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古今集


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作品集名古今集 
作品集名読みこきんしゅう 
作成年月日(延喜五年四月十八日)((905年5月24日))
場所 
備考現存伝本には、延喜七年や延喜十三年三月十三日の歌も収められている。官職表記は、延喜十三、十四年、或いは延喜十年から十七年までわたるとされ、たとえ延喜五年に成立したとしても、その後しばらくは加除訂正が行われたとみられる。 

古今集 巻一:春上
古今集 巻二:春下
古今集 巻三:夏
古今集 巻四:秋上
古今集 巻五:秋下
古今集 巻六:冬
古今集 巻七:賀
古今集 巻八:離別
古今集 巻九:羈旅
古今集 巻十:物名
古今集 巻十一:恋一
古今集 巻十二:恋二
古今集 巻十三:恋三
古今集 巻十四:恋四
古今集 巻十五:恋五
古今集 巻十六:哀傷
古今集 巻十七:雑上
古今集 巻十八:雑下
古今集 巻十九:雑体
古今集 巻二十:大歌所歌
古今集 異本所載歌

古今集 巻一:春上

00001
元方 在原元方 (169)

としのうちに春はきにけりひととせをこそとやいはむことしとやいはむ

としのうちに−はるはきにけり−ひととせを−こそとやいはむ−ことしとやいはむ

異同資料句番号:00001

00002
貫之 紀貫之 (035)

袖ひちてむすひし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ

そてひちて−むすひしみつの−こほれるを−はるたつけふの−かせやとくらむ

異同資料句番号:00002

00003
読人不知 よみ人しらす (000)

春霞たてるやいつこみよしののよしのの山に雪はふりつつ

はるかすみ−たてるやいつこ−みよしのの−よしののやまに−ゆきはふりつつ

異同資料句番号:00003

00004
番号外作者 二条のきさき (999)

雪の内に春はきにけりうくひすのこほれる涙今やとくらむ

ゆきのうちに−はるはきにけり−うくひすの−こほれるなみた−いまやとくらむ

異同資料句番号:00004

00005
読人不知 よみ人しらす (000)

梅かえにきゐるうくひすはるかけてなけともいまた雪はふりつつ

うめかえに−きゐるうくひす−はるかけて−なけともいまた−ゆきはふりつつ

異同資料句番号:00005

00006
素性 素性法師 (021)

春たては花とや見らむ白雪のかかれる枝にうくひすそなく

はるたては−はなとやみらむ−しらゆきの−かかれるえたに−うくひすそなく

異同資料句番号:00006

00007
読人不知 よみ人しらす(一説、さきのおほきおほいまうちきみ) (000)

心さしふかくそめてし折りけれはきえあへぬ雪の花と見ゆらむ

こころさし−ふかくそめてし−をりけれは−きえあへぬゆきの−はなとみゆらむ

異同資料句番号:00007

00008
康秀 文屋やすひて (022)

春の日のひかりにあたる我なれとかしらの雪となるそわひしき

はるのひの−ひかりにあたる−われなれと−かしらのゆきと−なるそわひしき

異同資料句番号:00008

00009
貫之 きのつらゆき (035)

霞たちこのめもはるの雪ふれは花なきさとも花そちりける

かすみたち−このめもはるの−ゆきふれは−はななきさとも−はなそちりける

異同資料句番号:00009

00010
番号外作者 ふちはらのことなほ (999)

はるやとき花やおそきとききわかむ鶯たにもなかすもあるかな

はるやとき−はなやおそきと−ききわかむ−うくひすたにも−なかすもあるかな

異同資料句番号:00010

00011
忠峯 みふのたたみね (030)

春きぬと人はいへともうくひすのなかぬかきりはあらしとそ思ふ

はるきぬと−ひとはいへとも−うくひすの−なかぬかきりは−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00011

00012
番号外作者 源まさすみ (999)

谷風にとくるこほりのひまことにうちいつる浪や春のはつ花

たにかせに−とくるこほりの−ひまことに−うちいつるなみや−はるのはつはな

異同資料句番号:00012

00013
友則 紀とものり (033)

花のかを風のたよりにたくへてそ鶯さそふしるへにはやる

はなのかを−かせのたよりに−たくへてそ−うくひすさそふ−しるへにはやる

異同資料句番号:00013

00014
千里 大江千里 (023)

うくひすの谷よりいつるこゑなくは春くることをたれかしらまし

うくひすの−たによりいつる−こゑなくは−はるくることを−たれかしらまし

異同資料句番号:00014

00015
棟梁 在原棟梁 (180)

春たてと花もにほはぬ山さとはものうかるねに鶯そなく

はるたてと−はなもにほはぬ−やまさとは−ものうかるねに−うくひすそなく

異同資料句番号:00015

00016
読人不知 よみ人しらす (000)

野辺ちかくいへゐしせれはうくひすのなくなるこゑはあさなあさなきく

のへちかく−いへゐしせれは−うくひすの−なくなるこゑは−あさなあさなきく

異同資料句番号:00016

00017
読人不知 よみ人しらす (000)

かすかのはけふはなやきそわか草のつまもこもれり我もこもれり

かすかのは−けふはなやきそ−わかくさの−つまもこもれり−われもこもれり

異同資料句番号:00017

00018
読人不知 よみ人しらす (000)

かすかののとふひののもりいてて見よ今いくかありてわかなつみてむ

かすかのの−とふひののもり−いててみよ−いまいくかありて−わかなつみてむ

異同資料句番号:00018

00019
読人不知 よみ人しらす (000)

み山には松の雪たにきえなくに宮こはのへのわかなつみけり

みやまには−まつのゆきたに−きえなくに−みやこはのへの−わかなつみけり

異同資料句番号:00019

00020
読人不知 よみ人しらす (000)

梓弓おしてはるさめけふふりぬあすさへふらはわかなつみてむ

あつさゆみ−おしてはるさめ−けふふりぬ−あすさへふらは−わかなつみてむ

異同資料句番号:00020

00021
光孝院 仁和のみかと (015)

君かため春ののにいててわかなつむわか衣手に雪はふりつつ

きみかため−はるののにいてて−わかなつむ−わかころもてに−ゆきはふりつつ

異同資料句番号:00021

00022
貫之 つらゆき (035)

かすかののわかなつみにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらむ

かすかのの−わかなつみにや−しろたへの−そてふりはへて−ひとのゆくらむ

異同資料句番号:00022

00023
行平 在原行平朝臣 (016)

はるのきるかすみの衣ぬきをうすみ山風にこそみたるへらなれ

はるのきる−かすみのころも−ぬきをうすみ−やまかせにこそ−みたるへらなれ

異同資料句番号:00023

00024
宗于 源むねゆきの朝臣 (028)

ときはなる松のみとりも春くれは今ひとしほの色まさりけり

ときはなる−まつのみとりも−はるくれは−いまひとしほの−いろまさりけり

異同資料句番号:00024

00025
貫之 つらゆき (035)

わかせこか衣はるさめふることにのへのみとりそいろまさりける

わかせこか−ころもはるさめ−ふることに−のへのみとりそ−いろまさりける

異同資料句番号:00025

00026
貫之 つらゆき (035)

あをやきのいとよりかくる春しもそみたれて花のほころひにける

あをやきの−いとよりかくる−はるしもそ−みたれてはなの−ほころひにける

異同資料句番号:00026

00027
遍昭 僧正遍昭 (012)

あさみとりいとよりかけてしらつゆをたまにもぬける春の柳か

あさみとり−いとよりかけて−しらつゆを−たまにもぬける−はるのやなきか

異同資料句番号:00027

00028
読人不知 よみ人しらす (000)

ももちとりさへつる春は物ことにあらたまれとも我そふり行く

ももちとり−さへつるはるは−ものことに−あらたまれとも−われそふりゆく

異同資料句番号:00028

00029
読人不知 よみ人しらす (000)

をちこちのたつきもしらぬ山なかにおほつかなくもよふことりかな

をちこちの−たつきもしらぬ−やまなかに−おほつかなくも−よふことりかな

異同資料句番号:00029

00030
躬恒 凡河内みつね (029)

春くれはかりかへるなり白雲のみちゆきふりにことやつてまし

はるくれは−かりかへるなり−しらくもの−みちゆきふりに−ことやつてまし

異同資料句番号:00030

00031
伊勢 (019)

はるかすみたつを見すててゆくかりは花なきさとにすみやならへる

はるかすみ−たつをみすてて−ゆくかりは−はななきさとに−すみやならへる

異同資料句番号:00031

00032
読人不知 よみ人しらす (000)

折りつれは袖こそにほへ梅花有りとやここにうくひすのなく

をりつれは−そてこそにほへ−うめのはな−ありとやここに−うくひすのなく

異同資料句番号:00032

00033
読人不知 よみ人しらす (000)

色よりもかこそあはれとおもほゆれたか袖ふれしやとの梅そも

いろよりも−かこそあはれと−おもほゆれ−たかそてふれし−やとのうめそも

異同資料句番号:00033

00034
読人不知 よみ人しらす (000)

やとちかく梅の花うゑしあちきなくまつ人のかにあやまたれけり

やとちかく−うめのはなうゑし−あちきなく−まつひとのかに−あやまたれけり

異同資料句番号:00034

00035
読人不知 よみ人しらす (000)

梅花たちよるはかりありしより人のとかむるかにそしみぬる

うめのはな−たちよるはかり−ありしより−ひとのとかむる−かにそしみぬる

異同資料句番号:00035

00036
番号外作者 東三条の左のおほいまうちきみ (999)

鶯の笠にぬふといふ梅花折りてかささむおいかくるやと

うくひすの−かさにぬふといふ−うめのはな−をりてかささむ−おいかくるやと

異同資料句番号:00036

00037
素性 素性法師 (021)

よそにのみあはれとそ見し梅花あかぬいろかは折りてなりけり

よそにのみ−あはれとそみし−うめのはな−あかぬいろかは−をりてなりけり

異同資料句番号:00037

00038
友則 とものり (033)

君ならて誰にか見せむ梅花色をもかをもしる人そしる

きみならて−たれにかみせむ−うめのはな−いろをもかをも−しるひとそしる

異同資料句番号:00038

00039
貫之 つらゆき (035)

梅花にほふ春へはくらふ山やみにこゆれとしるくそ有りける

うめのはな−にほふはるへは−くらふやま−やみにこゆれと−しるくそありける

異同資料句番号:00039

00040
躬恒 みつね (029)

月夜にはそれとも見えす梅花かをたつねてそしるへかりける

つきよには−それともみえす−うめのはな−かをたつねてそ−しるへかりける

異同資料句番号:00040

00041
躬恒 みつね (029)

春の夜のやみはあやなし梅花色こそ見えねかやはかくるる

はるのよの−やみはあやなし−うめのはな−いろこそみえね−かやはかくるる

異同資料句番号:00041

00042
貫之 つらゆき (035)

人はいさ心もしらすふるさとは花そ昔のかににほひける

ひとはいさ−こころもしらす−ふるさとは−はなそむかしの−かににほひける

異同資料句番号:00042

00043
伊勢 (019)

春ことになかるる河を花と見てをられぬ水に袖やぬれなむ

はることに−なかるるかはを−はなとみて−をられぬみつに−そてやぬれなむ

異同資料句番号:00043

00044
伊勢 (019)

年をへて花のかかみとなる水はちりかかるをやくもるといふらむ

としをへて−はなのかかみと−なるみつは−ちりかかるをや−くもるといふらむ

異同資料句番号:00044

00045
貫之 つらゆき (035)

くるとあくとめかれぬものを梅花いつの人まにうつろひぬらむ

くるとあくと−めかれぬものを−うめのはな−いつのひとまに−うつろひぬらむ

異同資料句番号:00045

00046
読人不知 よみ人しらす (000)

梅かかをそてにうつしてととめては春はすくともかたみならまし

うめかかを−そてにうつして−ととめては−はるはすくとも−かたみならまし

異同資料句番号:00046

00047
素性 素性法師 (021)

ちると見てあるへきものを梅花うたてにほひのそてにとまれる

ちるとみて−あるへきものを−うめのはな−うたてにほひの−そてにとまれる

異同資料句番号:00047

00048
読人不知 よみ人しらす (000)

ちりぬともかをたにのこせ梅花こひしき時のおもひいてにせむ

ちりぬとも−かをたにのこせ−うめのはな−こひしきときの−おもひいてにせむ

異同資料句番号:00048

00049
貫之 つらゆき (035)

ことしより春しりそむるさくら花ちるといふ事はならはさらなむ

ことしより−はるしりそむる−さくらはな−ちるといふことは−ならはさらなむ

異同資料句番号:00049

00050
読人不知 よみ人しらす (000)

山たかみ人もすさめぬさくら花いたくなわひそ我見はやさむ

やまたかみ−ひともすさへぬ−さくらはな−いたくなわひそ−われみはやさむ

異同資料句番号:00050

00051
読人不知 よみ人しらす (000)

やまさくらわか見にくれは春霞峰にもをにもたちかくしつつ

やまさくら−わかみにくれは−はるかすみ−みねにもをにも−たちかくしつつ

異同資料句番号:00051

00052
番号外作者 さきのおほきおほいまうちきみ (999)

年ふれはよはひはおいぬしかはあれと花をし見れはもの思ひもなし

としふれは−よはひはおいぬ−しかはあれと−はなをしみれは−ものおもひもなし

異同資料句番号:00052

00053
業平 在原業平朝臣 (017)

世中にたえてさくらのなかりせは春の心はのとけからまし

よのなかに−たえてさくらの−なかりせは−はるのこころは−のとけからまし

異同資料句番号:00053

00054
読人不知 よみ人しらす (000)

いしはしるたきなくもかな桜花たをりてもこむ見ぬ人のため

いしはしる−たきなくもかな−さくらはな−たをりてもこむ−みぬひとのため

異同資料句番号:00054

00055
素性 そせい法し (021)

見てのみや人にかたらむさくら花てことにをりていへつとにせむ

みてのみや−ひとにかたらむ−さくらはな−てことにをりて−いへつとにせむ

異同資料句番号:00055

00056
素性 そせい法し (021)

みわたせは柳桜をこきませて宮こそ春の錦なりける

みわたせは−やなきさくらを−こきませて−みやこそはるの−にしきなりける

異同資料句番号:00056

00057
友則 きのとものり (033)

いろもかもおなしむかしにさくらめと年ふる人そあらたまりける

いろもかも−おなしむかしに−さくらめと−としふるひとそ−あらたまりける

異同資料句番号:00057

00058
貫之 つらゆき (035)

たれしかもとめてをりつる春霞たちかくすらむ山のさくらを

たれしかも−とめてをりつる−はるかすみ−たちかくすらむ−やまのさくらを

異同資料句番号:00058

00059
貫之 つらゆき (035)

桜花さきにけらしなあしひきの山のかひより見ゆる白雲

さくらはな−さきにけらしな−あしひきの−やまのかひより−みゆるしらくも

異同資料句番号:00059

00060
友則 とものり (033)

三吉野の山へにさけるさくら花雪かとのみそあやまたれける

みよしのの−やまへにさける−さくらはな−ゆきかとのみそ−あやまたれける

異同資料句番号:00060

00061
伊勢 (019)

さくら花春くははれる年たにも人の心にあかれやはせぬ

さくらはな−はるくははれる−としたにも−ひとのこころに−あかれやはせぬ

異同資料句番号:00061

00062
読人不知 よみ人しらす (000)

あたなりとなにこそたてれ桜花年にまれなる人もまちけり

あたなりと−なにこそたてれ−さくらはな−としにまれなる−ひともまちけり

異同資料句番号:00062

00063
業平 なりひらの朝臣 (017)

けふこすはあすは雪とそふりなましきえすはありとも花と見ましや

けふこすは−あすはゆきとそ−ふりなまし−きえすはありとも−はなとみましや

異同資料句番号:00063

00064
読人不知 よみ人しらす (000)

ちりぬれはこふれとしるしなきものをけふこそさくらをらはをりてめ

ちりぬれは−こふれとしるし−なきものを−けふこそさくら−をらはをりてめ

異同資料句番号:00064

00065
読人不知 よみ人しらす (000)

をりとらはをしけにもあるか桜花いさやとかりてちるまては見む

をりとらは−をしけにもあるか−さくらはな−いさやとかりて−ちるまてはみむ

異同資料句番号:00065

00066
番号外作者 きのありとも (999)

さくらいろに衣はふかくそめてきむ花のちりなむのちのかたみに

さくらいろに−ころもはふかく−そめてきむ−はなのちりなむ−のちのかたみに

異同資料句番号:00066

00067
躬恒 みつね (029)

わかやとの花見かてらにくる人はちりなむのちそこひしかるへき

わかやとの−はなみかてらに−くるひとは−ちりなむのちそ−こひしかるへき

異同資料句番号:00067

00068
伊勢 (019)

見る人もなき山さとのさくら花ほかのちりなむのちそさかまし

みるひとも−なきやまさとの−さくらはな−ほかのちりなむ−のちそさかまし

異同資料句番号:00068


古今集 巻二:春下

00069
読人不知 よみ人しらす (000)

春霞たなひく山のさくら花うつろはむとや色かはりゆく

はるかすみ−たなひくやまの−さくらはな−うつろはむとや−いろかはりゆく

異同資料句番号:00069

00070
読人不知 よみ人しらす (000)

まてといふにちらてしとまる物ならはなにを桜に思ひまさまし

まてといふに−ちらてしとまる−ものならは−なにをさくらに−おもひまさまし

異同資料句番号:00070

00071
読人不知 よみ人しらす (000)

のこりなくちるそめてたき桜花ありて世中はてのうけれは

のこりなく−ちるそめてたき−さくらはな−ありてよのなか−はてのうけれは

異同資料句番号:00071

00072
読人不知 よみ人しらす (000)

このさとにたひねしぬへしさくら花ちりのまかひにいへちわすれて

このさとに−たひねしぬへし−さくらはな−ちりのまかひに−いへちわすれて

異同資料句番号:00072

00073
読人不知 よみ人しらす (000)

空蝉の世にもにたるか花さくらさくと見しまにかつちりにけり

うつせみの−よにもにたるか−はなさくら−さくとみしまに−かつちりにけり

異同資料句番号:00073

00074
番号外作者 これたかのみこ (999)

さくら花ちらはちらなむちらすとてふるさと人のきても見なくに

さくらはな−ちらはちらなむ−ちらすとて−ふるさとひとの−きてもみなくに

異同資料句番号:00074

00075
番号外作者 そうく法師 (999)

桜ちる花の所は春なから雪そふりつつきえかてにする

さくらちる−はなのところは−はるなから−ゆきそふりつつ−きえかてにする

異同資料句番号:00075

00076
素性 そせい法し (021)

花ちらす風のやとりはたれかしる我にをしへよ行きてうらみむ

はなちらす−かせのやとりは−たれかしる−われにをしへよ−ゆきてうらみむ

異同資料句番号:00076

00077
番号外作者 そうく法し (999)

いささくら我もちりなむひとさかりありなは人にうきめ見えなむ

いささくら−われもちりなむ−ひとさかり−ありなはひとに−うきめみえなむ

異同資料句番号:00077

00078
貫之 つらゆき (035)

ひとめ見し君もやくると桜花けふはまち見てちらはちらなむ

ひとめみし−きみもやくると−さくらはな−けふはまちみて−ちらはちらなむ

異同資料句番号:00078

00079
貫之 つらゆき (035)

春霞なにかくすらむ桜花ちるまをたにも見るへきものを

はるかすみ−なにかくすらむ−さくらはな−ちるまをたにも−みるへきものを

異同資料句番号:00079

00080
番号外作者 藤原よるかの朝臣 (999)

たれこめて春のゆくへもしらぬまにまちし桜もうつろひにけり

たれこめて−はるのゆくへも−しらぬまに−まちしさくらも−うつろひにけり

異同資料句番号:00080

00081
番号外作者 すかのの高世 (999)

枝よりもあたにちりにし花なれはおちても水のあわとこそなれ

えたよりも−あたにちりにし−はななれは−おちてもみつの−あわとこそなれ

異同資料句番号:00081

00082
貫之 つらゆき (035)

ことならはさかすやはあらぬさくら花見る我さへにしつ心なし

ことならは−さかすやはあらぬ−さくらはな−みるわれさへに−しつこころなし

異同資料句番号:00082

00083
貫之 つらゆき (035)

さくら花とくちりぬともおもほえす人の心そ風も吹きあへぬ

さくらはな−とくちりぬとも−おもほえす−ひとのこころそ−かせもふきあへぬ

異同資料句番号:00083

00084
友則 きのとものり (033)

久方のひかりのとけき春の日にしつ心なく花のちるらむ

ひさかたの−ひかりのとけき−はるのひに−しつこころなく−はなのちるらむ

異同資料句番号:00084

00085
番号外作者 ふちはらのよしかせ (999)

春風は花のあたりをよきてふけ心つからやうつろふと見む

はるかせは−はなのあたりを−よきてふけ−こころつからや−うつろふとみむ

異同資料句番号:00085

00086
躬恒 凡河内みつね (029)

雪とのみふるたにあるをさくら花いかにちれとか風の吹くらむ

ゆきとのみ−ふるたにあるを−さくらはな−いかにちれとか−かせのふくらむ

異同資料句番号:00086

00087
貫之 つらゆき (035)

山たかみみつつわかこしさくら花風は心にまかすへらなり

やまたかみ−みつつわかこし−さくらはな−かせはこころに−まかすへらなり

異同資料句番号:00087

00088
黒主 つらゆき(一本大伴くろぬし) (501)

春雨のふるは涙かさくら花ちるををしまぬ人しなけれは

はるさめの−ふるはなみたか−さくらはな−ちるををしまぬ−ひとしなけれは

異同資料句番号:00088

00089
貫之 つらゆき (035)

さくら花ちりぬる風のなこりには水なきそらに浪そたちける

さくらはな−ちりぬるかせの−なこりには−みつなきそらに−なみそたちける

異同資料句番号:00089

00090
番号外作者 ならのみかと (999)

ふるさととなりにしならのみやこにも色はかはらす花はさきけり

ふるさとと−なりにしならの−みやこにも−いろはかはらす−はなはさきけり

異同資料句番号:00090

00091
遍昭 よしみねのむねさた (012)

花の色はかすみにこめて見せすともかをたにぬすめ春の山かせ

はなのいろは−かすみにこめて−みせすとも−かをたにぬすめ−はるのやまかせ

異同資料句番号:00091

00092
素性 そせい法し (021)

はなの木も今はほりうゑし春たてはうつろふ色に人ならひけり

はなのきも−いまはほりうゑし−はるたては−うつろふいろに−ひとならひけり

異同資料句番号:00092

00093
読人不知 よみ人しらす (000)

春の色のいたりいたらぬさとはあらしさけるさかさる花の見ゆらむ

はるのいろの−いたりいたらぬ−さとはあらし−さけるさかさる−はなのみゆらむ

異同資料句番号:00093

00094
貫之 つらゆき (035)

三わ山をしかもかくすか春霞人にしられぬ花やさくらむ

みわやまを−しかもかくすか−はるかすみ−ひとにしられぬ−はなやさくらむ

異同資料句番号:00094

00095
素性 そせい (021)

いさけふは春の山辺にましりなむくれなはなけの花のかけかは

いさけふは−はるのやまへに−ましりなむ−くれなはなけの−はなのかけかは

異同資料句番号:00095

00096
素性 そせい (021)

いつまてか野辺に心のあくかれむ花しちらすは千世もへぬへし

いつまてか−のへにこころの−あくかれむ−はなしちらすは−ちよもへぬへし

異同資料句番号:00096

00097
読人不知 よみ人しらす (000)

春ことに花のさかりはありなめとあひ見む事はいのちなりけり

はることに−はなのさかりは−ありなめと−あひみむことは−いのちなりけり

異同資料句番号:00097

00098
読人不知 よみ人しらす (000)

花のこと世のつねならはすくしてし昔は又もかへりきなまし

はなのこと−よのつねならは−すくしてし−むかしはまたも−かへりきなまし

異同資料句番号:00098

00099
読人不知 よみ人しらす (000)

吹く風にあつらへつくる物ならはこのひともとはよきよといはまし

ふくかせに−あつらへつくる−ものならは−このひともとは−よきよといはまし

異同資料句番号:00099

00100
読人不知 よみ人しらす (000)

まつ人もこぬものゆゑにうくひすのなきつる花ををりてけるかな

まつひとも−こぬものゆゑに−うくひすの−なきつるはなを−をりてけるかな

異同資料句番号:00100

00101
興風 藤原おきかせ (034)

さく花は千くさなからにあたなれとたれかははるをうらみはてたる

さくはなは−ちくさなからに−あたなれと−たれかははるを−うらみはてたる

異同資料句番号:00101

00102
興風 藤原おきかせ (034)

春霞色のちくさに見えつるはたなひく山の花のかけかも

はるかすみ−いろのちくさに−みえつるは−たなひくやまの−はなのかけかも

異同資料句番号:00102

00103
元方 ありはらのもとかた (169)

霞立つ春の山へはとほけれと吹きくる風は花のかそする

かすみたつ−はるのやまへは−とほけれと−ふきくるかせは−はなのかそする

異同資料句番号:00103

00104
躬恒 みつね (029)

花見れは心さへにそうつりけるいろにはいてし人もこそしれ

はなみれは−こころさへにそ−うつりける−いろにはいてし−ひともこそしれ

異同資料句番号:00104

00105
読人不知 よみ人しらす (000)

鶯のなくのへことにきて見れはうつろふ花に風そふきける

うくひすの−なくのへことに−きてみれは−うつろふはなに−かせそふきける

異同資料句番号:00105

00106
読人不知 よみ人しらす (000)

吹く風をなきてうらみよ鶯は我やは花に手たにふれたる

ふくかせを−なきてうらみよ−うくひすは−われやははなに−てたにふれたる

異同資料句番号:00106

00107
番号外作者 典侍洽子朝臣 (999)

ちる花のなくにしとまる物ならは我鶯におとらましやは

ちるはなの−なくにしとまる−ものならは−われうくひすに−おとらましやは

異同資料句番号:00107

00108
番号外作者 藤原のちかけ (999)

花のちることやわひしき春霞たつたの山のうくひすのこゑ

はなのちる−ことやわひしき−はるかすみ−たつたのやまの−うくひすのこゑ

異同資料句番号:00108

00109
素性 そせい (021)

こつたへはおのかはかせにちる花をたれにおほせてここらなくらむ

こつたへは−おのかはかせに−ちるはなを−たれにおほせて−ここらなくらむ

異同資料句番号:00109

00110
躬恒 みつね (029)

しるしなきねをもなくかなうくひすのことしのみちる花ならなくに

しるしなき−ねをもなくかな−うくひすの−ことしのみちる−はなならなくに

異同資料句番号:00110

00111
読人不知 よみ人しらす (000)

こまなめていさ見にゆかむふるさとは雪とのみこそ花はちるらめ

こまなへて−いさみにゆかむ−ふるさとは−ゆきとのみこそ−はなはちるらめ

異同資料句番号:00111

00112
読人不知 よみ人しらす (000)

ちる花をなにかうらみむ世中にわか身もともにあらむものかは

ちるはなを−なにかうらみむ−よのなかに−わかみもともに−あらむものかは

異同資料句番号:00112

00113
小町 小野小町 (009)

花の色はうつりにけりないたつらにわか身世にふるなかめせしまに

はなのいろは−うつりにけりな−いたつらに−わかみよにふる−なかめせしまに

異同資料句番号:00113

00114
素性 そせい (021)

をしと思ふ心はいとによられなむちる花ことにぬきてととめむ

をしとおもふ−こころはいとに−よられなむ−ちるはなことに−ぬきてととめむ

異同資料句番号:00114

00115
貫之 つらゆき (035)

あつさゆみはるの山辺をこえくれは道もさりあへす花そちりける

あつさゆみ−はるのやまへを−こえくれは−みちもさりあへす−はなそちりける

異同資料句番号:00115

00116
貫之 つらゆき (035)

春ののにわかなつまむとこしものをちりかふ花にみちはまとひぬ

はるののに−わかなつまむと−こしものを−ちりかふはなに−みちはまとひぬ

異同資料句番号:00116

00117
貫之 つらゆき (035)

やとりして春の山辺にねたる夜は夢の内にも花そちりける

やとりして−はるのやまへに−ねたるよは−ゆめのうちにも−はなそちりける

異同資料句番号:00117

00118
貫之 つらゆき (035)

吹く風と谷の水としなかりせはみ山かくれの花を見ましや

ふくかせと−たにのみつとし−なかりせは−みやまかくれの−はなをみましや

異同資料句番号:00118

00119
遍昭 僧正遍昭 (012)

よそに見てかへらむ人にふちの花はひまつはれよえたはをるとも

よそにみて−かへらむひとに−ふちのはな−はひまつはれよ−えたはをるとも

異同資料句番号:00119

00120
躬恒 みつね (029)

わかやとにさける藤波たちかへりすきかてにのみ人の見るらむ

わかやとに−さけるふちなみ−たちかへり−すきかてにのみ−ひとのみるらむ

異同資料句番号:00120

00121
読人不知 よみ人しらす (000)

今もかもさきにほふらむ橘のこしまのさきの山吹の花

いまもかも−さきにほふらむ−たちはなの−こしまのさきの−やまふきのはな

異同資料句番号:00121

00122
読人不知 よみ人しらす (000)

春雨ににほへる色もあかなくにかさへなつかし山吹の花

はるさめに−にほへるいろも−あかなくに−かさへなつかし−やまふきのはな

異同資料句番号:00122

00123
読人不知 よみ人しらす (000)

山ふきはあやななさきそ花見むとうゑけむ君かこよひこなくに

やまふきは−あやななさきそ−はなみむと−うゑけむきみか−こよひこなくに

異同資料句番号:00123

00124
貫之 つらゆき (035)

吉野河岸の山吹ふくかせにそこの影さへうつろひにけり

よしのかは−きしのやまふき−ふくかせに−そこのかけさへ−うつろひにけり

異同資料句番号:00124

00125
読人不知 よみ人しらす(一説、たちはなのきよとも) (000)

かはつなくゐての山吹ちりにけり花のさかりにあはましものを

かはつなく−ゐてのやまふき−ちりにけり−はなのさかりに−あはましものを

異同資料句番号:00125

00126
素性 そせい (021)

おもふとち春の山辺にうちむれてそこともいはぬたひねしてしか

おもふとち−はるのやまへに−うちむれて−そこともいはぬ−たひねしてしか

異同資料句番号:00126

00127
躬恒 みつね (029)

あつさゆみ春たちしより年月のいるかことくもおもほゆるかな

あつさゆみ−はるたちしより−としつきの−いるかことくも−おもほゆるかな

異同資料句番号:00127

00128
貫之 つらゆき (035)

なきとむる花しなけれはうくひすもはては物うくなりぬへらなり

なきとむる−はなしなけれは−うくひすも−はてはものうく−なりぬへらなり

異同資料句番号:00128

00129
深養父 ふかやふ (036)

花ちれる水のまにまにとめくれは山には春もなくなりにけり

はなちれる−みつのまにまに−とめくれは−やまにははるも−なくなりにけり

異同資料句番号:00129

00130
元方 もとかた (169)

をしめともととまらなくに春霞かへる道にしたちぬとおもへは

をしめとも−ととまらなくに−はるかすみ−かへるみちにし−たちぬとおもへは

異同資料句番号:00130

00131
興風 おきかせ (034)

こゑたえすなけやうくひすひととせにふたたひとたにくへき春かは

こゑたえす−なけやうくひす−ひととせに−ふたたひとたに−くへきはるかは

異同資料句番号:00131

00132
躬恒 みつね (029)

ととむへき物とはなしにはかなくもちる花ことにたくふこころか

ととむへき−ものとはなしに−はかなくも−ちるはなことに−たくふこころか

異同資料句番号:00132

00133
業平 なりひらの朝臣 (017)

ぬれつつそしひてをりつる年の内に春はいくかもあらしと思へは

ぬれつつそ−しひてをりつる−としのうちに−はるはいくかも−あらしとおもへは

異同資料句番号:00133

00134
躬恒 みつね (029)

けふのみと春をおもはぬ時たにも立つことやすき花のかけかは

けふのみと−はるをおもはぬ−ときたにも−たつことやすき−はなのかけかは

異同資料句番号:00134


古今集 巻三:夏

00135
読人不知 よみ人しらす(一説、かきのもとの人まろ) (000)

わかやとの池の藤波さきにけり山郭公いつかきなかむ

わかやとの−いけのふちなみ−さきにけり−やまほとときす−いつかきなかむ

異同資料句番号:00135

00136
番号外作者 紀としさた (999)

あはれてふ事をあまたにやらしとや春におくれてひとりさくらむ

あはれてふ−ことをあまたに−やらしとや−はるにおくれて−ひとりさくらむ

異同資料句番号:00136

00137
読人不知 よみ人しらす (000)

さ月まつ山郭公うちはふき今もなかなむこそのふるこゑ

さつきまつ−やまほとときす−うちはふき−いまもなかなむ−こそのふるこゑ

異同資料句番号:00137

00138
伊勢 (019)

五月こはなきもふりなむ郭公またしきほとのこゑをきかはや

さつきこは−なきもふりなむ−ほとときす−またしきほとの−こゑをきかはや

異同資料句番号:00138

00139
読人不知 よみ人しらす (000)

さつきまつ花橘のかをかけは昔の人の袖のかそする

さつきまつ−はなたちはなの−かをかけは−むかしのひとの−そてのかそする

異同資料句番号:00139

00140
読人不知 よみ人しらす (000)

いつのまにさ月きぬらむあしひきの山郭公今そなくなる

いつのまに−さつききぬらむ−あしひきの−やまほとときす−いまそなくなる

異同資料句番号:00140

00141
読人不知 よみ人しらす (000)

けさきなきいまたたひなる郭公花たちはなにやとはからなむ

けさきなき−いまたたひなる−ほとときす−はなたちはなに−やとはからなむ

異同資料句番号:00141

00142
友則 きのとものり (033)

