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院御歌合


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作品集名院御歌合 
作品集名読みいんおううたあわせ 
作成年月日宝治元年九月(1247年10月)
場所 

00001
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いつくより春はきぬらん天のとのあくるをまたすたつ霞かな

いつくより−はるはきぬらむ−あまのとの−あくるをまたす−たつかすみかな


00002
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春きてもなほ氷しく衣川霞もいくへたちわたるらん

はるきても−なほこほりしく−ころもかは−かすみもいくへ−たちわたるらむ


00003
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皇の御代さかゆへき春なれは霞をこめてたちや出てまし

すめらきの−みよさかゆへき−はるなれは−かすみをこめて−たちやいてまし


00004
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君かためなほ万代の春の色に霞初めたる明ほのの空

きみかため−なほよろつよの−はるのいろに−かすみそめたる−あけほののそら


00005
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かすかのの草のはつかに雪消えてみとりもさむく霞むころかな

かすかのの−くさのはつかに−ゆききえて−みとりもさむく−かすむころかな


00006
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梓弓おして春こそきにけらし野やまをこめて霞たなひく

あつさゆみ−おしてはるこそ−きにけらし−のやまをこめて−かすみたなひく


00007
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あつさ弓春のみ空にいつなれてやかて霞の立ちかさぬらん

あつさゆみ−はるのみそらに−いつなれて−やかてかすみの−たちかさぬらむ


00008
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浅みとり春の日かすもしられけりまた色うすき山の霞に

あさみとり−はるのひかすも−しられけり−またいろうすき−やまのかすみに


00009
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いまもなほ雪はふりつつ朝霞たてるやいつこ春はきにけり

いまもなほ−ゆきはふりつつ−あさかすみ−たてるやいつこ−はるはきにけり


00010
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天のとの明けゆく空はかすみつつまたあらたまる春はきにけり

あまのとの−あけゆくそらは−かすみつつ−またあらたまる−はるはきにけり


00011
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春立てはあまの岩との明くるより神よもまつや霞初めけん

はるたては−あまのいはとの−あくるより−かみよもまつや−かすみそめけむ


00012
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朝かすみかせも音せぬあら玉の春はまつこそのとけきをみれ

あさかすみ−かせもおとせぬ−あらたまの−はるはまつこそ−のとけきをみれ


00013
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あまのとを明くるやおそき立つ春の霞みてみゆるよこ雲の空

あまのとを−あくるやおそき−たつはるの−かすみてみゆる−よこくものそら


00014
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まきもくのあなしのひはら猶さえて都の空はうす霞みつつ

まきもくの−あなしのひはら−なほさえて−みやこのそらは−うすかすみつつ


00015
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きのふまて雪けにくもる天つ空明ほのかけてはや霞みぬる

きのふまて−ゆきけにくもる−あまつそら−あけほのかけて−はやかすみぬる


00016
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あまの原雪けの空のかすますは立ちける春もえやはわかまし

あまのはら−ゆきけのそらの−かすますは−たちけるはるも−えやはわかまし


00017
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君か代のはしめの春ののとけさを空もしりてや霞たつらん

きみかよの−はしめのはるの−のとけさを−そらもしりてや−かすみたつらむ


00018
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このほとはあらしも雪も猶さえて霞そうすきよもの山のは

このほとは−あらしもゆきも−なほさえて−かすみそうすき−よものやまのは


00019
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春はいまとわたりくらし天のはら雲井はるかに今朝はかすめる

はるはいま−とわたりくらし−あまのはら−くもゐはるかに−けさはかすめる


00020
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さほ姫の霞の衣袖さえてたつとはみれと春そすくなき

さほひめの−かすみのころも−そてさえて−たつとはみれと−はるそすくなき


00021
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あら玉のとしをへたてて朝霞いつしか春も立ちにけるかな

あらたまの−としをへたてて−あさかすみ−いつしかはるも−たちにけるかな


00022
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久堅のあまつみ空の朝かすみ立ちこそわたれ春やきぬらん

ひさかたの−あまつみそらの−あさかすみ−たちこそわたれ−はるやきぬらむ


00023
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よこ雲の霞にまかふ山かつら暁かけて春はきにけり

よこくもの−かすみにまかふ−やまかつら−あかつきかけて−はるはきにけり


00024
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春きぬとおもひもあへす久かたのあまつみ空にたつ霞かな

はるきぬと−おもひもあへす−ひさかたの−あまつみそらに−たつかすみかな


00025
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明けわたるみねの霞を出つる日の影もくもらぬ千代の初春

あけわたる−みねのかすみを−いつるひの−かけもくもらぬ−ちよのはつはる


00026
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いつのまに霞の衣うち消えし雪ふる空も春はたつらむ

いつのまに−かすみのころも−うちきえし−ゆきふるそらも−はるはたつらむ


00027
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みても猶おくそゆかしきあしかきのよしのの山の花のさかりは

みてもなほ−おくそゆかしき−あしかきの−よしののやまの−はなのさかりは


00028
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雲のうへの山もこたかき桜花みよの盛の春にあふらん

くものうへの−やまもこたかき−さくらはな−みよのさかりの−はるにあふらむ


00029
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おもひ出てよわれもむかしはたつ田山たかねの花も袖にかけてき

おもひいてよ−われもむかしは−たつたやま−たかねのはなも−そてにかけてき


00030
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春はまた花のみやこと成りにけり桜ににほふみよしのの山

はるはまた−はなのみやこと−なりにけり−さくらににほふ−みよしののやま


00031
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みよしののたかきの山の桜花雲より空ににほふ色かな

みよしのの−たかきのやまの−さくらはな−くもよりそらに−にほふいろかな


00032
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山かせは心してふけ高砂の尾上の桜いまさかりなり

やまかせは−こころしてふけ−たかさこの−をのへのさくら−いまさかりなり


00033
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桜花をちの里まてなかむらんあたにをらすな春の山もり

さくらはな−をちのさとまて−なかむらむ−あたにをらすな−はるのやまもり


00034
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かつらきやいつこを花とたつねまし梢につつく峰の白雲

かつらきや−いつこをはなと−たつねまし−こすゑにつつく−みねのしらくも


00035
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よしの山みねにたなひく白雲のにほふは花の盛なりけり

