前伝に著せしごとく、物の味をしる異能によりて頗ル過奢に似たり。然れども、其人もと家富てしかも無欲なるがうへに子孫もなく、後を謀るの意なきによる歟。老て居宅田園に至るまで村中に譲り置て、生涯費用は心のまゝにとりつかひしが、身後余財猶多かりしかば、今に及びて此人の忌辰年回等の追福は、村中より執リ行ふと也。所為ますます奇なり。