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人物名 |
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本文 |
享保のはじめ、京に手車といふものをうる翁あり。糸もてまはして、是は誰かのじや、といへば、これはおれがのじや、と答て童べ買てもてあそぶ。されば此人いでくれば、童つどひて喜ぶことなりし。後はまた難波に往て、売こと京のごとくして、終にとある家の軒の下に端座して死す。傍に小き卒塔婆を建て、 小車のめぐりめぐりて今こゝにたてたるそとばこれはおれがのじや と書つけたり。いかなる人の世を翫びてかゝりけんと、その時を知る人かたりぬ。 |