生玉万句

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作品集名	生玉万句
作品集名読み	いくたままんく
作成年月日	寛文十三年春（1673年春）
場所	生玉（いくたま）
備考	寛文十三年（1673）春興行、六月刊行とみる説と、奥書を万句成就の日と考え、六月の興行とみる説があるが、後者では追加発句の季が疑問として残る。

生玉万句三物　全

句番号	句／作者／異同資料句番号
00001	飛梅やかるがろしくも神の春とひうめや−かろかろしくも−かみのはる守武：荒木田　(xxx)
00002	ふるき句も又あらた成としふるきくもまた−あらたなるとし覚澄：生玉　(xxx)
00003	鴬を日毎にきけど興は有てうくひすを−ひことにきけと−きようはあつて清勝：山口　(xxx)
00004	老松も雨や滝水若みどりおいまつも−あめやたきみつ−わかみとり久任：西田　(xxx)
00005	何国の孫か手折藤が枝いつくのまこか−たをるふちかえ正甫：北峯　(xxx)
00006	濡れつつぞしいと駒打春くれてぬれつつそ−しいとこまうつ−はるくれて一礼　(xxx)
00007	馬に鞍尾上の桜咲にけりうまにくら−をのへのさくら−さきにけり悦春　(xxx)
00008	対の革籠の玉の緒柳ついのかはこの−たまのをやなき広之：吉井　(xxx)
00009	渋張にあらざる池の水とけてしふはりに−あらさるいけの−みつとけて清章：尾崎　(xxx)
00010	生れ名よ仏も元は助四郎うまれなよ−ほとけももとは−すけしらう遠舟：和気　(xxx)
00011	茂る柳もおなじ髪たれしけるやなきも−おなしかみたれ酔白：白石　(xxx)
00012	乗馬に清水流るゝあと見えてのるうまに−しみつなかるる−あとみえて正勝：上村　(xxx)
00013	名乗きかん懐紙の雲にほとゝぎすなのりきかん−くわいしのくもに−ほとときす初知：中堀　(xxx)
00014	硯の蓋も明やすき月すすりのふたも−あけやすきつき尓云　(xxx)
00015	十露盤も更行鐘の音添てそろはんも−ふけゆくかねの−おとそひて似扇　(xxx)
00016	今朝とかはり秋の夕といふ物有けさとかはり−あきのゆふへと−いふものあり西随：早川　(xxx)
00017	啼むしの音は何とやら唯なくむしのねは−なにとやらたた有年：仁和寺　(xxx)
00018	腹中も読ぬ歌人月を見てふくちうも−よめぬうたひと−つきをみて末清：生田　(xxx)
00019	双六盤うつてかへたる碪哉すころくはん−うつてかへたる−きぬたかな古竹　(xxx)
00020	片肌ぬぎし月人おとこかたはたぬきし−つきひとをとこ未学：渡辺　(xxx)
00021	秋立て相場飛脚や急覧あきたちて−さうはひきやくや−いそくらん豊由：安井　(xxx)
00022	天川に□ながるゝ珊瑚珠哉あまのかはに−もみちなかるる−さこしゆかな武仙：岩井　(xxx)
00023	革巾着やいつの小男鹿かはきんちやくや−いつのさをしか鶴永：井原　(xxx)
00024	山ふかく入旅きせる霧こめてやまふかく−いるたひきせる−きりこめて正察：志水　(xxx)
00025	御免あれ赤地の錦の置頭巾こめんあれ−あかちのにしきの−おきつきん均明　(xxx)
00026	時雨のあめに染るびん髭しくれのあめに−そむるひんひけ流水　(xxx)
00027	十面を誰が誠より作るらんしふめんを−たかまことより−つくるらん豊春　(xxx)
00028	其時のわけいかづちは神楽哉そのときの−わけいかつちは−かくらかな胤久　(xxx)
00029	或は諸天に千早ぶる雪あるいはしよてんに−ちはやふるゆき正倫　(xxx)
00030	鵞の足も水くゝるとはかげ見へてかのあしも−みつくくるとは−かけみえて一得　(xxx)
00031	歳旦も守たけかざれ俳諧師さいたんも−もりたけかされ−はいかいし不琢：藤田　(xxx)
00032	松は植物天文の春まるはうゑもの−てんふんのはる鶴永：井原　(xxx)
00033	一里山覚の通り雪消ていちりやま−おほえのとほり−ゆききえて幾音：中堀　(xxx)
00034	釈迦のわかれかなしきかなや金仏しやかのわかれ−かなしきかなや−かなほとけ常頼：絹笠　(xxx)
