六斎念仏


データ番号043_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説葉月も央になりゆけば、例の孟蘭盆とて家々精霊まつるわざ忙がはし。この頃吉祥院壬生寺(きっしょういんみぶでら)には今も青年団員などの間に六斎念仏とて行はる。そも六斎は空也上人(くうやしょうにん)より始まり、中頃道空法如上人(どうくうほうにょしょうにん)再興あり。六斎精進功徳経の法理により、鉦鼓の妙音を発して衆生を済度せむとすることと、亡き人の霊を慰めて父母を喜ばす歓喜踊躍とが合致して成れるもの。浴衣姿のもの廿余名代る代る豆太鼓四ツ太鼓鉦四挺釣を打ち、笛ふきて越後獅子鉄輪祇園囃子等の曲を奏し、就中獅子曲などは獅子頭をかづき岩上跳飛の勢を示し、蜘蛛曲は千筋の糸を投ぐ。わけてその豆太鼓うつ手ぶりの敏捷巧妙は技神に入り、たやすく追随を許さず。人をして嘆賞、時を移さしむ。盛夏花洛歳事の一珍といふべし。