おとは山けさこえくれは郭公こすゑはるかに今そなくなる

おとはやま−けさこえくれは−ほとときす−こすゑはるかに−いまそなくなる

異同資料句番号:00142

00143
素性 そせい (021)

郭公はつこゑきけはあちきなくぬしさたまらぬこひせらるはた

ほとときす−はつこゑきけは−あちきなく−ぬしさたまらぬ−こひせらるはた

異同資料句番号:00143

00144
素性 そせい (021)

いそのかみふるき宮この郭公声はかりこそむかしなりけれ

いそのかみ−ふるきみやこの−ほとときす−こゑはかりこそ−むかしなりけれ

異同資料句番号:00144

00145
読人不知 よみ人しらす (000)

夏山になく郭公心あらは物思ふ我に声なきかせそ

なつやまに−なくほとときす−こころあらは−ものおもふわれに−こゑなきかせそ

異同資料句番号:00145

00146
読人不知 よみ人しらす (000)

郭公なくこゑきけはわかれにしふるさとさへそこひしかりける

ほとときす−なくこゑきけは−わかれにし−ふるさとさへそ−こひしかりける

異同資料句番号:00146

00147
読人不知 よみ人しらす (000)

ほとときすなかなくさとのあまたあれは猶うとまれぬ思ふものから

ほとときす−なかなくさとの−あまたあれは−なほうとまれぬ−おもふものから

異同資料句番号:00147

00148
読人不知 よみ人しらす (000)

思ひいつるときはの山の郭公唐紅のふりいててそなく

おもひいつる−ときはのやまの−ほとときす−からくれなゐの−ふりいててそなく

異同資料句番号:00148

00149
読人不知 よみ人しらす (000)

声はして涙は見えぬ郭公わか衣手のひつをからなむ

こゑはして−なみたはみえぬ−ほとときす−わかころもての−ひつをからなむ

異同資料句番号:00149

00150
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山郭公をりはへてたれかまさるとねをのみそなく

あしひきの−やまほとときす−をりはへて−たれかまさると−ねをのみそなく

異同資料句番号:00150

00151
読人不知 よみ人しらす (000)

今さらに山へかへるな郭公こゑのかきりはわかやとになけ

いまさらに−やまへかへるな−ほとときす−こゑのかきりは−わかやとになけ

異同資料句番号:00151

00152
番号外作者 みくにのまち (999)

やよやまて山郭公事つてむ我世中にすみわひぬとよ

やよやまて−やまほとときす−ことつてむ−われよのなかに−すみわひぬとよ

異同資料句番号:00152

00153
友則 紀とものり (033)

五月雨に物思ひをれは郭公夜ふかくなきていつちゆくらむ

さみたれに−ものおもひをれは−ほとときす−よふかくなきて−いつちゆくらむ

異同資料句番号:00153

00154
友則 紀とものり (033)

夜やくらき道やまとへるほとときすわかやとをしもすきかてになく

よやくらき−みちやまとへる−ほとときす−わかやとをしも−すきかてになく

異同資料句番号:00154

00155
千里 大江千里 (023)

やとりせし花橘もかれなくになとほとときすこゑたえぬらむ

やとりせし−はなたちはなも−かれなくに−なとほとときす−こゑたえぬらむ

異同資料句番号:00155

00156
貫之 きのつらゆき (035)

夏の夜のふすかとすれは郭公なくひとこゑにあくるしののめ

なつのよの−ふすかとすれは−ほとときす−なくひとこゑに−あくるしののめ

異同資料句番号:00156

00157
忠峯 みふのたたみね (030)

くるるかと見れはあけぬるなつのよをあかすとやなく山郭公

くるるかと−みれはあけぬる−なつのよを−あかすとやなく−やまほとときす

異同資料句番号:00157

00158
番号外作者 紀秋岑 (999)

夏山にこひしき人やいりにけむ声ふりたててなく郭公

なつやまに−こひしきひとや−いりにけむ−こゑふりたてて−なくほとときす

異同資料句番号:00158

00159
読人不知 よみ人しらす (000)

こその夏なきふるしてし郭公それかあらぬかこゑのかはらぬ

こそのなつ−なきふるしてし−ほとときす−それかあらぬか−こゑのかはらぬ

異同資料句番号:00159

00160
貫之 つらゆき (035)

五月雨のそらもととろに郭公なにをうしとかよたたなくらむ

さみたれの−そらもととろに−ほとときす−なにをうしとか−よたたなくらむ

異同資料句番号:00160

00161
躬恒 みつね (029)

ほとときすこゑもきこえす山ひこはほかになくねをこたへやはせぬ

ほとときす−こゑもきこえす−やまひこは−ほかになくねを−こたへやはせぬ

異同資料句番号:00161

00162
貫之 つらゆき (035)

郭公人まつ山になくなれは我うちつけにこひまさりけり

ほとときす−ひとまつやまに−なくなれは−われうちつけに−こひまさりけり

異同資料句番号:00162

00163
忠峯 たたみね (030)

むかしへや今もこひしき郭公ふるさとにしもなきてきつらむ

むかしへや−いまもこひしき−ほとときす−ふるさとにしも−なきてきつらむ

異同資料句番号:00163

00164
躬恒 みつね (029)

郭公我とはなしに卯花のうき世中になきわたるらむ

ほとときす−われとはなしに−うのはなの−うきよのなかに−なきわたるらむ

異同資料句番号:00164

00165
遍昭 僧正へんせう (012)

はちすはのにこりにしまぬ心もてなにかはつゆを玉とあさむく

はちすはの−にこりにしまぬ−こころもて−なにかはつゆを−たまとあさむく

異同資料句番号:00165

00166
深養父 (036)

夏の夜はまたよひなからあけぬるを雲のいつこに月やとるらむ

なつのよは−またよひなから−あけぬるを−くものいつこに−つきやとるらむ

異同資料句番号:00166

00167
躬恒 みつね (029)

ちりをたにすゑしとそ思ふさきしよりいもとわかぬるとこ夏のはな

ちりをたに−すゑしとそおもふ−さきしより−いもとわかぬる−とこなつのはな

異同資料句番号:00167

00168
躬恒 みつね (029)

夏と秋と行きかふそらのかよひちはかたへすすしき風やふくらむ

なつとあきと−ゆきかふそらの−かよひちは−かたへすすしき−かせやふくらむ

異同資料句番号:00168


古今集 巻四:秋上

00169
敏行 藤原敏行朝臣 (018)

あききぬとめにはさやかに見えねとも風のおとにそおとろかれぬる

あききぬと−めにはさやかに−みえねとも−かせのおとにそ−おとろかれぬる

異同資料句番号:00169

00170
貫之 つらゆき (035)

河風のすすしくもあるかうちよする浪とともにや秋は立つらむ

かはかせの−すすしくもあるか−うちよする−なみとともにや−あきはたつらむ

異同資料句番号:00170

00171
読人不知 よみ人しらす (000)

わかせこか衣のすそを吹返しうらめつらしき秋のはつ風

わかせこか−ころものすそを−ふきかへし−うらめつらしき−あきのはつかせ

異同資料句番号:00171

00172
読人不知 よみ人しらす (000)

きのふこそさなへとりしかいつのまにいなはそよきて秋風の吹く

きのふこそ−さなへとりしか−いつのまに−いなはそよきて−あきかせのふく

異同資料句番号:00172

00173
読人不知 よみ人しらす (000)

秋風の吹きにし日より久方のあまのかはらにたたぬ日はなし

あきかせの−ふきにしひより−ひさかたの−あまのかはらに−たたぬひはなし

異同資料句番号:00173

00174
読人不知 よみ人しらす (000)

久方のあまのかはらのわたしもり君わたりなはかちかくしてよ

ひさかたの−あまのかはらの−わたしもり−きみわたりなは−かちかくしてよ

異同資料句番号:00174

00175
読人不知 よみ人しらす (000)

天河紅葉をはしにわたせはやたなはたつめの秋をしもまつ

あまのかは−もみちをはしに−わたせはや−たなはたつめの−あきをしもまつ

異同資料句番号:00175

00176
読人不知 よみ人しらす (000)

こひこひてあふ夜はこよひあまの河きり立ちわたりあけすもあらなむ

こひこひて−あふよはこよひ−あまのかは−きりたちわたり−あけすもあらなむ

異同資料句番号:00176

00177
友則 とものり (033)

天河あさせしら浪たとりつつわたりはてねはあけそしにける

あまのかは−あさせしらなみ−たとりつつ−わたりはてねは−あけそしにける

異同資料句番号:00177

00178
興風 藤原おきかせ (034)

契りけむ心そつらきたなはたの年にひとたひあふはあふかは

ちきりけむ−こころそつらき−たなはたの−としにひとたひ−あふはあふかは

異同資料句番号:00178

00179
躬恒 凡河内みつね (029)

年ことにあふとはすれとたなはたのぬるよのかすそすくなかりける

としことに−あふとはすれと−たなはたの−ぬるよのかすそ−すくなかりける

異同資料句番号:00179

00180
躬恒 凡河内みつね (029)

織女にかしつる糸の打ちはへて年のをなかくこひやわたらむ

たなはたに−かしつるいとの−うちはへて−としのをなかく−こひやわたらむ

異同資料句番号:00180

00181
素性 そせい (021)

こよひこむ人にはあはしたなはたのひさしきほとにまちもこそすれ

こよひこむ−ひとにはあはし−たなはたの−ひさしきほとに−まちもこそすれ

異同資料句番号:00181

00182
宗于 源むねゆきの朝臣 (028)

今はとてわかるる時は天河わたらぬさきにそてそひちぬる

いまはとて−わかるるときは−あまのかは−わたらぬさきに−そてそひちぬる

異同資料句番号:00182

00183
忠峯 みふのたたみね (030)

けふよりはいまこむ年のきのふをそいつしかとのみまちわたるへき

けふよりは−いまこむとしの−きのふをそ−いつしかとのみ−まちわたるへき

異同資料句番号:00183

00184
読人不知 よみ人しらす (000)

このまよりもりくる月の影見れは心つくしの秋はきにけり

このまより−もりくるつきの−かけみれは−こころつくしの−あきはきにけり

異同資料句番号:00184

00185
読人不知 よみ人しらす (000)

おほかたの秋くるからにわか身こそかなしき物と思ひしりぬれ

おほかたの−あきくるからに−わかみこそ−かなしきものと−おもひしりぬれ

異同資料句番号:00185

00186
読人不知 よみ人しらす (000)

わかためにくる秋にしもあらなくにむしのねきけはまつそかなしき

わかために−くるあきにしも−あらなくに−むしのねきけは−まつそかなしき

異同資料句番号:00186

00187
読人不知 よみ人しらす (000)

物ことに秋そかなしきもみちつつうつろひゆくをかきりと思へは

ものことに−あきそかなしき−もみちつつ−うつろひゆくを−かきりとおもへは

異同資料句番号:00187

00188
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとりぬるとこは草はにあらねとも秋くるよひはつゆけかりけり

ひとりぬる−とこはくさはに−あらねとも−あきくるよひは−つゆけかりけり

異同資料句番号:00188

00189
読人不知 よみ人しらす (000)

いつはとは時はわかねと秋のよそ物思ふ事のかきりなりける

いつはとは−ときはわかねと−あきのよそ−ものおもふことの−かきりなりける

異同資料句番号:00189

00190
躬恒 みつね (029)

かくはかりをしと思ふ夜をいたつらにねてあかすらむ人さへそうき

かくはかり−をしとおもふよを−いたつらに−ねてあかすらむ−ひとさへそうき

異同資料句番号:00190

00191
読人不知 よみ人しらす (000)

白雲にはねうちかはしとふかりのかすさへ見ゆる秋のよの月

しらくもに−はねうちかはし−とふかりの−かすさへみゆる−あきのよのつき

異同資料句番号:00191

00192
読人不知 よみ人しらす (000)

さ夜なかと夜はふけぬらしかりかねのきこゆるそらに月わたる見ゆ

さよなかと−よはふけぬらし−かりかねの−きこゆるそらに−つきわたるみゆ

異同資料句番号:00192

00193
千里 大江千里 (023)

月見れはちちに物こそかなしけれわか身ひとつの秋にはあらねと

つきみれは−ちちにものこそ−かなしけれ−わかみひとつの−あきにはあらねと

異同資料句番号:00193

00194
忠峯 たたみね (030)

久方の月の桂も秋は猶もみちすれはやてりまさるらむ

ひさかたの−つきのかつらも−あきはなほ−もみちすれはや−てりまさるらむ

異同資料句番号:00194

00195
元方 在原元方 (169)

秋の夜の月のひかりしあかけれはくらふの山もこえぬへらなり

あきのよの−つきのひかりし−あかけれは−くらふのやまも−こえぬへらなり

異同資料句番号:00195

00196
忠房 藤原忠房 (182)

蟋蟀いたくななきそ秋の夜の長き思ひは我そまされる

きりきりす−いたくななきそ−あきのよの−なかきおもひは−われそまされる

異同資料句番号:00196

00197
敏行 としゆきの朝臣 (018)

秋の夜のあくるもしらすなくむしはわかこと物やかなしかるらむ

あきのよの−あくるもしらす−なくむしは−わかことものや−かなしかるらむ

異同資料句番号:00197

00198
読人不知 よみ人しらす (000)

あき萩も色つきぬれはきりきりすわかねぬことやよるはかなしき

あきはきも−いろつきぬれは−きりきりす−わかねぬことや−よるはかなしき

異同資料句番号:00198

00199
読人不知 よみ人しらす (000)

秋の夜はつゆこそことにさむからし草むらことにむしのわふれは

あきのよは−つゆこそことに−さむからし−くさむらことに−むしのわふれは

異同資料句番号:00199

00200
読人不知 よみ人しらす (000)

君しのふ草にやつるるふるさとは松虫のねそかなしかりける

きみしのふ−くさにやつるる−ふるさとは−まつむしのねそ−かなしかりける

異同資料句番号:00200

00201
読人不知 よみ人しらす (000)

秋ののに道もまとひぬ松虫のこゑする方にやとやからまし

あきののに−みちもまとひぬ−まつむしの−こゑするかたに−やとやからまし

異同資料句番号:00201

00202
読人不知 よみ人しらす (000)

あきののに人松虫のこゑすなり我かとゆきていさとふらはむ

あきののに−ひとまつむしの−こゑすなり−われかとゆきて−いさとふらはむ

異同資料句番号:00202

00203
読人不知 よみ人しらす (000)

もみちはのちりてつもれるわかやとに誰を松虫ここらなくらむ

もみちはの−ちりてつもれる−わかやとに−たれをまつむし−ここらなくらむ

異同資料句番号:00203

00204
読人不知 よみ人しらす (000)

ひくらしのなきつるなへに日はくれぬと思ふは山のかけにそありける

ひくらしの−なきつるなへに−ひはくれぬと−おもふはやまの−かけにそありける

異同資料句番号:00204

00205
読人不知 よみ人しらす (000)

ひくらしのなく山里のゆふくれは風よりほかにとふ人もなし

ひくらしの−なくやまさとの−ゆふくれは−かせよりほかに−とふひともなし

異同資料句番号:00205

00206
元方 在原元方 (169)

まつ人にあらぬものからはつかりのけさなくこゑのめつらしきかな

まつひとに−あらぬものから−はつかりの−けさなくこゑの−めつらしきかな

異同資料句番号:00206

00207
友則 とものり (033)

秋風にはつかりかねそきこゆなるたかたまつさをかけてきつらむ

あきかせに−はつかりかねそ−きこゆなる−たかたまつさを−かけてきつらむ

異同資料句番号:00207

00208
読人不知 よみ人しらす (000)

わかかとにいなおほせとりのなくなへにけさ吹く風にかりはきにけり

わかかとに−いなおほせとりの−なくなへに−けさふくかせに−かりはきにけり

異同資料句番号:00208

00209
読人不知 よみ人しらす (000)

いとはやもなきぬるかりか白露のいろとる木木ももみちあへなくに

いとはやも−なきぬるかりか−しらつゆの−いろとるききも−もみちあへなくに

異同資料句番号:00209

00210
読人不知 よみ人しらす (000)

春霞かすみていにしかりかねは今そなくなる秋きりのうへに

はるかすみ−かすみていにし−かりかねは−いまそなくなる−あききりのうへに

異同資料句番号:00210

00211
読人不知 よみ人しらす(一説、柿本の人まろ) (000)

夜をさむみ衣かりかねなくなへに萩のしたはもうつろひにけり

よをさむみ−ころもかりかね−なくなへに−はきのしたはも−うつろひにけり

異同資料句番号:00211

00212
番号外作者 藤原菅根朝臣 (999)

秋風にこゑをほにあけてくる舟はあまのとわたるかりにそありける

あきかせに−こゑをほにあけて−くるふねは−あまのとわたる−かりにそありける

異同資料句番号:00212

00213
躬恒 みつね (029)

うき事を思ひつらねてかりかねのなきこそわたれ秋のよなよな

うきことを−おもひつらねて−かりかねの−なきこそわたれ−あきのよなよな

異同資料句番号:00213

00214
忠峯 たたみね (030)

山里は秋こそことにわひしけれしかのなくねにめをさましつつ

やまさとは−あきこそことに−わひしけれ−しかのなくねに−めをさましつつ

異同資料句番号:00214

00215
読人不知 よみ人しらす (000)

おく山に紅棄ふみわけなく鹿のこゑきく時そ秋は悲しき

おくやまに−もみちふみわけ−なくしかの−こゑきくときそ−あきはかなしき

異同資料句番号:00215

00216
読人不知 よみ人しらす (000)

秋はきにうらひれをれはあしひきの山したとよみしかのなくらむ

あきはきに−うらひれをれは−あしひきの−やましたとよみ−しかのなくらむ

異同資料句番号:00216

00217
読人不知 よみ人しらす (000)

秋はきをしからみふせてなくしかのめには見えすておとのさやけさ

あきはきを−しからみふせて−なくしかの−めにはみえすて−おとのさやけさ

異同資料句番号:00217

00218
敏行 藤原としゆきの朝臣 (018)

あきはきの花さきにけり高砂のをのへのしかは今やなくらむ

あきはきの−はなさきにけり−たかさこの−をのへのしかは−いまやなくらむ

異同資料句番号:00218

00219
躬恒 みつね (029)

秋はきのふるえにさける花見れは本の心はわすれさりけり

あきはきの−ふるえにさける−はなみれは−もとのこころは−わすれさりけり

異同資料句番号:00219

00220
読人不知 よみ人しらす (000)

あきはきのしたは色つく今よりやひとりある人のいねかてにする

あきはきの−したはいろつく−いまよりや−ひとりあるひとの−いねかてにする

異同資料句番号:00220

00221
読人不知 よみ人しらす (000)

なきわたるかりの涙やおちつらむ物思ふやとの萩のうへのつゆ

なきわたる−かりのなみたや−おちつらむ−ものおもふやとの−はきのうへのつゆ

異同資料句番号:00221

00222
読人不知 よみ人しらす(一説、ならのみかと) (000)

萩の露玉にぬかむととれはけぬよし見む人は枝なから見よ

はきのつゆ−たまにぬかむと−とれはけぬ−よしみむひとは−えたなからみよ

異同資料句番号:00222

00223
読人不知 よみ人しらす (000)

をりて見はおちそしぬへき秋はきの枝もたわわにおけるしらつゆ

をりてみは−おちそしぬへき−あきはきの−えたもたわわに−おけるしらつゆ

異同資料句番号:00223

00224
読人不知 よみ人しらす (000)

萩か花ちるらむをののつゆしもにぬれてをゆかむさ夜はふくとも

はきかはな−ちるらむをのの−つゆしもに−ぬれてをゆかむ−さよはふくとも

異同資料句番号:00224

00225
朝康 文屋あさやす (037)

秋ののにおくしらつゆは玉なれやつらぬきかくるくものいとすち

あきののに−おくしらつゆは−たまなれや−つらぬきかくる−くものいとすち

異同資料句番号:00225

00226
遍昭 僧正へんせう (012)

名にめててをれるはかりそをみなへし我おちにきと人にかたるな

なにめてて−をれるはかりそ−をみなへし−われおちにきと−ひとにかたるな

異同資料句番号:00226

00227
番号外作者 ふるのいまみち (999)

をみなへしうしと見つつそゆきすくるをとこ山にしたてりと思へは

をみなへし−うしとみつつそ−ゆきすくる−をとこやまにし−たてりとおもへは

異同資料句番号:00227

00228
敏行 としゆきの朝臣 (018)

秋ののにやとりはすへしをみなへし名をむつましみたひならなくに

あきののに−やとりはすへし−をみなへし−なをむつましみ−たひならなくに

異同資料句番号:00228

00229
番号外作者 をののよし木 (999)

をみなへしおほかるのへにやとりせはあやなくあたの名をやたちなむ

をみなへし−おほかるのへに−やとりせは−あやなくあたの−なをやたちなむ

異同資料句番号:00229

00230
時平 左のおほいまうちきみ (503)

をみなへし秋のの風にうちなひき心ひとつをたれによすらむ

をみなへし−あきののかせに−うちなひき−こころひとつを−たれによすらむ

異同資料句番号:00230

00231
定方 藤原定方朝臣 (025)

秋ならてあふことかたきをみなへしあまのかはらにおひぬものゆゑ

あきならて−あふことかたき−をみなへし−あまのかはらに−おひぬものゆゑ

異同資料句番号:00231

00232
貫之 つらゆき (035)

たか秋にあらぬものゆゑをみなへしなそ色にいててまたきうつろふ

たかあきに−あらぬものゆゑ−をみなへし−なそいろにいてて−またきうつろふ

異同資料句番号:00232

00233
躬恒 みつね (029)

つまこふるしかそなくなる女郎花おのかすむのの花としらすや

つまこふる−しかそなくなる−をみなへし−おのかすむのの−はなとしらすや

異同資料句番号:00233

00234
躬恒 みつね (029)

女郎花ふきすきてくる秋風はめには見えねとかこそしるけれ

をみなへし−ふきすきてくる−あきかせは−めにはみえねと−かこそしるけれ

異同資料句番号:00234

00235
忠峯 たたみね (030)

人の見る事やくるしきをみなへし秋きりにのみたちかくるらむ

ひとのみる−ことやくるしき−をみなへし−あききりにのみ−たちかくるらむ

異同資料句番号:00235

00236
忠峯 たたみね (030)

ひとりのみなかむるよりは女郎花わかすむやとにうゑて見ましを

ひとりのみ−なかむるよりは−をみなへし−わかすむやとに−うゑてみましを

異同資料句番号:00236

00237
兼覧王 (179)

をみなへしうしろめたくも見ゆるかなあれたるやとにひとりたてれは

をみなへし−うしろめたくも−みゆるかな−あれたるやとに−ひとりたてれは

異同資料句番号:00237

00238
貞文 平さたふん (161)

花にあかてなにかへるらむをみなへしおほかるのへにねなましものを

はなにあかて−なにかへるらむ−をみなへし−おほかるのへに−ねなましものを

異同資料句番号:00238

00239
敏行 としゆきの朝臣 (018)

なに人かきてぬきかけしふちはかまくる秋ことにのへをにほはす

なにひとか−きてぬきかけし−ふちはかま−くるあきことに−のへをにほはす

異同資料句番号:00239

00240
貫之 つらゆき (035)

やとりせし人のかたみかふちはかまわすられかたきかににほひつつ

やとりせし−ひとのかたみか−ふちはかま−わすられかたき−かににほひつつ

異同資料句番号:00240

00241
素性 そせい (021)

ぬししらぬかこそにほへれ秋ののにたかぬきかけしふちはかまそも

ぬししらぬ−かこそにほへれ−あきののに−たかぬきかけし−ふちはかまそも

異同資料句番号:00241

00242
貞文 平貞文 (161)

今よりはうゑてたに見し花すすきほにいつる秋はわひしかりけり

いまよりは−うゑてたにみし−はなすすき−ほにいつるあきは−わひしかりけり

異同資料句番号:00242

00243
棟梁 ありはらのむねやな (180)

秋の野の草のたもとか花すすきほにいててまねく袖と見ゆらむ

あきののの−くさのたもとか−はなすすき−ほにいててまねく−そてとみゆらむ

異同資料句番号:00243

00244
素性 素性法師 (021)

我のみやあはれとおもはむきりきりすなくゆふかけのやまとなてしこ

われのみや−あはれとおもはむ−きりきりす−なくゆふかけの−やまとなてしこ

異同資料句番号:00244

00245
読人不知 よみ人しらす (000)

みとりなるひとつ草とそ春は見し秋はいろいろの花にそありける

みとりなる−ひとつくさとそ−はるはみし−あきはいろいろの−はなにそありける

異同資料句番号:00245

00246
読人不知 よみ人しらす (000)

ももくさの花のひもとく秋ののを思ひたはれむ人なとかめそ

ももくさの−はなのひもとく−あきののを−おもひたはれむ−ひとなとかめそ

異同資料句番号:00246

00247
読人不知 よみ人しらす (000)

月草に衣はすらむあさつゆにぬれてののちはうつろひぬとも

つきくさに−ころもはすらむ−あさつゆに−ぬれてののちは−うつろひぬとも

異同資料句番号:00247

00248
遍昭 僧正遍昭 (012)

さとはあれて人はふりにしやとなれや庭もまかきも秋ののらなる

さとはあれて−ひとはふりにし−やとなれや−にはもまかきも−あきののらなる

異同資料句番号:00248


古今集 巻五:秋下

00249
康秀 文屋やすひて (022)

吹くからに秋の草木のしをるれはむへ山かせをあらしといふらむ

ふくからに−あきのくさきの−しをるれは−うへやまかせを−あらしといふらむ

異同資料句番号:00249

00250
康秀 文屋やすひて (022)

草も木も色かはれともわたつうみの浪の花にそ秋なかりける

くさもきも−いろかはれとも−わたつうみの−なみのはなにそ−あきなかりける

異同資料句番号:00250

00251
番号外作者 紀よしもち (999)

紅葉せぬときはの山は吹く風のおとにや秋をききわたるらむ

もみちせぬ−ときはのやまは−ふくかせの−おとにやあきを−ききわたるらむ

異同資料句番号:00251

00252
読人不知 よみ人しらす (000)

霧立ちて雁そなくなる片岡の朝の原は紅葉しぬらむ

きりたちて−かりそなくなる−かたをかの−あしたのはらは−もみちしぬらむ

異同資料句番号:00252

00253
読人不知 よみ人しらす (000)

神な月時雨もいまたふらなくにかねてうつろふ神なひのもり

かみなつき−しくれもいまた−ふらなくに−かねてうつろふ−かみなひのもり

異同資料句番号:00253

00254
読人不知 よみ人しらす (000)

ちはやふる神なひ山のもみちはに思ひはかけしうつろふものを

ちはやふる−かみなひやまの−もみちはに−おもひはかけし−うつろふものを

異同資料句番号:00254

00255
番号外作者 藤原かちおむ (999)

おなしえをわきてこのはのうつろふは西こそ秋のはしめなりけれ

おなしえを−わきてこのはの−うつろふは−にしこそあきの−はしめなりけれ

異同資料句番号:00255

00256
貫之 つらゆき (035)

秋風のふきにし日よりおとは山峰のこすゑも色つきにけり

あきかせの−ふきにしひより−おとはやま−みねのこすゑも−いろつきにけり

異同資料句番号:00256

00257
敏行 としゆきの朝臣 (018)

白露の色はひとつをいかにして秋のこのはをちちにそむらむ

しらつゆの−いろはひとつを−いかにして−あきのこのはを−ちちにそむらむ

異同資料句番号:00257

00258
忠峯 壬生忠岑 (030)

秋の夜のつゆをはつゆとおきなからかりの涙やのへをそむらむ

あきのよの−つゆをはつゆと−おきなから−かりのなみたや−のへをそむらむ

異同資料句番号:00258

00259
読人不知 よみ人しらす (000)

あきのつゆいろいろことにおけはこそ山のこのはのちくさなるらめ

あきのつゆ−いろいろことに−おけはこそ−やまのこのはの−ちくさなるらめ

異同資料句番号:00259

00260
貫之 つらゆき (035)

しらつゆも時雨もいたくもる山はしたはのこらす色つきにけり

しらつゆも−しくれもいたく−もるやまは−したはのこらす−いろつきにけり

異同資料句番号:00260

00261
元方 在原元方 (169)

雨ふれとつゆももらしをかさとりの山はいかてかもみちそめけむ

あめふれと−つゆももらしを−かさとりの−やまはいかてか−もみちそめけむ

異同資料句番号:00261

00262
貫之 つらゆき (035)

ちはやふる神のいかきにはふくすも秋にはあへすうつろひにけり

ちはやふる−かみのいかきに−はふくすも−あきにはあへす−うつろひにけり

異同資料句番号:00262

00263
忠峯 たたみね (030)

あめふれはかさとり山のもみちははゆきかふ人のそてさへそてる

あめふれは−かさとりやまの−もみちはは−ゆきかふひとの−そてさへそてる

異同資料句番号:00263

00264
読人不知 よみ人しらす (000)

ちらねともかねてそをしきもみちはは今は限の色と見つれは

ちらねとも−かねてそをしき−もみちはは−いまはかきりの−いろとみつれは

異同資料句番号:00264

00265
友則 きのとものり (033)

たかための錦なれはか秋きりのさほの山辺をたちかくすらむ

たかための−にしきなれはか−あききりの−さほのやまへを−たちかくすらむ

異同資料句番号:00265

00266
読人不知 よみ人しらす (000)

秋きりはけさはなたちそさほ山のははそのもみちよそにても見む

あききりは−けさはなたちそ−さほやまの−ははそのもみち−よそにてもみむ

異同資料句番号:00266

00267
是則 坂上是則 (031)

佐保山のははその色はうすけれと秋は深くもなりにけるかな

さほやまの−ははそのいろは−うすけれと−あきはふかくも−なりにけるかな

異同資料句番号:00267

00268
業平 在原なりひらの朝臣 (017)

うゑしうゑは秋なき時やさかさらむ花こそちらめねさへかれめや

うゑしうゑは−あきなきときや−さかさらむ−はなこそちらめ−ねさへかれめや

異同資料句番号:00268

00269
敏行 としゆきの朝臣 (018)

久方の雲のうへにて見る菊はあまつほしとそあやまたれける

ひさかたの−くものうへにて−みるきくは−あまつほしとそ−あやまたれける

異同資料句番号:00269

00270
友則 きのとものり (033)

露なからをりてかささむきくの花おいせぬ秋のひさしかるへく

つゆなから−をりてかささむ−きくのはな−おいせぬあきの−ひさしかるへく

異同資料句番号:00270

00271
千里 大江千里 (023)

うゑし時花まちとほにありしきくうつろふ秋にあはむとや見し

うゑしとき−はなまちとほに−ありしきく−うつろふあきに−あはむとやみし

異同資料句番号:00271

00272
道真 すかはらの朝臣 (024)

秋風の吹きあけにたてる白菊は花かあらぬか浪のよするか

あきかせの−ふきあけにたてる−しらきくは−はなかあらぬか−なみのよするか

異同資料句番号:00272

00273
素性 素性法師 (021)

ぬれてほす山ちの菊のつゆのまにいつかちとせを我はへにけむ

ぬれてほす−やまちのきくの−つゆのまに−いつかちとせを−われはへにけむ

異同資料句番号:00273

00274
友則 とものり (033)

花見つつ人まつ時はしろたへの袖かとのみそあやまたれける

はなみつつ−ひとまつときは−しろたへの−そてかとのみそ−あやまたれける

異同資料句番号:00274

00275
友則 とものり (033)

ひともとと思ひしきくをおほさはの池のそこにもたれかうゑけむ

ひともとと−おもひしきくを−おほさはの−いけのそこにも−たれかうゑけむ

異同資料句番号:00275

00276
貫之 つらゆき (035)

秋の菊にほふかきりはかさしてむ花よりさきとしらぬわか身を

あきのきく−にほふかきりは−かさしてむ−はなよりさきと−しらぬわかみを

異同資料句番号:00276

00277
躬恒 凡河内みつね (029)

心あてにをらはやをらむはつしものおきまとはせる白菊の花

こころあてに−をらはやをらむ−はつしもの−おきまとはせる−しらきくのはな

異同資料句番号:00277

00278
読人不知 よみ人しらす (000)

いろかはる秋のきくをはひととせにふたたひにほふ花とこそ見れ

いろかはる−あきのきくをは−ひととせに−ふたたひにほふ−はなとこそみれ

異同資料句番号:00278

00279
貞文 平さたふん (161)

秋をおきて時こそ有りけれ菊の花うつろふからに色のまされは

あきをおきて−ときこそありけれ−きくのはな−うつろふからに−いろのまされは

異同資料句番号:00279

00280
貫之 つらゆき (035)

さきそめしやとしかはれは菊の花色さへにこそうつろひにけれ

さきそめし−やとしかはれは−きくのはな−いろさへにこそ−うつろひにけれ

異同資料句番号:00280

00281
読人不知 よみ人しらす (000)

佐保山のははそのもみちちりぬへみよるさへ見よとてらす月影

さほやまの−ははそのもみち−ちりぬへみ−よるさへみよと−てらすつきかけ

異同資料句番号:00281

00282
番号外作者 藤原関雄 (999)

おく山のいはかきもみちちりぬへしてる日のひかり見る時なくて

おくやまの−いはかきもみち−ちりぬへし−てるひのひかり−みるときなくて

異同資料句番号:00282

00283
読人不知 よみ人しらす(一説、ならのみかと) (000)

竜田河もみちみたれて流るめりわたらは錦なかやたえなむ

たつたかは−もみちみたれて−なかるめり−わたらはにしき−なかやたえなむ

異同資料句番号:00283

00284
読人不知 よみ人しらす(一説、人丸) (000)

たつた河もみちは流る神なひのみむろの山に時雨ふるらし

たつたかは−もみちはなかる−かみなひの−みむろのやまに−しくれふるらし

異同資料句番号:00284

00285
読人不知 よみ人しらす (000)