00035	赤栴檀に来啼鴬しやくせんたんに−きなくうくひす未弁：小谷　(xxx)
00036	梅が香を唐物棚に匂はせてうめかかを−からものたなに−にほはせて古道：仁和寺　(xxx)
00037	雨に花ちるかやはらりさん候あめにはな−ちるかやはらり−さんさふらふ在宣　(xxx)
00038	麓にあたつて帰る雁金ふもとにあたつて−かへるかりかね信元：備中　(xxx)
00039	岩が根のふりずんぱいやかすむらんいはかねの−ふりつんはいや−かすむらん中明：早川　(xxx)
00040	奥山や狼も花の衣がへおくやまや−おほかみもはなの−ころもかへ正甫：北峯　(xxx)
00041	とらの尾桜まつ郭公とらのをさくら−まつほとときす胤久：大須賀　(xxx)
00042	大あくび風もうそ吹むら雨におほあくひ−かせもうそふく−むらさめに西也：蘆谷　(xxx)
00043	青山桝目を驚かす有様なりあをさんせう−めをおとろかす−ありさまなり一歩：広瀬　(xxx)
00044	横手をうてぱふる梅のあめよこてをうては−ふるうめのあめ伊之：高嶋　(xxx)
00045	誰か有時鳥なく夜は更てたれかある−ほとときすなく−よはふけて末也：豊嶋　(xxx)
00046	一葉や然ぱ船のせん万句いちえふや−しかれはふねの−せんまんく南遅　(xxx)
00047	諸礼は停止月は出次第しよれいはちやうし−つきはてしたい高木：松意　(xxx)
00048	寐ころびて枕にひゞくむし啼てねころひて−まくらにひひく−むしなきて宗之　(xxx)
00049	急候都にはやく月のくれいそきそろ−みやこにはやく−つきのくれ林元　(xxx)
00050	紅葉折たく行水の下もみちをりたく−きやうすいのした重玄：伊勢村　(xxx)
00051	またぶりや小鹿の角にまがふらんまたふりや−をしかのつのに−まかふらん三友：多古　(xxx)
00052	なくや鶉人々悦び引鳥じやなくやうつら−ひとひとよろこひ−ひきとりちや元春　(xxx)
00053	けさは来にけり此町のあきけさはきにけり−このまちのあき悦春　(xxx)
00054	荻の上萩の下見世風吹てをきのうへ−はきのしたみせ−かせふきて亅退：天野　(xxx)
00055	西へちる木葉や神の旅ごろもにしへちる−このはやかみの−たひころも清勝：山口　(xxx)
00056	霜に朽せぬ金のわらんづしもにくちせぬ−きんのわらんつ利玄：仁和寺　(xxx)
00057	拾貫目休む重荷に春見えてしつくわんめ−やすむおもにに−はるみえて遠舟：和気　(xxx)
00058	煎豆や打にもすだく除夜の鬼いりまめや−うつにもすたく−ちよやのおに休夢：平野　(xxx)
00059	福は内にと厄払宿ふくはうちにと−やくはらふやと正行：小西　(xxx)
00060	白鼠すめる町義のかね懸てしろねすみ−すめるきやうきの−かねかけて常省：長瀬　(xxx)
00061	水祝ひや墨絵に見ゆる作髭みついはひや−すみゑにみゆる−つくりひけ由平：前川　(xxx)
00062	恋風ぞ吹風呂の焼初こひかせそふく−ふろのたきそめ鶴永：井原　(xxx)
00063	粉糠雨や柳の木末ふりぬらんこぬかあめや−やなきのこすゑ−ふりぬらん幸友：川村　(xxx)
00064	北へ行や南方むねん雁のこゑきたへゆくや−なんはうむねん−かりのこゑ正察：志水　(xxx)
00065	覚ていよゝ花の有山おほえていよよ−はなのあるやま一得：牧野　(xxx)
00066	去年の枝折男結びに藤咲てこそのしをり−をとこむすひに−ふちさきて鶴永：井原　(xxx)
00067	玉椿八千世を籠し万句哉たまつはき−やちよをこめし−まんくかな有年：仁和寺　(xxx)
00068	うぐひすの声出合遠近うくひすのこゑ−てあふをちこち重吉　(xxx)
00069	取立る相撲のかこい雪消てとりたつる−すまふのかこひ−ゆききえて久任：西田　(xxx)
00070	生玉の卯花くだし湯立哉いくたまの−うのはなくたし−ゆたてかな広之：吉井　(xxx)
00071	かねの緒かけよ山ほとゝぎすかねのをかけよ−やまほとときす松意：高木　(xxx)
00072	夏の夜は秤の皿をあけ初てなつのよは−はかりのさらを−あけそめて一飛　(xxx)
