嵯峨虚空藏十三詣


データ番号015_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説全山霞か雲か白雪の花となりゆく嵐峽の、渡月橋(とげつきょう)に近き法輪寺(ほうりんじ)虚空蔵菩薩へ、例年四月十三日十三歳を迎へし児童を伴ひ、福徳智恵を授からむとて参詣することあり。嵐山(あらしやま)の桜も時には葉桜となりてうつろひぬることもあめれど、橋の上は綺羅をかざれる都人を織りなして大堰川(おおいがわ)に影をさし、さながら一幅の絵巻物を展げたるが如し。川舟も今日を晴れの歓びを載せて淵瀬をゆきかふにぎやかさ。そもそもこの十三参りは元渡月橋畔の松尾社の末社(まつおしゃのまっしゃ)に詣づるならひなりしを、十三日が虚空蔵の縁日なるところより案じて、安永二年(あんえいにねん)から此の寺のさかしき僧の花時を撰びてし出でけるなり。いつしか松尾末社詣では此の方になびき、今の盛況とはなれりしなりといふ。福徳智恵を受けてかへるさ、後を向けば又これを失ふとて、児童に心よするもをかしや。世の染色工藝にたづさはれるもの、此のわたりに佇みて道ゆく人々の衣裳に今年の流行を案ずといふ。