こひしくは見てもしのはむもみちはを吹きなちらしそ山おろしのかせ

こひしくは−みてもしのはむ−もみちはを−ふきなちらしそ−やまおろしのかせ

異同資料句番号:00285

00286
読人不知 よみ人しらす (000)

秋風にあへすちりぬるもみちはのゆくへさためぬ我そかなしき

あきかせに−あへすちりぬる−もみちはの−ゆくへさためぬ−われそかなしき

異同資料句番号:00286

00287
読人不知 よみ人しらす (000)

あきはきぬ紅葉はやとにふりしきぬ道ふみわけてとふ人はなし

あきはきぬ−もみちはやとに−ふりしきぬ−みちふみわけて−とふひとはなし

異同資料句番号:00287

00288
読人不知 よみ人しらす (000)

ふみわけてさらにやとはむもみちはのふりかくしてしみちとみなから

ふみわけて−さらにやとはむ−もみちはの−ふりかくしてし−みちとみなから

異同資料句番号:00288

00289
読人不知 よみ人しらす (000)

秋の月山辺さやかにてらせるはおつるもみちのかすを見よとか

あきのつき−やまへさやかに−てらせるは−おつるもみちの−かすをみよとか

異同資料句番号:00289

00290
読人不知 よみ人しらす (000)

吹く風の色のちくさに見えつるは秋のこのはのちれはなりけり

ふくかせの−いろのちくさに−みえつるは−あきのこのはの−ちれはなりけり

異同資料句番号:00290

00291
番号外作者 せきを (999)

霜のたてつゆのぬきこそよわからし山の錦のおれはかつちる

しものたて−つゆのぬきこそ−よわからし−やまのにしきの−おれはかつちる

異同資料句番号:00291

00292
遍昭 僧正へんせう (012)

わひ人のわきてたちよるこの本はたのむかけなくもみちちりけり

わひひとの−わきてたちよる−このもとは−たのむかけなく−もみちちりけり

異同資料句番号:00292

00293
素性 そせい (021)

もみちはのなかれてとまるみなとには紅深き浪や立つらむ

もみちはの−なかれてとまる−みなとには−くれなゐふかき−なみやたつらむ

異同資料句番号:00293

00294
業平 なりひらの朝臣 (017)

ちはやふる神世もきかす竜田河唐紅に水くくるとは

ちはやふる−かみよもきかす−たつたかは−からくれなゐに−みつくくるとは

異同資料句番号:00294

00295
敏行 としゆきの朝臣 (018)

わかきつる方もしられすくらふ山木木のこのはのちるとまかふに

わかきつる−かたもしられす−くらふやま−ききのこのはの−ちるとまかふに

異同資料句番号:00295

00296
忠峯 たたみね (030)

神なひのみむろの山を秋ゆけは錦たちきる心地こそすれ

かみなひの−みむろのやまを−あきゆけは−にしきたちきる−ここちこそすれ

異同資料句番号:00296

00297
貫之 つらゆき (035)

見る人もなくてちりぬるおく山の紅葉はよるのにしきなりけり

みるひとも−なくてちりぬる−おくやまの−もみちはよるの−にしきなりけり

異同資料句番号:00297

00298
兼覧王 かねみの王 (179)

竜田ひめたむくる神のあれはこそ秋のこのはのぬさとちるらめ

たつたひめ−たむくるかみの−あれはこそ−あきのこのはの−ぬさとちるらめ

異同資料句番号:00298

00299
貫之 つらゆき (035)

秋の山紅葉をぬさとたむくれはすむ我さへそたひ心ちする

あきのやま−もみちをぬさと−たむくれは−すむわれさへそ−たひここちする

異同資料句番号:00299

00300
深養父 きよはらのふかやふ (036)

神なひの山をすき行く秋なれはたつた河にそぬさはたむくる

かみなひの−やまをすきゆく−あきなれは−たつたかはにそ−ぬさはたむくる

異同資料句番号:00300

00301
興風 ふちはらのおきかせ (034)

白浪に秋のこのはのうかへるをあまのなかせる舟かとそ見る

しらなみに−あきのこのはの−うかへるを−あまのなかせる−ふねかとそみる

異同資料句番号:00301

00302
是則 坂上これのり (031)

もみちはのなかれさりせは竜田河水の秋をはたれかしらまし

もみちはの−なかれさりせは−たつたかは−みつのあきをは−たれかしらまし

異同資料句番号:00302

00303
列樹 はるみちのつらき (032)

山河に風のかけたるしからみは流れもあへぬ紅葉なりけり

やまかはに−かせのかけたる−しからみは−なかれもあへぬ−もみちなりけり

異同資料句番号:00303

00304
躬恒 みつね (029)

風ふけはおつるもみちは水きよみちらぬかけさへそこに見えつつ

かせふけは−おつるもみちは−みつきよみ−ちらぬかけさへ−そこにみえつつ

異同資料句番号:00304

00305
躬恒 みつね (029)

立ちとまり見てをわたらむもみちはは雨とふるとも水はまさらし

たちとまり−みてをわたらむ−もみちはは−あめとふるとも−みつはまさらし

異同資料句番号:00305

00306
忠峯 たたみね (030)

山田もる秋のかりいほにおくつゆはいなおほせ鳥の涙なりけり

やまたもる−あきのかりいほに−おくつゆは−いなおほせとりの−なみたなりけり

異同資料句番号:00306

00307
読人不知 よみ人しらす (000)

ほにもいてぬ山田をもると藤衣いなはのつゆにぬれぬ日そなき

ほにもいてぬ−やまたをもると−ふちころも−いなはのつゆに−ぬれぬひそなき

異同資料句番号:00307

00308
読人不知 よみ人しらす (000)

かれる田におふるひつちのほにいてぬは世を今更に秋はてぬとか

かれるたに−おふるひつちの−ほにいてぬは−よをいまさらに−あきはてぬとか

異同資料句番号:00308

00309
素性 そせい法し (021)

もみちはは袖にこきいれてもていてなむ秋は限と見む人のため

もみちはは−そてにこきいれて−もていてなむ−あきはかきりと−みむひとのため

異同資料句番号:00309

00310
興風 おきかせ (034)

み山よりおちくる水の色見てそ秋は限と思ひしりぬる

みやまより−おちくるみつの−いろみてそ−あきはかきりと−おもひしりぬる

異同資料句番号:00310

00311
貫之 つらゆき (035)

年ことにもみちはなかす竜田河みなとや秋のとまりなるらむ

としことに−もみちはなかす−たつたかは−みなとやあきの−とまりなるらむ

異同資料句番号:00311

00312
貫之 つらゆき (035)

ゆふつく夜をくらの山になくしかのこゑの内にや秋はくるらむ

ゆふつくよ−をくらのやまに−なくしかの−こゑのうちにや−あきはくるらむ

異同資料句番号:00312

00313
躬恒 みつね (029)

道しらはたつねもゆかむもみちはをぬさとたむけて秋はいにけり

みちしらは−たつねもゆかむ−もみちはを−ぬさとたむけて−あきはいにけり

異同資料句番号:00313


古今集 巻六:冬

00314
読人不知 よみ人しらす (000)

竜田河綿おりかく神な月しくれの雨をたてぬきにして

たつたかは−にしきおりかく−かみなつき−しくれのあめを−たてぬきにして

異同資料句番号:00314

00315
宗于 源宗于朝臣 (028)

山里は冬そさひしさまさりける人めも草もかれぬと思へは

やまさとは−ふゆそさひしさ−まさりける−ひとめもくさも−かれぬとおもへは

異同資料句番号:00315

00316
読人不知 読人しらす (000)

おほそらの月のひかりしきよけれは影見し水そまつこほりける

おほそらの−つきのひかりし−きよけれは−かけみしみつそ−まつこほりける

異同資料句番号:00316

00317
読人不知 読人しらす (000)

ゆふされは衣手さむしみよしののよしのの山にみ雪ふるらし

ゆふされは−ころもてさむし−みよしのの−よしののやまに−みゆきふるらし

異同資料句番号:00317

00318
読人不知 読人しらす (000)

今よりはつきてふらなむわかやとのすすきおしなみふれるしら雪

いまよりは−つきてふらなむ−わかやとの−すすきおしなひ−ふれるしらゆき

異同資料句番号:00318

00319
読人不知 読人しらす (000)

ふる雪はかつそけぬらしあしひきの山のたきつせおとまさるなり

ふるゆきは−かつそけぬらし−あしひきの−やまのたきつせ−おとまさるなり

異同資料句番号:00319

00320
読人不知 読人しらす (000)

この河にもみちは流るおく山の雪けの水そ今まさるらし

このかはに−もみちはなかる−おくやまの−ゆきけのみつそ−いままさるらし

異同資料句番号:00320

00321
読人不知 読人しらす (000)

ふるさとはよしのの山しちかけれはひと日もみ雪ふらぬ日はなし

ふるさとは−よしののやまし−ちかけれは−ひとひもみゆき−ふらぬひはなし

異同資料句番号:00321

00322
読人不知 読人しらす (000)

わかやとは雪ふりしきてみちもなしふみわけてとふ人しなけれは

わかやとは−ゆきふりしきて−みちもなし−ふみわけてとふ−ひとしなけれは

異同資料句番号:00322

00323
貫之 紀貫之 (035)

雪ふれは冬こもりせる草も木も春にしられぬ花そさきける

ゆきふれは−ふゆこもりせる−くさもきも−はるにしられぬ−はなそさきける

異同資料句番号:00323

00324
番号外作者 紀あきみね (999)

白雪のところもわかすふりしけはいはほにもさく花とこそ見れ

しらゆきの−ところもわかす−ふりしけは−いはほにもさく−はなとこそみれ

異同資料句番号:00324

00325
是則 坂上これのり (031)

みよしのの山の白雪つもるらしふるさとさむくなりまさるなり

みよしのの−やまのしらゆき−つもるらし−ふるさとさむく−なりまさるなり

異同資料句番号:00325

00326
興風 ふちはらのおきかせ (034)

浦ちかくふりくる雪は白浪の末の松山こすかとそ見る

うらちかく−ふりくるゆきは−しらなみの−すゑのまつやま−こすかとそみる

異同資料句番号:00326

00327
忠峯 壬生忠岑 (030)

みよしのの山の白雪ふみわけて入りにし人のおとつれもせぬ

みよしのの−やまのしらゆき−ふみわけて−いりにしひとの−おとつれもせぬ

異同資料句番号:00327

00328
忠峯 壬生忠岑 (030)

白雪のふりてつもれる山さとはすむ人さへや思ひきゆらむ

しらゆきの−ふりてつもれる−やまさとは−すむひとさへや−おもひきゆらむ

異同資料句番号:00328

00329
躬恒 凡河内みつね (029)

ゆきふりて人もかよはぬみちなれやあとはかもなく思ひきゆらむ

ゆきふりて−ひともかよはぬ−みちなれや−あとはかもなく−おもひきゆらむ

異同資料句番号:00329

00330
深養父 きよはらのふかやふ (036)

冬なからそらより花のちりくるは雲のあなたは春にやあるらむ

ふゆなから−そらよりはなの−ちりくるは−くものあなたは−はるにやあるらむ

異同資料句番号:00330

00331
貫之 つらゆき (035)

ふゆこもり思ひかけぬをこのまより花と見るまて雪そふりける

ふゆこもり−おもひかけぬを−このまより−はなとみるまて−ゆきそふりける

異同資料句番号:00331

00332
是則 坂上これのり (031)

あさほらけありあけの月と見るまてによしののさとにふれるしらゆき

あさほらけ−ありあけのつきと−みるまてに−よしののさとに−ふれるしらゆき

異同資料句番号:00332

00333
読人不知 よみ人しらす (000)

けぬかうへに又もふりしけ春霞たちなはみ雪まれにこそ見め

けぬかうへに−またもふりしけ−はるかすみ−たちなはみゆき−まれにこそみめ

異同資料句番号:00333

00334
番号外作者 よみ人しらす(一説、柿本人まろ) (999)

梅花それとも見えす久方のあまきる雪のなへてふれれは

うめのはな−それともみえす−ひさかたの−あまきるゆきの−なへてふれれは

異同資料句番号:00334

00335
篁 小野たかむらの朝臣 (011)

花の色は雪にましりて見えすともかをたににほへ人のしるへく

はなのいろは−ゆきにましりて−みえすとも−かをたににほへ−ひとのしるへく

異同資料句番号:00335

00336
貫之 きのつらゆき (035)

梅のかのふりおける雪にまかひせはたれかことことわきてをらまし

うめのかの−ふりおけるゆきに−まかひせは−たれかことこと−わきてをらまし

異同資料句番号:00336

00337
友則 きのとものり (033)

雪ふれは木ことに花そさきにけるいつれを梅とわきてをらまし

ゆきふれは−きことにはなそ−さきにける−いつれをうめと−わきてをらまし

異同資料句番号:00337

00338
躬恒 みつね (029)

わかまたぬ年はきぬれと冬草のかれにし人はおとつれもせす

わかまたぬ−としはきぬれと−ふゆくさの−かれにしひとは−おとつれもせす

異同資料句番号:00338

00339
元方 在原もとかた (169)

あらたまの年のをはりになることに雪もわか身もふりまさりつつ

あらたまの−としのをはりに−なることに−ゆきもわかみも−ふりまさりつつ

異同資料句番号:00339

00340
読人不知 よみ人しらす (000)

雪ふりて年のくれぬる時にこそつひにもみちぬ松も見えけれ

ゆきふりて−としのくれぬる−ときにこそ−つひにもみちぬ−まつもみえけれ

異同資料句番号:00340

00341
列樹 はるみちのつらき (032)

昨日といひけふとくらしてあすかかは流れてはやき月日なりけり

きのふといひ−けふとくらして−あすかかは−なかれてはやき−つきひなりけり

異同資料句番号:00341

00342
貫之 きのつらゆき (035)

ゆく年のをしくもあるかなますかかみ見るかけさへにくれぬと思へは

ゆくとしの−をしくもあるかな−ますかかみ−みるかけさへに−くれぬとおもへは

異同資料句番号:00342


古今集 巻七:賀

00343
読人不知 よみ人しらす (000)

わか君は千世にやちよにさされいしのいはほとなりてこけのむすまて

わかきみは−ちよにやちよに−さされいしの−いはほとなりて−こけのむすまて

異同資料句番号:00343

00344
読人不知 よみ人しらす (000)

渡つ海の浜のまさこをかそへつつ君かちとせのありかすにせむ

わたつうみの−はまのまさこを−かそへつつ−きみかちとせの−ありかすにせむ

異同資料句番号:00344

00345
読人不知 よみ人しらす (000)

しほの山さしてのいそにすむ千鳥きみかみ世をはやちよとそなく

しほのやま−さしてのいそに−すむちとり−きみかみよをは−やちよとそなく

異同資料句番号:00345

00346
読人不知 よみ人しらす (000)

わかよはひ君かやちよにとりそへてととめおきては思ひいてにせよ

わかよはひ−きみかやちよに−とりそへて−ととめおきては−おもひいてにせよ

異同資料句番号:00346

00347
光孝院 仁和帝 (015)

かくしつつとにもかくにもなからへて君かやちよにあふよしもかな

かくしつつ−とにもかくにも−なからへて−きみかやちよに−あふよしもかな

異同資料句番号:00347

00348
遍昭 僧正へんせう (012)

ちはやふる神やきりけむつくからにちとせの坂もこえぬへらなり

ちはやふる−かみやきりけむ−つくからに−ちとせのさかも−こえぬへらなり

異同資料句番号:00348

00349
業平 在原業平朝臣 (017)

さくら花ちりかひくもれおいらくのこむといふなる道まかふかに

さくらはな−ちりかひくもれ−おいらくの−こむといふなる−みちまかふかに

異同資料句番号:00349

00350
番号外作者 きのこれをか (999)

亀の尾の山のいはねをとめておつるたきの白玉千世のかすかも

かめのをの−やまのいはねを−とめておつる−たきのしらたま−ちよのかすかも

異同資料句番号:00350

00351
興風 ふちはらのおきかせ (034)

いたつらにすくす月日はおもほえて花見てくらす春そすくなき

いたつらに−すくすつきひは−おもほえて−はなみてくらす−はるそすくなき

異同資料句番号:00351

00352
貫之 きのつらゆき (035)

春くれはやとにまつさく梅花君かちとせのかさしとそ見る

はるくれは−やとにまつさく−うめのはな−きみかちとせの−かさしとそみる

異同資料句番号:00352

00353
素性 そせい法し (021)

いにしへにありきあらすはしらねともちとせのためし君にはしめむ

いにしへに−ありきあらすは−しらねとも−ちとせのためし−きみにはしめむ

異同資料句番号:00353

00354
素性 そせい法し (021)

ふしておもひおきてかそふるよろつよは神そしるらむわかきみのため

ふしておもひ−おきてかそふる−よろつよは−かみそしるらむ−わかきみのため

異同資料句番号:00354

00355
番号外作者 在原しけはる(一説、在原ときはる) (999)

鶴亀もちとせののちはしらなくにあかぬ心にまかせはててむ

つるかめも−ちとせののちは−しらなくに−あかぬこころに−まかせはててむ

異同資料句番号:00355

00356
素性 そせい法し (021)

よろつ世を松にそ君をいはひつるちとせのかけにすまむと思へは

よろつよを−まつにそきみを−いはひつる−ちとせのかけに−すまむとおもへは

異同資料句番号:00356

00357
素性 そせい法し (021)

かすかのにわかなつみつつよろつ世をいはふ心は神そしるらむ

かすかのに−わかなつみつつ−よろつよを−いはふこころは−かみそしるらむ

異同資料句番号:00357

00358
躬恒 そせい法し (029)

山たかみくもゐに見ゆるさくら花心の行きてをらぬ日そなき

やまたかみ−くもゐにみゆる−さくらはな−こころのゆきて−をらぬひそなき

異同資料句番号:00358

00359
友則 そせい法し (033)

めつらしきこゑならなくに郭公ここらの年をあかすもあるかな

めつらしき−こゑならなくに−ほとときす−ここらのとしを−あかすもあるかな

異同資料句番号:00359

00360
躬恒 そせい法し (029)

住の江の松を秋風吹くからにこゑうちそふるおきつ白浪

すみのえの−まつをあきかせ−ふくからに−こゑうちそふる−おきつしらなみ

異同資料句番号:00360

00361
忠峯 そせい法し (030)

千鳥なくさほの河きりたちぬらし山のこのはも色まさりゆく

ちとりなく−さほのかはきり−たちぬらし−やまのこのはも−いろまさりゆく

異同資料句番号:00361

00362
是則 そせい法し (031)

秋くれと色もかはらぬときは山よそのもみちを風そかしける

あきくれと−いろもかはらぬ−ときはやま−よそのもみちを−かせそかしける

異同資料句番号:00362

00363
貫之 そせい法し (035)

白雪のふりしく時はみよしのの山した風に花そちりける

しらゆきの−ふりしくときは−みよしのの−やましたかせに−はなそちりける

異同資料句番号:00363

00364
番号外作者 典侍藤原よるかの朝臣 (999)

峰たかきかすかの山にいつる日はくもる時なくてらすへらなり

みねたかき−かすかのやまに−いつるひは−くもるときなく−てらすへらなり

異同資料句番号:00364


古今集 巻八:離別

00365
行平 在原行平朝臣 (016)

立ちわかれいなはの山の峰におふる松としきかは今かへりこむ

たちわかれ−いなはのやまの−みねにおふる−まつとしきかは−いまかへりこむ

異同資料句番号:00365

00366
読人不知 よみ人しらす (000)

すかるなく秋のはきはらあさたちて旅行く人をいつとかまたむ

すかるなく−あきのはきはら−あさたちて−たひゆくひとを−いつとかまたむ

異同資料句番号:00366

00367
読人不知 よみ人しらす (000)

限なき雲ゐのよそにわかるとも人を心におくらさむやは

かきりなき−くもゐのよそに−わかるとも−ひとをこころに−おくらさむやは

異同資料句番号:00367

00368
番号外作者 をののちふるの母 (999)

たらちねのおやのまもりとあひそふる心はかりはせきなととめそ

たらちねの−おやのまもりと−あひそふる−こころはかりは−せきなととめそ

異同資料句番号:00368

00369
番号外作者 きのとしさた (999)

けふわかれあすはあふみとおもへとも夜やふけぬらむ袖のつゆけき

けふわかれ−あすはあふみと−おもへとも−よやふけぬらむ−そてのつゆけき

異同資料句番号:00369

00370
番号外作者 きのとしさた (999)

かへる山ありとはきけと春霞立別れなはこひしかるへし

かへるやま−ありとはきけと−はるかすみ−たちわかれなは−こひしかるへし

異同資料句番号:00370

00371
貫之 きのつらゆき (035)

をしむからこひしきものを白雲のたちなむのちはなに心地せむ

をしむから−こひしきものを−しらくもの−たちなむのちは−なにここちせむ

異同資料句番号:00371

00372
番号外作者 在原しけはる (999)

わかれてはほとをへたつとおもへはやかつ見なからにかねてこひしき

わかれては−ほとをへたつと−おもへはや−かつみなからに−かねてこひしき

異同資料句番号:00372

00373
番号外作者 いかこのあつゆき (999)

おもへとも身をしわけねはめに見えぬ心を君にたくへてそやる

おもへとも−みをしわけねは−めにみえぬ−こころをきみに−たくへてそやる

異同資料句番号:00373

00374
番号外作者 なにはのよろつを (999)

相坂の関しまさしき物ならはあかすわかるる君をととめよ

あふさかの−せきしまさしき−ものならは−あかすわかるる−きみをととめよ

異同資料句番号:00374

00375
読人不知 よみ人しらす (000)

唐衣たつ日はきかしあさつゆのおきてしゆけはけぬへきものを

からころも−たつひはきかし−あさつゆの−おきてしゆけは−けぬへきものを

異同資料句番号:00375

00376
番号外作者 寵 (999)

あさなけに見へききみとしたのまねは思ひたちぬる草枕なり

あさなけに−みへききみとし−たのまねは−おもひたちぬる−くさまくらなり

異同資料句番号:00376

00377
読人不知 よみ人しらす (000)

えそしらぬ今心みよいのちあらは我やわするる人やとはぬと

えそしらぬ−いまこころみよ−いのちあらは−われやわするる−ひとやとはぬと

異同資料句番号:00377

00378
深養父 ふかやふ (036)

雲ゐにもかよふ心のおくれねはわかると人に見ゆはかりなり

くもゐにも−かよふこころの−おくれねは−わかるとひとに−みゆはかりなり

異同資料句番号:00378

00379
番号外作者 よしみねのひてをか (999)

白雲のこなたかなたに立ちわかれ心をぬさとくたくたひかな

しらくもの−こなたかなたに−たちわかれ−こころをぬさと−くたくたひかな

異同資料句番号:00379

00380
貫之 つらゆき (035)

しらくものやへにかさなるをちにてもおもはむ人に心へたつな

しらくもの−やへにかさなる−をちにても−おもはむひとに−こころへたつな

異同資料句番号:00380

00381
貫之 つらゆき (035)

わかれてふ事はいろにもあらなくに心にしみてわひしかるらむ

わかれてふ−ことはいろにも−あらなくに−こころにしみて−わひしかるらむ

異同資料句番号:00381

00382
躬恒 凡河内みつね (029)

かへる山なにそはありてあるかひはきてもとまらぬ名にこそありけれ

かへるやま−なにそはありて−あるかひは−きてもとまらぬ−なにこそありけれ

異同資料句番号:00382

00383
躬恒 凡河内みつね (029)

よそにのみこひやわたらむしら山の雪見るへくもあらぬわか身は

よそにのみ−こひやわたらむ−しらやまの−ゆきみるへくも−あらぬわかみは

異同資料句番号:00383

00384
貫之 つらゆき (035)

おとは山こたかくなきて郭公君か別ををしむへらなり

おとはやま−こたかくなきて−ほとときす−きみかわかれを−をしむへらなり

異同資料句番号:00384

00385
番号外作者 ふちはらのかねもち (999)

もろともになきてととめよ蛬のわかれはをしくやはあらぬ

もろともに−なきてととめよ−きりきりす−あきのわかれは−をしくやはあらぬ

異同資料句番号:00385

00386
番号外作者 平もとのり (999)

秋霧のともにたちいててわかれなははれぬ思ひに恋ひや渡らむ

あききりの−ともにたちいてて−わかれなは−はれぬおもひに−こひやわたらむ

異同資料句番号:00386

00387
番号外作者 しろめ (999)

いのちたに心にかなふ物ならはなにか別のかなしからまし

いのちたに−こころにかなふ−ものならは−なにかわかれの−かなしからまし

異同資料句番号:00387

00388
番号外作者 源さね (999)

人やりの道ならなくにおほかたはいきうしといひていさ帰りなむ

ひとやりの−みちならなくに−おほかたは−いきうしといひて−いさかへりなむ

異同資料句番号:00388

00389
番号外作者 藤原かねもち (999)

したはれてきにし心の身にしあれは帰るさまには道もしられす

したはれて−きにしこころの−みにしあれは−かへるさまには−みちもしられす

異同資料句番号:00389

00390
貫之 つらゆき (035)

かつこえてわかれもゆくかあふさかは人たのめなる名にこそありけれ

かつこえて−わかれもゆくか−あふさかは−ひとたのめなる−なにこそありけれ

異同資料句番号:00390

00391
兼輔 藤原かねすけの朝臣 (027)

君かゆくこしのしら山しらねとも雪のまにまにあとはたつねむ

きみかゆく−こしのしらやま−しらねとも−ゆきのまにまに−あとはたつねむ

異同資料句番号:00391

00392
遍昭 僧正遍昭 (012)

ゆふくれのまかきは山と見えななむよるはこえしとやとりとるへく

ゆふくれの−まかきはやまと−みえななむ−よるはこえしと−やとりとるへく

異同資料句番号:00392

00393
番号外作者 幽仙法師 (999)

別をは山のさくらにまかせてむとめむとめしは花のまにまに

わかれをは−やまのさくらに−まかせてむ−とめむとめしは−はなのまにまに

異同資料句番号:00393

00394
遍昭 僧正へんせう (012)

山かせにさくらふきまきみたれなむ花のまきれにたちとまるへく

やまかせに−さくらふきまき−みたれなむ−はなのまきれに−たちとまるへく

異同資料句番号:00394

00395
番号外作者 幽仙法師 (999)

ことならは君とまるへくにほはなむかへすは花のうきにやはあらぬ

ことならは−きみとまるへく−にほはなむ−かへすははなの−うきにやはあらぬ

異同資料句番号:00395

00396
番号外作者 兼芸法し (999)

あかすしてわかるる涙滝にそふ水まさるとやしもは見るらむ

あかすして−わかるるなみた−たきにそふ−みつまさるとや−しもはみるらむ

異同資料句番号:00396

00397
貫之 つらゆき (035)

秋はきの花をは雨にぬらせとも君をはましてをしとこそおもへ

あきはきの−はなをはあめに−ぬらせとも−きみをはまして−をしとこそおもへ

異同資料句番号:00397

00398
兼覧王 (179)

をしむらむ人の心をしらぬまに秋の時雨と身そふりにける

をしむらむ−ひとのこころを−しらぬまに−あきのしくれと−みそふりにける

異同資料句番号:00398

00399
躬恒 みつね (029)

わかるれとうれしくもあるかこよひよりあひ見ぬさきになにをこひまし

わかるれと−うれしくもあるか−こよひより−あひみぬさきに−なにをこひまし

異同資料句番号:00399

00400
読人不知 よみ人しらす (000)

あかすしてわかるるそてのしらたまを君かかたみとつつみてそ行く

あかすして−わかるるそての−しらたまを−きみかかたみと−つつみてそゆく

異同資料句番号:00400

00401
読人不知 よみ人しらす (000)

限なく思ふ涙にそほちぬる袖はかわかしあはむ日まてに

かきりなく−おもふなみたに−そほちぬる−そてはかわかし−あはむひまてに

異同資料句番号:00401

00402
読人不知 よみ人しらす (000)

かきくらしことはふらなむ春雨にぬれきぬきせて君をととめむ

かきくらし−ことはふらなむ−はるさめに−ぬれきぬきせて−きみをととめむ

異同資料句番号:00402

00403
読人不知 よみ人しらす (000)

しひて行く人をととめむ桜花いつれを道と迷ふまてちれ

しひてゆく−ひとをととめむ−さくらはな−いつれをみちと−まよふまてちれ

異同資料句番号:00403

00404
貫之 つらゆき (035)

むすふてのしつくににこる山の井のあかても人にわかれぬるかな

むすふての−しつくににこる−やまのゐの−あかてもひとに−わかれぬるかな

異同資料句番号:00404

00405
友則 とものり (033)

したのおひのみちはかたかたわかるとも行きめくりてもあはむとそ思ふ

したのおひの−みちはかたかた−わかるとも−ゆきめくりても−あはむとそおもふ

異同資料句番号:00405


古今集 巻九:羈旅

00406
仲麿 安倍仲麿 (007)

あまの原ふりさけ見れはかすかなるみかさの山にいてし月かも

あまのはら−ふりさけみれは−かすかなる−みかさのやまに−いてしつきかも

異同資料句番号:00406

00407
篁 小野たかむらの朝臣 (011)

わたのはらやそしまかけてこきいてぬと人にはつけよあまのつり舟

わたのはら−やそしまかけて−こきいてぬと−ひとにはつけよ−あまのつりふね

異同資料句番号:00407

00408
読人不知 よみ人しらす (000)

都いてて今日みかの原いつみ河かは風さむし衣かせ山

みやこいてて−けふみかのはら−いつみかは−かはかせさむし−ころもかせやま

異同資料句番号:00408

00409
読人不知 よみ人しらす(一説、柿本人麿) (000)

ほのはのと明石の浦の朝霧に島かくれ行く舟をしそ思ふ

ほのほのと−あかしのうらの−あさきりに−しまかくれゆく−ふねをしそおもふ

異同資料句番号:00409

00410
業平 在原業平朝臣 (017)

唐衣きつつなれにしつましあれははるはるきぬるたひをしそ思ふ

からころも−きつつなれにし−つましあれは−はるはるきぬる−たひをしそおもふ

異同資料句番号:00410

00411
業平 在原業平朝臣 (017)

名にしおははいさ事とはむ宮ことりわか思ふ人はありやなしやと

なにしおはは−いさこととはむ−みやことり−わかおもふひとは−ありやなしやと

異同資料句番号:00411

00412
読人不知 よみ人しらす (000)

北へ行くかりそなくなるつれてこしかすはたらてそかへるへらなる

きたへゆく−かりそなくなる−つれてこし−かすはたらてそ−かへるへらなる

異同資料句番号:00412

00413
番号外作者 おと (999)

山かくす春の霞そうらめしきいつれみやこのさかひなるらむ

やまかくす−はるのかすみそ−うらめしき−いつれみやこの−さかひなるらむ

異同資料句番号:00413

00414
躬恒 みつね (029)

きえはつる時しなけれはこしちなる白山の名は雪にそありける

きえはつる−ときしなけれは−こしちなる−しらやまのなは−ゆきにそありける

異同資料句番号:00414

00415
貫之 つらゆき (035)

いとによる物ならなくにわかれちの心ほそくもおもほゆるかな

いとによる−ものならなくに−わかれちの−こころほそくも−おもほゆるかな

異同資料句番号:00415

00416
躬恒 みつね (029)

夜をさむみおくはつ霜をはらひつつ草の枕にあまたたひねぬ

よをさむみ−おくはつしもを−はらひつつ−くさのまくらに−あまたたひねぬ

異同資料句番号:00416

00417
兼輔 ふちはらのかねすけ (027)

ゆふつくよおほつかなきを玉匣ふたみの浦は曙てこそ見め

ゆふつくよ−おほつかなきを−たまくしけ−ふたみのうらは−あけてこそみめ

異同資料句番号:00417

00418
業平 在原なりひらの朝臣 (017)

かりくらしたなはたつめにやとからむあまのかはらに我はきにけり

かりくらし−たなはたつめに−やとからむ−あまのかはらに−われはきにけり

異同資料句番号:00418

00419
番号外作者 きのありつね (999)

ひととせにひとたひきます君まてはやとかす人もあらしとそ思ふ

ひととせに−ひとたひきます−きみまては−やとかすひとも−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00419

00420
道真 すかはらの朝臣 (024)

このたひはぬさもとりあへすたむけ山紅葉の錦神のまにまに

このたひは−ぬさもとりあへす−たむけやま−もみちのにしき−かみのまにまに

異同資料句番号:00420

00421
素性 素性法師 (021)

たむけにはつつりの袖もきるへきにもみちにあける神やかへさむ

たむけには−つつりのそても−きるへきに−もみちにあける−かみやかへさむ

異同資料句番号:00421


古今集 巻十:物名

00422
敏行 藤原としゆきの朝臣 (018)

心から花のしつくにそほちつつうくひすとのみ鳥のなくらむ

こころから−はなのしつくに−そほちつつ−うくひすとのみ−とりのなくらむ

異同資料句番号:00422

00423
敏行 藤原としゆきの朝臣 (018)

くへきほとときすきぬれやまちわひてなくなるこゑの人をとよむる

くへきほと−ときすきぬれや−まちわひて−なくなるこゑの−ひとをとよむる

異同資料句番号:00423

00424
番号外作者 在原しけはる (999)

浪のうつせみれはたまそみたれけるひろははそてにはかなからむや

なみのうつ−せみれはたまそ−みたれける−ひろははそてに−はかなからむや

異同資料句番号:00424

00425
忠峯 壬生忠岑 (030)

たもとよりはなれて玉をつつまめやこれなむそれとうつせ見むかし

たもとより−はなれてたまを−つつまめや−これなむそれと−うつせみむかし

異同資料句番号:00425

00426
読人不知 よみ人しらす (000)

あなうめにつねなるへくも見えぬかなこひしかるへきかはにほひつつ

あなうめに−つねなるへくも−みえぬかな−こひしかるへき−かはにほひつつ

異同資料句番号:00426

00427
貫之 つらゆき (035)