00073	夕立や神啼殿のお行水ゆふたちや−かみなりとのの−おきやうすい一任：和田　(xxx)
00074	柄杓にかゝる黒雲のみねひしやくにかかる−くろくものみね西也：蘆谷　(xxx)
00075	樗の木手桶の内にかげ見へてあふちのき−てをけのうちに−かけみえて良風：片山　(xxx)
00076	象の□癒あふ星の光哉さうの□□−いえあふほしの−ひかりかな重成：桜井　(xxx)
00077	鴟口のさきとがる三ケ月とひくちのさき−とかるみかつき正春：井田　(xxx)
00078	秋かぜをおききやるかとて木やりしてあきかせを−おききやるかとて−きやりして重故：岨山　(xxx)
00079	須弥山の南の坊の月見かなしゆみせんの−みなみのはうの−つきみかな本秋　(xxx)
00080	観音同座いく玉の秋くわんのんとうさ−いくたまのあき三治　(xxx)
00081	馬の角牛の涎も露と落てうまのつの−うしのよたれも−つゆとおちて素玄　(xxx)
00082	紅葉するや紙の間に間に銀杏の葉もみちするや−まきのまにまに−いちやうのは寸志：阿部　(xxx)
00083	書物棚より遠き鹿の音しよもつたなより−とほきしかのね可山：山村　(xxx)
00084	詩に曰山また山の月更てしにいはく−やままたやまの−つきふけて永房：間宮　(xxx)
00085	渋土の色をあらそふ時雨かなさひつちの−いろをあらそふ−しくれかな三昌：浜野　(xxx)
00086	枯葉に見ゆる蔦の細炉路かれはにみゆる−つたのほそろち初知：中堀　(xxx)
00087	空さゆる月にもたどる飛石にそらさゆる−つきにもたとる−とひいしに由平：前川　(xxx)
00088	たまご酒やかへらん事をとし忘たまこさけや−かへらんことを−としわすれ三友：多古　(xxx)
00089	一本見ゆる雪の杉箸いつほんみゆる−ゆきのすきはし一礼：柏谷　(xxx)
00090	焼筆に関の山かげうつされてやきふてに−せきのやまかけ−うつされて正察：志水　(xxx)
00091	年玉や牛の角もじゆがみ文字としたまや−うしのつのもし−ゆかみもし清章：尾崎　(xxx)
00092	ふたつすぐなる門の松が枝ふたつすくなる−かとのまつかえ古竹　(xxx)
00093	藤さかふ家は公家武家納りてふちさかふ−いえはくけふけ−をさまりて素玄　(xxx)
00094	日あたりや南の坊の花菫ひあたりや−みなみのはうの−はなすみれ祐可：平野　(xxx)
00095	則隣に咲桜本すなはちとなりに−さくさくらもと鶴永：井原　(xxx)
00096	水帳の流の末やかすむらんみつちやうの−なかれのすゑや−かすむらん正甫：北峯　(xxx)
00097	蛇柳のみどりはそのまゝいろこ哉しややなきの−みとりはそのまま−いろこかな利玄：仁和寺　(xxx)
00098	囀るとりやくれなゐの舌さへつつるとりや−くれなゐのした一得：牧野　(xxx)
00099	夕日影絵筆の先に春くれてゆふひかけ−ゑふてのさきに−はるくれて悦春　(xxx)
00100	御神託にまかせて聞むほとゝぎすこしんたくに−まかせてきかむ−ほとときす松意：高木　(xxx)
00101	銚子の口に薫る橘てうしのくちに−かをるたちはな不入：和田　(xxx)
00102	柱建軒の下風静にてはしらたて−のきのしたかせ−しつかにて未弁：小谷　(xxx)
00103	傘も匂ふにしるし梅の雨からかさも−にほふにしるし−うめのあめ友正　(xxx)
00104	行幸の場に取早松茸みゆきのにはに−とるさまつたけ松緑：小野　(xxx)
00105	夏山に今一度の酒宴してなつやまに−いまひとたひの−しゆえんして路春：隅田　(xxx)
00106	相撲場も神さび土の俵かなすまふはも−かみさひつちの−たはらかな一永：水野　(xxx)
00107	かるこで担ふ道芝の露かるこてになふ−みちしはのつゆ一瓶　(xxx)
00108	雁金も骨を折てや渡らんかりかねも−ほねををりてや−わたるらん舛吉　(xxx)
00109	乱酒にや神も千秋楽の舞らんしゆにや−かみもせんしう−らくのまひ心入：下山　(xxx)
00110	夜も長座敷祭客人よもなかさしき−まつりきやくしん一任：和田　(xxx)
00111	外聞の□灯ともす月更てくわいふんの−つちんともす−つきふけて金利：三谷　(xxx)
