炭俵

蓬莱に聞ばや伊勢の初便
ほうらいに−きかはやいせの−はつたより

[詞書]　立春

芭蕉　(xxx)

東雲やまいら戸はづすかざり松
しののめや−まいらとはつす−かさりまつ

[詞書]　立春

濁子　(xxx)

みちのくのけふ関越ん箱の海老
みちのくの−けふせきこえん−はこのえひ

[詞書]　立春

杉風　(xxx)

春や祝ふ丹波の鹿も帰とて
はるやいはふ−たんはのしかも−かへるとて

[詞書]　立春

去来：京　(xxx)

刀さす供もつれたし今朝の春
かたなさす−とももつれたし−けさのはる

[詞書]　立春

正秀：膳所　(xxx)

いそがしき春を雀のかきばかま
いそかしき−はるをすすめの−かきはかま

[詞書]　立春

洒堂：大坂　(xxx)

喰つみや木曾のにほひの桧物
くひつみや−きそのにほひの−ひのきもの

[詞書]　立春

岱水　(xxx)

猶いきれ門徒坊主の水祝ひ
なほいきれ−もんとはうすの−みついはひ

[詞書]　立春

沾圃　(xxx)

目下にも中の詞や年の時宜
めしたにも−ちうのことはや−としのしき

[詞書]　立春

孤屋　(xxx)

初日影我茎立とつまればや
はつひかけ−われくくたちと−つまれはや

[詞書]　立春

利牛　(xxx)

長松が親の名で来る御慶哉
ちやうまつか−おやのなてくる−きよけいかな

[詞書]　立春

野坡　(xxx)

梅一木つれづれ草の姿かな
うめひとき−つれつれくさの−すかたかな

[詞書]　梅

露沾　(xxx)

むめ咲や臼の挽木のよきまがり
うめさくや−うすのひききの−よきまかり

[詞書]　梅

曲翠　(xxx)

むめが香の筋に立よるはつ日哉
うめかかの−すちにたちよる−はつひかな

[詞書]　梅

支考　(xxx)

むめちるや糸の光の日の匂ひ
うめちるや−いとのひかりの−ひのにほひ

[詞書]　梅：窓のうちをみこみて

土芳：伊賀　(xxx)

梅さきて湯殿の崩れなほしけり
うめさきて−ゆとののくつれ−なほしけり

[詞書]　梅

利牛　(xxx)

赤みその口を明けりむめの花
あかみその−くちをあけけり−うめのはな

[詞書]　梅

游刀　(xxx)

みなみなに咲そろはねど梅の花
みなみなに−さきそろはねと−うめのはな

[詞書]　梅

野坡　(xxx)

紅梅は娘すまする妻戸哉
こうはいは−むすめすまする−つまとかな

[詞書]　梅

杉風　(xxx)

とばしるも顔に匂へる薺哉
とはしるも−かほににほへる−なつなかな

[詞書]　おなごどもの七くさはやすをみて

其角　(xxx)

七草や粧ひしかけて切刻み
ななくさや−けはひしかけて−きりきさみ

野坡　(xxx)

うちむれてわかな摘野に脛かゆし
うちむれて−わかなつむのに−はきかゆし

仙杖　(xxx)

朧月一足づつもわかれかな
おほろつき−ひとあしつつも−わかれかな

[詞書]　洛よりの文のはしに

去来　(xxx)

大はらや蝶の出てまふ朧月
おほはらや−てふのててまふ−おほろつき

丈艸：僧　(xxx)

おぼろ月まだはなされぬ頭巾かな
おほろつき−またはなされぬ−つきんかな

仙花　(xxx)

長閑さや寒の残りも三ケ一
のとかさや−かんののこりも−さんかいち

[詞書]　深川の会に

利牛　(xxx)

十五日立や睦月の古手売
しふこにち−たつやむつきの−ふるてうり

之道：大坂　(xxx)

猫の恋初手から鳴て哀也
ねこのこひ−しよてからなきて−あはれなり

野坡　(xxx)

ねこの子のくんづほぐれつ胡蝶哉
ねこのこの−くんつほくれつ−こてふかな

其角　(xxx)

うぐひすにほうと息する朝哉
うくひすに−ほうといきする−あしたかな

[詞書]　鴬

嵐雪　(xxx)

鴬に薬をしへん声の文
うくひすに−くすりをしへん−こゑのあや

[詞書]　鴬

其角　(xxx)

うぐひすの声に起行雀かな
うくひすの−こゑにおきゆく−すすめかな

[詞書]　鴬

桃隣　(xxx)

うぐひすや門はたまたま豆麩売
うくひすや−かとはたまたま−とうふうり

[詞書]　鴬

野坡　(xxx)

鴬の一声も念を入にけり
うくひすの−ひとこゑもねんを−いれにけり

[詞書]　鴬

利牛　(xxx)

こねりをもへらして植し柳かな
こねりをも−へらしてうゑし−やなきかな

[詞書]　柳

湖春　(xxx)

障子ごし月のなびかす柳かな
しやうしこし−つきのなひかす−やなきかな

[詞書]　柳

素龍　(xxx)

