吉田神社追儺


データ番号061_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説節分は春たつ前日のことなれば、此の日過ぎぬる一年の禍を祓ひ、迎へゆく年の幸福を祈る行事洛中社寺にここらあり。就中官幣中社吉田神社(よしだじんじゃ)にて挙行せらるる追儺式は平安朝(へいあんちょう)宮中の古式に則り、予の立案に係り節分の前夜同社境内に於て行はる。当夜午後八時社前にて先づ陰陽師の祭文朗読あり。近衛楽人神楽歌を奏すれば、黄金四目玄衣朱裳の方相氏は桙をもて楯を打つこと三度にして、人の世の災厄を与ふる無形の鬼を追はむと社前を走りいづ。之れに従へるISO/(4FB2)子公卿殿上人も大声疾呼し、公卿は携へたる桃弓葦矢にて鬼を射る儀あり。かくて方相氏ISO/(4FB2)子は吉田山を一周して帰社、行事を終る。近来同社にては鬼二人を加へ、祭儀いよいよ興を添へたり。当夜参詣拝観の人々幾万を算すべく、境内立錐の地なし。一年の奉賽一日にして集るとぞ伝ふめる。