かつけとも浪のなかにはさくられて風吹くことにうきしつむたま

かつけとも−なみのなかには−さくられて−かせふくことに−うきしつむたま

異同資料句番号:00427

00428
貫之 つらゆき (035)

今いくか春しなけれはうくひすもものはなかめて思ふへらなり

いまいくか−はるしなけれは−うくひすも−ものはなかめて−おもふへらなり

異同資料句番号:00428

00429
深養父 ふかやふ (036)

あふからもものはなほこそかなしけれわかれむ事をかねて思へは

あふからも−ものはなほこそ−かなしけれ−わかれむことを−かねておもへは

異同資料句番号:00429

00430
番号外作者 をののしけかけ (999)

葦引の山たちはなれ行く雲のやとりさためぬ世にこそ有りけれ

あしひきの−やまたちはなれ−ゆくくもの−やとりさためぬ−よにこそありけれ

異同資料句番号:00430

00431
友則 とものり (033)

みよしののよしののたきにうかひいつるあわをかたまのきゆと見つらむ

みよしのの−よしののたきに−うかひいつる−あわをかたまの−きゆとみつらむ

異同資料句番号:00431

00432
読人不知 よみ人しらす (000)

秋はきぬいまやまかきのきりきりすよなよななかむ風のさむさに

あきはきぬ−いまやまかきの−きりきりす−よなよななかむ−かせのさむさに

異同資料句番号:00432

00433
読人不知 よみ人しらす (000)

かくはかりあふひのまれになる人をいかかつらしとおもはさるへき

かくはかり−あふひのまれに−なるひとを−いかかつらしと−おもはさるへき

異同資料句番号:00433

00434
読人不知 よみ人しらす (000)

人めゆゑのちにあふひのはるけくはわかつらきにや思ひなされむ

ひとめゆゑ−のちにあふひの−はるけくは−わかつらきにや−おもひなされむ

異同資料句番号:00434

00435
遍昭 僧正へんせう (012)

ちりぬれはのちはあくたになる花を思ひしらすもまとふてふかな

ちりぬれは−のちはあくたに−なるはなを−おもひしらすも−まとふてふかな

異同資料句番号:00435

00436
貫之 つらゆき (035)

我はけさうひにそ見つる花の色をあたなる物といふへかりけり

われはけさ−うひにそみつる−はなのいろを−あたなるものと−いふへかりけり

異同資料句番号:00436

00437
友則 とものり (033)

白露を玉にぬくやとささかにの花にも葉にもいとをみなへし

しらつゆを−たまにぬくやと−ささかにの−はなにもはにも−いとをみなへし

異同資料句番号:00437

00438
友則 とものり (033)

あさ露をわけそほちつつ花見むと今その山をみなへしりぬる

あさつゆを−わけそほちつつ−はなみむと−いまそのやまを−みなへしりぬる

異同資料句番号:00438

00439
貫之 つらゆき (035)

をくら山みねたちならしなくしかのへにけむ秋をしる人そなき

をくらやま−みねたちならし−なくしかの−へにけむあきを−しるひとそなき

異同資料句番号:00439

00440
友則 とものり (033)

秋ちかうのはなりにけり白露のおけるくさはも色かはりゆく

あきちかう−のはなりにけり−しらつゆの−おけるくさはも−いろかはりゆく

異同資料句番号:00440

00441
読人不知 よみ人しらす (000)

ふりはへていさふるさとの花見むとこしをにほひそうつろひにける

ふりはへて−いさふるさとの−はなみむと−こしをにほひそ−うつろひにける

異同資料句番号:00441

00442
友則 とものり (033)

わかやとの花ふみしたくとりうたむのはなけれはやここにしもくる

わかやとの−はなふみしたく−とりうたむ−のはなけれはや−ここにしもくる

異同資料句番号:00442

00443
読人不知 よみ人しらす (000)

ありと見てたのむそかたきうつせみの世をはなしとや思ひなしてむ

ありとみて−たのむそかたき−うつせみの−よをはなしとや−おもひなしてむ

異同資料句番号:00443

00444
番号外作者 やたへの名実 (999)

うちつけにこしとや花の色を見むおく白露のそむるはかりを

うちつけに−こしとやはなの−いろをみむ−おくしらつゆの−そむるはかりを

異同資料句番号:00444

00445
康秀 文屋やすひて (022)

花の木にあらさらめともさきにけりふりにしこのみなるときもかな

はなのきに−あらさらめとも−さきにけり−ふりにしこのみ−なるときもかな

異同資料句番号:00445

00446
番号外作者 きのとしさた (999)

山たかみつねに嵐の吹くさとはにほひもあへす花そちりける

やまたかみ−つねにあらしの−ふくさとは−にほひもあへす−はなそちりける

異同資料句番号:00446

00447
番号外作者 平あつゆき (999)

郭公みねのくもにやましりにしありとはきけと見るよしもなき

ほとときす−みねのくもにや−ましりにし−ありとはきけと−みるよしもなき

異同資料句番号:00447

00448
読人不知 よみ人しらす (000)

空蝉のからは木ことにととむれとたまのゆくへを見ぬそかなしき

うつせみの−からはきことに−ととむれと−たまのゆくへを−みぬそかなしき

異同資料句番号:00448

00449
深養父 ふかやふ (036)

うはたまの夢になにかはなくさまむうつつにたにもあかぬ心は

うはたまの−ゆめになにかは−なくさまむ−うつつにたにも−あかぬこころは

異同資料句番号:00449

00450
番号外作者 たかむこのとしはる (999)

花の色はたたひとさかりこけれとも返す返すそつゆはそめける

はなのいろは−たたひとさかり−こけれとも−かへすかへすそ−つゆはそめける

異同資料句番号:00450

00451
番号外作者 しけはる (999)

いのちとてつゆをたのむにかたけれは物わひしらになくのへのむし

いのちとて−つゆをたのむに−かたけれは−ものわひしらに−なくのへのむし

異同資料句番号:00451

00452
番号外作者 かけのりのおほきみ (999)

さ夜ふけてなかはたけゆく久方の月ふきかへせ秋の山風

さよふけて−なかはたけゆく−ひさかたの−つきふきかへせ−あきのやまかせ

異同資料句番号:00452

00453
番号外作者 真せいほうし (999)

煙たちもゆとも見えぬ草のはをたれかわらひとなつけそめけむ

けふりたち−もゆともみえぬ−くさのはを−たれかわらひと−なつけそめけむ

異同資料句番号:00453

00454
番号外作者 きのめのと (999)

いささめに時まつまにそ日はへぬる心はせをは人に見えつつ

いささめに−ときまつまにそ−ひはへぬる−こころはせをは−ひとにみえつつ

異同資料句番号:00454

00455
番号外作者 兵衛 (999)

あちきなしなけきなつめそうき事にあひくるみをはすてぬものから

あちきなし−なけきなつめそ−うきことに−あひくるみをは−すてぬものから

異同資料句番号:00455

00456
番号外作者 安倍清行朝臣 (999)

浪のおとのけさからことにきこゆるは春のしらへや改るらむ

なみのおとの−けさからことに−きこゆるは−はるのしらへや−あらたまるらむ

異同資料句番号:00456

00457
兼覧王 (179)

かちにあたる浪のしつくを春なれはいかかさきちる花と見さらむ

かちにあたる−なみのしつくを−はるなれは−いかかさきちる−はなとみさらむ

異同資料句番号:00457

00458
番号外作者 あほのつねみ (999)

かの方にいつからさきにわたりけむ浪ちはあとものこらさりけり

かのかたに−いつからさきに−わたりけむ−なみちはあとも−のこらさりけり

異同資料句番号:00458

00459
伊勢 (019)

浪の花おきからさきてちりくめり水の春とは風やなるらむ

なみのはな−おきからさきて−ちりくめり−みつのはるとは−かせやなるらむ

異同資料句番号:00459

00460
貫之 つらゆき (035)

うはたまのわかくろかみやかはるらむ鏡の影にふれるしらゆき

うはたまの−わかくろかみや−かはるらむ−かかみのかけに−ふれるしらゆき

異同資料句番号:00460

00461
貫之 つらゆき (035)

あしひきの山へにをれは白雲のいかにせよとかはるる時なき

あしひきの−やまへにをれは−しらくもの−いかにせよとか−はるるときなき

異同資料句番号:00461

00462
忠峯 たたみね (030)

夏草のうへはしけれるぬま水のゆくかたのなきわか心かな

なつくさの−うへはしけれる−ぬまみつの−ゆくかたのなき−わかこころかな

異同資料句番号:00462

00463
番号外作者 源ほとこす (999)

秋くれは月のかつらのみやはなるひかりを花とちらすはかりを

あきくれは−つきのかつらの−みやはなる−ひかりをはなと−ちらすはかりを

異同資料句番号:00463

00464
読人不知 よみ人しらす (000)

花ことにあかすちらしし風なれはいくそはくわかうしとかは思ふ

はなことに−あかすちらしし−かせなれは−いくそはくわか−うしとかはおもふ

異同資料句番号:00464

00465
番号外作者 しけはる (999)

春かすみなかしかよひちなかりせは秋くるかりはかへらさらまし

はるかすみ−なかしかよひち−なかりせは−あきくるかりは−かへらさらまし

異同資料句番号:00465

00466
番号外作者 みやこのよしか (999)

流れいつる方たに見えぬ涙河おきひむ時やそこはしられむ

なかれいつる−かたたにみえぬ−なみたかは−おきひむときや−そこはしられむ

異同資料句番号:00466

00467
千里 大江千里 (023)

のちまきのおくれておふるなへなれとあたにはならぬたのみとそきく

のちまきの−おくれておふる−なへなれと−あたにはならぬ−たのみとそきく

異同資料句番号:00467

00468
番号外作者 僧正聖宝 (999)

花のなかめにあくやとてわけゆけは心そともにちりぬへらなる

はなのなか−めにあくやとて−わけゆけは−こころそともに−ちりぬへらなる

異同資料句番号:00468


古今集 巻十一:恋一

00469
読人不知 読人しらす (000)

郭公なくやさ月のあやめくさあやめもしらぬこひもするかな

ほとときす−なくやさつきの−あやめくさ−あやめもしらぬ−こひもするかな

異同資料句番号:00469

00470
素性 素性法師 (021)

おとにのみきくの白露よるはおきてひるは思ひにあへすけぬへし

おとにのみ−きくのしらつゆ−よるはおきて−ひるはおもひに−あへすけぬへし

異同資料句番号:00470

00471
貫之 紀貫之 (035)

吉野河いは浪たかく行く水のはやくそ人を思ひそめてし

よしのかは−いはなみたかく−ゆくみつの−はやくそひとを−おもひそめてし

異同資料句番号:00471

00472
番号外作者 藤原勝臣 (999)

白浪のあとなき方に行く舟も風そたよりのしるへなりける

しらなみの−あとなきかたに−ゆくふねも−かせそたよりの−しるへなりける

異同資料句番号:00472

00473
元方 在原元方 (169)

おとは山おとにききつつ相坂の関のこなたに年をふるかな

おとはやま−おとにききつつ−あふさかの−せきのこなたに−としをふるかな

異同資料句番号:00473

00474
元方 在原元方 (169)

立帰りあはれとそ思ふよそにても人に心をおきつ白浪

たちかへり−あはれとそおもふ−よそにても−ひとにこころを−おきつしらなみ

異同資料句番号:00474

00475
貫之 つらゆき (035)

世中はかくこそ有りけれ吹く風のめに見ぬ人もこひしかりけり

よのなかは−かくこそありけれ−ふくかせの−めにみぬひとも−こひしかりけり

異同資料句番号:00475

00476
業平 在原業平朝臣 (017)

見すもあらす見もせぬ人のこひしくはあやなくけふやなかめくらさむ

みすもあらす−みもせぬひとの−こひしくは−あやなくけふや−なかめくらさむ

異同資料句番号:00476

00477
読人不知 よみ人しらす (000)

しるしらぬなにかあやなくわきていはむ思ひのみこそしるへなりけれ

しるしらぬ−なにかあやなく−わきていはむ−おもひのみこそ−しるへなりけれ

異同資料句番号:00477

00478
忠峯 みふのたたみね (030)

かすかののゆきまをわけておひいてくる草のはつかに見えしきみはも

かすかのの−ゆきまをわけて−おひいてくる−くさのはつかに−みえしきみはも

異同資料句番号:00478

00479
貫之 つらゆき (035)

山さくら霞のまよりほのかにも見てし人こそこひしかりけれ

やまさくら−かすみのまより−ほのかにも−みてしひとこそ−こひしかりけれ

異同資料句番号:00479

00480
元方 もとかた (169)

たよりにもあらぬおもひのあやしきは心を人につくるなりけり

たよりにも−あらぬおもひの−あやしきは−こころをひとに−つくるなりけり

異同資料句番号:00480

00481
躬恒 凡河内みつね (029)

はつかりのはつかにこゑをききしより中そらにのみ物を思ふかな

はつかりの−はつかにこゑを−ききしより−なかそらにのみ−ものをおもふかな

異同資料句番号:00481

00482
貫之 つらゆき (035)

逢ふ事はくもゐはるかになる神のおとにききつつこひ渡るかな

あふことは−くもゐはるかに−なるかみの−おとにききつつ−こひわたるかな

異同資料句番号:00482

00483
読人不知 読人しらす (000)

かたいとをこなたかなたによりかけてあはすはなにをたまのをにせむ

かたいとを−こなたかなたに−よりかけて−あはすはなにを−たまのをにせむ

異同資料句番号:00483

00484
読人不知 読人しらす (000)

夕くれは雲のはたてに物そ思ふあまつそらなる人をこふとて

ゆふくれは−くものはたてに−ものそおもふ−あまつそらなる−ひとをこふとて

異同資料句番号:00484

00485
読人不知 読人しらす (000)

かりこもの思ひみたれて我こふといもしるらめや人しつけすは

かりこもの−おもひみたれて−わかこふと−いもしるらめや−ひとしつけすは

異同資料句番号:00485

00486
読人不知 読人しらす (000)

つれもなき人をやねたくしらつゆのおくとはなけきぬとはしのはむ

つれもなき−ひとをやねたく−しらつゆの−おくとはなけき−ぬとはしのはむ

異同資料句番号:00486

00487
読人不知 読人しらす (000)

ちはやふるかもの社のゆふたすきひと日も君をかけぬ日はなし

ちはやふる−かものやしろの−ゆふたすき−ひとひもきみを−かけぬひはなし

異同資料句番号:00487

00488
読人不知 読人しらす (000)

わかこひはむなしきそらにみちぬらし思ひやれともゆく方もなし

わかこひは−むなしきそらに−みちぬらし−おもひやれとも−ゆくかたもなし

異同資料句番号:00488

00489
読人不知 読人しらす (000)

するかなるたこの浦浪たたぬひはあれとも君をこひぬ日はなし

するかなる−たこのうらなみ−たたぬひは−あれともきみを−こひぬひはなし

異同資料句番号:00489

00490
読人不知 読人しらす (000)

ゆふつく夜さすやをかへの松のはのいつともわかぬこひもするかな

ゆふつくよ−さすやをかへの−まつのはの−いつともわかぬ−こひもするかな

異同資料句番号:00490

00491
読人不知 読人しらす (000)

葦引の山した水のこかくれてたきつ心をせきそかねつる

あしひきの−やましたみつの−こかくれて−たきつこころを−せきそかねつる

異同資料句番号:00491

00492
読人不知 読人しらす (000)

吉野河いはきりとほし行く水のおとにはたてしこひはしぬとも

よしのかは−いはきりとほし−ゆくみつの−おとにはたてし−こひはしぬとも

異同資料句番号:00492

00493
読人不知 読人しらす (000)

たきつせのなかにもよとはありてふをなとわかこひのふちせともなき

たきつせの−なかにもよとは−ありてふを−なとわかこひの−ふちせともなき

異同資料句番号:00493

00494
読人不知 読人しらす (000)

山高みした行く水のしたにのみ流れてこひむこひはしぬとも

やまたかみ−したゆくみつの−したにのみ−なかれてこひむ−こひはしぬとも

異同資料句番号:00494

00495
読人不知 読人しらす (000)

思ひいつるときはの山のいはつつしいはねはこそあれこひしきものを

おもひいつる−ときはのやまの−いはつつし−いはねはこそあれ−こひしきものを

異同資料句番号:00495

00496
読人不知 読人しらす (000)

人しれすおもへはくるし紅のすゑつむ花のいろにいてなむ

ひとしれす−おもへはくるし−くれなゐの−すゑつむはなの−いろにいてなむ

異同資料句番号:00496

00497
読人不知 読人しらす (000)

秋の野のをはなにましりさく花のいろにやこひむあふよしをなみ

あきののの−をはなにましり−さくはなの−いろにやこひむ−あふよしをなみ

異同資料句番号:00497

00498
読人不知 読人しらす (000)

わかそのの梅のほつえに鶯のねになきぬへきこひもするかな

わかそのの−うめのほつえに−うくひすの−ねになきぬへき−こひもするかな

異同資料句番号:00498

00499
読人不知 読人しらす (000)

あしひきの山郭公わかことや君にこひつついねかてにする

あしひきの−やまほとときす−わかことや−きみにこひつつ−いねかてにする

異同資料句番号:00499

00500
読人不知 読人しらす (000)

夏なれはやとにふすふるかやり火のいつまてわか身したもえをせむ

なつなれは−やとにふすふる−かやりひの−いつまてわかみ−したもえにせむ

異同資料句番号:00500

00501
読人不知 読人しらす (000)

恋せしとみたらし河にせしみそき神はうけすそなりにけらしも

こひせしと−みたらしかはに−せしみそき−かみはうけすそ−なりにけらしも

異同資料句番号:00501

00502
読人不知 読人しらす (000)

あはれてふ事たになくはなにをかは恋のみたれのつかねをにせむ

あはれてふ−ことたになくは−なにをかは−こひのみたれの−つかねをにせむ

異同資料句番号:00502

00503
読人不知 読人しらす (000)

おもふには忍ふる事そまけにける色にはいてしとおもひしものを

おもふには−しのふることそ−まけにける−いろにはいてしと−おもひしものを

異同資料句番号:00503

00504
読人不知 読人しらす (000)

わかこひを人しるらめや敷妙の枕のみこそしらはしるらめ

わかこひを−ひとしるらめや−しきたへの−まくらのみこそ−しらはしるらめ

異同資料句番号:00504

00505
読人不知 読人しらす (000)

あさちふのをののしの原しのふとも人しるらめやいふ人なしに

あさちふの−をののしのはら−しのふとも−ひとしるらめや−いふひとなしに

異同資料句番号:00505

00506
読人不知 読人しらす (000)

人しれぬ思ひやなそとあしかきのまちかけれともあふよしのなき

ひとしれぬ−おもひやなそと−あしかきの−まちかけれとも−あふよしのなき

異同資料句番号:00506

00507
読人不知 読人しらす (000)

思ふともこふともあはむ物なれやゆふてもたゆくとくるしたひも

おもふとも−こふともあはむ−ものなれや−ゆふてもたゆく−とくるしたひも

異同資料句番号:00507

00508
読人不知 読人しらす (000)

いて我を人なとかめそおほ舟のゆたのたゆたに物思ふころそ

いてわれを−ひとなとかめそ−おほふねの−ゆたのたゆたに−ものおもふころそ

異同資料句番号:00508

00509
読人不知 読人しらす (000)

伊勢の海につりするあまのうけなれや心ひとつを定めかねつる

いせのうみに−つりするあまの−うけなれや−こころひとつを−ささめかねつる

異同資料句番号:00509

00510
読人不知 読人しらす (000)

いせのうみのあまのつりなは打ちはへてくるしとのみや思ひ渡らむ

いせのうみの−あまのつりなは−うちはへて−くるしとのみや−おもひわたらむ

異同資料句番号:00510

00511
読人不知 読人しらす (000)

涙河何みなかみを尋ねけむ物思ふ時のわか身なりけり

なみたかは−なにみなかみを−たつねけむ−ものおもふときの−わかみなりけり

異同資料句番号:00511

00512
読人不知 読人しらす (000)

たねしあれはいはにも松はおひにけり恋をしこひはあはさらめやは

たねしあれは−いはにもまつは−おひにけり−こひをしこひは−あはさらめやは

異同資料句番号:00512

00513
読人不知 読人しらす (000)

あさなあさな立つ河霧のそらにのみうきて思ひのある世なりけり

あさなあさな−たつかはきりの−そらにのみ−うきておもひの−あるよなりけり

異同資料句番号:00513

00514
読人不知 読人しらす (000)

わすらるる時しなけれはあしたつの思ひみたれてねをのみそなく

わすらるる−ときしなけれは−あしたつの−おもひみたれて−ねをのみそなく

異同資料句番号:00514

00515
読人不知 読人しらす (000)

唐衣ひもゆふくれになる時は返す返すそ人はこひしき

からころも−ひもゆふくれに−なるときは−かへすかへすそ−ひとはこひしき

異同資料句番号:00515

00516
読人不知 読人しらす (000)

よひよひに枕さためむ方もなしいかにねし夜か夢に見えけむ

よひよひに−まくらさためむ−かたもなし−いかにねしよか−ゆめにみえけむ

異同資料句番号:00516

00517
読人不知 読人しらす (000)

恋しきに命をかふる物ならはしにはやすくそあるへかりける

こひしきに−いのちをかふる−ものならは−しにはやすくそ−あるへかりける

異同資料句番号:00517

00518
読人不知 読人しらす (000)

人の身もならはしものをあはすしていさ心みむこひやしぬると

ひとのみも−ならはしものを−あはすして−いさこころみむ−こひやしぬると

異同資料句番号:00518

00519
読人不知 読人しらす (000)

忍ふれは苦しきものを人しれす思ふてふ事誰にかたらむ

しのふれは−くるしきものを−ひとしれす−おもふてふこと−たれにかたらむ

異同資料句番号:00519

00520
読人不知 読人しらす (000)

こむ世にもはや成りななむ目の前につれなき人を昔とおもはむ

こむよにも−はやなりななむ−めのまへに−つれなきひとを−むかしとおもはむ

異同資料句番号:00520

00521
読人不知 読人しらす (000)

つれもなき人をこふとて山ひこのこたへするまてなけきつるかな

つれもなき−ひとをこふとて−やまひこの−こたへするまて−なけきつるかな

異同資料句番号:00521

00522
読人不知 読人しらす (000)

ゆく水にかすかくよりもはかなきはおもはぬ人を思ふなりけり

ゆくみつに−かすかくよりも−はかなきは−おもはぬひとを−おもふなりけり

異同資料句番号:00522

00523
読人不知 読人しらす (000)

人を思ふ心は我にあらねはや身の迷ふたにしられさるらむ

ひとをおもふ−こころはわれに−あらねはや−みのまよふたに−しられさるらむ

異同資料句番号:00523

00524
読人不知 読人しらす (000)

思ひやるさかひはるかになりやするまとふ夢ちにあふ人のなき

おもひやる−さかひはるかに−なりやする−まとふゆめちに−あふひとのなき

異同資料句番号:00524

00525
読人不知 読人しらす (000)

夢の内にあひ見む事をたのみつつくらせるよひはねむ方もなし

ゆめのうちに−あひみむことを−たのみつつ−くらせるよひは−ねむかたもなし

異同資料句番号:00525

00526
読人不知 読人しらす (000)

こひしねとするわさならしむはたまのよるはすからに夢に見えつつ

こひしねと−するわさならし−うはたまの−よるはすからに−ゆめにみえつつ

異同資料句番号:00526

00527
読人不知 読人しらす (000)

涙河枕なかるるうきねには夢もさたかに見えすそありける

なみたかは−まくらなかるる−うきねには−ゆめもさたかに−みえすそありける

異同資料句番号:00527

00528
読人不知 読人しらす (000)

恋すれはわか身は影と成りにけりさりとて人にそはぬものゆゑ

こひすれは−わかみはかけと−なりにけり−さりとてひとに−そはぬものゆゑ

異同資料句番号:00528

00529
読人不知 読人しらす (000)

篝火にあらぬわか身のなそもかく涙の河にうきてもゆらむ

かかりひに−あらぬわかみの−なそもかく−なみたのかはに−うきてもゆらむ

異同資料句番号:00529

00530
読人不知 読人しらす (000)

かかり火の影となる身のわひしきは流れてしたにもゆるなりけり

かかりひの−かけとなるみの−わひしきは−なかれてしたに−もゆるなりけり

異同資料句番号:00530

00531
読人不知 読人しらす (000)

はやきせに見るめおひせはわか袖の涙の河にうゑましものを

はやきせに−みるめおひせは−わかそての−なみたのかはに−うゑましものを

異同資料句番号:00531

00532
読人不知 読人しらす (000)

おきへにもよらぬたまもの浪のうへにみたれてのみやこひ渡りなむ

おきへにも−よらぬたまもの−なみのうへに−みたれてのみや−こひわたりなむ

異同資料句番号:00532

00533
読人不知 読人しらす (000)

あしかものさわく入江の白浪のしらすや人をかくこひむとは

あしかもの−さわくいりえの−しらなみの−しらすやひとを−かくこひむとは

異同資料句番号:00533

00534
読人不知 読人しらす (000)

人しれぬ思ひをつねにするかなるふしの山こそわか身なりけれ

ひとしれぬ−おもひをつねに−するかなる−ふしのやまこそ−わかみなりけれ

異同資料句番号:00534

00535
読人不知 読人しらす (000)

とふとりのこゑもきこえぬ奥山のふかき心を人はしらなむ

とふとりの−こゑもきこえぬ−おくやまの−ふかきこころを−ひとはしらなむ

異同資料句番号:00535

00536
読人不知 読人しらす (000)

相坂のゆふつけとりもわかことく人やこひしきねのみなくらむ

あふさかの−ゆふつけとりも−わかことく−ひとやこひしき−ねのみなくらむ

異同資料句番号:00536

00537
読人不知 読人しらす (000)

相坂の関になかるるいはし水いはて心に思ひこそすれ

あふさかの−せきになかるる−いはしみつ−いはてこころに−おもひこそすれ

異同資料句番号:00537

00538
読人不知 読人しらす (000)

うき草のうへはしけれるふちなれや深き心をしる人のなき

うきくさの−うへはしけれる−ふちなれや−ふかきこころを−しるひとのなき

異同資料句番号:00538

00539
読人不知 読人しらす (000)

打ちわひてよははむ声に山ひこのこたへぬ山はあらしとそ思ふ

うちわひて−よははむこゑに−やまひこの−こたへぬやまは−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00539

00540
読人不知 読人しらす (000)

心かへする物にもかかたこひはくるしき物と人にしらせむ

こころかへ−するものにもか−かたこひは−くるしきものと−ひとにしらせむ

異同資料句番号:00540

00541
読人不知 読人しらす (000)

よそにしてこふれはくるしいれひものおなし心にいさむすひてむ

よそにして−こふれはくるし−いれひもの−おなしこころに−いさむすひてむ

異同資料句番号:00541

00542
読人不知 読人しらす (000)

春たてはきゆる氷ののこりなく君か心は我にとけなむ

はるたては−きゆるこほりの−のこりなく−きみかこころは−われにとけなむ

異同資料句番号:00542

00543
読人不知 読人しらす (000)

あけたては蝉のをりはへなきくらしよるはほたるのもえこそわたれ

あけたては−せみのをりはへ−なきくらし−よるはほたるの−もえこそわたれ

異同資料句番号:00543

00544
読人不知 読人しらす (000)

夏虫の身をいたつらになすこともひとつ思ひによりてなりけり

なつむしの−みをいたつらに−なすことも−ひとつおもひに−よりてなりけり

異同資料句番号:00544

00545
読人不知 読人しらす (000)

ゆふされはいととひかたきわかそてに秋のつゆさへおきそはりつつ

ゆふくれは−いととひかたき−わかそてに−あきのつゆさへ−おきそはりつつ

異同資料句番号:00545

00546
読人不知 読人しらす (000)

いつとてもこひしからすはあらねとも秋のゆふへはあやしかりけり

いつとても−こひしからすは−あらねとも−あきのゆふへは−あやしかりけり

異同資料句番号:00546

00547
読人不知 読人しらす (000)

秋の田のほにこそ人をこひさらめなとか心に忘れしもせむ

あきのたの−ほにこそひとを−こひさらめ−なとかこころに−わすれしもせむ

異同資料句番号:00547

00548
読人不知 読人しらす (000)

あきのたのほのうへをてらすいなつまのひかりのまにも我やわするる

あきのたの−ほのうへをてらす−いなつまの−ひかりのまにも−われやわするる

異同資料句番号:00548

00549
読人不知 読人しらす (000)

人めもる我かはあやな花すすきなとかほにいててこひすしもあらむ

ひとめもる−われかはあやな−はなすすき−なとかほにいてて−こひすしもあらむ

異同資料句番号:00549

00550
読人不知 読人しらす (000)

あは雪のたまれはかてにくたけつつわか物思ひのしけきころかな

あはゆきの−たまれはかてに−くたけつつ−わかものおもひの−しけきころかな

異同資料句番号:00550

00551
読人不知 読人しらす (000)

奥山の管のねしのきふる雪のけぬとかいはむこひのしけきに

おくやまの−すかのねしのき−ふるゆきの−けぬとかいはむ−こひのしけきに

異同資料句番号:00551


古今集 巻十二:恋二

00552
小町 小野小町 (009)

思ひつつぬれはや人の見えつらむ夢としりせはさめさらましを

おもひつつ−ぬれはやひとの−みえつらむ−ゆめとしりせは−さめさらましを

異同資料句番号:00552

00553
小町 小野小町 (009)

うたたねに恋しきひとを見てしより夢てふ物は思みそめてき

うたたねに−こひしきひとを−みてしより−ゆめてふものは−たのみそめてき

異同資料句番号:00553

00554
小町 小野小町 (009)

いとせめてこひしき時はむは玉のよるの衣を返してそきる

いとせめて−こひしきときは−うはたまの−よるのころもを−かへしてそきる

異同資料句番号:00554

00555
素性 素性法師 (021)

秋風の身にさむけれはつれもなき人をそたのむくるる夜ことに

あきかせの−みにさむけれは−つれもなき−ひとをそたのむ−くるるよことに

異同資料句番号:00555

00556
番号外作者 あへのきよゆきの朝臣 (999)

つつめとも袖にたまらぬ白玉は人を見ぬめの涙なりけり

つつめとも−そてにたまらぬ−しらたまは−ひとをみぬめの−なみたなりけり

異同資料句番号:00556

00557
小町 こまち (009)

おろかなる涙そそてに玉はなす我はせきあへすたきつせなれは

おろかなる−なみたそそてに−たまはなす−われはせきあへす−たきつせなれは

異同資料句番号:00557

00558
敏行 藤原としゆきの朝臣 (018)

恋ひわひて打ちぬる中に行きかよふ夢のたたちはうつつならなむ

こひわひて−うちぬるなかに−ゆきかよふ−ゆめのたたちは−うつつならなむ

異同資料句番号:00558

00559
敏行 藤原としゆきの朝臣 (018)

住の江の岸による浪よるさへやゆめのかよひち人めよくらむ

すみのえの−きしによるなみ−よるさへや−ゆめのかよひち−ひとめよくらむ

異同資料句番号:00559

00560
番号外作者 をののよしき (999)

わかこひはみ山かくれの草なれやしけさまされとしる人のなき

わかこひは−みやまかくれの−くさなれや−しけさまされと−しるひとのなき

異同資料句番号:00560

00561
友則 紀とものり (033)

よひのまもはかなく見ゆる夏虫に迷ひまされるこひもするかな

よひのまも−はかなくみゆる−なつむしに−まよひまされる−こひもするかな

異同資料句番号:00561

00562
友則 紀とものり (033)

ゆふされは蛍よりけにもゆれともひかり見ねはや人のつれなき

ゆふされは−ほたるよりけに−もゆれとも−ひかりみねはや−ひとのつれなき

異同資料句番号:00562

00563
友則 紀とものり (033)

ささのはにおく霜よりもひとりぬるわか衣手そさえまさりける

ささのはに−おくしもよりも−ひとりぬる−わかころもてそ−さえまさりける

異同資料句番号:00563

00564
友則 紀とものり (033)

わかやとの菊のかきねにおくしものきえかへりてそこひしかりける

わかやとの−きくのかきねに−おくしもの−きえかへりてそ−こひしかりける

異同資料句番号:00564

00565
友則 紀とものり (033)

河のせになひくたまものみかくれて人にしられぬこひもするかな

かはのせに−なひくたまもの−みかくれて−ひとにしられぬ−こひもするかな

異同資料句番号:00565

00566
忠峯 みふのたたみね (030)

かきくらしふる白雪のしたきえにきえて物思ふころにもあるかな

かきくらし−ふるしらゆきの−したきえに−きえてものおもふ−ころにもあるかな

異同資料句番号:00566

00567
興風 藤原おきかせ (034)

君こふる涙のとこにみちぬれはみをつくしとそ我はなりぬる

きみこふる−なみたのとこに−みちぬれは−みをつくしとそ−われはなりぬる

異同資料句番号:00567

00568
興風 藤原おきかせ (034)

しぬるいのちいきもやすると心みに玉のをはかりあはむといはなむ

しぬるいのち−いきもやすると−こころみに−たまのをはかり−あはむといはなむ

異同資料句番号:00568

00569
興風 藤原おきかせ (034)

わひぬれはしひてわすれむと思へとも夢といふ物そ人たのめなる

わひぬれは−しひてわすれむと−おもへとも−ゆめといふものそ−ひとたのめなる

異同資料句番号:00569

00570
読人不知 よみ人しらす (000)

わりなくもねてもさめてもこひしきか心をいつちやらはわすれむ

わりなくも−ねてもさめても−こひしきか−こころをいつち−やらはわすれむ

異同資料句番号:00570

00571
読人不知 よみ人しらす (000)

恋しきにわひてたましひ迷ひなはむなしきからのなにやのこらむ

こひしきに−わひてたましひ−まよひなは−むなしきからの−なにやのこらむ

異同資料句番号:00571

00572
貫之 紀つらゆき (035)

