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影供歌合


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作品集名影供歌合 
作品集名読みえいぐうたあわせ 
作成年月日建長三年九月十三日(1251年9月29日)
場所 

00001
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ぬれてほす野原の草の露のまにちとせの秋のいつかきぬらん

ぬれてほす−のはらのくさの−つゆのまに−ちとせのあきの−いつかきぬらむ


00002
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秋きぬと野なる草木もしりぬらんあまねくひろき露のめくみに

あききぬと−のなるくさきも−しりぬらむ−あまねくひろき−つゆのめくみに


00003
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白露の玉しく小野のあさちはら風よりささに秋はきにけり

しらつゆの−たましくをのの−あさちはら−かせよりささに−あきはきにけり


00004
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玉しきの露のうてなも時にあひて千代の初の秋そきにける

たましきの−つゆのうてなも−ときにあひて−ちよのはしめの−あきそきにける


00005
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白露の玉をみかける竹の葉にあらはれてくる千代の初秋

しらつゆの−たまをみかける−たけのはに−あらはれてくる−ちよのはつあき


00006
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しら露のおきにし日より古里のみかきかはらも秋そきにける

しらつゆの−おきにしひより−ふるさとの−みかきかはらも−あきそきにける


00007
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うつろはぬ千代の初秋あらはれて松のうははにかかるしら露

うつろはぬ−ちよのはつあき−あらはれて−まつのうははに−かかるしらつゆ


00008
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おく露は草はのうへとおもひしに袖さへぬれて秋はきにけり

おくつゆは−くさはのうへと−おもひしに−そてさへぬれて−あきはきにけり


00009
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露むすふ衣手涼しねぬる夜の身にしられてそ秋はきにける

つゆむすふ−ころもてすすし−ねぬるよの−みにしられてそ−あきはきにける


00010
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今朝とてもおもへはおなし白露のいかてか秋の色を見すらん

けさとても−おもへはおなし−しらつゆの−いかてかあきの−いろをみすらむ


00011
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秋きぬと人こそつけねうたたねの袖の露にそおとろかれぬる

あききぬと−ひとこそつけね−うたたねの−そてのつゆにそ−おとろかれぬる


00012
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白妙の露や身にしむ色ならん秋くるよひの袖のかわかぬ

しろたへの−つゆやみにしむ−いろならむ−あきくるよひの−そてのかわかぬ


00013
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いつのまに秋はきぬらん白露のあまりてむすふ庭のあさちふ

いつのまに−あきはきぬらむ−しらつゆの−あまりてむすふ−にはのあさちふ


00014
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置きそむる露にてしりぬさやかにも見えぬと聞きし秋のはしめを

おきそむる−つゆにてしりぬ−さやかにも−みえぬとききし−あきのはしめを


00015
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野へことに色に出つへき秋きぬとしらせそめてや露の置くらん

のへことに−いろにいつへき−あききぬと−しらせそめてや−つゆのおくらむ


00016
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千とせへんあさのゆふしてとりもあへす昨日にかはる野への白露

ちとせへむ−あさのゆふして−とりもあへす−きのふにかはる−のへのしらつゆ


00017
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このねぬる夜のまの秋をしる物は野への草はにおける白露

このねぬる−よのまのあきを−しるものは−のへのくさはに−おけるしらつゆ


00018
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草の葉は秋くるよひのいかならん我か衣手は露そ置きそふ

くさのはは−あきくるよひの−いかならむ−わかころもては−つゆそおきそふ


00019
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夕暮は袖より露の置きそめて秋のけしきそ身にしられぬる

ゆふくれは−そてよりつゆの−おきそめて−あきのけしきそ−みにしられぬる


00020
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昨日まてならす扇に置きそへていつしか露の秋をしるらん

きのふまて−ならすあふきに−おきそへて−いつしかつゆの−あきをしるらむ


00021
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草の原野もせの露も夜のほとに置きて知らるる秋はきにけり

くさのはら−のもせのつゆも−よのほとに−おきてしらるる−あきはきにけり


00022
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露むすふ下草みれは桜あさのをふのかりふに秋はきにけり

つゆむすふ−したくさみれは−さくらあさの−をふのかりふに−あきはきにけり


00023
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今やこれ秋おく露のにひむすひ時はきにけり袂すすしも

いまやこれ−あきおくつゆの−にひむすひ−ときはきにけり−たもとすすしも


00024
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草の原またきに露はむすひけりいくかもあらぬ秋の日数に

くさのはら−またきにつゆは−むすひけり−いくかもあらぬ−あきのひかすに


00025
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秋やくる夢よりぬらす明かたの枕のうへに露そ置きそふ

あきやくる−ゆめよりぬらす−あけかたの−まくらのうへに−つゆそおきそふ


00026
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打ちなひき秋きたりとや草むしろ野もせの露の玉をしくらん

うちなひき−あききたりとや−くさむしろ−のもせのつゆの−たまをしくらむ


00027
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大方の秋立つ比に成りぬとは袖の外なる露にこそしれ

おほかたの−あきたつころに−なりぬとは−そてのほかなる−つゆにこそしれ


00028
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ふけぬるか夜半のみそきのあさのはにやかて置きそふ秋の白露

ふけぬるか−よはのみそきの−あさのはに−やかておきそふ−あきのしらつゆ


00029
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白露もおきあへぬまてむは玉の夜のまの秋は今そきにける

しらつゆも−おきあへぬまて−うはたまの−よのまのあきは−いまそきにける


00030
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しら露もけふ置きそめて呉竹の千代のはしめの秋をしるかな

しらつゆも−けふおきそめて−くれたけの−ちよのはしめの−あきをしるかな


00031
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白露のあまりておける我か宿の浅茅か庭に秋はきにけり

しらつゆの−あまりておける−わかやとの−あさちかにはに−あきはきにけり


00032
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野へみれはおく白露の色よりそ秋しりそむるはしめなりける

のへみれは−おくしらつゆの−いろよりそ−あきしりそむる−はしめなりける


00033
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今宵猶つねよりしけき白露に草葉も今は秋をしるらん

こよひなほ−つねよりしけき−しらつゆに−くさはもいまは−あきをしるらむ


00034
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今さらに我か袖おもし夏衣またひとへなる秋のしら露

いまさらに−わかそておもし−なつころも−またひとへなる−あきのしらつゆ


00035
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いつくより露のはしめて結ふらん秋をは人の心こそしれ

いつくより−つゆのはしめて−むすふらむ−あきをはひとの−こころこそしれ


00036
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たかとこに秋くるよひといひ置きてかくは露けきならひなるらん

たかとこに−あきくるよひと−いひおきて−かくはつゆけき−ならひなるらむ


00037
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秋のくる夕のあはれしりそめて何の草木も露や置くらん

あきのくる−ゆふへのあはれ−しりそめて−なにのくさきも−つゆやおくらむ


00038
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思ひあへすけふも扇は手になれて露こそ秋とおきはしめけれ

おもひあへす−けふもあふきは−てになれて−つゆこそあきと−おきはしめけれ


00039
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置く露の白玉椿けふよりや八千代の秋のはしめなるらん

おくつゆの−しらたまつはき−けふよりや−やちよのあきの−はしめなるらむ


00040
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秋そとは思ひもわかぬあかつきに枕の露をおきてしりぬる

あきそとは−おもひもわかぬ−あかつきに−まくらのつゆを−おきてしりぬる


00041
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おきまさる草はのうへの露のまにさひしき秋のいつかきぬらん

おきまさる−くさはのうへの−つゆのまに−さひしきあきの−いつかきぬらむ


00042
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なほさりにささ分けしのの白露もひまこそ見えね秋やきぬらん

なほさりに−ささわけしのの−しらつゆも−ひまこそみえね−あきやきぬらむ


00043
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山ふかみすまゐからにや身にしむと都の秋の風をとははや

やまふかみ−すまゐからにや−みにしむと−みやこのあきの−かせをとははや


00044
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つまきこる谷のゆききの道すから人にしらるる秋の山風

つまきこる−たにのゆききの−みちすから−ひとにしらるる−あきのやまかせ


00045
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たえすくす峰のしはやの風の音も更に悲しき秋の空かな

たえすくす−みねのしはやの−かせのおとも−さらにかなしき−あきのそらかな


00046
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人とはぬ山のかきほのくすかつらかつうらみつつ秋風そ吹く

ひととはぬ−やまのかきほの−くすかつら−かつうらみつつ−あきかせそふく


00047
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つかふとてまれにのみ見る山里の庭の浅茅に秋風そ吹く

つかふとて−まれにのみみる−やまさとの−にはのあさちに−あきかせそふく


00048
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さひしとも誰にかたらん山里の軒はの松の夜半の秋風

さひしとも−たれにかたらむ−やまさとの−のきはのまつの−よはのあきかせ


00049
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吹く風もとふにつらさのまさるかななくさめかぬる秋の山里

ふくかせも−とふにつらさの−まさるかな−なくさめかぬる−あきのやまさと


00050
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山里の夜半のねさめはさならてもうきをはしるや岑の秋風

やまさとの−よはのねさめは−さならても−うきをはしるや−みねのあきかせ


00051
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さらてたに心うかるる山里の夕暮ことに秋風そふく

さらてたに−こころうかるる−やまさとの−ゆふくれことに−あきかせそふく


00052
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山里の秋をはいかになくさめんとふさへつらき峰の松風

やまさとの−あきをはいかに−なくさめむ−とふさへつらき−みねのまつかせ


00053
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今更にかきほのつつらくりかへし悲しきものそ秋の山風

いまさらに−かきほのつつら−くりかへし−かなしきものそ−あきのやまかせ


00054
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かきほなる山のしたしは打ちなひき人はおとせて秋風そ吹く

かきほなる−やまのしたしは−うちなひき−ひとはおとせて−あきかせそふく


00055
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誰きてか秋ともつけん山里に松吹く風のおとなかりせは

たれきてか−あきともつけむ−やまさとに−まつふくかせの−おとなかりせは


00056
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さひしさはたくひもあらし山里の草のとほそに過くる秋風

