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宗長追善千句

作品集名	宗長追善千句
作品集名読み	そうちょうついぜんせんく
作成年月日	（享禄五）天文元年三月二十五日（1532年4月30日）
場所
備考	五月六日宗牧、宗長追善のための品経和歌を取り重ね実隆邸にて披講

宗長追善千句　第一：何人［はるのよの］

宗長追善千句　第二：白何［みしやいつ］

宗長追善千句　第十：三字中略［ふしのねや］

宗長追善千句　追加：何衣［ゆくはるに］

宗長追善千句　第一：何人［はるのよの］

句番号	句
001	はるのよの－ゆめのあしたの－こころかな
002	さくらやいつら－くもものこらす
003	あをやきに－そらもいろそふ－あめすきて
004	ゆふひかくれに－かせわたるこゑ
005	□□□はや－あきまつつきに－たちぬらむ
006	□□□のきりの－はれままつみち
007	□□すすき－をちかたひとの－ほのみえて
008	けしきうつろふ－のはとふもなし
009	さのみなと－すすのしのやの－ゆふしくれ
010	ならすもしらぬ－あらしをそきく
011	まつことは－こよひはつよの－ふ□□□□
012	ゆめはかりなる－おとつれはうし
013	みしひとや－あととめわふる－やまの□□
014	そてもいつより－こけのいはか□□
015	くちのこる－はなのおほえす－にほひきて
016	はるのなかれや－みきはまさらむ
017	□□□ひも－なきはとけゆく－しらゆきに
018	□れなきつきは－ありあけのかけ
019	□□□ぬる－まくらのうへの－あきのかせ
020	かりのこゑにや－おもひいつらむ
021	このうちに－くもゐはいつの－たつなきて
022	しらへをそふる－ことのあはれさ
023	わひひとや－すさひはかりに－かかるらむ
024	よにふりぬるは－をしまさらめや
025	はるはけふ－あめをもいはぬ－こころにて
026	つゆうちはらひ－わかなつむそて
027	あきならぬ－をきのやけはら－むらむらに
028	うしやわくるも－のこるむさしの
029	おもかけも－おもふをさそへ－たひのすゑ
030	まろねいくよの－つきになるらむ
031	むしのねに－なみたはおなし－まくらして
032	□□もつゆけき－ころそしらるる
033	あさちふを－なくさめくさに－ならははや
034	□□くれことに－うときいにしへ
035	いつよりも－まちかそめつる－ほとときす
036	そのやまとなく－しけりあふかけ
037	うのはなや－ちきりしみねの－しるへせ□
038	あれにしかきね－ひとなわすれそ
039	いまこむと－さとをはかれす－いひす□□
040	たたひとふても－たよりとや□□
041	ゆくつきの－かけをまねきて－まな□□□
042	かねもきこゆる－そてのあきかせ
043	やまきはの－すきのむらたち－きりふりて
044	うくひすいつち－はなもすさまし
