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人物名 |
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本文 |
守景は久隅氏、通名半兵衛。探幽法印の弟子にて画を能す。家貧なれども其志高く、容易人の需に応ずることなし。加賀侯、守景を召て、金沢に留給ふこと三年に及びしかども、扶持給るけしきもなかりしかば、かくては故郷にあるも同じ、帰りなんとて、侯の近侍せる士に別を告しかば、理也とて其よしを申けるに、侯笑給ひて、吾よくこれをしれり、然れども守景は胆太くして、人の需に従ふものにあらず。其画もとより世に稀なるもの也。されば此男に禄を与へば、画を描くことをばせじとおもひて、かく貧しからしむ。今は三年に及べば、画も国中に多く残りなん。さらば扶持すべしとて、ともしからず賜しとぞ。 (追記) 按、守景が為リ人トもとより奇也。侯の人を知りたまへること明にして、又謀たまへる所尤奇也。楽天が鷹を養ふ篇に、飽しむれば放れ、飢しむれば馴ずといひて、人事をさとしけるもおもひよせられぬ。 |