さひしさは−たくひもあらし−やまさとの−くさのとほそに−すくるあきかせ


00057
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山ふかき秋のあはれを身にそへて猶うき物は軒の秋風

やまふかき−あきのあはれを−みにそへて−なほうきものは−のきのあきかせ


00058
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風の音にたへてもいかかすみはてん山のおくまて秋はきにけり

かせのおとに−たへてもいかか−すみはてむ−やまのおくまて−あきはきにけり


00059
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かねてしるすまゐなれとも秋は猶さひしさまさる岑の松風

かねてしる−すまゐなれとも−あきはなほ−さひしさまさる−みねのまつかせ


00060
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軒はなる木のはの色はおそけれと秋やと山の風そ身にしむ

のきはなる−このはのいろは−おそけれと−あきやとやまの−かせそみにしむ


00061
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我か庵の草のとさしのあたなれは明けぬくれぬと秋風そ吹く

わかいほの−くさのとさしの−あたなれは−あけぬくれぬと−あきかせそふく


00062
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ふしなれぬ程をはゆるせ竹のとに風も夜さむの時はきぬとも

ふしなれぬ−ほとをはゆるせ−たけのとに−かせもよさむの−ときはきぬとも


00063
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身にしみて物そかなしき秋風の吹立つ比の山かけの庵

みにしみて−ものそかなしき−あきかせの−ふきたつころの−やまかけのいほ


00064
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今よりや虫の音さそふ山風の音羽の里は夜寒なるらん

いまよりや−むしのねさそふ−やまかせの−おとはのさとは−よさむなるらむ


00065
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おいてすむ山へはさそな風の音も秋にはあへすさひしかるらん

おいてすむ−やまへはさそな−かせのおとも−あきにはあへす−さひしかるらむ


00066
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吹きかはる風のけしきに成るままに猶すみわふる秋の山里

ふきかはる−かせのけしきに−なるままに−なほすみわふる−あきのやまさと


00067
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むくらはふ真柴の庵におとつれて荻のは過くるよはの秋風

むくらはふ−ましはのいほに−おとつれて−をきのはすくる−よはのあきかせ


00068
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山ふかみをちかた人はこととはておとつれたえぬ松の秋風

やまふかみ−をちかたひとは−こととはて−おとつれたえぬ−まつのあきかせ


00069
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かくはかりみし人見えぬ山里に情しらるる秋の風かな

かくはかり−みしひとみえぬ−やまさとに−なさけしらるる−あきのかせかな


00070
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やへしけるむくらの宿のしはの戸もあらはにすくる峰の秋風

やへしける−むくらのやとの−しはのとも−あらはにすくる−みねのあきかせ


00071
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身にしむも秋のならひの山風をすむやとからと何思ふらん

みにしむも−あきのならひの−やまかせを−すむやとからと−なにおもふらむ


00072
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とふ人も嵐の風のいたつらにふくはかりなる秋の山里

とふひとも−あらしのかせの−いたつらに−ふくはかりなる−あきのやまさと


00073
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さひしさはさらてもつらき山里に身にしむ秋の風の音かな

さひしさは−さらてもつらき−やまさとに−みにしむあきの−かせのおとかな


00074
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山里はいつとしわかぬ松風の吹くにつけても秋そ悲しき

やまさとは−いつとしわかぬ−まつかせの−ふくにつけても−あきそかなしき


00075
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なれなはとおもひし軒の山風に秋はいかなるおとをそふらん

なれなはと−おもひしのきの−やまかせに−あきはいかなる−おとをそふらむ


00076
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いかにせんわか世へぬへき山陰の軒はの松に秋風そふく

いかにせむ−わかよへぬへき−やまかけの−のきはのまつに−あきかせそふく


00077
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都人ふみもならさぬ庭の面にかよふ跡なき峰の秋風

みやこひと−ふみもならさぬ−にはのおもに−かよふあとなき−みねのあきかせ


00078
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ならはねはふしそかねたる山里のささかきうすき夜はの秋風

ならはねは−ふしそかねたる−やまさとの−ささかきうすき−よはのあきかせ


00079
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都よりかよふともなき風の音はきけともつらき秋の山里

みやこより−かよふともなき−かせのおとは−きけともつらき−あきのやまさと


00080
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ふしわひぬすすのしのやのかりひさしやや夜さむなる秋の山風

ふしわひぬ−すすのしのやの−かりひさし−ややよさむなる−あきのやまかせ


00081
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住侘ひぬ都の秋のさひしさも更に吹きそふ松の下風

すみわひぬ−みやこのあきの−さひしさも−さらにふきそふ−まつのしたかせ


00082
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さらてたにほさぬたもとをかたしきのとこにな吹きそ秋の山風

さらてたに−ほさぬたもとを−かたしきの−とこになふきそ−あきのやまかせ


00083
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み山へに柴のかこひのあはらさも吹きくる秋の風そしらする

みやまへに−しはのかこひの−あはらさも−ふきくるあきの−かせそしらする


00084
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山ふかく住むはうき身と思ふよりいかにせよとか秋風の吹く

やまふかく−すむはうきみと−おもふより−いかにせよとか−あきかせのふく


00085
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忘れすよ朝きよめするとのもりの袖にうつりし秋萩の花

わすれすよ−あさきよめする−とのもりの−そてにうつりし−あきはきのはな


00086
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いかはかり露こほるらん女郎花をはなかもとのあくる別に

いかはかり−つゆこほるらむ−をみなへし−をはなかもとの−あくるわかれに


00087
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あさ戸いてにあかもすそひく乙女子か手折りてかさす秋萩の花

あさといてに−あかもすそひく−をとめこか−たをりてかさす−あきはきのはな


00088
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花すすきたか手枕をとめかねてあくるなけきの人まねくらん

はなすすき−たかたまくらを−とめかねて−あくるなけきの−ひとまねくらむ


00089
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朝戸あけてみれともあかす秋萩のうつろひまさる花の盛は

あさとあけて−みれともあかす−あきはきの−うつろひまさる−はなのさかりは


00090
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朝露や野へのにしきをそめつらんぬれて色こき秋萩の花

あさつゆや−のへのにしきを−そめつらむ−ぬれていろこき−あきはきのはな


00091
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見わたせは秋の野原の朝日影ちくさの花の色そうつろふ

みわたせは−あきののはらの−あさひかけ−ちくさのはなの−いろそうつろふ


00092
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あさねかみこほれていととみたるともこはきか露は折りてかささん

あさねかみ−こほれていとと−みたるとも−こはきかつゆは−をりてかささむ


00093
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見てもまた日数はひさしあさなあさなちれはかつ咲く野への萩原

みてもまた−ひかすはひさし−あさなあさな−ちれはかつさく−のへのはきはら


00094
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旅人のあさたつ野への花薄たか白妙の袖とみゆらん

たひひとの−あさたつのへの−はなすすき−たかしろたへの−そてとみゆらむ


00095
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をみなへしたかきぬきぬの名残とて朝おく露にかつしをるらん

をみなへし−たかきぬきぬの−なこりとて−あさおくつゆに−かつしをるらむ


00096
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花すすきまねく袂にかけてけりあさたつ人の袖のしら露

はなすすき−まねくたもとに−かけてけり−あさたつひとの−そてのしらつゆ


00097
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旅衣あさたつ袖も色見えてたえたえまねく花薄かな

たひころも−あさたつそても−いろみえて−たえたえまねく−はなすすきかな


00098
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よるとても心のしめはたゆまぬをけさみたれたる秋はきの花

よるとても−こころのしめは−たゆまぬを−けさみたれたる−あきはきのはな


00099
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あさ戸あけのたよりにつけてみつるかな人こそとはね庭の秋萩

あさとあけの−たよりにつけて−みつるかな−ひとこそとはね−にはのあきはき


00100
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旅人のあさたつ野へのをみなへしゆくてはかりの袖に匂ふな

たひひとの−あさたつのへの−をみなへし−ゆくてはかりの−そてににほふな


00101
未入力 (xxx)

よなよなや花は咲くらんあさことに色まさりゆく野への秋萩

よなよなや−はなはさくらむ−あさことに−いろまさりゆく−のへのあきはき


00102
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朝な朝なうつろふ露はあたなれと萩のふるえの花は忘れす

あさなあさな−うつろふつゆは−あたなれと−はきのふるえの−はなはわすれす


00103
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あつさ弓ひくまの野へのあさ日影にほふ真萩の色そうつろふ

あつさゆみ−ひくまののへの−あさひかけ−にほふまはきの−いろそうつろふ


00104
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下葉まてそめつくすへきあさ露のおき所なきもとあらのはき

したはまて−そめつくすへき−あさつゆの−おきところなき−もとあらのはき


00105
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あさなあさなおく白露もうつろひぬ咲きそふ秋の花の千種に

あさなあさな−おくしらつゆも−うつろひぬ−さきそふあきの−はなのちくさに


00106
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あはれけさとふ人あれな秋萩の花のうへなる露もひぬまに

あはれけさ−とふひとあれな−あきはきの−はなのうへなる−つゆもひぬまに


00107
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いととまたちらまくもをしかり人のあさふむのへにさける秋萩

いととまた−ちらまくもをし−かりひとの−あさふむのへに−さけるあきはき


00108
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露なから見せはや人にあさなあさなうつろふ庭の秋はきの花

つゆなから−みせはやひとに−あさなあさな−うつろふにはの−あきはきのはな


00109
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ささわけてぬれゆく袖の雫さへこほれてうつる萩か花すり

ささわけて−ぬれゆくそての−しつくさへ−こほれてうつる−はきかはなすり


00110
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すかのねのなか月のよのあけたては露けさまさる秋はきの花

すかのねの−なかつきのよの−あけたては−つゆけさまさる−あきはきのはな


00111
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朝ことにたかかたみとて秋はきの花を哀とおもひそめけん

あさことに−たかかたみとて−あきはきの−はなをあはれと−おもひそめけむ


00112
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朝またき野原しのはら分けきつる我か衣手の萩か花すり

あさまたき−のはらしのはら−わけきつる−わかころもての−はきかはなすり


00113
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しののめはほのかに空のあくるよりまねくをみする花薄かな