君こふる涙しなくは唐衣むねのあたりは色もえなまし

きみこふる−なみたしなくは−からころも−むねのあたりは−いろもえなまし

異同資料句番号:00572

00573
貫之 紀つらゆき (035)

世とともに流れてそ行く涙河冬もこほらぬみなわなりけり

よとともに−なかれてそゆく−なみたかは−ふゆもこほらぬ−みなわなりけり

異同資料句番号:00573

00574
貫之 紀つらゆき (035)

夢ちにもつゆやおくらむよもすからかよへる袖のひちてかわかぬ

ゆめちにも−つゆやおくらむ−よもすから−かよへるそての−ひちてかわかぬ

異同資料句番号:00574

00575
素性 そせい法し (021)

はかなくて夢にも人を見つる夜は朝のとこそおきうかりける

はかなくて−ゆめにもひとを−みつるよは−あしたのとこそ−おきうかりける

異同資料句番号:00575

00576
忠房 藤原たたふさ (182)

いつはりの涙なりせは唐衣しのひに袖はしほらさらまし

いつはりの−なみたなりせは−からころも−しのひにそては−しほらさらまし

異同資料句番号:00576

00577
千里 大江千里 (023)

ねになきてひちにしかとも春さめにぬれにし袖ととははこたへむ

ねになきて−ひちにしかとも−はるさめに−ぬれにしそてと−とははこたへむ

異同資料句番号:00577

00578
敏行 としゆきの朝臣 (018)

わかことく物やかなしき郭公時そともなくよたたなくらむ

わかことく−ものやかなしき−ほとときす−ときそともなく−よたたなくらむ

異同資料句番号:00578

00579
貫之 つらゆき (035)

さ月山こすゑをたかみ郭公なくねそらなるこひもするかな

さつきやま−こすゑをたかみ−ほとときす−なくねそらなる−こひもするかな

異同資料句番号:00579

00580
躬恒 凡河内みつね (029)

秋きりのはるる時なき心にはたちゐのそらもおもほえなくに

あききりの−はるるときなき−こころには−たちゐのそらも−おもほえなくに

異同資料句番号:00580

00581
深養父 清原ふかやふ (036)

虫のこと声にたててはなかねとも涙のみこそしたになかるれ

むしのこと−こゑにたてては−なかねとも−なみたのみこそ−したになかるれ

異同資料句番号:00581

00582
読人不知 よみ人しらす (000)

秋なれは山とよむまてなくしかに我おとらめやひとりぬるよは

あきなれは−やまとよむまて−なくしかに−われおとらめや−ひとりぬるよは

異同資料句番号:00582

00583
貫之 つらゆき (035)

秋ののにみたれてさける花の色のちくさに物を思ふころかな

あきののに−みたれてさける−はなのいろの−ちくさにものを−おもふころかな

異同資料句番号:00583

00584
躬恒 みつね (029)

ひとりして物をおもへは秋のよのいなはのそよといふ人のなき

ひとりして−ものをおもへは−あきのよの−いなはのそよと−いふひとのなき

異同資料句番号:00584

00585
深養父 ふかやふ (036)

人を思ふ心はかりにあらねともくもゐにのみもなきわたるかな

ひとをおもふ−こころはかりに−あらねとも−くもゐにのみも−なきわたるかな

異同資料句番号:00585

00586
忠峯 たたみね (030)

秋風にかきなすことのこゑにさへはかなく人のこひしかるらむ

あきかせに−かきなすことの−こゑにさへ−はかなくひとの−こひしかるらむ

異同資料句番号:00586

00587
貫之 つらゆき (035)

まこもかるよとのさは水雨ふれはつねよりことにまさるわかこひ

まこもかる−よとのさはみつ−あめふれは−つねよりことに−まさるわかこひ

異同資料句番号:00587

00588
貫之 つらゆき (035)

こえぬまはよしのの山のさくら花人つてにのみききわたるかな

こえぬまは−よしののやまの−さくらはな−ひとつてにのみ−ききわたるかな

異同資料句番号:00588

00589
貫之 つらゆき (035)

露ならぬ心を花におきそめて風吹くことに物思ひそつく

つゆならぬ−こころをはなに−おきそめて−かせふくことに−ものおもひそつく

異同資料句番号:00589

00590
是則 坂上これのり (031)

わかこひにくらふの山のさくら花まなくちるともかすはまさらし

わかこひに−くらふのやまの−さくらはな−まなくちるとも−かすはまさらし

異同資料句番号:00590

00591
番号外作者 むねをかのおほより (999)

冬河のうへはこほれる我なれやしたになかれてこひわたるらむ

ふゆかはの−うへはこほれる−われなれや−したになかれて−こひわたるらむ

異同資料句番号:00591

00592
忠峯 たたみね (030)

たきつせにねさしととめぬうき草のうきたるこひも我はするかな

たきつせに−ねさしととめぬ−うきくさの−うきたるこひも−われはするかな

異同資料句番号:00592

00593
友則 とものり (033)

よひよひにぬきてわかぬるかり衣かけておもはぬ時のまもなし

よひよひに−ぬきてわかぬる−かりころも−かけておもはぬ−ときのまもなし

異同資料句番号:00593

00594
友則 とものり (033)

あつまちのさやの中山なかなかになにしか人を思ひそめけむ

あつまちの−さやのなかやま−なかなかに−なにしかひとを−おもひそめけむ

異同資料句番号:00594

00595
友則 とものり (033)

しきたへの枕のしたに海はあれと人を見るめはおひすそ有りける

しきたへの−まくらのしたに−うみはあれと−ひとをみるめは−おひすそありける

異同資料句番号:00595

00596
友則 とものり (033)

年をへてきえぬおもひは有りなからよるのたもとは猶こほりけり

としをへて−きえぬおもひは−ありなから−よるのたもとは−なほこほりけり

異同資料句番号:00596

00597
貫之 つらゆき (035)

わかこひはしらぬ山ちにあらなくに迷ふ心そわひしかりける

わかこひは−しらぬやまちに−あらなくに−まよふこころそ−わひしかりける

異同資料句番号:00597

00598
貫之 つらゆき (035)

紅のふりいてつつなく涙にはたもとのみこそ色まさりけれ

くれなゐの−ふりいてつつなく−なみたには−たもとのみこそ−いろまさりけれ

異同資料句番号:00598

00599
貫之 つらゆき (035)

白玉と見えし涙も年ふれはから紅にうつろひにけり

しらたまと−みえしなみたも−としふれは−からくれなゐに−うつろひにけり

異同資料句番号:00599

00600
躬恒 みつね (029)

夏虫をなにかいひけむ心から我も思ひにもえぬへらなり

なつむしを−なにかいひけむ−こころから−われもおもひに−もえぬへらなり

異同資料句番号:00600

00601
忠峯 たたみね (030)

風ふけは峰にわかるる白雲のたえてつれなき君か心か

かせふけは−みねにわかるる−しらくもの−たえてつれなき−きみかこころか

異同資料句番号:00601

00602
忠峯 たたみね (030)

月影にわか身をかふる物ならはつれなき人もあはれとや見む

つきかけに−わかみをかふる−ものならは−つれなきひとも−あはれとやみむ

異同資料句番号:00602

00603
深養父 ふかやふ (036)

こひしなはたか名はたたし世中のつねなき物といひはなすとも

こひしなは−たかなはたたし−よのなかの−つねなきものと−いひはなすとも

異同資料句番号:00603

00604
貫之 つらゆき (035)

つのくにのなにはのあしのめもはるにしけきわかこひ人しるらめや

つのくにの−なにはのあしの−めもはるに−しけきわかこひ−ひとしるらめや

異同資料句番号:00604

00605
貫之 つらゆき (035)

手もふれて月日へにけるしらま弓おきふしよるはいこそねられね

てもふれて−つきひへにける−しらまゆみ−おきふしよるは−いこそねられね

異同資料句番号:00605

00606
貫之 つらゆき (035)

人しれぬ思ひのみこそわひしけれわか歎をは我のみそしる

ひとしれぬ−おもひのみこそ−わひしけれ−わかなけきをは−われのみそしる

異同資料句番号:00606

00607
友則 とものり (033)

事にいてていはぬはかりそみなせ河したにかよひてこひしきものを

ことにいてて−いはぬはかりそ−みなせかは−したにかよひて−こひしきものを

異同資料句番号:00607

00608
躬恒 みつね (029)

君をのみ思ひねにねし夢なれはわか心から見つるなりけり

きみをのみ−おもひねにねし−ゆめなれは−わかこころから−みつるなりけり

異同資料句番号:00608

00609
忠峯 たたみね (030)

いのちにもまさりてをしくある物は見はてぬゆめのさむるなりけり

いのちにも−まさりてをしく−あるものは−みはてぬゆめの−さむるなりけり

異同資料句番号:00609

00610
列樹 はるみちのつらき (032)

梓弓ひけは本末わか方によるこそまされこひの心は

あつさゆみ−ひけはもとすゑ−わかかたに−よるこそまされ−こひのこころは

異同資料句番号:00610

00611
躬恒 みつね (029)

わかこひはゆくへもしらすはてもなし逢ふを限と思ふはかりそ

わかこひは−ゆくへもしらす−はてもなし−あふをかきりと−おもふはかりそ

異同資料句番号:00611

00612
躬恒 みつね (029)

我のみそかなしかりけるひこほしもあはてすくせる年しなけれは

われのみそ−かなしかりける−ひこほしも−あはてすくせる−とししなけれは

異同資料句番号:00612

00613
深養父 ふかやふ (036)

今ははやこひしなましをあひ見むとたのめし夢そいのちなりける

いまははや−こひしなましを−あひみむと−たのめしことそ−いのちなりける

異同資料句番号:00613

00614
躬恒 みつね (029)

たのめつつあはて年ふるいつはりにこりぬ心を人はしらなむ

たのめつつ−あはてとしふる−いつはりに−こりぬこころを−ひとはしらなむ

異同資料句番号:00614

00615
友則 とものり (033)

いのちやはなにそはつゆのあた物をあふにしかへはをしからなくに

いのちやは−なにそはつゆの−あたものを−あふにしかへは−をしからなくに

異同資料句番号:00615


古今集 巻十三:恋三

00616
業平 在原業平朝臣 (017)

おきもせすねもせてよるをあかしては春の物とてなかめくらしつ

おきもせす−ねもせてよるを−あかしては−はるのものとて−なかめくらしつ

異同資料句番号:00616

00617
敏行 としゆきの朝臣 (018)

つれつれのなかめにまさる涙河袖のみぬれてあふよしもなし

つれつれの−なかめにまさる−なみたかは−そてのみぬれて−あふよしもなし

異同資料句番号:00617

00618
業平 なりひらの朝臣 (017)

あさみこそ袖はひつらめ涙河身さへ流るときかはたのまむ

あさみこそ−そてはひつらめ−なみたかは−みさへなかると−きかはたのまむ

異同資料句番号:00618

00619
読人不知 よみ人しらす (000)

よるへなみ身をこそとほくへたてつれ心は君か影となりにき

よるへなみ−みをこそとほく−へたてつれ−こころはきみか−かけとなりにき

異同資料句番号:00619

00620
読人不知 よみ人しらす (000)

いたつらに行きてはきぬるものゆゑに見まくほしさにいさなはれつつ

いたつらに−ゆきてはきぬる−ものゆゑに−みまくほしさに−いさなはれつつ

異同資料句番号:00620

00621
読人不知 よみ人しらす(一説、柿本人麿) (000)

あはぬ夜のふる白雪とつもりなは我さへともにけぬへきものを

あはぬよの−ふるしらゆきと−つもりなは−われさへともに−けぬへきものを

異同資料句番号:00621

00622
業平 なりひらの朝臣 (017)

秋ののにささわけしあさの袖よりもあはてこしよそひちまさりける

あきののに−ささわけしあさの−そてよりも−あはてこしよそ−ひちまさりける

異同資料句番号:00622

00623
小町 をののこまち (009)

見るめなきわか身をうらとしらねはやかれなてあまのあしたゆくくる

みるめなき−わかみをうらと−しらねはや−かれなてあまの−あしたゆくくる

異同資料句番号:00623

00624
宗于 源むねゆきの朝臣 (028)

あはすしてこよひあけなは春の日の長くや人をつらしと思はむ

あはすして−こよひあけなは−はるのひの−なかくやひとを−つらしとおもはむ

異同資料句番号:00624

00625
忠峯 みふのたたみね (030)

有あけのつれなく見えし別より暁はかりうき物はなし

ありあけの−つれなくみえし−わかれより−あかつきはかり−うきものはなし

異同資料句番号:00625

00626
元方 在原元方 (169)

逢ふ事のなきさにしよる浪なれは怨みてのみそ立帰りける

あふことの−なきさにしよる−なみなれは−うらみてのみそ−たちかへりける

異同資料句番号:00626

00627
読人不知 よみ人しらす (000)

かねてより風にさきたつ浪なれや逢ふ事なきにまたき立つらむ

かねてより−かせにさきたつ−なみなれや−あふことなきに−またきたつらむ

異同資料句番号:00627

00628
忠峯 たたみね (030)

みちのくに有りといふなるなとり河なきなとりてはくるしかりけり

みちのくに−ありといふなる−なとりかは−なきなとりては−くるしかりけり

異同資料句番号:00628

00629
番号外作者 みはるのありすけ (999)

あやなくてまたきなきなのたつた河わたらてやまむ物ならなくに

あやなくて−またきなきなの−たつたかは−わたらてやまむ−ものならなくに

異同資料句番号:00629

00630
元方 もとかた (169)

人はいさ我はなきなのをしけれは昔も今もしらすとをいはむ

ひとはいさ−われはなきなの−をしけれは−むかしもいまも−しらすとをいはむ

異同資料句番号:00630

00631
読人不知 よみ人しらす (000)

こりすまに又もなきなはたちぬへし人にくからぬ世にしすまへは

こりすまに−またもなきなは−たちぬへし−ひとにくからぬ−よにしすまへは

異同資料句番号:00631

00632
業平 なりひらの朝臣 (017)

ひとしれぬわかかよひちの関守はよひよひことにうちもねななむ

ひとしれぬ−わかかよひちの−せきもりは−よひよひことに−うちもねななむ

異同資料句番号:00632

00633
貫之 つらゆき (035)

しのふれとこひしき時はあしひきの山より月のいててこそくれ

しのふれと−こひしきときは−あしひきの−やまよりつきの−いててこそくれ

異同資料句番号:00633

00634
読人不知 よみ人しらす (000)

こひこひてまれにこよひそ相坂のゆふつけ鳥はなかすもあらなむ

こひこひて−まれにこよひそ−あふさかの−ゆふつけとりは−なかすもあらなむ

異同資料句番号:00634

00635
小町 をののこまち (009)

秋の夜も名のみなりけりあふといへは事そともなくあけぬるものを

あきのよも−なのみなりけり−あふといへは−ことそともなく−あけぬるものを

異同資料句番号:00635

00636
躬恒 凡河内みつね (029)

なかしとも思ひそはてぬ昔より逢ふ人からの秋のよなれは

なかしとも−おもひそはてぬ−むかしより−あふひとからの−あきのよなれは

異同資料句番号:00636

00637
読人不知 よみ人しらす (000)

しののめのほからほからとあけゆけはおのかきぬきぬなるそかなしき

しののめの−ほからほからと−あけゆけは−おのかきぬきぬ−なるそかなしき

異同資料句番号:00637

00638
番号外作者 藤原国経朝臣 (999)

曙ぬとて今はの心つくからになといひしらぬ思ひそふらむ

あけぬとて−いまはのこころ−つくからに−なといひしらぬ−おもひそふらむ

異同資料句番号:00638

00639
敏行 としゆきの朝臣 (018)

あけぬとてかへる道にはこきたれて雨も涙もふりそほちつつ

あけぬとて−かへるみちには−こきたれて−あめもなみたも−ふりそほちつつ

異同資料句番号:00639

00640
番号外作者 寵 (999)

しののめの別ををしみ我そまつ鳥よりさきに鳴きはしめつる

しののめの−わかれををしみ−われそまつ−とりよりさきに−なきはしめつる

異同資料句番号:00640

00641
読人不知 よみ人しらす (000)

ほとときす夢かうつつかあさつゆのおきて別れし暁のこゑ

ほとときす−ゆめかうつつか−あさつゆの−おきてわかれし−あかつきのこゑ

異同資料句番号:00641

00642
読人不知 よみ人しらす (000)

玉匣あけは君かなたちぬへみ夜ふかくこしを人見けむかも

たまくしけ−あけはきみかな−たちぬへみ−よふかくこしを−ひとみけむかも

異同資料句番号:00642

00643
千里 大江千里 (023)

けさはしもおきけむ方もしらさりつ思ひいつるそきえてかなしき

けさはしも−おきけむかたも−しらさりつ−おもひいつるそ−きえてかなしき

異同資料句番号:00643

00644
業平 なりひらの朝臣 (017)

ねぬる夜の夢をはかなみまとろめはいやはかなにもなりまさるかな

ねぬるよの−ゆめをはかなみ−まとろめは−いやはかなにも−なりまさるかな

異同資料句番号:00644

00645
読人不知 よみ人しらす (000)

きみやこし我や行きけむおもほえす夢かうつつかねてかさめてか

きみやこし−われやゆきけむ−おもほえす−ゆめかうつつか−ねてかさめてか

異同資料句番号:00645

00646
業平 なりひらの朝臣 (017)

かきくらす心のやみに迷ひにき夢うつつとは世人さためよ

かきくらす−こころのやみに−まよひにき−ゆめうつつとは−よひとさためよ

異同資料句番号:00646

00647
読人不知 よみ人しらす (000)

むはたまのやみのうつつはさたかなる夢にいくらもまさらさりけり

うはたまの−やみのうつつは−さたかなる−ゆめにいくらも−まさらさりけり

異同資料句番号:00647

00648
読人不知 よみ人しらす (000)

さ夜ふけてあまのと渡る月影にあかすも君をあひ見つるかな

さよふけて−あまのとわたる−つきかけに−あかすもきみを−あひみつるかな

異同資料句番号:00648

00649
読人不知 よみ人しらす (000)

君か名もわかなもたてしなにはなるみつともいふなあひきともいはし

きみかなも−わかなもたてし−なにはなる−みつともいふな−あひきともいはし

異同資料句番号:00649

00650
読人不知 よみ人しらす (000)

名とり河せせのむもれ木あらはれは如何にせむとかあひ見そめけむ

なとりかは−せせのうもれき−あらはれは−いかにせむとか−あひみそめけむ

異同資料句番号:00650

00651
読人不知 よみ人しらす (000)

吉野河水の心ははやくともたきのおとにはたてしとそ思ふ

よしのかは−みつのこころは−はやくとも−たきのおとには−たてしとそおもふ

異同資料句番号:00651

00652
読人不知 よみ人しらす (000)

こひしくはしたにをおもへ紫のねすりの衣色にいつなゆめ

こひしくは−したにをおもへ−むらさきの−ねすりのころも−いろにいつなゆめ

異同資料句番号:00652

00653
番号外作者 をののはるかせ (999)

花すすきほにいててこひは名ををしみしたゆふひものむすほほれつつ

はなすすき−ほにいててこひは−なををしみ−したゆふひもの−むすほほれつつ

異同資料句番号:00653

00654
読人不知 よみ人しらす (000)

思ふとちひとりひとりかこひしなはたれによそへてふち衣きむ

おもふとち−ひとりひとりか−こひしなは−たれによそへて−ふちころもきむ

異同資料句番号:00654

00655
番号外作者 たちはなのきよ木 (999)

なきこふる涙に袖のそほちなはぬきかへかてらよるこそはきめ

なきこふる−なみたにそての−そほちなは−ぬきかへかてら−よるこそはきめ

異同資料句番号:00655

00656
小町 こまち (009)

うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人めをよくと見るかわひしさ

うつつには−さもこそあらめ−ゆめにさへ−ひとめをよくと−みるかわひしさ

異同資料句番号:00656

00657
小町 こまち (009)

限なき思ひのままによるもこむゆめちをさへに人はとかめし

かきりなき−おもひのままに−よるもこむ−ゆめちをさへに−ひとはとかめし

異同資料句番号:00657

00658
小町 こまち (009)

夢ちにはあしもやすめすかよへともうつつにひとめ見しことはあらす

ゆめちには−あしもやすめす−かよへとも−うつつにひとめ−みしことはあらす

異同資料句番号:00658

00659
読人不知 よみ人しらす (000)

おもへとも人めつつみのたかけれは河と見なからえこそわたらね

おもへとも−ひとめつつみの−たかけれは−かはとみなから−えこそわたらね

異同資料句番号:00659

00660
読人不知 よみ人しらす (000)

たきつせのはやき心をなにしかも人めつつみのせきととむらむ

たきつせの−はやきこころを−なにしかも−ひとめつつみの−せきととむらむ

異同資料句番号:00660

00661
友則 きのとものり (033)

紅の色にはいてしかくれぬのしたにかよひてこひはしぬとも

くれなゐの−いろにはいてし−かくれぬの−したにかよひて−こひはしぬとも

異同資料句番号:00661

00662
躬恒 みつね (029)

冬の池にすむにほ鳥のつれもなくそこにかよふと人にしらすな

ふゆのいけに−すむにほとりの−つれもなく−そこにかよふと−ひとにしらすな

異同資料句番号:00662

00663
躬恒 みつね (029)

ささのはにおくはつしもの夜をさむみしみはつくとも色にいてめや

ささのはに−おくはつしもの−よをさむみ−しみはつくとも−いろにいてめや

異同資料句番号:00663

00664
読人不知 読人しらす(一説、あふみのうねめ) (000)

山しなのおとはの山のおとにたに人のしるへくわかこひめかも

やましなの−おとはのやまの−おとにたに−ひとのしるへく−わかこひめかも

異同資料句番号:00664

00665
深養父 清原ふかやふ (036)

みつしほの流れひるまをあひかたみみるめの浦によるをこそまて

みつしほの−なかれひるまを−あひかたみ−みるめのうらに−よるをこそまて

異同資料句番号:00665

00666
貞文 平貞文 (161)

白河のしらすともいはしそこきよみ流れて世世にすまむと思へは

しらかはの−しらすともいはし−そこきよみ−なかれてよよに−すまむとおもへは

異同資料句番号:00666

00667
友則 とものり (033)

したにのみこふれはくるし玉のをのたえてみたれむ人なとかめそ

したにのみ−こふれはくるし−たまのをの−たえてみたれむ−ひとなとかめそ

異同資料句番号:00667

00668
友則 とものり (033)

わかこひをしのひかねてはあしひきの山橘の色にいてぬへし

わかこひを−しのひかねては−あしひきの−やまたちはなの−いろにいてぬへし

異同資料句番号:00668

00669
読人不知 よみ人しらす (000)

おほかたはわか名もみなとこきいてなむ世をうみへたに見るめすくなし

おほかたは−わかなもみなと−こきいてなむ−よをうみへたに−みるめすくなし

異同資料句番号:00669

00670
貞文 平貞文 (161)

枕より又しる人もなきこひを涙せきあへすもらしつるかな

まくらより−またしるひとも−なきこひを−なみたせきあへす−もらしつるかな

異同資料句番号:00670

00671
読人不知 よみ人しらす(一説、かきのもとの人まろ) (000)

風ふけは浪打つ岸の松なれやねにあらはれてなきぬへらなり

かせふけは−なみうつきしの−まつなれや−ねにあらはれて−なきぬへらなり

異同資料句番号:00671

00672
読人不知 よみ人しらす (000)

池にすむ名ををし鳥の水をあさみかくるとすれとあらはれにけり

いけにすむ−なををしとりの−みつをあさみ−かくるとすれと−あらはれにけり

異同資料句番号:00672

00673
読人不知 よみ人しらす (000)

逢ふ事は玉の緒はかり名のたつは吉野の河のたきつせのこと

あふことは−たまのをはかり−なのたつは−よしののかはの−たきつせのこと

異同資料句番号:00673

00674
読人不知 よみ人しらす (000)

むらとりのたちにしわか名今更にことなしふともしるしあらめや

むらとりの−たちにしわかな−いまさらに−ことなしむとも−しるしあらめや

異同資料句番号:00674

00675
読人不知 よみ人しらす (000)

君によりわかなは花に春霞野にも山にもたちみちにけり

きみにより−わかなははなに−はるかすみ−のにもやまにも−たちみちにけり

異同資料句番号:00675

00676
伊勢 (019)

しるといへは枕たにせてねしものをちりならぬなのそらにたつらむ

しるといへは−まくらたにせて−ねしものを−ちりならぬなの−そらにたつらむ

異同資料句番号:00676


古今集 巻十四:恋四

00677
読人不知 よみ人しらす (000)

みちのくのあさかのぬまの花かつみかつ見る人にこひやわたらむ

みちのくの−あさかのぬまの−はなかつみ−かつみるひとに−こひやわたらむ

異同資料句番号:00677

00678
読人不知 よみ人しらす (000)

あひ見すはこひしきこともなからましおとにそ人をきくへかりける

あひみすは−こひしきことも−なからまし−おとにそひとを−きくへかりける

異同資料句番号:00678

00679
貫之 つらゆき (035)

いそのかみふるのなか道なかなかに見すはこひしと思はましやは

いそのかみ−ふるのなかみち−なかなかに−みすはこひしと−おもはましやは

異同資料句番号:00679

00680
番号外作者 ふちはらのたたゆき (999)

君てへは見まれ見すまれふしのねのめつらしけなくもゆるわかこひ

きみてへは−みまれみすまれ−ふしのねの−めつらしけなく−もゆるわかこひ

異同資料句番号:00680

00681
伊勢 (019)

夢にたに見ゆとは見えしあさなあさなわかおもかけにはつる身なれは

ゆめにたに−みゆとはみえし−あさなあさな−わかおもかけに−はつるみなれは

異同資料句番号:00681

00682
読人不知 よみ人しらす (000)

いしま行く水の白浪立帰りかくこそは見めあかすもあるかな

いしまゆく−みつのしらなみ−たちかへり−かくこそはみめ−あかすもあるかな

異同資料句番号:00682

00683
読人不知 よみ人しらす (000)

いせのあまのあさなゆふなにかつくてふみるめに人をあくよしもかな

いせのあまの−あさなゆふなに−かつくてふ−みるめにひとを−あくよしもかな

異同資料句番号:00683

00684
友則 とものり (033)

春霞たなひく山のさくら花見れともあかぬ君にもあるかな

はるかすみ−たなひくやまの−さくらはな−みれともあかぬ−きみにもあるかな

異同資料句番号:00684

00685
深養父 ふかやふ (036)

心をそわりなき物と思ひぬる見るものからやこひしかるへき

こころをそ−わりなきものと−おもひぬる−みるものからや−こひしかるへき

異同資料句番号:00685

00686
躬恒 凡河内みつね (029)

かれはてむのちをはしらて夏草の深くも人のおもほゆるかな

かれはてむ−のちをはしらて−なつくさの−ふかくもひとの−おもほゆるかな

異同資料句番号:00686

00687
読人不知 よみ人しらす (000)

あすかかはふちはせになる世なりとも思ひそめてむ人はわすれし

あすかかは−ふちはせになる−よなりとも−おもひそめてむ−ひとはわすれし

異同資料句番号:00687

00688
読人不知 よみ人しらす (000)

思ふてふ事のはのみや秋をへて色もかはらぬ物にはあるらむ

おもふてふ−ことのはのみや−あきをへて−いろもかはらぬ−ものにはあるらむ

異同資料句番号:00688

00689
読人不知 よみ人しらす (000)

さむしろに衣かたしきこよひもや我をまつらむうちのはしひめ

さむしろに−ころもかたしき−こよひもや−われをまつらむ−うちのはしひめ

異同資料句番号:00689

00690
読人不知 よみ人しらす (000)

君やこむ我やゆかむのいさよひにまきのいたともささすねにけり

きみやこむ−われやゆかむの−いさよひに−まきのいたとも−ささすねにけり

異同資料句番号:00690

00691
素性 そせいほうし (021)

今こむといひしはかりに長月のありあけの月をまちいてつるかな

いまこむと−いひしはかりに−なかつきの−ありあけのつきを−まちいてつるかな

異同資料句番号:00691

00692
読人不知 よみ人しらす (000)

月夜よしよよしと人につけやらはこてふににたりまたすしもあらす

つきよよし−よよしとひとに−つけやらは−こてふににたり−またすしもあらす

異同資料句番号:00692

00693
読人不知 よみ人しらす (000)

君こすはねやへもいらしこ紫わかもとゆひにしもはおくとも

きみこすは−ねやへもいらし−こむらさき−わかもとゆひに−しもはおくとも

異同資料句番号:00693

00694
読人不知 よみ人しらす (000)

宮木ののもとあらのこはきつゆをおもみ風をまつこときみをこそまて

みやきのの−もとあらのこはき−つゆをおもみ−かせをまつこと−きみをこそまて

異同資料句番号:00694

00695
読人不知 よみ人しらす (000)

あなこひし今も見てしか山かつのかきほにさける山となてしこ

あなこひし−いまもみてしか−やまかつの−かきほにさける−やまとなてしこ

異同資料句番号:00695

00696
読人不知 よみ人しらす (000)

つのくにのなにはおもはす山しろのとはにあひ見むことをのみこそ

つのくにの−なにはおもはす−やましろの−とはにあひみむ−ことをのみこそ

異同資料句番号:00696

00697
貫之 つらゆき (035)

しきしまややまとにはあらぬ唐衣ころもへすしてあふよしもかな

しきしまや−やまとにはあらぬ−からころも−ころもへすして−あふよしもかな

異同資料句番号:00697

00698
深養父 ふかやふ (036)

こひしとはたかなつけけむことならむしぬとそたたにいふへかりける

こひしとは−たかなつけけむ−ことならむ−しぬとそたたに−いふへかりける

異同資料句番号:00698

00699
読人不知 よみ人しらす (000)

三吉野のおほかはのへの藤波のなみにおもははわかこひめやは

みよしのの−おほかはのへの−ふちなみの−なみにおもはは−わかこひめやは

異同資料句番号:00699

00700
読人不知 よみ人しらす (000)

かくこひむ物とは我も思ひにき心のうらそまさしかりける

かくこひむ−ものとはわれも−おもひにき−こころのうらそ−まさしかりける

異同資料句番号:00700

00701
読人不知 よみ人しらす (000)

あまのはらふみととろかしなる神も思ふなかをはさくるものかは

あまのはら−ふみととろかし−なるかみも−おもふなかをは−さくるものかは

異同資料句番号:00701

00702
読人不知 よみ人しらす(一説、あめのみかと) (000)

梓弓ひきののつつらすゑつひにわか思ふ人に事のしけけむ

あつさゆみ−ひきののつつら−すゑつひに−わかおもふひとに−ことのしけけむ

異同資料句番号:00702

00703
読人不知 よみ人しらす(一説、あふみのうねめ) (000)

夏ひきのてひきのいとをくりかへし事しけくともたえむと思ふな

なつひきの−てひきのいとを−くりかへし−こしとけくとも−たえむとおもふな

異同資料句番号:00703

00704
読人不知 よみ人しらす (000)

さと人の事は夏ののしけくともかれ行くきみにあはさらめやは

さとひとの−ことはなつのの−しけくとも−かれゆくきみに−あはさらめやは

異同資料句番号:00704

00705
業平 在原業平朝臣 (017)

かすかすにおもひおもはすとひかたみ身をしる雨はふりそまされる

かすかすに−おもひおもはす−とひかたみ−みをしるあめは−ふりそまされる

異同資料句番号:00705

00706
読人不知 よみ人しらす (000)

おほぬさのひくてあまたになりぬれはおもへとえこそたのまさりけれ

おほぬさの−ひくてあまたに−なりぬれは−おもへとえこそ−たのまさりけれ

異同資料句番号:00706

00707
業平 なりひらの朝臣 (017)

おほぬさと名にこそたてれなかれてもつひによるせはありてふものを

おほぬさと−なにこそたてれ−なかれても−つひによるせは−ありてふものを

異同資料句番号:00707

00708
読人不知 よみ人しらす (000)

すまのあまのしほやく煙風をいたみおもはぬ方にたなひきにけり

すまのあまの−しほやくけふり−かせをいたみ−おもはぬかたに−たなひきにけり

異同資料句番号:00708

00709
読人不知 よみ人しらす (000)

たまかつらはふ木あまたになりぬれはたえぬ心のうれしけもなし

たまかつら−はふきあまたに−なりぬれは−たえぬこころの−うれしけもなし

異同資料句番号:00709

00710
読人不知 よみ人しらす (000)

たかさとに夜かれをしてか郭公たたここにしもねたるこゑする

たかさとに−よかれをしてか−ほとときす−たたここにしも−ねたるこゑする

異同資料句番号:00710

00711
読人不知 よみ人しらす (000)

いて人は事のみそよき月草のうつし心はいろことにして

いてひとは−ことのみそよき−つきくさの−うつしこころは−いろことにして

異同資料句番号:00711

00712
読人不知 よみ人しらす (000)

いつはりのなき世なりせはいかはかり人のことのはうれしからまし

いつはりの−なきよなりせは−いかはかり−ひとのことのは−うれしからまし

異同資料句番号:00712

00713
読人不知 よみ人しらす (000)

いつはりと思ふものから今さらにたかまことをか我はたのまむ

いつはりと−おもふものから−いまさらに−たかまことをか−われはたのまむ

異同資料句番号:00713

00714
素性 素性法師 (021)

秋風に山のこのはのうつろへは人の心もいかかとそ思ふ

あきかせに−やまのこのはの−うつろへは−ひとのこころも−いかかとそおもふ

異同資料句番号:00714

00715
友則 とものり (033)

蝉のこゑきけはかなしな夏衣うすくや人のならむと思へは

せみのこゑ−きけはかなしな−なつころも−うすくやひとの−ならむとおもへは

異同資料句番号:00715

00716
読人不知 よみ人しらす (000)