よしのやま−みねにたなひく−しらくもの−にほふははなの−さかりなりけり


00036
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けふよりは雲こそにほへよしの山たかねの桜花やさくらし

けふよりは−くもこそにほへ−よしのやま−たかねのさくら−はなやさくらし


00037
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白波のたちかさなれるたきのうへにみふねの山は花さかりかも

しらなみの−たちかさなれる−たきのうへに−みふねのやまは−はなさかりかも


00038
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けふしはや花まちつくるおいらくのみ山かくれに春をしるかな

けふしはや−はなまちつくる−おいらくの−みやまかくれに−はるをしるかな


00039
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わくかたもなくてなかめむ桜花たちなまかひそ山のはの雲

わくかたも−なくてなかめむ−さくらはな−たちなまかひそ−やまのはのくも


00040
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桜花さくとみしより松山の木末に波のかけぬまもなし

さくらはな−さくとみしより−まつやまの−こすゑになみの−かけぬまもなし


00041
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たつね入る花よりはなに日かすへて山ちの末にいくよとまりぬ

たつねいる−はなよりはなに−ひかすへて−やまちのすゑに−いくよとまりぬ


00042
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心のみ行きかへりつつ山たかみをられぬ花そうつろひぬへき

こころのみ−ゆきかへりつつ−やまたかみ−をられぬはなそ−うつろひぬへき


00043
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よしの山ふもとの里の春をへてひと日も桜めかれやはする

よしのやま−ふもとのさとの−はるをへて−ひとひもさくら−めかれやはする


00044
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泊瀬山さきそふ花の色みえてことしはふかき峰の白雲

はつせやま−さきそふはなの−いろみえて−ことしはふかき−みねのしらくも


00045
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尋ねきていまそしめゆふたまたすき雲ゐる山のはつ桜花

たつねきて−いまそしめゆふ−たまたすき−くもゐるやまの−はつさくらはな


00046
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みよしののおくまて花にさそはれぬかへらむみちのしをりたにせて

みよしのの−おくまてはなに−さそはれぬ−かへらむみちの−しをりたにせて


00047
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みよしのの花は昔の春なからなと故郷の山となりけん

みよしのの−はなはむかしの−はるなから−なとふるさとの−やまとなりけむ


00048
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こころをは染めさらましを桜花山のかひなくうつろはむとや

こころをは−そめさらましを−さくらはな−やまのかひなく−うつろはむとや


00049
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芳野山桜にまかふ色そなき峰のしら雲なにはたてとも

よしのやま−さくらにまかふ−いろそなき−みねのしらくも−なにはたてとも


00050
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桜花かはらぬ色をわきかねて雲さへをしき春の山かせ

さくらはな−かはらぬいろを−わきかねて−くもさへをしき−はるのやまかせ


00051
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みよしのの花のさかりに成りぬれはよもの草木もにほふ春かせ

みよしのの−はなのさかりに−なりぬれは−よものくさきも−にほふはるかせ


00052
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老のみにくるしき山のさか越えてなにとよそなる花をみるらん

おいのみに−くるしきやまの−さかこえて−なにとよそなる−はなをみるらむ


00053
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里なれていまそなくなるほとときす五月を人は待つへかりけり

さとなれて−いまそなくなる−ほとときす−さつきをひとは−まつへかりけり


00054
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おのかつまいかに契れはほとときすさ月の空をわきてとふらん

おのかつま−いかにちきれは−ほとときす−さつきのそらを−わきてとふらむ


00055
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我のみとなくやさ月の時鳥たれもね覚をよそにやはきく

われのみと−なくやさつきの−ほとときす−たれもねさめを−よそにやはきく


00056
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かたらひし宿の軒はのたち花にさ月こととふほとときすかな

かたらひし−やとののきはの−たちはなに−さつきこととふ−ほとときすかな


00057
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たち花のにほふさ月の時鳥いかに忍ふるむかしなるらん

たちはなの−にほふさつきの−ほとときす−いかにしのふる−むかしなるらむ


00058
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をりはへてなけや雲ちの郭公いまはたおのかさ月きにけり

をりはへて−なけやくもちの−ほとときす−いまはたおのか−さつききにけり


00059
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つれもなき月を待つとて時鳥なくはなみたの五月雨の空

つれもなき−つきをまつとて−ほとときす−なくはなみたの−さみたれのそら


00060
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いまよりはまたてやきかむ郭公なきふるしつるさみたれの比

いまよりは−またてやきかむ−ほとときす−なきふるしつる−さみたれのころ


00061
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人しれすまたれしものを梅雨の空にふりぬる時鳥かな

ひとしれす−またれしものを−さみたれの−そらにふりぬる−ほとときすかな


00062
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きかぬまのこころつくしの時鳥さ月の空はまたれさりけり

きかぬまの−こころつくしの−ほとときす−さつきのそらは−またれさりけり


00063
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をちかへりいまもなかなん時鳥おのかさ月のこそのふる声

をちかへり−いまもなかなむ−ほとときす−おのかさつきの−こそのふるこゑ


00064
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郭公はたまつよりもまたれけりおのかとおもふさ月きぬれは

ほとときす−はたまつよりも−またれけり−おのかとおもふ−さつききぬれは


00065
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時鳥わきていつとはおもはぬにおのかさ月といまはなくなり

ほとときす−わきていつとは−おもはぬに−おのかさつきと−いまはなくなり


00066
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五月山月まつよひの村雨にふり出ててなくほとときすかな

さつきやま−つきまつよひの−むらさめに−ふりいててなく−ほとときすかな


00067
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さみたれの空にそあかぬ時鳥う月の比に待ちならひつつ

さみたれの−そらにそあかぬ−ほとときす−うつきのころに−まちならひつつ


00068
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まてといふになかすもあらは郭公なにをさ月とおもひわかまし

まてといふに−なかすもあらは−ほとときす−なにをさつきと−おもひわかまし


00069
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徒にはつ音ほとふる時鳥まつとせしまにさ月きにけり

いたつらに−はつねほとふる−ほとときす−まつとせしまに−さつききにけり


00070
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子規忍ひしほとの一こゑをいまはさつきとなきやふるさむ