045	□きいつる－けさのあさけの－はるのいろ
046	□□はきのふを－こそのさひしさ
047	□□□より－したにこほりの－あすかかは
048	□そへはよする－みつのしらなみ
049	かせそよく－ますけはいはに－かれやらて
050	とはれしあとは－しものやまさと
051	かみなつき－つきはあきをや－しのふらむ
052	なかむるそらに－もののかなしき
053	たれゆゑと－おもひそめしを－みたれにて
054	なのひとつまに－いかてたつらむ
055	ほのかなる－かいまみよりや－ゆくこころ
056	ひとつすまひに－たへぬふるさと
057	ちりちりに－おのかあはれも－なりぬへし
058	つゆををしむか－はなのあきのの
059	ゆふつくよ－いるさやすらふ－かけはして
060	□てはたさむみ－うすきしらくも
061	□ちしめり－ふねにたくもの－なみのうへ
062	□まのたもとや－いととぬるらむ
063	たれもみは－あはれなるへき－さすらひに
064	なさけそたのみ－わひてたにゆけ
065	うらむにや－よらさらましの－くれなら□
066	おのつからにし－ひとのとひこ□
067	しつかなる－かせにもはるの－はなの□□
068	かすみのうちを－やとのとりの□
069	そことなき－おほろつきよに－やまこえ□
070	かりねのゆめの－いつちなり□□
071	さらぬたに－ひとりなりけり－くさまくら
072	おもひやらるる－のへのはてはて
073	つみせしも－なにそこのよは－かりころも
074	□きりもしらぬ－たつやなくらむ
075	□ふなみの－わかのまつはら－あきたちて
076	いかにまつらし－ほしあひのはま
077	またみるも－まれなるはかり－つききよみ
078	さひしすみつく－やまかけもかな
079	やすからぬ－ほとはすてつと－しらしみに
080	またこしかたの－こころならすや
081	あたにしも－うつるちきりの－たちかへり
082	たへむにまさる－うきこともなし
083	ちるやとを－ゆけともはなの－はるのくれ
084	かへすやまたは－みちのへのすゑ
085	とほきのの－ひはりやそらを－わさならむ
086	なきたるあさの－かせのたえたえ
087	くもはるる－あとにひとすち－たなひきて
088	くまなきよりも－ほのかなるつき
089	□きりあれは－あかつきかたの－あきのよに
090	□□□あまりや－あさかほのつゆ
091	はかなさは－よむともつきむ－かすならし
092	たのめしなかの－ことのはのみち
093	ものをなと－くものはたてに－おもふらむ
094	したもえわふる－ほたるとふ□□
095	すすしとも－みえすなかれは－さはふかみ
096	あやめにまよふ－みつのつきか□
097	あしねはふ－すゑはやかせの－みたるらむ
098	おかぬかたなく－しもはなりけり
099	はつゆきは－いつくおほえす－ちらしきて
100	あらましかはの－かれのとふあと