00112	鼻に入やくれなゐ匂ふ唐がらしはなにいるや−くれなゐにほふ−たうからし政長：平子　(xxx)
00113	田楽にちるくつさめの露てんかくにちる−くつさめのつゆ政仍：木村　(xxx)
00114	かげごとを夕の月やくらからんかけことを−ゆふへのつきや−くらからん三紀　(xxx)
00115	生玉のさか迎せむ神帰いくたまの−さかむかへせむ−かみかへり幾音：中堀　(xxx)
00116	幕打まはす森の凩まくうちまはす−もりのこからし利玄：仁和寺　(xxx)
00117	新関を末野の原のかり小屋にしんせきを−すゑののはらの−かりこやに正任　(xxx)
00118	障子骨やかみの間に間に煤払しやうしほねや−かみのまにまに−すすはらひ峯雪：岩田　(xxx)
00119	鰒汁に冬籠るやどふくとうしるに−ふゆこもるやと正因　(xxx)
00120	酒の粕つぽみの梅は春まちてさけのかす−つほみのうめは−はるまちて常頼：絹笠　(xxx)
00121	梅花折て頼朝もさす首哉はいくわおつて−よりとももさす−かうへかな未学：渡辺　(xxx)
00122	梶原二度のかけの春駒かちはらにとの−かけのはるこま一得：牧野　(xxx)
00123	蜈も進む所の雪消てけちけちも−すすむところの−ゆききえて西随：早川　(xxx)
00124	万句には池の蛙や歌合まんくには−いけのかはつや−うたあはせ三治　(xxx)
00125	水辺つゝく岩の山吹すいへんつつく−いはのやまふき治平　(xxx)
00126	御座船の底の影さへ春めきてこさふねの−そこのかけさへ−はるめきて三友：多古　(xxx)
00127	松に藤七宝荘厳まき柱まつにふち−しつほうしやうこん−まきはしら中明：早川　(xxx)
00128	八功徳池に岸の山ぶきはちくとくちに−きしのやまふき有年：仁和寺　(xxx)
00129	蛙鳴声仏事をやなしぬらんかはつなく−こゑふつしをや−なしぬらん高家：同　(xxx)
00130	蛍火は星のうすきがごとく也ほたるひは−ほしのうすきか−ことくなり正明　(xxx)
00131	月のある夜は涼し学問つきのあるよは−すすしかくもん治平：古筆　(xxx)
00132	濡縁の戸ざゝぬ御代と納りてぬれえんの−とささぬみよと−をさまりて吉次：種村　(xxx)
00133	青梅や鴬ならでとり肴あをうめや−うくひすならて−とりさかな栄治　(xxx)
00134	山ほとゝぎす珍敷客やまほとときす−めつらしききやく正重：古妻　(xxx)
00135	五月雨のふる句もあらぬ発句してさみたれの−ふるくもあらぬ−ほつくして重信：安立町　(xxx)
00136	此題や請取わたす駒むかへこのたいや−うけとりわたす−こまむかへ宗静：土橋　(xxx)
00137	染ぬる筆も秋の鹿蔵そめぬるふても−あきのしかさう一礼　(xxx)
00138	人形も近年御領の月暮てにんきやうも−きんねんこりやうの−つきくれて一得：牧野　(xxx)
00139	色鳥や唯一さしとの御所望也いろとりや−たたひとさしとの−こしよまうなり任笑　(xxx)
00140	三日の日は又三ケ月の影みかのひはまた−みかつきのかけ一歩：広瀬　(xxx)
00141	秋の風振舞ふるゝ声添てあきのかせ−ふるまひふるる−こゑそへて昌忠　(xxx)
00142	とらるゝや鶉なくなる深草山とらるるや−うつらなくなる−ふかくさやま古道：仁和寺　(xxx)
00143	木幡の秋はすごき猫またこはたのあきは−すこきねこまた正任：大塚　(xxx)
00144	連歌師もかちよりぞ行月更てれんかしも−かちよりそゆく−つきふけて豊由：安井　(xxx)
00145	糊加減かみはうけずも頭巾哉のりかけん−かみはうけすも−つきんかな正俊：萩原　(xxx)
00146	へらの先までわたる寒風へらのさきまて−わたるさむかせ三清：宮原　(xxx)
00147	脇指の作つけなるおとこ見てわきさしの−つくりつけなる−をとこみて一任：和田　(xxx)
00148	などかくす年とはんより除夜のまめなとかくす−としとはんより−ちよやのまめ勝政　(xxx)
00149	寒声聞て調子うらなふかんこゑきいて−てうしうらなふ似扇　(xxx)
00150	四方髪また四海なみうたぬ世にしはうかみ−またしかいなみ−うたぬよに江流　(xxx)
