句番号	句／作者／異同資料句番号
00001	これはこれはとばかり花の芳野山これはこれは－とはかりはなの－よしのやま
00002	我ままをいはする花のあるじ哉わかままを－いはするはなの－あるしかな
00003	薄曇りけだかくはなの林かなうすくもり－けたかくはなの－はやしかな
00004	はなのやまどことらまへて哥よまむはなのやま－とことらまへて－うたよまむ
00005	暮淋し花の後の鬼瓦くれさひし－はなのうしろの－おにかはら
00006	山里に喰ものしひる花見かなやまさとに－くひものしひる－はなみかな
00007	何事ぞ花みる人の長刀なにことそ－はなみるひとの－なかかたな
00008	みねの雲すこしは花もまじるべしみねのくも－すこしははなも－ましるへし
00009	はなのなか下戸引て来るかいな哉はなのなか－けこひいてくる－かいなかな
00010	下下の下の客といはれん花の宿けけのけの－きやくといはれん－はなのやと
00011	はなの山常折くぶる枝もなしはなのやま－つねをりくふる－えたもなし
00012	見あげしがふもとに成ぬ花の滝みあけしか－ふもとになりぬ－はなのたき
00013	兄弟のいろはあげけり花のとききやうたいの－いろはあけけり－はなのとき
00014	ちるはなは酒ぬす人よぬす人よちるはなは－さけぬすひとよ－ぬすひとよ
00015	冷汁に散てもよしや花の陰ひやしるに－ちりてもよしや－はなのかけ
00016	はつ花に誰が傘ぞいまいましはつはなに－たかからかさそ－いまいまし
00017	柴舟の花咲にけり宵の雨しはふねの－はなさきにけり－よひのあめ
00018	をるときになりて迯けり花の枝をるときに－なりてにけけり－はなのえた
00019	連だつや従弟はおほし花の時つれたつや－いとこはおほし－はなのとき
00020	疱瘡の跡まだ見ゆるはな見哉はうさうの－あとまたみゆる－はなみかな
00021	あらけなや風車売花のときあらけなや－かさくるまうる－はなのとき
00022	花にきてうつくしく成心哉はなにきて－うつくしくなる－こころかな
00023	山あひのはなを夕日に見出したりやまあひの－はなをゆふひに－みたしたり
00024	おもしろや理窟はなしに花の雲おもしろや－りくつはなしに－はなのくも
00025	なりあひやはつ花よりの物わすれなりあひや－はつはなよりの－ものわすれ
00026	独来て友選びけり花のやまひとりきて－ともえらひけり－はなのやま
00027	花鳥とこけら葺ゐる尾上かなはなとりと－こけらふきゐる－をのへかな
00028	首出して岡の花見よ鮑とりくひたして－をかのはなみよ－あはひとり
00029	月花もなくて酒のむひとり哉つきはなも－なくてさけのむ－ひとりかな
00030	橿の木のはなにかまはぬすがた哉かしのきの－はなにかまはぬ－すかたかな

阿羅野　巻一：杜宇二十句

句番号	句／作者／異同資料句番号
00031	鳥篭の憂目見つらん郭公とりかこの－うきめみつらん－ほとときす
00032	目には青葉山ほととぎす初がつをめにはあをは－やまほとときす－はつかつを
00033	いそがしきなかに聞けり蜀魄いそかしき－なかにききけり－ほとときす
00034	蝋燭のひかりにくしやほととぎすらふそくの－ひかりにくしや－ほとときす
00035	おひし子の口まねするや時鳥おひしこの－くちまねするや－ほとときす
00036	跡や先気のつく野辺の郭公あとやまつ－きのつくのへの－ほとときす
00037	ほととぎすどれからきかむ野の広きほとときす－とれからきかむ－ののひろき
00038	ほととぎすはばかりもなき烏かなほとときす－ははかりもなき－からすかな
00039	晴ちぎる空鳴行やほととぎすはれちきる－そらなきゆくや－ほとときす
00040	蚊屋臭き寐覚うつつや時鳥かやくさき－ねさめうつつや－ほとときす
00041	三声ほど跡のをかしや郭公みこゑほと－あとのをかしや－ほとときす
00042	ほととぎす十日もはやき夜舟哉ほとときす－とをかもはやき－よふねかな
00043	嬉しさや寐入らぬ先のほととぎすうれしさや－ねいらぬさきの－ほとときす
00044	あぶなしや今起て聞郭公あふなしや－いまおきてきく－ほとときす
00045	くらがりや力がましきほととぎすくらかりや－ちからかましき－ほとときす
00046	馬と馬よばりあひけり郭公うまとうま－よはりあひけり－ほとときす
00047	哥がるたにくき人かなほととぎすうたかるた－にくきひとかな－ほとときす
00048	うつかりとうつぶきゐたり時鳥うつかりと－うつふきゐたり－ほとときす
00049	うつかりと春の心ぞほととぎすうつかりと－はるのこころそ－ほとときす

阿羅野　巻一：月三十句

句番号	句／作者／異同資料句番号
00050	かるがると笹のうへゆく月夜哉かるかると－ささのうへゆく－つきよかな
00051	それがしも月見る中の独かなそれかしも－つきみるなかの－ひとりかな
00052	月ひとつばひとりがちの今宵哉つきひとつ－はひとりかちの－こよひかな
00053	雨の月どこともなしの薄あかりあめのつき－とこともなしの－うすあかり
00054	けうとさに少脇むく月夜哉けうとさに－すこしわきむく－つきよかな
00055	屋わたりの宵はさびしや月の影やわたりの－よひはさひしや－つきのかけ
00056	をかしげにほめて詠る月夜哉をかしけに－ほめてなかむる－つきよかな
00057	どこまでも見とほす月の野中哉とこまても－みとほすつきの－のなかかな
00058	峠迄硯抱て月見かなたうけまて－すすりかかへて－つきみかな
00059	一つ屋やいかいこと見るけふのつきひとつやや－いかいことみる－けふのつき
00060	名月は夜明るきはもなかりけりめいけつは－よあくるきはも－なかりけり
00061	名月やとしに十二は有ながらめいけつや－としにしふには－ありなから
00062	名月やかいつきたててつなぐ舟めいけつや－かいつきたてて－つなくふね
00063	めいげつやはだしでありく草の中めいけつや－はたしてありく－くさのなか
00064	名月や鼓の声と犬のこゑめいけつや－つつみのこゑと－いぬのこゑ
00065	見るものと覚えて人の月見哉みるものと－おほえてひとの－つきみかな
00066	むつかしと月を見る日は火も焼かじむつかしと－つきをみるひは－ひもたかし
00067	いつの月もあとを忘れて哀也いつのつきも－あとをわすれて－あはれなり
00068	名月や海もおもはず山も見ずめいけつや－うみもおもはす－やまもみす
00069	めいげつや下戸と下戸とのむつまじきめいけつや－けことけことの－むつましき
00070	めいげつはありきもたらぬ林かなめいけつは－ありきもたらぬ－はやしかな
00071	宵に見し橋はさびしや月の影よひにみし－はしはさひしや－つきのかけ
00072	影ふた夜たらぬ程見る月夜哉かけふたよ－たらぬほとみる－つきよかな
00073	暮いかに月の気もなし海の果くれいかに－つきのけもなし－うみのはて
00074	見る人もたしなき月の夕かなみるひとも－たしなきつきの－ゆふへかな
00075	何事の見たてにも似ず三かの月なにことの－みたてにもにす－みかのつき
00076	夕月夜あんどんけしてしばしみむゆふつきよ－あんとんけして－しはしみむ
00077	何日とも見さだめがたや宵の月いくかとも－みさためかたや－よひのつき
00078	銀州見習ふ比や月のそらあまのかは－みならふころや－つきのそら
00079	能ほどにはなして帰る月夜哉よきほとに－はなしてかへる－つきよかな

阿羅野　巻一：雪二十句

句番号	句／作者／異同資料句番号
00080	雪の日や船頭どのの顔の色ゆきのひや－せんとうとのの－かほのいろ
00081	いざゆかむ雪見にころぶ所までいさゆかむ－ゆきみにころふ－ところまて
00082	竹の雪落て夜るなく雀かなたけのゆき－おちてよるなく－すすめかな
00083	かさなるや雪のある山只の山かさなるや－ゆきのあるやま－たたのやま
00084	車道雪なき冬のあした哉くるまみち－ゆきなきふゆの－あしたかな
00085	はつ雪を見てから顔を洗けりはつゆきを－みてからかほを－あらひけり
00086	はつ雪に戸明ぬ留主の菴かなはつゆきに－とあけぬるすの－いほりかな
00087	ものかげのふらぬも雪の一つ哉ものかけの－ふらぬもゆきの－ひとつかな
00088	くらき夜に物陰見たり雪の隈くらきよに－ものかけみたり－ゆきのくま
00089	雪降て馬屋にはひる雀かなゆきふりて－うまやにはひる－すすめかな
00090	夜の雪おとさぬやうに枝折らんよるのゆき－おとさぬやうに－えたをらん
00091	ゆきの日や川筋ばかりほそほそとゆきのひや－かはすちはかり－ほそほそと
00092	初雪やおしにぎる手の寄麗也はつゆきや－おしにきるての－きれいなり
00093	雪の江の大舟よりは小舟かなゆきのえの－おほふねよりは－こふねかな
00094	雪の朝から鮭わくる声高しゆきのあさ－からさけわくる－こゑたかし
00095	雪の暮猶さやけしや鷹の声ゆきのくれ－なほさやけしや－たかのこゑ
00096	ちらちらや淡雪かかる酒強飯ちらちらや－あはゆきかかる－さかこはひ
00097	はつ雪や先草履にて隣まではつゆきや－まつさうりにて－となりまて
00098	はかられし雪の見所有り所はかられし－ゆきのみところ－ありところ
00099	舟かけていくかふれども海の雪ふねかけて－いくかふれとも－うみのゆき

