下御霊神社祭


データ番号026_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説花洛の祭礼数ある中に、剱鉾の逸品多きをもて名あるは上下御霊神社(かみしもごりょうじんじゃ)の祭を措きて他にあるなし。そも御霊神社は代々に祟せし八所の神霊をいはひこめたる府社にて、此の祭は昔は七八月にありしを、季節あしきにより今は五月一日に神幸し十八日に還幸す。列中には鎌倉時代以降の勅賜の剣鉾多数あり。枠に組みて立てし鉾もあり。牛車鳳輿神輿錦蓋太鼓威儀のもの獅子頭などの長列、いづれを見るも京洛祭礼の特色を備へたり。この鉾は精巧なる鋳彫金の技と卓抜なる意匠に成れるものいと多く、持手はこの重き鉾を捧げて末端を帯に挟み、上を前後に打ちふりつつ調子をかしげに歩行するさまいとめづらかなり。下御霊の氏子は中京繁華のところなれば、祭礼の景気はわけて花やかに、世を呪ふ神霊も今日のみは御心もなごみけむ。