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内裏歌合


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作品集名内裏歌合 
作品集名読みだいりうたあわせ 
作成年月日建保二年八月十六日(1214年9月2日)
場所 

00001
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をさまれる民の草はをみせかほになひく田のもの秋の初風

をさまれる−たみのくさはを−みせかほに−なひくたのもの−あきのはつかせ


00002
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しらさりついつはた秋のきにけらしふりて身にしむ風の音かな

しらさりつ−いつはたあきの−きにけらし−ふりてみにしむ−かせのおとかな


00003
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よやさむき衣手うすしかたしきのまたひとへなる秋の初風

よやさむき−ころもてうすし−かたしきの−またひとへなる−あきのはつかせ


00004
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荻のはにそよくあはれは吹きすきて心にのこる秋風のこゑ

をきのはに−そよくあはれは−ふきすきて−こころにのこる−あきかせのこゑ


00005
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さむしろに人をはたれとたのまねとくるる夜ことに秋風そ吹く

さむしろに−ひとをはたれと−たのまねと−くるるよことに−あきかせそふく


00006
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いまよりの萩のしたはもいかならんまついねかての秋風そふく

いまよりの−はきのしたはも−いかならむ−まついねかての−あきかせそふく


00007
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うちなひきまさきのかつら秋やくると山にかはるけさのはつ風

うちなひき−まさきのかつら−あきやくる−とやまにかはる−けさのはつかせ


00008
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露はけに袖にもおきあへすをき原やしのに秋ふく夕暮の風

つゆはけに−そてにもおきあへす−をきはらや−しのにあきふく−ゆふくれのかせ


00009
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ひこほしのつま待つ秋のよひのまは風のみわたるかささきのはし

ひこほしの−つままつあきの−よひのまは−かせのみわたる−かささきのはし


00010
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うつりゆく草はにつけてふく風の色はさやかにみえぬ秋かは

うつりゆく−くさはにつけて−ふくかせの−いろはさやかに−みえぬあきかは


00011
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をとめ子か袖ふる山のたまかつらみたれてなひく秋の白露

をとめこか−そてふるやまの−たまかつら−みたれてなひく−あきのしらつゆ


00012
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やたの野の色つくあさちおしなへてしろくも露をふく嵐かな

やたののの−いろつくあさち−おしなへて−しろくもつゆを−ふくあらしかな


00013
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秋きぬと風にのみやはおとろかんひろはぬ袖に玉もはかなし

あききぬと−かせにのみやは−おとろかむ−ひろはぬそてに−たまもはかなし


00014
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木のまより色つくかけにうつりきてたもとにそむる秋の夕露

このまより−いろつくかけに−うつりきて−たもとにそむる−あきのゆふつゆ


00015
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を山田のかりほのいほのとことはにわかころもては秋のしら露

をやまたの−かりほのいほの−とことはに−わかころもては−あきのしらつゆ


00016
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秋はきぬさそな草はのしをるらん袖たにかかる露のたまくら

あきはきぬ−さそなくさはの−しをるらむ−そてたにかかる−つゆのたまくら


00017
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袖ぬらすしのふもちすりたかためかみたれてもろさ宮木のの露

そてぬらす−しのふもちすり−たかためか−みたれてもろさ−みやきののつゆ


00018
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おとそよく荻のはよりもあさ風の人にしらるる袖の夕露

おとそよく−をきのはよりも−あさかせの−ひとにしらるる−そてのゆふつゆ


00019
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夕されは野もせにみかくしら露のたまれはかてに秋風そふく

ゆふされは−のもせにみかく−しらつゆの−たまれはかてに−あきかせそふく


00020
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ことわりの露とほかりはなくさめとぬれそふ袖にもよほすも秋

ことわりの−つゆとほかりは−なくさめと−ぬれそふそてに−もよほすもあき


00021
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おほかたは我か身ひとつの秋としもあらしにはるる山のはの月

