データ番号 | 097_2 |
作者名 | 江馬務(えまつとむ) |
解説 | 鉢たたき月雪に名は花之丞といはれけむ空也堂(くうやどう)の法門を敲く半僧半俗、春秋彼岸と寒中は鉦打ちたたき洛の内外三昧を廻りぬ。そも空也堂は醍醐天皇(だいごてんのう)皇子空也上人(くうやしょうにん)の開基にて、縁起によれば上人平将門(たいらのまさかど)残党を説法し、鉦に代ふるに兜の鉢を打たしめしより、この門下を鉢敲といふといへど、こは恐らく鉄鉢を打ちしことより起りし名なるべし。法会行脚には鉢とて瓢を打つことあり。まことの鉦皷を打つことあり。投頭巾に墨染の素絹、木蘭色服に五条の袈裟、手甲脚絆草鞋の甲斐々々しき行脚姿はいかで内職とは見らるべき。さあれ説くところは万法一如、北嶺朝暮の草の露、夢の浮世を免れいでよとの、世にありがたき上人の法語にしあれば、米やらぬ我身恥かしと吟ぜられしもげに理りなり。 |