阿羅野　巻二：歳旦

句番号	句／作者／異同資料句番号
00100	二日にもぬかりはせじな花の春ふつかにも－ぬかりはせしな－はなのはる
00101	たれ人の手がらもからじ花の春たれひとの－てからもからし－はなのはる
00102	わか水や凡千年のつるべ縄わかみつや－およそちとせの－つるへなは
00103	松かざり伊勢が家買人は誰まつかさり－いせかいへかふ－ひとはたれ
00104	うたか否連歌にあらずにし肴うたかいな－れんかにあらす－にしさかな
00105	月雪のためにもしたし門の松つきゆきの－ためにもしたし－かとのまつ
00106	かざり木にならで年ふる柏哉かさりきに－ならてとしふる－かしはかな
00107	元朝や何となけれど遅ざくらくわんてうや－なにとなけれと－おそさくら
00108	元日は明すましたるかすみ哉くわんしつは－あけすましたる－かすみかな
00109	歯固に梅の花かむにほひかなはかために－うめのはなかむ－にほひかな
00110	ふたつ社老にはたらねとしの春ふたつこそ－おいにはたらね－としのはる
00111	若水をうちかけて見よ雪の梅わかみつを－うちかけてみよ－ゆきのうめ
00112	伊勢浦や御木引休む今朝の春いせうらや－みきひきやすむ－けさのはる
00113	ことぶきの名をつけて見む宿の梅ことふきの－なをつけてみむ－やとのうめ
00114	去年の春ちひさかりしが芋頭こそのはる－ちひさかりしか－いもかしら
00115	小柑子栗やひろはむまつのかどせうかうし－くりやひろはむ－まつのかと
00116	とし男千秋楽をならひけりとしをとこ－せんしうらくを－ならひけり
00117	山柴にうら白まじる竃かなやましはに－うらしろましる－かまとかな
00118	松高し引馬つるる年をとこまつたかし－ひきうまつるる－としをとこ
00119	月花の初は琵琶の木どり哉つきはなの－はしめはひはの－きとりかな
00120	連てきて子にまはせけり万歳楽つれてきて－こにまはせけり－まんさいらく
00121	うら白もはみちる神の馬屋哉うらしろも－はみちるかみの－うまやかな
00122	見おぼえむこや新玉の年の海みおほえむ－こやあらたまの－としのうみ
00123	今朝と起て縄ぶしほどく柳哉けさとおきて－なはふしほとく－やなきかな
00124	さほ姫やふかいの面いかならむさほひめや－ふかいのおもて－いかならむ
00125	蓬莱や舟の匠のかんなくずほうらいや－ふねのたくみの－かんなくす
00126	仏より神ぞたふとき今朝の春ほとけより－かみそたふとき－けさのはる
00127	のの宮やとしの旦はいかならんののみやや－としのあしたは－いかならん
00128	かざりにとたが思ひだすたはら物かさりにと－たかおもひたす－たはらもの
00129	正月の魚のかしらや炭だはらしやうくわつの－うをのかしらや－すみたはら
00130	けさの春寂しからざる閑かなけさのはる－さひしからさる－しつかかな
00131	あひあひに松なき門もおもしろやあひあひに－まつなきかとも－おもしろや
00132	大服は去年の青葉の匂哉おほふくは－こそのあをはの－にほひかな
00133	鴬の声聞まゐれ年をとこうくひすの－こゑききまゐれ－としをとこ
00134	傘に歯朶かかりけりゑ方だなからかさに－したかかりけり－えはうたな
00135	袖すりて松の葉契る今朝の春そてすりて－まつのはちきる－けさのはる
00136	たてて見む霞やうつる大かがみたててみむ－かすみやうつる－おほかかみ
00137	曙は春の初やだうぶくらあけほのは－はるのはしめや－たうふくら
00138	はつ春のめでたき名なり賢魚魚はつはるの－めてたきななり－かつをうを
00139	初夢や浜名の橋の今のさまはつゆめや－はまなのはしの－いまのさま
00140	しづやしづ御階にけふの麦厚ししつやしつ－みはしにけふの－むきあつし
00141	万歳のやどを隣に明にけりまんさいの－やとをとなりに－あけにけり
00142	巳のとしやむかしの春のおぼつかなみのとしや－むかしのはるの－おほつかな
00143	我は春目かどに立るまつ毛哉われははる－めかとにたてる－まつけかな
00144	我等式が宿にも来るや今朝の春われらしきか－やとにもくるや－けさのはる

阿羅野　巻二：初春

句番号	句／作者／異同資料句番号
00145	若菜つむ跡は木を割畑哉わかなつむ－あとはきをわる－はたけかな
00146	精出して摘とも見えぬ若菜哉せいたして－つむともみえぬ－わかなかな
00147	七草をたたきたがりて泣子かなななくさを－たたきたかりて－なくこかな
00148	女出て鶴たつあとの若菜哉をんなてて－つるたつあとの－わかなかな
00149	側濡て袂のおもき礒菜かなそはぬれて－たもとのおもき－いそなかな
00150	吾うらも残しておかぬ若菜哉わかうらも－のこしておかぬ－わかなかな
00151	石釣てつぼみたる梅折しけりいしつりて－つほみたるうめ－をりしけり
00152	鷹居て折にもどかし梅の花たかすゑて－をるにもとかし－うめのはな
00153	むめの花もの気にいらぬけしき哉うめのはな－ものきにいらぬ－けしきかな
00154	藪見しれもどりに折らん梅の花やふみしれ－もとりにをらん－うめのはな
00155	梅折てあたり見廻す野中かなうめをりて－あたりみまはす－のなかかな
00156	華もなきむめのずはいぞ頼もしきはなもなき－うめのすはいそ－たのもしき
00157	みのむしとしれつる梅のさかり哉みのむしと－しれつるうめの－さかりかな
00158	梅の木になほやどり木や梅の花うめのきに－なほやとりきや－うめのはな
00159	うぐひすの鳴そこなへる嵐かなうくひすの－なきそこなへる－あらしかな
00160	鴬の鳴や餌ひろふ片手にもうくひすの－なくやゑひろふ－かたてにも
00161	あけぼのや鴬とまるはね釣瓶あけほのや－うくひすとまる－はねつるへ
00162	鴬にちひさき藪も捨られじうくひすに－ちひさきやふも－すてられし
00163	うぐひすの声に脱たる頭巾哉うくひすの－こゑにぬきたる－つきんかな
00164	鴬になじみもなきや新屋敷うくひすに－なしみもなきや－しんやしき
00165	うぐひすに水汲こぼすあした哉うくひすに－みつくみこほす－あしたかな
00166	さとかすむ夕をまつの盛かなさとかすむ－ゆふへをまつの－さかりかな
00167	行行て程のかはらぬ霞哉ゆきゆきて－ほとのかはらぬ－かすみかな
00168	行人の簑をはなれぬ霞かなゆくひとの－みのをはなれぬ－かすみかな
00169	かれ芝やまだかげろふの一二寸かれしはや－またかけろふの－いちにすん
00170	かげろふや馬の眼のとろとろとかけろふや－うまのまなこの－とろとろと
00171	水仙の見る問を春に得たりけりすいせんの－みるまをはるに－えたりけり
00172	蝶鳥を待るけしきやものの枝てふとりを－まてるけしきや－もののえた
00173	つきたかと児のぬき見るさし木哉つきたかと－ちこのぬきみる－さしきかな
00174	つまの下かくしかねたる継穂かなつまのした－かくしかねたる－つきほかな
00175	暁の釣瓶にあがるつばきかなあかつきの－つるへにあかる－つはきかな
00176	藪深く蝶気のつかねつばき哉やふふかく－てふきのつかね－つはきかな
00177	はる雨はいせの望一がこより哉はるさめは－いせのもいちか－こよりかな
00178	春の雨弟どもを呼でこよはるのあめ－おとうとともを－よんてこよ
00179	はやぶさの尻つまげたる白尾哉はやふさの－しりつまけたる－しらをかな
00180	蛛の井に春雨かかる雫かなくものいに－はるさめかかる－しつくかな
00181	立臼に若草見たる明屋哉たてうすに－わかくさみたる－あきやかな
00182	すごすごと親子摘けりつくづくしすこすこと－おやこつみけり－つくつくし
00183	すごすごと摘やつまずや土筆すこすこと－つむやつますや－つくつくし
00184	すごすごと案山子のけけり土筆すこすこと－かかしのけけり－つくつくし
00185	土橋やよこにはえたるつくづくしつちはしや－よこにはえたる－つくつくし
00186	川舟や手をのべてつむ土筆かはふねや－てをのへてつむ－つくつくし
00187	つくづくし頭巾にたまるひとつよりつくつくし－つきんにたまる－ひとつより
00188	池に鵞なし仮名書習ふ柳陰いけにかなし－かなかきならふ－やなきかけ
00189	風の吹方を後のやなぎ哉かせのふく－かたをうしろの－やなきかな
00190	何事もなしと過行柳哉なにことも－なしとすきゆく－やなきかな
00191	さし柳ただ直なるもおもしろしさしやなき－たたすくなるも－おもしろし
00192	尺ばかりはやたわみぬる柳哉しやくはかり－はやたわみぬる－やなきかな
00193	すがれすがれ柳は風にとりつかむすかれすかれ－やなきはかせに－とりつかむ
00194	とりつきて筏をとむる柳哉とりつきて－いかたをとむる－やなきかな
00195	さはれども髪のゆがまぬ柳哉さはれとも－かみのゆかまぬ－やなきかな
00196	みじかくて垣にのがるる柳哉みしかくて－かきにのかるる－やなきかな
00197	ふくかぜに牛のわきむく柳哉ふくかせに－うしのわきむく－やなきかな
00198	吹風に鷹かたよするやなぎ哉ふくかせに－たかかたよする－やなきかな
00199	かぜふかぬ日はわがなりの柳哉かせふかぬ－ひはわかなりの－やなきかな
00200	いそがしき野鍛冶をしらぬ柳哉いそかしき－のかちをしらぬ－やなきかな
00201	蝙蝠にみだるる月の柳哉かうもりに－みたるるつきの－やなきかな
00202	青柳にもたれて通す車哉あをやきに－もたれてとほす－くるまかな
00203	引いきに後へころぶ柳かなひくいきに－うしろへころふ－やなきかな
00204	菊の名は忘れたれども植にけりきくのなは－わすれたれとも－うゑにけり

