僧正おおきによろこび給ひて、寺中のしゅと
たちをくわいがうし、せんぎまちゝゝなり。僧正仰せ
けるやうは、たう寺はがらんさうゝゝのゝち、大だんな
はんじゃうして仏法さい中のだうじゃうなれば、
ふせうのひゞきはこゝろにまかせてりうぐうより
とりてかへりしかねなれば、天下無双のてうほう
末代のめいよなり。とかうのさたにをよばず。ほう
しゃをうけたまふべし」とありしかば、まんざの
大しゅ一どうにみなもつともとりゃうじゃうし、
吉日をえらんで、かのつりがねをきしんし給へ。
すなわちくやうをなすべしとて、千常をば
かへされける。藤太此よしうけたまはり、からさきの
はまへゆきてみれば、夜のまにりうぐうより
あげたまふとおぼしくて、くだんのつりがねおはし
ます。「これより三井でらへひきつけんには、あまた
の人ぶをもちたまはずば、たやすく引つくまじ」と
あんじけるところに、明日くやうとあひさだめし