宗長追善千句　第二：白何［みしやいつ］

句番号	句
001	みしやいつ－きのふならては－はなさかり
002	かすみのまとの－をちのやまやま
003	つきのもと－のとかなるよや－あけぬらむ
004	かねはそことも－ききあへぬこゑ
005	かたしきの－まくらのあらし－ふきそひて
006	ころもてさむみ－ゆきになるそら
007	あられちる－おちはかうへの－やすらひに
008	たかむらたけの－ほのけふるかた
009	めなるるも－しらぬややまの－かけならむ
010	たひゐいくかに－おもひたつみち
011	ふるさとは－わすられぬより－ほかもなし
012	□□をすくせは－あきかせのころ
013	やま□□の－もとあらのこはき－はなさきて
014	ひとむらすすき－たくへむもみす
015	なかつきや－しもにうきかけ－うつるらむ
016	いひしはかりに－そてもくちけり
017	あさゆふに－ちかまさりする－みのゆくへ
018	あはましものは－なほのりのみ□
019	やまさくら－はなをゆくてに－みねのてら
020	なかなかしひも－かへるさのくれ
021	けふもまた－むかしかたりの－はるの□□
022	なにこふらくの－おほきこころ□
023	あはれにも－あととめわふる－ひとふてに
024	はかなかりせは－すゑのなもうし
025	くちのこる－みをまつやまに－ならはして
026	□つみなからも－きみかよのかけ
027	てらせなほ－あまつみそらの－あきのつき
028	たなはたつめや－くものかよひち
029	しらしらと－よはあかつきの－きりのうち
030	わかるるひとを－みるかかなしき
031	なかなかに－かきくれやらぬ－なみたにて
032	たたなほさりの－つてとしもなし
033	のちつひに－ゆくとやたひは－きこゆらむ
034	さそはぬはなに－うらむことのは
035	さらにしも－こころはおいの－はるならて
036	みつのえかすみ－わたるうらしま
037	つきもさそ－よさのいりうみ－をしむらむ
038	あきのよあくる－ちとりなくなり
039	つゆのまは－ぬるともおなし－おきてゆけ
040	□ひまきれなは－なきなにやせむ
041	とふひとに－ふりてのうへは－なになれや
042	にははちりたに－みえぬとこなつ
043	ゆふたちや－なかるるはかり－なりぬらむ
044	そてにおほゆる－かせそあさふ□
045	くもにまた－のこるよふかみ－まよひきて
046	いつらみやこの－かたのおもかけ
047	いにしへの－あとはさひろく－しけきのに
048	うめひともとも－みやはとかめぬ
049	わかやとの－あさまのけふり－はるさえて
050	ゆききえやらす－なほふりにけり
051	いかはかり－うはこほりする－みつならむ
052	わたるひとなき－つきのかはつら
053	きりのまも－むらのふるみち－かすかにて
054	つゆやのはらの－あはれならまし
055	もらさしの－なかにをはなか－そてもかな
056	ほのみえにしは－なににまきれむ
057	こころこそ－かりそめなから－はかなけれ
058	つくすとならは－このたひそかし
059	かくふみの－たよりはまれに－とほさかり
060	なこりのかりや－くもちなるらむ
061	はるかせに－しほひのかたの－うらさひて
062	ふちなみかかる－やまもとのまつ
063	なかめつつ－たれわかいほの－あまそそき
064	つきなきころも－たたならぬそら
065	きりきりす－ふけゆくままに－よはすみて
066	ゆふへよりみに－しみやそむらむ
067	ひとはいつ－おともしてまし－あきのかせ
068	いたつらにのみ－こころなるすき
069	はつゆきは－としのつもるを－まつににて
070	しくれふるよを－いかてわするる
071	ちるころも－とほやまのへの－おそもみち
072	てらすをみれは－のこるひのかけ
073	きくひとも－くるしきせみの－なくならし
074	ひとひひとひの－あけやすしとや
075	あふことの－いつたのまれぬ－たひことに
076	おもひのいろは－あくこしられす
077	はなそめの－そてのうへにや－たをるらむ
078	なれなはいかに－はるのわかれち
079	かりまくら－ひとよかはせし－あさかすみ
080	こころそらなる－やまかせそふく
081	みねたかみ－へたつるつきの－あきふけて
082	つまやいつくの－さをしかのこゑ
083	ゆふされは－いなはおしなひ－もるさとに
084	ゆくそてみえす－しもはまよへり
085	したみつや－はしうちわたし－けふるらむ
086	なみいとしろく－たちかへるすゑ
087	ちりかかる－ころはうもれき－はなにして
088	かすみのうちや－ひとしれぬみち
089	こひはまた－あらたまならて－うきとしに
090	とけぬこほりを－そてにかこたむ
091	かせゆるく－おもふわたりは－はけしくて
092	つきいかなれや－さとわかぬかけ
093	うかれきて－かきねをのへに－なくうつら
094	しけきくさはや－つゆにくるらむ
095	おほかたは－あきになりぬと－なつたけて
096	むすひすてすは－なにわすれみつ
097	やまのゐの－あかすとをしれ－ひとこころ
098	ひとりあるみや－しかのはままつ
099	たへみむも－しらぬはふるき－みやこにて
100	たのますなから－なからへにけり

