上賀茂六月祓


データ番号084_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説一年のなからのここらの罪汚を根の国底の国に祓ひて、世の青人草の心も身もすがすがしく清めむとの心にて、六月の晦日には上賀茂の社(かみがものやしろ)にて水無月の祓なむ行はるる。此の日たそがれの頃主典以下の神人あまたつどひてくさぐさのためつものを供へ、中臣家の大祓の祝詞声高らかに聞えあげ、級戸の風の雨の八重雲をふきはらふことの如くに祓へ清め給へとて、五尺にあまる木綿をとり裂きて水に流し、伊弉諾尊の日向(ひゅうが)の小門(おど)の阿波岐原(あわきはら)の古きためしをまねぶとかや。昔は土舎にてこの儀行はれしを、今は拝殿に易へて行はるるとぞ。古へより退転もなく昔を今に行はるるはいともめでたきためしなりけり。