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作品集名 | 永福門院百番自歌合 |
作品集名読み | えいふくもんいんひゃくばんじうたあわせ |
作成年月日 | |
場所 |
00001 |
未入力 (xxx)
春とたに思ひもあへぬけさの朝け山の霞ははや立ちにけり
はるとたに−おもひもあへぬ−けさのあさけ−やまのかすみは−はやたちにけり |
00002 |
未入力 (xxx)
朝嵐は外面の竹に吹きあれて山の霞も春寒き比
あさあらしは−そとものたけに−ふきあれて−やまのかすみも−はるさむきころ |
00003 |
未入力 (xxx)
外山には霞たな引きむへしこそ野沢の雪も下消えにけれ
とやまには−かすみたなひき−うへしこそ−のさはのゆきも−したきえにけれ |
00004 |
未入力 (xxx)
なほさゆる夜半の雪けのうすくもり晴行く月も又霞みぬる
なほさゆる−よはのゆきけの−うすくもり−はれゆくつきも−またかすみぬる |
00005 |
未入力 (xxx)
峰の霞ふもとの草のうす緑野山をかけて春めきにけり
みねのかすみ−ふもとのくさの−うすみとり−のやまをかけて−はるめきにけり |
00006 |
未入力 (xxx)
木木の心花ちかからし昨日けふ世はうすくもり春雨そふる
ききのこころ−はなちかからし−きのふけふ−よはうすくもり−はるさめそふる |
00007 |
未入力 (xxx)
折りかさす道行人のけしきにて世はみな花の盛をそしる
をりかさす−みちゆきひとの−けしきにて−よはみなはなの−さかりをそしる |
00008 |
未入力 (xxx)
入あひのこゑする山の陰くれて花の木の間に月出てにけり
いりあひの−こゑするやまの−かけくれて−はなのこのまに−つきいてにけり |
00009 |
未入力 (xxx)
花のうへにしはしうつろふ夕附日入るともなしに影消えにけり
はなのうへに−しはしうつろふ−ゆふつくひ−いるともなしに−かけきえにけり |
00010 |
未入力 (xxx)
何となき草の花さく野への春雲にひはりの声ものとけき
なにとなき−くさのはなさく−のへのはる−くもにひはりの−こゑものとけき |
00011 |
未入力 (xxx)
窓の梅のかをりなつかし朝明に閨なから聞く鴬の声
まとのうめの−かをりなつかし−あさあけに−ねやなからきく−うくひすのこゑ |
00012 |
未入力 (xxx)
あくかるる心なからやさそはれん梅咲く軒のはるの夕かせ
あくかるる−こころなからや−さそはれむ−うめさくのきの−はるのゆふかせ |
00013 |
未入力 (xxx)
遠近の霞の色はふかけれと岸の柳そ淺みとりなる
をちこちの−かすみのいろは−ふかけれと−きしのやなきそ−あさみとりなる |
00014 |
未入力 (xxx)
霞みわたり長閑けき暮に河きしの柳一もと春風そふく
かすみわたり−のとけきくれに−かはきしの−やなきひともと−はるかせそふく |
00015 |
未入力 (xxx)
さえかへる嵐を寒み足引の山のさくらも咲きやかねぬる
さえかへる−あらしをさむみ−あしひきの−やまのさくらも−さきやかねぬる |
00016 |
未入力 (xxx)
遠近の鴬の音ものとかにて花の咲きそふ宿の夕暮
をちこちの−うくひすのねも−のとかにて−はなのさきそふ−やとのゆふくれ |
00017 |
未入力 (xxx)
一木つつつきて咲きなん我か宿の花は見るほと久しかるへき
ひときつつ−つきてさきなむ−わかやとの−はなはみるほと−ひさしかるへき |
00018 |
未入力 (xxx)
春ことにかはらぬものか梅の匂ひ桜かいろにうつるこころは
はることに−かはらぬものか−うめのにほひ−さくらかいろに−うつるこころは |
00019 |
未入力 (xxx)
峰のかすみ麓の花に鳥のこゑ野山のはるは夕なりけり
みねのかすみ−ふもとのはなに−とりのこゑ−のまのはるは−ゆふへなりけり |
00020 |
未入力 (xxx)
夕暮の霞につつむ山本の花とけふりの里のむらむら
ゆふくれの−かすみにつつむ−やまもとの−はなとけふりの−さとのむらむら |
00021 |
未入力 (xxx)
夕月日軒はの影はうつり消えて花のうへにそしはし残れる
ゆふつくひ−のきはのかけは−うつりきえて−はなのうへにそ−しはしのこれる |
00022 |
未入力 (xxx)
何となく庭の梢はかすみふけて入るかた晴るる山のはの月
なにとなく−にはのこすゑは−かすみふけて−いるかたはるる−やまのはのつき |
00023 |
未入力 (xxx)
詠めやるかすみの遠のはるの暮柳さくらの色そこもれる
なかめやる−かすみのをちの−はるのくれ−やなきさくらの−いろそこもれる |
00024 |
未入力 (xxx)
枝かはす柳か末はなひけとも盛のはなは風もよきけり
えたかはす−やなきかすゑは−なひけとも−さかりのはなは−かせもよきけり |