しののめは−ほのかにそらの−あくるより−まねくをみする−はなすすきかな


00114
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このねぬる夜のまに花の咲きそへてけさは色こき庭の萩原

このねぬる−よのまにはなの−さきそへて−けさはいろこき−にはのはきはら


00115
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けさみれはわかいねかてもあらはれて下葉うつろふ秋萩の花

けさみれは−わかいねかても−あらはれて−したはうつろふ−あきはきのはな


00116
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旅人のあさたつをののすきかてにみたれてまねく花すすきかな

たひひとの−あさたつをのの−すきかてに−みたれてまねく−はなすすきかな


00117
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のへにたつを花のなみの白妙に山のはつつくあさまたきかな

のへにたつ−をはなのなみの−しろたへに−やまのはつつく−あさまたきかな


00118
未入力 (xxx)

をりにあへは野もりか秋のあさといてもうらやむ程の花の色かな

をりにあへは−のもりかあきの−あさといても−うらやむほとの−はなのいろかな


00119
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白露の手枕のののをみなへし誰とかはせるけさの名残そ

しらつゆの−たまくらののの−をみなへし−たれとかはせる−けさのなこりそ


00120
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明けて行くたかかへるさもととまらしはかなくまねく花すすきかな

あけてゆく−たかかへるさも−ととまらし−はかなくまねく−はなすすきかな


00121
未入力 (xxx)

やとりする妻とたのめと女郎花けさこそなひく色は見えけれ

やとりする−つまとたのめと−をみなへし−けさこそなひく−いろはみえけれ


00122
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立ちかへり昔をかけて朝露のふるえの小萩かさしにそさす

たちかへり−むかしをかけて−あさつゆの−ふるえのこはき−かさしにそさす


00123
未入力 (xxx)

花すすきたかきぬきぬの名残とてくさの袂のけさは露けき

はなすすき−たかきぬきぬの−なこりとて−くさのたもとの−けさはつゆけき


00124
未入力 (xxx)

秋の野のかりねの庵のあさ戸出に心そとまる萩か花すり

あきののの−かりねのいほの−あさとてに−こころそとまる−はきかはなすり


00125
未入力 (xxx)

あかつきの露より後におきていまおそくそ見ける秋萩の花

あかつきの−つゆよりのちに−おきていま−おそくそみける−あきはきのはな


00126
未入力 (xxx)

たかゆるす花の盛そ朝かほのあしたわひしき宿と見なから

たかゆるす−はなのさかりそ−あさかほの−あしたわひしき−やととみなから


00127
未入力 (xxx)

暮行けとはやましけ山さはりおほみあはてやしかの妻をこふらん

くれゆけと−はやましけやま−さはりおほみ−あはてやしかの−つまをこふらむ


00128
未入力 (xxx)

たえすたつ夕への雲のたかねにもすめはすみけるさをしかのこゑ

たえすたつ−ゆふへのくもの−たかねにも−すめはすみける−さをしかのこゑ


00129
未入力 (xxx)

夕されは妻こひすらし高砂の尾上にひひくさをしかのこゑ

ゆふされは−つまこひすらし−たかさこの−をのへにひひく−さをしかのこゑ


00130
未入力 (xxx)

夕暮はおのかすみかの山にても猶うき時と鹿そ鳴くなる

ゆふくれは−おのかすみかの−やまにても−なほうきときと−しかそなくなる


00131
未入力 (xxx)

夕暮はわきてあはれやしらるらん妻待つ山のさをしかのこゑ

ゆふくれは−わきてあはれや−しらるらむ−つままつやまの−さをしかのこゑ


00132
未入力 (xxx)

み山への秋の夕へを哀ともなきてや鹿の人につくらん

みやまへの−あきのゆふへを−あはれとも−なきてやしかの−ひとにつくらむ


00133
未入力 (xxx)

秋されは山の尾上にこゑたてて鹿も夕への物や悲しき

あきされは−やまのをのへに−こゑたてて−しかもゆふへの−ものやかなしき


00134
未入力 (xxx)

秋はいととさひしき山の夕へにもすめはすむとや鹿の鳴くらん

あきはいとと−さひしきやまの−ゆふへにも−すめはすむとや−しかのなくらむ


00135
未入力 (xxx)

つまこひの夕へとなれはおく山にめにみぬ鹿の音をのみそ鳴く

つまこひの−ゆふへとなれは−おくやまに−めにみぬしかの−ねをのみそなく


00136
未入力 (xxx)

夕暮のまかきの山はこれならんつまをへたてて鹿そ啼くなる

ゆふくれの−まかきのやまは−これならむ−つまをへたてて−しかそなくなる


00137
未入力 (xxx)

み山への秋にはあへすなく鹿もゆふへそ人の袖ぬらしける

みやまへの−あきにはあへす−なくしかも−ゆふへそひとの−そてぬらしける


00138
未入力 (xxx)

鳴く鹿の涙も袖におちそひぬしけきみ山の秋の夕暮

なくしかの−なみたもそてに−おちそひぬ−しけきみやまの−あきのゆふくれ


00139
未入力 (xxx)

山ふかき秋の夕を哀とも鳴きてしらするさをしかの声

やまふかき−あきのゆふへを−あはれとも−なきてしらする−さをしかのこゑ


00140
未入力 (xxx)

夕暮はあやしかりけりをしかなくみやまはいつとわかぬ哀も

ゆふくれは−あやしかりけり−をしかなく−みやまはいつと−わかぬあはれも


00141
未入力 (xxx)

色まさる涙やふかき夕つくひわけ入る山のさをしかのこゑ

いろまさる−なみたやふかき−ゆふつくひ−わけいるやまの−さをしかのこゑ


00142
未入力 (xxx)

暮れかかる秋のけしきにたへかねてをのへの鹿も妻をこふらし

くれかかる−あきのけしきに−たへかねて−をのへのしかも−つまをこふらし


00143
未入力 (xxx)

かきりなき秋のあはれは白雲のゆふゐる山のさをしかの声

かきりなき−あきのあはれは−しらくもの−ゆふゐるやまの−さをしかのこゑ


00144
未入力 (xxx)

夕暮の山のたかねに鳴く鹿もあまつ空にや妻をこふらし

ゆふくれの−やまのたかねに−なくしかも−あまつそらにや−つまをこふらし


00145
未入力 (xxx)

立ちならす葉山しけ山なく鹿のこゑもさはらぬゆふま暮かな

たちならす−はやましけやま−なくしかの−こゑもさはらぬ−ゆふまくれかな


00146
未入力 (xxx)

さひしさも秋はならひの夕くれにたえす尾上の鹿そ鳴くなる

さひしさも−あきはならひの−ゆふくれに−たえすをのへの−しかそなくなる


00147
未入力 (xxx)

夕暮は妻まつ時としりかほにはやまの鹿もねをそたつなる

ゆふくれは−つままつときと−しりかほに−はやまのしかも−ねをそたつなる


00148
未入力 (xxx)

忍はれぬ山への秋の夕暮はおしはからるるさをしかの声

しのはれぬ−やまへのあきの−ゆふくれは−おしはからるる−さをしかのこゑ


00149
未入力 (xxx)

秋ふかき山のしつくのゆふこりに鳴くやをしかのいかかしつけき

あきふかき−やまのしつくの−ゆふこりに−なくやをしかの−いかかしつけき


00150
未入力 (xxx)

さをしかの鳴く音もいろはまさりけり夕日かかれる秋の山もと

さをしかの−なくねもいろは−まさりけり−ゆふひかかれる−あきのやまもと


00151
未入力 (xxx)

鳴く鹿もこゑのかきりやつくすらん小倉の山の秋も夕へと

なくしかも−こゑのかきりや−つくすらむ−をくらのやまの−あきもゆふへと


00152
未入力 (xxx)

夕つくひ暮れゆくままに鳴きまさる秋の小鹿の妻こひの山

ゆふつくひ−くれゆくままに−なきまさる−あきのをしかの−つまこひのやま


00153
未入力 (xxx)

さても猶夕へやつらき秋山にともはあれとも鹿のなくなる

さてもなほ−ゆふへやつらき−あきやまに−ともはあれとも−しかのなくなる


00154
未入力 (xxx)

暮れかかるみ山おろしにたくひきて秋の袖とふさをしかの声

くれかかる−みやまおろしに−たくひきて−あきのそてとふ−さをしかのこゑ


00155
未入力 (xxx)

きけは猶さひしかりけりさを鹿の鳴く山かけの秋のゆふくれ

きけはなほ−さひしかりけり−さをしかの−なくやまかけの−あきのゆふくれ


00156
未入力 (xxx)

つまきとる名をなつかしみ山人のかへる跡より鹿そ鳴くなる

つまきとる−なをなつかしみ−やまひとの−かへるあとより−しかそなくなる


00157
未入力 (xxx)

から衣日も夕暮につまこめてと山の奥に鹿そ鳴くなる

からころも−ひもゆふくれに−つまこめて−とやまのおくに−しかそなくなる


00158
未入力 (xxx)

あはれまたためしもあらしさをしかの妻とふ山の秋の夕暮

あはれまた−ためしもあらし−さをしかの−つまとふやまの−あきのゆふくれ


00159
未入力 (xxx)

山ふかみ暮行く空におのれのみ秋の哀は鹿そ鳴くなる

やまふかみ−くれゆくそらに−おのれのみ−あきのあはれは−しかそなくなる


00160
未入力 (xxx)

小倉山妻とふ鹿もわきて猶たへすやふかき秋の夕暮

をくらやま−つまとふしかも−わきてなほ−たへすやふかき−あきのゆふくれ


00161
未入力 (xxx)

妻こひに鹿はなくなりから衣すそろの山の秋のゆふ暮

つまこひに−しかはなくなり−からころも−すそろのやまの−あきのゆふくれ


00162
未入力 (xxx)

いつの秋たのめおきけんさをしかの妻待つ山の夕暮のそら

いつのあき−たのめおきけむ−さをしかの−つままつやまの−ゆふくれのそら


00163
未入力 (xxx)