宗長追善千句　第三：何色［うくひすの］

句番号	句
001	うくひすの－しののめふかき－やなきかな
002	つきにうちふく－はるかせのこゑ
003	こほりより－ひままちいつる－みつすみて
004	なかれやいはに－たえせさるらむ
005	なつはたた－かよふひことの－やまかくれ
006	しけりおくるる－みちしはのあと
007	あめつゆも－もらさぬまつの－このもとに
008	いくあきをふる－そらとしもなし
009	わかいほに－よるののわきの－なほふきて
010	さはらすふるき－のきのつきかけ
011	ねさめには－やすくやよをも－いとふらむ
012	あしたになれは－なとてはかなき
013	つくしぬと－おもふものこる－ことのはに
014	のちのはるをし－たたならすみむ
015	はなやもし－さかしとおそき－ひときにて
016	さくらかもとを－たのむみやまゐ
017	わすれては－みやこのこころ－しはのとに
018	さひしさなれぬ－ほとそしらるる
019	つきはたた－いひしはかりに－あきくれて
020	なかなかしとや－よをかこちけむ
021	しはしたに－とたえはきかぬ－をきのおと
022	とはすかたりに－ならはされつつ
023	あさはかの－われにもいまは－しのははや
024	たのむこころの－ひとすちのおく
025	よしのやま－なくはよのなか－いかかせむ
026	ならのみやこや－はなもいにしへ
027	みとりそふ－こまつかうへの－はるみえて
028	かすみたちそめ－はるるあはゆき
029	とをさかる－みのしろころも－たれなれや
030	さこそはたひの－なほみちのそら
031	つきにさへ－まよふやまこえ－かたふきて
032	またよもふかき－つゆにぬれけり
033	みにしめて－あさゆくなこり－しはしまて
034	いまこむもはた－さためあるかは
035	よわるをも－しらはせめての－たまのをに
036	なにのつらさも－ふるにまさらし
037	ひととせの－うちやしくるる－ころならむ
038	とははやまかけ－このはちるいほ
039	をのへより－ことのほかなる－ゆふあらし
040	たちゐるかたは－あまつむらくも
041	まつこころ－つきにもみえて－なかめはや
042	まくらのものと－あきのもよほす
043	ゆめはいつ－かたらひくさの－つゆおちて
044	のへにほとなき－はるのゆくすゑ
045	はるちやる－かすみにこまの－あしはやみ
046	ひやさとのこの－おそくしるらし
047	けさはなほ－をちかたやまの－さえさえて
048	つれなくみゆる－まつたてるかけ
049	はまひさし－ひさしくなみや－こえぬらむ
050	うらのとまやの－さみたれのころ
051	ほとときす－おのかなのりそ－かすかにて
052	きかすはなにに－ものをおもはむ
053	なほふかき－おくやたつねむ－こひのやま
054	をささにしらぬ－みちつつくなり
055	やとりとふ－ゆきのはしかの－ふみわけて
056	あさたちゆけは－ころもさむしも
057	ありあけや－くもまそそろに－おくるらむ
058	めさますあきそ－こころあられぬ
059	あめのおと－きりのしたはの－たまくらに
060	ひとはそよとも－かせにきこえす
061	やすらひに－ひまゆかしかる－たますたれ
062	ほたるをくるる－やとにいれはや
063	ささかにの－くさむらことに－いとはへて
064	たかふるあとの－なほのこるらむ
065	かきすつる－みところおほき－ひとふてに
066	こころをとめは－はるのうみつら
067	いつちゆく－あらしのはなの－ひらのやま
068	のなるかすみの－くれふかきそら
069	つきまちて－ひとやいへちに－なりぬらむ
070	たれそとてには－こたかなりけり
071	たたすむも－をるとははきに－みえやらて
072	つゆをおもふや－こころなるらむ
073	あちきなや－またともすれは－みのゆくへ
074	かはらしなかも－いかにとそしる
075	たのめしは－うきさかしらの－いひいひに
076	まことならぬは－すゑもとほらし
077	さかふるや－みちあるひとの－よよもへむ
078	かとはこふかき－あをやきのかけ
079	さくらさく－くもゐのちとり－こゑこゑに
080	みたるるいとの－あそひするころ
081	はるののや－たかころもても－やつすらむ
082	いつともわかす－ふめるしもゆき
083	おきいつる－ふゆのよあけつ－あけやらて
084	みをこからしの－さむしろのつき
085	とこふりて－ひたすらひとは－のきのまつ
086	まつたよりとは－ゆふへたになれ
087	いのちこそ－おもへはあすも－とほからめ
088	さきたちにしに－いかておくれむ
089	おほふねの－たゆたふあとに－こきいてて
090	かとりのうらの－みえやわたれる
091	なつころも－たれしかうすく－おりつらむ
092	すすしけなりし－そてのおもかけ
093	ふきかへせ－みちゆきふりの－あきのかせ
094	みたれそめむは－うきおもひくさ
095	あれにしも－いたまにいはぬ－つきのもと
096	よるならてやは－こころすままし
097	いつさめむ－わかみのゆめも－あるものを
098	たちわかれしは－またはるのそら
099	やまちより－やとりのかたの－はなをみて
100	かすみにひかれ－なほみやこひと

