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拾遺集


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作品集名拾遺集 
作品集名読みしゅういしゅう 
作成年月日寛弘二年六月十九日-寛弘四年一月二十八日頃(1005年7月27日-1007年2月18日)
場所 

拾遺集 巻一:春
拾遺集 巻二:夏
拾遺集 巻三:秋
拾遺集 巻四:冬
拾遺集 巻五:賀
拾遺集 巻六:別
拾遺集 巻七:物名
拾遺集 巻八:雑上
拾遺集 巻九:雑下
拾遺集 巻十:神楽歌
拾遺集 巻十一:恋一
拾遺集 巻十二:恋二
拾遺集 巻十三:恋三
拾遺集 巻十四:恋四
拾遺集 巻十五:恋五
拾遺集 巻十六:雑春
拾遺集 巻十七:雑秋
拾遺集 巻十八:雑賀
拾遺集 巻十九:雑恋
拾遺集 巻二十:哀傷
拾遺集 異本歌

拾遺集 巻一:春

00001
忠峯 壬生忠岑 (030)

はるたつといふはかりにや三吉野の山もかすみてけさは見ゆらん

はるたつと−いふはかりにや−みよしのの−やまもかすみて−けさはみゆらむ

異同資料句番号:00001

00002
番号外作者 紀文幹 (999)

春霞たてるを見れは荒玉の年は山よりこゆるなりけり

はるかすみ−たてるをみれは−あらたまの−としはやまより−こゆるなりけり

異同資料句番号:00002

00003
赤人 山辺赤人 (004)

昨日こそ年はくれしか春霞かすかの山にはやたちにけり

きのふこそ−としはくれしか−はるかすみ−かすかのやまに−はやたちにけり

異同資料句番号:00003

00004
重之 源重之 (048)

吉野山峯の白雪いつきえてけさは霞の立ちかはるらん

よしのやま−みねのしらゆき−いつきえて−けさはかすみの−たちかはるらむ

異同資料句番号:00004

00005
素性 素性法師 (021)

あらたまの年立帰る朝よりまたるる物はうくひすのこゑ

あらたまの−としたちかへる−あしたより−またるるものは−うくひすのこゑ

異同資料句番号:00005

00006
順 源順 (130)

氷たにとまらぬ春の谷風にまたうちとけぬ鴬の声

こほりたに−とまらぬはるの−たにかせに−またうちとけぬ−うくひすのこゑ

異同資料句番号:00006

00007
番号外作者 平祐挙 (999)

春立ちて朝の原の雪見れはまたふる年の心地こそすれ

はるたちて−あしたのはらの−ゆきみれは−またふるとしの−ここちこそすれ

異同資料句番号:00007

00008
躬恒 みつね (029)

春立ちて猶ふる宮は梅の花さくほともなくちるかとそ見る

はるたちて−なほふるゆきは−うめのはな−さくほともなく−ちるかとそみる

異同資料句番号:00008

00009
読人不知 よみ人しらす (000)

わかやとの梅にならひてみよしのの山の雪をも花とこそ見れ

わかやとの−うめにならひて−みよしのの−やまのゆきをも−はなとこそみれ

異同資料句番号:00009

00010
朝忠 中納言朝忠 (044)

鴬の声なかりせは雪きえぬ山さといかてはるをしらまし

うくひすの−こゑなかりせは−ゆききえぬ−やまさといかて−はるをしらまし

異同資料句番号:00010

00011
家持 大伴家持 (006)

うちきらし雪はふりつつしかすかにわか家のそのに鴬そなく

うちきらし−ゆきはふりつつ−しかすかに−わかいへのそのに−うくひすそなく

異同資料句番号:00011

00012
人麿 柿本人麿 (003)

梅の花それとも見えす久方のあまきるこのなへてふれれは

うめのはな−それともみえす−ひさかたの−あまきるゆきの−なへてふれれは

異同資料句番号:00012

00013
貫之 つらゆき (035)

むめかえにふりかかりてそ白雪の花のたよりにをらるへらなる

うめかえに−ふりかかりてそ−しらゆきの−はなのたよりに−をらるへらなる

異同資料句番号:00013

00014
躬恒 みつね (029)

ふる雪に色はまかひぬ梅の花かにこそにたる物なかりけれ

ふるゆきに−いろはまかひぬ−うめのはな−かにこそにたる−ものなかりけれ

異同資料句番号:00014

00015
兼盛 平兼盛 (040)

わかやとの梅のたちえや見えつらん思ひの外に君かきませる

わかやとの−うめのたちえや−みえつらむ−おもひのほかに−きみかきませる

異同資料句番号:00015

00016
躬恒 みつね (029)

かをとめてたれをらさらん梅の花あやなし霞たちなかくしそ

かをとめて−たれをらさらむ−うめのはな−あやなしかすみ−たちなかくしそ

異同資料句番号:00016

00017
貫之 つらゆき (035)

白妙のいもか衣にむめの花色をもかをもわきそかねつる

しろたへの−いもかころもに−うめのはな−いろをもかをも−わきそかねつる

異同資料句番号:00017

00018
人麿 (003)

あすからはわかなつまむとかたをかの朝の原はけふそやくめる

あすからは−わかなつまむと−かたをかの−あしたのはらは−けふそやくめる

異同資料句番号:00018

00019
貫之 つらゆき (035)

野辺見れはわかなつみけりむへしこそかきねの草もはるめきにけれ

のへみれは−わかなつみけり−うへしこそ−かきねのくさも−はるめきにけれ

異同資料句番号:00019

00020
番号外作者 円融院御製 (999)

かすか野におほくの年はつみつれとおいせぬ物はわかななりけり

かすかのに−おほくのとしは−つみつれと−おいせぬものは−わかななりけり

異同資料句番号:00020

00021
家持 大伴家持 (006)

春ののにあさるききすのつまこひにおのかありかを人にしれつつ

はるののに−あさるききすの−つまこひに−おのかありかを−ひとにしれつつ

異同資料句番号:00021

00022
番号外作者 宮内 (999)

松のうへになく鴬のこゑをこそはつねの日とはいふへかりけれ

まつのうへに−なくうくひすの−こゑをこそ−はつねのひとは−いふへかりけれ

異同資料句番号:00022

00023
忠峯 たたみね (030)

子の日するのへにこ松のなかりせは千世のためしになにをひかまし

ねのひする−のへにこまつの−なかりせは−ちよのためしに−なにをひかまし

異同資料句番号:00023

00024
能宣 大中臣よしのふ (049)

ちとせまてかきれる松もけふよりは君にひかれて万代やへむ

ちとせまて−かきれるまつも−けふよりは−きみにひかれて−よろつよやへむ

異同資料句番号:00024

00025
貫之 つらゆき (035)

梅の花またちらねともゆく水のそこにうつれるかけそ見えける

うめのはな−またちらねとも−ゆくみつの−そこにうつれる−かけそみえける

異同資料句番号:00025

00026
読人不知 よみ人しらす (000)

つみたむることのかたきは鴬の声するのへのわかななりけり

つみたむる−ことのかたきは−うくひすの−こゑするのへの−わかななりけり

異同資料句番号:00026

00027
読人不知 よみ人しらす (000)

梅の花よそなから見むわきもこかとかむはかりのかにもこそしめ

うめのはな−よそなからみむ−わきもこか−とかむはかりの−かにもこそしめ

異同資料句番号:00027

00028
読人不知 よみ人しらす (000)

袖たれていさわかそのにうくひすのこつたひちらす梅の花見む

そてたれて−いさわかそのに−うくひすの−こつたひちらす−うめのはなみむ

異同資料句番号:00028

00029
元良親王 兵部卿元良親王 (020)

あさまたきおきてそ見つる梅の花夜のまの風のうしろめたさに

あさまたき−おきてそみつる−うめのはな−よのまのかせの−うしろめたさに

異同資料句番号:00029

00030
躬恒 みつね (029)

吹く風をなにいとひけん梅の花ちりくる時そかはまさりける

ふくかせを−なにいとひけむ−うめのはな−ちりくるときそ−かはまさりける

異同資料句番号:00030

00031
能宣 大中臣能宣 (049)

匂をは風にそふとも梅の花色さへあやなあたにちらすな

にほひをは−かせにそふとも−うめのはな−いろさへあやな−あたにちらすな

異同資料句番号:00031

00032
読人不知 よみ人しらす (000)

ともすれは風のよるにそ青柳のいとは中中みたれそめける

ともすれは−かせのよるにそ−あをやきの−いとはなかなか−みたれそめける

異同資料句番号:00032

00033
能宣 大中臣能宣 (049)

ちかくてそ色もまされるあをやきの糸はよりてそ見るへかりける

ちかくてそ−いろもまされる−あをやきの−いとはよりてそ−みるへかりける

異同資料句番号:00033

00034
躬恒 凡河内躬恒 (029)

青柳の花田のいとをよりあはせてたえすもなくか鴬のこゑ

あをやきの−はなたのいとを−よりあはせて−たえすもなくか−うくひすのこゑ

異同資料句番号:00034

00035
読人不知 よみ人しらす (000)

花見にはむれてゆけとも青柳の糸のもとにはくる人もなし

はなみには−むれてゆけとも−あをやきの−いとのもとには−くるひともなし

異同資料句番号:00035

00036
中務 (136)

さけはちるさかねはこひし山桜思ひたえせぬ花のうへかな

さけはちる−さかねはこひし−やまさくら−おもひたえせぬ−はなのうへかな

異同資料句番号:00036

00037
中務 (136)

吉野山たえす霞のたなひくは人にしられぬ花やさくらん

よしのやま−たえすかすみの−たなひくは−ひとにしられぬ−はなやさくらむ

異同資料句番号:00037

00038
読人不知 よみ人しらす (000)

さきさかすよそにても見む山さくら峯の白雲たちなかくしそ

さきさかす−よそにてもみむ−やまさくら−みねのしらくも−たちなかくしそ

異同資料句番号:00038

00039
読人不知 よみ人しらす (000)

吹く風にあらそひかねてあしひきの山の桜はほころひにけり

ふくかせに−あらそひかねて−あしひきの−やまのさくらは−ほころひにけり

異同資料句番号:00039

00040
読人不知 よみ人しらす (000)

浅緑のへの霞はつつめともこほれてにほふ花さくらかな

あさみとり−のへのかすみは−つつめとも−こほれてにほふ−はなさくらかな

異同資料句番号:00040

00041
読人不知 よみ人しらす (000)

吉野山きえせぬ雪と見えつるは峯つつきさくさくらなりけり

よしのやま−きえせぬゆきと−みえつるは−みねつつきさく−さくらなりけり

異同資料句番号:00041

00042
元輔 清原元輔 (042)

春霞立ちなへたてそ花さかりみてたにあかぬ山のさくらを

はるかすみ−たちなへたてそ−はなさかり−みてたにあかぬ−やまのさくらを

異同資料句番号:00042

00043
忠峯 たたみね (030)

はるは猶我にてしりぬ花さかり心のとけき人はあらしな

はるはなほ−われにてしりぬ−はなさかり−こころのとけき−ひとはあらしな

異同資料句番号:00043

00044
番号外作者 藤原千景 (999)

さきそめていく世へぬらんさくら花色をは人にあかす見せつつ

さきそめて−いくよへぬらむ−さくらはな−いろをはひとに−あかすみせつつ

異同資料句番号:00044

00045
忠見 たた見 (041)

春くれはまつそうち見るいその神めつらしけなき山田なれとも

はるくれは−まつそうちみる−いそのかみ−めつらしけなき−やまたなれとも

異同資料句番号:00045

00046
元方 在原元方 (169)

はるくれは山田の氷打ちとけて人の心にまかすへらなり

はるくれは−やまたのこほり−うちとけて−ひとのこころに−まかすへらなり

異同資料句番号:00046

00047
番号外作者 斎宮内侍 (999)

春の田を人にまかせて我はたた花に心をつくるころかな

はるのたを−ひとにまかせて−われはたた−はなにこころを−つくるころかな

異同資料句番号:00047

00048
貫之 つらゆき (035)

あたなれとさくらのみこそ旧里の昔なからの物には有りけれ

あたなれと−さくらのみこそ−ふるさとの−むかしなからの−ものにはありけれ

異同資料句番号:00048

00049
伊勢 (019)

ちりちらすきかまほしきをふるさとの花見て帰る人もあはなん

ちりちらす−きかまほしきを−ふるさとの−はなみてかへる−ひともあはなむ

異同資料句番号:00049

00050
読人不知 よみ人しらす (000)

さくらかり雨はふりきぬおなしくはぬるとも花の影にかくれむ

さくらかり−あめはふりきぬ−おなしくは−ぬるともはなの−かけにかくれむ

異同資料句番号:00050

00051
元輔 もとすけ (042)

とふ人もあらしと思ひし山さとに花のたよりに人め見るかな

とふひとも−あらしとおもひし−やまさとに−はなのたよりに−ひとめみるかな

異同資料句番号:00051

00052
兼盛 平兼盛 (040)

花の木をうゑしもしるく春くれはわかやとすきて行く人そなき

はなのきを−うゑしもしるく−はるくれは−わかやとすきて−ゆくひとそなき

異同資料句番号:00052

00053
読人不知 よみ人しらす (000)

さくら色にわか身は深く成りぬらん心にしめて花ををしめは

さくらいろに−わかみはふかく−なりぬらむ−こころにしめて−はなををしめは

異同資料句番号:00053

00054
長能 藤原長能 (176)

身にかへてあやなく花を惜むかないけらはのちのはるもこそあれ

みにかへて−あやなくはなを−をしむかな−いけらはのちの−はるもこそあれ

異同資料句番号:00054

00055
読人不知 よみ人しらす (000)

見れとあかぬ花のさかりに帰る雁猶ふるさとのはるやこひしき

みれとあかぬ−はなのさかりに−かへるかり−なほふるさとの−はるやこひしき

異同資料句番号:00055

00056
読人不知 よみ人しらす (000)

ふるさとの霞とひわけゆくかりはたひのそらにやはるをくらさむ

ふるさとの−かすみとひわけ−ゆくかりは−たひのそらにや−はるをくらさむ

異同資料句番号:00056

00057
仲文 藤原清正 (125)

ちりぬへき花見る時はすかのねのなかきはる日もみしかかりけり

ちりぬへき−はなみるときは−すかのねの−なかきはるひも−みしかかりけり

異同資料句番号:00057

00058
読人不知 よみ人しらす (000)

つけやらんまにもちりなはさくら花いつはり人に我やなりなん

つけやらむ−まにもちりなは−さくらはな−いつはりひとに−われやなりなむ

異同資料句番号:00058

00059
能宣 よしのふ (049)

ちりそむる花を見すててかへらめやおほつかなしといもはまつとも

ちりそむる−はなをみすてて−かへらめや−おほつかなしと−いもはまつとも

異同資料句番号:00059

00060
読人不知 よみ人しらす (000)

見もはててゆくとおもへはちる花につけて心のそらになるかな

みもはてて−ゆくとおもへは−ちるはなに−つけてこころの−そらになるかな

異同資料句番号:00060

00061
読人不知 よみ人しらす (000)

あさことにわかはくやとのにはさくら花ちるほとはてもふれて見む

あさことに−わかはくやとの−にはさくら−はなちるほとは−てもふれてみむ

異同資料句番号:00061

00062
恵慶 恵慶法師 (047)

あさちはらぬしなきやとの桜花心やすくや風にちるらん

あさちはら−ぬしなきやとの−さくらはな−こころやすくや−かせにちるらむ

異同資料句番号:00062

00063
貫之 つらゆき (035)

春ふかくなりぬと思ふをさくら花ちるこのもとはまた雪そふる

はるふかく−なりぬとおもふを−さくらはな−ちるこのもとは−またゆきそふる

異同資料句番号:00063

00064
貫之 つらゆき (035)

さくらちるこのした風はさむからてそらにしられぬゆきそふりける

さくらちる−このしたかせは−さむからて−そらにしられぬ−ゆきそふりける

異同資料句番号:00064

00065
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山ちにちれる桜花きえせぬはるの雪かとそ見る

あしひきの−やまちにちれる−さくらはな−きえせぬはるの−ゆきかとそみる

異同資料句番号:00065

00066
番号外作者 小弐命婦 (999)

あしひきの山かくれなるさくら花ちりのこれりと風にしらるな

あしひきの−やまかくれなる−さくらはな−ちりのこれりと−かせにしらるな

異同資料句番号:00066

00067
読人不知 よみ人しらす (000)

いはまをもわけくるたきの水をいかてちりつむ花のせきととむらん

いはまをも−わけくるたきの−みつをいかて−ちりつむはなの−せきととむらむ

異同資料句番号:00067

00068
順 源したかふ (130)

春ふかみゐてのかは浪たちかへり見てこそゆかめ山吹の花

はるふかみ−ゐてのかはなみ−たちかへり−みてこそゆかめ−やまふきのはな

異同資料句番号:00068

00069
恵慶 恵慶法師 (047)

山吹の花のさかりにゐてにきてこのさと人になりぬへきかな

やまふきの−はなのさかりに−ゐてにきて−このさとひとに−なりぬへきかな

異同資料句番号:00069

00070
元輔 もとすけ (042)

物もいはてなかめてそふる山吹の花に心そうつろひぬらん

ものもいはて−なかめてそふる−やまふきの−はなにこころそ−うつろひぬらむ

異同資料句番号:00070

00071
読人不知 よみ人しらす (000)

さは水にかはつなくなり山吹のうつろふ影やそこに見ゆらん

さはみつに−かはつなくなり−やまふきの−うつろふかけや−そこにみゆらむ

異同資料句番号:00071

00072
読人不知 よみ人しらす (000)

わかやとのやへ山吹はひとへたにちりのこらなんはるのかたみに

わかやとの−やへやまふきは−ひとへたに−ちりのこらなむ−はるのかたみに

異同資料句番号:00072

00073
是則 坂上是則 (031)

花の色をうつしととめよ鏡山春よりのちの影や見ゆると

はなのいろを−うつしととめよ−かかみやま−はるよりのちの−かけやみゆると

異同資料句番号:00073

00074
読人不知 よみ人しらす (000)

春霞たちわかれゆく山みちは花こそぬさとちりまかひけれ

はるかすみ−たちわかれゆく−やまみちは−はなこそぬさと−ちりまかひけれ

異同資料句番号:00074

00075
読人不知 よみ人しらす (000)

年の内はみな春なからくれななん花見てたにもうきよすくさん

としのうちは−みなはるなから−くれななむ−はなみてたにも−うきよすくさむ

異同資料句番号:00075

00076
貫之 つらゆき (035)

風ふけは方もさためすちる花をいつ方へゆくはるとかは見む

かせふけは−かたもさためす−ちるはなを−いつかたへゆく−はるとかはみむ

異同資料句番号:00076

00077
貫之 つらゆき (035)

花もみなちりぬるやとは行く春のふるさととこそなりぬへらなれ

はなもみな−ちりぬるやとは−ゆくはるの−ふるさととこそ−なりぬへらなれ

異同資料句番号:00077

00078
躬恒 みつね (029)

つねよりものとけかりつるはるなれとけふのくるるはあかすそありける

つねよりも−のとけかりつる−はるなれと−けふのくるるは−あかすそありける

異同資料句番号:00078


拾遺集 巻二:夏

00079
能宣 大中臣能宣 (049)

なくこゑはまたきかねともせみのはのうすき衣はたちそきてける

なくこゑは−またきかねとも−せみのはの−うすきころもは−たちそきてける

異同資料句番号:00079

00080
順 したかふ (130)

わかやとのかきねやはるをへたつらん夏きにけりと見ゆる卯の花

わかやとの−かきねやはるを−へたつらむ−なつきにけりと−みゆるうのはな

異同資料句番号:00080

00081
重之 源重之 (048)

花の色にそめしたもとのをしけれは衣かへうきけふにもあるかな

はなのいろに−そめしたもとの−をしけれは−ころもかへうき−けふにもあるかな

異同資料句番号:00081

00082
番号外作者 盛明のみこ (999)

花ちるといとひしものを夏衣たつやおそきと風をまつかな

はなちると−いとひしものを−なつころも−たつやおそきと−かせをまつかな

異同資料句番号:00082

00083
重之 しけゆき (048)

夏にこそさきかかりけれふちの花松にとのみも思ひけるかな

なつにこそ−さきかかりけれ−ふちのはな−まつにとのみも−おもひけるかな

異同資料句番号:00083

00084
兼盛 平かねもり (040)

住吉の岸のふちなみわかやとの松のこすゑに色はまさらし

すみよしの−きしのふちなみ−わかやとの−まつのこすゑに−いろはまさらし

異同資料句番号:00084

00085
順 したかふ (130)

紫のふちさく松のこすゑにはもとのみとりもみえすそありける

むらさきの−ふちさくまつの−こすゑには−もとのみとりも−みえすそありける

異同資料句番号:00085

00086
実頼 小野宮太政大臣 (511)

うすくこくみたれてさける藤の花ひとしき色はあらしとそ思ふ

うすくこく−みたれてさける−ふちのはな−ひとしきいろは−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00086

00087
躬恒 (029)

手もふれてをしむかひなく藤の花そこにうつれは浪そをりける

てもふれて−をしむかひなく−ふちのはな−そこにうつれは−なみそをりける

異同資料句番号:00087

00088
人麿 柿本人麿 (003)

たこの浦のそこさへにほふ藤浪をかさしてゆかん見ぬ人のため

たこのうらの−そこさへにほふ−ふちなみを−かさしてゆかむ−みぬひとのため

異同資料句番号:00088

00089
番号外作者 平公誠 (999)

卯の花をちりにしむめにまかへてや夏のかきねに鴬のなく

うのはなを−ちりにしうめに−まかへてや−なつのかきねに−うくひすのなく

異同資料句番号:00089

00090
読人不知 よみ人しらす (000)

うの花のさけるかきねはみちのくのまかきのしまの浪かとそ見る

うのはなの−さけるかきねは−みちのくの−まかきのしまの−なみかとそみる

異同資料句番号:00090

00091
躬恒 みつね (029)

神まつる卯月にさける卯の花はしろくもきねかしらけたるかな

かみまつる−うつきにさける−うのはなは−しろくもきねか−しらけたるかな

異同資料句番号:00091

00092
貫之 つらゆき (035)

かみまつるやとの卯の花白妙のみてくらかとそあやまたれける

かみまつる−やとのうのはな−しろたへの−みてくらかとそ−あやまたれける

異同資料句番号:00092

00093
読人不知 よみ人しらす (000)

山かつのかきねにさける卯の花はたか白妙の衣かけしそ

やまかつの−かきねにさける−うのはなは−たかしろたへの−ころもかけしそ

異同資料句番号:00093

00094
読人不知 よみ人しらす (000)

時わかすふれる雪かと見るまてにかきねもたわにさける卯の花

ときわかす−ふれるゆきかと−みるまてに−かきねもたわに−さけるうのはな

異同資料句番号:00094

00095
読人不知 よみ人しらす (000)

春かけてきかむともこそ思ひしか山郭公おそくなくらん

はるかけて−きかむともこそ−おもひしか−やまほとときす−おそくなくらむ

異同資料句番号:00095

00096
読人不知 よみ人しらす (000)

はつこゑのきかまほしさに郭公夜深くめをもさましつるかな

はつこゑの−きかまほしさに−ほとときす−よふかくめをも−さましつるかな

異同資料句番号:00096

00097
番号外作者 久米広縄 (999)

家にきてなにをかたらむあしひきの山郭公ひとこゑもかな

いへにきて−なにをかたらむ−あしひきの−やまほとときす−ひとこゑもかな

異同資料句番号:00097

00098
貫之 つらゆき (035)

山さとにしる人もかな郭公なきぬときかはつけにくるかに

やまさとに−しるひともかな−ほとときす−なきぬときかは−つけにくるかに

異同資料句番号:00098

00099
読人不知 よみ人しらす (000)

やまさとにやとらさりせは郭公きく人もなきねをやなかまし

やまさとに−やとらさりせは−ほとときす−きくひともなき−ねをやなかまし

異同資料句番号:00099

00100
番号外作者 坂上望城 (999)

髣髴にそ鳴渡るなる郭公み山をいつるけさのはつ声

ほのかにそ−なきわたるなる−ほとときす−みやまをいつる−けさのはつこゑ

異同資料句番号:00100

00101
兼盛 平兼盛 (040)

み山いてて夜はにやきつる郭公暁かけてこゑのきこゆる

みやまいてて−よはにやきつる−ほとときす−あかつきかけて−こゑのきこゆる

異同資料句番号:00101

00102
道綱母 右大将道綱母 (053)

宮こ人ねてまつらめや郭公今そ山へをなきていつなる

みやこひと−ねてまつらめや−ほとときす−いまそやまへを−なきていつなる

異同資料句番号:00102

00103
是則 坂上是則 (031)

山かつと人はいへとも郭公まつはつこゑは我のみそきく

やまかつと−ひとはいへとも−ほとときす−まつはつこゑは−われのみそきく

異同資料句番号:00103

00104
忠見 壬生忠見 (041)

さ夜ふけてねさめさりせは郭公人つてにこそきくへかりけれ

さよふけて−ねさめさりせは−ほとときす−ひとつてにこそ−きくへかりけれ

異同資料句番号:00104

00105
伊勢 (019)

ふたこゑときくとはなしに郭公夜深くめをもさましつるかな

ふたこゑと−きくとはなしに−ほとときす−よふかくめをも−さましつるかな

異同資料句番号:00105

00106
公忠 源公忠朝臣 (117)

行きやらて山ちくらしつほとときす今ひとこゑのきかまほしさに

ゆきやらて−やまちくらしつ−ほとときす−いまひとこゑの−きかまほしさに

異同資料句番号:00106

00107
貫之 つらゆき (035)

このさとにいかなる人かいへゐして山郭公たえすきくらむ

このさとに−いかなるひとか−いへゐして−やまほとときす−たえすきくらむ

異同資料句番号:00107

00108
読人不知 よみ人しらす (000)

さみたれはちかくなるらしよと河のあやめの草もみくさおひにけり

さみたれは−ちかくなるらし−よとかはの−あやめのくさも−みくさおひにけり

異同資料句番号:00108

00109
能宣 大中臣能宣 (049)

昨日まてよそに思ひしあやめ草けふわかやとのつまと見るかな

きのふまて−よそにおもひし−あやめくさ−けふわかやとの−つまとみるかな

異同資料句番号:00109

00110
読人不知 よみ人しらす (000)

けふ見れは玉のうてなもなかりけりあやめの草のいほりのみして

けふみれは−たまのうてなも−なかりけり−あやめのくさの−いほりのみして

異同資料句番号:00110

00111
番号外作者 延喜御製 (999)

葦引の山郭公けふとてやあやめの草のねにたててなく

あしひきの−やまほとときす−けふとてや−あやめのくさの−ねにたててなく

異同資料句番号:00111

00112
読人不知 よみ人しらす (000)

たかそてに思ひよそへて郭公花橘のえたになくらん

たかそてに−おもひよそへて−ほとときす−はなたちはなの−えたになくらむ

異同資料句番号:00112

00113
忠見 壬生忠見 (041)

いつ方になきてゆくらむ郭公よとのわたりのまたよふかきに

いつかたに−なきてゆくらむ−ほとときす−よとのわたりの−またよふかきに

異同資料句番号:00113

00114
忠見 壬生忠見 (041)

しけることまこものおふるよとのにはつゆのやとりを人そかりける

しけること−まこものおふる−よとのには−つゆのやとりを−ひとそかりける

異同資料句番号:00114

00115
貫之 つらゆき (035)

かの方にはやこきよせよ郭公道になきつと人にかたらん

かのかたに−はやこきよせよ−ほとときす−みちになきつと−ひとにかたらむ

異同資料句番号:00115

00116
躬恒 みつね (029)

郭公をちかへりなけうなゐこかうちたれかみのさみたれのそら

ほとときす−をちかへりなけ−うなゐこか−うちたれかみの−さみたれのそら

異同資料句番号:00116

00117
読人不知 よみ人しらす (000)

なけやなけたか田の山の郭公このさみたれにこゑなをしみそ

なけやなけ−たかたのやまの−ほとときす−このさみたれに−こゑなをしみそ

異同資料句番号:00117

00118
読人不知 よみ人しらす (000)

さみたれはいこそねられね郭公夜ふかくなかむこゑをまつとて

さみたれは−いこそねられね−ほとときす−よふかくなかむ−こゑをまつとて

異同資料句番号:00118

00119
読人不知 よみ人しらす (000)

うたて人おもはむものをほとときすよるしもなとかわかやとになく

うたてひと−おもはむものを−ほとときす−よるしもなとか−わかやとになく

異同資料句番号:00119

00120
坂上郎女 大伴坂上郎女 (521)

郭公いたくななきそひとりゐていのねられぬにきけはくるしも

ほとときす−いたくななきそ−ひとりゐて−いのねられぬに−きけはくるしも

異同資料句番号:00120

00121
中務 (136)

夏の夜の心をしれるほとときすはやもなかなんあけもこそすれ

なつのよの−こころをしれる−ほとときす−はやもなかなむ−あけもこそすれ

異同資料句番号:00121

00122
中務 (136)

なつのよは浦島のこかはこなれやはかなくあけてくやしかるらん

なつのよは−うらしまのこか−はこなれや−はかなくあけて−くやしかるらむ

異同資料句番号:00122

00123
読人不知 よみ人しらす (000)

なつくれは深草山の郭公なくこゑしけくなりまさるなり

なつくれは−ふかくさやまの−ほとときす−なくこゑしけく−なりまさるなり

異同資料句番号:00123

00124
実方 藤原実方朝臣 (051)

さ月やみくらはし山の郭公おほつかなくもなきわたるかな

さつきやみ−くらはしやまの−ほとときす−おほつかなくも−なきわたるかな

異同資料句番号:00124

00125
読人不知 よみ人しらす (000)

郭公なくやさ月のみしかよもひとりしぬれはあかしかねつも

ほとときす−なくやさつきの−みしかよも−ひとりしぬれは−あかしかねつも

異同資料句番号:00125

00126
順 源したかふ (130)

ほとときす松につけてやともしする人も山へによをあかすらん

ほとときす−まつにつけてや−ともしする−ひともやまへに−よをあかすらむ

異同資料句番号:00126

00127
貫之 つらゆき (035)

さ月山このしたやみにともす火はしかのたちとのしるへなりけり

さつきやま−このしたやみに−ともすひは−しかのたちとの−しるへなりけり

異同資料句番号:00127

00128
兼盛 平兼盛 (040)

あやしくもしかのたちとの見えぬかなをくらの山に我やきぬらん

あやしくも−しかのたちとの−みえぬかな−をくらのやまに−われやきぬらむ

異同資料句番号:00128

00129
躬恒 みつね (029)

ゆくすゑはまたとほけれと夏山のこのしたかけそたちうかりける

ゆくすゑは−またとほけれと−なつやまの−このしたかけそ−たちうかりける

異同資料句番号:00129

00130
貫之 つらゆき (035)

夏山の影をしけみやたまほこの道行く人も立ちとまるらん

なつやまの−かけをしけみや−たまほこの−みちゆくひとも−たちとまるらむ

異同資料句番号:00130

00131
恵慶 恵慶法師 (047)

松影のいはゐの水をむすひあけて夏なきとしと思ひけるかな

まつかけの−いはゐのみつを−むすひあけて−なつなきとしと−おもひけるかな

異同資料句番号:00131

00132
伊勢 (019)

いつこにもさきはすらめとわかやとの山となてしこたれに見せまし

いつこにも−さきはすらめと−わかやとの−やまとなてしこ−たれにみせまし

異同資料句番号:00132

00133
読人不知 よみ人しらす (000)

そこきよみなかるる河のさやかにもはらふることを神はきかなん

そこきよみ−なかるるかはの−さやかにも−はらふることを−かみはきかなむ

異同資料句番号:00133

00134
長能 藤原長能 (176)

さはへなすあらふる神もおしなへてけふはなこしの祓なりけり

さはへなす−あらふるかみも−おしなへて−けふはなこしの−はらへなりけり

異同資料句番号:00134

00135
読人不知 よみ人しらす (000)

もみちせはあかくなりなんをくら山秋まつほとのなにこそありけれ

もみちせは−あかくなりなむ−をくらやま−あきまつほとの−なにこそありけれ

異同資料句番号:00135

00136
忠峯 たたみね (030)

おほあらきのもりのした草しけりあひて深くも夏のなりにけるかな

おほあらきの−もりのしたくさ−しけりあひて−ふかくもなつの−なりにけるかな

異同資料句番号:00136


拾遺集 巻三:秋

00137
安法 安法法師 (185)

夏衣またひとへなるうたたねに心してふけ秋のはつ風

なつころも−またひとへなる−うたたねに−こころしてふけ−あきのはつかせ

異同資料句番号:00137

00138
読人不知 よみ人しらす (000)

秋はきぬ竜田の山も見てしかなしくれぬさきに色やかはると

あきはきぬ−たつたのやまも−みてしかな−しくれぬさきに−いろやかはると

異同資料句番号:00138

00139
貫之 つらゆき (035)

荻の葉のそよくねとこそ秋風の人にしらるる始なりけれ

をきのはの−そよくおとこそ−あきかせの−ひとにしらるる−はしめなりけれ

異同資料句番号:00139

00140
恵慶 恵慶法師 (047)

やへむくらしけれるやとのさひしきに人こそ見えね秋はきにけり

やへむくら−しけれるやとの−さひしきに−ひとこそみえね−あきはきにけり

異同資料句番号:00140

00141
番号外作者 安貴玉 (999)

秋立ちていく日もあらねとこのねぬるあさけの風はたもとすすしも

あきたちて−いくかもあらねと−このねぬる−あさけのかせは−たもとすすしも

異同資料句番号:00141

00142
躬恒 みつね (029)

ひこほしのつままつよひの秋思に我さへあやな人そこひしき

ひこほしの−つままつよひの−あきかせに−われさへあやな−ひとそこひしき

異同資料句番号:00142

00143
貫之 つらゆき (035)

秋風に夜のふけゆけはあまの河かはせに浪のたちゐこそまて

あきかせに−よのふけゆけは−あまのかは−かはせになみの−たちゐこそまて

異同資料句番号:00143

00144
人麿 柿本人まろ (003)

あまの河とほき渡にあらねとも君かふなては年にこそまて

あまのかは−とほきわたりに−あらねとも−きみかふなては−としにこそまて

異同資料句番号:00144

00145
人麿 柿本人まろ (003)

天の河こその渡のうつろへはあさせふむまに夜そふけにける

あまのかは−こそのわたりの−うつろへは−あさせふむまに−よそふけにける

異同資料句番号:00145

00146
読人不知 よみ人しらす (000)

さ夜ふけてあまの河をそいてて見る思ふさまなる雲や渡ると

さよふけて−あまのかはをそ−いててみる−おもふさまなる−くもやわたると

異同資料句番号:00146

00147
番号外作者 湯原玉 (999)

ひこほしの思ひますらん事よりも見る我くるしよのふけゆけは

ひこほしの−おもひますらむ−ことよりも−みるわれくるし−よのふけゆけは

異同資料句番号:00147

00148
人麿 人まろ (003)

年に有りてひとよいもにあふひこほしも我にまさりて思ふらんやそ

としにありて−ひとよいもにあふ−ひこほしも−われにまさりて−おもふらむやそ

異同資料句番号:00148

00149
貫之 つらゆき (035)

たなはたにぬきてかしつる唐衣いとと涙に袖やぬるらん

たなはたに−ぬきてかしつる−からころも−いととなみたに−そてやぬるらむ

異同資料句番号:00149

00150
貫之 つらゆき (035)

ひととせにひとよとおもへとたなはたのあひ見む秋の限なきかな

ひととせに−ひとよとおもへと−たなはたの−あひみむあきの−かきりなきかな

異同資料句番号:00150

00151
恵慶 恵慶法師 (047)

いたつらにすくる月日をたなはたのあふよのかすと思はましかは

いたつらに−すくるつきひを−たなはたの−あふよのかすと−おもはましかは

異同資料句番号:00151

00152
元輔 もとすけ (042)

いととしくいもねさるらんと思ふかなけふのこよひにあへるたなはた

いととしく−いもねさるらむと−おもふかな−けふのこよひに−あへるたなはた

異同資料句番号:00152

00153
読人不知 よみ人しらす (000)

あひ見てもあはてもなけくたなはたはいつか心ののとけかるへき

あひみても−あはてもなけく−たなはたは−いつかこころの−のとけかるへき

異同資料句番号:00153

00154
読人不知 よみ人しらす (000)

わかいのる事はひとつそ天の河そらにしりてもたかへさらなん

わかいのる−ことはひとつそ−あまのかは−そらにしりても−たかへさらなむ

異同資料句番号:00154

00155
読人不知 よみ人しらす (000)

君こすは誰に見せましわかやとのかきねにさける槿の花

きみこすは−たれにみせまし−わかやとの−かきねにさける−あさかほのはな

異同資料句番号:00155

00156
読人不知 よみ人しらす (000)

女郎花おほかるのへに花すすきいつれをさしてまねくなるらん

をみなへし−おほかるのへに−はなすすき−いつれをさして−まねくなるらむ

異同資料句番号:00156

00157
読人不知 よみ人しらす (000)

手もたゆくうゑしもしるく女郎花色ゆゑ君かやとりぬるかな

てもたゆく−うゑしもしるく−をみなへし−いろゆゑきみか−やとりぬるかな

異同資料句番号:00157

00158
実頼 小野宮太政大臣 (511)

くちなしの色をそたのむ女郎花はなにめてつと人にかたるな

くちなしの−いろをそたのむ−をみなへし−はなにめてつと−ひとにかたるな

異同資料句番号:00158

00159
能宣 よしのふ (049)

女郎花にほふあたりにむつるれはあやなくつゆや心おくらん

をみなへし−にほふあたりに−むつるれは−あやなくつゆや−こころおくらむ

異同資料句番号:00159

00160
読人不知 よみ人しらす (000)

白露のおくつまにする女郎花あなわつらはし人なてふれそ

しらつゆの−おくつまにする−をみなへし−あなわつらはし−ひとなてふれそ

異同資料句番号:00160

00161
長能 藤原長能 (176)

日くらしに見れともあかぬをみなへしのへにやこよひたひねしなまし

ひくらしに−みれともあかぬ−をみなへし−のへにやこよひ−たひねしなまし

異同資料句番号:00161

00162
恵慶 恵慶法師 (047)

荻の葉もややうちそよくほとなるをなとかりかねのおとなかるらん

をきのはも−ややうちそよく−ほとなるを−なとかりかねの−おとなかるらむ

異同資料句番号:00162

00163
読人不知 よみ人しらす (000)

かりにとてくへかりけりや秋の野の花見るほとに日もくれぬへし

かりにとて−くへかりけりや−あきののの−はなみるほとに−ひもくれぬへし

異同資料句番号:00163

00164
読人不知 よみ人しらす (000)

秋の野の花のなたてに女郎花かりにのみこむ人にをらるな

あきののの−はなのなたてに−をみなへし−かりにのみこむ−ひとにをらるな

異同資料句番号:00164

00165
貫之 紀貫之 (035)

かりにとて我はきつれとをみなへし見るに心そ思ひつきぬる

かりにとて−われはきつれと−をみなへし−みるにこころそ−おもひつきぬる

異同資料句番号:00165

00166
貫之 紀貫之 (035)

かりにのみ人の見ゆれはをみなへし花のたもとそつゆけかりける

かりにのみ−ひとのみゆれは−をみなへし−はなのたもとそ−つゆけかりける

異同資料句番号:00166

00167
伊勢 (019)

栽ゑたてて君かしめゆふ花なれは玉と見えてやつゆもおくらん

うゑたてて−きみかしめゆふ−はななれは−たまとみえてや−つゆもおくらむ

異同資料句番号:00167

00168
読人不知 よみ人しらす (000)

こてすくす秋はなけれとはつかりのきくたひことにめつらしきかな

こてすくす−あきはなけれと−はつかりの−きくたひことに−めつらしきかな

異同資料句番号:00168

00169
高遠 大弐高遠 (171)

相坂の関のいはかとふみならし山たちいつるきりはらのこま

あふさかの−せきのいはかと−ふみならし−やまたちいつる−きりはらのこま

異同資料句番号:00169

00170
貫之 つらゆき (035)

あふさかの関のし水に影見えて今やひくらんもち月のこま

あふさかの−せきのしみつに−かけみえて−いまやひくらむ−もちつきのこま

異同資料句番号:00170

00171
順 源したかふ (130)

水のおもにてる月浪をかそふれはこよひそ秋のもなかなりける

みつのおもに−てるつきなみを−かそふれは−こよひそあきの−もなかなりける

異同資料句番号:00171

00172
能宣 よしのふ (049)

秋の月浪のそこにそいてにけるまつらん山のかひやなからん

あきのつき−なみのそこにそ−いてにける−まつらむやまの−かひやなからむ

異同資料句番号:00172

00173
番号外作者 源景明 (999)