日くるれはゆく人見えぬしからきのと山に出つるさをしかのこゑ

ひくるれは−ゆくひとみえぬ−しからきの−とやまにいつる−さをしかのこゑ


00164
未入力 (xxx)

さをしかのは山しけ山ふみ分けて鳴く夕くれも妻やつれなき

さをしかの−はやましけやま−ふみわけて−なくゆふくれも−つまやつれなき


00165
未入力 (xxx)

夕暮は妻待つ山の風寒み尾上の鹿そ音にたてて鳴く

ゆふくれは−つままつやまの−かせさむみ−をのへのしかそ−ねにたててなく


00166
未入力 (xxx)

夕日さす松の木陰にたつ鹿のいつともわかす妻やこふらん

ゆふひさす−まつのこかけに−たつしかの−いつともわかす−つまやこふらむ


00167
未入力 (xxx)

尾上なる松の木のまの夕つくよさしもはなとか鹿の鳴くらん

をのへなる−まつのこのまの−ゆふつくよ−さしもはなとか−しかのなくらむ


00168
未入力 (xxx)

またけふもむなしく暮れぬ高砂の尾上の鹿の音のみなかれて

またけふも−むなしくくれぬ−たかさこの−をのへのしかの−ねのみなかれて


00169
未入力 (xxx)

久方のあまきる霧のたえたえにそれかとみえて雁はきにけり

ひさかたの−あまきるきりの−たえたえに−それかとみえて−かりはきにけり


00170
未入力 (xxx)

立ちまよふ霧にとたえやまさるらんおのれ数そふ秋のかりかね

たちまよふ−きりにとたえや−まさるらむ−おのれかすそふ−あきのかりかね


00171
未入力 (xxx)

天の原たえたえみゆるうす霧の雲井に遠き秋の雁金

あまのはら−たえたえみゆる−うすきりの−くもゐにとほき−あきのかりかね


00172
未入力 (xxx)

立ちわたる峰の秋霧ひまとめてうすすみしるき雁の玉つさ

たちわたる−みねのあききり−ひまとめて−うすすみしるき−かりのたまつさ


00173
未入力 (xxx)

たえたえに山とひこゆる雁金のはかせもしるき峰の秋霧

たえたえに−やまとひこゆる−かりかねの−はかせもしるき−みねのあききり


00174
未入力 (xxx)

夕霧の立ちもらしける山のはにかすさへみえて雁はきにけり

ゆふきりの−たちもらしける−やまのはに−かすさへみえて−かりはきにけり


00175
未入力 (xxx)

久方のあまつみ空に立ちのほる霧分けわひて雁そ鳴くなる

ひさかたの−あまつみそらに−たちのほる−きりわけわひて−かりそなくなる


00176
未入力 (xxx)

立ちわたるうす霧かくれみえわかてくれとも遠き秋の雁金

たちわたる−うすきりかくれ−みえわかて−くれともとほき−あきのかりかね


00177
未入力 (xxx)

天つ空へたつる霧のたえまよりあらはれわたるはつ雁の声

あまつそら−へたつるきりの−たえまより−あらはれわたる−はつかりのこゑ


00178
未入力 (xxx)

秋をしもおのか時とやあさ霧にたちおくれしと雁もなくなり

あきをしも−おのかときとや−あさきりに−たちおくれしと−かりもなくなり


00179
未入力 (xxx)

鳴きてくるかたもきこゆる雁金の数こそみえね峰の秋霧

なきてくる−かたもきこゆる−かりかねの−かすこそみえね−みねのあききり


00180
未入力 (xxx)

玉つさはかけてもみえし秋霧のはれぬ雲井に雁はきにけり

たまつさは−かけてもみえし−あききりの−はれぬくもゐに−かりはきにけり


00181
未入力 (xxx)

晴れやらぬ霧のたえまのうすすみにかきつらねたる雁の玉つさ

はれやらぬ−きりのたえまの−うすすみに−かきつらねたる−かりのたまつさ


00182
未入力 (xxx)

たえたえに立つ秋霧の空にのみ鳴きわたりつつまよふ雁金

たえたえに−たつあききりの−そらにのみ−なきわたりつつ−まよふかりかね


00183
未入力 (xxx)

ゆく雁はつつまてみする玉章をよそにかきけつ峰の秋霧

ゆくかりは−つつまてみする−たまつさを−よそにかきけつ−みねのあききり


00184
未入力 (xxx)

朝霧のたなひく峰を行く雁のはらふ羽風に数もわかれす

あさきりの−たなひくみねを−ゆくかりの−はらふはかせに−かすもわかれす


00185
未入力 (xxx)

あまつ空たつ朝霧のたえたえにはれゆくみれは雁はきにけり

あまつそら−たつあさきりの−たえたえに−はれゆくみれは−かりはきにけり


00186
未入力 (xxx)

秋霧のやへにかさなる山のはを声もへたてす雁はきにけり

あききりの−やへにかさなる−やまのはを−こゑもへたてす−かりはきにけり


00187
未入力 (xxx)

雁金のはかせに霧や晴れぬらんおのれまよはぬ秋の空かな

かりかねの−はかせにきりや−はれぬらむ−おのれまよはぬ−あきのそらかな


00188
未入力 (xxx)

とふかりの数見えぬへきうす霧に鳴くねはいととかくれやはする

とふかりの−かすみえぬへき−うすきりに−なくねはいとと−かくれやはする


00189
未入力 (xxx)

雁のくると山のこすゑみえそめてよそにわかるる秋のあさ霧

かりのくる−とやまのこすゑ−みえそめて−よそにわかるる−あきのあさきり


00190
未入力 (xxx)

秋霧の音もせてのみふるものをいかてかけこし雁の玉章

あききりの−おともせてのみ−ふるものを−いかてかけこし−かりのたまつさ


00191
未入力 (xxx)

雁かねのは風はなにそみちのへの霧吹きはらへ人のためかは

かりかねの−はかせはなにそ−みちのへの−きりふきはらへ−ひとのためかは


00192
未入力 (xxx)

しるらめや霧たつ空に鳴く雁もはれぬ思ひのたくひある身を

しるらめや−きりたつそらに−なくかりも−はれぬおもひの−たくひあるみを


00193
未入力 (xxx)

立ちまよふ峰の夕霧ふかき秋の雲井を分けて雁そ鳴くなる

たちまよふ−みねのゆふきり−ふかきあきの−くもゐをわけて−かりそなくなる


00194
未入力 (xxx)

初雁の鳴く音もさむく日は暮れてたなひきやらぬうす霧の空

はつかりの−なくねもさむく−ひはくれて−たなひきやらぬ−うすきりのそら


00195
未入力 (xxx)

またれつる雲井の雁の玉章をみせすはつらし秋の夕霧

またれつる−くもゐのかりの−たまつさを−みせすはつらし−あきのゆふきり


00196
未入力 (xxx)

はれそむるたえまそみゆる雁金のまたとほさかる山の秋霧

はれそむる−たえまそみゆる−かりかねの−またとほさかる−やまのあききり


00197
未入力 (xxx)

秋霧はたちかさねたる空なれと初雁かねの声そへたてぬ

あききりは−たちかさねたる−そらなれと−はつかりかねの−こゑそへたてぬ


00198
未入力 (xxx)

しはしとてみるほとそなき秋きりのたえまを過くる雁の玉章

しはしとて−みるほとそなき−あききりの−たえまをすくる−かりのたまつさ


00199
未入力 (xxx)

かけてくるたか玉章そ朝霧のたえまにみゆる秋の雁金

かけてくる−たかたまつさそ−あさきりの−たえまにみゆる−あきのかりかね


00200
未入力 (xxx)

鳴きわたる雁のはかせははらへともまた立ちまよふ峰の朝霧

なきわたる−かりのはかせは−はらへとも−またたちまよふ−みねのあさきり


00201
未入力 (xxx)

さきたつもとまるもみえぬ夕霧にいくつらとてか雁のゆくらん

さきたつも−とまるもみえぬ−ゆふきりに−いくつらとてか−かりのゆくらむ


00202
未入力 (xxx)

いくつらと見ても何せん鳴く雁のこゑきく空の秋の朝霧

いくつらと−みてもなにせむ−なくかりの−こゑきくそらの−あきのあさきり


00203
未入力 (xxx)

久方のあまの秋霧たえたえにかすあらはるる初雁のこゑ

ひさかたの−あまのあききり−たえたえに−かすあらはるる−はつかりのこゑ


00204
未入力 (xxx)

たちわたる霧のたえまのほともなくみえてはみえぬ初雁の声

たちわたる−きりのたえまの−ほともなく−みえてはみえぬ−はつかりのこゑ


00205
未入力 (xxx)

へたてなきとしの契にくるかりは霧のうへにも声そ近つく

へたてなき−としのちきりに−くるかりは−きりのうへにも−こゑそちかつく


00206
未入力 (xxx)

雁金のたか玉章を忍ふらんそれともみえぬ峰の秋霧

かりかねの−たかたまつさを−しのふらむ−それともみえぬ−みねのあききり


00207
未入力 (xxx)

立ちまよふ峰の秋霧たえたえにへたてもはてぬ雁の一こゑ

たちまよふ−みねのあききり−たえたえに−へたてもはてぬ−かりのひとこゑ


00208
未入力 (xxx)

あけわたる峰の朝けのほのかなる霧のまよひに雁はきにけり

あけわたる−みねのあさけの−ほのかなる−きりのまよひに−かりはきにけり


00209
未入力 (xxx)

くる雁のは風にちかき程見えてはるるかほなる秋のあさきり

くるかりの−はかせにちかき−ほとみえて−はるるかほなる−あきのあさきり


00210
未入力 (xxx)

くる雁のうきて思ひはしらねともたつ河霧の空に鳴くなり

くるかりの−うきておもひは−しらねとも−たつかはきりの−そらになくなり


00211
未入力 (xxx)

月もなほなからにくちし橋柱ありとやここにすみ渡るらん

つきもなほ−なからにくちし−はしはしら−ありとやここに−すみわたるらむ


00212
未入力 (xxx)