ほとときす−しのひしほとの−ひとこゑを−いまはさつきと−なきやふるさむ


00071
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時鳥いかてあやめにひきそへてなかなく音をもたまにぬかまし

ほとときす−いかてあやめに−ひきそへて−なかなくねをも−たまにぬかまし


00072
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さみたれのふりにし友とかたらへはなれもこととふほとときすかな

さみたれの−ふりにしともと−かたらへは−なれもこととふ−ほとときすかな


00073
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あやにくに初音またれし時鳥さ月はおのか時となくなり

あやにくに−はつねまたれし−ほとときす−さつきはおのか−ときとなくなり


00074
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なけやなけはつ音惜みし郭公いまこそなつはさ月なりけれ

なけやなけ−はつねをしみし−ほとときす−いまこそなつは−さつきなりけれ


00075
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たかために里はあまたの時鳥おのかさ月をなほ忍ふらん

たかために−さとはあまたの−ほとときす−おのかさつきを−なほしのふらむ


00076
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なにしおふやみはあやなし時鳥おのかさ月は声もかくれす

なにしおふ−やみはあやなし−ほとときす−おのかさつきは−こゑもかくれす


00077
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庭にちる花たちはなの梅雨に声はしをれぬ時鳥かな

にはにちる−はなたちはなの−さみたれに−こゑはしをれぬ−ほとときすかな


00078
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身をなけてなみたは時もわかれぬにさ月ときなくほとときすかな

みをなけて−なみたはときも−わかれぬに−さつきときなく−ほとときすかな


00079
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秋といへはあへす色つく木葉かな今朝こそかせの音も身にしめ

あきといへは−あへすいろつく−このはかな−けさこそかせの−おともみにしめ


00080
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荻のはに声たてねともふく風の身にしむ色に秋そしらるる

をきのはに−こゑたてねとも−ふくかせの−みにしむいろに−あきそしらるる


00081
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袖のうへに老のなみたのかかれるを秋きにけりと風やしるらん

そてのうへに−おいのなみたの−かかれるを−あききにけりと−かせやしるらむ


00082
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秋としもなと荻のはのむすひけん夕のかせに露の契を

あきとしも−なとをきのはの−むすひけむ−ゆふへのかせに−つゆのちきりを


00083
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岡野へやいつともわかぬ松かせの身にしむ程に秋はきにけり

をかのへや−いつともわかぬ−まつかせの−みにしむほとに−あきはきにけり


00084
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君かへむ千とせの秋のはしめとてしらする風も松に吹くなり

きみかへむ−ちとせのあきの−はしめとて−しらするかせも−まつにふくなり


00085
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いまははやあつまのおくにかよふらむ秋のしるへの西の山かせ

いまははや−あつまのおくに−かよふらむ−あきのしるへの−にしのやまかせ


00086
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けふはまた夕をわきて久堅の空よりすくる秋の初かせ

けふはまた−ゆふへをわきて−ひさかたの−そらよりすくる−あきのはつかせ


00087
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いととまた身にしむかせの吹くなへにはやしられぬる秋の空かな

いととまた−みにしむかせの−ふくなへに−はやしられぬる−あきのそらかな


00088
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うたたねの衣手すすし吹くかせのめにはみえすて秋やきぬらむ

うたたねの−ころもてすすし−ふくかせの−めにはみえすて−あきやきぬらむ


00089
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吹くかせもすすしくなりぬ久堅のあまつみ空に秋やきぬらん

ふくかせも−すすしくなりぬ−ひさかたの−あまつみそらに−あきやきぬらむ


00090
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身にさむき秋そきぬらし荻原やさらては風のさしもやはふく

みにさむき−あきそきぬらし−をきはらや−さらてはかせの−さしもやはふく


00091
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荻原のすゑこすかせの音よりそほのかに秋はききはしめつる

をきはらの−すゑこすかせの−おとよりそ−ほのかにあきは−ききはしめつる


00092
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袖のうへに露はみたれてむすへともなほ色みえぬ秋の初かせ

そてのうへに−つゆはみたれて−むすへとも−なほいろみえぬ−あきのはつかせ


00093
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おほつかな秋をつけよとたれうゑて今朝は身にしむ荻のうはかせ

おほつかな−あきをつけよと−たれうゑて−けさはみにしむ−をきのうはかせ


00094
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くる秋もたたわかためとおもひつつきけはや風の身にはしむらん

くるあきも−たたわかためと−おもひつつ−きけはやかせの−みにはしむらむ


00095
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おしなへて身にしむのみかふく風の音もさやかに秋はきにけり

おしなへて−みにしむのみか−ふくかせの−おともさやかに−あきはきにけり


00096
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ふく風はきのふもけふもかはらねとみにしむ音に秋そしらるる

ふくかせは−きのふもけふも−かはらねと−みにしむおとに−あきそしらるる


00097
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天川かはかせすすしとほつまのいつかと待ちし秋やきぬらん

あまのかは−かはかせすすし−とほつまの−いつかとまちし−あきやきぬらむ


00098
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いつもきくめにみぬかせの秋といへは身にしむ色のいかてそふらん

いつもきく−めにみぬかせの−あきといへは−みにしむいろの−いかてそふらむ


00099
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うちつけにまつそみにしむ秋きぬといふはかりなる荻のうはかせ

うちつけに−まつそみにしむ−あききぬと−いふはかりなる−をきのうはかせ


00100
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いかにしてみにしむ色を染めつらん音こそあらめ秋の初かせ

いかにして−みにしむいろを−そめつらむ−おとこそあらめ−あきのはつかせ


00101
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白妙のみつかけ草やなひくらん天のかはらの秋の初風

しろたへの−みつかけくさや−なひくらむ−あまのかはらの−あきのはつかせ


00102
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尋ねくる秋のしるしもしられけり風ふきかはる三輪の杉むら

たつねくる−あきのしるしも−しられけり−かせふきかはる−みわのすきむら


00103
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かせわたる秋の夕の荻のはにおけはかすちる露の白玉

かせわたる−あきのゆふへの−をきのはに−おけはかすちる−つゆのしらたま


00104
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ふく風もあさけすすしく成りにけりねぬるよのまに秋やきぬらん

