大神楽


データ番号054_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説松の内の都大路をおとづるる古き門附の中、今もなほ来て新春の心を唆るものに伊勢(いせ)の大神楽あり。そも獅子頭は元西域亀茲国より唐に伝はり、更に我が国に移りしものにて、中古散楽田楽の舞曲、祭禮の行列に加へられ、専ら除厄福祉を祈るよすがとせしを、永正(えいしょう)の頃伊勢山田(いせやまだ)にて疫病ありし時この獅子頭を出して、さしものひろごりし病も立ちどころに鎮まりしより、歳のはじめにその村人ふるさとよりいでて人々にこの霊験を頒たむと国々を巡りしなり。獅子は片手に幣片手に刀を持ちて、笛鉦太鼓の妙なる音に打ちつれてよしある舞をなし、あらゆるまが事を攘ふ。銭多く取らすれば、一行の中滑稽なる男をかしき手ぶりにて人の頤を解き、あるは昔の田楽にゆかりある軽業手品など演じて観者の手に汗を握らしむ。若し銭少なければ、祓もそこそこに去るはまことに銭次第の世なりけり。