ことしこそけに数そひて長月の月もあかしのうらちなりけれ

ことしこそ−けにかすそひて−なかつきの−つきもあかしの−うらちなりけれ


00213
未入力 (xxx)

神路山さこそ此世をてらすらめくもらぬ空にすめる月影

かみちやま−さこそこのよを−てらすらめ−くもらぬそらに−すめるつきかけ


00214
未入力 (xxx)

いつくにも思ひそ出てん松島やをしまかいその秋のよの月

いつくにも−おもひそいてむ−まつしまや−をしまかいその−あきのよのつき


00215
未入力 (xxx)

年をへて見しも昔に成りにけりさとはみなせの秋の夜の月

としをへて−みしもむかしに−なりにけり−さとはみなせの−あきのよのつき


00216
未入力 (xxx)

清見かた雲をはとめぬ浦風に月をそやとすなみの関守

きよみかた−くもをはとめぬ−うらかせに−つきをそやとす−なみのせきもり


00217
未入力 (xxx)

いにしへのふるき都を三笠山おもひいてつつ月やすむらん

いにしへの−ふるきみやこを−みかさやま−おもひいてつつ−つきやすむらむ


00218
未入力 (xxx)

またもあることしの秋のなか月は月もふたみの浦にこそ見め

またもある−ことしのあきの−なかつきは−つきもふたみの−うらにこそみめ


00219
未入力 (xxx)

とことはに雲吹きはらへ月のすむうらもあかしの夜半の秋風

とことはに−くもふきはらへ−つきのすむ−うらもあかしの−よはのあきかせ


00220
未入力 (xxx)

すへらきの三笠の山の月影やくもりなきよをさしてしるらん

すへらきの−みかさのやまの−つきかけや−くもりなきよを−さしてしるらむ


00221
未入力 (xxx)

沖つ風吹上の浜の白妙になほすみのほる秋のよの月

おきつかせ−ふきあけのはまの−しろたへに−なほすみのほる−あきのよのつき


00222
未入力 (xxx)

とへかしな蘆屋の里のはるる夜にわかすむかたの月はいかにと

とへかしな−あしやのさとの−はるるよに−わかすむかたの−つきはいかにと


00223
未入力 (xxx)

秋の夜は須暦の関守すみかへて月やゆききの人ととむらん

あきのよは−すまのせきもり−すみかへて−つきやゆききの−ひとととむらむ


00224
未入力 (xxx)

神代よりあまてる月もかけなれてのとかにそすむ住吉の浦

かみよより−あまてるつきも−かけなれて−のとかにそすむ−すみよしのうら


00225
未入力 (xxx)

よそにみし雲たにもなし葛城や嵐吹く夜の山のはの月

よそにみし−くもたにもなし−かつらきや−あらしふくよの−やまのはのつき


00226
未入力 (xxx)

秋の月こよひあかしのうら浪ものとかにみゆる世のけしきかな

あきのつき−こよひあかしの−うらなみも−のとかにみゆる−よのけしきかな


00227
未入力 (xxx)

五十鈴川ひとたひすめる色そへて光をやとす万代の月

いすすかは−ひとたひすめる−いろそへて−ひかりをやとす−よろつよのつき


00228
未入力 (xxx)

時しらぬ雪に光やさえぬらんふしの高根の秋のよの月

ときしらぬ−ゆきにひかりや−さえぬらむ−ふしのたかねの−あきのよのつき


00229
未入力 (xxx)

ほのほのとあかしのうらをなかめけんむかしのかけをうつす月影

ほのほのと−あかしのうらを−なかめけむ−むかしのかけを−うつすつきかけ


00230
未入力 (xxx)

立ちよりてたれもなかめつ鏡山くもらぬ秋の夜半の月影

たちよりて−たれもなかめつ−かかみやま−くもらぬあきの−よはのつきかけ


00231
未入力 (xxx)

秋ことになくさめかたき月そとはなれてもしるやをはすての山

あきことに−なくさめかたき−つきそとは−なれてもしるや−をはすてのやま


00232
未入力 (xxx)

長月のきくのたかはま月影にうつろふなみを花かとそ見る

なかつきの−きくのたかはま−つきかけに−うつろふなみを−はなかとそみる


00233
未入力 (xxx)

かたしきに夜やふけぬらん東路のいそねのはしに月渡るみゆ

かたしきに−よやふけぬらむ−あつまちの−いそねのはしに−つきわたるみゆ


00234
未入力 (xxx)

長月の月にそへてやあかしかた秋のなかはの影のこしけん

なかつきの−つきにそへてや−あかしかた−あきのなかはの−かけのこしけむ


00235
未入力 (xxx)

よにしらぬ光も色も秋の月みやきか原にすめるよの影

よにしらぬ−ひかりもいろも−あきのつき−みやきかはらに−すめるよのかけ


00236
未入力 (xxx)

たれしかも見て忍ふらんかるもかくふすゐの島の秋の月影

たれしかも−みてしのふらむ−かるもかく−ふすゐのしまの−あきのつきかけ


00237
未入力 (xxx)

こよひこそ忍ふの里にすむ人のいとふはかりも月はみえけれ

こよひこそ−しのふのさとに−すむひとの−いとふはかりも−つきはみえけれ


00238
未入力 (xxx)

年をへて光さしそへ春日なる山はみかさの秋のよの月

としをへて−ひかりさしそへ−かすかなる−やまはみかさの−あきのよのつき


00239
未入力 (xxx)

ききおきしほとともいはしさらしなやさらにそ秋の月はさやけき

ききおきし−ほとともいはし−さらしなや−さらにそあきの−つきはさやけき


00240
未入力 (xxx)

久方の月に夜舟も出てやらて浪吹きよするすまの浦風

ひさかたの−つきによふねも−いてやらて−なみふきよする−すまのうらかせ


00241
未入力 (xxx)

なにたかきほとそしらるるさらしなや月すむ秋のをはすての山

なにたかき−ほとそしらるる−さらしなや−つきすむあきの−をはすてのやま


00242
未入力 (xxx)

あきらけきちかひも月にあらはれて末住よしと人はいふなり

あきらけき−ちかひもつきに−あらはれて−すゑすみよしと−ひとはいふなり


00243
未入力 (xxx)

ふた見方よるもやひろふたまゆらもくもらてあくる月の光に

ふたみかた−よるもやひろふ−たまゆらも−くもらてあくる−つきのひかりに


00244
未入力 (xxx)

時しもあれ千里に月はあかしかたよを長月の有明のころ

ときしもあれ−ちさとにつきは−あかしかた−よをなかつきの−ありあけのころ


00245
未入力 (xxx)

さらしなの山のすそゆくみなの川さこそはすまめ秋の月影

さらしなの−やまのすそゆく−みなのかは−さこそはすまめ−あきのつきかけ


00246
未入力 (xxx)

かけさりし浪にや影のやとるらんたかしの浜の秋の夜の月

かけさりし−なみにやかけの−やとるらむ−たかしのはまの−あきのよのつき


00247
未入力 (xxx)

難波かた塩ひや遠く成りぬらんやとらてすめる秋のよの月

なにはかた−しほひやとほく−なりぬらむ−やとらてすめる−あきのよのつき


00248
未入力 (xxx)

神もみよくもりなき世の鏡山いのるかひある月そさやけき

かみもみよ−くもりなきよの−かかみやま−いのるかひある−つきそさやけき


00249
未入力 (xxx)

白妙になみのよせくる玉つ島月にそみかくおきつ塩風

しろたへに−なみのよせくる−たまつしま−つきにそみかく−おきつしほかせ


00250
未入力 (xxx)

あかしとは月にもしるしなか月のとよにあまれるみよの行末

あかしとは−つきにもしるし−なかつきの−とよにあまれる−みよのゆくすゑ


00251
未入力 (xxx)

わか身さてふるの山へのこかくれを月のしるへに出てにけるかな

わかみさて−ふるのやまへの−こかくれを−つきのしるへに−いてにけるかな


00252
未入力 (xxx)

くまもなきいくたのうらの秋の空月は今宵のさかとこそみれ

くまもなき−いくたのうらの−あきのそら−つきはこよひの−さかとこそみれ


00253
未入力 (xxx)

月よよしよよしとそみるわかかとのわさ田おしなみほに出つる比

つきよよし−よよしとそみる−わかかとの−わさたおしなひ−ほにいつるころ


00254
未入力 (xxx)

秋の田のひたのいほりをもる露に我か袖ぬれてやとる月影

あきのたの−ひたのいほりを−もるつゆに−わかそてぬれて−やとるつきかけ


00255
未入力 (xxx)

門田もるかりほの庵のさよ衣月ゆゑとてもぬれぬ袖かは

かとたもる−かりほのいほの−さよころも−つきゆゑとても−ぬれぬそてかは


00256
未入力 (xxx)

秋の田のかりほの露はおきなから月にそしをるよはの衣手

あきのたの−かりほのつゆは−おきなから−つきにそしをる−よはのころもて


00257
未入力 (xxx)

君かすむとは田のおものいねかてにとしある御代の月をみるかな

きみかすむ−とはたのおもの−いねかてに−としあるみよの−つきをみるかな


00258
未入力 (xxx)

里とほき山田の庵に夜もすからたれ独のみ月をみるらん

さととほき−やまたのいほに−よもすから−たれひとりのみ−つきをみるらむ


00259
未入力 (xxx)

秋のたにまはらにさせるしつか庵もりくる月の影にまかせて

あきのたに−まはらにさせる−しつかいほ−もりくるつきの−かけにまかせて


00260
未入力 (xxx)

秋の田の庵もるよはのあくるまはいかに露けき月とかはしる

あきのたの−いほもるよはの−あくるまは−いかにつゆけき−つきとかはしる


00261
未入力 (xxx)

もりあかす門田の庵のあれまくも猶をしまるる山のはの月

もりあかす−かとたのいほの−あれまくも−なほをしまるる−やまのはのつき


00262
未入力 (xxx)

秋の田のいねてふこともわすられていほもりあかす月の比かな

あきのたの−いねてふことも−わすられて−いほもりあかす−つきのころかな


00263
未入力 (xxx)