阿羅野　巻二：仲春

句番号	句／作者／異同資料句番号
00205	麦の葉に菜のはなかかる嵐哉むきのはに－なのはなかかる－あらしかな
00206	菜の花や杉菜の土手のあひあひになのはなや－すきなのとての－あひあひに
00207	なの花の座敷にうつる日影哉なのはなの－さしきにうつる－ひかけかな
00208	菜の花の畦うち残すながめ哉なのはなの－あせうちのこす－なかめかな
00209	うごくとも見えで畑うつ麓かなうこくとも－みえてはたうつ－ふもとかな
00210	万歳を仕舞うてうてる春田哉まんさいを－しまうてうてる－はるたかな
00211	つばきまで折そへらるるさくらかなつはきまて－をりそへらるる－さくらかな
00212	広庭に一本植しさくら哉ひろにはに－ひともとうゑし－さくらかな
00213	ときどきは簑干さくら咲にけりときときは－みのほすさくら－さきにけり
00214	手のとどくほどはをらるる桜哉てのととく－ほとはをらるる－さくらかな
00215	うしろより見られぬ岨の桜哉うしろより－みられぬそはの－さくらかな
00216	すごすごと山やくれけむ遅ざくらすこすこと－やまやくれけむ－おそさくら
00217	はる風にちからくらぶる雲雀哉はるかせに－ちからくらふる－ひはりかな
00218	あふのきに寐てみむ野辺の雲雀哉あふのきに－ねてみむのへの－ひはりかな
00219	高声につらをあかむる雉子かなたかこゑに－つらをあかむる－ききすかな
00220	行かかり輪縄解てやる雉子哉ゆきかかり－わなといてやる－ききすかな
00221	手をついて哥申あぐる蛙かなてをついて－うたまうしあくる－かはつかな
00222	鳴立ていりあひ聞ぬかはづかななきたてて－いりあひきかぬ－かはつかな
00223	あかつきをむつかしさうに鳴蛙あかつきを－むつかしさうに－なくかはつ
00224	いくすべり骨をる岸のかはづ哉いくすへり－ほねをるきしの－かはつかな
00225	飛入てしばし水ゆく蛙かなとひいりて－しはしみつゆく－かはつかな
00226	不図飛て後に居なほる蛙哉ふととひて－あとにゐなほる－かはつかな
00227	ゆふやみの唐網にいる蛙かなゆふやみの－たうあみにいる－かはつかな
00228	はつ蝶を児の見出す笑ひ哉はつてふを－ちこのみいたす－わらひかな
00229	椶櫚の葉にとまらで過る胡蝶哉しゆろのはに－とまらてすくる－こてふかな
00230	かやはらの中を出かぬるこてふかなかやはらの－なかをてかぬる－こてふかな
00231	かれ芝や若葉たづねて行胡蝶かれしはや－わかはたつねて－ゆくこてふ

阿羅野　巻二：暮春

句番号	句／作者／異同資料句番号
00232	何の気もつかぬに土手の菫哉なにのきも－つかぬにとての－すみれかな
00233	ねぶたしと馬には乗らぬ菫草ねふたしと－うまにはのらぬ－すみれくさ
00234	はうろくの土とる跡は菫かなはうろくの－つちとるあとは－すみれかな
00235	昼ばかり日のさす洞の菫哉ひるはかり－ひのさすほらの－すみれかな
00236	草刈て菫選出す童かなくさかりて－すみれえりたす－わらはかな
00237	行蝶のとまり残さぬあざみ哉ゆくてふの－とまりのこさぬ－あさみかな
00238	麦畑の人見るはるの塘かなむきはたの－ひとみるはるの－つつみかな
00239	はげ山や朧の月のすみ所はけやまや－おほろのつきの－すみところ
00240	ほろほろと山吹ちるか滝の音ほろほろと－やまふきちるか－たきのおと
00241	松明にやま吹うすし夜のいろたいまつに－やまふきうすし－よるのいろ
00242	山吹とてふのまぎれぬあらし哉やまふきと－てふのまきれぬ－あらしかな
00243	一重かと山吹のぞくゆふべ哉ひとへかと－やまふきのそく－ゆふへかな
00244	とりつきてやまぶきのぞくいはね哉とりつきて－やまふきのそく－いはねかな
00245	あそぶともゆくともしらぬ燕かなあそふとも－ゆくともしらぬ－つはめかな
00246	去年の巣の土ぬり直す燕かなこそのすの－つちぬりなほす－つはめかな
00247	いまきたといはぬばかりの燕かないまきたと－いはぬはかりの－つはめかな
00248	燕の巣を覗行すずめかなつはくらの－すをのそきゆく－すすめかな
00249	黄昏にたてだされたる燕哉たそかれに－たてたされたる－つはめかな
00250	友減て鳴音かひなや夜の鴈ともへりて－なくねかひなや－よるのかり
00251	角落てやすくも見ゆる小鹿哉つのおちて－やすくもみゆる－をしかかな
00252	なら漬に親よぶ浦の塩干哉ならつけに－おやよふうらの－しほひかな
00253	おやも子も同じ飲手や桃の酒おやもこも－おなしのみてや－もものさけ
00254	人霞む舟と陸との塩干かなひとかすむ－ふねとくかとの－しほひかな
00255	山まゆに花咲かぬる躑躅かなやままゆに－はなさきかぬる－つつしかな
00256	朧夜やながくてしろき藤の花おほろよや－なかくてしろき－ふちのはな
00257	篝火に藤のすすけぬ鵜舟かなかかりひに－ふちのすすけぬ－うふねかな
00258	永き日や鐘突跡もくれぬ也なかきひや－かねつくあとも－くれぬなり
00259	永き日や油しめ木のよわる音なかきひや－あふらしめきの－よわるおと
00260	行春のあみ塩からを残しけりゆくはるの－あみしほからを－のこしけり

阿羅野　巻三：初夏

句番号	句／作者／異同資料句番号
00261	ころもがへや白きは物に手のつかずころもかへや－しろきはものに－てのつかす
00262	更衣襟もをらずやだだくさにころもかへ－えりもをらすや－たたくさに
00263	ころもがへ刀もさして見たき哉ころもかへ－かたなもさして－みたきかな
00264	髭に焼香もあるべしころもがへひけにたく－かうもあるへし－ころもかへ
00265	なつ来てもただひとつ葉の一つ哉なつきても－たたひとつはの－ひとつかな
00266	いちはつはをとこなるらんかきつばたいちはつは－をとこなるらん－かきつはた
00267	柿の木のいたり過たる若葉哉かきのきの－いたりすきたる－わかはかな
00268	切かぶのわか葉を見れば桜哉きりかふの－わかはをみれは－さくらかな
00269	若葉からすぐにながめの冬木哉わかはから－すくになかめの－ふゆきかな
00270	わけもなくその木その木の若葉哉わけもなく－そのきそのきの－わかはかな
00271	ひらひらとわか葉にとまる故蝶哉ひらひらと－わかはにとまる－こてふかな
00272	ゆあびして若葉見に行夕かなゆあひして－わかはみにゆく－ゆふへかな
00273	はげ山や下行水の沢卯木はけやまや－したゆくみつの－さはうつき
00274	上ゲ土にいつの種とて麦一穂あけつちに－いつのたねとて－むきひとほ
00275	枯色は麦ばかり見る夏の哉かれいろは－むきはかりみる－なつのかな
00276	麦かりて桑の木ばかり残りけりむきかりて－くはのきはかり－のこりけり
00277	むぎからにしかるる里の葵かなむきからに－しかるるさとの－あふひかな
00278	しら芥子にはかなや蝶の鼠いろしらけしに－はかなやてふの－ねすみいろ
00279	鳥飛であぶなきけしの一重哉とりとんて－あふなきけしの－ひとへかな
00280	けし散て直に実を見る夕哉けしちりて－すくにみをみる－ゆふへかな
00281	大粒な雨にこたえし芥子の花おほつふな－あめにこたえし－けしのはな
00282	散たびに児ぞ拾ひぬ芥子の花ちるたひに－ちこそひろひぬ－けしのはな
00283	菴の夜もみじかくなりぬすこしづつあんのよも－みしかくなりぬ－すこしつつ
00284	さびしさの色はおぼえずかつこ鳥さひしさの－いろはおほえす－かつことり