ふくかせも−あさけすすしく−なりにけり−ねぬるよのまに−あきやきぬらむ


00105
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塩かまのうらの煙も絶えにけり月みむとてのあまのしわさに

しほかまの−うらのけふりも−たえにけり−つきみむとての−あまのしわさに


00106
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わかのうらやおなしなかれの君かよにまた立出てて月をみるかな

わかのうらや−おなしなかれの−きみかよに−またたちいてて−つきをみるかな


00107
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蘆そよくなにはの波のかすかすにみにしめとすむ月の影かな

あしそよく−なにはのなみの−かすかすに−みにしめとすむ−つきのかけかな


00108
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しをるなよ月をは袖の秋のよにもしほたれてもすまのうら人

しをるなよ−つきをはそての−あきのよに−もしほたれても−すまのうらひと


00109
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なにはかたあまのたくなはなかしともおもひそ果てぬ秋のよの月

なにはかた−あまのたくなは−なかしとも−おもひそはてぬ−あきのよのつき


00110
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むかしよりきくやあかしのうらの名も空にしらるる秋のよの月

むかしより−きくやあかしの−うらのなも−そらにしらるる−あきのよのつき


00111
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わたの原空もひとつにみわたせはうつらぬ月に波そかかれる

わたのはら−そらもひとつに−みわたせは−うつらぬつきに−なみそかかれる


00112
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おしてるやなにはのうらの夕なきにあしの末はをいつる月かけ

おしてるや−なにはのうらの−ゆふなきに−あしのすゑはを−いつるつきかけ


00113
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秋のよは月にそみかく玉くしけふたみのうらによする白波

あきのよは−つきにそみかく−たまくしけ−ふたみのうらに−よするしらなみ


00114
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ますかかみみぬめのうらは名のみしておなしかけなる秋のよの月

ますかかみ−みぬめのうらは−なのみして−おなしかけなる−あきのよのつき


00115
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おほかたに曇なきよの月なれはさそなあかしのうらもさやけき

おほかたに−くもりなきよの−つきなれは−さそなあかしの−うらもさやけき


00116
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いさこよひなたのあまのこしるへせよしほちの月を漕出ててみん

いさこよひ−なたのあまのこ−しるへせよ−しほちのつきを−こきいててみむ


00117
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なにしおふなか井のうらの秋のよに行くともみえてすめる月かな

なにしおふ−なかゐのうらの−あきのよに−ゆくともみえて−すめるつきかな


00118
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みわたせはのしまかさきの波まより山のはならていつる月かけ

みわたせは−のしまかさきの−なみまより−やまのはならて−いつるつきかけ


00119
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わたの原八重のしほちに雲消えて月すみのほるすまのうらかせ

わたのはら−やへのしほちに−くもきえて−つきすみのほる−すまのうらかせ


00120
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もしほくむよはのさ衣あはれにそあまのしわさは月やとしける

もしほくむ−よはのさころも−あはれにそ−あまのしわさは−つきやとしける


00121
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漕きいてしまつらのうみをなかめつつ月になれぬる秋のさよひめ

こきいてし−まつらのうみを−なかめつつ−つきになれぬる−あきのさよひめ


00122
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白妙の袖師のうらによる波のかすさへみえて月そさやけき

しろたへの−そてしのうらに−よるなみの−かすさへみえて−つきそさやけき


00123
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海原やなこのしほひのまきこちに清き月よのさもそさやけき

うなはらや−なこのしほひの−まきこちに−きよきつきよの−さもそさやけき


00124
未入力 (xxx)

ふけ行けはうらこく船の音まてもさもすみまさるよはの月かな

ふけゆけは−うらこくふねの−おとまても−さもすみまさる−よはのつきかな


00125
未入力 (xxx)

なかしとも月におほえぬ秋のよをなとかふけ井のうらといふらん

なかしとも−つきにおほえぬ−あきのよを−なとかふけひの−うらといふらむ


00126
未入力 (xxx)

秋をへてよわたるあまのすて衣塩なれにける袖の月かな

あきをへて−よわたるあまの−すてころも−しほなれにける−そてのつきかな


00127
未入力 (xxx)

わかのうらや昔にかへる波のうへに光あまねき秋のよの月

わかのうらや−むかしにかへる−なみのうへに−ひかりあまねき−あきのよのつき


00128
未入力 (xxx)

里のあまのしほたれ衣ほしやらてさなからやとす秋のよの月

さとのあまの−しほたれころも−ほしやらて−さなからやとす−あきのよのつき


00129
未入力 (xxx)

あかしかた塩やくあまの煙たにくまこそなけれ月のすむよは

あかしかた−しほやくあまの−けふりたに−くまこそなけれ−つきのすむよは


00130
未入力 (xxx)

秋のよのなたかの浦のしほ風に影さしのほる月のさやけさ

あきのよの−なたかのうらの−しほかせに−かけさしのほる−つきのさやけさ


00131
未入力 (xxx)

いととまたかきりもみえすむさし野やあまきる雪の明ほのの空

いととまた−かきりもみえす−むさしのや−あまきるゆきの−あけほののそら


00132
未入力 (xxx)

みなせ山ちかきみかりのおもかけやかたのの雪に猶のこるらん

みなせやま−ちかきみかりの−おもかけや−かたののゆきに−なほのこるらむ


00133
未入力 (xxx)

雪おもるみにならひてもおもふかな野なる草木のいかにさゆらん

ゆきおもる−みにならひても−おもふかな−のなるくさきの−いかにさゆらむ


00134
未入力 (xxx)

かりにこしあとたにもなくうつもれて雪ふか草の野への故郷

かりにこし−あとたにもなく−うつもれて−ゆきふかくさの−のへのふるさと


00135
未入力 (xxx)

かち人のわけ行く末もしらすけのまののふるみち雪つもりつつ

かちひとの−わけゆくすゑも−しらすけの−まののふるみち−ゆきつもりつつ


00136
未入力 (xxx)

白雪のふる枝のこ萩今朝みれはあらぬ花さくみや木のの原

しらゆきの−ふるえのこはき−けさみれは−あらぬはなさく−みやきののはら


00137
未入力 (xxx)