もりあかす月影さむし我か門のおくてのいなはほに出つる比

もりあかす−つきかけさむし−わかかとの−おくてのいなは−ほにいつるころ


00264
未入力 (xxx)

秋の田の庵もる人のいねかても月ゆゑとてや袖ぬらすらん

あきのたの−いほもるひとの−いねかても−つきゆゑとてや−そてぬらすらむ


00265
未入力 (xxx)

わさ田もるかりほの庵のいなむしろ露にかたしく秋のよの月

わさたもる−かりほのいほの−いなむしろ−つゆにかたしく−あきのよのつき


00266
未入力 (xxx)

秋の夜は山田の庵のひたすらにおとろくはかり月そさやけき

あきのよは−やまたのいほの−ひたすらに−おとろくはかり−つきそさやけき


00267
未入力 (xxx)

秋ふかき田つらのいほのいたつらに人こそすまね月はもりけり

あきふかき−たつらのいほの−いたつらに−ひとこそすまね−つきはもりけり


00268
未入力 (xxx)

秋の田の露しくとこのいなむしろ月の宿とももる庵かな

あきのたの−つゆしくとこの−いなむしろ−つきのやととも−もるいほりかな


00269
未入力 (xxx)

秋の夜は門田のいなは吹く風に千とせをかねてすめる月かけ

あきのよは−かとたのいなは−ふくかせに−ちとせをかねて−すめるつきかけ


00270
未入力 (xxx)

露むすふ門田のおしねひたすらに月もるよははねられやはする

つゆむすふ−かとたのおしね−ひたすらに−つきもるよはは−ねられやはする


00271
未入力 (xxx)

今よりはおしね色つく秋風の身にしむ庵に月を見るかな

いまよりは−おしねいろつく−あきかせの−みにしむいほに−つきをみるかな


00272
未入力 (xxx)

ほに出つる門田のいねのいねかても月見る比のならひなりけり

ほにいつる−かとたのいねの−いねかても−つきみるころの−ならひなりけり


00273
未入力 (xxx)

いなはもるねさめの庵にさ夜更けて田のもはるかにすめる月かけ

いなはもる−ねさめのいほに−さよふけて−たのもはるかに−すめるつきかけ


00274
未入力 (xxx)

独たにやすくふされぬを山田の程なき庵にすめる月影

ひとりたに−やすくふされぬ−をやまたの−ほとなきいほに−すめるつきかけ


00275
未入力 (xxx)

庵さす田のもはるかにさ夜更けてねぬわれ独月を見るらん

いほりさす−たのもはるかに−さよふけて−ねぬわれひとり−つきをみるらむ


00276
未入力 (xxx)

数ならて庵もるしつも月や見るあふたのみある秋の契りに

かすならて−いほもるしつも−つきやみる−あふたのみある−あきのちきりに


00277
未入力 (xxx)

さ夜すから月そ山田の庵はもる風になるこはひく人もなし

さよすから−つきそやまたの−いほはもる−かせになるこは−ひくひともなし


00278
未入力 (xxx)

いほむすふ山田のそひの月影にいなおほせ鳥も夜寒にそ鳴く

いほむすふ−やまたのそひの−つきかけに−いなおほせとりも−よさむにそなく


00279
未入力 (xxx)

夜をかさねいねてふことも忘られぬ庵もる月をみるとせしまに

よをかさね−いねてふことも−わすられぬ−いほもるつきを−みるとせしまに


00280
未入力 (xxx)

夜もすから庵もる露のおきゐつつとは田の面に月をみるかな

よもすから−いほもるつゆの−おきゐつつ−とはたのおもに−つきをみるかな


00281
未入力 (xxx)

おしねほす小田の庵のかりにたにいくよか秋の月をみつらん

おしねほす−をたのいほりの−かりにたに−いくよかあきの−つきをみつらむ


00282
未入力 (xxx)

かりてほすいねてふことも忘られて山田の庵に月をみるかな

かりてほす−いねてふことも−わすられて−やまたのいほに−つきをみるかな


00283
未入力 (xxx)

露むすふ山田の庵の苫をあらみねぬ夜かさねて月を見るかな

つゆむすふ−やまたのいほの−とまをあらみ−ねぬよかさねて−つきをみるかな


00284
未入力 (xxx)

夜さむなる門田の庵の月影にわかいねかてをとふ人もなし

よさむなる−かとたのいほの−つきかけに−わかいねかてを−とふひともなし


00285
未入力 (xxx)

門田よりほなみの雲に月すみてたみゆたかなる御代の秋かな

かとたより−ほなみのくもに−つきすみて−たみゆたかなる−みよのあきかな


00286
未入力 (xxx)

なこそあれさてしも月のくまそなき門田のいなは雲をなしつつ

なこそあれ−さてしもつきの−くまそなき−かとたのいなは−くもをなしつつ


00287
未入力 (xxx)

いなはもる門田の面の月影も夜さむなれはやねられさるらん

いなはもる−かとたのおもの−つきかけも−よさむなれはや−ねられさるらむ


00288
未入力 (xxx)

秋の田をまもるかり庵にいくよへてならしかほには月をみるらん

あきのたを−まもるかりいほに−いくよへて−ならしかほには−つきをみるらむ


00289
未入力 (xxx)

いくちよもおなしよし田のいなむしろ玉しく露に月や見るへき

いくちよも−おなしよしたの−いなむしろ−たましくつゆに−つきやみるへき


00290
未入力 (xxx)

ひきうゑしみとしろ小田に庵しめてほに出つる秋の月をみるかな

ひきうゑし−みとしろをたに−いほしめて−ほにいつるあきの−つきをみるかな


00291
未入力 (xxx)

秋田もるかりほのとこのさむしろにいくよかさねて月をみるらん

あきたもる−かりほのとこの−さむしろに−いくよかさねて−つきをみるらむ


00292
未入力 (xxx)

みるままに門田の庵の隙をあらみいく夜か月のもりあかすらん

みるままに−かとたのいほの−ひまをあらみ−いくよかつきの−もりあかすらむ


00293
未入力 (xxx)

またからぬわさ田をもると霜のよの岡のやかたに月をみるかな

またからぬ−わさたをもると−しものよの−をかのやかたに−つきをみるかな


00294
未入力 (xxx)

かりてける門田のいねのなそもかくほされぬ袖に月をみるらん

かりてける−かとたのいねの−なそもかく−ほされぬそてに−つきをみるらむ


00295
未入力 (xxx)

ちらぬよりもみちや道をうつむらん見て過きゆかん方も忘れて

ちらぬより−もみちやみちを−うつむらむ−みてすきゆかむ−かたもわすれて


00296
未入力 (xxx)

そめはてて時雨は山を過きぬれと人をはやらぬ峰のもみちは

そめはてて−しくれはやまを−すきぬれと−ひとをはやらぬ−みねのもみちは


00297
未入力 (xxx)

かへるさのいつふみわけん竜田山木すゑにみゆるよものもみち葉

かへるさの−いつふみわけむ−たつたやま−こすゑにみゆる−よものもみちは


00298
未入力 (xxx)

立ちよれは袖も色つくもみち葉のかけゆく道を人やとかめん

たちよれは−そてもいろつく−もみちはの−かけゆくみちを−ひとやとかめむ


00299
未入力 (xxx)

時雨れつつさきたつ雲やそめつらん越えゆく山の秋の紅葉は

しくれつつ−さきたつくもや−そめつらむ−こえゆくやまの−あきのもみちは


00300
未入力 (xxx)

過きやらてしはしそみつる露霜に木の葉色つく杜の下道

すきやらて−しはしそみつる−つゆしもに−このはいろつく−もりのしたみち


00301
未入力 (xxx)

おのつからをちこち人の立ちとまる関とそみゆる秋の紅葉は

おのつから−をちこちひとの−たちとまる−せきとそみゆる−あきのもみちは


00302
未入力 (xxx)

かへるさに色やまさると時雨れつる杜の紅葉はまたすきてみん

かへるさに−いろやまさると−しくれつる−もりのもみちは−またすきてみむ


00303
未入力 (xxx)

旅衣ほさてしくるるみ山路にしひてそみつる峰のもみち葉

たひころも−ほさてしくるる−みやまちに−しひてそみつる−みねのもみちは


00304
未入力 (xxx)

玉ほこの道ふみかへてけふは又ゆくてのほかの紅葉をそみる

たまほこの−みちふみかへて−けふはまた−ゆくてのほかの−もみちをそみる


00305
未入力 (xxx)

玉ほこの道ゆき人の袖の色もうつるはかりにそむる紅葉は

たまほこの−みちゆきひとの−そてのいろも−うつるはかりに−そむるもみちは


00306
未入力 (xxx)

みち人の時雨をすくすほととても紅葉のかけをよそにやはみる

みちひとの−しくれをすくす−ほととても−もみちのかけを−よそにやはみる


00307
未入力 (xxx)

くれぬとも猶みてゆかんもみちはのしたてる道はよるもまよはし

くれぬとも−なほみてゆかむ−もみちはの−したてるみちは−よるもまよはし


00308
未入力 (xxx)

心さへ峰のもみちにうつろひて秋の山路はすきそわつらふ

こころさへ−みねのもみちに−うつろひて−あきのやまちは−すきそわつらふ


00309
未入力 (xxx)

さそひきてしくるる雲は過きぬともしはしもみちのかけにやとらん

さそひきて−しくるるくもは−すきぬとも−しはしもみちの−かけにやとらむ


00310
未入力 (xxx)

時雨るとも猶やすらはん紅葉ははぬれての後そ色まさりける

しくるとも−なほやすらはむ−もみちはは−ぬれてののちそ−いろまさりける


00311
未入力 (xxx)

過きやらぬ山路の秋の関守は人の心をとむるもみち葉

すきやらぬ−やまちのあきの−せきもりは−ひとのこころを−とむるもみちは


00312
未入力 (xxx)

玉ほこのゆききの岡のはつ時雨もみちのかけをえやはすくへき

たまほこの−ゆききのをかの−はつしくれ−もみちのかけを−えやはすくへき


00313
未入力 (xxx)