五人ぶちとりてしだるる柳かな
こにんふち−とりてしたるる−やなきかな

[詞書]　柳

野坡　(xxx)

せきれいの尾は見付ざる柳哉
せきれいの−をはみつけさる−やなきかな

[詞書]　柳

一風　(xxx)

町なかへしだるる宿の柳かな
まちなかへ−したるるしゆくの−やなきかな

[詞書]　柳

利牛　(xxx)

傘に押わけみたる柳かな
からかさに−おしわけみたる−やなきかな

[詞書]　柳

芭蕉　(xxx)

土はこぶ□にちり込椿かな
つちはこふ−ふこにちりこむ−つはきかな

[詞書]　椿

孤屋　(xxx)

枝長く伐らぬ習を椿かな
えたなかく−きらぬならひを−つはきかな

[詞書]　椿

湖春　(xxx)

念入て冬からつぼむ椿かな
ねんいれて−ふゆからつほむ−つはきかな

[詞書]　椿

曲翠　(xxx)

鋸にからきめみせて花つばき
のこきりに−からきめみせて−はなつはき

[詞書]　椿

嵐雪　(xxx)

鳥のねも絶ず家陰の赤椿
とりのねも−たえすやかけの−あかつはき

[詞書]　椿

支考　(xxx)

はき掃除してから椿散にけり
はきさうち−してからつはき−ちりにけり

[詞書]　椿

野坡　(xxx)

四つごきのそろはぬ花見心哉
よつこきの−そろはぬはなみ−こころかな

[詞書]　花：うへのの花見にまかり侍しに、人人幕打さわぎ、ものの音、小うたの声さまざまなりにける。かたはらの松かげをたのみて

芭蕉　(xxx)

めづらしや内で花見のはつめじか
めつらしや−うちてはなみの−はつめしか

[詞書]　花

杉風　(xxx)

うかうかと来ては花見の留守居哉
うかうかと−きてははなみの−るすゐかな

[詞書]　花

丈艸　(xxx)

中下もそれ相応の花見かな
なかしもも−それさうおうの−はなみかな

[詞書]　花：何がしかうの殿の花見に侍りて

素龍　(xxx)

花守や白きかしらを突あはせ
はなもりや−しろきかしらを−つきあはせ

[詞書]　花

去来　(xxx)

朝めしの湯を片膝や庭の花
あさめしの−ゆをかたひさや−にはのはな

[詞書]　花

孤屋　(xxx)

あすと云花見の宵のくらさ哉
あすといふ−はなみのよひの−くらさかな

[詞書]　花

荊口　(xxx)

だかれてもおのこごいきる花見哉
たかれても−おのここいきる−はなみかな

[詞書]　花

斜嶺　(xxx)

柿の袈裟ゆすり直すや花の中
かきのけさ−ゆすりなほすや−はなのなか

[詞書]　花

北枝　(xxx)

牡丹すく人もや花見とはさくら
ほたんすく−ひともやはなみ−とはさくら

[詞書]　花

湖春　(xxx)

あだなりと花に五戒の桜かな
あたなりと−はなにこかいの−さくらかな

[詞書]　花

其角　(xxx)

花はよも毛虫にならじ家桜
はなはよも−けむしにならし−いへさくら

[詞書]　花

嵐雪　(xxx)

やまざくらちるや小川の水車
やまさくら−ちるやをかはの−みつくるま

[詞書]　花

智月：大津あま　(xxx)

老僧も袈裟かづきたる花見哉
らうそうも−けさかつきたる−はなみかな

[詞書]　花

之道：大坂　(xxx)

誰母ぞ花に珠数くる遅ざくら
たかははそ−はなにしゆすくる−おそさくら

[詞書]　花

祐甫　(xxx)

山桜小川飛こすおなご哉
やまさくら−をかはとひこす−をなこかな

[詞書]　花

普全：越前福井　(xxx)

昆布だしや花に気のつく庫裏坊主
こふたしや−はなにきのつく−くりはうす

[詞書]　花

利牛　(xxx)

おちつきは魚やまかせや桜がり
おちつきは−うをやまかせや−さくらかり

[詞書]　花

仝　(xxx)

折かへる桜でふくや台所
をりかへる−さくらてふくや−たいところ

[詞書]　花

孤屋　(xxx)

祭まであそぶ日なくて花見哉
まつりまて−あそふひなくて−はなみかな

[詞書]　花

野坡　(xxx)

食の時みなあつまるや山ざくら
めしのとき−みなあつまるや−やまさくら

[詞書]　花

仝　(xxx)

帯ほどに川のながるる塩干哉
おひほとに−かはのなかるる−しほひかな

[詞書]　上巳

沾徳　(xxx)

昼舟に乗るやふしみの桃の花
ひるふねに−のるやふしみの−もものはな

[詞書]　上巳

桃隣　(xxx)

かづらきの神はいづれぞ夜の雛
かつらきの−かみはいつれそ−よるのひな

[詞書]　上巳

其角　(xxx)