00151	鳥の名も匂ひ常より万句哉とりのなも−にほひつねより−まんくかな宗之　(xxx)
00152	国に文学さかりなる梅くににふんかく−さかりなるうめ清勝：山口　(xxx)
00153	春の夜のくらひ心を合点してはるのよの−くらひこころを−かてんして一永：永野　(xxx)
00154	初能やまだ踏も見ぬはしがゝりはつのうや−またふみもみぬ−はしかかり立川　(xxx)
00155	畳の色も青陽の春たたみのいろも−せいやうのはる鶴永：井原　(xxx)
00156	新世帯頼むあたりの雪きへてしんしよたい−たのむあたりの−ゆききえて幾音：中堀　(xxx)
00157	花嫁や里まで送る折も有はなよめや−さとまておくる−をりもあり豊由：安井　(xxx)
00158	十五日づゝ東風かぜ恋風しふこにちつつ−こちかせこひかせ正察：志水　(xxx)
00159	かはり番余所目の関や霞むらんかはりはん−よそめのせきや−かすむらん昌忠　(xxx)
00160	おしみ鳴やしはん棒の津ほとゝぎすをしみなくや−しはんはうのつ−ほとときす忠村：吉田　(xxx)
00161	虱のかはに卯の花の浪しらみのかはに−うのはなのなみ政仍：木村　(xxx)
00162	古袷袖しろたへにとき分てふるあはせ−そてしろたへに−ときわけて心入：下山　(xxx)
00163	馬蘭草似た物野干哉はらんさう−にたもの□□□−やかんかな佐太：川村　(xxx)
00164	鷺の身ぶるひ夏のよの霜さきのみふるひ−なつのよのしも西随：早川　(xxx)
00165	峯の月詩人すむべき浦見へてみねのつき−ししんすむへき−うらみえて栄圃　(xxx)
00166	生玉や和光のひかり露の玉いくたまや−わくわうのひかり−つゆのたま正次　(xxx)
00167	かけ奉る十六夜の月かけたてまつる−いさよひのつき不琢：藤田　(xxx)
00168	初汐の満れぱやがて御舟とめてはつしほの−みつれはやかて−みふねとめて直行：足代　(xxx)
00169	見物もちりうせずして花火かなけんふつも−ちりうせすして−はなひかな正直：古妻　(xxx)
00170	まさきのかづら長き夜遊びまさきのかつら−なかきよあそひ重信：安立町　(xxx)
00171	高塀の炉路の戸口も秋更てたかへいの−ろちのとくちも−あきふけて栄治　(xxx)
00172	散ぬるか今迄有し女郎花ちりぬるか−いままてありし−をみなへし和善　(xxx)
00173	合点まいらぬ野辺の秋かぜかてんまゐらぬ−のへのあきかせ一永：水野　(xxx)
00174	難題の歌に鶉のこゑ添てなんたいの−うたにうつらの−こゑそへて峯雪：岩田　(xxx)
00175	菓子袋ねざゝに霰とかゝれたりくわしふくろ−ねささにあられと−かかれたり似扇　(xxx)
00176	熨斗をつゝむや雪の杉原のしをつつむや−ゆきのすきはら流水　(xxx)
00177	山窓を納戸奉行の明初てやままとを−なんとふきやうの−あけそめて鶴永：井原　(xxx)
00178	万事は夢今日と暮して明日の春はんしはゆめ−けふとくらして−あすのはる亅退：天野　(xxx)
00179	興ある雪に一盃の酒きようあるゆきに−いつはいのさけ春良：浜田　(xxx)
00180	御自慢の松はもとよりうたひにてこしまんの−まつはもとより−うたひにて久栄：鞠　(xxx)
00181	鴬は藪から棒のたか音哉うくひすは−やふからはうの−たかねかな問也　(xxx)
00182	咲やり梅のとがる言の葉さくやりうめの−とかることのは未学：渡辺　(xxx)
00183	番所をとがいの下いてとけてはんところ−おとかいのした−いてとけて一得：牧野　(xxx)
00184	北の方へ送る雁書や返事きたのかたへ−おくるかんしよや−かへりこと正春：井田　(xxx)
00185	爰許かはらず雪消山ここもとかはらす−ゆききゆるやま重故：岨山　(xxx)
00186	御当代みどりの松も若やぎてこたうたい−みとりのまつも−わかやきて重成：桜井　(xxx)
00187	生玉やかつてあまのりを三津の浦いくたまや−かつてあまのりを−みつのうら流水　(xxx)
00188	かすむ海づら冷汁の色かすむうみつら−ひやしるのいろ似扇　(xxx)
