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作品集名 | 草根集_正徹 |
作品集名読み | そうこんしゅう_しょうてつ |
作成年月日 | 文明五年七月(※1459年) |
場所 | |
備考 | 但し、それ以前に正徹自身の手控をもとにして、正広が編纂し終えた集が流布していた。[内閣文庫本草根抄] |
草根集 春 |
草根集 夏 |
草根集 秋 |
草根集 冬 |
草根集 恋 |
草根集 雑 |
00001 |
未入力 正徹 (xxx)
冬に先あひやとりしてくる春の霞や年の中へたつらん
ふゆにまつ−あひやとりして−くるはるの−かすみやとしの−なかへたつらむ |
00002 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ浪や津による舟も大伴の三の春きてかすむ冬かな
ささなみや−つによるふねも−おほともの−みつのはるきて−かすむふゆかな |
00003 |
未入力 正徹 (xxx)
冬に立つ春の子の日の松きるも千世の年木のためしにや摘む
ふゆにたつ−はるのねのひの−まつきるも−ちよのとしきの−ためしにやつむ |
00004 |
未入力 正徹 (xxx)
かすめ空年立ちくれは年くるるいさよひの月や春の曙
かすめそら−としたちくれは−としくるる−いさよひのつきや−はるのあけほの |
00005 |
未入力 正徹 (xxx)
月も日も半をめくる久堅の山のみなみに春や立つらむ
つきもひも−なかはをめくる−ひさかたの−やまのみなみに−はるやたつらむ |
00006 |
未入力 正徹 (xxx)
年のをのなかき春日の初とやいつる光ものとけかるらむ
としのをの−なかきはるひの−はしめとや−いつるひかりも−のとけかるらむ |
00007 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちに出つる日影のさしなから今日を春とやのとけかるらし
ゆきのうちに−いつるひかけの−さしなから−けふをはるとや−のとけかるらし |
00008 |
未入力 正徹 (xxx)
かきりなくむかふる年を送りても行末遠き春や立つらん
かきりなく−むかふるとしを−おくりても−ゆくすゑとほき−はるやたつらむ |
00009 |
未入力 正徹 (xxx)
高砂の梢の風に聞ゆらし春たつこゑの住よしの松
たかさこの−こすゑのかせに−きこゆらし−はるたつこゑの−すみよしのまつ |
00010 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくをか又ふる郷となしはてて今日は都に春のきぬらん
いつくをか−またふるさとと−なしはてて−けふはみやこに−はるのきぬらむ |
00011 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝みれは世は久堅もあらかねも春ををさむる四方の色かな
けさみれは−よはひさかたも−あらかねも−はるををさむる−よものいろかな |
00012 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへる春の日吉の影たかき山はふしのね雪もけなくに
たちかへる−はるのひよしの−かけたかき−やまはふしのね−ゆきもけなくに |
00013 |
未入力 正徹 (xxx)
年こゆる空にかそへてしらすともかすむや春のたつ日なるらん
としこゆる−そらにかそへて−しらすとも−かすむやはるの−たつひなるらむ |
00014 |
未入力 正徹 (xxx)
若菜摘むけふを待ちてや荒玉の春さへ野へに立ちわたるらん
わかなつむ−けふをまちてや−あらたまの−はるさへのへに−たちわたるらむ |
00015 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山はるさへ三の衣手にうつる日影やかすみ初むらむ
やはたやま−はるさへみつの−ころもてに−うつるひかけや−かすみそむらむ |
00016 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちに春たつことや久かたの神代ふりにし天のかく山
ゆきのうちに−はるたつことや−ひさかたの−かみよふりにし−あまのかくやま |
00017 |
未入力 正徹 (xxx)
はつ春の初市いそく民の袖今日や霞に立ちましるらん
はつはるの−はついちいそく−たみのそて−けふやかすみに−たちましるらむ |
00018 |
未入力 正徹 (xxx)
春きぬと豊芦原に立帰り年なみこゆる四方の海かな
はるきぬと−とよあしはらに−たちかへり−としなみこゆる−よものうみかな |
00019 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝みれは雲そ色なる天の原雪け霞みて春や立つらん
けさみれは−くもそいろなる−あまのはら−ゆきけかすみて−はるやたつらむ |
00020 |
未入力 正徹 (xxx)
末とほき世にうちはへて立ちこむる露や春のすかたなるらん
すゑとほき−よにうちはへて−たちこむる−かすみやはるの−すかたなるらむ |
00021 |
未入力 正徹 (xxx)
空にしる春の霞のはた物をたつやをとめのあまの羽衣
そらにしる−はるのかすみの−はたものを−たつやをとめの−あまのはころも |
00022 |
未入力 正徹 (xxx)
くりかへし限しられぬ年のをのなかきをけふの春日にそみる
くりかへし−かきりしられぬ−としのをの−なかきをけふの−はるひにそみる |
00023 |
未入力 正徹 (xxx)
万代をめくりくれとも老せぬや春をつれたるけふのわか年
よろつよを−めくりくれとも−おいせぬや−はるをつれたる−けふのわかとし |
00024 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむなりけふもろこしに日本をふりさけみてや春をしるらん
かすむなり−けふもろこしに−ひのもとを−ふりさけみてや−はるをしるらむ |
00025 |
未入力 正徹 (xxx)
来る春は神代や契り天地の中の衣をたつ霞かな
くるはるは−かみよやちきり−あめつちの−なかのころもを−たつかすみかな |
00026 |
未入力 正徹 (xxx)
よもの海春や立つらし老のなみ心のとけき御代の年かな
よものうみ−はるやたつらし−おいのなみ−こころのとけき−みよのとしかな |
00027 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる神のいかきに年越えて大宮人や春をしるらん
あけわたる−かみのいかきに−としこえて−おほみやひとや−はるをしるらむ |
00028 |
未入力 正徹 (xxx)
うちなひき年と春とのけふしはや友なひきたる御代そのとけき
うちなひき−としとはるとの−けふしはや−ともなひきたる−みよそのとけき |
00029 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺こゆる霞やひなの長路より春たちのほるしるしなるらん
みねこゆる−かすみやひなの−なかちより−はるたちのほる−しるしなるらむ |
00030 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたるたかまか原そ霞みくるあまくたりてや春のたつらん
あけわたる−たかまかはらそ−かすみくる−あまくたりてや−はるのたつらむ |
00031 |
未入力 正徹 (xxx)
おしなへて霞みにけりな海山もみなわか時と春やたつらん
おしなへて−かすみにけりな−うみやまも−みなわかときと−はるやたつらむ |
00032 |
未入力 正徹 (xxx)
跡たるる北国なれはおしなへて今日神風に春や立つらむ
あとたるる−きたくになれは−おしなへて−けふかみかせに−はるやたつらむ |
00033 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝のまにあつき氷をみなとくや春たつ風もはけしかるらん
けさのまに−あつきこほりを−みなとくや−はるたつかせも−はけしかるらむ |
00034 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原明くる岩戸の関越えていまた旅なる春やきぬらん
あまのはら−あくるいはとの−せきこえて−いまたたひなる−はるやきぬらむ |
00035 |
未入力 正徹 (xxx)
春にたつ浪のかさしのわたつみも今朝は霞をかけやそふらん
はるにたつ−なみのかさしの−わたつみも−けさはかすみを−かけやそふらむ |
00036 |
未入力 正徹 (xxx)
大伴の三津の白波春や立つかすみをかけて遠き浜松
おほともの−みつのしらなみ−はるやたつ−かすみをかけて−とほきはままつ |
00037 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝霞み山もそこらのわたつ海に浪をはふかすたてる春かな
けさかすみ−やまもそこらの−わたつうみに−なみをはふかす−たてるはるかな |
00038 |
未入力 正徹 (xxx)
此地に神のきにける初とや立かへる年も天くたるらむ
このくにに−かみのきにける−はしめとや−たちかへるとしも−あまくたるらむ |
00039 |
未入力 正徹 (xxx)
朝かすみしき津の浪に立つ春を松は昨日の住よしの霜
あさかすみ−しきつのなみに−たつはるを−まつはきのふの−すみよしのしも |
00040 |
未入力 正徹 (xxx)
つらなれる山の霞やくる年に春立ちならふさころもの袖
つらなれる−やまのかすみや−くるとしに−はるたちならふ−さころものそて |
00041 |
未入力 正徹 (xxx)
松たかき雪のしらゆふかすむなり神の御山に春やたつらん
まつたかき−ゆきのしらゆふ−かすむなり−かみのみやまに−はるやたつらむ |
00042 |
未入力 正徹 (xxx)
天地のひらけし花の都より春立初めていく世なるらん
あめつちの−ひらけしはなの−みやこより−はるたちそめて−いくよなるらむ |
00043 |
未入力 正徹 (xxx)
む月てふ世は人ことに新しきけふの衣に春やたつらん
むつきてふ−よはひとことに−あたらしき−けふのころもに−はるやたつらむ |
00044 |
未入力 正徹 (xxx)
霞とく都はたつみのとけきや此神風に春のたつらむ
かすみとく−みやこはたつみ−のとけきや−このかみかせに−はるのたつらむ |
00045 |
未入力 正徹 (xxx)
あらかねの土はしまらぬ青海の浪の色にや春の立ちけん
あらかねの−つちはしまらぬ−あをうみの−なみのいろにや−はるのたちけむ |
00046 |
未入力 正徹 (xxx)
七十に四方の山風かすむなり老もろともに春やたつらむ
ななそちに−よものやまかせ−かすむなり−おいもろともに−はるやたつらむ |
00047 |
未入力 正徹 (xxx)
やはらくる光のかけに春や立つちりもかすまぬ神の国かな
やはらくる−ひかりのかけに−はるやたつ−ちりもかすまぬ−かみのくにかな |
00048 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風を空になひけて四方に立つ春や世をしるあるしなるらん
くもかせを−そらになひけて−よもにたつ−はるやよをしる−あるしなるらむ |
00049 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸を明くるはたてる春の色に霞出つるや羽衣のそて
あまのとを−あくるはたてる−はるのいろに−かすみいてつるや−はころものそて |
00050 |
未入力 正徹 (xxx)
年こえて十日あまりの二見かた春立つ浪の後そかすめる
としこえて−とをかあまりの−ふたみかた−はるたつなみの−のちそかすめる |
00051 |
未入力 正徹 (xxx)
家家に入りくる春をまつらめや夜ふかき庭の朝清めして
いへいへに−いりくるはるを−まつらめや−よふかきにはの−あさきよめして |
00052 |
未入力 正徹 (xxx)
春や先たかまか原の神代にも土はしまらぬ海に立つらん
はるやまつ−たかまかはらの−かみよにも−つちはしまらぬ−うみにたつらむ |
00053 |
未入力 正徹 (xxx)
玉そよる浪に霞をしきたへの袖しのうらの春の初風
たまそよる−なみにかすみを−しきたへの−そてしのうらの−はるのはつかせ |
00054 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の春をふくめるいきのをや年にうちはへ霞いつらん
さほひめの−はるをふくめる−いきのをや−としにうちはへ−かすみいつらむ |
00055 |
未入力 正徹 (xxx)
百花も弥継に見ん今朝霞み年ひらけ行く色そこもれる
ももはなも−いやつきにみむ−けさかすみ−としひらけゆく−いろそこもれる |
00056 |
未入力 正徹 (xxx)
水も木も春立つ庭の雪氷きくに浪なしみるに花あり
みつもきも−はるたつにはの−ゆきこほり−きくになみなし−みるにはなあり |
00057 |
未入力 正徹 (xxx)
のとかなる日影も風も春立つといはぬにしるき世の気色かな
のとかなる−ひかけもかせも−はるたつと−いはぬにしるき−よのけしきかな |
00058 |
未入力 正徹 (xxx)
氷よりうちいつる浪の初尾花春立つ今日のまのの秋かせ
こほりより−うちいつるなみの−はつをはな−はるたつけふの−まののあきかせ |
00059 |
未入力 正徹 (xxx)
影とめしみたらし川のをみの袖ふる年つもる春や立つらん
かけとめし−みたらしかはの−をみのそて−ふるとしつもる−はるやたつらむ |
00060 |
未入力 正徹 (xxx)
限なき神代のむかし天地のひらけ初めしそ春のはつはな
かきりなき−かみよのむかし−あめつちの−ひらけそめしそ−はるのはつはな |
00061 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふかく嶺にあつまる雲わかれ星のかす消え明くる年かな
さよふかく−みねにあつまる−くもわかれ−ほしのかすきえ−あくるとしかな |
00062 |
未入力 正徹 (xxx)
冬と春と今夜行合ふ衣衣の袖と見ゆるや霞みそむらん
ふゆとはると−こよひゆきあふ−きぬきぬの−そてとみゆるや−かすみそむらむ |
00063 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春の光か年もあけ星を鳥のこゑさへうたふとそ聞く
くるはるの−ひかりかとしも−あけほしを−とりのこゑさへ−うたふとそきく |
00064 |
未入力 正徹 (xxx)
氷より春立ちわたる朝川のけふりや水のかすみなるらん
こほりより−はるたちわたる−あさかはの−けふりやみつの−かすみなるらむ |
00065 |
未入力 正徹 (xxx)
うこきなき世世の山とし高ねより春立ちのほる朝日影かな
うこきなき−よよのやまとし−たかねより−はるたちのほる−あさひかけかな |
00066 |
未入力 正徹 (xxx)
神代にや緑を空のはしめにて立ちくる春の色となりけん
かみよにや−みとりをそらの−はしめにて−たちくるはるの−いろとなりけむ |
00067 |
未入力 正徹 (xxx)
名にたかき天のは衣冬さえてけふや春日の影にあふらん
なにたかき−あまのはころも−ふゆさえて−けふやはるひの−かけにあふらむ |
00068 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの今朝は見えぬや春立つといふにもあまる霞なるらん
やまのはの−けさはみえぬや−はるたつと−いふにもあまる−かすみなるらむ |
00069 |
未入力 正徹 (xxx)
あふきみん今朝や霞も諸共に春たちのほる久かたの山
あふきみむ−けさやかすみも−もろともに−はるたちのほる−ひさかたのやま |
00070 |
未入力 正徹 (xxx)
くもりなき御代の鏡か山鳥の尾上かすまぬ今朝の朝日は
くもりなき−みよのかかみか−やまとりの−をのへかすまぬ−けさのあさひは |
00071 |
未入力 正徹 (xxx)
海山もあれにし四方の冬の空風をさまりて春や立つらむ
うみやまも−あれにしよもの−ふゆのそら−かせをさまりて−はるやたつらむ |
00072 |
未入力 正徹 (xxx)
御笠山春たつ色に出つる日の光もなひく峰の松かせ
みかさやま−はるたついろに−いてつるひの−ひかりもなひく−みねのまつかせ |
00073 |
未入力 正徹 (xxx)
おき出てて世のこゑ聞けはのとけきや風の心に春の立つらむ
おきいてて−よのこゑきけは−のとけきや−かせのこころに−はるのたつらむ |
00074 |
未入力 正徹 (xxx)
をさまれる国つよろつの神風にけさうちなひき春はきにけり
をさまれる−くにつよろつの−かみかせに−けさうちなひき−はるはきにけり |
00075 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原春立つ雰の浪こえて風のかけたるしからみもなし
あまのはら−はるたつくもの−なみこえて−かせのかけたる−しからみもなし |
00076 |
未入力 正徹 (xxx)
敷島の道もろ共に今朝や立つ六種も春も風をはしめに
しきしまの−みちもろともに−けさやたつ−むくさもはるも−かせをはしめに |
00077 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きかはり春たつ道の追風に旅なる冬や遠さかるらん
ふきかはり−はるたつみちの−おひかせに−たひなるふゆや−とほさかるらむ |
00078 |
未入力 正徹 (xxx)
吹あれし風をさまりて立つ春の山も時しる朝かすみかな
ふきあれし−かせをさまりて−たつはるの−やまもときしる−あさかすみかな |
00079 |
未入力 正徹 (xxx)
尋来てたれくみそめん山の井を霞のつつむ春のわか水
たつねきて−たれくみそめむ−やまのゐを−かすみのつつむ−はるのわかみつ |
00080 |
未入力 正徹 (xxx)
影きよき岩まの水のひも鏡とけても春にむかふけふかな
かけきよき−いはまのみつの−ひもかかみ−とけてもはるに−むかふけふかな |
00081 |
未入力 正徹 (xxx)
川口をとちし氷も声立てて関もる浪に春やたつらん
かはくちを−とちしこほりも−こゑたてて−せきもるなみに−はるやたつらむ |
00082 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春にあふ坂なから白川の関の戸あくる山の雪かな
くるはるに−あふさかなから−しらかはの−せきのとあくる−やまのゆきかな |
00083 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝みれはたてつつけたる門なみに松原遠き都なりけり
けさみれは−たてつつけたる−かとなみに−まつはらとほき−みやこなりけり |
00084 |
未入力 正徹 (xxx)
海士小舟初せ川浪うち出てて氷そうかふ春のこもり江
あまをふね−はつせかはなみ−うちいてて−こほりそうかふ−はるのこもりえ |
00085 |
未入力 正徹 (xxx)
つもりこし雪のしら山うちかすみ冬のとまりに春はきにけり
つもりこし−ゆきのしらやま−うちかすみ−ふゆのとまりに−はるはきにけり |
00086 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春は冬のかへりし跡しめて世はわかやとと霞をそしく
くるはるは−ふゆのかへりし−あとしめて−よはわかやとと−かすみをそしく |
00087 |
未入力 正徹 (xxx)
さくを待つ花の都にこし春は霞のうちやすみ家なるらん
さくをまつ−はなのみやこに−こしはるは−かすみのうちや−すみかなるらむ |
00088 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原あふけはたかく霞む日も光ある世の春の色かな
あまのはら−あふけはたかく−かすむひも−ひかりあるよの−はるのいろかな |
00089 |
未入力 正徹 (xxx)
けふは又後の子日の野へことに松もかすみも引きかさぬらん
けふはまた−のちのねのひの−のへことに−まつもかすみも−ひきかさぬらむ |
00090 |
未入力 正徹 (xxx)
古年の涙のつららとけしより袖行く水のたゆる日もなし
ふるとしの−なみたのつらら−とけしより−そてゆくみつの−たゆるひもなし |
00091 |
未入力 正徹 (xxx)
神のます山の南の宮柱春たちめくりかすむ空かな
かみのます−やまのみなみの−みやはしら−はるたちめくり−かすむそらかな |
00092 |
未入力 正徹 (xxx)
いもせ山春の霞の衣たに中にあらすは年もへたてし
いもせやま−はるのかすみの−ころもたに−なかにあらすは−としもへたてし |
00093 |
未入力 正徹 (xxx)
曇りくる霞の下の雪こほりかたへ冬なる春の山川
くもりくる−かすみのしたの−ゆきこほり−かたへふゆなる−はるのやまかは |
00094 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちにたた年はかりくる春を待かね山はかすむともなし
ゆきのうちに−たたとしはかり−くるはるを−まちかねやまは−かすむともなし |
00095 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空春の霞もこほれるや打出つる雲の浪たたぬまて
あまつそら−はるのかすみも−こほれるや−うちいつるくもの−なみたたぬまて |
00096 |
未入力 正徹 (xxx)
ましはれる神や染めなす紅の塵にかすめる世は春にして
ましはれる−かみやそめなす−くれなゐの−ちりにかすめる−よははるにして |
00097 |
未入力 正徹 (xxx)
晴れくもり春はくらせる日のうちにさえみのとけみ影かはるなり
はれくもり−はるはくらせる−ひのうちに−さえみのとけみ−かけかはるなり |
00098 |
未入力 正徹 (xxx)
のとけしや霞の光さして行く山より山の春の初かせ
のとけしや−かすみのひかり−さしてゆく−やまよりやまの−はるのはつかせ |
00099 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにして七十あまり七種を身につむ年の春にあふらん
いかにして−ななそちあまり−ななくさを−みにつむとしの−はるにあふらむ |
00100 |
未入力 正徹 (xxx)
よもの海に立つ月の名もむつましと君はしら浪こゆる年かな
よものうみに−たつつきのなも−むつましと−きみはしらなみ−こゆるとしかな |
00101 |
未入力 正徹 (xxx)
比はまた春の日なからなかからて雪けにかすむ風そ寒けき
ころはまた−はるのひなから−なかからて−ゆきけにかすむ−かせそさむけき |
00102 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥のこゑ霞の色もいちしるし春となつけそ嶺の松風
とりのこゑ−かすみのいろも−いちしるし−はるとなつけそ−みねのまつかせ |
00103 |
未入力 正徹 (xxx)
かつきえし山の嵐も又さえて霞も雪も春のむらたち
かつきえし−やまのあらしも−またさえて−かすみもゆきも−はるのむらたち |
00104 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐さえて雪はふれれと古年におもひくらへよ春はきにけり
あらしさえて−ゆきはふれれと−ふるとしに−おもひくらへよ−はるはきにけり |
00105 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる衣をさむみ重ぬらん霞のひもをとくあらしかな
はるのきる−ころもをさむみ−かさぬらむ−かすみのひもを−とくあらしかな |
00106 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきるよもの霞のうす衣今朝より夏のおもかけそ立つ
はるのきる−よものかすみの−うすころも−けさよりなつの−おもかけそたつ |
00107 |
未入力 正徹 (xxx)
九重や時にあへりと住む人の心の花も春や来ぬらむ
ここのへや−ときにあへりと−すむひとの−こころのはなも−はるやきぬらむ |
00108 |
未入力 正徹 (xxx)
白川の関の秋霧吹きのほり宮こにかすむ春のはつかせ
しらかはの−せきのあききり−ふきのほり−みやこにかすむ−はるのはつかせ |
00109 |
未入力 正徹 (xxx)
さきいつる心の花の宮こ鳥とりさたまらぬ春の初風
さきいつる−こころのはなの−みやことり−とりさたまらぬ−はるのはつかせ |
00110 |
未入力 正徹 (xxx)
花やとき霞の衣梅かかに袖ふれそむる春は来にけり
はなやとき−かすみのころも−うめかかに−そてふれそむる−はるはきにけり |
00111 |
未入力 正徹 (xxx)
去年の三月たな引きつれて帰りしや今年の春に霞みきぬらん
こそのやよひ−たなひきつれて−かへりしや−ことしのはるに−かすみきぬらむ |
00112 |
未入力 正徹 (xxx)
朝あけの山のこなたに春のきてたてるすかたや霞なるらん
あさあけの−やまのこなたに−はるのきて−たてるすかたや−かすみなるらむ |
00113 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬ霞や天のかく山に去年ほしかけし衣なるらむ
いろかへぬ−かすみやあまの−かくやまに−こそほしかけし−ころもなるらむ |
00114 |
未入力 正徹 (xxx)
春やきる織女もしらし朝明のうすき霞の天のはころも
はるやきる−おりめもしらし−あさあけの−うすきかすみの−あまのはころも |
00115 |
未入力 正徹 (xxx)
はるのきるしのふにすれる袖もなし限しられす世はかすめとも
はるのきる−しのふにすれる−そてもなし−かきりしられす−よはかすめとも |
00116 |
未入力 正徹 (xxx)
しからきや外山の正木くる春の霞と共に綱手引くなり
しからきや−とやまのまさき−くるはるの−かすみとともに−つなてひくなり |
00117 |
未入力 正徹 (xxx)
踏みわけて春来にけりとたか里に太山の雪の春のむら消
ふみわけて−はるきにけりと−たかさとに−みやまのゆきの−はるのむらきえ |
00118 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ衣かたへ寒けき山風に雪も霞も春の村きえ
あさころも−かたへさむけき−やまかせに−ゆきもかすみも−はるのむらきえ |
00119 |
未入力 正徹 (xxx)
霜にさへ緑さかふる松かえに春あらはるる雪の村きえ
しもにさへ−みとりさかふる−まつかえに−はるあらはるる−ゆきのむらきえ |
00120 |
未入力 正徹 (xxx)
あら玉の春の光を降る雪に敷島山はかすむともなし
あらたまの−はるのひかりを−ふるゆきに−しきしまやまは−かすむともなし |
00121 |
未入力 正徹 (xxx)
松風も春をよろこふしらへにて雪をめくらす雲の袖かな
まつかせも−はるをよろこふ−しらへにて−ゆきをめくらす−くものそてかな |
00122 |
未入力 正徹 (xxx)
けさそとふ冬の高ねにつもりしはふりて友まつ若年の雪
けさそとふ−ふゆのたかねに−つもりしは−ふりてともまつ−わかとしのゆき |
00123 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の色の猶つれなきをもらさしと霞みこめたる山の白雪
ふゆのいろの−なほつれなきを−もらさしと−かすみこめたる−やまのしらゆき |
00124 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきるみのしろ衣広くたつかすみにたまる山の白雪
はるのきる−みのしろころも−ひろくたつ−かすみにたまる−やまのしらゆき |
00125 |
未入力 正徹 (xxx)
かねてより豊の年ある雪氷くる春あつきめくみをそしる
かねてより−とよのとしある−ゆきこほり−くるはるあつき−めくみをそしる |
00126 |
未入力 正徹 (xxx)
春日影水なき空のこほりをもとくや草木におつる朝露
はるひかけ−みつなきそらの−こほりをも−とくやくさきに−おつるあさつゆ |
00127 |
未入力 正徹 (xxx)
谷ふかみ古巣を冬になしはてて春の日かけにいつる鴬
たにふかみ−ふるすをふゆに−なしはてて−はるのひかけに−いつるうくひす |
00128 |
未入力 正徹 (xxx)
春きても太山の松の雪に鳴く鴬さそへ野への梅か枝
はるきても−みやまのまつの−ゆきになく−うくひすさそへ−のへのうめかえ |
00129 |
未入力 正徹 (xxx)
おも影そけふもかはらぬ天の原ふりにし年の春やたつらん
おもかけそ−けふもかはらぬ−あまのはら−ふりにしとしの−はるやたつらむ |
00130 |
未入力 正徹 (xxx)
久堅の天の岩戸をあけし世も出つる日影にしるき春かな
ひさかたの−あまのいはとを−あけしよも−いつるひかけに−しるきはるかな |
00131 |
未入力 正徹 (xxx)
いつる日も光のとけき久かたの天の宮人春をしるらし
いつるひも−ひかりのとけき−ひさかたの−あまのみやひと−はるをしるらし |
00132 |
未入力 正徹 (xxx)
山はまたかすまぬ宮も降りかねて嵐のまへにこほる雲かな
やまはまた−かすまぬみやも−ふりかねて−あらしのまへに−こほるくもかな |
00133 |
未入力 正徹 (xxx)
おしなへてかすむや雪け大空をわたる春日の影の寒けさ
おしなへて−かすむやゆきけ−おほそらを−わたるはるひの−かけのさむけさ |
00134 |
未入力 正徹 (xxx)
吹くままに年そ明行く久かたの天の岩戸の関の春かせ
ふくままに−としそあけゆく−ひさかたの−あまのいはとの−せきのはるかせ |
00135 |
未入力 正徹 (xxx)
くみそめて末をそおもふあら玉の春をむかふる宿の若水
くみそめて−すゑをそおもふ−あらたまの−はるをむかふる−やとのわかみつ |
00136 |
未入力 正徹 (xxx)
年毎にあらぬ姿そあはれてふ老の影見よ春の若水
としことに−あらぬすかたそ−あはれてふ−おいのかけみよ−はるのわかみつ |
00137 |
未入力 正徹 (xxx)
紙屋川今朝うちとけて水そ行く氷や神の心なるらん
かみやかは−けさうちとけて−みつそゆく−こほりやかみの−こころなるらむ |
00138 |
未入力 正徹 (xxx)
初せ川氷なかれて岩ほうつこゑさへ鐘にたくふ春かな
はつせかは−こほりなかれて−いはほうつ−こゑさへかねに−たくふはるかな |
00139 |
未入力 正徹 (xxx)
うしと見し春もめわたる鳥辺山もえし煙や霞みきぬらん
うしとみし−はるもめわたる−とりへやま−もえしけふりや−かすみきぬらむ |
00140 |
未入力 正徹 (xxx)
滝の上にいそく御舟の山かつらまほにかけてや春のきぬらん
たきのうへに−いそくみふねの−やまかつら−まほにかけてや−はるのきぬらむ |
00141 |
未入力 正徹 (xxx)
都まて春や立つらむ朝目影かかれる西の山そかすまぬ
みやこまて−はるやたつらむ−あさひかけ−かかれるにしの−やまそかすまぬ |
00142 |
未入力 正徹 (xxx)
霞立つ春さへいまた旅にして衣や寒きむこの山かせ
かすみたつ−はるさへいまた−たひにして−ころもやさむき−むこのやまかせ |
00143 |
未入力 正徹 (xxx)
ことうらの海士やはしらん此花の匂ふ難波の春の初を
ことうらの−あまやはしらむ−このはなの−にほふなにはの−はるのはしめを |
00144 |
未入力 正徹 (xxx)
時をうる空もひとつに春の色の青うなはらそいととかすめる
ときをうる−そらもひとつに−はるのいろの−あをうなはらそ−いととかすめる |
00145 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる衣霞の下風に山もしのふのおくそみたるる
はるのきる−ころもかすみの−したかせに−やまもしのふの−おくそみたるる |
00146 |
未入力 正徹 (xxx)
おしなへてかすめるよりも天の原すめるを春の色そのとけき
おしなへて−かすめるよりも−あまのはら−すめるをはるの−いろそのとけき |
00147 |
未入力 正徹 (xxx)
玉津島や春たつはまの真砂山つきせす遠くかすむ浪かな
たまつしまや−はるたつはまの−まさこやま−つきせすとほく−かすむなみかな |
00148 |
未入力 正徹 (xxx)
君かへん千世の年のをくりかへし又はしになる春はきにけり
きみかへむ−ちよのとしのを−くりかへし−またはしになる−はるはきにけり |
00149 |
未入力 正徹 (xxx)
夜の程にかへりし冬の春ならは名をあらためて年やきぬらん
よのほとに−かへりしふゆの−はるならは−なをあらためて−としやきぬらむ |
00150 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉のはまの真砂をみかく日も光春なる玉津島山
すみよしの−はまのまさこを−みかくひも−ひかりはるなる−たまつしまやま |
00151 |
未入力 正徹 (xxx)
みとりそふ松も千世まて限なき霞そ春に色はちきれる
みとりそふ−まつもちよまて−かきりなき−かすみそはるに−いろはちきれる |
00152 |
未入力 正徹 (xxx)
いはふなり老いてもさらに七十は逢ひかたき春にあへるけふとて
いはふなり−おいてもさらに−ななそちは−あひかたきはるに−あへるけふとて |
00153 |
未入力 正徹 (xxx)
立初めし日かすのままにふる年のこゆれはやかて春そたけ行く
たちそめし−ひかすのままに−ふるとしの−こゆれはやかて−はるそたけゆく |
00154 |
未入力 正徹 (xxx)
山の名の千年の坂をけふ越えて行すゑとほくかすむ春かな
やまのなの−ちとせのさかを−けふこえて−ゆくすゑとほく−かすむはるかな |
00155 |
未入力 正徹 (xxx)
大ひえやむかしの杣木こゑかすみいまも高ねに春風そふく
おほひえや−むかしのそまき−こゑかすみ−いまもたかねに−はるかせそふく |
00156 |
未入力 正徹 (xxx)
年こえてとへは五十日そ春としる待遠ならし初桜はな
としこえて−とへはいそかそ−はるとしる−まちとほならし−はつさくらはな |
00157 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春をやかてしめちか原の草もゆるみとりそ松にまされる
くるはるを−やかてしめちか−はらのくさ−もゆるみとりそ−まつにまされる |
00158 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の色を春の霞の衣たに中にあらすは猶や逢見ん
ふゆのいろを−はるのかすみの−ころもたに−なかにあらすは−なほやあひみむ |
00159 |
未入力 正徹 (xxx)
つつきつる子日若菜も時過きていとと春なる永き日くらし
つつきつる−ねのひわかなも−ときすきて−いととはるなる−なかきひくらし |
00160 |
未入力 正徹 (xxx)
塩かまの浦のひかたの朝曇けふりなからや霞みそむらむ
しほかまの−うらのひかたの−あさくもり−けふりなからや−かすみそむらむ |
00161 |
未入力 正徹 (xxx)
榊葉になひく霞のあをにきてかけて春しる天のかく山
さかきはに−なひくかすみの−あをにきて−かけてはるしる−あまのかくやま |
00162 |
未入力 正徹 (xxx)
春の浪ちかのうらわや遠からん老のみるめは霞みそめつつ
はるのなみ−ちかのうらわや−とほからむ−おいのみるめは−かすみそめつつ |
00163 |
未入力 正徹 (xxx)
賀茂山や朽ちしいつきの宮柱たてるは春のかすみなりけり
かもやまや−くちしいつきの−みやはしら−たてるははるの−かすみなりけり |
00164 |
未入力 正徹 (xxx)
山川や春せく瀬瀬の氷よりうちいつる浪そ音にかへれる
やまかはや−はるせくせせの−こほりより−うちいつるなみそ−おとにかへれる |
00165 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ氷岩にくたけて行くこゑやいすすふる世の春の川波
あさこほり−いはにくたけて−ゆくこゑや−いすすふるよの−はるのかはなみ |
00166 |
未入力 正徹 (xxx)
長閑なる若のうら人立ちつつけ霞も浪も春はしるなり
のとかなる−わかのうらひと−たちつつけ−かすみもなみも−はるはしるなり |
00167 |
未入力 正徹 (xxx)
うちきえしさゆる日おほき山風に霞きえては淡雪そふる
うちきえし−さゆるひおほき−やまかせに−かすみきえては−あはゆきそふる |
00168 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の山のかひより一むらの霞や春に立ちならふらむ
あさあけの−やまのかひより−ひとむらの−かすみやはるに−たちならふらむ |
00169 |
未入力 正徹 (xxx)
今年なほ御代のとかにともろ人の心のそろふ春やきぬらん
ことしなほ−みよのとかにと−もろひとの−こころのそろふ−はるやきぬらむ |
00170 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のもとつ葉とりしゆつりはの三春かけてやかすみ初むらむ
やまひとの−もとつはとりし−ゆつりはの−みはるかけてや−かすみそむらむ |
00171 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす霞の衣かく山の天きる雪もぬれてほすらし
ひかけさす−かすみのころも−かくやまの−あまきるゆきも−ぬれてほすらし |
00172 |
未入力 正徹 (xxx)
あさなあさなかすむ入江の玉津島やかてや春の光そふらむ
あさなあさな−かすむいりえの−たまつしま−やかてやはるの−ひかりそふらむ |
00173 |
未入力 正徹 (xxx)
霞たつ春の衣のしたかさねかさねて山はつもる雪かな
かすみたつ−はるのころもの−したかさね−かさねてやまは−つもるゆきかな |
00174 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上松にもみゆる春の色の青きか原や霞みそむらん
なみのうへ−まつにもみゆる−はるのいろの−あをきかはらや−かすみそむらむ |
00175 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春は日数はかりをしるへにてかすみなれたる山の色かな
くるはるは−ひかすはかりを−しるへにて−かすみなれたる−やまのいろかな |
00176 |
未入力 正徹 (xxx)
古き世の春にそ似たる朝ほらけいつれの年の霞なるらん
ふるきよの−はるにそにたる−あさほらけ−いつれのとしの−かすみなるらむ |
00177 |
未入力 正徹 (xxx)
春日さす山は雪けのしつくよりたてる煙やかすみ初むらん
はるひさす−やまはゆきけの−しつくより−たてるけふりや−かすみそむらむ |
00178 |
未入力 正徹 (xxx)
をとめ子かたえぬ霞の袖ふるや名におふ山の春のさ衣
をとめこか−たえぬかすみの−そてふるや−なにおふやまの−はるのさころも |
00179 |
未入力 正徹 (xxx)
春のくる雲路さやかに明けてけり霞や天の岩戸なるらん
はるのくる−くもちさやかに−あけてけり−かすみやあまの−いはとなるらむ |
00180 |
未入力 正徹 (xxx)
年もまた若のうら風吹きみかけ霞のおくの春のたま松
としもまた−わかのうらかせ−ふきみかけ−かすみのおくの−はるのたままつ |
00181 |
未入力 正徹 (xxx)
明けそ行く山はかすみを立ちきても衣やうすき春の夜のしも
あけそゆく−やまはかすみを−たちきても−ころもやうすき−はるのよのしも |
00182 |
未入力 正徹 (xxx)
春日さす天つ空より露そちる霞の袖も氷とくらし
はるひさす−あまつそらより−つゆそちる−かすみのそても−こほりとくらし |
00183 |
未入力 正徹 (xxx)
深山よりたなひき出てて世にそみつ去年の霞や冬こもるらん
みやまより−たなひきいてて−よにそみつ−こそのかすみや−ふゆこもるらむ |
00184 |
未入力 正徹 (xxx)
あら玉の春に霞も立ちそひて山路こゆるやくもりきぬらん
あらたまの−はるにかすみも−たちそひて−やまちこゆるや−くもりきぬらむ |
00185 |
未入力 正徹 (xxx)
春のうらの霞の網の糸すちもほそきやいまたくもらさるらん
はるのうらの−かすみのあみの−いとすちも−ほそきやいまた−くもらさるらむ |
00186 |
未入力 正徹 (xxx)
難波津もおなし霞に氷とく春のあさかの山の井の水
なにはつも−おなしかすみに−こほりとく−はるのあさかの−やまのゐのみつ |
00187 |
未入力 正徹 (xxx)
雪きゆる南の山の松風やちかき軒はの霞とくらん
ゆききゆる−みなみのやまの−まつかせや−ちかきのきはの−かすみとくらむ |
00188 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく霞のみをそさかのほるなかれそむらん花の日数に
あらしふく−かすみのみをそ−さかのはる−なかれそむらむ−はなのひかすに |
00189 |
未入力 正徹 (xxx)
真木の戸をあくる夜ことに古年の夢路へたててかすむ春かな
まきのとを−あくるよことに−ふるとしの−ゆめちへたてて−かすむはるかな |
00190 |
未入力 正徹 (xxx)
泊瀬山霞をしのきくる春も岩ほの雪にあとやつくらん
はつせやま−かすみをしのき−くるはるも−いはほのゆきに−あとやつくらむ |
00191 |
未入力 正徹 (xxx)
千世の春をやかて見するや軒近き松にたな引く霞なるらん
ちよのはるを−やかてみするや−のきちかき−まつにたなひく−かすみなるらむ |
00192 |
未入力 正徹 (xxx)
山そ先みとりにかすむ有間すけなかしとまてはしらぬ春日に
やまそまつ−みとりにかすむ−ありますけ−なかしとまては−しらぬはるひに |
00193 |
未入力 正徹 (xxx)
消えやらて去年の霞や立出つる見し色かへぬはつ春の山
きえやらて−こそのかすみや−たちいつる−みしいろかへぬ−はつはるのやま |
00194 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつうみのかさしの霞ちる玉も春立つ浪のあらき浜かせ
わたつうみの−かさしのかすみ−ちるたまも−はるたつなみの−あらきはまかせ |
00195 |
未入力 正徹 (xxx)
四方にくる春の心の色こきやふかくかすめる所なるらん
よもにくる−はるのこころの−いろこきや−ふかくかすめる−ところなるらむ |
00196 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫のかすみのうちの海山や春のあやおる衣なるらん
さほひめの−かすみのうちの−うみやまや−はるのあやおる−ころもなるらむ |
00197 |
未入力 正徹 (xxx)
霞しく日影を寒み棹姫の袖ももすそも雪にぬれつつ
かすみしく−ひかけをさむみ−さほひめの−そてももすそも−ゆきにぬれつつ |
00198 |
未入力 正徹 (xxx)
敷島の道の春風霞みきてたかことのはも色そ添行く
しきしまの−みちのはるかせ−かすみきて−たかことのはも−いろそそひゆく |
00199 |
未入力 正徹 (xxx)
山はみな春の霞に鳥のこゑ宮この花はむめかかそする
やまはみな−はるのかすみに−とりのこゑ−みやこのはなは−うめかかそする |
00200 |
未入力 正徹 (xxx)
としきてもむ月の月の弓張にたつ春しるく川霞を
としきても−むつきのつきの−ゆみはりに−たつはるしるく−хххかすみを |
00201 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる衣の色のあさ妻や浪におりはへ霞立つらむ
はるのきる−ころものいろの−あさつまや−なみにおりはへ−かすみたつらむ |
00202 |
未入力 正徹 (xxx)
滝川の水の心もとけてけりこほるいもせの山の下ひも
たきかはの−みつのこころも−とけてけり−こほるいもせの−やまのしたひも |
00203 |
未入力 正徹 (xxx)
年きても春をはらめるおもひかな氷のうちにこもるわか水
としきても−はるをはらめる−おもひかな−こほりのうちに−こもるわかみつ |
00204 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす嶺の雪消や山川のこほりの上の水の白浪
あさひさす−みねのゆきけや−やまかはの−こほりのうへの−みつのしらなみ |
00205 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねよりくもるを春の霞ともわかぬ光につもるしら雪
たかねより−くもるをはるの−かすみとも−わかぬひかりに−つもるしらゆき |
00206 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春の光そ見えぬ空もまた雪けにかすむ霞はかりは
くるはるの−ひかりそみえぬ−そらもまた−ゆきけにかすむ−かすみはかりは |
00207 |
未入力 正徹 (xxx)
月と日とめくる所となり初めて空もいく世の春にあふらん
つきとひと−めくるところと−なりそめて−そらもいくよの−はるにあふらむ |
00208 |
未入力 正徹 (xxx)
神代かもかすむもすめる天の原春の雪けの池そにこれる
かみよかも−かすむもすめる−あまのはら−はるのゆきけの−いけそにこれる |
00209 |
未入力 正徹 (xxx)
春をしるこれそ一花久かたの天ひらけ行く夜はのしののめ
はるをしる−これそひとはな−ひさかたの−そらひらけゆく−よはのしののめ |
00210 |
未入力 正徹 (xxx)
曇なき鏡なりけり山鳥の尾上の松にかかるはる日は
くもりなき−かかみなりけり−やまとりの−をのへのまつに−かかるはるひは |
00211 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの影を霞につつみても朝日うらこき春の衣手
やまのはの−かけをかすみに−つつみても−あさひうらこき−はるのころもて |
00212 |
未入力 正徹 (xxx)
春のくる山のかひより吹く風にかすみなかれてこほる川浪
はるのくる−やまのかひより−ふくかせに−かすみなかれて−こほるかはなみ |
00213 |
未入力 正徹 (xxx)
薄煙はるの霞をもよほして松をこめたる塩かまの浦
うすけふり−はるのかすみを−もよほして−まつをこめたる−しほかまのうら |
00214 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春のたかねの松に明行くを千世の初と誰かみさらん
くるはるの−たかねのまつに−あけゆくを−ちよのはしめと−たれかみさらむ |
00215 |
未入力 正徹 (xxx)
野も山も霞を春の古巣とや又鴬のこゑこもるらん
のもやまも−かすみをはるの−ふるすとや−またうくひすの−こゑこもるらむ |
00216 |
未入力 正徹 (xxx)
世は春と霞も空に立つ鶴のは風のとかにわたる日の影
よははると−かすみもそらに−たつつるの−はかせのとかに−わたるひのかけ |
00217 |
未入力 正徹 (xxx)
水わかくなりぬる年に浪のしわのふるやにほのうら風もなし
みつわかく−なりぬるとしに−なみのしわ−のふるやにほの−うらかせもなし |
00218 |
未入力 正徹 (xxx)
氷とく袖の春風やはらかにぬる夜はしるや貫川のなみ
こほりとく−そてのはるかせ−やはらかに−ぬるよはしるや−ぬきかはのなみ |
00219 |
未入力 正徹 (xxx)
夜や寒き春は雪まの松にきて風のやとりにこもる声かな
よやさむき−はるはゆきまの−まつにきて−かせのやとりに−こもるこゑかな |
00220 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風は音にもききて猶そしるめにみぬ春は立つ名のみして
ふくかせは−おとにもききて−なほそしる−めにみぬはるは−たつなのみして |
00221 |
未入力 正徹 (xxx)
東おり氷ときもてくる風や宮この川にあさわたるらん
あつまより−こほりときもて−くるかせや−みやこのかはに−あさわたるらむ |
00222 |
未入力 正徹 (xxx)
さかふへき色こそ見ゆれもろ人のことのはことや春の若草
さかふへき−いろこそみゆれ−もろひとの−ことのはことや−はるのわかくさ |
00223 |
未入力 正徹 (xxx)
誰もみな新桑ならぬまゆひらけくる年のをも手にはかからし
たれもみな−にひくはならぬ−まゆひらけ−くるとしのをも−てにはかからし |
00224 |
未入力 正徹 (xxx)
此春はほしやをしやの人心うすく成りゆけ国そさかへん
このはるは−ほしやをしやの−ひとこころ−うすくなりゆけ−くにそさかへむ |
00225 |
未入力 正徹 (xxx)
結ひこし契も久しよろつ度春をむかへん法のわか水
むすひこし−ちきりもひさし−よろつたひ−はるをむかへむ−のりのわかみつ |
00226 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝に弥年のはの数そへて千世にもあまる御代の春かな
まつかえに−いやとしのはの−かすそへて−ちよにもあまる−みよのはるかな |
00227 |
未入力 正徹 (xxx)
春といへとことそともなき朝かな世にもつかへすよをも渡らす
はるといへと−ことそともなき−あしたかな−よにもつかへす−よをもわたらす |
00228 |
未入力 正徹 (xxx)
風さゆる春の霞のたちとたに猶さためなきよもの浮雲
かせさゆる−はるのかすみの−たちとたに−なほさためなき−よものうきくも |
00229 |
未入力 正徹 (xxx)
八十島や興つしほせの春霞立ちものこらぬ浪のうへかな
やそしまや−おきつしほせの−はるかすみ−たちものこらぬ−なみのうへかな |
00230 |
未入力 正徹 (xxx)
おき出てし夜ふかき鐘のかすみつつ声より色に明くる山かな
おきいてし−よふかきかねの−かすみつつ−こゑよりいろに−あくるやまかな |
00231 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむより緑をそへて敷島の大和にもあらぬから崎の松
かすむより−みとりをそへて−しきしまの−やまとにもあらぬ−からさきのまつ |
00232 |
未入力 正徹 (xxx)
春寒み霞をかれるあま衣いかかしか津のうら風そふく
はるさむみ−かすみをかれる−あまころも−いかかしかつの−うらかせそふく |
00233 |
未入力 正徹 (xxx)
すまのあまのうら風なからなれぬとや霞の衣まとほなるらん
すまのあまの−うらかせなから−なれぬとや−かすみのころも−まとほなるらむ |
00234 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる空もみとりの色こきや春のかすみのしるしなるらん
あけわたる−そらもみとりの−いろこきや−はるのかすみの−しるしなるらむ |
00235 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をこめてかすめる天のとのくもりやかてへたてす明くる春かな
よをこめて−かすめるそらの−とのくもり−やかてへたてす−あくるはるかな |
00236 |
未入力 正徹 (xxx)
へたつとて春のかくるるかたもなしかすむそいととあらはなりける
へたつとて−はるのかくるる−かたもなし−かすむそいとと−あらはなりける |
00237 |
未入力 正徹 (xxx)
石見かた明くれはこれそ筆の海する墨うすくかすむ浪かな
いはみかた−あくれはこれそ−ふてのうみ−するすみうすく−かすむなみかな |
00238 |
未入力 正徹 (xxx)
都より先色みえて秋津すの海山とほくかすむ春かな
みやこより−まついろみえて−あきつすの−うみやまとほく−かすむはるかな |
00239 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる嶺をほのかにのこしてそ空まて高き霞をもしる
まつたてる−みねをほのかに−のこしてそ−そらまてたかき−かすみをもしる |
00240 |
未入力 正徹 (xxx)
みとりなる色をかさねて筑波根の陰よりしけく霞む春かな
みとりなる−いろをかさねて−つくはねの−かけよりしけく−かすむはるかな |
00241 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸を出てし神代の常暗や春のかすみに晴れのこるらむ
あまのとを−いてしかみよの−とこやみや−はるのかすみに−はれのこるらむ |
00242 |
未入力 正徹 (xxx)
さえわたる朝けの霞むら消えて雪まもよほす春の山風
さえわたる−あさけのかすみ−むらきえて−ゆきまもよほす−はるのやまかせ |
00243 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春の霞も山をかくせはや去年の雪まを又埋むらん
くるはるの−かすみもやまを−かくせはや−こそのゆきまを−またうつむらむ |
00244 |
未入力 正徹 (xxx)
たえまなくたなひく春の霞かなひとつの袖や世におほふらん
たえまなく−たなひくはるの−かすみかな−ひとつのそてや−よにおほふらむ |
00245 |
未入力 正徹 (xxx)
春をへてかすむ塩干の王津島松にいく世の年ひろふらん
はるをへて−かすむしほひの−たまつしま−まつにいくよの−としひろふらむ |
00246 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うつむ山の霞の下風に春日色こき野へのわか草
くもうつむ−やまのかすみの−したかせに−はるひいろこき−のへのわかくさ |
00247 |
未入力 正徹 (xxx)
春日よき雲井のたつを芹川の霞にすれるかり衣かな
はるひよき−くもゐのたつを−せりかはの−かすみにすれる−かりころもかな |
00248 |
未入力 正徹 (xxx)
山姫のときあらひ衣かけほすや日影にかすむ棹の川岸
やまひめの−ときあらひきぬ−かけほすや−ひかけにかすむ−さをのかはきし |
00249 |
未入力 正徹 (xxx)
川上の霞のみをにまほかけてうかふ三室の山かつらせり
かはかみの−かすみのみをに−まほかけて−うかふみむろの−やまかつらせり |
00250 |
未入力 正徹 (xxx)
浪に引くかすみの網のうら人のほすとしもなき春日をそみる
なみにひく−かすみのあみの−うらひとの−ほすとしもなき−はるひをそみる |
00251 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ霞しつはた山は花鳥の色に綾おる春のさころも
あさかすみ−しつはたやまは−はなとりの−いろにあやおる−はるのさころも |
00252 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥のこゑかすめる滝の音羽川おき出ててみれは山のはもなし
とりのこゑ−かすめるたきの−おとはかは−おきいててみれは−やまのはもなし |
00253 |
未入力 正徹 (xxx)
雪きえし敏の衣ほしはてて春日とさらす天のかく山
ゆききえし−かすみのころも−ほしはてて−はるひとさらす−あまのかくやま |
00254 |
未入力 正徹 (xxx)
世にまよふ春の霞やへたてある人の心となりはしめけん
よにまよふ−はるのかすみや−へたてある−ひとのこころと−なりはしめけむ |
00255 |
未入力 正徹 (xxx)
世世を引くこれもきつなか野山にも春は霞の思ひはなれぬ
よよをひく−これもきつなか−のやまにも−はるはかすみの−おもひはなれぬ |
00256 |
未入力 正徹 (xxx)
日もなかし道行人のこゑもせす霞にうとき遠近のさと
ひもなかし−みちゆくひとの−こゑもせす−かすみにうとき−をちこちのさと |
00257 |
未入力 正徹 (xxx)
かすめともありとしられて高砂の尾上の松に春風そ吹く
かすめとも−ありとしられて−たかさこの−をのへのまつに−はるかせそふく |
00258 |
未入力 正徹 (xxx)
棹姫のたつや霞の衣手に山下風吹きてさゆる春かな
さほひめの−たつやかすみの−ころもてに−やまおろしふきて−さゆるはるかな |
00259 |
未入力 正徹 (xxx)
氷とく山下水にたつ煙のほるもかすむ朝日影かな
こほりとく−やましたみつに−たつけふり−のほるもかすむ−あさひかけかな |
00260 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸を明かたかけて芦引の山よりたかくかすむ春かな
あまのとを−あけかたかけて−あしひきの−やまよりたかく−かすむはるかな |
00261 |
未入力 正徹 (xxx)
世世をへし年のをしほの山かつらなかき日かけてかすむ春かな
よよをへし−としのをしほの−やまかつら−なかきひかけて−かすむはるかな |
00262 |
未入力 正徹 (xxx)
よもに見し山遠さかり九重の都をひろく立つかすみかな
よもにみし−やまとほさかり−ここのへの−みやこをひろく−たつかすみかな |
00263 |
未入力 正徹 (xxx)
名そのこる煙を山の霞とも誰みよしのの春の里人
なそのこる−けふりをやまの−かすみとも−たれみよしのの−はるのさとひと |
00264 |
未入力 正徹 (xxx)
浜ゆふやうら浪たかく春かけて百重かすめるき路の遠山
はまゆふや−うらなみたかく−はるかけて−ももへかすめる−きちのとほやま |
00265 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色にいつる朝日のうす曇光そにほふ遠近の山
はるのいろに−いつるあさひの−うすくもり−ひかりそにほふ−をちこちのやま |
00266 |
未入力 正徹 (xxx)
朝みとりかさす袖とも霞むかなこや春のきる衣笠の山
あさみとり−かさすそてとも−かすむかな−こやはるのきる−きぬかさのやま |
00267 |
未入力 正徹 (xxx)
山姫の春の衣のあさつまをかさねて浪にたつ霞かな
やまひめの−はるのころもの−あさつまを−かさねてなみに−たつかすみかな |
00268 |
未入力 正徹 (xxx)
なほさえて霞かさねぬ山風に衣やうすき春の杣人
なほさえて−かすみかさねぬ−やまかせに−ころもやうすき−はるのそまひと |
00269 |
未入力 正徹 (xxx)
春きても都の山のかすむ日はまれのみ雪にさゆる空かな
はるきても−みやこのやまの−かすむひは−まれのみゆきに−さゆるそらかな |
00270 |
未入力 正徹 (xxx)
いふき山もゆる煙に立ちなれてさしもかすまぬ春の色かな
いふきやま−もゆるけふりに−たちなれて−さしもかすまぬ−はるのいろかな |
00271 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけしくや霞にのこるなり大和島ねの春のむら山
あさほらけ−しくやかすみに−のこるなり−やまとしまねの−はるのむらやま |
00272 |
未入力 正徹 (xxx)
春や猶わしの高ねをしたひきて法の莚を霞敷くらん
はるやなほ−わしのたかねを−したひきて−のりのむしろを−かすみしくらむ |
00273 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむとも緑にや見ん山もまた塵なりし世の春の明ほの
かすむとも−みとりにやみむ−やまもまた−ちりなりしよの−はるのあけほの |
00274 |
未入力 正徹 (xxx)
綱手縄ひけるやかすみまきもくのひ原の山の春の杣人
つなてなは−ひけるやかすみ−まきもくの−ひはらのやまの−はるのそまひと |
00275 |
未入力 正徹 (xxx)
をちかたの霞の光あらはれて雨にかくれぬ山の色かな
をちかたの−かすみのひかり−あらはれて−あまにかくれぬ−やまのいろかな |
00276 |
未入力 正徹 (xxx)
大和島かすみもいまたむら山に雪たちのこしさゆる春かな
やまとしま−かすみもいまた−むらやまに−ゆきたちのこし−さゆるはるかな |
00277 |
未入力 正徹 (xxx)
春霞天のはらまて曇りきて雪におよはぬふしの四方山
はるかすみ−あまのはらまて−くもりきて−ゆきにおよはぬ−ふしのよもやま |
00278 |
未入力 正徹 (xxx)
染めてけり霞の衣色をうすみ山のすそこの春の若草
そめてけり−かすみのころも−いろをうすみ−やまのすそこの−はるのわかくさ |
00279 |
未入力 正徹 (xxx)
袖と見しかすみのみたれ雪そけつ名におふ山の忍もちすり
そてとみし−かすみのみたれ−ゆきそけつ−なにおふやまの−しのふもちすり |
00280 |
未入力 正徹 (xxx)
坂こゆる人の袖かとみかの原国の都は山そかすめる
さかこゆる−ひとのそてかと−みかのはら−くにのみやこは−やまそかすめる |
00281 |
未入力 正徹 (xxx)
時しらぬ色にもしるし春はきてふもとにかすむ富士の白雪
ときしらぬ−いろにもしるし−はるはきて−ふもとにかすむ−ふしのしらゆき |
00282 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにも春を見せんと足引の山つたひして行く霞かな
いつくにも−はるをみせむと−あしひきの−やまつたひして−ゆくかすみかな |
00283 |
未入力 正徹 (xxx)
春さむき霞のみをにけふしこそ御舟の山もうかふあは雪
はるさむき−かすみのみをに−けふしこそ−みふねのやまも−うかふあはゆき |
00284 |
未入力 正徹 (xxx)
あし引の山たち花の袖のかもむかしにかすむ春のふる郷
あしひきの−やまたちはなの−そてのかも−むかしにかすむ−はるのふるさと |
00285 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色を日比見せつと足引の山たちはなれ行く霞かな
はるのいろを−ひころみせつと−あしひきの−やまたちはなれ−ゆくかすみかな |
00286 |
未入力 正徹 (xxx)
棹姫のとほ山まゆもうす墨の夕ほのかにかすむ春かな
さほひめの−とほやままゆも−うすすみの−ゆふへほのかに−かすむはるかな |
00287 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ霞かかれとてしもむは玉の黒髪山に春やこさらむ
あさかすみ−かかれとてしも−むはたまの−くろかみやまに−はるやこさらむ |
00288 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影ふもとの塵にかすめるをみぬ世の年も遠き山かな
あさひかけ−ふもとのちりに−かすめるを−みぬよのとしも−とほきやまかな |
00289 |
未入力 正徹 (xxx)
いつる日のかすめる色もあさか山かけさへ雪にさゆる春かな
いつるひの−かすめるいろも−あさかやま−かけさへゆきに−さゆるはるかな |
00290 |
未入力 正徹 (xxx)
霞たつ衣かせ山いつみ川舟のりさむし春のあさあけ
かすみたつ−ころもかせやま−いつみかは−ふなのりさむし−はるのあさあけ |
00291 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉なき秋の朝霧思出てぬ山たちかすむ春の初霜
このはなき−あきのあさきり−おもひいてぬ−やまたちかすむ−はるのはつしも |
00292 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ことに大内山の宮木をや春のかすみも綱手引くらん
あさことに−おほうちやまの−みやきをや−はるのかすみも−つなてひくらむ |
00293 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺出ててかすむ朝日の麓川くれなゐくくる浪もこほらす
みねいてて−かすむあさひの−ふもとかは−くれなゐくくる−なみもこほらす |
00294 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の嶺にそかすむ花さかぬ山さくら戸の春の白雪
あさあけの−みねにそかすむ−はなさかぬ−やまさくらとの−はるのしらゆき |
00295 |
未入力 正徹 (xxx)
のほる日の光をこめて足引の山よりたかくかすむ空かな
のほるひの−ひかりをこめて−あしひきの−やまよりたかく−かすむそらかな |
00296 |
未入力 正徹 (xxx)
山風の霞をまくや棹姫のおくるあしたの床のさむしろ
やまかせの−かすみをまくや−さほひめの−おくるあしたの−とこのさむしろ |
00297 |
未入力 正徹 (xxx)
あまのきる春の衣のあさ妻やうら風なからかすむ山かな
あまのきる−はるのころもの−あさつまや−うらかせなから−かすむやまかな |
00298 |
未入力 正徹 (xxx)
たかためそ霞のうちに出つる日のくれなゐそむる春のさ衣
たかためそ−かすみのうちに−いつるひの−くれなゐそむる−はるのさころも |
00299 |
未入力 正徹 (xxx)
主やたれかすみのうちの松か枝も遠山すりの春のさ衣
ぬしやたれ−かすみのうちの−まつかえも−とほやますりの−はるのさころも |
00300 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにしてなひく霞や心あてに猶わきもこか二かみの山
よそにして−なひくかすみや−こころあてに−なほわきもこか−ふたかみのやま |
00301 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちこむるをちの山人それも見はわか住むさとや又霞むらん
たちこむる−をちのやまひと−それもみは−わかすむさとや−またかすむらむ |
00302 |
未入力 正徹 (xxx)
雪そちる霞を山と御吉野のふる郷人の春の衣手
ゆきそちる−かすみをやまと−みよしのの−ふるさとひとの−はるのころもて |
00303 |
未入力 正徹 (xxx)
行末も遠山鳥のをしほ山神代へたてすかすむ春かな
ゆくすゑも−とほやまとりの−をしほやま−かみよへたてす−かすむはるかな |
00304 |
未入力 正徹 (xxx)
うつもれし我か身の霧はかつ晴れて今朝遠山の霞むをそみる
うつもれし−わかみのきりは−かつはれて−けさとほやまの−かすむをそみる |
00305 |
未入力 正徹 (xxx)
難波かた霞も山もうす墨の絵島そにしの海にうかへる
なにはかた−かすみもやまも−うすすみの−えしまそにしの−うみにうかへる |
00306 |
未入力 正徹 (xxx)
見えさりし霞かかれる色なから朝日にいつる春のとほ山
みえさりし−かすみかかれる−いろなから−あさひにいつる−はるのとほやま |
00307 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明のかすみのおくに山ありとかねてしらすは海かとそみむ
あさあけの−かすみのおくに−やまありと−かねてしらすは−うみかとそみむ |
00308 |
未入力 正徹 (xxx)
朝みとりかすめる山の松杉もおなしよそ目にさゆる春かな
あさみとり−かすめるやまの−まつすきも−おなしよそめに−さゆるはるかな |
00309 |
未入力 正徹 (xxx)
かすましな衣たちきるすまのあまや寒き都の山路こゆらん
かすましな−ころもたちきる−すまのあまや−さむきみやこの−やまちこゆらむ |
00310 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬまにほすや霞のかり衣ぬく日もしらぬ天のかく山
あけぬまに−ほすやかすみの−かりころも−ぬくひもしらぬ−あまのかくやま |
00311 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす山の霞もくれなゐのこ染や春の衣なるらむ
あさひさす−やまのかすみも−くれなゐの−こそめやはるの−ころもなるらむ |
00312 |
未入力 正徹 (xxx)
かすみきぬ夕山姫のたか春にくもる契の色をそふらん
かすみきぬ−ゆふやまひめの−たかはるに−くもるちきりの−いろをそふらむ |
00313 |
未入力 正徹 (xxx)
春なれはふしの高ねの雪の上もかすむかたつか天の羽衣
はるなれは−ふしのたかねの−ゆきのうへも−かすむかたつか−あまのはころも |
00314 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬしやたれ山わけ衣みたれくる春のかすみの袖の追風
ぬしやたれ−やまわけころも−みたれくる−はるのかすみの−そてのおひかせ |
00315 |
未入力 正徹 (xxx)
雲の浪かからぬ松もあらはれす霞や千重の嶺のはまゆふ
くものなみ−かからぬまつも−あらはれす−かすみやちへの−みねのはまゆふ |
00316 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす天の岩戸の関よりも山はかすみをいてぬ春かな
あさひさす−あまのいはとの−せきよりも−やまはかすみを−いてぬはるかな |
00317 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の色のきえぬもきえつ真砂山はまゆふ霞幾重立つらむ
ゆきのいろの−きえぬもきえつ−まさこやま−はまゆふかすみ−いくへたつらむ |
00318 |
未入力 正徹 (xxx)
山は人かすみは山をへたてても行く旅とほしふる郷のはる
やまはひと−かすみはやまを−へたてても−ゆくたひとほし−ふるさとのはる |
00319 |
未入力 正徹 (xxx)
朝かすみもも重をかくるうら風に浜ゆふたかき三くまのの山
あさかすみ−ももへをかくる−うらかせに−はまゆふたかき−みくまののやま |
00320 |
未入力 正徹 (xxx)
ありとみし松杉なからははききのかすみにきゆる山のあけほの
ありとみし−まつすきなから−ははききの−かすみにきゆる−やまのあけほの |
00321 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる嶺の緑も見えぬかな雪をやうつむ霞なるらん
まつたてる−みねのみとりも−みえぬかな−ゆきをやうつむ−かすみなるらむ |
00322 |
未入力 正徹 (xxx)
霞みこめつらなる峰の塵はかり残るかわたる雁のおも影
かすみこめ−つらなるみねの−ちりはかり−のこるかわたる−かりのおもかけ |
00323 |
未入力 正徹 (xxx)
雪消えて峰の霞やたつか弓春の関もるき路の遠山
ゆききえて−みねのかすみや−たつかゆみ−はるのせきもる−きちのとほやま |
00324 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ行く霞のみをにかけてけりつつく高ねの雲の梯
なかれゆく−かすみのみをに−かけてけり−つつくたかねの−くものかけはし |
00325 |
未入力 正徹 (xxx)
春よまた太山嵐の峰つたひ雪も霞の色はけすらん
はるよまた−みやまあらしの−みねつたひ−ゆきもかすみの−いろはけすらむ |
00326 |
未入力 正徹 (xxx)
朝みとり若葉の松も色そこき山染めいたす春の霞に
あさみとり−わかはのまつも−いろそこき−やまそめいたす−はるのかすみに |
00327 |
未入力 正徹 (xxx)
天地やなにの上にもくる春の色を千種にかすむ山かな
あめつちや−なにのうへにも−くるはるの−いろをちくさに−かすむやまかな |
00328 |
未入力 正徹 (xxx)
野も山もおなし緑の色そこきふらぬ霞や木のめはるさめ
のもやまも−おなしみとりの−いろそこき−ふらぬかすみや−きのめはるさめ |
00329 |
未入力 正徹 (xxx)
こすと見し浪は霞にしかれけり春の色こき末の松山
こすとみし−なみはかすみに−しかれけり−はるのいろこき−すゑのまつやま |
00330 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色に出雲八雲そあかねさす日の川上のあさ霞かも
はるのいろに−いつもやくもそ−あかねさす−ひのかはかみの−あさかすみかも |
00331 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色にうらなれにけり棹姫の霞の衣ころもへすして
はるのいろに−うらなれにけり−さほひめの−かすみのころも−ころもへすして |
00332 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる衣さむしろ今朝そみる降りしく雪の山の霞に
はるのきる−ころもさむしろ−けさそみる−ふりしくゆきの−やまのかすみに |
00333 |
未入力 正徹 (xxx)
世にひろく立つや霞の衣手にもれてみえたる山のはもなし
よにひろく−たつやかすみの−ころもてに−もれてみえたる−やまのはもなし |
00334 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の春のかすみをおりはへてたれにともなくたつ衣かな
さほひめの−はるのかすみを−おりはへて−たれにともなく−たつころもかな |
00335 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪にもすそぬらすや霞立つ棹山姫の衣なるらん
かはなみに−もすそぬらすや−かすみたつ−さほやまひめの−ころもなるらむ |
00336 |
未入力 正徹 (xxx)
聞ゆるや杣山人の斧ならん春もかすみの衣うつこゑ
きこゆるや−そまやまひとの−をのならむ−はるもかすみの−ころもうつこゑ |
00337 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむ日の松浦か興のから衣もろこし人やたち霞ぬらん
かすむひの−まつらかおきの−からころも−もろこしひとや−たちかさぬらむ |
00338 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の衣の玉を春みせて霞のしたにかかる日のかけ
さほひめの−ころものたまを−はるみせて−かすみのしたに−かかるひのかけ |
00339 |
未入力 正徹 (xxx)
霞たつ春は大津の宮人のふるき衣にうら風そふく
かすみたつ−はるはおほつの−みやひとの−ふるきころもに−うらかせそふく |
00340 |
未入力 正徹 (xxx)
袖はへて梅かかうつすぬしや誰かすめる庭の春のさころも
そてはへて−うめかかうつす−ぬしやたれ−かすめるにはの−はるのさころも |
00341 |
未入力 正徹 (xxx)
古の春のかすみをたちきるも猶身にあまるけふの袂そ
いにしへの−はるのかすみを−たちきるも−なほみにあまる−けふのたもとそ |
00342 |
未入力 正徹 (xxx)
世は春の霞の衣きる人もあらし吹く日やぬきわかるらん
よははるの−かすみのころも−きるひとも−あらしふくひや−ぬきわかるらむ |
00343 |
未入力 正徹 (xxx)
色色の衣はあれと世は春のかすみのうはききぬ人もなし
いろいろの−ころもはあれと−よははるの−かすみのうはき−きぬひともなし |
00344 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山三の衣の玉くしけふたつはたてる雲よ霞よ
やはたやま−みつのころもの−たまくしけ−ふたつはたてる−くもよかすみよ |
00345 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川星合の空は程遠したれに霞の衣かすらむ
あまのかは−ほしあひのそらは−ほととほし−たれにかすみの−ころもかすらむ |
00346 |
未入力 正徹 (xxx)
空にたつ衣のうらの玉かしはかすむ春日はなにはならねと
そらにたつ−ころものうらの−たまかしは−かすむはるひは−なにはならねと |
00347 |
未入力 正徹 (xxx)
川社七日ひさらん衣ほせかすみそかかるあまのかく山
かはやしろ−なぬかひさらむ−ころもほせ−かすみそかかる−あまのかくやま |
00348 |
未入力 正徹 (xxx)
春きても猶山姫の夜や寒き衣やうすきかすむともなし
はるきても−なほやまひめの−よやさむき−ころもやうすき−かすむともなし |
00349 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる衣を寒みぬくとなき霞のひもをとく嵐かな
はるのきる−ころもをさむみ−ぬくとなき−かすみのひもを−とくあらしかな |
00350 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまたあさしや六のくらゐ山かすむみとりの衣をそきる
はるはまた−あさしやむつの−くらゐやま−かすむみとりの−ころもをそきる |
00351 |
未入力 正徹 (xxx)
棹姫の袖ももすそもわきてみす衣といはん霞ともなし
さほひめの−そてももすそも−わきてみす−ころもといはむ−かすみともなし |
00352 |
未入力 正徹 (xxx)
杣人の綱手ならねと山路より都に春を引くかすみかな
そまひとの−つなてならねと−やまちより−みやこにはるを−ひくかすみかな |
00353 |
未入力 正徹 (xxx)
四方にたつ霞も春になれすとや山風吹けは遠さかるらん
よもにたつ−かすみもはるに−なれすとや−やまかせふけは−とほさかるらむ |
00354 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきるこや羽衣の天つひれふりはへなかしかすみ初むらん
はるのきる−こやはころもの−あまつひれ−ふりはへなかし−かすみそむらむ |
00355 |
未入力 正徹 (xxx)
九重の山の霞ももろ人も今朝たなひくや春のきぬらん
ここのへの−やまのかすみも−もろひとも−けさたなひくや−はるのきぬらむ |
00356 |
未入力 正徹 (xxx)
海山もたなひくしたに顕れぬいくかかすめる長路なるらん
うみやまも−たなひくしたに−あらはれぬ−いくかかすめる−なかちなるらむ |
00357 |
未入力 正徹 (xxx)
けさみれはたな引ききえぬ夜の程は霞のなれる興つ島山
けさみれは−たなひききえぬ−よのほとは−かすみのなれる−おきつしまやま |
00358 |
未入力 正徹 (xxx)
朝みとり春のかすみの山めくりしくれし秋に染めし色かな
あさみとり−はるのかすみの−やまめくり−しくれしあきに−そめしいろかな |
00359 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの天つかすみの橋立を空にもかくるよさのうらなみ
ひさかたの−あまつかすみの−はしたてを−そらにもかくる−よさのうらなみ |
00360 |
未入力 正徹 (xxx)
道辺をへたつる程もみえわかてかすみにちかきをちの里人
みちのへを−へたつるほとも−みえわかて−かすみにちかき−をちのさとひと |
00361 |
未入力 正徹 (xxx)
かまとよりたつや煙も高き屋にのほる霞の色とみゆらん
かまとより−たつやけふりも−たかきやに−のほるかすみの−いろとみゆらむ |
00362 |
未入力 正徹 (xxx)
朝霞空にみつはのむら雲やたつ川上の浪と見ゆらん
あさかすみ−そらにみつはの−むらくもや−たつかはかみの−なみとみゆらむ |
00363 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ火の煙もみちてあまの住む村の朝けはかすむ春かな
もしほひの−けふりもみちて−あまのすむ−むらのあさけは−かすむはるかな |
00364 |
未入力 正徹 (xxx)
大和路やさとはとをちの村山もありとはみえすかすむ春かな
やまとちや−さとはとをちの−むらやまも−ありとはみえす−かすむはるかな |
00365 |
未入力 正徹 (xxx)
大和川音はかりして遠近のかすみにのこる春のむら山
やまとかは−おとはかりして−をちこちの−かすみにのこる−はるのむらやま |
00366 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きはらへ宿たちかくす村霞をちかた人の袖の春かせ
ふきはらへ−やとたちかくす−むらかすみ−をちかたひとの−そてのはるかせ |
00367 |
未入力 正徹 (xxx)
杜たかき千枝を草葉とみるはかりしのたの方のかすむ野へかな
もりたかき−ちえをくさはと−みるはかり−しのたのかたの−かすむのへかな |
00368 |
未入力 正徹 (xxx)
遠かたの梢の風やさわくらむかすみの衣しのふもちすり
をちかたの−こすゑのかせや−さわくらむ−かすみのころも−しのふもちすり |
00369 |
未入力 正徹 (xxx)
たちのこす霞の袖につく墨はたかため恋の杜となるらん
たちのこす−かすみのそてに−つくすみは−たかためこひの−もりとなるらむ |
00370 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原霞のうちもくもらぬや興の玉藻の光なるらん
わたのはら−かすみのうちも−くもらぬや−おきのたまもの−ひかりなるらむ |
00371 |
未入力 正徹 (xxx)
春霞光そうすき伊勢の海の塩干の玉やけさひろひけん
はるかすみ−ひかりそうすき−いせのうみの−しほひのたまや−けさひろひけむ |
00372 |
未入力 正徹 (xxx)
よもの海に二の袖やおほふらん霞の衣かきりなくして
よものうみに−ふたつのそてや−おほふらむ−かすみのころも−かきりなくして |
00373 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にしく霞の色もわかめ刈るあまの磯菜や雪の下もえ
なみにしく−かすみのいろも−わかめかる−あまのいそなや−ゆきのしたもえ |
00374 |
未入力 正徹 (xxx)
春やくる浪に霞を敷たへの床のうら人おきはわかれし
はるやくる−なみにかすみを−しきたへの−とこのうらひと−おきはわかれし |
00375 |
未入力 正徹 (xxx)
四方の海かすみおよはぬ興もあらは春のとまりを浪にみてまし
よものうみ−かすみおよはぬ−おきもあらは−はるのとまりを−なみにみてまし |
00376 |
未入力 正徹 (xxx)
紅のゆたかにたてる袂かな霞によする春のうら人
くれなゐの−ゆたかにたてる−たもとかな−かすみによする−はるのうらひと |
00377 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原春たちかへる雲の波霞の浪も風そのとけき
わたのはら−はるたちかへる−くものなみ−かすみのなみも−かせそのとけき |
00378 |
未入力 正徹 (xxx)
春はいまうらこく舟の路の草玉ももえ出ててかすむ浪かな
はるはいま−うらこくふねの−みちのくさ−たまももえいてて−かすむなみかな |
00379 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原山を見あてにとり梶もかすみにたゆる春の船人
わたのはら−やまをみあてに−とりかちも−かすみにたゆる−はるのふなひと |
00380 |
未入力 正徹 (xxx)
そことなき霞は晴れてわたつ海に残るも曇る八重のしほかせ
そことなき−かすみははれて−わたつうみに−のこるもくもる−やへのしほかせ |
00381 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海のかさしの浪の花かつら霞をかけて浦風そ吹く
わたつうみの−かさしのなみの−はなかつら−かすみをかけて−うらかせそふく |
00382 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海の浪そとことは夕なきに霞や春の色をしくらん
わたつうみの−なみそとことは−ゆふなきに−かすみやはるの−いろをしくらむ |
00383 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙の浪のかさしのわたつ海に又さしはへてかすむ春かな
しろたへの−なみのかさしの−わたつうみに−またさしはへて−かすむはるかな |
00384 |
未入力 正徹 (xxx)
うちはふる霞の網のめも春に入江のあしはうら風そ吹く
うちはふる−かすみのあみの−めもはるに−いりえのあしは−うらかせそふく |
00385 |
未入力 正徹 (xxx)
石見かた山も高津のうら波にひれふる袖や霞なるらん
いはみかた−やまもたかつの−うらなみに−ひれふるそてや−かすみなるらむ |
00386 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かた山のかさしのわたつ海は波さへしろくかすむ春かな
あはちかた−やまのかさしの−わたつうみは−なみさへしろく−かすむはるかな |
00387 |
未入力 正徹 (xxx)
うら風におもひきえぬもみゆるかな世を海わたる霞ならねと
うらかせに−おもひきえぬも−みゆるかな−よをうみわたる−かすみならねと |
00388 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原八百日行くともはてしらぬ浪と霞の遠つしらはま
わたのはら−やほかゆくとも−はてしらぬ−なみとかすみの−とほつしらはま |
00389 |
未入力 正徹 (xxx)
伊勢の海や渚の玉の光かも霞をみかく興つしら浪
いせのうみや−なきさのたまの−ひかりかも−かすみをみかく−おきつしらなみ |
00390 |
未入力 正徹 (xxx)
波の上の霞をわけて引く塩に夕日くらしぬ玉津しまやま
なみのうへの−かすみをわけて−ひくしほに−ゆふひくらしぬ−たまつしまやま |
00391 |
未入力 正徹 (xxx)
興つなみ雲のはたてにかけておれ霞のぬきのあまのさ衣
おきつなみ−くものはたてに−かけておれ−かすみのぬきの−あまのさころも |
00392 |
未入力 正徹 (xxx)
むろの木のみとりを分けて霞むなりこき出つる舟のともの浦浪
むろのきの−みとりをわけて−かすむなり−こきいつるふねの−とものうらなみ |
00393 |
未入力 正徹 (xxx)
春日さす氷は消えし霞にも遠さかり行くしかのうら浪
はるひさす−こほりはきえし−かすみにも−とほさかりゆく−しかのうらなみ |
00394 |
未入力 正徹 (xxx)
山風もかすむふもとの夕波にたてるやいつこしかの浜松
やまかせも−かすむふもとの−ゆふなみに−たてるやいつこ−しかのはままつ |
00395 |
未入力 正徹 (xxx)
さくらあさも見ぬ名におふのうらなしに霞みこめたる浪の音かな
さくらあさも−みぬなにおふの−うらなしに−かすみこめたる−なみのおとかな |
00396 |
未入力 正徹 (xxx)
梶をたえ行末もしらす由良の戸をわたる舟路の春の霞に
かちをたえ−ゆくへもしらす−ゆらのとを−わたるふなちの−はるのかすみに |
00397 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の霞のかたほかけすててうら風遠くわたる舟人
あさあけの−かすみのかたほ−かけすてて−うらかせとほく−わたるふなひと |
00398 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはるる時をはいつとしら浪の浜松かねも猶かすむらん
あらはるる−ときをはいつと−しらなみの−はままつかねも−なほかすむらむ |
00399 |
未入力 正徹 (xxx)
霞にもはなれ小島はあらはれて又うつもるる沖つとほ山
かすみにも−はなれこしまは−あらはれて−またうつもるる−おきつとほやま |
00400 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そしるいふきおろしは波間よりみゆる小島の見えぬ霞に
けさそしる−いふきおろしは−なみまより−みゆるこしまの−みえぬかすみに |
00401 |
未入力 正徹 (xxx)
雲井にそけさほかすめる久かたの天つをとめの沖つしま松
くもゐにそ−けさほかすめる−ひさかたの−あまつをとめの−おきつしままつ |
00402 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけ興行く舟のほのほのと霞にのこるあとのしら浪
あさほらけ−おきゆくふねの−ほのほのと−かすみにのこる−あとのしらなみ |
00403 |
未入力 正徹 (xxx)
行く舟のとものうら浪あと消えてむろの一木そ霞みのこれる
ゆくふねの−とものうらなみ−あときえて−むろのひときそ−かすみのこれる |
00404 |
未入力 正徹 (xxx)
行く舟のあとの白浪かすむ日ほ此世中をなににたとへん
ゆくふねの−あとのしらなみ−かすむひほ−このよのなかを−なににたとへむ |
00405 |
未入力 正徹 (xxx)
あつさ弓八十の湊のあまを舟おしてささ浪今朝そかすめる
あつさゆみ−やそのみなとの−あまをふね−おしてささなみ−けさそかすめる |
00406 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけ霞や八重のしほならぬ浦風なから空にみつらん
あさほらけ−かすみややへの−しほならぬ−うらかせなから−そらにみつらむ |
00407 |
未入力 正徹 (xxx)
うきて行く春の霞のうらつたひ浜風しるしにほのささ浪
うきてゆく−はるのかすみの−うらつたひ−はまかせしるし−にほのささなみ |
00408 |
未入力 正徹 (xxx)
下くくるにほ冬こもるうら風のたつうは浪にかすむ春かな
したくくる−にほふゆこもる−うらかせの−たつうはなみに−かすむはるかな |
00409 |
未入力 正徹 (xxx)
うちなひきかすむ春日もにほてるやささ浪清く風そのとけき
うちなひき−かすむはるひも−にほてるや−ささなみきよく−かせそのとけき |
00410 |
未入力 正徹 (xxx)
志賀のうらやみるめなきさに磯菜摘むあまのま袖もかすむ春かな
しかのうらや−みるめなきさに−いそなつむ−あまのまそても−かすむはるかな |
00411 |
未入力 正徹 (xxx)
霞さへあれ行く比良のみなと風かへるやあまの袖ならぬ浪
かすみさへ−あれゆくひらの−みなとかせ−かへるやあまの−そてならぬなみ |
00412 |
未入力 正徹 (xxx)
あまのきぬ霞の袖のみなと江はもろこし船のから衣かも
あまのきぬ−かすみのそての−みなとえは−もろこしふねの−からころもかも |
00413 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影さすや霞の下風に玉江をみかく春のしら浪
あさひかけ−さすやかすみの−したかせに−たまえをみかく−はるのしらなみ |
00414 |
未入力 正徹 (xxx)
三島江や枯葉なからに立つ芦の色も緑にかすむ春かな
みしまえや−かれはなからに−たつあしの−いろもみとりに−かすむはるかな |
00415 |
未入力 正徹 (xxx)
朝あけの入江のさ浪音消えて霞のうちは浦風もなし
あさあけの−いりえのさなみ−おときえて−かすみのうちは−うらかせもなし |
00416 |
未入力 正徹 (xxx)
伊勢の海やをのの古江の朝霞長閑になひく春の神風
いせのうみや−をののふるえの−あさかすみ−のとかになひく−はるのかみかせ |
00417 |
未入力 正徹 (xxx)
しら浪の玉津島江にかすむなり真砂吹上の春の浜風
しらなみの−たまつしまえに−かすむなり−まさこふきあけの−はるのはまかせ |
00418 |
未入力 正徹 (xxx)
まのの浦の入江の春の初尾花袖に見ゆるや霞なるらん
まののうらの−いりえのはるの−はつをはな−そてにみゆるや−かすみなるらむ |
00419 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにける影やみさらん鏡山かすむ朝けのしかのはま松
ふりにける−かけやみさらむ−かかみやま−かすむあさけの−しかのはままつ |
00420 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしたかすみけん床の莚とて春の霞を敷島の宮
むかしたか−すみけむゆかの−むしろとて−はるのかすみを−しきしまのみや |
00421 |
未入力 正徹 (xxx)
世は春とたつや霞も君すめは都のよもや光そふらん
よははると−たつやかすみも−きみすめは−みやこのよもや−ひかりそふらむ |
00422 |
未入力 正徹 (xxx)
百敷や春のこすもる薫のにほふけふりも霞そふらん
ももしきや−はるのこすもる−たきものの−にほふけふりも−かすみそふらむ |
00423 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる春の霞にことの葉のありと聞ゆる百千鳥かな
あけわたる−はるのかすみに−ことのはの−ありときこゆる−ももちとりかな |
00424 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる霞ににほひくる春の空はみとりの色もかはらて
あけわたる−かすみににほひ−くるはるの−そらはみとりの−いろもかはらて |
00425 |
未入力 正徹 (xxx)
あけほのの霞も春に心ひく色そかさなる嶺のよこ雲
あけほのの−かすみもはるに−こころひく−いろそかさなる−みねのよこくも |
00426 |
未入力 正徹 (xxx)
焼きすてし冬野の煙年越えてかすみとなるも遠き山かな
たきすてし−ふゆののけふり−としこえて−かすみとなるも−とほきやまかな |
00427 |
未入力 正徹 (xxx)
山よりも冬をそ遠くへたて行く霞や春の心なるらん
やまよりも−ふゆをそとほく−へたてゆく−かすみやはるの−こころなるらむ |
00428 |
未入力 正徹 (xxx)
野へとほき霞にましり行人の袖より袖に梅か香そする
のへとほき−かすみにましり−ゆくひとの−そてよりそてに−うめかかそする |
00429 |
未入力 正徹 (xxx)
春やとき花なき関の藤川や松にかかるは霞なりけり
はるやとき−はななきせきの−ふちかはや−まつにかかるは−かすみなりけり |
00430 |
未入力 正徹 (xxx)
古年の心のうらもあふ坂の関路まさしくかすむ山かな
ふるとしの−こころのうらも−あふさかの−せきちまさしく−かすむやまかな |
00431 |
未入力 正徹 (xxx)
関屋ふく霞のひさしあれまくもをしみそあへぬ不破の山風
せきやふく−かすみのひさし−あれまくも−をしみそあへぬ−ふはのやまかせ |
00432 |
未入力 正徹 (xxx)
すすか山春の霞のすゑおくや八十関こゆる四方の旅人
すすかやま−はるのかすみの−すゑおくや−やそせきこゆる−よものたひひと |
00433 |
未入力 正徹 (xxx)
行く浪もこゑ高からぬ袖なれや川口おほふ関の霞に
ゆくなみも−こゑたかからぬ−そてなれや−かはくちおほふ−せきのかすみに |
00434 |
未入力 正徹 (xxx)
清見かた君もる浪も春はきるかすみの衣ぬれぬ日そなき
きよみかた−きみもるなみも−はるはきる−かすみのころも−ぬれぬひそなき |
00435 |
未入力 正徹 (xxx)
守る関のあら垣かこふ霞より氷なかるる春の川くち
もるせきの−あらかきかこふ−かすみより−こほりなかるる−はるのかはくち |
00436 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるき世の春待ちこふる難波人かすむや遠き三つの浜松
ふるきよの−はるまちこふる−なにはひと−かすむやとほき−みつのはままつ |
00437 |
未入力 正徹 (xxx)
山かくす霞の袖もほしあへすよを鴬のこゑたてて啼く
やまかくす−かすみのそても−ほしあへす−よをうくひすの−こゑたててなく |
00438 |
未入力 正徹 (xxx)
都にも春のかすみの古巣をはいてぬこゑしく鴬そ鳴く
みやこにも−はるのかすみの−ふるすをは−いてぬこゑしく−うくひすそなく |
00439 |
未入力 正徹 (xxx)
くもれとも空たちのこす村霞あらはれ消えて雁そ行くなる
くもれとも−そらたちのこす−むらかすみ−あらはれきえて−かりそゆくなる |
00440 |
未入力 正徹 (xxx)
雁のくるさとや玉川遠かたの天つかすみをゐての下帯
かりのくる−さとやたまかは−をちかたの−あまつかすみを−ゐてのしたおひ |
00441 |
未入力 正徹 (xxx)
なくさむる老の涙のひまはあれと霞忘れぬ春のよの月
なくさむる−おいのなみたの−ひまはあれと−かすみわすれぬ−はるのよのつき |
00442 |
未入力 正徹 (xxx)
くもらしな霞の袖の中川になかれての名をつつむ月かけ
くもらしな−かすみのそての−なかかはに−なかれてのなを−つつむつきかけ |
00443 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちそひて花にわかれし春霞はかなや月のくもるかたみは
たちそひて−はなにわかれし−はるかすみ−はかなやつきの−くもるかたみは |
00444 |
未入力 正徹 (xxx)
めくれとも春のそらをは出てやらぬ霞や月のうき世なるらん
めくれとも−はるのそらをは−いてやらぬ−かすみやつきの−うきよなるらむ |
00445 |
未入力 正徹 (xxx)
有明の月出ててこそ春の夜の千里も山もかすむとはみれ
ありあけの−つきいててこそ−はるのよの−ちさともやまも−かすむとはみれ |
00446 |
未入力 正徹 (xxx)
たか中にぬきてわかれしさ夜衣草葉の床にしく霞かな
たかなかに−ぬきてわかれし−さよころも−くさはのとこに−しくかすみかな |
00447 |
未入力 正徹 (xxx)
朝あけの嵐も春もしかの浦に山こえしてや霞みしくらん
あさあけの−あらしもはるも−しかのうらに−やまこえしてや−かすみしくらむ |
00448 |
未入力 正徹 (xxx)
程遠く四方にみえつる山もなしかすむやいつこ春の明ほの
ほととほく−よもにみえつる−やまもなし−かすむやいつこ−はるのあけほの |
00449 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺に見し松もこふらく横雲のきゆる朝は引く霞かな
みねにみし−まつもこふらく−よこくもの−きゆるあしたは−ひくかすみかな |
00450 |
未入力 正徹 (xxx)
棹姫のささわくる朝の袖かとも深山路遠く立つ霞かな
さほひめの−ささわくるあさの−そてかとも−みやまちとほく−たつかすみかな |
00451 |
未入力 正徹 (xxx)
氷りつつ今朝やかすみもあさか山やまのゐうつむ水の白雪
こほりつつ−けさやかすみも−あさかやま−やまのゐうつむ−みつのしらゆき |
00452 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまた蛙もなかす朝霞かひやか上の山そくもれる
はるはまた−かはつもなかす−あさかすみ−かひやかうへの−やまそくもれる |
00453 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちこゆるかすみの衣山風にささわくるあさの袖かへすなり
たちこゆる−かすみのころも−やまかせに−ささわくるあさの−そてかへすなり |
00454 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色はかすみの朝戸あけわたる天つ関路に急く日の影
はるのいろは−かすみのあさと−あけわたる−あまつせきちに−いそくひのかけ |
00455 |
未入力 正徹 (xxx)
とほくみる春のあさけの窓の戸に霞つつける花鳥の声
とほくみる−はるのあさけの−まとのとに−かすみつつける−はなとりのこゑ |
00456 |
未入力 正徹 (xxx)
ふもと行く霞の袖の朝しめり篠分くる嶺の日影やはしる
ふもとゆく−かすみのそての−あさしめり−ささわくるみねの−ひかけやはしる |
00457 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れわたる遠山まゆのかたみたれのほる霞や先かくすらん
くれわたる−とほやままゆの−かたみたれ−のほるかすみや−まつかくすらむ |
00458 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世のくもる契を夕かすみ春にかけてや立ちわたるらん
ひとのよの−くもるちきりを−ゆふかすみ−はるにかけてや−たちわたるらむ |
00459 |
未入力 正徹 (xxx)
花にさけ紅さくらうゑてみん入日色こき嶺の霞に
はなにさけ−くれなゐさくら−うゑてみむ−いりひいろこき−みねのかすみに |
00460 |
未入力 正徹 (xxx)
あとふかきわしのみ山の苔の洞霞に法のこゑそのこれる
あとふかき−わしのみやまの−こけのほら−かすみにのりの−こゑそのこれる |
00461 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬしやたれ霞の袖に引く弓のかけあらはるる春の三日月
ぬしやたれ−かすみのそてに−ひくゆみの−かけあらはるる−はるのみかつき |
00462 |
未入力 正徹 (xxx)
月のきる霞の衣あけほのの光にそむる春のくれなゐ
つきのきる−かすみのころも−あけほのの−ひかりにそむる−はるのくれなゐ |
00463 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もみす有明の月のかつらまてかすみにそむる春の紅
あきもみす−ありあけのつきの−かつらまて−かすみにそむる−はるのくれなゐ |
00464 |
未入力 正徹 (xxx)
橋姫の待つゆふ暮も中たえて霞はてぬるうちの川浪
はしひめの−まつゆふくれも−なかたえて−かすみはてぬる−うちのかはなみ |
00465 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる霞の袖もまきほさぬ山風よわみ淡雪そ降る
はるのきる−かすみのそても−まきほさぬ−やまかせよわみ−あはゆきそふる |
00466 |
未入力 正徹 (xxx)
杣木引くと山の正木春くれはたゆるやかすむ綱手なるらん
そまきひく−とやまのまさき−はるくれは−たゆるやかすむ−つなてなるらむ |
00467 |
未入力 正徹 (xxx)
引きううる子日の小松いく千世の陰を二葉にやとし初むらん
ひきううる−ねのひのこまつ−いくちよの−かけをふたはに−やとしそむらむ |
00468 |
未入力 正徹 (xxx)
いかなりしいつの子日の行末にいま老松の神となるらん
いかなりし−いつのねのひの−ゆくすゑに−いまおいまつの−かみとなるらむ |
00469 |
未入力 正徹 (xxx)
二葉さす子日の小松まつかひもありへん物そ千世の生末
ふたはさす−ねのひのこまつ−まつかひも−ありへむものそ−ちよのおひすゑ |
00470 |
未入力 正徹 (xxx)
千年とも身には思はす松をおきてこと葉の色に引く露かな
ちとせとも−みにはおもはす−まつをおき−てことはのいろ−にひくつゆかな |
00471 |
未入力 正徹 (xxx)
千世の色を人もみよとや消えぬらんあすの子日を松の白雪
ちよのいろを−ひともみよとや−きえぬらむ−あすのねのひを−まつのしらゆき |
00472 |
未入力 正徹 (xxx)
春はけふきのえねの日と逢ひと合ひて松も千年の初とそしる
はるはけふ−きのえねのひと−あひとあひて−まつもちとせの−はしめとそしる |
00473 |
未入力 正徹 (xxx)
玉ははきてに取りもちて子の年のをとめやけふの塵はらふらん
たまははき−てにとりもちて−ねのとしの−をとめやけふの−ちりはらふらむ |
00474 |
未入力 正徹 (xxx)
うらわかみまた初草の妻やとふ春の野に出てて鴬そなく
うらわかみ−またはつくさの−つまやとふ−はるののにいてて−うくひすそなく |
00475 |
未入力 正徹 (xxx)
我か庵のそのふの竹に朝な夕な世を鴬となくそ友なる
わかいほの−そのふのたけに−あさなゆふな−よをうくひすと−なくそともなる |
00476 |
未入力 正徹 (xxx)
さく梅の色とはなしに鴬のこゑの匂ひや友さそふらん
さくうめの−いろとはなしに−うくひすの−こゑのにほひや−ともさそふらむ |
00477 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春をさやかにや見む鴬の声はかりしてかすむ野へかな
くるはるを−さやかにやみむ−うくひすの−こゑはかりして−かすむのへかな |
00478 |
未入力 正徹 (xxx)
花やとき涙の氷梅かかに今朝うちとくる鴬のこゑ
はなやとき−なみたのこほり−うめかかに−けさうちとくる−うくひすのこゑ |
00479 |
未入力 正徹 (xxx)
岩浪もさへつるこゑやかへすらん巣たちし谷の鴬の滝
いはなみも−さへつるこゑや−かへすらむ−すたちしたにの−うくひすのたき |
00480 |
未入力 正徹 (xxx)
春寒みさそふへき花を松のはに猶冬こもる鴬の声
はるさむみ−さそふへきはなを−まつのはに−なほふゆこもる−うくひすのこゑ |
00481 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの春たれかはききし鴬のかひ子をいてし竹姫の声
いつのはる−たれかはききし−うくひすの−かひこをいてし−たけひめのこゑ |
00482 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬のさへつり出す初音より猶色わかき朝かすみかな
うくひすの−さへつりいたす−はつねより−なほいろわかき−あさかすみかな |
00483 |
未入力 正徹 (xxx)
箸鷹の狩はの小野に巣立ちてやなら柴かくれ鴬の啼く
はしたかの−かりはのをのに−すたちてや−ならしはかくれ−うくひすのなく |
00484 |
未入力 正徹 (xxx)
梅はまたしつく小枝も花遠し鴬さそへ水のうき草
うめはまた−しつくさえたも−はなとほし−うくひすさそへ−みつのうきくさ |
00485 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬の初音の春に契りてや千世を八千代とゆらくたま松
うくひすの−はつねのはるに−ちきりてや−ちよをやちよと−ゆらくたままつ |
00486 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬のおのか涙のおつるにや氷とけ行く春をつくらむ
うくひすの−おのかなみたの−おつるにや−こほりとけゆく−はるをつくらむ |
00487 |
未入力 正徹 (xxx)
声すなり鴬あをき鳥とてや春のつかひに山路越えきて
こゑすなり−うくひすあをき−とりとてや−はるのつかひに−やまちこえきて |
00488 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりこぬ鴬したふむもれ木の雪の花けつ谷川の浪
かへりこぬ−うくひすしたふ−うもれきの−ゆきのはなけつ−たにかはのなみ |
00489 |
未入力 正徹 (xxx)
咲きてちる花そ川浪さそひてや谷にも春の鴬のこゑ
さきてちる−はなそかはなみ−さそひてや−たににもはるの−うくひすのこゑ |
00490 |
未入力 正徹 (xxx)
氷とけ上こす花のささ浪にうくひすさそふ谷の埋木
こほりとけ−うへこすはなの−ささなみに−うくひすさそふ−たにのうもれき |
00491 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとてさそふか雪の花園にこゑひらけ行く春の鴬
いまはとて−さそふかゆきの−はなそのに−こゑひらけゆく−はるのうくひす |
00492 |
未入力 正徹 (xxx)
消えのこる梢の雪の花にたにさそはれやすき春のうくひす
きえのこる−こすゑのゆきの−はなにたに−さそはれやすき−はるのうくひす |
00493 |
未入力 正徹 (xxx)
春やとき都の雪の朝もよひ木ことに花と鴬そ鳴く
はるやとき−みやこのゆきの−あさもよひ−きことにはなと−うくひすそなく |
00494 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雪に梅の花笠かたふけて梢やしのく鴬の声
ふるゆきに−うめのはなかさ−かたふけて−こすゑやしのく−うくひすのこゑ |
00495 |
未入力 正徹 (xxx)
うくひすやかとりおるらん霞む日に木つたふ野への糸の乱は
うくひすや−かとりおるらむ−かすむひに−こつたふのへの−いとのみたれは |
00496 |
未入力 正徹 (xxx)
春は又とけ行く松の霜の後ねにあらはるる野への鴬
はるはまた−とけゆくまつの−しもののち−ねにあらはるる−のへのうくひす |
00497 |
未入力 正徹 (xxx)
さく梅の花の林にうくひすの老いたるわかき声そこもれる
さくうめの−はなのはやしに−うくひすの−おいたるわかき−こゑそこもれる |
00498 |
未入力 正徹 (xxx)
その色とさたかならねとすまのうらのあまのさへつる鴬の声
そのいろと−さたかならねと−すまのうらの−あまのさへつる−うくひすのこゑ |
00499 |
未入力 正徹 (xxx)
谷川の岩こす浪もこゑ高き真柴枯はに鴬そなく
たにかはの−いはこすなみも−こゑたかき−ましはかれはに−うくひすそなく |
00500 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑの綾おるかと見ゆる氷とけなく鴬の滝川の浪
こゑのあや−おるかとみゆる−こほりとけ−なくうくひすの−たきかはのなみ |
00501 |
未入力 正徹 (xxx)
うくひすもまた出てやらね太山路の小川の浪の花に啼くなり
うくひすも−またいてやらね−みやまちの−おかわのなみの−はなになくなり |
00502 |
未入力 正徹 (xxx)
有明の月かけ消えて鴬のこゑのにほひにかすむ山かな
ありあけの−つきかけきえて−うくひすの−こゑのにほひに−かすむやまかな |
00503 |
未入力 正徹 (xxx)
朝戸あけはおとろきぬへし呉竹のちかきさ枝に来ゐる鴬
あさとあけは−おとろきぬへし−くれたけの−ちかきさえたに−きゐるうくひす |
00504 |
未入力 正徹 (xxx)
かつにほふ花なき里の朝またき日影やさそふ鴬の声
かつにほふ−はななきさとの−あさまたき−ひかけやさそふ−うくひすのこゑ |
00505 |
未入力 正徹 (xxx)
朝またき軒のつららもまたとけぬ雪の梢に鴬そなく
あさまたき−のきのつららも−またとけぬ−ゆきのこすゑに−うくひすそなく |
00506 |
未入力 正徹 (xxx)
あさけたつ煙のうちの村竹に啼く音そむせふさとの鴬
あさけたつ−けふりのうちの−むらたけに−なくねそむせふ−さとのうくひす |
00507 |
未入力 正徹 (xxx)
朝露もちりかひなひく柳風うくひすさそへ池のうき草
あさつゆも−ちりかひなひく−やなきかせ−うくひすさそへ−いけのうきくさ |
00508 |
未入力 正徹 (xxx)
これそ春あかつきつけし庭鳥のそらねもしらぬけさの鴬
これそはる−あかつきつけし−にはとりの−そらねもしらぬ−けさのうくひす |
00509 |
未入力 正徹 (xxx)
世は春といかてしるらん篭の内にねての朝けの鴬のこゑ
よははると−いかてしるらむ−このうちに−ねてのあさけの−うくひすのこゑ |
00510 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬の上毛の色も墨染のゆふへの山にこゑそのこれる
うくひすの−うはけのいろも−すみそめの−ゆふへのやまに−こゑそのこれる |
00511 |
未入力 正徹 (xxx)
霞みしくそののむら竹くらき日も夕まとひせぬうくひすの声
かすみしく−そののむらたけ−くらきひも−ゆふまとひせぬ−うくひすのこゑ |
00512 |
未入力 正徹 (xxx)
雪とちる羽風ををしめ鴬はきすともぬれし梅の花笠
ゆきとちる−はかせををしめ−うくひすは−きすともぬれし−うめのはなかさ |
00513 |
未入力 正徹 (xxx)
たたならす霞のうちに声もせて鴬こもるそののむら竹
たたならす−かすみのうちに−こゑもせて−うくひすこもる−そののむらたけ |
00514 |
未入力 正徹 (xxx)
雪はらふ竹のはすさふ風をいたみ園の垣根に鴬そなく
ゆきはらふ−たけのはすさふ−かせをいたみ−そののかきねに−うくひすそなく |
00515 |
未入力 正徹 (xxx)
緑なるそのの林の竹のはに花もさそはぬうくひすそ啼く
みとりなる−そののはやしの−たけのはに−はなもさそはぬ−うくひすそなく |
00516 |
未入力 正徹 (xxx)
うくひすも千世へん声をひらくなり木つたふ松や春の初はな
うくひすも−ちよへむこゑを−ひらくなり−こつたふまつや−はるのはつはな |
00517 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝に千とせのかすを百千鳥とくさへつれときゐる鴬
まつかえに−ちとせのかすを−ももちとり−とくさへつれと−きゐるうくひす |
00518 |
未入力 正徹 (xxx)
木つたひに鳴けとも妻は声たてすおなし巣立のをのの鴬
こつたひに−なけともつまは−こゑたてす−おなしすたちの−をののうくひす |
00519 |
未入力 正徹 (xxx)
あまさかるひなの鴬声はかり老行く春のおくの深山路
あまさかる−ひなのうくひす−こゑはかり−おいゆくはるの−おくのみやまち |
00520 |
未入力 正徹 (xxx)
みとりそふ木陰も苔の太山路や春なき谷にかへる鴬
みとりそふ−こかけもこけの−みやまちや−はるなきたにに−かへるうくひす |
00521 |
未入力 正徹 (xxx)
山路にて声やあはせん時鳥いつれはかへる春のうくひす
やまちにて−こゑやあはせむ−ほとときす−いつれはかへる−はるのうくひす |
00522 |
未入力 正徹 (xxx)
なくなくも山路やたのむ鴬の住みこし花の宿にわかれて
なくなくも−やまちやたのむ−うくひすの−すみこしはなの−やとにわかれて |
00523 |
未入力 正徹 (xxx)
袖寒みかたみのわか菜沢水に摘みもたまらぬあわ雪そ降る
そてさむみ−かたみのわかな−さはみつに−つみもたまらぬ−あわゆきそふる |
00524 |
未入力 正徹 (xxx)
きえかての春の氷をうちはらひたれ蓬生に若なつむらん
きえかての−はるのこほりを−うちはらひ−たれよもきふに−わかなつむらむ |
00525 |
未入力 正徹 (xxx)
しつのめか雪まの野へを立ちかへり荒行く庭に若なをそ摘む
しつのめか−ゆきまののへを−たちかへり−あれゆくにはに−わかなをそつむ |
00526 |
未入力 正徹 (xxx)
雪も消えのこる氷もあさ沢にまた水かくるるねせりをそ摘む
ゆきもきえ−のこるこほりも−あささはに−またみかくるる−ねせりをそつむ |
00527 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人や早苗とりてし古小田に又おり立ちてわかなつむらん
さとひとや−さなへとりてし−ふるをたに−またおりたちて−わかなつむらむ |
00528 |
未入力 正徹 (xxx)
人めより古葉はかれぬ朝ことに若菜つむのの雪寒くして
ひとめより−ふるははかれぬ−あさことに−わかなつむのの−ゆきさむくして |
00529 |
未入力 正徹 (xxx)
はむらめや雪野の駒の跡よきてよその若なを猶やたつねん
はむらめや−ゆきののこまの−あとよきて−よそのわかなを−なほやたつねむ |
00530 |
未入力 正徹 (xxx)
つむ若な野へのままとや埋むらん帰るかたみの春のしらゆき
つむわかな−のへのままとや−うつむらむ−かへるかたみの−はるのしらゆき |
00531 |
未入力 正徹 (xxx)
あらさらん後をしのふの種ならは春はかたみに摘むわかなかな
あらさらむ−のちをしのふの−たねならは−はるはかたみに−つむわかなかな |
00532 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちに老いたるしつか摘むとてや若なも手にはたまらさるらん
ゆきのうちに−おいたるしつか−つむとてや−わかなもてには−たまらさるらむ |
00533 |
未入力 正徹 (xxx)
春やときここら出てつる里人の手ことにつめる野への若草
はるやとき−ここらいてつる−さとひとの−てことにつめる−のへのわかくさ |
00534 |
未入力 正徹 (xxx)
うつめとも生ふる所をかねてしる野守や雪に若菜つむらん
うつめとも−おふるところを−かねてしる−のもりやゆきに−わかなつむらむ |
00535 |
未入力 正徹 (xxx)
しつのめか声ききしらて鳥や立つ若菜かりくる野への雪間を
しつのめか−こゑききしらて−とりやたつ−わかなかりくる−のへのゆきまを |
00536 |
未入力 正徹 (xxx)
春日野も大和にはあれとからなつなもろこし人のつむとこもなし
かすかのも−やまとにはあれと−からなつな−もろこしひとの−つむとこもなし |
00537 |
未入力 正徹 (xxx)
あしたつのすりかり衣袖はへてたれ芹川にわかなつむらん
あしたつの−すりかりころも−そてはへて−たれせりかはに−わかなつむらむ |
00538 |
未入力 正徹 (xxx)
摘むのみか野へのわかなの七種をしつくもたたく雪の松陰
つむのみか−のへのわかなの−ななくさを−しつくもたたく−ゆきのまつかけ |
00539 |
未入力 正徹 (xxx)
春日影さすや若菜も紅の雪のすゑつむ花かたみかな
はるひかけ−さすやわかなも−くれなゐの−ゆきのすゑつむ−はなかたみかな |
00540 |
未入力 正徹 (xxx)
雪なから先もそいれむかたみくむ竹田川原にわかな摘むなり
ゆきなから−まつもそいれむ−かたみくむ−たけたかはらに−わかなつむなり |
00541 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみわくる雪の跡より氷りつつ猶うつもるる若菜をそ摘む
ふみわくる−ゆきのあとより−こほりつつ−なほうつもるる−わかなをそつむ |
00542 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねても雪のふる葉の下萌はあるにもあらぬ若菜をそ摘む
たつねても−ゆきのふるはの−したもえは−あるにもあらぬ−わかなをそつむ |
00543 |
未入力 正徹 (xxx)
おりたてはこほる雪けの沢水に若菜もかけの見えぬ比かな
おりたては−こほるゆきけの−さはみつに−わかなもかけの−みえぬころかな |
00544 |
未入力 正徹 (xxx)
三笠山雪けの沢に求子の名をかるしつか若菜とやせん
みかさやま−ゆきけのさはに−もとめこの−なをかるしつか−わかなとやせむ |
00545 |
未入力 正徹 (xxx)
里人やわかなつむらし沢の上の松もたわわに鶴そむれゐる
さとひとや−わかなつむらし−さはのうへの−まつもたわわに−つるそむれゐる |
00546 |
未入力 正徹 (xxx)
沢にゐる氷を人にくたかせてのこる若菜をたつあさるなり
さはにゐる−こほりをひとに−くたかせて−のこるわかなを−たつあさるなり |
00547 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人もはるはるきてや八橋のあたりの沢にわかなつむらん
さとひとも−はるはるきてや−やつはしの−あたりのさはに−わかなつむらむ |
00548 |
未入力 正徹 (xxx)
見し秋のわさ田なりせは尋行く春の若菜も先やもえなん
みしあきの−わさたなりせは−たつねゆく−はるのわかなも−まつやもえなむ |
00549 |
未入力 正徹 (xxx)
見し雪も都のたつみしかそなき八十うち人もわかなつむらし
みしゆきも−みやこのたつみ−しかそなき−やそうちひとも−わかなつむらし |
00550 |
未入力 正徹 (xxx)
けさみれは夕陰草の露たかく春のよのまに生ふる野へかな
けさみれは−ゆふかけくさの−つゆたかく−はるのよのまに−おふるのへかな |
00551 |
未入力 正徹 (xxx)
御吉野を立つや葛人九重の都のほかもわかなつむなり
みよしのを−たつやくすひと−ここのへの−みやこのほかも−わかなつむなり |
00552 |
未入力 正徹 (xxx)
かきわくる岡の萱生の枯葉たにみえぬ雪間の若な摘むなり
かきわくる−をかのかやふの−かれはたに−みえぬゆきまの−わかなつむなり |
00553 |
未入力 正徹 (xxx)
おきて行くたか手枕のおのつから別路に生ふる若なつむらん
おきてゆく−たかたまくらの−おのつから−わかれちにおふる−わかなつむらむ |
00554 |
未入力 正徹 (xxx)
時過きぬ生田の小野は昨日たにとほぬは稀の若菜をそつむ
ときすきぬ−いくたのをのは−きのふたに−とほぬはまれの−わかなをそつむ |
00555 |
未入力 正徹 (xxx)
かつつもる梢の雪の花のえはしつくに消ゆる朝日影かな
かつつもる−こすゑのゆきの−はなのえは−しつくにきゆる−あさひかけかな |
00556 |
未入力 正徹 (xxx)
ときやらぬ氷の上にまよふなり滝の白淡の雪のむら消
ときやらぬ−こほりのうへに−まよふなり−たきのしらあわの−ゆきのむらきえ |
00557 |
未入力 正徹 (xxx)
月に猶こほりにけりな日影にもつもりし庭の春のあわ雪
つきになほ−こほりにけりな−ひかけにも−つもりしにはの−はるのあわゆき |
00558 |
未入力 正徹 (xxx)
雲さむみ春のみ友を松の戸は誰をともなき春の山路
くもさむみ−はるのみともを−まつのとは−たれをともなき−はるのやまみち |
00559 |
未入力 正徹 (xxx)
木陰まていま消えはつる雪とみえて水なき庭の淡そ残れる
こかけまて−いまきえそむる−ゆきとみえて−みつなきにはの−あわそのこれる |
00560 |
未入力 正徹 (xxx)
春さむみ杜の木のまをしのききてもとの朽はをしたふ雪かな
はるさむみ−もりのこのまを−しのききて−もとのくちはを−したふゆきかな |
00561 |
未入力 正徹 (xxx)
消えのこる雪の太山の村からすたえたえおのか色そかくるる
きえのこる−ゆきのみやまの−むらからす−たえたえおのか−いろそかくるる |
00562 |
未入力 正徹 (xxx)
松の葉のしつくは落ちて山風のさゆるやのこる雪の下柴
まつのはの−しつくはおちて−やまかせの−さゆるやのこる−ゆきのしたしは |
00563 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うすき日影の空にふり消えてしつくそつもる雪の山水
くもうすき−ひかけのそらに−ふりきえて−しつくそつもる−ゆきのやまみつ |
00564 |
未入力 正徹 (xxx)
かつきえて岩根をあらふ淡雪の雫ににこる春の山の井
かつきえて−いはねをあらふ−あはゆきの−しつくににこる−はるのやまのゐ |
00565 |
未入力 正徹 (xxx)
淡雪の空より消えて露とふり雫と落ちてこほる庭かな
あはゆきの−そらよりきえて−つゆとふり−しつくとおちて−こほるにはかな |
00566 |
未入力 正徹 (xxx)
高砂や尾上の松にさく花も春にあひ生の雪の浦風
たかさこや−をのへのまつに−さくはなも−はるにあひおひの−ゆきのうらかせ |
00567 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝まても雪のきえつる色とたにみえぬ太山の松の夕風
けさまても−ゆきのきえつる−いろとたに−みえぬみやまの−まつのゆふかせ |
00568 |
未入力 正徹 (xxx)
岡のへや松の雪消の春の水落葉なかれて又こほる比
をかのへや−まつのゆきけの−はるのみつ−おちはなかれて−またこほるころ |
00569 |
未入力 正徹 (xxx)
とけて行く雪の雫も落はとちつららに高き岸の松かけ
とけてゆく−ゆきのしつくも−おちはとち−つららにたかき−きしのまつかけ |
00570 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの垣ほの雪のむら消は枝にも見ゆる梅の初はな
やまかつの−かきほのゆきの−むらきえは−えたにもみゆる−うめのはつはな |
00571 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす宿の南のかきほかけ雪にきはある庭の草かな
あさひさす−やとのみなみの−かきほかけ−ゆきにきはある−にはのくさかな |
00572 |
未入力 正徹 (xxx)
かささきのわたせる橋は滝の上のあさ野に白き春の淡雪
かささきの−わたせるはしは−たきのうへの−あさのにしろき−はるのあはゆき |
00573 |
未入力 正徹 (xxx)
松かねの岩井の氷雪なから夏なき年の春のままなる
まつかねの−いはゐのこほり−ゆきなから−なつなきとしの−はるのままなる |
00574 |
未入力 正徹 (xxx)
春きてもふしのは山のゆつりははとる人なしに雪にこもれる
はるきても−ふしのはやまの−ゆつりはは−とるひとなしに−ゆきにこもれる |
00575 |
未入力 正徹 (xxx)
影みえぬ湊の小田ににこるなり春の雪けの水くきの岡
かけみえぬ−みなとのをたに−にこるなり−はるのゆきけの−みつくきのをか |
00576 |
未入力 正徹 (xxx)
かけろふのもゆる春日のおのつからつもれは消えて淡雪そふる
かけろふの−もゆるはるひの−おのつから−つもれはきえて−あはゆきそふる |
00577 |
未入力 正徹 (xxx)
花のひも水の氷もときなから春の心の淡雪そふる
はなのひも−みつのこほりも−ときなから−はるのこころの−あはゆきそふる |
00578 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風はや雲雪をめくらすや春のつかひのたもとなるらん
あまつかせ−はやくもゆきを−めくらすや−はるのつかひの−たもとなるらむ |
00579 |
未入力 正徹 (xxx)
新桑をかふこもまたき春の雪とくやしつ屋の軒の糸水
にひくはを−かふこもまたき−はるのゆき−とくやしつやの−のきのいとみつ |
00580 |
未入力 正徹 (xxx)
むらむらに残りしままに残りける今朝の雪消の庭のしら淡
むらむらに−のこりしままに−のこりける−けさのゆきけの−にはのしらあわ |
00581 |
未入力 正徹 (xxx)
長閑なる日影とともにちる雪の露のみつもる庭の若草
のとかなる−ひかけとともに−ちるゆきの−つゆのみつもる−にはのわかくさ |
00582 |
未入力 正徹 (xxx)
いまも猶心つくしにうつろひし梅を哀と神や見るらん
いまもなほ−こころつくしに−うつろひし−うめをあはれと−かみやみるらむ |
00583 |
未入力 正徹 (xxx)
住む人の心とめよと梅かかをうき世にしめて春風そふく
すむひとの−こころとめよと−うめかかを−うきよにしめて−はるかせそふく |
00584 |
未入力 正徹 (xxx)
人はいさ心もしらすとはかりににほひ忘れぬ宿の梅かか
ひとはいさ−こころもしらす−とはかりに−にほひわすれぬ−やとのうめかか |
00585 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえもほの見し夢のうつり香も行末かすめる月の衣手
うめかえも−ほのみしゆめの−うつりかも−ゆくへかすめる−つきのころもて |
00586 |
未入力 正徹 (xxx)
よもの風吹きつたへける梅かかはいく世うつろふかたみなるらん
よものかせ−ふきつたへける−うめかかは−いくようつろふ−かたみなるらむ |
00587 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬の宿はととはぬ梅かかもさそふ嵐のこゑそこたふる
うくひすの−やとはととはぬ−うめかかも−さそふあらしの−こゑそこたふる |
00588 |
未入力 正徹 (xxx)
三日月にむかへる岡の梅かかもかすむ夕の春の山かせ
みかつきに−むかへるをかの−うめかかも−かすむゆふへの−はるのやまかせ |
00589 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくとも木のもとしらぬみか月のうすき霞に匂ふ梅か香
いつくとも−このもとしらぬ−みかつきの−うすきかすみに−にほふうめかか |
00590 |
未入力 正徹 (xxx)
そのそこにしろくさけるを梅そともしらぬ霞の匂ふ春風
そのそこに−しろくさけるを−うめそとも−しらぬかすみの−にほふはるかせ |
00591 |
未入力 正徹 (xxx)
影うかふ山川あさみ水すみて夕の月ににほふむめかえ
かけうかふ−やまかはあさみ−みつすみて−ゆふへのつきに−にほふうめかえ |
00592 |
未入力 正徹 (xxx)
かけにさへはねをならふる契あれやうかへる池のをしの梅かえ
かけにさへ−はねをならふる−ちきりあれや−うかへるいけの−をしのうめかえ |
00593 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色に鴬あをき鳥やきて枝にかくらん梅のはな笠
はるのいろに−うくひすあをき−とりやきて−えたにかくらむ−うめのはなかさ |
00594 |
未入力 正徹 (xxx)
梅か枝の花は去年より花なから今朝さきそふる春の白雪
うめかえの−はなはこそより−はななから−けささきそふる−はるのしらゆき |
00595 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とふにほひもさむしさく梅の雪にとちたる窓の北風
まくらとふ−にほひもさむし−さくうめの−ゆきにとちたる−まとのきたかせ |
00596 |
未入力 正徹 (xxx)
まとに今よみつる文を巻きもては眠そさむる梅のした風
まとにいま−よみつるふみを−まきもては−ねふりそさむる−うめのしたかせ |
00597 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ふれて遠かた人の心ひけ糸ならぬ梅の風ほそくとも
そてふれて−をちかたひとの−こころひけ−いとならぬうめの−かせほそくとも |
00598 |
未入力 正徹 (xxx)
にほへなほとひくる人をわかためと思はぬ宿の梅の初花
にほへなほ−とひくるひとを−わかためと−おもはぬやとの−うめのはつはな |
00599 |
未入力 正徹 (xxx)
梅花閨ちかくしてうつみ火のもとつ枝とくる露の下紐
うめのはな−ねやちかくして−うつみひの−もとつえとくる−つゆのしたひも |
00600 |
未入力 正徹 (xxx)
宿の梅衣にほほせかつそとく人の心の花のしたひも
やとのうめ−ころもにほほせ−かつそとく−ひとのこころの−はなのしたひも |
00601 |
未入力 正徹 (xxx)
庭となす土さへいまたあらかねに梅の匂ひのこまやかにして
にはとなす−つちさへいまた−あらかねに−うめのにほひの−こまやかにして |
00602 |
未入力 正徹 (xxx)
さく梅の花の木陰のうす曇霞や袖に香をうつすらん
さくうめの−はなのこかけの−うすくもり−かすみやそてに−かをうつすらむ |
00603 |
未入力 正徹 (xxx)
霞みきて梅の匂にむすはほれ風もきこえぬ苔の庭かな
かすみきて−うめのにほひに−むすほほれ−かせもきこえぬ−こけのにはかな |
00604 |
未入力 正徹 (xxx)
古りにける梅のにほひを年年の若はにしむる庭の春草
ふりにける−うめのにほひを−としとしの−わかはにしむる−にはのはるくさ |
00605 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえの匂の淵そなかれ行く千世の春せく花の遣水
うめかえの−にほひのふちそ−なかれゆく−ちよのはるせく−はなのやりみつ |
00606 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そまつ軒はの梅のさきしより匂ふあらしを宿の物とて
なほそまつ−のきはのうめの−さきしより−にほふあらしを−やとのものとて |
00607 |
未入力 正徹 (xxx)
うつりきて軒端の花に成りにけり嵐にふかきよもの梅か香
うつりきて−のきはのはなに−なりにけり−あらしにふかき−よものうめかか |
00608 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかも苔のみたれて匂ふまてふるき軒はに春風そ吹く
うめかかも−こけのみたれて−にほふまて−ふるきのきはに−はるかせそふく |
00609 |
未入力 正徹 (xxx)
軒しろき月かとみれは更くるよの衣にほほす梅の下風
のきしろき−つきかとみれは−ふくるよの−ころもにほほす−うめのしたかせ |
00610 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむ軒のしのふも咲く梅の花に色つく春の秋風
みにそしむ−のきのしのふも−さくうめの−はなにいろつく−はるのあきかせ |
00611 |
未入力 正徹 (xxx)
もえいうるる軒のしのふをかこととや袖にみたれてにほふ梅かか
もえいつる−のきのしのふを−かこととや−そてにみたれて−にほふうめかか |
00612 |
未入力 正徹 (xxx)
むら鳥の羽風けちかき朝床に夢は軒はの梅かかそする
むらとりの−はかせけちかき−あさとこに−ゆめはのきはの−うめかかそする |
00613 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえに其名もしらぬ鳥か鳴くあつまやかをる軒の春風
うめかえに−そのなもしらぬ−とりかなく−あつまやかをる−のきのはるかせ |
00614 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きおくる泊瀬おろしにさと人の袖にやとらぬ春の梅か香
ふきおくる−はつせおろしに−さとひとの−そてにやとらぬ−はるのうめかか |
00615 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかもえやさそはれんなほさりに里とひすくる春の山風
うめかかも−えやさそはれむ−なほさりに−さととひすくる−はるのやまかせ |
00616 |
未入力 正徹 (xxx)
難波かた小屋のもしほ火うら風に煙も春は梅かかそする
なにはかた−こやのもしほひ−うらかせに−けふりもはるは−うめかかそする |
00617 |
未入力 正徹 (xxx)
なにはめか袖のかたしき梅かかも小屋のしのひにかよふうら風
なにはめか−そてのかたしき−うめかかも−こやのしのひに−かよふうらかせ |
00618 |
未入力 正徹 (xxx)
すすふきししの屋は荒れて草莚吹きしく風は梅かかそする
すすふきし−しのやはあれて−くさむしろ−ふきしくかせは−うめかかそする |
00619 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬の屋との梅かえ隣とや手枕にほふ野へのはるかせ
うくひすの−やとのうめかえ−となりとや−たまくらにほふ−のへのはるかせ |
00620 |
未入力 正徹 (xxx)
さく梅の花吹きちらす笛の音に風を恨みぬ木のもとの宿
さくうめの−はなふきちらす−ふえのねに−かせをうらみぬ−このもとのやと |
00621 |
未入力 正徹 (xxx)
難波津のむかしの宮の跡そとや民のかまとに梅にほふらん
なにはつの−むかしのみやの−あとそとや−たみのかまとに−うめにほふらむ |
00622 |
未入力 正徹 (xxx)
わけくらす遠かた野へに匂ふなりしろくさけるや梅の初花
わけくらす−をちかたのへに−にほふなり−しろくさけるや−うめのはつはな |
00623 |
未入力 正徹 (xxx)
なには人ゆく袖ぬらせ玉鉾のみちくる塩も梅かかそする
なにはひと−ゆくそてぬらせ−たまほこの−みちくるしほも−うめかかそする |
00624 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のみか梅かかふるる駒の毛も香をしめぬとや道いさむらん
そてのみか−うめかかふるる−こまのけも−かをしめぬとや−みちいさむらむ |
00625 |
未入力 正徹 (xxx)
風もをし道行ふりの梅かかや心なき人の袖したふらん
かせもをし−みちゆきふりの−うめかかや−こころなきひとの−そてしたふらむ |
00626 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへる山路の梅に山人の此ころ袖は花のかそする
ゆきかへる−やまちのうめに−やまひとの−このころそては−はなのかそする |
00627 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれつつそてゆくての梅の花笠はありてかひなき袖の春雨
ぬれつつそ−ゆくてのうめの−はなかさは−ありてかひなき−そてのはるさめ |
00628 |
未入力 正徹 (xxx)
宿出てておほくの梅かかをしめはあたなる袖と花も頼まし
やといてて−おほくのうめか−かをしめは−あたなるそてと−はなもたのまし |
00629 |
未入力 正徹 (xxx)
をとめ子も此世のむめの花のかを天のほ袖に春やしむらん
をとめこも−このよのうめの−はなのかを−あまのほそてに−はるやしむらむ |
00630 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかの千しほの衣いつれとも色さたまらぬ袖の春風
うめかかの−ちしほのころも−いつれとも−いろさたまらぬ−そてのはるかせ |
00631 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる梅のにほひの淵となかれてもぬれぬ衣におつる春風
ちるうめの−にほひのふちと−なかれても−ぬれぬころもに−おつるはるかせ |
00632 |
未入力 正徹 (xxx)
舟よせぬ春風なから梅かかのとまるや袖のみなとなるらん
ふねよせぬ−はるかせなから−うめかかの−とまるやそての−みなとなるらむ |
00633 |
未入力 正徹 (xxx)
梅花さくや難波のあま衣塩なれし袖も匂ふ春風
うめのはな−さくやなにはの−あまころも−しほなれしそても−にほふはるかせ |
00634 |
未入力 正徹 (xxx)
雨かをる雫を袖にかけてけり道行ふりのむめの花笠
あめかをる−しつくをそてに−かけてけり−みちゆきふりの−うめのはなかさ |
00635 |
未入力 正徹 (xxx)
木間より袖もる月に梅かかのかすみてかよふ夜はの春風
このまより−そてもるつきに−うめかかの−かすみてかよふ−よはのはるかせ |
00636 |
未入力 正徹 (xxx)
いく千世そ梅の花かめさしなから水のうき木にあへる匂ひは
いくちよそ−うめのはなかめ−さしなから−みつのうききに−あへるにほひは |
00637 |
未入力 正徹 (xxx)
浮鳥のつかひはなれぬ池水に影そふ鮎の梅かかそする
うきとりの−つかひはなれぬ−いけみつに−かけそふをしの−うめかかそする |
00638 |
未入力 正徹 (xxx)
滝つ浪かけ見ぬ梅も花のかもみわたにとまる春の川風
たきつなみ−かけみぬうめも−はなのかも−みわたにとまる−はるのかはかせ |
00639 |
未入力 正徹 (xxx)
初瀬川花のやとりもさたかにて尾上の梅にかをる春かせ
はつせかは−はなのやとりも−さたかにて−をのへのうめに−かをるはるかせ |
00640 |
未入力 正徹 (xxx)
立田山梅かかむかふ初瀬風ゆふつけ鳥やこゑにほふらん
たつたやま−うめかかむかふ−はつせかせ−ゆふつけとりや−こゑにほふらむ |
00641 |
未入力 正徹 (xxx)
むら雨に覚めてそにほふ夢人にきせてかへさぬ梅の花かさ
むらさめに−さめてそにほふ−ゆめひとに−きせてかへさぬ−うめのはなかさ |
00642 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜の木のまの月の有明は思出あれやむめかかそする
はるのよの−このまのつきの−ありあけは−おもひいてあれや−うめかかそする |
00643 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風光も色も吹きわけて梅の匂ひにかすむ夜の月
あまつかせ−ひかりもいろも−ふきわけて−うめのにほひに−かすむよのつき |
00644 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふなと梅のにほひを世にしめて霞に色を染むる月かけ
いとふなと−うめのにほひを−よにしめて−かすみにいろを−そむるつきかけ |
00645 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜の枕の梅のうつり香にしくかた惜しきうたたねの袖
はるのよの−まくらのうめの−うつりかに−しくかたをしき−うたたねのそて |
00646 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上もかすめる閨にもる月を梅かかなから手枕にせむ
そてのうへも−かすめるねやに−もるつきを−うめかかなから−たまくらにせむ |
00647 |
未入力 正徹 (xxx)
おもほえすやみはあやなき梅かかにねてか覚めてか袖をかしつる
おもほえす−やみはあやなき−うめかかに−ねてかさめてか−そてをかしつる |
00648 |
未入力 正徹 (xxx)
いく春そ木の間の月の有明に松のはかをるむめの下かせ
いくはるそ−このまのつきの−ありあけに−まつのはかをる−うめのしたかせ |
00649 |
未入力 正徹 (xxx)
袖しめし行へを人にこととひてさめぬ夢路ににほふ梅かか
そてしめし−ゆくへをひとに−こととひて−さめぬゆめちに−にほふうめかか |
00650 |
未入力 正徹 (xxx)
風やしるいつくにさける梅ならんたた香はかりの春のよの闇
かせやしる−いつくにさける−うめならむ−たたかはかりの−はるのよのやみ |
00651 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかもかすめる月のさ夜中に見はてぬ夢やわさと覚むらん
うめかかも−かすめるつきの−さよなかに−みはてぬゆめや−わさとさむらむ |
00652 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人の袖の香まかふ梅かえにかすめる月も深きよの夢
みしひとの−そてのかまかふ−うめかえに−かすめるつきも−ふかきよのゆめ |
00653 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけはさき初めし春も遠からぬ梅や千里ににほひ行くらん
かせふけは−さきそめしはるも−とほからぬ−うめやちさとに−にほひゆくらむ |
00654 |
未入力 正徹 (xxx)
色香をも誰かかれとはをしへけん今年花しる梅の若枝に
いろかをも−たれかかれとは−をしへけむ−ことしはなしる−うめのわかえに |
00655 |
未入力 正徹 (xxx)
おく霜の氷吹きとく松風にうちいつる浪や梅の初はな
おくしもの−こほりふきとく−まつかせに−うちいつるなみや−うめのはつはな |
00656 |
未入力 正徹 (xxx)
散りうせぬこと葉の花を春うゑてさくや梅かえ匂ふ松かせ
ちりうせぬ−ことはのはなを−はるうゑて−さくやうめかえ−にほふまつかせ |
00657 |
未入力 正徹 (xxx)
かたえさく梅の匂ひもたえたえに松の香ふかし庭の春風
かたえさく−うめのにほひも−たえたえに−まつのかふかし−にはのはるかせ |
00658 |
未入力 正徹 (xxx)
宿にさく松の葉わけの梅かえも千代をはよそに匂ひやはせん
やとにさく−まつのはわけの−うめかえも−ちよをはよそに−にほひやはせむ |
00659 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の松の葉分の梅かかや難波のかたの春のうらかせ
すみよしの−まつのはわけの−うめかかや−なにはのかたの−はるのうらかせ |
00660 |
未入力 正徹 (xxx)
わつかなる春の胡蝶の羽風にも匂をちらす花そのの梅
わつかなる−はるのこてふの−はかせにも−にほひをちらす−はなそののうめ |
00661 |
未入力 正徹 (xxx)
わか屋ととわきてはうゑしこの比の世はおしなへて梅かかそする
わかやとと−わきてはうゑし−このころの−よはおしなへて−うめかかそする |
00662 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかぬまそ袖にもとまる梅かえの匂や風のあと送るらん
ふかぬまそ−そてにもとまる−うめかえの−にほひやかせの−あとおくるらむ |
00663 |
未入力 正徹 (xxx)
梅花にほふ朝日の山風や八十うち人の袖たつぬらむ
うめのはな−にほふあさひの−やまかせや−やそうちひとの−そてたつぬらむ |
00664 |
未入力 正徹 (xxx)
さく梅の星のまきれもくらき夜のやみのうつつは匂ふ春風
さくうめの−ほしのまきれも−くらきよの−やみのうつつは−にほふはるかせ |
00665 |
未入力 正徹 (xxx)
なへて世のうらにみちぬる梅かかや天つをとめの袖の春風
なへてよの−うらにみちぬる−うめかかや−あまつをとめの−そてのはるかせ |
00666 |
未入力 正徹 (xxx)
月出つる夕やみ晴れて家の風いまはたにほへ世世の梅か枝
つきいつる−ゆふやみはれて−いへのかせ−いまはたにほへ−よよのうめかえ |
00667 |
未入力 正徹 (xxx)
わか宿と誰かしめゆふ梅かかを吹きくる風も遠つさと人
わかやとと−たれかしめゆふ−うめかかを−ふきくるかせも−とほつさとひと |
00668 |
未入力 正徹 (xxx)
かけなから梅の匂ひをおくりきぬ霞の末の月のした風
かけなから−うめのにほひを−おくりきぬ−かすみのすゑの−つきのしたかせ |
00669 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく遠き梅かえちらぬまも花にそはぬは匂なりけり
あらしふく−とほきうめかえ−ちらぬまも−はなにそはぬは−にほひなりけり |
00670 |
未入力 正徹 (xxx)
よのつわの梅かえならすもろこしの南の江より風や吹くらん
よのつわの−うめかえならす−もろこしの−みなみのえより−かせやふくらむ |
00671 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかもふりせぬ花のちらぬまにしらすいく世を宿にへぬらん
うめかかも−ふりせぬはなの−ちらぬまに−しらすいくよを−やとにへぬらむ |
00672 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかに春は千里そこもり行くいくらの花に嵐吹くらむ
うめかかに−はるはちさとそ−こもりゆく−いくらのはなに−あらしふくらむ |
00673 |
未入力 正徹 (xxx)
さく梅も松と竹とのよはひにて色香そ三の友にまされる
さくうめも−まつとたけとの−よはひにて−いろかそみつの−ともにまされる |
00674 |
未入力 正徹 (xxx)
家の風吹きまされなと香をとめて四代まてあふく梅の初花
いへのかせ−ふきまされなと−かをとめて−よよまてあふく−うめのはつはな |
00675 |
未入力 正徹 (xxx)
冬と春と行きかふ梅の花かたみめならぬ年をつむ匂かな
ふゆとはると−ゆきかふうめの−はなかたみ−めならぬとしを−つむにほひかな |
00676 |
未入力 正徹 (xxx)
さかへ行く宿のかさしと成りぬとやほほゑむ梅の花のかほはせ
さかへゆく−やとのかさしと−なりぬとや−ほほゑむうめの−はなのかほはせ |
00677 |
未入力 正徹 (xxx)
誰かしる梅の色香に染めおきしはしめの年の遠き心を
たれかしる−うめのいろかに−そめおきし−はしめのとしの−とほきこころを |
00678 |
未入力 正徹 (xxx)
春ことにわれをいとはぬ色かゆゑ梅を手折りて老となりぬる
はることに−われをいとはぬ−いろかゆゑ−うめをたをりて−おいとなりぬる |
00679 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふとも色をはわかし行人の山路つつかぬやとの梅か枝
にほふとも−いろをはわかし−ゆくひとの−やまちつつかぬ−やとのうめかえ |
00680 |
未入力 正徹 (xxx)
深かれとさらは思はし梅かかをしるはかりなる風にまかせて
ふかかれと−さらはおもはし−うめかかを−しるはかりなる−かせにまかせて |
00681 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上にかつさく梅の花の香をふかくそしむる庭の春風
そてのうへに−かつさくうめの−はなのかを−ふかくそしむる−にはのはるかせ |
00682 |
未入力 正徹 (xxx)
遠近の霞吹きとく春風にむすはほれたるむめかかそする
をちこちの−かすみふきとく−はるかせに−むすはほれたる−うめかかそする |
00683 |
未入力 正徹 (xxx)
香そをしきかた山林むめならてましる木もなき花の春風
かそをしき−かたやまはやし−うめならて−ましるきもなき−はなのはるかせ |
00684 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえの月をにほひのあるしにてかすむ色とふ花の春風
うめかえの−つきをにほひの−あるしにて−かすむいろとふ−はなのはるかせ |
00685 |
未入力 正徹 (xxx)
みる夢のさむる枕の梅かかやむかしの風のかたみなるらん
みるゆめの−さむるまくらの−うめかかや−むかしのかせの−かたみなるらむ |
00686 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬のなみたの雨も紅に落ちそふむめの花のした露
うくひすの−なみたのあめも−くれなゐに−おちそふうめの−はなのしたつゆ |
00687 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きのほる尾上の松に浪そこす梅さく谷の春の川風
ふきのほる−をのへのまつに−なみそこす−うめさくたにの−はるのかはかせ |
00688 |
未入力 正徹 (xxx)
おのかぬふ梅の花笠糸たえて散りかふ雨にぬるるうくひす
おのかぬふ−うめのはなかさ−いとたえて−ちりかふあめに−ぬるるうくひす |
00689 |
未入力 正徹 (xxx)
むめなれや花のみそれの庭たつみあま風かをる雪のささ浪
うめなれや−はなのみそれの−にはたつみ−あまかせかをる−ゆきのささなみ |
00690 |
未入力 正徹 (xxx)
つつみおく春の雪消の露もなし嵐の梅の春の衣手
つつみおく−はるのゆきけの−つゆもなし−あらしのうめの−はるのころもて |
00691 |
未入力 正徹 (xxx)
初瀬風谷吹きのほる梅かかにかすむ尾上の月そいさよふ
はつせかせ−たにふきのほる−うめかかに−かすむをのへの−つきそいさよふ |
00692 |
未入力 正徹 (xxx)
あすか川瀬による梅の花の春にもすそはぬらす春のたをやめ
あすかかは−せによるうめの−はなのはるに−もすそはぬらす−はるのたをやめ |
00693 |
未入力 正徹 (xxx)
こん春も水にはさかし散る梅のなにうき草のねにかへるらん
こむはるも−みつにはさかし−ちるうめの−なにうきくさの−ねにかへるらむ |
00694 |
未入力 正徹 (xxx)
行く河のみなきはふかくよりそくる梅ちる風の花のしら淡
ゆくかはの−みなきはふかく−よりそくる−うめちるかせの−はなのしらあわ |
00695 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる梅もあわとうかひてととまらす真砂をなかすいさら小河に
ちるうめも−あわとうかひて−ととまらす−まさこをなかす−いさらおかわに |
00696 |
未入力 正徹 (xxx)
梅花ちらすか匂ふ飛鳥風君かあたりもみえぬ霞に
うめのはな−ちらすかにほふ−あすかかせ−きみかあたりも−みえぬかすみに |
00697 |
未入力 正徹 (xxx)
朝川の岸の藪梅ちりやせし水の煙にたつにほひかな
あさかはの−きしのやふうめ−ちりやせし−みつのけふりに−たつにほひかな |
00698 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫のかくる柳の花かつらみたれぬすちにまゆそこもれる
さほひめの−かくるやなきの−はなかつら−みたれぬすちに−まゆそこもれる |
00699 |
未入力 正徹 (xxx)
陰清き此川岸の糸柳むすふ契も世世にたえせし
かけきよき−このかはきしの−いとやなき−むすふちきりも−よよにたえせし |
00700 |
未入力 正徹 (xxx)
老いぬれは柳のめさへかすむらん哀はかけよ春の川浪
おいぬれは−やなきのめさへ−かすむらむ−あはれはかけよ−はるのかはなみ |
00701 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちならふ柳のめにはさやかにも見ゆるやかすむ春の初花
たちならふ−やなきのめには−さやかにも−みゆるやかすむ−はるのはつはな |
00702 |
未入力 正徹 (xxx)
春ことに柳のめにも恥ちぬへし老いてみたるる髪しありせは
はることに−やなきのめにも−はちぬへし−おいてみたるる−かみしありせは |
00703 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの小川の水の淡と見しねしろの柳かすみ消えつつ
やまもとの−おかわのみつの−あわとみし−ねしろのやなき−かすみきえつつ |
00704 |
未入力 正徹 (xxx)
民の戸にたてる柳の糸まゆを先引きはへて末いはふらん
たみのとに−たてるやなきの−いとまゆを−まつひきはへて−すゑいはふらむ |
00705 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす一もと柳色そひてならふ春なき野への朝霜
ひかけさす−ひともとやなき−いろそひて−ならふはるなき−のへのあさしも |
00706 |
未入力 正徹 (xxx)
陰たかみ柳の糸につなく日のなかきも落ちて急く山のは
かけたかみ−やなきのいとに−つなくひの−なかきもおちて−いそくやまのは |
00707 |
未入力 正徹 (xxx)
春にあふ柳もまゆをひらく門戸ささて御代のめくみまてとや
はるにあふ−やなきもまゆを−ひらくかと−とささてみよの−めくみまてとや |
00708 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる川や玉藻かくれの糸柳よるかたなしと身をも思はし
ふるかはや−たまもかくれの−いとやなき−よるかたなしと−みをもおもはし |
00709 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと川もろこし舟や陰にきてから藍そめし青柳の糸
みなとかは−もろこしふねや−かけにきて−からあゐそめし−あをやきのいと |
00710 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまた浅せになひく藻上川岸の柳も色みえぬ比
はるはまた−あさせになひく−もかみかは−きしのやなきも−いろみえぬころ |
00711 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川やたてる柳を橋姫の春の姿にたとへてや見ん
うちかはや−たてるやなきを−はしひめの−はるのすかたに−たとへてやみむ |
00712 |
未入力 正徹 (xxx)
若草の野への緑もまたみえす一もと柳川風そふく
わかくさの−のへのみとりも−またみえす−ひともとやなき−かはかせそふく |
00713 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちもせぬ岸の柳の花かつらむかしやかけし宇治のはし姫
くちもせぬ−きしのやなきの−はなかつら−むかしやかけし−うちのはしひめ |
00714 |
未入力 正徹 (xxx)
川岸や柳の陰もうち霞みめくむか水のよとのわかこも
かはきしや−やなきのかけも−うちかすみ−めくむかみつの−よとのわかこも |
00715 |
未入力 正徹 (xxx)
はし姫のみたす柳の花かつらまゆさへかすむ宇治の川風
はしひめの−みたすやなきの−はなかつら−まゆさへかすむ−うちのかはかせ |
00716 |
未入力 正徹 (xxx)
いつからむ川戸の柳花落ちてうき草うつむ淀のわかこも
いつからむ−かはとのやなき−はなおちて−うきくさうつむ−よとのわかこも |
00717 |
未入力 正徹 (xxx)
柳かも遠山姫のあさねかみみたれてたてる宿かともみゆ
やなきかも−とほやまひめの−あさねかみ−みたれてたてる−やとかともみゆ |
00718 |
未入力 正徹 (xxx)
外山なる柳の目路のかすむより煙をたたぬ春の里人
とやまなる−やなきのめちの−かすむより−けふりをたたぬ−はるのさとひと |
00719 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつのおとろのかみにましりてもまよふすちなき青柳のいと
やまかつの−おとろのかみに−ましりても−まよふすちなき−あをやきのいと |
00720 |
未入力 正徹 (xxx)
宿からのおもひありとやもえぬらん葎の門の春の青柳
やとからの−おもひありとや−もえぬらむ−むくらのかとの−はるのあをやき |
00721 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂や春にそあくる柳陰し水なかるる関の岩かと
あふさかや−はるにそあくる−やなきかけ−しみつなかるる−せきのいはかと |
00722 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬ千年の竹の世世の門たかき柳もまゆひらくなり
いろかへぬ−ちとせのたけの−よよのかと−たかきやなきも−まゆひらくなり |
00723 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかみとり杉たつ門の古柳めくむも春のしるしなりけり
ふかみとり−すきたつかとの−ふるやなき−めくむもはるの−しるしなりけり |
00724 |
未入力 正徹 (xxx)
めも春をひらくか桑の門柳おなしみとりの苔の袖まて
めもはるを−ひらくかくはの−かとやなき−おなしみとりの−こけのそてまて |
00725 |
未入力 正徹 (xxx)
春はなほたつや緑のめかれせす門もる柳いく世へぬらん
はるはなほ−たつやみとりの−めかれせす−かともるやなき−いくよへぬらむ |
00726 |
未入力 正徹 (xxx)
朝かすみ煙の色にかけてけりかひ屋かつまの春の青柳
あさかすみ−けふりのいろに−かけてけり−かひやかつまの−はるのあをやき |
00727 |
未入力 正徹 (xxx)
うちけふり野中の柳もゆるまて緑もみえぬ荻の焼原
うちけふり−のなかのやなき−もゆるまて−みとりもみえぬ−をきのやけはら |
00728 |
未入力 正徹 (xxx)
あさみとり霞の中の小山田にかひ屋のけふり立つ柳かな
あさみとり−かすみのうちの−をやまたに−かひやのけふり−たつやなきかな |
00729 |
未入力 正徹 (xxx)
煙をは木のめにみせてかけろふのもゆる春日にたつ柳かな
けふりをは−このめにみせて−かけろふの−もゆるはるひに−たつやなきかな |
00730 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にうく岸の柳の陰よりも猶なひきもの春の川風
なみにうく−きしのやなきの−かけよりも−なほなひきもの−はるのかはかせ |
00731 |
未入力 正徹 (xxx)
柳かけふけはみたるる糸すちにやとりかねてや風の行くらん
やなきかけ−ふけはみたるる−いとすちに−やとりかねてや−かせのゆくらむ |
00732 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の柳のかみのさかりはも衣のもすそにかすむ春風
さほひめの−やなきのかみの−さかりはも−きぬのもすそに−かすむはるかせ |
00733 |
未入力 正徹 (xxx)
里とほみたかせの行て恋佗ひて野原の柳朽ちのこるちむ
さととほみ−たかせのゆくて−こひわひて−のはらのやなき−くちのこるちむ |
00734 |
未入力 正徹 (xxx)
柳かけゆきやすらふをいな莚我しきほすと誰かみるらん
やなきかけ−ゆきやすらふを−いなむしろ−われしきほすと−たれかみるらむ |
00735 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむ日も柳にあそふ糸ゆふの消えぬみとりに春風そ吹く
かすむひも−やなきにあそふ−いとゆふの−きえぬみとりに−はるかせそふく |
00736 |
未入力 正徹 (xxx)
春日さす柳の露の玉のをもみたれて空にあそふ糸ゆふ
はるひさす−やなきのつゆの−たまのをも−みたれてそらに−あそふいとゆふ |
00737 |
未入力 正徹 (xxx)
をとめ子かかくる柳の玉かつらかさしの玉は露そこほるる
をとめこか−かくるやなきの−たまかつら−かさしのたまは−つゆそこほるる |
00738 |
未入力 正徹 (xxx)
おしなへて春の錦や立田川入江の柳花にさかせて
おしなへて−はるのにしきや−たつたかは−いりえのやなき−はなにさかせて |
00739 |
未入力 正徹 (xxx)
水草ゐる古江の柳朽ちすとももゆる緑のかけやなからん
みくさゐる−ふるえのやなき−くちすとも−もゆるみとりの−かけやなからむ |
00740 |
未入力 正徹 (xxx)
氷とく古江の水草かたよりに糸もてはらふ青柳の風
こほりとく−ふるえのみくさ−かたよりに−いともてはらふ−あをやきのかせ |
00741 |
未入力 正徹 (xxx)
江をめくる燕あまたの水すみて春日ゆるかぬ青柳の糸
えをめくる−つはめあまたの−みつすみて−はるひゆるかぬ−あをやきのいと |
00742 |
未入力 正徹 (xxx)
川岸の大江の柳いつ朽ちて松はかりなる春のしるしそ
かはきしの−おほえのやなき−いつくちて−まつはかりなる−はるのしるしそ |
00743 |
未入力 正徹 (xxx)
枝しつく岸の柳の糸水に又吹きみたす春の川かせ
えたしつく−きしのやなきの−いとみつに−またふきみたす−はるのかはかせ |
00744 |
未入力 正徹 (xxx)
川岸やなかるる水のあわ糸をよるにはあらぬ春の青柳
かはきしや−なかるるみつの−あわいとを−よるにはあらぬ−はるのあをやき |
00745 |
未入力 正徹 (xxx)
紙屋川水すむ岸の柳陰春はみとりの色そかさなる
かみやかは−みつすむきしの−やなきかけ−はるはみとりの−いろそかさなる |
00746 |
未入力 正徹 (xxx)
はや川のあやふき岸の臥柳ことしもあれは緑そへつつ
はやかはの−あやふききしの−ふしやなき−ことしもあれは−みとりそへつつ |
00747 |
未入力 正徹 (xxx)
なひけとも陰見ぬ野への山岸に川浪ほしくたつ柳かな
なひけとも−かけみぬのへの−やまきしに−かはなみほしく−たつやなきかな |
00748 |
未入力 正徹 (xxx)
かれかれに見ゆへき色を忘草生ふてふ岸の春の青柳
かれかれに−みゆへきいろを−わすれくさ−おふてふきしの−はるのあをやき |
00749 |
未入力 正徹 (xxx)
柳原舟行く岸のあさみとりいつるもかすむ末の川浪
やなきはら−ふねゆくきしの−あさみとり−いつるもかすむ−すゑのかはなみ |
00750 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海の南の岸の玉柳まゆのひかりや北のうら浪
わたつうみの−みなみのきしの−たまやなき−まゆのひかりや−きたのうらなみ |
00751 |
未入力 正徹 (xxx)
春雨に野田の柳のいなむしろしくとはみれともる人もなし
はるさめに−のたのやなきの−いなむしろ−しくとはみれと−もるひともなし |
00752 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田のさかひの柳一かたにぬしさたまらすなひく春風
をやまたの−さかひのやなき−ひとかたに−ぬしさたまらす−なひくはるかせ |
00753 |
未入力 正徹 (xxx)
真柴とる岩もとわらひ折りそへて行手ひまなき春の山人
ましはとる−いはもとわらひ−をりそへて−ゆくてひまなき−はるのやまひと |
00754 |
未入力 正徹 (xxx)
わらひをるかた山ききす立ちかへりのこるほとろの陰やたのまん
わらひをる−かたやまききす−たちかへり−のこるほとろの−かけやたのまむ |
00755 |
未入力 正徹 (xxx)
うつろひし山路の菊は紫のちりにそのこる春のさわらひ
うつろひし−やまちのきくは−むらさきの−ちりにそのこる−はるのさわらひ |
00756 |
未入力 正徹 (xxx)
下蕨おへる薪にをりそへて花にやすらふ春のやま人
うちむれて−このしたわらひ−やまかつの−をるひやさとの−けふりともしき |
00757 |
未入力 正徹 (xxx)
うちむれて木の下蕨山かつの折る日やさとの煙ともしき
したわらひ−おへるたききに−をりそへて−はなにやすらふ−はるのやまひと |
00758 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの衣の色に紫のゆかりそ遠き道のさわらひ
やまかつの−ころものいろに−むらさきの−ゆかりそとほき−みちのさわらひ |
00759 |
未入力 正徹 (xxx)
折よくもかた山林下草を先焼きすてき春のさわらひ
をりよくも−かたやまはやし−したくさを−まつたきすてき−はるのさわらひ |
00760 |
未入力 正徹 (xxx)
末の世の人の心そとけかたき春の氷はしたにむすはて
すゑのよの−ひとのこころそ−とけかたき−はるのこほりは−したにむすはて |
00761 |
未入力 正徹 (xxx)
氷とく沖中川も春の色にうち出つる浪の花の初しほ
こほりとく−おきなかかはも−はるのいろに−うちいつるなみの−はなのはつしほ |
00762 |
未入力 正徹 (xxx)
浪ともに氷の関をこえきてもいまた旅立つ春の川かせ
なみともに−こほりのせきを−こえきても−いまたたひたつ−はるのかはかせ |
00763 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ことに花そまさらぬ山風の霞吹きとく雪のしたひも
あさことに−はなそまさらぬ−やまかせの−かすみふきとく−ゆきのしたひも |
00764 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色の一しほ染の山ならぬ山こそなけれ霞そむらし
はるのいろの−ひとしほそめの−やまならぬ−やまこそなけれ−かすみそむらし |
00765 |
未入力 正徹 (xxx)
民のため袖せはからす世におほへのこる山なき春の霞そ
たみのため−そてせはからす−よにおほへ−のこるやまなき−はるのかすみそ |
00766 |
未入力 正徹 (xxx)
朝霞所もわかぬ春の色をひとりよそなるふしの白雪
あさかすみ−ところもわかぬ−はるのいろを−ひとりよそなる−ふしのしらゆき |
00767 |
未入力 正徹 (xxx)
色ふかき空の緑をうかへても水の心に春やあまれる
いろふかき−そらのみとりを−うかへても−みつのこころに−はるやあまれる |
00768 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねよりなひく霞やにほの海の浪の花おる春の衣手
たかねより−なひくかすみや−にほのうみの−なみのはなおる−はるのころもて |
00769 |
未入力 正徹 (xxx)
松陰そ千とせのあるし花鳥の春をうかふる宿の池水
まつかけそ−ちとせのあるし−はなとりの−はるをうかふる−やとのいけみつ |
00770 |
未入力 正徹 (xxx)
わかみとり色こき松の下染も藍よりいてぬ春のまし水
わかみとり−いろこきまつの−したそめも−あゐよりいてぬ−はるのましみつ |
00771 |
未入力 正徹 (xxx)
松の色は四の常葉の春なからいかにおくりて千とせへぬらん
まつのいろは−よつのときはの−はるなから−いかにおくりて−ちとせへぬらむ |
00772 |
未入力 正徹 (xxx)
春日さす緑や紅葉松のはの千世に千しほの色そまされる
はるひさす−みとりやもみち−まつのはの−ちよにちしほの−いろそまされる |
00773 |
未入力 正徹 (xxx)
行末もあへる君かな千千の春十度生ひかはる松のはしめに
ゆくすゑも−あへるきみかな−ちちのはると−たひおひかはる−まつのはしめに |
00774 |
未入力 正徹 (xxx)
八千とせの春ふる松や天地を二葉にわけし緑なるらん
やちとせの−はるふるまつや−あめつちを−ふたはにわけし−みとりなるらむ |
00775 |
未入力 正徹 (xxx)
宿しるき松もあるしの万代にかつそ千年の春を契れる
やとしるき−まつもあるしの−よろつよに−かつそちとせの−はるをちきれる |
00776 |
未入力 正徹 (xxx)
限なき此世に松したえせすは契かはらしゆくすゑのはる
かきりなき−このよにまつし−たえせすは−ちきりかはらし−ゆくすゑのはる |
00777 |
未入力 正徹 (xxx)
君はたた花に花さく松か枝の千世を弥継の年に逢見ん
きみはたた−はなにはなさく−まつかえの−ちよをやゆきの−としにあひみむ |
00778 |
未入力 正徹 (xxx)
此春は松に小松をならへみむ千とせの後も千世を契れと
このはるは−まつにこまつを−ならへみむ−ちとせののちも−ちよをちきれと |
00779 |
未入力 正徹 (xxx)
若葉さす松のありへむ千年山動なき色も春そ陰そふ
わかはさす−まつのありへむ−ちとせやま−うこきなきいろも−はるそかけそふ |
00780 |
未入力 正徹 (xxx)
古りにける軒はの松の若みとり立出ててまさる春の色かな
ふりにける−のきはのまつの−わかみとり−たちいててまさる−はるのいろかな |
00781 |
未入力 正徹 (xxx)
手向草松も花さくもくしら浜の庭の真砂やよろつ代の数
たむけくさ−まつもはなさく−しらはまの−にはのまさこや−よろつよのかす |
00782 |
未入力 正徹 (xxx)
葉をかへぬ花さく春も万代を八尾の椿かけそふりせぬ
はをかへぬ−はなさくはるも−よろつよを−やつをのつはき−かけそふりせぬ |
00783 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹そ先世になひく春の色は草にもあらす木にもなき比
くれたけそ−まつよになひく−はるのいろは−くさにもあらす−きにもなきころ |
00784 |
未入力 正徹 (xxx)
猶さえて雪けにかへる二月の雲やかすみを又かくすらん
なほさえて−ゆきけにかへる−きさらきの−くもやかすみを−またかくすらむ |
00785 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる年はのとかにこえし空さえて又二月に春やたつらん
ふるとしは−のとかにこえし−そらさえて−またきさらきに−はるやたつらむ |
00786 |
未入力 正徹 (xxx)
風さゆる春の霞のむら消に又もえいつる野へのわか草
かせさゆる−はるのかすみの−むらきえに−またもえいつる−のへのわかくさ |
00787 |
未入力 正徹 (xxx)
野も山も消ゆれはかてにふる雪の春日うらみてのこる木からし
のもやまも−きゆれはかてに−ふるゆきの−はるひうらみて−のこるこからし |
00788 |
未入力 正徹 (xxx)
わひぬれはたたひとへのみきさらきの春もさえぬる苔のそてかな
わひぬれは−たたひとへのみ−きさらきの−はるもさえぬる−こけのそてかな |
00789 |
未入力 正徹 (xxx)
雪さそふ嵐もさゆる衣手に今はた冬やきさらきの空
ゆきさそふ−あらしもさゆる−ころもてに−いまはたふゆや−きさらきのそら |
00790 |
未入力 正徹 (xxx)
春の日も俄にさゆる風をいたみ花さきとまる二月の霜
はるのひも−にはかにさゆる−かせをいたみ−はなさきとまる−きさらきのしも |
00791 |
未入力 正徹 (xxx)
さえかへるよもの桜も霜をいたみ又さきかぬる二月のはな
さえかへる−よものさくらも−しもをいたみ−またさきかぬる−きさらきのはな |
00792 |
未入力 正徹 (xxx)
二月の雪に山風又さえて一むらかかる松のしら雪
きさらきの−ゆきにやまかせ−またさえて−ひとむらかかる−まつのしらゆき |
00793 |
未入力 正徹 (xxx)
又さえて吹きのほる谷の春風にいくへの雪をきそのあさ衣
またさえて−ふきのほるたにの−はるかせに−いくへのゆきを−きそのあさきぬ |
00794 |
未入力 正徹 (xxx)
猶さえて降りしく雪の光なき霞をほらふ春の谷風
なほさえて−ふりしくゆきの−ひかりなき−かすみをほらふ−はるのたにかせ |
00795 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空よもの霞を吹きとちて春の嵐や冬こもるらむ
あまつそら−よものかすみを−ふきとちて−はるのあらしや−ふゆこもるらむ |
00796 |
未入力 正徹 (xxx)
袖さむみ朝戸たてよとちる雪の又ふふき入る庭の春風
そてさむみ−あさとたてよと−ちるゆきの−またふふきいる−にはのはるかせ |
00797 |
未入力 正徹 (xxx)
寒けさは秋にそまさる若草の霜の花さくをのの朝風
さむけさは−あきにそまさる−わかくさの−しものはなさく−をののあさかせ |
00798 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへり春の嵐の冬の霜たかもとゆひにみたれそふらん
たちかへり−はるのあらしの−ふゆのしも−たかもとゆひに−みたれそふらむ |
00799 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとて一重ぬきおく衣をも又きさらきの霜の朝風
いまはとて−ひとへぬきおく−ころもをも−またきさらきの−しものあさかせ |
00800 |
未入力 正徹 (xxx)
降りきゆる雪の日影に松のはのしつくもこほる春の山風
ふりきゆる−ゆきのひかけに−まつのはの−しつくもこほる−はるのやまかせ |
00801 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまた嶺のささ原風さやきむら雲まよひ雪そ降りくる
はるはまた−みねのささはら−かせさやき−むらくもまよひ−ゆきそふりくる |
00802 |
未入力 正徹 (xxx)
けぬか上に越路の嵐さえかへり雪をかさぬる春のしら山
けぬかうへに−こしちのあらし−さえかへり−ゆきをかさぬる−はるのしらやま |
00803 |
未入力 正徹 (xxx)
早瀬川氷にせきて春さへも日数なかれぬ水のみなかみ
はやせかは−こほりにせきて−はるさへも−ひかすなかれぬ−みつのみなかみ |
00804 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむへきならひもしらす晴れくもり春のふふきをわたる月かけ
かすむへき−ならひもしらす−はれくもり−はるのふふきを−わたるつきかけ |
00805 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風とけにし月のうは氷結ふかさゆる春の夜のかけ
あまつかせ−とけにしつきの−うはこほり−むすふかさゆる−はるのよのかけ |
00806 |
未入力 正徹 (xxx)
かすみてそ猶さえかへる天つ風春のふふきをわたる月影
かすみてそ−なほさえかへる−あまつかせ−はるのふふきを−わたるつきかけ |
00807 |
未入力 正徹 (xxx)
春寒み我か身霜ふるはかりこそ昔にもあらねかすむ月影
はるさむみ−わかみしもふる−はかりこそ−むかしにもあらね−かすむつきかけ |
00808 |
未入力 正徹 (xxx)
さえかへる春やいつそも霞みつつくもるは晴るる月の雪けを
さえかへる−はるやいつそも−かすみつつ−くもるははるる−つきのゆきけを |
00809 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる夜の雪の雫は音たてて軒のたるひにおつる月影
さゆるよの−ゆきのしつくは−おとたてて−のきのたるひに−おつるつきかけ |
00810 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原春の緑の色にすむ月の光はかすむともなし
あまのはら−はるのみとりの−いろにすむ−つきのひかりは−かすむともなし |
00811 |
未入力 正徹 (xxx)
霞行く光そうつる春の夜の月のかつらの花染の袖
かすみゆく−ひかりそうつる−はるのよの−つきのかつらの−はなそめのそて |
00812 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから嵐に晴れぬ光かな月や霞をいとはさるらん
よもすから−あらしにはれぬ−ひかりかな−つきやかすみを−いとはさるらむ |
00813 |
未入力 正徹 (xxx)
かすめとも空行く月の都にはしらす光を春やそふらん
かすめとも−そらゆくつきの−みやこには−しらすひかりを−はるやそふらむ |
00814 |
未入力 正徹 (xxx)
中空にしはしやすらへ山のははいとと霞もふかきよの月
なかそらに−しはしやすらへ−やまのはは−いととかすみも−ふかきよのつき |
00815 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの月のかつらももえいつる若葉のかけや猶かすむらん
ひさかたの−つきのかつらも−もえいつる−わかはのかけや−なほかすむらむ |
00816 |
未入力 正徹 (xxx)
春のよの我かねし夢のうき橋をわたりにけりとのこる月かな
はるのよの−わかねしゆめの−うきはしを−わたりにけりと−のこるつきかな |
00817 |
未入力 正徹 (xxx)
月にたにうかひそいてぬ興つしほかすめる浪の淡路島山
つきにたに−うかひそいてぬ−おきつしほ−かすめるなみの−あはちしまやま |
00818 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむへきならひはなにのゆゑそともなるる月さへしらぬ春のよ
かすむへき−ならひはなにの−ゆゑそとも−なるるつきさへ−しらぬはるのよ |
00819 |
未入力 正徹 (xxx)
春ならす老いては月のくもる夜を霞みけりともいつまてかみし
はるならす−おいてはつきの−くもるよを−かすみけりとも−いつまてかみし |
00820 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねの袖に落ちくる山風に花の香なからやとる月影
うたたねの−そてにおちくる−やまかせに−はなのかなから−やとるつきかけ |
00821 |
未入力 正徹 (xxx)
月そすむ霞のうちになかれてもつひによる瀬ほ有明のかけ
つきそすむ−かすみのうちに−なかれても−つひによるせほ−ありあけのかけ |
00822 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川霞のみをにさかのほるうたかた消えて月や澄むらん
あまのかは−かすみのみをに−さかのほる−うたかたきえて−つきやすむらむ |
00823 |
未入力 正徹 (xxx)
二月や春のよさむのうす氷空にのみしてのこる月かけ
きさらきや−はるのよさむの−うすこほり−そらにのみして−のこるつきかけ |
00824 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風又や霞にたゆむらん月の氷の夜はのむらきえ
あまつかせ−またやかすみに−たゆむらむ−つきのこほりの−よはのむらきえ |
00825 |
未入力 正徹 (xxx)
春はたたかすむならひの月影をさやかにみるや空めなるらん
はるはたた−かすむならひの−つきかけを−さやかにみるや−そらめなるらむ |
00826 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の霞の袖の中なるやたかねし玉ののこる月かけ
さほひめの−かすみのそての−うちなるや−たかねしたまの−のこるつきかけ |
00827 |
未入力 正徹 (xxx)
世世かけてうつまぬ春の光かなむかしの月のいまの霞に
よよかけて−うつまぬはるの−ひかりかな−むかしのつきの−いまのかすみに |
00828 |
未入力 正徹 (xxx)
月ゆゑは霞もさこそいとふらめくもる名たての老の涙を
つきゆゑは−かすみもさこそ−いとふらめ−くもるなたての−おいのなみたを |
00829 |
未入力 正徹 (xxx)
いとへ月花にうつりし春なからちるとて空にかへるこころを
いとへつき−はなにうつりし−はるなから−ちるとてそらに−かへるこころを |
00830 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身の昔見しにもかはらすは今夜の月やかすまさるらん
おいかみの−むかしみしにも−かはらすは−こよひのつきや−かすまさるらむ |
00831 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかなる月のかつらの花かつら霞なかけそ天つはる風
さやかなる−つきのかつらの−はなかつら−かすみなかけそ−あまつはるかせ |
00832 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空やみのうつつといふ程の夢路にちかくかすむ月かな
あまつそら−やみのうつつと−いふほとの−ゆめちにちかく−かすむつきかな |
00833 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちこむる霞の上の天の原おもへは月に春やなからむ
たちこむる−かすみのうへの−あまのはら−おもへはつきに−はるやなからむ |
00834 |
未入力 正徹 (xxx)
老いてみる身はことわりの月の影秋なりともとかすむ春かな
おいてみる−みはことわりの−つきのかけ−あきなりともと−かすむはるかな |
00835 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空月の光をうつしもて霞やひろく世をてらすらん
あまつそら−つきのひかりを−うつしもて−かすみやひろく−よをてらすらむ |
00836 |
未入力 正徹 (xxx)
開きちるもえやは見えまし春霞月のかつらの花なかくしそ
さきちるも−えやはみえまし−はるかすみ−つきのかつらの−はななかくしそ |
00837 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川春の霞のみをつくし月の御舟そ立ちわかれ行く
あまのかは−はるのかすみの−みをつくし−つきのみふねそ−たちわかれゆく |
00838 |
未入力 正徹 (xxx)
春のよをくもると見つつまとろめは夢路かすめる有明の月
はるのよを−くもるとみつつ−まとろめは−ゆめちかすめる−ありあけのつき |
00839 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられぬむかしの袖の影ならてかすめは遠き春のよの月
わすられぬ−むかしのそての−かけならて−かすめはとほき−はるのよのつき |
00840 |
未入力 正徹 (xxx)
春はたた開きちる花に暮しても心やすめすかすむよの月
はるはたた−さきちるはなに−くらしても−こころやすめす−かすむよのつき |
00841 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかり望月の夜にめくりあへさてこそ春の最中ともみめ
はなさかり−もちつきのよに−めくりあへ−さてこそはるの−もなかともみめ |
00842 |
未入力 正徹 (xxx)
空たかき中なへたてそ我か方を月のみるめもさそかすむらん
そらたかき−なかなへたてそ−わかかたを−つきのみるめも−さそかすむらむ |
00843 |
未入力 正徹 (xxx)
限なく老いすはかすむ角やみんありやなしやもしらぬよの空
かきりなく−おいすはかすむ−つきやみむ−ありやなしやも−しらぬよのそら |
00844 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれくる氷も波も高島や此川上にかすむつきかけ
なかれくる−こほりもなみも−たかしまや−このかはかみに−かすむつきかけ |
00845 |
未入力 正徹 (xxx)
春はたた月も霞を出てやらぬうき世の山や秋のよのそら
はるはたた−つきもかすみを−いてやらぬ−うきよのやまや−あきのよのそら |
00846 |
未入力 正徹 (xxx)
さらしなを春の秋にてなかむれは霞もはてぬをはすての月
さらしなを−はるのあきにて−なかむれは−かすみもはてぬ−をはすてのつき |
00847 |
未入力 正徹 (xxx)
老いらくのむかしをおもふ面影そみなものことにかすむ夜の月
おいらくの−むかしをおもふ−おもかけそ−みなものことに−かすむよのつき |
00848 |
未入力 正徹 (xxx)
なれ行くを月もおもひの外なりと見るらん老の末の世の春
なれゆくを−つきもおもひの−ほかなりと−みるらむおいの−すゑのよのはる |
00849 |
未入力 正徹 (xxx)
影もらてかすむ尾上の夕月よ深けてそ頼む空そすくなき
かけもらて−かすむをのへの−ゆふつくよ−ふけてそたのむ−そらそすくなき |
00850 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れぬまにかすむ光を待ちとるや入日にむかふ山の端の月
くれぬまに−かすむひかりを−まちとるや−いりひにむかふ−やまのはのつき |
00851 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮かすみし梅の匂さへうす雲かかる月のかけかな
ゆふまくれ−かすみしうめの−にほひさへ−うすくもかかる−つきのかけかな |
00852 |
未入力 正徹 (xxx)
緑そふ草を冬野の春さえて夕霜かすむ月の影かな
みとりそふ−くさをふゆのの−はるさえて−ゆふしもかすむ−つきのかけかな |
00853 |
未入力 正徹 (xxx)
空にみて海士やはをしむ行く月の舟をなかして霞む夕風
そらにみて−あまやはをしむ−ゆくつきの−ふねをなかして−かすむゆふかせ |
00854 |
未入力 正徹 (xxx)
めつらしき春たつ空の三日月を暮れなは誰か出てて見すらん
めつらしき−はるたつそらの−みかつきを−くれなはたれか−いててみすらむ |
00855 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかなる月をおほろにみるはてはやみともたとる老の春かな
さやかなる−つきをおほろに−みるはては−やみともたとる−おいのはるかな |
00856 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜の袖そ朧のし水せく老の涙や大はらの月
はるのよの−そてそおほろの−しみつせく−おいのなみたや−おほはらのつき |
00857 |
未入力 正徹 (xxx)
若草の末野の風の音もせて月そ霞のつまにこもれる
わかくさの−すゑののかせの−おともせて−つきそかすみの−つまにこもれる |
00858 |
未入力 正徹 (xxx)
天つたふ道さまたけの霞ゆゑ月のあよみもいそくとはみす
あまつたふ−みちさまたけの−かすみゆゑ−つきのあよみも−いそくとはみす |
00859 |
未入力 正徹 (xxx)
みすもあらす見もせぬ月の深くるまて無益空のかすむ夜はかな
みすもあらす−みもせぬつきの−ふくるまて−つれなくそらの−かすむよはかな |
00860 |
未入力 正徹 (xxx)
村霞くもりみはれみ行く月に見し世の事もつつきやはする
むらかすみ−くもりみはれみ−ゆくつきに−みしよのことも−つつきやはする |
00861 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜の晴れたる星の影ほとも袖にやとらてかすむ月かな
はるのよの−はれたるほしの−かけほとも−そてにやとらて−かすむつきかな |
00862 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春の山のはこえて朝日影にほふ雲間に残る月かな
ゆくはるの−やまのはこえて−あさひかけ−にほふくもまに−のこるつきかな |
00863 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねの袖とふ月のかたはらに人こそみえね春のよの夢
うたたねの−そてとふつきの−かたはらに−ひとこそみえね−はるのよのゆめ |
00864 |
未入力 正徹 (xxx)
しかの浦の春のかすみに残るらしふる郷人のそての月影
しかのうらの−はるのかすみに−のこるらし−ふるさとひとの−そてのつきかけ |
00865 |
未入力 正徹 (xxx)
里はあれぬいととうき世と住佗ひて月や霞に身をかくすらん
さとはあれぬ−いととうきよと−すみわひて−つきやかすみに−みをかくすらむ |
00866 |
未入力 正徹 (xxx)
世をうちのむなし涙や霞みけん難波の春の月のむかしに
よをうちの−むなしなみたや−かすみけむ−なにはのはるの−つきのむかしに |
00867 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまはかすみし山も月出ててみれはさやけき春の色かな
くるるまは−かすみしやまも−つきいてて−みれはさやけき−はるのいろかな |
00868 |
未入力 正徹 (xxx)
はるる夜は軒のしのふの山やみんみたれて霞む月の下風
はるるよは−のきのしのふの−やまやみむ−みたれてかすむ−つきのしたかせ |
00869 |
未入力 正徹 (xxx)
夕霞月のかかみのうらなるや見し山鳥のをのへなるらん
ゆふかすみ−つきのかかみの−うらなるや−みしやまとりの−をのへなるらむ |
00870 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほやく海士のたくへき霞かは月を煙におほせさらなん
もしほやく−あまのたくへき−かすみかは−つきをけふりに−おほせさらなむ |
00871 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふかく霞の網に入る月をひくや湊のあまのよひこゑ
さよふかく−かすみのあみに−いるつきを−ひくやみなとの−あまのよひこゑ |
00872 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春のかすみの袖のなかに入る玉かみなとにしたふ月かけ
ゆくはるの−かすみのそての−なかにいる−たまかみなとに−したふつきかけ |
00873 |
未入力 正徹 (xxx)
ひらの海や雪吹きおろす山風に霞みてしつむみなと江の月
ひらのうみや−ゆきふきおろす−やまかせに−かすみてしつむ−みなとえのつき |
00874 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむ夜の月は真砂にうと浜や照すをとめの袖そ数そふ
かすむよの−つきはまさこに−うとはまや−てらすをとめの−そてそかすそふ |
00875 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風あらき浜辺の白浪に霞をりふせやとる月影
おきつかせ−あらきはまへの−しらなみに−かすみをりふせ−やとるつきかけ |
00876 |
未入力 正徹 (xxx)
いもに恋ひたか折りしきし浜荻の春の枯葉に月やとるらん
いもにこひ−たかをりしきし−はまをきの−はるのかれはに−つきやとるらむ |
00877 |
未入力 正徹 (xxx)
はまゆふもめくむはかりの月影をうすくへたててかすむ浪かな
はまゆふも−めくむはかりの−つきかけを−うすくへたてて−かすむなみかな |
00878 |
未入力 正徹 (xxx)
玉よする玉津島江にかすむなり波を光の春の夜の月
たまよする−たまつしまえに−かすむなり−なみをひかりの−はるのよのつき |
00879 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜のいさら小川の音深けてこほらぬ浪にくたく月かけ
はるのよの−いさらをかはの−おとふけて−こほらぬなみに−くたくつきかけ |
00880 |
未入力 正徹 (xxx)
田上や川浪かけてやとるなりうすきかすみの衣手の月
たなかみや−かはなみかけて−やとるなり−うすきかすみの−ころもてのつき |
00881 |
未入力 正徹 (xxx)
明かたの入野のかすみたなひくや弓張月の末そかくるる
あけかたの−いるののかすみ−たなひくや−ゆみはりつきの−すゑそかくるる |
00882 |
未入力 正徹 (xxx)
おも影の猶うとまれぬ有明にゆかりかすめる月のうす雲
おもかけの−なほうとまれぬ−ありあけに−ゆかりかすめる−つきのうすくも |
00883 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつらかけのたれをのなかき夜は春にもありと月そ残れる
やまかつら−かけのたれをの−なかきよは−はるにもありと−つきそのこれる |
00884 |
未入力 正徹 (xxx)
二月の在明の比も開きあはぬ月の木の間は花そつれなき
きさらきの−ありあけのころも−さきあはぬ−つきのこのまは−はなそつれなき |
00885 |
未入力 正徹 (xxx)
のこるなりちりて花なき有明に春の心はとはかりの月
のこるなり−ちりてはななき−ありあけに−はるのこころは−とはかりのつき |
00886 |
未入力 正徹 (xxx)
風そうき月な恨みそいもとせの山のかすみのきぬきぬの空
かせそうき−つきなうらみそ−いもとせの−やまのかすみの−きぬきぬのそら |
00887 |
未入力 正徹 (xxx)
あひに逢ひて春行く色を染川の淵の緑にかすむ月影
あひにあひて−はるゆくいろを−そめかはの−ふちのみとりに−かすむつきかけ |
00888 |
未入力 正徹 (xxx)
さためすよ秋の夕のことわりも又明ほのの春のあはれに
さためすよ−あきのゆふへの−ことわりも−またあけほのの−はるのあはれに |
00889 |
未入力 正徹 (xxx)
見す聞かぬ山の花鳥色も音も霞にこもる春の明ほの
みすきかぬ−やまのはなとり−いろもねも−かすみにこもる−はるのあけほの |
00890 |
未入力 正徹 (xxx)
雲鳥の色ねもにたる時やなき花に明行く春ならすとも
くもとりの−いろねもにたる−ときやなき−はなにあけゆく−はるならすとも |
00891 |
未入力 正徹 (xxx)
春のよの花も匂はす月もなき霞そ明くる光なりける
はるのよの−はなもにほはす−つきもなき−かすみそあくる−ひかりなりける |
00892 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月も霞をわくる山風に花の香ほしき春の明ほの
ゆくつきも−かすみをわくる−やまかせに−はなのかほしき−はるのあけほの |
00893 |
未入力 正徹 (xxx)
あくる夜の月と花との哀をもたたおし篭めて霞む春かな
あくるよの−つきとはなとの−あはれをも−たたおしこめて−かすむはるかな |
00894 |
未入力 正徹 (xxx)
曙も花にあへるやをしからん木すゑわかれぬ嶺の横くも
あけほのも−はなにあへるや−をしからむ−こすゑわかれぬ−みねのよこくも |
00895 |
未入力 正徹 (xxx)
花に月霞に鳥はさへつりて山もとくらき春の明ほの
はなにつき−かすみにとりは−さへつりて−やまもとくらき−はるのあけほの |
00896 |
未入力 正徹 (xxx)
比はまた花も匂はす月もなし行末そかすむ春の明ほの
ころはまた−はなもにほはす−つきもなし−ゆくへそかすむ−はるのあけほの |
00897 |
未入力 正徹 (xxx)
山風も花の香なから真木の戸をおして春雨曙の空
やまかせも−はなのかなから−まきのとを−おしてはるさめ−あけほののそら |
00898 |
未入力 正徹 (xxx)
百千鳥ふかき霞に声消えぬ山は軒端の春の明ほの
ももちとり−ふかきかすみに−こゑきえぬ−やまはのきはの−はるのあけほの |
00899 |
未入力 正徹 (xxx)
明ほのも花そ夜ふかき百千鳥さへつりいたす山の霞に
あけほのも−はなそよふかき−ももちとり−さへつりいたす−やまのかすみに |
00900 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら色わく程の明ほのに霞をいつる鳥のこゑかな
やまさくら−いろわくほとの−あけほのに−かすみをいつる−とりのこゑかな |
00901 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらにかすむ山かな曙の花もにほはす月も無きころ
いたつらに−かすむやまかな−あけほのの−はなもにほはす−つきもなきころ |
00902 |
未入力 正徹 (xxx)
かくなから見はや鴬の雲霞嶺たちのこす明ほのの松
かくなから−みはやうくひすの−くもかすみ−みねたちのこす−あけほののまつ |
00903 |
未入力 正徹 (xxx)
にほふ花かすめる山を形見にて又遠さかる月の明ほの
にほふはな−かすめるやまを−かたみにて−またとほさかる−つきのあけほの |
00904 |
未入力 正徹 (xxx)
春ならぬ山とはなりぬ雪消えてさく花おそくさゆる曙
はるならぬ−やまとはなりぬ−ゆききえて−さくはなおそく−さゆるあけほの |
00905 |
未入力 正徹 (xxx)
漁火のかすむそ見ゆるあまのたくなはの浦わの春の明ほの
いさりひの−かすむそみゆる−あまのたく−なはのうらわの−はるのあけほの |
00906 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜のうら島かすみ雲そ立つこや玉くしけあけほのの空
はるのよの−うらしまかすみ−くもそたつ−こやたまくしけ−あけほののそら |
00907 |
未入力 正徹 (xxx)
浦風もかすみのほりて高塩の曙おそきすまの山もと
うらかせも−かすみのほりて−たかしほの−あけほのおそき−すまのやまもと |
00908 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原かすむ限はしら浪のへたてもとほし春の明ほの
わたのはら−かすむかきりは−しらなみの−へたてもとほし−はるのあけほの |
00909 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむ夜の花に枕をそはたてて曙しらぬすまの浦人
かすむよの−はなにまくらを−そはたてて−あけほのしらぬ−すまのうらひと |
00910 |
未入力 正徹 (xxx)
霞みしく興つ白浪うら風に匂はぬ花の春の明ほの
かすみしく−おきつしらなみ−うらかせに−にほはぬはなの−はるのあけほの |
00911 |
未入力 正徹 (xxx)
明けにけりあらましかはの春の花なきさにかすむしかの山本
あけにけり−あらましかはの−はるのはな−なきさにかすむ−しかのやまもと |
00912 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとは花にむらむら明けそめて霞にくらき春の深山路
このもとは−はなにむらむら−あけそめて−かすみにくらき−はるのみやまち |
00913 |
未入力 正徹 (xxx)
天地に雲をかさねて花そみつこれや神代の春の明ほの
あめつちに−くもをかさねて−はなそみつ−これやかみよの−はるのあけほの |
00914 |
未入力 正徹 (xxx)
明ほのを花にゆつりて横雲のわかれてきゆる嶺の春風
あけほのを−はなにゆつりて−よこくもの−わかれてきゆる−みねのはるかせ |
00915 |
未入力 正徹 (xxx)
散るよりも先そあたなるかつ消えて花にわかるる峰のよこ雲
ちるよりも−まつそあたなる−かつきえて−はなにわかるる−みねのよこくも |
00916 |
未入力 正徹 (xxx)
あけすとも花さく嶺の横雲になかはかくして月は見まほし
あけすとも−はなさくみねの−よこくもに−なかはかくして−つきはみまほし |
00917 |
未入力 正徹 (xxx)
百千鳥かすめる雨の花の香にぬれてさへつる曙の山
ももちとり−かすめるあめの−はなのかに−ぬれてさへつる−あけほののやま |
00918 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥かなくいまそ時しる山のはによひよりかけし花の横雲
とりかなく−いまそときしる−やまのはに−よひよりかけし−はなのよこくも |
00919 |
未入力 正徹 (xxx)
命をやにしかへん庭鳥のおのれあらそふ春の比かな
いのちをや−あふにしかへむ−にはとりの−おのれあらそふ−はるのころかな |
00920 |
未入力 正徹 (xxx)
雲ま行く月に木のめもかすむらんはらへ老その杜の春風
くもまゆく−つきにこのめも−かすむらむ−はらへおいその−もりのはるかせ |
00921 |
未入力 正徹 (xxx)
なからふる我か世の年の春ことにかすむやとほき昔なるらん
なからふる−わかよのとしの−はることに−かすむやとほき−むかしなるらむ |
00922 |
未入力 正徹 (xxx)
むら雨の梢の露も置きとめぬ花のやとりに山風そふく
むらさめの−こすゑのつゆも−おきとめぬ−はなのやとりに−やまかせそふく |
00923 |
未入力 正徹 (xxx)
しからきや遠山の正木うつ紐をたな引きそむる春霞かな
しからきや−とほやまのまさき−うつひもを−たなひきそむる−はるかすみかな |
00924 |
未入力 正徹 (xxx)
名にたかき尾上の鐘の声は猶かすみにさえてあくる春かな
なにたかき−をのへのかねの−こゑはなほ−かすみにさえて−あくるはるかな |
00925 |
未入力 正徹 (xxx)
しるしらぬ袖ともわかぬ梅かかにおなしやとりの春の夜の月
しるしらぬ−そてともわかぬ−うめかかに−おなしやとりの−はるのよのつき |
00926 |
未入力 正徹 (xxx)
うすこほりのこるはあれと初せ川はやくもなかは過くる春かな
うすこほり−のこるはあれと−はつせかは−はやくもなかは−すくるはるかな |
00927 |
未入力 正徹 (xxx)
めかれしよ御戸の錦のひらくるは春の花よりあふそ稀なる
めかれしよ−みとのにしきの−ひらくるは−はるのはなより−あふそまれなる |
00928 |
未入力 正徹 (xxx)
なへて世の天つ空にも君か住む宮このかすみ光そふらし
なへてよの−あまつそらにも−きみかすむ−みやこのかすみ−ひかりそふらし |
00929 |
未入力 正徹 (xxx)
色見ゆる春の衣をいま一重世の人ことにたつかすみかな
いろみゆる−はるのころもを−いまひとへ−よのひとことに−たつかすみかな |
00930 |
未入力 正徹 (xxx)
いくさとの花鳥の音もかすむ日の光のうちに篭る春かな
いくさとの−はなとりのねも−かすむひの−ひかりのうちに−こもるはるかな |
00931 |
未入力 正徹 (xxx)
ほしかくる霞の衣ひまもなしいつくの空か天のかくやま
ほしかくる−かすみのころも−ひまもなし−いつくのそらか−あまのかくやま |
00932 |
未入力 正徹 (xxx)
あふきみぬ人こそなけれ久かたの神代の春や天くたるらん
あふきみぬ−ひとこそなけれ−ひさかたの−かみよのはるや−あまくたるらむ |
00933 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねの床のさ夜風吹きかすみ月やあらぬと梅かかそする
うたたねの−とこのさよかせ−ふきかすみ−つきやあらぬと−うめかかそする |
00934 |
未入力 正徹 (xxx)
ねかはくは過きし年年引きかへて入をかすむる霞をは見し
ねかはくは−すきしとしとし−ひきかへて−ひとをかすむる−かすみをはみし |
00935 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きまよふ音こそきかね花とちる雲に枝なき天つ春風
ふきまよふ−おとこそきかね−はなとちる−くもにえたなき−あまつはるかせ |
00936 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたのすめるは空となりし世や春の光もてらし初めけん
ひさかたの−すめるはそらと−なりしよや−はるのひかりも−てらしそめけむ |
00937 |
未入力 正徹 (xxx)
久堅の天にましける神代には空はかりにや春も立ちけん
ひさかたの−あめにましける−かみよには−そらはかりにや−はるもたちけむ |
00938 |
未入力 正徹 (xxx)
よろつ民つくらむ田にも畠にもまく種ことにみのりさかへよ
よろつたみ−つくらむたにも−はたけにも−まくたねことに−みのりさかへよ |
00939 |
未入力 正徹 (xxx)
たれか見しもと此土のあらかねになひく草木の春のわか葉を
たれかみし−もとこのつちの−あらかねに−なひくくさきの−はるのわかはを |
00940 |
未入力 正徹 (xxx)
春は今朝八百日行きてや知らすらん浜の真砂の雪にかすめる
はるはけさ−やほかゆきてや−しらすらむ−はまのまさこの−ゆきにかすめる |
00941 |
未入力 正徹 (xxx)
春や夢さきそめしよりぬるかうちにみるにもあらぬ花そ散行く
はるやゆめ−さきそめしより−ぬるかうちに−みるにもあらぬ−はなそちりゆく |
00942 |
未入力 正徹 (xxx)
さまさまの誰かねかひもさもあらはあれ此春かなへ敷島のみち
さまさまの−たれかねかひも−さもあらはあれ−このはるかなへ−しきしまのみち |
00943 |
未入力 正徹 (xxx)
此春は御代にありとしあらん人上はあはれとしもはしたかへ
このはるは−みよにありとし−あらむひと−かみはあはれと−しもはしたかへ |
00944 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりあひてかつみる花を惜むへき命もしらぬ老の春かな
めくりあひて−かつみるはなを−をしむへき−いのちもしらぬ−おいのはるかな |
00945 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかそ去年にかはらぬもろ人の心の花を先ひらけとて
うめかかそ−こそにかはらぬ−もろひとの−こころのはなを−まつひらけとて |
00946 |
未入力 正徹 (xxx)
しかのうらやのこる石井のもと桜花もむかしの陰やすくなき
しかのうらや−のこるいしゐの−もとさくら−はなもむかしの−かけやすくなき |
00947 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉の花ともかなや鴬も梅もさそはて見ん人のため
ことのはの−はなともかなや−うくひすも−うめもさそはて−みむひとのため |
00948 |
未入力 正徹 (xxx)
花の香に翅をしめて白雲の嶺越えやらぬ春の雁かね
はなのかに−つはさをしめて−しらくもの−みねこえやらぬ−はるのかりかね |
00949 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間より花にかすみて久堅の光のとけき鳥の声かな
このまより−はなにかすみて−ひさかたの−ひかりのとけき−とりのこゑかな |
00950 |
未入力 正徹 (xxx)
塵もゐぬ天つ雲井のかすめるを朝きよめする春の風かな
ちりもゐぬ−あまつくもゐの−かすめるを−あさきよめする−はるのかせかな |
00951 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの天の戸出つる日の光春をそてらす御代もくもらし
ひさかたの−あまのといつる−ひのひかり−はるをそてらす−みよもくもらし |
00952 |
未入力 正徹 (xxx)
花の香に世はうち霞み春の日の光になひく風はゆるくて
はなのかに−よはうちかすみ−はるのひの−ひかりになひく−かせはゆるくて |
00953 |
未入力 正徹 (xxx)
春の空のなかはめくるも冬の日の時にも絶えぬ花の陰かな
はるのそらの−なかはめくるも−ふゆのひの−ときにもたえぬ−はなのかけかな |
00954 |
未入力 正徹 (xxx)
雪消えし春の枯野の夕霞うつめはもゆる草の色かな
ゆききえし−はるのかれのの−ゆふかすみ−うつめはもゆる−くさのいろかな |
00955 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふなりなきさの海士の家桜かすみてうつる月の夕浪
にほふなり−なきさのあまの−いへさくら−かすみてうつる−つきのゆふなみ |
00956 |
未入力 正徹 (xxx)
こまかなる星の光はみな消えて霞みのこせる夜はの夕つつ
こまかなる−ほしのひかりは−みなきえて−かすみのこせる−よはのゆふつつ |
00957 |
未入力 正徹 (xxx)
けふそみる滝つ氷の関の戸もひらくる浪の春の初花
けふそみる−たきつこほりの−せきのとも−ひらくるなみの−はるのはつはな |
00958 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間よりおつる雪消の水澄みて春をふかむる滝の白浪
このまより−おつるゆきけの−みつすみて−はるをふかむる−たきのしらなみ |
00959 |
未入力 正徹 (xxx)
今そうき宿かる春の花の露きえし所もむなし山風
いまそうき−やとかるはるの−はなのつゆ−きえしところも−むなしやまかせ |
00960 |
未入力 正徹 (xxx)
世は春の霞にこもる思ひたに晴れぬさくらの雲となる比
よははるの−かすみにこもる−おもひたに−はれぬさくらの−くもとなるころ |
00961 |
未入力 正徹 (xxx)
色にふけ草木も春をしらぬまの人の心の花のはつ風
いろにふけ−くさきもはるを−しらぬまの−ひとのこころの−はなのはつかせ |
00962 |
未入力 正徹 (xxx)
貫川や風の心もやはらかに氷吹きとく瀬瀬のしら浪
ぬきかはや−かせのこころも−やはらかに−こほりふきとく−せせのしらなみ |
00963 |
未入力 正徹 (xxx)
風ませに雪ちろほひて朝戸明の日影を寒み梅かかそする
かせませに−ゆきちろほひて−あさとあけの−ひかけをさむみ−うめかかそする |
00964 |
未入力 正徹 (xxx)
篠むすふ庵の戸細も明けぬよに霰音して春風そ吹く
ささむすふ−いほのとほそも−あけぬよに−あられおとして−はるかせそふく |
00965 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふかけてひくやしめ野の神風も長き草葉も春をしるらし
ゆふかけて−ひくやしめのの−かみかせも−なかきくさはも−はるをしるらし |
00966 |
未入力 正徹 (xxx)
山おろし初瀬の霞吹きまよひこもりもはてぬ花の色色
やまおろし−はつせのかすみ−ふきまよひ−こもりもはてぬ−はなのいろいろ |
00967 |
未入力 正徹 (xxx)
過きかての野への小松の末の世も花にや春の鴬のこゑ
すきかての−のへのこまつの−すゑのよも−はなにやはるの−うくひすのこゑ |
00968 |
未入力 正徹 (xxx)
夢となる人にみせはや芦のはのもゆる難波の春のうつつを
ゆめとなる−ひとにみせはや−あしのはの−もゆるなにはの−はるのうつつを |
00969 |
未入力 正徹 (xxx)
めくる江のなかれ洲崎のはなれ屋に燕出入る春日のとけし
めくるえの−なかれすさきの−はなれやに−つはめいている−はるひのとけし |
00970 |
未入力 正徹 (xxx)
穂にいてて麦の秋風待つころは田かへす春とみるそすくなき
ほにいてて−むきのあきかせ−まつころは−たかへすはると−みるそすくなき |
00971 |
未入力 正徹 (xxx)
すさましやあらすく牛のつく息もかすむ朝の春の小山田
すさましや−あらすくうしの−つくいきも−かすむあしたの−はるのをやまた |
00972 |
未入力 正徹 (xxx)
道辺の鳥井も今そあひにあふみしめはへたる小田の苗代
みちのへの−とりゐもいまそ−あひにあふ−みしめはへたる−をたのなはしろ |
00973 |
未入力 正徹 (xxx)
土かたき春のあら田の一かへしくるしきしつか初とそ見る
つちかたき−はるのあらたの−ひとかへし−くるしきしつか−はしめとそみる |
00974 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの風ならねとますらをか霞をかへす春のあら小田
やまもとの−あらしならねと−ますらをか−かすみをかへす−はるのあらをた |
00975 |
未入力 正徹 (xxx)
種まきし山田のくろに里の子の鳥おふ春の暮そさひしき
たねまきし−やまたのくろに−さとのこの−とりおふはるの−くれそさひしき |
00976 |
未入力 正徹 (xxx)
種おろす苗代水にゐる鷺のいさなとるをもたつる里の子
たねおろす−なはしろみつに−ゐるさきの−いさなとるをも−たつるさとのこ |
00977 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きつくす花の香かすむ大空も風ゆるき日の春のうくひす
なきつくす−はなのかかすむ−おほそらも−かせゆるきひの−はるのうくひす |
00978 |
未入力 正徹 (xxx)
梢より羽風をふれて桜さく野への雲雀もおつる花かな
こすゑより−はかせをふれて−さくらさく−のへのひはりも−おつるはなかな |
00979 |
未入力 正徹 (xxx)
春山や色音をかくす明くれに花も百千の鳥そこもれる
はるやまや−いろねをかくす−あけくれに−はなもももちの−とりそこもれる |
00980 |
未入力 正徹 (xxx)
かひやなき遠山もとの雲霞おりたつ田子のかへす嵐は
かひやなき−とほやまもとの−くもかすみ−おりたつたこの−かへすあらしは |
00981 |
未入力 正徹 (xxx)
山路行く夕のあらし松にかれ花こそあらめしら雲の宿
やまちゆく−ゆふへのあらし−まつにかれ−はなこそあらめ−しらくものやと |
00982 |
未入力 正徹 (xxx)
しかのうらの霞をしのきいまもさそ山立ちのほる五色の雲
しかのうらの−かすみをしのき−いまもさそ−やまたちのほる−いついろのくも |
00983 |
未入力 正徹 (xxx)
松の藤岩もとつつし下わらひ山をさなから折りやつす比
まつのふち−いはもとつつし−したわらひ−やまをさなから−をりやつすころ |
00984 |
未入力 正徹 (xxx)
降る雪もしはしな消えそ春たにも猶花さかぬいささむら竹
ふるゆきも−しはしなきえそ−はるたにも−なほはなさかぬ−いささむらたけ |
00985 |
未入力 正徹 (xxx)
春は先あらすきかへす小山田のすくなき水に蛙なくなり
はるはまつ−あらすきかへす−をやまたの−すくなきみつに−かはつなくなり |
00986 |
未入力 正徹 (xxx)
野へとほくもゆる千草のうす緑かすむ夕の松むしもかな
のへとほく−もゆるちくさの−うすみとり−かすむゆふへの−まつむしもかな |
00987 |
未入力 正徹 (xxx)
影もらぬ月のかりねの花の宿霞の光明けてかへらむ
かけもらぬ−つきのかりねの−はなのやと−かすみのひかり−あけてかへらむ |
00988 |
未入力 正徹 (xxx)
松の上に春たちきてや千世の宿今朝よりしめて霞みしくらん
まつのうへに−はるたちきてや−ちよのやと−けさよりしめて−かすみしくらむ |
00989 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮野かひの牛は歩みきてかすめる道に逢ふ人もなし
ゆふまくれ−のかひのうしは−あゆみきて−かすめるみちに−あふひともなし |
00990 |
未入力 正徹 (xxx)
夕間暮春の野かひのうしとたに住むよをしらてたてる哀さ
ゆふまくれ−はるののかひの−うしとたに−すむよをしらて−たてるあはれさ |
00991 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつる人は春の夜暮れやらて先まちとほの入会の声
たのめつる−ひとははるのよ−くれやらて−まつまちとほの−いりあひのこゑ |
00992 |
未入力 正徹 (xxx)
小泊瀬や川せに嶺の灯も落ちたる鐘そかすみあらそふ
をはつせや−かはせにみねの−ともしひも−おちたるかねそ−かすみあらそふ |
00993 |
未入力 正徹 (xxx)
夕霞なほこもり江に立ちこめぬ春ははつせの外よりや行く
ゆふかすみ−なほこもりえに−たちこめぬ−はるははつせの−ほかよりやゆく |
00994 |
未入力 正徹 (xxx)
川上の浪のこゑさへかすむなり月の笠置の山寺のかね
かはかみの−なみのこゑさへ−かすむなり−つきのかさきの−やまてらのかね |
00995 |
未入力 正徹 (xxx)
野へにしく霞のもすそたれ引くも雲そかさしの山桜花
のへにしく−かすみのもすそ−たれひくも−くもそかさしの−やまさくらはな |
00996 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さす霞の袖も立ちましり友とそあそふ野への糸ゆふ
ゆふひさす−かすみのそても−たちましり−ともとそあそふ−のへのいとゆふ |
00997 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとやかすむ木の間をたえたえにかかれていつる春の川浪
やまもとや−かすむこのまを−たえたえに−かかれていつる−はるのかはなみ |
00998 |
未入力 正徹 (xxx)
山こえて千里をみれは朝霞さわくはさらに浦風そ吹く
やまこえて−ちさとをみれは−あさかすみ−さわくはさらに−うらかせそふく |
00999 |
未入力 正徹 (xxx)
花ゆゑに見し雲雪の跡もなしあすや宿もる春の古郷
はなゆゑに−みしくもゆきの−あともなし−あすややともる−はるのふるさと |
01000 |
未入力 正徹 (xxx)
うらわかき此手柏をおほふかひなら山桜あらしにそちる
うらわかき−このてかしはを−おほふかひ−ならやまさくら−あらしにそちる |
01001 |
未入力 正徹 (xxx)
しかの山ここや聖のあとならむ霞にゆらく玉のを柳
しかのやま−ここやひしりの−あとならむ−かすみにゆらく−たまのをやなき |
01002 |
未入力 正徹 (xxx)
待ちもせぬしつ山かつの家さくらちるををしまぬ春や馴れけん
まちもせぬ−しつやまかつの−いへさくら−ちるををしまぬ−はるやなれけむ |
01003 |
未入力 正徹 (xxx)
春をへて身は住みなから山なしの花にかりなる此世をそしる
はるをへて−みはすみなから−やまなしの−はなにかりなる−このよをそしる |
01004 |
未入力 正徹 (xxx)
氷ゐし竹のほそ水音たてて軒はの山にかすむ梅かか
こほりゐし−たけのほそみつ−おとたてて−のきはのやまに−かすむうめかか |
01005 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこて霞みそわたる足引の山さくら戸の前のたな橋
ひとはこて−かすみそわたる−あしひきの−やまさくらとの−まへのたなはし |
01006 |
未入力 正徹 (xxx)
風さむしまた初春の雲とみてかへすなうつむ花の荒小田
かせさむし−またはつはるの−くもとみて−かへすなうつむ−はなのあらをた |
01007 |
未入力 正徹 (xxx)
もる人はかりほも今はつくる田の苗見ぬ程の鳥いとふとて
もるひとは−かりほもいまは−つくるたの−なへみぬほとの−とりいとふとて |
01008 |
未入力 正徹 (xxx)
ひなの空長路くるしき花の陰あひやとりせよ春の山人
ひなのそら−なかちくるしき−はなのかけ−あひやとりせよ−はるのやまひと |
01009 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねん春のみなとの山桜浦風にほふ梶のまくらは
いかかねむ−はるのみなとの−やまさくら−うらかせにほふ−かちのまくらは |
01010 |
未入力 正徹 (xxx)
かさなるを春の初そおとろかし今はうからぬ老の年かな
かさなるを−はるのはしめそ−おとろかし−いまはうからぬ−おいのとしかな |
01011 |
未入力 正徹 (xxx)
おろかにも野への雲雀に事よせてあからぬ道を何学ひけん
おろかにも−のへのひはりに−ことよせて−あからぬみちを−なにまなひけむ |
01012 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの代かねこし北野の神路山したつ岩ほに老松の風
いつのよか−ねこしきたのの−かみちやま−したついはほに−おいまつのかせ |
01013 |
未入力 正徹 (xxx)
久堅の神代のままに春の袖ふりさけみよと霞む空かな
ひさかたの−かみよのままに−はるのそて−ふりさけみよと−かすむそらかな |
01014 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえにかつ見え初めて草も木も御法の花にひもそとけ行く
うめかえに−かつみえそめて−くさもきも−みのりのはなに−ひもそとけゆく |
01015 |
未入力 正徹 (xxx)
待惜みさき散る花のふる郷や本のさとりの都なるらん
まちをしみ−さきちるはなの−ふるさとや−もとのさとりの−みやこなるらむ |
01016 |
未入力 正徹 (xxx)
をさまれといふは中中立ちかへり事新しき御代の年かな
をさまれと−いふはなかなか−たちかへり−ことあたらしき−みよのとしかな |
01017 |
未入力 正徹 (xxx)
今年より今年よりとそいはれけるねかひおほかる世をいはふとて
ことしより−ことしよりとそ−いはれける−ねかひおほかる−よをいはふとて |
01018 |
未入力 正徹 (xxx)
豊年の春としらする民の戸を明けてや今夜雪をみるらん
とよとしの−はるとしらする−たみのとを−あけてやこよひ−ゆきをみるらむ |
01019 |
未入力 正徹 (xxx)
うちむれていさみにゆかん諸人もいさみある世のけふの白馬
うちむれて−いさみにゆかむ−もろひとも−いさみあるよの−けふのあをうま |
01020 |
未入力 正徹 (xxx)
諸人の春の初のことふきに行末あへる御代の年かな
もろひとの−はるのはしめの−ことふきに−ゆくすゑあへる−みよのとしかな |
01021 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくらむかふ硯の水の上にちらんこと葉の花そすくなき
やまさくら−むかふすすりの−みつのうへに−ちらむことはの−はなそすくなき |
01022 |
未入力 正徹 (xxx)
霞むなりいつくの花のおくよりか匂にもれて鐘きこゆらん
かすむなり−いつくのはなの−おくよりか−にほひにもれて−かねきこゆらむ |
01023 |
未入力 正徹 (xxx)
百敷にのほるや春のつかさめし筆のつかとる人もかしこし
ももしきに−のほるやはるの−つかさめし−ふてのつかとる−ひともかしこし |
01024 |
未入力 正徹 (xxx)
新桑の木の目は春のまゆこもりいふせくもあらす遊ふ糸ゆふ
にひくはの−このめははるの−まゆこもり−いふせくもあらす−あそふいとゆふ |
01025 |
未入力 正徹 (xxx)
見すもあらぬ心にとふもこたへぬは旅ねむなしき春のよの夢
みすもあらぬ−こころにとふも−こたへぬは−たひねむなしき−はるのよのゆめ |
01026 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜のみしかくもゆる灯の色さへかへの草となり行く
はるのよの−みしかくもゆる−ともしひの−いろさへかへの−くさとなりゆく |
01027 |
未入力 正徹 (xxx)
すか莚なかく成行く日にそへてしきしのふ夜の夢の短さ
すかむしろ−なかくなりゆく−ひにそへて−しきしのふよの−ゆめのみしかさ |
01028 |
未入力 正徹 (xxx)
最上川岸の柳のいな莚夢はよそなる春の舟をさ
もかみかは−きしのやなきの−いなむしろ−ゆめはよそなる−はるのふなをさ |
01029 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川の車にかけし行末とや苗代水もめくりきぬらん
うちかはの−くるまにかけし−ゆくへとや−なはしろみつも−めくりきぬらむ |
01030 |
未入力 正徹 (xxx)
閨ちかく梅かかすなり鴬もおきいつる花の床や立ちうき
ねやちかく−うめかかすなり−うくひすも−おきいつるはなの−とこやたちうき |
01031 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上に春をしたふやあまを舟空にもさしてつるる雁かね
なみのうへに−はるをしたふや−あまをふね−そらにもさして−つるるかりかね |
01032 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑてこそさくに逢ひぬれ昔せしわか兼言の春の初花
うゑてこそ−さくにあひぬれ−むかしせし−わかかねことの−はるのはつはな |
01033 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野山あかぬ心をしをりにてわけ入る花は見ぬかたもなし
よしのやま−あかぬこころを−しをりにて−わけいるはなは−みぬかたもなし |
01034 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花の陰まてゆかぬ衣手に匂ひにあまる春の山風
さくはなの−かけまてゆかぬ−ころもてに−にほひにあまる−はるのやまかせ |
01035 |
未入力 正徹 (xxx)
たちそははやかてを消えよ白雲にまかへはつへき山桜かは
たちそはは−やかてをきえよ−しらくもに−まかへはつへき−やまさくらかは |
01036 |
未入力 正徹 (xxx)
けふも又春はうき世の外にきてあへる花かとなかめくらしつ
けふもまた−はるはうきよの−ほかにきて−あへるはなかと−なかめくらしつ |
01037 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらぬまも枝に青葉のかすそひて盛過行く花の色かな
ちらぬまも−えたにあをはの−かすそひて−さかりすきゆく−はなのいろかな |
01038 |
未入力 正徹 (xxx)
よきて吹く風はありとも心からととまらしとや花のちるらん
よきてふく−かせはありとも−こころから−ととまらしとや−はなのちるらむ |
01039 |
未入力 正徹 (xxx)
空かけて雲のかけはしわたるなりさくや吉野と小泊瀬の花
そらかけて−くものかけはし−わたるなり−さくやよしのと−をはつせのはな |
01040 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にてみてるはくるし桜花さきそろはぬを盛とや見ん
このよにて−みてるはくるし−さくらはな−さきそろはぬを−さかりとやみむ |
01041 |
未入力 正徹 (xxx)
跡とめぬ雲にまかふにしるかりきうき世に花は久しからしと
あととめぬ−くもにまかふに−しるかりき−うきよにはなは−ひさしからしと |
01042 |
未入力 正徹 (xxx)
人とはぬしかの花その昔たにあれしもしらすさける春かな
ひととはぬ−しかのはなその−むかしたに−あれしもしらす−さけるはるかな |
01043 |
未入力 正徹 (xxx)
せめてふけ花の手枕よのつねのすきまの風と思ふはかりは
せめてふけ−はなのたまくら−よのつねの−すきまのかせと−おもふはかりは |
01044 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみなとうき夕暮そみし花のかたみの雲をちらす山風
さのみなと−うきゆふくれそ−みしはなの−かたみのくもを−ちらすやまかせ |
01045 |
未入力 正徹 (xxx)
めかれせぬいつの人まも時過きてうつろひはつる花の春風
めかれせぬ−いつのひとまも−ときすきて−うつろひはつる−はなのはるかせ |
01046 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねなる花の香さそふ夕風も今朝よりふかき御吉のの山
たかねなる−はなのかさそふ−ゆふかせも−けさよりふかき−みよしののやま |
01047 |
未入力 正徹 (xxx)
咲くままに花しちらすは白雲の消えせぬ年を立ちやかさねん
さくままに−はなしちらすは−しらくもの−きえせぬとしを−たちやかさねむ |
01048 |
未入力 正徹 (xxx)
物ことにおとろふる世は色もかもむかしの花の程やなからむ
ものことに−おとろふるよは−いろもかも−むかしのはなの−ほとやなからむ |
01049 |
未入力 正徹 (xxx)
又そみる花も今年は老か世に開きあひかたくさそおもふらん
またそみる−はなもことしは−おいかよに−さきあひかたく−さそおもふらむ |
01050 |
未入力 正徹 (xxx)
見てもしれ花もうき世に宿かりて風まつ程の春の盛を
みてもしれ−はなもうきよに−やとかりて−かせまつほとの−はるのさかりを |
01051 |
未入力 正徹 (xxx)
年年に老のすかたも面なれて花にはつへき心たになし
としとしに−おいのすかたも−おもなれて−はなにはつへき−こころたになし |
01052 |
未入力 正徹 (xxx)
花の色もなとか此世におはさらむ空に月日の光をそみる
はなのいろも−なとかこのよに−おはさらむ−そらにつきひの−ひかりをそみる |
01053 |
未入力 正徹 (xxx)
さくとたにおもひ出さて忘れなん花のうき世の春の山風
さくとたに−おもひいたさて−わすれなむ−はなのうきよの−はるのやまかせ |
01054 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとに朽ちゆく色をみせしとや遠くも風の花さそふらん
このもとに−くちゆくいろを−みせしとや−とほくもかせの−はなさそふらむ |
01055 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑはせよ花の木玉のよふこ鳥山路まよはす見ん人のため
こゑはせよ−はなのこたまの−よふことり−やまちまよはす−みむひとのため |
01056 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりいてむ花の雪気は空晴れて梢にあらき春風そふく
ふりいてむ−はなのゆきけは−そらはれて−こすゑにあらき−はるかせそふく |
01057 |
未入力 正徹 (xxx)
枝かくす雲かさなりて高砂の松の木立そ花のままなる
えたかくす−くもかさなりて−たかさこの−まつのこたちそ−はなのままなる |
01058 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかり誰も心は山にありておもひそよらぬ春のうらなみ
はなさかり−たれもこころは−やまにありて−おもひそよらぬ−はるのうらなみ |
01059 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟初瀬しら浪をりかけて桜にたかき春の川風
あまをふね−はつせしらなみ−をりかけて−さくらにたかき−はるのかはかせ |
01060 |
未入力 正徹 (xxx)
網代木にいさよふ花の浪越えて八十うち山にちるさくらかな
あしろきに−いさよふはなの−なみこえて−やそうちやまに−ちるさくらかな |
01061 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空漕きゆく舟の白浪は散りかふ花に春の雁かね
あまつそら−こきゆくふねの−しらなみは−ちりかふはなに−はるのかりかね |
01062 |
未入力 正徹 (xxx)
此ころや色も匂も初瀬女かつくるゆふ花花にけたなむ
このころや−いろもにほひも−はつせめか−つくるゆふはな−はなにけたなむ |
01063 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまたかた待つ比の山さくら枝をわけてや花もいそかむ
はるはまた−かたまつころの−やまさくら−えたをわけてや−はなもいそかむ |
01064 |
未入力 正徹 (xxx)
待遠の花を心にかけよとや今朝嶺こえてきさらきの雲
まちとほの−はなをこころに−かけよとや−けさみねこえて−きさらきのくも |
01065 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまた立ちそふ嶺の雪かけて花待遠にさゆるしら雲
はるはまた−たちそふみねの−ゆきかけて−はなまちとほに−さゆるしらくも |
01066 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら一木は匂へおそくとも待ちそろへたる花はなくとも
やまさくら−ひときはにほへ−おそくとも−まちそろへたる−はなはなくとも |
01067 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと舟おひてなきさのうきねより猶いそかるる山桜かな
みなとふね−おひてなきさの−うきねより−なほいそかるる−やまさくらかな |
01068 |
未入力 正徹 (xxx)
さきやらす雨もふらなんと花ゆゑにくもる契そ先待たれける
さきやらす−あめもふらなむと−はなゆゑに−くもるちきりそ−まつまたれける |
01069 |
未入力 正徹 (xxx)
さかぬまをいそく心のいく度か花も匂はぬ山路こゆらん
さかぬまを−いそくこころの−いくたひか−はなもにほはぬ−やまちこゆらむ |
01070 |
未入力 正徹 (xxx)
おそくとふ人ならはこそ待佗ひて恨みもやらめ春のはつ花
おそくとふ−ひとならはこそ−まちわひて−うらみもやらめ−はるのはつはな |
01071 |
未入力 正徹 (xxx)
さもあらぬ心なかさの行末とや老いても花の猶またるらん
さもあらぬ−こころなかさの−ゆくへとや−おいてもはなの−なほまたるらむ |
01072 |
未入力 正徹 (xxx)
いそかすや人まつさ夜の更かたにならひ久しき花の日数は
いそかすや−ひとまつさよの−ふけかたに−ならひひさしき−はなのひかすは |
01073 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花を待つとせしまの有明にたくひつれなき峰の白雲
さくはなを−まつとせしまの−ありあけに−たくひつれなき−みねのしらくも |
01074 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら咲く遠山守の使しも道さまたけの花やみるらん
さくらさく−とほやまもりの−つかひしも−みちさまたけの−はなやみるらむ |
01075 |
未入力 正徹 (xxx)
又そあらん花待つ山の時鳥色音をかへむ心つくしは
またそあらむ−はなまつやまの−ほとときす−いろねをかへむ−こころつくしは |
01076 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねしよいつくの春も桜花待かね山に秋風そふく
たつねしよ−いつくのはるも−さくらはな−まちかねやまに−あきかせそふく |
01077 |
未入力 正徹 (xxx)
けふ見てのおなし山路の時鳥待ちかさぬへき花の陰かな
けふみての−おなしやまちの−ほとときす−まちかさぬへき−はなのかけかな |
01078 |
未入力 正徹 (xxx)
偽の雲のみ引きてかさなれと嶺のさくらそ下につれなき
いつはりの−くものみひきて−かさなれと−みねのさくらそ−したにつれなき |
01079 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさをならひやすらむ初桜花まつ春の山郭公
つれなさを−ならひやすらむ−はつさくら−はなまつはるの−やまほとときす |
01080 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくらたのめてかかるしら雲もまた偽のはれねゆふくれ
やまさくら−たのめてかかる−しらくもも−またいつはりの−はれねゆふくれ |
01081 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてか花よりも猶待とほに老の命をのへていそかむ
いつまてか−はなよりもなほ−まちとほに−おいのいのちを−のへていそかむ |
01082 |
未入力 正徹 (xxx)
けふもみすうきたる雲の足たゆく急雨はこふ山桜かな
けふもみす−うきたるくもの−あしたゆく−むらさめはこふ−やまさくらかな |
01083 |
未入力 正徹 (xxx)
いく春の花の下紐なかき日にめくりあひては心とくらむ
いくはるの−はなのしたひも−なかきひに−めくりあひては−こころとくらむ |
01084 |
未入力 正徹 (xxx)
時をしる一木なからも心とき枝にや花の今朝はみゆらん
ときをしる−ひときなからも−こころとき−えたにやはなの−けさはみゆらむ |
01085 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふなり花の下紐なかき日にかつとけわたる春の山かせ
にほふなり−はなのしたひも−なかきひに−かつとけわたる−はるのやまかせ |
01086 |
未入力 正徹 (xxx)
開出てぬかそいろとなる雨をうけて先このかみの春の初花
さきいてぬ−かそいろとなる−あめをうけて−まつこのかみの−はるのはつはな |
01087 |
未入力 正徹 (xxx)
とくおそく世はさまさまに待つ人も心そろはぬ花の下ひも
とくおそく−よはさまさまに−まつひとも−こころそろはぬ−はなのしたひも |
01088 |
未入力 正徹 (xxx)
過きにけりおもへは程も夏桜去年見し山の春の初花
すきにけり−おもへはほとも−なつさくら−こそみしやまの−はるのはつはな |
01089 |
未入力 正徹 (xxx)
見すしらすおよはぬ里に一枝もあまりて匂へ初さくら花
みすしらす−およはぬさとに−ひとえたも−あまりてにほへ−はつさくらはな |
01090 |
未入力 正徹 (xxx)
消えはてしたかねのみ雪又見えて世はのとけきや春の初花
きえはてし−たかねのみゆき−またみえて−よはのとけきや−はるのはつはな |
01091 |
未入力 正徹 (xxx)
開きいつる花の色香の初染は人の心と春やしるらむ
さきいつる−はなのいろかの−はつそめは−ひとのこころと−はるやしるらむ |
01092 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花にあへるを春の光とや今朝は霞も色にそふらん
さくはなに−あへるをはるの−ひかりとや−けさはかすみも−いろにそふらむ |
01093 |
未入力 正徹 (xxx)
初はなにたつや霞のうす衣つま吹きかへす春の山風
はつはなに−たつやかすみの−うすころも−つまふきかへす−はるのやまかせ |
01094 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら花の下紐ときかけて苔の莚に誰をまつらん
やまさくら−はなのしたひも−ときかけて−こけのむしろに−たれをまつらむ |
01095 |
未入力 正徹 (xxx)
しら雲の八重山遠く匂ふなり逢ふをかきりの花の春風
しらくもの−やへやまとほく−にほふなり−あふをかきりの−はなのはるかせ |
01096 |
未入力 正徹 (xxx)
桜かり舟出してけり此ままに蓬かしまの花やたつねん
さくらかり−ふなてしてけり−このままに−よもきかしまの−はなやたつねむ |
01097 |
未入力 正徹 (xxx)
おくれ猶また花の香もととまらぬ山路暮行く袖の月影
おくれなほ−またはなのかも−ととまらぬ−やまちくれゆく−そてのつきかけ |
01098 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら初かり衣たつ日より花の香むかふ袖のはる風
やまさくら−はつかりころも−たつひより−はなのかむかふ−そてのはるかせ |
01099 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかく花にあはすは帰らしと我そ入りにし雲のかよひち
やまふかく−はなにあはすは−かへらしと−われそいりにし−くものかよひち |
01100 |
未入力 正徹 (xxx)
花の香の袖に匂ふをしるへにて霞にまよふもすの草茎
はなのかの−そてににほふを−しるへにて−かすみにまよふ−もすのくさくき |
01101 |
未入力 正徹 (xxx)
行くもをし遠山桜めにかけていそくも浪の花の舟路は
ゆくもをし−とほやまさくら−めにかけて−いそくもなみの−はなのふなちは |
01102 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花のありかやいつこ白雲の空にをしへよかよふまほろし
さくはなの−ありかやいつこ−しらくもの−そらにをしへよ−かよふまほろし |
01103 |
未入力 正徹 (xxx)
おくる霞のま袖ふりはへて山路にあふも花のかそする
かせおくる−かすみのまそて−ふりはへて−やまちにあふも−はなのかそする |
01104 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花つつく山路を分行けは今朝そ雲井をかよふまほろし
さくらはな−つつくやまちを−わけゆけは−けさそくもゐを−かよふまほろし |
01105 |
未入力 正徹 (xxx)
尋行くいつくの花ももろこしの吉野の奥にさゆる白雲
たつねゆく−いつくのはなも−もろこしの−よしののおくに−さゆるしらくも |
01106 |
未入力 正徹 (xxx)
もろこしの吉野とおもふ花もなし秋津島ねをつくす山路に
もろこしの−よしのとおもふ−はなもなし−あきつしまねを−つくすやまちに |
01107 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花のやとりそ遠き分けつくす山路の鳥の声にまかせて
さくはなの−やとりそとほき−わけつくす−やまちのとりの−こゑにまかせて |
01108 |
未入力 正徹 (xxx)
それなからむなしき雲に分暮れぬ有りてつれなき山さくらかな
それなから−むなしきくもに−わけくれぬ−ありてつれなき−やまさくらかな |
01109 |
未入力 正徹 (xxx)
明日や見ん山ふみしても今夜まて桜にあらぬ雲の下ふし
あすやみむ−やまふみしても−こよひまて−さくらにあらぬ−くものしたふし |
01110 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の雲にあへるをしるへにて花を高根の月に尋ねん
あかつきの−くもにあへるを−しるへにて−はなをたかねの−つきにたつねむ |
01111 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろふる我か身の春の面影にのこすをうしと花やいとはん
おとろふる−わかみのはるの−おもかけに−のこすをうしと−はなやいとはむ |
01112 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はまてかすめる花の朝くもりあかてや花にめをきらすらん
のきはまて−かすめるはなの−あさくもり−あかてやはなに−めをきらすらむ |
01113 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑそうき花をみるめのまへわたりかこたんとすれは過くる松風
こゑそうき−はなをみるめの−まへわたり−かこたむとすれは−すくるまつかせ |
01114 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへもなれしこと葉の花の陰色そふ春の友にあひぬる
いにしへも−なれしことはの−はなのかけ−いろそふはるの−ともにあひぬる |
01115 |
未入力 正徹 (xxx)
二なき契もしらす山さくらなとをちこちの人に見ゆらん
ふたつなき−ちきりもしらす−やまさくら−なとをちこちの−ひとにみゆらむ |
01116 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝ある花のをられすはみつともいはし見ぬ人のため
いしはしる−たきあるはなの−をられすは−みつともいはし−みぬひとのため |
01117 |
未入力 正徹 (xxx)
花をのみみぬ人おほし朝霞たちましはるも都なりけり
はなをのみ−みぬひとおほし−あさかすみ−たちましはるも−みやこなりけり |
01118 |
未入力 正徹 (xxx)
山桜花に見るめをかけぬとやうら風ならて浪はちるらん
やまさくら−はなにみるめを−かけぬとや−うらかせならて−なみはちるらむ |
01119 |
未入力 正徹 (xxx)
人ならぬ木のめもなへてみる世とや太山の春の花はさくらん
ひとならぬ−このめもなへて−みるよとや−みやまのはるの−はなはさくらむ |
01120 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめや去年見し花の春の友また世にあるもつれぬ習を
しるらめや−こそみしはなの−はるのとも−またよにあるも−つれぬならひを |
01121 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花いかにあひみる心ともしらてや人にさきてちるらん
さくらはな−いかにあひみる−こころとも−しらてやひとに−さきてちるらむ |
01122 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねきてけふそしつかにむかひみる千世もへぬへき花盛かな
たつねきて−けふそしつかに−むかひみる−ちよもへぬへき−はなさかりかな |
01123 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかなる色こそくもれ桜花みね世の春をおもふ涙に
さやかなる−いろこそくもれ−さくらはな−みねよのはるを−おもふなみたに |
01124 |
未入力 正徹 (xxx)
霞みくる老の空めといふ事はたた雲とみる花の色かも
かすみくる−おいのそらめと−いふことは−たたくもとみる−はなのいろかも |
01125 |
未入力 正徹 (xxx)
おも影も梢の月にかすむなり花に見し世の春の夜の夢
おもかけも−こすゑのつきに−かすむなり−はなにみしよの−はるのよのゆめ |
01126 |
未入力 正徹 (xxx)
日をかさねなれにし後はめを開きめを閉つれとも花そみえける
ひをかさね−なれにしのちは−めをひらき−めをとつれとも−はなそみえける |
01127 |
未入力 正徹 (xxx)
山桜にほひも色もわかものとみるらん霞む木のもとの宿
やまさくら−にほひもいろも−わかものと−みるらむかすむ−このもとのやと |
01128 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きはらふ花の朝露置きもあへす消えて世にふる雪の山風
ふきはらふ−はなのあさつゆ−おきもあへす−きえてよにふる−ゆきのやまかせ |
01129 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかき夜の村雨かかる朝しめりまた開きしらぬ花の色かな
ふかきよの−むらさめかかる−あさしめり−またさきしらぬ−はなのいろかな |
01130 |
未入力 正徹 (xxx)
露分けて山桜戸を出つる日のまれなる色そ花にうつろふ
つゆわけて−やまさくらとを−いつるひの−まれなるいろそ−はなにうつろふ |
01131 |
未入力 正徹 (xxx)
夕はえの色なる露も秋にして花そ身にしむ宿の春風
ゆふはえの−いろなるつゆも−あきにして−はなそみにしむ−やとのはるかせ |
01132 |
未入力 正徹 (xxx)
春も猶ひとりある人のいねかては月にかすめる花の下陰
はるもなほ−ひとりあるひとの−いねかては−つきにかすめる−はなのしたかけ |
01133 |
未入力 正徹 (xxx)
見すや人木立も朽ちてかたふきぬ花こそ老を隔てさりけれ
みすやひと−こたちもくちて−かたふきぬ−はなこそおいを−へたてさりけれ |
01134 |
未入力 正徹 (xxx)
けふさくらめかれせぬまもそふ老を思ひも出てぬ花の陰かな
けふさくら−めかれせぬまも−そふおいを−おもひもいてぬ−はなのかけかな |
01135 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑし植ゑははや木高かれ山桜白雲まかふ花とみるまて
うゑしうゑは−はやこたかかれ−やまさくら−しらくもまかふ−はなとみるまて |
01136 |
未入力 正徹 (xxx)
かたみとも見んともしらす老か世にたた花なれはうゑてけるかな
かたみとも−みむともしらす−おいかよに−たたはななれは−うゑてけるかな |
01137 |
未入力 正徹 (xxx)
なからふる年をはならへ老か世にうゑおく花の行末の春
なからふる−としをはならへ−おいかよに−うゑおくはなの−ゆくすゑのはる |
01138 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花うゑけん時のしるしさへふる野の杉や生ひかはるらん
さくらはな−うゑけむときの−しるしさへ−ふるののすきや−おひかはるらむ |
01139 |
未入力 正徹 (xxx)
植ゑおくもよしなしさくら末の世の人のおもひの種をあまたに
うゑおくも−よしなしさくら−すゑのよの−ひとのおもひの−たねをあまたに |
01140 |
未入力 正徹 (xxx)
誰もとへ人もおもひの種うゑし花もむくらの宿の夕暮
たれもとへ−ひともおもひの−たねうゑし−はなもむくらの−やとのゆふくれ |
01141 |
未入力 正徹 (xxx)
うきなから春にあひみし老か身の年をやうゑて花にゆつらん
うきなから−はるにあひみし−おいかみの−としをやうゑて−はなにゆつらむ |
01142 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかへてみるともしらし桜花老いてうゑおく行末のはる
みをかへて−みるともしらし−さくらはな−おいてうゑおく−ゆくすゑのはる |
01143 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへり花の都のつとにおきてみるさへなれし友そ恋しき
たちかへり−はなのみやこの−つとにおきて−みるさへなれし−ともそこひしき |
01144 |
未入力 正徹 (xxx)
此春そかさしても見む桜花けには四十の老そかくれん
このはるそ−かさしてもみむ−さくらはな−けにはよそちの−おいそかくれむ |
01145 |
未入力 正徹 (xxx)
かくるらむよそめそしらぬさくら花折りかさしても老は忘れす
かくるらむ−よそめそしらぬ−さくらはな−をりかさしても−おいはわすれす |
01146 |
未入力 正徹 (xxx)
捨てしより心まかせの身にしあれと花ゆゑ行かぬかたそおほかる
すてしより−こころまかせの−みにしあれと−はなゆゑゆかぬ−かたそおほかる |
01147 |
未入力 正徹 (xxx)
折りてさす花そ久しき玉たれのかめの上なる山さくらかも
をりてさす−はなそひさしき−たまたれの−かめのうへなる−やまさくらかも |
01148 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふともあはれ見ぬ世の春の花あかぬ色香や我を忘れむ
おもふとも−あはれみぬよの−はるのはな−あかぬいろかや−われをわすれむ |
01149 |
未入力 正徹 (xxx)
さきにほふ花の春日の影もよし夜よしといひし月は霞みて
さきにほふ−はなのはるひの−かけもよし−よよしといひし−つきはかすみて |
01150 |
未入力 正徹 (xxx)
散りちらすわくるま袖に匂ふなりさらぬかさしの花の山ふみ
ちりちらす−わくるまそてに−にほふなり−さらぬかさしの−はなのやまふみ |
01151 |
未入力 正徹 (xxx)
梓弓この家さくら末たわに心ひかるる花さかりかな
あつさゆみ−このいへさくら−すゑたわに−こころひかるる−はなさかりかな |
01152 |
未入力 正徹 (xxx)
ほとそなき散る桜あれは開くといふことのはたかふ花の日数は
ほとそなき−ちるさくらあれは−さくといふ−ことのはたかふ−はなのひかすは |
01153 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら折りかさしても花は花老は老とやかくれなからん
やまさくら−をりかさしても−はなははな−おいはおいとや−かくれなからむ |
01154 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身をかくさんためと成りぬへし手折らて花を飽くまてやみん
おいかみを−かくさむためと−なりぬへし−たをらてはなを−あくまてやみむ |
01155 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく花は今年も春の夢見はてん月にきゆる白雲
あらしふく−はなはことしも−はるのゆめ−みはてむつきに−きゆるしらくも |
01156 |
未入力 正徹 (xxx)
山路行くたもとににほふ花の枝を朝露なから折りてかささむ
やまちゆく−たもとににほふ−はなのえを−あさつゆなから−をりてかささむ |
01157 |
未入力 正徹 (xxx)
手折りつつかさす桜の花のかをうつるは老の袖にいとはす
たをりつつ−かさすさくらの−はなのかを−うつるはおいの−そてにいとはす |
01158 |
未入力 正徹 (xxx)
をとめ子かかさしの桜かつ散りて雲の袖ふる山風そふく
をとめこか−かさしのさくら−かつちりて−くものそてふる−やまかせそふく |
01159 |
未入力 正徹 (xxx)
開きみちて春はありとしある人のかさしの花の都ならすや
さきみちて−はるはありとし−あるひとの−かさしのはなの−みやこならすや |
01160 |
未入力 正徹 (xxx)
あすか川花のかふれて行く袖の匂の淵よせになかはりそ
あすかかは−はなのかふれて−ゆくそての−にほひのふちよ−せになかはりそ |
01161 |
未入力 正徹 (xxx)
心なく分入る苔の衣たに中にあらすと花やいとはむ
こころなく−わけいるこけの−ころもたに−なかにあらすと−はなやいとはむ |
01162 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらはうし雲をいく村あつめてか花の市なす春の山踏
ちらはうし−くもをいくむら−あつめてか−はなのいちなす−はるのやまふみ |
01163 |
未入力 正徹 (xxx)
友と見て市のことくに立つ雲をいさわけいらん花さくら人
ともとみて−いちのことくに−たつくもを−いさわけいらむ−はなさくらひと |
01164 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの行く袖すりの花のかをいとふにもあらししめむともせし
やまかつの−ゆくそてすりの−はなのかを−いとふにもあらし−しめむともせし |
01165 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめや哀むかしの春の花身も盛にてみしそ忘れぬ
しるらめや−あはれむかしの−はるのはな−みもさかりにて−みしそわすれぬ |
01166 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染に打ちやつすとも色みえぬにほひを花の袖とまかへん
すみそめに−うちやつすとも−いろみえぬ−にほひをはなの−そてとまかへむ |
01167 |
未入力 正徹 (xxx)
身におはぬ花をはしひて手折るとも猶家つととえこそ思はね
みにおはぬ−はなをはしひて−たをるとも−なほいへつとと−えこそおもはね |
01168 |
未入力 正徹 (xxx)
手折りつつかさす桜の色にこそいとと老いぬる年はかくれね
たをりつつ−かさすさくらの−いろにこそ−いととおいぬる−としはかくれね |
01169 |
未入力 正徹 (xxx)
心なくたをれる花の哀をもしらぬ翁といとと成行く
こころなく−たをれるはなの−あはれをも−しらぬおきなと−いととなりゆく |
01170 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝をしのきて手折りこし枝とや花の浪もちるらん
いしはしる−たきをしのきて−たをりこし−えたとやはなの−なみもちるらむ |
01171 |
未入力 正徹 (xxx)
契あれやたをれる枝にのこりきてわか閏にとく花の下ひも
ちきりあれや−たをれるえたに−のこりきて−わかねやにとく−はなのしたひも |
01172 |
未入力 正徹 (xxx)
折りかさす花も時のまおとろへて果はかくれぬ老の春かな
をりかさす−はなもときのま−おとろへて−はてはかくれぬ−おいのはるかな |
01173 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花折りてかささは中中に老いぬる人としるからむかも
さくらはな−をりてかささは−なかなかに−おいぬるひとと−しるからむかも |
01174 |
未入力 正徹 (xxx)
色も香もまれなる花をかた人に頼みてまつもとはぬ宿かな
いろもかも−まれなるはなを−かたひとに−たのみてまつも−とはぬやとかな |
01175 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとにけふうちむれてめかれせぬ花は誰にか心そむらん
このもとに−けふうちむれて−めかれせぬ−はなはたれにか−こころそむらむ |
01176 |
未入力 正徹 (xxx)
やとりかす花のことの葉ならなくに旅ねしつけき松風の声
やとりかす−はなのことのは−ならなくに−たひねしつけき−まつかせのこゑ |
01177 |
未入力 正徹 (xxx)
あかて行く花にかくれとかけさそふ岩まの水やさかのほるらん
あかてゆく−はなにかくれと−かけさそふ−いはまのみつや−さかのはるらむ |
01178 |
未入力 正徹 (xxx)
われも見て花もろともに老いぬれと若枝たつなり行末の春
われもみて−はなもろともに−おいぬれと−わかえたつなり−ゆくすゑのはる |
01179 |
未入力 正徹 (xxx)
盛なる花のよはひを思ふには老をや春の友とみさらん
さかりなる−はなのよはひを−おもふには−おいをやはるの−ともとみさらむ |
01180 |
未入力 正徹 (xxx)
春をへし花はすかたもおとろへすわれをやもとの友とみさらん
はるをへし−はなはすかたも−おとろへす−われをやもとの−ともとみさらむ |
01181 |
未入力 正徹 (xxx)
老いぬれはいとふならひを咲く花の心もしらすなるる春かな
おいぬれは−いとふならひを−さくはなの−こころもしらす−なるるはるかな |
01182 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふとも花は春にやそひはてんわかれぬへくも老いにけるかな
としふとも−はなははるにや−そひはてむ−わかれぬへくも−おいにけるかな |
01183 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる花に夢の枕はならへねと友なひきてし身とそ驚く
ちるはなに−ゆめのまくらは−ならへねと−ともなひきてし−みとそおとろく |
01184 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身を花は友とも思はてやかつは散行く庭となるらん
おいかみを−はなはともとも−おもはてや−かつはちりゆく−にはとなるらむ |
01185 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れなむ花に日かすのへにけるもいさしら雪の宿そふる郷
わすれなむ−はなにひかすの−へにけるも−いさしらゆきの−やとそふるさと |
01186 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねきてちるまて花を水の江のうら島か子の世をやへにけん
たつねきて−ちるまてはなを−みつのえの−うらしまかこの−よをやへにけむ |
01187 |
未入力 正徹 (xxx)
散るまては花にかへらし春の風我か家さくら咲くと告けすは
ちるまては−はなにかへらし−はるのかせ−わかいへさくら−さくとつけすは |
01188 |
未入力 正徹 (xxx)
帰らしなうつろふまての花の陰日数かそへて人はまつとも
かへらしな−うつろふまての−はなのかけ−ひかすかそへて−ひとはまつとも |
01189 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷を立ちぬる月のけふ出ててなれしもあかぬ花の陰かな
ふるさとを−たちぬるつきの−けふいてて−なれしもあかぬ−はなのかけかな |
01190 |
未入力 正徹 (xxx)
あれまくも誰惜むらん花の陰日数うつろふ春のふる郷
あれまくも−たれをしむらむ−はなのかけ−ひかすうつろふ−はるのふるさと |
01191 |
未入力 正徹 (xxx)
見る人の心の色とちる花のうつれはかはる日数をそつむ
みるひとの−こころのいろと−ちるはなの−うつれはかはる−ひかすをそつむ |
01192 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとはうつろふ花の古郷にのこる日数や我を待つらん
このもとは−うつろふはなの−ふるさとに−のこるひかすや−われをまつらむ |
01193 |
未入力 正徹 (xxx)
雪わくる山路まよふな花みつつ日をふる郷の春のよの夢
ゆきわくる−やまちまよふな−はなみつつ−ひをふるさとの−はるのよのゆめ |
01194 |
未入力 正徹 (xxx)
暁のわかれもしらし朝霞花と春との中のころもは
あかつきの−わかれもしらし−あさかすみ−はなとはるとの−なかのころもは |
01195 |
未入力 正徹 (xxx)
散過くる比しも花にのこる月いととつれなき在明の空
ちりすくる−ころしもはなに−のこるつき−いととつれなき−ありあけのそら |
01196 |
未入力 正徹 (xxx)
桜花年にまれなる春をおきて時こそ有りけれ曙の空
さくらはな−としにまれなる−はるをおきて−ときこそありけれ−あけほののそら |
01197 |
未入力 正徹 (xxx)
よのつねの鳥のさへつる声ならす此世にも似ぬ花の曙
よのつねの−とりのさへつる−こゑならす−このよにもにぬ−はなのあけほの |
01198 |
未入力 正徹 (xxx)
光みぬ月ともわかす世は花の匂にかすむ春の明ほの
ひかりみぬ−つきともわかす−よははなの−にほひにかすむ−はるのあけほの |
01199 |
未入力 正徹 (xxx)
山の色もうすき霞を匂にて明ほのいそく花鳥のこゑ
やまのいろも−うすきかすみを−にほひにて−あけほのいそく−はなとりのこゑ |
01200 |
未入力 正徹 (xxx)
散らぬまと頼みやはせむ朝露の消えすはありとも花の下風
ちらぬまと−たのみやはせむ−あさつゆの−きえすはありとも−はなのしたかせ |
01201 |
未入力 正徹 (xxx)
木のまよりいつる日影にみかくなり雲に玉ゐる花の朝露
このまより−いつるひかけに−みかくなり−くもにたまゐる−はなのあさつゆ |
01202 |
未入力 正徹 (xxx)
香こそちれ露なき花の朝しめり枝うちなひく風ゆるくして
かこそちれ−つゆなきはなの−あさしめり−えたうちなひく−かせゆるくして |
01203 |
未入力 正徹 (xxx)
みかけ猶朝露かすむ花のみに日数さしいつる春の白玉
みかけなほ−あさつゆかすむ−はなのみに−ひかすさしいつる−はるのしらたま |
01204 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの花の梢にいつる日の朝露みかく影なかすみそ
やまのはの−はなのこすゑに−いつるひの−あさつゆみかく−かけなかすみそ |
01205 |
未入力 正徹 (xxx)
山姫のあさ露分けて立ちいつるたもとか花のにほふ霞は
やまひめの−あさつゆわけて−たちいつる−たもとかはなの−にほふかすみは |
01206 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れやらてむへ山風も雪とふる花にやとらぬ入相のこゑ
くれやらて−うへやまかせも−ゆきとふる−はなにやとらぬ−いりあひのこゑ |
01207 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら花吹きよわる夕嵐あすのなこりや猶のこすらん
やまさくら−はなふきよわる−ゆふあらし−あすのなこりや−なほのこすらむ |
01208 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染の夕かけ草の色もなし光にてらす花の木の本
すみそめの−ゆふかけくさの−いろもなし−ひかりにてらす−はなのこのもと |
01209 |
未入力 正徹 (xxx)
花盛さやかにみかく星たにもまとほにかすむ春の夕やみ
はなさかり−さやかにみかく−ほしたにも−まとほにかすむ−はるのゆふやみ |
01210 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人の帰るや道にたとるらんたそかれ時の花の木の本
みしひとの−かへるやみちに−たとるらむ−たそかれときの−はなのこのもと |
01211 |
未入力 正徹 (xxx)
色みえぬたそかれ時はかすめとも花はこたへぬ山風のこゑ
いろみえぬ−たそかれときは−かすめとも−はなはこたへぬ−やまかせのこゑ |
01212 |
未入力 正徹 (xxx)
影みよと花の鏡を暮れぬまの梢にかけていつる月かな
かけみよと−はなのかかみを−くれぬまの−こすゑにかけて−いつるつきかな |
01213 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりあふ花の木のまの夕月夜又いつの世の春かかからむ
めくりあふ−はなのこのまの−ゆふつくよ−またいつのよの−はるかかからむ |
01214 |
未入力 正徹 (xxx)
心あれや朧月夜の花の色の明くるををしむ霞はかりは
こころあれや−おほろつきよの−はなのいろの−あくるををしむ−かすみはかりは |
01215 |
未入力 正徹 (xxx)
夜に広き夜はの嵐の花さかり心におほふ袖はせはくて
よにひろき−よはのあらしの−はなさかり−こころにおほふ−そてはせはくて |
01216 |
未入力 正徹 (xxx)
花もさそよるの思ひの家桜いとへうき世の春の山風
はなもさそ−よるのおもひの−いへさくら−いとへうきよの−はるのやまかせ |
01217 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは花ちる山におもひ入る夢路の雪も深きよの空
かせふけは−はなちるやまに−おもひいる−ゆめちのゆきも−ふかきよのそら |
01218 |
未入力 正徹 (xxx)
深き夜の花の木陰にそむけ置きてともにあはれむ春の灯
ふかきよの−はなのこかけに−そむけおきて−ともにあはれむ−はるのともしひ |
01219 |
未入力 正徹 (xxx)
木の本の雪に光をそへんとや朧月夜に花はちるらむ
このもとの−ゆきにひかりを−そへむとや−おほろつきよに−はなはちるらむ |
01220 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつからさくは雲井にすめるかな花の都の月の宮人
おのつから−さくはくもゐに−すめるかな−はなのみやこの−つきのみやひと |
01221 |
未入力 正徹 (xxx)
世は春の花にかすめる月のかに幾里人の袖のせはけむ
よははるの−はなにかすめる−つきのかに−いくさとひとの−そてのせはけむ |
01222 |
未入力 正徹 (xxx)
色そそふ月も木の間にうつりきて花の香つたふ在明の影
いろそそふ−つきもこのまに−うつりきて−はなのかつたふ−ありあけのかけ |
01223 |
未入力 正徹 (xxx)
光ありと見しは霞の空めにて木の間の月そ花に色そふ
ひかりありと−みしはかすみの−そらめにて−このまのつきそ−はなにいろそふ |
01224 |
未入力 正徹 (xxx)
色もかもけふを盛の花の枝ゆるくはかりの風たにもなし
いろもかも−けふをさかりの−はなのえた−ゆるくはかりの−かせたにもなし |
01225 |
未入力 正徹 (xxx)
さきてちる花のよはひも程なきを盛の色に心とめつつ
さきてちる−はなのよはひも−ほとなきを−さかりのいろに−こころとめつつ |
01226 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の苔空のみとりもひとつにて花開きのほる春の白雲
にはのこけ−そらのみとりも−ひとつにて−はなさきのほる−はるのしらくも |
01227 |
未入力 正徹 (xxx)
開きにほふ嶺のさくらの花かつらあかてそむかふ永き日くらし
さきにほふ−みねのさくらの−はなかつら−あかてそむかふ−なかきひくらし |
01228 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝は猶見し白雲も高からす開きてかたふく峰の桜木
けさはなほ−みししらくもも−たかからす−さきてかたふく−みねのさくらき |
01229 |
未入力 正徹 (xxx)
雨風も心ある年の春なれや日数そちらぬ花にうつろふ
あめかせも−こころあるとしの−はるなれや−ひかすそちらぬ−はなにうつろふ |
01230 |
未入力 正徹 (xxx)
あらかねの土にも天つ白雲のたねはありける花さかりかな
あらかねの−つちにもあまつ−しらくもの−たねはありける−はなさかりかな |
01231 |
未入力 正徹 (xxx)
今年さく若木の桜行末の春にまさらん花をしそ思ふ
ことしさく−わかきのさくら−ゆくすゑの−はるにまさらむ−はなをしそおもふ |
01232 |
未入力 正徹 (xxx)
山風もにほひ色こき白雲のあつきはおくの花盛かも
やまかせも−にほひいろこき−しらくもの−あつきはおくの−はなさかりかも |
01233 |
未入力 正徹 (xxx)
花のえも風さへゆらく玉たれの簾にかかる庭の白雲
はなのえも−かせさへゆらく−たまたれの−すたれにかかる−にはのしらくも |
01234 |
未入力 正徹 (xxx)
桜さく山分衣袖の上に匂ひそおもきはなの下かせ
さくらさく−やまわけころも−そてのうへに−にほひそおもき−はなのしたかせ |
01235 |
未入力 正徹 (xxx)
露そちる花の色香をしめて行く山路の雲の中の衣手
つゆそちる−はなのいろかを−しめてゆく−やまちのくもの−なかのころもて |
01236 |
未入力 正徹 (xxx)
われそうきむかしの花の面影はいととさかりにかはるすかたを
われそうき−むかしのはなの−おもかけは−いととさかりに−かはるすかたを |
01237 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふかぬ春日のとけみ開匂ふ花に心をあはせてそ見る
かせふかぬ−はるひのとけみ−さきにほふ−はなにこころを−あはせてそみる |
01238 |
未入力 正徹 (xxx)
身にしめて春の日くらしむかふとや花の心に秋風の吹く
みにしめて−はるのひくらし−むかふとや−はなのこころに−あきかせのふく |
01239 |
未入力 正徹 (xxx)
朝露はかかれとてしも消えさりし夕の風に散るさくらかな
あさつゆは−かかれとてしも−きえさりし−ゆふへのかせに−ちるさくらかな |
01240 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにせんをはすて山の月の秋かかる桜のさく世なりせは
いかにせむ−をはすてやまの−つきのあき−かかるさくらの−さくよなりせは |
01241 |
未入力 正徹 (xxx)
玉ゆらの花に心をやすめてそ露けき老のさかも残らん
たまゆらの−はなにこころを−やすめてそ−つゆけきおいの−さかものこらむ |
01242 |
未入力 正徹 (xxx)
わか庵は老をなくさの浜ひさし袖によりくる花のしら浪
わかいほは−おいをなくさの−はまひさし−そてによりくる−はなのしらなみ |
01243 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ふれつ老を忘れてなるるをも花はいとはぬならひはかりに
そてふれつ−おいをわすれて−なるるをも−はなはいとはぬ−ならひはかりに |
01244 |
未入力 正徹 (xxx)
をしめとも庭に散りしく花莚それも心をのふる老かな
をしめとも−にはにちりしく−はなむしろ−それもこころを−のふるおいかな |
01245 |
未入力 正徹 (xxx)
春の花都のつとにつつみおく山のかすみを風なおくりそ
はるのはな−みやこのつとに−つつみおく−やまのかすみを−かせなおくりそ |
01246 |
未入力 正徹 (xxx)
うすもののあやなき春の衣かな霞にすける山桜はな
うすものの−あやなきはるの−ころもかな−かすみにすける−やまさくらはな |
01247 |
未入力 正徹 (xxx)
霞かはかねて煙の色なから花に立ちそひし松もうらめし
かすみかは−かねてけふりの−いろなから−はなにたちそひし−まつもうらめし |
01248 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の霞のま袖ふりはへてあかすやたてる花の木の本
さほひめの−かすみのまそて−ふりはへて−あかすやたてる−はなのこのもと |
01249 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとに心なとめそ桜かりかりの此世に匂ふ山かせ
このもとに−こころなとめそ−さくらかり−かりのこのよに−にほふやまかせ |
01250 |
未入力 正徹 (xxx)
紅ににほふか上と見し菊の遠山さくらかすむ君かな
くれなゐに−にほふかうへと−みしきくの−とほやまさくら−かすむきみかな |
01251 |
未入力 正徹 (xxx)
御吉野の出した風そ匂ひくる霞のおくの花盛かも
みよしのの−やましたかせそ−にほひくる−かすみのおくの−はなさかりかも |
01252 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花匂みちくるしほつ山浪も春なる浦風そ吹く
さくらはな−にほひみちくる−しほつやま−なみもはるなる−うらかせそふく |
01253 |
未入力 正徹 (xxx)
榊葉にかけし神代や水も又花の鏡と成りはしめけん
さかきはに−かけしかみよや−みつもまた−はなのかかみと−なりはしめけむ |
01254 |
未入力 正徹 (xxx)
玉くしけあけてそ見まし桜さく遠山鳥のをろの鏡を
たまくしけ−あけてそみまし−さくらさく−とほやまとりの−をろのかかみを |
01255 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海のなきさの桜花もねに帰る白波春なあらしそ
にほのうみの−なきさのさくら−はなもねに−かへるしらなみ−はるなあらしそ |
01256 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑ聞けは古すをいそく鳥もなしまたきも花のねに帰るらん
こゑきけは−ふるすをいそく−とりもなし−またきもはなの−ねにかへるらむ |
01257 |
未入力 正徹 (xxx)
時しもあれおつる梢の花そちる在明の月のわさならねとも
ときしもあれ−おつるこすゑの−はなそちる−ありあけのつきの−わさならねとも |
01258 |
未入力 正徹 (xxx)
白雲のさくらかもとと立行くや盛に花のさきおもるらん
しらくもの−さくらかもとと−たちゆくや−さかりにはなの−さきおもるらむ |
01259 |
未入力 正徹 (xxx)
風ゆるく日はのとけくて開く花の枝もたわわに匂ふ比かな
かせゆるく−ひはのとけくて−さくはなの−えたもたわわに−にほふころかな |
01260 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風そちらはやうしと思ひたつ花の心のたよりなるらむ
ふくかせそ−ちらはやうしと−おもひたつ−はなのこころの−たよりなるらむ |
01261 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬししらぬ花の錦木千つかまて立つ春もなくちらさすもかな
ぬししらぬ−はなのにしきき−ちつかまて−たつはるもなく−ちらさすもかな |
01262 |
未入力 正徹 (xxx)
朝あけの雲の浪分け嶺こえて花の初しほさす日影かな
あさあけの−くものなみわけ−みねこえて−はなのはつしほ−さすひかけかな |
01263 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる霞の衣くれなゐのこ染や花の色かさぬらん
はるのきる−かすみのころも−くれなゐの−こそめやはなの−いろかさぬらむ |
01264 |
未入力 正徹 (xxx)
梢にてうつろひはてし桜花又色かはる庭のはる風
こすゑにて−うつろひはてし−さくらはな−またいろかはる−にはのはるかせ |
01265 |
未入力 正徹 (xxx)
まれにきて此世にほはぬ花のかをしむらん物そ天の羽衣
まれにきて−このよにほはぬ−はなのかを−しむらむものそ−あまのはころも |
01266 |
未入力 正徹 (xxx)
苔むしろ誰かためつらき色みせてうつろふ花の塵つもるらん
こけむしろ−たかためつらき−いろみせて−うつろふはなの−ちりつもるらむ |
01267 |
未入力 正徹 (xxx)
泊瀬山花よりいつる鐘はなとくもる契をよそに告くらむ
はつせやま−はなよりいつる−かねはなと−くもるちきりを−よそにつくらむ |
01268 |
未入力 正徹 (xxx)
散る花の雪の夜さむの衣とや今朝も霞の立ちのこるらん
ちるはなの−ゆきのよさむの−ころもとや−けさもかすみの−たちのこるらむ |
01269 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝なき花をかさしても猶あらはるる老の浪かな
いしはしる−たきなきはなを−かさしても−なほあらはるる−おいのなみかな |
01270 |
未入力 正徹 (xxx)
舟人もはやぬさまつれかさはやのみほの磯山花さかりかも
ふなひとも−はやぬさまつれ−かさはやの−みほのいそやま−はなさかりかも |
01271 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかり世はおしなへて雲にあけ雲にくるるは天つ空かも
はなさかり−よはおしなへて−くもにあけ−くもにくるるは−あまつそらかも |
01272 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりし雲と雨とのかたみかは花の滴ににこる山の井
あかさりし−くもとあめとの−かたみかは−はなのしつくに−にこるやまのゐ |
01273 |
未入力 正徹 (xxx)
海士小舟初せやいつこさく花の雲の浪路にみる山もなし
あまをふね−はつせやいつこ−さくはなの−くものなみちに−みるやまもなし |
01274 |
未入力 正徹 (xxx)
ほのみつる遠山さくら白雲のすすむる花になる心かな
ほのみつる−とほやまさくら−しらくもの−すすむるはなに−なるこころかな |
01275 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら枝のうこくや白雲の今朝わき出つる花の下風
やまさくら−えたのうこくや−しらくもの−けさわきいつる−はなのしたかせ |
01276 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野川高ねの花のかたしろも散らぬにうかふ瀬瀬の白雲
よしのかは−たかねのはなの−かたしろも−ちらぬにうかふ−せせのしらくも |
01277 |
未入力 正徹 (xxx)
をちかたに今朝見し雲のかへらぬを入日や嶺の花になすらん
をちかたに−けさみしくもの−かへらぬを−いりひやみねの−はなになすらむ |
01278 |
未入力 正徹 (xxx)
花なれや日影にちるも雫とはならてそやかて雪に落ちくる
はななれや−ひかけにちるも−しつくとは−ならてそやかて−ゆきにおちくる |
01279 |
未入力 正徹 (xxx)
日影にも消えぬを花と猶や見む風に友まつ雪の木の本
ひかけにも−きえぬをはなと−なほやみむ−かせにともまつ−ゆきのこのもと |
01280 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめつつ木陰にむすふ山の井におもふ心を花やしるらん
なかめつつ−こかけにむすふ−やまのゐに−おもふこころを−はなやしるらむ |
01281 |
未入力 正徹 (xxx)
けふさくらわくともわかし散る花の庭も梢もおなし盛を
けふさくら−わくともわかし−ちるはなの−にはもこすゑも−おなしさかりを |
01282 |
未入力 正徹 (xxx)
わか心春の霞に染めおかはしらぬ野山に色やまよはむ
わかこころ−はるのかすみに−そめおかは−しらぬのやまに−いろやまよはむ |
01283 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑさりしなへて此世の花もしれせはき袂になつる心を
うゑさりし−なへてこのよの−はなもしれ−せはきたもとに−なつるこころを |
01284 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかり深山かくれに音はしてちらぬをいとふ春の風かな
はなさかり−みやまかくれに−おとはして−ちらぬをいとふ−はるのかせかな |
01285 |
未入力 正徹 (xxx)
まてしはしやとる朝露朝風にもろく散りてな花にをしへそ
まてしはし−やとるあさつゆ−あさかせに−もろくちりてな−はなにをしへそ |
01286 |
未入力 正徹 (xxx)
雨風に心あはせて春の花うつろほんとやおもひ立つらん
あめかせに−こころあはせて−はるのはな−うつろはむとや−おもひたつらむ |
01287 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめやあまた日数をさきたてて花におくるる春のかたみを
しるらめや−あまたひかすを−さきたてて−はなにおくるる−はるのかたみを |
01288 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら松よりうつる嵐とも見えぬ緑の花のしらゆき
やまさくら−まつよりうつる−あらしとも−みえぬみとりの−はなのしらゆき |
01289 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとの形見の水のみ草とや花を忍ふの種は生ふらん
このもとの−かたみのみつの−みくさとや−はなをしのふの−たねはおふらむ |
01290 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくらつらき嵐の嶺の雲しをるも形見ちるもゆかりを
やまさくら−つらきあらしの−みねのくも−しをるもかたみ−ちるもゆかりを |
01291 |
未入力 正徹 (xxx)
のこしおく花の鏡は手にたにもとらぬ形見の水からそうき
のこしおく−はなのかかみは−てにたにも−とらぬかたみの−みつからそうき |
01292 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれし花のなき世の雲にふけうきを形見の春の山風
さそはれし−はなのなきよの−くもにふけ−うきをかたみの−はるのやまかせ |
01293 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむなよ花の光をゆつりおきて散りしかたみの有明の月
かすむなよ−はなのひかりを−ゆつりおきて−ちりしかたみの−ありあけのつき |
01294 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花にうつる心やうらむらん去年の桜のふかき面影
さくはなに−うつるこころや−うらむらむ−こそのさくらの−ふかきおもかけ |
01295 |
未入力 正徹 (xxx)
見し色を忘れし花の貌鳥も音に啼く山の春の面影
みしいろを−わすれしはなの−かほとりも−ねになくやまの−はるのおもかけ |
01296 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられね去年のおも影あらそははいつれの花を身にはそへまし
わすられね−こそのおもかけ−あらそはは−いつれのはなを−みにはそへまし |
01297 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れはや見しおも影を老か身にそふるもうしと花やいとはむ
わすれはや−みしおもかけを−おいかみに−そふるもうしと−はなやいとはむ |
01298 |
未入力 正徹 (xxx)
昔見し花も我か身も物いはてむかへは涙露そこほるる
むかしみし−はなもわかみも−ものいはて−むかへはなみた−つゆそこほるる |
01299 |
未入力 正徹 (xxx)
なおそます庭にうつして年をふる松より遠き花のにほひは
なおそます−にはにうつして−としをふる−まつよりとほき−はなのにほひは |
01300 |
未入力 正徹 (xxx)
皇の代代になれにしいにしへの春をみはしの花にとははや
すめらきの−よよになれにし−いにしへの−はるをみはしの−はなにとははや |
01301 |
未入力 正徹 (xxx)
のこりなく雨ははれつる庭たつみ猶雲うつす花の下陰
のこりなく−あめははれつる−にはたつみ−なほくもうつす−はなのしたかけ |
01302 |
未入力 正徹 (xxx)
大井河花のうきはし遠近にわたしてたゆる春の山風
おほゐかは−はなのうきはし−をちこちに−わたしてたゆる−はるのやまかせ |
01303 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷の花の中道春過きて雪にあとなきふるの高はし
ふるさとの−はなのなかみち−はるすきて−ゆきにあとなき−ふるのたかはし |
01304 |
未入力 正徹 (xxx)
花園の花のうき浪風こえて匂ひにしつむ竹川の橋
はなそのの−はなのうきなみ−かせこえて−にほひにしつむ−たけかはのはし |
01305 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬさちらし関もる神の相坂を花に旅たつ春の山かせ
ぬさちらし−せきもるかみの−あふさかを−はなにたひたつ−はるのやまかせ |
01306 |
未入力 正徹 (xxx)
神もいまみるめよいかに散る花の木の島こゆる春のささ浪
かみもいま−みるめよいかに−ちるはなの−きのしまこゆる−はるのささなみ |
01307 |
未入力 正徹 (xxx)
色はゆる淵の緑も竹川の橋のまへなる花そののはな
いろはゆる−ふちのみとりも−たけかはの−はしのまへなる−はなそののはな |
01308 |
未入力 正徹 (xxx)
開く花の雲の衣も袖ほさす朝露かけし夕暮の雨
さくはなの−くものころもも−そてほさす−あさつゆかけし−ゆふくれのあめ |
01309 |
未入力 正徹 (xxx)
かそいろとやしなひたてしかひもなくあらくも雨の花をうつ声
かそいろと−やしなひたてし−かひもなく−あらくもあめの−はなをうつこゑ |
01310 |
未入力 正徹 (xxx)
あらかりし雨の名残の花の露吹きほす程も風やいとはむ
あらかりし−あめのなこりの−はなのつゆ−ふきほすほとも−かせやいとはむ |
01311 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらぬまも青葉立ちいつる花の枝の色おとろへてはるる雨かな
ちらぬまも−あをはたちいつる−はなのえの−いろおとろへて−はるるあめかな |
01312 |
未入力 正徹 (xxx)
惜しむらし折りもかこはぬ松かきのおのれと風を花にへたてて
をしむらし−をりもかこはぬ−まつかきの−おのれとかせを−はなにへたてて |
01313 |
未入力 正徹 (xxx)
木にもあらす草にもあらぬ竹そとや雲か花かの枝ましるらむ
きにもあらす−くさにもあらぬ−たけそとや−くもかはなかの−えたましるらむ |
01314 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風にほひを分けて匂ふなり雲間の雲や桜なるらむ
あまつかせ−にほひをわけて−にほふなり−くもまのくもや−さくらなるらむ |
01315 |
未入力 正徹 (xxx)
うらつつく桜のおくつの嵐かも山のかひよりいつるしら浪
うらつつく−さくらのおくの−あらしかも−やまのかひより−いつるしらなみ |
01316 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜かせ玉もかるをの磯まくらねての朝けの花をみるまて
こよひかせ−たまもかるをの−いそまくら−ねてのあさけの−はなをみるまて |
01317 |
未入力 正徹 (xxx)
くらき夜の磯山さくら木のしたに篝みせたるあまのいさり火
くらきよの−いそやまさくら−このしたに−かかりみせたる−あまのいさりひ |
01318 |
未入力 正徹 (xxx)
長閑なる塩ひのかたの夕浪にあまそ釣せぬ花やちるらん
のとかなる−しほひのかたの−ゆふなみに−あまそつりせぬ−はなやちるらむ |
01319 |
未入力 正徹 (xxx)
これも又神代の雲やこり初めておのころ島の花と成りけん
これもまた−かみよのくもや−こりそめて−おのころしまの−はなとなりけむ |
01320 |
未入力 正徹 (xxx)
桜花ちるや松風いほ崎のみほの興つに浪たかくみゆ
さくらはな−ちるやまつかせ−いほさきの−みほのおきつに−なみたかくみゆ |
01321 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふてふたれに心をくみしれとあくる川戸に花のまつらん
にほふてふ−たれにこころを−くみしれと−あくるかはとに−はなのまつらむ |
01322 |
未入力 正徹 (xxx)
音もせすむれゐる鷺の色もみす花の古江の雪の下波
おともせす−むれゐるさきの−いろもみす−はなのふるえの−ゆきのしたなみ |
01323 |
未入力 正徹 (xxx)
岸にます神のみけしか住の江に花の錦をあらふしら浪
きしにます−かみのみけしか−すみのえに−はなのにしきを−あらふしらなみ |
01324 |
未入力 正徹 (xxx)
谷川の瀬瀬にかたよる白淡や滝のうへなる山さくらはな
たにかはの−せせにかたよる−しらあわや−たきのうへなる−やまさくらはな |
01325 |
未入力 正徹 (xxx)
かたえさし磯屋匂はす花もをし塩焼く煙あまはいとはて
かたえさし−いそやにほはす−はなもをし−しほやくけふり−あまはいとはて |
