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作品集名 | 西行法師家集 |
作品集名読み | さいぎょうほうしかしゅう |
作成年月日 | 成立年時未詳(※1190年) |
場所 |
西行法師家集 春 |
西行法師家集 夏 |
西行法師家集 秋 |
西行法師家集 冬 |
西行法師家集 恋 |
西行法師家集 雑 |
西行法師家集 追加 |
00001 |
未入力 西行 (xxx)
岩間とちし氷も今朝はとけそめて苔の下水みちもとむらん
いはまとちし−こほりもけさは−とけそめて−こけのしたみつ−みちもとむらむ |
00002 |
未入力 西行 (xxx)
ふりつみし高ねのみ雪とけにけり波滝川の水の白浪
ふりつみし−たかねのみゆき−とけにけり−なみたきかはの−みつのしらなみ |
00003 |
未入力 西行 (xxx)
立ちかはる春をしれとも見せかほに年をへたつる霞なりけり
たちかはる−はるをしれとも−みせかほに−としをへたつる−かすみなりけり |
00004 |
未入力 西行 (xxx)
くる春は嶺の霞をさきたてて谷のかけひをつたふなりけり
くるはるは−みねのかすみを−さきたてて−たにのかけひを−つたふなりけり |
00005 |
未入力 西行 (xxx)
こせりつむ沢の氷のひま見えて春めきわたる桜井の里
こせりつむ−さはのこほりの−ひまみえて−はるめきわたる−さくらゐのさと |
00006 |
未入力 西行 (xxx)
春あさみすすのまかきに風さえてまた雪きえぬしからきの里
はるあさみ−すすのまかきに−かせさえて−またゆききえぬ−しからきのさと |
00007 |
未入力 西行 (xxx)
春になる桜かえたは何となく花なけれともむつましきかな
はるになる−さくらかえたは−なにとなく−はななけれとも−むつましきかな |
00008 |
未入力 西行 (xxx)
すきて行く羽風なつかし鴬よなつさひけりな梅の立えに
すきてゆく−はかせなつかし−うくひすよ−なつさひけりな−うめのたちえに |
00009 |
未入力 西行 (xxx)
鴬はゐなかの谷の巣なれともたみたる音をは鳴かぬなりけり
うくひすは−ゐなかのたにの−すなれとも−たみたるねをは−なかぬなりけり |
00010 |
未入力 西行 (xxx)
かすめとも春をはよその空にみてとけんともなき雪の下水
かすめとも−はるをはよその−そらにみて−とけむともなき−ゆきのしたみつ |
00011 |
未入力 西行 (xxx)
森しれと谷の細水もりそ行く岩間の氷ひまたえにけり
もりしれと−たにのほそみつ−もりそゆく−いはまのこほり−ひまたえにけり |
00012 |
未入力 西行 (xxx)
鴬のこゑそ霞にもれてくる人目ともしき春の山里
うくひすの−こゑそかすみに−もれてくる−ひとめともしき−はるのやまさと |
00013 |
未入力 西行 (xxx)
我なきて鹿秋なりと思ひけり春をもさてや鴬のしる
われなきて−しかあきなりと−おもひけり−はるをもさてや−うくひすのしる |
00014 |
未入力 西行 (xxx)
雲にまかふ花のさかりをおもはせてかつかつかすむみ吉野の山
くもにまかふ−はなのさかりを−おもはせて−かつかつかすむ−みよしののやま |
00015 |
未入力 西行 (xxx)
浪こすとふたみの松の見えつるは梢にかかる霞なりけり
なみこすと−ふたみのまつの−みえつるは−こすゑにかかる−かすみなりけり |
00016 |
未入力 西行 (xxx)
春ことに野辺の小松をひく人はいくらの千代のふへきなるらん
はることに−のへのこまつを−ひくひとは−いくらのちよの−ふへきなるらむ |
00017 |
未入力 西行 (xxx)
若なつむけふははつねのあひぬれはまつにや人のこころひくらん
わかなつむ−けふははつねの−あひぬれは−まつにやひとの−こころひくらむ |
00018 |
未入力 西行 (xxx)
けふはたたおもひもよらて帰りなん雪つむ野への若菜なりけり
けふはたた−おもひもよらて−かへりなむ−ゆきつむのへの−わかななりけり |
00019 |
未入力 西行 (xxx)
春雨のふる野の若菜おひぬらしぬれぬれつまんかたみぬきいれ
はるさめの−ふるののわかな−おひぬらし−ぬれぬれつまむ−かたみぬきいれ |
00020 |
未入力 西行 (xxx)
若菜おふ春の野守に我なりて浮世を人につみしらせはや
わかなおふ−はるののもりに−われなりて−うきよをひとに−つみしらせはや |
00021 |
未入力 西行 (xxx)
ふるすうとく谷の鴬なりはては我やかはりてなかんとすらん
ふるすうとく−たにのうくひす−なりはては−われやかはりて−なかむとすらむ |
00022 |
未入力 西行 (xxx)
梅かかにたくへて聞けは鴬のこゑなつかしき春の明ほの
うめかかに−たくへてきけは−うくひすの−こゑなつかしき−はるのあけほの |
00023 |
未入力 西行 (xxx)
独ぬる草のまくらのうつり香はかきねの梅の匂ひなりけり
ひとりぬる−くさのまくらの−うつりかは−かきねのうめの−にほひなりけり |
00024 |
未入力 西行 (xxx)
ぬしいかに風わたるとていとふらんよそにうれしき梅の匂ひを
ぬしいかに−かせわたるとて−いとふらむ−よそにうれしき−うめのにほひを |
00025 |
未入力 西行 (xxx)
おひかはる春の若草待ちわひて原のかれ野にききすなくなり
おひかはる−はるのわかくさ−まちわひて−はらのかれのに−ききすなくなり |
00026 |
未入力 西行 (xxx)
もえ出つる若菜あさるときこゆなり雉子鳴くのの春の明ほの
もえいつる−わかなあさると−きこゆなり−ききすなくのの−はるのあけほの |
00027 |
未入力 西行 (xxx)
何となくおほつかなきは天の原霞にきえて帰る雁かね
なにとなく−おほつかなきは−あまのはら−かすみにきえて−かへるかりかね |
00028 |
未入力 西行 (xxx)
玉つさのはしかきかとも見ゆるかなとひおくれつつ帰るかりかね
たまつさの−はしかきかとも−みゆるかな−とひおくれつつ−かへるかりかね |
00029 |
未入力 西行 (xxx)
いかて我とこ世の花のさかりみてことわりしらむ帰るかりかね
いかてわれ−とこよのはなの−さかりみて−ことわりしらむ−かへるかりかね |
00030 |
未入力 西行 (xxx)
帰る雁にちかふ雲路の燕めこまかにこれやかける玉章
かへるかりに−ちかふくもちの−つはくらめ−こまかにこれや−かけるたまつさ |
00031 |
未入力 西行 (xxx)
色よりも香はこきものを梅の花かくれんものかうつむ白雪
いろよりも−かはこきものを−うめのはな−かくれむものか−うつむしらゆき |
00032 |
未入力 西行 (xxx)
とめゆきてぬしなき宿の梅ならは勅ならすともをりて帰らん
とめゆきて−ぬしなきやとの−うめならは−ちよくならすとも−をりてかへらむ |
00033 |
未入力 西行 (xxx)
梅をのみ我か垣ねには植置きて見に来ん人に跡しのはれん
うめをのみ−わかかきねには−うゑおきて−みにこむひとに−あとしのはれむ |
00034 |
未入力 西行 (xxx)
とめこかし梅さかりなる我か宿をうときも人はをりにこそよれ
とめこかし−うめさかりなる−わかやとを−うときもひとは−をりにこそよれ |
00035 |
未入力 西行 (xxx)
見わたせはさほの川原にくりかけて風によらるる青柳の糸
みわたせは−さほのかはらに−くりかけて−かせによらるる−あをやきのいと |
00036 |
未入力 西行 (xxx)
山かつのかたをかかけてしむる野のさかひにたてる玉のを柳
やまかつの−かたをかかけて−しむるのの−さかひにたてる−たまのをやなき |
00037 |
未入力 西行 (xxx)
君こすは霞にけふも暮れなまし花待ちかぬる物かたりせよ
きみこすは−かすみにけふも−くれなまし−はなまちかぬる−ものかたりせよ |
00038 |
未入力 西行 (xxx)
吉野山桜かえたに雪ちりて花おそけなる年にも有るかな
よしのやま−さくらかえたに−ゆきちりて−はなおそけなる−としにもあるかな |
00039 |
未入力 西行 (xxx)
山さむみ花さくへくもなかりけりあまりかねてそ尋ねきにける
やまさむみ−はなさくへくも−なかりけり−あまりかねてそ−たつねきにける |
00040 |
未入力 西行 (xxx)
山人に花さきぬやと尋ぬれはいさ白雲とこたへてそ行く
やまひとに−はなさきぬやと−たつぬれは−いさしらくもと−こたへてそゆく |
00041 |
未入力 西行 (xxx)
吉野山こそのしをりの道かへてまたみぬかたの花を尋ねん
よしのやま−こそのしをりの−みちかへて−またみぬかたの−はなをたつねむ |
00042 |
未入力 西行 (xxx)
よしの山人にこころをつけかほに花よりさきにかかる白雲
よしのやま−ひとにこころを−つけかほに−はなよりさきに−かかるしらくも |
00043 |
未入力 西行 (xxx)
咲きやらぬものゆゑかねて物そおもふ花に心のたえぬならひに
さきやらぬ−ものゆゑかねて−ものそおもふ−はなにこころの−たえぬならひに |
00044 |
未入力 西行 (xxx)
花を待つ心こそなほ昔なれ春にはうとくなりにしものを
はなをまつ−こころこそなほ−むかしなれ−はるにはうとく−なりにしものを |
00045 |
未入力 西行 (xxx)
かたはかりつほむと花を思ふより空また風の物になるらん
かたはかり−つほむとはなを−おもふより−そらまたかせの−ものになるらむ |
00046 |
未入力 西行 (xxx)
またれつる吉野の桜さきにけり心をちらせ雪の山風
またれつる−よしののさくら−さきにけり−こころをちらせ−ゆきのやまかせ |
00047 |
未入力 西行 (xxx)
さきそむる花を一えたまつ折りて昔の人のためとおもはん
さきそむる−はなをひとえた−まつをりて−むかしのひとの−ためとおもはむ |
00048 |
未入力 西行 (xxx)
あはれわかおほくの春の花をみてそめおく心誰にゆつらん
あはれわか−おほくのはるの−はなをみて−そめおくこころ−たれにゆつらむ |
00049 |
未入力 西行 (xxx)
山人よ吉野のおくのしるへせよ花もたつねんまた思ひあり
やまひとよ−よしののおくの−しるへせよ−はなもたつねむ−またおもひあり |
00050 |
未入力 西行 (xxx)
おしなへて花のさかりになりにけり山の端ことにかかる白雲
おしなへて−はなのさかりに−なりにけり−やまのはことに−かかるしらくも |
00051 |
未入力 西行 (xxx)
春をへて花のさかりにあひきつつ思ひておほき我か身なりけり
はるをへて−はなのさかりに−あひきつつ−おもひておほき−わかみなりけり |
00052 |
未入力 西行 (xxx)
ねかはくは花の下にて春しなんその着更衣のもち月のころ
ねかはくは−はなのもとにて−はるしなむ−そのきさらきの−もちつきのころ |
00053 |
未入力 西行 (xxx)
花にそむ心のいかて残りけんすてはててきと思ふ我かみに
はなにそむ−こころのいかて−のこりけむ−すてはててきと−おもふわかみに |
00054 |
未入力 西行 (xxx)
よしの山やかて出てしとおもふみを花ちりなはと人や侍つらん
よしのやま−やかていてしと−おもふみを−はなちりなはと−ひとやまつらむ |
00055 |
未入力 西行 (xxx)
ちらぬまはさかりに人もかよひつつ花に春あるみよしのの山
ちらぬまは−さかりにひとも−かよひつつ−はなにはるある−みよしののやま |
00056 |
未入力 西行 (xxx)
あくかるる心はさても山桜ちりなん後やみにかへるへき
あくかるる−こころはさても−やまさくら−ちりなむのちや−みにかへるへき |
00057 |
未入力 西行 (xxx)
仏には桜の花をたてまつれ我か後の世を人とふらはは
ほとけには−さくらのはなを−たてまつれ−わかのちのよを−ひととふらはは |
00058 |
未入力 西行 (xxx)
花さかり梢をさそふ風なくてのとかにちらん春にあははや
はなさかり−こすゑをさそふ−かせなくて−のとかにちらむ−はるにあははや |
00059 |
未入力 西行 (xxx)
白河の木すゑをみてそなくさむる吉野の山にかよふ心を
しらかはの−こすゑをみてそ−なくさむる−よしののやまに−かよふこころを |
00060 |
未入力 西行 (xxx)
わきて見ん老木は花もあはれなり今幾たひか春にあふへき
わきてみむ−おいきははなも−あはれなり−いまいくたひか−はるにあふへき |
00061 |
未入力 西行 (xxx)
おいつとに何をかせましこの暮の花待ちつけぬ我かみなりせは
おいつとに−なにをかせまし−このくれの−はなまちつけぬ−わかみなりせは |
00062 |
未入力 西行 (xxx)
よしの山花をのとかに見ましやはうきかうれしき我か身なりけり
よしのやま−はなをのとかに−みましやは−うきかうれしき−わかみなりけり |
00063 |
未入力 西行 (xxx)
山路わけ花をたつねて日は暮れぬ宿かし鳥の声もかすみて
やまちわけ−はなをたつねて−ひはくれぬ−やとかしとりの−こゑもかすみて |
00064 |
未入力 西行 (xxx)
鴬のこゑを山路のしるへにて花みてつたふ岩のかけ道
うくひすの−こゑをやまちの−しるへにて−はなみてつたふ−いはのかけみち |
00065 |
未入力 西行 (xxx)
ちらはまたなけきやそはん山桜さかりになるはうれしけれとも
ちらはまた−なけきやそはむ−やまさくら−さかりになるは−うれしけれとも |
00066 |
未入力 西行 (xxx)
白川の関路の桜咲きにけりあつまよりくる人のまれなる
しらかはの−せきちのさくら−さきにけり−あつまよりくる−ひとのまれなる |
00067 |
未入力 西行 (xxx)
谷風の花の波をし吹きこせはゐせきにたてる嶺の村まつ
たにかせの−はなのなみをし−ふきこせは−ゐせきにたてる−みねのむらまつ |
00068 |
未入力 西行 (xxx)
ちらてまてと都の花をおもはまし春かへるへき我かみなりせは
ちらてまてと−みやこのはなを−おもはまし−はるかへるへき−わかみなりせは |
00069 |
未入力 西行 (xxx)
いにしへの人の心のなさけをはふる木の花の梢にそしる
いにしへの−ひとのこころの−なさけをは−ふるきのはなの−こすゑにそしる |
00070 |
未入力 西行 (xxx)
春といへは誰も吉野の山とおもふ心にふかきゆゑやあるらん
はるといへは−たれもよしのの−やまとおもふ−こころにふかき−ゆゑやあるらむ |
00071 |
未入力 西行 (xxx)
あかつきとおもはまほしき音なれや花に暮れぬる入あひのかね
あかつきと−おもはまほしき−おとなれや−はなにくれぬる−いりあひのかね |
00072 |
未入力 西行 (xxx)
今の我も昔の人も花みてん心の色はかはらしものを
いまのわれも−むかしのひとも−はなみてむ−こころのいろは−かはらしものを |
00073 |
未入力 西行 (xxx)
花いかに我を哀と思ふらん見て過きにける春をかそへて
はないかに−われをあはれと−おもふらむ−みてすきにける−はるをかそへて |
00074 |
未入力 西行 (xxx)
何となく暮になりぬと聞く日より心にかかるみよしのの山
なにとなく−くれになりぬと−きくひより−こころにかかる−みよしののやま |
00075 |
未入力 西行 (xxx)
さかぬまの花には雲のまかふとも雲とは花のみえすもあらなん
さかぬまの−はなにはくもの−まかふとも−くもとははなの−みえすもあらなむ |
00076 |
未入力 西行 (xxx)
今さらに春をわするる花もあらしおもひのとめてけふもくらさん
いまさらに−はるをわするる−はなもあらし−おもひのとめて−けふもくらさむ |
00077 |
未入力 西行 (xxx)
吉野山木すゑの花を見し日より心は身にもそはすなりにき
よしのやま−こすゑのはなを−みしひより−こころはみにも−そはすなりにき |
00078 |
未入力 西行 (xxx)
勅とかやくたす御かとのいませかしさらはおそれて花やちらぬと
ちよくとかや−くたすみかとの−いませかし−さらはおそれて−はなやちらぬと |
00079 |
未入力 西行 (xxx)
かさこしの嶺のつつきにさく花はいつさかりともなくやちるらん
かさこしの−みねのつつきに−さくはなは−いつさかりとも−なくやちるらむ |
00080 |
未入力 西行 (xxx)
芳野山風こすくきに花さけは人のをるさへをしまれぬかな
よしのやま−かせこすくきに−はなさけは−ひとのをるさへ−をしまれぬかな |
00081 |
未入力 西行 (xxx)
散りそむる花のはつ雪ふりぬれはふみわけまうきしかの山こえ
ちりそむる−はなのはつゆき−ふりぬれは−ふみわけまうき−しかのやまこえ |
00082 |
未入力 西行 (xxx)
春風の花の錦にうつもれてゆきもやられぬしかの山越
はるかせの−はなのにしきに−うつもれて−ゆきもやられぬ−しかのやまこえ |
00083 |
未入力 西行 (xxx)
吉野山たにへたなひく白雲は嶺の桜のちるにやあるらん
よしのやま−たにへたなひく−しらくもは−みねのさくらの−ちるにやあるらむ |
00084 |
未入力 西行 (xxx)
たちまかふ嶺の雲をははらふとも花を散らさぬ嵐なりせは
たちまかふ−みねのくもをは−はらふとも−はなをちらさぬ−あらしなりせは |
00085 |
未入力 西行 (xxx)
木のもとに旅ねをすれは芳野山花の衾をきする春風
このもとに−たひねをすれは−よしのやま−はなのふすまを−きするはるかせ |
00086 |
未入力 西行 (xxx)
峰にちる花は谷なる木にそさくいたくいとはし春の山風
みねにちる−はなはたになる−きにそさく−いたくいとはし−はるのやまかせ |
00087 |
未入力 西行 (xxx)
風あらみ木すゑの花のなかれ来て庭に浪たつ白川の里
かせあらみ−こすゑのはなの−なかれきて−にはになみたつ−しらかはのさと |
00088 |
未入力 西行 (xxx)
雪ふかみえたもゆるかてちる花は風のとかにはあらぬなるへし
ゆきふかみ−えたもゆるかて−ちるはなは−かせのとかには−あらぬなるへし |
00089 |
未入力 西行 (xxx)
おもへたた花のなからん木の本になにをかけにて我かみすみなん
おもへたた−はなのなからむ−このもとに−なにをかけにて−わかみすみなむ |
00090 |
未入力 西行 (xxx)
灯にちる花の行へはしらねともをしむ心はみにとまりけり
かせにちる−はなのゆくへは−しらねとも−をしむこころは−みにとまりけり |
00091 |
未入力 西行 (xxx)
何とかくあたなる花の色をしも心にふかくおもひそめけん
なにとかく−あたなるはなの−いろをしも−こころにふかく−おもひそめけむ |
00092 |
未入力 西行 (xxx)
花もちり人も都へかへりなは山さひしくやならんとすらん
はなもちり−ひともみやこへ−かへりなは−やまさひしくや−ならむとすらむ |
00093 |
未入力 西行 (xxx)
よしの山一村見ゆる白雲は咲きおくれたるさくらなるへし
よしのやま−ひとむらみゆる−しらくもは−さきおくれたる−さくらなるへし |
00094 |
未入力 西行 (xxx)
ひきかへて花見る春はよるもなく月みる秋はひるなからなん
ひきかへて−はなみるはるは−よるもなく−つきみるあきは−ひるなからなむ |
00095 |
未入力 西行 (xxx)
打ちはるる雲なかりけり吉野山花もてわたる風と見たれは
うちはるる−くもなかりけり−よしのやま−はなもてわたる−かせとみたれは |
00096 |
未入力 西行 (xxx)
初花のひらけはしむる梢よりそはへて風のわたるなるかな
はつはなの−ひらけはしむる−こすゑより−そはへてかせの−わたるなるかな |
00097 |
未入力 西行 (xxx)
おなしくは月の折さけ山桜花みるよひのたえまあらせし
おなしくは−つきのをりさけ−やまさくら−はなみるよひの−たえまあらせし |
00098 |
未入力 西行 (xxx)
木すゑふく風の心はいかかせんしたかふ花のうらめしきかな