宗長追善千句　第四：何舟［よもすから］

句番号	句
001	よもすから－あくるやおほろ－そらのつき
002	うらわかくさに－とけぬかたしき
003	はるののに－さすやかりほの－ゆきみえて
004	そてにおちくる－みちのやまかせ
005	ゆくかたも－かりはのとりの－あさほらけ
006	いくひとむらの－ならしはのかけ
007	かしはきの－たえまにかかる－ひははれて
008	みつはそことも－わかぬかはおと
009	なかれては－ゆくへやうみに－いりぬらむ
010	やまよりみれは－しるきをちこち
011	さともなき－ふもとのみちを－よちのほり
012	くもゐのつきや－かりねなるらむ
013	きぬきぬの－わかれよふかき－しらつゆに
014	しのふのみたれ－しはしたにまて
015	ひともとに－いにしへめきぬ－はなのかけ
016	さのみはなにと－わひひとのはる
017	あまたとし－こゆるやよはひ－おもひしれ
018	かへらむころし－かへらすはいさ
019	ならはさは－ひなのすまひを－こころにて
020	あかしのなみに－うらかせのこゑ
021	うこかぬや－やまとしまねの－みちならむ
022	かみのなしける－みよのゆくすゑ
023	しらさりし－ことはふみより－あらはして
024	おもひかけすも－かはるとをみむ
025	こよひこそ－またれさりける－はしめなれ
026	ふかさぬつきの－いつかなきそら
027	はなすすき－をりしくはかり－そてふれて
028	やとかるかやの－したはちるころ
029	たひゆくや－しとろもとろに－なりぬらむ
030	こころやるなり－やまふかきかた
031	かくさても－ひとにしらるる－わかみかは
032	かすにしあらぬ－ほとやなほうき
033	おもひしは－ひとよふたよに－つくしきて
034	なこりのはなの－はるいかかせむ
035	あきかせの－ふかはわするな－かへるかり
036	さとはたつらに－かすむさひしさ
037	のこるひに－のなかのたけの－ゆきおちて
038	くさははふゆに－なほやなるらむ
039	わけいれは－あとよりさむき－やまのおく
040	くものころもも－われにかしてよ
041	みせはやの－なみたはあまる－ゆふへにて
042	ひとまつはかり－なにかくるしき
043	とひゆかは－はるけきみちも－とほからし
044	あさちかはらや－ののみやのつき
045	あらしやま－いまひとしほの－あきふけて
046	をしむともなき－まつむしのこゑ
047	ふるさとも－まれなるともの－をりにふれ
048	かたるにのこる－むかしとやせむ
049	いつしかに－はなたちはなの－かけくれて
050	このまもりくる－ひこそなつなれ
051	をりたくや－たかやましはの－ゆふけふり
052	ゆきにならはぬ－みちのへのすゑ
053	かりころも－はるをもつてに－まちまちて
054	みやこあつまの－わかれぬるそら
055	なとてつき－かたもさためす－いてぬらむ
056	つれつれなれや－よひことのあき
057	むらさめの－くすのはならす－くさのとに
058	みねこすかせの－をかのへのまつ
059	ひとすちに－はるあるくもの－うちなひき
060	いりひにかへる－とりのこゑこゑ
061	みつあをき－なはしろをたを－かくるのに
062	かけをわかよの－しつかくれたけ
063	をたまきの－くるひともなき－ふゆこもり
064	おもふもなかや－みわのこからし
065	ちきりしは－ひはらのかさし－をれやらて
066	もみちにみゆる－こころならはや
067	ひさかたの－かつらにあふく－つきのうち
068	てにとるはかり－あきそしらるる
069	そてはたた－せみのはうすく－くれそめて
070	つねなきものと－すくさむもうし
071	ちよもとは－ひとのならひの－ことのはに
072	いつのさされの－いはほなるらむ
073	はなみにと－ふみわけかたき－やまたかみ
074	こころもしらす－よふことりなく
075	はるさむみ－あさきりかくれ－ぬれぬれて
076	まくらとひしを－つきにわすれし
077	おもかけは－いもとそひねの－あきのよに
078	ゆめもなになり－ころもうつこゑ
079	すかはらや－ふしみのさとは－のこるらむ
080	しもおくころに－のはなりにけり
081	ゆふつくひ－うつろふかけの－やまさえて
082	かせよりうへに－あさきうきくも
083	なかあめや－あまつみとりを－かきるらむ
084	とまやはおきの－かたにむかひぬ
085	しらむよを－なみにまちわひ－まくらして
086	こすゑにつきは－おそきまつかね
087	むしのなく－こけちをとへは－やまふかみ
088	いととこころの－つゆけくやなる
089	きみにより－みはあたしのの－とほからて
090	おもひのけふり－まつそたちける
091	たつぬへき－むろのやしまや－かたるらむ
092	ひとにとはすは－しらしわたりそ
093	いかなりし－ものともみえす－よるのゆめ
094	あくるまくらや－とりあへぬそら
095	あきににる－ときやはあらむ－つきもまて
096	そのなもわかす－のへのなつくさ
097	このもとは－あをはのはなに－あとたえて
098	こてふやくるる－ひをしたふらむ
099	ひまみえて－かすみのまかき－こすかせに
100	さそはれぬるむ－やりみつのこゑ