鬼の子に餅を居るもひひな哉
おにのこに−もちをすうるも−ひひなかな

[詞書]　上巳

如行：みの　(xxx)

日半路をてられて来るや桃の花
ひなかちを−てられてくるや−もものはな

[詞書]　上巳

野坡　(xxx)

麻の種毎年踏る桃の華
あさのたね−まいねんふまる−もものはな

[詞書]　上巳

利牛　(xxx)

藪垣や馬の皃かくももの花
やふかきや−うまのかほかく−もものはな

[詞書]　上巳

孤屋　(xxx)

青柳の泥にしだるる塩干かな
あをやきの−とろにしたるる−しほひかな

[詞書]　上巳

芭蕉　(xxx)

滝つぼに命打こむ小あゆ哉
たきつほに−いのちうちこむ−こあゆかな

[詞書]　題しらず

為有：嵯峨田夫　(xxx)

春雨や蜂の巣つたふ屋ねの漏
はるさめや−はちのすつたふ−やねのもり

[詞書]　題しらず

芭蕉　(xxx)

散残るつつじの蕊や二三本
ちりのこる−つつしのしへや−にさんほん

[詞書]　題しらず

子珊　(xxx)

ほそぼそとごみ焼門のつばめ哉
ほそほそと−こみたくかとの−つはめかな

[詞書]　題しらず

怒誰　(xxx)

鳥の行やけのの隈や風の末
とりのゆく−やけののくまや−かせのすゑ

[詞書]　題しらず

猿雖：伊賀　(xxx)

気相よき青葉の麦の嵐かな
きあひよき−あをはのむきの−あらしかな

[詞書]　題しらず

仙華　(xxx)

法度場の垣より内はすみれ哉
はつとはの−かきよりうちは−すみれかな

[詞書]　題しらず：旅行にて

野坡　(xxx)

雲霞どこまで行もおなじ事
くもかすみ−とこまてゆくも−おなしこと

[詞書]　題しらず：此集いまだ半なる比、孤屋旅立事ありけるに、品川までみ送りて

野坡　(xxx)

梅さくらふた月ばかり別れけり
うめさくら−ふたつきはかり−わかれけり

[詞書]　題しらず

利牛　(xxx)

塩うをの裏ほす日也衣がへ
しほうをの−うらほすひなり−ころもかへ

[詞書]　首夏

嵐雪　(xxx)

衣がへ十日はやくば花ざかり
ころもかへ−とをかはやくは−はなさかり

[詞書]　首夏

野坡　(xxx)

綿をぬく旅ねはせはし衣更
わたをぬく−たひねはせはし−ころもかへ

[詞書]　首夏

九節　(xxx)

雀よりやすき姿や衣がへ
すすめより−やすきすかたや−ころもかへ

[詞書]　首夏

雪芝　(xxx)

花の跡けさはよほどの茂りかな
はなのあと−けさはよほとの−しけりかな

[詞書]　首夏

子珊　(xxx)

扇屋の暖簾白し衣がへ
あふきやの−のうれんしろし−ころもかへ

[詞書]　首夏

利牛　(xxx)

卯の花やくらき柳の及ごし
うのはなや−くらきやなきの−およひこし

[詞書]　うの花

芭蕉　(xxx)

うのはなの絶間たたかん闇の門
うのはなの−たえまたたかん−やみのかと

[詞書]　うの花

去来　(xxx)

うの花に芦毛の馬の夜明哉
うのはなに−あしけのうまの−よあけかな

[詞書]　うの花：旅行に

許六　(xxx)

卯の花に扣ありくやかづらかけ
うのはなに−たたきありくや−かつらかけ

[詞書]　うの花

支考　(xxx)

棹の歌はやうら凉しめじか舟
さをのうた−はやうらすすし−めしかふね

[詞書]　題しらず

湖春　(xxx)

髭宗祇池に蓮ある心かな
ひけそうき−いけにはすある−こころかな

[詞書]　題しらず

素堂　(xxx)

うぐひすや竹の子藪に老を鳴
うくひすや−たけのこやふに−おいをなく

[詞書]　題しらず

芭蕉　(xxx)

聞までは二階にねたりほととぎす
きくまては−にかいにねたり−ほとときす

[詞書]　郭公

桃隣　(xxx)

ほととぎす一二の橋の夜明かな
ほとときす−いちにのはしの−よあけかな

[詞書]　郭公

其角　(xxx)

行燈を月の夜にせんほととぎす
あんとんを−つきのよにせん−ほとときす

[詞書]　郭公

嵐雪　(xxx)

挑灯の空に詮なしほととぎす
てうちんの−そらにせんなし−ほとときす

[詞書]　郭公

杉風　(xxx)

木がくれて茶摘も聞やほととぎす
こかくれて−ちやつみもきくや−ほとときす

[詞書]　郭公

芭蕉　(xxx)

青雲や舟ながしやる子規
あをくもや−ふねなかしやる−ほとときす

[詞書]　郭公

素龍　(xxx)

時鳥啼啼く風が雨になる
ほとときす−なくなくかせか−あめになる

[詞書]　郭公

利牛　(xxx)