こすゑふく−かせのこころは−いかかせむ−したかふはなの−うらめしきかな |
00099 |
未入力 西行 (xxx)
いかてかはちらてあれともおもふへきしはしとしたふなさけしれ花
いかてかは−ちらてあれとも−おもふへき−しはしとしたふ−なさけしれはな |
00100 |
未入力 西行 (xxx)
あなかちに庭をさへはく嵐かなさこそ心に花をまかせめ
あなかちに−にはをさへはく−あらしかな−さこそこころに−はなをまかせめ |
00101 |
未入力 西行 (xxx)
をしむ人の心をさへにちらすかな花をさそへる春の山風
をしむひとの−こころをさへに−ちらすかな−はなをさそへる−はるのやまかせ |
00102 |
未入力 西行 (xxx)
浪もなく風ををさめし白川のきみのをりもや花はちりけん
なみもなく−かせををさめし−しらかはの−きみのをりもや−はなはちりけむ |
00103 |
未入力 西行 (xxx)
をしまれぬ身たにも世にはあるものをあなあやにくの花の心や
をしまれぬ−みたにもよには−あるものを−あなあやにくの−はなのこころや |
00104 |
未入力 西行 (xxx)
うき世にはととめおかしと春風のちらすは花ををしむなりけり
うきよには−ととめおかしと−はるかせの−ちらすははなを−をしむなりけり |
00105 |
未入力 西行 (xxx)
世の中をおもへはなへてちる花の我かみをさてもいつちかもせん
よのなかを−おもへはなへて−ちるはなの−わかみをさても−いつちかもせむ |
00106 |
未入力 西行 (xxx)
花さへに世をうき草になりにけりちるををしめはさそふ山水
はなさへに−よをうきくさに−なりにけり−ちるををしめは−さそふやまみつ |
00107 |
未入力 西行 (xxx)
風もよし花をもちらせいかかせんおもひはつれはあらまうきよそ
かせもよし−はなをもちらせ−いかかせむ−おもひはつれは−あらまうきよそ |
00108 |
未入力 西行 (xxx)
鴬の声に桜そちりまかふ花のこと葉を聞く心ちして
うくひすの−こゑにさくらそ−ちりまかふ−はなのことはを−きくここちして |
00109 |
未入力 西行 (xxx)
もろともに我をもくしてちりね花浮世をいとふ心あるみそ
もろともに−われをもくして−ちりねはな−うきよをいとふ−こころあるみそ |
00110 |
未入力 西行 (xxx)
なかむとて花にもいたくなれぬれはちる別こそかなしかりけれ
なかむとて−はなにもいたく−なれぬれは−ちるわかれこそ−かなしかりけれ |
00111 |
未入力 西行 (xxx)
ちる花ををしむこころやととまりて又こんはるのたねとなるへき
ちるはなを−をしむこころや−ととまりて−またこむはるの−たねとなるへき |
00112 |
未入力 西行 (xxx)
花もちりなみたももろき春なれやまたやはとおもふ夕暮の空
はなもちり−なみたももろき−はるなれや−またやはとおもふ−ゆふくれのそら |
00113 |
未入力 西行 (xxx)
さらに又霞に暮るる山路かな花をたつぬる春の明ほの
さらにまた−かすみにくるる−やまちかな−はなをたつぬる−はるのあけほの |
00114 |
未入力 西行 (xxx)
誰か又花をたつねて芳野山こけふみわくる岩つたふらん
たれかまた−はなをたつねて−よしのやま−こけふみわくる−いはつたふらむ |
00115 |
未入力 西行 (xxx)
吉野山雲をはかりに尋ねいりて心にかけし花をみるかな
よしのやま−くもをはかりに−たつねいりて−こころにかけし−はなをみるかな |
00116 |
未入力 西行 (xxx)
待ちきつるやかみの桜さきにけりあらくおろすなみすの山かせ
まちきつる−やかみのさくら−さきにけり−あらくおろすな−みすのやまかせ |
00117 |
未入力 西行 (xxx)
見る人に花も昔を思ひ出てて恋しかるらし雨にしをるる
みるひとに−はなもむかしを−おもひいてて−こひしかるらし−あめにしをるる |
00118 |
未入力 上西門院兵衛の局 (xxx)
いにしへを忍ふる雨と誰か見ん花もその世のともしなけれは
いにしへを−しのふるあめと−たれかみむ−はなもそのよの−ともしなけれは |
00119 |
未入力 西行 (xxx)
雲にまかふ花のしたにてなかむれはおほろに月のみゆるなりけり
くもにまかふ−はなのしたにて−なかむれは−おほろにつきの−みゆるなりけり |
00120 |
未入力 西行 (xxx)
年をへておなし木すゑに向へとも花こそ人にあかれさりけれ
としをへて−おなしこすゑに−むかへとも−はなこそひとに−あかれさりけれ |
00121 |
未入力 西行 (xxx)
ちるをみてかへる心や桜花昔にかはるしるしなるらん
ちるをみて−かへるこころや−さくらはな−むかしにかはる−しるしなるらむ |
00122 |
未入力 西行 (xxx)
古郷の昔の庭を思出ててすみれつみにとくる人もかな
ふるさとの−むかしのにはを−おもひいてて−すみれつみにと−くるひともかな |
00123 |
未入力 西行 (xxx)
つくりすてあらしはてたる沢を田にさかりにさけるうらわかみかな
つくりすて−あらしはてたる−さはをたに−さかりにさける−うらわかみかな |
00124 |
未入力 西行 (xxx)
なほさりにやきすてしののさわらひはをる人なくてほとろとやなる
なほさりに−やきすてしのの−さわらひは−をるひとなくて−ほとろとやなる |
00125 |
未入力 西行 (xxx)
山ふきの花のさかりに成りぬれはここにもゐてとおもほゆるかな
やまふきの−はなのさかりに−なりぬれは−ここにもゐてと−おもほゆるかな |
00126 |
未入力 西行 (xxx)
ますけおふる荒田に水をまかすれはうれしかほにも鳴く蛙かな
ますけおふる−あらたにみつを−まかすれは−うれしかほにも−なくかはつかな |
00127 |
未入力 西行 (xxx)
うれしともおもひそはてぬ郭公春きくことのならひなけれは
うれしとも−おもひそはてぬ−ほとときす−はるきくことの−ならひなけれは |
00128 |
未入力 西行 (xxx)
春ゆゑにせめても物をおもへとやみそかにたにもたらて暮れぬる
はるゆゑに−せめてもものを−おもへとや−みそかにたにも−たらてくれぬる |
00129 |
未入力 西行 (xxx)
春くれて人ちりぬめり芳野山花のわかれをおもふのみかは
はるくれて−ひとちりぬめり−よしのやま−はなのわかれを−おもふのみかは |
00130 |
未入力 西行 (xxx)
青葉さへみれは心のとまるかなちりにし花の名残と思へは
あをはさへ−みれはこころの−とまるかな−ちりにしはなの−なこりとおもへは |
00131 |
未入力 西行 (xxx)
草しけるみちかりあけて山里は花みし人の心をそ見る
くさしける−みちかりあけて−やまさとは−はなみしひとの−こころをそみる |
00132 |
未入力 西行 (xxx)
神かきのあたりに咲くもたよりあれやゆふかけたりとみゆる卯の花
かみかきの−あたりにさくも−たよりあれや−ゆふかけたりと−みゆるうのはな |
00133 |
未入力 西行 (xxx)
時鳥人にかたらぬ折にしもはつね聞くこそかひなかりけれ
ほとときす−ひとにかたらぬ−をりにしも−はつねきくこそ−かひなかりけれ |
00134 |
未入力 西行 (xxx)
里なるるたそかれときの郭公聞かすかほにて又名のらせん
さとなるる−たそかれときの−ほとときす−きかすかほにて−またなのらせむ |
00135 |
未入力 西行 (xxx)
時鳥なかて明けぬとつけかほにまたれぬ鳥の音こそ聞ゆれ
ほとときす−なかてあけぬと−つけかほに−またれぬとりの−ねこそきこゆれ |
00136 |
未入力 西行 (xxx)
郭公聞かぬものゆゑまよはまし花をたつねし山路ならねは
ほとときす−きかぬものゆゑ−まよはまし−はなをたつねし−やまちならねは |
00137 |
未入力 西行 (xxx)
時鳥おもひもわかぬ一こゑをききつと人にいかかかたらん
ほとときす−おもひもわかぬ−ひとこゑを−ききつとひとに−いかかかたらむ |
00138 |
未入力 西行 (xxx)
聞きおくる心をくして郭公たかまの山の嶺こえぬなり
ききおくる−こころをくして−ほとときす−たかまのやまの−みねこえぬなり |
00139 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨のはれまも見えぬ雲路より山時鳥鳴きて過くなり
さみたれの−はれまもみえぬ−くもちより−やまほとときす−なきてすくなり |
00140 |
未入力 西行 (xxx)
我か宿に花橘をうゑてこそ山郭公待つへかりけれ
わかやとに−はなたちはなを−うゑてこそ−やまほとときす−まつへかりけれ |
00141 |
未入力 西行 (xxx)
聞かすともここをせにせん時鳥山田の原の杉の村立
きかすとも−ここをせにせむ−ほとときす−やまたのはらの−すきのむらたち |
00142 |
未入力 西行 (xxx)
世のうきをおもひし知れはやすきねをあまりこめたる郭公かな
よのうきを−おもひししれは−やすきねを−あまりこめたる−ほとときすかな |
00143 |
未入力 西行 (xxx)
うき身しりて我とはまたし時鳥橘にほふとなりたのみて
うきみしりて−われとはまたし−ほとときす−たちはなにほふ−となりたのみて |
00144 |
未入力 西行 (xxx)
橘のさかりしらなん郭公ちりなん後にこゑはかるとも
たちはなの−さかりしらなむ−ほとときす−ちりなむのちに−こゑはかるとも |
00145 |
未入力 西行 (xxx)
待ちかねてねたらはいかにうからまし山時鳥夜をのこしけり
まちかねて−ねたらはいかに−うからまし−やまほとときす−よをのこしけり |
00146 |
未入力 西行 (xxx)
郭公花橘になりにけり梅にかをりし鴬のこゑ
ほとときす−はなたちはなに−なりにけり−うめにかをりし−うくひすのこゑ |
00147 |
未入力 西行 (xxx)
鴬の古巣より立つ時鳥あゐよりもこきこゑの色かな
うくひすの−ふるすよりたつ−ほとときす−あゐよりもこき−こゑのいろかな |
00148 |
未入力 西行 (xxx)
時鳥こゑのさかりになりにけりたつねぬ人にさ月つくらし
ほとときす−こゑのさかりに−なりにけり−たつねぬひとに−さつきつくらし |
00149 |
未入力 西行 (xxx)
浮世おもふわれかはあやな時鳥あはれもこもるしのひねのこゑ
うきよおもふ−われかはあやな−ほとときす−あはれもこもる−しのひねのこゑ |
00150 |
未入力 西行 (xxx)
郭公いかなるゆゑの契りにてかかるこゑある鳥となるらん
ほとときす−いかなるゆゑの−ちきりにて−かかるこゑある−とりとなるらむ |
00151 |
未入力 西行 (xxx)
時鳥ふかき嶺より出てにけり外山のすそにこゑのおちくる
ほとときす−ふかきみねより−いてにけり−とやまのすそに−こゑのおちくる |
00152 |
未入力 西行 (xxx)
高砂の尾上を行けと人もあはす山郭公里なれにけり
たかさこの−をのへをゆけと−ひともあはす−やまほとときす−さとなれにけり |
00153 |
未入力 西行 (xxx)
早瀬川つなての岸をよそにみてのほりわつらふ五月雨の比
はやせかは−つなてのきしを−よそにみて−のほりわつらふ−さみたれのころ |
00154 |
未入力 西行 (xxx)
河はたのよとみにとまるなかれ木のうき橋になる五月雨の比
かははたの−よとみにとまる−なかれきの−うきはしになる−さみたれのころ |
00155 |
未入力 西行 (xxx)
水なしとききてふりにしかつまたの池あらたむる五月雨のころ
みつなしと−ききてふりにし−かつまたの−いけあらたむる−さみたれのころ |
00156 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨に水まさるらしうち橋のくもてにかくるなみの白糸
さみたれに−みつまさるらし−うちはしの−くもてにかくる−なみのしらいと |
00157 |
未入力 西行 (xxx)
軒ちかき花橘に袖しめて昔を忍ふ涙つつまん
のきちかき−はなたちはなに−そてしめて−むかしをしのふ−なみたつつまむ |
00158 |
未入力 西行 (xxx)
夏山の夕下風の涼しさにならの木陰のたたまうきかな
なつやまの−ゆふしたかせの−すすしさに−ならのこかけの−たたまうきかな |
00159 |
未入力 西行 (xxx)
解のほる蘆の若葉に月さえて秋をあらそふ難波江のうら
つゆのほる−あしのわかはに−つきさえて−あきをあらそふ−なにはえのうら |
00160 |
未入力 西行 (xxx)
夕立のはるれは月そやとりける玉ゆりすうる荷の上はに
ゆふたちの−はるれはつきそ−やとりける−たまゆりすうる−はすのうははに |
00161 |
未入力 西行 (xxx)
むすふてに涼しき影をそふるかなしみつにやとる夏のよの月
むすふてに−すすしきかけを−そふるかな−しみつにやとる−なつのよのつき |
00162 |
未入力 西行 (xxx)
みまくさのはらのすすきをしかふとてふしとあせぬとしかおもふらん
みまくさの−はらのすすきを−しかふとて−ふしとあせぬと−しかおもふらむ |
00163 |
未入力 西行 (xxx)
たひ人のわくる夏のの草しけみはすゑにすけのをかさはつれて
たひひとの−わくるなつのの−くさしけみ−はすゑにすけの−をかさはつれて |
00164 |
未入力 西行 (xxx)
山郷は外面の真葛はをしけみうらふき返す秋を待つかな
やまさとは−そとものまくす−はをしけみ−うらふきかへす−あきをまつかな |
00165 |
未入力 西行 (xxx)
さまさまにあはれを篭めて木すゑふく風に秋しる太山辺のさと
さまさまに−あはれをこめて−こすゑふく−かせにあきしる−みやまへのさと |
00166 |
未入力 西行 (xxx)
つねよりもあきになるをの松風はわきてみにしむ物にそ有りける
つねよりも−あきになるをの−まつかせは−わきてみにしむ−ものにそありける |
00167 |
未入力 西行 (xxx)
おしなへて物をおもはぬ人にさへ心をつくる秋のはつ風
おしなへて−ものをおもはぬ−ひとにさへ−こころをつくる−あきのはつかせ |
00168 |
未入力 西行 (xxx)
舟よする天の川瀬の夕暮は涼しき風や吹きわたすらん
ふねよする−あまのかはせの−ゆふくれは−すすしきかせや−ふきわたすらむ |
00169 |
未入力 西行 (xxx)
七夕のなかき思ひもくるしきにこの瀬をかきれ天の川なみ
たなはたの−なかきおもひも−くるしきに−このせをかきれ−あまのかはなみ |
00170 |
未入力 西行 (xxx)
あはれいかに草葉の露のこほるらん秋風立ちぬ宮城野の原
あはれいかに−くさはのつゆの−こほるらむ−あきかせたちぬ−みやきののはら |
00171 |
未入力 西行 (xxx)
たへぬみにあはれおもふもくるしきに秋のこさらん山里もかな
たへぬみに−あはれおもふも−くるしきに−あきのこさらむ−やまさともかな |
00172 |
未入力 西行 (xxx)
心なきみにも哀はしられけり鴫たつ沢の秋の夕暮
こころなき−みにもあはれは−しられけり−しきたつさはの−あきのゆふくれ |
00173 |
未入力 西行 (xxx)
足引の山陰なれはとおもふまに木すゑにつくる日くらしのこゑ
あしひきの−やまかけなれはと−おもふまに−こすゑにつくる−ひくらしのこゑ |
00174 |
未入力 西行 (xxx)
大かたの露には何のなるならん袂におくは涙なりけり
おほかたの−つゆにはなにの−なるならむ−たもとにおくは−なみたなりけり |
00175 |
未入力 西行 (xxx)
みにしみてあはれしらする風よりも月にそ秋の色は見えける
みにしみて−あはれしらする−かせよりも−つきにそあきの−いろはみえける |
00176 |
未入力 西行 (xxx)
山陰にすまぬこころのいかなれやをしまれて入る月もある世に
やまかけに−すまぬこころの−いかなれや−をしまれている−つきもあるよに |
00177 |
未入力 西行 (xxx)
待出ててくまなきよひの月みれは雲そ心にまつかかりける
まちいてて−くまなきよひの−つきみれは−くもそこころに−まつかかりける |
00178 |
未入力 西行 (xxx)
いかにそや残りおほかる心地して雲にかくるる秋のよの月
いかにそや−のこりおほかる−ここちして−くもにかくるる−あきのよのつき |
00179 |
未入力 西行 (xxx)
打ちつけに又来む秋のこよひまて月ゆゑをしくなる命かな
うちつけに−またこむあきの−こよひまて−つきゆゑをしく−なるいのちかな |
00180 |
未入力 西行 (xxx)
人も見ぬよしなき山の末まてもすむらん月のかけをこそ思へ
ひともみぬ−よしなきやまの−すゑまても−すむらむつきの−かけをこそおもへ |
00181 |
未入力 西行 (xxx)
なかなかに心つくすもくるしきに曇らはいりね秋のよの月
なかなかに−こころつくすも−くるしきに−くもらはいりね−あきのよのつき |
00182 |
未入力 西行 (xxx)
夜もすから月こそ袖にやとりけれ昔の秋を思ひ出つれは
よもすから−つきこそそてに−やとりけれ−むかしのあきを−おもひいつれは |
00183 |
未入力 西行 (xxx)
播磨かたなたのみおきにこき出ててにしに山なき月をみるかな
はりまかた−なたのみおきに−こきいてて−にしにやまなき−つきをみるかな |
00184 |
未入力 西行 (xxx)
わたの原浪にも月はかくれけり都の山を何いとひけん
わたのはら−なみにもつきは−かくれけり−みやこのやまを−なにいとひけむ |
00185 |
未入力 西行 (xxx)
あはれしる人見たらはとおもふかな旅ねの袖にやとる月影
あはれしる−ひとみたらはと−おもふかな−たひねのそてに−やとるつきかけ |
00186 |
未入力 西行 (xxx)
月見はとちきりおきてし古郷の人もやこよひ抽ぬらすらん
つきみはと−ちきりおきてし−ふるさとの−ひともやこよひ−そてぬらすらむ |
00187 |
未入力 西行 (xxx)
くまもなき折しも人をおもひ出てて心と月をやつしつるかな
くまもなき−をりしもひとを−おもひいてて−こころとつきを−やつしつるかな |
00188 |
未入力 西行 (xxx)
物おもふ心のたけそしられける夜な夜な月をなかめ明して
ものおもふ−こころのたけそ−しられける−よなよなつきを−なかめあかして |
00189 |
未入力 西行 (xxx)
月のためこころやすきは雲なれや浮世にすめる影をかくせは
つきのため−こころやすきは−くもなれや−うきよにすめる−かけをかくせは |
00190 |
未入力 西行 (xxx)
わひ人のすむ山里のとかならんくもらしものを秋のよの月
わひひとの−すむやまさとの−とかならむ−くもらしものを−あきのよのつき |
00191 |
未入力 西行 (xxx)
うきみこそいとひなからも哀なれ月を詠めて年をへぬれは
うきみこそ−いとひなからも−あはれなれ−つきをなかめて−としをへぬれは |
00192 |
未入力 西行 (xxx)
世のうさに一かたならすうかれゆく心さためよ秋のよの月
よのうさに−ひとかたならす−うかれゆく−こころさためよ−あきのよのつき |
00193 |
未入力 西行 (xxx)
なにこともかはりのみ行く世の中におなし影にもすめる月かな
なにことも−かはりのみゆく−よのなかに−おなしかけにも−すめるつきかな |
00194 |
未入力 西行 (xxx)
いとふ世も月すむ秋になりぬれはなからへすはと思ひけるかな
いとふよも−つきすむあきに−なりぬれは−なからへすはと−おもひけるかな |
00195 |
未入力 西行 (xxx)
世の中のうきをもしらてすむ月の影は我かみの心ちにそある
よのなかの−うきをもしらて−すむつきの−かけはわかみの−ここちにそある |
00196 |
未入力 西行 (xxx)
すつとならは浮世をいとふしるしあらん我にはくもれ秋のよの月
すつとならは−うきよをいとふ−しるしあらむ−われにはくもれ−あきのよのつき |
00197 |
未入力 西行 (xxx)
いにしへのかた見に月そなれとなるさらてのことはあるは有るかは