おほかたは−わかみひとつの−あきとしも−あらしにはるる−やまのはのつき


00022
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あまつ空みちもやとりもしら雲のあくるもしらて月を見るかな

あまつそら−みちもやとりも−しらくもの−あくるもしらて−つきをみるかな


00023
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秋はまたうきをも袖につつみけりなれぬる月の露のかことに

あきはまた−うきをもそてに−つつみけり−なれぬるつきの−つゆのかことに


00024
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ゆふへより雲をはらひし秋風のともにふけゆく山のはの月

ゆふへより−くもをはらひし−あきかせの−ともにふけゆく−やまのはのつき


00025
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あくかれてやとをはいてぬこのさとも我かころもては月にぬれつつ

あくかれて−やとをはいてぬ−このさとも−わかころもては−つきにぬれつつ


00026
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いつはとはわかぬときはのやま人も空におとろく月の影かな

いつはとは−わかぬときはの−やまひとも−そらにおとろく−つきのかけかな


00027
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かささきのちかふるはしのおほひ羽を夜わたる月のいかてもるらん

かささきの−ちかふるはしの−おほひはを−よわたるつきの−いかてもるらむ


00028
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君と秋と月とひかりとよろつ代のちきりは空にくもりなくみゆ

きみとあきと−つきとひかりと−よろつよの−ちきりはそらに−くもりなくみゆ


00029
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月みても我かよはすてに久かたのあまねくてらせ秋の心を

つきみても−わかよはすてに−ひさかたの−あまねくてらせ−あきのこころを


00030
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久かたのきよきみ空の秋風に月も光をみかきそふらし

ひさかたの−きよきみそらの−あきかせに−つきもひかりを−みかきそふらし


00031
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いとはしな月まつよひのあさちふにたえたえそそく秋の村雨

いとはしな−つきまつよひの−あさちふに−たえたえそそく−あきのむらさめ


00032
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風すさふきりのおちはにあとたえて窓ふかき夜の秋のむら雨

かせすさふ−きりのおちはに−あとたえて−まとふかきよの−あきのむらさめ


00033
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花そめのころもの色もさたまらす野分になひく秋の村雨

はなそめの−ころものいろも−さたまらす−のわきになひく−あきのむらさめ


00034
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人はこすはらはぬ庭のきりのはに音なふ雨のおとのさひしさ

ひとはこす−はらはぬにはの−きりのはに−おとなふあめの−おとのさひしさ


00035
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秋はまた軒はの木のはつれなくてききもまかはぬ夜半の村雨

あきはまた−のきはのこのは−つれなくて−ききもまかはぬ−よはのむらさめ


00036
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あさなあさな一葉つつちるははそ原秋もしくれのもろき色かな

あさなあさな−ひとはつつちる−ははそはら−あきもしくれの−もろきいろかな


00037
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宮木野のこの下露やいかならん風に玉まく秋のむら雨

みやきのの−このしたつゆや−いかならむ−かせにたままく−あきのむらさめ


00038
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日くらしのなく夕暮のうき雲にむら雨そそくもりの下草

ひくらしの−なくゆふくれの−うきくもに−むらさめそそく−もりのしたくさ


00039
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しをれぬや庭もまかきも秋の色のふるとはつらきよるの村雨

しをれぬや−にはもまかきも−あきのいろの−ふるとはつらき−よるのむらさめ


00040
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風ませに窓うつよはのむら雨のもらぬよりもる床の露かな

かせませに−まとうつよはの−むらさめの−もらぬよりもる−とこのつゆかな


00041
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松風の秋にはいととたえたえにふしみの夢のきゆる雁かね

まつかせの−あきにはいとと−たえたえに−ふしみのゆめの−きゆるかりかね


00042
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かりかねのきこゆるそらやあけぬらん枕にうすきまとの月影

かりかねの−きこゆるそらや−あけぬらむ−まくらにうすき−まとのつきかけ


00043
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たかためにくる秋風のことつても涙そおつる初雁の声