子規顔の出されぬ格子哉
ほとときす−かほのたされぬ−かうしかな

[詞書]　郭公

野坡　(xxx)

柿寺に麦穂いやしや作どり
かきてらに−むきほいやしや−つくりとり

[詞書]　麦

荊口：みの　(xxx)

麦の穂と共にそよぐや筑波山
むきのほと−ともにそよくや−つくはやま

[詞書]　麦

千川　(xxx)

麦跡の田植や遅き螢とき
むきあとの−たうゑやおそき−ほたるとき

[詞書]　麦

許六　(xxx)

刈こみし麦の匂ひや宿の内
かりこみし−むきのにほひや−しゆくのうち

[詞書]　麦：翁の旅行を川さきまで送ウて

利牛　(xxx)

麦畑や出ぬけても猶麦の中
むきはたや−てぬけてもなほ−むきのなか

[詞書]　麦：おなじ時に

野坡　(xxx)

浦風やむらがる蝿のはなれぎは
うらかせや−むらかるはへの−はなれきは

[詞書]　麦：おなじこころを

岱水　(xxx)

五月雨や傘に付たる小人形
さみたれや−かさにつけたる−こにんきやう

[詞書]　端午

其角　(xxx)

さうぶ懸てみばやさつきの風の色
さうふかけて−みはやさつきの−かせのいろ

[詞書]　端午

洒堂：大坂　(xxx)

五日迄水すみかぬるあやめかな
いつかまて−みつすみかぬる−あやめかな

[詞書]　端午

桃隣　(xxx)

文もなく口上もなし粽五把
ふみもなく−こうしやうもなし−ちまきこは

[詞書]　端午

嵐雪　(xxx)

みほのやは首の骨こそ甲なれ
みをのやは−くひのほねこそ−かふとなれ

[詞書]　端午

仙花　(xxx)

帷子のしたぬぎ懸る袷かな
かたひらの−したぬきかくる−あはせかな

[詞書]　端午

素龍　(xxx)

並松をみかけて町のあつさかな
なみまつを−みかけてまちの−あつさかな

[詞書]　夏旅

臥高　(xxx)

枯柴に昼皃あつし足のまめ
かれしはに−ひるかほあつし−あしのまめ

[詞書]　夏旅

斜嶺　(xxx)

二三番鶏は鳴どもあつさ哉
にさんはん−とりはなけとも−あつさかな

[詞書]　夏旅

魯町：長崎　(xxx)

はげ山の力及ばぬあつさかな
はけやまの−ちからおよはぬ−あつさかな

[詞書]　夏旅

猿雖　(xxx)

するが路や花橘も茶の匂ひ
するかちや−はなたちはなも−ちやのにほひ

[詞書]　夏旅：（後注）此句は嶋田よりの便に。

芭蕉　(xxx)

さみだれやとなりへ懸る丸木橋
さみたれや−となりへかくる−まろきはし

[詞書]　五月雨

素龍　(xxx)

五月雨の色やよど川大和川
さみたれの−いろやよとかは−やまとかは

[詞書]　五月雨

桃隣　(xxx)

さみだれに小鮒をにぎる子共哉
さみたれに−こふなをにきる−こともかな

[詞書]　五月雨

野坡　(xxx)

五月雨や露の葉にもる□□
さみたれや−つゆのはにもる−やまこはう

[詞書]　五月雨：（後注）この句は桃隣より書てこしぬ。

嵐蘭　(xxx)

五月雨や顔も枕もものの本
さみたれや−かほもまくらも−もののほん

[詞書]　五月雨

岱水　(xxx)

川中の根木によころぶすずみ哉
かはなかの−ねきによころふ−すすみかな

[詞書]　凉

芭蕉　(xxx)

月影にうごく夏木や葉の光り
つきかけに−うこくなつきや−はのひかり

[詞書]　凉

可南：女　(xxx)

凉しさよ塀にまたがる竹の枝
すすしさよ−へいにまたかる−たけのえた

[詞書]　凉

卯七：長崎　(xxx)

行燈をしいてとらするすずみかな
あんとんを−しいてとらする−すすみかな

[詞書]　凉

探芝　(xxx)

崎風はすぐれて凉し五位の声
さきかせは−すくれてすすし−こゐのこゑ

[詞書]　凉

智月　(xxx)

すずしさをしれと杓の雫かな
すすしさを−しれとひさくの−しつくかな

[詞書]　凉

兀峯：備前　(xxx)

すずしさや浮洲のうへのざこくらべ
すすしさや−うきすのうへの−さこくらへ

[詞書]　凉

去来　(xxx)

夕すずみあぶなき石にのぼりけり
ゆふすすみ−あふなきいしに−のほりけり

[詞書]　凉

野坡　(xxx)

三か月の隠にてすずむ哀かな
みかつきの−いんにてすすむ−あはれかな

[詞書]　凉

素堂　(xxx)

橘や定家机のありどころ
たちはなや−ていかつくゑの−ありところ

[詞書]　題しらず

杉風　(xxx)

