鞍馬竹切


データ番号030_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説峯延和尚(ほうえんおしょう)延喜年間(えんぎねんかん)護摩の秘宝を修せし時、北山(きたやま)より雌雄二疋の大蛇来り和尚を呑まむとす。和尚直ちに大威徳毘沙門の呪を誦せしに、雄蛇忽ち倒れ、大蔵丞峯直(おおくらじょうみねなお)はこれを斬つて蛇棄山に捨てぬ。雌蛇は和尚之を助けて曰く、此の山には清泉なし。水を施せよと。蛇去り忽ちにして清泉涌出す。これ閼伽井なりと鞍馬寺記にあり。この竹切は即ち大蛇斬に擬ふるものにて、今も例年六月廿日に修せらる。予め十八日雌雄竹二本宛を本堂簀子東西に吊し、十九日には蛇棄山にて式を行ひ、廿日午後大総助太刀等はならし竹とて先づ竹の本末を切り外陣に運ぶ。内陣にては蓮華会終りて導師現はれ、檜扇もて合図すれば、東西方大総二人づつ掛声勇ましく太刀を抜き放ちて、丁々と竹を四きだに切り、われ一にと茶所へ駈け込む。その敏捷にして勇壮なる、見るものをして数た喝采の声を禁ぜざらしむ。聞くにらく、昔はこの竹切の東方西方の遅速により近江丹波両国の米作を占ひしが、今はこれも忘れ果てられしがごとし。初夏の天緑蔭涼しうして、行事見がてらISO/IEC(7B3B)を曳くもの限りしられず。