00189	摺鉢の谷の岩角雪消てすりはちの−たにのいはかと−ゆききえて由平：前川　(xxx)
00190	わかたけの千世もといのる氏子哉わかたけの−ちよもといのる−うちこかな市女：平野　(xxx)
00191	五月雨ふるき宮の拝殿さみたれふるき−みやのはいてん得直：松永　(xxx)
00192	ほとゝぎす歌仙の内によみそへてほとときす−かせんのうちに−よみそへて浄久：柏原　(xxx)
00193	芥子壷の内より花の世界哉けしつほの−うちよりはなの−せかいかな盛光：小河原　(xxx)
00194	千に割たし郭公の声せんにわりたし−ほとときすのこゑ泗雲　(xxx)
00195	村雨や指の先にてはじく覧むらさめや−ゆひのさきにて−はしくらん信俊　(xxx)
00196	三盃や唯是槿花一時の酔さんはいや−たたこれきんくわ−いちしのゑひ一貞：武蔵　(xxx)
00197	かきねに見ゆる天目の露かきねにみゆる−てんもくのつゆ有己：広瀬　(xxx)
00198	秋風の手に品玉やとりぬらんあきかせの−てにしなたまや−とりぬらん永房：間宮　(xxx)
00199	生玉のひかりは萩の戸帳哉いくたまの−ひかりははきの−とはりかな重徳：平野　(xxx)
00200	御簾の鏡も真丸な月みすのかかみも−まんまるなつき高家：仁和寺　(xxx)
00201	天下一かくれはあらぬ秋の来ててんかいち−かくれはあらぬ−あきのきて古道：同　(xxx)
00202	月の兎出やらざ耳ひけ山のあいつきのうさき−てやらさみみひけ−やまのあひ永房：間宮　(xxx)
00203	かくれんぼうにまじる小男鹿かくれんほうに−ましるさをしか良風：片山　(xxx)
00204	夕霧や門の脇より立ぬらんゆふきりや−もんのわきより−たちぬらん正倫：多古　(xxx)
00205	時しらぬ竹の雪もやそくいべらときしらぬ−たけのゆきもや−そくひへら一礼　(xxx)
00206	鹿の子まだらにきるゝあかがりかのこまたらに−きるるあかかり三友：多古　(xxx)
00207	灸のふた尻からげより風あれてきうのふた−しりからけより−かせあれて利玄：仁和寺　(xxx)
00208	仏名やとのふ世界の南坊ふつみやうや−となふせかいの−みなみはう安之：早川　(xxx)
00209	宝の池や目前の雪たからのいけや−もくせんのゆき常頼：絹笠　(xxx)
00210	芦の葉にかくれみの鷺羽をのしてあしのはに−かくれみのさき−はをのして為親　(xxx)
00211	いでや此世に生玉や神の春いてやこの−よにいくたまや−かみのはる正嵩　(xxx)
00212	芦原国に粧る注連縄あしはらくにに−かさるしめなは重成：桜井　(xxx)
00213	七度まで正に霞ぬ鍛冶屋にてななとまて−まさにかすまぬ−かちやにて不琢：藤田　(xxx)
00214	九の枝や八重の塩ふく桜貝ここのえや−やへのしほふく−さくらかひ一友：岡野　(xxx)
00215	海原青き柳まないたうなはらあをき−やなきまないた鶴与　(xxx)
00216	夕詠台所船霞消てゆふなかめ−たいところふね−かすみきえて勝政　(xxx)
00217	聞ながせ花を滝とはうその川ききなかせ−はなをたきとは−うそのかは金公：堀金　(xxx)
00218	月の船こぐ春の名山つきのふねこく−はるのめいさん一歩：広瀬　(xxx)
00219	棹に成雁の尾上の長閑にてさをになる−かりのをのへの−のとかにて一丿：堀金　(xxx)
00220	是子規の一声送る風もがなこれしきの−ひとこゑおくる−かせもかな金利：三谷　(xxx)
00221	へぎの上まで薫る橘へきのうへまて−かをるたちはな三友：多古　(xxx)
00222	取肴五月のかげに改めてとりさかな−さつきのかけに−あらためて峯雪：岩田　(xxx)
00223	神は人の敬ひ仰ぐあふぎ哉かみはひとの−うやまひあふく−あふきかな可山：山村　(xxx)
00224	散銭はらり白雨の空さんせんはらり−ゆふたちのそら一得：牧野　(xxx)
00225	鰐口をたゝけぱ雷のこゑ添てわにくちを−たたけはらいの−こゑそひて有年：仁和寺　(xxx)
00226	負相撲上にたゝん事かたや哉まけすまふ−かみにたたんこと−かたやかな正定　(xxx)
00227	和歌の達者や秋の風の手わかのたつしやや−あきのかせのて正俊：萩原　(xxx)
