データ番号 | 098_2 |
作者名 | 江馬務(えまつとむ) |
解説 | 秋も酣になりて東山の翠巒も紅葉する霜月十日は官幣大社八坂神社(やさかじんじゃ)の大社に昇格の記念日とて、八坂神社にては同社にゆかりある舞人楽人など数多つどひて舞楽を奏し、神の御心を慰め奉ることあり。楽人はすべて直垂にて能舞台に居並び、舞人は社務所より出でて薦の上を拝殿に歩をはこび演技を行ふ。笙篳篥龍笛羯鼓さては大太鼓鉦鼓の妙なる音は繊々として谷間の流れの如く、(043813)々として峯の嵐にさも似たり。舞人の装束は井伊家旧蔵の逸品なる上、あるは振鉾あるは陵王、納蘇利左方右方文武の舞は袖を飜し、踏舞翩々として技誠に神に入る。神もをかしと見給ふらむ。さあれ観客の極めて少なきは現代に即せぬ高遠なる古儀なればなるべし。 |