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月卿雲客妬歌合 


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作品集名月卿雲客妬歌合  
作品集名読みげっけいうんかくねたみうたあわせ 
作成年月日建保二年九月三十日(1214年11月3日)
場所 

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ふる里のさほの河水いかならむははそのいろは風ものこらす

ふるさとの−さほのかはみつ−いかならむ−ははそのいろは−かせものこらす


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神なひの山のあらしやたつた川水のあきのみふかき比かな

かみなひの−やまのあらしや−たつたかは−みつのあきのみ−ふかきころかな


00003
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もみち葉やよとますうかふあすか川なかれてはやき秋の日かすに

もみちはや−よとますうかふ−あすかかは−なかれてはやき−あきのひかすに


00004
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あすか川ゆくせもふかき紅葉はにきのふの浪も色かはりけり

あすかかは−ゆくせもふかき−もみちはに−きのふのなみも−いろかはりけり


00005
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吹く風のここにはみえぬからにしき川せのなみのたつにまかせて

ふくかせの−ここにはみえぬ−からにしき−かはせのなみの−たつにまかせて


00006
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秋の色のさそふ水あらはとおもひける紅葉をなかすうちの川なみ

あきのいろの−さそふみつあらはと−おもひける−もみちをなかす−うちのかはなみ


00007
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木からしの竜田のもみちもろ共にさそへはさそふ秋の川なみ

こからしの−たつたのもみち−もろともに−さそへはさそふ−あきのかはなみ


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見わたせは秋かせなかるたつた河ちるやみむろの山の木葉に

みわたせは−あきかせなかる−たつたかは−ちるやみむろの−やまのこのはに


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竜田川なみにのこらぬ紅葉葉をとやまにしのふ松風のこゑ

たつたかは−なみにのこらぬ−もみちはを−とやまにしのふ−まつかせのこゑ


00010
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おほ井河わたらはにしき跡もをしこの比はかりいかたおろすな

おほゐかは−わたらはにしき−あともをし−このころはかり−いかたおろすな


00011
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山おろし吹きにし日より音羽川もみちによとむ瀬瀬のしら浪

やまおろし−ふきにしひより−おとはかは−もみちによとむ−せせのしらなみ


00012
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竜田山あらしの空の夕しくれ川せのなみの色も染めけり

たつたやま−あらしのそらの−ゆふしくれ−かはせのなみの−いろもそめけり


00013
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木すゑにはおともあらしのたつた河なほあきふかき水の色かな

こすゑには−おともあらしの−たつたかは−なほあきふかき−みつのいろかな


00014
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立田河うつるこのまの色なから秋をそさそふ水のしらなみ

たつたかは−うつるこのまの−いろなから−あきをそさそふ−みつのしらなみ


00015
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山おろしの紅葉吹きおろすたつた河ゆくせにはやき水の秋かな

やまおろしの−もみちふきおろす−たつたかは−ゆくせにはやき−みつのあきかな


00016
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吹きまよふあらしにつけて行く秋を川せにいそく峰のもみちは

ふきまよふ−あらしにつけて−ゆくあきを−かはせにいそく−みねのもみちは


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よもすからしくるる夜半のあらしよりこの葉にうかふ谷川の水

よもすから−しくるるよはの−あらしより−このはにうかふ−たにかはのみつ


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からにしき秋の色をやたつた川この葉いさよふせせのしらなみ

からにしき−あきのいろをや−たつたかは−このはいさよふ−せせのしらなみ


00019
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立田山木末の秋を浪にとめて紅むすふせせのかはかせ

たつたやま−こすゑのあきを−なみにとめて−くれなゐむすふ−せせのかはかせ


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まきもくのたかねの雲やしくれぬるあなしの河にこのはすくなり

まきもくの−たかねのくもや−しくれぬる−あなしのかはに−このはすくなり


00021
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けふもきてむなしき袖にとふ鳥のあすかとたにも何をたのまん

けふもきて−むなしきそてに−とふとりの−あすかとたにも−なにをたのまむ


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まちわひてこぬよむなしく明行けは涙にかすむ鴫のはねかき

まちわひて−こぬよむなしく−あけゆけは−なみたにかすむ−しきのはねかき


00023
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あふさかのゆふつけとりの声たててたのめぬ人の行きをそまつ

あふさかの−ゆふつけとりの−こゑたてて−たのめぬひとの−ゆききをそまつ


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とふ鳥のあとみし空にたつ煙たえむおもひのしるへはかなし

とふとりの−あとみしそらに−たつけふり−たえむおもひの−しるへはかなし


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ものおもふ袖の涙のくれなゐにふりつつそなく山ほとときす

ものおもふ−そてのなみたの−くれなゐに−ふりつつそなく−やまほとときす


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たつのゐるあしへの塩のいやましに袖ほすひまもなくなくそふる

たつのゐる−あしへのしほの−いやましに−そてほすひまも−なくなくそふる


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涙のみ鴫のはねかきかき侘ひてこぬよのかすや袖のかたしき

なみたのみ−しきのはねかき−かきわひて−こぬよのかすや−そてのかたしき


00028
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草も木もうつろふ秋のみやま鳥ひとりやねなん霜しろきよを

くさもきも−うつろふあきの−みやまとり−ひとりやねなむ−しもしろきよを


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うしや猶とほ山とりのひとりのみなかきおもひにあかぬ夜の袖

うしやなほ−とほやまとりの−ひとりのみ−なかきおもひに−あかぬよのそて


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わすれしな人をうらみてなくなへにいなとなつけそいなおほせ鳥