阿羅野　巻三：仲夏

句番号	句／作者／異同資料句番号
00285	宵の間は笹にみだるる螢かなよひのまは－ささにみたるる－ほたるかな
00286	刈草の馬屋に光るほたるかなかりくさの－うまやにひかる－ほたるかな
00287	窓くらき障子をのぼる螢哉まとくらき－しやうしをのほる－ほたるかな
00288	闇きよりくらき人呼螢かなくらきより－くらきひとよふ－ほたるかな
00289	道細く追はれぬ沢の螢かなみちほそく－おはれぬさはの－ほたるかな
00290	あめの夜は下ばかり行螢かなあめのよは－したはかりゆく－ほたるかな
00291	くさかりの袖より出るほたる哉くさかりの－そてよりいつる－ほたるかな
00292	水汲て濡たる袖のほたるかなみつくみて－ぬれたるそての－ほたるかな
00293	ここらかとのぞくあやめの軒端哉ここらかと－のそくあやめの－のきはかな
00294	蚊のむれて栂の一木の曇けりかのむれて－とかのひときの－くもりけり
00295	かやり火に寐所せまくなりにけりかやりひに－ねところせまく－なりにけり
00296	雨のくれ傘のぐるりに鳴蚊かなあめのくれ－かさのくるりに－なくかかな
00297	蚊の痩て鎧のうへにとまりけりかのやせて－よろひのうへに－とまりけり
00298	藻の花をかづける蜑の鬘かなものはなを－かつけるあまの－かつらかな
00299	塩引て藻の花しぼむ暑さかなしほひきて－ものはなしほむ－あつさかな
00300	足伸べて姫百合艸をらす昼ね哉あしのへて－ひめゆりをらす－ひるねかな
00301	竹の子に行燈さげてまはりけりたけのこに－あんとんさけて－まはりけり
00302	笋の時よりしるし弓の竹たけのこの－ときよりしるし－ゆみのたけ
00303	聞をればたたくてもなき水鶏哉ききをれは－たたくてもなき－くひなかな
00304	五月雨に柳きはまる汀かなさみたれに－やなききはまる－みきはかな
00305	この比は小粒になりぬ五月雨このころは－こつふになりぬ－さつきあめ
00306	五月雨は傘に音なきを雨間哉さみたれは－かさにおとなきを－あままかな
00307	おもしろうさうしさばくる鵜縄哉おもしろう－さうしさはくる－うなはかな
00308	おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉おもしろうて－やかてかなしき－うふねかな
00309	鵜のつらに篝こぼれて憐也うのつらに－かかりこほれて－あはれなり
00310	声あらば鮎も鳴らん鵜飼舟こゑあらは－あゆもなくらん－うかひふね
00311	先ふねの親もかまはね鵜舟哉さきふねの－おやもかまはね－うふねかな
00312	曲江に篝の見えぬうぶねかなまかりえに－かかりのみえぬ－うふねかな
00313	鴨の巣の見えたりあるはかくれたりかものすの－みえたりあるは－かくれたり
00314	松笠の緑を見たる夏野哉まつかさの－みとりをみたる－なつのかな
00315	虹の根をかくす野中の樗哉にしのねを－かくすのなかの－あふちかな
00316	藺の花や泥によごるる宵の雨ゐのはなや－とろによこるる－よひのあめ
00317	撫子や蒔絵書人をうらむらんなてしこや－まきゑかくひとを－うらむらん
00318	冷じや灯のこる夏のあさすさましや－ともしひのこる－なつのあさ
00319	夏の夜やたき火に簾見ゆる里なつのよや－たきひにすたれ－みゆるさと
00320	すびつさへすごきに夏の炭俵すひつさへ－すこきになつの－すみたはら
00321	夕がほや秋はいろいろの瓢かなゆふかほや－あきはいろいろの－ふくへかな
00322	ゆふがほのしぼむは人のしらぬ也ゆふかほの－しほむはひとの－しらぬなり
00323	夕皃は蚊の鳴ほどのくらさ哉ゆふかほは－かのなくほとの－くらさかな
00324	山路来て夕がほみたるのなか哉やまちきて－ゆふかほみたる－のなかかな
00325	名はへちまゆふがほに似て哀也なはへちま－ゆふかほににて－あはれなり

阿羅野　巻三：暮夏

句番号	句／作者／異同資料句番号
00326	楠も動くやう也蝉の声くすのきも－うこくやうなり－せみのこゑ
00327	雲の峰腰かけ所たくむなりくものみね－こしかけところ－たくむなり
00328	夕立に干傘ぬるる垣穂かなゆふたちに－ほしかさぬるる－かきほかな
00329	すずしさに榎もやらぬ木陰哉すすしさに－えのきもやらぬ－こかけかな
00330	涼しさよ白雨ながら入日影すすしさよ－ゆふたちなから－いりひかけ
00331	簾して涼しや宿のはひりぐちすたれして－すすしややとの－はひりくち
00332	はき庭の砂あつからぬ曇哉はきにはの－すなあつからぬ－くもりかな
00333	おもはずの人に逢けり夕涼みおもはすの－ひとにあひけり－ゆふすすみ
00334	飛石の石龍や草の下凉みとひいしの－とかけやくさの－したすすみ
00335	凉しさや楼の下ゆく水の音すすしさや－ろうのしたゆく－みつのおと
00336	挑燈のどこやらゆかし凉み舟てうちんの－とこやらゆかし－すすみふね
00337	すずしさをわすれてもどる川辺哉すすしさを－わすれてもとる－かはへかな
00338	吹ちりて水のうへゆく蓮かなふきちりて－みつのうへゆく－はちすかな
00339	蓮みむ日にさかやきはわるるともはちすみん－ひにさかやきは－わるるとも
00340	笠を着てみなにな蓮に暮にけりかさをきて－みなみなはすに－くれにけり
00341	河骨に水のわれ行ながれ哉かはほねに－みつのわれゆく－なかれかな
00342	はらはらとしみづに松の古葉哉はらはらと－しみつにまつの－ふるはかな
00343	すみきりて塩干の沖の清水哉すみきりて－しほひのおきの－しみつかな
00344	連あまた待せて結ぶし水哉つれあまた－またせてむすふ－しみつかな
00345	引立て馬にのまするし水かなひきたてて－うまにのまする－しみつかな
00346	かたびらは浅黄着て行清水哉かたひらは－あさききてゆく－しみつかな
00347	直垂をぬがずに結ぶしみづかなひたたれを－ぬかすにむすふ－しみつかな
00348	虫ぼしや幕をふるへばさくら花むしほしや－まくをふるへは－さくらはな
00349	麻の露皆こぼれけり馬の路あさのつゆ－みなこほれけり－うまのみち
00350	釣鐘草後に付たる名なるべしつりかねさう－のちにつけたる－ななるへし
00351	綿の花たまたま蘭に似たるかなわたのはな－たまたまらんに－にたるかな

阿羅野　巻四：初秋

句番号	句／作者／異同資料句番号
00352	ちからなや麻刈あとの秋の風ちからなや－あさかるあとの－あきのかせ
00353	梧の葉やひとつかぶらん秋の風きりのはや－ひとつかふらん－あきのかせ
00354	一葉散音かしましきばかり也ひとはちる－おとかしましき－はかりなり
00355	かたびらのちぢむや秋の夕げしきかたひらの－ちちむやあきの－ゆふけしき
00356	男くさき羽織を星の手向哉をとこくさき－はおりをほしの－たむけかな
00357	朝皃は酒盛しらぬさかりかなあさかほは－さかもりしらぬ－さかりかな
00358	蕣や垣ほのままのじだらくさあさかおや－かきほのままの－したらくさ
00359	あさがほの白きは露も見えぬ也あさかほの－しろきはつゆも－みえぬなり
00360	朝顔をその子にやるなくらふものあさかほを－そのこにやるな－くらふもの
00361	隣なるあさがほ竹にうつしけりとなりなる－あさかほたけに－うつしけり
00362	あさがほやひくみの水に残る月あさかほや－ひくみのみつに－のこるつき
00363	葉より葉にものいふやうや露の音はよりはに－ものいふやうや－つゆのおと
00364	秋風やしらきの弓に弦はらんあきかせや－しらきのゆみに－つるはらん
00365	凉しさは座敷より釣鱸かなすすしさは－さしきよりつる－すすきかな
00366	畦道に乗物すうるいなばかなあせみちに－のりものすうる－いなはかな
00367	まつむしは通る跡より鳴にけりまつむしは－とほるあとより－なきにけり
00368	きりぎりす燈台消て鳴にけりきりきりす－とうたいきえて－なきにけり
00369	あの雲は稲妻を待たより哉あのくもは－いなつまをまつ－たよりかな
00370	いなづまやきのふは東けふは西いなつまや－きのふはひかし－けふはにし
00371	ふまれてもなほうつくしや萩の花ふまれても－なほうつくしや－はきのはな
00372	ひよろひよろと猶露けしや女郎花ひよろひよろと－なほつゆけしや－をみなへし
00373	棚作ルはじめさびしき蒲萄哉たなつくる－はしめさひしき－ふたうかな
00374	草ばうばうからぬも荷ふ花野哉くさはうはう－からぬもになふ－はなのかな
00375	もえきれて帋燭をなぐる薄哉もえきれて－しそくをなくる－すすきかな
00376	行人や堀にはまらんむら薄ゆくひとや－ほりにはまらん－むらすすき
00377	名もしらぬ小草花咲野菊哉なもしらぬ－こくさはなさく－のきくかな
00378	としどしのふる根に高き薄哉としとしの－ふるねにたかき－すすきかな