00025 |
未入力 (xxx)
吹きはらふ山の嵐ははけしきにおつる桜はのとけかりけり
ふきはらふ−やまのあらしは−はけしきに−おつるさくらは−のとけかりけり |
00026 |
未入力 (xxx)
ちるとなみ花おちすさふ夕暮の風ゆるき日の二月の空
ちるとなみ−はなおちすさふ−ゆふくれの−かせゆるきひの−きさらきのそら |
00027 |
未入力 (xxx)
あひ思はてうたて散りゆく花にしも何あちきなく心そむらん
あひおもはて−うたてちりゆく−はなにしも−なにあちきなく−こころそむらむ |
00028 |
未入力 (xxx)
あやにくに吹きたつ風のつらきかなあすまてよものけふの桜に
あやにくに−ふきたつかせの−つらきかな−あすまてよもの−けふのさくらに |
00029 |
未入力 (xxx)
残なく散りしく庭の花の雪えたにをかへせ春のゆふ風
のこりなく−ちりしくにはの−はなのゆき−えたにをかへせ−はるのゆふかせ |
00030 |
未入力 (xxx)
峰つつきくれて吹きたつ山風にさかぬ野へまて花そ散りしく
みねつつき−くれてふきたつ−やまかせに−さかぬのへまて−はなそちりしく |
00031 |
未入力 (xxx)
滝つせやいはもと白くよる花は流るとすれと又かへるなり
たきつせや−いはもとしろく−よるはなは−なかるとすれと−またかへるなり |
00032 |
未入力 (xxx)
流れやらぬ花のしら浪立ちかへり春をととむる山川の水
なかれやらぬ−はなのしらなみ−たちかへり−はるをととむる−やまかはのみつ |
00033 |
未入力 (xxx)
明けかたき秋の寝覚もかくやありし草の庵のよはの春雨
あけかたき−あきのねさめも−かくやありし−くさのいほりの−よはのはるさめ |
00034 |
未入力 (xxx)
何となく寝覚の袂しほりわひおし明くる空もよはの春雨
なにとなく−ねさめのたもと−しほりわひ−おしあくるそらも−よはのはるさめ |
00035 |
未入力 (xxx)
帰さの道もやまよふ夕暮のかすむ雲井にきゆる雁かね
かへるさの−みちもやまよふ−ゆふくれの−かすむくもゐに−きゆるかりかね |
00036 |
未入力 (xxx)
入かたの月影かすむ山のはに帰る雁さへほのかなるこゑ
いりかたの−つきかけかすむ−やまのはに−かへるかりさへ−ほのかなるこゑ |
00037 |
未入力 (xxx)
此ころよ井手のわたりもかくやらん山吹咲きてかはつ鳴くなり
このころよ−ゐてのわたりも−かくやらむ−やまふきさきて−かはつなくなり |
00038 |
未入力 (xxx)
打ちいつる浪さへ色にうつろひぬ井手の川瀬の山吹の比
うちいつる−なみさへいろに−うつろひぬ−ゐてのかはせの−やまふきのころ |
00039 |
未入力 (xxx)
ゆく春をしたひかねてそ聞ゆなる青葉のなかの鴬の声
ゆくはるを−したひかねてそ−きこゆなる−あをはのなかの−うくひすのこゑ |
00040 |
未入力 (xxx)
岩かくれ咲けるつつしの人しれす残れる春の色もめつらし
いはかくれ−さけるつつしの−ひとしれす−のこれるはるの−いろもめつらし |
00041 |
未入力 (xxx)
神まつる卯月になれや榊葉にみしめはへたるあけの玉垣
かみまつる−うつきになれや−さかきはに−みしめはへたる−あけのたまかき |
00042 |
未入力 (xxx)
ほとときすこゑも高根のよこ雲になき捨ててゆく曙の空
ほとときす−こゑもたかねの−よこくもに−なきすててゆく−あけほののそら |
00043 |
未入力 (xxx)
卯の花の垣ねの月のうす雲に山ほとときすひと声そ鳴く
うのはなの−かきねのつきの−うすくもに−やまほとときす−ひとこゑそなく |
00044 |
未入力 (xxx)
月雪の色にそまかふ卯の花のかきねつつきのたそかれの宿
つきゆきの−いろにそまかふ−うのはなの−かきねつつきの−たそかれのやと |
00045 |
未入力 (xxx)
さなへなひく外面の小田のむら雨に山時鳥こゑおとすなり
さなへなひく−そとものをたの−むらさめに−やまほとときす−こゑおとすなり |
00046 |
未入力 (xxx)
楢の葉にむら雨かかる山陰のくるる雲間に郭公なく
ならのはに−むらさめかかる−やまかけの−くるるくもまに−ほとときすなく |
00047 |
未入力 (xxx)
小山田のさなへの色はすすしくて岡へこくらき杉の一村
をやまたの−さなへのいろは−すすしくて−をかへこくらき−すきのひとむら |
00048 |
未入力 (xxx)
山本のけふりの色も消えはてぬ遠里むらの五月雨の比
やまもとの−けふりのいろも−きえはてぬ−とほさとむらの−さみたれのころ |
00049 |
未入力 (xxx)
五月雨のふる屋の軒の糸水のくる人もなき暮そ淋しき
さみたれの−ふるやののきの−いとみつの−くるひともなき−くれそさひしき |
00050 |