宗長追善千句　第五：片何［やまさくら］

句番号	句
001	やまさくら－けふははなまつ－こけちかな
002	いはにせきなす－みつののとけさ
003	しもうすき－にはにかすみは－かさなりて
004	まとやゆふかけ－ややうつるらむ
005	なかむれは－しはしみなみの－あきのひに
006	はつかりわたる－こゑまよふそら
007	いつくにて－しらぬよさむの－くさまくら
008	みやこのつきに－わかれてしひと
009	さもこそは－やまちはくもの－ふかからめ
010	とはぬもいはし－しはのとのくれ
011	さひしさを－おもひとるみの－はしめにて
012	いつかまとゐの－かすにいらまし
013	おもかけは－つゆきえしとちの－みるはなに
014	はるにこころや－なほのこるらむ
015	やまみつの－かすみかくれに－をしなきて
016	うすこほりする－つきのくれかた
017	たれにこひ－しくれそむらむ－そてのうへ
018	ひとならはしの－かせのはけしさ
019	このもとは－すみつきぬへき－あきならて
020	はなさくくさに－いほむすははや
021	つゆにめて－おとろくことも－ありやせむ
022	をしかふすのの－みちのへのくれ
023	いつくにか－かへるとはかり－てらふりて
024	なにはわたりは－たたなみのおと
025	おほともや－すすしきみつの－はままつに
026	ひのもとなれは－なほてらすかけ
027	きみかよは－ひとのくににも－おとらめや
028	はるかにゆくは－こむといふらし
029	またみぬも－おほかたしるき－ふみにして
030	おもふににたる－こころはかなさ
031	わかなみた－ひとのそてにや－こほるらむ
032	ところせきなる－あきにあふやと
033	しのふおふる－のきのつきかけ－もれいてて
034	をきのうははの－ゆふかせのこゑ
035	あめそそく－なかれはかよふ－ふねもみす
036	かはせをあさみ－たてるかささき
037	うつりゆく－すかたはしるや－しらさらむ
038	ひとはいつまて－もとのこころそ
039	あたなりと－おもひかへすを－まちしよに
040	さりともやつき－ひをつくすらむ
041	おもほえす－よはひのすゑに－なるもうし
042	うかれさらめや－ことにこのはる
043	ひときつつ－みれはさかりの－はなにきて
044	もものはやしや－いととなるらむ
045	くるるまて－つなくうしこそ－おもひやれ
046	みつはかすかに－まれのひとかけ
047	ひろさはや－むかしをとへは－つきすみて
048	そてにそおとす－やまさとのつゆ
049	はつかせの－あきをひくらし－なくこゑに
050	まつにさひしき－けふことのかけ
051	としにいつ－まつりたえせす－よよのすゑ
052	はるすきなつも－ひまならぬみち
053	こひくさや－したもえあへす－しけるらむ
054	のへのききすに－われもつまこめ
055	うくひすの－こゑはやまもと－かれやらて
056	みねのあさひの－さむくなるかけ
057	そらはれて－しはしくもりの－あはゆきに
058	たちよるやとり－すきかてにせむ
059	やすむこそ－なかなかみちの－くるしけれ
060	ふねもかなとそ－くかにまとへる
061	かはおとは－きこえてさとの－とほきよに
062	ひともわたらぬ－はしのうへのつき
063	やなきかけ－それともなしに－あきはきて
064	かせうちなひき－いなおほせとり
065	なかめわひぬ－きみかこころや－いつみえむ
066	そらたのめなる－たまのをのすゑ
067	うまるるを－たとへむえにし－あさからて
068	いつるひかりや－はるのみやひと
069	かさしては－いとまもしるき－はなのいろ
070	さくらかもとを－なすことにせむ
071	さとみえて－かへすころまつ－をやまたに
072	あめはふりつつ－みつまさるなり
073	たれとなく－まよふやさらに－わたりかは
074	たのむふなちは－たたのりのみち
075	かねもなれ－つきにしられぬ－たひのそら
076	よそのかりねか－なかのあきのよ
077	ひとかへる－あかつきふかき－つゆおちて
078	いまはたそての－けしきみえてよ
079	ほとけにと－いくたひたをる－はななれや
080	しはのいほりの－やまかけのはる
081	なかれゆく－みつはこほりの－うちとけて
082	なみもこころや－よするからさき
083	ゆふちとり－こゑこゑしかの－うらかせに
084	かよふあとこそ－とほさかりけれ
085	いまははや－あさちかすゑの－ちきりにて
086	やとはととはは－まつもこたへよ
087	たかそての－あきゆくかたに－しくるらむ
088	つきにもしらし－よるのやまこえ
089	あたらしや－おくにいろつく－みねつつき
090	みやこのをちの－みわたしのそら
091	いつちはた－いてていなむや－わかさらむ
092	のちしのはるる－みとおもははや
093	ときによる－ひとのこころの－よのなかに
094	うときもはるは－またさらめやは
095	うめのはな－さけはおもひの－いろそひて
096	いくよみるとも－つきかすむころ
097	いたつらに－すくるはねてや－しらるらむ
098	ゆめにいさむる－ことのはのすゑ
099	ひとのみは－なほまほろしの－こころもて
100	よもきかしまも－たつぬてふみち