空蝉の世の人ことのしけけれはわすれぬもののかれぬへらなり

うつせみの−よのひとことの−しけけれは−わすれぬものの−かれぬへらなり

異同資料句番号:00716

00717
読人不知 よみ人しらす (000)

あかてこそおもはむなかははなれなめそをたにのちのわすれかたみに

あかてこそ−おもはむなかは−はなれなめ−そをたにのちの−わすれかたみに

異同資料句番号:00717

00718
読人不知 よみ人しらす (000)

忘れなむと思ふ心のつくからに有りしよりけにまつそこひしき

わすれなむと−おもふこころの−つくからに−ありしよりけに−まつそこひしき

異同資料句番号:00718

00719
読人不知 よみ人しらす (000)

わすれなむ我をうらむな郭公人の秋にはあはむともせす

わすれなむ−われをうらむな−ほとときす−ひとのあきには−あはむともせす

異同資料句番号:00719

00720
読人不知 よみ人しらす(一説、なかとみのあつま人) (000)

たえすゆくあすかの河のよとみなは心あるとや人のおもはむ

たえすゆく−あすかのかはの−よとみなは−こころあるとや−ひとのおもはむ

異同資料句番号:00720

00721
読人不知 よみ人しらす (000)

よと河のよとむと人は見るらめと流れてふかき心あるものを

よとかはの−よとむとひとは−みるらめと−なかれてふかき−こころあるものを

異同資料句番号:00721

00722
素性 そせい法し (021)

そこひなきふちやはさわく山河のあさきせにこそあたなみはたて

そこひなき−ふちやはさわく−やまかはの−あさきせにこそ−あたなみはたて

異同資料句番号:00722

00723
読人不知 よみ人しらす (000)

紅のはつ花そめの色ふかく思ひし心我わすれめや

くれなゐの−はつはなそめの−いろふかく−おもひしこころ−われわすれめや

異同資料句番号:00723

00724
融 河原左大臣 (014)

みちのくのしのふもちすりたれゆゑにみたれむと思ふ我ならなくに

みちのくの−しのふもちすり−たれゆゑに−みたれむとおもふ−われならなくに

異同資料句番号:00724

00725
読人不知 よみ人しらす (000)

おもふよりいかにせよとか秋風になひくあさちの色ことになる

おもふより−いかにせよとか−あきかせに−なひくあさちの−いろことになる

異同資料句番号:00725

00726
読人不知 よみ人しらす (000)

千千の色にうつろふらめとしらなくに心し秋のもみちならねは

ちちのいろに−うつろふらめと−しらなくに−こころしあきの−もみちならねは

異同資料句番号:00726

00727
小町 小野小町 (009)

あまのすむさとのしるへにあらなくに怨みむとのみ人のいふらむ

あまのすむ−さとのしるへに−あらなくに−うらみむとのみ−ひとのいふらむ

異同資料句番号:00727

00728
番号外作者 しもつけのをむね (999)

くもり日の影としなれる我なれはめにこそ見えね身をははなれす

くもりひの−かけとしなれる−われなれは−めにこそみえね−みをははなれす

異同資料句番号:00728

00729
貫之 つらゆき (035)

色もなき心を人にそめしよりうつろはむとはおもほえなくに

いろもなき−こころをひとに−そめしより−うつろはむとは−おもほえなくに

異同資料句番号:00729

00730
読人不知 よみ人しらす (000)

めつらしき人を見むとやしかもせぬわかしたひものとけわたるらむ

めつらしき−ひとをみむとや−しかもせぬ−わかしたひもの−とけわたるらむ

異同資料句番号:00730

00731
読人不知 よみ人しらす (000)

かけろふのそれかあらぬか春雨のふる日となれはそてそぬれぬる

かけろふの−それかあらぬか−はるさめの−ふるひとなれは−そてそぬれぬる

異同資料句番号:00731

00732
読人不知 よみ人しらす (000)

ほり江こくたななしを舟こきかへりおなし人にやこひわたりなむ

ほりえこく−たななしをふね−こきかへり−おなしひとにや−こひわたりなむ

異同資料句番号:00732

00733
伊勢 (019)

わたつみとあれにしとこを今更にはらははそてやあわとうきなむ

わたつみと−あれにしとこを−いまさらに−はらははそてや−あわとうきなむ

異同資料句番号:00733

00734
貫之 つらゆき (035)

いにしへに猶立帰る心かなこひしきことに物わすれせて

いにしへに−なほたちかへる−こころかな−こひしきことに−ものわすれせて

異同資料句番号:00734

00735
黒主 大伴くろぬし (501)

思ひいててこひしき時ははつかりのなきてわたると人しるらめや

おもひいてて−こひしきときは−はつかりの−なきてわたると−ひとしるらめや

異同資料句番号:00735

00736
番号外作者 典侍藤原よるかの朝臣 (999)

たのめこし事のは今はかへしてむわか身ふるれはおきところなし

たのめこし−ことのはいまは−かへしてむ−わかみふるれは−おきところなし

異同資料句番号:00736

00737
番号外作者 近院の右のおほいまうちきみ (999)

今はとてかへす事のはひろひおきておのかものからかたみとや見む

いまはとて−かへすことのは−ひろひおきて−おのかものから−かたみとやみむ

異同資料句番号:00737

00738
番号外作者 よるかの朝臣 (999)

たまほこの追はつねにもまとはなむ人をとふとも我かとおもはむ

たまほこの−みちはつねにも−まとはなむ−ひとをとふとも−われかとおもはむ

異同資料句番号:00738

00739
読人不知 よみ人しらす (000)

まてといははねてもゆかなむしひて行くこまのあしをれまへのたなはし

まてといはは−ねてもゆかなむ−しひてゆく−こまのあしをれ−まへのたなはし

異同資料句番号:00739

00740
番号外作者 閑院 (999)

相坂のゆふつけ鳥にあらはこそ君かゆききをなくなくも見め

あふさかの−ゆふつけとりに−あらはこそ−きみかゆききを−なくなくもみめ

異同資料句番号:00740

00741
伊勢 (019)

ふるさとにあらぬものからわかために人の心のあれて見ゆらむ

ふるさとに−あらぬものから−わかために−ひとのこころの−あれてみゆらむ

異同資料句番号:00741

00742
番号外作者 寵 (999)

山かつのかきほにはへるあをつつら人はくれともことつてもなし

やまかつの−かきほにはへる−あをつつら−ひとはくれとも−ことつてもなし

異同資料句番号:00742

00743
番号外作者 さかゐのひとさね (999)

おほそらはこひしき人のかたみかは物思ふことになかめらるらむ

おほそらは−こひしきひとの−かたみかは−ものおもふことに−なかめらるらむ

異同資料句番号:00743

00744
読人不知 読人しらす (000)

あふまてのかたみも我はなにせむに見ても心のなくさまなくに

あふまての−かたみもわれは−なにせむに−みてもこころの−なくさまなくに

異同資料句番号:00744

00745
興風 おきかせ (034)

あふまてのかたみとてこそととめけめ涙に浮ふもくつなりけり

あふまての−かたみとてこそ−ととめけめ−なみたにうかふ−もくつなりけり

異同資料句番号:00745

00746
読人不知 よみ人しらす (000)

かたみこそ今はあたなれこれなくはわするる時もあらましものを

かたみこそ−いまはあたなれ−これなくは−わするるときも−あらましものを

異同資料句番号:00746


古今集 巻十五:恋五

00747
業平 在原業平朝臣 (017)

月やあらぬ春や昔の春ならぬわか身ひとつはもとの身にして

つきやあらぬ−はるやむかしの−はるならぬ−わかみひとつは−もとのみにして

異同資料句番号:00747

00748
仲平 藤原なかひらの朝臣 (504)

花すすき我こそしたに思ひしかほにいてて人にむすはれにけり

はなすすき−われこそしたに−おもひしか−ほにいててひとに−むすはれにけり

異同資料句番号:00748

00749
兼輔 藤原かねすけの朝臣 (027)

よそにのみきかましものをおとは河渡るとなしに見なれそめけむ

よそにのみ−きかましものを−おとはかは−わたるとなしに−みなれそめけむ

異同資料句番号:00749

00750
躬恒 凡河内みつね (029)

わかことく我をおもはむ人もかなさてもやうきと世を心みむ

わかことく−われをおもはむ−ひともかな−さてもやうきと−よをこころみむ

異同資料句番号:00750

00751
元方 もとかた (169)

久方のあまつそらにもすまなくに人はよそにそ思ふへらなる

ひさかたの−あまつそらにも−すまなくに−ひとはよそにそ−おもふへらなる

異同資料句番号:00751

00752
読人不知 よみひとしらす (000)

見ても又またも見まくのほしけれはなるるを人はいとふへらなり

みてもまた−またもみまくの−ほしけれは−なるるをひとは−いとふへらなり

異同資料句番号:00752

00753
友則 きのとものり (033)

雲もなくなきたるあさの我なれやいとはれてのみ世をはへぬらむ

くももなく−なきたるあさの−われなれや−いとはれてのみ−よをはへぬらむ

異同資料句番号:00753

00754
読人不知 よみ人しらす (000)

花かたみめならふ人のあまたあれはわすられぬらむかすならぬ身は

はなかたみ−めならふひとの−あまたあれは−わすられぬらむ−かすならぬみは

異同資料句番号:00754

00755
読人不知 よみ人しらす (000)

うきめのみおひて流るる浦なれはかりにのみこそあまはよるらめ

うきめのみ−おひてなかるる−うらなれは−かりにのみこそ−あまはよるらめ

異同資料句番号:00755

00756
伊勢 (019)

あひにあひて物思ふころのわか袖にやとる月さへぬるるかほなる

あひにあひて−ものおもふころの−わかそてに−やとるつきさへ−ぬるるかほなる

異同資料句番号:00756

00757
読人不知 よみ人しらす (000)

秋ならておく白露はねさめするわかた枕のしつくなりけり

あきならて−おくしらつゆは−ねさめする−わかたまくらの−しつくなりけり

異同資料句番号:00757

00758
読人不知 よみ人しらす (000)

すまのあまのしほやき衣をさをあらみまとほにあれや君かきまさぬ

すまのあまの−しほやきころも−をさをあらみ−まとほにあれや−きみかきまさぬ

異同資料句番号:00758

00759
読人不知 よみ人しらす (000)

山しろのよとのわかこもかりにたにこぬ人たのむ我そはかなき

やましろの−よとのわかこも−かりにたに−こぬひとたのむ−われそはかなき

異同資料句番号:00759

00760
読人不知 よみ人しらす (000)

あひ見ねはこひこそまされみなせ河なににふかめて思ひそめけむ

あひみねは−こひこそまされ−みなせかは−なににふかめて−おもひそめけむ

異同資料句番号:00760

00761
読人不知 よみ人しらす (000)

暁のしきのはねかきももはかき君かこぬ夜は我そかすかく

あかつきの−しきのはねかき−ももはかき−きみかこぬよは−われそかすかく

異同資料句番号:00761

00762
読人不知 よみ人しらす (000)

玉かつら今はたゆとや吹く風のおとにも人のきこえさるらむ

たまかつら−いまはたゆとや−ふくかせの−おとにもひとの−きこえさるらむ

異同資料句番号:00762

00763
読人不知 よみ人しらす (000)

わか袖にまたき時雨のふりぬるは君か心に秋やきぬらむ

わかそてに−またきしくれの−ふりぬるは−きみかこころに−あきやきぬらむ

異同資料句番号:00763

00764
読人不知 よみ人しらす (000)

山の井の浅き心もおもはぬに影はかりのみ人の見ゆらむ

やまのゐの−あさきこころも−おもはぬに−かけはかりのみ−ひとのみゆらむ

異同資料句番号:00764

00765
読人不知 よみ人しらす (000)

忘草たねとらましを逢ふ事のいとかくかたき物としりせは

わすれくさ−たねとらましを−あふことの−いとかくかたき−ものとしりせは

異同資料句番号:00765

00766
読人不知 よみ人しらす (000)

こふれとも逢ふ夜のなきは忘草夢ちにさへやおひしけるらむ

こふれとも−あふよのなきは−わすれくさ−ゆめちにさへや−おひしけるらむ

異同資料句番号:00766

00767
読人不知 よみ人しらす (000)

夢にたにあふ事かたくなりゆくは我やいをねぬ人やわするる

ゆめにたに−あふことかたく−なりゆくは−われやいをねぬ−ひとやわするる

異同資料句番号:00767

00768
番号外作者 けむけい法し (999)

もろこしも夢に見しかはちかかりきおもはぬ中そはるけかりける

もろこしも−ゆめにみしかは−ちかかりき−おもはぬなかそ−はるけかりける

異同資料句番号:00768

00769
番号外作者 さたののほる (999)

独のみなかめふるやのつまなれは人を忍ふの草そおひける

ひとりのみ−なかめふるやの−つまなれは−ひとをしのふの−くさそおひける

異同資料句番号:00769

00770
遍昭 僧正へんせう (012)

わかやとは道もなきまてあれにけりつれなき人をまつとせしまに

わかやとは−みちもなきまて−あれにけり−つれなきひとを−まつとせしまに

異同資料句番号:00770

00771
遍昭 僧正へんせう (012)

今こむといひてわかれし朝より思ひくらしのねをのみそなく

いまこむと−いひてわかれし−あしたより−おもひくらしの−ねをのみそなく

異同資料句番号:00771

00772
読人不知 よみ人しらす (000)

こめやとは思ふものからひくらしのなくゆふくれはたちまたれつつ

こめやとは−おもふものから−ひくらしの−なくゆふくれは−たちまたれつつ

異同資料句番号:00772

00773
読人不知 よみ人しらす (000)

今しはとわひにしものをささかにの衣にかかり我をたのむる

いましはと−わひにしものを−ささかにの−ころもにかかり−われをたのむる

異同資料句番号:00773

00774
読人不知 よみ人しらす (000)

いまはこしと思ふものから忘れつつまたるる事のまたもやまぬか

いまはこしと−おもふものから−わすれつつ−またるることの−またもやまぬか

異同資料句番号:00774

00775
読人不知 よみ人しらす (000)

月よにはこぬ人またるかきくもり雨もふらなむわひつつもねむ

つきよには−こぬひとまたる−かきくもり−あめもふらなむ−わひつつもねむ

異同資料句番号:00775

00776
読人不知 よみ人しらす (000)

うゑていにし秋田かるまて見えこねはけさはつかりのねにそなきぬる

うゑていにし−あきたかるまて−みえこねは−けさはつかりの−ねにそなきぬる

異同資料句番号:00776

00777
読人不知 よみ人しらす (000)

こぬ人をまつゆふくれの秋風はいかにふけはかわひしかるらむ

こぬひとを−まつゆふくれの−あきかせは−いかにふけはか−わひしかるらむ

異同資料句番号:00777

00778
読人不知 よみ人しらす (000)

ひさしくもなりにけるかなすみのえの松はくるしき物にそありける

ひさしくも−なりにけるかな−すみのえの−まつはくるしき−ものにそありける

異同資料句番号:00778

00779
兼覧王 かねみのおほきみ (179)

住の江の松ほとひさになりぬれはあしたつのねになかぬ日はなし

すみのえの−まつほとひさに−なりぬれは−あしたつのねに−なかぬひはなし

異同資料句番号:00779

00780
伊勢 (019)

みわの山いかにまち見む年ふともたつぬる人もあらしと思へは

みわのやま−いかにまちみむ−としふとも−たつぬるひとも−あらしとおもへは

異同資料句番号:00780

00781
番号外作者 雲林院のみこ (999)

吹きまよふ野風をさむみ秋はきのうつりも行くか人の心の

ふきまよふ−のかせをさむみ−あきはきの−うつりもゆくか−ひとのこころの

異同資料句番号:00781

00782
小町 をののこまち (009)

今はとてわか身時雨にふりぬれは事のはさへにうつろひにけり

いまはとて−わかみしくれに−ふりぬれは−ことのはさへに−うつろひにけり

異同資料句番号:00782

00783
番号外作者 小野さたき (999)

人を思ふ心のこのはにあらはこそ風のまにまにちりみたれめ

ひとをおもふ−こころのこのはに−あらはこそ−かせのまにまに−ちりもみたれめ

異同資料句番号:00783

00784
番号外作者 きのありつねかむすめ (999)

あま雲のよそにも人のなりゆくかさすかにめには見ゆるものから

あまくもの−よそにもひとの−なりゆくか−さすかにめには−みゆるものから

異同資料句番号:00784

00785
業平 なりひらの朝臣 (017)

ゆきかへりそらにのみしてふる事はわかゐる山の風はやみなり

ゆきかへり−そらにのみして−ふることは−わかゐるやまの−かせはやみなり

異同資料句番号:00785

00786
番号外作者 かけのりのおほきみ (999)

唐衣なれは身にこそまつはれめかけてのみやはこひむと思ひし

からころも−なれはみにこそ−まつはれめ−かけてのみやは−こひむとおもひし

異同資料句番号:00786

00787
友則 とものり (033)

秋風は身をわけてしもふかなくに人の心のそらになるらむ

あきかせは−みをわけてしも−ふかなくに−ひとのこころの−そらになるらむ

異同資料句番号:00787

00788
宗于 源宗于朝臣 (028)

つれもなくなりゆく人の事のはそ秋よりさきのもみちなりける

つれもなく−なりゆくひとの−ことのはそ−あきよりさきの−もみちなりける

異同資料句番号:00788

00789
番号外作者 兵衛 (999)

しての山ふもとを見てそかへりにしつらき人よりまつこえしとて

してのやま−ふもとをみてそ−かへりにし−つらきひとより−まつこえしとて

異同資料句番号:00789

00790
番号外作者 こまちかあね (999)

時すきてかれゆくをののあさちには今は思ひそたえすもえける

ときすきて−かれゆくをのの−あさちには−いまはおもひそ−たえすもえける

異同資料句番号:00790

00791
伊勢 (019)

冬かれののへとわか身を思ひせはもえても春をまたましものを

ふゆかれの−のへとわかみを−おもひせは−もえてもはるを−またましものを

異同資料句番号:00791

00792
友則 とものり (033)

水のあわのきえてうき身といひなから流れて猶もたのまるるかな

みつのあわの−きえてうきみと−いひなから−なかれてなほも−たのまるるかな

異同資料句番号:00792

00793
読人不知 よみ人しらす (000)

みなせ河有りて行く水なくはこそつひにわか身をたえぬと思はめ

みなせかは−ありてゆくみつ−なくはこそ−つひにわかみを−たえぬとおもはめ

異同資料句番号:00793

00794
躬恒 みつね (029)

吉野河よしや人こそつらからめはやくいひてし事はわすれし

よしのかは−よしやひとこそ−つらからめ−はやくいひてし−ことはわすれし

異同資料句番号:00794

00795
読人不知 よみ人しらす (000)

世中の人の心は花そめのうつろひやすき色にそありける

よのなかの−ひとのこころは−はなそめの−うつろひやすき−いろにそありける

異同資料句番号:00795

00796
読人不知 よみ人しらす (000)

心こそうたてにくけれそめさらはうつろふ事もをしからましや

こころこそ−うたてにくけれ−そめさらは−うつろふことも−をしからましや

異同資料句番号:00796

00797
小町 小野小町 (009)

色見えてうつろふ物は世中の人の心の花にそ有りける

いろみえて−うつろふものは−よのなかの−ひとのこころの−はなにそありける

異同資料句番号:00797

00798
読人不知 よみ人しらす (000)

我のみや世をうくひすとなきわひむ人の心の花とちりなは

われのみや−よをうくひすと−なきわひむ−ひとのこころの−はなとちりなは

異同資料句番号:00798

00799
素性 そせい法し (021)

思ふともかれなむ人をいかかせむあかすちりぬる花とこそ見め

おもふとも−かれなむひとを−いかかせむ−あかすちりぬる−はなとこそみめ

異同資料句番号:00799

00800
読人不知 よみ人しらす (000)

今はとて君かかれなはわかやとの花をはひとり見てやしのはむ

いまはとて−きみかかれなは−わかやとの−はなをはひとり−みてやしのはむ

異同資料句番号:00800

00801
宗于 むねゆきの朝臣 (028)

忘草かれもやするとつれもなき人の心にしもはおかなむ

わすれくさ−かれもやすると−つれもなき−ひとのこころに−しもはおかなむ

異同資料句番号:00801

00802
素性 そせい法し (021)

忘草なにをかたねと思ひしはつれなき人の心なりけり

わすれくさ−なにをかたねと−おもひしは−つれなきひとの−こころなりけり

異同資料句番号:00802

00803
素性 そせい法し (021)

秋の田のいねてふ事もかけなくに何をうしとか人のかるらむ

あきのたの−いねてふことも−かけなくに−なにをうしとか−ひとのかるらむ

異同資料句番号:00803

00804
貫之 きのつらゆき (035)

はつかりのなきこそわたれ世中の人の心の秋しうけれは

はつかりの−なきこそわたれ−よのなかの−ひとのこころの−あきしうけれは

異同資料句番号:00804

00805
読人不知 よみ人しらす (000)

あはれともうしとも物を思ふ時なとか涙のいとなかるらむ

あはれとも−うしともものを−おもふとき−なにかなみたの−いとなかるらむ

異同資料句番号:00805

00806
読人不知 よみ人しらす (000)

身をうしと思ふにきえぬ物なれはかくてもへぬるよにこそ有りけれ

みをうしと−おもふにきえぬ−ものなれは−かくてもへぬる−よにこそありけれ

異同資料句番号:00806

00807
番号外作者 典侍藤原直子朝臣 (999)

あまのかるもにすむむしの我からとねをこそなかめ世をはうらみし

あまのかる−もにすむむしの−われからと−ねをこそなかめ−よをはうらみし

異同資料句番号:00807

00808
番号外作者 いなは (999)

あひ見ぬもうきもわか身のから衣思ひしらすもとくるひもかな

あひみぬも−うきもわかみの−からころも−おもひしらすも−とくるひもかな

異同資料句番号:00808

00809
番号外作者 すかののたたおむ (999)

つれなきを今はこひしとおもへとも心よわくもおつる涙か

つれなきを−いまはこひしと−おもへとも−こころよわくも−おつるなみたか

異同資料句番号:00809

00810
伊勢 (019)

人しれすたえなましかはわひつつもなき名そとたにいはましものを

ひとしれす−たえなましかは−わひつつも−なきなそとたに−いはましものを

異同資料句番号:00810

00811
読人不知 よみ人しらす (000)

それをたに思ふ事とてわかやとを見きとないひそ人のきかくに

それをたに−おもふこととて−わかやとを−みきとないひそ−ひとのきかくに

異同資料句番号:00811

00812
読人不知 よみ人しらす (000)

逢ふ事のもはらたえぬる時にこそ人のこひしきこともしりけれ

あふことの−もはらたえぬる−ときにこそ−ひとのこひしき−こともしりけれ

異同資料句番号:00812

00813
読人不知 よみ人しらす (000)

わひはつる時さへ物の悲しきはいつこをしのふ涙なるらむ

わひはつる−ときさへものの−かなしきは−いつこをしのふ−なみたなるらむ

異同資料句番号:00813

00814
興風 藤原おきかせ (034)

怨みてもなきてもいはむ方そなきかかみに見ゆる影ならすして

うらみても−なきてもいはむ−かたそなき−かかみにみゆる−かけならすして

異同資料句番号:00814

00815
読人不知 よみ人しらす (000)

夕されは人なきとこを打ちはらひなけかむためとなれるわかみか

ゆふされは−ひとなきとこを−うちはらひ−なけかむためと−なれるわかみか

異同資料句番号:00815

00816
読人不知 よみ人しらす (000)

わたつみのわか身こす浪立返りあまのすむてふうらみつるかな

わたつみの−わかみこすなみ−たちかへり−あまのすむてふ−うらみつるかな

異同資料句番号:00816

00817
読人不知 よみ人しらす (000)

あらを田をあらすきかへしかへしても人の心を見てこそやまめ

あらをたを−あらすきかへし−かへしても−ひとのこころを−みてこそやまめ

異同資料句番号:00817

00818
読人不知 よみ人しらす (000)

有そ海の浜のまさことたのめしは忘るる事のかすにそ有りける

ありそうみの−はまのまさこと−たのめしは−わするることの−かすにそありける

異同資料句番号:00818

00819
読人不知 よみ人しらす (000)

葦辺より雲ゐをさして行く雁のいやとほさかるわか身かなしも

あしへより−くもゐをさして−ゆくかりの−いやとほさかる−わかみかなしも

異同資料句番号:00819

00820
読人不知 よみ人しらす (000)

しくれつつもみつるよりも事のはの心の秋にあふそわひしき

しくれつつ−もみつるよりも−ことのはの−こころのあきに−あふそわひしき

異同資料句番号:00820

00821
読人不知 よみ人しらす (000)

秋風のふきとふきぬるむさしのはなへて草はの色かはりけり

あきかせの−ふきとふきぬる−むさしのは−なへてくさはの−いろかはりけり

異同資料句番号:00821

00822
小町 (009)

あきかせにあふたのみこそかなしけれわか身むなしくなりぬと思へは

あきかせに−あふたのみこそ−かなしけれ−わかみむなしく−なりぬとおもへは

異同資料句番号:00822

00823
貞文 平貞文 (161)

秋風の吹きうらかへすくすのはのうらみても猶うらめしきかな

あきかせの−ふきうらかへす−くすのはの−うらみてもなほ−うらめしきかな

異同資料句番号:00823

00824
読人不知 よみ人しらす (000)

あきといへはよそにそききしあた人の我をふるせる名にこそ有りけれ

あきといへは−よそにそききし−あたひとの−われをふるせる−なにこそありけれ

異同資料句番号:00824

00825
読人不知 よみ人しらす (000)

わすらるる身をうちはしの中たえて人もかよはぬ年そへにける

わすらるる−みをうちはしの−なかたえて−ひともかよはぬ−としそへにける

異同資料句番号:00825

00826
是則 坂上これのり (031)

あふ事をなからのはしのなからへてこひ渡るまに年そへにける

あふことを−なからのはしの−なからへて−こひわたるまに−としそへにける

異同資料句番号:00826

00827
友則 とものり (033)

うきなからけぬるあわともなりななむ流れてとたにたのまれぬ身は

うきなから−けぬるあわとも−なりななむ−なかれてとたに−たのまれぬみは

異同資料句番号:00827

00828
読人不知 読人しらす (000)

流れては妹背の山のなかにおつるよしのの河のよしや世中

なかれては−いもせのやまの−なかにおつる−よしののかはの−よしやよのなか

異同資料句番号:00828


古今集 巻十六:哀傷

00829
篁 小野たかむらの朝臣 (011)

なく涙雨とふらなむわたり河水まさりなはかへりくるかに

なくなみた−あめとふらなむ−わたりかは−みつまさりなは−かへりくるかに

異同資料句番号:00829

00830
素性 そせい法し (021)

ちの涙おちてそたきつ白河は君か世まての名にこそ有りけれ

ちのなみた−おちてそたきつ−しらかはは−きみかよまての−なにこそありけれ

異同資料句番号:00830

00831
番号外作者 僧都勝延 (999)

空蝉はからを見つつもなくさめつ深草の山煙たにたて

うつせみは−からをみつつも−なくさめつ−ふかくさのやま−けふりたにたて

異同資料句番号:00831

00832
番号外作者 かむつけのみねを (999)

ふかくさののへの桜し心あらはことしはかりはすみそめにさけ

ふかくさの−のへのさくらし−こころあらは−ことしはかりは−すみそめにさけ

異同資料句番号:00832

00833
友則 きのとものり (033)

ねても見ゆねても見えけりおほかたは空蝉の世そ夢には有りける

ねてもみゆ−ねてもみえけり−おほかたは−うつせみのよそ−ゆめにはありける

異同資料句番号:00833

00834
貫之 紀つらゆき (035)

夢とこそいふへかりけれ世中にうつつある物と思ひけるかな

ゆめとこそ−いふへかりけれ−よのなかに−うつつあるものと−おもひけるかな

異同資料句番号:00834

00835
忠峯 みふのたたみね (030)

ぬるかうちに見るをのみやは夢といはむはかなき世をもうつつとは見す

ぬるかうちに−みるをのみやは−ゆめといはむ−はかなきよをも−うつつとはみす

異同資料句番号:00835

00836
忠峯 みふのたたみね (030)

せをせけはふちとなりてもよとみけりわかれをとむるしからみそなき

せをせけは−ふちとなりても−よとみけり−わかれをとむる−しからみそなき

異同資料句番号:00836

00837
番号外作者 閑院 (999)

さきたたぬくいのやちたひかなしきはなかるる水のかへりこぬなり

さきたたぬ−くいのやちたひ−かなしきは−なかるるみつの−かへりこぬなり

異同資料句番号:00837

00838
貫之 つらゆき (035)

あすしらぬわか身とおもへとくれぬまのけふは人こそかなしかりけれ

あすしらぬ−わかみとおもへと−くれぬまの−けふはひとこそ−かなしかりけれ

異同資料句番号:00838

00839
忠峯 たたみね (030)

時しもあれ秋やは人のわかるへきあるを見るたにこひしきものを

ときしもあれ−あきやはひとの−わかるへき−あるをみるたに−こひしきものを

異同資料句番号:00839

00840
躬恒 凡河内みつね (029)

神な月時雨にぬるるもみちははたたわひ人のたもとなりけり

かみなつき−しくれにぬるる−もみちはは−たたわひひとの−たもとなりけり

異同資料句番号:00840

00841
忠峯 たたみね (030)

ふち衣はつるるいとはわひ人の涙の玉のをとそなりける

ふちころも−はつるるいとは−わひひとの−なみたのたまの−をとそなりける

異同資料句番号:00841

00842
貫之 つらゆき (035)

あさ露のおくての山田かりそめにうき世中を思ひぬるかな

あさつゆの−おくてのやまた−かりそめに−うきよのなかを−おもひぬるかな

異同資料句番号:00842

00843
忠峯 たたみね (030)

すみそめの君かたもとは雲なれやたえす涙の雨とのみふる

すみそめの−きみかたもとは−くもなれや−たえすなみたの−あめとのみふる

異同資料句番号:00843

00844
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山へに今はすみそめの衣の袖はひる時もなし

あしひきの−やまへにいまは−すみそめの−ころものそての−ひるときもなし

異同資料句番号:00844

00845
篁 たかむらの朝臣 (011)

水のおもにしつく花の色さやかにも君かみかけのおもほゆるかな

みつのおもに−しつくはなのいろ−さやかにも−きみかみかけの−おもほゆるかな

異同資料句番号:00845

00846
康秀 文屋やすひて (022)

草ふかき霞の谷に影かくしてるひのくれしけふにやはあらぬ

くさふかき−かすみのたにに−かけかくし−てるひのくれし−けふにやはあらぬ

異同資料句番号:00846

00847
遍昭 僧正遍昭 (012)

みな人は花の衣になりぬなりこけのたもとよかわきたにせよ

みなひとは−はなのころもに−なりぬなり−こけのたもとよ−かわきたにせよ

異同資料句番号:00847

00848
番号外作者 近院右のおほいまうちきみ (999)

うちつけにさひしくもあるかもみちはもぬしなきやとは色なかりけり

うちつけに−さひしくもあるか−もみちはも−ぬしなきやとは−いろなかりけり

異同資料句番号:00848

00849
貫之 つらゆき (035)

郭公けさなくこゑにおとろけは君を別れし時にそありける

ほとときす−けさなくこゑに−おとろけは−きみにわかれし−ときにそありける

異同資料句番号:00849

00850
番号外作者 きのもちゆき (999)

花よりも人こそあたになりにけれいつれをさきにこひむとか見し

はなよりも−ひとこそあたに−なりにけれ−いつれをさきに−こひむとかみし

異同資料句番号:00850

00851
貫之 つらゆき (035)

色もかも昔のこさににほへともうゑけむ人の影そこひしき

いろもかも−むかしのこさに−にほへとも−うゑけむひとの−かけそこひしき

異同資料句番号:00851

00852
貫之 つらゆき (035)

君まさて煙たえにししほかまの浦さひしくも見え渡るかな

きみまさて−けふりたえにし−しほかまの−うらさひしくも−みえわたるかな

異同資料句番号:00852

00853
番号外作者 みはるのありすけ (999)

きみかうゑしひとむらすすき虫のねのしけきのへともなりにけるかな

きみかうゑし−ひとむらすすき−むしのねの−しけきのへとも−なりにけるかな

異同資料句番号:00853

00854
友則 とものり (033)

ことならは事のはさへもきえななむ見れは涙のたきまさりけり

ことならは−ことのはさへも−きえななむ−みれはなみたの−たきまさりけり

異同資料句番号:00854

00855
読人不知 よみ人しらす (000)

なき人のやとにかよはは郭公かけてねにのみなくとつけなむ

なきひとの−やとにかよはは−ほとときす−かけてねにのみ−なくとつけなむ

異同資料句番号:00855

00856
読人不知 よみ人しらす (000)

誰見よと花さけるらむ白雲のたつのとはやくなりにしものを

たれみよと−はなさけるらむ−しらくもの−たつのとはやく−なりにしものを

異同資料句番号:00856

00857
番号外作者 閑院の五のみこ (999)

かすかすに我をわすれぬものならは山の霞をあはれとは見よ

かすかすに−われをわすれぬ−ものならは−やまのかすみを−あはれとはみよ

異同資料句番号:00857

00858
読人不知 よみ人しらす (000)

こゑをたにきかてわかるるたまよりもなきとこにねむ君そかなしき

こゑをたに−きかてわかるる−たまよりも−なきとこにねむ−きみそかなしき

異同資料句番号:00858

00859
千里 大江千里 (023)

もみちはを風にまかせて見るよりもはかなき物はいのちなりけり

もみちはを−かせにまかせて−みるよりも−はかなきものは−いのちなりけり

異同資料句番号:00859

00860
番号外作者 藤原これもと (999)

つゆをなとあたなる物と思ひけむわか身も草におかぬはかりを

つゆをなと−あたなるものと−おもひけむ−わかみもくさに−おかぬはかりを

異同資料句番号:00860

00861
業平 なりひらの朝臣 (017)