未入力 (xxx)
五月雨のはるる雲間の宵の月軒のあまりの影そすくなき
さみたれの−はるるくもまの−よひのつき−のきのあまりの−かけそすくなき |
00051 |
未入力 (xxx)
夕立の雲も残らす空晴れてすたれをのほる宵の月影
ゆふたちの−くもものこらす−そらはれて−すたれをのほる−よひのつきかけ |
00052 |
未入力 (xxx)
風の音もすすしくそよく呉竹のふしうきよはの月の影かな
かせのおとも−すすしくそよく−くれたけの−ふしうきよはの−つきのかけかな |
00053 |
未入力 (xxx)
みしか夜はさし入る月の影をこめて枕の山ははや明けにけり
みしかよは−さしいるつきの−かけをこめて−まくらのやまは−はやあけにけり |
00054 |
未入力 (xxx)
雨はるる梢の青葉いろそひて吹きたつ風は露はらふなり
あめはるる−こすゑのあをは−いろそひて−ふきたつかせは−つゆはらふなり |
00055 |
未入力 (xxx)
なく蝉のこゑさへすすし吹く風にむら雨ましる山のゆふかけ
なくせみの−こゑさへすすし−ふくかせに−むらさめましる−やまのゆふかけ |
00056 |
未入力 (xxx)
旅人のあまた立ちよる夕木陰山川きよみすすみ涼しも
たひひとの−あまたたちよる−ゆふこかけ−やまかはきよみ−すすみすすしも |
00057 |
未入力 (xxx)
夜の雨に竹の葉末はなひき伏して朝けの窓の風の涼しさ
よるのあめに−たけのはすゑは−なひきふして−あさけのまとの−かせのすすしさ |
00058 |
未入力 (xxx)
夏深き草のしけみのしけくのみ思ふおもひは道もとほらす
なつふかき−くさのしけみの−しけくのみ−おもふおもひは−みちもとほらす |
00059 |
未入力 (xxx)
谷ふかき庵の軒のまつの風秋よりさきに秋をきくかな
たにふかき−いほりののきの−まつのかせ−あきよりさきに−あきをきくかな |
00060 |
未入力 (xxx)
吹くかせも今宵はすすし御祓する川瀬の浪に秋やさきたつ
ふくかせも−こよひはすすし−みそきする−かはせのなみに−あきやさきたつ |
00061 |
未入力 (xxx)
いつしかと聞くに心そ愁へそむる荻のうへわたる秋のはつ風
いつしかと−きくにこころそ−うれへそむる−をきのうへわたる−あきのはつかせ |
00062 |
未入力 (xxx)
何もなくかはるとなしの色さひて松も桧原も秋は見えけり
なにもなく−かはるとなしの−いろさひて−まつもひはらも−あきはみえけり |
00063 |
未入力 (xxx)
ひこほしのあふ夜をちかく思ふより我さへ空に詠をそする
ひこほしの−あふよをちかく−おもふより−われさへそらに−なかめをそする |
00064 |
未入力 (xxx)
天の川としのわたりを待つよりもけふのくるるは猶や久しき
あまのかは−としのわたりを−まつよりも−けふのくるるは−なほやひさしき |
00065 |
未入力 (xxx)
秋草の花のひもとく比しもあれ吹きなむすひそ野への夕風
あきくさの−はなのひもとく−ころしもあれ−ふきなむすひそ−のへのゆふかせ |
00066 |
未入力 (xxx)
宮城野やちくさのうへの秋の風なひくそ花のすかたなりける
みやきのや−ちくさのうへの−あきのかせ−なひくそはなの−すかたなりける |
00067 |
未入力 (xxx)
おきて見る朝けの籬露しけし小萩かすゑの花になる比
おきてみる−あさけのまかき−つゆしけし−こはきかすゑの−はなになるころ |
00068 |
未入力 (xxx)
出てそむる尾花もはきも色そこき露の籬のけさの曙
いてそむる−をはなもはきも−いろそこき−つゆのまかきの−けさのあけほの |
00069 |
未入力 (xxx)
更くる夜の月と虫とは何なれや光もこゑもひとつにそすむ
ふくるよの−つきとむしとは−なになれや−ひかりもこゑも−ひとつにそすむ |
00070 |
未入力 (xxx)
みちのへや垣根の虫も声更けて月より外に行く人もなし
みちのへや−かきねのむしも−こゑふけて−つきよりほかに−ゆくひともなし |
00071 |
未入力 (xxx)
庭白く月出て始むる宵のまの草の葉かくれきりきりす鳴く
にはしろく−つきいてそむる−よひのまの−くさのはかくれ−きりきりすなく |
00072 |
未入力 (xxx)
虫のこゑ露の光もさよ更けて霧にしめれる野への月影
むしのこゑ−つゆのひかりも−さよふけて−きりにしめれる−のへのつきかけ |
00073 |
未入力 (xxx)
きかしみしかけそふ比の月の色にねさめ秋なる荻の上かせ
きかしみし−かけそふころの−つきのいろに−ねさめあきなる−をきのうはかせ |
00074 |
未入力 (xxx)
秋の夜の月は心にすみけるを雲井にのみと何おもひけん
あきのよの−つきはこころに−すみけるを−くもゐにのみと−なにおもひけむ |
00075 |
未入力 (xxx)