あきの月西にあるかと見えつるはふけゆくよはの影にそ有りける

あきのつき−にしにあるかと−みえつるは−ふけゆくよはの−かけにそありける

異同資料句番号:00173

00174
元輔 もとすけ (042)

あかすのみおもほえむをはいかかせんかくこそは見め秋のよの月

あかすのみ−おもほえむをは−いかかせむ−かくこそはみめ−あきのよのつき

異同資料句番号:00174

00175
番号外作者 藤原経臣 (999)

ここにたにひかりさやけき秋の月雲のうへこそ思ひやらるれ

ここにたに−ひかりさやけき−あきのつき−くものうへこそ−おもひやらるれ

異同資料句番号:00175

00176
躬恒 みつね (029)

いつこにか今夜の月の見えさらんあかぬは人の心なりけり

いつこにか−こよひのつきの−みえさらむ−あかぬはひとの−こころなりけり

異同資料句番号:00176

00177
兼盛 かねもり (040)

終夜見てをあかさむ秋の月こよひのそらにくもなからなん

よもすから−みてをあかさむ−あきのつき−こよひのそらに−くもなからなむ

異同資料句番号:00177

00178
番号外作者 藤原為頼 (999)

おほつかないつこなるらん虫のねをたつねは草の露やみたれん

おほつかな−いつこなるらむ−むしのねを−たつねはくさの−つゆやみたれむ

異同資料句番号:00178

00179
伊勢 (019)

いつこにも草の枕をすすむしはここをたひとも思はさらなん

いつこにも−くさのまくらを−すすむしは−ここをたひとも−おもはさらなむ

異同資料句番号:00179

00180
貫之 つらゆき (035)

秋くれははたおる虫のあるなへに唐錦にも見ゆるのへかな

あきくれは−はたおるむしの−あるなへに−からにしきにも−みゆるのへかな

異同資料句番号:00180

00181
読人不知 よみ人しらす (000)

契りけん程や過きぬる秋ののに人松虫の声のたえせぬ

ちきりけむ−ほとやすきぬる−あきののに−ひとまつむしの−こゑのたえせぬ

異同資料句番号:00181

00182
躬恒 みつね (029)

露けくてわか衣手はぬれぬとも折りてをゆかん秋はきの花

つゆけくて−わかころもては−ぬれぬとも−をりてをゆかむ−あきはきのはな

異同資料句番号:00182

00183
伊勢 (019)

うつろはむ事たに惜しき秋萩ををれぬはかりもおける露かな

うつろはむ−ことたにをしき−あきはきを−をれぬはかりも−おけるつゆかな

異同資料句番号:00183

00184
元輔 もとすけ (042)

わかやとの菊の白露けふことにいく世つもりて淵となるらん

わかやとの−きくのしらつゆ−けふことに−いくよつもりて−ふちとなるらむ

異同資料句番号:00184

00185
躬恒 みつね (029)

長月のここぬかことにつむ菊の花もかひなくおいにけるかな

なかつきの−ここぬかことに−つむきくの−はなもかひなく−おいにけるかな

異同資料句番号:00185

00186
忠峯 たたみね (030)

千鳥なくさほの河きり立ちぬらし山のこのはも色かはり行く

ちとりなく−さほのかはきり−たちぬらし−やまのこのはも−いろかはりゆく

異同資料句番号:00186

00187
貫之 つらゆき (035)

風さむみわかから衣うつ時そ萩のしたはもいろまさりける

かせさむみ−わかからころも−うつときそ−はきのしたはも−いろまさりける

異同資料句番号:00187

00188
好忠 曾禰好忠 (046)

神なひのみむろの山をけふみれはした草かけて色つきにけり

かみなひの−みむろのやまを−けふみれは−したくさかけて−いろつきにけり

異同資料句番号:00188

00189
能宣 大中臣能宣 (049)

紅葉せぬときはの山は吹く風のおとにや秋をききわたるらん

もみちせぬ−ときはのやまは−ふくかせの−おとにやあきを−ききわたるらむ

異同資料句番号:00189

00190
能宣 大中臣能宣 (049)

もみちせぬときはの山にすむしかはおのれなきてや秋をしるらん

もみちせぬ−ときはのやまに−すむしかは−おのれなきてや−あきをしるらむ

異同資料句番号:00190

00191
読人不知 よみ人しらす (000)

秋風の打吹くことに高砂のをのへのしかのなかぬ日そなき

あきかせの−うちふくことに−たかさこの−をのへのしかの−なかぬひそなき

異同資料句番号:00191

00192
読人不知 よみ人しらす (000)

あきかせをそむくものから花すすきゆく方をなとまねくなるらん

あきかせを−そむくものから−はなすすき−ゆくかたをなと−まねくなるらむ

異同資料句番号:00192

00193
恵慶 恵慶法師 (047)

もみち見にやとれる我としらねはやさほの河きりたちかくすらん

もみちみに−やとれるわれと−しらねはや−さほのかはきり−たちかくすらむ

異同資料句番号:00193

00194
読人不知 よみ人しらす (000)

もみちはの色をしそへてなかるれはあさくも見えす山河の水

もみちはの−いろをしそへて−なかるれは−あさくもみえす−やまかはのみつ

異同資料句番号:00194

00195
能宣 よしのふ (049)

もみち葉をけふは猶見むくれぬともをくらの山の名にはさはらし

もみちはを−けふはなほみむ−くれぬとも−をくらのやまの−なにはさはらし

異同資料句番号:00195

00196
読人不知 読人しらす (000)

秋きりのたたまくをしき山ちかなもみちの錦おりつもりつつ

あききりの−たたまくをしき−やまちかな−もみちのにしき−おりつもりつつ

異同資料句番号:00196

00197
番号外作者 健守法師 (999)

水のあやに紅葉の鏡かさねつつ河せに浪のたたぬ日そなき

みつのあやに−もみちのにしき−かさねつつ−かはせになみの−たたぬひそなき

異同資料句番号:00197

00198
順 したかふ (130)

名をきけは昔なからの山なれとしくるる秋は色まさりけり

なをきけは−むかしなからの−やまなれと−しくるるあきは−いろまさりけり

異同資料句番号:00198

00199
恵慶 恵慶法師 (047)

昨日よりけふはまされるもみちはのあすの色をは見てややみなん

きのふより−けふはまされる−もみちはの−あすのいろをは−みてややみなむ

異同資料句番号:00199

00200
番号外作者 源延光朝臣 (999)

もみち葉を手ことにをりてかへりなん風の心もうしろめたきに

もみちはを−てことにをりて−かへりなむ−かせのこころも−うしろめたきに

異同資料句番号:00200

00201
番号外作者 源兼光 (999)

枝なから見てをかへらんもみちははをらんほとにもちりもこそすれ

えたなから−みてをかへらむ−もみちはは−をらむほとにも−ちりもこそすれ

異同資料句番号:00201

00202
深養父 ふかやふ (036)

河霧のふもとをこめて立ちぬれはそらにそ秋の山は見えける

かはきりの−ふもとをこめて−たちぬれは−そらにそあきの−やまはみえける

異同資料句番号:00202

00203
番号外作者 法橋観教 (999)

水うみに秋の山へをうつしてははたはりひろき錦とそ見る

みつうみに−あきのやまへを−うつしては−はたはりひろき−にしきとそみる

異同資料句番号:00203

00204
恵慶 恵慶法師 (047)

今よりは紅葉のもとにやとりせしをしむに旅の日かすへぬへし

いまよりは−もみちのもとに−やとりせし−をしむにたひの−ひかすへぬへし

異同資料句番号:00204

00205
読人不知 よみ人しらす (000)

とふ人も今はあらしの山かせに人松虫のこゑそかなしき

とふひとも−いまはあらしの−やまかせに−ひとまつむしの−こゑそかなしき

異同資料句番号:00205

00206
貫之 つらゆき (035)

ちりぬへき山の紅葉を秋きりのやすくも見せす立ちかくすらん

ちりぬへき−やまのもみちを−あききりの−やすくもみせす−たちかくすらむ

異同資料句番号:00206

00207
遍昭 僧正遍昭 (012)

秋山のあらしのこゑをきく時はこのはならねと物そかなしき

あきやまの−あらしのこゑを−きくときは−このはならねと−ものそかなしき

異同資料句番号:00207

00208
貫之 つらゆき (035)

あきの夜に雨ときこえてふる物は風にしたかふ紅葉なりけり

あきのよに−あめときこえて−ふるものは−かせにしたかふ−もみちなりけり

異同資料句番号:00208

00209
貫之 つらゆき (035)

心もてちらんたにこそをしからめなとか紅葉に風の吹くらん

こころもて−ちらむたにこそ−をしからめ−なとかもみちに−かせのふくらむ

異同資料句番号:00209

00210
公任 右衛門督公任 (055)

あさまたき嵐の山のさむけれは紅葉の錦きぬ人そなき

あさまたき−あらしのやまの−さむけれは−もみちのにしき−きぬひとそなき

異同資料句番号:00210

00211
能宣 よしのふ (049)

秋きりの峯にもをにもたつ山はもみちの錦たまらさりけり

あききりの−みねにもをにも−たつやまは−もみちのにしき−たまらさりけり

異同資料句番号:00211

00212
忠峯 壬生忠岑 (030)

いろいろのこのはなかるる大井河しもは桂のもみちとや見ん

いろいろの−このはなかるる−おほゐかは−しもはかつらの−もみちとやみむ

異同資料句番号:00212

00213
好忠 よしたた (046)

まねくとて立ちもとまらぬ秋ゆゑにあはれかたよる花すすきかな

まねくとて−たちもとまらぬ−あきゆゑに−あはれかたよる−はなすすきかな

異同資料句番号:00213

00214
兼盛 平兼盛 (040)

くれてゆく秋のかたみにおく物はわかもとゆひのしもにそ有りける

くれてゆく−あきのかたみに−おくものは−わかもとゆひの−しもにそありける

異同資料句番号:00214


拾遺集 巻四:冬

00215
貫之 紀貫之 (035)

あしひきの山かきくもりしくるれと紅葉はいととてりまさりけり

あしひきの−やまかきくもり−しくるれと−もみちはいとと−てりまさりけり

異同資料句番号:00215

00216
読人不知 よみ人しらす (000)

綱代木にかけつつ洗ふ唐錦日をへてよする紅葉なりけり

あしろきに−かけつつあらふ−からにしき−ひをへてよする−もみちなりけり

異同資料句番号:00216

00217
貫之 つらゆき (035)

かきくらししくるるそらをなかめつつ思ひこそやれ神なひのもり

かきくらし−しくるるそらを−なかめつつ−おもひこそやれ−かみなひのもり

異同資料句番号:00217

00218
読人不知 よみ人しらす (000)

神な月時雨しぬらしくすのはのうらこかるねに鹿もなくなり

かみなつき−しくれしぬらし−くすのはの−うちこかるねに−しかもなくなり

異同資料句番号:00218

00219
人麿 柿本人麿 (003)

竜田河もみち葉なかる神なひのみむろの山に時雨ふるらし

たつたかは−もみちはなかる−かみなひの−みむろのやまに−しくれふるらし

異同資料句番号:00219

00220
遍昭 僧正遍昭 (012)

唐錦枝にひとむらのこれるは秋のかたみをたたぬなりけり

からにしき−えたにひとむら−のこれるは−あきのかたみを−たたぬなりけり

異同資料句番号:00220

00221
貫之 つらゆき (035)

流れくるもみち葉見れはからにしき滝のいともておれるなりけり

なかれくる−もみちはみれは−からにしき−たきのいともて−おれるなりけり

異同資料句番号:00221

00222
兼盛 平兼盛 (040)

時雨ゆゑかつくたもとをよそ人はもみちをはらふ袖かとや見ん

しくれゆゑ−かつくたもとを−よそひとは−もみちをはらふ−そてかとやみむ

異同資料句番号:00222

00223
重之 源重之 (048)

あしのはにかくれてすみしつのくにのこやもあらはに冬はきにけり

あしのはに−かくれてすみし−つのくにの−こやもあらはに−ふゆはきにけり

異同資料句番号:00223

00224
貫之 つらゆき (035)

思ひかねいもかりゆけは冬の夜の河風さむみちとりなくなり

おもひかね−いもかりゆけは−ふゆのよの−かはかせさむみ−ちとりなくなり

異同資料句番号:00224

00225
読人不知 よみ人しらす (000)

ひねもすに見れともあかぬもみちははいかなる山の嵐なるらん

ひねもすに−みれともあかぬ−もみちはは−いかなるやまの−あらしなるらむ

異同資料句番号:00225

00226
読人不知 よみ人しらす (000)

夜をさむみねさめてきけはをしとりの浦山しくもみなるなるかな

よをさむみ−ねさめてきけは−をしとりの−うらやましくも−みなるなるかな

異同資料句番号:00226

00227
読人不知 よみ人しらす (000)

水鳥のしたやすからぬ思ひにはあたりの水もこほらさりけり

みつとりの−したやすからぬ−おもひには−あたりのみつも−こほらさりけり

異同資料句番号:00227

00228
読人不知 よみ人しらす (000)

夜をさむみねさめてきけはをしそなく払ひもあへす霜やおくらん

よをさむみ−ねさめてきけは−をしそなく−はらひもあへす−しもやおくらむ

異同資料句番号:00228

00229
読人不知 よみ人しらす (000)

霜のうへにふるはつゆきのあさ氷とけすも物を思ふころかな

しものうへに−ふるはつゆきの−あさこほり−とけすもものを−おもふころかな

異同資料句番号:00229

00230
公任 右衛門督公任 (055)

しもおかぬ袖たにさゆる冬の夜にかものうはけを思ひこそやれ

しもおかぬ−そてたにさゆる−ふゆのよに−かものうはけを−おもひこそやれ

異同資料句番号:00230

00231
番号外作者 たちはなのゆきより (999)

池水や氷とくらむあしかもの夜ふかくこゑのさわくなるかな

いけみつや−こほりとくらむ−あしかもの−よふかくこゑの−さわくなるかな

異同資料句番号:00231

00232
友則 紀友則 (033)

とひかよふをしのはかせのさむけれは池の氷そさえまさりける

とひかよふ−をしのはかせの−さむけれは−いけのこほりそ−さえまさりける

異同資料句番号:00232

00233
読人不知 よみ人しらす (000)

水のうへに思ひしものを冬の夜の氷は袖の物にそ有りける

みつのうへに−おもひしものを−ふゆのよの−こほりはそての−ものにそありける

異同資料句番号:00233

00234
兼盛 平兼盛 (040)

ふしつけしよとの渡をけさ見れはとけんこもなく氷しにけり

ふしつけし−よとのわたりを−けさみれは−とけむこもなく−こほりしにけり

異同資料句番号:00234

00235
読人不知 よみ人しらす (000)

冬さむみこほらぬ水はなけれとも吉野のたきはたゆるよもなし

ふゆさむみ−こほらぬみつは−なけれとも−よしののたきは−たゆるよもなし

異同資料句番号:00235

00236
能宣 よしのふ (049)

ふゆされは嵐のこゑもたかさこの松につけてそきくへかりける

ふゆされは−あらしのこゑも−たかさこの−まつにつけてそ−きくへかりける

異同資料句番号:00236

00237
元輔 もとすけ (042)

高砂の松にすむつる冬くれはをのへの霜やおきまさるらん

たかさこの−まつにすむつる−ふゆくれは−をのへのしもや−おきまさるらむ

異同資料句番号:00237

00238
友則 紀とものり (033)

ゆふされはさほのかはらの河きりに友まとはせる千鳥なくなり

ゆふされは−さほのかはらの−かはきりに−ともまとはせる−ちとりなくなり

異同資料句番号:00238

00239
人麿 (003)

浦ちかくふりくる雪はしら浪の末の松山こすかとそ見る

うらちかく−ふりくるゆきは−しらなみの−すゑのまつやま−こすかとそみる

異同資料句番号:00239

00240
元輔 もとすけ (042)

冬の夜の池の氷のさやけきは月の光のみかくなりけり

ふゆのよの−いけのこほりの−さやけきは−つきのひかりの−みかくなりけり

異同資料句番号:00240

00241
読人不知 よみ人しらす (000)

ふゆの池のうへは氷にとちられていかてか月のそこに入るらん

ふゆのいけの−うへはこほりに−とちられて−いかてかつきの−そこにいるらむ

異同資料句番号:00241

00242
恵慶 恵慶法師 (047)

あまの原そらさへさえや渡るらん氷と見ゆる冬の夜の月

あまのはら−そらさへさえや−わたるらむ−こほりとみゆる−ふゆのよのつき

異同資料句番号:00242

00243
番号外作者 源景明 (999)

宮こにてめつらしと見るはつ雪はよしのの山にふりやしぬらん

みやこにて−めつらしとみる−はつゆきは−よしののやまに−ふりやしぬらむ

異同資料句番号:00243

00244
元輔 もとすけ (042)

ふるほともはかなく見ゆるあはゆきのうら山しくも打ちとくるかな

ふるほとも−はかなくみゆる−あはゆきの−うらやましくも−うちとくるかな

異同資料句番号:00244

00245
伊勢 (019)

あしひきの山ゐにふれる白雪はすれる衣の心地こそすれ

あしひきの−やまゐにふれる−しらゆきは−すれるころもの−ここちこそすれ

異同資料句番号:00245

00246
貫之 つらゆき (035)

よるならは月とそ見ましわかやとの庭しろたへにふれるしらゆき

よるならは−つきとそみまし−わかやとの−にはしろたへに−ふれるしらゆき

異同資料句番号:00246

00247
能宣 よしのふ (049)

わかやとの雪につけてそふるさとのよしのの山は思ひやらるる

わかやとの−ゆきにつけてそ−ふるさとの−よしののやまは−おもひやらるる

異同資料句番号:00247

00248
番号外作者 藤原佐忠朝臣 (999)

我ひとりこしの山ちにこしかとも雪ふりにける跡を見るかな

われひとり−こしのやまちに−こしかとも−ゆきふりにける−あとをみるかな

異同資料句番号:00248

00249
忠見 たたみ (041)

年ふれはこしのしら山おいにけりおほくの冬の雪つもりつつ

としふれは−こしのしらやま−おいにけり−おほくのふゆの−ゆきつもりつつ

異同資料句番号:00249

00250
兼盛 かねもり (040)

見わたせは松のはしろきよしの山いくよつもれる雪にかあるらん

みわたせは−まつのはしろき−よしのやま−いくよつもれる−ゆきにかあるらむ

異同資料句番号:00250

00251
兼盛 かねもり (040)

山さとは雪ふりつみて道もなしけふこむ人をあはれとは見む

やまさとは−ゆきふりつみて−みちもなし−けふこむひとを−あはれとはみむ

異同資料句番号:00251

00252
人麿 人まろ (003)

あしひきの山ちもしらすしらかしの枝にもはにも雪のふれれは

あしひきの−やまちもしらす−しらかしの−えたにもはにも−ゆきのふれれは

異同資料句番号:00252

00253
貫之 つらゆき (035)

白雪のふりしく時はみよしのの山した風に花そちりける

しらゆきの−ふりしくときは−みよしのの−やましたかせに−はなそちりける

異同資料句番号:00253

00254
兼盛 かねもり (040)

人しれす春をこそまてはらふへき人なきやとにふれるしらゆき

ひとしれす−はるをこそまて−はらふへき−ひとなきやとに−ふれるしらゆき

異同資料句番号:00254

00255
能宣 よしのふ (049)

あたらしきはるさへちかくなりゆけはふりのみまさる年の雪かな

あたらしき−はるさへちかく−なりゆけは−ふりのみまさる−としのゆきかな

異同資料句番号:00255

00256
公任 右衛門督公任 (055)

梅かえにふりつむ雪はひととせにふたたひさける花かとそ見る

うめかえに−ふりつむゆきは−ひととせに−ふたたひさける−はなかとそみる

異同資料句番号:00256

00257
能宣 よしのふ (049)

おきあかす霜とともにやけさはみな冬の夜ふかきつみもけぬらん

おきあかす−しもとともにや−けさはみな−ふゆのよふかき−つみもけぬらむ

異同資料句番号:00257

00258
貫之 つらゆき (035)

年の内につもれるつみはかきくらしふる白雪とともにきえなん

としのうちに−つもれるつみは−かきくらし−ふるしらゆきと−ともにきえなむ

異同資料句番号:00258

00259
能宣 よしのふ (049)

雪ふかき山ちになににかへるらん春まつ花のかけにとまらて

ゆきふかき−やまちになにに−かへるらむ−はるまつはなの−かけにとまらて

異同資料句番号:00259

00260
兼盛 かねもり (040)

人はいさをかしやすらん冬くれは年のみつもるゆきとこそ見れ

ひとはいさ−をかしやすらむ−ふゆくれは−としのみつもる−ゆきとこそみれ

異同資料句番号:00260

00261
兼盛 かねもり (040)

かそふれはわか身につもる年月を送り迎ふとなにいそくらん

かそふれは−わかみにつもる−としつきを−おくりむかふと−なにいそくらむ

異同資料句番号:00261

00262
重之 源重之 (048)

ゆきつもるおのか年をはしらすしてはるをはあすときくそうれしき

ゆきつもる−おのかとしをは−しらすして−はるをはあすと−きくそうれしき

異同資料句番号:00262


拾遺集 巻五:賀

00263
朝忠 中納言朝忠 (044)

よろつ世の始とけふをいのりおきて今行末は神そしるらん

よろつよの−はしめとけふを−いのりおきて−いまゆくすゑは−かみそしるらむ

異同資料句番号:00263

00264
能宣 大中臣能宣 (049)

ちはやふるひらのの松の枝しけみ千世もやちよも色はかはらし

ちはやふる−ひらののまつの−えたしけみ−ちよもやちよも−いろはかはらし

異同資料句番号:00264

00265
読人不知 よみ人しらす (000)

かまふののたまのを山にすむつるの千とせは君かみよのかすなり

かまふのの−たまのをやまに−すむつるの−ちとせはきみか−みよのかすなり

異同資料句番号:00265

00266
元輔 清原元輔 (042)

あさまたききりふのをかにたつきしは千世の日つきの始なりけり

あさまたき−きりふのをかに−たつきしは−ちよのひつきの−はしめなりけり

異同資料句番号:00266

00267
能宣 よしのふ (049)

ふたはよりたのもしきかなかすか山こたかき松のたねそとおもへは

ふたはより−たのもしきかな−かすかやま−こたかきまつの−たねそとおもへは

異同資料句番号:00267

00268
能宣 よしのふ (049)

君かへむやほよろつ世をかそふれはかつかつけふそなぬかなりける

きみかへむ−やほよろつよを−かそふれは−かつかつけふそ−なぬかなりける

異同資料句番号:00268

00269
兼盛 平かねもり (040)

ことしおひの松はなぬかになりにけりのこりの程を思ひこそやれ

ことしおひの−まつはなぬかに−なりにけり−のこりのほとを−おもひこそやれ

異同資料句番号:00269

00270
能宣 よしのふ (049)

千とせともかすはさためす世の中に限なき身と人もいふへく

ちとせとも−かすはさためす−よのなかに−かきりなきみと−ひともいふへく

異同資料句番号:00270

00271
順 源したかふ (130)

老いぬれはおなし事こそせられけれきみはちよませきみはちよませ

おいぬれは−おなしことこそ−せられけれ−きみはちよませ−きみはちよませ

異同資料句番号:00271

00272
能宣 よしのふ (049)

ゆひそむるはつもとゆひのこむらさき衣の色にうつれとそ思ふ

ゆひそむる−はつもとゆひの−こむらさき−ころものいろに−うつれとそおもふ

異同資料句番号:00272

00273
兼盛 かねもり (040)

山しなの山のいはねに松をうゑてときはかきはにいのりつるかな

やましなの−やまのいはねに−まつをうゑて−ときはかきはに−いのりつるかな

異同資料句番号:00273

00274
番号外作者 仲算法師 (999)

声たかくみかさの山そよはふなるあめのしたこそたのしかるらし

こゑたかく−みかさのやまそ−よはふなる−あめのしたこそ−たのしかるらし

異同資料句番号:00274

00275
番号外作者 斎宮内侍 (999)

色かへぬ松と竹とのすゑの世をいつれひさしと君のみそ見む

いろかへぬ−まつとたけとの−すゑのよを−いつれひさしと−きみのみそみむ

異同資料句番号:00275

00276
頼基 大中臣頼基 (120)

ひとふしに千世をこめたる杖なれはつくともつきし君かよはひは

ひとふしに−ちよをこめたる−つゑなれは−つくともつきし−きみかよはひは

異同資料句番号:00276

00277
元輔 もとすけ (042)

君か世をなににたとへんさされいしのいはほとならんほともあかねは

きみかよを−なににたとへむ−さされいしの−いはほとならむ−ほともあかねは

異同資料句番号:00277

00278
元輔 もとすけ (042)

あをやきの緑の糸をくり返しいくらはかりのはるをへぬらん

あをやきの−みとりのいとを−くりかへし−いくらはかりの−はるをへぬらむ

異同資料句番号:00278

00279
兼盛 かねもり (040)

わかやとにさけるさくらの花さかりちとせ見るともあかしとそ思ふ

わかやとに−さけるさくらの−はなさかり−ちとせみるとも−あかしとそおもふ

異同資料句番号:00279

00280
能宣 よしのふ (049)

君かためけふきる竹の杖なれはまたもつきせぬ世世そこもれる

きみかため−けふきるたけの−つゑなれは−またもつきせぬ−よよそこもれる

異同資料句番号:00280

00281
能宣 よしのふ (049)

位山峯まてつける杖なれと今よろつよのさかのためなり

くらゐやま−みねまてつける−つゑなれと−いまよろつよの−さかのためなり

異同資料句番号:00281

00282
番号外作者 小野好古朝臣 (999)

吹く風によその紅葉はちりくれと君かときはの影そのとけき

ふくかせに−よそのもみちは−ちりくれと−きみかときはの−かけそのとけき

異同資料句番号:00282

00283
公忠 源公忠朝臣 (117)

よろつ世も猶こそあかね君かため思ふ心のかきりなけれは

よろつよも−なほこそあかね−きみかため−おもふこころの−かきりなけれは

異同資料句番号:00283

00284
伊勢 (019)

おほそらにむれたるたつのさしなから思ふ心のありけなるかな

おほそらに−むれたるたつの−さしなから−おもふこころの−ありけなるかな

異同資料句番号:00284

00285
伊勢 (019)

春の野のわかなならねときみかため年のかすをもつまんとそ思ふ

はるののの−わかなならねと−きみかため−としのかすをも−つまむとそおもふ

異同資料句番号:00285

00286
師輔 九条右大臣 (513)

さくら花今夜かさしにさしなからかくてちとせの春をこそへめ

さくらはな−こよひかさしに−さしなから−かくてちとせの−はるをこそへめ

異同資料句番号:00286

00287
読人不知 よみ人しらす (000)

かつ見つつちとせの春をすくすともいつかは花の色にあくへき

かつみつつ−ちとせのはるを−すくすとも−いつかははなの−いろにあくへき

異同資料句番号:00287

00288
躬恒 みつね (029)

みちとせになるてふもものことしより花さく春にあひにけるかな

みちとせに−なるてふももの−ことしより−はなさくはるに−あひにけるかな

異同資料句番号:00288

00289
番号外作者 藤原のふかた (999)

めつらしきちよのはしめの子の日にはまつけふをこそひくへかりけれ

めつらしき−ちよのはしめの−ねのひには−まつけふをこそ−ひくへかりけれ

異同資料句番号:00289

00290
番号外作者 三条太政大臣 (999)

ゆくすゑも子の日の松のためしには君かちとせをひかむとそ思ふ

ゆくすゑも−ねのひのまつの−ためしには−きみかちとせを−ひかむとそおもふ

異同資料句番号:00290

00291
貫之 つらゆき (035)

松をのみときはと思ふに世とともになかす泉もみとりなりけり

まつをのみ−ときはとおもふに−よとともに−なかすいつみも−みとりなりけり

異同資料句番号:00291

00292
読人不知 よみ人しらす (000)

みな月のなこしのはらへする人は千とせのいのちのふといふなり

みなつきの−なこしのはらへ−するひとは−ちとせのいのち−のふといふなり

異同資料句番号:00292

00293
番号外作者 参議伊衡 (999)

みそきして思ふ事をそ祈りつるやほよろつよの神のまにまに

みそきして−おもふことをそ−いのりつる−やほよろつよの−かみのまにまに

異同資料句番号:00293

00294
実頼 小野宮太政大臣 (511)

よろつ世にかはらぬ花の色なれはいつれの秋かきみか見さらん

よろつよに−かはらぬはなの−いろなれは−いつれのあきか−きみかみさらむ

異同資料句番号:00294

00295
兼盛 平兼盛 (040)

ちとせとそ草むらことにきこゆなるこや松虫のこゑにはあるらん

ちとせとそ−くさむらことに−きこゆなる−こやまつむしの−こゑにはあるらむ

異同資料句番号:00295

00296
貫之 つらゆき (035)

たか年のかすとかは見むゆきかへり千鳥なくなるはまのまさこを

たかとしの−かすとかはみむ−ゆきかへり−ちとりなくなる−はまのまさこを

異同資料句番号:00296

00297
能宣 よしのふ (049)

おひそむるねよりそしるきふえ竹のすゑの世なかくならん物とは

おひそむる−ねよりそしるき−ふえたけの−すゑのよなかく−ならむものとは

異同資料句番号:00297

00298
伊勢 (019)

千とせともなにかいのらんうらにすむたつのうへをそ見るへかりける

ちとせとも−なにかいのらむ−うらにすむ−たつのうへをそ−みるへかりける

異同資料句番号:00298

00299
読人不知 よみ人しらす (000)

きみか世はあまのは衣まれにきてなつともつきぬいはほならなん

きみかよは−あまのはころも−まれにきて−なつともつきぬ−いはほならなむ

異同資料句番号:00299

00300
元輔 もとすけ (042)

うこきなきいはほのはてもきみそ見むをとめのそてのなてつくすまて

うこきなき−いはほのはても−きみそみむ−をとめのそての−なてつくすまて

異同資料句番号:00300


拾遺集 巻六:別

00301
読人不知 よみ人しらす (000)

春霞たつあか月を見るからに心そそらになりぬへらなる

はるかすみ−たつあかつきを−みるからに−こころそそらに−なりぬへらなる

異同資料句番号:00301

00302
読人不知 よみ人しらす (000)

さくら花つゆにぬれたるかほみれはなきて別れし人そこひしき

さくらはな−つゆにぬれたる−かほみれは−なきてわかれし−ひとそこひしき

異同資料句番号:00302

00303
読人不知 よみ人しらす (000)

ちる花は道見えぬまてうつまなんわかるる人もたちやとまると

ちるはなは−みちみえぬまて−うつまなむ−わかるるひとも−たちやとまると

異同資料句番号:00303

00304
好忠 曾禰のよしたた (046)

かりかねの帰るをきけはわかれちは雲井はるかに思ふはかりそ

かりかねの−かへるをきけは−わかれちは−くもゐはるかに−おもふはかりそ

異同資料句番号:00304

00305
村上院 御製 (512)

夏衣たちわかるへき今夜こそひとへにをしき思ひそひぬれ

なつころも−たちわかるへき−こよひこそ−ひとへにをしき−おもひそひぬれ

異同資料句番号:00305

00306
読人不知 よみ人しらす (000)

わするなよわかれちにおふるくすのはの秋風ふかは今帰りこむ

わするなよ−わかれちにおふる−くすのはの−あきかせふかは−いまかへりこむ

異同資料句番号:00306

00307
読人不知 よみ人しらす (000)

別てふ事は誰かは始めけんくるしき物としらすやありけん

わかれてふ−ことはたれかは−はしめけむ−くるしきものと−しらすやありけむ

異同資料句番号:00307

00308
読人不知 よみ人しらす (000)

時しもあれ秋しも人のわかるれはいととたもとそつゆけかりける

ときしもあれ−あきしもひとの−わかるれは−いととたもとそ−つゆけかりける

異同資料句番号:00308

00309
村上院 御製 (512)

君か世を長月とたにおもはすはいかに別のかなしからまし

きみかよを−なかつきとたに−おもはすは−いかにわかれの−かなしからまし

異同資料句番号:00309

00310
忠見 たたみ (041)

露にたにあてしと思ひし人しもそ時雨ふるころたひにゆきける

つゆにたに−あてしとおもひし−ひとしもそ−しくれふるころ−たひにゆきける

異同資料句番号:00310

00311
能宣 よしのふ (049)

わかれちをへたつる雲のためにこそ扇の風をやらまほしけれ

わかれちを−へたつるくもの−ためにこそ−あふきのかせを−やらまほしけれ

異同資料句番号:00311

00312
読人不知 よみ人しらす (000)

別れてはあはむあはしそ定なきこのゆふくれや限なるらん

わかれては−あはむあはしそ−さためなき−このゆふくれや−かきりなるらむ

異同資料句番号:00312

00313
読人不知 よみ人しらす (000)

わかれちはこひしき人のふみなれややらてのみこそ見まくほしけれ

わかれちは−こひしきひとの−ふみなれや−やらてのみこそ−みまくほしけれ

異同資料句番号:00313

00314
貫之 つらゆき (035)

別れゆくけふはまとひぬあふさかは帰りこむ日のなにこそ有りけれ

わかれゆく−けふはまとひぬ−あふさかは−かへりこむひの−なにこそありけれ

異同資料句番号:00314

00315
能宣 よしのふ (049)

ゆくすゑのいのちもしらぬ別ちはけふ相坂やかきりなるらん

ゆくすゑの−いのちもしらぬ−わかれちは−けふあふさかや−かきりなるらむ

異同資料句番号:00315

00316
赤染衛門 (059)

惜むともなきものゆゑにしかすかの渡ときけはたたならぬかな

をしむとも−なきものゆゑに−しかすかの−わたりときけは−たたならぬかな

異同資料句番号:00316

00317
番号外作者 源のよしたねの妻 (999)

もろともにゆかぬみかはのやつはしはこひしとのみや思ひわたらん

もろともに−ゆかぬみかはの−やつはしは−こひしとのみや−おもひわたらむ

異同資料句番号:00317

00318
順 源したかふ (130)

別ちはわたせるはしもなきものをいかてかつねにこひ渡るへき

わかれちは−わたせるはしも−なきものを−いかてかつねに−こひわたるへき

異同資料句番号:00318

00319
貫之 つらゆき (035)

月影はあかす見るともさらしなの山のふもとになかゐすな君

つきかけは−あかすみるとも−さらしなの−やまのふもとに−なかゐすなきみ

異同資料句番号:00319

00320
村上院 天暦御製 (512)

わかるれは心をのみそつくしくしさしてあふへきほとをしらねは

わかるれは−こころをのみそ−つくしくし−さしてあふへき−ほとをしらねは

異同資料句番号:00320

00321
読人不知 よみ人しらす (000)

ゆく人をととめかたみのから衣たつよりそてのつゆけかるらん

ゆくひとを−ととめかたみの−からころも−たつよりそての−つゆけかるらむ

異同資料句番号:00321

00322
番号外作者 御めのと少納言 (999)

をしむともかたしやわかれ心なる涙をたにもえやはととむる

をしむとも−かたしやわかれ−こころなる−なみたをたにも−えやはととむる

異同資料句番号:00322

00323
番号外作者 女蔵人参河 (999)

あつまちの草はをわけん人よりもおくるる袖そまつはつゆけき

あつまちの−くさはをわけむ−ひとよりも−おくるるそてそ−まつはつゆけき

異同資料句番号:00323

00324
読人不知 よみ人しらす (000)

わかるれはまつ涙こそさきにたていかておくるる袖のぬるらん

わかるれは−まつなみたこそ−さきにたて−いかておくるる−そてのぬるらむ

異同資料句番号:00324

00325
読人不知 よみ人しらす (000)

わかるるををしとそ思ふつる木はの身をよりくたく心ちのみして

わかるるを−をしとそおもふ−つるきはの−みをよりくたく−ここちのみして

異同資料句番号:00325

00326
番号外作者 三条太皇太后宮 (999)

旅人の露はらふへき唐衣またきも袖のぬれにけるかな

たひひとの−つゆはらふへき−からころも−またきもそての−ぬれにけるかな

異同資料句番号:00326

00327
貫之 つらゆき (035)

あまたにはぬひかさねねと唐衣思ふ心はちへにそありける

あまたには−ぬひかさねねと−からころも−おもふこころは−ちへにそありける

異同資料句番号:00327

00328
貫之 つらゆき (035)

とほくゆく人のためにはわかそての涙の玉もをしからなくに

とほくゆく−ひとのためには−わかそての−なみたのたまも−をしからなくに

異同資料句番号:00328

00329
読人不知 よみ人しらす (000)

惜むとてとまる事こそかたからめわか衣手をほしてたにゆけ

をしむとて−とまることこそ−かたからめ−わかころもてを−ほしてたにゆけ

異同資料句番号:00329

00330
貫之 つらゆき (035)

糸による物ならなくにわかれちは心ほそくもおもほゆるかな

いとによる−ものならなくに−わかれちは−こころほそくも−おもほゆるかな

異同資料句番号:00330

00331
番号外作者 戒秀法師 (999)

かめ山にいくくすりのみ有りけれはととむる方もなき別かな

かめやまに−いくくすりのみ−ありけれは−ととむるかたも−なきわかれかな

異同資料句番号:00331

00332
仲文 藤原清正 (125)

思ふ人ある方へゆくわかれちを惜む心そかつはわりなき

おもふひと−あるかたへゆく−わかれちを−をしむこころそ−かつはわりなき

異同資料句番号:00332

00333
元輔 もとすけ (042)

いかはかり思ふらむとか思ふらんおいてわかるるとほきわかれを

いかはかり−おもふらむとか−おもふらむ−おいてわかるる−とほきわかれを

異同資料句番号:00333

00334
番号外作者 源満中朝臣 (999)

君はよし行末とほしとまる身のまつほといかかあらむとすらん

きみはよし−ゆくすゑとほし−とまるみの−まつほといかか−あらむとすらむ

異同資料句番号:00334

00335
読人不知 よみ人しらす (000)

おくれゐてわかこひをれは白雲のたなひく山をけふやこゆらん

おくれゐて−わかこひをれは−しらくもの−たなひくやまを−けふやこゆらむ

異同資料句番号:00335

00336
番号外作者 右衛門 (999)

命をそいかならむとは思ひこしいきてわかるる世にこそ有りけれ

いのちをそ−いかならむとは−おもひこし−いきてわかるる−よにこそありけれ

異同資料句番号:00336

00337
番号外作者 橘倚平 (999)

昔見しいきの松原事とははわすれぬ人も有りとこたへよ

むかしみし−いきのまつはら−こととはは−わすれぬひとも−ありとこたへよ

異同資料句番号:00337

00338
番号外作者 藤原為順 (999)

たけくまの松を見つつやなくさめん君かちとせの影にならひて

たけくまの−まつをみつつや−なくさめむ−きみかちとせの−かけにならひて

異同資料句番号:00338

00339
兼盛 平兼盛 (040)

たよりあらはいかて宮こへつけやらむけふ白河の関はこえぬと

たよりあらは−いかてみやこへ−つけやらむ−けふしらかはの−せきはこえぬと

異同資料句番号:00339

00340
公任 右衛門督公任 (055)

あつまちのこのしたくらくなりゆかは宮この月をこひさらめやは

あつまちの−このしたくらく−なりゆかは−みやこのつきを−こひさらめやは

異同資料句番号:00340

00341
読人不知 よみ人しらす (000)

たひゆかはそてこそぬるれもる山のしつくにのみはおほせさらなん

たひゆかは−そてこそぬるれ−もるやまの−しつくにのみは−おほせさらなむ

異同資料句番号:00341

00342
兼盛 かねもり (040)

しほみてるほとにゆきかふ旅人やはまなのはしとなつけそめけん

しほみてる−ほとにゆきかふ−たひひとや−はまなのはしと−なつけそめけむ

異同資料句番号:00342

00343
貫之 つらゆき (035)

雨によりたみののしまをわけゆけと名にはかくれぬ物にそ有りける

あめにより−たみののしまを−わけゆけと−なにはかくれぬ−ものにそありける

異同資料句番号:00343

00344
伊勢 (019)

郭公ねくらなからのこゑきけは草の枕そつゆけかりける

ほとときす−ねくらなからの−こゑきけは−くさのまくらそ−つゆけかりける

異同資料句番号:00344

00345
能宣 よしのふ (049)

草枕我のみならすかりかねもたひのそらにそなき渡るなる

くさまくら−われのみならす−かりかねも−たひのそらにそ−なきわたるなる

異同資料句番号:00345

00346
読人不知 よみ人しらす (000)

君をのみこひつつたひの草枕つゆしけからぬあか月そなき

きみをのみ−こひつつたひの−くさまくら−つゆしけからぬ−あかつきそなき

異同資料句番号:00346

00347
兼盛 平兼盛 (040)

はるかなるたひのそらにもおくれねはうら山しきは秋のよの月

はるかなる−たひのそらにも−おくれねは−うらやましきは−あきのよのつき

異同資料句番号:00347

00348
能宣 よしのふ (049)