駒なめて過きもやられすかた岡の杜の木の葉はもみちしにけり

こまなへて−すきもやられす−かたをかの−もりのこのはは−もみちしにけり


00314
未入力 (xxx)

過きかてにけふやくれなん紅葉はもなかめすつへき梢ならねは

すきかてに−けふやくれなむ−もみちはも−なかめすつへき−こすゑならねは


00315
未入力 (xxx)

紅葉はも袖の色にそうつり行く木の下かけの秋の山道

もみちはも−そてのいろにそ−うつりゆく−このしたかけの−あきのやまみち


00316
未入力 (xxx)

今そむる紅葉の色やみさらまし時雨るる山をこえこさりせは

いまそむる−もみちのいろや−みさらまし−しくるるやまを−こえこさりせは


00317
未入力 (xxx)

こしかたはそむる時雨もなしはらのむまやあきてふ山の紅葉は

こしかたは−そむるしくれも−なしはらの−うまやあきてふ−やまのもみちは


00318
未入力 (xxx)

かへるさにをりてもゆかん村時雨そめな残しそききの紅葉は

かへるさに−をりてもゆかむ−むらしくれ−そめなのこしそ−ききのもみちは


00319
未入力 (xxx)

時雨行く秋の山路は紅葉はのうつろふ色やしるへなるらん

しくれゆく−あきのやまちは−もみちはの−うつろふいろや−しるへなるらむ


00320
未入力 (xxx)

見ぬ人のためとやをらん玉ほこのみちのくまをのはつもみちはを

みぬひとの−ためとやをらむ−たまほこの−みちのくまをの−はつもみちはを


00321
未入力 (xxx)

行末のみちは千里もあらしとや紅葉にくらす秋の旅人

ゆくすゑの−みちはちさとも−あらしとや−もみちにくらす−あきのたひひと


00322
未入力 (xxx)

てりまさる秋の山への紅葉はによるさへかよふいはのかけ道

てりまさる−あきのやまへの−もみちはに−よるさへかよふ−いはのかけみち


00323
未入力 (xxx)

行末はまた遠けれと旅人の紅葉おりはへ日をくらすかな

ゆくすゑは−またとほけれと−たひひとの−もみちおりはへ−ひをくらすかな


00324
未入力 (xxx)

しくれ行く山路も遠きぬれ衣きつつもみちの色をみるかな

しくれゆく−やまちもとほき−ぬれころも−きつつもみちの−いろをみるかな


00325
未入力 (xxx)

ぬれぬともゆくてにをらん村時雨そむる山ちの秋の紅葉は

ぬれぬとも−ゆくてにをらむ−むらしくれ−そむるやまちの−あきのもみちは


00326
未入力 (xxx)

秋はまた紅葉やみちの関ならん行くもかへるも心ととめて

あきはまた−もみちやみちの−せきならむ−ゆくもかへるも−こころととめて


00327
未入力 (xxx)

みちすから時雨るる色はこくうすく梢をわきて紅葉しにけり

みちすから−しくるるいろは−こくうすく−こすゑをわきて−もみちしにけり


00328
未入力 (xxx)

ゆきやらて日数へにけり竜田山紅葉にあかぬ秋の旅人

ゆきやらて−ひかすへにけり−たつたやま−もみちにあかぬ−あきのたひひと


00329
未入力 (xxx)

相坂のゆききたえせぬ旅人の心をそむる関の紅葉は

あふさかの−ゆききたえせぬ−たひひとの−こころをそむる−せきのもみちは


00330
未入力 (xxx)

猶もまた山路の末のしくるれはこれよりふかき紅葉をやみん

なほもまた−やまちのすゑの−しくるれは−これよりふかき−もみちをやみむ


00331
未入力 (xxx)

ぬれつつもとまる情はこえぬらんさのみ紅葉のかけな時雨れそ

ぬれつつも−とまるなさけは−こえぬらむ−さのみもみちの−かけなしくれそ


00332
未入力 (xxx)

ななそちのおいの坂行く山こえてまた色ふかき紅葉をそみる

ななそちの−おいのさかゆく−やまこえて−またいろふかき−もみちをそみる


00333
未入力 (xxx)

行すゑもしくるとみえし山のははけふ過きかての紅葉なりけり

ゆくすゑも−しくるとみえし−やまのはは−けふすきかての−もみちなりけり


00334
未入力 (xxx)

かつ見つつ色まさりゆく紅葉かな時雨も過くる山のした道

かつみつつ−いろまさりゆく−もみちかな−しくれもすくる−やまのしたみち


00335
未入力 (xxx)

紅葉はの色まさりゆく道のへは時雨とともに過きそやられぬ

もみちはの−いろまさりゆく−みちのへは−しくれとともに−すきそやられぬ


00336
未入力 (xxx)

思ひことみちゆきかねてこの秋もわか身時雨に木のはそめつつ

おもひこと−みちゆきかねて−このあきも−わかみしくれに−このはそめつつ


00337
未入力 (xxx)

忍ふともうはの空にやしられまし恋に煙のたつよなりせは

しのふとも−うはのそらにや−しられまし−こひにけふりの−たつよなりせは


00338
未入力 (xxx)

うら風にたくもの煙なひくともしらるな人に心よわさを

うらかせに−たくものけふり−なひくとも−しらるなひとに−こころよわさを


00339
未入力 (xxx)

けふりたにそれとは見えしあちきなく心にこかすしたのおもひは

けふりたに−それとはみえし−あちきなく−こころにこかす−したのおもひは


00340
未入力 (xxx)

名にたたむ後そ悲しき富士の根の同し煙に身をまかへても

なにたたむ−のちそかなしき−ふしのねの−おなしけふりに−みをまかへても


00341
未入力 (xxx)

下もえの思ひをそれとしらすなよふしのけふりはいつもたてとも

したもえの−おもひをそれと−しらすなよ−ふしのけふりは−いつもたてとも


00342
未入力 (xxx)

富士のねのけたぬ煙もたたはたて身のおもひたに人ししらすは

ふしのねの−けたぬけふりも−たたはたて−みのおもひたに−ひとししらすは


00343
未入力 (xxx)

恋ひわひてきえなむ後の煙たに思ひありきと人にしらすな

こひわひて−きえなむのちの−けふりたに−おもひありきと−ひとにしらすな


00344
未入力 (xxx)

あちきなくなとしたもえと成りにけん富士の煙も空にこそたて

あちきなく−なとしたもえと−なりにけむ−ふしのけふりも−そらにこそたて


00345
未入力 (xxx)

しられしなたくもの煙下にのみむせふならひのそめてうき身は

しられしな−たくものけふり−したにのみ−むせふならひの−そめてうきみは


00346
未入力 (xxx)

たちのほる煙をよそにいひなして思ひありとも人にしらせし

たちのほる−けふりをよそに−いひなして−おもひありとも−ひとにしらせし


00347
未入力 (xxx)

富士のねにたえぬ煙も心せよわか下もえの思ひあるよに

ふしのねに−たえぬけふりも−こころせよ−わかしたもえの−おもひあるよに


00348
未入力 (xxx)

せめて猶下にはなひけ夕煙もえてわか名の空にたたすは

せめてなほ−したにはなひけ−ゆふけふり−もえてわかなの−そらにたたすは


00349
未入力 (xxx)

きえねたたむろの八島の夕煙思ひありとも人にしらすな

きえねたた−むろのやしまの−ゆふけふり−おもひありとも−ひとにしらすな


00350
未入力 (xxx)

したもえにむせひわふともうつみ火の煙よたつと人にしらすな

したもえに−むせひわふとも−うつみひの−けふりよたつと−ひとにしらすな


00351
未入力 (xxx)

いつまてとあまのすくもひあちきなくたたぬ煙の下にくゆらん

いつまてと−あまのすくもひ−あちきなく−たたぬけふりの−したにくゆらむ


00352
未入力 (xxx)

いかにせんあまの塩屋にまかへても恋の煙は立ちやまさらん

いかにせむ−あまのしほやに−まかへても−こひのけふりは−たちやまさらむ


00353
未入力 (xxx)

富士のねの煙はさそなとしふとも下の思ひを人にしらすな

ふしのねの−けふりはさそな−としふとも−したのおもひを−ひとにしらすな


00354
未入力 (xxx)

人しれぬ忍ふの浦のなにしおはは煙なたてそあまのもしほ火

ひとしれぬ−しのふのうらの−なにしおはは−けふりなたてそ−あまのもしほひ


00355
未入力 (xxx)

我か恋は忍ふの浦のしのへとももしほの煙たたぬまもなし

わかこひは−しのふのうらの−しのへとも−もしほのけふり−たたぬまもなし


00356
未入力 (xxx)

大方のむなし煙といひなしてもゆるなけきのほとをしらせし

おほかたの−むなしけふりと−いひなして−もゆるなけきの−ほとをしらせし


00357
未入力 (xxx)

きえねたた下の思ひの夕けふり心のほかの名にもこそたて

きえねたた−したのおもひの−ゆふけふり−こころのほかの−なにもこそたて


00358
未入力 (xxx)

煙をもいつかはたつるいそかくれたきあらはさぬあまのしのひは

けふりをも−いつかはたつる−いそかくれ−たきあらはさぬ−あまのしのひは


00359
未入力 (xxx)

よしやまたたつとも浦の塩煙わかやくとたに人のしらすは

よしやまた−たつともうらの−しほけふり−わかやくとたに−ひとのしらすは


00360
未入力 (xxx)

人しれすむせふ思ひに恋ひしなはむなし煙や跡に残らん

ひとしれす−むせふおもひに−こひしなは−むなしけふりや−あとにのこらむ


00361
未入力 (xxx)

煙まてこひとはたつなあともなくきえゆく空の雲にまかへて

けふりまて−こひとはたつな−あともなく−きえゆくそらの−くもにまかへて


00362
未入力 (xxx)

煙たつ海士のもしほはやきもせよ下のおもひは人もとかめす

けふりたつ−あまのもしほは−やきもせよ−したのおもひは−ひともとかめす


00363
未入力 (xxx)