いにしへの−かたみにつきそ−なれとなる−さらてのことは−あるはあるかは |
00198 |
未入力 西行 (xxx)
なかめつつ月にこころそおいにける今いくたひか世をもすさめん
なかめつつ−つきにこころそ−おいにける−いまいくたひか−よをもすさめむ |
00199 |
未入力 西行 (xxx)
いつくとてあはれならすはなけれともあれたる宿そ月はさひしき
いつくとて−あはれならすは−なけれとも−あれたるやとそ−つきはさひしき |
00200 |
未入力 西行 (xxx)
山里をとへかし人にあはれみせん露しく庭にすめる月かけ
やまさとを−とへかしひとに−あはれみせむ−つゆしくにはに−すめるつきかけ |
00201 |
未入力 西行 (xxx)
水の面にやとる月さへ入りぬれは池の底にも山や有りける
みつのおもに−やとるつきさへ−いりぬれは−いけのそこにも−やまやありける |
00202 |
未入力 西行 (xxx)
有明の月のころにしなりぬれは秋はよるなき心ちこそすれ
ありあけの−つきのころにし−なりぬれは−あきはよるなき−ここちこそすれ |
00203 |
未入力 西行 (xxx)
かそへねとこよひの月のけしきにて秋のなかはを空にしるかな
かそへねと−こよひのつきの−けしきにて−あきのなかはを−そらにしるかな |
00204 |
未入力 西行 (xxx)
秋はたたこよひ一よの名なりけりおなし雲井に月はすめとも
あきはたた−こよひひとよの−ななりけり−おなしくもゐに−つきはすめとも |
00205 |
未入力 西行 (xxx)
さやかなる影にてしるし秋の月とよにあまりていつかなりけり
さやかなる−かけにてしるし−あきのつき−とよにあまりて−いつかなりけり |
00206 |
未入力 西行 (xxx)
老いもせぬ十五の年もあるものをこよひの月のかからましかは
おいもせぬ−しふこのとしも−あるものを−こよひのつきの−かからましかは |
00207 |
未入力 西行 (xxx)
月まては影なく雲につつまれてこよひならすはやみに見えまし
つきまては−かけなくくもに−つつまれて−こよひならすは−やみにみえまし |
00208 |
未入力 西行 (xxx)
雲きえし秋の中はの空よりも月はこよひそ名に出てにける
くもきえし−あきのなかはの−そらよりも−つきはこよひそ−なにいてにける |
00209 |
未入力 西行 (xxx)
こよひはと心得かほにすむ月のひかりもてなす菊の白露
こよひはと−こころえかほに−すむつきの−ひかりもてなす−きくのしらつゆ |
00210 |
未入力 西行 (xxx)
月みれはあきくははれる年は又あかぬ心もそふにそ有りける
つきみれは−あきくははれる−としはまた−あかぬこころも−そふにそありける |
00211 |
未入力 西行 (xxx)
秋のよの空にいつてふ名のみして影ほのかなる夕月よかな
あきのよの−そらにいつてふ−なのみして−かけほのかなる−ゆふつくよかな |
00212 |
未入力 西行 (xxx)
うれしとや待つ人ことにおもふらん山の端出つる秋のよの月
うれしとや−まつひとことに−おもふらむ−やまのはいつる−あきのよのつき |
00213 |
未入力 西行 (xxx)
あつまには入りぬと人やおもふらん都にいつる山のはの月
あつまには−いりぬとひとや−おもふらむ−みやこにいつる−やまのはのつき |
00214 |
未入力 西行 (xxx)
天のはらおなし岩とをいつれともひかりことなる秋のよの月
あまのはら−おなしいはとを−いつれとも−ひかりことなる−あきのよのつき |
00215 |
未入力 西行 (xxx)
行末の月をはしらす過来ぬる秋またかかる影はなかりき
ゆくすゑの−つきをはしらす−すききぬる−あきまたかかる−かけはなかりき |
00216 |
未入力 西行 (xxx)
なかむるもまことしからぬここ地して世にあまりたる月の影かな
なかむるも−まことしからぬ−ここちして−よにあまりたる−つきのかけかな |
00217 |
未入力 西行 (xxx)
月のためひるとおもふはかひなきにしはしくもりてよるをしらせよ
つきのため−ひるとおもふは−かひなきに−しはしくもりて−よるをしらせよ |
00218 |
未入力 西行 (xxx)
さためなく鳥や鳴くらん秋のよは月のひかりを思ひまかへて
さためなく−とりやなくらむ−あきのよは−つきのひかりを−おもひまかへて |
00219 |
未入力 西行 (xxx)
月さゆる明石のせとに風吹けは氷の上にたたむしらなみ
つきさゆる−あかしのせとに−かせふけは−こほりのうへに−たたむしらなみ |
00220 |
未入力 西行 (xxx)
清見かた沖の岩こす白波にひかりをかはす秋のよの月
きよみかた−おきのいはこす−しらなみに−ひかりをかはす−あきのよのつき |
00221 |
未入力 西行 (xxx)
なかむれはほかの影こそゆかしけれかはらしものを秋のよの月
なかむれは−ほかのかけこそ−ゆかしけれ−かはらしものを−あきのよのつき |
00222 |
未入力 西行 (xxx)
秋風やあまつ雲ゐをはらふらんふけ行くままに月のさやけき
あきかせや−あまつくもゐを−はらふらむ−ふけゆくままに−つきのさやけき |
00223 |
未入力 西行 (xxx)
中中にくもると見えてはるる夜の月は光のそふ心ちする
なかなかに−くもるとみえて−はるるよの−つきはひかりの−そふここちする |
00224 |
未入力 西行 (xxx)
月を見て心うかれしいにしへの秋にもさらにめくりあひぬる
つきをみて−こころうかれし−いにしへの−あきにもさらに−めくりあひぬる |
00225 |
未入力 西行 (xxx)
ゆくへなく月に心のすみすみてはてはいかにかならんとすらん
ゆくへなく−つきにこころの−すみすみて−はてはいかにか−ならむとすらむ |
00226 |
未入力 西行 (xxx)
すゑはふく風は野もせにわたるともあらくはわけし萩の下露
すゑはふく−かせはのもせに−わたるとも−あらくはわけし−はきのしたつゆ |
00227 |
未入力 西行 (xxx)
夕露をはらへは袖に玉ちりて道わけわふるをのの萩原
ゆふつゆを−はらへはそてに−たまちりて−みちわけわふる−をののはきはら |
00228 |
未入力 西行 (xxx)
をらて行く袖にも露はかかりけり萩かえしけき野ちのほそ道
をらてゆく−そてにもつゆは−かかりけり−はきかえしけき−のちのほそみち |
00229 |
未入力 西行 (xxx)
花すすき心あてにそ分けて行くほの見し道のあとしなけれは
はなすすき−こころあてにそ−わけてゆく−ほのみしみちの−あとしなけれは |
00230 |
未入力 西行 (xxx)
けふそしるそのえにあらふから錦萩さく野へに有りけるものを
けふそしる−そのえにあらふ−からにしき−はきさくのへに−ありけるものを |
00231 |
未入力 西行 (xxx)
花の色を影にうつせは秋の夜の月そ野守の鏡なりける
はなのいろを−かけにうつせは−あきのよの−つきそのもりの−かかみなりける |
00232 |
未入力 西行 (xxx)
花かえに露の白玉ぬきかけてをる袖ぬらすをみなへしかな
はなかえに−つゆのしらたま−ぬきかけて−をるそてぬらす−をみなへしかな |
00233 |
未入力 西行 (xxx)
たくひなき花のすかたををみなへし池のかかみにうつしてそみる
たくひなき−はなのすかたを−をみなへし−いけのかかみに−うつしてそみる |
00234 |
未入力 西行 (xxx)
庭さゆる月なりけりなをみなへし霜にあひたる花とみたれは
にはさゆる−つきなりけりな−をみなへし−しもにあひたる−はなとみたれは |
00235 |
未入力 西行 (xxx)
花をこそ野への物とは見にきつれ暮るれは虫の音をもききけり
はなをこそ−のへのものとは−みにきつれ−くるれはむしの−ねをもききけり |
00236 |
未入力 西行 (xxx)
小萩さく山田のくろの虫の音に庵もる人や袖ぬらすらん
こはきさく−やまたのくろの−むしのねに−いほもるひとや−そてぬらすらむ |
00237 |
未入力 西行 (xxx)
ひとりねの友にはならてきりきりす鳴く音を聞けは物おもひそふ
ひとりねの−ともにはならて−きりきりす−なくねをきけは−ものおもひそふ |
00238 |
未入力 西行 (xxx)
池にすむ月にかかれる浮雲ははらひ残せる水さひなりけり
いけにすむ−つきにかかれる−うきくもは−はらひのこせる−みさひなりけり |
00239 |
未入力 西行 (xxx)
くもりなき山にて海の月見れは島そ氷のたえまなりける
くもりなき−やまにてうみの−つきみれは−しまそこほりの−たえまなりける |
00240 |
未入力 西行 (xxx)
山おろし月に木の葉を吹きためて光にまかふ影をみるかな
やまおろし−つきにこのはを−ふきためて−ひかりにまかふ−かけをみるかな |
00241 |
未入力 西行 (xxx)
鹿の音をかきねにこめて聞くのみか月もすみける秋の山里
しかのねを−かきねにこめて−きくのみか−つきもすみける−あきのやまさと |
00242 |
未入力 西行 (xxx)
庵にもる月の影こそさひしけれ山田はひたの音はかりして
いほにもる−つきのかけこそ−さひしけれ−やまたはひたの−おとはかりして |
00243 |
未入力 西行 (xxx)
おもふにも過きて哀に聞ゆるは荻のはわくる秋の夕賞
おもふにも−すきてあはれに−きこゆるは−をきのはわくる−あきのゆふくれ |
00244 |
未入力 西行 (xxx)
なにとなく物かなしくそ見えわたるとはたの面の秋の夕くれ
なにとなく−ものかなしくそ−みえわたる−とはたのおもの−あきのゆふくれ |
00245 |
未入力 西行 (xxx)
山郷は秋のすゑにそ思ひしるかなしかりけり木からしの風
やまさとは−あきのすゑにそ−おもひしる−かなしかりけり−こからしのかせ |
00246 |
未入力 西行 (xxx)
独ねの夜さむになるにかさねはや誰かためにうつ衣なるらん
ひとりねの−よさむになるに−かさねはや−たかためにうつ−ころもなるらむ |
00247 |
未入力 西行 (xxx)
そめてけり紅葉の色のくれなゐをしくると見えし太山辺の里
そめてけり−もみちのいろの−くれなゐを−しくるとみえし−みやまへのさと |
00248 |
未入力 西行 (xxx)
さまさまの錦有りけるみやまかな花見し峰を時雨そめつつ
さまさまの−にしきありける−みやまかな−はなみしみねを−しくれそめつつ |
00249 |
未入力 西行 (xxx)
秋風に穂すゑなみよるかるかやの下葉に虫のこゑみたるなり
あきかせに−ほすゑなみよる−かるかやの−したはにむしの−こゑみたるなり |
00250 |
未入力 西行 (xxx)
夜もすから袂に虫の音をかけてはらひわつらふ袖の白露
よもすから−たもとにむしの−ねをかけて−はらひわつらふ−そてのしらつゆ |
00251 |
未入力 西行 (xxx)
虫の音にさのみぬるへき袂かはあやしや心物おもふへく
むしのねに−さのみぬるへき−たもとかは−あやしやこころ−ものおもふへく |
00252 |
未入力 西行 (xxx)
横雲の風にわかるるしののめに山とひこゆるはつかりのこゑ
よこくもの−かせにわかるる−しののめに−やまとひこゆる−はつかりのこゑ |
00253 |
未入力 西行 (xxx)
白雲をつはさにかけてとふかりの門田の面の友したふなり
しらくもを−つはさにかけて−とふかりの−かとたのおもの−ともしたふなり |
00254 |
未入力 西行 (xxx)
晴へれやらぬ太山の霧のたえたえにほのかに鹿の声聞ゆなり
はれやらぬ−みやまのきりの−たえたえに−ほのかにしかの−こゑきこゆなり |
00255 |
未入力 西行 (xxx)
しの原やきりにまとひて鳴く鹿の声かすかなる秋の夕暮
しのはらや−きりにまとひて−なくしかの−こゑかすかなる−あきのゆふくれ |
00256 |
未入力 西行 (xxx)
夜をのこすねさめに聞くそ哀なる夢のの鹿もかくやなくらん
よをのこす−ねさめにきくそ−あはれなる−ゆめののしかも−かくやなくらむ |
00257 |
未入力 西行 (xxx)
なにとなくすままほしくそおもほゆる鹿あはれなる秋の山里
なにとなく−すままほしくそ−おもほゆる−しかあはれなる−あきのやまさと |
00258 |
未入力 西行 (xxx)
夕露の玉しくを田の稲莚かけほすすゑに月そやとれる
ゆふつゆの−たましくをたの−いなむしろ−かけほすすゑに−つきそやとれる |
00259 |
未入力 西行 (xxx)
くもりなき月のひかりにさそはれて幾雲ゐまて行く心そも
くもりなき−つきのひかりに−さそはれて−いくくもゐまて−ゆくこころそも |
00260 |
未入力 西行 (xxx)
我なれや松の梢に月たけてみとりの色に霜ふりにけり
われなれや−まつのこすゑに−つきたけて−みとりのいろに−しもふりにけり |
00261 |
未入力 西行 (xxx)
ふりさけし人の心そしられけるこよひ三笠の月をなかめて
ふりさけし−ひとのこころそ−しられける−こよひみかさの−つきをなかめて |
00262 |
未入力 西行 (xxx)
からす羽にかく玉つさの心地して雁なきわたる夕やみの空
からすはに−かくたまつさの−ここちして−かりなきわたる−ゆふやみのそら |
00263 |
未入力 西行 (xxx)
三笠山月さしのほる影さえて鹿鳴きそむる春日のの原
みかさやま−つきさしのほる−かけさえて−しかなきそむる−かすかののはら |
00264 |
未入力 西行 (xxx)
かねてより心そいととすみのほる月待つ嶺のさをしかのこゑ
かねてより−こころそいとと−すみのほる−つきまつみねの−さをしかのこゑ |
00265 |
未入力 西行 (xxx)
山里はあはれなりやと人とはは鹿の鳴く音をきけとこたへん
やまさとは−あはれなりやと−ひととはは−しかのなくねを−きけとこたへむ |
00266 |
未入力 西行 (xxx)
小倉山ふもとをこむる秋霧に立ちもらさるるさをしかのこゑ
をくらやま−ふもとをこむる−あききりに−たちもらさるる−さをしかのこゑ |
00267 |
未入力 西行 (xxx)
を山たの庵ちかく鳴く鹿の音におとろかされておとろかすかな
をやまたの−いほちかくなく−しかのねに−おとろかされて−おとろかすかな |
00268 |
未入力 西忍入道 (xxx)
しかのねや心ならねはとまるらんさらては野へをみなみするかな
しかのねや−こころならねは−とまるらむ−さらてはのへを−みなみするかな |
00269 |
未入力 西行 (xxx)
鹿のたつ野への錦のきりはらは残おほかる心ちこそすれ
しかのたつ−のへのにしきの−きりはらは−のこりおほかる−ここちこそすれ |
00270 |
未入力 西行 (xxx)
きりきりす夜さむに秋のなるままによわるかこゑのとほさかり行く
きりきりす−よさむにあきの−なるままに−よわるかこゑの−とほさかりゆく |
00271 |
未入力 西行 (xxx)
誰すみてあはれしるらん山郷の雨降りすさむ夕暮の空
たれすみて−あはれしるらむ−やまさとの−あめふりすさむ−ゆふくれのそら |
00272 |
未入力 西行 (xxx)
雲かかる遠山はたの秋されは思ひやるたにかなしきものを
くもかかる−とほやまはたの−あきされは−おもひやるたに−かなしきものを |
00273 |
未入力 西行 (xxx)
たつた山時雨しぬへくくもる空に心のいろをそめはしめつる
たつたやま−しくれしぬへく−くもるそらに−こころのいろを−そめはしめつる |
00274 |
未入力 西行 (xxx)
なにとなく心をさへはつくすらん我かなけきにて暮るる秋かは
なにとなく−こころをさへは−つくすらむ−わかなけきにて−くるるあきかは |
00275 |
未入力 西行 (xxx)
をしめとも鐘の音さへかはるかな霜にや露を結ひかゆらん
をしめとも−かねのおとさへ−かはるかな−しもにやつゆを−むすひかゆらむ |
00276 |
未入力 西行 (xxx)
初時雨あはれしらせてすきぬなりおとに心の色をそめつつ
はつしくれ−あはれしらせて−すきぬなり−おとにこころの−いろをそめつつ |
00277 |
未入力 西行 (xxx)
かねてより木すゑの色をおもふかな時雨れはしむるみやまへのさと
かねてより−こすゑのいろを−おもふかな−しくれはしむる−みやまへのさと |
00278 |
未入力 西行 (xxx)
月をまつ高ねの雲は晴れにけり心ありけるはつ時雨かな
つきをまつ−たかねのくもは−はれにけり−こころありける−はつしくれかな |
00279 |
未入力 西行 (xxx)
霜うつむ葎かしたのきりきりすあるかなきかの声きこゆなり
しもうつむ−むくらかしたの−きりきりす−あるかなきかの−こゑきこゆなり |
00280 |
未入力 西行 (xxx)
時雨かとねさめの床にきこゆるは嵐にたへぬ木のはなりけり
しくれかと−ねさめのとこに−きこゆるは−あらしにたへぬ−このはなりけり |
00281 |
未入力 西行 (xxx)
霜にあひて色あらたむる蘆のはのさひしくみゆる難波江の浦
しもにあひて−いろあらたむる−あしのはの−さひしくみゆる−なにはえのうら |
00282 |
未入力 西行 (xxx)
かきこめしすそのの薄霜かれてさひしさまさる柴の庵かな
かきこめし−すそののすすき−しもかれて−さひしさまさる−しはのいほかな |
00283 |
未入力 西行 (xxx)
霜さゆる庭の木のはをふみ分けて月はみるやととふ人もかな
しもさゆる−にはのこのはを−ふみわけて−つきはみるやと−とふひともかな |
00284 |
未入力 西行 (xxx)
あはち島せとの塩干の夕暮にすまよりかよふ千鳥鳴くなり
あはちしま−せとのしほひの−ゆふくれに−すまよりかよふ−ちとりなくなり |
00285 |
未入力 西行 (xxx)
さゆれとも心やすくそ聞きあかす川瀬の千鳥友くしてけり
さゆれとも−こころやすくそ−ききあかす−かはせのちとり−ともくしてけり |
00286 |
未入力 西行 (xxx)
せとわたるたななしを舟心せよあられみたるるしまきよこきる
せとわたる−たななしをふね−こころせよ−あられみたるる−しまきよこきる |
00287 |
未入力 西行 (xxx)
木からしに木のはのおつる山郷は涙さへこそもろく成りぬれ
こからしに−このはのおつる−やまさとは−なみたさへこそ−もろくなりぬれ |
00288 |
未入力 西行 (xxx)
くれなゐの木のはの色をおろしつつあくまて人にみゆる山風
くれなゐの−このはのいろを−おろしつつ−あくまてひとに−みゆるやまかせ |
00289 |
未入力 西行 (xxx)
瀬にたたむ岩のしからみ浪かけて錦をなかす山川のみつ
せにたたむ−いはのしからみ−なみかけて−にしきをなかす−やまかはのみつ |
00290 |
未入力 西行 (xxx)
秋すきて庭のよもきのすゑみれは月も昔になる心ちする
あきすきて−にはのよもきの−すゑみれは−つきもむかしに−なるここちする |
00291 |
未入力 西行 (xxx)
さひしさは秋見し空にかはりけりかれ野をてらす有明の月
さひしさは−あきみしそらに−かはりけり−かれのをてらす−ありあけのつき |
00292 |
未入力 西行 (xxx)
小倉山ふもとの里に木のはちれは梢にはるる月をみるかな
をくらやま−ふもとのさとに−このはちれは−こすゑにはるる−つきをみるかな |
00293 |
未入力 西行 (xxx)
ひとりすむ片山陰の友なれや嵐にはるる冬のよの月
ひとりすむ−かたやまかけの−ともなれや−あらしにはるる−ふゆのよのつき |
00294 |
未入力 西行 (xxx)
まきの屋の時雨の音を聞く袖に月のもり来てやとりぬるかな
まきのやの−しくれのおとを−きくそてに−つきのもりきて−やとりぬるかな |
00295 |
未入力 西行 (xxx)
水上に水や氷をむすふらんくるとも見えぬ滝の白糸
みなかみに−みつやこほりを−むすふらむ−くるともみえぬ−たきのしらいと |
00296 |
未入力 西行 (xxx)
雪うつむ園の呉竹をれ伏してねくらもとむる村すすめかな
ゆきうつむ−そののくれたけ−をれふして−ねくらもとむる−むらすすめかな |
00297 |
未入力 西行 (xxx)
