陸軍観兵式


データ番号058_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説千早ふる神代の昔よりわが国は尚武の国にて、君のため国の為には家も身もすてて釼太刀ふりかざし戦のにはに出で立つならひなり。されば古より一とたびも外つ国の辱しめを受けし事なく、国運いよいよ伸長して今日の聖代を仰ぐは、まことに列聖の稜威の然らしむるところとはいへ、また国民勇武の結果なるべし。治に居て乱を忘れざる心にや、毎年正月八日は観兵式とて、東都にては大元帥陛下みみづから御閲兵の盛儀あり。京都にても明治四十二年(めいじ42ねん)より第十六師団(だいじゅうろくしだん)諸聯隊は此の日練兵場に打ちつどひ、師団長之れを閲し終りて分列式を挙行せられ、一万の貔貅は歩武堂々場内を周行し、飛行機は裂帛の音を吐いて上空に翼を列ねて飛翔し、その勇ましさ譬ふるにものなし。観者何人か士気を鼓舞せざるものあらむや。