御火焚


データ番号096_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説霜月のはじめより央へかけて、洛中諸社にては御火焚とて社頭に新穀の御饌密(蜜)柑饅頭ISO/IEC(7C94)ISO/IEC(7C79)と神酒を供へ、神人祝詞を誦し玉串を捧げ、兼ねて広前に積みおける松の木に火をかけ、時としては竹をも加へ、神酒を注ぎて竹を爆ぜさす。火焔々と燃え上れば、神人は神の大前に盛りし密(蜜)柑などを撒く。そを待ちけるあたりの童ども、お火たきのうのうと呼ばはりつつ我れ先きにと争ひ拾ふ。是れ新嘗祭に擬し、社前に神楽を奏することの移れるなるべし。火焚祭のうち名あるは十一月八日の稲荷社(いなりしゃ)のものなるが、民間にても鍛冶職など火を用うる業は何れも火焚を行ひて供物を家々に頒つ。火を祀ることの誤れるにや。さあれいづれも敬神の美風をとどむることにはけじめあらざるべし。