熨斗むぐや磯菜すずしき嶋がまへ
のしむくや−いそなすすしき−しまかまへ

[詞書]　題しらず

正秀　(xxx)

世の中や年貢畠のけしの花
よのなかや−ねんくはたけの−けしのはな

[詞書]　題しらず

里東　(xxx)

早乙女にかへてとりたる菜飯哉
さをとめに−かへてとりたる−なめしかな

[詞書]　題しらず

嵐雪　(xxx)

やまぶきも巴も出る田うゑかな
やまふきも−ともゑもいつる−たうゑかな

[詞書]　題しらず：木曾路にて

許六　(xxx)

ひるがほや雨降たらぬ花の皃
ひるかほや−あめふりたらぬ−はなのかほ

[詞書]　題しらず

智月　(xxx)

はえ山や人もすさめぬ生ぐるみ
はえやまや−ひともすさめぬ−なまくるみ

[詞書]　題しらず

北鯤　(xxx)

暁のめをさまさせよはすの花
あかつきの−めをさまさせよ−はすのはな

[詞書]　題しらず

乙州　(xxx)

雨乞の雨気こはがるかり着哉
あまこひの−あまけこはかる−かりきかな

[詞書]　題しらず

丈艸　(xxx)

螢みし雨の夕や水葵
ほたるみし−あめのゆふへや−みつあふひ

[詞書]　題しらず

仙花　(xxx)

一いきれ蝶もうろつくわか葉哉
ひといきれ−てふもうろつく−わかはかな

[詞書]　題しらず

楚舟　(xxx)

なりかかる蝉がら落す李かな
なりかかる−せみからおとす−すももかな

[詞書]　題しらず

残香：みの　(xxx)

猪の牙にもげたる茄子かな
ゐのししの−きはにもけたる−なすひかな

[詞書]　題しらず

為有：さが　(xxx)

団売侍町のあつさかな
うちはうり−さむらひまちの−あつさかな

[詞書]　題しらず

怒風　(xxx)

けうときは鷲の栖や雲の峯
けうときは−わしのすみかや−くものみね

[詞書]　題しらず

祐甫　(xxx)

一枝はすげなき竹のわかば哉
ひとえたは−すけなきたけの−わかはかな

[詞書]　題しらず

仙花　(xxx)

竹の子や児の歯ぐきのうつくしき
たけのこや−ちこのはくきの−うつくしき

[詞書]　題しらず

嵐雪　(xxx)

改て酒に名のつくあつさ哉
あらためて−さけになのつく−あつさかな

[詞書]　題しらず：さるべき人、僕が酒をたしむ事を、かたく戒め給ひて諾せしむ。しかるにある会にそれをよく知て、あらき・あはもりなど、名あるかぎりを取出て、あるじせられければ、汗をかぎて

利牛　(xxx)

行雲をねてゐてみるや夏座敷
ゆくくもを−ねてゐてみるや−なつさしき

[詞書]　題しらず：ある人の別墅にいざなはれ、尽日打和て物がたりし其夕つかた、外のかたをながめ出して

野坡　(xxx)

明月や見つめても居ぬ夜一よさ
めいけつや−みつめてもゐぬ−よひとよさ

[詞書]　名月

湖春　(xxx)

名月や縁取まはす黍の虚
めいけつや−えんとりまはす−きひのから

[詞書]　名月

去来　(xxx)

家買てことし見初る月夜哉
いへかうて−ことしみそむる−つきよかな

[詞書]　名月

荷兮　(xxx)

名月や誰吹起す森の鳩
めいけつや−たれふきおこす−もりのはと

[詞書]　名月

洒堂　(xxx)

松陰や生船揚に江の月見
まつかけや−いけふねあけに−えのつきみ

[詞書]　名月

里東　(xxx)

もち汐の橋のひくさよけふの月
もちしほの−はしのひくさよ−けふのつき

[詞書]　名月

利牛　(xxx)

家こぼつ木立も寒し後の月
いへこほつ−こたちもさむし−のちのつき

[詞書]　名月

其角　(xxx)

明月や不二みゆるかとするが町
めいけつや−ふしみゆるかと−するかちやう

[詞書]　名月：むさしの仲秋の月、はじめて見侍て、望峯ノ不尽・筑波を

素龍　(xxx)

笹のはに枕付てやほしむかへ
ささのはに−まくらつけてや−ほしむかへ

[詞書]　七夕

其角　(xxx)

星合にもえ立紅やかやの縁
ほしあひに−もえたつへにや−かやのへり

[詞書]　七夕

孤屋　(xxx)

七夕やふりかはりたるあまの川
たなはたや−ふりかはりたる−あまのかは

[詞書]　七夕

嵐雪　(xxx)

とうきびにかげろふ軒や玉まつり
とうきひに−かけろふのきや−たままつり

[詞書]　孟蘭盆

洒堂　(xxx)

踊るべきほどには酔て盆の月
をとるへき−ほとにはゑうて−ほんのつき

[詞書]　孟蘭盆

李由：江州　(xxx)