宗長追善千句　第六：何路［やまふきに］

句番号	句
001	やまふきに－はるゆくみつの－かはへかな
002	わたるあらしの－きしのあをやき
003	けさははや－あしやのつはめ－なきそめて
004	いつともわかぬ－のたのかたはら
005	かよひちは－たたひとすちや－つつくらむ
006	たかかへるさの－しもはらふそて
007	やまさむみ－ましはにつきを－おひいてて
008	ふもとにくるる－さともみえつつ
009	ゆくふねは－いつくとまりの－うらかせに
010	なみはるはると－かたもおほえす
011	くもによは－ひかれもやらぬ－あさほらけ
012	おもふもそては－ふりやつすらむ
013	あたひとに－からくれなゐも－いろならて
014	たのめしすゑは－みをあきのやま
015	よにふるや－たたありあけの－のこるらむ
016	かせのまへなる－よもきふのつゆ
017	はなをのみ－はかなくみむは－あやまたれ
018	おもひかへすや－はるのくれかた
019	さととほく－かすみたつのに－ならしきて
020	なにふるてらは－ものめてもせむ
021	かかくるは－みちのひかりの－ともしひに
022	ねよとのかねの－きこえくるそら
023	ゆくゆくも－さすかあはむは－しらさりき
024	さてしもひとは－いつくなるくれ
025	わすれぬを－おもふかたとは－なかめして
026	たひのそてとふ－かせやふくらむ
027	やとりきて－のなかのまつの－むつましみ
028	ふたつからすの－こころみえけり
029	つききよみ－ふくるもともを－しのふよに
030	ふねさしゆけは－なほあきのみつ
031	かはつらの－いねかるさとの－すみつとひ
032	ひとさわくなり－かせのむらさめ
033	てらすひの－けしきにはかに－くもりきて
034	くたれはやまや－かけになるらむ
035	よそにても－みやこをみねの－やすらひに
036	しはしもしはの－すみかあられし
037	かりそめも－ゆるすとならは－こころかは
038	おやしなくとも－たたあるかこと
039	おもふをも－しらておふるか－わすれくさ
040	のへのしけさは－うさやまさらむ
041	たちわかれ－とほやまのはを－ゆくへにて
042	ゆふかけなつむ－こまいはふこゑ
043	はなのもと－わかいへちにや－うつろはむ
044	やなきひとしほ－みとりそふころ
045	しらかはや－かすみにおつる－みつすみて
046	みしはなこりの－あけほののつき
047	よもすから－まくらのうへの－ひややかに
048	つゆまとろます－うちすくすのみ
049	くるしさは－いつをひまなる－われならて
050	こひはこのよに－かきるみちかは
051	もろこしや－なほうきものを－おもふらむ
052	にほふけふりに－きえぬおもかけ
053	しのはしき－むかしはこすの－まとほにて
054	あはれともとや－みねのやままつ
055	ひとりたれ－ゆきのうちゆく－たひならむ
056	かせたにみちの－しるへとはなれ
057	そことなく－おくるはゆめの－ここちして
058	ほとときすたた－ひとこゑもうし
059	ゆふつくよ－さすやあやめの－たまくらに
060	むすはまほしき－ちきりなりけり
061	みそめては－かへりみむをや－わかさらむ
062	のちのよかける－ゑさへおそろし
063	おとにきく－みつせのかはの－いかはかり
064	しつけきかたに－はらへすらしも
065	すきたてる－かけものふかき－しめのうち
066	かねなとはなに－ゆふへつくらむ
067	かへるかり－こゑはきこえて－やまさひし
068	よするもみえす－はるのうらなみ
069	しほかまや－みやこにをしと－なのみして
070	しをるるたもと－つきやうつさむ
071	ひとはこて－あきのつれつれ－まさるよに
072	まきのとささぬ－かせそみにしむ
073	おくふかき－やまのはつゆき－ふりいてて
074	いくむらくもの－かへりゆくすゑ
075	おほそらや－ゆゑありかほに－くらすらむ
076	あすよりほかは－なにかまたるる
077	さりともと－おもふもものを－かきりにて
078	つつむにたへす－ならむとやする
079	そてはなほ－あつきほたるの－したもえに
080	あきをいそかぬ－よるよるもなし
081	なかつきの－つきやわかかけ－わするらむ
082	はなにあさおく－きくのしらつゆ
083	やまかけは－きりのまかきも－いろつきて
084	のらなるむらよ－いかにすむらむ
085	わひにしも－ありしなからの－ふるあとに
086	なをくたさむも－こころからなり
087	ひとはたた－たつたのかはの－にこるなよ
088	みつもらさしの－すゑもたのもし
089	ぬるともの－そてのよそめや－まきるらむ
090	あけかたふかき－かへるさのそら
091	はなをつき－このまのはるの－こととひて
092	わかはいろそふ－つゆのしたくさ
093	ゆきとくる－のへのあしたや－つもるらむ
094	やまもひかりの－かけはかくれし
095	たかねより－みれはあしひの－うみはれて
096	あまのいへゐは－そことしられす
097	ゆふなみの－ふねよるすまの－せきのとに
098	たひはをりから－またところから
099	よのつねの－あきとしおもひ－まよふなよ
100	こころのつきは－はれしくもらし

