松ケ崎題目踊


データ番号042_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説孟蘭盆には祖先の精霊を鎮静し父母の心情を慰藉する為めに、歓喜のあまり踊躍する風俗室町時代(むろまちじだい)より仏徒の間に起り、世に盆踊とて一般に流布し今もなほ近郊に行はる。その中にも松ケ崎(まつがさき)題目踊は最も古き形式を具へ、法悦を如実に示すものなりけり。この題目踊は元妙泉寺(みょうせんじ)に行はれしが、今は本涌寺(ほんゆうじ)にて八月十五六両日夜村民男女によりて行はる。男女の扮装いづれも浴衣に襷をかけ扇もつ。女は三幅前垂せるは流石にといとをかし。本堂前に二台の大太鼓を持ちいで、之を打てば男女大なる輪となりて整列し、南無妙法蓮華経の法華の題目を称え、仏の功徳を礼讃せる法の歌を唱へつつ、もの腰てぶり怪しく踊りめぐる。げに十万の諸霊も成仏し、一切の衆生も済度せらるべうぞ覚えし。法の庭の夜は更けぬ。松ふく風凉しくして露は感涙と共に地に落つ。十悪八逆の迷の雲もはれずば已まざるべし。