雨風は暮にやみぬる大空の雲間に早き夜半の月影
あめかせは−くれにやみぬる−おほそらの−くもまにはやき−よはのつきかけ |
00076 |
未入力 (xxx)
村雲にかくれ顕れゆく月のはれも曇りも秋そ悲しき
むらくもに−かくれあらはれ−ゆくつきの−はれもくもりも−あきそかなしき |
00077 |
未入力 (xxx)
秋風のひひきは峰にさよ更けて影遠くなる入かたの月
あきかせの−ひひきはみねに−さよふけて−かけとほくなる−いりかたのつき |
00078 |
未入力 (xxx)
このまより月はたえたえ庭にもりて軒端にさわく夜半の松風
このまより−つきはたえたえ−にはにもりて−のきはにさわく−よはのまつかせ |
00079 |
未入力 (xxx)
月にみかく露の光も清くしてよなよな涼し竹の秋風
つきにみかく−つゆのひかりも−きよくして−よなよなすすし−たけのあきかせ |
00080 |
未入力 (xxx)
更行けはまきのを山に霧はれて月影清し宇治の川浪
ふけゆけは−まきのをやまに−きりはれて−つきかけきよし−うちのかはなみ |
00081 |
未入力 (xxx)
露繁き草葉のうへは静にて下には虫の声そみたるる
つゆしけき−くさはのうへは−しつかにて−したにはむしの−こゑそみたるる |
00082 |
未入力 (xxx)
宵過きて月また遅き山のはの雲にひかれる秋の稲妻
よひすきて−つきまたおそき−やまのはの−くもにひかれる−あきのいなつま |
00083 |
未入力 (xxx)
はるはるとわたるや雁のこゑ遠し雲に色ある西の山のは
はるはると−わたるやかりの−こゑとほし−くもにいろある−にしのやまのは |
00084 |
未入力 (xxx)
やへきりのたつ山本のはるはると田面におつる秋の雁かね
やへきりの−たつやまもとの−はるはると−たのもにおつる−あきのかりかね |
00085 |
未入力 (xxx)
末高き籬の花はかたふきて露おちつつく雨の夕暮
すゑたかき−まかきのはなは−かたふきて−つゆおちつつく−あめのゆふくれ |
00086 |
未入力 (xxx)
何となく寝覚の袖もうるほひぬ明けやらぬ窓の秋のよの雨
なにとなく−ねさめのそても−うるほひぬ−あけやらぬまとの−あきのよのあめ |
00087 |
未入力 (xxx)
うす霧の朝けの梢いろさひて虫の音残る森の下草
うすきりの−あさけのこすゑ−いろさひて−むしのねのこる−もりのしたくさ |
00088 |
未入力 (xxx)
露しけき草のうへより明けそめて霧の山へそしはし夜深き
つゆしけき−くさのうへより−あけそめて−きりのやまへそ−しはしよふかき |
00089 |
未入力 (xxx)
秋風の梢をはらふ夕暮の雲にはつるるみか月のかけ
あきかせの−こすゑをはらふ−ゆふくれの−くもにはつるる−みかつきのかけ |
00090 |
未入力 (xxx)
夕附日いはねの苔に影きえて岡の柳は秋風そふく
ゆふつくひ−いはねのこけに−かけきえて−をかのやなきは−あきかせそふく |
00091 |
未入力 (xxx)
其いろとささぬ夕の悲しきはをはなか風に薄雲の空
そのいろと−ささぬゆふへの−かなしきは−をはなかかせに−うすくものそら |
00092 |
未入力 (xxx)
さまさまにうき世をおもふ夕暮のそてと草葉といつれ露けし
さまさまに−うきよをおもふ−ゆふくれの−そてとくさはと−いつれつゆけし |
00093 |
未入力 (xxx)
おしなへて紅葉はちかく成りにけり夕日の山の秋のゆふくれ
おしなへて−もみちはちかく−なりにけり−ゆふひのやまの−あきのゆふくれ |
00094 |
未入力 (xxx)
時雨れつつ秋すさましき岡のへの尾花にましる櫨の一本
しくれつつ−あきすさましき−をかのへの−をはなにましる−はしのひともと |
00095 |
未入力 (xxx)
打ちはらふ袖にも秋そすさましき露霜かかる山の下道
うちはらふ−そてにもあきそ−すさましき−つゆしもかかる−やまのしたみち |
00096 |
未入力 (xxx)
嵐吹く岡への秋はさむくして柞のもみち散りそめぬなり
あらしふく−をかへのあきは−さむくして−ははそのもみち−ちりそめぬなり |
00097 |
未入力 (xxx)
何となき山の木のはは落ちすさひ時雨るる暮の秋そ悲しき
なにとなき−やまのこのはは−おちすさひ−しくるるくれの−あきそかなしき |
00098 |
未入力 (xxx)
もろくなる桐のかれ葉は庭に落ちて嵐にましる村雨の音
もろくなる−きりのかれはは−にはにおちて−あらしにましる−むらさめのおと |
00099 |
未入力 (xxx)
とめかたき日数の秋をおもふよの月たに空をいそかさらなん
とめかたき−ひかすのあきを−おもふよの−つきたにそらを−いそかさらなむ |
00100 |
未入力 (xxx)
色残る花の籬はまた秋をはや霜しろしけさの朝明
いろのこる−はなのまかきは−またあきを−はやしもしろし−けさのあさあけ |