をみなへし我にやとかせいなみののいなといふともここをすきめや

をみなへし−われにやとかせ−いなみのの−いなといふとも−ここをすきめや

異同資料句番号:00348

00349
重之 (048)

ふなちには草の枕もむすはねはおきなからこそ夢も見えけれ

ふなちには−くさのまくらも−むすはねは−おきなからこそ−ゆめもみえけれ

異同資料句番号:00349

00350
嘉言 ゆけのよしとき (163)

思ひいてもなきふるさとの山なれとかくれゆくはたあはれなりけり

おもひいても−なきふるさとの−やまなれと−かくれゆくはた−あはれなりけり

異同資料句番号:00350

00351
道真 贈太政大臣 (024)

君かすむやとのこすゑのゆくゆくとかくるるまてにかへりみしはや

きみかすむ−やとのこすゑの−ゆくゆくと−かくるるまてに−かへりみしはや

異同資料句番号:00351

00352
番号外作者 かなをか (999)

浪のうへに見えしこしまのしまかくれゆくそらもなしきみにわかれて

なみのうへに−みえしこしまの−しまかくれ−ゆくそらもなし−きみにわかれて

異同資料句番号:00352

00353
人麿 かきのもとの人まろ (003)

あまとふやかりのつかひにいつしかもならのみやこにことつてやらん

あまとふや−かりのつかひに−いつしかも−ならのみやこに−ことつてやらむ

異同資料句番号:00353


拾遺集 巻七:物名

00354
読人不知 よみ人しらす (000)

うくひすのすつくる枝を折りつれはこうはいかてかうまむとすらん

うくひすの−すつくるえたを−をりつれは−こをはいかてか−うまむとすらむ

異同資料句番号:00354

00355
読人不知 よみ人しらす (000)

花の色をあらはにめてはあためきぬいさくらやみになりてかささむ

はなのいろを−あらはにめては−あためきぬ−いさくらやみに−なりてかささむ

異同資料句番号:00355

00356
番号外作者 藤原すけみ (999)

たひのいはやなきとこにもねられけり草の枕につゆはおけとも

たひのいは−やなきとこにも−ねられけり−くさのまくらに−つゆはおけとも

異同資料句番号:00356

00357
番号外作者 藤原すけみ (999)

なくこゑはあまたすれとも鴬にまさるとりのはなくこそ有りけれ

なくこゑは−あまたすれとも−うくひすに−まさるとりのは−なくこそありけれ

異同資料句番号:00357

00358
伊勢 (019)

わたつ海のおきなかにひのはなれいててもゆと見ゆるはあまのいさりか

わたつうみの−おきなかにひの−はなれいてて−もゆとみゆるは−あまのいさりか

異同資料句番号:00358

00359
読人不知 よみ人しらす (000)

こき色かいつはたうすくうつろはむ花に心もつけさらんかも

こきいろか−いつはたうすく−うつろはむ−はなにこころも−つけさらむかも

異同資料句番号:00359

00360
高光 如覚法師 (116)

紫の色にはさくなむさしのの草のゆかりと人もこそ見れ

むらさきの−いろにはさくな−むさしのの−くさのゆかりと−ひともこそみれ

異同資料句番号:00360

00361
読人不知 よみ人しらす (000)

うゑて見る君たにしらぬ花の名を我しもつけん事のあやしさ

うゑてみる−きみたにしらぬ−はなのなを−われしもつけむ−ことのあやしさ

異同資料句番号:00361

00362
読人不知 よみ人しらす (000)

河かみに今よりうたむあしろにはまつもみちはやよらむとすらん

かはかみに−いまよりうたむ−あしろには−まつもみちはや−よらむとすらむ

異同資料句番号:00362

00363
読人不知 よみ人しらす (000)

あた人のまかきちかうな花うゑそにほひもあへす折りつくしけり

あたひとの−まかきちかうな−はなうゑそ−にほひもあへす−をりつくしけり

異同資料句番号:00363

00364
読人不知 よみ人しらす (000)

わかやとの花の葉にのみぬるてふのいかなるあさかほかよりはくる

わかやとの−はなのはにのみ−ぬるてふの−いかなるあさか−ほかよりはくる

異同資料句番号:00364

00365
読人不知 よみ人しらす (000)

忘れにし人のさらにもこひしきかむけにこしとは思ふものから

わすれにし−ひとのさらにも−こひしきか−むけにこしとは−おもふものから

異同資料句番号:00365

00366
読人不知 よみ人しらす (000)

秋ののに花てふ花を折りつれはわひしらにこそ虫もなきけれ

あきののに−はなてふはなを−をりつれは−わひしらにこそ−むしもなきけれ

異同資料句番号:00366

00367
忠峯 忠岑 (030)

白露のかかるかやかてきえさらは草はそたまのくしけならまし

しらつゆの−かかるかやかて−きえさらは−くさはそたまの−くしけならまし

異同資料句番号:00367

00368
忠峯 忠岑 (030)

山河はきのはなかれすあさきせをせけはふちとそ秋はなるらん

やまかはは−きのはなかれす−あさきせを−せけはふちとそ−あきはなるらむ

異同資料句番号:00368

00369
忠峯 忠岑 (030)

たきつせのなかにたまつむしらなみは流るる水ををにそぬきける

たきつせの−なかにたまつむ−しらなみは−なかるるみつを−をにそぬきける

異同資料句番号:00369

00370
忠峯 忠岑 (030)

今こむといひて別れしあしたよりおもひくらしのねをのみそなく

いまこむと−いひてわかれし−あしたより−おもひくらしの−ねをのみそなく

異同資料句番号:00370

00371
貫之 つらゆき (035)

そま人は宮木ひくらしあしひきの山の山ひこ声とよむなり

そまひとは−みやきひくらし−あしひきの−やまのやまひこ−こゑとよむなり

異同資料句番号:00371

00372
貫之 つらゆき (035)

松のねは秋のしらへにきこゆなりたかくせめあけて鳥そひくらし

まつのねは−あきのしらへに−きこゆなり−たかくせめあけて−かせそひくらし

異同資料句番号:00372

00373
番号外作者 すけみ (999)

あたなりとひともときくるのへしもそ花のあたりをすきかてにする

あたなりと−ひともときくる−ものしもそ−はなのあたりを−すきかてにする

異同資料句番号:00373

00374
番号外作者 すけみ (999)

鴬のすはうこけともぬしもなし風にまかせていつちいぬらん

うくひすの−すはうこけとも−ぬしもなし−かせにまかせて−いつちいぬらむ

異同資料句番号:00374

00375
番号外作者 すけみ (999)

ふるみちに我やまとはむいにしへの野中の草はしけりあひにけり

ふるみちに−われやまとはむ−いにしへの−のなかのくさは−しけりあひにけり

異同資料句番号:00375

00376
番号外作者 すけみ (999)

すみよしのをかの松かささしつれは雨はふるともいなみのはきし

すみよしの−をかのまつかさ−さしつれは−あめはふるとも−いなみのはきし

異同資料句番号:00376

00377
番号外作者 すけみ (999)

白浪のうちかくるすのかわかぬにわかたもとこそおとらさりけれ

しらなみの−うちかくるすの−かわかぬに−わかたもとこそ−おとらさりけれ

異同資料句番号:00377

00378
番号外作者 すけみ (999)

水もなく舟もかよはぬこのしまにいかてかあまのなまめかるらん

みつもなく−ふねもかよはぬ−このしまに−いかてかあまの−なまめかるらむ

異同資料句番号:00378

00379
元方 在原元方 (169)

うゑていにし人もみなくに秋はきのたれ見よとかは花のさきけむ

うゑていにし−ひともみなくに−あきはきの−たれみよとかは−はなのさきけむ

異同資料句番号:00379

00380
貫之 つらゆき (035)

あしひきの山辺にをれは白雲のいかにせよとかはるる時なき

あしひきの−やまへにをれは−しらくもの−いかにせよとか−はるるときなき

異同資料句番号:00380

00381
業平 在原業平朝臣 (017)

つくしよりここまてくれとつともなしたちのをかはのはしのみそある

つくしより−ここまてくれと−つともなし−たちのをかはの−はしのみそある

異同資料句番号:00381

00382
読人不知 よみ人しらす (000)

身をすてて山に入りにし我なれはくまのくらはむこともおほえす

みをすてて−やまにいりにし−われなれは−くまのくらはむ−こともおほえす

異同資料句番号:00382

00383
読人不知 よみ人しらす (000)

鳥のこはまたひななからたちていぬかひの見ゆるはすもりなりけり

とりのこは−またひななから−たちていぬ−かひのみゆるは−すもりなりけり

異同資料句番号:00383

00384
番号外作者 すけみ (999)

くきもはもみな緑なるふかせりはあらふねのみやしろく見ゆらん

くきもはも−みなみとりなる−ふかせりは−あらふねのみや−しろくみゆらむ

異同資料句番号:00384

00385
重之 しけゆき (048)

あたなりなとりのこほりにおりゐるはしたよりとくる事はしらぬか

あたなりな−とりのこほりに−おりゐるは−したよりとくる−ことはしらぬか

異同資料句番号:00385

00386
兼盛 かねもり (040)

おほつかな雲のかよひち見てしかなとりのみゆけはあとはかもなし

おほつかな−くものかよひち−みてしかな−とりのみゆけは−あとはかもなし

異同資料句番号:00386

00387
読人不知 よみ人しらす (000)

あかすしてわかれし人のすむさとはさはこの見ゆる山のあなたか

あかすして−わかれしひとの−すむさとは−さはこのみゆる−やまのあなたか

異同資料句番号:00387

00388
番号外作者 紀輔時 (999)

かかり火の所さためす見えつるは流れつつのみたけはなりけり

かかりひの−ところさためす−みえつるは−なかれつつのみ−たけはなりけり

異同資料句番号:00388

00389
番号外作者 高向草春 (999)

神なひのみむろのきしやくつるらん竜田の河の水のにこれる

かみなひの−みむろのきしや−くつるらむ−たつたのかはの−みつのにこれる

異同資料句番号:00389

00390
番号外作者 すけみ (999)

いかりゐのいしをくくみてかみこしはきさのきにこそおとらさりけれ

いかりゐの−いしをくくみて−かみこしは−きさのきにこそ−おとらさりけれ

異同資料句番号:00390

00391
番号外作者 仙慶法師 (999)

五月雨にならぬ限は郭公なにかはなかむしのふはかりに

さみたれに−ならぬかきりは−ほとときす−なにかはなかむ−しのふはかりに

異同資料句番号:00391

00392
番号外作者 すけみ (999)

心さしふかき時にはそこのももかつきいてぬる物にそ有りける

こころさし−ふかきときには−そこのもも−かつきいてぬる−ものにそありける

異同資料句番号:00392

00393
読人不知 よみ人しらす (000)

おもかけにしはしは見ゆる君なれと恋しき事そ時そともなき

おもかけに−しはしはみゆる−きみなれと−こひしきことそ−ときそともなき

異同資料句番号:00393

00394
番号外作者 すけみ (999)

いにしへはおこれりしかとわひぬれはとねりかきぬも今はきつへし

いにしへは−おこれりしかと−わひぬれは−とねりかきぬも−いまはきつへし

異同資料句番号:00394

00395
番号外作者 すけみ (999)

池をはりこめたる水のおほかれはいひのくちよりあまるなるへし

いけをはり−こめたるみつの−おほかれは−いひのくちより−あまるなるへし

異同資料句番号:00395

00396
番号外作者 すけみ (999)

あしひきの山した水にぬれにけりその火まつたけ衣あふらん

あしひきの−やましたみつに−ぬれにけり−そのひまつたけ−ころもあふらむ

異同資料句番号:00396

00397
番号外作者 すけみ (999)

いとへともつらきかたみを見る時はまつたけからぬねこそなかるれ

いとへとも−つらきかたみを−みるときは−まつたけからぬ−ねこそなかるれ

異同資料句番号:00397

00398
番号外作者 すけみ (999)

山たかみ花の色をも見るへきににくくたちぬる春かすみかな

やまたかみ−はなのいろをも−みるへきに−にくくたちぬる−はるかすみかな

異同資料句番号:00398

00399
番号外作者 すけみ (999)

野を見れは春めきにけりあをつつらこにやくまましわかなつむへく

のをみれは−はるめきにけり−あをつつら−こにやくままし−わかなつむへく

異同資料句番号:00399

00400
番号外作者 高岳相如 (999)

いさりせしあまのをしへしいつくそやしまめくるとてありといひしは

いさりせし−あまのをしへし−いつくそや−しまめくるとて−ありといひしは

異同資料句番号:00400

00401
番号外作者 すけみ (999)

河きしのをとりおるへき所あらはうきにしにせぬ身はなけてまし

かはきしの−をとりおるへき−ところあらは−うきにしにせぬ−みはなけてまし

異同資料句番号:00401

00402
番号外作者 すけみ (999)

もみちはに衣の色はしみにけり秋のやまからめくりこしまに

もみちはに−ころものいろは−しみにけり−あきのやまから−めくりこしまに

異同資料句番号:00402

00403
番号外作者 すけみ (999)

なにとかやくきのすかたはおもほえてあやしく花の名こそわするれ

なにとかや−くきのすかたは−おもほえて−あやしくはなの−なこそわするれ

異同資料句番号:00403

00404
黒主 大伴黒主 (501)

わか心あやしくあたに春くれは花につく身となとてなりけん

わかこころ−あやしくあたに−はるくれは−はなにつくみと−なとてなりけむ

異同資料句番号:00404

00405
黒主 大伴黒主 (501)

さく花に思ひつくみのあちきなさ身にいたつきのいるもしらすて

さくはなに−おもひつくみの−あちきなさ−みにいたつきの−いるもしらすて

異同資料句番号:00405

00406
番号外作者 すけみ (999)

なにはつはくらめにのみそ舟はつく朝の風のさためなけれは

なにはつは−くらめにのみそ−ふねはつく−あしたのかせの−さためなけれは

異同資料句番号:00406

00407
元輔 もとすけ (042)

みよしのもわかなつむらんわきもこかひはらかすみて日かすへぬれは

みよしのも−わかなつむらむ−わきもこか−ひはらかすみて−ひかすへぬれは

異同資料句番号:00407

00408
番号外作者 すけみ (999)

あしきぬはさけからみてそ人はきるひろやたらぬと思ふなるへし

あしきぬは−さけからみてそ−ひとはきる−ひろやたらぬと−おもふなるへし

異同資料句番号:00408

00409
番号外作者 すけみ (999)

雲まよひほしのあゆくと見えつるは蛍のそらにとふにそ有りける

くもまよひ−ほしのあゆくと−みえつるは−ほたるのそらに−とふにそありける

異同資料句番号:00409

00410
番号外作者 すけみ (999)

はしたかのをきゑにせんとかまへたるおしあゆかすなねすみとるへく

はしたかの−をきゑにせむと−かまへたる−おしあゆかすな−ねすみとるへく

異同資料句番号:00410

00411
番号外作者 すけみ (999)

わきもこか身をすてしよりさるさはの池のつつみやきみはこひしき

わきもこか−みをすてしより−さるさはの−いけのつつみや−きみはこひしき

異同資料句番号:00411

00412
重之 しけゆき (048)

この家はうるかいりても見てしかなあるしなからもかはんとそ思ふ

このいへは−うるかいりても−みてしかな−あるしなからも−かはむとそおもふ

異同資料句番号:00412

00413
読人不知 よみ人しらす (000)

あつまにてやしなはれたる人のこはしたたみてこそ物はいひけれ

あつまにて−やしなはれたる−ひとのこは−したたみてこそ−ものはいひけれ

異同資料句番号:00413

00414
読人不知 よみ人しらす (000)

春風のけさはやけれは鴬の花の衣もほころひにけり

はるかせの−けさはやけれは−うくひすの−はなのころもも−ほころひにけり

異同資料句番号:00414

00415
読人不知 よみ人しらす (000)

霞わけいまかり帰る物ならは秋くるまてはこひやわたらん

かすみわけ−いまかりかへる−ものならは−あきくるまては−こひやわたらむ

異同資料句番号:00415

00416
番号外作者 すけみ (999)

思ふとちところもかへすすみへなんたちはなれなはこひしかるへし

おもふとち−ところもかへす−すみへなむ−たちはなれなは−こひしかるへし

異同資料句番号:00416

00417
番号外作者 すけみ (999)

あしひきの山のこのはのおちくちはいろのをしきそあはれなりける

あしひきの−やまのこのはの−おちくちは−いろのをしきそ−あはれなりける

異同資料句番号:00417

00418
番号外作者 すけみ (999)

つのくにのなにはわたりにつくる田はあしかなへかとえこそ見わかね

つのくにの−なにはわたりに−つくるたは−あしかなへかと−えこそみわかね

異同資料句番号:00418

00419
番号外作者 すけみ (999)

たかかひのまたもこなくにつなきいぬのはなれていかむなくるまつほと

たかかひの−またもこなくに−つなきいぬの−はなれてゆかむ−なくるまつほと

異同資料句番号:00419

00420
躬恒 みつね (029)

ことそともききたにわかすわりなくも人のいかるかにけやしなまし

ことそとも−ききたにわかす−わりなくも−ひとのいかるか−にけやしなまし

異同資料句番号:00420

00421
番号外作者 すけみ (999)

年をへて君をのみこそねすみつれことはらにやはこをはうむへき

としをへて−きみをのみこそ−ねすみつれ−ことはらにやは−こをはうむへき

異同資料句番号:00421

00422
番号外作者 すけみ (999)

久方のつきのきぬをはきたれともひかりはそはぬわか身なりけり

ひさかたの−つきのきぬをは−きたれとも−ひかりはそはぬ−わかみなりけり

異同資料句番号:00422

00423
番号外作者 すけみ (999)

世とともにしほやくあまのたえせねはなきさのきのはこかれてそちる

よとともに−しほやくあまの−たえせねは−なきさのきのは−こかれてそちる

異同資料句番号:00423

00424
番号外作者 すけみ (999)

鴬のなかむしろには我そなく花のにほひやしはしとまると

うくひすの−なかむしろには−われそなく−はなのにほひや−しはしとまると

異同資料句番号:00424

00425
番号外作者 すけみ (999)

そこへうのかは浪わけていりぬるかまつほとすきて見えすもあるかな

そこへうの−かはなみわけて−いりぬるか−まつほとすきて−みえすもあるかな

異同資料句番号:00425

00426
番号外作者 すけみ (999)

かのかはのむかはきすきてふかからはわたらてたたにかへるはかりそ

かのかはの−むかはきすきて−ふかからは−わたらてたたに−かへるはかりそ

異同資料句番号:00426

00427
番号外作者 すけみ (999)

かのえさる舟まてしはし事とはんおきのしらなみまたたたぬまに

かのえさる−ふねまてしはし−こととはむ−おきのしらなみ−またたたぬまに

異同資料句番号:00427

00428
恵慶 恵慶法師 (047)

さをしかの友まとはせる声すなりつまやこひしき秋の山へに

さをしかの−ともまとはせる−こゑすなり−つまやこひしき−あきのやまへに

異同資料句番号:00428

00429
読人不知 よみ人しらす (000)

ひと夜ねてうしとらこそは思ひけめうきなたつみそわひしかりける

ひとよねて−うしとらこそは−おもひけめ−うきなたつみそ−わひしかりける

異同資料句番号:00429

00430
読人不知 よみ人しらす (000)

むまれよりひつしつくれは山にさるひとりいぬるにひとゐていませ

うまれより−ひつしつくれは−やまにさる−ひとりいぬるに−ひとゐていませ

異同資料句番号:00430

00431
番号外作者 すけみ (999)

秋風のよもの山よりおのかししふくにちりぬるもみちかなしな

あきかせの−よものやまより−おのかしし−ふくにちりぬる−もみちかなしな

異同資料句番号:00431


拾遺集 巻八:雑上

00432
後醍醐院 中務卿具平親王 (623)

世にふるに物思ふとしもなけれとも月にいくたひなかめしつらん

よにふるに−ものおもふとしも−なけれとも−つきにいくたひ−なかめしつらむ

異同資料句番号:00432

00433
貫之 つらゆき (035)

思ふ事有りとはなしに久方の月よとなれはねられさりけり

おもふこと−ありとはなしに−ひさかたの−つきよとなれは−ねられさりけり

異同資料句番号:00433

00434
番号外作者 大江為基 (999)

なかむるに物思ふ事のなくさむは月はうき世の外よりやゆく

なかむるに−ものおもふことの−なくさむは−つきはうきよの−ほかよりやゆく

異同資料句番号:00434

00435
高光 藤原たかみつ (116)

かくはかりへかたく見ゆる世の中にうら山しくもすめる月かな

かくはかり−へかたくみゆる−よのなかに−うらやましくも−すめるつきかな

異同資料句番号:00435

00436
 藤原仲文 (132)

ありあけの月のひかりをまつほとにわか世のいたくふけにけるかな

ありあけの−つきのひかりを−まつほとに−わかよのいたく−ふけにけるかな

異同資料句番号:00436

00437
伊勢 (019)

くもゐにてあひかたらはぬ月たにもわかやとすきてゆく時はなし

くもゐにて−あひかたらはぬ−つきたにも−わかやとすきて−ゆくときはなし

異同資料句番号:00437

00438
素性 素性法師 (021)

もち月のこまよりおそくいてつれはたとるたとるそ山はこえつる

もちつきの−こまよりおそく−いてつれは−たとるたとるそ−やまはこえつる

異同資料句番号:00438

00439
貫之 つらゆき (035)

つねよりもてりまさるかな山のはの紅葉をわけていつる月影

つねよりも−てりまさるかな−やまのはの−もみちをわけて−いつるつきかけ

異同資料句番号:00439

00440
躬恒 みつね (029)

久方のあまつそらなる月なれといつれの水に影やとるらん

ひさかたの−あまつそらなる−つきなれと−いつれのみつに−かけやとるらむ

異同資料句番号:00440

00441
番号外作者 左大将済時 (999)

みなそこにやとる月たにうかへるを沈むやなにのみくつなるらん

みなそこに−やとるつきたに−うかへるを−しつむやなにの−みくつなるらむ

異同資料句番号:00441

00442
番号外作者 式部大輔文時 (999)

水のおもに月の沈むを見さりせは我ひとりとや思ひはてまし

みつのおもに−つきのしつむを−みさりせは−われひとりとや−おもひはてまし

異同資料句番号:00442

00443
元輔 もとすけ (042)

年ことにたえぬ渡やつもりつついととふかくは身をしつむらん

としことに−たえぬなみたや−つもりつつ−いととふかくは−みをしつむらむ

異同資料句番号:00443

00444
順 したかふ (130)

ほともなく泉はかりに沈む身はいかなるつみのふかきなるらん

ほともなく−いつみはかりに−しつむみは−いかなるつみの−ふかきなるらむ

異同資料句番号:00444

00445
伊勢 (019)

おとは河せきいれておとすたきつせに人の心の見えもするかな

おとはかは−せきいれておとす−たきつせに−ひとのこころの−みえもするかな

異同資料句番号:00445

00446
中務 (136)

君かくるやとにたえせぬたきのいとはへて見まほしき物にそ有りける

きみかくる−やとにたえせぬ−たきのいと−はへてみまほしき−ものにそありける

異同資料句番号:00446

00447
貫之 つらゆき (035)

なかれくる滝のしらいとたえすしていくらの玉の緒とかなるらん

なかれくる−たきのしらいと−たえすして−いくらのたまの−をとかなるらむ

異同資料句番号:00447

00448
貫之 つらゆき (035)

流れくるたきのいとこそよわからしぬけとみたれておつる白玉

なかれくる−たきのいとこそ−よわからし−ぬけとみたれて−おつるしらたま

異同資料句番号:00448

00449
公任 右衛門督公任 (055)

たきの糸はたえてひさしく成りぬれと名こそ流れて猶きこえけれ

たきのいとは−たえてひさしく−なりぬれと−なこそなかれて−なほきこえけれ

異同資料句番号:00449

00450
躬恒 みつね (029)

おほそらをなかめそくらす吹く風のおとはすれともめにも見えねは

おほそらを−なかめそくらす−ふくかせの−おとはすれとも−めにもみえねは

異同資料句番号:00450

00451
斎宮女御 (119)

ことのねに峯の松風かよふらしいつれのをよりしらへそめけん

ことのねに−みねのまつかせ−かよふらし−いつれのをより−しらへそめけむ

異同資料句番号:00451

00452
斎宮女御 (119)

松風のおとにみたるることのねをひけは子の日の心地こそすれ

まつかせの−おとにみたるる−ことのねを−ひけはねのひの−ここちこそすれ

異同資料句番号:00452

00453
忠見 (041)

をのへなる松のこすゑは打ちなひき浪の声にそ風もふきける

をのへなる−まつのこすゑは−うちなひき−なみのこゑにそ−かせもふきける

異同資料句番号:00453

00454
貫之 つらゆき (035)

雨ふると吹く松風はきこゆれと池のみきははまさらさりけり

あめふると−ふくまつかせは−きこゆれと−いけのみきはは−まさらさりけり

異同資料句番号:00454

00455
貫之 つらゆき (035)

大井河かはへの松に事とはむかかるみゆきやありし昔も

おほゐかは−かはへのまつに−こととはむ−かかるみゆきや−ありしむかしも

異同資料句番号:00455

00456
貫之 つらゆき (035)

おとにのみきき渡りつる住吉の松のちとせをけふ見つるかな

おとにのみ−ききわたりつる−すみよしの−まつのちとせを−けふみつるかな

異同資料句番号:00456

00457
伊勢 (019)

海にのみひちたる松のふかみとりいくしほとかはしるへかるらん

うみにのみ−ひちたるまつの−ふかみとり−いくしほとかは−しるへかるらむ

異同資料句番号:00457

00458
能宣 よしのふ (049)

わたつみの浪にもぬれぬうきしまの松に心をよせてたのまん

わたつみの−なみにもぬれぬ−うきしまの−まつにこころを−よせてたのまむ

異同資料句番号:00458

00459
読人不知 よみ人しらす (000)

かこのしま松原こしになくたつのあななかなかしきく人なしに

かこのしま−まつはらこしに−なくたつの−あななかなかし−きくひとなしに

異同資料句番号:00459

00460
能宣 よしのふ (049)

いかて猶わか身にかへてたけくまの松ともならむ行人のため

いかてなほ−わかみにかへて−たけくまの−まつともならむ−ゆくひとのため

異同資料句番号:00460

00461
道済 源道済 (164)

行末のしるしはかりにのこるへき松さへいたくおいにけるかな

ゆくすゑの−しるしはかりに−のこるへき−まつさへいたく−おいにけるかな

異同資料句番号:00461

00462
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中を住吉としもおもはぬになにをまつとてわか身へぬらん

よのなかを−すみよしとしも−おもはぬに−なにをまつとて−わかみへぬらむ

異同資料句番号:00462

00463
貫之 つらゆき (035)

いたつらに世にふる物と高砂の松も我をや友と見るらん

いたつらに−よにふるものと−たかさこの−まつもわれをや−ともとみるらむ

異同資料句番号:00463

00464
番号外作者 源為憲 (999)

世とともにあかしの浦の松原は浪をのみこそよるとしるらめ

よとともに−あかしのうらの−まつはらは−なみをのみこそ−よるとしるらめ

異同資料句番号:00464

00465
読人不知 よみ人しらす (000)

もかり舟今そなきさにきよすなるみきはのたつのこゑさわくなり

もかりふね−いまそなきさに−きよすなる−みきはのたつの−こゑさわくなり

異同資料句番号:00465

00466
読人不知 よみ人しらす (000)

うちしのひいさすみの江の忘草わすれて人のまたやつまぬと

うちしのひ−いさすみのえの−わすれくさ−わすれてひとの−またやつまぬと

異同資料句番号:00466

00467
番号外作者 左大将済時 (999)

あさほらけひくらしのこゑきこゆなりこやあけくれと人のいふらん

あさほらけ−ひくらしのこゑ−きこゆなり−こやあけくれと−ひとのいふらむ

異同資料句番号:00467

00468
仲文 藤原きよたた (125)

あしまより見ゆるなからのはしはしら昔のあとのしろへなりけり

あしまより−みゆるなからの−はしはしら−むかしのあとの−しるへなりけり

異同資料句番号:00468

00469
読人不知 よみ人しらす (000)

けふまてと見るに涙のますかかみなれにし影を人にかたるな

けふまてと−みるになみたの−ますかかみ−なれにしかけを−ひとにかたるな

異同資料句番号:00469

00470
番号外作者 よみ人しらす (999)

わするなよほとは雲ゐに成りぬともそら行く月の廻りあふまて

わするなよ−ほとはくもゐに−なりぬとも−そらゆくつきの−めくりあふまて

異同資料句番号:00470

00471
貫之 つらゆき (035)

年月は昔にあらす成りゆけとこひしきことはかはらさりけり

としつきは−むかしにあらす−なりゆけと−こひしきことは−かはらさりけり

異同資料句番号:00471

00472
番号外作者 藤原後生 (999)

昔わか折りし桂のかひもなし月の林のめしにいらねは

むかしわか−をりしかつらの−かひもなし−つきのはやしの−めしにいらねは

異同資料句番号:00472

00473
番号外作者 菅原の大臣の母 (999)

久方の月の桂もをるはかり家の風をもふかせてしかな

ひさかたの−つきのかつらも−をるはかり−いへのかせをも−ふかせてしかな

異同資料句番号:00473

00474
人麿 人まろ (003)

月草に衣はすらんあさつゆにぬれてののちはうつろひぬとも

つきくさに−ころもはすらむ−あさつゆに−ぬれてののちは−うつろひぬとも

異同資料句番号:00474

00475
人麿 人まろ (003)

ちちわくに人はいふともおりてきむわかはた物にしろきあさきぬ

ちちわくに−ひとはいふとも−おりてきむ−わかはたものに−しろきあさきぬ

異同資料句番号:00475

00476
人麿 人まろ (003)

久方のあめにはきぬをあやしくもわか衣手のひる時もなき

ひさかたの−あめにはきぬを−あやしくも−わかころもての−ひるときもなき

異同資料句番号:00476

00477
人麿 人まろ (003)

白浪はたてと衣にかさならすあかしもすまもおのかうらうら

しらなみは−たてところもに−かさならす−あかしもすまも−おのかうらうら

異同資料句番号:00477

00478
人麿 人まろ (003)

ゆふされは衣手さむしわきもこかときあらひ衣行きてはやきむ

ゆふされは−ころもてさむし−わきもこか−ときあらひころも−ゆきてはやきむ

異同資料句番号:00478

00479
道真 贈太政大臣 (024)

あまつほし道もやとりも有りなからそらにうきてもおもほゆるかな

あまつほし−みちもやとりも−ありなから−そらにうきても−おもほゆるかな

異同資料句番号:00479

00480
道真 贈太政大臣 (024)

なかれ木も三とせ有りてはあひ見てん世のうき事そかへらさりける

なかれきも−みとせありては−あひみてむ−よのうきことそ−かへらさりける

異同資料句番号:00480

00481
貞文 平定文 (161)

うき世にはかとさせりとも見えなくになとかわか身のいてかてにする

うきよには−かとさせりとも−みえなくに−なとかわかみの−いてかてにする

異同資料句番号:00481

00482
伊勢 (019)

木にもおひすはねもならへてなにしかも浪ちへたてて君をきくらん

きにもおひす−はねもならへて−なにしかも−なみちへたてて−きみをきくらむ

異同資料句番号:00482

00483
人麿 人まろ (003)

ささなみやあふみの宮は名のみして霞たなひき宮きもりなし

ささなみや−あふみのみやは−なのみして−かすみたなひき−みやきもりなし

異同資料句番号:00483

00484
能宣 よしのふ (049)

暁のねさめの千鳥たかためかさほのかはらにをちかへりなく

あかつきの−ねさめのちとり−たかためか−さほのかはらに−をちかへりなく

異同資料句番号:00484

00485
能宣 よしのふ (049)

あさからぬちきりむすへる心ははたむけの神そしるへかりける

あさからぬ−ちきりむすへる−こころはは−たむけのかみそ−しるへかりける

異同資料句番号:00485

00486
元輔 もとすけ (042)

みわの山しるしのすきは有りなからをしへし人はなくていくよそ

みわのやま−しるしのすきは−ありなから−をしへしひとは−なくていくよそ

異同資料句番号:00486

00487
番号外作者 肥前 (999)

おきつしま雲井の岸を行きかへりふみかよはさむまはろしもかな

おきつしま−くもゐのきしを−ゆきかへり−ふみかよはさむ−まほろしもかな

異同資料句番号:00487

00488
人麿 人まろ (003)

そらの海に雲の浪たち月の舟里の林にこきかくる見ゆ

そらのうみに−くものなみたち−つきのふね−ほしのはやしに−こきかくるみゆ

異同資料句番号:00488

00489
人麿 人まろ (003)

河のせのうつまく見れは玉もかるちりみたれたるかはの舟かも

かはのせの−うつまくみれは−たまもかる−ちりみたれたる−かはのふねかも

異同資料句番号:00489

00490
人麿 人まろ (003)

なる神のおとにのみきくまきもくのひはらの山をけふ見つるかな

なるかみの−おとにのみきく−まきもくの−ひはらのやまを−けふみつるかな

異同資料句番号:00490

00491
人麿 人まろ (003)

いにしへに有りけむ人もわかことやみわのひはらにかさし折りけん

いにしへに−ありけむひとも−わかことや−みわのひはらに−かさしをりけむ

異同資料句番号:00491

00492
貫之 つらゆき (035)

人しれすこゆと思ふらしあしひきの山した水にかけは見えつつ

ひとしれす−こゆとおもふらし−あしひきの−やましたみつに−かけはみえつつ

異同資料句番号:00492

00493
人麿 人まろ (003)

おふの海にふなのりすらんわきもこかあかものすそにしほみつらんか

をふのうみに−ふなのりすらむ−わきもこか−あかものすそに−しほみつらむか

異同資料句番号:00493

00494
村上院 御製 (512)

思ふ事なるといふなるすすか山こえてうれしきさかひとそきく

おもふこと−なるといふなる−すすかやま−こえてうれしき−さかひとそきく

異同資料句番号:00494

00495
斎宮女御 (119)

世にふれは又もこえけりすすか山昔の今になるにやあるらん

よにふれは−またもこえけり−すすかやま−むかしのいまに−なるにやあらむ

異同資料句番号:00495

00496
人麿 人まろ (003)

あすかかはしからみわたしせかませはなかるる水ものとけからまし

あすかかは−しからみわたし−せかませは−なかるるみつも−のとけからまし

異同資料句番号:00496

00497
実頼 小野宮太政大臣 (511)

おくれゐてなくなるよりはあしたつのなとかよはひをゆつらさりけん

おくれゐて−なくなるよりは−あしたつの−なとかよはひを−ゆつらさりけむ

異同資料句番号:00497

00498
番号外作者 愛宮 (999)

年をへてたちならしつるあしたつのいかなる方にあとととむらん

としをへて−たちならしつる−あしたつの−いかなるかたに−あとととむらむ

異同資料句番号:00498

00499
元輔 もとすけ (042)

ゆくすゑの忍草にも有りやとてつゆのかたみもおかんとそ思ふ

ゆくすゑの−しのふくさにも−ありやとて−つゆのかたみも−おかむとそおもふ

異同資料句番号:00499

00500
中務 (136)

うゑて見る草葉そ世をはしらせけるおきてはきゆるけさの朝露

うゑてみる−くさはそよをは−しらせける−おきてはきゆる−けさのあさつゆ

異同資料句番号:00500

00501
嘉言 ゆけのよしとき (163)

露のいのちをしとにはあらす君を又見てやと思ふそかなしかりける

つゆのいのち−をしとにはあらす−きみをまた−みてやとおもふそ−かなしかりける

異同資料句番号:00501

00502
元輔 もとすけ (042)

をしからぬいのちやさらにのひぬらんをはりの煙しむるのへにて

をしからぬ−いのちやさらに−のひぬらむ−をはりのけふり−しむるのへにて

異同資料句番号:00502

00503
番号外作者 佐伯清忠 (999)

限なき涙のつゆにむすはれて人のしもとはなるにやあるらん

かきりなき−なみたのつゆに−むすはれて−ひとのしもとは−なるにやあるらむ

異同資料句番号:00503

00504
元輔 もとすけ (042)

うき世には行きかくれなてかきくもりふるは思ひのほかにもあるかな

うきよには−ゆきかくれなて−かきくもり−ふるはおもひの−ほかにもあるかな

異同資料句番号:00504

00505
番号外作者 源景明 (999)

わひ人はうき世の中にいけらしと思ふ事さへかなはさりけり

わひひとは−うきよのなかに−いけらしと−おもふことさへ−かなはさりけり

異同資料句番号:00505

00506
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中にあらぬ所もえてしかな年ふりにたるかたちかくさむ

よのなかに−あらぬところも−えてしかな−としふりにたる−かたちかくさむ

異同資料句番号:00506

00507
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中をかくいひいひのはてはてはいかにやいかにならむとすらん

よのなかを−かくいひいひの−はてはては−いかにやいかに−ならむとすらむ

異同資料句番号:00507

00508
読人不知 よみ人しらす (000)

いにしへのとらのたくひに身をなけはさかとはかりはとはむとそ思ふ

いにしへの−とらのたくひに−みをなけは−さかとはかりは−とはむとそおもふ

異同資料句番号:00508


拾遺集 巻九:雑下

00509
貫之 紀貫之 (035)

春秋に思ひみたれてわきかねつ時につけつつうつる心は

はるあきに−おもひみたれて−わきかねつ−ときにつけつつ−うつるこころは

異同資料句番号:00509

00510
番号外作者 承香殿のとしこ (999)

おほかたの秋に心はよせしかと花見る時はいつれともなし

おほかたの−あきにこころは−よせしかそ−はなみるときは−いつれともなし

異同資料句番号:00510

00511
読人不知 よみ人しらす (000)

春はたた花のひとへにさくはかり物のあはれは秋そまされる

はるはたた−はなのひとへに−さくはかり−もののあはれは−あきそまされる

異同資料句番号:00511

00512
番号外作者 大納言朝光 (999)

折からにいつれともなき鳥のねもいかかさためむ時ならぬ身は

をりからに−いつれともなき−とりのねも−いかかさためむ−ときならぬみは

異同資料句番号:00512

00513
番号外作者 参譲伊衡 (999)

白露はうへよりおくをいかなれは萩のしたはのまつもみつらん

しらつゆは−うへよりおくを−いかなれは−はきのしたはの−まつもみつらむ

異同資料句番号:00513

00514
躬恒 みつね (029)

さをしかのしからみふする秋萩はしたはやうへになりかへるらん

さをしかの−しからみふする−あきはきは−したはやうへに−なりかへるらむ

異同資料句番号:00514

00515
忠峯 たたみね (030)

秋はきはまつさすえよりうつろふをつゆのわくとは思はさらなむ

あきはきは−まつさすえより−うつろふを−つゆのわくとは−おもはさらなむ

異同資料句番号:00515

00516
番号外作者 これひら (999)

ちとせふる松のしたはのいろつくはたかしたかみにかけてかへすそ

ちとせふる−まつのしたはの−いろつくは−たかしたかみに−かけてかへすそ

異同資料句番号:00516

00517
躬恒 みつね (029)

松といへとちとせの秋にあひくれはしのひにおつるしたはなりけり

まつといへと−ちとせのあきに−あひくれは−しのひにおつる−したはなりけり

異同資料句番号:00517

00518
番号外作者 これひら (999)

白妙のしろき月をも紅の色をもなとかあかしといふらん

しろたへの−しろきつきをも−くれなゐの−いろをもなとか−あかしといふらむ

異同資料句番号:00518

00519
躬恒 みつね (029)

昔よりいひしきにける事なれは我らはいかか今はさためん

むかしより−いひしきにける−ことなれは−われらはいかか−いまはさためむ

異同資料句番号:00519

00520
番号外作者 これひら (999)

かけ見れはひかりなきをも衣ぬふいとをもなとかよるといふらん

かけみれは−ひかりなきをも−ころもぬふ−いとをもなとか−よるといふらむ

異同資料句番号:00520

00521
躬恒 みつね (029)

むはたまのよるはこひしき人にあひていとをもよれはあふとやは見ぬ

うはたまの−よるはこひしき−ひとにあひて−いとをもよれは−あふとやはみぬ

異同資料句番号:00521

00522
番号外作者 伊衡 (999)

よるひるのかすはみそちにあまらぬをなと長月といひはしめけん

よるひるの−かすはみそちに−あまらぬを−なとなかつきと−いひはしめけむ

異同資料句番号:00522

00523
躬恒 みつね (029)

秋ふかみこひする人のあかしかね夜を長月といふにやあるらん

あきふかみ−こひするひとの−あかしかね−よをなかつきと−いふにやあるらむ

異同資料句番号:00523

00524
読人不知 よみ人しらす (000)

水のあわやたねとなるらんうきくさのまく人なみのうへにおふれは

みつのあわや−たねとなるらむ−うきくさの−まくひとなみの−うへにおふれは

異同資料句番号:00524

00525
恵慶 恵慶法師 (047)