01326 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむなよ山の桜戸明けぬよの花よりいつるふし待の月
かすむなよ−やまのさくらと−あけぬよの−はなよりいつる−ふしまちのつき |
01327 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしのねにうつみしよりや水ならぬ花の鏡もまとほなるらん
ふしのねに−うつみしよりや−みつならぬ−はなのかかみも−まとほなるらむ |
01328 |
未入力 正徹 (xxx)
つくは山はやまの里に開きしよりしけき人めとなる桜かな
つくはやま−はやまのさとに−さきしより−しけきひとめと−なるさくらかな |
01329 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかり雲か雪かとまかへみし情ゆるさぬ春の山風
はなさかり−くもかゆきかと−まかへみし−こころゆるさぬ−はるのやまかせ |
01330 |
未入力 正徹 (xxx)
又寒き嵐にとちて雪もなし消えすは花と嶺のさくら戸
またさむき−あらしにとちて−ゆきもなし−きえすははなと−みねのさくらと |
01331 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら山雲に春風吹きさえて猶あらましの花そ雪ちる
さくらやま−くもにはるかせ−ふきさえて−なほあらましの−はなそゆきちる |
01332 |
未入力 正徹 (xxx)
山川もこほる下紐ときやらて花にかけたる風のしからみ
やまかはも−こほるしたひも−ときやらて−はなにかけたる−かせのしからみ |
01333 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかも衣におつる雪なからさくらを手折る春の山ふみ
うめかかも−ころもにおつる−ゆきなから−さくらをたをる−はるのやまふみ |
01334 |
未入力 正徹 (xxx)
開きつくせ四方の嵐も吹きこさす花にめくれる山たかくして
さきつくせ−よものあらしも−ふきこさす−はなにめくれる−やまたかくして |
01335 |
未入力 正徹 (xxx)
神ならて風にまかすな開く花におほふはかりの山そめくれる
かみならて−かせにまかすな−さくはなに−おほふはかりの−やまそめくれる |
01336 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめやる程も雲井の山桜生ひけむ年の春やはるけき
なかめやる−ほともくもゐの−やまさくら−おひけむとしの−はるやはるけき |
01337 |
未入力 正徹 (xxx)
昨日かも遠山さくら春きにけり所もさらぬ雲の一むら
きのふかも−とほやまさくら−はるきにけり−ところもさらぬ−くものひとむら |
01338 |
未入力 正徹 (xxx)
雲ふかき花のあたりの入相に峰の奥しる春の山てら
くもふかき−はなのあたりの−いりあひに−みねのおくしる−はるのやまてら |
01339 |
未入力 正徹 (xxx)
花をそへ花をのこして行きかへる嵐のをちの峰のしら雲
はなをそへ−はなをのこして−ゆきかへる−あらしのをちの−みねのしらくも |
01340 |
未入力 正徹 (xxx)
夕時雨音も外山の松のははうつもれきゆる花のした風
ゆふしくれ−おともとやまの−まつのはは−うつもれきゆる−はなのしたかせ |
01341 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねこす木のまの夕日影消えて桜にかへる花の色かな
たかねこす−このまのゆふひ−かけきえて−さくらにかへる−はなのいろかな |
01342 |
未入力 正徹 (xxx)
まきなかす袖こそ匂へ散りかかる浪さへ花ににふの杣人
まきなかす−そてこそにほへ−ちりかかる−なみさへはなに−にふのそまひと |
01343 |
未入力 正徹 (xxx)
開く花の春は雲のみなりのほる物とそみゆるかつらきの山
さくはなの−はるはくものみ−なりのほる−ものとそみゆる−かつらきのやま |
01344 |
未入力 正徹 (xxx)
あたに見し此世の色を雲にさへまかへもはてぬ山さくらかな
あたにみし−このよのいろを−くもにさへ−まかへもはてぬ−やまさくらかな |
01345 |
未入力 正徹 (xxx)
色もをし初時鳥興にいててなかはかくやと深山辺の花
いろもをし−はつほとときす−おきにいてて−なかはかくやと−みやまへのはな |
01346 |
未入力 正徹 (xxx)
枝なからなひき初めてや山さくらおもふ嵐と花のちるらん
えたなから−なひきそめてや−やまさくら−おもふあらしと−はなのちるらむ |
01347 |
未入力 正徹 (xxx)
それをこそとふにはなさめさくら花散りなむ後の春の山踏
それをこそ−とふにはなさめ−さくらはな−ちりなむのちの−はるのやまふみ |
01348 |
未入力 正徹 (xxx)
とちぬとも風の便やこえゆかむ山桜戸の雲の関守
とちぬとも−かせのたよりや−こえゆかむ−やまさくらとの−くものせきもり |
01349 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかりしつ心なき山里は物のさひしき春やしられぬ
はなさかり−しつこころなき−やまさとは−もののさひしき−はるやしられぬ |
01350 |
未入力 正徹 (xxx)
山里は花におもひそかへさるる世のうきよりの春の夕風
やまさとは−はなにおもひそ−かへさるる−よのうきよりの−はるのゆふかせ |
01351 |
未入力 正徹 (xxx)
法とはぬ此山さとの人そくるふるせる寺の花の一木に
のりとはぬ−このやまさとの−ひとそくる−ふるせるてらの−はなのひときに |
01352 |
未入力 正徹 (xxx)
おく山の花の錦のくらき夜はみる人もこぬ春の日くらし
おくやまの−はなのにしきの−くらきよは−みるひともこぬ−はるのひくらし |
01353 |
未入力 正徹 (xxx)
待つ人に遠き尾上の初桜関きぬとみえむ雲なかくしそ
まつひとに−とほきをのへの−はつさくら−さきぬとみえむ−くもなかくしそ |
01354 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふなり花のあるしは山かつの垣ほの桜春をあらさて
にほふなり−はなのあるしは−やまかつの−かきほのさくら−はるをあらさて |
01355 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はまて開入る山の花の枝に簾うこかし人おともせす
のきはまて−さきいるやまの−はなのえに−すたれうこかし−ひとおともせす |
01356 |
未入力 正徹 (xxx)
出てぬるか暮れぬに松の戸を閉ちて花の宿もる人音もせす
いてぬるか−くれぬにまつの−とをとちて−はなのやともる−ひとおともせす |
01357 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる山桜戸のかはさくらとちける雲をとく嵐かな
あけわたる−やまさくらとの−かはさくら−とちけるくもを−とくあらしかな |
01358 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ人のなきにつけても奥山の花の戸さしそさし忘れぬる
とふひとの−なきにつけても−おくやまの−はなのとさしそ−さしわすれぬる |
01359 |
未入力 正徹 (xxx)
さきてちる花にうき世やさとるらん幾春か見し鷲の山人
さきてちる−はなにうきよや−さとるらむ−いくはるかみし−わしのやまひと |
01360 |
未入力 正徹 (xxx)
くろにさく一もと桜おのつから花のあるしの小田のかり庵
くろにさく−ひともとさくら−おのつから−はなのあるしの−をたのかりいほ |
01361 |
未入力 正徹 (xxx)
春の花もるとしもなき木の本に荒れてそのこる小田のかり庵
はるのはな−もるとしもなき−このもとに−あれてそのこる−をたのかりいほ |
01362 |
未入力 正徹 (xxx)
まきるへき風さへふかて散りかかる花の音きく窓の内かな
まきるへき−かせさへふかて−ちりかかる−はなのおときく−まとのうちかな |
01363 |
未入力 正徹 (xxx)
松風の吹く日そ宿に声はせししはしも花のありやわふらん
まつかせの−ふくひそやとに−こゑはせし−しはしもはなの−ありやわふらむ |
01364 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかなる所やいつこ春の花風にしらるる夕暮のやと
しつかなる−ところやいつこ−はるのはな−かせにしらるる−ゆふくれのやと |
01365 |
未入力 正徹 (xxx)
開きてちる花の日数の程はかり宿を立ちいてて春にしられし
さきてちる−はなのひかすの−ほとはかり−やとをたちいてて−はるにしられし |
01366 |
未入力 正徹 (xxx)
此春は都なからにたれこめて太山桜そおも影にたつ
このはるは−みやこなからに−たれこめて−みやまさくらそ−おもかけにたつ |
01367 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にほふ花の雲井のさと人は春やたちきる天の羽衣
そてにほふ−はなのくもゐの−さとひとは−はるやたちきる−あまのはころも |
01368 |
未入力 正徹 (xxx)
雲そゐる此手柏は青によきなら山さくらいまさかりかも
くもそゐる−このてかしはは−あをによき−ならやまさくら−いまさかりかも |
01369 |
未入力 正徹 (xxx)
山路こしあまた旅ねの花の香も袖の別の野への朝露
やまちこし−あまたたひねの−はなのかも−そてのわかれの−のへのあさつゆ |
01370 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとの旅ねなりとも花莚こよひなしきそ春の山風
このもとの−たひねなりとも−はなむしろ−こよひなしきそ−はるのやまかせ |
01371 |
未入力 正徹 (xxx)
日数ふるひなの長路の花に花おとろへ行くそわれにまされる
ひかすふる−ひなのなかちの−はなにはな−おとろへゆくそ−われにまされる |
01372 |
未入力 正徹 (xxx)
春ことの道の行てに折りすててもとあらの桜花そすくなき
はることの−みちのゆくてに−をりすてて−もとあらのさくら−はなそすくなき |
01373 |
未入力 正徹 (xxx)
すまの山や陰なる花にくもるなり関路こえくる春の塩かせ
すまのやまや−かけなるはなに−くもるなり−せきちこえくる−はるのしほかせ |
01374 |
未入力 正徹 (xxx)
逢坂や浪も岩ほもちる花の行く春さそふ関の走ゐ
あふさかや−なみもいはほも−ちるはなの−ゆくはるさそふ−せきのはしりゐ |
01375 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂やゆふつけ鳥のゆふしても関路の花に春はかけつつ
あふさかや−ゆふつけとりの−ゆふしても−せきちのはなに−はるはかけつつ |
01376 |
未入力 正徹 (xxx)
逢坂や関もる神も惜むらし老木となりぬ山さくらはな
あふさかや−せきもるかみも−をしむらし−おいきとなりぬ−やまさくらはな |
01377 |
未入力 正徹 (xxx)
初瀬女か春の手染の糸桜かつ色ふかき峰のあけほの
はつせめか−はるのてそめの−いとさくら−かついろふかき−みねのあけほの |
01378 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山尾上の名もさく花の匂ひの淵にしつむこゑかな
はつせやま−をのへのはなも−さくはなの−にほひのふちに−しつむこゑかな |
01379 |
未入力 正徹 (xxx)
清水さへもとの心の花の陰みゆる野中の杜のさくら木
しみつさへ−もとのこころの−はなのかけ−みゆるのなかの−もりのさくらき |
01380 |
未入力 正徹 (xxx)
雨の日は池やよりこし木の本の真砂にのこる花のみなきは
あめのひは−いけやよりこし−このもとの−まさこにのこる−はなのみなきは |
01381 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春もおくれぬ花の木の間よりことをあまたの有明の月
ゆくはるも−おくれぬはなの−このまより−ことをあまたの−ありあけのつき |
01382 |
未入力 正徹 (xxx)
のこるなりたかうたたねの山桜みはてぬ夢の雲の一むら
のこるなり−たかうたたねの−やまさくら−みはてぬゆめの−くものひとむら |
01383 |
未入力 正徹 (xxx)
太山陰なへての花の春もをし心おくれてさくさくらかな
みやまかけ−なへてのはなの−はるもをし−こころおくれて−さくさくらかな |
01384 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風の心のやみのうつつをは夢にもなさて花そちり行く
ふくかせの−こころのやみの−うつつをは−ゆめにもなさて−はなそちりゆく |
01385 |
未入力 正徹 (xxx)
青柳のなひくはちらてさくら花さそはれ安き庭の春風
あをやきの−なひくはちらて−さくらはな−さそはれやすき−にはのはるかせ |
01386 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺はらふ霞のひまにうち出てし雲の浪ちる花の山風
みねはらふ−かすみのひまに−うちいてし−くものなみちる−はなのやまかせ |
01387 |
未入力 正徹 (xxx)
又もみん老にはあらねと花に今猶うらめしき嶺の松風
またもみむ−おいにはあらねと−はなにいま−なほうらめしき−みねのまつかせ |
01388 |
未入力 正徹 (xxx)
散りぬらんさくを尋ねし花の山踏みちかへてやのこるをも見む
ちりぬらむ−さくをたつねし−はなのやま−ふみちかへてや−のこるをもみむ |
01389 |
未入力 正徹 (xxx)
初瀬山尾上の鐘も川浪も花のためとや春はのとけき
はつせやま−をのへのかねも−かはなみも−はなのためとや−はるはのとけき |
01390 |
未入力 正徹 (xxx)
おくふかき軒のかはらに松ふりて花にかすめる春のともしひ
おくふかき−のきのかはらに−まつふりて−はなにかすめる−はるのともしひ |
01391 |
未入力 正徹 (xxx)
色うつむ初せの桧原くもりかね花に緑もきゆる山かな
いろうつむ−はつせのひはら−くもりかね−はなにみとりも−きゆるやまかな |
01392 |
未入力 正徹 (xxx)
木の本にちるをしみてや歎きつつあかぬ心の花もしをれむ
このもとに−ちるをしみてや−なけきつつ−あかぬこころの−はなもしをれむ |
01393 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにしてまかせさらなむ散りやすき花をうき世の風の心に
いかにして−まかせさらなむ−ちりやすき−はなをうきよの−かせのこころに |
01394 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよ花も花をや惜むらん吹くほとちらぬ春の山かせ
こころせよ−はなもはなをや−をしむらむ−ふくほとちらぬ−はるのやまかせ |
01395 |
未入力 正徹 (xxx)
散る花におほふ霞も荒き風ふせきかねたる春の衣手
ちるはなに−おほふかすみも−あらきかせ−ふせきかねたる−はるのころもて |
01396 |
未入力 正徹 (xxx)
したひ佗ひみるもうらめしさくら花風のためなる心よわさを
したひわひ−みるもうらめし−さくらはな−かせのためなる−こころよわさを |
01397 |
未入力 正徹 (xxx)
ととまらぬ花に心をつくしきていよいよ春や老をそふらむ
ととまらぬ−はなにこころを−つくしきて−いよいよはるや−おいをそふらむ |
01398 |
未入力 正徹 (xxx)
又あはん花はありともいかさまに名残すくなき老の春かな
またあはむ−はなはありとも−いかさまに−なこりすくなき−おいのはるかな |
01399 |
未入力 正徹 (xxx)
花みよとならふ林にてる月のくもるもかすむ春の山風
はなみよと−ならふはやしに−てるつきの−くもるもかすむ−はるのやまかせ |
01400 |
未入力 正徹 (xxx)
風にちる花そ一日に限りけるをしまれて入る月はよなよな
かせにちる−はなそひとひに−かきりける−をしまれている−つきはよなよな |
01401 |
未入力 正徹 (xxx)
惜ますやちらす物そと立ちそめしうき名のままの花の春風
をしますや−ちらすものそと−たちそめし−うきなのままの−はなのはるかせ |
01402 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風も花ちる里のわかれにてつらさそ嶺の松にかへれる
ふくかせも−はなちるさとの−わかれにて−つらさそみねの−まつにかへれる |
01403 |
未入力 正徹 (xxx)
花そちるあはれなれきて池にすむ鳥のなつらき庭の春かせ
はなそちる−あはれなれきて−いけにすむ−とりのなつらき−にはのはるかせ |
01404 |
未入力 正徹 (xxx)
あとのこる此水茎に散る花のあわと消えにし人や恋しき
あとのこる−このみつくきに−ちるはなの−あわときえにし−ひとやこひしき |
01405 |
未入力 正徹 (xxx)
ことしさはかほりてちらせ桜木の木の葉を春に花を秋風
ことしさは−かほりてちらせ−さくらきの−このはをはるに−はなをあきかせ |
01406 |
未入力 正徹 (xxx)
春の花おもふは別いとふにはそふをうき世のあとの山風
はるのはな−おもふはわかれ−いとふには−そふをうきよの−あとのやまかせ |
01407 |
未入力 正徹 (xxx)
わかるるはなにか此世に惜しからむ思ひ捨てなん花の音かせ
わかるるは−なにかこのよに−をしからむ−おもひすてなむ−はなのはるかせ |
01408 |
未入力 正徹 (xxx)
老いはてぬことしはかりとしたひてもあまたの春の花に逢ひねる
おいはてぬ−ことしはかりと−したひても−あまたのはるの−はなにあひねる |
01409 |
未入力 正徹 (xxx)
風そうき人待つ時を夕暮のならひもしらす花のわかるる
かせそうき−ひとまつときを−ゆふくれの−ならひもしらす−はなのわかるる |
01410 |
未入力 正徹 (xxx)
相かたき人は今夜を契るとも花にな暮れそ雲も霞も
あひかたき−ひとはこよひを−ちきるとも−はなになくれそ−くももかすみも |
01411 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく花はちりかひくもる世をよそにやかすむ春のよの月
あらしふく−はなはちりかひ−くもるよを−よそにやかすむ−はるのよのつき |
01412 |
未入力 正徹 (xxx)
比しもあれ風もさそはす風もなし恨なくてや花のちるらん
ころしもあれ−かせもさそはす−かせもなし−うらみなくてや−はなのちるらむ |
01413 |
未入力 正徹 (xxx)
住みわひぬ花散るさとのあれまくも有りしにまさる春の暮かた
すみわひぬ−はなちるさとの−あれまくも−ありしにまさる−はるのくれかた |
01414 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらはちれ惜まし花よ世中の心まかせになきはくるしき
ちらはちれ−をしましはなよ−よのなかの−こころまかせに−なきはくるしき |
01415 |
未入力 正徹 (xxx)
のとかなる春日もなかき谷風に心みしかくちる桜かな
のとかなる−はるひもなかき−たにかせに−こころみしかく−ちるさくらかな |
01416 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとて枝に別れてちる花をのこるさくらや先惜むらん
いまはとて−えたにわかれて−ちるはなを−のこるさくらや−まつをしむらむ |
01417 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりきてねくらあれぬと鳴く鳥のちる花の枝に暮るる春かな
かへりきて−ねくらあれぬと−なくとりの−ちるはなのえに−くるるはるかな |
01418 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれ行く霞の袖にこき入れてちるかたみせぬ花の山風
みたれゆく−かすみのそてに−こきいれて−ちるかたみせぬ−はなのやまかせ |
01419 |
未入力 正徹 (xxx)
梢にも庭にものこせ花ちらす風の心の石木ならすは
こすゑにも−にはにものこせ−はなちらす−かせのこころの−いはきならすは |
01420 |
未入力 正徹 (xxx)
老いにける滝の水上ならなくに黒きすちなく花そ落ちちる
おいにける−たきのみなかみ−ならなくに−くろきすちなく−はなそおちちる |
01421 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花ちるにさそはぬ風もなしいつくの春をわきて恨みん
さくらはな−ちるにさそはぬ−かせもなし−いつくのはるを−わきてうらみむ |
01422 |
未入力 正徹 (xxx)
わかためや嵐の末の春の花なかれての世のうきをみすらん
わかためや−あらしのすゑの−はるのはな−なかれてのよの−うきをみすらむ |
01423 |
未入力 正徹 (xxx)
此春の花より後は開きてちるならひなくとも風や恨みむ
このはるの−はなよりのちは−さきてちる−ならひなくとも−かせやうらみむ |
01424 |
未入力 正徹 (xxx)
色もなき人の心の末の世にあへるをうしと花やちるらん
いろもなき−ひとのこころの−すゑのよに−あへるをうしと−はなやちるらむ |
01425 |
未入力 正徹 (xxx)
開けはちる夜のまの花の夢のうちにやかてまきれぬ嶺の白雲
さけはちる−よのまのはなの−ゆめのうちに−やかてまきれぬ−みねのしらくも |
01426 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花ちるも心にまかせねは雪とふり行く春の山かせ
さくらはな−ちるもこころに−まかせねは−ゆきとふりゆく−はるのやまかせ |
01427 |
未入力 正徹 (xxx)
まとろまてこその桜の塵の世をおもふ枕につもるおもかけ
まとろまて−こそのさくらの−ちりのよを−おもふまくらに−つもるおもかけ |
01428 |
未入力 正徹 (xxx)
哀とや散行く花を嶺の雲はしめまかひし色のゆかりを
あはれとや−ちりゆくはなを−みねのくも−はしめまかひし−いろのゆかりを |
01429 |
未入力 正徹 (xxx)
限なくみまくほしかる我かためやさらぬ別の花の山かせ
かきりなく−みまくほしかる−わかためや−さらぬわかれの−はなのやまかせ |
01430 |
未入力 正徹 (xxx)
かりの世の色をはかなみ散る花にましるこ蝶も夢をみよとや
かりのよの−いろをはかなみ−ちるはなに−ましるこてふも−ゆめをみよとや |
01431 |
未入力 正徹 (xxx)
跡とふも袖そ露ちる春の風さそひし花の木の本の宿
あととふも−そてそつゆちる−はるのかせ−さそひしはなの−このもとのやと |
01432 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりしけふも命のうちにして又さきたつる花の春風
しらさりし−けふもいのちの−うちにして−またさきたつる−はなのはるかせ |
01433 |
未入力 正徹 (xxx)
山と成るふもとの桜塵の世にまよふ嵐そやむ時もなき
やまとなる−ふもとのさくら−ちりのよに−まよふあらしそ−やむときもなき |
01434 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野川岩浪たかくなる神に山風きほふ花の夕たち
よしのかは−いはなみたかく−なるかみに−やまかせきほふ−はなのゆふたち |
01435 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく霞の袖の別さへ花ちるみねのあり明の月
あらしふく−かすみのそての−わかれさへ−はなちるみねの−ありあけのつき |
01436 |
未入力 正徹 (xxx)
かへらめや梢わかれし花莚山の霞のしきしのふとも
かへらめや−こすゑわかれし−はなむしろ−やまのかすみの−しきしのふとも |
01437 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きさそふ嵐の庭の花よりもわか身世にふる春そつもれる
ふきさそふ−あらしのにはの−はなよりも−わかみよにふる−はるそつもれる |
01438 |
未入力 正徹 (xxx)
散りましる空ものとけき春の日にあそふ糸かの山桜花
ちりましる−そらものとけき−はるのひに−あそふいとかの−やまさくらはな |
01439 |
未入力 正徹 (xxx)
先たえぬけふも命のうちにしてあらまし花のなきそ数そふ
まつたえぬ−けふもいのちの−うちにして−あらましはなの−なきそかすそふ |
01440 |
未入力 正徹 (xxx)
散りて行く花の所もさりあへぬ野山の末の道のはる風
ちりてゆく−はなのところも−さりあへぬ−のやまのすゑの−みちのはるかせ |
01441 |
未入力 正徹 (xxx)
荒ち山花の雪折しかすかに音せぬ嶺の春の木からし
あらちやま−はなのゆきをれ−しかすかに−おとせぬみねの−はるのこからし |
01442 |
未入力 正徹 (xxx)
月にとふ庭の嵐にちる花のやとりむなしき暁の露
つきにとふ−にはのあらしに−ちるはなの−やとりむなしき−あかつきのつゆ |
01443 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花こしのしらねの冬の雪つもりかさなるよもきふの宿
さくらはな−こしのしらねの−ふゆのゆき−つもりかさなる−よもきふのやと |
01444 |
未入力 正徹 (xxx)
のとかなる嶺の朝日にあそふ糸のみたれて共に散る桜かな
のとかなる−みねのあさひに−あそふいとの−みたれてともに−ちるさくらかな |
01445 |
未入力 正徹 (xxx)
散りかかる夕かけ草やうつもれて露をへたつる花をうらみん
ちりかかる−ゆふかけくさや−うつもれて−つゆをへたつる−はなをうらみむ |
01446 |
未入力 正徹 (xxx)
花のえにねくら尋ぬる鳥もあらはいかかこたへん春の山風
はなのえに−ねくらたつぬる−とりもあらは−いかかこたへむ−はるのやまかせ |
01447 |
未入力 正徹 (xxx)
はやくあけ夕暮おそき色もみす花はかたかたうき別かな
はやくあけ−ゆふくれおそき−いろもみす−はなはかたかた−うきわかれかな |
01448 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら花ちりかひかくす高ねより嵐をこえていつる月かけ
さくらはな−ちりかひかくす−たかねより−あらしをこえて−いつるつきかけ |
01449 |
未入力 正徹 (xxx)
出つるまの月のかつらの花とちる高ねの桜嵐ふくらし
いつるまの−つきのかつらの−はなとちる−たかねのさくら−あらしふくらし |
01450 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなくも花はうき世のことわりにまかせてちるをととめかぬらん
はかなくも−はなはうきよの−ことわりに−まかせてちるを−ととめかぬらむ |
01451 |
未入力 正徹 (xxx)
香をしめて花にそふ夜の衣衣はあるにもあらぬ春の山風
かをしめて−はなにそふよの−きぬきぬは−あるにもあらぬ−はるのやまかせ |
01452 |
未入力 正徹 (xxx)
東路にありとそききし花もそふ風の心のままのつきはし
あつまちに−ありとそききし−はなもそふ−かせのこころの−ままのつきはし |
01453 |
未入力 正徹 (xxx)
よしやふけちるを見さらん花は猶あかぬ心の春の山かせ
よしやふけ−ちるをみさらむ−はなはなほ−あかぬこころの−はるのやまかせ |
01454 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野山花も嵐に荒れしより木すゑそ春の古郷のそら
よしのやま−はなもあらしに−あれしより−こすゑそはるの−ふるさとのそら |
01455 |
未入力 正徹 (xxx)
ねにかへる雲も嵐も花ならす雪とわかれし嶺の桜木
ねにかへる−くももあらしも−はなならす−ゆきとわかれし−みねのさくらき |
01456 |
未入力 正徹 (xxx)
散るとたにわきてはみえす久堅のあまきりかすむ花の山風
ちるとたに−わきてはみえす−ひさかたの−あまきりかすむ−はなのやまかせ |
01457 |
未入力 正徹 (xxx)
里はあれぬしのふの簾糸絶えて袖もあらはに花そみたるる
さとはあれぬ−しのふのすたれ−いとたえて−そてもあらはに−はなそみたるる |
01458 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ふるきこすのあみ糸絶絶に花ちる閨は春風そふく
のきふるき−こすのあみいと−たえたえに−はなちるねやは−はるかせそふく |
01459 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくらちらても人はとひかたみ花や身をしる夕暮の雨
やまさくら−ちらてもひとは−とひかたみ−はなやみをしる−ゆふくれのあめ |
01460 |
未入力 正徹 (xxx)
雨とふり暮と世にちる白雪のありてはてうき春の花かな
あめとふり−ゆきとよにちる−しらくもの−ありてはてうき−はるのはなかな |
01461 |
未入力 正徹 (xxx)
夕嵐あらく吹くとも花はなと惜む心の道うつむらん
ゆふあらし−あらくふくとも−はなはなと−をしむこころの−みちうつむらむ |
01462 |
未入力 正徹 (xxx)
敷島の道まよひきぬ無き跡の我か名もうつめ花の白雪
しきしまの−みちまよひきぬ−なきあとの−わかなもうつめ−はなのしらゆき |
01463 |
未入力 正徹 (xxx)
開きいてて花に世やうき吉野山入りにし人のあとうつむなり
さきいてて−はなによやうき−よしのやま−いりにしひとの−あとうつむなり |
01464 |
未入力 正徹 (xxx)
梢にはなきかおほかる花の陰あらましかはの雪も消えつつ
こすゑには−なきかおほかる−はなのかけ−あらましかはの−ゆきもきえつつ |
01465 |
未入力 正徹 (xxx)
花やこれ雪葉にすかくささかにの糸にかかれる宮の一むら
はなやこれ−ゆきはにすかく−ささかにの−いとにかかれる−みやのひとむら |
01466 |
未入力 正徹 (xxx)
山かくれつひに嵐の音きかて心と花のいくかちるらん
やまかくれ−つひにあらしの−おときかて−こころとはなの−いくかちるらむ |
01467 |
未入力 正徹 (xxx)
花そなきさめたる松は嶺に明けてまかひし雲も春のよの夢
はなそなき−さめたるまつは−みねにあけて−まかひしくもも−はるのよのゆめ |
01468 |
未入力 正徹 (xxx)
あとみえぬ雪の朝となるはかり花の夢路をうつむ春風
あとみえぬ−ゆきのあしたと−なるはかり−はなのゆめちを−うつむはるかせ |
01469 |
未入力 正徹 (xxx)
咲きにほへならへる庭の松か枝に千世の年かる花の付すゑ
さきにほへ−ならへるにはの−まつかえに−ちよのとしかる−はなのゆくすゑ |
01470 |
未入力 正徹 (xxx)
色も香も山の霞にむすほほれとけしもしらぬ花の下ひも
いろもかも−やまのかすみに−むすほほれ−とけしもしらぬ−はなのしたひも |
01471 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の日影ちかつく山のはも紅さくら露しろくして
あさあけの−ひかけちかつく−やまのはも−くれなゐさくら−つゆしろくして |
01472 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら咲く花の錦をあらふなり入江の雨の露のはる風
さくらさく−はなのにしきを−あらふなり−いりえのあめの−つゆのはるかせ |
01473 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺こえし花の錦をみてかへる雲ともみえぬ古郷のくれ
みねこえし−はなのにしきを−みてかへる−くもともみえぬ−ふるさとのくれ |
01474 |
未入力 正徹 (xxx)
おく露かなにそは花の玉のをにみたれやすくもちる桜かな
おくつゆか−なにそははなの−たまのをに−みたれやすくも−ちるさくらかな |
01475 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にはとまらぬ花の春ことにふるき枕の夢そ数そふ
このよには−とまらぬはなの−はることに−ふるきまくらの−ゆめそかすそふ |
01476 |
未入力 正徹 (xxx)
春は猶花の香さそへ玉琴のしらへにかよふ嶺の松風
はるはなほ−はなのかさそへ−たまことの−しらへにかよふ−みねのまつかせ |
01477 |
未入力 正徹 (xxx)
山つとに手折りてのする花筏あらくおろすな春の川風
やまつとに−たをりてのする−はないかた−あらくおろすな−はるのかはかせ |
01478 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫や錦おりさす露のぬき霞のたての花の山風
さほひめや−にしきおりさす−つゆのぬき−かすみのたての−はなのやまかせ |
01479 |
未入力 正徹 (xxx)
七十の夢に開きちる春の花眠のうちにいつまてか見ん
ななそちの−ゆめにさきちる−はるのはな−ねふりのうちに−いつまてかみむ |
01480 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら苔の莚にちりそしく夢はふたたひかへる枕を
やまさくら−こけのむしろに−ちりそしく−ゆめはふたたひ−かへるまくらを |
01481 |
未入力 正徹 (xxx)
待ちいつる日の川上の山さくらいつももかくや花の八重雲
まちいつる−ひのかはかみの−やまさくら−いつももかくや−はなのやへくも |
01482 |
未入力 正徹 (xxx)
にほふらむはらふ霞のおくなきも程は雲井の花の山風
にほふらむ−はらふかすみの−おくなきも−ほとはくもゐの−はなのやまかせ |
01483 |
未入力 正徹 (xxx)
さきのほる山の一木のさくら花巌より立つ雲とみるらん
さきのほる−やまのひときの−さくらはな−いはほよりたつ−くもとみるらむ |
01484 |
未入力 正徹 (xxx)
花やいむさかりの色にむかふにも老の涙はちりやすき身を
はなやいむ−さかりのいろに−むかふにも−おいのなみたは−ちりやすきみを |
01485 |
未入力 正徹 (xxx)
老いはてぬ山さくら花又やみむ又はみすともさのみやはへん
おいはてぬ−やまさくらはな−またやみむ−またはみすとも−さのみやはへむ |
01486 |
未入力 正徹 (xxx)
春の花月に開きあふ年まれに友なふ人のおほきよはかな
はるのはな−つきにさきあふ−としまれに−ともなふひとの−おほきよはかな |
01487 |
未入力 正徹 (xxx)
花にても身は心なきけたものの雲に吠えけんためしをそしる
はなにても−みはこころなき−けたものの−くもにほえけむ−ためしをそしる |
01488 |
未入力 正徹 (xxx)
雨風もをしほのさくら立ちかへり其日みすはとおもふ夢かな
あめかせも−をしほのさくら−たちかへり−そのひみすはと−おもふゆめかな |
01489 |
未入力 正徹 (xxx)
月のかほ花の姿にいにしへのおも影のこすすまのすら浪
つきのかほ−はなのすかたに−いにしへの−おもかけのこす−すまのすらなみ |
01490 |
未入力 正徹 (xxx)
花をまつ世は春しるき木の本の袖とふ月に秋風そふく
はなをまつ−よははるしるき−このもとの−そてとふつきに−あきかせそふく |
01491 |
未入力 正徹 (xxx)
なさけなく吹きてそ老の坂くたるのこる心の花の追風
なさけなく−ふきてそおいの−さかくたる−のこるこころの−はなのおひかせ |
01492 |
未入力 正徹 (xxx)
今よりそこと葉の花の宿の庭山とつもらん適を分けこむ
いまよりそ−ことはのはなの−やとのには−やまとつもらむ−みちをわけこむ |
01493 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねより花の木の間を見くたせは千里に霞む春の雲水
たかねより−はなのこのまを−みくたせは−ちさとにかすむ−はるのくもみつ |
01494 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れぬとてととむる人の声せねと花あれは入る道辺の宿
くれぬとて−ととむるひとの−こゑせねと−はなあれはいる−みちのへのやと |
01495 |
未入力 正徹 (xxx)
千千の手にみるめもあかし春の花入の心を哀とやしる
ちちのてに−みるめもあかし−はるのはな−ひとのこころを−あはれとやしる |
01496 |
未入力 正徹 (xxx)
春ことに花物いはてとく法の心しられてちるあらしかな
はることに−はなものいはて−とくのりの−こころしられて−ちるあらしかな |
01497 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれゆく心のままに手折りてそ花をかはらぬ仏とも見ん
みたれゆく−こころのままに−たをりてそ−はなをかはらぬ−ほとけともみむ |
01498 |
未入力 正徹 (xxx)
今も世につたへやすらん法の師の一花見せしふかきさとりを
いまもよに−つたへやすらむ−のりのしの−ひとはなみせし−ふかきさとりを |
01499 |
未入力 正徹 (xxx)
此ころのこと葉の花をみもしらぬ身は山人に猶そおとれる
このころの−ことはのはなを−みもしらぬ−みはやまひとに−なほそおとれる |
01500 |
未入力 正徹 (xxx)
松程やこたへさらましつたへきくむかしの風を花にとふとも
まつほとや−こたへさらまし−つたへきく−むかしのかせを−はなにとふとも |
01501 |
未入力 正徹 (xxx)
我なくは花やあらむと誰こひむ春や昔の名はのこるとも
われなくは−はなやあらむと−たれこひむ−はるやむかしの−なはのこるとも |
01502 |
未入力 正徹 (xxx)
遠さかる程は雲井の春の花此世の旅のわかれたにうし
とほさかる−ほとはくもゐの−はるのはな−このよのたひの−わかれたにうし |
01503 |
未入力 正徹 (xxx)
いく度か生ひかはりけむ天くたる神代の春の花のさくら木
いくたひか−おひかはりけむ−あまくたる−かみよのはるの−はなのさくらき |
01504 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれん風の心を先しるやふかき梢の花そちり行く
さそはれむ−かせのこころを−まつしるや−ふかきこすゑの−はなそちりゆく |
01505 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかあらむおもひを花にのこすとも我か後の世の夕暮の空
いかかあらむ−おもひをはなに−のこすとも−わかのちのよの−ゆふくれのそら |
01506 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふなり嵐の下のかり衣花の旅ねのこしのしらゆき
にほふなり−あらしのしたの−かりころも−はなのたひねの−こしのしらゆき |
01507 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら春はなかはの日数にもあまりてにほふ花の色かな
やまさくら−はるはなかはの−ひかすにも−あまりてにほふ−はなのいろかな |
01508 |
未入力 正徹 (xxx)
世中にちらすしほれぬ花もあらはたた松杉の色やまさらん
よのなかに−ちらすしほれぬ−はなもあらは−たたまつすきの−いろやまさらむ |
01509 |
未入力 正徹 (xxx)
見ても世におもひまきるる事そなき捨てしは花のためならねとも
みてもよに−おもひまきるる−ことそなき−すてしははなの−ためならねとも |
01510 |
未入力 正徹 (xxx)
世にみちてさけるを花のあるしとや桜になひくよもの里人
よにみちて−さけるをはなの−あるしとや−さくらになひく−よものさとひと |
01511 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつのそのの垣うち程せはき春をしめたる花もある世を
やまかつの−そののかきうち−ほとせはき−はるをしめたる−はなもあるよを |
01512 |
未入力 正徹 (xxx)
岩か根の滝のしら淡幾めくり年にあたなる花にましらむ
いはかねの−たきのしらあわ−いくめくり−としにあたなる−はなにましらむ |
01513 |
未入力 正徹 (xxx)
春とたにふかぬ嵐の山さくら光のとけき花の色かな
はるとたに−ふかぬあらしの−やまさくら−ひかりのとけき−はなのいろかな |
01514 |
未入力 正徹 (xxx)
ふもと寺杉の庵の山さくら今朝おも影そ在明の月
ふもとてら−すきのいほりの−やまさくら−けさおもかけそ−ありあけのつき |
01515 |
未入力 正徹 (xxx)
山風の吹きしくならて桜花さくや川辺の里のしら雲
やまかせの−ふきしくならて−さくらはな−さくやかはへの−さとのしらくも |
01516 |
未入力 正徹 (xxx)
一さかり過きにし後に花さくや花のおくての春のさくら田
ひとさかり−すきにしのちに−はなさくや−はなのおくての−はるのさくらた |
01517 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの夕日の色はさやかにてかすめる庭にのこる春雨
やまのはの−ゆふひのいろは−さやかにて−かすめるにはに−のこるはるさめ |
01518 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらにあるは過きうき春雨の降る日をひまとなしやはてまし
いたつらに−あるはすきうき−はるさめの−ふるひをひまと−なしやはてまし |
01519 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらにふる野の草そ色まさる哀都の花の春雨
いたつらに−ふるののくさそ−いろまさる−あはれみやこの−はなのはるさめ |
01520 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はにも音せぬ雨の遠かたにちりかひかすむ春の色かな
のきはにも−おとせぬあめの−をちかたに−ちりかひかすむ−はるのいろかな |
01521 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の面にくもる日影を猶みせてかすめるかたに春雨そ降る
にはのおもに−くもるひかけを−なほみせて−かすめるかたに−はるさめそふる |
01522 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる春は花を養ひうるとしれ親のいさめのうたたねの雨
ふるはるは−はなをやしなひ−うるとしれ−おやのいさめの−うたたねのあめ |
01523 |
未入力 正徹 (xxx)
草の露木木のしつくにしられけり川音高き春雨の空
くさのつゆ−ききのしつくに−しられけり−かはおとたかき−はるさめのそら |
01524 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかも星のまきれはすくなくて春雨そそく深きよの闇
うめかかも−ほしのまきれは−すくなくて−はるさめそそく−ふかきよのやみ |
01525 |
未入力 正徹 (xxx)
閨ちかくよるひかるてふ玉水や月影かすむ軒の春雨
ねやちかく−よるひかるてふ−たまみつや−つきかけかすむ−のきのはるさめ |
01526 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もめくみにもれぬ春の雨苔の袂をよそに過すな
くさもきも−めくみにもれぬ−はるのあめ−こけのたもとを−よそにすくすな |
01527 |
未入力 正徹 (xxx)
近からし空よりおほれ降る雨に月のある夜のかすむとほ山
ちかからし−そらよりおほれ−ふるあめに−つきのあるよの−かすむとほやま |
01528 |
未入力 正徹 (xxx)
雪消えし野原の雨の下縁草も枯葉をうつむ色かな
ゆききえし−のはらのあめの−したみとり−くさもかれはを−うつむいろかな |
01529 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さすかた空はれて吹く風に山もと遠くかすむ春雨
あさひさす−かたそらはれて−ふくかせに−やまもととほく−かすむはるさめ |
01530 |
未入力 正徹 (xxx)
紐ときし花のねくらの鳥のこゑにほふ雨夜の明ほのの山
ひもときし−はなのねくらの−とりのこゑ−にほふあまよの−あけほののやま |
01531 |
未入力 正徹 (xxx)
もる庵にさむる涙をそふるかなうき春雨のふるき世の夢
もるいほに−さむるなみたを−そふるかな−うきはるさめの−ふるきよのゆめ |
01532 |
未入力 正徹 (xxx)
日をへつつ宿をは出てすまゆこもりいふせくもあるか春雨の空
ひをへつつ−やとをはいてす−まゆこもり−いふせくもあるか−はるさめのそら |
01533 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はなるしのふの枯葉ぬれ延ひて紅葉にかへる春雨そふる
のきはなる−しのふのかれは−ぬれのひて−もみちにかへる−はるさめそふる |
01534 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくよりさそひて庭の春雨を花のみそれと風のなすらん
いつくより−さそひてにはの−はるさめを−はなのみそれと−かせのなすらむ |
01535 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふ色しをれても春雨は猶山なしの花の一枝
つゆはらふ−いろしをれても−はるさめは−なほやまなしの−はなのひとえた |
01536 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はなる有明の月の影なから霞みておつる袖のはる雨
のきはなる−ありあけのつきの−かけなから−かすみておつる−そてのはるさめ |
01537 |
未入力 正徹 (xxx)
山風の松に木ふかき音はして花の香くらき明ほのの雨
やまかせの−まつにこふかき−おとはして−はなのかくらき−あけほののあめ |
01538 |
未入力 正徹 (xxx)
花はちりぬ夕の雨にふりはてよ鳥の入るてふ雲のなきまて
はなはちりぬ−ゆふへのあめに−ふりはてよ−とりのいるてふ−くものなきまて |
01539 |
未入力 正徹 (xxx)
いかはかり夕の雨の遠かたにかすむさと人袖しほるらむ
いかはかり−ゆふへのあめの−をちかたに−かすむさとひと−そてしほるらむ |
01540 |
未入力 正徹 (xxx)
遠かたの霞の衣たれかきるあまつつみせり夕暮の空
をちかたの−かすみのころも−たれかきる−あまつつみせり−ゆふくれのそら |
01541 |
未入力 正徹 (xxx)
のこるなり夕山かつらかすみかけふる春雨にあくるおもかけ
のこるなり−ゆふやまかつら−かすみかけ−ふるはるさめに−あくるおもかけ |
01542 |
未入力 正徹 (xxx)
春雨のくるる軒はにいくすちかいとゆふみたすしつのをた巻
はるさめの−くるるのきはに−いくすちか−いとゆふみたす−しつのをたまき |
01543 |
未入力 正徹 (xxx)
春はたた嶺に夕ゐる雲もなし大かた空のかすむ雨かな
はるはたた−みねにゆふゐる−くももなし−おほかたそらの−かすむあめかな |
01544 |
未入力 正徹 (xxx)
雨も又たか手枕に明けぬらん雲そとたゆる春のよの夢
あめもまた−たかたまくらに−あけぬらむ−くもそとたゆる−はるのよのゆめ |
01545 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とふ雨と成りてや絶えぬらん月も春の夜夢のうき雲
まくらとふ−あめとなりてや−たえぬらむ−つきもはるのよ−ゆめのうきくも |
01546 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そそく円田の草に花そ咲くおくてになしてしはしかへすな
あめそそく−かとたのくさに−はなそさく−おくてになして−しはしかへすな |
01547 |
未入力 正徹 (xxx)
過きぬるか閨のあれまにもる雨の雫もかすむ袖の月かけ
すきぬるか−ねやのあれまに−もるあめの−しつくもかすむ−そてのつきかけ |
01548 |
未入力 正徹 (xxx)
春の雨晴行くしもつ出雲寺のこるは雲やはつさくら花
はるのあめ−はれゆくしもつ−いつもてら−のこるはくもや−はつさくらはな |
01549 |
未入力 正徹 (xxx)
草の庵ねぬにそおもふ春雨のこまかに遠き世世の古こと
くさのいほ−ねぬにそおもふ−はるさめの−こまかにとほき−よよのふること |
01550 |
未入力 正徹 (xxx)
さもそ世はうき山風の音たえて春の花なき夕暮の雨
さもそよは−うきやまかせの−おとたえて−はるのはななき−ゆふくれのあめ |
01551 |
未入力 正徹 (xxx)
わか袖も春の老その杜のはも涙かきくらす雨そ色つく
わかそても−はるのおいその−もりのはも−なみたかきくらす−あめそいろつく |
01552 |
未入力 正徹 (xxx)
江の上の水のうき草紅にふりいてて松をそむる春雨
えのうへの−みつのうきくさ−くれなゐに−ふりいててまつを−そむるはるさめ |
01553 |
未入力 正徹 (xxx)
わかかたをしのふの軒の春雨に古郷人も袖しほるらむ
わかかたを−しのふののきの−はるさめに−ふるさとひとも−そてしほるらむ |
01554 |
未入力 正徹 (xxx)
主やたれ春の苗代つくる雨に田面の雲をかへす山かせ
ぬしやたれ−はるのなはしろ−つくるあめに−たのものくもを−かへすやまかせ |
01555 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれつつもあへる時かな雨の足もあらすき返す春の小山田
ぬれつつも−あへるときかな−あめのあしも−あらすきかへす−はるのをやまた |
01556 |
未入力 正徹 (xxx)
夜の雨にあさのさ衣かへす田を夢にもみるやいそくしつのを
よるのあめに−あさのさころも−かへすたを−ゆめにもみるや−いそくしつのを |
01557 |
未入力 正徹 (xxx)
すさむらむ御牧の草の古葉さへ又駒かへる春とみえつつ
すさむらむ−みまきのくさの−ふるはさへ−またこまかへる−はるとみえつつ |
01558 |
未入力 正徹 (xxx)
程ちかき手馴の駒を放ちおきてなれも草かる野へのあけまき
ほとちかき−たなれのこまを−はなちおきて−なれもくさかる−のへのあけまき |
01559 |
未入力 正徹 (xxx)
あれそ行く御牧の駒のしたりかみおきふし野への草にみたれて
あれそゆく−みまきのこまの−したりかみ−おきふしのへの−くさにみたれて |
01560 |
未入力 正徹 (xxx)
野辺の駒つなける縄に草そふすいたくな引きそ秋の花みん
のへのこま−つなけるなはに−くさそふす−いたくなひきそ−あきのはなみむ |
01561 |
未入力 正徹 (xxx)
駒はみな春の御牧の野へにひく霞の色をかす毛はかりそ
こまはみな−はるのみまきの−のへにひく−かすみのいろを−かすけはかりそ |
01562 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまつ心なき駒の形代をいたたきいはふこゑもいさめる
はるはまつ−こころなきこまの−かたしろを−いたたきいはふ−こゑもいさめる |
01563 |
未入力 正徹 (xxx)
春日よみ遠き野原の放駒ねふりたてるも哀とそみる
はるひよみ−とほきのはらの−はなれこま−ねふりたてるも−あはれとそみる |
01564 |
未入力 正徹 (xxx)
二葉ともみつの御牧の春の草もゆれはやかて駒そすさむる
ふたはとも−みつのみまきの−はるのくさ−もゆれはやかて−こまそすさむる |
01565 |
未入力 正徹 (xxx)
秋は又民も草葉にいさまなん御牧にいはふのへの春駒
あきはまた−たみもくさはに−いさまなむ−みまきにいはふ−のへのはるこま |
01566 |
未入力 正徹 (xxx)
春ふかみ草おふ駒もかる人もかへるみつ野の夕暮の雨
はるふかみ−くさおふこまも−かるひとも−かへるみつのの−ゆふくれのあめ |
01567 |
未入力 正徹 (xxx)
草もまた古葉の色をはむ駒の毛さへ栗栖の野へそ春なき
くさもまた−ふるはのいろを−はむこまの−けさへくるすの−のへそはるなき |
01568 |
未入力 正徹 (xxx)
駒の毛のひはり立つなりくるすのの御牧の草やはみあらすらん
こまのけの−ひはりたつなり−くるすのの−みまきのくさや−はみあらすらむ |
01569 |
未入力 正徹 (xxx)
御牧より春草おひてくる駒のおのれやせたる世中のうさ
みまきより−はるくさおひて−くるこまの−おのれやせたる−よのなかのうさ |
01570 |
未入力 正徹 (xxx)
哀にもかすむ夕の広き野に静に立ちて駒そかへらぬ
あはれにも−かすむゆふへの−ひろきのに−しつかにたちて−こまそかへらぬ |
01571 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちこむる野への霞をはむ駒にもゆるそしるき春の若草
たちこむる−のへのかすみを−はむこまに−もゆるそしるき−はるのわかくさ |
01572 |
未入力 正徹 (xxx)
春ふかみ沢におり立つつるふちの駒のすさむる草そ荒行く
はるふかみ−さはにおりたつ−つるふちの−こまのすさむる−くさそあれゆく |
01573 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくらん心もさそなあれわたる春の田面の雁のとこよを
いそくらむ−こころもさそな−あれわたる−はるのたのもの−かりのとこよを |
01574 |
未入力 正徹 (xxx)
ととめこし子をおもふ雁や春のよのくらきやみ路に猶かへるらん
ととめこし−こをおもふかりや−はるのよの−くらきやみちに−なほかへるらむ |
01575 |
未入力 正徹 (xxx)
空になとおもひたつらん春の雁おのか床よの塵ならぬ身を
そらになと−おもひたつらむ−はるのかり−おのかとこよの−ちりならぬみを |
01576 |
未入力 正徹 (xxx)
こととはむしらすとこよは此比を秋にさためて雁や行くらん
こととはむ−しらすとこよは−このころを−あきにさためて−かりやゆくらむ |
01577 |
未入力 正徹 (xxx)
二月の午ならねとも稲荷山さかの名しるくこゆる雁か音
きさらきの−うまならねとも−いなりやま−さかのなしるく−こゆるかりかね |
01578 |
未入力 正徹 (xxx)
春の色を空にそしらぬ雁の行くとこよや花の都なるらん
はるのいろを−そらにそしらぬ−かりのゆく−とこよやはなの−みやこなるらむ |
01579 |
未入力 正徹 (xxx)
かきつらね秋こし数のそのままにかへるやかたき春のかりかね
かきつらね−あきこしかすの−そのままに−かへるやかたき−はるのかりかね |
01580 |
未入力 正徹 (xxx)
都にてむすひし雁の玉章もとくやとこよの花の下紐
みやこにて−むすひしかりの−たまつさも−とくやとこよの−はなのしたひも |
01581 |
未入力 正徹 (xxx)
あとつくる真砂の鳥を形見とや又もし消えて帰る雁か音
あとつくる−まさこのとりを−かたみとや−またもしきえて−かへるかりかね |
01582 |
未入力 正徹 (xxx)
霞たつしのふもちすり衣手にみたれて帰る春の雁か音
かすみたつ−しのふもちすり−ころもてに−みたれてかへる−はるのかりかね |
01583 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる霞の衣した帯をひきてわかるる雁の一むら
はるのきる−かすみのころも−したおひを−ひきてわかるる−かりのひとむら |
01584 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷にいまた思ひやたえさらん南にいそく春のかりか音
ふるさとに−いまたおもひや−たえさらむ−みなみにいそく−はるのかりかね |
01585 |
未入力 正徹 (xxx)
燕くるかた岡の辺の柳原なひく梢にかへるかりかね
つはめくる−かたをかのへの−やなきはら−なひくこすゑに−かへるかりかね |
01586 |
未入力 正徹 (xxx)
みこし路にいまゆかすとも春の雁北にむかふをかへるとやみん
みこしちに−いまゆかすとも−はるのかり−きたにむかふを−かへるとやみむ |
01587 |
未入力 正徹 (xxx)
風吹けは駒もいはふる古郷をいそくか北にむかふかりかね
かせふけは−こまもいはふる−ふるさとを−いそくかきたに−むかふかりかね |
01588 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ雁秋の衣をぬきすてて帰るに似たる雲そのこれる
あまつかり−あきのころもを−ぬきすてて−かへるににたる−くもそのこれる |
01589 |
未入力 正徹 (xxx)
春の雁ゆふへの雲に声すなり哀かへらぬ老のなみかな
はるのかり−ゆふへのくもに−こゑすなり−あはれかへらぬ−おいのなみかな |
01590 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき日の空に正木の綱はへてと山を遠みかすむ雁かね
なかきひの−そらにまさきの−つなはへて−とやまをとほみ−かすむかりかね |
01591 |
未入力 正徹 (xxx)
真葛葉もたえすかへりし秋風の行へはしるや春のかりかね
まくすはも−たえすかへりし−あきかせの−ゆくへはしるや−はるのかりかね |
01592 |
未入力 正徹 (xxx)
こえて行く嶺のま葛の若葉さへ雁の羽風にいまかへるなり
こえてゆく−みねのまくすの−わかはさへ−かりのはかせに−いまかへるなり |
01593 |
未入力 正徹 (xxx)
雁に又めくりあふらし小車のとこよの花の春のさと人
かりにまた−めくりあふらし−をくるまの−とこよのはなの−はるのさとひと |
01594 |
未入力 正徹 (xxx)
比良の海の浪に釣するあまの袖かへるも雁の羽風とそみる
ひらのうみの−なみにつりする−あまのそて−かへるもかりの−はかせとそみる |
01595 |
未入力 正徹 (xxx)
雁なれや雲にことちを立つとみてかへりこゑする春のしらへは
かりなれや−くもにことちを−たつとみて−かへりこゑする−はるのしらへは |
01596 |
未入力 正徹 (xxx)
行く雁の都の夢もかへるらんこしの浪路の荒き旅ねに
ゆくかりの−みやこのゆめも−かへるらむ−こしのなみちの−あらきたひねに |
01597 |
未入力 正徹 (xxx)
春いてて冬にそむかふ天つ雁都の霞こしのしら雪
はるいてて−ふゆにそむかふ−あまつかり−みやこのかすみ−こしのしらゆき |
01598 |
未入力 正徹 (xxx)
毛衣に花の錦も立ちあへすかへるかいそくかりのふる郷
けころもに−はなのにしきも−たちあへす−かへるかいそく−かりのふるさと |
01599 |
未入力 正徹 (xxx)
待てしはしとこ世も此よ花ならぬ花やはさかん春の雁か音
まてしはし−とこよもこのよ−はなならぬ−はなやはさかむ−はるのかりかね |
01600 |
未入力 正徹 (xxx)
春をあさみまた北海や荒れぬらん漕きかへるなり雁のとも舟
はるをあさみ−またきたうみや−あれぬらむ−こきかへるなり−かりのともふね |
01601 |
未入力 正徹 (xxx)
行く雁は啼きてもさそふ有明の月そおもはぬ空に残れる
ゆくかりは−なきてもさそふ−ありあけの−つきそおもはぬ−そらにのこれる |
01602 |
未入力 正徹 (xxx)
星合は秋そわかるみ天の川かはたれ時にかへるかりかね
ほしあひは−あきそわかるみ−あまのかは−かはたれときに−かへるかりかね |
01603 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きて行く雁の涙もかくれあらし雲も霞も袖につつまて
なきてゆく−かりのなみたも−かくれあらし−くももかすみも−そてにつつまて |
01604 |
未入力 正徹 (xxx)
梢にも宿やはからん霞わけねに行く鳥につるる雁か音
こすゑにも−やとやはからむ−かすみわけ−ねにゆくとりに−つるるかりかね |
01605 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章は中中見えし墨染のゆふへをかけて帰る雁かね
たまつさは−なかなかみえし−すみそめの−ゆふへをかけて−かへるかりかね |
01606 |
未入力 正徹 (xxx)
三日月もわか有明かくるるまとたのむる比の雁の別は
みかつきも−わかありあけか−くるるまと−たのむるころの−かりのわかれは |
01607 |
未入力 正徹 (xxx)
ねに行くもましる鳥かな明けはとも雁はたのめぬ春の夕暮
ねにゆくも−ましるとりかな−あけはとも−かりはたのめぬ−はるのゆふくれ |
01608 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷に今夜なつきそ花にふれてやみの錦をかりの毛衣
ふるさとに−こよひなつきそ−はなにふれて−やみのにしきを−かりのけころも |
01609 |
未入力 正徹 (xxx)
いるとみる弓張月もおとろかす雁や霞に身をかくすらん
いるとみる−ゆみはりつきも−おとろかす−かりやかすみに−みをかくすらむ |
01610 |
未入力 正徹 (xxx)
霞にも雲にもまよふ空なから春をしるへと雁や行くらん
かすみにも−くもにもまよふ−そらなから−はるをしるへと−かりやゆくらむ |
01611 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章のこすみ薄墨かきつらね今遠近にかへる雁か音
たまつさの−こすみうすすみ−かきつらね−いまをちこちに−かへるかりかね |
01612 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮かすみて雁もとふさ立つ足から山にかへる雲かな
ゆふまくれ−かすみてかりも−とふさたつ−あしからやまに−かへるくもかな |
01613 |
未入力 正徹 (xxx)
みなの川霞のうちに音はして今よりおつる春の雁か音
みなのかは−かすみのうちに−おとはして−いまよりおつる−はるのかりかね |
01614 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちねたた花ちる嶺に行く雁のなこりもしらぬ谷の埋木
くちねたた−はなちるみねに−ゆくかりの−なこりもしらぬ−たにのうもれき |
01615 |
未入力 正徹 (xxx)
おくれとや夕へは北に吹く風のむかしの谷をしたふかりかね
おくれとや−ゆふへはきたに−ふくかせの−むかしのたにを−したふかりかね |
01616 |
未入力 正徹 (xxx)
はしたての松もかくとや浪の上に霞みてならふ春のかりかね
はしたての−まつもかくとや−なみのうへに−かすみてならふ−はるのかりかね |
01617 |
未入力 正徹 (xxx)
春とてや雁かへるらん海松や時そともなき浪にならはて
はるとてや−かりかへるらむ−うみまつや−ときそともなき−なみにならはて |
01618 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上につはさならへてうけ縄の長きに似たる春の雁か音
なみのうへに−つはさならへて−うけなはの−なかきににたる−はるのかりかね |
01619 |
未入力 正徹 (xxx)
蘆辺より浪よる磯にみつ塩のいやましにのみ帰る雁か音
あしへより−なみよるいそに−みつしほの−いやましにのみ−かへるかりかね |
01620 |
未入力 正徹 (xxx)
ひらの海や湊の春の荒小田に夕浪こえて雁そむれゐる
ひらのうみや−みなとのはるの−あらをたに−ゆふなみこえて−かりそむれゐる |
01621 |
未入力 正徹 (xxx)
かへるかりわたれとぬれぬえそしらぬ翅の雨に春のささ浪
かへるかり−わたれとぬれぬ−えそしらぬ−つはさのあめに−はるのささなみ |
01622 |
未入力 正徹 (xxx)
帰るらし浪にうち出の浜つつらつらなる雁もはねかつらして
かへるらし−なみにうちての−はまつつら−つらなるかりも−はねかつらして |
01623 |
未入力 正徹 (xxx)
雁かゐし春の渚のあととめてかへりつくさぬにほのうら浪
かりかゐし−はるのなきさの−あととめて−かへりつくさぬ−にほのうらなみ |
01624 |
未入力 正徹 (xxx)
かすかすに筑波根こえてから衣すそわの田井にかすむ雁か音
かすかすに−つくはねこえて−からころも−すそわのたゐに−かすむかりかね |
01625 |
未入力 正徹 (xxx)
すきかへす春の荒田はすむ程の水さへなしと雁や行くらむ
すきかへす−はるのあらたは−すむほとの−みつさへなしと−かりやゆくらむ |
01626 |
未入力 正徹 (xxx)
雁そ行く又わたらしともろこしの橋にかきてし文字をつらねて
かりそゆく−またわたらしと−もろこしの−はしにかきてし−もしをつらねて |
01627 |
未入力 正徹 (xxx)
春のきる雲の衣の帯にしてかへるをつるる雁の一すち
はるのきる−くものころもの−おひにして−かへるをつるる−かりのひとすち |
01628 |
未入力 正徹 (xxx)
かすむ日にこえ行く雲の一枝は雁のつらぬるみねの松はら
かすむひに−こえゆくくもの−ひとえたは−かりのつらぬる−みねのまつはら |
01629 |
未入力 正徹 (xxx)
遠かたの霞のみをになかれ行く雁のはの字や書くかひもなき
をちかたの−かすみのみをに−なかれゆく−かりのはのしや−かくかひもなき |
01630 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ行く水なき空に水茎のあとさへ消えてかすむ雁かね
なかれゆく−みつなきそらに−みつくきの−あとさへきえて−かすむかりかね |
01631 |
未入力 正徹 (xxx)
春のよはかりねの夢のうき橋もみしかき雲に渡る雁かね
はるのよは−かりねのゆめの−うきはしも−みしかきくもに−わたるかりかね |
01632 |
未入力 正徹 (xxx)
影うつる苗代水やさそふらん遠山もとにおつるかりかね
かけうつる−なはしろみつや−さそふらむ−とほやまもとに−おつるかりかね |
01633 |
未入力 正徹 (xxx)
霞行く翅の風や寒き日のとほ山すりのころも雁か音
かすみゆく−つはさのかせや−さむきひの−とほやますりの−ころもかりかね |
01634 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしたかかきける筆のあととてか消えつつ遠く雁帰るらん
むかしたか−かきけるふての−あととてか−きえつつとほく−かりかへるらむ |
01635 |
未入力 正徹 (xxx)
棹姫のかすみの袖につく墨のおつるやこゆる春の雁かね
さほひめの−かすみのそてに−つくすみの−おつるやこゆる−はるのかりかね |
01636 |
未入力 正徹 (xxx)
春の雁帰るも空に遠き世をわれそ心に思ひつらぬる
はるのかり−かへるもそらに−とほきよを−われそこころに−おもひつらぬる |
01637 |
未入力 正徹 (xxx)
さほ姫の遠山まゆのおも形に今朝そみたれて帰る雁かね
さほひめの−とほやままゆの−おもかけに−けさそみたれて−かへるかりかね |
01638 |
未入力 正徹 (xxx)
いくつらと見ゆるものからあま雲のよそにのみして帰る雁かね
いくつらと−みゆるものから−あまくもの−よそにのみして−かへるかりかね |
01639 |
未入力 正徹 (xxx)
かすめやる心雲路をしのけとや昔にかすむ春のかりかね
かすめやる−こころくもちを−しのけとや−むかしにかすむ−はるのかりかね |
01640 |
未入力 正徹 (xxx)
いさ今夜うれしき道にともなはむ我も昔にかへる雁かね
いさこよひ−うれしきみちに−ともなはむ−われもむかしに−かへるかりかね |
01641 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりこぬ空に心を送れはやむかしにかすむ春のかりかね
かへりこぬ−そらにこころを−おくれはや−むかしにかすむ−はるのかりかね |
01642 |
未入力 正徹 (xxx)
春の雁まてニかたにしたふとも花ちる嶺のこゆるをそみむ
はるのかり−まてふたかたに−したふとも−はなちるみねの−こゆるをそみむ |
01643 |
未入力 正徹 (xxx)
ゐるかたやかすむ嵐の末ならん塵に立行く春のかりかね
ゐるかたや−かすむあらしの−すゑならむ−ちりにたちゆく−はるのかりかね |
01644 |
未入力 正徹 (xxx)
友なはぬ昨日の雁の雲ゐ路に鳴きて帰るをあすやしたはん
ともなはぬ−きのふのかりの−くもゐちに−なきてかへるを−あすやしたはむ |
01645 |
未入力 正徹 (xxx)
巣をいてて山の霞にまよへはや子を呼ふ鳥の鳴きくらすらん
すをいてて−やまのかすみに−まよへはや−こをよふとりの−なきくらすらむ |
01646 |
未入力 正徹 (xxx)
いとへとやうき世の人を喚子鳥ひとり太山にねを尽すらん
いとへとや−うきよのひとを−よふことり−ひとりみやまに−ねをつくすらむ |
01647 |
未入力 正徹 (xxx)
こたふるをきかてやさのみ呼子鳥太山の滝の近きひひきに
こたふるを−きかてやさのみ−よふことり−みやまのたきの−ちかきひひきに |
01648 |
未入力 正徹 (xxx)
そことなく子を喚ふ鳥のこゑきくを鷲のみ山と思はましかは
そことなく−こをよふとりの−こゑきくを−わしのみやまと−おもはましかは |
01649 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちてこそ種をもとめめ水底に水草かりしく春の苗代
くちてこそ−たねをもとめめ−みなそこに−みくさかりしく−はるのなはしろ |
01650 |
未入力 正徹 (xxx)
あつさ弓五十串のみしめ引きはへて種まく小田は鳥もかよはす
あつさゆみ−いくしのみしめ−ひきはへて−たねまくをたは−とりもかよはす |
01651 |
未入力 正徹 (xxx)
神楽とはよも苗代のみな口に川頭やうたふ春のささ浪
かくらとは−よもなはしろの−みなくちに−かはつやうたふ−はるのささなみ |
01652 |
未入力 正徹 (xxx)
おもへとや鳥おふ水の苗代に鹿立つ嶺のかけもみゆらむ
おもへとや−とりおふみつの−なはしろに−しかたつみねの−かけもみゆらむ |
01653 |
未入力 正徹 (xxx)
花なれや苗代小田にしめ越えて御ぬさ手向くる春の山風
はななれや−なはしろをたに−しめこえて−みぬさたむくる−はるのやまかせ |
01654 |
未入力 正徹 (xxx)
春の田の苗の牆代いくしたて鳥驚かすしめのゆふして
はるのたの−なへのかきしろ−いくしたて−とりおとろかす−しめのゆふして |
01655 |
未入力 正徹 (xxx)
五十串たてまつるとなしの水口にうすの玉まく春の苗代
いくしたて−まつるとなしの−みなくちに−うすのたままく−はるのなはしろ |
01656 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙になひくみしめの夕つくひさすや岡辺の小田の苗代
しろたへに−なひくみしめの−ゆふつくひ−さすやをかへの−をたのなはしろ |
01657 |
未入力 正徹 (xxx)
あら小田や野へによろつなつむ賎は知らすやこれも民の草はと
あらをたや−のへによろつな−つむしつは−しらすやこれも−たみのくさはと |
01658 |
未入力 正徹 (xxx)
野を寒みまた新草は手にたにもたまらぬ雪の下に萌えつつ
のをさむみ−またにひくさは−てにたにも−たまらぬゆきの−したにもえつつ |
01659 |
未入力 正徹 (xxx)
末遠き野への若葉の新草にやとり初めたる春の朝露
すゑとほき−のへのわかはの−にひくさに−やとりそめたる−はるのあさつゆ |
01660 |
未入力 正徹 (xxx)
若草の花さくそのの初蝶も春日のとけみ遊ふ糸ゆふ
わかくさの−はなさくそのの−はつてふも−はるひのとけみ−あそふいとゆふ |
01661 |
未入力 正徹 (xxx)
松陰のをかの屋かたの雪間より秋風しるき葛の下萌
まつかけの−をかのやかたの−ゆきまより−あきかせしるき−くすのしたもえ |
01662 |
未入力 正徹 (xxx)
春は又落葉かきても松陰の礒菜摘むなりあまのをとめ子
はるはまた−おちはかきても−まつかけの−いそなつむなり−あまのをとめこ |
01663 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめすよ花さく春の草はあれとめかり塩焼く磯のあま人
なかめすよ−はなさくはるの−くさはあれと−めかりしほやく−いそのあまひと |
01664 |
未入力 正徹 (xxx)
たか春の草のたもとそあさ緑しなくたりてもみえぬ色かな
たかはるの−くさのたもとそ−あさみとり−しなくたりても−みえぬいろかな |
01665 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれし遠かた野へに小松原ありとみゆるや春のむら草
ふゆかれし−をちかたのへに−こまつはら−ありとみゆるや−はるのむらくさ |
01666 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨のうるほす庭にむす苔とみるはかりなる春の草かな
ふるあめの−うるほすにはに−むすこけと−みるはかりなる−はるのくさかな |
01667 |
未入力 正徹 (xxx)
消えはをし野への若葉の初もえき染めいたす春の雪の一入
きえはをし−のへのわかはの−はつもえき−そめいたすはるの−ゆきのひとしほ |
01668 |
未入力 正徹 (xxx)
秋かけてたちそつつけん若草の花の錦のおくの色色
あきかけて−たちそつつけむ−わかくさの−はなのにしきの−おくのいろいろ |
01669 |
未入力 正徹 (xxx)
春も猶山にはもえす若草のつま木こる男の道芝にして
はるもなほ−やまにはもえす−わかくさの−つまきこるをの−みちしはにして |
01670 |
未入力 正徹 (xxx)
初みとり色もこもらす宿に咲くこや若草のつまなしの花
はつみとり−いろもこもらす−やとにさく−こやわかくさの−つまなしのはな |
01671 |
未入力 正徹 (xxx)
みとりしく春のわか草やはらかにぬるよしらるる庭の夕露
みとりしく−はるのわかくさ−やはらかに−ぬるよしらるる−にはのゆふつゆ |
01672 |
未入力 正徹 (xxx)
若草につまもかくさて朝明の霞もしかもわたるのへかな
わかくさに−つまもかくさて−あさあけの−かすみもしかも−わたるのへかな |
01673 |
未入力 正徹 (xxx)
摘むもをしわかむらさきの菫草しのふのみたれのこるあさ露
つむもをし−わかむらさきの−すみれくさ−しのふのみたれ−のこるあさつゆ |
01674 |
未入力 正徹 (xxx)
たた一夜ねての朝けの露さむし菫摘むのの春の衣手
たたひとよ−ねてのあさけの−つゆさむし−すみれつむのの−はるのころもて |
01675 |
未入力 正徹 (xxx)
菫つむ沢辺の水の春さむみ一夜ねはかせ鶴の毛ころも
すみれつむ−さはへのみつの−はるさむみ−ひとよねはかせ−つるのけころも |
01676 |
未入力 正徹 (xxx)
つますとも菫ましりの若草の野をなつかしみ宿やからまし
つますとも−すみれましりの−わかくさの−のをなつかしみ−やとやからまし |
01677 |
未入力 正徹 (xxx)
行人も野へのしの屋に一夜ねぬつまぬ菫の春の名たてに
ゆくひとも−のへのしのやに−ひとよねぬ−つまぬすみれの−はるのなたてに |
01678 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑおきて花さへ春を三ちとせになるてふ桃のよはひをそしる
うゑおきて−はなさへはるを−みちとせに−なるてふももの−よはひをそしる |
01679 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりきぬけふさく花もももちとりさへつる宿の春の杯
めくりきぬ−けふさくはなも−ももちとり−さへつるやとの−はるのさかつき |
01680 |
未入力 正徹 (xxx)
山里にあさてかけおくはつきより桃の林とさける花かな
やまさとに−あさてかけおく−はつきより−もものはやしと−さけるはなかな |
01681 |
未入力 正徹 (xxx)
あさてほす棹かけわたす山奴のそのふの竹に桃そ交れる
あさてほす−さをかけわたす−やまかつの−そのふのたけに−ももそましれる |
01682 |
未入力 正徹 (xxx)
山さとのそのの垣ほにさく桃の枝をはつ木とあさてほすみゆ
やまさとの−そののかきほに−さくももの−えたをはつきと−あさてほすみゆ |
01683 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれきて桃の杯過くるとも手もさへきらし飲む身ならねは
なかれきて−もものさかつき−すくるとも−てもさへきらし−のむみならねは |
01684 |
未入力 正徹 (xxx)
紅にしろき花さく薗の桃むへ山かつもこころありけり
くれなゐに−しろきはなさく−そののもも−うへやまかつも−こころありけり |
01685 |
未入力 正徹 (xxx)
よくしれは夕かけまたぬあさかほもたた三千とせそ桃園の花
よくしれは−ゆふかけまたぬ−あさかほも−たたみちとせそ−ももそののはな |
01686 |
未入力 正徹 (xxx)
杯の石にさはるもことの葉もせかるる程ほまたれやはせん
さかつきの−いしにさはるも−ことのはも−せかるるほとほ−またれやはせむ |
01687 |
未入力 正徹 (xxx)
稀なれやけふの巳の日の御祓川めくりあふてふももの杯
まれなれや−けふのみのひの−みそきかは−めくりあふてふ−もものさかつき |
01688 |
未入力 正徹 (xxx)
まちけめや弥生の三日の水の上にうきたる鳥の春のさか月
まちけめや−やよひのみかの−みつのうへに−うきたるとりの−はるのさかつき |
01689 |
未入力 正徹 (xxx)
花さけは錦かけほす桃そのの春のふる宮人しなけれと
はなさけは−にしきかけほす−ももそのの−はるのふるみや−ひとしなけれと |
01690 |
未入力 正徹 (xxx)
たちわたる春のまといのともねまてきこえて高き雲の上人
たちわたる−はるのまといの−ともねまて−きこえてたかき−くものうへひと |
01691 |
未入力 正徹 (xxx)
九重に春の霞も引く弓の影見ぬ庭はともねとそしる
ここのへに−はるのかすみも−ひくゆみの−かけみぬにはは−ともねとそしる |
01692 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ波もかすめる池のかきつはたいつれかつひに春をへたてん
ささなみも−かすめるいけの−かきつはた−いつれかつひに−はるをへたてむ |
01693 |
未入力 正徹 (xxx)
花の色をかたみとやみしたとへけん人ははかなし一枝の雨
はなのいろを−かたみとやみし−たとへけむ−ひとははかなし−ひとえたのあめ |
01694 |
未入力 正徹 (xxx)
わたのはらうち出ててみれは山なしの花とやいはん沖つ白浪
わたのはら−うちいててみれは−やまなしの−はなとやいはむ−おきつしらなみ |
01695 |
未入力 正徹 (xxx)
浪こゆる入江にかすむ蘆の子のわか葉もいまたみえぬ春かな
なみこゆる−いりえにかすむ−あしのこの−わかはもいまた−みえぬはるかな |
01696 |
未入力 正徹 (xxx)
夕霞野かひの牛のあよみくる入江の蘆もかつそ角くむ
ゆふかすみ−のかひのうしの−あよみくる−いりえのあしも−かつそつのくむ |
01697 |
未入力 正徹 (xxx)
天の世のはしめは神も蘆牙の姿なりける江にや角くむ
あまのよの−はしめはかみも−あしかひの−すかたなりける−えにやつのくむ |
01698 |
未入力 正徹 (xxx)
哀にも軒はの燕きなくなり去年も巣かけし宿を尋ねて
あはれにも−のきはのつはめ−きなくなり−こそもすかけし−やとをたつねて |
01699 |
未入力 正徹 (xxx)
永き日の柳の糸にみたれきてつはめあまたの庭の春風
なかきひの−やなきのいとに−みたれきて−つはめあまたの−にはのはるかせ |
01700 |
未入力 正徹 (xxx)
あまたこゑ簾にかかる春の日のかすめる庭にちるつはめかな
あまたこゑ−すたれにかかる−はるのひの−かすめるにはに−ちるつはめかな |
01701 |
未入力 正徹 (xxx)
庭めくる燕入るなりなかはあけておしはるみすの下もあらはに
にはめくる−つはめいるなり−なかはあけて−おしはるみすの−したもあらはに |
01702 |
未入力 正徹 (xxx)
つはくらめ簾うこかす羽風にもかつ散る庭の花そ匂へる
つはくらめ−すたれうこかす−はかせにも−かつちるにはの−はなそにほへる |
01703 |
未入力 正徹 (xxx)
子をおもふ野へのおとろの下蕨折りてなふれそききす鳴くなり
こをおもふ−のへのおとろの−したわらひ−をりてなふれそ−ききすなくなり |
01704 |
未入力 正徹 (xxx)
行ふりに聞けはのとけし永き日のかすむ春野に雉なくこゑ
ゆきふりに−きけはのとけし−なかきひの−かすむはるのに−ききすなくこゑ |
01705 |
未入力 正徹 (xxx)
子を思ふ心しるらし雉鳴くかすみも袖をおほふ野へかな
こをおもふ−こころしるらし−ききすなく−かすみもそてを−おほふのへかな |
01706 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふらん子をいかにとも今そ聞く焼野を行けは雉なくこゑ
おもふらむ−こをいかにとも−いまそきく−やけのをゆけは−ききすなくこゑ |
01707 |
未入力 正徹 (xxx)
若草のもゆる春日も猶さゆるうたの枯野にききす鳴くなり
わかくさの−もゆるはるひも−なほさゆる−うたのかれのに−ききすなくなり |
01708 |
未入力 正徹 (xxx)
あつさ弓山桜かりわれならぬことわりしらて立つききすかな
あつさゆみ−やまさくらかり−われならぬ−ことわりしらて−たつききすかな |
01709 |
未入力 正徹 (xxx)
子をおもふ道のささ原岡越に誰ふみたてて雉なくらん
こをおもふ−みちのささはら−をかこしに−たれふみたてて−ききすなくらむ |
01710 |
未入力 正徹 (xxx)
子をおもふききす鳴くなりかの岡に草刈るをのこ春なくもかな
こをおもふ−ききすなくなり−かのをかに−くさかるをのこ−はるなくもかな |
01711 |
未入力 正徹 (xxx)
さくらちるかた野の原に立つ雉の羽風も春は花のかそする
さくらちる−かたののはらに−たつきしの−はかせもはるは−はなのかそする |
01712 |
未入力 正徹 (xxx)
真柴もて草葉そよかす山人のおりくる野へに雉立つなり
ましはもて−くさはそよかす−やまひとの−おりくるのへに−ききすたつなり |
01713 |
未入力 正徹 (xxx)
啼くききす子を思ひ草秋かけて涙や春の野へを染むらん
なくききす−こをおもひくさ−あきかけて−なみたやはるの−のへをそむらむ |
01714 |
未入力 正徹 (xxx)
雪そちる草のはら野の朝かしはぬるや雉の声はまたせて
ゆきそちる−くさのはらのの−あさかしは−ぬるやききすの−こゑはまたせて |
01715 |
未入力 正徹 (xxx)
おなしえに子をおもふ雉うらふれて鴫くや沢へのたつのもろこゑ
おなしえに−こをおもふききす−うらふれて−しきくやさはへの−たつのもろこゑ |
01716 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の鴫春のききすの立つ沢に哀こもれる霧かすみかな
あきのしき−はるのききすの−たつさはに−あはれこもれる−きりかすみかな |
01717 |
未入力 正徹 (xxx)
むら薄のこるを陰とねせりつむ沢田のくろにふす雉かな
むらすすき−のこるをかけと−ねせりつむ−さはたのくろに−ふすききすかな |
01718 |
未入力 正徹 (xxx)
鶴のすむ入江の沢に鳴く雉もろ心にや子をおもふらん
つるのすむ−いりえのさはに−なくききす−もろこころにや−こをおもふらむ |
01719 |
未入力 正徹 (xxx)
子をおもふ心しれとやかけろふのもゆる春日にききす啼くらん
こをおもふ−こころしれとや−かけろふの−もゆるはるひに−ききすなくらむ |
01720 |
未入力 正徹 (xxx)
あらき風わか葉な吹きそ鳴くききす子を思ふ野への末の芝生そ
あらきかせ−わかはなふきそ−なくききす−こをおもふのへの−すゑのしはふそ |
01721 |
未入力 正徹 (xxx)
のかれこしうき世わするる山陰に子を思ふ雉の声なをしへそ
のかれこし−うきよわするる−やまかけに−こをおもふきしの−こゑなをしへそ |
01722 |
未入力 正徹 (xxx)
消えかねし雪の跡とや雉鳴くかた山かくれ草もみしかき
きえかねし−ゆきのあととや−ききすなく−かたやまかくれ−くさもみしかき |
01723 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑさへもあるかなきかを糸ゆふにまかへてあかる夕雲雀かな
こゑさへも−あるかなきかを−いとゆふに−まかへてあかる−ゆふひはりかな |
01724 |
未入力 正徹 (xxx)
さしのほる春日の上の空しめてかすむ雲雀の野へのこゑこゑ
さしのほる−はるひのうへの−そらしめて−かすむひはりの−のへのこゑこゑ |
01725 |
未入力 正徹 (xxx)
春日よくかすめる空の村鳥や野辺のひはりの皆あかるらん
はるひよく−かすめるそらの−むらとりや−のへのひはりの−みなあかるらむ |
01726 |
未入力 正徹 (xxx)
かささきの橋に鳴くまて天の川かたのの雲雀あかるとそみし
かささきの−はしになくまて−あまのかは−かたののひはり−あかるとそみし |
01727 |
未入力 正徹 (xxx)
空たかくあかる雲雀もにくからす哀わか身の程知らぬ世に
そらたかく−あかるひはりも−にくからす−あはれわかみの−ほとしらぬよに |
01728 |
未入力 正徹 (xxx)
野への床草葉をあらす駒の毛の雲雀や空に声恨むらん
のへのとこ−くさはをあらす−こまのけの−ひはりやそらに−こゑうらむらむ |
01729 |
未入力 正徹 (xxx)
つまこめし野守の鏡面影のかすめる空になくひはりかな
つまこめし−のもりのかかみ−おもかけの−かすめるそらに−なくひはりかな |
01730 |
未入力 正徹 (xxx)
影清き野守の鏡折折にくもるはあかるむら雲雀かも
かけきよき−のもりのかかみ−をりをりに−くもるはあかる−むらひはりかも |
01731 |
未入力 正徹 (xxx)
玉鉾の野へのひはりもねをそ鳴くあかりての世の道や恋しき
たまほこの−のへのひはりも−ねをそなく−あかりてのよの−みちやこひしき |
01732 |
未入力 正徹 (xxx)
夕雲雀こゑの雲井に高島やかちのの草は嵐たつらし
ゆふひはり−こゑのくもゐに−たかしまや−かちののくさは−あらしたつらし |
01733 |
未入力 正徹 (xxx)
若葉たつ末野の茅原かくろへて巣のうちふかく鳴く雲雀かな
わかはたつ−すゑののちはら−かくろへて−すのうちふかく−なくひはりかな |
01734 |
未入力 正徹 (xxx)
啼くひはり空にあるまにすき返す田面の草に床はなくして
なくひはり−そらにあるまに−すきかへす−たのものくさに−とこはなくして |
01735 |
未入力 正徹 (xxx)
かへすよりあれにし野田の草の原むなしき床をとふひはりかな
かへすより−あれにしのたの−くさのはら−むなしきとこを−とふひはりかな |
01736 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの夕かけ草を吹く風におく露またてたつ雲雀かな
やまもとの−ゆふかけくさを−ふくかせに−おくつゆまたて−たつひはりかな |
01737 |
未入力 正徹 (xxx)
夕雲雀空にこゑして落ちこぬやなれし床なき荻の焼原
ゆふひはり−そらにこゑして−おちこぬや−なれしとこなき−をきのやけはら |
01738 |
未入力 正徹 (xxx)
野辺の草はねもしをれし夕露の結はぬ先に雲雀落つなり
のへのくさ−はねもしをれし−ゆふつゆの−むすはぬさきに−ひはりおつなり |
01739 |
未入力 正徹 (xxx)
野への露夕かけ草にのほるさへおつる雲雀の床のかたしき
のへのつゆ−ゆふかけくさに−のほるさへ−おつるひはりの−とこのかたしき |
01740 |
未入力 正徹 (xxx)
菫つむ遠かた人もいそくらし春の野に出ててあそふ糸ゆふ
すみれつむ−をちかたひとも−いそくらし−はるののにいてて−あそふいとゆふ |
01741 |
未入力 正徹 (xxx)
春日影をちかた野への若草に里の子ましりあそふ糸ゆふ
はるひかけ−をちかたのへの−わかくさに−さとのこましり−あそふいとゆふ |
01742 |
未入力 正徹 (xxx)
世にかくてあるかなきかの身をしるもたくひむなしき春の糸ゆふ
よにかくて−あるかなきかの−みをしるも−たくひむなしき−はるのいとゆふ |
01743 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ人かさしにむすふ糸ゆふやみとりの空にみたれゆくらん
あまつひと−かさしにむすふ−いとゆふや−みとりのそらに−みたれゆくらむ |
01744 |
未入力 正徹 (xxx)
蘆のやの野への春風くりかへしたか糸ゆふをしつのをた巻
あしのやの−のへのはるかせ−くりかへし−たかいとゆふを−しつのをたまき |
01745 |
未入力 正徹 (xxx)
若みとりまた長からぬ初草に春日をつなく野へのいとゆふ
わかみとり−またなかからぬ−はつくさに−はるひをつなく−のへのいとゆふ |
01746 |
未入力 正徹 (xxx)
草もゆる野島か崎の永き日にあまや約する棹の糸ゆふ
くさもゆる−のしまかさきの−なかきひに−あまやつりする−さをのいとゆふ |
01747 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身はあるかなきかの糸ゆふになひく日影をはらふ春風
おいかみは−あるかなきかの−いとゆふに−なひくひかけを−はらふはるかせ |
01748 |
未入力 正徹 (xxx)
世中はけに事しけき春の野の草葉にあそふ糸まなの身や
よのなかは−けにことしけき−はるののの−くさはにあそふ−いとまなのみや |
01749 |
未入力 正徹 (xxx)
はれくもりわたる春日もかけろふのあるかなきかの小野の糸ゆふ
はれくもり−わたるはるひも−かけろふの−あるかなきかの−をののいとゆふ |
01750 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる野への緑のみたるるもあそふも草の糸そみしかき
かせわたる−のへのみとりの−みたるるも−あそふもくさの−いとそみしかき |
01751 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜も初はひとりまきの戸の水鶏に似たる蛙なくなり
はるのよも−はしめはひとり−まきのとの−くひなににたる−かはつなくなり |
01752 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふらむ山田の水に数しらぬ子はこゑたてす鳴く川頭かな
おもふらむ−やまたのみつに−かすしらぬ−こはこゑたてす−なくかはつかな |
01753 |
未入力 正徹 (xxx)
木の本の山田の水にすみなから蛙や春の花になくらむ
このもとの−やまたのみつに−すみなから−かはつやはるの−はなになくらむ |
01754 |
未入力 正徹 (xxx)
うきて鳴く水の蛙のいきのをもよるやさ浪のしけき小やま田
うきてなく−みつのかはつの−いきのをも−よるやさなみの−しけきをやまた |
01755 |
未入力 正徹 (xxx)
おりたちて田歌の声をならすなり水の蛙の春のゆふくれ
おりたちて−たうたのこゑを−ならすなり−みつのかはつの−はるのゆふくれ |
01756 |
未入力 正徹 (xxx)
手もふれぬ荒田の草の水かくれに初こゑいたす蛙なくなり
てもふれぬ−あらたのくさの−みかくれに−はつこゑいたす−かはつなくなり |
01757 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田やまかする水の萍にかくれあらはれかはつなくなり
をやまたや−まかするみつの−うきくさに−かくれあらはれ−かはつなくなり |
01758 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥をこそおふ人もあれ苗代の水の蛙のなにうらむらん
とりをこそ−おふひともあれ−なはしろの−みつのかはつの−なにうらむらむ |
01759 |
未入力 正徹 (xxx)
春の夜の苗代水に秋田もるいねかてにしてなく蛙かな
はるのよの−なはしろみつに−あきたもる−いねかてにして−なくかはつかな |
01760 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの夕の鐘も霞消えて寺の前田に蛙なくなり
やまもとの−ゆふへのかねも−かすみきえて−てらのまへたに−かはつなくなり |
01761 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらぬ子は蛙とも苗代の水のあはれむ声かとそ聞く
かすしらぬ−こはかはつとも−なはしろの−みつのあはれむ−こゑかとそきく |
01762 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらすすたく蛙のこゑことに玉うきいつる水の苗代
かすしらす−すたくかはつの−こゑことに−たまうきいつる−みつのなはしろ |
01763 |
未入力 正徹 (xxx)
なく蛙身をうき草にかくしてもねをこそたえね水の苗代
なくかはつ−みをうきくさに−かくしても−ねをこそたえね−みつのなはしろ |
01764 |
未入力 正徹 (xxx)
水にすむ名のみなかれて苗代の外面の草に鳴くかはつかな
みつにすむ−なのみなかれて−なはしろの−そとものくさに−なくかはつかな |
01765 |
未入力 正徹 (xxx)
苗代の水の蛙のうたかたにこぬさをとめのこゑならすなり
なはしろの−みつのかはつの−うたかたに−こぬさをとめの−こゑならすなり |
01766 |
未入力 正徹 (xxx)
春はまた苗代水のうたかたに消えて蛙のこゑそまれなる
はるはまた−なはしろみつの−うたかたに−きえてかはつの−こゑそまれなる |
01767 |
未入力 正徹 (xxx)
散る花にましる蛙のうたかたも色なる川の水のしらあわ
ちるはなに−ましるかはつの−うたかたも−いろなるかはの−みつのしらあわ |
01768 |
未入力 正徹 (xxx)
水ひろきすみかもしらす底みえぬ板井にひとり鳴く蛙かな
みつひろき−すみかもしらす−そこみえぬ−いたゐにひとり−なくかはつかな |
01769 |
未入力 正徹 (xxx)
蛙かも水の下にてなく声にうかひ出てたる淡そなかるる
かはつかも−みつのしたにて−なくこゑに−うかひいてたる−あわそなかるる |
01770 |
未入力 正徹 (xxx)
水の上に蛙の鳴くも山川の瀬のなるなみのよるそまきるる
みつのうへに−かはつのなくも−やまかはの−せのなるなみの−よるそまきるる |
01771 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮の春行く水に啼く蛙風にはれせぬ声そかすめる
ゆふくれの−はるゆくみつに−なくかはつ−かせにはれせぬ−こゑそかすめる |
01772 |
未入力 正徹 (xxx)
夕川やなかるる淡と消えそ行く水の蛙のはるの初こゑ
ゆふかはや−なかるるあわと−きえそゆく−みつのかはつの−はるのはつこゑ |
01773 |
未入力 正徹 (xxx)
湊川しほに瀬のなる夕浪に小田の蛙そこゑけたれ行く
みなとかは−しほにせのなる−ゆふなみに−をたのかはつそ−こゑけたれゆく |
01774 |
未入力 正徹 (xxx)
夕かすみ山田の川にたつ袖の中なるよとに蛙啼くなり
ゆふかすみ−やまたのかはに−たつそての−うちなるよとに−かはつなくなり |
01775 |
未入力 正徹 (xxx)
池まれにつくる田もなき都たに暮るれはしけく蛙鳴くこゑ
いけまれに−つくるたもなき−みやこたに−くるれはしけく−かはつなくこゑ |
01776 |
未入力 正徹 (xxx)
玉のをの長かりけるも春の日の暮れかたきこそ思ひしらるる
たまのをの−なかかりけるも−はるのひの−くれかたきこそ−おもひしらるる |
01777 |
未入力 正徹 (xxx)
なつるまの岩ほも雪と成りぬへし春日そ秋のいなつまのかけ
なつるまの−いはほもゆきと−なりぬへし−はるひそあきの−いなつまのかけ |
01778 |
未入力 正徹 (xxx)
春の日のまた出てぬまの秋ならはかたふく影に入相のかね
はるのひの−またいてぬまの−あきならは−かたふくかけに−いりあひのかね |
01779 |
未入力 正徹 (xxx)
花そ雪またかたふかね春の日に冬の一日をおくる山風
はなそゆき−またかたふかね−はるのひに−ふゆのひとひを−おくるやまかせ |
01780 |
未入力 正徹 (xxx)
なへて世も花の色かに霞む日のやすらふ空や道まよふらん
なへてよも−はなのいろかに−かすむひの−やすらふそらや−みちまよふらむ |
01781 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影いつる高ねに程遠してらしかへさむ西の山の端
あさひかけ−いつるたかねに−ほととほし−てらしかへさむ−にしのやまのは |
01782 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝のまの昨日をけふとおもふにはあすもや過きし春の夕暮
けさのまの−きのふをけふと−おもふには−あすもやすきし−はるのゆふくれ |
01783 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そちる高ねのつつしさく花の色に入日の跡のうき雲
なほそちる−たかねのつつし−さくはなの−いろにいりひの−あとのうきくも |
01784 |
未入力 正徹 (xxx)
道辺の岩もとつつし紅のあか裳ぬきすて誰かいにけむ
みちのへの−いはもとつつし−くれなゐの−あかもぬきすて−たれかいにけむ |
01785 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかくさくや蓮の花つつししましうき世ににこる心は
やまふかく−さくやはちすの−はなつつし−しましうきよに−にこるこころは |
01786 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくなよ手折るつつしの灯によるの山路はかへりいてなん
いそくなよ−たをるつつしの−ともしひに−よるのやまちは−かへりいてなむ |
01787 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺たかき松の下てるひめつつし花開きわたせ天のうき橋
みねたかき−まつのしたてる−ひめつつし−はなさきわたせ−あめのうきはし |
01788 |
未入力 正徹 (xxx)
にこりにもします蓮の花つつし池をよそなる岩根にそ咲く
にこりにも−しますはちすの−はなつつし−いけをよそなる−いはねにそさく |
01789 |
未入力 正徹 (xxx)
川上にたく火をけちて滝つ浪こゆる岩ほにさくつつしかな
かはかみに−たくひをけちて−たきつなみ−こゆるいはほに−さくつつしかな |
01790 |
未入力 正徹 (xxx)
夜こえむ人のためにとくらふ山木の下つつし折りもつくさし
よるこえむ−ひとのためにと−くらふやま−このしたつつし−をりもつくさし |
01791 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよ柴おふ駒もむれて行く山路おしなみつつしさくなり
こころせよ−しはおふこまも−むれてゆく−やまちおしなみ−つつしさくなり |
01792 |
未入力 正徹 (xxx)
岩根ふむ隣に今朝も火やこはむ松の煙もおそのつつしに
いはねふむ−となりにけさも−ひやこはむ−まつのけふりも−おそのつつしに |
01793 |
未入力 正徹 (xxx)
雲なれや木たかき松の末こえてみとりの空になひく藤なみ
くもなれや−こたかきまつの−すゑこえて−みとりのそらに−なひくふちなみ |
01794 |
未入力 正徹 (xxx)
こりしきて巌そはたつ山岸に落ちたる滝やかかる藤なみ
こりしきて−いはほそはたつ−やまきしに−おちたるたきや−かかるふちなみ |
01795 |
未入力 正徹 (xxx)
池の上にさきちる藤の花かたみ色をつつくる鴛の毛ころも
いけのうへに−さきちるふちの−はなかたみ−いろをつつくる−をしのけころも |
01796 |
未入力 正徹 (xxx)
花かつらかけまく浪もあら妙の藤江のうらの海士のをとめ子
はなかつら−かけまくなみも−あらたへの−ふちえのうらの−あまのをとめこ |
01797 |
未入力 正徹 (xxx)
さく藤の松を憑むもあるものをなににかかれる人の命そ
さくふちの−まつをたのむも−あるものを−なににかかれる−ひとのいのちそ |
01798 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかみる藤江のうらの藤浪をかつきもしらね春のあま人
いかかみる−ふちえのうらの−ふちなみを−かつきもしらね−はるのあまひと |
01799 |
未入力 正徹 (xxx)
さく瀬の花のかつらか棹姫の袖のみとりの松にかかれる
さくふしの−はなのかつらか−さほひめの−そてのみとりの−まつにかかれる |
01800 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の色こき春の時過きてちるか水なき池の藤なみ
むらさきの−いろこきはるの−ときすきて−ちるかみつなき−いけのふちなみ |
01801 |
未入力 正徹 (xxx)
色たへにさける藤なみ世世かけて春の名たかの浦風そ吹く
いろたへに−さけるふちなみ−よよかけて−はるのなたかの−うらかせそふく |
01802 |
未入力 正徹 (xxx)
花にたつ松のうら葉の若みとり又藤浪をこゆるはるかな
はなにたつ−まつのうらはの−わかみとり−またふちなみを−こゆるはるかな |
01803 |
未入力 正徹 (xxx)
さく藤の色こき時や玉かつらはふ木あまたに秋を待つらん
さくふちの−いろこきときや−たまかつら−はふきあまたに−あきをまつらむ |
01804 |
未入力 正徹 (xxx)
開く藤もかかれとてこそなひきけめしつえ枯れぬる岸の松かな
さくふちも−かかれとてこそ−なひきけめ−しつえかれぬる−きしのまつかな |
01805 |
未入力 正徹 (xxx)
あまも見しうらの八島にむかふとも松の藤戸をとつる霞に
あまもみし−うらのやしまに−むかふとも−まつのふちとを−とつるかすみに |
01806 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風ふきもふかすも住吉の松かえあらふ春の藤波
おきつかせ−ふきもふかすも−すみよしの−まつかえあらふ−はるのふちなみ |
01807 |
未入力 正徹 (xxx)
わか花の色にもあらぬ松のはをゆかりとかかる春の藤波
わかはなの−いろにもあらぬ−まつのはを−ゆかりとかかる−はるのふちなみ |
01808 |
未入力 正徹 (xxx)
春のみと滝の水上あらはれて松よりおつる嶺の藤浪
はるのみと−たきのみなかみ−あらはれて−まつよりおつる−みねのふちなみ |
01809 |
未入力 正徹 (xxx)
からろおす雁の舟路はのこりけり雲ゐに嶺の松の藤波
からろおす−かりのふなちは−のこりけり−くもゐにみねの−まつのふちなみ |
01810 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは浪より下の波の声松なりけりな藤のうら葉は
かせふけは−なみよりしたの−なみのこゑ−まつなりけりな−ふちのうらはは |
01811 |
未入力 正徹 (xxx)
さく藤の花のかつらもみたれなき松の葉分けて春風そ吹く
さくふちの−はなのかつらも−みたれなき−まつのはわけて−はるかせそふく |
01812 |
未入力 正徹 (xxx)
高砂の山松かえの藤なみにおくれてわたる雁の友舟
たかさこの−やままつかえの−ふちなみに−おくれてわたる−かりのともふね |
01813 |
未入力 正徹 (xxx)
藤浪の花そ十かへり松のはもおよはぬ千世の色やわくらん
ふちなみの−はなそとかへり−まつのはも−およはぬちよの−いろやわくらむ |
01814 |
未入力 正徹 (xxx)
緑そふ若葉をこめて開く藤の花のませゆふ松そ木高き
みとりそふ−わかはをこめて−さくふちの−はなのませゆふ−まつそこたかき |
01815 |
未入力 正徹 (xxx)
子をおもふ鶴そ鳴くなる浜松の梢の藤の浪のうき巣に
こをおもふ−つるそなくなる−はままつの−こすゑのふちの−なみのうきすに |
01816 |
未入力 正徹 (xxx)
露そちる梢の藤は浪こえてみなそこならぬ杜の下草
つゆそちる−こすゑのふちは−なみこえて−みなそこならぬ−もりのしたくさ |
01817 |
未入力 正徹 (xxx)
高砂の尾上に匂ふ松の藤夕そかねのこゑにかかれる
たかさこの−をのへににほふ−まつのふち−ゆふへそかねの−こゑにかかれる |
01818 |
未入力 正徹 (xxx)
さく藤の花のかつらもなひきもの春の名たかの浦風そ吹く
さくふちの−はなのかつらも−なひきもの−はるのなたかの−うらかせそふく |
01819 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてそ山路の岸のかたくつれ残る岩根の松の藤波
いつまてそ−やまちのきしの−かたくつれ−のこるいはねの−まつのふちなみ |
01820 |
未入力 正徹 (xxx)
川音もきこえぬ滝や高ねより藤開きくたる花の岩波
かはおとも−きこえぬたきや−たかねより−ふちさきくたる−はなのいはなみ |
01821 |
未入力 正徹 (xxx)
陰おほふ松のはひ枝にさく藤に岩浪まさる滝の水上
かけおほふ−まつのはひえに−さくふちに−いはなみまさる−たきのみなかみ |
01822 |
未入力 正徹 (xxx)
岩こえて音なき浪も立水のなかれあまたにさける藤かな
いはこえて−おとなきなみも−たつみつの−なかれあまたに−さけるふちかな |
01823 |
未入力 正徹 (xxx)
月も日も関やはすゑむ雲水のうき世をさそふ春の藤浪
つきもひも−せきやはすゑむ−くもみつの−うきよをさそふ−はるのふちなみ |
01824 |
未入力 正徹 (xxx)
月そもる関屋のひさし開く花もひまあら妙の藤川の浪
つきそもる−せきやのひさし−さくはなも−ひまあらたへの−ふちかはのなみ |
01825 |
未入力 正徹 (xxx)
花の枝も細谷川をうちわたりむかひの庵に松の藤波
はなのえも−ほそたにかはを−うちわたり−むかひのいほに−まつのふちなみ |
01826 |
未入力 正徹 (xxx)
水の上のしけみさ枝やかのみゆる池辺にかかる春の藤なみ
みつのうへの−しけみさえたや−かのみゆる−いけへにかかる−はるのふちなみ |
01827 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは池のうき草かたよりに又影さわく春の藤なみ
かせふけは−いけのうきくさ−かたよりに−またかけさわく−はるのふちなみ |
01828 |
未入力 正徹 (xxx)
かせふけは池に影せぬ鴛の毛も玉藻にあそふ花の藤波
かせふけは−いけにかけせぬ−をしのけも−たまもにあそふ−はなのふちなみ |
01829 |
未入力 正徹 (xxx)
藤なれや堤の下樋朽ちはてて水なき池に浪そまされる
ふちなれや−つつみのしたひ−くちはてて−みつなきいけに−なみそまされる |
01830 |
未入力 正徹 (xxx)
鳰鳥や藤さく春の池水にうきても浪の下くくるなり
にほとりや−ふちさくはるの−いけみつに−うきてもなみの−したくくるなり |
01831 |
未入力 正徹 (xxx)
かの池にうつろふ色のそか菊を春もかけたる松の藤なみ
かのいけに−うつろふいろの−そかきくを−はるもかけたる−まつのふちなみ |
01832 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の塵をそよする藤の花ちりかひうかふ池のささ浪
むらさきの−ちりをそよする−ふちのはな−ちりかひうかふ−いけのささなみ |
01833 |
未入力 正徹 (xxx)
春日山峰にさく藤うつりきて池に浪たつさる沢の岸
かすかやま−みねにさくふち−うつりきて−いけになみたつ−さるさはのきし |
01834 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の松の葉うつむ藤の花岸に生ふてふ草にやつるな
すみよしの−まつのはうつむ−ふちのはな−きしにおふてふ−くさにやつるな |
01835 |
未入力 正徹 (xxx)
松にはふ末の世遠くさかふなり南の岸の北の藤なみ
まつにはふ−すゑのよとほく−さかふなり−みなみのきしの−きたのふちなみ |
01836 |
未入力 正徹 (xxx)
谷の松いつまちとらむ開きにほふ高ねの岸の藤のさかり枝
たにのまつ−いつまちとらむ−さきにほふ−たかねのきしの−ふちのさかりえ |
01837 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかていつかは春を忘草生ふてふきしにかかる藤波
はなさかて−いつかははるを−わすれくさ−おふてふきしに−かかるふちなみ |
01838 |
未入力 正徹 (xxx)
山奴のわたりそをしき開く藤の花のませゆふ嶺のかけはし
やまかつの−わたりそをしき−さくふちの−はなのませゆふ−みねのかけはし |
01839 |
未入力 正徹 (xxx)
開きかかる軒はの藤を横雲になして明行く鐘のこゑかな
さきかかる−のきはのふちを−よこくもに−なしてあけゆく−かねのこゑかな |
01840 |
未入力 正徹 (xxx)
寺よりも西にかかりてさく藤のかつらき山の雲をしそ思ふ
てらよりも−にしにかかりて−さくふちの−かつらきやまの−くもをしそおもふ |
01841 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとの庵をせはみはふ藤や垣ほの柴のねりそゆふらん
このもとの−いほりをせはみ−はふふちや−かきほのしはの−ねりそゆふらむ |
01842 |
未入力 正徹 (xxx)
手折りつつかさしてゆかん藤なみを浪そふ老のしわとやはみむ
たをりつつ−かさしてゆかむ−ふちなみを−なみそふおいの−しわとやはみむ |
01843 |
未入力 正徹 (xxx)
かつそちる夜のまの藤の初花に結ひもなれぬ春の朝露
かつそちる−よのまのふちの−はつはなに−むすひもなれぬ−はるのあさつゆ |
01844 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きおつる山松風やあらたへの藤なみこゆる滝のいはかと
ふきおつる−やままつかせや−あらたへの−ふちなみこゆる−たきのいはかと |
01845 |
未入力 正徹 (xxx)
池ふるき松の経にける年なみをかけてそ匂ふ宿の藤か枝
いけふるき−まつのへにける−としなみを−かけてそにほふ−やとのふちかえ |
01846 |
未入力 正徹 (xxx)
手折るとも人にかたるな山吹の花にわけくる露はおちにき
たをるとも−ひとにかたるな−やまふきの−はなにわけくる−つゆはおちにき |
01847 |
未入力 正徹 (xxx)
露かけてむすふやいかに款冬の花はひもとく井ての下帯
つゆかけて−むすふやいかに−やまふきの−はなはひもとく−ゐてのしたおひ |
01848 |
未入力 正徹 (xxx)
し水せく八重山吹の花の露いとと浪こす井てのしからみ
しみつせく−やへやまふきの−はなのつゆ−いととなみこす−ゐてのしからみ |
01849 |
未入力 正徹 (xxx)
女良花秋やかたみの色にいてん朽行く庭の春の山吹
をみなへし−あきやかたみの−いろにいてむ−くちゆくにはの−はるのやまふき |
01850 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春をしたふとみえて山吹の花も散りあへぬ露そこほるる
ゆくはるを−したふとみえて−やまふきの−はなもちりあへぬ−つゆそこほるる |
01851 |
未入力 正徹 (xxx)
人もかくおもふをいはぬ色こそはあらまほしけれ山吹のはな
ひともかく−おもふをいはぬ−いろこそは−あらまほしけれ−やまふきのはな |
01852 |
未入力 正徹 (xxx)
思川千しほの木の葉ととまらてあさき色せく山吹の花
おもひかは−ちしほのこのは−ととまらて−あさきいろせく−やまふきのはな |
01853 |
未入力 正徹 (xxx)
かけ行くもこゑする水に山吹の花ものいふに人やきかまし
かけゆくも−こゑするみつに−やまふきの−はなものいふに−ひとやきかまし |
01854 |
未入力 正徹 (xxx)
あやふしや花のよはひも行く春に開きてかたふく岸の山吹
あやふしや−はなのよはひも−ゆくはるに−さきてかたふく−きしのやまふき |
01855 |
未入力 正徹 (xxx)
かつそ見る井ての蛙のこゑこゑを花やききうき春の山吹
かつそみる−ゐてのかはつの−こゑこゑを−はなやききうき−はるのやまふき |
01856 |
未入力 正徹 (xxx)
思川かけても見せぬ山吹を花にしら淡よるそかなしき
おもひかは−かけてもみせぬ−やまふきを−はなにしらあわ−よるそかなしき |
01857 |
未入力 正徹 (xxx)
山城のゐてこす浪に橘の実さへ恋しき山ふきの花
やましろの−ゐてこすなみに−たちはなの−みさへこひしき−やまふきのはな |
01858 |
未入力 正徹 (xxx)
山里の春の木の下紅葉葉や岩かきこむる山吹の花
やまさとの−はるのこのした−もみちはや−いはかきこむる−やまふきのはな |
01859 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘つきて暮行く春の山吹はたかししまをか色にみすらん
かねつきて−くれゆくはるの−やまふきは−たかししまをか−いろにみすらむ |
01860 |
未入力 正徹 (xxx)
時しらぬ籬の上の白雪やうつろふ色の山吹のはな
ときしらぬ−まかきのうへの−しらゆきや−うつろふいろの−やまふきのはな |
01861 |
未入力 正徹 (xxx)
つつしさく山の千しほの下染も花にそ浅き水の山吹
つつしさく−やまのちしほの−したそめも−はなにそあさき−みつのやまふき |
01862 |
未入力 正徹 (xxx)
橘の花さく比の実そまかふ宿の軒はの山吹のいろ
たちはなの−はなさくころの−みそまかふ−やとののきはの−やまふきのいろ |
01863 |
未入力 正徹 (xxx)
春は又たれめてさらむ女郎花おなし色そふ山吹の花
はるはまた−たれめてさらむ−をみなへし−おなしいろそふ−やまふきのはな |
01864 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりかかるさくらか本の山吹やうき紅葉はの雪のおもかけ
ちりかかる−さくらかもとの−やまふきや−うきもみちはの−ゆきのおもかけ |
01865 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪になひく玉藻を染めかねて色になかるる水の款冬
かはなみに−なひくたまもを−そめかねて−いろになかるる−みつのやまふき |
01866 |
未入力 正徹 (xxx)
山吹もさくや川辺に行く春の花に休らふ宇治の中宿
やまふきも−さくやかはへに−ゆくはるの−はなにやすらふ−うちのなかやと |
01867 |
未入力 正徹 (xxx)
春もをし又川浪にくちなしのあせ行く色の山ふきの花
はるもをし−またかはなみに−くちなしの−あせゆくいろの−やまふきのはな |
01868 |
未入力 正徹 (xxx)
川長もかけをそからん行く水の玉藻にうつる山吹の花
かはをさも−かけをそからむ−ゆくみつの−たまもにうつる−やまふきのはな |
01869 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑたてぬ水の心をくむ花やたた色にのみゐての山吹
こゑたてぬ−みつのこころを−くむはなや−たたいろにのみ−ゐてのやまふき |
01870 |
未入力 正徹 (xxx)
池水もこゑをはたてすなに事をつつみにさける山吹の花
いけみつも−こゑをはたてす−なにことを−つつみにさける−やまふきのはな |
01871 |
未入力 正徹 (xxx)
山吹のうつれる池の水底に花はこかねのいさこをそしく
やまふきの−うつれるいけの−みなそこに−はなはこかねの−いさこをそしく |
01872 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑたてぬそこに心や川島の水にかたふく山吹はな
こゑたてぬ−そこにこころや−かはしまの−みつにかたふく−やまふきのはな |
01873 |
未入力 正徹 (xxx)
身にかかる法の衣の色をかるこや彼岸の山吹のはな
みにかかる−のりのころもの−いろをかる−こやかのきしの−やまふきのはな |
01874 |
未入力 正徹 (xxx)
水のあわもたくひあやふき川岸に開きてかたふく山吹の露
みつのあわも−たくひあやふき−かはきしに−さきてかたふく−やまふきのつゆ |
01875 |
未入力 正徹 (xxx)
薄くこく咲くや籬の山つつし紅ましるやまふきのはな
うすくこく−さくやまかきの−やまつつし−くれなゐましる−やまふきのはな |
01876 |
未入力 正徹 (xxx)
過きかてにたれとはさらん山吹の花のさかりの玉川の里
すきかてに−たれとはさらむ−やまふきの−はなのさかりの−たまかはのさと |
01877 |
未入力 正徹 (xxx)
契あれな井ての下帯花のひもときかさねたる水の山吹
ちきりあれな−ゐてのしたおひ−はなのひも−ときかさねたる−みつのやまふき |
01878 |
未入力 正徹 (xxx)
籬こす夏の草葉の露のかすならす夕の山吹のはな
まかきこす−なつのくさはの−つゆのかす−ならすゆふへの−やまふきのはな |
01879 |
未入力 正徹 (xxx)
散るままにあかてや露は桔ふ手のしつくににこる山吹のはな
ちるままに−あかてやつゆは−むすふての−しつくににこる−やまふきのはな |
01880 |
未入力 正徹 (xxx)
日に染むる八重山吹は朝露のへたつる色もをしき花かな
ひにそむる−やへやまふきは−あさつゆの−へたつるいろも−をしきはなかな |
01881 |
未入力 正徹 (xxx)
折りかさす心そいはぬかくせ花八十にちかし八重の山ふき
をりかさす−こころそいはぬ−かくせはな−やそちにちかし−やへのやまふき |
01882 |
未入力 正徹 (xxx)
山吹のこと葉の花を水茎にいはてやかきてゐての玉川
やまふきの−ことはのはなを−みつくきに−いはてやかきて−ゐてのたまかは |
01883 |
未入力 正徹 (xxx)
うこかさて心のやとる身をしけはけふの春日に過くる百年
うこかさて−こころのやとる−みをしけは−けふのはるひに−すくるももとせ |
01884 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬のかへる山路の遅さくら春の色音をよそにうつすな
うくひすの−かへるやまちの−おそさくら−はるのいろねを−よそにうつすな |
01885 |
未入力 正徹 (xxx)
いまもをし此三日月の山のはをいてむ弥生の有明の夜は
いまもをし−このみかつきの−やまのはを−いてむやよひの−ありあけのよは |
01886 |
未入力 正徹 (xxx)
月のこる嶺の朝けの花鳥に別れかねてや春も行くらむ
つきのこる−みねのあさけの−はなとりに−わかれかねてや−はるもゆくらむ |
01887 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れて行く春の日数をかそふれは又三日月を朝にそみる
くれてゆく−はるのひかすを−かそふれは−またみかつきを−あしたにそみる |
01888 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春の朝ひく雲の糸すちにかかるも細き山のはの月
ゆくはるの−あさひくくもの−いとすちに−かかるもほそき−やまのはのつき |
01889 |
未入力 正徹 (xxx)
とくさける弥生の山の卯花やのこるさくらの木木の下陰
とくさける−やよひのやまの−うのはなや−のこるさくらの−ききのしたかけ |
01890 |
未入力 正徹 (xxx)
山月山尾上の雲の糸すちをならへていつる月そ明行く
やよひやま−をのへのくもの−いとすちを−ならへていつる−つきそあけゆく |
01891 |
未入力 正徹 (xxx)
比良の山消えさりけりとみる程もあかぬ三月をのこす雪かな
ひらのやま−きえさりけりと−みるほとも−あかぬやよひを−のこすゆきかな |
01892 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春も家路わすれよ軒はまて幾重霞みて山なしの花
ゆくはるも−いへちわすれよ−のきはまて−いくへかすみて−やまなしのはな |
01893 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたと行へしられぬ花鳥の跡をや春の猶したふらん
いつかたと−ゆくへしられぬ−はなとりの−あとをやはるの−なほしたふらむ |
01894 |
未入力 正徹 (xxx)
雲に入り又ねにかへる花をめて鳥をうらやむ春や行くらん
くもにいり−またねにかへる−はなをめて−とりをうらやむ−はるやゆくらむ |
01895 |
未入力 正徹 (xxx)
この夕吹きくる風を便にておもふかたにや春の行くらむ
このゆふへ−ふきくるかせを−たよりにて−おもふかたにや−はるのゆくらむ |
01896 |
未入力 正徹 (xxx)
ふけ嵐春行く野への夕ま暮若葉の葛も恨みかぬらん
ふけあらし−はるゆくのへの−ゆふまくれ−わかはのくすも−うらみかぬらむ |
01897 |
未入力 正徹 (xxx)
人ことに別れなれにし春をなとをしむならひと思初めけん
ひとことに−わかれなれにし−はるをなと−をしむならひと−おもひそめけむ |
01898 |
未入力 正徹 (xxx)
したはしよおもへは夏の花鳥にかはらんまての春の名残を
したはしよ−おもへはなつの−はなとりに−かはらむまての−はるのなこりを |
01899 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりき春の限の夕暮を尾上の鐘にしたふへしとは
しらさりき−はるのかきりの−ゆふくれを−をのへのかねに−したふへしとは |
01900 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとて雲に入りにし鳥の子のかへるや春のかたみなるらん
いまはとて−くもにいりにし−とりのこの−かへるやはるの−かたみなるらむ |
01901 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたに道ふみわけし跡をみんむなしき空に春のゆかすは
いつかたに−みちふみわけし−あとをみむ−むなしきそらに−はるのゆかすは |
01902 |
未入力 正徹 (xxx)
ととまらぬ春の湊の川淵に望たえてや山吹のちる
ととまらぬ−はるのみなとの−かはふちに−のそみたえてや−やまふきのちる |
01903 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れて行くしるしもみえす遠かたの霞に春や立ちかくすらん
くれてゆく−しるしもみえす−をちかたの−かすみにはるや−たちかくすらむ |
01904 |
未入力 正徹 (xxx)
引きとめよ暮るる三月の末たわに弓張月の影そのこれる
ひきとめよ−くるるやよひの−すゑたわに−ゆみはりつきの−かけそのこれる |
01905 |
未入力 正徹 (xxx)
くるかたもかへる所もなき春を送りむかふと何おもふらん
くるかたも−かへるところも−なきはるを−おくりむかふと−なにおもふらむ |
01906 |
未入力 正徹 (xxx)
花はちり鳥も古巣に入相の鐘なる山にかへる春かな
はなはちり−とりもふるすに−いりあひの−かねなるやまに−かへるはるかな |
01907 |
未入力 正徹 (xxx)
まちをしむ花鳥の音の後さきに霞そ春の匂なりける
まちをしむ−はなとりのねの−あとさきに−かすみそはるの−にほひなりける |
01908 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしまてかへる鴬うかるへし春にわかれん谷の古巣は
しはしまて−かへるうくひす−うかるへし−はるにわかれむ−たにのふるすは |
01909 |
未入力 正徹 (xxx)
けふのこる花のかとりの白かさねあすたちかへむ春そすくなき
けふのこる−はなのかとりの−しらかさね−あすたちかへむ−はるそすくなき |
01910 |
未入力 正徹 (xxx)
雲に入る鳥よりも猶心なき嵐や花を根にかへすらん
くもにいる−とりよりもなほ−こころなき−あらしやはなを−ねにかへすらむ |
01911 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風のめに見ぬかたに行く春を消えてもをしめ山吹の露
ふくかせの−めにみぬかたに−ゆくはるを−きえてもをしめ−やまふきのつゆ |
01912 |
未入力 正徹 (xxx)
藤波のかかる巌をうつたへにととまりかたく帰る春かな
ふちなみの−かかるいはほを−うつたへに−ととまりかたく−かへるはるかな |
01913 |
未入力 正徹 (xxx)
藤の花夏にかかるを行く春やうらむらさきの色かはるらん
ふちのはな−なつにかかるを−ゆくはるや−うらむらさきの−いろかはるらむ |
01914 |
未入力 正徹 (xxx)
散りてなき花もわかれの春よりはうらみ所のあり明の月
ちりてなき−はなもわかれの−はるよりは−うらみところの−ありあけのつき |
01915 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川あかつき出つる月の舟春の湊にこきなかくれそ
あまのかは−あかつきいつる−つきのふね−はるのみなとに−こきなかくれそ |
01916 |
未入力 正徹 (xxx)
雁そ鳴く有明の空に月の舟さしかへる春の湊をしへよ
かりそなく−ありあけのそらに−つきのふね−さしかへるはるの−みなとをしへよ |
01917 |
未入力 正徹 (xxx)
月か舟湊におくれ行く春の別路にかすむ有明の空
つきかふね−みなとにおくれ−ゆくはるの−わかれちにかすむ−ありあけのそら |
01918 |
未入力 正徹 (xxx)
雲もけふ袖のみぬれてふる雨のさはるもしらすかへる春かな
くももけふ−そてのみぬれて−ふるあめの−さはるもしらす−かへるはるかな |
01919 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は朝の雲の立ちわかれ雨と成りてや春のゆくらむ
ゆふくれは−あしたのくもの−たちわかれ−あめとなりてや−はるのゆくらむ |
01920 |
未入力 正徹 (xxx)
なこりをもしはしととめし花鳥の入りにし雪をさそふ春かな
なこりをも−しはしととめし−はなとりの−いりにしゆきを−さそふはるかな |
01921 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風にかさねて春を惜しめとや鳥の入りにし雲そ飛行く
ふくかせに−かさねてはるを−をしめとや−とりのいりにし−くもそとひゆく |
01922 |
未入力 正徹 (xxx)
おくれしと春行く空やしたふらんおりゐる雲のみえぬ山かな
おくれしと−はるゆくそらや−したふらむ−おりゐるくもの−みえぬやまかな |
01923 |
未入力 正徹 (xxx)
花ちりし雪にあとなく行く春にいつはりならぬ嶺の白雲
はなちりし−ゆきにあとなく−ゆくはるに−いつはりならぬ−みねのしらくも |
01924 |
未入力 正徹 (xxx)
霞みつつ夕ゐる嶺を立別れ春よりさきにかへる雲かな
かすみつつ−ゆふゐるみねを−たちわかれ−はるよりさきに−かへるくもかな |
01925 |
未入力 正徹 (xxx)
日数へてさきつく花の陰ことにうかりし風も過くる春かな
ひかすへて−さきつくはなの−かけことに−うかりしかせも−すくるはるかな |
01926 |
未入力 正徹 (xxx)
春にたに契あさはの野へにたつすけなや今日は行くもしたはて
はるにたに−ちきりあさはの−のへにたつ−すけなやけふは−ゆくもしたはて |
01927 |
未入力 正徹 (xxx)
霞さへ日のたてぬきにおる雲のはたても薄く暮るる春かな
かすみさへ−ひのたてぬきに−おるくもの−はたてもうすく−くるるはるかな |
01928 |
未入力 正徹 (xxx)
うかりけるたか待つさとを契るとて夕の鐘に春の行くらん
うかりける−たかまつさとを−ちきるとて−ゆふへのかねに−はるのゆくらむ |
01929 |
未入力 正徹 (xxx)
此夕いり会の鐘のかすむかな音せぬかたに春やゆくらん
このゆふへ−いりあひのかねの−かすむかな−おとせぬかたに−はるやゆくらむ |
01930 |
未入力 正徹 (xxx)
心なく暁かねもなりたかしみそかに春やゆかむとすらん
こころなく−あかつきかねも−なりたかし−みそかにはるや−ゆかむとすらむ |
01931 |
未入力 正徹 (xxx)
よもさめしこ蝶も花もそのの外にさりて帰らぬ春のよの夢
よもさめし−こてふもはなも−そののほかに−さりてかへらぬ−はるのよのゆめ |
01932 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原こ蝶うち散り尋ぬなりむなしきあとの春の花園
くさのはら−こてふうちちり−たつぬなり−むなしきあとの−はるのはなその |
01933 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひたつ春の太山になく猿のことわりしるき夕くれの雨
おもひたつ−はるのみやまに−なくさるの−ことわりしるき−ゆふくれのあめ |
01934 |
未入力 正徹 (xxx)
みしかしな春のひま行く駒にむち打ちわたすまの前のたな橋
みしかしな−はるのひまゆく−こまにむち−うちわたすまの−まへのたなはし |
01935 |
未入力 正徹 (xxx)
日数のみふる江の蘆のいま一夜のこるも夢にくるる春かな
ひかすのみ−ふるえのあしの−いまひとよ−のこるもゆめに−くるるはるかな |
01936 |
未入力 正徹 (xxx)
末遠き玉江に生ふるまろ小菅永き日なからくるる春かな
すゑとほき−たまえにおふる−まろこすけ−なかきひなから−くるるはるかな |
01937 |
未入力 正徹 (xxx)
陸人のわたる裳すそもぬれぬ江に契あさくもかへる春かな
かちひとの−わたるもすそも−ぬれぬえに−ちきりあさくも−かへるはるかな |
01938 |
未入力 正徹 (xxx)
春ははやいなさ細江に住む鳥のこは世にしらぬ別路もうし
はるははや−いなさほそえに−すむとりの−こはよにしらぬ−わかれちもうし |
01939 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日影入江のあまの釣の糸にかかるともなく春や行くらむ
ゆふひかけ−いりえのあまの−つりのいとに−かかるともなく−はるやゆくらむ |
01940 |
未入力 正徹 (xxx)
海士もうし湊の小舟行く春をこきもかへさぬ浪にかすみて
あまもうし−みなとのをふね−ゆくはるを−こきもかへさぬ−なみにかすみて |
01941 |
未入力 正徹 (xxx)
したへ猶暮行く春を忘貝それもなきさのよその舟人
したへなほ−くれゆくはるを−わすれかひ−それもなきさの−よそのふなひと |
01942 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆくへなき春をおひてに漕く舟のほかけかすむをそれと知らすや
ゆくへなき−はるをおひてに−こくふねの−ほかけかすむを−それとしらすや |
01943 |
未入力 正徹 (xxx)
旅の空春行く行にやすらひていさ待ちつれむかへる雲鳥
たひのそら−はるゆくみちに−やすらひて−いさまちつれむ−かへるくもとり |
01944 |
未入力 正徹 (xxx)
春もいぬ鳥の入りにし雲消えて見ゆらん嶺の宿をかたみは
はるもいぬ−とりのいりにし−くもきえて−みゆらむみねの−やとをかたみは |
01945 |
未入力 正徹 (xxx)
けふもをし花のかとりの声のうちにあすの日影の春の限は
けふもをし−はなのかとりの−こゑのうちに−あすのひかけの−はるのかきりは |
01946 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れてゆく霞の袖はひかふとも春の衣はてにもかからし
くれてゆく−かすみのそては−ひかふとも−はるのころもは−てにもかからし |
01947 |
未入力 正徹 (xxx)
春そ猶ひま行く駒の行くことはまさきの綱もつなきととめし
はるそなほ−ひまゆくこまの−ゆくことは−まさきのつなも−つなきととめし |
01948 |
未入力 正徹 (xxx)
やすらひて世を卯月にはあはしとやけふの夕に春の行くらん
やすらひて−よをうつきには−あはしとや−けふのゆふへに−はるのゆくらむ |
01949 |
未入力 正徹 (xxx)
春は又去年もかへりし古路を尋ねてけふやおもひ立つらん
はるはまた−こそもかへりし−ふるみちを−たつねてけふや−おもひたつらむ |
01950 |
未入力 正徹 (xxx)
さしも夜の長月のはてを思ふにも三月の夢の今日の夕くれ
さしもよの−なかつきのはてを−おもふにも−やよひのゆめの−けふのゆふくれ |
01951 |
未入力 正徹 (xxx)
しのひにや夜ふかき空にうかれゆかむなれし三月のみそか心は
しのひにや−よふかきそらに−うかれゆかむ−なれしやよひの−みそかこころは |
01952 |
未入力 正徹 (xxx)
常よりもをしき春かな時守のうつやつつみもけふなきかせそ
つねよりも−をしきはるかな−ときもりの−うつやつつみも−けふなきかせそ |
01953 |
未入力 正徹 (xxx)
先そおもふあすの朝気の春の道遠くはゆかし野にも山にも
まつそおもふ−あすのあさけの−はるのみち−とほくはゆかし−のにもやまにも |
01954 |
未入力 正徹 (xxx)
春も此ゆふへはかりの山の端にのこる霞や立ちおくれまし
はるもこの−ゆふへはかりの−やまのはに−のこるかすみや−たちおくれまし |
01955 |
未入力 正徹 (xxx)
けふも又青葉の桜雪とふる山路かけてや夏のきぬらん
けふもまた−あをはのさくら−ゆきとふる−やまちかけてや−なつのきぬらむ |
01956 |
未入力 正徹 (xxx)
見しやいつ開きちる花の春の夢覚むるともなく夏はきにけり
みしやいつ−さきちるはなの−はるのゆめ−さむるともなく−なつはきにけり |
01957 |
未入力 正徹 (xxx)
しけれたた春におくれてひとりとも思ふ色なきみ山木の陰
しけれたた−はるにおくれて−ひとりとも−おもふいろなき−みやまきのかけ |
01958 |
未入力 正徹 (xxx)
榊とる卯月のいみのさしなから立ちくる夏になひくしらゆふ
さかきとる−うつきのいみの−さしなから−たちくるなつに−なひくしらゆふ |
01959 |
未入力 正徹 (xxx)
宮人の卯月の袖も榊葉の神さひにける夏衣かな
みやひとの−うつきのそても−さかきはの−かみさひにける−なつころもかな |
01960 |
未入力 正徹 (xxx)
卯花のほかにや夏はきさらきの雪まにかへる山の下柴
うのはなの−ほかにやなつは−きさらきの−ゆきまにかへる−やまのしたしは |
01961 |
未入力 正徹 (xxx)
花もまたのこる梢の初もえき夏と春との色やわくらん
はなもまた−のこるこすゑの−はつもえき−なつとはるとの−いろやわくらむ |
01962 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春のすみれ咲く野に朝立つやたた一夜ねて夏はきにけり
ゆくはるの−すみれさくのに−あさたつや−たたひとよねて−なつはきにけり |
01963 |
未入力 正徹 (xxx)
けふならは卯月のいみにさしとめて春をもやらぬ夏に逢ふらん
けふならは−うつきのいみに−さしとめて−はるをもやらぬ−なつにあふらむ |
01964 |
未入力 正徹 (xxx)
榊とる心のしめにかけ置きし神わさしるく夏はきにけり
さかきとる−こころのしめに−かけおきし−かみわさしるく−なつはきにけり |
01965 |
未入力 正徹 (xxx)
春暮れて夏なき宿をけふそとふ見さりし桐の風の広はに
はるくれて−なつなきやとを−けふそとふ−みさりしきりの−かせのひろはに |
01966 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そみる弥生のうちに立つ夏の日かすはかりにかふる衣を
けさそみる−やよひのうちに−たつなつの−ひかすはかりに−かふるころもを |
01967 |
未入力 正徹 (xxx)
花に見し卯月のよひの月にそふ霞や春のにほひなるらん
はなにみし−うつきのよひの−つきにそふ−かすみやはるの−にほひなるらむ |
01968 |
未入力 正徹 (xxx)
けふみれは卯月の花の下紐もはやときかくる衣かへかな
けふみれは−うつきのはなの−したひもも−はやときかくる−ころもかへかな |
01969 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにもけふあけそむる氷室ゆゑ夏のくる日の風そ涼しき
いつくにも−けふあけそむる−ひむろゆゑ−なつのくるひの−かせそすすしき |
01970 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりし春は夜のまの夢路にもとほくはゆかし夏の曙
あかさりし−はるはよのまの−ゆめちにも−とほくはゆかし−なつのあけほの |
01971 |
未入力 正徹 (xxx)
春はいぬ花のかかみもくもりなき夏の陰見る宿のまし水
はるはいぬ−はなのかかみも−くもりなき−なつのかけみる−やとのましみつ |
01972 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そ見る春をとなりの中垣に衣かけほしさける卯花
けさそみる−はるをとなりの−なかかきに−ころもかけほし−さけるうのはな |
01973 |
未入力 正徹 (xxx)
埋火のもとの夜床もわすられす又朝さむき夏衣かな
うつみひの−もとのよとこも−わすられす−またあささむき−なつころもかな |
01974 |
未入力 正徹 (xxx)
朝またき夏のはつ風吹初めぬいかはかりかは袖にまたまし
あさまたき−なつのはつかせ−ふきそめぬ−いかはかりかは−そてにまたまし |
01975 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きても春はありその海松や猶ときそとも浪に霞みて
なつきても−はるはありその−うみまつや−なほときそとも−なみにかすみて |
01976 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の子も世のうきふしをそへかほに窓につのくむ夏はきにけり
たけのこも−よのうきふしを−そへかほに−まとにつのくむ−なつはきにけり |
01977 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝かすみ春をへたてて立ちかふる天つ衣のうら風そ吹く
けさかすみ−はるをへたてて−たちかふる−あまつころもの−うらかせそふく |
01978 |
未入力 正徹 (xxx)
佗ひぬれは朽ちはつるまて立ちかへぬ苔の衣に夏はきにけり
わひぬれは−くちはつるまて−たちかへぬ−こけのころもに−なつはきにけり |
01979 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きても匂ふ藤浪あらたへの衣かへせぬ山かとそ見る
なつきても−にほふふちなみ−あらたへの−ころもかへせぬ−やまかとそみる |
01980 |
未入力 正徹 (xxx)
しけりゆくうらはの下に咲く藤の春にかへらぬ花のなみかな
しけりゆく−うらはのしたに−さくふちの−はるにかへらぬ−はなのなみかな |
01981 |
未入力 正徹 (xxx)
咲きそむる卯花月にみかの夜のかけ天地をてらす夏かな
さきそむる−うのはなつきに−みかのよの−かけあめつちを−てらすなつかな |
01982 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きては袖をかさねて薄からす卯花山の雲のさころも
なつきては−そてをかさねて−うすからす−うのはなやまの−くものさころも |
01983 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山あふくめくみの陰しけき嶺のたつ木に夏はきにけり
やはたやま−あふくめくみの−かけしけき−みねのたつきに−なつはきにけり |
01984 |
未入力 正徹 (xxx)
三日月の中にかつらはしけるともかた枝に夏の影やしくらん
みかつきの−うちにかつらは−しけるとも−かたえになつの−かけやしくらむ |
01985 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから月のきせつる白かさねあくれはうすき夏衣かな
よもすから−つきのきせつる−しらかさね−あくれはうすき−なつころもかな |
01986 |
未入力 正徹 (xxx)
声たかし卯月のけふの忍音といふへくもあらぬ郭公かな
こゑたかし−うつきのけふの−しのひねと−いふへくもあらぬ−ほとときすかな |
01987 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きても花にまかへししら雲を送りつくさぬよその春風
なつきても−はなにまかへし−しらくもを−おくりつくさぬ−よそのはるかせ |
01988 |
未入力 正徹 (xxx)
蝉のはの衣手よりも猶うすく匂ふ桜にのこる春風
せみのはの−ころもてよりも−なほうすく−にほふさくらに−のこるはるかせ |
01989 |
未入力 正徹 (xxx)
夏にけふ扇の風そいそかるる吹くともあかし六月の空
なつにけふ−あふきのかせそ−いそかるる−ふくともあかし−みなつきのそら |
01990 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣袖にまちえついにしへの風の心を今も伝へて
なつころも−そてにまちえつ−いにしへの−かせのこころを−いまもつたへて |
01991 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春を送りし川のいつへよりさそふ水ありて夏のきねらん
ゆくはるを−おくりしかはの−いつへより−さそふみつありて−なつのきねらむ |
01992 |
未入力 正徹 (xxx)
神山の卯月の雲も引くしめの夕の雨ににほふ榊葉
かみやまの−うつきのくもも−ひくしめの−ゆふへのあめに−にほふさかきは |
01993 |
未入力 正徹 (xxx)
もろ人のかふる衣の一重山うすくは見えぬ夏木立かな
もろひとの−かふるころもの−ひとへやま−うすくはみえぬ−なつこたちかな |
01994 |
未入力 正徹 (xxx)
いまよりの手引もたえし桜麻は夏そに成りぬうな上の山
いまよりの−てひきもたえし−さくらあさは−なつそになりぬ−うなかみのやま |
01995 |
未入力 正徹 (xxx)
ま柴とり入る山人の夏衣うすきやのこる霞なるらん
ましはとり−いるやまひとの−なつころも−うすきやのこる−かすみなるらむ |
01996 |
未入力 正徹 (xxx)
袖かろし此山たつに杣板のすくなる道を夏や来にけん
そてかろし−このやまたつに−そまいたの−すくなるみちを−なつやきにけむ |
01997 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公これや卯月の都鳥軒く音こととふ雲の上人
ほとときす−これやうつきの−みやことり−なくねこととふ−くものうへひと |
01998 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉はいつれかしけき夏きぬとゆふしてかくる杜の下草
ことのはは−いつれかしけき−なつきぬと−ゆふしてかくる−もりのしたくさ |
01999 |
未入力 正徹 (xxx)
惜むかな花の林の春の陰あるるはしける夏のこすゑを
をしむかな−はなのはやしの−はるのかけ−あるるはしける−なつのこすゑを |
02000 |
未入力 正徹 (xxx)
かけしけくならふ梢のふか緑あさくは夏を契らさりけり
かけしけく−ならふこすゑの−ふかみとり−あさくはなつを−ちきらさりけり |
02001 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへも茂る林にかくろへてかふるか夏の鷺の毛衣
しろたへも−しけるはやしに−かくろへて−かふるかなつの−さきのけころも |
02002 |
未入力 正徹 (xxx)
榊たて卯月のしめの外になす春遠さかるかもの神山
さかきたて−うつきのしめの−ほかになす−はるとほさかる−かものかみやま |
02003 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかふるならひもしらぬ墨染の衣はいつのかたみなるらん
たちかふる−ならひもしらぬ−すみそめの−ころもはいつの−かたみなるらむ |
02004 |
未入力 正徹 (xxx)
たちかへて袖になれにし名残たにいさ白かさね花の香もなし
たちかへて−そてになれにし−なこりたに−いさしらかさね−はなのかもなし |
02005 |
未入力 正徹 (xxx)
花の春もかへはかへなん惜むへき袖にもあらね麻のさ衣
はなのはるも−かへはかへなむ−をしむへき−そてにもあらね−あさのさころも |
02006 |
未入力 正徹 (xxx)
けふよりも涼しくかふる衣手を知るらむものそ六月の風
けふよりも−すすしくかふる−ころもてを−しるらむものそ−みなつきのかせ |
02007 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣人こそかふれ花の香ををしむににたる苔の袖かな
なつころも−ひとこそかふれ−はなのかを−をしむににたる−こけのそてかな |
02008 |
未入力 正徹 (xxx)
織りいたす香取をとめもひまやなきけふもろ人のかふる衣に
おりいたす−かとりをとめも−ひまやなき−けふもろひとの−かふるころもに |
02009 |
未入力 正徹 (xxx)
思はすにけさぬきかへて花のかをうつし心もなきたもとかな
おもはすに−けさぬきかへて−はなのかを−うつしこころも−なきたもとかな |
02010 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへにかふるを見ても墨染の袖のよそなる夏そしらるる
しろたへに−かふるをみても−すみそめの−そてのよそなる−なつそしらるる |
02011 |
未入力 正徹 (xxx)
あかすしてなれにし春の衣手も花の香取にうつる夏かな
あかすして−なれにしはるの−ころもても−はなのかとりに−うつるなつかな |
02012 |
未入力 正徹 (xxx)
榊とるけふ神山に入る人やいもひのために衣かふらん
さかきとる−けふかみやまに−いるひとや−いもひのために−ころもかふらむ |
02013 |
未入力 正徹 (xxx)
立残る山の霞もたた一重衣かへするけふにあひぬる
たちのこる−やまのかすみも−たたひとへ−ころもかへする−けふにあひぬる |
02014 |
未入力 正徹 (xxx)
水にすむたくひを見ても今しはしかへまく袖の鴛の毛衣
みつにすむ−たくひをみても−いましはし−かへまくそての−をしのけころも |
02015 |
未入力 正徹 (xxx)
見し花の香取のうらのあま衣立ちかふる日もぬれつつやふる
みしはなの−かとりのうらの−あまころも−たちかふるひも−ぬれつつやふる |
02016 |
未入力 正徹 (xxx)
つつりさす衣はなにか惜しからんかへはや春の花のかもなし
つつりさす−ころもはなにか−をしからむ−かへはやはるの−はなのかもなし |
02017 |
未入力 正徹 (xxx)
遅桜のこるにほひをさそひきてかふる衣に春風そふく
おそさくら−のこるにほひを−さそひきて−かふるころもに−はるかせそふく |
02018 |
未入力 正徹 (xxx)
八重霞山も七重をぬき捨ててうすき衣になる朝かな
やへかすみ−やまもななへを−ぬきすてて−うすきころもに−なるあしたかな |
02019 |
未入力 正徹 (xxx)
雲路にてけふやはかへん行く春の花の香しめし鳥の毛衣
くもちにて−けふやはかへむ−ゆくはるの−はなのかしめし−とりのけころも |
02020 |
未入力 正徹 (xxx)
したひつる春いかなれはぬきかふる衣にうすき契なるらん
したひつる−はるいかなれは−ぬきかふる−ころもにうすき−ちきりなるらむ |
02021 |
未入力 正徹 (xxx)
壁代もみすにそへたるうす物も今朝立ちかへて袖や涼しき
かへしろも−みすにそへたる−うすものも−けさたちかへて−そてやすすしき |
02022 |
未入力 正徹 (xxx)
猶もをし花の香のこる朝露のぬれてひるまにかふる衣は
なほもをし−はなのかのこる−あさつゆの−ぬれてひるまに−かふるころもは |
02023 |
未入力 正徹 (xxx)
誰かけふあはてねしよの春過きてさえ分くるあさの衣かふらん
たれかけふ−あはてねしよの−はるすきて−さえわくるあさの−ころもかふらむ |
02024 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかふる衣の袖の朝しめり露も夏にやうつりきぬらん
たちかふる−ころものそての−あさしめり−つゆもなつにや−うつりきぬらむ |
02025 |
未入力 正徹 (xxx)
花の香を惜むにもあらす夏衣朝寒くしてかへまくはうし
はなのかを−をしむにもあらす−なつころも−あささむくして−かへまくはうし |
02026 |
未入力 正徹 (xxx)
このねぬる朝露なからぬき置きて猶袖かろき夏衣かな
このねぬる−あさつゆなから−ぬきおきて−なほそてかろき−なつころもかな |
02027 |
未入力 正徹 (xxx)
卯花の木の下てらす夕月夜春にまされる山さくらかな
うのはなの−このしたてらす−ゆふつくよ−はるにまされる−やまさくらかな |
02028 |
未入力 正徹 (xxx)
山さくら花こそのこれ一枝をけふのかつらに折りやうゑまし
やまさくら−はなこそのこれ−ひとえたを−けふのかつらに−をりやうゑまし |
02029 |
未入力 正徹 (xxx)
尋見ん春にあはぬを恨にてさくや卯月の山桜花
たつねみむ−はるにあはぬを−うらみにて−さくやうつきの−やまさくらはな |
02030 |
未入力 正徹 (xxx)
夏もみる春の湊かさし藤の波に雲ゐる山さくら花
なつもみる−はるのみなとか−さしふちの−なみにくもゐる−やまさくらはな |
02031 |
未入力 正徹 (xxx)
しけるなりさけるやいつこ御吉野の山桜はに花のかそする
しけるなり−さけるやいつこ−みよしのの−やまさくらはに−はなのかそする |
02032 |
未入力 正徹 (xxx)
あかて見し人のためとや夏きても桜かさせる山の井の水
あかてみし−ひとのためとや−なつきても−さくらかさせる−やまのゐのみつ |
02033 |
未入力 正徹 (xxx)
三月たにさえつるふしの山桜ふもとの雲そ夏にかかれる
やよひたに−さえつるふしの−やまさくら−ふもとのくもそ−なつにかかれる |
02034 |
未入力 正徹 (xxx)
咲く藤も夏にかかるをしるへにて又たつねつる山桜かな
さくふちも−なつにかかるを−しるへにて−またたつねつる−やまさくらかな |
02035 |
未入力 正徹 (xxx)
夏山に猶花ありとよふこ鳥声にも春を忘れやはする
なつやまに−なほはなありと−よふことり−こゑにもはるを−わすれやはする |
02036 |
未入力 正徹 (xxx)
桜かりゆけとも花は夏山のしけみか上に雪そちりくる
さくらかり−ゆけともはなは−なつやまの−しけみかうへに−ゆきそちりくる |
02037 |
未入力 正徹 (xxx)
尋見ん卯月の山の桜かりしけきの風に花のかそする
たつねみむ−うつきのやまの−さくらかり−しけきのかせに−はなのかそする |
02038 |
未入力 正徹 (xxx)
夏山のしけみかおくにかくろへて春をやとせる花の陰かな
なつやまの−しけみかおくに−かくろへて−はるをやとせる−はなのかけかな |
02039 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣きその朝露袖かけて桜にほはせつるる山風
なつころも−きそのあさつゆ−そてかけて−さくらにほはせ−つるるやまかせ |
02040 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きてそしけれる谷の埋木も人にしらるる花の下陰
なつきてそ−しけれるたにの−うもれきも−ひとにしらるる−はなのしたかけ |
02041 |
未入力 正徹 (xxx)
けふとるやま榊の葉のかをしめて袂に春の花を忘れし
けふとるや−まさかきのはの−かをしめて−たもとにはるの−はなをわすれし |
02042 |
未入力 正徹 (xxx)
うすけれと袖さむからす夏衣たちあはせたる白かさねかな
うすけれと−そてさむからす−なつころも−たちあはせたる−しらかさねかな |
02043 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣かふるともなく立つ波の花の香取のうら風そふく
なつころも−かふるともなく−たつなみの−はなのかとりの−うらかせそふく |
02044 |
未入力 正徹 (xxx)
松風の色もかすまて千重による木のまの浪に夏や立つらん
まつかせの−いろもかすまて−ちへによる−このまのなみに−なつやたつらむ |
02045 |
未入力 正徹 (xxx)
夏はまた遠山鳥も見し雲のしたり尾なかくこゆる嶺かな
なつはまた−とほやまとりも−みしくもの−したりをなかく−こゆるみねかな |
02046 |
未入力 正徹 (xxx)
しけり行く色は緑の夏山になにの花そものこる白雲
しけりゆく−いろはみとりの−なつやまに−なにのはなそも−のこるしらくも |
02047 |
未入力 正徹 (xxx)
若葉たつ嶺の林の薄雲も秋の色かる夏そきにける
わかはたつ−みねのはやしの−うすくもも−あきのいろかる−なつそきにける |
02048 |
未入力 正徹 (xxx)
ねにかへり鳥の入りぬと見し雲もききの林の茂る夏かな
ねにかへり−とりのいりぬと−みしくもも−ききのはやしの−しけるなつかな |
02049 |
未入力 正徹 (xxx)
茂りあふ木の下遠き夕やみに道はまよはすさける卯花
しけりあふ−このもととほき−ゆふやみに−みちはまよはす−さけるうのはな |
02050 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮月は此比有明の影先きたつる庭の卯花
ゆふまくれ−つきはこのころ−ありあけの−かけさきたつる−にはのうのはな |
02051 |
未入力 正徹 (xxx)
垣ほなる卯花月夜ふけぬともそらにしられぬ木の本の宿
かきほなる−うのはなつきよ−ふけぬとも−そらにしられぬ−このもとのやと |
02052 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの垣ほにさける卯花や玉しく庭に猶まさるらん
やまかつの−かきほにさける−うのはなや−たましくにはに−なほまさるらむ |
02053 |
未入力 正徹 (xxx)
木の本の卯花月の出入をまちもをしまぬ遠近の山
このもとの−うのはなつきの−いていりを−まちもをしまぬ−をちこちのやま |
02054 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへに卯花さける氷室山うつみし雪や色に出つらん
しろたへに−うのはなさける−ひむろやま−うつみしゆきや−いろにいつらむ |
02055 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの雲まの影はくもる夜を卯月そてらす花の下みち
ひさかたの−くもまのかけは−くもるよを−うつきそてらす−はなのしたみち |
02056 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きてもまた三日の夜は卯花のさける光そ月にまされる
なつきても−またみかのよは−うのはなの−さけるひかりそ−つきにまされる |
02057 |
未入力 正徹 (xxx)
影うすき卯花山の夕月よしくれにきえぬ嶺の松風
かけうすき−うのはなやまの−ゆふつくよ−しくれにきえぬ−みねのまつかせ |
02058 |
未入力 正徹 (xxx)
つひに世を卯花山におもひ入る雪のふるすは鴬そなく
つひによを−うのはなやまに−おもひいる−ゆきのふるすは−うくひすそなく |
02059 |
未入力 正徹 (xxx)
山やみなしけりはつらん木の下の卯月の花の雪のむらきえ
やまやみな−しけりはつらむ−このもとの−うつきのはなの−ゆきのむらきえ |
02060 |
未入力 正徹 (xxx)
氷室山こほりにさゆる川風にふらぬ雪ちる岸の卯花
ひむろやま−こほりにさゆる−かはかせに−ふらぬゆきちる−きしのうのはな |
02061 |
未入力 正徹 (xxx)
初春の卯つちにきりし枝もをし夏の垣ほに先さける花
はつはるの−うつちにきりし−えたもをし−なつのかきほに−まつさけるはな |
02062 |
未入力 正徹 (xxx)
春過きて卯花さける氷室山こほらぬ雪をいたすとそみる
はるすきて−うのはなさける−ひむろやま−こほらぬゆきを−いたすとそみる |
02063 |
未入力 正徹 (xxx)
咲きあまる卯花山の山人や月またさらむ此月はかり
さきあまる−うのはなやまの−やまひとや−つきまたさらむ−このつきはかり |
02064 |
未入力 正徹 (xxx)
見てもあかぬ大宮人もたをれとや神の井垣をうゆる卯花
みてもあかぬ−おほみやひとも−たをれとや−かみのゐかきを−うゆるうのはな |
02065 |
未入力 正徹 (xxx)
時過きてうつろふ杜の卯花やゆふしてくつる色にみゆらん
ときすきて−うつろふもりの−うのはなや−ゆふしてくつる−いろにみゆらむ |
02066 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの霧の籬はあれはてて又雪かこふ庭の卯花
やまかつの−きりのまかきは−あれはてて−またゆきかこふ−にはのうのはな |
02067 |
未入力 正徹 (xxx)
遠かたやさらすあさ衣一むらを月まてかくるさとの卯花
をちかたや−さらすあさきぬ−ひとむらを−つきまてかくる−さとのうのはな |
02068 |
未入力 正徹 (xxx)
これや此あな卯花とおもへとも立ちかへり見る敷島の道
これやこの−あなうのはなと−おもへとも−たちかへりみる−しきしまのみち |
02069 |
未入力 正徹 (xxx)
山風や宮の直路も寒からすかへしま袖にわくる卯花
やまかせや−みやのたたちも−さむからす−かへしまそてに−わくるうのはな |
02070 |
未入力 正徹 (xxx)
分けゆかは山路の雪のすり衣卯花散りて露そみたれん
わけゆかは−やまちのゆきの−すりころも−うのはなちりて−つゆそみたれむ |
02071 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかみ世を卯花に分けいらは更にわか身をすつるとやみん
やまふかみ−よをうのはなに−わけいらは−さらにわかみを−すつるとやみむ |
02072 |
未入力 正徹 (xxx)
春過きて木の下雪そたとらるる花に卯杖を又やきらまし
はるすきて−このしたゆきそ−たとらるる−はなにうつゑを−またやきらまし |
02073 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そそく木の下露も卯花の雪の光をみかくしら玉
あめそそく−このしたつゆも−うのはなの−ゆきのひかりを−みかくしらたま |
02074 |
未入力 正徹 (xxx)
うつ木原木の下おくる夕月よ花としらてやかへる山人
うつきはら−このもとおくる−ゆふつくよ−はなとしらてや−かへるやまひと |
02075 |
未入力 正徹 (xxx)
夏来てもくるる色なき卯花にいまもあけおく山の桜戸
なつきても−くるるいろなき−うのはなに−いまもあけおく−やまのさくらと |
02076 |
未入力 正徹 (xxx)
雪かともえそ見えわかぬ川舟ののはれはくたる岸の卯花
ゆきかとも−えそみえわかぬ−かはふねの−のはれはくたる−きしのうのはな |
02077 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の色を高ねにつつく卯花の岸に棹さすふしの川船
ゆきのいろを−たかねにつつく−うのはなの−きしにさをさす−ふしのかはふね |
02078 |
未入力 正徹 (xxx)
早川やくたす鵜舟に岸うつりとふ白鳥やさける卯花
はやかはや−くたすうふねに−きしうつり−とふしらとりや−さけるうのはな |
02079 |
未入力 正徹 (xxx)
卯花のさける淡路をあわとみて塩あひよくるせとの舟人
うのはなの−さけるあはちを−あわとみて−しほあひよくる−せとのふなひと |
02080 |
未入力 正徹 (xxx)
川上の滝のしら淡なかれきて雪をあらそふ岸の卯花
かはかみの−たきのしらあわ−なかれきて−ゆきをあらそふ−きしのうのはな |
02081 |
未入力 正徹 (xxx)
なつみ川山陰にして見し雪ののこるかさくか岸の卯花
なつみかは−やまかけにして−みしゆきの−のこるかさくか−きしのうのはな |
02082 |
未入力 正徹 (xxx)
影うつす卯花さける木の本に消ゆとはなしの雪の下水
かけうつす−うのはなさける−このもとに−きゆとはなしの−ゆきのしたみつ |
02083 |
未入力 正徹 (xxx)
岸たかみ牆ほつつきの卯花に川辺の里をうつむ白波
きしたかみ−かきほつつきの−うのはなに−かはへのさとを−うつむしらなみ |
02084 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空光は見えす卯花の咲くや卯月の夕やみの庭
あまつそら−ひかりはみえす−うのはなの−さくやうつきの−ゆふやみのには |
02085 |
未入力 正徹 (xxx)
卯花のさける山路の夕ま暮送らぬ月にいつる里人
うのはなの−さけるやまちの−ゆふまくれ−おくらぬつきに−いつるさとひと |
02086 |
未入力 正徹 (xxx)
ねくらなき身をうの花の雪の山月ともわかす鳥や鳴くらん
ねくらなき−みをうのはなの−ゆきのやま−つきともわかす−とりやなくらむ |
02087 |
未入力 正徹 (xxx)
杣木きる嵐やたくふ山岸に咲く卯花や雪折のこゑ
そまききる−あらしやたくふ−やまきしに−さくうのはなや−ゆきをれのこゑ |
02088 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公わか名をもらせ人とはは床の山なるいさとこたへん
ほとときす−わかなをもらせ−ひととはは−とこのやまなる−いさとこたへむ |
02089 |
未入力 正徹 (xxx)
ほのかにそ月はのこれる郭公今一こゑを面影にして
ほのかにそ−つきはのこれる−ほとときす−いまひとこゑを−おもかけにして |
02090 |
未入力 正徹 (xxx)
待見つる山郭公一こゑの後にそなかき夏のよの空
まちみつる−やまほとときす−ひとこゑの−のちにそなかき−なつのよのそら |
02091 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへり老をたのみしかひありて山郭公ね覚にそきく
たちかへり−おいをたのみし−かひありて−やまほとときす−ねさめにそきく |
02092 |
未入力 正徹 (xxx)
をしか待つは山をいつる郭公ともすほくしの影に鳴くなり
をしかまつ−はやまをいつる−ほとときす−ともすほくしの−かけになくなり |
02093 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公鳴きてやすらふ山すけのなかき日くらしあかすもあるかな
ほとときす−なきてやすらふ−やますけの−なかきひくらし−あかすもあるかな |
02094 |
未入力 正徹 (xxx)
四月まちてそのまにもなけ郭公道たとたとし夕やみの空
つきまちて−そのまにもなけ−ほとときす−みちたとたとし−ゆふやみのそら |
02095 |
未入力 正徹 (xxx)
かたらはんなれもまた世に出てやらて鳴く音そこもる山郭公
かたらはむ−なれもまたよに−いてやらて−なくねそこもる−やまほとときす |
02096 |
未入力 正徹 (xxx)
晴れやらて八重たつ雲に郭公なくやよ川のすきかての空
はれやらて−やへたつくもに−ほとときす−なくやよかはの−すきかてのそら |
02097 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑそきく山郭公なのりそを磯にはよせぬにほのうら波
こゑそきく−やまほとときす−なのりそを−いそにはよせぬ−にほのうらなみ |
02098 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きすかる声を聞けとも郭公あかてそむすふ山の井の水
なきすかる−こゑをきけとも−ほとときす−あかてそむすふ−やまのゐのみつ |
02099 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公わかなをたてて忍ねをたかもらしつと世をはうらみん
ほとときす−わかなをたてて−しのひねを−たかもらしつと−よをはうらみむ |
02100 |
未入力 正徹 (xxx)
とくいてしわかはらからの鴬や卯月もさらぬ山郭公
とくいてし−わかはらからの−うくひすや−うつきもさらぬ−やまほとときす |
02101 |
未入力 正徹 (xxx)
老いにけりいまこん年の一こゑを鳴きてはなとか山郭公
おいにけり−いまこむとしの−ひとこゑを−なきてはなとか−やまほとときす |
02102 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公初鳥やこめの箸鷹に心あはせて出てぬ山かな
ほとときす−はつとやこめの−はしたかに−こころあはせて−いてぬやまかな |
02103 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねをやかておき出つる一声はおやのいさめの郭公かな
うたたねを−やかておきいつる−ひとこゑは−おやのいさめの−ほとときすかな |
02104 |
未入力 正徹 (xxx)
むら雨は山田の杉のもとかしはぬれぬかけしる郭公かな
むらさめは−やまたのすきの−もとかしは−ぬれぬかけしる−ほとときすかな |
02105 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしまて木幡の山の郭公こゑ此ころや口なしの花
しはしまて−こはたのやまの−ほとときす−こゑこのころや−くちなしのはな |
02106 |
未入力 正徹 (xxx)
橘のちるは色かををしむなりきなれしものを山ほとときす
たちはなの−ちるはいろかを−をしむなり−きなれしものを−やまほとときす |
02107 |
未入力 正徹 (xxx)
ををよわみ涙の玉もおちかへりみたれてをなけ山郭公
ををよわみ−なみたのたまも−おちかへり−みたれてをなけ−やまほとときす |
02108 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公こゑもこよひの影なから窓もる竹の臥待の月
ほとときす−こゑもこよひの−かけなから−まともるたけの−ふしまちのつき |
02109 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公稀なるこゑを恨みてや夕の雲も立ちかへるらん
ほとときす−まれなるこゑを−うらみてや−ゆふへのくもも−たちかへるらむ |
02110 |
未入力 正徹 (xxx)
榊とる山路をいてて郭公鳴くや卯月のしめの外まて
さかきとる−やまちをいてて−ほとときす−なくやうつきの−しめのほかまて |
02111 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公おほえぬ夜の一こゑの後そ心をつけのをまくら
ほとときす−おほえぬよるの−ひとこゑの−のちそこころを−つけのをまくら |
02112 |
未入力 正徹 (xxx)
一こゑをうたかひあへる人ことにものいひとまる郭公かな
ひとこゑを−うたかひあへる−ひとことに−ものいひとまる−ほとときすかな |
02113 |
未入力 正徹 (xxx)
五月かも麦の秋風蝉のこゑましはる杜になく郭公
さつきかも−むきのあきかせ−せみのこゑ−ましはるもりに−なくほとときす |
02114 |
未入力 正徹 (xxx)
落ちくるも声しら淡にききてけり滝の上なる山郭公
おちくるも−こゑしらあわに−ききてけり−たきのうへなる−やまほとときす |
02115 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふとも思はてしもや郭公深山かくれに初音鳴くらん
しのふとも−おもはてしもや−ほとときす−みやまかくれに−はつねなくらむ |
02116 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからやすらへ空の郭公月に鳴くとも涙くもらし
よもすから−やすらへそらの−ほとときす−つきになくとも−なみたくもらし |
02117 |
未入力 正徹 (xxx)
おやよりも世に名そたかき鴬のかひこの中の鳥の一こゑ
おやよりも−よになそたかき−うくひすの−かひこのうちの−とりのひとこゑ |
02118 |
未入力 正徹 (xxx)
駒とむるひのくま川の夕浪にささめことせぬ郭公かな
こまとむる−ひのくまかはの−ゆふなみに−ささめことせぬ−ほとときすかな |
02119 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公まつにつけてもまとろます蚊の初こゑの渡る枕は
ほとときす−まつにつけても−まとろます−かのはつこゑの−わたるまくらは |
02120 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公すかたはしらす年へてもきくに老いせぬこゑの色かな
ほとときす−すかたはしらす−としへても−きくにおいせぬ−こゑのいろかな |
02121 |
未入力 正徹 (xxx)
またれつる心のうらもあひねとや此夕とふ郭公かな
またれつる−こころのうらも−あひねとや−このゆふへとふ−ほとときすかな |
02122 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公心にかけて思ふ夜は雲まの月のおも影のこゑ
ほとときす−こころにかけて−おもふよは−くもまのつきの−おもかけのこゑ |
02123 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよふいさよひの月の村雨を先まちいつる郭公かな
くもまよふ−いさよひのつきの−むらさめを−まつまちいつる−ほとときすかな |
02124 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥きかぬ山路に分けいれは心あらはすみねの松風
ほとときす−きかぬやまちに−わけいれは−こころあらはす−みねのまつかせ |
02125 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公しれかし山の尾の上にもひとつ心の一木たつなり
ほとときす−しれかしやまの−をのへにも−ひとつこころの−ひときたつなり |
02126 |
未入力 正徹 (xxx)
年もへぬまつに心はみしかくて玉のをなかき郭公かな
としもへぬ−まつにこころは−みしかくて−たまのをなかき−ほとときすかな |
02127 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥わか松山をこえてなけ契りし末はそれそかはらぬ
ほとときす−わかまつやまを−こえてなけ−ちきりしすゑは−それそかはらぬ |
02128 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公雨の名残もつれなくてまたぬに出つる山のはの雲
ほとときす−あめのなこりも−つれなくて−またぬにいつる−やまのはのくも |
02129 |
未入力 正徹 (xxx)
きかし猶老いて名をかるみみなしの山郭公なきふるすとも
きかしなほ−おいてなをかる−みみなしの−やまほとときす−なきふるすとも |
02130 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥鳴くや涙のはつ染に木木の若葉や色に出つらん
ほとときす−なくやなみたの−はつそめに−ききのわかはや−いろにいつらむ |
02131 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公なかなく声の初しほは色なき袖に涙おちつつ
ほとときす−なかなくこゑの−はつしほは−いろなきそてに−なみたおちつつ |
02132 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公卯月に手折る榊葉の色もかはらぬ初音をそ聞く
ほとときす−うつきにたをる−さかきはの−いろもかはらぬ−はつねをそきく |
02133 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公初音のけふの玉手箱この明かたや太山出つらん
ほとときす−はつねのけふの−たまてはこ−このあけかたや−みやまいつらむ |
02134 |
未入力 正徹 (xxx)
手にとらぬ初音のけふの郭公これにも又やゆらく玉のを
てにとらぬ−はつねのけふの−ほとときす−これにもまたや−ゆらくたまのを |
02135 |
未入力 正徹 (xxx)
初こゑになれもめててや時鳥けふのうつきに落ちかへりなく
はつこゑに−なれもめててや−ほとときす−けふのうつきに−おちかへりなく |
02136 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥人もことはのおほかるは品すくなしと又そこゑせぬ
ほとときす−ひともことはの−おほかるは−しなすくなしと−またそこゑせぬ |
02137 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公たかねの月も二こゑとなかて色そふ松の夕かせ
ほとときす−たかねのつきも−ふたこゑと−なかていろそふ−まつのゆふかせ |
02138 |
未入力 正徹 (xxx)
もりいつる雲まの月の一こゑに声なかさねそ山郭公
もりいつる−くもまのつきの−ひとこゑに−こゑなかさねそ−やまほとときす |
02139 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはに雲あつまりぬ郭公しはしかたらへ一こゑそせし
やまのはに−くもあつまりぬ−ほとときす−しはしかたらへ−ひとこゑそせし |
02140 |
未入力 正徹 (xxx)
神まつる卯月のしめのうちにたにこといみしける山郭公
かみまつる−うつきのしめの−うちにたに−こといみしける−やまほとときす |
02141 |
未入力 正徹 (xxx)
神山の卯月のしめのよそにたにゆふかけてなく郭公かな
かみやまの−うつきのしめの−よそにたに−ゆふかけてなく−ほとときすかな |
02142 |
未入力 正徹 (xxx)
此夕一こゑ過きぬほとときすかへさを契れあかつきの空
このゆふへ−ひとこゑすきぬ−ほとときす−かへさをちきれ−あかつきのそら |
02143 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらはあかすは老のひかききもましれと思ふ郭公かな
よしさらは−あかすはおいの−ひかききも−ましれとおもふ−ほとときすかな |
02144 |
未入力 正徹 (xxx)
いくこゑと人のいふにそ郭公遅く聞きつる数もくやしき
いくこゑと−ひとのいふにそ−ほとときす−おそくききつる−かすもくやしき |
02145 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公老の枕にかすかなるこゑいかはかりさやけかるらん
ほとときす−おいのまくらに−かすかなる−こゑいかはかり−さやけかるらむ |
02146 |
未入力 正徹 (xxx)
きけは先心そらなる郭公たのますとてや遠さかるらん
きけはまつ−こころそらなる−ほとときす−たのますとてや−とほさかるらむ |
02147 |
未入力 正徹 (xxx)
聞きあへす人にかたれは我かための初音ふりねる郭公かな
ききあへす−ひとにかたれは−わかための−はつねふりねる−ほとときすかな |
02148 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公又あひかたしこれや此わしの高ねの法の一こゑ
ほとときす−またあひかたし−これやこの−わしのたかねの−のりのひとこゑ |
02149 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥鳴く山ことに山ひこのあらまほしきもあるそまれなる
ほとときす−なくやまことに−やまひこの−あらまほしきも−あるそまれなる |
02150 |
未入力 正徹 (xxx)
桜かり夏やのこると初音をも尋ぬる山に鳴く郭公
さくらかり−なつやのこると−はつねをも−たつぬるやまに−なくほとときす |
02151 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥とほさかるなり覚めつるは近き夢路にこゑや行くらん
ほとときす−とほさかるなり−さめつるは−ちかきゆめちに−こゑやゆくらむ |
02152 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公ききても老と思はぬやことしはかりのね覚ならまし
ほとときす−ききてもおいと−おもはぬや−ことしはかりの−ねさめならまし |
02153 |
未入力 正徹 (xxx)
夢さめておきいつる閨の郭公いま一こゑは月にきくなり
ゆめさめて−おきいつるねやの−ほとときす−いまひとこゑは−つきにきくなり |
02154 |
未入力 正徹 (xxx)
うき夢の床の涙のよそなからなきおとろかす郭公かな
うきゆめの−とこのなみたの−よそなから−なきおとろかす−ほとときすかな |
02155 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲を空にすゑおく関と見てやすらひあかす郭公かな
よこくもを−そらにすゑおく−せきとみて−やすらひあかす−ほとときすかな |
02156 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさは暁はかりうき物とおもひもはてぬ郭公かな
つれなさは−あかつきはかり−うきものと−おもひもはてぬ−ほとときすかな |
02157 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公たか衣衣のあかつきにしたはぬ声の落ちかへるらん
ほとときす−たかきぬきぬの−あかつきに−したはぬこゑの−おちかへるらむ |
02158 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよふ山郭公こゑ過きて青葉にあくる木木のむら立
くもまよふ−やまほとときす−こゑすきて−あをはにあくる−ききのむらたち |
02159 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公又もきかれぬ里の子の夕ととろきに声ましりつつ
ほとときす−またもきかれぬ−さとのこの−ゆふととろきに−こゑましりつつ |
02160 |
未入力 正徹 (xxx)
雨かかる山のはきえて郭公鳴くや夕にまよふ浮雲
あめかかる−やまのはきえて−ほとときす−なくやゆふへに−まよふうきくも |
02161 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きぬなり卯花月夜すみ染のゆふ暮あさき山郭公
なきぬなり−うのはなつきよ−すみそめの−ゆふくれあさき−やまほとときす |
02162 |
未入力 正徹 (xxx)
思はすにねに行くからすなかめやる雲路にきなく郭公かな
おもはすに−ねにゆくからす−なかめやる−くもちにきなく−ほとときすかな |
02163 |
未入力 正徹 (xxx)
時鳥ときのつつみの九こゑきかて過きぬるさ夜中もうし
ほとときす−ときのつつみの−ここのこゑ−きかてすきぬる−さよなかもうし |
02164 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公雲のいつくの月とたにしらぬやとりのあくる一こゑ
ほとときす−くものいつくの−つきとたに−しらぬやとりの−あくるひとこゑ |
02165 |
未入力 正徹 (xxx)
さむるとていかなる夢か惜しからむ声おとろかせ山ほとときす
さむるとて−いかなるゆめか−をしからむ−こゑおとろかせ−やまほとときす |
02166 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公心のやみも晴れぬとや山のはいつる月になくらん
ほとときす−こころのやみも−はれぬとや−やまのはいつる−つきになくらむ |
02167 |
未入力 正徹 (xxx)
雲路行く月のこゑかとたとるまて光にちかき郭公かな
くもちゆく−つきのこゑかと−たとるまて−ひかりにちかき−ほとときすかな |
02168 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるかおなしたかねの郭公なく一こゑにいつる月かけ
あけぬるか−おなしたかねの−ほとときす−なくひとこゑに−いつるつきかけ |
02169 |
未入力 正徹 (xxx)
一こゑはまたすしもあらす月影に夜よしとつくる郭公かな
ひとこゑは−またすしもあらす−つきかけに−よよしとつくる−ほとときすかな |
02170 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公月や雲まに出てぬらんひかりもおつる一こゑの空
ほとときす−つきやくもまに−いてぬらむ−ひかりもおつる−ひとこゑのそら |
02171 |
未入力 正徹 (xxx)
をちかへりなくへきそらを郭公いつれの雲に声かくすらん
をちかへり−なくへきそらを−ほとときす−いつれのくもに−こゑかくすらむ |
02172 |
未入力 正徹 (xxx)
衣かも雲のはたてのぬきを辞み声もたまらぬほとときナかな
ころもかも−くものはたての−ぬきをうすみ−こゑもたまらぬ−ほとときすかな |
02173 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きまよふ風もうらめし郭公鳴くやなこりをみねのむら雲
ふきまよふ−かせもうらめし−ほとときす−なくやなこりを−みねのむらくも |
02174 |
未入力 正徹 (xxx)
恨みても恋ひてもなけと郭公こゑする雲のきゆる空かな
うらみても−こひてもなけと−ほとときす−こゑするくもの−きゆるそらかな |
02175 |
未入力 正徹 (xxx)
をちかへりたひたひきなく時鳥いつれの雲に羽をやすむらん
をちかへり−たひたひきなく−ほとときす−いつれのくもに−はをやすむらむ |
02176 |
未入力 正徹 (xxx)
又きかまほしのまきれの郭公のこるは軒のむら雨のこゑ
またきかま−ほしのまきれの−ほとときす−のこるはのきの−むらさめのこゑ |
02177 |
未入力 正徹 (xxx)
さおりする田長をおのかしるへとやしつやに近き郭公かな
さおりする−たをさをおのか−しるへとや−しつやにちかき−ほとときすかな |
02178 |
未入力 正徹 (xxx)
雲とちてねん山やなき五月やみくらせるよひに鳴く郭公
くもとちて−ねむやまやなき−さつきやみ−くらせるよひに−なくほとときす |
02179 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる岡のま草の夕露に落ちかへりなく郭公かな
かせわたる−をかのまくさの−ゆふつゆに−おちかへりなく−ほとときすかな |
02180 |
未入力 正徹 (xxx)
夕波にこゑをちかへれ入海の松のむかひの山郭公
ゆふなみに−こゑをちかへれ−いりうみの−まつのむかひの−やまほとときす |
02181 |
未入力 正徹 (xxx)
すまのうらの山郭公わくらはにこゑしほちまてかへる波かな
すまのうらの−やまほとときす−わくらはに−こゑしほちまて−かへるなみかな |
02182 |
未入力 正徹 (xxx)
松風も心ありけるさとの名のね覚うれしき郭公かな
まつかせも−こころありける−さとのなの−ねさめうれしき−ほとときすかな |
02183 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかきくあたら初音を里とよむ市はの上の山郭公
たれかきく−あたらはつねを−さととよむ−いちはのうへの−やまほとときす |
02184 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公なくや涙の露も見すゆふ暮ふかき森の下草
ほとときす−なくやなみたの−つゆもみす−ゆふくれふかき−もりのしたくさ |
02185 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公田中の杜にをちかへり生ふるさなへのねをつくすなり
ほとときす−たなかのもりに−をちかへり−おふるさなへの−ねをつくすなり |
02186 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴行くをかそへんとすれは遠かたにこゑまきらはす郭公かな
なきゆくを−かそへむとすれは−をちかたに−こゑまきらはす−ほとときすかな |
02187 |
未入力 正徹 (xxx)
落ちかへり野にも山にも郭公こゑのたねまけこん年のため
おちかへり−のにもやまにも−ほとときす−こゑのたねまけ−こむとしのため |
02188 |
未入力 正徹 (xxx)
むら雨も村山めくる郭公こゑにさとわくかたやなからん
むらさめも−むらやまめくる−ほとときす−こゑにさとわく−かたやなからむ |
02189 |
未入力 正徹 (xxx)
夏をしる世におしなへて郭公こゑをふらせる夕暮の雨
なつをしる−よにおしなへて−ほとときす−こゑをふらせる−ゆふくれのあめ |
02190 |
未入力 正徹 (xxx)
今は世にこゑききのこす里人も稀なる比のほとときすかな
いまはよに−こゑききのこす−さとひとも−まれなるころの−ほとときすかな |
02191 |
未入力 正徹 (xxx)
たちきかむ心はやます山の井のあかても過くる郭公かな
たちきかむ−こころはやます−やまのゐの−あかてもすくる−ほとときすかな |
02192 |
未入力 正徹 (xxx)
つまこめになくやね山の郭公八雲のおくの夕暮のこゑ
つまこめに−なくやねやまの−ほとときす−やくものおくの−ゆふくれのこゑ |
02193 |
未入力 正徹 (xxx)
夏ふかみ花ちる山の遅さくら見しより稀の郭公かな
なつふかみ−はなちるやまの−おそさくら−みしよりまれの−ほとときすかな |
02194 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねのこれは夢路か郭公おとつれたえし後の一こゑ
うたたねの−これはゆめちか−ほとときす−おとつれたえし−のちのひとこゑ |
02195 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公なくや五月の玉さかになるは程なき有明の空
ほとときす−なくやさつきの−たまさかに−なるはほとなき−ありあけのそら |
02196 |
未入力 正徹 (xxx)
ほとときす時に一たひさく花にきかまほしきは声の色かな
ほとときす−ときにひとたひ−さくはなに−きかまほしきは−こゑのいろかな |
02197 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公まれなる中の契ゆゑこゑをまとほにおもふ夜もなし
ほとときす−まれなるなかの−ちきりゆゑ−こゑをまとほに−おもふよもなし |
02198 |
未入力 正徹 (xxx)
芹川やまれの御幸の跡たえし初音をさかの山ほとときす
せりかはや−まれのみゆきの−あとたえし−はつねをさかの−やまほとときす |
02199 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくて有明過きぬ郭公此三か月にきえし一こゑ
つれなくて−ありあけすきぬ−ほとときす−このみかつきに−きえしひとこゑ |
02200 |
未入力 正徹 (xxx)
花ちりて茂る桜の陰にさへ年にまれなる山郭公
はなちりて−しけるさくらの−かけにさへ−としにまれなる−やまほとときす |
02201 |
未入力 正徹 (xxx)
よろつ木のおなし緑も天地のめくみたかくやしけりそふらん
よろつきの−おなしみとりも−あめつちの−めくみたかくや−しけりそふらむ |
02202 |
未入力 正徹 (xxx)
夏そひくうなての杜の葉をしけみまとりすむともみえぬ陰かな
なつそひく−うなてのもりの−はをしけみ−まとりすむとも−みえぬかけかな |
02203 |
未入力 正徹 (xxx)
ふか緑夏もたけ行く木木の葉のうらわかからぬ風の音かな
ふかみとり−なつもたけゆく−ききのはの−うらわかからぬ−かせのおとかな |
02204 |
未入力 正徹 (xxx)
水鳥の苛羽の山の色そこきおなしうは毛としける梢に
みつとりの−あをはのやまの−いろそこき−おなしうはけと−しけるこすゑに |
02205 |
未入力 正徹 (xxx)
見し春にかはらぬ岡の常盤木もよその緑に茂る夏かな
みしはるに−かはらぬをかの−ときはきも−よそのみとりに−しけるなつかな |
02206 |
未入力 正徹 (xxx)
松風も千世の緑をかしは木のひろはにあまる夏の声かな
まつかせも−ちよのみとりを−かしはきの−ひろはにあまる−なつのこゑかな |
02207 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草の末野の森そたかからぬ茂りかたふく露の梢に
なつくさの−すゑののもりそ−たかからぬ−しけりかたふく−つゆのこすゑに |
02208 |
未入力 正徹 (xxx)
庭ちかくしけりつつきてひまもなし都も山もひとつ木すゑに
にはちかく−しけりつつきて−ひまもなし−みやこもやまも−ひとつこすゑに |
02209 |
未入力 正徹 (xxx)
葛の葉のかからぬ嶺のしけみにもはふきあまたの横雲のそら
くすのはの−かからぬみねの−しけみにも−はふきあまたの−よこくものそら |
02210 |
未入力 正徹 (xxx)
夏山の若葉にましるふか緑もとの松とも見えぬ松かな
なつやまの−わかはにましる−ふかみとり−もとのまつとも−みえぬまつかな |
02211 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへの林にしけきたくひにもおよはすあさき心ことのは
いにしへの−はやしにしけき−たくひにも−およはすあさき−こころことのは |
02212 |
未入力 正徹 (xxx)
花なくて見るかひなくは思はれす青葉の山にかかるしら雲
はななくて−みるかひなくは−おもはれす−あをはのやまに−かかるしらくも |
02213 |
未入力 正徹 (xxx)
しける木の若葉の色や紅の一花そめの山ひめの袖
しけるきの−わかはのいろや−くれなゐの−ひとはなそめの−やまひめのそて |
02214 |
未入力 正徹 (xxx)
よもの木に朝おく露の玉のえも茂るよもきか庭の島かな
よものきに−あさおくつゆの−たまのえも−しけるよもきか−にはのしまかな |
02215 |
未入力 正徹 (xxx)
露しける木下はらひ吹く風のめに見ぬ色や秋のおも影
つゆしける−このもとはらひ−ふくかせの−めにみぬいろや−あきのおもかけ |
02216 |
未入力 正徹 (xxx)
山風も梢をわたるむら猿のこゑさへふかくしける夏かな
やまかせも−こすゑをわたる−むらさるの−こゑさへふかく−しけるなつかな |
02217 |
未入力 正徹 (xxx)
花ならぬ山の林になる梅の実さへ若葉の色に匂へる
はなならぬ−やまのはやしに−なるうめの−みさへわかはの−いろににほへる |
02218 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海にこきいててみれは茂るらん若葉波よるひらのねおろし
にほのうみに−こきいててみれは−しけるらむ−わかはなみよる−ひらのねおろし |
02219 |
未入力 正徹 (xxx)
時しもあれ卯月の嶺の緑さへうすき木の葉の衣ほすなり
ときしもあれ−うつきのみねの−みとりさへ−うすきこのはの−ころもほすなり |
02220 |
未入力 正徹 (xxx)
筑波根やしけれはいととみなの川峰よりおつる音はかりして
つくはねや−しけれはいとと−みなのかは−みねよりおつる−おとはかりして |
02221 |
未入力 正徹 (xxx)
まきもくもしけりまさきの綱たえて杣木引くなり嶺のよこ雲
まきもくも−しけりまさきの−つなたえて−そまきひくなり−みねのよこくも |
02222 |
未入力 正徹 (xxx)
つくはねの嶺そ緑の淵となるおつるやいつこみなの川波
つくはねの−みねそみとりの−ふちとなる−おつるやいつこ−みなのかはなみ |
02223 |
未入力 正徹 (xxx)
筑波山茂りかさねてみなの川嶺よりおつと見えぬ夏かな
つくはやま−しけりかさねて−みなのかは−みねよりおつと−みえぬなつかな |
02224 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふしてを茂りかくしてかた岡の森もみしめも見えぬ比かな
ゆふしてを−しけりかくして−かたをかの−もりもみしめも−みえぬころかな |
02225 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとの岡の屋かたの妻見えてこもりもはてす茂る夏かな
このもとの−をかのやかたの−つまみえて−こもりもはてす−しけるなつかな |
02226 |
未入力 正徹 (xxx)
えそみえぬねにこしからす幾つれかとまる林は木の葉のみして
えそみえぬ−ねにこしからす−いくつれか−とまるはやしは−このはのみして |
02227 |
未入力 正徹 (xxx)
夕間暮ねにくるからすいくむらかしける林に身をかくすらん
ゆふまくれ−ねにくるからす−いくむらか−しけるはやしに−みをかくすらむ |
02228 |
未入力 正徹 (xxx)
深草や杜の嵐にちる藤のうら葉あらはに茂る夏かな
ふかくさや−もりのあらしに−ちるふちの−うらはあらはに−しけるなつかな |
02229 |
未入力 正徹 (xxx)
深緑ましる若葉の薄もえき夏の色わく山の朝露
ふかみとり−ましるわかはの−うすもえき−なつのいろわく−やまのあさつゆ |
02230 |
未入力 正徹 (xxx)
しけりあふわか葉かたふきふる雨に木のまの山そしはし見え行く
しけりあふ−わかはかたふき−ふるあめに−このまのやまそ−しはしみえゆく |
02231 |
未入力 正徹 (xxx)
夏のくる床に葉風のこゑ涼し竹の庵のすとの明ほの
なつのくる−とこにはかせの−こゑすすし−たけのいほりの−すとのあけほの |
02232 |
未入力 正徹 (xxx)
宿の藤夏にかかるも紫の竹の夜のまは色もかはらす
やとのふち−なつにかかるも−むらさきの−たけのよのまは−いろもかはらす |
02233 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の子も世のうきふしをそへかほに窓につのくむ夏はきにけり
たけのこも−よのうきふしを−そへかほに−まとにつのくむ−なつはきにけり |
02234 |
未入力 正徹 (xxx)
宿ふかきそのふに生ふる竹の子の蝉こそなかね夏はきにけり
やとふかき−そのふにおふる−たけのこの−せみこそなかね−なつはきにけり |
02235 |
未入力 正徹 (xxx)
春くれし木の下やみを卯花の光も露もはらふ夏かな
はるくれし−このしたやみを−うのはなの−ひかりもつゆも−はらふなつかな |
02236 |
未入力 正徹 (xxx)
春暮れて雲に入りにし鳥の子のひなの長路に夏も来にけり
はるくれて−くもにいりにし−とりのこの−ひなのなかちに−なつもきにけり |
02237 |
未入力 正徹 (xxx)
葵草露も二葉におく程はいく程ならしみかけしら玉
あふひくさ−つゆもふたはに−おくほとは−いくほとならし−みかけしらたま |
02238 |
未入力 正徹 (xxx)
もろ葉草二葉の露のたまたまも神めつる日にめくり逢ひぬる
もろはくさ−ふたはのつゆの−たまたまも−かみめつるひに−めくりあひぬる |
02239 |
未入力 正徹 (xxx)
天地の友神男神の二柱二葉ゆゑあるあふひなるらん
あめつちの−めかみをかみの−ふたはしら−ふたはゆゑある−あふひなるらむ |
02240 |
未入力 正徹 (xxx)
年年になれにしものを葵草けふほ哀にかくる露かな
としとしに−なれにしものを−あふひくさ−けふほあはれに−かくるつゆかな |
02241 |
未入力 正徹 (xxx)
水鳥の青葉の簾葵つけけふかけわたせかもの川波
みつとりの−あをはのすたれ−あふひつけ−けふかけわたせ−かものかはなみ |
02242 |
未入力 正徹 (xxx)
宮ひけり玉をあむより葵草ふりたるみすの青き二葉は
みやひけり−たまをあむより−あふひくさ−ふりたるみすの−あをきふたはは |
02243 |
未入力 正徹 (xxx)
葵草けふより後の宮ひをもみすの枯葉に猶やのこさん
あふひくさ−けふよりのちの−みやひをも−みすのかれはに−なほやのこさむ |
02244 |
未入力 正徹 (xxx)
あふひこそあひ生ならね神山の昔の二葉松はふりつつ
あふひこそ−あひおひならね−かみやまの−むかしのふたは−まつはふりつつ |
02245 |
未入力 正徹 (xxx)
もる月に枝もさはらぬ竹の子のまたみしか夜の窓そ涼しき
もるつきに−えたもさはらぬ−たけのこの−またみしかよの−まとそすすしき |
02246 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原さやかに月の明くる夜を雪のいつくと誰かたとらん
あまのはら−さやかにつきの−あくるよを−ゆきのいつくと−たれかたとらむ |
02247 |
未入力 正徹 (xxx)
猶もをし山郭公一こゑに出入る月の夜はならねとも
なほもをし−やまほとときす−ひとこゑに−いているつきの−よはならねとも |
02248 |
未入力 正徹 (xxx)
行く水をむすふ手玉にくたけても底にいつみの月そ涼しき
ゆくみつを−むすふてたまに−くたけても−そこにいつみの−つきそすすしき |
02249 |
未入力 正徹 (xxx)
明けはをしわか老いらくの白髪に夏の霜夜の月そやとれる
あけはをし−わかおいらくの−しろかみに−なつのしもよの−つきそやとれる |
02250 |
未入力 正徹 (xxx)
やとるさへあかてそあかすしろたへの我か衣手のみしか夜の月
やとるさへ−あかてそあかす−しろたへの−わかころもての−みしかよのつき |
02251 |
未入力 正徹 (xxx)
てる月の玉江のかけも夏かりに生ひいつる蘆の短夜の月
てるつきの−たまえのかけも−なつかりに−おひいつるあしの−みしかよのつき |
02252 |
未入力 正徹 (xxx)
いつのまに千町の水をわたるらん植ゑし早苗の短夜の月
いつのまに−ちまちのみつを−わたるらむ−うゑしさなへの−みしかよのつき |
02253 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月の天の岩戸の関の戸をよひのまなから明くる比かな
ゆくつきの−あまのいはとの−せきのとを−よひのまなから−あくるころかな |
02254 |
未入力 正徹 (xxx)
水あさき蘆まにすたつ鴫の足のみしかくうかふ夏の月影
みつあさき−あしまにすたつ−しきのあしの−みしかくうかふ−なつのつきかけ |
02255 |
未入力 正徹 (xxx)
みしかくもまたふし見えぬ竹の子のよわたりかぬる園の月影
みしかくも−またふしみえぬ−たけのこの−よわたりかぬる−そののつきかけ |
02256 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの木をうこかせる風涼し扇をあけて出つる月よに
やまのはの−きをうこかせる−かせすすし−あふきをあけて−いつるつきよに |
02257 |
未入力 正徹 (xxx)
しつの屋そ明くるも知らぬ夏はきの麻のをからの白き月よに
しつのやそ−あくるもしらぬ−なつはきの−あさのをからの−しろきつきよに |
02258 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公なく一こゑは杉の戸にあけんともせぬ月の影かな
ほとときす−なくひとこゑは−すきのとに−あけむともせぬ−つきのかけかな |
02259 |
未入力 正徹 (xxx)
形見をはならす扇にのこし置きてかさなる山に月そかくるる
かたみをは−ならすあふきに−のこしおきて−かさなるやまに−つきそかくるる |
02260 |
未入力 正徹 (xxx)
夏引のいそく手引のいとなみもよることたえね月のみしかさ
なつひきの−いそくてひきの−いとなみも−よることたえね−つきのみしかさ |
02261 |
未入力 正徹 (xxx)
光もて卯月の月のしらかさねかさねようすし夜はのさ衣
ひかりもて−うつきのつきの−しらかさね−かさねようすし−よはのさころも |
02262 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣うらなく月は身にそそふ雲なへたてそ夜もみしかし
なつころも−うらなくつきは−みにそそふ−くもなへたてそ−よるもみしかし |
02263 |
未入力 正徹 (xxx)
そのままにほすやはつきの短夜は月にもぬれぬ賎かあさてを
そのままに−ほすやはつきの−みしかよは−つきにもぬれぬ−しつかあさてを |
02264 |
未入力 正徹 (xxx)
しつほ猶月影のこせ夏はきの麻のをからのしろき牆ほに
しつほなほ−つきかけのこせ−なつはきの−あさのをからの−しろきかきほに |
02265 |
未入力 正徹 (xxx)
短夜をうなての杜の木の間にも月くらからしま鳥すますは
みしかよを−うなてのもりの−このまにも−つきくらからし−まとりすますは |
02266 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにして底もふか井にやとるらんふりわけ髪の短よの月
いかにして−そこもふかゐに−やとるらむ−ふりわけかみの−みしかよのつき |
02267 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしなる影もたまらす夏衣すすのしの鷺の月のさよかせ
しはしなる−かけもたまらす−なつころも−すすのしのやの−つきのさよかせ |
02268 |
未入力 正徹 (xxx)
滝川のはや瀬の月も夕波になかれもあへす明くる夏の夜
たきかはの−はやせのつきも−ゆふなみに−なかれもあへす−あくるなつのよ |
02269 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまの玉江の月は夏かりの蘆のみしかき夜のまたになし
くるるまの−たまえのつきは−なつかりの−あしのみしかき−よのまたになし |
02270 |
未入力 正徹 (xxx)
夏のよの暁しらぬ夕月も入会のかねによこ雲の空
なつのよの−あかつきしらぬ−ゆふつきも−いりあひのかねに−よこくものそら |
02271 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原雲路を遠み足はやき色やくるしきみしか夜の比
あまのはら−くもちをとほみ−あしはやき−つきやくるしき−みしかよのころ |
02272 |
未入力 正徹 (xxx)
手にまきてくり返すまも夏のよの月そみしかきしつのをたまき
てにまきて−くりかへすまも−なつのよの−つきそみしかき−しつのをたまき |
02273 |
未入力 正徹 (xxx)
短夜をいとになかけそ草そ引くうなかみ山にいそく月かけ
みしかよを−いとになかけそ−くさそひく−うなかみやまに−いそくつきかけ |
02274 |
未入力 正徹 (xxx)
ひるとよるとあへる夏かな冬の日のわたりし道に月や行くらん
ひるとよると−あへるなつかな−ふゆのひの−わたりしみちに−つきやゆくらむ |
02275 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上に契そうすき夏衣なれてわかるる有明の影
そてのうへに−ちきりそうすき−なつころも−なれてわかるる−ありあけのかけ |
02276 |
未入力 正徹 (xxx)
橋柱ふりぬる名のみなから江や蘆のよのまの月そ短かき
はしはしら−ふりぬるなのみ−なからえや−あしのよのまの−つきそみしかき |
02277 |
未入力 正徹 (xxx)
夏のよの月にこほるる声涼し秋風またぬ荻のした露
なつのよの−つきにこほるる−こゑすすし−あきかせまたぬ−をきのしたつゆ |
02278 |
未入力 正徹 (xxx)
秋なれや岩まの水もわく月の玉よる風に蝉の羽衣
あきなれや−いはまのみつも−わくつきの−たまよるかせに−せみのはころも |
02279 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風月のかつらを吹分けてたもとの影をはらふ涼しさ
あまつかせ−つきのかつらを−ふきわけて−たもとのかけを−はらふすすしさ |
02280 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは空をみかきて吹く風に雲の波ちる月のしら玉
すすしさは−そらをみかきて−ふくかせに−くものなみちる−つきのしらたま |
02281 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きかへす荻の上葉を霜と見て風に夏なき庭の月影
ふきかへす−をきのうははを−しもとみて−かせになつなき−にはのつきかけ |
02282 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣すす吹く野へのさ夜風に月も袖うつ露のしらなみ
なつころも−すすふくのへの−さよかせに−つきもそてうつ−つゆのしらなみ |
02283 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは夕立はるる庭たつみ月をみたしてさ波ふく風
すすしさは−ゆふたちはるる−にはたつみ−つきをみたして−さなみふくかせ |
02284 |
未入力 正徹 (xxx)
むすはぬも衣手涼し夏か秋かいさら小川にやとる月影
むすはぬも−ころもてすすし−なつかあきか−いさらをかはに−やとるつきかけ |
02285 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは夏そ秋にも真砂山雪にみかける月のさよ風
すすしさは−なつそあきにも−まさこやま−ゆきにみかける−つきのさよかせ |
02286 |
未入力 正徹 (xxx)
よひのまに明けなは明けよ天つ空雪のいつくと月はたとらし
よひのまに−あけなはあけよ−あまつそら−ゆきのいつくと−つきはたとらし |
02287 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかみるたたおしひねる玉章の明けやすき月はことのはもなし
いかかみる−たたおしひねる−たまつさの−あけやすきつきは−ことのはもなし |
02288 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねの袖さへうすき夕月よ影もまさらて明くるしののめ
うたたねの−そてさへうすき−ゆふつくよ−かけもまさらて−あくるしののめ |
02289 |
未入力 正徹 (xxx)
見る程もなつの夜わたる竹川の橋つめなから明くる月かけ
みるほとも−なつのよわたる−たけかはの−はしつめなから−あくるつきかけ |
02290 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ほこす浦水のあわの一めくり空行く月に明けそあらそふ
いはほこす−しみつのあわの−ひとめくり−そらゆくつきに−あけそあらそふ |
02291 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸をたたく水鶏の二こゑときかぬに明くる夏のよの月
あまのとを−たたくくひなの−ふたこゑと−きかぬにあくる−なつのよのつき |
02292 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の池の汀にたてるかもの足のみしかく明くる水の月影
なつのいけの−みきはにたてる−かものあしの−みしかくあくる−みつのつきかけ |
02293 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの月みしかき筆のつかのまに明くる恨はかきもつくさし
よはのつき−みしかきふての−つかのまに−あくるうらみは−かきもつくさし |
02294 |
未入力 正徹 (xxx)
うなゐ子かふり分髪のみしか夜を月なとやみにむすほほるらん
うなゐこか−ふりわけかみの−みしかよを−つきなとやみに−むすほほるらむ |
02295 |
未入力 正徹 (xxx)
波はやみ月影わくる川島をめくりあふまに明くる夏の夜
なみはやみ−つきかけわくる−かはしまを−めくりあふまに−あくるなつのよ |
02296 |
未入力 正徹 (xxx)
川社しのに月影神さひてうたはぬ瀬瀬のささ波のこゑ
かはやしろ−しのにつきかけ−かみさひて−うたはぬせせの−ささなみのこゑ |
02297 |
未入力 正徹 (xxx)
影おちて月も岩こす滝川のなみよりはやく明くる夏のよ
かけおちて−つきもいはこす−たきかはの−なみよりはやく−あくるなつのよ |
02298 |
未入力 正徹 (xxx)
滝川やさかまく水のみなわよりめくるそはやき夏のよの月
たきかはや−さかまくみつの−みなわより−めくるそはやき−なつのよのつき |
02299 |
未入力 正徹 (xxx)
夏のよの水のさ波は月にみえて入江のさとに秋風そふく
なつのよの−みつのさなみは−つきにみえて−いりえのさとに−あきかせそふく |
02300 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさはまし水あさみさされ石もなかるる月の有明のこゑ
すすしさは−ましみつあさみ−さされいしも−なかるるつきの−ありあけのこゑ |
02301 |
未入力 正徹 (xxx)
六月の月すむ天の川社秋や衣をほしあひのそら
みなつきの−つきすむあまの−かはやしろ−あきやころもを−ほしあひのそら |
02302 |
未入力 正徹 (xxx)
音になかぬせみの小川のは衣や夕暮うすき浪の月影
ねになかぬ−せみのをかはの−はころもや−ゆふくれうすき−なみのつきかけ |
02303 |
未入力 正徹 (xxx)
川島のなかれをわくる月の影めくりあふまに明くる夏のよ
かはしまの−なかれをわくる−つきのかけ−めくりあふまに−あくるなつのよ |
02304 |
未入力 正徹 (xxx)
影すすし春はいなさの山のはにかかる細江の波の三か月
かけすすし−はるはいなさの−やまのはに−かかるほそえの−なみのみかつき |
02305 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海や国つ御かみのささ波にうちいててみれは月そ涼しき
にほのうみや−くにつみかみの−ささなみに−うちいててみれは−つきそすすしき |
02306 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ舟雲まの月のおもかちもとりあへす明くる夜はの短かさ
おきつふね−くもまのつきの−おもかちも−とりあへすあくる−よはのみしかさ |
02307 |
未入力 正徹 (xxx)
浜つつら月も涼しき夕露に夏やこぬみのうら風そふく
はまつつら−つきもすすしき−ゆふつゆに−なつやこぬみの−うらかせそふく |
02308 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるかうらわのさとの蚊遣火にかすみもあへぬ浪の上の月
あけぬるか−うらわのさとの−かやりひに−かすみもあへぬ−なみのうへのつき |
02309 |
未入力 正徹 (xxx)
いつれうき入りぬる磯の夏の夜はみらくすくなき月と夢とに
いつれうき−いりぬるいその−なつのよは−みらくすくなき−つきとゆめとに |
02310 |
未入力 正徹 (xxx)
月やとる真砂の霜の花かつらみしかくかけて明くる夏の夜
つきやとる−まさこのしもの−はなかつら−みしかくかけて−あくるなつのよ |
02311 |
未入力 正徹 (xxx)
おくにある滝のしら玉涼しくやみかくいさこの山のはの月
おくにある−たきのしらたま−すすしくや−みかくいさこの−やまのはのつき |
02312 |
未入力 正徹 (xxx)
てる日影ひるは真砂をむし明の月に霜おくせとの浜風
てるひかけ−ひるはまさこを−むしあけの−つきにしもおく−せとのはまかせ |
02313 |
未入力 正徹 (xxx)
さ浪行く洲なかし遠く影見えて浜風涼し夏の夜の月
さなみゆく−すなかしとほく−かけみえて−はまかせすすし−なつのよのつき |
02314 |
未入力 正徹 (xxx)
霜雪や弥かたまれる真砂ちに夏なき月そ冬のままなる
しもゆきや−いやかたまれる−まさこちに−なつなきつきそ−ふゆのままなる |
02315 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさはあかる真砂の霜くもり月に夏なきさ夜の浜風
すすしさは−あかるまさこの−しもくもり−つきになつなき−さよのはまかせ |
02316 |
未入力 正徹 (xxx)
月そ秋真砂の上の霜かれは一葉も見えぬ庭の夏草
つきそあき−まさこのうへの−しもかれは−ひとはもみえぬ−にはのなつくさ |
02317 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の夜のまさこの霜の花染をいくしほ月の庭にしくらん
なつのよの−まさこのしもの−はなそめを−いくしほつきの−にはにしくらむ |
02318 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川夏をさそひて行く月の影まてとまる瀬瀬のゆふして
みそきかは−なつをさそひて−ゆくつきの−かけまてとまる−せせのゆふして |
02319 |
未入力 正徹 (xxx)
むら薄みとりもまかふ春雨の山田のくろにとるさなへかな
むらすすき−みとりもまかふ−はるさめの−やまたのくろに−とるさなへかな |
02320 |
未入力 正徹 (xxx)
もるまてもくるしからしとしつのをやわか家の門に早苗とるらん
もるまても−くるしからしと−しつのをや−わかいへのかとに−さなへとるらむ |
02321 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田におり立つ比も時過きてさなへも水もみとりにそすむ
をやまたに−おりたつころも−ときすきて−さなへもみつも−みとりにそすむ |
02322 |
未入力 正徹 (xxx)
うつり行く水も緑の杜の陰うき田のさなへとりはつくさし
うつりゆく−みつもみとりの−もりのかけ−うきたのさなへ−とりはつくさし |
02323 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき日の千町のさなへうゑつかれ山田のくろにやすむさ乙女
なかきひの−ちまちのさなへ−うゑつかれ−やまたのくろに−やすむさをとめ |
02324 |
未入力 正徹 (xxx)
又やみん緑のさなへ松陰のみとしろ小田にさかへ行くころ
またやみむ−みとりのさなへ−まつかけの−みとしろをたに−さかへゆくころ |
02325 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくとも山田の早苗取りのこせあすのゆひめやきつつうらみん
いそくとも−やまたのさなへ−とりのこせ−あすのゆひめや−きつつうらみむ |
02326 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑはててかへり見すれは湊田に秋のほなみは早苗にそたつ
うゑはてて−かへりみすれは−みなとたに−あきのほなみは−さなへにそたつ |
02327 |
未入力 正徹 (xxx)
みしめ縄引くはさなへのためなから田中の杜の神もうくらん
みしめなは−ひくはさなへの−ためなから−たなかのもりの−かみもうくらむ |
02328 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの沢田の早苗とらぬまもおり立つ雲のふかき比かな
やまもとの−さはたのさなへ−とらぬまも−おりたつくもの−ふかきころかな |
02329 |
未入力 正徹 (xxx)
汲むひまもなたのしはやき湊田にほす袖ぬれてとる早苗かな
くむひまも−なたのしはやき−みなとたに−ほすそてぬれて−とるさなへかな |
02330 |
未入力 正徹 (xxx)
雨はるる山田の雲にさをとめかかくれあらはれとる早苗かな
あめはるる−やまたのくもに−さをとめか−かくれあらはれ−とるさなへかな |
02331 |
未入力 正徹 (xxx)
けふは先田中の杜の蝉のはのうすくうゑたるさなへとそ見る
けふはまつ−たなかのもりの−せみのはの−うすくうゑたる−さなへとそみる |
02332 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田やしつかさおりのあさ衣をみしふに染めてとる早苗かな
をやまたや−しつかさおりの−あさきぬを−みしふにそめて−とるさなへかな |
02333 |
未入力 正徹 (xxx)
一木たつ岡への小田のくろの松さなへうゑての後そ色こき
ひときたつ−をかへのをたの−くろのまつ−さなへうゑての−のちそいろこき |
02334 |
未入力 正徹 (xxx)
ますけよき笠のかりてのかりしほを早苗にいそくしつか小山田
ますけよき−かさのかりての−かりしほを−さなへにいそく−しつかをやまた |
02335 |
未入力 正徹 (xxx)
小乙女かもすそのみしふしはしみて湊の小田にとるさなへかな
さをとめか−もすそのみしふ−しはしみて−みなとのをたに−とるさなへかな |
02336 |
未入力 正徹 (xxx)
かすおほきおくてのうゑめよそにみてひとりさなへの田草とるなり
かすおほき−おくてのうゑめ−よそにみて−ひとりさなへの−たくさとるなり |
02337 |
未入力 正徹 (xxx)
旅ゆけはさおりの田歌国により所につけて声そかはれる
たひゆけは−さおりのたうた−くににより−ところにつけて−こゑそかはれる |
02338 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとのみとりのさなへむらむらに色付きそむる麦の秋かせ
やまもとの−みとりのさなへ−むらむらに−いろつきそむる−むきのあきかせ |
02339 |
未入力 正徹 (xxx)
水ひろき田面のさなへむらむらに先おきわたしうゑめまつなり
みつひろき−たのものさなへ−むらむらに−まつおきわたし−うゑめまつなり |
02340 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公五月も末の小山田に田長こゑせてとる早苗かな
ほとときす−さつきもすゑの−をやまたに−たをさこゑせて−とるさなへかな |
02341 |
未入力 正徹 (xxx)
たつ民も山田のくろの社とや取りし早苗を手向けては行く
たつたみも−やまたのくろの−やしろとや−とりしさなへを−たむけてはゆく |
02342 |
未入力 正徹 (xxx)
芹つみし沢田の水そ又にこるとるやさなへのねをあらふらん
せりつみし−さはたのみつそ−またにこる−とるやさなへの−ねをあらふらむ |
02343 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑのほる田子そ見え行く山たかくあせかさなれる跡のさなへに
うゑのほる−たこそみえゆく−やまたかく−あせかさなれる−あとのさなへに |
02344 |
未入力 正徹 (xxx)
田中なる社の御戸にしつかとる早苗うちつけに手向けてそ行く
たなかなる−やしろのみとに−しつかとる−さなへうちつけに−たむけてそゆく |
02345 |
未入力 正徹 (xxx)
水かるる田中の神の雨こひにとらぬさなへを先手向くなり
みつかるる−たなかのかみの−あまこひに−とらぬさなへを−まつたむくなり |
02346 |
未入力 正徹 (xxx)
今そとるたねまかぬ世に生ひいてて三度かりてし稲のさなへは
いまそとる−たねまかぬよに−おひいてて−みたひかりてし−いねのさなへは |
02347 |
未入力 正徹 (xxx)
しつのをか沢田さし行く板舟をおりたたすしてとる早苗かな
しつのをか−さはたさしゆく−いたふねを−おりたたすして−とるさなへかな |
02348 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆひにいてとるや湊の早苗ゆゑめかり塩やく海士そ稀なる
ゆひにいて−とるやみなとの−さなへゆゑ−めかりしほやく−あまそまれなる |
02349 |
未入力 正徹 (xxx)
時きぬとわさ田の露の玉たすきゆひめかけつれ早苗とるなり
とききぬと−わさたのつゆの−たまたすき−ゆひめかけつれ−さなへとるなり |
02350 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちならふ田子の小笠も雨風にそかひになひく早苗をそとる
たちならふ−たこのをかさも−あめかせに−そかひになひく−さなへをそとる |
02351 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちならふ田子のうゑめか早苗より空にて玉もしけき雨かな
たちならふ−たこのうゑめか−さなへより−そらにてたまも−しけきあめかな |
02352 |
未入力 正徹 (xxx)
早苗もており立つうゑめひまなきに猶取りはこふ小田のますらを
さなへもて−おりたつうゑめ−ひまなきに−なほとりはこふ−をたのますらを |
02353 |
未入力 正徹 (xxx)
こらかてに早苗そのこる空に立つとりこの池田いまやうゑけん
こらかてに−さなへそのこる−そらにたつ−とりこのいけた−いまやうゑけむ |
02354 |
未入力 正徹 (xxx)
さなへとるあとの山田の水そめはもとの緑を峰の松かえ
さなへとる−あとのやまたの−みつそめは−もとのみとりを−みねのまつかえ |
02355 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれてほす露のあさての玉たすき夕日をかけて早苗取るなり
ぬれてほす−つゆのあさての−たまたすき−ゆふひをかけて−さなへとるなり |
02356 |
未入力 正徹 (xxx)
しめのうちもおなし田面の外ならて早苗取りはて又やうゑてん
しめのうちも−おなしたのもの−ほかならて−さなへとりはて−またやうゑてむ |
02357 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風にあらぬみしふを身にしめてほきの沢田に取るさなへかな
あきかせに−あらぬみしふを−みにしめて−ほきのさはたに−とるさなへかな |
02358 |
未入力 正徹 (xxx)
まとゐする山田のくろのかれ飯にひるま過きぬととる早苗かな
まとゐする−やまたのくろの−かれいひに−ひるますきぬと−とるさなへかな |
02359 |
未入力 正徹 (xxx)
田中なるしつか垣ほの竹の子もともにふし立つさなへとるなり
たなかなる−しつかかきほの−たけのこも−ともにふしたつ−さなへとるなり |
02360 |
未入力 正徹 (xxx)
水広きふもとの小田の山風にゆふなみたててとる早苗かな
みつひろき−ふもとのをたの−やまかせに−ゆふなみたてて−とるさなへかな |
02361 |
未入力 正徹 (xxx)
とる袖に夕露ちりてみたるるやうゑぬ早苗の手玉なるらん
とるそてに−ゆふつゆちりて−みたるるや−うゑぬさなへの−てたまなるらむ |
02362 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は雲のはたてにおり立ちてそはの山田にとる早苗かな
ゆふくれは−くものはたてに−おりたちて−そはのやまたに−とるさなへかな |
02363 |
未入力 正徹 (xxx)
里人の手ことに取りし跡見えてなへ田すくなきふるの山本
さとひとの−てことにとりし−あとみえて−なへたすくなき−ふるのやまもと |
02364 |
未入力 正徹 (xxx)
取りのこす早苗のひまを引きすてて五月にうゑぬ小田も有りけり
とりのこす−さなへのひまを−ひきすてて−さつきにうゑぬ−をたもありけり |
02365 |
未入力 正徹 (xxx)
しつか屋にさなへ取りつみ日は暮れぬ小田のうゑめや明日を待つらん
しつかやに−さなへとりつみ−ひはくれぬ−をたのうゑめや−あすをまつらむ |
02366 |
未入力 正徹 (xxx)
あさてぬふこや新針の早苗草かつもる庵のしつのをたまき
あさてぬふ−こやにひはりの−さなへくさ−かつもるいほの−しつのをたまき |
02367 |
未入力 正徹 (xxx)
さし入の小屋のはにふはあれにけり早苗とるまの雨のみかさに
さしいりの−こやのはにふは−あれにけり−さなへとるまの−あめのみかさに |
02368 |
未入力 正徹 (xxx)
御田屋もる民の戸張のすか莚長き日かけてとる早苗かな
みたやもる−たみのとはりの−すかむしろ−なかきひかけて−とるさなへかな |
02369 |
未入力 正徹 (xxx)
田子のすむ庵に早苗を積置きてもえぬ比さへねんかたやなき
たこのすむ−いほにさなへを−つみおきて−もえぬころさへ−ねむかたやなき |
02370 |
未入力 正徹 (xxx)
水の上の影すむ山の松のはにうゑぬ早苗をうつす小田かな
みつのうへの−かけすむやまの−まつのはに−うゑぬさなへを−うつすをたかな |
02371 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑのほる山の岨田の水落ちてしつか早苗のねをすすくみゆ
うゑのはる−やまのそはたの−みつおちて−しつかさなへの−ねをすすくみゆ |
02372 |
未入力 正徹 (xxx)
湊田のをくろの上にむれゐるやいきつく海士の早苗取るらん
みなとたの−をくろのうへに−むれゐるや−いきつくあまの−さなへとるらむ |
02373 |
未入力 正徹 (xxx)
事しけきことのはなから夏草の花もましらぬ道そ物うき
ことしけき−ことのはなから−なつくさの−はなもましらぬ−みちそものうき |
02374 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑはまてのほるも涼し夏草のまかきを山の庭の夕露
すゑはまて−のはるもすすし−なつくさの−まかきをやまの−にはのゆふつゆ |
02375 |
未入力 正徹 (xxx)
なれなれていつかは花におくとみん秋まち遠の百草の露
なれなれて−いつかははなに−おくとみむ−あきまちとほの−ももくさのつゆ |
02376 |
未入力 正徹 (xxx)
夏ことに草葉を広み宿はあれと朝夕露のかるそ稀なる
なつことに−くさはをひろみ−やとはあれと−あさゆふつゆの−かるそまれなる |
02377 |
未入力 正徹 (xxx)
露おかぬ夏野の草のかたなひきいかなる風の夜はに吹きけん
つゆおかぬ−なつののくさの−かたなひき−いかなるかせの−よはにふきけむ |
02378 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草のしけみか上のおも影よ霜かれはつる野への木からし
なつくさの−しけみかうへの−おもかけよ−しもかれはつる−のへのこからし |
02379 |
未入力 正徹 (xxx)
したつえそ緑かくるる松陰の手草もたかく茂りのほりて
したつえそ−みとりかくるる−まつかけの−てくさもたかく−しけりのほりて |
02380 |
未入力 正徹 (xxx)
めくる日も風もこゑせす哀てふ事も夏野の荻の上かな
めくるひも−かせもこゑせす−あはれてふ−こともなつのの−をきのうへかな |
02381 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆり花さくやなてしこましるとも茂りかくすな野への夏草
さゆりはな−さくやなてしこ−ましるとも−しけりかくすな−のへのなつくさ |
02382 |
未入力 正徹 (xxx)
しけりあふ葎の庭の草莚ひしき物には露のしら玉
しけりあふ−むくらのにはの−くさむしろ−ひしきものには−つゆのしらたま |
02383 |
未入力 正徹 (xxx)
茂るらし花咲く比のさゆりはにしられぬ山のおくのかけ草
しけるらし−はなさくころの−さゆりはに−しられぬやまの−おくのかけくさ |
02384 |
未入力 正徹 (xxx)
日かすへん草のは山はかさなりて夏は分くへきむさし野もなし
ひかすへむ−くさのはやまは−かさなりて−なつはわくへき−むさしのもなし |
02385 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかく入れははてなて夏草の事しけき世をわたる風かな
やまふかく−いれははてなて−なつくさの−ことしけきよを−わたるかせかな |
02386 |
未入力 正徹 (xxx)
小百合葉のしられぬし水くみたえて野中の草を結ふ山風
さゆりはの−しられぬしみつ−くみたえて−のなかのくさを−むすふやまかせ |
02387 |
未入力 正徹 (xxx)
茂りつつしられぬ草そおほからんさゆりは花の色にしるくて
しけりつつ−しられぬくさそ−おほからむ−さゆりははなの−いろにしるくて |
02388 |
未入力 正徹 (xxx)
庵むすふ茂みかおくのさゆり花たかともす火の光なるらん
いほむすふ−しけみかおくの−さゆりはな−たかともすひの−ひかりなるらむ |
02389 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草のしけき葉ことのましはりも猶所せき世のならひかな
なつくさの−しけきはことの−ましはりも−なほところせき−よのならひかな |
02390 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草の露のぬきのみいそけとも花の錦はおるたてもなし
なつくさの−つゆのぬきのみ−いそけとも−はなのにしきは−おるたてもなし |
02391 |
未入力 正徹 (xxx)
しほらしな夏野をしけみ置きかねて草葉もたへぬ露の衣手
しほらしな−なつのをしけみ−おきかねて−くさはもたへぬ−つゆのころもて |
02392 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草のしけみか底にすむ水を忘れすとても誰かむすはん
なつくさの−しけみかそこに−すむみつを−わすれすとても−たれかむすはむ |
02393 |
未入力 正徹 (xxx)
遊ふとは見えぬ野中に夏草の糸ゆふみたれてる日影かな
あそふとは−みえぬのなかに−なつくさの−いとゆふみたれ−てるひかけかな |
02394 |
未入力 正徹 (xxx)
時しらすいたたく霜を夏草の末はにかけて分くるのへかな
ときしらす−いたたくしもを−なつくさの−すゑはにかけて−わくるのへかな |
02395 |
未入力 正徹 (xxx)
影見えし野守鏡ちりたかくつもるになして茂る草かな
かけみえし−のもりのかかみ−ちりたかく−つもるになして−しけるくさかな |
02396 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草のみとりの淵の身をつくしたてる野中の松の一本
なつくさの−みとりのふちの−みをつくし−たてるのなかの−まつのひともと |
02397 |
未入力 正徹 (xxx)
夢路をも人しらめやは蓬生のふかき心の底のまろねに
ゆめちをも−ひとしらめやは−よもきふの−ふかきこころの−そこのまろねに |
02398 |
未入力 正徹 (xxx)
影すみて行くや川瀬のなひきもも茂る生田の杜の下暮
かけすみて−ゆくやかはせの−なひきもも−しけるいくたの−もりのしたくさ |
02399 |
未入力 正徹 (xxx)
柏木の杜の広葉の陰の草いまた春野と茂りかねつつ
かしはきの−もりのひろはの−かけのくさ−いまたはるのと−しけりかねつつ |
02400 |
未入力 正徹 (xxx)
鳰鳥のうきすにかよふ道も見す茂る草葉の広沢の水
にほとりの−うきすにかよふ−みちもみす−しけるくさはの−ひろさはのみつ |
02401 |
未入力 正徹 (xxx)
世にふりし寺も名のみの水たえて夏草しけき広沢の跡
よにふりし−てらもなのみの−みつたえて−なつくさしけき−ひろさはのあと |
02402 |
未入力 正徹 (xxx)
雨にますみつの御牧の草かくれからても駒のやすむ日はなし
あめにます−みつのみまきの−くさかくれ−からてもこまの−やすむひはなし |
02403 |
未入力 正徹 (xxx)
行人に袖もかりあへす初尾花ほに出てぬ夏の野への上風
ゆくひとに−そてもかりあへす−はつをはな−ほにいてぬなつの−のへのうはかせ |
02404 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬさまつる神風涼し旅衣日もゆふしての森のした風
ぬさまつる−かみかせすすし−たひころも−ひもゆふしての−もりのしたかせ |
02405 |
未入力 正徹 (xxx)
袖そうき峰の下草分けいつる日影はぬれぬ野への朝露
そてそうき−みねのしたくさ−わけいつる−ひかけはぬれぬ−のへのあさつゆ |
02406 |
未入力 正徹 (xxx)
世にしけき言の葉見はや敷島の道の芝草夏に逢ふまて
よにしけき−ことのはみはや−しきしまの−みちのしはくさ−なつにあふまて |
02407 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろきぬ夏はめちなき高萱に俄にあへる野へのたひ人
おとろきぬ−なつはめちなき−たかかやに−にはかにあへる−のへのたひひと |
02408 |
未入力 正徹 (xxx)
うちなひくしけみそ高き東野の草や夕の煙なるらん
うちなひく−しけみそたかき−あつまのの−くさやゆふへの−けふりなるらむ |
02409 |
未入力 正徹 (xxx)
草ふかきふもとの野への山風に緑の波をおくるしら露
くさふかき−ふもとののへの−やまかせに−みとりのなみを−おくるしらつゆ |
02410 |
未入力 正徹 (xxx)
咲く花の露も心もふかみ草たたなほさりの色とやは見る
さくはなの−つゆもこころも−ふかみくさ−たたなほさりの−いろとやはみる |
02411 |
未入力 正徹 (xxx)
ともに見んことわりあれやもろこしの師子を絵かけはほうたんの花
ともにみむ−ことわりあれや−もろこしの−ししをえかけは−ほうたむのはな |
02412 |
未入力 正徹 (xxx)
早くきぬきそひの馬の足なみに猶かち鞭をあけん老かな
はやくきぬ−きそひのうまの−あしなみに−なほかちむちを−あけむおいかな |
02413 |
未入力 正徹 (xxx)
ひかぬより長き根見えて刈こもにあらぬやけふのあやめなるらん
ひかぬより−なかきねみえて−かりこもに−あらぬやけふの−あやめなるらむ |
02414 |
未入力 正徹 (xxx)
なかきねのあやめの車世世かけて誰か九重に引きはしめけん
なかきねの−あやめのくるま−よよかけて−たかここのへに−ひきはしめけむ |
02415 |
未入力 正徹 (xxx)
ねをたえてふきしあやめの其ままに生ふる軒はと茂る草かな
ねをたえて−ふきしあやめの−そのままに−おふるのきはと−しけるくさかな |
02416 |
未入力 正徹 (xxx)
けふこそはしつ屋の軒も菖蒲ゆゑやつるるよりはめにかかりぬれ
けふこそは−しつやののきも−あやめゆゑ−やつるるよりは−めにかかりぬれ |
02417 |
未入力 正徹 (xxx)
ふきすてしあやめの枯葉おとたてて匂ひのこらぬ軒の下風
ふきすてし−あやめのかれは−おとたてて−にほひのこらぬ−のきのしたかせ |
02418 |
未入力 正徹 (xxx)
旅にしてあやめもしかぬ人やあらん都なからの草枕かな
たひにして−あやめもしかぬ−ひとやあらむ−みやこなからの−くさまくらかな |
02419 |
未入力 正徹 (xxx)
哀にも水のあやめをかりの世に身はなかきねをなくなくそふる
あはれにも−みつのあやめを−かりのよに−みはなかきねを−なくなくそふる |
02420 |
未入力 正徹 (xxx)
菖蒲草けふ九重に九のふしある根をや猶尋ぬらん
あやめくさ−けふここのへに−ここのつの−ふしあるねをや−なほたつぬらむ |
02421 |
未入力 正徹 (xxx)
宿ことのあやめのにほひ花やかに今朝ふく風も都なりけり
やとことの−あやめのにほひ−はなやかに−けさふくかせも−みやこなりけり |
02422 |
未入力 正徹 (xxx)
けふとてやたかのりしらぬ雲の上にあやめのこしをかきならふらん
けふとてや−たかのりしらぬ−くものうへに−あやめのこしを−かきならふらむ |
02423 |
未入力 正徹 (xxx)
けふみかけかかる五月の玉たれやすかるあやめの軒の朝露
けふみかけ−かかるさつきの−たまたれや−すかるあやめの−のきのあさつゆ |
02424 |
未入力 正徹 (xxx)
こやの池に今朝はあやめをかりこもやありて夕の露を待つらん
こやのいけに−けさはあやめを−かりこもや−ありてゆふへの−つゆをまつらむ |
02425 |
未入力 正徹 (xxx)
水にすむすかたはいける物ならてあやめの角のねこそ長けれ
みつにすむ−すかたはいける−ものならて−あやめのつのの−ねこそなかけれ |
02426 |
未入力 正徹 (xxx)
引きのこすあやめの草のたもとにも五月の玉をかくるしら露
ひきのこす−あやめのくさの−たもとにも−さつきのたまを−かくるしらつゆ |
02427 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかき江にけふはあやめを引まゆの糸まつなかきねに乱れつつ
ふかきえに−けふはあやめを−ひきまゆの−いとまつなかき−ねにみたれつつ |
02428 |
未入力 正徹 (xxx)
根をたゆるよとののあやめ引きわかれさひしくもあるか水のうき草
ねをたゆる−よとののあやめ−ひきわかれ−さひしくもあるか−みつのうきくさ |
02429 |
未入力 正徹 (xxx)
いまは又しつか手引のいとなみを沼のあやめのねにやかふらん
いまはまた−しつかてひきの−いとなみを−ぬまのあやめの−ねにやかふらむ |
02430 |
未入力 正徹 (xxx)
けふならてねそあらはれぬあやめ草かねてもひきしささかにの糸
けふならて−ねそあらはれぬ−あやめくさ−かねてもひきし−ささかにのいと |
02431 |
未入力 正徹 (xxx)
けふとてや沼のあやめも刈こもの軒は契らぬねをのこすらん
けふとてや−ぬまのあやめも−かりこもの−のきはちきらぬ−ねをのこすらむ |
02432 |
未入力 正徹 (xxx)
よと野より川浪かけてかをるなりあやめかりつむ舟の追風
よとのより−かはなみかけて−かをるなり−あやめかりつむ−ふねのおひかせ |
02433 |
未入力 正徹 (xxx)
あやめ引く沼江にかけし鳥の巣の今朝あらはなるねをもそへつつ
あやめひく−ぬまえにかけし−とりのすの−けさあらはなる−ねをもそへつつ |
02434 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨はあやめにすかくささかにの糸さへなかき軒の玉水
さみたれは−あやめにすかく−ささかにの−いとさへなかき−のきのたまみつ |
02435 |
未入力 正徹 (xxx)
花に咲くおなし軒はの橘もけふやあやめのにほひかるらん
はなにさく−おなしのきはの−たちはなも−けふやあやめの−にほひかるらむ |
02436 |
未入力 正徹 (xxx)
ねをかけよ鳴くや軒はの山鳥のしたり尾なかきあやめをそふく
ねをかけよ−なくやのきはの−やまとりの−したりをなかき−あやめをそふく |
02437 |
未入力 正徹 (xxx)
けふさくも軒の忍にふきそふるあやめをよその庭の蓬生
けふさくも−のきのしのふに−ふきそふる−あやめをよその−にはのよもきふ |
02438 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる軒のあやめの落ちぬまを頼むともなきささかにの糸
かせわたる−のきのあやめの−おちぬまを−たのむともなき−ささかにのいと |
02439 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨にわれとねさすや葺きすててうゑぬあやめの軒も緑に
さみたれに−われとねさすや−ふきすてて−うゑぬあやめの−のきもみとりに |
02440 |
未入力 正徹 (xxx)
閨にしくあやめゆゑともえそしらぬなかき夢みし短夜の空
ねやにしく−あやめゆゑとも−えそしらぬ−なかきゆめみし−みしかよのそら |
02441 |
未入力 正徹 (xxx)
けふとてや猶引きのこす水の上の雲のは袖もあやめかくらん
けふとてや−なほひきのこす−みつのうへの−くものはそても−あやめかくらむ |
02442 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をかさね水鶏そたたく天の戸もとちたる雲の五月雨の比
よをかさね−くひなそたたく−あまのとも−とちたるくもの−さみたれのころ |
02443 |
未入力 正徹 (xxx)
岩たたくこゑに明行く川浪もわかれてかへる水の庭鳥
いはたたく−こゑにあけゆく−かはなみも−わかれてかへる−みつのにはとり |
02444 |
未入力 正徹 (xxx)
稲荷山杉に水鶏の声すなり神の戸ほそや打ちたたくらん
いなりやま−すきにくひなの−こゑすなり−かみのとほそや−うちたたくらむ |
02445 |
未入力 正徹 (xxx)
をちこちの村の蚊遣火うちけふり水鶏なくなり森の木隠
をちこちの−むらのかやりひ−うちけふり−くひななくなり−もりのこかくれ |
02446 |
未入力 正徹 (xxx)
舟はたを夜はにそたたくにほの海に網おく磯の杜の水鶏は
ふなはたを−よはにそたたく−にほのうみに−あみおくいその−もりのくひなは |
02447 |
未入力 正徹 (xxx)
稲荷山社の戸口うちたたく水鶏そかへる杉のむらたち
いなりやま−やしろのとくち−うちたたく−くひなそかへる−すきのむらたち |
02448 |
未入力 正徹 (xxx)
家家に門もとささぬ世なりせは夜ことにきくや水鶏ならまし
いへいへに−かともとささぬ−よなりせは−よことにきくや−くひなならまし |
02449 |
未入力 正徹 (xxx)
あけぬ戸をたたくかひなきおのれのみ千度水鶏のくらきよになく
あけぬとを−たたくかひなき−おのれのみ−ちたひくひなの−くらきよになく |
02450 |
未入力 正徹 (xxx)
水鶏なく杜の木陰の夕ま暮水の蛙もこゑあはすなり
くひななく−もりのこかけの−ゆふまくれ−みつのかはつも−こゑあはすなり |
02451 |
未入力 正徹 (xxx)
八千度と聞くそ身にしるなれさへも老その杜を水鶏鳴くこゑ
やちたひと−きくそみにしる−なれさへも−おいそのもりを−くひななくこゑ |
02452 |
未入力 正徹 (xxx)
こぬ妻をまつ夜むなしき明ほのに身をや八千度水鶏なくらん
こぬつまを−まつよむなしき−あけほのに−みをややちたひ−くひななくらむ |
02453 |
未入力 正徹 (xxx)
松風も岩かとたたくあふ坂の山陰くれて水鶏なくなり
まつかせも−いはかとたたく−あふさかの−やまかけくれて−くひななくなり |
02454 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮入江にかかる舟はたをたたくやいつれ水の庭鳥
ゆふまくれ−いりえにかかる−ふなはたを−たたくやいつれ−みつのにはとり |
02455 |
未入力 正徹 (xxx)
あかつきの八こゑもしらて夕ま暮さす門たたく水の庭鳥
あかつきの−やこゑもしらて−ゆふまくれ−さすかとたたく−みつのにはとり |
02456 |
未入力 正徹 (xxx)
夜寒き氷とけにし山川に又岩たたく水の庭鳥
よるさむき−こほりとけにし−やまかはに−またいはたたく−みつのにはとり |
02457 |
未入力 正徹 (xxx)
水鶏のみなくとそきかん逢坂やたたきならさぬ関の岩かと
くひなのみ−なくとそきかむ−あふさかや−たたきならさぬ−せきのいはかと |
02458 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のかのなきをかたみとうゑおかは花たちはなを人やすさめん
そてのかの−なきをかたみと−うゑおかは−はなたちはなを−ひとやすさめむ |
02459 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしをははな橘にわすれなんいかなる夢かにほひくるとて
むかしをは−はなたちはなに−わすれなむ−いかなるゆめか−にほひくるとて |
02460 |
未入力 正徹 (xxx)
りうの子のささけし玉も橘の実に光そふ花やなからん
りうのこの−ささけしたまも−たちはなの−みにひかりそふ−はなやなからむ |
02461 |
未入力 正徹 (xxx)
昔をやたれものこさん橘のにほふあたりのもろ人の袖
むかしをや−たれものこさむ−たちはなの−にほふあたりの−もろひとのそて |
02462 |
未入力 正徹 (xxx)
秋まちて雁の羽風に匂はなんおなし常世をいてし橘
あきまちて−かりのはかせに−にほはなむ−おなしとこよを−いてしたちはな |
02463 |
未入力 正徹 (xxx)
哀にもわれそふり行く橘のみさへのこりて花にあふ世を
あはれにも−われそふりゆく−たちはなの−みさへのこりて−はなにあふよを |
02464 |
未入力 正徹 (xxx)
わか方の世世につたへよ橘の氏人のみや袖の香もせん
わかかたの−よよにつたへよ−たちはなの−うちひとのみや−そてのかもせむ |
02465 |
未入力 正徹 (xxx)
香をそへよなれしも桜あさの袖花橘の春のかたみに
かをそへよ−なれしもさくら−あさのそて−はなたちはなの−はるのかたみに |
02466 |
未入力 正徹 (xxx)
夏そ引くしつのをた巻よそにして昔を今ににほふ橘
なつそひく−しつのをたまき−よそにして−むかしをいまに−にほふたちはな |
02467 |
未入力 正徹 (xxx)
風さそふ花橘をそらにしておほふも雲の袖の香やせん
かせさそふ−はなたちはなを−そらにして−おほふもくもの−そてのかやせむ |
02468 |
未入力 正徹 (xxx)
花も香もなれし常世やしたふらん南の風の北のたち花
はなもかも−なれしとこよや−したふらむ−みなみのかせの−きたのたちはな |
02469 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ならぬ袖そ色つく橘のにほふむかしをしたふ涙に
あきならぬ−そてそいろつく−たちはなの−にほふむかしを−したふなみたに |
02470 |
未入力 正徹 (xxx)
木の本のかけふむ月は橘のちりしきけりなにほふしら雪
このもとの−かけふむつきは−たちはなの−ちりしきけりな−にほふしらゆき |
02471 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のかも花にうつろふ橘の身をしる雨そはるるまもなき
そてのかも−はなにうつろふ−たちはなの−みをしるあめそ−はるるまもなき |
02472 |
未入力 正徹 (xxx)
物そおもふ花橘のむかしとふ雲のはたての袖のゆふ風
ものそおもふ−はなたちはなの−むかしとふ−くものはたての−そてのゆふかせ |
02473 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷は庭にをしかもたち花にわけしを花か袖の香そする
ふるさとは−にはにをしかも−たちはなに−わけしをはなか−そてのかそする |
02474 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にふけ花たちはなのうつりかは時過きぬとも風はいとはし
そてにふけ−はなたちはなの−うつりかは−ときすきぬとも−かせはいとはし |
02475 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの天つをとめの袖ふれて雲吹く風ににほふたち花
ひさかたの−あまつをとめの−そてふれて−くもふくかせに−にほふたちはな |
02476 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風のめに見ぬ人の袖の香はかくこそありけれ軒の橘
ふくかせの−めにみぬひとの−そてのかは−かくこそありけれ−のきのたちはな |
02477 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこぬむかしの風の使たに袖のかしるき宿のたち花
ひとはこぬ−むかしのかせの−つかひたに−そてのかしるき−やとのたちはな |
02478 |
未入力 正徹 (xxx)
をとめ子かそれもむかしのかをとめて袖振山にたち花もかな
をとめこか−それもむかしの−かをとめて−そてふるやまに−たちはなもかな |
02479 |
未入力 正徹 (xxx)
にほへとも老いぬる袖のたち花に末吹きよわる風そすくなき
にほへとも−おいぬるそての−たちはなに−すゑふきよわる−かせそすくなき |
02480 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きくるもそれにはあらぬ匂ひかなむかしの風のいまのたち花
ふきくるも−それにはあらぬ−にほひかな−むかしのかせの−いまのたちはな |
02481 |
未入力 正徹 (xxx)
ととめおくたひねのやとの橘にわか袖のかを誰かいとはん
ととめおく−たひねのやとの−たちはなに−わかそてのかを−たれかいとはむ |
02482 |
未入力 正徹 (xxx)
行ふりの八十氏人の袖のかも小島にのこる世世のたち花
ゆきふりの−やそうちひとの−そてのかも−こしまにのこる−よよのたちはな |
02483 |
未入力 正徹 (xxx)
橘にちかくぬる夜の岩枕撫てなむ天つ袖の香そする
たちはなに−ちかくぬるよの−いはまくら−なてなむあまつ−そてのかそする |
02484 |
未入力 正徹 (xxx)
しるといふ枕にとふも橘のたか袖ならぬ風そ匂へる
しるといふ−まくらにとふも−たちはなの−たかそてならぬ−かせそにほへる |
02485 |
未入力 正徹 (xxx)
橘はちかき若木そうゑぬ世の枕やふるきむかしなるらん
たちはなは−ちかきわかきそ−うゑぬよの−まくらやふるき−むかしなるらむ |
02486 |
未入力 正徹 (xxx)
香をとめし花橘にたか袖の涙のこりて露みたるらん
かをとめし−はなたちはなに−たかそての−なみたのこりて−つゆみたるらむ |
02487 |
未入力 正徹 (xxx)
風かをる花たち花のよるの夢身にさへさむる鈴の音かな
かせかをる−はなたちはなの−よるのゆめ−みにさへさむる−すすのおとかな |
02488 |
未入力 正徹 (xxx)
人すます荒れたる宿の橘はにほひも袖や尋ねわふらん
ひとすます−あれたるやとの−たちはなは−にほひもそてや−たつねわふらむ |
02489 |
未入力 正徹 (xxx)
たか香とかとははこたへんわれひとり袖かけさりし軒の橘
たかかとか−とははこたへむ−われひとり−そてかけさりし−のきのたちはな |
02490 |
未入力 正徹 (xxx)
さされ石も巌とならて橘のかけふむ庭に年そかすそふ
さされいしも−いはほとならて−たちはなの−かけふむにはに−としそかすそふ |
02491 |
未入力 正徹 (xxx)
しらぬ世の猶おも影に橘の雪ふる苔の袖の香そする
しらぬよの−なほおもかけに−たちはなの−ゆきふるこけの−そてのかそする |
02492 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のかのたそかれ時の花のえに見ぬ世そちかき軒の橘
そてのかの−たそかれときの−はなのえに−みぬよそちかき−のきのたちはな |
02493 |
未入力 正徹 (xxx)
猶見よと花橘や匂ふらんむかしの夢のみしか夜の空
なほみよと−はなたちはなや−にほふらむ−むかしのゆめの−みしかよのそら |
02494 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとにかよひし道は跡もなし花橘の雪の夜の夢
このもとに−かよひしみちは−あともなし−はなたちはなの−ゆきのよのゆめ |
02495 |
未入力 正徹 (xxx)
橘の風のにほひにふきかへせむかしの夢やよるのさ衣
たちはなの−かせのにほひに−ふきかへせ−むかしのゆめや−よるのさころも |
02496 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへに匂ひそまさる橘に月の宮人袖おほふらし
しろたへに−にほひそまさる−たちはなに−つきのみやひと−そておほふらし |
02497 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷にうゑし若木の橘にしらぬむかしを心にそとふ
ふるさとに−うゑしわかきの−たちはなに−しらぬむかしを−こころにそとふ |
02498 |
未入力 正徹 (xxx)
えやはいふそこらむかしをしる花の名にこそたてれ軒の橘
えやはいふ−そこらむかしを−しるはなの−なにこそたてれ−のきのたちはな |
02499 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そそく花橘にいにしへをとふにつらさの涙おつやと
あめそそく−はなたちはなに−いにしへを−とふにつらさの−なみたおつやと |
02500 |
未入力 正徹 (xxx)
橘のかけふむ庭の苔の上にこれもむかしのあとやのこらん
たちはなの−かけふむにはの−こけのうへに−これもむかしの−あとやのこらむ |
02501 |
未入力 正徹 (xxx)
橘のさける軒はの苔衣ふるき板間に袖の香そする
たちはなの−さけるのきはの−こけころも−ふるきいたまに−そてのかそする |
02502 |
未入力 正徹 (xxx)
庭のおもは結ふはかりにしけりあふ草のふもとに匂ふ橘
にはのおもは−むすふはかりに−しけりあふ−くさのふもとに−にほふたちはな |
02503 |
未入力 正徹 (xxx)
ちり過くる花橘に宿はあれて庭のまさこも草そ見え行く
ちりすくる−はなたちはなに−やとはあれて−にはのまさこも−くさそみえゆく |
02504 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風に花橘もあへぬとや軒のしのふにみたれちるらん
ふくかせに−はなたちはなも−あへぬとや−のきのしのふに−みたれちるらむ |
02505 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ふなりむかしの袖の雨やこれ花橘の軒のしつくほ
にほふなり−むかしのそての−あめやこれ−はなたちはなの−のきのしつくほ |
02506 |
未入力 正徹 (xxx)
里はあれねたか袖の香と知らぬをそ花橘にとほまほしけれ
さとはあれぬ−たかそてのかと−しらぬをそ−はなたちはなに−とほまほしけれ |
02507 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷の庭にのこりて橘の花にましはる身さへつれなし
ふるさとの−にはにのこりて−たちはなの−はなにましはる−みさへつれなし |
02508 |
未入力 正徹 (xxx)
里は荒れぬ今まて人の袖の香はあらしまことに匂ふ橘
さとはあれぬ−いままてひとの−そてのかは−あらしまことに−にほふたちはな |
02509 |
未入力 正徹 (xxx)
あれしより人もかよはぬ古郷のたきの都の五月雨の比
あれしより−ひともかよはぬ−ふるさとの−たきのみやこの−さみたれのころ |
02510 |
未入力 正徹 (xxx)
日かすふるうらのひかたはさす塩の程をみかさの五月雨の比
ひかすふる−うらのひかたは−さすしほの−ほとをみかさの−さみたれのころ |
02511 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲は猶も高ねをうつむなりはれても晴れぬ五月雨の空
うきくもは−なほもたかねを−うつむなり−はれてもはれぬ−さみたれのそら |
02512 |
未入力 正徹 (xxx)
ちくま川にこれる水の五月雨にきえていく夜の有明のかけ
ちくまかは−にこれるみつの−さみたれに−きえていくよの−ありあけのかけ |
02513 |
未入力 正徹 (xxx)
日をふれとわきてたまれる水もなし浜のま砂の五月雨の比
ひをふれと−わきてたまれる−みつもなし−はまのまさこの−さみたれのころ |
02514 |
未入力 正徹 (xxx)
晴行くか吹く方かはる朝風に雲も五月雨の雨そそきして
はれゆくか−ふくかたかはる−あさかせに−くももさみたれの−あまそそきして |
02515 |
未入力 正徹 (xxx)
水かさこす広せに立つや五月雨のふる川のへの杉の二本
みかさこす−ひろせにたつや−さみたれの−ふるかはのへの−すきのふたもと |
02516 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨はささ波こえて高島や陸野の水に駒もわたらて
さみたれは−ささなみこえて−たかしまや−かちののみつに−こまもわたらて |
02517 |
未入力 正徹 (xxx)
道のへや人もかよはぬ五月雨の空に行きの雲そひまなき
みちのへや−ひともかよはぬ−さみたれの−そらにゆききの−くもそひまなき |
02518 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川今そ八十瀬にあまるともいさしら波の落つる五月雨
あまのかは−いまそやそせに−あまるとも−いさしらなみの−おつるさみたれ |
02519 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねには見さりし滝の五月雨になかれて落つるふしの白雪
たかねには−みさりしたきの−さみたれに−なかれておつる−ふしのしらゆき |
02520 |
未入力 正徹 (xxx)
はるるにもふるにもあらぬ浮雲も身を中空の五月雨の比
はるるにも−ふるにもあらぬ−うきくもも−みをなかそらの−さみたれのころ |
02521 |
未入力 正徹 (xxx)
浮雲のみをさかのほる五月雨にわたらてしるき四方の川波
うきくもの−みをさかのほる−さみたれに−わたらてしるき−よものかはなみ |
02522 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮雲まのみとりかつ見るは月にそまさる五月雨の空
ゆふまくれ−くもまのみとり−かつみるは−つきにそまさる−さみたれのそら |
02523 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとに見えし川との川すかきもくつにしつむ五月雨の比
このもとに−みえしかはとの−かはすかき−もくつにしつむ−さみたれのころ |
02524 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨のみなきは見ゆる垣ねまてなかれし川そさとのよそなる
さみたれの−みなきはみゆる−かきねまて−なかれしかはそ−さとのよそなる |
02525 |
未入力 正徹 (xxx)
池はらふ風の立葉も下折れぬ蓮のいとのさみたれのころ
いけはらふ−かせのたちはも−したをれぬ−はちすのいとの−さみたれのころ |
02526 |
未入力 正徹 (xxx)
落滝つ岩ほなかるる深山川去年の木つみや五月雨の比
おちたきつ−いはほなかるる−みやまかは−こそのこつみや−さみたれのころ |
02527 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる日をは中中いはす晴れやらてくもるをいとふ五月雨の比
ふるひをは−なかなかいはす−はれやらて−くもるをいとふ−さみたれのころ |
02528 |
未入力 正徹 (xxx)
大空もいつくか雲のみをつくし浅き江になき五月雨の比
おほそらも−いつくかくもの−みをつくし−あさきえになき−さみたれのころ |
02529 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨のしかまの川の朝市に水こそいつれ立つ人はなし
さみたれの−しかまのかはの−あさいちに−みつこそいつれ−たつひとはなし |
02530 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨はそはの真砂のかたくつれ生ふる草木やねをはなるらん
さみたれは−そはのまさこの−かたくつれ−おふるくさきや−ねをはなるらむ |
02531 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨の袖打ちしめり夏衣ときあらふへき日数をそえぬ
さみたれの−そてうちしめり−なつころも−ときあらふへき−ひかすをそえぬ |
02532 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は入江の川のみをつくしみしかくなりぬ残る夏の日
さみたれは−いりえのかはの−みをつくし−みしかくなりぬ−のこるなつのひ |
02533 |
未入力 正徹 (xxx)
湊川しほひしほみち波こえぬ海まてまさる五月雨の空
みなとかは−しほひしほみち−なみこえぬ−うみまてまさる−さみたれのそら |
02534 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は夏のしつ屋にかふまゆを引くよりなかき軒の糸水
さみたれは−なつのしつやに−かふまゆを−ひくよりなかき−のきのいとみつ |
02535 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は空ことしけりささ雲に又雲みてる峰のした柴
さみたれは−そらことしけり−ささくもに−またくもみてる−みねのしたしは |
02536 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨の水かさ落行く太山川もくつにうつむ岸のささ原
さみたれの−みかさおちゆく−みやまかは−もくつにうつむ−きしのささはら |
02537 |
未入力 正徹 (xxx)
晴まなくふりこめられて友もみなうとき心の五月雨の宿
はれまなく−ふりこめられて−とももみな−うときこころの−さみたれのやと |
02538 |
未入力 正徹 (xxx)
おりのほる雲にかくされあらはれて心にもあらし五月雨の山
おりのほる−くもにかくされ−あらはれて−こころにもあらし−さみたれのやま |
02539 |
未入力 正徹 (xxx)
日数へて晴れぬ五月の雨しめりたわつく髪やみたれわふらん
ひかすへて−はれぬさつきの−あましめり−たわつくかみや−みたれわふらむ |
02540 |
未入力 正徹 (xxx)
川舟の水底見れは陸なりし木すゑそなひく五月雨の比
かはふねの−みなそこみれは−くかなりし−こすゑそなひく−さみたれのころ |
02541 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は晴れせぬ風に露こほす竹のさ枝にかはつ鳴くなり
さみたれは−はれせぬかせに−つゆこほす−たけのさえたに−かはつなくなり |
02542 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき日の雲のみなわにうちはへて空にさかまく五月雨の比
なかきひの−くものみなわに−うちはへて−そらにさかまく−さみたれのころ |
02543 |
未入力 正徹 (xxx)
雲くたる南の海の五月雨におくれてのほる嶺の一むら
くもくたる−みなみのうみの−さみたれに−おくれてのほる−みねのひとむら |
02544 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は過くるかあらき声の後日比の雲もかはりてそ行く
さみたれは−すくるかあらき−こゑののち−ひころのくもも−かはりてそゆく |
02545 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨はむら雲いててくらき夜の北になかるる星のかけかな
さみたれは−むらくもいてて−くらきよの−きたになかるる−ほしのかけかな |
02546 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨の水すみぬとや洗ひほすしつかあさても里にみつらん
さみたれの−みつすみぬとや−あらひほす−しつかあさても−さとにみつらむ |
02547 |
未入力 正徹 (xxx)
最上川遠き都にいつる日ものほれはくたる五月雨の雲
もかみかは−とほきみやこに−いつるひも−のほれはくたる−さみたれのくも |
02548 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は水落見えてなかれけんま砂にうつむ山の下柴
さみたれは−みつおちみえて−なかれけむ−まさこにうつむ−やまのしたしは |
02549 |
未入力 正徹 (xxx)
丹生の川みをにそにこる杣つくりうつすみなはの五月雨の比
にふのかは−みをにそにこる−そまつくり−うつすみなはの−さみたれのころ |
02550 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまをあらみ雲に埋むもかひそなき嶺の庵の五月雨の比
ひまをあらみ−くもにうつむも−かひそなき−みねのいほりの−さみたれのころ |
02551 |
未入力 正徹 (xxx)
しけりつつくもる日をふる五月雨に朽つる色なき衣手のもり
しけりつつ−くもるひをふる−さみたれに−くつるいろなき−ころもてのもり |
02552 |
未入力 正徹 (xxx)
蝉の羽も涙ほしあへしま鳥すむ杜のすかのねなか雨の比
せみのはも−なみたほしあへし−まとりすむ−もりのすかのね−なかあめのころ |
02553 |
未入力 正徹 (xxx)
宮こ鳥ありやなしやもしら波の堀江の川にあまる五月雨
みやことり−ありやなしやも−しらなみの−ほりえのかはに−あまるさみたれ |
02554 |
未入力 正徹 (xxx)
契りてはうきかち人のぬれぬ江も此比ほしき道のさみたれ
ちきりては−うきかちひとの−ぬれぬえも−このころほしき−みちのさみたれ |
02555 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は水の入江の川堤こゆるか浅き舟のさを
さみたれは−みつのいりえの−かはつつみ−こゆるかあさき−ふねのひとさを |
02556 |
未入力 正徹 (xxx)
深山川岩ほなかれてとまる瀬のしからみ高き水の五月雨
みやまかは−いはほなかれて−とまるせの−しからみたかき−みつのさみたれ |
02557 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は興中川に行く水の速くにこるや日かすふるらん
さみたれは−おきなかかはに−ゆくみつの−はやくにこるや−ひかすふるらむ |
02558 |
未入力 正徹 (xxx)
水すめはたらひにもみつ天の川里の影なきさみたれの雲
みつすめは−たらひにもみつ−あまのかは−さとのかけなき−さみたれのくも |
02559 |
未入力 正徹 (xxx)
みな底のくらきやささのくまならんひのくま川の五月雨の比
みなそこの−くらきやささの−くまならむ−ひのくまかはの−さみたれのころ |
02560 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨はまさる川戸のふし柳しからみあへすこゆる波かな
さみたれは−まさるかはとの−ふしやなき−しからみあへす−こゆるなみかな |
02561 |
未入力 正徹 (xxx)
日かすさへ遠きひかたの五月雨にまさこなひかぬうら風そ吹く
ひかすさへ−とほきひかたの−さみたれに−まさこなひかぬ−うらかせそふく |
02562 |
未入力 正徹 (xxx)
真砂ゆく川波たかき浜松のねにあらはれん五月雨の比
まさこゆく−かはなみたかき−はままつの−ねにあらはれむ−さみたれのころ |
02563 |
未入力 正徹 (xxx)
老のなみ一夜にこえつさ月やみ雨うつまとのしたの舟人
おいのなみ−ひとよにこえつ−さつきやみ−あめうつまとの−したのふなひと |
02564 |
未入力 正徹 (xxx)
亀の上の山を見さりし舟人も五月雨よりや老と成りけん
かめのうへの−やまをみさりし−ふなひとも−さみたれよりや−おいとなりけむ |
02565 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはも又川波も分けて見すみな雲水の五月雨の比
やまのはも−またかはなみも−わけてみす−みなくもみつの−さみたれのころ |
02566 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野川岩もと落つる水底の玉藻かくれの五月雨の比
よしのかは−いはもとおつる−みなそこの−たまもかくれの−さみたれのころ |
02567 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨の晴行く雲をかつらきの山人のみやよそに見るらん
さみたれの−はれゆくくもを−かつらきの−やまひとのみや−よそにみるらむ |
02568 |
未入力 正徹 (xxx)
宿出てて見さりし川の淵も瀬もみちになかるる五月雨の比
やといてて−みさりしかはの−ふちもせも−みちになかるる−さみたれのころ |
02569 |
未入力 正徹 (xxx)
雪と見し花にたかひて梅かえの実を紅にそむる雨かな
ゆきとみし−はなにたかひて−うめかえの−みをくれなゐに−そむるあめかな |
02570 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨は庭になかるる水かきのひさしの板も朽つる東屋
さみたれは−にはになかるる−みつかきの−ひさしのいたも−くつるあつまや |
02571 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨の身のうき雲も世にふれせ思ひはれゆく時をこそみれ
さみたれの−みのうきくもも−よにふれせ−おもひはれゆく−ときをこそみれ |
02572 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きおくる風にまかせて山のはの雲に先立つゆふたちの雨
ふきおくる−かせにまかせて−やまのはの−くもにさきたつ−ゆふたちのあめ |
02573 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きとつる空にもあらす風こえて夕立はるる雲のかよひち
ふきとつる−そらにもあらす−かせこえて−ゆふたちはるる−くものかよひち |
02574 |
未入力 正徹 (xxx)
また晴れぬ雲そと見せて岩かねのこりしく嶺にすくる夕立
またはれぬ−くもそとみせて−いはかねの−こりしくみねに−すくるゆふたち |
02575 |
未入力 正徹 (xxx)
雲はやみ風もしをらぬ夏の日のかけまてなひく夕立の空
くもはやみ−かせもしをらぬ−なつのひの−かけまてなひく−ゆふたちのそら |
02576 |
未入力 正徹 (xxx)
あらき風先吹きあけて玉鉾の塵さへくもる夕立のそら
あらきかせ−まつふきあけて−たまほこの−ちりさへくもる−ゆふたちのそら |
02577 |
未入力 正徹 (xxx)
尾上より一むら見えてわく雲の千里にくたる夕立の雨
をのへより−ひとむらみえて−わくくもの−ちさとにくたる−ゆふたちのあめ |
02578 |
未入力 正徹 (xxx)
こりしける嶺の巌にわく雲の山たちかくす夕立の空
こりしける−みねのいはほに−わくくもの−やまたちかくす−ゆふたちのそら |
02579 |
未入力 正徹 (xxx)
風はやみ雲をへたてて夕立のこゆれは峰にかかる日の影
かせはやみ−くもをへたてて−ゆふたちの−こゆれはみねに−かかるひのかけ |
02580 |
未入力 正徹 (xxx)
くもるより山風吹きて夕立のやかてこゑする嶺のしひ柴
くもるより−やまかせふきて−ゆふたちの−やかてこゑする−みねのしひしは |
02581 |
未入力 正徹 (xxx)
音はしてふりこぬ先にゆふ立の雲鳥さわく木木の山風
おとはして−ふりこぬさきに−ゆふたちの−くもとりさわく−ききのやまかせ |
02582 |
未入力 正徹 (xxx)
まきの戸に吹入る風の程もなくこすのまとほに過くる夕立
まきのとに−ふきいるかせの−ほともなく−こすのまとほに−すくるゆふたち |
02583 |
未入力 正徹 (xxx)
あつま屋の軒はの雲もかたかけてむね分にふる夕立の雨
あつまやの−のきはのくもも−かたかけて−むねわけにふる−ゆふたちのあめ |
02584 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの園の竹原吹きしをり下葉ふりそふ夕立の風
やまもとの−そののたけはら−ふきしをり−したはふりそふ−ゆふたちのかせ |
02585 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひちは隣のほとのひち笠も取りあへすぬるる夕立の空
かよひちは−となりのほとの−ひちかさも−とりあへすぬるる−ゆふたちのそら |
02586 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺わたる山のかせきの柴分けてくたると聞くそ夕立のこゑ
みねわたる−やまのかせきの−しはわけて−くたるときくそ−ゆふたちのこゑ |
02587 |
未入力 正徹 (xxx)
雲くらきかた空晴れて山きはの日影にしろき夕立の雨
くもくらき−かたそらはれて−やまきはの−ひかけにしろき−ゆふたちのあめ |
02588 |
未入力 正徹 (xxx)
空見れは色なる橋の夕立や虹たちわたる天の川波
そらみれは−いろなるはしの−ゆふたちや−にしたちわたる−あまのかはなみ |
02589 |
未入力 正徹 (xxx)
うきて行く雲さへとほく天さかるひなのいくかそ夕立の雨
うきてゆく−くもさへとほく−あまさかる−ひなのいくかそ−ゆふたちのあめ |
02590 |
未入力 正徹 (xxx)
さやくなりあられましりの夕立に色もかしけぬ道の玉ささ
さやくなり−あられましりの−ゆふたちに−いろもかしけぬ−みちのたまささ |
02591 |
未入力 正徹 (xxx)
ふもとなる山そ消行くわきのほる雲に峰なす夕立の空
ふもとなる−やまそきえゆく−わきのほる−くもにみねなす−ゆふたちのそら |
02592 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは夕立過きてのこる日の雲に影すく紙屋川波
すすしさは−ゆふたちすきて−のこるひの−くもにかけすく−かみやかはなみ |
02593 |
未入力 正徹 (xxx)
染めてふれ今も木の葉をちらすなり時雨のあらき夕立の風
そめてふれ−いまもこのはを−ちらすなり−しくれのあらき−ゆふたちのかせ |
02594 |
未入力 正徹 (xxx)
入日さす夕立なからたつ虹の色もみとりにはるる山かな
いりひさす−ゆふたちなから−たつにしの−いろもみとりに−はるるやまかな |
02595 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さすま砂をむして煙たつうらの浜路のゆふ立の跡
ひかけさす−まさこをむして−けふりたつ−うらのはまちの−ゆふたちのあと |
02596 |
未入力 正徹 (xxx)
引きたつる槙の板戸もとほるやと打つ音あらき夕立の風
ひきたつる−まきのいたとも−とほるやと−うつおとあらき−ゆふたちのかせ |
02597 |
未入力 正徹 (xxx)
なる神もまたこゑたてぬ雲まより夕立まねく遠の稲雲
なるかみも−またこゑたてぬ−くもまより−ゆふたちまねく−をちのいなつま |
02598 |
未入力 正徹 (xxx)
峰うつむ雲の下柴ふく風にうつるかよその夕立のこゑ
みねうつむ−くものしたしは−ふくかせに−うつるかよその−ゆふたちのこゑ |
02599 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きしをり野分をならす夕立の風の上なる雲よ木の葉よ
ふきしをり−のわきをならす−ゆふたちの−かせのうへなる−くもよこのはよ |
02600 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立の嶺のうき雲風こしにきほふも涼しきそのあさ衣
ゆふたちの−みねのうきくも−かせこしに−きほふもすすし−きそのあさきぬ |
02601 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きのほる風のしからみ雲きえて夕立すなり川上の山
ふきのほる−かせのしからみ−くもきえて−ゆふたちすなり−かはかみのやま |
02602 |
未入力 正徹 (xxx)
夕たたみ雲の行てもまきもくの山風はけし夕立の空
ゆふたたみ−くものゆくても−まきもくの−やまかせはけし−ゆふたちのそら |
02603 |
未入力 正徹 (xxx)
てる日影むかへる壁に夕立のかかりてかわく風そ匂へる
てるひかけ−むかへるかへに−ゆふたちの−かかりてかわく−かせそにほへる |
02604 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立は蝉のは袖もたちしらぬ衣そあつき浮雲のそら
ゆふたちは−せみのはそても−たちしらぬ−ころもそあつき−うきくものそら |
02605 |
未入力 正徹 (xxx)
送りくる風よりはやき夕立にふりこめられてさわく雲かな
おくりくる−かせよりはやき−ゆふたちに−ふりこめられて−さわくくもかな |
02606 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立はあらく落ちきてむら林雲鳥さわく遠の山もと
ゆふたちは−あらくおちきて−むらはやし−くもとりさわく−をちのやまもと |
02607 |
未入力 正徹 (xxx)
時ならぬ木の葉みたれて夕立の雲鳥さわく山風のこゑ
ときならぬ−このはみたれて−ゆふたちの−くもとりさわく−やまかせのこゑ |
02608 |
未入力 正徹 (xxx)
雲はらふ風に音せす過きてけり岩根こりしく嶺の夕立
くもはらふ−かせにおとせす−すきてけり−いはねこりしく−みねのゆふたち |
02609 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もぬれて色こき山なれや見しより近き夕立のあと
くさもきも−ぬれていろこき−やまなれや−みしよりちかき−ゆふたちのあと |
02610 |
未入力 正徹 (xxx)
たつか弓いるよりはやく夕立のきの関こえて過くる山かせ
たつかゆみ−いるよりはやく−ゆふたちの−きのせきこえて−すくるやまかせ |
02611 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立は山のかせきか稲妻のまねけはいとととほさかり行く
ゆふたちは−やまのかせきか−いなつまの−まねけはいとと−とほさかりゆく |
02612 |
未入力 正徹 (xxx)
早川を空になかして絶えにけり雲吹く風の夕たちの雨
はやかはを−そらになかして−たえにけり−くもふくかせの−ゆふたちのあめ |
02613 |
未入力 正徹 (xxx)
雲は猶空かた分けて夕立の日影さやけき西の山のは
くもはなほ−そらかたわけて−ゆふたちの−ひかけさやけき−にしのやまのは |
02614 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから空吹く風の朝清めちりものこらね夕立の雲
おのつから−そらふくかせの−あさきよめ−ちりものこらね−ゆふたちのくも |
02615 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ人のこふか薄き雲消えて玉ゆかみかく夕立の風
あまつひと−のこふかうすき−くもきえて−たまゆかみかく−ゆふたちのかせ |
02616 |
未入力 正徹 (xxx)
神無月かくこそありしか夕立の雲も都の山めくりして
かみなつき−かくこそありしか−ゆふたちの−くももみやこの−やまめくりして |
02617 |
未入力 正徹 (xxx)
袖も木も糸に玉ぬくささかにの雲田の村の夕立の跡
そてもきも−いとにたまぬく−ささかにの−くもたのむらの−ゆふたちのあと |
02618 |
未入力 正徹 (xxx)
なひくなり夕立きほふしほ風に雲もかさなる浦のはまゆふ
なひくなり−ゆふたちきほふ−しほかせに−くももかさなる−うらのはまゆふ |
02619 |
未入力 正徹 (xxx)
潮ふく鯨のいきと見えぬへし興にむらくたる夕立
うしほふく−くちらのいきと−みえぬへし−おきにひとむら−くたるゆふたち |
02620 |
未入力 正徹 (xxx)
湊風あら塩こえて川浪のくたれはのほる夕立のあと
みなとかせ−あらしほこえて−かはなみの−くたれはのほる−ゆふたちのあと |
02621 |
未入力 正徹 (xxx)
水かさます都のよもの夕立にまつしら川の波そ聞ゆる
みかさます−みやこのよもの−ゆふたちに−まつしらかはの−なみそきこゆる |
02622 |
未入力 正徹 (xxx)
あつさ弓水かさ引きこすやまと川いるよりはやき夕立の波
あつさゆみ−みかさひきこす−やまとかは−いるよりはやき−ゆふたちのなみ |
02623 |
未入力 正徹 (xxx)
都人たか宿しらぬ門ことに夕立すくすほとのちきりも
みやこひと−たかやとしらぬ−かとことに−ゆふたちすくす−ほとのちきりも |
02624 |
未入力 正徹 (xxx)
道のへや笠のかりてを結ふまに雲そ吹きとく夕立の風
みちのへや−かさのかりてを−むすふまに−くもそふきとく−ゆふたちのかせ |
02625 |
未入力 正徹 (xxx)
軒せはみ人はかさなる夕立に憑むもぬるる道のへの庵
のきせはみ−ひとはかさなる−ゆふたちに−たのむもぬるる−みちのへのいほ |
02626 |
未入力 正徹 (xxx)
行きつかれさてたにあれと夕立のはるるをまたぬ道の中宿
ゆきつかれ−さてたにあれと−ゆふたちの−はるるをまたぬ−みちのなかやと |
02627 |
未入力 正徹 (xxx)
さととほき市のかり屋の出ゐにもくらせは暮す夕立の空
さととほき−いちのかりやの−いてゐにも−くらせはくらす−ゆふたちのそら |
02628 |
未入力 正徹 (xxx)
坂くたる木曽のあさ衣身をうてはいたむはかりに荒き夕立
さかくたる−きそのあさきぬ−みをうては−いたむはかりに−あらきゆふたち |
02629 |
未入力 正徹 (xxx)
跡先も遠き野原の人やとりかりねせよとや晴れぬ夕立
あとさきも−とほきのはらの−ひとやとり−かりねせよとや−はれぬゆふたち |
02630 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはにかたふく程は夏の日のかけとほさかる夕立の空
やまのはに−かたふくほとは−なつのひの−かけとほさかる−ゆふたちのそら |
02631 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川紅葉のはしか立つ虹のとほきわたりの夕立の空
あまのかは−もみちのはしか−たつにしの−とほきわたりの−ゆふたちのそら |
02632 |
未入力 正徹 (xxx)
衣ても風や涼しき夕立の雲のした行くをちの山人
ころもても−かせやすすしき−ゆふたちの−くものしたゆく−をちのやまひと |
02633 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人の袖しほりてや八百日行くはまち宿なきすゑの夕立
たひひとの−そてしほりてや−やほかゆく−はまちやとなき−すゑのゆふたち |
02634 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの杜の一むら色きえてをちの日影になひく夕立
やまもとの−もりのひとむら−いろきえて−をちのひかけに−なひくゆふたち |
02635 |
未入力 正徹 (xxx)
山つたひ夕立うつる風さきに木の葉も鳥もふかれてそ行く
やまつたひ−ゆふたちうつる−かせさきに−このはもとりも−ふかれてそゆく |
02636 |
未入力 正徹 (xxx)
声きくは夕立涼し波たかみにこりてくたる川上の山
こゑきくは−ゆふたちすすし−なみたかみ−にこりてくたる−かはかみのやま |
02637 |
未入力 正徹 (xxx)
蓮さく池をしみれはにこる世も猶たのまるる花の露かな
はちすさく−いけをしみれは−にこるよも−なほたのまるる−はなのつゆかな |
02638 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しとや引くは蓮の露ならてかり家つくる池のささかに
すすしとや−ひくははちすの−つゆならて−かりいへつくる−いけのささかに |
02639 |
未入力 正徹 (xxx)
かるの池の蓮の糸や初せめか手染にもれて花にほふらん
かるのいけの−はちすのいとや−はつせめか−てそめにもれて−はなにほふらむ |
02640 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとや茂る林のまへの池に蓮も白き鷺そむれゐる
やまもとや−しけるはやしの−まへのいけに−はちすもしろき−さきそむれゐる |
02641 |
未入力 正徹 (xxx)
彼岸の池辺に見はや小車の輪にたとへとく花の蓮葉
かのきしの−いけへにみはや−をくるまの−わにたとへとく−はなのはちすは |
02642 |
未入力 正徹 (xxx)
くもりなく池の鏡をみかかなんたた水銀そ蓮はの露
くもりなく−いけのかかみを−みかかなむ−たたみつかねそ−はちすはのつゆ |
02643 |
未入力 正徹 (xxx)
葉も青く蓮の花のさかりにて燕飛ひかふ池の涼しさ
はもあをく−はちすのはなの−さかりにて−つはめとひかふ−いけのすすしさ |
02644 |
未入力 正徹 (xxx)
葉をしけみさくや蓮の花鳥も春にこえたる池のささ波
はをしけみ−さくやはちすの−はなとりも−はるにこえたる−いけのささなみ |
02645 |
未入力 正徹 (xxx)
花と実とは橘いつれ軒ちかく蓮葉かをる池の夕風
はなとみとは−たちはないつれ−のきちかく−はちすはかをる−いけのゆふかせ |
02646 |
未入力 正徹 (xxx)
音あらき池の蓮のまくりはに玉もたまらぬ夕立の露
おとあらき−いけのはちすの−まくりはに−たまもたまらぬ−ゆふたちのつゆ |
02647 |
未入力 正徹 (xxx)
これなくはなににたとへん花も実もおなし時しる池の蓮は
これなくは−なににたとへむ−はなもみも−おなしときしる−いけのはちすは |
02648 |
未入力 正徹 (xxx)
水清みさける蓮の花の露池のこころもにこるとはみす
みつきよみ−さけるはちすの−はなのつゆ−いけのこころも−にこるとはみす |
02649 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨にちるやしら玉ひまもなくあつめてこほす池の蓮は
ふるあめに−ちるやしらたま−ひまもなく−あつめてこほす−いけのはちすは |
02650 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ鳥もいかかねふらん風わたり雨打つ池のほちすはのこゑ
すむとりも−いかかねふらむ−かせわたり−あめうついけの−はちすはのこゑ |
02651 |
未入力 正徹 (xxx)
氷とそさなから見ゆる夕立の露をおとさぬ池の蓮葉
こほりとそ−さなからみゆる−ゆふたちの−つゆをおとさぬ−いけのはちすは |
02652 |
未入力 正徹 (xxx)
池水のにこりにしまぬ花の露むねの蓮の玉みかくなり
いけみつの−にこりにしまぬ−はなのつゆ−むねのはちすの−たまみかくなり |
02653 |
未入力 正徹 (xxx)
朝露のまろひあふまに白たへの玉のをなかくおつる蓮葉
あさつゆの−まろひあふまに−しろたへの−たまのをなかく−おつるはちすは |
02654 |
未入力 正徹 (xxx)
露むすふ池の蓮のまくりはの今朝ひらくるそ花にまされる
つゆむすふ−いけのはちすの−まくりはの−けさひらくるそ−はなにまされる |
02655 |
未入力 正徹 (xxx)
蛍ゐる蓮の上のしら露や色をかへたる玉みかくらん
ほたるゐる−はちすのうへの−しらつゆや−いろをかへたる−たまみかくらむ |
02656 |
未入力 正徹 (xxx)
池広きはすの立葉のうつり行く玉の林の露の下風
いけひろき−はすのたちはの−うつりゆく−たまのはやしの−つゆのしたかせ |
02657 |
未入力 正徹 (xxx)
玉とのみ花にわきてや結ふらん籬も草のなてしこの露
たまとのみ−はなにわきてや−むすふらむ−まかきもくさの−なてしこのつゆ |