打返すをみの衣と見ゆるかな竹の上葉にふれる白露
うちかへす−をみのころもと−みゆるかな−たけのうははに−ふれるしらつゆ |
00298 |
未入力 西行 (xxx)
道とちて人とはすなる山郷のあはれは雪にうつもれにけり
みちとちて−ひととはすなる−やまさとの−あはれはゆきに−うつもれにけり |
00299 |
未入力 西行 (xxx)
千鳥鳴くふけひのかたを見わたせは月影さひし難波江のうら
ちとりなく−ふけひのかたを−みわたせは−つきかけさひし−なにはえのうら |
00300 |
未入力 西行 (xxx)
さひしさにたへたる人の又もあれな庵ならへん冬の山郷
さひしさに−たへたるひとの−またもあれな−いほりならへむ−ふゆのやまさと |
00301 |
未入力 西行 (xxx)
花もかれ紅葉もちりぬ山里はさひしさを又とふ人もかな
はなもかれ−もみちもちりぬ−やまさとは−さひしさをまた−とふひともかな |
00302 |
未入力 西行 (xxx)
玉かけし花のかつらもおろへて霜をいたたく女郎花かな
たまかけし−はなのかつらも−おとろへて−しもをいたたく−をみなへしかな |
00303 |
未入力 西行 (xxx)
つの国の蘆のまろ屋のさひしさは冬こそわきてとふへかりけれ
つのくにの−あしのまろやの−さひしさは−ふゆこそわきて−とふへかりけれ |
00304 |
未入力 西行 (xxx)
山桜はつ雪ふれは咲きにけり芳野はさらに冬こもれとも
やまさくら−はつゆきふれは−さきにけり−よしのはさらに−ふゆこもれとも |
00305 |
未入力 西行 (xxx)
よもすから嵐の山に風さえて大井のよとに氷をそしく
よもすから−あらしのやまに−かせさえて−おほゐのよとに−こほりをそしく |
00306 |
未入力 西行 (xxx)
風さえてよすれはやかて氷りつつかへるなみなき志賀のからさき
かせさえて−よすれはやかて−こほりつつ−かへるなみなき−しかのからさき |
00307 |
未入力 西行 (xxx)
山郷は時雨れし比のさひしさにあられの音はややまさりけり
やまさとは−しくれしころの−さひしさに−あられのおとは−ややまさりけり |
00308 |
未入力 西行 (xxx)
芳野山ふもとにふらぬ雪ならは花かとみてやたつね入らまし
よしのやま−ふもとにふらぬ−ゆきならは−はなかとみてや−たつねいらまし |
00309 |
未入力 西行 (xxx)
立ちのほる朝日のかけのさすままに都の雪はきえみきえすみ
たちのほる−あさひのかけの−さすままに−みやこのゆきは−きえみきえすみ |
00310 |
未入力 西行 (xxx)
とふ人も初雪をこそ分けこしか道たえにけりみやまへの里
とふひとも−はつゆきをこそ−わけこしか−みちたえにけり−みやまへのさと |
00311 |
未入力 西行 (xxx)
年くれしそのいとなみはわすられてあらぬさまなるいそきをそする
としくれし−そのいとなみは−わすられて−あらぬさまなる−いそきをそする |
00312 |
未入力 西行 (xxx)
おしなへておなし月日の過きゆけは都もかくや年は暮れぬる
おしなへて−おなしつきひの−すきゆけは−みやこもかくや−としはくれぬる |
00313 |
未入力 西行 (xxx)
昔おもふ庭に浮木をつみおきて見し世にもにぬ年のくれかな
むかしおもふ−にはにうききを−つみおきて−みしよにもにぬ−としのくれかな |
00314 |
未入力 西行 (xxx)
弓はりの月にはつれて見しかけのやさしかりしはいつか忘れん
ゆみはりの−つきにはつれて−みしかけの−やさしかりしは−いつかわすれむ |
00315 |
未入力 西行 (xxx)
しらさりき雲井のよそに見し月の影を袂にやとすへしとは
しらさりき−くもゐのよそに−みしつきの−かけをたもとに−やとすへしとは |
00316 |
未入力 西行 (xxx)
月待つといひなされつるよひのまの心の色を袖に見えぬる
つきまつと−いひなされつる−よひのまの−こころのいろを−そてにみえぬる |
00317 |
未入力 西行 (xxx)
あはれとも見る人あらはおもはなん月のおもてにやとす心を
あはれとも−みるひとあらは−おもはなむ−つきのおもてに−やとすこころを |
00318 |
未入力 西行 (xxx)
数ならぬ心のとかになしはててしらせてこそはみをもうらみめ
かすならぬ−こころのとかに−なしはてて−しらせてこそは−みをもうらみめ |
00319 |
未入力 西行 (xxx)
難波かた浪のみいとと数そひてうらみのひまや袖のかわかん
なにはかた−なみのみいとと−かすそひて−うらみのひまや−そてのかわかむ |
00320 |
未入力 西行 (xxx)
日をふれは涙の雨のあらそひてはるへくもなき我か心かな
ひをふれは−なみたのあめの−あらそひて−はるへくもなき−わかこころかな |
00321 |
未入力 西行 (xxx)
かきくらす涙の雨のあししけみさかりにもののなけかしきかな
かきくらす−なみたのあめの−あししけみ−さかりにものの−なけかしきかな |
00322 |
未入力 西行 (xxx)
いかかせんその五月雨の名残よりやかてをやまぬ袖のしつくを
いかかせむ−そのさみたれの−なこりより−やかてをやまぬ−そてのしつくを |
00323 |
未入力 西行 (xxx)
さまさまにおもひみたるる心をは君かもとにそつかねあつむる
さまさまに−おもひみたるる−こころをは−きみかもとにそ−つかねあつむる |
00324 |
未入力 西行 (xxx)
みをしれは人のとかとはおもはぬにうらみかほにもぬるる袖かな
みをしれは−ひとのとかとは−おもはぬに−うらみかほにも−ぬるるそてかな |
00325 |
未入力 西行 (xxx)
かかるみにおほしたてけんたらちねのおやさへつらき恋もするかな
かかるみに−おほしたてけむ−たらちねの−おやさへつらき−こひもするかな |
00326 |
未入力 西行 (xxx)
とにかくにいとはまほしき世なれとも君かすむにもひかれぬるかな
とにかくに−いとはまほしき−よなれとも−きみかすむにも−ひかれぬるかな |
00327 |
未入力 西行 (xxx)
むかはらは我かなけきのむくいにて誰ゆゑ君か物をおもはん
むかはらは−われかなけきの−むくいにて−たれゆゑきみか−ものをおもはむ |
00328 |
未入力 西行 (xxx)
あやめつつ人しるとてもいかかせんしのひはつへき袂ならねは
あやめつつ−ひとしるとても−いかかせむ−しのひはつへき−たもとならねは |
00329 |
未入力 西行 (xxx)
けふこそはけしきを人に知られぬれさてのみやはとおもふあまりに
けふこそは−けしきをひとに−しられぬれ−さてのみやはと−おもふあまりに |
00330 |
未入力 西行 (xxx)
物おもへは袖になかるる涙川いかなるみをにあふせありなん
ものおもへは−そてになかるる−なみたかは−いかなるみをに−あふせありなむ |
00331 |
未入力 西行 (xxx)
もらさしと袖にあまるをつつままし情を忍ふ涙なりせは
もらさしと−そてにあまるを−つつままし−なさけをしのふ−なみたなりせは |
00332 |
未入力 西行 (xxx)
こと付けて今朝の別はやすらはん時雨をさへや袖にかくへき
ことつけて−けさのわかれは−やすらはむ−しくれをさへや−そてにかくへき |
00333 |
未入力 西行 (xxx)
きえかへり暮待つ柚そしをれぬるおきつる人は露ならねとも
きえかへり−くれまつそてそ−しをれぬる−おきつるひとは−つゆならねとも |
00334 |
未入力 西行 (xxx)
なかなかにあはぬ思ひのままならはうらみはかりやみにつもらまし
なかなかに−あはぬおもひの−ままならは−うらみはかりや−みにつもらまし |
00335 |
未入力 西行 (xxx)
さらに又むすほほれ行く心かなとけなはとこそおもひしかとも
さらにまた−むすほほれゆく−こころかな−とけなはとこそ−おもひしかとも |
00336 |
未入力 西行 (xxx)
昔より物おもふ人やなからまし心にかなふなけきなりせは
むかしより−ものおもふひとや−なからまし−こころにかなふ−なけきなりせは |
00337 |
未入力 西行 (xxx)
夏草のしけりのみ行くおもひかなまたるる秋の思ひしられて
なつくさの−しけりのみゆく−おもひかな−またるるあきの−おもひしられて |
00338 |
未入力 西行 (xxx)
くれなゐの色に袂の時雨れつつ袖に秋ある心地こそすれ
くれなゐの−いろにたもとの−しくれつつ−そてにあきある−ここちこそすれ |
00339 |
未入力 西行 (xxx)
今そしるおもひ出てよとちきりしは忘れんとての情なりけり
いまそしる−おもひいてよと−ちきりしは−わすれむとての−なさけなりけり |
00340 |
未入力 西行 (xxx)
日にそへてうらみはいととおほ海のゆたかなりける我か涙かな
ひにそへて−うらみはいとと−おほうみの−ゆたかなりける−わかなみたかな |
00341 |
未入力 西行 (xxx)
わりなしや我も人日をつつむまにしひてもいはぬ心つくしは
わりなしや−われもひとひを−つつむまに−しひてもいはぬ−こころつくしは |
00342 |
未入力 西行 (xxx)
山かつのあら野をしめてすみそむるかたたよりなき恋もするかな
やまかつの−あらのをしめて−すみそむる−かたたよりなき−こひもするかな |
00343 |
未入力 西行 (xxx)
うとかりし恋もしられぬいかにして人をわするることをならはん
うとかりし−こひもしられぬ−いかにして−ひとをわするる−ことをならはむ |
00344 |
未入力 西行 (xxx)
中中に忍ふけしきやしるからんかかる思ひにならひなきみは
なかなかに−しのふけしきや−しるからむ−かかるおもひに−ならひなきみは |
00345 |
未入力 西行 (xxx)
いくほともなからふましき世の中に物をおもはてふるよしもかな
いくほとも−なからふましき−よのなかに−ものをおもはて−ふるよしもかな |
00346 |
未入力 西行 (xxx)
よしさらはたれかは世にもなからへんと思ふをりにそ人はうからぬ
よしさらは−たれかはよにも−なからへむと−おもふをりにそ−ひとはうからぬ |
00347 |
未入力 西行 (xxx)
風になひく富士の煙の空にきえて行へも知らぬ我か思ひかな
かせになひく−ふしのけふりの−そらにきえて−ゆくへもしらぬ−わかおもひかな |
00348 |
未入力 西行 (xxx)
あはれとてとふ人のなとなかるらん物おもふ宿の荻の上風
あはれとて−とふひとのなと−なかるらむ−ものおもふやとの−をきのうはかせ |
00349 |
未入力 西行 (xxx)
思ひ知る人あり明の世なりせはつきせすみをはうらみさらまし
おもひしる−ひとありあけの−よなりせは−つきせすみをは−うらみさらまし |
00350 |
未入力 西行 (xxx)
あふと見しその夜の夢のさめてあれななかきねふりはうかるへけれと
あふとみし−そのよのゆめの−さめてあれな−なかきねふりは−うかるへけれと |
00351 |
未入力 西行 (xxx)
あはれあはれこの世はよしやさもあらはあれこんよもかくやくるしかるへき
あはれあはれ−このよはよしや−さもあらはあれ−こむよもかくや−くるしかるへき |
00352 |
未入力 西行 (xxx)
物おもへとかからぬ人もあるものを哀なりける身のちきりかな
ものおもへと−かからぬひとも−あるものを−あはれなりける−みのちきりかな |
00353 |
未入力 西行 (xxx)
歎けとて月やは物をおもはするかこちかほなる我か涙かな
なけけとて−つきやはものを−おもはする−かこちかほなる−わかなみたかな |
00354 |
未入力 西行 (xxx)
七な草にせりありけりとみるからにぬれけん袖のつまれぬるかな
ななくさに−せりありけりと−みるからに−ぬれけむそての−つまれぬるかな |
00355 |
未入力 西行 (xxx)
ときは山しひの下柴かりすてんかくれておもふかひのなきかと
ときはやま−しひのしたしは−かりすてむ−かくれておもふ−かひのなきかと |
00356 |
未入力 西行 (xxx)
我かおもふいもかりゆきて郭公ね覚の袖のあはれつたへよ
わかおもふ−いもかりゆきて−ほとときす−なさめのそての−あはれつたへよ |
00357 |
未入力 西行 (xxx)
人はうしなけきは露もなくさますさはこはいかかすへき思ひそ
ひとはうし−なけきはつゆも−なくさます−さはこはいかか−すへきおもひそ |
00358 |
未入力 西行 (xxx)
浮世にはあはれはあるにまかせつつ心よいたく物なおもひそ
うきよには−あはれはあるに−まかせつつ−こころよいたく−ものなおもひそ |
00359 |
未入力 西行 (xxx)
今さらに何と人目をつつむらんしほらは袖のかわくへきかは
いまさらに−なにとひとめを−つつむらむ−しほらはそての−かわくへきかは |
00360 |
未入力 西行 (xxx)
うきみしる心にもにぬ涙かなうらみんとしもおもはぬものを
うきみしる−こころにもにぬ−なみたかな−うらみむとしも−おもはぬものを |
00361 |
未入力 西行 (xxx)
なとか我ことのほかなるなけきせてみさをなるみに生れさりけん
なとかわれ−ことのほかなる−なけきせて−みさをなるみに−うまれさりけむ |
00362 |
未入力 西行 (xxx)
袖の上の人目しられし折まてはみさをなりける我か心かな
そてのうへの−ひとめしられし−をりまては−みさをなりける−わかこころかな |
00363 |
未入力 西行 (xxx)
とへかしななさけは人のみのためをうき我とても心やはなき
とへかしな−なさけはひとの−みのためを−うきわれとても−こころやはなき |
00364 |
未入力 西行 (xxx)
うらみしとおもふ我さへつらきかなとはて過きぬる心つよさを
うらみしと−おもふわれさへ−つらきかな−とはてすきぬる−こころつよさを |
00365 |
未入力 西行 (xxx)
なかめこそうき身のくせになりはてて夕暮ならぬをりもわかれね
なかめこそ−うきみのくせに−なりはてて−ゆふくれならぬ−をりもわかれね |
00366 |
未入力 西行 (xxx)
わりなしやいつを思ひのはてにして月日を送る我かみなるらん
わりなしや−いつをおもひの−はてにして−つきひをおくる−わかみなるらむ |
00367 |
未入力 西行 (xxx)
心から心に物をおもはせて身をくるしむる我かみなりけり
こころから−こころにものを−おもはせて−みをくるしむる−わかみなりけり |
00368 |
未入力 西行 (xxx)
かつすすく沢のこせりのねをしろみ清けに物をおもはすもかな
かつすすく−さはのこせりの−ねをしろみ−きよけにものを−おもはすもかな |
00369 |
未入力 西行 (xxx)
身のうさのおもひしらるることわりにおさへられぬは涙なりけり
みのうさの−おもひしらるる−ことわりに−おさへられぬは−なみたなりけり |
00370 |
未入力 西行 (xxx)
ことつくるみあれのほとをすくしてもなほや卯月の心なるへき
ことつくる−みあれのほとを−すくしても−なほやうつきの−こころなるへき |
00371 |
未入力 西行 (xxx)
なほさりのなさけは人のあるものをたゆるはつねのならひなれとも
なほさりの−なさけはひとの−あるものを−たゆるはつねの−ならひなれとも |
00372 |
未入力 西行 (xxx)
何となくさすかにをしき命かなありへは人や思ひしるとて
なにとなく−さすかにをしき−いのちかな−ありへはひとや−おもひしるとて |
00373 |
未入力 西行 (xxx)
心さしありてのみやは人をとふなさけはなととおもふはかりそ
こころさし−ありてのみやは−ひとをとふ−なさけはなとと−おもふはかりそ |
00374 |
未入力 西行 (xxx)
あひみてはとはれぬうさそ忘れぬるうれしきをのみまつおもふまて
あひみては−とはれぬうさそ−わすれぬる−うれしきをのみ−まつおもふまて |
00375 |
未入力 西行 (xxx)
今朝よりそ人の心はつらからて明けはなれ行く空をなかむる
けさよりそ−ひとのこころは−つらからて−あけはなれゆく−そらをなかむる |
00376 |
未入力 西行 (xxx)
あふまての命もかなとおもひしはくやしかりける我か心かな
あふまての−いのちもかなと−おもひしは−くやしかりける−わかこころかな |
00377 |
未入力 西行 (xxx)
うとくなる人を何とてうらむらんしられすしらぬ折も有りしを
うとくなる−ひとをなにとて−うらむらむ−しられすしらぬ−をりもありしを |
00378 |
未入力 西行 (xxx)
かたそきのゆきあはぬまよりもる月やさえてみそての霜におくらん
かたそきの−ゆきあはぬまより−もるつきや−さえてみそての−しもにおくらむ |
00379 |
未入力 西行 (xxx)
なかれたえぬ浪にや世をはをさむらん神風涼しみもすその川
なかれたえぬ−なみにやよをは−をさむらむ−かみかせすすし−みもすそのかは |
00380 |
未入力 西行 (xxx)
たえたりし君かみゆきを待ちつけて神いかはかりうれしかるらん
たえたりし−きみかみゆきを−まちつけて−かみいかはかり−うれしかるらむ |
00381 |
未入力 西行 (xxx)
いにしへの松のしつえをあらひけん浪を心にかけてこそみれ
いにしへの−まつのしつえを−あらひけむ−なみをこころに−かけてこそみれ |
00382 |
未入力 西行 (xxx)
住吉のまつの根あらふ浪のおとを梢にかくるおきつしほ風
すみよしの−まつのねあらふ−なみのおとを−こすゑにかくる−おきつしほかせ |
00383 |
未入力 西行 (xxx)
かしこまるしてに涙のかかるかなまたいつかはとおもふ哀に
かしこまる−してになみたの−かかるかな−またいつかはと−おもふあはれに |
00384 |
未入力 西行 (xxx)
ひろむらん法にはあはぬみなりとも名を聞く数にいらさらめやは
ひろむらむ−のりにはあはぬ−みなりとも−なをきくかすに−いらさらめやは |
00385 |
未入力 西行 (xxx)
つらなりし昔に露もかはらしとおもひしられし法の庭かな
つらなりし−むかしにつゆも−かはらしと−おもひしられし−のりのにはかな |
00386 |
未入力 西行 (xxx)
ちりまかふ花の匂ひをさきたてて光を法の莚にそしく
ちりまかふ−はなのにほひを−さきたてて−ひかりをのりの−むしろにそしく |
00387 |
未入力 西行 (xxx)
こりもせすうき世のやみにまとふかなみを思はぬは心なりけり
こりもせす−うきよのやみに−まとふかな−みをおもはぬは−こころなりけり |
00388 |
未入力 西行 (xxx)
あま雲のはるるみ空の月影にうらみなくさむをはすての山
あまくもの−はるるみそらの−つきかけに−うらみなくさむ−をはすてのやま |
00389 |
未入力 西行 (xxx)
鷲の山月を入りぬと見る人はくらきにまよふ心なりけり
わしのやま−つきをいりぬと−みるひとは−くらきにまよふ−こころなりけり |
00390 |
未入力 西行 (xxx)
やみはれて心のうちにすむ月は西の山辺やちかくなるらん
やみはれて−こころのうちに−すむつきは−にしのやまへや−ちかくなるらむ |
00391 |
未入力 西行 (xxx)
なにこともむなしき法の心にて罪ある身とも今はおもはし
なにことも−むなしきのりの−こころにて−つみあるみとも−いまはおもはし |
00392 |
未入力 西行 (xxx)
けふや君おほふ五の雲はれて心の月をみかきいつらん
けふやきみ−おほふいつつの−くもはれて−こころのつきを−みかきいつらむ |
00393 |
未入力 西行 (xxx)
なき人をかそふる秋のよもすからしをるる袖や鳥へのの露
なきひとを−かそふるあきの−よもすから−しをるるそてや−とりへののつゆ |
00394 |
未入力 西行 (xxx)
道かはるみゆきかなしきこよひかな限のたひと見るにつけても
みちかはる−みゆきかなしき−こよひかな−かきりのたひと−みるにつけても |
00395 |
未入力 西行 (xxx)
かたかたにはかなかるへきこの世かな有るを思ふもなきを忍ふも
かたかたに−はかなかるへき−このよかな−あるをおもふも−なきをしのふも |