たねなくてなき物草はおひにけりまくてふ事はあらしとそ思ふ

たねなくて−なきものくさは−おひにけり−まくてふことは−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00525

00526
好忠 そねのよしたた (046)

わか事はえもいはしろの結松ちとせをふともたれかとくへき

わかことは−えもいはしろの−むすひまつ−ちとせをふとも−たれかとくへき

異同資料句番号:00526

00527
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山のこてらにすむ人はわかいふこともかなはさりけり

あしひきの−やまのこてらに−すむひとは−わかいふことも−かなはさりけり

異同資料句番号:00527

00528
番号外作者 源経房朝臣 (999)

山ならぬすみかあまたにきく人の野ふしにとくも成りにけるかな

やまならぬ−すみかあまたに−きくひとの−のふしにとくも−なりにけるかな

異同資料句番号:00528

00529
番号外作者 健守法師 (999)

やまふしものふしもかくて心みつ今はとねりのねやそゆかしき

やまふしも−のふしもかくて−こころみつ−いまはとねりの−ねやそゆかしき

異同資料句番号:00529

00530
道綱母 右大将道綱母 (053)

わたつ海はあまの舟こそありときけのりたかへてもこきいてたるかな

わたつうみは−あまのふねこそ−ありときけ−のりたかへても−こきいてたるかな

異同資料句番号:00530

00531
読人不知 よみ人しらす (000)

勅なれはいともかしこし鴬のやとはととははいかかこたへむ

ちよくなれは−いともかしこし−うくひすの−やとはととはは−いかかこたへむ

異同資料句番号:00531

00532
番号外作者 寿玄法師 (999)

いなをらしつゆにたもとのぬれたらは物思ひけりと人もこそ見れ

いなをらし−つゆにたもとの−ぬれたらは−ものおもひけりと−ひともこそみれ

異同資料句番号:00532

00533
能宣 よしのふ (049)

あつさゆみはるかに見ゆる山のはをいかてか月のさして入るらん

あつさゆみ−はるかにみゆる−やまのはを−いかてかつきの−さしているらむ

異同資料句番号:00533

00534
伊勢 (019)

そらめをそ君はみたらし河の水あさしやふかしそれは我かは

そらめをそ−きみはみたらし−かはのみつ−あさしやふかし−それはわれかは

異同資料句番号:00534

00535
 藤原仲文 (132)

かをさしてむまといふ人ありけれはかもをもをしと思ふなるへし

かをさして−うまといふひと−ありけれは−かもをもをしと−おもふなるへし

異同資料句番号:00535

00536
能宣 よしのふ (049)

なしといへはをしむかもとや思ふらんしかやむまとそいふへかりける

なしといへは−をしむかもとや−おもふらむ−しかやうまとそ−いふへかりける

異同資料句番号:00536

00537
恵慶 恵慶法師 (047)

なにはえのあしのはなけのましれるはつのくにかひのこまにやあるらん

なにはえの−あしのはなけの−ましれるは−つのくにかひの−こまにやあるらむ

異同資料句番号:00537

00538
忠見 たたみ (041)

難波かたしけりあへるはきみかよにあしかるわさをせねはなるへし

なにはかた−しけりあへるは−きみかよに−あしかるわさを−せねはなるへし

異同資料句番号:00538

00539
忠見 たたみ (041)

宮こにはすみわひはててつのくにの住吉ときくさとにこそゆけ

みやこには−すみわひはてて−つのくにの−すみよしときく−さとにこそゆけ

異同資料句番号:00539

00540
読人不知 よみ人しらす (000)

君なくてあしかりけりと思ふにもいととなにはの浦そすみうき

きみなくて−あしかりけりと−おもふにも−いととなにはの−うらそすみうき

異同資料句番号:00540

00541
読人不知 よみ人しらす (000)

あしからしよからむとてそわかれけんなにかなにはの浦はすみうき

あしからし−よからむとてそ−わかれけむ−なにかなにはの−うらはすみうき

異同資料句番号:00541

00542
番号外作者 麗景殿みやのきみ (999)

なき人のかたみと思ふにあやしきはゑみても袖のぬるるなりけり

なきひとの−かたみとおもふに−あやしきは−ゑみてもそての−ぬるるなりけり

異同資料句番号:00542

00543
番号外作者 菅原道雅女 (999)

みつせ河渡るみさをもなかりけりなにに衣をぬきてかくらん

みつせかは−わたるみさをも−なかりけり−なににころもを−ぬきてかくらむ

異同資料句番号:00543

00544
番号外作者 皇太后宮権大夫国章 (999)

かくしこそ春の始はうれしけれつらきは秋のをはりなりけり

かくしこそ−はるのはしめは−うれしけれ−つらきはあきの−をはりなりけり

異同資料句番号:00544

00545
番号外作者 源重之の叔母 (999)

おやのおやとおもはましかはとひてましわかこのこにはあらぬなるへし

おやのおやと−おもはましかは−とひてまし−わかこのこには−あらぬなるへし

異同資料句番号:00545

00546
人麿 人まろ (003)

山高みゆふ日かくれぬあさち原後見むためにしめゆはましを

やまたかみ−ゆふひかくれぬ−あさちはら−のちみむために−しめゆはましを

異同資料句番号:00546

00547
貫之 (035)

名のみして山は三笠もなかりけりあさ日ゆふ日のさすをいふかも

なのみして−やまはみかさも−なかりけり−あさひゆふひの−さすをいふかも

異同資料句番号:00547

00548
読人不知 よみ人しらす (000)

なのみしてなれるも見えす梅津河ゐせきの水ももれはなりけり

なのみして−なれるもみえす−うめつかは−ゐせきのみつも−もれはなりけり

異同資料句番号:00548

00549
読人不知 よみ人しらす (000)

名にはいへとくろくも見えすうるし河さすかに渡る水はぬるめり

なにはいへと−くろくもみえす−うるしかは−さすかにわたる−みつはぬるめり

異同資料句番号:00549

00550
恵慶 恵慶法師 (047)

世の中にあやしき物は雨ふれと大原河のひるにそありける

よのなかに−あやしきものは−あめふれと−おほはらかはの−ひるにそありける

異同資料句番号:00550

00551
 仲文 (132)

河柳いとはみとりにあるものをいつれかあけの衣なるらん

かはやなき−いとはみとりに−あるものを−いつれかあけの−ころもなるらむ

異同資料句番号:00551

00552
村上院 御製 (512)

しら浪の打ちやかへすとまつほとにはまのまさこのかすそつもれる

しらなみの−うちやかへすと−まつほとに−はまのまさこの−かすそつもれる

異同資料句番号:00552

00553
実頼 小野宮太政大臣 (511)

いつしかとあけて見たれははま千鳥跡あることにあとのなきかな

いつしかと−あけてみたれは−はまちとり−あとあることに−あとのなきかな

異同資料句番号:00553

00554
馬内侍 右大将実資 (172)

ととめてもなににかはせん浜千鳥ふりぬるあとは浪にきえつつ

ととめても−なににかはせむ−はまちとり−ふりぬるあとは−なみにきえつつ

異同資料句番号:00554

00555
読人不知 よみ人しらす (000)

みなそこのわくはかりにやくくるらんよる人もなきたきのしらいと

みなそこの−わくはかりにや−くくるらむ−よるひともなき−たきのいらいと

異同資料句番号:00555

00556
読人不知 よみ人しらす (000)

おとにきくつつみのたきをうち見れはたた山河のなるにそ有りける

おとにきく−つつみのたきを−うちみれは−たたやまかはの−なるにそありける

異同資料句番号:00556

00557
番号外作者 三位国章 (999)

おとにきくこまの渡のうりつくりとなりかくなりなる心かな

おとにきく−こまのわたりの−うりつくり−となりかくなり−なるこころかな

異同資料句番号:00557

00558
番号外作者 大納言朝光 (999)

さためなくなるなるうりのつら見てもたちやよりこむこまのすきもの

さためなく−なるなるうりの−つらみても−たちやよりこむ−こまのすきもの

異同資料句番号:00558

00559
兼盛 かねもり (040)

みちのくのあたちのはらのくろつかにおにこもれりときくはまことか

みちのくの−あたちのはらの−くろつかに−おにこもれりと−いふはまことか

異同資料句番号:00559

00560
番号外作者 藤原為順 (999)

ぬす人のたつたの山に入りにけりおなしかさしの名にやけかれん

ぬすひとの−たつたのやまに−いりにけり−おなしかさしの−なにやけかれむ

異同資料句番号:00560

00561
番号外作者 藤原為順 (999)

なき名のみたつたの山のふもとには世にもあらしの風もふかなん

なきなのみ−たつたのやまの−ふもとには−よにもあらしの−かせもふかなむ

異同資料句番号:00561

00562
番号外作者 八条のおほいきみ (999)

なき名のみたかをの山といひたつる君はあたこの峯にやあるらん

なきなのみ−たかをのやまと−いひたつる−きみはあたこの−みねにやあるらむ

異同資料句番号:00562

00563
元輔 もとすけ (042)

いにしへものほりやしけんよしの山やまよりたかきよはひなる人

いにしへも−のほりやしけむ−よしのやま−やまよりたかき−よはひなるひと

異同資料句番号:00563

00564
読人不知 よみ人しらす (000)

おいはてて雪の山をはいたたけとしもと見るにそ身はひえにける

おいはてて−ゆきのやまをは−いたたけと−しもとみるにそ−みはひえにける

異同資料句番号:00564

00565
番号外作者 よみ人しらす (999)

ますかかみそこなるかけにむかひゐて見る時にこそしらぬおきなにあふ心地すれ

ますかかみ−そこなるかけに−むかひゐて−みるときにこそ−しらぬおきなに−あふここちすれ

異同資料句番号:00565

00566
人麿 柿本人まろ (003)

ますかかみみしかと思ふいもにあはむかもたまのをのたえたるこひのしけきこのころ

ますかかみ−みしかとおもふ−いもにあはむかも−たまのをの−たえたるこひの−しけきこのころ

異同資料句番号:00566

00567
人麿 柿本人まろ (003)

かのをかに草かるをのこしかなかりそありつつもきみかきまさむみまくさにせん

かのをかに−くさかるをのこ−しかなかりそ−ありつつも−きみかきまさむ−みまくさにせむ

異同資料句番号:00567

00568
番号外作者 源かけあきら (999)

あつさゆみおもはすにしていりにしをさもねたくひきととめてそふすへかりける

あつさゆみ−おもはすにして−いりにしを−さもねたく−ひきととめてそ−ふすへかりける

異同資料句番号:00568

00569
人麿 人まろ (003)

ちはやふる わかおほきみの きこしめす あめのしたなる 草の葉も うるひにたりと 山河の すめるかうちと みこころを よしののくにの 花さかり 秋つののへに 宮はしら ふとしきまして ももしきの 大宮人は 舟ならへ あさ河わたり ふなくらへ ゆふかはわたり この河の たゆる事なく この山の いやたかからし たま水の たきつの宮こ 見れとあかぬかも

ちはやふる−わかおほきみの−きこしめす−あめのしたなる−くさのはも−うるひにたりと−やまかはの−すめるかふちと−みこころを−よしののくにの−はなさかり−あきつののへに−みやはしら−ふとしきまして−ももしきの−おほみやひとは−ふねならへ−あさかはわたり−ふなくらへ−ゆふかはわたり−このかはの−たゆることなく−このやまの−いやたかからし−たまみつの−たきつのみやこ−みれとあかぬかも

異同資料句番号:00569

00570
人麿 人まろ (003)

見れとあかぬよしのの河の流れてもたゆる時なく行きかへり見む

みれとあかぬ−よしののかはの−なかれても−たゆるときなく−ゆきかへりみむ

異同資料句番号:00570

00571
順 源したかふ (130)

あらたまの 年のはたちに たらさりし 時はの山の 山さむみ 風もさはらぬ ふち衣 ふたたひたちし あさきりに 心もそらに まとひそめ みなしこ草に なりしより 物思ふことの 葉をしけみ けぬへきつゆの よるはおきて 夏はみきはに もえわたる ほたるをそてに ひろひつつ 冬は花かと 見えまかひ このもかのもに ふりつもる 雪をたもとに あつめつつ ふみみていてし 道は猶 身のうきにのみ 有りけれは ここもかしこも あしねはふ したにのみこそ しつみけれ たれここのつの さは水に なくたつのねを 久方の くものうへまて かくれなみ たかくきこゆる かひありて いひなかしけん 人は猶 かひもなきさに みつしほの 世にはからくて すみの江の 松はいたつら おいぬれと みとりの衣 ぬきすてむ はるはいつとも しらなみの なみちにいたく ゆきかよひ ゆもとりあへす なりにける 舟のわれをし きみしらは あはれいまたに しつめしと あまのつりなは うちはへて ひくとしきかは 物はおもはし

あらたまの−としのはたちに−たらさりし−ときはのやまの−やまさむみ−かせもさはらぬ−ふちころも−ふたたひたちし−あさきりに−こころもそらに−まとひそめ−みなしこくさに−なりしより−ものおもふことの−はをしけみ−けぬへきつゆの−よるはおきて−なつはみきはに−もえわたる−ほたるをそてに−ひろひつつ−ふゆははなかと−みえまかひ−このもかのもに−ふりつもる−ゆきをたもとに−あつめつつ−ふみみていてし−みちはなほ−みのうきにのみ−ありけれは−ここもかしこも−あしねはふ−したにのみこそ−しつみけれ−たれここのつの−さはみつに−なくたつのねを−ひさかたの−くものうへまて−かくれなみ−たかくきこゆる−かひありて−いひなかしけむ−ひとはなほ−かひもなきさに−みつしほの−よにはからくて−すみのえの−まつはいたつら−おいぬれと−みとりのころも−ぬきすてむ−はるはいつとも−しらなみの−なみちにいたく−ゆきかよひ−ゆもとりあへす−なりにける−ふねのわれをし−きみしらは−あはれいまたに−しつめしと−あまのつりなは−うちはへて−ひくとしきかは−ものはおもはし

異同資料句番号:00571

00572
能宣 よしのふ (049)

世の中を おもへはくるし わするれは えもわすられす たれもみな おなしみ山の 松かえと かるる事なく すへらきの ちよもやちよも つかへんと たかきたのみを かくれぬの したよりねさす あやめくさ あやなき身にも 人なみに かかる心を 思ひつつ 世にふるゆきを きみはしも 冬はとりつみ 夏は又 草のほたるを あつめつつ ひかりさやけき 久方の 月のかつらを をるまてに 時雨にそほち つゆにぬれ へにけむそての ふかみとり いろあせかたに 今はなり かつしたはより くれなゐに うつろひはてん 秋にあはは まつひらけなん 花よりも こたかきかけと あふかれん 物とこそ見し しほかまの うらさひしけに なそもかく 世をしも思ひ なすのゆの たきるゆゑをも かまへつつ わか身を人の 身になして おもひくらへよ ももしきに あかしくらして とこ夏の くもゐはるけき みな人に おくれてなひく 我もあるらし

よのなかを−おもへはくるし−わするれは−えもわすられす−たれもみな−おなしみやまの−まつかえと−かるることなく−すめらきの−ちよもやちよも−つかへむと−たかきたのみを−かくれぬの−したよりねさす−あやめくさ−あやなきみにも−ひとなみに−かかるこころを−おもひつつ−よにふるゆきを−きみはしも−ふゆはとりつみ−なつはまた−くさのほたるを−あつめつつ−ひかりさやけき−ひさかたの−つきのかつらを−をるまてに−しくれにそほち−つゆにぬれ−へにけむそての−ふかみとり−いろあせかたに−いまはなり−かつしたはより−くれなゐに−うつろひはてむ−あきにあはは−まつひらけなむ−はなよりも−こたかきかけと−あふかれむ−ものとこそみし−しほかまの−うらさひしけに−なそもかく−よをしもおもひ−なすのゆの−たきるゆゑをも−かまへつつ−わかみをひとの−みになして−おもひくらへよ−ももしきに−あかしくらして−とこなつの−くもゐはるけき−みなひとに−おくれてなひく−われもあるらし

異同資料句番号:00572

00573
読人不知 よみ人しらす (000)

今はとも いはさりしかと やをとめの たつやかすかの ふるさとに かへりやくると まつち山 まつほとすきて かりかねの 雲のよそにも きこえねは 我はむなしき たまつさを かくてもたゆく むすひおきて つてやる風の たよりたに なきさにきゐる ゆふちとり うらみはふかく みつしほに そてのみいとと ぬれつつそ あともおもはぬ きみにより かひなきこひに なにしかも 我のみひとり うきふねの こかれてよには わたるらん とさへそはては かやり火の くゆる心も つきぬへく 思ひなるまて おとつれす おほつかなくて かへれとも けふみつくきの あとみれは ちきりし事は 君も又 わすれさりけり しかしあらは たれもうきよの あさつゆに ひかりまつまの 身にしあれは おもはしいかて とこ夏の 花のうつろふ 秋もなく おなしあたりに すみの江の きしのひめ松 ねをむすひ 世世をへつつも しもゆきの ふるにもぬれぬ なかとなりなむ

いまはとも−いはさりしかと−やをとめの−たつやかすかの−ふるさとに−かへりやくると−まつちやま−まつほとすきて−かりかねの−くものよそにも−きこえねは−われはむなしき−たまつさを−かくてもたゆく−むすひおきて−つてやるかせの−たよりたに−なきさにきゐる−ゆふちとり−うらみはふかく−みつしほに−そてのみいとと−ぬれつつそ−あともおもはぬ−きみにより−かひなきこひに−なにしかも−われのみひとり−うきふねの−こかれてよには−わたるらむ−とさへそはては−かやりひの−くゆるこころも−つきぬへく−おもひなるまて−おとつれす−おほつかなくて−かへれとも−けふみつくきの−あとみれは−ちきりしことは−きみもまた−わすれさりけり−しかしあらは−たれもうきよの−あさつゆに−ひかりまつまの−みにしあれは−おもはしいかて−とこなつの−はなのうつろふ−あきもなく−おなしあたりに−すみのえの−きしのひめまつ−ねをむすひ−よよをへつつも−しもゆきの−ふるにもぬれぬ−なかとなりなむ

異同資料句番号:00573

00574
番号外作者 東三条太政大臣 (999)

あはれわれ いつつの宮の 宮人と そのかすならぬ 身をなして おもひし事は かけまくも かしこけれとも たのもしき かけにふたたひ おくれたる ふたはの草を 吹く風の あらき方には あてしとて せはきたもとを ふせきつつ ちりもすゑしと みかきては たまのひかりを たれか見む と思ふ心に おほけなく かみつえたをは さしこえて 花さく春の 宮人と なりし時はは いかはかり しけきかけとか たのまれし すゑの世まてと 思ひつつ ここのかさねの そのなかに いつきすゑしも ことてしも たれならなくに を山田を 人にまかせて 我はたた たもとそほつに 身をなして ふたはるみはる すくしつつ その秋冬の あさきりの たえまにたにもと 思ひしを 峯の白雲 よこさまに たちかはりぬと 見てしかは 身をかきりとは おもひにき いのちあらはと たのみしは 人におくるる ななりけり 思ふもしるし 山河の みなしもなりし もろ人も うこかぬきしに まもりあけて しつむみくつの はてはては かきなかされし 神な月 うすき氷に とちられて とまれる方も なきわふる なみたしつみて かそふれは 冬も三月に なりにけり なかきよなよな しきたへの ふさすやすます あけくらし おもへとも猶 かなしきは やそうち人も あたら世の ためしなりとそ さわくなる ましてかすかの すきむらに いまたかれたる 枝はあらし 大原野辺の つほすみれ つみをかしある 物ならは てる日も見よと いふことを 年のをはりに きよめすは わか身そつひに くちぬへき たにのむもれ木 春くとも さてややみなむ 年の内に 春吹く風も 心あらは そての氷を とけとふかなむ

あはれわれ−いつつのみやの−みやひとと−そのかすならぬ−みをなして−おもひしことは−かけまくも−かしこけれとも−たのもしき−かけにふたたひ−おくれたる−ふたはのくさを−ふくかせの−あらきかたには−あてしとて−せはきたもとを−ふせきつつ−ちりもすゑしと−みかきては−たまのひかりを−たれかみむと−おもふこころに−おほけなく−かみつえたをは−さしこえて−はなさくはるの−みやひとと−なりしときはは−いかはかり−しけきかけとか−たのまれし−すゑのよまてと−おもひつつ−ここのかさねの−そのなかに−いつきすゑしも−ことてしも−たれならなくに−をやまたを−ひとにまかせて−われはたた−たもとそほつに−みをなして−ふたはるみはる−すくしつつ−そのあきふゆの−あさきりの−たえまにたにもと−おもひしを−みねのしらくも−よこさまに−たちかはりぬと−みてしかは−みをかきりとは−おもひにき−いのちあらはと−たのみしは−ひとにおくるる−ななりけり−おもふもしるし−やまかはの−みなしもなりし−もろひとも−うこかぬきしに−まもりあけて−しつむみくつの−はてはては−かきなかされし−かみなつき−うすきこほりに−とちられて−とまれるかたも−なきわふる−なみたしつみて−かそふれは−ふゆもみつきに−なりにけり−なかきよなよな−しきたへの−ふさすやすます−あけくらし−おもへともなほ−かなしきは−やそうちひとも−あたらよの−ためしなりとそ−さわくなる−ましてかすかの−すきむらに−いまたかれたる−えたはあらし−おほはらのへの−つほすみれ−つみをかしある−ものならは−てるひもみよと−いふことを−としのをはりに−きよめすは−わかみそつひに−くちぬへき−たにのうもれき−はるくとも−さてややみなむ−としのうちに−はるふくかせも−こころあらは−そてのこほりを−とけとふかなむ

異同資料句番号:00574

00575
番号外作者 東三条太政大臣 (999)

如何せむわか身くたれるいな舟のしはしはかりのいのちたえすは

いかにせむ−わかみくたれる−いなふねの−しはしはかりの−いのちたえすは

異同資料句番号:00575


拾遺集 巻十:神楽歌

00576
番号外作者 不記 (999)

さかきはにゆふしてかけてたか世にか神のみまへにいはひそめけん

さかきはに−ゆふしてかけて−たかよにか−かみのみまへに−いはひそめけむ

異同資料句番号:00576

00577
番号外作者 不記 (999)

さか木葉のかをかくはしみとめくれはやそうち人そまとゐせりける

さかきはの−かをかくはしみ−とめくれは−やそうちひとそ−まとゐせりける

異同資料句番号:00577

00578
番号外作者 不記 (999)

みてくらにならましものをすへ神のみてにとられてなつさはましを

みてくらに−ならましものを−すめかみの−みてにとられて−なつさはましを

異同資料句番号:00578

00579
番号外作者 不記 (999)

みてくらはわかにはあらすあめにますとよをかひめの宮のみてくら

みてくらは−わかにはあらす−あめにます−とよをかひめの−みやのみてくら

異同資料句番号:00579

00580
番号外作者 不記 (999)

あふさかをけさこえくれは山人のちとせつけとてきれるつゑなり

あふさかを−けさこえくれは−やまひとの−ちとせつけとて−きれるつゑなり

異同資料句番号:00580

00581
番号外作者 不記 (999)

よも山の人のたからにするゆみを神のみまへにけふたてまつる

よもやまの−ひとのたからに−するゆみを−かみのみまへに−けふたてまつる

異同資料句番号:00581

00582
番号外作者 不記 (999)

いその神ふるやをとこのたちもかなくみのをしてて宮ちかよはむ

いそのかみ−ふるやをとこの−たちもかな−くみのをしてて−みやちかよはむ

異同資料句番号:00582

00583
番号外作者 不記 (999)

銀のめぬきのたちをさけはきてならの宮こをねるやたかこそ

しろかねの−めぬきのたちを−さけはきて−ならのみやこを−ねるやたかこそ

異同資料句番号:00583

00584
番号外作者 不記 (999)

わか駒ははやくゆかなんあさひこかやへさすをかのたまささのうへに

わかこまは−はやくゆかなむ−あさひこか−やへさすをかの−たまささのうへに

異同資料句番号:00584

00585
番号外作者 不記 (999)

さいはりに衣はそめん雨ふれとうつろひかたしふかくそめては

さいはりに−ころもはそめむ−あめふれと−うつろひかたし−ふかくそめては

異同資料句番号:00585

00586
番号外作者 不記 (999)

しなかとりゐなのふし原とひわたるしきかはねおとおもしろきかな

しなかとり−ゐなのふしはら−とひわたる−しきかはねおと−おもしろきかな

異同資料句番号:00586

00587
番号外作者 不記 (999)

住吉のきしもせさらんものゆゑにねたくや人に松といはれむ

すみよしの−きしもせさらむ−ものゆゑに−ねたくやひとに−まつといはれむ

異同資料句番号:00587

00588
番号外作者 不記 (999)

ゆふたすきかくるたもとはわつらはしゆたけにとけてあらむとをしれ

ゆふたすき−かくるたもとは−わつらはし−ゆたけにとけて−あらむとをしれ

異同資料句番号:00588

00589
安法 安法法師 (185)

あまくたるあら人神のあひおひをおもへはひさし住吉の松

あまくたる−あらひとかみの−あひおひを−おもへはひさし−すみよしのまつ

異同資料句番号:00589

00590
恵慶 恵慶法師 (047)

我とはは神世の事もこたへなん昔をしれるすみよしのまつ

われとはは−かみよのことも−こたへなむ−むかしをしれる−すみよしのまつ

異同資料句番号:00590

00591
重之 (048)

いく世にかかたりつたへむはこさきの松のちとせのひとつならねは

いくよにか−かたりつたへむ−はこさきの−まつのちとせの−ひとつならねは

異同資料句番号:00591

00592
元輔 もとすけ (042)

おひしけれひらのの原のあやすきよこき紫にたちかさぬへく

おひしけれ−ひらののはらの−あやすきよ−こきむらさきに−たちかさぬへく

異同資料句番号:00592

00593
番号外作者 僧都実因 (999)

ねきかくるひえの社のゆふたすきくさのかきはもことやめてきけ

ねきかくる−ひえのやしろの−ゆふたすき−くさのかきはも−ことやめてきけ

異同資料句番号:00593

00594
番号外作者 源兼澄 (999)

おほよとのみそきいくよになりぬらん神さひにたる浦のひめ松

おほよとの−みそきいくよに−なりぬらむ−かみさひにたる−うらのひめまつ

異同資料句番号:00594

00595
番号外作者 平祐挙 (999)

みそきするけふからさきにおろすあみは神のうけひくしるしなりけり

みそきする−けふからさきに−おろすあみは−かみのうけひく−しるしなりけり

異同資料句番号:00595

00596
人麿 人まろ (003)

ちはやふる神のたもてるいのちをはたれかためにか長くと思はん

ちはやふる−かみのたもてる−いのちをは−たれかためにか−なかくとおもはむ

異同資料句番号:00596

00597
人麿 人まろ (003)

千早振かみも思ひのあれはこそ年へてふしの山ももゆらめ

ちはやふる−かみもおもひの−あれはこそ−としへてふしの−やまももゆらめ

異同資料句番号:00597

00598
能宣 大中臣能宣 (049)

君か世のなからの山のかひありとのとけき雲のゐる時そ見る

きみかよの−なからのやまの−かひありと−のとけきくもの−ゐるときそみる

異同資料句番号:00598

00599
能宣 大中臣能宣 (049)

ささなみのなからの山のなからへてたのしかるへき君かみよかな

ささなみの−なからのやまの−なからへて−たのしかるへき−きみかみよかな

異同資料句番号:00599

00600
読人不知 よみ人しらす (000)

うこきなきいはくら山にきみかよをはこひおきつつちよをこそつめ

うこきなき−いはくらやまに−きみかよを−はこひおきつつ−ちよをこそつめ

異同資料句番号:00600

00601
能宣 よしのふ (049)

ちはやふるみ神の山のさか木ははさかえそまさるすゑの世まてに

ちはやふる−みかみのやまの−さかきはは−さかえそまさる−すゑのよまてに

異同資料句番号:00601

00602
読人不知 よみ人しらす (000)

万代の色もかはらぬさか木ははみかみの山におふるなりけり

よろつよの−いろもかはらぬ−さかきはは−みかみのやまに−おふるなりけり

異同資料句番号:00602

00603
元輔 もとすけ (042)

よろつ世をみかみの山のひひくにはやす河の水すみそあひにける

よろつよを−みかみのやまの−ひひくには−やすかはのみつ−すみそあひにける

異同資料句番号:00603

00604
能宣 よしのふ (049)

みつきつむおほくら山はときはにていろもかはらすよろつ世そへむ

みつきつむ−おほくらやまは−ときはにて−いろもかはらす−よろつよそへむ

異同資料句番号:00604

00605
読人不知 よみ人しらす (000)

たかしまやみをの中山そまたててつくりかさねよちよのなみくら

たかしまや−みをのなかやま−そまたてて−つくりかさねよ−ちよのなみくら

異同資料句番号:00605

00606
能宣 よしのふ (049)

みかきける心もしるく鏡山くもりなきよにあふかたのしさ

みかきける−こころもしるく−かかみやま−くもりなきよに−あふかたのしさ

異同資料句番号:00606

00607
元輔 清原元輔 (042)

ちとせふる松かさきにはむれゐつつたつさへあそふ心あるらし

ちとせふる−まつかさきには−むれゐつつ−たつさへあそふ−こころあるらし

異同資料句番号:00607

00608
兼盛 かねもり (040)

ととこほる時もあらしな近江なるおもののはまのあまのひつきは

ととこほる−ときもあらしな−あふみなる−おもののはまの−あまのひつきは

異同資料句番号:00608

00609
能宣 よしのふ (049)

ことしよりちとせの山はこゑたえす君かみよをそいのるへらなる

ことしより−ちとせのやまは−こゑたえす−きみかみよをそ−いのるへらなる

異同資料句番号:00609

00610
兼盛 かねもり (040)

近江なるいやたか山のさか木にて君かちよをはいのりかささん

あふみなる−いやたかやまの−さかきにて−きみかちよをは−いのりかささむ

異同資料句番号:00610

00611
能宣 よしのふ (049)

いのりくるみかみの山のかひしあれはちとせの影にかくてつかへん

いのりくる−みかみのやまの−かひしあれは−ちとせのかけに−かくてつかへむ

異同資料句番号:00611

00612
能宣 よしのふ (049)

けふよりはいはくら山に万代をうこきなくのみつまむとそ思ふ

けふよりは−いはくらやまに−よろつよを−うこきなくのみ−つまむとそおもふ

異同資料句番号:00612

00613
中務 (136)

万代をあきらけく見むかかみ山ちとせのほとはちりもくもらし

よろつよを−あきらけくみむ−かかみやま−ちとせのほとは−ちりもくもらし

異同資料句番号:00613

00614
兼盛 かねもり (040)

年もよしこかひもえたりおほくにのさとたのもしくおもほゆるかな

としもよし−こかひもえたり−おほくにの−さとたのもしく−おもほゆるかな

異同資料句番号:00614

00615
兼盛 かねもり (040)

名にたてるよしたのさとの杖なれはつくともつきし君かよろつ世

なにたてる−よしたのさとの−つゑなれは−つくともつきし−きみかよろつよ

異同資料句番号:00615

00616
兼盛 かねもり (040)

泉河のとけき水のそこ見れはことしはかけそすみまさりける

いつみかは−のとけきみつの−そこみれは−ことしはかけそ−すみまさりける

異同資料句番号:00616

00617
兼盛 かねもり (040)

つるのすむ松かさきにはならへたる千世のためしを見するなりけり

つるのすむ−まつかさきには−ならへたる−ちよのためしを−みするなりけり

異同資料句番号:00617

00618
貫之 つらゆき (035)

あしひきの山のさかきはときはなるかけにさかゆる神のきねかな

あしひきの−やまのさかきは−ときはなる−かけにさかゆる−かみのきねかな

異同資料句番号:00618

00619
人麿 人まろ (003)

おほなむちすくなみ神のつくれりし妹背の山を見るそうれしき

おほなむち−すくなみかみの−つくれりし−いもせのやまを−みるそうれしき

異同資料句番号:00619

00620
忠房 藤原忠房 (182)

めつらしきけふのかすかのやをとめを神もうれしとしのはさらめや

めつらしき−けふのかすかの−やをとめを−かみもうれしと−しのはさらめや

異同資料句番号:00620


拾遺集 巻十一:恋一

00621
忠見 壬生忠見 (041)

こひすてふわか名はまたき立ちにけり人しれすこそ思ひそめしか

こひすてふ−わかなはまたき−たちにけり−ひとしれすこそ−おもひそめしか

異同資料句番号:00621

00622
兼盛 平兼盛 (040)

しのふれと色にいてにけりわか恋は物や思ふと人のとふまて

しのふれと−いろにいてにけり−わかこひは−ものやおもふと−ひとのとふまて

異同資料句番号:00622

00623
貫之 (035)

いろならはうつるはかりもそめてまし思ふ心をしる人のなさ

いろならは−うつるはかりも−そめてまし−おもふこころを−しるひとのなき

異同資料句番号:00623

00624
番号外作者 平公誠 (999)

しのふるも誰ゆゑならぬ物なれは今は何かは君にへたてむ

しのふるも−たれゆゑならぬ−ものなれは−いまはなにかは−きみにへたてむ

異同資料句番号:00624

00625
読人不知 よみ人しらす (000)

なけきあまりつひに色にそいてぬへきいはぬを人のしらはこそあらめ

なけきあまり−つひにいろにそ−いてぬへき−いはぬをひとの−しらはこそあらめ

異同資料句番号:00625

00626
読人不知 よみ人しらす (000)

あふことを松にて年のへぬるかな身は住の江におひぬものゆゑ

あふことを−まつにてとしの−へぬるかな−みはすみのえに−おひぬものゆゑ

異同資料句番号:00626

00627
読人不知 よみ人しらす (000)

おとにきく人に心をつくはねのみねとこひしききみにもあるかな

おとにきく−ひとにこころを−つくはねの−みねとこひしき−きみにもあるかな

異同資料句番号:00627

00628
人麿 (003)

あまくものやへ雲かくれなる神のおとにのみやはきき渡るへき

あまくもの−やへくもかくれ−なるかみの−おとにのみやは−ききわたるへき

異同資料句番号:00628

00629
読人不知 よみ人しらす (000)

見ぬ人のこひしきやなそおほつかな誰とかしらむゆめに見ゆとも

みぬひとの−こひしきやなそ−おほつかな−たれとかしらむ−ゆめにみゆとも

異同資料句番号:00629

00630
読人不知 よみ人しらす (000)

夢よりそ恋しき人を見そめつる今はあはする人もあらなん

ゆめよりそ−こひしきひとを−みそめつる−いまはあはする−ひともあらなむ

異同資料句番号:00630

00631
読人不知 よみ人しらす (000)

かくてのみありその浦の浜千鳥よそになきつつこひやわたらむ

かくてのみ−ありそのうらの−はまちとり−よそになきつつ−こひやわたらむ

異同資料句番号:00631

00632
読人不知 よみ人しらす (000)

よそにのみ見てやはこひむ紅のすゑつむ花のいろにいてすは

よそにのみ−みてやはこひむ−くれなゐの−すゑつむはなの−いろにいてすは

異同資料句番号:00632

00633
敦忠 権中納言敦忠 (043)

身にしみて思ふ心の年ふれはつひに色にもいてぬへきかな

みにしみて−おもふこころの−としふれは−つひにいろにも−いてぬへきかな

異同資料句番号:00633

00634
番号外作者 くにまさ (999)

いかてかはしらせそむへき人しれす思ふ心のいろにいてすは

いかてかは−しらせそむへき−ひとしれす−おもふこころの−いろにいてすは

異同資料句番号:00634

00635
敦忠 権中納言敦忠 (043)

いかてかはかく思ふてふ事をたに人つてならてきみにしらせむ

いかてかは−かくおもふてふ−ことをたに−ひとつてならて−きみにしらせむ

異同資料句番号:00635

00636
実頼 小野宮太政大臣 (511)

あなこひしはつかに人をみつのあわのきえかへるともしらせてしかな

あなこひし−はつかにひとを−みつのあわの−きえかへるとも−しらせてしかな

異同資料句番号:00636

00637
番号外作者 つつみの中納言のみやす所 (999)

なかからしと思ふ心は水のあわによそふる人のたのまれぬかな

なかからしと−おもふこころは−みつのあわに−よそふるひとの−たのまれぬかな

異同資料句番号:00637

00638
読人不知 よみ人しらす (000)

みなといつるあまのを舟のいかりなはくるしき物とこひをしりぬる

みなといつる−あまのをふねの−いかりなは−くるしきものと−こひをしりぬる

異同資料句番号:00638

00639
読人不知 よみ人しらす (000)

大井河くたすいかたのみなれさを見なれぬ人もこひしかりけり

おほゐかは−くたすいかたの−みなれさを−みなれぬひとも−こひしかりけり

異同資料句番号:00639

00640
人麿 人まろ (003)

みなそこにおふるたまものうちなひき心をよせてこふるこのころ

みなそこに−おふるたまもの−うちなひき−こころをよせて−こふるこのころ

異同資料句番号:00640

00641
読人不知 よみ人しらす (000)

おとにのみききつるこひを人しれすつれなき人にならひぬるかな

おとにのみ−ききつるこひを−ひとしれす−つれなきひとに−ならひぬるかな

異同資料句番号:00641

00642
読人不知 よみ人しらす (000)

如何せむいのちはかきりあるものをこひはわすれす人はつれなし

いかにせむ−いのちはかきり−あるものを−こひはわすれす−ひとはつれなし

異同資料句番号:00642

00643
読人不知 よみ人しらす (000)

山ひこもこたへぬ山のよふことり我ひとりのみなきやわたらむ

やまひこも−こたへぬやまの−よふことり−われひとりのみ−なきやわたらむ

異同資料句番号:00643

00644
読人不知 よみ人しらす (000)

やまひこは君にもにたる心かな我こゑせねはおとつれもせす

やまひこは−きみにもにたる−こころかな−わかこゑせねは−おとつれもせす

異同資料句番号:00644

00645
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山したとよみ行く水の時そともなくこひ渡るかな

あしひきの−やましたとよみ−ゆくみつの−ときそともなく−こひわたるかな

異同資料句番号:00645

00646
読人不知 よみ人しらす (000)

いかにしてしはしわすれんいのちたにあらはあふよのありもこそすれ

いかにして−しはしわすれむ−いのちたに−あらはあふよの−ありもこそすれ

異同資料句番号:00646

00647
読人不知 よみ人しらす (000)

ぬきみたる涙の玉もとまるやとたまのをはかりあはむといはなん

ぬきみたる−なみたのたまも−とまるやと−たまのをはかり−あはむといはなむ

異同資料句番号:00647

00648
読人不知 よみ人しらす (000)

いはのうへにおふるこ松もひきつれと猶ねかたきは君にそ有りける

いはのうへに−おふるこまつも−ひきつれと−なほねかたきは−きみにそありける

異同資料句番号:00648

00649
読人不知 よみ人しらす (000)

たなはたもあふよありけりあまの河この渡にはわたるせもなし

たなはたも−あふよありけり−あまのかは−このわたりには−わたるせもなし

異同資料句番号:00649

00650
師輔 九条右大臣 (513)

さはにのみ年はへぬれとあしたつの心は雲のうへにのみこそ

さはにのみ−としはへぬれと−あしたつの−こころはくもの−うへにのみこそ

異同資料句番号:00650

00651
読人不知 よみ人しらす (000)

おほそらはくもらさりけり神な月時雨ここちは我のみそする

おほそらは−くもらさりけり−かみなつき−しくれここちは−われのみそする

異同資料句番号:00651

00652
読人不知 よみ人しらす (000)

しのふれと猶しひてこそおもほゆれ恋といふ物の身をしさらねは

しのふれと−なほしひてこそ−おもほゆれ−こひといふものの−みをしさらねは

異同資料句番号:00652

00653
読人不知 よみ人しらす (000)

あはれともおもはしものをしらゆきのしたにきえつつ猶もふるかな

あはれとも−おもはしものを−しらゆきの−したにきえつつ−なほもふるかな

異同資料句番号:00653

00654
中務 (136)

ほともなくきえぬる雪はかひもなし身をつみてこそあはれとおもはめ

ほともなく−きえぬるゆきは−かひもなし−みをつみてこそ−あはれとおもはめ

異同資料句番号:00654

00655
読人不知 よみ人しらす (000)

よそなからあひ見ぬほとにこひしなは何にかへたるいのちとかいはむ

よそなから−あひみぬほとに−こひしなは−なににかへたる−いのちとかいはむ

異同資料句番号:00655

00656
読人不知 よみ人しらす (000)

いつとてかわかこひやまむちはやふるあさまのたけのけふりたゆとも

いつとてか−わかこひやまむ−ちはやふる−あさまのたけの−けふりたゆとも

異同資料句番号:00656

00657
伊尹 一条摂政 (045)

