下賀茂歩射


データ番号074_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説もろこし屈原(くつげん)の故事とかや、五月五日は武事を競ふこと昔も今も変りなきためしなれば、此日武家にて弓を弄ぶ行事にならひて、京都下賀茂の社(しもがものやしろ)にても歩射の儀を挙行して神の御霊を慰め奉る。此の日午前十時ころより武徳会北野支部の錬達の士を招き、師範一人射手正八人副八人をして境内馬場にて弓を射しむ。的は檜垣とて竹をもて枠を造り、射手との間にも砂七段を盛り御幣を立つ。射手は各直垂を着し、的に向ひて代る代る手錬をふるふ。誠に勇壮たとへむかたなし。さあれ始めより優劣を考へず責を附せず。ただ端午の古きならはしに従ふのみなるは、なかなかにうるはしき心ばへも見えて世にありがたき御儀とぞ覚えし。