伏見弁天祭


データ番号036_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説花洛の祭礼の中、水上を上るとするもの獨伏見(ふしみ)中書島(ちゅうしょじま)弁天祭を推すべし。この祭は同廊中健寺(ちゅうけんじ)(長建寺(ちょうけんじ))の祭にて、毎年七月二十二三両日午後八時頃より挙行せらる。遊里にそへる河上に篝舟二隻御輿舟一隻囃子舟一隻漕ぎいづ。篝舟は舟上に材木を積み上げ、その上に砂を盛りあげ、濡れ蓙を敷きし上に篝を焚き、囃子舟は十歳より十二歳までのみめよき娘ども三味鼓鉦笛などをかなづ。えならぬ音の水上を通ひくれば、高張を掲げし遊覧船など四方より先を争ひて漕ぎよす。篝の火影は焔々として闇夜を照し、川波これに映えて(080760)艶たり。時移りぬれば楽の音は嚠喨としてあたりの秦(青)楼に反響し花街の解(綺)語の花もあだ姿にて、紅燈さやかなる青楼の欄に凭りて並し見るも又この祭の余興ならずとせむや。小夜ふけては河風一入涼しく、八隅の浪子も橋の上川岸につどひて、中には祭をよそに美女の手枕の見あかぬ眺めにそぞろ心ときめかすもありなまし。