おほはらの神もしるらむわかこひはけふ氏人の心やらなむ

おほはらの−かみもしるらむ−わかこひは−けふうちひとの−こころやらなむ

異同資料句番号:00657

00658
読人不知 よみ人しらす (000)

さか木はの春さす枝のあまたあれはとかむる神もあらしとそおもふ

さかきはの−はるさすえたの−あまたあれは−とかむるかみも−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00658

00659
読人不知 よみ人しらす (000)

あめつちの神そしるらん君かため思ふ心のかきりなけれは

あめつちの−かみそしるらむ−きみかため−おもふこころの−かきりなけれは

異同資料句番号:00659

00660
読人不知 よみ人しらす (000)

海もあさし山もほとなしわかこひをなにによそへて君にいはまし

うみもあさし−やまもほとなし−わかこひを−なにによそへて−きみにいはまし

異同資料句番号:00660

00661
人麿 人まろ (003)

おく山のいはかきぬまのみこもりにこひや渡らんあふよしをなみ

おくやまの−いはかきぬまの−みこもりに−こひやわたらむ−あふよしをなみ

異同資料句番号:00661

00662
番号外作者 寛祐法師 (999)

あまた見しとよのみそきのもろ人の君しも物を思はするかな

あまたみし−とよのみそきの−もろひとの−きみしもものを−おもはするかな

異同資料句番号:00662

00663
読人不知 よみ人しらす (000)

たますたれいとのたえまに人を見てすける心は思ひかけてき

たますたれ−いとのたえまに−ひとをみて−すけるこころは−おもひかけてき

異同資料句番号:00663

00664
読人不知 よみ人しらす (000)

たまたれのすける心と見てしよりつらしてふ事かけぬ日はなし

たまたれの−すけるこころと−みてしより−つらしてふこと−かけぬひはなし

異同資料句番号:00664

00665
読人不知 よみ人しらす (000)

我こそや見ぬ人こふるやまひすれあふ日ならてはやむくすりなし

われこそや−みぬひとこふる−やまひすれ−あふひならては−やむくすりなし

異同資料句番号:00665

00666
読人不知 よみ人しらす (000)

玉江こくこもかり舟のさしはへて浪まもあらはよらむとそ思ふ

たまえこく−こもかりふねの−さしはへて−なみまもあらは−よらむとそおもふ

異同資料句番号:00666

00667
読人不知 よみ人しらす (000)

みるめかるあまとはなしに君こふるわか衣手のかわく時なき

みるめかる−あまとはなしに−きみこふる−わかころもての−かわくときなき

異同資料句番号:00667

00668
人麿 柿本人麿 (003)

みくまのの浦のはまゆふももへなる心はおもへとたたにあはぬかも

みくまのの−うらのはまゆふ−ももへなる−こころはおもへと−たたにあはぬかも

異同資料句番号:00668

00669
貫之 つらゆき (035)

あさなあさなけつれはつもるおちかみのみたれて物を思ふころかな

あさなあさな−けつれはつもる−おちかみの−みたれてものを−おもふころかな

異同資料句番号:00669

00670
実方 藤原実方朝臣 (051)

わかためはたなゐのし水ぬるけれと猶かきやらむさてはすむやと

わかためは−たなゐのしみつ−ぬるけれと−なほかきやらむ−さてはすむやと

異同資料句番号:00670

00671
読人不知 よみ人しらす (000)

かきやらはにこりこそせめあさきせのみくつはたれかすませても見む

かきやらは−にこりこそせめ−あさきせの−みくつはたれか−すませてもみむ

異同資料句番号:00671

00672
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとしれぬ心の内を見せたらは今まてつらき人はあらしな

ひとしれぬ−こころのうちを−みせたらは−いままてつらき−ひとはあらしな

異同資料句番号:00672

00673
実頼 小野宮太政大臣 (511)

人しれぬ思ひは年もへにけれと我のみしるはかひなかりけり

ひとしれぬ−おもひはとしも−へにけれと−われのみしるは−かひなかりけり

異同資料句番号:00673

00674
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとしれぬ涙に袖は朽ちにけりあふよもあらはなににつつまむ

ひとしれぬ−なみたにそては−くちにけり−あふよもあらは−なににつつまむ

異同資料句番号:00674

00675
読人不知 よみ人しらす (000)

君はたた袖はかりをやくたすらん逢ふには身をもかふとこそきけ

きみはたた−そてはかりをや−くたすらむ−あふにはみをも−かふとこそきけ

異同資料句番号:00675

00676
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとしれすおつる涙はつのくにのなかすと見えて袖そくちぬる

ひとしれす−おつるなみたは−つのくにの−なかすとみえて−そてそくちぬる

異同資料句番号:00676

00677
読人不知 よみ人しらす (000)

恋といへはおなしなにこそ思ふらめいかてわか身を人にしらせん

こひといへは−おなしなにこそ−おもふらめ−いかてわかみを−ひとにしらせむ

異同資料句番号:00677

00678
朝忠 中納言朝忠 (044)

あふ事のたえてしなくは中中に人をも身をも怨みさらまし

あふことの−たえてしなくは−なかなかに−ひとをもみをも−うらみさらまし

異同資料句番号:00678

00679
兼盛 かねもり (040)

逢ふ事はかたゐさりするみとりこのたたむ月にもあはしとやする

あふことは−かたゐさりする−みとりこの−たたむつきにも−あはしとやする

異同資料句番号:00679

00680
読人不知 よみ人しらす (000)

あふことを月日にそへてまつ時はけふ行末になりねとそ思ふ

あふことを−つきひにそへて−まつときは−けふゆくすゑに−なりねとそおもふ

異同資料句番号:00680

00681
読人不知 よみ人しらす (000)

あふ事をいつともしらて君かいはむ時はの山の松そくるしき

あふことを−いつともしらて−きみかいはむ−ときはのやまの−まつそくるしき

異同資料句番号:00681

00682
読人不知 よみ人しらす (000)

いのちをは逢ふにかふとかききしかと我やためしにあはぬしにせん

いのちをは−あふにかふとか−ききしかと−われやためしに−あはぬしにせむ

異同資料句番号:00682

00683
貫之 つらゆき (035)

行末はつひにすきつつ道ふウの年月なきそわひしかりける

ゆくすゑは−つひにすきつつ−あふことの−としつきなきそ−わひしかりける

異同資料句番号:00683

00684
読人不知 よみ人しらす (000)

いきたれはこひする事のくるしきを猶いのちをはあふにかへてん

いきたれは−こひすることの−くるしきを−なほいのちをは−あふにかへてむ

異同資料句番号:00684

00685
番号外作者 大伴百世 (999)

こひしなむのちはなにせんいける日のためこそ人の見まくほしけれ

こひしなむ−のちはなにせむ−いけるひの−ためこそひとの−みまくほしけれ

異同資料句番号:00685

00686
番号外作者 源経基 (999)

あはれとしきみたにいははこひわひてしなんいのちもをしからなくに

あはれとし−きみたにいはは−こひわひて−しなむいのちも−をしからなくに

異同資料句番号:00686

00687
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとしれす思ふ心をととめつついくたひ君かやとをすくらん

ひとしれす−おもふこころを−ととめつつ−いくたひきみか−やとをすくらむ

異同資料句番号:00687

00688
読人不知 よみ人しらす (000)

しくれにも雨にもあらて君こふる年のふるにも袖はぬれけり

しくれにも−あめにもあらて−きみこふる−としのふるにも−そてはぬれけり

異同資料句番号:00688

00689
輔昭 菅原輔昭 (183)

露はかりたのめしほとのすきゆけはきえぬはかりの心地こそすれ

つゆはかり−たのめしほとの−すきゆけは−きえぬはかりの−ここちこそすれ

異同資料句番号:00689

00690
読人不知 よみ人しらす (000)

つゆはかりたのむることもなきものをあやしやなにに思ひおきけん

つゆはかり−たのむることも−なきものを−あやしやなにに−おもひおきけむ

異同資料句番号:00690

00691
読人不知 よみ人しらす (000)

流れてとたのむるよりは山河のこひしきせせにわたりやはせぬ

なかれてと−たのむるよりは−やまかはの−こひしきせせに−わたりやはせぬ

異同資料句番号:00691

00692
読人不知 よみ人しらす (000)

あひ見てはしにせぬ身とそなりぬへきたのむるにたにのふるいのちは

あひみては−しにせぬみとそ−なりぬへき−たのむるにたに−のふるいのちは

異同資料句番号:00692

00693
読人不知 よみ人しらす (000)

いかてかと思ふ心のある時はおほめくさへそうれしかりける

いかてかと−おもふこころの−あるときは−おほめくさへそ−うれしかりける

異同資料句番号:00693

00694
読人不知 よみ人しらす (000)

わひつつも昨日はかりはすくしてきけふやわか身のかきりなるらん

わひつつも−きのふはかりは−すくしてき−けふやわかみの−かきりなるらむ

異同資料句番号:00694

00695
人麿 人まろ (003)

こひつつもけふはくらしつ霞立つあすのはる日をいかてくらさん

こひつつも−けふはくらしつ−かすみたつ−あすのはるひを−いかてくらさむ

異同資料句番号:00695

00696
人麿 人まろ (003)

恋ひつつもけふは有りなんたまくしけあけんあしたをいかてくらさむ

こひつつも−けふはありなむ−たまくしけ−あけむあしたを−いかてくらさむ

異同資料句番号:00696

00697
読人不知 よみ人しらす (000)

君をのみ思ひかけこのたまくしけあけたつことにこひぬ日はなし

きみをのみ−おもひかけこの−たまくしけ−あけたつことに−こひぬひはなし

異同資料句番号:00697


拾遺集 巻十二:恋二

00698
読人不知 よみ人しらす (000)

春の野におふるなきなのわひしきは身をつみてたに人のしらぬよ

はるののに−おふるなきなの−わひしきは−みをつみてたに−ひとのしらぬよ

異同資料句番号:00698

00699
読人不知 よみ人しらす (000)

なき名のみたつたの山のあをつつら又くる人も見えぬ所に

なきなのみ−たつたのやまの−あをつつら−またくるひとも−みえぬところに

異同資料句番号:00699

00700
人麿 (003)

無き名のみたつの市とはさわけともいさまた人をうるよしもなし

なきなのみ−たつのいちとは−さわけとも−いさまたひとを−うるよしもなし

異同資料句番号:00700

00701
読人不知 よみ人しらす (000)

なき事をいはれの池のうきぬなはくるしき物は世にこそ有りけれ

なきことを−いはれのいけの−うきぬなは−くるしきものは−よにこそありけれ

異同資料句番号:00701

00702
人麿 人まろ (003)

竹の葉におきゐる事のまろひあひてぬるとはなしに立つわかなかな

たけのはに−おきゐるつゆの−まろひあひて−ぬるとはなしに−たつわかなかな

異同資料句番号:00702

00703
読人不知 よみ人しらす (000)

あちきなやわかなはたちて唐衣身にもならさてやみぬへきかな

あちきなや−わかなはたちて−からころも−みにもならさて−やみぬへきかな

異同資料句番号:00703

00704
読人不知 よみ人しらす (000)

唐衣我はかたなのふれなくにまつたつ物はなき名なりけり

からころも−われはかたなの−ふれなくに−まつたつものは−なきななりけり

異同資料句番号:00704

00705
重之 源重之 (048)

そめ河にやとかる浪のはやけれはなき名立つとも今は怨みし

そめかはに−やとかるなみの−はやけれは−なきなたつとも−いまはうらみし

異同資料句番号:00705

00706
読人不知 よみ人しらす (000)

こはた河こはたかいひし事のはそなきなすすかむたきつせもなし

こはたかは−こはたかいひし−ことのはそ−なきなすすかむ−たきつせもなし

異同資料句番号:00706

00707
忠房 藤原忠房朝臣 (182)

君か名の立つにとかなき身なりせはおほよそ人になして見ましや

きみかなの−たつにとかなき−みなりせは−おほよそひとに−なしてみましや

異同資料句番号:00707

00708
読人不知 よみ人しらす (000)

夢かとも思ふへけれとねやはせしなにそ心にわすれかたきは

ゆめかとも−おもふへけれと−ねやはせし−なにそこころに−わすれかたきは

異同資料句番号:00708

00709
読人不知 よみ人しらす (000)

ゆめよゆめこひしき人にあひ見すなさめてののちにわひしかりけり

ゆめよゆめ−こひしきひとに−あひみすな−さめてののちに−わひしかりけり

異同資料句番号:00709

00710
敦忠 権中納言敦忠 (043)

あひ見てののちの心にくらふれは昔は物もおもはさりけり

あひみての−のちのこころに−くらふれは−むかしはものも−おもはさりけり

異同資料句番号:00710

00711
是則 坂上是則 (031)

あひみてはなくさむやとそ思ひしをなこりしもこそこひしかりけれ

あひみては−なくさむやとそ−おもひしを−なこりしもこそ−こひしかりけれ

異同資料句番号:00711

00712
読人不知 よみ人しらす (000)

あひ見てもありにしものをいつのまにならひて人のこひしかるらん

あひみても−ありにしものを−いつのまに−ならひてひとの−こひしかるらむ

異同資料句番号:00712

00713
読人不知 よみ人しらす (000)

わか恋は猶あひ見てもなくさますいやまさりなる心地のみして

わかこひは−なほあひみても−なくさます−いやまさりなる−ここちのみして

異同資料句番号:00713

00714
能宣 よしのふ (049)

逢ふ事をまちし月日のほとよりもけふのくれこそひさしかりけれ

あふことを−まちしつきひの−ほとよりも−けふのくれこそ−ひさしかりけれ

異同資料句番号:00714

00715
貫之 つらゆき (035)

暁のなからましかは白露のおきてわひしき別せましや

あかつきの−なからましかは−しらつゆの−おきてわひしき−わかれせましや

異同資料句番号:00715

00716
貫之 つらゆき (035)

あひ見ても猶なくさまぬ心かないくちよねてかこひのさむへき

あひみても−なほなくさまぬ−こころかな−いくちよねてか−こひのさむへき

異同資料句番号:00716

00717
人麿 人まろ (003)

むはたまのこよひなあけそあけゆかはあさゆく君をまつくるしきに

うはたまの−こよひなあけそ−あけゆかは−あさゆくきみを−まつくるしきに

異同資料句番号:00717

00718
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとりねし時はまたれし鳥のねもまれにあふよはわひしかりけり

ひとりねし−ときはまたれし−とりのねも−まれにあふよは−わひしかりけり

異同資料句番号:00718

00719
読人不知 よみ人しらす (000)

葛木や我やはくめのはしつくりあけゆくほとは物をこそおもへ

かつらきや−われやはくめの−はしつくり−あけゆくほとは−ものをこそおもへ

異同資料句番号:00719

00720
番号外作者 平行時 (999)

あさまたき露わけきつる衣手のひるまはかりにこひしきやなそ

あさまたき−つゆわけきつる−ころもての−ひるまはかりに−こひしきやなそ

異同資料句番号:00720

00721
番号外作者 大納言源きよかけ (999)

ふたつなき心は君におきつるを又ほともなくこひしきやなそ

ふたつなき−こころはきみに−おきつるを−またほともなく−こひしきやなそ

異同資料句番号:00721

00722
読人不知 よみ人しらす (000)

いつしかとくれをまつまのおほそらはくもるさへこそうれしかりけれ

いつしかと−くれをまつまの−おほそらは−くもるさへこそ−うれしかりけれ

異同資料句番号:00722

00723
番号外作者 大江為基 (999)

日のうちに物をふたたひ思ふかなとくあけぬるとおそくくるると

ひのうちに−ものをふたたひ−おもふかな−とくあけぬると−おそくくるると

異同資料句番号:00723

00724
貫之 つらゆき (035)

ももはかきはねかくしきもわかことく朝わひしきかすはまさらし

ももはかき−はねかくしきも−わかことく−あしたわひしき−かすはまさらし

異同資料句番号:00724

00725
読人不知 よみ人しらす (000)

うつつにも夢にも人によるしあへはくれゆくはかりうれしきはなし

うつつにも−ゆめにもひとに−よるしあへは−くれゆくはかり−うれしきはなし

異同資料句番号:00725

00726
読人不知 よみ人しらす (000)

暁の別の道をおもはすはくれ行くそらはうれしからまし

あかつきの−わかれのみちを−おもはすは−くれゆくそらは−うれしからまし

異同資料句番号:00726

00727
読人不知 よみ人しらす (000)

君こふる涙のこほる冬の夜は心とけたるいやはねらるる

きみこふる−なみたのこほる−ふゆのよは−こころとけたる−いやはねらるる

異同資料句番号:00727

00728
業平 在原業平朝臣 (017)

かからても有りにしものをしらゆきのひとひもふれはまさるわかこひ

かからても−ありにしものを−しらゆきの−ひとひもふれは−まさるわかこひ

異同資料句番号:00728

00729
能宣 よしのふ (049)

あさこほりとくるまもなききみによりなとてそほつるたもとなるらん

あさこほり−とくるまもなき−きみにより−なとてそほつる−たもとなるらむ

異同資料句番号:00729

00730
読人不知 よみ人しらす (000)

身をつめは露をあはれと思ふかな暁ことにいかておくらん

みをつめは−つゆをあはれと−おもふかな−あかつきことに−いかておくらむ

異同資料句番号:00730

00731
読人不知 よみ人しらす (000)

うしと思ふものから人のこひしきはいつこをしのふ心なるらん

うしとおもふ−ものからひとの−こひしきは−いつこをしのふ−こころなるらむ

異同資料句番号:00731

00732
読人不知 よみ人しらす (000)

よそにても有りにしものを花すすきほのかに見てそ人は恋しき

よそにても−ありにしものを−はなすすき−ほのかにみてそ−ひとはこひしき

異同資料句番号:00732

00733
読人不知 よみ人しらす (000)

夢よりもはかなきものはかけろふのほのかに見えしかけにそありける

ゆめよりも−はかなきものは−かけろふの−ほのかにみえし−かけにそありける

異同資料句番号:00733

00734
忠見 たたみ (041)

ゆめのことなとかよるしも君を見むくるるまつまもさためなきよを

ゆめのこと−なとかよるしも−きみをみむ−くるるまつまも−さためなきよを

異同資料句番号:00734

00735
順 したかふ (130)

こひしきを何につけてかなくさめむ夢たに見えすぬる夜なけれは

こひしきを−なににつけてか−なくさめむ−ゆめたにみえす−ぬるよなけれは

異同資料句番号:00735

00736
順 したかふ (130)

あけくれのそらにそ我は迷ひぬる思ふ心のゆかぬまにまに

あけくれの−そらにそわれは−まよひぬる−おもふこころの−ゆかぬまにまに

異同資料句番号:00736

00737
貫之 つらゆき (035)

たまほこのとほ道もこそ人はゆけなと時のまも見ねはこひしき

たまほこの−とほみちもこそ−ひとはゆけ−なとときのまも−みぬはこひしき

異同資料句番号:00737

00738
読人不知 よみ人しらす (000)

身にこひのあまりにしかはしのふれと人のしるらん事そわひしき

みにこひの−あまりにしかは−しのふれと−ひとのしるらむ−ことそわひしき

異同資料句番号:00738

00739
読人不知 よみ人しらす (000)

しのひつつおもへはくるしすみの江の松のねなからあらはれなはや

しのひつつ−おもへはくるし−すみのえの−まつのねなから−あらはれなはや

異同資料句番号:00739

00740
番号外作者 大納言きよかけ (999)

住吉の松ならねともひさしくも君とねぬよのなりにけるかな

すみよしの−まつならねとも−ひさしくも−きみとねぬよの−なりにけるかな

異同資料句番号:00740

00741
番号外作者 忠房かむすめ (999)

ひさしくもおもほえねとも住吉の松やふたたひおひかはるらん

ひさしくも−おもほえねとも−すみよしの−まつやふたたひ−おひかはるらむ

異同資料句番号:00741

00742
読人不知 よみ人しらす (000)

なにせむに結ひそめけんいはしろの松はひさしき物としるしる

なにせむに−むすひそめけむ−いはしろの−まつはひさしき−ものとしるしる

異同資料句番号:00742

00743
読人不知 よみ人しらす (000)

かた岸の松のうきねとしのひしはされはよつひにあらはれにけり

かたきしの−まつのうきねと−しのひしは−されはよつひに−あらはれにけり

異同資料句番号:00743

00744
人麿 人まろ (003)

あひ見てはいくひささにもあらねとも年月のことおもほゆるかな

あひみては−いくひささにも−あらねとも−としつきのこと−おもほゆるかな

異同資料句番号:00744

00745
人麿 人まろ (003)

年をへて思ひ思ひてあひぬれは月日のみこそうれしかりけれ

としをへて−おもひおもひて−あひぬれは−つきひのみこそ−うれしかりけれ

異同資料句番号:00745

00746
人麿 人まろ (003)

すきいたもてふけるいたまのあはさらは如何せんとかわかねそめけん

すきいたもて−ふけるいたまの−あはさらは−いかにせむとか−わかねそめけむ

異同資料句番号:00746

00747
読人不知 よみ人しらす (000)

こぬかなとしはしは人におもはせんあはてかへりしよひのねたさに

こぬかなと−しはしはひとに−おもはせむ−あはてかへりし−よひのねたさに

異同資料句番号:00747

00748
読人不知 よみ人しらす (000)

秋霧のはれぬ朝のおほそらを見るかことくも見えぬ君かな

あききりの−はれぬあしたの−おほそらを−みるかことくも−みえぬきみかな

異同資料句番号:00748

00749
読人不知 よみ人しらす (000)

恋ひわひぬねをたになかむ声たてていつこなるらんおとなしのさと

こひわひぬ−ねをたになかむ−こゑたてて−いつこなるらむ−おとなしのさと

異同資料句番号:00749

00750
元輔 もとすけ (042)

おとなしのかはとそつひに流れけるいはて物思ふ人の渡は

おとなしの−かはとそつひに−なかれける−いはてものおもふ−ひとのなみたは

異同資料句番号:00750

00751
読人不知 よみ人しらす (000)

風さむみ声よわり行く虫よりもいはて物思ふ我そまされる

かせさむみ−こゑよわりゆく−むしよりも−いはてものおもふ−われそまされる

異同資料句番号:00751

00752
読人不知 よみ人しらす (000)

しかのあまのつりにともせるいさり火のほのかにいもを見るよしもかな

しかのあまの−つりにともせる−いさりひの−ほのかにいもを−みるよしもかな

異同資料句番号:00752

00753
読人不知 よみ人しらす (000)

恋するはくるしき物としらすへく人をわか身にしはしなさはや

こひするは−くるしきものと−しらすへく−ひとをわかみに−しはしなさはや

異同資料句番号:00753

00754
読人不知 よみ人しらす (000)

しるや君しらすはいかにつらからむわかかくはかり思ふ心を

しるやきみ−しらすはいかに−つらからむ−わかかくはかり−おもふこころを

異同資料句番号:00754

00755
能宣 よしのふ (049)

あすしらぬわか身なりとも怨みおかむこの世にてのみやましと思へは

あすしらぬ−わかみなりとも−うらみおかむ−このよにてのみ−やましとおもへは

異同資料句番号:00755

00756
人麿 (003)

思ふなと君はいへともあふ事をいつとしりてかわかこひさらん

おもふなと−きみはいへとも−あふことを−いつとしりてか−わかこひさらむ

異同資料句番号:00756

00757
順 源順 (130)

おもふらむ心の内をしらぬ身はしぬはかりにもあらしとそ思ふ

おもふらむ−こころのうちを−しらぬみは−しぬはかりにも−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00757

00758
伊尹 一条摂政 (045)

かくれぬのそこの心そうらめしきいかにせよとてつれなかるらん

かくれぬの−そこのこころそ−うらめしき−いかにせよとて−つれなかるらむ

異同資料句番号:00758

00759
読人不知 よみ人しらす (000)

我なからさももとかしき心かなおもはぬ人はなにかこひしき

われなから−さももとかしき−こころかな−おもはぬひとは−なにかこひしき

異同資料句番号:00759

00760
元輔 もとすけ (042)

草かくれかれにし水はぬるくともむすひしそては今もかわかす

くさかくれ−かれにしみつは−ぬるくとも−むすひしそては−いまもかわかす

異同資料句番号:00760

00761
読人不知 よみ人しらす (000)

わか思ふ人は草葉のつゆなれやかくれは抽のまつそほつらむ

わかおもふ−ひとはくさはの−つゆなれや−かくれはそての−まつそほつらむ

異同資料句番号:00761

00762
読人不知 よみ人しらす (000)

たもとよりおつる涙はみちのくの衣河とそいふへかりける

たもとより−おつるなみたは−みちのくの−ころもかはとそ−いふへかりける

異同資料句番号:00762

00763
読人不知 よみ人しらす (000)

衣をやぬきてやらまし涙のみかかりけりとも人の見るへく

ころもをや−ぬきてやらまし−なみたのみ−かかりけりとも−ひとのみるへく

異同資料句番号:00763

00764
実方 実方朝臣 (051)

人めをもつつまぬ物と思ひせは袖の涙のかからましやは

ひとめをも−つつまぬものと−おもひせは−そてのなみたの−かからましやは

異同資料句番号:00764

00765
番号外作者 大伴方見 (999)

礒神ふるとも雨にさはらめやあはむといもにいひてしものを

いそのかみ−ふるともあめに−さはらめや−あはむといもに−いひてしものを

異同資料句番号:00765

00766
元良親王 もとよしのみこ (020)

わひぬれは今はたおなしなにはなる身をつくしてもあはむとそ思ふ

わひぬれは−いまはたおなし−なにはなる−みをつくしても−あはむとそおもふ

異同資料句番号:00766

00767
読人不知 よみ人しらす (000)

いつかともおもはぬさはのあやめ草たたつくつくとねこそなかるれ

いつかとも−おもはぬさはの−あやめくさ−たたつくつくと−ねこそなかるれ

異同資料句番号:00767

00768
躬恒 みつね (029)

おふれともこまもすさめぬあやめ草かりにも人のこぬかわひしさ

おふれとも−こまもすさへぬ−あやめくさ−かりにもひとの−こぬかわひしさ

異同資料句番号:00768

00769
能宣 よしのふ (049)

かやり火は物思ふ人の心かも夏のよすからしたにもゆらん

かやりひは−ものおもふひとの−こころかも−なつのよすから−したにもゆらむ

異同資料句番号:00769

00770
番号外作者 勝観法師 (999)

しのふれはくるしかりけりしのすすき秋のさかりになりやしなまし

しのふれは−くるしかりけり−しのすすき−あきのさかりに−なりやしなまし

異同資料句番号:00770

00771
読人不知 よみ人しらす (000)

思ひきやわかまつ人はよそなからたなはたつめのあふを見むとは

おもひきや−わかまつひとは−よそなから−たなはたつめの−あふをみむとは

異同資料句番号:00771

00772
読人不知 よみ人しらす (000)

けふさへやよそに見るへきひこほしのたちならすらんあまのかはなみ

けふさへや−よそにみるへき−ひこほしの−たちならすらむ−あまのかはなみ

異同資料句番号:00772

00773
読人不知 よみ人しらす (000)

わひぬれはつねはゆゆしきたなはたもうらやまれぬる物にそ有りける

わひぬれは−つねはゆゆしき−たなはたも−うらやまれぬる−ものにそありける

異同資料句番号:00773

00774
読人不知 よみ人しらす (000)

露たにもなからましかは秋の夜に誰とおきゐて人をまたまし

つゆたにも−なからましかは−あきのよに−たれとおきゐて−ひとをまたまし

異同資料句番号:00774

00775
読人不知 よみ人しらす (000)

今更にとふへき人もおもほえすやへむくらしてかとさせりてへ

いまさらに−とふへきひとも−おもほえす−やへむくらして−かとさせりてへ

異同資料句番号:00775

00776
読人不知 よみ人しらす (000)

秋はわか心のつゆにあらねとも物なけかしきころにもあるかな

あきはわか−こころのつゆに−あらねとも−ものなけかしき−ころにもあるかな

異同資料句番号:00776


拾遺集 巻十三:恋三

00777
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山した風もさむけきにこよひも又やわかひとりねん

あしひきの−やましたかせも−さむけきに−こよひもまたや−わかひとりねむ

異同資料句番号:00777

00778
人麿 人まろ (003)

葦引の山鳥の尾のしたりをのなかなかし夜をひとりかもねむ

あしひきの−やまとりのをの−したりをの−なかなかしよを−ひとりかもねむ

異同資料句番号:00778

00779
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの葛木山にゐる事のたちてもゐても君をこそおもへ

あしひきの−かつらきやまに−ゐるくもの−たちてもゐても−きみをこそおもへ

異同資料句番号:00779

00780
読人不知 よみ人しらす (000)

あしひきの山の山すけやますのみ見ねはこひしききみにもあるかな

あしひきの−やまのやますけ−やますのみ−みねはこひしき−きみにもあるかな

異同資料句番号:00780

00781
番号外作者 石上乙麿 (999)

あしひきの山こえくれてやとからはいもたちまちていねさらむかも

あしひきの−やまこえくれて−やとからは−いもたちまちて−いねさらむかも

異同資料句番号:00781

00782
人麿 人まろ (003)

あしひきの山よりいつる月まつと人にはいひて君をこそまて

あしひきの−やまよりいつる−つきまつと−ひとにはいひて−きみをこそまて

異同資料句番号:00782

00783
人麿 人まろ (003)

みか月のさやかに見えす雲隠見まくそほしきうたてこのころ

みかつきの−さやかにみえす−くもかくれ−みまくそほしき−うたてこのころ

異同資料句番号:00783

00784
読人不知 よみ人しらす (000)

逢ふ事はかたわれ月の雲かくれおほろけにやは人のこひしき

あふことは−かたわれつきの−くもかくれ−おほろけにやは−ひとのこひしき

異同資料句番号:00784

00785
人麿 人まろ (003)

秋の夜の月かも君はくもかくれしはしも見ねはここらこひしき

あきのよの−つきかもきみは−くもかくれ−しはしもみねは−ここらこひしき

異同資料句番号:00785

00786
兼盛 平兼盛 (040)

秋の夜の月見るとのみおきゐつつ今夜もねてや我はかへらん

あきのよの−つきみるとのみ−おきゐつつ−こよひもねてや−われはかへらむ

異同資料句番号:00786

00787
信明 源さねあきら (124)

こひしさはおなし心にあらすとも今夜の月を君見さらめや

こひしさは−おなしこころに−あらすとも−こよひのつきを−きみみさらめや

異同資料句番号:00787

00788
中務 (136)

さやかにも見るへき月を我はたた涙にくもるをりそおほかる

さやかにも−みるへきつきを−われはたた−なみたにくもる−をりそおほかる

異同資料句番号:00788

00789
人麿 人まろ (003)

久方のあまてる月もかくれ行く何によそへてきみをしのはむ

ひさかたの−あまてるつきも−かくれゆく−なにによそへて−きみをしのはむ

異同資料句番号:00789

00790
読人不知 よみ人しらす (000)

宮こにて見しにかはらぬ月影をなくさめにてもあかすころかな

みやこにて−みしにかはらぬ−つきかけを−なくさめにても−あかすころかな

異同資料句番号:00790

00791
貫之 つらゆき (035)

てる月も影みなそこにうつりけりにたる物なきこひもするかな

てるつきも−かけみなそこに−うつりけり−にたるものなき−こひもするかな

異同資料句番号:00791

00792
馬内侍 中宮内侍 (172)

今夜君いかなるさとの月を見て宮こにたれを思ひいつらむ

こよひきみ−いかなるさとの−つきをみて−みやこにたれを−おもひいつらむ

異同資料句番号:00792

00793
忠峯 たたみね (030)

月かけをわか身にかふる物ならはおもはぬ人もあはれとや見む

つきかけを−わかみにかふる−ものならは−おもはぬひとも−あはれとやみむ

異同資料句番号:00793

00794
順 したかふ (130)

ひとりぬるやとには月の見えさらは恋しき事のかすはまさらし

ひとりぬる−やとにはつきの−みえさらは−こひしきことの−かすはまさらし

異同資料句番号:00794

00795
人麿 人まろ (003)

長月の在明の月の有りつつも君しきまさは我こひめやも

なかつきの−ありあけのつきの−ありつつも−きみしきまさは−わかこひめやも

異同資料句番号:00795

00796
人麿 人まろ (003)

ことならはやみにそあらまし秋のよのなそ月かけの人たのめなる

ことならは−やみにそあらまし−あきのよの−なそつきかけの−ひとたのめなる

異同資料句番号:00796

00797
 春宮左近 (131)

ふらぬ夜の心をしらておほそらの雨をつらしと思ひけるかな

ふらぬよの−こころをしらて−おほそらの−あめをつらしと−おもひけるかな

異同資料句番号:00797

00798
読人不知 よみ人しらす (000)

衣たになかに有りしはうとかりきあはぬ夜をさへへたてつるかな

ころもたに−なかにありしは−うとかりき−あはぬよをさへ−へたてつるかな

異同資料句番号:00798

00799
読人不知 よみ人しらす (000)

なかき夜も人をつらしと思ふにはねなくにあくる物にそ有りける

なかきよも−ひとをつらしと−おもふには−ねなくにあくる−ものにそありける

異同資料句番号:00799

00800
読人不知 よみ人しらす (000)

わすれなん今はとはしと思ひつつぬる夜しもこそゆめに見えけれ

わすれなむ−いまはとはしと−おもひつつ−ぬるよしもこそ−ゆめにみえけれ

異同資料句番号:00800

00801
読人不知 よみ人しらす (000)

よるとてもねられさりけり人しれすねさめのこひにおとろかれつつ

よるとても−ねられさりけり−ひとしれす−ねさめのこひに−おとろかれつつ

異同資料句番号:00801

00802
読人不知 よみ人しらす (000)

むはたまのいもかくろかみこよひもやわかなきとこになひきいてぬらん

うはたまの−いもかくろかみ−こよひもや−わかなきとこに−なひきいてぬらむ

異同資料句番号:00802

00803
読人不知 よみ人しらす (000)

わかせこかありかもしらてねたる夜はあか月かたの枕さひしも

わかせこか−ありかもしらて−ねたるよは−あかつきかたの−まくらさひしも

異同資料句番号:00803

00804
読人不知 よみ人しらす (000)

いかなりし時くれ竹のひと夜たにいたつらふしをくるしといふらん

いかなりし−ときくれたけの−ひとよたに−いたつらふしを−くるしといふらむ

異同資料句番号:00804

00805
読人不知 よみ人しらす (000)

いかならんをりふしにかはくれ竹のよるはこひしき人にあひ見む

いかならむ−をりふしにかは−くれたけの−よるはこひしき−ひとにあひみむ

異同資料句番号:00805

00806
人麿 ひとまろ (003)

まさしてふやそのちまたにゆふけとふうらまさにせよいもにあふへく

まさしてふ−やそのちまたに−ゆふけとふ−うらまさにせよ−いもにあふへく

異同資料句番号:00806

00807
人麿 ひとまろ (003)

ゆふけとふうらにもよくありこよひたにこさらむきみをいつかまつへき

ゆふけとふ−うらにもよくあり−こよひたに−こさらむきみを−いつかまつへき

異同資料句番号:00807

00808
人麿 ひとまろ (003)

夢をたにいかてかたみに見てしかなあはてぬるよのなくさめにせん

ゆめをたに−いかてかたみに−みてしかな−あはてぬるよの−なくさめにせむ

異同資料句番号:00808

00809
人麿 ひとまろ (003)

うつつにはあふことかたし玉の緒のよるはたえせすゆめに見えなん

うつつには−あふことかたし−たまのをの−よるはたえせす−ゆめにみえなむ

異同資料句番号:00809

00810
番号外作者 ひろはたのみやす所 (999)

いにしへをいかてかとのみ思ふ身に今夜のゆめを春になさはや

いにしへを−いかてかとのみ−おもふみに−こよひのゆめを−はるになさはや

異同資料句番号:00810

00811
貫之 つらゆき (035)

わすらるる時しなけれは春の田を返す返すそ人はこひしき

わすらるる−ときしなけれは−はるのたを−かへすかへすそ−ひとはこひしき

異同資料句番号:00811

00812
読人不知 よみひとしらす (000)

あつさゆみ春のあら田をうち返し思ひやみにし人そこひしき

あつさゆみ−はるのあらたを−うちかへし−おもひやみにし−ひとそこひしき

異同資料句番号:00812

00813
躬恒 みつね (029)

かのをかにはきかるをのこなはをなみねるやねりそのくたけてそ思ふ

かのをかに−はきかるをのこ−なはをなみ−ねるやねりその−くたけてそおもふ

異同資料句番号:00813

00814
読人不知 よみ人しらす (000)

春くれは柳のいともとけにけりむすほほれたるわか心かな

はるくれは−やなきのいとも−とけにけり−むすほほれたる−わかこころかな

異同資料句番号:00814

00815
読人不知 よみ人しらす (000)

いつ方によるとかは見むあをやきのいとさためなき人の心を

いつかたに−よるとかはみむ−あをやきの−いとさためなき−ひとのこころを

異同資料句番号:00815

00816
読人不知 よみ人しらす (000)

まきもくのひはらの霞立返りかくこそは見めあかぬ君かな

まきもくの−ひはらのかすみ−たちかへり−かくこそはみめ−あかぬきみかな

異同資料句番号:00816

00817
番号外作者 藤原きよたたかむすめ (999)

なかめやる山へはいととかすみつつおほつかなさのまさる春かな

なかめやる−やまへはいとと−かすみつつ−おほつかなさの−まさるはるかな

異同資料句番号:00817

00818
人麿 人まろ (003)

わかせこをきませの山とひとはいへと君もきまさぬ山のなならし

わかせこを−きませのやまと−ひとはいへと−きみもきまさぬ−やまのなならし

異同資料句番号:00818

00819
赤人 山辺赤人 (004)

我か背子をならしの岡のよふことり君よひかへせ夜のふけぬ時

わかせこを−ならしのをかの−よふことり−きみよひかへせ−よのふけぬとき

異同資料句番号:00819

00820
読人不知 よみ人しらす (000)

こぬ人をまつちの山の郭公おなし心にねこそなかるれ

こぬひとを−まつちのやまの−ほとときす−おなしこころに−ねこそなかるれ

異同資料句番号:00820

00821
読人不知 よみ人しらす (000)

しののめになきこそわたれ時鳥物思ふやとはしるくやあるらん

しののめに−なきこそわたれ−ほとときす−ものおもふやとは−しるくやあるらむ

異同資料句番号:00821

00822
読人不知 よみ人しらす (000)

たたくとてやとのつまとをあけたれは人もこすゑのくひななりけり

たたくとて−やとのつまとを−あけたれは−ひともこすゑの−くひななりけり

異同資料句番号:00822

00823
読人不知 よみ人しらす (000)

夏衣うすきなからそたのまるるひとへなるしも身にちかけれは

なつころも−うすきなからそ−たのまるる−ひとへなるしも−みにちかけれは

異同資料句番号:00823

00824
読人不知 よみ人しらす (000)

かりてほすよとのまこもの雨ふれはつかねもあへぬこひもするかな

かりてほす−よとのまこもの−あめふれは−つかぬもあへぬ−こひもするかな

異同資料句番号:00824

00825
読人不知 よみ人しらす (000)

みな月のつちさへさけててる日にもわかそてひめやいもにあはすして

みなつきの−つちさへさけて−てるひにも−わかそてひめや−いもにあはすして

異同資料句番号:00825

00826
人麿 人まろ (003)

なる神のしはしうこきてそらくもり雨もふらなん君とまるへく

なるかみの−しはしうこきて−そらくもり−あめもふらなむ−きみとまるへく

異同資料句番号:00826

00827
人麿 人まろ (003)

人ことは夏野の草のしけくとも君と我としたつさはりなは

ひとことは−なつののくさの−しけくとも−きみとわれとし−たつさはりなは

異同資料句番号:00827

00828
読人不知 よみ人しらす (000)

野も山もしけりあひぬる夏なれと人のつらさは事のはもなし

のもやまも−しけりあひぬる−なつなれと−ひとのつらさは−ことのはもなし

異同資料句番号:00828

00829
読人不知 よみ人しらす (000)

夏草のしけみにおふるまろこすけまろかまろねよいくよへぬらん

なつくさの−しけみにおふる−まろこすけ−まろかまろねよ−いくよへぬらむ

異同資料句番号:00829

00830
村上院 御製 (512)

山かつのかきほにおふるなてしこに思ひよそへぬ時のまそなき

やまかつの−かきほにおふる−なてしこに−おもひよそへぬ−ときのまそなき

異同資料句番号:00830

00831
元輔 清原元輔 (042)

思ひしる人に見せはやよもすからわかとこ夏におきゐたるつゆ

おもひしる−ひとにみせはや−よもすから−わかとこなつに−おきゐたるつゆ

異同資料句番号:00831

00832
読人不知 よみ人しらす (000)

秋の野の草葉もわけぬわか袖のつゆけくのみもなりまさるかな

あきののの−くさはもわけぬ−わかそての−つゆけくのみも−なりまさるかな

異同資料句番号:00832

00833
好忠 曾禰好忠 (046)