00396 |
未入力 西行 (xxx)
こととなくけふ暮れにけりあすも又かはらすこそはひますくるかけ
こととなく−けふくれにけり−あすもまた−かはらすこそは−ひますくるかけ |
00397 |
未入力 西行 (xxx)
世の中のうきもうからす思ひとけはあさちにむすふ露の白玉
よのなかの−うきもうからす−おもひとけは−あさちにむすふ−つゆのしらたま |
00398 |
未入力 西行 (xxx)
鳥へ野を心のうちにわけ行けはいそちの露に袖そそほつる
とりへのを−こころのうちに−わけゆけは−いそちのつゆに−そてそそほつる |
00399 |
未入力 西行 (xxx)
年月をいかて我かみもおくりけんきのふの人もけふはなき世に
としつきを−いかてわかみも−おくりけむ−きのふのひとも−けふはなきよに |
00400 |
未入力 西行 (xxx)
ちるとみて又さく花の匂ひにもおくれさきたつためし有りけり
ちるとみて−またさくはなの−にほひにも−おくれさきたつ−ためしありけり |
00401 |
未入力 西行 (xxx)
つきはてんその入あひの程なきをこのあかつきにおもひしりぬる
つきはてむ−そのいりあひの−ほとなきを−このあかつきに−おもひしりぬる |
00402 |
未入力 西行 (xxx)
そのをりのよもきかもとの枕にもかくこそ虫の音にはむつれめ
そのをりの−よもきかもとの−まくらにも−かくこそむしの−ねにはむつれめ |
00403 |
未入力 西行 (xxx)
月をみていつれの年の秋まてかこの世の中にたのみあるらん
つきをみて−いつれのとしの−あきまてか−このよのなかに−たのみあるらむ |
00404 |
未入力 西行 (xxx)
哀とも心におもふ程はかりいはれぬへくはいひこそはせめ
あはれとも−こころにおもふ−ほとはかり−いはれぬへくは−いひこそはせめ |
00405 |
未入力 西行 (xxx)
世の中を夢と見る見るはかなくもなほおとろかぬ我か心かな
よのなかを−ゆめとみるみる−はかなくも−なほおとろかぬ−わかこころかな |
00406 |
未入力 西行 (xxx)
桜花ちりちりになる木のもとに名残ををしむ鴬のこゑ
さくらはな−ちりちりになる−このもとに−なこりををしむ−うくひすのこゑ |
00407 |
未入力 西行 (xxx)
きえにける本のしつくをおもふにもたれかは末の露のみならぬ
きえにける−もとのしつくを−おもふにも−たれかはすゑの−つゆのみならぬ |
00408 |
未入力 西行 (xxx)
つの国の難波の春は夢なれや蘆のかれはに風わたるなり
つのくにの−なにはのはるは−ゆめなれや−あしのかれはに−かせわたるなり |
00409 |
未入力 西行 (xxx)
かさねきる藤の衣をたよりにて心の色をそめよとそおもふ
かさねきる−ふちのころもを−たよりにて−こころのいろを−そめよとそおもふ |
00410 |
未入力 西行 (xxx)
このたひはさきに見えけん夢よりもさめすや物はかなしかるらん
このたひは−さきにみえけむ−ゆめよりも−さめすやものは−かなしかるらむ |
00411 |
未入力 西行 (xxx)
涙をやしのはん人はなかすへき哀に見ゆる水くきの跡
なみたをや−しのはむひとは−なかすへき−あはれにみゆる−みつくきのあと |
00412 |
未入力 西行 (xxx)
とりへ野や鷲の高ねのすそならん煙を分けて出つる月かけ
とりへのや−わしのたかねの−すそならむ−けふりをわけて−いつるつきかけ |
00413 |
未入力 寂然 (xxx)
とへかしな別の袖に露ふかきよもきかもとの心ほそさを
とへかしな−わかれのそてに−つゆふかき−よもきかもとの−こころほそさを |
00414 |
未入力 西行 (xxx)
よそにおもふ別ならねは誰をかはみよりほかにはとふへかりける
よそにおもふ−わかれならねは−たれをかは−みよりほかには−とふへかりける |
00415 |
未入力 寂然 (xxx)
みたれすとをはり聞くこそうれしけれさても別はなくさまねとも
みたれすと−をはりきくこそ−うれしけれ−さてもわかれは−なくさまねとも |
00416 |
未入力 西行 (xxx)
この世にて又あふましきかなしさにすすめし人そ心みたれし
このよにて−またあふましき−かなしさに−すすめしひとそ−こころみたれし |
00417 |
未入力 寂然 (xxx)
いるさにはひろふ形見も残りけり帰る山路の友は涙か
いるさには−ひろふかたみも−のこりけり−かへるやまちの−ともはなみたか |
00418 |
未入力 西行 (xxx)
いかにともおもひわかてそ過きにける夢に山路を行く心地して
いかにとも−おもひわかてそ−すきにける−ゆめにやまちを−ゆくここちして |
00419 |
未入力 西行 (xxx)
かきりなくかなしかりけりとりへ山なきを送りてかへる心は
かきりなく−かなしかりけり−とりへやま−なきをおくりて−かへるこころは |
00420 |
未入力 西行 (xxx)
おくり置きてかへりし野への朝露を袖にうつすは涙なりけり
おくりおきて−かへりしのへの−あさつゆを−そてにうつすは−なみたなりけり |
00421 |
未入力 西行 (xxx)
ふなをかのすそののつかの数そひて昔の人に君をなしつる
ふなをかの−すそののつかの−かすそひて−むかしのひとに−きみをなしつる |
00422 |
未入力 西行 (xxx)
後の世をとへと契りしことのはやわすらるましきかた見なるらん
のちのよを−とへとちきりし−ことのはや−わすらるましき−かたみなるらむ |
00423 |
未入力 西行 (xxx)
とははやと思ひよらてそなけかまし昔なからの我かみなりせは
とははやと−おもひよらてそ−なけかまし−むかしなからの−わかみなりせは |
00424 |
未入力 西行 (xxx)
たつぬとも風のつてにもさかしかし花とちりにし君か行へは
たつぬとも−かせのつてにも−さかしかし−はなとちりにし−きみかゆくへは |
00425 |
未入力 しりたりける人 (xxx)
ふく風の行へしらする物ならは花とちるともおくれさらまし
ふくかせの−ゆくへしらする−ものならは−はなとちるとも−おくれさらまし |
00426 |
未入力 西行 (xxx)
みかかれし玉のうてなを露ふかき野へにうつして見るそかなしき
みかかれし−たまのうてなを−つゆふかき−のへにうつして−みるそかなしき |
00427 |
未入力 西行 (xxx)
いにしへにかはらぬ君か姿こそけふはときはのかた見なりけれ
いにしへに−かはらぬきみか−すかたこそ−けふはときはの−かたみなりけれ |
00428 |
未入力 前伊賀守為業 (xxx)
色かへて独残れる常盤木はいつをまつとか人のみるらん
いろかへて−ひとりのこれる−ときはきは−いつをまつとか−ひとのみるらむ |
00429 |
未入力 西行 (xxx)
なき人のかた見にたてし寺に入りて跡ありけりと見て帰りぬる
なきひとの−かたみにたてし−てらにいりて−あとありけりと−みてかへりぬる |
00430 |
未入力 西行 (xxx)
おもひおきしあさちか露をわけ入れはたたわつかなるすすむしのこゑ
おもひおきし−あさちかつゆを−わけいれは−たたわつかなる−すすむしのこゑ |
00431 |
未入力 西行 (xxx)
野へに成りてしけきあさちをわけ入れは君か住みける石すゑの跡
のへになりて−しけきあさちを−わけいれは−きみかすみける−いしすゑのあと |
00432 |
未入力 西行 (xxx)
露ふかき野辺になり行く古郷はおもひやるたに袖しをれけり
つゆふかき−のへになりゆく−ふるさとは−おもひやるたに−そてしをれけり |
00433 |
未入力 西行 (xxx)
山里は庭の木すゑのおとまても世をすさみたるけしきなるかな
やまさとは−にはのこすゑの−おとまても−よをすさみたる−けしきなるかな |
00434 |
未入力 西行 (xxx)
浦島かこは何ものと人とははあけてかひあるはことこたへよ
うらしまか−こはなにものと−ひととはは−あけてかひある−はことこたへよ |
00435 |
未入力 西行 (xxx)
夜るの鶴の都のうちを出ててあれなこのおもひにはまとはさらまし
よるのつるの−みやこのうちを−いててあれな−このおもひには−まとはさらまし |
00436 |
未入力 西行 (xxx)
雲のうへやふるき都に成りにけりすむらん月の影はかはらて
くものうへや−ふるきみやこに−なりにけり−すむらむつきの−かけはかはらて |
00437 |
未入力 西行 (xxx)
いにしへを何に付けてか思ひ出てん月さへかはる世ならましかは
いにしへを−なににつけてか−おもひいてむ−つきさへかはる−よならましかは |
00438 |
未入力 西行 (xxx)
今よりは昔かたりは心せんあやしきまてに袖しをれけり
いまよりは−むかしかたりは−こころせむ−あやしきまてに−そてしをれけり |
00439 |
未入力 西行 (xxx)
露しけくあさちしけれる野に成りてありし都は見し心地せぬ
つゆしけく−あさちしけれる−のになりて−ありしみやこは−みしここちせぬ |
00440 |
未入力 西行 (xxx)
これや見し昔すみけん跡ならんよもきか露に月のやとれる
これやみし−むかしすみけむ−あとならむ−よもきかつゆに−つきのやとれる |
00441 |
未入力 西行 (xxx)
月すみし宿も昔の宿ならて我かみもあらぬ我かみなりけり
つきすみし−やともむかしの−やとならて−わかみもあらぬ−わかみなりけり |
00442 |
未入力 西行 (xxx)
身のうさを思ひしらてややみなましそむくならひのなきよなりせは
みのうさを−おもひしらてや−やみなまし−そむくならひの−なきよなりせは |
00443 |
未入力 西行 (xxx)
世の中をそむきはてぬといひおかん思ひ知るへき人はなくとも
よのなかを−そむきはてぬと−いひおかむ−おもひしるへき−ひとはなくとも |
00444 |
未入力 西行 (xxx)
程ふれはおなし都の中たにもおほつかなさはとはまほしきを
ほとふれは−おなしみやこの−うちたにも−おほつかなさは−とはまほしきを |
00445 |
未入力 西行 (xxx)
旅ねする嶺の嵐につたひきて哀なりけるかねのおとかな
たひねする−みねのあらしに−つたひきて−あはれなりける−かねのおとかな |
00446 |
未入力 西行 (xxx)
すてて出てしうき世に月のすまてあれなさらは心のとまらさらまし
すてていてし−うきよにつきの−すまてあれな−さらはこころの−とまらさらまし |
00447 |
未入力 西行 (xxx)
世の中をいとふまてこそかたからめかりの宿をもをしむ君かな
よのなかを−いとふまてこそ−かたからめ−かりのやとをも−をしむきみかな |
00448 |
未入力 遊女たへ (xxx)
世をいとふ人とし聞けはかりの宿に心とむなと思ふはかりそ
よをいとふ−ひととしきけは−かりのやとに−こころとむなと−おもふはかりそ |
00449 |
未入力 西行 (xxx)
めくりあはて雲のよそにはなりぬとも月になれ行くむつひ忘るな
めくりあはて−くものよそには−なりぬとも−つきになれゆく−むつひわするな |
00450 |
未入力 西行 (xxx)
もろともになかめなかめて秋の月ひとりにならんことそかなしき
もろともに−なかめなかめて−あきのつき−ひとりにならむ−ことそかなしき |
00451 |
未入力 西行 (xxx)
くやしきはよしなく人になれそめていとふ都のしのはれぬへき
くやしきは−よしなくひとに−なれそめて−いとふみやこの−しのはれぬへき |
00452 |
未入力 西行 (xxx)
大原やまたすみ釜もならはすといひけん人を今あらせはや
おほはらや−またすみかまも−ならはすと−いひけむひとを−いまあらせはや |
00453 |
未入力 西行 (xxx)
涙をは衣川にそなかしつるふるきみやこをおもひ出てつつ
なみたをは−ころもかはにそ−なかしつる−ふるきみやこを−おもひいてつつ |
00454 |
未入力 西行 (xxx)
君いなは月まつとてもなかめやらん東のかたの夕暮の空
きみいなは−つきまつとても−なかめやらむ−あつまのかたの−ゆふくれのそら |
00455 |
未入力 西行 (xxx)
くちもせぬその名はかりをととめおきてかれののすすきかたみにそみる
くちもせぬ−そのなはかりを−ととめおきて−かれののすすき−かたみにそみる |
00456 |
未入力 西行 (xxx)
松山の浪になかれてこし船のやかてむなしく成りにけるかな
まつやまの−なみになかれて−こしふねの−やかてむなしく−なりにけるかな |
00457 |
未入力 西行 (xxx)
よしや君昔の玉のゆかとてもかからん後は何にかはせん
よしやきみ−むかしのたまの−ゆかとても−かからむのちは−なににかはせむ |
00458 |
未入力 西行 (xxx)
ひさにへて我か後の世をとへよ松跡忍ふへき人もなきみそ
ひさにへて−わかのちのよを−とへよまつ−あとしのふへき−ひともなきみそ |
00459 |
未入力 西行 (xxx)
ここを又我すみうくてうかれなは松やひとりにならんとすらん
ここをまた−われすみうくて−うかれなは−まつやひとりに−ならむとすらむ |
00460 |
未入力 西行 (xxx)
露もらぬ窟も袖はぬれけりときかすはいかにあやしからまし
つゆもらぬ−いはほもそては−ぬれけりと−きかすはいかに−あやしからまし |
00461 |
未入力 西行 (xxx)
名におひて紅葉の色のふかき山を心にそむる秋にも有るかな
なにおひて−もみちのいろの−ふかきやまを−こころにそむる−あきにもあるかな |
00462 |
未入力 西行 (xxx)
庵さす草のまくらにともなひてささの露にもやとる月かな
いほりさす−くさのまくらに−ともなひて−ささのつゆにも−やとるつきかな |
00463 |
未入力 西行 (xxx)
ふかき山に住みける月を見さりせは思ひてもなき我かみならまし
ふかきやまに−すみけるつきを−みさりせは−おもひてもなき−わかみならまし |
00464 |
未入力 西行 (xxx)
月すめる谷にそ春はしつみける嶺吹きはらふ母にしられて
つきすめる−たににそはるは−しつみける−みねふきはらふ−かせにしられて |
00465 |
未入力 西行 (xxx)
をはすてはしなのならねといつくにも月すむ峰の名にこそ有りけれ
をはすては−しなのならねと−いつくにも−つきすむみねの−なにこそありけれ |
00466 |
未入力 西行 (xxx)
梢もる月もあはれを思ふへし光にくして露もこほるる
こすゑもる−つきもあはれを−おもふへし−ひかりにくして−つゆもこほるる |
00467 |
未入力 西行 (xxx)
松かねのいはたの川の夕すすみ君かあれなとおもほゆるかな
まつかねの−いはたのかはの−ゆふすすみ−きみかあれなと−おもほゆるかな |
00468 |
未入力 西行 (xxx)
昔見し野中の清水かはらねは我か影をもや思ひ出つらん
むかしみし−のなかのしみつ−かはらねは−わかかけをもや−おもひいつらむ |
00469 |
未入力 西行 (xxx)
つの国のなからの橋のかたもなし名はととまりて聞えわたれと
つのくにの−なからのはしの−かたもなし−なはととまりて−きこえわたれと |
00470 |
未入力 西行 (xxx)
白川のせきやを月のもる影は人の心をとむるなりけり
しらかはの−せきやをつきの−もるかけは−ひとのこころを−とむるなりけり |
00471 |
未入力 西行 (xxx)
浪の音を心にかけてあかすかなとまもる月の影を友にて
なみのおとを−こころにかけて−あかすかな−とまもるつきの−かけをともにて |
00472 |
未入力 西行 (xxx)
月のみやうはの空なるかた見にて思ひも出ては心かよはん
つきのみや−うはのそらなる−かたみにて−おもひもいては−こころかよはむ |
00473 |
未入力 西行 (xxx)
見しままに姿も影もかはらねは月そ都のかた見なりける
みしままに−すかたもかけも−かはらねは−つきそみやこの−かたみなりける |
00474 |
未入力 西行 (xxx)
都にて月を哀と思ひしは数にもあらぬすさひなりけり
みやこにて−つきをあはれと−おもひしは−かすにもあらぬ−すさひなりけり |
00475 |
未入力 西行 (xxx)
たのめおかむ君も心やなくさむとかへらんことはいつとなけれと
たのめおかむ−きみもこころや−なくさむと−かへらむことは−いつとなけれと |
00476 |
未入力 西行 (xxx)
年たけて又こゆへしと思ひきや命なりけりさやの中山
としたけて−またこゆへしと−おもひきや−いのちなりけり−さやのなかやま |
00477 |
未入力 西行 (xxx)
霧ふかきけふのわたりのわたし守岸の船つきおもひさためよ
きりふかき−けふのわたりの−わたしもり−きしのふなつき−おもひさためよ |
00478 |
未入力 西行 (xxx)
嵐吹く嶺の木の葉にさそはれていつちうかるる心なるらん
あらしふく−みねのこのはに−さそはれて−いつちうかるる−こころなるらむ |
00479 |
未入力 侍従の大納言成道 (xxx)
なにとなくおつる木のはも吹く風にちり行くかたはしられやはせぬ
なにとなく−おつるこのはも−ふくかせに−ちりゆくかたは−しられやはせぬ |
00480 |
未入力 西行 (xxx)
さりともとなほあふことを憑むかなしての山路をこえぬ別は
さりともと−なほあふことを−たのむかな−してのやまちを−こえぬわかれは |
00481 |
未入力 西行 (xxx)
世の中に心有明の人はみなかくてやみにはまとはさらなん
よのなかに−こころありあけの−ひとはみな−かくてやみには−まとはさらなむ |
00482 |
未入力 知りたる人 (xxx)
世をそむく心はかりは有明のつきせぬやみは君にはるけん
よをそむく−こころはかりは−ありあけの−つきせぬやみは−きみにはるけむ |
00483 |
未入力 西行 (xxx)
いかかせん世にあらはやは世をもすててあなうの世やとさらにおもはん
いかかせむ−よにあらはやは−よをもすてて−あなうのよやと−さらにおもはむ |
00484 |
未入力 西行 (xxx)
かひありな君かみ袖におほはれてこころにあはぬこともなきかな
かひありな−きみかみそてに−おほはれて−こころにあはぬ−こともなきかな |
00485 |
未入力 西行 (xxx)
風吹けは花さくなみのをるたひに桜かひあるみしまえのうら
かせふけは−はなさくなみの−をるたひに−さくらかひある−みしまえのうら |
00486 |
未入力 西行 (xxx)
浪あらふ衣のうらの袖かひをみきはに風のたたみおくかな
なみあらふ−ころものうらの−そてかひを−みきはにかせの−たたみおくかな |
00487 |
未入力 西行 (xxx)
こよひこそあはれみあつき心ちして嵐の音はよそに聞きつれ
こよひこそ−あはれみあつき−ここちして−あらしのおとは−よそにききつれ |
00488 |
未入力 宮法印 (xxx)
けさの色やわかむらさきにそめてけるこけの袂を思ひかへして
けさのいろや−わかむらさきに−そめてける−こけのたもとを−おもひかへして |
00489 |
未入力 西行 (xxx)
君すまぬ御うちはあれてありすかはいむすかたをもうつしつるかな
きみすまぬ−みうちはあれて−ありすかは−いむすかたをも−うつしつるかな |
00490 |
未入力 宣旨のつほね (xxx)
おもひきやいみこし人のつてににてなれし御うちをきかんものとは
おもひきや−いみこしひとの−つてににて−なれしみうちを−きかむものとは |
00491 |
未入力 新院 (xxx)
もかみ川つなてひくらんいな舟のしはしかほとはいかりおろさん
もかみかは−つなてひくらむ−いなふねの−しはしかほとは−いかりおろさむ |
00492 |
未入力 西行 (xxx)
つよくひくつなてと見せよもかみ川その稲舟のいかりおろさめ
つよくひく−つなてとみせよ−もかみかは−そのいなふねの−いかりおろさめ |
00493 |
[詞書] 世の中みたれて、新院あらぬさまにならせおはしまして、御くしおろして、仁和寺の北院におはしますと聞きて、参りたりしに、兼賢阿☆梨の出てあひたりしに、月のあかくて、何となく心もさわき、哀に覚えて
未入力 西行 (xxx)