00101 |
未入力 (xxx)
浮雲は軒はの峰をこえかかりしはし時雨れて又過きぬなり
うきくもは−のきはのみねを−こえかかり−しはししくれて−またすきぬなり |
00102 |
未入力 (xxx)
枯れておつる木の葉の上にかかれはや時雨の音ももろく聞ゆる
かれておつる−このはのうへに−かかれはや−しくれのおとも−もろくきこゆる |
00103 |
未入力 (xxx)
さやかなる光もぬれてみゆるかな時雨の後の庭の月影
さやかなる−ひかりもぬれて−みゆるかな−しくれののちの−にはのつきかけ |
00104 |
未入力 (xxx)
月のすかた猶有明の村雲に一そそきする時雨をそ見る
つきのすかた−なほありあけの−むらくもに−ひとそそきする−しくれをそみる |
00105 |
未入力 (xxx)
もみち葉をさそひておろす山風にいく木の錦庭に敷くらん
もみちはを−さそひておろす−やまかせに−いくきのにしき−にはにしくらむ |
00106 |
未入力 (xxx)
一はらひ励しくおろす夕暮のあらしの末を木のはにそみる
ひとはらひ−はけしくおろす−ゆふくれの−あらしのすゑを−このはにそみる |
00107 |
未入力 (xxx)
朝日さす野原のをささ霜消えて露としもなき光をそみる
あさひさす−のはらのをささ−しもきえて−つゆとしもなき−ひかりをそみる |
00108 |
未入力 (xxx)
山本はまた霧くらき曙のすそ野は霜の色にしらめる
やまもとは−またきりくらき−あけほのの−すそのはしもの−いろにしらめる |
00109 |
未入力 (xxx)
窓たたく嵐にさやく呉竹のよことに雪をあすやとそ待つ
まとたたく−あらしにさやく−くれたけの−よことにゆきを−あすやとそまつ |
00110 |
未入力 (xxx)
村鳥の羽音してたつ朝明の汀のあしも雪降りにけり
むらとりの−はおとしてたつ−あさあけの−みきはのあしも−ゆきふりにけり |
00111 |
未入力 (xxx)
雪の色にややしらみ行く山のはの梢にきゆる有明の月
ゆきのいろに−ややしらみゆく−やまのはの−こすゑにきゆる−ありあけのつき |
00112 |
未入力 (xxx)
朝戸明の軒はに近く聞ゆなる梢のからす雪ふかきこゑ
あさとあけの−のきはにちかく−きこゆなる−こすゑのからす−ゆきふかきこゑ |
00113 |
未入力 (xxx)
宵のまま雪はひとへの色なから薄雲晴れて月そさやけき
よひのまま−ゆきはひとへの−いろなから−うすくもはれて−つきそさやけき |
00114 |
未入力 (xxx)
雲はるる月は梢に更過きて積りもそはぬ夜半の薄雪
くもはるる−つきはこすゑに−ふけすきて−つもりもそはぬ−よはのうすゆき |
00115 |
未入力 (xxx)
遠近の里のわたりそ静なるかよひ絶えたる雪の夕くれ
をちこちの−さとのわたりそ−しつかなる−かよひたえたる−ゆきのゆふくれ |
00116 |
未入力 (xxx)
浦風や雪の白浪吹きはれてしはし霞める遠しまの松
うらかせや−ゆきのしらなみ−ふきはれて−しはしかすめる−とほしまのまつ |
00117 |
未入力 (xxx)
むらむらに小松ましれる冬枯の野へすさましき夕暮の雨
むらむらに−こまつましれる−ふゆかれの−のへすさましき−ゆふくれのあめ |
00118 |
未入力 (xxx)
寒き雨はかれ野の原に降りしめて山松風の音たにもせす
さむきあめは−かれののはらに−ふりしめて−やままつかせの−おとたにもせす |
00119 |
未入力 (xxx)
解けやらぬ池の汀のあさ氷こほれるほととつもる雪かな
とけやらぬ−いけのみきはの−あさこほり−こほれるほとと−つもるゆきかな |
00120 |
未入力 (xxx)
とちわたる氷のひまを行きなやみ常よりほそき山川の水
とちわたる−こほりのひまを−ゆきなやみ−つねよりほそき−やまかはのみつ |
00121 |
未入力 (xxx)
降る雪にしられぬ程に交る雨の暮れゆく軒に音をたてぬる
ふるゆきに−しられぬほとに−ましるあめの−くれゆくのきに−おとをたてぬる |
00122 |
未入力 (xxx)
くもる夜の庭はむらむら霰にてまかきの竹は風はらふなり
くもるよの−にははむらむら−あられにて−まかきのたけは−かせはらふなり |
00123 |
未入力 (xxx)
天乙女そてふる夜はの風さむみ月を雲井におもひやるかな
あまをとめ−そてふるよはの−かせさむみ−つきをくもゐに−おもひやるかな |
00124 |
未入力 (xxx)
あれぬ日の夕の空は長閑にて柳のすゑも春近く見ゆ
あれぬひの−ゆふへのそらは−のとかにて−やなきのすゑも−はるちかくみゆ |
00125 |
未入力 (xxx)
つつむかた人めも常に忘るるを世にもそもるのことよせもなし
つつむかた−ひとめもつねに−わするるを−よにもそもるの−ことよせもなし |
00126 |
