筑子踊


データ番号055_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説注連のうち屠蘇の香もまだ去りやらぬ年のはじめ、日頃労働雑役せる手伝の面々、けふを晴と豆絞りの手拭にて鉢巻し、印半天に紺ぱつちの姿いさぎよく、手毎に棒を持ち、折ふし立ちどまり見る人山を面はゆげにもせで、街路一列に立ち並び、音頭とりの音頭にあはせ手ぶりをかしく踊ることあり。俗に之れを棒踊、御祝儀踊といへど、正しくは筑子といふとぞ。抑筑子は元散楽の一にして、後世田楽放下に移り、さらに転じて手伝の所演となれりしは、さても奇縁といひつべし。宮中左義長に鬼の演じける棒振綾織舞もその一種にしあれば、筑子も正月にゆかりなきにしもあらず。かく門前に踊りて得意の客に報謝の意を表すとはいへど、まことは金品の祝儀を得るも一の目的なるはことさらにいふを俟たざるべし。