02658 |
未入力 正徹 (xxx)
しをれてそ籬にかかるおく露のしけきをいたむ撫子の花
しをれてそ−まかきにかかる−おくつゆの−しけきをいたむ−なてしこのはな |
02659 |
未入力 正徹 (xxx)
手折るなよまたいときなき黒髪をなつるにまさる撫子の花
たをるなよ−またいときなき−くろかみを−なつるにまさる−なてしこのはな |
02660 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝の雲夕は雨となる山もおなしかたみのなてしこの露
けさのくも−ゆふへはあめと−なるやまも−おなしかたみの−なてしこのつゆ |
02661 |
未入力 正徹 (xxx)
一もとのゆかりやいつれ紫の竹のませゆふなてしこの花
ひともとの−ゆかりやいつれ−むらさきの−たけのませゆふ−なてしこのはな |
02662 |
未入力 正徹 (xxx)
草のかけたかなてしこの花のかほ見せはや思ひおく露のまに
くさのかけ−たかなてしこの−はなのかほ−みせはやおもひ−おくつゆのまに |
02663 |
未入力 正徹 (xxx)
行く水の哀をかくる人もなし大和にはあれと川原なてしこ
ゆくみつの−あはれをかくる−ひともなし−やまとにはあれと−かはらなてしこ |
02664 |
未入力 正徹 (xxx)
かからんと思ひおきてや露きえし色かしけたるなてしこの花
かからむと−おもひおきてや−つゆきえし−いろかしけたる−なてしこのはな |
02665 |
未入力 正徹 (xxx)
今こそあれ秋の千草の花さかはうつりやはてんなてしこの花
いまこそあれ−あきのちくさの−はなさかは−うつりやはてむ−なてしこのはな |
02666 |
未入力 正徹 (xxx)
あはれにも花のかさしをたらちねの仏もかくそなてしこの露
あはれにも−はなのかさしを−たらちねの−ほとけもかくそ−なてしこのつゆ |
02667 |
未入力 正徹 (xxx)
神をとめふるきかさしの玉やおく山のうてなの撫子の露
かみをとめ−ふるきかさしの−たまやおく−やまのうてなの−なてしこのつゆ |
02668 |
未入力 正徹 (xxx)
たてぬきもはかなきませにかかるさへ露いたはしき撫子の花
たてぬきも−はかなきませに−かかるさへ−つゆいたはしき−なてしこのはな |
02669 |
未入力 正徹 (xxx)
開もをし海士の磯屋に焼くしほのからなてしこの花の夕露
さくもをし−あまのいそやに−やくしほの−からなてしこの−はなのゆふつゆ |
02670 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしほせ夏野を遠み袖ぬれぬささ分けし朝の床夏の露
しはしほせ−なつのをとほみ−そてぬれぬ−ささわけしあさの−とこなつのつゆ |
02671 |
未入力 正徹 (xxx)
まかきにも稀なる色そ天つ袖今や岩ほをなてしこの花
まかきにも−まれなるいろそ−あまつそて−いまやいはほを−なてしこのはな |
02672 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらすたか形見そとかきこしにとははや庭のなてしこの花
そてぬらす−たかかたみそと−かきこしに−とははやにはの−なてしこのはな |
02673 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりのこれなへての花のかそいろもわきて哀む撫テの雨
ふりのこれ−なへてのはなの−かそいろも−わきてあはれむ−なてしこのあめ |
02674 |
未入力 正徹 (xxx)
わきてみゆ一もと樗紫の色こき時の野なる草木に
わきてみゆ−ひともとあふち−むらさきの−いろこきときの−のなるくさきに |
02675 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の一もとあふちさく野への草はみなからみとりをそしく
むらさきの−ひともとあふち−さくのへの−くさはみなから−みとりをそしく |
02676 |
未入力 正徹 (xxx)
ちり過きし外面の桐の花の色におも影近く開く樗かな
ちりすきし−そとものきりの−はなのいろに−おもかけちかく−さくあふちかな |
02677 |
未入力 正徹 (xxx)
栴嶺といふ名はありて花樗二はもなとかかうはしくなき
せむたむと−いふなはありて−はなあふち−ふたはもなとか−かうはしくなき |
02678 |
未入力 正徹 (xxx)
手折りてもいたくは人のめてさらむ木に花見えぬ比の樗を
たをりても−いたくはひとの−めてさらむ−きにはなみえぬ−ころのあふちを |
02679 |
未入力 正徹 (xxx)
あふちちり雲そ消行く箸鷹のたか軒はうつ雨恨むらむ
あふちちり−くもそきえゆく−はしたかの−たかのきはうつ−あめうらむらむ |
02680 |
未入力 正徹 (xxx)
樗ちる一むら雲のむらさきをくたきておとす野への春風
あふちちる−ひとむらくもの−むらさきを−くたきておとす−のへのはるかせ |
02681 |
未入力 正徹 (xxx)
開く花の林をかさる樗かなあれにしさとに人はまたねと
さくはなの−はやしをかさる−あふちかな−あれにしさとに−ひとはまたねと |
02682 |
未入力 正徹 (xxx)
夏草のしけみの花とかつ見えて野中の杜にちる樗かな
なつくさの−しけみのはなと−かつみえて−のなかのもりに−ちるあふちかな |
02683 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねはや鶴の林に春きえし色なる雲にあふちなるらん
たつねはや−つるのはやしに−はるきえし−いろなるくもに−あふちなるらむ |
02684 |
未入力 正徹 (xxx)
折りはてし林のわらひ紫のちりの行へにちるあふちかな
をりはてし−はやしのわらひ−むらさきの−ちりのゆくへに−ちるあふちかな |
02685 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の一もとあふちちらはをしさとはみなから匂ふ山風
むらさきの−ひともとあふち−ちらはをし−さとはみなから−にほふやまかせ |
02686 |
未入力 正徹 (xxx)
むらさきのゆかりの色もかうはしき嶺の庵にあふち咲く比
むらさきの−ゆかりのいろも−かうはしき−みねのいほりに−あふちさくころ |
02687 |
未入力 正徹 (xxx)
こととへよなにの花とかしら露の遠かた人の宿のゆふかほ
こととへよ−なにのはなとか−しらつゆの−をちかたひとの−やとのゆふかほ |
02688 |
未入力 正徹 (xxx)
しつか屋のおやのかふこかしろたへにまゆひらけたる夕かほのはな
しつかやの−おやのかふこか−しろたへに−まゆひらけたる−ゆふかほのはな |
02689 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかやそ花にかたふく夕かほのなれるや重き軒はなるらん
しつかやそ−はなにかたふく−ゆふかほの−なれるやおもき−のきはなるらむ |
02690 |
未入力 正徹 (xxx)
夕かほの花もちりうせぬ松のかき青葉ひまある山かつの宿
ゆふかほの−はなもちりうせぬ−まつのかき−あをはひまある−やまかつのやと |
02691 |
未入力 正徹 (xxx)
里つつくみつのやいつこ夕かほの花の波よる淀の川きし
さとつつく−みつのやいつこ−ゆふかほの−はなのなみよる−よとのかはきし |
02692 |
未入力 正徹 (xxx)
里つつく水の入江のおもたかもさく色しろき夕かほの花
さとつつく−みつのいりえの−おもたかも−さくいろしろき−ゆふかほのはな |
02693 |
未入力 正徹 (xxx)
いつれかとあらそふ秋のしら露は扇におきつ夕かほの花
いつれかと−あらそふあきの−しらつゆは−あふきにおきつ−ゆふかほのはな |
02694 |
未入力 正徹 (xxx)
秋かけてたのむ軒はもかたふきぬ古屋にさける夕貌の露
あきかけて−たのむのきはも−かたふきぬ−ふるやにさける−ゆふかほのつゆ |
02695 |
未入力 正徹 (xxx)
一枝の花をそおける夕かほのかきほの月のしろき扇に
ひとえたの−はなをそおける−ゆふかほの−かきほのつきの−しろきあふきに |
02696 |
未入力 正徹 (xxx)
さかぬまもかきねつつきの夕かほをみつのにかくる淀の川波
さかぬまも−かきねつつきの−ゆふかほを−みつのにかくる−よとのかはなみ |
02697 |
未入力 正徹 (xxx)
咲きぬへき花はけぬへき雪にして夕かほおもき軒そかたふく
さきぬへき−はなはけぬへき−ゆきにして−ゆふかほおもき−のきそかたふく |
02698 |
未入力 正徹 (xxx)
こかひしてえひらおくやの軒はとやまゆひらけたる花の夕貌
こかひして−えひらおくやの−のきはとや−まゆひらけたる−はなのゆふかほ |
02699 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの庭にはかなきくひ垣もみやひかにさく夕かほの花
やまかつの−にはにはかなき−くひかきも−みやひかにさく−ゆふかほのはな |
02700 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかすむわら屋にかかる夕顔の実さへ花さへあくる軒かな
しつかすむ−わらやにかかる−ゆふかほの−みさへはなさへ−あくるのきかな |
02701 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れやらぬ日影にしほむ夕かほの葉風の花や露を待つらん
くれやらぬ−ひかけにしほむ−ゆふかほの−はかせのはなや−つゆをまつらむ |
02702 |
未入力 正徹 (xxx)
しつか屋に糸くりはてし新桑の又まゆひらく夕かほの花
しつかやに−いとくりはてし−にひくはの−またまゆひらく−ゆふかほのはな |
02703 |
未入力 正徹 (xxx)
さるかたに見そ捨てられぬ夕かほはしつか垣ほの花に咲くとも
さるかたに−みそすてられぬ−ゆふかほは−しつかかきほの−はなにさくとも |
02704 |
未入力 正徹 (xxx)
かきこむるみつのの岸による淡のきえぬもさける夕顔の花
かきこむる−みつののきしに−よるあわの−きえぬもさける−ゆふかほのはな |
02705 |
未入力 正徹 (xxx)
板まもる露さへ涼しあかねさすひかきにたゆる夕かほの花
いたまもる−つゆさへすすし−あかねさす−ひかきにたゆる−ゆふかほのはな |
02706 |
未入力 正徹 (xxx)
夕貌の花のえたかき籬よりしろきあふきをいたす月影
ゆふかほの−はなのえたかき−まかきより−しろきあふきを−いたすつきかけ |
02707 |
未入力 正徹 (xxx)
夕顔の花のかつらやあらてくむ賎か垣ほのねりそなるらん
ゆふかほの−はなのかつらや−あらてくむ−しつかかきほの−ねりそなるらむ |
02708 |
未入力 正徹 (xxx)
枝もふす賎かぬる屋のわらふきにもたれてあまたなれる夕顔
えたもふす−しつかぬるやの−わらふきに−もたれてあまた−なれるゆふかほ |
02709 |
未入力 正徹 (xxx)
はてしなき宮もかはらぬうき世とやわら屋にかかる夕顔の花
はてしなき−みやもかはらぬ−うきよとや−わらやにかかる−ゆふかほのはな |
02710 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひあらは空まてかよふ蛍をや雲の衣の袖につつまむ
おもひあらは−そらまてかよふ−ほたるをや−くものころもの−そてにつつまむ |
02711 |
未入力 正徹 (xxx)
山たかみ見おろす谷の家家にともす光や蛍そふらん
やまたかみ−みおろすたにの−いへいへに−ともすひかりや−ほたるそふらむ |
02712 |
未入力 正徹 (xxx)
たか方によるの蛍の思川もえ行く水の淡もけたすて
たかかたに−よるのほたるの−おもひかは−もえゆくみつの−あわもけたすて |
02713 |
未入力 正徹 (xxx)
あつめおけ窓のほたるも九の枝の光そことのはの花
あつめおけ−まとのほたるも−ここのつの−えたのひかりそ−ことのはのはな |
02714 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ蛍光は雲の上なから秋風ふくとつけのをまくら
とふほたる−ひかりはくもの−うへなから−あきかせふくと−つけのをまくら |
02715 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰の草も朽木の杣川におのれもいてて行く蛍かな
やまかけの−くさもくちきの−そまかはに−おのれもいてて−ゆくほたるかな |
02716 |
未入力 正徹 (xxx)
道辺やふりたてて行く松の火の遠きはやみの蛍なりけり
みちのへや−ふりたててゆく−まつのひの−とほきはやみの−ほたるなりけり |
02717 |
未入力 正徹 (xxx)
ゐる蛍あまた梢のしけみよりこほれて匂ふ影そ散行く
ゐるほたる−あまたこすゑの−しけみより−こほれてにほふ−かけそちりゆく |
02718 |
未入力 正徹 (xxx)
夏あさの糸にぬくとは見えなくに玉をつらねてくる蛍かな
なつあさの−いとにぬくとは−みえなくに−たまをつらねて−くるほたるかな |
02719 |
未入力 正徹 (xxx)
蛍とふ山のしけみにすたきあひてちらぬ光や朽木なるらん
ほたるとふ−やまのしけみに−すたきあひて−ちらぬひかりや−くちきなるらむ |
02720 |
未入力 正徹 (xxx)
雲ちかく蛍もたかく飛ふ鳥のあすか川風暮そ涼しき
くもちかく−ほたるもたかく−とふとりの−あすかかはかせ−くれそすすしき |
02721 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからもゆるほたるのこゑたては物うかる音を鳴きやあかさん
よもすから−もゆるほたるの−こゑたては−ものうかるねを−なきやあかさむ |
02722 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にてもゆる蛍はおもひ川うたかた誰にあはて消えけん
このよにて−もゆるほたるは−おもひかは−うたかたたれに−あはてきえけむ |
02723 |
未入力 正徹 (xxx)
ほにいつる夏野を広み糸みたれ蛍の玉をぬくつ花かな
ほにいつる−なつのをひろみ−いとみたれ−ほたるのたまを−ぬくつはなかな |
02724 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから思ひのなきに思ひありもえぬをもゆる蛍とそみる
よもすから−おもひのなきに−おもひあり−もえぬをもゆる−ほたるとそみる |
02725 |
未入力 正徹 (xxx)
世をうらの玉よる磯の夕波も袖にくたけてちる蛍かな
よをうらの−たまよるいその−ゆふなみも−そてにくたけて−ちるほたるかな |
02726 |
未入力 正徹 (xxx)
草わけてとらはけぬへくほの見えし露のもえつつとふ蛍かな
くさわけて−とらはけぬへく−ほのみえし−つゆのもえつつ−とふほたるかな |
02727 |
未入力 正徹 (xxx)
いなり山うつみし玉やほたるとも見えてを杉の窓てらすらん
いなりやま−うつみしたまや−ほたるとも−みえてをすきの−まとてらすらむ |
02728 |
未入力 正徹 (xxx)
夕やみはこれもゆけたの数しらすいよすの外にとふ蛍かな
ゆふやみは−これもゆけたの−かすしらす−いよすのほかに−とふほたるかな |
02729 |
未入力 正徹 (xxx)
ともしけてこすのあみ糸たえたえに蛍そあらすくらき夜のやみ
ともしけて−こすのあみいと−たえたえに−ほたるそあらす−くらきよのやみ |
02730 |
未入力 正徹 (xxx)
中たえしふるき簾のひまにきてかたみの水に入る蛍かな
なかたえし−ふるきすたれの−ひまにきて−かたみのみつに−いるほたるかな |
02731 |
未入力 正徹 (xxx)
またすやは秋の星合の天の川もよほす波に行く蛍かな
またすやは−あきのほしあひの−あまのかは−もよほすなみに−ゆくほたるかな |
02732 |
未入力 正徹 (xxx)
滝川や波もくたけて石の火の出てける物とちる蛍かな
たきかはや−なみもくたけて−いしのひの−いてけるものと−ちるほたるかな |
02733 |
未入力 正徹 (xxx)
蛍さへ飛ふ火かくれはよるは見すはるる伊駒の西の川浪
ほたるさへ−とふひかくれは−よるはみす−はるるいこまの−にしのかはなみ |
02734 |
未入力 正徹 (xxx)
水鳥の波のうきねもくらからす蛍玉ものとこのともし火
みつとりの−なみのうきねも−くらからす−ほたるたまもの−とこのともしひ |
02735 |
未入力 正徹 (xxx)
これも猶かけたにあらはとふと見んかたみの水にゐる蛍かな
これもなほ−かけたにあらは−とふとみむ−かたみのみつに−ゐるほたるかな |
02736 |
未入力 正徹 (xxx)
水の上にうきて此世をすくしけんあまの玉みる蛍とそみる
みつのうへに−うきてこのよを−すくしけむ−あまのたまみる−ほたるとそみる |
02737 |
未入力 正徹 (xxx)
鳰鳥の下のおもひやあらはれん興中川にとふほたるかな
にほとりの−したのおもひや−あらはれむ−おきなかかはに−とふほたるかな |
02738 |
未入力 正徹 (xxx)
行く蛍なかるる川をつくすとも猶身を海にもえやわたらん
ゆくほたる−なかるるかはを−つくすとも−なほみをうみに−もえやわたらむ |
02739 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ蛍神のよるへの水の上にきよき心の玉や見すらん
とふほたる−かみのよるへの−みつのうへに−きよきこころの−たまやみすらむ |
02740 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野川たきつ心も焼く火とや岩きりとほし蛍とふらん
よしのかは−たきつこころも−たくひとや−いはきりとほし−ほたるとふらむ |
02741 |
未入力 正徹 (xxx)
よるもみゆ入江の里の芦かくれ蛍のともす光おほくて
よるもみゆ−いりえのさとの−あしかくれ−ほたるのともす−ひかりおほくて |
02742 |
未入力 正徹 (xxx)
夕波のかくるもしらす芦辺よりなきたる興に行く蛍かな
ゆふなみの−かくるもしらす−あしへより−なきたるおきに−ゆくほたるかな |
02743 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかからて影なき程の夕暮はたた夏虫のとふ蛍かな
ふかからて−かけなきほとの−ゆふくれは−たたなつむしの−とふほたるかな |
02744 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮の思ひか袖の蛍かも天つをとめの玉のかさしか
ゆふくれの−おもひかそての−ほたるかも−あまつをとめの−たまのかさしか |
02745 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへの真砂の月の霜の夜を時そともなく飛ふ蛍かな
しろたへの−まさこのつきの−しものよを−ときそともなく−とふほたるかな |
02746 |
未入力 正徹 (xxx)
波を行くいさり火遠き駅路による山すきてとふ蛍かな
なみをゆく−いさりひとほき−うまやちに−よるやますきて−とふほたるかな |
02747 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみ子を思ひし人のなき玉や蛍と成りてやみにもゆらん
さのみこを−おもひしひとの−なきたまや−ほたるとなりて−やみにもゆらむ |
02748 |
未入力 正徹 (xxx)
まよふへき心のやみもしらすとやよるの蛍の身を照すらん
まよふへき−こころのやみも−しらすとや−よるのほたるの−みをてらすらむ |
02749 |
未入力 正徹 (xxx)
いくさとの光をやみのうつつにて夢路さたかに蛍とふらん
いくさとの−ひかりをやみの−うつつにて−ゆめちさたかに−ほたるとふらむ |
02750 |
未入力 正徹 (xxx)
いつよりかおのか心のやみ晴れて空くもる夜に蛍とふらん
いつよりか−おのかこころの−やみはれて−そらくもるよに−ほたるとふらむ |
02751 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風もとまらぬ物と夕立のふるにまかせて行く蛍かな
くもかせも−とまらぬものと−ゆふたちの−ふるにまかせて−ゆくほたるかな |
02752 |
未入力 正徹 (xxx)
草かくれよるは蛍の焼く火ゆゑ野中のし水さそぬるむらん
くさかくれ−よるはほたるの−たくひゆゑ−のなかのしみつ−さそぬるむらむ |
02753 |
未入力 正徹 (xxx)
わかさりき夏野の月のしら玉とみたるる露かゐる蛍かも
わかさりき−なつののつきの−しらたまと−みたるるつゆか−ゐるほたるかも |
02754 |
未入力 正徹 (xxx)
春日野に妻もこもらぬ夏草をやくかと見えてとふ蛍かな
かすかのに−つまもこもらぬ−なつくさを−やくかとみえて−とふほたるかな |
02755 |
未入力 正徹 (xxx)
ゐる蛍草のたもとにつつみてももゆるおもひをけたぬ露かな
ゐるほたる−くさのたもとに−つつみても−もゆるおもひを−けたぬつゆかな |
02756 |
未入力 正徹 (xxx)
谷川にそこら蛍のすたくかな苔の埋木朽ちやはつらん
たにかはに−そこらほたるの−すたくかな−こけのうもれき−くちやはつらむ |
02757 |
未入力 正徹 (xxx)
月清みいさり火そはぬ蛍さへ波にみちたるにほの水海
つききよみ−いさりひそはぬ−ほたるさへ−なみにみちたる−にほのみつうみ |
02758 |
未入力 正徹 (xxx)
波くらき入江の芦にみかくれて有るかなきかの蛍火の影
なみくらき−いりえのあしに−みかくれて−あるかなきかの−ほたるひのかけ |
02759 |
未入力 正徹 (xxx)
友君のむかしのよるの思ひとやみしま江口にほたるもゆらん
ともきみの−むかしのよるの−おもひとや−みしまえくちに−ほたるもゆらむ |
02760 |
未入力 正徹 (xxx)
影とめん世をにこり江の水とみてさめたる松にゐる蛍かな
かけとめむ−よをにこりえの−みつとみて−さめたるまつに−ゐるほたるかな |
02761 |
未入力 正徹 (xxx)
誰ここによるは蛍をたよりにて玉つくり江に玉みかくらん
たれここに−よるはほたるを−たよりにて−たまつくりえに−たまみかくらむ |
02762 |
未入力 正徹 (xxx)
すたきゐる萍なからみさひ江にさそふ水あれは行く蛍かな
すたきゐる−うきくさなから−みさひえに−さそふみつあれは−ゆくほたるかな |
02763 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ江の葉分の月も芦つつの影さへうすく行く蛍かな
なかれえの−はわけのつきも−あしつつの−かけさへうすく−ゆくほたるかな |
02764 |
未入力 正徹 (xxx)
夏かりの汀の芦の末はれて蛍数そふみしま江のなみ
なつかりの−みきはのあしの−すゑはれて−ほたるかすそふ−みしまえのなみ |
02765 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴く音かるおもひにもえて木陰行く蝉の小川にとふ蛍かな
なくねかる−おもひにもえて−こかけゆく−せみのをかはに−とふほたるかな |
02766 |
未入力 正徹 (xxx)
泉川衣かせ山つつめとも袖にあまるや蛍とふらん
いつみかは−ころもかせやま−つつめとも−そてにあまるや−ほたるとふらむ |
02767 |
未入力 正徹 (xxx)
滝の上の御舟のかかり影落ちて吉野の川にとふ蛍かな
たきのうへの−みふねのかかり−かけおちて−よしののかはに−とふほたるかな |
02768 |
未入力 正徹 (xxx)
夏川に子を思ふ鳰のゐる玉やうきすの芦に蛍みゆらん
なつかはに−こをおもふにほの−ゐるたまや−うきすのあしに−ほたるみゆらむ |
02769 |
未入力 正徹 (xxx)
橋姫のかさしの玉と川波に蛍みたるるうちの山興
はしひめの−かさしのたまと−かはなみに−ほたるみたるる−うちのやまおく |
02770 |
未入力 正徹 (xxx)
山人はたえぬる嶺のかけはしに夜わたる星と蛍とそ行く
やまひとは−たえぬるみねの−かけはしに−よわたるほしと−ほたるとそゆく |
02771 |
未入力 正徹 (xxx)
いさりするあまの焼縄たく火とやとつなの橋に蛍もゆらん
いさりする−あまのたくなは−たくひとや−とつなのはしに−ほたるもゆらむ |
02772 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきや夜の契やあらはれん蛍みたれてくめの岩はし
かつらきや−よるのちきりや−あらはれむ−ほたるみたれて−くめのいははし |
02773 |
未入力 正徹 (xxx)
橋はしら朽ちて蛍となから江に猶中たえてとふ蛍かな
はしはしら−くちてほたると−なからえに−なほなかたえて−とふほたるかな |
02774 |
未入力 正徹 (xxx)
みしか夜に今もなからの橋あらはわたりもはてぬ蛍をそみん
みしかよに−いまもなからの−はしあらは−わたりもはてぬ−ほたるをそみむ |
02775 |
未入力 正徹 (xxx)
川淵にしつみし玉か蛍かもしらす夜わたるなから江のはし
かはふちに−しつみしたまか−ほたるかも−しらすよわたる−なからえのはし |
02776 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから床にそもゆる里は荒れて住みけん人の袖の蛍は
よもすから−とこにそもゆる−さとはあれて−すみけむひとの−そてのほたるは |
02777 |
未入力 正徹 (xxx)
我にますおもひやあると暮るるよの里をはかれすとふ蛍かな
われにます−おもひやあると−くるるよの−さとをはかれす−とふほたるかな |
02778 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ蛍かへなる草にきゐるなり光あつめぬ窓としらすや
とふほたる−かへなるくさに−きゐるなり−ひかりあつめぬ−まととしらすや |
02779 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる蛍もまとに入る月の影けつ程のやみの心を
みにそしる−ほたるもまとに−いるつきの−かけけつほとの−やみのこころを |
02780 |
未入力 正徹 (xxx)
川岸の蛍もあし火今夜たけ鵜舟のかかり影そすくなき
かはきしの−ほたるもあしひ−こよひたけ−うふねのかかり−かけそすくなき |
02781 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほやく影とそまかふ浦ちかくいつる夜川にもやす篝火
もしほやく−かけとそまかふ−うらちかく−いつるよかはに−もやすかかりひ |
02782 |
未入力 正徹 (xxx)
ますら男か夜な夜な出つるうかひ火に夕やみしらぬうちの川波
ますらをか−よなよないつる−うかひひに−ゆふやみしらぬ−うちのかはなみ |
02783 |
未入力 正徹 (xxx)
ますらをか鵜舟のかかりさしとくも綱手くるしき後の世のやみ
ますらをか−うふねのかかり−さしとくも−つなてくるしき−のちのよのやみ |
02784 |
未入力 正徹 (xxx)
島つ鳥おのか手縄のくるしきもしらてや浪の下にくくらん
しまつとり−おのかたなはの−くるしきも−しらてやなみの−したにくくらむ |
02785 |
未入力 正徹 (xxx)
広瀬川一せにかよふ鵜飼火の跡先くらき夕やみの空
ひろせかは−ひとせにかよふ−うかひひの−あとさきくらき−ゆふやみのそら |
02786 |
未入力 正徹 (xxx)
神代にもかくやは秋津島つ鳥うきたる波に夜川立ちけん
かみよにも−かくやはあきつ−しまつとり−うきたるなみに−よかはたちけむ |
02787 |
未入力 正徹 (xxx)
かかり火を鵜のゐる石に焼きすてて明くる夜川にかへる舟人
かかりひを−うのゐるいしに−たきすてて−あくるよかはに−かへるふなひと |
02788 |
未入力 正徹 (xxx)
おり立ちてさわかす波にけたれけりかちうくるしき篝火の影
おりたちて−さわかすなみに−けたれけり−かちうくるしき−かかりひのかけ |
02789 |
未入力 正徹 (xxx)
頼むらん鵜の入る魚も山川の底に岩戸の関はこえしと
たのむらむ−うのいるうをも−やまかはの−そこにいはとの−せきはこえしと |
02790 |
未入力 正徹 (xxx)
夏川の水のけふりや鵜飼舟今朝まてたきし篝なるらん
なつかはの−みつのけふりや−うかひふね−けさまてたきし−かかりなるらむ |
02791 |
未入力 正徹 (xxx)
川波に影そやすらふしまつ鳥うつせにかかる夜はの篝火
かはなみに−かけそやすらふ−しまつとり−うつせにかかる−よはのかかりひ |
02792 |
未入力 正徹 (xxx)
友舟ののほれはくたるうかひ縄たかひにいとふ夜川立つらし
ともふねの−のほれはくたる−うかひなは−たかひにいとふ−よかはたつらし |
02793 |
未入力 正徹 (xxx)
いとはすや闇をつはさの色にかる鵜舟あらはにかかりたく夜を
いとはすや−やみをつはさの−いろにかる−うふねあらはに−かかりたくよを |
02794 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしと見てそ哀むつかふ鵜のわかくひはてぬ魚の命を
はかなしと−みてそあはれむ−つかふうの−わかくひはてぬ−うをのいのちを |
02795 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥の名も夜もうは玉の毛衣をあらふもくらき波に入るなり
とりのなも−よもうはたまの−けころもを−あらふもくらき−なみにいるなり |
02796 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくに鵜舟のかかりさしとくも手縄くるしくむすふ川風
とにかくに−うふねのかかり−さしとくも−たなはくるしく−むすふかはかせ |
02797 |
未入力 正徹 (xxx)
かつら大御調の小舟漕きつれて鵜飼の長のいつる夜の空
かつらかは−みつきのをふね−こきつれて−うかひのをさの−いつるよのそら |
02798 |
未入力 正徹 (xxx)
鵜川なる水にも火にも飼ふ人のいらん所そあはれたたいま
うかはなる−みつにもひにも−かふひとの−いらむところそ−あはれたたいま |
02799 |
未入力 正徹 (xxx)
川上のむらの蚊いとふ煙にも暮るる夜いそく瀬瀬のうかひ火
かはかみの−むらのかいとふ−けふりにも−くるるよいそく−せせのうかひひ |
02800 |
未入力 正徹 (xxx)
かかり火に翅もほさて島つ鳥うきたる波をいく瀬行くらん
かかりひに−つはさもほさて−しまつとり−うきたるなみを−いくせゆくらむ |
02801 |
未入力 正徹 (xxx)
鵜かひ舟かかり焼きすてし朝川やささぬも水の煙たつらん
うかひふね−かかりたきすてし−あさかはや−ささぬもみつの−けふりたつらむ |
02802 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまもなく波に入るなり島つ鳥うち松そへよくらき篝火
ひまもなく−なみにいるなり−しまつとり−うちまつそへよ−くらきかかりひ |
02803 |
未入力 正徹 (xxx)
水底にめくるやいかに島つ鳥うたかたうかふ篝火のかけ
みなそこに−めくるやいかに−しまつとり−うたかたうかふ−かかりひのかけ |
02804 |
未入力 正徹 (xxx)
川上にうつかと見ゆる石の火の出つるや鵜舟夕やみの空
かはかみに−うつかとみゆる−いしのひの−いつるやうふね−ゆふやみのそら |
02805 |
未入力 正徹 (xxx)
松浦川う舟のかかりけちて見よ鏡の影のそこ照すかに
まつらかは−うふねのかかり−けちてみよ−かかみのかけの−そこてらすかに |
02806 |
未入力 正徹 (xxx)
うかひ舟この瀬はかりと横雲に月をかくしてかかりさすなり
うかひふね−このせはかりと−よこくもに−つきをかくして−かかりさすなり |
02807 |
未入力 正徹 (xxx)
河戸ゆく暁やみのうかひ火にわかれ路やおくるうちの橋姫
かはとゆく−あかつきやみの−うかひひに−わかれちやおくる−うちのはしひめ |
02808 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲にかかりそ見ゆる川上のほしか鵜舟かくたる山のは
よこくもに−かかりそみゆる−かはかみの−ほしかうふねか−くたるやまのは |
02809 |
未入力 正徹 (xxx)
舟人の袖にまちかき鵜飼火も深けて涼しき瀬瀬の川風
ふなひとの−そてにまちかき−うかひひも−ふけてすすしき−せせのかはかせ |
02810 |
未入力 正徹 (xxx)
よひなから明くる川戸も出てやらて鵜舟のかかりともしけつなり
よひなから−あくるかはとも−いてやらて−うふねのかかり−ともしけつなり |
02811 |
未入力 正徹 (xxx)
たか中にかよふおもひのもやとみん波によかれぬ鵜飼火のかけ
たかなかに−かよふおもひの−もやとみむ−なみによかれぬ−うかひひのかけ |
02812 |
未入力 正徹 (xxx)
かかり火のならひてくたる影をみてよそに広瀬をしる夜川かな
かかりひの−ならひてくたる−かけをみて−よそにひろせを−しるよかはかな |
02813 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑせはみ広瀬にならふうかひ舟ひとりひとりそ又おちて行く
すゑせはみ−ひろせにならふ−うかひふね−ひとりひとりそ−またおちてゆく |
02814 |
未入力 正徹 (xxx)
夜川立つ瀬ふしの魚も影をみて淵にかくるる水のかかり火
よかはたつ−せふしのうをも−かけをみて−ふちにかくるる−みつのかかりひ |
02815 |
未入力 正徹 (xxx)
あらちをか川せの鵜舟かかりけつ山風ふけぬいもこふらしも
あらちをか−かはせのうふね−かかりけつ−やまかせふけぬ−いもこふらしも |
02816 |
未入力 正徹 (xxx)
かかり火も二の鵜舟さしわかれめくりあふまに明くる川島
かかりひも−ふたつのうふね−さしわかれ−めくりあふまに−あくるかはしま |
02817 |
未入力 正徹 (xxx)
めくるともむかしにはあらし橘のこしまににほふかかり火の影
めくるとも−むかしにはあらし−たちはなの−こしまににほふ−かかりひのかけ |
02818 |
未入力 正徹 (xxx)
なく蝉のは山の夕日影見えてみとりも薄き木木の色かな
なくせみの−はやまのゆふひ−かけみえて−みとりもうすき−ききのいろかな |
02819 |
未入力 正徹 (xxx)
うつりくる梢の鳥に驚きて杜の陰とふせみの一こゑ
うつりくる−こすゑのとりに−おとろきて−もりのかけとふ−せみのひとこゑ |
02820 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身をはしけきさ月の木の下にもぬけてなとか蝉の鳴くらん
うきみをは−しけきさつきの−このもとに−もぬけてなとか−せみのなくらむ |
02821 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかへてもぬけしからを前の世の我と知りてや蝉の鳴くらん
みをかへて−もぬけしからを−さきのよの−われとしりてや−せみのなくらむ |
02822 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きつくす蝉のこゑかな深山路やまた末遠き夏の日数を
なきつくす−せみのこゑかな−みやまちや−またすゑとほき−なつのひかすを |
02823 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴くこゑも日影にきえて蝉のはのうす雲かへるゆふ暮の山
なくこゑも−ひかけにきえて−せみのはの−うすくもかへる−ゆふくれのやま |
02824 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨の木下はらひ吹く風にきほひおくるる山のむら蝉
ふるあめの−このもとはらひ−ふくかせに−きほひおくるる−やまのむらせみ |
02825 |
未入力 正徹 (xxx)
五月山むなしき物ともぬけてしからを見つつや蝿の鳴くらん
さつきやま−むなしきものと−もぬけてし−からをみつつや−せみのなくらむ |
02826 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりまつ梢をたかみ鳴きそめて山めくりする蝉のもろこゑ
ひとりまつ−こすゑをたかみ−なきそめて−やまめくりする−せみのもろこゑ |
02827 |
未入力 正徹 (xxx)
滝の上の蝉の羽衣おりあましみたれにけらしおつる白糸
たきのうへの−せみのはころも−おりあまし−みたれにけらし−おつるしらいと |
02828 |
未入力 正徹 (xxx)
杣山や峰の嵐のこゑことに木の菜も蝉も宮木引くなり
そまやまや−みねのあらしの−こゑことに−このはもせみも−みやきひくなり |
02829 |
未入力 正徹 (xxx)
蝉のこゑおとろかせとも朝かしはぬるや川辺のさよのみしかさ
せみのこゑ−おとろかせとも−あさかしは−ぬるやかはへの−さよのみしかさ |
02830 |
未入力 正徹 (xxx)
いく度か太山の杜に鳴く蝉のしをる嵐に遠さかるらん
いくたひか−みやまのもりに−なくせみの−しをるあらしに−とほさかるらむ |
02831 |
未入力 正徹 (xxx)
杣人のきる木をよそに立つ蝉も鳴きておとろくをののこゑかな
そまひとの−きるきをよそに−たつせみも−なきておとろく−をののこゑかな |
02832 |
未入力 正徹 (xxx)
伊駒山雲の林になく蝉や見さりし春の花をこふらん
いこまやま−くものはやしに−なくせみや−みさりしはるの−はなをこふらむ |
02833 |
未入力 正徹 (xxx)
夕風に木ふかき杜のうつせみに又なきましる日くらしの声
ゆふかせに−こふかきもりの−うつせみに−またなきましる−ひくらしのこゑ |
02834 |
未入力 正徹 (xxx)
夏くるる日影をのこす杜のはも秋に色つく蝉そ鳴くなる
なつくるる−ひかけをのこす−もりのはも−あきにいろつく−せみそなくなる |
02835 |
未入力 正徹 (xxx)
衣手もあさ夕涼しなく蝉のは山につつく杜の下草
ころもても−あさゆふすすし−なくせみの−はやまにつつく−もりのしたくさ |
02836 |
未入力 正徹 (xxx)
山風も涼しく落ちて日くらしの鳴く音にゆつる杜の空蝉
やまかせも−すすしくおちて−ひくらしの−なくねにゆつる−もりのうつせみ |
02837 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき日のうき田のみしめ杜のはもくるしくしける蝉のこゑかな
なかきひの−うきたのみしめ−もりのはも−くるしくしける−せみのこゑかな |
02838 |
未入力 正徹 (xxx)
まとりすむうつ蝉のはもほさしとや秋かけて鳴く杜の下露
まとりすむ−うつせみのはも−ほさしとや−あきかけてなく−もりのしたつゆ |
02839 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴く蝉のこゑにゆるきの杜のはにふかても風の姿をそみる
なくせみの−こゑにゆるきの−もりのはに−ふかてもかせの−すかたをそみる |
02840 |
未入力 正徹 (xxx)
杜のはの雨をふくめる朝風に露よりもろき蝉の諸こゑ
もりのはの−あめをふくめる−あさかせに−つゆよりもろき−せみのもろこゑ |
02841 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの入日色こくたつ杉に蝉なきましる日くらしのこゑ
やまもとの−いりひいろこく−たつすきに−せみなきましる−ひくらしのこゑ |
02842 |
未入力 正徹 (xxx)
のこる日は木のますくなく影きえて空行く雲も村蝉のこゑ
のこるひは−このますくなく−かけきえて−そらゆくくもも−むらせみのこゑ |
02843 |
未入力 正徹 (xxx)
過きぬるか木の葉の陰の雨やとりいてて空とふ蝉の一こゑ
すきぬるか−このはのかけの−あまやとり−いててそらとふ−せみのひとこゑ |
02844 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる梢の露やかかるらん月におとろく蝉の一こゑ
かせわたる−こすゑのつゆや−かかるらむ−つきにおとろく−せみのひとこゑ |
02845 |
未入力 正徹 (xxx)
家家にふきしあやめの長きねを梢の蝉にのこす比かな
いへいへに−ふきしあやめの−なかきねを−こすゑのせみに−のこすころかな |
02846 |
未入力 正徹 (xxx)
五月山名におふ雨のみたれよりしけき梢の蝉のもろこゑ
さつきやま−なにおふあめの−みたれより−しけきこすゑの−せみのもろこゑ |
02847 |
未入力 正徹 (xxx)
をちかたに鴨きたつ蝉の声過きて梢しつかにくるる夏かな
をちかたに−なきたつせみの−こゑすきて−こすゑしつかに−くるるなつかな |
02848 |
未入力 正徹 (xxx)
置きそへよ空蝉の世を鳴暮す木末の露そ秋に先たつ
おきそへよ−うつせみのよを−なきくらす−こすゑのつゆそ−あきにさきたつ |
02849 |
未入力 正徹 (xxx)
川の瀬にうたふささ波露かけて木陰すすしき蝉のもろ声
かはのせに−うたふささなみ−つゆかけて−こかけすすしき−せみのもろこゑ |
02850 |
未入力 正徹 (xxx)
せみの羽の此世にうすき契をやまちかき秋の音には鳴くらん
せみのはの−このよにうすき−ちきりをや−まちかきあきの−ねにはなくらむ |
02851 |
未入力 正徹 (xxx)
秋近きこゑそさやけき蝉のはの色うす墨の夕暮の山
あきちかき−こゑそさやけき−せみのはの−いろうすすみの−ゆふくれのやま |
02852 |
未入力 正徹 (xxx)
こかしけん扇はしらす蚊遣火の煙そ見ゆる夕かほの宿
こかしけむ−あふきはしらす−かやりひの−けふりそみゆる−ゆふかほのやと |
02853 |
未入力 正徹 (xxx)
焼きたつる煙のうへにくもる蚊は空に晴行く夕暮のやと
たきたつる−けふりのうへに−くもるかは−そらにはれゆく−ゆふくれのやと |
02854 |
未入力 正徹 (xxx)
浦風も煙をはこふ蚊遣火に塩くむさとのあまやくるしき
うらかせも−けふりをはこふ−かやりひに−しほくむさとの−あまやくるしき |
02855 |
未入力 正徹 (xxx)
蚊遣たく道行ふりの煙さへ宿うらめしき袖のうつりか
かやりたく−みちゆきふりの−けふりさへ−やとうらめしき−そてのうつりか |
02856 |
未入力 正徹 (xxx)
すく藻たく煙もすみて深き夜に蚊の声かへるしつか家家
すくもたく−けふりもすみて−ふかきよに−かのこゑかへる−しつかいへいへ |
02857 |
未入力 正徹 (xxx)
しはし先庭にかたよる蚊の声は煙にすめる夕暮の宿
しはしまつ−にはにかたよる−かのこゑは−けふりにすめる−ゆふくれのやと |
02858 |
未入力 正徹 (xxx)
たかぬよりおのれ煙とたつる蚊に夕暮くもる木隠の宿
たかぬより−おのれけふりと−たつるかに−ゆふくれくもる−こかくれのやと |
02859 |
未入力 正徹 (xxx)
煙ゆゑさととよみつる蚊のこゑはすめるもくもる夕月夜かな
けふりゆゑ−さととよみつる−かのこゑは−すめるもくもる−ゆふつくよかな |
02860 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかく心かよふもふすへかね蚊をこそいとへ世をはいとはす
やまふかく−こころかよふも−ふすへかね−かをこそいとへ−よをはいとはす |
02861 |
未入力 正徹 (xxx)
木隠のむらの煙を吹きいたし蚊のこゑおくる野への夕風
こかくれの−むらのけふりを−ふきいたし−かのこゑおくる−のへのゆふかせ |
02862 |
未入力 正徹 (xxx)
煙ゆゑ空にむら立のほる蚊に影うすくもる夕月夜かな
けふりゆゑ−そらにむらたち−のほるかに−かけうすくもる−ゆふつくよかな |
02863 |
未入力 正徹 (xxx)
蚊遣火もたてぬ里にやたなひかん煙吹きやる宿の夕風
かやりひも−たてぬさとにや−たなひかむ−けふりふきやる−やとのゆふかせ |
02864 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮杣木もしらぬ蚊柱をたつるはあるる夏の古郷
ゆふまくれ−そまきもしらぬ−かはしらを−たつるはあるる−なつのふるさと |
02865 |
未入力 正徹 (xxx)
す戸おろす賎屋の軒の妻ことに煙をこめていとふかやり火
すとおろす−しつやののきの−つまことに−けふりをこめて−いとふかやりひ |
02866 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの遠の柴屋の蚊柱やけふりの上に煙りたつらん
やまもとの−をちのしはやの−かはしらや−けふりのうへに−けふりたつらむ |
02867 |
未入力 正徹 (xxx)
よる鹿の星かともしの光かも嶺たつ雲に明くる短か夜
よるしかの−ほしかともしの−ひかりかも−みねたつくもに−あくるみしかよ |
02868 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの上毛の星はくらくとも照射によりて影ななかりそ
さをしかの−うはけのほしは−くらくとも−ともしによりて−かけななかりそ |
02869 |
未入力 正徹 (xxx)
さしこもるまふしの影も明けそ行くさつをの弓末みしか夜のそら
さしこもる−まふしのかけも−あけそゆく−さつをのゆすゑ−みしかよのそら |
02870 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はによるともしの鹿を哀とも知らてふすゐの夢な覚しそ
よはによる−ともしのしかを−あはれとも−しらてふすゐの−ゆめなさましそ |
02871 |
未入力 正徹 (xxx)
のこるらんは山の照射もえつきてよらぬをしかの思ひはかりは
のこるらむ−はやまのともし−もえつきて−よらぬをしかの−おもひはかりは |
02872 |
未入力 正徹 (xxx)
よる鹿はは山の陰にあらはれぬともしの松かねになかねとも
よるしかは−はやまのかけに−あらはれぬ−ともしのまつか−ねになかねとも |
02873 |
未入力 正徹 (xxx)
猶たのめもゆるともしの松山に波こす鹿のおのか契を
なほたのめ−もゆるともしの−まつやまに−なみこすしかの−おのかちきりを |
02874 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間もる嶺の庵の蚊遣火をともしとみてや鹿のよるらん
このまもる−みねのいほりの−かやりひを−ともしとみてや−しかのよるらむ |
02875 |
未入力 正徹 (xxx)
夏山のほくしの鹿の身を捨ては秋のおもひや薪つきなん
なつやまの−ほくしのしかの−みをすては−あきのおもひや−たききつきなむ |
02876 |
未入力 正徹 (xxx)
立つ鹿の深山やつらき春たにも雪消えなくの松のほくしに
たつしかの−みやまやつらき−はるたにも−ゆききえなくの−まつのほくしに |
02877 |
未入力 正徹 (xxx)
たつ鹿の上毛の星かほたるかも夜のさつをの嶺にたく火か
たつしかの−うはけのほしか−ほたるかも−よるのさつをの−みねにたくひか |
02878 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿は見てよるやほくしをさしも草もゆるいふきの嶺の夕やみ
しかはみて−よるやほくしを−さしもくさ−もゆるいふきの−みねのゆふやみ |
02879 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿は毛もぬれて夏野の草にふせほさし木陰はほくしもゆとも
しかはけも−ぬれてなつのの−くさにふせ−ほさしこかけは−ほくしもゆとも |
02880 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲にはや引きかくせともしたつは山か峰に鹿そよるなる
よこくもに−はやひきかくせ−ともしたつ−はやまかみねに−しかそよるなる |
02881 |
未入力 正徹 (xxx)
暁のわかれはしかもつらしとやもゆるともしに身をは捨つらん
あかつきの−わかれはしかも−つらしとや−もゆるともしに−みをはすつらむ |
02882 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるかのほる煙もみしか夜の嶺のともしのまつとせしまに
あけぬるか−のほるけふりも−みしかよの−みねのともしの−まつとせしまに |
02883 |
未入力 正徹 (xxx)
山に入る月ありとてもたとへめや雨くらき夜の閨のかはほり
やまにいる−つきありとても−たとへめや−あめくらきよの−ねやのかはほり |
02884 |
未入力 正徹 (xxx)
夕顔の花のゆくへそおもひちるやとれる露もしろき扇に
ゆふかほの−はなのゆくへそ−おもひちる−やとれるつゆも−しろきあふきに |
02885 |
未入力 正徹 (xxx)
まよひける道をおもへは動かさて扇に風を尋ねこしかな
まよひける−みちをおもへは−うこかさて−あふきにかせを−たつねこしかな |
02886 |
未入力 正徹 (xxx)
月しろき扇の色に夏過きは嶺の紅葉やつまをこかさん
つきしろき−あふきのいろに−なつすきは−みねのもみちや−つまをこかさむ |
02887 |
未入力 正徹 (xxx)
人とははかさなる山にかくるとも扇にかける月やこたへん
ひととはは−かさなるやまに−かくるとも−あふきにかける−つきやこたへむ |
02888 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間より影もる宿のあつき日にかさす扇につまこかすらん
このまより−かけもるやとの−あつきひに−かさすあふきに−つまこかすらむ |
02889 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかしる手を動かせはおのつから扇の風のいつる所を
たれかしる−てをうこかせは−おのつから−あふきのかせの−いつるところを |
02890 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣そら吹く風にまかせてや日影にかさすあふきなるらん
なつころも−そらふくかせに−まかせてや−ひかけにかさす−あふきなるらむ |
02891 |
未入力 正徹 (xxx)
秋を引く手にはならさす涼しさを月の扇の風にまかせて
あきをひく−てにはならさす−すすしさを−つきのあふきの−かせにまかせて |
02892 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の閨のあふきの風をいたみ月よりけなる床の露かな
あかつきの−ねやのあふきの−かせをいたみ−つきよりけなる−とこのつゆかな |
02893 |
未入力 正徹 (xxx)
宿ふりてくらき閨とふかはほりを又手にならす風もうるさし
やとふりて−くらきねやとふ−かはほりを−またてにならす−かせもうるさし |
02894 |
未入力 正徹 (xxx)
壁に生ふる草をおもへは閨の中の扇に風の種はありけり
かへにおふる−くさをおもへは−ねやのうちの−あふきにかせの−たねはありけり |
02895 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそへはあふきも閨にかれそ行くたか秋風のはしした・ふらん
みにそへは−あふきもねやに−かれそゆく−たかあきかせの−はししたふらむ |
02896 |
未入力 正徹 (xxx)
たとふらん閨もる月を手にならす風やかへりて空に涼しき
たとふらむ−ねやもるつきを−てにならす−かせやかへりて−そらにすすしき |
02897 |
未入力 正徹 (xxx)
閨のうちのしろき扇やこかすらんすたく蛍のもゆるおもひに
ねやのうちの−しろきあふきや−こかすらむ−すたくほたるの−もゆるおもひに |
02898 |
未入力 正徹 (xxx)
手ならせは閨の小莚ちりもなし扇や人のちきりなるらん
てならせは−ねやのさむしろ−ちりもなし−あふきやひとの−ちきりなるらむ |
02899 |
未入力 正徹 (xxx)
あれわたる閨の扇の色にもる月をかくすな夜はの村雲
あれわたる−ねやのあふきの−いろにもる−つきをかくすな−よはのむらくも |
02900 |
未入力 正徹 (xxx)
もる月もしろき扇は夏のよの閨にも雪をあつめてそみる
もるつきも−しろきあふきは−なつのよの−ねやにもゆきを−あつめてそみる |
02901 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはにまたさし出てぬ日扇も風ぬるからぬ閨の朝露
やまのはに−またさしいてぬ−ひあふきも−かせぬるからぬ−ねやのあさつゆ |
02902 |
未入力 正徹 (xxx)
てにならす外にそいとふかほほりの荒れたる閨にさわく羽風は
てにならす−ほかにそいとふ−かほほりの−あれたるねやに−さわくはかせは |
02903 |
未入力 正徹 (xxx)
六月も秋たつ風はぬるからし閨の扇を手にやまかせん
みなつきも−あきたつかせは−ぬるからし−ねやのあふきを−てにやまかせむ |
02904 |
未入力 正徹 (xxx)
身にならす閨の扇に結ふ糸のひかれぬ秋の風ぬるくして
みにならす−ねやのあふきに−むすふいとの−ひかれぬあきの−かせぬるくして |
02905 |
未入力 正徹 (xxx)
かはほりの風よき閨にもる月の影も扇の色そ涼しき
かはほりの−かせよきねやに−もるつきの−かけもあふきの−いろそすすしき |
02906 |
未入力 正徹 (xxx)
いてしまの月のゆかりか紫の扇を雲のね屋の一むら
いてしまの−つきのゆかりか−むらさきの−あふきをくもの−ねやのひとむら |
02907 |
未入力 正徹 (xxx)
手にむすふ岩まのし水ちる玉にかつかついそく秋の白露
てにむすふ−いはまのしみつ−ちるたまに−かつかついそく−あきのしらつゆ |
02908 |
未入力 正徹 (xxx)
岩枕し水に秋をよせ来なりむすふたもとのしたのささ波
いはまくら−しみつにあきを−よせきなり−むすふたもとの−したのささなみ |
02909 |
未入力 正徹 (xxx)
うら風も吹飯の波に幾夜ねぬ閨の泉を庭にたたへて
うらかせも−ふけひのなみに−いくよねぬ−ねやのいつみを−にはにたたへて |
02910 |
未入力 正徹 (xxx)
岩まもる水の心にあひの風ふくや夏なき松のこゑかな
いはまもる−みつのこころに−あひのかせ−ふくやなつなき−まつのこゑかな |
02911 |
未入力 正徹 (xxx)
むすふまは夏こそよそに忘水わすれさりけり冬の氷は
むすふまは−なつこそよそに−わすれみつ−わすれさりけり−ふゆのこほりは |
02912 |
未入力 正徹 (xxx)
とへかしなし水の上のかりやかたかりそめならぬ夏のふるさと
とへかしな−しみつのうへの−かりやかた−かりそめならぬ−なつのふるさと |
02913 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月や山のし水の音かきに春のとなりの秋風のこゑ
みなつきや−やまのしみつの−いはかきに−はるのとなりの−あきかせのこゑ |
02914 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かくれ波こす山の滝のもとよりこぬ夏をはらふしら玉
いはかくれ−なみこすやまの−たきのもと−よりこぬなつを−はらふしらたま |
02915 |
未入力 正徹 (xxx)
滝をたて嵐をぬきの苔衣なつる岩ほもぬれて涼しき
たきをたて−あらしをぬきの−こけころも−なつるいはほも−ぬれてすすしき |
02916 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるまてあかす泉にむかふ日は思ひわすれぬ埋火のもと
くるるまて−あかすいつみに−むかふひは−おもひわすれぬ−うつみひのもと |
02917 |
未入力 正徹 (xxx)
夏そなき玉ちる滝の岩波に日かすしくるる松の下風
なつそなき−たまちるたきの−いはなみに−ひかすしくるる−まつのしたかせ |
02918 |
未入力 正徹 (xxx)
都まて涼しかれとやかよふらんうたの氷室にくるる山風
みやこまて−すすしかれとや−かよふらむ−うたのひむろに−くるるやまかせ |
02919 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰やうたの氷室のうたかたも夏なき水の上そ涼しき
やまかけや−うたのひむろの−うたかたも−なつなきみつの−うへそすすしき |
02920 |
未入力 正徹 (xxx)
夏とたにいさしら波も川風にさゆる氷室のつもる雪かな
なつとたに−いさしらなみも−かはかせに−さゆるひむろの−つもるゆきかな |
02921 |
未入力 正徹 (xxx)
六月の夜半に涼しき所とや氷室戸たたく水鶏なるらん
みなつきの−よはにすすしき−ところとや−ひむろとたたく−くひななるらむ |
02922 |
未入力 正徹 (xxx)
山風のたたくも涼し松の陰氷のこもる室の戸口は
やまかせの−たたくもすすし−まつのかけ−こほりのこもる−むろのとくちは |
02923 |
未入力 正徹 (xxx)
松か崎いそく都のつとにおきて氷をはこふ氷室守かな
まつかさき−いそくみやこの−つとにおきて−こほりをはこふ−ひむろもりかな |
02924 |
未入力 正徹 (xxx)
氷室山たかつの宮のさためしや消えぬ氷のはしめなりけん
ひむろやま−たかつのみやの−さためしや−きえぬこほりの−はしめなりけむ |
02925 |
未入力 正徹 (xxx)
松か崎これも都の草つとに氷をつつむ夏の山人
まつかさき−これもみやこの−くさつとに−こほりをつつむ−なつのやまひと |
02926 |
未入力 正徹 (xxx)
よもあけし冬のこもれる氷室戸を照る日の夏の風なたたきそ
よもあけし−ふゆのこもれる−ひむろとを−てるひのなつの−かせなたたきそ |
02927 |
未入力 正徹 (xxx)
夏は又せき入れておとす氷室川氷や波の下をとつらん
なつはまた−せきいれておとす−ひむろかは−こほりやなみの−したをとつらむ |
02928 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の日の影を都のつとにおきていそく氷のしつくにそしる
なつのひの−かけをみやこの−つとにおきて−いそくこほりの−しつくにそしる |
02929 |
未入力 正徹 (xxx)
山岸のしつくの露か氷室風さえぬ時なくこほるした柴
やまきしの−しつくのつゆか−ひむろかせ−さえぬときなく−こほるしたしは |
02930 |
未入力 正徹 (xxx)
さすか猶此世をうたの氷室守夏なき山に心とむらん
さすかなほ−このよをうたの−ひむろもり−なつなきやまに−こころとむらむ |
02931 |
未入力 正徹 (xxx)
夕波そ夏の冬なる氷室山せき入れし川や下こほるらん
ゆふなみそ−なつのふゆなる−ひむろやま−せきいれしかはや−したこほるらむ |
02932 |
未入力 正徹 (xxx)
風さむき氷室のかけの山人はいててやよそに夏をしるらん
かせさむき−ひむろのかけの−やまひとは−いててやよそに−なつをしるらむ |
02933 |
未入力 正徹 (xxx)
氷室山いたすこほりのしつくかも露ふく野への風そ涼しき
ひむろやま−いたすこほりの−しつくかも−つゆふくのへの−かせそすすしき |
02934 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月の川波さえて氷室山しをる立木そちらぬ木からし
みなつきの−かはなみさえて−ひむろやま−しをるたちきそ−ちらぬこからし |
02935 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間もる朝日に出たす氷室守やかてしつくや袖に涼しき
このまもる−あさひにいたす−ひむろもり−やかてしつくや−そてにすすしき |
02936 |
未入力 正徹 (xxx)
氷室戸にせきいるる水の朝氷さゆるや冬のふもとなるらん
ひむろとに−せきいるるみつの−あさこほり−さゆるやふゆの−ふもとなるらむ |
02937 |
未入力 正徹 (xxx)
あさのまは都のつとに袖ぬれぬ氷や夏の思ひなるらん
あさのまは−みやこのつとに−そてぬれぬ−こほりやなつの−おもひなるらむ |
02938 |
未入力 正徹 (xxx)
室いたす朝けのまにもかつとけてひ水になりぬ六月の空
むろいたす−あさけのまにも−かつとけて−ひみつになりぬ−みなつきのそら |
02939 |
未入力 正徹 (xxx)
松か崎都のつとのしつくかも朝露こほるみちの夏草
まつかさき−みやこのつとの−しつくかも−あさつゆこほる−みちのなつくさ |
02940 |
未入力 正徹 (xxx)
松か崎氷室あさ吹く北風にいはひてむかふ駒や涼しき
まつかさき−ひむろあさふく−きたかせに−いはひてむかふ−こまやすすしき |
02941 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月の氷をいたす衣手に吹くやあさけの山の木からし
みなつきの−こほりをいたす−ころもてに−ふくやあさけの−やまのこからし |
02942 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世に岩ほに生ふる松か崎雪もこほりの種となりけん
いつのよに−いはほにおふる−まつかさき−ゆきもこほりの−たねとなりけむ |
02943 |
未入力 正徹 (xxx)
松か崎さゆる氷室の川風にをのの山田も水そ涼しき
まつかさき−さゆるひむろの−かはかせに−をののやまたも−みつそすすしき |
02944 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらし守る身やうたの氷室川こん世涼しき瀬をも思はて
そてぬらし−もるみやうたの−ひむろかは−こむよすすしき−せをもおもはて |
02945 |
未入力 正徹 (xxx)
島つ鳥うた山川にむれそゐる氷室涼しき槙のした陰
しまつとり−うたやまかはに−むれそゐる−ひむろすすしき−まきのしたかけ |
02946 |
未入力 正徹 (xxx)
六月の東路涼し氷室にもをさめぬ雪のふしの根颪
みなつきの−あつまちすすし−ひむろにも−をさめぬゆきの−ふしのねおろし |
02947 |
未入力 正徹 (xxx)
氷室戸はあけおくものをつけの野にうけらか花そ開く世もなき
ひむろとは−あけおくものを−つけののに−うけらかはなそ−ひらくよもなき |
02948 |
未入力 正徹 (xxx)
日数さへつもる岩井にすむ水の底の心もしらぬ夏かな
ひかすさへ−つもるいはゐに−すむみつの−そこのこころも−しらぬなつかな |
02949 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の日も消えてそ結ふ風そよくならの陰もる水のうたかた
なつのひも−きえてそむすふ−かせそよく−ならのかけもる−みつのうたかた |
02950 |
未入力 正徹 (xxx)
露かかる蝉のは袖の朝しめりほすかぬらすか柞の下風
つゆかかる−せみのはそての−あさしめり−ほすかぬらすか−ならのしたかせ |
02951 |
未入力 正徹 (xxx)
下陰の岩かきし水苔莚ほかゆく夏をしき忍ふとて
したかけの−いはかきしみつ−こけむしろ−ほかゆくなつを−しきしのふとて |
02952 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは波の玉ちるみな月の真砂に秋やとつの浜風
すすしさは−なみのたまちる−みなつきの−まさこにあきや−とつのはまかせ |
02953 |
未入力 正徹 (xxx)
山おろし谷の川かせ吹きのほり簾にとほる暮そ涼しき
やまおろし−たにのかはかせ−ふきのほり−すたれにとほる−くれそすすしき |
02954 |
未入力 正徹 (xxx)
もり出つる音そ涼しき岩枕し水を袖のうちにまかせて
もりいつる−おとそすすしき−いはまくら−しみつをそての−うちにまかせて |
02955 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月の夕暮かけてもろこしの風なき山も水や涼しき
みなつきの−ゆふくれかけて−もろこしの−かせなきやまも−みつやすすしき |
02956 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちよらん木陰まれなる都にもし水はありて汲むそ涼しき
たちよらむ−こかけまれなる−みやこにも−しみつはありて−くむそすすしき |
02957 |
未入力 正徹 (xxx)
むすふまの手にまく水の玉ゆらも消えて夏なき山のいさら井
むすふまの−てにまくみつの−たまゆらも−きえてなつなき−やまのいさらゐ |
02958 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣身につく程の朝しめりほすなよしはし木木の下風
なつころも−みにつくほとの−あさしめり−ほすなよしはし−ききのしたかせ |
02959 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさほと山の谷の水のこゑ秋にまさ木をしをる松風
すすしさは−とやまのたにの−みつのこゑ−あきにまさきを−しをるまつかせ |
02960 |
未入力 正徹 (xxx)
池すすし広葉柏に風ためてし水かきやる山の岩かけ
いけすすし−ひろはかしはに−かせためて−しみつかきやる−やまのいはかけ |
02961 |
未入力 正徹 (xxx)
山隠岩ほそはたつ松かねの枕椋しきそてのした水
やまかくれ−いはほそはたつ−まつかねの−まくらすすしき−そてのしたみつ |
02962 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もこす夏ともいかか岩ね松苔もみとりのあらし吹くかけ
あきもこす−なつともいかか−いはねまつ−こけもみとりの−あらしふくかけ |
02963 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰の水と風とになかれくる秋の日数や夏をこゆらん
やまかけの−みつとかせとに−なかれくる−あきのひかすや−なつをこゆらむ |
02964 |
未入力 正徹 (xxx)
くるる夜は夢にかへらん宿もうしすすむ木陰の秋風にして
くるるよは−ゆめにかへらむ−やともうし−すすむこかけの−あきかせにして |
02965 |
未入力 正徹 (xxx)
滝のもとよりゐる岩は水よりも身にとほるまてさゆる夏かな
たきのもと−よりゐるいはは−みつよりも−みにとほるまて−さゆるなつかな |
02966 |
未入力 正徹 (xxx)
いとまなみ玉藻かるをの夏衣涼しくかをるなたの塩風
いとまなみ−たまもかるをの−なつころも−すすしくかをる−なたのしほかせ |
02967 |
未入力 正徹 (xxx)
静なる心にすめは身は涼し光にやとれ夏のよの月
しつかなる−こころにすめは−みはすすし−ひかりにやとれ−なつのよのつき |
02968 |
未入力 正徹 (xxx)
日の影ももらぬ深山の真砂川あさきなかれの風そ涼しき
ひのかけも−もらぬみやまの−まさこかは−あさきなかれの−かせそすすしき |
02969 |
未入力 正徹 (xxx)
そなれ松水なき陰も涼しきはしける草葉を結ふ山風
そなれまつ−みつなきかけも−すすしきは−しけるくさはを−むすふやまかせ |
02970 |
未入力 正徹 (xxx)
深山木の色かけ涼し苔莚しきみにかをる露の朝風
みやまきの−いろかけすすし−こけむしろ−しきみにかをる−つゆのあさかせ |
02971 |
未入力 正徹 (xxx)
夕風も杉のふもとの三輪川にすすむともなくかへる市人
ゆふかせも−すきのふもとの−みわかはに−すすむともなく−かへるいちひと |
02972 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐をも露をもうけて夏衣袖に涼しき松のした陰
あらしをも−つゆをもうけて−なつころも−そてにすすしき−まつのしたかけ |
02973 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたかわきて涼しき風かよふもやも下屋もおなし木の本
いつかたか−わきてすすしき−かせかよふ−もやもしもやも−おなしこのもと |
02974 |
未入力 正徹 (xxx)
下荻のはや吹きこゆる夕風をうけて涼しき木のもとの宿
したをきの−はやふきこゆる−ゆふかせを−うけてすすしき−このもとのやと |
02975 |
未入力 正徹 (xxx)
衣手にあさ露おつる松の陰立ちさる夏を送る山かせ
ころもてに−あさつゆおつる−まつのかけ−たちさるなつを−おくるやまかせ |
02976 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは雨か露かと袖しめるしけ木の中のかせのした道
すすしさは−あめかつゆかと−そてしめる−しけきのうちの−かせのしたみち |
02977 |
未入力 正徹 (xxx)
岡辺の夕かけ草の露の上に夏なき秋のかよふ松風
をかへのゆ−ふかけくさのつ−ゆのうへに−なつなきあきの−かよふまつかせ |
02978 |
未入力 正徹 (xxx)
奥山の雲の夕波滝の糸風こそむすへ夏はよりこす
おくやまの−くものゆふなみ−たきのいと−かせこそむすへ−なつはよりこす |
02979 |
未入力 正徹 (xxx)
氷れるか夏も深井のつるへ縄くりあくる水におつるしら玉
こほれるか−なつもふかゐの−つるへなは−くりあくるみつに−おつるしらたま |
02980 |
未入力 正徹 (xxx)
夕波に夏もやいなの湊風秋をよせくる興つ舟人
ゆふなみに−なつもやいなの−みなとかせ−あきをよせくる−おきつふなひと |
02981 |
未入力 正徹 (xxx)
清滝やいつくを夏と岩波もはやく身にしむ袖の川風
きよたきや−いつくをなつと−いはなみも−はやくみにしむ−そてのかはかせ |
02982 |
未入力 正徹 (xxx)
夕波に夏の日数はなかれつきぬ秋風うかふ天の川上
ゆふなみに−なつのひかすは−なかれつきぬ−あきかせうかふ−あまのかはかみ |
02983 |
未入力 正徹 (xxx)
うたかたそ消えて涼しきふしの根も雪六月の中川の水
うたかたそ−きえてすすしき−ふしのねも−ゆきみなつきの−なかかはのみつ |
02984 |
未入力 正徹 (xxx)
鳰の海や袖こす波にこきむかふ舟人涼し興つ島風
にほのうみや−そてこすなみに−こきむかふ−ふなひとすすし−おきつしまかせ |
02985 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさそ風にもまさる太山陰木の下はらふ滝のしら波
すすしさそ−かせにもまさる−みやまかけ−このもとはらふ−たきのしらなみ |
02986 |
未入力 正徹 (xxx)
たえす立つ煙の色も涼しきや水の心を川しまの松
たえすたつ−けふりのいろも−すすしきや−みつのこころを−かはしまのまつ |
02987 |
未入力 正徹 (xxx)
太山路の松の奥よりなかれ出つるいさら小川も夏のためとや
みやまちの−まつのおくより−なかれいつる−いさらをかはも−なつのためとや |
02988 |
未入力 正徹 (xxx)
結ふ手のしつくにそそく松かねの苔も色こき夏の山の井
むすふての−しつくにそそく−まつかねの−こけもいろこき−なつのやまのゐ |
02989 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝の葉かけ涼しき萍はさそふ水あれといなんともせす
まつかえの−はかけすすしき−うきくさは−さそふみつあれと−いなむともせす |
02990 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる山あひの水は藍よりも色こき夏にそむ心かな
まつたてる−やまあひのみつは−あゐよりも−いろこきなつに−そむこころかな |
02991 |
未入力 正徹 (xxx)
夏かりの藍より出てぬ松陰の岩まの水もみとり染めつつ
なつかりの−あゐよりいてぬ−まつかけの−いはまのみつも−みとりそめつつ |
02992 |
未入力 正徹 (xxx)
六月ややとる日影も山水の春のままなる松風のおく
みなつきや−やとるひかけも−やまみつの−はるのままなる−まつかせのおく |
02993 |
未入力 正徹 (xxx)
山松のしつえうこかしうつ風に小波かたよる池の涼しさ
やままつの−しつえうこかし−うつかせに−さなみかたよる−いけのすすしさ |
02994 |
未入力 正徹 (xxx)
蓬生やみそきにちかき茅原風夕つけて吹く川辺涼しも
よもきふや−みそきにちかき−ちはらかせ−ゆふつけてふく−かはへすすしも |
02995 |
未入力 正徹 (xxx)
六月の雲のはたてにみたれきてあさの衣に秋風そ吹く
みなつきの−くものはたてに−みたれきて−あさのころもに−あきかせそふく |
02996 |
未入力 正徹 (xxx)
水無月のゆふつけ行くも秋にして心露けき荻の下風
みなつきの−ゆふつけゆくも−あきにして−こころつゆけき−をきのしたかせ |
02997 |
未入力 正徹 (xxx)
夏ならぬこゑこそましれ秋やきて先やとり木になるる松風
なつならぬ−こゑこそましれ−あきやきて−まつやとりきに−なるるまつかせ |
02998 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは松の落葉のちりもゐす木下はらふ滝つ川風
すすしさは−まつのおちはの−ちりもゐす−このもとはらふ−たきつかはかせ |
02999 |
未入力 正徹 (xxx)
玉鉾の道行ふりも涼しきは山川はやき杉の本立
たまほこの−みちゆきふりも−すすしきは−やまかははやき−すきのもとたち |
03000 |
未入力 正徹 (xxx)
茂りたつ木の本とほき山水のなかれのおくは秋風そ吹く
しけりたつ−このもととほき−やまみつの−なかれのおくは−あきかせそふく |
03001 |
未入力 正徹 (xxx)
百草のたもとも夏はせはからて広葉の柞の木木の下風
ももくさの−たもともなつは−せはからて−ひろはのならの−ききのしたかせ |
03002 |
未入力 正徹 (xxx)
夏きてそ世をすて人もあひに合ふ木下石の上のすまひ
なつきてそ−よをすてひとも−あひにあふ−きのしたいしの−うへのすまひは |
03003 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ふれて心秋なりみな月のゆふつけて行く水と風とに
そてふれて−こころあきなり−みなつきの−ゆふつけてゆく−みつとかせとに |
03004 |
未入力 正徹 (xxx)
松の陰すすめとなれるゆふへかな風と水とのこころくらへに
まつのかけ−すすめとなれる−ゆふへかな−かせとみつとの−こころくらへに |
03005 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かねの水も草なし秋の風かくれてやとる谷の松陰
いはかねの−みつもくさなし−あきのかせ−かくれてやとる−たにのまつかけ |
03006 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立は玉みる露とみたれきぬ末野の草の袖の追風
ゆふたちは−たまみるつゆと−みたれきぬ−すゑののくさの−そてのおひかせ |
03007 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月のてる日もしらぬ太山風滝の岩屋に秋やこもれる
みなつきの−てるひもしらぬ−みやまかせ−たきのいはやに−あきやこもれる |
03008 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やくる二のほしもいててきけみそきする夜の天川風
あきやくる−ふたつのほしも−いててきけ−みそきするよの−あまのかはかせ |
03009 |
未入力 正徹 (xxx)
六月の御祓にちかき山川の瀬のなる声やうたふささ波
みなつきの−みそきにちかき−やまかはの−せのなるこゑや−うたふささなみ |
03010 |
未入力 正徹 (xxx)
うらむらんかきほのま葛夏なから秋に吹く風の心かはりを
うらむらむ−かきほのまくす−なつなから−あきにふくかせの−こころかはりを |
03011 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の空にのこる有明もおもふらん今いくか有りて秋のよの月
なつのそらに−のこるありあけも−おもふらむ−いまいくかありて−あきのよのつき |
03012 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は庭の蓬か杣山にたつ蚊の声や宮木引くらん
ゆふくれは−にはのよもきか−そまやまに−たつかのこゑや−みやきひくらむ |
03013 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかにと身をもちなせはし水より心掠しき松のした庵
しつかにと−みをもちなせは−しみつより−こころすすしき−まつのしたいほ |
03014 |
未入力 正徹 (xxx)
六月のやすの川風網代木に秋はいさよふ風そ涼しき
みなつきの−やすのかはかせ−あしろきに−あきはいさよふ−かせそすすしき |
03015 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立は山より晴れて鳰の海の漕く舟こえてわたる雲かな
ゆふたちは−やまよりはれて−にほのうみの−こくふねこえて−わたるくもかな |
03016 |
未入力 正徹 (xxx)
しけき野の朝露分くる夏衣ぬるるもすそに秋風そ吹く
しけきのの−あさつゆわくる−なつころも−ぬるるもすそに−あきかせそふく |
03017 |
未入力 正徹 (xxx)
あつき日の雲も衣は一重山いさ行きつれん身になかさねそ
あつきひの−くももころもは−ひとへやま−いさゆきつれむ−みになかさねそ |
03018 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺こゆる雲の衣をぬきすててくたれはうすき袖の上風
みねこゆる−くものころもを−ぬきすてて−くたれはうすき−そてのうはかせ |
03019 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣今朝の山路の袖ほせはもすそにのほる野への夕露
なつころも−けさのやまちの−そてほせは−もすそにのほる−のへのゆふつゆ |
03020 |
未入力 正徹 (xxx)
風涼しあさのさ衣たてぬきも薄き雲路のみねの梯
かせすすし−あさのさころも−たてぬきも−うすきくもちの−みねのかけはし |
03021 |
未入力 正徹 (xxx)
うちわたす遠かた人の旅衣日も夕かほの寝やとふらん
うちわたす−をちかたひとの−たひころも−ひもゆふかほの−やとやとふらむ |
03022 |
未入力 正徹 (xxx)
明くる夜の山郭公こゑ過きてかはらぬ嶺の松そのこれる
あくるよの−やまほとときす−こゑすきて−かはらぬみねの−まつそのこれる |
03023 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはなる入江の芦の夏よりも青葉かさなる鴨のむら立
あらはなる−いりえのあしの−なつよりも−あをはかさなる−かものむらたち |
03024 |
未入力 正徹 (xxx)
すさの江の波に色かれ鳥の名もあちさへさけるあつまのの原
すさのえの−なみにいろかれ−とりのなも−あちさへさける−あつまののはら |
03025 |
未入力 正徹 (xxx)
影なからいつる高根に匂ふなり卯月の花の雪のしら雲
かけなから−いつるたかねに−にほふなり−うつきのはなの−ゆきのしらくも |
03026 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへの雲の糸すちみたるなり天つをとめや夏そ引くらし
しろたへの−くものいとすち−みたるなり−あまつをとめや−なつそひくらし |
03027 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しさは昨日の道の夕立に塵もあからぬ袖のあさ風
すすしさは−きのふのみちの−ゆふたちに−ちりもあからぬ−そてのあさかせ |
03028 |
未入力 正徹 (xxx)
誰もみな見はてぬ夢のみしか夜に秋のね覚のしけき老かな
たれもみな−みはてぬゆめの−みしかよに−あきのねさめの−しけきおいかな |
03029 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれん秋風いそく桐の葉や身をうき草の心しるらん
さそはれむ−あきかせいそく−きりのはや−みをうきくさの−こころしるらむ |
03030 |
未入力 正徹 (xxx)
玉くしけ二毛の塵にゐる星もかつあらはるる野への曙
たまくしけ−ふたけのちりに−ゐるほしも−かつあらはるる−のへのあけほの |
03031 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しくも今朝そ手ならす夏のよの雲のいつくの月の扇を
すすしくも−けさそてならす−なつのよの−くものいつくの−つきのあふきを |
03032 |
未入力 正徹 (xxx)
露もまた置きあへぬ床の朝しめりおほえすかろき夏衣かな
つゆもまた−おきあへぬとこの−あさしめり−おほえすかろき−なつころもかな |
03033 |
未入力 正徹 (xxx)
玉とちる露吹く風に出つる日もすすむか涼し嶺の木の本
たまとちる−つゆふくかせに−いつるひも−すすむかすすし−みねのこのもと |
03034 |
未入力 正徹 (xxx)
草茂る野守の鏡春日野になかはみかける夕月の影
くさしける−のもりのかかみ−かすかのに−なかはみかける−ゆふつきのかけ |
03035 |
未入力 正徹 (xxx)
おほつかなそこらの事を見し夢のさむる沈は夏のよにして
おほつかな−そこらのことを−みしゆめの−さむるまくらは−なつのよにして |
03036 |
未入力 正徹 (xxx)
五月闇くらき枕の蚊のこゑにいとふ煙もなかき夏のよ
さつきやみ−くらきまくらの−かのこゑに−いとふけふりも−なかきなつのよ |
03037 |
未入力 正徹 (xxx)
葉をしけみ木のもとかかり遠く焼くほかけ涼しき庭の夕やみ
はをしけみ−このもとかかり−とほくたく−ほかけすすしき−にはのゆふやみ |
03038 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うかれ風まよふ夜の橘にやみのうつつの袖のかそする
くもうかれ−かせまよふよの−たちはなに−やみのうつつの−そてのかそする |
03039 |
未入力 正徹 (xxx)
中川の宿のひさしのこすのまに風吹きとほせ夏の夕やみ
なかかはの−やとのひさしの−こすのまに−かせふきとほせ−なつのゆふやみ |
03040 |
未入力 正徹 (xxx)
わたとのの泉涼しきうたたねに風吹きとほせ中川のやと
わたとのの−いつみすすしき−うたたねに−かせふきとほせ−なかかはのやと |
03041 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはに出つるを見んと槙の戸をあくれは明くる夏のよの月
やまのはに−いつるをみむと−まきのとを−あくれはあくる−なつのよのつき |
03042 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣たもとにとほる蚊のこゑを打ちはらふまに明くる夜はかな
なつころも−たもとにとほる−かのこゑを−うちはらふまに−あくるよはかな |
03043 |
未入力 正徹 (xxx)
夏のよの夢のわたりの川波は袖に涼しき涙なりけり
なつのよの−ゆめのわたりの−かはなみは−そてにすすしき−なみたなりけり |
03044 |
未入力 正徹 (xxx)
朝のまに明くるは五月さまさまに見えてのこらぬ夢は秋の夜
あさのまに−あくるはさつき−さまさまに−みえてのこらぬ−ゆめはあきのよ |
03045 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の夜の明くるおもへは枕せぬねふりのうちの夢そ久しき
なつのよの−あくるおもへは−まくらせぬ−ねふりのうちの−ゆめそひさしき |
03046 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれてほす伊勢男のあまのしほたれて夏は日毎にしる衣かな
ぬれてほす−いせをのあまの−しほたれて−なつはひことに−しるころもかな |
03047 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣身にかかるともしら波の岩こす滝のうへの松風
なつころも−みにかかるとも−しらなみの−いはこすたきの−うへのまつかせ |
03048 |
未入力 正徹 (xxx)
むすひても猶身におもし行く水の淡はかりなるうすものの袖
むすひても−なほみにおもし−ゆくみつの−あわはかりなる−うすもののそて |
03049 |
未入力 正徹 (xxx)
あま人のしほたれ衣ほす網もかわくまはやき夏のうら風
あまひとの−しほたれころも−ほすあみも−かわくまはやき−なつのうらかせ |
03050 |
未入力 正徹 (xxx)
猶涼し大宮人の夏衣氷水に風のいとまある日も
なほすすし−おほみやひとの−なつころも−ひみつにかせの−いとまあるひも |
03051 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣うらなる玉とちるあせをわするはかりの秋風もかな
なつころも−うらなるたまと−ちるあせを−わするはかりの−あきかせもかな |
03052 |
未入力 正徹 (xxx)
花ちりし雲の衣のしらかさねそれさへ今はうすき夏かな
はなちりし−くものころもの−しらかさね−それさへいまは−うすきなつかな |
03053 |
未入力 正徹 (xxx)
かつはるる緑の空か夕立の雲の衣のふたあゐの帯
かつはるる−みとりのそらか−ゆふたちの−くものころもの−ふたあゐのおひ |
03054 |
未入力 正徹 (xxx)
清水せく山松かねの苔むしろ枕も夏もしらぬ夢かな
しみつせく−やままつかねの−こけむしろ−まくらもなつも−しらぬゆめかな |
03055 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしなからなるるし水の岩枕むすひそへたるうたたねの夢
ふしなから−なるるしみつの−いはまくら−むすひそへたる−うたたねのゆめ |
03056 |
未入力 正徹 (xxx)
夏の夜の夢のうきはし橋板は閨にみしかき枕なりけり
なつのよの−ゆめのうきはし−はしいたは−ねやにみしかき−まくらなりけり |
03057 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこてわれのみとふのすか莚みしかく明くる夏の夜もなし
ひとはこて−われのみとふの−すかむしろ−みしかくあくる−なつのよもなし |
03058 |
未入力 正徹 (xxx)
やすくぬる夜はになのへそ一夏もとくへき法の莚ならすは
やすくぬる−よはになのへそ−ひとなつも−とくへきのりの−むしろならすは |
03059 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立になかれきにけり中川やせき入れぬ水も方たかへして
ゆふたちに−なかれきにけり−なかかはや−せきいれぬみつも−かたたかへして |
03060 |
未入力 正徹 (xxx)
むらむらに小波をたてて夏の池の水の上うつ庭の松風
むらむらに−さなみをたてて−なつのいけの−みつのうへうつ−にはのまつかせ |
03061 |
未入力 正徹 (xxx)
吹くも描くもる空よりみな月のてる日そ風はよもに涼しき
ふくもなほ−くもるそらより−みなつきの−てるひそかせは−よもにすすしき |
03062 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はまて茂る木陰やとはさらん花よりなれし風ならすは
のきはまて−しけるこかけや−とはさらむ−はなよりなれし−あらしならすは |
03063 |
未入力 正徹 (xxx)
夏をなみ吹くや嵐の山川に秋をたつねてよる一葉かな
なつをなみ−ふくやあらしの−やまかはに−あきをたつねて−よるひとはかな |
03064 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは結ひて袖にかくる花軒のあやめも匂ふけふかな
かせふけは−むすひてそてに−かくるはな−のきのあやめも−にほふけふかな |
03065 |
未入力 正徹 (xxx)
学ひえよこひねかほしきみな月の風のすかたを大和ことのは
まなひえよ−こひねかほしき−みなつきの−かせのすかたを−やまとことのは |
03066 |
未入力 正徹 (xxx)
箭のことく浅茅なかれてあつさ弓いくしのしてになひく川風
やのことく−あさちなかれて−あつさゆみ−いくしのしてに−なひくかはかせ |
03067 |
未入力 正徹 (xxx)
いくみそき浅瀬にとまる麻のはの見ぬ川島となれる夕は
いくみそき−あさせにとまる−あさのはの−みぬかはしまと−なれるゆふへは |
03068 |
未入力 正徹 (xxx)
夏河に鵜はひとりゐて飛ふ鷺のかす限なき滝の岩波
なつかはに−うはひとりゐて−とふさきの−かすかきりなき−たきのいはなみ |
03069 |
未入力 正徹 (xxx)
ともしたつさつをの弓すゑほのみてやおとろきいつる山郭公
ともしたつ−さつをのゆすゑ−ほのみてや−おとろきいつる−やまほとときす |
03070 |
未入力 正徹 (xxx)
夏川の浅瀬にあさるはなれ鵜にむらかりあかぬ鷺の一つれ
なつかはの−あさせにあさる−はなれうに−むらかりあかぬ−さきのひとつれ |
03071 |
未入力 正徹 (xxx)
橋姫の待つ夜もうちの島つ鳥うきてや波にあかしはつらん
はしひめの−まつよもうちの−しまつとり−うきてやなみに−あかしはつらむ |
03072 |
未入力 正徹 (xxx)
榊葉の香をかくはしみ郭公卯月のいみをさして鳴くこゑ
さかきはの−かをかくはしみ−ほとときす−うつきのいみを−さしてなくこゑ |
03073 |
未入力 正徹 (xxx)
ねにゆきしかへさや遠き朝からす雀なくまて夏そ声せぬ
ねにゆきし−かへさやとほき−あさからす−すすめなくまて−なつそこゑせぬ |
03074 |
未入力 正徹 (xxx)
郭公又一こゑに成りにけりおのか五月の杉の木隠
ほとときす−またひとこゑに−なりにけり−おのかさつきの−すきのこかくれ |
03075 |
未入力 正徹 (xxx)
おのか毛を花とたに見ん夏草の籬にあされ宿の庭鳥
おのかけを−はなとたにみむ−なつくさの−まかきにあされ−やとのにはとり |
03076 |
未入力 正徹 (xxx)
むれゐたる蛍そ玉江草かりのあしたつはみな空にのみして
むれゐたる−ほたるそたまえ−くさかりの−あしたつはみな−そらにのみして |
03077 |
未入力 正徹 (xxx)
下折は夏そきこえぬ村鷺のおもる川辺の松の白雪
したをれは−なつそきこえぬ−むらさきの−おもるかはへの−まつのしらゆき |
03078 |
未入力 正徹 (xxx)
行く蛍秋風吹くとつけん日もまた程遠き雲のうへかな
ゆくほたる−あきかせふくと−つけむひも−またほととほき−くものうへかな |
03079 |
未入力 正徹 (xxx)
蝉さへも身はもぬけけり生きなから老の姿をかへぬ世そうき
せみさへも−みはもぬけけり−いきなから−おいのすかたを−かへぬよそうき |
03080 |
未入力 正徹 (xxx)
竹のはによるは蛍の火をみれとすたきし蝉は一声もせす
たけのはに−よるはほたるの−ひをみれと−すたきしせみは−ひとこゑもせす |
03081 |
未入力 正徹 (xxx)
俄なる夏の雨風くもりきて木末の蛙こゑしきるなり
にはかなる−なつのあめかせ−くもりきて−こすゑのかはつ−こゑしきるなり |
03082 |
未入力 正徹 (xxx)
宮城野に立つやをしかの思草葉末のともし消ゆる夜もなし
みやきのに−たつやをしかの−おもひくさ−はすゑのともし−きゆるよもなし |
03083 |
未入力 正徹 (xxx)
御牧よりかる草おひて行く駒のあせもしほほの五月雨の比
みまきより−かるくさおひて−ゆくこまの−あせもしほほの−さみたれのころ |
03084 |
未入力 正徹 (xxx)
賀茂山やくらへし駒の道はかり草を冬ののみな月の比
かもやまや−くらへしこまの−みちはかり−くさをふゆのの−みなつきのころ |
03085 |
未入力 正徹 (xxx)
やすむまも夏のおも荷を引く牛のいきの小車はやめすもかな
やすむまも−なつのおもにを−ひくうしの−いきのをくるま−はやめすもかな |
03086 |
未入力 正徹 (xxx)
放ちかふ野飼の牛のわたり行く入江のさとも夏そ引くなり
はなちかふ−のかひのうしの−わたりゆく−いりえのさとも−なつそひくなり |
03087 |
未入力 正徹 (xxx)
なる神は空にしられぬ道辺に小車過きて夕立もなし
なるかみは−そらにしられぬ−みちのへに−をくるますきて−ゆふたちもなし |
03088 |
未入力 正徹 (xxx)
足よわき牛のやり縄ゆるきくる車そ夏も見るはくるしき
あしよわき−うしのやりなは−ゆるきくる−くるまそなつも−みるはくるしき |
03089 |
未入力 正徹 (xxx)
風あつく照る日の道にゆるきくる車の牛のあよむゆたけさ
かせあつく−てるひのみちに−ゆるきくる−くるまのうしの−あよむゆたけさ |
03090 |
未入力 正徹 (xxx)
よそなから見るさへ涼し柳陰川との風によする舟人
よそなから−みるさへすすし−やなきかけ−かはとのかせに−よするふなひと |
03091 |
未入力 正徹 (xxx)
岸つかけ茂る柳にまこもつむ舟みたれそふ遠の川波
きしつかけ−しけるやなきに−まこもつむ−ふねみたれそふ−をちのかはなみ |
03092 |
未入力 正徹 (xxx)
月はまた高瀬のよとのみなれさを袖こさぬまに明くるしののめ
つきはまた−たかせのよとの−みなれさを−そてこさぬまに−あくるしののめ |
03093 |
未入力 正徹 (xxx)
浦ちかく落ちあふ水の湊川にこるやあまの田草とるらん
うらちかく−おちあふみつの−みなとかは−にこるやあまの−たくさとるらむ |
03094 |
未入力 正徹 (xxx)
夏ふかき沢辺のね芹生ひぬれは鳥こそあされ摘む人はなし
なつふかき−さはへのねせり−おひぬれは−とりこそあされ−つむひとはなし |
03095 |
未入力 正徹 (xxx)
打ちなひく玉藻かくれにふす魚も淵に入るまて照すZの日
うちなひく−たまもかくれに−ふすうをも−ふちにいるまて−てらすなつのひ |
03096 |
未入力 正徹 (xxx)
難は江の芦のよのまの夏かりにむれゐるこ鳥もこやも隠れす
なにはえの−あしのよのまの−なつかりに−むれゐるとりも−こやもかくれす |
03097 |
未入力 正徹 (xxx)
夏ふかき沼水あつく照す日にみくり菱の葉色そつれなき
なつふかき−ぬまみつあつく−てらすひに−みくりひしのは−いろそつれなき |
03098 |
未入力 正徹 (xxx)
臥すほとも夏の雨夜のしなか鳥いかにさためてかるもかくらん
ふすほとも−なつのあまよの−しなかとり−いかにさためて−かるもかくらむ |
03099 |
未入力 正徹 (xxx)
ふらぬまもくもる五月の雨しめりたもとやおもき蝉のは衣
ふらぬまも−くもるさつきの−あましめり−たもとやおもき−せみのはころも |
03100 |
未入力 正徹 (xxx)
山風の雲吹くこゑも荒く成りて五月雨あかる夕立の空
やまかせの−くもふくこゑも−あらくなりて−さみたれあかる−ゆふたちのそら |
03101 |
未入力 正徹 (xxx)
むら消し春もかかりき卯花の雪をくたしてふれる雨かな
むらきえし−はるもかかりき−うのはなの−ゆきをくたして−ふれるあめかな |
03102 |
未入力 正徹 (xxx)
よるふりし庭の小草の朝しめりこまかにおくも露そ涼しき
よるふりし−にはのこくさの−あさしめり−こまかにおくも−つゆそすすしき |
03103 |
未入力 正徹 (xxx)
五月雨の後せにくもる夕立も椎柴見えてはるる山風
さみたれの−のちせにくもる−ゆふたちも−しひしはみえて−はるるやまかせ |
03104 |
未入力 正徹 (xxx)
雨しをる花橘におつるかなむかしの人の袖のしつくは
あめしをる−はなたちはなに−おつるかな−むかしのひとの−そてのしつくは |
03105 |
未入力 正徹 (xxx)
橘の花はちりにし木のもとに袖のかうとき風そ涼しき
たちはなの−はなはちりにし−このもとに−そてのかうとき−かせそすすしき |
03106 |
未入力 正徹 (xxx)
雨過くる雲の衣の行すゑに花たちはなの袖の香やせん
あめすくる−くものころもの−ゆくすゑに−はなたちはなの−そてのかやせむ |
03107 |
未入力 正徹 (xxx)
年にとる梶のもとつ葉一秋もちらぬをうしと夏や色つく
としにとる−かちのもとつは−ひとあきも−ちらぬをうしと−なつやいろつく |
03108 |
未入力 正徹 (xxx)
葉かくれの実も色つかす橘の花の香ちりて夏深き比
はかくれの−みもいろつかす−たちはなの−はなのかちりて−なつふかきころ |
03109 |
未入力 正徹 (xxx)
古葉こき田中の杉の若みとり植ゑし早苗に色そあらそふ
ふるはこき−たなかのすきの−わかみとり−うゑしさなへに−いろそあらそふ |
03110 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなくそ水の淡津に空蝉のからのみとまる杜の木かくれ
はかなくそ−みつのあわつに−うつせみの−からのみとまる−もりのこかくれ |
03111 |
未入力 正徹 (xxx)
六月の夏の日数も竹の子の枝さす園そふかく成行く
みなつきの−なつのひかすも−たけのこの−えたさすそのそ−ふかくなりゆく |
03112 |
未入力 正徹 (xxx)
里はあれぬ竹のこの世のうきふしをしれかし草の陰頼むらん
さとはあれぬ−たけのこのよの−うきふしを−しれかしくさの−かけたのむらむ |
03113 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑそする住むや田中の杜のはも茂る早苗のおくの里人
こゑそする−すむやたなかの−もりのはも−しけるさなへの−おくのさとひと |
03114 |
未入力 正徹 (xxx)
佗人のは山かくれの宿の窓夏やともしの影頼むらん
わひひとの−はやまかくれの−やとのまと−なつやともしの−かけたのむらむ |
03115 |
未入力 正徹 (xxx)
新しき夏毛色こき筆を見て照射の鹿のよるそかなしき
あたらしき−なつけいろこき−ふてをみて−ともしのしかの−よるそかなしき |
03116 |
未入力 正徹 (xxx)
月ならぬ山のはもうし夕つつの入りぬる夏のやみふかくして
つきならぬ−やまのはもうし−ゆふつつの−いりぬるなつの−やみふかくして |
03117 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かねやなるるし水にみたれても秋の露まつ袖のしら玉
いはかねや−なるるしみつに−みたれても−あきのつゆまつ−そてのしらたま |
03118 |
未入力 正徹 (xxx)
あやにくに早苗あらそひ種まかぬ水の田草やとれは生ふらん
あやにくに−さなへあらそひ−たねまかぬ−みつのたくさや−とれはおふらむ |
03119 |
未入力 正徹 (xxx)
道辺にちりこそあかれ天つ風いもせある宿のとこ夏の花
みちのへに−ちりこそあかれ−あまつかせ−いもせあるやとの−とこなつのはな |
03120 |
未入力 正徹 (xxx)
しろたへの雲の衣の五月雨に朽ちにし色をさらす空かな
しろたへの−くものころもの−さみたれに−くちにしいろを−さらすそらかな |
03121 |
未入力 正徹 (xxx)
山たかみ花にまかへししら雲の衣そうすき夏やきぬらん
やまたかみ−はなにまかへし−しらくもの−ころもそうすき−なつやきぬらむ |
03122 |
未入力 正徹 (xxx)
わたる日の空行く雲の一むらもおほへは夏をへたてけるかな
わたるひの−そらゆくくもの−ひとむらも−おほへはなつを−へたてけるかな |
03123 |
未入力 正徹 (xxx)
一むらも夏の日影にまたれつる心かはりの月のうき雲
ひとむらも−なつのひかけに−またれつる−こころかはりの−つきのうきくも |
03124 |
未入力 正徹 (xxx)
雲水のならひに跡はとめすとも夏のてる日の下にやすらへ
くもみつの−ならひにあとは−とめすとも−なつのてるひの−もとにやすらへ |
03125 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うすき衣のうらの玉柳夏をかけたるかつらきの山
くもうすき−ころものうらの−たまやなき−なつをかけたる−かつらきのやま |
03126 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ人すすむやいかにわきのほる雲を泉の嶺の滝波
あまつひと−すすむやいかに−わきのほる−くもをいつみの−みねのたきなみ |
03127 |
未入力 正徹 (xxx)
夕立の晴れぬる山の岩ねよりのほるも消ゆる雲の一むら
ゆふたちの−はれぬるやまの−いはねより−のほるもきゆる−くものひとむら |
03128 |
未入力 正徹 (xxx)
今見るも夢のわたりか月の舟雲浅き江にあくる夏の夜
いまみるも−ゆめのわたりか−つきのふね−くもあさきえに−あくるなつのよ |
03129 |
未入力 正徹 (xxx)
影そもる天つをとめの夏衣雲にうらなき有明の月
かけそもる−あまつをとめの−なつころも−くもにうらなき−ありあけのつき |
03130 |
未入力 正徹 (xxx)
又ゆかむ道の朝かけ夕すすみひるまを夏の宿にすくして
またゆかむ−みちのあさかけ−ゆふすすみ−ひるまをなつの−やとにすくして |
03131 |
未入力 正徹 (xxx)
都まて結ふし水やつとならん行てにつつむ袖のしら玉
みやこまて−むすふしみつや−つとならむ−ゆくてにつつむ−そてのしらたま |
03132 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとのし水をひるの宿として朝夕かけに道いそくなり
このもとの−しみつをひるの−やととして−あさゆふかけに−みちいそくなり |
03133 |
未入力 正徹 (xxx)
むせかへりねんかたそなき夏かりの芦火たく屋にもえぬ煙は
むせかへり−ねむかたそなき−なつかりの−あしひたくやに−もえぬけふりは |
03134 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしのねの煙やともしよるとなき鹿子またらの雪のしは山
ふしのねの−けふりやともし−よるとなき−かのこまたらの−ゆきのしはやま |
03135 |
未入力 正徹 (xxx)
杣木きる遠き嵐やまかふらん卯花山の雪の下折
そまききる−とほきあらしや−まかふらむ−うのはなやまの−ゆきのしたをれ |
03136 |
未入力 正徹 (xxx)
太山風蚊のこゑ遠き宿のゆか夕枕して明けぬこの夜は
みやまかせ−かのこゑとほき−やとのゆか−ゆふまくらして−あけぬこのよは |
03137 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝の白淡わきかへり水の心や五月雨の空
いしはしる−たきのしらあわ−わきかへり−みつのこころや−さみたれのそら |
03138 |
未入力 正徹 (xxx)
川の瀬にいさ取りそへて捨てはてん我かことのはのあさのゆふして
かはのせに−いさとりそへて−すてはてむ−わかことのはの−あさのゆふして |
03139 |
未入力 正徹 (xxx)
一重なる身におふ程のたのしみやあさの衣の夏の夕風
ひとへなる−みにおふほとの−たのしみや−あさのころもの−なつのゆふかせ |
03140 |
未入力 正徹 (xxx)
夏こしにもはらひは捨てし此世には身のうからては住むへくもなし
なこしにも−はらひはすてし−このよには−みのうからては−すむへくもなし |
03141 |
未入力 正徹 (xxx)
水上やいく里人の御祓川瀬をせくまての麻のゆふして
みなかみや−いくさとひとの−みそきかは−せをせくまての−あさのゆふして |
03142 |
未入力 正徹 (xxx)
立田川けふこそあらぬ麻のはにゆふつけ鳥の御祓ともなき
たつたかは−けふこそあらぬ−あさのはに−ゆふつけとりの−みそきともなき |
03143 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川入江にすつるあさの葉もすくなる水を尋ねてそゆく
みそきかは−いりえにすつる−あさのはも−すくなるみつを−たつねてそゆく |
03144 |
未入力 正徹 (xxx)
みそきしてけふすかぬきついつくにも茂る浅茅やまはらなるらん
みそきして−けふすかぬきつ−いつくにも−しけるあさちや−まはらなるらむ |
03145 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やくる半年行く庭にいてて御祓する夜の荻の上風
あきやくる−なかはとしゆく−にはにいてて−みそきするよの−をきのうはかせ |
03146 |
未入力 正徹 (xxx)
折ふしもしらぬ田蓑の島人もけふはなこしの御祓すらしも
をりふしも−しらぬたみのの−しまひとも−けふはなこしの−みそきすらしも |
03147 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川暮るれは夏の日影さへ七瀬のよとにのこるゆふして
みそきかは−くるれはなつの−ひかけさへ−ななせのよとに−のこるゆふして |
03148 |
未入力 正徹 (xxx)
七瀬川あさにひかれて行く水の心しらるるゆふはらへかな
ななせかは−あさにひかれて−ゆくみつの−こころしらるる−ゆふはらへかな |
03149 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふしてもなかれてはやき御祓川麻にひかれて夏や行くらん
ゆふしても−なかれてはやき−みそきかは−あさにひかれて−なつやゆくらむ |
03150 |
未入力 正徹 (xxx)
おりはへて夏神楽せし川波になかしつつくるあさのゆふして
おりはへて−なつかくらせし−かはなみに−なかしつつくる−あさのゆふして |
03151 |
未入力 正徹 (xxx)
よりやこん蓬か島も御祓川海に出てたるあまにひかれて
よりやこむ−よもきかしまも−みそきかは−うみにいてたる−あまにひかれて |
03152 |
未入力 正徹 (xxx)
ならひたつかもの川原の小車にかけぬ茅のわをこゆる諸人
ならひたつ−かものかはらの−をくるまに−かけぬちのわを−こゆるもろひと |
03153 |
未入力 正徹 (xxx)
麻のわをすかぬきこゆる度ことに三の男をいつるとそおもふ
あさのわを−すかぬきこゆる−たひことに−みつのをとこを−いつるとそおもふ |
03154 |
未入力 正徹 (xxx)
岩こすけせくや御祓の夕は川麻のしからみたかくかけつつ
いはこすけ−せくやみそきの−ゆふはかは−あさのしからみ−たかくかけつつ |
03155 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はにたつ鹿もさこそは道辺に茅の輪を切りて土を打つこゑ
よはにたつ−しかもさこそは−みちのへに−ちのわをきりて−つちをうつこゑ |
03156 |
未入力 正徹 (xxx)
岩波もならの小川の広は陰ここを御祓の瀬瀬のゆふして
いはなみも−ならのをかはの−ひろはかけ−ここをみそきの−せせのゆふして |
03157 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちいてて夕すすみせし木の本もいもゐの庭そ麻のゆふして
たちいてて−ゆふすすみせし−このもとも−いもゐのにはそ−あさのゆふして |
03158 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川ゆふしてしろし鴨のはの色そふ杜の木木の下陰
みそきかは−ゆふしてしろし−かものはの−いろそふもりの−ききのしたかけ |
03159 |
未入力 正徹 (xxx)
鷺の毛もけふゆふかけて社なき杜さへあへる夏祓かな
さきのけも−けふゆふかけて−やしろなき−もりさへあへる−なつはらへかな |
03160 |
未入力 正徹 (xxx)
ふくる夜の御祓川原にけふ人の捨てし浅茅にかよふ秋風
ふくるよの−みそきかはらに−けふひとの−すてしあさちに−かよふあきかせ |
03161 |
未入力 正徹 (xxx)
朝川やあさの葉なかすしかまかた立つ市人や御祓しつらん
あさかはや−あさのはなかす−しかまかた−たついちひとや−みそきしつらむ |
03162 |
未入力 正徹 (xxx)
いくしさすしてにあらふる神やますなこやかならぬ瀬瀬の川波
いくしさす−してにあらふる−かみやます−なこやかならぬ−せせのかはなみ |
03163 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川此輪のうちにめくりきて我より先に秋やこゆらん
みそきかは−このわのうちに−めくりきて−われよりさきに−あきやこゆらむ |
03164 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しくも御祓の波にかへりきぬ時雨ふりおきしならの小川は
すすしくも−みそきのなみに−かへりきぬ−しくれふりおきし−ならのをかはは |
03165 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川うき瀬たえねとなかしやる身をなて物や麻のゆふして
みそきかは−うきせたえねと−なかしやる−みをなてものや−あさのゆふして |
03166 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓して川戸にすつるなかれわに中はめくれる年もこえつつ
みそきして−かはとにすつる−なかれわに−なかはめくれる−としもこえつつ |
03167 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月もニの星の契さへ麻の葉すつる瀬によとむらん
みなつきも−ふたつのほしの−ちきりさへ−あさのはすつる−せによとむらむ |
03168 |
未入力 正徹 (xxx)
すかぬきし茅のわきりすて玉鉾に又めくりくる秋や待つらん
すかぬきし−ちのわきりすて−たまほこに−まためくりくる−あきやまつらむ |
03169 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ事さしてなき身や夏をけふすつるはかりのあさのゆふして
おもふこと−さしてなきみや−なつをけふ−すつるはかりの−あさのゆふして |
03170 |
未入力 正徹 (xxx)
なかしけん幾里人の御祓川見さりし島や麻のゆふして
なかしけむ−いくさとひとの−みそきかは−みさりししまや−あさのゆふして |
03171 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川瀬瀬になかるる麻の葉にすかぬきかかる波のしらゆふ
みそきかは−せせになかるる−あさのはに−すかぬきかかる−なみのしらゆふ |
03172 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりきて又逢ひかたき御祓かな茅のわすかぬくしかのうらなみ
めくりきて−またあひかたき−みそきかな−ちのわすかぬく−しかのうらなみ |
03173 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふはちへしかまになかす麻のはや塩やくあまの焼くもなるらん
ゆふはちへ−しかまになかす−あさのはや−しほやくあまの−たくもなるらむ |
03174 |
未入力 正徹 (xxx)
河社うたひ捨てつるささ波に又あさのはをなかすけふかな
かはやしろ−うたひすてつる−ささなみに−またあさのはを−なかすけふかな |
03175 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓川のほるや魚のなて物もなかるる瀬瀬の浅茅とそみる
みそきかは−のほるやうをの−なてものも−なかるるせせの−あさちとそみる |
03176 |
未入力 正徹 (xxx)
引きまする麻のよもきのすくなるもけふの御祓の山やうくらん
ひきまする−あさのよもきの−すくなるも−けふのみそきの−やまやうくらむ |
03177 |
未入力 正徹 (xxx)
みな月の七七瀬川原のから蓬なかすあさにやひかれ行くらん
みなつきの−ななせかはらの−からよもき−なかすあさにや−ひかれゆくらむ |
03178 |
未入力 正徹 (xxx)
あさなかす川にうつまきしつむなり御祓やうくる水にます神
あさなかす−かはにうつまき−しつむなり−みそきやうくる−みつにますかみ |
03179 |
未入力 正徹 (xxx)
身にしめてけふとそ告くる袖の上の露にはなれし秋のはつ風
みにしめて−けふとそつくる−そてのうへの−つゆにはなれし−あきのはつかせ |
03180 |
未入力 正徹 (xxx)
露もみすなにの一葉も散りあへぬきのふの風に秋はきにけり
つゆもみす−なにのひとはも−ちりあへぬ−きのふのかせに−あきはきにけり |
03181 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のかせたてるやいつこみそきせし昨日も涼しよもの川浪
あきのかせ−たてるやいつこ−みそきせし−きのふもすすし−よものかはなみ |
03182 |
未入力 正徹 (xxx)
まつかえた秋たつ風の乙女子か袖ふる山もけふや涼しき
まつかえた−あきたつかせの−をとめこか−そてふるやまも−けふやすすしき |
03183 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もけふたつの市大涼しさをなににかへけん袖の初風
あきもけふ−たつのいちひと−すすしさを−なににかへけむ−そてのはつかせ |
03184 |
未入力 正徹 (xxx)
きてもまた旅なる秋のぬききする衣手なれや暁の空
きてもまた−たひなるあきの−ぬききする−ころもてなれや−あかつきのそら |
03185 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風夢ちさたかに吹きこすや暁やみのうつつなるらん
あきのかせ−ゆめちさたかに−ふきこすや−あかつきやみの−うつつなるらむ |
03186 |
未入力 正徹 (xxx)
わかれつる時をはかへす秋はきぬ去年の長月のつきし曙
わかれつる−ときをはかへす−あきはきぬ−こそのなかつきの−つきしあけほの |
03187 |
未入力 正徹 (xxx)
又やみん秋たつ嶺の暁にあふはわかれの長月の雲
またやみむ−あきたつみねの−あかつきに−あふはわかれの−なかつきのくも |
03188 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影くもる梢に結ひきてはつ秋みかく露のしら玉
あさひかけ−くもるこすゑに−むすひきて−はつあきみかく−つゆのしらたま |
03189 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もけさたつそ鳴くなるねくらせし松の嵐や吹きかはるらん
あきもけさ−たつそなくなる−ねくらせし−まつのあらしや−ふきかはるらむ |
03190 |
未入力 正徹 (xxx)
たたならぬ夕まくれともまた知らぬ朝けの露に秋風そ吹く
たたならぬ−ゆふまくれとも−またしらぬ−あさけのつゆに−あきかせそふく |
03191 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やすゑこす風になかは行く年のはしめに秋そ立ちくる
をきはらや−すゑこすかせに−なかはゆく−としのはしめに−あきそたちくる |
03192 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにせんうき秋風の荻はらやうつす袂の露のはしめを
いかにせむ−うきあきかせの−をきはらや−うつすたもとの−つゆのはしめを |
03193 |
未入力 正徹 (xxx)
友そなき四十余のこの山に初風なれし秋もわすれす
ともそなき−よそちあまりの−このやまに−はつかせなれし−あきもわすれす |
03194 |
未入力 正徹 (xxx)
くるとたに先しらさらむうき秋を忘れんと思ふ心忘れて
くるとたに−まつしらさらむ−うきあきを−わすれむとおもふ−こころわすれて |
03195 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風のこゑそ身にしむ老か世のうきをもととや秋はきぬらん
ふくかせの−こゑそみにしむ−おいかよの−うきをもととや−あきはきぬらむ |
03196 |
未入力 正徹 (xxx)
一葉ちりひと花開きて春をつけ秋をしらせし秋はきにけり
ひとはちり−ひとはなさきて−はるをつけ−あきをしらせし−あきはきにけり |
03197 |
未入力 正徹 (xxx)
外面なる桐の一葉を吹く風のたよりすくさぬ荻の音かな
そともなる−きりのひとはを−ふくかせの−たよりすくさぬ−をきのおとかな |
03198 |
未入力 正徹 (xxx)
露となる風となりてやなへて世の人わひさする秋はきぬらん
つゆとなる−かせとなりてや−なへてよの−ひとわひさする−あきはきぬらむ |
03199 |
未入力 正徹 (xxx)
本つ枝や秋ふかき露もおかさらむ星合ちかしかちの初風
もとつえや−あきふかきつゆも−おかさらむ−ほしあひちかし−かちのはつかせ |
03200 |
未入力 正徹 (xxx)
人心こころやすくや秋のこし夏をはしたふならひなき世に
ひとこころ−こころやすくや−あきのこし−なつをはしたふ−ならひなきよに |
03201 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつもあまもいかてか秋にあひてありしにかはる心なからむ
やまかつも−あまもいかてか−あきにあひて−ありしにかはる−こころなからむ |
03202 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の面も汀ににほのうら風に桐の一葉の舟そよりくる
にはのおもも−みきはににほの−うらかせに−きりのひとはの−ふねそよりくる |
03203 |
未入力 正徹 (xxx)
六月やはつ風きかぬ荻みても思ひそ出てし秋のおとつれ
みなつきや−はつかせきかぬ−をきみても−おもひそいてし−あきのおとつれ |
03204 |
未入力 正徹 (xxx)
法の庭秋の草木もけふにあひてなき玉結ふ露かとそみる
のりのには−あきのくさきも−けふにあひて−なきたまむすふ−つゆかとそみる |
03205 |
未入力 正徹 (xxx)
末遠き小松かうへの千世のこゑ秋たつ風を始とそきく
すゑとほき−こまつかうへの−ちよのこゑ−あきたつかせを−はしめとそきく |
03206 |
未入力 正徹 (xxx)
さひしさはいつも秋津のをのの露此ころ草にかはる色かな
さひしさは−いつもあきつの−をののつゆ−このころくさに−かはるいろかな |
03207 |
未入力 正徹 (xxx)
しののめやたもとの露にきえかはるはつ秋風のまへの灯
しののめや−たもとのつゆに−きえかはる−はつあきかせの−まへのともしひ |
03208 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のきてさそふ嵐にちる露も一葉の上やはしめなるらん
あきのきて−さそふあらしに−ちるつゆも−ひとはのうへや−はしめなるらむ |
03209 |
未入力 正徹 (xxx)
一葉ちる軒端の桐の下草にふみ分けかたき秋の露かな
ひとはちる−のきはのきりの−したくさに−ふみわけかたき−あきのつゆかな |
03210 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もまたおきこそあへね消残る命や露の始なるらん
あきもまた−おきこそあへね−きえのこる−いのちやつゆの−はしめなるらむ |
03211 |
未入力 正徹 (xxx)
秋きての影とや見えん老いぬれは時そともなき袖の時雨を
あききての−かけとやみえむ−おいぬれは−ときそともなき−そてのしくれを |
03212 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはも秋や立ちくるのほる日の光をいつる風そ涼しき
やまのはも−あきやたちくる−のほるひの−ひかりをいつる−かせそすすしき |
03213 |
未入力 正徹 (xxx)
心あるたくひややかてうちま山またあさ風の秋のさと人
こころある−たくひややかて−うちまやま−またあさかせの−あきのさとひと |
03214 |
未入力 正徹 (xxx)
身にしむもありしにまさる思ひかなまして四十の秋のはつかせ
みにしむも−ありしにまさる−おもひかな−ましてよそちの−あきのはつかせ |
03215 |
未入力 正徹 (xxx)
結ふこそさそははおちめ袖の露いたたく霜の秋の初風
むすふこそ−さそははおちめ−そてのつゆ−いたたくしもの−あきのはつかせ |
03216 |
未入力 正徹 (xxx)
音たえす吹上になひく真砂さへ心やくたく秋のはつ風
おとたえす−ふきあけになひく−まさこさへ−こころやくたく−あきのはつかせ |
03217 |
未入力 正徹 (xxx)
秋とたに青葉の山はかはらぬに身にしむ声のかもの川かせ
あきとたに−あをはのやまは−かはらぬに−みにしむこゑの−かものかはかせ |
03218 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ分くる道ならなくに都人声さわかしきあきのはつ風
ささわくる−みちならなくに−みやこひと−こゑさわかしき−あきのはつかせ |
03219 |
未入力 正徹 (xxx)
秋にふくきそちの風のはふりこもすきまいとはぬ風や涼しき
あきにふく−きそちのかせの−はふりこも−すきまいとはぬ−かせやすすしき |
03220 |
未入力 正徹 (xxx)
ほのかにも麓のを花雲のなみたつ舟岡の秋のはつかせ
ほのかにも−ふもとのをはな−くものなみ−たつふなをかの−あきのはつかせ |
03221 |
未入力 正徹 (xxx)
後にこむ冬の心のいそけはやあまり涼しき秋のはつ風
のちにこむ−ふゆのこころの−いそけはや−あまりすすしき−あきのはつかせ |
03222 |
未入力 正徹 (xxx)
今もうしみそきにすてしあさちふの残おほかる秋の初かせ
いまもうし−みそきにすてし−あさちふの−のこりおほかる−あきのはつかせ |
03223 |
未入力 正徹 (xxx)
なか月のすゑ吹きかはり身にさむし涙しくるる秋のはつかせ
なかつきの−すゑふきかはり−みにさむし−なみたしくるる−あきのはつかせ |
03224 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとはいつくをとふも身につるる老その杜の秋の初風
このもとは−いつくをとふも−みにつるる−おいそのもりの−あきのはつかせ |
03225 |
未入力 正徹 (xxx)
身にとひて心に秋をしることは風よりはやき朝明の床
みにとひて−こころにあきを−しることは−かせよりはやき−あさあけのとこ |
03226 |
未入力 正徹 (xxx)
天乙女引くや玉琴秋風のしらへそかよふとほ山の松
あまをとめ−ひくやたまこと−あきかせの−しらへそかよふ−とほやまのまつ |
03227 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のくる音をそはこふ石見かた松も高津の沖つ塩風
あきのくる−おとをそはこふ−いはみかた−まつもたかつの−おきつしほかせ |
03228 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕の雲路秋たつことのねに先かよふらし嶺の松かせ
たなはたの−くもちあきたつ−ことのねに−まつかよふらし−みねのまつかせ |
03229 |
未入力 正徹 (xxx)
くる秋も分くるかをきのはつ嵐ふけは影入る閨の三か月
くるあきも−わくるかをきの−はつあらし−ふけはかけいる−ねやのみかつき |
03230 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もとふらむ秋の初嵐松そこたふる千世へたりとて
くさもきも−とふらむあきの−はつあらし−まつそこたふる−ちよへたりとて |
03231 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日影さすかなひくか涼しきは雲のはたての秋の初かせ
ゆふひかけ−さすかなひくか−すすしきは−くものはたての−あきのはつかせ |
03232 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風おちくる袖そしほたるる雲の浪分け秋や立つらん
あまつかせ−おちくるそてそ−しほたるる−くものなみわけ−あきやたつらむ |
03233 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しくもゆふつけて行く秋の日の色そ梢のうすき紅葉は
すすしくも−ゆふつけてゆく−あきのひの−いろそこすゑの−うすきもみちは |
03234 |
未入力 正徹 (xxx)
いつしかに昨日の夏を風かはる衣も秋もへたててそおもふ
いつしかに−きのふのなつを−かせかはる−ころももあきも−へたててそおもふ |
03235 |
未入力 正徹 (xxx)
けふも猶昨日のままの夏衣かろきやかはる秋のはつかせ
けふもなほ−きのふのままの−なつころも−かろきやかはる−あきのはつかせ |
03236 |
未入力 正徹 (xxx)
身にとまる秋の思ひを蝉のはの袖にたまらぬ露のしら玉
みにとまる−あきのおもひを−せみのはの−そてにたまらぬ−つゆのしらたま |
03237 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きかへしうらめつらしき程もみす衣のすその秋の初風
ふきかへし−うらめつらしき−ほともみす−ころものすその−あきのはつかせ |
03238 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣けさ身にかろく風たちてあさのをからにかへる秋かな
なつころも−けさみにかろく−かせたちて−あさのをからに−かへるあきかな |
03239 |
未入力 正徹 (xxx)
日をかさね一葉つつちる木の本を秋風たたむ扇にそしる
ひをかさね−ひとはつつちる−このもとを−あきかせたたむ−あふきにそしる |
03240 |
未入力 正徹 (xxx)
風ならぬこゑにそ秋をしらせける一葉もおつる桐のはの雨
かせならぬ−こゑにそあきを−しらせける−ひとはもおつる−きりのはのあめ |
03241 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ふかき夕日かくれは山ならぬ家ゐも涼し秋のはつ風
のきふかき−ゆふひかくれは−やまならぬ−いへゐもすすし−あきのはつかせ |
03242 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲にほのみか月のまゆ篭いふせくもあるか秋の遠山
うきくもに−ほのみかつきの−まゆこもり−いふせくもあるか−あきのとほやま |
03243 |
未入力 正徹 (xxx)
下荻も初風ならす夕暮に秋をそへたるみか月のかけ
したをきも−はつかせならす−ゆふくれに−あきをそへたる−みかつきのかけ |
03244 |
未入力 正徹 (xxx)
たちそむる雲の衣の秋風はよそなる月も身にやしむらん
たちそむる−くものころもの−あきかせは−よそなるつきも−みにやしむらむ |
03245 |
未入力 正徹 (xxx)
秋きての草木の上はしらねとも月に色つくよものしら露
あききての−くさきのうへは−しらねとも−つきにいろつく−よものしらつゆ |
03246 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の色もあるかなきかの三か月の影吹きはらふ荻のうは風
あきのいろも−あるかなきかの−みかつきの−かけふきはらふ−をきのうはかせ |
03247 |
未入力 正徹 (xxx)
空は猶涼しくなりぬくる秋のはつ風吹きて三日の夜の月
そらはなほ−すすしくなりぬ−くるあきの−はつかせふきて−みかのよのつき |
03248 |
未入力 正徹 (xxx)
よひのまの雲の浪ちによる月の舟のりしてや秋はきぬらん
よひのまの−くものなみちに−よるつきの−ふなのりしてや−あきはきぬらむ |
03249 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川うかひそ出つる月の舟あすわたるへき瀬やならすらん
あまのかは−うかひそいつる−つきのふね−あすわたるへき−せやならすらむ |
03250 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きかはる風はありとも荻なくはなににか秋の声をからまし
ふきかはる−かせはありとも−をきなくは−なににかあきの−こゑをからまし |
03251 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の声を聞きわく人のためにこそやかてもうけれ荻の初風
あきのこゑを−ききわくひとの−ためにこそ−やかてもうけれ−をきのはつかせ |
03252 |
未入力 正徹 (xxx)
をきのはに入りたつ風の心にもうき秋しるや露こほるらん
をきのはに−いりたつかせの−こころにも−うきあきしるや−つゆこほるらむ |
03253 |
未入力 正徹 (xxx)
夏過きぬ風ふかぬまの荻のはとははや秋の声やこもれる
なつすきぬ−かせふかぬまの−をきのはに−とははやあきの−こゑやこもれる |
03254 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きみたす岩もと薄うこきなき所もしらぬ秋の初風
ふきみたす−いはもとすすき−うこきなき−ところもしらぬ−あきのはつかせ |
03255 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれにしもとの心の花薄又ほにいてむ秋のはつかせ
みたれにし−もとのこころの−はなすすき−またほにいてむ−あきのはつかせ |
03256 |
未入力 正徹 (xxx)
はらふなよすそ野の露の玉匣あくるさ山の秋の初風
はらふなよ−すそののつゆの−たまくしけ−あくるさやまの−あきのはつかせ |
03257 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風も山をおしなみくる秋にしられぬ軒の草かくれつつ
ふくかせも−やまをおしなみ−くるあきに−しられぬのきの−くさかくれつつ |
03258 |
未入力 正徹 (xxx)
時をえて風さへ秋にうつりくる宮古の宿はいまや住みよき
ときをえて−かせさへあきに−うつりくる−みやこのやとは−いまやすみよき |
03259 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきぬ嶺の葛葉の夕嵐おろす岡辺の松にうらみて
あきはきぬ−みねのくすはの−ゆふあらし−おろすをかへの−まつにうらみて |
03260 |
未入力 正徹 (xxx)
から崎や松に吹くさへくる秋の色しほしまぬにほのうらかせ
からさきや−まつにふくさへ−くるあきの−いろしほしまぬ−にほのうらかせ |
03261 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕のいそくやいつこ川岸の一葉そはやく舟出してける
たなはたの−いそくやいつこ−かはきしの−ひとはそはやく−ふなてしてける |
03262 |
未入力 正徹 (xxx)
いくさとを過きこし袖にかはるらん道行ふりの秋のはつ風
いくさとを−すきこしそてに−かはるらむ−みちゆきふりの−あきのはつかせ |
03263 |
未入力 正徹 (xxx)
わきてけふ身にしみまさるおともなしいつもうき世の秋の初風
わきてけふ−みにしみまさる−おともなし−いつもうきよの−あきのはつかせ |
03264 |
未入力 正徹 (xxx)
置きなれしたもとの露の身にしむも今さらならぬ秋の初かせ
おきなれし−たもとのつゆの−みにしむも−いまさらならぬ−あきのはつかせ |
03265 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふまた初風も秋ふかく身にほおほゆる老の袖かな
つゆはらふ−またはつかせも−あきふかく−みにほおほゆる−おいのそてかな |
03266 |
未入力 正徹 (xxx)
たえすうき老の心は去年よりもよわるにまさる秋の初風
たえすうき−おいのこころは−こそよりも−よわるにまさる−あきのはつかせ |
03267 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そうき老を心にのとめても身をせめきたる秋のはつかせ
なほそうき−おいをこころに−のとめても−みをせめきたる−あきのはつかせ |
03268 |
未入力 正徹 (xxx)
露や知る思ひしことにかすこえて猶身をしはる秋のはつ風
つゆやしる−おもひしことに−かすこえて−なほみをしはる−あきのはつかせ |
03269 |
未入力 正徹 (xxx)
咲きてちる思ひの色そかはりくる春の一花秋の一葉に
さきてちる−おもひのいろそ−かはりくる−はるのひとはな−あきのひとはに |
03270 |
未入力 正徹 (xxx)
都にもたえぬ日はなし久かたの天の川原の秋のはつ風
みやこにも−たえぬひはなし−ひさかたの−あまのかはらの−あきのはつかせ |
03271 |
未入力 正徹 (xxx)
庭たつみ柳のかけの一葉身こき出ててくる秋のはつかせ
にはたつみ−やなきのかけの−ひとはふね−こきいててくる−あきのはつかせ |
03272 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風そわつかにそよくささかにの糸もみたれぬ軒の下荻
あきかせそ−わつかにそよく−ささかにの−いともみたれぬ−のきのしたをき |
03273 |
未入力 正徹 (xxx)
にほふなり色を六種に分けくれはこと葉の花の秋のはつかせ
にほふなり−いろをむくさに−わけくれは−ことはのはなの−あきのはつかせ |
03274 |
未入力 正徹 (xxx)
白露も扇もおきてとる梶にむすひし夢をおくる秋風
しらつゆも−あふきもおきて−とるかちに−むすひしゆめを−おくるあきかせ |
03275 |
未入力 正徹 (xxx)
みをつくし浪をたつきの山風に一はそしるし秋の舟のり
みをつくし−なみをたつきの−やまかせに−ひとはそしるし−あきのふなのり |
03276 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の水ささけもちてや年ことに御手洗の夜の御戸ひらくらん
あきのみつ−ささけもちてや−としことに−みたらしのよの−みとひらくらむ |
03277 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にさへ心かはりの秋風に露も草木やうれへそむらん
そてにさへ−こころかはりの−あきかせに−つゆもくさきや−うれへそむらむ |
03278 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかなる夕日させとも時つ風西より吹けは秋そ涼しき
さやかなる−ゆふひさせとも−ときつかせ−にしよりふけは−あきそすすしき |
03279 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川またき紅葉の橋守にこととひわたる秋のはつかせ
あまのかは−またきもみちの−はしもりに−こととひわたる−あきのはつかせ |
03280 |
未入力 正徹 (xxx)
ひろき世の木の本ことに一葉つつ散るもいくらそ秋のはつ風
ひろきよの−このもとことに−ひとはつつ−ちるもいくらそ−あきのはつかせ |
03281 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきて世のうきさまに聞ゆとも思ひもいれしよもの初かせ
あきはきて−よのうきさまに−きこゆとも−おもひもいれし−よものはつかせ |
03282 |
未入力 正徹 (xxx)
西ふけは人の心も涼しきや彼国よりの秋のはつかせ
にしふけは−ひとのこころも−すすしきや−かのくによりの−あきのはつかせ |
03283 |
未入力 正徹 (xxx)
めに見えぬ風はきこえていつくより音せぬ露の結ひきぬらん
めにみえぬ−かせはきこえて−いつくより−おとせぬつゆの−むすひきぬらむ |
03284 |
未入力 正徹 (xxx)
わか心わすれね秋はきにけりとおもふよりこそうきをあつむれ
わかこころ−わすれねあきは−きにけりと−おもふよりこそ−うきをあつむれ |
03285 |
未入力 正徹 (xxx)
消ちわひぬうき世中の哀をもおほくみすくす秋の初風
けちわひぬ−うきよのなかの−あはれをも−おほくみすくす−あきのはつかせ |
03286 |
未入力 正徹 (xxx)
はちすはに露をちらさぬ宿もあらし哀秋きて望月の比
はちすはに−つゆをちらさぬ−やともあらし−あはれあききて−もちつきのころ |
03287 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝のまに秋をのせくるを舟とや一葉も風の便まちけん
けさのまに−あきをのせくる−をふねとや−ひとはもかせの−たよりまちけむ |
03288 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ははや桐のはおつる軒はとてよそにやはみん梶の下風
あきははや−きりのはおつる−のきはとて−よそにやはみむ−かちのしたかせ |
03289 |
未入力 正徹 (xxx)
梢より先しる物や下荻の葉もちらぬ秋のはつかせ
こすゑより−まつしるものや−したをきの−ひとはもちらぬ−あきのはつかせ |
03290 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風のおとにしれとは荻のはのいつれの秋か契りそめけん
ふくかせの−おとにしれとは−をきのはの−いつれのあきか−ちきりそめけむ |
03291 |
未入力 正徹 (xxx)
いく里のあかつき露にたちぬれて朝戸あけよと秋のきぬらん
いくさとの−あかつきつゆに−たちぬれて−あさとあけよと−あきのきぬらむ |
03292 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風けさはかくこそはらふらめおなし草木のもろこしの露
あきのかせ−けさはかくこそ−はらふらめ−おなしくさきの−もろこしのつゆ |
03293 |
未入力 正徹 (xxx)
しをれつつ袖そ待ちとる空にして露ふく風の秋のおとつれ
しをれつつ−そてそまちとる−そらにして−つゆふくかせの−あきのおとつれ |
03294 |
未入力 正徹 (xxx)
わか袖のふるき露のみ消えやらて又結ひくる秋にあふかな
わかそての−ふるきつゆのみ−きえやらて−またむすひくる−あきにあふかな |
03295 |
未入力 正徹 (xxx)
あらためて結ふもしらす露はまたふるき袖とふ秋の初風
あらためて−むすふもしらす−つゆはまた−ふるきそてとふ−あきのはつかせ |
03296 |
未入力 正徹 (xxx)
花もはも草木をかさる露の玉みかきいたせる秋のはつかせ
はなもはも−くさきをかさる−つゆのたま−みかきいたせる−あきのはつかせ |
03297 |
未入力 正徹 (xxx)
光あれや心の泉秋かけてむすひつらぬる玉のことのは
ひかりあれや−こころのいつみ−あきかけて−むすひつらぬる−たまのことのは |
03298 |
未入力 正徹 (xxx)
草木にもいたりいたらぬ秋やこれ結ふ露さへむら雨の空
くさきにも−いたりいたらぬ−あきやこれ−むすふつゆさへ−むらさめのそら |
03299 |
未入力 正徹 (xxx)
風もいま秋たつにしの山のはに雲十さ涼しき三か月の影
かせもいま−あきたつにしの−やまのはに−くもますすしき−みかつきのかけ |
03300 |
未入力 正徹 (xxx)
夏と秋と二かみ山の朝鴬におきわかれてや風も身にしむ
なつとあきと−ふたかみやまの−あさつゆに−おきわかれてや−かせもみにしむ |
03301 |
未入力 正徹 (xxx)
あふけとやこのかも山の神風に涼しき秋も世におほふらん
あふけとや−このかもやまの−かみかせに−すすしきあきも−よにおほふらむ |
03302 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲もいささおしなみさわくなり深山吹きこす秋のはつ風
うきくもも−いささおしなみ−さわくなり−みやまふきこす−あきのはつかせ |
03303 |
未入力 正徹 (xxx)
時しもあれ夏の後せの山風や松に千秋のこゑ向ふらん
ときしもあれ−なつののちせの−やまかせや−まつにちあきの−こゑむかふらむ |
03304 |
未入力 正徹 (xxx)
秋も先都にきてや吹きかはる風の便を四方にたつらむ
あきもまつ−みやこにきてや−ふきかはる−かせのたよりを−よもにたつらむ |
03305 |
未入力 正徹 (xxx)
わきてけふたちくる風も秋草の花の都の野へやとふらん
わきてけふ−たちくるかせも−あきくさの−はなのみやこの−のへやとふらむ |
03306 |
未入力 正徹 (xxx)
賀茂川やみそきにすてし麻のはのかはらぬ色に秋風そ吹く
かもかはや−みそきにすてし−あさのはの−かはらぬいろに−あきかせそふく |
03307 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風西ふく浪そ音かはる海の宮古も秋やたつらん
おきつかせ−にしふくなみそ−おとかはる−うみのみやこも−あきやたつらむ |
03308 |
未入力 正徹 (xxx)
塩ならぬ日影のさして行く舟も浪ち涼しきにほの秋かせ
しほならぬ−ひかけのさして−ゆくふねも−なみちすすしき−にほのあきかせ |
03309 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ浪の音さへ涼し箱根山秋に明行くみねの松かせ
ささなみの−おとさへすすし−はこねやま−あきにあけゆく−みねのまつかせ |
03310 |
未入力 正徹 (xxx)
露なからわさ田のほなみかつみえて秋をよせくるふるの山かせ
つゆなから−わさたのほなみ−かつみえて−あきをよせくる−ふるのやまかせ |
03311 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の松軒のかけひにつたひきて涼しくおつる嶺の秋風
にはのまつ−のきのかけひに−つたひきて−すすしくおつる−みねのあきかせ |
03312 |
未入力 正徹 (xxx)
見し月も先夏の夜の霜とけて結ふか秋のま砂ちの露
みしつきも−まつなつのよの−しもとけて−むすふかあきの−まさこちのつゆ |
03313 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきぬさらはなへての露やおくとへとしら玉うすけ乱れて
あきはきぬ−さらはなへての−つゆやおく−とへとしらたま−うすけみたれて |
03314 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきぬ去年の草木の夕露も根にかへりしや又のほるらん
あきはきぬ−こそのくさきの−ゆふつゆも−ねにかへりしや−またのほるらむ |
03315 |
未入力 正徹 (xxx)
やとりをは草とも木とも露やまた思ひさためぬ秋の初風
やとりをは−くさともきとも−つゆやまた−おもひさためぬ−あきのはつかせ |
03316 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もはや草葉吹きほす初風にわか袖たのむ宿の朝露
あきもはや−くさはふきほす−はつかせに−わかそてたのむ−やとのあさつゆ |
03317 |
未入力 正徹 (xxx)
袂にそ先うつりくる朝てあらふ露のぬきすの秋のはつ風
たもとにそ−まつうつりくる−あさてあらふ−つゆのぬきすの−あきのはつかせ |
03318 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる本あらの露の玉ゆらにかかる荻原秋そ見え行く
まつたてる−もとあらのつゆの−たまゆらに−かかるをきはら−あきそみえゆく |
03319 |
未入力 正徹 (xxx)
風も猶のこすか荻の一もとにこゑかる秋のおもふことのは
かせもなほ−のこすかをきの−ひともとに−こゑかるあきの−おもふことのは |
03320 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もまた白露の入日影秋に色つく西の山のは
くさもきも−またしらつゆの−いりひかけ−あきにいろつく−にしのやまのは |
03321 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風今朝や涼しき乙女子か秋の衣の雲のかよひち
あまつかせ−けさやすすしき−をとめこか−あきのころもの−くものかよひち |
03322 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風秋たつ暮や猶もろき一葉のさきにおつる雨かな
あまつかせ−あきたつくれや−なほもろき−ひとはのさきに−おつるあめかな |
03323 |
未入力 正徹 (xxx)
音たつる雨のみ落ちて一葉たにまたもろからぬ桐の朝風
おとたつる−あめのみおちて−ひとはたに−またもろからぬ−きりのあさかせ |
03324 |
未入力 正徹 (xxx)
雲さそふ初秋風にふる雨の時雨はそれも木からしの声
くもさそふ−はつあきかせに−ふるあめの−しくれはそれも−こからしのこゑ |
03325 |
未入力 正徹 (xxx)
うきものとくるをいとひし人ゆゑや秋も身をしる夕暮の雨
うきものと−くるをいとひし−ひとゆゑや−あきもみをしる−ゆふくれのあめ |
03326 |
未入力 正徹 (xxx)
風涼し草木を分けてくる秋もまたむら雨の露の下行
かせすすし−くさきをわけて−くるあきも−またむらさめの−つゆのしたみち |
03327 |
未入力 正徹 (xxx)
猶涼し雨にたもとをまかすれはぬれての後の秋の初風
なほすすし−あめにたもとを−まかすれは−ぬれてののちの−あきのはつかせ |
03328 |
未入力 正徹 (xxx)
わかるへき日数なりけり手を折りてあひみしよりの秋のうきふし
わかるへき−ひかすなりけり−てををりて−あひみしよりの−あきのうきふし |
03329 |
未入力 正徹 (xxx)
行く秋はあすの衣の新わたを中にへたつる日数たになし
ゆくあきは−あすのころもの−にひわたを−なかにへたつる−ひかすたになし |
03330 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしみき篠をかさしてまふ人の神おくりせし出雲八重垣
むかしみき−ささをかさして−まふひとの−かみおくりせし−いつもやへかき |
03331 |
未入力 正徹 (xxx)
あくるまを朝たちかねて暮るる日にいつくとまりと秋の行くらん
あくるまを−あさたちかねて−くるるひに−いつくとまりと−あきのゆくらむ |
03332 |
未入力 正徹 (xxx)
風なから西よりたちし秋なれは入日にかへるところなるらん
かせなから−にしよりたちし−あきなれは−いりひにかへる−ところなるらむ |
03333 |
未入力 正徹 (xxx)
わかさりきいかなる秋の雲つきて冬の紅葉にあすはしくれん
わかさりき−いかなるあきの−くもつきて−ふゆのもみちに−あすはしくれむ |
03334 |
未入力 正徹 (xxx)
たたいまの夕の雲やかへる秋しくれてきえね山のこなたに
たたいまの−ゆふへのくもや−かへるあき−しくれてきえね−やまのこなたに |
03335 |
未入力 正徹 (xxx)
長月や夕をかけて吹く風のめにみぬ秋もかへる雲かな
なかつきや−ゆふへをかけて−ふくかせの−めにみぬあきも−かへるくもかな |
03336 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとてわかるる秋の袖もあらはなほこのくれを引きやととめん
いまはとて−わかるるあきの−そてもあらは−なほこのくれを−ひきやととめむ |
03337 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をしる風のあるしといまそなるすすみなれにし杜の夕陰
あきをしる−かせのあるしと−いまそなる−すすみなれにし−もりのゆふかけ |
03338 |
未入力 正徹 (xxx)
袖涼し岩まの水の秋の露風に心をあはせてそちる
そてすすし−いはまのみつの−あきのつゆ−かせにこころを−あはせてそちる |
03339 |
未入力 正徹 (xxx)
おきやらてとるかはほりもぬるからす身におほゆるや秋のはつ風
おきやらて−とるかはほりも−ぬるからす−みにおほゆるや−あきのはつかせ |
03340 |
未入力 正徹 (xxx)
身にとほる程こそなけれうす衣袖の日影をはらふ秋風
みにとほる−ほとこそなけれ−うすころも−そてのひかけを−はらふあきかせ |
03341 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか吹くむすひし水に袖ふれて夏なき年の秋のはつかせ
いかかふく−むすひしみつに−そてふれて−なつなきとしの−あきのはつかせ |
03342 |
未入力 正徹 (xxx)
山風そ昨日にも似ぬ秋にたにしられしと思ふ木かくれの宿
やまかせそ−きのふにもにぬ−あきにたに−しられしとおもふ−こかくれのやと |
03343 |
未入力 正徹 (xxx)
音もせす庵は山の岩かくれ苔路たちくる秋のはつ風
おともせす−いほりはやまの−いはかくれ−こけちたちくる−あきのはつかせ |
03344 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねこん秋たにしらぬ露の宿今朝そひもとく百草の花
たつねこむ−あきたにしらぬ−つゆのやと−けさそひもとく−ももくさのはな |
03345 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風まつ荻のほにたちよりて四方の草木につけねとそ吹く
あきのかせ−まつをきのほに−たちよりて−よものくさきに−つけねとそふく |
03346 |
未入力 正徹 (xxx)
秋になる風の初こゑ聞ゆなりのちに一はのちるはなくとも
あきになる−かせのはつこゑ−きこゆなり−のちにひとはの−ちるはなくとも |
03347 |
未入力 正徹 (xxx)
空ふくはしられぬ物と尋ねきて荻に声かる秋のはつかせ
そらふくは−しられぬものと−たつねきて−をきにこゑかる−あきのはつかせ |
03348 |
未入力 正徹 (xxx)
たかためにやますも秋をしたふらん木をうこかさぬ秋のはつかせ
たかために−やますもあきを−したふらむ−きをうこかさぬ−あきのはつかせ |
03349 |
未入力 正徹 (xxx)
とことはの心に秋を又告けてたもとにおもる風のしら露
とことはの−こころにあきを−またつけて−たもとにおもる−かせのしらつゆ |
03350 |
未入力 正徹 (xxx)
一葉舟うかふや嶺の木すゑより秋を吹きこす雲の波風
ひとはふね−うかふやみねの−こすゑより−あきをふきこす−くものなみかせ |
03351 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木も友にそなひくおしなへて露と風とに秋や立つらん
くさもきも−ともにそなひく−おしなへて−つゆとかせとに−あきやたつらむ |
03352 |
未入力 正徹 (xxx)
みるままにむなしき空の秋の風さはる声なき雲そ身にしむ
みるままに−むなしきそらの−あきのかせ−さはるこゑなき−くもそみにしむ |
03353 |
未入力 正徹 (xxx)
あはらやに山かつのあさてほすはつきの嵐身にやしむらん
あはらやに−すむやまかつの−あさてほす−はつきのあらし−みにやしむらむ |
03354 |
未入力 正徹 (xxx)
身ひとつの物とこたへん吹く風もうきはたれその秋の夕くれ
みひとつの−ものとこたへむ−ふくかせも−うきはたれその−あきのゆふくれ |
03355 |
未入力 正徹 (xxx)
たえすうき此夕くれも秋風の身はのこれとや吹きよわるらん
たえすうき−このゆふくれも−あきかせの−みはのこれとや−ふきよわるらむ |
03356 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにも夕の色はいたるともうき宿のこせ秋のむら風
いつくにも−ゆふへのいろは−いたるとも−うきやとのこせ−あきのむらかせ |
03357 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のかせたもとにみてる夕くれの涙こきませ露そ身にしむ
あきのかせ−たもとにみてる−ゆふくれの−なみたこきませ−つゆそみにしむ |
03358 |
未入力 正徹 (xxx)
心なきあまの家居も秋風になりて思ひやおほのうらなし
こころなき−あまのいへゐも−あきかせに−なりておもひや−おほのうらなし |
03359 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみ分けぬならの落葉もふるき世の国の都に秋風そ吹く
ふみわけぬ−ならのおちはも−ふるきよの−くにのみやこに−あきかせそふく |
03360 |
未入力 正徹 (xxx)
なひきふす荻のみありと人そ見ん風にしかるる山の下庵
なひきふす−をきのみありと−ひとそみむ−かせにしかるる−やまのしたいほ |
03361 |
未入力 正徹 (xxx)
知るしらす遠きをのへの松にとへふりにし人を宿の秋かせ
しるしらす−とほきをのへの−まつにとへ−ふりにしひとを−やとのあきかせ |
03362 |
未入力 正徹 (xxx)
さよ衣二のほしの天つひれふるき秋にやかさねそめけん
さよころも−ふたつのほしの−あまつひれ−ふるきあきにや−かさねそめけむ |
03363 |
未入力 正徹 (xxx)
御舟こく天に川との明ほのにかちをかくさぬあとのしら浪
みふねこく−あまのかはとの−あけほのに−かちをかくさぬ−あとのしらなみ |
03364 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世のさらぬわかれを七夕のなかき契にいく度か見ん
ひとのよの−さらぬわかれを−たなはたの−なかきちきりに−いくたひかみむ |
03365 |
未入力 正徹 (xxx)
手をたゆく織るとはすれと七夕になほ衣かすけふのもろ人
てをたゆく−おるとはすれと−たなはたに−なほころもかす−けふのもろひと |
03366 |
未入力 正徹 (xxx)
てもたゆき五百はた衣七夕のかく数数になにいそくらん
てもたゆき−いほはたころも−たなはたの−かくかすかすに−なにいそくらむ |
03367 |
未入力 正徹 (xxx)
いくとせかならひきぬらむ七夕の秋さり衣さらぬわかれに
いくとせか−ならひきぬらむ−たなはたの−あきさりころも−さらぬわかれに |
03368 |
未入力 正徹 (xxx)
なかきをに契や結ふ玉手箱二のほしのあふさきるさを
なかきをに−ちきりやむすふ−たまてはこ−ふたつのほしの−あふさきるさを |
03369 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜よも二のほしの水もらぬ中はへたてし天の川霧
こよひよも−ふたつのほしの−みつもらぬ−なかはへたてし−あまのかはきり |
03370 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕にわかれのほしもよこ雲の車引きいつるしののめやうき
たなはたに−わかれのほしも−よこくもの−くるまひきいつる−しののめやうき |
03371 |
未入力 正徹 (xxx)
待ちとほき年にはたへて天つ星けふのくれ行くほとや久しき
まちとほき−としにはたへて−あまつほし−けふのくれゆく−ほとやひさしき |
03372 |
未入力 正徹 (xxx)
遠かりし一とせよりも七夕のくるるをまつや千世もへぬらん
とほかりし−ひととせよりも−たなはたの−くるるをまつや−ちよもへぬらむ |
03373 |
未入力 正徹 (xxx)
よりくるをまつらか興になりにけり心つくしの天の川舟
よりくるを−まつらかおきに−なりにけり−こころつくしの−あまのかはふね |
03374 |
未入力 正徹 (xxx)
いそけ星秋たつ天の川長もつくり出さぬ月の御舟を
いそけほし−あきたつあまの−かはをさも−つくりいたさぬ−つきのみふねを |
03375 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕のあふ夜の床の天つ風まれにや雲のちりはらふらん
たなはたの−あふよのとこの−あまつかせ−まれにやくもの−ちりはらふらむ |
03376 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふ浪にほしのやとりを尋ねてもむかふかあまの川上の雲
ゆふなみに−ほしのやとりを−たつねても−むかふかあまの−かはかみのくも |
03377 |
未入力 正徹 (xxx)
くるる夜の舟まちかねて七夕の雲のひれふる天の川岸
くるるよの−ふねまちかねて−たなはたの−くものひれふる−あまのかはきし |
03378 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕の妻まつけふの夕くれにいふせさそふるあまの川きり
たなはたの−つままつけふの−ゆふくれに−いふせさそふる−あまのかはきり |
03379 |
未入力 正徹 (xxx)
たちかくせ妻むかへ舟よりきてもまた夜にならす天の川霧
たちかくせ−つまむかへふね−よりきても−またよにならす−あまのかはきり |
03380 |
未入力 正徹 (xxx)
さす花のかさしもひれも錦たつ露のまきれの天つ川かせ
さすはなの−かさしもひれも−にしきたつ−つゆのまきれの−あまつかはかせ |
03381 |
未入力 正徹 (xxx)
織女のおるや五百はたたてぬきは露霜しらぬ天のはころも
たなはたの−おるやいほはた−たてぬきは−つゆしもしらぬ−あまのはころも |
03382 |
未入力 正徹 (xxx)
河橋やかへるなみたのむら雨にぬれて星合の秋の紅葉は
かははしや−かへるなみたの−むらさめに−ぬれてほしあひの−あきのもみちは |
03383 |
未入力 正徹 (xxx)
君に行く綱手もいそけ川浪にはやのりうけぬ天の岩舟
きみにゆく−つなてもいそけ−かはなみに−はやのりうけぬ−あめのいはふね |
03384 |
未入力 正徹 (xxx)
星やけふつくりおきけん久かたの天つ神代の天の川はし
ほしやけふ−つくりおきけむ−ひさかたの−あまつかみよの−あまのかははし |
03385 |
未入力 正徹 (xxx)
此夕ふりさけみれは雲はれて先星きよし天の川風
このゆふへ−ふりさけみれは−くもはれて−まつほしきよし−あまのかはかせ |
03386 |
未入力 正徹 (xxx)
よひのまに渡りて月の舟なかせえやはかへらん天の川浪
よひのまに−わたりてつきの−ふねなかせ−えやはかへらむ−あまのかはなみ |
03387 |
未入力 正徹 (xxx)
天の河わたりし月の舟なかしこきもかへらてなとわかるらん
あまのかは−わたりしつきの−ふねなかし−こきもかへらて−なとわかるらむ |
03388 |
未入力 正徹 (xxx)
あまの川こえつる月の舟なかし別や星のかちわたりせん
あまのかは−こえつるつきの−ふねなかし−わかれやほしの−かちわたりせむ |
03389 |
未入力 正徹 (xxx)
つれもなき星も心やうつすらん思ひよわれる秋の日かけを
つれもなき−ほしもこころや−うつすらむ−おもひよわれる−あきのひかけを |
03390 |
未入力 正徹 (xxx)
かちの葉におきけるものをよしやさは水かけ草の露の玉つさ
かちのはに−おきけるものを−よしやさは−みつかけくさの−つゆのたまつさ |
03391 |
未入力 正徹 (xxx)
空にさへねかひの糸を引く雲のほそきや綱手天の川舟
そらにさへ−ねかひのいとを−ひくくもの−ほそきやつなて−あまのかはふね |
03392 |
未入力 正徹 (xxx)
行きめくるあふせや遠き七夕の車をあらふ秋の川水
ゆきめくる−あふせやとほき−たなはたの−くるまをあらふ−あきのかはみつ |
03393 |
未入力 正徹 (xxx)
あまの川今朝足よわきを車をあらふもつらくかへる浪かな
あまのかは−けさあしよわき−をくるまを−あらふもつらく−かへるなみかな |
03394 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ空けさ露とらぬ玉章をかくやわかれの涙なるらん
あまつそら−けさつゆとらぬ−たまつさを−かくやわかれの−なみたなるらむ |
03395 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕の雲の車はあらふへき輪たちの塵もあらし河なみ
たなはたの−くものくるまは−あらふへき−わたちのちりも−あらしかはなみ |
03396 |
未入力 正徹 (xxx)
星合の露の玉ゆかけさはまたつもらぬちりのたてる名やうき
ほしあひの−つゆのたまゆか−けさはまた−つもらぬちりの−たてるなやうき |
03397 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕の待つや夕もいそかれす先うき秋にむかふ心は
たなはたの−まつやゆふへも−いそかれす−まつうきあきに−むかふこころは |
03398 |
未入力 正徹 (xxx)
此夕にほへる雲やほし合の空たきものの煙なるらん
このゆふへ−にほへるくもや−ほしあひの−そらたきものの−けふりなるらむ |
03399 |
未入力 正徹 (xxx)
露結ふ此手拍もうらなくやふたつの星の影うつすらん
つゆむすふ−このてかしはも−うらなくや−ふたつのほしの−かけうつすらむ |
03400 |
未入力 正徹 (xxx)
たき初めよけふ星合の浜ひさしさして夜をまつあまのいさり火
たきそめよ−けふほしあひの−はまひさし−さしてよをまつ−あまのいさりひ |
03401 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりてはむなしき浪に七夕のあふ衣かさねよ浦のはまゆふ
かへりては−むなしきなみに−たなはたの−あふよかさねよ−うらのはまゆふ |
03402 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ星ささ分くる露や仙人の千ひろの竹のすゑはなるらん
あまつほし−ささわくるつゆや−やまひとの−ちひろのたけの−すゑはなるらむ |
03403 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜あふほしか川辺に影なひく芦屋の里にすくる蛍は
こよひあふ−ほしかかはへに−かけなひく−あしやのさとに−すくるほたるは |
03404 |
未入力 正徹 (xxx)
星のためあらふ硯も紫の色こき程のことのはもかな
ほしのため−あらふすすりも−むらさきの−いろこきほとの−ことのはもかな |
03405 |
未入力 正徹 (xxx)
ほしのかけなかれて水もめくりあふ今夜そしるや天の川島
ほしのかけ−なかれてみつも−めくりあふ−こよひそしるや−あまのかはしま |
03406 |
未入力 正徹 (xxx)
いかてけふわか時えたる梶の木の枝もまはらにもとつ葉もなき
いかてけふ−わかときえたる−かちのきの−えたもまはらに−もとつはもなき |
03407 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕の玉のかさしにさす櫛もおちてぬる夜や心とくらん
たなはたの−たまのかさしに−さすくしも−おちてぬるよや−こころとくらむ |
03408 |
未入力 正徹 (xxx)
おちそせん七夕つめのくろかみにさすや別のくしも涙も
おちそせむ−たなはたつめの−くろかみに−さすやわかれの−くしもなみたも |
03409 |
未入力 正徹 (xxx)
彦ほしのひれふりはへてくるならん夕の空になひく白露
ひこほしの−ひれふりはへて−くるならむ−ゆふへのそらに−なひくしらつゆ |
03410 |
未入力 正徹 (xxx)
八十瀬こく舟路あさくほひこ星にかさはや天の川原毛の駒
やそせこく−ふなちあさくほ−ひこほしに−かさはやあまの−かはらけのこま |
03411 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕のたもとに落ちてささかにのあさ引く糸のくるるまてとや
たなはたの−たもとにおちて−ささかにの−あさひくいとの−くるるまてとや |
03412 |
未入力 正徹 (xxx)
わか中の契はしらすさをしかの上毛かはらぬほし合のころ
わかなかの−ちきりはしらす−さをしかの−うはけかはらぬ−ほしあひのころ |
03413 |
未入力 正徹 (xxx)
星合の道とししらは獣の雲にはほえしさ夜ふけぬとも
ほしあひの−みちとししらは−けたものの−くもにはほえし−さよふけぬとも |
03414 |
未入力 正徹 (xxx)
かるもかくふすゐの床に玉のゆか思へはほしもかりの契を
かるもかく−ふすゐのとこに−たまのゆか−おもへはほしも−かりのちきりを |
03415 |
未入力 正徹 (xxx)
かり衣しくまにもあらて天つ星今夜にあふやえものなるらん
かりころも−しくまにもあらて−あまつほし−こよひにあふや−えものなるらむ |
03416 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世そくもる契を猶もまつ暮れぬにわたせ天の川ふね
ひとのよそ−くもるちきりを−なほもまつ−くれぬにわたせ−あまのかはふね |
03417 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕のあふ夜の窓に文をさへひもときおきてこよひかしつる
たなはたの−あふよのまとに−ふみをさへ−ひもときおきて−こよひかしつる |
03418 |
未入力 正徹 (xxx)
いかたしも天のふみ木にしはしかせなれもそ星のあふ瀬しら浪
いかたしも−あめのふみきに−しはしかせ−なれもそほしの−あふせしらなみ |
03419 |
未入力 正徹 (xxx)
くりいたす天つ織女の糸ならぬたかはた薄秋みたるらん
くりいたす−あまつたなはたの−いとならぬ−たかはたすすき−あきみたるらむ |
03420 |
未入力 正徹 (xxx)
あやしくも舟そよりくる天の川風の心もほそき綱手に
あやしくも−ふねそよりくる−あまのかは−かせのこころも−ほそきつなてに |
03421 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川えやはまさらむ七夕の契むなしき雨ときけとも
あまのかは−えやはまさらむ−たなはたの−ちきりむなしき−あめときけとも |
03422 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世の思ひや空に浅からむ年に一夜を契るほしかな
ひとのよの−おもひやそらに−あさからむ−としにひとよを−ちきるほしかな |
03423 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれてのほしの契のはてもなく初もしらぬ天の川なみ
なかれての−ほしのちきりの−はてもなく−はしめもしらぬ−あまのかはなみ |
03424 |
未入力 正徹 (xxx)
仙人の千ひろの竹の庭鳥や星の別の夜半を告くらん
やまひとの−ちひろのたけの−にはとりや−ほしのわかれの−よはをつくらむ |
03425 |
未入力 正徹 (xxx)
くもりつる君か秋霧けふ晴れて千年まてみよ星合の空
くもりつる−きみかあききり−けふはれて−ちとせまてみよ−ほしあひのそら |
03426 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜あふ七夕つめにやとりさし天の川原にかかるたひ人
こよひあふ−たなはたつめに−やとりさし−あまのかはらに−かかるたひひと |
03427 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川うき木の亀のあひかたき御法の影を星にみるかな
あまのかは−うききのかめの−あひかたき−みのりのかけを−ほしにみるかな |
03428 |
未入力 正徹 (xxx)
鵲の翅をほしの天の川ほしよりさきにわたる秋かせ
かささきの−つはさをほしの−あまのかは−ほしよりさきに−わたるあきかせ |
03429 |
未入力 正徹 (xxx)
星合の橋ともかさぬかささきや宇治の川洲にねふり立つらん
ほしあひの−はしともかさぬ−かささきや−うちのかはすに−ねふりたつらむ |
03430 |
未入力 正徹 (xxx)
ふけにけりねぬ夜の後の酉の日を鳴きてな告けそ星合の空
ふけにけり−ねぬよののちの−とりのひを−なきてなつけそ−ほしあひのそら |
03431 |
未入力 正徹 (xxx)
七夕にしつかあさてもかけてかせは月なるへきのちのあしたそ
たなはたに−しつかあさても−かけてかせ−はつきなるへき−のちのあしたそ |
03432 |
未入力 正徹 (xxx)
天の河去年のあさ瀬や忘るらんわたりわつらふ星のかけかな
あまのかは−こそのあさせや−わするらむ−わたりわつらふ−ほしのかけかな |
03433 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川なかれ初めにしむかしより契そたえぬ星合の空
あまのかは−なかれそめにし−むかしより−ちきりそたえぬ−ほしあひのそら |
03434 |
未入力 正徹 (xxx)
花もをし朝霧たつる玉くもる日影みかかぬ野へのしら露
はなもをし−あさきりたつる−たまくもる−ひかけみかかぬ−のへのしらつゆ |
03435 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ならてかからむかたも七十にあまりて消えぬ露もうらめし
そてならて−かからむかたも−ななそちに−あまりてきえぬ−つゆもうらめし |
03436 |
未入力 正徹 (xxx)
袖をかる露は心にあるものをよそけにぬるる草のうへかな
そてをかる−つゆはこころに−あるものを−よそけにぬるる−くさのうへかな |
03437 |
未入力 正徹 (xxx)
秋草の露とこたふる風もなしたたしら玉をみかく月かけ
あきくさの−つゆとこたふる−かせもなし−たたしらたまを−みかくつきかけ |
03438 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世まてふるのの小篠かからまし都のおくの秋の夕露
いくよまて−ふるののをささ−かからまし−みやこのおくの−あきのゆふつゆ |
03439 |
未入力 正徹 (xxx)
かかりけむ昔の秋の宮人もたもとや色にならのはの露
かかりけむ−むかしのあきの−みやひとも−たもとやいろに−ならのはのつゆ |
03440 |
未入力 正徹 (xxx)
さとはあれぬ露はむかしの秋かけて誰になれにし袖したふらん
さとはあれぬ−つゆはむかしの−あきかけて−たれになれにし−そてしたふらむ |
03441 |
未入力 正徹 (xxx)
たか世よりささ葉分けけんいそのかみ都の秋の夕くれの露
たかよより−ささはわけけむ−いそのかみ−みやこのあきの−ゆふくれのつゆ |
03442 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のみかはては草にもととまらす恨みやおくるふるさとの露
そてのみか−はてはくさにも−ととまらす−うらみやおくる−ふるさとのつゆ |
03443 |
未入力 正徹 (xxx)
ささかにも露もあさちか末の世にかかれとてしもすみし宿かは
ささかにも−つゆもあさちか−すゑのよに−かかれとてしも−すみしやとかは |
03444 |
未入力 正徹 (xxx)
露やあらぬ秋や昔の古郷にわか身ひとつのもとあらの萩
つゆやあらぬ−あきやむかしの−ふるさとに−わかみひとつの−もとあらのはき |
03445 |
未入力 正徹 (xxx)
宿そなきすみけん人の思ひおく露やあさちに古郷ののへ
やとそなき−すみけむひとの−おもひおく−つゆやあさちに−ふるさとののへ |
03446 |
未入力 正徹 (xxx)
契りてきその暁の露の身をてらさん月にめくりあへとは
ちきりてき−そのあかつきの−つゆのみを−てらさむつきに−めくりあへとは |
03447 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむそよ又世に出てん望月の其暁の露のちきりを
たのむそよ−またよにいてむ−もちつきの−そのあかつきの−つゆのちきりを |
03448 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の人の涙もまこるらん此方彼方の道芝のつゆ
きぬきぬの−ひとのなみたも−まこるらむ−こなたかなたの−みちしはのつゆ |
03449 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川かほたれ時の浪やちる露ふりくたる草のうへかな
あまのかは−かはたれときの−なみやちる−つゆふりくたる−くさのうへかな |
03450 |
未入力 正徹 (xxx)
しほたれぬ袖やなからむ暁の露の玉手のさとのうら人
しほたれぬ−そてやなからむ−あかつきの−つゆのたまての−さとのうらひと |
03451 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田の新はの露の玉ゆらにまちうる民も心なかくや
あきのたの−にひはのつゆの−たまゆらに−まちうるたみも−こころなかくや |
03452 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月のたよりは契れ鶉さへかれにし床のふか草のつゆ
ゆくつきの−たよりはちきれ−うつらさへ−かれにしとこの−ふかくさのつゆ |
03453 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原風そ分けくる花すすき手にまきかくす露の白玉
くさのはら−かせそわけくる−はなすすき−てにまきかくす−つゆのしらたま |
03454 |
未入力 正徹 (xxx)
草毎に見し末の露もと柏色にかつちる原のあきかせ
くさことに−みしすゑのつゆ−もとかしは−いろにかつちる−はらのあきかせ |
03455 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙のあさけの袖に露きえぬ身や夕くれの野への秋風
しろたへの−あさけのそてに−つゆきえぬ−みやゆふくれの−のへのあきかせ |
03456 |
未入力 正徹 (xxx)
老そ猶かせまつ程の夕くれにいのちかけたる袖のしら露
おいそなほ−かせまつほとの−ゆふくれに−いのちかけたる−そてのしらつゆ |
03457 |
未入力 正徹 (xxx)
かさしては夏の日影そへたて行く秋風いたす月の扇に
かさしては−なつのひかけそ−へたてゆく−あきかせいたす−つきのあふきに |
03458 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はまたてる日もつよく吹く風の身にしむへくもあらぬ空かな
あきはまた−てるひもつよく−ふくかせの−みにしむへくも−あらぬそらかな |
03459 |
未入力 正徹 (xxx)
日影なきあさ夕露は秋にして袖のひるまにのこる夏かな
ひかけなき−あさゆふつゆは−あきにして−そてのひるまに−のこるなつかな |
03460 |
未入力 正徹 (xxx)
秋にたつ雲の衣の天つ風てる日を草にかへす袖かな
あきにたつ−くものころもの−あまつかせ−てるひをくさに−かへすそてかな |
03461 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの田面はるかに風さわきむら雲まよふ秋のいなつま
やまもとの−たのもはるかに−かせさわき−むらくもまよふ−あきのいなつま |
03462 |
未入力 正徹 (xxx)
風渡る山田のくろの花汀まねけはまねくよひのいなつま
かせわたる−やまたのくろの−はなみきは−まねけはまねく−よひのいなつま |
03463 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れわたる山きは晴れて一村のにかけする秋のいなつま
くれわたる−やまきははれて−ひとむらの−くもにかけする−あきのいなつま |
03464 |
未入力 正徹 (xxx)
春秋は夢にもあらす稲妻の光のうちにすめる世中
はるあきは−ゆめにもあらす−いなつまの−ひかりのうちに−すめるよのなか |
03465 |
未入力 正徹 (xxx)
星きよき夕やみなからいなつまの光にみれはむら雲の空
ほしきよき−ゆふやみなから−いなつまの−ひかりにみれは−むらくものそら |
03466 |
未入力 正徹 (xxx)
行末も昔も今もいなつまのひかりにすきぬあはれ世中
ゆくすゑも−むかしもいまも−いなつまの−ひかりにすきぬ−あはれよのなか |
03467 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへは心にちかしいな妻のひかりのまにもいく世へねらん
いにしへは−こころにちかし−いなつまの−ひかりのまにも−いくよへねらむ |
03468 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田をほのめかしつる夕より稲の妻しる雲のかよひち
あきのたを−ほのめかしつる−ゆふへより−いねのつましる−くものかよひち |
03469 |
未入力 正徹 (xxx)
見さりつる遠き山きはあらはれて雲のは匂ふよひの稲妻
みさりつる−とほきやまきは−あらはれて−くものはにほふ−よひのいなつま |
03470 |
未入力 正徹 (xxx)
行く舟をまねくとみえてひれふるや松浦の山の秋のいなつま
ゆくふねを−まねくとみえて−ひれふるや−まつらのやまの−あきのいなつま |
03471 |
未入力 正徹 (xxx)
心からたたいなつまのかけに見て千年は過きぬ遠山の松
こころから−たたいなつまの−かけにみて−ちとせはすきぬ−とほやまのまつ |
03472 |
未入力 正徹 (xxx)
くらき夜のたれに心をあはすらん雲そまたたく秋の稲妻
くらきよの−たれにこころを−あはすらむ−くもそまたたく−あきのいなつま |
03473 |
未入力 正徹 (xxx)
さしも草もゆる光はつれもなき雲もいふきの袖の稲妻
さしもくさ−もゆるひかりは−つれもなき−くももいふきの−そてのいなつま |
03474 |
未入力 正徹 (xxx)
なる神はならぬ山田のいなつまにひたうつ秋の鹿そおとろく
なるかみは−ならぬやまたの−いなつまに−ひたうつあきの−しかそおとろく |
03475 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のよひのいなつまさ夜更けて遠山はたの雲にのこれる
あきのたの−よひのいなつま−さよふけて−とほやまはたの−くもにのこれる |
03476 |
未入力 正徹 (xxx)
をしむとや向ふ雲まの山の端に入日をまねく秋のいな妻
をしむとや−むかふくもまの−やまのはに−いりひをまねく−あきのいなつま |
03477 |
未入力 正徹 (xxx)
照しても心はやみのままなれはわか身のよそのさ夜の稲つま
てらしても−こころはやみの−ままなれは−わかみのよその−さよのいなつま |
03478 |
未入力 正徹 (xxx)
長月や秋の日影の初霜の露とおくまて残るあさかほ
なかつきや−あきのひかけの−はつしもの−つゆとおくまて−のこるあさかほ |
03479 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそあらぬ秋の日かけの日にそへてよわれはつよき槿の花
みにそあらぬ−あきのひかけの−ひにそへて−よわれはつよき−あさかほのはな |
03480 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしまてあさかほおそき花のひもとかぬに結ふあかつきの露
しはしまて−あさかほおそき−はなのひも−とかぬにむすふ−あかつきのつゆ |
03481 |
未入力 正徹 (xxx)
露なから日の出てやらむ程はかり月かけ契るあさかほの花
つゆなから−ひのいてやらむ−ほとはかり−つきかけちきる−あさかほのはな |
03482 |
未入力 正徹 (xxx)
夕くれの露をはなににかかれとてけさあさかほのしをれはつらん
ゆふくれの−つゆをはなにに−かかれとて−けさあさかほの−しをれはつらむ |
03483 |
未入力 正徹 (xxx)
あしかきの夜ふかき月に開初めている影したふあさかほの花
あしかきの−よふかきつきに−さきそめて−いるかけしたふ−あさかほのはな |
03484 |
未入力 正徹 (xxx)
哀にそかきほにみゆるあさかほのあすひらくへき花とかるると
あはれにそ−かきほにみゆる−あさかほの−あすひらくへき−はなとかるると |
03485 |
未入力 正徹 (xxx)
消えとまる露こそなけれ槿の夕かけまたぬ花のまかきに
きえとまる−つゆこそなけれ−あさかほの−ゆふかけまたぬ−はなのまかきに |
03486 |
未入力 正徹 (xxx)
あさかほの露の籬の花かつら夕日をかけて見る秋もかな
あさかほの−つゆのまかきの−はなかつら−ゆふひをかけて−みるあきもかな |
03487 |
未入力 正徹 (xxx)
中垣のかけものこらすしをるるや朝日すゑこす槿の花
なかかきの−かけものこらす−しをるるや−あさひすゑこす−あさかほのはな |
03488 |
未入力 正徹 (xxx)
折りとらぬ色こそあかね中垣の花のぬしある宿のあさかほ
をりとらぬ−いろこそあかね−なかかきの−はなのぬしある−やとのあさかほ |
03489 |
未入力 正徹 (xxx)
垣ほよりこなたに枝を引きとるや人つまならぬあさかほのはな
かきほより−こなたにえたを−ひきとるや−ひとつまならぬ−あさかほのはな |
03490 |
未入力 正徹 (xxx)
一枝もをりはやつさし開く花のあるしよそなる庭のあさかほ
ひとえたも−をりはやつさし−さくはなの−あるしよそなる−にはのあさかほ |
03491 |
未入力 正徹 (xxx)
ひともともうゑぬ宿とは誰かみんかきほは人のあさかほのほな
ひともとも−うゑぬやととは−たれかみむ−かきほはひとの−あさかほのほな |
03492 |
未入力 正徹 (xxx)
葉かくれてつもれる露のみなそこに花そしをれぬ庭の槿
はかくれて−つもれるつゆの−みなそこに−はなそしをれぬ−にはのあさかほ |
03493 |
未入力 正徹 (xxx)
たかわけし都の野へそ磯の上ふる枝にさける秋萩の露
たかわけし−みやこののへそ−いそのかみ−ふるえにさける−あきはきのつゆ |
03494 |
未入力 正徹 (xxx)
色色の花の中なる白妙は露のさきける草も有りけり
いろいろの−はなのうちなる−しろたへは−つゆのさきける−くさもありけり |
03495 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらはをし秋風よきよ百草に一花急く萩のうは露
ちらはをし−あきかせよきよ−ももくさに−ひとはないそく−はきのうはつゆ |
03496 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ嵐野への錦をあらふなり花の千種の露のしら浪
あさあらし−のへのにしきを−あらふなり−はなのちくさの−つゆのしらなみ |
03497 |
未入力 正徹 (xxx)
そのの名のもも草分くる道ふりてみし世すくなく残るあさかほ
そののなの−ももくさわくる−みちふりて−みしよすくなく−のこるあさかほ |
03498 |
未入力 正徹 (xxx)
小萩さく麓の野への山颪おきける露の限をそみる
こはきさく−ふもとののへの−やまおろし−おきけるつゆの−かきりをそみる |
03499 |
未入力 正徹 (xxx)
花のひもときあらひ衣露ちるや萩のえこゆる野ちの川なみ
はなのひも−ときあらひきぬ−つゆちるや−はきのえこゆる−のちのかはなみ |
03500 |
未入力 正徹 (xxx)
萩かえのむもれし露はみなおちて花の香かろき庭の朝かせ
はきかえの−むもれしつゆは−みなおちて−はなのかかろき−にはのあさかせ |
03501 |
未入力 正徹 (xxx)
置く露の色をあさちか一もとも花にましらぬ野への秋草
おくつゆの−いろをあさちか−ひともとも−はなにましらぬ−のへのあきくさ |
03502 |
未入力 正徹 (xxx)
いとへ風千草なからの夕露にひもときわたす花のいろいろ
いとへかせ−ちくさなからの−ゆふつゆに−ひもときわたす−はなのいろいろ |
03503 |
未入力 正徹 (xxx)
秋草の花のひろ野のひろはたはおりめも知らぬから錦かも
あきくさの−はなのひろのの−ひろはたは−おりめもしらぬ−からにしきかも |
03504 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑ遠き千草に千世の松の風花の宿とふ声もたえせし
すゑとほき−ちくさにちよの−まつのかせ−はなのやととふ−こゑもたえせし |
03505 |
未入力 正徹 (xxx)
野辺の草花の錦のうら風になりてそこゆる露の白浪
のへのくさ−はなのにしきの−うらかせに−なりてそこゆる−つゆのしらなみ |
03506 |
未入力 正徹 (xxx)
色たへの秋の花野をむら草に吹きあらはせる露のあさかせ
いろたへの−あきのはなのを−むらくさに−ふきあらはせる−つゆのあさかせ |
03507 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もはやふるき軒はの萩の露下葉うつろひ花そあれ行く
あきもはや−ふるきのきはの−はきのつゆ−したはうつろひ−はなそあれゆく |
03508 |
未入力 正徹 (xxx)
山颪俄にあらきのへの草花飛ひ露もくたけてそ行く
やまおろし−にはかにあらき−のへのくさ−はなとひつゆも−くたけてそゆく |
03509 |
未入力 正徹 (xxx)
はな薄まねけはとてやかへるらんうらみまくすか原の秋風
はなすすき−まねけはとてや−かへるらむ−うらみまくすか−はらのあきかせ |
03510 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の霜しはしなおきそ蓬生の露たにからす松むしの声
あきのしも−しはしなおきそ−よもきふの−つゆたにからす−まつむしのこゑ |
03511 |
未入力 正徹 (xxx)
あさちふや古郷人の秋風をなほ身にしめとまつ虫のなく
あさちふや−ふるさとひとの−あきかせを−なほみにしめと−まつむしのなく |
03512 |
未入力 正徹 (xxx)
霜はまた浅茅かくれの蛬わかなきからす声なうらみそ
しもはまた−あさちかくれの−きりきりす−わかなきからす−こゑなうらみそ |
03513 |
未入力 正徹 (xxx)
わけ行けは草はにねをそ鳴きとむるたれ松虫の心おくらむ
わけゆけは−くさはにねをそ−なきとむる−たれまつむしの−こころおくらむ |
03514 |
未入力 正徹 (xxx)
露そちるなひく草葉はそよかねと虫鳴きとまる野への夕風
つゆそちる−なひくくさはは−そよかねと−むしなきとまる−のへのゆふかせ |
03515 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかみおこなふ鈴とききなせはしきみか本に虫そ鳴くなる
やまふかみ−おこなふすすと−ききなせは−しきみかもとに−むしそなくなる |
03516 |
未入力 正徹 (xxx)
あれわたる壁に影なき灯にあらはれてなくきりきりすかな
あれわたる−かへにかけなき−ともしひに−あらはれてなく−きりきりすかな |
03517 |
未入力 正徹 (xxx)
野への霜にみな声たえて篭の内に露かふ虫ののこるはかなさ
のへのしもに−みなこゑたえて−このうちに−つゆかふむしの−のこるはかなさ |
03518 |
未入力 正徹 (xxx)
あやにくに草むらことの虫のねもわくれはきゆるのへの夕露
あやにくに−くさむらことの−むしのねも−わくれはきゆる−のへのゆふつゆ |
03519 |
未入力 正徹 (xxx)
夕露に又みかくれて松むしのなくねや秋のもすの草くき
ゆふつゆに−またみかくれて−まつむしの−なくねやあきの−もすのくさくき |
03520 |
未入力 正徹 (xxx)
露分けて草の原をやとふとせんやかてきえ行く虫の声かな
つゆわけて−くさのはらをや−とふとせむ−やかてきえゆく−むしのこゑかな |
03521 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原すゑはの秋の霜をいたみかるるをみれは虫のねもなし
くさのはら−すゑはのあきの−しもをいたみ−かるるをみれは−むしのねもなし |
03522 |
未入力 正徹 (xxx)
もにすまぬ思ひも秋やふかからむ虫啼く草の原の池水
もにすまぬ−おもひもあきや−ふかからむ−むしなくくさの−はらのいけみつ |
03523 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きまよふかたもさためす草の原野風のままにきほふ虫の音
ふきまよふ−かたもさためす−くさのはら−のかせのままに−きほふむしのね |
03524 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の虫草を冬野の松のもとふみからされぬねをや鳴くらん
あきのむし−くさをふゆのの−まつのもと−ふみからされぬ−ねをやなくらむ |
03525 |
未入力 正徹 (xxx)
なく虫も露霜さむき秋草のふかき所にのこる声かな
なくむしも−つゆしもさむき−あきくさの−ふかきところに−のこるこゑかな |
03526 |
未入力 正徹 (xxx)
駅路をよるやすくるとこととへは草のは山にすすむしの声
うまやちを−よるやすくると−こととへは−くさのはやまに−すすむしのこゑ |
03527 |
未入力 正徹 (xxx)
すみなれし秋をまくさのかりふよりこゑあらはれて虫うらむらん
すみなれし−あきをまくさの−かりふより−こゑあらはれて−むしうらむらむ |
03528 |
未入力 正徹 (xxx)
秋なから落葉もしらぬ松虫の声うつもるる野への初霜
あきなから−おちはもしらぬ−まつむしの−こゑうつもるる−のへのはつしも |
03529 |
未入力 正徹 (xxx)
野への霜よわかなつますは草かくれありもやせんと虫や鳴くらん
のへのしもよ−わかなつますは−くさかくれ−ありもやせむと−むしやなくらむ |
03530 |
未入力 正徹 (xxx)
影見えぬ野守のかかみよそなからなほかくれなき虫の声かな
かけみえぬ−のもりのかかみ−よそなから−なほかくれなき−むしのこゑかな |
03531 |
未入力 正徹 (xxx)
しほみてはなるみの野へにすす舟をよる漕きわたる虫の声かな
しほみては−なるみののへに−すすふねを−よるこきわたる−むしのこゑかな |
03532 |
未入力 正徹 (xxx)
虫のねは猶そひまなき松かきをへたつる野への秋の暮かた
むしのねは−なほそひまなき−まつかきを−へたつるのへの−あきのくれかた |
03533 |
未入力 正徹 (xxx)
秋を猶しめちかはらに鳴く虫の霜ふらぬまや露たのむらん
あきをなほ−しめちかはらに−なくむしの−しもふらぬまや−つゆたのむらむ |
03534 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜にあへすかれ行く秋草の糸よりよわき虫のこゑかな
つゆしもに−あへすかれゆく−あきくさの−いとよりよわき−むしのこゑかな |
03535 |
未入力 正徹 (xxx)
此秋も露きえやらて虫の音のよわるををしむ老の暮かな
このあきも−つゆきえやらて−むしのねの−よわるををしむ−おいのくれかな |
03536 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原やかてまきるるむしのねはいつれの露のやとりなるらん
くさのはら−やかてまきるる−むしのねは−いつれのつゆの−やとりなるらむ |
03537 |
未入力 正徹 (xxx)
野へのかせこなたに吹くやぬる床にきほひおくるるむしの声かな
のへのかせ−こなたにふくや−ぬるとこに−きほひおくるる−むしのこゑかな |
03538 |
未入力 正徹 (xxx)
あすしらぬ野原の虫も世にふれはことのはしけき夕暮の声
あすしらぬ−のはらのむしも−よにふれは−ことのはしけき−ゆふくれのこゑ |
03539 |
未入力 正徹 (xxx)
在明の月のかつらの影にさへかたへかれゆくむしのこゑかな
ありあけの−つきのかつらの−かけにさへ−かたへかれゆく−むしのこゑかな |
03540 |
未入力 正徹 (xxx)
草葉にも哀はかけよ松虫のなく夕かけの秋の初霜
くさはにも−あはれはかけよ−まつむしの−なくゆふかけの−あきのはつしも |
03541 |
未入力 正徹 (xxx)
草のはにきゆる日影を限にて夕露またぬ松むしのこゑ
くさのはに−きゆるひかけを−かきりにて−ゆふつゆまたぬ−まつむしのこゑ |
03542 |
未入力 正徹 (xxx)
風ぬるく夕霜おかぬ秋の程草葉にすかる虫の声かな
かせぬるく−ゆふしもおかぬ−あきのほと−くさはにすかる−むしのこゑかな |
03543 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき夜をあかすときくも鳴く虫の心しられぬ野への露霜
なかきよを−あかすときくも−なくむしの−こころしられぬ−のへのつゆしも |
03544 |
未入力 正徹 (xxx)
虫のねは野へにそさむる秋の夢やとりはせはきあさちふの床
むしのねは−のへにそさむる−あきのゆめ−やとりはせはき−あさちふのとこ |
03545 |
未入力 正徹 (xxx)
蛬なくねからすなわか方によるの衣の袖のはつ霜
きりきりす−なくねからすな−わかかたに−よるのころもの−そてのはつしも |
03546 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の虫なくや思ひの草葉より出行く玉ととふほたるかな
あきのむし−なくやおもひの−くさはより−いてゆくたまと−とふほたるかな |
03547 |
未入力 正徹 (xxx)
いてぬまは草のはしけく啼く虫のまはらになりぬ月やさゆらん
いてぬまは−くさのはしけく−なくむしの−まはらになりぬ−つきやさゆらむ |
03548 |
未入力 正徹 (xxx)
人はなとうしと聞くらん秋の虫鳴くはよろこふ声ふかき夜を
ひとはなと−うしときくらむ−あきのむし−なくはよろこふ−こゑふかきよを |
03549 |
未入力 正徹 (xxx)
宮木引くこゑにはあらてさ夜中に蓬か杣はむしそ鳴くなる
みやきひく−こゑにはあらて−さよなかに−よもきかそまは−むしそなくなる |
03550 |
未入力 正徹 (xxx)
あさちふや袖とふ月の秋風も夜渡りあかす虫の声かな
あさちふや−そてとふつきの−あきかせも−よわたりあかす−むしのこゑかな |
03551 |
未入力 正徹 (xxx)
夜半の虫なにをつくとか駅路のよそのね覚に鈴ならすらん
よはのむし−なにをつくとか−うまやちの−よそのねさめに−すすならすらむ |
03552 |
未入力 正徹 (xxx)
月はとへよるの蛍の玉きえし人も枕もふるき世の秋
つきはとへ−よるのほたるの−たまきえし−ひともまくらも−ふるきよのあき |
03553 |
未入力 正徹 (xxx)
わかためにはたおる虫や閨にきて壁なる草の糸に鳴くらん
わかために−はたおるむしや−ねやにきて−かへなるくさの−いとになくらむ |
03554 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴くむしの思ひの露もふかからぬ秋を草はにかろき声かな
なくむしの−おもひのつゆも−ふかからぬ−あきをくさはに−かろきこゑかな |
03555 |
未入力 正徹 (xxx)
草のもとつもりし露のみな底に身をしつめても虫や鳴くらん
くさのもと−つもりしつゆの−みなそこに−みをしつめても−むしやなくらむ |
03556 |
未入力 正徹 (xxx)
淵となる底の草葉を玉藻にてなかるる露に虫そ鳴くなる
ふちとなる−そこのくさはを−たまもにて−なかるるつゆに−むしそなくなる |
03557 |
未入力 正徹 (xxx)
よをこめて庭の蓬を杣木とやきりきりすなく声いそくらん
よをこめて−にはのよもきを−そまきとや−きりきりすなく−こゑいそくらむ |
03558 |
未入力 正徹 (xxx)
庭草に秋風たつを松むしの人けありとや啼きとまるらん
にはくさに−あきかせたつを−まつむしの−ひとけありとや−なきとまるらむ |
03559 |
未入力 正徹 (xxx)
虫の音も庭の草葉もからさすよ有明の月の霜の下露
むしのねも−にはのくさはも−からさすよ−ありあけのつきの−しものしたつゆ |
03560 |
未入力 正徹 (xxx)
草はみないつくか霜の下ならぬ身にしられけりよわる虫の音
くさはみな−いつくかしもの−したならぬ−みにしられけり−よわるむしのね |
03561 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふかき虫のうらみにまくす葉の心あはせてかへる野へかな
あきふかき−むしのうらみに−まくすはの−こころあはせて−かへるのへかな |
03562 |
未入力 正徹 (xxx)
誰をかもこやのにかるる松虫のこゑもうらみて浪かへるらん
たれをかも−こやのにかるる−まつむしの−こゑもうらみて−なみかへるらむ |
03563 |
未入力 正徹 (xxx)
秋すてにふけ行くのへも霜おかておのかねの日の松虫や啼く
あきすてに−ふけゆくのへも−しもおかて−おのかねのひの−まつむしやなく |
03564 |
未入力 正徹 (xxx)
野へやうき蓬かねやの蛬露のまろねはわれそ寒けき
のへやうき−よもきかねやの−きりきりす−つゆのまろねは−われそさむけき |
03565 |
未入力 正徹 (xxx)
きりきりす千草の露もまろひ逢ひて思ひの淵に声そしつめる
きりきりす−ちくさのつゆも−まろひあひて−おもひのふちに−こゑそしつめる |
03566 |
未入力 正徹 (xxx)
うき秋のなみたかつとほおもはてや枕の下にきりきりすなく
うきあきの−なみたかつとほ−おもはてや−まくらのしたに−きりきりすなく |
03567 |
未入力 正徹 (xxx)
蛬野にもふすならぬ手枕の下はふくすのうらみてそなく
きりきりす−のにもふすならぬ−たまくらの−したはふくすの−うらみてそなく |
03568 |
未入力 正徹 (xxx)
声のみそねやの枕にきりきりす庭なる壁のもとに鳴く夜を
こゑのみそ−ねやのまくらに−きりきりす−にはなるかへの−もとになくよを |
03569 |
未入力 正徹 (xxx)
知るといふ枕やつけて蛬秋の思ひのうきをとふらん
しるといふ−まくらやつけて−きりきりす−あきのおもひの−うきをとふらむ |
03570 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜も嵐にちりて行く秋を恨たえたる葛の紅葉は
つゆしもも−あらしにちりて−ゆくあきを−うらみたえたる−くすのもみちは |
03571 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐吹くかきほのまくすかれかれに恨あるやとの秋をあらすな
あらしふく−かきほのまくす−かれかれに−うらみあるやとの−あきをあらすな |
03572 |
未入力 正徹 (xxx)
垣にむす苔の衣のうらふれて玉まきいつる露のまくす葉
かきにむす−こけのころもの−うらふれて−たままきいつる−つゆのまくすは |
03573 |
未入力 正徹 (xxx)
かた岡の松の雪まのおも影にかへる葛はの月の下かせ
かたをかの−まつのゆきまの−おもかけに−かへるくすはの−つきのしたかせ |
03574 |
未入力 正徹 (xxx)
露の身をいつくに岡の葛はらや一葉もやすき秋の風か
つゆのみを−いつくにをかの−くすはらや−ひとはもやすき−あきのかせかは |
03575 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風にたちいてし人はしらねとも葛のはかへる岡のへの宿
あきかせに−たちいてしひとは−しらねとも−くすのはかへる−をかのへのやと |
03576 |
未入力 正徹 (xxx)
松やしるかかれる葛の花かつら下葉の風の秋のうらみを
まつやしる−かかれるくすの−はなかつら−したはのかせの−あきのうらみを |
03577 |
未入力 正徹 (xxx)
蔦ちらす風秋なから松になともとのみさをの色いそくらむ
つたちらす−かせあきなから−まつになと−もとのみさをの−いろいそくらむ |
03578 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれてもともにみたるる露はなし松よりおつる蔦の秋風
しくれても−ともにみたるる−つゆはなし−まつよりおつる−つたのあきかせ |
03579 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風に思ひやまさるまくすはのかくれと落つる蔦のうらみは
あきかせに−おもひやまさる−まくすはの−かくれとおつる−つたのうらみは |
03580 |
未入力 正徹 (xxx)
宇津の山夢にも秋の色にそむ蔦の下ふし風心せよ
うつのやま−ゆめにもあきの−いろにそむ−つたのしたふし−かせこころせよ |
03581 |
未入力 正徹 (xxx)
松にはふ蔦ちる軒の葛のはにさそひてかへる庭の秋風
まつにはふ−つたちるのきの−くすのはに−さそひてかへる−にはのあきかせ |
03582 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はいぬ時雨ふる宮のときは木に蔦のはおつる宇治の山風
あきはいぬ−しくれふるみやの−ときはきに−つたのはおつる−うちのやまかせ |
03583 |
未入力 正徹 (xxx)
山岸の松のはひえも色さひて蔦の落はに水の秋かせ
やまきしの−まつのはひえも−いろさひて−つたのおちはに−みつのあきかせ |
03584 |
未入力 正徹 (xxx)
世をうちと思ひはてぬる常盤木に蔦のは惜しき秋の川かせ
よをうちと−おもひはてぬる−ときはきに−つたのはをしき−あきのかはかせ |
03585 |
未入力 正徹 (xxx)
色かはる岡のくすやの蔦かつらはふ木あまたに秋風そふく
いろかはる−をかのくすやの−つたかつら−はふきあまたに−あきかせそふく |
03586 |
未入力 正徹 (xxx)
宇津の山たかねもふしの陰さむし雪のふもとの蔦の秋風
うつのやま−たかねもふしの−かけさむし−ゆきのふもとの−つたのあきかせ |
03587 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風に蔦のはおちてうつのやのむなしき山に猿叫ふこゑ
あきかせに−つたのはおちて−うつのやの−むなしきやまに−さるさけふこゑ |
03588 |
未入力 正徹 (xxx)
松そうきかかりて久にたのむかひなきや世中蔦の秋風
まつそうき−かかりてひさに−たのむかひ−なきやよのなか−つたのあきかせ |
03589 |
未入力 正徹 (xxx)
霧はれぬいかなるみちかくらからむ蔦の色ちるうつの山風
きりはれぬ−いかなるみちか−くらからむ−つたのいろちる−うつのやまかせ |
03590 |
未入力 正徹 (xxx)
色にそめ松にやとりをかりの世もかくこそ有りけれつたの紅葉は
いろにそめ−まつにやとりを−かりのよも−かくこそありけれ−つたのもみちは |
03591 |
未入力 正徹 (xxx)
松の木の衣の色のくれなゐもふり出てておつる蔦の秋風
まつのきの−ころものいろの−くれなゐも−ふりいてておつる−つたのあきかせ |
03592 |
未入力 正徹 (xxx)
宿からとちらは軒端もあれぬへき紅葉かなしき蔦の下かせ
やとからと−ちらはのきはも−あれぬへき−もみちかなしき−つたのしたかせ |
03593 |
未入力 正徹 (xxx)
あかねさす目かきも軒もあらはれて蔦にあれ行く宿の秋かせ
あかねさす−めかきものきも−あらはれて−つたにあれゆく−やとのあきかせ |
03594 |
未入力 正徹 (xxx)
松葉しき蔦はふ軒の長月や風にまかせてあるる庵かな
まつはしき−つたはふのきの−なかつきや−かせにまかせて−あるるいほかな |
03595 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙の色とも見えす朝ほらけ音行く水のあやの川霧
しろたへの−いろともみえす−あさほらけ−おとゆくみつの−あやのかはきり |
03596 |
未入力 正徹 (xxx)
朝朗麓の霧も川浪の上になかるるうちの山かせ
あさほらけ−ふもとのきりも−かはなみの−うへになかるる−うちのやまかせ |
03597 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬひはらのうへは秋風にくもるもはるる嶺のあさ霧
いろかへぬ−ひはらのうへは−あきかせに−くもるもはるる−みねのあさきり |
03598 |
未入力 正徹 (xxx)
あけ渡る山もとふかくゐる霧のそこの心よをちこちの里
あけわたる−やまもとふかく−ゐるきりの−そこのこころよ−をちこちのさと |
03599 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけ千さとの浪のうき草や霧にうかへる梢なるらん
あさほらけ−ちさとのなみの−うきくさや−きりにうかへる−こすゑなるらむ |
03600 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの杉の本たち松かねをのこしてくたる嶺のあさ霧
やまもとの−すきのもとたち−まつかねを−のこしてくたる−みねのあさきり |
03601 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮はそれしもかなし秋の色のかくれかねたる山のうす霧
ゆふくれは−それしもかなし−あきのいろの−かくれかねたる−やまのうすきり |
03602 |
未入力 正徹 (xxx)
深けぬるか月に嵐の声たえて霧にしつまる夜はの山本
ふけぬるか−つきにあらしの−こゑたえて−きりにしつまる−よはのやまもと |
03603 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きはらへ山はよし野の秋霧にこもりかつても見えぬ神かせ
ふきはらへ−やまはよしのの−あききりに−こもりかつても−みえぬかみかせ |
03604 |
未入力 正徹 (xxx)
松の葉の煙をそへて朝ほらけ立つやをしほの山の秋きり
まつのはの−けふりをそへて−あさほらけ−たつやをしほの−やまのあききり |
03605 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる月の麓の色もみすいくへの霧のおくの山ふみ
あけわたる−つきのふもとの−いろもみす−いくへのきりの−おくのやまふみ |
03606 |
未入力 正徹 (xxx)
すまの浦にたれつくり絵を明ほのの麓の霧をまく嵐かな
すまのうらに−たれつくりえを−あけほのの−ふもとのきりを−まくあらしかな |
03607 |
未入力 正徹 (xxx)
たつ鴫のしをれてはねやかかさらん霧ふる沢のあかつきの空
たつしきの−しをれてはねや−かかさらむ−きりふるさはの−あかつきのそら |
03608 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺ちかくのこる光そみたれ行く霧ふりくたる有明の月
みねちかく−のこるひかりそ−みたれゆく−きりふりくたる−ありあけのつき |
03609 |
未入力 正徹 (xxx)
さらにいまもみちをなかせ朝霧に日影もしろき秋の川浪
さらにいま−もみちをなかせ−あさきりに−ひかけもしろき−あきのかはなみ |
03610 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川やもみちの御舟引きつるも絶絶のこる水のあさ霧
うちかはや−もみちのみふね−ひきつるも−たえたえのこる−みつのあさきり |
03611 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけ麓の霧のいもせ川中なるよともいつくとはなし
あさほらけ−ふもとのきりの−いもせかは−なかなるよとも−いつくとはなし |
03612 |
未入力 正徹 (xxx)
もかみ川みなきる水にたつ煙のほれはくたる嶺の朝霧
もかみかは−みなきるみつに−たつけふり−のほれはくたる−みねのあさきり |
03613 |
未入力 正徹 (xxx)
あけわたる川戸の水のはつ煙霧に立ちそふ秋さむくして
あけわたる−かはとのみつの−はつけふり−きりにたちそふ−あきさむくして |
03614 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺はるるふもとの霧にかち人のあさ川わたるこゑはかりして
みねはるる−ふもとのきりに−かちひとの−あさかはわたる−こゑはかりして |
03615 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜の涙もくらき川霧に瀬のなるこゑやうちの橋姫
たのむよの−なみたもくらき−かはきりに−せのなるこゑや−うちのはしひめ |
03616 |
未入力 正徹 (xxx)
小舟さす宇治の川長わたるらし棹の音する水のあさ霧
をふねさす−うちのかはをさ−わたるらし−さをのおとする−みつのあさきり |
03617 |
未入力 正徹 (xxx)
芦の葉も翅もほさし島つ鳥うとのの堤霧ふかくして
あしのはも−つはさもほさし−しまつとり−うとののつつみ−きりふかくして |
03618 |
未入力 正徹 (xxx)
鷺のゐる古江の堤霧こめて柳は見えぬ雪のむら立
さきのゐる−ふるえのつつみ−きりこめて−やなきはみえぬ−ゆきのむらたち |
03619 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほくむ渚のあまのしわさかは夕霧はこふ秋のうら風
もしほくむ−なきさのあまの−しわさかは−ゆふきりはこふ−あきのうらかせ |
03620 |
未入力 正徹 (xxx)
浪くらきあまのいさり火今や焼くゆふ霧にほふ秋のいり海
なみくらき−あまのいさりひ−いまやたく−ゆふきりにほふ−あきのいりうみ |
03621 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海の竜の宮古の朝もよひ霧の浪まのけふりなるらん
わたつうみの−たつのみやこの−あさもよひ−きりのなみまの−けふりなるらむ |
03622 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむらん霧の戸はりもはかなきは浦の苫やの秋のしほ風
たのむらむ−きりのとはりも−はかなきは−うらのとまやの−あきのしほかせ |
03623 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かた浪の緑もうすくこき絵島かさきの松のむら霧
あはちかた−なみのみとりも−うすくこき−えしまかさきの−まつのむらきり |
03624 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの崎浪に夕霧さわくなりむこ山風吹きにけらしも
わたのさき−なみにゆふきり−さわくなり−むこやまおろし−ふきにけらしも |
03625 |
未入力 正徹 (xxx)
三輪か崎家はなくして杉の本かつあらはるる秋のあさ霧
みわかさき−いへはなくして−すきのもと−かつあらはるる−あきのあさきり |
03626 |
未入力 正徹 (xxx)
をくろ崎都のつとはやふれにき霧につつみしみつの浦風
をくろさき−みやこのつとは−やふれにき−きりにつつみし−みつのうらかせ |
03627 |
未入力 正徹 (xxx)
たえたえにあまの家島あらはれて浦わの霧に浪のよるみゆ
たえたえに−あまのいへしま−あらはれて−うらわのきりに−なみのよるみゆ |
03628 |
未入力 正徹 (xxx)
よる舟もたく火をみせよみをつくしたてるは霧の興のうら人
よるふねも−たくひをみせよ−みをつくし−たてるはきりの−おきのうらひと |
03629 |
未入力 正徹 (xxx)
山ち行く苔の莚にこよひねて麓の霧を敷きしのへとや
やまちゆく−こけのむしろに−こよひねて−ふもとのきりを−しきしのへとや |
03630 |
未入力 正徹 (xxx)
霧渡る山はかさしのすすか川八十瀬ふみ行く水の駅路
きりわたる−やまはかさしの−すすかかは−やそせふみゆく−みつのうまやち |
03631 |
未入力 正徹 (xxx)
めにもみすなるとはすれとよる舟のすすの綱手のすまの夕きり
めにもみす−なるとはすれと−よるふねの−すすのつなての−すまのゆふきり |
03632 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる霧にうつみて関もなしこゆるやいつこすまのうら浪
あけわたる−きりにうつみて−せきもなし−こゆるやいつこ−すまのうらなみ |
03633 |
未入力 正徹 (xxx)
誰こえん嶺の梯あさ霧もわたりわつらふ雲の下かせ
たれこえむ−みねのかけはし−あさきりも−わたりわつらふ−くものしたかせ |
03634 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人のあさ行くのへにそそくらん袖よりおつる霧のしつくを
たひひとの−あさゆくのへに−そそくらむ−そてよりおつる−きりのしつくを |
03635 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ日影いまさしくるやほの上の霧に色つく秋の小山田
あさひかけ−いまさしくるや−ほのうへの−きりにいろつく−あきのをやまた |
03636 |
未入力 正徹 (xxx)
立出つる山田の日影ほのほのと霧に色こき稲のかりしほ
たちいつる−やまたのひかけ−ほのほのと−きりにいろこき−いねのかりしほ |
03637 |
未入力 正徹 (xxx)
秋も又いなはの上におりそたつ鹿の霧や田子のおもかけ
あきもまた−いなはのうへに−おりそたつ−ふもとのきりや−たこのおもかけ |
03638 |
未入力 正徹 (xxx)
村村に四方の梢はまた見えて夕の霧にまよふ秋風
むらむらに−よものこすゑは−またみえて−ゆふへのきりに−まよふあきかせ |
03639 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の色のふかきあはれは埋むらむ夕の霧のしたの山さと
あきのいろの−ふかきあはれは−うつむらむ−ゆふへのきりの−したのやまさと |
03640 |
未入力 正徹 (xxx)
世中を思ひすてつる心さへ猶身にそはぬ秋のゆふくれ
よのなかを−おもひすてつる−こころさへ−なほみにそはぬ−あきのゆふくれ |
03641 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひなき人にとははやさしもうき身はことわりの秋の夕暮
おもひなき−ひとにとははや−さしもうき−みはことわりの−あきのゆふくれ |
03642 |
未入力 正徹 (xxx)
うき物とかねてしりにきわか心思ひもいれし秋の夕くれ
うきものと−かねてしりにき−わかこころ−おもひもいれし−あきのゆふくれ |
03643 |
未入力 正徹 (xxx)
露の身のうきをもとにて世にふるもたへぬ末はの秋の夕暮
つゆのみの−うきをもとにて−よにふるも−たへぬすゑはの−あきのゆふくれ |
03644 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなしや昨日も秋を忍ひきてけふの夕のうきにあひぬる
つれなしや−きのふもあきを−しのひきて−けふのゆふへの−うきにあひぬる |
03645 |
未入力 正徹 (xxx)
今さらにいとはしよしやうしとても身はかきりある秋の夕くれ
いまさらに−いとはしよしや−うしとても−みはかきりある−あきのゆふくれ |
03646 |
未入力 正徹 (xxx)
うしとてもよもいとはれしわか身世にあらむ限の秋の夕暮
うしとても−よもいとはれし−わかみよに−あらむかきりの−あきのゆふくれ |
03647 |
未入力 正徹 (xxx)
うかひきぬうきを心にかさぬれは去年の夕の秋の面かけ
うかひきぬ−うきをこころに−かさぬれは−こそのゆふへの−あきのおもかけ |
03648 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにしてうきにもたへん老いぬれは身によわり行く秋の夕暮
いかにして−うきにもたへむ−おいぬれは−みによわりゆく−あきのゆふくれ |
03649 |
未入力 正徹 (xxx)
うきをさへ思ひおくかな露の身はきえてみぬ世の秋の夕くれ
うきをさへ−おもひおくかな−つゆのみは−きえてみぬよの−あきのゆふくれ |
03650 |
未入力 正徹 (xxx)
あふそうきなからへんともしらさりき心のほかの秋の夕くれ
あふそうき−なからへむとも−しらさりき−こころのほかの−あきのゆふくれ |
03651 |
未入力 正徹 (xxx)
よしや袖比も秋なり夕なりことわりしらぬなみたとは見し
よしやそて−ころもあきなり−ゆふへなり−ことわりしらぬ−なみたとはみし |
03652 |
未入力 正徹 (xxx)
老いゆかはたれか涙のかたからんありしにまさる秋の夕くれ
おいゆかは−たれかなみたの−かたからむ−ありしにまさる−あきのゆふくれ |
03653 |
未入力 正徹 (xxx)
たれそ此うき夕暮をあるしにのとへとこたへぬやとの秋風
たれそこの−うきゆふくれを−あるしにの−とへとこたへぬ−やとのあきかせ |
03654 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世をもなくさめきてし身のためにするわさなれや秋の夕暮
うきよをも−なくさめきてし−みのために−するわさなれや−あきのゆふくれ |
03655 |
未入力 正徹 (xxx)
うきをしる袖をはらひて立ちさらむ涙にやとれ秋の夕くれ
うきをしる−そてをはらひて−たちさらむ−なみたにやとれ−あきのゆふくれ |
03656 |
未入力 正徹 (xxx)
なからへて身にうきかすを知る事も今年はまさる秋の夕暮
なからへて−みにうきかすを−しることも−ことしはまさる−あきのゆふくれ |
03657 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさも今いくほととなくさめて思ひすつれは秋の夕くれ
みのうさも−いまいくほとと−なくさめて−おもひすつれは−あきのゆふくれ |
03658 |
未入力 正徹 (xxx)
袖はなとひとつ涙そあはれともうしとも思ふ秋のゆふくれ
そてはなと−ひとつなみたそ−あはれとも−うしともおもふ−あきのゆふくれ |
03659 |
未入力 正徹 (xxx)
くる秋の思ひはむねにみつ雲の立ちいてん空もなき夕かな
くるあきの−おもひはむねに−みつくもの−たちいてむそらも−なきゆふへかな |
03660 |
未入力 正徹 (xxx)
めにふるる岩木も物はをしへけりしらしと思ふ秋の夕くれ
めにふるる−いはきもものは−をしへけり−しらしとおもふ−あきのゆふくれ |
03661 |
未入力 正徹 (xxx)
うきをしるたか心にもかよふらしひとりのうへの秋の夕くれ
うきをしる−たかこころにも−かよふらし−ひとりのうへの−あきのゆふくれ |
03662 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめてはたれかうき身にならさらん人をはわかす秋の夕くれ
なかめては−たれかうきみに−ならさらむ−ひとをはわかす−あきのゆふくれ |
03663 |
未入力 正徹 (xxx)
世のうきめ見えぬ山ちの秋も猶夕やおなし思ひならまし
よのうきめ−みえぬやまちの−あきもなほ−ゆふへやおなし−おもひならまし |
03664 |
未入力 正徹 (xxx)
二かたになとせめくらん世もうくて秋と夕の中にある身を
ふたかたに−なとせめくらむ−よもうくて−あきとゆふへの−なかにあるみを |
03665 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまの秋の思ひよかすつきし野山に袖の露をかすとも
くるるまの−あきのおもひよ−かすつきし−のやまにそての−つゆをかすとも |
03666 |
未入力 正徹 (xxx)
ことわりのなきはいかなる思ひとも我たにしらぬ秋の夕くれ
ことわりの−なきはいかなる−おもひとも−われたにしらぬ−あきのゆふくれ |
03667 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ならぬいく夕暮をあつめてもうきをくらへんかたやなからん
あきならぬ−いくゆふくれを−あつめても−うきをくらへむ−かたやなからむ |
03668 |
未入力 正徹 (xxx)
たたいまの夕のうさのことならはすまれんものか秋のこの世は
たたいまの−ゆふへのうさの−ことならは−すまれむものか−あきのこのよは |
03669 |
未入力 正徹 (xxx)
うしとたに猶いひしらぬ夕暮の色に音そふころの秋風
うしとたに−なほいひしらぬ−ゆふくれの−いろにおとそふ−ころのあきかせ |
03670 |
未入力 正徹 (xxx)
たかために秋の夕のとひくらん哀もしらぬ人となる世を
たかために−あきのゆふへの−とひくらむ−あはれもしらぬ−ひととなるよを |
03671 |
未入力 正徹 (xxx)
人ことにうきを分けてもやらまほしひとりの上の秋の夕くれ
ひとことに−うきをわけても−やらまほし−ひとりのうへの−あきのゆふくれ |
03672 |
未入力 正徹 (xxx)
うき時と知る人さへやまれならんくたり行く世の秋の夕くれ
うきときと−しるひとさへや−まれならむ−くたりゆくよの−あきのゆふくれ |
03673 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身にはいつも秋なる心にも思ひわきぬる夕暮の空
うきみには−いつもあきなる−こころにも−おもひわきぬる−ゆふくれのそら |
03674 |
未入力 正徹 (xxx)
うき事の此世にきたるはしめとはいつかなりけん秋の夕くれ
うきことの−このよにきたる−はしめとは−いつかなりけむ−あきのゆふくれ |
03675 |
未入力 正徹 (xxx)
世のならひ秋のためしも身のうさにあまる夕そいととせめくる
よのならひ−あきのためしも−みのうさに−あまるゆふへそ−いととせめくる |
03676 |
未入力 正徹 (xxx)
身そたへぬ秋を心のあるしにてとはれにけりな夕暮の空
みそたへぬ−あきをこころの−あるしにて−とはれにけりな−ゆふくれのそら |
03677 |
未入力 正徹 (xxx)
いとせめて秋と夕の一かたもわすれんとすれは木の間もる月
いとせめて−あきとゆふへの−ひとかたも−わすれむとすれは−このまもるつき |
03678 |
未入力 正徹 (xxx)
なとやうきかねて涙の身にそふもいつちいにけん秋の夕暮
なとやうき−かねてなみたの−みにそふも−いつちいにけむ−あきのゆふくれ |
03679 |
未入力 正徹 (xxx)
草の庵うきにまかせて出てぬへし夕と秋の便なくとも
くさのいほ−うきにまかせて−いてぬへし−ゆふへとあきの−たよりなくとも |
03680 |
未入力 正徹 (xxx)
かくれはや夕も秋も心よりほかなるうさそわれを尋ぬる
かくれはや−ゆふへもあきも−こころより−ほかなるうさそ−われをたつぬる |
03681 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風もとほき思ひの家つとは道行ふりの秋の夕くれ
くもかせも−とほきおもひの−いへつとは−みちゆきふりの−あきのゆふくれ |
03682 |
未入力 正徹 (xxx)
みるままに夕の雲の色そそふ秋の思ひの露や染むらむ
みるままに−ゆふへのくもの−いろそそふ−あきのおもひの−つゆやそむらむ |
03683 |
未入力 正徹 (xxx)
のかれしなこまもろこしの夕暮もおなしうき世の秋の涙は
のかれしな−こまもろこしの−ゆふくれも−おなしうきよの−あきのなみたは |
03684 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひわく涙はなとかおちさらむあてなる人の秋の夕くれ
おもひわく−なみたはなとか−おちさらむ−あてなるひとの−あきのゆふくれ |
03685 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山や面かけはかり先そめて梢色なき夕時雨かな
あきやまや−おもかけはかり−まつそめて−こすゑいろなき−ゆふしくれかな |
03686 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のこゑ草葉かなしき夕風におちたる庭の桐のはの雨
あきのこゑ−くさはかなしき−ゆふかせに−おちたるにはの−きりのはのあめ |
03687 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そこれきゆる小花かすゑの露もとあらの萩に結ふ夕霜
あきそこれ−きゆるをはなか−すゑのつゆ−もとあらのはきに−むすふゆふしも |
03688 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかりいとふ命も消えやらて身におきそふる秋のゆふ露
かくはかり−いとふいのちも−きえやらて−みにおきそふる−あきのゆふつゆ |
03689 |
未入力 正徹 (xxx)
奥つ風あらす浪かなへたてつる夕霧たのむ浦の苫やを
おきつかせ−あらすなみかな−へたてつる−ゆふきりたのむ−うらのとまやを |
03690 |
未入力 正徹 (xxx)
いさりすと出つるあま人心あれや枝もたをらぬをふの浦なし
いさりすと−いつるあまひと−こころあれや−えたもたをらぬ−をふのうらなし |
03691 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮もうきをかたみのうら風に遠さかり行く秋の舟人
ゆふくれも−うきをかたみの−うらかせに−とほさかりゆく−あきのふなひと |
03692 |
未入力 正徹 (xxx)
あまのすむ思ひの家も秋たちて夕になりぬをふのうらなし
あまのすむ−おもひのいへも−あきたちて−ゆふへになりぬ−をふのうらなし |
03693 |
未入力 正徹 (xxx)
世にすめはあまも思ひやいとまなみ芦屋のなたの秋の夕暮
よにすめは−あまもおもひや−いとまなみ−あしやのなたの−あきのゆふくれ |
03694 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の露にうつろふ山もうす霧のくるる色にそふかくなり行く
あきのつゆに−うつろふやまも−うすきりの−くるるいろにそ−ふかくなりゆく |
03695 |
未入力 正徹 (xxx)
野への露袖の涙をひとつにてうき身そやかて秋の夕くれ
のへのつゆ−そてのなみたを−ひとつにて−うきみそやかて−あきのゆふくれ |
03696 |
未入力 正徹 (xxx)
袖したふかたのの露や天の川遠きわたりの秋の夕暮
そてしたふ−かたののつゆや−あまのかは−とほきわたりの−あきのゆふくれ |
03697 |
未入力 正徹 (xxx)
笠置山おくの岩やも袖ぬれぬ此川上の秋の夕くれ
かさきやま−おくのいはやも−そてぬれぬ−このかはかみの−あきのゆふくれ |
03698 |
未入力 正徹 (xxx)
夕うき雲にへたてはあらし吹くその山もとの秋のさと人
ゆふへうき−くもにへたては−あらしふく−そのやまもとの−あきのさとひと |
03699 |
未入力 正徹 (xxx)
山こえて思ひやわれにかよふらんみぬさと人の秋の夕暮
やまこえて−おもひやわれに−かよふらむ−みぬさとひとの−あきのゆふくれ |
03700 |
未入力 正徹 (xxx)
哀ともあすか川霧みせすかも君かあたりの秋の夕暮
あはれとも−あすかかはきり−みせすかも−きみかあたりの−あきのゆふくれ |
03701 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかもるこえてみるめもかるかやの関やをかくす秋の夕霧
いかかもる−こえてみるめも−かるかやの−せきやをかくす−あきのゆふきり |
03702 |
未入力 正徹 (xxx)
あれぬともわらふきかゆなあふ坂のふるき関やを夕霧にみん
あれぬとも−わらふきかゆな−あふさかの−ふるきせきやを−ゆふきりにみむ |
03703 |
未入力 正徹 (xxx)
世に出ててうきやいつれと心みん山さとならぬ秋の夕くれ
よにいてて−うきやいつれと−こころみむ−やまさとならぬ−あきのゆふくれ |
03704 |
未入力 正徹 (xxx)
よのうきめみぬはよのつねのかれすむ山の色けつ秋の夕きり
よのうきめ−みぬはよのつね−のかれすむ−やまのいろけつ−あきのゆふきり |
03705 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮の秋の思ひそかさなれる落葉か下の草のかりいほ
ゆふくれの−あきのおもひそ−かさなれる−おちはかしたの−くさのかりいほ |
03706 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむ下葉色つく萩はらや猶今よりの荻のうほ風
みにそしむ−したはいろつく−はきはらや−なほいまよりの−をきのうはかせ |
03707 |
未入力 正徹 (xxx)
たもとにもあまる涙はせはくともうき世の月よ身をなはなれそ
たもとにも−あまるなみたは−せはくとも−うきよのつきよ−みをなはなれそ |
03708 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田の露吹きたててなひくほの色こき時とわたる秋かせ
をやまたの−つゆふきたてて−なひくほの−いろこきときと−わたるあきかせ |
03709 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さすをのの山田の露かけていろこき稲の花かつらかな
ゆふひさす−をののやまたの−つゆかけて−いろこきいねの−はなかつらかな |
03710 |
未入力 正徹 (xxx)
ほにいつるくろの薄も山田かる袖かと見えて秋風そふく
ほにいつる−くろのすすきも−やまたかる−そてかとみえて−あきかせそふく |
03711 |
未入力 正徹 (xxx)
日本もさすかにひろき秋の田の一ほをたにもうる事はなし
ひのもとも−さすかにひろき−あきのたの−ひとほをたにも−うることはなし |
03712 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のほの上くらき山もとの夕の霧にかかるむら雨
あきのたの−ほのうへくらき−やまもとの−ゆふへのきりに−かかるむらさめ |
03713 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のほきの沢水みしふゐてかるをのあさのもすそまつらん
あきのたの−ほきのさはみつ−みしふゐて−かるをのあさの−もすそまつらむ |
03714 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟おしねのほなみうち出てぬ稲葉を渡る秋の浦風
あまをふね−おしねのほなみ−うちいてぬ−いなはをわたる−あきのうらかせ |
03715 |
未入力 正徹 (xxx)
かたよりに見えしほなみはみなふしてひとりいねかての小田のさ莚
かたよりに−みえしほなみは−みなふして−ひとりいねかての−をたのさむしろ |
03716 |
未入力 正徹 (xxx)
一かたに露もそなひく秋の田の昨日の風のほむけかはらて
ひとかたに−つゆもそなひく−あきのたの−きのふのかせの−ほむけかはらて |
03717 |
未入力 正徹 (xxx)
おそくとき秋のいなほの花さかり民の心や春にあふらむ
おそくとき−あきのいなほの−はなさかり−たみのこころや−はるにあふらむ |
03718 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥もこす鹿おとろかす弓影ゆゑやつかほ長き秋の小山田
とりもこす−しかおとろかす−ゆかけゆゑ−やつかほなかき−あきのをやまた |
03719 |
未入力 正徹 (xxx)
田中なる民の戸みれはしつのめかいねこく庭にするうすの声
たなかなる−たみのとみれは−しつのめか−いねこくにはに−するうすのこゑ |
03720 |
未入力 正徹 (xxx)
露なからさわく稲つまにとふ虫のかす限なき小田の秋かせ
つゆなから−さわくいなつまに−とふむしの−かすかきりなき−をたのあきかせ |
03721 |
未入力 正徹 (xxx)
道をえん秋田もる男のいねかてに誰も此世を思ひあかさは
みちをえむ−あきたもるをの−いねかてに−たれもこのよを−おもひあかさは |
03722 |
未入力 正徹 (xxx)
梢よりみなたちつれて小山田のみしめにならふ秋の色鳥
こすゑより−みなたちつれて−をやまたの−みしめにならふ−あきのいろとり |
03723 |
未入力 正徹 (xxx)
あけ行くやいな葉のかせもたつの鳴くあへの田面に月かたふきぬ
あけゆくや−いなはのかせも−たつのなく−あへのたのもに−つきかたふきぬ |
03724 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよふあへの坂田に雁鳴きてほなみにくたる秋の夕かせ
くもまよふ−あへのさかたに−かりなきて−ほなみにくたる−あきのゆふかせ |
03725 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のかりほの窓にこゑたてていねてふ事をとふ時雨かな
あきのたの−かりほのまとに−こゑたてて−いねてふことを−とふしくれかな |
03726 |
未入力 正徹 (xxx)
早苗よりいなはにかはる秋の田にしつか手玉を残す自露
さなへより−いなはにかはる−あきのたに−しつかてたまを−のこすしらつゆ |
03727 |
未入力 正徹 (xxx)
露なからさわくいなはにとふ虫の数かきりなきを田の秋風
つゆなから−さわくいなはに−とふむしの−かすかきりなき−をたのあきかせ |
03728 |
未入力 正徹 (xxx)
あら田より民のくるしむあせや猶かすまさるらんほの上の露
あらたより−たみのくるしむ−あせやなほ−かすまさるらむ−ほのうへのつゆ |
03729 |
未入力 正徹 (xxx)
雲路よりほなみにおつるしら鳥のとは田に消ゆる秋の夕霧
くもちより−ほなみにおつる−しらとりの−とはたにきゆる−あきのゆふきり |
03730 |
未入力 正徹 (xxx)
松風もそよくとそきく足引の名さへいなはの山田もる庵
まつかせも−そよくとそきく−あしひきの−なさへいなはの−やまたもるいほ |
03731 |
未入力 正徹 (xxx)
色色のいなほにみかく朝ひこの玉の露ちるを田の秋かせ
いろいろの−いなほにみかく−あさひこの−たまのつゆちる−をたのあきかせ |
03732 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨行くかけのかり田に秋山の梢の露やおちほそむらむ
しくれゆく−かけのかりたに−あきやまの−こすゑのつゆや−おちほそむらむ |
03733 |
未入力 正徹 (xxx)
をしかなく老の枕のいねかてを山田もるをに今夜かしつる
をしかなく−おいのまくらの−いねかてを−やまたもるをに−こよひかしつる |
03734 |
未入力 正徹 (xxx)
さそふともいなはにさむき初霜よからすは何の夢の秋かせ
さそふとも−いなはにさむき−はつしもよ−からすはなにの−ゆめのあきかせ |
03735 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の夜もはつ穂もなかきいな莚心のへたる民のころかな
あきのよも−はつほもなかき−いなむしろ−こころのへたる−たみのころかな |
03736 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田の夜はのかりほの煙まてともしにあかぬ鹿やよるらん
あきのたの−よはのかりほの−けふりまて−ともしにあかぬ−しかやよるらむ |
03737 |
未入力 正徹 (xxx)
民の戸の小田のかり生のむら雨に雲ををさめしいなはならすや
たみのとの−をたのかりふの−むらさめに−くもををさめし−いなはならすや |
03738 |
未入力 正徹 (xxx)
ふれはいとひふらねはねかふ世中を秋田もるをも雨に知るらん
ふれはいとひ−ふらねはねかふ−よのなかを−あきたもるをも−あめにしるらむ |
03739 |
未入力 正徹 (xxx)
岡へなる早田霜おきさをしかの妻とひはてて秋や行くらん
をかへなる−はやたしもおき−さをしかの−つまとひはてて−あきやゆくらむ |
03740 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ事きれは心の秋にひく玉のをそむるなかき夜の雨
おもふこと−きれはこころの−あきにひく−たまのをそむる−なかきよのあめ |
03741 |
未入力 正徹 (xxx)
はれぬへき雲かとみれは長月の時雨もしらぬ雨となり行く
はれぬへき−くもかとみれは−なかつきの−しくれもしらぬ−あめとなりゆく |
03742 |
未入力 正徹 (xxx)
色そこき時雨れぬ比の秋の雨そむる夕のそこのこころは
いろそこき−しくれぬころの−あきのあめ−そむるゆふへの−そこのこころは |
03743 |
未入力 正徹 (xxx)
空みれは村雲ならすさ夜時雨あすやもみちぬ山もなからん
そらみれは−むらくもならす−さよしくれ−あすやもみちぬ−やまもなからむ |
03744 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身もしらす玉のを秋の日のみしかくなひく村雨のかけ
おいかみも−しらすたまのを−あきのひの−みしかくなひく−むらさめのかけ |
03745 |
未入力 正徹 (xxx)
籬なる秋の日影をうつしもてうす霧そむる庭のむら雨
まかきなる−あきのひかけを−うつしもて−うすきりそむる−にはのむらさめ |
03746 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の日をそむれはうすき村雨の草木にかへる山そ色そふ
あきのひを−そむれはうすき−むらさめの−くさきにかへる−やまそいろそふ |
03747 |
未入力 正徹 (xxx)
染めのこせしくるる山をとふ嵐あらし今はの秋の紅葉は
そめのこせ−しくるるやまを−とふあらし−あらしいまはの−あきのもみちは |
03748 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれ行く梢も袖のよそならてわか身霜ふる長月の空
しくれゆく−こすゑもそての−よそならて−わかみしもふる−なかつきのそら |
03749 |
未入力 正徹 (xxx)
此秋も時雨の露と消えやらて猶さためなき身をそ恨むる
このあきも−しくれのつゆと−きえやらて−なほさためなき−みをそうらむる |
03750 |
未入力 正徹 (xxx)
ほす世なき袖よりほかの秋の空今そまことの時雨ふるらん
ほすよなき−そてよりほかの−あきのそら−いまそまことの−しくれふるらむ |
03751 |
未入力 正徹 (xxx)
山路行く袖の時雨にふりなりて木の葉をそめぬ秋の雲かな
やまちゆく−そてのしくれに−ふりなりて−このはをそめぬ−あきのくもかな |
03752 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もほさし枕に時雨れきてしはしの夢も長月のすゑ
くさもきも−ほさしまくらに−しくれきて−しはしのゆめも−なかつきのすゑ |
03753 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風なみた時雨のあさの袖空より染めぬ色なたつねそ
あきのかせ−なみたしくれの−あさのそて−そらよりそめぬ−いろなたつねそ |
03754 |
未入力 正徹 (xxx)
程もなく過くる時雨の糸すちを引ののつつらくるる秋かな
ほともなく−すくるしくれの−いとすちを−ひくののつつら−くるるあきかな |
03755 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にふる露も昔の軒の草わすれし秋をとふ時雨かな
そてにふる−つゆもむかしの−のきのくさ−わすれしあきを−とふしくれかな |
03756 |
未入力 正徹 (xxx)
もる山のしくれの雨の下もみち染めもわたさて行く嵐かな
もるやまの−しくれのあめの−したもみち−そめもわたさて−ゆくあらしかな |
03757 |
未入力 正徹 (xxx)
露のぬき時雨のたてにおるとなきしつはた山の雲↓色付く
つゆのぬき−しくれのたてに−おるとなき−しつはたやまの−くもそいろつく |
03758 |
未入力 正徹 (xxx)
長月のすゑ野の浅茅むらむらに朝霜けたて行く時雨かな
なかつきの−すゑののあさち−むらむらに−あさしもけたて−ゆくしくれかな |
03759 |
未入力 正徹 (xxx)
おく露をかれる身なから朝ことに草に消ゆるをあはれとそみる
おくつゆを−かれるみなから−あさことに−くさにきゆるを−あはれとそみる |
03760 |
未入力 正徹 (xxx)
松のかけ明行く露も玉しきの真砂にまさる苔の庭かな
まつのかけ−あけゆくつゆも−たましきの−まさこにまさる−こけのにはかな |
03761 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす松に朝露しけく落ちて宜にみたるる岡の村名
ひかけさす−まつにあさつゆ−しけくおちて−かやにみたるる−をかのむらきり |
03762 |
未入力 正徹 (xxx)
まさきくる外山の秋の松のはに時雨れて霜をけつ嵐かな
まさきくる−とやまのあきの−まつのはに−しくれてしもを−けつあらしかな |
03763 |
未入力 正徹 (xxx)
初霜の世にふるかひや長月の木の葉も草もかるる秋かな
はつしもの−よにふるかひや−なかつきの−このはもくさも−かるるあきかな |
03764 |
未入力 正徹 (xxx)
秋におく草木や家をあはれまむいたたく霜はとことはにして
あきにおく−くさきやいへを−あはれまむ−いたたくしもは−とことはにして |
03765 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はへぬわか若かみの初霜におもひしすちはなき世なれとも
あきはへぬ−わかわかかみの−はつしもに−おもひしすちは−なきよなれとも |
03766 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風たかくろかみに初霜のふるよりさきにむすほほるらん
あきのかせ−たかくろかみに−はつしもの−ふるよりさきに−むすほほるらむ |
03767 |
未入力 正徹 (xxx)
秋寒き有明の月につく鐘や霜にこゑそふはしめなるらん
あきさむき−ありあけのつきに−つくかねや−しもにこゑそふ−はしめなるらむ |
03768 |
未入力 正徹 (xxx)
枕うきたかもとゆひの秋の霜けさは草葉にむすほほるらん
まくらうき−たかもとゆひの−あきのしも−けさはくさはに−むすほほるらむ |
03769 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはに朝ゐる雲は霧はれて後の日影にたちわかるなり
やまのはに−あさゐるくもは−きりはれて−のちのひかけに−たちわかるなり |
03770 |
未入力 正徹 (xxx)
村村にしくれんためか秋の日をかねて里わく遠近の雲
むらむらに−しくれむためか−あきのひを−かねてさとわく−をちこちのくも |
03771 |
未入力 正徹 (xxx)
立田姫染めもおよはしわたの原秋行く雲の秋のくれなゐ
たつたひめ−そめもおよはし−わたのはら−あきゆくくもの−あきのくれなゐ |
03772 |
未入力 正徹 (xxx)
まのの浦のを花やあへすぬれてふす夕浪たかし秋の浜風
まののうらの−をはなやあへす−ぬれてふす−ゆふなみたかし−あきのはまかせ |
03773 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そみん浦の苫やにたえすたく色をもみちのあまのもしほ火
あきそみむ−うらのとまやに−たえすたく−いろをもみちの−あまのもしほひ |
03774 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかにも見えしやかかみ山鳥の長月の尾のなかき夜の夢
さやかにも−みえしやかかみ−やまとりの−なかつきのをの−なかきよのゆめ |
03775 |
未入力 正徹 (xxx)
老いらくの床も枕も秋のよのなかきをしるは涙なりけり
おいらくの−とこもまくらも−あきのよの−なかきをしるは−なみたなりけり |
03776 |
未入力 正徹 (xxx)
今さらに老の命のなかき夜もおとろかれぬる夢の後かな
いまさらに−おいのいのちの−なかきよも−おとろかれぬる−ゆめののちかな |
03777 |
未入力 正徹 (xxx)
長月やねにふしとらにおくるまも春の一夜の程はへにけり
なかつきや−ねにふしとらに−おくるまも−はるのひとよの−ほとはへにけり |
03778 |
未入力 正徹 (xxx)
明けやらぬ秋の枕に思はすや身の後しらぬなかき夜のやみ
あけやらぬ−あきのまくらに−おもはすや−みののちしらぬ−なかきよのやみ |
03779 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そうきすゑをみはやと思ふ夢にわさとぬる夜は長くめ覚めて
あきそうき−すゑをみはやと−おもふゆめに−わさとぬるよは−なかくめさめて |
03780 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しくも秋くる西の山かせにあらまほしきは有明の月
すすしくも−あきくるにしの−やまかせに−あらまほしきは−ありあけのつき |
03781 |
未入力 正徹 (xxx)
松一木月にならへる嶺はかり霧たちのこすあかつきの山
まつひとき−つきにならへる−みねはかり−きりたちのこす−あかつきのやま |
03782 |
未入力 正徹 (xxx)
もろ共にききそあかさん行末も長月の夜のかねに契りて
もろともに−ききそあかさむ−ゆくすゑも−なかつきのよの−かねにちきりて |
03783 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮のこゑもききしはそれなから林のかねをさそふあきかせ
ゆふくれの−こゑもききしは−それなから−はやしのかねを−さそふあきかせ |
03784 |
未入力 正徹 (xxx)
しけき野も暁むしのこゑはせす秋の霜おく月の下草
しけきのも−あかつきむしの−こゑはせす−あきのしもおく−つきのしたくさ |
03785 |
未入力 正徹 (xxx)
色ふかみ此敷島の大和川もみちや秋の人のことの葉
いろふかみ−このしきしまの−やまとかは−もみちやあきの−ひとのことのは |
03786 |
未入力 正徹 (xxx)
すみなれてあくるうれしきせをそみる霧はれにけり堀川の水
すみなれて−あくるうれしき−せをそみる−きりはれにけり−ほりかはのみつ |
03787 |
未入力 正徹 (xxx)
かへるさは露そこほるる玉かつらはふ木あまたの秋のなこりに
かへるさは−つゆそこほるる−たまかつら−はふきあまたの−あきのなこりに |
03788 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世は色かはり行く秋のはにかかるも末の露の山かせ
ひとのよは−いろかはりゆく−あきのはに−かかるもすゑの−つゆのやまかせ |
03789 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえのいそく心をしら菊や花より後の花をゆつらん
うめかえの−いそくこころを−しらきくや−はなよりのちの−はなをゆつらむ |
03790 |
未入力 正徹 (xxx)
秋さむき岡の屋かたやうつむらん葛の下はふ夕煙かな
あきさむき−をかのやかたや−うつむらむ−くすのしたはふ−ゆふけふりかな |
03791 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまそなき霧晴れやらぬまきのはに山路しくるる露も雫も
ひまそなき−きりはれやらぬ−まきのはに−やまちしくるる−つゆもしつくも |
03792 |
未入力 正徹 (xxx)
妻やまつふすゐのかるもかきこめて花のの秋の床そ色なる
つまやまつ−ふすゐのかるも−かきこめて−はなののあきの−とこそいろなる |
03793 |
未入力 正徹 (xxx)
山田もる庵のたく火におとろくやともしかなしき秋のさをしか
やまたもる−いほのたくひに−おとろくや−ともしかなしき−あきのさをしか |
03794 |
未入力 正徹 (xxx)
春のみか草木色つき都にも人めにたたぬ秋のにしきは
はるのみか−くさきいろつき−みやこにも−ひとめにたたぬ−あきのにしきは |
03795 |
未入力 正徹 (xxx)
明渡るすゑ野の山の入海に霧吹残す秋のしほかせ
あけわたる−すゑののやまの−いりうみに−きりふきのこす−あきのしほかせ |
03796 |
未入力 正徹 (xxx)
西川や遠かた人の心さへはれぬかつらの宮の秋きり
にしかはや−をちかたひとの−こころさへ−はれぬかつらの−みやのあききり |
03797 |
未入力 正徹 (xxx)
松かけも落葉そうつむ秋はいつかへりくすはの宮の古道
まつかけも−おちはそうつむ−あきはいつ−かへりくすはの−みやのふるみち |
03798 |
未入力 正徹 (xxx)
世を秋の心みたるる折もあらしかやか軒はの松の嵐に
よをあきの−こころみたるる−をりもあらし−かやかのきはの−まつのあらしに |
03799 |
未入力 正徹 (xxx)
入りきてもかへらむ日をや急くらんあれにし後のふるさとの秋
いりきても−かへらむひをや−いそくらむ−あれにしのちの−ふるさとのあき |
03800 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山はまたうつろはぬ木の葉ちる嵐に軒の松そしくるる
あきやまは−またうつろはぬ−このはちる−あらしにのきの−まつそしくるる |
03801 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の窓の光はそひて夜はおそしを車にさす油ならねは
あきのまとの−ひかりはそひて−よはおそし−をくるまにさす−あふらならねは |
03802 |
未入力 正徹 (xxx)
露なからいねかり入れししつかやにほなみかたしきさねぬ此夜を
つゆなから−いねかりいれし−しつかやに−ほなみかたしき−さねぬこのよを |
03803 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷の秋に色つけ嶺こゆる思ひをせかぬ雲のしからみ
ふるさとの−あきにいろつけ−みねこゆる−おもひをせかぬ−くものしからみ |
03804 |
未入力 正徹 (xxx)
宮古にて露をはかたれささ分くる袖の上こす嶺のかりかね
みやこにて−つゆをはかたれ−ささわくる−そてのうへこす−みねのかりかね |
03805 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ人もかたみに心おくはかりやかてかくるる野へのあさきり
あふひとも−かたみにこころ−おくはかり−やかてかくるる−のへのあさきり |
03806 |
未入力 正徹 (xxx)
見すしらし此世の夢のわたり川そのうきはしの秋の夕暮
みすしらし−このよのゆめの−わたりかは−そのうきはしの−あきのゆふくれ |
03807 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりけんたか涙にかひつ川の橋さへねるる秋のゆふ暮
わたりけむ−たかなみたにか−ひつかはの−はしさへねるる−あきのゆふくれ |
03808 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の霜空にみつなりかささきのわたせる橋はいつくなるらん
あきのしも−そらにみつなり−かささきの−わたせるはしは−いつくなるらむ |
03809 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章をくる雁ことにかけてこはおはつかなさや誰もなからん
たまつさを−くるかりことに−かけてこは−おほつかなさや−たれもなからむ |
03810 |
未入力 正徹 (xxx)
長月や紅葉かつちる鳰鳥のくれなゐくくる池の月かけ
なかつきや−もみちかつちる−にほとりの−くれなゐくくる−いけのつきかけ |
03811 |
未入力 正徹 (xxx)
明かたのうらの朝霧たつそなく島かくれせぬ秋のこゑかな
あけかたの−うらのあさきり−たつそなく−しまかくれせぬ−あきのこゑかな |
03812 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の浪さむき汀とおのか毛の雪をもしらて鷺やとふらん
あきのなみ−さむきみきはと−おのかけの−ゆきをもしらて−さきやとふらむ |
03813 |
未入力 正徹 (xxx)
難波江の秋のほ浪にへたてきぬ芦かひなりし神の代の春
なにはえの−あきのほなみに−へたてきぬ−あしかひなりし−かみのよのはる |
03814 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やなきあさちか底は秋の霜結ひからさぬ古郷の夢
あきやなき−あさちかそこは−あきのしも−むすひからさぬ−ふるさとのゆめ |
03815 |
未入力 正徹 (xxx)
山かけや庵かなしき秋風にめくれる霧のかきほあれつつ
やまかけや−いほりかなしき−あきかせに−めくれるきりの−かきほあれつつ |
03816 |
未入力 正徹 (xxx)
よもかさしむこ山颪川かせに秋さり衣雁はなけとも
よもかさし−むこやまおろし−かはかせに−あきさりころも−かりはなけとも |
03817 |
未入力 正徹 (xxx)
橋姫のもゆる思ひをなかき夜にたきもつくさしうちの柴舟
はしひめの−もゆるおもひを−なかきよに−たきもつくさし−うちのしはふね |
03818 |
未入力 正徹 (xxx)
さひしさは花もにほほす鳥もゐす苔にふりたる園の秋風
さひしさは−はなもにほはす−とりもゐす−こけにふりたる−そののあきかせ |
03819 |
未入力 正徹 (xxx)
ならのはに時雨ふる秋をしたひても跡なき風のうつろふはをし
ならのはに−しくれふるあきを−したひても−あとなきかせの−うつろふはをし |
03820 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の花を軒はのたなに折りちらしあかさらならすかはらやのおく
あきのはなを−のきはのたなに−をりちらし−あかさらならす−かはらやのおく |
03821 |
未入力 正徹 (xxx)
川上は笠置の岩戸霧とちぬ向ふあらしを寺にかせやま
かはかみは−かさきのいはと−きりとちぬ−むかふあらしを−てらにかせやま |
03822 |
未入力 正徹 (xxx)
影そみぬ風は夕になら坂やこの手柏のまねくみか月
かけそみぬ−かせはゆふへに−ならさかや−このてかしはの−まねくみかつき |
03823 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむふけ行く月も秋風の声すみのほる夜はの笛竹
みにそしむ−ふけゆくつきも−あきかせの−こゑすみのはる−よはのふえたけ |
03824 |
未入力 正徹 (xxx)
かきならすことのをかけて秋風のしらへそ松にうれへ初めぬる
かきならす−ことのをかけて−あきかせの−しらへそまつに−うれへそめぬる |
03825 |
未入力 正徹 (xxx)
行きてみぬしかのそのふの秋の花むなしき露を月みかくらん
ゆきてみぬ−しかのそのふの−あきのはな−むなしきつゆを−つきみかくらむ |
03826 |
未入力 正徹 (xxx)
山本の梢色つき秋深けてまへのの尾花まねく手もなし
やまもとの−こすゑいろつき−あきふけて−まへののをはな−まねくてもなし |
03827 |
未入力 正徹 (xxx)
浦つつく上野のかたのすす虫を舟に声かるすまの山かせ
うらつつく−うへののかたの−すすむしを−ふねにこゑかる−すまのやまかせ |
03828 |
未入力 正徹 (xxx)
秋されはさく夕かほの花過きてみつのの浪の色そあせゆく
あきされは−さくゆふかほの−はなすきて−みつののなみの−いろそあせゆく |
03829 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜もしらぬ夕日を秋の色になにそは染めて影かはるらん
つゆしもも−しらぬゆふひを−あきのいろに−なにそはそめて−かけかはるらむ |
03830 |
未入力 正徹 (xxx)
出つる日に光をゆつる有明のいらまくつらき秋の山の端
いつるひに−ひかりをゆつる−ありあけの−いらまくつらき−あきのやまのは |
03831 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく嶺の下葛うらふれて松かけささぬ鹿そ鳴くなる
あらしふく−みねのしたくす−うらふれて−まつかけささぬ−しかそなくなる |
03832 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ露はこまかにおちて村すすき霧ふる野へは風もなひかす
あさつゆは−こまかにおちて−むらすすき−きりふるのへは−かせもなひかす |
03833 |
未入力 正徹 (xxx)
橋ひめのかたしく袖に染めいたす山も朝日の秋のさころも
はしひめの−かたしくそてに−そめいたす−やまもあさひの−あきのさころも |
03834 |
未入力 正徹 (xxx)
散りうせよ世にもあらしにととまらぬ秋の木の葉をことのはにして
ちりうせよ−よにもあらしに−ととまらぬ−あきのこのはを−ことのはにして |
03835 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれ行くしはしか秋の雲風に身をあるもののなきになしつつ
しくれゆく−しはしかあきの−くもかせに−みをあるものの−なきになしつつ |
03836 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられぬ昔の秋に今ぬらす涙もふかき袖やこふらん
わすられぬ−むかしのあきに−いまぬらす−なみたもふかき−そてやこふらむ |
03837 |
未入力 正徹 (xxx)
夜そなかき枕のみねの松風に野田のひたうつ秋の山さと
よそなかき−まくらのみねの−まつかせに−のたのひたうつ−あきのやまさと |
03838 |
未入力 正徹 (xxx)
玉かしは秋なき浪を染めかねてなには入江にふる時雨かな
たまかしは−あきなきなみを−そめかねて−なにはいりえに−ふるしくれかな |
03839 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘たえしならのあすかにとふ鳥のひとりも鳴きてしたふ秋かな
かねたえし−ならのあすかに−とふとりの−ひとりもなきて−したふあきかな |
03840 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみ分けて入るや野口のかりこゑに山もとさわく秋のむら鳥
ふみわけて−いるやのくちの−かりこゑに−やまもとさわく−あきのむらとり |
03841 |
未入力 正徹 (xxx)
露なから花ふみしたく駒ゆゑも秋の野守やつらきかり人
つゆなから−はなふみしたく−こまゆゑも−あきののもりや−つらきかりひと |
03842 |
未入力 正徹 (xxx)
露分くる野への千種の花鳥に又色そふるかり衣かな
つゆわくる−のへのちくさの−はなとりに−またいろそふる−かりころもかな |
03843 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしやかりはの風の荻のえに心をつけぬ小鳥はかりは
はかなしや−かりはのかせの−をきのえに−こころをつけぬ−ことりはかりは |
03844 |
未入力 正徹 (xxx)
山の端にむら雲さわくかり衣すそのの野分かつ心せよ
やまのはに−むらくもさわく−かりころも−すそのののわき−かつこころせよ |
03845 |
未入力 正徹 (xxx)
野へ遠き都のつとか荻の上に小鳥とりつけかへるかり人
のへとほき−みやこのつとか−をきのうへに−ことりとりつけ−かへるかりひと |
03846 |
未入力 正徹 (xxx)
長月や草ふみたてて花鳥のいのちもしらぬのへのかり人
なかつきや−くさふみたてて−はなとりの−いのちもしらぬ−のへのかりひと |
03847 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂や引く駒おそき望月も山たちいつる雲のうへ人
あふさかや−ひくこまおそき−もちつきも−やまたちいつる−くものうへひと |
03848 |
未入力 正徹 (xxx)
逢坂に雲の上人むかへとも月毛の駒はくもるともみす
あふさかに−くものうへひと−むかへとも−つきけのこまは−くもるともみす |
03849 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山ふもとの秋の神わさにひとり宮もる嶺の松かせ
やはたやま−ふもとのあきの−かみわさに−ひとりみやもる−みねのまつかせ |
03850 |
未入力 正徹 (xxx)
きの海の浪につつかぬひろ沢も月の南は山の端もなし
きのうみの−なみにつつかぬ−ひろさはも−つきのみなみは−やまのはもなし |
03851 |
未入力 正徹 (xxx)
西の海に今すむ月や雲の上の秋をしたひし名残なるらん
にしのうみに−いますむつきや−くものうへの−あきをしたひし−なこりなるらむ |
03852 |
未入力 正徹 (xxx)
こととはんたそかれ時の山のはにおもかけしるく出つる月かな
こととはむ−たそかれときの−やまのはに−おもかけしるく−いつるつきかな |
03853 |
未入力 正徹 (xxx)
しかの浦やあれし都の月ひとりすむとはしるやから崎の松
しかのうらや−あれしみやこの−つきひとり−すむとはしるや−からさきのまつ |
03854 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるき世の月をかたみの鏡ともみよとや空に猶のこるらん
ふるきよの−つきをかたみの−かかみとも−みよとやそらに−なほのこるらむ |
03855 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみわれつもらむ年のよもあらし老いてそ月をみつへかりける
さのみわれ−つもらむとしの−よもあらし−おいてそつきを−みつへかりける |
03856 |
未入力 正徹 (xxx)
つひに身のさらむ此世のなこりまておし明かたの月もわするな
つひにみの−さらむこのよの−なこりまて−おしあけかたの−つきもわするな |
03857 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの月を招きて庵ふりぬいつるを待つと入るををしむと
やまのはの−つきをまねきて−いほふりぬ−いつるをまつと−いるををしむと |
03858 |
未入力 正徹 (xxx)
しるかりき出つる木の間の夕月よ心つくしを秋にとはねと
しるかりき−いつるこのまの−ゆふつくよ−こころつくしを−あきにとはねと |
03859 |
未入力 正徹 (xxx)
秋も夜も深行く月の宮木守かつらををらぬ光をしむな
あきもよも−ふけゆくつきの−みやきもり−かつらををらぬ−ひかりをしむな |
03860 |
未入力 正徹 (xxx)
山たかみわか立つ杣のひかし坂のほらぬ月をふもとにそみる
やまたかみ−わかたつそまの−ひかしさか−のほらぬつきを−ふもとにそみる |
03861 |
未入力 正徹 (xxx)
やとれ身は七十三の秋の月影みん袖もしらぬなみたに
やとれみは−ななそちみつの−あきのつき−かけみむそても−しらぬなみたに |
03862 |
未入力 正徹 (xxx)
世をまもる神と光を分けきてもわしの高根に有明の月
よをまもる−かみとひかりを−わけきても−わしのたかねに−ありあけのつき |
03863 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川やとかす人もあらしとや秋のよわたる月の行くらん
あまのかは−やとかすひとも−あらしとや−あきのよわたる−つきのゆくらむ |
03864 |
未入力 正徹 (xxx)
見るからそ秋やは人をなくさめて光をそへんさらしなの月
みるからそ−あきやはひとを−なくさめて−ひかりをそへむ−さらしなのつき |
03865 |
未入力 正徹 (xxx)
月も又われをめてける行へともしらてや人を老となすらん
つきもまた−われをめてける−ゆくへとも−しらてやひとを−おいとなすらむ |
03866 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたのたたその中にすみなれて月の宮人月やみさらん
ひさかたの−たたそのうちに−すみなれて−つきのみやひと−つきやみさらむ |
03867 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの月の宮人我なれや光のうちにすむこころかな
ひさかたの−つきのみやひと−われなれや−ひかりのうちに−すむこころかな |
03868 |
未入力 正徹 (xxx)
一とせの春の花程月をみはねむ秋の日やみしか夜の空
ひととせの−はるのはなほと−つきをみは−ねむあきのひや−みしかよのそら |
03869 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめつつ哀と思ひつらしとも人のままにや月はすむらん
なかめつつ−あはれとおもひ−つらしとも−ひとのままにや−つきはすむらむ |
03870 |
未入力 正徹 (xxx)
久堅の月の宮古を都にてみるはいかなる契なるらむ
ひさかたの−つきのみやこを−みやこにて−みるはいかなる−ちきりなるらむ |
03871 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにして世にすむ物そ人心むかしにもあらぬ秋の夜の月
いかにして−よにすむものそ−ひとこころ−むかしにもあらぬ−あきのよのつき |
03872 |
未入力 正徹 (xxx)
ねかはくはこむ世も秋の月をみてかく思ひおくいまをわすれし
ねかはくは−こむよもあきの−つきをみて−かくおもひおく−いまをわすれし |
03873 |
未入力 正徹 (xxx)
都にもおなしかかみをかけ出つる遠山とりのをは捨の月
みやこにも−おなしかかみを−かけいつる−とほやまとりの−をはすてのつき |
03874 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身をはかへてもなとかあはさらんさらぬわかれの有明の月
うきみをは−かへてもなとか−あはさらむ−さらぬわかれの−ありあけのつき |
03875 |
未入力 正徹 (xxx)
はるる夜の老の涙にくもるをは袖にゆるして月をみるかな
はるるよの−おいのなみたに−くもるをは−そてにゆるして−つきをみるかな |
03876 |
未入力 正徹 (xxx)
さやけさを手にとるはかり久かたの月の宮人月やみるらん
さやけさを−てにとるはかり−ひさかたの−つきのみやひと−つきやみるらむ |
03877 |
未入力 正徹 (xxx)
影やとす月に思ひをかさねても衣手うすし秋のうたたね
かけやとす−つきにおもひを−かさねても−ころもてうすし−あきのうたたね |
03878 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月しのに衣そぬれまさるこれもなみたの川やしろかも
あきのつき−しのにころもそ−ぬれまさる−これもなみたの−かはやしろかも |
03879 |
未入力 正徹 (xxx)
行きめくり月のぬる夜のなきにたに雲の床しく空の秋風
ゆきめくり−つきのぬるよの−なきにたに−くものとこしく−そらのあきかせ |
03880 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめけん此坂もとの松島やをしまの月の秋をしそ思ふ
なかめけむ−このさかもとの−まつしまや−をしまのつきの−あきをしそおもふ |
03881 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよりおちたる月もなかれもの水底みゆる秋の川浪
くもまより−おちたるつきも−なかれもの−みなそこみゆる−あきのかはなみ |
03882 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月めてすはなににつもるそと心なき身の老にとははや
あきのつき−めてすはなにに−つもるそと−こころなきみの−おいにとははや |
03883 |
未入力 正徹 (xxx)
人ことの思ひは雲とかさなれと月そむくはぬ影にさやけき
ひとことの−おもひはくもと−かさなれと−つきそむくはぬ−かけにさやけき |
03884 |
未入力 正徹 (xxx)
衣たつしのふのみたれ雲きえてかきりしられぬ月の行末
ころもたつ−しのふのみたれ−くもきえて−かきりしられぬ−つきのゆくすゑ |
03885 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海の浪も七度あせはてていつ桑原に月のすみけん
にほのうみの−なみもななたひ−あせはてて−いつくははらに−つきのすみけむ |
03886 |
未入力 正徹 (xxx)
あれわたる床のかかみはたかおける形見ともなき古郷の月
あれわたる−とこのかかみは−たかおける−かたみともなき−ふるさとのつき |
03887 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの月のかつらの秋の花にほひはつれす光ちるなり
ひさかたの−つきのかつらの−あきのはな−にほひはつれす−ひかりちるなり |
03888 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世ともいはねこりしき谷ふかき山としたかくいつる月影
いくよとも−いはねこりしき−たにふかき−やまとしたかく−いつるつきかけ |
03889 |
未入力 正徹 (xxx)
出つるまの月のうちよりこゑそするかねやいこまの嶺の山寺
いつるまの−つきのうちより−こゑそする−かねやいこまの−みねのやまてら |
03890 |
未入力 正徹 (xxx)
雲そなき空はなかはの秋の名に一夜へたつる山のはの月
くもそなき−そらはなかはの−あきのなに−ひとよへたつる−やまのはのつき |
03891 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの月かならすいつる山のはに雲あつまりて又そきえ行く
よはのつき−かならすいつる−やまのはに−くもあつまりて−またそきえゆく |
03892 |
未入力 正徹 (xxx)
夕くれの山きははれてさしのほる月より上の雲そ色こき
ゆふくれの−やまきははれて−さしのほる−つきよりうへの−くもそいろこき |
03893 |
未入力 正徹 (xxx)
ふもととも一の塵のなりし世やいつる嶺なき秋の夜の月
ふもととも−ひとつのちりの−なりしよや−いつるみねなき−あきのよのつき |
03894 |
未入力 正徹 (xxx)
木のまよりむかふ伊駒の雲に影さすやみかさの山のはの月
このまより−むかふいこまの−くもにかけ−さすやみかさの−やまのはのつき |
03895 |
未入力 正徹 (xxx)
物ことにきははなるるはかたき世にやすくも月のあかる山かな
ものことに−きははなるるは−かたきよに−やすくもつきの−あかるやまかな |
03896 |
未入力 正徹 (xxx)
出てけりなあはれうき世と思ひいる身の夕くれの山のはの月
いてけりな−あはれうきよと−おもひいる−みのゆふくれの−やまのはのつき |
03897 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲の袖かへるなり海士を舟空にをすての山のはの月
うきくもの−そてかへるなり−あまをふね−そらにをすての−やまのはのつき |
03898 |
未入力 正徹 (xxx)
おく露にやとるはしらす山松の下草みえて出つる月かけ
おくつゆに−やとるはしらす−やままつの−したくさみえて−いつるつきかけ |
03899 |
未入力 正徹 (xxx)
すみのほる月にもれたる草かくれ嵐そわたる峰の松かえ
すみのほる−つきにもれたる−くさかくれ−あらしそわたる−みねのまつかえ |
03900 |
未入力 正徹 (xxx)
たちいてて今の都をもる月の世世にくもらぬ大ひえの山
たちいてて−いまのみやこを−もるつきの−よよにくもらぬ−おほひえのやま |
03901 |
未入力 正徹 (xxx)
照りまさる月の桂のもみちははちらぬ高根に秋風そふく
てりまさる−つきのかつらの−もみちはは−ちらぬたかねに−あきかせそふく |
03902 |
未入力 正徹 (xxx)
山となる麓のちりも今夜ゐは数さへ見えん月の影かな
やまとなる−ふもとのちりも−こよひゐは−かすさへみえむ−つきのかけかな |
03903 |
未入力 正徹 (xxx)
かさならむ山となるへき塵もゐは今夜そ見えん出つる月影
かさならむ−やまとなるへき−ちりもゐは−こよひそみえむ−いつるつきかけ |
03904 |
未入力 正徹 (xxx)
松風の声にそましる中空のふもとをのほる嶺の月かけ
まつかせの−こゑにそましる−なかそらの−ふもとをのほる−みねのつきかけ |
03905 |
未入力 正徹 (xxx)
湊山かけをうつして月の舟漕きいつる嶺の天の川なみ
みなとやま−かけをうつして−つきのふね−こきいつるみねの−あまのかはなみ |
03906 |
未入力 正徹 (xxx)
影ともにふもとの海に落ちてけりあつまの月のいつの山かせ
かけともに−ふもとのうみに−おちてけり−あつまのつきの−いつのやまかせ |
03907 |
未入力 正徹 (xxx)
山にすむ昔かしこき人もかなまたれて出つる月もある世に
やまにすむ−むかしかしこき−ひともかな−またれていつる−つきもあるよに |
03908 |
未入力 正徹 (xxx)
日の御影いてし岩戸を又照す月おもしろき天のかく山
ひのみかけ−いてしいはとを−またてらす−つきおもしろき−あまのかくやま |
03909 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちこむる霧より出ててすみのほる月のおくなる秋の遠山
たちこむる−きりよりいてて−すみのはる−つきのおくなる−あきのとほやま |
03910 |
未入力 正徹 (xxx)
滝浪を霧に吹きなす深山風なにの草木も秋の月影
たきなみを−きりにふきなす−みやまかせ−なにのくさきも−あきのつきかけ |
03911 |
未入力 正徹 (xxx)
柴の戸に秋風ふけて月寒き梢の浪の山わたる声
しはのとに−あきかせふけて−つきさむき−こすゑのなみの−やまわたるこゑ |
03912 |
未入力 正徹 (xxx)
深山路や木の間をみれはわたるなり色やはかはる大うみのなみ
みやまちや−このまをみれは−わたるなり−いろやはかはる−おほうみのなみ |
03913 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間もるならひはかりにいかか見る秋の太山の月の里人
このまもる−ならひはかりに−いかかみる−あきのみやまの−つきのさとひと |
03914 |
未入力 正徹 (xxx)
きりはてぬ思ひの河やまさきちる秋の外山の月の宮人
きりはてぬ−おもひのかはや−まさきちる−あきのとやまの−つきのみやひと |
03915 |
未入力 正徹 (xxx)
遠方にかたふく影は夜ふかくて月の外山のみねそ明行く
をちかたに−かたふくかけは−よふかくて−つきのとやまの−みねそあけゆく |
03916 |
未入力 正徹 (xxx)
み山木の秋のこの実もおつるはも音せぬ谷にふくる夜の月
みやまきの−あきのこのみも−おつるはも−おとせぬたにに−ふくるよのつき |
03917 |
未入力 正徹 (xxx)
ささのやに太山の松の一葉たにおつる声なき月のさ夜中
ささのやに−みやまのまつの−ひとはたに−おつるこゑなき−つきのさよなか |
03918 |
未入力 正徹 (xxx)
落葉かと四方にきこゆるおともなし太山の松の月のさよ中
おちはかと−よもにきこゆる−おともなし−みやまのまつの−つきのさよなか |
03919 |
未入力 正徹 (xxx)
かかれとそ世をも人をも祈りおかむ深山の空にふくるよの月
かかれとそ−よをもひとをも−いのりおかむ−みやまのそらに−ふくるよのつき |
03920 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふかき山風きかて木のまもる月に落椎の霜をうつこゑ
あきふかき−やまかせきかて−このまもる−つきにおちしひの−しもをうつこゑ |
03921 |
未入力 正徹 (xxx)
すみのほる月の夕の山かつらかくるににたる雲そのこれる
すみのほる−つきのゆふへの−やまかつら−かくるににたる−くもそのこれる |
03922 |
未入力 正徹 (xxx)
雲にほふ色そふ月の出所夜ことにかはる嶺つつきかな
くもにほふ−いろそふつきの−いてところ−よことにかはる−みねつつきかな |
03923 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺におふる松はまことに久堅の月出てぬまも千代やへぬらん
みねにおふる−まつはまことに−ひさかたの−つきいてぬまも−ちよやへぬらむ |
03924 |
未入力 正徹 (xxx)
月まつと人にいふへき左もなし契れるかたのほしき夜はかな
つきまつと−ひとにいふへき−とももなし−ちきれるかたの−ほしきよはかな |
03925 |
未入力 正徹 (xxx)
うしや猶いさよひの後はまちえても夜ことにかるる月の宮人
うしやなほ−いさよひののちは−まちえても−よことにかるる−つきのみやひと |
03926 |
未入力 正徹 (xxx)
たか中に契りそめてか三日の夜をねやにあらはし月の出つらん
たかなかに−ちきりそめてか−みかのよを−ねやにあらはし−つきのいつらむ |
03927 |
未入力 正徹 (xxx)
まとかなるすかたはかりはあらはれて下に色こき秋の三か月
まとかなる−すかたはかりは−あらはれて−したにいろこき−あきのみかつき |
03928 |
未入力 正徹 (xxx)
玉くしけなかはの秋の三日のよにあらはしいたす望月もかな
たまくしけ−なかはのあきの−みかのよに−あらはしいたす−もちつきもかな |
03929 |
未入力 正徹 (xxx)
てらせ猶弓張月のよひのまに入る山のはの秋のもみち葉
てらせなほ−ゆみはりつきの−よひのまに−いるやまのはの−あきのもみちは |
03930 |
未入力 正徹 (xxx)
更けにけり月のかけたるあつさ弓いり江浪こす興つしほ風
ふけにけり−つきのかけたる−あつさゆみ−いりえなみこす−おきつしほかせ |
03931 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしにも光そこえん秋をそへ名をかさね行く夜半のもち月
むかしにも−ひかりそこえむ−あきをそへ−なをかさねゆく−よはのもちつき |
03932 |
未入力 正徹 (xxx)
星合は過きても秋の名にたかき月こそわたれ天の川なみ
ほしあひは−すきてもあきの−なにたかき−つきこそわたれ−あまのかはなみ |
03933 |
未入力 正徹 (xxx)
名こそあれわか身の年も半にてみし世の月の秋そかへらぬ
なこそあれ−わかみのとしも−なかはにて−みしよのつきの−あきそかへらぬ |
03934 |
未入力 正徹 (xxx)
すきし空あすのいさよひの光をもかるや名たかき月をますとて
すきしそら−あすのいさよひの−ひかりをも−かるやなたかき−つきをますとて |
03935 |
未入力 正徹 (xxx)
白菊はわか時過きて月に又あすの名ちらす露のあきかせ
しらきくは−わかときすきて−つきにまた−あすのなちらす−つゆのあきかせ |
03936 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にもる雲まの影そ猶ほそき夜は長月の中の三か月
そてにもる−くもまのかけそ−なほほそき−よはなかつきの−なかのみかつき |
03937 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへる秋もはてなき月の名にいく長月かめくりあはまし
ゆきかへる−あきもはてなき−つきのなに−いくなかつきか−めくりあはまし |
03938 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる初霜さむし秋の月望に二夜のまへのたなはし
かせわたる−はつしもさむし−あきのつき−もちにふたよの−まへのたなはし |
03939 |
未入力 正徹 (xxx)
たれもみよやかてみてるをかく月のいさよひの空そ人の世中
たれもみよ−やかてみてるを−かくつきの−いさよひのそらそ−ひとのよのなか |
03940 |
未入力 正徹 (xxx)
光をも名をも昨日をゆつるらしいさよひの空に出つる望月
ひかりをも−なをもきのふを−ゆつるらし−いさよひのそらに−いつるもちつき |
03941 |
未入力 正徹 (xxx)
花にみんやとりあらさし秋草の露ふむ庭にたちまちの月
はなにみむ−やとりあらさし−あきくさの−つゆふむにはに−たちまちのつき |
03942 |
未入力 正徹 (xxx)
千草ふく野への嵐にさをしかもおき臥待の月や知るらん
ちくさふく−のへのあらしに−さをしかも−おきふしまちの−つきやしるらむ |
03943 |
未入力 正徹 (xxx)
戸を明けてひとりねまちの月夜よし人をこてふににたる宿かな
とをあけて−ひとりねまちの−つきよよし−ひとをこてふに−にたるやとかな |
03944 |
未入力 正徹 (xxx)
民の戸も出てて照さぬかたやなき廿日ゐ中の月の都に
たみのとも−いてててらさぬ−かたやなき−はつかゐなかの−つきのみやこに |
03945 |
未入力 正徹 (xxx)
空にいる同しはは箭は見えねとも月や神代の天のこの弓
そらにいる−おなしははやは−みえねとも−つきやかみよの−あまのこのゆみ |
03946 |
未入力 正徹 (xxx)
色もをし月の桂の枝分に夜をへてかるる有明のかけ
いろもをし−つきのかつらの−えたわけに−よをへてかるる−ありあけのかけ |
03947 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけむなしき秋の中空に月ものこりて影やこふらん
あさほらけ−むなしきあきの−なかそらに−つきものこりて−かけやこふらむ |
03948 |
未入力 正徹 (xxx)
覚めてみるわか長月の有明はまた初霜のさ夜中の空
さめてみる−わかなかつきの−ありあけは−またはつしもの−さよなかのそら |
03949 |
未入力 正徹 (xxx)
有明の残るにたへぬ長き夜の月より西は空そはるけき
ありあけの−のこるにたへぬ−なかきよの−つきよりにしは−そらそはるけき |
03950 |
未入力 正徹 (xxx)
消えやらて猶もわか世に有明を月につれなき恨とやみん
きえやらて−なほもわかよに−ありあけを−つきにつれなき−うらみとやみむ |
03951 |
未入力 正徹 (xxx)
月はいまをはすて山の有明にしなののま弓かけていてつつ
つきはいま−をはすてやまの−ありあけに−しなののまゆみ−かけていてつつ |
03952 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらすあかつきおきは恋ちにも法の道にも契る月かけ
そてぬらす−あかつきおきは−こひちにも−のりのみちにも−ちきるつきかけ |
03953 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから雲なき空をおくりきて心かたふく有明の月
よもすから−くもなきそらを−おくりきて−こころかたふく−ありあけのつき |
03954 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の夜にわかれて月や残るらんさきたつ友の跡の身そうき
あきのよに−わかれてつきや−のこるらむ−さきたつともの−あとのみそうき |
03955 |
未入力 正徹 (xxx)
あくるまはこゑそうらむる中空の月まちとらぬ峰の松かせ
あくるまは−こゑそうらむる−なかそらの−つきまちとらぬ−みねのまつかせ |
03956 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにして月そさやかにおくりける雲の衣の嶺のきぬきぬ
よそにして−つきそさやかに−おくりける−くものころもの−みねのきぬきぬ |
03957 |
未入力 正徹 (xxx)
あくるまの月にそみつる此世にもをしめは残るならひありとは
あくるまの−つきにそみつる−このよにも−をしめはのこる−ならひありとは |
03958 |
未入力 正徹 (xxx)
道しらぬ月とやはみん秋なかは名をとけし世に有明の空
みちしらぬ−つきとやはみむ−あきなかは−なをとけしよに−ありあけのそら |
03959 |
未入力 正徹 (xxx)
長き夜をおくりすててや行末ののこれる空に月とまるらん
なかきよを−おくりすててや−ゆくすゑの−のこれるそらに−つきとまるらむ |
03960 |
未入力 正徹 (xxx)
うす雲のかけ行く月は明くる夜の光にかはる窓のともし火
うすくもの−かけゆくつきは−あくるよの−ひかりにかはる−まとのともしひ |
03961 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原明行くままに影きえてうす雲渡る山のはの月
あまのはら−あけゆくままに−かけきえて−うすくもわたる−やまのはのつき |
03962 |
未入力 正徹 (xxx)
雲にあくる月より西のはるる夜はなに心なき空もうらめし
くもにあくる−つきよりにしの−はるるよは−なにこころなき−そらもうらめし |
03963 |
未入力 正徹 (xxx)
春の花うきにそまさる入る月の光ちらさて送る秋かせ
はるのはな−うきにそまさる−いるつきの−ひかりちらさて−おくるあきかせ |
03964 |
未入力 正徹 (xxx)
あくる戸の月やかへりてしたふらんかたふく閨の奥にやとれる
あくるとの−つきやかへりて−したふらむ−かたふくねやの−おくにやとれる |
03965 |
未入力 正徹 (xxx)
したへとや月のかたふく山をしもたかく神代にうみはおきけん
したへとや−つきのかたふく−やまをしも−たかくかみよに−うみはおきけむ |
03966 |
未入力 正徹 (xxx)
世にいてん事は夜のまそをしまれて入る山ふかく月ほなるとも
よにいてむ−ことはよのまそ−をしまれて−いるやまふかく−つきほなるとも |
03967 |
未入力 正徹 (xxx)
いねかては萩の下葉もなれしらすひとりある人の月の名残に
いねかては−はきのしたはも−なれしらす−ひとりあるひとの−つきのなこりに |
03968 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月かくこそあらめと老か身のみさらん秋をしる涙かな
あきのつき−かくこそあらめと−おいかみの−みさらむあきを−しるなみたかな |
03969 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれめや露おく秋の初よりなれにし袖の長月の月
わすれめや−つゆおくあきの−はしめより−なれにしそての−なかつきのつき |
03970 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身はなき世の秋の月を見てしのはん人や今もとほまし
おいかみは−なきよのあきの−つきをみて−しのはむひとや−いまもとほまし |
03971 |
未入力 正徹 (xxx)
物そ思ふ月なき秋の夕たになかめやすてし雲のはたては
ものそおもふ−つきなきあきの−ゆふへたに−なかめやすてし−くものはたては |
03972 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の空みしかかりつる日の影の月にそへはや色まさるらん
あきのそら−みしかかりつる−ひのかけの−つきにそへはや−いろまさるらむ |
03973 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれても秋こぬ年のめくりこは空行く月や光かはらむ
わすれても−あきこぬとしの−めくりこは−そらゆくつきや−ひかりかはらむ |
03974 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふとも月の心にそむかすは袖にくもらぬしるしをそみむ
あきふとも−つきのこころに−そむかすは−そてにくもらぬ−しるしをそみむ |
03975 |
未入力 正徹 (xxx)
あひに合ふ空を契りし秋こすはかはりにけりと月やうらみん
あひにあふ−そらをちきりし−あきこすは−かはりにけりと−つきやうらみむ |
03976 |
未入力 正徹 (xxx)
空に名をいひはたてねと浮雲や月と秋との中をさふらん
そらになを−いひはたてねと−うきくもや−つきとあきとの−なかをさふらむ |
03977 |
未入力 正徹 (xxx)
老の坂のほりてくたる道すから空行く月をつれぬ夜tなし
おいのさか−のほりてくたる−みちすから−そらゆくつきを−つれぬよもなし |
03978 |
未入力 正徹 (xxx)
ならひありてあはれ手にとる物ならはわか世に秋の色やみさらん
