[ 日文研トップ ] [ 日文研データベースの案内 ] [ データベースメニュー ] |
人物名 |
|
||||||||||
本文 |
前編、空におぼえて誤る所、この比、長崎夜話草に正す。吉左衛門氏は小篠也、号は酉水軒にして、人は淵明と称す。先には氏を洩し、又号を猩々翁と誤る。其うへ朋友の贈り物を辞して受ず、と記せるも非也、大かたの人のよしみもなきが施すはかたく受ずしていふ、われに因の由緒もなく、其人の為に謀りし功もなくてうくるは乞丐也、急難に臨ミて施を受るならひもなきにあらねど、我今老たり。其人に報すべき齢もなし。ながくありて人の助施をうけんことを恥、といひて、飢たる色をもあらはさず。さまざま旧知のよしみあるが米穀など贈れるは、感じてうけ納めぬ。つひに近思録を見ながら死せると也。かゝれば受ルとうけざるの義におきて間然すべきことなく、前の評論は此人にはあたらず。君子ナル哉如キ斯クノ人。 |