たかために−くるあきかせの−ことつても−なみたそおつる−はつかりのこゑ


00044
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秋ふけぬころもかりかね夜やさむきつはさに雲を重ねてそ鳴く

あきふけぬ−ころもかりかね−よやさむき−つはさにくもを−かさねてそなく


00045
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このころの雁のなみたのはつしほに色わきそむる峰の松風

このころの−かりのなみたの−はつしほに−いろわきそむる−みねのまつかせ


00046
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雁かねのゆききを空にしのふとてかすみを霧にいくへなかめつ

かりかねの−ゆききをそらに−しのふとて−かすみをきりに−いくへなかめつ


00047
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山人もみちたえぬらんかりかねのともよひかはすみねの秋霧

やまひとも−みちたえぬらむ−かりかねの−ともよひかはす−みねのあききり


00048
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秋のかり風にきほひてこしちよりたれをたのむの沢に鳴くらん

あきのかり−かせにきほひて−こしちより−たれをたのむの−さはになくらむ


00049
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なきわたる雁の涙やしくるらんはねうちかはす村雲の空

なきわたる−かりのなみたや−しくるらむ−はねうちかはす−むらくものそら


00050
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たつた山から紅のふりいててなくやこすゑの秋のかりかね

たつたやま−からくれなゐの−ふりいてて−なくやこすゑの−あきのかりかね


00051
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秋の野のをはなふきちる風の上にありかさためぬ虫の声かな

あきののの−をはなふきちる−かせのうへに−ありかさためぬ−むしのこゑかな


00052
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秋の虫はたおる野へのくれはとりあやしく袖に露みたれつつ

あきのむし−はたおるのへの−くれはとり−あやしくそてに−つゆみたれつつ


00053
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くるるよりおなしまかきのきりきりすちかつく声に夜やふけぬらん

くるるより−おなしまかきの−きりきりす−ちかつくこゑに−よやふけぬらむ


00054
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野やさむさよはの枕のきりきりすわかもとゆひも霜はおくなり

のやさむさ−よはのまくらの−きりきりす−わかもとゆひも−しもはおくなり


00055
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露はつゆなく音はたてつきりきりすおもふかものを秋のよもきふ

つゆはつゆ−なくねはたてつ−きりきりす−おもふかものを−あきのよもきふ


00056
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秋はなほあさちかはらのおのれのみかれゆく虫のなにを待つらん

あきはなほ−あさちかはらの−おのれのみ−かれゆくむしの−なにをまつらむ


00057
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月影はいたらぬさともなくむしのこゑのかさりやふか草の露

つきかけは−いたらぬさとも−なくむしの−こゑのかさりや−ふかくさのつゆ


00058
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松むしの声をとひくる秋の野はたかふるさとの庭のまかきそ

まつむしの−こゑをとひくる−あきののは−たかふるさとの−にはのまかきそ


00059
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あるしから思ひたえにしよもきふにむかしもよほす松虫の声

あるしから−おもひたえにし−よもきふに−むかしもよほす−まつむしのこゑ


00060
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うつもれぬ軒はにつたふむしの音によもきかもとの宿の夕暮

うつもれぬ−のきはにつたふ−むしのねに−よもきかもとの−やとのゆふくれ


00061
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みむろ山した草かけてなくしかのこゑよりしけき暁の露

みむろやま−したくさかけて−なくしかの−こゑよりしけき−あかつきのつゆ


00062
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しのひあまり思ひやかくる神なひのみむろの山に鹿そ鳴くなる

しのひあまり−おもひやかくる−かみなひの−みむろのやまに−しかそなくなる


00063
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むかし思ふみわのひはらやかせくれてみねにをしかの声おくるなり

むかしおもふ−みわのひはらや−かせくれて−みねにをしかの−こゑおくるなり


00064
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おもひいる山にても又なくしかのなほうきときか秋の夕暮

おもひいる−やまにてもまた−なくしかの−なほうきときか−あきのゆふくれ


00065
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色かはる床はあさちふ露霜に鹿も妻なき音をや鳴くらん

