鞍馬花供養


データ番号072_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説春は花いざ見にごんせ東山ならで、洛北鞍馬(くらま)のうば桜千枝万朶の花咲きほころびて時ならぬ雪ともまがふべし。現信楽貫主(しんらくかんじゅ)これを機とし、例年四月十八日より六日間鞍馬寺(くらまでら)に花供養といへるを催され、本尊毘沙門天及び脇侍に朝な夕なの法華常行三昧と特別の祈祷とを行はる。堂外には舞台を設けて、諸講遊廓信者などの狂言長唄清元舞踊など演藝を催され、結願の日には紫緋の法衣着たる貫主大衆、色とりどりの水干着たるらうたき稚児等、雪と散りくる花の下に庭儀行道の列をなす。行粧の美しさ誠に目もさむる心地ぞせらるる。満山花に明け花に暮れゆく春陽のけしきもさるものながら、此の供養につどふ老若男女の多きも鎮ります毘沙門天のいかにをかしと見給ふらむ。