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人物名 |
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本文 |
石臥、若きほどは長野采女と名のりて、真田伊豆守信幸朝臣に仕へたり。剣術の諸流を極め、手かくこと大かた能書にて侍りし。神道家に立いりてみちをたふとみ、禅教の学に深く、歌林にさへ遊びて、よめるうた多く侍りしが、皆忘たり。たまたま記憶せしとて、東湖禅師の唱られ侍りし。 みよしのはさくらの外に峯もなし花やつもりて山となりけん
人家にて庭のさくらを、 一木こそのどかにはみれ咲つゞくやまは花より心ちるもの 隠遁の後は左右軒と号しける。正徳三年より二十年ばかりあなた、東海道沼津にて身まかりぬ。七十歳にてありける。もとより隠遁の志ふかく、妻子をももたで侍けるとぞ。 |