いろかはる−とこはあさちふ−つゆしもに−しかもつまなき−ねをやなくらむ


00066
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あさちふのおのか草ふしうらかれて人やはとはぬさをしかの声

あさちふの−おのかくさふし−うらかれて−ひとやはとはぬ−さをしかのこゑ


00067
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ときこそあれいかにちきりてさをしかの秋の夕の野辺に鳴くらん

ときこそあれ−いかにちきりて−さをしかの−あきのゆふへの−のへになくらむ


00068
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恨みよとなれるちきりのしかのねよ夕もつらき霧のまかきに

うらみよと−なれるちきりの−しかのねよ−ゆふへもつらき−きりのまかきに


00069
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秋やまのみねゆくしかのともをなみきりにまとへる夕暮の声

あきやまの−みねゆくしかの−ともをなみ−きりにまとへる−ゆふくれのこゑ


00070
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あさなあさな木のはうつろひなく鹿のことわりしるき秋の山陰

あさなあさな−このはうつろひ−なくしかの−ことわりしるき−あきのやまかけ


00071
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袖の色は露のひまたにととまらてすすきも萩も秋風そふく

そてのいろは−つゆのひまたに−ととまらて−すすきもはきも−あきかせそふく


00072
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さきにけりうたのおほ野のこ萩原妻とふしかもいまや鳴くらん

さきにけり−うたのおほのの−こはきはら−つまとふしかも−いまやなくらむ


00073
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旅衣ひもとく花の色色もとほさとをののあたら朝霧

たひころも−ひもとくはなの−いろいろも−とほさとをのの−あたらあさきり


00074
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ぬれてほす袖こそあらね露の色はもとみし秋の萩か花すり

ぬれてほす−そてこそあらね−つゆのいろは−もとみしあきの−はきかはなすり


00075
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おしなへてうつろふ露にわきかねぬ花のえことに秋とをいはん

おしなへて−うつろふつゆに−わきかねぬ−はなのえことに−あきとをいはむ


00076
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こ萩さく花すり衣うつろひぬぬれての後や袖の朝露

こはきさく−はなすりころも−うつろひぬ−ぬれてののちや−そてのあさつゆ


00077
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あかなくに野へにましりてけふくれぬ露のやとかせもとあらの萩

あかなくに−のへにましりて−けふくれぬ−つゆのやとかせ−もとあらのはき


00078
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やとりつる月はかたみもととまらてあけゆく袖は萩か花すり

やとりつる−つきはかたみも−ととまらて−あけゆくそては−はきかはなすり


00079
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あさ露に花のしたひもとけにしを又いまさらに野への夕暮

あさつゆに−はなのしたひも−とけにしを−またいまさらに−のへのゆふくれ


00080
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秋風にさきちるをのの露しけは袖もとををにうつる萩原

あきかせに−さきちるをのの−つゆしけは−そてもとををに−うつるはきはら


00081
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竜田河うつる紅葉のちらぬまはわたれとにしき中やたえける

たつたかは−うつるもみちの−ちらぬまは−わたれとにしき−なかやたえける


00082
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ふみ分けてたれかはとはん秋山のもみちふりしく谷の下水

ふみわけて−たれかはとはむ−あきやまの−もみちふりしく−たにのしたみつ


00083
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山のはも時雨はまたさ朝日影くれなゐにほふ滝の白糸

やまのはも−しくれはまたさ−あさひかけ−くれなゐにほふ−たきのしらいと


00084
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大井河しもはかつらのもみちはもひとつあらしの山の秋風

おほゐかは−しもはかつらの−もみちはも−ひとつあらしの−やまのあきかせ


00085
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おもひこしいく田のもリの秋風に河おとすみぬよやふけぬらん

おもひこし−いくたのもリの−あきかせに−かはおとすみぬ−よやふけぬらむ


00086
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しくれつつ木のはをさそふ水の面にうきても秋のいなむとや思ふ