未入力 (xxx)
此暮につつむ涙はととめかねぬおさふる袖の下とほるまて
このくれに−つつむなみたは−ととめかねぬ−おさふるそての−したとほるまて |
00127 |
未入力 (xxx)
あやしくも心のうちそみたれ行く物おもふ身とはならしと思ふに
あやしくも−こころのうちそ−みたれゆく−ものおもふみとは−ならしとおもふに |
00128 |
未入力 (xxx)
とにかくに晴れぬ思ひにむきそめて憂きより先に物の悲しき
とにかくに−はれぬおもひに−むきそめて−うきよりさきに−もののかなしき |
00129 |
未入力 (xxx)
逢ふことはなきさによするしき浪の頻にぬるる袖を見せはや
あふことは−なきさによする−しきなみの−しきりにぬるる−そてをみせはや |
00130 |
未入力 (xxx)
いつまても命をかけて待つへきになからへかたくなるそ悲しき
いつまても−いのちをかけて−まつへきに−なからへかたく−なるそかなしき |
00131 |
未入力 (xxx)
蘆間わくる湊の小舟とにかくに障りやすさをこりす待つかな
あしまわくる−みなとのをふね−とにかくに−さはりやすさを−こりすまつかな |
00132 |
未入力 (xxx)
いつとしもたのめぬ暮の玉章に解けぬにおとるつらさこそそへ
いつとしも−たのめぬくれの−たまつさに−とけぬにおとる−つらさこそそへ |
00133 |
未入力 (xxx)
何となく今宵さへこそ待たれけれあかぬきのふの心ならひに
なにとなく−こよひさへこそ−またれけれ−あかぬきのふの−こころならひに |
00134 |
未入力 (xxx)
またやもしと頼む心の今日さへよけさ別れきとおもふものから
またやもしと−たのむこころの−けふさへよ−けさわかれきと−おもふものから |
00135 |
未入力 (xxx)
空しくはおもひはつへき今宵ともしらてや人のたた明すらん
そらしくは−おもひはつへき−こよひとも−しらてやひとの−たたあかすらむ |
00136 |
未入力 (xxx)
つひに今宵こすしもならん後にこそつらき人とは思ひはてなめ
つひにこよひ−こすしもならむ−のちにこそ−つらきひととは−おもひはてなめ |
00137 |
未入力 (xxx)
後をとも頼まぬ中のたまさかにあふ夜は時のうつらすもかな
のちをとも−たのまぬなかの−たまさかに−あふよはときの−うつらすもかな |
00138 |
未入力 (xxx)
たまさかに逢ははひと夜の時のまにこひも恨もいかにはるけん
たまさかに−あははひとよの−ときのまに−こひもうらみも−いかにはるけむ |
00139 |
未入力 (xxx)
馴れしかたの哀はかりは捨てすとも又逢見すは何にかはせん
なれしかたの−あはれはかりは−すてすとも−またあひみすは−なににかはせむ |
00140 |
未入力 (xxx)
思ひ過す其をりをりの心をもいつあひ見てかかかりしもせん
おもひすくす−そのをりをりの−こころをも−いつあひみてか−かかりしもせむ |
00141 |
未入力 (xxx)
つつみくらす涙をゆるす時にして月をさたかにみるよはそなき
つつみくらす−なみたをゆるす−ときにして−つきをさたかに−みるよはそなき |
00142 |
未入力 (xxx)
涙にも余りて人のつらきよは慰にみし月さへもうし
なみたにも−あまりてひとの−つらきよは−なくさみにみし−つきさへもうし |
00143 |
未入力 (xxx)
いつまてか行衛さためぬ浮雲のうきて立ゐに物を思はん
いつまてか−ゆくへさためぬ−うきくもの−うきてたちゐに−ものをおもはむ |
00144 |
未入力 (xxx)
大かたは頼むへくしもなき人のうからぬにこそ思ひ佗ひぬれ
おほかたは−たのむへくしも−なきひとの−うからぬにこそ−おもひわひぬれ |
00145 |
未入力 (xxx)
よはの残り契りかたやの疑ひにまた深しともえこそいはれね
よはののこり−ちきりかたやの−うたかひに−またふかしとも−えこそいはれね |
00146 |
未入力 (xxx)
別れてもまた夜は深き鳥のねを独なこりの床に聞くかな
わかれても−またよはふかき−とりのねを−ひとりなこりの−とこにきくかな |
00147 |
未入力 (xxx)
思ひしる一ふしをたに見せかぬる心よわさそ我なからうき
おもひしる−ひとふしをたに−みせかぬる−こころよわさそ−われなからうき |
00148 |
未入力 (xxx)
有りしよりも哀はそひてみしよりもうさはまさるに思ひかねぬる
ありしよりも−あはれはそひて−みしよりも−うさはまさるに−おもひかねぬる |
00149 |
未入力 (xxx)
宵宵の夢の行衛のあやしさよ我かおもひ寝かひとの心か
よひよひの−ゆめのゆくへの−あやしさよ−わかおもひねか−ひとのこころか |
00150 |
未入力 (xxx)
おもふてふことのはなくは今更に人のこころにまよはさらまし