かすか野をわけ行くひとの袖さえてみちもさりあへす雪は降りつつ

かすかのを−わけゆくひとの−そてさえて−みちもさりあへす−ゆきはふりつつ


00138
未入力 (xxx)

けぬかうへにまた跡つけよ玉ほこのみちある御代の野への白雪

けぬかうへに−またあとつけよ−たまほこの−みちあるみよの−のへのしらゆき


00139
未入力 (xxx)

霜かれのをのの浅ちふ跡もなく心のままにつもる白雪

しもかれの−をののあさちふ−あともなく−こころのままに−つもるしらゆき


00140
未入力 (xxx)

かきくらし雪は降りつつ梓弓すゑのはら野はいる人もなし

かきくらし−ゆきはふりつつ−あつさゆみ−すゑのはらのは−いるひともなし


00141
未入力 (xxx)

いそのかみふるののみゆきふみわけていまそ昔の跡もみるへき

いそのかみ−ふるののみゆき−ふみわけて−いまそむかしの−あともみるへき


00142
未入力 (xxx)

おのつからさてものそみのおよふやと雪の朝の野へに出てぬる

おのつから−さてものそみの−およふやと−ゆきのあしたの−のへにいてぬる


00143
未入力 (xxx)

梓弓いるののみちの跡絶えてしかもかよはすふれる白雪

あつさゆみ−いるののみちの−あとたえて−しかもかよはす−ふれるしらゆき


00144
未入力 (xxx)

ささたけの野へのふるみちまよふとも雪ふみならしとふ人もかな

ささたけの−のへのふるみち−まよふとも−ゆきふみならし−とふひともかな


00145
未入力 (xxx)

うつもるるかれののすすきふみわけてなほ行末も雪のふるみち

うつもるる−かれののすすき−ふみわけて−なほゆくすゑも−ゆきのふるみち


00146
未入力 (xxx)

もと柏もとよりうつむ雪のうへにふるからをののみちや絶えなん

もとかしは−もとよりうつむ−ゆきのうへに−ふるからをのの−みちやたえなむ


00147
未入力 (xxx)

いそのかみふるのののもりふみわけて雪にも御代のみちは有りけり

いそのかみ−ふるのののもり−ふみわけて−ゆきにもみよの−みちはありけり


00148
未入力 (xxx)

終にまたもみちぬ色やこれならん野中にたてる松の白雪

つひにまた−もみちぬいろや−これならむ−のなかにたてる−まつのしらゆき


00149
未入力 (xxx)

下折のゐなのふし原いやしきにまなくも雪の猶つもるらん

したをれの−ゐなのふしはら−いやしきに−まなくもゆきの−なほつもるらむ


00150
未入力 (xxx)

このしたの露にやまさる宮木ののみかさとりあへぬ雪のふかさは

このしたの−つゆにやまさる−みやきのの−みかさとりあへぬ−ゆきのふかさは


00151
未入力 (xxx)

けさのまも跡こそみえね白雪のふるからをののもとのかよひち

けさのまも−あとこそみえね−しらゆきの−ふるからをのの−もとのかよひち


00152
未入力 (xxx)

おもふよりいとといくののみち絶えてまたふみもみすつもる雪かな

おもふより−いとといくのの−みちたえて−またふみもみす−つもるゆきかな


00153
未入力 (xxx)

降る雪に野中の松もうつもれていまは嵐の声たにもなし

ふるゆきに−のなかのまつも−うつもれて−いまはあらしの−こゑたにもなし


00154
未入力 (xxx)

ふみわけて行くへきみちも白雪のしらぬ野原の末そゆかしき

ふみわけて−ゆくへきみちも−しらゆきの−しらぬのはらの−すゑそゆかしき


00155
未入力 (xxx)

かすか野や秋の名残もみえわかすみな白妙の雪の下草

かすかのや−あきのなこりも−みえわかす−みなしろたへの−ゆきのしたくさ


00156
未入力 (xxx)

浅ち原かれふのをのの草のうへにましる色なくつもる白雪

あさちはら−かれふのをのの−くさのうへに−ましるいろなく−つもるしらゆき


00157
未入力 (xxx)

つれなきもいはねはこそとおもはすはとし月いかてなからへもせん

つれなきも−いはねはこそと−おもはすは−としつきいかて−なからへもせむ


00158
未入力 (xxx)

人しれぬ心にふるすとし月を命となれる程そつれなき

ひとしれぬ−こころにふるす−としつきを−いのちとなれる−ほとそつれなき


00159
未入力 (xxx)

さのみやはたえぬおもひもかくれぬの下行くみつのくるしかるへき

さのみやは−たえぬおもひも−かくれぬの−したゆくみつの−くるしかるへき


00160
未入力 (xxx)

秋をへてしくるる色を忍ふ山露をもらすなみちの果まて

あきをへて−しくるるいろを−しのふやま−つゆをもらすな−みちのはてまて


00161
未入力 (xxx)

としをふる涙なりともおのつからもらさは袖のひまもあらまし

としをふる−なみたなりとも−おのつから−もらさはそての−ひまもあらまし


00162
未入力 (xxx)

したにのみ忍ふの山の岩こすけいはておもひの年そへにける

したにのみ−しのふのやまの−いはこすけ−いはておもひの−としそへにける


00163
未入力 (xxx)

逢ふことをまつになみたのゆふしくれとしはふるとも色にいたすな

あふことを−まつになみたの−ゆふしくれ−としはふるとも−いろにいたすな


00164
未入力 (xxx)

名取川おもひ朽ちても年はへぬまたあらはれぬ瀬瀬の埋木

なとりかは−おもひくちても−としはへぬ−またあらはれぬ−せせのうもれき


00165
未入力 (xxx)

逢ふことはいのちにかへておもふ身の何と忍ひてとしのへぬらん

あふことは−いのちにかへて−おもふみの−なにとしのひて−としのへぬらむ


00166
未入力 (xxx)

みなそこになひく玉ものとしをへておもひみたると人はしらしな

みなそこに−なひくたまもの−としをへて−おもひみたると−ひとはしらしな


00167
未入力 (xxx)

知りかたきひとのこころのやすらひにいはておもひのとしそへにける

しりかたき−ひとのこころの−やすらひに−いはておもひの−としそへにける


00168
未入力 (xxx)