しくれつつ−このはをさそふ−みつのおもに−うきてもあきの−いなむとやおもふ


00087
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秋風のかつふきはらふ谷の戸におもふもきよくすめる山水

あきかせの−かつふきはらふ−たにのとに−おもふもきよく−すめるやまみつ


00088
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おとは河関のあらしのかけみえてたか色ふかき秋の滝つせ

おとはかは−せきのあらしの−かけみえて−たかいろふかき−あきのたきつせ


00089
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人くまぬいた井のし水さととほみむかしもいく世秋そもりける

ひとくまぬ−いたゐのしみつ−さととほみ−むかしもいくよ−あきそもりける


00090
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をくら山あらしやいそく大井河はやせの浪に秋の日かすを

をくらやま−あらしやいそく−おほゐかは−はやせのなみに−あきのひかすを


00091
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もみちははふりみふらすみおく霜のさえゆく松に秋風そ吹く

もみちはは−ふりみふらすみ−おくしもの−さえゆくまつに−あきかせそふく


00092
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はつ霜のをくらの山はうつろひぬ秋の木のはの色もかきりに

はつしもの−をくらのやまは−うつろひぬ−あきのこのはの−いろもかきりに


00093
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さをしかの妻とふをかは霜かれてからぬわさ田に残る秋風

さをしかの−つまとふをかは−しもかれて−からぬわさたに−のこるあきかせ


00094
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おきまよふ影をかたしく袖の月の霜の枕に秋風そふく

おきまよふ−かけをかたしく−そてのつきの−しものまくらに−あきかせそふく


00095
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しらすけのまののはきはらあさなあさなおきまとはせる秋の初霜

しらすけの−まののはきはら−あさなあさな−おきまとはせる−あきのはつしも


00096
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夜をさむみいまはあらしのをとめ子か袖ふる山の秋の初霜

よをさむみ−いまはあらしの−をとめこか−そてふるやまの−あきのはつしも


00097
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秋の色にのこるかたみの霜をたにおけかし草はそれもとまらす

あきのいろに−のこるかたみの−しもをたに−おけかしくさは−それもとまらす


00098
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霜しろくをかへのいほのささまくら一夜に秋の末はをそしる

しもしろく−をかへのいほの−ささまくら−ひとよにあきの−すゑはをそしる


00099
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ゆきあはぬかたのまよひに霜そおくにひしまもりかあさのさ衣

ゆきあはぬ−かたのまよひに−しもそおく−にひしまもりか−あさのさころも


00100
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山さとは雪よりさきもすみわひぬはつ霜かれの長月の空

やまさとは−ゆきよりさきも−すみわひぬ−はつしもかれの−なかつきのそら


00101
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君か代にちちの秋風ふきそめてなひきにけらし野への草木も

きみかよに−ちちのあきかせ−ふきそめて−なひきにけらし−のへのくさきも


00102
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君かへんよはひをかねていく千代とかすかく鴫の音も夜ふかし

きみかへむ−よはひをかねて−いくちよと−かすかくしきの−おともよふかし


00103
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山水に老せぬ千世をせきとめておのれうつろふ白菊の花

やまみつに−おいせぬちよを−せきとめて−おのれうつろふ−しらきくのはな


00104
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菊の花君かためには長月のここぬかことに千代そつむへき

きくのはな−きみかためには−なかつきの−ここぬかことに−ちよそつむへき


00105
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ゆく末をおもへはひさし乙女子か袖ふる山の秋の夜の月

ゆくすゑを−おもへはひさし−をとめこか−そてふるやまの−あきのよのつき


00106
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君か代の千とせも秋そあらはるるよものしくれに残る松か枝

きみかよの−ちとせもあきそ−あらはるる−よものしくれに−のこるまつかえ


00107
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千代のかけひさしかれとそ松か枝に猶吹きむすへ御代の秋風