盆の月ねたかと門をたたきけり
ほんのつき−ねたかとかとを−たたきけり

[詞書]　孟蘭盆

野坡　(xxx)

朝皃や昼は錠おろす門の垣
あさかほや−ひるはちやうおろす−もんのかき

[詞書]　朝皃：閉関

芭蕉　(xxx)

朝皃や日傭出て行跡の垣
あさかほや−ひようててゆく−あとのかき

[詞書]　朝皃

利合　(xxx)

てしがなと朝皃ははす柳哉
てしかなと−あさかほははす−やなきかな

[詞書]　朝皃

湖春　(xxx)

年よれば声はかるるぞきりぎりす
としよれは−こゑはかるるそ−きりきりす

[詞書]　秋虫

智月：大津　(xxx)

悔いふ人のとぎれやきりぎりす
くやみいふ−ひとのときれや−きりきりす

[詞書]　秋虫

丈艸　(xxx)

蟷螂にくんで落たるぬかごかな
かまきりに−くんておちたる−ぬかこかな

[詞書]　秋虫

為有：さが　(xxx)

こほろぎや箸で追やる膳の上
こほろきや−はしておひやる−せんのうへ

[詞書]　秋虫

孤屋　(xxx)

友鹿の啼を見かへる小鹿かな
ともしかの−なくをみかへる−をしかかな

[詞書]　鹿

車来　(xxx)

鹿のふむ跡や硯の躬恒形
しかのふむ−あとやすすりの−みつねかた

[詞書]　鹿：人のもとめによりて

素龍　(xxx)

近江路やすがひに立る鹿の長
あふみちや−すかひにたてる−しかのたけ

[詞書]　鹿：旅行のとき

土芳　(xxx)

宮城野の萩や夏より秋の花
みやきのの−はきやなつより−あきのはな

[詞書]　草花

桃隣　(xxx)

花すすきとらへぢからや村すずめ
はなすすき−とらへちからや−むらすすめ

[詞書]　草花

野童　(xxx)

片岡の萩や刈ほす稲の端
かたをかの−はきやかりほす−いねのはた

[詞書]　草花

猿雖　(xxx)

芦の穂や皃撫揚る夢ごころ
あしのほや−かほなてあくる−ゆめこころ

[詞書]　草花

丈草　(xxx)

芦のほに箸うつかたや客の膳
あしのほに−はしうつかたや−きやくのせん

[詞書]　草花：なには津にて

去来　(xxx)

茸狩や鼻のさきなる哥がるた
たけかりや−はなのさきなる−うたかるた

[詞書]　草花：女中の茸狩をみて

其角　(xxx)

菊畑おくある霧のくもり哉
きくはたけ−おくあるきりの−くもりかな

[詞書]　草花：園菊

杉風　(xxx)

紺菊も色に呼出す九日かな
こんきくも−いろによひたす−くにちかな

[詞書]　草花

桃隣　(xxx)

柿のなる本を子どもの寄どころ
かきのなる−もとをこともの−よりところ

[詞書]　秋植物

利牛　(xxx)

落栗や谷にながるる蟹の甲
おちくりや−たにになかるる−かにのかふ

[詞書]　秋植物

祐甫　(xxx)

秋風や茄子の数のあらはるる
あきかせや−なすひのかすの−あらはるる

[詞書]　秋植物

木白　(xxx)

箕に干て窓にとちふく綿の桃
みにほして−まとにとちふく−わたのもも

[詞書]　秋植物

孤屋　(xxx)

石台を終にねこぎや唐がらし
せきたいを−つひにねこきや−たうからし

[詞書]　秋植物：とうがらしの名を南蛮がらしといへるは、かれが治世南ばんにてひさしかりしゆゑにや。未詳。ほほづき、天のぞぎ、そら見、八つなりなどいへるは、おのがかたちをこのめる人人の、もてあそびて付たる成べし。みなやさしからぬ名目は、汝がむまれ付のふつつかなれば、天資自然の理、さらさら恨むべからず。かれが愛をうくるや、石台にのせられて、竹縁のはしのかたにあるは、上上の仕合なり。ともすれば、すりばちのわれ、そこぬけのつるべに土かはれて、やねのはづれ、二階のつま、物ほしのひかげをたのめるなど、あやふくみえ侍を、朝皃のはかなきたぐひには、たれもたれもおもはず、大かたはかづら髭・つり鬚のますらをにかしづかれて、びんぼ樽の口をうつすみさかなとなり、不食無菜のとき、ふと取出され、おほくはやつこ豆麩の比、紅葉の色をみするを栄花の頂上とせり。かくはいへど、ある人北野まうでの帰さに、みちのほとりの小童に、こがね一両くれて、なんぢが青青とひとつみのりしを所望せし事ありといへば、いやしめらるべきにもあらず。しかし、いまはその人人も此世をさりつれば、いよいよ愛をもたのむべからず。からきめもみすべからずと、小序をしかいふ

野坡　(xxx)

相撲取ならぶや秋のからにしき
すまふとり−ならふやあきの−からにしき

[詞書]　題しらず

嵐雪　(xxx)