ならひありて−あはれてにとる−ものならは−わかよにあきの−いろやみさらむ |
03979 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにもうれへある人をなくさめて此世に月や行きめくるらん
いつくにも−うれへあるひとを−なくさめて−このよにつきや−ゆきめくるらむ |
03980 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をへて月にぬれにし衣手のひぬ夜そつもる露のかたしき
あきをへて−つきにぬれにし−ころもての−ひぬよそつもる−つゆのかたしき |
03981 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめてもしつかをた巻長き夜と月にはしはし秋の宮人
なかめても−しつかをたまき−なかきよと−つきにはしはし−あきのみやひと |
03982 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさもみれは思はす月の内におふるかいさや物わすれ草
みのうさも−みれはおもはす−つきのうちに−おふるかいさや−ものわすれくさ |
03983 |
未入力 正徹 (xxx)
すみかたき世にうき秋のせめつるをはらふかむかふ月の下風
すみかたき−よにうきあきの−せめつるを−はらふかむかふ−つきのしたかせ |
03984 |
未入力 正徹 (xxx)
よもすからふけともかはる色もみす月とふたりの中の秋かせ
よもすから−ふけともかはる−いろもみす−つきとふたりの−なかのあきかせ |
03985 |
未入力 正徹 (xxx)
なほさりにかたり捨てつる人はこて月とふたりの床そ更行く
なほさりに−かたりすてつる−ひとはこて−つきとふたりの−とこそふけゆく |
03986 |
未入力 正徹 (xxx)
友そなきさらむ此世も生れしもよしや独と月をのみみて
ともそなき−さらむこのよも−うまれしも−よしやひとりと−つきをのみみて |
03987 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめても猶そ夜ふかき久かたの月とふたりのありのすさみに
なかめても−なほそよふかき−ひさかたの−つきとふたりの−ありのすさみに |
03988 |
未入力 正徹 (xxx)
ともなへと月のみせたるわか影の身にしたかふも心なくして
ともなへと−つきのみせたる−わかかけの−みにしたかふも−こころなくして |
03989 |
未入力 正徹 (xxx)
千千の秋思ひを月につくすなり今夜わか世や深けまさるらん
ちちのあき−おもひをつきに−つくすなり−こよひわかよや−ふけまさるらむ |
03990 |
未入力 正徹 (xxx)
すみのほる心にすめる月をみて月をわするる秋のさ夜中
すみのほる−こころにすめる−つきをみて−つきをわするる−あきのさよなか |
03991 |
未入力 正徹 (xxx)
何ゆゑにうしとも思ひつらしともみなさぬ月に涙おつらん
なにゆゑに−うしともおもひ−つらしとも−みなさぬつきに−なみたおつらむ |
03992 |
未入力 正徹 (xxx)
あきらけく此九重に影しけは月の宮古をならへてそ見る
あきらけく−このここのへに−かけしけは−つきのみやこを−ならへてそみる |
03993 |
未入力 正徹 (xxx)
世の人の夜半のみるめそ限なき色やしのはんかたなかるらん
よのひとの−よはのみるめそ−かきりなき−いろやしのはむ−かたなかるらむ |
03994 |
未入力 正徹 (xxx)
長月の月にそくらす此秋も命のうちのあり明の空
なかつきの−つきにそくらす−このあきも−いのちのうちの−ありあけのそら |
03995 |
未入力 正徹 (xxx)
雲は猶うきたる物そ月よ世に身をかくすへき宿な尋ねそ
くもはなほ−うきたるものそ−つきよよに−みをかくすへき−やとなたつねそ |
03996 |
未入力 正徹 (xxx)
やとりきてうらみぬ袖をしほるかな雲路の浪にかかる月かけ
やとりきて−うらみぬそてを−しほるかな−くもちのなみに−かかるつきかけ |
03997 |
未入力 正徹 (xxx)
色そそふすみけん天の昔より秋に契やふかき夜の月
いろそそふ−すみけむあめの−むかしより−あきにちきりや−ふかきよのつき |
03998 |
未入力 正徹 (xxx)
老の浪月のみるめにみくやともしらすよるよる向ふころかな
おいのなみ−つきのみるめに−みくやとも−しらすよるよる−むかふころかな |
03999 |
未入力 正徹 (xxx)
覚めてみる空もむかしの秋ならし夢の面かけ月にそはすは
さめてみる−そらもむかしの−あきならし−ゆめのおもかけ−つきにそはすは |
04000 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの月のさかりのさ夜中もわれ山のはに有明のそら
ひさかたの−つきのさかりの−さよなかも−われやまのはに−ありあけのそら |
04001 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりみていく秋過きぬ世の人のいむてふものか深き夜の月
ひとりみて−いくあきすきぬ−よのひとの−いむてふものか−ふかきよのつき |
04002 |
未入力 正徹 (xxx)
荻の葉に風も音せぬさ夜ふけて月に千草の露おもるなり
をきのはに−かせもおとせぬ−さよふけて−つきにちくさの−つゆおもるなり |
04003 |
未入力 正徹 (xxx)
おきあまり更行く月に露は落ちて一葉もならぬ庭の荻はら
おきあまり−ふけゆくつきに−つゆはおちて−ひとはもならぬ−にはのをきはら |
04004 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむさ夜も半に秋更けて音せぬ風にやとる月かけ
みにそしむ−さよもなかはに−あきふけて−おとせぬかせに−やとるつきかけ |
04005 |
未入力 正徹 (xxx)
宵のまに明けぬとみるをたかために長してふ夜の月となるらん
よひのまに−あけぬとみるを−たかために−なかしてふよの−つきとなるらむ |
04006 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のよのなかきをおくる月はあれと命そ人をしたはさりける
あきのよの−なかきをおくる−つきはあれと−いのちそひとを−したはさりける |
04007 |
未入力 正徹 (xxx)
かくて夜をあかしそはてん思ふとち月の円居に似たる空かな
かくてよを−あかしそはてむ−おもふとち−つきのまとゐに−にたるそらかな |
04008 |
未入力 正徹 (xxx)
月も又夢や見さらんうき雲の閨へもいらてよそに明行く
つきもまた−ゆめやみさらむ−うきくもの−ねやへもいらて−よそにあけゆく |
04009 |
未入力 正徹 (xxx)
出つるより入るまて空をみすてねは月のうらみん時のまもなし
いつるより−いるまてそらを−みすてねは−つきのうらみむ−ときのまもなし |
04010 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ出てて水上遠き舟いそけあけなは月に漕きかへるとも
おもひいてて−みなかみとほき−ふねいそけ−あけなはつきに−こきかへるとも |
04011 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をへて老は友なくなりにけりみすてかたくや月のとふらん
あきをへて−おいはともなく−なりにけり−みすてかたくや−つきのとふらむ |
04012 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月に中中雲の一むらはかけみまほしくすめる空かな
ゆくつきに−なかなかくもの−ひとむらは−かけみまほしく−すめるそらかな |
04013 |
未入力 正徹 (xxx)
中空にてる日のかけか望月ののほれは午の時もかはらす
なかそらに−てるひのかけか−もちつきの−のほれはうまの−ときもかはらす |
04014 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑの世も影かはらしと見し人にみせまくほしき月そさやけき
すゑのよも−かけかはらしと−みしひとに−みせまくほしき−つきそさやけき |
04015 |
未入力 正徹 (xxx)
さまさまに秋の思ひの色そわくうれへを月のもとの身にして
さまさまに−あきのおもひの−いろそわく−うれへをつきの−もとのみにして |
04016 |
未入力 正徹 (xxx)
あやにくにいとひし雲の一村はてる月ちかくありてみまほし
あやにくに−いとひしくもの−ひとむらは−てるつきちかく−ありてみまほし |
04017 |
未入力 正徹 (xxx)
ねくらとふそれにもあらぬ鳥のねにゆふつけて行く秋の月かけ
ねくらとふ−それにもあらぬ−とりのねに−ゆふつけてゆく−あきのつきかけ |
04018 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ人雲のはたてのうすものをおりいたすみれは夕月の影
あまつひと−くものはたての−うすものを−おりいたすみれは−ゆふつきのかけ |
04019 |
未入力 正徹 (xxx)
やとれ影月なき秋の夕暮もうきを初とぬれし袂に
やとれかけ−つきなきあきの−ゆふくれも−うきをはしめと−ぬれしたもとに |
04020 |
未入力 正徹 (xxx)
白浪のたつたの山路くらからし入日をおくる弓張の月
しらなみの−たつたのやまち−くらからし−いりひをおくる−ゆみはりのつき |
04021 |
未入力 正徹 (xxx)
月出つる嶺の林の夕からすしはしねくらをとりてさためぬ
つきいつる−みねのはやしの−ゆふからす−しはしねくらを−とりてさためぬ |
04022 |
未入力 正徹 (xxx)
まちいてむ月の光かたく火かも山のあなたにむかふ白雲
まちいてむ−つきのひかりか−たくひかも−やまのあなたに−むかふしらくも |
04023 |
未入力 正徹 (xxx)
霜そ置くさ夜はなかはに更けはつるわか世の月の秋の衣手
しもそおく−さよはなかはに−ふけはつる−わかよのつきの−あきのころもて |
04024 |
未入力 正徹 (xxx)
ふけにけりいつくの夢の枕をかむなしく夜はの月渡るらん
ふけにけり−いつくのゆめの−まくらをか−むなしくよはの−つきわたるらむ |
04025 |
未入力 正徹 (xxx)
ことしけき都のみちに人こゑも聞えぬ月に風そふけ行く
ことしけき−みやこのみちに−ひとこゑも−きこえぬつきに−かせそふけゆく |
04026 |
未入力 正徹 (xxx)
深けにけり嶺吹きこゆる松風のおとさへたかくのほる月かな
ふけにけり−みねふきこゆる−まつかせの−おとさへたかく−のほるつきかな |
04027 |
未入力 正徹 (xxx)
まちとらむ心なきをや恨むらんかたふく月の行末の山
まちとらむ−こころなきをや−うらむらむ−かたふくつきの−ゆくすゑのやま |
04028 |
未入力 正徹 (xxx)
千里まてまちや出つらむ月入りし山のあなたの秋のもろ人
ちさとまて−まちやいつらむ−つきいりし−やまのあなたの−あきのもろひと |
04029 |
未入力 正徹 (xxx)
松かえに千とせの秋を友なひて入りにし嶺の月もしたはし
まつかえに−ちとせのあきを−ともなひて−いりにしみねの−つきもしたはし |
04030 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のこらぬかつらの枝そそふかへる薪のうへの月かけ
やまひとの−こらぬかつらの−えたそそふ−かへるたききの−うへのつきかけ |
04031 |
未入力 正徹 (xxx)
いく浦か浪に釣竿なかき夜の月みぬあまの漕きめくるらん
いくうらか−なみにつりさを−なかきよの−つきみぬあまの−こきめくるらむ |
04032 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やときはしめは秋をしくれとも思はぬ月のはれくもり行く
あきやとき−はしめはあきを−しくれとも−おもはぬつきの−はれくもりゆく |
04033 |
未入力 正徹 (xxx)
すみはてぬ此世や思ひしらるらんしくるる秋にあへる月かけ
すみはてぬ−このよやおもひ−しらるらむ−しくるるあきに−あへるつきかけ |
04034 |
未入力 正徹 (xxx)
八重葎はらふ野分に空はれて影さしこもる月の閨かな
やへむくら−はらふのわきに−そらはれて−かけさしこもる−つきのねやかな |
04035 |
未入力 正徹 (xxx)
くたけちる月に白玉数しらす秋の花のの露のさ夜風
くたけちる−つきにしらたま−かすしらす−あきのはなのの−つゆのさよかせ |
04036 |
未入力 正徹 (xxx)
はれくもる影を嵐やかへすらん雲なき月の嶺の誰しは
はれくもる−かけをあらしや−かへすらむ−くもなきつきの−みねのしひしは |
04037 |
未入力 正徹 (xxx)
こえかかる夕の雪やうつむらん月に嶺なき遠方の山
こえかかる−ゆふへのゆきや−うつむらむ−つきにみねなき−をちかたのやま |
04038 |
未入力 正徹 (xxx)
心して嵐のおくる夕とや峰こす程はいそく月かけ
こころして−あらしのおくる−ゆふへとや−みねこすほとは−いそくつきかけ |
04039 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上の淡とそうかふあはちかた向ふいこまの嶺の月影
なみのうへの−あわとそうかふ−あはちかた−むかふいこまの−みねのつきかけ |
04040 |
未入力 正徹 (xxx)
出てぬより月の光をまつかけて嶺の梢に秋風そ吹く
いてぬより−つきのひかりを−まつかけて−みねのこすゑに−あきかせそふく |
04041 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくなりわか立つ杣のたかねよりふもとの塵にましる月かけ
あふくなり−わかたつそまの−たかねより−ふもとのちりに−ましるつきかけ |
04042 |
未入力 正徹 (xxx)
入かたの月の後せの山かせにうら吹きかへす峰のしひしは
いりかたの−つきののちせの−やまかせに−うらふきかへす−みねのしひしは |
04043 |
未入力 正徹 (xxx)
松風も高ねの光さしそへてくもらぬ月のかさとりの山
まつかせも−たかねのひかり−さしそへて−くもらぬつきの−かさとりのやま |
04044 |
未入力 正徹 (xxx)
やとすらむうつ火はきえてかつらきの嶺入る人の袖の月かけ
やとすらむ−うつひはきえて−かつらきの−みねいるひとの−そてのつきかけ |
04045 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ人やいつるも遠き空とみん嶺のいほりにならふ月かけ
すむひとや−いつるもとほき−そらとみむ−みねのいほりに−ならふつきかけ |
04046 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかき山はいこまのあしなみに月の歩をいそくともみす
みねたかき−やまはいこまの−あしなみに−つきのあゆみを−いそくともみす |
04047 |
未入力 正徹 (xxx)
塵ほとも秋やかくるる所なきたかねにみかく月のかかみに
ちりほとも−あきやかくるる−ところなき−たかねにみかく−つきのかかみに |
04048 |
未入力 正徹 (xxx)
うらむらん嶺のくす葉に月出てぬさそ山かけの秋のさと人
うらむらむ−みねのくすはに−つきいてぬ−さそやまかけの−あきのさとひと |
04049 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりのなる山よりたかく出ててけりつもりし老の秋のよの月
ちりのなる−やまよりたかく−いててけり−つもりしおいの−あきのよのつき |
04050 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のきそのあさ衣秋さむく月衣きいたす風こしの嶺
やまひとの−きそのあさきぬ−あきさむく−つきふきいたす−かさこしのみね |
04051 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺におふる松しなけれはいつるまもさはらぬ月そやかてくまなき
みねにおふる−まつしなけれは−いつるまも−さはらぬつきそ−やかてくまなき |
04052 |
未入力 正徹 (xxx)
たちいつる高ねの月の秋風になひく光を千里にそしく
たちいつる−たかねのつきの−あきかせに−なひくひかりを−ちさとにそしく |
04053 |
未入力 正徹 (xxx)
明石かた岡へも浜も見し人のたえたるみねに月そ残れる
あかしかた−をかへもはまも−みしひとの−たえたるみねに−つきそのこれる |
04054 |
未入力 正徹 (xxx)
つもりけん塵をつくして嶺となる山風きよく出つる月影
つもりけむ−ちりをつくして−みねとなる−やまかせきよく−いつるつきかけ |
04055 |
未入力 正徹 (xxx)
神世よりいく世の月をやとすらんすめるみ室の谷川の水
かみよより−いくよのつきを−やとすらむ−すめるみむろの−たにかはのみつ |
04056 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはるる影をや秋の色とみん月すむ谷の下の埋木
あらはるる−かけをやあきの−いろとみむ−つきすむたにの−したのうもれき |
04057 |
未入力 正徹 (xxx)
雲霧はおりてもとちす谷の戸をあけおく夜はの月の影かな
くもきりは−おりてもとちす−たにのとを−あけおくよはの−つきのかけかな |
04058 |
未入力 正徹 (xxx)
月に玉ひろふはかりと伊勢の海の清き渚のあまもみるらん
つきにたま−ひろふはかりと−いせのうみの−きよきなきさの−あまもみるらむ |
04059 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原浪の千さとに月はあれと人は声せす秋のしほ風
わたのはら−なみのちさとに−つきはあれと−ひとはこゑせす−あきのしほかせ |
04060 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上に此世をすくすあまの子は宿もさためぬ月やみるらん
なみのうへに−このよをすくす−あまのこは−やともさためぬ−つきやみるらむ |
04061 |
未入力 正徹 (xxx)
伊せの海の渚の月もみかくらし人のこと葉の玉ひろふ世に
いせのうみの−なきさのつきも−みかくらし−ひとのことはの−たまひろふよに |
04062 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海の千いろの底にかつきても月をみるめりかすはくもらし
わたつうみの−ちいろのそこに−かつきても−つきをみるめり−かすはくもらし |
04063 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに興の小島の浜ひさし指入る月のひかりはかりや
いたつらに−おきのこしまの−はまひさし−さしいるつきの−ひかりはかりや |
04064 |
未入力 正徹 (xxx)
空にたつあまのたく縄煙さへ猶なかき夜の月にのこれる
そらにたつ−あまのたくなは−けふりさへ−なほなかきよの−つきにのこれる |
04065 |
未入力 正徹 (xxx)
空かけてはてなき海も行く月の光にこもる浪の上かな
そらかけて−はてなきうみも−ゆくつきの−ひかりにこもる−なみのうへかな |
04066 |
未入力 正徹 (xxx)
伊勢島やきよき渚に玉やなす何そは月によする白浪
いせしまや−きよきなきさに−たまやなす−なにそはつきに−よするしらなみ |
04067 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくかはきよき渚の月ならぬこよひやいせの海となるらん
いつくかは−きよきなきさの−つきならぬ−こよひやいせの−うみとなるらむ |
04068 |
未入力 正徹 (xxx)
夕しほの入りぬる磯に影みちて見らくおほかる秋の望月
ゆふしほの−いりぬるいそに−かけみちて−みらくおほかる−あきのもちつき |
04069 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜の月のかつらの木の本も浪の枕におきつ舟人
たのむよの−つきのかつらの−このもとも−なみのまくらに−おきつふなひと |
04070 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原影をうけける色なからかへりて月をてらす浪かな
わたのはら−かけをうけける−いろなから−かへりてつきを−てらすなみかな |
04071 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしたに浪の千さとも宿かさす身をうら風と月や入るらん
しはしたに−なみのちさとも−やとかさす−みをうらかせと−つきやいるらむ |
04072 |
未入力 正徹 (xxx)
ふくる夜のうらわをみれはもしほ草しき津に月そ影をやとせる
ふくるよの−うらわをみれは−もしほくさ−しきつにつきそ−かけをやとせる |
04073 |
未入力 正徹 (xxx)
夜にほさす露のやとりは跡もなし浦になるみののへの月影
よにほさす−つゆのやとりは−あともなし−うらになるみの−のへのつきかけ |
04074 |
未入力 正徹 (xxx)
うら人のしほくむ袖にやとりても猶かけはこふ浪の月かな
うらひとの−しほくむそてに−やとりても−なほかけはこふ−なみのつきかな |
04075 |
未入力 正徹 (xxx)
まちこふる人はなけれと大伴の三津のうらわの月をしそ思ふ
まちこふる−ひとはなけれと−おほともの−みつのうらわの−つきをしそおもふ |
04076 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ浪床にうき藻をかたしきて月もぬる夜の浪なあらしそ
おきつなみ−とこにうきもを−かたしきて−つきもぬるよの−なみなあらしそ |
04077 |
未入力 正徹 (xxx)
人による浪の月かは難波江に心あるあまもなとかなからん
ひとによる−なみのつきかは−なにはえに−こころあるあまも−なとかなからむ |
04078 |
未入力 正徹 (xxx)
すまの浦にのこりて月のかほよきや住みこし人の形見なるらん
すまのうらに−のこりてつきの−かほよきや−すみこしひとの−かたみなるらむ |
04079 |
未入力 正徹 (xxx)
浪ち行く月にみてこそ色まされ煙はたてよしほかまのうら
なみちゆく−つきにみてこそ−いろまされ−けふりはたてよ−しほかまのうら |
04080 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜のふり行く秋を身にとめて月に老いたるすまの関守
つゆしもの−ふりゆくあきを−みにとめて−つきにおいたる−すまのせきもり |
04081 |
未入力 正徹 (xxx)
明けやらてむへ心ある天の戸の月に夜ふかき松かうらしま
あけやらて−うへこころある−あまのとの−つきによふかき−まつかうらしま |
04082 |
未入力 正徹 (xxx)
かつきてもほすなよ秋はたはれ島袖かる月のあまのぬれ衣
かつきても−ほすなよあきは−たはれしま−そてかるつきの−あまのぬれきぬ |
04083 |
未入力 正徹 (xxx)
月やとる浪の手玉もゆらのとにまかちしけぬき渡る舟人
つきやとる−なみのてたまも−ゆらのとに−まかちしけぬき−わたるふなひと |
04084 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからきかはや月にうと浜の天つ乙女の秋のしらへを
よもすから−きかはやつきに−うとはまの−あまつをとめの−あきのしらへを |
04085 |
未入力 正徹 (xxx)
月にいててさかなもとめよ玉たれのこかめを中の磯のまとゐに
つきにいてて−さかなもとめよ−たまたれの−こかめをなかの−いそのまとゐに |
04086 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そ猶うきねの袖の湊川よそになかれぬ床の月かけ
あきそなほ−うきねのそての−みなとかは−よそになかれぬ−とこのつきかけ |
04087 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる浪の玉に光をかすゐかた月にたゆむな秋のはまかせ
ちるなみの−たまにひかりを−かすゐかた−つきにたゆむな−あきのはまかせ |
04088 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のうらのしほひのかたのま砂風あかれはふふく雪の月かけ
あきのうらの−しほひのかたの−まさこかせ−あかれはふふく−ゆきのつきかけ |
04089 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふへき出雲八雲をしたふらしひの川上に出つる月かけ
いとふへき−いつもやくもを−したふらし−ひのかはかみに−いつるつきかけ |
04090 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川八十の淵せやわたるらん遠きわたりの長き夜の月
あまのかは−やそのふちせや−わたるらむ−とほきわたりの−なかきよのつき |
04091 |
未入力 正徹 (xxx)
月のよはしつかますけをかり鳴きて千鳥たつなりそかの川浪
つきのよは−しつかますけを−かりなきて−ちとりたつなり−そかのかはなみ |
04092 |
未入力 正徹 (xxx)
駒とめてみれともあかすひのくまやささのくまなき月の川浪
こまとめて−みれともあかす−ひのくまや−ささのくまなき−つきのかはなみ |
04093 |
未入力 正徹 (xxx)
更けにけり瀬のなる声も高島や此川上に月かたふきぬ
ふけにけり−せのなるこゑも−たかしまや−このかはかみに−つきかたふきぬ |
04094 |
未入力 正徹 (xxx)
里はあれて君かあたりのあすか川わたらぬ淵にすめる月かけ
さとはあれて−きみかあたりの−あすかかは−わたらぬふちに−すめるつきかけ |
04095 |
未入力 正徹 (xxx)
浪こゆる汀のますけ水かくれて月かけなひくそかの川かせ
なみこゆる−みきはのますけ−みかくれて−つきかけなひく−そかのかはかせ |
04096 |
未入力 正徹 (xxx)
月をこそみわたにたため鳰鳥の玉藻にあそふ秋の川淀
つきをこそ−みわたにたため−にほとりの−たまもにあそふ−あきのかはよと |
04097 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての世を宇治山の月やしる河の遠なる秋のさと人
なかれての−よをうちやまの−つきやしる−かはのをちなる−あきのさとひと |
04098 |
未入力 正徹 (xxx)
御祓せしみたらし川の月をみて世世をこふるは神やうくらん
みそきせし−みたらしかはの−つきをみて−よよをこふるは−かみやうくらむ |
04099 |
未入力 正徹 (xxx)
竹川のみとりの玉もかたよりになかれて淵にしつむ月かけ
たけかはの−みとりのたまも−かたよりに−なかれてふちに−しつむつきかけ |
04100 |
未入力 正徹 (xxx)
しほこさぬつたの細江を行く水にみちたる月をうかへてそみる
しほこさぬ−つたのほそえを−ゆくみつに−みちたるつきを−うかへてそみる |
04101 |
未入力 正徹 (xxx)
みせはやな松のはつたふ有明もほそ江の橋にたかくのこるを
みせはやな−まつのはつたふ−ありあけも−ほそえのはしに−たかくのこるを |
04102 |
未入力 正徹 (xxx)
里もみな古江のこすけうきぬなはやとりさひたる月の庭かな
さともみな−ふるえのこすけ−うきぬなは−やとりさひたる−つきのにはかな |
04103 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の霜剣やふりて朽ちぬらんさひ江の水にくもる月かけ
あきのしも−つるきやふりて−くちぬらむ−さひえのみつに−くもるつきかけ |
04104 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふかき水草か上の秋の霜結ふか月を古江にそしく
さよふかき−みくさかうへの−あきのしも−むすふかつきを−ふるえにそしく |
04105 |
未入力 正徹 (xxx)
舟とむる松かねこえてさしそくる入江の塩にうかふ月かけ
ふねとむる−まつかねこえて−さしそくる−いりえのしほに−うかふつきかけ |
04106 |
未入力 正徹 (xxx)
あし分くる月の舟かけかち人のわたれはぬるる露の玉えに
あしわくる−つきのふなかけ−かちひとの−わたれはぬるる−つゆのたまえに |
04107 |
未入力 正徹 (xxx)
むは玉のやみなるす鳥夜みえていり江の秋の浪にてる月
むはたまの−やみなるすとり−よるみえて−いりえのあきの−なみにてるつき |
04108 |
未入力 正徹 (xxx)
玉津島江もあさからす思ふとちいさみにゆかむふかきよの月
たまつしま−えもあさからす−おもふとち−いさみにゆかむ−ふかきよのつき |
04109 |
未入力 正徹 (xxx)
み草をはかるもになしてしなか鳥いなさほそ江にやとる月かけ
みくさをは−かるもになして−しなかとり−いなさほそえに−やとるつきかけ |
04110 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月入江の霧に交るもひかりさひたる浪のうへかな
あきのつき−いりえのきりに−ましはるも−ひかりさひたる−なみのうへかな |
04111 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身のあはれこのよにすめる江は木の葉ふりしく水の月かけ
おいかみの−あはれこのよに−すめるえは−このはふりしく−みつのつきかけ |
04112 |
未入力 正徹 (xxx)
白露の玉江の浪も秋かけて芦のいとなくこほる月かな
しらつゆの−たまえのなみも−あきかけて−あしのいとなく−こほるつきかな |
04113 |
未入力 正徹 (xxx)
影うすきさひえの月の有明に霜ふく芦の末の秋かせ
かけうすき−さひえのつきの−ありあけに−しもふくあしの−すゑのあきかせ |
04114 |
未入力 正徹 (xxx)
有明のかけもほそ江の秋ふけて氷にならふあまのすて舟
ありあけの−かけもほそえの−あきふけて−こほりにならふ−あまのすてふね |
04115 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふかきほそ江の月のまゆの霜水のかかみにふりてさむけき
あきふかき−ほそえのつきの−まゆのしも−みつのかかみに−ふりてさむけき |
04116 |
未入力 正徹 (xxx)
おく霜の花もみくりも秋風にみたれてさゆるみしま江の月
おくしもの−はなもみくりも−あきかせに−みたれてさゆる−みしまえのつき |
04117 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにかむれゐし舟はいなさ江の月かけほそき水の秋かせ
いつくにか−むれゐしふねは−いなさえの−つきかけほそき−みつのあきかせ |
04118 |
未入力 正徹 (xxx)
あちむらの立ちゐるすさのいり江なみ音冷しき秋の月かけ
あちむらの−たちゐるすさの−いりえなみ−おとすさましき−あきのつきかけ |
04119 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふけぬ暁月もなかれ江にかたふく芦の霜のしたかせ
あきふけぬ−あかつきつきも−なかれえに−かたふくあしの−しものしたかせ |
04120 |
未入力 正徹 (xxx)
月のこる入江のす鳥よそにたて翅のやみはならへても見し
つきのこる−いりえのすとり−よそにたて−つはさのやみは−ならへてもみし |
04121 |
未入力 正徹 (xxx)
夏かりの沼の菖蒲にのこるねの長き夜ふかくすめる月かな
なつかりの−ぬまのあやめに−のこるねの−なかきよふかく−すめるつきかな |
04122 |
未入力 正徹 (xxx)
春は見し雪けの沢の忘水たえ行く秋もすめる月かな
はるはみし−ゆきけのさはの−わすれみつ−たえゆくあきも−すめるつきかな |
04123 |
未入力 正徹 (xxx)
霧はれぬかたふく月にたつの鳴く其山もとの秋の沢水
きりはれぬ−かたふくつきに−たつのなく−そのやまもとの−あきのさはみつ |
04124 |
未入力 正徹 (xxx)
すましおく心の水をひとつにてあか井をひろみ結ふ月かけ
すましおく−こころのみつを−ひとつにて−あかゐをひろみ−むすふつきかけ |
04125 |
未入力 正徹 (xxx)
をの山のにしになるより行く月の影おちやまぬおとなしの滝
をのやまの−にしになるより−ゆくつきの−かけおちやまぬ−おとなしのたき |
04126 |
未入力 正徹 (xxx)
梢よりおちくる月を結ひとめて紅なかす滝のしら糸
こすゑより−おちくるつきを−むすひとめて−くれなゐなかす−たきのしらいと |
04127 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪に影もうかひて滝の上の御舟こき出つる山のはの月
かはなみに−かけもうかひて−たきのうへの−みふねこきいつる−やまのはのつき |
04128 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にちる月はいさこの山よりもくたけておつる布引の滝
なみにちる−つきはいさこの−やまよりも−くたけておつる−ぬのひきのたき |
04129 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる浪の花枝をらすとも滝なかれとは月におもはし
いしはしる−なみのはなえた−をらすとも−たきなかれとは−つきにおもはし |
04130 |
未入力 正徹 (xxx)
川上の滝の上野の草にさへ落ちたる月の露のしら玉
かはかみの−たきのうへのの−くさにさへ−おちたるつきの−つゆのしらたま |
04131 |
未入力 正徹 (xxx)
月かけにさすともみゆる塩ならぬにほの入江の秋のささ浪
つきかけに−さすともみゆる−しほならぬ−にほのいりえの−あきのささなみ |
04132 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海やもちしほならぬ浪の上に今夜みちたる月のかけかな
にほのうみや−もちしほならぬ−なみのうへに−こよひみちたる−つきのかけかな |
04133 |
未入力 正徹 (xxx)
漕きわたる舟こそ見えねにほのうみの月にま近き興の島山
こきわたる−ふねこそみえね−にほのうみの−つきにまちかき−おきのしまやま |
04134 |
未入力 正徹 (xxx)
空にさへ秋のもなかの遠けれは月こそ見えね塩ならぬうみ
そらにさへ−あきのもなかの−とほけれは−つきこそみえね−しほならぬうみ |
04135 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海や夜半のもしほの煙をもしほりなそへそ袖の秋風
にほのうみや−よはのもしほの−けふりをも−しほりなそへそ−そてのあきかせ |
04136 |
未入力 正徹 (xxx)
高島やかちののを花面かけにたつや興行く浪の上の月
たかしまや−かちののをはな−おもかけに−たつやおきゆく−なみのうへのつき |
04137 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海の霧吹きたつる程はかり月に見えたる秋のしほかせ
にほのうみの−きりふきたつる−ほとはかり−つきにみえたる−あきのしほかせ |
04138 |
未入力 正徹 (xxx)
庵しめてみしさ三とせの秋過きぬ哀淡津の浪の上の月
いほしめて−みしはみとせの−あきすきぬ−あはれあはつの−なみのうへのつき |
04139 |
未入力 正徹 (xxx)
すはの海や影に氷を先しきてひとりそわたる秋の夜の月
すはのうみや−かけにこほりを−まつしきて−ひとりそわたる−あきのよのつき |
04140 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上に秋は氷そわたり行く月影さゆるすはのみつうみ
なみのうへに−あきはこほりそ−わたりゆく−つきかけさゆる−すはのみつうみ |
04141 |
未入力 正徹 (xxx)
あま衣うら風ふけは浪に花さくやこのはま月は秋にて
あまころも−うらかせふけは−なみにはな−さくやこのはま−つきはあきにて |
04142 |
未入力 正徹 (xxx)
島めくる浪まの月になかき夜のあけのそほ舟別れてそ行く
しまめくる−なみまのつきに−なかきよの−あけのそほふね−わかれてそゆく |
04143 |
未入力 正徹 (xxx)
西追風にほはあけまくもおしてるや難波の興の月に行く舟
おひかせに−ほはあけまくも−おしてるや−なにはのおきの−つきにゆくふね |
04144 |
未入力 正徹 (xxx)
いつるまもさはらされとや浪の上の月にほおろす興つ舟人
いつるまも−さはらされとや−なみのうへの−つきにほおろす−おきつふなひと |
04145 |
未入力 正徹 (xxx)
影おつる月も浪ちやいそくらんまかちしけぬく興つ舟人
かけおつる−つきもなみちや−いそくらむ−まかちしけぬく−おきつふなひと |
04146 |
未入力 正徹 (xxx)
跡になし枕になしてみる月に舟まはり行く浪ちをそしる
あとになし−まくらになして−みるつきに−ふねまはりゆく−なみちをそしる |
04147 |
未入力 正徹 (xxx)
窓の月にいとまありともむかはめやおのれにくらき文字の関守
まとのつきに−いとまありとも−むかはめや−おのれにくらき−もしのせきもり |
04148 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂の山路の月はのこるともいさしら川の関の明ほの
あふさかの−やまちのつきは−のこるとも−いさしらかはの−せきのあけほの |
04149 |
未入力 正徹 (xxx)
かけをしき月にあら垣あらくたに送りなおきそ川口の関
かけをしき−つきにあらかき−あらくたに−おくりなおきそ−かはくちのせき |
04150 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしたに跡とそいひし秋の月いつかはすまの関屋守りけん
むかしたに−あととそいひし−あきのつき−いつかはすまの−せきやもりけむ |
04151 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから秋はくき田の関守や稲葉の月におきあかすらん
おのつから−あきはくきたの−せきもりや−いなはのつきに−おきあかすらむ |
04152 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるき世も月やもるらむ旅人の板とりあらす不破の関やは
ふるきよも−つきやもるらむ−たひひとの−いたとりあらす−ふはのせきやは |
04153 |
未入力 正徹 (xxx)
月のもる軒ふきあらせ芦葺のすまの関やの八重の塩風
つきのもる−のきふきあらせ−あしふきの−すまのせきやの−やへのしほかせ |
04154 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはなる不破の関屋の板ひさしあれしも今は昔なりけり
あらはなる−ふはのせきやの−いたひさし−あれしもいまは−むかしなりけり |
04155 |
未入力 正徹 (xxx)
おく露にあたら光ややとすらむ人なきのへの草の上の月
おくつゆに−あたらひかりや−やとすらむ−ひとなきのへの−くさのうへのつき |
04156 |
未入力 正徹 (xxx)
月見にと遠さと人のくるもなしうつろひかはれをのの秋萩
つきみにと−とほさとひとの−くるもなし−うつろひかはれ−をののあきはき |
04157 |
未入力 正徹 (xxx)
月も又枕とやせむ一夜せし野へのすみれの秋のかれ葉を
つきもまた−まくらとやせむ−ひとよせし−のへのすみれの−あきのかれはを |
04158 |
未入力 正徹 (xxx)
月も又雲になのりそ行く人もかち野はおそし露の下道
つきもまた−くもになのりそ−ゆくひとも−かちのはおそし−つゆのしたみち |
04159 |
未入力 正徹 (xxx)
高島やかち野の月に分行けは秋風さむしふけぬこの夜は
たかしまや−かちののつきに−わけゆけは−あきかせさむし−ふけぬこのよは |
04160 |
未入力 正徹 (xxx)
よるはぬるいとまなきまてくるす野にま草かるをも月やみるらん
よるはぬる−いとまなきまて−くるすのに−まくさかるをも−つきやみるらむ |
04161 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原遠近人の玉たすきみちをあまたに送る月かけ
くさのはら−をちこちひとの−たまたすき−みちをあまたに−おくるつきかけ |
04162 |
未入力 正徹 (xxx)
露ふかし明けなは分くる人そあらむ月に夜わたれすすの下風
つゆふかし−あけなはわくる−ひとそあらむ−つきによわたれ−すすのしたかせ |
04163 |
未入力 正徹 (xxx)
あさち原たか世に分けし道芝に忘れす月の跡したふらん
あさちはら−たかよにわけし−みちしはに−わすれすつきの−あとしたふらむ |
04164 |
未入力 正徹 (xxx)
友なふと思ふはしらす末野行く遠かた人に月そならへる
ともなふと−おもふはしらす−すゑのゆく−をちかたひとに−つきそならへる |
04165 |
未入力 正徹 (xxx)
声たゆる鹿や恋しきともしせし宮きか原の萩の上の月
こゑたゆる−しかやこひしき−ともしせし−みやきかはらの−はきのうへのつき |
04166 |
未入力 正徹 (xxx)
夕露も月に色そふまくす原うらみぬよそにかへる雲かな
ゆふつゆも−つきにいろそふ−まくすはら−うらみぬよそに−かへるくもかな |
04167 |
未入力 正徹 (xxx)
あかしかたうら風くもる高しほもおよはぬ岡にすめる月かけ
あかしかた−うらかせくもる−たかしほも−およはぬをかに−すめるつきかけ |
04168 |
未入力 正徹 (xxx)
月まてと雲もよこほるかひかねに光さきたつ秋の白雪
つきまてと−くももよこほる−かひかねに−ひかりさきたつ−あきのしらゆき |
04169 |
未入力 正徹 (xxx)
ならへみむ秋は千草の露にさく花の都と月の宮古と
ならへみむ−あきはちくさの−つゆにさく−はなのみやこと−つきのみやこと |
04170 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風も光そ匂ふ久かたの月の桂のはなの宮古は
あきかせも−ひかりそにほふ−ひさかたの−つきのかつらの−はなのみやこは |
04171 |
未入力 正徹 (xxx)
影さへやみし世の人を恋ひかねてあさちにくもるふるさとの月
かけさへや−みしよのひとを−こひかねて−あさちにくもる−ふるさとのつき |
04172 |
未入力 正徹 (xxx)
昔よりいく世の人かあかすしてなかめすてけん古郷の月
むかしより−いくよのひとか−あかすして−なかめすてけむ−ふるさとのつき |
04173 |
未入力 正徹 (xxx)
すみはてぬ古郷入も世世をへてうつれはかはる月のむら雲
すみはてぬ−ふるさとひとも−よよをへて−うつれはかはる−つきのむらくも |
04174 |
未入力 正徹 (xxx)
うつろひし代代の都の秋の月いく古郷にすみかはるらん
うつろひし−よよのみやこの−あきのつき−いくふるさとに−すみかはるらむ |
04175 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ人もさてそなくさむ月の中の都へたてぬ秋の古郷
すむひとも−さてそなくさむ−つきのうちの−みやこへたてぬ−あきのふるさと |
04176 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜たれふしみの里のあれまくらすか原さむき露の月かけ
こよひたれ−ふしみのさとの−あれまくら−すかはらさむき−つゆのつきかけ |
04177 |
未入力 正徹 (xxx)
橋ひめの袖とふ月の露霜をよそにはらはぬ宇治の里人
はしひめの−そてとふつきの−つゆしもを−よそにはらはぬ−うちのさとひと |
04178 |
未入力 正徹 (xxx)
あすか風ぬるや川への音深けて君かあたりは月そかたふく
あすかかせ−ぬるやかはへの−おとふけて−きみかあたりは−つきそかたふく |
04179 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上にしくれぬ影のくもるかなひはらを渡る山のはの月
そてのうへに−しくれぬかけの−くもるかな−ひはらをわたる−やまのはのつき |
04180 |
未入力 正徹 (xxx)
いなり山ふもとの庵のうき秋も半は杉の木のまもる月
いなりやま−ふもとのいほの−うきあきも−なかははすきの−このまもるつき |
04181 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれきて嶺にそあかす松風も人なき月の宿をあらすな
うかれきて−みねにそあかす−まつかせも−ひとなきつきの−やとをあらすな |
04182 |
未入力 正徹 (xxx)
影も猶世にななひきそ身をかくす山立ちいつる秋のよの月
かけもなほ−よにななひきそ−みをかくす−やまたちいつる−あきのよのつき |
04183 |
未入力 正徹 (xxx)
木のまもる深山の露の苔むしろやとる夜まれに月をみるかな
このまもる−みやまのつゆの−こけむしろ−やとるよまれに−つきをみるかな |
04184 |
未入力 正徹 (xxx)
はるる夜のなきにそへてやかこつらん槙のは山の月のうす霧
はるるよの−なきにそへてや−かこつらむ−まきのはやまの−つきのうすきり |
04185 |
未入力 正徹 (xxx)
入りにきとみる里人そおほからむ嶺の柴やに月のかかれる
いりにきと−みるさとひとそ−おほからむ−みねのしはやに−つきのかかれる |
04186 |
未入力 正徹 (xxx)
まろ竹の中行く水の音聞くもふけてさひしき月の山里
まろたけの−なかゆくみつの−おときくも−ふけてさひしき−つきのやまさと |
04187 |
未入力 正徹 (xxx)
涙こそなほもかはらめ山さとは世のうきよりの月のあはれに
なみたこそ−なほもかはらめ−やまさとは−よのうきよりの−つきのあはれに |
04188 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とふ月にむかしを尋ぬともこたへしよしや庭の松かせ
まくらとふ−つきにむかしを−たつぬとも−こたへしよしや−にはのまつかせ |
04189 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月しののは草のかりの戸にしはし出ていれわれすますとも
あきのつき−しののはくさの−かりのとに−しはしいていれ−われすますとも |
04190 |
未入力 正徹 (xxx)
月そとふ尾花かりふく古宮を思ふね覚の秋の枕に
つきそとふ−をはなかりふく−ふるみやを−おもふねさめの−あきのまくらに |
04191 |
未入力 正徹 (xxx)
形見ともたれかは見まし今はとてあらさらん世の古やもる月
かたみとも−たれかはみまし−いまはとて−あらさらむよの−ふるやもるつき |
04192 |
未入力 正徹 (xxx)
宿は猶燕ならひしうつはりにあれてそ月のひとりかかれる
やとはなほ−つはめならひし−うつはりに−あれてそつきの−ひとりかかれる |
04193 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれすも軒のしのふにやつれきて昔をとへる月の影かな
わすれすも−のきのしのふに−やつれきて−むかしをとへる−つきのかけかな |
04194 |
未入力 正徹 (xxx)
心をもおかてや床のさむしろにわかねぬよひの月やとるらん
こころをも−おかてやとこの−さむしろに−わかねぬよひの−つきやとるらむ |
04195 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人の影まちゐてはかへりねむ閨に夜をへてかかる月かな
まつひとの−かけまちゐては−かへりねむ−ねやによをへて−かかるつきかな |
04196 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のかりほの苫にふく稲のほの上渡る軒の月かけ
あきのたの−かりほのとまに−ふくいねの−ほのうへわたる−のきのつきかけ |
04197 |
未入力 正徹 (xxx)
山田もるすこかかりほはあれにけり竹の戸ほそのおくの月影
やまたもる−すこかかりほは−あれにけり−たけのとほその−おくのつきかけ |
04198 |
未入力 正徹 (xxx)
いなはもる芦のまろやの夜もすからかたもさためぬ月をみるかな
いなはもる−あしのまろやの−よもすから−かたもさためぬ−つきをみるかな |
04199 |
未入力 正徹 (xxx)
月のさす竹のあみ戸のかり庵をいなはそたたく露の秋風
つきのさす−たけのあみとの−かりいほを−いなはそたたく−つゆのあきかせ |
04200 |
未入力 正徹 (xxx)
かりはてし田中のわらやふきかへて夜めにもしるき月の遠かた
かりはてし−たなかのわらや−ふきかへて−よめにもしるき−つきのをちかた |
04201 |
未入力 正徹 (xxx)
これそ此つもりのうらの浪のしわ月をめてこし老にはあらねと
これそこの−つもりのうらの−なみのしわ−つきをめてこし−おいにはあらねと |
04202 |
未入力 正徹 (xxx)
古江もる水にも月はわれ舟のたくひつれなき有明のかけ
ふるえもる−みつにもつきは−われふねの−たくひつれなき−ありあけのかけ |
04203 |
未入力 正徹 (xxx)
末遠き野寺の月に鐘の声尋ねは草の露のふる道
すゑとほき−のてらのつきに−かねのこゑ−たつねはくさの−つゆのふるみち |
04204 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山みあかし文もあきらかに今夜や見えん秋のよの月
はつせやま−みあかしふみも−あきらかに−こよひやみえむ−あきのよのつき |
04205 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきやにしなる月にのこるなり遠山鳥のをはつせのかね
かつらきや−にしなるつきに−のこるなり−とほやまとりの−をはつせのかね |
04206 |
未入力 正徹 (xxx)
すかはらや伏見にあくる鐘とほきをのへの寺に月そかかれる
すかはらや−ふしみにあくる−かねとほき−をのへのてらに−つきそかかれる |
04207 |
未入力 正徹 (xxx)
つとむらし山松風もふく貝のこゑ冷しき月に起きゐて
つとむらし−やままつかせも−ふくかひの−こゑすさましき−つきにおきゐて |
04208 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山ふもとの川に御幸してかへる坂路にいつる望月
やはたやま−ふもとのかはに−みゆきして−かへるさかちに−いつるもちつき |
04209 |
未入力 正徹 (xxx)
水底もみたらし川の瀬になひく玉も光をそふる月かけ
みなそこも−みたらしかはの−せになひく−たまもひかりを−そふるつきかけ |
04210 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふ庭のよもきか杣人の袖とや我を月もとふらん
つゆはらふ−にはのよもきか−そまひとの−そてとやわれを−つきもとふらむ |
04211 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにける夢路をしたふ庭にいてて立ちやすらへは有明の月
ふりにける−ゆめちをしたふ−にはにいてて−たちやすらへは−ありあけのつき |
04212 |
未入力 正徹 (xxx)
うつり行く籬の菊の霜の上下葉の露に月そのこれる
うつりゆく−まかきのきくの−しものうへ−したはのつゆに−つきそのこれる |
04213 |
未入力 正徹 (xxx)
白菊のはなれやすきを此世とやまかきの露に月そわかるる
しらきくの−はなれやすきを−このよとや−まかきのつゆに−つきそわかるる |
04214 |
未入力 正徹 (xxx)
谷ふかき苔の雫におちそくる松のは渡る嶺の月かけ
たにふかき−こけのしつくに−おちそくる−まつのはわたる−みねのつきかけ |
04215 |
未入力 正徹 (xxx)
やたののにあさちかたしき月そぬるこしの里人宿もかさすや
やたののに−あさちかたしき−つきそぬる−こしのさとひと−やともかさすや |
04216 |
未入力 正徹 (xxx)
哀をも見すくすらめや住む人の秋の心のあさちふの月
あはれをも−みすくすらめや−すむひとの−あきのこころの−あさちふのつき |
04217 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月空に光をしきたへの袖まてあまる夜はの初霜
あきのつき−そらにひかりを−しきたへの−そてまてあまる−よはのはつしも |
04218 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜風もえそ山姫のさむしろに月の影しく秋のはつ霜
さよかせも−えそやまひめの−さむしろに−つきのかけしく−あきのはつしも |
04219 |
未入力 正徹 (xxx)
神かきにちかき林の松の葉の塵にましはる月もさやけし
かみかきに−ちかきはやしの−まつのはの−ちりにましはる−つきもさやけし |
04220 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから空行く月も松のはをわたりつくさぬ木の本の庵
よもすから−そらゆくつきも−まつのはを−わたりつくさぬ−このもとのいほ |
04221 |
未入力 正徹 (xxx)
をのへにはかくる浪なき松かねに影あらはるるいさよひの月
をのへには−かくるなみなき−まつかねに−かけあらはるる−いさよひのつき |
04222 |
未入力 正徹 (xxx)
いつるまのをのへにたてる松の陰ひろく麓におほふ月かな
いつるまの−をのへにたてる−まつのかけ−ひろくふもとに−おほふつきかな |
04223 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりけるか竹のはしたる秋の霜月おもからぬかけやしくらん
ふりけるか−たけのはしたる−あきのしも−つきおもからぬ−かけやしくらむ |
04224 |
未入力 正徹 (xxx)
程もなくこえて葉分もいとはれす月にかたふく竹の一むら
ほともなく−こえてはわけも−いとはれす−つきにかたふく−たけのひとむら |
04225 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ人よ雪のうちなる竹の子をえしは昔の秋の夜の月
とふひとよ−ゆきのうちなる−たけのこを−えしはむかしの−あきのよのつき |
04226 |
未入力 正徹 (xxx)
松かけもあくるふしみの岡のへに竹のよなかく月そのこれる
まつかけも−あくるふしみの−をかのへに−たけのよなかく−つきそのこれる |
04227 |
未入力 正徹 (xxx)
これそ此老その杜は世の人の月をめてこし名にこそ有りけれ
これそこの−おいそのもりは−よのひとの−つきをめてこし−なにこそありけれ |
04228 |
未入力 正徹 (xxx)
露はみなききの林の秋風に月をやとしてすくるうき雲
つゆはみな−ききのはやしの−あきかせに−つきをやとして−すくるうきくも |
04229 |
未入力 正徹 (xxx)
秋さむしかた山林木の本のをささか原の月のむらきえ
あきさむし−かたやまはやし−このもとの−をささかはらの−つきのむらきえ |
04230 |
未入力 正徹 (xxx)
月やしる此天地の玉くしけあけぬ鏡のかけまさるをは
つきやしる−このあめつちの−たまくしけ−あけぬかかみの−かけまさるをは |
04231 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をへてそむかはまほしきくまなくて老のかけみぬ月の鏡は
よをへてそ−むかはまほしき−くまなくて−おいのかけみぬ−つきのかかみは |
04232 |
未入力 正徹 (xxx)
手にとらは月をあけてやたとへましおき忘れにし秋の扇に
てにとらは−つきをあけてや−たとへまし−おきわすれにし−あきのあふきに |
04233 |
未入力 正徹 (xxx)
やとせ袖ふりぬる人の面かけも見しよのままの月の涙を
やとせそて−ふりぬるひとの−おもかけも−みしよのままの−つきのなみたを |
04234 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへのかたみとみつつなき人の数こそしらね月はかはらす
いにしへの−かたみとみつつ−なきひとの−かすこそしらね−つきはかはらす |
04235 |
未入力 正徹 (xxx)
はれくもる時こそ有りけれ人ことの心や月のすかたなるらん
はれくもる−ときこそありけれ−ひとことの−こころやつきの−すかたなるらむ |
04236 |
未入力 正徹 (xxx)
すはの海や月に氷を敷きなから秋とて人も駒もわたらす
すはのうみや−つきにこほりを−しきなから−あきとてひとも−こまもわたらす |
04237 |
未入力 正徹 (xxx)
うきねとふ月に吹きこす塩風も夢の関もるむしあけの松
うきねとふ−つきにふきこす−しほかせも−ゆめのせきもる−むしあけのまつ |
04238 |
未入力 正徹 (xxx)
篷おほひいかりおろしつはし舟にのり別れてや月にこかまし
とまおほひ−いかりおろしつ−はしふねに−のりわかれてや−つきにこかまし |
04239 |
未入力 正徹 (xxx)
しほ月も松のしらへもからことのとまりし浪に月そ袖こす
しほつきも−まつのしらへも−からことの−とまりしなみに−つきそそてこす |
04240 |
未入力 正徹 (xxx)
袖に見ん夢をはかなみ待つとても程は雲井のおなし月かけ
そてにみむ−ゆめをはかなみ−まつとても−ほとはくもゐの−おなしつきかけ |
04241 |
未入力 正徹 (xxx)
なるる夜夢路ゆるさぬかり枕月の都の下ふしもうし
なるるよる−ゆめちゆるさぬ−かりまくら−つきのみやこの−したふしもうし |
04242 |
未入力 正徹 (xxx)
明石かた月に里人立出てて秋は浜風ひかぬ夜もなし
あかしかた−つきにさとひと−たちいてて−あきははまかせ−ひかぬよもなし |
04243 |
未入力 正徹 (xxx)
かきりなき秋もいく世の影ならんあふくも高き広沢の月
かきりなき−あきもいくよの−かけならむ−あふくもたかき−ひろさはのつき |
04244 |
未入力 正徹 (xxx)
天つたふ月も道行ふりとてや草木の露にやとりすつらん
あまつたふ−つきもみちゆき−ふりとてや−くさきのつゆに−やとりすつらむ |
04245 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山おなしふもとの川浪に御幸待ちとる秋のもち月
やはたやま−おなしふもとの−かはなみに−みゆきまちとる−あきのもちつき |
04246 |
未入力 正徹 (xxx)
月ともに出ててそなひく紫の糸にたわつく荻の初しほ
つきともに−いててそなひく−むらさきの−いとにたわつく−をきのはつしほ |
04247 |
未入力 正徹 (xxx)
下荻の風のやとりをとひくれは露も契もあり明の月
したをきの−かせのやとりを−とひくれは−つゆもちきりも−ありあけのつき |
04248 |
未入力 正徹 (xxx)
月のもる荻の末葉の影なから袖にみたるる床のしら露
つきのもる−をきのすゑはの−かけなから−そてにみたるる−とこのしらつゆ |
04249 |
未入力 正徹 (xxx)
荻はらや月に天とふ雁鳴きて秋風さむしほの上の霜
をきはらや−つきにあまとふ−かりなきて−あきかせさむし−ほのうへのしも |
04250 |
未入力 正徹 (xxx)
くらからぬ軒はとみれは荻のはにかくれてほそき月の夕暮
くらからぬ−のきはとみれは−をきのはに−かくれてほそき−つきのゆふくれ |
04251 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく庭におきふしぬかつくやてる月あふく宿の荻はら
あらしふく−にはにおきふし−ぬかつくや−てるつきあふく−やとのをきはら |
04252 |
未入力 正徹 (xxx)
薄ちる秋風ふけは宿もなし袖をたつぬる有明の月
すすきちる−あきかせふけは−やともなし−そてをたつぬる−ありあけのつき |
04253 |
未入力 正徹 (xxx)
霧こめしこすの大野の女良花月のはしゐになして晴れぬる
きりこめし−こすのおほのの−をみなへし−つきのはしゐに−なしてはれぬる |
04254 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れすはたれか昔のかたみともはほその月の影をみさらん
わすれすは−たれかむかしの−かたみとも−はほそのつきの−かけをみさらむ |
04255 |
未入力 正徹 (xxx)
月なから三世の覚の母そはらたてりとしれは色そまされる
つきなから−みよのさとりの−ははそはら−たてりとしれは−いろそまされる |
04256 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷の月にかけおくさほ山の柞の錦くらき夜もなし
ふるさとの−つきにかけおく−さほやまの−ははそのにしき−くらきよもなし |
04257 |
未入力 正徹 (xxx)
月すめはなにを吹くとも白雲の残るかたなきよもの秋風
つきすめは−なにをふくとも−しらくもの−のこるかたなき−よものあきかせ |
04258 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そかしいさしら雲か行く月の氷にましる雪のむらきえ
あきそかし−いさしらくもか−ゆくつきの−こほりにましる−ゆきのむらきえ |
04259 |
未入力 正徹 (xxx)
うす霧も浪よる小花吹きませて月はれくもる野への秋かせ
うすきりも−なみよるをはな−ふきませて−つきはれくもる−のへのあきかせ |
04260 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上にあかつき出つる星崎やむかひの磯に月かたふきぬ
なみのうへに−あかつきいつる−ほしさきや−むかひのいそに−つきかたふきぬ |
04261 |
未入力 正徹 (xxx)
なれきつるわか袖なくは宿の月やとせよ庭の露のをすすき
なれきつる−わかそてなくは−やとのつき−やとせよにはの−つゆのをすすき |
04262 |
未入力 正徹 (xxx)
塵そよく嵐や露の玉ははきはらへと庭の月は残りて
ちりそよく−あらしやつゆの−たまははき−はらへとにはの−つきはのこりて |
04263 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風もはらはす月も宿からぬ思ひの露は心にそおく
あきかせも−はらはすつきも−やとからぬ−おもひのつゆは−こころにそおく |
04264 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの月の桂やおもるらんひかりにおつる露のしら玉
ひさかたの−つきのかつらや−おもるらむ−ひかりにおつる−つゆのしらたま |
04265 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の露やかてきえなは尋ねても草葉にやとる月やなからん
あきのつゆ−やかてきえなは−たつねても−くさはにやとる−つきやなからむ |
04266 |
未入力 正徹 (xxx)
ま弓ちるやたのの浅茅露はあれと月に秋なき嶺の初雪
まゆみちる−やたののあさち−つゆはあれと−つきにあきなき−みねのはつゆき |
04267 |
未入力 正徹 (xxx)
秋萩の露の下葉もかはらぬをひとりある月の影そうつろふ
あきはきの−つゆのしたはも−かはらぬを−ひとりあるつきの−かけそうつろふ |
04268 |
未入力 正徹 (xxx)
秋草の袂にかかるあさかほの花田の帯そ月にとけ行く
あきくさの−たもとにかかる−あさかほの−はなたのおひそ−つきにとけゆく |
04269 |
未入力 正徹 (xxx)
露なから光はおつる月草の色に染めなす天つ空かな
つゆなから−ひかりはおつる−つきくさの−いろにそめなす−あまつそらかな |
04270 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの月のかつらの下草も宿からたかき庭のよもきふ
ひさかたの−つきのかつらの−したくさも−やとからたかき−にはのよもきふ |
04271 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの紅葉の木のまもる月の光をそむる秋のむら雨
やまもとの−もみちのこのま−もるつきの−ひかりをそむる−あきのむらさめ |
04272 |
未入力 正徹 (xxx)
空にたつふしの煙の浪の上に光をくたす秋のよの月
そらにたつ−ふしのけふりの−なみのうへに−ひかりをくたす−あきのよのつき |
04273 |
未入力 正徹 (xxx)
にきはへる民の家ゐを空にみて煙の上に月やすむらん
にきはへる−たみのいへゐを−そらにみて−けふりのうへに−つきやすむらむ |
04274 |
未入力 正徹 (xxx)
月みんとおのか出ゐにしくこもの長きよへぬるしつのをた巻
つきみむと−おのかいてゐに−しくこもの−なかきよへぬる−しつのをたまき |
04275 |
未入力 正徹 (xxx)
芦そよく月に浜風さひしさもまさこの上のあまの捨舟
あしそよく−つきにはまかせ−さひしさも−まさこのうへの−あまのすてふね |
04276 |
未入力 正徹 (xxx)
浦ち行く月をのせしは昔にてわれて洲にゐる浜の捨舟
うらちゆく−つきをのせしは−むかしにて−われてすにゐる−はまのすてふね |
04277 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかにも色やみさらん天とふも此世をかりの涙くもらは
さやかにも−いろやみさらむ−あまとふも−このよをかりの−なみたくもらは |
04278 |
未入力 正徹 (xxx)
うす墨の翅の色をくもりなき月にそへたる雁の一つら
うすすみの−つはさのいろを−くもりなき−つきにそへたる−かりのひとつら |
04279 |
未入力 正徹 (xxx)
荻の葉もめつらしけなき秋風の月の南に初雁の声
をきのはも−めつらしけなき−あきかせの−つきのみなみに−はつかりのこゑ |
04280 |
未入力 正徹 (xxx)
みこしちの雲の浪分けしをれきて月にやさらす雁の羽衣
みこしちの−くものなみわけ−しをれきて−つきにやさらす−かりのはころも |
04281 |
未入力 正徹 (xxx)
月の行く空にを舟を漕きつれて雲の浪ちに雁ほきにけり
つきのゆく−そらにをふねを−こきつれて−くものなみちに−かりほきにけり |
04282 |
未入力 正徹 (xxx)
過きて行く初かりかねをまつらめや月の南のとほつさと人
すきてゆく−はつかりかねを−まつらめや−つきのみなみの−とほつさとひと |
04283 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の雁まつよの月のまへわたりうたて雲路に声はかりして
あきのかり−まつよのつきの−まへわたり−うたてくもちに−こゑはかりして |
04284 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月の光をなににかくすらん数さへ見えし初雁のこゑ
ゆくつきの−ひかりをなにに−かくすらむ−かすさへみえし−はつかりのこゑ |
04285 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから小鷹かり野の跡の月ふせし鶉の床にわかれて
おのつから−こたかかりのの−あとのつき−ふせしうつらの−とこにわかれて |
04286 |
未入力 正徹 (xxx)
月みてもすみかたき世のうきかすを鴫の百羽にかきそそへぬる
つきみても−すみかたきよの−うきかすを−しきのももはに−かきそそへぬる |
04287 |
未入力 正徹 (xxx)
声すなりたてるやいつこ暁の鴫のは山は月そのこれる
こゑすなり−たてるやいつこ−あかつきの−しきのはやまは−つきそのこれる |
04288 |
未入力 正徹 (xxx)
うき名のみたつそ鳴くなるよしさらは月とは契れ雲の通路
うきなのみ−たつそなくなる−よしさらは−つきとはちきれ−くものかよひち |
04289 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふともあはれ霜夜の月まては恨たにせし松むしの声
おもふとも−あはれしもよの−つきまては−うらみたにせし−まつむしのこゑ |
04290 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の夜はおこなふ人のふる声も野寺の月にすす虫のなく
あきのよは−おこなふひとの−ふるこゑも−のてらのつきに−すすむしのなく |
04291 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上枕の下にきりきりす庭は霜夜の色やさむけき
そてのうへ−まくらのしたに−きりきりす−にははしもよの−いろやさむけき |
04292 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふくまくすか影もかくれなき月に恨みて鹿や鳴くらん
あらしふく−まくすかかけも−かくれなき−つきにうらみて−しかやなくらむ |
04293 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺近き月の桂の下風に上毛にほはし鹿そ鳴くなる
みねちかき−つきのかつらの−したかせに−うはけにほはし−しかそなくなる |
04294 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかのわか身ひとつはうき秋に月やあらぬと妻やこふらん
さをしかの−わかみひとつは−うきあきに−つきやあらぬと−つまやこふらむ |
04295 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの有明の月に妻まつもわかつれなさにかへる山のは
さをしかの−ありあけのつきに−つままつも−わかつれなさに−かへるやまのは |
04296 |
未入力 正徹 (xxx)
をしか入るは山の月に角さはる声もすさましま柴椎柴
をしかいる−はやまのつきに−つのさはる−こゑもすさまし−ましはしひしは |
04297 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしはさ山か月に鹿そ鳴く妻なき草の床のあらしに
ちきりしは−さやまかつきに−しかそなく−つまなきくさの−とこのあらしに |
04298 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺こゆる影にむかひて鹿そなく月の都に妻やこふらん
みねこゆる−かけにむかひて−しかそなく−つきのみやこに−つまやこふらむ |
04299 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜たにこと葉の玉をみかかすは光そへたる色やうらみん
こよひたに−ことはのたまを−みかかすは−ひかりそへたる−いろやうらみむ |
04300 |
未入力 正徹 (xxx)
いそのかみふるき枕もしらぬ世の秋をとへとや月のこるらん
いそのかみ−ふるきまくらも−しらぬよの−あきをとへとや−つきのこるらむ |
04301 |
未入力 正徹 (xxx)
影きよき河辺をちかみぬるかうちにみるさへ夢のうき橋の月
かけきよき−かはへをちかみ−ぬるかうちに−みるさへゆめの−うきはしのつき |
04302 |
未入力 正徹 (xxx)
ふくる夜の空に聞えて天つたふ月よりたかきかねの声かな
ふくるよの−そらにきこえて−あまつたふ−つきよりたかき−かねのこゑかな |
04303 |
未入力 正徹 (xxx)
影そなき月のなのみはくらからす心にすめる夜半の雨かな
かけそなき−つきのなのみは−くらからす−こころにすめる−よはのあめかな |
04304 |
未入力 正徹 (xxx)
椎のはを床に打ちしく宿もなき旅にしあれは月をみるかな
しひのはを−とこにうちしく−やともなき−たひにしあれは−つきをみるかな |
04305 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜更けぬ身にさむからし玉ほこに行く人おくる月の秋風
さよふけぬ−みにさむからし−たまほこに−ゆくひとおくる−つきのあきかせ |
04306 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風のめにみす遠き海山も月にさやけき秋のおもかけ
ふくかせの−めにみすとほき−うみやまも−つきにさやけき−あきのおもかけ |
04307 |
未入力 正徹 (xxx)
枝わけし松をはなれてをのへこす風の上なる月そさやけき
えたわけし−まつをはなれて−をのへこす−かせのうへなる−つきそさやけき |
04308 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風のこととふ月の都鳥ありともきかぬ天の川原に
あきかせの−こととふつきの−みやことり−ありともきかぬ−あまのかはらに |
04309 |
未入力 正徹 (xxx)
夜半の嵐しほるま袖の秋の霜ふりさけみれは月そかたふく
よはのあらし−しほるまそての−あきのしも−ふりさけみれは−つきそかたふく |
04310 |
未入力 正徹 (xxx)
空きよき風の光を秋そへて長き夜わたる月そさやけき
そらきよき−かせのひかりを−あきそへて−なかきよわたる−つきそさやけき |
04311 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜世にひろくそおほふ名にたかき月より出つる風の光も
こよひよに−ひろくそおほふ−なにたかき−つきよりいつる−かせのひかりも |
04312 |
未入力 正徹 (xxx)
いく秋の月に契らんたちよるも風をたよりのわかのうら浪
いくあきの−つきにちきらむ−たちよるも−かせをたよりの−わかのうらなみ |
04313 |
未入力 正徹 (xxx)
はらひあへぬ露を袂に吹きこめて月まてとほるさ夜の秋風
はらひあへぬ−つゆをたもとに−ふきこめて−つきまてとほる−さよのあきかせ |
04314 |
未入力 正徹 (xxx)
しほれたた月のかつらの木の間より光吹きいたす空の秋かせ
しほれたた−つきのかつらの−このまより−ひかりふきいたす−そらのあきかせ |
04315 |
未入力 正徹 (xxx)
花や開く袖こそにほへ月の中の桂を出つる秋のさ夜風
はなやさく−そてこそにほへ−つきのうちの−かつらをいつる−あきのさよかせ |
04316 |
未入力 正徹 (xxx)
山めくる時雨のこゑをもちなから月をそみかく夜はの松風
やまめくる−しくれのこゑを−もちなから−つきをそみかく−よはのまつかせ |
04317 |
未入力 正徹 (xxx)
月やとる千いろの竹の露のまに風もいく世の秋をおくらし
つきやとる−ちいろのたけの−つゆのまに−かせもいくよの−あきをおくらし |
04318 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬ心に月もつたひきぬ松の嵐の竹をうつ夜は
いろかへぬ−こころにつきも−つたひきぬ−まつのあらしの−たけをうつよは |
04319 |
未入力 正徹 (xxx)
初霜の花色衣こよひたれうつろふ野への月にうつらん
はつしもの−はないろころも−こよひたれ−うつろふのへの−つきにうつらむ |
04320 |
未入力 正徹 (xxx)
月のすむなきさのあまの捨衣うちける浪や夜寒なるらん
つきのすむ−なきさのあまの−すてころも−うちけるなみや−よさむなるらむ |
04321 |
未入力 正徹 (xxx)
寒えのほる音そ夜ふけてしつみ行くうつや衣の月にぬれつつ
さえのほる−おとそよふけて−しつみゆく−うつやころもの−つきにぬれつつ |
04322 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ちかくまちとる物そ雲はれてまへ行く月の嶺のさと人
そてちかく−まちとるものそ−くもはれて−まへゆくつきの−みねのさとひと |
04323 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふみ山の月の秋風に木陰しくるる落椎の声
さるさけふ−みやまのつきの−あきかせに−こかけしくるる−おちしひのこゑ |
04324 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふ太山の月もおち椎の音冷しき玉ささの霜
さるさけふ−みやまのつきも−おちしひの−おとすさましき−たまささのしも |
04325 |
未入力 正徹 (xxx)
これそ此つもれは老となりはてぬ又後の世も色やめてまし
これそこの−つもれはおいと−なりはてぬ−またのちのよも−いろやめてまし |
04326 |
未入力 正徹 (xxx)
月もしれ八十年にちかきことのはの色染めやらぬ袖しくるとは
つきもしれ−やそちにちかき−ことのはの−いろそめやらぬ−そてしくるとは |
04327 |
未入力 正徹 (xxx)
昔思ふたか心にもうかひ来ぬ月やかたみのひまなかるらん
むかしおもふ−たかこころにも−うかひきぬ−つきやかたみの−ひまなかるらむ |
04328 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふらんわかみし程の昔たに思へはとほき秋のよの月
しのふらむ−わかみしほとの−むかしたに−おもへはとほき−あきのよのつき |
04329 |
未入力 正徹 (xxx)
月の舟こきもかくれすよるそ行く世はしら浪のおそれある比
つきのふね−こきもかくれす−よるそゆく−よはしらなみの−おそれあるころ |
04330 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の月あきらかなりと今夜みし其夢人も我を哀め
あきのつき−あきらかなりと−こよひみし−そのゆめひとも−われをあはれめ |
04331 |
未入力 正徹 (xxx)
行暮れて里ありとても宿にねし月とあかすはのへそまされる
ゆきくれて−さとありとても−やとにねし−つきとあかすは−のへそまされる |
04332 |
未入力 正徹 (xxx)
宿からむいまたねぬ声聞ゆなり月の夜みちの末の里人
やとからむ−いまたねぬこゑ−きこゆなり−つきのよみちの−すゑのさとひと |
04333 |
未入力 正徹 (xxx)
月も又ふたりすましとやとりこはこよひいつくに床をうつさん
つきもまた−ふたりすましと−やとりこは−こよひいつくに−とこをうつさむ |
04334 |
未入力 正徹 (xxx)
海山も都の月にかさなりて心につつくもろこしのあき
うみやまも−みやこのつきに−かさなりて−こころにつつく−もろこしのあき |
04335 |
未入力 正徹 (xxx)
なへてよも麻にはあらし都人うつはいかなる衣なるらむ
なへてよも−あさにはあらし−みやこひと−うつはいかなる−ころもなるらむ |
04336 |
未入力 正徹 (xxx)
長月の秋の霜夜の手をさむみなににまかせて衣うたまし
なかつきの−あきのしもよの−てをさむみ−なににまかせて−ころもうたまし |
04337 |
未入力 正徹 (xxx)
たかまとのをのへの小萩うらかれて秋風さむし衣うつらし
たかまとの−をのへのこはき−うらかれて−あきかせさむし−ころもうつらし |
04338 |
未入力 正徹 (xxx)
秋にうき伊駒おろしも夜寒にて君かあたりは衣打つなり
あきにうき−いこまおろしも−よさむにて−きみかあたりは−ころもうつなり |
04339 |
未入力 正徹 (xxx)
ときあらひ衣うたせむ人そなきくち行くままに秋もへぬへし
ときあらひ−ころもうたせむ−ひとそなき−くちゆくままに−あきもへぬへし |
04340 |
未入力 正徹 (xxx)
うちめよくかさねん色を思はてやしつかきぬたの声急くらん
うちめよく−かさねむいろを−おもはてや−しつかきぬたの−こゑいそくらむ |
04341 |
未入力 正徹 (xxx)
初せ女か手にまく糸をくりかへし長き夜ことにうつ衣かな
はつせめか−てにまくいとを−くりかへし−なかきよことに−うつころもかな |
04342 |
未入力 正徹 (xxx)
しのはらやしのひし秋も夜寒にて衣打つらむ野ちの里人
しのはらや−しのひしあきも−よさむにて−ころもうつらむ−のちのさとひと |
04343 |
未入力 正徹 (xxx)
うつ音もかはらさりけりしきたへの枕もふるき秋の衣は
うつおとも−かはらさりけり−しきたへの−まくらもふるき−あきのころもは |
04344 |
未入力 正徹 (xxx)
くれなゐに染めし八しほの衣とやおなし紅葉の陰そうつらん
くれなゐに−そめしやしほの−ころもとや−おなしもみちの−かけそうつらむ |
04345 |
未入力 正徹 (xxx)
此秋は都なからの旅衣うつとしもなき宿もならはす
このあきは−みやこなからの−たひころも−うつとしもなき−やともならはす |
04346 |
未入力 正徹 (xxx)
のかれきてすむてふ山の岩ほにもひとりや苔の衣うつらん
のかれきて−すむてふやまの−いはほにも−ひとりやこけの−ころもうつらむ |
04347 |
未入力 正徹 (xxx)
つたひくる嵐も雲も猶のこる遠山すりの衣うつこゑ
つたひくる−あらしもくもも−なほのこる−とほやますりの−ころもうつこゑ |
04348 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風に衣うつなりしからきの外山のまさき色かはるらん
あきかせに−ころもうつなり−しからきの−とやまのまさき−いろかはるらむ |
04349 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふけてこゑこそよわれ古郷に老いたる人や衣うつらん
さよふけて−こゑこそよわれ−ふるさとに−おいたるひとや−ころもうつらむ |
04350 |
未入力 正徹 (xxx)
霜なからうてとも秋の色見えぬ衣そ人に夜かれかさぬる
しもなから−うてともあきの−いろみえぬ−ころもそひとに−よかれかさぬる |
04351 |
未入力 正徹 (xxx)
あつま路にききし衣の関すゑて都の夢をもるひひきかな
あつまちに−ききしころもの−せきすゑて−みやこのゆめを−もるひひきかな |
04352 |
未入力 正徹 (xxx)
外面なる林あれ行く秋風にたれ落栗のころもうつらん
そともなる−はやしあれゆく−あきかせに−たれおちくりの−ころもうつらむ |
04353 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふかくおき出ててきけは衣うつ里はとほちの村雲の月
さよふかく−おきいててきけは−ころもうつ−さとはとほちの−むらくものつき |
04354 |
未入力 正徹 (xxx)
花ならぬ衣して打つさくら麻のこゑさへ秋はちる嵐かな
はなならぬ−ころもしてうつ−さくらあさの−こゑさへあきは−ちるあらしかな |
04355 |
未入力 正徹 (xxx)
うらなくもうつや衣の二おもてこの手柏に風さむきころ
うらなくも−うつやころもの−ふたおもて−このてかしはに−かせさむきころ |
04356 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をかさね霜に衣をうつせみの羽袖たえにし秋の木からし
よをかさね−しもにころもを−うつせみの−はそてたえにし−あきのこからし |
04357 |
未入力 正徹 (xxx)
石川や花田の帯のなかき夜にたか中たえて衣うつらん
いしかはや−はなたのおひの−なかきよに−たかなかたえて−ころもうつらむ |
04358 |
未入力 正徹 (xxx)
くれなゐのこ染の袖をのこしてやうへにとりきし衣うつらん
くれなゐの−こそめのそてを−のこしてや−うへにとりきし−ころもうつらむ |
04359 |
未入力 正徹 (xxx)
長月の花の綿つむ今夜とや籬に菊の衣うつらむ
なかつきの−はなのわたつむ−こよひとや−まかきにきくの−ころもうつらむ |
04360 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原しをるる霜の花衣うつこゑちらす秋の木からし
くさのはら−しをるるしもの−はなころも−うつこゑちらす−あきのこからし |
04361 |
未入力 正徹 (xxx)
かさねきる衣ありてや難波女か芦の夜ことに打ちあかすらん
かさねきる−ころもありてや−なにはめか−あしのよことに−うちあかすらむ |
04362 |
未入力 正徹 (xxx)
木かくれの遠山かつのすむ里をあらはし衣月に打つこゑ
こかくれの−とほやまかつの−すむさとを−あらはしころも−つきにうつこゑ |
04363 |
未入力 正徹 (xxx)
しひしはの嵐のかけに声すなり色に染めてや衣うつらん
しひしはの−あらしのかけに−こゑすなり−いろにそめてや−ころもうつらむ |
04364 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちよりてたれもうてとやすさむらん道行ふりの宿のさ衣
たちよりて−たれもうてとや−すさむらむ−みちゆきふりの−やとのさころも |
04365 |
未入力 正徹 (xxx)
月草のはなたの衣うつたへに秋そうつろふよもきふの宿
つきくさの−はなたのころも−うつたへに−あきそうつろふ−よもきふのやと |
04366 |
未入力 正徹 (xxx)
たはれ島浪のぬれ衣いつほして打つらん声そ秋のあま人
たはれしま−なみのぬれきぬ−いつほして−うつらむこゑそ−あきのあまひと |
04367 |
未入力 正徹 (xxx)
たか中をいととまとほになしほてて夕の霧に衣うつらん
たかなかを−いととまとほに−なしほてて−ゆふへのきりに−ころもうつらむ |
04368 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人のあらふ衣も朝かしはぬるや川辺に打つ音もせす
さとひとの−あらふころもも−あさかしは−ぬるやかはへに−うつおともせす |
04369 |
未入力 正徹 (xxx)
時しもあれ梢うつろふ月影にね覚めてきくの衣うつこゑ
ときしもあれ−こすゑうつろふ−つきかけに−ねさめてきくの−ころもうつこゑ |
04370 |
未入力 正徹 (xxx)
めに見えぬ遠山すりのかり衣うつ声おくる秋の木からし
めにみえぬ−とほやますりの−かりころも−うつこゑおくる−あきのこからし |
04371 |
未入力 正徹 (xxx)
月みても秋の心を忘れすはうてかしたゆむあさのさ衣
つきみても−あきのこころを−わすれすは−うてかしたゆむ−あさのさころも |
04372 |
未入力 正徹 (xxx)
うつ声に色はなくとも夜をさむみね覚めてきくの衣とやせん
うつこゑに−いろはなくとも−よをさむみ−ねさめてきくの−ころもとやせむ |
04373 |
未入力 正徹 (xxx)
声そちる野へのかりほの夕露にひもとく花の衣うつらし
こゑそちる−のへのかりほの−ゆふつゆに−ひもとくはなの−ころもうつらし |
04374 |
未入力 正徹 (xxx)
明ぬまにたれまきおきて横雲の衣うつらん嶺の里人
あけぬまに−たれまきおきて−よこくもの−ころもうつらむ−みねのさとひと |
04375 |
未入力 正徹 (xxx)
乙女子も夜を長月の月にうて明かたさむし天のは衣
をとめこも−よをなかつきの−つきにうて−あけかたさむし−あまのはころも |
04376 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲をよそなる嶺の里人やおきてわかれし衣うつらん
よこくもを−よそなるみねの−さとひとや−おきてわかれし−ころもうつらむ |
04377 |
未入力 正徹 (xxx)
あまもなく所もすまの浦ならて夢をまとほにうつ衣かな
あまもなく−ところもすまの−うらならて−ゆめをまとほに−うつころもかな |
04378 |
未入力 正徹 (xxx)
うつままに音をそさそふ秋の風もろき木の葉の衣ならねと
うつままに−おとをそさそふ−あきのかせ−もろきこのはの−ころもならねと |
04379 |
未入力 正徹 (xxx)
山ひこのこたふる松も衣うつ風や夜寒の秋のさと人
やまひこの−こたふるまつも−ころもうつ−かせやよさむの−あきのさとひと |
04380 |
未入力 正徹 (xxx)
かたふかて月すむかたの枕にも跡にもちかくうつ衣かな
かたふかて−つきすむかたの−まくらにも−あとにもちかく−うつころもかな |
04381 |
未入力 正徹 (xxx)
薪とりしあした夕の谷の風こゑをひとつに打つころもかな
たききとりし−あしたゆふへの−たにのかせ−こゑをひとつに−うつころもかな |
04382 |
未入力 正徹 (xxx)
秋さむききぬたは風に駒いはへ枝にすむ鳥に声合すなり
あきさむき−きぬたはかせに−こまいはへ−えにすむとりに−こゑあはすなり |
04383 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくそと空に心のうつろふや色つき草のころもうつらん
いつくそと−そらにこころの−うつろふや−いろつきくさの−ころもうつらむ |
04384 |
未入力 正徹 (xxx)
さそひくる風もしのふの衣とや空にみたれて声迷ふらん
さそひくる−かせもしのふの−ころもとや−そらにみたれて−こゑまよふらむ |
04385 |
未入力 正徹 (xxx)
から衣おとよりも猶うつ人の袖は枕にさはる夢かな
からころも−おとよりもなほ−うつひとの−そてはまくらに−さはるゆめかな |
04386 |
未入力 正徹 (xxx)
うつ里の声のうすきや夏衣秋のきぬたに猶残るらん
うつさとの−こゑのうすきや−なつころも−あきのきぬたに−なほのこるらむ |
04387 |
未入力 正徹 (xxx)
老の浪よるの衣をうつたへに声うらかなしをちの秋風
おいのなみ−よるのころもを−うつたへに−こゑうらかなし−をちのあきかせ |
04388 |
未入力 正徹 (xxx)
をかやふくふせやはくらきこも簾月にあけてや衣打つらん
をかやふく−ふせやはくらき−こもすたれ−つきにあけてや−ころもうつらむ |
04389 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣うつてのつちやおもからぬあくるもしらす音聞ゆなり
さよころも−うつてのつちや−おもからぬ−あくるもしらす−おときこゆなり |
04390 |
未入力 正徹 (xxx)
手をたゆみとほさかるなりうつ衣よひにきほひし暁のこゑ
てをたゆみ−とほさかるなり−うつころも−よひにきほひし−あかつきのこゑ |
04391 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとて打つこゑなきもあくる夜の袖のわかれの衣なるらん
いまはとて−うつこゑなきも−あくるよの−そてのわかれの−ころもなるらむ |
04392 |
未入力 正徹 (xxx)
まとほなる秋さり衣きその夜を中にへたてて打ちあかす声
まとほなる−あきさりころも−きそのよを−なかにへたてて−うちあかすこゑ |
04393 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろかす程はなけれと秋のよの夢をはかなみうつ衣かな
おとろかす−ほとはなけれと−あきのよの−ゆめをはかなみ−うつころもかな |
04394 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をへてききしもさらに遠き世の昔の声に打つ衣かな
あきをへて−ききしもさらに−とほきよの−むかしのこゑに−うつころもかな |
04395 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ分くる嵐の末にきえてけりあはてぬる夜の衣うつらん
ささわくる−あらしのすゑに−きえてけり−あはてぬるよの−ころもうつらむ |
04396 |
未入力 正徹 (xxx)
から衣はつるる糸かうつこゑもむすほほれくるさ夜の秋かせ
からころも−はつるるいとか−うつこゑも−むすほほれくる−さよのあきかせ |
04397 |
未入力 正徹 (xxx)
はらふらし夜半に衣をうちわたす遠かた人の袖のはつ霜
はらふらし−よはにころもを−うちわたす−をちかたひとの−そてのはつしも |
04398 |
未入力 正徹 (xxx)
うちあかす夜はの衣はたか中に遠さかり行く声きこゆらん
うちあかす−よはのころもは−たかなかに−とほさかりゆく−こゑきこゆらむ |
04399 |
未入力 正徹 (xxx)
月にうつ音にてしれは雲かかるとほ山すりの衣なるらむ
つきにうつ−おとにてしれは−くもかかる−とほやますりの−ころもなるらむ |
04400 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野山すす分けしあさのすり衣うつや雲まの嶺の嵐に
よしのやま−すすわけしあさの−すりころも−うつやくもまの−みねのあらしに |
04401 |
未入力 正徹 (xxx)
衣うつ音もゆつはの村雲にたえたえつつく秋の川なみ
ころもうつ−おともゆつはの−むらくもに−たえたえつつく−あきのかはなみ |
04402 |
未入力 正徹 (xxx)
さとこえて嵐のおくる秋のよに声さへなかくうつ衣かな
さとこえて−あらしのおくる−あきのよに−こゑさへなかく−うつころもかな |
04403 |
未入力 正徹 (xxx)
音きくもしらぬ里人たか中にこぬ夜へたつる衣うつらん
おときくも−しらぬさとひと−たかなかに−こぬよへたつる−ころもうつらむ |
04404 |
未入力 正徹 (xxx)
はつ霜の古郷人にかれそ行くうつや衣のなか月の夢
はつしもの−ふるさとひとに−かれそゆく−うつやころもの−なかつきのゆめ |
04405 |
未入力 正徹 (xxx)
かすかなるあさちかおくのやとりにもすむ人ありと打つ衣かな
かすかなる−あさちかおくの−やとりにも−すむひとありと−うつころもかな |
04406 |
未入力 正徹 (xxx)
かさねよと子を思ふ人やいそくらん夜を長岡に衣うつ声
かさねよと−こをおもふひとや−いそくらむ−よをなかをかに−ころもうつこゑ |
04407 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風ふせくやかたき松陰の岩ほの中もうつ衣かな
あきのかせ−ふせくやかたき−まつかけの−いはほのうちも−うつころもかな |
04408 |
未入力 正徹 (xxx)
やみになる月のかつらのさと人や子を思ふ夜の衣うつらん
やみになる−つきのかつらの−さとひとや−こをおもふよの−ころもうつらむ |
04409 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ衣きなれの里は秋にたにうつ夜まれなるつちの音かな
あさころも−きなれのさとは−あきにたに−うつよまれなる−つちのおとかな |
04410 |
未入力 正徹 (xxx)
山鳥の秋のすゑ尾の里人はへたてて夜はの衣うつらん
やまとりの−あきのすゑをの−さとひとは−へたててよはの−ころもうつらむ |
04411 |
未入力 正徹 (xxx)
衣うつこやの里人芦のはにかくれてすまぬ声そ聞ゆる
ころもうつ−こやのさとひと−あしのはに−かくれてすまぬ−こゑそきこゆる |
04412 |
未入力 正徹 (xxx)
風あらす古郷人やうつかひもあらぬ夜さむの秋のさ衣
かせあらす−ふるさとひとや−うつかひも−あらぬよさむの−あきのさころも |
04413 |
未入力 正徹 (xxx)
ひたかくる稲葉を遠みもる月を嶺のいほりにうつ衣かな
ひたかくる−いなはをとほみ−もるつきを−みねのいほりに−うつころもかな |
04414 |
未入力 正徹 (xxx)
かからすは夢をやみつの浜つつらくるれはあまの打つ衣かな
かからすは−ゆめをやみつの−はまつつら−くるれはあまの−うつころもかな |
04415 |
未入力 正徹 (xxx)
宿見えぬ川辺の秋の霜のよに浪もあやうつ衣をそきく
やとみえぬ−かはへのあきの−しものよに−なみもあやうつ−ころもをそきく |
04416 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山の木の葉も草も妻こひになくやをしかの涙そむらし
あきやまの−このはもくさも−つまこひに−なくやをしかの−なみたそむらし |
04417 |
未入力 正徹 (xxx)
妻こふる秋やなからむ法ききし鹿の苑生に鹿はすむとも
つまこふる−あきやなからむ−のりききし−しかのそのふに−しかはすむとも |
04418 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの契り外山か秋かけてかはるまさきの色恨むらん
さをしかの−ちきりとやまか−あきかけて−かはるまさきの−いろうらむらむ |
04419 |
未入力 正徹 (xxx)
よそに見しともしを秋は妻恋の心にもゆと鹿や鳴くらん
よそにみし−ともしをあきは−つまこひの−こころにもゆと−しかやなくらむ |
04420 |
未入力 正徹 (xxx)
松山の色はかはらてうき中の契を秋と鹿や鳴くらむ
まつやまの−いろはかはらて−うきなかの−ちきりをあきと−しかやなくらむ |
04421 |
未入力 正徹 (xxx)
きく人の心もしらす夕暮はわかうきままに鹿や鳴くらん
きくひとの−こころもしらす−ゆふくれは−わかうきままに−しかやなくらむ |
04422 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねはや御法のこゑに音をそへしむかしの鹿のそのの古道
たつねはや−みのりのこゑに−ねをそへし−むかしのしかの−そののふるみち |
04423 |
未入力 正徹 (xxx)
柴ましるそはの枯木とかつみれは角ふりたてて鹿そ鳴くなる
しはましる−そはのかれきと−かつみれは−つのふりたてて−しかそなくなる |
04424 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山の鹿やともしの跡にきてなかくわかれし妻になくらん
あきやまの−しかやともしの−あとにきて−なかくわかれし−つまになくらむ |
04425 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はしかつれなき妻を松かけにともしの煙むねに恋ひつつ
あきはしか−つれなきつまを−まつかけに−ともしのけふり−むねにこひつつ |
04426 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山の木の葉色つきから衣たつやすそ野にをしかなくなり
あきやまの−このはいろつき−からころも−たつやすそのに−をしかなくなり |
04427 |
未入力 正徹 (xxx)
外山なるまさきの綱やつなきおく秋ふけ行くにさをしかの声
とやまなる−まさきのつなや−つなきおく−あきふけゆくに−さをしかのこゑ |
04428 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふみ山の苔のさ莚をしきしのふ夜やをしか鳴くらん
つゆはらふ−みやまのこけの−さむしろを−しきしのふよや−をしかなくらむ |
04429 |
未入力 正徹 (xxx)
ふす鹿の秋のみ山の苔莚いつくの妻にしきしのふらん
ふすしかの−あきのみやまの−こけむしろ−いつくのつまに−しきしのふらむ |
04430 |
未入力 正徹 (xxx)
世に遠き太山の秋のさをしかは妻恋ならぬねをやなくらん
よにとほき−みやまのあきの−さをしかは−つまこひならぬ−ねをやなくらむ |
04431 |
未入力 正徹 (xxx)
外山なるまさきのかけにたつ鹿も散るをかきりの声そかれ行く
とやまなる−まさきのかけに−たつしかも−ちるをかきりの−こゑそかれゆく |
04432 |
未入力 正徹 (xxx)
杣木きると山のまさきよる綱にひかれぬ妻ををしか鳴くなり
そまききる−とやまのまさき−よるつなに−ひかれぬつまを−をしかなくなり |
04433 |
未入力 正徹 (xxx)
妻恋の外山を鹿や出てさらんまさきのきつな秋にたえすは
つまこひの−とやまをしかや−いてさらむ−まさきのきつな−あきにたえすは |
04434 |
未入力 正徹 (xxx)
さむからし外山色つき鹿そ鳴くおくてもる庵の袖の露霜
さむからし−とやまいろつき−しかそなく−おくてもるいほの−そてのつゆしも |
04435 |
未入力 正徹 (xxx)
なく鹿の思ひの色やまさきはふと山のくれの松の下柴
なくしかの−おもひのいろや−まさきはふ−とやまのくれの−まつのしたしは |
04436 |
未入力 正徹 (xxx)
杣山やくれ行くをのの音たえてひとりなけきををしか鳴くなり
そまやまや−くれゆくをのの−おとたえて−ひとりなけきを−をしかなくなり |
04437 |
未入力 正徹 (xxx)
外山なるまさきの綱のくるるまは秋にたへすや鹿のなくらん
とやまなる−まさきのつなの−くるるまは−あきにたへすや−しかのなくらむ |
04438 |
未入力 正徹 (xxx)
おのか毛はきえ行くほしを空にみて夕の嶺にしかや鳴くらん
おのかけは−きえゆくほしを−そらにみて−ゆふへのみねに−しかやなくらむ |
04439 |
未入力 正徹 (xxx)
その山と契らぬ妻にうちわひて入あひのかねに鹿や鳴くらん
そのやまと−ちきらぬつまに−うちわひて−いりあひのかねに−しかやなくらむ |
04440 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨るらむ末野の峰のしかのねに夕やたへぬをちのさと人
しくるらむ−すゑののみねの−しかのねに−ゆふへやたへぬ−をちのさとひと |
04441 |
未入力 正徹 (xxx)
妻そなき岡辺の早田霜八度おきて鳴きたつ鹿はあれとも
つまそなき−をかへのはやた−しもやたひ−おきてなきたつ−しかはあれとも |
04442 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かた山路の鹿も妻こめて恋渡る瀬戸の秋の舟人
あはちかた−やまちのしかも−つまこめて−こひわたるせとの−あきのふなひと |
04443 |
未入力 正徹 (xxx)
しかのねもうきねの床に高砂の松風なからよするうら浪
しかのねも−うきねのとこに−たかさこの−まつかせなから−よするうらなみ |
04444 |
未入力 正徹 (xxx)
あはちかた島山風も早しほに鹿の音うかふせとの夕浪
あはちかた−しまやまかせも−はやしほに−しかのねうかふ−せとのゆふなみ |
04445 |
未入力 正徹 (xxx)
しなか鳥ふすさへゐなの湊田に又たちあかすさをしかの声
しなかとり−ふすさへゐなの−みなとたに−またたちあかす−さをしかのこゑ |
04446 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふくるをのの山田にさをしかの涙色こき稲そのこれる
あきふくる−をののやまたに−さをしかの−なみたいろこき−いねそのこれる |
04447 |
未入力 正徹 (xxx)
を山田のをしかも声をからし行くいなほのかつら長き夜のしも
をやまたの−をしかもこゑを−からしゆく−いなほのかつら−なかきよのしも |
04448 |
未入力 正徹 (xxx)
なれも名やをしねかり田の初霜に妻とふ鹿の跡そ残れる
なれもなや−をしねかりたの−はつしもに−つまとふしかの−あとそのこれる |
04449 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとのかりほの小萩露ほさて野田のほなみに鹿そ鳴くなる
やまもとの−かりほのこはき−つゆほさて−のたのほなみに−しかそなくなる |
04450 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの涙時雨れて秋の田のほの上染むる夕霧のこゑ
さをしかの−なみたしくれて−あきのたの−ほのうへそむる−ゆふきりのこゑ |
04451 |
未入力 正徹 (xxx)
妻しらてひとりたたすむ小男鹿の思ひ色こき秋のはつ稲
つましらて−ひとりたたすむ−さをしかの−おもひいろこき−あきのはついね |
04452 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの秋の草ふし夜かれしてもる声たかき野田のかりいほ
さをしかの−あきのくさふし−よかれして−もるこゑたかき−のたのかりいほ |
04453 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿もこす夢路もたえぬ岡へなる早田かりねの霜の曙
しかもこす−ゆめちもたえぬ−をかへなる−はやたかりねの−しものあけほの |
04454 |
未入力 正徹 (xxx)
秋すくるおのか草ふし夜や寒き野田のかりほにをしか鳴くなり
あきすくる−おのかくさふし−よやさむき−のたのかりほに−をしかなくなり |
04455 |
未入力 正徹 (xxx)
かり庵ももらぬいなはのあれまくもをしか鳴きよる秋の小山田
かりいほも−もらぬいなはの−あれまくも−をしかなきよる−あきのをやまた |
04456 |
未入力 正徹 (xxx)
稲葉ふく風もめくりてかたしらす芦の丸屋のさをしかの声
いなはふく−かせもめくりて−かたしらす−あしのまろやの−さをしかのこゑ |
04457 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの妻とふ夜はの山かつらかけはなれ行くなかに鳴くなり
さをしかの−つまとふよはの−やまかつら−かけはなれゆく−なかになくなり |
04458 |
未入力 正徹 (xxx)
音にそなく暁露に立ちぬれて月にもほさぬ鹿の上毛を
ねにそなく−あかつきつゆに−たちぬれて−つきにもほさぬ−しかのうはけを |
04459 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿そなく草の原野の有明に月にとへはや妻もつれなき
しかそなく−くさのはらのの−ありあけに−つきにとへはや−つまもつれなき |
04460 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたるをのへの鹿や妻こめに雲をのこしてこゑわかるらん
あけわたる−をのへのしかや−つまこめに−くもをのこして−こゑわかるらむ |
04461 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿はたたうきを心にしらすとも鳴くねにたへぬ暮とおもはん
しかはたた−うきをこころに−しらすとも−なくねにたへぬ−くれとおもはむ |
04462 |
未入力 正徹 (xxx)
月まつと人にいふへき道もなしくるれは妻にしかや鳴くらん
つきまつと−ひとにいふへき−みちもなし−くるれはつまに−しかやなくらむ |
04463 |
未入力 正徹 (xxx)
たれも此うき身さをなる夕暮も猶まつかけに鹿は鳴くなり
たれもこの−うきみさをなる−ゆふくれも−なほまつかけに−しかはなくなり |
04464 |
未入力 正徹 (xxx)
をしかなく夕の霧に立ちかくす矢野のかみ山色付きぬらん
をしかなく−ゆふへのきりに−たちかくす−やののかみやま−いろつきぬらむ |
04465 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの妻やたのめしのへにきて夕かけ草の露にふすなり
さをしかの−つまやたのめし−のへにきて−ゆふかけくさの−つゆにふすなり |
04466 |
未入力 正徹 (xxx)
小男鹿のおのれ夜かれていかかなく待ちえぬ妻はねにもたてぬを
さをしかの−おのれよかれて−いかかなく−まちえぬつまは−ねにもたてぬを |
04467 |
未入力 正徹 (xxx)
妻恋のこゑをしのふる道やなきやみにかくれてをしか鳴くなり
つまこひの−こゑをしのふる−みちやなき−やみにかくれて−をしかなくなり |
04468 |
未入力 正徹 (xxx)
寝覚して鹿のねきけは月に霧萩さくのへの露の面かけ
なさめして−しかのねきけは−つきにきり−はきさくのへの−つゆのおもかけ |
04469 |
未入力 正徹 (xxx)
なく鹿もともしせし夜の秋ならはうき妻恋に身をや捨てまし
なくしかも−ともしせしよの−あきならは−うきつまこひに−みをやすてまし |
04470 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山の月の夜霧の妻こめて思ひやはれぬをしか鳴くなり
あきやまの−つきのよきりの−つまこめて−おもひやはれぬ−をしかなくなり |
04471 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の夜の心なかさのつらさまて鹿なく嶺に残るよこ雲
あきのよの−こころなかさの−つらさまて−しかなくみねに−のこるよこくも |
04472 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をさむみたか枕香の木枯に秋行く鹿の声わたるらん
よをさむみ−たかまくらかの−こからしに−あきゆくしかの−こゑわたるらむ |
04473 |
未入力 正徹 (xxx)
妻恋のもりのすかのね枝き夜もふさてや鹿の鳴きあかすらん
つまこひの−もりのすかのね−なかきよも−ふさてやしかの−なきあかすらむ |
04474 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの心のやみの妻こひにあひみまほしの毛をやうらむる
さをしかの−こころのやみの−つまこひに−あひみまほしの−けをやうらむる |
04475 |
未入力 正徹 (xxx)
其山としらぬ嵐にまよふなり木のはにつるるさをしかの声
そのやまと−しらぬあらしに−まよふなり−このはにつるる−さをしかのこゑ |
04476 |
未入力 正徹 (xxx)
きくままに谷の庵に声そする後や手かひの鹿とならまし
きくままに−たにのいほりに−こゑそする−のちやてかひの−しかとならまし |
04477 |
未入力 正徹 (xxx)
夜そふかき月に秋風たつ鹿の声吹きかへす霧の山もと
よそふかき−つきにあきかせ−たつしかの−こゑふきかへす−きりのやまもと |
04478 |
未入力 正徹 (xxx)
なほさりに妻とふしかの秋の声うつろひ行くや遠さかるらん↓
なほさりに−つまとふしかの−あきのこゑ−うつろひゆくや−とほさかるらむ |
04479 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかのよるの契もうす霧になくや朝けの秋の山もと
さをしかの−よるのちきりも−うすきりに−なくやあさけの−あきのやまもと |
04480 |
未入力 正徹 (xxx)
声もせす月をもいとへ野への鹿夕の霧に妻そこもれる
こゑもせす−つきをもいとへ−のへのしか−ゆふへのきりに−つまそこもれる |
04481 |
未入力 正徹 (xxx)
から錦しかはたたまくをしまてや野への秋萩おのれふすらん
からにしき−しかはたたまく−をしまてや−のへのあきはき−おのれふすらむ |
04482 |
未入力 正徹 (xxx)
まちそ見る思ひつきせぬ玉章ののこりおほかる雁の一行
まちそみる−おもひつきせぬ−たまつさの−のこりおほかる−かりのひとつら |
04483 |
未入力 正徹 (xxx)
日雲にたに宿なきさののわたりくる雁かねさむし秋の村雨
ひくれたに−やとなきさのの−わたりくる−かりかねさむし−あきのむらさめ |
04484 |
未入力 正徹 (xxx)
いさふたりねむともたれか岩の上の苔の衣をかりや鳴くらん
いさふたり−ねむともたれか−いはのうへの−こけのころもを−かりやなくらむ |
04485 |
未入力 正徹 (xxx)
このねぬる朝けの床に風立ちて衣手さむし初かりの声
このねぬる−あさけのとこに−かせたちて−ころもてさむし−はつかりのこゑ |
04486 |
未入力 正徹 (xxx)
都たにいまた旅なる初雁のいつくをやとと鳴きて行くらん
みやこたに−いまたたひなる−はつかりの−いつくをやとと−なきてゆくらむ |
04487 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風をつけし蛍の影もなき野沢におちて雁そ啼くなる
あきかせを−つけしほたるの−かけもなき−のさはにおちて−かりそなくなる |
04488 |
未入力 正徹 (xxx)
時しもあれ夕の風に雁のくる峰のくす葉もかへる雲かな
ときしもあれ−ゆふへのかせに−かりのくる−みねのくすはも−かへるくもかな |
04489 |
未入力 正徹 (xxx)
声たつる風も冷し雁鳴きて菊の花さく秋のはま松
こゑたつる−かせもすさまし−かりなきて−きくのはなさく−あきのはままつ |
04490 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかおるはたてを雲にこととひて鳴くや夕の衣かりかね
しつかおる−はたてをくもに−こととひて−なくやゆふへの−ころもかりかね |
04491 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日影空にうつろふ初雁のなみた染めなす雲のいろかな
ゆふひかけ−そらにうつろふ−はつかりの−なみたそめなす−くものいろかな |
04492 |
未入力 正徹 (xxx)
はし鷹の初かり衣雁そなくほさてやかさむ野への夕露
はしたかの−はつかりころも−かりそなく−ほさてやかさむ−のへのゆふつゆ |
04493 |
未入力 正徹 (xxx)
声声に遠山鳥のをのへより翅もなかくかりそつらなる
こゑこゑに−とほやまとりの−をのへより−つはさもなかく−かりそつらなる |
04494 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにも去年のねくらは荒れぬらん尋ねなわひそ秋の初雁
いつくにも−こそのねくらは−あれぬらむ−たつねなわひそ−あきのはつかり |
04495 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬとて夜の床世を立ちわかれかへるやきたる秋のかりかね
あけぬとて−よるのとこよを−たちわかれ−かへるやきたる−あきのかりかね |
04496 |
未入力 正徹 (xxx)
都路に去年こし雁のさき立ちてまたみぬひなのしるへとやなる
みやこちに−こそこしかりの−さきたちて−またみぬひなの−しるへとやなる |
04497 |
未入力 正徹 (xxx)
池にすむ手かひの鳥も雲路より友待ちえたるはつ雁のこゑ
いけにすむ−てかひのとりも−くもちより−ともまちえたる−はつかりのこゑ |
04498 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの天の川舟からろをやおし明かたの初かりの声
ひさかたの−あまのかはふね−からろをや−おしあけかたの−はつかりのこゑ |
04499 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そかし雁は初声菊はまたつほめる比も花になくむし
あきそかし−かりははつこゑ−きくはまた−つほめるころも−はなになくむし |
04500 |
未入力 正徹 (xxx)
なきてくる雁の羽衣我にかせ秋の夜寒は空にますらん
なきてくる−かりのはころも−われにかせ−あきのよさむは−そらにますらむ |
04501 |
未入力 正徹 (xxx)
やとやしるいにし燕のことつてを軒はにつけて渡る雁かね
やとやしる−いにしつはめの−ことつてを−のきはにつけて−わたるかりかね |
04502 |
未入力 正徹 (xxx)
かさしまて天つ乙女に衣かれはねかつらする雁の一行
かさしまて−あまつをとめに−ころもかれ−はねかつらする−かりのひとつら |
04503 |
未入力 正徹 (xxx)
霧たちてははそ色付く山もとのさほの川原にわたる雁かね
きりたちて−ははそいろつく−やまもとの−さほのかはらに−わたるかりかね |
04504 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ衣しつか手なるるをた巻のくる秋なかき夜はのはつ雁
あさころも−しつかてなるる−をたまきの−くるあきなかき−よはのはつかり |
04505 |
未入力 正徹 (xxx)
舟人の浪にからろをおしあてにくる雁しるき浦のあさ霧
ふなひとの−なみにからろを−おしあてに−くるかりしるき−うらのあさきり |
04506 |
未入力 正徹 (xxx)
おのかなく涙も露も置きそへす袂をすくる雁のは風に
おのかなく−なみたもつゆも−おきそへす−たもとをすくる−かりのはかせに |
04507 |
未入力 正徹 (xxx)
なく雁の涙の玉をぬきもあへすみたれて消ゆる雲の糸すち
なくかりの−なみたのたまを−ぬきもあへす−みたれてきゆる−くものいとすち |
04508 |
未入力 正徹 (xxx)
みぬ秋のむかしのことを空にかけ雁は其世も都にそこし
みぬあきの−むかしのことを−そらにかけ−かりはそのよも−みやこにそこし |
04509 |
未入力 正徹 (xxx)
月にぬる天つ乙女の下帯をとくかとみるは衣かりかね
つきにぬる−あまつをとめの−したおひを−とくかとみるは−ころもかりかね |
04510 |
未入力 正徹 (xxx)
天つかりつらなりくるや山のはの月にかかれるよひの横雲
あまつかり−つらなりくるや−やまのはの−つきにかかれる−よひのよこくも |
04511 |
未入力 正徹 (xxx)
みなの川ふちにはよらし筑波根の嶺よりおつる雁の一つら
みなのかは−ふちにはよらし−つくはねの−みねよりおつる−かりのひとつら |
04512 |
未入力 正徹 (xxx)
こえてくる雁の涙の下染にかつ色付くや秋の太山木
こえてくる−かりのなみたの−したそめに−かついろつくや−あきのみやまき |
04513 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きてくるかりの涙もおきとめぬ嶺のを花の袖の秋風
なきてくる−かりのなみたも−おきとめぬ−みねのをはなの−そてのあきかせ |
04514 |
未入力 正徹 (xxx)
煙ともなせや玉章世にちらはいかかいふきの嶺にとふかり
けふりとも−なせやたまつさ−よにちらは−いかかいふきの−みねにとふかり |
04515 |
未入力 正徹 (xxx)
くれゆかは遠山ひめのまゆを引く雁さへきえておもかけもなし
くれゆかは−とほやまひめの−まゆをひく−かりさへきえて−おもかけもなし |
04516 |
未入力 正徹 (xxx)
秋さむき浪にをりはへ川の名の衣かりかね今そ鳴くなる
あきさむき−なみにをりはへ−かはのなの−ころもかりかね−いまそなくなる |
04517 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章をまつとはなしの初かりもまたをちかたに秋の音信
たまつさを−まつとはなしの−はつかりも−またをちかたに−あきのおとつれ |
04518 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑきかは雲の浪分けくる雁にしほたるらめや袖の浦人
こゑきかは−くものなみわけ−くるかりに−しほたるらめや−そてのうらひと |
04519 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さす時雨の雲に行く雁の涙吹きほす嶺の秋かせ
ゆふひさす−しくれのくもに−ゆくかりの−なみたふきほす−みねのあきかせ |
04520 |
未入力 正徹 (xxx)
露をとく雁の涙や待ちえけむなく夕かけの草そ色つく
つゆをとく−かりのなみたや−まちえけむ−なくゆふかけの−くさそいろつく |
04521 |
未入力 正徹 (xxx)
色かはる秋風さむし初雁のなく夕かけの山のした柴
いろかはる−あきかせさむし−はつかりの−なくゆふかけの−やまのしたしは |
04522 |
未入力 正徹 (xxx)
天とふも翅つかれて夕気立つ尾上の里に雁やおつらん
あまとふも−つはさつかれて−ゆふけたつ−をのへのさとに−かりやおつらむ |
04523 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれくる初かり金のこゑのあや雲のはたてにおりやかくらん
みたれくる−はつかりかねの−こゑのあや−くものはたてに−おりやかくらむ |
04524 |
未入力 正徹 (xxx)
霧うすき梢の色もほのかなる山のなかはを雁わたるみゆ
きりうすき−こすゑのいろも−ほのかなる−やまのなかはを−かりわたるみゆ |
04525 |
未入力 正徹 (xxx)
名もしるし岡のうへこす雁の羽も立つやきりふの色にみたれて
なもしるし−をかのうへこす−かりのはも−たつやきりふの−いろにみたれて |
04526 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺越えて落ちくる雁のしほれ羽も霧にかくるる野へのはきはら
みねこえて−おちくるかりの−しほれはも−きりにかくるる−のへのはきはら |
04527 |
未入力 正徹 (xxx)
雲のはにわたるや雁の玉章を袖より袖にうつすとそみゆ
くものはに−わたるやかりの−たまつさを−そてよりそてに−うつすとそみゆ |
04528 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きてくる雁のなみたやおさふらん翅にかかる雲のは袖は
なきてくる−かりのなみたや−おさふらむ−つはさにかかる−くものはそては |
04529 |
未入力 正徹 (xxx)
雁のくる嵐につけて飛ふ雲のきえすほ有りとも友と落ちめや
かりのくる−あらしにつけて−とふくもの−きえすはありとも−ともとおちめや |
04530 |
未入力 正徹 (xxx)
よひのまにぬきてわかるる雁そなくふけてや寒き雲のは衣
よひのまに−ぬきてわかるる−かりそなく−ふけてやさむき−くものはころも |
04531 |
未入力 正徹 (xxx)
初時雨天とふ雁の涙にもそめぬ夕の雲そ色つく
はつしくれ−あまとふかりの−なみたにも−そめぬゆふへの−くもそいろつく |
04532 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらぬ雲の衣にいかかせんつらなる雁の一すちの帯
かすしらぬ−くものころもに−いかかせむ−つらなるかりの−ひとすちのおひ |
04533 |
未入力 正徹 (xxx)
みこしちの露のしほれ羽うちはふき都の霧にわたる雁かね
みこしちの−つゆのしほれは−うちはふき−みやこのきりに−わたるかりかね |
04534 |
未入力 正徹 (xxx)
いくつらそ雁なきわたるわたつ海にうちかへてけりあまのたく縄
いくつらそ−かりなきわたる−わたつうみに−うちかへてけり−あまのたくなは |
04535 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上は秋くる雁の玉章をかきける筆の海かとそみる
なみのうへは−あきくるかりの−たまつさを−かきけるふての−うみかとそみる |
04536 |
未入力 正徹 (xxx)
こく舟のからろを雁のともねとやうら浪ちかく鳴きておつらん
こくふねの−からろをかりの−ともねとや−うらなみちかく−なきておつらむ |
04537 |
未入力 正徹 (xxx)
はむ程のおちほもあらし雁はきて秋の田ならぬいなさ細江は
はむほとの−おちほもあらし−かりはきて−あきのたならぬ−いなさほそえは |
04538 |
未入力 正徹 (xxx)
あまのかる早田のいなの湊舟こきわかるるやわたる雁かね
あまのかる−はやたのいなの−みなとふね−こきわかるるや−わたるかりかね |
04539 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章を袖のみなとにつたへおきてしのひにすくる沖つ雁金
たまつさを−そてのみなとに−つたへおきて−しのひにすくる−おきつかりかね |
04540 |
未入力 正徹 (xxx)
からろおすもろこし舟を雁そなくあまの衣の袖の湊に
からろおす−もろこしふねを−かりそなく−あまのころもの−そてのみなとに |
04541 |
未入力 正徹 (xxx)
風そよく声は昨日のかり田行く雁の涙やおちほそむらん
かせそよく−こゑはきのふの−かりたゆく−かりのなみたや−おちほそむらむ |
04542 |
未入力 正徹 (xxx)
露そちるを田のほかつらくる雁もともにかけたるおのか玉章
つゆそちる−をたのほかつら−くるかりも−ともにかけたる−おのかたまつさ |
04543 |
未入力 正徹 (xxx)
明渡る山田の杉は霧こめて空にむら立つ秋のかりかね
あけわたる−やまたのすきは−きりこめて−そらにむらたつ−あきのかりかね |
04544 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のさかひのくぬき色付きて同への霧に渡る雁かね
あきのたの−さかひのくぬき−いろつきて−をかへのきりに−わたるかりかね |
04545 |
未入力 正徹 (xxx)
いそけなほほなみをわたる稲舟の此月はかり秋のはつ雁
いそけなほ−ほなみをわたる−いなふねの−このつきはかり−あきのはつかり |
04546 |
未入力 正徹 (xxx)
くる雁はほなみにきえて夕まくれ山田もる男そ独のこれる
くるかりは−ほなみにきえて−ゆふまくれ−やまたもるをそ−ひとりのこれる |
04547 |
未入力 正徹 (xxx)
こしちより雁の翅を吹きおくる風とはなりぬ駒いはふらし
こしちより−かりのつはさを−ふきおくる−かせとはなりぬ−こまいはふらし |
04548 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きみたす野分のそこに先落ちて翅をたためかりの一行
ふきみたす−のわきのそこに−まつおちて−つはさをたため−かりのひとつら |
04549 |
未入力 正徹 (xxx)
くる雁よたれかうらみの玉章もみるめなきさの浪にぬらすな
くるかりよ−たれかうらみの−たまつさも−みるめなきさの−なみにぬらすな |
04550 |
未入力 正徹 (xxx)
よこの海の夕浪さむく雁そ鳴く秋風いかかしほつすか原
よこのうみの−ゆふなみさむく−かりそなく−あきかせいかか−しほつすかはら |
04551 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きてくる雲井の雁の玉章も袖まきほさぬ秋の夕風
なきてくる−くもゐのかりの−たまつさも−そてまきほさぬ−あきのゆふかせ |
04552 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟雲まの浪の夕月夜それもほのかにわたる雁かね
あまをふね−くもまのなみの−ゆふつくよ−それもほのかに−わたるかりかね |
04553 |
未入力 正徹 (xxx)
面かけそつらなりきたるやと過くる夕の雁はいててみねとも
おもかけそ−つらなりきたる−やとすくる−ゆふへのかりは−いててみねとも |
04554 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染の夕の袖やしほるらん雁かねこゆる嶺の山てら
すみそめの−ゆふへのそてや−しほるらむ−かりかねこゆる−みねのやまてら |
04555 |
未入力 正徹 (xxx)
かたわくや秋の雲ゐのこまとりにあらそひきたる雁の一行
かたわくや−あきのくもゐの−こまとりに−あらそひきたる−かりのひとつら |
04556 |
未入力 正徹 (xxx)
二かたによるやあわをのあはぬまにこゑもわかれて雁はきにけり
ふたかたに−よるやあわをの−あはぬまに−こゑもわかれて−かりはきにけり |
04557 |
未入力 正徹 (xxx)
橋ひめのまつ夜むなしき玉章に雁かねつらき宇治の曙
はしひめの−まつよむなしき−たまつさに−かりかねつらき−うちのあけほの |
04558 |
未入力 正徹 (xxx)
こまとむる夕浪さひてひのくまや此川上に雁なきわたる
こまとむる−ゆふなみさひて−ひのくまや−このかはかみに−かりなきわたる |
04559 |
未入力 正徹 (xxx)
うきねせぬ野に見えつるかち枕空にのこれる雁の声かな
うきねせぬ−ゆめにみえつる−かちまくら−そらにのこれる−かりのこゑかな |
04560 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねとふ杣のかりやに声みれはうつすみなはの雁の一すち
たかねとふ−そまのかりやに−こゑみれは−うつすみなはの−かりのひとすち |
04561 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の霜むすはん草にふすうつら衣ありとも床なたのみそ
あきのしも−むすはむくさに−ふすうつら−ころもありとも−とこなたのみそ |
04562 |
未入力 正徹 (xxx)
深草や春こし花も墨染の夕の野へにうつら鳴くなり
ふかくさや−はるこしはなも−すみそめの−ゆふへののへに−うつらなくなり |
04563 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑの行く袖の下よりたつ鶉あはれみなてし世もや有りけん
すゑのゆく−そてのしたより−たつうつら−あはれみなてし−よもやありけむ |
04564 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれうつら鳴くのの露ちりて入江のはしをわたる秋かせ
ゆふまくれ−うつらなくのの−つゆちりて−いりえのはしを−わたるあきかせ |
04565 |
未入力 正徹 (xxx)
ふか草や秋のうつらの床の夢えやはふしみん野への木からし
ふかくさや−あきのうつらの−とこのゆめ−えやはふしみむ−のへのこからし |
04566 |
未入力 正徹 (xxx)
都鳥はねかく事やすみた川田面の鴫のほとにまかはは
みやことり−はねかくことや−すみたかは−たのものしきの−ほとにまかはは |
04567 |
未入力 正徹 (xxx)
あくるまてかくや百羽をやすめつつくるる沢田に鴫のふすらん
あくるまて−かくやももはを−やすめつつ−くるるさはたに−しきのふすらむ |
04568 |
未入力 正徹 (xxx)
たえたえに霧吹きのこす山本の野分さひしき鴫のはねかき
たえたえに−きりふきのこす−やまもとの−のわきさひしき−しきのはねかき |
04569 |
未入力 正徹 (xxx)
摘みのこす沢辺の若菜草立ちて鴫のふしとをかくす秋かな
つみのこす−さはへのわかな−くさたちて−しきのふしとを−かくすあきかな |
04570 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟入江の沢による浪のかすかく鴫の夕くれのこゑ
あまをふね−いりえのさはに−よるなみの−かすかくしきの−ゆふくれのこゑ |
04571 |
未入力 正徹 (xxx)
秋は又沢への蛍もえあかす思ひのかすを鴫のはねかき
あきはまた−さはへのほたる−もえあかす−おもひのかすを−しきのはねかき |
04572 |
未入力 正徹 (xxx)
庵ちかき沢田の鴫も立ちぬれて百羽かきさすふかき夜の雨
いほちかき−さはたのしきも−たちぬれて−ももはかきさす−ふかきよのあめ |
04573 |
未入力 正徹 (xxx)
明渡る秋の沢水霧はれて鴫の百羽もかすそさやけき
あけわたる−あきのさはみつ−きりはれて−しきのももはも−かすそさやけき |
04574 |
未入力 正徹 (xxx)
みちてかく時やはあらん秋の月心にみかきもてる鏡は
みちてかく−ときやはあらむ−あきのつき−こころにみかき−もてるかかみは |
04575 |
未入力 正徹 (xxx)
あはれまぬ神はいかなるちかひとかみさ山かけに鹿の鳴くらん
あはれまぬ−かみはいかなる−ちかひとか−みさやまかけに−しかのなくらむ |
04576 |
未入力 正徹 (xxx)
秋にうき庭の荻原そよかすは空吹く風をききやすくさむ
あきにうき−にはのをきはら−そよかすは−そらふくかせを−ききやすくさむ |
04577 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原はさても何ゆゑ秋風のかなしかるへき声をもちけん
をきはらは−さてもなにゆゑ−あきかせの−かなしかるへき−こゑをもちけむ |
04578 |
未入力 正徹 (xxx)
しをれともすゑふしはてぬ荻原にかへるをきけは葛のうら風
しをれとも−すゑふしはてぬ−をきはらに−かへるをきけは−くすのうらかせ |
04579 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風を待ちとる戸もすくなきはせはき軒はの荻の一本
あきかせを−まちとるこゑも−すくなきは−せはきのきはの−をきのひともと |
04580 |
未入力 正徹 (xxx)
山ち行く荻の葉風はつよくなりて木のまもる日の袖によわれる
やまちゆく−をきのはかせは−つよくなりて−このまもるひの−そてによわれる |
04581 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やわか夕くれと秋風の吹きにし日より声そこたふる
をきはらや−わかゆふくれと−あきかせの−ふきにしひより−こゑそこたふる |
04582 |
未入力 正徹 (xxx)
里わかすうき秋風の吹きくるをとはすかたりの荻の声かな
さとわかす−うきあきかせの−ふきくるを−とはすかたりの−をきのこゑかな |
04583 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか吹く都のやとの荻にさへ秋のこころのあらきはま風
いかかふく−みやこのやとの−をきにさへ−あきのこころの−あらきはまかせ |
04584 |
未入力 正徹 (xxx)
秋きぬとつけの枕にしらせけりねてのあさけの荻の初かせ
あききぬと−つけのまくらに−しらせけり−ねてのあさけの−をきのはつかせ |
04585 |
未入力 正徹 (xxx)
葛かかる庭の荻はらしほれともさのみ聞えぬ秋風の声
くすかかる−にはのをきはら−しほれとも−さのみきこえぬ−あきかせのこゑ |
04586 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけはいつれの草か音たてぬ秋を待ちとる荻のはそうき
かせふけは−いつれのくさか−おとたてぬ−あきをまちとる−をきのはそうき |
04587 |
未入力 正徹 (xxx)
玉ささにおつるそそよく秋風のふかぬ夕の荻のした露
たまささに−おつるそそよく−あきかせの−ふかぬゆふへの−をきのしたつゆ |
04588 |
未入力 正徹 (xxx)
わか袖にやとれしら露荻はらやすゑこす風は心なくとも
わかそてに−やとれしらつゆ−をきはらや−すゑこすかせは−こころなくとも |
04589 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やきけは心もみたれ葉に露をあらそふ秋のはつ風
をきはらや−きけはこころも−みたれはに−つゆをあらそふ−あきのはつかせ |
04590 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみなと千草の中に荻ひとりうき秋風を人に告くらん
さのみなと−ちくさのうちに−をきひとり−うきあきかせを−ひとにつくらむ |
04591 |
未入力 正徹 (xxx)
下荻の上の思ひもほに出てて色かはり行く露の秋かせ
したをきの−うへのおもひも−ほにいてて−いろかはりゆく−つゆのあきかせ |
04592 |
未入力 正徹 (xxx)
出ててみるわれならねとも風ふけは月におきふす庭の荻かな
いててみる−われならねとも−かせふけは−つきにおきふす−にはのをきかな |
04593 |
未入力 正徹 (xxx)
ききてなと袖しほるらん荻にこそうき秋風の音信もあれ
ききてなと−そてしほるらむ−をきにこそ−うきあきかせの−おとつれもあれ |
04594 |
未入力 正徹 (xxx)
をきのはにうき秋風となりそめし世のゆゑしらぬ袖の露かな
をきのはに−うきあきかせと−なりそめし−よのゆゑしらぬ−そてのつゆかな |
04595 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もまたたそかれ時の風なからとはぬをなのる荻の声かな
あきもまた−たそかれときの−かせなから−とはぬをなのる−をきのこゑかな |
04596 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やうきはいかなるゆゑそとも猶いひしらぬ風の音かな
をきはらや−うきはいかなる−ゆゑそとも−なほいひしらぬ−かせのおとかな |
04597 |
未入力 正徹 (xxx)
しめゆひし荻の葉もりの神風もありてやしるく秋を告くらん
しめゆひし−をきのはもりの−かみかせも−ありてやしるく−あきをつくらむ |
04598 |
未入力 正徹 (xxx)
荻のはの風は嵐に吹きなりて日ことに秋の声そはけしき
をきのはの−かせはあらしに−ふきなりて−ひことにあきの−こゑそはけしき |
04599 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふかす荻のはならぬ夕暮を身のうきひまとたのむ秋かな
かせふかす−をきのはならぬ−ゆふくれを−みのうきひまと−たのむあきかな |
04600 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風はいかに吹くともあはれてふ声になつけそ庭の荻原
あきかせは−いかにふくとも−あはれてふ−こゑになつけそ−にはのをきはら |
04601 |
未入力 正徹 (xxx)
風そよく荻の葉分の夕月夜月としもなき影そみたるる
かせそよく−をきのはわけの−ゆふつくよ−つきとしもなき−かけそみたるる |
04602 |
未入力 正徹 (xxx)
ふけは又わか心にもうき秋をしのひにすくる荻の夕かせ
ふけはまた−わかこころにも−うきあきを−しのひにすくる−をきのゆふかせ |
04603 |
未入力 正徹 (xxx)
光いてむ其暁の夢覚めてうしとはきかしをきの上風
ひかりいてむ−そのあかつきの−ゆめさめて−うしとはきかし−をきのうはかせ |
04604 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふ夜半の嵐に中たえぬ荻のは渡る夢の通路
つゆはらふ−よはのあらしに−なかたえぬ−をきのはわたる−ゆめのかよひち |
04605 |
未入力 正徹 (xxx)
夢さそふ軒の嵐におとろけは荻の末はの長き夜の月
ゆめさそふ−のきのあらしに−おとろけは−をきのすゑはの−なかきよのつき |
04606 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風に覚めつる後は荻の葉のすゑふすひまの夢をたにみゆ
あきかせに−さめつるのちは−をきのはの−すゑふすひまの−ゆめをたにみゆ |
04607 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬる床もうきたる夢は荻のはの露吹く風のまへにきえつつ
ぬるとこも−うきたるゆめは−をきのはの−つゆふくかせの−まへにきえつつ |
04608 |
未入力 正徹 (xxx)
昔こそおとろかしつれ荻のはのかせまつ夢は覚めてかへりぬ
むかしこそ−おとろかしつれ−をきのはの−かせまつゆめは−さめてかへりぬ |
04609 |
未入力 正徹 (xxx)
跡そなき風まつ程の荻の葉にやとりし夢も露のまにして
あとそなき−かせまつほとの−をきのはに−やとりしゆめも−つゆのまにして |
04610 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひ行く夢ちとほさぬ声もうし人ならぬ荻のかせの関守
かよひゆく−ゆめちとほさぬ−こゑもうし−ひとならぬをきの−かせのせきもり |
04611 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく秋の夢ちにおきふしてかよひかねたる宿の荻原
あらしふく−あきのゆめちに−おきふして−かよひかねたる−やとのをきはら |
04612 |
未入力 正徹 (xxx)
さはりける夜はの夢路のあしわけは秋くる風のあらき浜をき
さはりける−よはのゆめちの−あしわけは−あきくるかせの−あらきはまをき |
04613 |
未入力 正徹 (xxx)
ふくる夜の風の下なる荻はふせとおきゐしままの夢そさめ行く
ふくるよの−かせのしもなる−をきはふせと−おきゐしままの−ゆめそさめゆく |
04614 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風も後にこそきけ下荻のほなみうちこす夜はの枕は
あきかせも−のちにこそきけ−したをきの−ほなみうちこす−よはのまくらは |
04615 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きかへす夜半の衣のうら風に荻のほなみのうつまくらかな
ふきかへす−よはのころもの−うらかせに−をきのほなみの−うつまくらかな |
04616 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原や嵐はすきしみたれはの立ちなほるこゑも夜そ身にしむ
をきはらや−あらしはすきし−みたれはの−たちなほるこゑも−よるそみにしむ |
04617 |
未入力 正徹 (xxx)
おとにさへやみほあやなし夕月夜入りぬる庭の荻のうは風
おとにさへ−やみほあやなし−ゆふつくよ−いりぬるにはの−をきのうはかせ |
04618 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の日は糸よりよわきささかにの雲のはたてに荻のうは風
あきのひは−いとよりよわき−ささかにの−くものはたてに−をきのうはかせ |
04619 |
未入力 正徹 (xxx)
伊勢の海の荻の葉さそな都たに夕たつ声のあらき浜風
いせのうみの−をきのはさそな−みやこたに−ゆふたつこゑの−あらきはまかせ |
04620 |
未入力 正徹 (xxx)
とはるるをよそにききても袖ぬれぬたか宿しらぬ荻の夕風
とはるるを−よそにききても−そてぬれぬ−たかやとしらぬ−をきのゆふかせ |
04621 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかなる荻の葉分の夕月夜もるとしもなき影そすくなき
しつかなる−をきのはわけの−ゆふつくよ−もるとしもなき−かけそすくなき |
04622 |
未入力 正徹 (xxx)
ねぬる夜の風さえわたりたえて行く荻の末葉や夢のうきはし
ねぬるよの−かせさえわたり−たえてゆく−をきのすゑはや−ゆめのうきはし |
04623 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかき夜の野分にしをる荻はらやすゑふす露を月そかたしく
ふかきよの−のわきにしをる−をきはらや−すゑふすつゆを−つきそかたしく |
04624 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はたた夜半に荻原うつ雨の風にまされる音はねられす
あきはたた−よはにをきはら−うつあめの−かせにまされる−おとはねられす |
04625 |
未入力 正徹 (xxx)
風さへもふかくは分けぬ荻原にかくれて秋をしらぬ庵かな
かせさへも−ふかくはわけぬ−をきはらに−かくれてあきを−しらぬいほかな |
04626 |
未入力 正徹 (xxx)
宿みれは昔夜ことにねし床は荻のはしけく秋風そ吹く
やとみれは−むかしよことに−ねしとこは−をきのはしけく−あきかせそふく |
04627 |
未入力 正徹 (xxx)
此庵の秋風まてはまたなれすききこしものを荻のやけ原
このいほの−あきかせまては−またなれす−ききこしものを−をきのやけはら |
04628 |
未入力 正徹 (xxx)
今さらにうきを中中えそしらぬ荻にかくれし宿の秋風
いまさらに−うきをなかなか−えそしらぬ−をきにかくれし−やとのあきかせ |
04629 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ人も嵐のやとり荻はらにかくれもはてぬ道のへの宿
すむひとも−あらしのやとり−をきはらに−かくれもはてぬ−みちのへのやと |
04630 |
未入力 正徹 (xxx)
露やさき風や後とも秋のくるしるしもみえぬ庭の荻原
つゆやさき−かせやのちとも−あきのくる−しるしもみえぬ−にはのをきはら |
04631 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれ苔ふる庭の石たたきおつる羽風そ荻に声する
ゆふまくれ−こけふるにはの−いしたたき−おつるはかせそ−をきにこゑする |
04632 |
未入力 正徹 (xxx)
苔の上におちくる鳥の羽風にも一もとそよく庭の荻原
こけのうへに−おちくるとりの−はかせにも−ひともとそよく−にはのをきはら |
04633 |
未入力 正徹 (xxx)
をきの葉もならす扇に露おちていつれもおかぬ軒の秋風
をきのはも−ならすあふきに−つゆおちて−いつれもおかぬ−のきのあきかせ |
04634 |
未入力 正徹 (xxx)
袖とふも老はくるしき秋風におきふしやすき庭の荻かな
そてとふも−おいはくるしき−あきかせに−おきふしやすき−にはのをきかな |
04635 |
未入力 正徹 (xxx)
下荻の露も嵐もしほるなり秋にやあるるまかきならまし
したをきの−つゆもあらしも−しほるなり−あきにやあるる−まかきならまし |
04636 |
未入力 正徹 (xxx)
うちそよきちかき籬の山人のとふかときけは荻の上風
うちそよき−ちかきまかきの−やまひとの−とふかときけは−をきのうはかせ |
04637 |
未入力 正徹 (xxx)
荻はらや霧のまかきはたのむかひ嵐の庭にたへすふしつつ
をきはらや−きりのまかきは−たのむかひ−あらしのにはに−たへすふしつつ |
04638 |
未入力 正徹 (xxx)
籬よりかたふく荻のすゑの松たえすほなみをこす嵐かな
まかきより−かたふくをきの−すゑのまつ−たえすほなみを−こすあらしかな |
04639 |
未入力 正徹 (xxx)
荻をあめる野守か庵のかりの戸にあまりてそよく四方の秋風
をきをあめる−のもりかいほの−かりのとに−あまりてそよく−よものあきかせ |
04640 |
未入力 正徹 (xxx)
まきの戸をたたかぬのみや尋ねくる人にはあらぬ荻のうは風
まきのとを−たたかぬのみや−たつねくる−ひとにはあらぬ−をきのうはかせ |
04641 |
未入力 正徹 (xxx)
した荻を風はわくとも山里に人くとつけよ秋のうくひす
したをきを−かせはわくとも−やまさとに−ひとくとつけよ−あきのうくひす |
04642 |
未入力 正徹 (xxx)
初尾花ふりはへけりな荻はらや分けくる人の袖のあらしは
はつをはな−ふりはへけりな−をきはらや−わけくるひとの−そてのあらしは |
04643 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへる袖かとそきく夜半の戸になひきてさはる荻の末はを
たちかへる−そてかとそきく−よはのとに−なひきてさはる−をきのすゑはを |
04644 |
未入力 正徹 (xxx)
をき原や都にうときうら浪の声を枕の遠つ秋風
をきはらや−みやこにうとき−うらなみの−こゑをまくらの−とほつあきかせ |
04645 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やふる江をかけて秋風のわたれとぬれぬほなみをそこす
をきはらや−ふるえをかけて−あきかせの−わたれとぬれぬ−ほなみをそこす |
04646 |
未入力 正徹 (xxx)
あくる夜の入え漕きさり行く舟に秋風おくるさとの荻はら
あくるよの−いりえこきさり−ゆくふねに−あきかせおくる−さとのをきはら |
04647 |
未入力 正徹 (xxx)
石にたつ入江のす鳥ほしあへぬ羽風も秋にそよくをきはら
いしにたつ−いりえのすとり−ほしあへぬ−はかせもあきに−そよくをきはら |
04648 |
未入力 正徹 (xxx)
露は先入江の宿の秋風に荻のはよする夜半のうら浪
つゆはまつ−いりえのやとの−あきかせに−をきのはよする−よはのうらなみ |
04649 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やうしともしらぬあま人はきくにもあらし秋のはま風
をきはらや−うしともしらぬ−あまひとは−きくにもあらし−あきのはまかせ |
04650 |
未入力 正徹 (xxx)
はま荻や人は旅ねもしら浪の打ちふけて行く秋のしほかせ
はまをきや−ひとはたひねも−しらなみの−うちふけてゆく−あきのしほかせ |
04651 |
未入力 正徹 (xxx)
まのの浦に浪よるを花色きえてたつ夕霧にうつら鳴くなり
まののうらに−なみよるをはな−いろきえて−たつゆふきりに−うつらなくなり |
04652 |
未入力 正徹 (xxx)
花薄しらす冬をやまねくらん暮行く秋のうきにたへつつ
はなすすき−しらすふゆをや−まねくらむ−くれゆくあきの−うきにたへつつ |
04653 |
未入力 正徹 (xxx)
松陰の岩もとすすきほのほのとあらはれきゆるみねの朝霧
まつかけの−いはもとすすき−ほのほのと−あらはれきゆる−みねのあさきり |
04654 |
未入力 正徹 (xxx)
あはれめよおもきらひせぬみとり子のさし出す手とみゆるを花そ
あはれめよ−おもきらひせぬ−みとりこの−さしいたすてと−みゆるをはなそ |
04655 |
未入力 正徹 (xxx)
風さゆる秋のすゑののすすきはらかれなて袖の霜なうらみそ
かせさゆる−あきのすゑのの−すすきはら−かれなてそての−しもなうらみそ |
04656 |
未入力 正徹 (xxx)
のこりなく尾花ちるなり秋の袖あらはそあたに誰をまねかん
のこりなく−をはなちるなり−あきのそて−あらはそあたに−たれをまねかむ |
04657 |
未入力 正徹 (xxx)
ほにいてはまねきかへせと初秋の薄にかよふよひの稲妻
ほにいては−まねきかへせと−はつあきの−すすきにかよふ−よひのいなつま |
04658 |
未入力 正徹 (xxx)
露なれぬ初花すすき手のうちの玉なくたきそ野への秋風
つゆなれぬ−はつはなすすき−てのうちの−たまなくたきそ−のへのあきかせ |
04659 |
未入力 正徹 (xxx)
みたるなり日影も見えすくもるにも薄ちる野の秋のいとゆふ
みたるなり−ひかけもみえす−くもるにも−すすきちるのの−あきのいとゆふ |
04660 |
未入力 正徹 (xxx)
こきかへす松浦の山の花すすきいまもひれふる興つ舟人
こきかへす−まつらのやまの−はなすすき−いまもひれふる−おきつふなひと |
04661 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふかき尾花かもとのかすかすに思ひしのはてむしや鳴くらむ
あきふかき−をはなかもとの−かすかすに−おもひしのはて−むしやなくらむ |
04662 |
未入力 正徹 (xxx)
くるる野の一むらすすき紫の色しらねともあはれとそみる
くるるのの−ひとむらすすき−むらさきの−いろしらねとも−あはれとそみる |
04663 |
未入力 正徹 (xxx)
村すすきまねくをみれは出てやらて秋のほならす野へのいなつま
むらすすき−まねくをみれは−いてやらて−あきのほならす−のへのいなつま |
04664 |
未入力 正徹 (xxx)
このねぬる初花すすき紫のたかもとゆひか今朝はとくらん
このねぬる−はつはなすすき−むらさきの−たかもとゆひか−けさはとくらむ |
04665 |
未入力 正徹 (xxx)
しけき野と今ならすともわか庵の一村すすき露な忘れそ
しけきのと−いまならすとも−わかいほの−ひとむらすすき−つゆなわすれそ |
04666 |
未入力 正徹 (xxx)
たか秋と岩もと薄いはねともまねかぬ袖の露そかれ行く
たかあきと−いはもとすすき−いはねとも−まねかぬそての−つゆそかれゆく |
04667 |
未入力 正徹 (xxx)
契りきや時を待ちえてほにいつる一花すすき秋のはつかせ
ちきりきや−ときをまちえて−ほにいつる−ひとはなすすき−あきのはつかせ |
04668 |
未入力 正徹 (xxx)
太山にはおつるかいさやわしのはのきりふの薄秋風そふく
みやまには−おつるかいさや−わしのはの−きりふのすすき−あきかせそふく |
04669 |
未入力 正徹 (xxx)
けさも猶露そこほるる主しらぬ袖のわかれの庭のを薄
けさもなほ−つゆそこほるる−ぬししらぬ−そてのわかれの−にはのをすすき |
04670 |
未入力 正徹 (xxx)
山ひめの袖やはつるるいと薄玉ぬく露をみたす秋風
やまひめの−そてやはつるる−いとすすき−たまぬくつゆを−みたすあきかせ |
04671 |
未入力 正徹 (xxx)
花すすきたかふりはてて色かはる蓬かかみに袖おほふらん
はなすすき−たかふりはてて−いろかはる−よもきかかみに−そておほふらむ |
04672 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむ一村すすき秋風のまねく程たにふかぬ夕は
みにそしむ−ひとむらすすき−あきかせの−まねくほとたに−ふかぬゆふへは |
04673 |
未入力 正徹 (xxx)
花薄わか袖ひとつたのむとてはらへはうとし露の秋風
はなすすき−わかそてひとつ−たのむとて−はらへはうとし−つゆのあきかせ |
04674 |
未入力 正徹 (xxx)
石たたきおつる羽風にみたれても音なき庭の薄一もと
いしたたき−おつるはかせに−みたれても−おとなきにはの−すすきひともと |
04675 |
未入力 正徹 (xxx)
夕露の岩もとすすき末ふしておちくる鳥のはね音もせす
ゆふつゆの−いはもとすすき−すゑふして−おちくるとりの−はねおともせす |
04676 |
未入力 正徹 (xxx)
わか袖と一もと薄まねくとも人やはとはんやとの秋かせ
わかそてと−ひともとすすき−まねくとも−ひとやはとはむ−やとのあきかせ |
04677 |
未入力 正徹 (xxx)
風渡る峰の尾花の袖さむみ雲のはたてにたれまねくらん
かせわたる−みねのをはなの−そてさむみ−くものはたてに−たれまねくらむ |
04678 |
未入力 正徹 (xxx)
ほに出つるを花みたれて遠かたの入日をまねく野への秋かせ
ほにいつる−をはなみたれて−をちかたの−いりひをまねく−のへのあきかせ |
04679 |
未入力 正徹 (xxx)
たか袖も尾花かもとにそふ草の思ひそひろきのへの夕露
たかそても−をはなかもとに−そふくさの−おもひそひろき−のへのゆふつゆ |
04680 |
未入力 正徹 (xxx)
宿はあれぬくれなはなけと松かねの岩もと薄たれまねくらん
やとはあれぬ−くれなはなけと−まつかねの−いはもとすすき−たれまねくらむ |
04681 |
未入力 正徹 (xxx)
雲の上ははるけき野への薄にもこき紫の袖そふれ行く
くものうへは−はるけきのへの−すすきにも−こきむらさきの−そてそふれゆく |
04682 |
未入力 正徹 (xxx)
わか袖の露よりしけし花すすきひろ野や秋の袂なるらん
わかそての−つゆよりしけし−はなすすき−ひろのやあきの−たもとなるらむ |
04683 |
未入力 正徹 (xxx)
花薄しをるるみれは露わけしをちかた人の袖そ残れる
はなすすき−しをるるみれは−つゆわけし−をちかたひとの−そてそのこれる |
04684 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野山岩もとすすきむすほほれいる人したふ袖のしからみ
よしのやま−いはもとすすき−むすほほれ−いるひとしたふ−そてのしからみ |
04685 |
未入力 正徹 (xxx)
まねくへき人はゆけとも薄原手もさし出てぬのへの初秋
まねくへき−ひとはゆけとも−すすきはら−てもさしいてぬ−のへのはつあき |
04686 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりすむ草の庵の村薄たれ分けきてか心みたれん
ひとりすむ−くさのいほりの−むらすすき−たれわけきてか−こころみたれむ |
04687 |
未入力 正徹 (xxx)
尾花ふくいつの御幸の宿ふりてつらねしのへに袖のこるらん
をはなふく−いつのみゆきの−やとふりて−つらねしのへに−そてのこるらむ |
04688 |
未入力 正徹 (xxx)
ふもとなる岩もと薄折れそふすむへ山人の袖ふれてけり
ふもとなる−いはもとすすき−をれそふす−うへやまひとの−そてふれてけり |
04689 |
未入力 正徹 (xxx)
野への尾花きえもてくれや夕霧にをちかた人の袖そちかつく
のへのをはな−きえもてくれや−ゆふきりに−をちかたひとの−そてそちかつく |
04690 |
未入力 正徹 (xxx)
風かよふ薄はかりの草のはら年ことになにをまねきとむらん
かせかよふ−すすきはかりの−くさのはら−としことになにを−まねきとむらむ |
04691 |
未入力 正徹 (xxx)
花すすき手にとりもてる露にたに契あさちか原の秋風
はなすすき−てにとりもてる−つゆにたに−ちきりあさちか−はらのあきかせ |
04692 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜よを花かもとの草の原思ひある袖のおほふはかりは
つゆしもよ−をはなかもとの−くさのはら−おもひあるそての−おほふはかりは |
04693 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風声しのはらのしの薄しのにおく露ちらぬまもなし
あきのかせ−こゑしのはらの−しのすすき−しのにおくつゆ−ちらぬまもなし |
04694 |
未入力 正徹 (xxx)
初尾花袖につつみもうつもれて茂るにせはき原の池みつ
はつをはな−そてにつつみも−うつもれて−しけるにせはき−はらのいけみつ |
04695 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の一もとゆゑの露や猶萩さくのへにおきあまるらむ
むらさきの−ひともとゆゑの−つゆやなほ−はきさくのへに−おきあまるらむ |
04696 |
未入力 正徹 (xxx)
しらぬ野の冬の草葉とかれんまて秋をあらすな庭の村萩
しらぬのの−ふゆのくさはと−かれむまて−あきをあらすな−にはのむらはき |
04697 |
未入力 正徹 (xxx)
かのみゆるをちかた人の分くる袖うつろふものそ露のはきはら
かのみゆる−をちかたひとの−わくるそて−うつろふものそ−つゆのはきはら |
04698 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のかりほの小萩鹿のねをと山になして色かはり行く
あきのたの−かりほのこはき−しかのねを−とやまになして−いろかはりゆく |
04699 |
未入力 正徹 (xxx)
高円のをのへに残る萩の戸の花やあれにし色をこふらん
たかまとの−をのへにのこる−はきのとの−はなやあれにし−いろをこふらむ |
04700 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑてみよ葉におく露もこと草のおよはぬ萩は花さかすとも
うゑてみよ−はにおくつゆも−ことくさの−およはぬはきは−はなさかすとも |
04701 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれ小萩か上の露もみすこまかにそそく秋の村雨
ゆふまくれ−こはきかうへの−つゆもみす−こまかにそそく−あきのむらさめ |
04702 |
未入力 正徹 (xxx)
人こすは露やはえなく思はまし宿の萩原花に開くとも
ひとこすは−つゆやはえなく−おもはまし−やとのはきはら−はなにさくとも |
04703 |
未入力 正徹 (xxx)
さく花の色もうつさす萩の葉になにそは茂る秋のしら玉
さくはなの−いろもうつさす−はきのはに−なにそはしける−あきのしらたま |
04704 |
未入力 正徹 (xxx)
白玉かなにそととへは萩のうへの影はこたへすふるさとの月
しらたまか−なにそととへは−はきのうへの−かけはこたへす−ふるさとのつき |
04705 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきの露も雫もわきてみす霧ふるのへに遠の山風
あきはきの−つゆもしつくも−わきてみす−きりふるのへに−をちのやまかせ |
04706 |
未入力 正徹 (xxx)
花も葉もなきかおほかる秋萩に雁の涙の露そ置きそふ
はなもはも−なきかおほかる−あきはきに−かりのなみたの−つゆそおきそふ |
04707 |
未入力 正徹 (xxx)
秋萩の露を分けきて墨染もけふや錦の袖と見ゆらん
あきはきの−つゆをわけきて−すみそめも−けふやにしきの−そてとみゆらむ |
04708 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきのは山を庭の籬にて露なかれ行く花の下水
あきはきの−はやまをにはの−まかきにて−つゆなかれゆく−はなのしたみつ |
04709 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にふす萩の下はふ枝川のみとりも花の色そうつろふ
なみにふす−はきのしたはふ−えたかはの−みとりもはなの−いろそうつろふ |
04710 |
未入力 正徹 (xxx)
さきかかる岸の萩原かつちりてみなわ色なる玉川の浪
さきかかる−きしのはきはら−かつちりて−みなわいろなる−たまかはのなみ |
04711 |
未入力 正徹 (xxx)
影うつる萩のにしきの中絶えて水の上野に秋かせそふく
かけうつる−はきのにしきの−なかたえて−みつのうへのに−あきかせそふく |
04712 |
未入力 正徹 (xxx)
さく萩の色なうつしそ妻とみて鹿も思ひをかくる川なみ
さくはきの−いろなうつしそ−つまとみて−しかもおもひを−かくるかはなみ |
04713 |
未入力 正徹 (xxx)
唐あゐの色は下葉そこま錦たつや花さくのへの萩はら
からあゐの−いろはしたはそ−こまにしき−たつやはなさく−のへのはきはら |
04714 |
未入力 正徹 (xxx)
たつた姫こまのにしきを八百はたにおるや広のの秋萩の花
たつたひめ−こまのにしきを−やほはたに−おるやひろのの−あきはきのはな |
04715 |
未入力 正徹 (xxx)
心行く秋まちえてや真萩原花のもろひもときわたすらん
こころゆく−あきまちえてや−まはきはら−はなのもろひも−ときわたすらむ |
04716 |
未入力 正徹 (xxx)
氷室よりたねやうゑけん花の色に雪をいたせる庭の秋はき
ひむろより−たねやうゑけむ−はなのいろに−ゆきをいたせる−にはのあきはき |
04717 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふかは軒にみたれてみちのくの岩ほにすれる萩か花すり
しのふかは−のきにみたれて−みちのくの−いはほにすれる−はきかはなすり |
04718 |
未入力 正徹 (xxx)
高円の宮人たえしをのへとや道もふる枝の萩そすくなき
たかまとの−みやひとたえし−をのへとや−みちもふるえの−はきそすくなき |
04719 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきの下葉の露も高円の尾上の松ににほふ秋かせ
あきはきの−したはのつゆも−たかまとの−をのへのまつに−にほふあきかせ |
04720 |
未入力 正徹 (xxx)
とはれねは庭に日影はさしなから萩の錦そくらき夜のやみ
とはれねは−にはにひかけは−さしなから−はきのにしきそ−くらきよのやみ |
04721 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれつつゆききの岡の萩はらに月日うつろふあすか川なみ
なかれつつ−ゆききのをかの−はきはらに−つきひうつろふ−あすかかはなみ |
04722 |
未入力 正徹 (xxx)
苔なからふりぬる庭の小萩原あさ露かけて誰にみせまし
こけなから−ふりぬるにはの−こはきはら−あさつゆかけて−たれにみせまし |
04723 |
未入力 正徹 (xxx)
朝霧の野へ立ちわかれ行く鹿の跡に露けき萩か花つま
あさきりの−のへたちわかれ−ゆくしかの−あとにつゆけき−はきかはなつま |
04724 |
未入力 正徹 (xxx)
夕露に萩そ花さく紅葉せぬ下葉や雁の涙まつらん
ゆふつゆに−はきそはなさく−もみちせぬ−したはやかりの−なみたまつらむ |
04725 |
未入力 正徹 (xxx)
まてしはし萩の下葉も色つかすひとりある人の袖の夕露
まてしはし−はきのしたはも−いろつかす−ひとりあるひとの−そてのゆふつゆ |
04726 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はきの花のうす霧吹きまよひ露さへくもるのへのゆふかせ
あきはきの−はなのうすきり−ふきまよひ−つゆさへくもる−のへのゆふかせ |
04727 |
未入力 正徹 (xxx)
花も葉もうつろひそめて朝夕の露のみさむきをのの萩はら
はなもはも−うつろひそめて−あさゆふの−つゆのみさむき−をののはきはら |
04728 |
未入力 正徹 (xxx)
手折るとてたれかもすそを引まのに朝置く露の見えぬ萩はら
たをるとて−たれかもすそを−ひくまのに−あさおくつゆの−みえぬはきはら |
04729 |
未入力 正徹 (xxx)
花はまた遠里をのの萩かえに露たにおかは先やたをらん
はなはまた−とほさとをのの−はきかえに−つゆたにおかは−まつやたをらむ |
04730 |
未入力 正徹 (xxx)
あつまちやわくる萩原面かけに先宮木のの露の衣手
あつまちや−わくるはきはら−おもかけに−まつみやきのの−つゆのころもて |
04731 |
未入力 正徹 (xxx)
はきの葉に露おく玉そ花にます光なけちそのへの朝霧
はきのはに−つゆおくたまそ−はなにます−ひかりなけちそ−のへのあさきり |
04732 |
未入力 正徹 (xxx)
つくしにも紫生ふる紫のしめのの萩も秋やわすれぬ
つくしにも−むらさきおふる−むらさきの−しめののはきも−あきやわすれぬ |
04733 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよいさみに行きて手折らんと人にはいひしのへの秋萩
こころせよ−いさみにゆきて−たをらむと−ひとにはいひし−のへのあきはき |
04734 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかの分けつるみちの小萩原露けき花に結ふ秋萩
さをしかの−わけつるみちの−こはきはら−つゆけきはなに−むすふあきはき |
04735 |
未入力 正徹 (xxx)
玉鉾の行ての小萩折りとらはのこれる花の色やあせなむ
たまほこの−ゆくてのこはき−をりとらは−のこれるはなの−いろやあせなむ |
04736 |
未入力 正徹 (xxx)
高円のをのへの雲の上人もわけけん露や野への萩はら
たかまとの−をのへのくもの−うへひとも−わけけむつゆや−のへのはきはら |
04737 |
未入力 正徹 (xxx)
たかまとのをのへの萩のすり衣みたれてくたる雲の秋風
たかまとの−をのへのはきの−すりころも−みたれてくたる−くものあきかせ |
04738 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の雨のいとを錦のたてぬきに玉おりいたす花の萩原
あきのあめの−いとをにしきの−たてぬきに−たまおりいたす−はなのはきはら |
04739 |
未入力 正徹 (xxx)
をみなへしたちそかくみる玉たれのこすの大野の霧の戸張に
をみなへし−たちそかくみる−たまたれの−こすのおほのの−きりのとはりに |
04740 |
未入力 正徹 (xxx)
風のまの霧の戸はりに立ちかくれのへおくふかき女郎花かな
かせのまの−きりのとはりに−たちかくれ−のへおくふかき−をみなへしかな |
04741 |
未入力 正徹 (xxx)
ふちはかまぬしなき野へに匂ふをは風もあはれと立ちやよるらん
ふちはかま−ぬしなきのへに−にほふをは−かせもあはれと−たちやよるらむ |
04742 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の一花すりのふちはかま野風をとほみ匂ふころかな
むらさきの−ひとはなすりの−ふちはかま−のかせをとほみ−にほふころかな |
04743 |
未入力 正徹 (xxx)
心をはいさしら菊の露霜にうつろふ色やさかりなるらん
こころをは−いさしらきくの−つゆしもに−うつろふいろや−さかりなるらむ |
04744 |
未入力 正徹 (xxx)
百色の花のおととときくの露あはれはかけよ草のこのかみ
ももいろの−はなのおととと−きくのつゆ−あはれはかけよ−くさのこのかみ |
04745 |
未入力 正徹 (xxx)
うつろふもさらに老せぬ色なれやわかむらさきの菊の籬は
うつろふも−さらにおいせぬ−いろなれや−わかむらさきの−きくのまかきは |
04746 |
未入力 正徹 (xxx)
初霜のたてそふ菊の露のぬき今仙人や衣おるらむ
はつしもの−たてそふきくの−つゆのぬき−いまやまひとや−ころもおるらむ |
04747 |
未入力 正徹 (xxx)
仙人の菊うる市か花のえの露あたたむるあさ日さすなり
やまひとの−きくうるいちか−はなのえの−つゆあたたむる−あさひさすなり |
04748 |
未入力 正徹 (xxx)
霜そなきうつろふ菊のこむらさきたかもとゆひの露結ふらん
しもそなき−うつろふきくの−こむらさき−たかもとゆひの−つゆむすふらむ |
04749 |
未入力 正徹 (xxx)
白菊のちらぬためしも露霜に猶うつろはぬ秋やまちけん
しらきくの−ちらぬためしも−つゆしもに−なほうつろはぬ−あきやまちけむ |
04750 |
未入力 正徹 (xxx)
花の露うけてや年をのはへけん菊うる市の秋のもろ人
はなのつゆ−うけてやとしを−のはへけむ−きくうるいちの−あきのもろひと |
04751 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまほ籬と見えし霧はれて月にかかれる庭の白菊
くるるまは−まかきとみえし−きりはれて−つきにかかれる−にはのしらきく |
04752 |
未入力 正徹 (xxx)
かけみゆる籬の菊の花さかりま砂そ庭の月にうつろふ
かけみゆる−まかきのきくの−はなさかり−まさこそにはの−つきにうつろふ |
04753 |
未入力 正徹 (xxx)
秋草を花のなこりと白菊のちらぬまかきそ日数へにける
あきくさを−はなのなこりと−しらきくの−ちらぬまかきそ−ひかすへにける |
04754 |
未入力 正徹 (xxx)
さく菊のまかきはしけくかこはねと秋のととまる関とならすや
さくきくの−まかきはしけく−かこはねと−あきのととまる−せきとならすや |
04755 |
未入力 正徹 (xxx)
色そあらぬ籬の霜の花染に染めいたす菊は紫にして
いろそあらぬ−まかきのしもの−はなそめに−そめいたすきくは−むらさきにして |
04756 |
未入力 正徹 (xxx)
まかきこす日影も菊もくれなゐに匂ふか上の露のしら玉
まかきこす−ひかけもきくも−くれなゐに−にほふかうへの−つゆのしらたま |
04757 |
未入力 正徹 (xxx)
さく菊のかけうく谷の下水に光なしともみえぬ秋かな
さくきくの−かけうくたにの−したみつに−ひかりなしとも−みえぬあきかな |
04758 |
未入力 正徹 (xxx)
露おちてなかるる水に山人もすむらん谷の白菊の花
つゆおちて−なかるるみつに−やまひとも−すむらむたにの−しらきくのはな |
04759 |
未入力 正徹 (xxx)
花の色のうつろふよりもねをあたにさす山岸の菊の一本
はなのいろの−うつろふよりも−ねをあたに−さすやまきしの−きくのひともと |
04760 |
未入力 正徹 (xxx)
かさしてもあかぬ袂にこき入れてかへる山ちも菊を分けつつ
かさしても−あかぬたもとに−こきいれて−かへるやまちも−きくをわけつつ |
04761 |
未入力 正徹 (xxx)
めくるまの花そしをるるさか月にうかへし菊の露なしにして
めくるまの−はなそしをるる−さかつきに−うかへしきくの−つゆなしにして |
04762 |
未入力 正徹 (xxx)
いく秋にめくりあはましつむ菊の花をうかふるけふのさか月
いくあきに−めくりあはまし−つむきくの−はなをうかふる−けふのさかつき |
04763 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふけてうつろふ菊もよもあらし霜をいたたく下の思ひは
あきふけて−うつろふきくも−よもあらし−しもをいたたく−したのおもひは |
04764 |
未入力 正徹 (xxx)
春秋の千世を友にや契るらんちらぬ花さく菊のはま松
はるあきの−ちよをともにや−ちきるらむ−ちらぬはなさく−きくのはままつ |
04765 |
未入力 正徹 (xxx)
吹上のはまのま砂もしら菊のまたうつろほぬ秋そまかへる
ふきあけの−はまのまさこも−しらきくの−またうつろほぬ−あきそまかへる |
04766 |
未入力 正徹 (xxx)
すみよしや雁なく浜に菊そさく秋にも春の海へともかな
すみよしや−かりなくはまに−きくそさく−あきにもはるの−うみへともかな |
04767 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ちり菊もうつろひ行く水の心ととめぬ秋の庭かな
このはちり−きくもうつろひ−ゆくみつの−こころととめぬ−あきのにはかな |
04768 |
未入力 正徹 (xxx)
露にたにぬれてほすまは千世そふる折る袖あらふ菊の下水
つゆにたに−ぬれてほすまは−ちよそふる−をるそてあらふ−きくのしたみつ |
04769 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜の染めかへぬまもなかれ出てて雲にうつろふきくのした水
つゆしもの−そめかへぬまも−なかれいてて−くもにうつろふ−きくのしたみつ |
04770 |
未入力 正徹 (xxx)
山ち行く菊の下水海にいてて浪もよもきか島によるらん
やまちゆく−きくのしたみつ−うみにいてて−なみもよもきか−しまによるらむ |
04771 |
未入力 正徹 (xxx)
水無川秋のかたみをおきの海に開きうつろはぬしら菊の花
みなせかは−あきのかたみを−おきのうみに−さきうつろはぬ−しらきくのはな |
04772 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やこえ行く浪に千世をせけ菊さく谷の秋のうき橋
やまかはや−こえゆくなみに−ちよをせけ−きくさくたにの−あきのうきはし |
04773 |
未入力 正徹 (xxx)
朝霜のきえし露ほすきくのえに匂ふ日影もかたふきにけり
あさしもの−きえしつゆほす−きくのえに−にほふひかけも−かたふきにけり |
04774 |
未入力 正徹 (xxx)
長月の秋の末まてさく花のよはひはのへよきくのした露
なかつきの−あきのすゑまて−さくはなの−よはひはのへよ−きくのしたつゆ |
04775 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はいぬうつろひのこるしら菊のはなれかたくや露むすふらん
あきはいぬ−うつろひのこる−しらきくの−はなれかたくや−つゆむすふらむ |
04776 |
未入力 正徹 (xxx)
おく露に影なき星のにほふとも空にしられぬしら菊の花
おくつゆに−かけなきほしの−にほふとも−そらにしられぬ−しらきくのはな |
04777 |
未入力 正徹 (xxx)
長月のたもとにほはせ紅のすゑつむ菊のはなのしたみつ
なかつきの−たもとにほはせ−くれなゐの−すゑつむきくの−はなのしたみつ |
04778 |
未入力 正徹 (xxx)
たか袖かぬれてにほはん露なからけふつむ菊の行末の秋
たかそてか−ぬれてにほはむ−つゆなから−けふつむきくの−ゆくすゑのあき |
04779 |
未入力 正徹 (xxx)
たか御代かけふさく菊の九重にめくり初めけん花のさかつき
たかみよか−けふさくきくの−ここのへに−めくりそめけむ−はなのさかつき |
04780 |
未入力 正徹 (xxx)
雲の上にこと葉の花をちらすけふにほひをそふる庭の白菊
くものうへに−ことはのはなを−ちらすけふ−にほひをそふる−にはのしらきく |
04781 |
未入力 正徹 (xxx)
わか心さもあさちふの宿の露ふかくは秋のなに結ふらん
わかこころ−さもあさちふの−やとのつゆ−ふかくはあきの−なにむすふらむ |
04782 |
未入力 正徹 (xxx)
はらふとも涙露ほす世やはあらん心浅ちかやとの秋かせ
はらふとも−なみたつゆほす−よやはあらむ−こころあさちか−やとのあきかせ |
04783 |
未入力 正徹 (xxx)
霜そうき去年の野分の後まても消えぬをたのむ浅ちふの露
しもそうき−こそののわきの−のちまても−きえぬをたのむ−あさちふのつゆ |
04784 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふかき露にかたふくあさちふの末はをしたにかるるのへかな
あきふかき−つゆにかたふく−あさちふの−すゑはをしたに−かるるのへかな |
04785 |
未入力 正徹 (xxx)
折れかへりけにことわりのみたれとも野分にゆるす庭のかるかや
をれかへり−けにことわりの−みたれとも−のわきにゆるす−にはのかるかや |
04786 |
未入力 正徹 (xxx)
野への鹿啼くねもかれぬ露霜にたてる千種の色なうらみそ
のへのしか−なくねもかれぬ−つゆしもに−たてるちくさの−いろなうらみそ |
04787 |
未入力 正徹 (xxx)
又や夢かれにし虫のねをしのふ霜のの草の秋のすゑ葉は
またやゆめ−かれにしむしの−ねをしのふ−しもののくさの−あきのすゑはは |
04788 |
未入力 正徹 (xxx)
木の間行く秋の日影もくれなゐの匂ふか上にふる時雨かな
このまゆく−あきのひかけも−くれなゐの−にほふかうへに−ふるしくれかな |
04789 |
未入力 正徹 (xxx)
たつた姫秋の手染のいとなみもまなく時雨るる梢にそみる
たつたひめ−あきのてそめの−いとなみも−まなくしくるる−こすゑにそみる |
04790 |
未入力 正徹 (xxx)
千しほなる色に照して秋の日のよわきもしらぬ嶺の紅葉は
ちしほなる−いろにてらして−あきのひの−よわきもしらぬ−みねのもみちは |
04791 |
未入力 正徹 (xxx)
露時雨そめすはありとも名にしおふ色や八しほの岡の紅葉は
つゆしくれ−そめすはありとも−なにしおふ−いろややしほの−をかのもみちは |
04792 |
未入力 正徹 (xxx)
くれなゐの袖かとまかふもみち葉の下てる姫やあまくたるらん
くれなゐの−そてかとまかふ−もみちはの−したてるひめや−あまくたるらむ |
04793 |
未入力 正徹 (xxx)
染めおきし高ねのもみちかつちるをうらむる雲はよそに時雨れて
そめおきし−たかねのもみち−かつちるを−うらむるくもは−よそにしくれて |
04794 |
未入力 正徹 (xxx)
入日さす紅葉の上の村時雨そめやほすまや長月の空
いりひさす−もみちのうへの−むらしくれ−そめやほすまや−なかつきのそら |
04795 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜の山そはつ染もみちもてかけしは遠き天の川橋
つゆしもの−やまそはつそめ−もみちもて−かけしはとほき−あまのかははし |
04796 |
未入力 正徹 (xxx)
くれなゐのすゑつむ花の下ひもをとくや八しほの岡の紅葉は
くれなゐの−すゑつむはなの−したひもを−とくややしほの−をかのもみちは |
04797 |
未入力 正徹 (xxx)
ましりてもこは世中の人心もみちするより松そよそなる
ましりても−こはよのなかの−ひとこころ−もみちするより−まつそよそなる |
04798 |
未入力 正徹 (xxx)
おく山にし水むすひし人たえて岩かきもみちとはぬ秋かな
おくやまに−しみつむすひし−ひとたえて−いはかきもみち−とはぬあきかな |
04799 |
未入力 正徹 (xxx)
山風のわたれは錦中たゆる秋のこすゑや立田川なみ
やまかせの−わたれはにしき−なかたゆる−あきのこすゑや−たつたかはなみ |
04800 |
未入力 正徹 (xxx)
夕嵐くれなゐふかき紫の梢をくたく嶺のもみちは
ゆふあらし−くれなゐふかき−むらさきの−こすゑをくたく−みねのもみちは |
04801 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれねと千しほの色になら坂やこのて柏は手染なるらん
しくれねと−ちしほのいろに−ならさかや−このてかしはは−てそめなるらむ |
04802 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかからぬ紅葉の上の染川やなかるる雲のしくれなるらむ
ふかからぬ−もみちのうへの−そめかはや−なかるるくもの−しくれなるらむ |
04803 |
未入力 正徹 (xxx)
白雲のかかれる時やたつた山春見し花の秋のもみちは
しらくもの−かかれるときや−たつたやま−はるみしはなの−あきのもみちは |
04804 |
未入力 正徹 (xxx)
雲の上の乙女恋ひてや天の戸にたつらむ秋の嶺の錦木
くものうへの−をとめこひてや−あまのとに−たつらむあきの−みねのにしきき |
04805 |
未入力 正徹 (xxx)
したてらす山桜戸のもみち葉の花よりいそく明ほのの空
したてらす−やまさくらとの−もみちはの−はなよりいそく−あけほののそら |
04806 |
未入力 正徹 (xxx)
うつり行く時雨の跡の山めくり又一しほのもみちをそ見る
うつりゆく−しくれのあとの−やまめくり−またひとしほの−もみちをそみる |
04807 |
未入力 正徹 (xxx)
置く露にぬれてほせとや紅葉はの下染いそく夕日さすらん
おくつゆに−ぬれてほせとや−もみちはの−したそめいそく−ゆふひさすらむ |
04808 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もまたしくれぬ山はもみちはの色そあさはの野への下草
あきもまた−しくれぬやまは−もみちはの−いろそあさはの−のへのしたくさ |
04809 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日かけきゆる梢のはつ染を雲のはたてにいそく秋かな
ゆふひかけ−きゆるこすゑの−はつそめを−くものはたてに−いそくあきかな |
04810 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ふかき心の色の初そめを梢にいそく露のもみち葉
あきふかき−こころのいろの−はつそめを−こすゑにいそく−つゆのもみちは |
04811 |
未入力 正徹 (xxx)
浦にやくあまのしわさも時過くる嶺のもみちの秋の初しほ
うらにやく−あまのしわさも−ときすくる−みねのもみちの−あきのはつしほ |
04812 |
未入力 正徹 (xxx)
枝分にぬれてほすまの一しほにしくれしままの村紅葉かな
えたわけに−ぬれてほすまの−ひとしほに−しくれしままの−むらもみちかな |
04813 |
未入力 正徹 (xxx)
八千しほにたてる紅葉は雲ときえ雨としくれし人の袖かも
やちしほに−たてるもみちは−くもときえ−あめとしくれし−ひとのそてかも |
04814 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の日のよわき影とやもみちはにやとるもうすき梢なるらん
あきのひの−よわきかけとや−もみちはに−やとるもうすき−こすゑなるらむ |
04815 |
未入力 正徹 (xxx)
高根なる紅葉のかけの朝日かけのほるもはやく色そうつろふ
たかねなる−もみちのかけの−あさひかけ−のほるもはやく−いろそうつろふ |
04816 |
未入力 正徹 (xxx)
色そふも秋の日よわき影はをし春ならましの山の紅葉は
いろそふも−あきのひよわき−かけはをし−はるならましの−やまのもみちは |
04817 |
未入力 正徹 (xxx)
立田姫ならふ梢のかた思ひいかなる色に染めまさるらん
たつたひめ−ならふこすゑの−かたおもひ−いかなるいろに−そめまさるらむ |
04818 |
未入力 正徹 (xxx)
山風も時雨れて染めよ長月の梢のよそに有明の月
やまかせも−しくれてそめよ−なかつきの−こすゑのよそに−ありあけのつき |
04819 |
未入力 正徹 (xxx)
山の名のこまの錦のはしさすや苔の莚のよものもみちは
やまのなの−こまのにしきの−はしさすや−こけのむしろの−よものもみちは |
04820 |
未入力 正徹 (xxx)
たつたひめやみのにしきの明ほのに匂ふ紅葉の秋の衣手
たつたひめ−やみのにしきの−あけほのに−にほふもみちの−あきのころもて |
04821 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ霧のへたて分けたるむら紅葉松はつらくもなき山ちかな
あさきりの−へたてわけたる−むらもみち−まつはつらくも−なきやまちかな |
04822 |
未入力 正徹 (xxx)
色ふかき梢の雲の浪まよりくれなゐくくる峰の紅葉は
いろふかき−こすゑのくもの−なみまより−くれなゐくくる−みねのもみちは |
04823 |
未入力 正徹 (xxx)
影ふかきもみちのみなわ行く秋をさかまきかへす早せ川なみ
かけふかき−もみちのみなわ−ゆくあきを−さかまきかへす−はやせかはなみ |
04824 |
未入力 正徹 (xxx)
立田山ちらぬもみちに木かくれてゆふ付鳥のこゑそしくるる
たつたやま−ちらぬもみちに−こかくれて−ゆふつけとりの−こゑそしくるる |
04825 |
未入力 正徹 (xxx)
あらし吹くさほ山川の浪かけてうつるもさそふ秋の紅葉は
あらしふく−さほやまかはの−なみかけて−うつるもさそふ−あきのもみちは |
04826 |
未入力 正徹 (xxx)
村時雨しのに衣をかせ山の色や千しほに染めてほすらん
むらしくれ−しのにころもを−かせやまの−いろやちしほに−そめてほすらむ |
04827 |
未入力 正徹 (xxx)
ふらぬまもおのれ時雨れて色なきや紅葉のおくの嶺の松風
ふらぬまも−おのれしくれて−いろなきや−もみちのおくの−みねのまつかせ |
04828 |
未入力 正徹 (xxx)
わひ人の手折る山ちの下紅葉涙しくれて色やまさらん
わひひとの−たをるやまちの−したもみち−なみたしくれて−いろやまさらむ |
04829 |
未入力 正徹 (xxx)
いこま山ぬるる紅紫の色も見ん時雨れて後の雲なかくしそ
いこまやま−ぬるるももちの−いろもみむ−しくれてのちの−くもなかくしそ |
04830 |
未入力 正徹 (xxx)
さしも草しくるれは猶もゆるこそいふきのみねの紅葉なりけり
さしもくさ−しくるれはなほ−もゆるこそ−いふきのみねの−もみちなりけり |
04831 |
未入力 正徹 (xxx)
よるはとて嶺に入日のゆつりてし月や紅葉のあるししむらん
よるはとて−みねにいりひの−ゆつりてし−つきやもみちの−あるししむらむ |
04832 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺たかき梢は雨に色そひて谷の戸くらき秋の夕霧
みねたかき−こすゑはあめに−いろそひて−たにのとくらき−あきのゆふきり |
04833 |
未入力 正徹 (xxx)
是も又都の秋の紅葉はをわたらは錦中川の水
これもまた−みやこのあきの−もみちはを−わたらはにしき−なかかはのみつ |
04834 |
未入力 正徹 (xxx)
いこま山秋のもみちを吹きなかせ手染しらなみ天の川かせ
いこまやま−あきのもみちを−ふきなかせ−てそめしらなみ−あまのかはかせ |
04835 |
未入力 正徹 (xxx)
大井川御舟うかへし浪の上にかけさへ年をふる紅葉かな
おほゐかは−みふねうかへし−なみのうへに−かけさへとしを−ふるもみちかな |
04836 |
未入力 正徹 (xxx)
立田川神代もきかぬ紅葉こそ今おりいたす錦なりけれ
たつたかは−かみよもきかぬ−もみちこそ−いまおりいたす−にしきなりけれ |
04837 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとのあけのそほ舟朝しほに満ちたる色や浦の紅葉は
やまもとの−あけのそほふね−あさしほに−みちたるいろや−うらのもみちは |
04838 |
未入力 正徹 (xxx)
かけあらふ浪のにしきの紅葉はは磯たちならすあま人もなし
かけあらふ−なみのにしきの−もみちはは−いそたちならす−あまひともなし |
04839 |
未入力 正徹 (xxx)
紅葉はをはたやく山となかむらん土佐のとわたる秋の舟人
もみちはを−はたやくやまと−なかむらむ−とさのとわたる−あきのふなひと |
04840 |
未入力 正徹 (xxx)
山姫の滝のしら糸むら染になして落ちそふ嶺の紅葉は
やまひめの−たきのしらいと−むらそめに−なしておちそふ−みねのもみちは |
04841 |
未入力 正徹 (xxx)
滝の上にうかふゆつはの村紅葉たえたえそむる秋のしら浪
たきのうへに−うかふゆつはの−むらもみち−たえたえそむる−あきのしらなみ |
04842 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜のをかの屋かたに色まさる紅葉のあるし誰を待つらん
つゆしもの−をかのやかたに−いろまさる−もみちのあるし−たれをまつらむ |
04843 |
未入力 正徹 (xxx)
日影みし岡のはし原色きえて遠き垣ねに鵙の一声
ひかけみし−をかのはしはら−いろきえて−とほきかきねに−もすのひとこゑ |
04844 |
未入力 正徹 (xxx)
遠さかり行てのもみちかへりみて杜のしめ縄ひく心かな
とほさかり−ゆくてのもみち−かへりみて−もりのしめなは−ひくこころかな |
04845 |
未入力 正徹 (xxx)
おのか毛の色になかしそまとりすむうなての杜の秋の紅葉は
おのかけの−いろになかしそ−まとりすむ−うなてのもりの−あきのもみちは |
04846 |
未入力 正徹 (xxx)
さしいてむかた枝もなしや秋霧にふりこめらるる山の杖葉は
さしいてむ−かたえもなしや−あききりに−ふりこめらるる−やまのもみちは |
04847 |
未入力 正徹 (xxx)
見む人の色にそむなと秋の霧うき世へたつる山の紅葉は
みむひとの−いろにそむなと−あきのきり−うきよへたつる−やまのもみちは |
04848 |
未入力 正徹 (xxx)
立田姫いかに契りて色かくすゆふきりそむる山のもみちは
たつたひめ−いかにちきりて−いろかくす−ゆふきりそむる−やまのもみちは |
04849 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらすなよ老木のははそ今一目あひみんまての露の秋風
ちらすなよ−おいきのははそ−いまひとめ−あひみむまての−つゆのあきかせ |
04850 |
未入力 正徹 (xxx)
山ちゆけいはたのははそ色付きて鶉なくなりをのの秋きり
やまちゆけ−いはたのははそ−いろつきて−うつらなくなり−をののあききり |
04851 |
未入力 正徹 (xxx)
もすのなく櫨のもみちの夕日影きゆるかたへや野へのむら霧
もすのなく−はしのもみちの−ゆふひかけ−きゆるかたへや−のへのむらきり |
04852 |
未入力 正徹 (xxx)
鵙のなくみかきか原の朝露にぬれて色こき櫨の紅葉は
もすのなく−みかきかはらの−あさつゆに−ぬれていろこき−はしのもみちは |
04853 |
未入力 正徹 (xxx)
ふり出てぬ太山かくれの思川うき水上の秋のもみちは
ふりいてぬ−みやまかくれの−おもひかは−うきみなかみの−あきのもみちは |
04854 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとのあけのそほ舟こきいつる雲の浪ちの嶺の紅葉は
やまもとの−あけのそほふね−こきいつる−くものなみちの−みねのもみちは |
04855 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きあらすもみちの山のかけの庵とはははるけし風の下みち
ふきあらす−もみちのやまの−かけのいほ−とはははるけし−かせのしたみち |
04856 |
未入力 正徹 (xxx)
色ふかくてらす紅葉の庭はかりしはしよそなる秋の夕やみ
いろふかく−てらすもみちの−にははかり−しはしよそなる−あきのゆふやみ |
04857 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かくれ汀のちりとつもるともかきもはらはし宿の紅葉は
いはかくれ−みきはのちりと−つもるとも−かきもはらはし−やとのもみちは |
04858 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる庭の薄のみたれほにかつちりましる秋の紅葉は
かせわたる−にはのすすきの−みたれほに−かつちりましる−あきのもみちは |
04859 |
未入力 正徹 (xxx)
かわくなよ時雨にのこる庭たつみ影まてそむる秋のもみち葉
かわくなよ−しくれにのこる−にはたつみ−かけまてそむる−あきのもみちは |
04860 |
未入力 正徹 (xxx)
松かけのもみちやくれてわきもこかあかもたれひき立つとみゆらん
まつかけの−もみちやくれて−わきもこか−あかもたれひき−たつとみゆらむ |
04861 |
未入力 正徹 (xxx)
もみち葉も秋は色色にとふ鳥のあすかわかるる里の川かせ
もみちはも−あきはいろいろに−とふとりの−あすかわかるる−さとのかはかせ |
04862 |
未入力 正徹 (xxx)
漕きいたす紅葉のかけのうき枕夜のまの床もあけのそほ舟
こきいたす−もみちのかけの−うきまくら−よのまのとこも−あけのそほふね |
04863 |
未入力 正徹 (xxx)
露そめし千しほはちりてのこる枝に初霜いそく秋の紅葉は
つゆそめし−ちしほはちりて−のこるえに−はつしもいそく−あきのもみちは |
04864 |
未入力 正徹 (xxx)
木からしや千しほのかきり露霜の山の嵐の秋のむら雨
こからしや−ちしほのかきり−つゆしもの−やまのあらしの−あきのむらさめ |
04865 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけはもろき柞の秋の色を染むるもあさきえやは時雨れし
かせふけは−もろきははその−あきのいろを−そむるもあさき−えやはしくれし |
04866 |
未入力 正徹 (xxx)
露のかす山のにしきか立田姫おるともみえす染むるともなし
つゆのかす−やまのにしきか−たつたひめ−おるともみえす−そむるともなし |
04867 |
未入力 正徹 (xxx)
初時雨しのたの杜の千枝のはもまた一しほの色に染めつつ
はつしくれ−しのたのもりの−ちえのはも−またひとしほの−いろにそめつつ |
04868 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そみるこかね花さくみちのくの山の木の葉の色をひとつに
あきそみる−こかねはなさく−みちのくの−やまのこのはの−いろをひとつに |
04869 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくをも秋やかまくら山とみん金花さく下紅葉かな
いつくをも−あきやかまくら−やまとみむ−こかねはなさく−したもみちかな |
04870 |
未入力 正徹 (xxx)
紅葉はのぬるるかほなる色そこき朝露見えぬ秋の遠山
もみちはの−ぬるるかほなる−いろそこき−あさつゆみえぬ−あきのとほやま |
04871 |
未入力 正徹 (xxx)
秋山の時雨の露のうは染にのこる色なきよものもみちは
あきやまの−しくれのつゆの−うはそめに−のこるいろなき−よものもみちは |
04872 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれ行く山ちの露にぬれてほす一しほ染の秋の紅葉は
しくれゆく−やまちのつゆに−ぬれてほす−ひとしほそめの−あきのもみちは |
04873 |
未入力 正徹 (xxx)
くもるなよ夕日の色に染めいたす山の木のはをまたぬ時雨は
くもるなよ−ゆふひのいろに−そめいたす−やまのこのはを−またぬしくれは |
04874 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人の秋の思ひを木木のはにかけてもうすき露の下そめ
さとひとの−あきのおもひを−ききのはに−かけてもうすき−つゆのしたそめ |
04875 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくそやこかね花さく山はきけとはをつくしたる林をそみる
いつくそや−こかねはなさく−やまはきけと−はをつくしたる−はやしをそみる |
04876 |
未入力 正徹 (xxx)
夜半にせし野分うらむる村雨に朝かせかこつ庭の松むし
よはにせし−のわきうらむる−むらさめに−あさかせかこつ−にはのまつむし |
04877 |
未入力 正徹 (xxx)
たかつくる玉章ならぬ荻のはに野分の風のかへしをそみる
たかつくる−たまつさならぬ−をきのはに−のわきのかせの−かへしをそみる |
04878 |
未入力 正徹 (xxx)
風あらき庭の千草はみな臥して木のはにましるひはたふき板
かせあらき−にはのちくさは−みなふして−このはにましる−ひはたふきいた |
04879 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の草分くるはてなきむさし野は霜にあへるや限なるらん
あきのくさ−わくるはてなき−むさしのは−しもにあへるや−かきりなるらむ |
04880 |
未入力 正徹 (xxx)
朝霜わたちそみゆるを車や長きよと野に行きかへるらん
あさしもに−わたちそみゆる−をくるまや−なかきよとのに−ゆきかへるらむ |
04881 |
未入力 正徹 (xxx)
長月の霜に跡なき草の原花ほいかにと誰にとほまし
なかつきの−しもにあとなき−くさのはら−はなほいかにと−たれにとはまし |
04882 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふこと有明の月も老髪の千すちに霜をそふる秋かな
おもふこと−ありあけのつきも−おいかみの−ちすちにしもを−そふるあきかな |
04883 |
未入力 正徹 (xxx)
行末も湊を秋のとまりとや稲葉をさらぬを田の秋風
ゆくすゑも−みなとをあきの−とまりとや−いなはをさらぬ−をたのあきかせ |
04884 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ふく音そなかるる白川に河なき山の関の秋かせ
このはふく−おとそなかるる−しらかはに−かはなきやまの−せきのあきかせ |
04885 |
未入力 正徹 (xxx)
時しあれは夜を長月の夢よりもうつつはかなく暮るる秋かな
ときしあれは−よをなかつきの−ゆめよりも−うつつはかなく−くるるあきかな |
04886 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はけふ野山の露の下染をしくるる冬にまかせてや行く
あきはけふ−のやまのつゆの−したそめを−しくるるふゆに−まかせてやゆく |
04887 |
未入力 正徹 (xxx)
をた巻を何につけてかしたひゆかむかへる所もしらぬ秋かな
をたまきを−なににつけてか−したひゆかむ−かへるところも−しらぬあきかな |
04888 |
未入力 正徹 (xxx)
長き夜にのこされてこそのこるらめ月におくるる秋もうらめし
なかきよに−のこされてこそ−のこるらめ−つきにおくるる−あきもうらめし |
04889 |
未入力 正徹 (xxx)
うきはたたもとの身にして長月の秋をおくると思ひけるかな
うきはたた−もとのみにして−なかつきの−あきをおくると−おもひけるかな |
04890 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ゆかは跡をあれねと草も木もなと木枯の吹きはらふらん
あきゆかは−あとをあれねと−くさもきも−なとこからしの−ふきはらふらむ |
04891 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そ猶行へしられぬとふ鳥の跡は夕の雲ものこれり
あきそなほ−ゆくへしられぬ−とふとりの−あとはゆふへの−くもものこれり |
04892 |
未入力 正徹 (xxx)
つねよりも秋は長居の浜つつらをりはへ浪にかへる程なさ
つねよりも−あきはなかゐの−はまつつら−をりはへなみに−かへるほとなさ |
04893 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やけふかへりあるしもしらさらん早くひま行く駒にまかせて
あきやけふ−かへりあるしも−しらさらむ−はやくひまゆく−こまにまかせて |
04894 |
未入力 正徹 (xxx)
長月の末のの雲の初時雨まちかき冬にあはて消えめや
なかつきの−すゑののくもの−はつしくれ−まちかきふゆに−あはてきえめや |
04895 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜をきえぬうき身にのこしおきて老の坂こえ秋や行くらん
つゆしもを−きえぬうきみに−のこしおきて−おいのさかこえ−あきやゆくらむ |
04896 |
未入力 正徹 (xxx)
くみとむる秋ともかなや長月の日数なかるる菊のした水
くみとむる−あきともかなや−なかつきの−ひかすなかるる−きくのしたみつ |
04897 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるまて秋にはうとき花そののこてう恋しき宿の白菊
くるるまて−あきにはうとき−はなそのの−こてうこひしき−やとのしらきく |
04898 |
未入力 正徹 (xxx)
けふそわか袖まて匂ふ長月の末つむ菊の宿のかさしに
けふそわか−そてまてにほふ−なかつきの−すゑつむきくの−やとのかさしに |
04899 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やこれ紅葉の上のむら時雨そめてつくさてかへるうき雲
あきやこれ−もみちのうへの−むらしくれ−そめてつくさて−かへるうきくも |
04900 |
未入力 正徹 (xxx)
行く秋のかたみあたなる横雲のきえはともにと残る月かけ
ゆくあきの−かたみあたなる−よこくもの−きえはともにと−のこるつきかけ |
04901 |
未入力 正徹 (xxx)
わかれ行く秋のぬきおく露霜のかたみならねとうつ衣かな
わかれゆく−あきのぬきおく−つゆしもの−かたみならねと−うつころもかな |
04902 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとてかへる朝か秋のきる衣川なみきりにしをれて
いまはとて−かへるあしたか−あきのきる−ころもかはなみ−きりにしをれて |
04903 |
未入力 正徹 (xxx)
涼しくも空に過きこし秋風を風やはけしく又おくるらん
すすしくも−そらにすきこし−あきかせを−かせやはけしく−またおくるらむ |
04904 |
未入力 正徹 (xxx)
空もいま秋と冬とのあひのかせくるかしたふか雲そ時雨るる
そらもいま−あきとふゆとの−あひのかせ−くるかしたふか−くもそしくるる |
04905 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねくる時雨も秋にあはすとや木の葉うらみて雲かへるらん
たつねくる−しくれもあきに−あはすとや−このはうらみて−くもかへるらむ |
04906 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はいぬ猶色のこせ雲となり雨と時雨れし行へたにうし
あきはいぬ−なほいろのこせ−くもとなり−あめとしくれし−ゆくへたにうし |
04907 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまもなき袖の時雨と嶺の雲あらそひかねてかへる秋かな
ひまもなき−そてのしくれと−みねのくも−あらそひかねて−かへるあきかな |
04908 |
未入力 正徹 (xxx)
消えやらておくるる秋のかたみともせめては露の身をやたのまん
きえやらて−おくるるあきの−かたみとも−せめてはつゆの−みをやたのまむ |
04909 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れぬとて野にも山にも行く秋にのこりて露のあすやこほらん
くれぬとて−のにもやまにも−ゆくあきに−のこりてつゆの−あすやこほらむ |
04910 |
未入力 正徹 (xxx)
夕露を苔のたもとに置きとめてたえし物とや秋の行くらん
ゆふつゆを−こけのたもとに−おきとめて−たえしものとや−あきのゆくらむ |
04911 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく草のやとりに我を置きて袂の露ときゆる秋かな
あらしふく−くさのやとりに−われをおきて−たもとのつゆと−きゆるあきかな |
04912 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れやすき秋の日影のいくたひかしくるる雲の衣ほすらん
くれやすき−あきのひかけの−いくたひか−しくるるくもの−ころもほすらむ |
04913 |
未入力 正徹 (xxx)
行く秋もわかれの涙おさへかねもらすか雲の袖にしくるる
ゆくあきも−わかれのなみた−おさへかね−もらすかくもの−そてにしくるる |
04914 |
未入力 正徹 (xxx)
室山にのこる日影もたかつきの村雲なから時雨れてそ行く
むろやまに−のこるひかけも−たかつきの−むらくもなから−しくれてそゆく |
04915 |
未入力 正徹 (xxx)
いくとせか草はひかかる霜の松かれなてかへる秋をうらみん
いくとせか−くさはひかかる−しものまつ−かれなてかへる−あきをうらみむ |
04916 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れて行く秋のかたみをかささきのわたせるはしにかかる霜かな
くれてゆく−あきのかたみを−かささきの−わたせるはしに−かかるしもかな |
04917 |
未入力 正徹 (xxx)
いたたくは秋くる風に先置きて草葉そ末の長月の霜
いたたくは−あきくるかせに−まつおきて−くさはそすゑの−なかつきのしも |
04918 |
未入力 正徹 (xxx)
すてしよりわかもとゆひはなけれとも暮行く秋の結ふ霜かな
すてしより−わかもとゆひは−なけれとも−くれゆくあきの−むすふしもかな |
04919 |
未入力 正徹 (xxx)
長月やたかくろかみに初霜の秋のかたみを置きわするらん
なかつきや−たかくろかみに−はつしもの−あきのかたみを−おきわするらむ |
04920 |
未入力 正徹 (xxx)
夕霜に声なつくしそ鈴虫もふりすてかたく思ふ秋かは
ゆふしもに−こゑなつくしそ−すすむしも−ふりすてかたく−おもふあきかは |
04921 |
未入力 正徹 (xxx)
したふとや翅はやめて行く秋のみねの入日にくもる雁かね
したふとや−つはさはやめて−ゆくあきの−みねのいりひに−くもるかりかね |
04922 |
未入力 正徹 (xxx)
おきて行く秋のかたみをうしとたに岩もとこすけ長月の霜
おきてゆく−あきのかたみを−うしとたに−いはもとこすけ−なかつきのしも |
04923 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川やかけとめられて水車行きめくる秋をはてやうらやむ
うちかはや−かけとめられて−みつくるま−ゆきめくるあきを−はてやうらやむ |
04924 |
未入力 正徹 (xxx)
夕くれも猶たのみあり秋はまた冬にうつらぬさ夜の明ほの
ゆふくれも−なほたのみあり−あきはまた−ふゆにうつらぬ−さよのあけほの |
04925 |
未入力 正徹 (xxx)
はやき瀬の世をうき草と秋そ行く水もさそはぬ年の日数を
はやきせの−よをうきくさと−あきそゆく−みつもさそはぬ−としのひかすを |
04926 |
未入力 正徹 (xxx)
めくり行く床の涙のうたかたに秋さへ冬にあはて消えめや
めくりゆく−とこのなみたの−うたかたに−あきさへふゆに−あはてきえめや |
04927 |
未入力 正徹 (xxx)
あすや又秋をおくりて行く雲の冬のしくれとふりてかへらむ
あすやまた−あきをおくりて−ゆくくもの−ふゆのしくれと−ふりてかへらむ |
04928 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくて今年も冬の隣まて老行く秋のやとりとりぬる
つれなくて−ことしもふゆの−となりまて−おいゆくあきの−やとりとりぬる |
04929 |
未入力 正徹 (xxx)
きゆるをそ今年もみつる玉のをの我か長月の末の朝露
きゆるをそ−ことしもみつる−たまのをの−わかなかつきの−すゑのあさつゆ |
04930 |
未入力 正徹 (xxx)
うら風やたれも待恋ひて浜松になれにし三の秋は行くらん
うらかせや−たれもまちこひて−はままつに−なれにしみつの−あきはゆくらむ |
04931 |
未入力 正徹 (xxx)
色かはる木の葉は風そ身のうさをさそひてかへれ長月の秋
いろかはる−このははかせそ−みのうさを−さそひてかへれ−なかつきのあき |
04932 |
未入力 正徹 (xxx)
しくるとも空に往来の関はなしぬれてさはらぬ秋や過くらん
しくるとも−そらにゆききの−せきはなし−ぬれてさはらぬ−あきやすくらむ |
04933 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐吹く夕のかねも行く秋をしたふかたにや声なひくらん
あらしふく−ゆふへのかねも−ゆくあきを−したふかたにや−こゑなひくらむ |
04934 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは声のおよはん所まて行く秋したへ入会のかね
よしさらは−こゑのおよはむ−ところまて−ゆくあきしたへ−いりあひのかね |
04935 |
未入力 正徹 (xxx)
山風も秋のなこりもなるかねのいろなる声に行く木の葉かな
やまかせも−あきのなこりも−なるかねの−いろなるこゑに−ゆくこのはかな |
04936 |
未入力 正徹 (xxx)
人そねぬ今夜もりきてはつ時雨秋のわかれをとふのすかこも
ひとそねぬ−こよひもりきて−はつしくれ−あきのわかれを−とふのすかこも |
04937 |
未入力 正徹 (xxx)
わきてなほ出雲八重垣けふしこそ神にしたかふ冬もきぬらめ
わきてなほ−いつもやへかき−けふしこそ−かみにしたかふ−ふゆもきぬらめ |
04938 |
未入力 正徹 (xxx)
神無月あさの衣をかさねても今日こそやかて冬もりぬれ
かみなつき−あさのころもを−かさねても−けふこそやかて−ふゆこもりぬれ |
04939 |
未入力 正徹 (xxx)
庭草に秋より置きし宿の霜人めかれそふ冬は来にけり
にはくさに−あきよりおきし−やとのしも−ひとめかれそふ−ふゆはきにけり |
04940 |
未入力 正徹 (xxx)
たちかふる今朝の衣をかさねてや冬のかまへも身に知らるらん
たちかふる−けさのころもを−かさねてや−ふゆのかまへも−みにしらるらむ |
04941 |
未入力 正徹 (xxx)
程もなく冬たつ空と思ふにも先なけかるる年の暮かな
ほともなく−ふゆたつそらと−おもふにも−まつなけかるる−としのくれかな |
04942 |
未入力 正徹 (xxx)
今日よりは冬たつ空とおもふにも暮れやすき日の惜しき老かな
けふよりは−ふゆたつそらと−おもふにも−くれやすきひの−をしきおいかな |
04943 |
未入力 正徹 (xxx)
心せす入りくる冬の朝戸かせはけしや衣たちあへぬまに
こころせす−いりくるふゆの−あさとかせ−はけしやころも−たちあへぬまに |
04944 |
未入力 正徹 (xxx)
さむく吹く冬の嵐はわかねともけふ身にあつくたつ衣かな
さむくふく−ふゆのあらしは−わかねとも−けふみにあつく−たつころもかな |
04945 |
未入力 正徹 (xxx)
行く年の程あらしとやかくはかり暮れやすき日に冬のきぬらん
ゆくとしの−ほとあらしとや−かくはかり−くれやすきひに−ふゆのきぬらむ |
04946 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月冬の春日のうすくもりまなく時雨れてかすむ空かな
かみなつき−ふゆのはるひの−うすくもり−まなくしくれて−かすむそらかな |
04947 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ人よもたちかへし此世には冬さむくしておもき衣を
あまつひと−よもたちかへし−このよには−ふゆさむくして−おもきころもを |
04948 |
未入力 正徹 (xxx)
袖さむし昨日の秋のあさ衣かへぬ朝気に冬やきぬらん
そてさむし−きのふのあきの−あさころも−かへぬあさけに−ふゆやきぬらむ |
04949 |
未入力 正徹 (xxx)
松葉しく千世のふる道けふとへは昨日の風に冬はきにけり
まつはしく−ちよのふるみち−けふとへは−きのふのかせに−ふゆはきにけり |
04950 |
未入力 正徹 (xxx)
さくら色の袖よりもをし白菊の花の香とめてかふる衣は
さくらいろの−そてよりもをし−しらきくの−はなのかとめて−かふるころもは |
04951 |
未入力 正徹 (xxx)
八重垣の出雲の宮も神風にしたかひきてや冬の立つらん
やへかきの−いつものみやも−かみかせに−したかひきてや−ふゆのたつらむ |
04952 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくをか又めくりきて初時雨ふりにし年の冬にあふらん
いつくをか−まためくりきて−はつしくれ−ふりにしとしの−ふゆにあふらむ |
04953 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりきむかしいかなる契にて秋にはあはす冬のきぬらん
しらさりき−むかしいかなる−ちきりにて−あきにはあはす−ふゆのきぬらむ |
04954 |
未入力 正徹 (xxx)
冬はきてかさなる出雲八重垣に神まちとほの四方の宮人
ふゆはきて−かさなるいつも−やへかきに−かみまちとほの−よものみやひと |
04955 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりちらぬ菊も紅葉も色かへすきのふの秋をしたふ冬かな
ちりちらぬ−きくももみちも−いろかへす−きのふのあきを−したふふゆかな |
04956 |
未入力 正徹 (xxx)
夏衣いまやうら見むもろ人のうすきをいとふ冬のくる夜に
なつころも−いまやうらみむ−もろひとの−うすきをいとふ−ふゆのくるよに |
04957 |
未入力 正徹 (xxx)
たちかふる今日のころものふしのわた雪をかさねる冬は来にけり
たちかふる−けふのころもの−ふしのわた−ゆきをかさねる−ふゆはきにけり |
04958 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さむきみののを山の松一木まれなる色をそふる冬かな
しもさむき−みののをやまの−まつひとき−まれなるいろを−そふるふゆかな |
04959 |
未入力 正徹 (xxx)
あらし吹く峰のまくすもうき雲きも昨日の秋にかへり送るな
あらしふく−みねのまくすも−うきくもも−きのふのあきに−かへりおくるな |
04960 |
未入力 正徹 (xxx)
法にけふ八雲をかけて七年の夢の跡とふ冬はきにけり
のりにけふ−やくもをかけて−ななとせの−ゆめのあととふ−ふゆはきにけり |
04961 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝のまはしくれ木の葉の音もせす世はしつかにや冬のきぬらん
けさのまは−しくれこのはの−おともせす−よはしつかにや−ふゆのきぬらむ |
04962 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとの落葉か上におとつれて昨日の秋をとふ時雨かな
このもとの−おちはかうへに−おとつれて−きのふのあきを−とふしくれかな |
04963 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をなほきえてもしたへ冬の日のさすや岡への松の初霜
あきをなほ−きえてもしたへ−ふゆのひの−さすやをかへの−まつのはつしも |
04964 |
未入力 正徹 (xxx)
冬たちて今日より風そ北になる古郷しのふ駒いはふらし
ふゆたちて−けふよりかせそ−きたになる−ふるさとしのふ−こまいはふらし |
04965 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月今朝かせ寒きしら浪に海もわたつむ冬かとそみる
かみなつき−けさかせさむき−しらなみに−うみもわたつむ−ふゆかとそみる |
04966 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月又しら菊の花の香に秋の衣はかへまくもをし
かみなつき−またしらきくの−はなのかに−あきのころもは−かへまくもをし |
04967 |
未入力 正徹 (xxx)
いつる日の昨日にかはる色はみすさゆるや冬のしるしなるらん
いつるひの−きのふにかはる−いろはみす−さゆるやふゆの−しるしなるらむ |
04968 |
未入力 正徹 (xxx)
まもるらし今朝もろもろの神な月都もさえぬ日の御影かな
まもるらし−けさもろもろの−かみなつき−みやこもさえぬ−ひのみかけかな |
04969 |
未入力 正徹 (xxx)
こきもとるつくしの舟にわたつ海も衣かへせよ浪のよこ雲
こきもとる−つくしのふねに−わたつうみも−ころもかへせよ−なみのよこくも |
04970 |
未入力 正徹 (xxx)
冬やたつむかへる窓の北風に今朝そなり行く駒いはふらし
ふゆやたつ−むかへるまとの−きたかせに−けさそなりゆく−こまいはふらし |
04971 |
未入力 正徹 (xxx)
秋と冬と行きかふみちの中川は浪を分けてや今朝こほりせん
あきとふゆと−ゆきかふみちの−なかかはは−なみをわけてや−けさこほりせむ |
04972 |
未入力 正徹 (xxx)
晴れくもるしくれを冬とかくはかり定なき世にたれさためけん
はれくもる−しくれをふゆと−かくはかり−さためなきよに−たれさためけむ |
04973 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまもなく空にや冬をはこふらんけふもたひたひ時雨れきにけり
ひまもなく−そらにやふゆを−はこふらむ−けふもたひたひ−しくれきにけり |
04974 |
未入力 正徹 (xxx)
さためなく時雨れん物と今朝は先しるこそ冬の初なりけれ
さためなく−しくれむものと−けさはまつ−しるこそふゆの−はしめなりけれ |
04975 |
未入力 正徹 (xxx)
空さむみ世はおしなへて冬きぬと時雨につけよ四方の浮雲
そらさむみ−よはおしなへて−ふゆきぬと−しくれにつけよ−よものうきくも |
04976 |
未入力 正徹 (xxx)
空ほまつしくれて冬の立ちくるを待つにやたへぬ曙のくも
そらはまつ−しくれてふゆの−たちくるを−まつにやたへぬ−あけほののくも |
04977 |
未入力 正徹 (xxx)
世にふれは老いぬる袖そ待しらぬ冬たちてこそ雲も時雨るれ
よにふれは−おいぬるそてそ−ときしらぬ−ふゆたちてこそ−くももしくるれ |
04978 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月はつ山めくり道しらて木の葉にまよふ夕時雨かな
かみなつき−はつやまめくり−みちしらて−このはにまよふ−ゆふしくれかな |
04979 |
未入力 正徹 (xxx)
冬そとも思ひさためぬうき雲にこほれて過くる初しくれかな
ふゆそとも−おもひさためぬ−うきくもに−こほれてすくる−はつしくれかな |
04980 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ちる松にまさりて霜そまつあらはれ初むる冬やきぬらん
このはちる−まつにまさりて−しもそまつ−あらはれそむる−ふゆやきぬらむ |
04981 |
未入力 正徹 (xxx)
神無月もみち散りしく山の名の嵐のかすにのこる秋かな
かみなつき−もみちちりしく−やまのなの−あらしのかすに−のこるあきかな |
04982 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ふく昨日の嵐山おろしつよくなるをや冬と知るらん
このはふく−きのふのあらし−やまおろし−つよくなるをや−ふゆとしるらむ |
04983 |
未入力 正徹 (xxx)
山松の霜に嵐も吹きこほりしくれかねたる神無月かな
やままつの−しもにあらしも−ふきこほり−しくれかねたる−かみなつきかな |
04984 |
未入力 正徹 (xxx)
けふそとふ木の葉しくれの宿の松あらはれわたる冬の嵐に
けふそとふ−このはしくれの−やとのまつ−あらはれわたる−ふゆのあらしに |
04985 |
未入力 正徹 (xxx)
かせの名の嵐の山は昨日より寒きや冬のはしめなるらん
かせのなの−あらしのやまは−きのふより−さむきやふゆの−はしめなるらむ |
04986 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふくやとの木の葉の衣かへみねはかりにそ雲をたちきる
あらしふく−やとのこのはの−ころもかへ−みねはかりにそ−くもをたちきる |
04987 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きての山の風そ吹きかはる木の葉しくれは秋のままにて
ふゆきての−やまのあらしそ−ふきかはる−このはしくれは−あきのままにて |
04988 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ちる昨日の秋の山あらしまさるや冬のはしめなるらん
このはちる−きのふのあきの−やまあらし−まさるやふゆの−はしめなるらむ |
04989 |
未入力 正徹 (xxx)
身に寒き冬の嵐となりそ行く衣たちきよ天のかく山
みにさむき−ふゆのあらしと−なりそゆく−ころもたちきよ−あまのかくやま |
04990 |
未入力 正徹 (xxx)
のこりなく秋のはおちし山風に塵もくもらぬ宿の冬かな
のこりなく−あきのはおちし−やまかせに−ちりもくもらぬ−やとのふゆかな |
04991 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きては都のうちの木すゑさへみな木枯の森のこゑかな
ふゆきては−みやこのうちの−こすゑさへ−みなこからしの−もりのこゑかな |
04992 |
未入力 正徹 (xxx)
あるはなくなきはある世のさかの山冬たちくれはちる木の葉かな
あるはなく−なきはあるよの−さかのやま−ふゆたちくれは−ちるこのはかな |
04993 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月夜のまの秋をしたふとやしくれぬさきに木の葉ちるらん
かみなつき−よのまのあきを−したふとや−しくれぬさきに−このはちるらむ |
04994 |
未入力 正徹 (xxx)
神無月ぬくや木の葉の衣かへ雲なたちきそ山さむくとも
かみなつき−ぬくやこのはの−ころもかへ−くもなたちきそ−やまさむくとも |
04995 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝は世にしくれんとして空にたつ雲こそ冬の初なりけれ
けさはよに−しくれむとして−そらにたつ−くもこそふゆの−はしめなりけれ |
04996 |
未入力 正徹 (xxx)
冬とてやしつくも空につもるらんしくれにこほる夕月夜かな
ふゆとてや−しつくもそらに−つもるらむ−しくれにこほる−ゆふつくよかな |
04997 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きてそかさねんための里ことに秋よりも猶衣うつこゑ
ふゆきてそ−かさねむための−さとことに−あきよりもなほ−ころもうつこゑ |
04998 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月むへ山ひめも立ちかへて衣そあつき雲の袖くち
かみなつき−うへやまひめも−たちかへて−ころもそあつき−くものそてくち |
04999 |
未入力 正徹 (xxx)
おとは山あけは錦の袖をみむ夜の紅葉に冬はきにけり
おとはやま−あけはにしきの−そてをみむ−よるのもみちに−ふゆはきにけり |
05000 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月秋の錦をぬく山やしくるろ雲の衣かふらむ
かみなつき−あきのにしきを−ぬくやまや−しくるろくもの−ころもかふらむ |
05001 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のきていにし跡ともまたしらす夜のまの山の霜の古路
あきのきて−いにしあととも−またしらす−よのまのやまの−しものふるみち |
05002 |
未入力 正徹 (xxx)
面影もいととほそ江に木の葉ちり秋はいなさの山そ冬立つ
おもかけも−いととほそえに−このはちり−あきはいなさの−やまそふゆたつ |
05003 |
未入力 正徹 (xxx)
なへて世の木ことに冬は木枯の杜の名うつす風のこゑかな
なへてよの−きことにふゆは−こからしの−もりのなうつす−かせのこゑかな |
05004 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きての色もあらしの木の葉かすときはの里のもりの下道
ふゆきての−いろもあらしの−このはかす−ときはのさとの−もりのしたみち |
05005 |
未入力 正徹 (xxx)
われならて人なきやとにはこひおけ冬たつ嵐雲と時雨を
われならて−ひとなきやとに−はこひおけ−ふゆたつあらし−くもとしくれを |
05006 |
未入力 正徹 (xxx)
今は身を秋よりさきの冬こもり冬のとふともしらぬ庵かな
いまはみを−あきよりさきの−ふゆこもり−ふゆのとふとも−しらぬいほかな |
05007 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月雪のこの花難波津にかつちる寺も冬こもるらん
かみなつき−ゆきのこのはな−なにはつに−かつちるてらも−ふゆこもるらむ |
05008 |
未入力 正徹 (xxx)
さらに又衣かへする冬そとやのこれる菊にわたをかさねん
さらにまた−ころもかへする−ふゆそとや−のこれるきくに−わたをかさねむ |
05009 |
未入力 正徹 (xxx)
冬草はみなからかれて紫の一もと菊に匂ふ霜かな
ふゆくさは−みなからかれて−むらさきの−ひともときくに−にほふしもかな |
05010 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくて冬さく菊の霜かつき老いたる花とみるそ友なる
つれなくて−ふゆさくきくの−しもかつき−おいたるはなと−みるそともなる |
05011 |
未入力 正徹 (xxx)
菊のはのもみちは花にまさらねと冬のまかきを猶そあらさぬ
きくのはの−もみちははなに−まさらねと−ふゆのまかきを−なほそあらさぬ |
05012 |
未入力 正徹 (xxx)
花もたかをしへをうけて庭の菊冬の籬に猶にほふらん
はなもたか−をしへをうけて−にはのきく−ふゆのまかきに−なほにほふらむ |
05013 |
未入力 正徹 (xxx)
年年のならひはしらす今日は先しくるる空に冬はきにけり
としとしの−ならひはしらす−けふはまつ−しくるるそらに−ふゆはきにけり |
05014 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりまさる袖の涙や槙の屋にやすくは過きぬ時雨なるらん
ふりまさる−そてのなみたや−まきのやに−やすくはすきぬ−しくれなるらむ |
05015 |
未入力 正徹 (xxx)
晴れくもる空はあれとも神な月袖のしくれそまなく時なき
はれくもる−そらはあれとも−かみなつき−そてのしくれそ−まなくときなき |
05016 |
未入力 正徹 (xxx)
おとたえぬ松の嵐やうらむらんやすく時雨の過くる心を
おとたえぬ−まつのあらしや−うらむらむ−やすくしくれの−すくるこころを |
05017 |
未入力 正徹 (xxx)
まつこともさためなきこそさたまれる世のならひなれ雲な時雨れそ
まつことも−さためなきこそ−さたまれる−よのならひなれ−くもなしくれそ |
05018 |
未入力 正徹 (xxx)
さためなくしくるる空は世中の人の心や雲となりけん
さためなく−しくるるそらは−よのなかの−ひとのこころや−くもとなりけむ |
05019 |
未入力 正徹 (xxx)
たか里の空に消ゆらん神な月しくれもて行く雲の泊は
たかさとの−そらにきゆらむ−かみなつき−しくれもてゆく−くものとまりは |
05020 |
未入力 正徹 (xxx)
空さむみ雲もうれへて神無月しくれもはてぬ袖の色かな
そらさむみ−くももうれへて−かみなつき−しくれもはてぬ−そてのいろかな |
05021 |
未入力 正徹 (xxx)
けふも猶とほき時雨の山めくりまちとらぬ袖に降るとしらすや
けふもなほ−とほきしくれの−やまめくり−まちとらぬそてに−ふるとしらすや |
05022 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風空に里わく村雲のたたそのままにふる時雨かな
あまつかせ−そらにさとわく−むらくもの−たたそのままに−ふるしくれかな |
05023 |
未入力 正徹 (xxx)
たえてけり紅葉むなしき冬の雨村村ふりし秋の瞑は
たえてけり−もみちむなしき−ふゆのあめ−むらむらふりし−あきのうらみは |
05024 |
未入力 正徹 (xxx)
ならのはのふるきよのとも空に今めくりあひぬるむら時雨かな
ならのはの−ふるきよのとも−そらにいま−めくりあひぬる−むらしくれかな |
05025 |
未入力 正徹 (xxx)
窓あけてむかふ嵐の北時雨はれゆくみれは雪の山のは
まとあけて−むかふあらしの−きたしくれ−はれゆくみれは−ゆきのやまのは |
05026 |
未入力 正徹 (xxx)
世にふるは心の外のまよひとやうき雲かこつ時雨なるらん
よにふるは−こころのほかの−まよひとや−うきくもかこつ−しくれなるらむ |
05027 |
未入力 正徹 (xxx)
うきてたつ雲をたよりの山風に時雨も冬をはこふ空かな
うきてたつ−くもをたよりの−やまかせに−しくれもふゆを−はこふそらかな |
05028 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風のいつしか北にめくるより寒く日ことにふる時雨かな
くもかせの−いつしかきたに−めくるより−さむくひことに−ふるしくれかな |
05029 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ちかき音さへ冬にならのはの名におふ山もさそ時雨るらん
のきちかき−おとさへふゆに−ならのはの−なにおふやまも−さそしくるらむ |
05030 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月しくるる山の朝日影空にもそむる雲の色かな
かみなつき−しくるるやまの−あさひかけ−そらにもそむる−くものいろかな |
05031 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかへん軒の糸水もみしかく暮るるしつのをたまき
いかかへむ−ххххのきの−いとみつも−みしかくくるる−しつのをたまき |
05032 |
未入力 正徹 (xxx)
冬やくる秋をとちめし天の戸の雲をひらきて今朝しくるなり
ふゆやくる−あきをとちめし−あまのとの−くもをひらきて−けさしくるなり |
05033 |
未入力 正徹 (xxx)
きゆるまはしくれといはん程もなし日影にそそく雲の一村
きゆるまは−しくれといはむ−ほともなし−ひかけにそそく−くものひとむら |
05034 |
未入力 正徹 (xxx)
二かたにうきたる雲も引きわかれしくれくらふるをちこちの山
ふたかたに−うきたるくもも−ひきわかれ−しくれくらふる−をちこちのやま |
05035 |
未入力 正徹 (xxx)
神無月ふりくる夕雲寒えて雪の時雨そ山めくりする
かみなつき−ふりくるゆふへ−くもさえて−ゆきのしくれそ−やまめくりする |
05036 |
未入力 正徹 (xxx)
古事を思ふ夜戸出に影さえぬ時雨ふり置きしならのはの月
ふることを−おもふよとてに−かけさえぬ−しくれふりおきし−ならのはのつき |
05037 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか見る時雨の雨の足たゆくかれなて雲のめくる里人
いかかみる−しくれのあめの−あしたゆく−かれなてくもの−めくるさとひと |
05038 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きてはめにたつ雲そ山めくるしくれもなれぬ袖のよそとて
ふゆきては−めにたつくもそ−やまめくる−しくれもなれぬ−そてのよそとて |
05039 |
未入力 正徹 (xxx)
くれにけり時雨をわたる冬の日のぬるるかほなる影もひぬまに
くれにけり−しくれをわたる−ふゆのひの−ぬるるかほなる−かけもひぬまに |
05040 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれし木の葉はかせのよそにして時雨もそはぬ雲そわかるる
さそはれし−このははかせの−よそにして−しくれもそはぬ−くもそわかるる |
05041 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月月も老行く涙とやたえすそ雲の袖にしくるる
かみなつき−つきもおいゆく−なみたとや−たえすそくもの−そてにしくるる |
05042 |
未入力 正徹 (xxx)
空さえてこほるとみゆる浮雲をとくや日影にふる時雨かな
そらさえて−こほるとみゆる−うきくもを−とくやひかけに−ふるしくれかな |
05043 |
未入力 正徹 (xxx)
色そめてふりにし声をかりなから時雨もしらぬ四方の松風
いろそめて−ふりにしこゑを−かりなから−しくれもしらぬ−よものまつかせ |
05044 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れやすき日影も雪のひまもらてしくれにおくる神な月かな
くれやすき−ひかけもゆきの−ひまもらて−しくれにおくる−かみなつきかな |
05045 |
未入力 正徹 (xxx)
松風の時雨はもとのあるしにて冬たつ嶺の雲に降りきぬ
まつかせの−しくれはもとの−あるしにて−ふゆたつみねの−くもにふりきぬ |
05046 |
未入力 正徹 (xxx)
ことわりになへて草木の色かはる心もしらすふる時雨かな
ことわりに−なへてくさきの−いろかはる−こころもしらす−ふるしくれかな |
05047 |
未入力 正徹 (xxx)
色かはる冬の草木のよそなから雲さへもろくふる時雨かな
いろかはる−ふゆのくさきの−よそなから−くもさへもろく−ふるしくれかな |
05048 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにふけ雲に時雨の音はにすかねてまかひし峰の松風
よそにふけ−くもにしくれの−おとはにす−かねてまかひし−みねのまつかせ |
05049 |
未入力 正徹 (xxx)
おときけとみな袖ぬらす人もなしうき世のままの村時雨かな
おときけと−みなそてぬらす−ひともなし−うきよのままの−むらしくれかな |
05050 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月のしくるる空の笠やとりたのむもぬるる雲の影かな
ゆくつきの−しくるるそらの−かさやとり−たのむもぬるる−くものかけかな |
05051 |
未入力 正徹 (xxx)
冬は又うきたる雲をまちつけて時雨れんとすれははらふ木枯
ふゆはまた−うきたるくもを−まちつけて−しくれむとすれは−はらふこからし |
05052 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉にも秋をうつまぬ冬の雲たつ朝霧にふる時雨かな
このはにも−あきをうつまぬ−ふゆのくも−たつあさきりに−ふるしくれかな |
05053 |
未入力 正徹 (xxx)
いかに又野山のゆふへ人も袖ぬらさすきかの時雨ふるらん
いかにまた−のやまのゆふへ−ひともそて−ぬらさすきかの−しくれふるらむ |
05054 |
未入力 正徹 (xxx)
さそふ風雲に木の葉を吹きませて山は時雨にあれぬ日もなし
さそふかせ−くもにこのはを−ふきませて−やまはしくれに−あれぬひもなし |
05055 |
未入力 正徹 (xxx)
むら時雨雨も心のままならすうき世の空にふりみふらすみ
むらしくれ−あめもこころの−ままならす−うきよのそらに−ふりみふらすみ |
05056 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる日の草にも木にも初時雨つもらはなにの色かうつまん
さゆるひの−くさにもきにも−はつしくれ−つもらはなにの−いろかうつまむ |
05057 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月けふの物とは見るらめと秋もふりにし初時雨かな
かみなつき−けふのものとは−みるらめと−あきもふりにし−はつしくれかな |
05058 |
未入力 正徹 (xxx)
いつる日もしくるる雲の足ほ山高ねはすきよ冬の影みん
いつるひも−しくるるくもの−あしほやま−たかねはすきよ−ふゆのかけみむ |
05059 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くらめやしくるる冬のおとつれもかさなる山のしたの里人
きくらめや−しくるるふゆの−おとつれも−かさなるやまの−したのさとひと |
05060 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きぬとしらぬ里人ありなしもわかすこゑする初時雨かな
ふゆきぬと−しらぬさとひと−ありなしも−わかすこゑする−はつしくれかな |
05061 |
未入力 正徹 (xxx)
いつとなくはれぬ雲のみおりゐるや時雨によらぬ高ねなるらん
いつとなく−はれぬくものみ−おりゐるや−しくれによらぬ−たかねなるらむ |
05062 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月しくるるころは晴れくもる雲も心をおかぬ日もなし
かみなつき−しくるるころは−はれくもる−くももこころを−おかぬひもなし |
05063 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりはてすしくるる雲をうき身にて猶この冬も世にやめくらん
ふりはてす−しくるるくもを−うきみにて−なほこのふゆも−よにやめくらむ |
05064 |
未入力 正徹 (xxx)
風はやみはれて一村ゆく雲のしくれきゆるを日影にそみる
かせはやみ−はれてひとむら−ゆくくもの−しくれきゆるを−ひかけにそみる |
05065 |
未入力 正徹 (xxx)
そひはてぬうき世もしらす秋過きて時雨をしたふ冬の雲かな
そひはてぬ−うきよもしらす−あきすきて−しくれをしたふ−ふゆのくもかな |
05066 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの雲に時雨をさきたてて朝日まつまの冬はきにけり
やまのはの−くもにしくれを−さきたてて−あさひまつまの−ふゆはきにけり |
05067 |
未入力 正徹 (xxx)
紅葉せし今朝の梢の日影たに色そめやすき村時雨かな
もみちせし−けさのこすゑの−ひかけたに−いろそめやすき−むらしくれかな |
05068 |
未入力 正徹 (xxx)
のこる日を尾上にかけて山もとの夕かけ草にふる時雨かな
のこるひを−をのへにかけて−やまもとの−ゆふかけくさに−ふるしくれかな |
05069 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさになかむる空の夕時雨袖より雲や立ちはしめけん
みのうさに−なかむるそらの−ゆふしくれ−そてよりくもや−たちはしめけむ |
05070 |
未入力 正徹 (xxx)
色なりし木の葉ちりぬとうす墨に夕を染めてふる時雨かな
いろなりし−このはちりぬと−うすすみに−ゆふへをそめて−ふるしくれかな |
05071 |
未入力 正徹 (xxx)
夕付日影を冬にやうつむらんしくるる雲も秋にかはらて
ゆふつくひ−かけをふゆにや−うつむらむ−しくるるくもも−あきにかはらて |
05072 |
未入力 正徹 (xxx)
ふり初めし雲や千里に過きぬらん長き夜明くる村時雨かな
ふりそめし−くもやちさとに−すきぬらむ−なかきよあくる−むらしくれかな |
05073 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる夜の時雨そ秋にかへりぬる木の葉たえにし夢の通路
さゆるよの−しくれそあきに−かへりぬる−このはたえにし−ゆめのかよひち |
05074 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるとたにしられね程に過行くや時雨も夜のこゑ忍ふらん
ふるとたに−しられねほとに−すきゆくや−しくれもよるの−こゑしのふらむ |
05075 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれし夜はも忘れぬ槙の戸に又おとつるるむら時雨かな
そてぬれし−よはもわすれぬ−まきのとに−またおとつるる−むらしくれかな |
05076 |
未入力 正徹 (xxx)
ね屋の上によるの衣をかへす雲夢やは見えん時雨もる月
ねやのうへに−よるのころもを−かへすくも−ゆめやはみえむ−しくれもるつき |
05077 |
未入力 正徹 (xxx)
まくらよりしくれいててや里ことの人のね覚の袖ぬらすらん↓
まくらより−しくれいててや−さとことの−ひとのねさめの−そてぬらすらむ |
05078 |
未入力 正徹 (xxx)
影くもる有明の月につれなきや時雨にのこる峰の横雲
かけくもる−ありあけのつきに−つれなきや−しくれにのこる−みねのよこくも |
05079 |
未入力 正徹 (xxx)
はれくもる雲にみ山の月なくは時雨やはてんせせの川なみ
はれくもる−くもにみやまの−つきなくは−しくれやはてむ−せせのかはなみ |
05080 |
未入力 正徹 (xxx)
さためなく時雨にまよふ浮雲を送迎へて山風そふく
さためなく−しくれにまよふ−うきくもを−おくりむかへて−やまかせそふく |
05081 |
未入力 正徹 (xxx)
契かはうきたる雲もわきもこか二上山のひまそしくるる
ちきりかは−うきたるくもも−わきもこか−ふたかみやまの−ひまそしくるる |
05082 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺たかき山となるへき塵をたに見ぬ世も雲やかけて時雨れし
みねたかき−やまとなるへき−ちりをたに−みぬよもくもや−かけてしくれし |
05083 |
未入力 正徹 (xxx)
千世の色を冬たつ雲に契りきて時雨なれたる峰の松風
ちよのいろを−ふゆたつくもに−ちきりきて−しくれなれたる−みねのまつかせ |
05084 |
未入力 正徹 (xxx)
さしも草もゆるひまなきうき雲のいふきの山はふる時雨かな
さしもくさ−もゆるひまなき−うきくもの−いふきのやまは−ふるしくれかな |
05085 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月しくるる山の雲ともに日影もはやくめくる空かな
かみなつき−しくるるやまの−くもともに−ひかけもはやく−めくるそらかな |
05086 |
未入力 正徹 (xxx)
跡の雲おくりし岡の松風をやかておひきて降る時雨かな
あとのくも−おくりしをかの−まつかせを−やかておひきて−ふるしくれかな |
05087 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらぬ枝を折りさす庭のもみち葉に時雨れて秋ののこる冬かな
ちらぬえを−をりさすにはの−もみちはに−しくれてあきの−のこるふゆかな |
05088 |
未入力 正徹 (xxx)
しらす又色そめしとは思ひても松に時雨や年をふるらん
しらすまた−いろそめしとは−おもひても−まつにしくれや−としをふるらむ |
05089 |
未入力 正徹 (xxx)
つつみあへぬたか衣ての杜のはのしくれとともに時雨行くらん
つつみあへぬ−たかころもての−もりのはの−しくれとともに−しくれゆくらむ |
05090 |
未入力 正徹 (xxx)
かりはてしいなはの雲は冬たえて田中の杜にふる時雨かな
かりはてし−いなはのくもは−ふゆたえて−たなかのもりに−ふるしくれかな |
05091 |
未入力 正徹 (xxx)
高根より雲をふもとにさそひきて時雨によわる木枯の末
たかねより−くもをふもとに−さそひきて−しくれによわる−こからしのすゑ |
05092 |
未入力 正徹 (xxx)
山路ゆく月も時雨にぬれわひてたちよる松のかけ頼むこゑ
やまちゆく−つきもしくれに−ぬれわひて−たちよるまつの−かけたのむこゑ |
05093 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき夜の嵐も雲を槙の屋にいくめくりふる時雨なるらん
なかきよの−あらしもくもを−まきのやに−いくめくりふる−しくれなるらむ |
05094 |
未入力 正徹 (xxx)
雲間よりふもとになひく夕日かもいさ山鳥の尾やしくるらん
くもまより−ふもとになひく−ゆふひかも−いさやまとりの−をやしくるらむ |
05095 |
未入力 正徹 (xxx)
雲そ見ぬまた山ふかく霧こめて時雨は庭に杉の下露
くもそみぬ−またやまふかく−きりこめて−しくれはにはに−すきのしたつゆ |
05096 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日影かへしもあへす跡もなし時雨きえつる雲の一むら
ゆふひかけ−かへしもあへす−あともなし−しくれきえつる−くものひとむら |
05097 |
未入力 正徹 (xxx)
けふもなほたかねをはらふ木枯にしくれわひてや雲帰るらん
けふもなほ−たかねをはらふ−こからしに−しくれわひてや−くもかへるらむ |
05098 |
未入力 正徹 (xxx)
村時雨過きけん空もしら鳥の嶺うす色に雲そ成行く
むらしくれ−すきけむそらも−しらとりの−みねうすいろに−くもそなりゆく |
05099 |
未入力 正徹 (xxx)
足はやく過きにけるかな時雨れつる雲のひま行く駒もうつらて
あしはやく−すきにけるかな−しくれつる−くものひまゆく−こまもうつらて |
05100 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれさりき隣ありきのひち笠もさしあへぬまにはるる時雨は
ぬれさりき−となりありきの−ひちかさも−さしあへぬまに−はるるしくれは |
05101 |
未入力 正徹 (xxx)
晴れゆけはしくれし道の笠やとりたか宿しらぬ名残たになし
はれゆけは−しくれしみちの−かさやとり−たかやとしらぬ−なこりたになし |
05102 |
未入力 正徹 (xxx)
雲消ゆる空はみとりの色なからなほしら玉のふる時雨かな
くもきゆる−そらはみとりの−いろなから−なほしらたまの−ふるしくれかな |
05103 |
未入力 正徹 (xxx)
山はみなはるる浮雲めくりきてたもとにとまる夕しくれかな
やまはみな−はるるうきくも−めくりきて−たもとにとまる−ゆふしくれかな |
05104 |
未入力 正徹 (xxx)
足はやみまたかた空ほ雲のこる時雨をしたふ有明の月
あしはやみ−またかたそらは−くものこる−しくれをしたふ−ありあけのつき |
05105 |
未入力 正徹 (xxx)
めくる日はしくるる雲のうちなから遠き高ねに影そかかれる
めくるひは−しくるるくもの−うちなから−とほきたかねに−かけそかかれる |
05106 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の上にしくるる雲の村消や日影もとかぬしつくなるらん
ゆきのうへに−しくるるくもの−むらきえや−ひかけもとかぬ−しつくなるらむ |
05107 |
未入力 正徹 (xxx)
うきて行く雲を冬たつ使にて里をはかれすとふ時雨かな
うきてゆく−くもをふゆたつ−つかひにて−さとをはかれす−とふしくれかな |
05108 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜われ古郷人にならのはのおち葉かね屋に時雨をそ聞く
こよひわれ−ふるさとひとに−ならのはの−おちはかねやに−しくれをそきく |
05109 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨には思ひそ出てぬしら露にあらそひ置きし函閨の扇を
しくれには−おもひそいてぬ−しらつゆに−あらそひおきし−ねやのあふきを |
05110 |
未入力 正徹 (xxx)
枕かの木からし吹きて窓うつやわたらぬ浪のしくれなるらん
まくらかの−こからしふきて−まとうつや−わたらぬなみの−しくれなるらむ |
05111 |
未入力 正徹 (xxx)
あらむ世のすゑまて晴れよさ夜時雨ふりにし人のかへる夢路は
あらむよの−すゑまてはれよ−さよしくれ−ふりにしひとの−かへるゆめちは |
05112 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜時雨おとは霰にかはるともほさしたもとのさゆるね覚を
さよしくれ−おとはあられに−かはるとも−ほさしたもとの−さゆるねさめを |
05113 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やあさせになひくなかれもに雲さへうきてふる時臣かな
やまかはや−あさせになひく−なかれもに−くもさへうきて−ふるしくれかな |
05114 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨れくるいまそ思ひもあさ川の水の煙のたちよわるまて
しくれくる−いまそおもひも−あさかはの−みつのけふりの−たちよわるまて |
05115 |
未入力 正徹 (xxx)
笠置山さしもくもらていつみ川こまのわたりはふる時雨かな
かさきやま−さしもくもらて−いつみかは−こまのわたりは−ふるしくれかな |
05116 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれをはあまのを舟にさきたててくもりおくるるせとの塩風
しくれをは−あまのをふねに−さきたてて−くもりおくるる−せとのしほかせ |
05117 |
未入力 正徹 (xxx)
日数うき山路をいてはあふ人の時雨にぬれぬ袖かとやみん
ひかすうき−やまちをいては−あふひとの−しくれにぬれぬ−そてかとやみむ |
05118 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷をいてし旅ねの村時雨ぬれぬそもとの袖の月影
ふるさとを−いてしたひねの−むらしくれ−ぬれぬそもとの−そてのつきかけ |
05119 |
未入力 正徹 (xxx)
冬はなほ人めも草もかりの世を思ふ太山にとふしくれかな
ふゆはなほ−ひとめもくさも−かりのよを−おもふみやまに−とふしくれかな |
05120 |
未入力 正徹 (xxx)
秋過きし野守のかかみ氷ゐて面かけかはる霜の下草
あきすきし−のもりのかかみ−こほりゐて−おもかけかはる−しものしたくさ |
05121 |
未入力 正徹 (xxx)
かれはつる野への尾花の袖の霜すゑはの露もこほる冬かな
かれはつる−のへのをはなの−そてのしも−すゑはのつゆも−こほるふゆかな |
05122 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたるそかの川原の冬かれにのこるますけも露こほりつつ
かせわたる−そかのかはらの−ふゆかれに−のこるますけも−つゆこほりつつ |
05123 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこてかれのの薄霜さむみ今朝たにまねく冬そつれなき
ひとはこて−かれののすすき−しもさむみ−けさたにまねく−ふゆそつれなき |
05124 |
未入力 正徹 (xxx)
ときは木の梢に霜をふせかせてまた色かへぬ冬の下草
ときはきの−こすゑにしもを−ふせかせて−またいろかへぬ−ふゆのしたくさ |
05125 |
未入力 正徹 (xxx)
霜かるる庭の荻のはかつ落ちておとそよかさぬ風となり行く
しもかるる−にはのをきのは−かつおちて−おとそよかさぬ−かせとなりゆく |
05126 |
未入力 正徹 (xxx)
葛かつら朽行く霜のまくりても寒き朝けの峰の木からし
くすかつら−くちゆくしもの−まくりても−さむきあさけの−みねのこからし |
05127 |
未入力 正徹 (xxx)
浅茅原日かけそ霜の花さそふ冬はうらみもなき嵐かな
あさちはら−ひかけそしもの−はなさそふ−ふゆはうらみも−なきあらしかな |
05128 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬしやたれ草のたもとをつらねしもかれ行くかたは知らぬ野へかな
ぬしやたれ−くさのたもとを−つらねしも−かれゆくかたは−しらぬのへかな |
05129 |
未入力 正徹 (xxx)
世のうさを思ふ心もかれせぬや冬の草葉の霜の下もえ
よのうさを−おもふこころも−かれせぬや−ふゆのくさはの−しものしたもえ |
05130 |
未入力 正徹 (xxx)
虫のこゑ草の花のの秋の夢たえしこてふのまよふ雪かな
むしのこゑ−くさのはなのの−あきのゆめ−たえしこてふの−まよふゆきかな |
05131 |
未入力 正徹 (xxx)
たかからぬこゑもすさまし草の原霜のかれ葉に落つる山風
たかからぬ−こゑもすさまし−くさのはら−しものかれはに−おつるやまかせ |
05132 |
未入力 正徹 (xxx)
冬草に春のこてふの夢かれて雪そかつしく霜の花園
ふゆくさに−はるのこてふの−ゆめかれて−ゆきそかつしく−しものはなその |
05133 |
未入力 正徹 (xxx)
霜置かぬ露よりちりし玉かつらはふ木あらはにかるる冬かな
しもおかぬ−つゆよりちりし−たまかつら−はふきあらはに−かるるふゆかな |
05134 |
未入力 正徹 (xxx)
花みんとうゑけん人も冬の草かれていく世のふる郷の霜
はなみむと−うゑけむひとも−ふゆのくさ−かれていくよの−ふるさとのしも |
05135 |
未入力 正徹 (xxx)
あはれにも霜の原ののあさちふにやふれてかかるささかにの糸
あはれにも−しものはらのの−あさちふに−やふれてかかる−ささかにのいと |
05136 |
未入力 正徹 (xxx)
すすみすと草を冬野は又そみし跡なき霜の杜の下陰
すすみすと−くさをふゆのは−またそみし−あとなきしもの−もりのしたかけ |
05137 |
未入力 正徹 (xxx)
垣ほあれてたかくろ髪の末かれし霜のおとろそうちの山里
かきほあれて−たかくろかみの−すゑかれし−しものおとろそ−うちのやまさと |
05138 |
未入力 正徹 (xxx)
見てそしるもらぬ岩屋の奥の草霜はからさぬ冬の限を
みてそしる−もらぬいはやの−おくのくさ−しもはからさぬ−ふゆのかきりを |
05139 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原そこと見えてもなにかせん霜かれし秋の後の形見は
くさのはら−そことみえても−なにかせむ−しもかれしあきの−のちのかたみは |
05140 |
未入力 正徹 (xxx)
秋過きし尾花か袖の初霜にくち行く色をとふあらしかな
あきすきし−をはなかそての−はつしもに−くちゆくいろを−とふあらしかな |
05141 |
未入力 正徹 (xxx)
草かるる冬野の霜の花そのに今もこてふのあそふ雪かな
くさかるる−ふゆののしもの−はなそのに−いまもこてふの−あそふゆきかな |
05142 |
未入力 正徹 (xxx)
くるす野やま草かるをの人めさへいととかれねと結ふ霜かな
くるすのや−まくさかるをの−ひとめさへ−いととかれねと−むすふしもかな |
05143 |
未入力 正徹 (xxx)
憑みこし鹿の花つまおとろへて霜そしからむ冬の萩原
たのみこし−しかのはなつま−おとろへて−しもそしからむ−ふゆのはきはら |
05144 |
未入力 正徹 (xxx)
中半こし霜いかなれは冬草の花となりてもはをからすらん
なかはこし−しもいかなれは−ふゆくさの−はなとなりても−はをからすらむ |
05145 |
未入力 正徹 (xxx)
あかす見る人そすくなき霜消えてぬれたる野への冬草のいろ
あかすみる−ひとそすくなき−しもきえて−ぬれたるのへの−ふゆくさのいろ |
05146 |
未入力 正徹 (xxx)
若草の春の霜とやいたむらんかれしくち葉の冬の下もえ
わかくさの−はるのしもとや−いたむらむ−かれしくちはの−ふゆのしたもえ |
05147 |
未入力 正徹 (xxx)
たちかへりとへよ八十の冬の霜うつろふ草のかれはてぬまに
たちかへり−とへよやそちの−ふゆのしも−うつろふくさの−かれはてぬまに |
05148 |
未入力 正徹 (xxx)
おく霜の後は秋みし草の原夢かとたにも誰にとはまし
おくしもの−のちはあきみし−くさのはら−ゆめかとたにも−たれにとはまし |
05149 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原かれ行く物となり初めしゆゑこそしらねふるきよの霜
くさのはら−かれゆくものと−なりそめし−ゆゑこそしらね−ふるきよのしも |
05150 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷のあさちか露のこほれるに霜そつらきの原の下草
ふるさとの−あさちかつゆの−こほれるに−しもそつらきの−はらのしたくさ |
05151 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の一花すすきまねきたえ手にまく露もこほる冬かな
むらさきの−ひとはなすすき−まねきたえ−てにまくつゆも−こほるふゆかな |
05152 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくて春のみとりや松の陰草のはつかにのこる冬かな
つれなくて−はるのみとりや−まつのかけ−くさのはつかに−のこるふゆかな |
05153 |
未入力 正徹 (xxx)
枯れゆくを見しも跡なき夢の野に枕かりふの霜の下草
かれゆくを−みしもあとなき−ゆめののに−まくらかりふの−しものしたくさ |
05154 |
未入力 正徹 (xxx)
一もとの薄のかれほ霜折れて草なき野へとなれる冬かな
ひともとの−すすきのかれほ−しもをれて−くさなきのへと−なれるふゆかな |
05155 |
未入力 正徹 (xxx)
程ひろき庭のま砂の霜の上に一本薄秋やこふらん
ほとひろき−にはのまさこの−しものうへに−ひともとすすき−あきやこふらむ |
05156 |
未入力 正徹 (xxx)
山と見し庭のよもきか杣人のたよりもたえてかるる冬かな
やまとみし−にはのよもきか−そまひとの−たよりもたえて−かるるふゆかな |
05157 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふかき庭のよもきかかみすちのおつるも白き霜の下風
としふかき−にはのよもきか−かみすちの−おつるもしろき−しものしたかせ |
05158 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さゆるかやか捨てはの下みたれあらし嵐の冬のやとりは
しもさゆる−かやかすてはの−したみたれ−あらしあらしの−ふゆのやとりは |
05159 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の露と消えし身ならはいかかせん霜置く草のかけの嵐を
あきのつゆと−きえしみならは−いかかせむ−しもおくくさの−かけのあらしを |
05160 |
未入力 正徹 (xxx)
草はみなかれふの草にくちはてて冬のみひろき原の池水
くさはみな−かれふのくさに−くちはてて−ふゆのみひろき−はらのいけみつ |
05161 |
未入力 正徹 (xxx)
秋みしはかれて霜おく草か江に花のかかみをかくるささなみ
あきみしは−かれてしもおく−くさかえに−はなのかかみを−かくるささなみ |
05162 |
未入力 正徹 (xxx)
かれのこる薄とみれはを山田のくろに生ひたるひつちほの霜
かれのこる−すすきとみれは−をやまたの−くろにおひたる−ひつちほのしも |
05163 |
未入力 正徹 (xxx)
冬草の霜のかれはの下もえに立つや煙の野への朝川
ふゆくさの−しものかれはの−したもえに−たつやけふりの−のへのあさかは |
05164 |
未入力 正徹 (xxx)
さえあかす末のの霜の花薄月はよかれぬ袖のうへかな
さえあかす−すゑののしもの−はなすすき−つきはよかれぬ−そてのうへかな |
05165 |
未入力 正徹 (xxx)
霜はらふすすみにきてし夏たにも草を冬のの杜の月影
しもはらふ−すすみにきてし−なつたにも−くさをふゆのの−もりのつきかけ |
05166 |
未入力 正徹 (xxx)
野への月こほれはいくへとけぬらん千草の霜の花の下紐
のへのつき−こほれはいくへ−とけぬらむ−ちくさのしもの−はなのしたひも |
05167 |
未入力 正徹 (xxx)
埋火も恋しき山の窓あけて冬たつ炭のけふりをそみる
うつみひも−こひしきやまの−まとあけて−ふゆたつすみの−けふりをそみる |
05168 |
未入力 正徹 (xxx)
草なから人めかるへき山里になくさめとてや冬のきぬらん
くさなから−ひとめかるへき−やまさとに−なくさめとてや−ふゆのきぬらむ |
05169 |
未入力 正徹 (xxx)
われからそ松に草葉よ置く霜のからさはなにの冬かのこらん
われからそ−まつにくさはよ−おくしもの−からさはなにの−ふゆかのこらむ |
05170 |
未入力 正徹 (xxx)
うつの山夕霜はらふ松風に蔦のかれ葉は猶のこりけり
うつのやま−ゆふしもはらふ−まつかせに−つたのかれはは−なほのこりけり |
05171 |
未入力 正徹 (xxx)
なからふる身はしろたへにふりはてぬ五十の霜や置所なき
なからふる−みはしろたへに−ふりはてぬ−いそちのしもや−おきところなき |
05172 |
未入力 正徹 (xxx)
下草もみなうつもれてふり初むる雪はつかしき松の霜かな
したくさも−みなうつもれて−ふりそむる−ゆきはつかしき−まつのしもかな |
05173 |
未入力 正徹 (xxx)
白たへの山もとくもる朝霜に日影をはらふ嶺の松かせ
しろたへの−やまもとくもる−あさしもに−ひかけをはらふ−みねのまつかせ |
05174 |
未入力 正徹 (xxx)
ときは木の青はの太山霜ふかし都の人や初雪とみん
ときはきの−あをはのみやま−しもふかし−みやこのひとや−はつゆきとみむ |
05175 |
未入力 正徹 (xxx)
しらす又夕の庭に雨やみむ朝霜こほりてる日影よし
しらすまた−ゆふへのにはに−あめやみむ−あさしもこほり−てるひかけよし |
05176 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるか霜ふかき夜の山のはのくもれるうへに月はかかりて
あけぬるか−しもふかきよの−やまのはの−くもれるうへに−つきはかかりて |
05177 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木も霜のからすといへる名のなきをつれたる松の色かな
くさもきも−しものからすと−いへるなの−なきをつれたる−まつのいろかな |
05178 |
未入力 正徹 (xxx)
さすか猶ゆく年つもる霜の松下葉いろ付きちる嵐かな
さすかなほ−ゆくとしつもる−しものまつ−したはいろつき−ちるあらしかな |
05179 |
未入力 正徹 (xxx)
風さえて霜のはうすき松か枝に夕日色こき影そ消えゆく
かせさえて−しものはうすき−まつかえに−ゆふひいろこき−かけそきえゆく |
05180 |
未入力 正徹 (xxx)
さえくらしかへる雲なき空晴れて尾上の霜にさわく松風
さえくらし−かへるくもなき−そらはれて−をのへのしもに−さわくまつかせ |
05181 |
未入力 正徹 (xxx)
行く月も夕霜しろきかささきのわたすやたとる峰の梯
ゆくつきも−ゆふしもしろき−かささきの−わたすやたとる−みねのかけはし |
05182 |
未入力 正徹 (xxx)
あふきみて猶こそ思へ置く霜の後の鳥羽山松のむかしを
あふきみて−なほこそおもへ−おくしもの−のちのとはやま−まつのむかしを |
05183 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれのみ山の霜をかしけたるを篠の色に嵐吹くなり
ふゆかれの−みやまのしもを−かしけたる−をささのいろに−あらしふくなり |
05184 |
未入力 正徹 (xxx)
木のまもる日影に消えてささの葉のみ山は霜のくもる色かな
このまもる−ひかけにきえて−ささのはの−みやまはしもの−くもるいろかな |
05185 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふこゑさへさむし篠のはのみ山の霜に嵐ふく夜は
さるさけふ−こゑさへさむし−ささのはの−みやまのしもに−あらしふくよは |
05186 |
未入力 正徹 (xxx)
まとろまてさ夜もはるかに竹のはの霜にさえたる風の音かな
まとろまて−さよもはるかに−たけのはの−しもにさえたる−かせのおとかな |
05187 |
未入力 正徹 (xxx)
窓の前におきいててみれは呉竹の葉たれ霜ふり月かたふきぬ
まとのまへに−おきいててみれは−くれたけの−はたれしもふり−つきかたふきぬ |
05188 |
未入力 正徹 (xxx)
われのみか今年生出てし竹の子も霜ふりはててたてる程なさ
われのみか−ことしおひいてし−たけのこも−しもふりはてて−たてるほとなさ |
05189 |
未入力 正徹 (xxx)
明かたは小枝もたわにくれ竹の夜なかき霜そおもく成行く
あけかたは−さえたもたわに−くれたけの−よなかきしもそ−おもくなりゆく |
05190 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけねくらの鳥も出てぬまて霜にとちたる窓の呉竹
あさほらけ−ねくらのとりも−いてぬまて−しもにとちたる−まとのくれたけ |
05191 |
未入力 正徹 (xxx)
かり衣つはさもさむし箸鷹をすゑをの竹の霜の下道
かりころも−つはさもさむし−はしたかを−すゑをのたけの−しものしたみち |
05192 |
未入力 正徹 (xxx)
竹のはの月の夜霜はみな消えてふれるはかりにさゆる朝風
たけのはの−つきのよしもは−みなきえて−ふれるはかりに−さゆるあさかせ |
05193 |
未入力 正徹 (xxx)
ささたかき山の尾上の杉の本霜も岩ほも道そこりしく
ささたかき−やまのをのへの−すきのもと−しももいはほも−みちそこりしく |
05194 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影さしもる霜も消えやらすもゆる思ひや冬はなからん
あさひかけ−さしもるしもも−きえやらす−もゆるおもひや−ふゆはなからむ |
05195 |
未入力 正徹 (xxx)
むさしのの霜はいつくをさかふらん草葉かるるそかきりなりける
むさしのの−しもはいつくを−さかふらむ−くさはかるるそ−かきりなりける |
05196 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の庭千草にとけし花もなしむすほほれけり霜の下紐
ふゆのには−ちくさにとけし−はなもなし−むすほほれけり−しものしたひも |
05197 |
未入力 正徹 (xxx)
かれのこる籬の草の一花を霜と見なから猶やめてまし
かれのこる−まかきのくさの−ひとはなを−しもとみなから−なほやめてまし |
05198 |
未入力 正徹 (xxx)
朝霜も庭よこりしきあらかねの土さへさけてこほる冬かな
あさしもも−にはよこりしき−あらかねの−つちさへさけて−こほるふゆかな |
05199 |
未入力 正徹 (xxx)
はしゐする衣てさむし松のはもおとせぬ庭の霜の朝風
はしゐする−ころもてさむし−まつのはも−おとせぬにはの−しものあさかせ |
05200 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから松ふく庭の土こほり朝霜ふかき木枯のやと
よもすから−まつふくにはの−つちこほり−あさしもふかき−こからしのやと |
05201 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす軒はの松の陰はかりおとしておつる霜の下露
あさひさす−のきはのまつの−かけはかり−おとしておつる−しものしたつゆ |
05202 |
未入力 正徹 (xxx)
跡もなき昔の庭のをしへかな霜をいたたく身のみふりつつ
あともなき−むかしのにはの−をしへかな−しもをいたたく−みのみふりつつ |
05203 |
未入力 正徹 (xxx)
待つ人はよもきのかれふむら薄木の葉よたえし庭の夕霜
まつひとは−よもきのかれふ−むらすすき−このはよたえし−にはのゆふしも |
05204 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さすいたやの霜の村消にたてぬ朝けの煙をそみる
ひかけさす−いたやのしもの−むらきえに−たてぬあさけの−けふりをそみる |
05205 |
未入力 正徹 (xxx)
おきいてしまきの戸あくる朝霜に音せぬ風そ身にとほりぬる
おきいてし−まきのとあくる−あさしもに−おとせぬかせそ−みにとほりぬる |
05206 |
未入力 正徹 (xxx)
手をさむみ袖のあさ霜まくりもて行人くもる遠かたの野へ
てをさむみ−そてのあさしも−まくりもて−ゆくひとくもる−をちかたののへ |
05207 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす軒はの霜のまたきよりたかぬ朝けをたつる里人
ひかけさす−のきはのしもの−またきより−たかぬあさけを−たつるさとひと |
05208 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原たれにとふとも此比や朝霜おきてかるとこたへん
くさのはら−たれにとふとも−このころや−あさしもおきて−かるとこたへむ |
05209 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす峰のときは木露落ちて木のもと白し椎柴の霜
ひかけさす−みねのときはき−つゆおちて−このもとしろし−しひしはのしも |
05210 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる峰の嵐に水鳥の羽かひの山も霜はらふなり
あけわたる−みねのあらしに−みつとりの−はかひのやまも−しもはらふなり |
05211 |
未入力 正徹 (xxx)
かるもをはこほれる霜にかきませてふすゐやさむきのへの朝かせ
かるもをは−こほれるしもに−かきませて−ふすゐやさむき−のへのあさかせ |
05212 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やくちて板なきはしけたにたえたえかかる冬のあさ霜
やまかはや−くちていたなき−はしけたに−たえたえかかる−ふゆのあさしも |
05213 |
未入力 正徹 (xxx)
かさ鷺のわたせる橋の霜消えて天つ日影や今朝しくるらん
かささきの−わたせるはしの−しもきえて−あまつひかけや−けさしくるらむ |
05214 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ川やを舟ならふる橋縄の長き夜のまに結ふ霜かな
あさかはや−をふねならふる−はしなはの−なかきよのまに−むすふしもかな |
05215 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の雲ゐのみねの冬も猶わたすか霜の花の梯
あさあけの−くもゐのみねの−ふゆもなほ−わたすかしもの−はなのかけはし |
05216 |
未入力 正徹 (xxx)
おひ風もま柴をはらふ袖なからゆふ霜かろくかへる山人
おひかせも−ましはをはらふ−そてなから−ゆふしもかろく−かへるやまひと |
05217 |
未入力 正徹 (xxx)
かれし野の薄はかりやうらやまん遠かた人の袖のゆふ霜
かれしのの−すすきはかりや−うらやまむ−をちかたひとの−そてのゆふしも |
05218 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をへし木の葉は霜にくちはててちるも色なき神な月かな
あきをへし−このははしもに−くちはてて−ちるもいろなき−かみなつきかな |
05219 |
未入力 正徹 (xxx)
をしましよ木の葉よりけにかろき身はいかなる谷に朽ちはてぬとも
をしましよ−このはよりけに−かろきみは−いかなるたにに−くちはてぬとも |
05220 |
未入力 正徹 (xxx)
風さそふしくれとともにふり落ちて庭の木の葉のかわくまそなき
かせさそふ−しくれとともに−ふりおちて−にはのこのはの−かわくまそなき |
05221 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きのほる谷風なから木の葉もて又うちわたす峰のかけはし
ふきのほる−たにかせなから−このはもて−またうちわたす−みねのかけはし |
05222 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく空は木の葉の村立にこの比雲のゆききをも見す
あらしふく−そらはこのはの−むらたちに−このころくもの−ゆききをもみす |
05223 |
未入力 正徹 (xxx)
をしむそよ木の葉の過くる嵐にもまさりてはやくめくる日影を
をしむそよ−このはのすくる−あらしにも−まさりてはやく−めくるひかけを |
05224 |
未入力 正徹 (xxx)
山里は庭に木の葉を巻く風のよわれはおつるこゑもさひしき
やまさとは−にはにこのはを−まくかせの−よわれはおつる−こゑもさひしき |
05225 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとにのこる朽はを吹きたてて雪まてくもる冬の山風
このもとに−のこるくちはを−ふきたてて−ゆきまてくもる−ふゆのやまかせ |
05226 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風もきほふ木の葉の露霜にほすまもしらぬ山の下道
くもかせも−きほふこのはの−つゆしもに−ほすまもしらぬ−やまのしたみち |
05227 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりまよふ嵐の上はなほさえて空に木の葉の霜やおくらん
ちりまよふ−あらしのうへは−なほさえて−そらにこのはの−しもやおくらむ |
05228 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねんまよふ木の葉のちりの世を思ひめくらす庭のさ夜風
いかかねむ−まよふこのはの−ちりのよを−おもひめくらす−にはのさよかせ |
05229 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふき木の葉みたれてくもる日やあれ行く冬のはしめなるらん
あらしふき−このはみたれて−くもるひや−あれゆくふゆの−はしめなるらむ |
05230 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれくる木の葉も空にみちのくのしのふやうつむ軒の山風
みたれくる−このはもそらに−みちのくの−しのふやうつむ−のきのやまかせ |
05231 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月木の葉をさそふ風たにも猶やすけなき雲そ時雨るる
かみなつき−このはをさそふ−かせたにも−なほやすけなき−くもそしくるる |
05232 |
未入力 正徹 (xxx)
冬やうき山の木の葉のかくろへもなきかおほかる遠近のさと
ふゆやうき−やまのこのはの−かくろへも−なきかおほかる−をちこちのさと |
05233 |
未入力 正徹 (xxx)
たつきなき野へに木の葉そふりくたる嶺の嵐やさそひすくらん
たつきなき−のへにこのはそ−ふりくたる−みねのあらしや−さそひすくらむ |
05234 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは朽ちにし木の葉よるかたもあれはあるよとたのむはかなさ
かせふけは−くちにしこのは−よるかたも−あれはあるよと−たのむはかなさ |
05235 |
未入力 正徹 (xxx)
山はみな雲の衣をうらもなくたのみやすらんちる木の葉かな
やまはみな−くものころもを−うらもなく−たのみやすらむ−ちるこのはかな |
05236 |
未入力 正徹 (xxx)
朝なきの浪にうちちるあま舟や朽ちし木の葉の行へなるらん
あさなきの−なみにうちちる−あまふねや−くちしこのはの−ゆくへなるらむ |
05237 |
未入力 正徹 (xxx)
さそひ行くあらしのひまに又落つる木の葉や庭の友したふらん
さそひゆく−あらしのひまに−またおつる−このはやにはの−ともしたふらむ |
05238 |
未入力 正徹 (xxx)
ささかにの糸にもみちをかけ置きて軒は過きゆく庭の木枯
ささかにの−いとにもみちを−かけおきて−のきはすきゆく−にはのこからし |
05239 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる木の葉しくれにたまる水の淡に落ちてもまさる色そはかなき
ちるこのは−しくれにたまる−みつのあわに−おちてもまさる−いろそはかなき |
05240 |
未入力 正徹 (xxx)
太山かせふかく吹きしく冬のはに木の実も落ちて谷に行くこゑ
みやまかせ−ふかくふきしく−ふゆのはに−このみもおちて−たににゆくこゑ |
05241 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく木の葉の霜の花のねにかへる雲路の鳥はなくして
あらしふく−このはのしもの−はなのねに−かへるくもちの−とりはなくして |
05242 |
未入力 正徹 (xxx)
ちり行くを心かろしとのこるとも春のわか葉の後のときは木
ちりゆくを−こころかろしと−のこるとも−はるのわかはの−のちのときはき |
05243 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにも思ひはとめし嵐ふく冬の木の葉のこころともかな
いつくにも−おもひはとめし−あらしふく−ふゆのこのはの−こころともかな |
05244 |
未入力 正徹 (xxx)
のこらむはかた野の木の葉木からしの夕かりすつるあその山風
のこらむは−かたののこのは−こからしの−ゆふかりすつる−あそのやまかせ |
05245 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世には木の葉も枝をのかれつつあらかひ行くをいつまてかみん
うきよには−このはもえたを−のかれつつ−あらかひゆくを−いつまてかみむ |
05246 |
未入力 正徹 (xxx)
おそくとくちりみちらすみ世にみてる紅葉や冬の光なるらん
おそくとく−ちりみちらすみ−よにみてる−もみちやふゆの−ひかりなるらむ |
05247 |
未入力 正徹 (xxx)
雲そゐる冬は木の葉のかくろへもなき山ひめや袖かさすらん
くもそゐる−ふゆはこのはの−かくろへも−なきやまひめや−そてかさすらむ |
05248 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみ分けぬ思ひの色をかさねてや葎の庭に木の葉ちるらん
ふみわけぬ−おもひのいろを−かさねてや−むくらのにはに−このはちるらむ |
05249 |
未入力 正徹 (xxx)
ちれはとて木の葉の衣袖なくはうき世の民におほひやはせん
ちれはとて−このはのころも−そてなくは−うきよのたみに−おほひやはせむ |
05250 |
未入力 正徹 (xxx)
軒の雨ちるもみち葉のかかるにそいとふにも似ぬささかにの糸
のきのあめ−ちるもみちはの−かかるにそ−いとふにもにぬ−ささかにのいと |
05251 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風山は木の葉のかくろへもあらはに塩のひける磯かな
おきつかせ−やまはこのはの−かくろへも−あらはにしほの−ひけるいそかな |
05252 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにして落葉かきとる里の子も時雨に憑むときは木の陰
よそにして−おちはかきとる−さとのこも−しくれにたのむ−ときはきのかけ |
05253 |
未入力 正徹 (xxx)
紅葉ちる四方の嵐もあらかねをやくやこかるる土の色かな
もみちちる−よものあらしも−あらかねを−やくやこかるる−つちのいろかな |
05254 |
未入力 正徹 (xxx)
くれなゐのうす花色を染めまして山桜戸にちる紅葉かな
くれなゐの−うすはないろを−そめまして−やまさくらとに−ちるもみちかな |
05255 |
未入力 正徹 (xxx)
山嵐峰の白雪ふきませてくれなゐうすく行くもみちかな
やまあらし−みねのしらゆき−ふきませて−くれなゐうすく−ゆくもみちかな |
05256 |
未入力 正徹 (xxx)
世中はうらきもつらきままならぬ花の嵐にちる木の葉かな
よのなかは−うらきもつらき−ままならぬ−はなのあらしに−ちるこのはかな |
05257 |
未入力 正徹 (xxx)
いこま山て染の糸の中たえてみしかき色にちる木の葉かな
いこまやま−てそめのいとの−なかたえて−みしかきいろに−ちるこのはかな |
05258 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜風にちるや木の葉のさらさらとまたきに竹の霰をそ聞く
さよかせに−ちるやこのはの−さらさらと−またきにたけの−あられをそきく |
05259 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月ちらすはありとも朽ちぬへしわか身時雨に染むる袂は
かみなつき−ちらすはありとも−くちぬへし−わかみしくれに−そむるたもとは |
05260 |
未入力 正徹 (xxx)
たえねとそ冬は山風立田姫しくれの糸の秋のてそめを
たえねとそ−ふゆはやまかせ−たつたひめ−しくれのいとの−あきのてそめを |
05261 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨れゆくあとの村雲吹きませて木の葉にはるる嶺の木枯
しくれゆく−あとのむらくも−ふきませて−このはにはるる−みねのこからし |
05262 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりましるおとそたえせぬ神な月木の葉は風に雲は時雨に
ふりましる−おとそたえせぬ−かみなつき−このははかせに−くもはしくれに |
05263 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きても秋のみなとの河上に舟よそひして行く木の葉かな
ふゆきても−あきのみなとの−かはかみに−ふなよそひして−ゆくこのはかな |
05264 |
未入力 正徹 (xxx)
はては又嵐をそめて行く木の葉しくれし雲にかへす色かな
はてはまた−あらしをそめて−ゆくこのは−しくれしくもに−かへすいろかな |
05265 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよふ滝とおつるや山風に吹きすてらるる木の葉なるらん
くもまよふ−たきとおつるや−やまかせに−ふきすてらるる−このはなるらむ |
05266 |
未入力 正徹 (xxx)
わたれ人風になかるる紅葉はは都なからの染川のなみ
わたれひと−かせになかるる−もみちはは−みやこなからの−そめかはのなみ |
05267 |
未入力 正徹 (xxx)
松かけや嵐はふかて朝露のおつるしつくに散る木の葉かな
まつかけや−あらしはふかて−あさつゆの−おつるしつくに−ちるこのはかな |
05268 |
未入力 正徹 (xxx)
なひけこしみとりの風そ色かはる木の葉や冬の春の若草
なひけこし−みとりのかせそ−いろかはる−このはやふゆの−はるのわかくさ |
05269 |
未入力 正徹 (xxx)
春の花風の心のままならはむくひある世をちる木の葉かな
はるのはな−かせのこころの−ままならは−むくひあるよを−ちるこのはかな |
05270 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章のかみの色とも見えぬへしもみち吹きまく風のつかひに
たまつさの−かみのいろとも−みえぬへし−もみちふきまく−かせのつかひに |
05271 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる木の葉さそふ水なき空なからなかれて遠く行く嵐かな
ちるこのは−さそふみつなき−そらなから−なかれてとほく−ゆくあらしかな |
05272 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふとてさそふにもあらし吹く風のつらきやとりをかる木の葉かな
おもふとて−さそふにもあらし−ふくかせの−つらきやとりを−かるこのはかな |
05273 |
未入力 正徹 (xxx)
かささきに一むら見えて行末の空にまはらにちる木の葉かな
かささきに−ひとむらみえて−ゆくすゑの−そらにまはらに−ちるこのはかな |
05274 |
未入力 正徹 (xxx)
風きけは峰の木の葉の中空に吹きすてられて落つるこゑこゑ
かせきけは−みねのこのはの−なかそらに−ふきすてられて−おつるこゑこゑ |
05275 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく庭にかたよる木の葉にも猶さためなき時雨をそ聞く
あらしふく−にはにかたよる−このはにも−なほさためなき−しくれをそきく |
05276 |
未入力 正徹 (xxx)
落つる葉の霜にあたりて声すなりさゆる朝気の庭の木枯
おつるはの−しもにあたりて−こゑすなり−さゆるあさけの−にはのこからし |
05277 |
未入力 正徹 (xxx)
ね屋の上に雨よりおもき声すなり霜おく後や木の葉ちるらん
ねやのうへに−あめよりおもき−こゑすなり−しもおくのちや−このはちるらむ |
05278 |
未入力 正徹 (xxx)
風吹きてかへる落葉にちる雪の花の物いふふる郷の庭
かせふきて−かへるおちはに−ちるゆきの−はなのものいふ−ふるさとのには |
05279 |
未入力 正徹 (xxx)
梢にもいまはあらしの冬のはの霜をかなしむ庭のこゑかな
こすゑにも−いまはあらしの−ふゆのはの−しもをかなしむ−にはのこゑかな |
05280 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きいれはね屋に衣となるはかり落葉かさねに庭の木枯
ふきいれは−ねやにころもと−なるはかり−おちはかさねに−にはのこからし |
05281 |
未入力 正徹 (xxx)
うつもるるなさへあるしの宿かほに木の葉ふりかくす道のへの庵
うつもるる−なさへあるしの−やとかほに−このはふりかくす−みちのへのいほ |
05282 |
未入力 正徹 (xxx)
さやきこし太山颪にかれそ行く木の葉の下の道のささ原
さやきこし−みやまおろしに−かれそゆく−このはのしたの−みちのささはら |
05283 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりつもる谷の木の葉のめくるかなさかまく水や下に行くらん
ちりつもる−たにのこのはの−めくるかな−さかまくみつや−したにゆくらむ |
05284 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やみなわさかまく水の上に落ちて木の葉や又のほるらん
やまかはや−みなわさかまく−みつのうへに−おちてこのはや−またのほるらむ |
05285 |
未入力 正徹 (xxx)
おとまかふ木の葉も雲の色ならて時雨わけたる軒の玉水
おとまかふ−このはもくもの−いろならて−しくれわけたる−のきのたまみつ |
05286 |
未入力 正徹 (xxx)
山ひめの涙しくれの色ならは木の葉も袖のゆかりとやみん
やまひめの−なみたしくれの−いろならは−このはもそての−ゆかりとやみむ |
05287 |
未入力 正徹 (xxx)
ね屋の上におとする程の露もらは木の葉のそはぬ時雨ならまし
ねやのうへに−おとするほとの−つゆもらは−このはのそはぬ−しくれならまし |
05288 |
未入力 正徹 (xxx)
木の本のくち葉の後は霜八たひおくともなにの色かかはらん
このもとの−くちはののちは−しもやたひ−おくともなにの−いろかかはらむ |
05289 |
未入力 正徹 (xxx)
今よりは梢の霜のおき所嵐にたへてちる木の葉かな
いまよりは−こすゑのしもの−おきところ−あらしにたへて−ちるこのはかな |
05290 |
未入力 正徹 (xxx)
たて見はやこしの山路の雪にまつ積る木の葉のさをのしるしを