ちよのかけ−ひさしかれとそ−まつかえに−なほふきむすへ−みよのあきかせ


00108
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君か代はちちの秋風まさかつら神の宮人いのりそめてき

きみかよは−ちちのあきかせ−まさかつら−かみのみやひと−いのりそめてき


00109
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かみ風やみもすそ河の夕浪に千とせの秋のこゑはつきせし

かみかせや−みもすそかはの−ゆふなみに−ちとせのあきの−こゑはつきせし


00110
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あめつちのひらけし神のみことより千とせの秋は我か君のため

あめつちの−ひらけしかみの−みことより−ちとせのあきは−わかきみのため


00111
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故郷はとほ山とりのをのへより霜おくかねのなかき夜の空

ふるさとは−とほやまとりの−をのへより−しもおくかねの−なかきよのそら


00112
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草も木もあたなるころの野山わけちきりしみやこ程もはかなし

くさもきも−あたなるころの−のやまわけ−ちきりしみやこ−ほともはかなし


00113
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都おもふそてもかたかたほしあへすあへのしま山露ふかくして

みやこおもふ−そてもかたかた−ほしあへす−あへのしまやま−つゆふかくして


00114
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月よなほさやの中山なかなかになに面影の秋のふる里

つきよなほ−さやのなかやま−なかなかに−なにおもかけの−あきのふるさと


00115
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宮こをはよそにたにみんささのくまひのくま河の秋の夕暮

みやこをは−よそにたにみむ−ささのくま−ひのくまかはの−あきのゆふくれ


00116
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あつまちやこえゆく山も色つきぬ都もいまやうちしくるらん

あつまちや−こえゆくやまも−いろつきぬ−みやこもいまや−うちしくるらむ


00117
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うらみぬや旅ねの夢は秋風にむすほほれたる古郷の空

うらみぬや−たひねのゆめは−あきかせに−むすほほれたる−ふるさとのそら


00118
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かへりこんほとをはいつとしら露のすかるなく野に秋風そ吹く

かへりこむ−ほとをはいつと−しらつゆの−すかるなくのに−あきかせそふく


00119
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ふるさとはしのふやいかに忍ふ山とははや秋の風のたよりに

ふるさとは−しのふやいかに−しのふやま−とははやあきの−かせのたよりに


00120
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故郷の雲たにそれとあともなしあさまの山の朝霧の空

ふるさとの−くもたにそれと−あともなし−あさまのやまの−あさきりのそら


00121
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わすれはや風はむかしの秋の露ありしにもにぬ人の心に

わすれはや−かせはむかしの−あきのつゆ−ありしにもにぬ−ひとのこころに


00122
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したむせふもしほの煙こかるとて秋やはみゆる人はうらみし

したむせふ−もしほのけふり−こかるとて−あきやはみゆる−ひとはうらみし


00123
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きけはうし吹くとなつけそしら露のおきて人待つ宵の秋風

きけはうし−ふくとなつけそ−しらつゆの−おきてひとまつ−よひのあきかせ


00124
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面影はちきりしままのことのはにまたさしくるる秋の色かな

おもかけは−ちきりしままの−ことのはに−またさしくるる−あきのいろかな


00125
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なかむれは空やはかはるいまこんのままのつきはし月もうらめし

なかむれは−そらやはかはる−いまこむの−ままのつきはし−つきもうらめし


00126
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なかしてふ秋の夜のまもいたつらにゆきてはきぬる夢の通路

なかしてふ−あきのよのまも−いたつらに−ゆきてはきぬる−ゆめのかよひち


00127
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しののめやわかるる空のうき雲にのこすかたみの月もとまらす

しののめや−わかるるそらの−うきくもに−のこすかたみの−つきもとまらす


00128
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風むすふたよりもつらし道のへのをはなかもとの露の下草

かせむすふ−たよりもつらし−みちのへの−をはなかもとの−つゆのしたくさ


00129
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すへてたた恋せぬ袖の露たにももろきならひの秋の夕露