つひにゆくみちとはかねてききしかときのふけふとはおもはさりしを

つひにゆく−みちとはかねて−ききしかと−きのふけふとは−おもはさりしを

異同資料句番号:00861

00862
番号外作者 在原しけはる (999)

かりそめのゆきかひちとそ思ひこし今はかきりのかとてなりけり

かりそめの−ゆきかひちとそ−おもひこし−いまはかきりの−かとてなりけり

異同資料句番号:00862


古今集 巻十七:雑上

00863
読人不知 よみ人しらす (000)

わかうへに露そおくなるあまの河とわたる舟のかいのしつくか

わかうへに−つゆそおくなる−あまのかは−とわたるふねの−かいのしつくか

異同資料句番号:00863

00864
読人不知 よみ人しらす (000)

思ふとちまとゐせる夜は唐錦たたまくをしき物にそありける

おもふとち−まとゐせるよは−からにしき−たたまくをしき−ものにそありける

異同資料句番号:00864

00865
読人不知 よみ人しらす (000)

うれしきをなににつつまむ唐衣たもとゆたかにたてといはましを

うれしきを−なににつつまむ−からころも−たもとゆたかに−たてといはましを

異同資料句番号:00865

00866
読人不知 よみ人しらす(一説、さきのおほいまうち君) (000)

限なき君かためにとをる花はときしもわかぬ物にそ有りける

かきりなき−きみかためにと−をるはなは−ときしもわかぬ−ものにそありける

異同資料句番号:00866

00867
読人不知 よみ人しらす (000)

紫のひともとゆゑにむさしのの草はみなからあはれとそ見る

むらさきの−ひともとゆゑに−むさしのの−くさはみなから−あはれとそみる

異同資料句番号:00867

00868
業平 なりひらの朝臣 (017)

紫の色こき時はめもはるに野なる草木そわかれさりける

むらさきの−いろこきときは−めもはるに−のなるくさきそ−わかれさりける

異同資料句番号:00868

00869
番号外作者 近院右のおほいまうちきみ (999)

色なしと人や見るらむ昔よりふかき心にそめてしものを

いろなしと−ひとやみるらむ−むかしより−ふかきこころに−そめてしものを

異同資料句番号:00869

00870
番号外作者 ふるのいまみち (999)

日のひかりやふしわかねはいそのかみふりにしさとに花もさきけり

ひのひかり−やふしわかねは−いそのかみ−ふりにしさとに−はなもさきけり

異同資料句番号:00870

00871
業平 なりひらの朝臣 (017)

おほはらやをしほの山もけふこそは神世の事も思ひいつらめ

おほはらや−をしほのやまも−けふこそは−かみよのことも−おもひいつらめ

異同資料句番号:00871

00872
遍昭 よしみねのむねさた (012)

あまつかせ雲のかよひち吹きとちよをとめのすかたしはしととめむ

あまつかせ−くものかよひち−ふきとちよ−をとめのすかた−しはしととめむ

異同資料句番号:00872

00873
融 河原の左のおほいまうちきみ (014)

ぬしやたれとへとしら玉いはなくにさらはなへてやあはれとおもはむ

ぬしやたれ−とへとしらたま−いはなくに−さらはなへてや−あはれとおもはむ

異同資料句番号:00873

00874
敏行 としゆきの朝臣 (018)

玉たれのこかめやいつらこよろきのいその浪わけおきにいてにけり

たまたれの−こかめやいつら−こよろきの−いそのなみわけ−おきにいてにけり

異同資料句番号:00874

00875
番号外作者 けむけいほうし (999)

かたちこそみ山かくれのくち木なれ心は花になさはなりなむ

かたちこそ−みやまかくれの−くちきなれ−こころははなに−なさはなりなむ

異同資料句番号:00875

00876
友則 きのとものり (033)

蝉のはのよるの衣はうすけれとうつりかこくもにほひぬるかな

せみのはの−よるのころもは−うすけれと−うつりかこくも−にほひぬるかな

異同資料句番号:00876

00877
読人不知 よみ人しらす (000)

おそくいつる月にもあるかな葦引の山のあなたもをしむへらなり

おそくいつる−つきにもあるかな−あしひきの−やまのあなたも−をしむへらなり

異同資料句番号:00877

00878
読人不知 よみ人しらす (000)

わか心なくさめかねつさらしなやをはすて山にてる月を見て

わかこころ−なくさめかねつ−さらしなや−をはすてやまに−てるつきをみて

異同資料句番号:00878

00879
業平 なりひらの朝臣 (017)

おほかたは月をもめてしこれそこのつもれは人のおいとなるもの

おほかたは−つきをもめてし−これそこの−つもれはひとの−おいとなるもの

異同資料句番号:00879

00880
貫之 きのつらゆき (035)

かつ見れとうとくもあるかな月影のいたらぬさともあらしと思へは

かつみれと−うとくもあるかな−つきかけの−いたらぬさとも−あらしとおもへは

異同資料句番号:00880

00881
貫之 きのつらゆき (035)

ふたつなき物と思ひしをみなそこに山のはならていつる月かけ

ふたつなき−ものとおもひしを−みなそこに−やまのはならて−いつるつきかけ

異同資料句番号:00881

00882
読人不知 よみ人しらす (000)

あまの河雲のみをにてはやけれはひかりととめす月そなかるる

あまのかは−くものみをにて−はやけれは−ひかりととめす−つきそなかるる

異同資料句番号:00882

00883
読人不知 よみ人しらす (000)

あかすして月のかくるる山本はあなたおもてそこひしかりける

あかすして−つきのかくるる−やまもとは−あなたおもてそ−こひしかりける

異同資料句番号:00883

00884
業平 なりひらの朝臣 (017)

あかなくにまたきも月のかくるるか山のはにけていれすもあらなむ

あかなくに−またきもつきの−かくるるか−やまのはにけて−いれすもあらなむ

異同資料句番号:00884

00885
番号外作者 あま敬信 (999)

おほそらをてりゆく月しきよけれは雲かくせともひかりけなくに

おほそらを−てりゆくつきし−きよけれは−くもかくせとも−ひかりけなくに

異同資料句番号:00885

00886
読人不知 よみ人しらす (000)

いそのかみふるからをののもとかしは本の心はわすられなくに

いそのかみ−ふるからをのの−もとかしは−もとのこころは−わすられなくに

異同資料句番号:00886

00887
読人不知 よみ人しらす (000)

いにしへの野中のし水ぬるけれと本の心をしる人そくむ

いにしへの−のなかのしみつ−ぬるけれと−もとのこころを−しるひとそくむ

異同資料句番号:00887

00888
読人不知 よみ人しらす (000)

いにしへのしつのをたまきいやしきもよきもさかりは有りしものなり

いにしへの−しつのをたまき−いやしきも−よきもさかりは−ありしものなり

異同資料句番号:00888

00889
読人不知 よみ人しらす (000)

今こそあれ我も昔はをとこ山さかゆく時も有りこしものを

いまこそあれ−われもむかしは−をとこやま−さかゆくときも−ありこしものを

異同資料句番号:00889

00890
読人不知 よみ人しらす (000)

世中にふりぬる物はつのくにのなからのはしと我となりけり

よのなかに−ふりぬるものは−つのくにの−なからのはしと−われとなりけり

異同資料句番号:00890

00891
読人不知 よみ人しらす (000)

ささのはにふりつむ雪のうれをおもみ本くたちゆくわかさかりはも

ささのはに−ふりつむゆきの−うれをおもみ−もとくたちゆく−わかさかりはも

異同資料句番号:00891

00892
読人不知 よみ人しらす (000)

おほあらきのもりのした草おいぬれは駒もすさめすかる人もなし

おほあらきの−もりのしたくさ−おいぬれは−こまもすさへす−かるひともなし

異同資料句番号:00892

00893
読人不知 よみ人しらす (000)

かそふれはとまらぬ物を年といひてことしはいたくおいそしにける

かそふれは−とまらぬものを−としといひて−ことしはいたく−おいそしにける

異同資料句番号:00893

00894
読人不知 よみ人しらす (000)

おしてるやなにはのみつにやくしほのからくも我はおいにけるかな

おしてるや−なにはのみつに−やくしほの−からくもわれは−おいにけるかな

異同資料句番号:00894

00895
読人不知 よみ人しらす (000)

おいらくのこむとしりせはかとさしてなしとこたへてあはさらましを

おいらくの−こむとしりせは−かとさして−なしとこたへて−あはさらましを

異同資料句番号:00895

00896
読人不知 よみ人しらす (000)

さかさまに年もゆかなむとりもあへすすくるよはひやともにかへると

さかさまに−としもゆかなむ−とりもあへす−すくるよはひや−ともにかへると

異同資料句番号:00896

00897
読人不知 よみ人しらす (000)

とりとむる物にしあらねは年月をあはれあなうとすくしつるかな

とりとむる−ものにしあらねは−としつきを−あはれあなうと−すくしつるかな

異同資料句番号:00897

00898
読人不知 よみ人しらす (000)

ととめあへすむへもとしとはいはれけりしかもつれなくすくるよはひか

ととめあへす−うへもとしとは−いはれけり−しかもつれなく−すくるよはひか

異同資料句番号:00898

00899
読人不知 よみ人しらす(一説、おほとものくろぬし) (000)

鏡山いさ立ちよりて見てゆかむ年へぬる身はおいやしぬると

かかみやま−いさたちよりて−みてゆかむ−としへぬるみは−おいやしぬると

異同資料句番号:00899

00900
番号外作者 業平朝臣のははのみこ (999)

老いぬれはさらぬ別もありといへはいよいよ見まくほしき君かな

おいぬれは−さらぬわかれも−ありといへは−いよいよみまく−ほしききみかな

異同資料句番号:00900

00901
業平 なりひらの朝臣 (017)

世中にさらぬ別のなくもかな千世もとなけく人のこのため

よのなかに−さらぬわかれの−なくもかな−ちよもとなけく−ひとのこのため

異同資料句番号:00901

00902
棟梁 在原むねやな (180)

白雪のやへふりしけるかへる山かへるかへるもおいにけるかな

しらゆきの−やへふりしける−かへるやま−かへるかへるも−おいにけるかな

異同資料句番号:00902

00903
敏行 としゆきの朝臣 (018)

おいぬとてなとかわか身をせめきけむおいすはけふにあはましものか

おいぬとて−なとかわかみを−せめきけむ−おいすはけふに−あはましものか

異同資料句番号:00903

00904
読人不知 よみ人しらす (000)

ちはやふる宇治の橋守なれをしそあはれとは思ふ年のへぬれは

ちはやふる−うちのはしもり−なれをしそ−あはれとはおもふ−としのへぬれは

異同資料句番号:00904

00905
読人不知 よみ人しらす (000)

我見てもひさしく成りぬ住の江の岸の姫松いくよへぬらむ

われみても−ひさしくなりぬ−すみのえの−きしのひめまつ−いくよへぬらむ

異同資料句番号:00905

00906
読人不知 よみ人しらす (000)

住吉の岸のひめ松人ならはいく世かへしととはましものを

すみよしの−きしのひめまつ−ひとならは−いくよかへしと−とはましものを

異同資料句番号:00906

00907
読人不知 よみ人しらす(一説、柿本人麿) (000)

梓弓いそへのこ松たか世にかよろつ世かねてたねをまきけむ

あつさゆみ−いそへのこまつ−たかよにか−よろつよかねて−たねをまきけむ

異同資料句番号:00907

00908
読人不知 よみ人しらす (000)

かくしつつ世をやつくさむ高砂のをのへにたてる松ならなくに

かくしつつ−よをやつくさむ−たかさこの−をのへにたてる−まつならなくに

異同資料句番号:00908

00909
興風 藤原おきかせ (034)

誰をかもしる人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

たれをかも−しるひとにせむ−たかさこの−まつもむかしの−ともならなくに

異同資料句番号:00909

00910
読人不知 よみ人しらす (000)

わたつ海のおきつしほあひにうかふあわのきえぬものからよる方もなし

わたつうみの−おきつしほあひに−うかふあわの−きえぬものから−よるかたもなし

異同資料句番号:00910

00911
読人不知 よみ人しらす (000)

わたつ海のかさしにさせる白妙の浪もてゆへる淡路しま山

わたつうみの−かさしにさせる−しろたへの−なみもてゆへる−あはちしまやま

異同資料句番号:00911

00912
読人不知 よみ人しらす (000)

わたの原よせくる浪のしはしはも見まくのほしき玉津島かも

わたのはら−よせくるなみの−しはしはも−みまくのほしき−たまつしまかも

異同資料句番号:00912

00913
読人不知 よみ人しらす (000)

なにはかたしほみちくらしあま衣たみのの島にたつなき渡る

なにはかた−しほみちくらし−あまころも−たみののしまに−たつなきわたる

異同資料句番号:00913

00914
忠房 藤原たたふさ (182)

君を思ひおきつのはまになくたつの尋ねくれはそありとたにきく

きみをおもひ−おきつのはまに−なくたつの−たつねくれはそ−ありとたにきく

異同資料句番号:00914

00915
貫之 つらゆき (035)

おきつ浪たかしのはまの浜松の名にこそ君をまちわたりつれ

おきつなみ−たかしのはまの−はままつの−なにこそきみを−まちわたりつれ

異同資料句番号:00915

00916
貫之 つらゆき (035)

なにはかたおふるたまもをかりそめのあまとそ我はなりぬへらなる

なにはかた−おふるたまもを−かりそめの−あまとそわれは−なりぬへらなる

異同資料句番号:00916

00917
忠峯 みふのたたみね (030)

すみよしとあまはつくともなかゐすな人忘草おふといふなり

すみよしと−あまはつくとも−なかゐすな−ひとわすれくさ−おふといふなり

異同資料句番号:00917

00918
貫之 つらゆき (035)

あめによりたみのの島をけふゆけと名にはかくれぬ物にそ有りける

あめにより−たみののしまを−けふゆけと−なにはかくれぬ−ものにそありける

異同資料句番号:00918

00919
貫之 法皇 (035)

あしたつのたてる河辺を吹く風によせてかへらぬ浪かとそ見る

あしたつの−たてるかはへを−ふくかせに−よせてかへらぬ−なみかとそみる

異同資料句番号:00919

00920
伊勢 (019)

水のうへにうかへる舟の君ならはここそとまりといはましものを

みつのうへに−うかへるふねの−きみならは−ここそとまりと−いはましものを

異同資料句番号:00920

00921
番号外作者 真せいほうし (999)

宮こまてひひきかよへるからことは浪のをすけてそひきける

みやこまて−ひひきかよへる−からことは−なみのをすけて−かせそひきける

異同資料句番号:00921

00922
行平 在原行平朝臣 (016)

こきちらすたきの白玉ひろひおきて世のうき時の涙にそかる

こきちらす−たきのしらいと−ひろひおきて−よのうきときの−なみたにそかる

異同資料句番号:00922

00923
業平 なりひらの朝臣 (017)

ぬきみたる人こそあるらし白玉のまなくもちるか袖のせはきに

ぬきみたる−ひとこそあるらし−しらたまの−まなくもちるか−そてのせはきに

異同資料句番号:00923

00924
番号外作者 承均法師 (999)

たかためにひきてさらせるぬのなれや世をへて見れととる人もなき

たかために−ひきてさらせる−ぬのなれや−よをへてみれと−とるひとのなき

異同資料句番号:00924

00925
番号外作者 神たい法し (999)

きよたきのせせのしらいとくりためて山わけ衣おりてきましを

きよたきの−せせのしらいと−くりためて−やまわけころも−おりてきましを

異同資料句番号:00925

00926
伊勢 (019)

たちぬはぬきぬきし人もなきものをなに山姫のぬのさらすらむ

たちぬはぬ−きぬきしひとも−なきものを−なにやまひめの−ぬのさらすらむ

異同資料句番号:00926

00927
番号外作者 たちはなのなかもり (999)

ぬしなくてさらせるぬのをたなはたにわか心とやけふはかさまし

ぬしなくて−さらせるぬのを−たなはたに−わかこころとや−けふはかさまし

異同資料句番号:00927

00928
忠峯 たたみね (030)

おちたきつたきのみなかみとしつもりおいにけらしなくろきすちなし

おちたきつ−たきのみなかみ−としつもり−おいにけらしな−くろきすちなし

異同資料句番号:00928

00929
躬恒 みつね (029)

風ふけと所もさらぬ白雲はよをへておつる水にそ有りける

かせふけと−ところもさらぬ−しらくもは−よをへておつる−みつにそありける

異同資料句番号:00929

00930
番号外作者 三条の町 (999)

おもひせく心の内のたきなれやおつとは見れとおとのきこえぬ

おもひせく−こころのうちの−たきなれや−おつとはみれと−おとのきこえぬ

異同資料句番号:00930

00931
貫之 つらゆき (035)

さきそめし時よりのちはうちはへて世は春なれや色のつねなる

さきそめし−ときよりのちは−うちはへて−よははるなれや−いろのつねなる

異同資料句番号:00931

00932
是則 坂上これのり (031)

かりてほす山田のいねのこきたれてなきこそわたれ秋のうけれは

かりてほす−やまたのいねの−こきたれて−なきこそわたれ−あきのうけれは

異同資料句番号:00932


古今集 巻十八:雑下

00933
読人不知 読人しらす (000)

世中はなにかつねなるあすかかはきのふのふちそけふはせになる

よのなかは−なにかつねなる−あすかかは−きのふのふちそ−けふはせになる

異同資料句番号:00933

00934
読人不知 読人しらす (000)

いく世しもあらしわか身をなそもかくあまのかるもに思ひみたるる

いくよしも−あらしわかみを−なそもかく−あまのかるもに−おもひみたるる

異同資料句番号:00934

00935
読人不知 読人しらす (000)

雁のくる峰の朝霧はれすのみ思ひつきせぬ世中のうさ

かりのくる−みねのあさきり−はれすのみ−おもひつきせぬ−よのなかのうさ

異同資料句番号:00935

00936
篁 小野たかむらの朝臣 (011)

しかりとてそむかれなくに事しあれはまつなけかれぬあなう世中

しかりとて−そむかれなくに−ことしあれは−まつなけかれぬ−あなうよのなか

異同資料句番号:00936

00937
番号外作者 をののさたき (999)

宮こ人いかかととはは山たかみはれぬくもゐにわふとこたへよ

みやこひと−いかかととはは−やまたかみ−はれぬくもゐに−わふとこたへよ

異同資料句番号:00937

00938
小町 小野小町 (009)

わひぬれは身をうき草のねをたえてさそふ水あらはいなむとそ思ふ

わひぬれは−みをうきくさの−ねをたえて−さそふみつあらは−いなむとそおもふ

異同資料句番号:00938

00939
小町 小野小町 (009)

あはれてふ事こそうたて世中を思ひはなれぬほたしなりけれ

あはれてふ−ことこそうたて−よのなかを−おもひはなれぬ−ほたしなりけれ

異同資料句番号:00939

00940
読人不知 よみ人しらす (000)

あはれてふ事のはことにおくつゆは昔をこふる涙なりけり

あはれてふ−ことのはことに−おくつゆは−むかしをこふる−なみたなりけり

異同資料句番号:00940

00941
読人不知 よみ人しらす (000)

世中のうきもつらきもつけなくにまつしる物はなみたなりけり

よのなかの−うきもつらきも−つけなくに−まつしるものは−なみたなりけり

異同資料句番号:00941

00942
読人不知 よみ人しらす (000)

世中は夢かうつつかうつつとも夢ともしらす有りてなけれは

よのなかは−ゆめかうつつか−うつつとも−ゆめともしらす−ありてなけれは

異同資料句番号:00942

00943
読人不知 よみ人しらす (000)

よのなかにいつらわか身のありてなしあはれとやいはむあなうとやいはむ

よのなかに−いつらわかみの−ありてなし−あはれとやいはむ−あなうとやいはむ

異同資料句番号:00943

00944
読人不知 よみ人しらす (000)

山里は物の惨慄き事こそあれ世のうきよりはすみよかりけり

やまさとは−もののさひしき−ことこそあれ−よのうきよりは−すみよかりけり

異同資料句番号:00944

00945
番号外作者 これたかのみこ (999)

白雲のたえすたなひく岑にたにすめはすみぬる世にこそ有りけれ

しらくもの−たえすたなひく−みねにたに−すめはすみぬる−よにこそありけれ

異同資料句番号:00945

00946
番号外作者 ふるのいまみち (999)

しりにけむききてもいとへ世中は浪のさわきに風そしくめる

しりにけむ−ききてもいとへ−よのなかは−なみのさわきに−かせそしくめる

異同資料句番号:00946

00947
素性 そせい (021)

いつこにか世をはいとはむ心こそのにも山にもまとふへらなれ

いつこにか−よをはいとはむ−こころこそ−のにもやまにも−まとふへらなれ

異同資料句番号:00947

00948
読人不知 よみ人しらす (000)

世中は昔よりやはうかりけむわか身ひとつのためになれるか

よのなかは−むかしよりやは−うかりけむ−わかみひとつの−ためになれるか

異同資料句番号:00948

00949
読人不知 よみ人しらす (000)

世中をいとふ山への草木とやあなうの花の色にいてにけむ

よのなかを−いとふやまへの−くさきとや−あなうのはなの−いろにいてにけむ

異同資料句番号:00949

00950
読人不知 よみ人しらす (000)

みよしのの山のあなたにやともかな世のうき時のかくれかにせむ

みよしのの−やまのあなたに−やともかな−よのうきときの−かくれかにせむ

異同資料句番号:00950

00951
読人不知 よみ人しらす (000)

世にふれはうさこそまされみよしののいはのかけみちふみならしてむ

よにふれは−うさこそまされ−みよしのの−いはのかけみち−ふみならしてむ

異同資料句番号:00951

00952
読人不知 よみ人しらす (000)

いかならむ巌の中にすまはかは世のうき事のきこえこさらむ

いかならむ−いはほのうちに−すまはかは−よのうきことの−きこえこさらむ

異同資料句番号:00952

00953
読人不知 よみ人しらす (000)

葦引の山のまにまにかくれなむうき世中はあるかひもなし

あしひきの−やまのまにまに−かくれなむ−うきよのなかは−あるかひもなし

異同資料句番号:00953

00954
読人不知 よみ人しらす (000)

世中のうけくにあきぬ奥山のこのはにふれる雪やけなまし

よのなかの−うけくにあきぬ−おくやまの−このはにふれる−ゆきやけなまし

異同資料句番号:00954

00955
番号外作者 もののへのよしな (999)

よのうきめ見えぬ山ちへいらむにはおもふ人こそほたしなりけれ

よのうきめ−みえぬやまちへ−いらむには−おもふひとこそ−ほたしなりけれ

異同資料句番号:00955

00956
躬恒 凡河内みつね (029)

世をすてて山にいる人山にても猶うき時はいつちゆくらむ

よをすてて−やまにいるひと−やまにても−なほうきときは−いつちゆくらむ

異同資料句番号:00956

00957
躬恒 凡河内みつね (029)

今更になにおひいつらむ竹のこのうきふししけき世とはしらすや

いまさらに−なにおひいつらむ−たけのこの−うきふししけき−よとはしらすや

異同資料句番号:00957

00958
読人不知 よみ人しらす (000)

世にふれは事のはしけきくれ竹のうきふしことに鶯そなく

よにふれは−ことのはしけき−くれたけの−うきふしことに−うくひすそなく

異同資料句番号:00958

00959
読人不知 よみ人しらす(一説、高津のみこ) (000)

木にもあらす草にもあらぬ竹のよのはしにわか身はなりぬへらなり

きにもあらす−くさにもあらぬ−たけのよの−はしにわかみは−なりぬへらなり

異同資料句番号:00959

00960
読人不知 よみ人しらす (000)

わか身からうき世中となつけつつ人のためさへかなしかるらむ

わかみから−うきよのなかと−なけきつつ−ひとのためさへ−かなしかるらむ

異同資料句番号:00960

00961
篁 たかむらの朝臣 (011)

思ひきやひなのわかれにおとろへてあまのなはたきいさりせむとは

おもひきや−ひなのわかれに−おとろへて−あまのなはたき−いさりせむとは

異同資料句番号:00961

00962
行平 在原行平朝臣 (016)

わくらはにとふ人あらはすまの浦にもしほたれつつわふとこたへよ

わくらはに−とふひとあらは−すまのうらに−もしほたれつつ−わふとこたへよ

異同資料句番号:00962

00963
番号外作者 をののはるかせ (999)

あまひこのおとつれしとそ今は思ふ我か人かと身をたとるよに

あまひこの−おとつれしとそ−いまはおもふ−われかひとかと−みをたとるよに

異同資料句番号:00963

00964
貞文 平さたふん (161)

うき世にはかとさせりとも見えなくになとかわか身のいてかてにする

うきよには−かとさせりとも−みえなくに−なとかわかみの−いてかてにする

異同資料句番号:00964

00965
貞文 平さたふん (161)

有りはてぬいのちまつまのほとはかりうきことしけくおもはすもかな

ありはてぬ−いのちまつまの−ほとはかり−うきことしけく−おもはすもかな

異同資料句番号:00965

00966
番号外作者 みやちのきよき (999)

つくはねのこの本ことに立ちそよる春のみ山のかけをこひつつ

つくはねの−このもとことに−たちそよる−はるのみやまの−かけをこひつつ

異同資料句番号:00966

00967
深養父 清原深事父 (036)

ひかりなき谷には春もよそなれはさきてとくちる物思ひもなし

ひかりなき−たににははるも−よそなれは−さきてとくちる−ものおもひもなし

異同資料句番号:00967

00968
伊勢 (019)

久方の中におひたるさとなれはひかりをのみそたのむへらなる

ひさかたの−うちにおひたる−さとなれは−ひかりをのみそ−たのむへらなる

異同資料句番号:00968

00969
業平 なりひらの朝臣 (017)

今そしるくるしき物と人またむさとをはかれすとふへかりけり

いまそしる−くるしきものと−ひとまたむ−さとをはかれす−とふへかりけり

異同資料句番号:00969

00970
業平 なりひらの朝臣 (017)

わすれては夢かとそ思ふおもひきや雪ふみわけて君を見むとは

わすれては−ゆめかとそおもふ−おもひきや−ゆきふみわけて−きみをみむとは

異同資料句番号:00970

00971
業平 なりひらの朝臣 (017)

年をへてすみこしさとをいてていなはいとと深草のとやなりなむ

としをへて−すみこしさとを−いてていなは−いととふかくさ−のとやなりなむ

異同資料句番号:00971

00972
読人不知 よみ人しらす (000)

野とならはうつらとなきて年はへむかりにたにやは君かこさらむ

のとならは−うつらとなきて−としはへむ−かりにたにやは−きみかこさらむ

異同資料句番号:00972

00973
読人不知 よみ人しらす (000)

我を君なにはの浦に有りしかはうきめをみつのあまとなりにき

われをきみ−なにはのうらに−ありしかは−うきめをみつの−あまとなりにき

異同資料句番号:00973

00974
読人不知 よみ人しらす (000)

なにはかたうらむへきまもおもほえすいつこをみつのあまとかはなる

なにはかた−うらむへきまも−おもほえす−いつこをみつの−あまとかはなる

異同資料句番号:00974

00975
読人不知 よみ人しらす (000)

今更にとふへき人もおもほえすやへむくらしてかとさせりてへ

いまさらに−とふへきひとも−おもほえす−やへむくらして−かとさせりてへ

異同資料句番号:00975

00976
躬恒 みつね (029)

水のおもにおふるさ月のうき草のうき事あれやねをたえてこぬ

みつのおもに−おふるさつきの−うきくさの−うきことあれや−ねをたえてこぬ

異同資料句番号:00976

00977
躬恒 みつね (029)

身をすててゆきやしにけむ思ふより外なる物は心なりけり

みをすてて−ゆきやしにけむ−おもふより−ほかなるものは−こころなりけり

異同資料句番号:00977

00978
躬恒 みつね (029)

君か思ひ雪とつもらはたのまれす春よりのちはあらしとおもへは

きみかおもひ−ゆきとつもらは−たのまれす−はるよりのちは−あらしとおもへは

異同資料句番号:00978

00979
番号外作者 宗岳大頼 (999)

君をのみ思ひこしちのしら山はいつかは雪のきゆる時ある

きみをのみ−おもひこしちの−しらやまは−いつかはゆきの−きゆるときある

異同資料句番号:00979

00980
貫之 きのつらゆき (035)

思ひやるこしの白山しらねともひと夜も夢にこえぬよそなき

おもひやる−こしのしらやま−しらねとも−ひとよもゆめに−こえぬよそなき

異同資料句番号:00980

00981
読人不知 よみ人しらす (000)

いさここにわか世はへなむ菅原や伏見の里のあれまくもをし

いさここに−わかよはへなむ−すかはらや−ふしみのさとの−あれまくもをし

異同資料句番号:00981

00982
読人不知 よみ人しらす (000)

わかいほはみわの山もとこひしくはとふらひきませすきたてるかと

わかいほは−みわのやまもと−こひしくは−とふらひきませ−すきたてるかと

異同資料句番号:00982

00983
喜撰 きせんほうし (008)

わかいほは宮このたつみしかそすむ世をうち山と人はいふなり

わかいほは−みやこのたつみ−しかそすむ−よをうちやまと−ひとはいふなり

異同資料句番号:00983

00984
読人不知 よみ人しらす (000)

あれにけりあはれいくよのやとなれやすみけむ人のおとつれもせぬ

あれにけり−あはれいくよの−やとなれや−すみけむひとの−おとつれもせぬ

異同資料句番号:00984

00985
遍昭 よしみねのむねさた (012)

わひひとのすむへきやとと見るなへに歎きくははることのねそする

わひひとの−すむへきやとと−みるなへに−なけきくははる−ことのねそする

異同資料句番号:00985

00986
番号外作者 二条 (999)

人ふるすさとをいとひてこしかともならの宮こもうきななりけり

ひとふるす−さとをいとひて−こしかとも−ならのみやこも−うきななりけり

異同資料句番号:00986

00987
読人不知 よみ人しらす (000)

世中はいつれかさしてわかならむ行きとまるをそやととさたむる

よのなかは−いつれかさして−わかならむ−ゆきとまるをそ−やととさたむる

異同資料句番号:00987

00988
読人不知 よみ人しらす (000)

相坂の嵐のかせはさむけれとゆくへしらねはわひつつそぬる

あふさかの−あらしのかせは−さむけれと−ゆくへしらねは−わひつつそぬる

異同資料句番号:00988

00989
読人不知 よみ人しらす (000)

風のうへにありかさためぬちりの身はゆくへもしらすなりぬへらなり

かせのうへに−ありかさためぬ−ちりのみは−ゆくへもしらす−なりぬへらなり

異同資料句番号:00989

00990
伊勢 (019)

あすかかはふちにもあらぬわかやともせにかはりゆく物にそ有りける

あすかかは−ふちにもあらぬ−わかやとも−せにかはりゆく−ものにそありける

異同資料句番号:00990

00991
友則 きのとものり (033)

ふるさとは見しこともあらすをののえのくちし所そこひしかりける

ふるさとは−みしこともあらす−をののえの−くちしところそ−こひしかりける

異同資料句番号:00991

00992
番号外作者 みちのく (999)

あかさりし袖のなかにやいりにけむわかたましひのなき心ちする

あかさりし−そてのなかにや−いりにけむ−わかたましひの−なきここちする

異同資料句番号:00992

00993
忠房 ふちはらのたたふさ (182)

なよ竹のよなかきうへにはつしものおきゐて物を思ふころかな

なよたけの−よなかきうへに−はつしもの−おきゐてものを−おもふころかな

異同資料句番号:00993

00994
[詞書] 題しらす/ある人、この歌は、むかしやまとのくになりける人のむすめにある人すみわたりけり、この女おやもなくなりて家もわるくなりゆくあひたに、このをとこ、かふちのくにに人をあひしりてかよひつつ、かれやうにのみなりゆきけり、さりけれともつらけなるけしきも見えて、かふちへいくことに、をとこの心のことくにしつついたしやりけれは、あやしと思ひて、もしなきまにこと心もやあるとうたかひて、月のおもしろかりける夜、かふちへいくまねにてせんさいのなかにかくれて見けれは、夜ふくるまてことをかきならしつつ、うちなけきてこの歌をよみてねにけれは、これをききて、それより又ほかへもまからすなりにけりとなむいひつたへたる
読人不知 よみ人しらす (000)

風ふけはおきつ白浪たつた山よはにや君かひとりこゆらむ

かせふけは−おきつしらなみ−たつたやま−よはにやきみか−ひとりこゆらむ

異同資料句番号:00994

00995
読人不知 よみ人しらす (000)

たかみそきゆふつけ鳥か唐衣たつたの山にをりはへてなく

たかみそき−ゆふつけとりか−からころも−たつたのやまに−をりはへてなく

異同資料句番号:00995

00996
読人不知 よみ人しらす (000)

わすられむ時しのへとそ浜千鳥ゆくへもしらぬあとをととむる

わすられむ−ときしのへとそ−はまちとり−ゆくへもしらぬ−あとをととむる

異同資料句番号:00996

00997
番号外作者 文屋ありすゑ (999)

神な月時雨ふりおけるならのはのなにおふ宮のふることそこれ

かみなつき−しくれふりおける−ならのはの−なにおふみやの−ふることそこれ

異同資料句番号:00997

00998
千里 大江千里 (023)

あしたつのひとりおくれてなくこゑは雲のうへまてきこえつかなむ

あしたつの−ひとりおくれて−なくこゑは−くものうへまて−きこえつかなむ

異同資料句番号:00998

00999
番号外作者 ふちはらのかちおむ (999)

ひとしれす思ふ心は春霞たちいててきみかめにも見えなむ

ひとしれす−おもふこころは−はるかすみ−たちいててきみか−めにもみえなむ

異同資料句番号:00999

01000
伊勢 (019)