たてみはや−こしのやまちの−ゆきにまつ−つもるこのはの−さをのしるしを |
05291 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれの庭の風になかれきて水なき淵となる木の葉かな
ふゆかれの−にはのあらしに−なかれきて−みつなきふちと−なるこのはかな |
05292 |
未入力 正徹 (xxx)
おともせす散りし木の葉のそこひなき淵やはさわく霜のうは浪
おともせす−ちりしこのはの−そこひなき−ふちやはさわく−しものうはなみ |
05293 |
未入力 正徹 (xxx)
山里はのこる木の葉のかくろへもなき家かすそ冬はそひ行く
やまさとは−のこるこのはの−かくろへも−なきいへかすそ−ふゆはそひゆく |
05294 |
未入力 正徹 (xxx)
みこし路やつもる木の葉の雪ならはしるしにたてる棹やなからん
みこしちや−つもるこのはの−ゆきならは−しるしにたてる−さをやなからむ |
05295 |
未入力 正徹 (xxx)
冬ふかみ春の木の目におくれしやかた枝に一葉ちり残るらん
ふゆふかみ−はるのこのめに−おくれしや−かたえにひとは−ちりのこるらむ |
05296 |
未入力 正徹 (xxx)
色そ見ぬ嶺たちいつる明かたの星のまきれにちる木の葉かな
いろそみぬ−みねたちいつる−あけかたの−ほしのまきれに−ちるこのはかな |
05297 |
未入力 正徹 (xxx)
滝川の岩浪はやくとやかへるたかをに落ちて飛ふ木の葉かな
たきかはの−いはなみはやく−とやかへる−たかをにおちて−とふこのはかな |
05298 |
未入力 正徹 (xxx)
霜白き嵐もさえてかささきのわたせる橋にちる木の葉かな
しもしろき−あらしもさえて−かささきの−わたせるはしに−ちるこのはかな |
05299 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる木の葉谷のを川をうつむよりあらはれわたる峰の梯
ちるこのは−たにのをかはを−うつむより−あらはれわたる−みねのかけはし |
05300 |
未入力 正徹 (xxx)
橋はしらたれ錦木のたつとみて落葉にうとき冬の山姫
はしはしら−たれにしききの−たつとみて−おちはにうとき−ふゆのやまひめ |
05301 |
未入力 正徹 (xxx)
明けは又思ひの色や染めまさん木の葉かた敷く宇治の橋ひめ
あけはまた−おもひのいろや−そめまさむ−このはかたしく−うちのはしひめ |
05302 |
未入力 正徹 (xxx)
枕にも夢のうきはしうつもれて木の葉にたゆるふるの中道
まくらにも−ゆめのうきはし−うつもれて−このはにたゆる−ふるのなかみち |
05303 |
未入力 正徹 (xxx)
ちる木の葉わたせる板に音はしてたゆるそあらぬ夢の浮橋
ちるこのは−わたせるいたに−おとはして−たゆるそあらぬ−ゆめのうきはし |
05304 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみならす跡に木のはの深くなりて中中しるき冬の太山路
ふみならす−あとにこのはの−ふかくなりて−なかなかしるき−ふゆのみやまち |
05305 |
未入力 正徹 (xxx)
あと見えぬ庭の木の葉を立ちいててわかかく程のいとなみもなし
あとみえぬ−にはのこのはを−たちいてて−わかかくほとの−いとなみもなし |
05306 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふくみねの入日の跡さえて夕霜なからふる木の葉かな
あらしふく−みねのいりひの−あとさえて−ゆふしもなから−ふるこのはかな |
05307 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨をはよしやいとはし手枕に木の葉もるまて閨のあれぬる
しくれをは−よしやいとはし−たまくらに−このはもるまて−ねやのあれぬる |
05308 |
未入力 正徹 (xxx)
おくれ月嵐ふく夜の有明はのこる木の葉のきぬきぬの空
おくれつき−あらしふくよの−ありあけは−のこるこのはの−きぬきぬのそら |
05309 |
未入力 正徹 (xxx)
みかさとも月にはいはし宮城のの時雨は夜はの木の葉なりけり
みかさとも−つきにはいはし−みやきのの−しくれはよはの−このはなりけり |
05310 |
未入力 正徹 (xxx)
庭寒き嵐は霜をおく月の影をもそめてもる木の葉かな
にはさむき−あらしはしもを−おくつきの−かけをもそめて−もるこのはかな |
05311 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれは又や氷をうつむらん草にかくれし野への沢水
ふゆかれは−またやこほりを−うつむらむ−くさにかくれし−のへのさはみつ |
05312 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕の霜おかすともかれぬへき野への千草の露そこほれる
あさゆふの−しもおかすとも−かれぬへき−のへのちくさの−つゆそこほれる |
05313 |
未入力 正徹 (xxx)
篠ましる野へのこ草の冬の霜かれすは有りともわきてみましや
ささましる−のへのこくさの−ふゆのしも−かれすはありとも−わきてみましや |
05314 |
未入力 正徹 (xxx)
草はみなかれにし野への霜の松たてる尾上の友そさひしき
くさはみな−かれにしのへの−しものまつ−たてるをのへの−ともそさひしき |
05315 |
未入力 正徹 (xxx)
冬は世にうちはへおけと主もなし枯野のきぬと雲の衣と
ふゆはよに−うちはへおけと−ぬしもなし−かれののきぬと−くものころもと |
05316 |
未入力 正徹 (xxx)
花にさく霜を日影にへたつとや冬のかれ野にのこる朝霧
はなにさく−しもをひかけに−へたつとや−ふゆのかれのに−のこるあさきり |
05317 |
未入力 正徹 (xxx)
あれわたる霜の冬のの草朽ちて蛍むなしき玉あられかな
あれわたる−しものふゆのの−くさくちて−ほたるむなしき−たまあられかな |
05318 |
未入力 正徹 (xxx)
山ひめのぬくやかれ野の衣ならん蹄に朽ちたる草はみなから
やまひめの−ぬくやかれのの−きぬならむ−しもにくちたる−くさはみなから |
05319 |
未入力 正徹 (xxx)
野へはみな煙そなひく朝日かけさしもか霜にあらぬ草はも
のへはみな−けふりそなひく−あさひかけ−さしもかしもに−あらぬくさはも |
05320 |
未入力 正徹 (xxx)
春秋よすたきし虫もすむ鳥も夢のの鹿の跡の霜かれ
はるあきよ−すたきしむしも−すむとりも−ゆめののしかの−あとのしもかれ |
05321 |
未入力 正徹 (xxx)
なみよりしみとりの草葉冬かれて世をうみわたるのへの山かせ
なみよりし−みとりのくさは−ふゆかれて−よをうみわたる−のへのやまかせ |
05322 |
未入力 正徹 (xxx)
み山よりさやきてくたる木枯のこゑもかはらぬ野へのささ原
みやまより−さやきてくたる−こからしの−こゑもかはらぬ−のへのささはら |
05323 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原たれにとひてか篠のはのつれなき色を冬にみすらん
くさのはら−たれにとひてか−ささのはの−つれなきいろを−ふゆにみすらむ |
05324 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の行くあけくれ寒し霜原やむはらのしとともすの鳴くこゑ
ふゆのゆく−あけくれさむし−しもはらや−むはらのしとと−もすのなくこゑ |
05325 |
未入力 正徹 (xxx)
冬も見つかれ野の霜の朝霧に染むる日かけの秋のくれなゐ
ふゆもみつ−かれののしもの−あさきりに−そむるひかけの−あきのくれなゐ |
05326 |
未入力 正徹 (xxx)
つれもなき木の葉のための木枯をよそけにおける草の夕霜
つれもなき−このはのための−こからしを−よそけにおける−くさのゆふしも |
05327 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにも木からしならぬ杜そなき冬や所の名をかくすらん
いつくにも−こからしならぬ−もりそなき−ふゆやところの−なをかくすらむ |
05328 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにか冬こもるらん万葉のやとりあれ行く木枯のかせ
いつくにか−ふゆこもるらむ−よろつはの−やとりあれゆく−こからしのかせ |
05329 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世には身をかくしおく人そあらん吹きなあらしそ山の木枯
うきよには−みをかくしおく−ひとそあらむ−ふきなあらしそ−やまのこからし |
05330 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きちらす木の葉の後は木からしの名におふ色もなにに見えまし
ふきちらす−このはののちは−こからしの−なにおふいろも−なににみえまし |
05331 |
未入力 正徹 (xxx)
冬のはのちる山ひめの枕かも木からしふけは舟わたるなり
ふゆのはの−ちるやまひめの−まくらかも−こからしふけは−ふねわたるなり |
05332 |
未入力 正徹 (xxx)
春は花ちりしはかりそ木をからす風の名つらき冬のこゑかな
はるははな−ちりしはかりそ−きをからす−かせのなつらき−ふゆのこゑかな |
05333 |
未入力 正徹 (xxx)
見し色のかはるとかはる冬のはを一葉もとめぬ山の木からし
みしいろの−かはるとかはる−ふゆのはを−ひとはもとめぬ−やまのこからし |
05334 |
未入力 正徹 (xxx)
人もこす雲もかへらす木枯の山吹きあらす霜のふる郷
ひともこす−くももかへらす−こからしの−やまふきあらす−しものふるさと |
05335 |
未入力 正徹 (xxx)
もみちゆゑ暮れさりし山の木枯も落つる色なき滝の岩なみ
もみちゆゑ−くれさりしやまの−こからしも−おつるいろなき−たきのいはなみ |
05336 |
未入力 正徹 (xxx)
かこひかね消えてそかへる木からしの山吹きあらす夕暮の雲
かこひかね−きえてそかへる−こからしの−やまふきあらす−ゆふくれのくも |
05337 |
未入力 正徹 (xxx)
松にのみくるる木枯吹きつくし冬の一葉もなき山路かな
まつにのみ−くるるこからし−ふきつくし−ふゆのひとはも−なきやまちかな |
05338 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる日の屋上の松の下柴に夕霜いそく木枯のこゑ
さゆるひの−をのへのまつの−したしはに−ゆふしもいそく−こからしのこゑ |
05339 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮の松にそかへる冬のはを吹きつくしたる木枯のこゑ
ゆふくれの−まつにそかへる−ふゆのはを−ふきつくしたる−こからしのこゑ |
05340 |
未入力 正徹 (xxx)
有明の月のかつらの木枯に散るか色こき影はおとせて
ありあけの−つきのかつらの−こからしに−ちるかいろこき−かけはおとせて |
05341 |
未入力 正徹 (xxx)
たちかへり朝けの煙吹きそしく落葉かきたく宿の木枯
たちかへり−あさけのけふり−ふきそしく−おちはかきたく−やとのこからし |
05342 |
未入力 正徹 (xxx)
さえのこる月のかつらの朝霜をはらふかうすき木枯の影
さえのこる−つきのかつらの−あさしもを−はらふかうすき−こからしのかけ |
05343 |
未入力 正徹 (xxx)
ききすてん雲もしくれす葉もおちすね覚夜ふかき木枯の声
ききすてむ−くももしくれす−はもおちす−ねさめよふかき−こからしのこゑ |
05344 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の夜の月もなかれておのつからこほらぬ雲のみをそしらるる
ふゆのよの−つきもなかれて−おのつから−こほらぬくもの−みをそしらるる |
05345 |
未入力 正徹 (xxx)
空さえて四方に氷をしく月のなかるる影といかて見ゆらん
そらさえて−よもにこほりを−しくつきの−なかるるかけと−いかてみゆらむ |
05346 |
未入力 正徹 (xxx)
さえつくす霜や氷を月のうちにあつめて四方にくたす影かな
さえつくす−しもやこほりをつ−きのうちに−あつめてよもに−くたすかけかな |
05347 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染の袖におちては天つ雲こほれる月も影そみかかぬ
すみそめの−そてにおちては−あまつくも−こほれるつきも−かけそみかかぬ |
05348 |
未入力 正徹 (xxx)
おく霜もこほれる影の物ことにきしる音してふくる夜の月
おくしもも−こほれるかけの−ものことに−きしるおとして−ふくるよのつき |
05349 |
未入力 正徹 (xxx)
氷しく霜夜の月につくかねのこゑや千さとの外の曙
こほりしく−しもよのつきに−つくかねの−こゑやちさとの−ほかのあけほの |
05350 |
未入力 正徹 (xxx)
戸さしせぬ月の氷の関こえて夜はに吹きくる天つ木枯
とさしせぬ−つきのこほりの−せきこえて−よはにふきくる−あまつこからし |
05351 |
未入力 正徹 (xxx)
ならはすやかやか軒はをもる月の霜おきあかす墨染の袖
ならはすや−かやかのきはを−もるつきの−しもおきあかす−すみそめのそて |
05352 |
未入力 正徹 (xxx)
木枯や霜も氷ももるね屋の夜とてしつとも見えぬ月かな
こからしや−しももこほりも−もるねやの−よとてしつとも−みえぬつきかな |
05353 |
未入力 正徹 (xxx)
猶のこる月のかつらのはたれ霜ふるやかたふく影そさむけき
なほのこる−つきのかつらの−はたれしも−ふるやかたふく−かけそさむけき |
05354 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風おと吹きむすふ大空の氷のうへにこほる月かけ
あまつかせ−おとふきむすふ−おほそらの−こほりのうへに−こほるつきかけ |
05355 |
未入力 正徹 (xxx)
星なれや月すむ空の氷よりうちいつる雲の浪の白玉
ほしなれや−つきすむそらの−こほりより−うちいつるくもの−なみのしらたま |
05356 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの月むら雲かくれ行く程や袖の氷を又くたくらむ
よはのつき−むらくもかくれ−ゆくほとや−そてのこほりを−またくたくらむ |
05357 |
未入力 正徹 (xxx)
月のうちにひひきのほると思ふまて霜夜の鐘に影そさえ行く
つきのうちに−ひひきのほると−おもふまて−しもよのかねに−かけそさえゆく |
05358 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑにさへあらはれけりなすむ月の氷のそこの峰の松かせ
こゑにさへ−あらはれけりな−すむつきの−こほりのそこの−みねのまつかせ |
05359 |
未入力 正徹 (xxx)
袖さゆる冬の夜とてに月はあれと心空なる人そすくなき
そてさゆる−ふゆのよとてに−つきはあれと−こころそらなる−ひとそすくなき |
05360 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか見む水なき空の氷とはならて袂そ月にぬれゆく
いかかみむ−みつなきそらの−こほりとは−ならてたもとそ−つきにぬれゆく |
05361 |
未入力 正徹 (xxx)
ありとある水のなさけをあつめおく月の氷も又世にそ敷く
ありとある−みつのなさけを−あつめおく−つきのこほりも−またよにそしく |
05362 |
未入力 正徹 (xxx)
とけん期もいさしら雲の天の原こほれるうへにこほる月影
とけむこも−いさしらくもの−あまのはら−こほれるうへに−こほるつきかけ |
05363 |
未入力 正徹 (xxx)
空にさへ光をわたる人やなき月のみやこの霜のふる道
そらにさへ−ひかりをわたる−ひとやなき−つきのみやこの−しものふるみち |
05364 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみならすすのこのきしる音さへもこほるににたる宿の月影
ふみならす−すのこのきしる−おとさへも−こほるににたる−やとのつきかけ |
05365 |
未入力 正徹 (xxx)
槙の戸をはやくたててそかへり入る老いてみぬ夜の木枯の月
まきのとを−はやくたててそ−かへりいる−おいてみぬよの−こからしのつき |
05366 |
未入力 正徹 (xxx)
はるる夜のおとに時雨れて山のはの月の氷をはらふ松かせ
はるるよの−おとにしくれて−やまのはの−つきのこほりを−はらふまつかせ |
05367 |
未入力 正徹 (xxx)
氷りけり山のあなたの月まてはおとによとみし滝の岩なみ
こほりけり−やまのあなたの−つきまては−おとによとみし−たきのいはなみ |
05368 |
未入力 正徹 (xxx)
冬川の水の心や春ならん氷なかるるせせの月かけ
ふゆかはの−みつのこころや−はるならむ−こほりなかるる−せせのつきかけ |
05369 |
未入力 正徹 (xxx)
月さゆる浦のひかたの松なれやふらぬ真砂の雪の村きえ
つきさゆる−うらのひかたの−まつなれや−ふらぬまさこの−ゆきのむらきえ |
05370 |
未入力 正徹 (xxx)
和田の原千里の浪にしくも猶あまる氷をみかく月影
わたのはら−ちさとのなみに−しくもなほ−あまるこほりを−みかくつきかけ |
05371 |
未入力 正徹 (xxx)
氷をもはこひそたえぬ夜塩汲むあまの袖しのうらの月影
こほりをも−はこひそたえぬ−よしほくむ−あまのそてしの−うらのつきかけ |
05372 |
未入力 正徹 (xxx)
芦火たくこやのあま人いててみよ煙の浪も月そこほれる
あしひたく−こやのあまひと−いててみよ−けふりのなみも−つきそこほれる |
05373 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるか霜のかり田のうねののに月かたふきてたつ鳴きわたる
あけぬるか−しものかりたの−うねののに−つきかたふきて−たつなきわたる |
05374 |
未入力 正徹 (xxx)
月のすむ都のたつみ里の名をたか身にしれと時雨ふるらん
つきのすむ−みやこのたつみ−さとのなを−たかみにしれと−しくれふるらむ |
05375 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ちる里はあれぬと住みわひん人は嵐にはるる月かけ
このはちる−さとはあれぬと−すみわひむ−ひとはあらしに−はるるつきかけ |
05376 |
未入力 正徹 (xxx)
かれにけり昔の庭の苔莚月のこほりはしき忍へとも
かれにけり−むかしのにはの−こけむしろ−つきのこほりは−しきしのへとも |
05377 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる寺とならのあすかの川もなしくむや石井にこほる月影
ふるてらと−ならのあすかの−かはもなし−くむやいしゐに−こほるつきかけ |
05378 |
未入力 正徹 (xxx)
かも川や都のにしのなかれまてまくらにこほるあり明の月
かもかはや−みやこのにしの−なかれまて−まくらにこほる−ありあけのつき |
05379 |
未入力 正徹 (xxx)
月のしく氷のしたの思草たれかほかれんあり明の空
つきのしく−こほりのしたの−おもひくさ−たれかほかれむ−ありあけのそら |
05380 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ行く天つ川たれ時しらぬ月はこほりて氷をそしく
なかれゆく−あまつかはたれ−ときしらぬ−つきはこほりて−こほりをそしく |
05381 |
未入力 正徹 (xxx)
野へにたれかりねの霜の花衣ぬき別れてか有明の月
のへにたれ−かりねのしもの−はなころも−ぬきわかれてか−ありあけのつき |
05382 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の月光をさまる明ほののこほりや四方の空に消ゆらん
ふゆのつき−ひかりをさまる−あけほのの−こほりやよもの−そらにきゆらむ |
05383 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかぬるかたふく月の夜はの袖氷にちかき遠のさと人
いかかぬる−かたふくつきの−よはのそて−こほりにちかき−をちのさとひと |
05384 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれの庭に音せぬ風さえてうす雪こほる夜はの月影
ふゆかれの−にはにおとせぬ−かせさえて−うすゆきこほる−よはのつきかけ |
05385 |
未入力 正徹 (xxx)
消えて行く雲に結はぬ霜氷空にみちたる月の影かな
きえてゆく−くもにむすはぬ−しもこほり−そらにみちたる−つきのかけかな |
05386 |
未入力 正徹 (xxx)
春ちかき廿日の月の望の夜になかはは消えて氷のこれる
はるちかき−はつかのつきの−もちのよに−なかははきえて−こほりのこれる |
05387 |
未入力 正徹 (xxx)
うつるさへおとする浪になかれぬや氷におもき冬川の月
うつるさへ−おとするなみに−なかれぬや−こほりにおもき−ふゆかはのつき |
05388 |
未入力 正徹 (xxx)
影さゆる月のかつらの木枯や秋にもまさる色をしくらむ
かけさゆる−つきのかつらの−こからしや−あきにもまさる−いろをしくらむ |
05389 |
未入力 正徹 (xxx)
さえわたる天の川せに音はせて氷をきしる月かとそみる
さえわたる−あまのかはせに−おとはせて−こほりをきしる−つきかとそみる |
05390 |
未入力 正徹 (xxx)
久堅の月の光の行かたやかきりしられぬ氷なるらん
ひさかたの−つきのひかりの−ゆくかたや−かきりしられぬ−こほりなるらむ |
05391 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風月をも玉とみかく夜の袖の氷にあられちるなり
あまつかせ−つきをもたまと−みかくよの−そてのこほりに−あられちるなり |
05392 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしかねて又かきおこす埋火はあれともさゆるね屋の月影
ふしかねて−またかきおこす−うつみひは−あれともさゆる−ねやのつきかけ |
05393 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の雲路の霜のふる道に氷をきしる冬の夜の月
あかつきの−くもちのしもの−ふるみちに−こほりをきしる−ふゆのよのつき |
05394 |
未入力 正徹 (xxx)
かささきのはしの霜夜の天の川しろきをみれは月そこほれる
かささきの−はしのしもよの−あまのかは−しろきをみれは−つきそこほれる |
05395 |
未入力 正徹 (xxx)
影さえし月のあよみも行きなやむ霜夜の空の霧の曙
かけさえし−つきのあよみも−ゆきなやむ−しもよのそらの−きりのあけほの |
05396 |
未入力 正徹 (xxx)
あしはやくさゆるやいそく木枯に吹きいたさるる山のはの月
あしはやく−さゆるやいそく−こからしに−ふきいたさるる−やまのはのつき |
05397 |
未入力 正徹 (xxx)
にふの山氷をたたく川浪も月のかつらをきるかとそ聞く
にふのやま−こほりをたたく−かはなみも−つきのかつらを−きるかとそきく |
05398 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる夜の月の氷にふる霜のおのか羽風に鴨そなくなる
さゆるよの−つきのこほりに−ふるしもの−おのかはかせに−かもそなくなる |
05399 |
未入力 正徹 (xxx)
川なみのたかせの淀に影落ちて氷をなかす冬の夜の月
かはなみの−たかせのよとに−かけおちて−こほりをなかす−ふゆのよのつき |
05400 |
未入力 正徹 (xxx)
雪うすき芦のかれ葉に氷るなり月のほそ江の有明の影
ゆきうすき−あしのかれはに−こほるなり−つきのほそえの−ありあけのかけ |
05401 |
未入力 正徹 (xxx)
見し鳥も浪に氷をしきはてていり江の山に月そ流るる
みしとりも−なみにこほりを−しきはてて−いりえのやまに−つきそなかるる |
05402 |
未入力 正徹 (xxx)
難波江や夜わたる月の玉かしは藻にうつもれぬ氷をそ敷く
なにはえや−よわたるつきの−たまかしは−もにうつもれぬ−こほりをそしく |
05403 |
未入力 正徹 (xxx)
板まあらみね屋もる月は冬なから夜はの衣の雪の村消
いたまあらみ−ねやもるつきは−ふゆなから−よはのころもの−ゆきのむらきえ |
05404 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の池も鳥こそうかへ閨にもる月のこほりの下の思ひよ
ふゆのいけも−とりこそうかへ−ねやにもる−つきのこほりの−したのおもひよ |
05405 |
未入力 正徹 (xxx)
かりねする枕の峰にこほるなり雲のね屋もる月のともし火
かりねする−まくらのみねに−こほるなり−くものねやもる−つきのともしひ |
05406 |
未入力 正徹 (xxx)
ね屋のうちに消ゆるやいつれ板まもる月の氷の埋火のかけ
ねやのうちに−きゆるやいつれ−いたまもる−つきのこほりの−うつみひのかけ |
05407 |
未入力 正徹 (xxx)
篠のはの霜ふく夜はの太山かせ月まてさやく有明のこゑ
ささのはの−しもふくよはの−みやまかせ−つきまてさやく−ありあけのこゑ |
05408 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川みなわにめくる月の輪に氷やきしるさゆる明かた
あまのかは−みなわにめくる−つきのわに−こほりやきしる−さゆるあけかた |
05409 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風夜はに氷をみかききてあかつき霜にくもる月かな
あまつかせ−よはにこほりを−みかききて−あかつきしもに−くもるつきかな |
05410 |
未入力 正徹 (xxx)
あかつきの空にそ霜はみつ塩の月さし残す松の下陰
あかつきの−そらにそしもは−みつしほの−つきさしのこす−まつのしたかけ |
05411 |
未入力 正徹 (xxx)
明しかねおきいてて見れは風すさむ霜は雪夜の月そ残れる
あかしかね−おきいててみれは−かせすさむ−しもはゆきよの−つきそのこれる |
05412 |
未入力 正徹 (xxx)
にほはねと袖を夜風にまかすれは結ふか霜の花の上の月
にほはねと−そてをよかせに−まかすれは−むすふかしもの−はなのうへのつき |
05413 |
未入力 正徹 (xxx)
月さゆる霜より上のうす霧になかはくもらぬかねのこゑかな
つきさゆる−しもよりうへの−うすきりに−なかはくもらぬ−かねのこゑかな |
05414 |
未入力 正徹 (xxx)
おきまよふ霜のみちひの白玉かなにそは月をみかくはまかせ
おきまよふ−しものみちひの−しらたまか−なにそはつきを−みかくはまかせ |
05415 |
未入力 正徹 (xxx)
月しろき薄の霜のまくりてにやとるともなき有明の影
つきしろき−すすきのしもの−まくりてに−やとるともなき−ありあけのかけ |
05416 |
未入力 正徹 (xxx)
衣てをかさねけるかとたとるまて月影おもしふかき夜の霜
ころもてを−かさねけるかと−たとるまて−つきかけおもし−ふかきよのしも |
05417 |
未入力 正徹 (xxx)
和田の原夜塩も今や霜空にみちたる月の影うかふらん
わたのはら−よしほもいまや−しもそらに−みちたるつきの−かけうかふらむ |
05418 |
未入力 正徹 (xxx)
月のとふ霜夜の夢をさめねとやまくらうこかす暁のかね
つきのとふ−しもよのゆめを−さめねとや−まくらうこかす−あかつきのかね |
05419 |
未入力 正徹 (xxx)
見し夢もをしのふすまの霜に月忘れぬ袖の氷をそとふ
みしゆめも−をしのふすまの−しもにつき−わすれぬそての−こほりをそとふ |
05420 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きさゆる霜に草木のこゑはあれと月の氷をしかぬまもなし
ふきさゆる−しもにくさきの−こゑはあれと−つきのこほりを−しかぬまもなし |
05421 |
未入力 正徹 (xxx)
風さえて水なき空のこほれはや月もなかれす霜もみつらん
かせさえて−みつなきそらの−こほれはや−つきもなかれす−しももみつらむ |
05422 |
未入力 正徹 (xxx)
水の面の氷かさねのかみや川たか玉章をかきなかすらん
みつのおもの−こほりかさねの−かみやかは−たかたまつさを−かきなかすらむ |
05423 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる夜の滝の岩浪おちもあへすこほるかくたく暁のこゑ
さゆるよの−たきのいはなみ−おちもあへす−こほるかくたく−あかつきのこゑ |
05424 |
未入力 正徹 (xxx)
月すめは冬の水なき空とちて氷をはらふ夜はの木枯
つきすめは−ふゆのみつなき−そらとちて−こほりをはらふ−よはのこからし |
05425 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ月の影みる水のうす氷かつはむすはぬ冬のよのゆめ
すむつきの−かけみるみつの−うすこほり−かつはむすはぬ−ふゆのよのゆめ |
05426 |
未入力 正徹 (xxx)
ゐるの雲の袖氷となりそ行くふもとの川の峰の水上
ゐるくもの−そてのこほりと−なりそゆく−ふもとのかはの−みねのみなかみ |
05427 |
未入力 正徹 (xxx)
すはの海の氷におも荷負ふよりもひま行く駒の足そあやふき
すはのうみの−こほりにおもに−おふよりも−ひまゆくこまの−あしそあやふき |
05428 |
未入力 正徹 (xxx)
雪をまたをさめぬ比の氷室川こほりなれてやうすこほるらん
ゆきをまた−をさめぬころの−ひむろかは−こほりなれてや−うすこほるらむ |
05429 |
未入力 正徹 (xxx)
すはの市にいつる馬人せきあへす氷の野へとなれる海かな
すはのいちに−いつるうまひと−せきあへす−こほりののへと−なれるうみかな |
05430 |
未入力 正徹 (xxx)
山川や冬の氷の関守はみねよりさえてかよふ木からし
やまかはや−ふゆのこほりの−せきもりは−みねよりさえて−かよふこからし |
05431 |
未入力 正徹 (xxx)
山河の氷のしたによするなり木の間もる日の影のささなみ
やまかはの−こほりのしたに−よするなり−このまもるひの−かけのささなみ |
05432 |
未入力 正徹 (xxx)
昨日まて結ひし水のうす氷今朝そあさてをあらひ佗ひぬる
きのふまて−むすひしみつの−うすこほり−けさそあさてを−あらひわひぬる |
05433 |
未入力 正徹 (xxx)
うす氷今朝見えそめぬ水草ゐてなかるる川のよとむ所に
うすこほり−けさみえそめぬ−みくさゐて−なかるるかはの−よとむところに |
05434 |
未入力 正徹 (xxx)
夕月夜入りにし影の猶やとる水やまことのこほりなるらん
ゆふつくよ−いりにしかけの−なほやとる−みつやまことの−こほりなるらむ |
05435 |
未入力 正徹 (xxx)
冬川の汀をぬるみ行く水の弥かたまるや氷なるらん
ふゆかはの−みきはをぬるみ−ゆくみつの−いやかたまるや−こほりなるらむ |
05436 |
未入力 正徹 (xxx)
太山路や氷の下のささ水のさやくなかれもみゆる月影
みやまちや−こほりのしたの−ささみつの−さやくなかれも−みゆるつきかけ |
05437 |
未入力 正徹 (xxx)
うち川や田面にせきし水車めくらぬ浪もこほる冬かな
うちかはや−たのもにせきし−みつくるま−めくらぬなみも−こほるふゆかな |
05438 |
未入力 正徹 (xxx)
夜比へてこほれるよりはおもからすたもとの月や結はさるらん
よころへて−こほれるよりは−おもからす−たもとのつきや−むすはさるらむ |
05439 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれしより氷かさねの袖口に夜比もみゆるきぬのさむけさ
ぬれしより−こほりかさねの−そてくちに−よころもみゆる−きぬのさむけさ |
05440 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の池のゆるき氷をくたくなり朝けの庭におつる水鳥
ふゆのいけの−ゆるきこほりを−くたくなり−あさけのにはに−おつるみつとり |
05441 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をかさね氷る玉藻の床せはになくやさ山か池のをし鳥
よをかさね−こほるたまもの−とこせはに−なくやさやまか−いけのをしとり |
05442 |
未入力 正徹 (xxx)
冬きてはにこるにしまぬ蓮とも見えぬ枯はのこほる池かな
ふゆきては−にこるにしまぬ−はちすとも−みえぬかれはの−こほるいけかな |
05443 |
未入力 正徹 (xxx)
汗より氷をふみて行く鳥のはるかにくたく末の池水
みきはより−こほりをふみて−ゆくとりの−はるかにくたく−すゑのいけみつ |
05444 |
未入力 正徹 (xxx)
まとかなる冬の池辺の水分けてかたわれ月の程そこほれる
まとかなる−ふゆのいけへの−みつわけて−かたわれつきの−ほとそこほれる |
05445 |
未入力 正徹 (xxx)
よる舟も昨日そちかくみしま江の入江の芦ね氷りとちつつ
よるふねも−きのふそちかく−みしまえの−いりえのあしね−こほりとちつつ |
05446 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川やこほる汀の水車めくる日影にゆるくせもなし
うちかはや−こほるみきはの−みつくるま−めくるひかけに−ゆるくせもなし |
05447 |
未入力 正徹 (xxx)
さしのほる日高の川もとけやらて氷をくたくき路の旅人
さしのほる−ひたかのかはも−とけやらて−こほりをくたく−きちのたひひと |
05448 |
未入力 正徹 (xxx)
冬川の氷のためのあすか風いたつらならぬ梅かかそする
ふゆかはの−こほりのための−あすかかせ−いたつらならぬ−うめかかそする |
05449 |
未入力 正徹 (xxx)
朝わたり駒とめてけりときあへぬひのくま川のあつき氷に
あさわたり−こまとめてけり−ときあへぬ−ひのくまかはの−あつきこほりに |
05450 |
未入力 正徹 (xxx)
水の上に朝霜むすふささ川の一夜のほとにこほる冬かな
みつのうへに−あさしもむすふ−ささかはの−ひとよのほとに−こほるふゆかな |
05451 |
未入力 正徹 (xxx)
暁か氷くたきし朝川の駒のひつめにたつけふりかな
あかつきか−こほりくたきし−あさかはの−こまのひつめに−たつけふりかな |
05452 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ川ややかて氷にきしるなりくたきていてし跡のとも舟
あさかはや−やかてこほりに−きしるなり−くたきていてし−あとのともふね |
05453 |
未入力 正徹 (xxx)
山里のかけひのまへのまろ木舟たたへし水ほこほりをそつむ
やまさとの−かけひのまへの−まろきふね−たたへしみつほ−こほりをそつむ |
05454 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海やあるる汀の里さひてこほらぬ浪に舟そよりこぬ
にほのうみや−あるるみきはの−さとさひて−こほらぬなみに−ふねそよりこぬ |
05455 |
未入力 正徹 (xxx)
月そすむ野中の沢の忘水夜かれし鴨の床のこほりに
つきそすむ−のなかのさはの−わすれみつ−よかれしかもの−とこのこほりに |
05456 |
未入力 正徹 (xxx)
山の井の水の氷や結ふてのしつくにくもるかかみなるらん
やまのゐの−みつのこほりや−むすふての−しつくにくもる−かかみなるらむ |
05457 |
未入力 正徹 (xxx)
結ふてにあまるしつくの音すなりおつれはこほる山の井の水
むすふてに−あまるしつくの−おとすなり−おつれはこほる−やまのゐのみつ |
05458 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はにたか汲みししつくそ石ゐつつあまるたるひと今朝はなるらん
よはにたか−くみししつくそ−いしゐつつ−あまるたるひと−けさはなるらむ |
05459 |
未入力 正徹 (xxx)
春は見し田な井にふるき水絶えて底のもくつのこほる冬かな
はるはみし−たなゐにふるき−みつたえて−そこのもくつの−こほるふゆかな |
05460 |
未入力 正徹 (xxx)
あすか井の上とふ鳥のかけもみすふるきやとりとこほる冬かな
あすかゐの−うへとふとりの−かけもみす−ふるきやとりと−こほるふゆかな |
05461 |
未入力 正徹 (xxx)
万代と亀井の水もともす火も消えすこほらぬ法の寺かな
よろつよと−かめゐのみつも−ともすひも−きえすこほらぬ−のりのてらかな |
05462 |
未入力 正徹 (xxx)
くみあまりゐつつにかけし水落ちてつららそ茂き冬の山陰
くみあまり−ゐつつにかけし−みつおちて−つららそしけき−ふゆのやまかけ |
05463 |
未入力 正徹 (xxx)
石たたく鳥のこゑをはやり水の氷にとまる庭の朝霜
いしたたく−とりのこゑをは−やりみつの−こほりにとまる−にはのあさしも |
05464 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉なき山のすかたもおとろへてこほれる滝の音そあせ行く
このはなき−やまのすかたも−おとろへて−こほれるたきの−おとそあせゆく |
05465 |
未入力 正徹 (xxx)
引結ふ氷そめくる谷川やきひの中山帯とかすして
ひきむすふ−こほりそめくる−たにかはや−きひのなかやま−おひとかすして |
05466 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川や氷のくさひうつたへに水の車そ絶えてめくらぬ
うちかはや−こほりのくさひ−うつたへに−みつのくるまそ−たえてめくらぬ |
05467 |
未入力 正徹 (xxx)
冬はまた石まの水のうは氷あはに結ふをとく日かけかな
ふゆはまた−いしまのみつの−うはこほり−あはにむすふを−とくひかけかな |
05468 |
未入力 正徹 (xxx)
行く水は岩まをせはみこほりゐて雪になかるる木からしの月
ゆくみつは−いはまをせはみ−こほりゐて−ゆきになかるる−こからしのつき |
05469 |
未入力 正徹 (xxx)
難波江や風にかれたつ芦つつのうすき氷をくたく浪かな
なにはえや−かせにかれたつ−あしつつの−うすきこほりを−くたくなみかな |
05470 |
未入力 正徹 (xxx)
あしつつのうすき氷をかつ結ひかつくたくなり池のささなみ
あしつつの−うすきこほりを−かつむすひ−かつくたくなり−いけのささなみ |
05471 |
未入力 正徹 (xxx)
影見よとこほる山田は山鳥のまへに鏡をみかく冬かな
かけみよと−こほるやまたは−やまとりの−まへにかかみを−みかくふゆかな |
05472 |
未入力 正徹 (xxx)
秋はこし駒のひつめの跡よりそかり田をみれは氷りそめぬる
あきはこし−こまのひつめの−あとよりそ−かりたをみれは−こほりそめぬる |
05473 |
未入力 正徹 (xxx)
みなの川せき入れし水やあさ衣すそわの田井に氷りはつらん
みなのかは−せきいれしみつや−あさころも−すそわのたゐに−こほりはつらむ |
05474 |
未入力 正徹 (xxx)
水こほる山のすそ田の霜のうへにむら鳥おつる柴のあさ風
みつこほる−やまのすそたの−しものうへに−むらとりおつる−しはのあさかせ |
05475 |
未入力 正徹 (xxx)
を山田のおち葉の上のうす氷秋をへたててもる水もなし
をやまたの−おちはのうへの−うすこほり−あきをへたてて−もるみつもなし |
05476 |
未入力 正徹 (xxx)
塩干かた真砂吹きまくうら風に立つや千鳥の跡たにもなし
しほひかた−まさこふきまく−うらかせに−たつやちとりの−あとたにもなし |
05477 |
未入力 正徹 (xxx)
なににかは身をなくさまむわかの浦の友なし千鳥ねにたてすして
なににかは−みをなくさまむ−わかのうらの−ともなしちとり−ねにたてすして |
05478 |
未入力 正徹 (xxx)
浪まより見ゆる小島に行きかへり妻とふかたとなく千鳥かな
なみまより−みゆるこしまに−ゆきかへり−つまとふかたと−なくちとりかな |
05479 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦の浜のま砂の百かすに跡つけかねてなく千鳥かな
わかのうらの−はまのまさこの−ももかすに−あとつけかねて−なくちとりかな |
05480 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さゆるかれはのますけふみしたきそかの河原に千鳥鳴くなり
しもさゆる−かれはのますけ−ふみしたき−そかのかはらに−ちとりなくなり |
05481 |
未入力 正徹 (xxx)
あはれともたれかは見つの浜千鳥跡ちりうせぬ松のことのは
あはれとも−たれかはみつの−はまちとり−あとちりうせぬ−まつのことのは |
05482 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原島めくりする夕浪に友なし千鳥うかれてや鳴く
わたのはら−しまめくりする−ゆふなみに−ともなしちとり−うかれてやなく |
05483 |
未入力 正徹 (xxx)
渚には立ゐありとや浪よらぬとほきひかたに千鳥なくらん
なきさには−たちゐありとや−なみよらぬ−とほきひかたに−ちとりなくらむ |
05484 |
未入力 正徹 (xxx)
とはぬまはひとりこゑして浜つつらくるる夜ことに千鳥なくなり
とはぬまは−ひとりこゑして−はまつつら−くるるよことに−ちとりなくなり |
05485 |
未入力 正徹 (xxx)
あら磯のとほき浜すにゐる舟のかけたのむかとよる千鳥かな
あらいその−とほきはますに−ゐるふねの−かけたのむかと−よるちとりかな |
05486 |
未入力 正徹 (xxx)
あらき風岩うつ浪のよるのこゑなきたるあさに鳴く千とりかな
あらきかせ−いはうつなみの−よるのこゑ−なきたるあさに−なくちとりかな |
05487 |
未入力 正徹 (xxx)
下折の竹田河原の雪もよには風をさむみ千鳥立つなり
したをれの−たけたかはらの−ゆきもよに−はかせをさむみ−ちとりたつなり |
05488 |
未入力 正徹 (xxx)
ま砂たつ塩風ふけは浜楸とことはにちるむら千鳥かな
まさこたつ−しほかせふけは−はまひさき−とことはにちる−むらちとりかな |
05489 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにけり都の東西川にかよふ千鳥の月にゆくこゑ
ふりにけり−みやこのひかし−にしかはに−かよふちとりの−つきにゆくこゑ |
05490 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌のうらや身をすて舟も芦のはにかくれてましる友千鳥かな
わかのうらや−みをすてふねも−あしのはに−かくれてましる−ともちとりかな |
05491 |
未入力 正徹 (xxx)
さ浪たによせこぬうらの夕なきに遠島千とりこゑ伝ふなり
さなみたに−よせこぬうらの−ゆふなきに−とほしまちとり−こゑつたふなり |
05492 |
未入力 正徹 (xxx)
松かねのあら機なみの島めくりいつくをかけと千鳥なくらん
まつかねの−あらいそなみの−しまめくり−いつくをかけと−ちとりなくらむ |
05493 |
未入力 正徹 (xxx)
浦ちかき磯屋の庭にいく度かおりゐるみれは千鳥立つらん
うらちかき−いそやのにはに−いくたひか−おりゐるみれは−ちとりたつらむ |
05494 |
未入力 正徹 (xxx)
里のあまの竹のあみ戸の芦垣もうきふし茂く鳴く千鳥かな
さとのあまの−たけのあみとの−あしかきも−うきふししけく−なくちとりかな |
05495 |
未入力 正徹 (xxx)
山路をはいさ白浪の氷みる立田川原になく千鳥かな
やまちをは−いさしらなみの−こほりみる−たつたかはらに−なくちとりかな |
05496 |
未入力 正徹 (xxx)
河岸やこほらぬ浪にふす竹のよことにうきてなく千鳥かな
かはきしや−こほらぬなみに−ふすたけの−よことにうきて−なくちとりかな |
05497 |
未入力 正徹 (xxx)
浜千鳥霜のは風も身にさむくたつやま砂の有明のこゑ
はまちとり−しものはかせも−みにさむく−たつやまさこの−ありあけのこゑ |
05498 |
未入力 正徹 (xxx)
舟人も興にぬる夜の篷の上にしらすおりゐてなく千鳥かな
ふなひとも−おきにぬるよの−とまのうへに−しらすおりゐて−なくちとりかな |
05499 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌の浦の砂の数と年ふりて三代の跡とふ浜千鳥かな
わかのうらの−いさこのかすと−としふりて−みよのあととふ−はまちとりかな |
05500 |
未入力 正徹 (xxx)
なく千鳥いもかりゆかぬ川かせもさゆる夜床にかよふ声かな
なくちとり−いもかりゆかぬ−かはかせも−さゆるよとこに−かよふこゑかな |
05501 |
未入力 正徹 (xxx)
もろともに鳴くや千鳥も水鳥のかもの河原の霜のあけほの
もろともに−なくやちとりも−みつとりの−かものかはらの−しものあけほの |
05502 |
未入力 正徹 (xxx)
浜つつらをりはへてなけうら千鳥あり明の霜も長き夜の月
はまつつら−をりはへてなけ−うらちとり−ありあけのしもも−なかきよのつき |
05503 |
未入力 正徹 (xxx)
すまのあまのころもまとほのうら千鳥浪こす袖に声そちかつく
すまのあまの−ころもまとほの−うらちとり−なみこすそてに−こゑそちかつく |
05504 |
未入力 正徹 (xxx)
浪たかき河辺の茅原かれしよりひろくおりゐて鳴く千鳥かな
なみたかき−かはへのちはら−かれしより−ひろくおりゐて−なくちとりかな |
05505 |
未入力 正徹 (xxx)
をふのうらの友なし千鳥みつ塩になりもならすも浪に鳴く声
をふのうらの−ともなしちとり−みつしほに−なりもならすも−なみになくこゑ |
05506 |
未入力 正徹 (xxx)
飛ふ千鳥した吹きはらふ浜風のま砂をあけてえやはおりゐる
とふちとり−したふきはらふ−はまかせの−まさこをあけて−えやはおりゐる |
05507 |
未入力 正徹 (xxx)
なくこゑにわか名はまたきたつ千鳥人しれぬおくの海にすめとも
なくこゑに−わかなはまたき−たつちとり−ひとしれぬおくの−うみにすめとも |
05508 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ふれし天つ乙女の岩ね松かけそとはまに千鳥なくなり
そてふれし−あまつをとめの−いはねまつ−かけそとはまに−ちとりなくなり |
05509 |
未入力 正徹 (xxx)
夕嵐たつた川原にちる柳かけなき岸に千鳥なくなり
ゆふあらし−たつたかはらに−ちるやなき−かけなききしに−ちとりなくなり |
05510 |
未入力 正徹 (xxx)
友千鳥あはれとはしれわかの浦に年をひろふは玉ならすとも
ともちとり−あはれとはしれ−わかのうらに−としをひろふは−たまならすとも |
05511 |
未入力 正徹 (xxx)
松にきえ浪にあらはれ磯つたひ遠きうらわに行く千鳥かな
まつにきえ−なみにあらはれ−いそつたひ−とほきうらわに−ゆくちとりかな |
05512 |
未入力 正徹 (xxx)
旅ねする人ともしらす清見かた岩しく袖にゐる千鳥かな
たひねする−ひとともしらす−きよみかた−いはしくそてに−ゐるちとりかな |
05513 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦の夜の塩干に光そふ玉のこゑかる友千鳥かな
わかのうらの−よるのしほひに−ひかりそふ−たまのこゑかる−ともちとりかな |
05514 |
未入力 正徹 (xxx)
芦そよく難波のみつの塩こえてこと浦風に千鳥なくなり
あしそよく−なにはのみつの−しほこえて−ことうらかせに−ちとりなくなり |
05515 |
未入力 正徹 (xxx)
世中よいつくのうらの浪風か心とまらんたつ千とりかな
よのなかよ−いつくのうらの−なみかせか−こころとまらむ−たつちとりかな |
05516 |
未入力 正徹 (xxx)
夕千鳥妻もかれてや浜つつらくるかひなしと浪になくらん
ゆふちとり−つまもかれてや−はまつつら−くるかひなしと−なみになくらむ |
05517 |
未入力 正徹 (xxx)
天乙女おりゐし跡もこと浜に真砂をしたふ千鳥なくらし
あまをとめ−おりゐしあとも−ことはまに−まさこをしたふ−ちとりなくらし |
05518 |
未入力 正徹 (xxx)
真砂たつはま松かねの塩風にあらはれ消えて行く千鳥かな
まさこたつ−はままつかねの−しほかせに−あらはれきえて−ゆくちとりかな |
05519 |
未入力 正徹 (xxx)
花はみなかれにし菊のはま千鳥あととほさかる声そうつろふ
はなはみな−かれにしきくの−はまちとり−あととほさかる−こゑそうつろふ |
05520 |
未入力 正徹 (xxx)
したふとや天くたりにし糸竹のこゑうとはまに千鳥なくらん
したふとや−あまくたりにし−いとたけの−こゑうとはまに−ちとりなくらむ |
05521 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴く千とり浪のあけおくはまの石のこまかに聞くもこゑそかなしき
なくちとり−なみのあけおく−はまのいしの−こまかにきくも−こゑそかなしき |
05522 |
未入力 正徹 (xxx)
うら千鳥今そ塩干のかたはかりつたへし道の光をも見る
うらちとり−いまそしほひの−かたはかり−つたへしみちの−ひかりをもみる |
05523 |
未入力 正徹 (xxx)
浦つたふ千鳥も見えす夕浪の島めくりするおとはかりして
うらつたふ−ちとりもみえす−ゆふなみの−しまめくりする−おとはかりして |
05524 |
未入力 正徹 (xxx)
さそふてふ水ならぬ浪にうち佗ひて身をうき島になく千鳥かな
さそふてふ−みつならぬなみに−うちわひて−みをうきしまに−なくちとりかな |
05525 |
未入力 正徹 (xxx)
浪路ゆく千鳥のこゑにゆらの戸やわたらぬ夢のかへる舟人
なみちゆく−ちとりのこゑに−ゆらのとや−わたらぬゆめの−かへるふなひと |
05526 |
未入力 正徹 (xxx)
おりゐれは磯うつ浪に玉ゆらのとわたる千鳥声そ残れる
おりゐれは−いそうつなみに−たまゆらの−とわたるちとり−こゑそのこれる |
05527 |
未入力 正徹 (xxx)
湊いてのかいのしつくにぬれぬれす舟につれゆくむら千鳥かな
みなといての−かいのしつくに−ぬれぬれす−ふねにつれゆく−むらちとりかな |
05528 |
未入力 正徹 (xxx)
うれしくも身をはやつさて墨染の袖のみなとによる千鳥かな
うれしくも−みをはやつさて−すみそめの−そてのみなとに−よるちとりかな |
05529 |
未入力 正徹 (xxx)
湊川なみさかのほる満しほに声のみおちてゆく千鳥かな
みなとかは−なみさかのほる−みつしほに−こゑのみおちて−ゆくちとりかな |
05530 |
未入力 正徹 (xxx)
むらねする鳥も生田の湊川おなし淵せになく千鳥かな
むらねする−とりもいくたの−みなとかは−おなしふちせに−なくちとりかな |
05531 |
未入力 正徹 (xxx)
千鳥なくみなとのあまはたかためにぬるるならひのなき袂かな
ちとりなく−みなとのあまは−たかために−ぬるるならひの−なきたもとかな |
05532 |
未入力 正徹 (xxx)
かるもかくゐなの湊になく千鳥ふし原ちかし夢やさむらん
かるもかく−ゐなのみなとに−なくちとり−ふしはらちかし−ゆめやさむらむ |
05533 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと川わたる千鳥も今朝みれは涙やこほる鳴くこゑもせす
みなとかは−わたるちとりも−けさみれは−なみたやこほる−なくこゑもせす |
05534 |
未入力 正徹 (xxx)
なくなくもつまとふ千鳥憑む江をわたれとぬれぬ氷のみして
なくなくも−つまとふちとり−たのむえを−わたれとぬれぬ−こほりのみして |
05535 |
未入力 正徹 (xxx)
さす塩のいまや入江のみをつくしたつ空こえて鳴く千鳥かな
さすしほの−いまやいりえの−みをつくし−たつそらこえて−なくちとりかな |
05536 |
未入力 正徹 (xxx)
里人も堤おりきて明けわたる河との浪に千鳥なくなり
さとひとも−つつみおりきて−あけわたる−かはとのなみに−ちとりなくなり |
05537 |
未入力 正徹 (xxx)
冬川の瀬による玉藻床はあれとをりゐぬ浪に鳴く千鳥かな
ふゆかはの−せによるたまも−とこはあれと−をりゐぬなみに−なくちとりかな |
05538 |
未入力 正徹 (xxx)
やす川やひをまつ夜はの網代木にちかくよりきて鳴く千鳥かな
やすかはや−ひをまつよはの−あしろきに−ちかくよりきて−なくちとりかな |
05539 |
未入力 正徹 (xxx)
月ふくるそかの里人音もせて河原の霜に千鳥なくなり
つきふくる−そかのさとひと−おともせて−かはらのしもに−ちとりなくなり |
05540 |
未入力 正徹 (xxx)
ましれとも身をやきすてぬ思川水の煙に千鳥なくなり
ましれとも−みをやきすてぬ−おもひかは−みつのけふりに−ちとりなくなり |
05541 |
未入力 正徹 (xxx)
友千鳥川せの玉もかりそめに羽うちかはし別れてそなく
ともちとり−かはせのたまも−かりそめに−はねうちかはし−わかれてそなく |
05542 |
未入力 正徹 (xxx)
よるかたも浪にかたふく川竹のうきたる世をや千鳥なくらん
よるかたも−なみにかたふく−かはたけの−うきたるよをや−ちとりなくらむ |
05543 |
未入力 正徹 (xxx)
心あらはむつた川せにさすさてのあはれもらすな千鳥鳴くこゑ
こころあらは−むつたかはせに−さすさての−あはれもらすな−ちとりなくこゑ |
05544 |
未入力 正徹 (xxx)
妻こふる思ひの煙たてすてて朝川わたりゆく千鳥かな
つまこふる−おもひのけふり−たてすてて−あさかはわたり−ゆくちとりかな |
05545 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉のきし方つらき草の名を忘れぬねにや千鳥なくらん
すみよしの−きしかたつらき−くさのなを−わすれぬねにや−ちとりなくらむ |
05546 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海やつはさにかかる磯浪になほしほたれて鳴く千鳥かな
にほのうみや−つはさにかかる−いそなみに−なほしほたれて−なくちとりかな |
05547 |
未入力 正徹 (xxx)
はま千鳥やまとにもあらぬから泊から声になく塩や満つらん
はまちとり−やまとにもあらぬ−からとまり−からこゑになく−しほやみつらむ |
05548 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜千鳥暁かたこなる滝やにしの川せの月になくなり
さよちとり−あかつきかたこ−なるたきや−にしのかはせの−つきになくなり |
05549 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の床のうら風よわくふけ老の浪路に千鳥なくなり
あかつきの−とこのうらかせ−よわくふけ−おいのなみちに−ちとりなくなり |
05550 |
未入力 正徹 (xxx)
いさり火の暁かたの影消えてうら風くらくなく千鳥かな
いさりひの−あかつきかたの−かけきえて−うらかせくらく−なくちとりかな |
05551 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひなく千鳥もひとり水たえしふるき川原に有明の月
かよひなく−ちとりもひとり−みつたえし−ふるきかはらに−ありあけのつき |
05552 |
未入力 正徹 (xxx)
はま千鳥なくねかなしき明暮にたか衣衣の袖のうら人
はまちとり−なくねかなしき−あけくれに−たかきぬきぬの−そてのうらひと |
05553 |
未入力 正徹 (xxx)
風さゆる河原の千鳥おりわひて鳴くや有明の霜の白石
かせさゆる−かはらのちとり−おりわひて−なくやありあけの−しものしらいし |
05554 |
未入力 正徹 (xxx)
明くれも河原の石のかすみゆる霜を光に行く千とりかな
あけくれも−かはらのいしの−かすみゆる−しもをひかりに−ゆくちとりかな |
05555 |
未入力 正徹 (xxx)
ますけこす夕浪さむみ友千鳥そかひもわたるそかの川かせ
ますけこす−ゆふなみさむみ−ともちとり−そかひもわたる−そかのかはかせ |
05556 |
未入力 正徹 (xxx)
興つなみ磯松風もうらふれて夕ゐる雲になく千鳥かな
おきつなみ−いそまつかせも−うらふれて−ゆふゐるくもに−なくちとりかな |
05557 |
未入力 正徹 (xxx)
ねにそなく空に夜わたる友千鳥あとなき夢の行へをや知る
ねにそなく−そらによわたる−ともちとり−あとなきゆめの−ゆくへをやしる |
05558 |
未入力 正徹 (xxx)
千鳥なき暁霜やますけふくこゑさへさゆるそかの川かせ
ちとりなき−あかつきしもや−ますけふく−こゑさへさゆる−そかのかはかせ |
05559 |
未入力 正徹 (xxx)
月さゆる都の霜もふかき夜にいつくともなき千鳥ひとこゑ
つきさゆる−みやこのしもも−ふかきよに−いつくともなき−ちとりひとこゑ |
05560 |
未入力 正徹 (xxx)
なく千鳥おつる涙もこほるらん河へのち原ふかき夜の霜
なくちとり−おつるなみたも−こほるらむ−かはへのちはら−ふかきよのしも |
05561 |
未入力 正徹 (xxx)
はま千鳥あり明の霜のま砂山月にこえくる声のさむけき
はまちとり−ありあけのしもの−まさこやま−つきにこえくる−こゑのさむけき |
05562 |
未入力 正徹 (xxx)
人みに今そさし出の磯千鳥君か八千世のこゑをしるへに
ひとなみに−いまそさしての−いそちとり−きみかやちよの−こゑをしるへに |
05563 |
未入力 正徹 (xxx)
汀なみ塩みちのほる浜川の橋におりゐてゆく千鳥かな
みきはなみ−しほみちのほる−はまかはの−はしにおりゐて−ゆくちとりかな |
05564 |
未入力 正徹 (xxx)
つららゐる玉藻のまくらむすほほれ夢路やまよふ池のをし鳥
つららゐる−たまものまくら−むすほほれ−ゆめちやまよふ−いけのをしとり |
05565 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世かつかひはなれしをし鳥の芦のしのひにひとりなく声
いつのよか−つかひはなれし−をしとりの−あしのしのひに−ひとりなくこゑ |
05566 |
未入力 正徹 (xxx)
そこふかき池の心を契にてつかひはなれぬ鴛のこゑこゑ
そこふかき−いけのこころを−ちきりにて−つかひはなれぬ−をしのこゑこゑ |
05567 |
未入力 正徹 (xxx)
あし鴨のむれ立つ空の朝くもり霜のは風もなれや寒けき
あしかもの−むれたつそらの−あさくもり−しものはかせも−なれやさむけき |
05568 |
未入力 正徹 (xxx)
寒き夜の水の氷に鴨そなく鳥の八こゑも梢なるらん
さむきよの−みつのこほりに−かもそなく−とりのやこゑも−こすゑなるらむ |
05569 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれても入江にあさきさされ水それにもたたぬ鴨の足かな
なかれても−いりえにあさき−さされみつ−それにもたたぬ−かものあしかな |
05570 |
未入力 正徹 (xxx)
わか方によるへの水と憑みてや神の御池に鳥もすむらん
わかかたに−よるへのみつと−たのみてや−かみのみいけに−とりもすむらむ |
05571 |
未入力 正徹 (xxx)
からろおす小舟をちかみ水鳥のむらねおとろく暁のこゑ
からろおす−をふねをちかみ−みつとりの−むらねおとろく−あかつきのこゑ |
05572 |
未入力 正徹 (xxx)
鴨とりのこほらぬ淵にうかひても上毛の霜やはらひかぬらん
かもとりの−こほらぬふちに−うかひても−うはけのしもや−はらひかぬらむ |
05573 |
未入力 正徹 (xxx)
いかはかりさえけん床そ水鳥の空に過きゆく暁のこゑ
いかはかり−さえけむとこそ−みつとりの−そらにすきゆく−あかつきのこゑ |
05574 |
未入力 正徹 (xxx)
雪ゐとふ便におちて行く鳥の跡なき水のあはれ世中
くもゐとふ−たよりにおちて−ゆくとりの−あとなきみつの−あはれよのなか |
05575 |
未入力 正徹 (xxx)
をし鳥のおのかつかひも池水をさらぬかかみやこほりなるらん
をしとりの−おのかつかひも−いけみつを−さらぬかかみや−こほりなるらむ |
05576 |
未入力 正徹 (xxx)
水もなき空にめくりて聞ゆなり雲を汀のあしかものこゑ
みつもなき−そらにめくりて−きこゆなり−くもをみきはの−あしかものこゑ |
05577 |
未入力 正徹 (xxx)
霜はらひ空にこゑする鴨の足のみしかき冬の日はさむくして
しもはらひ−そらにこゑする−かものあしの−みしかきふゆの−ひはさむくして |
05578 |
未入力 正徹 (xxx)
霜くもる朝日もおちてくれなゐに紫ましる水のかもとり
しもくもる−あさひもおちて−くれなゐに−むらさきましる−みつのかもとり |
05579 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の日は入江立ちゆく鴫の足の空にみしかく暮るる比かな
ふゆのひは−いりえたちゆく−かものあしの−そらにみしかく−くるるころかな |
05580 |
未入力 正徹 (xxx)
をりにあふさとかくらせり神のます杜の池へのすす鴨のこゑ
をりにあふ−さとかくらせり−かみのます−もりのいけへの−すすかものこゑ |
05581 |
未入力 正徹 (xxx)
は風にそみたれてのこる水鳥の立ちにし池の冬の朝霧
はかせにそ−みたれてのこる−みつとりの−たちにしいけの−ふゆのあさきり |
05582 |
未入力 正徹 (xxx)
人すまぬ野沢の水にかたふきてあるるささやのすす鴨の声
ひとすまぬ−のさはのみつに−かたふきて−あるるささやの−すすかものこゑ |
05583 |
未入力 正徹 (xxx)
かも鳥のくかに足たつ水かきはあるもかひなき時をしれとや
かもとりの−くかにあしたつ−みつかきは−あるもかひなき−ときをしれとや |
05584 |
未入力 正徹 (xxx)
鴨鳥のおのか青羽のむら紅葉みちたる池の水の木からし
かもとりの−おのかあをはの−むらもみち−みちたるいけの−みつのこからし |
05585 |
未入力 正徹 (xxx)
をし鴨の上毛をこゆる白玉のまなくそこほる池のささなみ
をしかもの−うはけをこゆる−しらたまの−まなくそこほる−いけのささなみ |
05586 |
未入力 正徹 (xxx)
霜こほる水のうき草かれしよりおのれたたよふ池の鴛かも
しもこほる−みつのうきくさ−かれしより−おのれたたよふ−いけのをしかも |
05587 |
未入力 正徹 (xxx)
駅路のいつくの池を立ちきてか夜出こゆるすすかものこゑ
うまやちの−いつくのいけを−たちきてか−よるやまこゆる−すすかものこゑ |
05588 |
未入力 正徹 (xxx)
こほるより跡たちはてて水鳥もすまぬはかひの山の井の水
こほるより−あとたちはてて−みつとりも−すまぬはかひの−やまのゐのみつ |
05589 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の木すゑの鴛のはらふ雪池のこほりにおつるさむけさ
あかつきの−こすゑのをしの−はらふゆき−いけのこほりに−おつるさむけさ |
05590 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かえにきゐるはうとし水鳥のうは毛の霜の花になく声
うめかえに−きゐるはうとし−みつとりの−うはけのしもの−はなになくこゑ |
05591 |
未入力 正徹 (xxx)
氷ゐてうかふせもなし水鳥のたのむ青はの山川のなみ
こほりゐて−うかふせもなし−みつとりの−たのむあをはの−やまかはのなみ |
05592 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そしる恋ひつつ夢に水鳥のはかひの霜のふるきよの友
けさそしる−こひつつゆめに−みつとりの−はかひのしもの−ふるきよのとも |
05593 |
未入力 正徹 (xxx)
をしかもの氷ふみ分けなくこゑにむすほほれつる夢そ解けゆく
をしかもの−こほりふみわけ−なくこゑに−むすほほれつる−ゆめそとけゆく |
05594 |
未入力 正徹 (xxx)
みるもうし氷かさねてうき鳥のすむ池水もせはくなる世を
みるもうし−こほりかさねて−うきとりの−すむいけみつも−せはくなるよを |
05595 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひこし玉もへたつる冬の池の氷にあそふかもの一つれ
かよひこし−たまもへたつる−ふゆのいけの−こほりにあそふ−かものひとつれ |
05596 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の霜冬の氷をつるきはのよそにはなれぬ池のをし鳥
あきのしも−ふゆのこほりを−つるきはの−よそにはなれぬ−いけのをしとり |
05597 |
未入力 正徹 (xxx)
けふもきて巌の松も水鳥もなき世の池の跡をしそ思ふ
けふもきて−いはほのまつも−みつとりも−なきよのいけの−あとをしそおもふ |
05598 |
未入力 正徹 (xxx)
氷ゐるふちせはなれてとふ鳥のあすか川かせ吹きさえぬらし
こほりゐる−ふちせはなれて−とふとりの−あすかかはかせ−ふきさえぬらし |
05599 |
未入力 正徹 (xxx)
をし鳥の妻あらそはぬ独ねも心そきよき山川の水
をしとりの−つまあらそはぬ−ひとりねも−こころそきよき−やまかはのみつ |
05600 |
未入力 正徹 (xxx)
冬もなほしつやなつみの川とみん浪にむら立つ鴨の上毛を
ふゆもなほ−しつやなつみの−かはとみむ−なみにむらたつ−かものうはけを |
05601 |
未入力 正徹 (xxx)
名取川せせの埋木水鳥のかくれんかけもあらしふく日は
なとりかは−せせのうもれき−みつとりの−かくれむかけも−あらしふくひは |
05602 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世もかはらぬものをにこり江にすむをうしとや鴛の鳴くらん
ひとのよも−かはらぬものを−にこりえに−すむをうしとや−をしのなくらむ |
05603 |
未入力 正徹 (xxx)
こほらすはつもりそかねん夕ま暮鳥もねぬまの水の白雪
こほらすは−つもりそかねむ−ゆふまくれ−とりもねぬまの−みつのしらゆき |
05604 |
未入力 正徹 (xxx)
芦見ゆるひかたとなりて引く塩の鴨の足たつ浪そ残れる
あしみゆる−ひかたとなりて−ひくしほの−かものあしたつ−なみそのこれる |
05605 |
未入力 正徹 (xxx)
入江なみこほらぬ程や鵜鳰とりも玉もの床に友さそふらん
いりえなみ−こほらぬほとや−にほとりも−たまものとこに−ともさそふらむ |
05606 |
未入力 正徹 (xxx)
水そこの玉藻をかつくにほ鳥にうきて友なふ池のをし鳥
みなそこの−たまもをかつく−にほとりに−うきてともなふ−いけのをしとり |
05607 |
未入力 正徹 (xxx)
川岸に鳥はかへりをさす舟の氷をくたくおとさやけとも
かはきしに−とりはかへりを−さすふねの−こほりをくたく−おとさやけとも |
05608 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴く鴛のひとりの外は鳥もこて氷にせはき広沢の池
なくをしの−ひとりのほかは−とりもこて−こほりにせはき−ひろさはのいけ |
05609 |
未入力 正徹 (xxx)
さえわたる月も今夜はみし影のやとる水なき池のうき鳥
さえわたる−つきもこよひは−みしかけの−やとるみつなき−いけのうきとり |
05610 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれの山の嵐はさそはねと木の葉こきちらす池の浮鳥
ふゆかれの−やまのあらしは−さそはねと−このはこきちらす−いけのうきとり |
05611 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりてうく木の葉も池に水鳥の色かすそふる冬の山かせ
ちりてうく−このはもいけに−みつとりの−いろかすそふる−ふゆのやまかせ |
05612 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にふす雪の下根に床しめて雪に出入るにほの村鳥
なみにふす−ゆきのしたねに−とこしめて−ゆきにいている−にほのむらとり |
05613 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくとや夜出こえて駅路のあり明の月にすす鴨の声
いそくとや−よるやまこえて−うまやちの−ありあけのつきに−すすかものこゑ |
05614 |
未入力 正徹 (xxx)
をし鴨のむれ行く空に満つ霜もこはるかおつる明ほのの声
をしかもの−むれゆくそらに−みつしもも−こほるかおつる−あけほののこゑ |
05615 |
未入力 正徹 (xxx)
野沢たつ霜の朝気のうす曇まよふか帰るをしの一声
のさはたつ−しものあさけの−うすくもり−まよふかかへる−をしのひとこゑ |
05616 |
未入力 正徹 (xxx)
八十瀬まてむれゐるみれは鴨の名のすすか河原のしののめの霜
やそせまて−むれゐるみれは−かものなの−すすかかはらの−しののめのしも |
05617 |
未入力 正徹 (xxx)
うす氷むねにくたきて行く鴛の跡もかくれぬ水の江の月
うすこほり−むねにくたきて−ゆくをしの−あともかくれぬ−みつのえのつき |
05618 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかきよの霜にそさゆる水鳥のわたるはかひの山のはの月
ふかきよの−しもにそさゆる−みつとりの−わたるはかひの−やまのはのつき |
05619 |
未入力 正徹 (xxx)
鴛鴨の雲の浪わけ夜わたるもこほらぬ空にすまれやはせん
をしかもの−くものなみわけ−よわたるも−こほらぬそらに−すまれやはせむ |
05620 |
未入力 正徹 (xxx)
夜やさむき氷をきしるを車の鴨鳥くたく淀の川なみ
よやさむき−こほりをきしる−をくるまの−かもとりくたく−よとのかはなみ |
05621 |
未入力 正徹 (xxx)
さむき夜を鴛の衾もよそにして我につかはぬ村鳥の声
さむきよを−をしのふすまも−よそにして−われにつかはぬ−むらとりのこゑ |
05622 |
未入力 正徹 (xxx)
たつ鳥に独はなるる枕にも涙そおつるこゑはよそにて
たつとりに−ひとりはなるる−まくらにも−なみたそおつる−こゑはよそにて |
05623 |
未入力 正徹 (xxx)
初雪もふるや霰の玉章に翅をおもみ雁わたるなり
はつゆきも−ふるやあられの−たまつさに−つはさをおもみ−かりわたるなり |
05624 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ雁つはさの雪やおちさらんわたる雲路のつつきならすは
あまつかり−つはさのゆきや−おちさらむ−わたるくもちの−つつきならすは |
05625 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとのを田のいなくきふみしたきむれゐる雁も雪払ふなり
やまもとの−をたのいなくき−ふみしたき−むれゐるかりも−ゆきはらふなり |
05626 |
未入力 正徹 (xxx)
影きえてこほりし月も尾上こすふふきの奥にかすむ雁かね
かけきえて−こほりしつきも−をのへこす−ふふきのおくに−かすむかりかね |
05627 |
未入力 正徹 (xxx)
空にみつ霜夜の雁も鳴きおちて田中の杉に有明の月
そらにみつ−しもよのかりも−なきおちて−たなかのすきに−ありあけのつき |
05628 |
未入力 正徹 (xxx)
いなくきに雪ほならひて水寒き刈田をみれは雁ひとりなく
いなくきに−ゆきほならひて−みつさむき−かりたをみれは−かりひとりなく |
05629 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の夢おとろきいつる槙の戸の霜よの月にわたる雁金
ふゆのゆめ−おとろきいつる−まきのとの−しもよのつきに−わたるかりかね |
05630 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとにむれ行く鷺のこゑきけは翅に雪を雁そなくなみ
やまもとに−むれゆくさきの−こゑきけは−つはさにゆきを−かりそなくなみ |
05631 |
未入力 正徹 (xxx)
雁のゐる翅の色をそれとみて落つるかを田の雪の白鷺
かりのゐる−つはさのいろを−それとみて−おつるかをたの−ゆきのしらさき |
05632 |
未入力 正徹 (xxx)
雁のぬる田中の竹の雪折におとろきさわく夕暮の声
かりのぬる−たなかのたけの−ゆきをれに−おとろきさわく−ゆふくれのこゑ |
05633 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる鳥羽田の雪に白鳥のおりゐるみれは雁そ鳴くなる
あけわたる−とはたのゆきに−しらとりの−おりゐるみれは−かりそなくなる |
05634 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれのぬなはひしつるはみすてて池の上田に雁そむれゐる
ふゆかれの−ぬなはひしつる−はみすてて−いけのうへたに−かりそむれゐる |
05635 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりつもる田のもの雪にかき絶えて鴫なき床を雁そ鳴くなる
ふりつもる−たのものゆきに−かきたえて−しきなきとこを−かりそなくなる |
05636 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねんこほる浜名の湊田に海わたりきぬくらゐかりかね
いかかねむ−こほるはまなの−みなとたに−うみわたりきぬ−くらゐかりかね |
05637 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴きおちて田長もしらぬ霜雪の氷かさねの衣かりかね
なきおちて−たをさもしらぬ−しもゆきの−こほりかさねの−ころもかりかね |
05638 |
未入力 正徹 (xxx)
雪さそふ夕山嵐さそひきて落つる田面にまよふ雁金
ゆきさそふ−ゆふやまあらし−さそひきて−おつるたのもに−まよふかりかね |
05639 |
未入力 正徹 (xxx)
雲路ゆく雁の涙も氷りおつるをちかた人の袖の夕暮
くもちゆく−かりのなみたも−こほりおつる−をちかたひとの−そてのゆふくれ |
05640 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月春の林のゆふ霜を花とみなから雁やかへらぬ
かみなつき−はるのはやしの−ゆふしもを−はなとみなから−かりやかへらぬ |
05641 |
未入力 正徹 (xxx)
氷みる入江の磯のすて舟におのれ梶とる雁のこゑかな
こほりみる−いりえのいその−すてふねに−おのれかちとる−かりのこゑかな |
05642 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章を煙になすや冬の朝けたつ水の江に雁のなくらん
たまつさを−けふりになすや−ふゆのあさけ−たつみつのえに−かりのなくらむ |
05643 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ江の苗のはしろきわた衣をさむき翅にかくる雁金
なかれえの−あしのほしろき−わたきぬを−さむきつはさに−かくるかりかね |
05644 |
未入力 正徹 (xxx)
霜はらふ山松風も木ふかくて星きよき夜の雁の一声
しもはらふ−やままつかせも−こふかくて−ほしきよきよの−かりのひとこゑ |
05645 |
未入力 正徹 (xxx)
やとりとれいつく鳥立と見えぬまて暮るる狩はに雪はふりきぬ
やとりとれ−いつくとたちと−みえぬまて−くるるかりはに−ゆきはふりきぬ |
05646 |
未入力 正徹 (xxx)
かりくらしこよひは我もふし柴にかくるる鳥をあすやたてまし
かりくらし−こよひはわれも−ふししはに−かくるるとりを−あすやたてまし |
05647 |
未入力 正徹 (xxx)
たとひわれかるへき身とは生るとも一も鳥をいかてたてまし
たとひわれ−かるへきみとは−うまるとも−ひとつもとりを−いかてたてまし |
05648 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雪は袖のみかろしかり衣とはゆる鷹のはらふは風に
ふるゆきは−そてのみかろし−かりころも−とはゆるたかの−はらふはかせに |
05649 |
未入力 正徹 (xxx)
あすもこんおとろか下に狩りこめて一はもたたぬ鳥や落つらん
あすもこむ−おとろかしたに−かりこめて−ひとはもたたぬ−とりやおつらむ |
05650 |
未入力 正徹 (xxx)
代代たえぬ天つひろきのかり衣ふるき御幸のあともかしこし
よよたえぬ−あまつひろきの−かりころも−ふるきみゆきの−あともかしこし |
05651 |
未入力 正徹 (xxx)
かり衣つはさもさむし箸鷹のすゑ尾の竹の霜の下道
かりころも−つはさもさむし−はしたかの−すゑをのたけの−しものしたみち |
05652 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥はなほおとろきふすや箸鷹のならすをふさのすすの下道
とりはなほ−おとろきふすや−はしたかの−ならすをふさの−すすのしたみち |
05653 |
未入力 正徹 (xxx)
翅うつあられ山かせあら鷹をけふたはなすに心そらなり
つはさうつ−あられやまかせ−あらたかを−けふたはなすに−こころそらなり |
05654 |
未入力 正徹 (xxx)
山里の垣ほの外のふか萱に犬よひこしているるかり人
やまさとの−かきほのほかの−ふかかやに−いぬよひこして−いるるかりひと |
05655 |
未入力 正徹 (xxx)
犬いるる谷のおとろの雪の上に尾を引く鳥の路や見えけん
いぬいるる−たにのおとろの−ゆきのうへに−ををひくとりの−みちやみえけむ |
05656 |
未入力 正徹 (xxx)
霜ふりて朝風さむし入る山の鷹の尾ふさのすすのしの原
しもふりて−あさかせさむし−いるやまの−たかのをふさの−すすのしのはら |
05657 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥のふす草はかくれぬうす雪にかり声さむし夕暮のこゑ
とりのふす−くさはかくれぬ−うすゆきに−かりこゑさむし−ゆふくれのこゑ |
05658 |
未入力 正徹 (xxx)
芹川やすりかり衣きし方もふるき御幸はたつなき渡る
せりかはや−すりかりころも−きしかたも−ふるきみゆきは−たつなきわたる |
05659 |
未入力 正徹 (xxx)
はし鷹を岡の村柴吹きかへし嵐そおつる鳥はなくして
はしたかを−をかのむらしは−ふきかへし−あらしそおつる−とりはなくして |
05660 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとに鷹とりつなけかり衣袖もしほほに雹ふりきぬ
このもとに−たかとりつなけ−かりころも−そてもしほほに−あられふりきぬ |
05661 |
未入力 正徹 (xxx)
おとすなりは風や雪を払ふらんたはなす鷹のすすのしの原
おとすなり−はかせやゆきを−はらふらむ−たはなすたかの−すすのしのはら |
05662 |
未入力 正徹 (xxx)
かりは行く袖にそくもるはし鷹のとはへてちらす雪の一むら
かりはゆく−そてにそくもる−はしたかの−とはへてちらす−ゆきのひとむら |
05663 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るる野のふふきはやみて箸鷹のかりこゑのこる雪の山もと
くるるのの−ふふきはやみて−はしたかの−かりこゑのこる−ゆきのやまもと |
05664 |
未入力 正徹 (xxx)
もののふを思へはなとかいてさらんはるるかりはのをののうす雪
もののふを−おもへはなとか−いてさらむ−はるるかりはの−をののうすゆき |
05665 |
未入力 正徹 (xxx)
ふす鳥をかりこゑききて思はすや今こそよその峰に立つ鹿
ふすとりを−かりこゑききて−おもはすや−いまこそよその−みねにたつしか |
05666 |
未入力 正徹 (xxx)
夕とかりかへる野風に柴さやくあられも鈴も玉の声して
ゆふとかり−かへるのかせに−しはさやく−あられもすすも−たまのこゑして |
05667 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れわたる山路の雲をかり衣かさねに嵐さむきかへさに
くれわたる−やまちのくもを−かりころも−かさねにあらし−さむきかへさに |
05668 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはれし緑も見えぬ霜の松さてしも年はふかき色かな
あらはれし−みとりもみえぬ−しものまつ−さてしもとしは−ふかきいろかな |
05669 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる日の松の古木のかは衣からまくほしき雪の朝風
さゆるひの−まつのふるきの−かはころも−からまくほしき−ゆきのあさかせ |
05670 |
未入力 正徹 (xxx)
一木たつ冬野の松の朝霜に落ちたる月をはらふ木からし
ひときたつ−ふゆののまつの−あさしもに−おちたるつきを−はらふこからし |
05671 |
未入力 正徹 (xxx)
うつみても緑かくれぬ霜の松雪よりさむき木枯の声
うつみても−みとりかくれぬ−しものまつ−ゆきよりさむき−こからしのこゑ |
05672 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす雪か霜かもわかぬまにしつくにこほる岡のへの松
あさひさす−ゆきかしもかも−わかぬまに−しつくにこほる−をかのへのまつ |
05673 |
未入力 正徹 (xxx)
朝けたつ煙もたえぬ松のはの霜なから吹く山の嵐に
あさけたつ−けふりもたえぬ−まつのはの−しもなからふく−やまのあらしに |
05674 |
未入力 正徹 (xxx)
松の色に夏は涼しく冬のはに雪つもらねとあたたかにみゆ
まつのいろに−なつはすすしく−ふゆのはに−ゆきつもらねと−あたたかにみゆ |
05675 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝ふるも氷りてさむき木の本に去年みし霜の松はたくらん
けさふるも−こほりてさむき−このもとに−こそみししもの−まつはたくらむ |
05676 |
未入力 正徹 (xxx)
山松の霜の下なるうす緑日影の露に色そそひゆく
やままつの−しものしたなる−うすみとり−ひかけのつゆに−いろそそひゆく |
05677 |
未入力 正徹 (xxx)
年さむき都の宿の松かえをきけ住吉のうらの神風
としさむき−みやこのやとの−まつかえを−きけすみよしの−うらのかみかせ |
05678 |
未入力 正徹 (xxx)
今日そ冬月の朝けの野への草嶺の松葉にさゆる嵐は
けふそふゆ−つきのあさけの−のへのくさ−みねのまつはに−さゆるあらしは |
05679 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉せくを川よとみて霜こほる松の嵐そむすほほれ行く
このはせく−をかはよとみて−しもこほる−まつのあらしそ−むすほほれゆく |
05680 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影露となときそ松の葉にさきうる霜の花の下紐
あさひかけ−つゆとなときそ−まつのはに−さきうるしもの−はなのしたひも |
05681 |
未入力 正徹 (xxx)
雪ふらはあたたかならむ松のはのことわりしらぬ霜のあさ明
ゆきふらは−あたたかならむ−まつのはの−ことわりしらぬ−しものあさあけ |
05682 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝に朝おく霜の花のやとにほふかしらす鶴の毛衣
まつかえに−あさおくしもの−はなのやと−にほふかしらす−つるのけころも |
05683 |
未入力 正徹 (xxx)
山きはの色に朝日はちかつきてこほれる霜にさわく松風
やまきはの−いろにあさひは−ちかつきて−こほれるしもに−さわくまつかせ |
05684 |
未入力 正徹 (xxx)
松の色は霜の後とそ思ひこし先あらはれてちる木の葉かな
まつのいろは−しもののちとそ−おもひこし−まつあらはれて−ちるこのはかな |
05685 |
未入力 正徹 (xxx)
枝ことに一葉のこさぬ霜のこゑ松よりさむし杜の木枯
えたことに−ひとはのこさぬ−しものこゑ−まつよりさむし−もりのこからし |
05686 |
未入力 正徹 (xxx)
こん年にちるへき程の花の葉も木毎の枝にこもる冬かな
こむとしに−ちるへきほとの−はなのはも−きことのえたに−こもるふゆかな |
05687 |
未入力 正徹 (xxx)
いくとせそ庭の松笠さしなから猶あらはるる霜の緑は
いくとせそ−にはのまつかさ−さしなから−なほあらはるる−しものみとりは |
05688 |
未入力 正徹 (xxx)
杜のはののこるも見えぬ枝の霜嵐にこほるおとそはけしき
もりのはの−のこるもみえぬ−えたのしも−あらしにこほる−おとそはけしき |
05689 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかみひろふ人なき落椎の下柴かくれくつる冬かな
やまふかみ−ひろふひとなき−おちしひの−したしはかくれ−くつるふゆかな |
05690 |
未入力 正徹 (xxx)
朝けもる旅にしあれは椎のはの霜の花折る宿の山かつ
あさけもる−たひにしあれは−しひのはの−しものはなをる−やとのやまかつ |
05691 |
未入力 正徹 (xxx)
山かせの柴吹きかへす日影にも椎のうら葉の消えぬ霜かな
やまかせの−しはふきかへす−ひかけにも−しひのうらはの−きえぬしもかな |
05692 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺わたる月に光をそへてけりうらよりしろき椎のはの霜
みねわたる−つきにひかりを−そへてけり−うらよりしろき−しひのはのしも |
05693 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰や朝霜消えぬ椎柴にさやきくらせる霰木からし
やまかけや−あさしもきえぬ−しひしはに−さやきくらせる−あられこからし |
05694 |
未入力 正徹 (xxx)
うら葉さへ霜の色かる椎柴にむかひそへたる嶺の月影
うらはさへ−しものいろかる−しひしはに−むかひそへたる−みねのつきかけ |
05695 |
未入力 正徹 (xxx)
網代うつ音をもいかか椎柴や庭のあらしの宇治の川なみ
あしろうつ−おとをもいかか−しひしはや−にはのあらしの−うちのかはなみ |
05696 |
未入力 正徹 (xxx)
峰に生ふるたか椎柴の袖さえて冬の嵐のこゑいとふらん
みねにおふる−たかしひしはの−そてさえて−ふゆのあらしの−こゑいとふらむ |
05697 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きかへす嶺の嵐にはれくもる椎のうら葉の雪の月かけ
ふきかへす−みねのあらしに−はれくもる−しひのうらはの−ゆきのつきかけ |
05698 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世には嵐にたくふ椎柴の身は落ちふるる木の本の庵
うきよには−あらしにたくふ−しひしはの−みはおちふるる−このもとのいほ |
05699 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のひろひし後の椎か本あられおち散り木からしそふく
やまひとの−ひろひしのちの−しひかもと−あられおちちり−こからしそふく |
05700 |
未入力 正徹 (xxx)
難波江におふるのみかはおしなへてとよ蘆原は冬かれにけり
なにはえに−おふるのみかは−おしなへて−とよあしはらは−ふゆかれにけり |
05701 |
未入力 正徹 (xxx)
こやの池にかくれて住みし水鳥の床あらはなる蘆の霜かれ
こやのいけに−かくれてすみし−みつとりの−とこあらはなる−あしのしもかれ |
05702 |
未入力 正徹 (xxx)
霜はらふ風もたまらぬ蘆のはにかくれわひぬるこやの里人
しもはらふ−かせもたまらぬ−あしのはに−かくれわひぬる−こやのさとひと |
05703 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さえてこほらぬ浪はよする江にわたれとぬれぬ蘆のうら風
しもさえて−こほらぬなみは−よするえに−わたれとぬれぬ−あしのうらかせ |
05704 |
未入力 正徹 (xxx)
さやくなり入江の氷下とちてなひかぬ蘆の霜の風をれ
さやくなり−いりえのこほり−したとちて−なひかぬあしの−しものかさをれ |
05705 |
未入力 正徹 (xxx)
みしま江や霜にをれふす蘆つつのあらはにうすく氷る浪かな
みしまえや−しもにをれふす−あしつつの−あらはにうすく−こほるなみかな |
05706 |
未入力 正徹 (xxx)
えやはみん難波の蘆の冬の夢夜はにかりふの霜のあけほの
えやはみむ−なにはのあしの−ふゆのゆめ−よはにかりふの−しものあけほの |
05707 |
未入力 正徹 (xxx)
しまつ鳥うとのの蘆そしのに立つちり葉つもりて浅き江もなし
しまつとり−うとののあしそ−しのにたつ−ちりはつもりて−あさきえもなし |
05708 |
未入力 正徹 (xxx)
かれわたる玉江の蘆をいつる日の葉わけの影もさゆる霜かな
かれわたる−たまえのあしを−いつるひの−はわけのかけも−さゆるしもかな |
05709 |
未入力 正徹 (xxx)
霜おけはこやにみしかき夏かりのあしのよのまにかるる霜かな
しもおけは−こやにみしかき−なつかりの−あしのよのまに−かるるしもかな |
05710 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりはてて入江の蘆にうく蘆のかれ葉吹きよする風そそよかぬ
ちりはてて−いりえのあしに−うくあしの−かれはふきよする−かせそそよかぬ |
05711 |
未入力 正徹 (xxx)
難波人思ひすてなて蘆のはにしみつく霜のあはれ世間
なにはひと−おもひすてなて−あしのはに−しみつくしもの−あはれよのなか |
05712 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟霜にふしたる蘆分も氷にさはる江にそよりこぬ
あまをふね−しもにふしたる−あしわけも−こほりにさはる−えにそよりこぬ |
05713 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪の煙をかけてよるひをは今朝たに見えぬうちの網代木
かはなみの−けふりをかけて−よるひをは−けさたにみえぬ−うちのあしろき |
05714 |
未入力 正徹 (xxx)
ありふるもよそにやはみん網代木によるひを虫のあたの命を
ありふるも−よそにやはみむ−あしろきに−よるひをむしの−あたのいのちを |
05715 |
未入力 正徹 (xxx)
田上や網代のかかりちかくともなほ衣手に霜やさゆらん
たなかみや−あしろのかかり−ちかくとも−なほころもてに−しもやさゆらむ |
05716 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪にあしろのかかりちかけれとなほてをさむみうちあかしつつ
かはなみに−あしろのかかり−ちかけれと−なほてをさむみ−うちあかしつつ |
05717 |
未入力 正徹 (xxx)
橋ひめの浪にかた敷く衣ての田上つつく宇治の網代木
はしひめの−なみにかたしく−ころもての−たなかみつつく−うちのあしろき |
05718 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしや網代にちかき河なみの木の葉にあそふひをの心は
はかなしや−あしろにちかき−かはなみの−このはにあそふ−ひをのこころは |
05719 |
未入力 正徹 (xxx)
かかりたく網代になるる川長は宿にぬる夜の袖やさむけき
かかりたく−あしろになるる−かはをさは−やとにぬるよの−そてやさむけき |
05720 |
未入力 正徹 (xxx)
老そうき田上川にすむひをもなほよるかたほある世なりけり
おいそうき−たなかみかはに−すむひをも−なほよるかたは−あるよなりけり |
05721 |
未入力 正徹 (xxx)
河かせや網代うつをのてをさむみかかりも雪に消かたの空
かはかせや−あしろうつをの−てをさむみ−かかりもゆきに−きえかたのそら |
05722 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川のまきの島わけ白妙におつる網代の布引の滝
うちかはの−まきのしまわけ−しろたへに−おつるあしろの−ぬのひきのたき |
05723 |
未入力 正徹 (xxx)
里の名もうち山颪さむき夜の河音ふけて網代うつ声
さとのなも−うちやまおろし−さむきよの−かはおとふけて−あしろうつこゑ |
05724 |
未入力 正徹 (xxx)
こほるらし八十氏人によるひををよそにうらみぬ橋ひめの袖
こほるらし−やそうちひとに−よるひをを−よそにうらみぬ−はしひめのそて |
05725 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまをなみ稲はかりてし田上やひたより後はあしろうつおと
ひまをなみ−いなはかりてし−たなかみや−ひたよりのちは−あしろうつおと |
05726 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川や網代の底の麻布をよ所に尋ねぬまきの島人
うちかはや−あしろのそこの−あさぬのを−よそにたつねぬ−まきのしまひと |
05727 |
未入力 正徹 (xxx)
かかり火によりてそあたる里の子の網代もる男をしる人にして
かかりひに−よりてそあたる−さとのこの−あしろもるをを−しるひとにして |
05728 |
未入力 正徹 (xxx)
みなそこの雪を照して氷りけり網代の布にやとる月影
みなそこの−ゆきをてらして−こほりけり−あしろのぬのに−やとるつきかけ |
05729 |
未入力 正徹 (xxx)
網代もる床にたく火のかけはかり河なみ立ちてこほる夜はかな
あしろもる−とこにたくひの−かけはかり−かはなみたちて−こほるよはかな |
05730 |
未入力 正徹 (xxx)
めくらすてたてるもさひしうち川や網代にならふ水の小車
めくらすて−たてるもさひし−うちかはや−あしろにならふ−みつのをくるま |
05731 |
未入力 正徹 (xxx)
田上やあさ川かけてゐる雲はたか衣手の網代もるらん
たなかみや−あさかはかけて−ゐるくもは−たかころもての−あしろもるらむ |
05732 |
未入力 正徹 (xxx)
浪による網代の木の葉かきませて氷魚もていつるうちの里人
なみによる−あしろのこのは−かきませて−ひをもていつる−うちのさとひと |
05733 |
未入力 正徹 (xxx)
川かせにひとり網代をうつ雨のくらき夜床はもる人もなし
かはかせに−ひとりあしろを−うつあめの−くらきよとこは−もるひともなし |
05734 |
未入力 正徹 (xxx)
田上や網代のかかりかけ消えて雨よりあかす夜半の衣て
たなかみや−あしろのかかり−かけきえて−あめよりあかす−よはのころもて |
05735 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる日もたか衣ての田上に川なみなれて網代もるらん
さゆるひも−たかころもての−たなかみに−かはなみなれて−あしろもるらむ |
05736 |
未入力 正徹 (xxx)
氷のみいふきおろしの網代木にひをさへよらぬやすの川なみ
こほりのみ−いふきおろしの−あしろきに−ひをさへよらぬ−やすのかはなみ |
05737 |
未入力 正徹 (xxx)
待つ夜ねぬうちの橋守もりあかす網代も袖もこほる浪かな
まつよねぬ−うちのはしもり−もりあかす−あしろもそても−こほるなみかな |
05738 |
未入力 正徹 (xxx)
里ちかき田上川のさ夜風にきぬたは絶えて網代うつこゑ
さとちかき−たなかみかはの−さよかせに−きぬたはたえて−あしろうつこゑ |
05739 |
未入力 正徹 (xxx)
かかりたく網代に床やならふらん又うつこゑは夜はのさ衣
かかりたく−あしろにとこや−ならふらむ−またうつこゑは−よはのさころも |
05740 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川や網代の布のうちはへてみなそこしろくやとる月影
うちかはや−あしろのぬのの−うちはへて−みなそこしろく−やとるつきかけ |
05741 |
未入力 正徹 (xxx)
みなそこの雪に木の葉のよるみえて網代の布に氷る月影
みなそこの−ゆきにこのはの−よるみえて−あしろのぬのに−こほるつきかけ |
05742 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの雲をはなれて網代木にいさよふ色やこほるしら浪
やまのはの−くもをはなれて−あしろきに−いさよふいろや−こほるしらなみ |
05743 |
未入力 正徹 (xxx)
宮人か月の桂のかけの枝をりしく浪に網代うつこゑ
みやひとか−つきのかつらの−かけのえた−をりしくなみに−あしろうつこゑ |
05744 |
未入力 正徹 (xxx)
川長のあはれ後の世網代木のくいの八千たひ身をやくたさん
かはをさの−あはれのちのよ−あしろきの−くいのやちたひ−みをやくたさむ |
05745 |
未入力 正徹 (xxx)
朝あけや峰に雪みる炭かまの煙みしかきをのの山もと
あさあけや−みねにゆきみる−すみかまの−けふりみしかき−をののやまもと |
05746 |
未入力 正徹 (xxx)
すみかまの雪や氷をいそきてもわか年さむきをのの山人
すみかまの−ゆきやこほりを−いそきても−わかとしさむき−をののやまひと |
05747 |
未入力 正徹 (xxx)
やきはつるまきの炭かまぬりこめて煙たえ行く山のさひしさ
やきはつる−まきのすみかま−ぬりこめて−けふりたえゆく−やまのさひしさ |
05748 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは煙もすくにのほらぬや横山すみのしるしなるらん
かせふけは−けふりもすくに−のほらぬや−よこやますみの−しるしなるらむ |
05749 |
未入力 正徹 (xxx)
朝またき炭やく山にいつる日のくもるとみるや煙なるらん
あさまたき−すみやくやまに−いつるひの−くもるとみるや−けふりなるらむ |
05750 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治川の水より立つや山颪に槙の炭やくけふりなるらん
うちかはの−みつよりたつや−やまおろしに−まきのすみやく−けふりなるらむ |
05751 |
未入力 正徹 (xxx)
ともしせしは山の陰に鹿はこて煙たちあかす峰のすみかま
ともしせし−はやまのかけに−しかはこて−けふりたちあかす−みねのすみかま |
05752 |
未入力 正徹 (xxx)
煙をも又ぬりこめていたさぬやすみのかまとのかまへなるらん
けふりをも−またぬりこめて−いたさぬや−すみのかまとの−かまへなるらむ |
05753 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のやく炭かまをぬりこめてかへる里にや煙たつらん
やまひとの−やくすみかまを−ぬりこめて−かへるさとにや−けふりたつらむ |
05754 |
未入力 正徹 (xxx)
をの山のすみの煙も吹きとかす嵐や空にこほりはつらん
をのやまの−すみのけふりも−ふきとかす−あらしやそらに−こほりはつらむ |
05755 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかく炭やくしつや衣てにおつるしつくを雪と知るらん
やまふかく−すみやくしつや−ころもてに−おつるしつくを−ゆきとしるらむ |
05756 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちに煙そたゆる焼きはてて又ぬりこむる嶺のすみかま
ゆきのうちに−けふりそたゆる−たきはてて−またぬりこむる−みねのすみかま |
05757 |
未入力 正徹 (xxx)
とことはにふせる床山やく炭をいそく心もしらぬ冬かな
とことはに−ふせるとこやま−やくすみを−いそくこころも−しらぬふゆかな |
05758 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺も尾も山そにきほふ煙立つすみのかまとのあまたかまへに
みねもをも−やまそにきほふ−けふりたつ−すみのかまとの−あまたかまへに |
05759 |
未入力 正徹 (xxx)
みねの松かた枝さしおほふすみかまの煙そむせふ雪の下露
みねのまつ−かたえさしおほふ−すみかまの−けふりそむせふ−ゆきのしたつゆ |
05760 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちにすみやく煙あかつきの雲も横山あらし吹くらし
ゆきのうちに−すみやくけふり−あかつきの−くももよこやま−あらしふくらし |
05761 |
未入力 正徹 (xxx)
いてん日や袖さえかねんすみかまを焼く火にあたるをのの山人
いてむひや−そてさえかねむ−すみかまを−たくひにあたる−をののやまひと |
05762 |
未入力 正徹 (xxx)
もちつるる翁かかみのしろ炭もよこ山いつる雪の下道
もちつるる−おきなかかみの−しろすみも−よこやまいつる−ゆきのしたみち |
05763 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝いつるを野山人のもつ炭にふらぬ都の雪をみるかな
けさいつる−をのやまひとの−もつすみに−ふらぬみやこの−ゆきをみるかな |
05764 |
未入力 正徹 (xxx)
つきせすよをのの山田に猶たてるくぬ木の炭はいてぬ日もなし
つきせすよ−をののやまたに−なほたてる−くぬきのすみは−いてぬひもなし |
05765 |
未入力 正徹 (xxx)
薪こり炭やく山の陰の海に煙うらやむあまのもしほ火
たききこり−すみやくやまの−かけのうみに−けふりうらやむ−あまのもしほひ |
05766 |
未入力 正徹 (xxx)
すみかまの嶺の煙も山風になかれてくたる宇治の川なみ
すみかまの−みねのけふりも−やまかせに−なかれてくたる−うちのかはなみ |
05767 |
未入力 正徹 (xxx)
外山にはをののおとして里人の煙をたえぬまきの炭かま
とやまには−をののおとして−さとひとの−けふりをたえぬ−まきのすみかま |
05768 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ぬへし遠山ひめの思ひよりもえてもたたぬすみの煙は
たつぬへし−とほやまひめの−おもひより−もえてもたたぬ−すみのけふりは |
05769 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる雲もよこ山炭やくや煙かしろくたちのほるなり
あけわたる−くももよこやま−すみやくや−けふりかしろく−たちのほるなり |
05770 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけはは山おく山なひきあふすみの煙や峰のかけ橋
かせふけは−はやまおくやま−なひきあふ−すみのけふりや−みねのかけはし |
05771 |
未入力 正徹 (xxx)
薄煙くもれる前に色こきや今たきいつる山のすみかま
うすけふり−くもれるまへに−いろこきや−いまたきいつる−やまのすみかま |
05772 |
未入力 正徹 (xxx)
雪をこひ氷をねかふ炭かまの煙や雲の波となるらん
ゆきをこひ−こほりをねかふ−すみかまの−けふりやくもの−なみとなるらむ |
05773 |
未入力 正徹 (xxx)
雪氷さむきねかひもことたえて煙やほそき嶺の炭かま
ゆきこほり−さむきねかひも−ことたえて−けふりやほそき−みねのすみかま |
05774 |
未入力 正徹 (xxx)
木をたちしをのの行末か炭かまの煙吹ききる太山嵐は
きをたちし−をののゆくへか−すみかまの−けふりふききる−みやまあらしは |
05775 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりそくるすみやく山の夕煙くもる契は雪にふかくて
ふりそくる−すみやくやまの−ゆふけふり−くもるちきりは−ゆきにふかくて |
05776 |
未入力 正徹 (xxx)
せめてもと猶かきつめて向ふかなうつまれぬ火ののこる光を
せめてもと−なほかきつめて−むかふかな−うつまれぬひの−のこるひかりを |
05777 |
未入力 正徹 (xxx)
灯の光そかすむ埋火のほそきけふりやねやにみつらん
ともしひの−ひかりそかすむ−うつみひの−ほそきけふりや−ねやにみつらむ |
05778 |
未入力 正徹 (xxx)
おやの親このこの世まて山かつのほたの火けたて形見とやみる
おやのおや−このこのよまて−やまかつの−ほたのひけたて−かたみとやみる |
05779 |
未入力 正徹 (xxx)
山入のやきもつくさぬ炭かまの煙やのこる夜はのうつみ火
やまひとの−やきもつくさぬ−すみかまの−けふりやのこる−よはのうつみひ |
05780 |
未入力 正徹 (xxx)
埋火の灰の蛍をあつめ置きて柴たきたつる暁の窓
うつみひの−はひのほたるを−あつめおきて−しはたきたつる−あかつきのまと |
05781 |
未入力 正徹 (xxx)
わつかにもうつむこそあれ朝毎に火を取る程の宿のあはれさ
わつかにも−うつむこそあれ−あさことに−ひをとるほとの−やとのあはれさ |
05782 |
未入力 正徹 (xxx)
冬はなと霜雪木の葉おこす火を閨にもうつむならひなるらん
ふゆはなと−しもゆきこのは−おこすひを−ねやにもうつむ−ならひなるらむ |
05783 |
未入力 正徹 (xxx)
さして世にすることわさのあらはこそ名を埋火の身ともうらみめ
さしてよに−することわさの−あらはこそ−なをうつみひの−みともうらみめ |
05784 |
未入力 正徹 (xxx)
霜やおく柴たきすてて埋火はよひより消えて袖そさむけき
しもやおく−しはたきすてて−うつみひは−よひよりきえて−そてそさむけき |
05785 |
未入力 正徹 (xxx)
みしかくはなるとも見えす焼直きしほたの丸木の丸ねせしまは
みしかくは−なるともみえす−たきおきし−ほたのまろきの−まろねせしまは |
05786 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちにたく火やたえん山里もかねてこり置く薪ならすは
ゆきのうちに−たくひやたえむ−やまさとも−かねてこりおく−たききならすは |
05787 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きはれぬ雪さへそちる残火の灰たちのほるこすの下かせ
ふきはれぬ−ゆきさへそちる−のこりひの−はひたちのほる−こすのしたかせ |
05788 |
未入力 正徹 (xxx)
さえわひて閨にたく火の煙こそ冬こもりする窓の月影
さえわひて−ねやにたくひの−けふりこそ−ふゆこもりする−まとのつきかけ |
05789 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかにとむかへる灰のはしり火もいそかしき年を知るならはうし
しつかにと−むかへるはひの−はしりひも−いそかしきとしを−しるならはうし |
05790 |
未入力 正徹 (xxx)
火もたかす人も影せぬあはらやにさえたる灰を払ふ山かせ
ひもたかす−ひともかけせぬ−あはらやに−さえたるはひを−はらふやまかせ |
05791 |
未入力 正徹 (xxx)
もえぬ火のありとも見えぬほたの上に松葉かきたく冬の山かつ
もえぬひの−ありともみえぬ−ほたのうへに−まつはかきたく−ふゆのやまかつ |
05792 |
未入力 正徹 (xxx)
ま柴たく煙をいたす槙の戸に雪ふふき入る庭の木枯
ましはたく−けふりをいたす−まきのとに−ゆきふふきいる−にはのこからし |
05793 |
未入力 正徹 (xxx)
さえわふる民をはしらすむかふ火に夜の衣をひとへぬきぬる
さえわふる−たみをはしらす−むかふひに−よるのころもを−ひとへぬきぬる |
05794 |
未入力 正徹 (xxx)
消えのこる火桶の灰にかく文字のてすさみうすき夜はの灯
きえのこる−ひをけのはひに−かくもしの−てすさみうすき−よはのともしひ |
05795 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬなり床も衾もさえとほる霜夜の火桶身にちかくして
あけぬなり−とこもふすまも−さえとほる−しもよのひをけ−みにちかくして |
05796 |
未入力 正徹 (xxx)
うつみ火のもとの契もあらはれて心とけたるまとゐをそする
うつみひの−もとのちきりも−あらはれて−こころとけたる−まとゐをそする |
05797 |
未入力 正徹 (xxx)
人ならは思ふ中とも見えぬへし立ちさりかたき埋火のもと
ひとならは−おもふなかとも−みえぬへし−たちさりかたき−うつみひのもと |
05798 |
未入力 正徹 (xxx)
なつかしくむかふ埋火人の世にかはらす老をいとはましかは
なつかしく−むかふうつみひ−ひとのよに−かはらすおいを−いとはましかは |
05799 |
未入力 正徹 (xxx)
心ありていとははいかにおこす火の老にむかはぬ時のまもなし
こころありて−いとははいかに−おこすひの−おいにむかはぬ−ときのまもなし |
05800 |
未入力 正徹 (xxx)
干しやらぬま柴ふすふかむかひ火はうちそむかれて又そはなれぬ
ほしやらぬ−ましはふすふか−むかひひは−うちそむかれて−またそはなれぬ |
05801 |
未入力 正徹 (xxx)
閨の火もうつまぬさきに雪さえて氷にとまる軒の玉水
ねやのひも−うつまぬさきに−ゆきさえて−こほりにとまる−のきのたまみつ |
05802 |
未入力 正徹 (xxx)
さえそ行くおく火の上の白灰もふるらん雪のふかき夜の空
さえそゆく−おくひのうへの−しらはひも−ふるらむゆきの−ふかきよのそら |
05803 |
未入力 正徹 (xxx)
まきの屋にほたたく埋立ちかすみこぬ春ふかき山の色かな
まきのやに−ほたたくけふり−たちかすみ−こぬはるふかき−やまのいろかな |
05804 |
未入力 正徹 (xxx)
春やときたえすをりたくしはしたに冬の影みぬ閨の霞は
はるやとき−たえすをりたく−しはしたに−ふゆのかけみぬ−ねやのかすみは |
05805 |
未入力 正徹 (xxx)
埋火のあたりをぬるみまとろめは行末とほき春のよの夢
うつみひの−あたりをぬるみ−まとろめは−ゆくすゑとほき−はるのよのゆめ |
05806 |
未入力 正徹 (xxx)
うつみ火のうすき煙の閨のうちに春の霞の衣をそきる
うつみひの−うすきけふりの−ねやのうちに−はるのかすみの−ころもをそきる |
05807 |
未入力 正徹 (xxx)
見しやいつ心とけつるうつみ火に春のねふりの冬のよの夢
みしやいつ−こころとけつる−うつみひに−はるのねふりの−ふゆのよのゆめ |
05808 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへをたとるたとるそかたりつるくらふの山のすみのほかけに
いにしへを−たとるたとるそ−かたりつる−くらふのやまの−すみのほかけに |
05809 |
未入力 正徹 (xxx)
たきさしてたたつかのまをふし柴の煙こりしく床のうへかな
たきさして−たたつかのまを−ふししはの−けふりこりしく−とこのうへかな |
05810 |
未入力 正徹 (xxx)
荒れわたるね屋に焼く火の影もるをかこはぬ雪はひかりかへつつ
あれわたる−ねやにたくひの−かけもるを−かこはぬゆきは−ひかりかへつつ |
05811 |
未入力 正徹 (xxx)
すさましや閨の埋火みなつきて灰もぬるまぬ暁の袖
すさましや−ねやのうつみひ−みなつきて−はひもぬるまぬ−あかつきのそて |
05812 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の灰にまきるるちりのひも山とやならむ四方の炭かま
あかつきの−はひにまきるる−ちりのひも−やまとやならむ−よものすみかま |
05813 |
未入力 正徹 (xxx)
明かたの灰すさましく石の火のいてしはかりにのこるかけかな
あけかたの−はひすさましく−いしのひの−いてしはかりに−のこるかけかな |
05814 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくにさえあかすこそ埋火の影まてうすき衣なりけれ
とにかくに−さえあかすこそ−うつみひの−かけまてうすき−ころもなりけれ |
05815 |
未入力 正徹 (xxx)
なにか世に身のあらはれんうつみ火のうつもるる名の消えははつとも
なにかよに−みのあらはれむ−うつみひの−うつもるるなの−きえははつとも |
05816 |
未入力 正徹 (xxx)
埋火を又かきおこす閨の上のはしに音する雪の下水
うつみひを−またかきおこす−ねやのうへの−はしにおとする−ゆきのしたみつ |
05817 |
未入力 正徹 (xxx)
閨の上の雪には猶もうつみ火をたきあかせともさゆる袖かな
ねやのうへの−ゆきにはなほも−うつみひを−たきあかせとも−さゆるそてかな |
05818 |
未入力 正徹 (xxx)
うつみ火に炭さしそへてしつかなるね屋の光に明くるをそ待つ
うつみひに−すみさしそへて−しつかなる−ねやのひかりに−あくるをそまつ |
05819 |
未入力 正徹 (xxx)
夜とてしてかへる閨にそ埋火のあたたかなるもさすか知らるる
よとてして−かへるねやにそ−うつみひの−あたたかなるも−さすかしらるる |
05820 |
未入力 正徹 (xxx)
老いはてて寒き霜夜に消えぬへき我をいけ置く埋火のもと
おいはてて−さむきしもよに−きえぬへき−われをいけおく−うつみひのもと |
05821 |
未入力 正徹 (xxx)
深けにけり戸もほそ殿の長すひつ火もいけおかす人音もせす
ふけにけり−ともほそとのの−なかすひつ−ひもいけおかす−ひとおともせす |
05822 |
未入力 正徹 (xxx)
てもふれぬね屋の扇に冬そ思ふ又うつみ火も夏残らはと
てもふれぬ−ねやのあふきに−ふゆそおもふ−またうつみひも−なつのこらはと |
05823 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる霰ねやもりあへす埋火におのれも消えて光けつこゑ
ふるあられ−ねやもりあへす−うつみひに−おのれもきえて−ひかりけつこゑ |
05824 |
未入力 正徹 (xxx)
うつみてはぬるき火桶の手すさみに煙たておく閨の焼物
うつみては−ぬるきひをけの−てすさみに−けふりたておく−ねやのたきもの |
05825 |
未入力 正徹 (xxx)
こほるらし雹におもき蓑の毛に玉のこゑする道の山かせ
こほるらし−あられにおもき−みののけに−たまのこゑする−みちのやまかせ |
05826 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬるるふもとのみそれ猶さえて山路のおくは雪のみそふる
そてぬるる−ふもとのみそれ−なほさえて−やまちのおくは−ゆきのみそふる |
05827 |
未入力 正徹 (xxx)
たひ衣きそのかさぬのぬれこほるみそれにとまる坂の下庵
たひころも−きそのかさぬの−ぬれこほる−みそれにとまる−さかのしたいほ |
05828 |
未入力 正徹 (xxx)
その山にくらせる代代の跡ふりて雪に絶えにし江にこそ有りけれ
そのやまに−くらせるよよの−あとふりて−ゆきにたえにし−えにこそありけれ |
05829 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくにとはれぬ跡は見えぬへし雪の下なる庭のよもきふ
とにかくに−とはれぬあとは−みえぬへし−ゆきのしたなる−にはのよもきふ |
05830 |
未入力 正徹 (xxx)
雪は猶空にそふかき白雲にひかりをそふるあり明の月
ゆきはなほ−そらにそふかき−しらくもに−ひかりをそふる−ありあけのつき |
05831 |
未入力 正徹 (xxx)
つきてふるいつくほあれと富士のねにつもるや雪の泊なるらん
つきてふる−いつくほあれと−ふしのねに−つもるやゆきの−とまりなるらむ |
05832 |
未入力 正徹 (xxx)
あらち山峰の白雪やたののに浅ちをかけてうつむ比かな
あらちやま−みねのしらゆき−やたののに−あさちをかけて−うつむころかな |
05833 |
未入力 正徹 (xxx)
いくへにかつもりそふらんとふ人のまたれしまての宿の白雪
いくへにか−つもりそふらむ−とふひとの−またれしまての−やとのしらゆき |
05834 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の雲ふもとの浪も白たへになかれてつもる雪の川かせ
みねのくも−ふもとのなみも−しろたへに−なかれてつもる−ゆきのかはかせ |
05835 |
未入力 正徹 (xxx)
湊舟とまもふきあへすここほしくる雪にたたよふひらのねおろし
みなとふね−とまもふきあへす−こほしくる−ゆきにたたよふ−ひらのねおろし |
05836 |
未入力 正徹 (xxx)
うつもるるこしのひら屋の雪の中に夜ならぬ火をともすとそきく
うつもるる−こしのひらやの−ゆきのうちに−よるならぬひを−ともすとそきく |
05837 |
未入力 正徹 (xxx)
雪つもるみほの杣山下折れて消えぬ梢そあまたあれ行く
ゆきつもる−みほのそまやま−したをれて−きえぬこすゑそ−あまたあれゆく |
05838 |
未入力 正徹 (xxx)
世世ふれとためしそ消えぬ雪の山庭につくりし秋の宮人
よよふれと−ためしそきえぬ−ゆきのやま−にはにつくりし−あきのみやひと |
05839 |
未入力 正徹 (xxx)
かた岡の村柴そよき風さえて雲の行てに雪は降りきぬ
かたをかの−むらしはそよき−かせさえて−くものゆくてに−ゆきはふりきぬ |
05840 |
未入力 正徹 (xxx)
今年又心にかけて行く雲や雪をめくらす風のすかたを
ことしまた−こころにかけて−ゆくくもや−ゆきをめくらす−かせのすかたを |
05841 |
未入力 正徹 (xxx)
ときは木の梢の雪やつもるらん空くらき夜の山そさやけき
ときはきの−こすゑのゆきや−つもるらむ−そらくらきよの−やまそさやけき |
05842 |
未入力 正徹 (xxx)
風ませにあらく落しはしつまりてこまかにつもる庭の白雪
かせませに−あらくおちしは−しつまりて−こまかにつもる−にはのしらゆき |
05843 |
未入力 正徹 (xxx)
今は世に都の朝けふりいてて雪みる人の情たになし
いまはよに−みやこのあさけ−ふりいてて−ゆきみるひとの−こころたになし |
05844 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかへぬ雪の朝も世中は見しにもあらぬ所とそなる
みをかへぬ−ゆきのあしたも−よのなかは−みしにもあらぬ−ところとそなる |
05845 |
未入力 正徹 (xxx)
降りくらす雪の白淡した折の松のうら葉そしはしくもれる
ふりくらす−ゆきのしらあわ−したをれの−まつのうらはそ−しはしくもれる |
05846 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬしやたれ別路もしらす明くる夜の雪にかさぬる衣笠の山
ぬしやたれ−わかれちもしらす−あくるよの−ゆきにかさぬる−きぬかさのやま |
05847 |
未入力 正徹 (xxx)
雲さむみ雪をまさしきあらき風吹きしつまりてくるる空かな
くもさむみ−ゆきをまさしき−あらきかせ−ふきしつまりて−くるるそらかな |
05848 |
未入力 正徹 (xxx)
雪おもるそはの下柴岩ね松なたれてうつむ谷の篠原
ゆきおもる−そはのしたしは−いはねまつ−なたれてうつむ−たにのささはら |
05849 |
未入力 正徹 (xxx)
一あれのふふきの後は音もせて雪かきたるる世は静なり
ひとあれの−ふふきののちは−おともせて−ゆきかきたるる−よはしつかなり |
05850 |
未入力 正徹 (xxx)
玉鉾のみちの朝けを先きけは雪ふむ暮そ高くつもれる
たまほこの−みちのあさけを−まつきけは−ゆきふむくれそ−たかくつもれる |
05851 |
未入力 正徹 (xxx)
月花もかくやは有りし世中の塵を雪めてつもる冬かな
つきはなも−かくやはありし−よのなかの−ちりをゆきめて−つもるふゆかな |
05852 |
未入力 正徹 (xxx)
袖さむし雪さへ今朝はあまさかるひなのあら野は雪降るらしも
そてさむし−ゆきさへけさは−あまさかる−ひなのあらのは−ゆきふるらしも |
05853 |
未入力 正徹 (xxx)
つららよりしつくは落ちてけさやかに朝日かかれる軒の白雪
つららより−しつくはおちて−けさやかに−あさひかかれる−のきのしらゆき |
05854 |
未入力 正徹 (xxx)
空ほなほこほすかことくふりつもるを野の御室の冬の夕暮
そらはなほ−こほすかことく−ふりつもる−をののみむろの−ふゆのゆふくれ |
05855 |
未入力 正徹 (xxx)
空さえてうちちる雪も村村につもる冬のの霜の朝かせ
そらさえて−うちちるゆきも−むらむらに−つもるふゆのの−しものあさかせ |
05856 |
未入力 正徹 (xxx)
さむけしや嵐に杉のかれはたく雪にあふ坂の関やもる人
さむけしや−あらしにすきの−かれはたく−ゆきにあふさかの−せきやもるひと |
05857 |
未入力 正徹 (xxx)
雲したふ雪もはしめて世にふるはたつきなしとやつもりわふらん
くもしたふ−ゆきもはしめて−よにふるは−たつきなしとや−つもりわふらむ |
05858 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月ふる初雪の下もみちわか葉色こき春の花かな
かみなつき−ふるはつゆきの−したもみち−わかはいろこき−はるのはなかな |
05859 |
未入力 正徹 (xxx)
こきませし柳さくらの春の夢見わたせは又雪の初花
こきませし−やなきさくらの−はるのゆめ−みわたせはまた−ゆきのはつはな |
05860 |
未入力 正徹 (xxx)
降りそむる都の野へにこゑすなりきかぬ太山の松の雪折
ふりそむる−みやこののへに−こゑすなり−きかぬみやまの−まつのゆきをれ |
05861 |
未入力 正徹 (xxx)
冬はまた行末とほき山のはの初雪をしくふる時雨かな
ふゆはまた−ゆくすゑとほき−やまのはの−はつゆきをしく−ふるしくれかな |
05862 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風さゆる夕に立つ雪のちかき高ねははつ雪そふる
あまつかせ−さゆるゆふへに−たつゆきの−ちかきたかねは−はつゆきそふる |
05863 |
未入力 正徹 (xxx)
あなし山嵐にとけぬ夕たたみかけて見ゆるや嶺の初雪
あなしやま−あらしにとけぬ−ゆふたたみ−かけてみゆるや−みねのはつゆき |
05864 |
未入力 正徹 (xxx)
かつはるる雲の汀の松風になみかさなれる峰のはつ雪
かつはるる−くものみきはの−まつかせに−なみかさなれる−みねのはつゆき |
05865 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりそむる雪さへ友を松の戸に跡みし人そ年にまれなる
ふりそむる−ゆきさへともを−まつのとに−あとみしひとそ−としにまれなる |
05866 |
未入力 正徹 (xxx)
つもれたた庭のをしへの跡たにもあらはと思ふ宿の白雪
つもれたた−にはのをしへの−あとたにも−あらはとおもふ−やとのしらゆき |
05867 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の苔砌のま砂色わけてうつみもはてすはるる初雪
にはのこけ−みきりのまさこ−いろわけて−うつみもはてす−はるるはつゆき |
05868 |
未入力 正徹 (xxx)
見もなれす所もしらぬ朝明の雲まの雪やもろこしの山
みもなれす−ところもしらぬ−あさあけの−くもまのゆきや−もろこしのやま |
05869 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そみる山や浪まの外ならぬ興つ塩あひにうかふあは雪
けさそみる−やまやなみまの−ほかならぬ−おきつしほあひに−うかふあはゆき |
05870 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの空よりちりて又さくや雲まの嶺の雪の初花
ひさかたの−そらよりちりて−またさくや−くもまのみねの−ゆきのはつはな |
05871 |
未入力 正徹 (xxx)
白たへの色も所もさたまらす雲まの山や雪ふふくらん
しろたへの−いろもところも−さたまらす−くもまのやまや−ゆきふふくらむ |
05872 |
未入力 正徹 (xxx)
遠かたの入日のかけに紅のこそめの雪と見ゆる山かな
をちかたの−いりひのかけに−くれなゐの−こそめのゆきと−みゆるやまかな |
05873 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきや雲まの雪になひくなり山鳥の尾のしたり柳は
かつらきや−くもまのゆきに−なひくなり−やまとりのをの−したりやなきは |
05874 |
未入力 正徹 (xxx)
空はれて国をへたつる山のはも雪に見えたる窓の朝明
そらはれて−くにをへたつる−やまのはも−ゆきにみえたる−まとのあさあけ |
05875 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかなる夕日に雪をわたりくる遠かた人の峰の梯
さやかなる−ゆふひにゆきを−わたりくる−をちかたひとの−みねのかけはし |
05876 |
未入力 正徹 (xxx)
鷲の山四色の花のふりし世を法の莚にみねのしら雪
わしのやま−よいろのはなの−ふりしよを−のりのむしろに−みねのしらゆき |
05877 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さす雪のふもとの川浪も煙にあかぬふしのしは山
あさひさす−ゆきのふもとの−かはなみも−けふりにあかぬ−ふしのしはやま |
05878 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸の雪にあくるや玉手箱山はかかみをかけてむかへる
あまのとの−ゆきにあくるや−たまてはこ−やまはかかみを−かけてむかへる |
05879 |
未入力 正徹 (xxx)
冬なから煙にかすむあさま山もえてや雪の光けつらん
ふゆなから−けふりにかすむ−あさまやま−もえてやゆきの−ひかりけつらむ |
05880 |
未入力 正徹 (xxx)
そはたかみかけたる谷の朝ゐてに雪と土とのなたれ行くこゑ
そはたかみ−かけたるたにの−あさゐてに−ゆきとつちとの−なたれゆくこゑ |
05881 |
未入力 正徹 (xxx)
山めの袖のわかれの明くれもひかりかくさぬ雪の色かな
やまひめの−そてのわかれの−あけくれも−ひかりかくさぬ−ゆきのいろかな |
05882 |
未入力 正徹 (xxx)
をとめ子か袖にはあらし朝明の雪をめくらす四方の山風
をとめこか−そてにはあらし−あさあけの−ゆきをめくらす−よものやまかせ |
05883 |
未入力 正徹 (xxx)
下折にくるるみ山の松の雪つもるをもみす聞く人もなし
したをれに−くるるみやまの−まつのゆき−つもるをもみす−きくひともなし |
05884 |
未入力 正徹 (xxx)
梢もる入日の影は消えなからゆふくれとほきみねのしら雪
こすゑもる−いりひのかけは−きえなから−ゆふくれとほき−みねのしらゆき |
05885 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりかね雲も夕を猶たとる跡なき雪の嶺のかけはし
わたりかね−くももゆふへを−なほたとる−あとなきゆきの−みねのかけはし |
05886 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりはれて月の光の友まつや夕暮うつむ山の白雪
ふりはれて−つきのひかりの−ともまつや−ゆふくれうつむ−やまのしらゆき |
05887 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨まてくもりてふかくみし山の雪におくなき木木の下折
しくれまて−くもりてふかく−みしやまの−ゆきにおくなき−ききのしたをれ |
05888 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うつめとほくみゆとも初雪にわか住む峰と契りやはせし
くもうつめ−とほくみゆとも−はつゆきに−わかすむみねと−ちきりやはせし |
05889 |
未入力 正徹 (xxx)
よもひかし杣作る木のとふささへちりかひくもる峰のしら雪
よもひかし−そまつくるきの−とふささへ−ちりかひくもる−みねのしらゆき |
05890 |
未入力 正徹 (xxx)
山人の杣たつをのの音絶えてひひきそかはる雪の下折
やまひとの−そまたつをのの−おとたえて−ひひきそかはる−ゆきのしたをれ |
05891 |
未入力 正徹 (xxx)
煙のみ柴屋をさむみ立ちやまてをのの声せぬ雪の杣山
けふりのみ−しはやをさむみ−たちやまて−をののこゑせぬ−ゆきのそまやま |
05892 |
未入力 正徹 (xxx)
いとまなきみほの杣人やすむらしかり屋の雪に埋立つなり
いとまなき−みほのそまひと−やすむらし−かりやのゆきに−けふりたつなり |
05893 |
未入力 正徹 (xxx)
降るままに嶺のかけはし中絶えて梢折れふす雪のときは木
ふるままに−みねのかけはし−なかたえて−こすゑをれふす−ゆきのときはき |
05894 |
未入力 正徹 (xxx)
おとすなり峰の杣木やたほすらん下をるましきうす雪の空
おとすなり−みねのそまきや−たほすらむ−したをるましき−うすゆきのそら |
05895 |
未入力 正徹 (xxx)
杣人の峰のときは木きりけりとみゆるはかりにうつむ雪かな
そまひとの−みねのときはき−きりけりと−みゆるはかりに−うつむゆきかな |
05896 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨れてもつひにもみちぬときは木の雪に色付く夕日影かな
しくれても−つひにもみちぬ−ときはきの−ゆきにいろつく−ゆふひかけかな |
05897 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐山秋のはちらぬときは木も世のさかしるき雪の下折
あらしやま−あきのはちらぬ−ときはきも−よのさかしるき−ゆきのしたをれ |
05898 |
未入力 正徹 (xxx)
枝おもる嶺のときは木吹きかへし嵐におつる雪のむら立
えたおもる−みねのときはき−ふきかへし−あらしにおつる−ゆきのむらたち |
05899 |
未入力 正徹 (xxx)
二度の花たち花と開く雪にその葉そしるき庭のときは木
ふたたひの−はなたちはなと−さくゆきに−そのはそしるき−にはのときはき |
05900 |
未入力 正徹 (xxx)
つもりかね又雪おつる松かけに一むらくもる岡の辺の里
つもりかね−またゆきおつる−まつかけに−ひとむらくもる−をかのへのさと |
05901 |
未入力 正徹 (xxx)
たちこむるふもとの雲につもるらし尾上の松に落つる白雪
たちこむる−ふもとのくもに−つもるらし−をのへのまつに−おつるしらゆき |
05902 |
未入力 正徹 (xxx)
ふれはかつ消えてそこほる冬の日の光につもる松の白雪
ふれはかつ−きえてそこほる−ふゆのひの−ひかりにつもる−まつのしらゆき |
05903 |
未入力 正徹 (xxx)
降る雪のつもるにもあらて枝そふすもとよりたへぬ松の風折
ふるゆきの−つもるにもあらて−えたそふす−もとよりたへぬ−まつのかさをれ |
05904 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きたてし木の葉は朽ちてうす雪のこほりかさなる谷の松風
ふきたてし−このははくちて−うすゆきの−こほりかさなる−たにのまつかせ |
05905 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原遠き尾上の松島やをしまの浪をかくるしら雪
わたのはら−とほきをのへの−まつしまや−をしまのなみを−かくるしらゆき |
05906 |
未入力 正徹 (xxx)
雪をれし滝のうへなるそなれ松しつく岩ほのたてる力に
ゆきをれし−たきのうへなる−そなれまつ−しつくいはほの−たてるちからに |
05907 |
未入力 正徹 (xxx)
かきくらす尾上の嵐浪こえて松にはれたる雪のとほ島
かきくらす−をのへのあらし−なみこえて−まつにはれたる−ゆきのとほしま |
05908 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにて鶴はねくらと憑むらん松のふるすの雪にこほるる
いつくにて−つるはねくらと−たのむらむ−まつのふるすの−ゆきにこほるる |
05909 |
未入力 正徹 (xxx)
雪たかき尾上の松も下折すうら吹きのほる風のちからに
ゆきたかき−をのへのまつも−したをれす−うらふきのほる−かせのちからに |
05910 |
未入力 正徹 (xxx)
風さえて今朝ふる雪に待ちえたり五葉の松に六の初花
かせさえて−けさふるゆきに−まちえたり−いつはのまつに−むつのはつはな |
05911 |
未入力 正徹 (xxx)
笠の雪つららの杖をつく松の老いかたふきてたてる庭かな
かさのゆき−つららのつゑを−つくまつの−おいかたふきて−たてるにはかな |
05912 |
未入力 正徹 (xxx)
日をかさね雪も昔の友まつやふりにしままのたか砂の松
ひをかさね−ゆきもむかしの−ともまつや−ふりにしままの−たかさこのまつ |
05913 |
未入力 正徹 (xxx)
世はこれそ梢こそあれ松かけの雪を落葉にうつみかへすは
よはこれそ−こすゑこそあれ−まつかけの−ゆきをおちはに−うつみかへすは |
05914 |
未入力 正徹 (xxx)
こほす枝なひく梢も松ことにむらむらみゆる雪の山もと
こほすえた−なひくこすゑも−まつことに−むらむらみゆる−ゆきのやまもと |
05915 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲につもると見えておとすなり杉たつ嶺の雪の下折
よこくもに−つもるとみえて−おとすなり−すきたつみねの−ゆきのしたをれ |
05916 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす薄雲かくれかつそみるふもとの杉の雪の村立
ひかけさす−うすくもかくれ−かつそみる−ふもとのすきの−ゆきのむらたち |
05917 |
未入力 正徹 (xxx)
雪つもるひ原の山に入る人やにほはぬ花のかさしをるらん
ゆきつもる−ひはらのやまに−いるひとや−にほはぬはなの−かさしをるらむ |
05918 |
未入力 正徹 (xxx)
降るとたにいさしら雪の下折にやかて窓うつ軒の呉竹
ふるとたに−いさしらゆきの−したをれに−やかてまとうつ−のきのくれたけ |
05919 |
未入力 正徹 (xxx)
むかひみる竹のは山の雪なから窓に明けゆく芹川の里
むかひみる−たけのはやまの−ゆきなから−まとにあけゆく−せりかはのさと |
05920 |
未入力 正徹 (xxx)
末の世にむかしの跡やしたふらんしかの園生の雪にふす竹
すゑのよに−むかしのあとや−したふらむ−しかのそのふの−ゆきにふすたけ |
05921 |
未入力 正徹 (xxx)
さきつつく春の友まてうゑ木たつ都のそのの雪の初花
さきつつく−はるのともまて−うゑきたつ−みやこのそのの−ゆきのはつはな |
05922 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そみる都の雪によもきふの宿の垣ねのこしの白山
けさそみる−みやこのゆきに−よもきふの−やとのかきねの−こしのしらやま |
05923 |
未入力 正徹 (xxx)
うつろひし下葉も見えす萩のとや雪に絶えたるいねかての空
うつろひし−したはもみえす−はきのとや−ゆきにたえたる−いねかてのそら |
05924 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲もおなしくろ戸の曙をさやかに見する庭の白雪
うきくもも−おなしくろとの−あけほのを−さやかにみする−にはのしらゆき |
05925 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の雪にとのへの沓の跡とめて暁いつる雲のうへ人
にはのゆきに−とのへのくつの−あととめて−あかつきいつる−くものうへひと |
05926 |
未入力 正徹 (xxx)
猶ふりぬ里とそ見ゆる深草やあれにし後の雪の折はは
なほふりぬ−さととそみゆる−ふかくさや−あれにしのちの−ゆきのをれはは |
05927 |
未入力 正徹 (xxx)
つま木さへともしき里の雪折にぬれたる枝をふすへかねつつ
つまきさへ−ともしきさとの−ゆきをれに−ぬれたるえたを−ふすへかねつつ |
05928 |
未入力 正徹 (xxx)
雪のうちにあれのみまさる古郷はのこりし三の道たにもなし
ゆきのうちに−あれのみまさる−ふるさとは−のこりしみつの−みちたにもなし |
05929 |
未入力 正徹 (xxx)
日かすふる暮にそいととさしこもる庭は葎の跡もなけれと
ひかすふる−くれにそいとと−さしこもる−にははむくらの−あともなけれと |
05930 |
未入力 正徹 (xxx)
跡つけん人あらはともいとはれすならひなき庭の雪の朝明
あとつけむ−ひとあらはとも−いとはれす−ならひなきにはの−ゆきのあさあけ |
05931 |
未入力 正徹 (xxx)
庭せはき雪の下なる水おとのあるかなきかの身さへふりつつ
にはせはき−ゆきのしたなる−みつおとの−あるかなきかの−みさへふりつつ |
05932 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに雪かく庭ほとふ人のあるにもあらぬすさみなりけり
いたつらに−ゆきかくにはほ−とふひとの−あるにもあらぬ−すさみなりけり |
05933 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もうゑし所をわすれねは跡なき雪に残る面かけ
くさもきも−うゑしところを−わすれねは−あとなきゆきに−のこるおもかけ |
05934 |
未入力 正徹 (xxx)
みちしあれは今日初雪に跡そみることのはつもれ宿の松陰
みちしあれは−けふはつゆきに−あとそみる−ことのはつもれ−やとのまつかけ |
05935 |
未入力 正徹 (xxx)
いくかありて消えんとかみる九重や雪の山つく秋の宮人
いくかありて−きえむとかみる−ここのへや−ゆきのやまつく−あきのみやひと |
05936 |
未入力 正徹 (xxx)
三のみち雪のうちにそあらはるるいかなる家の庭もさたかに
みつのみち−ゆきのうちにそ−あらはるる−いかなるいへの−にはもさたかに |
05937 |
未入力 正徹 (xxx)
雪ふれは軒はを憑む朝鳥のこゑはかりする庭のさひしさ
ゆきふれは−のきはをたのむ−あさとりの−こゑはかりする−にはのさひしさ |
05938 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の中に鳴く声せぬやむら鳥のはみこし水も今朝たゆるかに
ゆきのうちに−なくこゑせぬや−むらとりの−はみこしみつも−けさたゆるかに |
05939 |
未入力 正徹 (xxx)
柴の戸に夕日さしくる松陰の雪のしつくの音はかりして
しはのとに−ゆふひさしくる−まつかけの−ゆきのしつくの−おとはかりして |
05940 |
未入力 正徹 (xxx)
はらへ風ふり入る雪にたれこめて松の行へもしらぬゆふへを
はらへかせ−ふりいるゆきに−たれこめて−まつのゆくへも−しらぬゆふへを |
05941 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そとふ雪をめくらす袖はかりふりはへ庭に跡はなけれと
なほそとふ−ゆきをめくらす−そてはかり−ふりはへにはに−あとはなけれと |
05942 |
未入力 正徹 (xxx)
寺ふりて法のなからん世やいかに鐘もつつみもきかぬ雪かな
てらふりて−のりのなからむ−よやいかに−かねもつつみも−きかぬゆきかな |
05943 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく夕のかねのこゑ落ちて松につれなき嶺のしら雪
あらしふく−ゆふへのかねの−こゑおちて−まつにつれなき−みねのしらゆき |
05944 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ちかき木すゑあまたの雪折に山おくあさき入相のこゑ
のきちかき−こすゑあまたの−ゆきをれに−やまおくあさき−いりあひのこゑ |
05945 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の上に入相のこゑはかさなれと暮るる色なき山のかけかな
ゆきのうへに−いりあひのこゑは−かさなれと−くるるいろなき−やまのかけかな |
05946 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふかき冬を契りてふる雪もまたあさきえと見ゆる比かな
としふかき−ふゆをちきりて−ふるゆきも−またあさきえと−みゆるころかな |
05947 |
未入力 正徹 (xxx)
朝くもりしはしふりきて道のへのちりもかくさすはるる白雪
あさくもり−しはしふりきて−みちのへの−ちりもかくさす−はるるしらゆき |
05948 |
未入力 正徹 (xxx)
おく霜にまかふや雪のあさは野にねさへかくれすたてるかや原
おくしもに−まかふやゆきの−あさはのに−ねさへかくれす−たてるかやはら |
05949 |
未入力 正徹 (xxx)
日影さす冬野をあさみふれはかつ消ゆる草はの雪にぬれつつ
ひかけさす−ふゆのをあさみ−ふれはかつ−きゆるくさはの−ゆきにぬれつつ |
05950 |
未入力 正徹 (xxx)
朝くもりうちちる野へのかせさえて霜に色わく雪の村草
あさくもり−うちちるのへの−かせさえて−しもにいろわく−ゆきのむらくさ |
05951 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きはらふ尾上の松もこゑおちてふもとのかねにつもる白雪
ふきはらふ−をのへのまつも−こゑおちて−ふもとのかねに−つもるしらゆき |
05952 |
未入力 正徹 (xxx)
水いてし太山の川になかれきてつもる木積も見えぬ雪かな
みついてし−みやまのかはに−なかれきて−つもるこつみも−みえぬゆきかな |
05953 |
未入力 正徹 (xxx)
つもるらし木木の下折遠近にひまなき山の雪の暮かな
つもるらし−ききのしたをれ−をちこちに−ひまなきやまの−ゆきのくれかな |
05954 |
未入力 正徹 (xxx)
谷川もうつもれはつる下折に雪の木積となる山路かな
たにかはも−うつもれはつる−したをれに−ゆきのこつみと−なるやまちかな |
05955 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の中にことのはしけし山ひこもたえすこたふる木木の下折
ゆきのうちに−ことのはしけし−やまひこも−たえすこたふる−ききのしたをれ |
05956 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺たかみ松の梢の木のもとになるまてたへてつもる雪かな
みねたかみ−まつのこすゑの−このもとに−なるまてたへて−つもるゆきかな |
05957 |
未入力 正徹 (xxx)
岸による浪はしほ風うらの名もつもりてたかき松の白雪
きしによる−なみはしほかせ−うらのなも−つもりてたかき−まつのしらゆき |
05958 |
未入力 正徹 (xxx)
めくみをもふかくはうけし降る雪のおもきそたへぬ木木の下折
めくみをも−ふかくはうけし−ふるゆきの−おもきそたへぬ−ききのしたをれ |
05959 |
未入力 正徹 (xxx)
松杉の下折れしままうつもれて岡をならふる雪の山中
まつすきの−したをれしまま−うつもれて−をかをならふる−ゆきのやまなか |
05960 |
未入力 正徹 (xxx)
風さえし真柴も見えす岩かねに雪そこり敷く嶺の梯
かせさえし−ましはもみえす−いはかねに−ゆきそこりしく−みねのかけはし |
05961 |
未入力 正徹 (xxx)
まてしはし関守る雪のまれの跡ふふきにとまる紀路の山こえ
まてしはし−せきもるゆきの−まれのあと−ふふきにとまる−きちのやまこえ |
05962 |
未入力 正徹 (xxx)
河上の雪そ一村くたりくるこや山人の宇治の柴舟
かはかみの−ゆきそひとむら−くたりくる−こややまひとの−うちのしはふね |
05963 |
未入力 正徹 (xxx)
これも又雪のしるしの棹山や柞の梢ふりかくすらん
これもまた−ゆきのしるしの−さほやまや−ははそのこすゑ−ふりかくすらむ |
05964 |
未入力 正徹 (xxx)
風さゆる雪の芝原跡もなし天きる空の末もひとつに
かせさゆる−ゆきのしははら−あともなし−あまきるそらの−すゑもひとつに |
05965 |
未入力 正徹 (xxx)
くもりきてつもるか松に浪そこす尾上にかかる雪のうら風
くもりきて−つもるかまつに−なみそこす−をのへにかかる−ゆきのうらかせ |
05966 |
未入力 正徹 (xxx)
みこし路やしるしの竹のふしふしを夜ことにかくすさほの雪かな
みこしちや−しるしのたけの−ふしふしを−よことにかくす−さほのゆきかな |
05967 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲の空吹く風にうこかぬや岩ねこりしく嶺の白雪
うきくもの−そらふくかせに−うこかぬや−いはねこりしく−みねのしらゆき |
05968 |
未入力 正徹 (xxx)
とひこかし里はあれぬと誰かみん庭の籬も雪にかくれて
とひこかし−さとはあれぬと−たれかみむ−にはのまかきも−ゆきにかくれて |
05969 |
未入力 正徹 (xxx)
待つ人のすめる都にふらぬ日を憑みやせまし雪の山里
まつひとの−すめるみやこに−ふらぬひを−たのみやせまし−ゆきのやまさと |
05970 |
未入力 正徹 (xxx)
とはさらん程は雪にも跡付けしさらは軒はやこしのしら山
とはさらむ−ほとはゆきにも−あとつけし−さらはのきはや−こしのしらやま |
05971 |
未入力 正徹 (xxx)
つららゐる庭のなかれは音もせて風のみかくる雪のしからみ
つららゐる−にはのなかれは−おともせて−かせのみかくる−ゆきのしからみ |
05972 |
未入力 正徹 (xxx)
積りあへすみたるる雪に吹きくもり時雨にかへる嶺の松かせ
つもりあへす−みたるるゆきに−ふきくもり−しくれにかへる−みねのまつかせ |
05973 |
未入力 正徹 (xxx)
見てもにす雪をめくらす面影に風のすかたをまなふことのは
みてもにす−ゆきをめくらす−おもかけに−かせのすかたを−まなふことのは |
05974 |
未入力 正徹 (xxx)
行く雲に雪をめくらす姿をは見れともまよふわかのうらかせ
ゆくくもに−ゆきをめくらす−すかたをは−みれともまよふ−わかのうらかせ |
05975 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくは影しく雪に春やみん夜わたる月の雲の村きえ
つれなくは−かけしくゆきに−はるやみむ−よわたるつきの−くものむらきえ |
05976 |
未入力 正徹 (xxx)
天の原ふふきにとまる宿もなく夜わたりはつる雪の月かけ
あまのはら−ふふきにとまる−やともなく−よわたりはつる−ゆきのつきかけ |
05977 |
未入力 正徹 (xxx)
猶さえて友まつ雪のふりはふや雪まの月の光なるらん
なほさえて−ともまつゆきの−ふりはふや−ゆきまのつきの−ひかりなるらむ |
05978 |
未入力 正徹 (xxx)
庭しろき玉をのへたる光かなこほれる雪をみかく月夜に
にはしろき−たまをのへたる−ひかりかな−こほれるゆきを−みかくつきよに |
05979 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕の煙を見てもしらさりし雪にかくれぬ遠つ山里
あさゆふの−けふりをみても−しらさりし−ゆきにかくれぬ−とほつやまさと |
05980 |
未入力 正徹 (xxx)
山松の梢の雪の下折をたなひきかくす嶺の白雪
やままつの−こすゑのゆきの−したをれを−たなひきかくす−みねのしらゆき |
05981 |
未入力 正徹 (xxx)
下折の雪さへふかき太山木の枝もたわわにかかる白雲
したをれの−ゆきさへふかき−みやまきの−えたもたわわに−かかるしらくも |
05982 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとのかやか乱や秋のはのちりし林の枝のしら雪
やまもとの−かやかみたれや−あきのはの−ちりしはやしの−えたのしらゆき |
05983 |
未入力 正徹 (xxx)
空にまた有明の月の朝くもり光をつきて雪やちるらん
そらにまた−ありあけのつきの−あさくもり−ひかりをつきて−ゆきやちるらむ |
05984 |
未入力 正徹 (xxx)
なるみのや雪の上浪ふきこほりさそひそたてぬ今朝の塩かせ
なるみのや−ゆきのうはなみ−ふきこほり−さそひそたてぬ−けさのしほかせ |
05985 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日かけ雲にうつろふ紅の雪の野山そしはし色なる
あさひかけ−くもにうつろふ−くれなゐの−ゆきののやまそ−しはしいろなる |
05986 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちつつく朝けの煙吹きませて千里の雪にくもる山風
たちつつく−あさけのけふり−ふきませて−ちさとのゆきに−くもるやまかせ |
05987 |
未入力 正徹 (xxx)
あなし山嵐も雪を巻向のゆふたたみする朝けをそみる
あなしやま−あらしもゆきを−まきもくの−ゆふたたみする−あさけをそみる |
05988 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の都の四方の高ねこす雲はたつみの雪の白浪
あさあけの−みやこのよもの−たかねこす−くもはたつみの−ゆきのしらなみ |
05989 |
未入力 正徹 (xxx)
いく村にくもり分けてかふふくらん千里の山の雪の朝風
いくむらに−くもりわけてか−ふふくらむ−ちさとのやまの−ゆきのあさかせ |
05990 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の色にこかね花開く山と見ついつる日影のかかる草木を
ゆきのいろに−こかねはなさく−やまとみつ−いつるひかけの−かかるくさきを |
05991 |
未入力 正徹 (xxx)
松原のこなたの浪の朝なきに遠島めくる雪の白雲
まつはらの−こなたのなみの−あさなきに−とほしまめくる−ゆきのしらくも |
05992 |
未入力 正徹 (xxx)
かくてこそ峰もふもとも寺寺のいらかにつもる雪の朝明
かくてこそ−みねもふもとも−てらてらの−いらかにつもる−ゆきのあさあけ |
05993 |
未入力 正徹 (xxx)
いく里もおなしなかめのうちま山朝かせさむし雪の川なみ
いくさとも−おなしなかめの−うちまやま−あさかせさむし−ゆきのかはなみ |
05994 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにかちりもかくれん雪くるる山はかかみの四の面に
いつくにか−ちりもかくれむ−ゆきくるる−やまはかかみの−よつのおもてに |
05995 |
未入力 正徹 (xxx)
降りくたる高ねの雲の跡はれて朝日にならふ松の白雪
ふりくたる−たかねのくもの−あとはれて−あさひにならふ−まつのしらゆき |
05996 |
未入力 正徹 (xxx)
大和歌の道に心の駒とめてさののわたりの雪をしそ思ふ
やまとうたの−みちにこころの−こまとめて−さののわたりの−ゆきをしそおもふ |
05997 |
未入力 正徹 (xxx)
かき分けて思ひやるさへえそたへぬ雪のみ山の鳥の一声
かきわけて−おもひやるさへ−えそたへぬ−ゆきのみやまの−とりのひとこゑ |
05998 |
未入力 正徹 (xxx)
今もちる雪のの原の朝ほらけしちをならへてたてるを車
いまもちる−ゆきののはらの−あさほらけ−しちをならへて−たてるをくるま |
05999 |
未入力 正徹 (xxx)
くる人のむかふふふきに物いはて雪ふむ音のさゆる道のへ
くるひとの−むかふふふきに−ものいはて−ゆきふむおとの−さゆるみちのへ |
06000 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆく人の今朝あとつくる雪のこゑ枕にさゆる道のへのやと
ゆくひとの−けさあとつくる−ゆきのこゑ−まくらにさゆる−みちのへのやと |
06001 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめやる雪そまちかき降りそめし日数はるけき都路の空
なかめやる−ゆきそまちかき−ふりそめし−ひかすはるけき−みやこちのそら |
06002 |
未入力 正徹 (xxx)
空さむみふらぬ日もなき雪つもりちりゐぬ山も雲かかるまて
そらさむみ−ふらぬひもなき−ゆきつもり−ちりゐぬやまも−くもかかるまて |
06003 |
未入力 正徹 (xxx)
行人の暁雪をふむ音も枕にさゆる道のへのやと
ゆくひとの−あかつきゆきを−ふむおとも−まくらにさゆる−みちのへのやと |
06004 |
未入力 正徹 (xxx)
音たえす嵐やわたるあるる日の雲まの嶺の雪の梯
おとたえす−あらしやわたる−あるるひの−くもまのみねの−ゆきのかけはし |
06005 |
未入力 正徹 (xxx)
はま松の根さへ梢にあらはれて浪こす雲の雪の風折
はままつの−ねさへこすゑに−あらはれて−なみこすくもの−ゆきのかさをれ |
06006 |
未入力 正徹 (xxx)
こ屋うつむ雪の八重ふきなには江に春日さしこはあれまくもをし
こやうつむ−ゆきのやへふき−なにはえに−はるひさしこは−あれまくもをし |
06007 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風雪に梢をあらふなりおよはぬ浪の遠き浜まつ
おきつかせ−ゆきにこすゑを−あらふなり−およはぬなみの−とほきはままつ |
06008 |
未入力 正徹 (xxx)
雪にこそ煙をそへねはま松の枝さしおほふあまの塩屋は
ゆきにこそ−けふりをそへね−はままつの−えたさしおほふ−あまのしほやは |
06009 |
未入力 正徹 (xxx)
芦の屋は雪の下にて島つたふなたの波風あれくらすなり
あしのやは−ゆきのしたにて−しまつたふ−なたのなみかせ−あれくらすなり |
06010 |
未入力 正徹 (xxx)
から人は此日本につもるをやはなれこ島の雪と見るらん
からひとは−このひのもとに−つもるをや−はなれこしまの−ゆきとみるらむ |
06011 |
未入力 正徹 (xxx)
心ある家ゐを見はや雪つもる浪まの松かうら島のあま
こころある−いへゐをみはや−ゆきつもる−なみまのまつか−うらしまのあま |
06012 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きおろす高ねの雪やうつむらん嵐にたゆる富士の四方川
ふきおろす−たかねのゆきや−うつむらむ−あらしにたゆる−ふしのよもかは |
06013 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりとつる川との雪におりかねて汲みたえけりな賎か朝水
ふりとつる−かはとのゆきに−おりかねて−くみたえけりな−しつかあさみつ |
06014 |
未入力 正徹 (xxx)
白たへに浪も立ちきてふる雪のつもるもにほのうら風そ吹く
しろたへに−なみもたちきて−ふるゆきの−つもるもにほの−うらかせそふく |
06015 |
未入力 正徹 (xxx)
降るままにうかふみなわや氷るらん雪をさかまく山川のなみ
ふるままに−うかふみなわや−こほるらむ−ゆきをさかまく−やまかはのなみ |
06016 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲のひま行くこまは山こえて雪に跡なき塩つすか原
うきくもの−ひまゆくこまは−やまこえて−ゆきにあとなき−しほつすかはら |
06017 |
未入力 正徹 (xxx)
水くくる古江のよりもふり敷きてつもれる雪そ淡とたたよふ
みつくくる−ふるえのよりも−ふりしきて−つもれるゆきそ−あわとたたよふ |
06018 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの嵐の雪の下もみち浪によりくるあけのそほ舟
やまもとの−あらしのゆきの−したもみち−なみによりくる−あけのそほふね |
06019 |
未入力 正徹 (xxx)
あるる日の湊入りくる友舟はかす限なき雪のとまふき
あるるひの−みなといりくる−ともふねは−かすかきりなき−ゆきのとまふき |
06020 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりかかる雪の白かみ舟のうちに山を尋ねしから人やこれ
ふりかかる−ゆきのしろかみ−ふねのうちに−やまをたつねし−からひとやこれ |
06021 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日さすまほに鏡をかけ出てぬ松浦の興の雪の友舟
あさひさす−まほにかかみを−かけいてぬ−まつらのおきの−ゆきのともふね |
06022 |
未入力 正徹 (xxx)
鷺のゐる舟かと見れは釣人の蓑しろたへにつもる白雪
さきのゐる−ふねかとみれは−つりひとの−みのしろたへに−つもるしらゆき |
06023 |
未入力 正徹 (xxx)
うつもるるま柴やたゆる雪折の木をきりもちて出つる山人
うつもるる−ましはやたゆる−ゆきをれの−きをきりもちて−いつるやまひと |
06024 |
未入力 正徹 (xxx)
あかねさす袖ふりはへてつくしにもむらさきの行く雪のたひ人
あかねさす−そてふりはへて−つくしにも−むらさきのゆく−ゆきのたひひと |
06025 |
未入力 正徹 (xxx)
ささの屋のすすの垣ほの野への風あれまかくして雪埋むなり
ささのやの−すすのかきほの−のへのかせ−あれまかくして−ゆきうつむなり |
06026 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ明の末のの雪につく墨はたか夕暮の袖はらふらん
あさあけの−すゑののゆきに−つくすみは−たかゆふくれの−そてはらふらむ |
06027 |
未入力 正徹 (xxx)
うつめとも淀野の雪に道そある暁ありしを車のあと
うつめとも−よとののゆきに−みちそある−あかつきありし−をくるまのあと |
06028 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるまもしかまに染むるかち野にはあらぬ色そふ雪の高島
くるるまも−しかまにそむる−かちのには−あらぬいろそふ−ゆきのたかしま |
06029 |
未入力 正徹 (xxx)
里人の夢のおもかけしたふとも雪に跡みしまののかや原
さとひとの−ゆめのおもかけ−したふとも−ゆきにあとみし−まののかやはら |
06030 |
未入力 正徹 (xxx)
雪つもる都の冬をしめしたにおなし明石の岡の松かけ
ゆきつもる−みやこのふゆを−しめしたに−おなしあかしの−をかのまつかけ |
06031 |
未入力 正徹 (xxx)
わたらしよくちめたえてし橋板をふりつつ雪もふかき山川
わたらしよ−くちめたえてし−はしいたを−ふりつつゆきも−ふかきやまかは |
06032 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかへと雪の花さく市柴に春をうるまの冬のさと人
たれかへと−ゆきのはなさく−いちしはに−はるをうるまの−ふゆのさとひと |
06033 |
未入力 正徹 (xxx)
一村の雪そ落ちつる末野行くをち方人や袖はらひてん
ひとむらの−ゆきそおちつる−すゑのゆく−をちかたひとや−そてはらひてむ |
06034 |
未入力 正徹 (xxx)
さやに見しをち方人そかきくもる野風やはらふ袖の白雪
さやにみし−をちかたひとそ−かきくもる−のかせやはらふ−そてのしらゆき |
06035 |
未入力 正徹 (xxx)
のへわたる笠もま袖もふりはへて遠かた人の雪そちかつく
のへわたる−かさもまそても−ふりはへて−をちかたひとの−ゆきそちかつく |
06036 |
未入力 正徹 (xxx)
駒の足とまるこしちのみ雪にもひまゆくかけそ猶はやくなる
こまのあし−とまるこしちの−みゆきにも−ひまゆくかけそ−なほはやくなる |
06037 |
未入力 正徹 (xxx)
熊野川山の苔路はうつもれて雪にさをさすせせの杉ふね
くまのかは−やまのこけちは−うつもれて−ゆきにさをさす−せせのすきふね |
06038 |
未入力 正徹 (xxx)
苔をふみおとろをふみて跡もなき雪に山路のあたりをそ行く
こけをふみ−おとろをふみて−あともなき−ゆきにやまちの−あたりをそゆく |
06039 |
未入力 正徹 (xxx)
法のためもつや薪にふる雪もおもき笠置のおくの山人
のりのため−もつやたききに−ふるゆきも−おもきかさきの−おくのやまひと |
06040 |
未入力 正徹 (xxx)
をはつせやいはほのうへの沓のあとかくれぬ程に嶺のうす雪
をはつせや−いはほのうへの−くつのあと−かくれぬほとに−みねのうすゆき |
06041 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるままになほ夜や寒き住吉の行合の霜の上の白雪
ふるままに−なほよやさむき−すみよしの−ゆきあひのしもの−うへのしらゆき |
06042 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉や二の年の行くとてと行合の松そかたへ雪なる
すみよしや−ふたつのとしの−ゆくとてと−ゆきあひのまつそ−かたへゆきなる |
06043 |
未入力 正徹 (xxx)
松かねの枕たのまん雪ならす夕こえかかる山のした折
まつかねの−まくらたのまむ−ゆきならす−ゆふこえかかる−やまのしたをれ |
06044 |
未入力 正徹 (xxx)
松のはの夕暮いそく色もなし雪にはれたる遠かたの山
まつのはの−ゆふくれいそく−いろもなし−ゆきにはれたる−をちかたのやま |
06045 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れて行くふもとの松の一ふふき高ねもしらぬ雪に晴れぬる
くれてゆく−ふもとのまつの−ひとふふき−たかねもしらぬ−ゆきにはれぬる |
06046 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひいつる都の夕雪ふかし山さと人はこんといふとも
おもひいつる−みやこのゆふへ−ゆきふかし−やまさとひとは−こむといふとも |
06047 |
未入力 正徹 (xxx)
いそき行く夕そ雪に立ちかへるつもれる色の関となるらん
いそきゆく−ゆふへそゆきに−たちかへる−つもれるいろの−せきとなるらむ |
06048 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりくらしのこるみるめも絶えはてぬ千いろの雪の底の山松
ふりくらし−のこるみるめも−たえはてぬ−ちいろのゆきの−そこのやままつ |
06049 |
未入力 正徹 (xxx)
誰わけん苗木もうゑぬ庭の面の夕暮うつむ雪高くして
たれわけむ−なへきもうゑぬ−にはのおもの−ゆふくれうつむ−ゆきたかくして |
06050 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そふるねに行くからす夕暮の色をけたれぬ雪の山もと
なほそふる−ねにゆくからす−ゆふくれの−いろをけたれぬ−ゆきのやまもと |
06051 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつる槙の戸口にふる雪の夕暮はらふ袖の色かな
たのめつる−まきのとくちに−ふるゆきの−ゆふくれはらふ−そてのいろかな |
06052 |
未入力 正徹 (xxx)
ふり敷きて雪にあやふき呉竹のたちなほる世の夕ともかな
ふりしきて−ゆきにあやふき−くれたけの−たちなほるよの−ゆふへともかな |
06053 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜風はたた一足にしつまりてをち方きけは雪折の声
さよかせは−たたひとあしに−しつまりて−をちかたきけは−ゆきをれのこゑ |
06054 |
未入力 正徹 (xxx)
ふす鳥もおとろく人も声声に雪の夜しるき木木の下折
ふすとりも−おとろくひとも−こゑこゑに−ゆきのよしるき−ききのしたをれ |
06055 |
未入力 正徹 (xxx)
わたのへや大江の松は雪なから月すむろうの岸による舟
わたのへや−おほえのまつは−ゆきなから−つきすむろうの−きしによるふね |
06056 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふとち夜の月毛の駒なへて行かはやすまの山の白雪
おもふとち−よるのつきけの−こまなへて−ゆかはやすまの−やまのしらゆき |
06057 |
未入力 正徹 (xxx)
わたのへや朝気の川にうかふなり大江の松の雪の一村
わたのへや−あさけのかはに−うかふなり−おほえのまつの−ゆきのひとむら |
06058 |
未入力 正徹 (xxx)
河風はあたたかならす渡辺や岸に大江の松のしら雪
かはかせは−あたたかならす−わたのへや−きしにおほえの−まつのしらゆき |
06059 |
未入力 正徹 (xxx)
すまのうらや山路も雪の水馬屋こきととまらぬすす舟の声
すまのうらや−やまちもゆきの−みつうまや−こきととまらぬ−すすふねのこゑ |
06060 |
未入力 正徹 (xxx)
野への鳥関もる人もおとろかす雪に鈴なきすまのうら舟
のへのとり−せきもるひとも−おとろかす−ゆきにすすなき−すまのうらふね |
06061 |
未入力 正徹 (xxx)
うちさやきふるや霰の玉ささも葉分に冬はかるる色かな
うちさやき−ふるやあられの−たまささも−はわけにふゆは−かるるいろかな |
06062 |
未入力 正徹 (xxx)
いくたひか音は霰の玉たすき思ふにちかふ雪けなるらん
いくたひか−おとはあられの−たまたすき−おもふにちかふ−ゆきけなるらむ |
06063 |
未入力 正徹 (xxx)
玉ささの葉分の霜にくたけても消えぬを冬とちる霰かな
たまささの−はわけのしもに−くたけても−きえぬをふゆと−ちるあられかな |
06064 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹のよにふる程はうしとたにしらて霰や身をくたくらん
くれたけの−よにふるほとは−うしとたに−しらてあられや−みをくたくらむ |
06065 |
未入力 正徹 (xxx)
あられちる朽葉か上の面かけやみぬさ手向けし杜のかしは木
あられちる−くちはかうへの−おもかけや−みぬさたむけし−もりのかしはき |
06066 |
未入力 正徹 (xxx)
吹上やなひくま砂の玉霰ふるもふらすもくもる塩かせ
ふきあけや−なひくまさこの−たまあられ−ふるもふらすも−くもるしほかせ |
06067 |
未入力 正徹 (xxx)
霰ともみる人からや思ふらん三代にみかきし玉かしくらん
あられとも−みるひとからや−おもふらむ−みよにみかきし−たまかしくらむ |
06068 |
未入力 正徹 (xxx)
玉とみし蛍のなれる霰とや朽ちたる草のもとにきゆらん
たまとみし−ほたるのなれる−あられとや−くちたるくさの−もとにきゆらむ |
06069 |
未入力 正徹 (xxx)
神やしるふりくる霰松原に塩のみちひの玉のむかしを
かみやしる−ふりくるあられ−まつはらに−しほのみちひの−たまのむかしを |
06070 |
未入力 正徹 (xxx)
糸竹のしらへならねと月みかく玉こゑこゑにふるあられかな
いとたけの−しらへならねと−つきみかく−たまこゑこゑに−ふるあられかな |
06071 |
未入力 正徹 (xxx)
つつりあへぬ雲の行ての高ねより霰を玉にまく嵐かな
つつりあへぬ−くものゆくての−たかねより−あられをたまに−まくあらしかな |
06072 |
未入力 正徹 (xxx)
ひろひとる実はおちはてて椎のはに霰こはれて寒き山風
ひろひとる−みはおちはてて−しひのはに−あられこはれて−さむきやまかせ |
06073 |
未入力 正徹 (xxx)
山風に霰の玉のををよわみみたれてかかるをちのうき雲
やまかせに−あられのたまの−ををよわみ−みたれてかかる−をちのうきくも |
06074 |
未入力 正徹 (xxx)
窓に入るあかつき月に玉あられ竹のはたれの霜を打つこゑ
まとにいる−あかつきつきに−たまあられ−たけのはたれの−しもをうつこゑ |
06075 |
未入力 正徹 (xxx)
おとたかくしをる嵐は竹のはにたまりて落つる玉あられかな
おとたかく−しをるあらしは−たけのはに−たまりておつる−たまあられかな |
06076 |
未入力 正徹 (xxx)
末たわにこほれる雪やおもからん霰にをるる窓のくれ竹
すゑたわに−こほれるゆきや−おもからむ−あられにをるる−まとのくれたけ |
06077 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もみむいさ白玉を竹のはに露の種まくあられなりとも
あきもみむ−いさしらたまを−たけのはに−つゆのたねまく−あられなりとも |
06078 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹の葉たれの霜をうつたへに花に玉ちるあられをそ聞く
くれたけの−はたれのしもを−うつたへに−はなにたまちる−あられをそきく |
06079 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかきよの竹のはさやき降過きし窓の霰をとふ嵐かな
ふかきよの−たけのはさやき−ふりすきし−まとのあられを−とふあらしかな |
06080 |
未入力 正徹 (xxx)
玉みかく霰にみたせかしけたるささ葉分けきて月そあらそふ
たまみかく−あられにみたせ−かしけたる−ささはわけきて−つきそあらそふ |
06081 |
未入力 正徹 (xxx)
み山路やささの広ほをうつ霰声よわりゆく谷の村竹
みやまちや−ささのひろほを−うつあられ−こゑよわりゆく−たにのむらたけ |
06082 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる霰ひろへは消ゆる恨さへのこるまくすか原の玉ささ
ふるあられ−ひろへはきゆる−うらみさへ−のこるまくすか−はらのたまささ |
06083 |
未入力 正徹 (xxx)
玉章のたよりかかけし篠のはにあられ吹きませ風そうらむる
たまつさの−たよりかかけし−ささのはに−あられふきませ−かせそうらむる |
06084 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふかぬ太山のささのひろ葉にもたまらぬ物とちる霰かな
かせふかぬ−みやまのささの−ひろはにも−たまらぬものと−ちるあられかな |
06085 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さやきあられ玉ちる山風に柴の実落ちて音そあらそふ
しもさやき−あられたまちる−やまかせに−しはのみおちて−おとそあらそふ |
06086 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの椎のかり柴かれ飯ののこると見るはあられなりけり
やまかつの−しひのかりしは−かれいひの−のこるとみるは−あられなりけり |
06087 |
未入力 正徹 (xxx)
みかりはにふるや霰の玉きはる鳥柴かくれを払ふ木枯
みかりはに−ふるやあられの−たまきはる−としはかくれを−はらふこからし |
06088 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねのおやのいさめになら柴をうつや霰の玉かけりつつ
うたたねの−おやのいさめに−ならしはを−うつやあられの−たまかけりつつ |
06089 |
未入力 正徹 (xxx)
山颪ふもとのならのは柏に霰をはこふ音のはけしさ
やまおろし−ふもとのならの−はかしはに−あられをはこふ−おとのはけしさ |
06090 |
未入力 正徹 (xxx)
音たかく枯はなからにまたちらぬならの葉かしは霰うつなり
おとたかく−かれはなからに−またちらぬ−ならのはかしは−あられうつなり |
06091 |
未入力 正徹 (xxx)
柏木に冬は葉もりの神わさもしけくやぬさと霰ちるらん
かしはきに−ふゆははもりの−かみわさも−しけくやぬさと−あられちるらむ |
06092 |
未入力 正徹 (xxx)
風そよき山もとめくる夕暮をなかめかしはにあられふりきぬ
かせそよき−やまもとめくる−ゆふくれを−なかめかしはに−あられふりきぬ |
06093 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりのこる葉をたにもれと棺木の霰や神にぬさ手向くらん
ちりのこる−はをたにもれと−かしはきの−あられやかみに−ぬさたむくらむ |
06094 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらぬはのおとろくはかり朝かしはぬるや河へにふるあられかな
ちらぬはの−おとろくはかり−あさかしは−ぬるやかはへに−ふるあられかな |
06095 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人のみのの中山くもりきて野上のかたにあられふるなり
たひひとの−みののなかやま−くもりきて−のかみのかたに−あられふるなり |
06096 |
未入力 正徹 (xxx)
野をひろみ日影を分けてささの葉に霰むらむらこほれてそ行く
のをひろみ−ひかけをわけて−ささのはに−あられむらむら−こほれてそゆく |
06097 |
未入力 正徹 (xxx)
散りつもる原のかれのの朝かしはなほ木のもとに霰をそきく
ちりつもる−はらのかれのの−あさかしは−なほこのもとに−あられをそきく |
06098 |
未入力 正徹 (xxx)
白露の玉まきもちし葛かつら霰をよそにかるる野へかな
しらつゆの−たままきもちし−くすかつら−あられをよそに−かるるのへかな |
06099 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか行くあられよこきるしの原やしののをふふく野への旅人
いかかゆく−あられよこきる−しのはらや−しののをふふく−のへのたひひと |
06100 |
未入力 正徹 (xxx)
朝あけの野へのかれ芝色消えて霜に霰をしくあらしかな
あさあけの−のへのかれしは−いろきえて−しもにあられを−しくあらしかな |
06101 |
未入力 正徹 (xxx)
かるる野のよもきか杣に宮木をもきらぬとふさのちる霰かな
かるるのの−よもきかそまに−みやきをも−きらぬとふさの−ちるあられかな |
06102 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ沢や氷の上にふるあられなかれぬ水につもる雪かな
あささはや−こほりのうへに−ふるあられ−なかれぬみつに−つもるゆきかな |
06103 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はにも閨にももらしひまかくす雪より後の今朝の霰は
のきはにも−ねやにももらし−ひまかくす−ゆきよりのちの−けさのあられは |
06104 |
未入力 正徹 (xxx)
軒の草枕の苔に乱れきていたたく霜にふるあられかな
のきのくさ−まくらのこけに−みたれきて−いたたくしもに−ふるあられかな |
06105 |
未入力 正徹 (xxx)
乱れつるしのふはかれて軒はなる松の葉分に散るあられかな
みたれつる−しのふはかれて−のきはなる−まつのはわけに−ちるあられかな |
06106 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから霰時雨れて神な月ふりにし宿をしたふ空かな
よもすから−あられしくれて−かみなつき−ふりにしやとを−したふそらかな |
06107 |
未入力 正徹 (xxx)
いくたひそあられの玉をまきの屋のふるき軒うつ木枯のこゑ
いくたひそ−あられのたまを−まきのやの−ふるきのきうつ−こからしのこゑ |
06108 |
未入力 正徹 (xxx)
たえたえに時雨はもりし閨の上の木の葉へたてて聞く霰かな
たえたえに−しくれはもりし−ねやのうへの−このはへたてて−きくあられかな |
06109 |
未入力 正徹 (xxx)
枕ふく板まの風に覚めやらてつれなき夢をうつ霰かな
まくらふく−いたまのかせに−さめやらて−つれなきゆめを−うつあられかな |
06110 |
未入力 正徹 (xxx)
ねぬる夜そ霰もしはし槙の屋にかた枝さしおほふ松に降りおけ
ねぬるよそ−あられもしはし−まきのやに−かたえさしおほふ−まつにふりおけ |
06111 |
未入力 正徹 (xxx)
その原や夜はのふせ屋にふる霰あくれは露と消ゆるはは木木
そのはらや−よはのふせやに−ふるあられ−あくれはつゆと−きゆるははきき |
06112 |
未入力 正徹 (xxx)
閨にもるあられの玉や庵ふかきかやか乱を音にたつらん
ねやにもる−あられのたまや−いほふかき−かやかみたれを−おとにたつらむ |
06113 |
未入力 正徹 (xxx)
霰ふるおとにおとろくね覚かな木の葉や草のやとうつむらん
あられふる−おとにおとろく−ねさめかな−このはやくさの−やとうつむらむ |
06114 |
未入力 正徹 (xxx)
ねやの上にかたへちりしく玉柏うつや霰の音もねられす
ねやのうへに−かたへちりしく−たまかしは−うつやあられの−おともねられす |
06115 |
未入力 正徹 (xxx)
冬こもる庭のささふき九重のあられはしりを太山にそ聞く
ふゆこもる−にはのささふき−ここのへの−あられはしりを−みやまにそきく |
06116 |
未入力 正徹 (xxx)
あり明の庭の木の葉に玉霰ひとつふたつそ落ちてさひしき
ありあけの−にはのこのはに−たまあられ−ひとつふたつそ−おちてさひしき |
06117 |
未入力 正徹 (xxx)
空はれてさゆる嵐に玉そちる夕の星のくたるとやみん
そらはれて−さゆるあらしに−たまそちる−ゆふへのほしの−くたるとやみむ |
06118 |
未入力 正徹 (xxx)
いかなりし夕の雪のさえ分けて雪ともみたれ霰ともちる
いかなりし−ゆふへのゆきの−さえわけて−ゆきともみたれ−あられともちる |
06119 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかき夜のたかぬる玉もみかかれて心くもらし霰ふるこゑ
ふかきよの−たかぬるたまも−みかかれて−こころくもらし−あられふるこゑ |
06120 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの窓うつかしもとのかつらきも霰やさます山人の夢
よはのまと−うつかしもとの−かつらきも−あられやさます−やまひとのゆめ |
06121 |
未入力 正徹 (xxx)
明くる夜のあられもぬさや手向けけん夢路旅たち見えし枕に
あくるよの−あられもぬさや−たむけけむ−ゆめちたひたち−みえしまくらに |
06122 |
未入力 正徹 (xxx)
たえてけりあさてこふすまみしかくて氷をわたる夢のかよひち
たえてけり−あさてこふすま−みしかくて−こほりをわたる−ゆめのかよひち |
06123 |
未入力 正徹 (xxx)
すま人や浪のよるよる床さえし海の衾は身にかかれとも
すまひとや−なみのよるよる−とこさえし−うみのふすまは−みにかかれとも |
06124 |
未入力 正徹 (xxx)
白たへのあさてこ衾みしかきに閨もりあかす長き夜の霜
しろたへの−あさてこふすま−みしかきに−ねやもりあかす−なかきよのしも |
06125 |
未入力 正徹 (xxx)
磯まくらあまのぬれ衣風さえて浪に衾をかくるうみかな
いそまくら−あまのぬれきぬ−かせさえて−なみにふすまを−かくるうみかな |
06126 |
未入力 正徹 (xxx)
霜の上に猶そさえ行く板まあらみ月もる閨のまたらこ衾
しものうへに−なほそさえゆく−いたまあらみ−つきもるねやの−またらこふすま |
06127 |
未入力 正徹 (xxx)
をりかへしうたふ榊はかみさひて庭火も白し雪のあけほの
をりかへし−うたふさかきは−かみさひて−にはひもしろし−ゆきのあけほの |
06128 |
未入力 正徹 (xxx)
声声にみたれうたふにしるかりき是やしつ屋のこすけなるらん
こゑこゑに−みたれうたふに−しるかりき−これやしつやの−こすけなるらむ |
06129 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑはまたしつ屋のこすけ長き夜の霜おく庭の色そ明行く
こゑはまた−しつやのこすけ−なかきよの−しもおくにはの−いろそあけゆく |
06130 |
未入力 正徹 (xxx)
折りかへしうたふさかきの声のうちにさゆる霜よの袖そ明行く
をりかへし−うたふさかきの−こゑのうちに−さゆるしもよの−そてそあけゆく |
06131 |
未入力 正徹 (xxx)
うたふてふしつ屋のこ菅糸にしてあつまをいつかしらへ初めけん
うたふてふ−しつやのこすけ−いとにして−あつまをいつか−しらへそめけむ |
06132 |
未入力 正徹 (xxx)
うたふてふ弓をならへてそのかみは引きし東のしらへとそきく
うたふてふ−ゆみをならへて−そのかみは−ひきしあつまの−しらへとそきく |
06133 |
未入力 正徹 (xxx)
うけひけは神もねぬ夜のこも枕たかせのよとの声そ明けゆく
うけひけは−かみもねぬよの−こもまくら−たかせのよとの−こゑそあけゆく |
06134 |
未入力 正徹 (xxx)
をりかへす袖にも霜やこほるらんささのこゑする夜はの松かせ
をりかへす−そてにもしもや−こほるらむ−ささのこゑする−よはのまつかせ |
06135 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからをた巻ならてくり返し磯屋のこ菅うたふ声かな
よもすから−をたまきならて−くりかへし−いそやのこすけ−うたふこゑかな |
06136 |
未入力 正徹 (xxx)
うたふなり賎屋のこすけすかかくも東の声のさゆる夜の霜
うたふなり−しつやのこすけ−すかかくも−あつまのこゑの−さゆるよのしも |
06137 |
未入力 正徹 (xxx)
こも枕たかせの淀に影こほる月の御舟や雲路わくらん
こもまくら−たかせのよとに−かけこほる−つきのみふねや−くもちわくらむ |
06138 |
未入力 正徹 (xxx)
さ乙女のおりたつならぬしめのうちに冬のようたふ湊田の声
さをとめの−おりたつならぬ−しめのうちに−ふゆのようたふ−みなとたのこゑ |
06139 |
未入力 正徹 (xxx)
声に今たつる榊の上つえにかけし鏡そむかふ月かけ
こゑにいま−たつるさかきの−うはつえに−かけしかかみそ−むかふつきかけ |
06140 |
未入力 正徹 (xxx)
雲ゐまて庭火も白し月のうちの宮人さへや袖かへすらん
くもゐまて−にはひもしろし−つきのうちの−みやひとさへや−そてかへすらむ |
06141 |
未入力 正徹 (xxx)
からかみに大和ことのはさえのほる霜夜の庭に御火白くたけ
からかみに−やまとことのは−さえのほる−しもよのにはに−みひしろくたけ |
06142 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙の袖にそとくる山のはの日影の糸の長き夜の霜
しろたへの−そてにそとくる−やまのはの−ひかけのいとの−なかきよのしも |
06143 |
未入力 正徹 (xxx)
ひくことそ大和にもきくから荻をかたにとりかけ袖かへすなり
ひくことそ−やまとにもきく−からをきを−かたにとりかけ−そてかへすなり |
06144 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の鳥の鳴くまて聞ゆなり雪の太山のささうたふこゑ
あかつきの−とりのなくまて−きこゆなり−ゆきのみやまの−ささうたふこゑ |
06145 |
未入力 正徹 (xxx)
鶴もねし松にも霜を敷浪に嵐ふくよのむしろ田のこゑ
つるもねし−まつにもしもを−しきなみに−あらしふくよの−むしろたのこゑ |
06146 |
未入力 正徹 (xxx)
かつこほるよるへの水を結ふてのあか星うたふこゑもさむけし
かつこほる−よるへのみつを−むすふての−あかほしうたふ−こゑもさむけし |
06147 |
未入力 正徹 (xxx)
河竹やうたふひさこの一ふしも神代くみしる水のみなかみ
かはたけや−うたふひさこの−ひとふしも−かみよくみしる−みつのみなかみ |
06148 |
未入力 正徹 (xxx)
乱れうたふこゑさへ高し雲の上におはぬしつ屋のこ菅なからに
みたれうたふ−こゑさへたかし−くものうへに−おはぬしつやの−こすけなからに |
06149 |
未入力 正徹 (xxx)
きねかふる鈴の下風霜さやき焼く火ともしき杜の明ほの
きねかふる−すすのしたかせ−しもさやき−たくひともしき−もりのあけほの |
06150 |
未入力 正徹 (xxx)
杜のかけ宮も神楽もかたはかりあるかなきかの里のさひしさ
もりのかけ−みやもかくらも−かたはかり−あるかなきかの−さとのさひしさ |
06151 |
未入力 正徹 (xxx)
駅路や杜の社の里かくら過きゆくすすにあらぬこゑかな
うまやちや−もりのやしろの−さとかくら−すきゆくすすに−あらぬこゑかな |
06152 |
未入力 正徹 (xxx)
やとれ月賎屋のこ菅うちみたれうたふ霜よの明くる袂に
やとれつき−しつやのこすけ−うちみたれ−うたふしもよの−あくるたもとに |
06153 |
未入力 正徹 (xxx)
をみ衣庭火をちかみささ竹の夜ふかき霜も朝倉の声
をみころも−にはひをちかみ−ささたけの−よふかきしもも−あさくらのこゑ |
06154 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上の霜夜の月の有明に猶あけ星の影そさむけき
そてのうへの−しもよのつきの−ありあけに−なほあけほしの−かけそさむけき |
06155 |
未入力 正徹 (xxx)
こも枕たかせのよとの戸すなり川たれ時を神やうくらん
こもまくら−たかせのよとの−こゑすなり−かはたれときを−かみやうくらむ |
06156 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちいつるをみのま袖の霜の上になひく日影の糸竹の声
たちいつる−をみのまそての−しものうへに−なひくひかけの−いとたけのこゑ |
06157 |
未入力 正徹 (xxx)
白たへにをみもおほえす袖さえぬとよのあかりの暁の霜
しろたへに−をみもおほえす−そてさえぬ−とよのあかりの−あかつきのしも |
06158 |
未入力 正徹 (xxx)
ありなしの外に心のみなもとをみよの仏の名をも忘れて
ありなしの−ほかにこころの−みなもとを−みよのほとけの−なをもわすれて |
06159 |
未入力 正徹 (xxx)
となへこし三世の仏のいつれにか生れあひにし我か身ならまし
となへこし−みよのほとけの−いつれにか−うまれあひにし−わかみならまし |
06160 |
未入力 正徹 (xxx)
しらすわれ三世の仏のいつれにか御名をとなへて生れあはまし
しらすわれ−みよのほとけの−いつれにか−みなをとなへて−うまれあはまし |
06161 |
未入力 正徹 (xxx)
年くるる法の袖にやつつむらんかつくるわたのあつきめくみを
としくるる−のりのそてにや−つつむらむ−かつくるわたの−あつきめくみを |
06162 |
未入力 正徹 (xxx)
となふてふ三世の仏の道はあれとくる春もなくさる年もなし
となふてふ−みよのほとけの−みちはあれと−くるはるもなく−さるとしもなし |
06163 |
未入力 正徹 (xxx)
契りきや三世の仏の母そ原その木のもとの春にあへとは
ちきりきや−みよのほとけの−ははそはら−そのこのもとの−はるにあへとは |
06164 |
未入力 正徹 (xxx)
となへおく三世の仏のその中にわか名やあらんしる人もなし
となへおく−みよのほとけの−そのうちに−わかなやあらむ−しるひともなし |
06165 |
未入力 正徹 (xxx)
一念に三千仏をとなふれはわか身ひとつの名にこそ有りけれ
いちねむに−さむせむふつを−となふれは−わかみひとつの−なにこそありけれ |
06166 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふかき煙のうちの塩かまも霞にちかのうら風そふく
としふかき−けふりのうちの−しほかまも−かすみにちかの−うらかせそふく |
06167 |
未入力 正徹 (xxx)
世にふるき年のをたえの橋柱又たつ春にめくりあへとや
よにふるき−としのをたえの−はしはしら−またたつはるに−めくりあへとや |
06168 |
未入力 正徹 (xxx)
門の外に立ちいててみれはみな人そ春くる道にあよみちかつく
かとのほかに−たちいててみれは−みなひとそ−はるくるみちに−あよみちかつく |
06169 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の夜のあくるを待ちてくる春に門の柳もまゆねかくらん
ふゆのよの−あくるをまちて−くるはるに−かとのやなきも−まゆねかくらむ |
06170 |
未入力 正徹 (xxx)
手向けともみよの仏を思ふらしとなふる軒の花のむめかえ
たむけとも−みよのほとけを−おもふらし−となふるのきの−はなのうめかえ |
06171 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる年に春の立枝は雪なからことわりしるき梅かかそする
ふるとしに−はるのたちえは−ゆきなから−ことわりしるき−うめかかそする |
06172 |
未入力 正徹 (xxx)
有明に年ははつせの梅かかも月影したふ窓の山かせ
ありあけに−としははつせの−うめかかも−つきかけしたふ−まとのやまかせ |
06173 |
未入力 正徹 (xxx)
世はいつそ鴬なきてむめかをる春のこなたに冬はなくして
よはいつそ−うくひすなきて−うめかをる−はるのこなたに−ふゆはなくして |
06174 |
未入力 正徹 (xxx)
新しき年はひらけぬ槙の戸のくるる日ことに匂ふ梅かえ
あたらしき−としはひらけぬ−まきのとの−くるるひことに−にほふうめかえ |
06175 |
未入力 正徹 (xxx)
かた枝さく梅を年木にさしそへて都のつとといつる山人
かたえさく−うめをとしきに−さしそへて−みやこのつとと−いつるやまひと |
06176 |
未入力 正徹 (xxx)
またれすよ梅の匂はさそふともなにうくひすの春ならぬこゑ
またれすよ−うめのにほひは−さそふとも−なにうくひすの−はるならぬこゑ |
06177 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雪の木のまの月の笠にぬふ梅ならなくの冬の一花
ふるゆきの−このまのつきの−かさにぬふ−うめならなくの−ふゆのひとはな |
06178 |
未入力 正徹 (xxx)
年のうちの春やうれしき梅かえの今朝はほほゑむ花のかほはせ
としのうちの−はるやうれしき−うめかえの−けさはほほゑむ−はなのかほはせ |
06179 |
未入力 正徹 (xxx)
天の下一花さくに春ならは冬ののこりや去年の梅かえ
あめのした−ひとはなさくに−はるならは−ふゆののこりや−こそのうめかえ |
06180 |
未入力 正徹 (xxx)
ことしこそ庭ともなして住む庵にあへす花さく冬の梅かえ
ことしこそ−にはともなして−すむいほに−あへすはなさく−ふゆのうめかえ |
06181 |
未入力 正徹 (xxx)
開く梅も春まつ枝にこもりかね冬の軒はにうくひすそなく
さくうめも−はるまつえたに−こもりかね−ふゆののきはに−うくひすそなく |
06182 |
未入力 正徹 (xxx)
難波かた芦屋の軒にこの花の冬こもりせす匂ふうらかせ
なにはかた−あしやののきに−このはなの−ふゆこもりせす−にほふうらかせ |
06183 |
未入力 正徹 (xxx)
梅かかを末はの風に待ちとらて恨みてかれし軒のくすかな
うめかかを−すゑはのかせに−まちとらて−うらみてかれし−のきのくすかな |
06184 |
未入力 正徹 (xxx)
さく菊のこの花の後花なしといふへくもあらぬ梅の匂を
さくきくの−このはなののちは−ななしとい−ふへくもあらぬ−うめのにほひを |
06185 |
未入力 正徹 (xxx)
すすみせし松の下風そのままに草を冬のの夏のおもかけ
すすみせし−まつのしたかせ−そのままに−くさをふゆのの−なつのおもかけ |
06186 |
未入力 正徹 (xxx)
ふか草や野となる里の冬かれもおなし人めの雪の下庵
ふかくさや−のとなるさとの−ふゆかれも−おなしひとめの−ゆきのしたいほ |
06187 |
未入力 正徹 (xxx)
それなから暮行く年を松の戸の雪にそにほふともし火の花
それなから−くれゆくとしを−まつのとの−ゆきにそにほふ−ともしひのはな |
06188 |
未入力 正徹 (xxx)
今日そみるとよの御祓も久堅の天つ日嗣のたえぬためしを
けふそみる−とよのみそきも−ひさかたの−あまつひつきの−たえぬためしを |
06189 |
未入力 正徹 (xxx)
空に又有明の月の朝くもり光をつきて雪や散るらん
そらにまた−ありあけのつきの−あさくもり−ひかりをつきて−ゆきやちるらむ |
06190 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の上の影にしられて天の原ふりさけみぬも月そこほれる
ゆきのうへの−かけにしられて−あまのはら−ふりさけみぬも−つきそこほれる |
06191 |
未入力 正徹 (xxx)
つもるさへむら立つ竹か影見ゆる月に夜わたる雪の白雲
つもるさへ−むらたつたけか−かけみゆる−つきによわたる−ゆきのしらくも |
06192 |
未入力 正徹 (xxx)
さゆる夜の影なき月のうすくもりふりさけみれは落つる白雪
さゆるよの−かけなきつきの−うすくもり−ふりさけみれは−おつるしらゆき |
06193 |
未入力 正徹 (xxx)
冬もまたからぬ稲はやを山田にむら雲のこるよそめなるらん
ふゆもまた−からぬいなはや−をやまたに−むらくものこる−よそめなるらむ |
06194 |
未入力 正徹 (xxx)
岩まより出場と見るや朝川のこほれる水のけふりなるらん
いはまより−いてゆとみるや−あさかはの−こほれるみつの−けふりなるらむ |
06195 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をかさね手枕さゆる冬の夢おとろきつくせ春にあふへく
よをかさね−たまくらさゆる−ふゆのゆめ−おとろきつくせ−はるにあふへく |
06196 |
未入力 正徹 (xxx)
かつさます梅のにほひもふる年の夢の残も春や待つらん
かつさます−うめのにほひも−ふるとしの−ゆめののこりも−はるやまつらむ |
06197 |
未入力 正徹 (xxx)
なれし世の昔の年の暮もにすなすことかはる人にまかせて
なれしよの−むかしのとしの−くれもにす−なすことかはる−ひとにまかせて |
06198 |
未入力 正徹 (xxx)
老らくの春をむかふるいとなみはなきをしるしの年の暮かな
おいらくの−はるをむかふる−いとなみは−なきをしるしの−としのくれかな |
06199 |
未入力 正徹 (xxx)
うつほ木を立出ててあさるあら熊もみ山の雪に身やかくすらん
うつほきを−たちいててあさる−あらくまも−みやまのゆきに−みやかくすらむ |
06200 |
未入力 正徹 (xxx)
ききなれぬ鐘の声にそ都より遠き霜よの嵐をもしる
ききなれぬ−かねのこゑにそ−みやこより−とほきしもよの−あらしをもしる |
06201 |
未入力 正徹 (xxx)
置く霜をいかに契りて鐘のこゑうつまぬ雪に遠さかるらん
おくしもを−いかにちきりて−かねのこゑ−うつまぬゆきに−とほさかるらむ |
06202 |
未入力 正徹 (xxx)
うつもるる閨の衾に声うすし霜夜ならすや暁のかね
うつもるる−ねやのふすまに−こゑうすし−しもよならすや−あかつきのかね |
06203 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりき緑の空にあふきても遠きを冬といへる心を
しらさりき−みとりのそらに−あふきても−とほきをふゆと−いへるこころを |
06204 |
未入力 正徹 (xxx)
尾上なる松に入日のかかるより夕霜いそく野への冬かれ
をのへなる−まつにいりひの−かかるより−ゆふしもいそく−のへのふゆかれ |
06205 |
未入力 正徹 (xxx)
山高みひま行く駒もつまつかすこえてあゆみをいそく冬かな
やまたかみ−ひまゆくこまも−つまつかす−こえてあゆみを−いそくふゆかな |
06206 |
未入力 正徹 (xxx)
あさつくひむかひの岡のもと柏しつくもさやく霜のささ原
あさつくひ−むかひのをかの−もとかしは−しつくもさやく−しものささはら |
06207 |
未入力 正徹 (xxx)
朝川やうへとく水の下氷うすきや年の中へたつらん
あさかはや−うへとくみつの−したこほり−うすきやとしの−なかへたつらむ |
06208 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原朝風立ちて初霜の結ふにのこる露そこほれる
くさのはら−あさかせたちて−はつしもの−むすふにのこる−つゆそこほれる |
06209 |
未入力 正徹 (xxx)
里わきていかかふるらん朝あけの時雨にみこす山の白雪
さとわきて−いかかふるらむ−あさあけの−しくれにみこす−やまのしらゆき |
06210 |
未入力 正徹 (xxx)
夕時雨ふるやゆつきか下露も氷りておつる冬の山かせ
ゆふしくれ−ふるやゆつきか−したつゆも−こほりておつる−ふゆのやまかせ |
06211 |
未入力 正徹 (xxx)
ね屋の上は日比の雪にうつもれて今朝は音なき村時雨かな
ねやのうへは−ひころのゆきに−うつもれて−けさはおとなき−むらしくれかな |
06212 |
未入力 正徹 (xxx)
子日して磯辺の小松ひかすとも春まつあまやわかめからまし
ねのひして−いそへのこまつ−ひかすとも−はるまつあまや−わかめからまし |
06213 |
未入力 正徹 (xxx)
いとまなみ冬や形見を作るらん磯なつむへき里のあま人
いとまなみ−ふゆやかたみを−つくるらむ−いそなつむへき−さとのあまひと |
06214 |
未入力 正徹 (xxx)
うちいつる千尋の海のみるふさも冬かれしらぬ浪のうへかな
うちいつる−ちひろのうみの−みるふさも−ふゆかれしらぬ−なみのうへかな |
06215 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は世をうみわたり行く舟もなたの芦屋にあるる塩かせ
ゆふくれは−よをうみわたり−ゆくふねも−なたのあしやに−あるるしほかせ |
06216 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海やむかひの山の雪のかけうかへは遠き雪のま砂ち
にほのうみや−むかひのやまの−ゆきのかけ−うかへはとほき−ゆきのまさこち |
06217 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちはてし木の葉もちると雪つもる此比山やなりのほるらん
くちはてし−このはもちると−ゆきつもる−このころやまや−なりのほるらむ |
06218 |
未入力 正徹 (xxx)
のこる木は一葉もなくて冬かれぬ松たにあれと思ふ山かな
のこるきは−ひとはもなくて−ふゆかれぬ−まつたにあれと−おもふやまかな |
06219 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺の松谷のを川にしくれても冬こそなけれ残る木からし
みねのまつ−たにのをかはに−しくれても−ふゆこそなけれ−のこるこからし |
06220 |
未入力 正徹 (xxx)
霜雪もふる山のへにのこる木の過きにし友に又やあひみん
しもゆきも−ふるやまのへに−のこるきの−すきにしともに−またやあひみむ |
06221 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりはてし枝に紅葉を猶見せて山の木の実や色残るらん
ちりはてし−えたにもみちを−なほみせて−やまのこのみや−いろのこるらむ |
06222 |
未入力 正徹 (xxx)
篠分けて入る山人や年さむき松も葉たれの霜あさの袖
ささわけて−いるやまひとや−としさむき−まつもはたれの−しもあさのそて |
06223 |
未入力 正徹 (xxx)
さひしさやたくひもあらはなからまし庭のすすきの雪の一本
さひしさや−たくひもあらは−なからまし−にはのすすきの−ゆきのひともと |
06224 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹の夜のまの霜の朝戸出に葉分の風の身に寒くして
くれたけの−よのまのしもの−あさとてに−はわけのかせの−みにさむくして |
06225 |
未入力 正徹 (xxx)
を山田やかりしいなくき朽ちなから雪をならふる水のうへかな
をやまたや−かりしいなくき−くちなから−ゆきをならふる−みつのうへかな |
06226 |
未入力 正徹 (xxx)
おなしくは清滝川にね覚してきかはや夜はの水鳥のこゑ
おなしくは−きよたきかはに−ねさめして−きかはやよはの−みつとりのこゑ |
06227 |
未入力 正徹 (xxx)
こもり江につれこし鳥の一つかひなきよの水の上そかなしき
こもりえに−つれこしとりの−ひとつかひ−なきよのみつの−うへそかなしき |
06228 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねん冬の霜夜の空さえて嵐にわたる村鳥のこゑ
いかかねむ−ふゆのしもよの−そらさえて−あらしにわたる−むらとりのこゑ |
06229 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれの山のはこゆるあちむらに声も野分の木の葉をそみる
ふゆかれの−やまのはこゆる−あちむらに−こゑものわきの−このはをそみる |
06230 |
未入力 正徹 (xxx)
秋過きし野田の芝生の霜原にむら鳥さわくいねやこくらん
あきすきし−のたのしはふの−しもはらに−むらとりさわく−いねやこくらむ |
06231 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さむき垣ねつたひにうつるなり山路のしとと行くにまかせて
しもさむき−かきねつたひに−うつるなり−やまちのしとと−ゆくにまかせて |
06232 |
未入力 正徹 (xxx)
たかてらす日影をちかみ鳴くつるの霜の上毛や露みたるらん
たかてらす−ひかけをちかみ−なくつるの−しものうはけや−つゆみたるらむ |
06233 |
未入力 正徹 (xxx)
三冬つき春の花開きいてはとや虫もくち木の枝にこもれる
みふゆつき−はるのはなさき−いてはとや−むしもくちきの−えたにこもれる |
06234 |
未入力 正徹 (xxx)
さむからし雪野にしるき熊の子の此世にやすく生れくる身は
さむからし−ゆきのにしるき−くまのこの−このよにやすく−うまれくるみは |
06235 |
未入力 正徹 (xxx)
霜さゆる御牧の草の冬かれにこまのふる毛も色そあせゆく
しもさゆる−みまきのくさの−ふゆかれに−こまのふるけも−いろそあせゆく |
06236 |
未入力 正徹 (xxx)
冬こもるふすゐのかるも此比や雪かきませてねん方もなき
ふゆこもる−ふすゐのかるも−このころや−ゆきかきませて−ねむかたもなき |
06237 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ほらけてかひの犬の跡見えてこゑこゑさむき庭の初雪
あさほらけ−てかひのいぬの−あとみえて−こゑこゑさむき−にはのはつゆき |
06238 |
未入力 正徹 (xxx)
冬こもりすむうつほ木も下折れて雪野にしるきくまそ出行く
ふゆこもり−すむうつほきも−したをれて−ゆきのにしるき−くまそいてゆく |
06239 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふかくきけはいさみし村犬の跡をあまたの庭のしら雪
さよふかく−きけはいさみし−むらいぬの−あとをあまたの−にはのしらゆき |
06240 |
未入力 正徹 (xxx)
夜やさむき衣やとたにとふ人はさもかたき世に行合の霜
よやさむき−ころもやとたに−とふひとは−さもかたきよに−ゆきあひのしも |
06241 |
未入力 正徹 (xxx)
宮人の衣にすれるささ竹は雪にやさやくをみのうらかせ
みやひとの−ころもにすれる−ささたけは−ゆきにやさやく−をみのうらかせ |
06242 |
未入力 正徹 (xxx)
さよ衣うらさひしくや残るらん暁おきのさむきむしろに
さよころも−うらさひしくや−のこるらむ−あかつきおきの−さむきむしろに |
06243 |
未入力 正徹 (xxx)
年をへていたくそ霜にすみ染の衣の色そふかくなりぬる
としをへて−いたくそしもに−すみそめの−ころものいろそ−ふかくなりぬる |
06244 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の夜そきまくもほしき山里のかすみの衣おりもいたさて
ふゆのよそ−きまくもほしき−やまさとの−かすみのころも−おりもいたさて |
06245 |
未入力 正徹 (xxx)
くろ髪もさやけかりきやたく櫛のほかけにみえし夜はの乙女こ
くろかみも−さやけかりきや−たくくしの−ほかけにみえし−よはのをとめこ |
06246 |
未入力 正徹 (xxx)
長き夜をせんかたなみの床中にをりあはれなるをし碑の声
なかきよを−せむかたなみの−とこなかに−をりあはれなる−をしかものこゑ |
06247 |
未入力 正徹 (xxx)
さ莚のちりさへ今朝ははらはれすふかき涙の床のこほりに
さむしろの−ちりさへけさは−はらはれす−ふかきなみたの−とこのこほりに |
06248 |
未入力 正徹 (xxx)
おきいてて人なき床の月影にさゆる莚をまくあらしかな
おきいてて−ひとなきとこの−つきかけに−さゆるむしろを−まくあらしかな |
06249 |
未入力 正徹 (xxx)
松にはふま葛のかれは吹きはらひうらみなき世にかへる風かな
まつにはふ−まくすのかれは−ふきはらひ−うらみなきよに−かへるかせかな |
06250 |
未入力 正徹 (xxx)
かけをたにさそひつくして木の葉なき枝吹きしをる風のはけしさ
かけをたに−さそひつくして−このはなき−えたふきしをる−かせのはけしさ |
06251 |
未入力 正徹 (xxx)
荻原やかれは散りしく霜の上にそよきし風そむすほほれ行く
をきはらや−かれはちりしく−しものうへに−そよきしかせそ−むすほほれゆく |
06252 |
未入力 正徹 (xxx)
身にさむき風は昔の冬の夢さめぬる床に結ふはつ霜
みにさむき−かせはむかしの−ふゆのゆめ−さめぬるとこに−むすふはつしも |
06253 |
未入力 正徹 (xxx)
霜消えてうき出てし土の夕こりに嵐そかわく山の下みち
しもきえて−うきいてしつちの−ゆふこりに−あらしそかわく−やまのしたみち |
06254 |
未入力 正徹 (xxx)
明けて見ん嵐にあるる冬のおくふりかくすかの夜はの白雪
あけてみむ−あらしにあるる−ふゆのおく−ふりかくすかの−よはのしらゆき |
06255 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろかす鐘もつつみも音絶えて又ふかくなる冬のよの空
おとろかす−かねもつつみも−おとたえて−またふかくなる−ふゆのよのそら |
06256 |
未入力 正徹 (xxx)
埋火に枕かたふけ戸もあけす雪のうへなる月はおもへと
うつみひに−まくらかたふけ−ともあけす−ゆきのうへなる−つきはおもへと |
06257 |
未入力 正徹 (xxx)
明しかねうちぬる袖の霜氷夜夜の夢路はむすひ絶えつつ
あかしかね−うちぬるそての−しもこほり−よよのゆめちは−むすひたえつつ |
06258 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の夜をたれつくりてか明けやらてなからにかくる夢のうき檎
ふゆのよを−たれつくりてか−あけやらて−なからにかくる−ゆめのうきはし |
06259 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬとは鐘をもきかす置く霜の八度なけとも鳥の空ねに
あけぬとは−かねをもきかす−おくしもの−やたひなけとも−とりのそらねに |
06260 |
未入力 正徹 (xxx)
氷りゐる岩まに今夜ととまりて水も旅ねの宿やさむけき
こほりゐる−いはまにこよひ−ととまりて−みつもたひねの−やとやさむけき |
06261 |
未入力 正徹 (xxx)
あけぬ夜の入る山のはに消えそゆく月の氷は冬そともなく
あけぬよの−いるやまのはに−きえそゆく−つきのこほりは−ふゆそともなく |
06262 |
未入力 正徹 (xxx)
さえいつる太山の月の有明にくもらぬ雪のちる嵐かな
さえいつる−みやまのつきの−ありあけに−くもらぬゆきの−ちるあらしかな |
06263 |
未入力 正徹 (xxx)
さえいてし月は夜ことにうとくなりてつれなくのこる有明の山
さえいてし−つきはよことに−うとくなりて−つれなくのこる−ありあけのやま |
06264 |
未入力 正徹 (xxx)
霜ふかき樒も水もこほるらし暁おきの峰の山寺
しもふかき−しきみもみつも−こほるらし−あかつきおきの−みねのやまてら |
06265 |
未入力 正徹 (xxx)
風さえて暁霜のみちくるに雲の浪なき冬の空かな
かせさえて−あかつきしもの−みちくるに−くものなみなき−ふゆのそらかな |
06266 |
未入力 正徹 (xxx)
鵲のわたすはたえし横雲にふりける雪のみねの梯
かささきの−わたすはたえし−よこくもに−ふりけるゆきの−みねのかけはし |
06267 |
未入力 正徹 (xxx)
明行くやかひかねならぬ雪の上によこほりふすと見ゆる山かな
あけゆくや−かひかねならぬ−ゆきのうへに−よこほりふすと−みゆるやまかな |
06268 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺こゆる冬はいつくを別れてかいまよこ雲に時雨れきぬらん
みねこゆる−ふゆはいつくを−わかれてか−いまよこくもに−しくれきぬらむ |
06269 |
未入力 正徹 (xxx)
老いにけるたれ手枕にみたるらんくろかみ山のあかつきの霜
おいにける−たれたまくらに−みたるらむ−くろかみやまの−あかつきのしも |
06270 |
未入力 正徹 (xxx)
よひのまは時雨れし庭の木枯にこほりてさゆる有明の霜
よひのまは−しくれしにはの−こからしに−こほりてさゆる−ありあけのしも |
06271 |
未入力 正徹 (xxx)
明かたの月そかかれる鵲のわたせる橋の霜のふりはに
あけかたの−つきそかかれる−かささきの−わたせるはしの−しものふりはに |
06272 |
未入力 正徹 (xxx)
かた敷の袖の氷も夜もすからむすほほれあふ夢の明ほの
かたしきの−そてのこほりも−よもすから−むすほほれあふ−ゆめのあけほの |
06273 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の夜はいくたひ覚めていく度か遠き夢路に立ちかへるらん
ふゆのよは−いくたひさめて−いくたひか−とほきゆめちに−たちかへるらむ |
06274 |
未入力 正徹 (xxx)
面かけのさむる枕にかすむかな夢のかよひち春ふかくして
おもかけの−さむるまくらに−かすむかな−ゆめのかよひち−はるふかくして |
06275 |
未入力 正徹 (xxx)
袖こほるうつつの夢の関守はとけてぬる夜のうつみ火のもと
そてこほる−うつつのゆめの−せきもりは−とけてぬるよの−うつみひのもと |
06276 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣あたたかならぬ冬の夢さむるとはいはしみておとろきぬ
さよころも−あたたかならぬ−ふゆのゆめ−さむるとはいはし−みておとろきぬ |
06277 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれぬ袖の氷にねをたえて枕にちかき夢の浮鳥
さそはれぬ−そてのこほりに−ねをたえて−まくらにちかき−ゆめのうきとり |
06278 |
未入力 正徹 (xxx)
つねよりもちかく聞くかなさゆる夜の霜こそかねのひひきなりけれ
つねよりも−ちかくきくかな−さゆるよの−しもこそかねの−ひひきなりけれ |
06279 |
未入力 正徹 (xxx)
灯はたまらぬ雪そふかく入るあれて戸たてぬ寺のあらしに
ともしひは−たまらぬゆきそ−ふかくいる−あれてとたてぬ−てらのあらしに |
06280 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれ軒はの雪の松風にけふる樒そ匂のこれる
ゆふまくれ−のきはのゆきの−まつかせに−けふるしきみそ−にほひのこれる |
06281 |
未入力 正徹 (xxx)
雪の上の緑のしきみかたよりに嵐もまよふかねのこゑかな
ゆきのうへの−みとりのしきみ−かたよりに−あらしもまよふ−かねのこゑかな |
06282 |
未入力 正徹 (xxx)
さえ行くやひとつの雲にふり分けて時雨につるる雪の山かせ
さえゆくや−ひとつのくもに−ふりわけて−しくれにつるる−ゆきのやまかせ |
06283 |
未入力 正徹 (xxx)
白たへにたなひく空の雪にみつつもらぬ雪の山のすかたを
しろたへに−たなひくそらの−ゆきにみつ−つもらぬゆきの−やまのすかたを |
06284 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふま暮かねてしるしも空さえて雪けにちかき雲のふるまひ
ゆふまくれ−かねてしるしも−そらさえて−ゆきけにちかき−くものふるまひ |
06285 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風あれ行く雲のみをつくし立ちもさためぬ雪の白なみ
あまつかせ−あれゆくくもの−みをつくし−たちもさためぬ−ゆきのしらなみ |
06286 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日影なひく木陰にくたりきぬかれのの上の嶺の山人
ゆふひかけ−なひくこかけに−くたりきぬ−かれののうへの−みねのやまひと |
06287 |
未入力 正徹 (xxx)
野かひなき毛さへかしけてくる牛のさし入るこやの雪の山里
のかひなき−けさへかしけて−くるうしの−さしいるこやの−ゆきのやまさと |
06288 |
未入力 正徹 (xxx)
山里は煙もたてぬ宿の戸をあけとほす冬のおくそさひしき
やまさとは−けふりもたてぬ−やとのとを−あけとほすふゆの−おくそさひしき |
06289 |
未入力 正徹 (xxx)
ととこほる山嵐なくて荒れぬとや木の葉うらむる嶺の松かき
ととこほる−やまあらしなくて−あれぬとや−このはうらむる−みねのまつかき |
06290 |
未入力 正徹 (xxx)
こきいつる時そともなき舟岡やいととあれゆく冬のおひかせ
こきいつる−ときそともなき−ふなをかや−いととあれゆく−ふゆのおひかせ |
06291 |
未入力 正徹 (xxx)
冬こもりうきたをやめか衣手に雪ふる里のあすか川かせ
ふゆこもり−うきたをやめか−ころもてに−ゆきふるさとの−あすかかはかせ |
06292 |
未入力 正徹 (xxx)
塩木つむ磯屋の庭におりかねて軒はの雪になく千鳥かな
しほきつむ−いそやのにはに−おりかねて−のきはのゆきに−なくちとりかな |
06293 |
未入力 正徹 (xxx)
霜をへて松に塩かせさやく日の海のおもてはささ舟もなし
しもをへて−まつにしほかせ−さやくひの−うみのおもては−ささふねもなし |
06294 |
未入力 正徹 (xxx)
しら波もかへる雲ゐのたつそ鳴くねくらやさむき霜のはま松
しらなみも−かへるくもゐの−たつそなく−ねくらやさむき−しものはままつ |
06295 |
未入力 正徹 (xxx)
氷しく沢への松かねにそなく雑のふりほもmやさむけき
こほりしく−さはへのまつか−ねにそなく−しものふりはも−つるやさむけき |
06296 |
未入力 正徹 (xxx)
月落ちてこほる入江の芦のはに鶴のつはさもさやくよの霜
つきおちて−こほるいりえの−あしのはに−つるのつはさも−さやくよのしも |
06297 |
未入力 正徹 (xxx)
寺古りて嵐ふく夜の霜なから木の葉の上もひひく鐘かな
てらふりて−あらしふくよの−しもなから−このはのうへも−ひひくかねかな |
06298 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の池のはすの朽はも雪に又にこりにしまぬ花や開くらん
ふゆのいけの−はすのくちはも−ゆきにまた−にこりにしまぬ−はなやさくらむ |
06299 |
未入力 正徹 (xxx)
一もとの松のみ嶺に霜ふりてみなかしけたる山のささはら
ひともとの−まつのみみねに−しもふりて−みなかしけたる−やまのささはら |
06300 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝はなけ妻へたて行く鳥の名の山もかかみをかくる雪かな
けさはなけ−つまへたてゆく−とりのなの−やまもかかみを−かくるゆきかな |
06301 |
未入力 正徹 (xxx)
東路の草を冬野にふみからせすすめむ駒の足もととろに
あつまちの−くさをふゆのに−ふみからせ−すすめむこまの−あしもととろに |
06302 |
未入力 正徹 (xxx)
常よりも都にいそく旅人をまつらん年の暮るる家家
つねよりも−みやこにいそく−たひひとを−まつらむとしの−くるるいへいへ |
06303 |
未入力 正徹 (xxx)
おとたかく朝川くたきわたるきぬ氷のまへの宿のまくらに
おとたかく−あさかはくたき−わたるきぬ−こほりのまへの−やとのまくらに |
06304 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちそよるしののかり屋のかたはかりのこる野中の雪はらふとて
たちそよる−しののかりやの−かたはかり−のこるのなかの−ゆきはらふとて |
06305 |
未入力 正徹 (xxx)
冬川を夕わたりする火焼屋にたか宿とはて先そ立入る
ふゆかはを−ゆふわたりする−ひたきやに−たかやととはて−まつそたちいる |
06306 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから宿にたく火にうれふなりあすの山路の雪はいかにと
よもすから−やとにたくひに−うれふなり−あすのやまちの−ゆきはいかにと |
06307 |
未入力 正徹 (xxx)
跡うつめ世は冬こもる年も猶老いてさまよふ雪の下道
あとうつめ−よはふゆこもる−としもなほ−おいてさまよふ−ゆきのしたみち |
06308 |
未入力 正徹 (xxx)
心ゆく道うつもれて思ふ事跡なき雪のやとの夕くれ
こころゆく−みちうつもれて−おもふこと−あとなきゆきの−やとのゆふくれ |
06309 |
未入力 正徹 (xxx)
またのこる日数はあれとつれなくてことしも過くる老のくれかな
またのこる−ひかすはあれと−つれなくて−ことしもすくる−おいのくれかな |
06310 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春を松きる山に開く梅の花のかをしきあさのさ衣
くるはるを−まつきるやまに−さくうめの−はなのかをしき−あさのさころも |
06311 |
未入力 正徹 (xxx)
葉のちりし杜の梢にやとる木の松のみとりそ冬はめに立つ
はのちりし−もりのこすゑに−やとるきの−まつのみとりそ−ふゆはめにたつ |
06312 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やなかるる水のもみちはをしからみかけてこほり初めつつ
やまかはや−なかるるみつの−もみちはを−しからみかけて−こほりそめつつ |
06313 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ川はやくのことを忍へはや氷によとむせせの白浪
はつせかは−はやくのことを−しのへはや−こほりによとむ−せせのしらなみ |
06314 |
未入力 正徹 (xxx)
滝の上の岩にかかりてちる浪のこほりてたえすふる霰かな
たきのうへの−いはにかかりて−ちるなみの−こほりてたえす−ふるあられかな |
06315 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身にも憑む洲あれや冬川の舟なかすへき氷ともなし
うきみにも−たのむすあれや−ふゆかはの−ふねなかすへき−こほりともなし |
06316 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへり山の市柴つむ年のくるるなけきもしらぬ民かな
ゆきかへり−やまのいちしは−つむとしの−くるるなけきも−しらぬたみかな |
06317 |
未入力 正徹 (xxx)
宿そなきこほれる霞も玉たれのこすの名におふのへの村萩
やとそなき−こほれるつゆも−たまたれの−こすのなにおふ−のへのむらはき |
06318 |
未入力 正徹 (xxx)
明くるまてねぬ夜の雲の閨の戸を月もおき出てて出つるとそみる
あくるまて−ねぬよのくもの−ねやのとを−つきもおきいてて−いつるとそみる |
06319 |
未入力 正徹 (xxx)
冬のこし暁やみのうつつより雪をさたかにかへるとしかな
ふゆのこし−あかつきやみの−うつつより−ゆきをさたかに−かへるとしかな |
06320 |
未入力 正徹 (xxx)
袖さむし道行ふりの辻社ほたきの後の杜の木からし
そてさむし−みちゆきふりの−つしやしろ−ほたきののちの−もりのこからし |
06321 |
未入力 正徹 (xxx)
神な月いはふも久ししなか鳥ゐの日の夜はの時しかはらて
かみなつき−いはふもひさし−しなかとり−ゐのひのよはの−ときしかはらて |
06322 |
未入力 正徹 (xxx)
鷲の山たききつくれは火も消えていく年冬の雪埋むらん
わしのやま−たききつくれは−ひもきえて−いくとせふゆの−ゆきうつむらむ |
06323 |
未入力 正徹 (xxx)
法の道いそかれさりし月日へてかさなる年の暮そかなしき
のりのみち−いそかれさりし−つきひへて−かさなるとしの−くれそかなしき |
06324 |
未入力 正徹 (xxx)
過きやすき月日の数も身にとまる老となしてや年の行くらん
すきやすき−つきひのかすも−みにとまる−おいとなしてや−としのゆくらむ |
06325 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかり憎む所にととまらて心のままにすくるとしかな
かくはかり−にくむところに−ととまらて−こころのままに−すくるとしかな |
06326 |
未入力 正徹 (xxx)
わか心さのみしたはしをしみてもかくこそ去年の年も行きしか
わかこころ−さのみしたはし−をしみても−かくこそこその−としもゆきしか |
06327 |
未入力 正徹 (xxx)
みな人のしたふ心にととまらてめつらしからすくるる年かな
みなひとの−したふこころに−ととまらて−めつらしからす−くるるとしかな |
06328 |
未入力 正徹 (xxx)
積りきて雪の下折なき山も松きる年のおくそあれ行く
つもりきて−ゆきのしたをれ−なきやまも−まつきるとしの−おくそあれゆく |
06329 |
未入力 正徹 (xxx)
四の時おくると誰か思ひけん春立ちし日のくるる年かな
よつのとき−おくるとたれか−おもひけむ−はるたちしひの−くるるとしかな |
06330 |
未入力 正徹 (xxx)
行きめくる月日程なくいや年のはしになるまてくるる年かな
ゆきめくる−つきひほとなく−いやとしの−はしになるまて−くるるとしかな |
06331 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れて行く年木こるをのおのつからのこすこ松や子日待つらん
くれてゆく−としきこるをの−おのつから−のこすこまつや−ねのひまつらむ |
06332 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ川すみえぬ水のうたかたにしつみて年を又やおくらん
はつせかは−すみえぬみつの−うたかたに−しつみてとしを−またやおくらむ |
06333 |
未入力 正徹 (xxx)
玉くしけ老のなみのみたたみ置きて衣はうすき年の暮かな
たまくしけ−おいのなみのみ−たたみおきて−ころもはうすき−としのくれかな |
06334 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春のいとなみ茂き人の世をのとかにみるも暮るる年かな
くるはるの−いとなみしけき−ひとのよを−のとかにみるも−くるるとしかな |
06335 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬の梅の花もてぬふ笠のいとなみ茂き年のくれかな
うくひすの−うめのはなもて−ぬふかさの−いとなみしけき−としのくれかな |
06336 |
未入力 正徹 (xxx)
家家にはらひつくすをあやにくに空はすすけて落つる雪かな
いへいへに−はらひつくすを−あやにくに−そらはすすけて−おつるゆきかな |
06337 |
未入力 正徹 (xxx)
ます鏡老いぬる年のくれはとりあやしきまてにおもかはり行く
ますかかみ−おいぬるとしの−くれはとり−あやしきまてに−おもかはりゆく |
06338 |
未入力 正徹 (xxx)
いててみよ都のうちも市町のほかにはさのみくれぬ年かな
いててみよ−みやこのうちも−いちまちの−ほかにはさのみ−くれぬとしかな |
06339 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂やはやくも年の行くとくとせきとめかたき山川の水
あふさかや−はやくもとしの−ゆくとくと−せきとめかたき−やまかはのみつ |
06340 |
未入力 正徹 (xxx)
夜の程に又わか年となりそせん人のためには老をかさねて
よのほとに−またわかとしと−なりそせむ−ひとのためには−おいをかさねて |
06341 |
未入力 正徹 (xxx)
年の暮松を林と見るはかり都の市にたてる商人
としのくれ−まつをはやしと−みるはかり−みやこのいちに−たてるあきひと |
06342 |
未入力 正徹 (xxx)
たをやめも身やふりぬらん飛鳥風川なみ早く過くる年かな
たをやめも−みやふりぬらむ−あすかかせ−かはなみはやく−すくるとしかな |
06343 |
未入力 正徹 (xxx)
暮ことに年も年こそつもるらめよそけに人の上に越行く
くれことに−としもとしこそ−つもるらめ−よそけにひとの−うへにこえゆく |
06344 |
未入力 正徹 (xxx)
七十の春をむかふる年暮れぬあらむ物とは思ひやはせし
ななそちの−はるをむかふる−としくれぬ−あらむものとは−おもひやはせし |
06345 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみ又老をかなしみ行く年ををしむといふもめつらしけなし
さのみまた−おいをかなしみ−ゆくとしを−をしむといふも−めつらしけなし |
06346 |
未入力 正徹 (xxx)
たつ民の市にすすむるあち酒の三冬つきぬる年の暮かな
たつたみの−いちにすすむる−あちさけの−みふゆつきぬる−としのくれかな |
06347 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるをも惜むへき程の年ならすいそけ逢ひみん春の初花
くるるをも−をしむへきほとの−としならす−いそけあひみむ−はるのはつはな |
06348 |
未入力 正徹 (xxx)
ことわりの老はよのつねひるの子の足たたぬ年の暮そかなしき
ことわりの−おいはよのつね−ひるのこの−あしたたぬとしの−くれそかなしき |
06349 |
未入力 正徹 (xxx)
松風の声にも春やかよふらん年のをことの冬のしらへは
まつかせの−こゑにもはるや−かよふらむ−としのをことの−ふゆのしらへは |
06350 |
未入力 正徹 (xxx)
をしからすいとなますして一年の暮るるをしらぬ所ともかな
をしからす−いとなますして−ひととせの−くるるをしらぬ−ところともかな |
06351 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなしよ七十あまりのこされて今年も年に又やおくれん
つれなしよ−ななそちあまり−のこされて−ことしもとしに−またやおくれむ |
06352 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる年のねくらにいそく夕からすねての朝けや春を告くらん
ふるとしの−ねくらにいそく−ゆふからす−ねてのあさけや−はるをつくらむ |
06353 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸のあくるも空に声はせぬ春のとなりをたたく松かせ
あまのとの−あくるもそらに−こゑはせぬ−はるのとなりを−たたくまつかせ |
06354 |
未入力 正徹 (xxx)
したひつつ春を思はぬ日数とや立つことやすき年のゆくらん
したひつつ−はるをおもはぬ−ひかすとや−たつことやすき−としのゆくらむ |
06355 |
未入力 正徹 (xxx)
早川や行く年なみもをしの毛のぬれぬを老の袂ともかな
はやかはや−ゆくとしなみも−をしのけの−ぬれぬをおいの−たもとともかな |
06356 |
未入力 正徹 (xxx)
春を待つ心を分けてしたふとや暮れゆく年の猶いそくらん
はるをまつ−こころをわけて−したふとや−くれゆくとしの−なほいそくらむ |
06357 |
未入力 正徹 (xxx)
宮こをもひなの長路とみるはかり民ののほるも暮るる年かな
みやこをも−ひなのなかちと−みるはかり−たみののほるも−くるるとしかな |
06358 |
未入力 正徹 (xxx)
うらさりき老いたるしつかあはれにももちかへる年のくるる市かな
うらさりき−おいたるしつか−あはれにも−もちかへるとしの−くるるいちかな |
06359 |
未入力 正徹 (xxx)
あら玉の春待つ雪や暮れて行く年の光を猶のこすらん
あらたまの−はるまつゆきや−くれてゆく−としのひかりを−なほのこすらむ |
06360 |
未入力 正徹 (xxx)
心なくこれそ此世をふる雪のつもれる人に年はくれつつ
こころなく−これそこのよを−ふるゆきの−つもれるひとに−としはくれつつ |
06361 |
未入力 正徹 (xxx)
春かけて庭の年木や干しかねんこりつむままに埋む白雪
はるかけて−にはのとしきや−ほしかねむ−こりつむままに−うつむしらゆき |
06362 |
未入力 正徹 (xxx)
春ちかくなり行く年の雪よりも老のつもるそ今はけぬへき
はるちかく−なりゆくとしの−ゆきよりも−おいのつもるそ−いまはけぬへき |
06363 |
未入力 正徹 (xxx)
年すてに行くとくるとのかた糸は雪のあわをにむすほほれつつ
としすてに−ゆくとくるとの−かたいとは−ゆきのあわをに−むすほほれつつ |
06364 |
未入力 正徹 (xxx)
年のをとみるさへ暮れぬ天つ風空に吹きまく雪のめくるを
としのをと−みるさへくれぬ−あまつかせ−そらにふきまく−ゆきのめくるを |
06365 |
未入力 正徹 (xxx)
つもるまの雪のふる年先消えて氷にいそく春の川なみ
つもるまの−ゆきのふるとし−まつきえて−こほりにいそく−はるのかはなみ |
06366 |
未入力 正徹 (xxx)
春のこん跡たに見えし暮れて行く年の契もうす雪の庭
はるのこむ−あとたにみえし−くれてゆく−としのちきりも−うすゆきのには |
06367 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れてゆく年やうらむるやとの梅枝に入りたつ春のこころを
くれてゆく−としやうらむる−やとのうめ−かえにいりたつ−はるのこころを |
06368 |
未入力 正徹 (xxx)
鴬の梅の花笠ふる雪にかくれてちかき春やまつらん
うくひすの−うめのはなかさ−ふるゆきに−かくれてちかき−はるやまつらむ |
06369 |
未入力 正徹 (xxx)
年こゆる色やはかへん高砂の松もむかしの興つしらなみ
としこゆる−いろやはかへむ−たかさこの−まつもむかしの−おきつしらなみ |
06370 |
未入力 正徹 (xxx)
興つなみかけえぬいその松のはもつもる月日に越ゆる年かな
おきつなみ−かけえぬいその−まつのはも−つもるつきひに−こゆるとしかな |
06371 |
未入力 正徹 (xxx)
うす煙春の霞をたて初めてすみやく山もくるる年かな
うすけふり−はるのかすみを−たてそめて−すみやくやまも−くるるとしかな |
06372 |
未入力 正徹 (xxx)
霞にやあけなは春の光みむ年ものこらすうつみ火もなし
かすみにや−あけなははるの−ひかりみむ−としものこらす−うつみひもなし |
06373 |
未入力 正徹 (xxx)
山川や谷のなかれ木氷とめて暮行く年を送る浪かな
やまかはや−たにのなかれき−こほりとめて−くれゆくとしを−おくるなみかな |
06374 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかき山のおくとや憑むらんゆふへの雲にかへる年かな
みねたかき−やまのおくとや−たのむらむ−ゆふへのくもに−かへるとしかな |
06375 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに過くる月日を思ひねのよるの夢ちに年や行くらん
いたつらに−すくるつきひを−おもひねの−よるのゆめちに−としやゆくらむ |
06376 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから道行人の松の火に暮れける年の光をそみる
よもすから−みちゆくひとの−まつのひに−くれけるとしの−ひかりをそみる |
06377 |
未入力 正徹 (xxx)
あやふかりし世をうき橋に暮れはてて夢のわたりにかへる年なみ
あやふかりし−よをうきはしに−くれはてて−ゆめのわたりに−かへるとしなみ |
06378 |
未入力 正徹 (xxx)
すめる世ものとけき月の宮人や老せぬ年の暮に合ふらん
すめるよも−のとけきつきの−みやひとや−おいせぬとしの−くれにあふらむ |
06379 |
未入力 正徹 (xxx)
影みるも夜ことにうすし行く年の心ほそくや月もなるらん
かけみるも−よことにうすし−ゆくとしの−こころほそくや−つきもなるらむ |
06380 |
未入力 正徹 (xxx)
天の川月のこほりの関守はなしとや年もなかれ行くらん
あまのかは−つきのこほりの−せきもりは−なしとやとしも−なかれゆくらむ |
06381 |
未入力 正徹 (xxx)
梓弓いるとはなしに年の箭のなと一すちにはやき心そ
あつさゆみ−いるとはなしに−としのやの−なとひとすちに−はやきこころそ |
06382 |
未入力 正徹 (xxx)
をた巻やしつか手引のいとなみもこと茂き世に暮るる年かな
をたまきや−しつかてひきの−いとなみも−ことしけきよに−くるるとしかな |
06383 |
未入力 正徹 (xxx)
よのつねのねに行く鳥のはつかひも年のくるるを知るかとそみる
よのつねの−ねにゆくとりの−はつかひも−としのくるるを−しるかとそみる |
06384 |
未入力 正徹 (xxx)
浪ならぬ年も程なくこゆるきのいそかはしきは都なりけり
なみならぬ−としもほとなく−こゆるきの−いそかはしきは−みやこなりけり |
06385 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるをもいそく年かな老いぬとも春の詞の花やさくとて
くるるをも−いそくとしかな−おいぬとも−はるのことはの−はなやさくとて |
06386 |
未入力 正徹 (xxx)
いくつねて春そと人にとひし比まち遠なりし年そ恋しき
いくつねて−はるそとひとに−とひしころ−まちとほなりし−としそこひしき |
06387 |
未入力 正徹 (xxx)
宿ことの春のいとなみ数見えて又豊年のくるる比かな
やとことの−はるのいとなみ−かすみえて−またとよとしの−くるるころかな |
06388 |
未入力 正徹 (xxx)
消えぬ世にありのすさみはうかりきと雪ふる年も思ひたつらん
きえぬよに−ありのすさみは−うかりきと−ゆきふるとしも−おもひたつらむ |
06389 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくに暮るる日数をしたふかなわか年程のゆひを折りつつ
とにかくに−くるるひかすを−したふかな−わかとしほとの−ゆひををりつつ |
06390 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかなる月の有明にならぬ程くれね憑をかくる年かな
さやかなる−つきのありあけに−ならぬほと−くれねたのみを−かくるとしかな |
06391 |
未入力 正徹 (xxx)
後の世を思ふ心のおこたるもかねていそかぬ年にこそしれ
のちのよを−おもふこころの−おこたるも−かねていそかぬ−としにこそしれ |
06392 |
未入力 正徹 (xxx)
もとつえをいまたたをらぬゆつりはのみ山の雪にくるる年かな
もとつえを−いまたたをらぬ−ゆつりはの−みやまのゆきに−くるるとしかな |
06393 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくも行く年のをと玉のをとわか方なかき春日をやみん
つれなくも−ゆくとしのをと−たまのをと−わかかたなかき−はるひをやみむ |
06394 |
未入力 正徹 (xxx)
くる春をくれやすき日そいそき行く人のあよみもたたにやはみる
くるはるを−くれやすきひそ−いそきゆく−ひとのあよみも−たたにやはみる |
06395 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れゆくを身にとりとめてふりまさる老こそ年のかたみなりけれ
くれゆくを−みにとりとめて−ふりまさる−おいこそとしの−かたみなりけれ |
06396 |
未入力 正徹 (xxx)
若の浦も老その杜も引くしめやたたなはかけて暮るる年かな
わかのうらも−おいそのもりも−ひくしめや−たたなはかけて−くるるとしかな |
06397 |
未入力 正徹 (xxx)
深けにけり今夜はあかせ家家に春と冬とのあひやとりして
ふけにけり−こよひはあかせ−いへいへに−はるとふゆとの−あひやとりして |
06398 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさを思ひしるとて恨みすは人の心のなきになさまし
みのうさを−おもひしるとて−うらみすは−ひとのこころの−なきになさまし |
06399 |
未入力 正徹 (xxx)
なかめわひむなしき空にみつしほやからき恨の行へとふらん
なかめわひ−むなしきそらに−みつしほや−からきうらみの−ゆくへとふらむ |
06400 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣猶うらめしきうつつかなかへしてみぬを夢になせとも
さよころも−なほうらめしき−うつつかな−かへしてみぬを−ゆめになせとも |
06401 |
未入力 正徹 (xxx)
山たかみ隔ててし身を心なと霞のうちの花にそむらん
やまたかみ−へたててしみを−こころなと−かすみのうちの−はなにそむらむ |
06402 |
未入力 正徹 (xxx)
身にとまれひなの長路のすゑまては伝へきかれん恋のかせかは
みにとまれ−ひなのなかちの−すゑまては−つたへきかれむ−こひのかせかは |
06403 |
未入力 正徹 (xxx)
うら浪やうき身にかへり入しほのからくもいはぬむねにみちぬる
うらなみや−うきみにかへり−いりしほの−からくもいはぬ−むねにみちぬる |
06404 |
未入力 正徹 (xxx)
むねにたくもしほのけふり消えやらて身を浦風にかへる波かな
むねにたく−もしほのけふり−きえやらて−みをうらかせに−かへるなみかな |
06405 |
未入力 正徹 (xxx)
引きとめよしたふ別のうしろても見えす夜ふかき床の黒かみ
ひきとめよ−したふわかれの−うしろても−みえすよふかき−とこのくろかみ |
06406 |
未入力 正徹 (xxx)
さしこもるむくらの宿の思草はひあふ床はねんかたもなし
さしこもる−むくらのやとの−おもひくさ−はひあふとこは−ねむかたもなし |
06407 |
未入力 正徹 (xxx)
浅からぬ色にそ見ゆる紅の涙ふりいつる袖の初しほ
あさからぬ−いろにそみゆる−くれなゐの−なみたふりいつる−そてのはつしほ |
06408 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひつつあかしならはぬ初鳥のねにたてすともしる人もかな
おもひつつ−あかしならはぬ−はつとりの−ねにたてすとも−しるひともかな |
06409 |
未入力 正徹 (xxx)
わか心けにおもふともさためなき袖の時雨にぬれはしめつつ
わかこころ−けにおもふとも−さためなき−そてのしくれに−ぬれはしめつつ |
06410 |
未入力 正徹 (xxx)
初かりのなきても思ひつきせすはこえしよ秋の峰の朝霧
はつかりの−なきてもおもひ−つきせすは−こえしよあきの−みねのあさきり |
06411 |
未入力 正徹 (xxx)
露分けて思ひ入野の初尾花いつしかよそにぬるる袖かな
つゆわけて−おもひいるのの−はつをはな−いつしかよそに−ぬるるそてかな |
06412 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねの袂の露の新結枕まてとはおもひかけすよ
うたたねの−たもとのつゆの−にひむすひ−まくらまてとは−おもひかけすよ |
06413 |
未入力 正徹 (xxx)
またしらぬ心のおくの初を花みたれて露や袖にみゆらん
またしらぬ−こころのおくの−はつをはな−みたれてつゆや−そてにみゆらむ |
06414 |
未入力 正徹 (xxx)
入初むる思ひの煙たえせすは恋の山柴焼きやつくさむ
いりそむる−おもひのけふり−たえせすは−こひのやましは−たきやつくさむ |
06415 |
未入力 正徹 (xxx)
たき初むる思ひの薪いつこりてしらぬ山ちに煙たつらん
たきそむる−おもひのたきき−いつこりて−しらぬやまちに−けふりたつらむ |
06416 |
未入力 正徹 (xxx)
つつめ先高ねの花の雲霞のちに心の色はちるとも
つつめまつ−たかねのはなの−くもかすみ−のちにこころの−いろはちるとも |
06417 |
未入力 正徹 (xxx)
かかりきといははや春の初卯杖心にもまたふりぬ思ひを
かかりきと−いははやはるの−はつうつゑ−こころにもまた−ふりぬおもひを |
06418 |
未入力 正徹 (xxx)
深からむ色ともしらす紅の一はな衣したにそめつつ
ふかからむ−いろともしらす−くれなゐの−ひとはなころも−したにそめつつ |
06419 |
未入力 正徹 (xxx)
こもりゐて恋をもしらぬはしたかを初とやいたす君はうらめし
こもりゐて−こひをもしらぬ−はしたかを−はしめとやいたす−きみはうらめし |
06420 |
未入力 正徹 (xxx)
涙のみふるのの露にまかふらしまた初せちに思ひ入る身は
なみたのみ−ふるののつゆに−まかふらし−またはつせちに−おもひいるみは |
06421 |
未入力 正徹 (xxx)
契あらは初もとゆひの紫に結ふはかりのねをや尋ねん
ちきりあらは−はつもとゆひの−むらさきに−むすふはかりの−ねをやたつねむ |
06422 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ事ほにあらはさむ秋の田も初いねをこそ神もうくらめ
おもふこと−ほにあらはさむ−あきのたも−はついねをこそ−かみもうくらめ |
06423 |
未入力 正徹 (xxx)
したもえにたくとしらすや夕ま暮見そめか崎のあまのいさり火
したもえに−たくとしらすや−ゆふまくれ−みそめかさきの−あまのいさりひ |
06424 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふより下に焼く火の色そこき時雨は染めぬ秋の初しほ
おもふより−したにたくひの−いろそこき−しくれはそめぬ−あきのはつしほ |
06425 |
未入力 正徹 (xxx)
をはりとやなしてやみなんほのかにもみるを思ひの今日のはしめに
をはりとや−なしてやみなむ−ほのかにも−みるをおもひの−けふのはしめに |
06426 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そいま袖まきかくす初かりの涙も文もつつみやはする
あきそいま−そてまきかくす−はつかりの−なみたもふみも−つつみやはする |
06427 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れはやたたこよひこそみすもあらぬ面影はかり新枕すれ
わすれはや−たたこよひこそ−みすもあらぬ−おもかけはかり−にひまくらすれ |
06428 |
未入力 正徹 (xxx)
紅のまた初しほも袖に見しけふそのに出てて花のすゑつむ
くれなゐの−またはつしほも−そてにみし−けふそのにいてて−はなのすゑつむ |
06429 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふよりやかてうき身を秋の田のはつほの露の色に出てつつ
おもふより−やかてうきみを−あきのたの−はつほのつゆの−いろにいてつつ |
06430 |
未入力 正徹 (xxx)
煙たてやけとも秋は初しほのうらかにたへぬ島のあま人
けふりたて−やけともあきは−はつしほの−うらかにたへぬ−しまのあまひと |
06431 |
未入力 正徹 (xxx)
それかとよ恋のやつこにこととはんゆけはくるしき心つかひを
それかとよ−こひのやつこに−こととはむ−ゆけはくるしき−こころつかひを |
06432 |
未入力 正徹 (xxx)
末しらぬ恋ちにむかふ一足をふみさためぬも先そくるしき
すゑしらぬ−こひちにむかふ−ひとあしを−ふみさためぬも−まつそくるしき |
06433 |
未入力 正徹 (xxx)
ははきとる袖に初ねの玉そ散るはらひもあへすちりの思ひを
ははきとる−そてにはつねの−たまそちる−はらひもあへす−ちりのおもひを |
06434 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれ立出ててきけは我か心契田面のはつかりそなく
ゆふまくれ−たちいててきけは−わかこころ−ちきりたのもの−はつかりそなく |
06435 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはれし富士の高ねの初けふりたか思ひよりなひき出てけん
あらはれし−ふしのたかねの−はつけふり−たかおもひより−なひきいてけむ |
06436 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風に露そこほるる初いねの一ほいてしとつつむおもひは
あきかせに−つゆそこほるる−はついねの−ひとほいてしと−つつむおもひは |
06437 |
未入力 正徹 (xxx)
行末もあらはなとかとあはぬまはをしからぬ身そ思ひなりぬる
ゆくすゑも−あらはなとかと−あはぬまは−をしからぬみそ−おもひなりぬる |
06438 |
未入力 正徹 (xxx)
これはみな夢かとたにももろともにいはぬにつくる夜はのことのは
これはみな−ゆめかとたにも−もろともに−いはぬにつくる−よはのことのは |
06439 |
未入力 正徹 (xxx)
人もまた夢とたとらはたのめおけ今夜ののちにしらんうつつを
ひともまた−ゆめとたとらは−たのめおけ−こよひののちに−しらむうつつを |
06440 |
未入力 正徹 (xxx)
いつれをか先あらはさむねし床のまくらのちりとつもることのは
いつれをか−まつあらはさむ−ねしとこの−まくらのちりと−つもることのは |
06441 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは初てまけよさ夜衣うらなきまての心くらへに
よしさらは−はしめてまけよ−さよころも−うらなきまての−こころくらへに |
06442 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野川よとむ氷を春ときていもせにむすふ中の滝つせ
よしのかは−よとむこほりを−はるときて−いもせにむすふ−なかのたきつせ |
06443 |
未入力 正徹 (xxx)
夢に猶なせとないひそ今夜たに思ひねなりし心ならひに
ゆめになほ−なせとないひそ−こよひたに−おもひねなりし−こころならひに |
06444 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらはあくるもしらしとめかたき人をも身をもなきになしつつ
よしさらは−あくるもしらし−とめかたき−ひとをもみをも−なきになしつつ |
06445 |
未入力 正徹 (xxx)
契ありてあふ夜に成りぬ身のためにけふをよき日と後もおもはん
ちきりありて−あふよになりぬ−みのために−けふをよきひと−のちもおもはむ |
06446 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣ぬれにし袖をまきかへしおもひなき身になしてみえぬる
さよころも−ぬれにしそてを−まきかへし−おもひなきみに−なしてみえぬる |
06447 |
未入力 正徹 (xxx)
あふことそくらき夜の夢月の色且の声はねぬになせとも
あふことそ−くらきよのゆめ−つきのいろ−あらしのこゑは−ねぬになせとも |
06448 |
未入力 正徹 (xxx)
をしへおけおもひさむへき道もなしなにと今夜を夢になせとも
をしへおけ−おもひさむへき−みちもなし−なにとこよひを−ゆめになせとも |
06449 |
未入力 正徹 (xxx)
我かために契ありける前の世そ先あふ事にそへてうれしき
わかために−ちきりありける−さきのよそ−まつあふことに−そへてうれしき |
06450 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひかつとけて後せの山かつらかさねてかけよ衣衣のそら
こよひかつ−とけてのちせの−やまかつら−かさねてかけよ−きぬきぬのそら |
06451 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲もひけとそかへるむつこともまた月影の有明の空
よこくもも−ひけとそかへる−むつことも−またつきかけの−ありあけのそら |
06452 |
未入力 正徹 (xxx)
あひ見るは夢かととふもこたへせすたれをしるへに思ひさためん
あひみるは−ゆめかととふも−こたへせす−たれをしるへに−おもひさためむ |
06453 |
未入力 正徹 (xxx)
手枕に我とはかさし今夜たにひかたき袖そぬれしままなる
たまくらに−われとはかさし−こよひたに−ひかたきそてそ−ぬれしままなる |
06454 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はふかしはしうちいつるむつこともまた月影の西にならすは
よはふかし−はしうちいつる−むつことも−またつきかけの−にしにならすは |
06455 |
未入力 正徹 (xxx)
入りこすはうき身も見えし槙の戸を我たゆめつと人やおもはん
いりこすは−うきみもみえし−まきのとを−われたゆめつと−ひとやおもはむ |
06456 |
未入力 正徹 (xxx)
中たえし夜夜の涙にむせかへり恨所のあるかひもなし
なかたえし−よよのなみたに−むせかへり−うらみところの−あるかひもなし |
06457 |
未入力 正徹 (xxx)
下ひものとくる玉のは玉ゆらにいつのむかしのえにか結ひし
したひもの−とくるたまのは−たまゆらに−いつのむかしの−えにかむすひし |
06458 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひねの夢ならすともかはらしな君かくる夜のさめん別は
おもひねの−ゆめならすとも−かはらしな−きみかくるよの−さめむわかれは |
06459 |
未入力 正徹 (xxx)
うつつともおもひもわかぬあふことを夢になせとのことのはもうし
うつつとも−おもひもわかぬ−あふことを−ゆめになせとの−ことのはもうし |
06460 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜かく下ものひもにときまする氷やもとの涙なるらん
こよひかく−したものひもに−ときまする−こほりやもとの−なみたなるらむ |
06461 |
未入力 正徹 (xxx)
またれつつ今夜そ心あひのかせ吹くなりよりこ床のうら舟
またれつつ−こよひそこころ−あひのかせ−ふくなりよりこ−とこのうらふね |
06462 |
未入力 正徹 (xxx)
かりそむる見るめにあらき浪なくは磯たちなれて袖やぬらさん
かりそむる−みるめにあらき−なみなくは−いそたちなれて−そてやぬらさむ |
06463 |
未入力 正徹 (xxx)
我かかたによらはそちかのうらなれむつらきみるめのよその浪かせ
わかかたに−よらはそちかの−うらなれむ−つらきみるめの−よそのなみかせ |
06464 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられぬ人のすかたをうつしてもめかれぬへくは筆やうらみん
わすられぬ−ひとのすかたを−うつしても−めかれぬへくは−ふてやうらみむ |
06465 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよりさやにも見てしかひかねは雪に思ひをかさねてそふる
くもまより−さやにもみてし−かひかねは−ゆきにおもひを−かさねてそふる |
06466 |
未入力 正徹 (xxx)
我そかる見るめをかりのすかたとも思ひなされぬあまの心を
われそかる−みるめをかりの−すかたとも−おもひなされぬ−あまのこころを |
06467 |
未入力 正徹 (xxx)
よそに見るめもかれかれに成りゆけは契らぬさきにうき身をそしる
よそにみる−めもかれかれに−なりゆけは−ちきらぬさきに−うきみをそしる |
06468 |
未入力 正徹 (xxx)
よそなから宿の秋かせ身にそしむめに立つ雲の峰の夕暮
よそなから−やとのあきかせ−みにそしむ−めにたつくもの−みねのゆふくれ |
06469 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風をめに見ぬ松のさわくにもむねあひかたき中のさ衣
ふくかせを−めにみぬまつの−さわくにも−むねあひかたき−なかのさころも |
06470 |
未入力 正徹 (xxx)
しるへせよ心のおくに分けかねてまよふしのふの山のした道
しるへせよ−こころのおくに−わけかねて−まよふしのふの−やまのしたみち |
06471 |
未入力 正徹 (xxx)
せめてたたひとりにもらす思ひにてなへてをもらす世をはなけかし
せめてたた−ひとりにもらす−おもひにて−なへてをもらす−よをはなけかし |
06472 |
未入力 正徹 (xxx)
宿さへも軒のしのふの草かくれやつれて人にありとしられし
やとさへも−のきのしのふの−くさかくれ−やつれてひとに−ありとしられし |
06473 |
未入力 正徹 (xxx)
ころもへぬしのふのみたれかきりあらは心のおくの露や見えまし
ころもへぬ−しのふのみたれ−かきりあらは−こころのおくの−つゆやみえまし |
06474 |
未入力 正徹 (xxx)
にこるともすむともしらしおく山の岩かき淵のそこの心を
にこるとも−すむともしらし−おくやまの−いはかきふちの−そこのこころを |
06475 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うつむ遠山はたのなるこなは心ひくともいかかしられん
くもうつむ−とほやまはたの−なるこなは−こころひくとも−いかかしられむ |
06476 |
未入力 正徹 (xxx)
涙川袖のしからみひまもなしすゑや心のそこくくるらん
なみたかは−そてのしからみ−ひまもなし−すゑやこころの−そこくくるらむ |
06477 |
未入力 正徹 (xxx)
目かるなよ心の色のうつろふもけにはあたなる花のすかたそ
めかるなよ−こころのいろの−うつろふも−けにはあたなる−はなのすかたそ |
06478 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海のあまのすさみのみるめたに思ひいらすはかれやはてまし
わたつうみの−あまのすさみの−みるめたに−おもひいらすは−かれやはてまし |
06479 |
未入力 正徹 (xxx)
あまをふねさしかへるともかけをたになとか出見のうらに住む月
あまをふね−さしかへるとも−かけをたに−なとかいてみの−うらにすむつき |
06480 |
未入力 正徹 (xxx)
浪たかみ入りぬるいそによる草も見るめすくなくかるる中かな
なみたかみ−いりぬるいそに−よるくさも−みるめすくなく−かるるなかかな |
06481 |
未入力 正徹 (xxx)
なにかせん世世の契もあさか山かけたえはてぬ水は有りとも
なにかせむ−よよのちきりも−あさかやま−かけたえはてぬ−みつはありとも |
06482 |
未入力 正徹 (xxx)
くるしさをいとははよしやいつきても見るめにあかぬあまのしわさは
くるしさを−いとははよしや−いつきても−みるめにあかぬ−あまのしわさは |
06483 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海や渚の浪にととまるも人のよりくる見るめなりけり
にほのうみや−なきさのなみに−ととまるも−ひとのよりくる−みるめなりけり |
06484 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふとてさのみ見るめはつつめとも心のゆくをせくかたそなき
おもふとて−さのみみるめは−つつめとも−こころのゆくを−せくかたそなき |
06485 |
未入力 正徹 (xxx)
うちつけのめをうたかへる心にもあらぬおもひの色そそひゆく
うちつけの−めをうたかへる−こころにも−あらぬおもひの−いろそそひゆく |
06486 |
未入力 正徹 (xxx)
我にうき君は朝日の影なれやさしむかはれぬ涙こほれて
われにうき−きみはあさひの−かけなれや−さしむかはれぬ−なみたこほれて |
06487 |
未入力 正徹 (xxx)
命かもあふことなみのうきなから南の風による名はかりを
いのちかも−あふことなみの−うきなから−みなみのかせに−よるなはかりを |
06488 |
未入力 正徹 (xxx)
めにかかる浪をそいとふあま人のほすひまもなき□□□□□□□
めにかかる−なみをそいとふ−あまひとの−ほすひまもなき−ххххххх |
06489 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふれはさたかにむかふ時そとも涙まきれぬ袖そ朽ちゆく
しのふれは−さたかにむかふ−ときそとも−なみたまきれぬ−そてそくちゆく |
06490 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひそふ見るめのとかを人になり我にかはりていさめわひぬる
おもひそふ−みるめのとかを−ひとになり−われにかはりて−いさめわひぬる |
06491 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまの花のおもかけ身にそははねても別れし春のよの夢
くるるまの−はなのおもかけ−みにそはは−ねてもわかれし−はるのよのゆめ |
06492 |
未入力 正徹 (xxx)
ほのみゆる霞のうちのにほひゆゑ花におもひの色そそひゆく
ほのみゆる−かすみのうちの−にほひゆゑ−はなにおもひの−いろそそひゆく |
06493 |
未入力 正徹 (xxx)
きり捨てよ見るめはなにのとかかあらむ人に心をつくすきつなを
きりすてよ−みるめはなにの−とかかあらむ−ひとにこころを−つくすきつなを |
06494 |
未入力 正徹 (xxx)
いつよりかつらきおもかけへたたりて涙にむかふ人となりけん
いつよりか−つらきおもかけ−へたたりて−なみたにむかふ−ひととなりけむ |
06495 |
未入力 正徹 (xxx)
つつめとも身をはおもはぬ涙ともおちてしらるる袖の上かな
つつめとも−みをはおもはぬ−なみたとも−おちてしらるる−そてのうへかな |
06496 |
未入力 正徹 (xxx)
なほそせくさては心の行かたもしらぬ忍の山の下水
なほそせく−さてはこころの−ゆくかたも−しらぬしのふの−やまのしたみつ |
06497 |
未入力 正徹 (xxx)
煙たにたてぬ忍のうらさひてやくとな見えそあまのもしほ火
けふりたに−たてぬしのふの−うらさひて−やくとなみえそ−あまのもしほひ |
06498 |
未入力 正徹 (xxx)
いはし猶心のとふを心にてこたへこたへす人ししらすは
いはしなほ−こころのとふを−こころにて−こたへこたへす−ひとししらすは |
06499 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふかぬ心の花におほふ袖ありともつつむ色やちらまし
かせふかぬ−こころのはなに−おほふそて−ありともつつむ−いろやちらまし |
06500 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中を見しれるさまにいふ人もなきやかへりて忍ひわふらん
うきなかを−みしれるさまに−いふひとも−なきやかへりて−しのひわふらむ |
06501 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふより心にしむるつまこめはまた程遠きよその八重かき
おもふより−こころにしむる−つまこめは−またほととほき−よそのやへかき |
06502 |
未入力 正徹 (xxx)
うちわひむとほき忍ふの山ひこはありとも人に声はつたへし
うちわひむ−とほきしのふの−やまひこは−ありともひとに−こゑはつたへし |
06503 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふことしれは涙そ袖にもる身にも心を猶やへたてん
おもふこと−しれはなみたそ−そてにもる−みにもこころを−なほやへたてむ |
06504 |
未入力 正徹 (xxx)
つつましよおもふ思ひはいかにとも色そめかたき袖にまかせて
つつましよ−おもふおもひは−いかにとも−いろそめかたき−そてにまかせて |
06505 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世かほす時ならむ紅の袖まきかくす露よ日かけよ
いつのよか−ほすときならむ−くれなゐの−そてまきかくす−つゆよひかけよ |
06506 |
未入力 正徹 (xxx)
我か袖の色そつれなき松の葉も下紅葉する秋に時雨れて
わかそての−いろそつれなき−まつのはも−したもみちする−あきにしくれて |
06507 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ひわひえそか岩屋にこもるとも心のおくのうみやさわかむ
しのひわひ−えそかいはやに−こもるとも−こころのおくの−うみやさわかむ |
06508 |
未入力 正徹 (xxx)
跡もなくよせてかへるやそれならむ忍のうらにつもる年なみ
あともなく−よせてかへるや−それならむ−しのふのうらに−つもるとしなみ |
06509 |
未入力 正徹 (xxx)
見えやせし思ひ忍ふの山めくりしくるる袖を染めもわたさて
みえやせし−おもひしのふの−やまめくり−しくるるそてを−そめもわたさて |
06510 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひせくむねのうちとやなかめまし忍の軒にさわく村鳥
おもひせく−むねのうちとや−なかめまし−しのふののきに−さわくむらとり |
06511 |
未入力 正徹 (xxx)
およひなくかけし忍の山かつら心たかさはきゆるまもなし
およひなく−かけししのふの−やまかつら−こころたかさは−きゆるまもなし |
06512 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふよりうつろふ色そかくされぬ袖の時雨に雲はなくして
おもふより−うつろふいろそ−かくされぬ−そてのしくれに−くもはなくして |
06513 |
未入力 正徹 (xxx)
つつむともさそふ風あらはいかかせむ身をうき草の袖のささ波
つつむとも−さそふかせあらは−いかかせむ−みをうきくさの−そてのささなみ |
06514 |
未入力 正徹 (xxx)
いまよりの忍ふのみたれかきりある心をしるは哀なりけり
いまよりの−しのふのみたれ−かきりある−こころをしるは−あはれなりけり |
06515 |
未入力 正徹 (xxx)
春日のの霞の袖にしきかくせみたれにけりな忍もちすり
かすかのの−かすみのそてに−しきかくせ−みたれにけりな−しのふもちすり |
06516 |
未入力 正徹 (xxx)
夕なきに浪はかけこて磯屋ふくあしの忍ひのうら風もうし
ゆふなきに−なみはかけこて−いそやふく−あしのしのひの−うらかせもうし |
06517 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりあはむ夕を空に契りてもはかなや今朝の月の行末
めくりあはむ−ゆふへをそらに−ちきりても−はかなやけさの−つきのゆくすゑ |
06518 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれしの契の末もあやふきはわたりかけつる夢のうきはし
わすれしの−ちきりのすゑも−あやふきは−わたりかけつる−ゆめのうきはし |
06519 |
未入力 正徹 (xxx)
結ひてし人に契の有りなしや此世ひとつにかけてしられん
むすひてし−ひとにちきりの−ありなしや−このよひとつに−かけてしられむ |
06520 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなきを世世の契にまかせてもかつうらみすは又やたえまし
つれなきを−よよのちきりに−まかせても−かつうらみすは−またやたえまし |
06521 |
未入力 正徹 (xxx)
猶さりの道行ふりの袖にたにかかる契はのかれなき世を
なほさりの−みちゆきふりの−そてにたに−かかるちきりは−のかれなきよを |
06522 |
未入力 正徹 (xxx)
さりともと契をかけて松山のなきうらたのむ末の白なみ
さりともと−ちきりをかけて−まつやまの−なきうらたのむ−すゑのしらなみ |
06523 |
未入力 正徹 (xxx)
契あり契なしともそのままにうらみしいはし世世のえにこそ
ちきりあり−ちきりなしとも−そのままに−うらみしいはし−よよのえにこそ |
06524 |
未入力 正徹 (xxx)
世世かけて契の程をおもはすは人のつらさになしやはてまし
よよかけて−ちきりのほとを−おもはすは−ひとのつらさに−なしやはてまし |
06525 |
未入力 正徹 (xxx)
いひいててこたへん時そ契あり契なしとも思ひしられん
いひいてて−こたへむときそ−ちきりあり−ちきりなしとも−おもひしられむ |
06526 |
未入力 正徹 (xxx)
今見るもつれなき色そあさからぬ世世の契の末の松山
いまみるも−つれなきいろそ−あさからぬ−よよのちきりの−すゑのまつやま |
06527 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめおけそれも契のありなしによよはよるへきをふのうら浪
たのめおけ−それもちきりの−ありなしに−よよはよるへき−をふのうらなみ |
06528 |
未入力 正徹 (xxx)
世世かけてはねをならふる契にも八こゑの鳥の色やうらみん
よよかけて−はねをならふる−ちきりにも−やこゑのとりの−いろやうらみむ |
06529 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひきてつくは山風吹きむすへ鹿島の帯のかことはかりに
かよひきて−つくはやまかせ−ふきむすへ−かしまのおひの−かことはかりに |
06530 |
未入力 正徹 (xxx)
玉ほこの道行く袖のすり衣こむ世や恋の心みたれん
たまほこの−みちゆくそての−すりころも−こむよやこひの−こころみたれむ |
06531 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の風草のは結ふ契たにうつろふ末は露そこほるる
あきのかせ−くさのはむすふ−ちきりたに−うつろふすゑは−つゆそこほるる |
06532 |
未入力 正徹 (xxx)
前の世の契ならすといふことのありやなしやもいまそしられん
さきのよの−ちきりならすと−いふことの−ありやなしやも−いまそしられむ |
06533 |
未入力 正徹 (xxx)
人心なきたる磯のやとにきぬ契ありそのうみわたる舟
ひとこころ−なきたるいその−やとにきぬ−ちきりありその−うみわたるふね |
06534 |
未入力 正徹 (xxx)
つらしなと世世にかけけん涙ゆゑ袖のみ朽ちてくちぬ契を
つらしなと−よよにかけけむ−なみたゆゑ−そてのみくちて−くちぬちきりを |
06535 |
未入力 正徹 (xxx)
うかりけるみたらし川のせをあさみむすふ契を神もふかめよ
うかりける−みたらしかはの−せをあさみ−むすふちきりを−かみもふかめよ |
06536 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちよれはおもふ戸口にまち出つる人の契もふかき夜の月
たちよれは−おもふとくちに−まちいつる−ひとのちきりも−ふかきよのつき |
06537 |
未入力 正徹 (xxx)
さきのよの契はありのすさみにや我かおもふ人にわかうかりけん
さきのよの−ちきりはありの−すさみにや−わかおもふひとに−わかうかりけむ |
06538 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむなりいひしことはの末の松まつ夜の袖に浪はこせとも
たのむなり−いひしことはの−すゑのまつ−まつよのそてに−なみはこせとも |
06539 |
未入力 正徹 (xxx)
心をもさのみつくさし先の世に契あらはとうちたのみつつ
こころをも−さのみつくさし−さきのよに−ちきりあらはと−うちたのみつつ |
06540 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ河さかまく水のうたかたも契あれはそめくりあふらん
おもひかは−さかまくみつの−うたかたも−ちきりあれはそ−めくりあふらむ |
06541 |
未入力 正徹 (xxx)
一夜ねて五百度生れかはるとも契くちせぬ枕とそきく
ひとよねて−いほたひうまれ−かはるとも−ちきりくちせぬ−まくらとそきく |
06542 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中をなかむる空の契さへ跡なし雲のわたる夕風
うきなかを−なかむるそらの−ちきりさへ−あとなしくもの−わたるゆふかせ |
06543 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつついそく春日のくれかたみさらは長閑にそふ夜はもかな
たのめつつ−いそくはるひの−くれかたみ−さらはのとかに−そふよはもかな |
06544 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつつとはて夜ことに過きぬれはいつれの時をわきてかこたん
たのめつつ−とはてよことに−すきぬれは−いつれのときを−わきてかこたむ |
06545 |
未入力 正徹 (xxx)
かはりきぬやみのうつつの風の声ふけゆく袖の涙たつねて
かはりきぬ−やみのうつつの−かせのこゑ−ふけゆくそての−なみたたつねて |
06546 |
未入力 正徹 (xxx)
戸もささすまた深けぬ夜に人音のしつまるさへや契なるらん
ともささす−またふけぬよに−ひとおとの−しつまるさへや−ちきりなるらむ |
06547 |
未入力 正徹 (xxx)
深けにけりありしに思ひなそらへてまたしとすれは待つ夜とそなる
ふけにけり−ありしにおもひ−なそらへて−またしとすれは−まつよとそなる |
06548 |
未入力 正徹 (xxx)
なほそうき別路におひしくすのはのたちまつ庭にかへる秋風
なほそうき−わかれちにおひし−くすのはの−たちまつにはに−かへるあきかせ |
06549 |
未入力 正徹 (xxx)
あやしとや人の見るらん槙の戸も月なき比にささぬよひゐを
あやしとや−ひとのみるらむ−まきのとも−つきなきころに−ささぬよひゐを |
06550 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつつまつ夜になさぬ心もてみれとも深くるいさよひの月
たのめつつ−まつよになさぬ−こころもて−みれともふくる−いさよひのつき |
06551 |
未入力 正徹 (xxx)
まちわひぬまたしと思ふ偽のまことにあくる鳥の声かな
まちわひぬ−またしとおもふ−いつはりの−まことにあくる−とりのこゑかな |
06552 |
未入力 正徹 (xxx)
月まつと人にはいはし中中にそのことのはそふりてしられん
つきまつと−ひとにはいはし−なかなかに−そのことのはそ−ふりてしられむ |
06553 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ夜とほおもひいれしのうたたねもやすくはふけぬ閨の内かな
まつよとほ−おもひいれしの−うたたねも−やすくはふけぬ−ねやのうちかな |
06554 |
未入力 正徹 (xxx)
さちあかす人もねしよの枕かにこかるるむねを猶おさへつつ
まちあかす−ひともねしよの−まくらかに−こかるるむねを−なほおさへつつ |
06555 |
未入力 正徹 (xxx)
たつねくる友もうらめしひとりゐて契さはらすたのむ夕を
たつねくる−とももうらめし−ひとりゐて−ちきりさはらす−たのむゆふへを |
06556 |
未入力 正徹 (xxx)
いひし日をたかへけるかと又そまつたのめてあくる後の夕暮
いひしひを−たかへけるかと−またそまつ−たのめてあくる−のちのゆふくれ |
06557 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜のしるしはかりに槙の戸をほそめて月に心見えぬる
たのむよの−しるしはかりに−まきのとを−ほそめてつきに−こころみえぬる |
06558 |
未入力 正徹 (xxx)
さたまらぬ世は思はすのこともあれたのめたのますまたぬよそなき
さたまらぬ−よはおもはすの−こともあれ−たのめたのます−またぬよそなき |
06559 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちぬるるあかつき露の松のはに落ちたる月の袖もうらめし
たちぬるる−あかつきつゆの−まつのはに−おちたるつきの−そてもうらめし |
06560 |
未入力 正徹 (xxx)
たのみても深行くほとに身をしるを雨のよならぬ月そあやしき
たのみても−ふけゆくほとに−みをしるを−あめのよならぬ−つきそあやしき |
06561 |
未入力 正徹 (xxx)
さりともと心なくさの浜ひさしさすや夕日の松にかかれる
さりともと−こころなくさの−はまひさし−さすやゆふひの−まつにかかれる |
06562 |
未入力 正徹 (xxx)
待ちかねぬ夜のまのこけに鳥もねよきかし深けゆく時のつつみを
まちかねぬ−よのまのこけに−とりもねよ−きかしふけゆく−ときのつつみを |
06563 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさをかこつほたより在明の月みぬ空そまつよむなしき
つれなさを−かこつはたより−ありあけの−つきみぬそらそ−まつよむなしき |
06564 |
未入力 正徹 (xxx)
宿いてんたのめぬ夜はのふけ行くになすもなされぬ庭の松風
やといてむ−たのめぬよはの−ふけゆくに−なすもなされぬ−にはのまつかせ |
06565 |
未入力 正徹 (xxx)
君か代を松にもよせしたのめてし一夜も千代をふる身ならすや
きみかよを−まつにもよせし−たのめてし−ひとよもちよを−ふるみならすや |
06566 |
未入力 正徹 (xxx)
まつよひの槙の一戸口はあけおかし夏にもあらす月もなき比
まつよひの−まきのとくちは−あけおかし−なつにもあらす−つきもなきころ |
06567 |
未入力 正徹 (xxx)
おくらすよ暁露に立ちぬれてまつを別のあさちふのかせ
おくらすよ−あかつきつゆに−たちぬれて−まつをわかれの−あさちふのかせ |
06568 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれゆく玉とたにみよ露はらふ身は白妙の袖の別路
うかれゆく−たまとたにみよ−つゆはらふ−みはしろたへの−そてのわかれち |
06569 |
未入力 正徹 (xxx)
もろともにいさなひいてし槙の戸にのこるは月や送らさるらん
もろともに−いさなひいてし−まきのとに−のこるはつきや−おくらさるらむ |
06570 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣にかへる心のひかふるや夜のまにおふる葛の下道
きぬきぬに−かへるこころの−ひかふるや−よのまにおふる−くすのしたみち |
06571 |
未入力 正徹 (xxx)
きぬきぬの空に見れとも暁の雲に別をゆつるよもなし
きぬきぬの−そらにみれとも−あかつきの−くもにわかれを−ゆつるよもなし |
06572 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そうき影のこらしと入る月にくらき涙の袖のわかれ路
なほそうき−かけのこらしと−いるつきに−くらきなみたの−そてのわかれち |
06573 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりこむ葛のはならて露けきは別路におふる道の芝草
かへりこむ−くすのはならて−つゆけきは−わかれちにおふる−みちのしはくさ |
06574 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりし袖の別の月よたた我さへ空をゆく心ちして
あかさりし−そてのわかれの−つきよたた−われさへそらを−ゆくここちして |
06575 |
未入力 正徹 (xxx)
なからへんもとの別にたへてこそ今夜あひ見る命ともなれ
なからへむ−もとのわかれに−たへてこそ−こよひあひみる−いのちともなれ |
06576 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もおもかけならぬ色そなきうき衣衣のしののめの道
くさもきも−おもかけならぬ−いろそなき−うききぬきぬの−しののめのみち |
06577 |
未入力 正徹 (xxx)
朝鳥のは風おちくる衣衣に軒の忍の露そ身にしむ
あさとりの−はかせおちくる−きぬきぬに−のきのしのふの−つゆそみにしむ |
06578 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしとてひかふる衣のうしろ手にとりそへらるる黒かみもうし
しはしとて−ひかふるきぬの−うしろてに−とりそへらるる−くろかみもうし |
06579 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣のちかきかたみかねし床の涙もいまたあたたかにして
きぬきぬの−ちかきかたみか−ねしとこの−なみたもいまた−あたたかにして |
06580 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかねし袖の別の道の露草の袂は猶そしほるる
たれかねし−そてのわかれの−みちのつゆ−くさのたもとは−なほそしほるる |
06581 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは涙かさねよ衣衣のたもと夜ふかき月のやとるに
よしさらは−なみたかさねよ−きぬきぬの−たもとよふかき−つきのやとるに |
06582 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の人にかはりてやとるなり袖をまちとる道芝の露
きぬきぬの−ひとにかはりて−やとるなり−そてをまちとる−みちしはのつゆ |
06583 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬまにやらひやりぬと思はれん色さへつらし影かくしてよ
あけぬまに−やらひやりぬと−おもはれむ−いろさへつらし−かけかくしてよ |
06584 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の人にかはらぬよこ雲の別れなれたる空もうらめし
きぬきぬの−ひとにかはらぬ−よこくもの−わかれなれたる−そらもうらめし |
06585 |
未入力 正徹 (xxx)
したはれぬ人にかはりて衣衣のもすそひかふる道のささ原
したはれぬ−ひとにかはりて−きぬきぬの−もすそひかふる−みちのささはら |
06586 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風もわかれよとてとみれはうしなに心なく明くる此夜を
くもかせも−わかれよとてと−みれはうし−なにこころなく−あくるこのよを |
06587 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の袖のしつくもかけ見えぬかたみの水や床にかわかん
きぬきぬの−そてのしつくも−かけみえぬ−かたみのみつや−とこにかわかむ |
06588 |
未入力 正徹 (xxx)
夜ふかしとおもはむ露の心をもぬれぬれはつる道のささ原
よふかしと−おもはむつゆの−こころをも−ぬれぬれはつる−みちのささはら |
06589 |
未入力 正徹 (xxx)
きぬきぬの庭の真砂をふむくつも音をたてしとくたく心そ
きぬきぬの−にはのまさこを−ふむくつも−おとをたてしと−くたくこころそ |
06590 |
未入力 正徹 (xxx)
啼くそうきおきて別の庭つ鳥なれも梢の妻とぬるよに
なくそうき−おきてわかれの−にはつとり−なれもこすゑの−つまとぬるよに |
06591 |
未入力 正徹 (xxx)
せめて猶うき別路に朝露のおもはむ後の暮を憑めよ
せめてなほ−うきわかれちに−あさつゆの−おもはむのちの−くれをたのめよ |
06592 |
未入力 正徹 (xxx)
をしむともしたひし心うかりきとたか衣衣に思ひ出つらん
をしむとも−したひしこころ−うかりきと−たかきぬきぬに−おもひいつらむ |
06593 |
未入力 正徹 (xxx)
おきて行く朝の床の山かつら別路にかけよしからみにせん
おきてゆく−あしたのとこの−やまかつら−わかれちにかけよ−しからみにせむ |
06594 |
未入力 正徹 (xxx)
君もさはたかたわつけし朝ねかみみたるととははいかかこたへん
きみもさは−たかたわつけし−あさねかみ−みたるととはは−いかかこたへむ |
06595 |
未入力 正徹 (xxx)
紅の袖の別にふり出てて涙色けつあけくれのあめ
くれなゐの−そてのわかれに−ふりいてて−なみたいろけつ−あけくれのあめ |
06596 |
未入力 正徹 (xxx)
うらむるも又身をしるもかきくらす涙はわかぬ袖の上かな
うらむるも−またみをしるも−かきくらす−なみたはわかぬ−そてのうへかな |
06597 |
未入力 正徹 (xxx)
わすらるる身の歌かたの涙とはなされすとても世をはうらみし
わすらるる−みのうたかたの−なみたとは−なされすとても−よをはうらみし |
06598 |
未入力 正徹 (xxx)
あた浪のたかしの磯に遠さかり身をうら風の興つ舟人
あたなみの−たかしのいそに−とほさかり−みをうらかせの−おきつふなひと |
06599 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふそよ心のおくの海山やあらたつ浪に色もかはらて
しのふそよ−こころのおくの−うみやまや−あらたつなみに−いろもかはらて |
06600 |
未入力 正徹 (xxx)
君によれこえ行く袖のしきなみに身をうら風はふかぬまもなし
きみによれ−こえゆくそての−しきなみに−みをうらかせは−ふかぬまもなし |
06601 |
未入力 正徹 (xxx)
もえまさり猶そけたれぬ夜をかさね我か身をうらのあまのもしほ火
もえまさり−なほそけたれぬ−よをかさね−わかみをうらの−あまのもしほひ |
06602 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかへて此世の後にのこるともいまの恨の末としらすは
みをかへて−このよののちに−のこるとも−いまのうらみの−すゑとしらすは |
06603 |
未入力 正徹 (xxx)
とほさかる契もつらし世中にありとしられぬ宿もとめてん
とほさかる−ちきりもつらし−よのなかに−ありとしられぬ−やともとめてむ |
06604 |
未入力 正徹 (xxx)
つひに又恨の末のとほらすはいとふ恋ちの身にや帰らん
つひにまた−うらみのすゑの−とほらすは−いとふこひちの−みにやかへらむ |
06605 |
未入力 正徹 (xxx)
心から恨みすててはいくたひかわか身にうさのたちかへるらむ
こころから−うらみすてては−いくたひか−わかみにうさの−たちかへるらむ |
06606 |
未入力 正徹 (xxx)
いとせめてうき名はこけの下にたにくちぬ契を代代に残さん
いとせめて−うきなはこけの−したにたに−くちぬちきりを−よよにのこさむ |
06607 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふとも此世の後に生れあふその名は心身をやいのらん
いとふとも−このよののちに−うまれあふ−そのなはこころ−みをやいのらむ |
06608 |
未入力 正徹 (xxx)
うらみはて此世にあるを見えむとも身をそ思はぬ名をはかくさし
うらみはて−このよにあるを−みえむとも−みをそおもはぬ−なをはかくさし |
06609 |
未入力 正徹 (xxx)
あまのかるあしたゆくともいかかせん我か身をうらにたきつくす身は
あまのかる−あしたゆくとも−いかかせむ−わかみをうらに−たきつくすみは |
06610 |
未入力 正徹 (xxx)
わすらるるうき身つからのおこたりもことわりしらぬ袖の上かな
わすらるる−うきみつからの−おこたりも−ことわりしらぬ−そてのうへかな |
06611 |
未入力 正徹 (xxx)
猶さりのあまのすさみやかさぬらん松よりこゆる浪ときかすは
なほさりの−あまのすさみや−かさぬらむ−まつよりこゆる−なみときかすは |
06612 |
未入力 正徹 (xxx)
まくすかはなにのうらはもやすからぬ秋の野分は心にそたつ
まくすかは−なにのうらはも−やすからぬ−あきののわきは−こころにそたつ |
06613 |
未入力 正徹 (xxx)
かねてたた我をあしへのしきなみにさはらぬたつのよその諸声
かねてたた−われをあしへの−しきなみに−さはらぬたつの−よそのもろこゑ |
06614 |
未入力 正徹 (xxx)
夕千鳥我か身のかたはあれにきと啼くねつたへてよその浦浪
ゆふちとり−わかみのかたは−あれにきと−なくねつたへて−よそのうらなみ |
06615 |
未入力 正徹 (xxx)
かちをたえむかへは風も早しほに身□うら舟は猶そおち行く
かちをたえ−むかへはかせも−はやしほに−みхうらふねは−なほそおちゆく |
06616 |
未入力 正徹 (xxx)
あまの住むさとのしるへやうきとたにたれとはなくて煙たつらん
あまのすむ−さとのしるへや−うきとたに−たれとはなくて−けふりたつらむ |
06617 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中は秋をまさきの同し枝におよはすかかる葛の下風