月ゆゑと人にはいひてたれをかもめてても恋のおいとなるらん

つきゆゑと−ひとにはいひて−たれをかも−めててもこひの−おいとなるらむ


00169
未入力 (xxx)

忍ふるもくるしきものを夏ひきの手ひきの糸のとしをへぬれは

しのふるも−くるしきものを−なつひきの−てひきのいとの−としをへぬれは


00170
未入力 (xxx)

おもひつついくとせ波に朽ちぬらん忍ふのうらのあまのたくなは

おもひつつ−いくとせなみに−くちぬらむ−しのふのうらの−あまのたくなは


00171
未入力 (xxx)

我ならぬ忍ふの山の松のはもとしへて色にいつるものかは

われならぬ−しのふのやまの−まつのはも−としへていろに−いつるものかは


00172
未入力 (xxx)

おもふこといはて心のうちにのみつもる月日をしる人のなき

おもふこと−いはてこころの−うちにのみ−つもるつきひを−しるひとのなき


00173
未入力 (xxx)

人しれすおもひしをれて朽ちねとや袖にとしふる我かなみたかな

ひとしれす−おもひしをれて−くちねとや−そてにとしふる−わかなみたかな


00174
未入力 (xxx)

いたつらにとしをふるのの小ささ原露たに秋の色に出てめや

いたつらに−としをふるのの−をささはら−つゆたにあきの−いろにいてめや


00175
未入力 (xxx)

すかのねのしのひにむすふしたひものとけすや恋ひむとしはへぬれと

すかのねの−しのひにむすふ−したひもの−とけすやこひむ−としはへぬれと


00176
未入力 (xxx)

恋をのみしつか庵のかやむしろしき忍ふまに年そへにける

こひをのみ−しつかいほりの−かやむしろ−しきしのふまに−としそへにける


00177
未入力 (xxx)

いはておもふつらきままなるとし月のたのみよなににかかる命そ

いはておもふ−つらきままなる−としつきの−たのみよなにに−かかるいのちそ


00178
未入力 (xxx)

おさふへき袖はむかしに朽果てぬ我かくろかみよなみたもらすな

おさふへき−そてはむかしに−くちはてぬ−わかくろかみよ−なみたもらすな


00179
未入力 (xxx)

山かはのした行くみつの下にのみ音こそたてねとしはふれとも

やまかはの−したゆくみつの−したにのみ−おとこそたてね−としはふれとも


00180
未入力 (xxx)

秋をへてふるき軒はのしのふ草忍ひに露のいくよ置くらん

あきをへて−ふるきのきはの−しのふくさ−しのひにつゆの−いくよおくらむ


00181
未入力 (xxx)

故郷のしのふの露も色に出てぬいつわか袖よ人のとふまて

ふるさとの−しのふのつゆも−いろにいてぬ−いつわかそてよ−ひとのとふまて


00182
未入力 (xxx)

いはておもふ枕の下のなみたともしらしな人につもるとし月

いはておもふ−まくらのしたの−なみたとも−しらしなひとに−つもるとしつき


00183
未入力 (xxx)

あかしかねまたるる物と成りにけりさしもいとひし鳥の八こゑも

あかしかね−またるるものと−なりにけり−さしもいとひし−とりのやこゑも


00184
未入力 (xxx)

したの帯のあたにむすひし中なれはめくりあふへき限たになし

したのおひの−あたにむすひし−なかなれは−めくりあふへき−かきりたになし


00185
未入力 (xxx)

身をうらのあまのもしほ木こりすまにたつや煙のよそに消えつつ

みをうらの−あまのもしほき−こりすまに−たつやけふりの−よそにきえつつ


00186
未入力 (xxx)

わけしよの契も消えてかなしきはとへとこたへぬみち芝の露

わけしよの−ちきりもきえて−かなしきは−とへとこたへぬ−みちしはのつゆ


00187
未入力 (xxx)

かきりともおもはてしもや契置きしそのままにひぬ袖の白露

かきりとも−おもはてしもや−ちきりおきし−そのままにひぬ−そてのしらつゆ


00188
未入力 (xxx)

おもひ侘ひわか心にもわすれぬと歎きいひてもねはなかれつつ

おもひわひ−わかこころにも−わすれぬと−なけきいひても−ねはなかれつつ


00189
未入力 (xxx)

徒に明けぬくれぬと玉くしけふたたひあはぬ身こそつらけれ

いたつらに−あけぬくれぬと−たまくしけ−ふたたひあはぬ−みこそつらけれ


00190
未入力 (xxx)

わすれぬも我か身のとかとしるはかりありしにかはる暁もかな

わすれぬも−わかみのとかと−しるはかり−ありしにかはる−あかつきもかな


00191
未入力 (xxx)

いまこむといひし契やあた人のたたいつはりのなさけなるらん

いまこむと−いひしちきりや−あたひとの−たたいつはりの−なさけなるらむ


00192
未入力 (xxx)

おもひきやかかるつらさを契にてありしそのよをかきるへしとは

おもひきや−かかるつらさを−ちきりにて−ありしそのよを−かきるへしとは


00193
未入力 (xxx)

つれなくそいきてつらさを歎きけるあふにかへてし命ならすや

つれなくそ−いきてつらさを−なけきける−あふにかへてし−いのちならすや


00194
未入力 (xxx)

いとはるるつらさあるよのあふことをなにそはまたと契りおきけん

いとはるる−つらさあるよの−あふことを−なにそはまたと−ちきりおきけむ


00195
未入力 (xxx)

いまはたたかさねし袖のうつりかも心のうちにのこるはかりそ

いまはたた−かさねしそての−うつりかも−こころのうちに−のこるはかりそ


00196
未入力 (xxx)

うしとてもうらみは果てしかた糸のなからへはまたあふよ有りやと

うしとても−うらみははてし−かたいとの−なからへはまた−あふよありやと


00197
未入力 (xxx)

頼め置きし我か身やあらぬとはかりをいま一たひはいかてとはまし

たのめおきし−わかみやあらぬ−とはかりを−いまひとたひは−いかてとはまし


00198
未入力 (xxx)