水風呂の下や案山子の身の終
すいふろの−したやかかしの−みのをはり

[詞書]　題しらず

丈草　(xxx)

碪ひとりよき染物の匂ひかな
きぬたひとり−よきそめものの−にほひかな

[詞書]　題しらず

洒堂　(xxx)

秋のくれいよいよかるくなる身かな
あきのくれ−いよいよかるく−なるみかな

[詞書]　題しらず

荷兮　(xxx)

茸狩や黄□も児は嬉し皃
たけかりや−いくちもちこは−うれしかほ

[詞書]　題しらず

利合　(xxx)

夕皃の汁は秋しる夜寒かな
ゆふかほの−しるはあきしる−よさむかな

[詞書]　題しらず

支考　(xxx)

くる秋は風ばかりでもなかりけり
くるあきは−かせはかりても−なかりけり

[詞書]　題しらず

北枝　(xxx)

秋風に蝶やあぶなき池の上
あきかせに−てふやあふなき−いけのうへ

[詞書]　題しらず

依依：僧　(xxx)

庖丁の片袖くらし月の雲
はうちやうの−かたそてくらし−つきのくも

[詞書]　題しらず

其角　(xxx)

凩や沖よりさむき山のきれ
こからしや−おきよりさむき−やまのきれ

[詞書]　初冬

其角　(xxx)

市中や木の葉も落ずふじ颪
いちなかや−このはもおちす−ふしおろし

[詞書]　初冬

桃隣　(xxx)

冬枯の磯に今朝みるとさか哉
ふゆかれの−いそにけさみる−とさかかな

[詞書]　初冬

芭蕉　(xxx)

桜木や菰張まはす冬がまへ
さくらきや−こもはりまはす−ふゆかまへ

[詞書]　初冬

支梁　(xxx)

蜘の巣のきれ行冬や小松原
くものすの−きれゆくふゆや−こまつはら

[詞書]　初冬

斜嶺　(xxx)

刈蕎麦の跡の霜ふむすずめ哉
かりそはの−あとのしもふむ−すすめかな

[詞書]　初冬

桐奚　(xxx)

凩の藪にとどまる小家かな
こからしの−やふにととまる−こいへかな

[詞書]　初冬

残香　(xxx)

初霜や猫の毛も立台所
はつしもや−ねこのけもたつ−たいところ

[詞書]　初冬

楚舟　(xxx)

凩や□しげき猫の面
こからしや−またたきしけき−ねこのつら

[詞書]　初冬

八桑　(xxx)

木枯の根にすがり付桧皮かな
こからしの−ねにすかりつく−ひはたかな

[詞書]　初冬：南宮山に詣て

桃隣　(xxx)

箒目に霜の蘇鉄のさむさ哉
はうきめに−しものそてつの−さむさかな

[詞書]　初冬

游刀　(xxx)

芋喰の腹へらしけり初時雨
いもめしの−はらへらしけり−はつしくれ

[詞書]　時雨

荊ロ　(xxx)

黒みけり沖の時雨の行どころ
くろみけり−おきのしくれの−ゆきところ

[詞書]　時雨

丈艸　(xxx)

もらぬほど今日は時雨よ草の庵
もらぬほと−けふはしくれよ−くさのいほ

[詞書]　時雨：芭蕉翁をわが茅屋にまねきて

斜嶺　(xxx)

在明となれば度度しぐれかな
ありあけと−なれはたひたひ−しくれかな

[詞書]　時雨

許六　(xxx)

小夜霽となりの臼は挽やみぬ
さよしくれ−となりのうすは−ひきやみぬ

[詞書]　時雨：旅ねのころ

野坡　(xxx)

鞍壷に小坊主乗るや大根引
くらつほに−こはうすのるや−たいこひき

[詞書]　大根引と云ふ事を

芭蕉　(xxx)

鉢まきをとれば若衆ぞ大根引
はちまきを−とれはわかしゆそ−たいこひき

[詞書]　大根引と云ふ事を

野坡　(xxx)

神送荒たる宵の土大根
かみおくり−あれたるよひの−つちおほね

[詞書]　大根引と云ふ事を

洒堂　(xxx)

人声の夜半を過る寒さ哉
ひとこゑの−よなかをすくる−さむさかな

[詞書]　さむさを下の五文字にすゑて

野坡　(xxx)

この比は先挨拶もさむさ哉
このころは−まつあいさつも−さむさかな

[詞書]　さむさを下の五文字にすゑて

示蜂　(xxx)

蕎麦切に吸物もなき寒さ哉
そはきりに−すひものもなき−さむさかな

[詞書]　さむさを下の五文字にすゑて

利牛　(xxx)

足もともしらけて寒し冬の月
あしもとも−しらけてさむし−ふゆのつき

[詞書]　（後注）右の二句は、ふか川の庵へおとづれし比、他国よりの状のはしに有つるをみて、今爰に出しぬ。

我眉　(xxx)