おもふてふ−ことのはなくは−いまさらに−ひとのこころに−まよはさらまし |
00151 |
未入力 (xxx)
おのつからおなし月をは詠むともおもふ思ひは我にしもにし
おのつから−おなしつきをは−なかむとも−おもふおもひは−われにしもにし |
00152 |
未入力 (xxx)
人恋ふる心につねにあくかれてふるとはかりの世にはいつまて
ひとこふる−こころにつねに−あくかれて−ふるとはかりの−よにはいつまて |
00153 |
未入力 (xxx)
うれしかりし昨日の暮の契こそけふはつらさの数に成りけれ
うれしかりし−きのふのくれの−ちきりこそ−けふはつらさの−かすになりけれ |
00154 |
未入力 (xxx)
かけて待ちし月日を何に歎きけん後も頼まぬ帰るさの道
かけてまちし−つきひをなにに−なけきけむ−のちもたのまぬ−かへるさのみち |
00155 |
未入力 (xxx)
おなし世を頼むかたにはあらねとも別れし名残を忘れかねぬる
おなしよを−たのむかたには−あらねとも−わかれしなこりを−わすれかねぬる |
00156 |
未入力 (xxx)
かはさすは夜比かさなるから衣かへすかへすも身をそうらむる
かはさすは−よころかさなる−からころも−かへすかへすも−みをそうらむる |
00157 |
未入力 (xxx)
其折をかきるとは猶おもはぬをいかなるふしにいつ替りけん
そのをりを−かきるとはなほ−おもはぬを−いかなるふしに−いつかはりけむ |
00158 |
未入力 (xxx)
日数とは哀いつまてかそへけんいく年月の中のへたてを
ひかすとは−あはれいつまて−かそへけむ−いくとしつきの−なかのへたてを |
00159 |
未入力 (xxx)
恋ひやまぬ身はことわりにかへれとも忘るる人のうさはゆるさす
こひやまぬ−みはことわりに−かへれとも−わするるひとの−うさはゆるさす |
00160 |
未入力 (xxx)
限そと命をかけてかこてとも厭ふひとには其かひもなし
かきりそと−いのちをかけて−かこてとも−いとふひとには−そのかひもなし |
00161 |
未入力 (xxx)
おもひ馴れし我か心こそ哀なれ頼まぬものを夕暮の空
おもひなれし−わかこころこそ−あはれなれ−たのまぬものを−ゆふくれのそら |
00162 |
未入力 (xxx)
憂きはてをつれなやありてとはかりにむかふ夕そたへす悲しき
うきはてを−つれなやありて−とはかりに−むかふゆふへそ−たへすかなしき |
00163 |
未入力 (xxx)
契りけりまちけり哀其時のことのは残る水茎のあと
ちきりけり−まちけりあはれ−そのときの−ことのはのこる−みつくきのあと |
00164 |
未入力 (xxx)
うかりしも哀なりしもあらぬ世の今になりてはみなそ恋しき
うかりしも−あはれなりしも−あらぬよの−いまになりては−みなそこひしき |
00165 |
未入力 (xxx)
山松の梢の空のしらむままにかへにきえ行く閨の月かけ
やままつの−こすゑのそらの−しらむままに−かへにきえゆく−ねやのつきかけ |
00166 |
未入力 (xxx)
ひひきつる松の嵐の音もせす月さしのほる夕暮の山
ひひきつる−まつのあらしの−おともせす−つきさしのほる−ゆふくれのやま |
00167 |
未入力 (xxx)
月も入り鐘も声やむ明くれの空しつかなる星の影かな
つきもいり−かねもこゑやむ−あけくれの−そらしつかなる−ほしのかけかな |
00168 |
未入力 (xxx)
里遠く八こゑの鳥は音つれて月すみ清き有明の空
さととほく−やこゑのとりは−おとつれて−つきすみきよき−ありあけのそら |
00169 |
未入力 (xxx)
月ははや遠島かけに傾きぬしはしととめよ須磨の関守
つきははや−とほしまかけに−かたふきぬ−しはしととめよ−すまのせきもり |
00170 |
未入力 (xxx)
大空の月よ何とて常ならんさしもすみうき此世とおもふに
おほそらの−つきよなにとて−つねならむ−さしもすみうき−このよとおもふに |
00171 |
未入力 (xxx)
山川のたた一筋のなかれこそあまたの滝に落ちわかれけれ
やまかはの−たたひとすちの−なかれこそ−あまたのたきに−おちわかれけれ |
00172 |
未入力 (xxx)
しつみはてぬ入日は浪のうへにして塩干に清き磯の松原
しつみはてぬ−いりひはなみの−うへにして−しほひにきよき−いそのまつはら |
00173 |
未入力 (xxx)
峰ふかき嵐の音と聞くほとに谷の松にそ吹きおろしぬる
みねふかき−あらしのおとと−きくほとに−たにのまつにそ−ふきおろしぬる |
00174 |
未入力 (xxx)
谷川の底のひひきにかよふなり高き梢のまつかせの音
たにかはの−そこのひひきに−かよふなり−たかきこすゑの−まつかせのおと |
00175 |
未入力 (xxx)
聞きしほるねさめの窓は夜ふかくて槙の葉くらき暁の雨
ききしをる−ねさめのまとは−よふかくて−まきのはくらき−あかつきのあめ |
