義観法師は肥前長崎福済寺の知浴たりしが、元来非学にして目一丁字をしらざれども、義を守ることは確如たり。一ル時キ浴室より火出たりしに、座して不動、人あはてゝ是を引キ出し救ひていふ、火災は時也。人命隕べからず。官聴もおそれあり、と諌るに、法師頭を掉て、我は浴室を守るが任也。怠によりて失火せるは吾罪也と、たゞちに又火中に飛入て終る。