阿羅野　巻四：仲秋

句番号	句／作者／異同資料句番号
00379	かれ朶に烏のとまりけり秋の暮かれえたに－からすのとまりけり－あきのくれ
00380	つくづくと絵を見る秋の扇哉つくつくと－ゑをみるあきの－あふきかな
00381	谷川や茶袋そそぐ秋のくれたにかはや－ちやふくろそそく－あきのくれ
00382	石切の音も聞けり秋の暮いしきりの－おともききけり－あきのくれ
00383	斧のねや蝙蝠出るあきのくれをののねや－かうもりいつる－あきのくれ
00384	鹿の音に人の皃みる夕部哉しかのねに－ひとのかほみる－ゆふへかな
00385	田と畑を独りにたのむ案山子哉たとはたを－ひとりにたのむ－かかしかな
00386	山賎が鹿驚作りて笑けりやまかつか－かかしつくりて－わらひけり
00387	紅葉にはたがをしへける酒の間もみちには－たかをしへける－さけのかん
00388	しらぬ人と物いひて見る紅葉哉しらぬひとと－ものいひてみる－もみちかな
00389	藪の中に紅葉みじかき立枝哉やふのなかに－もみちみしかき－たちえかな
00390	どことなく地にはふ蔦の哀也とことなく－ちにはふつたの－あはれなり
00391	わが宿はどこやら秋の草葉哉わかやとは－とこやらあきの－くさはかな
00392	恥もせず我なり秋とおごりけりはちもせす－われなりあきと－おこりけり
00393	はすの実のぬけつくしたる蓮のみかはすのみの－ぬけつくしたる－はすのみか
00394	一本の芦の穂痩しゐせき哉ひともとの－あしのほやせし－ゐせきかな
00395	松の木に吹あてられな秋の蝶まつのきに－ふきあてられな－あきのてふ
00396	はつとして寐られぬ蚊屋のわかれ哉はつとして－ねられぬかやの－わかれかな
00397	心にもかからぬ市のきぬたかなこころにも－かからぬいちの－きぬたかな
00398	さぞ砧孫六やしき志津屋敷さそきぬた－まころくやしき－しつやしき
00399	きぬたうちて我にきかせよ坊がつまきぬたうちて－われにきかせよ－はうかつま
00400	いそがしや野分の空の夜這星いそかしや－のわきのそらの－よはひほし

阿羅野　巻四：暮秋

句番号	句／作者／異同資料句番号
00401	なにとなく植しが菊の白き哉なにとなく－うゑしかきくの－しろきかな
00402	しら菊のちらぬぞ少口をしきしらきくの－ちらぬそすこし－くちをしき
00403	山路のきく野菊とも又ちがひけりやまちのきく－のきくともまた－ちかひけり
00404	一色や作らぬ菊のはなざかりひといろや－つくらぬきくの－はなさかり
00405	かはらけの手ぎは見せばや菊の花かはらけの－てきはみせはや－きくのはな
00406	菊のつゆ凋る人や鬢帽子きくのつゆ－しをるるひとや－ひんはうし
00407	けふになりて菊作うとおもひけりけふになりて－きくつくらうと－おもひけり
00408	かなぐりて蔦さへ霜の塩木哉かなくりて－つたさへしもの－しほきかな
00409	淋しさは橿の実落るね覚哉さひしさは－かしのみおつる－ねさめかな
00410	残る葉ものこらずちれや梅もどきのこるはも－のこらすちれや－うめもとき
00411	芦の穂やまねく哀れよりちるあはれあしのほや－まねくあはれより－ちるあはれ

阿羅野　巻五：初冬

句番号	句／作者／異同資料句番号
00412	あめつちのはなしとだゆる時雨哉あめつちの－はなしとたゆる－しくれかな
00413	一夜きて三井寺うたへ初しぐれひとよきて－みゐてらうたへ－はつしくれ
00414	はつしぐれ何おもひ出すこの夕はつしくれ－なにおもひたす－このゆふへ
00415	見しり逢ふ人のやどりの時雨哉みしりあふ－ひとのやとりの－しくれかな
00416	今朝は猶そらばかり見るしぐれ哉けさはなほ－そらはかりみる－しくれかな
00417	釣がねの下降のこすしぐれかなつりかねの－したふりのこす－しくれかな
00418	渡し守ばかり簑着るしぐれ哉わたしもり－はかりみのきる－しくれかな
00419	こがらしに二日の月のふきちるかこからしに－ふつかのつきの－ふきちるか
00420	一葉づつ柿の葉みなに成にけりひとはつつ－かきのはみなに－なりにけり
00421	このはたく跡は淋しき囲炉裏哉このはたく－あとはさひしき－ゐろりかな
00422	枇杷の花人のわするる木陰かなひはのはな－ひとのわするる－こかけかな
00423	茶の花はもののついでに見たる哉ちやのはなは－もののついてに－みたるかな
00424	梨の花しぐれにぬれて猶淋しなしのはな－しくれにぬれて－なほさひし
00425	蓑虫のいつから見るや帰花みのむしの－いつからみるや－かへりはな
00426	麦まきて奇麗に成し庵哉むきまきて－きれいになりし－いほりかな
00427	のどけしや麦まく比の衣がへのとけしや－むきまくころの－ころもかへ
00428	縫ものをたたみてあたる火燵哉ぬひものを－たたみてあたる－こたつかな
00429	石臼の破てをかしやつはの花いしうすの－われてをかしや－つはのはな
00430	青くともとくさは冬の見物哉あをくとも－とくさはふゆの－みものかな
00431	あたらしき釣瓶にかかる荵かなあたらしき－つるへにかかる－しのふかな
00432	冬枯に風の休みもなき野哉ふゆかれに－かせのやすみも－なきのかな
00433	蓮池のかたちは見ゆる枯葉哉はすいけの－かたちはみゆる－かれはかな
00434	鷹居て石けつまづくかれ野哉たかすゑて－いしけつまつく－かれのかな
00435	こがらしに吹とられけり鷹の巾こからしに－ふきとられけり－たかのきん
00436	鷹狩の路にひきたる蕪哉たかかりの－みちにひきたる－かふらかな
00437	炉を出て度度月ぞ面白きろをいてて－たひたひつきそ－おもしろき
00438	あさ漬の大根あらふ月夜哉あさつけの－たいこんあらふ－つきよかな

阿羅野　巻五：仲冬

句番号	句／作者／異同資料句番号
00439	おろしおく鐘しづかなる霰哉おろしおく－かねしつかなる－あられかな
00440	しら浪とつれてたばしる霰哉しらなみと－つれてたはしる－あられかな
00441	掻よする馬糞にまじるあられ哉かきよする－はふんにましる－あられかな
00442	柴の戸をほどく間にやむ霰哉しはのとを－ほとくまにやむ－あられかな
00443	いただける柴をおろせば霰かないたたける－しはをおろせは－あられかな
00444	霜の朝せんだんの実のこぼれけりしものあさ－せんたんのみの－こほれけり
00445	水棚の菜の葉に見たる氷かなみつたなの－なのはにみたる－こほりかな
00446	深き池氷のときに覗きけりふかきいけ－こほりのときに－のそきけり
00447	つきわりてまつ葉かきけり薄氷つきわりて－まつはかきけり－うすこほり
00448	打をりて何ぞにしたき氷柱哉うちをりて－なにそにしたき－つららかな
00449	峠より雪舟乗おろす塩木哉たうけより－そりのりおろす－しほきかな
00450	ぬつくりと雪舟に乗たるにくさ哉ぬつくりと－そりにのりたる－にくさかな
00451	夜をこめて雪舟に乗たるよめり哉よをこめて－そりにのりたる－よめりかな
00452	馬屋より雪舟引出す朝かなうまやより－そりひきいたす－あしたかな
00453	雪舟引や休むも直に立てゐるそりひきや－やすむもすくに－たちてゐる
00454	つけかへておくるる雪舟のはや緒哉つけかへて－おくるるそりの－はやをかな
00455	青海や羽白黒鴨赤がしらあをうみや－はしろくろかも－あかかしら
00456	舟にたく火に声たつる鵆哉ふねにたく－ひにこゑたつる－ちとりかな
00457	朝鮮を見たもあるらん友千鳥てうせんを－みたもあるらん－ともちとり
00458	汗出して谷に突こむ氷室哉あせたして－たににつきこむ－ひむろかな
00459	海鼠腸の壷埋めたき氷室哉このわたの－つほうつめたき－ひむろかな
00460	炭竃の穴ふさぐやら薄けぶりすみかまの－あなふさくやら－うすけふり
00461	膝節をつつめど出るさむさ哉ひさふしを－つつめといつる－さむさかな
00462	火とぼして幾日になりぬ冬椿ひとほして－いくかになりぬ－ふゆつはき
00463	いつこけし庇起せば冬つばきいつこけし－ひさしおこせは－ふゆつはき
00464	冬籠りまたよりそはん此はしらふゆこもり－またよりそはん－このはしら

阿羅野　巻五：暮冬

句番号	句／作者／異同資料句番号
00465	餅つきや内にもをらず酒くらひもちつきや－うちにもをらす－さけくらひ
00466	吾書てよめぬもの有り年の暮われかきて－よめぬものあり－としのくれ
00467	もち花の後はすすけてちりぬべしもちはなの－あとはすすけて－ちりぬへし
00468	はる近く榾つみかゆる菜畑哉はるちかく－ほたつみかゆる－なはたかな
00469	煤はらひ梅にさげたる瓢かなすすはらひ－うめにさけたる－ひさこかな
00470	としのくれ杼の実一つころころととしのくれ－とちのみひとつ－ころころと
00471	門松をうりて蛤一荷ひかとまつを－うりてはまくり－ひとになひ
00472	田作に鼠追ふよの寒さ哉たつくりに－ねすみおふよの－さむさかな

