七五三の社参


データ番号049_2
作者名江馬務(えまつとむ)
解説昔霜月十五日には七五三の祝とてなすことあり。霜月は一陽来復の月にて、十五日は月満つる日なれば、此の日を殊に祝ふなりとぞ。女子七歳になりぬれば、帯解の祝とて始めて衣服の紐を去り帯を〆めさせ、男子五歳になれば、袴着とて始めて袴を穿きしめ、又男女三歳までは昔は髪を剃りしが、三歳の此の日より髪置とて始めて髪を延ばすにより、此の日その親その子を伴ひて産土の社に詣で、神人をしてその子行幸ある将来の祈祷を乞ふなり。何事も泰西のてぶりをまねぶ今の世にはかかる古の例もかつかつ泯びゆき、七五三の社祭も大方は見ることすら稀になりゆきしも、猶ほ心ある家々にては当日霜枯れの落葉ふみて社にぬかづき、神酒ぬさを手向け鈴打ちならしなどして、神に心よりの祈願をなすぞゆかしき。凩に時雨伴ひし空もかへさには日影さして、神の御しるしを喜びつつ家路をいそぐもめでたしや。