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人物名 |
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本文 |
園木覚郎は阿波の人にて、致仕の後、武芸をもて業とす。妹女に聟どりして家を委ね、みづからは山陰の竹樹林に隠居して、風月をたのしみ詩歌を翫ぶ。はた、客を好み夜をもて日に継ことを常とす。生質胆勇あり。或ル時、徳島の長臣権柄を取て跋扈せる人、覚郎老人が隠居に千年の古松あるを聞及び、使者に人夫を添て此松をうつし植んことをもとむ。老人何心なきさまにて、吾草庵暴風の憂あるを、度々此松によりて防ぎ侍れば、参らすることかなふまじと答たれば、せんかたなく使者かへりぬるが、纔に其門を出るころ、下部を呼て松を根より切倒しけるとぞ。其気概、善輔ににたるをもてこゝについづ。 |