わかせこかきまさぬよひの秋風はこぬ人よりもうらめしきかな

わかせこか−きまさぬよひの−あきかせは−こぬひとよりも−うらめしきかな

異同資料句番号:00833

00834
読人不知 よみ人しらす (000)

うら山しあさひにあたる白露をわか身と今はなすよしもかな

うらやまし−あさひにあたる−しらつゆを−わかみといまは−なすよしもかな

異同資料句番号:00834

00835
人麿 人まろ (003)

秋の田のほのうへにおけるしらつゆのけぬへく我はおもほゆるかな

あきのたの−ほのうへにおける−しらつゆの−けぬへくわれは−おもほゆるかな

異同資料句番号:00835

00836
人麿 人まろ (003)

住吉の岸を田にほりまきしいねのかるほとまてもあはぬきみかな

すみよしの−きしをたにほり−まきしいねの−かるほとまても−あはぬきみかな

異同資料句番号:00836

00837
赤人 (004)

こひしくはかたみにせむとわかやとにうゑし秋はき今さかりなり

こひしくは−かたみにせむと−わかやとに−うゑしあきはき−いまさかりなり

異同資料句番号:00837

00838
番号外作者 広平親王 (999)

秋はきのしたはを見すはわすらるる人の心をいかてしらまし

あきはきの−したはをみすは−わすらるる−ひとのこころを−いかてしらまし

異同資料句番号:00838

00839
読人不知 よみ人しらす (000)

しめゆはぬのへの秋はき風ふけはとふしかくふし物をこそ思へ

しめゆはぬ−のへのあきはき−かせふけは−とふしかくふし−ものをこそおもへ

異同資料句番号:00839

00840
馬内侍 中宮内侍 (172)

うつろふはしたははかりと見しほとにやかても秋になりにけるかな

うつろふは−したははかりと−みしほとに−やかてもあきに−なりにけるかな

異同資料句番号:00840

00841
能宣 よしのふ (049)

事の葉も霜にはあへすかれにけりこや秋はつるしるしなるらん

ことのはも−しもにはあへす−かれにけり−こやあきはつる−しるしなるらむ

異同資料句番号:00841

00842
貫之 つらゆき (035)

色もなき心を人にそめしよりうつろはむとはわかおもはなくに

いろもなき−こころをひとに−そめしより−うつろはむとは−わかおもはなくに

異同資料句番号:00842

00843
読人不知 よみ人しらす (000)

かすならぬ身をうち河のあしろ木におほくの日をもすくしつるかな

かすならぬ−みをうちかはの−あしろきに−おほくのひをも−すくしつるかな

異同資料句番号:00843

00844
読人不知 よみ人しらす (000)

したもみちするをはしらて松の木のうへの緑をたのみけるかな

したもみち−するをはしらて−まつのきの−うへのみとりを−たのみけるかな

異同資料句番号:00844

00845
人麿 (003)

わかせこをわかこひをれはわかやとの草さへ思ひうらかれにけり

わかせこを−わかこひをれは−わかやとの−くささへおもひ−うらかれにけり

異同資料句番号:00845

00846
読人不知 よみ人しらす (000)

霜のうへにふるはつ雪のあさ氷とけすも物を思ふころかな

しものうへに−ふるはつゆきの−あさこほり−とけすもものを−おもふころかな

異同資料句番号:00846

00847
番号外作者 源景明 (999)

三吉野の雪にこもれる山人もふる道とめてねをやなくらん

みよしのの−ゆきにこもれる−やまひとも−ふるみちとめて−ねをやなくらむ

異同資料句番号:00847

00848
人麿 (003)

たのめつつこぬ夜あまたに成りぬれはまたしと思ふそまつにまされる

たのめつつ−こぬよあまたに−なりぬれは−またしとおもふそ−まつにまされる

異同資料句番号:00848


拾遺集 巻十四:恋四

00849
人麿 (003)

あさねかみ我はけつらしうつくしき人のた枕ふれてしものを

あさねかみ−われはけつらし−うつくしき−ひとのたまくら−ふれてしものを

異同資料句番号:00849

00850
実方 藤原実方朝臣 (051)

時のまも心はそらになるものをいかてすくしし昔なるらむ

ときのまも−こころはそらに−なるものを−いかてすくしし−むかしなるらむ

異同資料句番号:00850

00851
読人不知 よみ人しらす (000)

しらなみのうちしきりつつ今夜さへいかてかひとりぬるとかやきみ

しらなみの−うちしきりつつ−こよひさへ−いかてかひとり−ぬるとかやきみ

異同資料句番号:00851

00852
番号外作者 小弐命婦 (999)

如何してけふをくらさむこゆるきのいそきいててもかひなかりけり

いかにして−けふをくらさむ−こゆるきの−いそきいてても−かひなかりけり

異同資料句番号:00852

00853
人麿 人まろ (003)

みなといりの葦わけを舟さはりおほみわか思ふ人にあはぬころかな

みなといりの−あしわけをふね−さはりおほみ−わかおもふひとに−あはぬころかな

異同資料句番号:00853

00854
人麿 人まろ (003)

いはしろのの中にたてる結松心もとけす昔おもへは

いはしろの−のなかにたてる−むすひまつ−こころもとけす−むかしおもへは

異同資料句番号:00854

00855
読人不知 よみ人しらす (000)

わかやとははりまかたにもあらなくにあかしもはてて人のゆくらん

わかやとは−はりまかたにも−あらなくに−あかしもはてて−ひとのゆくらむ

異同資料句番号:00855

00856
読人不知 よみ人しらす (000)

浪まより見ゆるこ舟の浜ひさ木ひさしく成りぬ君にあはすて

なみまより−みゆるこしまの−はまひさき−ひさしくなりぬ−きみにあはすて

異同資料句番号:00856

00857
人麿 人まろ (003)

ますかかみ手にとりもちてあさなあさな見れともきみにあく時そなき

ますかかみ−てにとりもちて−あさなあさな−みれともきみに−あくときそなき

異同資料句番号:00857

00858
人麿 人まろ (003)

みな人のかさにぬふてふ有ますけありてののちもあはんとそ思ふ

みなひとの−かさにぬふてふ−ありますけ−ありてののちも−あはむとそおもふ

異同資料句番号:00858

00859
読人不知 よみ人しらす (000)

いかほのやいかほのぬまのいかにして恋しき人を今ひとめみむ

いかほのや−いかほのぬまの−いかにして−こひしきひとを−いまひとめみむ

異同資料句番号:00859

00860
読人不知 よみ人しらす (000)

玉河にさらすてつくりさらさらに昔の人のこひしきやなそ

たまかはに−さらすてつくり−さらさらに−むかしのひとの−こひしきやなそ

異同資料句番号:00860

00861
読人不知 よみ人しらす (000)

身ははやくならの都になりにしをこひしき事のふりせさるらん

みははやく−ならのみやこに−なりにしを−こひしきことの−ふりせさるらむ

異同資料句番号:00861

00862
忠房 藤原忠房朝臣 (182)

いその神ふりにしこひのかみさひてたたるに我はねきそかねつる

いそのかみ−ふりにしこひの−かみさひて−たたるにわれは−ねきそかねつる

異同資料句番号:00862

00863
読人不知 よみ人しらす (000)

いかはかり苦しきものそ葛木のくめちのはしの中のたえまは

いかはかり−くるしきものそ−かつらきの−くめちのはしの−なかのたえまは

異同資料句番号:00863

00864
読人不知 よみ人しらす (000)

限なく思ひなからの橋柱思ひなからに中やたえなん

かきりなく−おもひなからの−はしはしら−おもひなからに−なかやたえなむ

異同資料句番号:00864

00865
番号外作者 源頼光 (999)

中中にいひもはなたてしなのなるきそちのはしのかけたるやなそ

なかなかに−いひもはなたて−しなのなる−きそちのはしの−かけたるやなそ

異同資料句番号:00865

00866
読人不知 よみ人しらす (000)

すきたてるやとをそ人はたつねける心の松はかひなかりけり

すきたてる−やとをそひとは−たつねける−こころのまつは−かひなかりけり

異同資料句番号:00866

00867
読人不知 よみ人しらす (000)

いその神ふるの社のゆふたすきかけてのみやはこひむと思ひし

いそのかみ−ふるのやしろの−ゆふたすき−かけてのみやは−こひむとおもひし

異同資料句番号:00867

00868
読人不知 よみ人しらす (000)

我やうき人やつらきとちはやふる神てふ神にとひ見てしかな

われやうき−ひとやつらきと−ちはやふる−かみてふかみに−とひみてしかな

異同資料句番号:00868

00869
読人不知 よみ人しらす (000)

住吉のあら人神にちかひてもわするる君か心とそきく

すみよしの−あらひとかみに−ちかひても−わするるきみか−こころとそきく

異同資料句番号:00869

00870
右近 (038)

わすらるる身をはおもはすちかひてし人のいのちのをしくもあるかな

わすらるる−みをはおもはす−ちかひてし−ひとのいのちの−をしくもあるかな

異同資料句番号:00870

00871
実方 実方朝臣 (051)

何せむに命をかけてちかひけんいかはやと思ふをりも有りけり

なにせむに−いのちをかけて−ちかひけむ−いかはやとおもふ−をりもありけり

異同資料句番号:00871

00872
読人不知 よみ人しらす (000)

ちりひちのかすにもあらぬ我ゆゑに思ひわふらんいもかかなしさ

ちりひちの−かすにもあらぬ−われゆゑに−おもひわふらむ−いもかかなしさ

異同資料句番号:00872

00873
人麿 人まろ (003)

こひこひて後もあはむとなくさむる心しなくはいのちあらめや

こひこひて−のちもあはむと−なくさむる−こころしなくは−いのちあらめや

異同資料句番号:00873

00874
人麿 人まろ (003)

かくはかりこひしき物としらませはよそに見るへくありけるものを

かくはかり−こひしきものと−しらませは−よそにみるへく−ありけるものを

異同資料句番号:00874

00875
読人不知 よみ人しらす (000)

涙河のとかにたにもなかれなんこひしき人の影や見ゆると

なみたかは−のとかにたにも−なかれなむ−こひしきひとの−かけやみゆると

異同資料句番号:00875

00876
貫之 つらゆき (035)

涙河おつるみなかみはやけれはせきそかねつるそてのしからみ

なみたかは−おつるみなかみ−はやけれは−せきそかねつる−そてのしからみ

異同資料句番号:00876

00877
順 源したかふ (130)

なみた河そこのみくつとなりはててこひしきせせに流れこそすれ

なみたかは−そてのみくつと−なりはてて−こひしきせせに−なかれこそすれ

異同資料句番号:00877

00878
番号外作者 藤原惟成 (999)

人しれすおつる涙のつもりつつかすかくはかりなりにけるかな

ひとしれす−おつるなみたの−つもりつつ−かすかくはかり−なりにけるかな

異同資料句番号:00878

00879
斎宮女御 (119)

かつ見つつ影はなれゆく水のおもにかくかすならぬ身をいかにせん

かつみつつ−かけはなれゆく−みつのおもに−かくかすならぬ−みをいかにせむ

異同資料句番号:00879

00880
読人不知 よみ人しらす (000)

さをしかのつめたにひちぬ山河のあさましきまてとはぬ君かな

さをしかの−つめたにひちぬ−やまかはの−あさましきまて−とはぬきみかな

異同資料句番号:00880

00881
読人不知 よみ人しらす (000)

浅猿やこのしたかけのいはし水いくその人の影を見つらん

あさましや−このしたかけの−いはしみつ−いくそのひとの−かけをみつらむ

異同資料句番号:00881

00882
読人不知 よみ人しらす (000)

行く水のあわならはこそきえかへり人のふちせを流れても見め

ゆくみつの−あわならはこそ−きえかへり−ひとのふちせを−なかれてもみめ

異同資料句番号:00882

00883
読人不知 よみ人しらす (000)

つのくにのほり江のふかく思ふとも我はなにはのなにとたに見す

つのくにの−ほりえのふかく−おもふとも−われはなにはの−なにとたにみす

異同資料句番号:00883

00884
読人不知 よみ人しらす (000)

つのくにのいくたの池のいくたひかつらき心を我に見すらん

つのくにの−いくたのいけの−いくたひか−つらきこころを−われにみすらむ

異同資料句番号:00884

00885
読人不知 よみ人しらす (000)

つのくにのなには渡につくるなるこやといはなんゆきて見るへく

つのくにの−なにはわたりに−つくるなる−こやといはなむ−ゆきてみるへく

異同資料句番号:00885

00886
読人不知 よみ人しらす (000)

たひひとのかやかりおほひつくるてふまろやは人を思ひわするる

たひひとの−かやかりおほひ−つくるてふ−まろやはひとを−おもひわするる

異同資料句番号:00886

00887
人麿 人まろ (003)

なには人あし火たくやはすすたれとおのかつまこそとこめつらなれ

なにはひと−あしひたくやは−すすたれと−おのかつまこそ−とこめつらなれ

異同資料句番号:00887

00888
読人不知 よみ人しらす (000)

住吉の岸におひたる忘草見すやあらましこひはしぬとも

すみよしの−きしにおひたる−わすれくさ−みすやあらまし−こひはしぬとも

異同資料句番号:00888

00889
読人不知 よみ人しらす (000)

やほかゆくはまのまさことわかこひといつれまされりおきつしまもり

やほかゆく−はまのまさこと−わかこひと−いつれまされり−おきつしまもり

異同資料句番号:00889

00890
兼盛 かねもり (040)

さしなから人の心を見くまののうらのはまゆふいくへなるらん

さしなから−ひとのこころを−みくまのの−うらのはまゆふ−いくへなるらむ

異同資料句番号:00890

00891
村上院 天暦御製 (512)

世の人のおよはぬ物はふしのねのくもゐにたかき思ひなりけり

よのひとの−およはぬものは−ふしのねの−くもゐにたかき−おもひなりけり

異同資料句番号:00891

00892
読人不知 よみ人しらす (000)

わかこひのあらはに見ゆる物ならはみやこのふしといはれなましを

わかこひの−あらはにみゆる−ものならは−みやこのふしと−いはれなましを

異同資料句番号:00892

00893
読人不知 よみ人しらす (000)

あしねはふうきはうへこそつれなけれしたはえならす思ふ心を

あしねはふ−うきはうへこそ−つれなけれ−したはえならす−おもふこころを

異同資料句番号:00893

00894
読人不知 よみ人しらす (000)

ねぬなはのくるしかるらん人よりも我そます田のいけるかひなき

ねぬなはの−くるしかるらむ−ひとよりも−われそますたの−いけるかひなき

異同資料句番号:00894

00895
人麿 人まろ (003)

たらちねのおやのかふこのまゆこもりいふせくもあるかいもにあはすして

たらちねの−おやのかふこの−まゆこもり−いふせくもあるか−いもにあはすて

異同資料句番号:00895

00896
読人不知 よみ人しらす (000)

いさやまたこひてふ事もしらなくにこやそなるらんいこそねられね

いさやまた−こひてふことも−しらなくに−こやそなるらむ−いこそねられね

異同資料句番号:00896

00897
読人不知 よみ人しらす (000)

たらちねのおやのいさめしうたたねは物思ふ時のわさにそ有りける

たらちねの−おやのいさめし−うたたねは−おもおもふときの−わさにそありける

異同資料句番号:00897

00898
中務 (136)

うちとなくなれもしなまし玉すたれたれ年月をへたてそめけん

うちとなく−なれもしなまし−たまたれの−たれとしつきを−へたてそめけむ

異同資料句番号:00898

00899
貫之 つらゆき (035)

うかりけるふしをはすててしらいとの今くる人と思ひなさなん

うかりける−ふしをはすてて−しらいとの−いまくるひとと−おもひなさなむ

異同資料句番号:00899

00900
読人不知 よみ人しらす (000)

思ふとていとこそ人になれさらめしかならひてそ見ねはこひしき

おもふとて−いとこそひとに−なれさらめ−しかならひてそ−みねはこひしき

異同資料句番号:00900

00901
読人不知 よみ人しらす (000)

た枕のすきまの風もさむかりき身はならはしの物にそ有りける

たまくらの−すきまのかせも−さむかりき−みはならはしの−ものにそありける

異同資料句番号:00901

00902
読人不知 よみ人しらす (000)

吹く風に雲のはたてはととむともいかかたのまん人の心は

ふくかせに−くものはたては−ととむとも−いかかたのまむ−ひとのこころは

異同資料句番号:00902

00903
読人不知 よみ人しらす (000)

わか草にととめもあへぬこまよりもなつけわひぬる人の心か

わかくさに−ととめもあへぬ−こまよりも−なつけわひぬる−ひとのこころか

異同資料句番号:00903

00904
読人不知 よみ人しらす (000)

あふことのかたかひしたるみちのくのこまほしくのみおもほゆるかな

あふことの−かたかひしたる−みちのくの−こまほしくのみ−おもほゆるかな

異同資料句番号:00904

00905
読人不知 よみ人しらす (000)

みちのくのあたちの原のしらまゆみ心こはくも見ゆるきみかな

みちのくの−あたちのはらの−しらまゆみ−こころこはくも−みゆるきみかな

異同資料句番号:00905

00906
伊勢 (019)

年月の行くらん方もおもほえす秋のはつかに人の見ゆれは

としつきの−ゆくらむかたも−おもほえす−あきのはつかに−ひとのみゆれは

異同資料句番号:00906

00907
伊勢 (019)

思ひきやあひ見ぬほとの年月をかそふはかりにならん物とは

おもひきや−あひみぬほとの−としつきを−かそふはかりに−ならむものとは

異同資料句番号:00907

00908
伊勢 (019)

遥なる程にもかよふ心かなさりとて人のしらぬものゆゑ

はるかなる−ほとにもかよふ−こころかな−さりとてひとの−しらぬものゆゑ

異同資料句番号:00908

00909
番号外作者 源経基 (999)

雲井なる人を遥に思ふにはわか心さへそらにこそなれ

くもゐなる−ひとをはるかに−おもふには−わかこころさへ−そらにこそなれ

異同資料句番号:00909

00910
人麿 ひとまろ (003)

よそに有りてくもゐに見ゆるいもか家に早くいたらむあゆめくろこま

よそにありて−くもゐにみゆる−いもかいへに−はやくいたらむ−あゆめくろこま

異同資料句番号:00910

00911
読人不知 よみ人しらす (000)

わかかへるみちのくろこま心あらは君はこすともおのれいななけ

わかかへる−みちのくろこま−こころあらは−きみはこすとも−おのれいななけ

異同資料句番号:00911

00912
道綱母 右大将道綱母 (053)

歎きつつ独ぬる夜のあくるまはいかにひさしき物とかはしる

なけきつつ−ひとりぬるよの−あくるまは−いかにひさしき−ものとかはしる

異同資料句番号:00912

00913
読人不知 よみ人しらす (000)

なけ木こる人いる山のをののえのほとほとしくもなりにけるかな

なけきこる−ひといるやまの−をののえの−ほとほとしくも−なりにけるかな

異同資料句番号:00913

00914
読人不知 よみ人しらす (000)

ひとにたにしらせていりしおく山に恋しさいかてたつねきつらん

ひとにたに−しらせていりし−おくやまに−こひしさいかて−たつねきつらむ

異同資料句番号:00914

00915
番号外作者 くにもち (999)

影たえておほつかなさのますかかみ見すはわか身のうさもしられし

かけたえて−おほつかなさの−ますかかみ−みすはわかみの−うさもしられし

異同資料句番号:00915

00916
読人不知 よみ人しらす (000)

思ひます人しなけれはますかかみうつれる影とねをのみそなく

おもひます−ひとしなけれは−ますかかみ−うつれるかけと−ねをのみそなく

異同資料句番号:00916

00917
読人不知 よみ人しらす (000)

わか袖のぬるるを人のとかめすはねをたにやすくなくへきものを

わかそての−ぬるるをひとの−とかめすは−ねをたにやすく−なくへきものを

異同資料句番号:00917

00918
読人不知 こまの命婦 (000)

かすならぬ身はたたにたにおもほえていかにせよとかなかめらるらん

かすならぬ−みはたたにたに−おもほえて−いかにせよとか−なかめらるらむ

異同資料句番号:00918

00919
読人不知 よみ人しらす (000)

夢にさへ人のつれなく見えつれはねてもさめても物をこそおもへ

ゆめにさへ−ひとのつれなく−みえつれは−ねてもさめても−ものをこそおもへ

異同資料句番号:00919

00920
読人不知 よみ人しらす (000)

見る夢のうつつになるはよのつねそうつつのゆめになるそかなしき

みるゆめの−うつつになるは−よのつねそ−うつつのゆめに−なるそかなしき

異同資料句番号:00920

00921
読人不知 よみ人しらす (000)

逢ふ事は夢の中にもうれしくてねさめのこひそわひしかりける

あふことは−ゆめのうちにも−うれしくて−ねさめのこひそ−わひしかりける

異同資料句番号:00921

00922
読人不知 よみ人しらす (000)

わすれしよゆめとちきりし事のははうつつにつらき心なりけり

わすれしよ−ゆめとちきりし−ことのはは−うつつにつらき−こころなりけり

異同資料句番号:00922

00923
読人不知 よみ人しらす (000)

あたらしと何にいのちを思ひけんわすれはふるくなりぬへき身を

あたらしと−なににいのちを−おもひけむ−わすれはふるく−なりぬへきみを

異同資料句番号:00923

00924
人麿 柿本人麿 (003)

ちはやふる神のいかきもこえぬへし今はわか身のをしけくもなし

ちはやふる−かみのいかきも−こえぬへし−いまはわかみの−をしけくもなし

異同資料句番号:00924


拾遺集 巻十五:恋五

00925
番号外作者 善祐法師の母 (999)

なく涙世はみな海となりななんおなしなきさに流れよるへく

なくなみた−よはみなうみと−なりななむ−おなしなきさに−なかれよるへく

異同資料句番号:00925

00926
人麿 人まろ (003)

住吉の岸にむかへるあはち島あはれと君をいはぬ日そなき

すみよしの−きしにむかへる−あはちしま−あはれときみを−いはぬひそなき

異同資料句番号:00926

00927
読人不知 よみ人しらす (000)

すてはてむいのちを今はたのまれよあふへきことのこの世ならねは

すてはてむ−いのちをいまは−たのまれよ−あふへきことの−このよならねは

異同資料句番号:00927

00928
読人不知 よみ人しらす (000)

いきしなん事の心にかなひせはふたたひ物はおもはさらまし

いきしなむ−ことのこころに−かなひせは−ふたたひものは−おもはさらまし

異同資料句番号:00928

00929
読人不知 よみ人しらす (000)

もえはててはひとなりなん時にこそ人を思ひのやまむこにせめ

もえはてて−はひとなりなむ−ときにこそ−ひとをおもひの−やまむこにせめ

異同資料句番号:00929

00930
読人不知 よみ人しらす (000)

いつ方にゆきかくれなん世の中に身のあれはこそ人もつらけれ

いつかたに−ゆきかくれなむ−よのなかに−みのあれはこそ−ひともつらけれ

異同資料句番号:00930

00931
読人不知 よみ人しらす (000)

有りへむと思ひもかけぬ世の中はなかなか身をそなけかさりける

ありへむと−おもひもかけぬ−よのなかは−なかなかみをそ−なけかさりける

異同資料句番号:00931

00932
読人不知 よみ人しらす (000)

いつはりと思ふものから今さらにたかまことをか我はたのまむ

いつはりと−おもふものから−いまさらに−たかまことをか−われはたのまむ

異同資料句番号:00932

00933
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中のうきもつらきもしのふれは思ひしらすと人や見るらん

よのなかの−うきもつらきも−しのふれは−おもひしらすと−ひとやみるらむ

異同資料句番号:00933

00934
読人不知 よみ人しらす (000)

ひたふるにしなはなにかはさもあらはあれいきてかひなき物思ふ身は

ひたふるに−しなはなにかは−さもあらはあれ−いきてかひなき−ものおもふみは

異同資料句番号:00934

00935
人麿 人まろ (003)

恋するにしにする物にあらませはちたひそ我はしにかへらまし

こひするに−しにするものに−あらませは−ちたひそわれは−しにかへらまし

異同資料句番号:00935

00936
人麿 人まろ (003)

こひてしねこひてしねとやわきもこかわか家の門をすきてゆくらん

こひてしね−こひてしねとや−わきもこか−わかいへのかとを−すきてゆくらむ

異同資料句番号:00936

00937
人麿 人まろ (003)

こひしなはこひもしねとや玉桙の道ゆき人に事つてもなき

こひしなは−こひもしねとや−たまほこの−みちゆきひとに−ことつてもなき

異同資料句番号:00937

00938
重之 (048)

恋しきをなくさめかねてすかはらや伏見にきてもねられさりけり

こひしきを−なくさめかねて−すかはらや−ふしみにきても−ねられさりけり

異同資料句番号:00938

00939
読人不知 読人しらす (000)

こひしきは色にいてても見えなくにいかなる時かむねにしむらん

こひしきは−いろにいてても−みえなくに−いかなるときか−むねにしむらむ

異同資料句番号:00939

00940
読人不知 読人しらす (000)

しのはむにしのはれぬへきこひならはつらきにつけてやみもしなまし

しのはむに−しのはれぬへき−こひならは−つらきにつけて−やみもしなまし

異同資料句番号:00940

00941
能宣 大中臣能宣 (049)

いかていかてこふる心をなくさめてのちの世まての物をおもはし

いかていかて−こふるこころを−なくさめて−のちのよまての−ものをおもはし

異同資料句番号:00941

00942
読人不知 よみ人しらす (000)

限なく思ふ心のふかけれはつらきもしらぬものにそありける

かきりなく−おもふこころの−ふかけれは−つらきもしらぬ−ものにそありける

異同資料句番号:00942

00943
読人不知 よみ人しらす (000)

わりなしやしひてもたのむ心かなつらしとかつは思ふものから

わりなしや−しひてもたのむ−こころかな−つらしとかつは−おもふものから

異同資料句番号:00943

00944
読人不知 よみ人しらす (000)

うしと思ふものから人のこひしきはいつこをしのふ心なるらん

うしとおもふ−ものからひとの−こひしきは−いつこをしのふ−こころなるらむ

異同資料句番号:00944

00945
読人不知 よみ人しらす (000)

身のうきを人のつらきと思ふこそ我ともいはしわりなかりけれ

みのうきを−ひとのつらきと−おもふこそ−われともいはし−わりなかりけれ

異同資料句番号:00945

00946
読人不知 よみ人しらす (000)

つらしとは思ふものからこひしきは我にかなはぬ心なりけり

つらしとは−おもふものから−こひしきは−われにかなはぬ−こころなりけり

異同資料句番号:00946

00947
読人不知 よみ人しらす (000)

つらきをも思ひしるやはわかためにつらき人しも我をうらむる

つらきをも−おもひしるやは−わかために−つらきひとしも−われをうらむる

異同資料句番号:00947

00948
読人不知 よみ人しらす (000)

心をはつらき物そといひおきてかはらしと思ふかほそこひしき

こころをは−つらきものそと−いひおきて−かはらしとおもふ−かほそこひしき

異同資料句番号:00948

00949
読人不知 よみ人しらす (000)

あさましや見しかとたにもおもはぬにかはらぬかほそ心ならまし

あさましや−みしかとたにも−おもはぬに−かはらぬかほそ−こころならまし

異同資料句番号:00949

00950
伊尹 一条摂政 (045)

あはれともいふへき人はおもほえて身のいたつらに成りぬへきかな

あはれとも−いふへきひとは−おもほえて−みのいたつらに−なりぬへきかな

異同資料句番号:00950

00951
伊勢 (019)

さもこそはあひ見むことのかたからめわすれすとたにいふ人のなき

さもこそは−あひみむことの−かたからめ−わすれすとたに−いふひとのなき

異同資料句番号:00951

00952
番号外作者 藤原有時 (999)

あふことのなけきの本をたつぬれはひとりねよりそおひはしめける

あふことの−なけきのもとを−たつぬれは−ひとりねよりそ−おひはしめける

異同資料句番号:00952

00953
貫之 つらゆき (035)

おほかたのわか身ひとつのうきからになへての世をも怨みつるかな

おほかたの−わかみひとつの−うきからに−なへてのよをも−うらみつるかな

異同資料句番号:00953

00954
人麿 人まろ (003)

あらちをのかるやのさきに立つしかもいと我はかり物はおもはし

あらちをの−かるやのさきに−たつしかも−いとわれはかり−ものはおもはし

異同資料句番号:00954

00955
人麿 人まろ (003)

荒磯の外ゆく浪の外心我はおもはしこひはしぬとも

あらいその−ほかゆくなみの−ほかこころ−われはおもはし−こひはしぬとも

異同資料句番号:00955

00956
人麿 人まろ (003)

かきくもり雨ふる河のささらなみまなくも人のこひらるるかな

かきくもり−あめふるかはの−ささらなみ−まなくもひとの−こひらるるかな

異同資料句番号:00956

00957
人麿 人まろ (003)

わかことや雲の中にも思ふらむ雨もなみたもふりにこそふれ

わかことや−くものうちにも−おもふらむ−あめもなみたも−ふりにこそふれ

異同資料句番号:00957

00958
貫之 つらゆき (035)

ふる雨にいててもぬれぬわかそてのかけにゐなからひちまさるかな

ふるあめに−いててもぬれぬ−わかそての−かけにゐなから−ひちまさるかな

異同資料句番号:00958

00959
読人不知 よみ人しらす (000)

これをたにかきそわつらふ雨とふる涙をのこふいとまなけれは

これをたに−かきそわつらふ−あめとふる−なみたをぬくふ−いとまなけれは

異同資料句番号:00959

00960
読人不知 よみ人しらす (000)

君こふる我もひさしくなりぬれは袖に涙もふりぬへらなり

きみこふる−われもひさしく−なりぬれは−そてになみたも−ふりぬへらなり

異同資料句番号:00960

00961
読人不知 よみ人しらす (000)

きみこふる涙のかかる袖のうらはいはほなりともくちそしぬへき

きみこふる−なみたのかかる−そてのうらは−いはほなりとも−くちそしぬへき

異同資料句番号:00961

00962
読人不知 よみ人しらす (000)

またしらぬおもひにもゆるわか身かなさるはなみたの河の中にて

またしらぬ−おもひにもゆる−わかみかな−さるはなみたの−かはのうちにて

異同資料句番号:00962

00963
番号外作者 源景明 (999)

風をいたみおもはぬ方にとまりするあまのを舟もかくやわふらん

かせをいたみ−おもはぬかたに−とまりする−あまのをふねも−かくやわふらむ

異同資料句番号:00963

00964
読人不知 よみ人しらす (000)

せをはやみたえすなかるる水よりもつきせぬ物は涙なりけり

せをはやみ−たえすなかるる−みつよりも−つきせぬものは−なみたなりけり

異同資料句番号:00964

00965
読人不知 よみ人しらす (000)

わかことく物思ふ人はいにしへも今ゆくすゑもあらしとそ思ふ

わかことく−ものおもふひとは−いにしへも−いまゆくすゑも−あらしとそおもふ

異同資料句番号:00965

00966
坂上郎女 (521)

くろかみにしろかみましりおふるまてかかるこひにはいまたあはさるに

くろかみに−しろかみましり−おふるまて−かかるこひには−いまたあはさるに

異同資料句番号:00966

00967
坂上郎女 (521)

しほみては入りぬるいその草なれや見らくすくなくこふらくのおほき

しほみては−いりぬるいその−くさなれや−みらくすくなく−こふらくのおほき

異同資料句番号:00967

00968
坂上郎女 (521)

しかのあまのつりにともせるいさり火のほのかに人を見るよしもかな

しかのあまの−つりにともせる−いさりひの−ほのかにひとを−みるよしもかな

異同資料句番号:00968

00969
坂上郎女 (521)

いはねふみかさなる山はなけれともあはぬ日かすをこひやわたらん

いはねふみ−かさなるやまは−なけれとも−あはぬひかすを−こひやわたらむ

異同資料句番号:00969

00970
番号外作者 藤原有時 (999)

なけ木こる山ちは人もしらなくにわか心のみつねにゆくらん

なけきこる−やまちはひとも−しらなくに−わかこころのみ−つねにゆくらむ

異同資料句番号:00970

00971
番号外作者 円融院 (999)

限なき思ひのそらにみちぬれはいくその煙雲となるらん

かきりなき−おもひのそらに−みちぬれは−いくそのけふり−くもとなるらむ

異同資料句番号:00971

00972
番号外作者 少将更衣 (999)

そらにみつ思ひの煙雲ならはなかむる人のめにそ見えまし

そらにみつ−おもひのけふり−くもならは−なかむるひとの−めにそみえまし

異同資料句番号:00972

00973
読人不知 よみ人しらす (000)

おもはすはつれなき事もつらからしたのめは人を怨みつるかな

おもはすは−つれなきことも−つらからし−たのめはひとを−うらみつるかな

異同資料句番号:00973

00974
読人不知 よみ人しらす (000)

つらけれとうらむる限ありけれは物はいはれてねこそなかるれ

つらけれと−うらむるかきり−ありけれは−ものはいはれて−ねこそなかるれ

異同資料句番号:00974

00975
読人不知 よみ人しらす (000)

紅のやしほの衣かくしあらは思ひそめすそあるへかりける

くれなゐの−やしほのころも−かくしあらは−おもひそめすそ−あるへかりける

異同資料句番号:00975

00976
読人不知 よみ人しらす (000)

ほのかにも我をみしまのあくた火のあくとや人のおとつれもせぬ

ほのかにも−われをみしまの−あくたひの−あくとやひとの−おとつれもせぬ

異同資料句番号:00976

00977
番号外作者 承香殿中納言 (999)

人をとくあくた河てふつのくにの名にはたかはぬ物にそ有りける

ひとをとく−あくたかはてふ−つのくにの−なにはたかはぬ−ものにそありける

異同資料句番号:00977

00978
読人不知 よみ人しらす (000)

限なく思ひそめてし紅の人をあくにそかへらさりける

かきりなく−おもひそめてし−くれなゐの−ひとをあくにそ−かへらさりける

異同資料句番号:00978

00979
読人不知 よみ人しらす (000)

ありそ海の浦とたのめしなこり浪うちよせてけるわすれかひかな

ありそうみの−うらとたのめし−なこりなみ−うちよせてける−わすれかひかな

異同資料句番号:00979

00980
読人不知 よみ人しらす (000)

つらけれと人にはいはすいはみかた怨そふかき心ひとつに

つらけれと−ひとにはいはす−いはみかた−うらみそふかき−こころひとつに

異同資料句番号:00980

00981
読人不知 よみ人しらす (000)

怨みぬもうたかはしくそおもほゆるたのむ心のなきかとおもへは

うらみぬも−うたかはしくそ−おもほゆる−たのむこころの−なきかとおもへは

異同資料句番号:00981

00982
読人不知 よみ人しらす (000)

近江なる打出のはまのうちいてつつ怨みやせまし人の心を

あふみなる−うちてのはまの−うちいてつつ−うらみやせまし−ひとのこころを

異同資料句番号:00982

00983
読人不知 よみ人しらす (000)

渡つ海のふかき心は有りなからうらみられぬる物にそ有りける

わたつうみの−ふかきこころは−ありなから−うらみられぬる−ものにそありける

異同資料句番号:00983

00984
読人不知 よみ人しらす (000)

かすならぬ身は心たになからなん思ひしらすは怨みさるへく

かすならぬ−みはこころたに−なからなむ−おもひしらすは−うらみさるへく

異同資料句番号:00984

00985
読人不知 よみ人しらす (000)

怨みてののちさへ人のつらからはいかにいひてかねをもなかまし

うらみての−のちさへひとの−つらからは−いかにいひてか−ねをもなかまし

異同資料句番号:00985

00986
番号外作者 閑院大君 (999)

きみを猶怨みつるかなあまのかるもにすむむしの名を忘れつつ

きみをなほ−うらみつるかな−あまのかる−もにすむむしの−なをわすれつつ

異同資料句番号:00986

00987
読人不知 よみ人しらす (000)

あまのかるもにすむむしのなはきけとたた我からのつらきなりけり

あまのかる−もにすむむしの−なはきけと−たたわれからの−つらきなりけり

異同資料句番号:00987

00988
読人不知 よみ人しらす (000)

こひわひぬかなしき事もなくさめんいつれなかすのはまへなるらん

こひわひぬ−かなしきことも−なくさめむ−いつれなかすの−はまへなるらむ

異同資料句番号:00988

00989
読人不知 よみ人しらす (000)

かくはかりうしと思ふにこひしきは我さへ心ふたつ有りけり

かくはかり−うしとおもふに−こひしきは−われさへこころ−ふたつありけり

異同資料句番号:00989

00990
人麿 人まろ (003)

とにかくに物はおもはすひたたくみうつすみなはのたたひとすちに

とにかくに−ものはおもはす−ひたたくみ−うつすみなはの−たたひとすちに

異同資料句番号:00990

00991
村上院 天暦御製 (512)

いにしへをさらにかけしと思へともあやしくめにもみつなみたかな

いにしへを−さらにかけしと−おもへとも−あやしくめにも−みつなみたかな

異同資料句番号:00991

00992
番号外作者 平忠依 (999)

逢ふ事は心にもあらてほとふともさやは契りし忘れはてねと

あふことは−こころにもあらて−ほとふとも−さやはちきりし−わすれはてねと

異同資料句番号:00992

00993
読人不知 よみ人しらす (000)

わするるかいささは我も忘れなん人にしたかふ心とならは

わするるか−いささはわれも−わすれなむ−ひとにしたかふ−こころとならは

異同資料句番号:00993

00994
読人不知 よみ人しらす (000)

わすれぬる君は中中つらからていままていける身をそ怨むる

わすれぬる−きみはなかなか−つらからて−いままていける−みをそうらむる

異同資料句番号:00994

00995
読人不知 よみ人しらす (000)

我はかり我をおもはむ人もかなさてもやうきと世を心みん

われはかり−われをおもはむ−ひともかな−さてもやうきと−よをこころみむ

異同資料句番号:00995

00996
読人不知 よみ人しらす (000)

あやしくも厭ふにはゆる心かないかにしてかは思ひたゆへき

あやしくも−いとふにはゆる−こころかな−いかにしてかは−おもひたゆへき

異同資料句番号:00996

00997
読人不知 よみ人しらす (000)

おもふ事なすこそ神のかたからめしはしわするる心つけなん

おもふこと−なすこそかみの−かたからめ−しはしわするる−こころつけなむ

異同資料句番号:00997

00998
読人不知 よみ人しらす (000)

高砂にわかなくこゑは成りにけり宮この人はききやつくらん

たかさこに−わかなくこゑは−なりにけり−みやこのひとは−ききやつくらむ

異同資料句番号:00998

00999
読人不知 よみ人しらす (000)

かしまなるつくまの神のつくつくとわか身ひとつにこひをつみつる

かしまなる−つくまのかみの−つくつくと−わかみひとつに−こひをつみつる

異同資料句番号:00999


拾遺集 巻十六:雑春

01000
躬恒 凡河内躬恒 (029)

春立つと思ふ心はうれしくて今ひととせのおいそそひける

はるたつと−おもふこころは−うれしくて−いまひととせの−おいそそひける

異同資料句番号:01000

01001
読人不知 よみ人しらす (000)

あたらしき年はくれともいたつらにわか身のみこそふりまさりけれ

あたらしき−としはくれとも−いたつらに−わかみのみこそ−ふりまさりけれ

異同資料句番号:01001

01002
読人不知 よみ人しらす (000)

あたらしきとしにはあれとも鴬のなくねさへにはかはらさりけり

あたらしき−としにはあれとも−うくひすの−なくねさへには−かはらさりけり

異同資料句番号:01002

01003
右近 (038)

年月のゆくへもしらぬ山かつはたきのおとにやはるをしるらん

としつきの−ゆくへもしらぬ−やまかつは−たきのおとにや−はるをしるらむ

異同資料句番号:01003

01004
貫之 紀貫之 (035)

春くれは滝のしらいといかなれやむすへとも猶あわに見ゆらん

はるくれは−たきのしらいと−いかなれや−むすへともなほ−あわにみゆらむ

異同資料句番号:01004

01005
後醍醐院 中務卿具平親王 (623)

あかさりし君かにほひのこひしさに梅の花をそけさは折りつる

あかさりし−きみかにほひの−こひしさに−うめのはなをそ−けさはをりつる

異同資料句番号:01005

01006
道真 贈太政大臣 (024)

こちふかはにほひおこせよ梅の花あるしなしとて春をわするな

こちふかは−にほひおこせよ−うめのはな−あるしなしとて−はるをわするな

異同資料句番号:01006

01007
読人不知 よみ人しらす (000)

梅の花雪よりさきにさきしかと見る人まれに雪のふりつつ

うめのはな−はるよりさきに−さきしかと−みるひとまれに−ゆきのふりつつ

異同資料句番号:01007

01008
番号外作者 安倍広庭 (999)

いにし年ねこしてうゑしわかやとのわか木の梅は花さきにけり

いにしとし−ねこしてうゑし−わかやとの−わかきのうめは−はなさきにけり

異同資料句番号:01008

01009
伊尹 一条摂政 (045)