かかる世に影もかはらすすむ月を見る我かみさへうらめしきかな
かかるよに−かけもかはらす−すむつきを−みるわかみさへ−うらめしきかな |
00494 |
未入力 西行 (xxx)
なにことにとまる心のありけれはさらにしも又世のいとはしき
なにことに−とまるこころの−ありけれは−さらにしもまた−よのいとはしき |
00495 |
未入力 西行 (xxx)
なれきにし都もうとくなりはててかなしさそふる秋の山里
なれきにし−みやこもうとく−なりはてて−かなしさそふる−あきのやまさと |
00496 |
未入力 中院の右大臣 (xxx)
夜もすから月をなかめて契置きしそのむつことにやみははれにき
よもすから−つきをなかめて−ちきりおきし−そのむつことに−やみははれにき |
00497 |
未入力 西行 (xxx)
すむと見し心の月しあらはれはこのよのやみははれさらめやは
すむとみし−こころのつきし−あらはれは−このよのやみは−はれさらめやは |
00498 |
未入力 侍賢門院の堀川局 (xxx)
しほなれしとまやもあれてうき浪によるかたもなきあまとしらすや
しほなれし−とまやもあれて−うきなみに−よるかたもなき−あまとしらすや |
00499 |
未入力 西行 (xxx)
とまの屋に浪立ちよらぬけしきにてあまり住みうき程は見えにき
とまのやに−なみたちよらぬ−けしきにて−あまりすみうき−ほとはみえにき |
00500 |
未入力 西行 (xxx)
山おろす嵐のおとのはけしさはいつならひけん君かすみかそ
やまおろす−あらしのおとの−はけしさは−いつならひけむ−きみかすみかそ |
00501 |
未入力 侍賢門院兵衛局 (xxx)
浮世をは嵐のかせにさそはれて家をいてにしすみかとそみる
うきよをは−あらしのかせに−さそはれて−いへをいてにし−すみかとそみる |
00502 |
未入力 西行 (xxx)
すむ人の心くまるる泉かな昔をいかに思ひいつらん
すむひとの−こころくまるる−いつみかな−むかしをいかに−おもひいつらむ |
00503 |
未入力 西行 (xxx)
紅葉見て君か袂や時雨るらん昔の秋の風をしたひて
もみちみて−きみかたもとや−しくるらむ−むかしのあきの−かせをしたひて |
00504 |
未入力 侍賢門院兵衛局 (xxx)
色ふかき木すゑをみても時雨れつつふりにしことをかけぬまそなき
いろふかき−こすゑをみても−しくれつつ−ふりにしことを−かけぬまそなき |
00505 |
未入力 西行 (xxx)
今たにもかかりといひしたきつせのその折まては昔なりけん
いまたにも−かかりといひし−たきつせの−そのをりまては−むかしなりけむ |
00506 |
未入力 西行 (xxx)
いにしへはついゐしやともあるものを何をかけふのかたみにはせん
いにしへは−ついゐしやとも−あるものを−なにをかけふの−かたみにはせむ |
00507 |
未入力 西行 (xxx)
しけき野をいく一むらに分けなしてさらに昔をしのひかへさん
しけきのを−いくひとむらに−わけなして−さらにむかしを−しのひかへさむ |
00508 |
未入力 西行 (xxx)
なかなかに谷のほそ道うつめ雪ありとて人のかよふへきかは
なかなかに−たにのほそみち−うつめゆき−ありとてひとの−かよふへきかは |
00509 |
未入力 西行 (xxx)
折しもあれうれしく雪のつもるかなかきこもりなんとおもふ山路に
をりしもあれ−うれしくゆきの−つもるかな−かきこもりなむと−おもふやまちに |
00510 |
未入力 西行 (xxx)
しきみおくあかのをしきのふちなくはなにに霰の玉とならまし
しきみおく−あかのをしきの−ふちなくは−なににあられの−たまとならまし |
00511 |
未入力 西行 (xxx)
花ならぬことの葉なれとおのつから色もやあると君ひろはなん
はなならぬ−ことのはなれと−おのつから−いろもやあると−きみひろはなむ |
00512 |
未入力 五条三位 (xxx)
三世をすてて入りにし道のことのはそ哀もふかき色は見えける
よをすてて−いりにしみちの−ことのはそ−あはれもふかき−いろはみえける |
00513 |
未入力 西行 (xxx)
分けて入る袖にあはれをかけよとて露けき庭に虫さへそなく
わけている−そてにあはれを−かけよとて−つゆけきにはに−むしさへそなく |
00514 |
未入力 西行 (xxx)
花ををしむ心の色の匂ひをは子を思ふおやの袖にかさねん
はなををしむ−こころのいろの−にほひをは−こをおもふおやの−そてにかさねむ |
00515 |
未入力 堀河の局 (xxx)
この世にてかたらひおかん郭公しての山路のしるへともなれ
このよにて−かたらひおかむ−ほとときす−してのやまちの−しるへともなれ |
00516 |
未入力 西行 (xxx)
郭公鳴く鳴くこそはかたらはめしての山路に君しかからは
ほとときす−なくなくこそは−かたらはめ−してのやまちに−きみしかからは |
00517 |
未入力 西行 (xxx)
あさく出てし心の水や湛ふらんすみゆくままにふかくなるかな
あさくいてし−こころのみつや−たたふらむ−すみゆくままに−ふかくなるかな |
00518 |
未入力 西行 (xxx)
夢さむる鐘のひひきに打ちそへて十たひのみなをとなへつるかな
ゆめさむる−かねのひひきに−うちそへて−とたひのみなを−となへつるかな |
00519 |
未入力 西行 (xxx)
すすか山うき世の中をふりすてていかになり行く我か身なるらん
すすかやま−うきよのなかを−ふりすてて−いかになりゆく−わかみなるらむ |
00520 |
未入力 西行 (xxx)
折につけて人の心もかはりつつ世にあるかひもなきさなりけり
をりにつけて−ひとのこころも−かはりつつ−よにあるかひも−なきさなりけり |
00521 |
未入力 西行 (xxx)
撫子のませにそはへるあこたうりおなしつらなるなをしたひつつ
なてしこの−ませにそはへる−あこたうり−おなしつらなる−なをしたひつつ |
00522 |
未入力 西行 (xxx)
かつみふくくまのまうてのとまりをはこもくろめとやいふへかるらん
かつみふく−くまのまうての−とまりをは−こもくろめとや−いふへかるらむ |
00523 |
未入力 西行 (xxx)
家の風吹きつたへたるかひありてちることの葉のめつらしきかな
いへのかせ−ふきつたへたる−かひありて−ちることのはの−めつらしきかな |
00524 |
未入力 西行 (xxx)
千代ふへき物をさなからあつめてや君かよはひの数にとるへき
ちよふへき−ものをさなから−あつめてや−きみかよはひの−かすにとるへき |
00525 |
未入力 西行 (xxx)
わか葉さすひらのの松はさらに又えたにや千代の数をそふらん
わかはさす−ひらののまつは−さらにまた−えたにやちよの−かすをそふらむ |
00526 |
未入力 西行 (xxx)
君か代のためしになにを思はましかはらぬまつの色なかりせは
きみかよの−ためしになにを−おもはまし−かはらぬまつの−いろなかりせは |
00527 |
未入力 西行 (xxx)
なにことにつけてか世をはいとふへきうかりし人そけふはうれしき
なにことに−つけてかよをは−いとふへき−うかりしひとそ−けふはうれしき |
00528 |
未入力 西行 (xxx)
よしさらは涙の池に袖なして心のままに月をやとさん
よしさらは−なみたのいけに−そてなして−こころのままに−つきをやとさむ |
00529 |
未入力 西行 (xxx)
くやしくもしつのふせやの戸をしめて月のもるをもしらて過きぬる
くやしくも−しつのふせやの−とをしめて−つきのもるをも−しらてすきぬる |
00530 |
未入力 西行 (xxx)
とたえせていつまて人のかよひけん嵐そわたる谷のかけはし
とたえせて−いつまてひとの−かよひけむ−あらしそわたる−たにのかけはし |
00531 |
未入力 西行 (xxx)
人しらてつひのすみかに憑むへき山のおくにもとまりそめぬる
ひとしらて−つひのすみかに−たのむへき−やまのおくにも−とまりそめぬる |
00532 |
未入力 西行 (xxx)
うきふしをまつおもひしる涙かなさのみこそはとなくさむれとも
うきふしを−まつおもひしる−なみたかな−さのみこそはと−なくさむれとも |
00533 |
未入力 西行 (xxx)
とふ人もおもひたえたる山郷のさひしさなくはすみうからまし
とふひとも−おもひたえたる−やまさとの−さひしさなくは−すみうからまし |
00534 |
未入力 西行 (xxx)
ときはなる太山にふかく入りにしを花咲きなはとおもひけるかな
ときはなる−みやまにふかく−いりにしを−はなさきなはと−おもひけるかな |
00535 |
未入力 西行 (xxx)
世をすつる人はまことにすつるかはすてぬ人こそすつるなりけれ
よをすつる−ひとはまことに−すつるかは−すてぬひとこそ−すつるなりけれ |
00536 |
未入力 西行 (xxx)
時雨かは山めくりする心かないつまてとなく打ちしをれつつ
しくれかは−やまめくりする−こころかな−いつまてとなく−うちしをれつつ |
00537 |
未入力 西行 (xxx)
浮世とて月すますなることもあらはいかかはすへき天の下人
うきよとて−つきすますなる−こともあらは−いかかはすへき−あめのしたひと |
00538 |
未入力 西行 (xxx)
来ん世には心のうちにあらはさんあかてやみぬる月のひかりを
こむよには−こころのうちに−あらはさむ−あかてやみぬる−つきのひかりを |
00539 |
未入力 西行 (xxx)
ふけにける我か世の影を思ふまにはるかに月のかたふきにける
ふけにける−わかよのかけを−おもふまに−はるかにつきの−かたふきにける |
00540 |
未入力 西行 (xxx)
しをりせてなほ山ふかく分入らんうきこときかぬ所ありやと
しをりせて−なほやまふかく−わけいらむ−うきこときかぬ−ところありやと |
00541 |
未入力 西行 (xxx)
暁の嵐にたくふ鐘の音を心のそこにこたへてそきく
あかつきの−あらしにたくふ−かねのおとを−こころのそこに−こたへてそきく |
00542 |
未入力 西行 (xxx)
あらはさぬ我か心をそうらむへき月やはうときをはすての山
あらはさぬ−わかこころをそ−うらむへき−つきやはうとき−をはすてのやま |
00543 |
未入力 西行 (xxx)
たのもしな君君にますをりにあひて心の色を筆にそめつる
たのもしな−きみきみにます−をりにあひて−こころのいろを−ふてにそめつる |
00544 |
未入力 西行 (xxx)
今よりはいとはし命あれはこそかかるすまひの哀をもしれ
いまよりは−いとはしいのち−あれはこそ−かかるすまひの−あはれをもしれ |
00545 |
未入力 西行 (xxx)
身のうさのかくれかにせん山里は心ありてそ住むへかりける
みのうさの−かくれかにせむ−やまさとは−こころありてそ−すむへかりける |
00546 |
未入力 西行 (xxx)
いつくにかみをかくさましいとひ出てて浮世にふかき山なかりせは
いつくにか−みをかくさまし−いとひいてて−うきよにふかき−やまなかりせは |
00547 |
未入力 西行 (xxx)
山里にうき世いとはん人もかなくやしく過きし昔かたらん
やまさとに−うきよいとはむ−ひともかな−くやしくすきし−むかしかたらむ |
00548 |
未入力 西行 (xxx)
足引の山のあなたに君すまは入るとも月ををしまさらまし
あしひきの−やまのあなたに−きみすまは−いるともつきを−をしまさらまし |
00549 |
未入力 西行 (xxx)
浮世いとふ山のおくにもしたひ来て月そ住家の哀をもしる
うきよいとふ−やまのおくにも−したひきて−つきそすみかの−あはれをもしる |
00550 |
未入力 西行 (xxx)
朝日まつ程はやみにやまよはまし有明の月の影なかりせは
あさひまつ−ほとはやみにや−まよはまし−ありあけのつきの−かけなかりせは |
00551 |
未入力 西行 (xxx)
古郷は見し世にもにすあせにけりいつち昔の人は行きけん
ふるさとは−みしよにもにす−あせにけり−いつちむかしの−ひとはゆきけむ |
00552 |
未入力 西行 (xxx)
昔見し宿の小松に年ふりて嵐の音を梢にそ聞く
むかしみし−やとのこまつに−としふりて−あらしのおとを−こすゑにそきく |
00553 |
未入力 西行 (xxx)
山郷は谷のかけ樋のたえたえに水こひとりのこゑ聞ゆなり
やまさとは−たにのかけひの−たえたえに−みつこひとりの−こゑきこゆなり |
00554 |
未入力 西行 (xxx)
ふるはたのそはのたつ木にゐるはとの友よふこゑのすこき夕暮
ふるはたの−そはのたつきに−ゐるはとの−ともよふこゑの−すこきゆふくれ |
00555 |
未入力 西行 (xxx)
見れはけに心もそれになりそ行くかれのの薄有明の月
みれはけに−こころもそれに−なりそゆく−かれののすすき−ありあけのつき |
00556 |
未入力 西行 (xxx)
なさけありし昔のみなほしのはれてなからへまうき世にも有るかな
なさけありし−むかしのみなほ−しのはれて−なからへまうき−よにもあるかな |
00557 |
未入力 西行 (xxx)
世を出てて渓に住みけるうれしさはふるすに残る鴬のこゑ
よをいてて−たににすみける−うれしさは−ふるすにのこる−うくひすのこゑ |
00558 |
未入力 西行 (xxx)
あはれ行くしはのふたては山里に心すむへきすまひなりけり
あはれゆく−しはのふたては−やまさとに−こころすむへき−すまひなりけり |
00559 |
未入力 西行 (xxx)
いつくにもすまれすはたたすまてあらん柴の庵のしはしなる世に
いつくにも−すまれすはたた−すまてあらむ−しはのいほりの−しはしなるよに |
00560 |
未入力 西行 (xxx)
いつなけきいつおもふへきことなれはのちのよしらて人のすくらん
いつなけき−いつおもふへき−ことなれは−のちのよしらて−ひとのすくらむ |
00561 |
未入力 西行 (xxx)
さてもこはいかかはすへき世の中に有るにもあらすなきにしもなし
さてもこは−いかかはすへき−よのなかに−あるにもあらす−なきにしもなし |
00562 |
未入力 西行 (xxx)
花ちらて月はくもらぬ世なりせは物を思はぬ我かみならまし
はなちらて−つきはくもらぬ−よなりせは−ものをおもはぬ−わかみならまし |
00563 |
未入力 西行 (xxx)
たのもしなよひあかつきの鐘の音に物おもふつみはくしてつくらん
たのもしな−よひあかつきの−かねのおとに−ものおもふつみは−くしてつくらむ |
00564 |
未入力 西行 (xxx)
なにとなくせりと聞くこそあはれなれつみけん人の心しられて
なにとなく−せりときくこそ−あはれなれ−つみけむひとの−こころしられて |
00565 |
未入力 西行 (xxx)
はらはらとおつる涙そ哀なるたまらす物のかなしかるへし
はらはらと−おつるなみたそ−あはれなる−たまらすものの−かなしかるへし |
00566 |
未入力 西行 (xxx)
わひ人の涙ににたる桜かな風みにしめはまつこほれつつ
わひひとの−なみたににたる−さくらかな−かせみにしめは−まつこほれつつ |
00567 |
未入力 西行 (xxx)
つくつくと物をおもふに打ちそへてをり哀なる鐘のおとかな
つくつくと−ものをおもふに−うちそへて−をりあはれなる−かねのおとかな |
00568 |
未入力 西行 (xxx)
谷の戸に独そ松もたてりける我のみ友はなきかと思へは
たにのとに−ひとりそまつも−たてりける−われのみともは−なきかとおもへは |
00569 |
未入力 西行 (xxx)
松風のおとあはれなる山里にさひしさそふる日くらしのこゑ
まつかせの−おとあはれなる−やまさとに−さひしさそふる−ひくらしのこゑ |
00570 |
未入力 西行 (xxx)
みくまののはまゆふおふる浦さひて人なみなみに年そかさなる
みくまのの−はまゆふおふる−うらさひて−ひとなみなみに−としそかさなる |
00571 |
未入力 西行 (xxx)
いそのかみふるきをしたふ世なりせはあれたる宿に人すみなまし
いそのかみ−ふるきをしたふ−よなりせは−あれたるやとに−ひとすみなまし |
00572 |
未入力 西行 (xxx)
風吹けはあたにやれ行くはせうはのあれはとみをもたのむへきかは
かせふけは−あたにやれゆく−はせうはの−あれはとみをも−たのむへきかは |
00573 |
未入力 西行 (xxx)
またれつる入あひの鐘の音すなりあすもやあらはきかんとすらん
またれつる−いりあひのかねの−おとすなり−あすもやあらは−きかむとすらむ |
00574 |
未入力 西行 (xxx)
入日さす山のあなたはしらねとも心をかねておくりおきつる
いりひさす−やまのあなたは−しらねとも−こころをかねて−おくりおきつる |
00575 |
未入力 西行 (xxx)
しはの庵はすみうきこともあらましを友なふ月の影なかりせは
しはのいほは−すみうきことも−あらましを−ともなふつきの−かけなかりせは |
00576 |
未入力 西行 (xxx)
わつらはて月には夜るもかよひけりとなりへつたふあせのほそ道
わつらはて−つきにはよるも−かよひけり−となりへつたふ−あせのほそみち |
00577 |
未入力 西行 (xxx)
ひかりをはくもらぬ月そみかきけるいなはにかくるあさひこのため
ひかりをは−くもらぬつきそ−みかきける−いなはにかくる−あさひこのため |
00578 |
未入力 西行 (xxx)
影消えては山の月はもりもこす谷は木末の雪と見えつつ
かけきえて−はやまのつきは−もりもこす−たにはこすゑの−ゆきとみえつつ |
00579 |
未入力 西行 (xxx)
嵐こす嶺の木の間を分けきつつ谷の清水にやとる月かけ
あらしこす−みねのこのまを−わけきつつ−たにのしみつに−やとるつきかけ |
00580 |
未入力 西行 (xxx)
月を見るよそもさこそはいとふらめ雲たたここの空にたたよへ
つきをみる−よそもさこそは−いとふらめ−くもたたここの−そらにたたよへ |
00581 |
未入力 西行 (xxx)
雲にたたこよひは月をやとしてんいとふとてしも晴れぬものゆゑ
くもにたた−こよひはつきを−やとしてむ−いとふとてしも−はれぬものゆゑ |
00582 |
未入力 西行 (xxx)
打ちはるる雲なかりけり吉野山花もてわたる風とみたれは
うちはるる−くもなかりけり−よしのやま−はなもてわたる−かせとみたれは |
00583 |
未入力 西行 (xxx)
なにとなく汲むたひにすむ心かな岩井の水に影うつしつつ
なにとなく−くむたひにすむ−こころかな−いはゐのみつに−かけうつしつつ |
00584 |
未入力 西行 (xxx)
谷風は戸を吹きあけて入るものをなにと嵐のまとたたくらん
たにかせは−とをふきあけて−いるものを−なにとあらしの−まとたたくらむ |
00585 |
未入力 西行 (xxx)
つかはねとうつれる影を友としてをしすみけりな山川のみつ
つかはねと−うつれるかけを−ともとして−をしすみけりな−やまかはのみつ |
00586 |
未入力 西行 (xxx)
おとはせて岩にたはしる霰こそよもきか宿の友となりけれ
おとはせて−いはにたはしる−あられこそ−よもきかやとの−ともとなりけれ |
00587 |
未入力 西行 (xxx)
熊のすむこけの岩山おそろしやむへなりけりな人もかよはぬ
くまのすむ−こけのいはやま−おそろしや−むへなりけりな−ひともかよはぬ |
00588 |
未入力 西行 (xxx)
里人のおほぬさこぬさたてなめてむまかたむすふ野へになりけり
さとひとの−おほぬさこぬさ−たてなめて−むまかたむすふ−のへになりけり |
00589 |
未入力 西行 (xxx)
くれなゐの色なりなからたてのほのからしや人のめにもたてねは
くれなゐの−いろなりなから−たてのほの−からしやひとの−めにもたてねは |
00590 |
未入力 西行 (xxx)
ひさ木おひてすすめとなれるかけなれや波うつ岸に風わたりつつ
ひさきおひて−すすめとなれる−かけなれや−なみうつきしに−かせわたりつつ |
00591 |
未入力 西行 (xxx)
