データ番号 | 101_2 |
作者名 | 江馬務(えまつとむ) |
解説 | 年の内にこし春の昔は知らず、今は耶蘇降誕祭も年の暮に来れば、年の瀬もやがて尽きなむ師走の下旬ともなれば、家々の慌しさいはむ方なし。わけて四条わたりの繁華街は年の市とて初春をことほがむ衣裳用具などを山と積みて売れるが中に、祝膳太箸神柵燈器大服茶熨斗昆布注連ちよろけんなどの店頭人波溢れ、「くりすますつりー」の燦として銀色輝けるも人の目を奪ふ。大路の中に「さんた、くろうす」の老翁にや擬へけむ、赤き衣着たる広告の人も御すがた年のくれの景物ならじやは。折ふし小雪鵞毛に似て飛びちる中にいそいそと嬉しげに行きかふ人の多きは、来む年にいたく望いだける人が懐あたたかき人なるべし。 |