うきなかは−あきをまさきの−おなしえに−およはすかかる−くすのしたかせ |
06618 |
未入力 正徹 (xxx)
うからすよ見すしらぬ世のよそ人になしておもへはもとの身にして
うからすよ−みすしらぬよの−よそひとに−なしておもへは−もとのみにして |
06619 |
未入力 正徹 (xxx)
とほさかる身をうら風よたかくたてたかかたによる舟もなきまて
とほさかる−みをうらかせよ−たかくたて−たかかたによる−ふねもなきまて |
06620 |
未入力 正徹 (xxx)
はれせしなあひみん月も雲霧に光消えにし秋のうらみは
はれせしな−あひみむつきも−くもきりに−ひかりきえにし−あきのうらみは |
06621 |
未入力 正徹 (xxx)
声たては浪の千ひろに入るあまのためもついきのをもやのはへん
こゑたては−なみのちひろに−いるあまの−ためもついきの−をもやのはへむ |
06622 |
未入力 正徹 (xxx)
身の秋をしるそとことは浦風に葛の下はとかへみ浪かな
みのあきを−しるそとことは−うらかせに−くすのしたはと−かへみなみかな |
06623 |
未入力 正徹 (xxx)
恨みしなたたかりそめのこともみな契によると見ゆる此世を
うらみしな−たたかりそめの−こともみな−ちきりによると−みゆるこのよを |
06624 |
未入力 正徹 (xxx)
それもいま朽ちはてけめや浪あらき身をうら舟の捨てし汀に
それもいま−くちはてけめや−なみあらき−みをうらふねの−すてしみきはに |
06625 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にて猶も恨をつくさすは人にうき身と又や生れん
このよにて−なほもうらみを−つくさすは−ひとにうきみと−またやうまれむ |
06626 |
未入力 正徹 (xxx)
葛ならぬなにの草木か風ふけはうらみぬそれや心なるらん
くすならぬ−なにのくさきか−かせふけは−うらみぬそれや−こころなるらむ |
06627 |
未入力 正徹 (xxx)
こす浪を恨の声になき島や我も袖かすつるの毛衣
こすなみを−うらみのこゑに−なきしまや−われもそてかす−つるのけころも |
06628 |
未入力 正徹 (xxx)
こかれてし舟もすにゐるかちをたえ身をうら風も吹きそよわれる
こかれてし−ふねもすにゐる−かちをたえ−みをうらかせも−ふきそよわれる |
06629 |
未入力 正徹 (xxx)
かれしなほ雪の冬野のことのはにいてて恨みぬ葛の下根は
かれしなほ−ゆきのふゆのの−ことのはに−いててうらみぬ−くすのしたねは |
06630 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかからしうきことのはも初草のまたうらわかき水の汀は
ふかからし−うきことのはも−はつくさの−またうらわかき−みつのみきはは |
06631 |
未入力 正徹 (xxx)
咲く藤のうらむらさきとおもへとも立ちかへり浪の松にかかれる
さくふちの−うらむらさきと−おもへとも−たちかへりなみの−まつにかかれる |
06632 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑとほる恨の心行かたはさそはてしらぬ浪路なるらん
すゑとほる−うらみのこころ−ゆくかたは−さそはてしらぬ−なみちなるらむ |
06633 |
未入力 正徹 (xxx)
我か袖のなみもかはらす大淀のうらみしままの松の色かな
わかそての−なみもかはらす−おほよとの−うらみしままの−まつのいろかな |
06634 |
未入力 正徹 (xxx)
散散りにうらみしはてはなりそ行く下葉色つく葛の下風
ちりちりに−うらみしはては−なりそゆく−したはいろつく−くすのしたかせ |
06635 |
未入力 正徹 (xxx)
かすかすにうきは真砂をふみしたき身をうらち行く足たゆくして
かすかすに−うきはまさこを−ふみしたき−みをうらちゆく−あしたゆくして |
06636 |
未入力 正徹 (xxx)
心なきて思ふかたほにたれかよる身をうら風はふかぬまもなし
こころなきて−おもふかたほに−たれかよる−みをうらかせは−ふかぬまもなし |
06637 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみやはつらき心をうつしみんたえね岩木の山の下水
さのみやは−つらきこころを−うつしみむ−たえねいはきの−やまのしたみつ |
06638 |
未入力 正徹 (xxx)
身を秋のうら紫の萩原や露も袂のゆかりそふらん
みをあきの−うらむらさきの−はきはらや−つゆもたもとの−ゆかりそふらむ |
06639 |
未入力 正徹 (xxx)
祈りおく神のいかきに葛のはのめくみし末は秋風そ吹く
いのりおく−かみのいかきに−くすのはの−めくみしすゑは−あきかせそふく |
06640 |
未入力 正徹 (xxx)
人心さもあら塩にかちをたえ浦こく舟そいととたゆたふ
ひとこころ−さもあらしほに−かちをたえ−うらこくふねそ−いととたゆたふ |
06641 |
未入力 正徹 (xxx)
又結ふ契を露にみたれふす恨はよその岡のかやはら
またむすふ−ちきりをつゆに−みたれふす−うらみはよその−をかのかやはら |
06642 |
未入力 正徹 (xxx)
ま葛原心にあまる草も木もうらはの見えぬ秋風もなし
まくすはら−こころにあまる−くさもきも−うらはのみえぬ−あきかせもなし |
06643 |
未入力 正徹 (xxx)
なしはてん心にあまりことのはにつきし恨を松のみさをに
なしはてむ−こころにあまり−ことのはに−つきしうらみを−まつのみさをに |
06644 |
未入力 正徹 (xxx)
面影を人こそしらねますかかみうら見ん鳥の音にたてすとも
おもかけを−ひとこそしらね−ますかかみ−うらみむとりの−ねにたてすとも |
06645 |
未入力 正徹 (xxx)
淵に身をなけきのもとに朽ちそせんうら紫のまつとせしまに
ふちにみを−なけきのもとに−くちそせむ−うらむらさきの−まつとせしまに |
06646 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらみこしのすかはらあれしより雁のねに啼くねさへ枯れぬる
みをうらみ−こしのすかはら−あれしより−かりのねになく−ねさへかれぬる |
06647 |
未入力 正徹 (xxx)
にくからすかすめなさはや枝枝にうらみいふへきことすくなにて
にくからす−かすめなさはや−えたえたに−うらみいふへき−ことすくなにて |
06648 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にてたえなはたえむしつたまき又くり返しなかき恨を
このよにて−たえなはたえむ−しつたまき−またくりかへし−なかきうらみを |
06649 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すさをよしやなけかんつらきにもうきにもよわる心なりせは
こひしさを−よしやなけかむ−つらきにも−うきにもよわる−こころなりせは |
06650 |
未入力 正徹 (xxx)
おちまさる袖の涙の玉きはる此身やかきり恋はつきせし
おちまさる−そてのなみたの−たまきはる−このみやかきり−こひはつきせし |
06651 |
未入力 正徹 (xxx)
よし人のほたしともなれあふ事を此世になかくかへぬ玉の緒
よしひとの−ほたしともなれ−あふことを−このよになかく−かへぬたまのを |
06652 |
未入力 正徹 (xxx)
枕より跡よりとたにおもははや身をせめはつる恋のやつこを
まくらより−あとよりとたに−おもははや−みをせめはつる−こひのやつこを |
06653 |
未入力 正徹 (xxx)
さすか身にをしき命のかけものはあふにかへんをかちまけにして
さすかみに−をしきいのちの−かけものは−あふにかへむを−かちまけにして |
06654 |
未入力 正徹 (xxx)
行末の契しられて時のまに先ことのはのつまそかはれる
ゆくすゑの−ちきりしられて−ときのまに−まつことのはの−つまそかはれる |
06655 |
未入力 正徹 (xxx)
うしとみるけふこそあれと人心かはりやすきをたのむ中かな
うしとみる−けふこそあれと−ひとこころ−かはりやすきを−たのむなかかな |
06656 |
未入力 正徹 (xxx)
あすか川かはる淵せに生ふるものなひきし末はみたれはてつつ
あすかかは−かはるふちせに−おふるもの−なひきしすゑは−みたれはてつつ |
06657 |
未入力 正徹 (xxx)
宿かるる契をしれはいなつまのひとりのとけき袖の上かな
やとかるる−ちきりをしれは−いなつまの−ひとりのとけき−そてのうへかな |
06658 |
未入力 正徹 (xxx)
さやかにそ契りて出てしいもせ山かへりみすれはかかるうき雲
さやかにそ−ちきりていてし−いもせやま−かへりみすれは−かかるうきくも |
06659 |
未入力 正徹 (xxx)
年比もさらは夜かれをならはさて心のままに床はなり行く
としころも−さらはよかれを−ならはさて−こころのままに−とこはなりゆく |
06660 |
未入力 正徹 (xxx)
江を浅み此世のうちの契さへみしかきあしによらぬ浪かな
えをあさみ−このよのうちの−ちきりさへ−みしかきあしに−よらぬなみかな |
06661 |
未入力 正徹 (xxx)
さためなき此世中のことわりはかはるそ人のかはらさりけり
さためなき−このよのなかの−ことわりは−かはるそひとの−かはらさりけり |
06662 |
未入力 正徹 (xxx)
つつり行く人の心の水の花さそふよるせは風も吹きあへす
つつりゆく−ひとのこころの−みつのはな−さそふよるせは−かせもふきあへす |
06663 |
未入力 正徹 (xxx)
つつむ名も散りしことのは吹返し又色見せぬ袖の木からし
つつむなも−ちりしことのは−ふきかへし−またいろみせぬ−そてのこからし |
06664 |
未入力 正徹 (xxx)
夢かとよひころうけ引く手のうらをかへすは遅き心かはりは
ゆめかとよ−ひころうけひく−てのうらを−かへすはおそき−こころかはりは |
06665 |
未入力 正徹 (xxx)
風わたる夕の雲のたちとよりかはりやすきをなかめわひつつ
かせわたる−ゆふへのくもの−たちとより−かはりやすきを−なかめわひつつ |
06666 |
未入力 正徹 (xxx)
いまさらにすけなやすかのあら野風心の秋の花もしほれて
いまさらに−すけなやすかの−あらのかせ−こころのあきの−はなもしほれて |
06667 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にきえ雲にかくれて程そなきむかひし月の心かはりは
そてにきえ−くもにかくれて−ほとそなき−むかひしつきの−こころかはりは |
06668 |
未入力 正徹 (xxx)
かはるともよしや吉野のみをつくし立つ川波ははやく朽ちにき
かはるとも−よしやよしのの−みをつくし−たつかはなみは−はやくくちにき |
06669 |
未入力 正徹 (xxx)
契あらはかとさせりともさはらめや思ふむくらの宿としらせよ
ちきりあらは−かとさせりとも−さはらめや−おもふむくらの−やととしらせよ |
06670 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ人の心もしらぬ宿の犬先とかめぬや契なるらん
とふひとの−こころもしらぬ−やとのいぬ−まつとかめぬや−ちきりなるらむ |
06671 |
未入力 正徹 (xxx)
とははやとおもふ心のしるへかなたれもをしへぬ宿の梢を
とははやと−おもふこころの−しるへかな−たれもをしへぬ−やとのこすゑを |
06672 |
未入力 正徹 (xxx)
行きやらてゆゑ有る庭の木立にもをしへぬ宿はうたかはれつつ
ゆきやらて−ゆゑあるにはの−こたちにも−をしへぬやとは−うたかはれつつ |
06673 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆきて我心のおくをかたらはやたとへはえそか千島なりとも
ゆきてわか−こころのおくを−かたらはや−たとへはえそか−ちしまなりとも |
06674 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原とへは白玉露落ちて人のゆかりの秋かせそふく
くさのはら−とへはしらたま−つゆおちて−ひとのゆかりの−あきかせそふく |
06675 |
未入力 正徹 (xxx)
をしへこし宿のつまなし名もつらくこたへぬ陰に立ちそわつらふ
をしへこし−やとのつまなし−なもつらく−こたへぬかけに−たちそわつらふ |
06676 |
未入力 正徹 (xxx)
とまやもるまことにあまの子なりともしらはや磯の見るめはかりは
とまやもる−まことにあまの−こなりとも−しらはやいその−みるめはかりは |
06677 |
未入力 正徹 (xxx)
たつねわひ虎のふすともたのまれぬ野へに命を猶やのこさん
たつねわひ−とらのふすとも−たのまれぬ−のへにいのちを−なほやのこさむ |
06678 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふことまたいひ出てぬむくらふのさし入のこ屋にはらふ松風
おもふこと−またいひいてぬ−むくらふの−さしいりのこやに−はらふまつかせ |
06679 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人のをしへし水のなかれよる住む宿ちかき松風そふく
みしひとの−をしへしみつの−なかれよる−すむやとちかき−まつかせそふく |
06680 |
未入力 正徹 (xxx)
しるへする人の門文ひらきみて又おしたてはかひやなからん
しるへする−ひとのかとふみ−ひらきみて−またおしたては−かひやなからむ |
06681 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめしをしらぬ里人とかむともまつらんものを杉ならぬ門
たのめしを−しらぬさとひと−とかむとも−まつらむものを−すきならぬかと |
06682 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人のすむ里まてはほのききぬ門たかへせぬしるへともかな
みしひとの−すむさとまては−ほのききぬ−かとたかへせぬ−しるへともかな |
06683 |
未入力 正徹 (xxx)
とひかねし門のしるしの岩井つついはぬ思ひやくみしらるらん
とひかねし−かとのしるしの−いはゐつつ−いはぬおもひや−くみしらるらむ |
06684 |
未入力 正徹 (xxx)
はけしくも吹きむかふかなやととはぬ人の心のおくの山かせ
はけしくも−ふきむかふかな−やととはぬ−ひとのこころの−おくのやまかせ |
06685 |
未入力 正徹 (xxx)
門ことに立聞く宿はさ夜ふけて人しつまりぬたれにとはまし
かとことに−たちきくやとは−さよふけて−ひとしつまりぬ−たれにとはまし |
06686 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりし宿のとなりの人にしもかたらひ行くそ先契なる
しらさりし−やとのとなりの−ひとにしも−かたらひゆくそ−まつちきりなる |
06687 |
未入力 正徹 (xxx)
とひあてん哀おもひの家数もおほくはあらぬ山さとにして
とひあてむ−あはれおもひの−いへかすも−おほくはあらぬ−やまさとにして |
06688 |
未入力 正徹 (xxx)
逢見んはよしかたそきのしるへせよ住吉のうら住吉のさと
あひみむは−よしかたそきの−しるへせよ−すみよしのうら−すみよしのさと |
06689 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくにいとひはつへき中としる我か身や人のうき世なるらん
とにかくに−いとひはつへき−なかとしる−わかみやひとの−うきよなるらむ |
06690 |
未入力 正徹 (xxx)
しるはかりいひよれは又うしろ手になしてそ人に遠さかりゆく
しるはかり−いひよれはまた−うしろてに−なしてそひとに−とほさかりゆく |
06691 |
未入力 正徹 (xxx)
いく度か身をしる心くり返しいとふにはへる池のねぬ縄
いくたひか−みをしるこころ−くりかへし−いとふにはへる−いけのねぬなは |
06692 |
未入力 正徹 (xxx)
なさけなくたれもはかなき世中の命を人のいそく身にして
なさけなく−たれもはかなき−よのなかの−いのちをひとの−いそくみにして |
06693 |
未入力 正徹 (xxx)
わかあるに世はうき物と思ひしれたたいたつらにすまはかひなし
わかあるに−よはうきものと−おもひしれ−たたいたつらに−すまはかひなし |
06694 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふとてわか住む里をかふるほとうき世おもはは君やなからん
いとふとて−わかすむさとを−かふるほと−うきよおもはは−きみやなからむ |
06695 |
未入力 正徹 (xxx)
くらき夜もさたかにむかふひまもなし人の心やかへのともし火
くらきよも−さたかにむかふ−ひまもなし−ひとのこころや−かへのともしひ |
06696 |
未入力 正徹 (xxx)
友そかしかへの灯よなよなにそむけられてもきえぬ命は
ともそかし−かへのともしひ−よなよなに−そむけられても−きえぬいのちは |
06697 |
未入力 正徹 (xxx)
そむくとて雲にものらは待ちそ見んかへる夕の人のかたみを
そむくとて−くもにものらは−まちそみむ−かへるゆふへの−ひとのかたみを |
06698 |
未入力 正徹 (xxx)
からくわれ人のうき世となるみ野や夜るみつ塩の道をよくらん
からくわれ−ひとのうきよと−なるみのや−よるみつしほの−みちをよくらむ |
06699 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中と思ひそ捨つる我にたにそむく心は君もゆるさす
うきなかと−おもひそすてつる−われにたに−そむくこころは−きみもゆるさす |
06700 |
未入力 正徹 (xxx)
我そうき月に灯そむくるもあはれむ物と人はしらすや
われそうき−つきにともしひ−そむくるも−あはれむものと−ひとはしらすや |
06701 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひしれ世中をたに我ゆゑにそむけとてこそ契りそめけめ
おもひしれ−よのなかをたに−われゆゑに−そむけとてこそ−ちきりそめけめ |
06702 |
未入力 正徹 (xxx)
君そ猶我をそむくるうらみわひいははきくへきかへの灯
きみそなほ−われをそむくる−うらみわひ−いははきくへき−かへのともしひ |
06703 |
未入力 正徹 (xxx)
うらめしやみるめあはせし通路をわさとちかへてしらすかほなる
うらめしや−みるめあはせし−かよひちを−わさとちかへて−しらすかほなる |
06704 |
未入力 正徹 (xxx)
いく山を人の心にへたつらんわかおもひ入るすゑにまかせて
いくやまを−ひとのこころに−へたつらむ−わかおもひいる−すゑにまかせて |
06705 |
未入力 正徹 (xxx)
かけたえてのちそ袂はぬれまさるいかか結ひし忘井の水
かけたえて−のちそたもとは−ぬれまさる−いかかむすひし−わすれゐのみつ |
06706 |
未入力 正徹 (xxx)
あひ見しをになせとは諸ともに思ふもならひいふもためしを
あひみしを−にゆめなせとは−もろともに−おもふもならひ−いふもためしを |
06707 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしを忘るるあらぬ空おほれたのまぬ物のたのむとやせん
ちきりしを−わするるあらぬ−そらおほれ−たのまぬものの−たのむとやせむ |
06708 |
未入力 正徹 (xxx)
人そしる雲まの月の空おほれそれとも見えぬ秋の心を
ひとそしる−くもまのつきの−そらおほれ−それともみえぬ−あきのこころを |
06709 |
未入力 正徹 (xxx)
みそしらぬ此身なからやあらぬ世に生れて人に面かはりする
みそしらぬ−このみなからや−あらぬよに−うまれてひとに−おもかはりする |
06710 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれしとたたいひ捨てしことのはを手に取りいたすならひなくして
わすれしと−たたいひすてし−ことのはを−てにとりいたす−ならひなくして |
06711 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしはちかきにつけて猶そうき物忘れする年のほとかは
ちきりしは−ちかきにつけて−なほそうき−ものわすれする−としのほとかは |
06712 |
未入力 正徹 (xxx)
末かけしことのはことの物わすれわすれぬ露は我か袖にのみ
すゑかけし−ことのはことの−ものわすれ−わすれぬつゆは−わかそてにのみ |
06713 |
未入力 正徹 (xxx)
わするるや此世なからに身をかへし人かと見るも面かはりせす
わするるや−このよなからに−みをかへし−ひとかとみるも−おもかはりせす |
06714 |
未入力 正徹 (xxx)
あふと見る夢になせとのことのははかれぬ枕の下のかよひち
あふとみる−ゆめになせとの−ことのはは−かれぬまくらの−したのかよひち |
06715 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはもわすれ草こそ生ひかはる契あさちか人の庭とて
ことのはも−わすれくさこそ−おひかはる−ちきりあさちか−ひとのにはとて |
06716 |
未入力 正徹 (xxx)
ともに見て人はその夜に秋の夢おとろかすともおほえやはせん
ともにみて−ひとはそのよに−あきのゆめ−おとろかすとも−おほえやはせむ |
06717 |
未入力 正徹 (xxx)
なれし夜の面影もうし忘れ草おふてふ野へにあさき沢水
なれしよの−おもかけもうし−わすれくさ−おふてふのへに−あさきさはみつ |
06718 |
未入力 正徹 (xxx)
つらかりし人のことのはひろひおく忘れかたみほ忘れしのため
つらかりし−ひとのことのは−ひろひおく−わすれかたみほ−わすれしのため |
06719 |
未入力 正徹 (xxx)
忘水むすひし夢も歌かたにきゆるあさちか野への秋風
わすれみつ−むすひしゆめも−うたかたに−きゆるあさちか−のへのあきかせ |
06720 |
未入力 正徹 (xxx)
あま衣袖しほたれて忘貝ひろひつくさぬ磯の浪かな
あまころも−そてしほたれて−わすれかひ−ひろひつくさぬ−いそのなみかな |
06721 |
未入力 正徹 (xxx)
今そ猶見ぬ世に忍ふむら雲の空忘せし比の月かけ
いまそなほ−みぬよにしのふ−むらくもの−そらわすれせし−ころのつきかけ |
06722 |
未入力 正徹 (xxx)
こし人にわすらるるこそ忘られぬ道たかへにもとふ夜はそなき
こしひとに−わすらるるこそ−わすられぬ−みちたかへにも−とふよはそなき |
06723 |
未入力 正徹 (xxx)
我に人見えさりけめや契りしをたとへは夢になす世なりとも
われにひと−みえさりけめや−ちきりしを−たとへはゆめに−なすよなりとも |
06724 |
未入力 正徹 (xxx)
草ふかき野中にゆかぬ忘水むすふ契に君そくみしる
くさふかき−のなかにゆかぬ−わすれみつ−むすふちきりに−きみそくみしる |
06725 |
未入力 正徹 (xxx)
真砂にもかすやまさらん忘貝かひなきいそにくたく心は
まさこにも−かすやまさらむ−わすれかひ−かひなきいそに−くたくこころは |
06726 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れけりわすれんと思ふ心あらは忘れしものを忘れはてつつ
わすれけり−わすれむとおもふ−こころあらは−わすれしものを−わすれはてつつ |
06727 |
未入力 正徹 (xxx)
もとの身をわすれにけりと忘るるや見さりし雲をはらふ秋かせ
もとのみを−わすれにけりと−わするるや−みさりしくもを−はらふあきかせ |
06728 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれぬを忘るるよしそ猶つらきたたに忘れてせめて忘れよ
わすれぬを−わするるよしそ−なほつらき−たたにわすれて−せめてわすれよ |
06729 |
未入力 正徹 (xxx)
なれにしを人こそしらめおきなさひかりの契をたつそ啼くなる
なれにしを−ひとこそしらめ−おきなさひ−かりのちきりを−たつそなくなる |
06730 |
未入力 正徹 (xxx)
かひなしやかけはなれぬるうつせみのもぬけのきぬのかたみはかりは
かひなしや−かけはなれぬる−うつせみの−もぬけのきぬの−かたみはかりは |
06731 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもつらき涙にみかくれて身をしつめゆくえをはたのまし
ちきりしも−つらきなみたに−みかくれて−みをしつめゆく−えをはたのまし |
06732 |
未入力 正徹 (xxx)
こととへはなき名のりその磯かくれ立ちわつらふもなみそくるしき
こととへは−なきなのりその−いそかくれ−たちわつらふも−なみそくるしき |
06733 |
未入力 正徹 (xxx)
かれしより見えすよさらにかくれぬの下はふぬなはみこもりにして
かれしより−みえすよさらに−かくれぬの−したはふぬなは−みこもりにして |
06734 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれにきいさとこたへてせくかたもあらしあふせの床の山河
なかれにき−いさとこたへて−せくかたも−あらしあふせの−とこのやまかは |
06735 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかしとてなにたのみけん涙川なかれてそこにあらはなる世を
ふかしとて−なにたのみけむ−なみたかは−なかれてそこに−あらはなるよを |
06736 |
未入力 正徹 (xxx)
さまかふるその石川のこまう人にひかれて出てし弓張の月
さまかふる−そのいしかはの−こまうとに−ひかれていてし−ゆみはりのつき |
06737 |
未入力 正徹 (xxx)
身にもしるそこもあらはになるとよりさしこす塩の跡のひかたを
みにもしる−そこもあらはに−なるとより−さしこすしほの−あとのひかたを |
06738 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲のかかるを中の契にてあとの名つらき衣衣の月
うきくもの−かかるをなかの−ちきりにて−あとのなつらき−きぬきぬのつき |
06739 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣はなれも忍はしうしろ手をしくるも人に見えてけるかな
きぬきぬは−なれもしのはし−うしろてを−しくるもひとに−みえてけるかな |
06740 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣中の契のうす物に今朝かくれなき身をそ恨むる
さよころも−なかのちきりの−うすものに−けさかくれなき−みをそうらむる |
06741 |
未入力 正徹 (xxx)
あともなき嶺のうき雲いつまてかいもせの山を立ちかくしけん
あともなき−みねのうきくも−いつまてか−いもせのやまを−たちかくしけむ |
06742 |
未入力 正徹 (xxx)
うき名立つほとやはありし衣衣の明けつる道も人はなかりき
うきなたつ−ほとやはありし−きぬきぬの−あけつるみちも−ひとはなかりき |
06743 |
未入力 正徹 (xxx)
ふくる夜の霧にかくれし契さへあさはの野ちの露の秋かせ
ふくるよの−きりにかくれし−ちきりさへ−あさはののちの−つゆのあきかせ |
06744 |
未入力 正徹 (xxx)
あさましやうき夕立の雲ならてもすそにかかる二あゐの帯
あさましや−うきゆふたちの−くもならて−もすそにかかる−ふたあゐのおひ |
06745 |
未入力 正徹 (xxx)
色見えて人の秋風身にそしむつま吹きかへす下の衣に
いろみえて−ひとのあきかせ−みにそしむ−つまふきかへす−したのころもに |
06746 |
未入力 正徹 (xxx)
見る人の目にたつほとはいつのまにむねにもあまる煙なるらん
みるひとの−めにたつほとは−いつのまに−むねにもあまる−けふりなるらむ |
06747 |
未入力 正徹 (xxx)
あくる夜のささのかりほにたた一重なにのかくれもなき契かな
あくるよの−ささのかりほに−たたひとへ−なにのかくれも−なきちきりかな |
06748 |
未入力 正徹 (xxx)
しのひこし入江の小舟あしまよりこき出てて浪にぬるる袖かな
しのひこし−いりえのをふね−あしまより−こきいててなみに−ぬるるそてかな |
06749 |
未入力 正徹 (xxx)
名とり河いかに見えけむ昔たに埋木なりし瀬瀬のみくつは
なとりかは−いかにみえけむ−むかしたに−うもれきなりし−せせのみくつは |
06750 |
未入力 正徹 (xxx)
御かりはや草なき床におつる鳥せめくる恋も身はつかれつつ
みかりはや−くさなきとこに−おつるとり−せめくるこひも−みはつかれつつ |
06751 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひのみ真砂を浜に敷きおきてしのひになしぬよせし浦波
おもひのみ−まさこをはまに−しきおきて−しのひになしぬ−よせしうらなみ |
06752 |
未入力 正徹 (xxx)
東屋のあまりにつらししのすたれ心のおくもかくれなき身は
あつまやの−あまりにつらし−しのすたれ−こころのおくも−かくれなきみは |
06753 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか今朝しとねのはしを身にふれしやみのにしきを立つ名にそかる
いかかけさ−しとねのはしを−みにふれし−やみのにしきを−たつなにそかる |
06754 |
未入力 正徹 (xxx)
しるからむあまる思ひのけふりよりやけののききす声たてすとも
しるからむ−あまるおもひの−けふりより−やけののききす−こゑたてすとも |
06755 |
未入力 正徹 (xxx)
新枕そのみかの夜のあらはしにいたす匣の身やはこかるる
にひまくら−そのみかのよの−あらはしに−いたすくしけの−みやはこかるる |
06756 |
未入力 正徹 (xxx)
あらき浪引きしほ貝もあらはなる渚の玉と身はくたけつつ
あらきなみ−ひきしほかひも−あらはなる−なきさのたまと−みはくたけつつ |
06757 |
未入力 正徹 (xxx)
つらしとそ南のうみのおきの石弥生の三かの塩もあらはに
つらしとそ−みなみのうみの−おきのいし−やよひのみかの−しほもあらはに |
06758 |
未入力 正徹 (xxx)
あひ見しは霜ののちなる松の葉にあまる雫を散さすもかな
あひみしは−しもののちなる−まつのはに−あまるしつくを−ちらさすもかな |
06759 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きわくる今朝の嵐そうらめしき今夜そ夢にねしろ高かや
ふきわくる−けさのあらしそ−うらめしき−こよひそゆめに−ねしろたかかや |
06760 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかして人とよこほりふせるとはさやに見えけんかひのしらねそ
いかかして−ひととよこほり−ふせるとは−さやにみえけむ−かひのしらねそ |
06761 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめや雲にすかたをあらはして我か名はまたき立の市人
しるらめや−くもにすかたを−あらはして−わかなはまたき−たつのいちひと |
06762 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまそなき山かたつきて思ふともたれ白雲の隔ある身は
ひまそなき−やまかたつきて−おもふとも−たれしらくもの−へたてあるみは |
06763 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ河たたよふ舟のかたのりに身をしつめてや浪にひかれん
おもひかは−たたよふふねの−かたのりに−みをしつめてや−なみにひかれむ |
06764 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬまをまち立ちけりとかけてたに身そ思はれぬかたつ方人
あはぬまを−まちたちけりと−かけてたに−みそおもはれぬ−かたつかたうと |
06765 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさは真砂なかるる瀬とそなる我かかたふちにしつむ思ひを
つれなさは−まさこなかるる−せとそなる−わかかたふちに−しつむおもひを |
06766 |
未入力 正徹 (xxx)
色そめぬ人の心そからあゐのしかまのかちのうらよおもてよ
いろそめぬ−ひとのこころそ−からあゐの−しかまのかちの−うらよおもてよ |
06767 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつ舟かたほ心にまかせねは思ふうらにもよらぬ恋かな
おきつふね−かたほこころに−まかせねは−おもふうらにも−よらぬこひかな |
06768 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ川身をかた淵にしつめてもうき名は浪に立ちやのこらん
おもひかは−みをかたふちに−しつめても−うきなはなみに−たちやのこらむ |
06769 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ河水の哀をよもかけしわかかた淵にしつみはつとも
おもひかは−みつのあはれを−よもかけし−わかかたふちに−しつみはつとも |
06770 |
未入力 正徹 (xxx)
ふか草やふしうき床のかたうつらかる人なしの身をもすてなて
ふかくさや−ふしうきとこの−かたうつら−かるひとなしの−みをもすてなて |
06771 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは忘れぬへしやあはすして過くる月日のたつにまかせん
よしさらは−わすれぬへしや−あはすして−すくるつきひの−たつにまかせむ |
06772 |
未入力 正徹 (xxx)
あひ見てしその世の人のことのはをかたるも我をしらすかほなる
あひみてし−そのよのひとの−ことのはを−かたるもわれを−しらすかほなる |
06773 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなしや三とせの外を待ちわひぬ契はかりにのこるいのちは
つれなしや−みとせのほかを−まちわひぬ−ちきりはかりに−のこるいのちは |
06774 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣うかりしままにあひ見すて年さへ中にある契かな
さよころも−うかりしままに−あひみすて−としさへなかに−あるちきりかな |
06775 |
未入力 正徹 (xxx)
あかせ猶立ちにし名をも世の人は忘れやすらんことなしにして
あかせなほ−たちにしなをも−よのひとは−わすれやすらむ−ことなしにして |
06776 |
未入力 正徹 (xxx)
行へなくおもふありかをこの国にこよかし問はむかよふまほろし
ゆくへなく−おもふありかを−このくにに−こよかしとはむ−かよふまほろし |
06777 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめやひるの雲まの星のかけ見えんはかたく思ひ消えつつ
しるらめや−ひるのくもまの−ほしのかけ−みえむはかたく−おもひきえつつ |
06778 |
未入力 正徹 (xxx)
庵そうき哀むかしをわすれ草かりふかましを夕暮の雨
いほそうき−あはれむかしを−わすれくさ−かりふかましを−ゆふくれのあめ |
06779 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬまにいくたひ朽ちん契りしはさもかた岡のもりの下なは
あはぬまに−いくたひくちむ−ちきりしは−さもかたをかの−もりのしたなは |
06780 |
未入力 正徹 (xxx)
生れ来てまれの御法にあへるをそかくはおもはめ人はよしなし
うまれきて−まれのみのりに−あへるをそ−かくはおもはめ−ひとはよしなし |
06781 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかのわかまつつまや秋二毛あひ見まほしの稀になり行く
さをしかの−わかまつつまや−あきふたけ−あひみまほしの−まれになりゆく |
06782 |
未入力 正徹 (xxx)
思出てよ三代にみかきし玉さかにあふもうれしき光ならねと
おもひいてよ−みよにみかきし−たまさかに−あふもうれしき−ひかりならねと |
06783 |
未入力 正徹 (xxx)
大井川あふせをまれの御幸にて袖そ紅葉の淵と成りぬる
おほゐかは−あふせをまれの−みゆきにて−そてそもみちの−ふちとなりぬる |
06784 |
未入力 正徹 (xxx)
せり川やわたりてなとか問はさらむまれの御幸は君ひとりこそ
せりかはや−わたりてなとか−とはさらむ−まれのみゆきは−きみひとりこそ |
06785 |
未入力 正徹 (xxx)
たか秋の風のやとりにかけ初めて乱れはつらんささかにの糸
たかあきの−かせのやとりに−かけそめて−みたれはつらむ−ささかにのいと |
06786 |
未入力 正徹 (xxx)
分けすてて出てにしままの春秋の草のみかるる宿のかよひち
わけすてて−いてにしままの−はるあきの−くさのみかるる−やとのかよひち |
06787 |
未入力 正徹 (xxx)
影見えし人のかたみの水たえて水k草かれ行く秋のかなしさ
かけみえし−ひとのかたみの−みつたえて−みくさかれゆく−あきのかなしさ |
06788 |
未入力 正徹 (xxx)
よりかけし人のかた糸たえしまにかよふ心の末もたかひぬ
よりかけし−ひとのかたいと−たえしまに−かよふこころの−すゑもたかひぬ |
06789 |
未入力 正徹 (xxx)
かた糸をよるの契のたえしよりたくひそつらきくめの岩はし
かたいとを−よるのちきりの−たえしより−たくひそつらき−くめのいははし |
06790 |
未入力 正徹 (xxx)
いとせめてうき名を埋むこけならはかよひし庭に跡見えすとも
いとせめて−うきなをうつむ−こけならは−かよひしにはに−あとみえすとも |
06791 |
未入力 正徹 (xxx)
手になれしむかしそつらき中たゆる契のままのしつのをたまき
てになれし−むかしそつらき−なかたゆる−ちきりのままの−しつのをたまき |
06792 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中はむなしき空にとふ鳥のあとかと見えし雲も消えつつ
うきなかは−むなしきそらに−とふとりの−あとかとみえし−くももきえつつ |
06793 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれて草とも思ひなされぬやうきふし柴のふるき世の露
そてぬれて−くさともおもひ−なされぬや−うきふししはの−ふるきよのつゆ |
06794 |
未入力 正徹 (xxx)
み草ゐぬ水の涙のかたみさへ我かかけのこる床はうらめし
みくさゐぬ−みつのなみたの−かたみさへ−わかかけのこる−とこはうらめし |
06795 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしはことなし草と成りてたになほ色かはる秋のかよひち
ちきりしは−ことなしくさと−なりてたに−なほいろかはる−あきのかよひち |
06796 |
未入力 正徹 (xxx)
わすらるる此たひ世世のきつなまてきらはや玉のををも知らすて
わすらるる−このたひよよの−きつなまて−きらはやたまの−ををもしらすて |
06797 |
未入力 正徹 (xxx)
ささかにの軒の糸すちたえたえに成りにし宿は秋風そふく
ささかにの−のきのいとすち−たえたえに−なりにしやとは−あきかせそふく |
06798 |
未入力 正徹 (xxx)
なほたのみこしのすか原枯れはててもとの契はなかくたえにき
なほたのみ−こしのすかはら−かれはてて−もとのちきりは−なかくたえにき |
06799 |
未入力 正徹 (xxx)
人はよも見きともかけしわすれねと我か身もいまはたけくまの松
ひとはよも−みきともかけし−わすれねと−わかみもいまは−たけくまのまつ |
06800 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめしは跡なき風の夕は山見えてはかなき夢のうきはし
たのめしは−あとなきかせの−ゆふはやま−みえてはかなき−ゆめのうきはし |
06801 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき夜をたえにしままにあひみねはたはふれにくき床の秋かせ
なかきよを−たえにしままに−あひみねは−たはふれにくき−とこのあきかせ |
06802 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ出てて月も嵐もたつぬなよむなしき袖はしくれはててき
おもひいてて−つきもあらしも−たつぬなよ−むなしきそては−しくれはててき |
06803 |
未入力 正徹 (xxx)
いてはやななかむる庭のくれ竹にふるきおもひの家鳩の声
いてはやな−なかむるにはの−くれたけに−ふるきおもひの−いへはとのこゑ |
06804 |
未入力 正徹 (xxx)
ありとたにしられすかれぬおく山の木の葉にふれる雪の下草
ありとたに−しられすかれぬ−おくやまの−このはにふれる−ゆきのしたくさ |
06805 |
未入力 正徹 (xxx)
しるしなき思ひは年をふる川や杉の二本とふかたもかな
しるしなき−おもひはとしを−ふるかはや−すきのふたもと−とふかたもかな |
06806 |
未入力 正徹 (xxx)
涙のみふるき枕はしるくともむかしかたりをたれにもらさん
なみたのみ−ふるきまくらは−しるくとも−むかしかたりを−たれにもらさむ |
06807 |
未入力 正徹 (xxx)
たへて世に猶もふる野の思ひ草枯れなて種をなとのこすらん
たへてよに−なほもふるのの−おもひくさ−かれなてたねを−なとのこすらむ |
06808 |
未入力 正徹 (xxx)
しのはるることのはもありうしとのみ昔見すてし中の玉礼
しのはるる−ことのはもあり−うしとのみ−むかしみすてし−なかのたまつさ |
06809 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに八しほそくちし捨衣ふるき涙のそめしくれなゐ
いたつらに−やしほそくちし−すてころも−ふるきなみたの−そめしくれなゐ |
06810 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしも猶たたいまと水くきの色もかはらぬ跡そのこれる
ちきりしも−なほたたいまと−みつくきの−いろもかはらぬ−あとそのこれる |
06811 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世そいそのかみ山色かはる秋風なからたえしことのは
いつのよそ−いそのかみやま−いろかはる−あきかせなから−たえしことのは |
06812 |
未入力 正徹 (xxx)
見るそうき其世にもあらぬ紙のかにしみの出行く文はやふれて
みるそうき−そのよにもあらぬ−かみのかに−しみのいてゆく−ふみはやふれて |
06813 |
未入力 正徹 (xxx)
今みるもうき身に紙魚のすむ文にのこるかたえし中の秋風
いまみるも−うきみにしみの−すむふみに−のこるかたえし−なかのあきかせ |
06814 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれはや恋のやつこも孫彦の世につたへきてつらき思ひを
わすれはや−こひのやつこも−まこひこの−よにつたへきて−つらきおもひを |
06815 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちせしな涙時雨のふることはよその契にならのはの霜
くちせしな−なみたしくれの−ふることは−よそのちきりに−ならのはのしも |
06816 |
未入力 正徹 (xxx)
むねにたく煙もふるき枕かの消行く閨に身はこかれつつ
むねにたく−けふりもふるき−まくらかの−きえゆくねやに−みはこかれつつ |
06817 |
未入力 正徹 (xxx)
おちつもる古き枕の苔つたふ雫ににこる床の山川
おちつもる−ふるきまくらの−こけつたふ−しつくににこる−とこのやまかは |
06818 |
未入力 正徹 (xxx)
遠つ春契くちきの古柳なひきし風の音つれもせす
とほつはる−ちきりくちきの−ふるやなき−なひきしかせの−おとつれもせす |
06819 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中をかたりつたふる人やあらんあれてもふるの都なりせは
うきなかを−かたりつたふる−ひとやあらむ−あれてもふるの−みやこなりせは |
06820 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにけり人と二はの老木まてまつとしきかは哀とやいはん
ふりにけり−ひととふたはの−おいきまて−まつとしきかは−あはれとやいはむ |
06821 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにけり岩にもおふる松のたね有るを憑みし恋はあはすて
ふりにけり−いはにもおふる−まつのたね−あるをたのみし−こひはあはすて |
06822 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかり思ひ初めにし時そうきいつの年とはさたかならねと
かくはかり−おもひそめにし−ときそうき−いつのとしとは−さたかならねと |
06823 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中はめくりし六の道すからおもひそひ行く此世なりけり
うきなかは−めくりしむつの−みちすから−おもひそひゆく−このよなりけり |
06824 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなしようき田にかくる下縄の七度くちし杜のときは木
つれなしよ−うきたにかくる−したなはの−ななたひくちし−もりのときはき |
06825 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふとてつれなき人もみそきせは恋を哀と神やうけまし
いとふとて−つれなきひとも−みそきせは−こひをあはれと−かみやうけまし |
06826 |
未入力 正徹 (xxx)
あひかたき玉やうかれて貴舟川岩こす浪の影とちるらん
あひかたき−たまやうかれて−きふねかは−いはこすなみの−かけとちるらむ |
06827 |
未入力 正徹 (xxx)
あふせあれやきかすよかみも恋せしの御祓のままにうけしためしを
あふせあれや−きかすよかみも−こひせしの−みそきのままに−うけしためしを |
06828 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへりむなしき年をふる川の杉のしるしもなき契かな
ゆきかへり−むなしきとしを−ふるかはの−すきのしるしも−なきちきりかな |
06829 |
未入力 正徹 (xxx)
たのみきてかくるをうけぬみそきともまた白ゆふのなひく神かき
たのみきて−かくるをうけぬ−みそきとも−またしらゆふの−なひくかみかき |
06830 |
未入力 正徹 (xxx)
しひて猶あふ夜ののちのねきことをうけすは神を又やうらみん
しひてなほ−あふよののちの−ねきことを−うけすはかみを−またやうらみむ |
06831 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへの女神男神のしるしあらは恋にみそきを猶やかけまし
いにしへの−めかみをかみの−しるしあらは−こひにみそきを−なほやかけまし |
06832 |
未入力 正徹 (xxx)
なにゆゑと人やとふとていなり山おもふ社はうちもたたかす
なにゆゑと−ひとやとふとて−いなりやま−おもふやしろは−うちもたたかす |
06833 |
未入力 正徹 (xxx)
神もうけす人もつれなしいく度もうらみ所や身にかへるらん
かみもうけす−ひともつれなし−いくたひも−うらみところや−みにかへるらむ |
06834 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひねの枕のちりにましはらはあよみをはこふ神やなからん
おもひねの−まくらのちりに−ましはらは−あよみをはこふ−かみやなからむ |
06835 |
未入力 正徹 (xxx)
後の世を祈るになさは月まつと人にはいひし夕暮の空
のちのよを−いのるになさは−つきまつと−ひとにはいひし−ゆふくれのそら |
06836 |
未入力 正徹 (xxx)
我か氏の神に祈らむ子のためにつれなき人の心とも見よ
わかうちの−かみにいのらむ−このために−つれなきひとの−こころともみよ |
06837 |
未入力 正徹 (xxx)
いくみそきしてに涙の露さへもむすほほれ行く契なるらん
いくみそき−してになみたの−つゆさへも−むすほほれゆく−ちきりなるらむ |
06838 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世にはなにかは祈りままならむ恋にかきりて神もうらめし
うきよには−なにかはいのり−ままならむ−こひにかきりて−かみもうらめし |
06839 |
未入力 正徹 (xxx)
たのみこし杉の二本はつせめのならふしるしもなき契かな
たのみこし−すきのふたもと−はつせめの−ならふしるしも−なきちきりかな |
06840 |
未入力 正徹 (xxx)
貴舟川袖の涙の水かさゆゑ玉たにちらぬ瀬瀬の岩浪
きふねかは−そてのなみたの−みかさゆゑ−たまたにちらぬ−せせのいはなみ |
06841 |
未入力 正徹 (xxx)
初せ山尾上の雲のまよふさへ恋ちにつらきしるしをそみる
はつせやま−をのへのくもの−まよふさへ−こひちにつらき−しるしをそみる |
06842 |
未入力 正徹 (xxx)
七日ひぬ袖の涙の川社あらはゆかてやしのに祈らん
なぬかひぬ−そてのなみたの−かはやしろ−あらはゆかてや−しのにいのらむ |
06843 |
未入力 正徹 (xxx)
あひ見すはわすれん祈り二かたに神も聞入れすなる契かな
あひみすは−わすれむいのり−ふたかたに−かみもききいれす−なるちきりかな |
06844 |
未入力 正徹 (xxx)
見すやまつ神のいかきにはふくすのめくむ春あらはかれん恨を
みすやまつ−かみのいかきに−はふくすの−めくむはるあらは−かれむうらみを |
06845 |
未入力 正徹 (xxx)
契あれや手にくる玉のををよわみたゆるをいのるしるしとそきく
ちきりあれや−てにくるたまの−ををよわみ−たゆるをいのる−しるしとそきく |
06846 |
未入力 正徹 (xxx)
祈りこし道にそかへる初瀬川はやくしるしを三輪の杉村
いのりこし−みちにそかへる−はつせかは−はやくしるしを−みわのすきむら |
06847 |
未入力 正徹 (xxx)
年へても契そかたき先の世に祈りおくをややすくうくらん
としへても−ちきりそかたき−さきのよに−いのりおくをや−やすくうくらむ |
06848 |
未入力 正徹 (xxx)
よしたのめ恋こそ人のいのるとも御祓をうけぬ神はしるらん
よしたのめ−こひこそひとの−いのるとも−みそきをうけぬ−かみはしるらむ |
06849 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりかねいく度かへり貴舟川玉きはるまて身もよわりつつ
わたりかね−いくたひかへり−きふねかは−たまきはるまて−みもよわりつつ |
06850 |
未入力 正徹 (xxx)
神しうけていもかりゆかむしるしとやみそきかはらに千鳥鳴くなり
かみしうけて−いもかりゆかむ−しるしとや−みそきかはらに−ちとりなくなり |
06851 |
未入力 正徹 (xxx)
世世かけてたえす朽ちせぬ契とや松をむすふの神の下縄
よよかけて−たえすくちせぬ−ちきりとや−まつをむすふの−かみのしたなは |
06852 |
未入力 正徹 (xxx)
小初瀬や仏は恋をいさめおく道にたかふを哀ともしれ
をはつせや−ほとけはこひを−いさめおく−みちにたかふを−あはれともしれ |
06853 |
未入力 正徹 (xxx)
人心あらふる神にいのるともおもひなたむる暮やなからむ
ひとこころ−あらふるかみに−いのるとも−おもひなたむる−くれやなからむ |
06854 |
未入力 正徹 (xxx)
恋せしの御祓をなとかうけさらむ神のまことの道にかなはは
こひせしの−みそきをなとか−うけさらむ−かみのまことの−みちにかなはは |
06855 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての末たのめとや御祓河瀬になひくもにかかるゆふして
なかれての−すゑたのめとや−みそきかは−せになひくもに−かかるゆふして |
06856 |
未入力 正徹 (xxx)
祈らしよ人に行合のまつことは猶かたそきの千木の社に
いのらしよ−ひとにゆきあひの−まつことは−なほかたそきの−ちきのやしろに |
06857 |
未入力 正徹 (xxx)
せめて先涙吹きほせ恋せしのみそき川風袖かろきまて
せめてまつ−なみたふきほせ−こひせしの−みそきかはかせ−そてかろきまて |
06858 |
未入力 正徹 (xxx)
うけひかぬ我かねきことよあひみしとつれなき人やしめをそへけん
うけひかぬ−わかねきことよ−あひみしと−つれなきひとや−しめをそへけむ |
06859 |
未入力 正徹 (xxx)
我かかたに心ひけとそ祈りとくゆ槻あまたのを初瀬のやま
わかかたに−こころひけとそ−いのりとく−ゆつきあまたの−をはつせのやま |
06860 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟さしてそたのむ初瀬川誓のうみに入あひのかね
あまをふね−さしてそたのむ−はつせかは−ちかひのうみに−いりあひのかね |
06861 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめてもたたよふ浪そよるへなき人のちかひの海わたる舟
たのめても−たたよふなみそ−よるへなき−ひとのちかひの−うみわたるふね |
06862 |
未入力 正徹 (xxx)
貴舟川袖のみぬれて神かけしことはの淵はかはるせそなき
きふねかは−そてのみぬれて−かみかけし−ことはのふちは−かはるせそなき |
06863 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は猶そまたるるかはらしとちかひし鐘の音ならねとも
ゆふくれは−なほそまたるる−かはらしと−ちかひしかねの−おとならねとも |
06864 |
未入力 正徹 (xxx)
涙のみうき木のかめにとふうらのなとあひかたきためしなるらん
なみたのみ−うききのかめに−とふうらの−なとあひかたき−ためしなるらむ |
06865 |
未入力 正徹 (xxx)
君か手を我もとりこのいける世にふかき契の影なかはりそ
きみかてを−われもとりこの−いけるよに−ふかきちきりの−かけなかはりそ |
06866 |
未入力 正徹 (xxx)
暮ことにうしともきかす偽を見なれそなれし中の松風
くれことに−うしともきかす−いつはりを−みなれそなれし−なかのまつかせ |
06867 |
未入力 正徹 (xxx)
又そふくたれに契をかしは木の宿にならしの岡の松かせ
またそふく−たれにちきりを−かしはきの−やとにならしの−をかのまつかせ |
06868 |
未入力 正徹 (xxx)
此国も恋やはかはるとらのこのなれてもなれぬ□の心かな
このくにも−こひやはかはる−とらのこの−なれてもなれぬ−хのこころかな |
06869 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲を秋にきなれの山乙女しくるる袖の色もふりにき
うきくもを−あきにきなれの−やまをとめ−しくるるそての−いろもふりにき |
06870 |
未入力 正徹 (xxx)
ならしはやなるるそかたきはしたかのと帰る山のあくる別は
ならしはや−なるるそかたき−はしたかの−とかへるやまの−あくるわかれは |
06871 |
未入力 正徹 (xxx)
世にふれは恋になるるもかたからす思ふにたかふ我か心かな
よにふれは−こひになるるも−かたからす−おもふにたかふ−わかこころかな |
06872 |
未入力 正徹 (xxx)
世にすむはたれか思ひの家ならぬ猶出てかたき関をすゑつる
よにすむは−たれかおもひの−いへならぬ−なほいてかたき−せきをすゑつる |
06873 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中は立ちましれとも身にかへておもふ心もしらぬ市人
うきなかは−たちましれとも−みにかへて−おもふこころも−しらぬいちひと |
06874 |
未入力 正徹 (xxx)
身にしめておもふ心の花さかりなほ色そふる袖の春雨
みにしめて−おもふこころの−はなさかり−なほいろそふる−そてのはるさめ |
06875 |
未入力 正徹 (xxx)
空にしれ思ひます田のいける身を水なき鳥のねになかすとも
そらにしれ−おもひますたの−いけるみを−みつなきとりの−ねになかすとも |
06876 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そ見る初あゐそめの一しほに身をむは玉の夜はの衣手
けさそみる−はつあゐそめの−ひとしほに−みをむはたまの−よはのころもて |
06877 |
未入力 正徹 (xxx)
うらもなくおもふ我か身や偽のある世にそむく心なるらん
うらもなく−おもふわかみや−いつはりの−あるよにそむく−こころなるらむ |
06878 |
未入力 正徹 (xxx)
いつはりとさのみ見えすは一度のまことまてともなにか待たれん
いつはりと−さのみみえすは−ひとたひの−まことまてとも−なにかまたれむ |
06879 |
未入力 正徹 (xxx)
身をしれはおもふよしなる偽もある世ならすは猶やうからん
みをしれは−おもふよしなる−いつはりも−あるよならすは−なほやうからむ |
06880 |
未入力 正徹 (xxx)
うきかたに思ひしれとも偽のありのすさみそなきにまされる
うきかたに−おもひしれとも−いつはりの−ありのすさみそ−なきにまされる |
06881 |
未入力 正徹 (xxx)
いつはりのある世をすくに恨みても時にあはすはかりのことのは
いつはりの−あるよをすくに−うらみても−ときにあはすは−かりのことのは |
06882 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ川くいの八千たひうつたへにいとと浪こす袖のしからみ
おもひかは−くいのやちたひ−うつたへに−いととなみこす−そてのしからみ |
06883 |
未入力 正徹 (xxx)
むつことをのこささりしも遠さかる夜の契の後そくやしき
むつことを−のこささりしも−とほさかる−よるのちきりの−のちそくやしき |
06884 |
未入力 正徹 (xxx)
さても猶契たかへん中そともしらていかなる心見えまし
さてもなほ−ちきりたかへむ−なかそとも−しらていかなる−こころみえまし |
06885 |
未入力 正徹 (xxx)
月たかく星もなかれす猶たのみありしにまされ宿の松風
つきたかく−ほしもなかれす−なほたのみ−ありしにまされ−やとのまつかせ |
06886 |
未入力 正徹 (xxx)
よるとしれたたひたすらにみ吉野の雁の心を契にそかる
よるとしれ−たたひたすらに−みよしのの−かりのこころを−ちきりにそかる |
06887 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜又ねぬよの月に成りにけりたた一事のあいな憑に
こよひまた−ねぬよのつきに−なりにけり−たたひとことの−あいなたのめに |
06888 |
未入力 正徹 (xxx)
あつさ弓矢前をふせくたてほこと心たかくもたのむ恋かな
あつさゆみ−やさきをふせく−たてほこと−こころたかくも−たのむこひかな |
06889 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくてめくりあはしの心さへあさ日につるる在明の影
つれなくて−めくりあはしの−こころさへ−あさひにつるる−ありあけのかけ |
06890 |
未入力 正徹 (xxx)
しかまかたのほる小舟にくるしきや人はかちちにかかる川浪
しかまかた−のほるをふねに−くるしきや−ひとはかちちに−かかるかはなみ |
06891 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへり猶我かかたそあしたゆきとはぬ心のなかくみしかき
ゆきかへり−なほわかかたそ−あしたゆき−とはぬこころの−なかくみしかき |
06892 |
未入力 正徹 (xxx)
恋ちにもすすむ心そよわり行く競の馬のあとの足なみ
こひちにも−すすむこころそ−よわりゆく−くらへのうまの−あとのあしなみ |
06893 |
未入力 正徹 (xxx)
はからるる人のことはのつかのまに我もきつねの心をそかる
はからるる−ひとのことはの−つかのまに−われもきつねの−こころをそかる |
06894 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれあやしの庭のうす霧に待つ人かけや立ちまよふらん
ゆふまくれ−あやしのにはの−うすきりに−まつひとかけや−たちまよふらむ |
06895 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくはいつれの世にもあふことの此うけかたき身にそまさらん
つれなくは−いつれのよにも−あふことの−このうけかたき−みにそまさらむ |
06896 |
未入力 正徹 (xxx)
雨はこふ今夜あひつの山颪こゆへくもなき道くらくして
あめはこふ−こよひあひつの−やまおろし−こゆへくもなき−みちくらくして |
06897 |
未入力 正徹 (xxx)
別れかねまきの戸出つるくろかみをわれとひかふるさ夜の面影
わかれかね−まきのといつる−くろかみを−われとひかふる−さよのおもかけ |
06898 |
未入力 正徹 (xxx)
問ひわひぬ人の詞のはしうくも心なかくてまちやわたらん
とひわひぬ−ひとのことはの−はしうくも−こころなかくて−まちやわたらむ |
06899 |
未入力 正徹 (xxx)
わかれ路の袖のにほひをうつしとる草木もつらしあかつきの露
わかれちの−そてのにほひを−うつしとる−くさきもつらし−あかつきのつゆ |
06900 |
未入力 正徹 (xxx)
うき人の袖やはぬれん世にもりてかかる涙の雨ときくとも
うきひとの−そてやはぬれむ−よにもりて−かかるなみたの−あめときくとも |
06901 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れすよ風に声する下荻のほのかたらひし名残ならねと
わすれすよ−かせにこゑする−したをきの−ほのかたらひし−なこりならねと |
06902 |
未入力 正徹 (xxx)
おくふかくかきなす琴ののほりねもおよはぬ中の心しれとや
おくふかく−かきなすことの−のほりねも−およはぬなかの−こころしれとや |
06903 |
未入力 正徹 (xxx)
おともうし露ふく軒の荻のはにしほりなそへそ袖の秋風
おともうし−つゆふくのきの−をきのはに−しほりなそへそ−そてのあきかせ |
06904 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての名はたかくとも我か心うつりなそめそ菊の下水
なかれての−なはたかくとも−わかこころ−うつりなそめそ−きくのしたみつ |
06905 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむ吹きいたすこすの夕かせも猶おくくらき玉ことの声
みにそしむ−ふきいたすこすの−ゆふかせも−なほおくくらき−たまことのこゑ |
06906 |
未入力 正徹 (xxx)
いつのまに身にしむ声そ松風を聞きおとろかぬ夢も有る世に
いつのまに−みにしむこゑそ−まつかせを−ききおとろかぬ−ゆめもあるよに |
06907 |
未入力 正徹 (xxx)
たれそこの思ふあたりのききしれも猶過きかたき道のへの宿
たれそこの−おもふあたりの−ききしれも−なほすきかたき−みちのへのやと |
06908 |
未入力 正徹 (xxx)
見すしらぬ我になすともいかかせんまつらかおきの遠つ舟人
みすしらぬ−われになすとも−いかかせむ−まつらかおきの−とほつふなひと |
06909 |
未入力 正徹 (xxx)
たたいまの思ひの色をつけやらは花や紅葉の比や隔てむ
たたいまの−おもひのいろを−つけやらは−はなやもみちの−ころやへたてむ |
06910 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれすはひとつ涙や思ひやるほとは雲井の月に落つらん
わすれすは−ひとつなみたや−おもひやる−ほとはくもゐの−つきにおつらむ |
06911 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひねの夢路を遠み覚めゆけは分けこしむねにさわくささはら
おもひねの−ゆめちをとほみ−さめゆけは−わけこしむねに−さわくささはら |
06912 |
未入力 正徹 (xxx)
君そうきわたらすしらぬもろこしも夢に見るよの秋つ島人
きみそうき−わたらすしらぬ−もろこしも−ゆめにみるよの−あきつしまひと |
06913 |
未入力 正徹 (xxx)
都より遠山とりのおきのうみになみなへたてそこふる関守
みやこより−とほやまとりの−おきのうみに−なみなへたてそ−こふるせきもり |
06914 |
未入力 正徹 (xxx)
うちもねよこふる心の弥つきに行くらむ直の末の関もり
うちもねよ−こふるこころの−いやつきに−ゆくらむみちの−すゑのせきもり |
06915 |
未入力 正徹 (xxx)
天地の外に恋ひてもめにちかくくるれはたえぬ雲風の山
あめつちの−ほかにこひても−めにちかく−くるれはたえぬ−くもかせのやま |
06916 |
未入力 正徹 (xxx)
おくよいかに春の霞も秋風も白川まての雪のさと人
おくよいかに−はるのかすみも−あきかせも−しらかはまての−ゆきのさとひと |
06917 |
未入力 正徹 (xxx)
日数さへ舟路はいととさたまらすかねて心そうきてこひしき
ひかすさへ−ふなちはいとと−さたまらす−かねてこころそ−うきてこひしき |
06918 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣かさねぬ袖の行すりにうたてにほひをふかくそめつつ
さよころも−かさねぬそての−ゆきすりに−うたてにほひを−ふかくそめつつ |
06919 |
未入力 正徹 (xxx)
へたつるもうき中かきのささめこときかしとすれやおくふかくなる
へたつるも−うきなかかきの−ささめこと−きかしとすれや−おくふかくなる |
06920 |
未入力 正徹 (xxx)
わつかなるこすのうちとのこと笛はねにあふさへも猶そくるしき
わつかなる−こすのうちとの−ことふえは−ねにあふさへも−なほそくるしき |
06921 |
未入力 正徹 (xxx)
かはかりの契もつらしふす人の夜はの衣に袖さはるまて
かはかりの−ちきりもつらし−ふすひとの−よはのころもに−そてさはるまて |
06922 |
未入力 正徹 (xxx)
宿をたになりへぬ閨の中の戸をしるや枕のふるき関守
やとをたに−なりへぬねやの−なかのとを−しるやまくらの−ふるきせきもり |
06923 |
未入力 正徹 (xxx)
むねやすむ涙もかなやしほかまにたく火影けつちかの浦浪
むねやすむ−なみたもかなや−しほかまに−たくひかけけつ−ちかのうらなみ |
06924 |
未入力 正徹 (xxx)
我かかたのなけきをたえすそへ恋ひて君こそはやけちかの塩かま
わかかたの−なけきをたえす−そへこひて−きみこそはやけ−ちかのしほかま |
06925 |
未入力 正徹 (xxx)
いかにしてみすにそへたるうす物の一重へたつる人のすかたを
いかにして−みすにそへたる−うすものの−ひとへへたつる−ひとのすかたを |
06926 |
未入力 正徹 (xxx)
玉もかる袖ならすして君か手をとりこの池と人やみるらん
たまもかる−そてならすして−きみかてを−とりこのいけと−ひとやみるらむ |
06927 |
未入力 正徹 (xxx)
ほのかなる声聞くはかりいもよれは又引きたつる戸のかためかな
ほのかなる−こゑきくはかり−いもよれは−またひきたつる−とのかためかな |
06928 |
未入力 正徹 (xxx)
やくしほはむねにそちかのうら風にけふりも浪も袖よりそたつ
やくしほは−むねにそちかの−うらかせに−けふりもなみも−そてよりそたつ |
06929 |
未入力 正徹 (xxx)
さしきてもおよはぬ塩そ引きかへる人はま砂にとほきはまゆふ
さしきても−およはぬしほそ−ひきかへる−ひとはまさこに−とほきはまゆふ |
06930 |
未入力 正徹 (xxx)
人心よしあしつつの程はかり中にありともなみのよるよる
ひとこころ−よしあしつつの−ほとはかり−なかにありとも−なみのよるよる |
06931 |
未入力 正徹 (xxx)
すかむしろ百ふなりせはとふにねて我か床ひろく君や待ちみん
すかむしろ−ももふなりせは−とふにねて−わかとこひろく−きみやまちみむ |
06932 |
未入力 正徹 (xxx)
はれしなほうき身をうらのはまゆふやかさなる霧の下の塩風
はれしなほ−うきみをうらの−はまゆふや−かさなるきりの−したのしほかせ |
06933 |
未入力 正徹 (xxx)
袖におちむねにそさわく立ちわかれ又さえわたるあさ川の浪
そてにおち−むねにそさわく−たちわかれ−またさえわたる−あさかはのなみ |
06934 |
未入力 正徹 (xxx)
このままに契やさらにあさねかみ下ひもかけてむすほほれゆく
このままに−ちきりやさらに−あさねかみ−したひもかけて−むすほほれゆく |
06935 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜のけふのひつしのあよみさへいそけは時のうつる久しさ
たのむよの−けふのひつしの−あよみさへ−いそけはときの−うつるひさしさ |
06936 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜中もかくやうかりし今朝のまも夕も遠きひまを恋ひつつ
さよなかも−かくやうかりし−けさのまも−ゆふへもとほき−ひまをこひつつ |
06937 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくらむ恋の山路をわたる日の影暮れかたき峰の松風
いそくらむ−こひのやまちを−わたるひの−かけくれかたき−みねのまつかせ |
06938 |
未入力 正徹 (xxx)
てる日をもうき中空にかけすてつくもる契の末の天雲
てるひをも−うきなかそらに−かけすてつ−くもるちきりの−すゑのあまくも |
06939 |
未入力 正徹 (xxx)
見てそしるいまた夕日になひく日の影もつれなき人の心は
みてそしる−いまたゆふひに−なひくひの−かけもつれなき−ひとのこころは |
06940 |
未入力 正徹 (xxx)
身を秋の心に春もなきものをくもる契はなかき日のかけ
みをあきの−こころにはるも−なきものを−くもるちきりは−なかきひのかけ |
06941 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝のまの過くるはかりそたのめつる夕暮とほき日影をそまつ
けさのまの−すくるはかりそ−たのめつる−ゆふくれとほき−ひかけをそまつ |
06942 |
未入力 正徹 (xxx)
夢ならすうちおとろきて恋ひわひぬ心の馬の時のつつみに
ゆめならす−うちおとろきて−こひわひぬ−こころのうまの−ときのつつみに |
06943 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつる夕をとほく思ふまの南の空にかかる日の影
たのめつる−ゆふへをとほく−おもふまの−みなみのそらに−かかるひのかけ |
06944 |
未入力 正徹 (xxx)
まちわひぬ親のいさめのうたたねに夢覚めてたに暮れかたき日を
まちわひぬ−おやのいさめの−うたたねに−ゆめさめてたに−くれかたきひを |
06945 |
未入力 正徹 (xxx)
夕くれは恋をし恋の時そとや人心むる庭の松かせ
ゆふくれは−こひをしこひの−ときそとや−ひとこころむる−にはのまつかせ |
06946 |
未入力 正徹 (xxx)
玉きはる夕にむかふ時すきはむなしき恋のむかしかたりを
たまきはる−ゆふへにむかふ−ときすきは−むなしきこひの−むかしかたりを |
06947 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中はたのめすまたぬ夕暮をいかになしてか思ひわふらん
うきなかは−たのめすまたぬ−ゆふくれを−いかになしてか−おもひわふらむ |
06948 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬる夜なき夢のかよひちたか方のしらぬ行きに遠さかるらん
ぬるよなき−ゆめのかよひち−たかかたの−しらぬゆききに−とほさかるらむ |
06949 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから夢もうつつも恋ひわひてぬるかうちとくわくかたもなし
よもすから−ゆめもうつつも−こひわひて−ぬるかうちとく−わくかたもなし |
06950 |
未入力 正徹 (xxx)
まつにうく別につらきならひかはおもひも恋もふかき夜の月
まつにうく−わかれにつらき−ならひかは−おもひもこひも−ふかきよのつき |
06951 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人はこすもる月に雁鳴きて竹のなる夜のかせそ明れ行く
まつひとは−こすもるつきに−かりなきて−たけのなるよの−かせそあれゆく |
06952 |
未入力 正徹 (xxx)
むは玉の見し黒かみの面かけはやみのうつつそいととさやけき
むはたまの−みしくろかみの−おもかけは−やみのうつつそ−いととさやけき |
06953 |
未入力 正徹 (xxx)
よるそうき伏見の夢のかよひちに人も木はたの関のくきぬき
よるそうき−ふしみのゆめの−かよひちに−ひともこはたの−せきのくきぬき |
06954 |
未入力 正徹 (xxx)
うき物となすもかたみそ在明のつれなく見えしとはかりの月
うきものと−なすもかたみそ−ありあけの−つれなくみえし−とはかりのつき |
06955 |
未入力 正徹 (xxx)
いまそ猶いく世の人の別路もつらきかたみの在明の月
いまそなほ−いくよのひとの−わかれちも−つらきかたみの−ありあけのつき |
06956 |
未入力 正徹 (xxx)
よこ雲の空にしめゆふ夢ちとやまたみぬかたにむすほほるらん
よこくもの−そらにしめゆふ−ゆめちとや−またみぬかたに−むすほほるらむ |
06957 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の袖にもこめす手にとりて人ののこさぬ月のかたみは
きぬきぬの−そてにもこめす−てにとりて−ひとののこさぬ−つきのかたみは |
06958 |
未入力 正徹 (xxx)
よりあはん契とまてはかけさりきまたあけまきの年の思ひを
よりあはむ−ちきりとまては−かけさりき−またあけまきの−としのおもひを |
06959 |
未入力 正徹 (xxx)
しらせしなさ夜も我か世も深けはつるおもひは年の廿はかりを
しらせしな−さよもわかよも−ふけはつる−おもひはとしの−はたちはかりを |
06960 |
未入力 正徹 (xxx)
いく夜さてうき面影の旅やつれ人にはなくてしたひきぬらん
いくよさて−うきおもかけの−たひやつれ−ひとにはなくて−したひきぬらむ |
06961 |
未入力 正徹 (xxx)
我そあらぬおもかけとめて古郷をいてにし月はもとの身にして
われそあらぬ−おもかけとめて−ふるさとを−いてにしつきは−もとのみにして |
06962 |
未入力 正徹 (xxx)
やすくなと覚めける夢そ野への草おもはぬかたの床の嵐に
やすくなと−さめけるゆめそ−のへのくさ−おもはぬかたの−とこのあらしに |
06963 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れなんおなし都の月にたに思ひたえにしよそのかりふし
わすれなむ−おなしみやこの−つきにたに−おもひたえにし−よそのかりふし |
06964 |
未入力 正徹 (xxx)
浪もかくよしやかけけむ岩枕おもはぬ磯のあまの契に
なみもかく−よしやかけけむ−いはまくら−おもはぬいその−あまのちきりに |
06965 |
未入力 正徹 (xxx)
いもにとひつらきかたみのうら風は袖こす月のおきつ白なみ
いもにとひ−つらきかたみの−うらかせは−そてこすつきの−おきつしらなみ |
06966 |
未入力 正徹 (xxx)
草枕かりにたに見す古郷に思ふ夢をやととめおきけん
くさまくら−かりにたにみす−ふるさとに−おもふゆめをや−ととめおきけむ |
06967 |
未入力 正徹 (xxx)
うらめしく都の人や夢に見んこよひ野上の露の契を
うらめしく−みやこのひとや−ゆめにみむ−こよひのうへの−つゆのちきりを |
06968 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれて旅ねの夢に君やこし我や行きけん月そやとれる
そてぬれて−たひねのゆめに−きみやこし−われやゆきけむ−つきそやとれる |
06969 |
未入力 正徹 (xxx)
あさは野やふる郷人のおも影もたつみわこすけ今夜宿かせ
あさはのや−ふるさとひとの−おもかけも−たつみわこすけ−こよひやとかせ |
06970 |
未入力 正徹 (xxx)
かり枕夢にも人はあはすともまとろまはやのうつの山かせ
かりまくら−ゆめにもひとは−あはすとも−まとろまはやの−うつのやまかせ |
06971 |
未入力 正徹 (xxx)
時のまに心は行きてかへる山人はこしちと思ひおくらし
ときのまに−こころはゆきて−かへるやま−ひとはこしちと−おもひおくらし |
06972 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりし袖の別の梅かかに面影かすむ月そのこれる
あかさりし−そてのわかれの−うめかかに−おもかけかすむ−つきそのこれる |
06973 |
未入力 正徹 (xxx)
月もまた思ひけりとやしらさらんやらす霞の袖くちぬ世に
つきもまた−おもひけりとや−しらさらむ−やらすかすみの−そてくちぬよに |
06974 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮それかと見えし面影もかすむそかたみ在明の月
ゆふまくれ−それかとみえし−おもかけも−かすむそかたみ−ありあけのつき |
06975 |
未入力 正徹 (xxx)
よもきふやもとの思ひにもえかへりかれんもつらし春の焼原
よもきふや−もとのおもひに−もえかへり−かれむもつらし−はるのやけはら |
06976 |
未入力 正徹 (xxx)
色にそむ身をや愁へむ分けくれは心へたてぬ花のかすみに
いろにそむ−みをやうれへむ−わけくれは−こころへたてぬ−はなのかすみに |
06977 |
未入力 正徹 (xxx)
そてなからかけてそ思ふをとめこか花かつらきの峰の白雲
そてなから−かけてそおもふ−をとめこか−はなかつらきの−みねのしらくも |
06978 |
未入力 正徹 (xxx)
さかり見し花に立ちそふ面影は夢ちにまよふ春の山ふみ
さかりみし−はなにたちそふ−おもかけは−ゆめちにまよふ−はるのやまふみ |
06979 |
未入力 正徹 (xxx)
かたみとやすまの若木の桜花かすみのうちの春のおもかけ
かたみとや−すまのわかきの−さくらはな−かすみのうちの−はるのおもかけ |
06980 |
未入力 正徹 (xxx)
行くほたるあくかれいつる玉ならはつれなき袖の中にととまれ
ゆくほたる−あくかれいつる−たまならは−つれなきそての−うちにととまれ |
06981 |
未入力 正徹 (xxx)
しけれたた冬はよもきか杣かたに思ひこりにし宿のかよひ路
しけれたた−ふゆはよもきか−そまかたに−おもひこりにし−やとのかよひち |
06982 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもその夜のままに夏衣うらなかりつる我さへそうき
ちきりしも−そのよのままに−なつころも−うらなかりつる−われさへそうき |
06983 |
未入力 正徹 (xxx)
蚊遣火のけふりをむねに焼きこめてむせふ心の行かたもなし
かやりひの−けふりをむねに−たきこめて−むせふこころの−ゆくかたもなし |
06984 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひつつふすや涙の泉こそし水のぬるき岩枕なれ
おもひつつ−ふすやなみたの−いつみこそ−しみつのぬるき−いはまくらなれ |
06985 |
未入力 正徹 (xxx)
我か門にすすむになして待つよひのふくるはあくるかねの声かな
わかかとに−すすむになして−まつよひの−ふくるはあくる−かねのこゑかな |
06986 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしは末はの秋の露にたに霜おきかはる庭のあさちふ
ちきりしは−すゑはのあきの−つゆにたに−しもおきかはる−にはのあさちふ |
06987 |
未入力 正徹 (xxx)
しくれてもつらき心の秋しのや契ると山そ色かはりゆく
しくれても−つらきこころの−あきしのや−ちきるとやまそ−いろかはりゆく |
06988 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木もうつろはぬまに秋ふけてうき□かれぬる中の衣手
くさもきも−うつろはぬまに−あきふけて−うきхかれぬる−なかのころもて |
06989 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そうき人はのこさぬ衣衣のかたみの月もおもかはりして
あきそうき−ひとはのこさぬ−きぬきぬの−かたみのつきも−おもかはりして |
06990 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねむ人の秋風音もせてむなし衣の身にとほる夜を
いかかねむ−ひとのあきかせ−おともせて−むなしころもの−みにとほるよを |
06991 |
未入力 正徹 (xxx)
身ひとつを其世の秋にうれふれは面影ならぬ在明の月
みひとつを−そのよのあきに−うれふれは−おもかけならぬ−ありあけのつき |
06992 |
未入力 正徹 (xxx)
わすらるるうき身の秋の袖の露かかれとてこそ朽ちのこりけめ
わすらるる−うきみのあきの−そてのつゆ−かかれとてこそ−くちのこりけめ |
06993 |
未入力 正徹 (xxx)
さしもうき秋やは人にかきたらんかけてそわたる雁の玉札
さしもうき−あきやはひとに−かきたらむ−かけてそわたる−かりのたまつさ |
06994 |
未入力 正徹 (xxx)
うきなから鳴きとほさかる雁そあるおもひつきせぬ峰の秋霧
うきなから−なきとほさかる−かりそある−おもひつきせぬ−みねのあききり |
06995 |
未入力 正徹 (xxx)
なかき夜の秋の思ひにまちこひぬ人ともかなや十ふのすかこも
なかきよの−あきのおもひに−まちこひぬ−ひとともかなや−とふのすかこも |
06996 |
未入力 正徹 (xxx)
よもあけしおもはぬ夢も猶覚めてうき身の秋の長き夜の空
よもあけし−おもはぬゆめも−なほさめて−うきみのあきの−なかきよのそら |
06997 |
未入力 正徹 (xxx)
秋きてそ時そともなき恋ならぬ夕も風もかはるうれへに
あききてそ−ときそともなき−こひならぬ−ゆふへもかせも−かはるうれへに |
06998 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめおきしことのはよりそ色かはる草木も秋の露にあへとも
たのめおきし−ことのはよりそ−いろかはる−くさきもあきの−つゆにあへとも |
06999 |
未入力 正徹 (xxx)
枕より跡よりとこそしらねとも恋ふてふ上に秋そせめくる
まくらより−あとよりとこそ−しらねとも−こふてふうへに−あきそせめくる |
07000 |
未入力 正徹 (xxx)
枯れてゆく人めはあさし年ふかくおもふ心のみちしはの霜
かれてゆく−ひとめはあさし−としふかく−おもふこころの−みちしはのしも |
07001 |
未入力 正徹 (xxx)
まち深けぬこほれる月のあよみより人のいそかぬ冬のよの空
まちふけぬ−こほれるつきの−あよみより−ひとのいそかぬ−ふゆのよのそら |
07002 |
未入力 正徹 (xxx)
契りけん我か心のみあさちふの霜の下葉になして枯れぬる
ちきりけむ−わかこころのみ−あさちふの−しものしたはに−なしてかれぬる |
07003 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりをこそ中中うつめ雪あられあれぬ夜もなき床の嵐に
ちりをこそ−なかなかうつめ−ゆきあられ−あれぬよもなき−とこのあらしに |
07004 |
未入力 正徹 (xxx)
涙川袖の氷の関こえてしのひにかよふあふ坂もかな
なみたかは−そてのこほりの−せきこえて−しのひにかよふ−あふさかもかな |
07005 |
未入力 正徹 (xxx)
やすますよ涙も袖にむすほほれ袖の氷もおもき思ひほ
やすますよ−なみたもそてに−むすほほれ−そてのこほりも−おもきおもひは |
07006 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりなと心とくらむあはぬよの涙にぬるむ袖の氷は
ひとりなと−こころとくらむ−あはぬよの−なみたにぬるむ−そてのこほりは |
07007 |
未入力 正徹 (xxx)
とはれすは雪の色たにふりかくせ契る末ののかるる草はを
とはれすは−ゆきのいろたに−ふりかくせ−ちきるすゑのの−かるるくさはを |
07008 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人も遠さかるなりしかのあまの袖の氷を身になかしつつ
まつひとも−とほさかるなり−しかのあまの−そてのこほりを−みになかしつつ |
07009 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にても見ぬ世ふりぬる人こゑもたたそのをりの雪の曙
ゆめにても−みぬよふりぬる−ひとこゑも−たたそのをりの−ゆきのあけほの |
07010 |
未入力 正徹 (xxx)
七車つむへき草も枯れはてて下根にもゆる冬のかよひち
ななくるま−つむへきくさも−かれはてて−したねにもゆる−ふゆのかよひち |
07011 |
未入力 正徹 (xxx)
かたしくもこほれる袖のみなと川涙うきねによる舟もなし
かたしくも−こほれるそての−みなとかは−なみたうきねに−よるふねもなし |
07012 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中はかれ行く水にしるものをつかはぬをしの声なをしへそ
うきなかは−かれゆくみつに−しるものを−つかはぬをしの−こゑなをしへそ |
07013 |
未入力 正徹 (xxx)
かれはつる冬の末野を契にて風そうらむる葛のははなし
かれはつる−ふゆのすゑのを−ちきりにて−かせそうらむる−くすのははなし |
07014 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさもつきぬ涙のいつみ川袖そなかるる衣かせやま
みのうさも−つきぬなみたの−いつみかは−そてそなかるる−ころもかせやま |
07015 |
未入力 正徹 (xxx)
うき名さへ立つや夜床の朝日影涙のぬるむ水のけふりに
うきなさへ−たつやよとこの−あさひかけ−なみたのぬるむ−みつのけふりに |
07016 |
未入力 正徹 (xxx)
紅にゆくや涙も河内女か手そめの糸のみたれてそうき
くれなゐに−ゆくやなみたも−かはちめか−てそめのいとの−みたれてそうき |
07017 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれぬ床のうら浪かたしきて見るめかりつる夢の名残は
そてぬれぬ−とこのうらなみ−かたしきて−みるめかりつる−ゆめのなこりは |
07018 |
未入力 正徹 (xxx)
かへしつる夜はの衣に心見えてたのむ夢にもあはて覚めぬる
かへしつる−よはのころもに−こころみえて−たのむゆめにも−あはてさめぬる |
07019 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへりいつかは夢もあひつ山跡まておくる峰の雲風
たちかへり−いつかはゆめも−あひつやま−あとまておくる−みねのくもかせ |
07020 |
未入力 正徹 (xxx)
なみたひつ枕のちりはかろからすうき名をたれかよそに立つらん
なみたひつ−まくらのちりは−かろからす−うきなをたれか−よそにたつらむ |
07021 |
未入力 正徹 (xxx)
山と成る枕のちりの二かみはへたつる雲にむすほほれつつ
やまとなる−まくらのちりの−ふたかみは−へたつるくもに−むすほほれつつ |
07022 |
未入力 正徹 (xxx)
なき名をはむなしき空に立ておきて枕にくもるちりの山風
なきなをは−むなしきそらに−たておきて−まくらにくもる−ちりのやまかせ |
07023 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめやことのはのへておもふとちぬる夜そ法の莚なりけり
しるらめや−ことのはのへて−おもふとち−ぬるよそのりの−むしろなりけり |
07024 |
未入力 正徹 (xxx)
月のゆく南の風にとく帯の一すちのこる雲もうらめし
つきのゆく−みなみのかせに−とくおひの−ひとすちのこる−くももうらめし |
07025 |
未入力 正徹 (xxx)
うれしさをつひにつつまて朽ちはてぬ涙はかりのせはき袂は
うれしさを−つひにつつまて−くちはてぬ−なみたはかりの−せはきたもとは |
07026 |
未入力 正徹 (xxx)
むかひつつわたるを恋の友とみるうらみのかけも我をへたつな
むかひつつ−わたるをこひの−ともとみる−うらみのかけも−われをへたつな |
07027 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりしそのよの人のきつなかはかねのこゑひく峰の横雲
あかさりし−そのよのひとの−きつなかは−かねのこゑひく−みねのよこくも |
07028 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くかねも声声たえて初瀬川袖におちくる都とそなる
きくかねも−こゑこゑたえて−はつせかは−そてにおちくる−みやことそなる |
07029 |
未入力 正徹 (xxx)
しほるほと袖やはぬれん我か心うはものなみにかかるはかりは
しほるほと−そてやはぬれむ−わかこころ−うはものなみに−かかるはかりは |
07030 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中にある夜はかりやあつからむ契そうすき閨のさころも
うきなかに−あるよはかりや−あつからむ−ちきりそうすき−ねやのさころも |
07031 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめすはいかかせんとの涙にも消えゆく鳥のあとの夕くれ
たのめすは−いかかせむとの−なみたにも−きえゆくとりの−あとのゆふくれ |
07032 |
未入力 正徹 (xxx)
こはいかか三輪の山鳥ひるはきて夜はわかるる神ならはこそ
こはいかか−みわのやまとり−ひるはきて−よるはわかるる−かみならはこそ |
07033 |
未入力 正徹 (xxx)
こりつむも道そくるしきさてのみや山のかたそのつらきふし柴
こりつむも−みちそくるしき−さてのみや−やまのかたその−つらきふししは |
07034 |
未入力 正徹 (xxx)
かひやなき人はあれにしとまやなみ我かかた久しかけて待つとも
かひやなき−ひとはあれにし−とまやなみ−わかかたひさし−かけてまつとも |
07035 |
未入力 正徹 (xxx)
身にとほる風さへ思ふかたなれは月に涙をゆるす袖かな
みにとほる−かせさへおもふ−かたなれは−つきになみたを−ゆるすそてかな |
07036 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれぬを思ひすててはむかへとも我かゆふくれとしたふ面影
わすれぬを−おもひすてては−むかへとも−わかゆふくれと−したふおもかけ |
07037 |
未入力 正徹 (xxx)
立別れかかるかたなきおもひかな夕の空の雲の一むら
たちわかれ−かかるかたなき−おもひかな−ゆふへのそらの−くものひとむら |
07038 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめとや中にある世の衣たになれぬ匂にとまる契を
たのめとや−なかにあるよの−ころもたに−なれぬにほひに−とまるちきりを |
07039 |
未入力 正徹 (xxx)
きぬきぬの後やうからん思ひねにいまた見さりし夢の曙
きぬきぬの−のちやうからむ−おもひねに−いまたみさりし−ゆめのあけほの |
07040 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひしれぬれし袂をほす袖になきてかしつる夜はの枕そ
おもひしれ−ぬれしたもとを−ほすそてに−なきてかしつる−よはのまくらそ |
07041 |
未入力 正徹 (xxx)
命をも名をもよしさは捨てはてん今夜ねぬよの夢の契に
いのちをも−なをもよしさは−すてはてむ−こよひねぬよの−ゆめのちきりに |
07042 |
未入力 正徹 (xxx)
行すゑもたた此ままにあひ見まくほしあへぬ袖を枕にそかす
ゆくすゑも−たたこのままに−あひみまく−ほしあへぬそてを−まくらにそかす |
07043 |
未入力 正徹 (xxx)
露かかることのは草も身にそしむ新枕かの木からしの風
つゆかかる−ことのはくさも−みにそしむ−にひまくらかの−こからしのかせ |
07044 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身にはいつかはこえむあふ坂の山ちに関のなき世なりとも
うきみには−いつかはこえむ−あふさかの−やまちにせきの−なきよなりとも |
07045 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にてもあひ見んことやかた糸のこなたかなたによるの枕は
ゆめにても−あひみむことや−かたいとの−こなたかなたに−よるのまくらは |
07046 |
未入力 正徹 (xxx)
あふことも待つもこよひにかきりなはかへぬ命や月に捨てまし
あふことも−まつもこよひに−かきりなは−かへぬいのちや−つきにすてまし |
07047 |
未入力 正徹 (xxx)
人心わかつれなさをくらへてもなほうとまれぬ恋そくるしき
ひとこころ−わかつれなさを−くらへても−なほうとまれぬ−こひそくるしき |
07048 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくにたのむ夜比はちかひきて契なき身の夕暮の空
とにかくに−たのむよころは−ちかひきて−ちきりなきみの−ゆふくれのそら |
07049 |
未入力 正徹 (xxx)
かきり有る命のほとを思ふにも猶あふことをいそく中かな
かきりある−いのちのほとを−おもふにも−なほあふことを−いそくなかかな |
07050 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中に年ふる玉のををよわみみたれはてぬや契なるらん
うきなかに−としふるたまの−ををよわみ−みたれはてぬや−ちきりなるらむ |
07051 |
未入力 正徹 (xxx)
消えやらてあらはあふよのしののめの露にかはらん命をそ待つ
きえやらて−あらはあふよの−しののめの−つゆにかはらむ−いのちをそまつ |
07052 |
未入力 正徹 (xxx)
きえやらぬうき身も世世の契とや恋を命にまかせはてまし
きえやらぬ−うきみもよよの−ちきりとや−こひをいのちに−まかせはてまし |
07053 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれとやあふにもかへぬ人のためすてし命の身にのこるらん
うかれとや−あふにもかへぬ−ひとのため−すてしいのちの−みにのこるらむ |
07054 |
未入力 正徹 (xxx)
海士を舟わたらぬ中のさはりとやなるとさしいたすせとの早しほ
あまをふね−わたらぬなかの−さはりとや−なるとさしいたす−せとのはやしほ |
07055 |
未入力 正徹 (xxx)
せせかけよあふを命のうちつけにいそくと見てやつれなかるらん
せせかけよ−あふをいのちの−うちつけに−いそくとみてや−つれなかるらむ |
07056 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝つ心の花もうしたをらぬなみは袖にちりつつ
いしはしる−たきつこころの−はなもうし−たをらぬなみは−そてにちりつつ |
07057 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉ふるえにたにぬれす秋かけていひしはかりの袖の春雨
このはふる−えにたにぬれす−あきかけて−いひしはかりの−そてのはるさめ |
07058 |
未入力 正徹 (xxx)
それをたにとふことにせよ恋ひしなぬ身のおこたりはいひしにもにす
それをたに−とふことにせよ−こひしなぬ−みのおこたりは−いひしにもにす |
07059 |
未入力 正徹 (xxx)
世もくたり人もなさけをしらすなる時しもふかき恋そくるしき
よもくたり−ひともなさけを−しらすなる−ときしもふかき−こひそくるしき |
07060 |
未入力 正徹 (xxx)
契りおけあはすはおなし世世を引く思ひもおなししつのをたまき
ちきりおけ−あはすはおなし−よよをひく−おもひもおなし−しつのをたまき |
07061 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかへてひとつ心をつくすとも此世ににたる人にあはすは
みをかへて−ひとつこころを−つくすとも−このよににたる−ひとにあはすは |
07062 |
未入力 正徹 (xxx)
あふことをさしも命のあた物とかへんはをしと人やつれなき
あふことを−さしもいのちの−あたものと−かへむはをしと−ひとやつれなき |
07063 |
未入力 正徹 (xxx)
恋ひしなはむなしきからを枕よりあとよりたれか哀ともみん
こひしなは−むなしきからを−まくらより−あとよりたれか−あはれともみむ |
07064 |
未入力 正徹 (xxx)
命にもつひにかへなてあひみすと人にいはれん後の名そうき
いのちにも−つひにかへなて−あひみすと−ひとにいはれむ−のちのなそうき |
07065 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさを思ひやむへき心にも又身はすてつ此世後の世
つれなさを−おもひやむへき−こころにも−またみはすてつ−このよのちのよ |
07066 |
未入力 正徹 (xxx)
人も人我もわれなる後の世にこの心ゐてさらはあひ見よ
ひともひと−われもわれなる−のちのよに−このこころゐて−さらはあひみよ |
07067 |
未入力 正徹 (xxx)
いつとなき恋を命と思ふにはあはすしてこそ世をもつくさめ
いつとなき−こひをいのちと−おもふには−あはすしてこそ−よをもつくさめ |
07068 |
未入力 正徹 (xxx)
まつしれはあふ夜の数にあまたある命なりせはかへやつくさん
まつしれは−あふよのかすに−あまたある−いのちなりせは−かへやつくさむ |
07069 |
未入力 正徹 (xxx)
人ゆゑの涙したふなうき世にもいまはあらしの袖の月かけ
ひとゆゑの−なみたしたふな−うきよにも−いまはあらしの−そてのつきかけ |
07070 |
未入力 正徹 (xxx)
我からのあまのかるもにうつもれてのこる命をうらのすてふね
われからの−あまのかるもに−うつもれて−のこるいのちを−うらのすてふね |
07071 |
未入力 正徹 (xxx)
なにはなる身をつくしてもあはちかたせとこく舟にむかふ早塩
なにはなる−みをつくしても−あはちかた−せとこくふねに−むかふはやしほ |
07072 |
未入力 正徹 (xxx)
何かせむあらはあふ夜と頼む身のなき世の月に袖ぬらすとも
なにかせむ−あらはあふよと−たのむみの−なきよのつきに−そてぬらすとも |
07073 |
未入力 正徹 (xxx)
後の世にかへてもあはんかたやなきうけかたき身は恋にすつとも
のちのよに−かへてもあはむ−かたやなき−うけかたきみは−こひにすつとも |
07074 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは涙浪こせたのむともあらはあふよの末の松山
よしさらは−なみたなみこせ−たのむとも−あらはあふよの−すゑのまつやま |
07075 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れなむ此世のうちは契なきおもひなひきそ生れこん身に
わすれなむ−このよのうちは−ちきりなき−おもひなひきそ−うまれこむみに |
07076 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなしなさらに思ひや出てさらむ恋ゆゑしるは命なりけり
つれなしな−さらにおもひや−いてさらむ−こひゆゑしるは−いのちなりけり |
07077 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人の心につるる面影のそははあふ夜をさのみいそかし
みしひとの−こころにつるる−おもかけの−そははあふよを−さのみいそかし |
07078 |
未入力 正徹 (xxx)
まち恋ひし松もうらめしつれなしと三津の浜貝忘れたにせて
まちこひし−まつもうらめし−つれなしと−みつのはまかひ−わすれたにせて |
07079 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれそはむ袖をはいかかささ原やしのひにとくるよはの下ひも
ぬれそはむ−そてをはいかか−ささはらや−しのひにとくる−よはのしたひも |
07080 |
未入力 正徹 (xxx)
猶さりに見きとなかけそ思ひねの夢にもあらぬ袖の雫を
なほさりに−みきとなかけそ−おもひねの−ゆめにもあらぬ−そてのしつくを |
07081 |
未入力 正徹 (xxx)
えそしらぬあふ夜も閨のかへに草あるをさはりの末のかねこと
えそしらぬ−あふよもねやの−かへにくさ−あるをさはりの−すゑのかねこと |
07082 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよかさぬる衣の音なひはやはらかなるもしるかりぬへし
こころせよ−かさぬるきぬの−おとなひは−やはらかなるも−しるかりぬへし |
07083 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ日のくもる契をよるそへて月さへ雲にあへはあひぬる
たのむひの−くもるちきりを−よるそへて−つきさへくもに−あへはあひぬる |
07084 |
未入力 正徹 (xxx)
結ひおく契を露ももらすなよ今夜忍の山の下草
むすひおく−ちきりをつゆも−もらすなよ−こよひしのふの−やまのしたくさ |
07085 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きならす風心なやたたくなと片戸あけ置くさ夜のつま戸を
ふきならす−かせこころなや−たたくなと−かたとあけおく−さよのつまとを |
07086 |
未入力 正徹 (xxx)
あやにくに忘れんと思ふ心より出ててもり行くよよのおもかけ
あやにくに−わすれむとおもふ−こころより−いててもりゆく−よよのおもかけ |
07087 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のうへにおつともしらし中中におさへは人の涙とや見ん
そてのうへに−おつともしらし−なかなかに−おさへはひとの−なみたとやみむ |
07088 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちてゆく袖にはかけしくろかみをつたふ涙のおちてみえすは
くちてゆく−そてにはかけし−くろかみを−つたふなみたの−おちてみえすは |
07089 |
未入力 正徹 (xxx)
しほれけりさ夜の莚に今朝もねて猶や涙をしきやほさまし
しほれけり−さよのむしろに−けさもねて−なほやなみたを−しきやほさまし |
07090 |
未入力 正徹 (xxx)
涙せく袂のふちに魚すまはあひてふ名をそ分きて憑まむ
なみたせく−たもとのふちに−うをすまは−あひてふなをそ−わきてたのまむ |
07091 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれ行く心そ袖にととまらぬ涙の玉はまきかくせとも
うかれゆく−こころそそてに−ととまらぬ−なみたのたまは−まきかくせとも |
07092 |
未入力 正徹 (xxx)
せきかねぬ滝つ心の岩木にもあへす此比おつるなみたを
せきかねぬ−たきつこころの−いはきにも−あへすこのころ−おつるなみたを |
07093 |
未入力 正徹 (xxx)
つつむともなにかは見えむもろともにみさをに過くる心まさりは
つつむとも−なにかはみえむ−もろともに−みさをにすくる−こころまさりは |
07094 |
未入力 正徹 (xxx)
おさへおく袖の涙のもろ心なほいつかたにつつみかぬらむ
おさへおく−そてのなみたの−もろこころ−なほいつかたに−つつみかぬらむ |
07095 |
未入力 正徹 (xxx)
まきの戸に立ちそふ袖のかやしるきしつまれる夜のすきまもる風
まきのとに−たちそふそての−かやしるき−しつまれるよの−すきまもるかせ |
07096 |
未入力 正徹 (xxx)
つらき江をつつむ涙の玉かしはなつとしもなき袖そくちゆく
つらきえを−つつむなみたの−たまかしは−なつとしもなき−そてそくちゆく |
07097 |
未入力 正徹 (xxx)
つつみきて朽つれはかふる袂にも人の涙の露はなかりき
つつみきて−くつれはかふる−たもとにも−ひとのなみたの−つゆはなかりき |
07098 |
未入力 正徹 (xxx)
もれやせんさしも心にかけし身のことのはにほふ袖のうつりか
もれやせむ−さしもこころに−かけしみの−ことのはにほふ−そてのうつりか |
07099 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑたてつ心くみしる人あらはあやなし思ひ忘れ井の水
こゑたてつ−こころくみしる−ひとあらは−あやなしおもひ−わすれゐのみつ |
07100 |
未入力 正徹 (xxx)
露やしる思ふあたりをことくさにうち忘れてもかけぬ日そなし
つゆやしる−おもふあたりを−ことくさに−うちわすれても−かけぬひそなし |
07101 |
未入力 正徹 (xxx)
よる浪にいまそ見そめりさきの世も思ひしられてぬるる袖かな
よるなみに−いまそみそめり−さきのよも−おもひしられて−ぬるるそてかな |
07102 |
未入力 正徹 (xxx)
しけみよりゐくひにすたつかほよ鳥あかす見なから□□□□□□□
しけみより−ゐくひにすたつ−かほよとり−あかすみなから−ххххххх |
07103 |
未入力 正徹 (xxx)
うらなれぬ人のかさしを見るふさに初しほかかる秋の袖かな
うらなれぬ−ひとのかさしを−みるふさに−はつしほかかる−あきのそてかな |
07104 |
未入力 正徹 (xxx)
ほのかなることの葉のつまもあふはかり契あれとそ先たのみつる
ほのかなる−ことのはのつまも−あふはかり−ちきりあれとそ−まつたのみつる |
07105 |
未入力 正徹 (xxx)
あふせあれや春の氷と水からといまそ岩まに恋聞ゆらん
あふせあれや−はるのこほりと−みつからと−いまそいはまに−こひきこゆらむ |
07106 |
未入力 正徹 (xxx)
契りあれやおもひをこめし初よりいまことのはのつまにかけぬる
ちきりあれや−おもひをこめし−はしめより−いまことのはの−つまにかけぬる |
07107 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣中にあるまはせく涙いかに染めてか色まさるらむ
さよころも−なかにあるまは−せくなみた−いかにそめてか−いろまさるらむ |
07108 |
未入力 正徹 (xxx)
よをかさねいととなけきをそへそおくちかまさりせし浦のしほかま
よをかさね−いととなけきを−そへそおく−ちかまさりせし−うらのしほかま |
07109 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへり又関すゆるあふ坂はこえてそたかき山の岩かと
たちかへり−またせきすゆる−あふさかは−こえてそたかき−やまのいはかと |
07110 |
未入力 正徹 (xxx)
別路につれなかりしそ思ひしるのちのなさけにたへぬ命を
わかれちに−つれなかりしそ−おもひしる−のちのなさけに−たへぬいのちを |
07111 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ又露もなみたも袖に入る玉さかならぬ契ともかな
こよひまた−つゆもなみたも−そてにいる−たまさかならぬ−ちきりともかな |
07112 |
未入力 正徹 (xxx)
いつそやも末ののこりしむつことを思ひ出てねはむすはほれつつ
いつそやも−すゑののこりし−むつことを−おもひいてねは−むすはほれつつ |
07113 |
未入力 正徹 (xxx)
いつか又かくは待ちみんおもひやるさかひはるかにめくる月日を
いつかまた−かくはまちみむ−おもひやる−さかひはるかに−めくるつきひを |
07114 |
未入力 正徹 (xxx)
よひよひにわひてうちぬる玉さかにあひ見る夢そわくかたもなし
よひよひに−わひてうちぬる−たまさかに−あひみるゆめそ−わくかたもなし |
07115 |
未入力 正徹 (xxx)
伊せのあまのなきさにひろふ玉さかに袖も塩干と今夜成りねる
いせのあまの−なきさにひろふ−たまさかに−そてもしほひと−こよひなりねる |
07116 |
未入力 正徹 (xxx)
かたれとも去年の此比あひ見てし夜をさたかにも人は覚えす
かたれとも−こそのこのころ−あひみてし−よをさたかにも−ひとはおほえす |
07117 |
未入力 正徹 (xxx)
いそのかみふるき契をたとるまて人の心のおくの中道
いそのかみ−ふるきちきりを−たとるまて−ひとのこころの−おくのなかみち |
07118 |
未入力 正徹 (xxx)
過きこしも年の三とせの新枕あらはあふよをかくやへたてん
すきこしも−としのみとせの−にひまくら−あらはあふよを−かくやへたてむ |
07119 |
未入力 正徹 (xxx)
いまも猶さめてとは見すくらき夜もおなしつらさの遠き夢ちそ
いまもなほ−さめてとはみす−くらきよも−おなしつらさの−とほきゆめちそ |
07120 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしも思はすふるきかねことと成りにし中そ今夜うらむる
ちきりしも−おもはすふるき−かねことと−なりにしなかそ−こよひうらむる |
07121 |
未入力 正徹 (xxx)
契のみうす花そめのさ夜衣又もかさねん春そはるけき
ちきりのみ−うすはなそめの−さよころも−またもかさねむ−はるそはるけき |
07122 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめしはむかしの秋といふはかり成りてあふ夜の明くるみしかさ
たのめしは−むかしのあきと−いふはかり−なりてあふよの−あくるみしかさ |
07123 |
未入力 正徹 (xxx)
月もうしわかるる比の有明にまち見る夢を残す面影
つきもうし−わかるるころの−ありあけに−まちみるゆめを−のこすおもかけ |
07124 |
未入力 正徹 (xxx)
よのつねの別の鳥にさ夜衣かはす契のあさ烏なく
よのつねの−わかれのとりに−さよころも−かはすちきりの−あさからすなく |
07125 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥啼きてのちにあふよの別路を夕のかねになさはうらめし
とりなきて−のちにあふよの−わかれちを−ゆふへのかねに−なさはうらめし |
07126 |
未入力 正徹 (xxx)
人そとふ夢ならすはと思ひねのうつつにまさるさ夜の手枕
ひとそとふ−ゆめならすはと−おもひねの−うつつにまさる−さよのたまくら |
07127 |
未入力 正徹 (xxx)
身にかはる夢なりけりな逢ふ人のうつつにもにぬ心よわさは
みにかはる−ゆめなりけりな−あふひとの−うつつにもにぬ−こころよわさは |
07128 |
未入力 正徹 (xxx)
あふと見る夢もうつつもえそわかぬ恋ひよわる身をさらはなけかし
あふとみる−ゆめもうつつも−えそわかぬ−こひよわるみを−さらはなけかし |
07129 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひせぬあふ夜の夢の中に有る衣は床にかへしてそねし
おもひせぬ−あふよのゆめの−なかにある−ころもはとこに−かへしてそねし |
07130 |
未入力 正徹 (xxx)
夜をかさね枕によりし浪なれやあひそめ川の夢のわたりは
よをかさね−まくらによりし−なみなれや−あひそめかはの−ゆめのわたりは |
07131 |
未入力 正徹 (xxx)
人も又いかにねし夜のゆくへにて覚めさらましの夢に見えけん
ひともまた−いかにねしよの−ゆくへにて−さめさらましの−ゆめにみえけむ |
07132 |
未入力 正徹 (xxx)
夢のうちにかけつる橋の板枕ならへし川そ袖にみなきる
ゆめのうちに−かけつるはしの−いたまくら−ならへしかはそ−そてにみなきる |
07133 |
未入力 正徹 (xxx)
夜な夜なの夢にまきれぬつらさかな返してねつる衣衣の空
よなよなの−ゆめにまきれぬ−つらさかな−かへしてねつる−きぬきぬのそら |
07134 |
未入力 正徹 (xxx)
わかるてふ名をたにきかぬ暁のなき世にあひて相見まくほし
わかるてふ−なをたにきかぬ−あかつきの−なきよにあひて−あひみまくほし |
07135 |
未入力 正徹 (xxx)
かたみこそ行くもとまるも在明の袖のわかれに分くる月かけ
かたみこそ−ゆくもとまるも−ありあけの−そてのわかれに−わくるつきかけ |
07136 |
未入力 正徹 (xxx)
あくる夜の袖の別の庭に出ててもすそぬれそふ道芝の露
あくるよの−そてのわかれの−にはにいてて−もすそぬれそふ−みちしはのつゆ |
07137 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣のふかかりし夜のつらさかなむなしき床に帰りぬるまて
きぬきぬの−ふかかりしよの−つらさかな−むなしきとこに−かへりぬるまて |
07138 |
未入力 正徹 (xxx)
二たひの名残もかなしおき出てて別ると見しは夢に別れて
ふたたひの−なこりもかなし−おきいてて−わかるとみしは−ゆめにわかれて |
07139 |
未入力 正徹 (xxx)
紅に涙そおつるくろかみのなかき別のきぬきぬのそて
くれなゐに−なみたそおつる−くろかみの−なかきわかれの−きぬきぬのそて |
07140 |
未入力 正徹 (xxx)
別れよといつへきかたの槙の戸を夜ふかくならす媒もうし
わかれよと−いつへきかたの−まきのとを−よふかくならす−なかたちもうし |
07141 |
未入力 正徹 (xxx)
したふそよ稀なる宿の契のみみしかき軒にあまる月影
したふそよ−まれなるやとの−ちきりのみ−みしかきのきに−あまるつきかけ |
07142 |
未入力 正徹 (xxx)
まてしはしかはかりくらき夜のほとをみよとて明くる槙の戸口そ
まてしはし−かはかりくらき−よのほとを−みよとてあくる−まきのとくちそ |
07143 |
未入力 正徹 (xxx)
ささわくるもすそをいたみ先消えて哀すすむる衣衣の露
ささわくる−もすそをいたみ−まつきえて−あはれすすむる−きぬきぬのつゆ |
07144 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしまて月の入るさのやますなく鳥も別をいそく横雲
しはしまて−つきのいるさの−やますなく−とりもわかれを−いそくよこくも |
07145 |
未入力 正徹 (xxx)
恨みすや今夜はかりと別路のあととちめつる槙の戸の月
うらみすや−こよひはかりと−わかれちの−あととちめつる−まきのとのつき |
07146 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりしうき身にしめと朝鳥のおくるは風も袖の別ち
あかさりし−うきみにしめと−あさとりの−おくるはかせも−そてのわかれち |
07147 |
未入力 正徹 (xxx)
我もさそ月も別れてゆく雲をぬきおく衣とたれかしたはん
われもさそ−つきもわかれて−ゆくくもを−ぬきおくきぬと−たれかしたはむ |
07148 |
未入力 正徹 (xxx)
しののめの道のへ遠く行きつれて衣衣よりもうき別かな
しののめの−みちのへとほく−ゆきつれて−きぬきぬよりも−うきわかれかな |
07149 |
未入力 正徹 (xxx)
行末をたのむ契のかはらすはよし一たひの衣衣の空
ゆくすゑを−たのむちきりの−かはらすは−よしひとたひの−きぬきぬのそら |
07150 |
未入力 正徹 (xxx)
身にかへてさらぬ別といふほとはあかぬ此世の明くれのみち
みにかへて−さらぬわかれと−いふほとは−あかぬこのよの−あけくれのみち |
07151 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣ならへもあへぬ衣衣に明けぬうつつの夢路をそ行く
さよころも−ならへもあへぬ−きぬきぬに−あけぬうつつの−ゆめちをそゆく |
07152 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の袖のうら浪早手川かへるもすそもぬるるしほかせ
きぬきぬの−そてのうらなみ−はやてかは−かへるもすそも−ぬるるしほかせ |
07153 |
未入力 正徹 (xxx)
いつはりの有る世をしらぬ心とや人にも身にも今夜みえまし
いつはりの−あるよをしらぬ−こころとや−ひとにもみにも−こよひみえまし |
07154 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはをまつにかけつる露落ちて色そふ袖にふくる秋風
ことのはを−まつにかけつる−つゆおちて−いろそふそてに−ふくるあきかせ |
07155 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしももし思ひねの夢ならはまつ夜明けぬとたれにうらみん
ちきりしも−もしおもひねの−ゆめならは−まつよあけぬと−たれにうらみむ |
07156 |
未入力 正徹 (xxx)
おくことの此ねかはらすあひ見んといひしはしるや宿の松かせ
おくことの−このねかはらす−あひみむと−いひしはしるや−やとのまつかせ |
07157 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人もたのめすつるにあらさりし夕のかねをさたかにそきく
まつひとも−たのめすつるに−あらさりし−ゆふへのかねを−さたかにそきく |
07158 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちいつる庭の秋風おと深けてたのむ夜うすくくもる月影
たちいつる−にはのあきかせ−おとふけて−たのむようすく−くもるつきかけ |
07159 |
未入力 正徹 (xxx)
秋かけていひしことのは猶たのむ草葉もおもる露の衣手
あきかけて−いひしことのは−なほたのむ−くさはもおもる−つゆのころもて |
07160 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮をまつのことのはちらさねはさはらし宿のむくらふのかせ
ゆふくれを−まつのことのは−ちらさねは−さはらしやとの−むくらふのかせ |
07161 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬより深けゆく袖に先こえぬ契りて今夜まつの山なみ
あはぬより−ふけゆくそてに−まつこえぬ−ちきりてこよひ−まつのやまなみ |
07162 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜を契りし末のまつほとは浪こえぬとも見えぬ袖かな
たのむよを−ちきりしすゑの−まつほとは−なみこえぬとも−みえぬそてかな |
07163 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣はたたかりそめそもろともにさらぬ別の道におくれし
きぬきぬは−たたかりそめそ−もろともに−さらぬわかれの−みちにおくれし |
07164 |
未入力 正徹 (xxx)
なほふかき契を松の二本に枝をならへて色もかはらし
なほふかき−ちきりをまつの−ふたもとに−えたをならへて−いろもかはらし |
07165 |
未入力 正徹 (xxx)
をささはらかれしや遠きいその上ふるき枕もくちぬ契に
をささはら−かれしやとほき−いそのかみ−ふるきまくらも−くちぬちきりに |
07166 |
未入力 正徹 (xxx)
先の世もかくや契ほあさちふの露きえかはる身とそしらるる
さきのよも−かくやちきりは−あさちふの−つゆきえかはる−みとそしらるる |
07167 |
未入力 正徹 (xxx)
契をは初もとゆひに結ひきてかはらぬ中の霜にふりぬる
ちきりをは−はつもとゆひに−むすひきて−かはらぬなかの−しもにふりぬる |
07168 |
未入力 正徹 (xxx)
前の世も契をくちぬあらかねにかけてや土と身は成りにけん
さきのよも−ちきりをくちぬ−あらかねに−かけてやつちと−みはなりにけむ |
07169 |
未入力 正徹 (xxx)
我も又わすれす人もよもきふのもとの契のかれぬ春かな
われもまた−わすれすひとも−よもきふの−もとのちきりの−かれぬはるかな |
07170 |
未入力 正徹 (xxx)
ととまらしたたさはかりのことのはにかかる命の露の玉ゆら
ととまらし−たたさはかりの−ことのはに−かかるいのちの−つゆのたまゆら |
07171 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにしてしられすしらす成りそせむかはる心のもとの契は
よそにして−しられすしらす−なりそせむ−かはるこころの−もとのちきりは |
07172 |
未入力 正徹 (xxx)
うつりなむたのめし道の朝くもりいまそ夕の衣衣の空
うつりなむ−たのめしみちの−あさくもり−いまそゆふへの−きぬきぬのそら |
07173 |
未入力 正徹 (xxx)
契れ猶かりそめならぬ宿もみつきゆとも草の原の下露
ちきれなほ−かりそめならぬ−やともみつ−きゆともくさの−はらのしたつゆ |
07174 |
未入力 正徹 (xxx)
いまよりはくへき宿そとたのめおく中にたえすはささかにの糸
いまよりは−くへきやとそと−たのめおく−なかにたえすは−ささかにのいと |
07175 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもたかふしのまにかはるらむはるけき里の道のささ原
ちきりしも−たかふしのまに−かはるらむ−はるけきさとの−みちのささはら |
07176 |
未入力 正徹 (xxx)
三わの山やみのうつつもしるしあるためしに又や賎のをたまき
みわのやま−やみのうつつも−しるしある−ためしにまたや−しつのをたまき |
07177 |
未入力 正徹 (xxx)
露かともいまそとはるる貴舟川□□□□□□□□□□□□□□
つゆかとも−いまそとはるる−きふねかは−ххххххх−ххххххх |
07178 |
未入力 正徹 (xxx)
初瀬山我か夕暮の鐘つひにしるしもつらき衣衣の声
はつせやま−わかゆふくれの−かねつひに−しるしもつらき−きぬきぬのこゑ |
07179 |
未入力 正徹 (xxx)
二本とたのみし三わの杉枕こよひならふるしるしをそみる
ふたもとと−たのみしみわの−すきまくら−こよひならふる−しるしをそみる |
07180 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふかけし神のしるしの帯ならはしたとけ初むる末やたのまん
ゆふかけし−かみのしるしの−おひならは−したとけそむる−すゑやたのまむ |
07181 |
未入力 正徹 (xxx)
祈りこしもとのしるしを三わの山こよひあや杉にかよふ神風
いのりこし−もとのしるしを−みわのやま−こよひあやすきに−かよふかみかせ |
07182 |
未入力 正徹 (xxx)
今そしる神のいさむる道ならぬ世世の契のふかきまことを
いまそしる−かみのいさむる−みちならぬ−よよのちきりの−ふかきまことを |
07183 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなくて契ありせは我かいのちしはし此世に神やのはへん
つれなくて−ちきりありせは−わかいのち−しはしこのよに−かみやのはへむ |
07184 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへりわか身を思ふ心たにそはぬを神に光やいのらむ
たちかへり−わかみをおもふ−こころたに−そはぬをかみに−まつやいのらむ |
07185 |
未入力 正徹 (xxx)
あふことの我かためならぬ恋あらは身を忘れてや猶祈見ん
あふことの−わかためならぬ−こひあらは−みをわすれてや−なほいのりみむ |
07186 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる川の杉のゆふしてしるしみむいつ二本のならふ契そ
ふるかはの−すきのゆふして−しるしみむ−いつふたもとの−ならふちきりそ |
07187 |
未入力 正徹 (xxx)
うけすはと祈りすててもいまさらにいつれの神をかへてたのまん
うけすはと−いのりすてても−いまさらに−いつれのかみを−かへてたのまむ |
07188 |
未入力 正徹 (xxx)
神そうき恋にしなとの風たにもふかぬみそきはしてもなひかす
かみそうき−こひにしなとの−かせたにも−ふかぬみそきは−してもなひかす |
07189 |
未入力 正徹 (xxx)
憑みきぬいかきのくす葉かへるとも身をはうらみし神の秋風
たのみきぬ−いかきのくすは−かへるとも−みをはうらみし−かみのあきかせ |
07190 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしのねやむなし煙の末つひに神の名たてに成りやはてまし
ふしのねや−むなしけふりの−すゑつひに−かみのなたてに−なりやはてまし |
07191 |
未入力 正徹 (xxx)
憑みこし神もしるしのなき名をはいかかこたへん貴舟川なみ
たのみこし−かみもしるしの−なきなをは−いかかこたへむ−きふねかはなみ |
07192 |
未入力 正徹 (xxx)
祈りこし契も中をへたつとや杉のはとつる布留の川霧
いのりこし−ちきりもなかを−へたつとや−すきのはとつる−ふるのかはきり |
07193 |
未入力 正徹 (xxx)
なひくとはきかぬそたのみかけおくもむなしきしめのよその引く手に
なひくとは−きかぬそたのみ−かけおくも−むなしきしめの−よそのひくてに |
07194 |
未入力 正徹 (xxx)
年月のむなしみそきはかなふともなにせん老のなみのあふせは
としつきの−むなしみそきは−かなふとも−なにせむおいの−なみのあふせは |
07195 |
未入力 正徹 (xxx)
ねきことをあつらへつけし宮人も老いてしるしのみえぬ中かな
ねきことを−あつらへつけし−みやひとも−おいてしるしの−みえぬなかかな |
07196 |
未入力 正徹 (xxx)
玉つしまあふく袂にいまもひけくへきよひしるささかにの糸
たまつしま−あふくたもとに−いまもひけ−くへきよひしる−ささかにのいと |
07197 |
未入力 正徹 (xxx)
朝しほをたのめは後のうら風に吹きなむかひそわたる舟人
あさしほを−たのめはのちの−うらかせに−ふきなむかひそ−わたるふなひと |
07198 |
未入力 正徹 (xxx)
さまさまにたのめおきてし一言もあはぬ心のうらそまさしき
さまさまに−たのめおきてし−ひとことも−あはぬこころの−うらそまさしき |
07199 |
未入力 正徹 (xxx)
あさしともたれかは空にくみしらんちかひの海のふかき契を
あさしとも−たれかはそらに−くみしらむ−ちかひのうみの−ふかきちきりを |
07200 |
未入力 正徹 (xxx)
身をしれは袖ぬれつつもふかき江とちかひしかみの見るめをそかる
みをしれは−そてぬれつつも−ふかきえと−ちかひしかみの−みるめをそかる |
07201 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ火も我かすむかたに立つ煙人をあし屋の里になひくな
もしほひも−わかすむかたに−たつけふり−ひとをあしやの−さとになひくな |
07202 |
未入力 正徹 (xxx)
たち帰りうらみにひまもありぬへしさのみうき身のとかになさすは
たちかへり−うらみにひまも−ありぬへし−さのみうきみの−とかになさすは |
07203 |
未入力 正徹 (xxx)
秋萩のうつろひそめし下はよりひとりそもろき露も涙も
あきはきの−うつろひそめし−したはより−ひとりそもろき−つゆもなみたも |
07204 |
未入力 正徹 (xxx)
よもきふや我か身のうさをもととして末葉の露そ雨にまされる
よもきふや−わかみのうさを−もととして−すゑはのつゆそ−あめにまされる |
07205 |
未入力 正徹 (xxx)
世のうさも人のつらさも身のほかにあらはそさらに思ひわかまし
よのうさも−ひとのつらさも−みのほかに−あらはそさらに−おもひわかまし |
07206 |
未入力 正徹 (xxx)
わすらるる身をうらしまによる浪のかへりて消えしあとの白あわ
わすらるる−みをうらしまに−よるなみの−かへりてきえし−あとのしらあわ |
07207 |
未入力 正徹 (xxx)
忘らるる身を浦島の玉くしけむなしくあけし契のみかは
わすらるる−みをうらしまの−たまくしけ−むなしくあけし−ちきりのみかは |
07208 |
未入力 正徹 (xxx)
をののえの朽ちし契の跡もなし身をうら島か此世なからに
をののえの−くちしちきりの−あともなし−みをうらしまか−このよなからに |
07209 |
未入力 正徹 (xxx)
いつよりのあまのしわさそ袖のなみ身をうら風も衣にそ吹く
いつよりの−あまのしわさそ−そてのなみ−みをうらかせも−ころもにそふく |
07210 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風に吹きかへされし下帯のうらはのままにかるる中かな
あきかせに−ふきかへされし−したおひの−うらはのままに−かるるなかかな |
07211 |
未入力 正徹 (xxx)
すゑとほる恨もふりてこよひこし跡こそみえね道芝の霜
すゑとほる−うらみもふりて−こよひこし−あとこそみえね−みちしはのしも |
07212 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしはうきたる雲の山風にあとなき嶺の松そつれなき
ちきりしは−うきたるくもの−やまかせに−あとなきみねの−まつそつれなき |
07213 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜にかかりしまくすねをたえて秋のうらはの色たにもなし
つゆしもに−かかりしまくす−ねをたえて−あきのうらはの−いろたにもなし |
07214 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはにうらみし秋もむかしにて下はふ草そねさへかれ行く
ことのはに−うらみしあきも−むかしにて−したはふくさそ−ねさへかれゆく |
07215 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひこし跡なき宿の道芝にかれす葛はや生ひかはるらん
かよひこし−あとなきやとの−みちしはに−かれすくすはや−おひかはるらむ |
07216 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみ身をうらわけ衣しほかせにほさぬま袖に波のかくらん
さのみみを−うらわけころも−しほかせに−ほさぬまそてに−なみのかくらむ |
07217 |
未入力 正徹 (xxx)
あさき江の秋にかれ行くあしへよりみちくるしほそうらをふかむる
あさきえの−あきにかれゆく−あしへより−みちくるしほそ−うらをふかむる |
07218 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか見るきのふにかはることくさの末はの露のおもき恨を
いかかみる−きのふにかはる−ことくさの−すゑはのつゆの−おもきうらみを |
07219 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ草ことのはことにさもあらぬ色にかれゆく露もうらめし
おもひくさ−ことのはことに−さもあらぬ−いろにかれゆく−つゆもうらめし |
07220 |
未入力 正徹 (xxx)
たえねたた袖の涙の玉たすきかくるもつらし思ふことのは
たえねたた−そてのなみたの−たまたすき−かくるもつらし−おもふことのは |
07221 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ火のくゆる煙もかひそなき吹きなひかさぬうら風にして
もしほひの−くゆるけふりも−かひそなき−ふきなひかさぬ−うらかせにして |
07222 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひかねかへす衣のうらみまて見ぬ世の夢も遠き中かな
おもひかね−かへすころもの−うらみまて−みぬよのゆめも−とほきなかかな |
07223 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたか恨まさるとくらへ見よくすの二本秋かせそふく
いつかたか−うらみまさると−くらへみよ−くすのふたもと−あきかせそふく |
07224 |
未入力 正徹 (xxx)
まつらかた世をうら風にむかふまのなくはそいてん秋の舟人
まつらかた−よをうらかせに−むかふまの−なくはそいてむ−あきのふなひと |
07225 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬ松のことのはつれなくはかかるもかれね葛の浦風
いろかへぬ−まつのことのは−つれなくは−かかるもかれね−くすのうらかせ |
07226 |
未入力 正徹 (xxx)
夢もみしうき人つての一言にやみのうつつはねてあかせとも
ゆめもみし−うきひとつての−ひとことに−やみのうつつは−ねてあかせとも |
07227 |
未入力 正徹 (xxx)
風つたふ末のの葛よ萩かえにうきもとあらのあらきことのは
かせつたふ−すゑののくすよ−はきかえに−うきもとあらの−あらきことのは |
07228 |
未入力 正徹 (xxx)
おともせし契なき名と今朝いふもよのつね人のためしある世は
おともせし−ちきりなきなと−けさいふも−よのつねひとの−ためしあるよは |
07229 |
未入力 正徹 (xxx)
けふのみの花の陰ともちきらてや立つことやすき名をなけくらん
けふのみの−はなのかけとも−ちきらてや−たつことやすき−なをなけくらむ |
07230 |
未入力 正徹 (xxx)
春過きて心の花のなき名たに夕雲かかる峰のさくらを
はるすきて−こころのはなの−なきなたに−ゆふくもかかる−みねのさくらを |
07231 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くそうき玉えの鳥の立つ空もなきにはあらぬ芦の下風
きくそうき−たまえのとりの−たつそらも−なきにはあらぬ−あしのしたかせ |
07232 |
未入力 正徹 (xxx)
しかりとておよはぬ雲にのほるかはうき名を空にたつの市人
しかりとて−およはぬくもに−のはるかは−うきなをそらに−たつのいちひと |
07233 |
未入力 正徹 (xxx)
身はこりぬうき名をたつの市柴をたくや煙の色もまかはて
みはこりぬ−うきなをたつの−いちしはを−たくやけふりの−いろもまかはて |
07234 |
未入力 正徹 (xxx)
恋ならぬ道をまなふにかはかりの我か名きこえはなにかうからん
こひならぬ−みちをまなふに−かはかりの−わかなきこえは−なにかうからむ |
07235 |
未入力 正徹 (xxx)
かくれすようき名もたつの市の日に雲にのほるを人のみるまて
かくれすよ−うきなもたつの−いちのひに−くもにのほるを−ひとのみるまて |
07236 |
未入力 正徹 (xxx)
めにかかる雲のなみまにいつ生ひて立つなのりそのかくれなからむ
めにかかる−くものなみまに−いつおひて−たつなのりその−かくれなからむ |
07237 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりならぬ我か名はまたきたち水のなかれての世を床にせかすは
ちりならぬ−わかなはまたき−たちみつの−なかれてのよを−とこにせかすは |
07238 |
未入力 正徹 (xxx)
ととまらしはやくうき名は立水のなかれての世を末にせくとも
ととまらし−はやくうきなは−たちみつの−なかれてのよを−すゑにせくとも |
07239 |
未入力 正徹 (xxx)
さもあらはあれ□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
さもあらはあれ−хххххххх−ххххх−ххххххх−хххххх |
07240 |
未入力 正徹 (xxx)
はま千鳥いつかおりゐし跡かたもみえぬま砂をたつる塩かせ
はまちとり−いつかおりゐし−あとかたも−みえぬまさこを−たつるしほかせ |
07241 |
未入力 正徹 (xxx)
ひきかくす衣のむねもあはぬまにもれいてて名の立つ煙かな
ひきかくす−ころものむねも−あはぬまに−もれいててなの−たつけふりかな |
07242 |
未入力 正徹 (xxx)
晴れかたき心も空にきえねとや跡なし雲にあらしふくらん
はれかたき−こころもそらに−きえねとや−あとなしくもに−あらしふくらむ |
07243 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれわひぬうき名をたつの市柴や恋のつかねをたゆる契に
みたれわひぬ−うきなをたつの−いちしはや−こひのつかねを−たゆるちきりに |
07244 |
未入力 正徹 (xxx)
よりきつる我か名のりそのもくつまて磯かくれなくあらふ浪かな
よりきつる−わかなのりその−もくつまて−いそかくれなく−あらふなみかな |
07245 |
未入力 正徹 (xxx)
あけぬまに我か身は雲に立ち出てぬはらはしちりのなれる山風
あけぬまに−わかみはくもに−たちいてぬ−はらはしちりの−なれるやまかせ |
07246 |
未入力 正徹 (xxx)
たつぬなよあまの子なれはやともとはいはぬにしほをたるる袖かな
たつぬなよ−あまのこなれは−やともとは−いはぬにしほを−たるるそてかな |
07247 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原とふへき主やたれそとも三重の扇にかすむ月かけ
くさのはら−とふへきぬしや−たれそとも−みへのあふきに−かすむつきかけ |
07248 |
未入力 正徹 (xxx)
たつぬともあまの子なれは宿もりて磯かくれなん名のりそもうし
たつぬとも−あまのこなれは−やともりて−いそかくれなむ−なのりそもうし |
07249 |
未入力 正徹 (xxx)
とはやなこよひの宿の松風も吹きつたふへき末のしるへを
とははやな−こよひのやとの−まつかせも−ふきつたふへき−すゑのしるへを |
07250 |
未入力 正徹 (xxx)
海山をおほくこえきて道もあらし人の心のおくのあよみは
うみやまを−おほくこえきて−みちもあらし−ひとのこころの−おくのあよみは |
07251 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれそ行くとへはあさちか末の露散りてこたふる袖の秋かせ
ぬれそゆく−とへはあさちか−すゑのつゆ−ちりてこたふる−そてのあきかせ |
07252 |
未入力 正徹 (xxx)
宿とはて帰らは思ひ消えぬへし月に舟さす川かみの雲
やととはて−かへらはおもひ−きえぬへし−つきにふねさす−かはかみのくも |
07253 |
未入力 正徹 (xxx)
あけまきもゆく末はしらす法の師の道ひくならぬをのの山陰
あけまきも−ゆくへはしらす−のりのしの−みちひくならぬ−をののやまかけ |
07254 |
未入力 正徹 (xxx)
忘貝かひあるきしによりきてもつらき草はの住吉の里
わすれかひ−かひあるきしに−よりきても−つらきくさはの−すみよしのさと |
07255 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟ちかきつなてをとり見はやこなたの江にもひかれよるかに
あまをふね−ちかきつなてを−とりみはや−こなたのえにも−ひかれよるかに |
07256 |
未入力 正徹 (xxx)
くり返し猶そ憑まむうりつるの末のたよりとなりもならすも
くりかへし−なほそたのまむ−うりつるの−すゑのたよりと−なりもならすも |
07257 |
未入力 正徹 (xxx)
水上にいさ白淡をよるへとてつたへとふともなかれとほくは
みなかみに−いさしらあわを−よるへとて−つたへとふとも−なかれとほくは |
07258 |
未入力 正徹 (xxx)
きえね露衣衣なりしむかしたにうき道芝の在明のかけ
きえねつゆ−きぬきぬなりし−むかしたに−うきみちしはの−ありあけのかけ |
07259 |
未入力 正徹 (xxx)
露そもる新手沈のすきまたに猶ならはしの袖せはくして
つゆそもる−にひたまくらの−すきまたに−なほならはしの−そてせはくして |
07260 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣わか身ひとつの露分けし袖にわかれぬしののめの月
さよころも−わかみひとつの−つゆわけし−そてにわかれぬ−しののめのつき |
07261 |
未入力 正徹 (xxx)
こぬ宿の軒はに立ちて松とたにみすなよさらはくらき朝霧
こぬやとの−のきはにたちて−まつとたに−みすなよさらは−くらきあさきり |
07262 |
未入力 正徹 (xxx)
とはぬ夜のあくれはむねにせきとちて心の道そいととはるけき
とはぬよの−あくれはむねに−せきとちて−こころのみちそ−いととはるけき |
07263 |
未入力 正徹 (xxx)
ほかなしと松も見るらん槙の戸にむかひの山も峰そ明行く
ほかなしと−まつもみるらむ−まきのとに−むかひのやまも−みねそあけゆく |
07264 |
未入力 正徹 (xxx)
まてはこてうらみんとおもふあけほのの空もむなしき雲そたえ行く
まてはこて−うらみむとおもふ−あけほのの−そらもむなしき−くもそたえゆく |
07265 |
未入力 正徹 (xxx)
あた浪にたのめつるかな岩木山こえてこぬみのはまかせもうし
あたなみに−たのめつるかな−いはきやま−こえてこぬみの−はまかせもうし |
07266 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜のあくる袂におもりきぬかねことのはの末の白露
たのむよの−あくるたもとに−おもりきぬ−かねことのはの−すゑのしらつゆ |
07267 |
未入力 正徹 (xxx)
月まちてまつ夜と人に見せもせすぬれともつらき鳥の声かな
つきまちて−まつよとひとに−みせもせす−ぬれともつらき−とりのこゑかな |
07268 |
未入力 正徹 (xxx)
まてはうしまたしとおもふ心をも忘れんとすれはたたに恋しき
まてはうし−またしとおもふ−こころをも−わすれむとすれは−たたにこひしき |
07269 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふ衣衣よりも立ちあかす身はひややかにあくる秋かせ
つゆはらふ−きぬきぬよりも−たちあかす−みはひややかに−あくるあきかせ |
07270 |
未入力 正徹 (xxx)
友に見てたのめし夜はをあきらかにしるへき月もこととはすして
ともにみて−たのめしよはを−あきらかに−しるへきつきも−こととはすして |
07271 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしをまつはよそにてむなし夜のあけの衣となる涙かな
ちきりしを−まつはよそにて−むなしよの−あけのころもと−なるなみたかな |
07272 |
未入力 正徹 (xxx)
こぬ人をまつとせしまの松の陰おなしときはの里はあれにき
こぬひとを−まつとせしまの−まつのかけ−おなしときはの−さとはあれにき |
07273 |
未入力 正徹 (xxx)
ありふへき末の命をなきになして一夜にかきるあふ事もかな
ありふへき−すゑのいのちを−なきになして−ひとよにかきる−あふこともかな |
07274 |
未入力 正徹 (xxx)
床中も恋はみちぬる閨を出ててたたすめは身をしほる松かせ
とこなかも−こひはみちぬる−ねやをいてて−たたすめはみを−しほるまつかせ |
07275 |
未入力 正徹 (xxx)
しみふかく人のとめてし枕かをこかるるむねにおきあかしつつ
しみふかく−ひとのとめてし−まくらかを−こかるるむねに−おきあかしつつ |
07276 |
未入力 正徹 (xxx)
露きえぬ契あさちはなにかせん命かけてし夕暮の宿
つゆきえぬ−ちきりあさちは−なにかせむ−いのちかけてし−ゆふくれのやと |
07277 |
未入力 正徹 (xxx)
人やもし袖ふれけんと下紐をそなたの風にむかひてそとく
ひとやもし−そてふれけむと−したひもを−そなたのかせに−むかひてそとく |
07278 |
未入力 正徹 (xxx)
身にとまる匂もちかき面影にこよひはひとりぬるとしもなし
みにとまる−にほひもちかき−おもかけに−こよひはひとり−ぬるとしもなし |
07279 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひこしふる野のをささいつの世に結ひし露の袖に朽つらん
かよひこし−ふるののをささ−いつのよに−むすひしつゆの−そてにくつらむ |
07280 |
未入力 正徹 (xxx)
とはれつるむかしの夢のたたちたに見えこし人やふみたかへけん
とはれつる−むかしのゆめの−たたちたに−みえこしひとや−ふみたかへけむ |
07281 |
未入力 正徹 (xxx)
まつそうき空ゆくかせの引きすてし雲の糸すちたえん契を
まつそうき−そらゆくかせの−ひきすてし−くものいとすち−たえむちきりを |
07282 |
未入力 正徹 (xxx)
ことしけくかよひし文の墨つきもかるる契の後そ見まうき
ことしけく−かよひしふみの−すみつきも−かるるちきりの−のちそみまうき |
07283 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりしは夢のうき橋末たえぬもとより川もなき床の上
わたりしは−ゆめのうきはし−すゑたえぬ−もとよりかはも−なきとこのうへ |
07284 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれ貝ひろひ初めてやうら人の我かなのりそをかつたとるらん
わすれかひ−ひろひそめてや−うらひとの−わかなのりそを−かつたとるらむ |
07285 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしとおもひ捨つるをたよりにてしたふかとほき夢の面影
はかなしと−おもひすてつるを−たよりにて−したふかとほき−ゆめのおもかけ |
07286 |
未入力 正徹 (xxx)
さもこそは隙はなくとも思ひなきもとの心をなとわするらん
さもこそは−ひまはなくとも−おもひなき−もとのこころを−なとわするらむ |
07287 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれ水此身のならむ野へまては思ひけたれぬ煙とやしる
わすれみつ−このみのならむ−のへまては−おもひけたれぬ−けふりとやしる |
07288 |
未入力 正徹 (xxx)
あやにくに忘れんとすれとわさととふ人やりならぬさよのおもかけ
あやにくに−わすれむとすれと−わさととふ−ひとやりならぬ−さよのおもかけ |
07289 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしておもひおきつの浜の松はこて在明の月に残る面影
ふしておもひ−おきつのはまの−まつはこて−ありあけのつきに−のこるおもかけ |
07290 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかりわするる心やす川の水や野中に草かくるらむ
かくはかり−わするるこころ−やすかはの−みつやのなかに−くさかくるらむ |
07291 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしは昨日の花の山あらしわすれかたみの雲もかからて
ちきりしは−きのふのはなの−やまあらし−わすれかたみの−くももかからて |
07292 |
未入力 正徹 (xxx)
うき雲のさはるをつくる月影に又ふりいつる袖のむら雨
うきくもの−さはるをつくる−つきかけに−またふりいつる−そてのむらさめ |
07293 |
未入力 正徹 (xxx)
うちいててさもかたかりしことのはの石の火のまにかはる中かな
うちいてて−さもかたかりし−ことのはの−いしのひのまに−かはるなかかな |
07294 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ鳥のてる日をさふる影のまに雲のよそにも人そ成行く
とふとりの−てるひをさふる−かけのまに−くものよそにも−ひとそなりゆく |
07295 |
未入力 正徹 (xxx)
浪たかみ水上いててくる川の契あさせはあとかたもなし
なみたかみ−みなかみいてて−くるかはの−ちきりあさせは−あとかたもなし |
07296 |
未入力 正徹 (xxx)
時のまをたのみけるかな我かかたに引く手のうらをかへす心は
ときのまを−たのみけるかな−わかかたに−ひくてのうらを−かへすこころは |
07297 |
未入力 正徹 (xxx)
なにかせんうきことのはを水くきの跡さたかなる世世の契は
なにかせむ−うきことのはを−みつくきの−あとさたかなる−よよのちきりは |
07298 |
未入力 正徹 (xxx)
かすかすに思ひまさこの鳥のあと消えてや見えん中の通ち
かすかすに−おもひまさこの−とりのあと−きえてやみえむ−なかのかよひち |
07299 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ川たつき心をみつくきの跡にもしれとなかしやりつつ
おもひかは−たつきこころを−みつくきの−あとにもしれと−なかしやりつつ |
07300 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりきぬかきつる紙のむすひめもとかぬ氷をかさねしもうし
かへりきぬ−かきつるかみの−むすひめも−とかぬこほりを−かさねしもうし |
07301 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそははあらしよ夢の面影に枕ならへてあくる別は
みにそはは−あらしよゆめの−おもかけに−まくらならへて−あくるわかれは |
07302 |
未入力 正徹 (xxx)
花の香も此世におはぬ色をみて思ひかさぬる袖の春雨
はなのかも−このよにおはぬ−いろをみて−おもひかさぬる−そてのはるさめ |
07303 |
未入力 正徹 (xxx)
いやましの雲にみるめをかけぬとやうきたる花の浪もちるらん
いやましの−くもにみるめを−かけぬとや−うきたるはなの−なみもちるらむ |
07304 |
未入力 正徹 (xxx)
ほの見ても思ひますほの薄ちる野を秋かせに露そくたくる
ほのみても−おもひますほの−すすきちる−のをあきかせに−つゆそくたくる |
07305 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりきうきて雲ゐる浪の上に見えぬこしまの松の面影
しらさりき−うきてくもゐる−なみのうへに−みえぬこしまの−まつのおもかけ |
07306 |
未入力 正徹 (xxx)
見るめさへなきさのとま屋すみすてはあらしなかねそにほのささ波
みるめさへ−なきさのとまや−すみすては−あらしなかねそ−にほのささなみ |
07307 |
未入力 正徹 (xxx)
いとはれぬほとにもかなやもろ恋になる世はかたき契なりとも
いとはれぬ−ほとにもかなや−もろこひに−なるよはかたき−ちきりなりとも |
07308 |
未入力 正徹 (xxx)
かきやらむおもふ心の下染はなほからあゐのやまとことのは
かきやらむ−おもふこころの−したそめは−なほからあゐの−やまとことのは |
07309 |
未入力 正徹 (xxx)
かひもなし浪まに消えてうきみるのよらぬ渚のよそめはかりは
かひもなし−なみまにきえて−うきみるの−よらぬなきさの−よそめはかりは |
07310 |
未入力 正徹 (xxx)
かけとめよ雲まの月を三かの原袂にわきていつみ川なみ
かけとめよ−くもまのつきを−みかのはら−たもとにわきて−いつみかはなみ |
07311 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれてそむねにみちくるまほろしに見えて消行く夕暮の空
うかれてそ−むねにみちくる−まほろしに−みえてきえゆく−ゆふくれのそら |
07312 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの天つ空なる人の世そ見るをあふにて心ゆくとか
ひさかたの−あまつそらなる−ひとのよそ−みるをあふにて−こころゆくとか |
07313 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられぬ風はむかしのこゑなからよそにのみしてきくの浜松
わすられぬ−かせはむかしの−こゑなから−よそにのみして−きくのはままつ |
07314 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさもかはらぬものをいそのかみ□□□□□□□□□□□□□□
つれなさも−かはらぬものを−いそのかみ−ххххххх−ххххххх |
07315 |
未入力 正徹 (xxx)
水くきのなかれくるまをまちわひて今朝のなみたの淡と消えぬる
みつくきの−なかれくるまを−まちわひて−けさのなみたの−あわときえぬる |
07316 |
未入力 正徹 (xxx)
わけかへる道のささはら朝露の思はぬさへもけぬかつれなさ
わけかへる−みちのささはら−あさつゆの−おもはぬさへも−けぬかつれなさ |
07317 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはにこの夕暮と契らすは猶引きとかしむすふ玉つさ
ことのはに−このゆふくれと−ちきらすは−なほひきとかし−むすふたまつさ |
07318 |
未入力 正徹 (xxx)
夢とたにいひはるけすはいかかとや今朝は心のとはんともせぬ
ゆめとたに−いひはるけすは−いかかとや−けさはこころの−とはむともせぬ |
07319 |
未入力 正徹 (xxx)
いまそうき別路におふるあさち原契りもおかぬ露の秋風
いまそうき−わかれちにおふる−あさちはら−ちきりもおかぬ−つゆのあきかせ |
07320 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれわひぬ別路に生ふる思ひ草たまたま露の消えしもすそを
ぬれわひぬ−わかれちにおふる−おもひくさ−たまたまつゆの−きえしもすそを |
07321 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣ののちはかひなし帰りふす床の白玉まろひあへとも
きぬきぬの−のちはかひなし−かへりふす−とこのしらたま−まろひあへとも |
07322 |
未入力 正徹 (xxx)
朝日影ほせかし袖をくれなはとわかなくさめて帰る契を
あさひかけ−ほせかしそてを−くれなはと−わかなくさめて−かへるちきりを |
07323 |
未入力 正徹 (xxx)
あらかりし千草の風はこゑ過きてことのはなひく露そ身にしむ
あらかりし−ちくさのかせは−こゑすきて−ことのはなひく−つゆそみにしむ |
07324 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかりぬる夜なき身にぬき川のせせのやはら田末や憑まん
かくはかり−ぬるよなきみに−ぬきかはの−せせのやはらた−すゑやたのまむ |
07325 |
未入力 正徹 (xxx)
ことうらのあまのみるめをへたつやとあしの忍ひにかつく浪かな
ことうらの−あまのみるめを−へたつやと−あしのしのひに−かつくなみかな |
07326 |
未入力 正徹 (xxx)
都鳥身をやくよりもとはかりのなけきのけふり立ちもわかれす
みやことり−みをやくよりも−とはかりの−なけきのけふり−たちもわかれす |
07327 |
未入力 正徹 (xxx)
いさしらす道行ふりの袖のかを中の衣になさむ契は
いさしらす−みちゆきふりの−そてのかを−なかのころもに−なさむちきりは |
07328 |
未入力 正徹 (xxx)
道ふりのこすのまよひに見すもあらぬなけきもかりの宿の秋風
みちふりの−こすのまよひに−みすもあらぬ−なけきもかりの−やとのあきかせ |
07329 |
未入力 正徹 (xxx)
行ふりの袖のにほひも深からぬ思ひのつまにかくる恋かな
ゆきふりの−そてのにほひも−ふかからぬ−おもひのつまに−かくるこひかな |
07330 |
未入力 正徹 (xxx)
あさかほの露のうはさを荻のはのこゑ身にしめし中川の宿
あさかほの−つゆのうはさを−をきのはの−こゑみにしめし−なかかはのやと |
07331 |
未入力 正徹 (xxx)
老ならぬ涙もろさのあやしさを見しれるさまに人そおほめく
おいならぬ−なみたもろさの−あやしさを−みしれるさまに−ひとそおほめく |
07332 |
未入力 正徹 (xxx)
人そとふ涙にたにもしらせしと思ひし袖の色みえぬまを
ひとそとふ−なみたにたにも−しらせしと−おもひしそての−いろみえぬまを |
07333 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ川あたにそ立ちしなかれてもうき名をすすけ袖の上なみ
おもひかは−あたにそたちし−なかれても−うきなをすすけ−そてのうへなみ |
07334 |
未入力 正徹 (xxx)
なほさりにひかへし袖のうつりかも身にしむ色の月なやとりそ
なほさりに−ひかへしそての−うつりかも−みにしむいろの−つきなやとりそ |
07335 |
未入力 正徹 (xxx)
あらためてたきにほはさしなれし夜の人かにそめる中の衣を
あらためて−たきにほはさし−なれしよの−ひとかにそめる−なかのころもを |
07336 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふへき衣にもあらぬ一重山中にありても恋ひつつそぬる
いとふへき−きぬにもあらぬ−ひとへやま−なかにありても−こひつつそぬる |
07337 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらすつれなき中の我かためにゆきては帰る年やくるしき
かすしらす−つれなきなかの−わかために−ゆきてはかへる−としやくるしき |
07338 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは我か年つもれつれなきもさすかふりぬと人をみるかに
よしさらは−わかとしつもれ−つれなきも−さすかふりぬと−ひとをみるかに |
07339 |
未入力 正徹 (xxx)
もとかしはもとの思ひの露おちてふるからをのに朽はとふなり
もとかしは−もとのおもひの−つゆおちて−ふるからをのに−くちはとふなり |
07340 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりうせぬ名におふ宮のふることも涙時雨にならのはの陰
ちりうせぬ−なにおふみやの−ふることも−なみたしくれに−ならのはのかけ |
07341 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中に年をふる野の秋の霜おきてそかれし道のささ原
うきなかに−としをふるのの−あきのしも−おきてそかれし−みちのささはら |
07342 |
未入力 正徹 (xxx)
袖しほる露をつたへよおなし野のゆかりの草の原のゆふかせ
そてしほる−つゆをつたへよ−おなしのの−ゆかりのくさの−はらのゆふかせ |
07343 |
未入力 正徹 (xxx)
つたふるもはかなきほとの年なみをよしくみしれよ中川の水
つたふるも−はかなきほとの−としなみを−よしくみしれよ−なかかはのみつ |
07344 |
未入力 正徹 (xxx)
二かたに思ひひかむるつらさをも中にことわる君しあらすは
ふたかたに−おもひひかむる−つらさをも−なかにことわる−きみしあらすは |
07345 |
未入力 正徹 (xxx)
面影の又やはさのみ身にしまむつま吹きかへすこすの秋かせ
おもかけの−またやはさのみ−みにしまむ−つまふきかへす−こすのあきかせ |
07346 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしや浪まにめくる水の淡のよらむ汀を松の下かせ
はかなしや−なみまにめくる−みつのあわの−よらむみきはを−まつのしたかせ |
07347 |
未入力 正徹 (xxx)
まよふなり君によるへをたのむ江の追手白なみふかぬ夕は
まよふなり−きみによるへを−たのむえの−おひてしらなみ−ふかぬゆふへは |
07348 |
未入力 正徹 (xxx)
あさき江にかつ見る花の貌鳥もうき太山木にかけなならへそ
あさきえに−かつみるはなの−かほとりも−うきみやまきに−かけなならへそ |
07349 |
未入力 正徹 (xxx)
末の松契りし浪はかつこえて庭のよもきは島となるまて
すゑのまつ−ちきりしなみは−かつこえて−にはのよもきは−しまとなるまて |
07350 |
未入力 正徹 (xxx)
とひとはむむくらのかとをならへてもうらはあらはそさしもこもらん
とひとはむ−むくらのかとを−ならへても−うらはあらはそ−さしもこもらむ |
07351 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬまを思ふ涙のもろ恋はやすくや袖もぬれてほすらん
あはぬまを−おもふなみたの−もろこひは−やすくやそても−ぬれてほすらむ |
07352 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そ夢あふよと見つるむつことにいもおとろくもうつつとはなし
なほそゆめ−あふよとみつる−むつことに−いもおとろくも−うつつとはなし |
07353 |
未入力 正徹 (xxx)
そへやせむ覚めさらましの夢ならはなかき眠にならぬうらみを
そへやせむ−さめさらましの−ゆめならは−なかきねふりに−ならぬうらみを |
07354 |
未入力 正徹 (xxx)
あけはをしね覚ののちのいねかてに枕ならふるさ夜の面影
あけはをし−ねさめののちの−いねかてに−まくらならふる−さよのおもかけ |
07355 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろきし夢の面影よのつねのね覚ならぬをしる涙かな
おとろきし−ゆめのおもかけ−よのつねの−ねさめならぬを−しるなみたかな |
07356 |
未入力 正徹 (xxx)
ほの身えてたえつる夢のうち橋にわたり帰らぬさよの面影
ほのみえて−たえつるゆめの−うちはしに−わたりかへらぬ−さよのおもかけ |
07357 |
未入力 正徹 (xxx)
なにゆゑのさむる涙そ思ひねをたのむ夢なく明くる夜の空
なにゆゑの−さむるなみたそ−おもひねを−たのむゆめなく−あくるよのそら |
07358 |
未入力 正徹 (xxx)
世世かけしことのはひろき影たのむ契を秋の露なもらしそ
よよかけし−ことのはひろき−かけたのむ−ちきりをあきの−つゆなもらしそ |
07359 |
未入力 正徹 (xxx)
みるめかる人の袂やこかれなむ我たくちかのうらのもしほ火
みるめかる−ひとのたもとや−こかれなむ−われたくちかの−うらのもしほひ |
07360 |
未入力 正徹 (xxx)
のこりゐて命をあたに朝露のおもはん袖の別路もうし
のこりゐて−いのちをあたに−あさつゆの−おもはむそての−わかれちもうし |
07361 |
未入力 正徹 (xxx)
我か袖を折りにほはさむあらましもとほ山桜ちるあらしかな
わかそてを−をりにほはさむ−あらましも−とほやまさくら−ちるあらしかな |
07362 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそへむあらぬ心に成りゆかぬ其世なからのあかぬ面影
みにそへむ−あらぬこころに−なりゆかぬ−そのよなからの−あかぬおもかけ |
07363 |
未入力 正徹 (xxx)
面影は身をもはなれぬうつつにてうつつそまれの夢の面影
おもかけは−みをもはなれぬ−うつつにて−うつつそまれの−ゆめのおもかけ |
07364 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひしれ我かおもかけの人のためうかりしをたに君も忘れし
おもひしれ−わかおもかけの−ひとのため−うかりしをたに−きみもわすれし |
07365 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつつまつま別路とりそへて出入る月にこふる夜はかな
たのめつつ−まつまわかれち−とりそへて−いているつきに−こふるよはかな |
07366 |
未入力 正徹 (xxx)
えそいはぬ心の中をかたはかりまなひかたれとおもふさへこそ
えそいはぬ−こころのうちを−かたはかり−まなひかたれと−おもふさへこそ |
07367 |
未入力 正徹 (xxx)
月まつと人にはいひし夕暮をたた其ままに君や聞きけん
つきまつと−ひとにはいひし−ゆふくれを−たたそのままに−きみやききけむ |
07368 |
未入力 正徹 (xxx)
人そ見む五十につたふる比ならぬこの玉つさを君よ紐とけ
ひとそみむ−いそにつたふる−ころならぬ−このたまつさを−きみよひもとけ |
07369 |
未入力 正徹 (xxx)
契りつつたのめてまつにくもる日は中中おそきゆふ暮の空
ちきりつつ−たのめてまつに−くもるひは−なかなかおそき−ゆふくれのそら |
07370 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまをふるは千とせの山陰に思ひもすてぬ峰の松風
くるるまを−ふるはちとせの−やまかけに−おもひもすてぬ−みねのまつかせ |
07371 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にこそ猶せきかぬれむもれ水岩まにもらす声につけても
そてにこそ−なほせきかぬれ−むもれみつ−いはまにもらす−こゑにつけても |
07372 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ事いひてことふる声をたにきかはやむなし恋の山ひこ
おもふこと−いひてことふる−こゑをたに−きかはやむなし−こひのやまひこ |
07373 |
未入力 正徹 (xxx)
松かきのひまありとても恋すてふ人めかるへき山のかけかは
まつかきの−ひまありとても−こひすてふ−ひとめかるへき−やまのかけかは |
07374 |
未入力 正徹 (xxx)
駒おろす木幡の山のささのくまおもかけさわく宇治の川浪
こまおろす−こはたのやまの−ささのくま−おもかけさわく−うちのかはなみ |
07375 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くもうし人は思ひもいらぬ世の山路むなしき松の下かせ
きくもうし−ひとはおもひも−いらぬよの−やまちむなしき−まつのしたかせ |
07376 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふむくらの宿の思ひよりこもりわつらふ山のおくかな
こひすてふ−むくらのやとの−おもひより−こもりわつらふ−やまのおくかな |
07377 |
未入力 正徹 (xxx)
なきあかす山のしつくは苔ならぬ袂におちてつもる恋かな
なきあかす−やまのしつくは−こけならぬ−たもとにおちて−つもるこひかな |
07378 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜ねてかたしくまののかや原に遠きおもかけたつあらしかな
こよひねて−かたしくまのの−かやはらに−とほきおもかけ−たつあらしかな |
07379 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれはや人めはたゆる宿なから松のおもはむ夕暮の空
わすれはや−ひとめはたゆる−やとなから−まつのおもはむ−ゆふくれのそら |
07380 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれ松にいさなふ面影のしつかならぬをとふあらしかな
ゆふまくれ−まつにいさなふ−おもかけの−しつかならぬを−とふあらしかな |
07381 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふ暮は心にもあらぬおもひかなひとり身をおく宿の松風
ゆふくれは−こころにもあらぬ−おもひかな−ひとりみをおく−やとのまつかせ |
07382 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしと岩まの水のおとつれもきけはなかれをつたふ面影
はかなしと−いはまのみつの−おとつれも−きけはなかれを−つたふおもかけ |
07383 |
未入力 正徹 (xxx)
人心あさちか色にかつ見えて契かれ行くふるさとのしも
ひとこころ−あさちかいろに−かつみえて−ちきりかれゆく−ふるさとのしも |
07384 |
未入力 正徹 (xxx)
なには女か里のしるへのけふりにもことうら舟をよするとは見す
なにはめか−さとのしるへの−けふりにも−ことうらふねを−よするとはみす |
07385 |
未入力 正徹 (xxx)
すちことにまたくろかみを宿なから身そふるさるる霜の通ち
すちことに−またくろかみを−やとなから−みそふるさるる−しものかよひち |
07386 |
未入力 正徹 (xxx)
あふもをし夜はにこはたの山川や白浪の名のうちのさと人
あふもをし−よはにこはたの−やまかはや−しらなみのなの−うちのさとひと |
07387 |
未入力 正徹 (xxx)
こぬ人に見ゆらむものをやとの松そのさとならぬ夕なりとも
こぬひとに−みゆらむものを−やとのまつ−そのさとならぬ−ゆふへなりとも |
07388 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ川むかひのきしに出てて見よ舟なかしたる水のみかさを
おもひかは−むかひのきしに−いててみよ−ふねなかしたる−みつのみかさを |
07389 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆく水に思ひのけふりくらへみよをちこち人の中のあさ川
ゆくみつに−おもひのけふり−くらへみよ−をちこちひとの−なかのあさかは |
07390 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから浪もろともにうちわひぬみしまかくれにこふるあしたつ
よもすから−なみもろともに−うちわひぬ−みしまかくれに−こふるあしたつ |
07391 |
未入力 正徹 (xxx)
人心あらき波風立ちよわれおもふかたほにしつむうら舟
ひとこころ−あらきなみかせ−たちよわれ−おもふかたほに−しつむうらふね |
07392 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海の雲のはたてに消えかへる心よせなむ遠の夕浪
わたつうみの−くものはたてに−きえかへる−こころよせなむ−をちのゆふなみ |
07393 |
未入力 正徹 (xxx)
せきとむる岩なみこえてなかれきぬこの川上の人そつれなき
せきとむる−いはなみこえて−なかれきぬ−このかはかみの−ひとそつれなき |
07394 |
未入力 正徹 (xxx)
つまこふる床の玉ものみたれさへよるはます田の池のをし鳥
つまこふる−とこのたまもの−みたれさへ−よるはますたの−いけのをしとり |
07395 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふことます田の池にうく鳥の夜もねぬなはの床のくるしさ
おもふこと−ますたのいけに−うくとりの−よもねぬなはの−とこのくるしさ |
07396 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心ひけはもとすゑあつさ弓よるよるちかき夢の通ち
わかこころ−ひけはもとすゑ−あつさゆみ−よるよるちかき−ゆめのかよひち |
07397 |
未入力 正徹 (xxx)
かへり見る思ひを峰にせく雲もきえね草はを渡る夕露
かへりみる−おもひをみねに−せくくもも−きえねくさはを−わたるゆふつゆ |
07398 |
未入力 正徹 (xxx)
旅の空行くをはるけき恋ちにて夜夜の沈にうすきおもかす
たひのそら−ゆくをはるけき−こひちにて−よよのまくらに−うすきおもかけ |
07399 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつか又あまの子か忘るなよふもとのうらのこよひ旅ねに
やまかつか−またあまのこか−わするなよ−ふもとのうらの−こよひたひねに |
07400 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそはぬ心なゆきそ帰りみる雲ちに人も嵐ふくらん
みにそはぬ−こころなゆきそ−かへりみる−くもちにひとも−あらしふくらむ |
07401 |
未入力 正徹 (xxx)
露わくるひとりの旅の朝立をうき衣衣ににたりとやせん
つゆわくる−ひとりのたひの−あさたちを−うききぬきぬに−にたりとやせむ |
07402 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからひとつ泊の友舟に見しおも影をよする浪かな
よもすから−ひとつとまりの−ともふねに−みしおもかけを−よするなみかな |
07403 |
未入力 正徹 (xxx)
さとの名も我か身のかたの夕波に舟さしとめぬ宇治の川長
さとのなも−わかみのかたの−ゆふなみに−ふねさしとめぬ−うちのかはをさ |
07404 |
未入力 正徹 (xxx)
跡ふりぬおほろ月夜の関の戸に恋ひけん人のすまの山里
あとふりぬ−おほろつきよの−せきのとに−こひけむひとの−すまのやまさと |
07405 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世のおもひや空にあさからむ年に一夜を契るほしかな
ひとのよの−おもひやそらに−あさからむ−としにひとよを−ちきるほしかな |
07406 |
未入力 正徹 (xxx)
春なから世や秋かけて色かはるわかはのくすの露のうら風
はるなから−よやあきかけて−いろかはる−わかはのくすの−つゆのうらかせ |
07407 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そしる霞かくれのいもせ山あらはに落つる滝つ河かせ
けさそしる−かすみかくれの−いもせやま−あらはにおつる−たきつかはかせ |
07408 |
未入力 正徹 (xxx)
うつめとも下もえまさる思草雪まさたかに色やみゆらん
うつめとも−したもえまさる−おもひくさ−ゆきまさたかに−いろやみゆらむ |
07409 |
未入力 正徹 (xxx)
かよふなり心のおくの山たかみ雪まをうつむ雲の下みち
かよふなり−こころのおくの−やまたかみ−ゆきまをうつむ−くものしたみち |
07410 |
未入力 正徹 (xxx)
くるしともよそには見えし立ちかくす霞のうらのあまのたく縄
くるしとも−よそにはみえし−たちかくす−かすみのうらの−あまのたくなは |
07411 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひかねかよふ忍のうらつたひふなかちかくせ雲も霞も
おもひかね−かよふしのふの−うらつたひ−ふなかちかくせ−くももかすみも |
07412 |
未入力 正徹 (xxx)
過きぬるか霞にくまはなほありておも影まよふ花の山さと
すきぬるか−かすみにくまは−なほありて−おもかけまよふ−はなのやまさと |
07413 |
未入力 正徹 (xxx)
花の香もうつろふ月の手枕に覚めさらましの春のよの夢
はなのかも−うつろふつきの−たまくらに−さめさらましの−はるのよのゆめ |
07414 |
未入力 正徹 (xxx)
宿やこれ霞のうちの見し花のおも影にほふ色もかはらて
やとやこれ−かすみのうちの−みしはなの−おもかけにほふ−いろもかはらて |
07415 |
未入力 正徹 (xxx)
行く春に夜のまの色やうつろはむ人の心の花のたまくら
ゆくはるに−よのまのいろや−うつろはむ−ひとのこころの−はなのたまくら |
07416 |
未入力 正徹 (xxx)
むすへ草くもる日影に糸ゆふのたえにしのへの春の契を
むすへくさ−くもるひかけに−いとゆふの−たえにしのへの−はるのちきりを |
07417 |
未入力 正徹 (xxx)
名にそふるねしろの柳みかさおちうき川岸の夏のよの雨
なにそふる−ねしろのやなき−みかさおち−うきかはきしの−なつのよのあめ |
07418 |
未入力 正徹 (xxx)
人の名もいかてかくれん夏衣我か身あらはにうすき契は
ひとのなも−いかてかくれむ−なつころも−わかみあらはに−うすきちきりは |
07419 |
未入力 正徹 (xxx)
とふほたるさらはつけこせつつみもつ袖も思ひもかくれなき身を
とふほたる−さらはつけこせ−つつみもつ−そてもおもひも−かくれなきみを |
07420 |
未入力 正徹 (xxx)
夏引のあさほすをふのうらみてもかひなき袖の五月雨の比
なつひきの−あさほすをふの−うらみても−かひなきそての−さみたれのころ |
07421 |
未入力 正徹 (xxx)
身すもあらぬなこりへたつる朝霧に猶袖ほさぬ宿の村雨
みすもあらぬ−なこりへたつる−あさきりに−なほそてほさぬ−やとのむらさめ |
07422 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆく道もおもふあたりにまたならす秋の日影そ心みしかき
ゆくみちも−おもふあたりに−またならす−あきのひかけそ−こころみしかき |
07423 |
未入力 正徹 (xxx)
雲霧のまよふ道かは宿ことにたつ面影も猶しるへせよ
くもきりの−まよふみちかは−やとことに−たつおもかけも−なほしるへせよ |
07424 |
未入力 正徹 (xxx)
こかれゆく心の色を猶染めて秋にやまさる宿の紅葉は
こかれゆく−こころのいろを−なほそめて−あきにやまさる−やとのもみちは |
07425 |
未入力 正徹 (xxx)
草くきにもすのき鳴きて尾をさすもをしふる宿そある心ちする
くさくきに−もすのきなきて−ををさすも−をしふるやとそ−あるここちする |
07426 |
未入力 正徹 (xxx)
むせふとも秋やく塩の初けふりたつなよこやのあしの八重ふき
むせふとも−あきやくしほの−はつけふり−たつなよこやの−あしのやへふき |
07427 |
未入力 正徹 (xxx)
名とり川人の契のあさ霧はたえてあとなきせせの埋木
なとりかは−ひとのちきりの−あさきりは−たえてあとなき−せせのうもれき |
07428 |
未入力 正徹 (xxx)
秋そたつ夏は人めも芦のはにかくれしこやのむねの煙は
あきそたつ−なつはひとめも−あしのはに−かくれしこやの−むねのけふりは |
07429 |
未入力 正徹 (xxx)
友と見やもといひおきしかねこともみちたる月のなかき夜の空
ともとみや−もといひおきし−かねことも−みちたるつきの−なかきよのそら |
07430 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめおくことのは草の末しれはかならすかれん秋の露霜
たのめおく−ことのはくさの−すゑしれは−かならすかれむ−あきのつゆしも |
07431 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中の契は秋の末野風かるる草はそかかる夕露
うきなかの−ちきりはあきの−すゑのかせ−かるるくさはそ−かかるゆふつゆ |
07432 |
未入力 正徹 (xxx)
恋ひわひぬ秋も心をつくし路のあひそめ川に身をや捨てまし
こひわひぬ−あきもこころを−つくしちの−あひそめかはに−みをやすてまし |
07433 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の夜の長きをかこつ人もねす枕ならへてことのはもなし
あきのよの−なかきをかこつ−ひともねす−まくらならへて−ことのはもなし |
07434 |
未入力 正徹 (xxx)
かけよなほ我か身をうちと見る月にあへる名たのむ暁の雲
かけよなほ−わかみをうちと−みるつきに−あへるなたのむ−あかつきのくも |
07435 |
未入力 正徹 (xxx)
床の露ふるき涙に水草ゐて我かおもかけもみえぬ秋かな
とこのつゆ−ふるきなみたに−みくさゐて−わかおもかけも−みえぬあきかな |
07436 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふより秋の色にやいつみ川このはに月をほのみかの原
おもふより−あきのいろにや−いつみかは−このはにつきを−ほのみかのはら |
07437 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きはつる木のはをくちし契にて冬もおくなき中の山風
ふきはつる−このはをくちし−ちきりにて−ふゆもおくなき−なかのやまかせ |
07438 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれなむ霜ふる磯のかみすちもくろかりし世そ思ひみたれし
わすれなむ−しもふるいその−かみすちも−くろかりしよそ−おもひみたれし |
07439 |
未入力 正徹 (xxx)
色もうし散りし木のはの契さへ朝おく霜ののちの松かえ
いろもうし−ちりしこのはの−ちきりさへ−あさおくしもの−のちのまつかえ |
07440 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ人心とけよとさ夜衣袖のこほりをまくらにそかす
こよひひと−こころとけよと−さよころも−そてのこほりを−まくらにそかす |
07441 |
未入力 正徹 (xxx)
わけかぬる袖の氷の衣衣はひややかなりし秋よりもうし
わけかぬる−そてのこほりの−きぬきぬは−ひややかなりし−あきよりもうし |
07442 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣なみたのつらら年暮れぬたれにとくらんよその下紐
さよころも−なみたのつらら−としくれぬ−たれにとくらむ−よそのしたひも |
07443 |
未入力 正徹 (xxx)
見てもゆけ関のはしりゐ岩こゆる玉も相坂にくたく心は
みてもゆけ−せきのはしりゐ−いはこゆる−たまもあふさかに−くたくこころは |
07444 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にさへ契くちにし袖の香に枕にほはす花の下かせ
ゆめにさへ−ちきりくちにし−そてのかに−まくらにほはす−はなのしたかせ |
07445 |
未入力 正徹 (xxx)
うつせみの身をかへてともいひおかす此世なからに身をや憑まん
うつせみの−みをかへてとも−いひおかす−このよなからに−みをやたのまむ |
07446 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮そ心もしらぬあひ見しはむかしかたりのあり明のまつ
ゆふくれそ−こころもしらぬ−あひみしは−むかしかたりの−ありあけのまつ |
07447 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くもうしみし夜の夢の後せ山末ふしわふる椎柴のかせ
きくもうし−みしよのゆめの−のちせやま−すゑふしわふる−しひしはのかせ |
07448 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちかへり又あふさかの契をもいさ白川の関のあきかせ
たちかへり−またあふさかの−ちきりをも−いさしらかはの−せきのあきかせ |
07449 |
未入力 正徹 (xxx)
下紐もとく世なくてや朽ちはてん結ひしままの岩代の松
したひもも−とくよなくてや−くちはてむ−むすひしままの−いはしろのまつ |
07450 |
未入力 正徹 (xxx)
友に見し其世の月の幾めくりむなしき袖に哀かくらん
ともにみし−そのよのつきの−いくめくり−むなしきそてに−あはれかくらむ |
07451 |
未入力 正徹 (xxx)
夢なれや夢になせともいはさりしそのかねことのむなしうつつは
ゆめなれや−ゆめになせとも−いはさりし−そのかねことの−むなしうつつは |
07452 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂をこえし関守こととははたかつれなさの名をかととめん
あふさかを−こえしせきもり−こととはは−たかつれなさの−なをかととめむ |
07453 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の空行く月よ幾めくりまたてぬる夜に明けのこるらん
きぬきぬの−そらゆくつきよ−いくめくり−またてぬるよに−あけのこるらむ |
07454 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ江に浪はよりても立ちかへりあふこかたみのうら風そふく
おもふえに−なみはよりても−たちかへり−あふこかたみの−うらかせそふく |
07455 |
未入力 正徹 (xxx)
立帰りたたくもあけす相坂やこえしあとさす関の岩かと
たちかへり−たたくもあけす−あふさかや−こえしあとさす−せきのいはかと |
07456 |
未入力 正徹 (xxx)
遠からしさたかにこえてあはた山いつあふ坂の道たかふらん
とほからし−さたかにこえて−あはたやま−いつあふさかの−みちたかふらむ |
07457 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふ我かたもとともよもきふのもとの契は秋風そふく
つゆはらふ−わかたもととも−よもきふの−もとのちきりは−あきかせそふく |
07458 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられぬ其夜の夢に三とせへぬ我かせしかこと人のことのは
わすられぬ−そのよのゆめに−みとせへぬ−わかせしかこと−ひとのことのは |
07459 |
未入力 正徹 (xxx)
時雨れてもかひやはあらむ契りこし末のの山の秋の岩木は
しくれても−かひやはあらむ−ちきりこし−すゑののやまの−あきのいはきは |
07460 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての契やよそに成りぬらんあふくま川の後のせたえは
なかれての−ちきりやよそに−なりぬらむ−あふくまかはの−のちのせたえは |
07461 |
未入力 正徹 (xxx)
あけは見よあひそめ川のかちわたりみかさも色もふかきよの袖
あけはみよ−あひそめかはの−かちわたり−みかさもいろも−ふかきよのそて |
07462 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ川さてもあふせのあさわたり我かかたふちに又しつみぬる
おもひかは−さてもあふせの−あさわたり−わかかたふちに−またしつみぬる |
07463 |
未入力 正徹 (xxx)
草によせ木にもたとへぬかねことの末吹きからす床の秋かせ
くさによせ−きにもたとへぬ−かねことの−すゑふきからす−とこのあきかせ |
07464 |
未入力 正徹 (xxx)
人目せくあふくま川の末つひにたえすはたゆるせをもうらみし
ひとめせく−あふくまかはの−すゑつひに−たえすはたゆる−せをもうらみし |
07465 |
未入力 正徹 (xxx)
限あるならひもつらしあふまての命のきはを又やのはへん
かきりある−ならひもつらし−あふまての−いのちのきはを−またやのはへむ |
07466 |
未入力 正徹 (xxx)
あさき江にさはるを舟も声たててあしの忍にかよふ夜もなし
あさきえに−さはるをふねも−こゑたてて−あしのしのひに−かよふよもなし |
07467 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひつつぬる玉さかにあふことも心うかれし行すゑの夢
おもひつつ−ぬるたまさかに−あふことも−こころうかれし−ゆくすゑのゆめ |
07468 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひねの夢路に天のうき橋をかけて神代の契をそしる
おもひねの−ゆめちにあめの−うきはしを−かけてかみよの−ちきりをそしる |
07469 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる玉もかりにとこらか手をとりこの池のそこのみたれを
みにそしる−たまもかりにと−こらかてを−とりこのいけの−そこのみたれを |
07470 |
未入力 正徹 (xxx)
なほさりにふりこす人のくろかみを手にかけなからあくるよもなき
なほさりに−ふりこすひとの−くろかみを−てにかけなから−あくるよもなき |
07471 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさはかはらぬ色になひくさへうきなら柴の木からしのかせ
つれなさは−かはらぬいろに−なひくさへ−うきならしはの−こからしのかせ |
07472 |
未入力 正徹 (xxx)
よのつねの人に物いふよしなからおもふ心の色や見ゆらん
よのつねの−ひとにものいふ−よしなから−おもふこころの−いろやみゆらむ |
07473 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世にくつれむ物と君かてをとりこの池の人めつつみほ
いつのよに−くつれむものと−きみかてを−とりこのいけの−ひとめつつみほ |
07474 |
未入力 正徹 (xxx)
をしましな君みなれ木の下紅葉まさる思ひの色にちるとも
をしましな−きみみなれこの−したもみち−まさるおもひの−いろにちるとも |
07475 |
未入力 正徹 (xxx)
をりをりのうき身のほとはしりなからたたよのつねにむかふくるしさ
をりをりの−うきみのほとは−しりなから−たたよのつねに−むかふくるしさ |
07476 |
未入力 正徹 (xxx)
たたしはしきかへ衣のうつりかを夜はにかさぬる中となさなん
たたしはし−きかへころもの−うつりかを−よはにかさぬる−なかとなさなむ |
07477 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひしもうきはいかなるふしはらやなひかぬ風の身にさわくらん
こよひしも−うきはいかなる−ふしはらや−なひかぬかせの−みにさわくらむ |
07478 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣つらしと思初めしよりはひあひかたき野へのむらさき
さよころも−つらしとおもひ−そめしより−はひあひかたき−のへのむらさき |
07479 |
未入力 正徹 (xxx)
からきせを身はこえはてきしほならぬうらみしままのあふ坂の山
からきせを−みはこえはてき−しほならぬ−うらみしままの−あふさかのやま |
07480 |
未入力 正徹 (xxx)
貴舟川さてもあふせはなみそちる手にくる玉のをさへ乱れて
きふねかは−さてもあふせは−なみそちる−てにくるたまの−をさへみたれて |
07481 |
未入力 正徹 (xxx)
はこへ猶人の心のひかれぬもたのむおもひのゆるきしめなは
はこへなほ−ひとのこころの−ひかれぬも−たのむおもひの−ゆるきしめなは |
07482 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中にさらぬ別のある世ともしらぬになして身をや祈らん
うきなかに−さらぬわかれの−あるよとも−しらぬになして−みをやいのらむ |
07483 |
未入力 正徹 (xxx)
うけよ神いとと身をしる雨のよも袖のみぬれてはこふあよみを
うけよかみ−いととみをしる−あめのよも−そてのみぬれて−はこふあよみを |
07484 |
未入力 正徹 (xxx)
うきなからあらはあふ夜を松尾の神かせふるき身に時雨れつつ
うきなから−あらはあふよを−まつのをの−かみかせふるき−みにしくれつつ |
07485 |
未入力 正徹 (xxx)
みしめなはなかくとまてはかけおかす思ひや人の命なるらん
みしめなは−なかくとまては−かけおかす−おもひやひとの−いのちなるらむ |
07486 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひたつ今よりやかてしるしあれ先つくりもつみしまゆふして
おもひたつ−いまよりやかて−しるしあれ−まつつくりもつ−みしまゆふして |
07487 |
未入力 正徹 (xxx)
祈りきてわかみし年の宮つくりふるのやしろに成る恋路かな
いのりきて−わかみしとしの−みやつくり−ふるのやしろに−なるこひちかな |
07488 |
未入力 正徹 (xxx)
よわらすは猶いくすちの年のをを引くしめなはとなして祈らん
よわらすは−なほいくすちの−としのをを−ひくしめなはと−なしていのらむ |
07489 |
未入力 正徹 (xxx)
かつを木のかつかつよわる心かなゆき合ひかたき千木のかたそき
かつをきの−かつかつよわる−こころかな−ゆきあひかたき−ちきのかたそき |
07490 |
未入力 正徹 (xxx)
人心これや千引の石神もあからすかたき契をそしる
ひとこころ−これやちひきの−いしかみも−あからすかたき−ちきりをそしる |
07491 |
未入力 正徹 (xxx)
我か神のしるしまてをやおさふらんつれなき人のいのる社は
わかかみの−しるしまてをや−おさふらむ−つれなきひとの−いのるやしろは |
07492 |
未入力 正徹 (xxx)
下もえの身をうら風の末つひに煙たえぬるちかの塩かま
したもえの−みをうらかせの−すゑつひに−けふりたえぬる−ちかのしほかま |
07493 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらのもとのもしほ火たきたえぬ煙のなりし雲も残らし
みをうらの−もとのもしほひ−たきたえぬ−けふりのなりし−くもものこらし |
07494 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらのもしほの煙たえはてぬなけきこりつむ日数ふるまに
みをうらの−もしほのけふり−たえはてぬ−なけきこりつむ−ひかすふるまに |
07495 |
未入力 正徹 (xxx)
まくすはも梢の秋のこゑたてて忘れんとすれは松風そ吹く
まくすはも−こすゑのあきの−こゑたてて−わすれむとすれは−まつかせそふく |
07496 |
未入力 正徹 (xxx)
つらき名の立つををしかのむねわけに成りて枯れゆく野への葛風
つらきなの−たつををしかの−むねわけに−なりてかれゆく−のへのかすはら |
07497 |
未入力 正徹 (xxx)
ほに出つる時はありともよもしらしうき身こもりのあしの下根を
ほにいつる−ときはありとも−よもしらし−うきみこもりの−あしのしたねを |
07498 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふさへぬるき心のうち海もうら風ふけはさわく浪かな
おもふさへ−ぬるきこころの−うちうみも−うらかせふけは−さわくなみかな |
07499 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらのあまの見るめの絶えんともしらてかるもに乱れつるかな
みをうらの−あまのみるめの−たえむとも−しらてかるもに−みたれつるかな |
07500 |
未入力 正徹 (xxx)
契なきこの身のさきに生れあふその世かたりも人やつたへし
ちきりなき−このみのさきに−うまれあふ−そのよかたりも−ひとやつたへし |
07501 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらす浪立ちかへりあまのすむ里にむまれしよをしるもうし
そてぬらす−なみたちかへり−あまのすむ−さとにうまれし−よをしるもうし |
07502 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きおくれ身をうら舟のかちをたえ霧にかくるる秋のしほかせ
ふきおくれ−みをうらふねの−かちをたえ−きりにかくるる−あきのしほかせ |
07503 |
未入力 正徹 (xxx)
風さわくいく夕暮の宿の松我に心の末かよふらむ
かせさわく−いくゆふくれの−やとのまつ−われにこころの−すゑかよふらむ |
07504 |
未入力 正徹 (xxx)
たえやせむくるる夜ことの松かせも末吹きよわる木枯の宿
たえやせむ−くるるよことの−まつかせも−すゑふきよわる−こからしのやと |
07505 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身しる涙をおもみかへされすまつ夜かさねし中の衣は
うきみしる−なみたをおもみ−かへされす−まつよかさねし−なかのころもは |
07506 |
未入力 正徹 (xxx)
先のよの契あさ衣むなしくはあすの明けなんのちや絶えまし
さきのよの−ちきりあさきぬ−むなしくは−あすのあけなむ−のちやたえまし |
07507 |
未入力 正徹 (xxx)
さ莚にまつ夜はかれぬ契にてうちぬるひまの月をたにみす
さむしろに−まつよはかれぬ−ちきりにて−うちぬるひまの−つきをたにみす |
07508 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人をたのみそめつる三かの夜に在明の月もなりてむなしき
まつひとを−たのみそめつる−みかのよに−ありあけのつきも−なりてむなしき |
07509 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは吹遠さかれたのみつつねぬ夜あまたの庭の松かせ
よしさらは−ふきとほさかれ−たのみつつ−ねぬよあまたの−にはのまつかせ |
07510 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ暮松下をれて道うつむ雪夜のからすあくと告くなり
たのむくれ−まつしたをれて−みちうつむ−ゆきよのからす−あくとつくなり |
07511 |
未入力 正徹 (xxx)
秋と見ししめちか原のことのははかるる夕をなほ松の風
あきとみし−しめちかはらの−ことのはは−かるるゆふへを−なほまつのかせ |
07512 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人の宿に行きてはかへり立つ我か庭つらくふくる松かせ
まつひとの−やとにゆきては−かへりたつ−わかにはつらく−ふくるまつかせ |
07513 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめしは比もすきぬを松風に命かけたるあかつきの露
たのめしは−ころもすきぬを−まつかせに−いのちかけたる−あかつきのつゆ |
07514 |
未入力 正徹 (xxx)
たつねくる所も宿もたかはすはいまかへるとも又やしたはん
たつねくる−ところもやとも−たかはすは−いまかへるとも−またやしたはむ |
07515 |
未入力 正徹 (xxx)
かへる山むなし契の末と見よ夕の雲のかくすさと人
かへるやま−むなしちきりの−すゑとみよ−ゆふへのくもの−かくすさとひと |
07516 |
未入力 正徹 (xxx)
うきかすをひろひつくして忘貝かひなきうらにくたく浪かな
うきかすを−ひろひつくして−わすれかひ−かひなきうらに−くたくなみかな |
07517 |
未入力 正徹 (xxx)
うき出つるいきのをなかし身をうらの□□□□□□□□□□□□□□
うきいつる−いきのをなかし−みをうらの−ххххххх−ххххххх |
07518 |
未入力 正徹 (xxx)
はれかたき袖の涙の川社しのに衣は朽ちやはてまし
はれかたき−そてのなみたの−かはやしろ−しのにころもは−くちやはてまし |
07519 |
未入力 正徹 (xxx)
空に立つ名のみま砂に鳴く鳥の跡なしことをうら風そ吹く
そらにたつ−なのみまさこに−なくとりの−あとなしことを−うらかせそふく |
07520 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くそうきあとなき磯に声たてて我か名のりそをかくる白浪
きくそうき−あとなきいそに−こゑたてて−わかなのりそを−かくるしらなみ |
07521 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにして見るめからぬを無き名のみ立出ててぬるる袖のうら波
よそにして−みるめからぬを−なきなのみ−たちいててぬるる−そてのうらなみ |
07522 |
未入力 正徹 (xxx)
浪こゆる松のねたくそ草のなのかれすもえ出つる住よしの岸
なみこゆる−まつのねたくそ−くさのなの−かれすもえいつる−すみよしのきし |
07523 |
未入力 正徹 (xxx)
しつみにきなきなたちきるさ夜衣いととなみこす床の涙に
しつみにき−なきなたちきる−さよころも−いととなみこす−とこのなみたに |
07524 |
未入力 正徹 (xxx)
たのみきぬうききたる雲の無き名とやたつの市路を照す月かけ
たのみきぬ−うききたるくもの−なきなとや−たつのいちちを−てらすつきかけ |
07525 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにのみなるみのあまのよひつきに身をうら風のこすとしらせよ
よそにのみ−なるみのあまの−よひつきに−みをうらかせの−こすとしらせよ |
07526 |
未入力 正徹 (xxx)
たのみつつ松はこぬみのはま風にからしとつけよよするしほ貝
たのみつつ−まつはこぬみの−はまかせに−からしとつけよ−よするしほかひ |
07527 |
未入力 正徹 (xxx)
枯れにけり秋うき物と葛のはにことつてやりし風もかへらす
かれにけり−あきうきものと−くすのはに−ことつてやりし−かせもかへらす |
07528 |
未入力 正徹 (xxx)
舟てせし風をたよりの浦伝ひ浪あらくてや漕きも帰らぬ
ふなてせし−かせをたよりの−うらつたひ−なみあらくてや−こきもかへらぬ |
07529 |
未入力 正徹 (xxx)
あやしめむ人にいふへきたよりかなこよひは月も立待にして
あやしめむ−ひとにいふへき−たよりかな−こよひはつきも−たちまちにして |
07530 |
未入力 正徹 (xxx)
行きむかひあはむ所を衣衣の床ともなして恋ひやかへらん
ゆきむかひ−あはむところを−きぬきぬの−とこともなして−こひやかへらむ |
07531 |
未入力 正徹 (xxx)
別路のゆくへもしらす雲となり雨と成りにしあとの山かせ
わかれちの−ゆくへもしらす−くもとなり−あめとなりにし−あとのやまかせ |
07532 |
未入力 正徹 (xxx)
くたかけのおくるもつらし別路の野らにすむてふきつにはめなて
くたかけの−おくるもつらし−わかれちの−のらにすむてふ−きつにはめなて |
07533 |
未入力 正徹 (xxx)
朝しほの引きて帰りし松かねによらぬもつらきいそのなみかな
あさしほの−ひきてかへりし−まつかねに−よらぬもつらき−いそのなみかな |
07534 |
未入力 正徹 (xxx)
紙の色にわかれし袖の紅もなみたそめます水くきのあと
かみのいろに−わかれしそての−くれなゐも−なみたそめます−みつくきのあと |
07535 |
未入力 正徹 (xxx)
床にうきなみた身をしる世世の雨はれすます田の池のみかさに
とこにうき−なみたみをしる−よよのあめ−はれすますたの−いけのみかさに |
07536 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ川末せく水のいやたかく消えぬみなわもさかのほるまて
おもひかは−すゑせくみつの−いやたかく−きえぬみなわも−さかのほるまて |
07537 |
未入力 正徹 (xxx)
なにはめかたくひとは見す水くきの心ことはもあし手ならぬに
なにはめか−たくひとはみす−みつくきの−こころことはも−あしてならぬに |
07538 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみなとはかなき鳥の跡をさへ見せぬまさこの身をくたくらん
さのみなと−はかなきとりの−あとをさへ−みせぬまさこの−みをくたくらむ |
07539 |
未入力 正徹 (xxx)
うたかたそ又手に帰る書きなかす末せく水のさかのほりつつ
うたかたそ−またてにかへる−かきなかす−すゑせくみつの−さかのほりつつ |
07540 |
未入力 正徹 (xxx)
東路に心つくしの文字消えてえそよみとかぬつほのいし文
あつまちに−こころつくしの−もしきえて−えそよみとかぬ−つほのいしふみ |
07541 |
未入力 正徹 (xxx)
別路の袖にかけしをかきりにて跡みぬもしの関の夕なみ
わかれちの−そてにかけしを−かきりにて−あとみぬもしの−せきのゆふなみ |
07542 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そうき別の庭の通路にまさこの鳥の跡かたも見す
けさそうき−わかれのにはの−かよひちに−まさこのとりの−あとかたもみす |
07543 |
未入力 正徹 (xxx)
水くきのかへしの風にことのはのなひくを見ても袖そぬれそふ
みつくきの−かへしのかせに−ことのはの−なひくをみても−そてそぬれそふ |
07544 |
未入力 正徹 (xxx)
ほしわひて猶そぬれそふもしほ草文かきあへすあまのしわさは
ほしわひて−なほそぬれそふ−もしほくさ−ふみかきあへす−あまのしわさは |
07545 |
未入力 正徹 (xxx)
とけにけり世は冬なれと待ちえたる涙の水の春にあふよは
とけにけり−よはふゆなれと−まちえたる−なみたのみつの−はるにあふよは |
07546 |
未入力 正徹 (xxx)
たつねくる山路の春もとひかねぬゆかり消えにし花のおもかけ
たつねくる−やまちのはるも−とひかねぬ−ゆかりきえにし−はなのおもかけ |
07547 |
未入力 正徹 (xxx)
かねて入るまきの戸口の月にたにしらす心を岡の辺のやと
かねている−まきのとくちの−つきにたに−しらすこころを−をかのへのやと |
07548 |
未入力 正徹 (xxx)
こはた山かちよりかとやとはさらんあひもおもはぬ宇治の里人
こはたやま−かちよりかとや−とはさらむ−あひもおもはぬ−うちのさとひと |
07549 |
未入力 正徹 (xxx)
あけて見る身をうらなみはかすこえて真砂の鳥の跡そすくなき
あけてみる−みをうらなみは−かすこえて−まさこのとりの−あとそすくなき |
07550 |
未入力 正徹 (xxx)
玉つさのひもときしこそ下ひもをむすひはつへき初なりけれ
たまつさの−ひもときしこそ−したひもを−むすひはつへき−はしめなりけれ |
07551 |
未入力 正徹 (xxx)
朝露にぬれてそわけし水くきのなかれこすとて袖やほされん
あさつゆに−ぬれてそわけし−みつくきの−なかれこすとて−そてやほされむ |
07552 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の袖におちにし水くきもなかれこぬ名のたつあしたかな
きぬきぬの−そてにおちにし−みつくきも−なかれこぬなの−たつあしたかな |
07553 |
未入力 正徹 (xxx)
雲となり雨と成りにし山をたにをしへしままのかたみとやみぬ
くもとなり−あめとなりにし−やまをたに−をしへしままの−かたみとやみぬ |
07554 |
未入力 正徹 (xxx)
見るほとも波のいつくに成りぬらんうき身かくれの鳰の下道
みるほとも−なみのいつくに−なりぬらむ−うきみかくれの−にほのしたみち |
07555 |
未入力 正徹 (xxx)
枕にそ面影まよふ雲のはにほのあらはれし月のなきよは
まくらにそ−おもかけまよふ−くものはに−ほのあらはれし−つきのなきよは |
07556 |
未入力 正徹 (xxx)
契りこしつらさもとりはかへされす涙や袖の下くくるらん
ちきりこし−つらさもとりは−かへされす−なみたやそての−したくくるらむ |
07557 |
未入力 正徹 (xxx)
袂をはくいの八千しほ染めおきて紅くくるなみたとそなる
たもとをは−くいのやちしほ−そめおきて−くれなゐくくる−なみたとそなる |
07558 |
未入力 正徹 (xxx)
かひそなき玉のをことのををたえて後さへおもふ峰の松風
かひそなき−たまのをことの−ををたえて−のちさへおもふ−みねのまつかせ |
07559 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世うき哀この身に山川のくいてもあまる水のしからみ
いくようき−あはれこのみに−やまかはの−くいてもあまる−みつのしからみ |
07560 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかへてせにうかふ世もなほやうきもとの心を染川の浪
みをかへて−せにうかふよも−なほやうき−もとのこころを−そめかはのなみ |
07561 |
未入力 正徹 (xxx)
芦の根の心あささをよそにしてかるる入江のしほもうらめし
あしのねの−こころあささを−よそにして−かるるいりえの−しほもうらめし |
07562 |
未入力 正徹 (xxx)
かくやうき雲ゐる浪にもしほ火の煙吹きいたすすまの浦風
かくやうき−くもゐるなみに−もしほひの−けふりふきいたす−すまのうらかせ |
07563 |
未入力 正徹 (xxx)
煙こそのこりてくゆれ思ひさへもゆる末野のねしろ高かや
けふりこそ−のこりてくゆれ−おもひさへ−もゆるすゑのの−ねしろたかかや |
07564 |
未入力 正徹 (xxx)
しつめなほちかひの海にかちをたえわたらぬ舟のよるへなき身は
しつめなほ−ちかひのうみに−かちをたえ−わたらぬふねの−よるへなきみは |
07565 |
未入力 正徹 (xxx)
世にもれは又いひなさんかたなきを心ひとつにとひこたへつつ
よにもれは−またいひなさむ−かたなきを−こころひとつに−とひこたへつつ |
07566 |
未入力 正徹 (xxx)
宿とへはやかてやめつる物のねに我も音せて立ちそわつらふ
やととへは−やかてやめつる−もののねに−われもおとせて−たちそわつらふ |
07567 |
未入力 正徹 (xxx)
人のきて思ふあたりをかたらすはみみのよそにやなしてこたへん
ひとのきて−おもふあたりを−かたらすは−みみのよそにや−なしてこたへむ |
07568 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ならぬ忍のもりのかたしくれ露とつらなる枝にもらすな
あきならぬ−しのふのもりの−かたしくれ−つゆとつらなる−えたにもらすな |
07569 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねの夢はかりたにしらすなよ親のいさめし人もたかへし
うたたねの−ゆめはかりたに−しらすなよ−おやのいさめし−ひともたかへし |
07570 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひこし道のささ原種たえておもはぬ松そあまたふり行く
かよひこし−みちのささはら−たねたえて−おもはぬまつそ−あまたふりゆく |
07571 |
未入力 正徹 (xxx)
契りつる人のゆくへは天とひし朝の鳥のゆふくれのあと
ちきりつる−ひとのゆくへは−あまとひし−あしたのとりの−ゆふくれのあと |
07572 |
未入力 正徹 (xxx)
都鳥契りし人のありなしをしらすはとはむまはろしもかな
みやことり−ちきりしひとの−ありなしを−しらすはとはむ−まはろしもかな |
07573 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中のをたえの橋をふみならし又恋ひわたる道そあやふき
うきなかの−をたえのはしを−ふみならし−またこひわたる−みちそあやふき |
07574 |
未入力 正徹 (xxx)
あとにひく心のつなてたれときて思はぬ岸に舟うつるらん
あとにひく−こころのつなて−たれときて−おもはぬきしに−ふねうつるらむ |
07575 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬき川やよとむせならぬ契さへうきたらちねの親さくる妻
ぬきかはや−よとむせならぬ−ちきりさへ−うきたらちねの−おやさくるつま |
07576 |
未入力 正徹 (xxx)
雲したふ友とはなしに篭のうちの鳥の思ひにかよふ恋かな
くもしたふ−ともとはなしに−このうちの−とりのおもひに−かよふこひかな |
07577 |
未入力 正徹 (xxx)
路のへの草の戸さしのおとつれもたとるとしれは立ちそとまらぬ
みちのへの−くさのとさしの−おとつれも−たとるとしれは−たちそとまらぬ |
07578 |
未入力 正徹 (xxx)
あけぬ夜の空をうらむる衣衣にうたてや月のなに心なき
あけぬよの−そらをうらむる−きぬきぬに−うたてやつきの−なにこころなき |
07579 |
未入力 正徹 (xxx)
おのれのみ帰るもしらすむくらふのさす門たたく葛のうら風
おのれのみ−かへるもしらす−むくらふの−さすかとたたく−くすのうらかせ |
07580 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そそき立ちぬれつるをその戸なとおしもひらかて又帰るらん
あまそそき−たちぬれつるを−そのとなと−おしもひらかて−またかへるらむ |
07581 |
未入力 正徹 (xxx)
よりゐつつひききるこすのひまなさをいひ置く宿のよひの帰るさ
よりゐつつ−ひききるこすの−ひまなさを−いひおくやとの−よひのかへるさ |
07582 |
未入力 正徹 (xxx)
枯れぬまを松にとひても葛のはのかへるちきりそ末の秋風
かれぬまを−まつにとひても−くすのはの−かへるちきりそ−すゑのあきかせ |
07583 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらのあまのとまやととふ波のとりとめられすかへるいそかな
みをうらの−あまのとまやと−とふなみの−とりとめられす−かへるいそかな |
07584 |
未入力 正徹 (xxx)
契さへふかからぬ色にみえおくや露の末つむ花のかほはせ
ちきりさへ−ふかからぬいろに−みえおくや−つゆのすゑつむ−はなのかほはせ |
07585 |
未入力 正徹 (xxx)
帰るなりぬるや磯らのみるめにもおよはぬ波そかけてくやしき
かへるなり−ぬるやいそらの−みるめにも−およはぬなみそ−かけてくやしき |
07586 |
未入力 正徹 (xxx)
みむろ山をろちにつけしをたまきの末のちきりそたえてやみぬる
みむろやま−をろちにつけし−をたまきの−すゑのちきりそ−たえてやみぬる |
07587 |
未入力 正徹 (xxx)
かねてなとくものふるまひかからすは頼む契りのしるしなりけん
かねてなと−くものふるまひ−かからすは−たのむちきりの−しるしなりけむ |
07588 |
未入力 正徹 (xxx)
せめしめてつなきととめんなかれ木のからくもなみにさかのほり行く
せめしめて−つなきととめむ−なかれきの−からくもなみに−さかのほりゆく |
07589 |
未入力 正徹 (xxx)
頼むよのしるしはいつそいそのかみ都の秋もかけし神杉
たのむよの−しるしはいつそ−いそのかみ−みやこのあきも−かけしかみすき |
07590 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめおけつらき此世の後せ川身をかへぬとも立ちやわたらん
たのめおけ−つらきこのよの−のちせかは−みをかへぬとも−たちやわたらむ |
07591 |
未入力 正徹 (xxx)
波ならすたのめ置きしを飛鳥川さても夜のまの淵せかはらは
なみならす−たのめおきしを−あすかかは−さてもよのまの−ふちせかはらは |
07592 |
未入力 正徹 (xxx)
ほと近くたのめおきてもしらさりき明日の命のけふの夕暮
ほとちかく−たのめおきても−しらさりき−あすのいのちの−けふのゆふくれ |
07593 |
未入力 正徹 (xxx)
猶かけよいく国さとの海川もおもひをせかぬ雲のしからみ
なほかけよ−いくくにさとの−うみかはも−おもひをせかぬ−くものしからみ |
07594 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひやる袖の涙ももろこしの吉のの風のすすの下露
おもひやる−そてのなみたも−もろこしの−よしののかせの−すすのしたつゆ |
07595 |
未入力 正徹 (xxx)
かくしてもいははやせめてひこほしにこひはまさりぬとはかりをたに
かくしても−いははやせめて−ひこほしに−こひはまさりぬ−とはかりをたに |
07596 |
未入力 正徹 (xxx)
きぬきぬにいとひもなれし光出てんそのあかつきの月やみさらん
きぬきぬに−いとひもなれし−ひかりいてむ−そのあかつきの−つきやみさらむ |
07597 |
未入力 正徹 (xxx)
まてしはし鳥もこゑせす有明もつれなからしと雲かくれ行く
まてしはし−とりもこゑせす−ありあけも−つれなからしと−くもかくれゆく |
07598 |
未入力 正徹 (xxx)
世のうきに涙のみえはなしもせん思ひの色よ袖にあまるな
よのうきに−なみたのみえは−なしもせむ−おもひのいろよ−そてにあまるな |
07599 |
未入力 正徹 (xxx)
さもあらぬ心をかくすことのはも思ふ色にはとりなされつつ
さもあらぬ−こころをかくす−ことのはも−おもふいろには−とりなされつつ |
07600 |
未入力 正徹 (xxx)
よりこぬも猶あたなみのこゑなから心はなきぬ床のうらふね
よりこぬも−なほあたなみの−こゑなから−こころはなきぬ−とこのうらふね |
07601 |
未入力 正徹 (xxx)
分けもみすともに心はつくはねやこのもかのもの人めしけきを
わけもみす−ともにこころは−つくはねや−このもかのもの−ひとめしけきを |
07602 |
未入力 正徹 (xxx)
あやしめきさらに板まももりぬれぬねやの莚を雨になせとも
あやしめき−さらにいたまも−もりぬれぬ−ねやのむしろを−あめになせとも |
07603 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなさの面影かくせ三か月のわれて又みる有明のくも
つれなさの−おもかけかくせ−みかつきの−われてまたみる−ありあけのくも |
07604 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつなみひろはぬ袖にかかりきて塩干塩みちみるめよるなる
おきつなみ−ひろはぬそてに−かかりきて−しほひしほみち−みるめよるなる |
07605 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかさて山田のひたのひたすらにきかぬもつらし秋の音つれ
いつかさて−やまたのひたの−ひたすらに−きかぬもつらし−あきのおとつれ |
07606 |
未入力 正徹 (xxx)
なにことか此世にねかふままならんけにことわりに恋そそむかぬ
なにことか−このよにねかふ−ままならむ−けにことわりに−こひそそむかぬ |
07607 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかかりしそこのみるめそたのまるる人の誓のうみあせすして
ふかかりし−そこのみるめそ−たのまるる−ひとのちかひの−うみあせすして |
07608 |
未入力 正徹 (xxx)
面影のさらぬ形見そくもりなき残るかかみはちりつもれとも
おもかけの−さらぬかたみそ−くもりなき−のこるかかみは−ちりつもれとも |
07609 |
未入力 正徹 (xxx)
おき出ててをしみやすらん月の入る山よりをちにこふる里人
おきいてて−をしみやすらむ−つきのいる−やまよりをちに−こふるさとひと |
07610 |
未入力 正徹 (xxx)
身の上にこよひはかけようつろふをおもひしるへの道芝の露
みのうへに−こよひはかけよ−うつろふを−おもひしるへの−みちしはのつゆ |
07611 |
未入力 正徹 (xxx)
しるへする君にそ思ひつき草のうつろふ袖の色なまかへそ
しるへする−きみにそおもひ−つきくさの−うつろふそての−いろなまかへそ |
07612 |
未入力 正徹 (xxx)
宿なからほのみし月のしるへする人こそまされならふ面影
やとなから−ほのみしつきの−しるへする−ひとこそまされ−ならふおもかけ |
07613 |
未入力 正徹 (xxx)
身を宇治と頼みこはたの山越えて白波のなをちきりにそかる
みをうちと−たのみこはたの−やまこえて−しらなみのなを−ちきりにそかる |
07614 |
未入力 正徹 (xxx)
あつまやも戸さしせぬ夜の人妻にいとと頼をかくる雨かな
あつまやも−とさしせぬよの−ひとつまに−いととたのみを−かくるあめかな |
07615 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の霜みえんうゑ木のかけにても君しまねかは身をやくたかん
あきのしも−みえむうゑきの−かけにても−きみしまねかは−みをやくたかむ |
07616 |
未入力 正徹 (xxx)
我か思ひすすむる風のたよりたにそなたにゆかぬ夕くれもなし
わかおもひ−すすむるかせの−たよりたに−そなたにゆかぬ−ゆふくれもなし |
07617 |
未入力 正徹 (xxx)
焼初むる思ひの薪朽ちはててきえん夕のけふりをそ待つ
たきそむる−おもひのたきき−くちはてて−きえむゆふへの−けふりをそまつ |
07618 |
未入力 正徹 (xxx)
手にとらてうたてもゆらく玉ははきちりつもりにし年もはつかし
てにとらて−うたてもゆらく−たまははき−ちりつもりにし−としもはつかし |
07619 |
未入力 正徹 (xxx)
都にそ衣かたしくさ莚につもれるちりやうちの橋姫
みやこにそ−ころもかたしく−さむしろに−つもれるちりや−うちのはしひめ |
07620 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬとも憂身の秋をきのふとはおもひなされぬ袖やしほれん
あけぬとも−うきみのあきを−きのふとは−おもひなされぬ−そてやしほれむ |
07621 |
未入力 正徹 (xxx)
梅か香もあかぬ別の袖ふれし人はむかしの春のあけほの
うめかかも−あかぬわかれの−そてふれし−ひとはむかしの−はるのあけほの |
07622 |
未入力 正徹 (xxx)
ま木の戸を出てしやみえす人の名ををりうらめしきしののめの月
まきのとを−いてしやみえす−ひとのなを−をりうらめしき−しののめのつき |
07623 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくなり末ものこらぬ年のををあわをによりて結ふ契を
いそくなり−すゑものこらぬ−としのをを−あわをによりて−むすふちきりを |
07624 |
未入力 正徹 (xxx)
我そしくたのめし人のことのははなこやかしたの夜るの衾を
われそしく−たのめしひとの−ことのはは−なこやかしたの−よるのふすまを |
07625 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ草なひくに似たることの葉は身にしむ色にかかる露かな
おもひくさ−なひくににたる−ことのはは−みにしむいろに−かかるつゆかな |
07626 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心かたひきもせすを車のもろわなからにめくりあひてん
わかこころ−かたひきもせす−をくるまの−もろわなからに−めくりあひてむ |
07627 |
未入力 正徹 (xxx)
いつれをもかけておもふはかろからてはかりのさをの引く方もなし
いつれをも−かけておもふは−かろからて−はかりのさをの−ひくかたもなし |
07628 |
未入力 正徹 (xxx)
人は猶心もゆかぬ逢坂をこえてまたみぬつほのいしふみ
ひとはなほ−こころもゆかぬ−あふさかを−こえてまたみぬ−つほのいしふみ |
07629 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりし枕の下の水くきにかよふもきゆる鳥のあとかな
あかさりし−まくらのしたの−みつくきに−かよふもきゆる−とりのあとかな |
07630 |
未入力 正徹 (xxx)
とはぬまのしるしもあやな宿に来てみし年月を杉ならぬ松
とはぬまの−しるしもあやな−やとにきて−みしとしつきを−すきならぬまつ |
07631 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣をしたひし夜はは隔りて徒にたつ峰の横雲
きぬきぬを−したひしよはは−へたたりて−いたつらにたつ−みねのよこくも |
07632 |
未入力 正徹 (xxx)
さても猶心まよひの山のはにほのみし雲の行へしらはや
さてもなほ−こころまよひの−やまのはに−ほのみしくもの−ゆくへしらはや |
07633 |
未入力 正徹 (xxx)
おきあかしやかてなかむる横雲の心引くより思ひ消えつつ
おきあかし−やかてなかむる−よこくもの−こころひくより−おもひきえつつ |
07634 |
未入力 正徹 (xxx)
夜半にうき衣ならても立つ雲の中にありてや先隔つらん
よはにうき−ころもならても−たつくもの−なかにありてや−まつへたつらむ |
07635 |
未入力 正徹 (xxx)
打ちつけに絶まかちなる空の雲そなたをたとる比もうらめし
うちつけに−たえまかちなる−そらのくも−そなたをたとる−ころもうらめし |
07636 |
未入力 正徹 (xxx)
消えせすは岩ほともなれもえはてん煙の後の峰のうき雲
きえせすは−いはほともなれ−もえはてむ−けふりののちの−みねのうきくも |
07637 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむむなしき雲の塵はかりはらふたよりの床の秋かせ
みにそしむ−むなしきくもの−ちりはかり−はらふたよりの−とこのあきかせ |
07638 |
未入力 正徹 (xxx)
行へなき何を契りて夕暮の空にも雲のみちいそくらん
ゆくへなき−なにをちきりて−ゆふくれの−そらにもくもの−みちいそくらむ |
07639 |
未入力 正徹 (xxx)
たか思ひかかる心の有初めしはしめもつらき峰の白雲
たかおもひ−かかるこころの−ありそめし−はしめもつらき−みねのしらくも |
07640 |
未入力 正徹 (xxx)
今そしるうきて思ひは八雲立つ出雲にふるき恋のはしめを
いまそしる−うきておもひは−やくもたつ−いつもにふるき−こひのはしめを |
07641 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかせん晴れたる空の一村はめにたつ雲の迷ふ恋路を
いかかせむ−はれたるそらの−ひとむらは−めにたつくもの−まよふこひちを |
07642 |
未入力 正徹 (xxx)
雨にうき雲は袖ともならなくにさもふり出つる我か涙かな
あめにうき−くもはそてとも−ならなくに−さもふりいつる−わかなみたかな |
07643 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ出てよそれも思ひの妻こめにたちし八色の雲の川上
おもひいてよ−それもおもひの−つまこめに−たちしやくさの−くものかはかみ |
07644 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中に思ひ消えしや此世まて残る契りのうす雲の空
うきなかに−おもひきえしや−このよまて−のこるちきりの−うすくものそら |
07645 |
未入力 正徹 (xxx)
空さへに思ふたよりはうす雲の渡るもすそもぬれぬえにして
そらさへに−おもふたよりは−うすくもの−わたるもすそも−ぬれぬえにして |
07646 |
未入力 正徹 (xxx)
棚ひきし雲の糸すち中絶えて又よりあはぬ賎のをた巻
たなひきし−くものいとすち−なかたえて−またよりあはぬ−しつのをたまき |
07647 |
未入力 正徹 (xxx)
半天にうきてきえぬを身にそ知る猶行く雲のくるる秋風
なかそらに−うきてきえぬを−みにそしる−なほゆくくもの−くるるあきかせ |
07648 |
未入力 正徹 (xxx)
茂れ草野中の水に空の雲わするるまなくうかふ面影
しけれくさ−のなかのみつに−そらのくも−わするるまなく−うかふおもかけ |
07649 |
未入力 正徹 (xxx)
伊駒山めにみぬ方の浮雲に身を秋しのの里そしくるる
いこまやま−めにみぬかたの−うきくもに−みをあきしのの−さとそしくるる |
07650 |
未入力 正徹 (xxx)
暮を待つ思ひやたかくわきのほる雲と成りても日をかくすらん
くれをまつ−おもひやたかく−わきのはる−くもとなりても−ひをかくすらむ |
07651 |
未入力 正徹 (xxx)
袖はほせ思ふ方とてわか心行くや雲まの村雨のそら
そてはほせ−おもふかたとて−わかこころ−ゆくやくもまの−むらさめのそら |
07652 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから思ひをかくす雲あらは空にみつとも跡やなからん
おのつから−おもひをかくす−くもあらは−そらにみつとも−あとやなからむ |
07653 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひなき夕の雲のは袖たにぬるるかほなる宿の村雨
おもひなき−ゆふへのくもの−はそてたに−ぬるるかほなる−やとのむらさめ |
07654 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ事うき中空にこる雲のなひかん方をみてや絶えなん
おもふこと−うきなかそらに−こるくもの−なひかむかたを−みてやたえなむ |
07655 |
未入力 正徹 (xxx)
空みれはくへきよひなるささかにのふるまひしるしまたすしもあらす
そらみれは−くへきよひなる−ささかにの−ふるまひしるし−またすしもあらす |
07656 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはにとよはた雲をさしあけて恋のやつこのせめくるをみよ
やまのはに−とよはたくもを−さしあけて−こひのやつこの−せめくるをみよ |
07657 |
未入力 正徹 (xxx)
かきくらす涙夜ふかき手枕に独明けゆく鳥の声かな
かきくらす−なみたよふかき−たまくらに−ひとりあけゆく−とりのこゑかな |
07658 |
未入力 正徹 (xxx)
明果つる空さへつらし起きてゆくたか名もしらぬ鳥の八声に
あけはつる−そらさへつらし−おきてゆく−たかなもしらぬ−とりのやこゑに |
07659 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の八声の鳥の一しきり啼くをもまたすおき別れつつ
あかつきの−やこゑのとりの−ひとしきり−なくをもまたす−おきわかれつつ |
07660 |
未入力 正徹 (xxx)
人たのめあふ夜の鳥はわするともわさとなかせて心みまほし
ひとたのめ−あふよのとりは−わするとも−わさとなかせて−こころみまほし |
07661 |
未入力 正徹 (xxx)
木綿もいな恋ちの関の鳥ならは恨をつけてはなちこそせめ
ゆふもいな−こひちのせきの−とりならは−うらみをつけて−はなちこそせめ |
07662 |
未入力 正徹 (xxx)
啼くとてもわかるる物とならはすは鳥の八声も何かうからん
なくとても−わかるるものと−ならはすは−とりのやこゑも−なにかうからむ |
07663 |
未入力 正徹 (xxx)
数ならぬみ山の鳥の跡なれや名もしらすとて文をたにみす
かすならぬ−みやまのとりの−あとなれや−なもしらすとて−ふみをたにみす |
07664 |
未入力 正徹 (xxx)
かるの子もうきみこもりの思ひにや玉もの床にすたちかぬらん
かるのこも−うきみこもりの−おもひにや−たまものとこに−すたちかぬらむ |
07665 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつやさそひもつれんしは鳥の声なしたひそ袖の別ち
やまかつや−さそひもつれむ−しはとりの−こゑなしたひそ−そてのわかれち |
07666 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆるさすよ明くる八声の鳥かなく東路ならぬ中の関守
ゆるさすよ−あくるやこゑの−とりかなく−あつまちならぬ−なかのせきもり |
07667 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふえにいつかはよらむかるのこの芦間かくれにすたち侘ひつつ
おもふえに−いつかはよらむ−かるのこの−あしまかくれに−すたちわひつつ |
07668 |
未入力 正徹 (xxx)
啼く鳥のはね打ちきするかひのこも帰る名つらき暁の空
なくとりの−はねうちきする−かひのこも−かへるなつらき−あかつきのそら |
07669 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ鳥の跡もうらめしすもりこの帰る世もなき中の契に
とふとりの−あともうらめし−すもりこの−かへるよもなき−なかのちきりに |
07670 |
未入力 正徹 (xxx)
あけぬまをねに啼く鳥にゆふ付けてすてはやつらき相坂の関
あけぬまを−ねになくとりに−ゆふつけて−すてはやつらき−あふさかのせき |
07671 |
未入力 正徹 (xxx)
人めのみしけみにみえし鳰鳥の悌残るねこそつきせね
ひとめのみ−しけみにみえし−にほとりの−おもかけのこる−ねこそつきせね |
07672 |
未入力 正徹 (xxx)
閨の上に秋のは落ちて待つ人はこすゑの鳥の声そかさなる
ねやのうへに−あきのはおちて−まつひとは−こすゑのとりの−こゑそかさなる |
07673 |
未入力 正徹 (xxx)
入ははや軒はのつはめならふさへたた身のためにつらき中かな
ひとははや−のきはのつはめ−ならふさへ−たたみのために−つらきなかかな |
07674 |
未入力 正徹 (xxx)
我もさそかたしや庭の石たたきくたく心はみえん世もなし
われもさそ−かたしやにはの−いしたたき−くたくこころは−みえむよもなし |
07675 |
未入力 正徹 (xxx)
かたらひし夜床を捨てて立つひはり思ひあかるとみるもうらめし
かたらひし−よとこをすてて−たつひはり−おもひあかると−みるもうらめし |
07676 |
未入力 正徹 (xxx)
暁をまたねにたてぬ鳥の子のかひ有る夜はの契ともかな
あかつきを−またねにたてぬ−とりのこの−かひあるよはの−ちきりともかな |
07677 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中は秋とたのむの雁かゐるよるの床よも同し契を
うきなかは−あきとたのむの−かりかゐる−よるのとこよも−おなしちきりを |
07678 |
未入力 正徹 (xxx)
いもとあれとねしよそしけき今こそは遠山鳥の岡のやかたに
いもとあれと−ねしよそしけき−いまこそは−とほやまとりの−をかのやかたに |
07679 |
未入力 正徹 (xxx)
事とはむ我そ契は朝鳥のたちさまよふも別れてやうき
こととはむ−われそちきりは−あさとりの−たちさまよふも−わかれてやうき |
07680 |
未入力 正徹 (xxx)
おのれなけ鳥の中にも時しらぬ夕の声を衣衣にして
おのれなけ−とりのうちにも−ときしらぬ−ゆふへのこゑを−きぬきぬにして |
07681 |
未入力 正徹 (xxx)
うつさしな遠くねに行く烏はにかくとも文のありとしらすは
うつさしな−とほくねにゆく−からすはに−かくともふみの−ありとしらすは |
07682 |
未入力 正徹 (xxx)
おなし枝にならはぬ程はなれさへも思ひに身をやこからめの鳴く
おなしえに−ならはぬほとは−なれさへも−おもひにみをや−こからめのなく |
07683 |
未入力 正徹 (xxx)
世世かけてかひこの中に啼く鳥のすくれたるねも誰を恋ふらん
よよかけて−かひこのうちに−なくとりの−すくれたるねも−たれをこふらむ |
07684 |
未入力 正徹 (xxx)
見えさりき契をよそにいそくとも天飛ふ鳥の跡の白くも
みえさりき−ちきりをよそに−いそくとも−あまとふとりの−あとのしらくも |
07685 |
未入力 正徹 (xxx)
隔てゆく憂身をよその浜風にくたく涙ややすかたの鳥
へたてゆく−うきみをよその−はまかせに−くたくなみたや−やすかたのとり |
07686 |
未入力 正徹 (xxx)
一方に思ひ入江のす鳥たに浮きてしつまぬ波まあらすや
ひとかたに−おもひいりえの−すとりたに−うきてしつまぬ−なみまあらすや |
07687 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしをくゆる心は時過くる鳥のすもりの帰る世もなき
ちきりしを−くゆるこころは−ときすくる−とりのすもりの−かへるよもなき |
07688 |
未入力 正徹 (xxx)
鳰鳥の浮巣に残るかひのこのまたき立つ名そ帰る世もなき
にほとりの−うきすにのこる−かひのこの−またきたつなそ−かへるよもなき |
07689 |
未入力 正徹 (xxx)
ほしやらし憂身の玉の尾長鳥ぬるる草木の露にひかれて
ほしやらし−うきみのたまの−をなかとり−ぬるるくさきの−つゆにひかれて |
07690 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬ夜の積る枕のちり山は鳥のふしとと荒れそ果てぬる
あはぬよの−つもるまくらの−ちりやまは−とりのふしとと−あれそはてぬる |
07691 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の憂はしるらん鶏の妻は啼く音もたてぬうらみに
きぬきぬの−うきはしるらむ−にはとりの−つまはなくねも−たてぬうらみに |
07692 |
未入力 正徹 (xxx)
まな鶴のまなく時なき松のはのねくらの霜の下に恋ひつつ
まなつるの−まなくときなき−まつのはの−ねくらのしもの−したにこひつつ |
07693 |
未入力 正徹 (xxx)
川上の夕の雲に飛ふ鳥のあすかたをやめ誰を恋ふらん
かはかみの−ゆふへのくもに−とふとりの−あすかたをやめ−たれをこふらむ |
07694 |
未入力 正徹 (xxx)
庭にきてさかなき事ををしへ鳥苔の筵の露なはらひそ
にはにきて−さかなきことを−をしへとり−こけのむしろの−つゆなはらひそ |
07695 |
未入力 正徹 (xxx)
跡つけよ袖の涙の下くくるならひもしらぬにほの通路
あとつけよ−そてのなみたの−したくくる−ならひもしらぬ−にほのかよひち |
07696 |
未入力 正徹 (xxx)
契りてき波やはこえん白鳥のとはになみえそ末の松山
ちきりてき−なみやはこえむ−しらとりの−とはになみえそ−すゑのまつやま |
07697 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれしよりとてもほされぬ塩風にかけよやせめて袖のうら波
ぬれしより−とてもほされぬ−しほかせに−かけよやせめて−そてのうらなみ |
07698 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかり身にしむ風の心かは吹きつたへてもいかかしられぬ
かくはかり−みにしむかせの−こころかは−ふきつたへても−いかかしられぬ |
07699 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふより涙の袖のしからみは風のかけてや露こほるらん
おもふより−なみたのそての−しからみは−かせのかけてや−つゆこほるらむ |
07700 |
未入力 正徹 (xxx)
みしめ縄四手吹く風も我か方になひくはかりのしるしともかな
みしめなは−してふくかせも−わかかたに−なひくはかりの−しるしともかな |
07701 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかせんかくこそあれと吹く風をめにみるとても恋しかりせは
いかかせむ−かくこそあれと−ふくかせを−めにみるとても−こひしかりせは |
07702 |
未入力 正徹 (xxx)
さらはこそ閨へもいらめ君か袖ふれけん風の行へしらせよ
さらはこそ−ねやへもいらめ−きみかそて−ふれけむかせの−ゆくへしらせよ |
07703 |
未入力 正徹 (xxx)
袖に吹け君か方へと行く雲の帰りし風はふみならすとも
そてにふけ−きみかかたへと−ゆくくもの−かへりしかせは−ふみならすとも |
07704 |
未入力 正徹 (xxx)
日をかさねほさすよさても涙ゆゑ風をいたまぬ袖は寒くて
ひをかさね−ほさすよさても−なみたゆゑ−かせをいたまぬ−そてはさむくて |
07705 |
未入力 正徹 (xxx)
人心猶かさはやの身をうらに落ちゆく舟の遠さかりつつ
ひとこころ−なほかさはやの−みをうらに−おちゆくふねの−とほさかりつつ |
07706 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人のいつの秋風とまりてか夜毎に閨のちりはらふらん
みしひとの−いつのあきかせ−とまりてか−よことにねやの−ちりはらふらむ |
07707 |
未入力 正徹 (xxx)
人心岩木の山に通ふともわかなひかさぬ風はかひなし
ひとこころ−いはきのやまに−かよふとも−わかなひかさぬ−かせはかひなし |
07708 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きしほるこよひそ限り難面くて猶こぬ人を松のかさをれ
ふきしほる−こよひそかきり−つれなくて−なほこぬひとを−まつのかさをれ |
07709 |
未入力 正徹 (xxx)
此夕思はぬ方の風そともわきてしらすは袖やぬるらん
このゆふへ−おもはぬかたの−かせそとも−わきてしらすは−そてやぬるらむ |
07710 |
未入力 正徹 (xxx)
たか袖に宿りかねてか過きぬらん空なる風も匂ひ侘ひぬる
たかそてに−やとりかねてか−すきぬらむ−そらなるかせも−にほひわひぬる |
07711 |
未入力 正徹 (xxx)
馴れぬれは手枕うとき真木の戸のすきまの風そもとの身にしむ
なれぬれは−たまくらうとき−まきのとの−すきまのかせそ−もとのみにしむ |
07712 |
未入力 正徹 (xxx)
のかれいる山ともなれと頼み置く床の塵吹く風はうらめし
のかれいる−やまともなれと−たのみおく−とこのちりふく−かせはうらめし |
07713 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれん風の心を先しるやふかぬ梢の花そ散りゆく
さそはれむ−かせのこころを−まつしるや−ふかぬこすゑの−はなそちりゆく |
07714 |
未入力 正徹 (xxx)
をりふせんたよりなきまて中に吹く風の心もあらき浜荻
をりふせむ−たよりなきまて−なかにふく−かせのこころも−あらきはまをき |
07715 |
未入力 正徹 (xxx)
祈りこし神の誓にまかすれは恋にしなとの風もいとはす
いのりこし−かみのちかひに−まかすれは−こひにしなとの−かせもいとはす |
07716 |
未入力 正徹 (xxx)
さそはれていとと思ひの露そもる風のかけたる袖のしからみ
さそはれて−いととおもひの−つゆそもる−かせのかけたる−そてのしからみ |
07717 |
未入力 正徹 (xxx)
積りては山ちと成りぬ辻風のまくとも床の塵はあからし
つもりては−やまちとなりぬ−つしかせの−まくともとこの−ちりはあからし |
07718 |
未入力 正徹 (xxx)
よもいはしそなたの風のたよりにも我か袖ひとつよきて咲けとは
よもいはし−そなたのかせの−たよりにも−わかそてひとつ−よきてさけとは |
07719 |
未入力 正徹 (xxx)
人心吹きあへぬ風の過きぬまにうつろふ色そ草木にもにぬ
ひとこころ−ふきあへぬかせの−すきぬまに−うつろふいろそ−くさきにもにぬ |
07720 |
未入力 正徹 (xxx)
色しるき心の花や世にちらむ思はぬ方の風はよくとも
いろしるき−こころのはなや−よにちらむ−おもはぬかたの−かせはよくとも |
07721 |
未入力 正徹 (xxx)
音よりも人のはけしきうさをのみしののをふふく秋のあはらや
おとよりも−ひとのはけしき−うさをのみ−しののをふふく−あきのあはらや |
07722 |
未入力 正徹 (xxx)
それも猶憂身ふけひのうら風に思ふかたほや遠さかるらん
それもなほ−うきみふけひの−うらかせに−おもふかたほや−とほさかるらむ |
07723 |
未入力 正徹 (xxx)
恋衣身をしる雨のしほるとも色に出てての後やくたさむ
こひころも−みをしるあめの−しほるとも−いろにいてての−のちやくたさむ |
07724 |
未入力 正徹 (xxx)
天つ風雲吹く雨のあしたゆくうきて思ひを何かさぬらん
あまつかせ−くもふくあめの−あしたゆく−うきておもひを−なにかさぬらむ |
07725 |
未入力 正徹 (xxx)
風ませに雨降りあれてさ夜更けぬ待つへきにあらす独かもねん
かせませに−あめふりあれて−さよふけぬ−まつへきにあらす−ひとりかもねむ |
07726 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くもうし身をしる雨といふほともなれえぬ中のまやのあまりに
きくもうし−みをしるあめと−いふほとも−なれえぬなかの−まやのあまりに |
07727 |
未入力 正徹 (xxx)
憂身しる袖より外の雨そそきあまり程へぬ中の通ち
うきみしる−そてよりほかの−あまそそき−あまりほとへぬ−なかのかよひち |
07728 |
未入力 正徹 (xxx)
東屋のあまり身をしる雨そそきひたふるまてになる袂かな
あつまやの−あまりみをしる−あまそそき−ひたふるまてに−なるたもとかな |
07729 |
未入力 正徹 (xxx)
頼むなり思ひもかけぬ雨夜にそ契さはらぬ中もしられん
たのむなり−おもひもかけぬ−あまよにそ−ちきりさはらぬ−なかもしられむ |
07730 |
未入力 正徹 (xxx)
はけしかる風にも人をまたせしとしるわさつらき夕暮の雨
はけしかる−かせにもひとを−またせしと−しるわさつらき−ゆふくれのあめ |
07731 |
未入力 正徹 (xxx)
いかてなほたのめてあはぬつらさをは雨夜の品に定めさりけん
いかてなほ−たのめてあはぬ−つらさをは−あまよのしなに−さためさりけむ |
07732 |
未入力 正徹 (xxx)
雨もしれ軒に音する玉水の淡と成りても消えぬおもひを
あめもしれ−のきにおとする−たまみつの−あわとなりても−きえぬおもひを |
07733 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひしれねかへはやかていとはしき雨の身にそふ袖の涙を
おもひしれ−ねかへはやかて−いとはしき−あめのみにそふ−そてのなみたを |
07734 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣うき名もはやくもりぬれぬ恋やたまらぬあはら屋の雨
さよころも−うきなもはやく−もりぬれぬ−こひやたまらぬ−あはらやのあめ |
07735 |
未入力 正徹 (xxx)
夜半にとふ音はそなたの風なからつらき心をはこふ雨かな
よはにとふ−おとはそなたの−かせなから−つらきこころを−はこふあめかな |
07736 |
未入力 正徹 (xxx)
ほしやせん袖のしくれの雨宿りぬれす立ちよる人にとはれは
ほしやせむ−そてのしくれの−あまやとり−ぬれすたちよる−ひとにとはれは |
07737 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れはやさし入の小屋の雨宿りほのみしかほの匂ひはかりを
わすれはや−さしいりのこやの−あまやとり−ほのみしかほの−にほひはかりを |
07738 |
未入力 正徹 (xxx)
浮雲の何にかかれる身ともなしたのめすまたぬ夕暮の雨
うきくもの−なににかかれる−みともなし−たのめすまたぬ−ゆふくれのあめ |
07739 |
未入力 正徹 (xxx)
心たに中にかよはは川波もなとかいもせの山の下道
こころたに−なかにかよはは−かはなみも−なとかいもせの−やまのしたみち |
07740 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世の誰か枕より積りけん我かねし床のちりならぬ山
いつのよの−たかまくらより−つもりけむ−わかねしとこの−ちりならぬやま |
07741 |
未入力 正徹 (xxx)
初瀬路や末吹きよわる山颪はけしかりしそ今は恋しき
はつせちや−すゑふきよわる−やまおろし−はけしかりしそ−いまはこひしき |
07742 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝なき山もをり侘ひぬへたつる花の霞はかりに
いしはしる−たきなきやまも−をりわひぬ−へたつるはなの−かすみはかりに |
07743 |
未入力 正徹 (xxx)
枝かはす松も契そ住む鳥のならふはかひの山とたのまん
えたかはす−まつもちきりそ−すむとりの−ならふはかひの−やまとたのまむ |
07744 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣を馴れてもいそく中にみよ帰るいもせの山かつらかは
きぬきぬを−なれてもいそく−なかにみよ−かへるいもせの−やまかつらかは |
07745 |
未入力 正徹 (xxx)
とめおきて山路かへらは俤のよ川の水や袖になかれん
とめおきて−やまちかへらは−おもかけの−よかはのみつや−そてになかれむ |
07746 |
未入力 正徹 (xxx)
涙のみあけの袂も包みえぬ契位の山そ夜ふかき
なみたのみ−あけのたもとも−つつみえぬ−ちきりくらゐの−やまそよふかき |
07747 |
未入力 正徹 (xxx)
絶えはてきあはぬをおほく行く水の山下とよみ名にやたてけん
たえはてき−あはぬをおほく−ゆくみつの−やましたとよみ−なにやたてけむ |
07748 |
未入力 正徹 (xxx)
契のみあさまの嶽の夕煙かれもあせねと山風そ吹く
ちきりのみ−あさまのたけの−ゆふけふり−かれもあせねと−やまかせそふく |
07749 |
未入力 正徹 (xxx)
別ちにけさもならひて横雲の衣衣しらぬ二かみの山
わかれちに−けさもならひて−よこくもの−きぬきぬしらぬ−ふたかみのやま |
07750 |
未入力 正徹 (xxx)
ともしてふ此比もゆる思ひかはさてもあひつの山そはるけき
ともしてふ−このころもゆる−おもひかは−さてもあひつの−やまそはるけき |
07751 |
未入力 正徹 (xxx)
声そせぬもゆるあさまの山ひこもむせふ煙にこたへかぬらん
こゑそせぬ−もゆるあさまの−やまひこも−むせふけふりに−こたへかぬらむ |
07752 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心またそ恋ちに帰る山夕の雲になにさそふらん
わかこころ−またそこひちに−かへるやま−ゆふへのくもに−なにさそふらむ |
07753 |
未入力 正徹 (xxx)
分入りし道もけはしき山菅のすけなや人のかりの言の葉
わけいりし−みちもけはしき−やますけの−すけなやひとの−かりのことのは |
07754 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる神のみ室の山わかれ立行く雲のきゆる思ひを
みにそしる−かみのみむろの−やまわかれ−たちゆくくもの−きゆるおもひを |
07755 |
未入力 正徹 (xxx)
石見潟たつとも波や消えさらん松も高津におろす山風
いはみかた−たつともなみや−きえさらむ−まつもたかつに−おろすやまかせ |
07756 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ入る山もあらはにこり果てぬ遠きなけきのもとの身にして
おもひいる−やまもあらはに−こりはてぬ−とほきなけきの−もとのみにして |
07757 |
未入力 正徹 (xxx)
玉かつらかけて恋ひめやほのみえし夕かみ山のよそのうしろて
たまかつら−かけてこひめや−ほのみえし−ゆふかみやまの−よそのうしろて |
07758 |
未入力 正徹 (xxx)
せく水もすまはやすまん奥山の岩かきこむる思ひありとも
せくみつも−すまはやすまむ−おくやまの−いはかきこむる−おもひありとも |
07759 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心たえねけはしき道分けて思ひ入りにし山の岩かと
わかこころ−たえねけはしき−みちわけて−おもひいりにし−やまのいはかと |
07760 |
未入力 正徹 (xxx)
神の代に生れし山も心あらは思ふいもせの中なへたてそ
かみのよに−うまれしやまも−こころあらは−おもふいもせの−なかなへたてそ |
07761 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしは夕の雲の山のはにたえてみえしも猶跡そなき
ちきりしは−ゆふへのくもの−やまのはに−たえてみえしも−なほあとそなき |
07762 |
未入力 正徹 (xxx)
いもせ山中に衣のわかれぬや契りしままの世世のしら雲
いもせやま−なかにころもの−わかれぬや−ちきりしままの−よよのしらくも |
07763 |
未入力 正徹 (xxx)
立消えしいなはの峰の山かつら松にかかれる夕暮もなし
たちきえし−いなはのみねの−やまかつら−まつにかかれる−ゆふくれもなし |
07764 |
未入力 正徹 (xxx)
いふき山もえて思ひのある世とや峰にも雲の立ちかくすらん
いふきやま−もえておもひの−あるよとや−みねにもくもの−たちかくすらむ |
07765 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜も又をくらか峰にやすらはて別馴れたる雲もうらめし
さよもまた−をくらかみねに−やすらはて−わかれなれたる−くももうらめし |
07766 |
未入力 正徹 (xxx)
言の葉もうつろひぬとや水くきの岡の葛原色かはるらん
ことのはも−うつろひぬとや−みつくきの−をかのくすはら−いろかはるらむ |
07767 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりてや袖にこほれん風のまも心岡への葛のした露
かへりてや−そてにこほれむ−かせのまも−こころをかへの−くすのしたつゆ |
07768 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはにいかはかりかはさわかれんとはは人めの岡のかやはら
ことのはに−いかはかりかは−さわかれむ−とははひとめの−をかのかやはら |
07769 |
未入力 正徹 (xxx)
とはしよも契る岡への松にたに雲ゐるへくもあらし吹くよを
とはしよも−ちきるをかへの−まつにたに−くもゐるへくも−あらしふくよを |
07770 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さすむかひの岡に夕草のとくともほさぬ露な乱れそ
ゆふひさす−むかひのをかに−ゆふくさの−とくともほさぬ−つゆなみたれそ |
07771 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜は遠き高ねの岡のまへいく松風の暮へたつらん
たのむよは−とほきたかねの−をかのまへ−いくまつかせの−くれへたつらむ |
07772 |
未入力 正徹 (xxx)
木高くてこむ世にみえよ契置く岡への小松宿のしるしは
こたかくて−こむよにみえよ−ちきりおく−をかへのこまつ−やとのしるしは |
07773 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりし思ひやからき契たにたかしほいとふ岡のへの宿
しらさりし−おもひやからき−ちきりたに−たかしほいとふ−をかのへのやと |
07774 |
未入力 正徹 (xxx)
さりともとことしも心長岡にいよいよみまくほしき暮かな
さりともと−ことしもこころ−なかをかに−いよいよみまく−ほしきくれかな |
07775 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしを人こそ忘れやす川にたつ網代木の身をくたくらん
ちきりしを−ひとこそわすれ−やすかはに−たつあしろきの−みをくたくらむ |
07776 |
未入力 正徹 (xxx)
末そうきひとつ思ひを川島に心わけゆく水の契りは
すゑそうき−ひとつおもひを−かはしまに−こころわけゆく−みつのちきりは |
07777 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひかねあくかれ出つる玉川をせくなよ君か宿のしからみ
おもひかね−あくかれいつる−たまかはを−せくなよきみか−やとのしからみ |
07778 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめてもいまたひかたの川波よ夕暮いそけ春の雲霧
たのめても−いまたひかたの−かはなみよ−ゆふくれいそけ−はるのくもきり |
07779 |
未入力 正徹 (xxx)
かみや川氷の上にかすかかはとけぬ契りやあらはならまし
かみやかは−こほりのうへに−かすかかは−とけぬちきりや−あらはならまし |
07780 |
未入力 正徹 (xxx)
ならふへき人もいつかはこも枕高瀬の淀のむなし川なみ
ならふへき−ひともいつかは−こもまくら−たかせのよとの−むなしかはなみ |
07781 |
未入力 正徹 (xxx)
ひのくまや隙ゆく駒はととむともみし川よとに影やなからん
ひのくまや−ひまゆくこまは−ととむとも−みしかはよとに−かけやなからむ |
07782 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちにけり吉野の川のみをつくしたつき心の末のしるしは
くちにけり−よしののかはの−みをつくし−たつきこころの−すゑのしるしは |
07783 |
未入力 正徹 (xxx)
うかりけり分行く水の二心又たか方に川しまの松
うかりけり−わけゆくみつの−ふたこころ−またたかかたに−かはしまのまつ |
07784 |
未入力 正徹 (xxx)
山川や契浅せのなる声もうき名をたつる波かとそきく
やまかはや−ちきりあさせの−なるこゑも−うきなをたつる−なみかとそきく |
07785 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかからすみしは程なくせ絶して我かかた淵にあまる川波
ふかからす−みしはほとなく−せたえして−わかかたふちに−あまるかはなみ |
07786 |
未入力 正徹 (xxx)
あさか山沼の浮草方よりてかつみし水のかけも忘れぬ
あさかやま−ぬまのうきくさ−かたよりて−かつみしみつの−かけもわすれぬ |
07787 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふたか世かとめし玉津島袖に入江のあまもひろはて
こひすてふ−たかよかとめし−たまつしま−そてにいりえの−あまもひろはて |
07788 |
未入力 正徹 (xxx)
たえぬとてをしみやはせん玉のをもほそ江の芦のねみぬ思ひに
たえぬとて−をしみやはせむ−たまのをも−ほそえのあしの−ねみぬおもひに |
07789 |
未入力 正徹 (xxx)
かつきせぬ苫屋のあまのぬれ衣を猶きさ潟の秋の塩風
かつきせぬ−とまやのあまの−ぬれきぬを−なほきさかたの−あきのしほかせ |
07790 |
未入力 正徹 (xxx)
波もかくかるるまてやはをりふせん人の心にあらき浜荻
なみもかく−かるるまてやは−をりふせむ−ひとのこころに−あらきはまをき |
07791 |
未入力 正徹 (xxx)
かさねつる契むなしく明石より又うと浜のあまのは衣
かさねつる−ちきりむなしく−あかしより−またうとはまの−あまのはころも |
07792 |
未入力 正徹 (xxx)
契のみ朽ちにし袖の湊江にそれもかよはぬあまの捨舟
ちきりのみ−くちにしそての−みなとえに−それもかよはぬ−あまのすてふね |
07793 |
未入力 正徹 (xxx)
人心さてもやいなの湊舟夜るみつ塩に遠さかるらん
ひとこころ−さてもやいなの−みなとふね−よるみつしほに−とほさかるらむ |
07794 |
未入力 正徹 (xxx)
まとろまぬうきねを夢に湊川名におふ袖の下にせきつつ
まとろまぬ−うきねをゆめに−みなとかは−なにおふそての−したにせきつつ |
07795 |
未入力 正徹 (xxx)
からくなと袖の波こす玉ゆらの湊さしこし塩のほるらん
からくなと−そてのなみこす−たまゆらの−みなとさしこし−しほのほるらむ |
07796 |
未入力 正徹 (xxx)
たきやせんわか身のうらのあまりつむなけきは尽きぬもしほなりとも
たきやせむ−わかみのうらの−あまりつむ−なけきはつきぬ−もしほなりとも |
07797 |
未入力 正徹 (xxx)
何にかはゆかりをよせん紫の上野に生ひぬすまのうらなみ
なににかは−ゆかりをよせむ−むらさきの−うへのにおひぬ−すまのうらなみ |
07798 |
未入力 正徹 (xxx)
すまのあまの身をうら風もほしはつる涙ま遠の衣ともなれ
すまのあまの−みをうらかせも−ほしはつる−なみたまとほの−ころもともなれ |
07799 |
未入力 正徹 (xxx)
袖こえて石はしるとはみえすとも滝つ心の花はをられし
そてこえて−いしはしるとは−みえすとも−たきつこころの−はなはをられし |
07800 |
未入力 正徹 (xxx)
これや此くろきすちなき滝川の老と成るまてあふせ白波
これやこの−くろきすちなき−たきかはの−おいとなるまて−あふせしらなみ |
07801 |
未入力 正徹 (xxx)
おちよとてゆるす涙の滝枕身をなかさすは猶も浅せそ
おちよとて−ゆるすなみたの−たきまくら−みをなかさすは−なほもあさせそ |
07802 |
未入力 正徹 (xxx)
いつよりか沢にさまよふ身と成りてねせりもつまぬ袖ぬらすらん
いつよりか−さはにさまよふ−みとなりて−ねせりもつまぬ−そてぬらすらむ |
07803 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中の水もりやすき契とはなかれての名の立つにてそしる
うきなかの−みつもりやすき−ちきりとは−なかれてのなの−たつにてそしる |
07804 |
未入力 正徹 (xxx)
つるへなは心ふか井におよはすはたれ汲みしらむおもふ水底
つるへなは−こころふかゐに−およはすは−たれくみしらむ−おもふみなそこ |
07805 |
未入力 正徹 (xxx)
おほほえすいつより袖にならひけんかけぬ朽木の杣川のなみ
おほほえす−いつよりそてに−ならひけむ−かけぬくちきの−そまかはのなみ |
07806 |
未入力 正徹 (xxx)
言の葉の色を見せてもみなれ木のめつらしけなき中やいとはん
ことのはの−いろをみせても−みなれきの−めつらしけなき−なかやいとはむ |
07807 |
未入力 正徹 (xxx)
いとせめて消えは共にと契りおけあるをたのまぬはは木木の露
いとせめて−きえはともにと−ちきりおけ−あるをたのまぬ−ははききのつゆ |
07808 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひしれつらき心のおく山にたつをたまきのこりぬ心を
おもひしれ−つらきこころの−おくやまに−たつをたまきの−こりぬこころを |
07809 |
未入力 正徹 (xxx)
それもうし恋に捨ててしうち川の森の木玉のけたぬ命は
それもうし−こひにすててし−うちかはの−もりのこたまの−けたぬいのちは |
07810 |
未入力 正徹 (xxx)
我か袖にひろひかくさん山陰や秋の木のみも落つる涙を
わかそてに−ひろひかくさむ−やまかけや−あきのこのみも−おつるなみたを |
07811 |
未入力 正徹 (xxx)
身そつらき君やは思ひとかの木のましるかや原色もかはらて
みそつらき−きみやはおもひ−とかのきの−ましるかやはら−いろもかはらて |
07812 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみなとくたく心そ恋の山人にはそはぬたつきなき身を
さのみなと−くたくこころそ−こひのやま−ひとにはそはぬ−たつきなきみを |
07813 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れすはたれか心をおく山にたつをたまきの千世もへさらん
わすれすは−たれかこころを−おくやまに−たつをたまきの−ちよもへさらむ |
07814 |
未入力 正徹 (xxx)
いかさまに椎の下葉は秋なから色かはらはそ露もうらみん
いかさまに−しひのしたはは−あきなから−いろかはらはそ−つゆもうらみむ |
07815 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての名取川なる埋木はうき出ててこそしからみもあれ
なかれての−なとりかはなる−うもれきは−うきいててこそ−しからみもあれ |
07816 |
未入力 正徹 (xxx)
まつとなき心に恋や宿木のかれぬ思ひの種と成りけん
まつとなき−こころにこひや−やとりきの−かれぬおもひの−たねとなりけむ |
07817 |
未入力 正徹 (xxx)
色にそむ心なくてはいかかせん人はみ山の岩木ならすは
いろにそむ−こころなくては−いかかせむ−ひとはみやまの−いはきならすは |
07818 |
未入力 正徹 (xxx)
賎かてにくりもかへさぬおく山やたつをたまきのくたけてそうき
しつかてに−くりもかへさぬ−おくやまや−たつをたまきの−くたけてそうき |
07819 |
未入力 正徹 (xxx)
山川に行く流木のとまるせよしはしまてなとからき姿そ
やまかはに−ゆくなかれきの−とまるせよ−しはしまてなと−からきすかたそ |
07820 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中は秋の木のはの木からしに今はの心つくはねの松
うきなかは−あきのこのはの−こからしに−いまはのこころ−つくはねのまつ |
07821 |
未入力 正徹 (xxx)
いつのまに埋木ならて名取川水もまさらぬせにうかひけん
いつのまに−うもれきならて−なとりかは−みつもまさらぬ−せにうかひけむ |
07822 |
未入力 正徹 (xxx)
下露に雨さへもりの木のす玉はかりし恋や宇治の里人
したつゆに−あめさへもりの−きのすたま−はかりしこひや−うちのさとひと |
07823 |
未入力 正徹 (xxx)
あへす世に立つ太山木の名もしらぬたくひとならて身をくたくらん
あへすよに−たつみやまきの−なもしらぬ−たくひとならて−みをくたくらむ |
07824 |
未入力 正徹 (xxx)
名取川あらはれし後は何かせん雨のみかさのせせの埋木
なとりかは−あらはれしのちは−なにかせむ−あめのみかさの−せせのうもれき |
07825 |
未入力 正徹 (xxx)
月はとへ人にはいはて松のはのこけのみたれて嵐ふく夜を
つきはとへ−ひとにはいはて−まつのはの−こけのみたれて−あらしふくよを |
07826 |
未入力 正徹 (xxx)
影移る汀の杉のはつせ川色かはらすは又もあひみん
かけうつる−みきはのすきの−はつせかは−いろかはらすは−またもあひみむ |
07827 |
未入力 正徹 (xxx)
君か住む宿の若木の杉のはもわか思ふたけに生ひはのほらし
きみかすむ−やとのわかきの−すきのはも−わかおもふたけに−おひはのほらし |
07828 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねても思ひははれしあや杉のあやめもみえぬしるしありとは
たつねても−おもひははれし−あやすきの−あやめもみえぬ−しるしありとは |
07829 |
未入力 正徹 (xxx)
行末の色はかはらし憂きなから杉のもと葉そあへす枯行く
ゆくすゑの−いろはかはらし−うきなから−すきのもとはそ−あへすかれゆく |
07830 |
未入力 正徹 (xxx)
人心八度霜おく榊はにつれなき色は猶やまさらん
ひとこころ−やたひしもおく−さかきはに−つれなきいろは−なほやまさらむ |
07831 |
未入力 正徹 (xxx)
神かけてをらはやをらん榊はのかをなつかしみ露をしるへに
かみかけて−をらはやをらむ−さかきはの−かをなつかしみ−つゆをしるへに |
07832 |
未入力 正徹 (xxx)
九重や霜夜にうたふ榊はの袖をりかへし独かもねん
ここのへや−しもよにうたふ−さかきはの−そてをりかへし−ひとりかもねむ |
07833 |
未入力 正徹 (xxx)
野の宮や八重の榊のははかりも忘れね心入かたの月
ののみやや−やへのさかきの−ははかりも−わすれねこころ−いりかたのつき |
07834 |
未入力 正徹 (xxx)
歎きつつ恋に命の長かしは葉を守る神もみるやつれなき
なけきつつ−こひにいのちの−なかかしは−はをもるかみも−みるやつれなき |
07835 |
未入力 正徹 (xxx)
たか秋を峰の尾花か本柏思ひある草と色かはるらん
たかあきを−みねのをはなか−もとかしは−おもひあるくさと−いろかはるらむ |
07836 |
未入力 正徹 (xxx)
有りし世の契りをたれに柏木の落は時雨のふることそなき
ありしよの−ちきりをたれに−かしはきの−おちはしくれの−ふることそなき |
07837 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらはちれたのめ馴れにし夕暮をなかめかしはも色かはる秋
ちらはちれ−たのめなれにし−ゆふくれを−なかめかしはも−いろかはるあき |
07838 |
未入力 正徹 (xxx)
暮毎になかめかしはのぬるをみてあはぬ歎の露そこほるる
くれことに−なかめかしはの−ぬるをみて−あはぬなけきの−つゆそこほるる |
07839 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらせ風なかむれは又我かむねに三葉柏の色かはる秋
ちらせかせ−なかむれはまた−わかむねに−みつはかしはの−いろかはるあき |
07840 |
未入力 正徹 (xxx)
露もなと清き川原の心なく秋の楸の色にそむらん
つゆもなと−きよきかはらの−こころなく−あきのひさきの−いろにそむらむ |
07841 |
未入力 正徹 (xxx)
月もしれひはらの陰にすむ身かはくもるは袖の涙ならすや
つきもしれ−ひはらのかけに−すむみかは−くもるはそての−なみたならすや |
07842 |
未入力 正徹 (xxx)
暮毎につらしとたれをみわの山桧原もくもる涙をそかる
くれことに−つらしとたれを−みわのやま−ひはらもくもる−なみたをそかる |
07843 |
未入力 正徹 (xxx)
にふの川なかさぬ山に立つ槙もつひにうきせに身をそくたかん
にふのかは−なかさぬやまに−たつまきも−つひにうきせに−みをそくたかむ |
07844 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそとふすみこし人はならのはのうつろひ果つる秋の都を
みにそとふ−すみこしひとは−ならのはの−うつろひはつる−あきのみやこを |
07845 |
未入力 正徹 (xxx)
はらへ風ゆるさぬ中のゆかりうきははその森のあらき言の葉
はらへかせ−ゆるさぬなかの−ゆかりうき−ははそのもりの−あらきことのは |
07846 |
未入力 正徹 (xxx)
をられしな月の桂の花の枝は此世に移る心ありとも
をられしな−つきのかつらの−はなのえは−このよにうつる−こころありとも |
07847 |
未入力 正徹 (xxx)
をりをりにかれも茂りも隙なきや我か恋草のならひなるらん
をりをりに−かれもしけりも−ひまなきや−わかこひくさの−ならひなるらむ |
07848 |
未入力 正徹 (xxx)
秋よりも露そこほるる時過きて草を冬野とかれし契に
あきよりも−つゆそこほるる−ときすきて−くさをふゆのと−かれしちきりに |
07849 |
未入力 正徹 (xxx)
通ひこし庭の蓬の仙杣かたやつひになけきのもとと成るらん
かよひこし−にはのよもきの−そまかたや−つひになけきの−もととなるらむ |
07850 |
未入力 正徹 (xxx)
秋ならぬ色にいてめや初草のうらなく物は思ひありとも
あきならぬ−いろにいてめや−はつくさの−うらなくものは−おもひありとも |
07851 |
未入力 正徹 (xxx)
うらみこし草を冬野の契たになへての後の霜の通ち
うらみこし−くさをふゆのの−ちきりたに−なへてののちの−しものかよひち |
07852 |
未入力 正徹 (xxx)
つらき身をしるにつけても我か宿と頼む葎の陰そ露けき
つらきみを−しるにつけても−わかやとと−たのむむくらの−かけそつゆけき |
07853 |
未入力 正徹 (xxx)
人心尾花か本の思ひにもあらぬ契りの末そかれゆく
ひとこころ−をはなかもとの−おもひにも−あらぬちきりの−すゑそかれゆく |
07854 |
未入力 正徹 (xxx)
もらさしよいつまて草の秋の露おふてふかへもきかははつかし
もらさしよ−いつまてくさの−あきのつゆ−おふてふかへも−きかははつかし |
07855 |
未入力 正徹 (xxx)
枯れやらぬ冬野の草の露はかり残す契りの色もうらめし
かれやらぬ−ふゆののくさの−つゆはかり−のこすちきりの−いろもうらめし |
07856 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか吹く尾花かもとの野への草しほれしままの袖の秋風
いかかふく−をはなかもとの−のへのくさ−しほれしままの−そてのあきかせ |
07857 |
未入力 正徹 (xxx)
憂身しる涙のち原紅にそめては帰る宿の通ひち
うきみしる−なみたのちはら−くれなゐに−そめてはかへる−やとのかよひち |
07858 |
未入力 正徹 (xxx)
待つ人は梢も高き蓬生に心くたくる露の夕風
まつひとは−こすゑもたかき−よもきふに−こころくたくる−つゆのゆふかせ |
07859 |
未入力 正徹 (xxx)
夜のまにも我か恋草をかりつみて山としなさは雲やかからん
よのまにも−わかこひくさを−かりつみて−やまとしなさは−くもやかからむ |
07860 |
未入力 正徹 (xxx)
露霜の尾花かもとの秋にあふ草はもたへすかるる色かな
つゆしもの−をはなかもとの−あきにあふ−くさはもたへす−かるるいろかな |
07861 |
未入力 正徹 (xxx)
春よたた結ふ契りのかれしより憂き若草のつまなしの花
はるよたた−むすふちきりの−かれしより−うきわかくさの−つまなしのはな |
07862 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねみよ草を冬野の契たに春待つ雪のしたのみとりを
たつねみよ−くさをふゆのの−ちきりたに−はるまつゆきの−したのみとりを |
07863 |
未入力 正徹 (xxx)
たか心あさにひかれて絶えぬらんかれし蓬かもとの契は
たかこころ−あさにひかれて−たえぬらむ−かれしよもきか−もとのちきりは |
07864 |
未入力 正徹 (xxx)
宿にたに草の戸さしのさはりおほみたれ芦分の小舟待つらん
やとにたに−くさのとさしの−さはりおほみ−たれあしわけの−をふねまつらむ |
07865 |
未入力 正徹 (xxx)
露結ふ契りも絶えて朽ちそ行く尾花か本の草を冬野は
つゆむすふ−ちきりもたえて−くちそゆく−をはなかもとの−くさをふゆのは |
07866 |
未入力 正徹 (xxx)
村薄いつまていもか手枕にかしけてたてる野への霜かな
むらすすき−いつまていもか−たまくらに−かしけてたてる−のへのしもかな |
07867 |
未入力 正徹 (xxx)
門近く忍ふ車はととむともここに蓬のまろねをはみし
かとちかく−しのふくるまは−ととむとも−ここによもきの−まろねをはみし |
07868 |
未入力 正徹 (xxx)
此国のいまた芦原なりし世にたれ憂ふしを歎初むらん
このくにの−いまたあしはら−なりしよに−たれうきふしを−なけきそむらむ |
07869 |
未入力 正徹 (xxx)
難波人思ひを小屋にたきあかし芦のいとなき賎のをたまき
なにはひと−おもひをこやに−たきあかし−あしのいとなき−しつのをたまき |
07870 |
未入力 正徹 (xxx)
つれもなき人に心の下折はみたるる萱か霜の明ほの
つれもなき−ひとにこころの−したをれは−みたるるかやか−しものあけほの |
07871 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとて身をもかくさすますけよき笠のかりてのとけぬ契に
いまはとて−みをもかくさす−ますけよき−かさのかりての−とけぬちきりに |
07872 |
未入力 正徹 (xxx)
人心からしやにほの浦波にしほつすか原根さへ朽つらん
ひとこころ−からしやにほの−うらなみに−しほつすかはら−ねさへくつらむ |
07873 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふ江のみしますかかさ打ちきつつ身をかくしてもよそにたにみむ↓
しのふえの−みしますかかさ−うちきつつ−みをかくしても−よそにたにみむ |
07874 |
未入力 正徹 (xxx)
契のみさて山沢にねを絶えてすけなや人のかれしままなる
ちきりのみ−さてやまさはに−ねをたえて−すけなやひとの−かれしままなる |
07875 |
未入力 正徹 (xxx)
人心こすけかりにもなひかすは袖のみぬれて山沢の水
ひとこころ−こすけかりにも−なひかすは−そてのみぬれて−やまさはのみつ |
07876 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみわか心もひかしいへはえに岩もとこ菅乱れ侘ひぬる
さのみわか−こころもひかし−いへはえに−いはもとこすけ−みたれわひぬる |
07877 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き数を心にとふのすか筵名のみなき世にちりの秋風
うきかすを−こころにとふの−すかむしろ−なのみなきよに−ちりのあきかせ |
07878 |
未入力 正徹 (xxx)
我か門をすけの小車すけなくも前渡りする月白くして
わかかとを−すけのをくるま−すけなくも−まへわたりする−つきしろくして |
07879 |
未入力 正徹 (xxx)
霜よりも人のかよはぬ心こそむすはてからせ宿の道芝
しもよりも−ひとのかよはぬ−こころこそ−むすはてからせ−やとのみちしは |
07880 |
未入力 正徹 (xxx)
朝露も袖のよそにそ消果つる別に分けぬ宿の道芝
あさつゆも−そてのよそにそ−きえはつる−わかれにわけぬ−やとのみちしは |
07881 |
未入力 正徹 (xxx)
一筋に思ひけるかな九重のきり芝広き野への恋ちを
ひとすちに−おもひけるかな−ここのへの−きりしはひろき−のへのこひちを |
07882 |
未入力 正徹 (xxx)
水まさり川への茅原露霜にあはぬねかるる波は越えつつ
みつまさり−かはへのちはら−つゆしもに−あはぬねかるる−なみはこえつつ |
07883 |
未入力 正徹 (xxx)
人はしれ身をうき草にかへつつも柳の花のなひく心を
ひとはしれ−みをうきくさに−かへつつも−やなきのはなの−なひくこころを |
07884 |
未入力 正徹 (xxx)
たのますよにほのかよはぬ萍もねを絶えやすき水の契は
たのますよ−にほのかよはぬ−うきくさも−ねをたえやすき−みつのちきりは |
07885 |
未入力 正徹 (xxx)
涙のみさそふ水あれといなんとも思はぬ中にまよふ浮草
なみたのみ−さそふみつあれと−いなむとも−おもはぬなかに−まよふうきくさ |
07886 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬるかうちの涙の水のうき草や枕によりて夢さそふらん
ぬるかうちの−なみたのみつの−うきくさや−まくらによりて−ゆめさそふらむ |
07887 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心乱れし果やみくまのの苔地くるしき露を分くらん
わかこころ−みたれしはてや−みくまのの−こけちくるしき−つゆをわくらむ |
07888 |
未入力 正徹 (xxx)
しらし身をうつまは苔の下こかれ露さへかれん野へは問ふとも
しらしみを−うつまはこけの−したこかれ−つゆさへかれむ−のへはとふとも |
07889 |
未入力 正徹 (xxx)
うつもれん苔の下道猶絶えてとはすはありとも松の夕風
うつもれむ−こけのしたみち−なほたえて−とはすはありとも−まつのゆふかせ |
07890 |
未入力 正徹 (xxx)
恋ゆゑと誰かはしらん道のへの岩ほのつかに苔ふりぬとも
こひゆゑと−たれかはしらむ−みちのへの−いはほのつかに−こけふりぬとも |
07891 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にて恨残さしうつもれん苔の下はふ葛もこそあれ
このよにて−うらみのこさし−うつもれむ−こけのしたはふ−くすもこそあれ |
07892 |
未入力 正徹 (xxx)
玉かつらかけて幾世の秋の色をうらみよとてや下葉染むらん
たまかつら−かけていくよの−あきのいろを−うらみよとてや−したはそむらむ |
07893 |
未入力 正徹 (xxx)
憂ふしも忘れぬ世世を隔てきて篠分くるあさの袖の別ち
うきふしも−わすれぬよよを−へたてきて−ささわくるあさの−そてのわかれち |
07894 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこて風のさわかす心さへ同し葉分の道のささはら
ひとはこて−かせのさわかす−こころさへ−おなしはわけの−みちのささはら |
07895 |
未入力 正徹 (xxx)
朝ひこのさすか夕そ頼まるる篠のくまなき心ならひに
あさひこの−さすかゆふへそ−たのまるる−ささのくまなき−こころならひに |
07896 |
未入力 正徹 (xxx)
憂ふしもなきはうらめしかり枕しののを篠の露の明くれ
うきふしも−なきはうらめし−かりまくら−しののをささの−つゆのあけくれ |
07897 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とて誰にか袖をかしけたる篠のよませに成る契かな
まくらとて−たれにかそてを−かしけたる−ささのよませに−なるちきりかな |
07898 |
未入力 正徹 (xxx)
うらめしやなひきなからもなよ竹のをるへくもなき人の心は
うらめしや−なひきなからも−なよたけの−をるへくもなき−ひとのこころは |
07899 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ人の涙そめおく紫の竹の一もと宿に露けき
とふひとの−なみたそめおく−むらさきの−たけのひともと−やとにつゆけき |
07900 |
未入力 正徹 (xxx)
末終になひきにけりな木にもあらす草にもあらぬ心よわさほ
すゑつひに−なひきにけりな−きにもあらす−くさにもあらぬ−こころよわさは |
07901 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめしをまつにもあらぬ竹のよのはしにおき出ててあかしかねつつ
たのめしを−まつにもあらぬ−たけのよの−はしにおきいてて−あかしかねつつ |
07902 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬ思ひをいかかしの竹の忍ひしふしも遠く成る世に
いろかへぬ−おもひをいかか−しのたけの−しのひしふしも−とほくなるよに |
07903 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもうき名はよそにちりの世の花にあたなる色やまさらん
ちきりしも−うきなはよそに−ちりのよの−はなにあたなる−いろやまさらむ |
07904 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣うつりあへぬや紅のうす花染の契なるらむ
さよころも−うつりあへぬや−くれなゐの−うすはなそめの−ちきりなるらむ |
07905 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめとやならへる枝の契たにうつろふ花に春の夕風
たのめとや−ならへるえたの−ちきりたに−うつろふはなに−はるのゆふかせ |
07906 |
未入力 正徹 (xxx)
身にしむもことわりしらぬ秋風になにそはつらき桐のはの雨
みにしむも−ことわりしらぬ−あきかせに−なにそはつらき−きりのはのあめ |
07907 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心あまのしきものしき波に夜るは乱れてねん方もなし
わかこころ−あまのしきもの−しきなみに−よるはみたれて−ねむかたもなし |
07908 |
未入力 正徹 (xxx)
我からと身をこそくたけ心なきあまのかるもに乱れ侘ひつつ
われからと−みをこそくたけ−こころなき−あまのかるもに−みたれわひつつ |
07909 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ川うき水底に流ものいつねをたえん時そともなく
おもひかは−うきみなそこに−なかれもの−いつねをたえむ−ときそともなく |
07910 |
未入力 正徹 (xxx)
うき枕かへる波にもわきもかもすそ忘れぬ磯の草かな
うきまくら−かへるなみにも−わきもこか−もすそわすれぬ−いそのくさかな |
07911 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ川つひにせによるなひきもをみよかし波にそむきやはする
おもひかは−つひにせによる−なひきもを−みよかしなみに−そむきやはする |
07912 |
未入力 正徹 (xxx)
乱れゆく心の果や渚こくもかり小舟のつなてたゆらん
みたれゆく−こころのはてや−なきさこく−もかりをふねの−つなてたゆらむ |
07913 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣のうき乱れものくろかみに床の涙の川風そふく
きぬきぬの−うきみたれもの−くろかみに−とこのなみたの−かはかせそふく |
07914 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心あまの人めも渚こくもかり小舟のみたれてそ行く
わかこころ−あまのひとめも−なきさこく−もかりをふねの−みたれてそゆく |
07915 |
未入力 正徹 (xxx)
絶えすとふ水の心になひきものこそにみたれぬ契をそまつ
たえすとふ−みつのこころに−なひきもの−こそにみたれぬ−ちきりをそまつ |
07916 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりき又たか方になひきもの水底ふかく分くる心を
しらさりき−またたかかたに−なひきもの−みなそこふかく−わくるこころを |
07917 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ江にそことよるへも渚こくもかりを舟そ綱手くるしき
おもふえに−そことよるへも−なきさこく−もかりをふねそ−つなてくるしき |
07918 |
未入力 正徹 (xxx)
とにかくに忍ふはくるし中中に乱れてみよや露のかや原
とにかくに−しのふはくるし−なかなかに−みたれてみよや−つゆのかやはら |
07919 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原むすひも果てぬ秋風を誰かしめちか露頼むらん
くさのはら−むすひもはてぬ−あきかせを−たれかしめちか−つゆたのむらむ |