かくまては誰かはしらんよとともに煙もみせぬ下のおもひを

かくまては−たれかはしらむ−よとともに−けふりもみせぬ−したのおもひを


00364
未入力 (xxx)

空に猶たつなもらすな里のあまのもしほの煙下むせふとも

そらになほ−たつなもらすな−さとのあまの−もしほのけふり−したむせふとも


00365
未入力 (xxx)

恋すてふなにはたてしと思ふ身にむねの煙の何こかるらん

こひすてふ−なにはたてしと−おもふみに−むねのけふりの−なにこかるらむ


00366
未入力 (xxx)

我かおもひ煙とならはさのみやはたつなをよそに忍ひはつへき

わかおもひ−けふりとならは−さのみやは−たつなをよそに−しのひはつへき


00367
未入力 (xxx)

あまのたく磯の塩屋の夕けふりおもひきゆとも人にしらすな

あまのたく−いそのしほやの−ゆふけふり−おもひきゆとも−ひとにしらすな


00368
未入力 (xxx)

よしやたた思ひもきえねなからへは身よりあまれる煙もそたつ

よしやたた−おもひもきえね−なからへは−みよりあまれる−けふりもそたつ


00369
未入力 (xxx)

しのふるも心にあまるおもひかな身よりや今はけふりたつらん

しのふるも−こころにあまる−おもひかな−みよりやいまは−けふりたつらむ


00370
未入力 (xxx)

ふしの山うはの空なる夕けふりわかしたもえにこころかへせよ

ふしのやま−うはのそらなる−ゆふけふり−わかしたもえに−こころかへせよ


00371
未入力 (xxx)

さてもよし難波入江に蜑のたくもくつの煙それもしらねは

さてもよし−なにはいりえに−あまのたく−もくつのけふり−それもしらねは


00372
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難波なる蘆のしのやの下むせひたてしや煙ゆくかたもなし

なにはなる−あしのしのやの−したむせひ−たてしやけふり−ゆくかたもなし


00373
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人とははよそのおもひといふはかり空に成行くけふりともかな

ひととはは−よそのおもひと−いふはかり−そらになりゆく−けふりともかな


00374
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もしほ火のよその煙はたたはたてわか下もえを人にしらすな

もしほひの−よそのけふりは−たたはたて−わかしたもえを−ひとにしらすな


00375
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つつむともたちもそのほるかはらやのしたたく煙思ひきえなて

つつむとも−たちもそのほる−かはらやの−したたくけふり−おもひきえなて


00376
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かはらやのしたたく煙下にのみ思ひむせふと人にしられし

かはらやの−したたくけふり−したにのみ−おもひむせふと−ひとにしられし


00377
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人とはは里のしるへといひなして恋の煙を猶やたてまし

ひととはは−さとのしるへと−いひなして−こひのけふりを−なほやたてまし


00378
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なひくかとみえなは人にいかかせんたくもの煙けつかたもかな

なひくかと−みえなはひとに−いかかせむ−たくものけふり−けつかたもかな


00379
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こぬ人によそへて待ちし夕へより月てふ物は恨みそめてき

こぬひとに−よそへてまちし−ゆふへより−つきてふものは−うらみそめてき


00380
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うき人はよそに成りつつよもすから月はかりこそ身にはそひけれ

うきひとは−よそになりつつ−よもすから−つきはかりこそ−みにはそひけれ


00381
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海士のすむ里はととはは浜千鳥月に鳴く夜の袖としらせよ

あまのすむ−さとはととはは−はまちとり−つきになくよの−そてとしらせよ


00382
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うき人に涙の衣ひきかへしやとすとかたれ袖の月影

うきひとに−なみたのころも−ひきかへし−やとすとかたれ−そてのつきかけ


00383
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わすらるるわか身を秋のつらさとて月さへかはる影そかなしき

わすらるる−わかみをあきの−つらさとて−つきさへかはる−かけそかなしき


00384
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いかにせんうかりし人の面影の月にたちそふあかつきの空

いかにせむ−うかりしひとの−おもかけの−つきにたちそふ−あかつきのそら


00385
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またよひとなくさめてこそまたれつれ更行く月にうさそまされる

またよひと−なくさめてこそ−またれつれ−ふけゆくつきに−うさそまされる


00386
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秋の夜の月にも袖はぬるれともつらき人にそねはなかれける

あきのよの−つきにもそては−ぬるれとも−つらきひとにそ−ねはなかれける


00387
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月やとす袖にもしるやうき人の面影そへてうらみわふとは

つきやとす−そてにもしるや−うきひとの−おもかけそへて−うらみわふとは


00388
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身にしれはさこそは月もしをるらめまくすか原の秋のよなよな

みにしれは−さこそはつきも−しをるらめ−まくすかはらの−あきのよなよな


00389
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そのままに忘れんと思ふうき人のかたみもつらし有明の月

そのままに−わすれむとおもふ−うきひとの−かたみもつらし−ありあけのつき


00390
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恨みてもなきても何をかこたましみしよの月のつらさならては

うらみても−なきてもなにを−かこたまし−みしよのつきの−つらさならては


00391
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つれもなき忘れかたみのつらさかな浮きものとみし有明の月

つれもなき−わすれかたみの−つらさかな−うきものとみし−ありあけのつき


00392
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うかりける人の心の秋の月かはらぬかけもいつまてか見ん

うかりける−ひとのこころの−あきのつき−かはらぬかけも−いつまてかみむ


00393
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今はたた涙なみえそ袖の月うつれはかはるかけもうらめし

いまはたた−なみたなみえそ−そてのつき−うつれはかはる−かけもうらめし


00394
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もろともにみし有明のつきもせすうきにつけてもなかめてそふる

もろともに−みしありあけの−つきもせす−うきにつけても−なかめてそふる


00395
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めくりあへはみしよの月もつらきかな空たのめうき人の心に

めくりあへは−みしよのつきも−つらきかな−そらたのめうき−ひとのこころに


00396
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待ちえても人の契そうかりけるおなし恨の山のはの月

まちえても−ひとのちきりそ−うかりける−おなしうらみの−やまのはのつき


00397
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独ねのわひしきよるをかさねつつ袖こそいたく月になれぬれ

ひとりねの−わひしきよるを−かさねつつ−そてこそいたく−つきになれぬれ


00398
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蜑のすむ里をうき身の契にてたのめし夜はの月そ更行く

あまのすむ−さとをうきみの−ちきりにて−たのめしよはの−つきそふけゆく


00399
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面影は忘れかたみになからへて我かためつらきよはの月かな

おもかけは−わすれかたみに−なからへて−わかためつらき−よはのつきかな


00400
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このまもる月とやいはんかけをたにみるはすくなき心つくしを

このまもる−つきとやいはむ−かけをたに−みるはすくなき−こころつくしを


00401
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哀又人のあきこそうかりけれ時雨れかちなる月をみるにも

あはれまた−ひとのあきこそ−うかりけれ−しくれかちなる−つきをみるにも


00402
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よひよひに月を哀となかめても猶うき人のまたれさりせは

よひよひに−つきをあはれと−なかめても−なほうきひとの−またれさりせは


00403
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うきなからさすかにものの月影を忘れはててし有明の空

うきなから−さすかにものの−つきかけを−わすれはててし−ありあけのそら


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つらし猶こよひもさのみふけはてはまたやはまたん山のはの月

つらしなほ−こよひもさのみ−ふけはては−またやはまたむ−やまのはのつき


00405
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かつみてもまつなけかれぬむは玉のそのよの月の昔かたりに

かつみても−まつなけかれぬ−うはたまの−そのよのつきの−むかしかたりに


00406
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有明の月をもいはしつれなさのためしは人の心にそ見る

ありあけの−つきをもいはし−つれなさの−ためしはひとの−こころにそみる


00407
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さのみまた月にも袖のしをるるは人をうらみのあまりなりけり

さのみまた−つきにもそての−しをるるは−ひとをうらみの−あまりなりけり


00408
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ねても又夢にそみつるさ夜衣かへす恨の袖の月かけ

ねてもまた−ゆめにそみつる−さよころも−かへすうらみの−そてのつきかけ


00409
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今更にみてうき事のまさるかな月やつらさのしるへなるらん

いまさらに−みてうきことの−まさるかな−つきやつらさの−しるへなるらむ


00410
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思ひ侘ひうきおも影やなくさむとみれは悲しき有明の月

おもひわひ−うきおもかけや−なくさむと−みれはかなしき−ありあけのつき


00411
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夜もすから袖にそやとるいつまてか月みるとても人を待ちけん

よもすから−そてにそやとる−いつまてか−つきみるとても−ひとをまちけむ


00412
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めくりあはて空行く月もかたふきぬ山のあなたと契りやはせし

めくりあはて−そらゆくつきも−かたふきぬ−やまのあなたと−ちきりやはせし


00413
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こぬ人のつらさもつらき秋の夜になと更けぬらん山のはの月

こぬひとの−つらさもつらき−あきのよに−なとふけぬらむ−やまのはのつき


00414
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やすらはて出てにし人の名残とて中中みすは有明の月

やすらはて−いてにしひとの−なこりとて−なかなかみすは−ありあけのつき


00415
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またれつる月は出てぬとなかめても残るうらみのある身なりけり

またれつる−つきはいてぬと−なかめても−のこるうらみの−あるみなりけり


00416
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いかにせん月のとかとは思はねとうき面影におつるなみたを

いかにせむ−つきのとかとは−おもはねと−うきおもかけに−おつるなみたを


00417
未入力 (xxx)

面影はみしよの月にしたはれてうきにも人の忘られぬかな

おもかけは−みしよのつきに−したはれて−うきにもひとの−わすられぬかな


00418
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もろともにみし有明はかはらねとうき身ひとつにくもる月影

もろともに−みしありあけは−かはらねと−うきみひとつに−くもるつきかけ


00419
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わか中のよしなき袖にやとりきて恨にましる月の影かな

わかなかの−よしなきそてに−やとりきて−うらみにましる−つきのかけかな


00420
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うき人はさそともいはし夜半の月たのむになれは落つる涙を

うきひとは−さそともいはし−よはのつき−たのむになれは−おつるなみたを