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人物名 |
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本文 |
其蜩庵杜口は生涯俳詣を好み、よき句ども多かりけらし。はじめ退隠する時、人の訪らひしにこたへて、 くちなはの見かへりもせぬはかまかな 此句あまねくいひもてはやして賞す。雅俗聞見の博き人にて、談話おもしろかりしかども、老後耳聾の故に、明暮、古文書のめづらしきを写し、又自ラ見聞しことゞもを筆にまかせてつれづれを消す。能筆にて根気も強かりしかば、凡二百巻におよび、翁草と号す。相識の人おのが好みにあたる巻々をかりうつしてもてはやせり。八十六にして乙卯の春なき名の数に入られし。 |