07920 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ぬとも草の原をは何かせんいきて有る世のうちにとはすは
たつぬとも−くさのはらをは−なにかせむ−いきてあるよの−うちにとはすは |
07921 |
未入力 正徹 (xxx)
それならぬ露を袂に分来ても身にそしめちか原の秋風
それならぬ−つゆをたもとに−わけきても−みにそしめちか−はらのあきかせ |
07922 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原とへと白玉露消えてかはらぬ月にやとる面影
くさのはら−とへとしらたま−つゆきえて−かはらぬつきに−やとるおもかけ |
07923 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原尋ねは露も哀とはみゆなよわれを人そいとひし
くさのはら−たつねはつゆも−あはれとは−みゆなよわれを−ひとそいとひし |
07924 |
未入力 正徹 (xxx)
さしも草もゆる思ひのままならはしめちか原やあさまならまし
さしもくさ−もゆるおもひの−ままならは−しめちかはらや−あさまならまし |
07925 |
未入力 正徹 (xxx)
やたののや契と峰の初雪にうつろふ秋の原の浅芽生
やたののや−ちきりとみねの−はつゆきに−うつろふあきの−はらのあさちふ |
07926 |
未入力 正徹 (xxx)
秋風のとへとよる波声もせす契りし草の原の池水
あきかせの−とへとよるなみ−こゑもせす−ちきりしくさの−はらのいけみつ |
07927 |
未入力 正徹 (xxx)
頼みてもうつろふ草をさのみなと思ひしめちか原の下露
たのみても−うつろふくさを−さのみなと−おもひしめちか−はらのしたつゆ |
07928 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひのみしけきもしらし昨日たにとはぬ生田の森の下草
おもひのみ−しけきもしらし−きのふたに−とはぬいくたの−もりのしたくさ |
07929 |
未入力 正徹 (xxx)
後とたにかけよやよそにもりの露うき田のみしめ朽ちぬ契に
のちとたに−かけよやよそに−もりのつゆ−うきたのみしめ−くちぬちきりに |
07930 |
未入力 正徹 (xxx)
言の葉にかけしもいさや白波のよする渚の森の秋風
ことのはに−かけしもいさや−しらなみの−よするなきさの−もりのあきかせ |
07931 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふとは空吹く風の便にもいかかいはせの森のことのは
おもふとは−そらふくかせの−たよりにも−いかかいはせの−もりのことのは |
07932 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ焼く芦のしの屋の隙をあらみ忍ひにたつる煙たになし
もしほやく−あしのしのやの−ひまをあらみ−しのひにたつる−けふりたになし |
07933 |
未入力 正徹 (xxx)
朝川の水の煙や恋すてふ人の身なけし思ひなるらん
あさかはの−みつのけふりや−こひすてふ−ひとのみなけし−おもひなるらむ |
07934 |
未入力 正徹 (xxx)
消えねたた思ひの煙立つ名にもかへてなひかぬ心なりせは
きえねたた−おもひのけふり−たつなにも−かへてなひかぬ−こころなりせは |
07935 |
未入力 正徹 (xxx)
下絶えすもゆる思ひもはれやらす絶えぬ煙や胸にみつらん
したたえす−もゆるおもひも−はれやらす−たえぬけふりや−むねにみつらむ |
07936 |
未入力 正徹 (xxx)
した絶えぬ思ひを室の八島もる身こそ煙のあるしなりけれ
したたえぬ−おもひをむろの−やしまもる−みこそけふりの−あるしなりけれ |
07937 |
未入力 正徹 (xxx)
もえ初めて煙とならん夕まてむねになけきをたきやそへまし
もえそめて−けふりとならむ−ゆふへまて−むねになけきを−たきやそへまし |
07938 |
未入力 正徹 (xxx)
うらやまし思ひより立つ煙にもあらむ朝けにましる里人
うらやまし−おもひよりたつ−けふりにも−あらむあさけに−ましるさとひと |
07939 |
未入力 正徹 (xxx)
渡らしよ誰か契のあさ川に水の思ひのけふり立つらん
わたらしよ−たれかちきりの−あさかはに−みつのおもひの−けふりたつらむ |
07940 |
未入力 正徹 (xxx)
恋ひしなは人そ煙と身をなさん胸にたててはいそかすもかな
こひしなは−ひとそけふりと−みをなさむ−むねにたてては−いそかすもかな |
07941 |
未入力 正徹 (xxx)
憂名たつ身をあつまのの煙にて又かへりみぬ衣衣の月
うきなたつ−みをあつまのの−けふりにて−またかへりみぬ−きぬきぬのつき |
07942 |
未入力 正徹 (xxx)
立つとてもかひなし室の八島もる神たにしらぬ胸の煙は
たつとても−かひなしむろの−やしまもる−かみたにしらぬ−むねのけふりは |
07943 |
未入力 正徹 (xxx)
身をこかす恋そとことは今は世にふしの煙のたちもたたすも
みをこかす−こひそとことは−いまはよに−ふしのけふりの−たちもたたすも |
07944 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き野の煙とならむ夕暮も風吹きしきて人にしらるな
とほきのの−けふりとならむ−ゆふくれも−かせふきしきて−ひとにしらるな |
07945 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとてもえん煙のしからみに涙はおとせ雨ならすとも
いまはとて−もえむけふりの−しからみに−なみたはおとせ−あめならすとも |
07946 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿やしる山田のあせに立つほくし人もおとろく胸の煙を
しかやしる−やまたのあせに−たつほくし−ひともおとろく−むねのけふりを |
07947 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちのほる下の煙をけちやらて衣のむねにふるなみたかな
たちのほる−したのけふりを−けちやらて−ころものむねに−ふるなみたかな |
07948 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねてもとはぬを室の八島もるわれと思ひの煙たてつつ
たつねても−とはぬをむろの−やしまもる−われとおもひの−けふりたてつつ |
07949 |
未入力 正徹 (xxx)
君かみて思ひ消えにし煙とも色しるからはもえてたにたて
きみかみて−おもひきえにし−けふりとも−いろしるからは−もえてたにたて |
07950 |
未入力 正徹 (xxx)
あさま山思ひの煙末の世も我かため立つとみやはとかめぬ
あさまやま−おもひのけふり−すゑのよも−わかためたつと−みやはとかめぬ |
07951 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこて風そ更けゆく胸にたく松のけふりに月はくもらて
ひとはこて−かせそふけゆく−むねにたく−まつのけふりに−つきはくもらて |
07952 |
未入力 正徹 (xxx)
いつか又たゆる中ともうらみましまたかけそめぬ夢の浮橋
いつかまた−たゆるなかとも−うらみまし−またかけそめぬ−ゆめのうきはし |
07953 |
未入力 正徹 (xxx)
さもふかき思ひの淵にかけてたにたゆる契りのあさむつのはし
さもふかき−おもひのふちに−かけてたに−たゆるちきりの−あさむつのはし |
07954 |
未入力 正徹 (xxx)
岩橋の夜目にも人やしるからん契はかけし我はみにくき
いははしの−よめにもひとや−しるからむ−ちきりはかけし−われはみにくき |
07955 |
未入力 正徹 (xxx)
相みるもなかははかなく絶えそ行くしはしかけつけ夢の浮橋
あひみるも−なかははかなく−たえそゆく−しはしかけつけ−ゆめのうきはし |
07956 |
未入力 正徹 (xxx)
渡りこはよきては人のよもゆかし心にほそき夢の浮橋
わたりこは−よきてはひとの−よもゆかし−こころにほそき−ゆめのうきはし |
07957 |
未入力 正徹 (xxx)
絶えにけりたのむる中の一言も神をそかけしくめの岩橋
たえにけり−たのむるなかの−ひとことも−かみをそかけし−くめのいははし |
07958 |
未入力 正徹 (xxx)
通ひしも跡なき物はかささきのと渡る橋の秋の初霜
かよひしも−あとなきものは−かささきの−とわたるはしの−あきのはつしも |
07959 |
未入力 正徹 (xxx)
ほと遠く思ひをかけてぬる玉や夜毎に渡る雲のかけはし
ほととほく−おもひをかけて−ぬるたまや−よことにわたる−くものかけはし |
07960 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりあへつらきままにて山鳥のを絶の橋も残る柱に
めくりあへ−つらきままにて−やまとりの−をたえのはしも−のこるはしらに |
07961 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるき世のなからもかくそ我か中に絶えしをつくれ夢の浮橋
ふるきよの−なからもかくそ−わかなかに−たえしをつくれ−ゆめのうきはし |
07962 |
未入力 正徹 (xxx)
通ひみる夢の渡りの浮橋もさ夜更けぬれはあふ人もなし
かよひみる−ゆめのわたりの−うきはしも−さよふけぬれは−あふひともなし |
07963 |
未入力 正徹 (xxx)
渡りきて俤とめよ内はしの下より出つる水のかかみに
わたりきて−おもかけとめよ−うちはしの−したよりいつる−みつのかかみに |
07964 |
未入力 正徹 (xxx)
我か涙水ゆく川といつ成りてくもてにわたす夢の浮橋
わかなみた−みつゆくかはと−いつなりて−くもてにわたす−ゆめのうきはし |
07965 |
未入力 正徹 (xxx)
隙もなく心そこゆる関守のうちぬる夢に我やみゆらん
ひまもなく−こころそこゆる−せきもりの−うちぬるゆめに−われやみゆらむ |
07966 |
未入力 正徹 (xxx)
うしとたに岩かと高き相坂は越えてそ末の関と成りける
うしとたに−いはかとたかき−あふさかは−こえてそすゑの−せきとなりける |
07967 |
未入力 正徹 (xxx)
あふせなきその川口に関すゑて猶あらかきの隙をもりつつ
あふせなき−そのかはくちに−せきすゑて−なほあらかきの−ひまをもりつつ |
07968 |
未入力 正徹 (xxx)
通ひちとなさぬ翁も神さひぬまもりくきたの関のくきぬき
かよひちと−なさぬおきなも−かみさひぬ−まもりくきたの−せきのくきぬき |
07969 |
未入力 正徹 (xxx)
清見かたかよふ心の関とちて岩しく袖にこゆる波かな
きよみかた−かよふこころの−せきとちて−いはしくそてに−こゆるなみかな |
07970 |
未入力 正徹 (xxx)
いつのまに関のと山になけきこり又相坂の道迷ふらん
いつのまに−せきのとやまに−なけきこり−またあふさかの−みちまよふらむ |
07971 |
未入力 正徹 (xxx)
こえしなほ人のまもりめゆるくとも憂き川口の関のくきぬき
こえしなほ−ひとのまもりめ−ゆるくとも−うきかはくちの−せきのくきぬき |
07972 |
未入力 正徹 (xxx)
ともかくも岩戸の関をかたくとちてゆるさす成りぬ雲のよそ人
ともかくも−いはとのせきを−かたくとちて−ゆるさすなりぬ−くものよそひと |
07973 |
未入力 正徹 (xxx)
一夜とも先あふ坂にあかしてそ契の末もしら川のせき
ひとよとも−まつあふさかに−あかしてそ−ちきりのすゑも−しらかはのせき |
07974 |
未入力 正徹 (xxx)
人もすみ我も都にありてなとこえんとすらん相坂の関
ひともすみ−われもみやこに−ありてなと−こえむとすらむ−あふさかのせき |
07975 |
未入力 正徹 (xxx)
あしたゆくくるそくるしきわたつ海の海士のかるてふみるめはかりに
あしたゆく−くるそくるしき−わたつうみの−あまのかるてふ−みるめはかりに |
07976 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねてはなとあはさらん人すまぬ海の都のありかなりとも
たつねては−なとあはさらむ−ひとすまぬ−うみのみやこの−ありかなりとも |
07977 |
未入力 正徹 (xxx)
終になと舟よせさらん外の海のあら立つ波に風はなすとも
つひになと−ふねよせさらむ−ほかのうみの−あらたつなみに−かせはなすとも |
07978 |
未入力 正徹 (xxx)
沖つ風うしやうしほは弥早になるとの小舟漕きもむかはし
おきつかせ−うしやうしほは−いやはやに−なるとのをふね−こきもむかはし |
07979 |
未入力 正徹 (xxx)
恋の山身は九をこえくとも人こそ八の海をへたてめ
こひのやま−みはここのつを−こえくとも−ひとこそやつの−うみをへたてめ |
07980 |
未入力 正徹 (xxx)
契たえ名をもくたして身を海に心ちしほしむ袖そ難面き
ちきりたえ−なをもくたして−みをうみに−ここちしほしむ−そてそつれなき |
07981 |
未入力 正徹 (xxx)
からくのみ石見の海のことのははかはらぬ磯の松のしほ風
からくのみ−いはみのうみの−ことのはは−かはらぬいその−まつのしほかせ |
07982 |
未入力 正徹 (xxx)
海にます神たにけたぬ思ひとや積りて波の淡とよるらん
うみにます−かみたにけたぬ−おもひとや−つもりてなみの−あわとよるらむ |
07983 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ事は波をたたへて年ふれとあする世もなき袖のうみかな
あふことは−なみをたたへて−としふれと−あするよもなき−そてのうみかな |
07984 |
未入力 正徹 (xxx)
君かもし海の都の人ならは千ひろの底に身をやしつめん
きみかもし−うみのみやこの−ひとならは−ちひろのそこに−みをやしつめむ |
07985 |
未入力 正徹 (xxx)
あすも世にしらぬ枕の海に入る涙の川そあふせ絶行く
あすもよに−しらぬまくらの−うみにいる−なみたのかはそ−あふせたえゆく |
07986 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬるる身を海松にかくろへて時そともなき色に恋ひつつ
そてぬるる−みをうみまつに−かくろへて−ときそともなき−いろにこひつつ |
07987 |
未入力 正徹 (xxx)
くたきても恋の心そすくならぬ杣の老木と我や成りなん
くたきても−こひのこころそ−すくならぬ−そまのおいきと−われやなりなむ |
07988 |
未入力 正徹 (xxx)
すくならぬ杣の枯木の心とや思ひきる世もなき身なるらん
すくならぬ−そまのかれきの−こころとや−おもひきるよも−なきみなるらむ |
07989 |
未入力 正徹 (xxx)
つくつくときかしよさらにいそかれし入相のかねのむなしひひきを
つくつくと−きかしよさらに−いそかれし−いりあひのかねの−むなしひひきを |
07990 |
未入力 正徹 (xxx)
人めうきよひのまきれの別ちも明くるににたる鐘の声かな
ひとめうき−よひのまきれの−わかれちも−あくるににたる−かねのこゑかな |
07991 |
未入力 正徹 (xxx)
明くるかねくるるひひきもいつのよの人の恋ちをつたひきぬらん
あくるかね−くるるひひきも−いつのよの−ひとのこひちを−つたひきぬらむ |
07992 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くかねの声にかかりし契たに又つきはてて更くる夜のそら
きくかねの−こゑにかかりし−ちきりたに−またつきはてて−ふくるよのそら |
07993 |
未入力 正徹 (xxx)
むは玉のかみも一夜の秋の霜独のためにさゆるかねかな
むはたまの−かみもひとよの−あきのしも−ひとりのために−さゆるかねかな |
07994 |
未入力 正徹 (xxx)
隔なくきかはかはらし鐘の声憂き衣衣も待つにこぬよも
へたてなく−きかはかはらし−かねのこゑ−うききぬきぬも−まつにこぬよも |
07995 |
未入力 正徹 (xxx)
せきあへす更けゆく袖に落ちそそふたのめし□□□□□□□□□□
せきあへす−ふけゆくそてに−おちそそふ−たのめしххх−ххххххх |
07996 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろかす御法のかねを枕にて恋てふ道の夢そ夜ふかき
おとろかす−みのりのかねを−まくらにて−こひてふみちの−ゆめそよふかき |
07997 |
未入力 正徹 (xxx)
今夜又七ふむなしきすか筵風に声しく暁のかね
こよひまた−ななふむなしき−すかむしろ−かせにこゑしく−あかつきのかね |
07998 |
未入力 正徹 (xxx)
山鳥の初尾のかかみ俤もへたつる中は遠さかりつつ
やまとりの−はつをのかかみ−おもかけも−へたつるなかは−とほさかりつつ |
07999 |
未入力 正徹 (xxx)
はし鷹のかけみぬ恋の積り行く袖や野守のかかみなるらん
はしたかの−かけみぬこひの−つもりゆく−そてやのもりの−かかみなるらむ |
08000 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れかたき恨はかけつますかかみくもる契の山鳥の尾に
くれかたき−うらみはかけつ−ますかかみ−くもるちきりの−やまとりのをに |
08001 |
未入力 正徹 (xxx)
みかくれし鵙の草くきあらはさぬ野守のかかみ見るかひもなし
みかくれし−もすのくさくき−あらはさぬ−のもりのかかみ−みるかひもなし |
08002 |
未入力 正徹 (xxx)
忘るなよしらぬ翁と君みすは又やかかみの影にむかはん
わするなよ−しらぬおきなと−きみみすは−またやかかみの−かけにむかはむ |
08003 |
未入力 正徹 (xxx)
影はかり移してそへし形見ともならて影やくもり果つらん
かけはかり−うつしてそへし−かたみとも−ならてかかみや−くもりはつらむ |
08004 |
未入力 正徹 (xxx)
手のうちにかくすはかりのかかみにも憂身にあまる影そくもらぬ
てのうちに−かくすはかりの−かかみにも−うきみにあまる−かけそくもらぬ |
08005 |
未入力 正徹 (xxx)
ますかかみくもるやかたみ見し人はかけもならはぬ涙はかりに
ますかかみ−くもるやかたみ−みしひとは−かけもならはぬ−なみたはかりに |
08006 |
未入力 正徹 (xxx)
我なからむかふかかみのくもらすはうとまれぬへし涙落ちそへ
われなから−むかふかかみの−くもらすは−うとまれぬへし−なみたおちそへ |
08007 |
未入力 正徹 (xxx)
ますかかみ影みぬうらにゐる鳥の音にたてすとも恋ひや渡らん
ますかかみ−かけみぬうらに−ゐるとりの−ねにたてすとも−こひやわたらむ |
08008 |
未入力 正徹 (xxx)
ねにたててをろのはつ尾に影見えは遠山鳥も啼くとつけこせ
ねにたてて−をろのはつをに−かけみえは−とほやまとりも−なくとつけこせ |
08009 |
未入力 正徹 (xxx)
恋そうき鏡のはこにゐる塵の中の心はくもりなき身を
こひそうき−かかみのはこに−ゐるちりの−なかのこころは−くもりなきみを |
08010 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふ我か心から朝ことにむかふかかみの影そやつるる
こひすてふ−わかこころから−あさことに−むかふかかみの−かけそやつるる |
08011 |
未入力 正徹 (xxx)
物思ふ我かおとろへをなけくまに鏡の塵の積りはてぬる
ものおもふ−わかおとろへを−なけくまに−かかみのちりの−つもりはてぬる |
08012 |
未入力 正徹 (xxx)
煙立つ思ひはうらもなき恋をかかみにうつせふしの柴山
けふりたつ−おもひはうらも−なきこひを−かかみにうつせ−ふしのしはやま |
08013 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝もみつ大和にもあらぬから鏡もろこし人の影は恋ひねと
けさもみつ−やまとにもあらぬ−からかかみ−もろこしひとの−かけはこひねと |
08014 |
未入力 正徹 (xxx)
水草ゐる人の形見の水鏡俤ふりて後そたえ行く
みくさゐる−ひとのかたみの−みつかかみ−おもかけふりて−のちそたえゆく |
08015 |
未入力 正徹 (xxx)
ますかかみうらなる鳥のねにたててなく世なけれは知る人もなし
ますかかみ−うらなるとりの−ねにたてて−なくよなけれは−しるひともなし |
08016 |
未入力 正徹 (xxx)
影やみん鏡の上にゐる塵をあらふ涙の雨はふりきね
かけやみむ−かかみのうへに−ゐるちりを−あらふなみたの−あめはふりきね |
08017 |
未入力 正徹 (xxx)
都をはへたつるすまの山鳥のかかみにうつせさらぬ面影
みやこをは−へたつるすまの−やまとりの−かかみにうつせ−さらぬおもかけ |
08018 |
未入力 正徹 (xxx)
乙女子か鏡の塵やけふりとも立つらんふしの山はもえねと
をとめこか−かかみのちりや−けふりとも−たつらむふしの−やまはもえねと |
08019 |
未入力 正徹 (xxx)
独我かしきてそ頼むあや筵くるよ絶えすは玉のをにせん
ひとりわか−しきてそたのむ−あやむしろ−くるよたえすは−たまのをにせむ |
08020 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちよれは待ちこし床のさ筵はわか夜かれにも塵積りつつ
たちよれは−まちこしとこの−さむしろは−わかよかれにも−ちりつもりつつ |
08021 |
未入力 正徹 (xxx)
面影はありて身にそふ言の葉のならふかひなき床のさ筵
おもかけは−ありてみにそふ−ことのはの−ならふかひなき−とこのさむしろ |
08022 |
未入力 正徹 (xxx)
まつかひも七ふ夜ふかき秋の風塵にかすめるさ筵の月
まつかひも−ななふよふかき−あきのかせ−ちりにかすめる−さむしろのつき |
08023 |
未入力 正徹 (xxx)
すか筵こよひは人のねし方に跡なつかしみ我そ方よる
すかむしろ−こよひはひとの−ねしかたに−あとなつかしみ−われそかたよる |
08024 |
未入力 正徹 (xxx)
さ筵に塵ともなして身をおかはそをたに人の打ちやはらはん
さむしろに−ちりともなして−みをおかは−そをたにひとの−うちやはらはむ |
08025 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひかね出てにし宿のすか筵我かねぬみふも塵積るらん
おもひかね−いてにしやとの−すかむしろ−わかねぬみふも−ちりつもるらむ |
08026 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙の袖のためしは有りなからまきほされぬはさ筵の露
しろたへの−そてのためしは−ありなから−まきほされぬは−さむしろのつゆ |
08027 |
未入力 正徹 (xxx)
柳原なひく契の稲筵しきならへても誰を待つらん
やなきはら−なひくちきりの−いなむしろ−しきならへても−たれをまつらむ |
08028 |
未入力 正徹 (xxx)
待ちあかす人の心の花筵うつろふ夜半は敷くかひそなき
まちあかす−ひとのこころの−はなむしろ−うつろふよはは−しくかひそなき |
08029 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中をうらみさらまし紅のやしほの衣思ひ染めすは
うきなかを−うらみさらまし−くれなゐの−やしほのころも−おもひそめすは |
08030 |
未入力 正徹 (xxx)
かへしてもなににかはせんさ夜衣さむれはつらき夢も程なし
かへしても−なににかはせむ−さよころも−さむれはつらき−ゆめもほとなし |
08031 |
未入力 正徹 (xxx)
いとせめて恋しきままにさ夜衣かへし馴れたる夢や待つらん
いとせめて−こひしきままに−さよころも−かへしなれたる−ゆめやまつらむ |
08032 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣中に有りしも昔にてかへすもみえぬ夢の通ち
さよころも−なかにありしも−むかしにて−かへすもみえぬ−ゆめのかよひち |
08033 |
未入力 正徹 (xxx)
紅の八しほの衣染めはててぬき置きし数もいくへなるらん
くれなゐの−やしほのころも−そめはてて−ぬきおきしかすも−いくへなるらむ |
08034 |
未入力 正徹 (xxx)
さめやせん夜半の衣をかへすとも思はぬ夢の契りをそ待つ
さめやせむ−よはのころもを−かへすとも−おもはぬゆめの−ちきりをそまつ |
08035 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひかねかへす衣の行へとやそはては人を又かへすらん
おもひかね−かへすころもの−ゆくへとや−そはてはひとを−またかへすらむ |
08036 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にたに夜半の衣の涙さへふるき夢路はかよふ夜もなし
ゆめにたに−よはのころもの−なみたさへ−ふるきゆめちは−かよふよもなし |
08037 |
未入力 正徹 (xxx)
あらはさぬ衣の玉も恋ゆゑやかへして夜半に光をもみん
あらはさぬ−ころものたまも−こひゆゑや−かへしてよはに−ひかりをもみむ |
08038 |
未入力 正徹 (xxx)
通ひこはかへす衣のうら伝ひ夢路に人や袖ぬらすらん
かよひこは−かへすころもの−うらつたひ−ゆめちにひとや−そてぬらすらむ |
08039 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にさへ猶あひかたみさ夜衣明けなんとするにかへし侘ひつつ
ゆめにさへ−なほあひかたみ−さよころも−あけなむとするに−かへしわひつつ |
08040 |
未入力 正徹 (xxx)
馴れにしも憂き山かつの藤衣はつるる糸のかけはなれつつ
なれにしも−うきやまかつの−ふちころも−はつるるいとの−かけはなれつつ |
08041 |
未入力 正徹 (xxx)
衣さへ中になき夜はかさなりて袖とふ月のうすき横雲
ころもさへ−なかになきよは−かさなりて−そてとふつきの−うすきよこくも |
08042 |
未入力 正徹 (xxx)
月草のうす花衣ぬれぬれすうつろふとたにみえぬ色かな
つきくさの−うすはなころも−ぬれぬれす−うつろふとたに−みえぬいろかな |
08043 |
未入力 正徹 (xxx)
形見とてきかへ衣もよころへて我かかに成りぬ何にかはせん
かたみとて−きかへころもも−よころへて−わかかになりぬ−なににかはせむ |
08044 |
未入力 正徹 (xxx)
数ならぬみとりの衣夜をかさね涙あけなる色もかひなし
かすならぬ−みとりのころも−よをかさね−なみたあけなる−いろもかひなし |
08045 |
未入力 正徹 (xxx)
しられしな衣のうらの玉もかる袖ならなくの露の乱れは
しられしな−ころものうらの−たまもかる−そてならなくの−つゆのみたれは |
08046 |
未入力 正徹 (xxx)
つらしともさのみや思ひいれ紐のとけにし後の心つよさを
つらしとも−さのみやおもひ−いれひもの−とけにしのちの−こころつよさを |
08047 |
未入力 正徹 (xxx)
かかれとて結ひやはせし入紐のとけぬ心となりそ成りぬる
かかれとて−むすひやはせし−いれひもの−とけぬこころと−なりそなりぬる |
08048 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふともみすなよせめてうしろてのうはもの海のあらき心を
いとふとも−みすなよせめて−うしろての−うはものうみの−あらきこころを |
08049 |
未入力 正徹 (xxx)
かくはかり袖やはぬれんたをやめか上裳の波に心かけすは
かくはかり−そてやはぬれむ−たをやめか−うはものなみに−こころかけすは |
08050 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣もに住む虫とわかなりてなかは涙や床のうら波
さよころも−もにすむむしと−わかなりて−なかはなみたや−とこのうらなみ |
08051 |
未入力 正徹 (xxx)
絵にかける上裳の波にぬれすとも袖行く水に身をやなかさん
えにかける−うはものなみに−ぬれすとも−そてゆくみつに−みをやなかさむ |
08052 |
未入力 正徹 (xxx)
いひしらぬ恋そくるしき下帯の行きめくりてもあふさきるさに
いひしらぬ−こひそくるしき−したおひの−ゆきめくりても−あふさきるさに |
08053 |
未入力 正徹 (xxx)
さしなからよそにやなれん結ひえぬ契を石の帯にかけつつ
さしなから−よそにやなれむ−むすひえぬ−ちきりをいしの−おひにかけつつ |
08054 |
未入力 正徹 (xxx)
色終にまさる方にや引きとらんこなたかなたに二あゐの帯
いろつひに−まさるかたにや−ひきとらむ−こなたかなたに−ふたあゐのおひ |
08055 |
未入力 正徹 (xxx)
人心あらすよ神をかけ帯に涙そめます秋のくれなゐ
ひとこころ−あらすよかみを−かけおひに−なみたそめます−あきのくれなゐ |
08056 |
未入力 正徹 (xxx)
末つひに契あらはのあらましにときては結ふ夜半の下帯
すゑつひに−ちきりあらはの−あらましに−ときてはむすふ−よはのしたおひ |
08057 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中は大和にもあらぬから匣あくるま遠き夜そくるしき
うきなかは−やまとにもあらぬ−からくしけ−あくるまとほき−よるそくるしき |
08058 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のみか君てなれよとうかれきてたか玉くしけ中に入るらん
そてのみか−きみてなれよと−うかれきて−たかたまくしけ−なかにいるらむ |
08059 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもふるき匣のを絶してたか心はの花うつるらむ
ちきりしも−ふるきくしけの−をたえして−たかこころはの−はなうつるらむ |
08060 |
未入力 正徹 (xxx)
せめていつなるる手箱のををよわみ夜をなかからす明けぬとおもはん
せめていつ−なるるてはこの−ををよわみ−よをなかからす−あけぬとおもはむ |
08061 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の身はうつせみのから匣あけすは惜きねをもなかしを
きぬきぬの−みはうつせみの−からくしけ−あけすはをしき−ねをもなかしを |
08062 |
未入力 正徹 (xxx)
さしかくすためしそつらきくろかみも八雲みたれしゆつのつまくし
さしかくす−ためしそつらき−くろかみも−やくもみたれし−ゆつのつまくし |
08063 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりみぬ別れのくしのさしなからならひそつらきたゆるくろかみ
かへりみぬ−わかれのくしの−さしなから−ならひそつらき−たゆるくろかみ |
08064 |
未入力 正徹 (xxx)
くろかみにたれとるならてわきもこかゆつのつまくしさしかへすらん
くろかみに−たれとるならて−わきもこか−ゆつのつまくし−さしかへすらむ |
08065 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそはんたかかさしとはしらねともおちたるくしのあかぬ匂を
みにそはむ−たかかさしとは−しらねとも−おちたるくしの−あかぬにほひを |
08066 |
未入力 正徹 (xxx)
乱れつつよそにこふてふつまくしはたわつくかみにさすかひもなし
みたれつつ−よそにこふてふ−つまくしは−たわつくかみに−さすかひもなし |
08067 |
未入力 正徹 (xxx)
くろかみもとかて日そふる櫛のはを引くよりしけき恋の乱れに
くろかみも−とかてひそふる−くしのはを−ひくよりしけき−こひのみたれに |
08068 |
未入力 正徹 (xxx)
たく櫛のほかけさやけきくろかみにかをりてかくす夜半の乙女子
たくくしの−ほかけさやけき−くろかみに−かをりてかくす−よはのをとめこ |
08069 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬしやたれさしけんかみもおちくしのあかぬ匂のこすの下風
ぬしやたれ−さしけむかみも−おちくしの−あかぬにほひの−こすのしたかせ |
08070 |
未入力 正徹 (xxx)
波は猶たちそ別のくした川こふるいつきは露わくる野へ
なみはなほ−たちそわかれの−くしたかは−こふるいつきは−つゆわくるのへ |
08071 |
未入力 正徹 (xxx)
黒髪はむすほほるともいむくしのなけの契に心とけめや
くろかみは−むすほほるとも−いむくしの−なけのちきりに−こころとけめや |
08072 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてと憂世にめくりあふ事も波のみ分くる水の車そ
いつまてと−うきよにめくり−あふことも−なみのみわくる−みつのくるまそ |
08073 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き数を露にそとらんあふ事は蓬か丸ねしちならすとも
うきかすを−つゆにそとらむ−あふことは−よもきかまろね−しちならすとも |
08074 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ひつつ月にやり行くむな車いかなる宿に誰をまつらん
しのひつつ−つきにやりゆく−むなくるま−いかなるやとに−たれをまつらむ |
08075 |
未入力 正徹 (xxx)
月そとふ人はこすけのむな車たたやりすくせ門させりてん
つきそとふ−ひとはこすけの−むなくるま−たたやりすくせ−かとさせりてむ |
08076 |
未入力 正徹 (xxx)
小車をたたここもとにやりとめて人は入りこぬ夕暮の宿
をくるまを−たたここもとに−やりとめて−ひとはいりこぬ−ゆふくれのやと |
08077 |
未入力 正徹 (xxx)
うしや猶恋ちは思ひめくらすも糸けの車乱れ侘ひつつ
うしやなほ−こひちはおもひ−めくらすも−いとけのくるま−みたれわひつつ |
08078 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ふとも心にもあらし人やりの道芝しるき小車の跡
しのふとも−こころにもあらし−ひとやりの−みちしはしるき−をくるまのあと |
08079 |
未入力 正徹 (xxx)
またよひの月の屋妻をやり出てぬ車のひさしさしも契らて
またよひの−つきのやつまを−やりいてぬ−くるまのひさし−さしもちきらて |
08080 |
未入力 正徹 (xxx)
てにとれはそなたより吹く風車めくりあふへきしるしとそみん
てにとれは−そなたよりふく−かせくるま−めくりあふへき−しるしとそみむ |
08081 |
未入力 正徹 (xxx)
うけひかぬ人の心のけはしさは車をくたく道よりもうし
うけひかぬ−ひとのこころの−けはしさは−くるまをくたく−みちよりもうし |
08082 |
未入力 正徹 (xxx)
道あらし千巻をつめる文車にや方芳しらぬ恋の心は
みちあらし−ちまきをつめる−ふくるまに−やるかたしらぬ−こひのこころは |
08083 |
未入力 正徹 (xxx)
待更けぬ今は蓬の丸ねにも床あまるへきしちの上かな
まちふけぬ−いまはよもきの−まろねにも−とこあまるへき−しちのうへかな |
08084 |
未入力 正徹 (xxx)
しる中のあしよわ車おしけつもあらきせつらきかもの川波
しるなかの−あしよわくるま−おしけつも−あらきせつらき−かものかはなみ |
08085 |
未入力 正徹 (xxx)
我か門にとめつと聞くも小車の夕ととろきは胸そやすまぬ
わかかとに−とめつときくも−をくるまの−ゆふととろきは−むねそやすまぬ |
08086 |
未入力 正徹 (xxx)
立帰りとふへき暮はしらねとも此戸はたてし衣衣の空
たちかへり−とふへきくれは−しらねとも−このとはたてし−きぬきぬのそら |
08087 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりみぬ別もつらし真木の戸に休らふ物と思ひ馴れつつ
かへりみぬ−わかれもつらし−まきのとに−やすらふものと−おもひなれつつ |
08088 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜中にうたてなる戸のたてあけをねぬ人あらは聞きやとかめん
さよなかに−うたてなるとの−たてあけを−ねぬひとあらは−ききやとかめむ |
08089 |
未入力 正徹 (xxx)
暁の身にならへとやま木の戸に休らひ出つるいさよひの月
あかつきの−みにならへとや−まきのとに−やすらひいつる−いさよひのつき |
08090 |
未入力 正徹 (xxx)
わかるなよ人をやり戸もあきなから簾にかかる遠の横雲
わかるなよ−ひとをやりとも−あきなから−すたれにかかる−をちのよこくも |
08091 |
未入力 正徹 (xxx)
袖をたにひかへなましをかり初の夜戸出のままの衣衣そ憂き
そてをたに−ひかへなましを−かりそめの−よとてのままの−きぬきぬそうき |
08092 |
未入力 正徹 (xxx)
徒にぬる夜の数もかさなりてかたへ塵はむ床さ筵
いたつらに−ぬるよのかすも−かさなりて−かたへちりはむ−とこのさむしろ |
08093 |
未入力 正徹 (xxx)
ほとあらし日影もる屋にたつ塵のたた一筋に迷ふ憂身は
ほとあらし−ひかけもるやに−たつちりの−たたひとすちに−まよふうきみは |
08094 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかかりき心の塵の朝きよめ又夕暮はつもる思ひは
ふかかりき−こころのちりの−あさきよめ−またゆふくれは−つもるおもひは |
08095 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬよの枕の塵をとる玉の身より出ててやさのみつもらぬ
あはぬよの−まくらのちりを−とるたまの−みよりいててや−さのみつもらぬ |
08096 |
未入力 正徹 (xxx)
よもしらし人をみるめに入る塵のくもる涙にまきらはしつる
よもしらし−ひとをみるめに−いるちりの−くもるなみたに−まきらはしつる |
08097 |
未入力 正徹 (xxx)
跡そなき枕の塵のなり併ほる恋の山風塵をはらひて
あとそなき−まくらのちりの−なりのほる−こひのやまかせ−ちりをはらひて |
08098 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひしもつらき方より吹きなから枕の塵をはらふ秋かせ
こよひしも−つらきかたより−ふきなから−まくらのちりを−はらふあきかせ |
08099 |
未入力 正徹 (xxx)
篠の屋のかやか苫葺心なと乱れてうすき契なるらん
ささのやの−かやかとまふき−こころなと−みたれてうすき−ちきりなるらむ |
08100 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらの苫屋は荒れて猶ぬる床も枕も沖つ塩かせ
みをうらの−とまやはあれて−ひとりぬる−とこもまくらも−おきつしほかせ |
08101 |
未入力 正徹 (xxx)
身をうらに頼む苫屋も絶えぬとや送る心のあらきなみ風
みをうらに−たのむとまやも−たえぬとや−おくるこころの−あらきなみかせ |
08102 |
未入力 正徹 (xxx)
よる江なき涙の海の苫葺をとる日もしらぬ興つ舟人
よるえなき−なみたのうみの−とまふきを−とるひもしらぬ−おきつふなひと |
08103 |
未入力 正徹 (xxx)
秋過きし契かりほの苫あれて袖に時雨のもらぬまもなし
あきすきし−ちきりかりほの−とまあれて−そてにしくれの−もらぬまもなし |
08104 |
未入力 正徹 (xxx)
道ふりの人のうしろてほのかにもみしますけ笠草かくれ行く
みちふりの−ひとのうしろて−ほのかにも−みしますけかさ−くさかくれゆく |
08105 |
未入力 正徹 (xxx)
陰頼む木の本ならす袖ぬれぬ御笠もからし宮城のの露
かけたのむ−このもとならす−そてぬれぬ−みかさもからし−みやきののつゆ |
08106 |
未入力 正徹 (xxx)
身はつひにかくれはつへき思ひかな笠のかりてのかりの契に
みはつひに−かくれはつへき−おもひかな−かさのかりての−かりのちきりに |
08107 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き江の芦かる人にいつなりて身をかくしてもみしま菅笠
とほきえの−あしかるひとに−いつなりて−みをかくしても−みしますけかさ |
08108 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつつ世世にをかけんかたいとをあわをによりし契朽ちすは
たのめつつ−よよにをかけむ−かたいとを−あわをによりし−ちきりくちすは |
08109 |
未入力 正徹 (xxx)
伊駒山雲の手染の糸すちもたゆる契の暮そかなしき
いこまやま−くものてそめの−いとすちも−たゆるちきりの−くれそかなしき |
08110 |
未入力 正徹 (xxx)
結ふてふ神やたたりのいと絶えてつひにあわをによらてみたれん
むすふてふ−かみやたたりの−いとたえて−つひにあわをに−よらてみたれむ |
08111 |
未入力 正徹 (xxx)
浅からす染むる心はもろこしのから紅のいとまなきまて
あさからす−そむるこころは−もろこしの−からくれなゐの−いとまなきまて |
08112 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてとたか捨舟の浅き江に朽ちぬうらみを猶残すらん
いつまてと−たかすてふねの−あさきえに−くちぬうらみを−なほのこすらむ |
08113 |
未入力 正徹 (xxx)
やますうつ波の心のあら磯によする小舟のくたけてそ憂き
やますうつ−なみのこころの−あらいそに−よするをふねの−くたけてそうき |
08114 |
未入力 正徹 (xxx)
袖によれもろこし舟の行末もしらぬ吉ののおくの滝波
そてによれ−もろこしふねの−ゆくすゑも−しらぬよしのの−おくのたきなみ |
08115 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみなと身はうき波に行く舟のほ縄くるしく心引くらん
さのみなと−みはうきなみに−ゆくふねの−ほなはくるしく−こころひくらむ |
08116 |
未入力 正徹 (xxx)
おくの海に思ふ心のはし舟もまた打出てぬ波のはけしさ
おくのうみに−おもふこころの−はしふねも−またうちいてぬ−なみのはけしさ |
08117 |
未入力 正徹 (xxx)
頼む夜のあけのそほ舟こき別れ行へむなしき床の波かな
たのむよの−あけのそほふね−こきわかれ−ゆくへむなしき−とこのなみかな |
08118 |
未入力 正徹 (xxx)
よりそへぬうきて思ひは大舟のゆたかに絶えぬ袖のみなとに
よりそへぬ−うきておもひは−おほふねの−ゆたかにたえぬ−そてのみなとに |
08119 |
未入力 正徹 (xxx)
波よりもあらき心のいかり縄よしやつなかぬ舟と成るとも
なみよりも−あらきこころの−いかりなは−よしやつなかぬ−ふねとなるとも |
08120 |
未入力 正徹 (xxx)
漕出てて思ふ江によれわきもこか引くもの色のあけのそほ舟
こきいてて−おもふえによれ−わきもこか−ひくものいろの−あけのそほふね |
08121 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれゆく玉ゆらの戸を漕く舟の梶をな絶えそよその波風
うかれゆく−たまゆらのとを−こくふねの−かちをなたえそ−よそのなみかせ |
08122 |
未入力 正徹 (xxx)
よりそひし柱そ形見なれ衣心のはなた色も移りて
よりそひし−はしらそかたみ−なれころも−こころのはなた−いろもうつりて |
08123 |
未入力 正徹 (xxx)
むなしてふうつほ柱にかくれしや猶九重に面影そたつ
むなしてふ−うつほはしらに−かくれしや−なほここのへに−おもかけそたつ |
08124 |
未入力 正徹 (xxx)
水上の石にさはるもまたれてはつひにあふむの流れやはこぬ
みなかみの−いしにさはるも−またれては−つひにあふむの−なかれやはこぬ |
08125 |
未入力 正徹 (xxx)
ま砂とそ波にくたくる石はしる滝つ心のあらき契は
まさことそ−なみにくたくる−いしはしる−たきつこころの−あらきちきりは |
08126 |
未入力 正徹 (xxx)
かひなしやまゆかく筆に玉札の言の葉みせぬすみの乱れは
かひなしや−まゆかくふてに−たまつさの−ことのはみせぬ−すみのみたれは |
08127 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬまの袖の白玉数数に消えてなかるる夜はのさ筵
あはぬまの−そてのしらたま−かすかすに−きえてなかるる−よはのさむしろ |
08128 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中は心くたけて玉きはる我そ吉野の滝の岩波
うきなかは−こころくたけて−たまきはる−われそよしのの−たきのいはなみ |
08129 |
未入力 正徹 (xxx)
されはとて清き心かいせの海にひろはぬ玉のおつる袂は
されはとて−きよきこころか−いせのうみに−ひろはぬたまの−おつるたもとは |
08130 |
未入力 正徹 (xxx)
君もしれしのふうつつにならひこは我かぬる玉は身をもはなれし
きみもしれ−しのふうつつに−ならひこは−わかぬるたまは−みをもはなれし |
08131 |
未入力 正徹 (xxx)
うきをしる涙の水をとる玉や袖に乱れて光きゆらん
うきをしる−なみたのみつを−とるたまや−そてにみたれて−ひかりきゆらむ |
08132 |
未入力 正徹 (xxx)
海山もいつくか恋の宿ならぬ身をかくすへき此世ともなし
うみやまも−いつくかこひの−やとならぬ−みをかくすへき−このよともなし |
08133 |
未入力 正徹 (xxx)
まきかくす衾の袖よをしの毛のぬれぬ思ひのあらはなる世に
まきかくす−ふすまのそてよ−をしのけの−ぬれぬおもひの−あらはなるよに |
08134 |
未入力 正徹 (xxx)
ききしらぬ声とないひそ笛のなのこま人うとき程や隔てん
ききしらぬ−こゑとないひそ−ふえのなの−こまひとうとき−ほとやへたてむ |
08135 |
未入力 正徹 (xxx)
忘られぬうき一ふしや笛竹の末のよなかきねに残るらん
わすられぬ−うきひとふしや−ふえたけの−すゑのよなかき−ねにのこるらむ |
08136 |
未入力 正徹 (xxx)
笛のなのこま山颪とほく吹け思ふ都に音をつたふとて
ふえのなの−こまやまおろし−とほくふけ−おもふみやこに−ねをつたふとて |
08137 |
未入力 正徹 (xxx)
音にたててたれを恋ふらん我か方にこま笛遠きよはの里人
ねにたてて−たれをこふらむ−わかかたに−こまふえとほき−よはのさとひと |
08138 |
未入力 正徹 (xxx)
笛竹の夜声やたれと聞きわかは身のうきふしや空にしられん
ふえたけの−よこゑやたれと−ききわかは−みのうきふしや−そらにしられむ |
08139 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくなりあまのはは矢をくたしても恋に命をきはめましかは
あふくなり−あまのははやを−くたしても−こひにいのちを−きはめましかは |
08140 |
未入力 正徹 (xxx)
我そ今身をうたふ鳥紅の涙の蓑を君きたれとて
われそいま−みをうたふとり−くれなゐの−なみたのみのを−きみきたれとて |
08141 |
未入力 正徹 (xxx)
みたしおけ涙の雨の蓑代はよるの衣のうへのくろかみ
みたしおけ−なみたのあめの−みのしろは−よるのころもの−うへのくろかみ |
08142 |
未入力 正徹 (xxx)
時のまの程も千里に玉こえぬ君かりゆきしうたたねの夢
ときのまの−ほともちさとに−たまこえぬ−きみかりゆきし−うたたねのゆめ |
08143 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬる夢にみすのあみ糸長き夜に契りてあけし宿もたのもし
ぬるゆめに−みすのあみいと−なかきよに−ちきりてあけし−やともたのもし |
08144 |
未入力 正徹 (xxx)
まよふよりあふも別も又さめぬ夢の中なる我そはかなき
まよふより−あふもわかれも−またさめぬ−ゆめのうちなる−われそはかなき |
08145 |
未入力 正徹 (xxx)
あひ別れへたてやは有る真木の戸にぬるかうちとも猶夢にして
あひわかれ−へたてやはある−まきのとに−ぬるかうちとも−なほゆめにして |
08146 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひねの夢のうき橋なかすまて涙の川はみかさこえつつ
おもひねの−ゆめのうきはし−なかすまて−なみたのかはは−みかさこえつつ |
08147 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひねの夢のうき橋まつ人のくめちにたゆるさ夜の秋風
おもひねの−ゆめのうきはし−まつひとの−くめちにたゆる−さよのあきかせ |
08148 |
未入力 正徹 (xxx)
ねてまたん枕さたかにあふとみる夢のうつつそ命なりける
ねてまたむ−まくらさたかに−あふとみる−ゆめのうつつそ−いのちなりける |
08149 |
未入力 正徹 (xxx)
消えそ行く夢の俤立ちまよふ雲さへ空にうすき契りは
きえそゆく−ゆめのおもかけ−たちまよふ−くもさへそらに−うすきちきりは |
08150 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にこし天つ乙女かさむる夜の枕の山は雲そたな引く
ゆめにこし−あまつをとめか−さむるよの−まくらのやまは−くもそたなひく |
08151 |
未入力 正徹 (xxx)
更けぬまに忍ひて通ふ方やあらぬ夢の通ひち相ふ人もなし
ふけぬまに−しのひてかよふ−かたやあらぬ−ゆめのかよひち−あふひともなし |
08152 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる夜はにかかけぬ灯のみしかくもえてきゆる思ひを
みにそしる−よはにかかけぬ−ともしひの−みしかくもえて−きゆるおもひを |
08153 |
未入力 正徹 (xxx)
命かも消えなんとする灯の光まされる夜夜の思ひは
いのちかも−きえなむとする−ともしひの−ひかりまされる−よよのおもひは |
08154 |
未入力 正徹 (xxx)
限りとや恋ひまさるらん灯も光をまして消かたの夜に
かきりとや−こひまさるらむ−ともしひも−ひかりをまして−きえかたのよに |
08155 |
未入力 正徹 (xxx)
波たかくいかかは思ひかけさらん身こそ下屋にすまのうら人
なみたかく−いかかはおもひ−かけさらむ−みこそしもやに−すまのうらひと |
08156 |
未入力 正徹 (xxx)
匂ひこそ猶もりいつれも屋のみすうこきたにせぬおくの人気に
にほひこそ−なほもりいつれ−もやのみす−うこきたにせぬ−おくのひとけに |
08157 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる夜をいねかての小田の露涙かりほの床の秋風
みにそしる−よをいねかての−をたのつゆ−なみたかりほの−とこのあきかせ |
08158 |
未入力 正徹 (xxx)
我か袖に庵りあまたとうとまれししての田長の涙をそかる
わかそてに−いほりあまたと−うとまれし−してのたをさの−なみたをそかる |
08159 |
未入力 正徹 (xxx)
かへさしと思ふ隣は火もこはす我か名や立ちしおそのたはれを
かへさしと−おもふとなりは−ひもこはす−わかなやたちし−おそのたはれを |
08160 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふれとかたき岩ほの心をもいつあは雪となしてとけまし
としふれと−かたきいはほの−こころをも−いつあはゆきと−なしてとけまし |
08161 |
未入力 正徹 (xxx)
筏おろす杣山川の岩たたみさはる暮のみしけき中かな
いかたおろす−そまやまかはの−いはたたみ−さはるくれのみ−しけきなかかな |
08162 |
未入力 正徹 (xxx)
いととしく恋こそまされあつさ弓ひけは本末よるはおきゐて
いととしく−こひこそまされ−あつさゆみ−ひけはもとすゑ−よるはおきゐて |
08163 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもはてはうき名にたつか弓はかなき舟の跡も残さし
ちきりしも−はてはうきなに−たつかゆみ−はかなきふねの−あとものこさし |
08164 |
未入力 正徹 (xxx)
我か方に心ひかれし行へかは弓きる槻のかけもなつかし
わかかたに−こころひかれし−ゆくへかは−ゆみきるつきの−かけもなつかし |
08165 |
未入力 正徹 (xxx)
憂身にはあつさのまゆみ本末もしらぬ恋ちに引く心かな
うきみには−あつさのまゆみ−もとすゑも−しらぬこひちに−ひくこころかな |
08166 |
未入力 正徹 (xxx)
見るらめや人はなひかすいなふちのほそ川まゆみよわる心を
みるらめや−ひとはなひかす−いなふちの−ほそかはまゆみ−よわるこころを |
08167 |
未入力 正徹 (xxx)
手にふれん弓きる槻の枝たわにかねて心の引く思ひかな
てにふれむ−ゆみきるつきの−えたたわに−かねてこころの−ひくおもひかな |
08168 |
未入力 正徹 (xxx)
心こそ猶もひかるれ三吉ののとつ川まゆみきえぬ契に
こころこそ−なほもひかるれ−みよしのの−とつかはまゆみ−きえぬちきりに |
08169 |
未入力 正徹 (xxx)
うき名のみたつか弓すゑもあらはれて山分出つる紀路の関守
うきなのみ−たつかゆすゑも−あらはれて−やまわけいつる−きちのせきもり |
08170 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心ひけはもと末よるもねすうつやゆつるの音をたにきけ
わかこころ−ひけはもとすゑ−よるもねす−うつやゆつるの−おとをたにきけ |
08171 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてかきそのあさ衣をさをあらみむねあふ程の隙を待ちみん
いつまてか−きそのあさきぬ−をさをあらみ−むねあふほとの−ひまをまちみむ |
08172 |
未入力 正徹 (xxx)
山風を薪とるをにふせけとや哀にいそくしつかてつくり
やまかせを−たききとるをに−ふせけとや−あはれにいそく−しつかてつくり |
08173 |
未入力 正徹 (xxx)
侘ひぬれはきそのあさ衣身も寒し山風吹くな独ぬる夜そ
わひぬれは−きそのあさきぬ−みもさむし−やまかせふくな−ひとりぬるよそ |
08174 |
未入力 正徹 (xxx)
行末を契りし事も中のをのたゆるをいかかかけてたのまん
ゆくすゑを−ちきりしことも−なかのをの−たゆるをいかか−かけてたのまむ |
08175 |
未入力 正徹 (xxx)
中のをの絶えてつれなき一ことに思ひつきせぬみねの松風
なかのをの−たえてつれなき−ひとことに−おもひつきせぬ−みねのまつかせ |
08176 |
未入力 正徹 (xxx)
心ひけてなかるることののほりねも中のを高く思ひかけすや
こころひけて−なかるることの−のほりねも−なかのをたかく−おもひかけすや |
08177 |
未入力 正徹 (xxx)
ことわりに我か中のをを先たちて此世さりねと音にも聞えぬ
ことわりに−わかなかのをを−さきたちて−このよさりねと−ねにもきこえぬ |
08178 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れしよ声むつましき六のをにおなしあつまと頼むしらへに
わすれしよ−こゑむつましき−むつのをに−おなしあつまと−たのむしらへに |
08179 |
未入力 正徹 (xxx)
露けさの思ひそしける玉琴のひきののつつらをにもなさねと
つゆけさの−おもひそしける−たまことの−ひきののつつら−をにもなさねと |
08180 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂を尋ねてこえんうき中は遠きあつまのしらへなりとも
あふさかを−たつねてこえむ−うきなかは−とほきあつまの−しらへなりとも |
08181 |
未入力 正徹 (xxx)
手なれしも忘れかたさに琴のををたちし契にねを残すらん
てなれしも−わすれかたさに−ことのをを−たちしちきりに−ねをのこすらむ |
08182 |
未入力 正徹 (xxx)
ことわりや我たちきけはつま引にならすも人の秋風の声
ことわりや−われたちきけは−つまひきに−ならすもひとの−あきかせのこゑ |
08183 |
未入力 正徹 (xxx)
とひかたき宿の軒さへほのみえて思ひくらせるをちの里人
とひかたき−やとののきさへ−ほのみえて−おもひくらせる−をちのさとひと |
08184 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷の人にととめし心よりほか行く旅の身はよわりつつ
ふるさとの−ひとにととめし−こころより−ほかゆくたひの−みはよわりつつ |
08185 |
未入力 正徹 (xxx)
夢もし今夜枕をうちあかせ思ふかたほにかかる夕なみ
ゆめもみし−こよひまくらを−うちあかせ−おもふかたほに−かかるゆふなみ |
08186 |
未入力 正徹 (xxx)
草枕思ひおこせは古郷の人もやこよひ旅ねなるらん
くさまくら−おもひおこせは−ふるさとの−ひともやこよひ−たひねなるらむ |
08187 |
未入力 正徹 (xxx)
ねし床のちりもてちりやつくされん心のあたをはらふ心よ
ねしとこの−ちりもてちりや−つくされむ−こころのあたを−はらふこころよ |
08188 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふ心のあたのせめくるになとあらそはぬ我か身なるらん
こひすてふ−こころのあたの−せめくるに−なとあらそはぬ−わかみなるらむ |
08189 |
未入力 正徹 (xxx)
したかはん心は我を思はすとしれかしよそのたれ恨むらん
したかはむ−こころはわれを−おもはすと−しれかしよその−たれうらむらむ |
08190 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人に心の行くもととまるも我か身を分けて恋そくるしき
みしひとに−こころのゆくも−ととまるも−わかみをわけて−こひそくるしき |
08191 |
未入力 正徹 (xxx)
なくなくそ身をしたかふる恋にひく心を後のあたにしれとも
なくなくそ−みをしたかふる−こひにひく−こころをのちの−あたにしれとも |
08192 |
未入力 正徹 (xxx)
俤もやみなる閨のかへしろにあやなく人や夜を隔つらん
おもかけも−やみなるねやの−かへしろに−あやなくひとや−よをへたつらむ |
08193 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣うちもへたてぬ玉札をみつから今朝や袖にこめけん
さよころも−うちもへたてぬ−たまつさを−みつからけさや−そてにこめけむ |
08194 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥の跡消えにし道に迷ひきぬ雁の翅のふみたかへつつ
とりのあと−きえにしみちに−まよひきぬ−かりのつはさの−ふみたかへつつ |
08195 |
未入力 正徹 (xxx)
まなふをは物うきままにまきよせて窓にも思ふ文そよまるる
まなふをは−ものうきままに−まきよせて−まとにもおもふ−ふみそよまるる |
08196 |
未入力 正徹 (xxx)
紅の涙をためてするすみの色とやはみん水くきの跡
くれなゐの−なみたをためて−するすみの−いろとやはみむ−みつくきのあと |
08197 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中にととめし文もしみとちて今みんとすれはひらきかねぬる
うきなかに−ととめしふみも−しみとちて−いまみむとすれは−ひらきかねぬる |
08198 |
未入力 正徹 (xxx)
むは玉のやみのうつつにみてもしれ夢にそかきしからすはの文
むはたまの−やみのうつつに−みてもしれ−ゆめにそかきし−からすはのふみ |
08199 |
未入力 正徹 (xxx)
心そむかみの墨つき筆つかひ人のかたちもみるにたかはし
こころそむ−かみのすみつき−ふてつかひ−ひとのかたちも−みるにたかはし |
08200 |
未入力 正徹 (xxx)
くもりなき心のおくの海と成る涙もからき袖のしほ風
くもりなき−こころのおくの−うみとなる−なみたもからき−そてのしほかせ |
08201 |
未入力 正徹 (xxx)
水をたに結ひもいれぬ身のうさになにか涙と成りて落つらん
みつをたに−むすひもいれぬ−みのうさに−なにかなみたと−なりておつらむ |
08202 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちてゆく床の涙よなかれての世に名やたたん山川の波
くちてゆく−とこのなみたよ−なかれての−よになやたたむ−やまかはのなみ |
08203 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらすあまの釣棹さしはへてうきたる中そいととくるしき
そてぬらす−あまのつりさを−さしはへて−うきたるなかそ−いととくるしき |
08204 |
未入力 正徹 (xxx)
みなれさを玉もかり初にさし離れ身をうら舟は波も帰らす
みなれさを−たまもかりそめに−さしはなれ−みをうらふねは−なみもかへらす |
08205 |
未入力 正徹 (xxx)
みこしちや雪のしるしに立つ棹のふかき契は末そみしかき
みこしちや−ゆきのしるしに−たつさをの−ふかきちきりは−すゑそみしかき |
08206 |
未入力 正徹 (xxx)
限りとや身をうら舟のほつなたえ人の心のあらち吹くらん
かきりとや−みをうらふねの−ほつなたえ−ひとのこころの−あらちふくらむ |
08207 |
未入力 正徹 (xxx)
つらきにもうきにもたへぬ度毎に天の御空を打ちあふきつつ
つらきにも−うきにもたへぬ−たひことに−あめのみそらを−うちあふきつつ |
08208 |
未入力 正徹 (xxx)
今は身も嵐の前に立つちりのおき所なき名こそかれせね
いまはみも−あらしのまへに−たつちりの−おきところなき−なこそかれせね |
08209 |
未入力 正徹 (xxx)
春秋の時そともなき恋草のかれぬ心にきゆる霜かな
はるあきの−ときそともなき−こひくさの−かれぬこころに−きゆるしもかな |
08210 |
未入力 正徹 (xxx)
さをしかのふしとは露もましるらん涙はかりの独ねの床
さをしかの−ふしとはつゆも−ましるらむ−なみたはかりの−ひとりねのとこ |
08211 |
未入力 正徹 (xxx)
見てもしれ空行く月のうさきたに光にかよふ契ある世を
みてもしれ−そらゆくつきの−うさきたに−ひかりにかよふ−ちきりあるよを |
08212 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふ心なくしてけた物の雲にほえけん通ちもかな
こひすてふ−こころなくして−けたものの−くもにほえけむ−かよひちもかな |
08213 |
未入力 正徹 (xxx)
君そうき野へのかせきも此山になるれは人を遠くやはなす
きみそうき−のへのかせきも−このやまに−なるれはひとを−とほくやはなす |
08214 |
未入力 正徹 (xxx)
しのふたにうちの渡りのさ夜中に人もとかむる里のいぬかな
しのふたに−うちのわたりの−さよなかに−ひともとかむる−さとのいぬかな |
08215 |
未入力 正徹 (xxx)
あたら名をかるも乱れて心から思ひふすゐの床そ明けゆく
あたらなを−かるもみたれて−こころから−おもひふすゐの−とこそあけゆく |
08216 |
未入力 正徹 (xxx)
とかむなよ馴れぬる宿の通ちにみしは手かひの犬ならすとも
とかむなよ−なれぬるやとの−かよひちに−みしはてかひの−いぬならすとも |
08217 |
未入力 正徹 (xxx)
波わけてまたみぬ国に住むとらのいかなる野へを恋ちとかしる
なみわけて−またみぬくにに−すむとらの−いかなるのへを−こひちとかしる |
08218 |
未入力 正徹 (xxx)
つなかれぬ心の駒もおとろへき恋ちさかしく遠き月日に
つなかれぬ−こころのこまも−おとろへき−こひちさかしく−とほきつきひに |
08219 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は恋そうき身をとほりぬる虎のうそふく風ならねとも
ゆふくれは−こひそうきみを−とほりぬる−とらのうそふく−かせならねとも |
08220 |
未入力 正徹 (xxx)
人よりも心おかれてふす犬やつらき門もる関と成るらん
ひとよりも−こころおかれて−ふすいぬや−つらきかともる−せきとなるらむ |
08221 |
未入力 正徹 (xxx)
音をそ啼くなれしもしらぬのらねこのつなたえはつる中の契に
ねをそなく−なれしもしらぬ−のらねこの−つなたえはつる−なかのちきりに |
08222 |
未入力 正徹 (xxx)
身そ残るすてはすつへきもろこしのとらふすのへの恋ちならねと
みそのこる−すてはすつへき−もろこしの−とらふすのへの−こひちならねと |
08223 |
未入力 正徹 (xxx)
やすくぬるふすゐの夢の程はかり心かるもに乱れすもかな
やすくぬる−ふすゐのゆめの−ほとはかり−こころかるもに−みたれすもかな |
08224 |
未入力 正徹 (xxx)
乗りえはや手引の車しはしたにうしてふことをかけ離れなん
のりえはや−てひきのくるま−しはしたに−うしてふことを−かけはなれなむ |
08225 |
未入力 正徹 (xxx)
犬の尾をくいの八千度めくるともめくりあはすは身やつかれまし
いぬのをを−くいのやちたひ−めくるとも−めくりあはすは−みやつかれまし |
08226 |
未入力 正徹 (xxx)
二かたに思ふ心をくらへ馬のきほふをまつる契なれはや
ふたかたに−おもふこころを−くらへうまの−きほふをまつる−ちきりなれはや |
08227 |
未入力 正徹 (xxx)
諸共にふすゐのかるも乱れてはうき名や床のちりと立つらん
もろともに−ふすゐのかるも−みたれては−うきなやとこの−ちりとたつらむ |
08228 |
未入力 正徹 (xxx)
あよむまの命をかきるひつしたに打ちふす程や夢に相みん
あよむまの−いのちをかきる−ひつしたに−うちふすほとや−ゆめにあひみむ |
08229 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれそはん袖の別ちおくりきて先達犬の露はらふなり
ぬれそはむ−そてのわかれち−おくりきて−さきたついぬの−つゆはらふなり |
08230 |
未入力 正徹 (xxx)
とかめつる犬も手かひと成るはかり夜比たたすむ宿ないとひそ
とかめつる−いぬもてかひと−なるはかり−よころたたすむ−やとないとひそ |
08231 |
未入力 正徹 (xxx)
磯の野のあまのかるもにかきそへてふすゐを袖の床のなみかな
いそののの−あまのかるもに−かきそへて−ふすゐをそての−とこのなみかな |
08232 |
未入力 正徹 (xxx)
恋に身を行きても捨てんここになと虎住む野へのなき世なるらん
こひにみを−ゆきてもすてむ−ここになと−とらすむのへの−なきよなるらむ |
08233 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめやおよはすとても妻とみて月のうさきのこふるならひは
しるらめや−およはすとても−つまとみて−つきのうさきの−こふるならひは |
08234 |
未入力 正徹 (xxx)
人心あやふき中と身をそしる尾をふむ虎のねふる契は
ひとこころ−あやふきなかと−みをそしる−ををふむとらの−ねふるちきりは |
08235 |
未入力 正徹 (xxx)
程遠く頼む夕のなるはうし犬のふすたけなかくなる日も
ほととほく−たのむゆふへの−なるはうし−いぬのふすたけ−なかくなるひも |
08236 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人もかくそえかたき谷の猿てにもとられぬ水の月影
みしひとも−かくそえかたき−たにのさる−てにもとられぬ−みつのつきかけ |
08237 |
未入力 正徹 (xxx)
身を捨てん憂名はたてていはすとも尾をふむとらの口はのかれし
みをすてむ−うきなはたてて−いはすとも−ををふむとらの−くちはのかれし |
08238 |
未入力 正徹 (xxx)
あま人のかるもはそれもあれぬへしよそにふすゐの床のうらなみ
あまひとの−かるもはそれも−あれぬへし−よそにふすゐの−とこのうらなみ |
08239 |
未入力 正徹 (xxx)
われそうき哀ふすゐの床中におきゐてあかす夜はもあらしを
われそうき−あはれふすゐの−とこなかに−おきゐてあかす−よはもあらしを |
08240 |
未入力 正徹 (xxx)
われそかる人の心のいかりゐに猶ますらをかむかふ思ひに
われそかる−ひとのこころの−いかりゐに−なほますらをか−むかふおもひに |
08241 |
未入力 正徹 (xxx)
妻こふるふしとはこれも明けそゆく契さ山かおくの鹿の音
つまこふる−ふしとはこれも−あけそゆく−ちきりさやまか−おくのしかのね |
08242 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰や秋のかのこの星消えて恋ふる心のやみそはるけぬ
やまかけや−あきのかのこの−ほしきえて−こふるこころの−やみそはるけぬ |
08243 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もやすくねぬかひあらし人心猶あらたかの末はをるとも
よもやすく−ねぬかひあらし−ひとこころ−なほあらたかの−すゑはをるとも |
08244 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてかくるしき坂をあらそはん夕付鳥のあふさきるさに
いつまてか−くるしきさかを−あらそはむ−ゆふつけとりの−あふさきるさに |
08245 |
未入力 正徹 (xxx)
別なき夕付鳥は一つかひある世になくそ人のため憂き
わかれなき−ゆふつけとりは−ひとつかひ−あるよになくそ−ひとのためうき |
08246 |
未入力 正徹 (xxx)
別よと真木の戸ならぬ羽をたたく鳥の初音にいそくさへうし
わかれよと−まきのとならぬ−はをたたく−とりのはつねに−いそくさへうし |
08247 |
未入力 正徹 (xxx)
ときやらて涙の滝もつららゐぬ身を鴬の春の山かせ
ときやらて−なみたのたきも−つららゐぬ−みをうくひすの−はるのやまかせ |
08248 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥も今恋に思ひの火来て身をせむるとや音には啼くらん
とりもいま−こひにおもひの−ひххきて−みをせむるとや−ねにはなくらむ |
08249 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしもうきてねになく鴨の足のみしかくあさきえをそうらむる
ちきりしも−うきてねになく−かものあしの−みしかくあさき−えをそうらむる |
08250 |
未入力 正徹 (xxx)
契をはなほあた波にかけそへて水かくれ果てぬ鳰の通ち
ちきりをは−なほあたなみに−かけそへて−みかくれはてぬ−にほのかよひち |
08251 |
未入力 正徹 (xxx)
鳰鳥のうきたる波は袖こえて我か身にしらぬ下のかよひち
にほとりの−うきたるなみは−そてこえて−わかみにしらぬ−したのかよひち |
08252 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世まてあふことなみをかつくらん身をうきすより出てし鳰鳥
いくよまて−あふことなみを−かつくらむ−みをうきすより−いてしにほとり |
08253 |
未入力 正徹 (xxx)
かねてうき恋そ身にしむますらをか鳩ふく秋の風はよそにて
かねてうき−こひそみにしむ−ますらをか−はとふくあきの−かせはよそにて |
08254 |
未入力 正徹 (xxx)
子を思ふ道にはあらて夜るのつるのたつてふあしのねをのみそなく
こをおもふ−みちにはあらて−よるのつるの−たつてふあしの−ねをのみそなく |
08255 |
未入力 正徹 (xxx)
恋侘ひてなくねよそなる契かは我もかさねぬ鶴の毛衣
こひわひて−なくねよそなる−ちきりかは−われもかさねぬ−つるのけころも |
08256 |
未入力 正徹 (xxx)
咲く花の匂ひし春の俤を雲ゐのつるのしたひてそなく
さくはなの−にほひしはるの−おもかけを−くもゐのつるの−したひてそなく |
08257 |
未入力 正徹 (xxx)
夜の鶴子を思ふ道もよそならて啼くや恋ちに迷ふやみかな
よるのつる−こをおもふみちも−よそならて−なくやこひちに−まよふやみかな |
08258 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れしの世にはすめともかけろふのあるかなきかをとふ人もなし
わすれしの−よにはすめとも−かけろふの−あるかなきかを−とふひともなし |
08259 |
未入力 正徹 (xxx)
人ははや軒はなからに頼むなりしはしな絶えそささかにの糸
ひとははや−のきはなからに−たのむなり−しはしなたえそ−ささかにのいと |
08260 |
未入力 正徹 (xxx)
あら磯の波もわか身をくたくこそもに住む虫のうらみなりけれ
あらいその−なみもわかみを−くたくこそ−もにすむむしの−うらみなりけれ |
08261 |
未入力 正徹 (xxx)
君もしれ虫のねからす秋の霜かかれとてしもおかぬ心を
きみもしれ−むしのねからす−あきのしも−かかれとてしも−おかぬこころを |
08262 |
未入力 正徹 (xxx)
いふせくも親のかふこのまゆねかく夕もあはすいもに恋ひつつ
いふせくも−おやのかふこの−まゆねかく−ゆふへもあはす−いもにこひつつ |
08263 |
未入力 正徹 (xxx)
われからと恋にや捨てんあまのかる玉もかくれの虫の命を
われからと−こひにやすてむ−あまのかる−たまもかくれの−むしのいのちを |
08264 |
未入力 正徹 (xxx)
かきつくす恨をしみのすみかまて残さてくちね玉札のもし
かきつくす−うらみをしみの−すみかまて−のこさてくちね−たまつさのもし |
08265 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世に心ひらかんまゆこもりそれもあひみる親のかふこを
いつのよに−こころひらかむ−まゆこもり−それもあひみる−おやのかふこを |
08266 |
未入力 正徹 (xxx)
文の中にうまれはつらし言の葉を心にしみのすみ所とて
ふみのうちに−うまれはつらし−ことのはを−こころにしみの−すみところとて |
08267 |
未入力 正徹 (xxx)
くたくらんもかり小舟につむ虫のそれもこかれし心心に
くたくらむ−もかりをふねに−つむむしの−それもこかれし−こころこころに |
08268 |
未入力 正徹 (xxx)
涙川君か方にそひを虫のよりてをきゆるあしろきもかな
なみたかは−きみかかたにそ−ひをむしの−よりてをきゆる−あしろきもかな |
08269 |
未入力 正徹 (xxx)
うき中のあしろもしらぬひを虫の命もよるはうらやまれつつ
うきなかの−あしろもしらぬ−ひをむしの−いのちもよるは−うらやまれつつ |
08270 |
未入力 正徹 (xxx)
なほのこる契りはかけきかけろふのおのれ消えても残る夕日に
なほのこる−ちきりはかけき−かけろふの−おのれきえても−のこるゆふひに |
08271 |
未入力 正徹 (xxx)
月草の心の花にぬる蝶の露のまたのむ夢そうつろふ
つきくさの−こころのはなに−ぬるてふの−つゆのまたのむ−ゆめそうつろふ |
08272 |
未入力 正徹 (xxx)
かくるともいかか頼まん軒ふりて板まもあはぬささかにの糸
かくるとも−いかかたのまむ−のきふりて−いたまもあはぬ−ささかにのいと |
08273 |
未入力 正徹 (xxx)
なさけなく夏のさはへをとるくもはくへきよひともいかかしらせん
なさけなく−なつのさはへを−とるくもは−くへきよひとも−いかかしらせむ |
08274 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はにも色やはみせんささかにのて染もしらぬ糸の乱れは
のきはにも−いろやはみせむ−ささかにの−てそめもしらぬ−いとのみたれは |
08275 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふ袂にかけよささかにの糸を星合の空にかすとも
こひすてふ−たもとにかけよ−ささかにの−いとをほしあひの−そらにかすとも |
08276 |
未入力 正徹 (xxx)
なきたむる涙の水にすむ蛙恋てふ歌のたねと成るかに
なきたむる−なみたのみつに−すむかはつ−こひてふうたの−たねとなるかに |
08277 |
未入力 正徹 (xxx)
猶そうき身にそふ衣のうちなからふところ貝のあふこかたみは
なほそうき−みにそふきぬの−うちなから−ふところかひの−あふこかたみは |
08278 |
未入力 正徹 (xxx)
きりきりす契かれ行く草はたに霜ふる壁の中の秋風
きりきりす−ちきりかれゆく−くさはたに−しもふるかへの−なかのあきかせ |
08279 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中のかはりやすきは石の火の光のまさへ猶そのとけき
うきなかの−かはりやすきは−いしのひの−ひかりのまさへ−なほそのとけき |
08280 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ川うき水底の石の火の打出ててもゆとみえん世もなし
おもひかは−うきみなそこの−いしのひの−うちいててもゆと−みえむよもなし |
08281 |
未入力 正徹 (xxx)
野への鹿たかく思ひをかけよとや峰の思ひのもえてみゆらん
のへのしか−たかくおもひを−かけよとや−みねのおもひの−もえてみゆらむ |
08282 |
未入力 正徹 (xxx)
心からむねに思ひの火やいてん木をもむ程に身をもやすめぬ
こころから−むねにおもひの−ひやいてむ−きをもむほとに−みをもやすめぬ |
08283 |
未入力 正徹 (xxx)
波こゆるう川のかかりもえかねてのほるせくるし思ひ絶えなん
なみこゆる−うかはのかかり−もえかねて−のほるせくるし−おもひたえなむ |
08284 |
未入力 正徹 (xxx)
篝火の影消かたのうち松になけきをそへてもえあかしつつ
かかりひの−かけきえかたの−うちまつに−なけきをそへて−もえあかしつつ |
08285 |
未入力 正徹 (xxx)
身にしめき竹のすい垣隙有りて見し夜の月のうちの川風
みにしめき−たけのすいかき−ひまありて−みしよのつきの−うちのかはかせ |
08286 |
未入力 正徹 (xxx)
しかま川朝市いそくかち人のわたれとぬれぬえにそくるしき
しかまかは−あさいちいそく−かちひとの−わたれとぬれぬ−えにそくるしき |
08287 |
未入力 正徹 (xxx)
うつしみはしろきを後のかほはせも涙くもりてかひやなからん
うつしみは−しろきをのちの−かほはせも−なみたくもりて−かひやなからむ |
08288 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染の夕波かけて落葉かく絵島のあまもまつと告けこせ
すみそめの−ゆふなみかけて−おちはかく−えしまのあまも−まつとつけこせ |
08289 |
未入力 正徹 (xxx)
うつすともおよはし筆のかた代に思ひの色の姿ならすは
うつすとも−およはしふての−かたしろに−おもひのいろの−すかたならすは |
08290 |
未入力 正徹 (xxx)
かたみとやなにはの春の芦て絵もみしかき笛の跡のこすらん
かたみとや−なにはのはるの−あしてえも−みしかきふえの−あとのこすらむ |
08291 |
未入力 正徹 (xxx)
にさらましむなし契の朽木かき筆限有る人のかた代
にさらまし−むなしちきりの−くちきかき−ふてかきりある−ひとのかたしろ |
08292 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねきてしほならぬうみにしほたるる袂をとへは海士もならほす
たつねきて−しほならぬうみに−しほたるる−たもとをとへは−あまもならはす |
08293 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上よ思ひしるてふことのはにかからぬ露のなにみたるらん
そてのうへよ−おもひしるてふ−ことのはに−かからぬつゆの−なにみたるらむ |
08294 |
未入力 正徹 (xxx)
結ふへき契もしらぬ寿をそなにそは露のきゆるをもまて
むすふへき−ちきりもしらぬ−いのちをそ−なにそはつゆの−きゆるをもまて |
08295 |
未入力 正徹 (xxx)
けさやみんかたしきけちてまきらはす露のあまりの床の白玉
けさやみむ−かたしきけちて−まきらはす−つゆのあまりの−とこのしらたま |
08296 |
未入力 正徹 (xxx)
色もなしたれかは分けん恋渡る心の花の露よなみたよ
いろもなし−たれかはわけむ−こひわたる−こころのはなの−つゆよなみたよ |
08297 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原とはれんこともしら露の消えて又おく命ならすは
くさのはら−とはれむことも−しらつゆの−きえてまたおく−いのちならすは |
08298 |
未入力 正徹 (xxx)
我か命露ときゆとも思ひのみ草の陰にや猶も残らん
わかいのち−つゆときゆとも−おもひのみ−くさのかけにや−なほものこらむ |
08299 |
未入力 正徹 (xxx)
恋草は分けつくすへきみちならて露けき秋の色そ朽行く
こひくさは−わけつくすへき−みちならて−つゆけきあきの−いろそくちゆく |
08300 |
未入力 正徹 (xxx)
うなはらやあまの御ほこの露もうし国とならすは恋やなからん
うなはらや−あまのみほこの−つゆもうし−くにとならすは−こひやなからむ |
08301 |
未入力 正徹 (xxx)
あけはみよ何の草木か染めさらん別ちに生ふる袖のしら露
あけはみよ−なにのくさきか−そめさらむ−わかれちにおふる−そてのしらつゆ |
08302 |
未入力 正徹 (xxx)
消えてたに深くと契れ紅のあさはの野らの後の夕露
きえてたに−ふかくとちきれ−くれなゐの−あさはののらの−のちのゆふつゆ |
08303 |
未入力 正徹 (xxx)
今よりもあさはの露を涙とはから紅の袖の初しほ
いまよりも−あさはのつゆを−なみたとは−からくれなゐの−そてのはつしほ |
08304 |
未入力 正徹 (xxx)
まてしはし契浅茅か末の露かからすとても秋のこからし
まてしはし−ちきりあさちか−すゑのつゆ−かからすとても−あきのこからし |
08305 |
未入力 正徹 (xxx)
ききかねぬ夕の霧のへたてたにつらきこすもる人の盲の葉
ききかねぬ−ゆふへのきりの−へたてたに−つらきこすもる−ひとのことのは |
08306 |
未入力 正徹 (xxx)
中にうき霞も思ひ消侘ひぬ花に契りやかけてかひなき
なかにうき−かすみもおもひ−きえわひぬ−はなにちきりや−かけてかひなき |
08307 |
未入力 正徹 (xxx)
恋侘ふる涙を人にかたらねは枕のしるもかひなかりけり
こひわふる−なみたをひとに−かたらねは−まくらのしるも−かひなかりけり |
08308 |
未入力 正徹 (xxx)
しるへせよ枕はかりをしる人になしてそ夢の契をもまつ
しるへせよ−まくらはかりを−しるひとに−なしてそゆめの−ちきりをもまつ |
08309 |
未入力 正徹 (xxx)
いひやらん物とはなしにうらむとも枕のしるを猶やたのまん
いひやらむ−ものとはなしに−うらむとも−まくらのしるを−なほやたのまむ |
08310 |
未入力 正徹 (xxx)
枕香も我のみつらし床の上のこかの渡りは舟もかよはて
まくらかも−われのみつらし−とこのうへの−こかのわたりは−ふねもかよはて |
08311 |
未入力 正徹 (xxx)
しるといふ枕も人にかたらすは涙もらすな夜夜のくろかみ
しるといふ−まくらもひとに−かたらすは−なみたもらすな−よよのくろかみ |
08312 |
未入力 正徹 (xxx)
あけは又独ぬる夜の枕かにむねのみこかのけふり渡らん
あけはまた−ひとりぬるよの−まくらかに−むねのみこかの−けふりわたらむ |
08313 |
未入力 正徹 (xxx)
人はとへ落つる涙の滝枕音に関もる夢のかよひち
ひとはとへ−おつるなみたの−たきまくら−おとにせきもる−ゆめのかよひち |
08314 |
未入力 正徹 (xxx)
うらめしく枕にゑかく獣やあふ夜の夢の道をたちけん
うらめしく−まくらにゑかく−けたものや−あふよのゆめの−みちをたちけむ |
08315 |
未入力 正徹 (xxx)
たれきてかふみならさまし独ねてあまる枕の夢の板橋
たれきてか−ふみならさまし−ひとりねて−あまるまくらの−ゆめのいたはし |
08316 |
未入力 正徹 (xxx)
あさてあらふたよりにも先あふ事を祈るとなしに打思ひつつ
あさてあらふ−たよりにもまつ−あふことを−いのるとなしに−うちおもひつつ |
08317 |
未入力 正徹 (xxx)
出つる日の契らぬかけそさしも入るまつ夜のままに明けし戸口は
いつるひの−ちきらぬかけそ−さしもいる−まつよのままに−あけしとくちは |
08318 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はふかく帰る契は朝鳥の軒の羽風もほさぬ袖かな
よはふかく−かへるちきりは−あさとりの−のきのはかせも−ほさぬそてかな |
08319 |
未入力 正徹 (xxx)
うたかはす今夜と契おく時の日影もすくになひく頼に
うたかはす−こよひとちきり−おくときの−ひかけもすくに−なひくたのみに |
08320 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりあふ夜はとはなしに小車のかけしひつしの時も頼ます
めくりあふ−よはとはなしに−をくるまの−かけしひつしの−ときもたのます |
08321 |
未入力 正徹 (xxx)
君かためすすまぬむまの時もなくなと足はやくかよふ心そ
きみかため−すすまぬうまの−ときもなく−なとあしはやく−かよふこころそ |
08322 |
未入力 正徹 (xxx)
うらみしよまたしと思ふ思ひたに夕はあらぬ心かはりを
うらみしよ−またしとおもふ−おもひたに−ゆふへはあらぬ−こころかはりを |
08323 |
未入力 正徹 (xxx)
のかれめや恋と夕の二道にせめくる宿を出てて行くとも
のかれめや−こひとゆふへの−ふたみちに−せめくるやとを−いててゆくとも |
08324 |
未入力 正徹 (xxx)
たのますよとよはた雲の引く手たにあまたになひく中の契は
たのますよ−とよはたくもの−ひくてたに−あまたになひく−なかのちきりは |
08325 |
未入力 正徹 (xxx)
こす近くたそかれ時にたたすむを君しもとははいかかこたへん
こすちかく−たそかれときに−たたすむを−きみしもとはは−いかかこたへむ |
08326 |
未入力 正徹 (xxx)
月なくはせめてもみはやまつはこて夕やみはれぬうたたねの夢
つきなくは−せめてもみはや−まつはこて−ゆふやみはれぬ−うたたねのゆめ |
08327 |
未入力 正徹 (xxx)
たとらはやたそかれ時も誰ならぬ俤はかり猶そさやけき
たとらはや−たそかれときも−たれならぬ−おもかけはかり−なほそさやけき |
08328 |
未入力 正徹 (xxx)
さのみかくおきもあかさし後の世を歎くと人や人にかたらん
さのみかく−おきもあかさし−のちのよを−なけくとひとや−ひとにかたらむ |
08329 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬよのつらさは夢になされぬややみのうつつのまことなるらん
あはぬよの−つらさはゆめに−なされぬや−やみのうつつの−まことなるらむ |
08330 |
未入力 正徹 (xxx)
かけてうき山かつら川たか中にあふせ明けぬと波帰るらん
かけてうき−やまかつらかは−たかなかに−あふせあけぬと−なみかへるらむ |
08331 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひつつねし夜の床に朝日さす袖の煙やなみたなるらん
おもひつつ−ねしよのとこに−あさひさす−そてのけふりや−なみたなるらむ |
08332 |
未入力 正徹 (xxx)
夢かさはてる日くもる日限りなき思ひのやみのふかき夜の空
ゆめかさは−てるひくもるひ−かきりなき−おもひのやみの−ふかきよのそら |
08333 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてか憂きみ山木の葉をしけみ日影もらさぬ思ひならまし
いつまてか−うきみやまこの−はをしけみ−ひかけもらさぬ−おもひならまし |
08334 |
未入力 正徹 (xxx)
あかねさす日のたてぬきの恋衣ほさぬ物とやおり初めけん
あかねさす−ひのたてぬきの−こひころも−ほさぬものとや−おりはしめけむ |
08335 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりみよもすそもいととあかねさすかけと成る身のけたぬ思ひを
かへりみよ−もすそもいとと−あかねさす−かけとなるみの−けたぬおもひを |
08336 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮に松の嵐やうからまし長き春日の心くらへに
ゆふくれに−まつのあらしや−うからまし−なかきはるひの−こころくらへに |
08337 |
未入力 正徹 (xxx)
いつはりの有るかなきかの夜そしらぬ夕日は袖に消ゆるかけろふ
いつはりの−あるかなきかの−よそしらぬ−ゆふひはそてに−きゆるかけろふ |
08338 |
未入力 正徹 (xxx)
うきにそむ日のたてぬきのさ夜衣影さすけさも氷やはとく
うきにそむ−ひのたてぬきの−さよころも−かけさすけさも−こほりやはとく |
08339 |
未入力 正徹 (xxx)
出つる日にてを合せても恋すてふ我はつかしき涙おちつつ
いつるひに−てをあはせても−こひすてふ−われはつかしき−なみたおちつつ |
08340 |
未入力 正徹 (xxx)
むかはしよ袖の涙の紅はあかねさす日も色やまさらん
むかはしよ−そてのなみたの−くれなゐは−あかねさすひも−いろやまさらむ |
08341 |
未入力 正徹 (xxx)
夜半もうし日影につれて行く星の入りはてんともみえん恋かは
よはもうし−ひかけにつれて−ゆくほしの−いりはてむとも−みえむこひかは |
08342 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての名こそ七の星の影いく夜を空にめくりあへとも
なかれての−なこそななつの−ほしのかけ−いくよをそらに−めくりあへとも |
08343 |
未入力 正徹 (xxx)
せめてみんむかふたらひの涙にもあふよの星の影や移ると
せめてみむ−むかふたらひの−なみたにも−あふよのほしの−かけやうつると |
08344 |
未入力 正徹 (xxx)
頼む夜もうき身のままに明星はみてもさとらん空そはるけき
たのむよも−うきみのままに−あかほしは−みてもさとらむ−そらそはるけき |
08345 |
未入力 正徹 (xxx)
憂名をもたたしかの子の星月夜くらきそたより野への通ち
うきなをも−たたしかのこの−ほしつきよ−くらきそたより−のへのかよひち |
08346 |
未入力 正徹 (xxx)
諸共に契りしままの月まつと人にもいはてむかふ山のは
もろともに−ちきりしままの−つきまつと−ひとにもいはて−むかふやまのは |
08347 |
未入力 正徹 (xxx)
もえ行くを天つ光もてらしみよ星の林の雪のした草
もえゆくを−あまつひかりも−てらしみよ−ほしのはやしの−ゆきのしたくさ |
08348 |
未入力 正徹 (xxx)
こぬ人を待つはむなしく明星の影は夜毎に閨をとへとも
こぬひとを−まつはむなしく−あかほしの−かけはよことに−ねやをとへとも |
08349 |
未入力 正徹 (xxx)
あひみまくほしのまきれもさたまらす頼む契やうす雲の空
あひみまく−ほしのまきれも−さたまらす−たのむちきりや−うすくものそら |
08350 |
未入力 正徹 (xxx)
なくさむる月こそあらまほしの影おほつかなしよ待つにねぬよを
なくさむる−つきこそあらま−ほしのかけ−おほつかなしよ−まつにねぬよを |
08351 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふことをやくにてあまたへぬ年のかはれる星の祈は
こひすてふ−ことをやくにて−あまたへぬ−としのかはれる−ほしのいのりは |
08352 |
未入力 正徹 (xxx)
独みていむてふ月にむかへとも憂身を捨つるしるしたになし
ひとりみて−いむてふつきに−むかへとも−うきみをすつる−しるしたになし |
08353 |
未入力 正徹 (xxx)
迷ふ身のうはの空なるしるへをもいつかは月の行へかこたん
まよふみの−うはのそらなる−しるへをも−いつかはつきの−ゆくへかこたむ |
08354 |
未入力 正徹 (xxx)
うれへみる袖の涙もはちぬへし月の都の人の心に
うれへみる−そてのなみたも−はちぬへし−つきのみやこの−ひとのこころに |
08355 |
未入力 正徹 (xxx)
我か涙袖にまてとも三か月の影みぬ暮そぬれてかひなき
わかなみた−そてにまてとも−みかつきの−かけみぬくれそ−ぬれてかひなき |
08356 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひなき枕の月のかたほにもふるき涙にやつれやはせぬ
おもひなき−まくらのつきの−かたほにも−ふるきなみたに−やつれやはせぬ |
08357 |
未入力 正徹 (xxx)
恨みても恋ひても空にかこつかな月のしるへき中ならなくに
うらみても−こひてもそらに−かこつかな−つきのしるへき−なかならなくに |
08358 |
未入力 正徹 (xxx)
澄む月もいく世の人のうれへをかうけて恋ちに猶めくるらん
すむつきも−いくよのひとの−うれへをか−うけてこひちに−なほめくるらむ |
08359 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれての月待つ夜をやかさぬらん月の残さぬ人の形みを
なかれての−つきまつよをや−かさぬらむ−つきののこさぬ−ひとのかたみを |
08360 |
未入力 正徹 (xxx)
たか方にあふ夜を月もさそふらんさも足早き四方の村雲
たかかたに−あふよをつきも−さそふらむ−さもあしはやき−よものむらくも |
08361 |
未入力 正徹 (xxx)
いつもなと先俤のむかふらん月の残さぬ人のかたみを
いつもなと−まつおもかけの−むかふらむ−つきののこさぬ−ひとのかたみを |
08362 |
未入力 正徹 (xxx)
忘られぬ涙のうちの面影も袖にこほるる有明の月
わすられぬ−なみたのうちの−おもかけも−そてにこほるる−ありあけのつき |
08363 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の上に涙もかけもそひそ行くほのかに人を三かのよの月
そてのうへに−なみたもかけも−そひそゆく−ほのかにひとを−みかのよのつき |
08364 |
未入力 正徹 (xxx)
俤は形見の雲に残る月契りし夢そにたる夜もなき
おもかけは−かたみのくもに−のこるつき−ちきりしゆめそ−にたるよもなき |
08365 |
未入力 正徹 (xxx)
人そうき待つと別の二道にうらみられても月そ残れる
ひとそうき−まつとわかれの−ふたみちに−うらみられても−つきそのこれる |
08366 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひかねわさとむかへとかひそなきいむてふ月も物忘して
おもひかね−わさとむかへと−かひそなき−いむてふつきも−ものわすれして |
08367 |
未入力 正徹 (xxx)
待出つる夜半の契の頼さへ月の宮古のおくの通ち
まちいつる−よはのちきりの−たのみさへ−つきのみやこの−おくのかよひち |
08368 |
未入力 正徹 (xxx)
俤に又や忘れんそふとても此世の月の後のあけほの
おもかけに−またやわすれむ−そふとても−このよのつきの−のちのあけほの |
08369 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ人月はたれともさしむかふ心をうつせ我もみまほし
こよひひと−つきはたれとも−さしむかふ−こころをうつせ−われもみまほし |
08370 |
未入力 正徹 (xxx)
やとるなよその夜の月のかたみたに袖に朽ちゆくふるき涙を
やとるなよ−そのよのつきの−かたみたに−そてにくちゆく−ふるきなみたを |
08371 |
未入力 正徹 (xxx)
独みていむてふことの偽を月にうれふる秋のふるさと
ひとりみて−いむてふことの−いつはりを−つきにうれふる−あきのふるさと |
08372 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふ人のうれへやおはさらん誰もなかむる月そつれなき
こひすてふ−ひとのうれへや−おはさらむ−たれもなかむる−つきそつれなき |
08373 |
未入力 正徹 (xxx)
俤よ月の宮人ならなくになけきあまれは打ちなかむらん
おもかけよ−つきのみやひと−ならなくに−なけきあまれは−うちなかむらむ |
08374 |
未入力 正徹 (xxx)
移り行く空もうらめしこよひしもみし夜の月の心はかりに
うつりゆく−そらもうらめし−こよひしも−みしよのつきの−こころはかりに |
08375 |
未入力 正徹 (xxx)
よしさらは雲たに月のかほかくせみるらん恋の袖のやつれを
よしさらは−くもたにつきの−かほかくせ−みるらむこひの−そてのやつれを |
08376 |
未入力 正徹 (xxx)
我ゆゑの涙と月も思はすはくもる恨を身にやかへさん
われゆゑの−なみたとつきも−おもはすは−くもるうらみを−みにやかへさむ |
08377 |
未入力 正徹 (xxx)
詠めつつ人の面影ならなくに忘れぬ月のかほそ身にしむ
なかめつつ−ひとのおもかけ−ならなくに−わすれぬつきの−かほそみにしむ |
08378 |
未入力 正徹 (xxx)
遠さかる思ひを月にうれふれは契をかりの声そこたふる
とほさかる−おもひをつきに−うれふれは−ちきりをかりの−こゑそこたふる |
08379 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれし人そ跡なき休らひにいてにし月の影はとへとも
そてぬれし−ひとそあとなき−やすらひに−いてにしつきの−かけはとへとも |
08380 |
未入力 正徹 (xxx)
むなしよをうらむる空にふる露の月の涙となすそなくさむ
むなしよを−うらむるそらに−ふるつゆの−つきのなみたと−なすそなくさむ |
08381 |
未入力 正徹 (xxx)
世の人のうき中ことをあきらめよくらきをてらす月ならは月
よのひとの−うきなかことを−あきらめよ−くらきをてらす−つきならはつき |
08382 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねん人こそたえめ手枕にやとり馴れにし月も夜かれは
いかかねむ−ひとこそたえめ−たまくらに−やとりなれにし−つきもよかれは |
08383 |
未入力 正徹 (xxx)
見るもうき夕つく夜かな月待つと人にいふへきたよりなくして
みるもうき−ゆふつくよかな−つきまつと−ひとにいふへき−たよりなくして |
08384 |
未入力 正徹 (xxx)
うれへこし月は思ひの初よりしるや契の秋のすゑはを
うれへこし−つきはおもひの−はしめより−しるやちきりの−あきのすゑはを |
08385 |
未入力 正徹 (xxx)
露とたにおちすは月の宿かれん袖も涙を頼む夜にして
つゆとたに−おちすはつきの−やとかれむ−そてもなみたを−たのむよにして |
08386 |
未入力 正徹 (xxx)
月清み思ひをかくる浮雲の乱れ心をはらへあき風
つききよみ−おもひをかくる−うきくもの−みたれこころを−はらへあきかせ |
08387 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひわか袂をそへてみし人の俤そへて月そやとれる
こよひわか−たもとをそへて−みしひとの−おもかけそへて−つきそやとれる |
08388 |
未入力 正徹 (xxx)
うき身かは契の末のあさは野に人もこすけの春の乱れは
うきみかは−ちきりのすゑの−あさはのに−ひともこすけの−はるのみたれは |
08389 |
未入力 正徹 (xxx)
てにかけし昔は今そ夏引のいとふもつらし賎のをた巻
てにかけし−むかしはいまそ−なつひきの−いとふもつらし−しつのをたまき |
08390 |
未入力 正徹 (xxx)
昔たか窓より秋を初にてふるき涙の露と成るらん
むかしたか−まとよりあきを−はしめにて−ふるきなみたの−つゆとなるらむ |
08391 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふね覚はかりのうき秋を思ひくらへん袖の上かは
つゆはらふ−ねさめはかりの−うきあきを−おもひくらへむ−そてのうへかは |
08392 |
未入力 正徹 (xxx)
雲風も秋うき比の夕暮や思ひも恋も空にみつらん
くもかせも−あきうきころの−ゆふくれや−おもひもこひも−そらにみつらむ |
08393 |
未入力 正徹 (xxx)
末まては結ふともなき契かなまた初草の枕かほして
すゑまては−むすふともなき−ちきりかな−またはつくさの−まくらかほして |
08394 |
未入力 正徹 (xxx)
とははうし思ひは今そ初草の原のかれ野とならん夕を
とははうし−おもひはいまそ−はつくさの−はらのかれのと−ならむゆふへを |
08395 |
未入力 正徹 (xxx)
夜のまにもたれにか思ひつき草のうつりし袖は今朝の白露
よのまにも−たれにかおもひ−つきくさの−うつりしそては−けさのしらつゆ |
08396 |
未入力 正徹 (xxx)
今はたたかこともかけし庭の松軒の忍ふの露の昔に
いまはたた−かこともかけし−にはのまつ−のきのしのふの−つゆのむかしに |
08397 |
未入力 正徹 (xxx)
移り香も露に消えよと乱るらし帰る朝の袖の下草
うつりかも−つゆにきえよと−みたるらし−かへるあしたの−そてのしたくさ |
08398 |
未入力 正徹 (xxx)
玉ゆらも何にかからん忘草それさへかれし野への夕露
たまゆらも−なににかからむ−わすれくさ−それさへかれし−のへのゆふつゆ |
08399 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひ草心のうちのたね絶えてなき世うれしき契ともかな
おもひくさ−こころのうちの−たねたえて−なきようれしき−ちきりともかな |
08400 |
未入力 正徹 (xxx)
とへかしな契を秋の霜にたに尾花かもとはかるるともなし
とへかしな−ちきりをあきの−しもにたに−をはなかもとは−かるるともなし |
08401 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の色によもうつろはし思草人こそ露をかけてやむとも
あきのいろに−よもうつろはし−おもひくさ−ひとこそつゆを−かけてやむとも |
08402 |
未入力 正徹 (xxx)
ねを絶えね尾花かもとの契ゆゑもえし煙そ春の焼原
ねをたえね−をはなかもとの−ちきりゆゑ−もえしけふりそ−はるのやけはら |
08403 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしを忘るる草の心こそ岩木に生ふる種と成りけめ
ちきりしを−わするるくさの−こころこそ−いはきにおふる−たねとなりけめ |
08404 |
未入力 正徹 (xxx)
契りても忘るる草の種そなき松の名つらき住吉の岸
ちきりても−わするるくさの−たねそなき−まつのなつらき−すみよしのきし |
08405 |
未入力 正徹 (xxx)
うつろふもまた白菊の花心よしやしはしの露なへたてそ
うつろふも−またしらきくの−はなこころ−よしやしはしの−つゆなへたてそ |
08406 |
未入力 正徹 (xxx)
恋すてふ秋の千草の花心乱れやすきや露の夕風
こひすてふ−あきのちくさの−はなこころ−みたれやすきや−つゆのゆふかせ |
08407 |
未入力 正徹 (xxx)
人そうき契浅茅の陰に行く石まの水はすみはつる世に
ひとそうき−ちきりあさちの−かけにゆく−いしまのみつは−すみはつるよに |
08408 |
未入力 正徹 (xxx)
やたののや契浅茅か秋に吹く声もあらちの雪の山風
やたののや−ちきりあさちか−あきにふく−こゑもあらちの−ゆきのやまかせ |
08409 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の色のあさちうらやむ霜そうき衣手からす中の契に
あきのいろの−あさちうらやむ−しもそうき−ころもてからす−なかのちきりに |
08410 |
未入力 正徹 (xxx)
玉のをも長き思ひをかけやせん匂ふあやめの袖の行ふり
たまのをも−なかきおもひを−かけやせむ−にほふあやめの−そてのゆきふり |
08411 |
未入力 正徹 (xxx)
見さらましうき身外山におりはててつつらはふ木のあまた心を
みさらまし−うきみとやまに−おりはてて−つつらはふきの−あまたこころを |
08412 |
未入力 正徹 (xxx)
はては又からすそつらきねぬなはのうきにはふ夜の長月の霜
はてはまた−からすそつらき−ねぬなはの−うきにはふよの−なかつきのしも |
08413 |
未入力 正徹 (xxx)
結ふらん露もかはらて宿木のならへる枝の契りともかな
むすふらむ−つゆもかはらて−やとりきの−ならへるえたの−ちきりともかな |
08414 |
未入力 正徹 (xxx)
およひなき思ひや高き梢にも生ふるなけきの種と成りけん
およひなき−おもひやたかき−こすゑにも−おふるなけきの−たねとなりけむ |
08415 |
未入力 正徹 (xxx)
人は猶梢にねさす松のたね思ひをつきて千世なかさねそ
ひとはなほ−こすゑにねさす−まつのたね−おもひをつきて−ちよなかさねそ |
08416 |
未入力 正徹 (xxx)
高くともせめて一夜の宿木よおよはぬ枝にねさすまてこそ
たかくとも−せめてひとよの−やとりきよ−およはぬえたに−ねさすまてこそ |
08417 |
未入力 正徹 (xxx)
たれこひん梢にねさす松の種生行く後の風の夕くれ
たれこひむ−こすゑにねさす−まつのたね−おひゆくのちの−かせのゆふくれ |
08418 |
未入力 正徹 (xxx)
みなれ木の梢に生ふる松の葉のつれなやこれも思ひかけきや
みなれきの−こすゑにおふる−まつのはの−つれなやこれも−おもひかけきや |
08419 |
未入力 正徹 (xxx)
待つ人は梢に根さす宿木のうつろふ秋も色そつれなき
まつひとは−こすゑにねさす−やとりきの−うつろふあきも−いろそつれなき |
08420 |
未入力 正徹 (xxx)
引残す谷のふし木のいつまてかそまのかたやの暮を待つらん
ひきのこす−たにのふしきの−いつまてか−そまのかたやの−くれをまつらむ |
08421 |
未入力 正徹 (xxx)
忘らるる身をの杣木の憂ふしをさなから朽つる袖にかけつつ
わすらるる−みをのそまきの−うきふしを−さなからくつる−そてにかけつつ |
08422 |
未入力 正徹 (xxx)
年をへて憂き言の葉のつきしよりかけの朽木の身をそうらむる
としをへて−うきことのはの−つきしより−かけのくちきの−みをそうらむる |
08423 |
未入力 正徹 (xxx)
数ならぬみ山かくれになしてたによるは朽木のもゆるならひを
かすならぬ−みやまかくれに−なしてたに−よるはくちきの−もゆるならひを |
08424 |
未入力 正徹 (xxx)
朝な夕なからき思ひをなけきにてさもたきそふる海士のもしほ火
あさなゆふな−からきおもひを−なけきにて−さもたきそふる−あまのもしほひ |
08425 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ焼く思ひの薪からく世の山をいく山こりつくすらん
もしほやく−おもひのたきき−からくよの−やまをいくやま−こりつくすらむ |
08426 |
未入力 正徹 (xxx)
煙にもかろくはたてし里のあまのわらぬ塩木のおもき恨を
けふりにも−かろくはたてし−さとのあまの−わらぬしほきの−おもきうらみを |
08427 |
未入力 正徹 (xxx)
名取川みなわなかるるあた波にうかひ出てたるせせの埋木
なとりかは−みなわなかるる−あたなみに−うかひいてたる−せせのうもれき |
08428 |
未入力 正徹 (xxx)
ありてうきみ山の谷の埋水そこにふしきの玉きはりてよ
ありてうき−みやまのたにの−いもれみつ−そこにふしきの−たまきはりてよ |
08429 |
未入力 正徹 (xxx)
なく涙人にもみえよ夜もすから面影さらぬ月のかかみに
なくなみた−ひとにもみえよ−よもすから−おもかけさらぬ−つきのかかみに |
08430 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の窓の蛍は絶えて恋すてふ月に思ひを又そ集むる
あきのまとの−ほたるはたえて−こひすてふ−つきにおもひを−またそあつむる |
08431 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかき夜の月にぬれたる袖はかり涙の隙とこふる秋かな
ふかきよの−つきにぬれたる−そてはかり−なみたのひまと−こふるあきかな |
08432 |
未入力 正徹 (xxx)
人心猶しら鳥のとはにみは憂身の秋の山やたのまん
ひとこころ−なほしらとりの−とはにみは−うきみのあきの−やまやたのまむ |
08433 |
未入力 正徹 (xxx)
かりにやは契りて分けし色かはる秋にあふ坂の山の下柴
かりにやは−ちきりてわけし−いろかはる−あきにあふさかの−やまのしたしは |
08434 |
未入力 正徹 (xxx)
わすらるる身をおくてもる袖ぬれぬ契かりほの小田の夕露
わすらるる−みをおくてもる−そてぬれぬ−ちきりかりほの−をたのゆふつゆ |
08435 |
未入力 正徹 (xxx)
露そちる人の心の秋に吹く風の宿りやわか身なるらん
つゆそちる−ひとのこころの−あきにふく−かせのやとりや−わかみなるらむ |
08436 |
未入力 正徹 (xxx)
さ筵のつま吹く夜はの秋風に立ちそはん名はちり程もなし
さむしろの−つまふくよはの−あきかせに−たちそはむなは−ちりほともなし |
08437 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れしの人の言の葉かれしより身こふる霜に秋風そ吹く
わすれしの−ひとのことのは−かれしより−みこふるしもに−あきかせそふく |
08438 |
未入力 正徹 (xxx)
契をはかけよや葛の玉かつら下葉に秋のかせはありとも
ちきりをは−かけよやくすの−たまかつら−したはにあきの−かせはありとも |
08439 |
未入力 正徹 (xxx)
身を秋に落つる涙の露のぬき思ひのたてにおる物もなし
みをあきに−おつるなみたの−つゆのぬき−おもひのたてに−おるものもなし |
08440 |
未入力 正徹 (xxx)
紬の上に色なき露をわきてみよ秋のしわさよ恋の心よ
そてのうへに−いろなきつゆを−わきてみよ−あきのしわさよ−こひのこころよ |
08441 |
未入力 正徹 (xxx)
しのの屋の忍ひに人の待つはこて虫の音つらきすすの秋風
しののやの−しのひにひとの−まつはこて−むしのねつらき−すすのあきかせ |
08442 |
未入力 正徹 (xxx)
あはぬ夜の秋の夢ちの関守や露霜寒き枕なるらん
あはぬよの−あきのゆめちの−せきもりや−つゆしもさむき−まくらなるらむ |
08443 |
未入力 正徹 (xxx)
夢よりもみしかかりけり猶わかねての朝けの秋の枕は
ゆめよりも−みしかかりけり−ひとりわか−ねてのあさけの−あきのまくらは |
08444 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひある葎の宿の秋の月影さへ雲にさしなこもりそ
おもひある−むくらのやとの−あきのつき−かけさへくもに−さしなこもりそ |
08445 |
未入力 正徹 (xxx)
秋になる人の心のあらかねは此国土のほかのかよひち
あきになる−ひとのこころの−あらかねは−このくにつちの−ほかのかよひち |
08446 |
未入力 正徹 (xxx)
身を秋の心空にそうかれ行く夜戸出のままの上土はふめとも
みをあきの−こころそらにそ−うかれゆく−よとてのままの−つちはふめとも |
08447 |
未入力 正徹 (xxx)
見るにこそ緑かはらね恋すてふ空やみさをに物思ふらん
みるにこそ−みとりかはらね−こひすてふ−そらやみさをに−ものおもふらむ |
08448 |
未入力 正徹 (xxx)
憂きなからしひて心は長月も日をへてよわるかけに恋ひつつ
うきなから−しひてこころは−なかつきも−ひをへてよわる−かけにこひつつ |
08449 |
未入力 正徹 (xxx)
月待つと人にいふへき人もなしたのめてふくる秋の夜はかな
つきまつと−ひとにいふへき−ひともなし−たのめてふくる−あきのよはかな |
08450 |
未入力 正徹 (xxx)
こかれ行く思ひの色をつたへやれ紅葉のぬさの秋のかみ風
こかれゆく−おもひのいろを−つたへやれ−もみちのぬさの−あきのかみかせ |
08451 |
未入力 正徹 (xxx)
まきるらん木の葉も秋も時雨れゆく袖の別のしののめの道
まきるらむ−このはもあきも−しくれゆく−そてのわかれの−しののめのみち |
08452 |
未入力 正徹 (xxx)
たか方にうつろふきくの衣衣をそれもかれねと霜結ふらん
たかかたに−うつろふきくの−きぬきぬを−それもかれねと−しもむすふらむ |
08453 |
未入力 正徹 (xxx)
行末や心つくしの色見えんこよひそ思ひそめ川のなみ
ゆくすゑや−こころつくしの−いろみえむ−こよひそおもひ−そめかはのなみ |
08454 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の袖なる月のかほにたにかけぬ涙を人のとふまて
きぬきぬの−そてなるつきの−かほにたに−かけぬなみたを−ひとのとふまて |
08455 |
未入力 正徹 (xxx)
思出てよ夢になせとはつひにわれ契らぬものを手枕の月
おもひいてよ−ゆめになせとは−つひにわれ−ちきらぬものを−たまくらのつき |
08456 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れのみしけりにけりなみし人の契りし秋の月のかけ草
わすれのみ−しけりにけりな−みしひとの−ちきりしあきの−つきのかけくさ |
08457 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれぬ雲の波ちと思ふにも月のみるめをつつむ夜はとは
そてぬれぬ−くものなみちと−おもふにも−つきのみるめを−つつむよはとは |
08458 |
未入力 正徹 (xxx)
たかために涙の露をみかくらん身のうき袖に月はくもらて
たかために−なみたのつゆを−みかくらむ−みのうきそてに−つきはくもらて |
08459 |
未入力 正徹 (xxx)
人そ憂き空行く月はわか方によるの袂をとふ涙かな
ひとそうき−そらゆくつきは−わかかたに−よるのたもとを−とふなみたかな |
08460 |
未入力 正徹 (xxx)
月を先心におくれ衣衣は山のあなたにかへる道かは
つきをまつ−こころにおくれ−きぬきぬは−やまのあなたに−かへるみちかは |
08461 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人をしはしすませて尋ねはやかたふく峰の月の下庵
みしひとを−しはしすませて−たつねはや−かたふくみねの−つきのしたいほ |
08462 |
未入力 正徹 (xxx)
いかてかも行くへき方をとはさらんおよはぬ月の都にや住む
いかてかも−ゆくへきかたを−とはさらむ−およはぬつきの−みやこにやすむ |
08463 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねても月に心は見えてみつのこらは残れ人の面影
たつねても−つきにこころは−みえてみつ−のこらはのこれ−ひとのおもかけ |
08464 |
未入力 正徹 (xxx)
宿の月村雲はては又そみん簾おろすな人も音せす
やとのつき−むらくもはては−またそみむ−すたれおろすな−ひともおとせす |
08465 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の池の月にな告けそ独ゐてふくるををしのやとる松風
にはのいけの−つきになつけそ−ひとりゐて−ふくるををしの−やとるまつかせ |
08466 |
未入力 正徹 (xxx)
真木の戸もうつろふ色に明けそ行く人の心の花の手枕
まきのとも−うつろふいろに−あけそゆく−ひとのこころの−はなのたまくら |
08467 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめ置く中の契も花のかにふかからぬ夜の袖の別ち
たのめおく−なかのちきりも−はなのかに−ふかからぬよの−そてのわかれち |
08468 |
未入力 正徹 (xxx)
露なから忍ふもちすり花の香にみたれてみえぬ春風もかな
つゆなから−しのふもちすり−はなのかに−みたれてみえぬ−はるかせもかな |
08469 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふ事色にいつとも人とはは花の物いはぬ陰やたのまん
おもふこと−いろにいつとも−ひととはは−はなのものいはぬ−かけやたのまむ |
08470 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそへてかたまつ花の下紐はとくともしらす人そつれなき
みにそへて−かたまつはなの−したひもは−とくともしらす−ひとそつれなき |
08471 |
未入力 正徹 (xxx)
松の色のいそく夕もつれそなき花のたのめし心しるらん
まつのいろの−いそくゆふへも−つれそなき−はなのたのめし−こころしるらむ |
08472 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひきて契りし宿は跡もなし夜のまの花の雪の下道
かよひきて−ちきりしやとは−あともなし−よのまのはなの−ゆきのしたみち |
08473 |
未入力 正徹 (xxx)
たか中の朝の露のぬれ衣を花もほしあへす色かすむらん
たかなかの−あしたのつゆの−ぬれきぬを−はなもほしあへす−いろかすむらむ |
08474 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の跡なしことも世にふりぬ花にかへりし道芝の露
きぬきぬの−あとなしことも−よにふりぬ−はなにかへりし−みちしはのつゆ |
08475 |
未入力 正徹 (xxx)
うき名とや霞のまより桜花契あらはに世にはちるらん
うきなとや−かすみのまより−さくらはな−ちきりあらはに−よにはちるらむ |
08476 |
未入力 正徹 (xxx)
人心うつろふ花に遠さかるうき身や風の姿なるらん
ひとこころ−うつろふはなに−とほさかる−うきみやかせの−すかたなるらむ |
08477 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれし昔の花の俤にかすめる雲のよその春風
そてぬれし−むかしのはなの−いもかけに−かすめるくもの−よそのはるかせ |
08478 |
未入力 正徹 (xxx)
跡もみし絶えにし中の庭の花きえすはありともこその白雪
あともみし−たえにしなかの−にはのはな−きえすはありとも−こそのしらゆき |
08479 |
未入力 正徹 (xxx)
さそひゆく風の宿りを契にて心うつろふ花もたのまし
さそひゆく−かせのやとりを−ちきりにて−こころうつろふ−はなもたのまし |
08480 |
未入力 正徹 (xxx)
人そうき花の別は啼く鳥の八声によらぬ宿の春風
ひとそうき−はなのわかれは−なくとりの−やこゑによらぬ−やとのはるかせ |
08481 |
未入力 正徹 (xxx)
衣衣の別の庭の花の露人かけつなよ袖におつとも
きぬきぬの−わかれのにはの−はなのつゆ−ひとかけつなよ−そてにおつとも |
08482 |
未入力 正徹 (xxx)
おくれかせ花桜戸の休らひにいてゆく袖のあかぬ匂を
おくれかせ−はなさくらとの−やすらひに−いてゆくそての−あかぬにほひを |
08483 |
未入力 正徹 (xxx)
人心みし色かはる初しほの秋のけふりにくゆる浦風
ひとこころ−みしいろかはる−はつしほの−あきのけふりに−くゆるうらかせ |
08484 |
未入力 正徹 (xxx)
ふかき夜を残りて月はをしふともしたひととめしならひなき身は
ふかきよを−のこりてつきは−をしふとも−したひととめし−ならひなきみは |
08485 |
未入力 正徹 (xxx)
契あらは神の御室の山ひこも声をつたへよ祈るねきこと
ちきりあらは−かみのみむろの−やまひこも−こゑをつたへよ−いのるねきこと |
08486 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめつつくもれけふとも暮をまついつの朝日の影に祈らん
たのめつつ−くもれけふとも−くれをまつ−いつのあさひの−かけにいのらむ |
08487 |
未入力 正徹 (xxx)
恋せしとするにはあらす神風になひけみそきのせせのゆふして
こひせしと−するにはあらす−かみかせに−なひけみそきの−せせのゆふして |
08488 |
未入力 正徹 (xxx)
初せ山雲のゆふして我か方になひかぬ末の秋そしくるる
はつせやま−くものゆふして−わかかたに−なひかぬすゑの−あきそしくるる |
08489 |
未入力 正徹 (xxx)
契りこし枕の塵の成りゆくはわかおきふしや恋の山もり
ちきりこし−まくらのちりの−なりゆくは−わかおきふしや−こひのやまもり |
08490 |
未入力 正徹 (xxx)
我か涙峰にわかるる棟雲の袖はかすとも猶やあまらん
わかなみた−みねにわかるる−よこくもの−そてはかすとも−なほやあまらむ |
08491 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみ分けし人は昔の跡そともたれ道芝の庭の霜かれ
ふみわけし−ひとはむかしの−あとそとも−たれみちしはの−にはのしもかれ |
08492 |
未入力 正徹 (xxx)
分けし猶は山しけ山よそにしてつらき心の道芝のつゆ
わけしなほ−はやましけやま−よそにして−つらきこころの−みちしはのつゆ |
08493 |
未入力 正徹 (xxx)
契りしはうき山かつの藤衣へにける年をしらぬ中かな
ちきりしは−うきやまかつの−ふちころも−へにけるとしを−しらぬなかかな |
08494 |
未入力 正徹 (xxx)
やすますよ思ひの薪になひもて花の陰なき春の山人
やすますよ−おもひのたきき−になひもて−はなのかけなき−はるのやまひと |
08495 |
未入力 正徹 (xxx)
憂身しるなけきの中もこり果てぬ立つ名くるしきたつの市柴
うきみしる−なけきのうちも−こりはてぬ−たつなくるしき−たつのいちしは |
08496 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるとも思ひはたえし行方もたのまぬ雲や空に消ゆらん
くるるとも−おもひはたえし−ゆくかたも−たのまぬくもや−そらにきゆらむ |
08497 |
未入力 正徹 (xxx)
みし人の俤はこふ秋風に雲もいく度身にしくるらん
みしひとの−おもかけはこふ−あきかせに−くももいくたひ−みにしくるらむ |
08498 |
未入力 正徹 (xxx)
返しおく夜るの衣のうらさひてみるめもたゆる夢の通ち
かへしおく−よるのころもの−うらさひて−みるめもたゆる−ゆめのかよひち |
08499 |
未入力 正徹 (xxx)
小夜衣袖にみちひのしほ馴れてうきかすはこふ里のあま人
さよころも−そてにみちひの−しほなれて−うきかすはこふ−さとのあまひと |
08500 |
未入力 正徹 (xxx)
真柴とる島の山かつもしほくむあまのめのこの中に恋ひつつ
ましはとる−しまのやまかつ−もしほくむ−あまのめのこの−なかにこひつつ |
08501 |
未入力 正徹 (xxx)
数ならぬ恨をなみにのとめても心くたくるあまのまてかた
かすならぬ−うらみをなみに−のとめても−こころくたくる−あまのまてかた |
08502 |
未入力 正徹 (xxx)
海となる涙のそこのためいきはうかはぬあまにつるるわさかは
うみとなる−なみたのそこの−ためいきは−うかはぬあまに−つるるわさかは |
08503 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろふる恋の長ちに猶たえすあまのたくてふなはのうらみは
おとろふる−こひのなかちに−なほたえす−あまのたくてふ−なはのうらみは |
08504 |
未入力 正徹 (xxx)
人そあらぬ千ひろの底の心まて引く手にみゆるあまのたくなは
ひとそあらぬ−ちひろのそこの−こころまて−ひくてにみゆる−あまのたくなは |
08505 |
未入力 正徹 (xxx)
恨みかねあまのさかてをうつなみに消えぬもつらし沖つしら淡
うらみかね−あまのさかてを−うつなみに−きえぬもつらし−おきつしらあわ |
08506 |
未入力 正徹 (xxx)
よるをさへかへす波かなあはぬ江に身をうきみるの色もかはらて
よるをさへ−かへすなみかな−あはぬえに−みをうきみるの−いろもかはらて |
08507 |
未入力 正徹 (xxx)
色みえぬ恨をとはは人心朝けの雪の上にふる霜
いろみえぬ−うらみをとはは−ひとこころ−あさけのゆきの−うへにふるしも |
08508 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の色こき時を秋のきくうつろふ中となと恨むらん
むらさきの−いろこきときを−あきのきく−うつろふなかと−なとうらむらむ |
08509 |
未入力 正徹 (xxx)
なほたてんうき里人のむかひ火は思ひけたれぬ宿の煙を
なほたてむ−うきさとひとの−むかひひは−おもひけたれぬ−やとのけふりを |
08510 |
未入力 正徹 (xxx)
憂をしる涙はなにのいつはりかありのすさひに人はなすとも
うきをしる−なみたはなにの−いつはりか−ありのすさひに−ひとはなすとも |
08511 |
未入力 正徹 (xxx)
馴れし夜を秋さり衣旅にきぬ吹きな返しそむこの山風
なれしよを−あきさりころも−たひにきぬ−ふきなかへしそ−むこのやまかせ |
08512 |
未入力 正徹 (xxx)
杯の石にさはるや早からん契りし暮のまへの川舟
さかつきの−いしにさはるや−はやからむ−ちきりしくれの−まへのかはふね |
08513 |
未入力 正徹 (xxx)
心から恋そ道なき人やりの水なれはこそ行方もあれ
こころから−こひそみちなき−ひとやりの−みつなれはこそ−ゆくかたもあれ |
08514 |
未入力 正徹 (xxx)
我も又ひかへし袖そよこ雲のかへる後せの山の椎柴
われもまた−ひかへしそてそ−よこくもの−かへるのちせの−やまのしひしは |
08515 |
未入力 正徹 (xxx)
たのめとやしののめ送る松風に夕すすむる袖の別ち
たのめとや−しののめおくる−まつかせに−ゆふへすすむる−そてのわかれち |
08516 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしむ色も匂ひもなほ迷ふ花のかりねの明けし契は
みにそしむ−いろもにほひも−なほまよふ−はなのかりねの−あけしちきりは |
08517 |
未入力 正徹 (xxx)
涙ゆく袖の氷もあつくきる夜半の衣におもる恋かな
なみたゆく−そてのこほりも−あつくきる−よはのころもに−おもるこひかな |
08518 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひしれさとは野上の暮毎に身をうる市め立つとみる世を
おもひしれ−さとはのかみの−くれことに−みをうるいちめ−たつとみるよを |
08519 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にこれなせとは露もいひおかす人さへかりの草の枕は
ゆめにこれ−なせとはつゆも−いひおかす−ひとさへかりの−くさのまくらは |
08520 |
未入力 正徹 (xxx)
まつらめや誰とさためぬ契さへしらぬ野上の宿の夕暮
まつらめや−たれとさためぬ−ちきりさへ−しらぬのかみの−やとのゆふくれ |
08521 |
未入力 正徹 (xxx)
みなれさをうきたる舟の契たにさして夕をまたぬ日もなし
みなれさを−うきたるふねの−ちきりたに−さしてゆふへを−またぬひもなし |
08522 |
未入力 正徹 (xxx)
筏さす袖とそこほるさを竹の憂ふし有りし暮を形みに
いかたさす−そてとそこほる−さをたけの−うきふしありし−くれをかたみに |
08523 |
未入力 正徹 (xxx)
よる波の枕ならへは杣川や筏の霜の床ねなりとも
よるなみの−まくらならへは−そまかはや−いかたのしもの−とこねなりとも |
08524 |
未入力 正徹 (xxx)
ねや出つる煙もにこる蓮葉のくゆる匂ひにしむ心かな
ねやいつる−けふりもにこる−はちすはの−くゆるにほひに−しむこころかな |
08525 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ枕これも忘れぬふし柴の契さわかす風の別ち
ささまくら−これもわすれぬ−ふししはの−ちきりさわかす−かせのわかれち |
08526 |
未入力 正徹 (xxx)
昔にほおほくなさけや送るらん恋する人も恋ひらるる身も
むかしにほ−おほくなさけや−おくるらむ−こひするひとも−こひらるるみも |
08527 |
未入力 正徹 (xxx)
啼く雲雀雲のよそなる契たに床によかれす帰る夕を
なくひはり−くものよそなる−ちきりたに−とこによかれす−かへるゆふへを |
08528 |
未入力 正徹 (xxx)
いつのよに人をうるまの島伝ひかよふ心は市とさわけと
いつのよに−ひとをうるまの−しまつたひ−かよふこころは−いちとさわけと |
08529 |
未入力 正徹 (xxx)
憂き中はまさきのかつら乱れすや山もと結のしもとゆふらん
うきなかは−まさきのかつら−みたれすや−やまもとゆひの−しもとゆふらむ |
08530 |
未入力 正徹 (xxx)
いてけるかすのこにおとす本結も匂へるこすのつまそ匂へる
いてけるか−すのこにおとす−もとゆひも−にほへるこすの−つまそにほへる |
08531 |
未入力 正徹 (xxx)
はし鷹を新はをよそにうつたへにをこしの鳥の音をのみそ啼く
はしたかを−あらはをよそに−うつたへに−をこしのとりの−ねをのみそなく |
08532 |
未入力 正徹 (xxx)
ねをや啼くはつをのかかみ心からへたつる鳥のかけもみぬまに
ねをやなく−はつをのかかみ−こころから−へたつるとりの−かけもみぬまに |
08533 |
未入力 正徹 (xxx)
末頼む我か恋草の夏かりは袖の別のみしか夜の空
すゑたのむ−わかこひくさの−なつかりは−そてのわかれの−みしかよのそら |
08534 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き世の心の花にすむてふもこぬを恨のそのの夕暮
とほきよの−こころのはなに−すむてふも−こぬをうらみの−そののゆふくれ |
08535 |
未入力 正徹 (xxx)
諸共にみる夜もあらは袖の上にまたさりけりと月やうらみん
もろともに−みるよもあらは−そてのうへに−またさりけりと−つきやうらみむ |
08536 |
未入力 正徹 (xxx)
君もしたふ都としれはしほかまの恨なくてもたつ煙かな
きみもしたふ−みやことしれは−しほかまの−うらみなくても−たつけふりかな |
08537 |
未入力 正徹 (xxx)
つりの糸に一たひかかるうろくつのひかるるほとの命をそしる
つりのいとに−ひとたひかかる−うろくつの−ひかるるほとの−いのちをそしる |
08538 |
未入力 正徹 (xxx)
いそくらしかたふく月の明かたに天の戸たたくみねの松風
いそくらし−かたふくつきの−あけかたに−あまのとたたく−みねのまつかせ |
08539 |
未入力 正徹 (xxx)
あふき見よむなしき空をふもとにてたかき所は心なりけり
あふきみよ−むなしきそらを−ふもとにて−たかきところは−こころなりけり |
08540 |
未入力 正徹 (xxx)
おこたるをすすめし世さへくたりにきあはれたえたる朝まつりこと
おこたるを−すすめしよさへ−くたりにき−あはれたえたる−あさまつりこと |
08541 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝も見よ夕の雨とならぬまの雲とたなひく山のかたみを
けさもみよ−ゆふへのあめと−ならぬまの−くもとたなひく−やまのかたみを |
08542 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに暮れぬとたにもきかぬかな我か身世にふる入あひのかね
いたつらに−くれぬとたにも−きかぬかな−わかみよにふる−いりあひのかね |
08543 |
未入力 正徹 (xxx)
をしまるる七夜のうちに在明の又ゆふ月となるもほとなし
をしまるる−ななよのうちに−ありあけの−またゆふつきと−なるもほとなし |
08544 |
未入力 正徹 (xxx)
あすしらぬ身のうき時を夕暮のならひになして又やすこさん
あすしらぬ−みのうきときを−ゆふくれの−ならひになして−またやすこさむ |
08545 |
未入力 正徹 (xxx)
よもしらし風のやとりは尋ぬとも夕の雲のかへるところを
よもしらし−かせのやとりは−たつぬとも−ゆふへのくもの−かへるところを |
08546 |
未入力 正徹 (xxx)
入ると見し雲やはのこる峰とほきゆふへの鳥のあとの山風
いるとみし−くもやはのこる−みねとほき−ゆふへのとりの−あとのやまかせ |
08547 |
未入力 正徹 (xxx)
石はしる滝なき山の尾上なる白玉つはき千世のかすかも
いしはしる−たきなきやまの−をのへなる−しらたまつはき−ちよのかすかも |
08548 |
未入力 正徹 (xxx)
年をへて山に心をかけし世もおもひたえぬる遠の白雲
としをへて−やまにこころを−かけしよも−おもひたえぬる−をちのしらくも |
08549 |
未入力 正徹 (xxx)
すかたさへけはしからぬや皇の都のよもの山となりけん
すかたさへ−けはしからぬや−すへらきの−みやこのよもの−やまとなりけむ |
08550 |
未入力 正徹 (xxx)
それも猶ゆゑありけめやすへらきの国は日本日の枝の山
それもなほ−ゆゑありけめや−すへらきの−くにはひのもと−ひのえたのやま |
08551 |
未入力 正徹 (xxx)
神もさそけふの手向をまつ山の松の千とせと君まもるらん
かみもさそ−けふのたむけを−まつやまの−まつのちとせと−きみまもるらむ |
08552 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野山代代の御幸の初よりふみならしけん岩のかけ道
よしのやま−よよのみゆきの−はしめより−ふみならしけむ−いはのかけみち |
08553 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる横雲かけて乙女子かけふも袖ふる山かつらかな
あけわたる−よこくもかけて−をとめこか−けふもそてふる−やまかつらかな |
08554 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはももき木と成りて老いぬれは心あさかの山の井の水
ことのはも−もききとなりて−おいぬれは−こころあさかの−やまのゐのみつ |
08555 |
未入力 正徹 (xxx)
幾世へぬ山となりにしあはちより峰にたえせぬ雲のはしめは
いくよへぬ−やまとなりにし−あはちより−みねにたえせぬ−くものはしめは |
08556 |
未入力 正徹 (xxx)
足ひける山なれはとや世の中のうきを江にしてかけかくすらん
あしひける−やまなれはとや−よのなかの−うきをえにして−かけかくすらむ |
08557 |
未入力 正徹 (xxx)
白浪に命をかけて山ふかく身をかくす人も此比はなし
しらなみに−いのちをかけて−やまふかく−みをかくすひとも−このころはなし |
08558 |
未入力 正徹 (xxx)
さしてくるしほにうかへて宮木引くつなてやかろき浦の杣山
さしてくる−しほにうかへて−みやきひく−つなてやかろき−うらのそまやま |
08559 |
未入力 正徹 (xxx)
うち山のふもとのま柴かりこめていさよふ浪にくたす舟人
うちやまの−ふもとのましは−かりこめて−いさよふなみに−くたすふなひと |
08560 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪も山かせなから夕日影さわくふもとの松のした柴
かはなみも−やまかせなから−ゆふひかけ−さわくふもとの−まつのしたしは |
08561 |
未入力 正徹 (xxx)
庵むすふふもとのま柴かりの世をしれとにはあらしはこふ山人
いほむすふ−ふもとのましは−かりのよを−しれとにはあらし−はこふやまひと |
08562 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さすふもとの野へに数しらす柴ふりたててつつく山人
ゆふひさす−ふもとののへに−かすしらす−しはふりたてて−つつくやまひと |
08563 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆふ日さすふもとの山路山かつの柴もちつつくかけそ暮行く
ゆふひさす−ふもとのやまち−やまかつの−しはもちつつく−かけそくれゆく |
08564 |
未入力 正徹 (xxx)
杣木引くふもとのま柴からすして根をたえ行くを哀とそみる
そまきひく−ふもとのましは−からすして−ねをたえゆくを−あはれとそみる |
08565 |
未入力 正徹 (xxx)
草たかきふもとの野へのささの庵しるしとたのむ杉の一本
くさたかき−ふもとののへの−ささのいほ−しるしとたのむ−すきのひともと |
08566 |
未入力 正徹 (xxx)
鷲の山薪つくれは火も消えていくとせ冬の空うつむらん
わしのやま−たききつくれは−ひもきえて−いくとせふゆの−そらうつむらむ |
08567 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かねのこりしく峰の松の陰われあらましの庵かむすはん
いはかねの−こりしくみねの−まつのかけ−わかあらましの−いほかむすはむ |
08568 |
未入力 正徹 (xxx)
浪に入るみさこそかくるあら磯の岩ねおしまく松のはひえに
なみにいる−みさこそかくる−あらいその−いはねおしまく−まつのはひえに |
08569 |
未入力 正徹 (xxx)
うら風も松かねこえてかへるさや岩ほに落つる滝のしらなみ
うらかせも−まつかねこえて−かへるさや−いはほにおつる−たきのしらなみ |
08570 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝にねてのあさけかをの羽も霜のみをかのやかたをのたか
まつかえに−ねてのあさけか−をのはねも−しものみをかの−やかたをのたか |
08571 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ちかく老のねふりをうつす木も身のうきことを夢にやはみん
のきちかく−おいのねふりを−うつすきも−みのうきことを−ゆめにやはみむ |
08572 |
未入力 正徹 (xxx)
日くるれはおのか葉ことに歓を合せてねふの木もうらやまし
ひくるれは−おのかはことに−よろこひを−あはせてねふの−きもうらやまし |
08573 |
未入力 正徹 (xxx)
いつるまの峰のかつらを月のうちに今夜はふしてみるもほとなし
いつるまの−みねのかつらを−つきのうちに−こよひはふして−みるもほとなし |
08574 |
未入力 正徹 (xxx)
十のかす八をの椿友とみん花もふりぬる雪のすかたを
とをのかす−やつをのつはき−ともとみむ−はなもふりぬる−ゆきのすかたを |
08575 |
未入力 正徹 (xxx)
たかね行くたよりにみかく玉椿光あらはせかつらきの雲
たかねゆく−たよりにみかく−たまつはき−ひかりあらはせ−かつらきのくも |
08576 |
未入力 正徹 (xxx)
槙の葉の軒をあらそふ谷の屋とよそけにたてる桧原杉むら
まきのはの−のきをあらそふ−たにのやと−よそけにたてる−ひはらすきむら |
08577 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこてあらしそくるる杉のもとあまたふみたる道のささ原
ひとはこて−あらしそくるる−すきのもと−あまたふみたる−みちのささはら |
08578 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかすむ尾上にたてる杉のもと松の門さす苔ふかくして
たれかすむ−をのへにたてる−すきのもと−まつのかとさす−こけふかくして |
08579 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる三輪山かつらゆふかけて神かきしるし杉たてる門
あけわたる−みわやまかつら−ゆふかけて−かみかきしるし−すきたてるかと |
08580 |
未入力 正徹 (xxx)
松の戸のさし入にたてる杉村に山おくふかきすみかをそしる
まつのとの−さしいりにたてる−すきむらに−やまおくふかき−すみかをそしる |
08581 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ちかくならへうゑても友ならしふりぬ高砂住の江の松
のきちかく−ならへうゑても−ともならし−ふりぬたかさこ−すみのえのまつ |
08582 |
未入力 正徹 (xxx)
里に入る門の前なる杉むらにふかさあささもみえぬ山かな
さとにいる−かとのまへなる−すきむらに−ふかさあささも−みえぬやまかな |
08583 |
未入力 正徹 (xxx)
一葉より秋のあらしに散りはてし梢の霧やなをのこすらん
ひとはより−あきのあらしに−ちりはてし−こすゑのきりや−なをのこすらむ |
08584 |
未入力 正徹 (xxx)
山とみるひろはもかなや此比のなかめかしはの雪の千枝に
やまとみる−ひろはもかなや−このころの−なかめかしはの−ゆきのちえたに |
08585 |
未入力 正徹 (xxx)
もりかねぬひろはかしはも所せくならふ梢のかけの山かせ
もりかねぬ−ひろはかしはも−ところせく−ならふこすゑの−かけのやまかせ |
08586 |
未入力 正徹 (xxx)
ゐる雲の衣のうらの玉かしはかつあらはるる杜の明ほの
ゐるくもの−ころものうらの−たまかしは−かつあらはるる−もりのあけほの |
08587 |
未入力 正徹 (xxx)
柏木のちりしは守もいつくにて森のみとりの春を待つらん
かしはきの−ちりしはもりも−いつくにて−もりのみとりの−はるをまつらむ |
08588 |
未入力 正徹 (xxx)
我か庵はよもきか杣の陰なれは真木の屋ならふ草のかりふき
わかいほは−よもきかそまの−かけなれは−まきのやならふ−くさのかりふき |
08589 |
未入力 正徹 (xxx)
つひにわか身を山菅のかりの世をいつまてよそに思ひみたれん
つひにわか−みをやますけの−かりのよを−いつまてよそに−おもひみたれむ |
08590 |
未入力 正徹 (xxx)
涙のみ先立ちけりな四のをの戸にひかるる駒もかへらて
なみたのみ−まつたちけりな−よつのをの−こゑにひかるる−こまもかへらて |
08591 |
未入力 正徹 (xxx)
なにかせん煙のうちの面かけの消えてむなしき後の思ひは
なにかせむ−けふりのうちの−おもかけの−きえてむなしき−のちのおもひは |
08592 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥となり枝ともならむことの葉は星の逢ふ夜や契定めし
とりとなり−えたともならむ−ことのはは−ほしのあふよや−ちきりさためし |
08593 |
未入力 正徹 (xxx)
たをやめかつらき心もうつろはて挿むなしき園の白きく
たをやめか−つらきこころも−うつろはて−かさしむなしき−そののしらきく |
08594 |
未入力 正徹 (xxx)
きえねたた身は光なき閨のうちにくらき雨きく窓の灯
きえねたた−みはひかりなき−ねやのうちに−くらきあめきく−まとのともしひ |
08595 |
未入力 正徹 (xxx)
人ならぬ身を梁のつはめたに心やすめてならひやはせぬ
ひとならぬ−みをうつはりの−つはめたに−こころやすめて−ならひやはせぬ |
08596 |
未入力 正徹 (xxx)
五十年よ一夜になとかおとろへぬ窓うつくらき雨にふる身は
いそとしよ−ひとよになとか−おとろへぬ−まとうつくらき−あめにふるみは |
08597 |
未入力 正徹 (xxx)
夢にたに契むなしき灯の窓うつ色のくらき夜の雨
ゆめにたに−ちきりむなしき−ともしひの−まとうついろの−くらきよのあめ |
08598 |
未入力 正徹 (xxx)
月もしれいてすそあらむかつらきの峰のひしりも世の人の為
つきもしれ−いてすそあらむ−かつらきの−みねのひしりも−よのひとのため |
08599 |
未入力 正徹 (xxx)
世にいててけふもかしこき人あらはもとのみ山に雲やかへらん
よにいてて−けふもかしこき−ひとあらは−もとのみやまに−くもやかへらむ |
08600 |
未入力 正徹 (xxx)
河上やくるるゆつはの村雲をひとつになして立つけふりかな
かはかみや−くるるゆつはの−むらくもを−ひとつになして−たつけふりかな |
08601 |
未入力 正徹 (xxx)
もよひするさとと見なからかなしきはつひの夕の煙なりけり
もよひする−さととみなから−かなしきは−つひのゆふへの−けふりなりけり |
08602 |
未入力 正徹 (xxx)
ありま山夜ふかき里はもよはねと出湯のかたにあさけをそみる
ありまやま−よふかきさとは−もよはねと−いてゆのかたに−あさけをそみる |
08603 |
未入力 正徹 (xxx)
むすひても今はなにせんいよの湯のめくる数にもあまる齢は
むすひても−いまはなにせむ−いよのゆの−めくるかすにも−あまるよはひは |
08604 |
未入力 正徹 (xxx)
いつる湯に水の煙そ時しらぬ山はありまの末の川なみ
いつるゆに−みつのけふりそ−ときしらぬ−やまはありまの−すゑのかはなみ |
08605 |
未入力 正徹 (xxx)
ありま山仏の身よりいたす湯に清きさとりもなとかなからん
ありまやま−ほとけのみより−いたすゆに−きよきさとりも−なとかなからむ |
08606 |
未入力 正徹 (xxx)
此比は伊与の湯けたの五百八十にかそへて人の年を祝へり
このころは−いよのゆけたの−いほやそに−かそへてひとの−としをいはへり |
08607 |
未入力 正徹 (xxx)
くま野路や雪のうちにもわきかへる湯の峰かすむ冬の山風
くまのちや−ゆきのうちにも−わきかへる−ゆのみねかすむ−ふゆのやまかせ |
08608 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたの雪に契りてあらかねの土よりいてしふしの四方山
ひさかたの−ゆきにちきりて−あらかねの−つちよりいてし−ふしのよもやま |
08609 |
未入力 正徹 (xxx)
おく霜の我か身にふりぬかささきのわたせる橋もなかき夜のそて
おくしもの−わかみにふりぬ−かささきの−わたせるはしも−なかきよのそて |
08610 |
未入力 正徹 (xxx)
はし鷹も久にあひ見ん君かため千世をこめてやと屋かへるらん
はしたかも−ひさにあひみむ−きみかため−ちよをこめてや−とやかへるらむ |
08611 |
未入力 正徹 (xxx)
たえねたたうきて此世を杉舟の身さへ朽ちぬるしるしたになし
たえねたた−うきてこのよを−すきふねの−みさへくちぬる−しるしたになし |
08612 |
未入力 正徹 (xxx)
見しはみな遠山鳥のおろかにも行末なかくたのむ老かな
みしはみな−とほやまとりの−おろかにも−ゆくすゑなかく−たのむおいかな |
08613 |
未入力 正徹 (xxx)
心をはそめすよいかかしかまなるかちの衣は身にかかれとも
こころをは−そめすよいかか−しかまなる−かちのころもは−みにかかれとも |
08614 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちねたた苔の衣の身にあるも人の岩木にかかるとそ見ん
くちねたた−こけのころもの−みにあるも−ひとのいはきに−かかるとそみむ |
08615 |
未入力 正徹 (xxx)
うは玉の色を衣の袖もひすまよふ心のやみの夜の雨
うはたまの−いろをころもの−そてもひす−まよふこころの−やみのよのあめ |
08616 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりの世の市にかくれし仙人も昔かたりの年そつもれる
ちりのよの−いちにかくれし−やまひとも−むかしかたりの−としそつもれる |
08617 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふれはかしらの霜をこすけゆふ枕の上におかぬ夜もなし
としふれは−かしらのしもを−こすけゆふ−まくらのうへに−おかぬよもなし |
08618 |
未入力 正徹 (xxx)
なにかせん魚なき水は清くとも此世に友のとひこさりせは
なにかせむ−うをなきみつは−きよくとも−このよにともの−とひこさりせは |
08619 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてか野中のし水ぬるき世もありしを忍ふうき身なるらん
いつまてか−のなかのしみつ−ぬるきよも−ありしをしのふ−うきみなるらむ |
08620 |
未入力 正徹 (xxx)
うきせにもよも立ちはてし早川に舟なかしたるあまの此身は
うきせにも−よもたちはてし−はやかはに−ふねなかしたる−あまのこのみは |
08621 |
未入力 正徹 (xxx)
あら海の浪に舟木はうすくとものらぬ命をたのみやはせん
あらうみの−なみにふなきは−うすくとも−のらぬいのちを−たのみやはせむ |
08622 |
未入力 正徹 (xxx)
草のかけ苔の下にもうつもれぬ名を思ひしは昔なりけり
くさのかけ−こけのしたにも−うつもれぬ−なをおもひしは−むかしなりけり |
08623 |
未入力 正徹 (xxx)
消えはてぬ露の光と見るはかりかへの草葉に残る灯
きえはてぬ−つゆのひかりと−みるはかり−かへのくさはに−のこるともしひ |
08624 |
未入力 正徹 (xxx)
かすみ行く老のひかめの輪のうちに見えぬ夜もなき灯の影
かすみゆく−おいのひかめの−わのうちに−みえぬよもなき−ともしひのかけ |
08625 |
未入力 正徹 (xxx)
照すまてかかくることはかたくとも法にそむけぬ灯もかな
てらすまて−かかくることは−かたくとも−のりにそむけぬ−ともしひもかな |
08626 |
未入力 正徹 (xxx)
そむけおくかへなる草のことなしに過きてくやしき世世の灯
そむけおく−かへなるくさの−ことなしに−すきてくやしき−よよのともしひ |
08627 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてかこれにもそはむ深けはつるわか影うすき夜はの灯
いつまてか−これにもそはむ−ふけはつる−わかかけうすき−よはのともしひ |
08628 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬまも消ゆれはきゆる灯の中にすむてふ虫の命を
あけぬまも−きゆれはきゆる−ともしひの−うちにすむてふ−むしのいのちを |
08629 |
未入力 正徹 (xxx)
かかくれは消えぬや露にまさるらん壁の草葉にかかる灯
かかくれは−きえぬやつゆに−まさるらむ−かへのくさはに−かかるともしひ |
08630 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねむ窓うつ雨に灯のみしかくもえてなかき夜の空
いかかねむ−まとうつあめに−ともしひの−みしかくもえて−なかきよのそら |
08631 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬまはうつろひ消ゆな月草の花に色かるともし火の露
あけぬまは−うつろひきゆな−つきくさの−はなにいろかる−ともしひのつゆ |
08632 |
未入力 正徹 (xxx)
あけよかし消えなんとして光ます夜はの灯くらきまくらは
あけよかし−きえなむとして−ひかります−よはのともしひ−くらきまくらは |
08633 |
未入力 正徹 (xxx)
ともすてふ窓に光はうすくとも消えやらぬまをしはし友なへ
ともすてふ−まとにひかりは−うすくとも−きえやらぬまを−しはしともなへ |
08634 |
未入力 正徹 (xxx)
かかけてもみしかくもゆる灯にあすの雨しる夜はの窓かな
かかけても−みしかくもゆる−ともしひに−あすのあめしる−よはのまとかな |
08635 |
未入力 正徹 (xxx)
ね屋もあれ窓もふりぬと灯の光にならふほしの影かな
ねやもあれ−まともふりぬと−ともしひの−ひかりにならふ−ほしのかけかな |
08636 |
未入力 正徹 (xxx)
かかけても影そけたれん紙の窓にすきたる月の残る灯
かかけても−かけそけたれむ−かみのまとに−すきたるつきの−のこるともしひ |
08637 |
未入力 正徹 (xxx)
あれにたる窓の北なる星月夜又灯をならへてそみる
あれにたる−まとのきたなる−ほしつきよ−またともしひを−ならへてそみる |
08638 |
未入力 正徹 (xxx)
明けやらぬ雨に窓うつかへに耳きくもかすかにのこるともし火
あけやらぬ−あめにまとうつ−かへにみみ−きくもかすかに−のこるともしひ |
08639 |
未入力 正徹 (xxx)
灯をかへのすきまになひかして影うすくこき窓の北風
ともしひを−かへのすきまに−なひかして−かけうすくこき−まとのきたかせ |
08640 |
未入力 正徹 (xxx)
くらくなり又あかくなる灯の消えまくちかく夜はふかくして
くらくなり−またあかくなる−ともしひの−きえまくちかく−よはふかくして |
08641 |
未入力 正徹 (xxx)
まなふとももとの心のくらき身はかくてや杉の窓の灯
まなふとも−もとのこころの−くらきみは−かくてやすきの−まとのともしひ |
08642 |
未入力 正徹 (xxx)
こぬ人はうき灯の花そめをかへなる草の袂にそみる
こぬひとは−うきともしひの−はなそめを−かへなるくさの−たもとにそみる |
08643 |
未入力 正徹 (xxx)
灯の影もすくにと身をそ思ふ窓のすきまの風ふかねまは
ともしひの−かけもすくにと−みをそおもふ−まとのすきまの−かせふかねまは |
08644 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるかかへにおふてふ草の名のみなしろくなる灯のもと
あけぬるか−かへにおふてふ−くさのなの−みなしろくなる−ともしひのもと |
08645 |
未入力 正徹 (xxx)
夜やふかきたれにとはまし灯の残りおほくもさむる夢かな
よやふかき−たれにとはまし−ともしひの−のこりおほくも−さむるゆめかな |
08646 |
未入力 正徹 (xxx)
おもかけの残る灯夢覚めて古りにし人の玉かとそみる
おもかけの−のこるともしひ−ゆめさめて−ふりにしひとの−たまかとそみる |
08647 |
未入力 正徹 (xxx)
槙の戸のすきまの風も灯の影ならはしにのこる夜はかな
まきのとの−すきまのかせも−ともしひの−かけならはしに−のこるよはかな |
08648 |
未入力 正徹 (xxx)
かかけてそ閨もにきはふ音なくてあまりしつまる夜はの灯
かかけてそ−ねやもにきはふ−おとなくて−あまりしつまる−よはのともしひ |
08649 |
未入力 正徹 (xxx)
友もあらし油はつきて光そふ閨そ夜ふかき秋のともし火
とももあらし−あふらはつきて−ひかりそふ−ねやそよふかき−あきのともしひ |
08650 |
未入力 正徹 (xxx)
うこかさて心のやとり身をおけはけふの春日に過くる百年
うこかさて−こころのやとり−みをおけは−けふのはるひに−すくるももとせ |
08651 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かねの苔の雫も木かくれておとに心をすます宿かな
いはかねの−こけのしつくも−こかくれて−おとにこころを−すますやとかな |
08652 |
未入力 正徹 (xxx)
すみあかし山ならすとも心から身をしつかにと思ふやとりは
すみあかし−やまならすとも−こころから−みをしつかにと−おもふやとりは |
08653 |
未入力 正徹 (xxx)
かたるへき人しとはねは思ふことなきにもにたるすみかなりけり
かたるへき−ひとしとはねは−おもふこと−なきにもにたる−すみかなりけり |
08654 |
未入力 正徹 (xxx)
木かくれてすみやははてん絶えすきる杣のかり屋のしはしはかりは
こかくれて−すみやははてむ−たえすきる−そまのかりやの−しはしはかりは |
08655 |
未入力 正徹 (xxx)
庵ちかく鳥の鳴く日もまれにして林あれ行く風の音かな
いほちかく−とりのなくひも−まれにして−はやしあれゆく−かせのおとかな |
08656 |
未入力 正徹 (xxx)
うかるへき軒はの松の風をたにきかぬ日おほくくらす宿かな
うかるへき−のきはのまつの−かせをたに−きかぬひおほく−くらすやとかな |
08657 |
未入力 正徹 (xxx)
たよりありて人すむへくも人やみぬ嵐のおくの苔ふかきそて
たよりありて−ひとすむへくも−ひとやみぬ−あらしのおくの−こけふかきそて |
08658 |
未入力 正徹 (xxx)
ひたすらに山かたつかぬ宿なから里はなれなる竹のおくかな
ひたすらに−やまかたつかぬ−やとなから−さとはなれなる−たけのおくかな |
08659 |
未入力 正徹 (xxx)
すみかかはたたよく心しつかにて身の涼しきそ風にしられぬ
すみかかは−たたよくこころ−しつかにて−みのすすしきそ−かせにしられぬ |
08660 |
未入力 正徹 (xxx)
よるよるそかたらひ明す我か影のあひすみしけるやとの灯
よるよるそ−かたらひあかす−わかかけの−あひすみしける−やとのともしひ |
08661 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかくす宿ともたのむうつほ木のむなし心をはらふ山かせ
みをかくす−やとともたのむ−うつほきの−むなしこころを−はらふやまかせ |
08662 |
未入力 正徹 (xxx)
いかてかく我を岩木となす庵は心もなきを人のとふらん
いかてかく−われをいはきと−なすいほは−こころもなきを−ひとのとふらむ |
08663 |
未入力 正徹 (xxx)
みねに出つるほしとや見まし暁の雲にそむくる宿の灯
みねにいつる−ほしとやみまし−あかつきの−くもにそむくる−やとのともしひ |
08664 |
未入力 正徹 (xxx)
なきかけをふたりやとはむ水の音松の嵐の友をのみさは
なきかけを−ふたりやとはむ−みつのおと−まつのあらしの−ともをのみさは |
08665 |
未入力 正徹 (xxx)
花そのは跡こそみえね志賀の浦松に昔のことやとはまし
はなそのは−あとこそみえね−しかのうら−まつにむかしの−ことやとはまし |
08666 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるさととならのあすかにとふ鳥のこゑも昔の友や恋しき
ふるさとと−ならのあすかに−とふとりの−こゑもむかしの−ともやこひしき |
08667 |
未入力 正徹 (xxx)
みかの原郡の都はかりそめに住みこし里も道そのこれる
みかのはら−くにのみやこは−かりそめに−すみこしさとも−みちそのこれる |
08668 |
未入力 正徹 (xxx)
今はとてすめるなにはの宮こ鳥さそうち川の汀こふらん
いまはとて−すめるなにはの−みやことり−さそうちかはの−みきはこふらむ |
08669 |
未入力 正徹 (xxx)
けふまても住めは住むかは古郷とならのあすかのあすしらぬ世に
けふまても−すめはすむかは−ふるさとと−ならのあすかの−あすしらぬよに |
08670 |
未入力 正徹 (xxx)
名そのこるいつくを見るも古郷となれる所は跡かたもなし
なそのこる−いつくをみるも−ふるさとと−なれるところは−あとかたもなし |
08671 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひやれなれし都を古郷となして住みうき山の庵を
おもひやれ−なれしみやこを−ふるさとと−なしてすみうき−やまのいほりを |
08672 |
未入力 正徹 (xxx)
たをやめの世世ふる袖のかたみとやならの飛鳥に雲残るらん
たをやめの−よよふるそての−かたみとや−ならのあすかに−くものこるらむ |
08673 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれすやいまをひらのの杉し世はありしなにはの古郷のかみ
わすれすや−いまをひらのの−すきしよは−ありしなにはの−ふるさとのかみ |
08674 |
未入力 正徹 (xxx)
むかし今かはるふちせを世にやみぬならのあすかに河はなけれと
むかしいま−かはるふちせを−よにやみぬ−ならのあすかに−かははなけれと |
08675 |
未入力 正徹 (xxx)
あれはてぬ昔そ猶も古郷とならの葉もりの鹿のふしとは
あれはてぬ−むかしそなほも−ふるさとと−ならのはもりの−しかのふしとは |
08676 |
未入力 正徹 (xxx)
住みはつる人のふりにしかすよりはあれさりけりな軒はもる月
すみはつる−ひとのふりにし−かすよりは−あれさりけりな−のきはもるつき |
08677 |
未入力 正徹 (xxx)
あれわたる里はあすかに飛ふ鳥もいく世すたちもこゑのこるらん
あれわたる−さとはあすかに−とふとりも−いくよすたちも−こゑのこるらむ |
08678 |
未入力 正徹 (xxx)
あさちふも道は枕にのこるとやたれに見ゆらん古郷の夢
あさちふも−みちはまくらに−のこるとや−たれにみゆらむ−ふるさとのゆめ |
08679 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ人もたえにし秋の古郷とならの落葉のしたの通路
すむひとも−たえにしあきの−ふるさとと−ならのおちはの−したのかよひち |
08680 |
未入力 正徹 (xxx)
ここよりや古郷なりきかし原の宮のあれにし世世のはしめは
ここよりや−ふるさとなりき−かしはらの−みやのあれにし−よよのはしめは |
08681 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるさととならのはもりの神さひて山風わくる道のささ原
ふるさとと−ならのはもりの−かみさひて−やまかせわくる−みちのささはら |
08682 |
未入力 正徹 (xxx)
月はとへ見し世はかなくさめぬともたれにかたらん古郷の夢
つきはとへ−みしよはかなく−さめぬとも−たれにかたらむ−ふるさとのゆめ |
08683 |
未入力 正徹 (xxx)
見し人のなきかおほかる古郷にあるははかなき道芝の露
みしひとの−なきかおほかる−ふるさとに−あるははかなき−みちしはのつゆ |
08684 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ人もふるの中路いつの世か篠わけさりしちりはらひけん
すむひとも−ふるのなかみち−いつのよか−ささわけさりし−ちりはらひけむ |
08685 |
未入力 正徹 (xxx)
百敷のうてなやあらす高円の尾上の竹の代代の山かせ
ももしきの−うてなやあらす−たかまとの−をのへのたけの−よよのやまかせ |
08686 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるさとのこれや柱の跡の石むなしき野へに草かくれつつ
ふるさとの−これやはしらの−あとのいし−むなしきのへに−くさかくれつつ |
08687 |
未入力 正徹 (xxx)
道もせに年年草はたねそひて見し世そかかる古郷の夢
みちもせに−としとしくさは−たねそひて−みしよそかかる−ふるさとのゆめ |
08688 |
未入力 正徹 (xxx)
露そちる浪にあらさぬ磯の上ふるき宮このおくのささ原
つゆそちる−なみにあらさぬ−いそのかみ−ふるきみやこの−おくのささはら |
08689 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑさりし松も嵐をやとすなり猶すみすてしあるる古郷
うゑさりし−まつもあらしを−やとすなり−なほすみすてし−あるるふるさと |
08690 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる志かのから崎ふるき世をとひてそかへるにほのうらなみ
まつたてる−しかのからさき−ふるきよを−とひてそかへる−にほのうらなみ |
08691 |
未入力 正徹 (xxx)
尾上にはのこる松のみ高円の宮のふる道あふ人もなし
をのへには−のこるまつのみ−たかまとの−みやのふるみち−あふひともなし |
08692 |
未入力 正徹 (xxx)
これまてやなにほの宮のたかき屋に煙をそへてみつの浜松
これまてや−なにほのみやの−たかきやに−けふりをそへて−みつのはままつ |
08693 |
未入力 正徹 (xxx)
から崎やいく世の人にふりぬらん真木の戸川の明ほのの松
からさきや−いくよのひとに−ふりぬらむ−まきのとかはの−あけほののまつ |
08694 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてか都の風のかよひけんあれにし磯のかみ寺の松
いつまてか−みやこのかせの−かよひけむ−あれにしいその−かみてらのまつ |
08695 |
未入力 正徹 (xxx)
軒の松おち葉をふきて古郷のあれまくをしむ嵐とそみる
のきのまつ−おちはをふきて−ふるさとの−あれまくをしむ−あらしとそみる |
08696 |
未入力 正徹 (xxx)
うらみすや里さへ世世にふるされて山の嵐のとへるはかりは
うらみすや−さとさへよよに−ふるされて−やまのあらしの−とへるはかりは |
08697 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑおきし昔の人や古郷の草木になるる雨となりけん
うゑおきし−むかしのひとや−ふるさとの−くさきになるる−あめとなりけむ |
08698 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷は思ひはれせぬ雨の底いく世の人の雲おほふらん
ふるさとは−おもひはれせぬ−あめのそこ−いくよのひとの−くもおほふらむ |
08699 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから声をそはこふ世世の人雲となりにし古郷の雨
よもすから−こゑをそはこふ−よよのひと−くもとなりにし−ふるさとのあめ |
08700 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷の軒もあらはにあれぬれはしのふにたへぬ草そ枯行く
ふるさとの−のきもあらはに−あれぬれは−しのふにたへぬ−くさそかれゆく |
08701 |
未入力 正徹 (xxx)
さひしさを軒端の山の松風にまかせはつれは吹くとしもなし
さひしさを−のきはのやまの−まつかせに−まかせはつれは−ふくとしもなし |
08702 |
未入力 正徹 (xxx)
たれもわれいつまて草の庵とは見るらんものをかへに生ひつつ
たれもわれ−いつまてくさの−いほりとは−みるらむものを−かへにおひつつ |
08703 |
未入力 正徹 (xxx)
草の庵たもとにかかる糸水に音なき雨を今そおとろく
くさのいほ−たもとにかかる−いとみつに−おとなきあめを−いまそおとろく |
08704 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐山あらしやすきもはかなきは草のおとろの道のへの庵
あらしやま−あらしやすきも−はかなきは−くさのおとろの−みちのへのいほ |
08705 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの雨きかぬを見るも袖ぬれぬ草ふく軒のせはき住居に
よはのあめ−きかぬをみるも−そてぬれぬ−くさふくのきの−せはきすまひに |
08706 |
未入力 正徹 (xxx)
かりにすむ身も朽ちはては苔ふりて庵や草のつかにならまし
かりにすむ−みもくちはては−こけふりて−いほりやくさの−つかにならまし |
08707 |
未入力 正徹 (xxx)
皇もかやふく宮にませあれは猶身におはぬ庵にそ住む
すへらきも−かやふくみやに−ませあれは−なほみにおはぬ−いほりにそすむ |
08708 |
未入力 正徹 (xxx)
もりやすく雨も心に思ふらし草ふく宿のあるる軒はを
もりやすく−あめもこころに−おもふらし−くさふくやとの−あるるのきはを |
08709 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉の花さくの庵かなさそ雨露もめくみおきけん
ことのはの−はなさくくさの−いほりかな−さそあめつゆも−めくみおきけむ |
08710 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれきて身にこそとほれかやか庵もる夜の雨の草の衣は
みたれきて−みにこそとほれ−かやかいほ−もるよのあめの−くさのころもは |
08711 |
未入力 正徹 (xxx)
夜の雨にひとり思へはいほふきし千種にうきは此世なりけり
よるのあめに−ひとりおもへは−いほふきし−ちくさにうきは−このよなりけり |
08712 |
未入力 正徹 (xxx)
年ふれは庵のかや葺土と成りて又草生ふる雨そもりこぬ
としふれは−いほのかやふき−つちとなりて−またくさおふる−あめそもりこぬ |
08713 |
未入力 正徹 (xxx)
陰たのむ松の落葉のふく宿を嵐もしらす人もとひこす
かけたのむ−まつのおちはの−ふくやとを−あらしもしらす−ひともとひこす |
08714 |
未入力 正徹 (xxx)
谷かくれおとろか下のささの庵うきふしありと誰にしられん
たにかくれ−おとろかしたの−ささのいほ−うきふしありと−たれにしられむ |
08715 |
未入力 正徹 (xxx)
木のみおち木のめたつをもいまたみす林の陰の庵にすめとも
このみおち−このめたつをも−いまたみす−はやしのかけの−いほにすめとも |
08716 |
未入力 正徹 (xxx)
岩のほる苔の衣の玉たすき夕霧いとふ山の木からし
いはのほる−こけのころもの−たまたすき−ゆふきりいとふ−やまのこからし |
08717 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染の夕の山の寺の門たたかぬ袖に月そさしくる
すみそめの−ゆふへのやまの−てらのかと−たたかぬそてに−つきそさしくる |
08718 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘とほきとよらのつつみ夜をこめて西なる山に雲そかかれる
かねとほき−とよらのつつみ−よをこめて−にしなるやまに−くもそかかれる |
08719 |
未入力 正徹 (xxx)
泊瀬川つねに心をあらひつつ御戸の錦にかけし思ひそ
はつせかは−つねにこころを−あらひつつ−みとのにしきに−かけしおもひそ |
08720 |
未入力 正徹 (xxx)
灯の影もうかひてうこきなき法の石井の水そふり行く
ともしひの−かけもうかひて−うこきなき−のりのいしゐの−みつそふりゆく |
08721 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き世の祇の薗ふの四のかねききつたへても夢や覚さん
とほきよの−かみのそのふの−よつのかね−ききつたへても−ゆめやさまさむ |
08722 |
未入力 正徹 (xxx)
都にもみなれぬ寺はおほく成りてふりし所そいととあれ行く
みやこにも−みなれぬてらは−おほくなりて−ふりしところそ−いととあれゆく |
08723 |
未入力 正徹 (xxx)
うつりきて都も寺もはしまりぬ我か立つ杣とつくる百敷
うつりきて−みやこもてらも−はしまりぬ−わかたつそまと−つくるももしき |
08724 |
未入力 正徹 (xxx)
榎のは井に月をやとしてかつらきの寺より西にのこる白玉
えのはゐに−つきをやとして−かつらきの−てらよりにしに−のこるしらたま |
08725 |
未入力 正徹 (xxx)
跡そなきゆらく玉のを年をへて浪のみのこる志かの古寺
あとそなき−ゆらくたまのを−としをへて−なみのみのこる−しかのふるてら |
08726 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘も又こゑやはかはるなにはかた入江のあしの世世の浦かせ
かねもまた−こゑやはかはる−なにはかた−いりえのあしの−よよのうらかせ |
08727 |
未入力 正徹 (xxx)
松しをる嵐にしつむ入相のこゑよりたかき峰のふる寺
まつしをる−あらしにしつむ−いりあひの−こゑよりたかき−みねのふるてら |
08728 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれしな尾上の鐘をぬることも七夜なからの月に聞きつる
わすれしな−をのへのかねを−ぬることも−ななよなからの−つきにききつる |
08729 |
未入力 正徹 (xxx)
雨をたかをやましとたに都よりみ山の鐘に思ひおこせん
あめをたか−をやましとたに−みやこより−みやまのかねに−おもひおこせむ |
08730 |
未入力 正徹 (xxx)
今も香はのこりやすらん橘の名におふ寺の法のたもとに
いまもかは−のこりやすらむ−たちはなの−なにおふてらの−のりのたもとに |
08731 |
未入力 正徹 (xxx)
人わたす法そのこれるなからなる橋もと寺の橋はたえても
ひとわたす−のりそのこれる−なからなる−はしもとてらの−はしはたえても |
08732 |
未入力 正徹 (xxx)
いててみよ寺の前なる春日野のとふひも法の光ならすや
いててみよ−てらのまへなる−かすかのの−とふひものりの−ひかりならすや |
08733 |
未入力 正徹 (xxx)
松さわく峰の嵐も吹きしきて入相のかねをうつむ雲かな
まつさわく−みねのあらしも−ふきしきて−いりあひのかねを−うつむくもかな |
08734 |
未入力 正徹 (xxx)
高根より雲をさそひてを泊瀬や入相の鐘をしく嵐かな
たかねより−くもをさそひて−をはつせや−いりあひのかねを−しくあらしかな |
08735 |
未入力 正徹 (xxx)
いかるかの宮のふる道猶にほふたち花寺の花の下かせ
いかるかの−みやのふるみち−なほにほふ−たちはなてらの−はなのしたかせ |
08736 |
未入力 正徹 (xxx)
泊せ川あはれはかけよ七十になほ二本の杉のよはひを
はつせかは−あはれはかけよ−ななそちに−なほふたもとの−すきのよはひを |
08737 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世へぬ今の都の杉木とりたてしなにはの寺のはしめは
いくよへぬ−いまのみやこの−すききとり−たてしなにはの−てらのはしめは |
08738 |
未入力 正徹 (xxx)
浪かけぬ磯の上寺かたはかりふる野にあれて住む人もなし
なみかけぬ−いそのかみてら−かたはかり−ふるのにあれて−すむひともなし |
08739 |
未入力 正徹 (xxx)
しなかとりいその上山杉ふりて寺もかるもの床と成りぬる
しなかとり−いそのかみやま−すきふりて−てらもかるもの−とことなりぬる |
08740 |
未入力 正徹 (xxx)
なにはかた浦ゆく舟のくらき夜も寺の前けつあまのいさり火
なにはかた−うらゆくふねの−くらきよも−てらのまへけつ−あまのいさりひ |
08741 |
未入力 正徹 (xxx)
三国へてわさとうき世のさかののをてらす仏の光をそみる
みくにへて−わさとうきよの−さかののを−てらすほとけの−ひかりをそみる |
08742 |
未入力 正徹 (xxx)
はれくもり雲かつらきの山嵐とよらの寺にかけぬ日もなし
はれくもり−くもかつらきの−やまあらし−とよらのてらに−かけぬひもなし |
08743 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきや豊浦の寺井汲みたえてしら玉しつく水もあれにき
かつらきや−とよらのてらゐ−くみたえて−しらたましつく−みつもあれにき |
08744 |
未入力 正徹 (xxx)
ともす日もまゆの光も軒うつむ霧に過きたる夕暮の山
ともすひも−まゆのひかりも−のきうつむ−きりにすきたる−ゆふくれのやま |
08745 |
未入力 正徹 (xxx)
名もしるし室の戸ふかき山寺のまへなる寺はつつらをりして
なもしるし−むろのとふかき−やまてらの−まへなるてらは−つつらをりして |
08746 |
未入力 正徹 (xxx)
しもとゆふこやかつらきの峰ならんとよらのかたの西の白雲
しもとゆふ−こやかつらきの−みねならむ−とよらのかたの−にしのしらくも |
08747 |
未入力 正徹 (xxx)
日の影をみのおの山よ雨ならぬ時そともなき滝は音して
ひのかけを−みのおのやまよ−あめならぬ−ときそともなき−たきはおとして |
08748 |
未入力 正徹 (xxx)
法なれやみたけのかねも音そへて落つる吉野の滝の岩浪
のりなれや−みたけのかねも−おとそへて−おつるよしのの−たきのいはなみ |
08749 |
未入力 正徹 (xxx)
蓑お山滝ふきちらす嵐ゆゑちかき岩木はむら雨そふる
みのおやま−たきふきちらす−あらしゆゑ−ちかきいはきは−むらさめそふる |
08750 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかみ岩かきあかの水落ちてしきみをむすふ滝の白糸
みねたかみ−いはかきあかの−みつおちて−しきみをむすふ−たきのしらいと |
08751 |
未入力 正徹 (xxx)
久米寺を立出てて遠く見わたせは山かつらきの雲の岩橋
くめてらを−たちいててとほく−みわたせは−やまかつらきの−くものいははし |
08752 |
未入力 正徹 (xxx)
河上の山のかせきやかりにきて笠置を法の水すましけん
かはかみの−やまのかせきや−かりにきて−かさきをのりの−みつすましけむ |
08753 |
未入力 正徹 (xxx)
を初せやくらきゆふはかしたはれてあくる尾上に月そかたふく
をはつせや−くらきゆふはか−したはれて−あくるをのへに−つきそかたふく |
08754 |
未入力 正徹 (xxx)
花さかぬ橘寺のあけほのに袖の香ならてにほふともし火
はなさかぬ−たちはなてらの−あけほのに−そてのかならて−にほふともしひ |
08755 |
未入力 正徹 (xxx)
九の枝の光か玉かさる花のうてなをみかきそへつつ
ここのつの−えたのひかりか−たまかさる−はなのうてなを−みかきそへつつ |
08756 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬれと消えぬ火の影寺にみえてなにはつくらき興のつり舟
あけぬれと−きえぬひのかけ−てらにみえて−なにはつくらき−おきのつりふね |
08757 |
未入力 正徹 (xxx)
法のため住みこし人はかはら屋にのこるもうすき世世のともし火
のりのため−すみこしひとは−かはらやに−のこるもうすき−よよのともしひ |
08758 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山ともすか上やいたたきの仏のてらす光なるらん
はつせやま−ともすかうへや−いたたきの−ほとけのてらす−ひかりなるらむ |
08759 |
未入力 正徹 (xxx)
夜のみか聖のみこのともしおく難波の寺にきえぬ火の影
よるのみか−ひしりのみこの−ともしおく−なにはのてらに−きえぬひのかけ |
08760 |
未入力 正徹 (xxx)
高野山月こそはあれ石の室いてんや遠き暁のかね
たかのやま−つきこそはあれ−いしのむろ−いてむやとほき−あかつきのかね |
08761 |
未入力 正徹 (xxx)
夜そしらぬ鐘はあれとも声きかぬ此古寺のちかきね覚に
よそしらぬ−かねはあれとも−こゑきかぬ−このふるてらの−ちかきねさめに |
08762 |
未入力 正徹 (xxx)
みをつくしたてるはあれと難波江や鐘こそ寺のしるしとはなれ
みをつくし−たてるはあれと−なにはえや−かねこそてらの−しるしとはなれ |
08763 |
未入力 正徹 (xxx)
芦の葉はもゆる難波の春の夢かかるもまたぬ鐘のこゑかな
あしのはは−もゆるなにはの−はるのゆめ−かかるもまたぬ−かねのこゑかな |
08764 |
未入力 正徹 (xxx)
紫の寺に金の光さすゆふ日をいそけ入相のこゑ
むらさきの−てらにこかねの−ひかりさす−ゆふひをいそけ−いりあひのこゑ |
08765 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山江にこもらすほみわ河に夕の鐘のこゑや聞くらん
はつせやま−えにこもらすは−みわかはに−ゆふへのかねの−こゑやきくらむ |
08766 |
未入力 正徹 (xxx)
仏ます前の木のまにともす火ののほれはくたる峰の入相
ほとけます−まへのこのまに−ともすひの−のほれはくたる−みねのいりあひ |
08767 |
未入力 正徹 (xxx)
明ほのにならのあすかは声たえてとよらの鐘そ西にのこれる
あけほのに−ならのあすかは−こゑたえて−とよらのかねそ−にしにのこれる |
08768 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐山ふもとの寺のかねのこゑむかしやひとりさひしかりけん
あらしやま−ふもとのてらの−かねのこゑ−むかしやひとり−さひしかりけむ |
08769 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂にさそ聞えけん足引の山科寺といひし世のかね
あふさかに−さそきこえけむ−あしひきの−やましなてらと−いひしよのかね |
08770 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからたえぬ御法の声のうちに又うちそふる暁の鐘
よもすから−たえぬみのりの−こゑのうちに−またうちそふる−あかつきのかね |
08771 |
未入力 正徹 (xxx)
きくらめやふる雨の夜の草の庵西にまちかき入相のかね
きくらめや−ふるあめのよの−くさのいほ−にしにまちかき−いりあひのかね |
08772 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山をのへの雲のおくのかね伏見のくれの嵐をそとふ
はつせやま−をのへのくもの−おくのかね−ふしみのくれの−あらしをそとふ |
08773 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はなるしのふにましる松ふりて鐘に苔むす声むもるなり
のきはなる−しのふにましる−まつふりて−かねにこけむす−こゑむもるなり |
08774 |
未入力 正徹 (xxx)
をはつせやをのへの声はむかへともこたへやはするみよしののかね
をはつせや−をのへのこゑは−むかへとも−こたへやはする−みよしののかね |
08775 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ人はめつらしけなき声とこそ聞えんかねに心とめつつ
すむひとは−めつらしけなき−こゑとこそ−きこえむかねに−こころとめつつ |
08776 |
未入力 正徹 (xxx)
よさの海や竜のともすと見えそ行く入相ののちのあまのいさり火
よさのうみや−たつのともすと−みえそゆく−いりあひののちの−あまのいさりひ |
08777 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ川岸に柳のかたよりにむすほほれくる鐘のこゑかな
はつせかは−きしにやなきの−かたよりに−むすほほれくる−かねのこゑかな |
08778 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘のこゑむかひの寺と聞きし夜の宮も跡なきうちの川橋
かねのこゑ−むかひのてらと−ききしよの−みやもあとなき−うちのかははし |
08779 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきやとよらの堤風おちてゆく人おくるかねのこゑかな
かつらきや−とよらのつつみ−かせおちて−ゆくひとおくる−かねのこゑかな |
08780 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野川岩きりとほしきこゆなり鐘のみたけの入相の声
よしのかは−いはきりとほし−きこゆなり−かねのみたけの−いりあひのこゑ |
08781 |
未入力 正徹 (xxx)
さかの山くるるをのへの川音はかねに消行く浪のしらあわ
さかのやま−くるるをのへの−かはおとは−かねにきえゆく−なみのしらあわ |
08782 |
未入力 正徹 (xxx)
声たえぬ此白河に勝りたる寺ありし世の六所のかね
こゑたえぬ−このしらかはに−まさりたる−てらありしよの−むところのかね |
08783 |
未入力 正徹 (xxx)
なにはかた寺もはしめの鐘ならはこれよりさきに聞く声やなき
なにはかた−てらもはしめの−かねならは−これよりさきに−きくこゑやなき |
08784 |
未入力 正徹 (xxx)
水上の笠置のかねも山あひをいつみ河風くれさそふらん
みなかみの−かさきのかねも−やまあひを−いつみかはかせ−くれさそふらむ |
08785 |
未入力 正徹 (xxx)
をはつせや夜ふかき鐘のこゑをみるみ山おろしに在明の月
をはつせや−よふかきかねの−こゑをみる−みやまおろしに−ありあけのつき |
08786 |
未入力 正徹 (xxx)
つくかねの十声一こゑやみはれてうき雲いつる山のはの月
つくかねの−とこゑひとこゑ−やみはれて−うきくもいつる−やまのはのつき |
08787 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山尾上の鐘も大悲者の世をあはれみの声かとそきく
はつせやま−をのへのかねも−たいひしやの−よをあはれみの−こゑかとそきく |
08788 |
未入力 正徹 (xxx)
なには津に立つや此寺いにしへの法もはしめそ松のことのは
なにはつに−たつやこのてら−いにしへの−のりもはしめそ−まつのことのは |
08789 |
未入力 正徹 (xxx)
色かへぬたねをやなけしもろこしの法も高野の松の生末
いろかへぬ−たねをやなけし−もろこしの−のりもたかのの−まつのおひすゑ |
08790 |
未入力 正徹 (xxx)
ならの葉のふるき都にかはらぬや七の寺の庭の松かせ
ならのはの−ふるきみやこに−かはらぬや−ななつのてらの−にはのまつかせ |
08791 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世へん亀井にうつる松のはのちりうせぬ風を法に契りて
いくよへむ−かめゐにうつる−まつのはの−ちりうせぬかせを−のりにちきりて |
08792 |
未入力 正徹 (xxx)
岩こゆる河浪しるし吹きおろす初せの桧原青きあらしに
いはこゆる−かはなみしるし−ふきおろす−はつせのひはら−あをきあらしに |
08793 |
未入力 正徹 (xxx)
難波かた浪の淡路に声消えぬいこま嵐や鐘さそふらん
なにはかた−なみのあはちに−こゑきえぬ−いこまあらしや−かねさそふらむ |
08794 |
未入力 正徹 (xxx)
吉野山雲にかけたる橋つめに嵐吹きこすを泊せの雪
よしのやま−くもにかけたる−はしつめに−あらしふきこす−をはつせのゆき |
08795 |
未入力 正徹 (xxx)
夕浪もたかき初せの川あらし吹きのほる鐘やをのへこゆらん
ゆふなみも−たかきはつせの−かはあらし−ふきのほるかねや−をのへこゆらむ |
08796 |
未入力 正徹 (xxx)
紅葉葉もまちてやちらん嵐山秋はてん日の法の莚に
もみちはも−まちてやちらむ−あらしやま−あきはてむひの−のりのむしろに |
08797 |
未入力 正徹 (xxx)
さきちると見るや初せの河嵐夕花かくるせせの白浪
さきちると−みるやはつせの−かはあらし−ゆふはなかくる−せせのしらなみ |
08798 |
未入力 正徹 (xxx)
寺もふり人もかへらてかつらきやとよらの竹に雲そおりくる
てらもふり−ひともかへらて−かつらきや−とよらのたけに−くもそおりくる |
08799 |
未入力 正徹 (xxx)
寺ありしとよらの跡か今の世のかつらき山の竹の一むら
てらありし−とよらのあとか−いまのよの−かつらきやまの−たけのひとむら |
08800 |
未入力 正徹 (xxx)
とらにのみおきつつ峰の山寺はねにふしまちてをしき月かな
とらにのみ−おきつつみねの−やまてらは−ねにふしまちて−をしきつきかな |
08801 |
未入力 正徹 (xxx)
かけつくるいらかならひて谷ふかみ深山の寺に人音もせす
かけつくる−いらかならひて−たにふかみ−みやまのてらに−ひとおともせす |
08802 |
未入力 正徹 (xxx)
寺の名もいさ白雲のおくの鐘ふもとの杉の門に聞えて
てらのなも−いさしらくもの−おくのかね−ふもとのすきの−かとにきこえて |
08803 |
未入力 正徹 (xxx)
寺あれやあかのしきみの花ふさを枯葉ましりにおろす山かせ
てらあれや−あかのしきみの−はなふさを−かれはましりに−おろすやまかせ |
08804 |
未入力 正徹 (xxx)
今も汲む袖とそ見ゆる寺ふりし雲かつらきの山の井の水
いまもくむ−そてとそみゆる−てらふりし−くもかつらきの−やまのゐのみつ |
08805 |
未入力 正徹 (xxx)
あれてすむ人あれはこそたえさらめ太山の寺の香の煙は
あれてすむ−ひとあれはこそ−たえさらめ−みやまのてらの−かうのけふりは |
08806 |
未入力 正徹 (xxx)
おもはすや峰に声する貝鐘のおよふ里人法を聞くとは
おもはすや−みねにこゑする−かひかねの−およふさとひと−のりをきくとは |
08807 |
未入力 正徹 (xxx)
ひねもすに風ふく雨の夕ま暮むへ山臥もねそなかれぬる
ひねもすに−かせふくあめの−ゆふまくれ−うへやまふしも−ねそなかれぬる |
08808 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮鐘つきとむる山陰に声うちいたす法そきこゆる
ゆふまくれ−かねつきとむる−やまかけに−こゑうちいたす−のりそきこゆる |
08809 |
未入力 正徹 (xxx)
みかの原此河上のかねの音に国の都も夢やさむらん
みかのはら−このかはかみの−かねのおとに−くにのみやこも−ゆめやさむらむ |
08810 |
未入力 正徹 (xxx)
たらちねのむかひの寺のかねこともつきけん秋やうちの曙
たらちねの−むかひのてらの−かねことも−つきけむあきや−うちのあけほの |
08811 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰や時うつる貝の声のうちにつきいたす鐘もまよふ松かせ
やまかけや−ときうつるかひの−こゑのうちに−つきいたすかねも−まよふまつかせ |
08812 |
未入力 正徹 (xxx)
聞きすてていく世の人のふりにけんおなし都の山寺のかね
ききすてて−いくよのひとの−ふりにけむ−おなしみやこの−やまてらのかね |
08813 |
未入力 正徹 (xxx)
寺山のしけきの枝やかれぬらんをのの音して煙たつなり
てらやまの−しけきのえたや−かれぬらむ−をののおとして−けふりたつなり |
08814 |
未入力 正徹 (xxx)
み草ゐてかた山岸の松ふりぬかはらの門のさし入の池
みくさゐて−かたやまきしの−まつふりぬ−かはらのかとの−さしいりのいけ |
08815 |
未入力 正徹 (xxx)
声しつる鳧のかねかな鳥すまぬ深山の池のおくの木陰に
こゑしつる−かものかねかな−とりすまぬ−みやまのいけの−おくのこかけに |
08816 |
未入力 正徹 (xxx)
やへたつと遠くは見ゆる雲はれてすめる横川の水の月影
やへたつと−とほくはみゆる−くもはれて−すめるよかはの−みつのつきかけ |
08817 |
未入力 正徹 (xxx)
よるあわにしきみそましる寺山のふもとの滝のせせの岩なみ
よるあわに−しきみそましる−てらやまの−ふもとのたきの−せせのいはなみ |
08818 |
未入力 正徹 (xxx)
法の雨ふらぬ日もなきしるしにや笠を置きけん峰の山寺
のりのあめ−ふらぬひもなき−しるしにや−かさをおきけむ−みねのやまてら |
08819 |
未入力 正徹 (xxx)
心なく寺の前なる里人や枕やすめぬ鐘うらむらん
こころなく−てらのまへなる−さとひとや−まくらやすめぬ−かねうらむらむ |
08820 |
未入力 正徹 (xxx)
契りつつ宮つくりせし都かな我か立つ杣のをののひひきに
ちきりつつ−みやつくりせし−みやこかな−わかたつそまの−をののひひきに |
08821 |
未入力 正徹 (xxx)
すますらんたよりもあれや名にたかき寺はよ川の水の心に
すますらむ−たよりもあれや−なにたかき−てらはよかはの−みつのこころに |
08822 |
未入力 正徹 (xxx)
跡しむる此宮寺の年ふりてかはらの松も神さひにけり
あとしむる−このみやてらの−としふりて−かはらのまつも−かみさひにけり |
08823 |
未入力 正徹 (xxx)
雲うつむ岩根の苔の道見えて松の戸ふかき峰の山寺
くもうつむ−いはねのこけの−みちみえて−まつのとふかき−みねのやまてら |
08824 |
未入力 正徹 (xxx)
すみ染の袖ふりはへて峰たかき夕の寺にかへる雲かな
すみそめの−そてふりはへて−みねたかき−ゆふへのてらに−かへるくもかな |
08825 |
未入力 正徹 (xxx)
此寺の七たくひのなきことを見すしらすともあふかさらめや
このてらの−ななつたくひの−なきことを−みすしらすとも−あふかさらめや |
08826 |
未入力 正徹 (xxx)
ほとせはき山路の寺の牆うちに松杉ふりて水そ音する
ほとせはき−やまちのてらの−かきうちに−まつすきふりて−みつそおとする |
08827 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく夕の露もおきあへす松にかかれるかねのこゑかな
あらしふく−ゆふへのつゆも−おきあへす−まつにかかれる−かねのこゑかな |
08828 |
未入力 正徹 (xxx)
おちくるそこゑぬるからぬ谷ふかき出ゆの上の山寺のかね
おちくるそ−こゑぬるからぬ−たにふかき−いてゆのうへの−やまてらのかね |
08829 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかすむ草の衣も身にたえてかれ行く比の野への古寺
いかかすむ−くさのころもも−みにたえて−かれゆくころの−のへのふるてら |
08830 |
未入力 正徹 (xxx)
さめよ夢送りしのへの草の陰聞くらん鐘のあかつきの声
さめよゆめ−おくりしのへの−くさのかけ−きくらむかねの−あかつきのこゑ |
08831 |
未入力 正徹 (xxx)
夕露をうてなの玉のさかりにて野なる草木を仏とやみる
ゆふつゆを−うてなのたまの−さかりにて−のなるくさきを−ほとけとやみる |
08832 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘遠き末野のあさち露分けてかへる夕の墨染の袖
かねとほき−すゑののあさち−つゆわけて−かへるゆふへの−すみそめのそて |
08833 |
未入力 正徹 (xxx)
おとろかぬ夜はのねくらやしめおきて鐘なる山に鳥帰るらん
おとろかぬ−よはのねくらや−しめおきて−かねなるやまに−とりかへるらむ |
08834 |
未入力 正徹 (xxx)
静にて夕のかねのことわりをきき入るる人や涙おつらん
しつかにて−ゆふへのかねの−ことわりを−ききいるるひとや−なみたおつらむ |
08835 |
未入力 正徹 (xxx)
ちかきより心そとまるをちかたに声しつみ行く入相のかね
ちかきより−こころそとまる−をちかたに−こゑしつみゆく−いりあひのかね |
08836 |
未入力 正徹 (xxx)
なへて世に暮るるな告けそ鐘の声身をおとろきて聞く人そなき
なへてよに−くるるなつけそ−かねのこゑ−みをおとろきて−きくひとそなき |
08837 |
未入力 正徹 (xxx)
うしやいま峰の雲消え鐘たえて夕のおくのくらき山さと
うしやいま−みねのくもきえ−かねたえて−ゆふへのおくの−くらきやまさと |
08838 |
未入力 正徹 (xxx)
そことなき夕のかねの遠きにも先むかしよと思ひいてつつ
そことなき−ゆふへのかねの−とほきにも−まつむかしよと−おもひいてつつ |
08839 |
未入力 正徹 (xxx)
夕くれの心の色を染めそおくつきはつる鐘のこゑの匂に
ゆふくれの−こころのいろを−そめそおく−つきはつるかねの−こゑのにほひに |
08840 |
未入力 正徹 (xxx)
住む人の衣におちて墨染の色をふかむる夕暮の鐘
すむひとの−ころもにおちて−すみそめの−いろをふかむる−ゆふくれのかね |
08841 |
未入力 正徹 (xxx)
たえまなく老いては耳になる鐘の声をもよそになす夕かな
たえまなく−おいてはみみに−なるかねの−こゑをもよそに−なすゆふへかな |
08842 |
未入力 正徹 (xxx)
まちそきく寺をいつくの鐘そともしらぬね覚になるるこゑこゑ
まちそきく−てらをいつくの−かねそとも−しらぬねさめに−なるるこゑこゑ |
08843 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とふ暁の鐘のこゑたえてこたへんかたもなき思ひかな
まくらとふ−あかつきのかねの−こゑたえて−こたへむかたも−なきおもひかな |
08844 |
未入力 正徹 (xxx)
夢の世のあはれつけくる鐘もきけこゑたてて鳴く老のね覚に
ゆめのよの−あはれつけくる−かねもきけ−こゑたててなく−おいのねさめに |
08845 |
未入力 正徹 (xxx)
ね覚めつついつもきく夜に耳なれて身をおとろかぬ鐘の声かな
ねさめつつ−いつもきくよに−みみなれて−みをおとろかぬ−かねのこゑかな |
08846 |
未入力 正徹 (xxx)
山おろす嵐や道にまよふらん枕をめくるかねのこゑかな
やまおろす−あらしやみちに−まよふらむ−まくらをめくる−かねのこゑかな |
08847 |
未入力 正徹 (xxx)
夢路まてむなし枕の山風に鐘さへまよふ明暮のそら
ゆめちまて−むなしまくらの−やまかせに−かねさへまよふ−あけくれのそら |
08848 |
未入力 正徹 (xxx)
淡と消えぬ興つしほあひにうかひ出つる鐘のみさきの夕暮の声
あわときえぬ−おきつしほあひに−うかひいつる−かねのみさきの−ゆふくれのこゑ |
08849 |
未入力 正徹 (xxx)
まよひきてあまたと聞けは山風のおくりおくらぬ鐘のこゑかな
まよひきて−あまたときけは−やまかせの−おくりおくらぬ−かねのこゑかな |
08850 |
未入力 正徹 (xxx)
ききなせは昔と今そちかくなり遠くなる夜のかねはしらねと
ききなせは−むかしといまそ−ちかくなり−とほくなるよの−かねはしらねと |
08851 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけは我かこゑまよふ鐘なからたれかうき世の夢覚すらん
かせふけは−わかこゑまよふ−かねなから−たれかうきよの−ゆめさますらむ |
08852 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたの声そときけは枕より跡より鐘のこゑそまきるる
いつかたの−こゑそときけは−まくらより−あとよりかねの−こゑそまきるる |
08853 |
未入力 正徹 (xxx)
まきらはす鐘はきけとも篭にや心にこゑの色そのこれる
まきらはす−かねはきけとも−こもりにや−こころにこゑの−いろそのこれる |
08854 |
未入力 正徹 (xxx)
さわくなり峰の林の夕まくれつきいたす鐘に鳥も嵐も
さわくなり−みねのはやしの−ゆふまくれ−つきいたすかねに−とりもあらしも |
08855 |
未入力 正徹 (xxx)
鐘の声思ひいれとはさそはねときこゆる山に雲かへるなり
かねのこゑ−おもひいれとは−さそはねと−きこゆるやまに−くもかへるなり |
08856 |
未入力 正徹 (xxx)
山の色もうれふるさまに声消えぬ鐘や夕をしたひかぬらん
やまのいろも−うれふるさまに−こゑきえぬ−かねやゆふへを−したひかぬらむ |
08857 |
未入力 正徹 (xxx)
消えのこる鐘のこゑかななかめやる末野の草の露の山かせ
きえのこる−かねのこゑかな−なかめやる−すゑののくさの−つゆのやまかせ |
08858 |
未入力 正徹 (xxx)
くるるまも又そ恋しき此かねの暁のこゑにさめし夜の夢
くるるまも−またそこひしき−このかねの−あかつきのこゑに−さめしよのゆめ |
08859 |
未入力 正徹 (xxx)
行末もこゑそふりせぬ形見なる昔のかねのけふの夕暮
ゆくすゑも−こゑそふりせぬ−かたみなる−むかしのかねの−けふのゆふくれ |
08860 |
未入力 正徹 (xxx)
世のことのしつかなる日のくるるにそ入相のかねもうちはまきれぬ
よのことの−しつかなるひの−くるるにそ−いりあひのかねも−うちはまきれぬ |
08861 |
未入力 正徹 (xxx)
しらさりし此上山に鐘そなる里はなれなる野へのかりねを
しらさりし−このかみやまに−かねそなる−さとはなれなる−のへのかりねを |
08862 |
未入力 正徹 (xxx)
野への風軒の草葉を吹きまよふ夕のかねもこゑかろくして
のへのかせ−のきのくさはを−ふきまよふ−ゆふへのかねも−こゑかろくして |
08863 |
未入力 正徹 (xxx)
枕をもいかかはすすのしのやふく袖の嵐に夢は見すとも
まくらをも−いかかはすすの−しのやふく−そてのあらしに−ゆめはみすとも |
08864 |
未入力 正徹 (xxx)
草の庵野への芝生をすきすててわつかに庭の籬をそする
くさのいほ−のへのしはふを−すきすてて−わつかににはの−まかきをそする |
08865 |
未入力 正徹 (xxx)
しととなく冬ののむはらみもたえてさむきさ枝の霜を吹くかせ
しととなく−ふゆののむはら−みもたえて−さむきさえたの−しもをふくかせ |
08866 |
未入力 正徹 (xxx)
かけ見えて一村過くる浮雲に雨打ちそそく野への沢水
かけみえて−ひとむらすくる−うきくもに−あめうちそそく−のへのさはみつ |
08867 |
未入力 正徹 (xxx)
草かくれふるき野沢の水絶えて影なき雲の空にうかへる
くさかくれ−ふるきのさはの−みつたえて−かけなきくもの−そらにうかへる |
08868 |
未入力 正徹 (xxx)
主やたれ野沢をわたり過行けは雲の衣をあらふささ浪
ぬしやたれ−のさはをわたり−すきゆけは−くものころもを−あらふささなみ |
08869 |
未入力 正徹 (xxx)
人ならぬ野中の水のやせ行くに老のしわみる風のささ浪
ひとならぬ−のなかのみつの−やせゆくに−おいのしわみる−かせのささなみ |
08870 |
未入力 正徹 (xxx)
ふるき世の野もりのかかみくたけてや底にのこれる水とみゆらん
ふるきよの−のもりのかかみ−くたけてや−そこにのこれる−みつとみゆらむ |
08871 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥屋こもり梢の鷹のかけもみす野守のかかみ底はすめとも
とやこもり−こすゑのたかの−かけもみす−のもりのかかみ−そこはすめとも |
08872 |
未入力 正徹 (xxx)
はし鷹のとやのの水のかかみさへかけみぬ草にこむる比かな
はしたかの−とやののみつの−かかみさへ−かけみぬくさに−こむるころかな |
08873 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれふす末野の千原かやかもとはかなの風のやとり所や
みたれふす−すゑののちはら−かやかもと−はかなのかせの−やとりところや |
08874 |
未入力 正徹 (xxx)
一木立つをのへの松にこたへつつやかて音なきのへの夕かせ
ひときたつ−をのへのまつに−こたへつつ−やかておとなき−のへのゆふかせ |
08875 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さす霞の袖も立ちましり友とそあそふ野への糸ゆふ
ゆふひさす−かすみのそても−たちましり−ともとそあそふ−のへのいとゆふ |
08876 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふとちわかなつみてし野へにきて手折りにけりな七種の花
おもふとち−わかなつみてし−のへにきて−たをりにけりな−ななくさのはな |
08877 |
未入力 正徹 (xxx)
をしからし君かたはなす鷹なれは勅にしたかふ鳥の命も
をしからし−きみかたはなす−たかなれは−ちよくにしたかふ−とりのいのちも |
08878 |
未入力 正徹 (xxx)
なら柴やすりかり衣みたれきて御輿のまへのちりはらふなり
ならしはや−すりかりころも−みたれきて−みこしのまへの−ちりはらふなり |
08879 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原くるる野飼の駒の毛もいつれは月に契る露かな
くさのはら−くるるのかひの−こまのけも−いつれはつきに−ちきるつゆかな |
08880 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれすよ内野となれる夕露の芝生に見えし石すゑの跡
わすれすよ−うちのとなれる−ゆふつゆの−しはふにみえし−いしすゑのあと |
08881 |
未入力 正徹 (xxx)
煙ともなさすはいつこつひにわか引きすてられん夕暮ののへ
けふりとも−なさすはいつこ−つひにわか−ひきすてられむ−ゆふくれののへ |
08882 |
未入力 正徹 (xxx)
草よりもたかくさわかす声さひしのへの小松か原の夕風
くさよりも−たかくさわかす−こゑさひし−のへのこまつか−はらのゆふかせ |
08883 |
未入力 正徹 (xxx)
宿とせぬ野への嵐そこゑ過くるさらは露ほせ篠のかりふき
やととせぬ−のへのあらしそ−こゑすくる−さらはつゆほせ−ささのかりふき |
08884 |
未入力 正徹 (xxx)
右になし左になして遠くきぬ苔の上ゆく野への小川を
みきになし−ひたりになして−とほくきぬ−こけのうへゆく−のへのをかはを |
08885 |
未入力 正徹 (xxx)
いくめくり見し世の人を尋ぬともあはし浅茅か原の夕かせ
いくめくり−みしよのひとを−たつぬとも−あはしあさちか−はらのゆふかせ |
08886 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人の袖の夕日も影消えて葉分になりぬのちのささ原
たひひとの−そてのゆふひも−かけきえて−はわけになりぬ−のちのささはら |
08887 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きもこせ遠かた人の草の原夕露とはむ宿の秋かせ
ふきもこせ−をちかたひとの−くさのはら−ゆふつゆとはむ−やとのあきかせ |
08888 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原夕日の影にわきてみつ遠かた人の袖の色色
くさのはら−ゆふひのかけに−わきてみつ−をちかたひとの−そてのいろいろ |
08889 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかふくひはらのくれに曇り行く遠かた人の袖の夕かせ
いかかふく−ひはらのくれに−くもりゆく−をちかたひとの−そてのゆふかせ |
08890 |
未入力 正徹 (xxx)
雲わかれ遠近人の行くとくと影もとまらぬ原の池水
くもわかれ−をちこちひとの−ゆくとくと−かけもとまらぬ−はらのいけみつ |
08891 |
未入力 正徹 (xxx)
ちかひおくさしもか露に袖ぬらせわくるしめちか原の旅人
ちかひおく−さしもかつゆに−そてぬらせ−わくるしめちか−はらのたひひと |
08892 |
未入力 正徹 (xxx)
うきふしを旅にしあれはしの原やしのはぬ袖そ露も時雨も
うきふしを−たひにしあれは−しのはらや−しのはぬそてそ−つゆもしくれも |
08893 |
未入力 正徹 (xxx)
床出てしおやをやしたふ木のもとの草の糸からつるるゐのこは
とこいてし−おやをやしたふ−このもとの−くさのいとから−つるるゐのこは |
08894 |
未入力 正徹 (xxx)
しつえには名におふ鳥もわたるなりみ山の滝つ川うその声
しつえには−なにおふとりも−わたるなり−みやまのたきつ−かはうそのこゑ |
08895 |
未入力 正徹 (xxx)
これもうし雨くらき夜の道のへにおやなしにしてゑのこ鳴くこゑ
これもうし−あめくらきよの−みちのへに−おやなしにして−ゑのこなくこゑ |
08896 |
未入力 正徹 (xxx)
いはへつつむかふ北風吹かすとも馬やせぬへきこしのなかみち
いはへつつ−むかふきたかせ−ふかすとも−うまやせぬへき−こしのなかみち |
08897 |
未入力 正徹 (xxx)
つなかるる手かひの猿のまなひたに庭の教は有る世ならすや
つなかるる−てかひのさるの−まなひたに−にはのをしへは−あるよならすや |
08898 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ねふみならふ木もなき山中の一木の杉にましら鳴くなり
いはねふみ−ならふきもなき−やまなかの−ひときのすきに−ましらなくなり |
08899 |
未入力 正徹 (xxx)
太山木の枝のかつらの谷わたりこなたかなたに猿さけふこゑ
みやまきの−えたのかつらの−たにわたり−こなたかなたに−さるさけふこゑ |
08900 |
未入力 正徹 (xxx)
深けにけり木のまの滝つ岩浪をみ山の月にさるの一声
ふけにけり−このまのたきつ−いはなみを−みやまのつきに−さるのひとこゑ |
08901 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐吹く梢のさるのこゑなからみ山の沢におつる月影
あらしふく−こすゑのさるの−こゑなから−みやまのさはに−おつるつきかけ |
08902 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふ太山の岩屋雲とちて梢にさわく椎のはの雨
さるさけふ−みやまのいはや−くもとちて−こすゑにさわく−しひのはのあめ |
08903 |
未入力 正徹 (xxx)
村猿のをのへおりくる山わたりやすき梢も見えぬ谷かな
むらさるの−をのへおりくる−やまわたり−やすきこすゑも−みえぬたにかな |
08904 |
未入力 正徹 (xxx)
おく山の苔の莚の岩枕ふしうくもあるかましら鳴くなり
おくやまの−こけのむしろの−いはまくら−ふしうくもあるか−ましらなくなり |
08905 |
未入力 正徹 (xxx)
雨しほる山の岩屋をふしとにて夢覚めぬらし猿さけふ声
あめしほる−やまのいはやを−ふしとにて−ゆめさめぬらし−さるさけふこゑ |
08906 |
未入力 正徹 (xxx)
冬ふかき峰のたつ木の木の葉さるうち散る枝そ又紅葉する
ふゆふかき−みねのたつきの−このはさる−うちちるえたそ−またもみちする |
08907 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふ夕の山の峡うつむ雲に雨きく木の本の宿
さるさけふ−ゆふへのやまの−かひうつむ−くもにあめきく−このもとのやと |
08908 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふ山あひみれは雨過きて岩ほより立つ雲そのこれる
さるさけふ−やまあひみれは−あめすきて−いはほよりたつ−くもそのこれる |
08909 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もまた木のみむなしき椎かもとおちたる月に猿さけふ声
あきもまた−このみむなしき−しひかもと−おちたるつきに−さるさけふこゑ |
08910 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかみ林の木のみなほ春におのれ色こき猿さけふなり
みねたかみ−はやしのこのみ−なほはるに−おのれいろこき−さるさけふなり |
08911 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ほしく峰のときは木雨おちて夕の雲にましら鳴く声
いはほしく−みねのときはき−あめおちて−ゆふへのくもに−ましらなくこゑ |
08912 |
未入力 正徹 (xxx)
高ねゆく雲の糸すち中絶えてたつをたまきにましら鳴くこゑ
たかねゆく−くものいとすち−なかたえて−たつをたまきに−ましらなくこゑ |
08913 |
未入力 正徹 (xxx)
木のまもる月に雨きくおく山の滝の岩やに猿さけふ声
このまもる−つきにあめきく−おくやまの−たきのいはやに−さるさけふこゑ |
08914 |
未入力 正徹 (xxx)
雲ゆけはならへる山の奥の峰月のとなりに猿叫ふこゑ
くもゆけは−ならへるやまの−おくのみね−つきのとなりに−さるさけふこゑ |
08915 |
未入力 正徹 (xxx)
猿さけふみ山嵐はよわく成りて夕の雨を梢にそきく
さるさけふ−みやまあらしは−よわくなりて−ゆふへのあめを−こすゑにそきく |
08916 |
未入力 正徹 (xxx)
たつ木きるをののひひきに峰よきて杣山くたる村猿のこゑ
たつききる−をののひひきに−みねよきて−そまやまくたる−むらさるのこゑ |
08917 |
未入力 正徹 (xxx)
それときくこゑに命を捨ててけりはかなき笛によるのを鹿は
それときく−こゑにいのちを−すててけり−はかなきふえに−よるのをしかは |
08918 |
未入力 正徹 (xxx)
老いにける涙の滝の水上もくろきすちなき峰のよこ雲
おいにける−なみたのたきの−みなかみも−くろきすちなき−みねのよこくも |
08919 |
未入力 正徹 (xxx)
こけの上もかわく世そなき嵐ふくみ山の滝のよその岩木は
こけのうへも−かわくよそなき−あらしふく−みやまのたきの−よそのいはきは |
08920 |
未入力 正徹 (xxx)
音はして太山の滝の色も見すささ分けて落つる谷の夕浪
おとはして−みやまのたきの−いろもみす−ささわけておつる−たにのゆふなみ |
08921 |
未入力 正徹 (xxx)
わきもこか衣にかくす涙とや山ふところに滝の落つらん
わきもこか−ころもにかくす−なみたとや−やまふところに−たきのおつらむ |
08922 |
未入力 正徹 (xxx)
道は猶たえしな滝つ岩浪のかすによみおけ歌の中山
みちはなほ−たえしなたきつ−いはなみの−かすによみおけ−うたのなかやま |
08923 |
未入力 正徹 (xxx)
むす苔のみとりにおちて立つ鳥の鳴くねしたはぬ滝の岩なみ
むすこけの−みとりにおちて−たつとりの−なくねしたはぬ−たきのいはなみ |
08924 |
未入力 正徹 (xxx)
水にゐる雲にまさりて苔ふかき夕の谷に鳥の一声
みつにゐる−くもにまさりて−こけふかき−ゆふへのたにに−とりのひとこゑ |
08925 |
未入力 正徹 (xxx)
静なる峰のときは木陰暮れて雲ゐる谷に鳥の一こゑ
しつかなる−みねのときはこ−かけくれて−くもゐるたにに−とりのひとこゑ |
08926 |
未入力 正徹 (xxx)
立田川ちる紅葉葉を絵かくなり御室の谷の雲の戸ひらに
たつたかは−ちるもみちはを−えかくなり−みむろのたにの−くものとひらに |
08927 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮の雨を契に妻そよふてる日は余所に家鳩のこゑ
ゆふくれの−あめをちきりに−つまそよふ−てるひはよそに−いへはとのこゑ |
08928 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひねんおのか太山のやとりをやかし鳥なきてくるる木の本
こよひねむ−おのかみやまの−やとりをや−かしとりなきて−くるるこのもと |
08929 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れてゆく春の契もあさ明の花のはやしの鳥のこゑかな
くれてゆく−はるのちきりも−あさあけの−はなのはやしの−とりのこゑかな |
08930 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの夕の雨になくはとのならふ梢そ雲かくれゆく
やまもとの−ゆふへのあめに−なくはとの−ならふこすゑそ−くもかくれゆく |
08931 |
未入力 正徹 (xxx)
哀なる林の鳥のむらねにもひとつの枝に二とまるは
あはれなる−はやしのとりの−むらねにも−ひとつのえたに−ふたつとまるは |
08932 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰や竹の林になく鳩のこゑはかりする夕暮の雨
やまかけや−たけのはやしに−なくはとの−こゑはかりする−ゆふくれのあめ |
08933 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れわたる遠の林は色消えて雪にしつまる鷺の一むら
くれわたる−をちのはやしは−いろきえて−ゆきにしつまる−さきのひとむら |
08934 |
未入力 正徹 (xxx)
ねにけらしくるる林にくる鳥のあまた聞えし声そしつまる
ねにけらし−くるるはやしに−くるとりの−あまたきこえし−こゑそしつまる |
08935 |
未入力 正徹 (xxx)
一枝にかさなりとまるこからめはひろき林も何にかはせむ
ひとえたに−かさなりとまる−こからめは−ひろきはやしも−なににかはせむ |
08936 |
未入力 正徹 (xxx)
さわかしや羽こひし世の聖たにとほき林の夕鳥の声
さわかしや−はねこひしよの−ひしりたに−とほきはやしの−ゆふとりのこゑ |
08937 |
未入力 正徹 (xxx)
哀にも鳥のしつまる林かな夕ととろきの里はのこりて
あはれにも−とりのしつまる−はやしかな−ゆふととろきの−さとはのこりて |
08938 |
未入力 正徹 (xxx)
村からす暮るる林に立ちそゆくひろき川原にしはしおりゐて
むらからす−くるるはやしに−たちそゆく−ひろきかはらに−しはしおりゐて |
08939 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥のねにつかふる道はしらねとも老いて明くるをまたぬ夜もなし
とりのねに−つかふるみちは−しらねとも−おいてあくるを−またぬよもなし |
08940 |
未入力 正徹 (xxx)
八声して近く天とふ鳥ならはあくるをしらぬ里やなからん
やこゑして−ちかくあまとふ−とりならは−あくるをしらぬ−さとやなからむ |
08941 |
未入力 正徹 (xxx)
水にすむ鳥ならなくにしたりをの川たれ時の八声をそ鳴く
みつにすむ−とりならなくに−したりをの−かはたれときの−やこゑをそなく |
08942 |
未入力 正徹 (xxx)
待ちなれし八声の鳥も老か身の暁おきにおくれてそなく
まちなれし−やこゑのとりも−おいかみの−あかつきおきに−おくれてそなく |
08943 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂やあくる梢の鳥の毛もしろきそしるき夕付のこゑ
あふさかや−あくるこすゑの−とりのけも−しろきそしるき−ゆふつけのこゑ |
08944 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂やあけすと見えて鳴く鳥もかへりさすなり関の釘ぬき
あふさかや−あけすとみえて−なくとりも−かへりさすなり−せきのくきぬき |
08945 |
未入力 正徹 (xxx)
ききいたす鳥の初音に夜をしれはまたなかからん老そふしうき
ききいたす−とりのはつねに−よをしれは−またなかからむ−おいそふしうき |
08946 |
未入力 正徹 (xxx)
庭つ鳥たかもろこしのから衣此日本におりはへてなく
にはつとり−たかもろこしの−からころも−このひのもとに−おりはへてなく |
08947 |
未入力 正徹 (xxx)
庭鳥の八こゑを八たひ聞きつくすひまたに明けぬ閨の内かな
にはとりの−やこゑをやたひ−ききつくす−ひまたにあけぬ−ねやのうちかな |
08948 |
未入力 正徹 (xxx)
告くるとは鳥も思はすさ夜も又いそかぬもののあくるしののめ
つくるとは−とりもおもはす−さよもまた−いそかぬものの−あくるしののめ |
08949 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥はたたなに心なきあかつきをつくるになして聞く人そきく
とりはたた−なにこころなき−あかつきを−つくるになして−きくひとそきく |
08950 |
未入力 正徹 (xxx)
八こゑなく木のまの月にこれもみつ夕付鳥のをろのかかみを
やこゑなく−このまのつきに−これもみつ−ゆふつけとりの−をろのかかみを |
08951 |
未入力 正徹 (xxx)
おのか毛もしろき月夜の庭鳥は明くるさかひをいかて告くらん
おのかけも−しろきつきよの−にはとりは−あくるさかひを−いかてつくらむ |
08952 |
未入力 正徹 (xxx)
夢の世を八たひは鳥のなくなくも声いたさねはきく人もなし
ゆめのよを−やたひはとりの−なくなくも−こゑいたさねは−きくひともなし |
08953 |
未入力 正徹 (xxx)
夢さますこゑはおもひもかけ鳥の浪うつ宿の磯の旅ねに
ゆめさます−こゑはおもひも−かけとりの−なみうつやとの−いそのたひねに |
08954 |
未入力 正徹 (xxx)
世にいてん天つ光に鳥の声そのあかつきの月をしそ思ふ
よにいてむ−あまつひかりに−とりのこゑ−そのあかつきの−つきをしそおもふ |
08955 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめや雪の太山にぬる鳥のその足柄の関の八声
しるらめや−ゆきのみやまに−ぬるとりの−そのあしからの−せきのやこゑх |
08956 |
未入力 正徹 (xxx)
白なみのたつたなこえそ関の鳥空音や人のしわさなるらん
しらなみの−たつたなこえそ−せきのとり−そらねやひとの−しわさなるらむ |
08957 |
未入力 正徹 (xxx)
あふさかの関もる神の鳥ならは空ねはなかし明けぬこの夜は
あふさかの−せきもるかみの−とりならは−そらねはなかし−あけぬこのよは |
08958 |
未入力 正徹 (xxx)
くらふれは八声そなかきあふ坂の山鳥の尾とかけのたれ尾と
くらふれは−やこゑそなかき−あふさかの−やまとりのをと−かけのたれをと |
08959 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑたかき夕つけ鳥にかかるなり逢坂山の関のよこ雲
こゑたかき−ゆふつけとりに−かかるなり−あふさかやまの−せきのよこくも |
08960 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂や関路の鳥にさとつつく天津のかたのおとそましれる
あふさかや−せきちのとりに−さとつつく−あまつのかたの−おとそましれる |
08961 |
未入力 正徹 (xxx)
時しらぬ鳥は庭鳥いつとてか関路日たけてこゑ送るらん
ときしらぬ−とりはにはとり−いつとてか−せきちひたけて−こゑおくるらむ |
08962 |
未入力 正徹 (xxx)
秋や又駒のかけ見んあふ坂の清水にうかふ鳥の声かな
あきやまた−こまのかけみむ−あふさかの−しみつにうかふ−とりのこゑかな |
08963 |
未入力 正徹 (xxx)
跡ふりて今は関なき立田山夕つけ鳥のこゑはもれとも
あとふりて−いまはせきなき−たつたやま−ゆふつけとりの−こゑはもれとも |
08964 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる遠のさかひのふる柳猶したりをの鳥のこゑかな
あけわたる−をちのさかひの−ふるやなき−なほしたりをの−とりのこゑかな |
08965 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥の音の遠き木の間をもりくるそ心つくしの月にまされる
とりのねの−とほきこのまを−もりくるそ−こころつくしの−つきにまされる |
08966 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれにおちぬ木のみと見るはかり夕付鳥のとほき色かな
ふゆかれに−おちぬこのみと−みるはかり−ゆふつけとりの−とほきいろかな |
08967 |
未入力 正徹 (xxx)
月を今のこして見はや鳴く鳥の尾上の里の松そ明行く
つきをいま−のこしてみはや−なくとりの−をのへのさとの−まつそあけゆく |
08968 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥のこゑに月落ちかかる山のはの木の間の軒そ白く明行く
とりのこゑに−つきおちかかる−やまのはの−このまののきそ−しろくあけゆく |
08969 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよふ天つ空ねになく鳥のをのへの里は猶や夜ふかき
くもまよふ−あまつそらねに−なくとりの−をのへのさとは−なほやよふかき |
08970 |
未入力 正徹 (xxx)
里あれや夕付鳥のさかこえてなく音きこゆる夜はの山かせ
さとあれや−ゆふつけとりの−さかこえて−なくねきこゆる−よはのやまかせ |
08971 |
未入力 正徹 (xxx)
鳴くこゑにたか衣衣もならひなき手かひの鳥は遠つ里人
なくこゑに−たかきぬきぬも−ならひなき−てかひのとりは−とほつさとひと |
08972 |
未入力 正徹 (xxx)
誰か見る八こゑもあくる山鳥のをのへの里の月のかかみを
たれかみる−やこゑもあくる−やまとりの−をのへのさとの−つきのかかみを |
08973 |
未入力 正徹 (xxx)
初声をやかて鳴きつく鳥たにも人のさとにはおくれてそきく
はつこゑを−やかてなきつく−とりたにも−ひとのさとには−おくれてそきく |
08974 |
未入力 正徹 (xxx)
明けすくる尾上の里にきこゆなり谷の麓のしは鳥の声
あけすくる−をのへのさとに−きこゆなり−たにのふもとの−しはとりのこゑ |
08975 |
未入力 正徹 (xxx)
羽をならす鳥のねくらやいとふらんこゑさへちかしならふ里人
はをならす−とりのねくらや−いとふらむ−こゑさへちかし−ならふさとひと |
08976 |
未入力 正徹 (xxx)
とほく引くかけのたれ尾も長岡や里むらつつく暁の雲
とほくひく−かけのたれをも−なかをかや−さとむらつつく−あかつきのくも |
08977 |
未入力 正徹 (xxx)
ほととほきこゑかと聞けはこの里につつきの村の夜はの鶏
ほととほき−こゑかときけは−このさとに−つつきのむらの−よはのにはとり |
08978 |
未入力 正徹 (xxx)
別路にあらて隣にかふ鳥のこゑをいとはぬあかつきもなし
わかれちに−あらてとなりに−かふとりの−こゑをいとはぬ−あかつきもなし |
08979 |
未入力 正徹 (xxx)
旅にしてあなかま宿の庭つ鳥あさはむほとのぬさちらしてん
たひにして−あなかまやとの−にはつとり−あさはむほとの−ぬさちらしてむ |
08980 |
未入力 正徹 (xxx)
浪かくるあすか河風飛ふ鳥のみたるるみれはつるのもろ声
なみかくる−あすかかはかせ−とふとりの−みたるるみれは−つるのもろこゑ |
08981 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつらかけのはつ鳥あふ坂の神に明けぬとこゑたむくなり
やまかつら−かけのはつとり−あふさかの−かみにあけぬと−こゑたむくなり |
08982 |
未入力 正徹 (xxx)
時をしる鳥の八こゑに八乙女か八たひうたへはあくる神かき
ときをしる−とりのやこゑに−やをとめか−やたひうたへは−あくるかみかき |
08983 |
未入力 正徹 (xxx)
子をおもふつるの林の二千とせ過きにしおやのいさめをもみす
こをおもふ−つるのはやしの−ふたちとせ−すきにしおやの−いさめをもみす |
08984 |
未入力 正徹 (xxx)
色くれぬなきたるうらの塩ひかた立行くつるのおるる松原
いろくれぬ−なきたるうらの−しほひかた−たちゆくつるの−おるるまつはら |
08985 |
未入力 正徹 (xxx)
みさこゐるあら磯浪にふす松のおなし年ふる鶴のもろこゑ
みさこゐる−あらいそなみに−ふすまつの−おなしとしふる−つるのもろこゑ |
08986 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる千とせの宿のありとみて雲井の鶴そここにおりぬる
まつたてる−ちとせのやとの−ありとみて−くもゐのつるそ−ここにおりぬる |
08987 |
未入力 正徹 (xxx)
世の中はつると鴨との足をみよ空にのほれは雲にやはたつ
よのなかは−つるとかもとの−あしをみよ−そらにのほれは−くもにやはたつ |
08988 |
未入力 正徹 (xxx)
世にすめははかなき鳥もおのつからめくみそあつき鶴の毛衣
よにすめは−はかなきとりも−おのつから−めくみそあつき−つるのけころも |
08989 |
未入力 正徹 (xxx)
あら磯にこす白浪も松かねの枕におつる鶴のもろこゑ
あらいそに−こすしらなみも−まつかねの−まくらにおつる−つるのもろこゑ |
08990 |
未入力 正徹 (xxx)
吹上のはまのまさこも白たへの霜になれぬる鶴の毛衣
ふきあけの−はまのまさこも−しろたへの−しもになれぬる−つるのけころも |
08991 |
未入力 正徹 (xxx)
わかのうらに身は老つるのひなの子もかくやはしらぬ道にまとはん
わかのうらに−みはおいつるの−ひなのこも−かくやはしらぬ−みちにまとはむ |
08992 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひこよふるき都の雲ゐをは今も忘れし和歌のうらつる
かよひこよ−ふるきみやこの−くもゐをは−いまもわすれし−わかのうらつる |
08993 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌の浦に猶ことの葉はあしたつの老いておよはぬねこそなかるれ
わかのうらに−なほことのはは−あしたつの−おいておよはぬ−ねこそなかるれ |
08994 |
未入力 正徹 (xxx)
たかみそきたみのの島にあさるらん夕してかくるつるの毛衣
たかみそき−たみののしまに−あさるらむ−ゆふしてかくる−つるのけころも |
08995 |
未入力 正徹 (xxx)
友つるのしたふはかりの羽をつかれ老いて長居の浜路こし身そ
ともつるの−したふはかりの−はをつかれ−おいてなかゐの−はまちこしみそ |
08996 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦にたちなるへくもちきられすひなは千世へんなかの老鶴
わかのうらに−たちなるへくも−ちきられす−ひなはちよへむ−なかのおいつる |
08997 |
未入力 正徹 (xxx)
わかのうらやしのにかくれて鳴くたつのあしのまよひをたれにはるけん
わかのうらや−しのにかくれて−なくたつの−あしのまよひを−たれにはるけむ |
08998 |
未入力 正徹 (xxx)
和かの浦に契もくちし秋の霜ふりにしつるのよよの毛衣
わかのうらに−ちきりもくちし−あきのしも−ふりにしつるの−よよのけころも |
08999 |
未入力 正徹 (xxx)
もえ出つるなこえのこすけ吹くかせにひとりみたるる鶴の毛衣
もえいつる−なこえのこすけ−ふくかせに−ひとりみたるる−つるのけころも |
09000 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦に鳴きわたるにもあしへ寺鶴の林の跡したふらん
わかのうらに−なきわたるにも−あしへてら−つるのはやしの−あとしたふらむ |
09001 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌のうらの三代の友鶴なくなくも老いて残るそたくひ少き
わかのうらの−みよのともつる−なくなくも−おいてのこるそ−たくひすくなき |
09002 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦の江こそふかけれ高砂の雲路の鶴の友を待ちえて
わかのうらの−えこそふかけれ−たかさこの−くもちのつるの−ともをまちえて |
09003 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦の我か友つるのすむ磯をけふ問ひくれは千世の松陰
わかのうらの−わかともつるの−すむいそを−けふとひくれは−ちよのまつかけ |
09004 |
未入力 正徹 (xxx)
老鶴のつはさつかれて若浦のたかくひろきをしる道そなき
おいつるの−つはさつかれて−わかのうらの−たかくひろきを−しるみちそなき |
09005 |
未入力 正徹 (xxx)
翁さひすれる衣をたれかきてかりはの沢にたつも鳴くらん
おきなさひ−すれるころもを−たれかきて−かりはのさはに−たつもなくらむ |
09006 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉やおなしみとりのあささはに松よりかよふつるのもろ声
すみよしや−おなしみとりの−あささはに−まつよりかよふ−つるのもろこゑ |
09007 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてか世をひろ沢とさまよはん霜のふる葉に老いてなく鶴
いつまてか−よをひろさはと−さまよはむ−しものふるはに−おいてなくつる |
09008 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつしほ入江はなきて夕浪もたたぬ洲崎にたつそむれゐる
おきつしほ−いりえはなきて−ゆふなみも−たたぬすさきに−たつそむれゐる |
09009 |
未入力 正徹 (xxx)
みちてこむしほのほととやわつかなるおきの中すにたつねふるらん
みちてこむ−しほのほととや−わつかなる−おきのなかすに−たつねふるらむ |
09010 |
未入力 正徹 (xxx)
なには江の洲にゐるつるもけふや又御法の庭の空にかけけん
なにはえの−すにゐるつるも−けふやまた−みのりのにはの−そらにかけけむ |
09011 |
未入力 正徹 (xxx)
うちむれて立行くつるの跡さひてひとりすにゐるうらのすて舟
うちむれて−たちゆくつるの−あとさひて−ひとりすにゐる−うらのすてふね |
09012 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の池のせはきすあまにかふつるの雲井をこふる声そかなしき
にはのいけの−せはきすあまに−かふつるの−くもゐをこふる−こゑそかなしき |
09013 |
未入力 正徹 (xxx)
千世まてとたれかかささむつるのゐる庭の洲崎の松のことのは
ちよまてと−たれかかささむ−つるのゐる−にはのすさきの−まつのことのは |
09014 |
未入力 正徹 (xxx)
いつれ子を思ひますらんにほのすむ水の中すの松か枝のつる
いつれこを−おもひますらむ−にほのすむ−みつのなかすの−まつかえのつる |
09015 |
未入力 正徹 (xxx)
わつかなる庭のすはまに飼ひおかん絵にかくほとのひなつるもかな
わつかなる−にはのすはまに−かひおかむ−えにかくほとの−ひなつるもかな |
09016 |
未入力 正徹 (xxx)
たてるすの白鶴はみの毛衣におのかひく尾の長き夜の霜
たてるすの−しらつるはみの−けころもに−おのかひくをの−なかきよのしも |
09017 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海の浜松かけを秋見はやなひくいなはの雲の上のつる
にほのうみの−はままつかけを−あきみはや−なひくいなはの−くものうへのつる |
09018 |
未入力 正徹 (xxx)
松かえにすたたぬひなの子の浜やうら浪かけてたつそ鳴きよる
まつかえに−すたたぬひなの−このはまや−うらなみかけて−たつそなきよる |
09019 |
未入力 正徹 (xxx)
霜おかぬうらの浜ゆふいくへともいさしら鶴の月の毛衣
しもおかぬ−うらのはまゆふ−いくへとも−いさしらつるの−つきのけころも |
09020 |
未入力 正徹 (xxx)
声もせてさ夜はふけひの浦さひぬしほひの松にたつはすめとも
こゑもせて−さよはふけひの−うらさひぬ−しほひのまつに−たつはすめとも |
09021 |
未入力 正徹 (xxx)
松かねの砂の上につはさしき鶴そいそまのうらの夕なみ
まつかねの−いさこのうへに−つはさしき−つるそいそまの−うらのゆふなみ |
09022 |
未入力 正徹 (xxx)
てる日よきなこえのあまもほこるらしあさしほなきてたつ鳴きわたる
てるひよき−なこえのあまも−ほこるらし−あさしほなきて−たつなきわたる |
09023 |
未入力 正徹 (xxx)
和かのうらや磯松かねのしき浪に名をもあらはせ千代の友鶴
わかのうらや−いそまつかねの−しきなみに−なをもあらはせ−ちよのともつる |
09024 |
未入力 正徹 (xxx)
夕浪に秋の田蓑をうちきつつたてる島人まかふつるかな
ゆふなみに−あきのたみのを−うちきつつ−たてるしまひと−まかふつるかな |
09025 |
未入力 正徹 (xxx)
興つしほ引島しるき跡のなみ立ちけこれともたつそむれゐる
おきつしほ−ひくしましるき−あとのなみ−たちにこれとも−たつそむれゐる |
09026 |
未入力 正徹 (xxx)
雲井にそあかる声せぬふる雨にはれぬ田蓑の島にゐるつる
くもゐにそ−あかるこゑせぬ−ふるあめに−はれぬたみのの−しまにゐるつる |
09027 |
未入力 正徹 (xxx)
此国のいてきしよりや浪なれしおのころ島の鶴の毛衣
このくにの−いてきしよりや−なみなれし−おのころしまの−つるのけころも |
09028 |
未入力 正徹 (xxx)
駕となしてをとほくもろこしの月をも見はや秋津島鶴
のりものと−なしてをとほく−もろこしの−つきをもみはや−あきつしまつる |
09029 |
未入力 正徹 (xxx)
まなつるの世におほひ羽をかさねても民あつくせよ秋つ島守
まなつるの−よにおほひはを−かさねても−たみあつくせよ−あきつしまもり |
09030 |
未入力 正徹 (xxx)
うみ山にねくらとすへき松そある棲やひろき秋つ島つる
うみやまに−ねくらとすへき−まつそある−すみかやひろき−あきつしまつる |
09031 |
未入力 正徹 (xxx)
雲路をはひとりやかよふ仙人となる人かたき秋つ島つる
くもちをは−ひとりやかよふ−やまひとと−なるひとかたき−あきつしまつる |
09032 |
未入力 正徹 (xxx)
磯の松入江の芦にかよひきてしほひしほみちたつそ鳴くなる
いそのまつ−いりえのあしに−かよひきて−しほひしほみち−たつそなくなる |
09033 |
未入力 正徹 (xxx)
身をかくす芦のほ綿のさむき夜もおもひそ出つるつるの毛衣
みをかくす−あしのほわたの−さむきよも−おもひそいつる−つるのけころも |
09034 |
未入力 正徹 (xxx)
あれにけり水の簾をあしのよにかけたる鶴の冬のすみかは
あれにけり−みつのすたれを−あしのよに−かけたるつるの−ふゆのすみかは |
09035 |
未入力 正徹 (xxx)
哀なる世世をおもへは空になくたつもやむかし雲の上人
あはれなる−よよをおもへは−そらになく−たつもやむかし−くものうへひと |
09036 |
未入力 正徹 (xxx)
名のみして月毛の駒は空にみす雲ゐをかける鶴そ鳴くなる
なのみして−つきけのこまは−そらにみす−くもゐをかける−つるそなくなる |
09037 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑかはす雲ゐの友も庭にきて手飼にましるつるそ数そふ
こゑかはす−くもゐのともも−にはにきて−てかひにましる−つるそかすそふ |
09038 |
未入力 正徹 (xxx)
我か庵によるはねくらの松の戸をおし明かたの鶴の一こゑ
わかいほに−よるはねくらの−まつのとを−おしあけかたの−つるのひとこゑ |
09039 |
未入力 正徹 (xxx)
毛衣も枕もさらて松かねにこゑする霜の鶴はみのそて
けころもも−まくらもさらて−まつかねに−こゑするしもの−つるはみのそて |
09040 |
未入力 正徹 (xxx)
浜松の梢の鶴のこゑ落ちて舟うつ浪に枕たにせす
はままつの−こすゑのつるの−こゑおちて−ふねうつなみに−まくらたにせす |
09041 |
未入力 正徹 (xxx)
なくつるの声も涙も月やとる袖におちくる松の下ふし
なくつるの−こゑもなみたも−つきやとる−そてにおちくる−まつのしたふし |
09042 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦に身は老鶴も千世の友むれゐる宿と松に問ひきぬ
わかのうらに−みはおいつるも−ちよのとも−むれゐるやとと−まつにとひきぬ |
09043 |
未入力 正徹 (xxx)
影ちかくあかれはいとと色妙の日のたてぬきのつるの毛衣
かけちかく−あかれはいとと−いろたへの−ひのたてぬきの−つるのけころも |
09044 |
未入力 正徹 (xxx)
久かたのあまつたふ日にはねかはしたつ鳴きわたる空そはるけき
ひさかたの−あまつたふひに−はねかはし−たつなきわたる−そらそはるけき |
09045 |
未入力 正徹 (xxx)
仙人の手かひの鶴や老いさらん千世を雲路にかさね行くとも
やまひとの−てかひのつるや−おいさらむ−ちよをくもちに−かさねゆくとも |
09046 |
未入力 正徹 (xxx)
年たかきほとをみよとやたとふらん雲井遥にのほるつるかな
としたかき−ほとをみよとや−たとふらむ−くもゐはるかに−のほるつるかな |
09047 |
未入力 正徹 (xxx)
まなつるのまなく時なく立ちなれよおなし千世ふる宿の松陰
まなつるの−まなくときなく−たちなれよ−おなしちよふる−やとのまつかけ |
09048 |
未入力 正徹 (xxx)
陰ふかきなこ江の小菅みたれ芦の末葉なひかしたつそ鳴くなる
かけふかき−なこえのこすけ−みたれあしの−すゑはなひかし−たつそなくなる |
09049 |
未入力 正徹 (xxx)
年をへん松さへよその数ならぬ千世をあつめて鶴そむれゐる
としをへむ−まつさへよその−かすならぬ−ちよをあつめて−つるそむれゐる |
09050 |
未入力 正徹 (xxx)
白鷺にましる鳥のみたれ碁をおのれうつたへはまちにそゐる
しらさきに−ましるからすの−みたれこを−おのれうつたへ−はまちにそゐる |
09051 |
未入力 正徹 (xxx)
いはほせく滝の前なる松かねに白なみこえて鷺そむれゐる
いはほせく−たきのまへなる−まつかねに−しらなみこえて−さきそむれゐる |
09052 |
未入力 正徹 (xxx)
冬かれの休の中の松の葉に雪をさわかす鷺の一つれ
ふゆかれの−はやしのうちの−まつのはに−ゆきをさわかす−さきのひとつれ |
09053 |
未入力 正徹 (xxx)
雨くらき山もとのへをさきひとりとひ行く色にのこるくれかな
あめくらき−やまもとのへを−さきひとり−とひゆくいろに−のこるくれかな |
09054 |
未入力 正徹 (xxx)
たちけるかなにはうら風あらき日の入江の川す鷺そ少き
たちけるか−なにはうらかせ−あらきひの−いりえのかはす−さきそすくなき |
09055 |
未入力 正徹 (xxx)
河きしやとほきみつ野の夕かほはおのれ花なる鷺そむれゐる
かはきしや−とほきみつのの−ゆふかほは−おのれはななる−さきそむれゐる |
09056 |
未入力 正徹 (xxx)
とふさきはさらせる布に色消えて夕日さやけきうちの川島
とふさきは−さらせるぬのに−いろきえて−ゆふひさやけき−うちのかはしま |
09057 |
未入力 正徹 (xxx)
河つらの里立ちわかれ山しろのみつ野の杜にさきそむれゐる
かはつらの−さとたちわかれ−やましろの−みつののもりに−さきそむれゐる |
09058 |
未入力 正徹 (xxx)
さかのほる江河の水の白あわをなかして過くるさきの一行
さかのほる−えかはのみつの−しらあわを−なかしてすくる−さきのひとつら |
09059 |
未入力 正徹 (xxx)
山川のふる江の柳かた淵をかくすはひ枝にさきそむれゐる
やまかはの−ふるえのやなき−かたふちを−かくすはひえに−さきそむれゐる |
09060 |
未入力 正徹 (xxx)
あまたたひ入江をめくる白さきのおりゐるみれは松の一本
あまたたひ−いりえをめくる−しらさきの−おりゐるみれは−まつのひともと |
09061 |
未入力 正徹 (xxx)
あまつつみとほき江川のふし柳浪こすなれやさきそむれ行く
あまつつみ−とほきえかはの−ふしやなき−なみこすなれや−さきそむれゆく |
09062 |
未入力 正徹 (xxx)
川そひのなかれ江とほくとふさきの村雨しのくあしの村立
かはそひの−なかれえとほく−とふさきの−むらさめしのく−あしのむらたち |
09063 |
未入力 正徹 (xxx)
さはりつるふる江のかれは立ちすてて雨のあしわけ鷺そ飛行く
さはりつる−ふるえのかれは−たちすてて−あめのあしわけ−さきそとひゆく |
09064 |
未入力 正徹 (xxx)
むら雨のふる江をよそに飛ふさきの跡まて白きおもたかの花
むらさめの−ふるえをよそに−とふさきの−あとまてしろき−おもたかのはな |
09065 |
未入力 正徹 (xxx)
雨しほる江川の岸の村柳とひかふ鷺も色そ暮れゆく
あめしほる−えかはのきしの−むらやなき−とひかふさきも−いろそくれゆく |
09066 |
未入力 正徹 (xxx)
山本の雨に飛行く鷺の毛のみのにかかるや雪の村立
やまもとの−あめにとひゆく−さきのけの−みのにかかるや−ゆきのむらたち |
09067 |
未入力 正徹 (xxx)
みなきはに鷺あつまりて河きしの石にゐる鵜のおるるをそまつ
みなきはに−さきあつまりて−かはきしの−いしにゐるうの−おるるをそまつ |
09068 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ瀬ゆくいなさとるとや夢にさへ汀の鷺のねふり立つまは
あさせゆく−いなさとるとや−ゆめにさへ−みきはのさきの−ねふりたつまは |
09069 |
未入力 正徹 (xxx)
河遠に夕ゐるさきの引別れとふや汀の雪のむらきえ
かはをちに−ゆふゐるさきの−ひきわかれ−とふやみきはの−ゆきのむらきえ |
09070 |
未入力 正徹 (xxx)
はや川や汀に波もかへりさす鷺のねふりの夢そしられぬ
はやかはや−みきはになみも−かへりさす−さきのねふりの−ゆめそしられぬ |
09071 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる野川のさきの一つれにひとりおくれていそく山本
まつたてる−のかはのさきの−ひとつれに−ひとりおくれて−いそくやまもと |
09072 |
未入力 正徹 (xxx)
うちむれてうのゐる川のみなきはにおのれさはしるいさな白鷺
うちむれて−うのゐるかはの−みなきはに−おのれさはしる−いさなしらさき |
09073 |
未入力 正徹 (xxx)
むれてゐる鷺のみの毛を吹上の浜洲も白き興つ塩風
むれてゐる−さきのみのけを−ふきあけの−はますもしろき−おきつしほかせ |
09074 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれすのあやふき浪も白さきのねふりはさませかよふ河かせ
なかれすの−あやふきなみも−しらさきの−ねふりはさませ−かよふかはかせ |
09075 |
未入力 正徹 (xxx)
河風にみの毛ふかせて立つ鷺の雨ふらぬ日やみたれわふらん
かはかせに−みのけふかせて−たつさきの−あめふらぬひや−みたれわふらむ |
09076 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるまて柳をはらふ川かせにしつまりかぬるさきの一つれ
くるるまて−やなきをはらふ−かはかせに−しつまりかぬる−さきのひとつれ |
09077 |
未入力 正徹 (xxx)
さとちかくあくる河戸の水の淡つもるとみれは鷺そ立ちぬる
さとちかく−あくるかはとの−みつのあわ−つもるとみれは−さきそたちぬる |
09078 |
未入力 正徹 (xxx)
白鷺はまへの江川にみなおりて山本柳見えぬくれかな
しらさきは−まへのえかはに−みなおりて−やまもとやなき−みえぬくれかな |
09079 |
未入力 正徹 (xxx)
枯れのこる汀のちはら色暮れぬ立ちゆくさきの跡の川かせ
かれのこる−みきはのちはら−いろくれぬ−たちゆくさきの−あとのかはかせ |
09080 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮江河のくひに立つ鷺のひとりならすは哀ともみし
ゆふまくれ−えかはのくひに−たつさきの−ひとりならすは−あはれともみし |
09081 |
未入力 正徹 (xxx)
かきとめて煙となしぬもしほ草さても跡なき筆のうみかな
かきとめて−けふりとなしぬ−もしほくさ−さてもあとなき−ふてのうみかな |
09082 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身もかかる時あれ浪のしわのふると見えてうら風もなし
おいかみも−かかるときあれ−なみのしわ−のふるとみえて−うらかせもなし |
09083 |
未入力 正徹 (xxx)
とひとはぬ舟路いくかそわたの原人のすむ島人のなき磯
とひとはぬ−ふなちいくかそ−わたのはら−ひとのすむしま−ひとのなきいそ |
09084 |
未入力 正徹 (xxx)
舟人もいかかはしらん山にても世をうみわたる心ひとつを
ふなひとも−いかかはしらむ−やまにても−よをうみわたる−こころひとつを |
09085 |
未入力 正徹 (xxx)
山ちかく今朝なりぬらしうな原や遠き浪ちのよこ雲の松
やまちかく−けさなりぬらし−うなはらや−とほきなみちの−よこくものまつ |
09086 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよ風はなころに立つなみもまた早しほのせとの舟人
こころせよ−かせはなころに−たつなみも−またはやしほの−せとのふなひと |
09087 |
未入力 正徹 (xxx)
こきちかふおきつ舟人こととふをこたへんとすれは跡の白浪
こきちかふ−おきつふなひと−こととふを−こたへむとすれは−あとのしらなみ |
09088 |
未入力 正徹 (xxx)
はかなしと塩あひとほく見し淡の消えぬにましる小舟かなしも
はかなしと−しほあひとほく−みしあわの−きえぬにましる−をふねかなしも |
09089 |
未入力 正徹 (xxx)
いつて舟いつくの人も白浪のうへにともなふ身こそうきたれ
いつてふね−いつくのひとも−しらなみの−うへにともなふ−みこそうきたれ |
09090 |
未入力 正徹 (xxx)
大舟のいかりおろしておき中にこよひはさねぬかせ心せよ
おほふねの−いかりおろして−おきなかに−こよひはさねぬ−かせこころせよ |
09091 |
未入力 正徹 (xxx)
ひく塩のさなみもぬるき遠あさによらてそとまるおきつ舟人
ひくしほの−さなみもぬるき−とほあさに−よらてそとまる−おきつふなひと |
09092 |
未入力 正徹 (xxx)
なこりたに浪にやぬらせから人の袖のみなとのあけのそほ舟
なこりたに−なみにやぬらせ−からひとの−そてのみなとの−あけのそほふね |
09093 |
未入力 正徹 (xxx)
いてしまはおきの小島と見し雲のしたになるまて舟はきにけり
いてしまは−おきのこしまと−みしくもの−したになるまて−ふねはきにけり |
09094 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ草こよひしきつに明すとやかりてこきつるるあまのはし舟
もしほくさ−こよひしきつに−あかすとや−かりてこきつるる−あまのはしふね |
09095 |
未入力 正徹 (xxx)
興に見し雲こそ跡に成りにけれいかはかりとき舟路なるらん
おきにみし−くもこそあとに−なりにけれ−いかはかりとき−ふなちなるらむ |
09096 |
未入力 正徹 (xxx)
とひゆくや浪にむれゐる鳥かちのこゑ遠さかるおきつ舟人
とひゆくや−なみにむれゐる−とりかちの−こゑとほさかる−おきつふなひと |
09097 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつ風吹くや浪まに数しらすおなし帆むけの舟そならへる
おきつかせ−ふくやなみまに−かすしらす−おなしほむけの−ふねそならへる |
09098 |
未入力 正徹 (xxx)
心あてやかはるおもかちかりかちのこゑもしけぬくおきつ舟長
こころあてや−かはるおもかち−かりかちの−こゑもしけぬく−おきつふなをさ |
09099 |
未入力 正徹 (xxx)
とるかちのともにはし舟引きそへていく浦過きぬまほの追風
とるかちの−ともにはしふね−ひきそへて−いくうらすきぬ−まほのおひかせ |
09100 |
未入力 正徹 (xxx)
こす浪のぬるき磯辺の岩あひにかしふりたててつなく舟人
こすなみの−ぬるきいそへの−いはあひに−かしふりたてて−つなくふなひと |
09101 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよ舟のともへのいかりなはおろすもこよひあらき浪かな
こころせよ−ふねのともへの−いかりなは−おろすもこよひ−あらきなみかな |
09102 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原今朝追風に舟出して浜ち八百日を一日にそこし
わたのはら−けさおひかせに−ふなてして−はまちやほかを−ひとひにそこし |
09103 |
未入力 正徹 (xxx)
松浦かたもろこし舟のつなてかもおきの入日の雲まもる影
まつらかた−もろこしふねの−つなてかも−おきのいりひの−くもまもるかけ |
09104 |
未入力 正徹 (xxx)
みれは又舟にちかひて行く雲の跡のおもひをせく涙かな
みれはまた−ふねにちかひて−ゆくくもの−あとのおもひを−せくなみたかな |
09105 |
未入力 正徹 (xxx)
よせかねぬ山かと見ゆる浪もみな舟のしたこすおきつ塩風
よせかねぬ−やまかとみゆる−なみもみな−ふねのしたこす−おきつしほかせ |
09106 |
未入力 正徹 (xxx)
友舟はちかひてはやき朝しほの道行ふりも見えぬ浪かな
ともふねは−ちかひてはやき−あさしほの−みちゆきふりも−みえぬなみかな |
09107 |
未入力 正徹 (xxx)
猶もふけ追手のほつなときおろし夕なみをしくとまる舟人
なほもふけ−おひてのほつな−ときおろし−ゆふなみをしく−とまるふなひと |
09108 |
未入力 正徹 (xxx)
よる浪の空にもかへる雲くれていその入江にとまる舟人
よるなみの−そらにもかへる−くもくれて−いそのいりえに−とまるふなひと |
09109 |
未入力 正徹 (xxx)
友舟のいかりおろすな暮れぬともここはなこ路のしほの八百合
ともふねの−いかりおろすな−くれぬとも−ここはなこちの−しほのやほあひ |
09110 |
未入力 正徹 (xxx)
舟おほくならへるおきの帆柱によこ雲かけて風そおひくる
ふねおほく−ならへるおきの−ほはしらに−よこくもかけて−かせそおひくる |
09111 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲のひくてのつなに出てそめて風に天とふおきつ舟人
よこくもの−ひくてのつなに−いてそめて−かせにあまとふ−おきつふなひと |
09112 |
未入力 正徹 (xxx)
やすむらんうきたる雲をほにあけて風のこき行くおきつ舟人
やすむらむ−うきたるくもを−ほにあけて−かせのこきゆく−おきつふなひと |
09113 |
未入力 正徹 (xxx)
あすは又舟路の雨と成りやせん海よりのほる雲の一むら
あすはまた−ふなちのあめと−なりやせむ−うみよりのほる−くものひとむら |
09114 |
未入力 正徹 (xxx)
よる浪のなきたるうらを出てし舟もおきになりては風そおほゆる
よるなみの−なきたるうらを−いてしふねも−おきになりては−かせそおほゆる |
09115 |
未入力 正徹 (xxx)
うしほ風おきの遠山こす浪を見おろすはかり舟そたゆたふ
うしほかせ−おきのとほやま−こすなみを−みおろすはかり−ふねそたゆたふ |
09116 |
未入力 正徹 (xxx)
大舟もちひさき鳥と見えぬへしおきのかもめは浪に消えつつ
おほふねも−ちひさきとりと−みえぬへし−おきのかもめは−なみにきえつつ |
09117 |
未入力 正徹 (xxx)
風よりもあらき舟子のことの葉にしらぬ浪ちをまかせてそ行く
かせよりも−あらきふなこの−ことのはに−しらぬなみちを−まかせてそゆく |
09118 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ又浪のぬるみにとめてけりおきつ島守舟むかへして
こよひまた−なみのぬるみに−とめてけり−おきつしまもり−ふなむかへして |
09119 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつかせまほにまかちをとる舟の天とふはかりわたる浪かな
おきつかせ−まほにまかちを−とるふねの−あまとふはかり−わたるなみかな |
09120 |
未入力 正徹 (xxx)
横雲をまほの綱手に引きませて山ちにかかるおきつ舟人
よこくもを−まほのつなてに−ひきませて−やまちにかかる−おきつふなひと |
09121 |
未入力 正徹 (xxx)
夕なみもなきさのあまのすて衣くちにし色をそふる雲かな
ゆふなみも−なきさのあまの−すてころも−くちにしいろを−そふるくもかな |
09122 |
未入力 正徹 (xxx)
浦にすむあまのみるめや友ならんよこ雲かつくおきの遠山
うらにすむ−あまのみるめや−ともならむ−よこくもかつく−おきのとほやま |
09123 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上にこきゆく舟はしらねとも雲のほおろす興つしほかせ
なみのうへに−こきゆくふねは−しらねとも−くものほおろす−おきつしほかせ |
09124 |
未入力 正徹 (xxx)
声たてて松やしほひのかたはかり昔をのこすわかの浦風
こゑたてて−まつやしほひの−かたはかり−むかしをのこす−わかのうらかせ |
09125 |
未入力 正徹 (xxx)
浪よりも松陰たのむはまひさしあやふき岸に鳥そおりゐる
なみよりも−まつかけたのむ−はまひさし−あやふききしに−とりそおりゐる |
09126 |
未入力 正徹 (xxx)
すみよしや昔はきしの松かねを打ちけん浪の遠きしら浜
すみよしや−むかしはきしの−まつかねを−うちけむなみの−とほきしらはま |
09127 |
未入力 正徹 (xxx)
橋立やはま松風はくらくなりてよさのふけひに月かたふきぬ
はしたてや−はままつかせは−くらくなりて−よさのふけひに−つきかたふきぬ |
09128 |
未入力 正徹 (xxx)
さかへつつみとりもつきす諸人のことのはにとる和かのうら松
さかへつつ−みとりもつきす−もろひとの−ことのはにとる−わかのうらまつ |
09129 |
未入力 正徹 (xxx)
神の世の木のこのかみと生ふるらん国もはしめのあはち島松
かみのよの−きのこのかみと−おふるらむ−くにもはしめの−あはちしままつ |
09130 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれ立つすさの入江の夕なみはあとまてさわくあちの村鳥
うかれたつ−すさのいりえの−ゆふなみは−あとまてさわく−あちのむらとり |
09131 |
未入力 正徹 (xxx)
浪かくるおきつなきさにゆられよる玉もかなみか遠き一むら
なみかくる−おきつなきさに−ゆられよる−たまもかなみか−とほきひとむら |
09132 |
未入力 正徹 (xxx)
人しけく家ゐそおほき朝夕のうらさひしとも何をかもみん
ひとしけく−いへゐそおほき−あさゆふの−うらさひしとも−なにをかもみむ |
09133 |
未入力 正徹 (xxx)
身をさへやかくしわふらん須磨のあまの家もまとほの衣なくして
みをさへや−かくしわふらむ−すまのあまの−いへもまとほの−ころもなくして |
09134 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さすいそ屋のあまのつりさをにあさてかけほしあひきするみゆ
ゆふひさす−いそやのあまの−つりさをに−あさてかけほし−あひきするみゆ |
09135 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほやく煙も思ひ消えそ行く世わたりわふるさとのあま人
もしほやく−けふりもおもひ−きえそゆく−よわたりわふる−さとのあまひと |
09136 |
未入力 正徹 (xxx)
月そ入るゆらの戸わたる横雲に浪ち夜ふかききちの遠山
つきそいる−ゆらのとわたる−よこくもに−なみちよふかき−きちのとほやま |
09137 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原むかひに山のありなしは雲にしらるる浪のうへかな
わたのはら−むかひにやまの−ありなしは−くもにしらるる−なみのうへかな |
09138 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原よるみしおきの山もなし雲なりけりな浪のあさなき
わたのはら−よるみしおきの−やまもなし−くもなりけりな−なみのあさなき |
09139 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちはててしほくむあまや捨衣なみのみあらふ雲の一むら
くちはてて−しほくむあまや−すてころも−なみのみあらふ−くものひとむら |
09140 |
未入力 正徹 (xxx)
見えさりしおきつ塩あひに浮かふ山の淡ときゆるは雲そ棚引く
みえさりし−おきつしほあひに−うかふやまの−あわときゆるは−くもそたなひく |
09141 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるかみさりし奥にわかれ行く雲間の浪に松そうかへる
あけぬるか−みさりしおきに−わかれゆく−くもまのなみに−まつそうかへる |
09142 |
未入力 正徹 (xxx)
あま人のもしほたれぬる袖かともみなとに遠き雲そ残れる
あまひとの−もしほたれぬる−そてかとも−みなとにとほき−くもそのこれる |
09143 |
未入力 正徹 (xxx)
月のこる遠のうみきは猶はれてみしかき雲をあらふ白浪
つきのこる−をちのうみきは−なほはれて−みしかきくもを−あらふしらなみ |
09144 |
未入力 正徹 (xxx)
宿ことの庭のなかれにせき入れてこの比清き中川の水
やとことの−にはのなかれに−せきいれて−このころきよき−なかかはのみつ |
09145 |
未入力 正徹 (xxx)
あまさかる雲に白浪みちもなし舟なかしたるあまの此身は
あまさかる−くもにしらなみ−みちもなし−ふねなかしたる−あまのこのみは |
09146 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに法の衣をたちそきるあひそめ川のなみもはつかし
いたつらに−のりのころもを−たちそきる−あひそめかはの−なみもはつかし |
09147 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にゐる雲に塩風いかか吹くまほもかたほもおきつふな人
なみにゐる−くもにしほかせ−いかかふく−まほもかたほも−おきつふなひと |
09148 |
未入力 正徹 (xxx)
影やこれたれあけおきて月のさす槙の戸川にあまる白浪
かけやこれ−たれあけおきて−つきのさす−まきのとかはに−あまるしらなみ |
09149 |
未入力 正徹 (xxx)
世の人のかすやはかはる行く河ももとの水にはあらてたえせし
よのひとの−かすやはかはる−ゆくかはも−もとのみつには−あらてたえせし |
09150 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の夜もおち鮎つきて西川や石にふしたる魚そのこれる
あきのよも−おちあゆつきて−にしかはや−いしにふしたる−うをそのこれる |
09151 |
未入力 正徹 (xxx)
水のあわと消えかへるなりたをやめかおもひたえせぬあすか川なみ
みつのあわと−きえかへるなり−たをやめか−おもひたえせぬ−あすかかはなみ |
09152 |
未入力 正徹 (xxx)
花そのの花をいく世かなかしけん風よりつらし志賀の山河
はなそのの−はなをいくよか−なかしけむ−かせよりつらし−しかのやまかは |
09153 |
未入力 正徹 (xxx)
すみた河岸の柳にたつさきの色にそならぬ宮こ鳥かな
すみたかは−きしのやなきに−たつさきの−いろにそならぬ−みやことりかな |
09154 |
未入力 正徹 (xxx)
うき草は江にかたよりて古川やのこるゐくひにたてる鷺かな
うきくさは−えにかたよりて−ふるかはや−のこるゐくひに−たてるさきかな |
09155 |
未入力 正徹 (xxx)
はるかなる洲にゐるたつもたのむらんくれなはなけの川上の松
はるかなる−すにゐるたつも−たのむらむ−くれなはなけの−かはかみのまつ |
09156 |
未入力 正徹 (xxx)
すみた川心や花の宮こ鳥都にとほき浪にすめとも
すみたかは−こころやはなの−みやことり−みやこにとほき−なみにすめとも |
09157 |
未入力 正徹 (xxx)
貌鳥の水にかけみぬ夕暮にゐくひをさしてさきそ落ちくる
かほとりの−みつにかけみぬ−ゆふくれに−ゐくひをさして−さきそおちくる |
09158 |
未入力 正徹 (xxx)
おちたきついはてたたにや山川の入江のすとりうきにまかせん
おちたきつ−いはてたたにや−やまかはの−いりえのすとり−うきにまかせむ |
09159 |
未入力 正徹 (xxx)
松かけのなみもともにそ立ちそめん此川上のつるの毛衣
まつかけの−なみもともにそ−たちそめむ−このかはかみの−つるのけころも |
09160 |
未入力 正徹 (xxx)
貌よ鳥ゐくひの上の川風に水のかかみはむかふまもなし
かほよとり−ゐくひのうへの−かはかせに−みつのかかみは−むかふまもなし |
09161 |
未入力 正徹 (xxx)
川音もすさきにたてる鵲のくもるつはさそ雨の色なる
かはおとも−すさきにたてる−かささきの−くもるつはさそ−あめのいろなる |
09162 |
未入力 正徹 (xxx)
むら鷺は山もと遠くとひ消えて柳ちるなりあきの河かせ
むらさきは−やまもととほく−とひきえて−やなきちるなり−あきのかはかせ |
09163 |
未入力 正徹 (xxx)
苔りぬ岩なみしろき山川におつるみさこのかへる松か枝
こけふりぬ−いはなみしろき−やまかはに−おつるみさこの−かへるまつかえ |
09164 |
未入力 正徹 (xxx)
朝川の水のけふりに島つ鳥うは玉の夜の色そ消行く
あさかはの−みつのけふりに−しまつとり−うはたまのよの−いろそきえゆく |
09165 |
未入力 正徹 (xxx)
末せはみひろせにうかふ筏土の一もやひつつおとす川波
すゑせはみ−ひろせにうかふ−いかたしの−ひともやひつつ−おとすかはなみ |
09166 |
未入力 正徹 (xxx)
岩なみのおとそきこえぬ杣川やつつく筏の床にせかれて
いはなみの−おとそきこえぬ−そまかはや−つつくいかたの−とこにせかれて |
09167 |
未入力 正徹 (xxx)
舟つなく堤の上の山風に川音くれて行人もなし
ふねつなく−つつみのうへの−やまかせに−かはおとくれて−ゆくひともなし |
09168 |
未入力 正徹 (xxx)
人心さも早川のせに生ふる玉もかりそめの世にやなひかん
ひとこころ−さもはやかはの−せにおふる−たまもかりそめの−よにやなひかむ |
09169 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかきるふもとの雲の上のきぬ小川の石の帯そめくれる
たれかきる−ふもとのくもの−うへのきぬ−をかはのいしの−おひそめくれる |
09170 |
未入力 正徹 (xxx)
月草の花たの帯か末かけて空色うつす山川の水
つきくさの−はなたのおひか−すゑかけて−そらいろうつす−やまかはのみつ |
09171 |
未入力 正徹 (xxx)
清滝やなかれ出てけんそのかみを岩ほもしらぬ水のしらなみ
きよたきや−なかれいてけむ−そのかみを−いはほもしらぬ−みつのしらなみ |
09172 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくなりみかく春日の川上にたえぬこと葉の玉もある世を
あふくなり−みかくかすかの−かはかみに−たえぬことはの−たまもあるよを |
09173 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂や苔の岩かと玉こえて山たちいつる関川のなみ
あふさかや−こけのいはかと−たまこえて−やまたちいつる−せきかはのなみ |
09174 |
未入力 正徹 (xxx)
世をかさねこほる玉もの床せはになくやさ山か池のをし鳥
よをかさね−こほるたまもの−とこせはに−なくやさやまか−いけのをしとり |
09175 |
未入力 正徹 (xxx)
庭ひろき池の心のちりもなし松にや世世の年つもるらん
にはひろき−いけのこころの−ちりもなし−まつにやよよの−としつもるらむ |
09176 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上によりくるかめやあひやすき池の浮草木にもあらすて
なみのうへに−よりくるかめや−あひやすき−いけのうきくさ−きにもあらすて |
09177 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにける池のふし木の苔の上に日影にあたる亀そむれゐる
ふりにける−いけのふしきの−こけのうへに−ひかけにあたる−かめそむれゐる |
09178 |
未入力 正徹 (xxx)
河なみのよとむふし木にすむかめの又淵に入る岸の人かけ
かはなみの−よとむふしきに−すむかめの−またふちにいる−きしのひとかけ |
09179 |
未入力 正徹 (xxx)
山川のふちにととまるなかれ木を棲となして亀そ鳴くなる
やまかはの−ふちにととまる−なかれきを−すみかとなして−かめそなくなる |
09180 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やせによるこけのうききにもあへるをまれの亀や鳴くらん
やまかはや−せによるこけの−うききにも−あへるをまれの−かめやなくらむ |
09181 |
未入力 正徹 (xxx)
風に見し柳の花のかたよりにおちても水になひく浮草
かせにみし−やなきのはなの−かたよりに−おちてもみつに−なひくうきくさ |
09182 |
未入力 正徹 (xxx)
みかきおけ空に水とる玉かしは道たかき世の心をも見ん
みかきおけ−そらにみつとる−たまかしは−みちたかきよの−こころをもみむ |
09183 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世とも岩まの水にわく玉の数かきりなき光をそ見ん
いくよとも−いはまのみつに−わくたまの−かすかきりなき−ひかりをそみむ |
09184 |
未入力 正徹 (xxx)
庭の面にせき入れてみよ松のはの散りうせぬかけそ水のうたかた
にはのおもに−せきいれてみよ−まつのはの−ちりうせぬかけそ−みつのうたかた |
09185 |
未入力 正徹 (xxx)
松かけの滝の岩なみ十かへりの花のかかみをみかく山かせ
まつかけの−たきのいはなみ−とかへりの−はなのかかみを−みかくやまかせ |
09186 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの雨のなこりの村雲にあらはれきゆる野への沢水
やまもとの−あめのなこりの−むらくもに−あらはれきゆる−のへのさはみつ |
09187 |
未入力 正徹 (xxx)
かくしつる雲そすくなきひろせ川わかれて残る峰の一村
かくしつる−くもそすくなき−ひろせかは−わかれてのこる−みねのひとむら |
09188 |
未入力 正徹 (xxx)
湊より興中川に行く水のなかれはるかにはるる雲かな
みなとより−おきなかかはに−ゆくみつの−なかれはるかに−はるるくもかな |
09189 |
未入力 正徹 (xxx)
一くもりふふき消えつる末の野にしろきをみれは雪の川橋
ひとくもり−ふふききえつる−すゑののに−しろきをみれは−ゆきのかははし |
09190 |
未入力 正徹 (xxx)
月いつる山沢とほき水かけもはつかに見ゆる雲の下風
つきいつる−やまさはとほき−みつかけも−はつかにみゆる−くものしたかせ |
09191 |
未入力 正徹 (xxx)
おときけはうきか中にも心をは猶やり水のある世なりけり
おときけは−うきかなかにも−こころをは−なほやりみつの−あるよなりけり |
09192 |
未入力 正徹 (xxx)
たた一木山さは水にふす松の葉分におふるこすけ村芦
たたひとき−やまさはみつに−ふすまつの−はわけにおふる−こすけむらあし |
09193 |
未入力 正徹 (xxx)
河風に又此比や桜谷みそきのぬさも花とちるらん
かはかせに−またこのころや−さくらたに−みそきのぬさも−はなとちるらむ |
09194 |
未入力 正徹 (xxx)
浪による玉かと峰の松のはの陰さへふかき谷の下水
なみによる−たまかとみねの−まつのはの−かけさへふかき−たにのしたみつ |
09195 |
未入力 正徹 (xxx)
こけふかき谷のふし木をせきとめて山の雫や淵と成るらん
こけふかき−たにのふしきを−せきとめて−やまのしつくや−ふちとなるらむ |
09196 |
未入力 正徹 (xxx)
風の上に峰の梯ゆく人のかけのみわたる谷川の水
かせのうへに−みねのかけはし−ゆくひとの−かけのみわたる−たにかはのみつ |
09197 |
未入力 正徹 (xxx)
谷川のしからみならぬ埋木にせかれて水のみ草よるなり
たにかはの−しからみならぬ−うもれきに−せかれてみつの−みくさよるなり |
09198 |
未入力 正徹 (xxx)
淵青くなるせは白き谷川をめにかけて行くそはのかけはし
ふちあをく−なるせはしろき−たにかはを−めにかけてゆく−そはのかけはし |
09199 |
未入力 正徹 (xxx)
あらきなみ風心せよ舟はたのうすき命の隔はかりを
あらきなみ−かせこころせよ−ふなはたの−うすきいのちの−へたてはかりを |
09200 |
未入力 正徹 (xxx)
湊出のおほ舟おくるはし舟に玉もかりつみかへるうら人
みなといての−おほふねおくる−はしふねに−たまもかりつみ−かへるうらひと |
09201 |
未入力 正徹 (xxx)
行く舟の追手もあまりつよくしてしはしほおろすせとの塩あひ
ゆくふねの−おひてもあまり−つよくして−しはしほおろす−せとのしほあひ |
09202 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの夢たゆともたゆな大舟におろすはかりの縄のうらなみ
よはのゆめ−たゆともたゆな−おほふねに−おろすはかりの−なはのうらなみ |
09203 |
未入力 正徹 (xxx)
日をへつつ思ひしうらに舟そよるなかくともなくあまのたくなは
ひをへつつ−おもひしうらに−ふねそよる−なかくともなく−あまのたくなは |
09204 |
未入力 正徹 (xxx)
しなかとりふしうきゐなのみなと舟あまのかるもの浪の枕は
しなかとり−ふしうきゐなの−みなとふね−あまのかるもの−なみのまくらは |
09205 |
未入力 正徹 (xxx)
こまとめて舟をやいそく末とほきさののわたりにかかる舟人
こまとめて−ふねをやいそく−すゑとほき−さののわたりに−かかるふなひと |
09206 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ行く舟のつなてをなけこして引きとめらるる早川のきし
なかれゆく−ふねのつなてを−なけこして−ひきとめらるる−はやかはのきし |
09207 |
未入力 正徹 (xxx)
八百日行く舟の時のまあつさゆみ引く早しほの矢ほの追風
やほかゆく−ふねのときのま−あつさゆみ−ひくはやしほの−やほのおひかせ |
09208 |
未入力 正徹 (xxx)
音あらき浪の手玉もゆらの戸をわたる舟人心くたけて
おとあらき−なみのてたまも−ゆらのとを−わたるふなひと−こころくたけて |
09209 |
未入力 正徹 (xxx)
磯たかき岩ほうちこすあら浪のむねにひひきのなたの舟人
いそたかき−いはほうちこす−あらなみの−むねにひひきの−なたのふなひと |
09210 |
未入力 正徹 (xxx)
舟とむる夜はにやかちを枕かのこかの渡に夢をまたまし
ふねとむる−よはにやかちを−まくらかの−こかのわたりに−ゆめをまたまし |
09211 |
未入力 正徹 (xxx)
あるやなき高塩むかふ風はやの身を後の世におきつ舟人
あるやなき−たかしほむかふ−かさはやの−みをのちのよに−おきつふなひと |
09212 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりみるあはちはあわそいこま山たかくよりくるせとの早舟
かへりみる−あはちはあわそ−いこまやま−たかくよりくる−せとのはやふね |
09213 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬさまつれうき立つ浪も早しほの八百合はやきせとの舟人
ぬさまつれ−うきたつなみも−はやしほの−やほあひはやき−せとのふなひと |
09214 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟こかの渡のよこ雲にたか枕かのゆくへとふらむ
あまをふね−こかのわたりの−よこくもに−たかまくらかの−ゆくへとふらむ |
09215 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かたせと漕渡る舟人の四の国みやおきつしま山
あはちかた−せとこきわたる−ふなひとの−よつのくにみや−おきつしまやま |
09216 |
未入力 正徹 (xxx)
ひくほとはあまりにしほも早とものわたらし波に舟やなからん
ひくほとは−あまりにしほも−はやともの−わたらしなみに−ふねやなからむ |
09217 |
未入力 正徹 (xxx)
興たかみ浪のあはちの山きえてせとこす舟の落つる早しほ
おきたかみ−なみのあはちの−やまきえて−せとこすふねの−おつるはやしほ |
09218 |
未入力 正徹 (xxx)
あはちかたせと行く雲をまきしほの風むかふ日は舟も渡らす
あはちかた−せとゆくくもを−まきしほの−かせむかふひは−ふねもわたらす |
09219 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にしく雲をうきねの枕かはこかれやはするあまのもしほ火
なみにしく−くもをうきねの−まくらかは−こかれやはする−あまのもしほひ |
09220 |
未入力 正徹 (xxx)
さしつくるむかひの舟のおりのりに人の心も見ゆる川岸
さしつくる−むかひのふねの−おりのりに−ひとのこころも−みゆるかはきし |
09221 |
未入力 正徹 (xxx)
さしむかひ舟くるほとの川きしにむれたつ人のおなし心よ
さしむかひ−ふねくるほとの−かはきしに−むれたつひとの−おなしこころよ |
09222 |
未入力 正徹 (xxx)
河きしにひとりたてるやしるからんよせんともせぬをちの舟長
かはきしに−ひとりたてるや−しるからむ−よせむともせぬ−をちのふなをさ |
09223 |
未入力 正徹 (xxx)
舟まてはおそき河原にふす民やさしわたりぬと夢にみるらん
ふねまては−おそきかはらに−ふすたみや−さしわたりぬと−ゆめにみるらむ |
09224 |
未入力 正徹 (xxx)
あさき江の契としるも袖ぬれぬきしの上野の草の枕は
あさきえの−ちきりとしるも−そてぬれぬ−きしのうへのの−くさのまくらは |
09225 |
未入力 正徹 (xxx)
いつはりの露を涙となすもうし野上の草の枕ならへて
いつはりの−つゆをなみたと−なすもうし−のかみのくさの−まくらならへて |
09226 |
未入力 正徹 (xxx)
まつ人はよもきか島も尋ねみぬ身をうき舟に老と成りつつ
まつひとは−よもきかしまも−たつねみぬ−みをうきふねに−おいとなりつつ |
09227 |
未入力 正徹 (xxx)
大舟のゆたのたゆたふ浪の上に夢のうきみるみたれ佗ひつつ
おほふねの−ゆたのたゆたふ−なみのうへに−ゆめのうきみる−みたれわひつつ |
09228 |
未入力 正徹 (xxx)
河こしに物いひかはす里かよひ舟ならてはのをちこちの岸
かはこしに−ものいひかはす−さとかよひ−ふねならてはの−をちこちのきし |
09229 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人の朝けにたけと椎のはの嵐そおくるうちの柴舟
さとひとの−あさけにたけと−しひのはの−あらしそおくる−うちのしはふね |
09230 |
未入力 正徹 (xxx)
みたれにしかふこの糸か桑原のなりけんにほの海の白なみ
みたれにし−かふこのいとか−くははらの−なりけむにほの−うみのしらなみ |
09231 |
未入力 正徹 (xxx)
はやめゆけやかぬしほ津をさす舟にからき浪たつ竹生島山
はやめゆけ−やかぬしほつを−さすふねに−からきなみたつ−ちくふしまやま |
09232 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟たかきぬきぬのあさ妻や身をうら浪に漕きかへるらん
あまをふね−たかきぬきぬの−あさつまや−みをうらなみに−こきかへるらむ |
09233 |
未入力 正徹 (xxx)
ささ浪も立つとは見えすにほの海のにはよき興をわたる舟人
ささなみも−たつとはみえす−にほのうみの−にはよきおきを−わたるふなひと |
09234 |
未入力 正徹 (xxx)
から崎の松もる神の社にもはまの鳥ゐにゆふかへるなみ
からさきの−まつもるかみの−やしろにも−はまのとりゐに−ゆふかへるなみ |
09235 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌のうらや昔の風のすかたにもおよはぬ松のことのはそうき
わかのうらや−むかしのかせの−すかたにも−およはぬまつの−ことのはそうき |
09236 |
未入力 正徹 (xxx)
なみならぬ幾代の人のことのはにかけて色こきわかのうら松
なみならぬ−いくよのひとの−ことのはに−かけていろこき−わかのうらまつ |
09237 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身のなき世のこけの下にふけこれやかきりの浦の松風
おいかみの−なきよのこけの−したにふけ−これやかきりの−うらのまつかせ |
09238 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜ふかきしほひのたつもいもに恋ひ和かの浦わの松に鳴くなり
さよふかき−しほひのたつも−いもにこひ−わかのうらわの−まつになくなり |
09239 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦や老木も松の花はあれと我かことのはの春そすくなき
わかのうらや−おいきもまつの−はなはあれと−わかことのはの−はるそすくなき |
09240 |
未入力 正徹 (xxx)
わかのうらの松の落葉のちりの世にうつもれはてし名をたにもたて
わかのうらの−まつのおちはの−ちりのよに−うつもれはてし−なをたにもたて |
09241 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉の数か吹上の山おろしまさこをはこふ和かのうら松
ことのはの−かすかふきあけの−やまおろし−まさこをはこふ−わかのうらまつ |
09242 |
未入力 正徹 (xxx)
後みれはよさの橋立中絶えて昔にもあらす松そかれにし
のちみれは−よさのはしたて−なかたえて−むかしにもあらす−まつそかれにし |
09243 |
未入力 正徹 (xxx)
あまの子もいまやかくらん波そちる松のはよせてうら風そ吹く
あまのこも−いまやかくらむ−なみそちる−まつのはよせて−うらかせそふく |
09244 |
未入力 正徹 (xxx)
風しをるよさの浦松夜見えて浪にきえせぬ竜の灯
かせしをる−よさのうらまつ−よるみえて−なみにきえせぬ−たつのともしひ |
09245 |
未入力 正徹 (xxx)
須磨の浦やなみも真砂も曇なき晴にいてたる入うみの松
すまのうらや−なみもまさこも−くもりなき−はれにいてたる−いりうみのまつ |
09246 |
未入力 正徹 (xxx)
行見はや松か浦島末の世に心あるあまの心なくとも
ゆきみはや−まつかうらしま−すゑのよに−こころあるあまの−こころなくとも |
09247 |
未入力 正徹 (xxx)
つもるらし松のこと葉の玉のかすひろひあつめよ和かの浦人
つもるらし−まつのことはの−たまのかす−ひろひあつめよ−わかのうらひと |
09248 |
未入力 正徹 (xxx)
はりまちの追風なからともの海の室の木陰に舟はきにけり
はりまちの−おひかせなから−とものうみの−むろのこかけに−ふねはきにけり |
09249 |
未入力 正徹 (xxx)
しほかまのうらこき暮るるみをつくしたてる煙によする舟人
しほかまの−うらこきくるる−みをつくし−たてるけふりに−よするふなひと |
09250 |
未入力 正徹 (xxx)
吹く風のかはると見えてほの上の日影をおろす興つ舟人
ふくかせの−かはるとみえて−ほのうへの−ひかけをおろす−おきつふなひと |
09251 |
未入力 正徹 (xxx)
いつて舟五十年の浪にかかるより日をへてよわるみほのうら風
いつてふね−いそちのなみに−かかるより−ひをへてよわる−みほのうらかせ |
09252 |
未入力 正徹 (xxx)
わかの浦や遠つひかたの舟のりもうかへるしほのさすか待つらん
わかのうらや−とほつひかたの−ふなのりも−うかへるしほの−さすかまつらむ |
09253 |
未入力 正徹 (xxx)
うけかたきみほのうらこく五手舟五にこれる浪にしつむな
うけかたき−みほのうらこく−いつてふね−いつつにこれる−なみにしつむな |
09254 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつ風たつ夕浪にとふ鳥のかへるをみれは舟にいさり火
おきつかせ−たつゆふなみに−とふとりの−かへるをみれは−ふねにいさりひ |
09255 |
未入力 正徹 (xxx)
さひしさは夕のおきに雲消えて浪たえぬ江にたななしを舟
さひしさは−ゆふへのおきに−くもきえて−なみたえぬえに−たななしをふね |
09256 |
未入力 正徹 (xxx)
遠つうらに友なしを舟あまやこくつかはぬ鳥そ浪ち分行く
とほつうらに−ともなしをふね−あまやこく−つかはぬとりそ−なみちわけゆく |
09257 |
未入力 正徹 (xxx)
夕浪に入江のす鳥まかふまて友なしを舟遠さかりゆく
ゆふなみに−いりえのすとり−まかふまて−ともなしをふね−とほさかりゆく |
09258 |
未入力 正徹 (xxx)
くるる江の芦間のを舟ふる雨におほへるとまの下の心よ
くるるえの−あしまのをふね−ふるあめに−おほへるとまの−したのこころよ |
09259 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌の浦の洲にゐし舟のうこく世も有りける浪の江をは出てねと
わかのうらの−すにゐしふねの−うこくよも−ありけるなみの−えをはいてねと |
09260 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世は根をはなれたる草か江につなかぬ舟の岸による波
ひとのよは−ねをはなれたる−くさかえに−つなかぬふねの−きしによるなみ |
09261 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬししらぬ入江の夕人なくて蓑と棹との舟にのこれる
ぬししらぬ−いりえのゆふへ−ひとなくて−みのとさをとの−ふねにのこれる |
09262 |
未入力 正徹 (xxx)
水たゆる古江の杉のまろ木舟いつうかひてか草に朽つらん
みつたゆる−ふるえのすきの−まろきふね−いつうかひてか−くさにくつらむ |
09263 |
未入力 正徹 (xxx)
塩やくやもかりを舟のつなて引く入江の里のくるるけふりは
しほやくや−もかりをふねの−つなてひく−いりえのさとの−くるるけふりは |
09264 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風入江のひかた塩みちてすにゐしを舟又そたゆたふ
おきつかせ−いりえのひかた−しほみちて−すにゐしをふね−またそたゆたふ |