すへてたた−こひせぬそての−つゆたにも−もろきならひの−あきのゆふつゆ


00130
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かこつへき草はにあまるたもとかな秋より外の色に出てつつ

かこつへき−くさはにあまる−たもとかな−あきよりほかの−いろにいてつつ


00131
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秋もあき月も雲ゐの空なからむかしをいまにおもひかねつつ

あきもあき−つきもくもゐの−そらなから−むかしをいまに−おもひかねつつ


00132
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しらさりしね覚もいまはふかき秋の在明の月に夜を残しつつ

しらさりし−ねさめもいまは−ふかきあきの−ありあけのつきに−よをのこしつつ


00133
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いまそしるあゆむ草はにすてはてし露の命は君かためとも

いまそしる−あゆむくさはに−すてはてし−つゆのいのちは−きみかためとも


00134
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いつくにか身をはやとさんかりのくるみねにもはれぬ思ひ有る比

いつくにか−みをはやとさむ−かりのくる−みねにもはれぬ−おもひあるころ


00135
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すてやらぬ身を秋風に年をへておつる涙のかすそそひぬる

すてやらぬ−みをあきかせに−としをへて−おつるなみたの−かすそそひぬる


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身をいとふ心をちきる故郷のまかきの花とさける朝顔

みをいとふ−こころをちきる−ふるさとの−まかきのはなと−さけるあさかほ


00137
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たれかとはんたたいたつらにふりまさる身をしる雨の秋の夕暮

たれかとはむ−たたいたつらに−ふりまさる−みをしるあめの−あきのゆふくれ


00138
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老か世はあはれ末野の草かれによるのおもひのなか月の空

おいかよは−あはれすゑのの−くさかれに−よるのおもひの−なかつきのそら


00139
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ねさめとふさそなならひの風もうし秋も昔の秋ならぬ身に

ねさめとふ−さそなならひの−かせもうし−あきもむかしの−あきならぬみに


00140
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かれぬとも猶ねにたてよきりきりすなれもいまはの秋の思ひを

かれぬとも−なほねにたてよ−きりきりす−なれもいまはの−あきのおもひを


00141
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わたつ海や秋なき花のなみ風も身にしむ比の吹上の浜

わたつうみや−あきなきはなの−なみかせも−みにしむころの−ふきあけのはま


00142
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鴫のたつ野沢のあきの夕まくれいつくにとまる心なるらん

しきのたつ−のさはのあきの−ゆふまくれ−いつくにとまる−こころなるらむ


00143
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たかさこの松にすむ月いまよりのをのへの霜やひかりそふらん

たかさこの−まつにすむつき−いまよりの−をのへのしもや−ひかりそふらむ


00144
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よし野山こけに露おくいはかねに契ありけれはあまたたひねぬ

よしのやま−こけにつゆおく−いはかねに−ちきりありけれは−あまたたひねぬ


00145
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影きよきよもきかほらの秋の月霜をてらさはすてすもあらなむ

かけきよき−よもきかほらの−あきのつき−しもをてらさは−すてすもあらなむ


00146
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人とははしはのあみとをおしあけていつかみ山の秋をこたへん

ひととはは−しはのあみとを−おしあけて−いつかみやまの−あきをこたへむ


00147
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秋の色をかつはつらしと深山木のこりすしくれに袖をかすらん

あきのいろを−かつはつらしと−みやまきの−こりすしくれに−そてをかすらむ


00148
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吹きまよふこすゑそもろき秋風にこは世にしらぬ袖の露かな

ふきまよふ−こすゑそもろき−あきかせに−こはよにしらぬ−そてのつゆかな


00149
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嵐ふくふるの神杉露おきてそのよもしらぬ秋の夕暮

あらしふく−ふるのかみすき−つゆおきて−そのよもしらぬ−あきのゆふくれ


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苔ふかくやとるもかなし秋の月わすれぬ袖に露や置くらん

こけふかく−やとるもかなし−あきのつき−わすれぬそてに−つゆやおくらむ