灌仏会


データ番号069_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説今を距ること二千五百年のむかし、卯月八日釈迦牟尼(しゃかむに)は印度迦眦羅城藍毘尼園無憂樹下に生れ給ひ、苦修練行十年宝寿三十余歳にして仏陀迦耶菩提樹下に大悟し始めて仏教を弘通し、とこしへに衆生のここらの苦患を救ひ給へり。この海山の恩を謝し、この日を記念せむが為め、古へより仏生会あり。此の日各寺院にては花の御堂とてさまざまの花もて小堂を飾り、中に誕生直後歩むこと七歩にして手をあげ天上天下唯我独尊と宣ひし釈迦像を安置し、釈尊生れし時九龍天より漁凉の淨水を御身に濺ぎしに象り、甘草尊の香水を頭より濺ぎ、詣づる人々には甜茶を施与す。篤信の人々上下のわいだめもなくこの舐茶を受けむとて竹筒・土瓶さげて参詣するも少なからず。唯いたく泰西のてぶり装へる人のまじらひ行くは聊か興さめぬれど、これも心は昔忘れぬわざにしあれば心づよくぞ覚えぬる。