わすれしな−ひとをうらみて−なくなへに−いなとなつけそ−いなおほせとり


00031
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おもひやるふかき心はとふ鳥の声たにもせぬ山のゆふくれ

おもひやる−ふかきこころは−とふとりの−こゑたにもせぬ−やまのゆふくれ


00032
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あふことはかたののとたちかるたかのそれてむなしき思ひなりけり

あふことは−かたののとたち−かるたかの−それてむなしき−おもひなりけり


00033
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あさちふやうらむる袖の朝きりに誰ゆゑとてか鶉なくらむ

あさちふや−うらむるそての−あさきりに−たれゆゑとてか−うつらなくらむ


00034
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しられしなふかき江にすむ水鳥の下やすからぬ思ひありとも

しられしな−ふかきえにすむ−みつとりの−したやすからぬ−おもひありとも


00035
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わひつつもさよやふけひの浦千鳥なくねあとなき袖の月かな

わひつつも−さよやふけひの−うらちとり−なくねあとなき−そてのつきかな


00036
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物おもへはよそにはきかすさよ千鳥うらみてかへるあかつきの声

ものおもへは−よそにはきかす−さよちとり−うらみてかへる−あかつきのこゑ


00037
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濁り江におもふ心はふかけれと人こそしらねにほの下みち

にこりえに−おもふこころは−ふかけれと−ひとこそしらね−にほのしたみち


00038
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わかこひはつれなきなみをかことにてかよふもくるしにほの下道

わかこひは−つれなきなみを−かことにて−かよふもくるし−にほのしたみち


00039
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はかなしや夢ちたえゆく鳥のねになきてわかれし人のおもかけ

はかなしや−ゆめちたえゆく−とりのねに−なきてわかれし−ひとのおもかけ


00040
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忍ふれとあまる涙ににほ鳥のぬれつつきつる跡やみゆらむ

しのふれと−あまるなみたに−にほとりの−ぬれつつきつる−あとやみゆらむ


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つれつれのなかめも今やまさきちる太山の秋のむら雨の空

つれつれの−なかめもいまや−まさきちる−みやまのあきの−むらさめのそら


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ふみまよひたつきもしらぬ山人の袖もしをりの雨のゆふ暮

ふみまよひ−たつきもしらぬ−やまひとの−そてもしをりの−あめのゆふくれ


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つきにたにとはれん山としらさりきしをりのおくの雨のゆふ暮

つきにたに−とはれむやまと−しらさりき−しをりのおくの−あめのゆふくれ


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山人の袖のみ色にふるあめのしつくむなしきまきの秋風

やまひとの−そてのみいろに−ふるあめの−しつくむなしき−まきのあきかせ


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たへてたれきくか嵐のふき迷ふよしののおくの秋のむら雨

たへてたれ−きくかあらしの−ふきまよふ−よしののおくの−あきのむらさめ


00046
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雲かかるみやまのおくの雨そそきあまりになれてさひしともなし

くもかかる−みやまのおくの−あまそそき−あまりになれて−さひしともなし


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よし野山さむきあらしの吹くままに木の葉こきませうちしくれつつ

よしのやま−さむきあらしの−ふくままに−このはこきませ−うちしくれつつ


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うきなから我か身世にふるしくれよりあきいろふかき山のおくかな

うきなから−わかみよにふる−しくれより−あきいろふかき−やまのおくかな


00049
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衣手はしくるる雨のふりはへてとはれぬ山のおくのかり庵

ころもては−しくるるあめの−ふりはへて−とはれぬやまの−おくのかりいほ


00050
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まきの葉になれてもそはぬ村時雨いく夜むなしき山をすくらむ

まきのはに−なれてもそはぬ−むらしくれ−いくよむなしき−やまをすくらむ


00051
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この比は紅葉をそむるしくれのみふるの山みちたれかよふらむ

このころは−もみちをそむる−しくれのみ−ふるのやまみち−たれかよふらむ


00052
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あし引の山はよし野のおくの庵しくるる空はとふ人もなし

あしひきの−やまはよしのの−おくのいほ−しくるるそらは−とふひともなし


00053
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むら雲は風も吹きあへすかつらきやたかまの奥もしくれすくらし

むらくもは−かせもふきあへす−かつらきや−たかまのおくも−しくれすくらし


00054
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しくれする色こそみえねまきもくのあなしの山に鹿はなくなり

しくれする−いろこそみえね−まきもくの−あなしのやまに−しかはなくなり


00055
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外山たにさひしきころのむら雨に雲よりおくの秋のゆふくれ

とやまたに−さひしきころの−むらさめに−くもよりおくの−あきのゆふくれ


00056
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まきの葉はさそなつれなき秋の比しらぬ山路の夕しくれかな

まきのはは−さそなつれなき−あきのころ−しらぬやまちの−ゆふしくれかな


00057
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けふも又露わけ衣ほしあへていくむらさめかみくま野の山

けふもまた−つゆわけころも−ほしあへて−いくむらさめか−みくまののやま


00058
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大かたのさひしさのみはなかりけり深山のあめの秋のゆふくれ

おほかたの−さひしさのみは−なかりけり−みやまのあめの−あきのゆふくれ


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染むれともつれなき槙の下葉よりしくれにあへぬ袖の色かな

そむれとも−つれなきまきの−したはより−しくれにあへぬ−そてのいろかな


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しをりせし山路をうつむ雲に又木の葉ふりそふ秋のむら雨

しをりせし−やまちをうつむ−くもにまた−このはふりそふ−あきのむらさめ