阿羅野　巻六：雑

句番号	句／作者／異同資料句番号
00473	いはけなやとそなめ初る人次第いはけなや－とそなめそむる－ひとしたい
00474	としごとに鳥居の藤のつぼみ哉としことに－とりゐのふちの－つほみかな
00475	沓音もしづかにかざすさくら哉くつおとも－しつかにかさす－さくらかな
00476	けふの日やついでに洗ふ仏達けふのひや－ついてにあらふ－ほとけたち
00477	おも痩て葵付たる髪薄しおもやせて－あふひつけたる－かみうすし
00478	うち明てほどこす米ぞ虫臭きうちあけて－ほとこすこめそ－むしくさき
00479	わか菜より七夕草ぞ覚えよきわかなより－たなはたくさそ－おほえよき
00480	爪髪も旅のすがたやこまむかへつめかみも－たひのすかたや－こまむかへ
00481	草の葉や足のをれたるきりぎりすくさのはや－あしのをれたる－きりきりす
00482	玉しきの衣かへよとかへり花たましきの－ころもかへよと－かへりはな
00483	舞姫に幾たび指を折にけりまひひめに－いくたひゆひを－をりにけり
00484	おはれてや脇にはづるる鬼の面おはれてや－わきにはつるる－おにのめん
00485	氷ゐし添水またなる春の風こほりゐし－そほつまたなる－はるのかせ
00486	水鳥のはしに付たる梅白しみつとりの－はしにつけたる－うめしろし
00487	花売に留主たのまるる隣哉はなうりに－るすたのまるる－となりかな
00488	寐入なばもの引きせよ花の下ねいりなは－ものひききせよ－はなのもと
00489	行春もこころえがほの野寺かなゆくはるも－こころえかほの－のてらかな
00490	綿脱は松かぜ聞に行ころかわたぬきは－まつかせききに－ゆくころか
00491	蓮の香も行水したる気色哉はすのかも－きやうすいしたる－けしきかな
00492	凉めとて切ぬきにけり北のまどすすめとて－きりぬきにけり－きたのまと
00493	雪の旅それらではなし秋の空ゆきのたひ－それらてはなし－あきのそら
00494	秋の雨はれて瓜よぶ人もなしあきのあめ－はれてうりよふ－ひともなし
00495	ひとしきりひだるうなりて夜ぞ長きひとしきり－ひたるうなりて－よそなかき
00496	独り寐や泣たる皃にまどの月ひとりねや－なきたるかほに－まとのつき
00497	白菊や素顔で見むを秋の霜しらきくや－すかほてみむを－あきのしも
00498	こがらしもしばし息つく小春哉こからしも－しはしいきつく－こはるかな
00499	鉢たたき出もこぬむらや雪のかりはちたたき－てもこぬむらや－ゆきのかり
00500	仏名の礼に腰懐く白髪哉ふつみやうの－らいにこしたく－しらかかな
00501	かげろふの夕日にいたきつぶり哉かけろふの－ゆふひにいたき－つふりかな
00502	五月闇水鶏ではなし人の家さつきやみ－くひなてはなし－ひとのいへ
00503	かへるさや酒のみによる秋の里かへるさや－さけのみによる－あきのさと
00504	あさ露のぎぼう折けむつくもがみあさつゆの－きほうをりけむ－つくもかみ
00505	こがらしの松の葉かきとつれ立てこからしの－まつのはかきと－つれたちて
00506	かげろふの抱つけばわがころも哉かけろふの－たきつけはわか－ころもかな
00507	はる風に帯ゆるみたる寐皃哉はるかせに－おひゆるみたる－ねかほかな
00508	もの数寄やむかしの春の侭ならんものすきや－むかしのはるの－ままならん
00509	花ながら植かへらるる牡丹かなはななから－うゑかへらるる－ほたんかな
00510	よの木にもまぎれぬ冬の柳哉よのきにも－まきれぬふゆの－やなきかな
00511	寐やの蚊や御仏供焼火に出て行くねやのかや－おふくたくひに－いててゆく
00512	杜若生ん絵書の来る日哉かきつはた－いけんゑかきの－くるひかな
00513	講釈の眠りにつかふ扇哉かうしやくの－ねふりにつかふ－あふきかな
00514	水あびよ藍干上を踏ずともみつあひよ－あゐほすうへを－ふますとも
00515	蝉の音に武家の夕食過にけりせみのねに－ふけのゆふめし－すきにけり
00516	五月雨や鶏とまるはね作りさみたれや－にはとりとまる－はねつくり
00517	鹿笛の上手を尽すあはれさよしかふえの－しやうすをつくす－あはれさよ
00518	鴫突の行影長き日あし哉しきつきの－ゆくかけなかき－ひあしかな
00519	枝ながら虫うりに行蜀☆かなえたなから－むしうりにゆく－くさきかな
00520	おもしろと鰯引けり盆の月おもしろと－いわしひきけり－ほんのつき
00521	秋の昏鵜川鵜川の火ぶり哉あきのくれ－うかはうかはの－ひふりかな
00522	一方は梅さく桃の継木かなひとかたは－うめさくももの－つききかな
00523	からながら師走の市にうるさざいからなから－しはすのいちに－うるささい
00524	七夕よ物かすこともなきむかしたなはたよ－ものかすことも－なきむかし
00525	散はてて跡なぎものは花火哉ちりはてて－あとなきものは－はなひかな
00526	鶏頭の雪になる迄紅かなけいとうの－ゆきになるまて－あかきかな
00527	ほととぎす鳴やむ時をしりにけりほとときす－なきやむときを－しりにけり
00528	うつくしく人にみらるる荊哉うつくしく－ひとにみらるる－いはらかな
00529	いろいろのかたちをかしや月の雲いろいろの－かたちをかしや－つきのくも
00530	鳴声のつくろひもなきうづら哉なくこゑの－つくろひもなき－うつらかな
00531	おくやまは霰に減るか岩の角おくやまは－あられにへるか－いはのかと
00532	苔とりし跡には土もなかりけりのりとりし－あとにはつちも－なかりけり

阿羅野　巻七：名所

句番号	句／作者／異同資料句番号
00533	八重がすみ奥迄見たる竜田哉やへかすみ－おくまてみたる－たつたかな
00534	しら魚の骨や式部が大江山しらうをの－ほねやしきふか－おほえやま
00535	から崎の松は花より朧にてからさきの－まつははなより－おほろにて
00536	藁一把かりて花見る阿波手哉わらいちは－かりてはなみる－あはてかな
00537	嵯峨までは見事あゆみぬ花盛さかまては－みことあゆみぬ－はなさかり
00538	雪残る鬼嶽さむき弥生かなゆきのこる－おにたけさむき－やよひかな
00539	関こえて爰も藤しろみさか哉せきこえて－ここもふちしろ－みさかかな
00540	芳野出て布子売をし更衣よしのてて－ぬのこうるをし－ころもかへ
00541	麦うつや内外もなき志賀のさとむきうつや－うちそともなき－しかのさと
00542	五月雨にかくれぬものや瀬田の橋さみたれに－かくれぬものや－せたのはし
00543	湖の水まさりけり五月雨みつうみの－みつまさりけり－さつきあめ
00544	牛もなし鳥羽のあたりの五月雨うしもなし－とはのあたりの－さつきあめ
00545	いざのぼれ嵯峨の鮎食ひに都鳥いさのほれ－さかのあゆくひに－みやことり
00546	みよしのはいかに秋立貝の音みよしのは－いかにあきたつ－かひのおと
00547	いざよひもまださらしなの郡哉いさよひも－またさらしなの－こほりかな
00548	夕月や杖に水なぶる角田川ゆふつきや－つゑにみつなふる－すみたかは
00549	唐土に富士あらばけふの月もみよもろこしに－ふしあらはけふの－つきもみよ
00550	鴫突の馬やり過す鳥羽田哉しきつきの－うまやりすこす－とはたかな
00551	鴫突は萱津のあまのむまご哉しきつきは－かやつのあまの－うまこかな
00552	武蔵野やいく所にも見る時雨むさしのや－いくところにも－みるしくれ
00553	湖を屋ねから見せん村しぐれみつうみを－やねからみせん－むらしくれ
00554	から崎やとまりあはせて初しぐれからさきや－とまりあはせて－はつしくれ
00555	むさしのとおもへど冬の日あし哉むさしのと－おもへとふゆの－ひあしかな
00556	めづらしと生海鼠を焼や小のの奥めつらしと－なまこをたくや－をののおく
00557	冬ざれの独轆轤やをののおくふゆされの－ひとりろくろや－をののおく
00558	雪の富士藁屋一つにかくれけりゆきのふし－わらやひとつに－かくれけり
00559	よし野山も唯大雪の夕哉よしのやまも－たたおほゆきの－ゆふへかな
00560	星崎のやみを見よとや鳴千鳥ほしさきの－やみをみよとや－なくちとり
00561	夜るの日や不破の小家の煤はらひよるのひや－ふはのこいへの－すすはらひ