00176 |
未入力 (xxx)
山風の吹きわたるかと聞くほとに桧原に雨のかかるなりけり
やまかせの−ふきわたるかと−きくほとに−ひはらにあめの−かかるなりけり |
00177 |
未入力 (xxx)
濡れまさる草葉の色にしられけりそそくも見えぬ夕暮の雨
ぬれまさる−くさはのいろに−しられけり−そそくもみえぬ−ゆふくれのあめ |
00178 |
未入力 (xxx)
おく山の桧原かうへに雨落ちて雲ゐる谷に鳥かへるなり
おくやまの−ひはらかうへに−あめおちて−くもゐるたにに−とりかへるなり |
00179 |
未入力 (xxx)
夕暮の山きは清く雨はれて雲おりかかる杉のむらたち
ゆふくれの−やまきはきよく−あめはれて−くもおりかかる−すきのむらたち |
00180 |
未入力 (xxx)
たちみたれ風に浮きゆく雨雲に半いろこきゆふくれの山
たちみたれ−かせにうきゆく−あまくもに−なかはいろこき−ゆふくれのやま |
00181 |
未入力 (xxx)
風たちてむらむらわたる雨雲の晴るる方より星出てにけり
かせたちて−むらむらわたる−あまくもの−はるるかたより−ほしいてにけり |
00182 |
未入力 (xxx)
別れゆく雲の絶間の見えてしも更に降りそふ夕暮の雨
わかれゆく−くものたえまの−みえてしも−さらにふりそふ−ゆふくれのあめ |
00183 |
未入力 (xxx)
山あひにおりしつまれる白雲のしはしと見れははや消えにけり
やまあひに−おりしつまれる−しらくもの−しはしとみれは−はやきえにけり |
00184 |
未入力 (xxx)
暮れはつる嵐の底にこたふなり宿とふ山の入相のかね
くれはつる−あらしのそこに−こたふなり−やととふやまの−いりあひのかね |
00185 |
未入力 (xxx)
折しもあれ遠里けふり絶えはてて夕のなかめ哀そふらん
をりしもあれ−とほさとけふり−たえはてて−ゆふへのなかめ−あはれそふらむ |
00186 |
未入力 (xxx)
うちむれて麓にくたる山人のゆくさきくるる野への夕霧
うちむれて−ふもとにくたる−やまひとの−ゆくさきくるる−のへのゆふきり |
00187 |
未入力 (xxx)
竹の編戸かこふともなき柴の垣物はかなけの賎か家居や
たけのあみと−かこふともなき−しはのかき−ものはかなけの−しつかいへゐや |
00188 |
未入力 (xxx)
山里の軒はに近き椎柴のしひてうき世にいつまてかへん
やまさとの−のきはにちかき−しひしはの−しひてうきよに−いつまてかへむ |
00189 |
未入力 (xxx)
山水の流を見ても住む人のこころの塵をすすけとそ思ふ
やまみつの−なかれをみても−すむひとの−こころのちりを−すすけとそおもふ |
00190 |
未入力 (xxx)
なかれての末をも何か頼むへき飛鳥の川のあすしらぬよに
なかれての−すゑをもなにか−たのむへき−あすかのかはの−あすしらぬよに |
00191 |
未入力 (xxx)
旅衣たつより袖は涙にてむすふまくらも野への夕露
たひころも−たつよりそては−なみたにて−むすふまくらも−のへのゆふつゆ |
00192 |
未入力 (xxx)
ひにそへて都の空そ隔てまさる昨日の宿はけふのふる里
ひにそへて−みやこのそらそ−へたてまさる−きのふのやとは−けふのふるさと |
00193 |
未入力 (xxx)
はしめなく迷ひ初めける長き夜の夢を此たひいかて覚さん
はしめなく−まよひそめける−なかきよの−ゆめをこのたひ−いかてさまさむ |
00194 |
未入力 (xxx)
心をも何かととめん露の命しはしおくまのかりの宿に
こころをも−なにかととめむ−つゆのいのち−しはしおくまの−かりのやとりに |
00195 |
未入力 (xxx)
昔とは遠きをのみは何かいはん近き昨日もけふはむかしを
むかしとは−とほきをのみは−なにかいはむ−ちかききのふも−けふはむかしを |
00196 |
未入力 (xxx)
こし方を忍ふ涙の玉くしけふたたひあはぬ時そ悲しき
こしかたを−しのふなみたの−たまくしけ−ふたたひあはぬ−ときそかなしき |
00197 |
未入力 (xxx)
人のうへのはかなき事を聞くにしも身は行末のよよのかねこと
ひとのうへの−はかなきことを−きくにしも−みはゆくすゑの−よよのかねこと |
00198 |
未入力 (xxx)
目のまへに見聞きしひとのなき数をかそへかそへて我もいつまて
めのまへに−みききしひとの−なきかすを−かそへかそへて−われもいつまて |
00199 |
未入力 (xxx)
日にそへてうきふししけみ呉竹の世にへかたくも成りまさるかな
ひにそへて−うきふししけみ−くれたけの−よにへかたくも−なりまさるかな |
00200 |
未入力 (xxx)
手すさひにつけおく墨も行末は誰かあはれと水茎の跡
てすさひに−つけおくすみも−ゆくすゑは−たれかあはれと−みつくきのあと |