またれしをかはるつらさとおもふまにやかてこぬよのつもりぬるかな

またれしを−かはるつらさと−おもふまに−やかてこぬよの−つもりぬるかな


00199
未入力 (xxx)

わすらるるおもひに消えぬ命こそおのか物からうらみられけれ

わすらるる−おもひにきえぬ−いのちこそ−おのかものから−うらみられけれ


00200
未入力 (xxx)

はかなしやたか心よりと絶してみるよもしらぬ夢のうき橋

はかなしや−たかこころより−とたえして−みるよもしらぬ−ゆめのうきはし


00201
未入力 (xxx)

頼めてもこぬ偽にふけしよをなかくや人の忘果てぬる

たのめても−こぬいつはりに−ふけしよを−なかくやひとの−わすれはてぬる


00202
未入力 (xxx)

おとろかす人しなけれはいまはたたみしは夢かとたれにとはまし

おとろかす−ひとしなけれは−いまはたた−みしはゆめかと−たれにとはまし


00203
未入力 (xxx)

ありしよをこふるうつつはかひなきに夢になさはやまたもみるやと

ありしよを−こふるうつつは−かひなきに−ゆめになさはや−またもみるやと


00204
未入力 (xxx)

夢にたにいまはみゆともみえしたたわすれし人にそはぬ身なれは

ゆめにたに−いまはみゆとも−みえしたた−わすれしひとに−そはぬみなれは


00205
未入力 (xxx)

暁はつらきならひの鳥の音をふたたひきかぬ契なりけり

あかつきは−つらきならひの−とりのねを−ふたたひきかぬ−ちきりなりけり


00206
未入力 (xxx)

おもひきやたまくらふれし朝ねかみみたれてもまたこひん物とは

おもひきや−たまくらふれし−あさねかみ−みたれてもまた−こひむものとは


00207
未入力 (xxx)

宵のまのふけ行くかねのうらみたにおもひたえても年へける身を

よひのまの−ふけゆくかねの−うらみたに−おもひたえても−としへけるみを


00208
未入力 (xxx)

我はかり心なかさをかたるともみし夢とやはおもひあはせん

われはかり−こころなかさを−かたるとも−みしゆめとやは−おもひあはせむ


00209
未入力 (xxx)

松かねの枕さためむかたそなきいかにはけしきよはの嵐そ

まつかねの−まくらさためむ−かたそなき−いかにはけしき−よはのあらしそ


00210
未入力 (xxx)

いくかへりなれぬ嵐もしくるらんみやこを忍ふよはの枕に

いくかへり−なれぬあらしも−しくるらむ−みやこをしのふ−よはのまくらに


00211
未入力 (xxx)

嵐とてよなよなききし音よりもたひねの庵ははけしかりけり

あらしとて−よなよなききし−おとよりも−たひねのいほは−はけしかりけり


00212
未入力 (xxx)

露けさを契りや置きし草枕あらし吹きそふ秋のたひねに

つゆけさを−ちきりやおきし−くさまくら−あらしふきそふ−あきのたひねに


00213
未入力 (xxx)

よをさむみころもかせ山秋ふけてかたしく霜をとふ嵐かな

よをさむみ−ころもかせやま−あきふけて−かたしくしもを−とふあらしかな


00214
未入力 (xxx)

いくよわれかたしきわひぬ旅ころもかさなる山の峰のあらしに

いくよわれ−かたしきわひぬ−たひころも−かさなるやまの−みねのあらしに


00215
未入力 (xxx)

草枕夢のかよひち吹きとちて夜半のあらしの音のさやけさ

くさまくら−ゆめのかよひち−ふきとちて−よはのあらしの−おとのさやけさ


00216
未入力 (xxx)

あらし吹くみねのささ屋の草枕かりねの夢はむすふともなし

あらしふく−みねのささやの−くさまくら−かりねのゆめは−むすふともなし


00217
未入力 (xxx)

吹きまよふあらしのかせのさむきよにかりねさひしきさやの中山

ふきまよふ−あらしのかせの−さむきよに−かりねさひしき−さやのなかやま


00218
未入力 (xxx)

かり枕夢もむすはすささの屋のふしうき程の夜半のあらしに

かりまくら−ゆめもむすはす−ささのやの−ふしうきほとの−よはのあらしに


00219
未入力 (xxx)

ささ枕またふしなれぬうたたねに峰のあらしも心してふけ

ささまくら−またふしなれぬ−うたたねに−みねのあらしも−こころしてふけ


00220
未入力 (xxx)

こよひまたここにたひねの松のかせむへ山あらし音のさひしさ

こよひまた−ここにたひねの−まつのかせ−むへやまあらし−おとのさひしさ


00221
未入力 (xxx)

足ひきの山の嵐をかたしきてならはぬいはの枕をそする

あしひきの−やまのあらしを−かたしきて−ならはぬいはの−まくらをそする


00222
未入力 (xxx)

いかはかり都のとほくなりぬらん夢ちもよそにふくあらしかな

いかはかり−みやこのとほく−なりぬらむ−ゆめちもよそに−ふくあらしかな


00223
未入力 (xxx)

片敷きていくよになりぬたひ衣袖になれぬる峰の嵐を

かたしきて−いくよになりぬ−たひころも−そてになれぬる−みねのあらしを


00224
未入力 (xxx)

岩のうへにあらしの風はいとさむしたひねの衣かす人もかな

いはのうへに−あらしのかせは−いとさむし−たひねのころも−かすひともかな


00225
未入力 (xxx)

さゆるよのあらしに夢も結ひけり身はならはしの草の枕に

さゆるよの−あらしにゆめも−むすひけり−みはならはしの−くさのまくらに


00226
未入力 (xxx)

草枕ね覚のとこのさひしさもことわりすきて吹くあらしかな

くさまくら−ねさめのとこの−さひしさも−ことわりすきて−ふくあらしかな


00227
未入力 (xxx)

岩かねの枕のあらしさらてたにいねかてなるを心してふけ

いはかねの−まくらのあらし−さらてたに−いねかてなるを−こころしてふけ


00228
未入力 (xxx)