花の色はあかす見るとも鴬のねくらの枝に手ななふれそも

はなのいろは−あかすみるとも−うくひすの−ねくらのえたに−てななふれそも

異同資料句番号:01009

01010
番号外作者 源寛信朝臣 (999)

折りて見るかひもあるかな梅の花けふここのへのにほひまさりて

をりてみる−かひもあるかな−うめのはな−けふここのへの−にほひまさりて

異同資料句番号:01010

01011
番号外作者 参議伊衡 (999)

かさしてはしらかにまかふ梅の花今はいつれをぬかむとすらん

かさしては−しらかにまかふ−うめのはな−いまはいつれを−ぬかむとすらむ

異同資料句番号:01011

01012
貫之 つらゆき (035)

かそふれとおほつかなきをわかやとの梅こそ春のかすをしるらめ

かそふれと−おほつかなきを−わかやとの−うめこそはるの−かすをしるらめ

異同資料句番号:01012

01013
読人不知 よみ人しらす (000)

年ことにさきはかはれと梅の花あはれなるかはうせすそありける

としことに−さきはかはれと−うめのはな−あはれなるかは−うせすそありける

異同資料句番号:01013

01014
順 源したかふ (130)

梅かえをかりにきてをる人やあるとのへの霞はたちかくすかも

うめかえを−かりにきてをる−ひとやあると−のへのかすみは−たちかくすかも

異同資料句番号:01014

01015
公任 右衛門督公任 (055)

春きてそ人もとひける山さとは花こそやとのあるしなりけれ

はるきてそ−ひともとひける−やまさとは−はなこそやとの−あるしなりけれ

異同資料句番号:01015

01016
安法 安法法師 (185)

おほつかなくらまの山の道しらて霞の中にまとふけふかな

おほつかな−くらまのやまの−みちしらて−かすみのうちに−まとふけふかな

異同資料句番号:01016

01017
貫之 きのつらゆき (035)

思ふ事ありてこそゆけはるかすみ道さまたけにたちなかくしそ

おもふこと−ありてこそゆけ−はるかすみ−みちさまたけに−たちなかくしそ

異同資料句番号:01017

01018
能宣 よしのふ (049)

たこの浦に霞のふかく見ゆるかなもしほのけふりたちやそふらん

たこのうらに−かすみのふかく−みゆるかな−もしほのけふり−たちやそふらむ

異同資料句番号:01018

01019
読人不知 よみ人しらす (000)

思ふ事いはてやみなん春霞山ちもちかしたちもこそきけ

おもふこと−いはてやみなむ−はるかすみ−やまちもちかし−たちもこそきけ

異同資料句番号:01019

01020
馬内侍 中宮内侍 (172)

かすかののをきのやけはらあさるとも見えぬなきなをおほすなるかな

かすかのの−をきのやけはら−あさるとも−みえぬなきなを−おほすなるかな

異同資料句番号:01020

01021
長能 藤原長能 (176)

雪をうすみかきねにつめるからなつななつさはまくのほしききみかな

ゆきをうすみ−かきねにつめる−からなつな−なつさはまくの−ほしききみかな

異同資料句番号:01021

01022
公任 右衛門督公任 (055)

たれにより松をもひかん鴬のはつねかひなきけふにもあるかな

たれにより−まつをもひかむ−うくひすの−はつねかひなき−けふにもあるかな

異同資料句番号:01022

01023
恵慶 恵慶法師 (047)

ひきて見る子の日の松はほとなきをいかてこもれるちよにかあるらん

ひきてみる−ねのひのまつは−ほとなきを−いかてこもれる−ちよにかあるらむ

異同資料句番号:01023

01024
読人不知 よみ人しらす (000)

しめてこそちとせの春はきつつ見め松をてたゆくなにかひくへき

しめてこそ−ちとせのはるは−きつつみめ−まつをてたゆく−なにかひくへき

異同資料句番号:01024

01025
順 したかふ (130)

ひともとの松のちとせもひさしきにいつきの宮そ思ひやらるる

ひともとの−まつのちとせも−ひさしきに−いつきのみやそ−おもひやらるる

異同資料句番号:01025

01026
元輔 清原元輔 (042)

おいの世にかかるみゆきは有りきやとこたかき峯の松にとははや

おいのよに−かかるみゆきは−ありきやと−こたかきみねの−まつにとははや

異同資料句番号:01026

01027
能宣 大中臣能宣 (049)

松ならは引く人けふは有りなまし袖の緑そかひなかりける

まつならは−ひくひとけふは−ありなまし−そてのみとりそ−かひなかりける

異同資料句番号:01027

01028
元輔 もとすけ (042)

引く人もなくてやみぬるみよしのの松は子の日をよそにこそきけ

ひくひとも−なくてやみぬる−みよしのの−まつはねのひを−よそにこそきけ

異同資料句番号:01028

01029
順 したかふ (130)

ひく人もなしと思ひしあつさゆみ今そうれしきもろやしつれは

ひくひとも−なしとおもひし−あつさゆみ−いまそうれしき−もろやしつれは

異同資料句番号:01029

01030
読人不知 よみ人しらす (000)

さきし時猶こそ見しかももの花ちれはをしくそ思ひなりぬる

さきしとき−なほこそみしか−もものはな−ちれはをしくそ−おもひなりぬる

異同資料句番号:01030

01031
嘉言 弓削嘉言 (163)

山さとの家ゐは霞こめたれとかきねの柳すゑはとに見ゆ

やまさとの−いへゐはかすみ−こめたれと−かきねのやなき−すゑはとにみゆ

異同資料句番号:01031

01032
番号外作者 賀朝法師 (999)

はるののにところもとむといふなるはふたりぬはかりみてたりやきみ

はるののに−ところもとむと−いふなるは−ふたりぬはかり−みてたりやきみ

異同資料句番号:01032

01033
読人不知 よみ人しらす (000)

春ののにほるほる見れとなかりけり世に所せき人のためには

はるののに−ほるほるみれと−なかりけり−よにところせき−ひとのためには

異同資料句番号:01033

01034
読人不知 よみ人しらす (000)

かきくらし雪もふらなん桜花またさかぬまはよそへても見む

かきくらし−ゆきもふらなむ−さくらはな−またさかぬまは−よそへてもみむ

異同資料句番号:01034

01035
読人不知 よみ人しらす (000)

はる風は花のなきまにふきはてねさきなは思ひなくて見るへく

はるかせは−はなのなきまに−ふきはてね−さきなはおもひ−なくてみるへく

異同資料句番号:01035

01036
躬恒 みつね (029)

さかさらむ物とはなしにさくら花おもかけにのみまたき見ゆらん

さかさらむ−ものとはなしに−さくらはな−おもかけにのみ−またきみゆらむ

異同資料句番号:01036

01037
読人不知 よみ人しらす (000)

いつこにかこのころ花のさかさらむ所からこそたつねられけれ

いつこにか−このころはなの−さかさらむ−こころからこそ−たつねられけれ

異同資料句番号:01037

01038
躬恒 みつね (029)

さくら花わかやとにのみ有りと見はなき物くさはおもはさらまし

さくらはな−わかやとにのみ−ありとみは−なきものくさは−おもはさらまし

異同資料句番号:01038

01039
読人不知 よみ人しらす (000)

もろともにをりしはるのみこひしくてひとり見まうき花さかりかな

もろともに−をりしはるのみ−こひしくて−ひとりみまうき−はなさかりかな

異同資料句番号:01039

01040
忠見 壬生忠見 (041)

もろともに我しをらねは桜花思ひやりてやはるをくらさん

もろともに−われしをらねは−さくらはな−おもひやりてや−はるをくらさむ

異同資料句番号:01040

01041
番号外作者 御導師浄蔵 (999)

霞立つ山のあなたの桜花思ひやりてやはるをくらさむ

かすみたつ−やまのあなたの−さくらはな−おもひやりてや−はるをくらさむ

異同資料句番号:01041

01042
貫之 つらゆき (035)

をち方の花も見るへく白浪のともにや我もたちわたらまし

をちかたの−はなもみるへく−しらなみの−ともにやわれも−たちわたらまし

異同資料句番号:01042

01043
遍昭 僧正遍昭 (012)

まてといははいともかしこし花山にしはしとなかん鳥のねもかな

まてといはは−いともかしこし−はなやまに−しはしとなかむ−とりのねもかな

異同資料句番号:01043

01044
忠房 藤原忠房朝臣 (182)

鴬のなきつるなへにかすかののけふのみゆきを花とこそ見れ

うくひすの−なきつるなへに−かすかのの−けふのみゆきを−はなとこそみれ

異同資料句番号:01044

01045
忠房 藤原忠房朝臣 (182)

ふるさとにさくとわひつるさくら花ことしそ君に見えぬへらなる

ふるさとに−さくとわひつる−さくらはな−ことしそきみに−みえぬへらなる

異同資料句番号:01045

01046
忠房 藤原忠房朝臣 (182)

春霞かすかののへに立ちわたりみちても見ゆるみやこ人かな

はるかすみ−かすかののへに−たちわたり−みちてもみゆる−みやこひとかな

異同資料句番号:01046

01047
兼盛 かねもり (040)

世の中にうれしき物は思ふとち花見てすくす心なりけり

よのなかに−うれしきものは−おもふとち−はなみてすくす−こころなりけり

異同資料句番号:01047

01048
元輔 もとすけ (042)

さくら花そこなるかけそをしまるるしつめる人のはるとおもへは

さくらはな−そこなるかけそ−をしまるる−しつめるひとの−はるとおもへは

異同資料句番号:01048

01049
長能 藤原長能 (176)

あつまちののちの雪まをわけてきてあはれ宮この花を見るかな

あつまちの−のちのゆきまを−わけてきて−あはれみやこの−はなをみるかな

異同資料句番号:01049

01050
番号外作者 兼盛弟 (999)

ひのもとにさけるさくらの色見れは人のくににもあらしとそ思ふ

ひのもとに−さけるさくらの−はなみれは−ひとのくににも−あらしとそおもふ

異同資料句番号:01050

01051
番号外作者 平きむさね (999)

み山木のふたはみつはにもゆるまてきえせぬ雪と見えもするかな

みやまきの−ふたはみつはに−もゆるまて−きえせぬゆきと−みえもするかな

異同資料句番号:01051

01052
長能 藤原長能 (176)

かた山にはたやくをのこかの見ゆるみ山さくらはよきてはたやけ

かたやまに−はたやくをのこ−かのみゆる−みやまさくらは−よきてはたやけ

異同資料句番号:01052

01053
読人不知 よみ人しらす (000)

うしろめたいかてかへらん山さくらあかぬにほひを風にまかせて

うしろめた−いかてかへらむ−やまさくら−あかぬにほひを−かせにまかせて

異同資料句番号:01053

01054
貫之 つらゆき (035)

ひさしかれあたにちるなとさくら花かめにさせれとうつろひにけり

ひさしかれ−あたにちるなと−さくらはな−かめにさせれと−うつろひにけり

異同資料句番号:01054

01055
公忠 源公忠朝臣 (117)

とのもりのとものみやつこ心あらはこの巻はかりあさきよめすな

とのもりの−とものみやつこ−こころあらは−このはるはかり−あさきよめすな

異同資料句番号:01055

01056
読人不知 よみ人しらす (000)

さくら花みかさの山のかけしあれは雪とふれともぬれしとそ思ふ

さくらはな−みかさのやまの−かけしあれは−ゆきとふれとも−ぬれしとそおもふ

異同資料句番号:01056

01057
読人不知 よみ人しらす (000)

年ことに春のなかめはせしかとも身さへふるともおもはさりしを

としことに−はるのなかめは−せしかとも−みさへふるとも−おもはさりしを

異同資料句番号:01057

01058
順 したかふ (130)

としことに春はくれとも池水におふるぬなははたえすそ有りける

としことに−はるはくれとも−いけみつに−おふるぬなはは−たえすそありける

異同資料句番号:01058

01059
輔昭 菅原輔昭 (183)

春風はのとけかるへしやへよりもかさねてにほへ山吹の花

はるかせは−のとけかるへし−やへよりも−かさねてにほへ−やまふきのはな

異同資料句番号:01059

01060
輔昭 菅原輔昭 (183)

浦人はかすみをあみにむすへはや浪の花をもとめてひくらん

うらひとは−かすみをあみに−むすへはや−なみのはなをも−とめてひくらむ

異同資料句番号:01060

01061
貫之 つらゆき (035)

やな見れは河風いたくふく時そ浪の花さへおちまさりける

やなみれは−かはかせいたく−ふくときそ−なみのはなさへ−おちまさりける

異同資料句番号:01061

01062
番号外作者 一条のきみ (999)

このまよりちりくる花をあつさゆみえやはととめぬはるのかたみに

このまより−ちりくるはなを−あつさゆみ−えやはととめぬ−はるのかたみに

異同資料句番号:01062

01063
高光 如覚法師 (116)

春すきてちりはてにける梅の花たたかはかりそ枝にのこれる

はるすきて−ちりはてにける−うめのはな−たたかはかりそ−えたにのこれる

異同資料句番号:01063

01064
道長 左大臣 (524)

谷の戸をとちやはてつる鴬のまつにおとせてはるもすきぬる

たにのとを−とちやはてつる−うくひすの−まつにおとせて−はるもすきぬる

異同資料句番号:01064

01065
公任 公任朝臣 (055)

ゆきかへる春をもしらす花さかぬみ山かくれのうくひすのこゑ

ゆきかへる−はるをもしらす−はなさかぬ−みやまかくれの−うくひすのこゑ

異同資料句番号:01065

01066
元輔 もとすけ (042)

春はをし郭公はたきかまほし思ひわつらふしつ心かな

はるはをし−ほとときすはた−きかまほし−おもひわつらふ−しつこころかな

異同資料句番号:01066

01067
貫之 つらゆき (035)

松風のふかむ限はうちはへてたゆへくもあらすさけるふちなみ

まつかせの−ふかむかきりは−うちはへて−たゆへくもあらす−さけるふちなみ

異同資料句番号:01067

01068
番号外作者 皇太后宮権大夫国章 (999)

ふちの花宮の内には紫のくもかとのみそあやまたれける

ふちのはな−みやのうちには−むらさきの−くもかとのみそ−あやまたれける

異同資料句番号:01068

01069
公任 右衛門督公任 (055)

紫の雲とそ見ゆる藤の花いかなるやとのしるしなるらん

むらさきの−くもとそみゆる−ふちのはな−いかなるやとの−しるしなるらむ

異同資料句番号:01069

01070
読人不知 読人しらす (000)

むらさきの色しこけれはふちの花松のみとりもうつろひにけり

むらさきの−いろしこけれは−ふちのはな−まつのみとりも−うつろひにけり

異同資料句番号:01070

01071
人麿 人まろ (003)

郭公かよふかきねの卯の花のうきことあれや君かきまさぬ

ほとときす−かよふかきねの−うのはなの−うきことあれや−きみかきまさぬ

異同資料句番号:01071

01072
重之 (048)

卯の花のさけるかきねにやとりせしねぬにあけぬとおとろかれけり

うのはなの−さけるかきねに−やとりせし−ねぬにあけぬと−おとろかれけり

異同資料句番号:01072

01073
実方 実方朝臣 (051)

年をへてみ山かくれの郭公きく人もなきねをのみそなく

としをへて−みやまかくれの−ほとときす−きくひともなき−ねをのみそなく

異同資料句番号:01073

01074
読人不知 よみ人しらす (000)

声たててなくといふとも郭公たもとはぬれしそらねなりけり

こゑたてて−なくといふとも−ほとときす−たもとはぬれし−そらねなりけり

異同資料句番号:01074

01075
元輔 もとすけ (042)

かくはかりまつとしらはや郭公こすゑたかくもなきわたるかな

かくはかり−まつとしらはや−ほとときす−こすゑたかくも−なきわたるかな

異同資料句番号:01075

01076
輔親 大中臣輔親 (170)

あしひきの山郭公さとなれてたそかれ時になのりすらしも

あしひきの−やまほとときす−さとなれて−たそかれときに−なのりすらしも

異同資料句番号:01076

01077
番号外作者 大伴像見 (999)

ふるさとのならしのをかに郭公事つてやりきいかにつけきや

ふるさとの−ならしのをかに−ほとときす−ことつてやりき−いかにつけきや

異同資料句番号:01077

01078
番号外作者 健守法師 (999)

終夜もゆるほたるをけさ見れは草のはことにつゆそおきける

よもすから−もゆるほたるを−けさみれは−くさのはことに−つゆそおきける

異同資料句番号:01078

01079
貫之 つらゆき (035)

とこ夏の花をし見れはうちはへてすくる月日のかすもしられす

とこなつの−はなをしみれは−うちはへて−すくるつきひの−かすもしられす

異同資料句番号:01079

01080
番号外作者 贈皇后宮 (999)

しはしたにかけにかくれぬ時は猶うなたれぬへきなてしこの花

しはしたに−かけにかくれぬ−ときはなほ−うなたれぬへき−なてしこのはな

異同資料句番号:01080

01081
躬恒 (029)

いたつらにおいぬへらなりおほあらきのもりのしたなる草葉ならねと

いたつらに−おいぬへらなり−おほあらきの−もりのしたなる−くさはならねと

異同資料句番号:01081


拾遺集 巻十七:雑秋

01082
順 源したかふ (130)

たなはたはそらにしるらんささかにのいとかくはかりまつる心を

たなはたは−そらにしるらむ−ささかにの−いとかくはかり−まつるこころを

異同資料句番号:01082

01083
兼盛 平兼盛 (040)

たなはたのあかぬ別もゆゆしきをけふしもなとか君かきませる

たなはたの−あかぬわかれも−ゆゆしきを−けふしもなとか−きみかきませる

異同資料句番号:01083

01084
貫之 つらゆき (035)

あさとあけてなかめやすらん織女のあかぬ別のそらをこひつつ

あさとあけて−なかめやすらむ−たなはたの−あかぬわかれの−そらをこひつつ

異同資料句番号:01084

01085
人麿 人まろ (003)

わたしもりはや舟かくせひととせにふたたひきます君ならなくに

わたしもり−はやふねかくせ−ひととせに−ふたたひきます−きみならなくに

異同資料句番号:01085

01086
村上院 天暦御製 (512)

織女のうらやましきに天の河こよひはかりはおりやたたまし

たなはたの−うらやましきに−あまのかは−こよひはかりは−おりやたたまし

異同資料句番号:01086

01087
読人不知 よみ人しらす (000)

世をうみてわかかすいとはたなはたの涙の玉のをとやなるらん

よをうみて−わかかすいとは−たなはたの−なみたのたまの−をとやなるらむ

異同資料句番号:01087

01088
中務 (136)

あまの河河辺すすしきたなはたに扇の風を猶やかさまし

あまのかは−かはへすすしき−たなはたに−あふきのかせを−なほやかさまし

異同資料句番号:01088

01089
元輔 中務 (042)

天の河扇の風にきりはれてそらすみわたる鵲のはし

あまのかは−あふきのかせに−きりはれて−そらすみわたる−かささきのはし

異同資料句番号:01089

01090
順 源したかふ (130)

ことのねはなそやかひなきたなはたのあかぬ別をひきしとめねは

ことのねは−なそやかひなき−たなはたの−あかぬわかれを−ひきしとめねは

異同資料句番号:01090

01091
貞文 平定文 (161)

水のあやをおりたちてきむぬきちらしたなはたつめに衣かすよは

みつのあやを−おりたちてきむ−ぬきちらし−たなはたつめに−ころもかすよは

異同資料句番号:01091

01092
義孝 藤原義孝 (050)

秋風よたなはたつめに事とはんいかなる世にかあはんとすらん

あきかせよ−たなはたつめに−こととはむ−いかなるよにか−あはむとすらむ

異同資料句番号:01092

01093
公任 右衛門督公任 (055)

天の河のちのけふたにはるけきをいつともしらぬふなてかなしな

あまのかは−のちのけふたに−はるけきを−いつともしらぬ−ふなてかなしな

異同資料句番号:01093

01094
貫之 つらゆき (035)

あひ見すてひとひも君にならはねはたなはたよりも我そまされる

あひみすて−ひとひもきみに−ならはねは−たなはたよりも−われそまされる

異同資料句番号:01094

01095
読人不知 よみ人しらす (000)

むつましきいもせの山としらねはやはつ秋きりの立ちへたつらん

むつましき−いもせのやまと−しらねはや−はつあききりの−たちへたつらむ

異同資料句番号:01095

01096
読人不知 よみ人しらす (000)

もしほやく煙になるるすまのあまは秋立つ霧もわかすやあるらん

もしほやく−けふりになるる−すまのあまは−あきたつきりも−わかすやあるらむ

異同資料句番号:01096

01097
重之 源重之 (048)

ゆく水の岸ににほへる女郎花しのひに浪や思ひかくらん

ゆくみつの−きしににほへる−をみなへし−しのひになみや−おもひかくらむ

異同資料句番号:01097

01098
遍昭 僧正遍昭 (012)

ここにしも何にほふらんをみなへし人の物いひさかにくきよに

ここにしも−なににほふらむ−をみなへし−ひとのものいひ−さかにくきよに

異同資料句番号:01098

01099
読人不知 よみ人しらす (000)

秋の野の花の色色とりすゑてわか衣手にうつしてしかな

あきののの−はなのいろいろ−とりすゑて−わかころもてに−うつしてしかな

異同資料句番号:01099

01100
読人不知 よみ人しらす (000)

ふなをかのの中にたてるをみなへしわたさぬ人はあらしとそ思ふ

ふなをかの−のなかにたてる−をみなへし−わたさぬひとは−あらしとそおもふ

異同資料句番号:01100

01101
兼盛 平兼盛 (040)

家つとにあまたの花もをるへきにねたくもたかをすゑてけるかな

いへつとに−あまたのはなも−をるへきに−ねたくもたかを−すゑてけるかな

異同資料句番号:01101

01102
貫之 つらゆき (035)

をくら山みね立ちならしなくしかのへにける秋をしる人のなき

をくらやま−みねたちならし−なくしかの−へにけるあきを−しるひとそなき

異同資料句番号:01102

01103
貫之 つらゆき (035)

こてふにもにたる物かな花すすきこひしき人に見すへかりけり

こてふにも−にたるものかな−はなすすき−こひしきひとに−みすへかりけり

異同資料句番号:01103

01104
能宣 よしのふ (049)

帰りにし雁そなくなるむへ人はうき世の中をそむきかぬらん

かへりにし−かりそなくなる−うへひとは−うきよのなかを−そむきかぬらむ

異同資料句番号:01104

01105
番号外作者 善滋為政 (999)

九重の内たにあかき月影にあれたるやとを思ひこそやれ

ここのへの−うちたにあかき−つきかけに−あれたるやとを−おもひこそやれ

異同資料句番号:01105

01106
読人不知 よみ人しらす (000)

ももしきの大宮なからやそしまを見る心地する秋のよの月

ももしきの−おほみやなから−やそしまを−みるここちする−あきのよのつき

異同資料句番号:01106

01107
順 したかふ (130)

水のおもにやとれる月ののとけきはなみゐて人のねぬよなれはか

みつのおもに−やとれるつきの−のとけきは−なみゐてひとの−ねぬよなれはか

異同資料句番号:01107

01108
元輔 もとすけ (042)

はしり井のほとをしらはや相坂の関ひきこゆるゆふかけのこま

はしりゐの−ほとをしらはや−あふさかの−せきひきこゆる−ゆふかけのこま

異同資料句番号:01108

01109
好忠 曾禰好忠 (046)

虫ならぬ人もおとせぬわかやとに秋ののへとて君はきにけり

むしならぬ−ひともおとせぬ−わかやとに−あきののへとて−きみはきにけり

異同資料句番号:01109

01110
人麿 人まろ (003)

庭草にむらさめふりてひくらしのなくこゑきけは秋はきにけり

にはくさに−むらさめふりて−ひくらしの−なくこゑきけは−あきはきにけり

異同資料句番号:01110

01111
好忠 よしたた (046)

秋風は吹きなやふりそわかやとのあはらかくせるくものすかきを

あきかせは−ふきなやふりそ−わかやとの−あはらかくせる−くものすかきを

異同資料句番号:01111

01112
躬恒 みつね (029)

住の江の松を秋風ふくからに声うちそふるおきつしら浪

すみのえの−まつをあきかせ−ふくからに−こゑうちそふる−おきつしらなみ

異同資料句番号:01112

01113
人麿 人まろ (003)

秋風のさむくふくなるわかやとのあさちかもとにひくらしもなく

あきかせの−さむくふくなる−わかやとの−あさちかもとに−ひくらしもなく

異同資料句番号:01113

01114
人麿 人まろ (003)

あき風し日ことにふけはわかやとのをかのこのはは色つきにけり

あきかせし−ひことにふけは−わかやとの−をかのこのはは−いろつきにけり

異同資料句番号:01114

01115
人麿 人まろ (003)

秋きりのたなひくをのの萩の花今やちるらんいまたあかなくに

あききりの−たなひくをのの−はきのはな−いまやちるらむ−いまたあかなくに

異同資料句番号:01115

01116
読人不知 女 (000)

秋はきのしたはにつけてめにちかくよそなる人の心をそみる

あきはきの−したはにつけて−めにちかく−よそなるひとの−こころをそみる

異同資料句番号:01116

01117
貫之 つらゆき (035)

世の中の人に心をそめしかは草葉にいろも見えしとそ思ふ

よのなかの−ひとにこころを−そめしかは−くさはにいろも−みえしとそおもふ

異同資料句番号:01117

01118
人麿 人まろ (003)

このころのあか月つゆにわかやとの萩のしたはは色つきにけり

このころの−あかつきつゆに−わかやとの−はきのしたはは−いろつきにけり

異同資料句番号:01118

01119
人麿 人まろ (003)

夜をさむみ衣かりかねなくなへにはきのしたはは色つきにけり

よをさむみ−ころもかりかね−なくなへに−はきのしたはは−いろつきにけり

異同資料句番号:01119

01120
読人不知 よみ人しらす (000)

かの見ゆる池辺にたてるそかきくのしけみさえたの色のてこらさ

かのみゆる−いけへにたてる−そかきくの−しけみさえたの−いろのてこらさ

異同資料句番号:01120

01121
忠見 (041)

吹く風にちる物ならは菊の花くもゐなりとも色は見てまし

ふくかせに−ちるものならは−きくのはな−くもゐなりとも−いろはみてまし

異同資料句番号:01121

01122
読人不知 よみ人しらす (000)

おいか世にうき事きかぬ菊たにもうつろふ色は有りけりと見よ

おいかよに−うきこときかぬ−きくたにも−うつろふいろは−ありけりとみよ

異同資料句番号:01122

01123
人麿 人まろ (003)

わきもこかあかもぬらしてうゑし田をかりてをさめむくらなしのはま

わきもこか−あかもぬらして−うゑしたを−かりてをさめむ−くらなしのはま

異同資料句番号:01123

01124
忠見 (041)

秋ことにかりつるいねはつみつれと老いにける身そおき所なき

あきことに−かりつるいねは−つみつれと−おいにけるみそ−おきところなき

異同資料句番号:01124

01125
躬恒 みつね (029)

かりてほす山田の稲をほしわひてまもるかりいほにいくよへぬらん

かりてほす−やまたのいねを−ほしわひて−まもるかりいほに−いくよへぬらむ

異同資料句番号:01125

01126
恵慶 恵慶法師 (047)

おく山にたてらましかはなきさこくふな木も今は紅葉しなまし

おくやまに−たてらましかは−なきさこく−ふなきもいまは−もみちしなまし

異同資料句番号:01126

01127
読人不知 よみ人しらす (000)

久方の月をさやけみもみちはのこさもうすさもわきつへらなり

ひさかたの−つきをさやけみ−もみちはの−こさもうすさも−わきつへらなり

異同資料句番号:01127

01128
忠平 小一条太政大臣 (026)

小倉山峯のもみちは心あらは今ひとたひのみゆきまたなん

をくらやま−みねのもみちは−こころあらは−いまひとたひの−みゆきまたなむ

異同資料句番号:01128

01129
能宣 大中臣能宣 (049)

ふるさとにかへると見てやたつたひめ紅葉の錦そらにきすらん

ふるさとに−かへるとみてや−たつたひめ−もみちのにしき−そらにきすらむ

異同資料句番号:01129

01130
読人不知 よみ人しらす (000)

白浪はふるさとなれやもみちはのにしきをきつつ立帰るらん

しらなみは−ふるさとなれや−もみちはの−にしきをきつつ−たちかへるらむ

異同資料句番号:01130

01131
躬恒 みつね (029)

もみちはのなかるる時はたけ河のふちのみとりも色かはるらむ

もみちはの−なかるるときは−たけかはの−ふちのみとりも−いろかはるらむ

異同資料句番号:01131

01132
躬恒 みつね (029)

水のおもの深く浅くも見ゆるかな紅葉の色やふちせなるらん

みつのおもの−ふかくあさくも−みゆるかな−もみちのいろや−ふちせなるらむ

異同資料句番号:01132

01133
元輔 清原元輔 (042)

月影のたなかみ河にきよけれは綱代にひをのよるも見えけり

つきかけの−たなかみかはに−きよけれは−あしろにひをの−よるもみえけり

異同資料句番号:01133

01134
番号外作者 修理 (999)

いかて猶あしろのひをに事とはむなにによりてか我をとはぬと

いかてなほ−あしろのひをに−こととはむ−なにによりてか−われをとはぬと

異同資料句番号:01134

01135
読人不知 よみ人しらす (000)

はふりこかいはふ社のもみちはもしめをはこえてちるといふものを

はふりこか−いはふやしろの−もみちはも−しめをはこえて−ちるといふものを

異同資料句番号:01135

01136
順 源したかふ (130)

いかなれはもみちにもまたあかなくに秋はてぬとはけふをいふらん

いかなれは−もみちにもまた−あかなくに−あきはてぬとは−けふをいふらむ

異同資料句番号:01136

01137
元輔 清原元輔 (042)

秋もまたとほくもあらぬにいかて猶たちかへれともつけにやらまし

あきもまた−とほくもあらぬに−いかてなほ−たちかへれとも−つけにやらまし

異同資料句番号:01137

01138
能宣 よしのふ (049)

そま山にたつけふりこそ神な月時雨をくたすくもとなりけれ

そまやまに−たつけふりこそ−かみなつき−しくれをくたす−くもとなりけれ

異同資料句番号:01138

01139
順 源したかふ (130)

名をきけは昔なからの山なれとしくるるころは色かはりけり

なをきけは−むかしなからの−やまなれと−しくるるころは−いろかはりけり

異同資料句番号:01139

01140
躬恒 みつね (029)

もみちはやたもとなるらん神な月しくるることに色のまされは

もみちはや−たもとなるらむ−かみなつき−しくるることに−いろのまされは

異同資料句番号:01140

01141
中務 (136)

しくれつつふりにしやとの言の葉はかきあつむれととまらさりけり

しくれつつ−ふりにしやとの−ことのはは−かきあつむれと−とまらさりけり

異同資料句番号:01141

01142
村上院 天暦御製 (512)

昔より名たかきやとの事のははこの本にこそおちつもるてへ

むかしより−なたかきやとの−ことのはは−このもとにこそ−おちつもるてへ

異同資料句番号:01142

01143
番号外作者 権中納言義懐のむすめ (999)

山かつのかきほわたりをいかにそとしもかれかれにとふ人もなし

やまかつの−かきほわたりを−いかにそと−しもかれかれに−とふひともなし

異同資料句番号:01143

01144
好忠 曾禰好忠 (046)

み山木をあさなゆふなにこりつめてさむさをこふるをののすみやき

みやまきを−あさなゆふなに−こりつめて−さむさをこふる−をののすみやき

異同資料句番号:01144

01145
好忠 曾禰好忠 (046)

にほとりの氷の関にとちられて玉ものやとをかれやしぬらん

にほとりの−こほりのせきに−とちられて−たまものやとを−かれやしぬらむ

異同資料句番号:01145

01146
元輔 もとすけ (042)

いさかくてをりあかしてん冬の月春の花にもおとらさりけり

いさかくて−をりあかしてむ−ふゆのつき−はるのはなにも−おとらさりけり

異同資料句番号:01146

01147
 東宮女蔵人左近 (131)

限なくとくとはすれと葦引の山井の水は猶そこほれる

かきりなく−とくとはすれと−あしひきの−やまゐのみつは−なほそこほれる

異同資料句番号:01147

01148
能宣 よしのふ (049)

ありあけの心地こそすれ杯に日かけもそひていてぬとおもへは

ありあけの−ここちこそすれ−さかつきに−ひかけもそひて−いてぬとおもへは

異同資料句番号:01148

01149
貫之 つらゆき (035)

あしひきの山ゐにすれる衣をは神につかふるしるしとそ思ふ

あしひきの−やまゐにすれる−ころもをは−かみにつかふる−しるしとそおもふ

異同資料句番号:01149

01150
読人不知 よみ人しらす (000)

ちはやふる神のいかきに事ふりてそらよりかかるゆふにそありける

ちはやふる−かみのいかきに−ゆきふりて−そらよりかかる−ゆふにそありける

異同資料句番号:01150

01151
貫之 つらゆき (035)

ひとりねはくるしき物とこりよとや旅なる夜しも雪のふるらん

ひとりねは−くるしきものと−こりよとや−たひなるよしも−ゆきのふるらむ

異同資料句番号:01151

01152
後醍醐院 中務のみこ (623)

わたつみもゆきけの水はまさりけりをちのしましま見えすなりゆく

わたつみも−ゆきけのみつは−まさりけり−をちのしましま−みえすなりゆく

異同資料句番号:01152

01153
後醍醐院 中務のみこ (623)

もとゆひにふりそふ雪のしつくには枕のしたに浪そたちける

もとゆひに−ふりそふゆきの−しつくには−まくらのしたに−なみそたちける

異同資料句番号:01153

01154
番号外作者 藤原通頼 (999)

さわらひやしたにもゆらんしもかれののはらの煙春めきにけり

さわらひや−したにもゆらむ−しもかれの−のはらのけふり−はるめきにけり

異同資料句番号:01154

01155
貫之 つらゆき (035)

霜かれに見えこし梅はさきにけり春にはわか身あはむとはすや

しもかれに−みえこしうめは−さきにけり−はるにはわかみ−あはむとはすや

異同資料句番号:01155

01156
番号外作者 三統元夏 (999)

梅の花匂の深く見えつるは春の隣のちかきなりけり

うめのはな−にほひのふかく−みえつるは−はるのとなりの−ちかきなりけり

異同資料句番号:01156

01157
貫之 つらゆき (035)

むめもみな春ちかしとてさくものをまつ時もなき我やなになる

うめもみな−はるちかしとて−さくものを−まつときもなき−われやなになる

異同資料句番号:01157

01158
貫之 つらゆき (035)

むはたまのわかくろかみに年くれてかかみのかけにふれるしらゆき

うはたまの−わかくろかみに−としくれて−かかみのかけに−ふれるしらゆき

異同資料句番号:01158


拾遺集 巻十八:雑賀

01159
貫之 紀貫之 (035)

昨日よりをちをはしらすももとせの春の始はけふにそ有りける

きのふより−をちをはしらす−ももとせの−はるのはしめは−けふにそありける

異同資料句番号:01159

01160
伊勢 (019)

はるはると雲井をさして行く舟の行末とほくおもほゆるかな

はるはると−くもゐをさして−ゆくふねの−ゆくすゑとほく−おもほゆるかな

異同資料句番号:01160

01161
元輔 もとすけ (042)

花の色もときはならなんなよ竹のなかきよにおくつゆしかからは

はなのいろも−ときはならなむ−なよたけの−なかきよにおく−つゆしかからは

異同資料句番号:01161

01162
元輔 もとすけ (042)

よろつ世をかそへむ物はきのくにのちひろのはまのまさこなりけり

よろつよを−かそへむものは−きのくにの−ちひろのはまの−まさこなりけり

異同資料句番号:01162

01163
読人不知 よみ人しらす (000)

こけむさはひろひもかへむさされいしのかすをみなとるよはひいくよそ

こけむさは−ひろひもかへむ−さされいしの−かすをみなとる−よはひいくよそ

異同資料句番号:01163

01164
貫之 (035)

松のねにいつる泉の水なれはおなしき物をたえしとそ思ふ

まつのねに−いつるいつみの−みつなれは−おなしきものを−たえしとそおもふ

異同資料句番号:01164

01165
道長 左大臣 (524)

いはのうへの松にたとへむきみきみは世にまれらなるたねそとおもへは

いはのうへの−まつにたとへむ−きみきみは−よにまれらなる−たねそとおもへは

異同資料句番号:01165

01166
元輔 もとすけ (042)

松かえのかよへる枝をとくらにてすたてらるへきつるのひなかな

まつかえの−かよへるえたを−とくらにて−すたてらるへき−つるのひなかな

異同資料句番号:01166

01167
元輔 もとすけ (042)

まつの苔ちとせをかねておひしけれつるのかひこのすとも見るへく

まつのこけ−ちとせをかねて−おひしけれ−つるのかひこの−すともみるへく

異同資料句番号:01167

01168
読人不知 よみ人しらす (000)

我のみやこもたるてへは高砂のをのへにたてる松もこもたり

われのみや−こもたるてへは−たかさこの−をのへにたてる−まつもこもたり

異同資料句番号:01168

01169
貫之 つらゆき (035)

いく世へしいそへの松そ昔よりたちよる浪やかすはしるらん

いくよへし−いそへのまつそ−むかしより−たちよるなみや−かすはしるらむ

異同資料句番号:01169

01170
元輔 もとすけ (042)

こ紫たなひく事をしるへにて位の山の峯をたつねん

こむらさき−たなひくくもを−しるへにて−くらゐのやまの−みねをたつねむ

異同資料句番号:01170

01171
番号外作者 参議好古 (999)

ももしきにちとせの事はおほかれとけふの君はためつらしきかな

ももしきに−ちとせのことは−おほかれと−けふのきみはた−めつらしきかな

異同資料句番号:01171

01172
道綱母 春宮大夫道綱母 (053)

心さしふかきみきはにかるこもはちとせのさ月いつかわすれん

こころさし−ふかきみきはに−かるこもは−ちとせのさつき−いつかわすれむ

異同資料句番号:01172

01173
元輔 清原元輔 (042)

ちとせへん君しいまさはすへらきのあめのしたこそうしろやすけれ

ちとせへむ−きみしいまさは−すめらきの−あめのしたこそ−うしろやすけれ

異同資料句番号:01173

01174
公任 右衛門督公任 (055)

きみか世に今いくたひかかくしつつうれしき事にあはんとすらん

きみかよに−いまいくたひか−かくしつつ−うれしきことに−あはむとすらむ

異同資料句番号:01174

01175
公任 右衛門督公任 (055)

すみそむるすゑの心の見ゆるかなみきはの松のかけをうつせは

すみそむる−すゑのこころの−みゆるかな−みきはのまつの−かけをうつせは

異同資料句番号:01175

01176
敦忠 権中納言敦忠 (043)

ちとせふる霜のつるをはおきなからひさしき物は君にそありける

ちとせふる−しものつるをは−おきなから−ひさしきものは−きみにそありける

異同資料句番号:01176

01177
貫之 つらゆき (035)

しらゆきはふりかくせともちよまてに竹のみとりはかはらさりけり

しらゆきは−ふりかくせとも−ちよまてに−たけのみとりは−かはらさりけり

異同資料句番号:01177

01178
元輔 もとすけ (042)

世の中にことなる事はあらすともとみはたしてむいのちなかくは

よのなかに−ことなることは−あらすとも−とみはたしてむ−いのちなかくは

異同資料句番号:01178

01179
番号外作者 右大将実資/むねかたの朝臣 (999)

流俗のいろにはあらす梅の花/珍重すへき物とこそ見れ

りうそくの−いろにはあらす−うめのはな/ちむちようすへき−ものとこそみれ

異同資料句番号:01179

01180
元輔 もとすけ (042)

春はもえ秋はこかるるかまと山/かすみもきりもけふりとそ見る

はるはもえ−あきはこかるる−かまとやま/かすみもきりも−けふりとそみる

異同資料句番号:01180

01181
番号外作者 藤原忠君朝臣/むすめ (999)

思ひたちぬるけふにもあるかな/かからてもありにしものをはるかすみ

おもひたちぬる−けふにもあるかな/かからても−ありにしものを−はるかすみ

異同資料句番号:01181

01182
村上院 ひろはたのみやす所/内 (512)

くらすへしやはいままてにきみ/とふやとそ我もまちつるはるの日を

くらすへしやは−いままてにきみ/とふやとそ−われもまちつる−はるのひを

異同資料句番号:01182

01183
番号外作者 天暦御製/しけののないし (999)

さ夜ふけて今はねふたくなりにけり/夢にあふへき人やまつらん

さよふけて−いまはねふたく−なりにけり/ゆめにあふへき−ひとやまつらむ

異同資料句番号:01183

01184
遍昭 女/良岑宗貞 (012)