阿羅野　巻七：旅

句番号	句／作者／異同資料句番号
00562	雲雀より上にやすらふ峠かなひはりより－うへにやすらふ－たうけかな
00563	花の陰謡に似たる旅ねかなはなのかけ－うたひににたる－たひねかな
00564	桜咲里を眠りて通りけりさくらさく－さとをねふりて－とほりけり
00565	日の入や舟に見て行桃の花ひのいりや－ふねにみてゆく－もものはな
00566	のどけしや湊の昼の生ざかなのとけしや－みなとのひるの－なまさかな
00567	ひとつ脱で後におひぬ衣がへひとつぬいて－うしろにおひぬ－ころもかへ
00568	ほととぎすなみだおさへて笑けりほとときす－なみたおさへて－わらひけり
00569	寐いらぬに食焼宿ぞ明やすきねいらぬに－めしたくやとそ－あけやすき
00570	蚊をころすうちに夜明る旅ね哉かをころす－うちによあくる－たひねかな
00571	五月雨や柱目を出す市の家さみたれや－はしらめをたす－いちのいへ
00572	夕立にどの大名か一しぼりゆふたちに－とのたいみやうか－ひとしほり
00573	稲妻にはしりつきたる別かないなつまに－はしりつきたる－わかれかな
00574	なきなきて袂にすがる秋の蝉なきなきて－たもとにすかる－あきのせみ
00575	あき風に申かねたるわかれ哉あきかせに－まうしかねたる－わかれかな
00576	物いはじたださへ秋のかなしさよものいはし－たたさへあきの－かなしさよ
00577	霧はれよすがたを松に見えぬ迄きりはれよ－すかたをまつに－みえぬまて
00578	更級の月は二人に見られけりさらしなの－つきはふたりに－みられけり
00579	月に行脇差つめよ馬のうへつきにゆく－わきさしつめよ－うまのうへ
00580	おくられつおくりつはては木曾の秋おくられつ－おくりつはては－きそのあき
00581	蜘の巣の是も散行秋のいほくものすの－これもちりゆく－あきのいほ
00582	狩野桶に鹿をなづけよ秋の山かのをけに－しかをなつけよ－あきのやま
00583	とまりとまり稲すり哥も替けりとまりとまり－いねすりうたも－かはりけり
00584	入月に今しばし行とまり哉いるつきに－いましはしゆく－とまりかな
00585	能きけば親舟に打碪かなよくきけは－おやふねにうつ－きぬたかな
00586	沢菴の墓をわかれの秋の暮たくあんの－はかをわかれの－あきのくれ
00587	草枕犬もしぐるるか夜るの声くさまくら－いぬもしくるるか－よるのこゑ
00588	旅なれぬ刀うたてや村しぐれたひなれぬ－かたなうたてや－むらしくれ
00589	いく落葉それほど袖もほころびずいくおちは－それほとそても－ほころひす
00590	夢に見し羽織は綿の入にけりゆめにみし－はおりはわたの－いりにけり
00591	ああたつたひとりたつたる冬の宿ああたつた－ひとりたつたる－ふゆのやと
00592	天龍でたたかれたまへ雪の暮てんりゆうて－たたかれたまへ－ゆきのくれ
00593	から尻の馬にみてゆく千鳥哉からしりの－うまにみてゆく－ちとりかな
00594	里人のわたり候かはしの霜さとひとの－わたりさうらふか－はしのしも
00595	寒けれど二人旅ねぞたのもしきさむけれと－ふたりたひねそ－たのもしき
00596	旅寐して見しや浮世の煤払たひねして－みしやうきよの－すすはらひ

阿羅野　巻七：述懐

句番号	句／作者／異同資料句番号
00597	きゆる時は氷もきえてはしる也きゆるときは－こほりもきえて－はしるなり
00598	子を独守りて田を打孀かなこをひとり－もりてたをうつ－やもめかな
00599	余所の田の蛙入ぬも浮世かなよそのたの－かはついれぬも－うきよかな
00600	散花にたぶさ恥けり奥の院ちるはなに－たふさはちけり－おくのゐん
00601	桜見て行あたりたる乞食哉さくらみて－ゆきあたりたる－こしきかな
00602	父母のしきりに恋し雉子の声ちちははの－しきりにこひし－きしのこゑ
00603	あやめさす軒さへよそのついで哉あやめさす－のきさへよその－ついてかな
00604	さうぶ入湯をもらひけり一盤さうふいる－ゆをもらひけり－ひとたらひ
00605	一本のなすびもあまる住居かなひともとの－なすひもあまる－すまひかな
00606	肩衣は戻子にてゆるせ老の夏かたきぬは－もしにてゆるせ－おいのなつ
00607	似合はしや白髪にかつぐ麻木売にあはしや－しらかにかつく－をからうり
00608	かくれ家やよめ菜の中に残る菊かくれかや－よめなのなかに－のこるきく
00609	かり家を貪るきくの垣穂かなかりいへを－むさほるきくの－かきほかな
00610	さればこそあれたきままの霜の宿されはこそ－あれたきままの－しものやと
00611	こがらしの落葉にやぶる小ゆび哉こからしの－おちはにやふる－こゆひかな
00612	落ばかく身はつぶね共ならばやなおちはかく－みはつふねとも－ならはやな
00613	あはれなる落葉に焼や島さよりあはれなる－おちはにたくや－しまさより
00614	たらちめの暖甫や冷ん鐘の声たらちめの－たんほやひえん－かねのこゑ
00615	榾の火に親子足さす佗ね哉ほたのひに－おやこあしさす－わひねかな
00616	目や遠う耳やちかよるとしのくれめやとほう－みみやちかよる－としのくれ
00617	ふるさとや臍の緒に泣年の暮ふるさとや－へそのをになく－としのくれ
00618	さまざまの過しをおもふ年のくれさまさまの－すきしをおもふ－としのくれ
00619	行年や親にしらがをかくしけりゆくとしや－おやにしらかを－かくしけり

阿羅野　巻七：恋

句番号	句／作者／異同資料句番号
00620	春の野に心ある人の素皃哉はるののに－こころあるひとの－すかほかな
00621	きぬぎぬや余のことよりも時鳥きぬきぬや－よのことよりも－ほとときす
00622	蚊屋出て寐がほまたみる別かなかやいてて－ねかほまたみる－わかれかな
00623	むし干の目に立枕ふたつかなむしほしの－めにたつまくら－ふたつかな
00624	虫干に小袖着て見る女かなむしほしに－こそてきてみる－をんなかな
00625	ささげめし妹が垣ねは荒にけりささけめし－いもかかきねは－あれにけり
00626	宵闇の稲妻消すや月の顔よひやみの－いなつまけすや－つきのかほ
00627	一めぐり人待かぬるをどりかなひとめくり－ひとまちかぬる－をとりかな
00628	つまなしと家主やくれし女郎花つまなしと－やぬしやくれし－をみなへし
00629	しりながら薄に明るつまどかなしりなから－すすきにあくる－つまとかな
00630	妻の名のあらばけし給へ神送りつまのなの－あらはけしたまへ－かみおくり
00631	松の中時雨る旅のよめり哉まつのなか－しくるるたひの－よめりかな
00632	物おもひ火燵を明ていかならむものおもひ－こたつをあけて－いかならむ
00633	うたたねに火燵消たる別れ哉うたたねに－こたつきえたる－わかれかな
00634	山畑にもの思はばや蕪引やまはたに－ものおもははや－かふらひき
00635	きぬぎぬを霰見よとて戻りけりきぬきぬを－あられみよとて－もとりけり
00636	おそろしやきぬぎぬの比鉢皷きおそろしや－きぬきぬのころ－はちたたき

阿羅野　巻七：無常

句番号	句／作者／異同資料句番号
00637	散る花を南無阿弥陀仏と夕哉ちるはなを－なむあみたふと－ゆふへかな
00638	咲つ散つひまなきけしの畠哉ちりつちりつ－ひまなきけしの－はたけかな
00639	南無や空ただ有明のほととぎすなむやそら－たたありあけの－ほとときす
00640	橋のかをり顔見ぬばかり也たちはなの－かをりかほみぬ－はかりなり
00641	手のうへにかなしく消る螢かなてのうへに－かなしくきゆる－ほたるかな
00642	あだ花の小瓜とみゆるちぎりかなあたはなの－こうりとみゆる－ちきりかな
00643	水無月の桐の一葉と思ふべしみなつきの－きりのひとはと－おもふへし
00644	あはれ也灯篭一つに主コ斉あはれなり－とうろひとつに－ぬしこさい
00645	似た顔のあらば出てみん一躍りにたかほの－あらはててみん－ひとをとり
00646	おく露や小町がほねの見事さよおくつゆや－こまちかほねの－みことさよ
00647	をみなへししでの里人それたのむをみなへし－してのさとひと－それたのむ
00648	ねられずやかたへひえゆく北おろしねられすや－かたへひえゆく－きたおろし
00649	その人の鼾さへなし秋のくれそのひとの－いひきさへなし－あきのくれ
00650	をさな子やひとり食くふ秋の暮をさなこや－ひとりめしくふ－あきのくれ
00651	埋火もきゆやなみだの烹る音うつみひも－きゆやなみたの－にゆるおと
00652	あは雪のとどかぬうちに消にけりあはゆきの－ととかぬうちに－きえにけり
00653	鳥辺野のかたや念仏の冬の月とりへのの－かたやねふつの－ふゆのつき