をりかくるなみの立つかと見ゆるかなすさきにきゐるささの村鳥
をりかくる−なみのたつかと−みゆるかな−すさきにきゐる−ささのむらとり |
00592 |
未入力 西行 (xxx)
浦ちかみかれたる松の梢には波の音をや風はかるらん
うらちかみ−かれたるまつの−こすゑには−なみのおとをや−かせはかるらむ |
00593 |
未入力 西行 (xxx)
しほ風にいせの浜荻ふけはまつほすゑ浪のあらたなるかな
しほかせに−いせのはまをき−ふけはまつ−ほすゑをなみの−あらたなるかな |
00594 |
未入力 西行 (xxx)
ふもと行く舟人いかにさむからんくま山たけをおろす嵐に
ふもとゆく−ふなひといかに−さむからむ−くまやまたけを−おろすあらしに |
00595 |
未入力 西行 (xxx)
おほつかないふきおろしのかささきにあさつま舟はあひやしぬらん
おほつかな−いふきおろしの−かささきに−あさつまふねは−あひやしぬらむ |
00596 |
未入力 西行 (xxx)
いたちもるあまみかせきに成りにけりえそかちしまを煙こめたり
いたちもる−あまみかせきに−なりにけり−えそかちしまを−けふりこめたり |
00597 |
未入力 西行 (xxx)
もののふのならすすさみはおひたたしあけとのしさりかもの入くひ
もののふの−ならすすさみは−おひたたし−あけとのしさり−かものいりくひ |
00598 |
未入力 西行 (xxx)
山里は人こさせしとおもはねととはるることそうとくなり行く
やまさとは−ひとこさせしと−おもはねと−とはるることそ−うとくなりゆく |
00599 |
未入力 西行 (xxx)
花見にとむれつつ人のくるのみそあたら桜のとかには有りける
はなみにと−むれつつひとの−くるのみそ−あたらさくらの−とかにはありける |
00600 |
未入力 西行 (xxx)
山ふかみ霞こめたる柴の戸に友なふ物は谷の鴬
やまふかみ−かすみこめたる−しはのとに−ともなふものは−たにのうくひす |
00601 |
未入力 西行 (xxx)
宮はしらしたつ岩ねにしきたてて露もくもらぬ日の御影かな
みやはしら−したついはねに−しきたてて−つゆもくもらぬ−ひのみかけかな |
00602 |
未入力 西行 (xxx)
神路山月さやかなるかひありて天の下をはてらすなりけり
かみちやま−つきさやかなる−かひありて−あめのしたをは−てらすなりけり |
00603 |
未入力 西行 (xxx)
さか木はに心をかけてゆふしてのおもへは神も仏なりけり
さかきはに−こころをかけて−ゆふしての−おもへはかみも−ほとけなりけり |
00604 |
未入力 西行 (xxx)
おもひきやふた見のうらの月をみて明暮袖に浪かけんとは
おもひきや−ふたみのうらの−つきをみて−あけくれそてに−なみかけむとは |
00605 |
未入力 西行 (xxx)
岩戸あけしあまつみことのそのかみに桜を誰か植始めけん
いはとあけし−あまつみことの−そのかみに−さくらをたれか−うゑはしめけむ |
00606 |
未入力 西行 (xxx)
爰も又都のたつみ鹿そすむ山こそかはれ名は宇治の里
ここもまた−みやこのたつみ−しかそすむ−やまこそかはれ−なはうちのさと |
00607 |
未入力 西行 (xxx)
この春は花ををしまてよそならん心を風の宮にまかせて
このはるは−はなををしまて−よそならむ−こころをかせの−みやにまかせて |
00608 |
未入力 西行 (xxx)
梢見れは秋にかはらぬ名なりけり花おもしろき月よみの宮
こすゑみれは−あきにかはらぬ−ななりけり−はなおもしろき−つきよみのみや |
00609 |
未入力 西行 (xxx)
神風に心やすくそまかせつる桜の宮の花のさかりを
かみかせに−こころやすくそ−まかせつる−さくらのみやの−はなのさかりを |
00610 |
未入力 西行 (xxx)
かみ路山みしめにこむる花さかりこはいかはかりうれしからまし
かみちやま−みしめにこむる−はなさかり−こはいかはかり−うれしからまし |
00611 |
未入力 西行 (xxx)
かすますは何をか春とおもはましまた雪きえぬみよしのの山
かすますは−なにをかはると−おもはまし−またゆききえぬ−みよしののやま |
00612 |
未入力 西行 (xxx)
さやかなる鷲のたかねの雲ゐより影やはらくる月よみの森
さやかなる−わしのたかねの−くもゐより−かけやはらくる−つきよみのもり |
00613 |
未入力 西行 (xxx)
鷲の山くもる心のなかりせは誰も見るへき有明の月
わしのやま−くもるこころの−なかりせは−たれもみるへき−ありあけのつき |
00614 |
未入力 西行 (xxx)
年をへてまつもをしむも山桜花に心をつくすなりけり
としをへて−まつもをしむも−やまさくら−はなにこころを−つくすなりけり |
00615 |
未入力 西行 (xxx)
なにことをいかにおもふとなけれとも袂かわかぬ秋の夕暮
なにことを−いかにおもふと−なけれとも−たもとかわかぬ−あきのゆふくれ |
00616 |
未入力 西行 (xxx)
秋ふかみよわるは虫のこゑのみか聞く我とてもたのみやはある
あきふかみ−よわるはむしの−こゑのみか−きくわれとても−たのみやはある |
00617 |
未入力 西行 (xxx)
秋の夜をひとりやなきてあかさまし友なふ虫のこゑなかりせは
あきのよを−ひとりやなきて−あかさまし−ともなふむしの−こゑなかりせは |
00618 |
未入力 西行 (xxx)
おほつかな秋はいかなるゆゑのあれはすすろにもののかなしかるらん
おほつかな−あきはいかなる−ゆゑのあれは−すすろにものの−かなしかるらむ |
00619 |
未入力 西行 (xxx)
松にはふまさきのかつらちりぬなり外山の秋は風すさむらん
まつにはふ−まさきのかつら−ちりぬなり−とやまのあきは−かせすさむらむ |
00620 |
未入力 西行 (xxx)
秋しのや外山のさとや時雨るらんいこまのたけに雲のかかれる
あきしのや−とやまのさとや−しくるらむ−いこまのたけに−くものかかれる |
00621 |
未入力 西行 (xxx)
あつまやのあまりにもふる時雨かな誰かはしらぬ神無月とは
あつまやの−あまりにもふる−しくれかな−たれかはしらぬ−かみなつきとは |
00622 |
未入力 西行 (xxx)
道のへの清水なかるる柳影しはしとてこそ立ちとまりつれ
みちのへの−しみつなかるる−やなきかけ−しはしとてこそ−たちとまりつれ |
00623 |
未入力 西行 (xxx)
よられつる野もせのくさの影ろひて涼しくくもる夕立の空
よられつる−のもせのくさの−かけろひて−すすしくくもる−ゆふたちのそら |
00624 |
未入力 西行 (xxx)
花におく露にやとりし影よりもかれのの月はあはれなりけり
はなにおく−つゆにやとりし−かけよりも−かれののつきは−あはれなりけり |
00625 |
未入力 西行 (xxx)
冬かれのすさましけなる山里に月のすむこそ哀なりけれ
ふゆかれの−すさましけなる−やまさとに−つきのすむこそ−あはれなりけれ |
00626 |
未入力 西行 (xxx)
ふかく入りて神路のおくを尋ぬれは又うへもなき峰のまつかせ
ふかくいりて−かみちのおくを−たつぬれは−またうへもなき−みねのまつかせ |
00627 |
未入力 西行 (xxx)
山ふかみなるるかせきのけちかさに世にとほさかる程そしらるる
やまふかみ−なるるかせきの−けちかさに−よにとほさかる−ほとそしらるる |
00628 |
未入力 西行 (xxx)
たのむらんしるへもいさやひとつ世の別にたにもまとふ心は
たのむらむ−しるへもいさや−ひとつよの−わかれにたにも−まとふこころは |
00629 |
未入力 西行 (xxx)
わたの原はるかに浪をへたてきて都に出てし月をみるかな
わたのはら−はるかになみを−へたてきて−みやこにいてし−つきをみるかな |
00630 |
未入力 西行 (xxx)
しかまつのくすのしけみにつまこめてとかみか原にをしか鳴くなり
しかまつの−くすのしけみに−つまこめて−とかみかはらに−をしかなくなり |
00631 |
未入力 西行 (xxx)
郭公都へゆかはことつてんこえくらしたる山の哀を
ほとときす−みやこへゆかは−ことつてむ−こえくらしたる−やまのあはれを |
00632 |
未入力 西行 (xxx)
立ちそめてかへる心は錦木のちつか待つへき心ちこそせめ
たちそめて−かへるこころは−にしききの−ちつかまつへき−ここちこそせめ |
00633 |
未入力 西行 (xxx)
風あらき柴の庵はつねよりもねさめて物はかなしかりけり
かせあらき−しはのいほりは−つねよりも−ねさめてものは−かなしかりけり |
00634 |
未入力 西行 (xxx)
なへて見る君か歎をとふ数におもひなされぬ言のはもかな
なへてみる−きみかなけきを−とふかすに−おもひなされぬ−ことのはもかな |
00635 |
未入力 西行 (xxx)
なき跡の面影をのみみにそへてさこそは人の恋しかるらめ
なきあとの−おもかけをのみ−みにそへて−さこそはひとの−こひしかるらめ |
00636 |
未入力 西行 (xxx)
なかれ行く水に玉なすうたかたのあはれあたなるこの世なりけり
なかれゆく−みつにたまなす−うたかたの−あはれあたなる−このよなりけり |
00637 |
未入力 西行 (xxx)
なき人もあるをおもふも世の中はねふりのうちの夢とこそなれ
なきひとも−あるをおもふも−よのなかは−ねふりのうちの−ゆめとこそなれ |
00638 |
未入力 西行 (xxx)
をしむとてをしまれぬへきこの世かはみをすててこそみをもたすけめ
をしむとて−をしまれぬへき−このよかは−みをすててこそ−みをもたすけめ |
00639 |
未入力 西行 (xxx)
いとふへきかりのやとりはいてぬなり今はまことの道を尋ねよ
いとふへき−かりのやとりは−いてぬなり−いまはまことの−みちをたつねよ |
00640 |
未入力 西行 (xxx)
いとといかに山を出てしとおもふらん心の月を独すまして
いとといかに−やまをいてしと−おもふらむ−こころのつきを−ひとりすまして |
00641 |
未入力 前大僧正慈鎮 (xxx)
うきみこそなほ山陰にしつめとも心にうかふ月をみせはや
うきみこそ−なほやまかけに−しつめとも−こころにうかふ−つきをみせはや |
00642 |
未入力 西行 (xxx)
ことのねになみたをそへてなかすかなたえなましかはとおもふあはれに
ことのねに−なみたをそへて−なかすかな−たえなましかはと−おもふあはれに |
00643 |
未入力 西行 (xxx)
かくれなくもにすむ虫の見ゆれとも我からくもる秋のよの月
かくれなく−もにすむむしの−みゆれとも−われからくもる−あきのよのつき |
00644 |
未入力 西行 (xxx)
したはるる心やゆくと山のはにしはしな入りそ秋のよの月
したはるる−こころやゆくと−やまのはに−しはしないりそ−あきのよのつき |
00645 |
未入力 西行 (xxx)
あま雲のわりなきひまをもる月の影はかりたにあひみてしかな
あまくもの−わりなきひまを−もるつきの−かけはかりたに−あひみてしかな |
00646 |
未入力 西行 (xxx)
うらみてもなくさみてまし中中につらくて人のあはぬと思はは
うらみても−なくさみてまし−なかなかに−つらくてひとの−あはぬとおもはは |
00647 |
未入力 西行 (xxx)
今よりはあはて物をはおもふとも後うき人にみをはまかせし
いまよりは−あはてものをは−おもふとも−のちうきひとに−みをはまかせし |
00648 |
未入力 西行 (xxx)
はるかなる岩のはさまにひとりゐて人目つつまて物思ははや
はるかなる−いはのはさまに−ひとりゐて−ひとめつつまて−ものおもははや |
00649 |
未入力 西行 (xxx)
面影のわすらるましき別かな名残を人の月にととめて
おもかけの−わすらるましき−わかれかな−なこりをひとの−つきにととめて |
00650 |
未入力 西行 (xxx)
有明はおもひてあれやよこ雲のたたよはれつるしののめの空
ありあけは−おもひてあれや−よこくもの−たたよはれつる−しののめのそら |
00651 |
未入力 西行 (xxx)
から衣立ちはなれにしままならはかさねて物はおもはさらまし
からころも−たちはなれにし−ままならは−かさねてものは−おもはさらまし |
00652 |
未入力 西行 (xxx)
我か袖をたこのもすそにくらへはやいつれかいたくぬれはまさると
わかそてを−たこのもすそに−くらへはや−いつれかいたく−ぬれはまさると |
00653 |
未入力 西行 (xxx)
人はこて風のけしきのふけぬるに哀に雁のおとつれて行く
ひとはこて−かせのけしきの−ふけぬるに−あはれにかりの−おとつれてゆく |
00654 |
未入力 西行 (xxx)
たのめぬに君くやとまつよひのまはふけゆかてたた明けなましものを
たのめぬに−きみくやとまつ−よひのまは−ふけゆかてたた−あけなましものを |
00655 |
未入力 西行 (xxx)
あはれとて人の心の情あれや数ならぬにはよらぬなけきを
あはれとて−ひとのこころの−なさけあれや−かすならぬには−よらぬなけきを |
00656 |
未入力 西行 (xxx)
物おもひてなかむるころの月の色にいかはかりなる哀そふらん
ものおもひて−なかむるころの−つきのいろに−いかはかりなる−あはれそふらむ |
00657 |
未入力 西行 (xxx)
みさをなる涙なりせはから衣かけても人にしられさらまし
みさをなる−なみたなりせは−からころも−かけてもひとに−しられさらまし |
00658 |
未入力 西行 (xxx)
まつしまやをしまの磯も何ならすたたきさかたの秋のよの月
まつしまや−をしまのいそも−なにならす−たたきさかたの−あきのよのつき |
00659 |
未入力 西行 (xxx)
月の色に心をふかくそめましや都を出てぬ我かxなりせは
つきのいろに−こころをふかく−そめましや−みやこをいてぬ−わかхなりせは |
00660 |
未入力 西行 (xxx)
風さむみいせの浜荻分けゆけは衣かりかね浪に鳴くなり
かせさむみ−いせのはまをき−わけゆけは−ころもかりかね−なみになくなり |
00661 |
未入力 西行 (xxx)
月影のしららのはまのしろかひはなみもひとつに見えわたるかな
つきかけの−しららのはまの−しろかひは−なみもひとつに−みえわたるかな |
00662 |
未入力 西行 (xxx)
しほ煙るますほのをかひひろふとていろの浜とは言ふにやあるらん
しほけふる−ますほのをかひ−ひろふとて−いろのはまとは−いふにやあるらむ |
00663 |
未入力 西行 (xxx)
浪よする竹のとまりのすすめ貝うれしき世世にあひにけるかな
なみよする−たけのとまりの−すすめかひ−うれしきよよに−あひにけるかな |
00664 |
未入力 西行 (xxx)
なみよする吹上の浜のすたれかひ風もそおろすいそにひろはは
なみよする−ふきあけのはまの−すたれかひ−かせもそおろす−いそにひろはは |
00665 |
未入力 西行 (xxx)
我か恋はほそ谷川の水なれやすゑにくははる音聞ゆなり
わかこひは−ほそたにかはの−みつなれや−すゑにくははる−おときこゆなり |
00666 |
未入力 西行 (xxx)
よこの海の君をみしまにひくあみのめにもかからぬあちの村鳥
よこのうみの−きみをみしまに−ひくあみの−めにもかからぬ−あちのむらとり |
00667 |
未入力 西行 (xxx)
我か恋はみしまか浪にこき出ててなころわつらふあまのつり舟
わかこひは−みしまかなみに−こきいてて−なころわつらふ−あまのつりふね |
00668 |
未入力 西行 (xxx)
なこの海かれたるあさの島かくれ風にかたよるすかの村鳥
なこのうみ−かれたるあさの−しまかくれ−かせにかたよる−すかのむらとり |
00669 |
未入力 西行 (xxx)
とちそむる氷をいかにいとふらんあちむらわたるすはの水うみ
とちそむる−こほりをいかに−いとふらむ−あちむらわたる−すはのみつうみ |
00670 |
未入力 西行 (xxx)
波にちる紅葉の色をあらふゆゑに錦の島といふにやあるらん
なみにちる−もみちのいろを−あらふゆゑに−にしきのしまと−いふにやあるらむ |
00671 |
未入力 西行 (xxx)
山ふかくさこそ心はかよふともすまて哀は知らんものかは
やまふかく−さこそこころは−かよふとも−すまてあはれは−しらむものかは |
00672 |
未入力 西行 (xxx)
数ならぬみをも心のもちかほにうかれても又帰りきにけり
かすならぬ−みをもこころの−もちかほに−うかれてもまた−かへりきにけり |
00673 |
未入力 西行 (xxx)
おろかなる心のひくにまかせてもさてさはいかにつひの住かは
おろかなる−こころのひくに−まかせても−さてさはいかに−つひのすみかは |
00674 |
未入力 西行 (xxx)
うけかたき人のすかたにうかひ出ててこりすや誰も又しつむらん
うけかたき−ひとのすかたに−うかひいてて−こりすやたれも−またしつむらむ |
00675 |
未入力 西行 (xxx)
世をいとふ名をたにもさはととめおきて数ならぬみの思出にせん
よをいとふ−なをたにもさは−ととめおきて−かすならぬみの−おもひてにせむ |
00676 |
未入力 西行 (xxx)
おのつからいはぬをもとふ人やあるとやすらふ程に年そ暮れぬる
おのつから−いはぬをもとふ−ひとやあると−やすらふほとに−としそくれぬる |
00677 |
未入力 西行 (xxx)
すゑの世もこの情のみかはらすと見し夢なくはよそに聞かまし
すゑのよも−このなさけのみ−かはらすと−みしゆめなくは−よそにきかまし |
00678 |
未入力 西行 (xxx)
たち入らて雲まを分けし月影はまたぬけしきや空に見えけん
たちいらて−くもまをわけし−つきかけは−またぬけしきや−そらにみえけむ |
00679 |
未入力 西行 (xxx)
年くれぬ春くへしとはおもはねとまさしく見えてかなふはつ夢
としくれぬ−はるくへしとは−おもはねと−まさしくみえて−かなふはつゆめ |
00680 |
未入力 西行 (xxx)
とけそむるはつ若水の氷にて春たつことのまつくまれぬる
とけそむる−はつわかみつの−こほりにて−はるたつことの−まつくまれぬる |
00681 |
未入力 西行 (xxx)
磯なつむあまのさをとめ心せよおきふく風に浪たかくみゆ
いそなつむ−あまのさをとめ−こころせよ−おきふくかせに−なみたかくみゆ |
00682 |
未入力 西行 (xxx)
山桜かさしの花に折りそへてかきりの春のいへつとにせん
やまさくら−かさしのはなに−をりそへて−かきりのはるの−いへつとにせむ |
00683 |
未入力 西行 (xxx)
をりならぬめくりのかきの卯の花をうれしく雪のさかせけるかな
をりならぬ−めくりのかきの−うのはなを−うれしくゆきの−さかせけるかな |
00684 |
未入力 西行 (xxx)
郭公ききにとてしもこもらねとはつせの山はたより有りけり
ほとときす−ききにとてしも−こもらねと−はつせのやまは−たよりありけり |
00685 |
未入力 西行 (xxx)
むらさきの色なき程の野へなれやかた祭にてかけぬ葵は
むらさきの−いろなきほとの−のへなれや−かたまつりにて−かけぬあふひは |
00686 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨は野原の沢に水こえていつれなるらんぬまの八橋
さみたれは−のはらのさはに−みつこえて−いつれなるらむ−ぬまのやつはし |
00687 |
未入力 西行 (xxx)
山かつの折かけかきのひまこえてとなりにもさく夕かほの花
やまかつの−をりかけかきの−ひまこえて−となりにもさく−ゆふかほのはな |
00688 |
未入力 西行 (xxx)
露つつむ池のはちすのまくりはに衣の玉をおもひしるかな
つゆつつむ−いけのはちすの−まくりはに−ころものたまを−おもひしるかな |
00689 |
未入力 西行 (xxx)
雲きゆるなちの高嶺に月たけて光をぬけるたきの白糸
くもきゆる−なちのたかねに−つきたけて−ひかりをぬける−たきのしらいと |