人心うしみついまはたのましよ/夢に見ゆやとねそすきにける

ひとこころ−うしみついまは−たのましよ/ゆめにみゆやと−ねそすきにける

異同資料句番号:01184

01185
貞文 平定文 (161)

ひきよせはたたにはよらて春こまの綱引するそなはたつときく

ひきよせは−たたにはよらて−はるこまの−つなひきするそ−なはたつときく

異同資料句番号:01185

01186
読人不知 よみ人しらす (000)

花の木はまかきちかくはうゑて見しうつろふ色に人ならひけり

はなのきは−まかきちかくは−うゑてみし−うつろふいろに−ひとならひけり

異同資料句番号:01186

01187
読人不知 よみ人しらす (000)

夏は扇冬は火をけに身をなしてつれなき人によりもつかはや

なつはあふき−ふゆはひをけに−みをなして−つれなきひとに−よりもつかはや

異同資料句番号:01187

01188
読人不知 よみ人しらす (000)

こひするに仏になるといはませは我そ浄土のあるしならまし

こひするに−ほとけになると−いはませは−われそしやうとの−あるしならまし

異同資料句番号:01188

01189
読人不知 よみ人しらす (000)

唐衣たつよりおつる水ならてわか袖ぬらす物やなになる

からころも−たつよりおつる−みつならて−わかそてぬらす−ものやなになる

異同資料句番号:01189

01190
義孝 藤原義孝 (050)

つらからは人にかたらむしきたへの枕かはしてひとよねにきと

つらからは−ひとにかたらむ−しきたへの−まくらかはして−ひとよねにきと

異同資料句番号:01190

01191
義孝 藤原義孝 (050)

あやしくもわかぬれきぬをきたるかなみかさの山を人にかられて

あやしくも−われぬれきぬを−きたるかな−みかさのやまを−ひとにかられて

異同資料句番号:01191

01192
番号外作者 平公誠 (999)

かくれみのかくれかさをもえてしかなきたりと人にしられさるへく

かくれみの−かくれかさをも−えてしかな−きたりとひとに−しられさるへく

異同資料句番号:01192

01193
読人不知 よみ人しらす (000)

心ありてとふにはあらす世の中にありやなしやのきかまほしきそ

こころありて−とふにはあらす−よのなかに−ありやなしやの−きかまほしきそ

異同資料句番号:01193

01194
読人不知 よみ人しらす (000)

きみとはていくよへぬらん色かへぬ竹のふるねのおひかはるまて

きみとはて−いくよへぬらむ−いろかへぬ−たけのふるねの−おひかはるまて

異同資料句番号:01194

01195
貫之 紀貫之 (035)

こぬ人をしたにまちつつ久方の月をあはれといはぬよそなき

こぬひとを−したにまちつつ−ひさかたの−つきをあはれと−いはぬよそなき

異同資料句番号:01195

01196
人麿 柿本人麿 (003)

あつさゆみひきみひかすみこすはこすこはこそをなそよそにこそ見め

あつさゆみ−ひきみひかすみ−こすはこす−こはこそをなそ−よそにこそみめ

異同資料句番号:01196

01197
伊尹 一条摂政 (045)

くれはとく行きてかたらむあふ時のとをちのさとのすみうかりしも

くれはとく−ゆきてかたらむ−あふことの−とをちのさとの−すみうかりしも

異同資料句番号:01197

01198
読人不知 よみ人しらす (000)

おろかにもおもはましかはあつまちのふせやといひしのへにねなまし

おろかにも−おもはましかは−あつまちの−ふせやといひし−のへにねなまし

異同資料句番号:01198

01199
読人不知 よみ人しらす (000)

あともなきかつら木山をふみみれはわかわたしこしかたはしかもし

あともなき−かつらきやまを−ふみみれは−わかわたしこし−かたはしかもし

異同資料句番号:01199

01200
読人不知 よみ人しらす (000)

かきつくる心見えなるあとなれと見てもしのはむ人やあるとて

かきつくる−こころみえなる−あとなれと−みてもしのはむ−ひとやあるとて

異同資料句番号:01200

01201
 春宮女蔵人左近 (131)

いははしのよるの契もたえぬへしあくるわひしき葛木の神

いははしの−よるのちきりも−たえぬへし−あくるわひしき−かつらきのかみ

異同資料句番号:01201

01202
道綱母 春宮大夫道綱母 (053)

うたかはしほかにわたせるふみみれは我やとたえにならむとすらん

うたかはし−ほかにわたせる−ふみみれは−われやとたえに−ならむとすらむ

異同資料句番号:01202

01203
読人不知 よみ人しらす (000)

いかてかはたつねきつらん蓬ふの人もかよはぬわかやとのみち

いかてかは−たつねきつらむ−よもきふの−ひともかよはぬ−わかやとのみち

異同資料句番号:01203

01204
斎宮女御 承香殿女御 (119)

雨ならてもる人もなきわかやとをあさちかはらと見るそかなしき

あめならて−もるひともなき−わかやとを−あさちかはらと−みるそかなしき

異同資料句番号:01204

01205
番号外作者 大納言朝光 (999)

いにしへはたかふるさとそおほつかなやともる雨にとひてしらはや

いにしへは−たかふるさとそ−おほつかな−やともるあめに−とひてしらはや

異同資料句番号:01205

01206
儀同三司母 高階成忠女 (054)

夢とのみ思ひなりにし世の中をなに今更におとろかすらん

ゆめとのみ−おもひなりにし−よのなかを−なにいまさらに−おとろかすらむ

異同資料句番号:01206

01207
公忠 源公忠朝臣 (117)

人も見ぬ所に昔きみとわかせぬわさわさをせしそこひしき

ひともみぬ−ところにむかし−きみとわか−せぬわさわさを−せしそこひしき

異同資料句番号:01207

01208
番号外作者 藤原後生か女 (999)

けふまてはいきの松原いきたれとわか身のうさになけきてそふる

けふまては−いきのまつはら−いきたれと−わかみのうさに−なけきてそふる

異同資料句番号:01208

01209
番号外作者 則忠朝臣女 (999)

いきたるかしぬるかいかにおもほえす身よりほかなるたまくしけかな

いきたるか−しぬるかいかに−おもほえす−みよりほかなる−たまくしけかな

異同資料句番号:01209


拾遺集 巻十九:雑恋

01210
人麿 柿本人麿 (003)

をとめこか袖ふる山のみつかきのひさしきよより思ひそめてき

をとめこか−そてふるやまの−みつかきの−ひさしきよより−おもひそめてき

異同資料句番号:01210

01211
貞文 平定文 (161)

いなり山社のかすを人とははつれなき人をみつとこたへむ

いなりやま−やしろのかすを−ひととはは−つれなきひとを−みつとこたへむ

異同資料句番号:01211

01212
人麿 柿本人麿 (003)

みしま江の玉江のあしをしめしよりおのかとそ思ふいまたからねと

みしまえの−たまえのあしを−しめしより−おのかとそおもふ−いまたからねと

異同資料句番号:01212

01213
能宣 大中臣能宣 (049)

あたなりとあたにはいかかさたむらん人の心を人はしるやは

あたなりと−あたにはいかか−さたむらむ−ひとのこころを−ひとはしるやは

異同資料句番号:01213

01214
読人不知 よみ人しらす (000)

すくろくのいちはにたてるひとつまのあはてやみなん物にやはあらぬ

すくろくの−いちはにたてる−ひとつまの−あはてやみなむ−ものにやはあらぬ

異同資料句番号:01214

01215
読人不知 よみ人しらす (000)

ぬれきぬをいかかきさらん世の人はあめのしたにしすまんかきりは

ぬれきぬを−いかかきさらむ−よのひとは−あめのしたにし−すまむかきりは

異同資料句番号:01215

01216
道真 贈太政大臣 (024)

あめのしたのかるる人のなけれはやきてしぬれきぬひるよしもなき

あめのした−のかるるひとの−なけれはや−きてしぬれきぬ−ひるよしもなし

異同資料句番号:01216

01217
読人不知 よみ人しらす (000)

いつくとも所定めぬ白雲のかからぬ山はあらしとそ思ふ

いつくとも−ところさためぬ−しらくもの−かからぬやまは−あらしとそおもふ

異同資料句番号:01217

01218
読人不知 よみ人しらす (000)

白雲のかかるそら事する人を山のふもとによせてけるかな

しらくもの−かかるそらこと−するひとを−やまのふもとに−よせてけるかな

異同資料句番号:01218

01219
読人不知 よみ人しらす (000)

いつしかもつくまのまつりはやせなんつれなき人のなへのかす見む

いつしかも−つくまのまつり−はやせなむ−つれなきひとの−なへのかすみむ

異同資料句番号:01219

01220
実頼 小野宮太政大臣 (511)

人しれぬ人まちかほに見ゆめるはたかたのめたるこよひなるらん

ひとしれぬ−ひとまちかほに−みゆめるは−たかたのめたる−こよひなるらむ

異同資料句番号:01220

01221
番号外作者 明日香采女 (999)

池水のそこにあらてはねぬなはのくる人もなしまつ人もなし

いけみつの−そこにあらては−ねぬなはの−くるひともなし−まつひともなし

異同資料句番号:01221

01222
右近 (038)

人しれすたのめし事は柏木のもりやしにけむ世にふりにけり

ひとしれす−たのめしことは−かしはきの−もりやしにけむ−よにふりにけり

異同資料句番号:01222

01223
読人不知 よみ人しらす (000)

秋はきの花もうゑおかぬやとなれはしかたちよらむ所たになし

あきはきの−はなもうゑおかぬ−やとなれは−しかたちよらむ−ところたになし

異同資料句番号:01223

01224
読人不知 よみ人しらす (000)

こゆるきのいそきてきつるかひもなくまたこそたてれおきつしらなみ

こゆるきの−いそきてきつる−かひもなく−またこそたてれ−おきつしらなみ

異同資料句番号:01224

01225
読人不知 よみ人しらす (000)

しのひつつよるこそきしか唐衣ひとや見むとはおもはさりしを

しのひつつ−よるこそきしか−からころも−ひとやみむとは−おもはさりしを

異同資料句番号:01225

01226
番号外作者 くにもち (999)

宮つくるひたのたくみのてをのおとほとほとしかるめをも見しかな

みやつくる−ひたのたくみの−てをのおと−ほとほとしかる−めをもみしかな

異同資料句番号:01226

01227
読人不知 よみ人しらす (000)

有りとてもいく世かはふるからくにのとらふすのへに身をもなけてん

ありとても−いくよかはふる−からくにの−とらふすのへに−みをもなけてむ

異同資料句番号:01227

01228
貫之 つらゆき (035)

むすふ手のしつくににこる山の井のあかても人に別れぬるかな

むすふての−しつくににこる−やまのゐの−あかてもひとに−わかれぬるかな

異同資料句番号:01228

01229
貫之 つらゆき (035)

家なからわかるる時は山の井のにこりしよりもわひしかりけり

いへなから−わかるるときは−やまのゐの−にこりしよりも−わひしかりけり

異同資料句番号:01229

01230
読人不知 よみ人しらす (000)

はしたかのとかへる山のしひしはのはかへはすともきみはかへせし

はしたかの−とかへるやまの−しひしはの−はかへはすとも−きみはかへせし

異同資料句番号:01230

01231
読人不知 よみ人しらす (000)

あやまちのあるかなきかをしらぬ身はいとふににたる心ちこそすれ

あやまちの−あるかなきかを−しらぬみは−いとふににたる−ここちこそすれ

異同資料句番号:01231

01232
読人不知 よみ人しらす (000)

ゆく水のあわならはこそきえかへり人のふちせを流れても見め

ゆくみつの−あわならはこそ−きえかへり−ひとのふちせを−なかれてもみめ

異同資料句番号:01232

01233
読人不知 よみ人しらす (000)

ともかくもいひはなたれよ池水のふかさあささをたれかしるへき

ともかくも−いひはなたれよ−いけみつの−ふかさあささを−たれかしるへき

異同資料句番号:01233

01234
業平 在原業平朝臣 (017)

そめ河をわたらん人のいかてかは色になるてふ事のなからん

そめかはを−わたらむひとの−いかてかは−いろになるてふ−ことのなからむ

異同資料句番号:01234

01235
番号外作者 兵衛 (999)

ちはやふるかもの河辺のふちなみはかけてわするる時のなきかな

ちはやふる−かものかはへの−ふちなみは−かけてわするる−ときのなきかな

異同資料句番号:01235

01236
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中はいかかはせまししけ山のあをはのすきのしるしたになし

よのなかは−いかかはせまし−しけやまの−あをはのすきの−しるしたになし

異同資料句番号:01236

01237
読人不知 よみ人しらす (000)

むもれ木は中むしはむといふめれはくめちのはしは心してゆけ

うもれきは−なかむしはむと−いふめれは−くめちのはしは−こころしてゆけ

異同資料句番号:01237

01238
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中はいさともいさや風のおとは秋に秋そふ心地こそすれ

よのなかは−いさともいさや−かせのおとは−あきにあきそふ−ここちこそすれ

異同資料句番号:01238

01239
人麿 人まろ (003)

いはみなるたかまの山のこのまよりわかふるそてをいも見けんかも

いはみなる−たかまのやまの−このまより−わかふるそてを−いもみけむかも

異同資料句番号:01239

01240
貫之 つらゆき (035)

おきつ浪たかしのはまのはま松のなにこそきみをまちわたりつれ

おきつなみ−たかしのはまの−はままつの−なにこそきみを−まちわたりつれ

異同資料句番号:01240

01241
村上院 天暦御製 (512)

君をのみ思ひやりつつ神よりも心のそらになりしよひかな

きみをのみ−おもひやりつつ−かみよりも−こころのそらに−なりしよひかな

異同資料句番号:01241

01242
貫之 つらゆき (035)

思ひやるこしのしら山しらねともひと夜も夢にこえぬ日そなき

おもひやる−こしのしらやま−しらねとも−ひとよもゆめに−こえぬひそなき

異同資料句番号:01242

01243
人麿 人まろ (003)

山しなのこはたの里に馬はあれとかちよりそくる君を思へは

やましなの−こはたのさとに−うまはあれと−かちよりそくる−きみをおもへは

異同資料句番号:01243

01244
人麿 人まろ (003)

春日山雲井かくれてとほけれと家はおもはす君をこそおもへ

かすかやま−くもゐかくれて−とほけれと−いへはおもはす−きみをこそおもへ

異同資料句番号:01244

01245
坂上郎女 (521)

わかせこをこふるもくるしいとまあらはひろひてゆかむ恋忘かひ

わかせこを−こふるもくるし−いとまあらは−ひろひてゆかむ−こひわすれかひ

異同資料句番号:01245

01246
恵慶 恵慶法師 (047)

旧里をこふるたもともかわかぬに又しほたるるあまも有りけり

ふるさとを−こふるたもとも−かわかぬに−またしほたるる−あまもありけり

異同資料句番号:01246

01247
頼基 大中臣頼基 (120)

しほたるる身は我とのみ思へともよそなるたつもねをそなくなる

しほたるる−みはわれのみと−おもへとも−よそなるたつも−ねをそなくなる

異同資料句番号:01247

01248
読人不知 よみ人しらす (000)

つれつれと思へはうきにおふるあしのはかなき世をはいかかたのまむ

つれつれと−おもへはうきに−おふるあしの−はかなきよをは−いかかたのまむ

異同資料句番号:01248

01249
順 したかふ (130)

定なき人の心にくらふれはたたうきしまは名のみなりけり

さためなき−ひとのこころに−くらふれは−たたうきしまは−なのみなりけり

異同資料句番号:01249

01250
元輔 もとすけ (042)

ひとりのみ年へけるにもおとらしをかすならぬ身のあるはあるかは

ひとりのみ−としへけるにも−おとらしを−かすならぬみの−あるはあるかは

異同資料句番号:01250

01251
読人不知 よみ人しらす (000)

風はやみ峯のくすはのともすれはあやかりやすき人のこころか

かせはやみ−みねのくすはの−ともすれは−あやかりやすき−ひとのこころか

異同資料句番号:01251

01252
家持 中納言家持 (006)

久方のあめのふるひをたたひとり山へにをれはむもれたりけり

ひさかたの−あめのふるひを−たたひとり−やまへにをれは−うもれたりけり

異同資料句番号:01252

01253
読人不知 よみ人しらす (000)

雨ふりて庭にたまれるにこり水たかすまはかはかけの見ゆへき

あめふりて−にはにたまれる−にこりみつ−たかすまはかは−かけのみゆへき

異同資料句番号:01253

01254
読人不知 よみ人しらす (000)

世とともに雨ふるやとの庭たつみすまぬに影は見ゆるものかは

よとともに−あめふるやとの−にはたつみ−すまぬにかけは−みゆるものかは

異同資料句番号:01254

01255
番号外作者 太皇太后宮 (999)

あふ事のかくてやつひにやみの夜の思ひもいてぬ人のためには

あふことの−かくてやつひに−やみのよの−おもひもいてぬ−ひとのためには

異同資料句番号:01255

01256
人麿 人まろ (003)

いはしろの野中にたてるむすひ松心もとけす昔おもへは

いはしろの−のなかにたてる−むすひまつ−こころもとけす−むかしおもへは

異同資料句番号:01256

01257
読人不知 よみ人しらす (000)

けふかともあすともしらぬ白菊のしらすいく世をふへきわか身そ

けふかとも−あすともしらぬ−しらきくの−しらすいくよを−ふへきわかみそ

異同資料句番号:01257

01258
番号外作者 まさのふ (999)

涙河水まされはやしきたへの枕のうきてとまらさるらん

なみたかは−みつまされはや−しきたへの−まくらのうきて−とまらさるらむ

異同資料句番号:01258

01259
番号外作者 按察のみやす所 (999)

世の中を常なき物とききしかとつらきことこそひさしかりけれ

よのなかを−つねなきものと−ききしかと−つらきことこそ−ひさしかりけれ

異同資料句番号:01259

01260
番号外作者 延喜御製 (999)

つらきをはつねなき物と思ひつつひさしき事をたのみやはせぬ

つらきをは−つねなきものと−おもひつつ−ひさしきことを−たのみやはせぬ

異同資料句番号:01260

01261
伊勢 (019)

我こそはにくくもあらめわかやとの花見にたにも君かきまさぬ

われこそは−にくくもあらめ−わかやとの−はなみにたにも−きみかきまさぬ

異同資料句番号:01261

01262
読人不知 よみ人しらす (000)

いはみかたなにかはつらきつらからは怨みかてらにきても見よかし

いはみかた−なにかはつらき−つらからは−うらみかてらに−きてもみよかし

異同資料句番号:01262

01263
番号外作者 本院侍従 (999)

それならぬ事もありしをわすれねといひしはかりをみみにとめけん

それならぬ−こともありしを−わすれねと−いひしはかりを−みみにとめけむ

異同資料句番号:01263

01264
読人不知 よみ人しらす (000)

みかりするこまのつまつくあをつつら君こそ我はほたしなりけれ

みかりする−こまのつまつく−あをつつら−きみこそわれは−ほたしなりけれ

異同資料句番号:01264

01265
読人不知 よみ人しらす (000)

君見れはむすふの神そうらめしきつれなき人をなにつくりけん

きみみれは−むすふのかみそ−うらめしき−つれなきひとを−なにつくりけむ

異同資料句番号:01265

01266
貫之 つらゆき (035)

いつれをかしるしとおもはむみわの山有りとしあるはすきにそありける

いつれをか−しるしとおもはむ−みわのやま−ありとしあるは−すきにそありける

異同資料句番号:01266

01267
長能 藤原長能 (176)

我といへはいなりの神もつらきかな人のためとはいのらさりしを

われといへは−いなりのかみも−つらきかな−ひとのためとは−いのらさりしを

異同資料句番号:01267

01268
読人不知 よみ人しらす (000)

滝の水かへりてすまはいなり山なぬかのほれるしるしとおもはん

たきのみつ−かへりてすまは−いなりやま−なぬかのほれる−しるしとおもはむ

異同資料句番号:01268

01269
読人不知 よみ人しらす (000)

思ひいててとふにはあらす秋はつる色の限を見するなりけり

おもひいてて−とふにはあらす−あきはつる−いろのかきりを−みするなりけり

異同資料句番号:01269

01270
読人不知 よみ人しらす (000)

ゆゆしとていむとも今はかひもあらしうきをは風につけてやみなん

ゆゆしとて−いむともいまは−かひもあらし−うきをはかせに−つけてやみなむ

異同資料句番号:01270

01271
貫之 つらゆき (035)

ひとりして世をしつくさは高砂の松のときはもかひなかりけり

ひとりして−よをしつくさは−たかさこの−まつのときはも−かひなかりけり

異同資料句番号:01271

01272
貫之 つらゆき (035)

玉もかるあまのゆき方さすさをの長くや人を怨渡らん

たまもかる−あまのゆきかた−さすさをの−なかくやひとを−うらみわたらむ

異同資料句番号:01272

01273
貫之 つらゆき (035)

たのめつつ別れし人をまつほとに年さへせめてうらめしきかな

たのめつつ−わかれしひとを−まつほとに−としさへせめて−うらめしきかな

異同資料句番号:01273


拾遺集 巻二十:哀傷

01274
実頼 小野宮太政大臣 (511)

さくら花のとけかりけりなき人をこふる涙そまつはおちける

さくらはな−のとけかりけり−なきひとを−こふるなみたそ−まつはおちける

異同資料句番号:01274

01275
兼盛 平兼盛 (040)

おもかけに色のみのこる桜花いく世の春をこひむとすらん

おもかけに−いろのみのこる−さくらはな−いくよのはるを−こひむとすらむ

異同資料句番号:01275

01276
元輔 清原元輔 (042)

花の色もやとも昔のそれなからかはれる物は露にそ有りける

はなのいろも−やともむかしの−それなから−かはれるものは−つゆにそありける

異同資料句番号:01276

01277
能宣 大中臣能宣 (049)

桜花にほふものから露けきはこのめも物を思ふなるへし

さくらはな−にほふものから−つゆけきは−このめもものを−おもふなるへし

異同資料句番号:01277

01278
番号外作者 大納言延光 (999)

君まさはまつそをらまし桜花風のたよりにきくそかなしき

きみまさは−まつそをらまし−さくらはな−かせのたよりに−きくそかなしき

異同資料句番号:01278

01279
伊尹 一条摂改 (045)

いにしへはちるをや人の惜みけん花こそ今は昔こふらし

いにしへは−ちるをやひとの−をしみけむ−はなこそいまは−むかしこふらし

異同資料句番号:01279

01280
番号外作者 女蔵人兵庫 (999)

さ月きてなかめまされはあやめ草思ひたえにしねこそなかるれ

さつききて−なかめまされは−あやめくさ−おもひたえにし−ねこそなかるれ

異同資料句番号:01280

01281
番号外作者 粟田右大臣 (999)

しのへとやあやめもしらぬ心にもなかからぬよのうきにうゑけん

しのへとや−あやめもしらぬ−こころにも−なかからぬよの−うきにうゑけむ

異同資料句番号:01281

01282
番号外作者 右大臣 (999)

ここにたにつれつれになく郭公ましてここひのもりはいかにそ

ここにたに−つれつれになく−ほとときす−ましてここひの−もりはいかにそ

異同資料句番号:01282

01283
道信 藤原道信朝臣 (052)

あさかほを何はかなしと思ひけん人をも花はさこそ見るらめ

あさかほを−なにはかなしと−おもひけむ−ひとをもはなは−さこそみるらめ

異同資料句番号:01283

01284
村上院 天暦御製 (512)

時ならてははその紅葉ちりにけりいかにこのもとさひしかるらん

ときならて−ははそのもみち−ちりにけり−いかにこのもと−さひしかるらむ

異同資料句番号:01284

01285
番号外作者 大弐国章 (999)

思ひきや秋のよ風のさむけきにいもなきとこにひとりねむとは

おもひきや−あきのよかせの−さむけきに−いもなきとこに−ひとりねむとは

異同資料句番号:01285

01286
村上院 天暦御製 (512)

秋風になひく草葉のつゆよりもきえにし人をなににたとへん

あきかせに−なひくくさはの−つゆよりも−きえにしひとを−なににたとへむ

異同資料句番号:01286

01287
人麿 人まろ (003)

こそ見てし秋の月夜はてらせともあひ見しいもはいやとほさかり

こそみてし−あきのつきよは−てらせとも−あひみしいもは−いやとほさかり

異同資料句番号:01287

01288
敦忠 権中納言敦忠 (043)

君なくて立つあさきりは麻衣池さへきるそかなしかりける

きみなくて−たつあさきりは−ふちころも−いけさへきるそ−かなしかりける

異同資料句番号:01288

01289
人麿 人まろ (003)

わきもこかねくたれかみをさるさはの池のたまもと見るそかなしき

わきもこか−ねくたれかみを−さるさはの−いけのたまもと−みるそかなしき

異同資料句番号:01289

01290
読人不知 よみ人しらす (000)

心にもあらぬうき世にすみそめの衣の袖のぬれぬ日そなき

こころにも−あらぬうきよに−すみそめの−ころものそての−ぬれぬひそなき

異同資料句番号:01290

01291
読人不知 よみ人しらす (000)

ふち衣はらへてすつる涙河きしにもまさる水そなかるる

ふちころも−はらへてすつる−なみたかは−きしにもまさる−みつそなかるる

異同資料句番号:01291

01292
読人不知 よみ人しらす (000)

藤衣はつるるいとはきみこふる涙の玉のをとやなるらん

ふちころも−はつるるいとは−きみこふる−なみたのたまの−をとやなるらむ

異同資料句番号:01292

01293
道信 藤原道信朝臣 (052)

限あれはけふぬきすてつ藤衣はてなき物は涙なりけり

かきりあれは−けふぬきすてつ−ふちころも−はてなきものは−なみたなりけり

異同資料句番号:01293

01294
番号外作者 としのふの母 (999)

人なししむねのちふさをほむらにてやくすみそめの衣きよきみ

ひとなしし−むねのちふさを−ほむらにて−やくすみそめの−ころもきよきみ

異同資料句番号:01294

01295
番号外作者 大江為基 (999)

藤衣あひ見るへしと思ひせはまつにかかりてなくさめてまし

ふちころも−あひみるへしと−おもひせは−まつにかかりて−なくさめてまし

異同資料句番号:01295

01296
番号外作者 大江為基 (999)

年ふれといかなる人かとこふりてあひ思ふ人にわかれさるらん

としふれと−いかなるひとか−とこふりて−あひおもふひとに−わかれさるらむ

異同資料句番号:01296

01297
読人不知 よみ人しらす (000)

墨染の衣の袖は雲なれや涙の雨のたえすふるらん

すみそめの−ころものそては−くもなれや−なみたのあめの−たえすふるらむ

異同資料句番号:01297

01298
番号外作者 よみ人しらす (999)

あまといへといかなるあまの身なれはか世ににぬしほをたれわたるらん

あまといへと−いかなるあまの−みなれはか−よににぬしほを−たれわたるらむ

異同資料句番号:01298

01299
番号外作者 藤原為頼 (999)

世の中にあらましかはと思ふ人なきかおほくも成りにけるかな

よのなかに−あらましかはと−おもふひと−なきかおほくも−なりにけるかな

異同資料句番号:01299

01300
公任 右衛門督公任 (055)

常ならぬ世はうき身こそかなしけれそのかすにたにいらしとおもへは

つねならぬ−よはうきみこそ−かなしけれ−そのかすにたに−いらしとおもへは

異同資料句番号:01300

01301
伊勢 (019)

なき人もあるかつらきを思ふにも色わかれぬは涙なりけり

なきひとも−あるかつらきを−おもふにも−いろわかれぬは−なみたなりけり

異同資料句番号:01301

01302
読人不知 よみ人しらす (000)

うつくしと思ひしいもを夢に見ておきてさくるになきそかなしき

うつくしと−おもひしいもを−ゆめにみて−おきてさくるに−なきそかなしき

異同資料句番号:01302

01303
元輔 清原元輔 (042)

思ひやるここひのもりのしつくにはよそなる人の袖もぬれけり

おもひやる−ここひのもりの−しつくには−よそなるひとの−そてもぬれけり

異同資料句番号:01303

01304
兼盛 平兼盛 (040)

なよ竹のわかこの世をはしらすしておほしたてつと思ひけるかな

なよたけの−わかこのよをは−しらすして−おほしたてつと−おもひけるかな

異同資料句番号:01304

01305
番号外作者 藤原共政朝臣妻 (999)

我のみやこの世はうきとおもへとも君もなけくと聞くそかなしき

われのみや−このよはうきと−おもへとも−きみもなけくと−きくそかなしき

異同資料句番号:01305

01306
番号外作者 大納言朝光 (999)

うき世にはある身もうしとなけきつつ涙のみこそふるここちすれ

うきよには−あるみもうしと−なけきつつ−なみたのみこそ−ふるここちすれ

異同資料句番号:01306

01307
伊勢 (019)

しての山こえてきつらん郭公こひしき人のうへかたらなん

してのやま−こえてきつらむ−ほとときす−こひしきひとの−うへかたらなむ

異同資料句番号:01307

01308
貞文 平定文 (161)

思ふよりいふはおろかに成りぬれはたとへていはん事のはそなき

おもふより−いふはおろかに−なりぬれは−たとへていはむ−ことのはそなき

異同資料句番号:01308

01309
貫之 つらゆき (035)

こふるまに年のくれなはなき人の別やいとととほくなりなん

こふるまに−としのくれなは−なきひとの−わかれやいとと−とほくなりなむ

異同資料句番号:01309

01310
読人不知 よみ人しらす (000)

如何せん忍の草もつみわひぬかたみと見えしこたになけれは

いかにせむ−しのふのくさも−つみわひぬ−かたみとみえし−こたになけれは

異同資料句番号:01310

01311
読人不知 よみ人しらす (000)

春は花秋は紅葉とちりはててたちかくるへきこのもともなし

はるははな−あきはもみちと−ちりはてて−たちかくるへき−このもともなし

異同資料句番号:01311

01312
中務 (136)

わすられてしはしまとろむほともかないつかはきみをゆめならて見ん

わすられて−しはしまとろむ−ほともかな−いつかはきみを−ゆめならてみむ

異同資料句番号:01312

01313
中務 (136)

うきなからきえせぬ物は身なりけりうら山しきは水のあわかな

うきなから−きえせぬものは−みなりけり−うらやましきは−みつのあわかな

異同資料句番号:01313

01314
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中をかくいひいひのはてはてはいかにやいかにならむとすらん

よのなかを−かくいひいひの−はてはては−いかにやいかに−ならむとすらむ

異同資料句番号:01314

01315
人麿 人まろ (003)

ささなみのしかのてこらかまかりにし河せの道を見れはかなしも

ささなみの−しかのてこらか−まかりにし−かはせのみちを−みれはかなしも

異同資料句番号:01315

01316
人麿 人まろ (003)

おきつ浪よるあらいそをしきたへの枕とまきてなれる君かも

おきつなみ−よるあらいそを−しきたへの−まくらとまきて−なれるきみかも

異同資料句番号:01316

01317
貫之 つらゆき (035)

あすしらぬわか身とおもへとくれぬまのけふは人こそかなしかりけれ

あすしらぬ−わかみとおもへと−くれぬまの−けふはひとこそ−かなしかりけれ

異同資料句番号:01317

01318
貫之 つらゆき (035)

夢とこそいふへかりけれ世の中はうつつある物と思ひけるかな

ゆめとこそ−いふへかりけれ−よのなかは−うつつあるものと−おもひけるかな

異同資料句番号:01318

01319
人麿 人まろ (003)

家にいきてわかやを見れはたまささのほかにおきけるいもかこまくら

いへにゆきて−わかやをみれは−たまささの−ほかにおきける−いもかこまくら

異同資料句番号:01319

01320
人麿 人まろ (003)

まきもくの山へひひきてゆく水のみなわのことによをはわか見る

まきもくの−やまへひひきて−ゆくみつの−みなわのことに−よをはわかみる

異同資料句番号:01320

01321
人麿 人まろ (003)

いも山のいはねにおける我をかもしらすていもかまちつつあらん

いもやまの−いはねにおける−われをかも−しらすていもか−まちつつあらむ

異同資料句番号:01321

01322
貫之 紀貫之 (035)

手に結ふ水にやとれる月影のあるかなきかの世にこそありけれ

てにむすふ−みつにやとれる−つきかけの−あるかなきかの−よにこそありけれ

異同資料句番号:01322

01323
番号外作者 御製 (999)

くれ竹のわか世はことに成りぬともねはたえせすもなかるへきかな

くれたけの−わかよはことに−なりぬとも−ねはたえせすも−なかるへきかな

異同資料句番号:01323

01324
読人不知 よみ人しらす (000)

とりへ山たににけふりのもえたたははかなく見えし我としらなん

とりへやま−たににけふりの−もえたたは−はかなくみえし−われとしらなむ

異同資料句番号:01324

01325
番号外作者 すけきよ (999)

みな人のいのちをつゆにたとふるは草むらことにおけはなりけり

みなひとの−いのちをつゆに−たとふるは−くさむらことに−おけはなりけり

異同資料句番号:01325

01326
順 したかふ (130)

草枕人はたれとかいひおきしつひのすみかはの山とそ見る

くさまくら−ひとはたれとか−いひおきし−つひのすみかは−のやまとそみる

異同資料句番号:01326

01327
番号外作者 沙弥満誓 (999)

世の中をなににたとへむあさほらけこきゆく舟のあとのしら浪

よのなかを−なににたとへむ−あさほらけ−こきゆくふねの−あとのしらなみ

異同資料句番号:01327

01328
番号外作者 源相方朝臣 (999)

契あれはかはねなれともあひぬるを我をはたれかとはんとすらん

ちきりあれは−かはねなれとも−あひぬるを−われをはたれか−とはむとすらむ

異同資料句番号:01328

01329
読人不知 よみ人しらす (000)

山寺の入あひのかねのこゑことにけふもくれぬときくそかなしき

やまてらの−いりあひのかねの−こゑことに−けふもくれぬと−きくそかなしき

異同資料句番号:01329

01330
番号外作者 慶滋保胤 (999)

うき世をはそむかはけふもそむきなんあすもありとはたのむへき身か

うきよをは−そむかはけふも−そむきなむ−あすもありとは−たのむへきみか

異同資料句番号:01330

01331
読人不知 よみ人しらす (000)

世の中に牛の車のなかりせは思ひの家をいかていてまし

よのなかに−うしのくるまの−なかりせは−おもひのいへを−いかていてまし

異同資料句番号:01331

01332
高光 藤原高光 (116)

世の中にふるそはかなき白雪のかつはきえぬる物としるしる

よのなかに−ふるそはかなき−しらゆきの−かつはきえぬる−ものとしるしる

異同資料句番号:01332

01333
能宣 よしのふ (049)

すみそめの色は我のみと思ひしをうき世をそむく人もあるとか

すみそめの−いろはわれのみと−おもひしを−うきよをそむく−ひともあるとか

異同資料句番号:01333

01334
読人不知 よみ人しらす (000)

すみそめの衣と見れはよそなからもろともにきる色にそ有りける

すみそめの−ころもとみれは−よそなから−もろともにきる−いろにそありける

異同資料句番号:01334

01335
公任 右衛門督公任 (055)

思ひしる人も有りける世の中をいつをいつとてすくすなるらん

おもひしる−ひともありける−よのなかを−いつをいつとて−すくすなるらむ

異同資料句番号:01335

01336
公任 右衛門督公任 (055)

ささなみやしかのうら風いかはかり心の内の源しかるらん

ささなみや−しかのうらかせ−いかはかり−こころのうちの−すすしかるらむ

異同資料句番号:01336

01337
選子内親王 斎院 (522)

こふつくすみたらし河のかめなれはのりのうききにあはぬなりけり

こふつくす−みたらしかはの−かめなれは−のりのうききに−あはぬなりけり

異同資料句番号:01337

01338
村上院 御製 (512)

いつしかと君にと思ひしわかなをはのりの道にそけふはつみつる

いつしかと−きみにとおもひし−わかなをは−のりのみちにそ−けふはつみつる

異同資料句番号:01338

01339
道綱母 春宮大夫道綱母 (053)

たき木こる事は昨日につきにしをいさをののえはここにくたさん

たききこる−ことはきのふに−つきにしを−いさをののえは−ここにくたさむ

異同資料句番号:01339

01340
実方 実方朝臣 (051)

けふよりは露のいのちもをしからす蓮のうへのたまとちきれは

けふよりは−つゆのいのちも−をしからす−はちすのうへの−たまとちきれは

異同資料句番号:01340

01341
番号外作者 夢想歌 (999)

あさことにはらふちりたにあるものをいまいくよとてたゆむなるらん

あさことに−はらふちりたに−あるものを−いまいくよとて−たゆむなるらむ

異同資料句番号:01341

01342
和泉式部 雅致女式部 (056)

暗きより暗き道にそ入りぬへき遥に照せ山のはの月

くらきより−くらきみちにそ−いりぬへき−はるかにてらせ−やまのはのつき

異同資料句番号:01342

01343
番号外作者 仙慶法師 (999)

極楽ははるけきほととききしかとつとめていたるところなりけり

こくらくは−はるけきほとと−ききしかと−つとめていたる−ところなりけり

異同資料句番号:01343

01344
番号外作者 空也上人 (999)

ひとたひも南無阿弥陀仏といふ人の蓮の上にのほらぬはなし

ひとたひも−なむあみたふつと−いふひとの−はちすのうへに−のほらぬはなし

異同資料句番号:01344

01345
番号外作者 光明皇后 (999)

みそちあまりふたつのすかたそなへたるむかしの人のふめるあとそこれ

みそちあまり−ふたつのすかた−そなへたる−むかしのひとの−ふめるあとそこれ

異同資料句番号:01345

01346
番号外作者 大僧正行基 (999)

法華経をわかえし事はたき木こりなつみ水くみつかへてそえし

ほけきやうを−わかえしことは−たききこり−なつみみつくみ−つかへてそえし

異同資料句番号:01346

01347
番号外作者 大僧正行基 (999)

ももくさにやそくさそへてたまひてしちふさのむくいけふそわかする

ももくさに−やそくさそへて−たまひてし−ちふさのむくひ−けふそわかする

異同資料句番号:01347

01348
番号外作者 大僧正行基 (999)

霊山の釈迦のみまへにちきりてし真如くちせすあひ見つるかな

りやうせむの−しやかのみまへに−ちきりてし−しむによくちせす−あひみつるかな

異同資料句番号:01348

01349
番号外作者 婆羅門僧正 (999)

かひらゑにともにちきりしかひありて文殊のみかほあひ見つるかな

かひらゑに−ともにちきりし−かひありて−もむしゆのみかほ−あひみつるかな

異同資料句番号:01349

01350
番号外作者 聖徳太子 (999)

しなてるやかたをか山にいひにうゑてふせるたひ人あはれおやなし

しなてるや−かたをかやまに−いひにうゑて−ふせるたひひと−あはれおやなし

異同資料句番号:01350

01351
読人不知 うゑ人 (000)

いかるかやとみのを河のたえはこそわかおほきみのみなをわすれめ

いかるかや−とみのをかはの−たえはこそ−わかおほきみの−みなをわすれめ

異同資料句番号:01351


拾遺集 異本歌

01352
番号外作者 藤原輔相 (999)

我はあすはのみやつまむさはのせり水はこほりてくきし見えねは

われはあす−はのみやつまむ−さはのせり−みつはこほりて−くきしみえねは


01353
読人不知 (000)

むまよりはひつしはかりはあるものをとりにいぬるかかゐてきぬらむ

うまよりは−ひつしはかりは−あるものを−とりにいぬるか−かひてきぬらむ


01354
読人不知 (000)

うしと思ふ心をしはしなくさめむ後によひとをあはれと思はむ

うしとおもふ−こころをしはし−なくさめむ−のちによひとを−あはれとおもはむ


01355
人麿 柿本人丸 (003)

かも山のいはねしまきてあるわれをしらぬかいもかまちつつあらむ

かもやまの−いはねしまきて−あるわれを−しらぬかいもか−まちつつあらむ


01356
番号外作者 式部 (999)

日くるれはまつ人もきぬからいともよるをはあふといふはかりなり

ひくるれは−まつひともきぬ−からいとも−よるをはあふと−いふはかりなり


01357
番号外作者 不記 (999)

よもやまのまほりにたのむあつさゆみ神のたからにいましつるかな

よのなかの−まもりにたのむ−あつさゆみ−かみのたからに−いましつるかな


01358
番号外作者 不記 (999)

わかくさのいもものりたりわれものりふねかたふくなふなかせふくな

わかくさの−いもものりたり−われものり−ふねかたふくな−ふなかせふくな


01359
番号外作者 源重之 (999)

このこにて心をさなくとはすともおやのおやにてうらむへしやは

このこにて−こころをさなく−とはすとも−おやのおやにて−うらむへしやは


01360
読人不知 (000)

夢のうちの花に心をつけてこそこのよのなかはおもひしらるれ

ゆめのうちの−はなにこころを−つけてこそ−このよのなかは−おもひしらるれ