00228	浦船の面梶のをと月くれてうらふねの−おもかちのおと−つきくれて重丈　(xxx)
00229	姥鴫やかゝれとてしも天の網うはしきや−かかれとてしも−てんのあみ正行：小西　(xxx)
00230	篠の葉ぬける沢の秋風ささのはぬける−さはのあきかせ常省：長瀬　(xxx)
00231	酒ぱやし杉の木の間の月はれてさかはやし−すきのこのまの−つきはれて可秀　(xxx)
00232	かへぬ色や五ついつもの五葉松かへぬいろや−いつついつもの−こえふまつ正倫：多古　(xxx)
00233	定紋まるき山下の月ちやうもんまるき−やまもとのつき正春：井田　(xxx)
00234	雲の袖一尺三寸霧たちてくものそて−いつしやくさんすん−きりたちて利方：広嶋　(xxx)
00235	生玉の神がきなれや霜柱いくたまの−かみかきなれや−しもはしら永賀：市村　(xxx)
00236	むすぶ手水もこほる曙むすふてみつも−こほるあけほの和善：泉　(xxx)
00237	目すりすり寒ごゑつかふかげ見へてめすりすり−かんこゑつかふ−かけみえて三治　(xxx)
00238	俳言も慥に御座れや節季候はいこんも−たしかにこされや−せつきそろ昨替　(xxx)
00239	春を待ぬる居所の広庭はるをまちぬる−きよしよのひろには一礼　(xxx)
00240	雪の梅さく助かげを払ふらんゆきのうめ−さくすけかけを−はらふらん鶴永　(xxx)
00241	一万句くせんくんじゆや神の春いちまんく−くせんくんしゆや−かみのはる一飛　(xxx)
00242	されぱ天下に名乗のり弓されはてんかに−なのるのりゆみ貞富：花実庵　(xxx)
00243	京の花肩で風きる盛にてきやうのはな−かたてかせきる−さかりにて長正　(xxx)
00244	神前にお初尾ほどや初ざくらしんせんに−おはつほほとや−はつさくら高家：仁和寺　(xxx)
00245	鰐口たゝく春雨の音わにくちたたく−はるさめのおと古道：同　(xxx)
00246	□も霞む海辺にうかび出てしやちほこも−かすむうみへに−うかひてて心入：下山　(xxx)
00247	色黒なかつらおとこや春の月いろくろな−かつらをとこや−はるのつき重信：安立町　(xxx)
00248	達者に旅の雁かへる空たつしやにたひの−かりかへるそら栄治：古妻　(xxx)
00249	歩で行名所名所の花咲てかちてゆく−めいしよめいしよの−はなさきて正重：同　(xxx)
00250	お神楽の数は鈴なり茄子哉おかくらの−かすはすすなり−なすひかな風角：野中　(xxx)
00251	夕祓とて祭客人ゆふはらへとて−まつりきやくしん一志：山下　(xxx)
00252	内井戸や夏のしるしにのぞくらんうちゐとや−なつのしるしに−のそくらん光友：玉造　(xxx)
00253	月月にさかんなりといへり神祭つきつきに−さかんなりといへり−かみまつり一知　(xxx)
00254	弥宜が袂も誘ふ涼風ねきかたもとも−さそふすすかせ一得：牧野　(xxx)
00255	笹の葉に四手切かくる湯だてしてささのはに−してきりかくる−ゆたてして可山：山村　(xxx)
00256	百韵は扇をく間に果にけりひやくゐんは−あふきをくまに−はてにけり祐慶：津村　(xxx)
00257	ちと用にたつ秋風の口ちとようにたつ−あきかせのくち正察：志水　(xxx)
00258	倅より弓馬の家に月澄てせかれより−きうはのいへに−つきすみて西随：早川　(xxx)
00259	サシニ曰然ぱ一舛の月見酒さしにいはく−しかれはいつしやうの−つきみさけ一詠：曲淵　(xxx)
00260	浪の鼓やうち渡るかりなみのつつみや−うちわたるかり良正：行沢　(xxx)
00261	子持筋尾花が袖や染ぬらんこもちすち−をはなかそてや−そめぬらん貞清：同　(xxx)
00262	句作りも一万石やきくの酒くつくりも−いちまんこくや−きくのさけ昌忠：袋谷　(xxx)
00263	踏から臼のさほ鹿のこゑふむからうすの−さほしかのこゑ良因：藤原　(xxx)
00264	水車仕かくる谷に月落てみつくるま−しかくるたにに−つきおちて吉貴　(xxx)
00265	鋪鳴や生玉の池友鵆しきしまや−いくたまのいけ−ともちとり夕夢　(xxx)
