北白川天神祭


データ番号094_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説秋も酣なる神無月廿三日、この頃は日も短ければ見るまに日影は西山に沈みて、落葉堆き北白川(きたしらかわ)わたりは午後四時ともなれば早や薄暮を呈しぬ。太鼓鉦を先にして、長鉾三本は小提灯もてる若者四十八人に捧持せられ、社掌氏子などこれに続き、高張二本の次には少彦名命(すくなひこなのみこと)を祀れる神輿は活気に満てる若者によりて舁がれ、歩調も早く町内の御旅所を出でて白糸瀧(しらいとのたき)より農大門前まで北白川の町を一筋にねり歩き、又還幸あり。氏子は更なり、遠近の人々路傍に佇みて之をおろがむ。社は山近く冷気迫りて詣づるものにはそぞろ襟元さむけれど、神輿の舁手は揃ひの浴衣に鉢巻して揃声勇ましく玉なす汗してあらびゆくも、一すぢに神を念ずる心の偲ばれていともゆかしきことどもなれや。