入営祝


データ番号059_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説男子生れて丁年に達すれば、徴されて兵役に服するは是れ国家の義務なり。されど身体累弱その他の事故によりて徴せられざるもあり。多数壮丁のうち身体の発達頗る完全にて素行学業いづれも欠点なきは徴されて、翌年正月十日所管の師団に入営せざるべからず。是れ豈男子一代の光栄にして、又一門の名誉ならずや。愈入営も近づけば、自家表間に大元帥陛下の御尊像を掲げ奉り、神酒を供へ幕を張り国旗を立て、友人より贈りし祝の幟は初春の東風にひらめきて、門前のけしきものものし。その家の町内も同家をことほぎて、家々国旗を出し之をあやかる。入営の日は早朝親戚・友人・知己集まりて祝盃を挙げ、在郷軍人なども斡旋に労をとり、門出には異口同音に万歳を三唱、零時の寂寥を破る。本人は得意満面国家に干城早や敵の首とりし心ばへにて、揚々として出でたつも勇ましや。