00266	小夜風さむしむかふ看台さよかせさむし−むかふかんたい吉重　(xxx)
00267	道をみちにゆがまぬ木々の雪ふりてみちをみちに−ゆかまぬききの−ゆきふりて三治　(xxx)
00268	難波潟うら一巡やとしのくれなにはかた−うらいちしゆんや−としのくれ政仍：木村　(xxx)
00269	匂ひの花は雪中の梅にほひのはなは−せつちうのうめ西随：早川　(xxx)
00270	下地窓あくる佗数奇炭置てしたちまと−あくるわひすき−すみおきて貞因：藤原　(xxx)
00271	書初のことしは七伊呂波哉かきそめの−ことしはななつ−いろはかな信元孫：七歳　(xxx)
00272	庭訓によむ谷の鴬ていきんによむ−たにのうくひす山蛍：天満　(xxx)
00273	花に風や頗本意背くらんはなにかせや−すこふるほんい−そむくらん酔白：白石　(xxx)
00274	奉る花は生玉椿かなたてまつる−はなはいくたま−つはきかな一志：山下　(xxx)
00275	かねの緒かくる青柳の糸かねのをかくる−あをやきのいと豊由：安井　(xxx)
00276	丑のとし三月吉日風たえてうしのとし−やほひきちしつ−かせたえて岑雪：岩田　(xxx)
00277	後咲花やされ共時至りおくれさく−はなやされとも−ときいたり一得：牧野　(xxx)
00278	にはとりの口あけぼのゝ春にはとりのくち−あけほののはる正圃：北岑　(xxx)
00279	旅籠銭雁は八百別ゆきてはたこせん−かりははつひやく−わかれゆきて鶴永：井原　(xxx)
00280	娑婆で見た弥次郎もきけほとゝぎすしやはてみた−やしらうもきけ−ほとときす不弁　(xxx)
00281	影左衛門がなつの一夕かけさゑもんか−なつのいつせき常頼：絹笠　(xxx)
00282	内蔵の金の扇やつかふ覧うちくらの−きんのあふきや−つかふらん西随：早川　(xxx)
00283	風の神や下知して曰大団かせのかみや−けちしていはく−おほうちは有己：広瀬　(xxx)
00284	其時弥宜も帷子ひとつそのときねきも−かたひらひとつ一成　(xxx)
00285	立烏帽子気随ものとやおもふらんたてえほし−きすいものとや−おもふらん松意：高木　(xxx)
00286	ふし穴にいる月弓やめつた的ふしあなに−いるつきゆみや−めつたまと舛吉　(xxx)
00287	青暖簾かたちし薄霧あをのうれんか−たちしうすきり利玄：仁和寺　(xxx)
00288	□狩山を屏風にかこはれてもみちかり−やまをひやうふに−かこはれて末清：生田　(xxx)
00289	洩とまれ新酒ながるゝ柳樽もれとまれ−しんしゆなかるる−やなきたる利清：池田　(xxx)
00290	まへがんたまゝ藤のうら枯まへかんたまま−ふちのうらかれ忠友：重村　(xxx)
00291	あわせ砥の山路の月やへりぬらんあわせとの−やまちのつきや−へりぬらん一竹：池田　(xxx)
00292	鈴虫の声もすむ也神楽堂すすむしの−こゑもすむなり−かくらたう正任　(xxx)
00293	尾花はらはら一貫弐百をはなはらはら−いつくわんにひやく心入：下山　(xxx)
00294	両替の軒端の露や散ぬらんりやうかへの−のきはのつゆや−ちりぬらん一任：和田　(xxx)
00295	質の利や払はぬ袖に積る雪しちのりや−はらはぬそてに−つもるゆき正勝：植村　(xxx)
00296	霜月師走ながれ行とししもつきしはす−なかれゆくとし正察：志水　(xxx)
00297	蝋燭のたつ間遅しと春まちてらふそくの−たつまおそしと−はるまちて利仙：北峯　(xxx)
00298	万句成就皆領満座年のくれまんくしやうしゆ−かいりやうまんさ−としのくれ助大夫　(xxx)
00299	神楽は神祇氏子は人倫かくらはしんき−うちこはしんりん吉三　(xxx)
00300	誰か是誉ざらん御代治りてたれかこれ−ほめさらんみよ−をさまりて松大夫　(xxx)
00301	咲花や懐紙合て四百本さくはなや−くわいしあはせて−しひやくほん鶴永：井原　(xxx)
00302	水引壱把青柳の糸みつひきいつは−あをやきのいと方由：南　(xxx)
00303	春風をおさむるへきに熨斗添てはるかせを−をさむるへきに−のしそへて西翁：西山　(xxx)

生玉万句

生玉万句三物 全

生玉万句三物　全