行きくれてひとよ宿かる松かねになにとあらしの床はらふらん

ゆきくれて−ひとよやとかる−まつかねに−なにとあらしの−とこはらふらむ


00229
未入力 (xxx)

うちとけてねられやはする草枕むすふ山ちの峰の嵐に

うちとけて−ねられやはする−くさまくら−むすふやまちの−みねのあらしに


00230
未入力 (xxx)

都人なにしか夢にみえつらむかりねかなしき峰のあらしに

みやこひと−なにしかゆめに−みえつらむ−かりねかなしき−みねのあらしに


00231
未入力 (xxx)

故郷にかよふ夢ちの関守はたひねおとろくあらしなりけり

ふるさとに−かよふゆめちの−せきもりは−たひねおとろく−あらしなりけり


00232
未入力 (xxx)

あらし吹く山ちかさなる草枕むすふたひねの夢そすくなき

あらしふく−やまちかさなる−くさまくら−むすふたひねの−ゆめそすくなき


00233
未入力 (xxx)

花すすきかりねののへに片敷きて月もあらしもみやこ恋しも

はなすすき−かりねののへに−かたしきて−つきもあらしも−みやここひしも


00234
未入力 (xxx)

草木吹くむへ山かせと聞きしかとなほそかりねの袖はしをるる

くさきふく−むへやまかせと−ききしかと−なほそかりねの−そてはしをるる


00235
未入力 (xxx)

我かすゑの絶えすすまなむいすす川そこにふかめて清き心を

わかすゑの−たえすすまなむ−いすすかは−そこにふかめて−きよきこころを


00236
未入力 (xxx)

石清みつなかれてきよきわか国を君の心に千よもまかせよ

いはしみつ−なかれてきよき−わかくにを−きみのこころに−ちよもまかせよ


00237
未入力 (xxx)

八幡山さかゆくみねも越果てて君をそ祈る身のうれしさに

やはたやま−さかゆくみねも−こえはてて−きみをそいのる−みのうれしさに


00238
未入力 (xxx)

神ち山すむ月かけも君かよのくもらぬ空に光をそさす

かみちやま−すむつきかけも−きみかよの−くもらぬそらに−ひかりをそさす


00239
未入力 (xxx)

君かよのためしにすめる石清みつなかれ久しきかけはみゆらむ

きみかよの−ためしにすめる−いはしみつ−なかれひさしき−かけはみゆらむ


00240
未入力 (xxx)

あめのしたをさまれるよは三笠山さすや朝日の影ものとけし

あめのした−をさまれるよは−みかさやま−さすやあさひの−かけものとけし


00241
未入力 (xxx)

神かきの葛のしたかせのとかにてさこそうらみのなきよなるらめ

かみかきの−くすのしたかせ−のとかにて−さこそうらみの−なきよなるらめ


00242
未入力 (xxx)

君かよをいのる心のしるしあらは久しくちきれかものみつかき

きみかよを−いのるこころの−しるしあらは−ひさしくちきれ−かものみつかき


00243
未入力 (xxx)

をさまれる御代そしらるる住よしの松ふく風の音ののとけさ

をさまれる−みよそしらるる−すみよしの−まつふくかせの−おとののとけさ


00244
未入力 (xxx)

さして出つるみかさの山の朝日かけ曇なきよそ久しかるへき

さしていつる−みかさのやまの−あさひかけ−くもりなきよそ−ひさしかるへき


00245
未入力 (xxx)

たて初めしいすすの川の宮柱うこかぬ御代のかためなりけり

たてそめし−いすすのかはの−みやはしら−うこかぬみよの−かためなりけり


00246
未入力 (xxx)

あらたまるいすすのかはのみやはしら百度ちたひ君そさためむ

あらたまる−いすすのかはの−みやはしら−ももたひちたひ−きみそさためむ


00247
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君のみやくみてしるらむ石清みつたえぬなかれのちよの行末

きみのみや−くみてしるらむ−いはしみつ−たえぬなかれの−ちよのゆくすゑ


00248
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石清みつさよきなかれをむすひても万代いのる神の乙女子

いはしみつ−さよきなかれを−むすひても−よろつよいのる−かみのをとめこ


00249
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住吉のきしの松かえ君か代にいくたひ花のさきかはるへき

すみよしの−きしのまつかえ−きみかよに−いくたひはなの−さきかはるへき


00250
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我みてと君そかそへむ住よしの松はまことに千世もへぬへし

われみてと−きみそかそへむ−すみよしの−まつはまことに−ちよもへぬへし


00251
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神かせやいすすのかはのいそのみやとこよの波の声そのとけき

かみかせや−いすすのかはの−いそのみや−とこよのなみの−こゑそのとけき


00252
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千早ふるいすすの宮のますかかみくもらぬ御代をてらすとそきく

ちはやふる−いすすのみやの−ますかかみ−くもらぬみよを−てらすとそきく


00253
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うこきなき山まつかねのいはしみつすむへきちよのかけそ久しき

うこきなき−やままつかねの−いはしみつ−すむへきちよの−かけそひさしき


00254
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千とせへむなかれもしるし石清みつにこりなきよの末もあらはる

ちとせへむ−なかれもしるし−いはしみつ−にこりなきよの−すゑもあらはる


00255
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色かへぬ君かちとせのかけそへてなほ久しかれすみよしの松

いろかへぬ−きみかちとせの−かけそへて−なほひさしかれ−すみよしのまつ


00256
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神かせやいすすの川の絶えすして君につかへむ御代そ久しき

かみかせや−いすすのかはの−たえすして−きみにつかへむ−みよそひさしき


00257
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住よしの神はしるらん君か代にいくたひ松のおひかはるらん

すみよしの−かみはしるらむ−きみかよに−いくたひまつの−おひかはるらむ


00258
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君すまむなかれ絶えせぬ石清みついはねとしるき千代のかけかな

きみすまむ−なかれたえせぬ−いはしみつ−いはねとしるき−ちよのかけかな


00259
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枝かはす神ちの山の松のはに君か千年のかけそみえける

えたかはす−かみちのやまの−まつのはに−きみかちとせの−かけそみえける


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いすす川まもるなかれの清けれは千世もやちよも君そすむへき

いすすかは−まもるなかれの−きよけれは−ちよもやちよも−きみそすむへき