阿羅野　巻八：釈教

句番号	句／作者／異同資料句番号
00654	神垣やおもひもかけず涅槃像かみかきや－おもひもかけす－ねはんさう
00655	負てくる母おろしけりねはんざうおうてくる－ははおろしけり－ねはんさう
00656	はつきりと有明残る桜かなはつきりと－ありあけのこる－さくらかな
00657	連翹や其望日としをれけりれんけうや－そのもちのひと－しをれけり
00658	うで首に蜂の巣かくる二王哉うてくひに－はちのすかくる－にわうかな
00659	木履はく僧も有けり雨の花ほくりはく－そうもありけり－あめのはな
00660	つりがねを扇で皷く花の寺つりかねを－あふきてたたく－はなのてら
00661	花に酒僧とも佗ん塩ざかなはなにさけ－そうともわひん－しほさかな
00662	散花の間はむかしばなし哉ちるはなの－あひたはむかし－はなしかな
00663	ほろほろと落るなみだやへびの玉ほろほろと－おつるなみたや－へひのたま
00664	観音の尾上のさくら咲にけりくわんのんの－をのへのさくら－さきにけり
00665	古寺やつるさぬかねの菫草ふるてらや－つるさぬかねの－すみれくさ
00666	海士の家聖よびこむやよひ哉あまのいへ－ひしりよひこむ－やよひかな
00667	咲にけりふべんな寺の紅牡丹さきにけり－ふへんなてらの－へにほたん
00668	夏山や木陰木陰の江湖部屋なつやまや－こかけこかけの－かうこへや
00669	灌仏の日に生れ逢ふ鹿の子哉くわんふつの－ひにうまれあふ－かのこかな
00670	灌仏の其比清ししらがさねくわんふつの－そのころきよし－しらかさね
00671	腰のあふぎ礼義ばかりの御山哉こしのあふき－れいきはかりの－みやまかな
00672	斎に来て菴一日の清水哉ときにきて－あんいちにちの－しみつかな
00673	おもふ事ながれて通るしみづ哉おもふこと－なかれてとほる－しみつかな
00674	夏陰の昼寐はほんの仏哉なつかけの－ひるねはほんの－ほとけかな
00675	ほころびや僧の縫をる夏衣ほころひや－そうのぬひをる－なつころも
00676	おどろくや門もてありく施餓鬼棚おとろくや－かともてありく－せかきたな
00677	折かけの火をとるむしのかなしさよをりかけの－ひをとるむしの－かなしさよ
00678	石篭に施餓鬼の棚のくづれ哉いしかこに－せかきのたなの－くつれかな
00679	魂祭舟より酒を手向けりたままつり－ふねよりさけを－たむけけり
00680	たままつり道ふみあくる野菊哉たままつり－みちふみあくる－のきくかな
00681	摂待のはしら見たてん松の陰せつたいの－はしらみたてん－まつのかけ
00682	摂待にただ行人をとどめけりせつたいに－たたゆくひとを－ととめけり
00683	稲妻に大仏をがむ野中哉いなつまに－たいふつをかむ－のなかかな
00684	垣越に引導覗くばせう哉かきこしに－いんたうのそく－はせうかな
00685	鴈くはぬ心仏にならはぬぞかりくはぬ－こころほとけに－ならはぬそ
00686	燕も御寺の鼓かへりうてつはくらも－みてらのつつみ－かへりうて
00687	進み出て坊主をかしや月の舟すすみてて－はうすをかしや－つきのふね
00688	鉢の子に木綿をうくる法師哉はちのこに－きわたをうくる－ほふしかな
00689	衣着て又はなしけり一時雨ころもきて－またはなしけり－ひとしくれ
00690	たふとさの涙や直に氷るらんたふとさの－なみたやすくに－こほるらん
00691	曙や伽藍伽藍の雪見廻ひあけほのや－からんからんの－ゆきみまひ
00692	雪折やかかる二王の片腕ゆきをれや－かかるにわうの－かたかひな
00693	つくり置てこはされもせじ雪仏つくりおきて－こはされもせし－ゆきほとけ
00694	朝寐する人のさはりや鉢皷あさねする－ひとのさはりや－はちたたき
00695	千観が馬もかせはし年のくれせんくわんか－うまもかせはし－としのくれ
00696	まつ白にむめの咲たつみなみ哉まつしろに－うめのかきたつ－みなみかな
00697	雪の日や酒樽拾ふあまの家ゆきのひや－さかたるひろふ－あまのいへ
00698	双六のあひてよびこむついり哉すころくの－あひてよひこむ－ついりかな
00699	竹たてておけば取つくささげかなたけたてて－おけはとりつく－ささけかな
00700	月の比隣の榎木きりにけりつきのころ－となりのえのき－きりにけり
00701	かわくとき清水見付る山辺哉かわくとき－しみつみつくる－やまへかな
00702	秋のよやおびゆるときに起さるるあきのよや－おひゆるときに－おこさるる

阿羅野　巻八：神祇

句番号	句／作者／異同資料句番号
00703	古宮や雪しるかかる獅子頭ふるみやや－ゆきしるかかる－ししかしら
00704	きさらぎや廿四日の月の梅きさらきや－にしふよつかの－つきのうめ
00705	しんしんと梅散かかる庭火哉しんしんと－うめちりかかる－にはひかな
00706	鴬も水あびてこよ神の梅うくひすも－みつあひてこよ－かみのうめ
00707	上下のさはらぬやうに神の梅かみしもの－さはらぬやうに－かみのうめ
00708	灯のかすかなりけり梅の中ともしひの－かすかなりけり－うめのなか
00709	何とやらをがめば寒し梅の花なにとやら－をかめはさむし－うめのはな
00710	覚えなくあたまぞさがる神の梅おほえなく－あたまそさかる－かみのうめ
00711	月代もしみるほど也梅の露さかやきも－しみるほとなり－うめのつゆ
00712	門あかで梅の瑞籬をがみけりもんあかて－うめのみつかき－をかみけり
00713	絵馬見る人の後のさくら哉ゑうまみる－ひとのうしろの－さくらかな
00714	花に来て歯朶かざり見る社哉はなにきて－したかさりみる－やしろかな
00715	宮の後川渡り見るさくら哉みやのうしろ－かはわたりみる－さくらかな
00716	御手洗の木の葉の中の蛙哉みたらしの－このはのなかの－かはつかな
00717	ほととぎす神楽の中を通りけりほとときす－かくらのなかを－とほりけり
00718	宮守の灯をわくる火串かなみやもりの－ともしをわくる－ほくしかな
00719	破扇一度にながす御祓かなやれあふき－いちとになかす－みそきかな
00720	川原迄瘧まぎれに御祓哉かはらまて－おこりまきれに－みそきかな
00721	こがらしや里の子覗く御輿部屋こからしや－さとのこのそく－みこしへや
00722	此月の恵比須はこちにゐます哉このつきの－ゑひすはこちに－ゐますかな
00723	冬ざれや称宜のさげたる油筒ふゆされや－ねきのさけたる－あふらつつ
00724	ききしらぬ哥も妙也神神楽ききしらぬ－うたもたへなり－かみかくら
00725	跡の方と寐なほす夜の神楽哉あとのかたと－ねなほすよるの－かくらかな
00726	鈴鹿川夜明の旅の神楽哉すすかかは－よあけのたひの－かくらかな
00727	かつらぎの神にはふとき庭火哉かつらきの－かみにはふとき－にはひかな
00728	橋杭や御祓かかる煤はらひはしくひや－おはらひかかる－すすはらひ

阿羅野　巻八：祝

句番号	句／作者／異同資料句番号
00729	肩付はいくよになりぬ長閑也かたつきは－いくよになりぬ－のとかなり
00730	幾春も竹其侭に見ゆる哉いくはるも－たけそのままに－みゆるかな
00731	君が代やみがくことなき玉つばききみかよや－みかくことなき－たまつはき
00732	青苔は何ほどもとれ沖の石あをのりは－なにほともとれ－おきのいし
00733	いきみたま畳の上に杖つかんいきみたま－たたみのうへに－つゑつかん
00734	千代の秋にほひにしるしことし米ちよのあき－にほひにしるし－ことしこめ
00735	先祝へ梅を心の冬籠りまついはへ－うめをこころの－ふゆこもり

阿羅野

阿羅野 巻一：花三十句

阿羅野 巻一：杜宇二十句

阿羅野 巻一：月三十句

阿羅野 巻一：雪二十句

阿羅野 巻二：歳旦

阿羅野 巻二：初春

阿羅野 巻二：仲春

阿羅野 巻二：暮春

阿羅野 巻三：初夏

阿羅野 巻三：仲夏

阿羅野 巻三：暮夏

阿羅野 巻四：初秋

阿羅野 巻四：仲秋

阿羅野 巻四：暮秋

阿羅野 巻五：初冬

阿羅野 巻五：仲冬

阿羅野 巻五：暮冬

阿羅野 巻六：雑

阿羅野 巻七：名所

阿羅野 巻七：旅

阿羅野 巻七：述懐

阿羅野 巻七：恋

阿羅野 巻七：無常

阿羅野 巻八：釈教

阿羅野 巻八：神祇

阿羅野 巻八：祝

阿羅野　巻一：花三十句

阿羅野　巻一：杜宇二十句

阿羅野　巻一：月三十句

阿羅野　巻一：雪二十句

阿羅野　巻二：歳旦

阿羅野　巻二：初春

阿羅野　巻二：仲春

阿羅野　巻二：暮春

阿羅野　巻三：初夏

阿羅野　巻三：仲夏

阿羅野　巻三：暮夏

阿羅野　巻四：初秋

阿羅野　巻四：仲秋

阿羅野　巻四：暮秋

阿羅野　巻五：初冬

阿羅野　巻五：仲冬

阿羅野　巻五：暮冬

阿羅野　巻六：雑

阿羅野　巻七：名所

阿羅野　巻七：旅

阿羅野　巻七：述懐

阿羅野　巻七：恋

阿羅野　巻七：無常

阿羅野　巻八：釈教

阿羅野　巻八：神祇

阿羅野　巻八：祝