嵯峨祭


データ番号082_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説京都の戌亥の天空にそそりたつ愛宕山(あたごやま)に鎮座まします鎮火の神の愛宕神社(あたごじんじゃ)と、古へ斎宮群行の前内親王の御潔斎あらせられし野々宮神社(ののみやじんじゃ)との祭は、嵯峨祭とて例年五月廿三日に執行せらる。伝説によれば昔は衣冠の稚児奉楽の列ありしよしなるも、星移り事かはり、今は榊剱鉾神馬信徒神職両社の神輿の順列は、釈迦堂前の御旅所(おたびしょ)をいでて野々宮(ののみや)天龍寺(てんりゅうじ)を経、渡月橋(とげつきょう)に至り、また一路一すぢに元の旅所へ引きかへす。両神御心をあはせ行を共にし給ふもをかし。風薫る初夏の嵯峨野は、此の祭見むとて遠郊近在よりふりはへて集る人も夥しく、花に新緑ににぎはひし嵐山も、又この祭にて時ならぬ賑ひを呈するもげにことわりなれや。