09265 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮人なき舟の蓑笠にむら雨かかる入江かなしき
ゆふまくれ−ひとなきふねの−みのかさに−むらさめかかる−いりえかなしき |
09266 |
未入力 正徹 (xxx)
君をこそ憑みますけのみくりなは身をまかせてや江にひかるらん
きみをこそ−たのみますけの−みくりなは−みをまかせてや−えにひかるらむ |
09267 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟島こきめくり笠ぬひの入江のますけからね日もなし
あまをふね−しまこきめくり−かさぬひの−いりえのますけ−からねひもなし |
09268 |
未入力 正徹 (xxx)
ひかれてもいまはなにせむことの葉も古江のみくり世には朽ちにき
ひかれても−いまはなにせむ−ことのはも−ふるえのみくり−よにはくちにき |
09269 |
未入力 正徹 (xxx)
まこもかる入江の小舟あまのうけあしてかくともみゆる浪かな
まこもかる−いりえのをふね−あまのうけ−あしてかくとも−みゆるなみかな |
09270 |
未入力 正徹 (xxx)
天の世の初は神もあし牙のすかたなりける江にやつのくむ
あめのよの−はしめはかみも−あしかひの−すかたなりける−えにやつのくむ |
09271 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ緑あしのねぬなははひめくりせはく成行く沼のささ浪
あさみとり−あしのねぬなは−はひめくり−せはくなりゆく−ぬまのささなみ |
09272 |
未入力 正徹 (xxx)
浪風のあやふなからも千世ふるやはなれ小島の松の一本
なみかせの−あやふなからも−ちよふるや−はなれこしまの−まつのひともと |
09273 |
未入力 正徹 (xxx)
海わたる鳥も一夜や旅ねせん夕浪こすな興つしま松
うみわたる−とりもひとよや−たひねせむ−ゆふなみこすな−おきつしままつ |
09274 |
未入力 正徹 (xxx)
もろこしもかからん種や生ひさらんことのはよする秋津島松
もろこしも−かからむたねや−おひさらむ−ことのはよする−あきつしままつ |
09275 |
未入力 正徹 (xxx)
はなれたつ岩ほをたかみ浪こゆる松そひさしきおきつ島守
はなれたつ−いはほをたかみ−なみこゆる−まつそひさしき−おきつしまもり |
09276 |
未入力 正徹 (xxx)
浪あらきおきの小島の松のたね天つ空より神やうゑけん
なみあらき−おきのこしまの−まつのたね−あまつそらより−かみやうゑけむ |
09277 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとり立つ浪やのとけき世の中をはなれ小島の松の心は
ひとりたつ−なみやのとけき−よのなかを−はなれこしまの−まつのこころは |
09278 |
未入力 正徹 (xxx)
煙をや先たてそめししほかまの神代ふりたるうき島の松
けふりをや−まつたてそめし−しほかまの−かみよふりたる−うきしまのまつ |
09279 |
未入力 正徹 (xxx)
興つなみ磯立ちならしこゆるきの松のかれはや露の玉たれ
おきつなみ−いそたちならし−こゆるきの−まつのかれはや−つゆのたまたれ |
09280 |
未入力 正徹 (xxx)
舟いたす磯松かえのかさまつりよそにたつねぬ手向草かな
ふねいたす−いそまつかえの−かさまつり−よそにたつねぬ−たむけくさかな |
09281 |
未入力 正徹 (xxx)
よもつきし磯松かねにみさこゐてつはさになつる岩の生前
よもつきし−いそまつかねに−みさこゐて−つはさになつる−いはのおひさき |
09282 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かねにくたくるなみの玉たれをこかめにかけつこゆるきの磯
いはかねに−くたくるなみの−たまたれを−こかめにかけつ−こゆるきのいそ |
09283 |
未入力 正徹 (xxx)
よりそくるさかなもとめよこゆるきの磯立ちならす浪のうきみる
よりそくる−さかなもとめよ−こゆるきの−いそたちならす−なみのうきみる |
09284 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつかせあら磯なから引くしほに又こえのこす松かねのなみ
おきつかせ−あらいそなから−ひくしほに−またこえのこす−まつかねのなみ |
09285 |
未入力 正徹 (xxx)
うこきなき岩ほもさらにこゆるきの磯浪つよくあらふ松かね
うこきなき−いはほもさらに−こゆるきの−いそなみつよく−あらふまつかね |
09286 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてかしほもさしての磯のなみいまは深山の雲そかさなる
いつまてか−しほもさしての−いそのなみ−いまはみやまの−くもそかさなる |
09287 |
未入力 正徹 (xxx)
もののふのあら機なみの岩ね松根をたえぬ世をたれか憑まん
もののふの−あらいそなみの−いはねまつ−ねをたえぬよを−たれかたのまむ |
09288 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜衣さなから浪をきさかたやいそのね覚そ都にもにぬ
さよころも−さなからなみを−きさかたや−いそのねさめそ−みやこにもにぬ |
09289 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにしてつはさこえぬとみさこゐる岩ほにかへるいその白浪
よそにして−つはさこえぬと−みさこゐる−いはほにかへる−いそのしらなみ |
09290 |
未入力 正徹 (xxx)
天くたる袖とはなしに磯なみのなつる岩ほや生ひのほるらん
あまくたる−そてとはなしに−いそなみの−なつるいはほや−おひのほるらむ |
09291 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原とほき磯辺の岩こえてこゆるは雲をあらふ白波
わたのはら−とほきいそへの−いはこえて−こゆるはくもを−あらふしらなみ |
09292 |
未入力 正徹 (xxx)
時のまにまさこ吹上の山谷をつくりかへたる紀路の浜風
ときのまに−まさこふきあけの−やまたにを−つくりかへたる−きちのはまかせ |
09293 |
未入力 正徹 (xxx)
入海の磯屋の戸口ひくしほにさしとりけりなあまのまてかた
いりうみの−いそやのとくち−ひくしほに−さしとりけりな−あまのまてかた |
09294 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほやくあまの磯屋に立つけふりやかてや雲のなみと成るらん
もしほやく−あまのいそやに−たつけふり−やかてやくもの−なみとなるらむ |
09295 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕はかならす塩をやくとなき煙そましる松かうらしま
あさゆふは−かならすしほを−やくとなき−けふりそましる−まつかうらしま |
09296 |
未入力 正徹 (xxx)
煙をは松におほせていとまなみ又つりたるるなたの塩やき
けふりをは−まつにおほせて−いとまなみ−またつりたるる−なたのしほやき |
09297 |
未入力 正徹 (xxx)
しほかまや煙は名のみたつなみにあれし磯屋もかよひ絶えつつ
しほかまや−けふりはなのみ−たつなみに−あれしいそやも−かよひたえつつ |
09298 |
未入力 正徹 (xxx)
あまやすむこ屋のしほひのかたはかりやくとしもなき煙たてつつ
あまやすむ−こやのしほひの−かたはかり−やくとしもなき−けふりたてつつ |
09299 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ火に煙をそふるゆふけたにうらさひしかるあまのむら里
もしほひに−けふりをそふる−ゆふけたに−うらさひしかる−あまのむらさと |
09300 |
未入力 正徹 (xxx)
いさり火をあとのす崎にたきすてて光おくれとかへるつり舟
いさりひを−あとのすさきに−たきすてて−ひかりおくれと−かへるつりふね |
09301 |
未入力 正徹 (xxx)
夕浪に入江のあまの家家にを舟さしいてけふるいさり火
ゆふなみに−いりえのあまの−いへいへに−をふねさしいて−けふるいさりひ |
09302 |
未入力 正徹 (xxx)
くるる江のなみにうちはへ棹の糸を月にかけたる海士の釣針
くるるえの−なみにうちはへ−さをのいとを−つきにかけたる−あまのつりはり |
09303 |
未入力 正徹 (xxx)
あま人の浪にしつむるつり針の一はうかふ三日月のかけ
あまひとの−なみにしつむる−つりはりの−ひとつはうかふ−みかつきのかけ |
09304 |
未入力 正徹 (xxx)
松陰にやみをそへてやいさり火の光色こき興つ遠しま
まつかけに−やみをそへてや−いさりひの−ひかりいろこき−おきつとほしま |
09305 |
未入力 正徹 (xxx)
あまを舟あかつきしほの弥早にさしおとされてかへるいさり火
あまをふね−あかつきしほの−いやはやに−さしおとされて−かへるいさりひ |
09306 |
未入力 正徹 (xxx)
むろの海やたか別れゆく篝とも浪ち夜ふかきあまのいさり火
むろのうみや−たかわかれゆく−かかりとも−なみちよふかき−あまのいさりひ |
09307 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にうく星か川たれ時つかせふけとも消えぬなたのいさり火
なみにうく−ほしかかはたれ−ときつかせ−ふけともきえぬ−なたのいさりひ |
09308 |
未入力 正徹 (xxx)
かけてうきあまのわさかな塩やよりやく火をともす夜はのいさり火
かけてうき−あまのわさかな−しほやより−たくひをともす−よはのいさりひ |
09309 |
未入力 正徹 (xxx)
くれて見し汀の松の煙よりいてける夜はの浪のいさり火
くれてみし−みきはのまつの−けふりより−いてけるよはの−なみのいさりひ |
09310 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世をははなれ小島に身はあれと針なき釣にかけし玉のを
うきよをは−はなれこしまに−みはあれと−はりなきつりに−かけしたまのを |
09311 |
未入力 正徹 (xxx)
島つたふあしはやを舟名のみしてひま行く駒の影そこえぬる
しまつたふ−あしはやをふね−なのみして−ひまゆくこまの−かけそこえぬる |
09312 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日影やみを照すや島つ鳥うのむらかれる遠の川きし
ゆふひかけ−やみをてらすや−しまつとり−うのむらかれる−をちのかはきし |
09313 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かた絵島の松のこのまより夕日をいたすおきつ白波
あはちかた−えしまのまつの−このまより−ゆふひをいたす−おきつしらなみ |
09314 |
未入力 正徹 (xxx)
波の上の夕の色にはなれてそ日影もたかきおきつ島山
なみのうへの−ゆふへのいろに−はなれてそ−ひかけもたかき−おきつしまやま |
09315 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつ風松かねあらふ浪もみえてみしまかくれもなきゆふへかな
おきつかせ−まつかねあらふ−なみもみえて−みしまかくれも−なきゆふへかな |
09316 |
未入力 正徹 (xxx)
うらなみは松よりくるる興中のはなれ小島にのこる日の影
うらなみは−まつよりくるる−おきなかの−はなれこしまに−のこるひのかけ |
09317 |
未入力 正徹 (xxx)
ほととほきうら風見えて雲まもる夕日にさわく興つ島松
ほととほき−うらかせみえて−くもまもる−ゆふひにさわく−おきつしままつ |
09318 |
未入力 正徹 (xxx)
よそにして暮るる夜ことになにはめかすくも焼く火をいさりとそみる
よそにして−くるるよことに−なにはめか−すくもたくひを−いさりとそみる |
09319 |
未入力 正徹 (xxx)
水の面にみゆる難波の宮こ鳥むかしや雲のうへに住みけん
みつのおもに−みゆるなにはの−みやことり−むかしやくもの−うへにすみけむ |
09320 |
未入力 正徹 (xxx)
たをやめもいかかすむらんあすか風里吹きあらす川音もうし
たをやめも−いかかすむらむ−あすかかせ−さとふきあらす−かはおともうし |
09321 |
未入力 正徹 (xxx)
民の戸のけふりを見てもなには人なみになこひそさくや此花
たみのとの−けふりをみても−なにはひと−なみになこひそ−さくやこのはな |
09322 |
未入力 正徹 (xxx)
身は夢そうちの橋姫わすれねよむかひの寺の鐘に待つ夜を
みはゆめそ−うちのはしひめ−わすれねよ−むかひのてらの−かねにまつよを |
09323 |
未入力 正徹 (xxx)
水野には舟のみまつを川むかひうらやましきやよとのつき橋
みつのには−ふねのみまつを−かはむかひ−うらやましきや−よとのつきはし |
09324 |
未入力 正徹 (xxx)
あさくとも道のこととへ宮こ鳥きたるほり江にちかきさと人
あさくとも−みちのこととへ−みやことり−きたるほりえに−ちかきさとひと |
09325 |
未入力 正徹 (xxx)
ならふとて女の子も舟をよくそさすめくれるさとの島のさと人
ならふとて−めのこもふねを−よくそさす−めくれるさとの−しまのさとひと |
09326 |
未入力 正徹 (xxx)
とふ鳥のあすか川風さとなれてかはる淵せを枕にそきく
とふとりの−あすかかはかせ−さとなれて−かはるふちせを−まくらにそきく |
09327 |
未入力 正徹 (xxx)
月やとふ里は水のの山かせに川おとまさる秋のねさめを
つきやとふ−さとはみつのの−やまかせに−かはおとまさる−あきのねさめを |
09328 |
未入力 正徹 (xxx)
ね覚めすやあすか川なみ耳なれて雨もあらしもしらぬさと人
ねさめすや−あすかかはなみ−みみなれて−あめもあらしも−しらぬさとひと |
09329 |
未入力 正徹 (xxx)
こえ見はや君かあたりの飛鳥川又わきもこかかつらきの山
こえみはや−きみかあたりの−あすかかは−またわきもこか−かつらきのやま |
09330 |
未入力 正徹 (xxx)
みこし路の駒の足たつ雪まてや氷にかよふしほつ舟人
みこしちの−こまのあしたつ−ゆきまてや−こほりにかよふ−しほつふなひと |
09331 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨はけふかあすかにとふ鳥に村雲ましりくもる川かせ
ふるあめは−けふかあすかに−とふとりに−むらくもましり−くもるかはかせ |
09332 |
未入力 正徹 (xxx)
いこま山時そともなくはれくもる雲をみつ野にすめるさと人
いこまやま−ときそともなく−はれくもる−くもをみつのに−すめるさとひと |
09333 |
未入力 正徹 (xxx)
椎の葉の嵐もうちの川おとは旅にしあれや夜はのさと人
しひのはの−あらしもうちの−かはおとは−たひにしあれや−よはのさとひと |
09334 |
未入力 正徹 (xxx)
あしつつの此世はうすき契ともしらぬなにはのあまのいさり火
あしつつの−このよはうすき−ちきりとも−しらぬなにはの−あまのいさりひ |
09335 |
未入力 正徹 (xxx)
さとくもるかた野の雨はきほひきてあまの川すに鵲のこゑ
さとくもる−かたののあめは−きほひきて−あまのかはすに−かささきのこゑ |
09336 |
未入力 正徹 (xxx)
えそとはぬすますやしかの宮こ鳥また見ぬ花のありやなしやを
えそとはぬ−すますやしかの−みやことり−またみぬはなの−ありやなしやを |
09337 |
未入力 正徹 (xxx)
いさりするなにはのあまもにくからす小屋の煙のともしきをみて
いさりする−なにはのあまも−にくからす−こやのけふりの−ともしきをみて |
09338 |
未入力 正徹 (xxx)
たてなからまきの島人いとふらんさらせる布にかかるけふりを
たてなから−まきのしまひと−いとふらむ−さらせるぬのに−かかるけふりを |
09339 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮河辺の里に立ちすみし煙こりしくをちの山本
ゆふまくれ−かはへのさとに−たちすみし−けふりこりしく−をちのやまもと |
09340 |
未入力 正徹 (xxx)
あはつ野のを花もいまは浪ならて水うみせはきせたのなかはし
あはつのの−をはなもいまは−なみならて−みつうみせはき−せたのなかはし |
09341 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人のさきたつ袖はかつききて夕日そわたる峰のかけはし
たひひとの−さきたつそては−かつききて−ゆふひそわたる−みねのかけはし |
09342 |
未入力 正徹 (xxx)
うかりけむさののわたりのためしをもさそ思ひねのうちのはし姫
うかりけむ−さののわたりの−ためしをも−さそおもひねの−うちのはしひめ |
09343 |
未入力 正徹 (xxx)
長き夜の夢のうきはしもる人のなきにも老そわたりわつらふ
なかきよの−ゆめのうきはし−もるひとの−なきにもおいそ−わたりわつらふ |
09344 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のいくたり行くもきこゆるは枕にちかき前のかけはし
やまひとの−いくたりゆくも−きこゆるは−まくらにちかき−まへのかけはし |
09345 |
未入力 正徹 (xxx)
えやはしるうちの橋守川上の海ならさりし水のはしめを
えやはしる−うちのはしもり−かはかみの−うみならさりし−みつのはしめを |
09346 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきや山をもかけてあま雲のとたえもみえすくめの岩はし
かつらきや−やまをもかけて−あまくもの−とたえもみえす−くめのいははし |
09347 |
未入力 正徹 (xxx)
苔ふかき前のたなはし音もせて嵐にいそく雨のあしかな
こけふかき−まへのたなはし−おともせて−あらしにいそく−あめのあしかな |
09348 |
未入力 正徹 (xxx)
河辺より山のはかけてたつ虹のおとせぬ橋をわたる雨かな
かはへより−やまのはかけて−たつにしの−おとせぬはしを−わたるあめかな |
09349 |
未入力 正徹 (xxx)
宇治橋のしたにてとむる柴舟のしはしはかりの雨やとりして
うちはしの−したにてとむる−しはふねの−しはしはかりの−あまやとりして |
09350 |
未入力 正徹 (xxx)
かささきのかけおく橋を雲こめて明けわたる夜もみえぬ雨かな
かささきの−かけおくはしを−くもこめて−あけわたるよも−みえぬあめかな |
09351 |
未入力 正徹 (xxx)
橋柱くちしやいつこなから江に雨こそわたれあしのうらかせ
はしはしら−くちしやいつこ−なからえに−あめこそわたれ−あしのうらかせ |
09352 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨はぬれてほすへき木の下のしつくに朽つる前の板はし
ふるあめは−ぬれてほすへき−このもとの−しつくにくつる−まへのいたはし |
09353 |
未入力 正徹 (xxx)
こけふかき前のたなはし音もせて嵐にいそく雨の足かな
こけふかき−まへのたなはし−おともせて−あらしにいそく−あめのあしかな |
09354 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝をおつるも苔のみたれはし風のみわたるそはの谷川
まつかえを−おつるもこけの−みたれはし−かせのみわたる−そはのたにかは |
09355 |
未入力 正徹 (xxx)
ともに見むふり行く橋のいたまあらみ世わたる苔の袖もつつかす
ともにみむ−ふりゆくはしの−いたまあらみ−よわたるこけの−そてもつつかす |
09356 |
未入力 正徹 (xxx)
河よくる山の陰みちふみなれてわたらぬ橋そこけにふり行く
かはよくる−やまのかけみち−ふみなれて−わたらぬはしそ−こけにふりゆく |
09357 |
未入力 正徹 (xxx)
苔莚しくともたれかなみこゆる丸木のはしにまろねをもせん
こけむしろ−しくともたれか−なみこゆる−まろきのはしに−まろねをもせむ |
09358 |
未入力 正徹 (xxx)
うはそくか苔の衣を岩橋にぬきかけけりとみゆる色かな
うはそくか−こけのころもを−いははしに−ぬきかけけりと−みゆるいろかな |
09359 |
未入力 正徹 (xxx)
大井川月のわたるをまち見はや木の葉色なる苔の古はし
おほゐかは−つきのわたるを−まちみはや−このはいろなる−こけのふるはし |
09360 |
未入力 正徹 (xxx)
わたのへやなき川橋の跡とては柱のこけをこゆる白なみ
わたのへや−なきかははしの−あととては−はしらのこけを−こゆるしらなみ |
09361 |
未入力 正徹 (xxx)
あやふしなむしけん苔のみたれはしわたる嵐にいとと破れて
あやふしな−むしけむこけの−みたれはし−わたるあらしに−いととやふれて |
09362 |
未入力 正徹 (xxx)
八橋や雲のゆききにみたれふる雨もくもてにまよふ川かせ
やつはしや−くものゆききに−みたれふる−あめもくもてに−まよふかはかせ |
09363 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世の谷の川原のなかれ木か水なき橋と人わたすらん
いつのよの−たにのかはらの−なかれきか−みつなきはしと−ひとわたすらむ |
09364 |
未入力 正徹 (xxx)
いこま山峰の嵐やおちつらん雲鳥さわく天の河はし
いこまやま−みねのあらしや−おちつらむ−くもとりさわく−あまのかははし |
09365 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れわたる天の川橋ゆく人も渚の松をとふあらしかな
くれわたる−あまのかははし−ゆくひとも−なきさのまつを−とふあらしかな |
09366 |
未入力 正徹 (xxx)
よと河や橋の下行く舟にみつ旅たつ人の心心を
よとかはや−はしのしたゆく−ふねにみつ−たひたつひとの−こころこころを |
09367 |
未入力 正徹 (xxx)
淀川や橋行く人のこととふをこたへもあへす遠さかる舟
よとかはや−はしゆくひとの−こととふを−こたへもあへす−とほさかるふね |
09368 |
未入力 正徹 (xxx)
見すや人夢のわたりのうき橋を此世にかけて過きぬ日もなし
みすやひと−ゆめのわたりの−うきはしを−このよにかけて−すきぬひもなし |
09369 |
未入力 正徹 (xxx)
道のへやめくる日影をあふきみてたてる旅人友かまつらん
みちのへや−めくるひかけを−あふきみて−たてるたひひと−ともかまつらむ |
09370 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかくのほりてくたる松陰に薪おろしてやすむ山人
みねたかく−のほりてくたる−まつかけに−たききおろして−やすむやまひと |
09371 |
未入力 正徹 (xxx)
行すりのをささかや原こゑさわき柴うこきくる山のした道
ゆきすりの−をささかやはら−こゑさわき−しはうこきくる−やまのしたみち |
09372 |
未入力 正徹 (xxx)
上めくみ下たのしめる世のこゑをきけは木こりのうたふにもあり
かみめくみ−しもたのしめる−よのこゑを−きけはきこりの−うたふにもあり |
09373 |
未入力 正徹 (xxx)
水清きあたりの谷のかけ草に柴たておきてふせる山かつ
みつきよき−あたりのたにの−かけくさに−しはたておきて−ふせるやまかつ |
09374 |
未入力 正徹 (xxx)
世をそしるあまたつつける山人の子の子と見えてもてる薪に
よをそしる−あまたつつける−やまひとの−このことみえて−もてるたききに |
09375 |
未入力 正徹 (xxx)
引きけるかみしふにそめし山人の衣も柴も色そまかへる
ひきけるか−みしふにそめし−やまひとの−ころももしはも−いろそまかへる |
09376 |
未入力 正徹 (xxx)
もちなからしはしなる世のくるしさをしらてやはこふよもの山人
もちなから−しはしなるよの−くるしさを−しらてやはこふ−よものやまひと |
09377 |
未入力 正徹 (xxx)
山路わけ薪とるをの藤衣おるやねりその行へなるらん
やまちわけ−たききとるをの−ふちころも−おるやねりその−ゆくへなるらむ |
09378 |
未入力 正徹 (xxx)
見し山を誰か柴こりつくすらんつま木とるへき宿もあらはに
みしやまを−たれかしはこり−つくすらむ−つまきとるへき−やともあらはに |
09379 |
未入力 正徹 (xxx)
たかすとも光や見えんをののえのくち木こりもちかへる山人
たかすとも−ひかりやみえむ−をののえの−くちきこりもち−かへるやまひと |
09380 |
未入力 正徹 (xxx)
柴つつく都の道もよきあへすいてぬ日もなき四方の山人
しはつつく−みやこのみちも−よきあへす−いてぬひもなき−よものやまひと |
09381 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕になけきこる日も山人はしらぬをよそにくるしくそみる
あさゆふに−なけきこるひも−やまひとは−しらぬをよそに−くるしくそみる |
09382 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ねふむそはにつつきてになひもつ柴に杖かしやすむ山人
いはねふむ−そはにつつきて−になひもつ−しはにつゑかし−やすむやまひと |
09383 |
未入力 正徹 (xxx)
賎のめはなつみ水くみおのつから薪こるをそ法にそむかぬ
しつのめは−なつみみつくみ−おのつから−たききこるをそ−のりにそむかぬ |
09384 |
未入力 正徹 (xxx)
あすいてん爪木ゆふらし山かつの手引のつつら長き夜もねす
あすいてむ−つまきゆふらし−やまかつの−てひきのつつら−なかきよもねす |
09385 |
未入力 正徹 (xxx)
つつききてまたいらぬ日を山人のもろ柴かくす峰のかけ橋
つつききて−またいらぬひを−やまひとの−もろしはかくす−みねのかけはし |
09386 |
未入力 正徹 (xxx)
道もせにならひ立つかな山人の手につく杖に柴をやすめて
みちもせに−ならひたつかな−やまひとの−てにつくつゑに−しはをやすめて |
09387 |
未入力 正徹 (xxx)
家家に柴もち入りて山人のかへる夕のさととよむなり
いへいへに−しはもちいりて−やまひとの−かへるゆふへの−さととよむなり |
09388 |
未入力 正徹 (xxx)
ねりそもてゆへるま柴をおとしやる谷や我かいほ峰の山かつ
ねりそもて−ゆへるましはを−おとしやる−たにやわかいほ−みねのやまかつ |
09389 |
未入力 正徹 (xxx)
さむき暮猶火もたかす世わたるや薪もち入りし谷の庵に
さむきくれ−なほひもたかす−よわたるや−たききもちいりし−たにのいほりに |
09390 |
未入力 正徹 (xxx)
せくとなき谷の水おちおとたえてわたりつつける柴ふるひ人
せくとなき−たにのみつおち−おとたえて−わたりつつける−しはふるひひと |
09391 |
未入力 正徹 (xxx)
影くらき道ふみなれて夕つくよたのむともなくかへる山人
かけくらき−みちふみなれて−ゆふつくよ−たのむともなく−かへるやまひと |
09392 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれつつや遠山かつのかへるらん夕ゐる雲の道芝のつゆ
ぬれつつや−とほやまかつの−かへるらむ−ゆふゐるくもの−みちしはのつゆ |
09393 |
未入力 正徹 (xxx)
さととほみこるや爪木のねりそもて入日をつなく峰の山人
さととほみ−こるやつまきの−ねりそもて−いりひをつなく−みねのやまひと |
09394 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつの峰もちこえて行く柴の末に入日の影そのこれる
やまかつの−みねもちこえて−ゆくしはの−すゑにいりひの−かけそのこれる |
09395 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まより入日をかくるましはもてたかぬ光にかへる山人
くもまより−いりひをかくる−ましはもて−たかぬひかりに−かへるやまひと |
09396 |
未入力 正徹 (xxx)
草のいほもりくる雨も我か上にわさとうかれとかかりける世を
くさのいほ−もりくるあめも−わかうへに−わさとうかれと−かかりけるよを |
09397 |
未入力 正徹 (xxx)
墨染の夕こそあれふる雨に色もかはらぬ袖のうへかな
すみそめの−ゆふへこそあれ−ふるあめに−いろもかはらぬ−そてのうへかな |
09398 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらすなけきの衣けふさらに又二月の夕くれの雨
そてぬらす−なけきのころも−けふさらに−またきさらきの−ゆふくれのあめ |
09399 |
未入力 正徹 (xxx)
うかれくる夕の雲は風に見えて木下はらふふるさとの雨
うかれくる−ゆふへのくもは−かせにみえて−このもとはらふ−ふるさとのあめ |
09400 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬれてこふるむかしの人はこて夕暮はこふ古郷の雨
そてぬれて−こふるむかしの−ひとはこて−ゆふくれはこふ−ふるさとのあめ |
09401 |
未入力 正徹 (xxx)
袖のみと思ひけるかな涙ふる夕にたへす雨もおちきぬ
そてのみと−おもひけるかな−なみたふる−ゆふへにたへす−あめもおちきぬ |
09402 |
未入力 正徹 (xxx)
行人の笠の日かけよしの原やしのひにぬるる袖の村雨
ゆくひとの−かさのひかけよ−しのはらや−しのひにぬるる−そてのむらさめ |
09403 |
未入力 正徹 (xxx)
くらき夜の窓うつ雨に我か心しつめはうかふ世世の古こと
くらきよの−まとうつあめに−わかこころ−しつめはうかふ−よよのふること |
09404 |
未入力 正徹 (xxx)
風そよく入江の芦も立つ鷺のみの毛かたよる夕暮の雨
かせそよく−いりえのあしも−たつさきの−みのけかたよる−ゆふくれのあめ |
09405 |
未入力 正徹 (xxx)
よるの雨の心のそこにとほるかなふりにし人や袖ぬらすらん
よるのあめの−こころのそこに−とほるかな−ふりにしひとや−そてぬらすらむ |
09406 |
未入力 正徹 (xxx)
袖にもるしの屋の雨のしのをたれふる夜もあけすねんかたもなし
そてにもる−しのやのあめの−しのをたれ−ふるよもあけす−ねむかたもなし |
09407 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨のそこの心に友はみなあるもむかしのくらきおもかけ
ふるあめの−そこのこころに−ともはみな−あるもむかしの−くらきおもかけ |
09408 |
未入力 正徹 (xxx)
たえまなき雲にとちたる空なから雨の夜あかき望月の比
たえまなき−くもにとちたる−そらなから−あめのよあかき−もちつきのころ |
09409 |
未入力 正徹 (xxx)
しの屋もる雨をは音につくしても山風たえぬ明ほのの松
しのやもる−あめをはおとに−つくしても−やまかせたえぬ−あけほののまつ |
09410 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつからおとろかされぬ夢覚めて八声の鳥をまたぬ夜もなし
おのつから−おとろかされぬ−ゆめさめて−やこゑのとりを−またぬよもなし |
09411 |
未入力 正徹 (xxx)
枕うくわか涙かなこの山を又やは見んとおもふね覚に
まくらうく−わかなみたかな−このやまを−またやはみむと−おもふねさめに |
09412 |
未入力 正徹 (xxx)
うれしくも七の社に七夜ねて八こゑの鳥にめをさましつる
うれしくも−ななのやしろに−ななよねて−やこゑのとりに−めをさましつる |
09413 |
未入力 正徹 (xxx)
わか袖をしきみつむよりぬれそふや暁おきの涙なるらん
わかそてを−しきみつむより−ぬれそふや−あかつきおきの−なみたなるらむ |
09414 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身はあかつきおきも物うくてまとろむことのかたき夜はかな
おいかみは−あかつきおきも−ものうくて−まとろむことの−かたきよはかな |
09415 |
未入力 正徹 (xxx)
月くもり千さとしつかに音もせす明くるさかひや人もまとろむ
つきくもり−ちさとしつかに−おともせす−あくるさかひや−ひともまとろむ |
09416 |
未入力 正徹 (xxx)
生れこし始やにたる夜はの夢さめんさめしのほとの心は
うまれこし−はしめやにたる−よはのゆめ−さめむさめしの−ほとのこころは |
09417 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身は夕の煙あかつきの雲と消ゆへき空そちかつく
おいかみは−ゆふへのけふり−あかつきの−くもときゆへき−そらそちかつく |
09418 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしたに月なかくしそ山かつらかけぬ峰とて明けぬ夜はかは
しはしたに−つきなかくしそ−やまかつら−かけぬみねとて−あけぬよはかは |
09419 |
未入力 正徹 (xxx)
かきりあれは天の河戸に山かつらしからみかけぬ浪そ明行く
かきりあれは−あまのかはとに−やまかつら−しからみかけぬ−なみそあけゆく |
09420 |
未入力 正徹 (xxx)
分けきてもあふ人はなき山ちかな峰にふしたる横雲の比
わけきても−あふひとはなき−やまちかな−みねにふしたる−よこくものころ |
09421 |
未入力 正徹 (xxx)
明かたはかひかねならふ雪も見すよこほる雲の山ことにゐて
あけかたは−かひかねならふ−ゆきもみす−よこほるくもの−やまことにゐて |
09422 |
未入力 正徹 (xxx)
わかいほの暁おきの山かつらかくて此世をかけやはなれん
わかいほの−あかつきおきの−やまかつら−かくてこのよを−かけやはなれむ |
09423 |
未入力 正徹 (xxx)
あかつきの雲ひく峰のさと人は見てやはをしむ海に入る月
あかつきの−くもひくみねの−さとひとは−みてやはをしむ−うみにいるつき |
09424 |
未入力 正徹 (xxx)
峰こえてまきるる月の横雲にむかひの山の松そ夜ふかき
みねこえて−まきるるつきの−よこくもに−むかひのやまの−まつそよふかき |
09425 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつら雲のしからみかけすてよなかれてあくる夜るやせかれん
やまかつら−くものしからみ−かけすてよ−なかれてあくる−よるやせかれむ |
09426 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたる遠山まゆのかたみたれ一の峰や雲かくすらむ
あけわたる−とほやままゆの−かたみたれ−ひとつのみねや−くもかくすらむ |
09427 |
未入力 正徹 (xxx)
をのへより弓はり月の影すなり山のかせきも夢やおとろく
をのへより−ゆみはりつきの−かけすなり−やまのかせきも−ゆめやおとろく |
09428 |
未入力 正徹 (xxx)
ふけ嵐あかつきいつるほし清くはれたる峰の松の一本
ふけあらし−あかつきいつる−ほしきよく−はれたるみねの−まつのひともと |
09429 |
未入力 正徹 (xxx)
明けゆくか在明の月のほそくかく遠山まゆをみたす横雲
あけゆくか−ありあけのつきの−ほそくかく−とほやままゆを−みたすよこくも |
09430 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥のねもまた夜ふかしと山のはにふすかと思ふ横雲の空
とりのねも−またよふかしと−やまのはに−ふすかとおもふ−よこくものそら |
09431 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の雲ふもとのなみに埋れてなかは明行くおきつしま山
みねのくも−ふもとのなみに−うつもれて−なかはあけゆく−おきつしまやま |
09432 |
未入力 正徹 (xxx)
月入りし西なる峰のよこ雲にさらぬ朝日の色そうつろふ
つきいりし−にしなるみねの−よこくもに−さらぬあさひの−いろそうつろふ |
09433 |
未入力 正徹 (xxx)
かたちよき人をも見はや山のはの紅うすきよこ雲のかけ
かたちよき−ひとをもみはや−やまのはの−くれなゐうすき−よこくものかけ |
09434 |
未入力 正徹 (xxx)
さとちかき林の鳥はさへつるをあけほのかくす峰の横雲
さとちかき−はやしのとりは−さへつるを−あけほのかくす−みねのよこくも |
09435 |
未入力 正徹 (xxx)
あくるまの遠き山路の横雲もひきののつつらをりにあひぬる
あくるまの−とほきやまちの−よこくもも−ひきののつつら−をりにあひぬる |
09436 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはの光もいまたほそかりきよこほる雲の色あつくして
やまのはの−ひかりもいまた−ほそかりき−よこほるくもの−いろあつくして |
09437 |
未入力 正徹 (xxx)
峰ことにたえていつくに別るらん千さとの山の明ほのの雲
みねことに−たえていつくに−わかるらむ−ちさとのやまの−あけほののくも |
09438 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮の心しれとや横雲のわかれをおくる峰の松風
ゆふくれの−こころしれとや−よこくもの−わかれをおくる−みねのまつかせ |
09439 |
未入力 正徹 (xxx)
ふもとより又吹きかへす椎の葉のあらしにこゆる峰の白雲
ふもとより−またふきかへす−しひのはの−あらしにこゆる−みねのしらくも |
09440 |
未入力 正徹 (xxx)
河内女かそめもおよはすてにまかぬ山かつらきの雲の糸すち
かはちめか−そめもおよはす−てにまかぬ−やまかつらきの−くものいとすち |
09441 |
未入力 正徹 (xxx)
空にたに風のままなる雲そある人にしたかふ世をはそむかし
そらにたに−かせのままなる−くもそある−ひとにしたかふ−よをはそむかし |
09442 |
未入力 正徹 (xxx)
かへるらむ雲も契やむすひおく鷲の高根の夕暮の空
かへるらむ−くももちきりや−むすひおく−わしのたかねの−ゆふくれのそら |
09443 |
未入力 正徹 (xxx)
いこま山なににつなきて嵐吹くみねにはなれぬ雲と成るらん
いこまやま−なににつなきて−あらしふく−みねにはなれぬ−くもとなるらむ |
09444 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐吹く木の間の夕日あらはれてふもとにくたるみねのうき雲
あらしふく−このまのゆふひ−あらはれて−ふもとにくたる−みねのうきくも |
09445 |
未入力 正徹 (xxx)
心をは高ねの八雲八重かきにこえんとおもへ松のことのは
こころをは−たかねのやくも−やへかきに−こえむとおもへ−まつのことのは |
09446 |
未入力 正徹 (xxx)
をちかたに見さりし岡のつつくかな山をなかはや雲かくすらん
をちかたに−みさりしをかの−つつくかな−やまをなかはや−くもかくすらむ |
09447 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きのほる時こそ有りけれ風こしの峰に雲ゐるきその御坂路
ふきのほる−ときこそありけれ−かさこしの−みねにくもゐる−きそのみさかち |
09448 |
未入力 正徹 (xxx)
かつらきの峰はいかなる山そともしられぬ雲のまなく時なき
かつらきの−みねはいかなる−やまそとも−しられぬくもの−まなくときなき |
09449 |
未入力 正徹 (xxx)
生ひのほる山やそのかみ雲のちりゐれとも峰の松もかはらて
おひのほる−やまやそのかみ−くものちり−ゐれともみねの−まつもかはらて |
09450 |
未入力 正徹 (xxx)
はれまなき峰の庵のおきふしに半は床をゆつる雲かな
はれまなき−みねのいほりの−おきふしに−なかははとこを−ゆつるくもかな |
09451 |
未入力 正徹 (xxx)
たかこゆる雲にひつめのさわくらんくたるい駒の峰のささ原
たかこゆる−くもにひつめの−さわくらむ−くたるいこまの−みねのささはら |
09452 |
未入力 正徹 (xxx)
白雲の峰よりおつるつくはねにおろす嵐やみなの川なみ
しらくもの−みねよりおつる−つくはねに−おろすあらしや−みなのかはなみ |
09453 |
未入力 正徹 (xxx)
一村の峰たつ雲そ山人のぬきすてけりと見ゆる衣は
ひとむらの−みねたつくもそ−やまひとの−ぬきすてけりと−みゆるころもは |
09454 |
未入力 正徹 (xxx)
人はこて峰の松杉立ちならひ杣山嵐宮木ひくこゑ
ひとはこて−みねのまつすき−たちならひ−そまやまあらし−みやきひくこゑ |
09455 |
未入力 正徹 (xxx)
かろけれと松のことの葉かきおくほ世世の契をむすふはかりそ
かろけれと−まつのことのは−かきおくほ−よよのちきりを−むすふはかりそ |
09456 |
未入力 正徹 (xxx)
ちらさしよかくつき松のことのはにあらぬさまなるちりをよせぬる
ちらさしよ−かくつきまつの−ことのはに−あらぬさまなる−ちりをよせぬる |
09457 |
未入力 正徹 (xxx)
石清水みなそこきよき高ねより影をうつすや箱崎の松
いはしみつ−みなそこきよき−たかねより−かけをうつすや−はこさきのまつ |
09458 |
未入力 正徹 (xxx)
みちふりも松のふりぬる所には庵しめはやとみてそ過きゆく
みちふりも−まつのふりぬる−ところには−いほしめはやと−みてそすきゆく |
09459 |
未入力 正徹 (xxx)
えそにせぬ人の心の色見えは松のみさをにあらまほしきを
えそにせぬ−ひとのこころの−いろみえは−まつのみさをに−あらまほしきを |
09460 |
未入力 正徹 (xxx)
おほよとのなみもうらみす松も又つらからぬ暮にかへる雲かな
おほよとの−なみもうらみす−まつもまた−つらからぬくれに−かへるくもかな |
09461 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の松のねかひはかたそきの行合ふましき古き世の道
すみよしの−まつのねかひは−かたそきの−ゆきあふましき−ふるきよのみち |
09462 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりうせぬ松とそみゆる人の世にありとある木の中のあるしは
ちりうせぬ−まつとそみゆる−ひとのよに−ありとあるきの−なかのあるしは |
09463 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉の近くもるなと松か枝にかかみをかくる玉つしま山
ことのはの−ちかくもるなと−まつかえに−かかみをかくる−たまつしまやま |
09464 |
未入力 正徹 (xxx)
しるかりき千本の小松我すまは一夜に生ひん神の御言は
しるかりき−ちもとのこまつ−われすまは−ひとよにおひむ−かみのみことは |
09465 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくらむ山とにはあれとから崎の松に日吉の影やとすなり
あふくらむ−やまとにはあれと−からさきの−まつにひよしの−かけやとすなり |
09466 |
未入力 正徹 (xxx)
行くなみをまきの戸川のあくるせもさやかにみゆるから崎の松
ゆくなみを−まきのとかはの−あくるせも−さやかにみゆる−からさきのまつ |
09467 |
未入力 正徹 (xxx)
谷の松春のよそとはたれかいふみとり花さき夏そしけれる
たにのまつ−はるのよそとは−たれかいふ−みとりはなさき−なつそしけれる |
09468 |
未入力 正徹 (xxx)
立田川これも神世やきかさらん三室の谷の松の夕風
たつたかは−これもかみよや−きかさらむ−みむろのたにの−まつのゆふかせ |
09469 |
未入力 正徹 (xxx)
根をたたん風まつほとそ三輪くむ身谷か下の松と老いにき
ねをたたむ−かせまつほとそ−みつわくむ−みたにかしたの−まつとおいにき |
09470 |
未入力 正徹 (xxx)
谷川や陰うく松の手向草いく世の水の玉もなるらん
たにかはや−かけうくまつの−たむけくさ−いくよのみつの−たまもなるらむ |
09471 |
未入力 正徹 (xxx)
はらひかね松も嵐をうらみてや夕ゐる雲の下に消ゆらん
はらひかね−まつもあらしを−うらみてや−ゆふゐるくもの−したにきゆらむ |
09472 |
未入力 正徹 (xxx)
かく山の雲の衣の袖のかや榊葉しをる峰の松かせ
かくやまの−くものころもの−そてのかや−さかきはしをる−みねのまつかせ |
09473 |
未入力 正徹 (xxx)
松たてる高ねはさ夜もふか緑あらそひかぬる明ほのもなし
まつたてる−たかねはさよも−ふかみとり−あらそひかぬる−あけほのもなし |
09474 |
未入力 正徹 (xxx)
峰におふる松はありとも神や猶こと葉の花のかけにやすまん
みねにおふる−まつはありとも−かみやなほ−ことはのはなの−かけにやすまむ |
09475 |
未入力 正徹 (xxx)
とほき世のことをやとはて一松雲ゐるおくの嶺に老いすは
とほきよの−ことをやとはて−ひとつまつ−くもゐるおくの−みねにおいすは |
09476 |
未入力 正徹 (xxx)
雲かかる峰をふもとの松となすことのはもかな敷島の歌
くもかかる−みねをふもとの−まつとなす−ことのはもかな−しきしまのうた |
09477 |
未入力 正徹 (xxx)
松しをる峰の嵐のこゑともにささの浪たてくたる柴舟
まつしをる−みねのあらしの−こゑともに−ささのなみたて−くたるしはふね |
09478 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかくおふる松葉をことのはになしてかきとれ和かのうら人
みねたかく−おふるまつはを−ことのはに−なしてかきとれ−わかのうらひと |
09479 |
未入力 正徹 (xxx)
かけくらきわしの高ねの松ことは又世にいてんあかつきの月
かけくらき−わしのたかねの−まつことは−またよにいてむ−あかつきのつき |
09480 |
未入力 正徹 (xxx)
後せ山松そ色こき椎の葉のうら吹きかへす峰のあらしに
のちせやま−まつそいろこき−しひのはの−うらふきかへす−みねのあらしに |
09481 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりきてたかねの松にいつる月あすの夕やよそにならはん
めくりきて−たかねのまつに−いつるつき−あすのゆふへや−よそにならはむ |
09482 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山おとそうつ浪箱崎やうらなれにける峰の松かせ
やはたやま−おとそうつなみ−はこさきや−うらなれにける−みねのまつかせ |
09483 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたにまちとるこゑそ峰つつきひまなくしをる松の嵐は
いつかたに−まちとるこゑそ−みねつつき−ひまなくしをる−まつのあらしは |
09484 |
未入力 正徹 (xxx)
千とせへん宿やいつこととめくれは軒はの松につるのもろ声
ちとせへむ−やとやいつこと−とめくれは−のきはのまつに−つるのもろこゑ |
09485 |
未入力 正徹 (xxx)
池はらふ風そあらひて手向草松はふ庭にしつく水えは
いけはらふ−かせそあらひて−たむけくさ−まつはふにはに−しつくみつえは |
09486 |
未入力 正徹 (xxx)
陰ふかき松のふる葉に千世の数つもれる庭のちりなはらひそ
かけふかき−まつのふるはに−ちよのかす−つもれるにはの−ちりなはらひそ |
09487 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉も三代に色そふ宿の松木高き陰に又そ立ちよる
ことのはも−みよにいろそふ−やとのまつ−こたかきかけに−またそたちよる |
09488 |
未入力 正徹 (xxx)
いく千世そ庭に真砂をおきかさね木たかく成りぬ松の生末
いくちよそ−にはにまさこを−おきかさね−こたかくなりぬ−まつのおひすゑ |
09489 |
未入力 正徹 (xxx)
松ふるきことしの若葉吹きくれは千代のこゑそふ庭の秋風
まつふるき−ことしのわかは−ふきくれは−ちよのこゑそふ−にはのあきかせ |
09490 |
未入力 正徹 (xxx)
つくはねのかけ見る庭の松の葉も緑の草やみなの川淵
つくはねの−かけみるにはの−まつのはも−みとりのくさや−みなのかはふち |
09491 |
未入力 正徹 (xxx)
片枝さす軒はに遠き松かきもふるき心をへたてやはする
かたえさす−のきはにとほき−まつかきも−ふるきこころを−へたてやはする |
09492 |
未入力 正徹 (xxx)
年のをもゆらく玉松行末の千世をは宿のあるしとそへん
としのをも−ゆらくたままつ−ゆくすゑの−ちよをはやとの−あるしとそへむ |
09493 |
未入力 正徹 (xxx)
年もへぬ山も岩ほもむすこけにおなし古木の川上の松
としもへぬ−やまもいはほも−むすこけに−おなしふるきの−かはかみのまつ |
09494 |
未入力 正徹 (xxx)
いはほこる山のすかたも苔ふりて松としたかき風のこゑかな
いはほこる−やまのすかたも−こけふりて−まつとしたかき−かせのこゑかな |
09495 |
未入力 正徹 (xxx)
弥次にこもたる松は老いぬれと千世の若枝そ宿に立ちそふ
いやつきに−こもたるまつは−おいぬれと−ちよのわかえそ−やとにたちそふ |
09496 |
未入力 正徹 (xxx)
此庭の松のふるきの手向草神もいく世のしめをゆふらん
このにはの−まつのふるきの−たむけくさ−かみもいくよの−しめをゆふらむ |
09497 |
未入力 正徹 (xxx)
命をもいかかのはへん住吉の松のことのは友とならすは
いのちをも−いかかのはへむ−すみよしの−まつのことのは−ともとならすは |
09498 |
未入力 正徹 (xxx)
はつせ山出てて昔をたつね見し鹿の苑生の松も忘るな
はつせやま−いててむかしを−たつねみし−しかのそのふの−まつもわするな |
09499 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑおきしたか世のかたみ古りはてて我に友なふ古郷の松
うゑおきし−たかよのかたみ−ふりはてて−われにともなふ−ふるさとのまつ |
09500 |
未入力 正徹 (xxx)
ほともなく我か老の末にあひ生の庭の若松あはれとやみる
ほともなく−わかおいのすゑに−あひおひの−にはのわかまつ−あはれとやみる |
09501 |
未入力 正徹 (xxx)
ちりうせぬことの葉もつけ友として年をふる木の陰の若松
ちりうせぬ−ことのはもつけ−ともとして−としをふるきの−かけのわかまつ |
09502 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちよらむ若のうら松老いぬれと友とそたのむ陰なをしみそ
たちよらむ−わかのうらまつ−おいぬれと−ともとそたのむ−かけなをしみそ |
09503 |
未入力 正徹 (xxx)
色まさる人のことのは松のはのかすもよはひもいく世つもらん
いろまさる−ひとのことのは−まつのはの−かすもよはひも−いくよつもらむ |
09504 |
未入力 正徹 (xxx)
生ひのほる世世の末葉にわたつうみのおなし千いろを竹にてそしる
おひのほる−よよのすゑはに−わたつうみの−おなしちいろを−たけにてそしる |
09505 |
未入力 正徹 (xxx)
しめおきて十かへり春を契らなん千世ふる松の花のあるしは
しめおきて−とかへりはるを−ちきらなむ−ちよふるまつの−はなのあるしは |
09506 |
未入力 正徹 (xxx)
手向草契かけおく浜松のはしめもはてもいさや白波
たむけくさ−ちきりかけおく−はままつの−はしめもはても−いさやしらなみ |
09507 |
未入力 正徹 (xxx)
千とせふる庭の真砂も苔むして松のはひろき緑をそしく
ちとせふる−にはのまさこも−こけむして−まつのはひろき−みとりをそしく |
09508 |
未入力 正徹 (xxx)
春のせし庭のをしへをうけぬとや緑かはらぬ千世の松かえ
はるのせし−にはのをしへを−うけぬとや−みとりかはらぬ−ちよのまつかえ |
09509 |
未入力 正徹 (xxx)
陰ふるき二代ののちの庭の松わか立ちよるを見るやつれなき
かけふるき−ふたよののちの−にはのまつ−わかたちよるを−みるやつれなき |
09510 |
未入力 正徹 (xxx)
杣山に千とせ過きぬと見ゆる松おもひの外にたてる類よ
そまやまに−ちとせすきぬと−みゆるまつ−おもひのほかに−たてるたくひよ |
09511 |
未入力 正徹 (xxx)
たえせしな松の年のを八千ひろにはへても長く結ふ契は
たえせしな−まつのとしのを−やちひろに−はへてもなかく−むすふちきりは |
09512 |
未入力 正徹 (xxx)
緑より猶年ふかき人にあるにほひほうつす庭の若松
みとりより−なほとしふかき−ひとにある−にほひほうつす−にはのわかまつ |
09513 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ほにもへにける物そ庭の苔ふりたる松につもる齢は
いはほにも−へにけるものそ−にはのこけ−ふりたるまつに−つもるよはひは |
09514 |
未入力 正徹 (xxx)
年へぬる庭のをしへのことのははけふ松かえにあらはれにけり
としへぬる−にはのをしへの−ことのはは−けふまつかえに−あらはれにけり |
09515 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮は松の陰のみ我か宿そたのむ嵐もこゑそよわれる
ゆふくれは−まつのかけのみ−わかやとそ−たのむあらしも−こゑそよわれる |
09516 |
未入力 正徹 (xxx)
世にしらぬみ山かくれに老いはてきいまは何をか松の風をれ
よにしらぬ−みやまかくれに−おいはてき−いまはなにをか−まつのかさをれ |
09517 |
未入力 正徹 (xxx)
くれにけり山路は杣木きるをののひひきもたえてのこる松風
くれにけり−やまちはそまき−きるをのの−ひひきもたえて−のこるまつかせ |
09518 |
未入力 正徹 (xxx)
さひしさはをちの高ねの夕日影なきにそまさる松の一もと
さひしさは−をちのたかねの−ゆふひかけ−なきにそまさる−まつのひともと |
09519 |
未入力 正徹 (xxx)
よそよりも滝の上なるそなれ松色暮れやらぬ水の白浪
よそよりも−たきのうへなる−そなれまつ−いろくれやらぬ−みつのしらなみ |
09520 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく松のみとりのみたれてやとほ山姫のまゆもけふれる
あらしふく−まつのみとりの−みたれてや−とほやまひめの−まゆもけふれる |
09521 |
未入力 正徹 (xxx)
峰たかみ緑の空につくすみは松なりけりな夕暮の山
みねたかみ−みとりのそらに−つくすみは−まつなりけりな−ゆふくれのやま |
09522 |
未入力 正徹 (xxx)
高砂や峰の雲まとめに見るも遠き世かけてたてる松かな
たかさこや−みねのくもまと−めにみるも−とほきよかけて−たてるまつかな |
09523 |
未入力 正徹 (xxx)
見えさりし霞かかれる色なからあさ日にいつる春の遠山
みえさりし−かすみかかれる−いろなから−あさひにいつる−はるのとほやま |
09524 |
未入力 正徹 (xxx)
尾上なる松ともみえす深みとりかたふく枝は根をかくすまて
をのへなる−まつともみえす−ふかみとり−かたふくえたは−ねをかくすまて |
09525 |
未入力 正徹 (xxx)
柴の戸にきかは山風うかれとて松やはたてる我すめはこそ
しはのとに−きかはやまかせ−うかれとて−まつやはたてる−われすめはこそ |
09526 |
未入力 正徹 (xxx)
松ふかきねくらやあくる鳥も出てす□□□□□□□□□□□□□□
まつふかき−ねくらやあくる−とりもいてす−ххххххх−ххххххх |
09527 |
未入力 正徹 (xxx)
松か枝に雲もおりゐて陰くらき夕の谷の鳥の一こゑ
まつかえに−くももおりゐて−かけくらき−ゆふへのたにの−とりのひとこゑ |
09528 |
未入力 正徹 (xxx)
松にさへ老ほきにけりさしこもりあはさらましを谷の岩門
まつにさへ−おいはきにけり−さしこもり−あはさらましを−たにのいはかと |
09529 |
未入力 正徹 (xxx)
衣手のわかすみ染の夕嵐ふけとも山の松青くして
ころもての−わかすみそめの−ゆふあらし−ふけともやまの−まつあをくして |
09530 |
未入力 正徹 (xxx)
日をかさねすすむる雲の入る山に我か夕くれそ遠さかり行く
ひをかさね−すすむるくもの−いるやまに−わかゆふくれそ−とほさかりゆく |
09531 |
未入力 正徹 (xxx)
雲となり雨となる山の暮れやすき袖のひるまの夢の通路
くもとなり−あめとなるやまの−くれやすき−そてのひるまの−ゆめのかよひち |
09532 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかすむ世のうき時は心なき山さへ雨にくもる夕は
いかかすむ−よのうきときは−こころなき−やまさへあめに−くもるゆふへは |
09533 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥なきて行人もなし嵐ふく夕の雨の山の下みち
とりなきて−ゆくひともなし−あらしふく−ゆふへのあめの−やまのしたみち |
09534 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひ入る心の色も暮ことに遠さかるなり山はうこかて
おもひいる−こころのいろも−くれことに−とほさかるなり−やまはうこかて |
09535 |
未入力 正徹 (xxx)
なほそうき世に柴くりの夕嵐身はなきもののきくと思ふを
なほそうき−よにしはくりの−ゆふあらし−みはなきものの−きくとおもふを |
09536 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の松さわくとみれは夕嵐ふもとの竹のこゑに成行く
みねのまつ−さわくとみれは−ゆふあらし−ふもとのたけの−こゑになりゆく |
09537 |
未入力 正徹 (xxx)
四方にちる紅葉を我に吹きませて夕の色にそむ嵐かな
よもにちる−もみちをわれに−ふきませて−ゆふへのいろに−そむあらしかな |
09538 |
未入力 正徹 (xxx)
ことわりに山かたつかぬ暮もみす世をうき雲の行くもかへるも
ことわりに−やまかたつかぬ−くれもみす−よをうきくもの−ゆくもかへるも |
09539 |
未入力 正徹 (xxx)
もののふの篝焼くらしうねひ山とよはた雲と煙たつなり
もののふの−かかりたくらし−うねひやま−とよはたくもと−けふりたつなり |
09540 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりすむ夕の嶺の松の戸になとやうき世の雲かへるらん
ひとりすむ−ゆふへのみねの−まつのとに−なとやうきよの−くもかへるらむ |
09541 |
未入力 正徹 (xxx)
暮れて行く尾上の雲のふもとなる松のはくらき村雨の空
くれてゆく−をのへのくもの−ふもとなる−まつのはくらき−むらさめのそら |
09542 |
未入力 正徹 (xxx)
下折の思ひなくてそこゑをきく夕みる雲のうつむ松風
したをれの−おもひなくてそ−こゑをきく−ゆふみるくもの−うつむまつかせ |
09543 |
未入力 正徹 (xxx)
をさまりて風もならさぬ御代なれやしつかになひく室の呉竹
をさまりて−かせもならさぬ−みよなれや−しつかになひく−むろのくれたけ |
09544 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりたに世はうきものをおや竹の子の生ひたつを哀とやみる
ひとりたに−よはうきものを−おやたけの−このおひたつを−あはれとやみる |
09545 |
未入力 正徹 (xxx)
神かきの竹の台も百敷の庭にかはらぬゆゑをしらはや
かみかきの−たけのうてなも−ももしきの−にはにかはらぬ−ゆゑをしらはや |
09546 |
未入力 正徹 (xxx)
千いろまて生ひのほるてふ呉竹の代代にさかふる法の門かな
ちいろまて−おひのほるてふ−くれたけの−よよにさかふる−のりのかとかな |
09547 |
未入力 正徹 (xxx)
石清水人もかかれとすなほなる心を竹にうつしてそすむ
いはしみつ−ひともかかれと−すなほなる−こころをたけに−うつしてそすむ |
09548 |
未入力 正徹 (xxx)
松の門竹の庵のうきふしを此世の外にきく嵐かな
まつのかと−たけのいほりの−うきふしを−このよのほかに−きくあらしかな |
09549 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕に生行く竹のかは衣ぬきおくそのと見えて涼しき
あさゆふに−おひゆくたけの−かはころも−ぬきおくそのと−みえてすすしき |
09550 |
未入力 正徹 (xxx)
物ことに余所にはきかし竹を打つこゑにも法の心をそ見し
ものことに−よそにはきかし−たけをうつ−こゑにものりの−こころをそみし |
09551 |
未入力 正徹 (xxx)
窓の上に南の月そ葉わけもる北なる星の前の村竹
まとのうへに−みなみのつきそ−はわけもる−きたなるほしの−まへのむらたけ |
09552 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹のもとたちなから窓の戸にさ枝きりすてむかふ山かな
くれたけの−もとたちなから−まとのとに−さえたきりすて−むかふやまかな |
09553 |
未入力 正徹 (xxx)
月のとふ今夜そまとの光をも待ちえてみかく竹の下露
つきのとふ−こよひそまとの−ひかりをも−まちえてみかく−たけのしたつゆ |
09554 |
未入力 正徹 (xxx)
呉作のもとつさ枝をきりすてて又窓あかきかみのうちかな
くれたけの−もとつさえたを−きりすてて−またまとあかき−かみのうちかな |
09555 |
未入力 正徹 (xxx)
窓のうちに先まなひえよ呉竹の一ふしありといへる体を
まとのうちに−まつまなひえよ−くれたけの−ひとふしありと−いへるすかたを |
09556 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはのあくるもしらす竹の葉のかけに夜ふかき窓の灯
やまのはの−あくるもしらす−たけのはの−かけによふかき−まとのともしひ |
09557 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてそ世のうきふしを身ひとつにあつめてむかふ窓の灯
いつまてそ−よのうきふしを−みひとつに−あつめてむかふ−まとのともしひ |
09558 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹を馬となしつるいにしへを思ふもこひし窓の北風
くれたけを−うまとなしつる−いにしへを−おもふもこひし−まとのきたかせ |
09559 |
未入力 正徹 (xxx)
うちなひき夜わたる風の灯の光をうつむ窓のくれ竹
うちなひき−よわたるかせの−ともしひの−ひかりをうつむ−まとのくれたけ |
09560 |
未入力 正徹 (xxx)
まなひつる道はあさくてひとへみし窓の竹のみふかく成行く
まなひつる−みちはあさくて−ひとへみし−まとのたけのみ−ふかくなりゆく |
09561 |
未入力 正徹 (xxx)
人もきてとへかし窓のまへの竹うきふししけき身とはしるらん
ひともきて−とへかしまとの−まへのたけ−うきふししけき−みとはしるらむ |
09562 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の世の蛍も雪も何かせんみかきつくれる窓の光に
たけのよの−ほたるもゆきも−なにかせむ−みかきつくれる−まとのひかりに |
09563 |
未入力 正徹 (xxx)
風そよく竹の葉なからうつる日の影さたまらぬかみの窓かな
かせそよく−たけのはなから−うつるひの−かけさたまらぬ−かみのまとかな |
09564 |
未入力 正徹 (xxx)
仙人と今もやなるとさか月にうけはや窓の竹のはの露
やまひとと−いまもやなると−さかつきに−うけはやまとの−たけのはのつゆ |
09565 |
未入力 正徹 (xxx)
窓ふりて緑そわかき世世へても竹に苔むす色しみえねは
まとふりて−みとりそわかき−よよへても−たけにこけむす−いろしみえねは |
09566 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の子の夜ことになかくなるほとは窓の朝戸を開きてそしる
たけのこの−よことになかく−なるほとは−まとのあさとを−ひらきてそしる |
09567 |
未入力 正徹 (xxx)
夜はの風草の窓とふしの竹のしのひにきくも夢そおとろく
よはのかせ−くさのまととふ−しのたけの−しのひにきくも−ゆめそおとろく |
09568 |
未入力 正徹 (xxx)
夏冬の陰とたのみてうゑおかん千ひろな生ひそ窓のくれ竹
なつふゆの−かけとたのみて−うゑおかむ−ちひろなおひそ−まとのくれたけ |
09569 |
未入力 正徹 (xxx)
代代へてもたたすなほなる呉竹の心に庭のをしへをそみる
よよへても−たたすなほなる−くれたけの−こころににはの−をしへをそみる |
09570 |
未入力 正徹 (xxx)
まなひつる庭のをしへはありといへとしるへきにあらす竹を打つこゑ
まなひつる−にはのをしへは−ありといへと−しるへきにあらす−たけをうつこゑ |
09571 |
未入力 正徹 (xxx)
友やうき夕の雨におとつるる松の風なき竹のこころは
ともやうき−ゆふへのあめに−おとつるる−まつのかせなき−たけのこころは |
09572 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふとちねての朝けや霜さむき岡の屋形の窓の呉竹
おもふとち−ねてのあさけや−しもさむき−をかのやかたの−まとのくれたけ |
09573 |
未入力 正徹 (xxx)
松の葉に色もかはらぬ呉竹の木にもあらすと思ひ隔つな
まつのはに−いろもかはらぬ−くれたけの−きにもあらすと−おもひへたつな |
09574 |
未入力 正徹 (xxx)
いつれこき緑をつつむ竹の子のそのかは淵にうつる葉色は
いつれこき−みとりをつつむ−たけのこの−そのかはふちに−うつるはいろは |
09575 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹のよはひにつれてかなはなんみな人ことのねかふふしふし
くれたけの−よはひにつれて−かなはなむ−みなひとことの−ねかふふしふし |
09576 |
未入力 正徹 (xxx)
聞きわたす嵐やたえぬ呉竹のふしみの松のかけの里人
ききわたす−あらしやたえぬ−くれたけの−ふしみのまつの−かけのさとひと |
09577 |
未入力 正徹 (xxx)
なよ竹のふしなるかはも月しろくなひく霜夜のさとの木からし
なよたけの−ふしなるかはも−つきしろく−なひくしもよの−さとのこからし |
09578 |
未入力 正徹 (xxx)
いつる日のまかきをこゆる影きえて緑そなひくそのの呉竹
いつるひの−まかきをこゆる−かけきえて−みとりそなひく−そののくれたけ |
09579 |
未入力 正徹 (xxx)
あれわたるまかきもおなし軒の竹たた一村の庭そさひしき
あれわたる−まかきもおなし−のきのたけ−たたひとむらの−にはそさひしき |
09580 |
未入力 正徹 (xxx)
たえにけりまかきの竹の下はらふ嵐の窓のくらき夢路は
たえにけり−まかきのたけの−したはらふ−あらしのまとの−くらきゆめちは |
09581 |
未入力 正徹 (xxx)
かくて見むかきほの遠の根はひきて庭の中なる竹の一本
かくてみむ−かきほのをちの−ねはひきて−にはのうちなる−たけのひともと |
09582 |
未入力 正徹 (xxx)
いつの世の人の薗生の跡ならん田中のくろの竹の一本
いつのよの−ひとのそのふの−あとならむ−たなかのくろの−たけのひともと |
09583 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひねん舟待つきしのふし竹もしらすいく世かのりおくれけん
こよひねむ−ふねまつきしの−ふしたけも−しらすいくよか−のりおくれけむ |
09584 |
未入力 正徹 (xxx)
冬川の岸の上なる藤かつらかかるもさむし雪のくれたけ
ふゆかはの−きしのうへなる−ふちかつら−かかるもさむし−ゆきのくれたけ |
09585 |
未入力 正徹 (xxx)
をりかへしうたふとなしの橋けたもふしをならふる竹川のきし
をりかへし−うたふとなしの−はしけたも−ふしをならふる−たけかはのきし |
09586 |
未入力 正徹 (xxx)
我か物ときしにつのくむ竹の子を水の牛かふ人や引きとる
わかものと−きしにつのくむ−たけのこを−みつのうしかふ−ひとやひきとる |
09587 |
未入力 正徹 (xxx)
岸の上の末葉したりて竹河や緑なみこす橋かとそみる
きしのうへの−すゑはしたりて−たけかはや−みとりなみこす−はしかとそみる |
09588 |
未入力 正徹 (xxx)
秋冬もかはらぬそのの春の竹あを葉うつろひちるあらしかな
あきふゆも−かはらぬそのの−はるのたけ−あをはうつろひ−ちるあらしかな |
09589 |
未入力 正徹 (xxx)
めくみあれや民の家ゐのそのの竹御代になひかぬ風はなかりき
めくみあれや−たみのいへゐの−そののたけ−みよになひかぬ−かせはなかりき |
09590 |
未入力 正徹 (xxx)
山姫のまつ夜むなしき涙かもこけの莚にあまる朝露
やまひめの−まつよむなしき−なみたかも−こけのむしろに−あまるあさつゆ |
09591 |
未入力 正徹 (xxx)
太山陰水は音せてこけつたふなかれをふみて路に出てぬる
みやまかけ−みつはおとせて−こけつたふ−なかれをふみて−みちにいてぬる |
09592 |
未入力 正徹 (xxx)
松山や浪こすきしの苔莚しきしのへともかへる世そなき
まつやまや−なみこすきしの−こけむしろ−しきしのへとも−かへるよそなき |
09593 |
未入力 正徹 (xxx)
松かもと峰のいはほにむす苔や雲の浪まのもくつなるらん
まつかもと−みねのいはほに−むすこけや−くものなみまの−もくつなるらむ |
09594 |
未入力 正徹 (xxx)
山科や岩ほふるくはのこるらん苔をきさみし人のことのは
やましなや−いはほふるくは−のこるらむ−こけをきさみし−ひとのことのは |
09595 |
未入力 正徹 (xxx)
こす浪の白玉かしは滝川になかれぬこけは下にむしつつ
こすなみの−しらたまかしは−たきかはに−なかれぬこけは−したにむしつつ |
09596 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ほにもたれかはさねんあら磯の松の手にまく苔のさむしろ
いはほにも−たれかはさねむ−あらいその−まつのてにまく−こけのさむしろ |
09597 |
未入力 正徹 (xxx)
いかなれは磯の岩ほをこす浪にしほしむ苔のかれぬ緑そ
いかなれは−いそのいはほを−こすなみに−しほしむこけの−かれぬみとりそ |
09598 |
未入力 正徹 (xxx)
苔の下に名をうつまんとうれしきは道しらぬ身の行末の空
こけのしたに−なをうつまむと−うれしきは−みちしらぬみの−ゆくすゑのそら |
09599 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまの道になつまぬ苔の袖されとも後の名をやうつまん
しきしまの−みちになつまぬ−こけのそて−されとものちの−なをやうつまむ |
09600 |
未入力 正徹 (xxx)
雲のみそとふとも余所にみくまのの峰の苔路をはらふ嵐に
くものみそ−とふともよそに−みくまのの−みねのこけちを−はらふあらしに |
09601 |
未入力 正徹 (xxx)
松かねも岩ほも苔の道たえておち葉にむせふ山の下水
まつかねも−いはほもこけの−みちたえて−おちはにむせふ−やまのしたみつ |
09602 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかく分けみぬ末もゆかしきはおとろか下の苔のほそ道
やまふかく−わけみぬすゑも−ゆかしきは−おとろかしたの−こけのほそみち |
09603 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまの道の岩かとつくすまて苔ふみならしいく世問ひこん
しきしまの−みちのいはかと−つくすまて−こけふみならし−いくよとひこむ |
09604 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉を思ひおきてそ消えぬへきさらぬ別の道芝の露
ことのはを−おもひおきてそ−きえぬへき−さらぬわかれの−みちしはのつゆ |
09605 |
未入力 正徹 (xxx)
かれつつも此たひたえねめくりこし六の道芝跡のなきまて
かれつつも−このたひたえね−めくりこし−むつのみちしは−あとのなきまて |
09606 |
未入力 正徹 (xxx)
かりに行く跡は十方にわかれても一仏のみち芝の草
かりにゆく−あとはとかたに−わかれても−ひとつほとけの−みちしはのくさ |
09607 |
未入力 正徹 (xxx)
万ことたえせすなからたかひきぬ哀昔の道芝の末
よろつこと−たえせすなから−たかひきぬ−あはれむかしの−みちしはのすゑ |
09608 |
未入力 正徹 (xxx)
まなひみんやまとことの葉我としりてとふへきにあらぬ道芝の草
まなひみむ−やまとことのは−われとしりて−とふへきにあらぬ−みちしはのくさ |
09609 |
未入力 正徹 (xxx)
まなふへきことは万の道芝をわけみぬかたになとまよふらん
まなふへき−ことはよろつの−みちしはを−わけみぬかたに−なとまよふらむ |
09610 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみしたく遠かた人にかしけても猶たねたえぬ道のささ原
ふみしたく−をちかたひとに−かしけても−なほたねたえぬ−みちのささはら |
09611 |
未入力 正徹 (xxx)
いとへとや峰のをささのかりの世に風もやとらす雲そ別るる
いとへとや−みねのをささの−かりのよに−かせもやとらす−くもそわかるる |
09612 |
未入力 正徹 (xxx)
ささわくる嵐をとへは岡のへの露にしほれぬ松のこゑかな
ささわくる−あらしをとへは−をかのへの−つゆにしほれぬ−まつのこゑかな |
09613 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ露そ夕にわたる松陰の岡のささ屋の軒のした芝
あさつゆそ−ゆふへにわたる−まつかけの−をかのささやの−のきのしたしは |
09614 |
未入力 正徹 (xxx)
榊はのかく山嵐神さひていまも衣手ふるき世の空
さかきはの−かくやまあらし−かみさひて−いまもころもて−ふるきよのそら |
09615 |
未入力 正徹 (xxx)
かく山の神代のかかみかみつ枝にいまもかけたるま榊の月
かくやまの−かみよのかかみ−かみつえに−いまもかけたる−まさかきのつき |
09616 |
未入力 正徹 (xxx)
大和人たもとやにほふ榊葉のかく山風のふかぬ日もなし
やまとひと−たもとやにほふ−さかきはの−かくやまかせの−ふかぬひもなし |
09617 |
未入力 正徹 (xxx)
天の戸の雲さへ八重の榊はのかく山嵐吹きにけらしも
あまのとの−くもさへやへの−さかきはの−かくやまあらし−ふきにけらしも |
09618 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりたついつれのうらの浜楸清き河原の友をこふらん
ひとりたつ−いつれのうらの−はまひさき−きよきかはらの−ともをこふらむ |
09619 |
未入力 正徹 (xxx)
うら風に楸ちりしく浜つつら下はふ秋の末そかれゆく
うらかせに−ひさきちりしく−はまつつら−したはふあきの−すゑそかれゆく |
09620 |
未入力 正徹 (xxx)
をりをりの花や紅葉に春秋をしるはかりなる山のおくかな
をりをりの−はなやもみちに−はるあきを−しるはかりなる−やまのおくかな |
09621 |
未入力 正徹 (xxx)
山にても猶うき時や世中をいとふにそむく心なるらん
やまにても−なほうきときや−よのなかを−いとふにそむく−こころなるらむ |
09622 |
未入力 正徹 (xxx)
かりの庵むすひそへよとおのつから水草きよき山の陰かな
かりのいほ−むすひそへよと−おのつから−みつくさきよき−やまのかけかな |
09623 |
未入力 正徹 (xxx)
世のうきにかへつとたにも思はすよ松の嵐をひとり聞くとも
よのうきに−かへつとたにも−おもはすよ−まつのあらしを−ひとりきくとも |
09624 |
未入力 正徹 (xxx)
よをいとふ山の嵐も住みわひは心にかなふ宿やなからむ
よをいとふ−やまのあらしも−すみわひは−こころにかなふ−やとやなからむ |
09625 |
未入力 正徹 (xxx)
もしもなほうき世いてすは生れきて此山里に住む身とならん
もしもなほ−うきよいてすは−うまれきて−このやまさとに−すむみとならむ |
09626 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかくいほり結ひて住みはてん住みはてしとも思ひさためし
やまふかく−いほりむすひて−すみはてむ−すみはてしとも−おもひさためし |
09627 |
未入力 正徹 (xxx)
たへてきけみ山の鳥と松の風タの雨に猿さけふ声
たへてきけ−みやまのとりと−まつのかせ−ゆふへのあめに−さるさけふこゑ |
09628 |
未入力 正徹 (xxx)
なほもたた宮こをしのふ心にてすむはかひなき山の陰かな
なほもたた−みやこをしのふ−こころにて−すむはかひなき−やまのかけかな |
09629 |
未入力 正徹 (xxx)
しはしこそうきにもたへめのかれきて住みなれぬ山の峰の松風
しはしこそ−うきにもたへめ−のかれきて−すみなれぬやまの−みねのまつかせ |
09630 |
未入力 正徹 (xxx)
閑なる山の心を今はわか友とするまて住みなれにけり
しつかなる−やまのこころを−いまはわか−ともとするまて−すみなれにけり |
09631 |
未入力 正徹 (xxx)
山松のこゑにはあらし世のうきめ見えぬ嵐はいかにふくとも
やままつの−こゑにはあらし−よのうきめ−みえぬあらしは−いかにふくとも |
09632 |
未入力 正徹 (xxx)
静なる太山もそよとささのはの心さわかす風の音かな
しつかなる−みやまもそよと−ささのはの−こころさわかす−かせのおとかな |
09633 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまもなきうき世を思ひいつるさへ猶さはりある山のおくかな
ひまもなき−うきよをおもひ−いつるさへ−なほさはりある−やまのおくかな |
09634 |
未入力 正徹 (xxx)
なき世をそ我か身にいそく山にてもなほうき時のありのすさひに
なきよをそ−わかみにいそく−やまにても−なほうきときの−ありのすさひに |
09635 |
未入力 正徹 (xxx)
庵しめていく世の人のおもひ入る山路むなしく雲うつむらん
いほしめて−いくよのひとの−おもひいる−やまちむなしく−くもうつむらむ |
09636 |
未入力 正徹 (xxx)
花のさき葉のおつるにて春秋をしるはかりなる山のおくかな
はなのさき−はのおつるにて−はるあきを−しるはかりなる−やまのおくかな |
09637 |
未入力 正徹 (xxx)
かくてこそあひにあひぬれなかからぬ柴の袖かきあさのさ衣
かくてこそ−あひにあひぬれ−なかからぬ−しはのそてかき−あさのさころも |
09638 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさも昔は山をたのみこしおくの棲そあらす成行く
みのうさも−むかしはやまを−たのみこし−おくのすみかそ−あらすなりゆく |
09639 |
未入力 正徹 (xxx)
山さとに生るる人や中中に物のさひしきこともなからん
やまさとに−うまるるひとや−なかなかに−もののさひしき−こともなからむ |
09640 |
未入力 正徹 (xxx)
柴のいほあるしをとへは戸をとちてうしろの山にをのの一声
しはのいほ−あるしをとへは−とをとちて−うしろのやまに−をののひとこゑ |
09641 |
未入力 正徹 (xxx)
我か庵の前なる峰を梯に月わたらすは夢のかよひち
わかいほの−まへなるみねを−かけはしに−つきわたらすは−ゆめのかよひち |
09642 |
未入力 正徹 (xxx)
ねりそもて柴もかこはぬ石かきの山岸たのむ庵そかりなる
ねりそもて−しはもかこはぬ−いしかきの−やまきしたのむ−いほそかりなる |
09643 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺のいほ薪もつをの世かたりはたのますなからさもやとそ聞く
みねのいほ−たききもつをの−よかたりは−たのますなから−さもやとそきく |
09644 |
未入力 正徹 (xxx)
おもかけに猶したひきて世のうきめ見えぬ山とは思ひなされす
おもかけに−なほしたひきて−よのうきめ−みえぬやまとは−おもひなされす |
09645 |
未入力 正徹 (xxx)
峰ふかき軒はあるとも木のもとの露なもらしそ雲の八重ふき
みねふかき−のきはあるとも−このもとの−つゆなもらしそ−くものやへふき |
09646 |
未入力 正徹 (xxx)
いかはかり心すむらん山里をつくりなしたる宿の草木に
いかはかり−こころすむらむ−やまさとを−つくりなしたる−やとのくさきに |
09647 |
未入力 正徹 (xxx)
しるらめやひとりむかひて物いはぬ山の草木にはつる心を
しるらめや−ひとりむかひて−ものいはぬ−やまのくさきに−はつるこころを |
09648 |
未入力 正徹 (xxx)
のかれても山里すみは末の世にいよいよかたく人そなり行く
のかれても−やまさとすみは−すゑのよに−いよいよかたく−ひとそなりゆく |
09649 |
未入力 正徹 (xxx)
つてにきくうき世のことそことかはる嵐はふるき松にこゑして
つてにきく−うきよのことそ−ことかはる−あらしはふるき−まつにこゑして |
09650 |
未入力 正徹 (xxx)
住む世へて吉野の山をかりに出てはもろこし人と誰か見さらん
すむよへて−よしののやまを−かりにいては−もろこしひとと−たれかみさらむ |
09651 |
未入力 正徹 (xxx)
此峰も世のうきことのたつねこは柴の戸さして雲に入らなん
このみねも−よのうきことの−たつねこは−しはのとさして−くもにいらなむ |
09652 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかにて山の嵐もふかぬ日やもとのうき世のやととなるらん
しつかにて−やまのあらしも−ふかぬひや−もとのうきよの−やととなるらむ |
09653 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかき谷のかたそのかけつくり四方の梢や宿の庭草
やまふかき−たにのかたその−かけつくり−よものこすゑや−やとのにはくさ |
09654 |
未入力 正徹 (xxx)
二とも見えぬ深山のおくの庵よをふるわさをいかにとかする
ふたつとも−みえぬみやまの−おくのいほ−よをふるわさを−いかにとかする |
09655 |
未入力 正徹 (xxx)
山さとの竹のまろひに行く水のかくれてすむを世になもらしそ
やまさとの−たけのまろひに−ゆくみつの−かくれてすむを−よになもらしそ |
09656 |
未入力 正徹 (xxx)
いく里の雲も嵐にたえぬらん外山か庵は夢のうきはし
いくさとの−くももあらしに−たえぬらむ−とやまかいほは−ゆめのうきはし |
09657 |
未入力 正徹 (xxx)
松の戸を又とちはてん住みわひしうき世中の門出はしつ
まつのとを−またとちはてむ−すみわひし−うきよのなかの−かといてはしつ |
09658 |
未入力 正徹 (xxx)
いまみれは思ひし山もまたさりき八十にかかる雲もわかれて
いまみれは−おもひしやまも−またさりき−やそちにかかる−くももわかれて |
09659 |
未入力 正徹 (xxx)
かりてふくおのかしは屋のしはしなる此世もしらてすめる山賎
かりてふく−おのかしはやの−しはしなる−このよもしらて−すめるやまかつ |
09660 |
未入力 正徹 (xxx)
いとふとも世のうきことはせめきなん山のおくなき比そかなしき
いとふとも−よのうきことは−せめきなむ−やまのおくなき−ころそかなしき |
09661 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかせん物のさひしき世中はいまはなるまて山そすみうき
いかかせむ−もののさひしき−よのなかは−いまはなるまて−やまそすみうき |
09662 |
未入力 正徹 (xxx)
心すむ大原山は世のうさをせくやせかゐの水はおとして
こころすむ−おほはらやまは−よのうさを−せくやせかゐの−みつはおとして |
09663 |
未入力 正徹 (xxx)
山さとにもとこしゆゑをかたらすは見し人とたにおもひ出てしを
やまさとに−もとこしゆゑを−かたらすは−みしひととたに−おもひいてしを |
09664 |
未入力 正徹 (xxx)
こたふへきさそ山ひこもあるらめと物いはされは聞くこともなし
こたふへき−さそやまひこも−あるらめと−ものいはされは−きくこともなし |
09665 |
未入力 正徹 (xxx)
家ゐする人そすくなき世中をいとひくるのみすまぬ山陰
いへゐする−ひとそすくなき−よのなかを−いとひくるのみ−すまぬやまかけ |
09666 |
未入力 正徹 (xxx)
陰しめて又すむ人のありなしもしらぬ太山の柴の下庵
かけしめて−またすむひとの−ありなしも−しらぬみやまの−しはのしたいほ |
09667 |
未入力 正徹 (xxx)
我ならぬ人の姿をみすしらていくとせ山にむかふ岩木そ
われならぬ−ひとのすかたを−みすしらて−いくとせやまに−むかふいはきそ |
09668 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥花をふくみこし世もあるものをひとりいとなむ山のおくかな
とりはなを−ふくみこしよも−あるものを−ひとりいとなむ−やまのおくかな |
09669 |
未入力 正徹 (xxx)
我かいほの手かひになれて山鳩の杖つく坂におりむかふなり
わかいほの−てかひになれて−やまはとの−つゑつくさかに−おりむかふなり |
09670 |
未入力 正徹 (xxx)
哀をもしらてそすくる鳥の音もきこえぬ山のおくの住ひは
あはれをも−しらてそすくる−とりのねも−きこえぬやまの−おくのすまひは |
09671 |
未入力 正徹 (xxx)
庵むすふ山のかたその呉竹をわか家はとのこゑもはかなし
いほむすふ−やまのかたその−くれたけを−わかいへはとの−こゑもはかなし |
09672 |
未入力 正徹 (xxx)
すむままに我をはしるや名もしらぬみ山の鳥の声そちかつく
すむままに−われをはしるや−なもしらぬ−みやまのとりの−こゑそちかつく |
09673 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人は我か名もしらすききなれぬ太山の鳥のこゑもたつねし
さとひとは−わかなもしらす−ききなれぬ−みやまのとりの−こゑもたつねし |
09674 |
未入力 正徹 (xxx)
初霜に竹の葉なひきなく鴿のこゑ朝さむき秋の山さと
はつしもに−たけのはなひき−なくはとの−こゑあささむき−あきのやまさと |
09675 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥も又思ひやすらんめになれて我か名もしらぬおくの山人
とりもまた−おもひやすらむ−めになれて−わかなもしらぬ−おくのやまひと |
09676 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにかすむ池ありて此いほのおくの太山に鴛のおつらん
いつくにか−すむいけありて−このいほの−おくのみやまに−をしのおつらむ |
09677 |
未入力 正徹 (xxx)
立ちそよる山のかせきをまねくとも見えぬすくろの庭の小薄
たちそよる−やまのかせきを−まねくとも−みえぬすくろの−にはのをすすき |
09678 |
未入力 正徹 (xxx)
そのままにすきの庵のささの戸をたたあけたつる風にまかせて
そのままに−すきのいほりの−ささのとを−たたあけたつる−かせにまかせて |
09679 |
未入力 正徹 (xxx)
山をたにわすれてすめは吹くたひにきけともきかぬ軒の松風
やまをたに−わすれてすめは−ふくたひに−きけともきかぬ−のきのまつかせ |
09680 |
未入力 正徹 (xxx)
山路行く嵐を松にやとさすはひとりかりほや隣なからん
やまちゆく−あらしをまつに−やとさすは−ひとりかりほや−となりなからむ |
09681 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くもうし山の嵐もこゑこゑに入りくる人にあらふものから
きくもうし−やまのあらしも−こゑこゑに−いりくるひとに−あらふものから |
09682 |
未入力 正徹 (xxx)
さましても何にかはせん夜はの嵐うき世もしらぬ山かつの夢
さましても−なににかはせむ−よはのあらし−うきよもしらぬ−やまかつのゆめ |
09683 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかみ嵐は松をやとりにてわか住む軒にならふとそきく
やまふかみ−あらしはまつを−やとりにて−わかすむのきに−ならふとそきく |
09684 |
未入力 正徹 (xxx)
住む人のふもとの嵐□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
すむひとの−ふもとのあらし−ххххх−ххххххх−ххххххх |
09685 |
未入力 正徹 (xxx)
庵しめてわか住む峰にゐる雲のまれなる友は嵐なりけり
いほしめて−わかすむみねに−ゐるくもの−まれなるともは−あらしなりけり |
09686 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ひきぬ軒はの松のこゑはかりききしににたる深山嵐を
しのひきぬ−のきはのまつの−こゑはかり−ききしににたる−みやまあらしを |
09687 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の庵嵐の上のおきふしもうきて年ふる谷の松かな
みねのいほ−あらしのうへの−おきふしも−うきてとしふる−たにのまつかな |
09688 |
未入力 正徹 (xxx)
おとつつく外山の庵の竹の葉に過くる嵐のおくの松かせ
おとつつく−とやまのいほの−たけのはに−すくるあらしの−おくのまつかせ |
09689 |
未入力 正徹 (xxx)
山路行く夜の嵐のまへわたりさのみなとめそ軒の松か枝
やまちゆく−よるのあらしの−まへわたり−さのみなとめそ−のきのまつかえ |
09690 |
未入力 正徹 (xxx)
軒はなる蛛のいかきはしらねとも山の嵐に夢そやふるる
のきはなる−くものいかきは−しらねとも−やまのあらしに−ゆめそやふるる |
09691 |
未入力 正徹 (xxx)
よしやふけいまはの山の松の風うきもしはやのしはし住む世に
よしやふけ−いまはのやまの−まつのかせ−うきもしはやの−しはしすむよに |
09692 |
未入力 正徹 (xxx)
山かせにかへらぬ雲と人は見よ岩ねこりしく嶺のすみかを
やまかせに−かへらぬくもと−ひとはみよ−いはねこりしく−みねのすみかを |
09693 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まくれ松をそしのふ山さへもなこやかならぬ椎のあらしに
ゆふまくれ−まつをそしのふ−やまさへも−なこやかならぬ−しひのあらしに |
09694 |
未入力 正徹 (xxx)
くるる夜の山の岩ねにふす松をおとろかすとや嵐吹くらん
くるるよの−やまのいはねに−ふすまつを−おとろかすとや−あらしふくらむ |
09695 |
未入力 正徹 (xxx)
夕嵐あらしいまはの山や思ふすみこしものを夢の明ほの
ゆふあらし−あらしいまはの−やまやおもふ−すみこしものを−ゆめのあけほの |
09696 |
未入力 正徹 (xxx)
住みすてんさのみ思ひをいたきもつ山ふところの暮のすさひを
すみすてむ−さのみおもひを−いたきもつ−やまふところの−くれのすさひを |
09697 |
未入力 正徹 (xxx)
庵しめてすむにもあらぬ山松の嵐のやとや隣なるらん
いほしめて−すむにもあらぬ−やままつの−あらしのやとや−となりなるらむ |
09698 |
未入力 正徹 (xxx)
世をいとふ我か松の戸の出入もいはふとなしに年はへにけり
よをいとふ−わかまつのとの−いていりも−いはふとなしに−としはへにけり |
09699 |
未入力 正徹 (xxx)
けふそきく宿のあたりの小松原山のたかきにまさる風を
けふそきく−やとのあたりの−こまつはら−やまのたかきに−まさるあらしを |
09700 |
未入力 正徹 (xxx)
雲はゐよ我か世の後□峰のいほゆつらんと思ふ松も老いにき
くもはゐよ−わかよののちх−みねのいほ−ゆつらむとおもふ−まつもおいにき |
09701 |
未入力 正徹 (xxx)
里はあれて風のかたらふ宿もうし此山もりの峰の老松
さとはあれて−かせのかたらふ−やともうし−このやまもりの−みねのおいまつ |
09702 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の松むすひしまては種おちす松さへふりて苔ふかき袖
みねのまつ−むすひしまては−たねおちす−まつさへふりて−こけふかきそて |
09703 |
未入力 正徹 (xxx)
かかれとてならふや杉のもと立を便になしてむすふいほかな
かかれとて−ならふやすきの−もとたちを−たよりになして−むすふいほかな |
09704 |
未入力 正徹 (xxx)
住みわひぬ松のかきほの杉の門雲しく閨をはらふあらしに
すみわひぬ−まつのかきほの−すきのかと−くもしくねやを−はらふあらしに |
09705 |
未入力 正徹 (xxx)
たれとはん木たかき山の杉のもとたね生ひかくす陰のいほりを
たれとはむ−こたかきやまの−すきのもと−たねおひかくす−かけのいほりを |
09706 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ほこる山もうこかす松の門竹のかきほは千世もへぬへし
いはほこる−やまもうこかす−まつのかと−たけのかきほは−ちよもへぬへし |
09707 |
未入力 正徹 (xxx)
すむもうし山のかけ草いつまてかしらぬ命の露をかけまし
すむもうし−やまのかけくさ−いつまてか−しらぬいのちの−つゆをかけまし |
09708 |
未入力 正徹 (xxx)
松風も窓うちあかす雨はれて軒よりのほる谷のうき雲
まつかせも−まとうちあかす−あめはれて−のきよりのはる−たにのうきくも |
09709 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねん山の木陰や夜の雨あめうつ庵にあらぬしつくは
いかかねむ−やまのこかけや−よるのあめ−あめうついほに−あらぬしつくは |
09710 |
未入力 正徹 (xxx)
おほえつつふりにしことはめの前に太山の雨のくらき夜もなし
おほえつつ−ふりにしことは−めのまへに−みやまのあめの−くらきよもなし |
09711 |
未入力 正徹 (xxx)
閨もりてぬる夜の夢に入る月もさたかにはあらぬ峰の松かせ
ねやもりて−ぬるよのゆめに−いるつきも−さたかにはあらぬ−みねのまつかせ |
09712 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくにかさそふ嵐の声すらんわかぬる床の夢の下柴
いつくにか−さそふあらしの−こゑすらむ−わかぬるとこの−ゆめのしたしは |
09713 |
未入力 正徹 (xxx)
さめてきく山の嵐も送らすはひとりや夜はの夢かへるらん
さめてきく−やまのあらしも−おくらすは−ひとりやよはの−ゆめかへるらむ |
09714 |
未入力 正徹 (xxx)
庵をもかけにと結ふ松かねややかて夜床の枕なるらん
いほりをも−かけにとむすふ−まつかねや−やかてよとこの−まくらなるらむ |
09715 |
未入力 正徹 (xxx)
此山のかけの灯きえぬ夜もあらしの窓にすすあめるかき
このやまの−かけのともしひ−きえぬよも−あらしのまとに−すすあめるかき |
09716 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふしのわさとは見えす庵しめて久しく成りぬ峰のともし火
やまふしの−わさとはみえす−いほしめて−ひさしくなりぬ−みねのともしひ |
09717 |
未入力 正徹 (xxx)
たよりなき山の朽木をあつめてもよるの光とたのむ窓かな
たよりなき−やまのくちきを−あつめても−よるのひかりと−たのむまとかな |
09718 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そそき窓の岩木にともす火の苔まてあをき暁の山
あまそそき−まとのいはきに−ともすひの−こけまてあをき−あかつきのやま |
09719 |
未入力 正徹 (xxx)
いく里になかれぬほしと人のみん木のま庵の峰のともし火
いくさとに−なかれぬほしと−ひとのみむ−このまいほりの−みねのともしひ |
09720 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかみ岩ほを壁になす庵に影ふりのこる窓の灯
やまふかみ−いはほをかへに−なすいほに−かけふりのこる−まとのともしひ |
09721 |
未入力 正徹 (xxx)
柴の屋の窓にかかくる灯のもとつ葉てらす杉のむら立
しはのやの−まとにかかくる−ともしひの−もとつはてらす−すきのむらたち |
09722 |
未入力 正徹 (xxx)
いなり山杉のいほりの過きかたき世にいつまてか在明の月
いなりやま−すきのいほりの−すきかたき−よにいつまてか−ありあけのつき |
09723 |
未入力 正徹 (xxx)
あかつきの雲にあへるをかたみにて月やをしまぬうちの里人
あかつきの−くもにあへるを−かたみにて−つきやをしまぬ−うちのさとひと |
09724 |
未入力 正徹 (xxx)
けふりたちもえぬそ思ひあさま山わひてすむ世をわたる里人
けふりたち−もえぬそおもひ−あさまやま−わひてすむよを−わたるさとひと |
09725 |
未入力 正徹 (xxx)
山さともあるかなきかにたく柴の煙をたにも思ひきえめや
やまさとも−あるかなきかに−たくしはの−けふりをたにも−おもひきえめや |
09726 |
未入力 正徹 (xxx)
山里の庭とて生ふる草もなしひまなくむせる苔あつくして
やまさとの−にはとておふる−くさもなし−ひまなくむせる−こけあつくして |
09727 |
未入力 正徹 (xxx)
いりしよりうき世中の通ちはふみたかへたる山の奥かな
いりしより−うきよのなかの−かよひちは−ふみたかへたる−やまのおくかな |
09728 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみわけし我か山さとにかはるとも見えぬ都のおくの庵かな
ふみわけし−わかやまさとに−かはるとも−みえぬみやこの−おくのいほかな |
09729 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまの道に心そかよはましいかなる山のおくにすむとも
しきしまの−みちにこころそ−かよはまし−いかなるやまの−おくにすむとも |
09730 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかすむ木の本しけき松かねにふむ跡みゆるおくの通路
いかかすむ−このもとしけき−まつかねに−ふむあとみゆる−おくのかよひち |
09731 |
未入力 正徹 (xxx)
山さとは雪かくほとのいとなみもまた時ならぬ冬のさひしさ
やまさとは−ゆきかくほとの−いとなみも−またときならぬ−ふゆのさひしさ |
09732 |
未入力 正徹 (xxx)
草かくれ水のたよりにかたかけて山沢ちかくむすふいほかな
くさかくれ−みつのたよりに−かたかけて−やまさはちかく−むすふいほかな |
09733 |
未入力 正徹 (xxx)
清くこそたれもみるらめ岩かねに水すましやる山の下道
きよくこそ−たれもみるらめ−いはかねに−みつすましやる−やまのしたみち |
09734 |
未入力 正徹 (xxx)
くみたゆる時こそはあれ岸つたふ苔のしつくの山の井の水
くみたゆる−ときこそはあれ−きしつたふ−こけのしつくの−やまのゐのみつ |
09735 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の樋にうけてそむすふ山きしの苔の雫のつもる流を
たけのひに−うけてそむすふ−やまきしの−こけのしつくの−つもるなかれを |
09736 |
未入力 正徹 (xxx)
まれにきてみるもさひしき山水を汲みしられすは住みやかへまし
まれにきて−みるもさひしき−やまみつを−くみしられすは−すみやかへまし |
09737 |
未入力 正徹 (xxx)
軒ちかき岩まにつもる山水をすめる心のゆくゆくそみる
のきちかき−いはまにつもる−やまみつを−すめるこころの−ゆくゆくそみる |
09738 |
未入力 正徹 (xxx)
軒端なる山の立□□水からもむすふたよりそさすか住みよき
のきはなる−やまのたちхх−みつからも−むすふたよりそ−さすかすみよき |
09739 |
未入力 正徹 (xxx)
人すまぬ山のかけひの丸木舟たかへてあまる水はおとして
ひとすまぬ−やまのかけひの−まろきふね−たかへてあまる−みつはおとして |
09740 |
未入力 正徹 (xxx)
水の上の山のしつくのつふつふとうき世をかたるこゑかとそきく
みつのうへの−やまのしつくの−つふつふと−うきよをかたる−こゑかとそきく |
09741 |
未入力 正徹 (xxx)
聞きなるる松の嵐も山水もさわけはいととすむこころかな
ききなるる−まつのあらしも−やまみつも−さわけはいとと−すむこころかな |
09742 |
未入力 正徹 (xxx)
苔つたふしつくをうくるしの水の心ほそさもたえぬ山里
こけつたふ−しつくをうくる−しのみつの−こころほそさも−たえぬやまさと |
09743 |
未入力 正徹 (xxx)
谷ふかみ岩ほをたたくみつからとむすふ夢なき峰の松風
たにふかみ−いはほをたたく−みつからと−むすふゆめなき−みねのまつかせ |
09744 |
未入力 正徹 (xxx)
山ふかみ水かけいるる宿に又つま木をなかす嵐ともかな
やまふかみ−みつかけいるる−やとにまた−つまきをなかす−あらしともかな |
09745 |
未入力 正徹 (xxx)
ふみならす人をはいとへさひしともいはのかけ路まへのいたはし
ふみならす−ひとをはいとへ−さひしとも−いはのかけみち−まへのいたはし |
09746 |
未入力 正徹 (xxx)
朽ちはてよ入りにし後は山川や人もわたらぬまへの板はし
くちはてよ−いりにしのちは−やまかはや−ひともわたらぬ−まへのいたはし |
09747 |
未入力 正徹 (xxx)
山川の音に心をすますより世をうき橋はわたりたえにき
やまかはの−おとにこころを−すますより−よをうきはしは−わたりたえにき |
09748 |
未入力 正徹 (xxx)
山ならぬ世に住みけるをくひかきや前の小川の竹あめる橋
やまならぬ−よにすみけるを−くひかきや−まへのをかはの−たけあめるはし |
09749 |
未入力 正徹 (xxx)
さともあせささわくる霜の山かつもかしけ行く冬の末の哀さ
さともあせ−ささわくるしもの−やまかつも−かしけゆくふゆの−すゑのあはれさ |
09750 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ夕の身のうき雲に松の葉も我か住む山の色や消ゆらん
あさゆふの−みのうきくもに−まつのはも−わかすむやまの−いろやきゆらむ |
09751 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺のいほよせぬ浪こすこゑ□うし山下海の松のあらしに
みねのいほ−よせぬなみこす−こゑхうし−やましたうみの−まつのあらしに |
09752 |
未入力 正徹 (xxx)
住みそめし山のかきほにさし杉のかけになるまて宿そふり行く
すみそめし−やまのかきほに−さしすきの−かけになるまて−やとそふりゆく |
09753 |
未入力 正徹 (xxx)
かすかなる山のかたその宿の竹かきこめて住むたよりたになし
かすかなる−やまのかたその−やとのたけ−かきこめてすむ−たよりたになし |
09754 |
未入力 正徹 (xxx)
たたす川かものは山の垣ほよりみとりそつつく杜の呉竹
たたすかは−かものはやまの−かきほより−みとりそつつく−もりのくれたけ |
09755 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふけはおきふす竹のさ枝をも手を合せける山かとそみる
かせふけは−おきふすたけの−さえたをも−てをあはせける−やまかとそみる |
09756 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰のいささ村竹吹きのほるあらしを松にをさめてそきく
やまかけの−いささむらたけ−ふきのほる−あらしをまつに−をさめてそきく |
09757 |
未入力 正徹 (xxx)
庵しむるそのの竹原しけからて巌あやふき上の山きし
いほしむる−そののたけはら−しけからて−いはほあやふき−うへのやまきし |
09758 |
未入力 正徹 (xxx)
あらし吹くひまも有りけり灯の星にならへる峰の柴屋は
あらしふく−ひまもありけり−ともしひの−ほしにならへる−みねのしはやは |
09759 |
未入力 正徹 (xxx)
うきわさを柴屋のけふり山陰にたな引くさへもしつのをた巻
うきわさを−しはやのけふり−やまかけに−たなひくさへも−しつのをたまき |
09760 |
未入力 正徹 (xxx)
住む人もあるかなきかの谷かくれのほる煙や春のいとゆふ
すむひとも−あるかなきかの−たにかくれ−のほるけふりや−はるのいとゆふ |
09761 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の庵たつる煙を天の川つりする糸をおろすとやみん
みねのいほ−たつるけふりを−あまのかは−つりするいとを−おろすとやみむ |
09762 |
未入力 正徹 (xxx)
山姫の手に引くいとの末見せてふもとのさとに立つけふりかな
やまひめの−てにひくいとの−すゑみせて−ふもとのさとに−たつけふりかな |
09763 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕にたつるけふりを山かつの玉のをとみる末もはかなし
あさゆふに−たつるけふりを−やまかつの−たまのをとみる−すゑもはかなし |
09764 |
未入力 正徹 (xxx)
たれしらむ深山をふかみ木のもとのくもるはかりのいほの煙は
たれしらむ−みやまをふかみ−このもとの−くもるはかりの−いほのけふりは |
09765 |
未入力 正徹 (xxx)
たえすきく嵐も山を出てしとや松にめくりてこゑめくるらん
たえすきく−あらしもやまを−いてしとや−まつにめくりて−こゑめくるらむ |
09766 |
未入力 正徹 (xxx)
見し友を松としきかはうからましいま入る山のあらしなりとも
みしともを−まつとしきかは−うからまし−いまいるやまの−あらしなりとも |
09767 |
未入力 正徹 (xxx)
山にすむ鳥獣を見てそしる人のかたちはうけかたき世を
やまにすむ−とりけたものを−みてそしる−ひとのかたちは−うけかたきよを |
09768 |
未入力 正徹 (xxx)
風なから夜はもあけおく松の戸にぬるる時雨のこけの衣手
かせなから−よはもあけおく−まつのとに−ぬるるしくれの−こけのころもて |
09769 |
未入力 正徹 (xxx)
松もけふ袖にしくれて苔の下になりにし人をとふあらしかな
まつもけふ−そてにしくれて−こけのしたに−なりにしひとを−とふあらしかな |
09770 |
未入力 正徹 (xxx)
住みすててのこる庵もかたふきぬかり田さひしき四方の嵐に
すみすてて−のこるいほりも−かたふきぬ−かりたさひしき−よものあらしに |
09771 |
未入力 正徹 (xxx)
を山田や残るをしねをかりふきのとまもあらはにあるる庵かな
をやまたや−のこるをしねを−かりふきの−とまもあらはに−あるるいほかな |
09772 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のあしのまろ屋のとまふきに雨もらぬまてかくるいねかな
あきのたの−あしのまろやの−とまふきに−あめもらぬまて−かくるいねかな |
09773 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のたにとまふく庵のささの戸もあらしにうすき賎かさ衣
あきのたに−とまふくいほの−ささのとも−あらしにうすき−しつかさころも |
09774 |
未入力 正徹 (xxx)
秋に見し門田のいなは夢なれやあしの丸屋はぬる人もなし
あきにみし−かとたのいなは−ゆめなれや−あしのまろやは−ぬるひともなし |
09775 |
未入力 正徹 (xxx)
もる民はかりほの床のいねかてに思ひやあかす年のなりほひ
もるたみは−かりほのとこの−いねかてに−おもひやあかす−としのなりはひ |
09776 |
未入力 正徹 (xxx)
かりほせん水のかはつもこゑたてて野田の若草花にさく比
かりほせむ−みつのかはつも−こゑたてて−のたのわかくさ−はなにさくころ |
09777 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そみる芦の丸屋のまろふしにひもとくならぬ小田の初ほは
けさそみる−あしのまろやの−まろふしに−ひもとくならぬ−をたのはつほは |
09778 |
未入力 正徹 (xxx)
露の身は秋の山田をもるほとのささふく草のいほりたになし
つゆのみは−あきのやまたを−もるほとの−ささふくくさの−いほりたになし |
09779 |
未入力 正徹 (xxx)
守りたてぬ豊の年ある民の草なかきぬいほの手向するまて
もりたてぬ−とよのとしある−たみのくさ−なかきぬいほの−たむけするまて |
09780 |
未入力 正徹 (xxx)
鳥たてし人はかへりてしけるなりかりほのまへの春の苗代
とりたてし−ひとはかへりて−しけるなり−かりほのまへの−はるのなはしろ |
09781 |
未入力 正徹 (xxx)
庵ふりて門田あれにし忘れ水それも人めはもらてたえにき
いほふりて−かとたあれにし−わすれみつ−それもひとめは−もらてたえにき |
09782 |
未入力 正徹 (xxx)
山とほき田中のむらのかきうちはしけき木竹のあるそふきはふ
やまとほき−たなかのむらの−かきうちは−しけきこちくの−あるそふきはふ |
09783 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝みれは山田の庵とまふきに初霜ふりぬおくてかるへく
けさみれは−やまたのいほり−とまふきに−はつしもふりぬ−おくてかるへく |
09784 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そそく門田の草に花そさくおくてになしてしはしかへすな
あめそそく−かとたのくさに−はなそさく−おくてになして−しはしかへすな |
09785 |
未入力 正徹 (xxx)
山鳥のをろの初いねおきあまりかりほの床になかき夜の霜
やまとりの−をろのはついね−おきあまり−かりほのとこに−なかきよのしも |
09786 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田はかりほむなしきひつちほの身をなき物になして住む世は
あきのたは−かりほむなしき−ひつちほの−みをなきものに−なしてすむよは |
09787 |
未入力 正徹 (xxx)
かり庵に弓たておきて人もなし山田もるをや夜かへりこむ
かりいほに−ゆみたておきて−ひともなし−やまたもるをや−よるかへりこむ |
09788 |
未入力 正徹 (xxx)
あれはつる秋田かりほの冬の床もりけん夢をむすふ霜かな
あれはつる−あきたかりほの−ふゆのとこ−もりけむゆめを−むすふしもかな |
09789 |
未入力 正徹 (xxx)
もる人もふもとのを田やひろくみん峰の庵の窓せはくとも
もるひとも−ふもとのをたや−ひろくみむ−みねのいほりの−まとせはくとも |
09790 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田や秋のいなはのおもかけをかりほの雲そ夕日色つく
をやまたや−あきのいなはの−おもかけを−かりほのくもそ−ゆふひいろつく |
09791 |
未入力 正徹 (xxx)
冬の田にひとり庵もるそほつさへ我か身あれゆく雨よ嵐よ
ふゆのたに−ひとりいほもる−そほつさへ−わかみあれゆく−あめよあらしよ |
09792 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のたのあたりの原にいねほすはからてもるより猶そ隙なき
あきのたの−あたりのはらに−いねほすは−からてもるより−なほそひまなき |
09793 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をへてすみこし民の古郷や冬田にのこるかりほなるらん
あきをへて−すみこしたみの−ふるさとや−ふゆたにのこる−かりほなるらむ |
09794 |
未入力 正徹 (xxx)
屋かたうつ舟ともよそに見えぬへしほなみにうかふ小田のかりいほ
やかたうつ−ふねともよそに−みえぬへし−ほなみにうかふ−をたのかりいほ |
09795 |
未入力 正徹 (xxx)
むかふ日に庵も庭も所せくいねかけわたすすこか竹かき
むかふひに−いほりもにはも−ところせく−いねかけわたす−すこかたけかき |
09796 |
未入力 正徹 (xxx)
門田もる賎かうみそのかたよりになひくいなはの風そ身にしむ
かとたもる−しつかうみその−かたよりに−なひくいなはの−かせそみにしむ |
09797 |
未入力 正徹 (xxx)
いなはもる人もわたらすさともなき田中の橋の夕暮の雨
いなはもる−ひともわたらす−さともなき−たなかのはしの−ゆふくれのあめ |
09798 |
未入力 正徹 (xxx)
かりてほすいなはそよきて小山田をわたる秋さのおとのさひしさ
かりてほす−いなはそよきて−をやまたを−わたるあきさの−おとのさひしさ |
09799 |
未入力 正徹 (xxx)
かる小田のひたもなるこも引きすてておちほにとまる秋の村鳥
かるをたの−ひたもなるこも−ひきすてて−おちほにとまる−あきのむらとり |
09800 |
未入力 正徹 (xxx)
なるこをも引きすてし冬の小山田に落ほをさらぬ四方のむら鳥
なるこをも−ひきすてしふゆの−をやまたに−おちほをさらぬ−よものむらとり |
09801 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のいなおほせ鳥のくる年もなくてうき世を過くるいほかな
あきのたの−いなおほせとりの−くるとしも−なくてうきよを−すくるいほかな |
09802 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のかりほは鳥のふしとともおちほののこるほとやみゆらん
あきのたの−かりほはとりの−ふしととも−おちほののこる−ほとやみゆらむ |
09803 |
未入力 正徹 (xxx)
暮るるまてのこる村鳥むらむらにかり田さひしき秋の山もと
くるるまて−のこるむらとり−むらむらに−かりたさひしき−あきのやまもと |
09804 |
未入力 正徹 (xxx)
秋田もるあまのかりほの湊江にしほみちくらしたつそ鳴くなる
あきたもる−あまのかりほの−みなとえに−しほみちくらし−たつそなくなる |
09805 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のむら鳥たつるなるこ縄もる庵の戸にかけて見えつつ
あきのたの−むらとりたつる−なるこなは−もるいほのとに−かけてみえつつ |
09806 |
未入力 正徹 (xxx)
沢田もる芦の丸屋のまろこすけかりのこしてや鳥は住むらん
さはたもる−あしのまろやの−まろこすけ−かりのこしてや−とりはすむらむ |
09807 |
未入力 正徹 (xxx)
そは田もる庵の上の松山にほの色いそくたうのこかれは
そはたもる−いほりのうへの−まつやまに−ほのいろいそく−たうのこかれは |
09808 |
未入力 正徹 (xxx)
庵あれしかきほのむはら霜さえてふるき山田にしとと鳴くこゑ
いほあれし−かきほのむはら−しもさえて−ふるきやまたに−しととなくこゑ |
09809 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへり羽をつかれすやおちほなくなれる門田のあちの村鳥
ゆきかへり−はをつかれすや−おちほなく−なれるかとたの−あちのむらとり |
09810 |
未入力 正徹 (xxx)
秋田かりほすやおちほのこほるらんあちのむらはむかり庵のまへ
あきたかり−ほすやおちほの−こほるらむ−あちのむらはむ−かりいほのまへ |
09811 |
未入力 正徹 (xxx)
庵あれし田中の古井くみたえてのこる水草に鷺あさるなり
いほあれし−たなかのふるゐ−くみたえて−のこるみくさに−さきあさるなり |
09812 |
未入力 正徹 (xxx)
なれぬとや稲おほふ鳥のきなくらん待ちとらぬ冬の霜のかり田に
なれぬとや−いなおほせとりの−きなくらむ−まちとらぬふゆの−しものかりたに |
09813 |
未入力 正徹 (xxx)
ほの上にむら鳥さわくもる人はたちいてけりな小田のかりいほ
ほのうへに−むらとりさわく−もるひとは−たちいてけりな−をたのかりいほ |
09814 |
未入力 正徹 (xxx)
すきかへす田中のさとの村竹にあさ風吹きて鴿そ鳴くなる
すきかへす−たなかのさとの−むらたけに−あさかせふきて−はとそなくなる |
09815 |
未入力 正徹 (xxx)
梢よりみな立ちつれて小山田のみしめにならふ秋のむら鳥
こすゑより−みなたちつれて−をやまたの−みしめにならふ−あきのむらとり |
09816 |
未入力 正徹 (xxx)
霜まよふかり田のくろに石たたきおりあへす近き河原にそ行く
しもまよふ−かりたのくろに−いしたたき−おりあへすちかき−かはらにそゆく |
09817 |
未入力 正徹 (xxx)
民の屋にかひおく秋の馬牛もいなおほせ鳥とならぬ日そなき
たみのやに−かひおくあきの−うまうしも−いなおほせとりと−ならぬひそなき |
09818 |
未入力 正徹 (xxx)
秋のほの長鳥の尾の初霜にふさて夜田もるさをしかの声
あきのほの−なかとりのをの−はつしもに−ふさてよたもる−さをしかのこゑ |
09819 |
未入力 正徹 (xxx)
六月をふるのわさ田の一ほたにからぬにきたるいなおほせ鳥
みなつきを−ふるのわさたの−ひとほたに−からぬにきたる−いなおほせとり |
09820 |
未入力 正徹 (xxx)
山田もるくろの上なるそなれ松なれぬ日もなくかよふ鶴かな
やまたもる−くろのうへなる−そなれまつ−なれぬひもなく−かよふつるかな |
09821 |
未入力 正徹 (xxx)
あへ山や雲のかり屋のかりの戸をあくる田面にたつさわくなり
あへやまや−くものかりやの−かりのとを−あくるたのもに−たつさわくなり |
09822 |
未入力 正徹 (xxx)
秋もりしかりほのぬしや手かひけんかり田の霜につるそおりくる
あきもりし−かりほのぬしや−てかひけむ−かりたのしもに−つるそおりくる |
09823 |
未入力 正徹 (xxx)
刈小田のおちほあらそふ里のこに猶むら鳥の面影そたつ
かりをたの−おちほあらそふ−さとのこに−なほむらとりの−おもかけそたつ |
09824 |
未入力 正徹 (xxx)
くろの上に円居しつつものむ酒の身のうさしらぬ秋のかり人
くろのうへに−まとゐしつつも−のむさけの−みのうさしらぬ−あきのかりひと |
09825 |
未入力 正徹 (xxx)
かるを田におつるほくみをつくる子もこゑこゑうたふ秋の山もと
かるをたに−おつるほくみを−つくるこも−こゑこゑうたふ−あきのやまもと |
09826 |
未入力 正徹 (xxx)
山田かるぬきほあみもち里のこの心行くさまにかへるこゑこゑ
やまたかる−ぬきほあみもち−さとのこの−こころゆくさまに−かへるこゑこゑ |
09827 |
未入力 正徹 (xxx)
村鳥をおのれあらそふさとの子のおちほとりもちさわく小山田
むらとりを−おのれあらそふ−さとのこの−おちほとりもち−さわくをやまた |
09828 |
未入力 正徹 (xxx)
むら鳥の立居はなれぬ棲かなかり田につめる秋のいなくら
むらとりの−たちゐはなれぬ−すみかかな−かりたにつめる−あきのいなくら |
09829 |
未入力 正徹 (xxx)
消えやらていな葉かり田の夕ま暮なほひつちほの雲そあたなる
きえやらて−いなはかりたの−ゆふまくれ−なほひつちほの−くもそあたなる |
09830 |
未入力 正徹 (xxx)
秋の田のかりほの小萩ほにみゆる花のかさむき村雨の風
あきのたの−かりほのこはき−ほにみゆる−はなのかさむき−むらさめのかせ |
09831 |
未入力 正徹 (xxx)
おくてかるかりほもさむき秋そとや山田のくろに煙たつらん
おくてかる−かりほもさむき−あきそとや−やまたのくろに−けふりたつらむ |
09832 |
未入力 正徹 (xxx)
小山田のかりほのすすきひく糸も煙にのこるしつのをた巻
をやまたの−かりほのすすき−ひくいとも−けふりにのこる−しつのをたまき |
09833 |
未入力 正徹 (xxx)
秋やいつ山田の石井水たえてかるるひつちにむすふ初霜
あきやいつ−やまたのいしゐ−みつたえて−かるるひつちに−むすふはつしも |
09834 |
未入力 正徹 (xxx)
人すまぬかりほこほれて石たたむ田な井は冬そ草かくれ行く
ひとすまぬ−かりほこほれて−いしたたむ−たなゐはふゆそ−くさかくれゆく |
09835 |
未入力 正徹 (xxx)
うつし田ににこりし水のすめる秋月を隣のいねかての庵
うつしたに−にこりしみつの−すめるあき−つきをとなりの−いねかてのいほ |
09836 |
未入力 正徹 (xxx)
庵より田中の井とにおりのほる道もいなはのうつむ秋かな
いほりより−たなかのゐとに−おりのほる−みちもいなはの−うつむあきかな |
09837 |
未入力 正徹 (xxx)
とま莚露もはらはすかるいねのゆひそなからの枕のみして
とまむしろ−つゆもはらはす−かるいねの−ゆひそなからの−まくらのみして |
09838 |
未入力 正徹 (xxx)
山おろす風のかけとやたのむらん田中の竹の前の庵は
やまおろす−かせのかけとや−たのむらむ−たなかのたけの−まへのいほりは |
09839 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとり猶冬田にたてる人かたのよはひにしらすかたふきにけり
ひとりなほ−ふゆたにたてる−ひとかたの−よはひにしらす−かたふきにけり |
09840 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ふらん秋田のいねもまもる身もわかなへなりし霜はふりつつ
しのふらむ−あきたのいねも−まもるみも−わかなへなりし−しもはふりつつ |
09841 |
未入力 正徹 (xxx)
をしかなくわさ田はからし霜はとも庵もる民のかみにてそみる
をしかなく−わさたはからし−しもはとも−いほもるたみの−かみにてそみる |
09842 |
未入力 正徹 (xxx)
鹿もみておとろくらめや山田もる霜の翁はこゑたてすとも
しかもみて−おとろくらめや−やまたもる−しものおきなは−こゑたてすとも |
09843 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮煙吹きみたす山風にのこる田中の末のむら雲
ゆふまくれ−けふりふきみたす−やまかせに−のこるたなかの−すゑのむらくも |
09844 |
未入力 正徹 (xxx)
わつかなるくろの村竹あせくぬき田中の里のたのむ陰かも
わつかなる−くろのむらたけ−あせくぬき−たなかのさとの−たのむかけかも |
09845 |
未入力 正徹 (xxx)
秋過きしかり田にたてる人かたも宿はととはぬ庵そあれ行く
あきすきし−かりたにたてる−ひとかたも−やとはととはぬ−いほそあれゆく |
09846 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひなき田中のさとの一村はいな葉かりての後そさひしき
かよひなき−たなかのさとの−ひとむらは−いなはかりての−のちそさひしき |
09847 |
未入力 正徹 (xxx)
ほとあらしひろき田面の杜せはみわら屋かや屋の木隠のさと
ほとあらし−ひろきたのもの−もりせはみ−わらやかややの−こかくれのさと |
09848 |
未入力 正徹 (xxx)
春の田をつくらんためのいみあれは里はあれぬといはまくもをし
はるのたを−つくらむための−いみあれは−さとはあれぬと−いはまくもをし |
09849 |
未入力 正徹 (xxx)
わさ田かりいねこきちらす賎のめか門の土居も心ゆくらし
わさたかり−いねこきちらす−しつのめか−かとのつちゐも−こころゆくらし |
09850 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑしより秋は田面をもりくらし冬そ我かすむ里のさと人
うゑしより−あきはたのもを−もりくらし−ふゆそわかすむ−さとのさとひと |
09851 |
未入力 正徹 (xxx)
なるこ縄むすへるす戸のあけたてに門田の末は鳥さわくなり
なるこなは−むすへるすとの−あけたてに−かとたのすゑは−とりさわくなり |
09852 |
未入力 正徹 (xxx)
かりのこすいなはをわきてこゑすなりひろき門田の秋の村かせ
かりのこす−いなはをわきて−こゑすなり−ひろきかとたの−あきのむらかせ |
09853 |
未入力 正徹 (xxx)
宿やこれなひくか遠の竹の上にかくれあらはれ煙をそみる
やとやこれ−なひくかをちの−たけのうへに−かくれあらはれ−けふりをそみる |
09854 |
未入力 正徹 (xxx)
おりのほる雲にせたえもさたまらす里の中なる遠の山川
おりのほる−くもにせたえも−さたまらす−さとのうちなる−をちのやまかは |
09855 |
未入力 正徹 (xxx)
おろすらむ峰の嵐の山里によこほりしきて煙ともなし
おろすらむ−みねのあらしの−やまさとに−よこほりしきて−けふりともなし |
09856 |
未入力 正徹 (xxx)
なにをかはうき夕暮の色ならんけふりなみせそ遠の山里
なにをかは−うきゆふくれの−いろならむ−けふりなみせそ−をちのやまさと |
09857 |
未入力 正徹 (xxx)
煙たつ所は見えすたかさとにつつきの原のくもる夕風
けふりたつ−ところはみえす−たかさとに−つつきのはらの−くもるゆふかせ |
09858 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたるとほ山かつらおのつからいまやかくらむ里のをとめこ
あけわたる−とほやまかつら−おのつから−いまやかくらむ−さとのをとめこ |
09859 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの煙か竹かむらむらになひくあたりはさととしもなし
やまもとの−けふりかたけか−むらむらに−なひくあたりは−さととしもなし |
09860 |
未入力 正徹 (xxx)
呉竹のなひくたひにやなかむらん雲まの山のおくの里人
くれたけの−なひくたひにや−なかむらむ−くもまのやまの−おくのさとひと |
09861 |
未入力 正徹 (xxx)
杣山に生ひまかる木ののこるまて身のよしあしそ思ひさためぬ
そまやまに−おひまかるきの−のこるまて−みのよしあしそ−おもひさためぬ |
09862 |
未入力 正徹 (xxx)
深山路やくるるもさひしけふり立つ杣のかりやは斧のおとして
みやまちや−くるるもさひし−けふりたつ−そまのかりやは−をののおとして |
09863 |
未入力 正徹 (xxx)
人心まかれる木のみ杣山におほかる末の世をそうらむる
ひとこころ−まかれるきのみ−そまやまに−おほかるすゑの−よをそうらむる |
09864 |
未入力 正徹 (xxx)
うき世□はいつみの杣木たえすなと思ひこりにし身をくたくらん
うきよхは−いつみのそまき−たえすなと−おもひこりにし−みをくたくらむ |
09865 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかへんうきはまさきのつなてたえ杣木引くへき力なき世に
いかかへむ−うきはまさきの−つなてたえ−そまきひくへき−ちからなきよに |
09866 |
未入力 正徹 (xxx)
杣山や谷の山ひこたへわひくらせるをののおとそ消行く
そまやまや−たにのやまひこ−こたへわひ−くらせるをのの−おとそきえゆく |
09867 |
未入力 正徹 (xxx)
杣山や直く立つ桧の老木まてあらん物とは身をも思はす
そまやまや−なほくたつひの−おいきまて−あらむものとは−みをもおもはす |
09868 |
未入力 正徹 (xxx)
杣木きる山の桧の木の直きより日ことに人は猶そあやふき
そまききる−やまのひのきの−なほきより−ひことにひとは−なほそあやふき |
09869 |
未入力 正徹 (xxx)
杣人のいる山口の桧原きりもつくさぬおくそしらるる
そまひとの−いるやまくちの−ひのきはら−きりもつくさぬ−おくそしらるる |
09870 |
未入力 正徹 (xxx)
川浪に杣山おろし送らすはつなてやひかんせせの筏士
かはなみに−そまやまおろし−おくらすは−つなてやひかむ−せせのいかたし |
09871 |
未入力 正徹 (xxx)
みかさます雨に蓑笠うちきつつ筏こき行く杣の川長
みかさます−あめにみのかさ−うちきつつ−いかたこきゆく−そまのかはをさ |
09872 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる杣山川のかたおちにせはき筏の床に住む世を
みにそしる−そまやまかはの−かたおちに−せはきいかたの−とこにすむよを |
09873 |
未入力 正徹 (xxx)
みかさます丸木の柱杣川になかしそへてや筏さすらん
みかさます−まろきのはしら−そまかはに−なかしそへてや−いかたさすらむ |
09874 |
未入力 正徹 (xxx)
山川やみかさますらしさす人も見えぬ筏そひとり落ちくる
やまかはや−みかさますらし−さすひとも−みえぬいかたそ−ひとりおちくる |
09875 |
未入力 正徹 (xxx)
坂こゆるあへの田のものいねをみてうりかふらめや秋の市人
さかこゆる−あへのたのもの−いねをみて−うりかふらめや−あきのいちひと |
09876 |
未入力 正徹 (xxx)
世をみれは心なほきも白浪も立ちましる市そ都なりけり
よをみれは−こころなほきも−しらなみも−たちましるいちそ−みやこなりけり |
09877 |
未入力 正徹 (xxx)
さと人のしかまの市に出てぬ日も浪立ちさわきなる川せかな
さとひとの−しかまのいちに−いてぬひも−なみたちさわき−なるかはせかな |
09878 |
未入力 正徹 (xxx)
世中は市のかり屋のたたしはしたれやはとまる夕暮の空
よのなかは−いちのかりやの−たたしはし−たれやはとまる−ゆふくれのそら |
09879 |
未入力 正徹 (xxx)
たかためにおのれうちきて帰るらんよふや市めの笠を重ねて
たかために−おのれうちきて−かへるらむ−よふやいちめの−かさをかさねて |
09880 |
未入力 正徹 (xxx)
風さむみ旅なる人の道ふりにのみすてて行く市のあち酒
かせさむみ−たひなるひとの−みちふりに−のみすててゆく−いちのあちさけ |
09881 |
未入力 正徹 (xxx)
吹きおろす嵐もさわく山本の雲にましはるたつの市人
ふきおろす−あらしもさわく−やまもとの−くもにましはる−たつのいちひと |
09882 |
未入力 正徹 (xxx)
道のへや夕の風のこゑすなり市に人なき塵はくもりて
みちのへや−ゆふへのかせの−こゑすなり−いちにひとなき−ちりはくもりて |
09883 |
未入力 正徹 (xxx)
月清き鏡はえたり市人のおくりてつるる宿の夜立に
つききよき−かかみはえたり−いちひとの−おくりてつるる−やとのよたちに |
09884 |
未入力 正徹 (xxx)
またきより遠近人もせきあへすたたぬ市はのあくる山路に
またきより−をちこちひとも−せきあへす−たたぬいちはの−あくるやまちに |
09885 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人は立ちましりてもましはらす市庭もよきぬ里の中道
たひひとは−たちましりても−ましはらす−いちはもよきぬ−さとのなかみち |
09886 |
未入力 正徹 (xxx)
あさ衣たれにおれとて行きつるる市のをさめも行いそくらん
あさころも−たれにおれとて−ゆきつるる−いちのをさめも−みちいそくらむ |
09887 |
未入力 正徹 (xxx)
あき人もまたおほからて行ふりの雲たちましる峰の朝市
あきひとも−またおほからて−ゆきふりの−くもたちましる−みねのあさいち |
09888 |
未入力 正徹 (xxx)
我そ行く市場のかりや人たえて夕からすなく森の下道
われそゆく−いちはのかりや−ひとたえて−ゆふからすなく−もりのしたみち |
09889 |
未入力 正徹 (xxx)
草の原市に分けきて立つ民に朝露ゆつる野への旅人
くさのはら−いちにわけきて−たつたみに−あさつゆゆつる−のへのたひひと |
09890 |
未入力 正徹 (xxx)
ありへんと市にましりし杣人も玉のをはかりえかたきはなし
ありへむと−いちにましりし−そまひとも−たまのをはかり−えかたきはなし |
09891 |
未入力 正徹 (xxx)
我かもつもおもきにかけ駄おひつれて朝市いそく村のさと人
わかもつも−おもきにかけた−おひつれて−あさいちいそく−むらのさとひと |
09892 |
未入力 正徹 (xxx)
たちくらし帰る市場のおくの屋に又旅人そあまたやとかる
たちくらし−かへるいちはの−おくのやに−またたひひとそ−あまたやとかる |
09893 |
未入力 正徹 (xxx)
山かつも旅行く人をかるの池のかけまてつれていつる朝市
やまかつも−たひゆくひとを−かるのいけの−かけまてつれて−いつるあさいち |
09894 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人も直なる道をよくはかりかきりしられぬ市女ますらを
たひひとも−すくなるみちを−よくはかり−かきりしられぬ−いちめますらを |
09895 |
未入力 正徹 (xxx)
あへの坂おも荷待ちこす市人も哀とおもへ老のくるしさ
あへのさか−おもにもちこす−いちひとも−あはれとおもへ−おいのくるしさ |
09896 |
未入力 正徹 (xxx)
浪たかみ嵐おちそふ滝の上にうかふ御舟の山はうこかす
なみたかみ−あらしおちそふ−たきのうへに−うかふみふねの−やまはうこかす |
09897 |
未入力 正徹 (xxx)
せきやらて袖におつるやそれならむ我か身も世にそふるの滝浪
せきやらて−そてにおつるや−それならむ−わかみもよにそ−ふるのたきなみ |
09898 |
未入力 正徹 (xxx)
おとは山滝のなかれも名にたかき清水もきよき法の寺かな
おとはやま−たきのなかれも−なにたかき−しみつもきよき−のりのてらかな |
09899 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくよりなかれきにけん日の本も南はなちの海の水かみ
いつくより−なかれきにけむ−ひのもとも−みなみはなちの−うみのみなかみ |
09900 |
未入力 正徹 (xxx)
白妙になひくいさこの山かせもあまた落ちそふ布引の滝
しろたへに−なひくいさこの−やまかせも−あまたおちそふ−ぬのひきのたき |
09901 |
未入力 正徹 (xxx)
雲井より落ちくる滝の行へとや塩まてたかきなちのうら浪
くもゐより−おちくるたきの−ゆくへとや−しほまてたかき−なちのうらなみ |
09902 |
未入力 正徹 (xxx)
事とはむかこの駅路くれわたるさとの煙に高砂の松
こととはむ−かこのうまやち−くれわたる−さとのけふりに−たかさこのまつ |
09903 |
未入力 正徹 (xxx)
月の舟せかゐに見ゆるし水のみなかれてかけは行かたもなし
つきのふね−せかゐにみゆる−しみつのみ−なかれてかけは−ゆくかたもなし |
09904 |
未入力 正徹 (xxx)
あとそなきたえしなからの橋守にそれもむかしや人わたしけん
あとそなき−たえしなからの−はしもりに−それもむかしや−ひとわたしけむ |
09905 |
未入力 正徹 (xxx)
木播ちや此比袖をひつ河の橘はわたらし浪そ涼しき
こはたちや−このころそてを−ひつかはの−はしはわたらし−なみそすすしき |
09906 |
未入力 正徹 (xxx)
をりふせし荻の葉たゆる旅ねにもなほ浪はかりあらき浜風
をりふせし−をきのはたゆる−たひねにも−なほなみはかり−あらきはまかせ |
09907 |
未入力 正徹 (xxx)
見ぬもうしなにのみ菊の長浜よことしも秋を過しける身を
みぬもうし−なにのみきくの−なかはまよ−ことしもあきを−すくしけるみを |
09908 |
未入力 正徹 (xxx)
石見かた岩うつ波にまつたてるこゑもたかつのうら風そ吹く
いはみかた−いはうつなみに−まつたてる−こゑもたかつの−うらかせそふく |
09909 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌の浦のあしへのたつと老いはてて雲井のひなにこゑそ及はぬ
わかのうらの−あしへのたつと−おいはてて−くもゐのひなに−こゑそおよはぬ |
09910 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはをつみてそしらん和かの浦のあまのしほ木のよきもあしきも
ことのはを−つみてそしらむ−わかのうらの−あまのしほきの−よきもあしきも |
09911 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉のうら浪かけてことの葉の松の林の神やすむらん
すみよしの−うらなみかけて−ことのはの−まつのはやしの−かみやすむらむ |
09912 |
未入力 正徹 (xxx)
もしほ草神のましはるちりならはつもりの浦をあまもはらはし
もしほくさ−かみのましはる−ちりならは−つもりのうらを−あまもはらはし |
09913 |
未入力 正徹 (xxx)
木のもとも人の心のたねちりぬ松葉かきとれ住吉の神
このもとも−ひとのこころの−たねちりぬ−まつはかきとれ−すみよしのかみ |
09914 |
未入力 正徹 (xxx)
よさの海や入塩遠き夕なきに松もこゑせぬあまのはしたて
よさのうみや−いりしほとほき−ゆふなきに−まつもこゑせぬ−あまのはしたて |
09915 |
未入力 正徹 (xxx)
うけよ神もくつなからもことの葉はさすかつもりの浦によせきぬ
うけよかみ−もくつなからも−ことのはは−さすかつもりの−うらによせきぬ |
09916 |
未入力 正徹 (xxx)
仙人のうゑけん竹やおよはまし千尋の海のあまのたくなは
やまひとの−うゑけむたけや−およはまし−ちひろのうみの−あまのたくなは |
09917 |
未入力 正徹 (xxx)
風の音もけに神さひてかたそきの行合ちかし住吉の松
かせのおとも−けにかみさひて−かたそきの−ゆきあひちかし−すみよしのまつ |
09918 |
未入力 正徹 (xxx)
和かの浦に五十年の老のなみこえぬ心もよせし松のことのは
わかのうらに−いそちのおいの−なみこえぬ−こころもよせし−まつのことのは |
09919 |
未入力 正徹 (xxx)
此法の末はをてらす光あれなうつみし三の箱崎のまつ
こののりの−すゑはをてらす−ひかりあれな−うつみしみつの−はこさきのまつ |
09920 |
未入力 正徹 (xxx)
秋歌浦の松のことのはちらはうし苔のみたれて色うつむ比
わかのうらの−まつのことのは−ちらはうし−こけのみたれて−いろうつむころ |
09921 |
未入力 正徹 (xxx)
なからふるかひもありけりわかの浦に生ひかはる松の陰にあふまて
なからふる−かひもありけり−わかのうらに−おひかはるまつの−かけにあふまて |
09922 |
未入力 正徹 (xxx)
大淀の松にうら風袖ふれぬつらくもあらぬなのみ聞えて
おほよとの−まつにうらかせ−そてふれぬ−つらくもあらぬ−なのみきこえて |
09923 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にうくたよりもあれや住江の神の見るめを松のことのは
なみにうく−たよりもあれや−すみのえの−かみのみるめを−まつのことのは |
09924 |
未入力 正徹 (xxx)
あま小舟玉もなかりそ高しほのみつのはま松末うかふらん
あまをふね−たまもなかりそ−たかしほの−みつのはままつ−すゑうかふらむ |
09925 |
未入力 正徹 (xxx)
住よしのうら吹く風にこゑ老いぬいつれの世にか岸のひめ松
すみよしの−うらふくかせに−こゑおいぬ−いつれのよにか−きしのひめまつ |
09926 |
未入力 正徹 (xxx)
市人もともに坂こえくたりきてあへの田面にさわくかりかね
いちひとも−ともにさかこえ−くたりきて−あへのたのもに−さわくかりかね |
09927 |
未入力 正徹 (xxx)
あへの市にたつ民よりも老の坂くたりての世に住むそくるしき
あへのいちに−たつたみよりも−おいのさか−くたりてのよに−すむそくるしき |
09928 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらぬ市人よりや立ちこえんあへの田面の秋のほなみは
かすしらぬ−いちひとよりや−たちこえむ−あへのたのもの−あきのほなみは |
09929 |
未入力 正徹 (xxx)
つもれともかふ人やなき住吉の浜への松場松のことのは
つもれとも−かふひとやなき−すみよしの−はまへのまつは−まつのことのは |
09930 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜の山雲を閨ともたのまれすかりねの嵐袖にこたへて
さよのやま−くもをねやとも−たのまれす−かりねのあらし−そてにこたへて |
09931 |
未入力 正徹 (xxx)
みなの川せき入れし小田の秋のほやすそわにあまる浪とみゆらん
みなのかは−せきいれしをたの−あきのほや−すそわにあまる−なみとみゆらむ |
09932 |
未入力 正徹 (xxx)
水くきの岡のみなとの田草をもたくもにかくやあまのもしほ火
みつくきの−をかのみなとの−たくさをも−たくもにかくや−あまのもしほひ |
09933 |
未入力 正徹 (xxx)
かさぬひのみ島かくれに舟そよるあらくおろすなしはつ山風
かさぬひの−みしまかくれに−ふねそよる−あらくおろすな−しはつやまかせ |
09934 |
未入力 正徹 (xxx)
いつのまに友神男神もうまさりし山はふしのね生ひのほりけん
いつのまに−めかみをかみも−うまさりし−やまはふしのね−おひのほりけむ |
09935 |
未入力 正徹 (xxx)
心せよこよひは夢もをしほ山ふもとの野への花のかりふし
こころせよ−こよひはゆめも−をしほやま−ふもとののへの−はなのかりふし |
09936 |
未入力 正徹 (xxx)
草も木も葉をつくしてそあらはなるいく田の小野の杜の川上
くさもきも−はをつくしてそ−あらはなる−いくたのをのの−もりのかはかみ |
09937 |
未入力 正徹 (xxx)
身はかくて朽木の杣木引く綱のたえてくるしき世をやつくさん
みはかくて−くちきのそまき−ひくつなの−たえてくるしき−よをやつくさむ |
09938 |
未入力 正徹 (xxx)
うら浪もをののひひきも高島やみをの杣山おろす嵐に
うらなみも−をののひひきも−たかしまや−みをのそまやま−おろすあらしに |
09939 |
未入力 正徹 (xxx)
ねをたえてきえぬたつ木もあれぬへし水のかねほるにふの杣山
ねをたえて−きえぬたつきも−あれぬへし−みつのかねほる−にふのそまやま |
09940 |
未入力 正徹 (xxx)
清見かた岩こす磯の浦風にさらにや夢もなみの関守
きよみかた−いはこすいその−うらかせに−さらにやゆめも−なみのせきもり |
09941 |
未入力 正徹 (xxx)
末の世につたへてそきくあふ坂や関のわら屋の四のをの音
すゑのよに−つたへてそきく−あふさかや−せきのわらやの−よつのをのおと |
09942 |
未入力 正徹 (xxx)
浪ちもる須磨の関屋の夕霧に駅の鈴の音はかりして
なみちもる−すまのせきやの−ゆふきりに−うまやのすすの−おとはかりして |
09943 |
未入力 正徹 (xxx)
昔こそなほゆかしけれこの比の山路をなとか白川の関
むかしこそ−なほゆかしけれ−このころの−やまちをなとか−しらかはのせき |
09944 |
未入力 正徹 (xxx)
よせくるや上野の虫ももろこゑを須磨の関路の秋の鈴舟
よせくるや−うへののむしも−もろこゑを−すまのせきちの−あきのすすふね |
09945 |
未入力 正徹 (xxx)
たつた山ふるき梢に鳥そなくもえて幾世の関路なるらん
たつたやま−ふるきこすゑに−とりそなく−もえていくよの−せきちなるらむ |
09946 |
未入力 正徹 (xxx)
清見かた岩うつ浪にちる玉の光も夜や関路もるらむ
きよみかた−いはうつなみに−ちるたまの−ひかりもよるや−せきちもるらむ |
09947 |
未入力 正徹 (xxx)
さねかつらかけのたれをの長路しるあふ坂山の関の行末
さねかつら−かけのたれをの−なかちしる−あふさかやまの−せきのゆくすゑ |
09948 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ほしぬ名をはたたすの神風や関吹きこえしすまのうら人
そてほしぬ−なをはたたすの−かみかせや−せきふきこえし−すまのうらひと |
09949 |
未入力 正徹 (xxx)
こえ見はやあつま筑紫のはてに行く路のなかはの白川のせき
こえみはや−あつまつくしの−はてにゆく−みちのなかはの−しらかはのせき |
09950 |
未入力 正徹 (xxx)
さすかなり宿かすき路の関もりもたつかなき世をかたりあかせは
さすかなり−やとかすきちの−せきもりも−たつかなきよを−かたりあかせは |
09951 |
未入力 正徹 (xxx)
関守かたておく夜はのたつかゆみ雲そ朝引くき路の遠山
せきもりか−たておくよはの−たつかゆみ−くもそあさひく−きちのとほやま |
09952 |
未入力 正徹 (xxx)
須磨の浦の興に舟かとみしほとの雲や渚の関うつむらん
すまのうらの−おきにふねかと−みしほとの−くもやなきさの−せきうつむらむ |
09953 |
未入力 正徹 (xxx)
あふさかやたれか手向のぬさのてをあくる関路の雲に引くらん
あふさかや−たれかたむけの−ぬさのてを−あくるせきちの−くもにひくらむ |
09954 |
未入力 正徹 (xxx)
関屋とて夕の雨にとまるともひさしあれたる不破の山風
せきやとて−ゆふへのあめに−とまるとも−ひさしあれたる−ふはのやまかせ |
09955 |
未入力 正徹 (xxx)
よひよひのたかかよひちそすすか姫関もる山は旅人そゆく
よひよひの−たかかよひちそ−すすかひめ−せきもるやまは−たひひとそゆく |
09956 |
未入力 正徹 (xxx)
守りあかす関屋はあれと須暦の浦浪の戸さして過くる舟人
もりあかす−せきやはあれと−すまのうら−なみのとさして−すくるふなひと |
09957 |
未入力 正徹 (xxx)
かへすてふよるの衣の関こゆる夢ちはしるや須磨の関守
かへすてふ−よるのころもの−せきこゆる−ゆめちはしるや−すまのせきもり |
09958 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ坂の新関守やしらさらん杉の嵐のふるき世の声
あふさかの−にひせきもりや−しらさらむ−すきのあらしの−ふるきよのこゑ |
09959 |
未入力 正徹 (xxx)
こえてみん河たれ時の川口や関のあらかき月そへたてぬ
こえてみむ−かはたれときの−かはくちや−せきのあらかき−つきそへたてぬ |
09960 |
未入力 正徹 (xxx)
浪の上の雪そたみのの島めくり須磨の関屋は雨の中にて
なみのうへの−ゆきそたみのの−しまめくり−すまのせきやは−あめのうちにて |
09961 |
未入力 正徹 (xxx)
すすか川関の戸よりもこえわひぬふり出てし雨の八十瀬しらなみ
すすかかは−せきのとよりも−こえわひぬ−ふりいてしあめの−やそせしらなみ |
09962 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き世のはまの御祓もけふそかし雨をはしるや須磨の関もり
とほきよの−はまのみそきも−けふそかし−あめをはしるや−すまのせきもり |
09963 |
未入力 正徹 (xxx)
関屋にはたく火も見えぬ河口の水の煙やあさけたつらん
せきやには−たくひもみえぬ−かはくちの−みつのけふりや−あさけたつらむ |
09964 |
未入力 正徹 (xxx)
夕日さす杉村おほふあふ坂の関守くらきかねのこゑかな
ゆふひさす−すきむらおほふ−あふさかの−せきもりくらき−かねのこゑかな |
09965 |
未入力 正徹 (xxx)
木の葉吹くおとそなかるる白河に川なき山の関の秋かせ
このはふく−おとそなかるる−しらかはに−かはなきやまの−せきのあきかせ |
09966 |
未入力 正徹 (xxx)
夕浪もすまの山柴音たてて関もる庵にわたるうら風
ゆふなみも−すまのやましは−おとたてて−せきもるいほに−わたるうらかせ |
09967 |
未入力 正徹 (xxx)
山人のひろふ爪木になりぬへしこよひをりしく峰の椎柴
やまひとの−ひろふつまきに−なりぬへし−こよひをりしく−みねのしひしは |
09968 |
未入力 正徹 (xxx)
なさけしる人もあまたにとひくれは七夜を旅と思ひやはせん
なさけしる−ひともあまたに−とひくれは−ななよをたひと−おもひやはせむ |
09969 |
未入力 正徹 (xxx)
宮こ出てて関屋へたたる旅なれと友もわかれす道もほとなし
みやこいてて−せきやへたたる−たひなれと−とももわかれす−みちもほとなし |
09970 |
未入力 正徹 (xxx)
ほささりき嵐は袖になかれてもぬるる旅ねの山川のこゑ
ほささりき−あらしはそてに−なかれても−ぬるるたひねの−やまかはのこゑ |
09971 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりみる形見そ残る夜はの夢わかれし峰にかかる横雲
かへりみる−かたみそのこる−よはのゆめ−わかれしみねに−かかるよこくも |
09972 |
未入力 正徹 (xxx)
馬いはひ鶏なきて旅人のいて立つこゑそ里にあまれる
うまいはひ−にはとりなきて−たひひとの−いてたつこゑそ−さとにあまれる |
09973 |
未入力 正徹 (xxx)
椎の葉のあられをみてもかれ飯をつつまぬ山につかれてやねん
しひのはの−あられをみても−かれいひを−つつまぬやまに−つかれてやねむ |
09974 |
未入力 正徹 (xxx)
峰こゆる山風さむし朝明の雲の衣手たちわかれつつ
みねこゆる−やまかせさむし−あさあけの−くものころもて−たちわかれつつ |
09975 |
未入力 正徹 (xxx)
宿もなくむかふ山路に雨おちて木下はらふみねの松風
やともなく−むかふやまちに−あめおちて−このもとはらふ−みねのまつかせ |
09976 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつ風あらき浪ちの磯つたひ舟におりのりいくかきぬらん
おきつかせ−あらきなみちの−いそつたひ−ふねにおりのり−いくかきぬらむ |
09977 |
未入力 正徹 (xxx)
里人はちかき湊にいる舟のこきわかれ行くなみのうへかな
さとひとは−ちかきみなとに−いるふねの−こきわかれゆく−なみのうへかな |
09978 |
未入力 正徹 (xxx)
やとるなよ月にそゆるす枕とて草引きむすふ野への夕露
やとるなよ−つきにそゆるす−まくらとて−くさひきむすふ−のへのゆふつゆ |
09979 |
未入力 正徹 (xxx)
とまるへき里かと見えて夕煙あまた立出つるをちの村竹
とまるへき−さとかとみえて−ゆふけふり−あまたたちいつる−をちのむらたけ |
09980 |
未入力 正徹 (xxx)
とほくとも朝立ちわたれ六の道まはるたにあるせたの長橋
とほくとも−あさたちわたれ−むつのみち−まはるたにある−せたのなかはし |
09981 |
未入力 正徹 (xxx)
東路やよこほる山にふせるなりさやにも見はや古郷の夢
あつまちや−よこほるやまに−ふせるなり−さやにもみはや−ふるさとのゆめ |
09982 |
未入力 正徹 (xxx)
旅衣袖もたえねと吹く風にさもあらぬ山の夢そやふるる
たひころも−そてもたえねと−ふくかせに−さもあらぬやまの−ゆめそやふるる |
09983 |
未入力 正徹 (xxx)
雲まよふ峰の嵐のうきねにも世をうみわたる夢そ覚えぬ
くもまよふ−みねのあらしの−うきねにも−よをうみわたる−ゆめそおほえぬ |
09984 |
未入力 正徹 (xxx)
あらき浪舟のとまうつしつくさへ蓑を衣のさぬるまもなし
あらきなみ−ふねのとまうつ−しつくさへ−みのをころもの−さぬるまもなし |
09985 |
未入力 正徹 (xxx)
つかれきていきのをたえをつく橋にしはしやすらふよもの旅人
つかれきて−いきのをたえを−つくはしに−しはしやすらふ−よものたひひと |
09986 |
未入力 正徹 (xxx)
おも荷もつ息をもいまやつき橋の中にはならひたてる旅人
おもにもつ−いきをもいまや−つきはしの−なかにはならひ−たてるたひひと |
09987 |
未入力 正徹 (xxx)
山もとの村雲うかふ川橋にわたりきえくる今朝のたひ人
やまもとの−むらくもうかふ−かははしに−わたりきえくる−けさのたひひと |
09988 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふことしはしもいはぬ旅人のわたりならはぬ橋ほそくして
おもふこと−しはしもいはぬ−たひひとの−わたりならはぬ−はしほそくして |
09989 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりくる宮このひかし河橋にすかたまかはぬ遠つ旅人
わたりくる−みやこのひかし−かははしに−すかたまかはぬ−とほつたひひと |
09990 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人はわたりましるもしるかりき朝立つ市のまへのたなはし
たひひとは−わたりましるも−しるかりき−あさたついちの−まへのたなはし |
09991 |
未入力 正徹 (xxx)
橋板もいま白河につくるなり宮こにわたれ四方のたひ人
はしいたも−いましらかはに−つくるなり−みやこにわたれ−よものたひひと |
09992 |
未入力 正徹 (xxx)
橋のもとに夏はひらくる花のかを袂にとめてわたる旅人
はしのもとに−なつはひらくる−はなのかを−たもとにとめて−わたるたひひと |
09993 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬる床に吹きまく雲を枕にてのほるふもとの嵐をそしく
ぬるとこに−ふきまくくもを−まくらにて−のほるふもとの−あらしをそしく |
09994 |
未入力 正徹 (xxx)
かり枕しつくも雨もさひしきは山下いほのね覚なりけり
かりまくら−しつくもあめも−さひしきは−やましたいほの−ねさめなりけり |
09995 |
未入力 正徹 (xxx)
月のもるすすのしの屋のかや莚さすか心をのふる夜半かな
つきのもる−すすのしのやの−かやむしろ−さすかこころを−のふるよはかな |
09996 |
未入力 正徹 (xxx)
しのはしよなれすてすよき古郷と思ふ宮こもつひの旅ねを
しのはしよ−なれすてすよき−ふるさとと−おもふみやこも−つひのたひねを |
09997 |
未入力 正徹 (xxx)
をののえも朽ちなはくちねかけたのむ我かたつ杣の今夜かりねに
をののえも−くちなはくちね−かけたのむ−わかたつそまの−こよひかりねに |
09998 |
未入力 正徹 (xxx)
足をいたみ出行く宿の朝あけに駒引きつれてたてる旅人
あしをいたみ−いてゆくやとの−あさあけに−こまひきつれて−たてるたひひと |
09999 |
未入力 正徹 (xxx)
雲にたた臥すとそみえむ岩かねのこりしく峰の明くるよそ目は
くもにたた−ふすとそみえむ−いはかねの−こりしくみねの−あくるよそめは |
10000 |
未入力 正徹 (xxx)
かりねする宿のあるしもみすしらてあすの道とふ答をそきく
かりねする−やとのあるしも−みすしらて−あすのみちとふ−こたへをそきく |
10001 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ又わたりかへりて古郷を旅ねの夢に峰のかけはし
こよひまた−わたりかへりて−ふるさとを−たひねのゆめに−みねのかけはし |
10002 |
未入力 正徹 (xxx)
たれならむ物へたてたるあひやとりききしににたる人のこゑこゑ
たれならむ−ものへたてたる−あひやとり−ききしににたる−ひとのこゑこゑ |
10003 |
未入力 正徹 (xxx)
草枕露しく月の宮人はみるらん袖をぬるとつけこせ
くさまくら−つゆしくつきの−みやひとは−みるらむそてを−ぬるとつけこせ |
10004 |
未入力 正徹 (xxx)
我や行くかりねの夢にとへはとて人は旅たつすかたともなし
われやゆく−かりねのゆめに−とへはとて−ひとはたひたつ−すかたともなし |
10005 |
未入力 正徹 (xxx)
岩かねに枝をりかけてふし柴のこるはかりなる嵐をそきく
いはかねに−えたをりかけて−ふししはの−こるはかりなる−あらしをそきく |
10006 |
未入力 正徹 (xxx)
かよひてし夢のたたちも旅なれてさぬるこよひは古郷もみす
かよひてし−ゆめのたたちも−たひなれて−さぬるこよひは−ふるさともみす |
10007 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷にかりねの月の宮こ人見てたにつけよこふるね覚を
ふるさとに−かりねのつきの−みやこひと−みてたにつけよ−こふるねさめを |
10008 |
未入力 正徹 (xxx)
われや行く旅ねの嵐ふる郷にふかすは今夜夢のかよひち
われやゆく−たひねのあらし−ふるさとに−ふかすはこよひ−ゆめのかよひち |
10009 |
未入力 正徹 (xxx)
かりねして太山嵐をかたしけはささの枕はたゆる夢かな
かりねして−みやまあらしを−かたしけは−ささのまくらは−たゆるゆめかな |
10010 |
未入力 正徹 (xxx)
旅なからまさしく草の枕をはせぬ夜の袖も露そこほるる
たひなから−まさしくくさの−まくらをは−せぬよのそても−つゆそこほるる |
10011 |
未入力 正徹 (xxx)
風ふかは宮この枕ことつけよ哀ときくやさよの中山
かせふかは−みやこのまくら−ことつけよ−あはれときくや−さよのなかやま |
10012 |
未入力 正徹 (xxx)
旅の空けふはおほえす遠くきぬ跡おふ嵐くたる山路に
たひのそら−けふはおほえす−とほくきぬ−あとおふあらし−くたるやまちに |
10013 |
未入力 正徹 (xxx)
嵐ふく枕の山は木ふかくて床あらはなる草のかりふし
あらしふく−まくらのやまは−こふかくて−とこあらはなる−くさのかりふし |
10014 |
未入力 正徹 (xxx)
宿そもるあすの山路の雨つつみぬれすはありとも猶ややつれん
やとそもる−あすのやまちの−あまつつみ−ぬれすはありとも−なほややつれむ |
10015 |
未入力 正徹 (xxx)
雨のため日比まきもつすか蓑をあけてもふらはときや初めまし
あめのため−ひころまきもつ−すかみのを−あけてもふらは−ときやそめまし |
10016 |
未入力 正徹 (xxx)
雨の夜におきゐて思ふ末もうしあすの深山の坂の下庵
あめのよに−おきゐておもふ−すゑもうし−あすのみやまの−さかのしたいほ |
10017 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひやるとほき母その秋風に人なき宿のゆふ暮のあめ
おもひやる−とほきははその−あきかせに−ひとなきやとの−ゆふくれのあめ |
10018 |
未入力 正徹 (xxx)
今朝そうき軒はの川の岩なみに山ちの雨をきかぬ旅ねは
けさそうき−のきはのかはの−いはなみに−やまちのあめを−きかぬたひねは |
10019 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねん夕の宿をかし捨てて人はふりきぬ雨はふりきぬ
いかかねむ−ゆふへのやとを−かしすてて−ひとはふりきぬ−あめはふりきぬ |
10020 |
未入力 正徹 (xxx)
君はしれ夜ことの夢に我見えは宮こにねても旅に出てぬと
きみはしれ−よことのゆめに−われみえは−みやこにねても−たひにいてぬと |
10021 |
未入力 正徹 (xxx)
夢やみんあらき浜への浜荻を折りふせさぬるなみの枕は
ゆめやみむ−あらきはまへの−はまをきを−をりふせさぬる−なみのまくらは |
10022 |
未入力 正徹 (xxx)
宮こにも見るらんものを枕よりまくらはかけよ夢の浮橋
みやこにも−みるらむものを−まくらより−まくらはかけよ−ゆめのうきはし |
10023 |
未入力 正徹 (xxx)
椎の葉もしらぬ山路の宿かけて夢そたえ行くうちの河風
しひのはも−しらぬやまちの−やとかけて−ゆめそたえゆく−うちのかはかせ |
10024 |
未入力 正徹 (xxx)
たのむ夜のささの枕の夢覚めて後そふしうきかたしきの袖
たのむよの−ささのまくらの−ゆめさめて−のちそふしうき−かたしきのそて |
10025 |
未入力 正徹 (xxx)
海山もさらに思ひそつつけえぬさめて忘るる夢路のみかは
うみやまも−さらにおもひそ−つつけえぬ−さめてわするる−ゆめちのみかは |
10026 |
未入力 正徹 (xxx)
うつなみの枕うこかしきよみかたいその岩ほにかへる夢かな
うつなみの−まくらうこかし−きよみかた−いそのいはほに−かへるゆめかな |
10027 |
未入力 正徹 (xxx)
まとろむもさこそは旅の空ならめ見る夢なくてさむる床かな
まとろむも−さこそはたひの−そらならめ−みるゆめなくて−さむるとこかな |
10028 |
未入力 正徹 (xxx)
とほくみぬ夢の末野の道たえて枕の草に月そおちくる
とほくみぬ−ゆめのすゑのの−みちたえて−まくらのくさに−つきそおちくる |
10029 |
未入力 正徹 (xxx)
庵ちかき野守のかかみ影すみて明行く山にくもるかねかな
いほちかき−のもりのかかみ−かけすみて−あけゆくやまに−くもるかねかな |
10030 |
未入力 正徹 (xxx)
聞くままに我か里なれし夜半もにす鐘さへひなの声そかはれる
きくままに−わかさとなれし−よはもにす−かねさへひなの−こゑそかはれる |
10031 |
未入力 正徹 (xxx)
松の葉の月やをしまにこゑすなりいその旅ねの明かたのかね
まつのはの−つきやをしまに−こゑすなり−いそのたひねの−あけかたのかね |
10032 |
未入力 正徹 (xxx)
在明のかけもわかれぬたもとかな月もかりねの山ふかくして
ありあけの−かけもわかれぬ−たもとかな−つきもかりねの−やまふかくして |
10033 |
未入力 正徹 (xxx)
したひてや朝立ちきなん古郷の見えこし夢をやとにととめは
したひてや−あさたちきなむ−ふるさとの−みえこしゆめを−やとにととめは |
10034 |
未入力 正徹 (xxx)
太山路やこよひの宿を木の本にかし鳥なきてあくるしののめ
みやまちや−こよひのやとを−このもとに−かしとりなきて−あくるしののめ |
10035 |
未入力 正徹 (xxx)
明けぬるか入江の磯に馬すすみ舟いてうかふ里とよむまて
あけぬるか−いりえのいそに−うますすみ−ふねいてうかふ−さととよむまて |
10036 |
未入力 正徹 (xxx)
露けさを宮こにつけよ野への風草の枕にかかる月影
つゆけさを−みやこにつけよ−のへのかせ−くさのまくらに−かかるつきかけ |
10037 |
未入力 正徹 (xxx)
たたたのめさせもか露の草枕やととしめちか原の松かせ
たたたのめ−させもかつゆの−くさまくら−やととしめちか−はらのまつかせ |
10038 |
未入力 正徹 (xxx)
袖しをる野へのかりほの草莚夢はおもひもかけぬ露かな
そてしをる−のへのかりほの−くさむしろ−ゆめはおもひも−かけぬつゆかな |
10039 |
未入力 正徹 (xxx)
露たにもよもいとはれしかけかくす野守か庵に宿をからすは
つゆたにも−よもいとはれし−かけかくす−のもりかいほに−やとをからすは |
10040 |
未入力 正徹 (xxx)
やとりなき野原を遠み枕ゆふ草葉いかなる契なるらん
やとりなき−のはらをとほみ−まくらゆふ−くさはいかなる−ちきりなるらむ |
10041 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷をさやかに見せよかりねする野守のかかみ夢ならすとも
ふるさとを−さやかにみせよ−かりねする−のもりのかかみ−ゆめならすとも |
10042 |
未入力 正徹 (xxx)
いた枕まくらに草はむすはねと野風たまらぬ道のへの宿
いたまくら−まくらにくさは−むすはねと−のかせたまらぬ−みちのへのやと |
10043 |
未入力 正徹 (xxx)
露はらふのへの荻原折りふせて夢路そさらにあらき浜風
つゆはらふ−のへのをきはら−をりふせて−ゆめちそさらに−あらきはまかせ |
10044 |
未入力 正徹 (xxx)
旅ねせむ秋は大野に尾花ふくかりほの袖をかたみなるらん
たひねせむ−あきはおほのに−をはなふく−かりほのそてを−かたみなるらむ |
10045 |
未入力 正徹 (xxx)
袖の露うつろふ夢のやとりさへあたの大野の荻のかりふき
そてのつゆ−うつろふゆめの−やとりさへ−あたのおほのの−をきのかりふき |
10046 |
未入力 正徹 (xxx)
風さやくすすの篠屋に夢覚めて隙もるみれは月かたふきぬ
かせさやく−すすのしのやに−ゆめさめて−ひまもるみれは−つきかたふきぬ |
10047 |
未入力 正徹 (xxx)
宿とはむしるへやそれとあつま野のけふりをみれは松風そ吹く
やととはむ−しるへやそれと−あつまのの−けふりをみれは−まつかせそふく |
10048 |
未入力 正徹 (xxx)
露わけむすすのしの屋のかりの戸をまた明けぬよの袖そしをるる
つゆわけむ−すすのしのやの−かりのとを−またあけぬよの−そてそしをるる |
10049 |
未入力 正徹 (xxx)
旅衣嵐を袖のやとりにて夕こえかかるさやの中やま
たひころも−あらしをそての−やとりにて−ゆふこえかかる−さやのなかやま |
10050 |
未入力 正徹 (xxx)
かへりみる煙のすゑもあつまのの草葉にかかる露の下道
かへりみる−けふりのすゑも−あつまのの−くさはにかかる−つゆのしたみち |
10051 |
未入力 正徹 (xxx)
とほくきて今夜いかなる宿からんひな行く里そみしにまされる
とほくきて−こよひいかなる−やとからむ−ひなゆくさとそ−みしにまされる |
10052 |
未入力 正徹 (xxx)
うちわたす遠かた人の旅衣日も夕くれの宿やとふらん
うちわたす−をちかたひとの−たひころも−ひもゆふくれの−やとやとふらむ |
10053 |
未入力 正徹 (xxx)
雲かへる夕の峰をこえそ行く袖ふれにきと人につけこせ
くもかへる−ゆふへのみねを−こえそゆく−そてふれにきと−ひとにつけこせ |
10054 |
未入力 正徹 (xxx)
袖やひん袖やぬらさむうみ山の旅ねもしらぬ道の夕風
そてやひむ−そてやぬらさむ−うみやまの−たひねもしらぬ−みちのゆふかせ |
10055 |
未入力 正徹 (xxx)
おもはしなたとへは行くもととまるも此世は旅の空のうき雲
おもはしな−たとへはゆくも−ととまるも−このよはたひの−そらのうきくも |
10056 |
未入力 正徹 (xxx)
出ててこし古郷人やしたふらん袖吹きかへす道の山かせ
いててこし−ふるさとひとや−したふらむ−そてふきかへす−みちのやまかせ |
10057 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人もけにそまれなる玉ほこの道行ふりも安からぬ世に
たひひとも−けにそまれなる−たまほこの−みちゆきふりも−やすからぬよに |
10058 |
未入力 正徹 (xxx)
空にたつ日数も山もかさなりぬちりつもるらん古郷の床
そらにたつ−ひかすもやまも−かさなりぬ−ちりつもるらむ−ふるさとのとこ |
10059 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬれてねん野へは麓そかり衣日も夕露の峰のかけ草
ぬれてねむ−のへはふもとそ−かりころも−ひもゆふつゆの−みねのかけくさ |
10060 |
未入力 正徹 (xxx)
嶺こゆる袖の下よりつき出すかねや千さとの暮おほふらん
みねこゆる−そてのしたより−つきいたす−かねやちさとの−くれおほふらむ |
10061 |
未入力 正徹 (xxx)
いつくまて友なへとてか横雲の朝立つ山に鐘おくるらん
いつくまて−ともなへとてか−よこくもの−あさたつやまに−かねおくるらむ |
10062 |
未入力 正徹 (xxx)
夕ま暮舟はつなきて人もなし此川原にや旅枕せん
ゆふまくれ−ふねはつなきて−ひともなし−このかはらにや−たひまくらせむ |
10063 |
未入力 正徹 (xxx)
日暮れたりいさまちつれん山路より遠かた人の袖のちかつく
ひくれたり−いさまちつれむ−やまちより−をちかたひとの−そてのちかつく |
10064 |
未入力 正徹 (xxx)
わするなよ舟まつほとの川岸にことかたらふも世世の契を
わするなよ−ふねまつほとの−かはきしに−ことかたらふも−よよのちきりを |
10065 |
未入力 正徹 (xxx)
わするなよ旅行く袖の村雨を送る一木のもとの契りは
わするなよ−たひゆくそての−むらさめを−おくるひときの−もとのちきりは |
10066 |
未入力 正徹 (xxx)
こととひてけふまてつれつ古郷にならひの村をいてし旅人
こととひて−けふまてつれつ−ふるさとに−ならひのむらを−いてしたひひと |
10067 |
未入力 正徹 (xxx)
太山路やあらそひつるる雲鳥の友もわかるる夕暮ののへ
みやまちや−あらそひつるる−くもとりの−とももわかるる−ゆふくれののへ |
10068 |
未入力 正徹 (xxx)
露しかは袖にやとかれ草の原ゆふ暮おくるのへの月影
つゆしかは−そてにやとかれ−くさのはら−ゆふくれおくる−のへのつきかけ |
10069 |
未入力 正徹 (xxx)
浪枕うきねの床におもふかな年ふるあまのたゆる心を
なみまくら−うきねのとこに−おもふかな−としふるあまの−たゆるこころを |
10070 |
未入力 正徹 (xxx)
友舟のきしる湊のかり枕浪こそかけねねんかたもなし
ともふねの−きしるみなとの−かりまくら−なみこそかけね−ねむかたもなし |
10071 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと舟みつしほたかく磯こえきうきねにもあらぬ松の下ふし
みなとふね−みつしほたかく−いそこえき−うきねにもあらぬ−まつのしたふし |
10072 |
未入力 正徹 (xxx)
舟人もやまとにはあらぬからろをやおしあけかたのとまり出つらん
ふなひとも−やまとにはあらぬ−からろをや−おしあけかたの−とまりいつらむ |
10073 |
未入力 正徹 (xxx)
人の世は朝にむまれ夕暮に命かけたるむしあけのせと
ひとのよは−あしたにうまれ−ゆふくれに−いのちかけたる−むしあけのせと |
10074 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねんなころに成りて大舟の下行く浪は山とこえつつ
いかかねむ−なころになりて−おほふねの−したゆくなみは−やまとこえつつ |
10075 |
未入力 正徹 (xxx)
すみわふる身はうつせみのから泊うきたる舟や此世なるらん
すみわふる−みはうつせみの−からとまり−うきたるふねや−このよなるらむ |
10076 |
未入力 正徹 (xxx)
ならはすよこよひよりもの枕して袖うつ浪にいその丸ねは
ならはすよ−こよひよりもの−まくらして−そてうつなみに−いそのまろねは |
10077 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ猶月にむかひてとるかちの雲の波間に舟やとまらん
こよひなほ−つきにむかひて−とるかちの−くものなみまに−ふねやとまらむ |
10078 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと川入江に舟をととむれは月としほとそさしのはり行く
みなとかは−いりえにふねを−ととむれは−つきとしほとそ−さしのはりゆく |
10079 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にさへ夜舟たたよふみなと川夢をしみはと松風そふく
なみにさへ−よふねたたよふ−みなとかは−ゆめをしみはと−まつかせそふく |
10080 |
未入力 正徹 (xxx)
大舟のともかちおろせみなと風浪あらからて追手ふくなり
おほふねの−ともかちおろせ−みなとかせ−なみあらからて−おひてふくなり |
10081 |
未入力 正徹 (xxx)
ききなやむはま松風のたゆむまにしひてや夢をみつの浦舟
ききなやむ−はままつかせの−たゆむまに−しひてやゆめを−みつのうらふね |
10082 |
未入力 正徹 (xxx)
声おくれ浪のしらへもからことのとまりし磯にのこる松かせ
こゑおくれ−なみのしらへも−からことの−とまりしいそに−のこるまつかせ |
10083 |
未入力 正徹 (xxx)
苔莚松かね立ちてむしあけのせとのしほせにとまる舟人
こけむしろ−まつかねたちて−むしあけの−せとのしほせに−とまるふなひと |
10084 |
未入力 正徹 (xxx)
ともすへき舟もあふらも夏の日の浜の真砂をむしあけのせと
ともすへき−ふねもあふらも−なつのひの−はまのまさこを−むしあけのせと |
10085 |
未入力 正徹 (xxx)
舟つなくむしあけのせとの松の陰うつなみくらき夜はの塩風
ふねつなく−むしあけのせとの−まつのかけ−うつなみくらき−よはのしほかせ |
10086 |
未入力 正徹 (xxx)
しほさゐにかもめ鳴きたつみなと舟月にそならふあけぬ此夜は
しほさゐに−かもめなきたつ−みなとふね−つきにそならふ−あけぬこのよは |
10087 |
未入力 正徹 (xxx)
浪こゆるうきねの袖のみなと川夢を見るめははやくかれつつ
なみこゆる−うきねのそての−みなとかは−ゆめをみるめは−はやくかれつつ |
10088 |
未入力 正徹 (xxx)
やとりかる湊のさとの川橋にともつなかけておるる舟人
やとりかる−みなとのさとの−かははしに−ともつなかけて−おるるふなひと |
10089 |
未入力 正徹 (xxx)
大舟のうちにもやとをかり屋かたうつ雨せはき床におりゐて
おほふねの−うちにもやとを−かりやかた−うつあめせはき−とこにおりゐて |
10090 |
未入力 正徹 (xxx)
しけぬきしまかちを浪の枕とや夢ちもはやくとほさかるらん
しけぬきし−まかちをなみの−まくらとや−ゆめちもはやく−とほさかるらむ |
10091 |
未入力 正徹 (xxx)
磯まくら浪に月おち鳥なくもまた面影のさ夜中のかね
いそまくら−なみにつきおち−とりなくも−またおもかけの−さよなかのかね |
10092 |
未入力 正徹 (xxx)
舟とむるむしあけのせとの波風にいかなる夢を松のしたかけ
ふねとむる−むしあけのせとの−なみかせに−いかなるゆめを−まつのしたかけ |
10093 |
未入力 正徹 (xxx)
舟にては山にねまほし古郷の夢をほかなみゆられあかして
ふねにては−やまにねまほし−ふるさとの−ゆめをほかなみ−ゆられあかして |
10094 |
未入力 正徹 (xxx)
浪のおと松かえかけてしをるなりいかなる夢をみつのはま風
なみのおと−まつかえかけて−しをるなり−いかなるゆめを−みつのはまかせ |
10095 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ舟おろすいかりのいかにねてたゆたふ浪にかへる夢路そ
おきつふね−おろすいかりの−いかにねて−たゆたふなみに−かへるゆめちそ |
10096 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりぬる夢ちはさけし東路のわたりにもあらぬさののさと人
ひとりぬる−ゆめちはさけし−あつまちの−わたりにもあらぬ−さののさとひと |
10097 |
未入力 正徹 (xxx)
心せようきねの夜はに見し夢やあし屋のなたのあらき浜風
こころせよ−うきねのよはに−みしゆめや−あしやのなたの−あらきはまかせ |
10098 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬるひまもなみを枕になれきてし磯のうら人しはし夢かせ
ぬるひまも−なみをまくらに−なれきてし−いそのうらひと−しはしゆめかせ |
10099 |
未入力 正徹 (xxx)
古郷にかよふ心のうき枕浪にひかれてかへる夢かな
ふるさとに−かよふこころの−うきまくら−なみにひかれて−かへるゆめかな |
10100 |
未入力 正徹 (xxx)
覚めなるるうきねの夢も牛まとに時しる浪を鼓とやせん
さめなるる−うきねのゆめも−うしまとに−ときしるなみを−つつみとやせむ |
10101 |
未入力 正徹 (xxx)
月そ入るやまとにもあらぬから舟にいまもろこしの夢やみるらん
つきそいる−やまとにもあらぬ−からふねに−いまもろこしの−ゆめやみるらむ |
10102 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと舟うきねの夢に入るなみのかへるやぬるる枕なるらん
みなとふね−うきねのゆめに−いるなみの−かへるやぬるる−まくらなるらむ |
10103 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりても行へしらなみかけたえぬおき中川の夢の浮橋
わたりても−ゆくへしらなみ−かけたえぬ−おきなかかはの−ゆめのうきはし |
10104 |
未入力 正徹 (xxx)
浪枕たゆたふ磯のとま屋かたこよひやかりて夢を待ちみん
なみまくら−たゆたふいその−とまやかた−こよひやかりて−ゆめをまちみむ |
10105 |
未入力 正徹 (xxx)
山陰に入りし小舟のうき枕やかてかちちにかかる夢かな
やまかけに−いりしをふねの−うきまくら−やかてかちちに−かかるゆめかな |
10106 |
未入力 正徹 (xxx)
松風はさやけき浪の沈にてとほさかり行くむしあけの夢
まつかせは−さやけきなみの−まくらにて−とほさかりゆく−むしあけのゆめ |
10107 |
未入力 正徹 (xxx)
かちとらむかたやいつこも白なみの立ちくる磯に夜を重ねつつ
かちとらむ−かたやいつこも−しらなみの−たちくるいそに−よをかさねつつ |
10108 |
未入力 正徹 (xxx)
いく夜さてとまる小舟そ追風にならすはおもふ袖のなみかは
いくよさて−とまるをふねそ−おひかせに−ならすはおもふ−そてのなみかは |
10109 |
未入力 正徹 (xxx)
興つ風追手まつまの湊舟梶こそふるき枕なりけれ
おきつかせ−おひてまつまの−みなとふね−かちこそふるき−まくらなりけれ |
10110 |
未入力 正徹 (xxx)
在明の月をそくたくうき枕夢をはかなみよする渚に
ありあけの−つきをそくたく−うきまくら−ゆめをはかなみ−よするなきさに |
10111 |
未入力 正徹 (xxx)
浪枕おろすいかりも大舟のなほもたゆたふ有明の月
なみまくら−おろすいかりも−おほふねの−なほもたゆたふ−ありあけのつき |
10112 |
未入力 正徹 (xxx)
むしあけの松のけふりを見あてにて浪のぬるみによする舟人
むしあけの−まつのけふりを−みあてにて−なみのぬるみに−よするふなひと |
10113 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かたもとの追手にかへるまて舟にまへほのうら風もうし
あはちかた−もとのおひてに−かへるまて−ふねにまへほの−うらかせもうし |
10114 |
未入力 正徹 (xxx)
あひおもふ中にそしらぬ浦風のかはるをまつは舟路なりけり
あひおもふ−なかにそしらぬ−うらかせの−かはるをまつは−ふなちなりけり |
10115 |
未入力 正徹 (xxx)
舟の中をおき出ててきけは音あらきむしあけの浪に松風そ吹く
ふねのうちを−おきいててきけは−おとあらき−むしあけのなみに−まつかせそふく |
10116 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひ身はもにすむ虫そあまふねのとまこす浪に心くたけて
こよひみは−もにすむむしそ−あまふねの−とまこすなみに−こころくたけて |
10117 |
未入力 正徹 (xxx)
みなと風おろすいかりやかろからむ枕の浪に舟そたゆたふ
みなとかせ−おろすいかりや−かろからむ−まくらのなみに−ふねそたゆたふ |
10118 |
未入力 正徹 (xxx)
室の戸や数かきりなく入る舟に夕なみきかぬいその松かせ
むろのとや−かすかきりなく−いるふねに−ゆふなみきかぬ−いそのまつかせ |
10119 |
未入力 正徹 (xxx)
大船のつかふはし舟いとまなみみなとの里にいくかへりせん
おほふねの−つかふはしふね−いとまなみ−みなとのさとに−いくかへりせむ |
10120 |
未入力 正徹 (xxx)
入江なみまた漕きさらぬ山本の松にわかれてあけのそほ舟
いりえなみ−またこきさらぬ−やまもとの−まつにわかれて−あけのそほふね |
10121 |
未入力 正徹 (xxx)
いかりなはこよひおろさしなこり浪なきたる興にとまる舟人
いかりなは−こよひおろさし−なこりなみ−なきたるおきに−とまるふなひと |
10122 |
未入力 正徹 (xxx)
塩風も心はなきぬ舟にこそおろすいかりの縄のうら人
しほかせも−こころはなきぬ−ふねにこそ−おろすいかりの−なはのうらひと |
10123 |
未入力 正徹 (xxx)
くる舟に火をあはすとやむしあけの松のけふりも暮れてみゆらん
くるふねに−ひをあはすとや−むしあけの−まつのけふりも−くれてみゆらむ |
10124 |
未入力 正徹 (xxx)
興かけて夕なみくらし湊風舟ことにたく煙みたれて
おきかけて−ゆふなみくらし−みなとかせ−ふねことにたく−けふりみたれて |
10125 |
未入力 正徹 (xxx)
友君の思ひのけふりたく柴にしはしもよすな室の舟人
ともきみの−おもひのけふり−たくしはに−しはしもよすな−むろのふなひと |
10126 |
未入力 正徹 (xxx)
うちもねぬあかせは明けぬ湊舟とまもる雨に蓑をかさねて
うちもねぬ−あかせはあけぬ−みなとふね−とまもるあめに−みのをかさねて |
10127 |
未入力 正徹 (xxx)
しられまし音せぬ苫の雨そそき窓うつなみのあらくもらすは
しられまし−おとせぬとまの−あまそそき−まとうつなみの−あらくもらすは |
10128 |
未入力 正徹 (xxx)
かへらめやさかしき山に日比へておとろへまさるひなの長路を
かへらめや−さかしきやまに−ひころへて−おとろへまさる−ひなのなかちを |
10129 |
未入力 正徹 (xxx)
ゆかすともひなの長路に事よせておとろふる身をとははこたへん
ゆかすとも−ひなのなかちに−ことよせて−おとろふるみを−とははこたへむ |
10130 |
未入力 正徹 (xxx)
こえわひぬ夜ふかき雲の足柄や行末くらき竹の下道
こえわひぬ−よふかきくもの−あしからや−ゆくすゑくらき−たけのしたみち |
10131 |
未入力 正徹 (xxx)
峰の雲ふもとの浪に袖ふれていく関こえぬき路の遠山
みねのくも−ふもとのなみに−そてふれて−いくせきこえぬ−きちのとほやま |
10132 |
未入力 正徹 (xxx)
分けつくす山おりくたり磯つたひかくても旅の道やはるけき
わけつくす−やまおりくたり−いそつたひ−かくてもたひの−みちやはるけき |
10133 |
未入力 正徹 (xxx)
ととまらん行くをかきりの宿かさは思はすしらぬ野山なりとも
ととまらむ−ゆくをかきりの−やとかさは−おもはすしらぬ−のやまなりとも |
10134 |
未入力 正徹 (xxx)
友とのみ松の柱に竹の恒心ある宿はたひねともなし
ともとのみ−まつのはしらに−たけのかき−こころあるやとは−たひねともなし |
10135 |
未入力 正徹 (xxx)
宿そなき峰の椎柴行ふりにいさ折りかけんこん人のため
やとそなき−みねのしひしは−ゆきふりに−いさをりかけむ−こむひとのため |
10136 |
未入力 正徹 (xxx)
おりのほる雲やくるしき道ならぬ岩さく峰の袖の夕露
おりのほる−くもやくるしき−みちならぬ−いはさくみねの−そてのゆふつゆ |
10137 |
未入力 正徹 (xxx)
しるかりき里かよひしてましれとも旅行く人のあよむ姿は
しるかりき−さとかよひして−ましれとも−たひゆくひとの−あよむすかたは |
10138 |
未入力 正徹 (xxx)
行く舟のとほき浪路にちりくるや日も夕塩のぬさの追風
ゆくふねの−とほきなみちに−ちりくるや−ひもゆふしほの−ぬさのおひかせ |
10139 |
未入力 正徹 (xxx)
物いはて行くも都の旅人はあまたの中にかはりやはせぬ
ものいはて−ゆくもみやこの−たひひとは−あまたのなかに−かはりやはせぬ |
10140 |
未入力 正徹 (xxx)
をりかけし真柴の上に雲そふす立ちかへりみる峰や夜ふかき
をりかけし−ましはのうへに−くもそふす−たちかへりみる−みねやよふかき |
10141 |
未入力 正徹 (xxx)
さともなく椎のはたのむかれ飯もたよりすくなき野への夕暮
さともなく−しひのはたのむ−かれいひも−たよりすくなき−のへのゆふくれ |
10142 |
未入力 正徹 (xxx)
かはらしな行くもとまるも旅たつになりぬる宿の床のまろねは
かはらしな−ゆくもとまるも−たひたつに−なりぬるやとの−とこのまろねは |
10143 |
未入力 正徹 (xxx)
あさゆくもくるしき民のかまと山煙たててそ哀をも見る
あさゆくも−くるしきたみの−かまとやま−けふりたててそ−あはれをもみる |
10144 |
未入力 正徹 (xxx)
跡になす古郷人はうらむらんのる駒いはふ山の北かせ
あとになす−ふるさとひとは−うらむらむ−のるこまいはふ−やまのきたかせ |
10145 |
未入力 正徹 (xxx)
山のはにまた日はたかし此里を杉たつ遠に宿やからまし
やまのはに−またひはたかし−このさとを−すきたつをちに−やとやからまし |
10146 |
未入力 正徹 (xxx)
羽をよわみ真砂におつる鳥の子のひなの長浜足もつかれて
はをよわみ−まさこにおつる−とりのこの−ひなのなかはま−あしもつかれて |
10147 |
未入力 正徹 (xxx)
磯つたひとほき日をふる浪あれていととぬれますかたつ袖かな
いそつたひ−とほきひをふる−なみあれて−いととぬれます−かたつそてかな |
10148 |
未入力 正徹 (xxx)
東よりつくし過くるも日本ははなれこしまそもろこしの国
あつまより−つくしすくるも−ひのもとは−はなれこしまそ−もろこしのくに |
10149 |
未入力 正徹 (xxx)
木の下は笠うつ雨のしつくさへたかくそこゆるみのの中山
このもとは−かさうつあめの−しつくさへ−たかくそこゆる−みののなかやま |
10150 |
未入力 正徹 (xxx)
わするらんもとの覚の都をは立たすよ六の道の旅人
わするらむ−もとのさとりの−みやこをは−たたすよむつの−みちのたひひと |
10151 |
未入力 正徹 (xxx)
宿あらはたれまちとらむくるるよの嵐も月も送る山ちに
やとあらは−たれまちとらむ−くるるよの−あらしもつきも−おくるやまちに |
10152 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらす夕の雨に宿なくはいなのかるもの枕はかりや
そてぬらす−ゆふへのあめに−やとなくは−いなのかるもの−まくらはかりや |
10153 |
未入力 正徹 (xxx)
たかせ山坂こえはてて見くたせははてなき海にふしのしら雪
たかせやま−さかこえはてて−みくたせは−はてなきうみに−ふしのしらゆき |
10154 |
未入力 正徹 (xxx)
こととひてこよひ旅ねの山みれはくれぬたかねに雲そまつゐる
こととひて−こよひたひねの−やまみれは−くれぬたかねに−くもそまつゐる |
10155 |
未入力 正徹 (xxx)
夢もゆけ宮この人のことのねに関もる松の風もかよはは
ゆめもゆけ−みやこのひとの−ことのねに−せきもるまつの−かせもかよはは |
10156 |
未入力 正徹 (xxx)
かり枕涙のうちに見るとつけて都にくもれたたいまの月
かりまくら−なみたのうちに−みるとつけて−みやこにくもれ−たたいまのつき |
10157 |
未入力 正徹 (xxx)
つもる日をすみた河原にかそへても遠きそ宮こ鳥は思はす
つもるひを−すみたかはらに−かそへても−とほきそみやこ−とりはおもはす |
10158 |
未入力 正徹 (xxx)
日にそむるおもひの色をそれとみよ夕の雲の下の宮こに
ひにそむる−おもひのいろを−それとみよ−ゆふへのくもの−したのみやこに |
10159 |
未入力 正徹 (xxx)
松陰のいそのかりねを立ちゆけは朝しほむかひたつ鳴きわたる
まつかけの−いそのかりねを−たちゆけは−あさしほむかひ−たつなきわたる |
10160 |
未入力 正徹 (xxx)
こしほとの道をは末にのこしおきてかたふかぬ日にむかふかれ飯
こしほとの−みちをはすゑに−のこしおきて−かたふかぬひに−むかふかれいひ |
10161 |
未入力 正徹 (xxx)
まなひえてくらからぬ人も名はかりは問ひてそこえん文字の関もり
まなひえて−くらからぬひとも−なはかりは−とひてそこえむ−もしのせきもり |
10162 |
未入力 正徹 (xxx)
関こえきこよひ枕をそはたてて嵐をききし須磨の浦なみ
せきこえき−こよひまくらを−そはたてて−あらしをききし−すまのうらなみ |
10163 |
未入力 正徹 (xxx)
日をへつつ旅なる宿をとふ友のなさけそあつき春のさ衣
ひをへつつ−たひなるやとを−とふともの−なさけそあつき−はるのさころも |
10164 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世まて野山の露の古郷をしのふの衣みたれつつねん
いくよまて−のやまのつゆの−ふるさとを−しのふのころも−みたれつつねむ |
10165 |
未入力 正徹 (xxx)
旅衣しほれきにけり行末にこえはそほさんあまのかく山
たひころも−しほれきにけり−ゆくすゑに−こえはそほさむ−あまのかくやま |
10166 |
未入力 正徹 (xxx)
いもにこひ秋さり衣ひもとかて旅ねやせましむこの山かせ
いもにこひ−あきさりころも−ひもとかて−たひねやせまし−むこのやまかせ |
10167 |
未入力 正徹 (xxx)
岩ねふみ木下わけし山風に夢も衣もやふれてそぬる
いはねふみ−このもとわけし−やまかせに−ゆめもころもも−やふれてそぬる |
10168 |
未入力 正徹 (xxx)
さととほみたつや煙をしをりにてくたる山ちの暮そまよはね
さととほみ−たつやけふりを−しをりにて−くたるやまちの−くれそまよはね |
10169 |
未入力 正徹 (xxx)
くれぬまにきの川長かみなれさをさしてや末の山路いそかん
くれぬまに−きのかはをさか−みなれさを−さしてやすゑの−やまちいそかむ |
10170 |
未入力 正徹 (xxx)
わたりてもくるしかるらんになひもつこや旅人のひつ川のはし
わたりても−くるしかるらむ−になひもつ−こやたひひとの−ひつかはのはし |
10171 |
未入力 正徹 (xxx)
八橋やわたらぬ川も袖ぬれぬくもてにとほきみち芝の露
やつはしや−わたらぬかはも−そてぬれぬ−くもてにとほき−みちしはのつゆ |
10172 |
未入力 正徹 (xxx)
旅人の行きちかはれぬ一はしわたりかへりて渡るをそまつ
たひひとの−ゆきちかはれぬ−ひとつはし−わたりかへりて−わたるをそまつ |
10173 |
未入力 正徹 (xxx)
しる人そおもひもかけすのりましるまちしむかひの川岸の舟
しるひとそ−おもひもかけす−のりましる−まちしむかひの−かはきしのふね |
10174 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とも袖折りふせむ下もゆる春の旅ねのいせのはま荻
まくらとも−そてをりふせむ−したもゆる−はるのたひねの−いせのはまをき |
10175 |
未入力 正徹 (xxx)
坂くたる前の入うみ舟もなし浪よるそはや浜路なるらん
さかくたる−まへのいりうみ−ふねもなし−なみよるそはや−はまちなるらむ |
10176 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかねん枕むすはん下草もなきさの杜はまさこ路にして
いかかねむ−まくらむすはむ−したくさも−なきさのもりは−まさこちにして |
10177 |
未入力 正徹 (xxx)
枕とも結ひてこよひなみなれんさとはなきさのもりの下草
まくらとも−むすひてこよひ−なみなれむ−さとはなきさの−もりのしたくさ |
10178 |
未入力 正徹 (xxx)
夜の雨にきそちのふせやもりぬれてあさ衣さむし哀此旅
よるのあめに−きそちのふせや−もりぬれて−あさきぬさむし−あはれこのたひ |
10179 |
未入力 正徹 (xxx)
老か世は旅のかり屋に駒いはへ庭鳥なきて門ひらくまそ
おいかよは−たひのかりやに−こまいはへ−にはとりなきて−かとひらくまそ |
10180 |
未入力 正徹 (xxx)
いはひつつすてに夜ふかく旅立ちぬこれそまことの馬のはなむけ
いはひつつ−すてによふかく−たひたちぬ−これそまことの−うまのはなむけ |
10181 |
未入力 正徹 (xxx)
行きかへりまつともつけよ立別れいなはの山は関路ともなし
ゆきかへり−まつともつけよ−たちわかれ−いなはのやまは−せきちともなし |
10182 |
未入力 正徹 (xxx)
行末のしらぬ別も宿いてし袖にかさなる峰のよこ雲
ゆくすゑの−しらぬわかれも−やといてし−そてにかさなる−みねのよこくも |
10183 |
未入力 正徹 (xxx)
のこる日も松を隔てて入るうみの浪にたゆたふおきつ舟人
のこるひも−まつをへたてて−いるうみの−なみにたゆたふ−おきつふなひと |
10184 |
未入力 正徹 (xxx)
紙屋川枕の浪に夢覚めて西なる山の月をみるかな
かみやかは−まくらのなみに−ゆめさめて−にしなるやまの−つきをみるかな |
10185 |
未入力 正徹 (xxx)
浪にゐる雲にそきゆるわたの原おきつ塩合の淡路島山
なみにゐる−くもにそきゆる−わたのはら−おきつしほあひの−あはちしまやま |
10186 |
未入力 正徹 (xxx)
おちかかる入日の下の山のはをこえてまちとるおきつ白浪
おちかかる−いりひのしたの−やまのはを−こえてまちとる−おきつしらなみ |
10187 |
未入力 正徹 (xxx)
年年の春の草葉はかはるとも忘れしものを住吉の岸
としとしの−はるのくさはは−かはるとも−わすれしものを−すみよしのきし |
10188 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれめや峰の入日も立ちのほり雲ふみならす山のくれ橋
わすれめや−みねのいりひも−たちのほり−くもふみならす−やまのくれはし |
10189 |
未入力 正徹 (xxx)
興遠き雲まの小舟浪路にも夕の鳥の帰るとそみる
おきとほき−くもまのをふね−なみちにも−ゆふへのとりの−かへるとそみる |
10190 |
未入力 正徹 (xxx)
かささきのわたすやいつこ行く雲のしろきをみれは峰のかけはし
かささきの−わたすやいつこ−ゆくくもの−しろきをみれは−みねのかけはし |
10191 |
未入力 正徹 (xxx)
入海の松のむかひの岡のへにならひてたかき杉の村立
いりうみの−まつのむかひの−をかのへに−ならひてたかき−すきのむらたち |
10192 |
未入力 正徹 (xxx)
うら風にさくや此浜から崎の松かけちかき花のしらなみ
うらかせに−さくやこのはま−からさきの−まつかけちかき−はなのしらなみ |
10193 |
未入力 正徹 (xxx)
淡路かたあまのすさひか筆の海うかふ絵島の松の村立
あはちかた−あまのすさひか−ふてのうみ−うかふえしまの−まつのむらたち |
10194 |
未入力 正徹 (xxx)
くるすのの草葉なみよるかさとりの山風なから雨はふりきぬ
くるすのの−くさはなみよる−かさとりの−やまかせなから−あめはふりきぬ |
10195 |
未入力 正徹 (xxx)
冬なから宮こを春とふり消ちてめくれる山につもる初雪
ふゆなから−みやこをはると−ふりけちて−めくれるやまに−つもるはつゆき |
10196 |
未入力 正徹 (xxx)
夕霞うら山かけてみるめかるあまのたく火や薪なるらん
ゆふかすみ−うらやまかけて−みるめかる−あまのたくひや−たききなるらむ |
10197 |
未入力 正徹 (xxx)
藤代のみ坂のほれは吹上のまさこにけふるわかのうら松
ふちしろの−みさかのほれは−ふきあけの−まさこにけふる−わかのうらまつ |
10198 |
未入力 正徹 (xxx)
影消えて興の夕日は入海の松の一むらたつけふりかな
かけきえて−おきのゆふひは−いりうみの−まつのひとむら−たつけふりかな |
10199 |
未入力 正徹 (xxx)
入うみや見おろす山のふもと寺里の前なる千船松はら
いりうみや−みおろすやまの−ふもとてら−さとのまへなる−ちふねまつはら |
10200 |
未入力 正徹 (xxx)
おとききて坂こえはつる山もとのいその岩ほにあまる白浪
おとききて−さかこえはつる−やまもとの−いそのいはほに−あまるしらなみ |
10201 |
未入力 正徹 (xxx)
影おちて夕日のわたる松原を柱と見なす峰のかけ橋
かけおちて−ゆふひのわたる−まつはらを−はしらとみなす−みねのかけはし |
10202 |
未入力 正徹 (xxx)
露やほす峰のかけはしわたり行く遠かた人の袖の夕日は
つゆやほす−みねのかけはし−わたりゆく−をちかたひとの−そてのゆふひは |
10203 |
未入力 正徹 (xxx)
わたの原夕のめちにかかるなり入江の山の猶おくのなみ
わたのはら−ゆふへのめちに−かかるなり−いりえのやまの−なほおくのなみ |
10204 |
未入力 正徹 (xxx)
たかし山夕こえのほるこなたより見えぬ浪きく峰のうら風
たかしやま−ゆふこえのほる−こなたより−みえぬなみきく−みねのうらかせ |
10205 |
未入力 正徹 (xxx)
末とほき岡のまへなる秋の田のほなみをせくとみゆる河岸
すゑとほき−をかのまへなる−あきのたの−ほなみをせくと−みゆるかはきし |
10206 |
未入力 正徹 (xxx)
うちいてて国見をすれは大和路やさとも村山いくへともなし
うちいてて−くにみをすれは−やまとちや−さともむらやま−いくへともなし |
10207 |
未入力 正徹 (xxx)
志賀の浦やなきたる雲の浪まよりみゆる小島にいそく舟人
しかのうらや−なきたるくもの−なみまより−みゆるこしまに−いそくふなひと |
10208 |
未入力 正徹 (xxx)
面影にみぬをみるかな箱根路や坂の上なるにほの水うみ
おもかけに−みぬをみるかな−はこねちや−さかのうへなる−にほのみつうみ |
10209 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海のおきの小島の岩とひはあまの羽袖をおろす山風
にほのうみの−おきのこしまの−いはとひは−あまのはそてを−おろすやまかせ |
10210 |
未入力 正徹 (xxx)
かち野行く遠かた人も見えみえす猶たか島によするうら波
かちのゆく−をちかたひとも−みえみえす−なほたかしまに−よするうらなみ |
10211 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑこゑそ入江のなみにたか島のみをの杣木や山くたすらん
こゑこゑそ−いりえのなみに−たかしまの−みをのそまきや−やまくたすらむ |
10212 |
未入力 正徹 (xxx)
たか世にか浪ちはなれしから崎や松もひとりの竹生島山
たかよにか−なみちはなれし−からさきや−まつもひとりの−ちくふしまやま |
10213 |
未入力 正徹 (xxx)
にほの海のあまの小舟そ浪にちる木のはの浜を風なあらしそ
にほのうみの−あまのをふねそ−なみにちる−このはのはまを−かせなあらしそ |
10214 |
未入力 正徹 (xxx)
明けわたるよさのうちとの海松をへたててつつくあまのはしたて
あけわたる−よさのうちとの−うみまつを−へたててつつく−あまのはしたて |
10215 |
未入力 正徹 (xxx)
浪たかき竹生島風むかひきてわたるやからきしほつ舟人
なみたかき−ちくふしまかせ−むかひきて−わたるやからき−しほつふなひと |
10216 |
未入力 正徹 (xxx)
見そあかぬ真砂なかるる浜川の松の陰行く末のしらなみ
みそあかぬ−まさこなかるる−はまかはの−まつのかけゆく−すゑのしらなみ |
10217 |
未入力 正徹 (xxx)
芦ふかきこやのたはれめ立出てよみしま江口はに舟あまたみゆ
あしふかき−こやのたはれめ−たちいてよ−みしまえくちに−ふねあまたみゆ |
10218 |
未入力 正徹 (xxx)
いつるより日影そかかる朝つまや浪のむかひのしかの浜松
いつるより−ひかけそかかる−あさつまや−なみのむかひの−しかのはままつ |
10219 |
未入力 正徹 (xxx)
海山に日影をつれてめくりあひぬ朝みし雲のかへる夕暮
うみやまに−ひかけをつれて−めくりあひぬ−あさみしくもの−かへるゆふくれ |
10220 |
未入力 正徹 (xxx)
西の海や日影そおつる夕なみにたかきを近き山のはにして
にしのうみや−ひかけそおつる−ゆふなみに−たかきをちかき−やまのはにして |
10221 |
未入力 正徹 (xxx)
磯に見し松のむら立みなふして夕塩たかき浦の八十島
いそにみし−まつのむらたち−みなふして−ゆふしほたかき−うらのやそしま |
10222 |
未入力 正徹 (xxx)
海山はたた面影そ見しかたの暮行くままにめちはたゆれと
うみやまは−たたおもかけそ−みしかたの−くれゆくままに−めちはたゆれと |
10223 |
未入力 正徹 (xxx)
峰とほき末の野山はみなたえて夕を軒につくす松かな
みねとほき−すゑののやまは−みなたえて−ゆふへをのきに−つくすまつかな |
10224 |
未入力 正徹 (xxx)
水しろき夕日の前の山本にとたえて橋をわたるうき雲
みつしろき−ゆふひのまへの−やまもとに−とたえてはしを−わたるうきくも |
10225 |
未入力 正徹 (xxx)
宮こより南の山のふもと川くるる千里の梢むら竹
みやこより−みなみのやまの−ふもとかは−くるるちさとの−こすゑむらたけ |
10226 |
未入力 正徹 (xxx)
もろこしといふはかりにそほのみゆる舟路の西のおきつ島山
もろこしと−いふはかりにそ−ほのみゆる−ふなちのにしの−おきつしまやま |
10227 |
未入力 正徹 (xxx)
目にそみぬ心の行くはかへされす水なき遠の雲のしからみ
めにそみぬ−こころのゆくは−かへされす−みつなきをちの−くものしからみ |
10228 |
未入力 正徹 (xxx)
行末の里をあまたにわかれけりはるるふもとの雲のした道
ゆくすゑの−さとをあまたに−わかれけり−はるるふもとの−くものしたみち |
10229 |
未入力 正徹 (xxx)
おきつなみくれぬとみれは帆の上に日影をみせて舟そいてくる
おきつなみ−くれぬとみれは−ほのうへに−ひかけをみせて−ふねそいてくる |
10230 |
未入力 正徹 (xxx)
興辺行く舟人きわき帆おろしつあらきしほ風今むかふらし
おきへゆく−ふなひときわき−ほおろしつ−あらきしほかせ−いまむかふらし |
10231 |
未入力 正徹 (xxx)
のこるともみえぬ入日をほにあけてつなてさやけき興つ舟人
のこるとも−みえぬいりひを−ほにあけて−つなてさやけき−おきつふなひと |
10232 |
未入力 正徹 (xxx)
紙のかのふるきはかりそつく墨は筆もまたひぬ水くきの跡
かみのかの−ふるきはかりそ−つくすみは−ふてもまたひぬ−みつくきのあと |
10233 |
未入力 正徹 (xxx)
よむ文の古きこと葉の末の世にあはぬをみても涙おちけり
よむふみの−ふるきことはの−すゑのよに−あはぬをみても−なみたおちけり |
10234 |
未入力 正徹 (xxx)
水くきのあととはしるき旦付に筆もかよはぬ昔をそみる
みつくきの−あととはしるき−すみつきに−ふてもかよはぬ−むかしをそみる |
10235 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身のへにける年にくらへても長き夜あまるさ月六月
おいかみの−へにけるとしに−くらへても−なかきよあまる−さつきみなつき |
10236 |
未入力 正徹 (xxx)
七十にいけるはまれの身をもちてあれはある世の何をうれへん
ななそちに−いけるはまれの−みをもちて−あれはあるよの−なにをうれへむ |
10237 |
未入力 正徹 (xxx)
染色の山の四おもてめくりこし心のはてもあけぬ夜の空
そめいろの−やまのよおもて−めくりこし−こころのはても−あけぬよのそら |
10238 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしたに見ぬ世の人の面影をおもひさためぬ夢に別れて
むかしたに−みぬよのひとの−おもかけを−おもひさためぬ−ゆめにわかれて |
10239 |
未入力 正徹 (xxx)
明けにけり行きてはなとかあはさらむ遠の所のむかしなりせは
あけにけり−ゆきてはなとか−あはさらむ−をちのところの−むかしなりせは |
10240 |
未入力 正徹 (xxx)
心ゆく思ひのあとになりにけり夜や明けぬらんもろこしの岸
こころゆく−おもひのあとに−なりにけり−よやあけぬらむ−もろこしのきし |
10241 |
未入力 正徹 (xxx)
ね覚してかきりしられす心ゆくむかししのふの山路いくへそ
ねさめして−かきりしられす−こころゆく−むかししのふの−やまちいくへそ |
10242 |
未入力 正徹 (xxx)
いまそなくかねのこゑせぬ暁も我かね覚をや鳥は待ちけん
いまそなく−かねのこゑせぬ−あかつきも−わかねさめをや−とりはまちけむ |
10243 |
未入力 正徹 (xxx)
よわるらん老行くままにね覚めてもおきゐることのかたくくるしき
よわるらむ−おいゆくままに−ねさめても−おきゐることの−かたくくるしき |
10244 |
未入力 正徹 (xxx)
いくたひか床の夢ちのたえぬらん音せぬ老のなみにひかれて
いくたひか−とこのゆめちの−たえぬらむ−おとせぬおいの−なみにひかれて |
10245 |
未入力 正徹 (xxx)
まき柱よりそふ老のかたねふり夢かうつつかたれにとほまし
まきはしら−よりそふおいの−かたねふり−ゆめかうつつか−たれにとほまし |
10246 |
未入力 正徹 (xxx)
よわり行く老のねふりのあへすさめさむるもねふる夢のはかなさ
よわりゆく−おいのねふりの−あへすさめ−さむるもねふる−ゆめのはかなさ |
10247 |
未入力 正徹 (xxx)
ふさぬまの老をたすくるつら杖にかかりてさむる夢のみしかさ
ふさぬまの−おいをたすくる−つらつゑに−かかりてさむる−ゆめのみしかさ |
10248 |
未入力 正徹 (xxx)
おきあかしかりによりそふ槙柱さむるか夢のおもかけそたつ
おきあかし−かりによりそふ−まきはしら−さむるかゆめの−おもかけそたつ |
10249 |
未入力 正徹 (xxx)
老いぬれは先おとろきて又むかふかかみのかけに涙おちつつ
おいぬれは−まつおとろきて−またむかふ−かかみのかけに−なみたおちつつ |
10250 |
未入力 正徹 (xxx)
なかきよの袖のしつくを結ひてや夢もたえたえ身にあまるらん
なかきよの−そてのしつくを−むすひてや−ゆめもたえたえ−みにあまるらむ |
10251 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすから昔をおもふ涙とや遠くなかれて袖にのこれる
よもすから−むかしをおもふ−なみたとや−とほくなかれて−そてにのこれる |
10252 |
未入力 正徹 (xxx)
世にすめは人の心のよしあしを身そしらぬ身となしてやみぬる
よにすめは−ひとのこころの−よしあしを−みそしらぬみと−なしてやみぬる |
10253 |
未入力 正徹 (xxx)
なには人よしあしひのみたくこ屋のむねのけふりをけつ嵐かな
なにはひと−よしあしひのみ−たくこやの−むねのけふりを−けつあらしかな |
10254 |
未入力 正徹 (xxx)
うかふ淡水の心による花もきえてとまらぬ早川のなみ
うかふあわ−みつのこころに−よるはなも−きえてとまらぬ−はやかはのなみ |
10255 |
未入力 正徹 (xxx)
いまそしるゆるき心のおこたりも玉のをなかきたよりなりとは
いまそしる−ゆるきこころの−おこたりも−たまのをなかき−たよりなりとは |
10256 |
未入力 正徹 (xxx)
うきなから年はへにけりなくさむる心をゆらく玉のをにして
うきなから−としはへにけり−なくさむる−こころをゆらく−たまのをにして |
10257 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかなる心をもては時うつりことかさなりてゆらく玉のを
しつかなる−こころをもては−ときうつり−ことかさなりて−ゆらくたまのを |
10258 |
未入力 正徹 (xxx)
閑なる心に身をはやとすまにいく世の月の影めくるらん
しつかなる−こころにみをは−やとすまに−いくよのつきの−かけめくるらむ |
10259 |
未入力 正徹 (xxx)
くり返し昔にもあらぬ夕暮の色に思ひをしつのをたまき
くりかへし−むかしにもあらぬ−ゆふくれの−いろにおもひを−しつのをたまき |
10260 |
未入力 正徹 (xxx)
かねもたえ風も音せぬ夕くれの心にやとをかる心かな
かねもたえ−かせもおとせぬ−ゆふくれの−こころにやとを−かるこころかな |
10261 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ庵もあるかなきかの心かな我か夕暮や春のいとゆふ
すむいほも−あるかなきかの−こころかな−わかゆふくれや−はるのいとゆふ |
10262 |
未入力 正徹 (xxx)
うかりしもなさけありしもふることをしのふやひとつ涙なるらん
うかりしも−なさけありしも−ふることを−しのふやひとつ−なみたなるらむ |
10263 |
未入力 正徹 (xxx)
見しことのかはるにつけて忍ふかなむかしを夢とおもひなせとも
みしことの−かはるにつけて−しのふかな−むかしをゆめと−おもひなせとも |
10264 |
未入力 正徹 (xxx)
身そのこるよとの河舟さしくたし手向せし世の友はなくして
みそのこる−よとのかはふね−さしくたし−たむけせしよの−ともはなくして |
10265 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身にむかしかたりはおほくとも見ぬ世の人はうたかひやせん
おいかみに−むかしかたりは−おほくとも−みぬよのひとは−うたかひやせむ |
10266 |
未入力 正徹 (xxx)
なからへき三度七日を仕へしも十とせ七とせ神やうけけん
なからへき−みたひなぬかを−つかへしも−ととせななとせ−かみやうけけむ |
10267 |
未入力 正徹 (xxx)
面かけに見し世のありて何かせむ忘れぬ夢をはらへ松風
おもかけに−みしよのありて−なにかせむ−わすれぬゆめを−はらへまつかせ |
10268 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き世と今をや見まし思はすにいそちの老の残あるよは
とほきよと−いまをやみまし−おもはすに−いそちのおいの−のこりあるよは |
10269 |
未入力 正徹 (xxx)
ましろはむ人こそなけれ老いぬるを昔いとひし心ならひに
ましろはむ−ひとこそなけれ−おいぬるを−むかしいとひし−こころならひに |
10270 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひいてて心みたれぬ面影の一にもあらぬ世世の故人
おもひいてて−こころみたれぬ−おもかけの−ひとつにもあらぬ−よよのふるひと |
10271 |
未入力 正徹 (xxx)
敷島の道とほくして日は暮れぬこしかたほとの我か身ともかな
しきしまの−みちとほくして−ひはくれぬ−こしかたほとの−わかみともかな |
10272 |
未入力 正徹 (xxx)
しれるをはしるといふへき古をしらぬをしらてとふ人もなし
しれるをは−しるといふへき−いにしへを−しらぬをしらて−とふひともなし |
10273 |
未入力 正徹 (xxx)
見しもみなかはり行く世になからふる老やむかしのかたみなるらん
みしもみな−かはりゆくよに−なからふる−おいやむかしの−かたみなるらむ |
10274 |
未入力 正徹 (xxx)
身はふりてあやふき淵を忘るるやわらは心のままのつきはし
みはふりて−あやふきふちを−わするるや−わらはこころの−ままのつきはし |
10275 |
未入力 正徹 (xxx)
しのはすよ人のおほゆるむかしをは猶ちかき世に思ひなされて
しのはすよ−ひとのおほゆる−むかしをは−なほちかきよに−おもひなされて |
10276 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ふへきこととも哀其時はしらぬむかしの涙そふらん
しのふへき−ことともあはれ−そのときは−しらぬむかしの−なみたそふらむ |
10277 |
未入力 正徹 (xxx)
おもひつつかたりいたさぬ古をひとりしのふとしる人もなし
おもひつつ−かたりいたさぬ−いにしへを−ひとりしのふと−しるひともなし |
10278 |
未入力 正徹 (xxx)
むかしよりきても堺にいらさりき老いてもとほき道はこの道
むかしより−きてもさかひに−いらさりき−おいてもとほき−みちはこのみち |
10279 |
未入力 正徹 (xxx)
いつもそひいつもあるへきことと見し人にも世にもとほくはなれて
いつもそひ−いつもあるへき−こととみし−ひとにもよにも−とほくはなれて |
10280 |
未入力 正徹 (xxx)
なにことも哀むかしのそのをりはしのふへしとも思ひやはせし
なにことも−あはれむかしの−そのをりは−しのふへしとも−おもひやはせし |
10281 |
未入力 正徹 (xxx)
物ことに哀むかしを見しめには涙うかはぬ時のまもなし
ものことに−あはれむかしを−みしめには−なみたうかはぬ−ときのまもなし |
10282 |
未入力 正徹 (xxx)
たかき世をおもひしのへは心よりのほる涙の又やなかれん
たかきよを−おもひしのへは−こころより−のほるなみたの−またやなかれむ |
10283 |
未入力 正徹 (xxx)
老いぬれはちかきむかしそ忘らるるいとけなかりしことはおほえて
おいぬれは−ちかきむかしそ−わすらるる−いとけなかりし−ことはおほえて |
10284 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりはてむしるしを庭にのこすとも哀むかしと見ん人やなき
ふりはてむ−しるしをにはに−のこすとも−あはれむかしと−みむひとやなき |
10285 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてとむかししのふの草衣かかるうき世の露にみたれん
いつまてと−むかししのふの−くさころも−かかるうきよの−つゆにみたれむ |
10286 |
未入力 正徹 (xxx)
古の世に見しことをかたるとも我か偽にききそなされん
いにしへの−よにみしことを−かたるとも−わかいつはりに−ききそなされむ |
10287 |
未入力 正徹 (xxx)
くり返し世世の昔をしのふれは冬の日なかし賎のをた巻
くりかへし−よよのむかしを−しのふれは−ふゆのひなかし−しつのをたまき |
10288 |
未入力 正徹 (xxx)
いそのかみさのみふるくはなき人もいま世にあちはすまし都に
いそのかみ−さのみふるくは−なきひとも−いまよにあちは−すましみやこに |
10289 |
未入力 正徹 (xxx)
こととへは見し世の人の庵にてその孫彦となのるほとなさ
こととへは−みしよのひとの−いほりにて−そのまこひこと−なのるほとなさ |
10290 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の馬のりならへにし人はみな忘れす夢のよそに先立つ
たけのうま−のりならへにし−ひとはみな−わすれすゆめの−よそにさきたつ |
10291 |
未入力 正徹 (xxx)
跡ふりし後の小松の千世の陰あふきし比の人そこひしき
あとふりし−のちのこまつの−ちよのかけ−あふきしころの−ひとそこひしき |
10292 |
未入力 正徹 (xxx)
わすれすよ我かたらちねと立ちなれし鹿苑世の露のめくみを
わすれすよ−わかたらちねと−たちなれし−しかのそのよの−つゆのめくみを |
10293 |
未入力 正徹 (xxx)
つくつくと昔の人を思ふまの我かつら杖にかかる夢かな
つくつくと−むかしのひとを−おもふまの−わかつらつゑに−かかるゆめかな |
10294 |
未入力 正徹 (xxx)
いたつらに老行くままに跡しのふことの数さへつもるとしかな
いたつらに−おいゆくままに−あとしのふ−ことのかすさへ−つもるとしかな |
10295 |
未入力 正徹 (xxx)
昔おもふ露なこほれそ竹の子の一二のふしならはこそ
むかしおもふ−つゆなこほれそ−たけのこの−ひとつふたつの−ふしならはこそ |
10296 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそそふ古き涙のおち所いまたかはらぬ袖のかたみは
みにそそふ−ふるきなみたの−おちところ−いまたかはらぬ−そてのかたみは |
10297 |
未入力 正徹 (xxx)
とほき世にもよほされつる袂かな涙にふるき色は見えねと
とほきよに−もよほされつる−たもとかな−なみたにふるき−いろはみえねと |
10298 |
未入力 正徹 (xxx)
わすられぬ心そさらにへたてなきなみたは昔袖はいまの身
わすられぬ−こころそさらに−へたてなき−なみたはむかし−そてはいまのみ |
10299 |
未入力 正徹 (xxx)
世世をへし古き涙にあたらしきいく年のをか朽ちて行くらん
よよをへし−ふるきなみたに−あたらしき−いくとしのをか−くちてゆくらむ |
10300 |
未入力 正徹 (xxx)
我かなみた秋を哀といひおきしむかしの人の袂をそかる
わかなみた−あきをあはれと−いひおきし−むかしのひとの−たもとをそかる |
10301 |
未入力 正徹 (xxx)
あかさりし世世の涙そおちまさる夕やふるきかたみなるらん
あかさりし−よよのなみたそ−おちまさる−ゆふへやふるき−かたみなるらむ |
10302 |
未入力 正徹 (xxx)
まきほさしむかしの人や涙ともなりて袂にいまかかるらん
まきほさし−むかしのひとや−なみたとも−なりてたもとに−いまかかるらむ |
10303 |
未入力 正徹 (xxx)
古寺のむかしをとへは見しはなき人をあまたに涙おちつつ
ふるてらの−むかしをとへは−みしはなき−ひとをあまたに−なみたおちつつ |
10304 |
未入力 正徹 (xxx)
友千鳥あととふ浜のまさこ山身を年たかきねをのみそ鳴く
ともちとり−あととふはまの−まさこやま−みをとしたかき−ねをのみそなく |
10305 |
未入力 正徹 (xxx)
とかむなよ哀むかしとおきふしに老いての後の枕ことをは
とかむなよ−あはれむかしと−おきふしに−おいてののちの−まくらことをは |
10306 |
未入力 正徹 (xxx)
身の上にかたりし年をしらぬまて老いはてぬれは古もなし
みのうへに−かたりしとしを−しらぬまて−おいはてぬれは−いにしへもなし |
10307 |
未入力 正徹 (xxx)
かちにてそ此坂こえしありま山むかしも年は老の身なから
かちにてそ−このさかこえし−ありまやま−むかしもとしは−おいのみなから |
10308 |
未入力 正徹 (xxx)
月やあらぬ昔の人の面影とすめる宿とふ軒の松かせ
つきやあらぬ−むかしのひとの−おもかけと−すめるやととふ−のきのまつかせ |
10309 |
未入力 正徹 (xxx)
雨そうきこまかに世世のふることも面影うかふ閨のたもとに
あめそうき−こまかによよの−ふることも−おもかけうかふ−ねやのたもとに |
10310 |
未入力 正徹 (xxx)
遠き世にかよふ心や送るらん夕の雨のふるさとの雲
とほきよに−かよふこころや−おくるらむ−ゆふへのあめの−ふるさとのくも |
10311 |
未入力 正徹 (xxx)
我か心よせしそむかし寺ふるき山の尾崎の松のことのは
わかこころ−よせしそむかし−てらふるき−やまのをさきの−まつのことのは |
10312 |
未入力 正徹 (xxx)
山寺の御法の箱をひらきても見ぬ世かしこき跡をしそ思ふ
やまてらの−みのりのはこを−ひらきても−みぬよかしこき−あとをしそおもふ |
10313 |
未入力 正徹 (xxx)
寺はあれと昔のままのかきりなき仏となりて山そあせ行く
てらはあれと−むかしのままの−かきりなき−ほとけとなりて−やまそあせゆく |
10314 |
未入力 正徹 (xxx)
さきたつはゆひををりても数しらす鴫よなにその夜はの羽かき
さきたつは−ゆひををりても−かすしらす−しきよなにその−よはのはねかき |
10315 |
未入力 正徹 (xxx)
昔見しあまたの人の面影もせはき夜床に在明の月
むかしみし−あまたのひとの−おもかけも−せはきよとこに−ありあけのつき |
10316 |
未入力 正徹 (xxx)
忘られぬふる野の真葛ふるき世にかへるもかるる暁の夢
わすられぬ−ふるののまくす−ふるきよに−かへるもかるる−あかつきのゆめ |
10317 |
未入力 正徹 (xxx)
つれなしや我よりとほき昔をはしる人まれに年そ老行く
つれなしや−われよりとほき−むかしをは−しるひとまれに−としそおいゆく |
10318 |
未入力 正徹 (xxx)
しるへなき哀万の道道にむかしの人のひとりともかな
しるへなき−あはれよろつの−みちみちに−むかしのひとの−ひとりともかな |
10319 |
未入力 正徹 (xxx)
せめてわかいとけなくしてみつる世に老いてあふ身となとや生れぬ
せめてわか−いとけなくして−みつるよに−おいてあふみと−なとやうまれぬ |
10320 |
未入力 正徹 (xxx)
夜もすからうちまもらるる灯にいく世のことのうかひきぬらん
よもすから−うちまもらるる−ともしひに−いくよのことの−うかひきぬらむ |
10321 |
未入力 正徹 (xxx)
松ほとやこたへさらましつたへきくむかしの風を花にとふとも
まつほとや−こたへさらまし−つたへきく−むかしのかせを−はなにとふとも |
10322 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねても昔こそあれ我か身世にふるの山さとしる人もなし
たつねても−むかしこそあれ−わかみよに−ふるのやまさと−しるひともなし |
10323 |
未入力 正徹 (xxx)
とし月もさかまく水の上の淡いくめくりをか忍ひかへさむ
としつきも−さかまくみつの−うへのあわ−いくめくりをか−しのひかへさむ |
10324 |
未入力 正徹 (xxx)
はかりなき千ひろの海にかつきてもかりに昔をみるめともかな
はかりなき−ちひろのうみに−かつきても−かりにむかしを−みるめともかな |
10325 |
未入力 正徹 (xxx)
のこすなよ昔の筆の海よりはあれのみまさる水くきのあと
のこすなよ−むかしのふての−うみよりは−あれのみまさる−みつくきのあと |
10326 |
未入力 正徹 (xxx)
うゑてこそさくにあひぬれ昔せし我か兼ことの春の初花
うゑてこそ−さくにあひぬれ−むかしせし−わかかねことの−はるのはつはな |
10327 |
未入力 正徹 (xxx)
おろかなることのはなからなほうけは神に手向も世にはもらさし
おろかなる−ことのはなから−なほうけは−かみにたむけも−よにはもらさし |
10328 |
未入力 正徹 (xxx)
神しうけはぬさもとりあへす手向けおく此ことのはも色や見えまし
かみしうけは−ぬさもとりあへす−たむけおく−このことのはも−いろやみえまし |
10329 |
未入力 正徹 (xxx)
ひまもなくいそけはいととしきしまの道のたたちにまよふけふかな
ひまもなく−いそけはいとと−しきしまの−みちのたたちに−まよふけふかな |
10330 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまの道はいのらす神しうけは法の言のは玉となせとて
しきしまの−みちはいのらす−かみしうけは−のりのことのは−たまとなせとて |
10331 |
未入力 正徹 (xxx)
こよひかく百のことのはかさねても一ものこす色やなからん
こよひかく−もものことのは−かさねても−ひとつものこす−いろやなからむ |
10332 |
未入力 正徹 (xxx)
此世にはほまれある名も何かせん花に春風月にうき雲
このよには−ほまれあるなも−なにかせむ−はなにはるかせ−つきにうきくも |
10333 |
未入力 正徹 (xxx)
あきらけき昔そ鏡あふき見ん人こそ人をくらくなすとも
あきらけき−むかしそかかみ−あふきみむ−ひとこそひとを−くらくなすとも |
10334 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌のうらを思捨つれと身にそふはなみもや老のわさとなるらん
わかのうらを−おもひすつれと−みにそふは−なみもやおいの−わさとなるらむ |
10335 |
未入力 正徹 (xxx)
芦の屋のなたの塩やくあまよりも身はいとまなき賎のをたまき
あしのやの−なたのしほやく−あまよりも−みはいとまなき−しつのをたまき |
10336 |
未入力 正徹 (xxx)
まなひこし風のすかたもいかならんしらす老木の松のことのは
まなひこし−かせのすかたも−いかならむ−しらすおいきの−まつのことのは |
10337 |
未入力 正徹 (xxx)
こととへは身ほうきふしの竹の庵宮こをとほく住みはてぬまに
こととへは−みはうきふしの−たけのいほ−みやこをとほく−すみはてぬまに |
10338 |
未入力 正徹 (xxx)
なに年も老いては思ひ捨てやすきことわりしらぬしきしまの道
なにとしも−おいてはおもひ−すてやすき−ことわりしらぬ−しきしまのみち |
10339 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉の色なきちりをよもすてしとてもましはる神の恵は
ことのはの−いろなきちりを−よもすてし−とてもましはる−かみのめくみは |
10340 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのははむすほほれつる敷島の道さまたけになる心かな
ことのはは−むすほほれつる−しきしまの−みちさまたけに−なるこころかな |
10341 |
未入力 正徹 (xxx)
わかのうらは家にもあらす人なみに名をかけすともよしやうらみし
わかのうらは−いへにもあらす−ひとなみに−なをかけすとも−よしやうらみし |
10342 |
未入力 正徹 (xxx)
おろかなる身のうからすはことのはになるへき草の種やなからん
おろかなる−みのうからすは−ことのはに−なるへきくさの−たねやなからむ |
10343 |
未入力 正徹 (xxx)
いそけ人いつれの道をまなふとも老は心のつきてかひなし
いそけひと−いつれのみちを−まなふとも−おいはこころの−つきてかひなし |
10344 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまやすくなる中つ道あるをしらてやつひに大和ことのは
しきしまや−すくなるなかつ−みちあるを−しらてやつひに−やまとことのは |
10345 |
未入力 正徹 (xxx)
老のなみさのみかさなるわかの浦に猶ととまらていつる舟かな
おいのなみ−さのみかさなる−わかのうらに−なほととまらて−いつるふねかな |
10346 |
未入力 正徹 (xxx)
うかふせも人はある世の老のなみこゆるにつけて身そしつみ行く
うかふせも−ひとはあるよの−おいのなみ−こゆるにつけて−みそしつみゆく |
10347 |
未入力 正徹 (xxx)
敷島の道なれはこそ六十あまり老いてさかりの友もありけれ
しきしまの−みちなれはこそ−むそちあまり−おいてさかりの−とももありけれ |
10348 |
未入力 正徹 (xxx)
玉のをもよをへてほそくなる月の在明の影に身はよわりつつ
たまのをも−よをへてほそく−なるつきの−ありあけのかけに−みはよわりつつ |
10349 |
未入力 正徹 (xxx)
なくなくもわれと心をなくさめて袂やすむるうき世ならすは
なくなくも−われとこころを−なくさめて−たもとやすむる−うきよならすは |
10350 |
未入力 正徹 (xxx)
老やしる人にも世にもうらみなき涙をとへは猶そ落ちそふ
おいやしる−ひとにもよにも−うらみなき−なみたをとへは−なほそおちそふ |
10351 |
未入力 正徹 (xxx)
まもれ神人の心の末の世にあはすなり行くしきしまの道
まもれかみ−ひとのこころの−すゑのよに−あはすなりゆく−しきしまのみち |
10352 |
未入力 正徹 (xxx)
春日山おとろかしたのことのはも露の契をむすふはかりそ
かすかやま−おとろかしたの−ことのはも−つゆのちきりを−むすふはかりそ |
10353 |
未入力 正徹 (xxx)
ふる雨のはるる日もなき浦のあまのほこらしき世もなき我か身かな
ふるあめの−はるるひもなき−うらのあまの−ほこらしきよも−なきわかみかな |
10354 |
未入力 正徹 (xxx)
おもふこと岩うつ浪のせかれては心にかへるわかのうらかせ
おもふこと−いはうつなみの−せかれては−こころにかへる−わかのうらかせ |
10355 |
未入力 正徹 (xxx)
人心さらになほらん世そかたき上におきてす下におそれす
ひとこころ−さらになほらむ−よそかたき−かみにおきてす−しもにおそれす |
10356 |
未入力 正徹 (xxx)
かたはれぬ門こそなけれ仕ふるはにをもつよりもくるしかるらん
かたはれぬ−かとこそなけれ−つかふるは−にをもつよりも−くるしかるらむ |
10357 |
未入力 正徹 (xxx)
古をまなははやこそはかなけれ時世にあはぬ心ことのは
いにしへを−まなははやこそ−はかなけれ−ときよにあはぬ−こころことのは |
10358 |
未入力 正徹 (xxx)
いかはかり子あらは我にそむかまし親のいさめし道ならぬ道
いかはかり−こあらはわれに−そむかまし−おやのいさめし−みちならぬみち |
10359 |
未入力 正徹 (xxx)
もろこしの人になしてそいとはるる大和こと葉と思ひこしかと
もろこしの−ひとになしてそ−いとはるる−やまとことはと−おもひこしかと |
10360 |
未入力 正徹 (xxx)
四方のうみにみな名のりそをかけおきて民は独もなき世なりけり
よものうみに−みななのりそを−かけおきて−たみはひとりも−なきよなりけり |
10361 |
未入力 正徹 (xxx)
御使や仰とも又さたあれとしろしめさすといふはまことか
みつかひや−おほせともまた−さたあれと−しろしめさすと−いふはまことか |
10362 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉もいつれの時をまなはなん夢路につけよ風月の神
ことのはも−いつれのときを−まなはなむ−ゆめちにつけよ−かせつきのかみ |
10363 |
未入力 正徹 (xxx)
くみしらぬ和かの浦人大海を一貝ほともうる道そなき
くみしらぬ−わかのうらひと−おほうみを−ひとかひほとも−うるみちそなき |
10364 |
未入力 正徹 (xxx)
おくれてそ老はうらやむわかの浦に足はやく行く年のさかりを
おくれてそ−おいはうらやむ−わかのうらに−あしはやくゆく−としのさかりを |
10365 |
未入力 正徹 (xxx)
くれにけりわかのうら舟漕きさらすことしも老のなみにうかへて
くれにけり−わかのうらふね−こきさらす−ことしもおいの−なみにうかへて |
10366 |
未入力 正徹 (xxx)
世をはへんさかふる人をうらやますおとろへ行くをかなしますして
よをはへむ−さかふるひとを−うらやます−おとろへゆくを−かなしますして |
10367 |
未入力 正徹 (xxx)
歌はたた人の物いふことの葉にのこるはかりの末の世もうし
うたはたた−ひとのものいふ−ことのはに−のこるはかりの−すゑのよもうし |
10368 |
未入力 正徹 (xxx)
和歌の浦にひろひもちても何かせん磯の塩貝玉もえぬ身に
わかのうらに−ひろひもちても−なにかせむ−いそのしほかひ−たまもえぬみに |
10369 |
未入力 正徹 (xxx)
老いはてぬいかてか人にましはらん此敷島の道にいらすは
おいはてぬ−いかてかひとに−ましはらむ−このしきしまの−みちにいらすは |
10370 |
未入力 正徹 (xxx)
今はわれ老いたる人の数にたに入るへき年かさのみつれなき
いまはわれ−おいたるひとの−かすにたに−いるへきとしか−さのみつれなき |
10371 |
未入力 正徹 (xxx)
若のうらはそこふかしともさとりえぬ老の浪ちにまよひはてぬる
わかのうらは−そこふかしとも−さとりえぬ−おいのなみちに−まよひはてぬる |
10372 |
未入力 正徹 (xxx)
うきことそもとのままなるさしもみな物わすれする老の心に
うきことそ−もとのままなる−さしもみな−ものわすれする−おいのこころに |
10373 |
未入力 正徹 (xxx)
忍ふへき人は此世にかたかりき身をなき物になして思へは
しのふへき−ひとはこのよに−かたかりき−みをなきものに−なしておもへは |
10374 |
未入力 正徹 (xxx)
しらかみのくろきすちなきことにのみひまこそなけれ哀いつまて
しらかみの−くろきすちなき−ことにのみ−ひまこそなけれ−あはれいつまて |
10375 |
未入力 正徹 (xxx)
なに事をさらになけかむ後前の仏にあはぬ世にも住む身は
なにことを−さらになけかむ−のちさきの−ほとけにあはぬ−よにもすむみは |
10376 |
未入力 正徹 (xxx)
のこりなく老いはててこそ哀てふことをあまたの浮世ともしれ
のこりなく−おいはててこそ−あはれてふ−ことをあまたの−うきよともしれ |
10377 |
未入力 正徹 (xxx)
おもほえす身のうきたひにおち初めて老の涙と今そなり行く
おもほえす−みのうきたひに−おちそめて−おいのなみたと−いまそなりゆく |
10378 |
未入力 正徹 (xxx)
老いて世になくさむ夢やなからましみな見し事のうつつならねは
おいてよに−なくさむゆめや−なからまし−みなみしことの−うつつならねは |
10379 |
未入力 正徹 (xxx)
老いなはと思ひけるかなかくはかり命の後もましる此世に
おいなはと−おもひけるかな−かくはかり−いのちののちも−ましるこのよに |
10380 |
未入力 正徹 (xxx)
老のなみたえすこえくる浜ひさし久しくなとかありてつれなき
おいのなみ−たえすこえくる−はまひさし−ひさしくなとか−ありてつれなき |
10381 |
未入力 正徹 (xxx)
なからふる身をそうらむる末の世に生れてしかも老いはつるまて
なからふる−みをそうらむる−すゑのよに−うまれてしかも−おいはつるまて |
10382 |
未入力 正徹 (xxx)
忘れてそ人にましはるいとけなき心かはらぬ老のすかたを
わすれてそ−ひとにましはる−いとけなき−こころかはらぬ−おいのすかたを |
10383 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかくてすみよかるらんこととへはひとりひとりのためにうき世を
たれかくて−すみよかるらむ−こととへは−ひとりひとりの−ためにうきよを |
10384 |
未入力 正徹 (xxx)
身のうさの人にこえたる名にもたてさてそ此世にあるもしられん
みのうさの−ひとにこえたる−なにもたて−さてそこのよに−あるもしられむ |
10385 |
未入力 正徹 (xxx)
こととはむそれも昔の友ならす行きてたに見ぬ高砂の松
こととはむ−それもむかしの−ともならす−ゆきてたにみぬ−たかさこのまつ |
10386 |
未入力 正徹 (xxx)
ほとあらしよしさは命世中にひとりうき身と思ひはつとも
ほとあらし−よしさはいのち−よのなかに−ひとりうきみと−おもひはつとも |
10387 |
未入力 正徹 (xxx)
身をいとひ世をうしといふことの葉もめつらしけなしかくてやみなん
みをいとひ−よをうしといふ−ことのはも−めつらしけなし−かくてやみなむ |
10388 |
未入力 正徹 (xxx)
いつまてそ老の浪こす身をつくししはし此世の江には立つとも
いつまてそ−おいのなみこす−みをつくし−しはしこのよの−えにはたつとも |
10389 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまや此道芝は分けそえぬ人のことのはからぬならひに
しきしまや−このみちしはは−わけそえぬ−ひとのことのは−からぬならひに |
10390 |
未入力 正徹 (xxx)
身にまさる年はあれともうき数の人にこえたる老のなみかな
みにまさる−としはあれとも−うきかすの−ひとにこえたる−おいのなみかな |
10391 |
未入力 正徹 (xxx)
人やあらぬ我やむかしの身をかへておなしうき世に年もへぬらん
ひとやあらぬ−われやむかしの−みをかへて−おなしうきよに−としもへぬらむ |
10392 |
未入力 正徹 (xxx)
たくひなくわか思ふことの二人とも世にあるへくは何かうらみん
たくひなく−わかおもふことの−ふたりとも−よにあるへくは−なにかうらみむ |
10393 |
未入力 正徹 (xxx)
くたりしはのほりけるかな老の坂おほえすこよひ峰の月影
くたりしは−のほりけるかな−おいのさか−おほえすこよひ−みねのつきかけ |
10394 |
未入力 正徹 (xxx)
ね覚にも心をよせてあかさなんこれも誠の道のことのは
ねさめにも−こころをよせて−あかさなむ−これもまことの−みちのことのは |
10395 |
未入力 正徹 (xxx)
さ夜枕はらひもあへす声しけし我か涙をや鳥の鳴くらん
さよまくら−はらひもあへす−こゑしけし−わかなみたをや−とりのなくらむ |
10396 |
未入力 正徹 (xxx)
世にのこる我かつれなさをくらふれは在明の月のよひの山のは
よにのこる−わかつれなさを−くらふれは−ありあけのつきの−よひのやまのは |
10397 |
未入力 正徹 (xxx)
いくほとそ玉ににるまてみかきても身は夕露の消えんことのは
いくほとそ−たまににるまて−みかきても−みはゆふつゆの−きえむことのは |
10398 |
未入力 正徹 (xxx)
身をそおく夕暮かけて朝露ののこるはかたき山のした柴
みをそおく−ゆふくれかけて−あさつゆの−のこるはかたき−やまのしたしは |
10399 |
未入力 正徹 (xxx)
老の浪よりくる袖のみなと川さてもなかれをせくしほはなし
おいのなみ−よりくるそての−みなとかは−さてもなかれを−せくしほはなし |
10400 |
未入力 正徹 (xxx)
千世をふる名をやたのまんいたつらにいきの松原いきうからすは
ちよをふる−なをやたのまむ−いたつらに−いきのまつはら−いきうからすは |
10401 |
未入力 正徹 (xxx)
いかか見ん七とせをへて楠木の千枝も色なき杜のしのたを
いかかみむ−ななとせをへて−くすのきの−ちえもいろなき−もりのしのたを |
10402 |
未入力 正徹 (xxx)
猶てらせ此世のやみののちの影我か消かたの夜夜のともし火
なほてらせ−このよのやみの−のちのかけ−わかきえかたの−よよのともしひ |
10403 |
未入力 正徹 (xxx)
あしからの木に伐りかけし舟木とやこき出つる世もなくて朽つらん
あしからの−きにきりかけし−ふなきとや−こきいつるよも−なくてくつらむ |
10404 |
未入力 正徹 (xxx)
我も世にかくてたてらむそなれ松なれすはしらしつらきはま風
われもよに−かくてたてらむ−そなれまつ−なれすはしらし−つらきはまかせ |
10405 |
未入力 正徹 (xxx)
古をしのふはかれて物ことにわするる草そ宿にしけれる
いにしへを−しのふはかれて−ものことに−わするるくさそ−やとにしけれる |
10406 |
未入力 正徹 (xxx)
我か風のすかたを世にそいとふなる松のことのは人なまなひそ
わかかせの−すかたをよにそ−いとふなる−まつのことのは−ひとなまなひそ |
10407 |
未入力 正徹 (xxx)
いつかたになひくも道にそむかねは風のままなる和かのうら松
いつかたに−なひくもみちに−そむかねは−かせのままなる−わかのうらまつ |
10408 |
未入力 正徹 (xxx)
老いぬれはかはる鏡をいとふ身にもとの面影なとしたふらん
おいぬれは−かはるかかみを−いとふみに−もとのおもかけ−なとしたふらむ |
10409 |
未入力 正徹 (xxx)
見もあへす鏡のかけをおほふかな我か年なみのしわをいとひて
みもあへす−かかみのかけを−おほふかな−わかとしなみの−しわをいとひて |
10410 |
未入力 正徹 (xxx)
さすしほのからかのしまを此世にてしつみうかふと身をなうらみそ
さすしほの−からかのしまを−このよにて−しつみうかふと−みをなうらみそ |
10411 |
未入力 正徹 (xxx)
しつみにき此敷島の大和川わか歌かたを世になのこしそ
しつみにき−このしきしまの−やまとかは−わかうたかたを−よになのこしそ |
10412 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから年へて後も見しことのあふにそ夢はたのまれにける
おのつから−としへてのちも−みしことの−あふにそゆめは−たのまれにける |
10413 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬるかうちも此世の夢のほかならてまことにさむる暁もなし
ぬるかうちも−このよのゆめの−ほかならて−まことにさむる−あかつきもなし |
10414 |
未入力 正徹 (xxx)
世世を見し夢の面影たつちりのいそちの床をはらふ松かせ
よよをみし−ゆめのおもかけ−たつちりの−いそちのとこを−はらふまつかせ |
10415 |
未入力 正徹 (xxx)
たれもありやいつそや夢に見てしこと思ひあはせてたとるうつつは
たれもありや−いつそやゆめに−みてしこと−おもひあはせて−たとるうつつは |
10416 |
未入力 正徹 (xxx)
まとろまぬ今朝の枕をおのつからきのふの夢のさむるとやせん
まとろまぬ−けさのまくらを−おのつから−きのふのゆめの−さむるとやせむ |
10417 |
未入力 正徹 (xxx)
思ひつつぬれとも見えぬことそある夢や心のみちたかふらん
おもひつつ−ぬれともみえぬ−ことそある−ゆめやこころの−みちたかふらむ |
10418 |
未入力 正徹 (xxx)
老いぬれはうつつも夢も夢のうちにまきれてあかしくらすはかりそ
おいぬれは−うつつもゆめも−ゆめのうちに−まきれてあかし−くらすはかりそ |
10419 |
未入力 正徹 (xxx)
見えけりな夢路は閨のうちなから大和もろこし後前の世は
みえけりな−ゆめちはねやの−うちなから−やまともろこし−のちさきのよは |
10420 |
未入力 正徹 (xxx)
行末も神をしるへの夢のつけさたかに見せよあかつきの空
ゆくすゑも−かみをしるへの−ゆめのつけ−さたかにみせよ−あかつきのそら |
10421 |
未入力 正徹 (xxx)
なからへてたえぬる夢のうき橋をかけのたれ尾のこゑそつれなき
なからへて−たえぬるゆめの−うきはしを−かけのたれをの−こゑそつれなき |
10422 |
未入力 正徹 (xxx)
月はなほ山のはつらしあかつきの夢にいりしはさめてのこれる
つきはなほ−やまのはつらし−あかつきの−ゆめにいりしは−さめてのこれる |
10423 |
未入力 正徹 (xxx)
もろこしの野へにさめつる枕かな夢さへいほの時過くる夜に
もろこしの−のへにさめつる−まくらかな−ゆめさへいほの−ときすくるよに |
10424 |
未入力 正徹 (xxx)
夕まとひ老のやくとやさたかにもねられぬ夢のみえて覚むらん
ゆふまとひ−おいのやくとや−さたかにも−ねられぬゆめの−みえてさむらむ |
10425 |
未入力 正徹 (xxx)
夢覚めてのこる鐘かなまとろまて声のはしめもききし枕に
ゆめさめて−のこるかねかな−まとろまて−こゑのはしめも−ききしまくらに |
10426 |
未入力 正徹 (xxx)
まとろみきいかなる夢を見つとたにおほえすさすかうつつともかな
まとろみき−いかなるゆめを−みつとたに−おほえすさすか−うつつともかな |
10427 |
未入力 正徹 (xxx)
さぬる夜のみしかき夢のたひたひにさむるも老はうつつとそなき
さぬるよの−みしかきゆめの−たひたひに−さむるもおいは−うつつとそなき |
10428 |
未入力 正徹 (xxx)
あととめてさむるか夢の中空に孤の雲の残るをそ見る
あととめて−さむるかゆめの−なかそらに−ひとつのくもの−のこるをそみる |
10429 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかしるむかしをいまと見る夢のたえて人なき床の秋かせ
いかかしる−むかしをいまと−みるゆめの−たえてひとなき−とこのあきかせ |
10430 |
未入力 正徹 (xxx)
竹の葉のうたていさときさ夜枕風をかきりの夢をうきたる
たけのはの−うたていさとき−さよまくら−かせをかきりの−ゆめをうきたる |
10431 |
未入力 正徹 (xxx)
松風もかねもきこえて夢のうちに見えつる人やおとろかしけん
まつかせも−かねもきこえて−ゆめのうちに−みえつるひとや−おとろかしけむ |
10432 |
未入力 正徹 (xxx)
床中に思ふもさらにあとそなき見えつる夢のはしめをはりは
とこなかに−おもふもさらに−あとそなき−みえつるゆめの−はしめをはりは |
10433 |
未入力 正徹 (xxx)
ひとりわか見はてぬ夢を又見るもさめこそわたれ夢のつきはし
ひとりわか−みはてぬゆめを−またみるも−さめこそわたれ−ゆめのつきはし |
10434 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらすひとりそ思ふ明けくらし人にかたらぬ夢とうつつと
かすしらす−ひとりそおもふ−あけくらし−ひとにかたらぬ−ゆめとうつつと |
10435 |
未入力 正徹 (xxx)
ふりにけるそこらの人にましはりし夢ちかへれはもとの身にして
ふりにける−そこらのひとに−ましはりし−ゆめちかへれは−もとのみにして |
10436 |
未入力 正徹 (xxx)
うたたねをいさめしおやの老ほとになるこそ夢の枕なりけれ
うたたねを−いさめしおやの−おいほとに−なるこそゆめの−まくらなりけれ |
10437 |
未入力 正徹 (xxx)
月にとふなけきを須磨の海に入るなきさに見えし夢の名残を
つきにとふ−なけきをすまの−うみにいる−なきさにみえし−ゆめのなこりを |
10438 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかしれはふりぬる人の夢のうちに此比の世のことかはすらん
いかかしれは−ふりぬるひとの−ゆめのうちに−このころのよの−ことかはすらむ |
10439 |
未入力 正徹 (xxx)
いときなき年にかへりてたらちねのいさめし夢そ老を忘るる
いときなき−としにかへりて−たらちねの−いさめしゆめそ−おいをわするる |
10440 |
未入力 正徹 (xxx)
うかふせもしつむも夢のわたり川結ひさためぬ浪のうたかた
うかふせも−しつむもゆめの−わたりかは−むすひさためぬ−なみのうたかた |
10441 |
未入力 正徹 (xxx)
ささかにのくもてにわたる此世かな一すちとほき夢のうきはし
ささかにの−くもてにわたる−このよかな−ひとすちとほき−ゆめのうきはし |
10442 |
未入力 正徹 (xxx)
さたかにも何をしのはんとにかくに昔の夢のむすほほれつつ
さたかにも−なにをしのはむ−とにかくに−むかしのゆめの−むすほほれつつ |
10443 |
未入力 正徹 (xxx)
ふしてみぬ夢のひまゆく駒とてやおとろく時のなくて過きけん
ふしてみぬ−ゆめのひまゆく−こまとてや−おとろくときの−なくてすきけむ |
10444 |
未入力 正徹 (xxx)
おもへ猶昔をぬれは見る夢の夢にさめたるかりのうつつそ
おもへなほ−むかしをぬれは−みるゆめの−ゆめにさめたる−かりのうつつそ |
10445 |
未入力 正徹 (xxx)
かへすへき夢にもあらすさ夜衣遠きむかしの世世のうつつは
かへすへき−ゆめにもあらす−さよころも−とほきむかしの−よよのうつつは |
10446 |
未入力 正徹 (xxx)
しのはるるむかしをさめぬ夢そともおもひあはする時そなくさむ
しのはるる−むかしをさめぬ−ゆめそとも−おもひあはする−ときそなくさむ |
10447 |
未入力 正徹 (xxx)
夜のまにもわするるものを古の夢はさたかになとのこるらん
よのまにも−わするるものを−いにしへの−ゆめはさたかに−なとのこるらむ |
10448 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへをなににたとへん過きこしは夢そといふもなにかたちある
いにしへを−なににたとへむ−すきこしは−ゆめそといふも−なにかたちある |
10449 |
未入力 正徹 (xxx)
すめる世のもとよりさめぬ夢ならはいにしへ今もなにかはるらん
すめるよの−もとよりさめぬ−ゆめならは−いにしへいまも−なにかはるらむ |
10450 |
未入力 正徹 (xxx)
ぬるかうちにみるはさむるをかきりにて覚めての夢にねても忘れぬ
ぬるかうちに−みるはさむるを−かきりにて−さめてのゆめに−ねてもわすれぬ |
10451 |
未入力 正徹 (xxx)
数しらぬ昔をきけは見しほともすたれたる世の今はこひしき
かすしらぬ−むかしをきけは−みしほとも−すたれたるよの−いまはこひしき |
10452 |
未入力 正徹 (xxx)
かすかにも思ひいつるはことわりのむかしのさきそしらてこひしき
かすかにも−おもひいつるは−ことわりの−むかしのさきそ−しらてこひしき |
10453 |
未入力 正徹 (xxx)
見しやいま夢もうつつもわかぬまてよわり行く身に思ふふること
みしやいま−ゆめもうつつも−わかぬまて−よわりゆくみに−おもふふること |
10454 |
未入力 正徹 (xxx)
みしこともわすれ忘れぬいにしへのつつかぬ夢そみなあともなき
みしことも−わすれわすれぬ−いにしへの−つつかぬゆめそ−みなあともなき |
10455 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれ行くふるき涙もいやつきにいまの哀をおくる袖かな
なかれゆく−ふるきなみたも−いやつきに−いまのあはれを−おくるそてかな |
10456 |
未入力 正徹 (xxx)
なかれゆく袖の涙の水上に見しよの人の影やみゆらん
なかれゆく−そてのなみたの−みなかみに−みしよのひとの−かけやみゆらむ |
10457 |
未入力 正徹 (xxx)
朝夕におくれさきたつ人の世を哀ときくもあはれいつまて
あさゆふに−おくれさきたつ−ひとのよを−あはれときくも−あはれいつまて |
10458 |
未入力 正徹 (xxx)
袖ぬらす野への草はの末の露もとのしつくをさのみとふかな
そてぬらす−のへのくさはの−すゑのつゆ−もとのしつくを−さのみとふかな |
10459 |
未入力 正徹 (xxx)
夕暮はたれともしらぬけふりたにさき立つ人とおもふ哀を
ゆふくれは−たれともしらぬ−けふりたに−さきたつひとと−おもふあはれを |
10460 |
未入力 正徹 (xxx)
あととへは十の三とせにみし夢は覚めてもさめぬ涙おつらん
あととへは−とをのみとせに−みしゆめは−さめてもさめぬ−なみたおつらむ |
10461 |
未入力 正徹 (xxx)
これも猶あさけの風の末の露もとあらの桜一花もなし
これもなほ−あさけのかせの−すゑのつゆ−もとあらのさくら−ひとはなもなし |
10462 |
未入力 正徹 (xxx)
早瀬川花も紅葉もなかれにしかたみの水のあわそ消行く
はやせかは−はなももみちも−なかれにし−かたみのみつの−あわそきえゆく |
10463 |
未入力 正徹 (xxx)
おろかなる我にかへりてたつねみよとくより外の法の心を
おろかなる−われにかへりて−たつねみよ−とくよりほかの−のりのこころを |
10464 |
未入力 正徹 (xxx)
へたてつる十のさかひそおのつからひとつ心のうちにひらくる
へたてつる−とをのさかひそ−おのつから−ひとつこころの−うちにひらくる |
10465 |
未入力 正徹 (xxx)
世にいてし四十年あまりのみことのり一もとかぬ仏とをしれ
よにいてし−よそちあまりの−みことのり−ひとつもとかぬ−ほとけとをしれ |
10466 |
未入力 正徹 (xxx)
あさけれと此百種の言葉も皆我か国の法をとくなり
あさけれと−このももくさの−ことのはも−みなわかくにの−のりをとくなり |
10467 |
未入力 正徹 (xxx)
おもほえす仏や神につかふとて此一度そいまた旅なる
おもほえす−ほとけやかみに−つかふとて−このひとたひそ−いまたたひなる |
10468 |
未入力 正徹 (xxx)
見てもしれつひに一木そまことなるかりにならひし三の浜松
みてもしれ−つひにひときそ−まことなる−かりにならひし−みつのはままつ |
10469 |
未入力 正徹 (xxx)
めくりこし三の界を此たひやいてて仏を友とたのまん
めくりこし−みつのさかひを−このたひや−いててほとけを−ともとたのまむ |
10470 |
未入力 正徹 (xxx)
仏とも法ともしらぬ人にこそもとのさとりはふかくみえけれ
ほとけとも−のりともしらぬ−ひとにこそ−もとのさとりは−ふかくみえけれ |
10471 |
未入力 正徹 (xxx)
一かたにうつりうつらす久かたの中なる法の花のかかみは
ひとかたに−うつりうつらす−ひさかたの−うちなるのりの−はなのかかみは |
10472 |
未入力 正徹 (xxx)
しるしらす人の心にてる月や鷲の高根にあり明の空
しるしらす−ひとのこころに−てるつきや−わしのたかねに−ありあけのそら |
10473 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつからつくりなしぬる続歌は百の仏のみそきなりけり
おのつから−つくりなしぬる−つつけうたは−もものほとけの−みそきなりけり |
10474 |
未入力 正徹 (xxx)
あふきみる鷲の高ねの春の花人の心にひらけてそ行く
あふきみる−わしのたかねの−はるのはな−ひとのこころに−ひらけてそゆく |
10475 |
未入力 正徹 (xxx)
いまもこし一日一夜にときおきし法のかきりの望月の雲
いまもこし−ひとひひとよに−ときおきし−のりのかきりの−もちつきのくも |
10476 |
未入力 正徹 (xxx)
露おつる一の音を色色にきくの心の花やひらけん
つゆおつる−ひとつのおとを−いろいろに−きくのこころの−はなやひらけむ |
10477 |
未入力 正徹 (xxx)
誰かきく三世の仏もいてぬまにときをはりての後にとく法
たれかきく−みよのほとけも−いてぬまに−ときをはりての−のちにとくのり |
10478 |
未入力 正徹 (xxx)
心よりすみのほるかな山のはにいつへき月をまねく庵は
こころより−すみのほるかな−やまのはに−いつへきつきを−まねくいほりは |
10479 |
未入力 正徹 (xxx)
かのきしにうかへる月の舟よせよいてては西にゆかぬよもなし
かのきしに−うかへるつきの−ふねよせよ−いててはにしに−ゆかぬよもなし |
10480 |
未入力 正徹 (xxx)
聞きかたくうけかたき身にたもちおかむ四十の後の法の実を
ききかたく−うけかたきみに−たもちおかむ−よそちののちの−のりのまことを |
10481 |
未入力 正徹 (xxx)
こゑそせぬ三世の仏の名をとへはたれそ心のおくにこたふる
こゑそせぬ−みよのほとけの−なをとへは−たれそこころの−おくにこたふる |
10482 |
未入力 正徹 (xxx)
たれかとくとかるる程そ説きおきしとかれぬ法の時そともなき
たれかとく−とかるるほとそ−ときおきし−とかれぬのりの−ときそともなき |
10483 |
未入力 正徹 (xxx)
我か仏たふとしといふことのはのあへるをしらぬ人もこそあれ
わかほとけ−たふとしといふ−ことのはの−あへるをしらぬ−ひともこそあれ |
10484 |
未入力 正徹 (xxx)
二ある手をむなしくはよもなさし三の宝の山にいる人
ふたつある−てをむなしくは−よもなさし−みつのたからの−やまにいるひと |
10485 |
未入力 正徹 (xxx)
さとりえぬなけきの本と思ひこし我か身に法の花咲きにけり
さとりえぬ−なけきのもとと−おもひこし−わかみにのりの−はなさきにけり |
10486 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから法のなかれと成りぬらん我か水くきのつもることのは
おのつから−のりのなかれと−なりぬらむ−わかみつくきの−つもることのは |
10487 |
未入力 正徹 (xxx)
いまそ猶三の衣につつみおく光あらはに御代を照さん
いまそなほ−みつのころもに−つつみおく−ひかりあらはに−みよをてらさむ |
10488 |
未入力 正徹 (xxx)
をしへおく法の心をさとらすはつたへぬ道や更になからん
をしへおく−のりのこころを−さとらすは−つたへぬみちや−さらになからむ |
10489 |
未入力 正徹 (xxx)
山もみなもとの仏のすかたにてたえす御法をとく嵐かな
やまもみな−もとのほとけの−すかたにて−たえすみのりを−とくあらしかな |
10490 |
未入力 正徹 (xxx)
さとるをもひらくか法の庭の松つらなる枝も雪の初花
さとるをも−ひらくかのりの−にはのまつ−つらなるえたも−ゆきのはつはな |
10491 |
未入力 正徹 (xxx)
草木かは生きとしいける物はみな仏のなれるすかたをそかる
くさきかは−いきとしいける−ものはみな−ほとけのなれる−すかたをそかる |
10492 |
未入力 正徹 (xxx)
大空に目をとちひらく度ことに身のはれくもる月日をそしる
おほそらに−めをとちひらく−たひことに−みのはれくもる−つきひをそしる |
10493 |
未入力 正徹 (xxx)
まよふとも我より外にもとむへき法しなけれは心にそとふ
まよふとも−われよりほかに−もとむへき−のりしなけれは−こころにそとふ |
10494 |
未入力 正徹 (xxx)
ときとかぬ法の二の道たえてもとのさとりは悟りともなし
ときとかぬ−のりのふたつの−みちたえて−もとのさとりは−さとりともなし |
10495 |
未入力 正徹 (xxx)
あふ事は四十あまりの法なからさらにときたる一もしもなし
あふことは−よそちあまりの−のりなから−さらにときたる−ひともしもなし |
10496 |
未入力 正徹 (xxx)
たつね見るふかき心にやとりきていく夜の月の胸にみつらん
たつねみる−ふかきこころに−やとりきて−いくよのつきの−むねにみつらむ |
10497 |
未入力 正徹 (xxx)
さりともな三の宝の世にまさはおろかなる身も其数そかし
さりともな−みつのたからの−よにまさは−おろかなるみも−そのかすそかし |
10498 |
未入力 正徹 (xxx)
さくこともちる事もなしかかれはやしきみの花を仏うくらん
さくことも−ちることもなし−かかれはや−しきみのはなを−ほとけうくらむ |
10499 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねてもあひみんものか法の師のかくれし鷲の山にありとも
たつねても−あひみむものか−のりのしの−かくれしわしの−やまにありとも |
10500 |
未入力 正徹 (xxx)
あやふくもあやふからすもおもふなよわたす仏のままのつきはし
あやふくも−あやふからすも−おもふなよ−わたすほとけの−ままのつきはし |
10501 |
未入力 正徹 (xxx)
くらき夜は松ふりたてて行く賎の光にあふもさそなうれしき
くらきよは−まつふりたてて−ゆくしつの−ひかりにあふも−さそなうれしき |
10502 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかなる我かむね分けていつる月ふりさけみれは村雲の月
しつかなる−わかむねわけて−いつるつき−ふりさけみれは−むらくものつき |
10503 |
未入力 正徹 (xxx)
老か身の□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
おいかみの−ххххххх−ххххх−ххххххх−ххххххх |
10504 |
未入力 正徹 (xxx)
もとよりもにこらさりける身をなせる四の一の水清くして
もとよりも−にこらさりける−みをなせる−よつのひとつの−みつきよくして |
10505 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつからあへる時かなやとれとは水も思はす月もたつねす
おのつから−あへるときかな−やとれとは−みつもおもはす−つきもたつねす |
10506 |
未入力 正徹 (xxx)
すますなり此一度の花すすく水より清きもとの心を
すますなり−このひとたひの−はなすすく−みつよりきよき−もとのこころを |
10507 |
未入力 正徹 (xxx)
おのつから法の衣を清むなりちらせる杖の水のしら玉
おのつから−のりのころもを−きよむなり−ちらせるつゑの−みつのしらたま |
10508 |
未入力 正徹 (xxx)
めくみをもけにもらさすはおろかなることのはまても神やうけまし
めくみをも−けにもらさすは−おろかなる−ことのはまても−かみやうけまし |
10509 |
未入力 正徹 (xxx)
千はやふる神の御国に生れあふ我か行末を猶たのむなり
ちはやふる−かみのみくにに−うまれあふ−わかゆくすゑを−なほたのむなり |
10510 |
未入力 正徹 (xxx)
すみ吉のかみの心にかよははやおろかなる身のしきしまの道
すみよしの−かみのこころに−かよははや−おろかなるみの−しきしまのみち |
10511 |
未入力 正徹 (xxx)
いま祈る心の道の一すちそ神もまことにうけは引くへき
いまいのる−こころのみちの−ひとすちそ−かみもまことに−うけはひくへき |
10512 |
未入力 正徹 (xxx)
調七日七夜こもりぬ春日山此のちの世を神にまかせて
ххなぬか−ななよこもりぬ−かすかやま−こののちのよを−かみにまかせて |
10513 |
未入力 正徹 (xxx)
此山のあらゆる神に手向くなりみよことのはのぬさの追風
このやまの−あらゆるかみに−たむくなり−みよことのはの−ぬさのおひかせ |
10514 |
未入力 正徹 (xxx)
いにしへのわか父母そ神となる此世にすくへめくりあひにき
いにしへの−わかちちははそ−かみとなる−このよにすくへ−めくりあひにき |
10515 |
未入力 正徹 (xxx)
手向をはそこともささし日本にあらゆる神の見るにまかせて
たむけをは−そこともささし−ひのもとに−あらゆるかみの−みるにまかせて |
10516 |
未入力 正徹 (xxx)
言葉の玉をみかきて大内の神の鏡もてらしそふらし
ことのはの−たまをみかきて−おほうちの−かみのかかみも−てらしそふらし |
10517 |
未入力 正徹 (xxx)
神垣やしめの内外のゆふしてにけふはぬきほをかけやそふらん
かみかきや−しめのうちとの−ゆふしてに−けふはぬきほを−かけやそふらむ |
10518 |
未入力 正徹 (xxx)
神となり人と生れて此国にきたれはまなふしきしまの道
かみとなり−ひととうまれて−このくにに−きたれはまなふ−しきしまのみち |
10519 |
未入力 正徹 (xxx)
身にそしる七の社の七夜まて契なくてはかくはつかへし
みにそしる−ななのやしろの−ななよまて−ちきりなくては−かくはつかへし |
10520 |
未入力 正徹 (xxx)
よそに見る神のいかきを思ひねの宮この夢に夜や越えまし
よそにみる−かみのいかきを−おもひねの−みやこのゆめに−よるやこえまし |
10521 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の神もしるらん石清水生ひそふ竹の世世の言のは
すみよしの−かみもしるらむ−いはしみつ−おひそふたけの−よよのことのは |
10522 |
未入力 正徹 (xxx)
みかけ人万の神のやはらくる光そやかてやまとことのは
みかけひと−よろつのかみの−やはらくる−ひかりそやかて−やまとことのは |
10523 |
未入力 正徹 (xxx)
にこる世の我等かために神となり仏としれは涙おちつつ
にこるよの−われらかために−かみとなり−ほとけとしれは−なみたおちつつ |
10524 |
未入力 正徹 (xxx)
此国にあとをそたるる敷島の道をしらきの神もうくらん
このくにに−あとをそたるる−しきしまの−みちをしらきの−かみもうくらむ |
10525 |
未入力 正徹 (xxx)
狩人の矢さきの鹿もうれふなよ神そすくはんすはのみさ山
かりひとの−やさきのしかも−うれふなよ−かみそすくはむ−すはのみさやま |
10526 |
未入力 正徹 (xxx)
あふけ猶物いひかはすことのはは神代の歌そしきしまの道
あふけなほ−ものいひかはす−ことのはは−かみよのうたそ−しきしまのみち |
10527 |
未入力 正徹 (xxx)
芦原はもとより神の国なれはいつくもいかてめくみなからん
あしはらは−もとよりかみの−くになれは−いつくもいかて−めくみなからむ |
10528 |
未入力 正徹 (xxx)
神や又神のしをりの跡しめて右の馬場にひかりならへし
かみやまた−かみのしをりの−あとしめて−みきのうまはに−ひかりならへし |
10529 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉のかけを社と松しめてつくりみかかぬ玉津島守
ことのはの−かけをやしろと−まつしめて−つくりみかかぬ−たまつしまもり |
10530 |
未入力 正徹 (xxx)
神ませは草の庵とは心見す軒はは萱の宮はしらかも
かみませは−くさのいほとは−こころみす−のきははかやの−みやはしらかも |
10531 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくへき万社はおほけれと我か庵の神にまつそつかふる
あふくへき−よろつやしろは−おほけれと−わかいほのかみに−まつそつかふる |
10532 |
未入力 正徹 (xxx)
法そこれ此日本の神の国に仏も出ては歌をときてん
のりそこれ−このひのもとの−かみのくにに−ほとけもいては−うたをときてむ |
10533 |
未入力 正徹 (xxx)
百かすは神の見るめにかなふてふ心のうみのことのはそこれ
ももかすは−かみのみるめに−かなふてふ−こころのうみの−ことのはそこれ |
10534 |
未入力 正徹 (xxx)
まもるへき神のまことは有りなから人のいつはり世そしるしなき
まもるへき−かみのまことは−ありなから−ひとのいつはり−よそしるしなき |
10535 |
未入力 正徹 (xxx)
思ふことたれかのこらむ日本の神をつくして手向する世に
おもふこと−たれかのこらむ−ひのもとの−かみをつくして−たむけするよに |
10536 |
未入力 正徹 (xxx)
ことのはに神やましはる朝きよめちりをさまれる宿に通ひて
ことのはに−かみやましはる−あさきよめ−ちりをさまれる−やとにかよひて |
10537 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の我か君とせし八幡山あふかさらめや世をはすつとも
すみよしの−わかきみとせし−やはたやま−あふかさらめや−よをはすつとも |
10538 |
未入力 正徹 (xxx)
ましはりしちりをはらひて八幡山君にあひみん日をや待つらん
ましはりし−ちりをはらひて−やはたやま−きみにあひみむ−ひをやまつらむ |
10539 |
未入力 正徹 (xxx)
宮人もあふひかささん酉の日を神やまつらんかものみつかき
みやひとも−あふひかささむ−とりのひを−かみやまつらむ−かものみつかき |
10540 |
未入力 正徹 (xxx)
天くたる神のいたせしことの葉の初を歌とたれかしらさる
あまくたる−かみのいたせし−ことのはの−はしめをうたと−たれかしらさる |
10541 |
未入力 正徹 (xxx)
いちはやき荒人かみそあらかねの此国土のかためとはなる
いちはやき−あらひとかみそ−あらかねの−このくにつちの−かためとはなる |
10542 |
未入力 正徹 (xxx)
我ならぬ神こそなけれ神や又人の心を神としるらん
われならぬ−かみこそなけれ−かみやまた−ひとのこころを−かみとしるらむ |
10543 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉に年ふる霜の翁さひ道なたやしそ行すゑの空
すみよしに−としふるしもの−おきなさひ−みちなたやしそ−ゆくすゑのそら |
10544 |
未入力 正徹 (xxx)
跡たるる神も仏も影なれは身をはなれたる光やはある
あとたるる−かみもほとけも−かけなれは−みをはなれたる−ひかりやはある |
10545 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉のつもるにつけて日本の神をもらさす手向けつるかな
ことのはの−つもるにつけて−ひのもとの−かみをもらさす−たむけつるかな |
10546 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の神や生れて世のために行ををしへし和歌のうら人
すみよしの−かみやうまれて−よのために−みちををしへし−わかのうらひと |
10547 |
未入力 正徹 (xxx)
八雲たつ遠山かつらゆふかけて出雲の宮になひく神風
やくもたつ−とほやまかつら−ゆふかけて−いつものみやに−なひくかみかせ |
10548 |
未入力 正徹 (xxx)
天下きよき春かな神社あまたまつりて年そくれにし
あめかした−きよきはるかな−かみやしろ−あまたまつりて−としそくれにし |
10549 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の神の見るめにかなふ浪ことしよせはや松のことのは
すみよしの−かみのみるめに−かなふなみ−ことしよせはや−まつのことのは |
10550 |
未入力 正徹 (xxx)
手向歌天つ国つの社よりかすをつくして神やうくらん
たむけうた−あまつくにつの−やしろより−かすをつくして−かみやうくらむ |
10551 |
未入力 正徹 (xxx)
道まもる神のすかたにあふくなり住吉の松玉津しま山
みちまもる−かみのすかたに−あふくなり−すみよしのまつ−たまつしまやま |
10552 |
未入力 正徹 (xxx)
あたらしきことのはもかな廿とせに社はかはるすみよしの松
あたらしき−ことのはもかな−はたとせに−やしろはかはる−すみよしのまつ |
10553 |
未入力 正徹 (xxx)
社あれて神やいつこと見えなからゆゑあるへくもふしをかみつつ
やしろあれて−かみやいつこと−みえなから−ゆゑあるへくも−ふしをかみつつ |
10554 |
未入力 正徹 (xxx)
みたらしや神のいもひにかくこりの水にこるとも心清くは
みたらしや−かみのいもひに−かくこりの−みつにこるとも−こころきよくは |
10555 |
未入力 正徹 (xxx)
ましりても塵なき神の御心をたれくみしれとすみの江の水
ましりても−ちりなきかみの−みこころを−たれくみしれと−すみのえのみつ |
10556 |
未入力 正徹 (xxx)
秋をまつ星も影をやうつすらん神の手あらふ水のたらひに
あきをまつ−ほしもかけをや−うつすらむ−かみのてあらふ−みつのたらひに |
10557 |
未入力 正徹 (xxx)
影うつす神のよるへの水のこと清くすめるを心ともかな
かけうつす−かみのよるへの−みつのこと−きよくすめるを−こころともかな |
10558 |
未入力 正徹 (xxx)
かたそきの神もろ人のことの葉を玉くしの枝とけふやうくらん
かたそきの−かみもろひとの−ことのはを−たまくしのえと−けふやうくらむ |
10559 |
未入力 正徹 (xxx)
七日ふる宮こを旅のかり宮にたつる榊そ神の八重山
なぬかふる−みやこをたひの−かりみやに−たつるさかきそ−かみのやへやま |
10560 |
未入力 正徹 (xxx)
御戸ちかく神のみつしや袖ふれてたつる榊もかににほふらん
みとちかく−かみのみつしや−そてふれて−たつるさかきも−かににほふらむ |
10561 |
未入力 正徹 (xxx)
宮柱めくる月日もかきりなきしたつ岩ねの榊はのかけ
みやはしら−めくるつきひも−かきりなき−したついはねの−さかきはのかけ |
10562 |
未入力 正徹 (xxx)
二柱四重のみかきの八重榊ゆゑあるへしとあふくはかりそ
ふたはしら−よへのみかきの−やへさかき−ゆゑあるへしと−あふくはかりそ |
10563 |
未入力 正徹 (xxx)
くもらしな松を宮ゐに鏡かけつくりみかかぬ玉つしま山
くもらしな−まつをみやゐに−かかみかけ−つくりみかかぬ−たまつしまやま |
10564 |
未入力 正徹 (xxx)
人もみなもとのさとりをひらけとやをさめし三の箱崎の松
ひともみな−もとのさとりを−ひらけとや−をさめしみつの−はこさきのまつ |
10565 |
未入力 正徹 (xxx)
すよしの松にとははやありふへき身はかたそきの神やうくらん
すみよしの−まつにとははや−ありふへき−みはかたそきの−かみやうくらむ |
10566 |
未入力 正徹 (xxx)
色をしる人こそさらにかたそきの神の見るめの松のことのは
いろをしる−ひとこそさらに−かたそきの−かみのみるめの−まつのことのは |
10567 |
未入力 正徹 (xxx)
古の風をあふかんしきしまや道のひしりの廟の松はら
いにしへの−かせをあふかむ−しきしまや−みちのひしりの−へうのまつはら |
10568 |
未入力 正徹 (xxx)
さかゆけと民のかまとや思ふらし平野の杉のもとのちかひは
さかゆけと−たみのかまとや−おもふらし−ひらののすきの−もとのちかひは |
10569 |
未入力 正徹 (xxx)
紙屋川北野平野の神杉をなかれわけたる水の白なみ
かみやかは−きたのひらのの−かみすきを−なかれわけたる−みつのしらなみ |
10570 |
未入力 正徹 (xxx)
世ををさめ国をしつむるしるしとや神の社に鉾杉たつらん
よををさめ−くにをしつむる−しるしとや−かみのやしろに−むすきたつらむ |
10571 |
未入力 正徹 (xxx)
神路山四重の御かきに八重のしめたつる榊になひくゆふして
かみちやま−よへのみかきに−やへのしめ−たつるさかきに−なひくゆふして |
10572 |
未入力 正徹 (xxx)
神社我か庵の園の竹の世もすみよかれとや跡をしめけん
かみやしろ−わかいほのそのの−たけのよも−すみよかれとや−あとをしめけむ |
10573 |
未入力 正徹 (xxx)
岸ちかくいま住吉の宮つくりはまにかすそふ人の家家
きしちかく−いますみよしの−みやつくり−はまにかすそふ−ひとのいへいへ |
10574 |
未入力 正徹 (xxx)
玉の戸も光くもらすみつかきの久しくちりにましはれる神
たまのとも−ひかりくもらす−みつかきの−ひさしくちりに−ましはれるかみ |
10575 |
未入力 正徹 (xxx)
神風も四重のみかきの世にこえて君にふれよとさそ祈るらん
かみかせも−よへのみかきの−よにこえて−きみにふれよと−さそいのるらむ |
10576 |
未入力 正徹 (xxx)
吹くかせも昔に似たるのとけさやなほかたそきの行あひの松
ふくかせも−むかしににたる−のとけさや−なほかたそきの−ゆきあひのまつ |
10577 |
未入力 正徹 (xxx)
うれしくも神のみ山の松風を七夜の苔の袖の聞きつる
うれしくも−かみのみやまの−まつかせを−ななよのこけの−そてのききつる |
10578 |
未入力 正徹 (xxx)
こく船のかとりの崎の岩の上によせてちる浪の又手向くなり
こくふねの−かとりのさきの−いはのうへに−よせてちるなみの−またたむくなり |
10579 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉の四の社は四の時万かへりの年やまもらん
すみよしの−よつのやしろは−よつのとき−よろつかへりの−としやまもらむ |
10580 |
未入力 正徹 (xxx)
契りおかむいまは宮こにかへるさに又行合の住よしの松
ちきりおかむ−いまはみやこに−かへるさに−またゆきあひの−すみよしのまつ |
10581 |
未入力 正徹 (xxx)
神もさそまことの道とみつかきの久しき法の末まもるらん
かみもさそ−まことのみちと−みつかきの−ひさしきのりの−すゑまもるらむ |
10582 |
未入力 正徹 (xxx)
手向していのるしるしをみつかきのひさしく君や御代につかへん
たむけして−いのるしるしを−みつかきの−ひさしくきみや−みよにつかへむ |
10583 |
未入力 正徹 (xxx)
うれしくも七夜をかけてみつかきの春の霞にこもりぬるかな
うれしくも−ななよをかけて−みつかきの−はるのかすみに−こもりぬるかな |
10584 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉を手向けし数も瑞霞の久しく成りぬ神やうけけん
ことのはを−たむけしかすも−みつかきの−ひさしくなりぬ−かみやうけけむ |
10585 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくてふ人の心にまかせつつ千とせ万代君はかきらし
あふくてふ−ひとのこころに−まかせつつ−ちとせよろつよ−きみはかきらし |
10586 |
未入力 正徹 (xxx)
十かへりの花やにほはん和歌の浦の二葉の松の春のことのは
とかへりの−はなやにほはむ−わかのうらの−ふたはのまつの−はるのことのは |
10587 |
未入力 正徹 (xxx)
おしなへてたれも心にかなふをや君か代いのることふきにせん
おしなへて−たれもこころに−かなふをや−きみかよいのる−ことふきにせむ |
10588 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまや此ことの葉の末の世をかけしはしめそ天のうきはし
しきしまや−このことのはの−すゑのよを−かけしはしめそ−あめのうきはし |
10589 |
未入力 正徹 (xxx)
なかくさせ八千世ませとのくりことも老いてそいととしつのをたまき
なかくさせ−やちよませとの−くりことも−おいてそいとと−しつのをたまき |
10590 |
未入力 正徹 (xxx)
つたへくる御法もひろき天地を祈るままにや猶さかへまし
つたへくる−みのりもひろき−あめつちを−いのるままにや−なほさかへまし |
10591 |
未入力 正徹 (xxx)
万代と跡たれそめし敷島の国のさかへは神のまにまに
よろつよと−あとたれそめし−しきしまの−くにのさかへは−かみのまにまに |
10592 |
未入力 正徹 (xxx)
宮柱神のさためし五百年ののちのさかへにめくりあはなん
みやはしら−かみのさためし−いほとせの−のちのさかへに−めくりあはなむ |
10593 |
未入力 正徹 (xxx)
ありへんは心のままを人ことにさしてないひそ千とせ万世
ありへむは−こころのままを−ひとことに−さしてないひそ−ちとせよろつよ |
10594 |
未入力 正徹 (xxx)
かきりなき君か八千世の有数をつもりの浦の砂にそみる
かきりなき−きみかやちよの−ありかすを−つもりのうらの−いさこにそみる |
10595 |
未入力 正徹 (xxx)
諸人の心のままにいははなん千代万代はいひなれてけり
もろひとの−こころのままに−いははなむ−ちよよろつよは−いひなれてけり |
10596 |
未入力 正徹 (xxx)
国民もやすかれと祈ること草よ君は千世ませいのるなりけり
くにたみも−やすかれといのる−ことくさよ−きみはちよませ−いのるなりけり |
10597 |
未入力 正徹 (xxx)
法の師の契結ひし都とて御代もさかへは寺もさかえん
のりのしの−ちきりむすひし−みやことて−みよもさかへは−てらもさかえむ |
10598 |
未入力 正徹 (xxx)
ねかはくは生きとしいける物ともに本の覚をはやくひらかん
ねかはくは−いきとしいける−ものともに−もとのさとりを−はやくひらかむ |
10599 |
未入力 正徹 (xxx)
名もたかく国をかさねて我か君のめくみをうけよふしの山守
なもたかく−くにをかさねて−わかきみの−めくみをうけよ−ふしのやまもり |
10600 |
未入力 正徹 (xxx)
神の代のあまてる日次月次にたえせぬ道そしきしまの歌
かみのよの−あまてるひなみ−つきなみに−たえせぬみちそ−しきしまのうた |
10601 |
未入力 正徹 (xxx)
世ををさめ民をめくむも君と臣身を合せたる時そかしこき
よををさめ−たみをめくむも−きみとひと−みをあはせたる−ときそかしこき |
10602 |
未入力 正徹 (xxx)
しつかにて身と心とをよくしれは神と仏の二なりけり
しつかにて−みとこころとを−よくしれは−かみとほとけの−ふたつなりけり |
10603 |
未入力 正徹 (xxx)
神路山行末とほきかちあよみ千とせの数やはこひ置きけん
かみちやま−ゆくすゑとほき−かちあよみ−ちとせのかすや−はこひおきけむ |
10604 |
未入力 正徹 (xxx)
神やしる百の手向も年年につもれはつもる君かよはひを
かみやしる−もものたむけも−としとしに−つもれはつもる−きみかよはひを |
10605 |
未入力 正徹 (xxx)
あふけ猶これも都にかへりなは君かめくみを三輪の神杉
あふけなほ−これもみやこに−かへりなは−きみかめくみを−みわのかみすき |
10606 |
未入力 正徹 (xxx)
いかかしる君にむかはすかけに居て世をいはふ人そ実なりける
いかかしる−きみにむかはす−かけにゐて−よをいはふひとそ−まことなりける |
10607 |
未入力 正徹 (xxx)
秋津すは人のつくらぬ国なれは代代のさかへも神のまにまに
あきつすは−ひとのつくらぬ−くになれは−よよのさかへも−かみのまにまに |
10608 |
未入力 正徹 (xxx)
ねかふことあまりおほきはなきににて春の初のことふきもせす
ねかふこと−あまりおほきは−なきににて−はるのはしめの−ことふきもせす |
10609 |
未入力 正徹 (xxx)
君か代は白雲かかる塵山の山をつくしてちりとなるまて
きみかよは−しらくもかかる−ちりやまの−やまをつくして−ちりとなるまて |
10610 |
未入力 正徹 (xxx)
御熊野や浜ゆふならぬしめ縄もいくへにかけて君を祈らん
みくまのや−はまゆふならぬ−しめなはも−いくへにかけて−きみをいのらむ |
10611 |
未入力 正徹 (xxx)
世にふれは一木の陰もあし原の国つ社の数そそひゆく
よにふれは−ひときのかけも−あしはらの−くにつやしろの−かすそそひゆく |
10612 |
未入力 正徹 (xxx)
神垣の松のよはひもかきりなく久しかるへき法の行末
かみかきの−まつのよはひも−かきりなく−ひさしかるへき−のりのゆくすゑ |
10613 |
未入力 正徹 (xxx)
ことの葉の種をそ神はうゑおきし松に生ひたつ住吉の岸
ことのはの−たねをそかみは−うゑおきし−まつにおひたつ−すみよしのきし |
10614 |
未入力 正徹 (xxx)
家家の風はあれとも君か代のちりをさまれる時そかしこき
いへいへの−かせはあれとも−きみかよの−ちりをさまれる−ときそかしこき |
10615 |
未入力 正徹 (xxx)
さかふなりとよあし原の世のために神のはしめし道の言葉
さかふなり−とよあしはらの−よのために−かみのはしめし−みちのことのは |
10616 |
未入力 正徹 (xxx)
あふくなり道のまもりにならのはの其世にいてし若の浦人
あふくなり−みちのまもりに−ならのはの−そのよにいてし−わかのうらひと |
10617 |
未入力 正徹 (xxx)
たつねみよむかしの人の跡つけし此しきしまの道にあふまて
たつねみよ−むかしのひとの−あとつけし−このしきしまの−みちにあふまて |
10618 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまの道行く人も玉ほこの玉みかくへき憑ある世に
しきしまの−みちゆくひとも−たまほこの−たまみかくへき−たのみあるよに |
10619 |
未入力 正徹 (xxx)
尋ねみよ神をしるへに敷島のふるき道あるおくの光を
たつねみよ−かみをしるへに−しきしまの−ふるきみちある−おくのひかりを |
10620 |
未入力 正徹 (xxx)
すむ鶴のつはさの霜も年ふるき松に契りて幾世へぬらん
すむつるの−つはさのしもも−としふるき−まつにちきりて−いくよへぬらむ |
10621 |
未入力 正徹 (xxx)
うれしさを空にもつつめ毛衣の袂かひろき鶴のつはさは
うれしさを−そらにもつつめ−けころもの−たもとかひろき−つるのつはさは |
10622 |
未入力 正徹 (xxx)
くもりなきたた大空にむかひても君をは千世と祈るはかりそ
くもりなき−たたおほそらに−むかひても−きみをはちよと−いのるはかりそ |
10623 |
未入力 正徹 (xxx)
わたつ海の浪をそのまま敷島の国と成りにし土そ久しき
わたつうみの−なみをそのまま−しきしまの−くにとなりにし−つちそひさしき |
10624 |
未入力 正徹 (xxx)
天の世の豊あし原の国となり人と生れしのちそさかふる
あめのよの−とよあしはらの−くにとなり−ひととうまれし−のちそさかふる |
10625 |
未入力 正徹 (xxx)
あつさ弓やそ氏神のまもります我か国国のいやさかへ行く
あつさゆみ−やそうちかみの−まもります−わかくにくにの−いやさかへゆく |
10626 |
未入力 正徹 (xxx)
さりともと神をそあふく此国のあらんかきりの大和ことのは
さりともと−かみをそあふく−このくにの−あらむかきりの−やまとことのは |
10627 |
未入力 正徹 (xxx)
こととはむしるや雲ゐの都鳥我かおもふ友の千世の行末
こととはむ−しるやくもゐの−みやことり−わかおもふともの−ちよのゆくすゑ |
10628 |
未入力 正徹 (xxx)
世にこえて猶そさかへんことの葉を神のさためし出雲八重垣
よにこえて−なほそさかへむ−ことのはを−かみのさためし−いつもやへかき |
10629 |
未入力 正徹 (xxx)
まなへたた神の代よりのことわさは此道のみのやまと言葉
まなへたた−かみのよよりの−ことわさは−このみちのみの−やまとことのは |
10630 |
未入力 正徹 (xxx)
いく世へぬ女神をかみの二はしらあひ見しままの天の浮橋
いくよへぬ−めかみをかみの−ふたはしら−あひみしままの−あめのうきはし |
10631 |
未入力 正徹 (xxx)
年そよき神の生れしむ月立つけふの一日の初ねにそあふ
としそよき−かみのうまれし−むつきたつ−けふのひとひの−はつねにそあふ |
10632 |
未入力 正徹 (xxx)
ましはるも君か代のため八幡山ふもとの塵の年つもるまて
ましはるも−きみかよのため−やはたやま−ふもとのちりの−としつもるまて |
10633 |
未入力 正徹 (xxx)
いまもさそ神世のままにもろ人の物いふことはみな歌にして
いまもさそ−かみよのままに−もろひとの−ものいふことは−みなうたにして |
10634 |
未入力 正徹 (xxx)
天にます神のうみてし国なれは此秋津洲とけにそいふなる
あめにます−かみのうみてし−くになれは−このあきつすと−けにそいふなる |
10635 |
未入力 正徹 (xxx)
神風の吹くにまかせてことのはの花そ常はの色そまされる
かみかせの−ふくにまかせて−ことのはの−はなそときはの−いろそまされる |
10636 |
未入力 正徹 (xxx)
八幡山民をなつとや大ぬさの手ことに君か世になひくらん
やはたやま−たみをなつとや−おほぬさの−てことにきみか−よになひくらむ |
10637 |
未入力 正徹 (xxx)
ならへ見よ神路の山のかたそきに行合のぬしのしむる社を
ならへみよ−かみちのやまの−かたそきに−ゆきあひのぬしの−しむるやしろを |
10638 |
未入力 正徹 (xxx)
住吉や松の林にあとしめてさかへきにける世世のことの葉
すみよしや−まつのはやしに−あとしめて−さかへきにける−よよのことのは |
10639 |
未入力 正徹 (xxx)
なからへて猶幾たひか宮柱たてかふる年に行合の松
なからへて−なほいくたひか−みやはしら−たてかふるとしに−ゆきあひのまつ |
10640 |
未入力 正徹 (xxx)
万代を契りそそむるすみ吉の神もこよひや松のことのは
よろつよを−ちきりそそむる−すみよしの−かみもこよひや−まつのことのは |
10641 |
未入力 正徹 (xxx)
玉にぬく糸を百たひすけかへて君をいのりの千とせ万世
たまにぬく−いとをももたひ−すけかへて−きみをいのりの−ちとせよろつよ |
10642 |
未入力 正徹 (xxx)
しきしまの歌をまもりの神の世にあらむかきりの宿そさかへん
しきしまの−うたをまもりの−かみのよに−あらむかきりの−やとそさかへむ |
10643 |
未入力 正徹 (xxx)
をさまれる世はしきしまの道ひろしせきあへぬまてたれも入りたて
をさまれる−よはしきしまの−みちひろし−せきあへぬまて−たれもいりたて |