00690 |
未入力 西行 (xxx)
みにつもることはの罪もあらはれて心すみけり三かさねのたき
みにつもる−ことはのつみも−あらはれて−こころすみけり−みかさねのたき |
00691 |
未入力 西行 (xxx)
木のもとにすみけるあとをみつるかななちの高根の花を尋ねて
このもとに−すみけるあとを−みつるかな−なちのたかねの−はなをたつねて |
00692 |
未入力 西行 (xxx)
三笠山春はこゑにて知られけり氷をたたく鴬のたき
みかさやま−はるはこゑにて−しられけり−こほりをたたく−うくひすのたき |
00693 |
未入力 西行 (xxx)
浪にやとる月を汀にゆりよせて鏡にかくる住よしの岸
なみにやとる−つきをみきはに−ゆりよせて−かかみにかくる−すみよしのきし |
00694 |
未入力 西行 (xxx)
はつ春をくまなくてらす影をみて月にまつしるみもすその岸
はつはるを−くまなくてらす−かけをみて−つきにまつしる−みもすそのきし |
00695 |
未入力 西行 (xxx)
千鳥鳴く絵島の浦にすむ月を浪にうつしてみるこよひかな
ちとりなく−ゑしまのうらに−すむつきを−なみにうつして−みるこよひかな |
00696 |
未入力 西行 (xxx)
すはの海に氷すらしも夜もすからきそのあさきぬさえわたるなり
すはのうみに−こほりすらしも−よもすから−きそのあさきぬ−さえわたるなり |
00697 |
未入力 西行 (xxx)
時雨れそむる花苑山に秋暮れて錦の色をあらたむるかな
しくれそむる−はなそのやまに−あきくれて−にしきのいろを−あらたむるかな |
00698 |
未入力 西行 (xxx)
まさ木わるひたのたくみや出てつらん村雨すきぬかさとりの山
まさきわる−ひたのたくみや−いてつらむ−むらさめすきぬ−かさとりのやま |
00699 |
未入力 西行 (xxx)
谷あひのまきのすそ山石たては杣人いかに涼しかるらん
たにあひの−まきのすそやま−いしたては−そまひといかに−すすしかるらむ |
00700 |
未入力 西行 (xxx)
青根山苔の莚の上にして春はしとねの心ちこそすれ
あをねやま−こけのむしろの−うへにして−はるはしとねの−ここちこそすれ |
00701 |
未入力 西行 (xxx)
杣くたす伊吹か奥の川上にたつきうつらしこけさなみよる
そまくたす−いふきかおくの−かはかみに−たつきうつらし−こけさなみよる |
00702 |
未入力 西行 (xxx)
吹出てて日はいふきの山の端にさそひて出つる関の藤川
ふきいてて−かせはいふきの−やまのはに−さそひていつる−せきのふちかは |
00703 |
未入力 西行 (xxx)
雁かねはかへる道にやまよふらんこしの中山霞へたてて
かりかねは−かへるみちにや−まよふらむ−こしのなかやま−かすみへたてて |
00704 |
未入力 西行 (xxx)
こほりわる筏の棹のたゆけれはもちやこすらんほつの山をは
こほりわる−いかたのさをの−たゆけれは−もちやこすらむ−ほつのやまをは |
00705 |
未入力 西行 (xxx)
はこね山梢も又や冬ならんふた見は松の雪の村きえ
はこねやま−こすゑもまたや−ふゆならむ−ふたみはまつの−ゆきのむらきえ |
00706 |
未入力 西行 (xxx)
わけて行く道のみならす梢さへちくさのたけは心すみけり
わけてゆく−みちのみならす−こすゑさへ−ちくさのたけは−こころすみけり |
00707 |
未入力 西行 (xxx)
すみれさくよこ野のつ花生ひぬれはおもひおもひに人かよふなり
すみれさく−よこののつはな−おひぬれは−おもひおもひに−ひとかよふなり |
00708 |
未入力 西行 (xxx)
くらふ山かこふ柴やのうちまても心をさめぬ所やはある
くらふやま−かこふしはやの−うちまても−こころをさめぬ−ところやはある |
00709 |
未入力 西行 (xxx)
さ夜ころも入野の里に打つならし遠く聞ゆるつちの音かな
さよころも−いるののさとに−うつならし−とほくきこゆる−つちのおとかな |
00710 |
未入力 西行 (xxx)
我か物と秋のこすゑを見つるかな小倉の山に家ゐせしより
わかものと−あきのこすゑを−みつるかな−をくらのやまに−いへゐせしより |
00711 |
未入力 西行 (xxx)
水の音はまくらにおつる心地してねさめかちなる大原の里
みつのおとは−まくらにおつる−ここちして−ねさめかちなる−おほはらのさと |
00712 |
未入力 西行 (xxx)
雨しのくみのふの郷のかき柴にすたちはしむる鴬のこゑ
あめしのく−みのふのさとの−かきしはに−すたちはしむる−うくひすのこゑ |
00713 |
未入力 西行 (xxx)
ふし見過きぬ岡の屋になほととまらし日野まて行きて駒心みん
ふしみすきぬ−をかのやになほ−ととまらし−ひのまてゆきて−こまこころみむ |
00714 |
未入力 西行 (xxx)
みちのくの奥ゆかしくそおもほゆるつほのいしふみそとのはま風
みちのくの−おくゆかしくそ−おもほゆる−つほのいしふみ−そとのはまかせ |
00715 |
未入力 西行 (xxx)
からす崎の浜のこいしとおもふかなしろもましらぬすかしまのくろ
からすさきの−はまのこいしと−おもふかな−しろもましらぬ−すかしまのくろ |
00716 |
未入力 西行 (xxx)
いらこ崎にかつをつる舟ならひうきはるけき浪にうかれてそよる
いらこさきに−かつをつるふね−ならひうき−はるけきなみに−うかれてそよる |
00717 |
未入力 西行 (xxx)
杣人の真木のかり屋のあたふしに音する物はあられなりけり
そまひとの−まきのかりやの−あたふしに−おとするものは−あられなりけり |
00718 |
未入力 西行 (xxx)
となりゐぬ畑のかり屋にあかす夜は物哀なるものにそ有りける
となりゐぬ−はたのかりやに−あかすよは−ものあはれなる−ものにそありける |
00719 |
未入力 西行 (xxx)
くみてこそ心すむらめしつのめかいたたく水にやとる月かけ
くみてこそ−こころすむらめ−しつのめか−いたたくみつに−やとるつきかけ |
00720 |
未入力 西行 (xxx)
そこすみて浪しつかなるさされみつわたりやしらぬ山川のかけ
そこすみて−なみしつかなる−さされみつ−わたりやしらぬ−やまかはのかけ |
00721 |
未入力 西行 (xxx)
我もさそ庭の真砂の土あそひさて生ひたてるみこそ有りけれ
われもさそ−にはのまさこの−つちあそひ−さておひたてる−みこそありけれ |
00722 |
未入力 西行 (xxx)
しはしこそ人目つつみにせかれけるさては涙やなる滝の川
しはしこそ−ひとめつつみに−せかれける−さてはなみたや−なるたきのかは |
00723 |
未入力 西行 (xxx)
誰とてもとまるへきかはあたしのの草のはことにすかる白露
たれとても−とまるへきかは−あたしのの−くさのはことに−すかるしらつゆ |
00724 |
未入力 西行 (xxx)
おほはらやひらの高根の近けれは雪ふる戸ほそおもひこそやれ
おほはらや−ひらのたかねの−ちかけれは−ゆきふるとほそ−おもひこそやれ |
00725 |
未入力 西行 (xxx)
ひやうふにや心をたてておもふらん行者はかへりちこはとまりぬ
ひやうふにや−こころをたてて−おもふらむ−きやうしやはかへり−ちこはとまりぬ |
00726 |
未入力 西行 (xxx)
篠ふかみ霧たつ嶺を朝立ちてなひきわつらふありのとわたり
ささふかみ−きりたつみねを−あさたちて−なひきわつらふ−ありのとわたり |
00727 |
未入力 西行 (xxx)
一すちにおもひ入りなん吉野山又あらはこそ人もさそはめ
ひとすちに−おもひいりなむ−よしのやま−またあらはこそ−ひともさそはめ |
00728 |
未入力 西行 (xxx)
心せんしつか垣ねの梅の花よしなく過くる人ととめけり
こころせむ−しつかかきねの−うめのはな−よしなくすくる−ひとととめけり |
00729 |
未入力 西行 (xxx)
山たかみ岩ねをしむる柴の戸にしはしもさらは世をのかれはや
やまたかみ−いはねをしむる−しはのとに−しはしもさらは−よをのかれはや |
00730 |
未入力 西行 (xxx)
雲にまかふ花の本にてなかむれはおほろに月はみゆるなりけり
くもにまかふ−はなのもとにて−なかむれは−おほろにつきは−みゆるなりけり |
00731 |
未入力 西行 (xxx)
ゆふされやひはらかみねをこえ行けはすこくきこゆる山はとのこゑ
ゆふされや−ひはらかみねを−こえゆけは−すこくきこゆる−やまはとのこゑ |
00732 |
未入力 西行 (xxx)
さらぬたに世のはかなさを思ふ身に鵺鳴きわたるしののめの空
さらぬたに−よのはかなさを−おもふみに−ぬえなきわたる−しののめのそら |
00733 |
未入力 西行 (xxx)
秋たつと人はつけねとしられけり太山のすその風のけしきに
あきたつと−ひとはつけねと−しられけり−みやまのすその−かせのけしきに |
00734 |
未入力 西行 (xxx)
いかに我きよくくもらぬ身と成りて心の月の影を見るへき
いかにわれ−きよくくもらぬ−みとなりて−こころのつきの−かけをみるへき |
00735 |
未入力 西行 (xxx)
君もとへ我もしのはん先たたは月を形見におもひ出てつつ
きみもとへ−われもしのはむ−さきたたは−つきをかたみに−おもひいてつつ |
00736 |
未入力 西行 (xxx)
何ゆゑに今日まて物をおもはまし命にかへて逢ふ世なりせは
なにゆゑに−けふまてものを−おもはまし−いのちにかへて−あふよなりせは |
00737 |
未入力 西行 (xxx)
うきをうしとおもはさるへき我かみかは何とて人の恋しかるらん
うきをうしと−おもはさるへき−わかみかは−なにとてひとの−こひしかるらむ |
00738 |
未入力 西行 (xxx)
待つことははつ音まてかとおもひしに聞きふるされぬ郭公かな
まつことは−はつねまてかと−おもひしに−ききふるされぬ−ほとときすかな |
00739 |
未入力 西行 (xxx)
いかにしてうらみし袖にやとりけんいてかたく見し有明の月
いかにして−うらみしそてに−やとりけむ−いてかたくみし−ありあけのつき |
00740 |
未入力 西行 (xxx)
西へ行く月をやよそにおもふらん心にいらぬ人のためには
にしへゆく−つきをやよそに−おもふらむ−こころにいらぬ−ひとのためには |
00741 |
未入力 西行 (xxx)
柴の庵のしはし都へかへらしと思はんたにも哀なるへし
しはのいほの−しはしみやこへ−かへらしと−おもはむたにも−あはれなるへし |
00742 |
未入力 西行 (xxx)
打ちたえて君にあふ人いかなれや我かみもおなし世にこそはふれ
うちたえて−きみにあふひと−いかなれや−わかみもおなし−よにこそはふれ |
00743 |
未入力 西行 (xxx)
なかむるに花の名立のみならすは木のもとにてや春をおくらん
なかむるに−はなのなたての−みならすは−このもとにてや−はるをおくらむ |
00744 |
未入力 西行 (xxx)
おもひ出てやかた野の御狩かりくらしかへるみなせの山のはの月
おもひいてや−かたののみかり−かりくらし−かへるみなせの−やまのはのつき |
00745 |
未入力 西行 (xxx)
見れはまつなみたなかるる水無瀬川いつより月の独すむらん
みれはまつ−なみたなかるる−みなせかは−いつよりつきの−ひとりすむらむ |
00746 |
未入力 西行 (xxx)
いかて我今夜の月をみにそへてしての山路の人をてらさん
いかてわれ−こよひのつきを−みにそへて−してのやまちの−ひとをてらさむ |
00747 |
未入力 西行 (xxx)
浪たてる川原柳のあをみとり涼しくわたる岸の夕風
なみたてる−かはらやなきの−あをみとり−すすしくわたる−きしのゆふかせ |
00748 |
未入力 西行 (xxx)
山郷の外面の岡のたかききにそそろかましき秋せみのこゑ
やまさとの−そとものをかの−たかききに−そそろかましき−あきせみのこゑ |
00749 |
未入力 西行 (xxx)
あさてほすしつかはつ木をたよりにてまとはれてさく夕かほの花
あさてほす−しつかはつきを−たよりにて−まとはれてさく−ゆふかほのはな |
00750 |
未入力 西行 (xxx)
しのにをるあたりも涼し川社榊にかくる浪のしらゆふ
しのにをる−あたりもすすし−かはやしろ−さかきにかくる−なみのしらゆふ |
00751 |
未入力 西行 (xxx)
ひはりたつあら田におふる姫百合の何につくともなき我かみかな
ひはりたつ−あらたにおふる−ひめゆりの−なににつくとも−なきわかみかな |
00752 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨に小田の早苗やいかならんあせのうきつちあらひこされて
さみたれに−をたのさなへや−いかならむ−あせのうきつち−あらひこされて |
00753 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨に山たのあせの滝枕数をかさねておつるなりけり
さみたれに−やまたのあせの−たきまくら−かすをかさねて−おつるなりけり |
00754 |
未入力 西行 (xxx)
川わたのよとみにとまるなかれ木のうき橋わたる五月雨の比
かはわたの−よとみにとまる−なかれきの−うきはしわたる−さみたれのころ |
00755 |
未入力 西行 (xxx)
水なしとききてふりぬるかつまたの池あらたむる五月雨のころ
みつなしと−ききてふりぬる−かつまたの−いけあらたむる−さみたれのころ |
00756 |
未入力 西行 (xxx)
橘の匂ふ梢にさみたれて山郭公こゑかをるなり
たちはなの−にほふこすゑに−さみたれて−やまほとときす−こゑかをるなり |
00757 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨に水まさるらし宇治橋のくもてにかかる浪の白糸
さみたれに−みつまさるらし−うちはしの−くもてにかかる−なみのしらいと |
00758 |
未入力 西行 (xxx)
ひろせ川わたりのせきのみをしるしみかさそふへし五月雨の比
ひろせかは−わたりのせきの−みをしるし−みかさそふへし−さみたれのころ |
00759 |
未入力 西行 (xxx)
なかれやらてつたの入江にまく水は舟をそもよふ五月雨の比
なかれやらて−つたのいりえに−まくみつは−ふねをそもよふ−さみたれのころ |
00760 |
未入力 西行 (xxx)
五月雨は行くへき道のあてもなし小篠か原も滝になかれて
さみたれは−ゆくへきみちの−あてもなし−をささかはらも−たきになかれて |
00761 |
未入力 西行 (xxx)
郭公なきわたるなる浪の上にこゑたたみおくしかのうらかせ
ほとときす−なきわたるなる−なみのうへに−こゑたたみおく−しかのうらかせ |
00762 |
未入力 西行 (xxx)
誰かかたに心さすらん郭公さかひの松のうれになくなり
たかかたに−こころさすらむ−ほとときす−さかひのまつの−うれになくなり |
00763 |
未入力 西行 (xxx)
あやめふく軒に匂へる橘にきてこゑくせよ山郭公
あやめふく−のきににほへる−たちはなに−きてこゑくせよ−やまほとときす |
00764 |
未入力 西行 (xxx)
思ふことみあれのしめに引くすすのかなはすはよもならしとそおもふ
おもふこと−みあれのしめに−ひくすすの−かなはすはよも−ならしとそおもふ |
00765 |
未入力 西行 (xxx)
たつた川岸のまかきを見わたせはゐせきの波にまかふ卯の花
たつたかは−きしのまかきを−みわたせは−ゐせきのなみに−まかふうのはな |
00766 |
未入力 西行 (xxx)
思ひ出てて古巣に帰る鴬は旅のねくらやすみうかるらん
おもひいてて−ふるすにかへる−うくひすは−たひのねくらや−すみうかるらむ |
00767 |
未入力 西行 (xxx)
つつし咲く山の岩ねにゆふはえて尾倉はよその名のみなりけり
つつしさく−やまのいはねに−ゆふはえて−をくらはよその−なのみなりけり |
00768 |
未入力 西行 (xxx)
たれならんあら田のくろにすみれつむ人は心のわかななるへし
たれならむ−あらたのくろに−すみれつむ−ひとはこころの−わかななるへし |
00769 |
未入力 西行 (xxx)
生ひかはる春のわか草待ちわひて原のかれのにききす鳴くなり
おひかはる−はるのわかくさ−まちわひて−はらのかれのに−ききすなくなり |
00770 |
未入力 西行 (xxx)
片山に柴うつりして鳴く雉子たつ羽音してたかからぬかは
かたやまに−しはうつりして−なくききす−たつはおとして−たかからぬかは |
00771 |
未入力 西行 (xxx)
梢うつ雨にしをれてちる花のをしき心を何にたとへん
こすゑうつ−あめにしをれて−ちるはなの−をしきこころを−なににたとへむ |
00772 |
未入力 西行 (xxx)
ときはなる花もやあると吉野山おくなく入りてなほ尋ねみん
ときはなる−はなもやあると−よしのやま−おくなくいりて−なほたつねみむ |
00773 |
未入力 西行 (xxx)
くれなゐの雪は昔のことと聞くに花の匂ひのみつる今日かな
くれなゐの−ゆきはむかしの−ことときくに−はなのにほひの−みつるけふかな |
00774 |
未入力 西行 (xxx)
月みれは風に桜の枝たれて花よとつくる心地こそすれ
つきみれは−かせにさくらの−えたたれて−はなよとつくる−ここちこそすれ |
00775 |
未入力 西行 (xxx)
つくりおきしこけのふすまに鴬のみにしむ花のかやうつすらん
つくりおきし−こけのふすまに−うくひすの−みにしむはなの−かやうつすらむ |
00776 |
未入力 西行 (xxx)
年ははや月なみかけてこえてけりむへつみけらしゑくのわかたち
としははや−つきなみかけて−こえてけり−むへつみけらし−ゑくのわかたち |
00777 |
未入力 西行 (xxx)
あはれみし袖の露をは結ひかへて霜にしみゆく冬かれののへ
あはれみし−そてのつゆをは−むすひかへて−しもにしみゆく−ふゆかれののへ |
00778 |
未入力 西行 (xxx)
霜かれてもろくくたくる荻のはをあらくわくなる風の音かな
しもかれて−もろくくたくる−をきのはを−あらくわくなる−かせのおとかな |
00779 |
未入力 西行 (xxx)
紅葉よりあしろのぬのの色かへてひをくくるとはみゆるなりけり
もみちより−あしろのぬのの−いろかへて−ひをくくるとは−みゆるなりけり |
00780 |
未入力 西行 (xxx)
川わたにおのおのつくるふし柴をひとつにとつるあさ氷かな
かはわたに−おのおのつくる−ふししはを−ひとつにとつる−あさこほりかな |
00781 |
未入力 西行 (xxx)
しのはらやみかみのたけを見渡せは一夜の程に雪は降りけり
しのはらや−みかみのたけを−みわたせは−ひとよのほとに−ゆきはふりけり |
00782 |
未入力 西行 (xxx)
たけのほる朝日の影のさまさまに都に雪はきえみきえすみ
たけのほる−あさひのかけの−さまさまに−みやこにゆきは−きえみきえすみ |
00783 |
未入力 西行 (xxx)
枯れはつる萱かうははに降る雪はさらに尾花の心ちこそすれ
かれはつる−かやかうははに−ふるゆきは−さらにおはなの−ここちこそすれ |
00784 |
未入力 西行 (xxx)
うらかへすをみの衣とみゆるかな竹の葉分にふれる白雪
うらかへす−をみのころもと−みゆるかな−たけのはわけに−ふれるしらゆき |
00785 |
未入力 西行 (xxx)
雪とくるしみみにしたく笠さきの道ゆきにくきあしからの山
ゆきとくる−しみみにしたく−かささきの−みちゆきにくき−あしからのやま |
00786 |
未入力 西行 (xxx)
あはせつるこゐのはしたかをきとらし大かひ人のこゑしきるなり
あはせつる−こゐのはしたか−をきとらし−いぬかひひとの−こゑしきるなり |
00787 |
未入力 西行 (xxx)
神人の庭火すすむるみかけにはまさきのかつらくりかへせとや
かみひとの−にはひすすむる−みかけには−まさきのかつら−くりかへせとや |