山河のおとにのみきくももしきを身をはやなから見るよしもかな

やまかはの−おとにのみきく−ももしきを−みをはやなから−みるよしもかな

異同資料句番号:01000


古今集 巻十九:雑体

01001
読人不知 よみ人しらす (000)

あふことの まれなるいろに おもひそめ わか身はつねに あまくもの はるる時なく ふしのねの もえつつとはに おもへとも あふことかたし なにしかも 人をうらみむ わたつみの おきをふかめて おもひてし おもひはいまは いたつらに なりぬへらなり ゆく水の たゆる時なく かくなわに おもひみたれて ふるゆきの けなはけぬへく おもへとも えふの身なれは なほやます おもひはふかし あしひきの 山した水の こかくれて たきつ心を たれにかも あひかたらはむ いろにいては 人しりぬへみ すみそめの ゆふへになれは ひとりゐて あはれあはれと なけきあまり せむすへなみに にはにいてて たちやすらへは しろたへの 衣のそてに おくつゆの けなはけぬへく おもへとも なほなけかれぬ はるかすみ よそにも人に あはむとおもへは

あふことの−まれなるいろに−おもひそめ−わかみはつねに−あまくもの−はるるときなく−ふしのねの−もえつつとはに−おもへとも−あふことかたし−なにしかも−ひとをうらみむ−わたつみの−おきをふかめて−おもひてし−おもひをいまは−いたつらに−なりぬへらなり−ゆくみつの−たゆるときなく−かくなわに−おもひみたれて−ふるゆきの−けなはけぬへく−おもへとも−えふのみなれは−なほやます−おもひはふかし−あしひきの−やましたみつの−こかくれて−たきつこころを−たれにかも−あひかたらはむ−いろにいては−ひとしりぬへみ−すみそめの−ゆふへになれは−ひとりゐて−あはれあはれと−なけきあまり−せむすへなみに−にはにいてて−たちやすらへは−しろたへの−ころものそてに−おくつゆの−けなはけぬへく−おもへとも−なほなけかれぬ−はるかすみ−よそにもひとに−あはむとおもへは

異同資料句番号:01001

01002
貫之 つらゆき (035)

ちはやふる 神のみよより くれ竹の 世世にもたえす あまひこの おとはの山の はるかすみ 思ひみたれて さみたれの そらもととろに さよふけて 山ほとときす なくことに たれもねさめて からにしき たつたの山の もみちはを 見てのみしのふ 神な月 しくれしくれて 冬の夜の 庭もはたれに ふるゆきの 猶きえかへり 年ことに 時につけつつ あはれてふ ことをいひつつ きみをのみ ちよにといはふ 世の人の おもひするかの ふしのねの もゆる思ひも あかすして わかるるなみた 藤衣 おれる心も やちくさの ことのはことに すへらきの おほせかしこみ まきまきの 中につくすと いせの海の うらのしほかひ ひろひあつめ とれりとすれと たまのをの みしかき心 思ひあへす 猶あらたまの 年をへて 大宮にのみ ひさかたの ひるよるわかす つかふとて かへりみもせぬ わかやとの しのふくさおふる いたまあらみ ふる春さめの もりやしぬらむ

ちはやふる−かみのみよより−くれたけの−よよにもたえす−あまひこの−おとはのやまの−はるかすみ−おもひみたれて−さみたれの−そらもととろに−さよふけて−やまほとときす−なくことに−たれもねさめて−からにしき−たつたのやまの−もみちはを−みてのみしのふ−かみなつき−しくれしくれて−ふゆのよの−にはもはたれに−ふるゆきの−なほきえかへり−としことに−ときにつけつつ−あはれてふ−ことをいひつつ−きみをのみ−ちよにといはふ−よのひとの−おもひするかの−ふしのねの−もゆるおもひも−あかすして−わかるるなみた−ふちころも−おれるこころも−やちくさの−ことのはことに−すめらきの−おほせかしこみ−まきまきの−うちにつくすと−いせのうみの−うらのしほかひ−ひろひあつめ−とれりとすれと−たまのをの−みしかきこころ−おもひあへす−なほあらたまの−としをへて−おほみやにのみ−ひさかたの−ひるよるわかす−つかふとて−かへりみもせぬ−わかやとの−しのふくさおふる−いたまあらみ−ふるはるさめの−もりやしぬらむ

異同資料句番号:01002

01003
忠峯 壬生忠岑 (030)

くれ竹の 世世のふること なかりせは いかほのぬまの いかにして 思ふ心を のはへまし あはれむかしへ ありきてふ 人まろこそは うれしけれ 身はしもなから ことのはを あまつそらまて きこえあけ すゑのよまての あととなし 今もおほせの くたれるは ちりにつけとや ちりの身に つもれる事を とはるらむ これをおもへは けたものの くもにほえけむ 心地して ちちのなさけも おもほえす ひとつ心そ ほこらしき かくはあれとも てるひかり ちかきまもりの 身なりしを たれかは秋の くる方に あさむきいてて みかきより とのへもる身の みかきもり をさをさしくも おもほえす ここのかさねの なかにては あらしの風もきかさりき 今はの山し ちかけれは 春は霞に たなひかれ 夏はうつせみ なきくらし 秋は時雨に 袖をかし 冬はしもにそ せめらるる かかるわひしき 身なからに つもれるとしを しるせれは いつつのむつに なりにけり これにそはれる わたくしの おいのかすさへ やよけれは 身はいやしくて 年たかき ことのくるしさ かくしつつ なからのはしの なからへて なにはのうらに たつ浪の 浪のしわにや おほほれむ さすかにいのち をしけれは こしのくになる しら山の かしらはしろく なりぬとも おとはのたきの おとにきく おいすしなすの くすりかも 君かやちよを わかえつつ見む

くれたけの−よよのふること−なかりせは−いかほのぬまの−いかにして−おもふこころを−のはへまし−あはれむかしへ−ありきてふ−ひとまろこそは−うれしけれ−みはしもなから−ことのはを−あまつそらまて−きこえあけ−すゑのよよまて−あととなし−いまもおほせの−くたれるは−ちりにつけとや−ちりのみに−つもれることを−とはるらむ−これをおもへは−けたものの−くもにほえけむ−ここちして−ちちのなさけも−おもほえす−ひとつこころそ−ほこらしき−かくはあれとも−てるひかり−ちかきまもりの−みなりしを−たれかはあきの−くるかたに−あさむきいてて−みかきもり−とのへもるみの−みかきより−をさをさしくも−おもほえす−ここのかさねの−なかにては−あらしのかせも−きかさりき−いまはのやまし−ちかけれは−はるはかすみに−たなひかれ−なつはうつせみ−なきくらし−あきはしくれに−そてをかし−ふゆはしもにそ−せめらるる−かかるわひしき−みなからに−つもれるとしを−しるせれは−いつつのむつに−なりにけり−これにそはれる−わたくしの−おいのかすさへ−やよけれは−みはいやしくて−としたかき−ことのくるしさ−かくしつつ−なからのはしの−なからへて−なにはのうらに−たつなみの−なみのしわにや−おほほれむ−さすかにいのち−をしけれは−こしのくになる−しらやまの−かしらはしろく−なりぬとも−おとはのたきの−おとにきく−おいすしなすの−くすりかも−きみかやちよを−わかえつつみむ

異同資料句番号:01003

01004
忠峯 壬生忠岑 (030)

君か世にあふさか山のいはし水こかくれたりと思ひけるかな

きみかよに−あふさかやまの−いはしみつ−こかくれたりと−おもひけるかな

異同資料句番号:01004

01005
躬恒 凡河内躬恒 (029)

ちはやふる 神な月とや けさよりは くもりもあへす はつ時雨 紅葉とともに ふるさとの よしのの山の 山あらしも さむく日ことに なりゆけは たまのをとけて こきちらし あられみたれて しもこほり いやかたまれる にはのおもに むらむら見ゆる 冬草の うへにふりしく 白雪の つもりつもりて あらたまの としをあまたも すくしつるかな

ちはやふる−かみなつきとや−けさよりは−くもりもあへす−はつしくれ−もみちとともに−ふるさとの−よしののやまの−やまあらしも−さむくひことに−なりゆけは−たまのをとけて−こきちらし−あられみたれて−しもこほり−いやかたまれる−にはのおもに−むらむらみゆる−ふゆくさの−うへにふりしく−しらゆきの−つもりつもりて−あらたまの−としをあまたも−すくしつるかな

異同資料句番号:01005

01006
伊勢 (019)

おきつなみ あれのみまさる 宮のうちは としへてすみし いせのあまも 舟なかしたる 心地して よらむ方なく かなしきに 涙の色の くれなゐは 我らかなかの 時雨にて 秋のもみちと 人人は おのかちりちり わかれなは たのむかけなく なりはてて とまる物とは 花すすき きみなき庭に むれたちて そらをまねかは はつかりの なき渡りつつ よそにこそ見め

おきつなみ−あれのみまさる−みやのうちは−としへてすみし−いせのあまも−ふねなかしたる−ここちして−よらむかたなく−かなしきに−なみたのいろの−くれなゐは−われらかなかの−しくれにて−あきのもみちと−ひとひとは−おのかちりちり−わかれなは−たのむかけなく−なりはてて−とまるものとは−はなすすき−きみなきにはに−むれたちて−そらをまかねは−はつかりの−なきわたりつつ−よそにこそみめ

異同資料句番号:01006

01007
読人不知 よみ人しらす (000)

うちわたすをち方人に物まうすわれそのそこにしろくさけるはなにの花そも

うちわたす−をちかたひとに−ものまうすわれ−そのそこに−しろくさけるは−なにのはなそも

異同資料句番号:01007

01008
読人不知 よみ人しらす (000)

君されはのへにまつさく見れとあかぬ花まひなしにたたなのるへき花のななれや

はるされは−のへにまつさく−みれとあかぬはな−まひなしに−たたなのるへき−はなのななれや

異同資料句番号:01008

01009
読人不知 よみ人しらす (000)

はつせ河ふるかはのへにふたもとあるすき年をへて又もあひ見むふたもとあるすき

はつせかは−ふるかはのへに−ふたもとあるすき−としをへて−またもあひみむ−ふたもとあるすき

異同資料句番号:01009

01010
貫之 つらゆき (035)

きみかさすみかさの山のもみちはのいろ神な月しくれのあめのそめるなりけり

きみかさす−みかさのやまの−もみちはのいろ−かみなつき−しくれのあめの−そめるなりけり

異同資料句番号:01010

01011
読人不知 よみ人しらす (000)

梅花見にこそきつれ鶯の人く人くといとひしもをる

うめのはな−みにこそきつれ−うくひすの−ひとくひとくと−いとひしもをる

異同資料句番号:01011

01012
素性 素性法師 (021)

山吹の花色衣ぬしやたれとへとこたへすくちなしにして

やまふきの−はないろころも−ぬしやたれ−とへとこたへす−くちなしにして

異同資料句番号:01012

01013
敏行 藤原敏行朝臣 (018)

いくはくの田をつくれはか郭公してのたをさをあさなあさなよふ

いくはくの−たをつくれはか−ほとときす−してのたをさを−あさなあさなよふ

異同資料句番号:01013

01014
兼輔 藤原かねすけの朝臣 (027)

いつしかとまたく心をはきにあけてあまのかはらをけふやわたらむ

いつしかと−またくこころを−はきにあけて−あまのかはらを−けふやわたらむ

異同資料句番号:01014

01015
躬恒 凡河内みつね (029)

むつこともまたつきなくにあけぬめりいつらは秋のなかしてふよは

むつことも−またつきなくに−あけぬめり−いつらはあきの−なかしてふよは

異同資料句番号:01015

01016
遍昭 僧正へんせう (012)

秋ののになまめきたてるをみなへしあなかしかまし花もひと時

あきののに−なまめきたてる−をみなへし−あなかしかまし−はなもひととき

異同資料句番号:01016

01017
読人不知 よみ人しらす (000)

あきくれはのへにたはるる女郎花いつれの人かつまて見るへき

あきくれは−のへにたはるる−をみなへし−いつれのひとか−つまてみるへき

異同資料句番号:01017

01018
読人不知 よみ人しらす (000)

秋きりのはれてくもれはをみなへし花のすかたそ見えかくれする

あききりの−はれてくもれは−をみなへし−はなのすかたそ−みえかくれする

異同資料句番号:01018

01019
読人不知 よみ人しらす (000)

花と見てをらむとすれはをみなへしうたたあるさまの名にこそ有りけれ

はなとみて−をらむとすれは−をみなへし−うたたあるさまの−なにこそありけれ

異同資料句番号:01019

01020
棟梁 在原むねやな (180)

秋風にほころひぬらしふちはかまつつりさせてふ蟋蟀なく

あきかせに−ほころひぬらし−ふちはかま−つつりさせてふ−きりきりすなく

異同資料句番号:01020

01021
深養父 清原ふかやふ (036)

冬なから春の隣のちかけれはなかかきよりそ花はちりける

ふゆなから−はるのとなりの−ちかけれは−なかかきよりそ−はなはちりける

異同資料句番号:01021

01022
読人不知 よみ人しらす (000)

いそのかみふりにしこひの神さひてたたるに我はいそねかねつる

いそのかみ−ふりにしこひの−かみさひて−たたるにわれは−いそねかねつる

異同資料句番号:01022

01023
読人不知 よみ人しらす (000)

枕よりあとよりこひのせめくれはせむ方なみそとこなかにをる

まくらより−あとよりこひの−せめくれは−せむかたなみそ−とこなかにをる

異同資料句番号:01023

01024
読人不知 よみ人しらす (000)

こひしきか方も方こそ有りときけたてれをれともなき心ちかな

こひしきか−かたもかたこそ−ありときけ−たてれをれとも−なきここちかな

異同資料句番号:01024

01025
読人不知 よみ人しらす (000)

ありぬやと心みかてらあひ見ねはたはふれにくきまてそこひしき

ありぬやと−こころみかてら−あひみねは−たはふれにくき−まてそこひしき

異同資料句番号:01025

01026
読人不知 よみ人しらす (000)

みみなしの山のくちなしえてしかな思ひの色のしたそめにせむ

みみなしの−やまのくちなし−えてしかな−おもひのいろの−したそめにせむ

異同資料句番号:01026

01027
読人不知 よみ人しらす (000)

葦引の山田のそほつおのれさへ我をほしてふうれはしきこと

あしひきの−やまたのそほつ−おのれさへ−われをほしてふ−うれはしきこと

異同資料句番号:01027

01028
番号外作者 きのめのと (999)

ふしのねのならぬおもひにもえはもえ神たにけたぬむなしけふりを

ふしのねの−ならぬおもひに−もえはもえ−かみたにけたぬ−むなしけふりを

異同資料句番号:01028

01029
番号外作者 きのありとも (999)

あひ見まく星はかすなく有りなから人に月なみ迷ひこそすれ

あひみまく−ほしはかすなく−ありなから−ひとにつきなみ−まよひこそすれ

異同資料句番号:01029

01030
小町 小野小町 (009)

人にあはむ月のなきには思ひおきてむねはしり火に心やけをり

ひとにあはむ−つきのなきには−おもひおきて−むねはしりひに−こころやけをり

異同資料句番号:01030

01031
興風 藤原おきかせ (034)

春霞たなひくのへのわかなにもなり見てしかな人もつむやと

はるかすみ−たなひくのへの−わかなにも−なりみてしかな−ひともつむやと

異同資料句番号:01031

01032
読人不知 よみ人しらす (000)

おもへとも猶うとまれぬ春霞かからぬ山もあらしとおもへは

おもへとも−なほうとまれぬ−はるかすみ−かからぬやまも−あらしとおもへは

異同資料句番号:01032

01033
貞文 平貞文 (161)

春の野のしけき草はのつまこひにとひたつきしのほろろとそなく

はるののの−しけきくさはの−つまこひに−とひたつきしの−ほろろとそなく

異同資料句番号:01033

01034
番号外作者 きのよしひと (999)

秋ののにつまなきしかの年をへてなそわかこひのかひよとそなく

あきののに−つまなきしかの−としをへて−なそわかこひの−かひよとそなく

異同資料句番号:01034

01035
躬恒 みつね (029)

蝉の羽のひとへにうすき夏衣なれはよりなむ物にやはあらぬ

せみのはの−ひとへにうすき−なつころも−なれはよりなむ−ものにやはあらぬ

異同資料句番号:01035

01036
忠峯 たたみね (030)

かくれぬのしたよりおふるねぬなはのねぬなはたてしくるないとひそ

かくれぬの−したよりおふる−ねぬなはの−ねぬなはたてし−くるないとひそ

異同資料句番号:01036

01037
読人不知 よみ人しらす (000)

ことならは思はすとやはいひはてぬなそ世中のたまたすきなる

ことならは−おもはすとやは−いひはてぬ−なそよのなかの−たまたすきなる

異同資料句番号:01037

01038
読人不知 よみ人しらす (000)

おもふてふ人の心のくまことにたちかくれつつ見るよしもかな

おもふてふ−ひとのこころの−くまことに−たちかくれつつ−みるよしもかな

異同資料句番号:01038

01039
読人不知 よみ人しらす (000)

思へともおもはすとのみいふなれはいなやおもはし思ふかひなし

おもへとも−おもはすとのみ−いふなれは−いなやおもはし−おもふかひなし

異同資料句番号:01039

01040
読人不知 よみ人しらす (000)

我をのみ思ふといははあるへきをいてや心はおほぬさにして

われをのみ−おもふといはは−あるへきを−いてやこころは−おほぬさにして

異同資料句番号:01040

01041
読人不知 よみ人しらす (000)

われを思ふ人をおもはぬむくいにやわか思ふ人の我をおもはぬ

われをおもふ−ひとをおもはぬ−むくひにや−わかおもふひとの−われをおもはぬ

異同資料句番号:01041

01042
深養父 よみ人しらす(一本、ふかやふ) (036)

思ひけむ人をそともにおもはましまさしやむくいなかりけりやは

おもひけむ−ひとをそともに−おもはまし−まさしやむくひ−なかりけりやは

異同資料句番号:01042

01043
読人不知 よみ人しらす (000)

いててゆかむ人をととめむよしなきにとなりの方にはなもひぬかな

いててゆかむ−ひとをととめむ−よしなきに−となりのかたに−はなもひぬかな

異同資料句番号:01043

01044
読人不知 よみ人しらす (000)

紅にそめし心もたのまれす人をあくにはうつるてふなり

くれなゐに−そめしこころも−たのまれす−ひとをあくには−うつるてふなり

異同資料句番号:01044

01045
読人不知 よみ人しらす (000)

いとはるるわか身ははるのこまなれやのかひかてらにはなちすてつる

いとはるる−わかみははるの−こまなれや−のかひかてらに−はなちすてつる

異同資料句番号:01045

01046
読人不知 よみ人しらす (000)

鶯のこそのやとりのふるすとや我には人のつれなかるらむ

うくひすの−こそのやとりの−ふるすとや−われにはひとの−つれなかるらむ

異同資料句番号:01046

01047
読人不知 よみ人しらす (000)

さかしらに夏は人まねささのはのさやくしもよをわかひとりぬる

さかしらに−なつはひとまね−ささのはの−さやくしもよを−わかひとりぬる

異同資料句番号:01047

01048
番号外作者 平中興 (999)

逢ふ事の今ははつかになりぬれは夜ふかからては月なかりけり

あふことの−いまははつかに−なりぬれは−よふかからては−つきなかりけり

異同資料句番号:01048

01049
時平 左のおほいまうちきみ (503)

もろこしのよしのの山にこもるともおくれむと思ふ我ならなくに

もろこしの−よしののやまに−こもるとも−おくれむとおもふ−われならなくに

異同資料句番号:01049

01050
番号外作者 なかき (999)

雲はれぬあさまの山のあさましや人の心を見てこそやまめ

くもはれぬ−あさまのやまの−あさましや−ひとのこころを−みてこそやまめ

異同資料句番号:01050

01051
伊勢 (019)

なにはなるなからのはしもつくるなり今はわか身をなににたとへむ

なにはなる−なからのはしも−つくるなり−いまはわかみを−なににたとへむ

異同資料句番号:01051

01052
読人不知 よみ人しらす (000)

まめなれとなにそはよけくかるかやのみたれてあれとあしけくもなし

まめなれと−なにそはよけく−かるかやの−みたれてあれと−あしけくもなし

異同資料句番号:01052

01053
興風 おきかせ (034)

なにかその名の立つ事のをしからむしりてまとふは我ひとりかは

なにかその−なのたつことの−をしからむ−しりてまとふは−われひとりかは

異同資料句番号:01053

01054
番号外作者 くそ (999)

よそなからわか身にいとのよるといへはたたいつはりにすくはかりなり

よそなから−わかみにいとの−よるといへは−たたいつはりに−すくはかりなり

異同資料句番号:01054

01055
番号外作者 さぬき (999)

ねき事をさのみききけむやしろこそはてはなけきのもりとなるらめ

ねきことを−さのみききけむ−やしろこそ−はてはなけきの−もりとなるらめ

異同資料句番号:01055

01056
大輔 (502)

なけきこる山としたかくなりぬれはつらつゑのみそまつつかれける

なけきこる−やまとしたかく−なりぬれは−つらつゑのみそ−まつつかれける

異同資料句番号:01056

01057
読人不知 よみ人しらす (000)

なけきをはこりのみつみてあしひきの山のかひなくなりぬへらなり

なけきをは−こりのみつみて−あしひきの−やまのかひなく−なりぬへらなり

異同資料句番号:01057

01058
読人不知 よみ人しらす (000)

人こふる事をおもにとになひもてあふこなきこそわひしかりけれ

ひとこふる−ことをおもにと−になひもて−あふこなきこそ−わひしかりけれ

異同資料句番号:01058

01059
読人不知 よみ人しらす (000)

よひのまにいてていりぬるみか月のわれて物思ふころにもあるかな

よひのまに−いてていりぬる−みかつきの−われてものおもふ−ころにもあるかな

異同資料句番号:01059

01060
読人不知 よみ人しらす (000)

そゑにとてとすれはかかりかくすれはあないひしらすあふさきるさに

そゑにとて−とすれはかかり−かくすれは−あないひしらす−あふさきるさに

異同資料句番号:01060

01061
読人不知 よみ人しらす (000)

世中のうきたひことに身をなけはふかき谷こそあさくなりなめ

よのなかの−うきたひことに−みをなけは−ふかきたにこそ−あさくなりなめ

異同資料句番号:01061

01062
元方 在原元方 (169)

よのなかはいかにくるしと思ふらむここらの人にうらみらるれは

よのなかは−いかにくるしと−おもふらむ−ここらのひとに−うらみらるれは

異同資料句番号:01062

01063
読人不知 よみ人しらす (000)

なにをして身のいたつらにおいぬらむ年のおもはむ事そやさしき

なにをして−みのいたつらに−おいぬらむ−としのおもはむ−ことそやさしき

異同資料句番号:01063

01064
興風 おきかせ (034)

身はすてつ心をたにもはふらさしつひにはいかかなるとしるへく

みはすてつ−こころをたにも−はふらさし−つひにはいかか−なるとしるへく

異同資料句番号:01064

01065
千里 千さと (023)

白雪の友にわか身はふりぬれと心はきえぬ物にそありける

しらゆきの−ともにわかみは−ふりぬれと−こころはきえぬ−ものにそありける

異同資料句番号:01065

01066
読人不知 よみ人しらす (000)

梅花さきてののちの身なれはやすき物とのみ人のいふらむ

うめのはな−さきてののちの−みなれはや−すきものとのみ−ひとのいふらむ

異同資料句番号:01066

01067
躬恒 みつね (029)

わひしらにましらななきそあしひきの山のかひあるけふにやはあらぬ

わひしらに−ましらななきそ−あしひきの−やまのかひある−けふにやはあらぬ

異同資料句番号:01067

01068
読人不知 よみ人しらす (000)

世をいとひこのもとことにたちよりてうつふしそめのあさのきぬなり

よをいとひ−このもとことに−たちよりて−うつふしそめの−あさのきぬなり

異同資料句番号:01068


古今集 巻二十:大歌所歌

01069
番号外作者 無記 (999)

あたらしき年の始にかくしこそちとせをかねてたのしきをつめ

あたらしき−としのはしめに−かくしこそ−ちとせをかねて−たのしきをつめ

異同資料句番号:01069

01070
番号外作者 無記 (999)

しもとゆふかつらき山にふる雪のまなく時なくおもほゆるかな

しもとゆふ−かつらきやまに−ふるゆきの−まなくときなく−おもほゆるかな

異同資料句番号:01070

01071
番号外作者 無記 (999)

近江よりあさたちくれはうねののにたつそなくなるあけぬこのよは

あふみより−あさたちくれは−うねののに−たつそなくなる−あけぬこのよは

異同資料句番号:01071

01072
番号外作者 無記 (999)

水くきのをかのやかたにいもとあれとねてのあさけのしものふりはも

みつくきの−をかのやかたに−いもとあれと−ねてのあさけの−しものふりはも

異同資料句番号:01072

01073
番号外作者 無記 (999)

しはつ山うちいてて見れはかさゆひのしまこきかくるたななしをふね

しはつやま−うちいててみれは−かさゆひの−しまこきかくる−たななしをふね

異同資料句番号:01073

01074
番号外作者 無記 (999)

神かきのみむろの山のさかきはは神のみまへにしけりあひにけり

かみかきの−みむろのやまの−さかきはは−かみのみまへに−しけりあひにけり

異同資料句番号:01074

01075
番号外作者 無記 (999)

しもやたひおけとかれせぬさかきはのたちさかゆへき神のきねかも

しもやたひ−おけとかれせぬ−さかきはの−たちさかゆへき−かみのきねかも

異同資料句番号:01075

01076
番号外作者 無記 (999)

まきもくのあなしの山の山人と人も見るかに山かつらせよ

まきもくの−あなしのやまの−やまひとと−ひともみるかに−やまかつらせよ

異同資料句番号:01076

01077
番号外作者 無記 (999)

み山にはあられふるらしとやまなるまさきのかつらいろつきにけり

みやまには−あられふるらし−とやまなる−まさきのかつら−いろつきにけり

異同資料句番号:01077

01078
番号外作者 無記 (999)

みちのくのあたちのまゆみわかひかはすゑさへよりこしのひしのひに

みちのくの−あたちのまゆみ−わかひかは−すゑさへよりこ−しのひしのひに

異同資料句番号:01078

01079
番号外作者 無記 (999)

わかかとのいたゐのし水さととほみ人しくまねはみくさおひにけり

わかかとの−いたゐのしみつ−さととほみ−ひとしくまねは−みくさおひにけり

異同資料句番号:01079

01080
番号外作者 無記 (999)

ささのくまひのくま河にこまとめてしはし水かへかけをたに見む

ささのくま−ひのくまかはに−こまとめて−しはしみつかへ−かけをたにみむ

異同資料句番号:01080

01081
番号外作者 無記 (999)

あをやきをかたいとによりて鶯のぬふてふ笠は梅の花かさ

あをやきを−かたいとによりて−うくひすの−ぬふてふかさは−うめのはなかさ

異同資料句番号:01081

01082
番号外作者 無記 (999)

まかねふくきひの中山おひにせるほそたに河のおとのさやけさ

まかねふく−きひのなかやま−おひにせる−ほそたにかはの−おとのさやけさ

異同資料句番号:01082

01083
番号外作者 無記 (999)

美作やくめのさら山さらさらにわかなはたてしよろつよまてに

みまさかや−くめのさらやま−さらさらに−わかなはたてし−よろつよまてに

異同資料句番号:01083

01084
番号外作者 無記 (999)

みののくに関のふち河たえすして君につかへむよろつよまてに

みののくに−せきのふちかは−たえすして−きみにつかへむ−よろつよまてに

異同資料句番号:01084

01085
番号外作者 無記 (999)

きみか世は限もあらしなかはまのまさこのかすはよみつくすとも

きみかよは−かきりもあらし−なかはまの−まさこのかすは−よみつくすとも

異同資料句番号:01085

01086
黒主 大伴くろぬし (501)

近江のやかかみの山をたてたれはかねてそ見ゆる君かちとせは

あふみのや−かかみのやまを−たてたれは−かねてそみゆる−きみかちとせは

異同資料句番号:01086

01087
番号外作者 無記 (999)

あふくまに霧立ちくもりあけぬとも君をはやらしまてはすへなし

あふくまに−きりたちくもり−あけぬとも−きみをはやらし−まてはすへなし

異同資料句番号:01087

01088
番号外作者 無記 (999)

みちのくはいつくはあれとしほかまの浦こく舟のつなてかなしも

みちのくは−いつくはあれと−しほかまの−うらこくふねの−つなてかなしも

異同資料句番号:01088

01089
番号外作者 無記 (999)

わかせこを宮こにやりてしほかまのまかきのしまの松そこひしき

わかせこを−みやこにやりて−しほかまの−まかきのしまの−まつそこひしき

異同資料句番号:01089

01090
番号外作者 無記 (999)

をくろさきみつのこしまの人ならは宮このつとにいさといはましを

をくろさき−みつのこしまの−ひとならは−みやこのつとに−いさといはましを

異同資料句番号:01090

01091
番号外作者 無記 (999)

みさふらひみかさと申せ宮木ののこのしたつゆはあめにまされり

みさふらひ−みかさとまうせ−みやきのの−このしたつゆは−あめにまされり

異同資料句番号:01091

01092
番号外作者 無記 (999)

もかみ河のほれはくたるいな舟のいなにはあらすこの月はかり

もかみかは−のほれはくたる−いなふねの−いなにはあらす−このつきはかり

異同資料句番号:01092

01093
番号外作者 無記 (999)

君をおきてあたし心をわかもたはすゑの松山浪もこえなむ

きみをおきて−あたしこころを−わかもたは−すゑのまつやま−なみもこえなむ

異同資料句番号:01093

01094
番号外作者 無記 (999)

こよろきのいそたちならしいそなつむめさしぬらすなおきにをれ浪

こよろきの−いそたちならし−いそなつむ−めさしぬらすな−おきにをれなみ

異同資料句番号:01094

01095
番号外作者 無記 (999)

つくはねのこのもかのもに影はあれと君かみかけにますかけはなし

つくはねの−このもかのもに−かけはあれと−きみかみかけに−ますかけはなし

異同資料句番号:01095

01096
番号外作者 無記 (999)

つくはねの峰のもみちはおちつもりしるもしらぬもなへてかなしも

つくはねの−みねのもみちは−おちつもり−しるもしらぬも−なへてかなしも

異同資料句番号:01096

01097
番号外作者 無記 (999)

かひかねをさやにも見しかけけれなくよこほりふせるさやの中山

かひかねを−さやにもみしか−けけれなく−よこほりふせる−さやのなかやま

異同資料句番号:01097

01098
番号外作者 無記 (999)

かひかねをねこし山こし吹く風を人にもかもや事つてやらむ

かひかねを−ねこしやまこし−ふくかせを−ひとにもかもや−ことつてやらむ

異同資料句番号:01098

01099
番号外作者 無記 (999)

をふのうらにかたえさしおほひなるなしのなりもならすもねてかたらはむ

をふのうらに−かたえさしおほひ−なるなしの−なりもならすも−ねてかたらはむ

異同資料句番号:01099

01100
敏行 藤原敏行朝臣 (018)

ちはやふるかものやしろのひめこまつよろつ世ふともいろはかはらし

ちはやふる−かものやしろの−ひめこまつ−よろつよふとも−いろはかはらし

異同資料句番号:01100


古今集 異本所載歌

01101
貫之 平あつゆき (035)

そま人は宮木ひくらしあしひきの山の山ひこよひとよむなり

そまひとは−みやきひくらし−あしひきの−やまのやまひこ−よひとよむなり

異同資料句番号:01101

01102
番号外作者 勝臣 (999)

かけりてもなにをかたまのきても見むからはほのほとなりにしものを

かけりても−なにをかたまの−きてもみむ−からはほのほと−なりにしものを

異同資料句番号:01102

01103
貫之 つらゆき (035)

こし時とこひつつをれはゆふくれのおもかけにのみ見えわたるかな

こしときと−こひつつをれは−ゆふくれの−おもかけにのみ−みえわたるかな

異同資料句番号:01103

01104
小町 をののこまち (009)

おきのゐて身をやくよりもかなしきは宮こしまへのわかれなりけり

おきのゐて−みをやくよりも−かなしきは−みやこしまへの−わかれなりけり

異同資料句番号:01104

01105
番号外作者 あやもち (999)

うきめをはよそめとのみそのかれゆく雲のあはたつ山のふもとに

うきめをは−よそめとのみそ−のかれゆく−くものあはたつ−やまのふもとに

異同資料句番号:01105

01106
番号外作者 よみ人しらす (999)

けふ人をこふる心は大井河なかるる水におとらさりけり

けふひとを−こふるこころは−おほゐかは−なかるるみつに−おとらさりけり

異同資料句番号:01106

01107
番号外作者 よみ人しらす (999)

わきもこにあふさか山のしのすすきほにはいてすもこひわたるかな

わきもこに−あふさかやまの−しのすすき−ほにはいてすも−こひわたるかな

異同資料句番号:01107

01108
番号外作者 よみ人しらす(一説、あめのみかと) (999)

いぬかみのとこの山なるなとり河いさとこたへよわかなもらすな

いぬかみの−とこのやまなる−なとりかは−いさとこたへよ−わかなもらすな

異同資料句番号:01108

01109
番号外作者 あふみのうねめ (999)

山しなのおとはのたきのおとにのみ人のしるへくわかこひめやも

やましなの−おとはのたきの−おとにのみ−ひとのしるへく−わかこひめやも

異同資料句番号:01109

01110
番号外作者 そとほりひめ (999)

わかせこかくへきよひなりささかにのくものふるまひかねてしるしも

わかせこか−くへきよひなり−ささかにの−くものふるまひ−かねてしるしも

異同資料句番号:01110

01111
貫之 つらゆき (035)

みちしらはつみにもゆかむすみのえの岸におふてふこひわすれくさ

みちしらは−つみにもゆかむ−すみのえの−きしにおふてふ−こひわすれくさ

異同資料句番号:01111