祇園会稚児社参


データ番号086_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説近代的尖端を趨る四条通(しじょうどおり)のただなかを、黄金色の立鳥帽子孔雀の羽の挿頭花有文の狩衣きて、馬上悠然と手綱かいくる花の如き稚児、祇園守かけし朱傘をさしかくるむくつけの白丁、前に刀持の素襖姿、後に上下の伴衆、つきづきしからぬ古きてぶりの一列はそも何ぞ。是れ祇園稚児の晴の社参にて、毎年祭に先だつ七月十一日午前九時よりこの儀行はる。稚児とても今は長刀鉾の稚児のみなるが氏子の家より撰ばれ、此の日身を禊斎し、かく列を整へて八坂本社(やさかほんしゃ)に詣で、その奉告祭に臨み神前にぬかづきて神酒をうけ、ことしの祭の稚児の位を授けらるるなり。帰るさ昔のならはしに基づき、二軒茶屋(にけんぢゃや)の一なる中村楼(なかむらろう)に休らひて稚児餅を味はふことあり。このいとみやびなる一列には道ゆく人も歩をとどめて見守りけるも、げにことわりとぞ覚えし。