データ番号 | 031_2 |
作者名 | 江馬務(えまつとむ) |
解説 | 洛西松尾神社のお田植の神事は例年七月二十三日社頭にて挙行せらる。当日上山田下津林谷三ケ村より十歳位の釆女一人宛を出し、腰元二人づつ付けて社参す。釆女は髪を下髪とし花椛を挿し水引を以て元結とし、額に葵形の白粉を施し、頭に牡丹桜菊などの紗張の花王を冠り、目もあやなる掻取を着つくろひ、手甲をなし紅白の襷をかけ、稲の苗を振りたるが男の肩に戴せられ、先駈雑色二人鍬持などの後に従ひ、笛太皷皷の能囃子につれて、拝殿の周囲を三たびめぐり、今年の米作の豊穂を神に祈るなり。さてこの式終れば、苗をそれぞれ自村へ持ち帰り田に植う。いやちこなる神の霊験にてその田には虫のつくことなしとぞ。その式の後能の催あり。近村の人々暑さを厭はずふりはへて参詣し、社内いたくにぎはふもいづれ神の稜威あらむかし。 |