魚店や莚うち上て冬の月
うをたなや−むしろうちあけて−ふゆのつき

[詞書]　（後注）右の二句は、ふか川の庵へおとづれし比、他国よりの状のはしに有つるをみて、今爰に出しぬ。

里東　(xxx)

はつ雪にとなりを顔で教けり
はつゆきに−となりをかほて−をしへけり

[詞書]　雪

野坡　(xxx)

初雪の見事や馬の鼻ばしら
はつゆきの−みことやうまの−はなはしら

[詞書]　雪

利牛　(xxx)

はつ雪や塀の崩れの蔦の上
はつゆきや−へいのくつれの−つたのうへ

[詞書]　雪

買山　(xxx)

雪の日に庵借ぞ鷦鷯
ゆきのひに−いほりかさうそ−みそささい

[詞書]　雪

依依　(xxx)

雪の日やうすやうくもるうつし物
ゆきのひや−うすやうくもる−うつしもの

[詞書]　雪

猿雖　(xxx)

杉のはの雪朧なり夜の鶴
すきのはの−ゆきおほろなり−よるのつる

[詞書]　雪：冬の夜飯道寺にて

支考　(xxx)

朱の鞍や佐野へわたりの雪の駒
しゆのくらや−さのへわたりの−ゆきのこま

[詞書]　雪

北枝　(xxx)

はつ雪や先馬やから消そむる
はつゆきや−まつうまやから−きえそむる

[詞書]　雪

許六　(xxx)

炭売の横町さがる雪吹哉
すみうりの−よこちやうさかる−ふふきかな

[詞書]　雪

湖夕　(xxx)

海山の鳥啼立る雪吹かな
うみやまの−とりなきたつる−ふふきかな

[詞書]　雪

乙州　(xxx)

江の舟や曲突にとまる雪の鷺
えのふねや−へつひにとまる−ゆきのさき

[詞書]　雪

素龍　(xxx)

かなしさの胸に折レ込枯野かな
かなしさの−むねにをれこむ−かれのかな

[詞書]　題不知

呂丸：羽黒亡人　(xxx)

寒菊や粉糠のかかる臼の端
かんきくや−こぬかのかかる−うすのはた

[詞書]　題不知

芭蕉　(xxx)

禅門の革足袋おろす十夜哉
せんもんの−かはたひおろす−しふやかな

[詞書]　題不知

許六　(xxx)

御火焼の盆物とるな村がらす
おほたきの−ほんものとるな−むらからす

[詞書]　題不知

智月　(xxx)

白うをのしろき匂ひや杉の箸
しらうをの−しろきにほひや−すきのはし

[詞書]　題不知

之道　(xxx)

榾の火やあかつき方の五六尺
ほたのひや−あかつきかたの−ころくしやく

[詞書]　題不知

丈艸　(xxx)

庚申やことに火燵のある座敷
かうしんや−ことにこたつの−あるさしき

[詞書]　題不知

残香　(xxx)

誰と誰が縁組すんでさと神楽
たれとたか−えんくみすんて−さとかくら

[詞書]　題不知

其角　(xxx)

海へ降霰や雲に波の音
うみへふる−あられやくもに−なみのおと

[詞書]　題不知

仝　(xxx)

煤はきは己が棚つる大工かな
すすはきは−おのかたなつる−たいくかな

[詞書]　すすはき

芭蕉　(xxx)

煤払しやうじをはくは手代かな
すすはらひ−しやうしをはくは−てたいかな

[詞書]　すすはき

万乎　(xxx)

餅つきや元服さする草履取
もちつきや−けんふくさする−さうりとり

[詞書]　すすはき

野坡　(xxx)

山臥の見事に出立師走哉
やまふしの−みことにてたつ−しはすかな

[詞書]　すすはき

嵐雪　(xxx)

待春や氷にまじるちりあくた
まつはるや−こほりにましる−ちりあくた

[詞書]　すすはき

智月　(xxx)

このくれも又くり返し同じ事
このくれも−またくりかへし−おなしこと

[詞書]　歳暮

杉風　(xxx)

はかまきぬ聟入もあり年のくれ
はかまきぬ−むこいりもあり−としのくれ

[詞書]　歳暮

李由　(xxx)

なしよせて鴬一羽としのくれ
なしよせて−うくひすいちは−としのくれ

[詞書]　歳暮

智月　(xxx)

鍋ぶたのけばけばしさよ年のくれ
なへふたの−けはけはしさよ−としのくれ

[詞書]　歳暮

孤屋　(xxx)

としの夜は豆はしらかす俵かな
としのよは−まめはしらかす−たはらかな

[詞書]　歳暮

猿雖　(xxx)

年のくれ互にこすき銭づかひ
としのくれ−たかひにこすき−せにつかひ

[詞書]　歳暮

野坡　(xxx)

爪取て心やさしや年ごもり
つめとりて−こころやさしや−としこもり

[詞書]　歳暮：芭蕉よりの文に、くれの事いかがなど在し其かへり事に

素龍　(xxx)

行年よ京へとならば状ひとつ
ゆくとしよ−きやうへとならは−しやうひとつ

[詞書]　歳暮

湖春　(xxx)