宗長追善千句　第七：山何［こほるるや］

句番号	句
001	こほるるや－すみれさきそふ－まつのふち
002	あままもおかす－なかきひくらし
003	うくひすの－まかきにこむる－こゑはして
004	おきゐてみれは－のこるあけほの
005	こえつくす－とおもふみねの－かりまくら
006	しらぬうらわの－つきやいつらむ
007	きりにみす－おとはたななし－あまをふね
008	うすきたもとに－あきをおくれり
009	やまかせに－きたるこのはの－いろふりて
010	あとたえそむる－ゆきのしたいほ
011	ひととせも－おほえぬすゑや－いかかせむ
012	またるのみなる－なかそしられぬ
013	とふとしも－みえていさよふ－たそかれに
014	なとておもふを－いぬほゆるこゑ
015	たつねすは－はなやなからむ－みやまかけ
016	やよひのこすゑ－しけりそふころ
017	つきははや－はつかあまりに－かすみきて
018	たちわかれしや－くもゐなるらむ
019	たれとみぬ－ふなちもかなし－わたのはら
020	ゆふなみかへる－おとはきこえて
021	つりするは－しつかなるこそ－こころなれ
022	みたれたるよを－いつるかしこさ
023	くさのうへの－つゆにもひとや－まさるらむ
024	なみたさそはぬ－むしのねもなし
025	ふるさとは－のへのこととふ－つきをみて
026	みののこるをも－なににかこたむ
027	うつろふは－あふをはしめと－しるものを
028	ひとすちにうき－なこりなりけり
029	かへらむも－たまのをやまを－けふこえて
030	ききしよりなほ－あつまちのすゑ
031	とりのねに－かりねのそらは－あけかたみ
032	こすゑはふかき－かけのすすしさ
033	あふちさく－そとものくもに－あめすきて
034	あさけのかせや－はらひはつらむ
035	のとかなる－ころはのやまの－あらましに
036	さそははたれか－もれなましはる
037	わかみつに－よはひのかけを－くみしらて
038	ならひなれはや－いはひきぬらむ
039	ひとことも－あたにきかむは－まてしはし
040	もれむもしらぬ－よはのたまくら
041	そふうちも－なにしかつきの－そらたのめ
042	うちなかむれは－あきかせそふく
043	したはちる－たちえにきゐる－もすなきて
044	ひとのかよひも－まれのかたをか
045	ゆふくれや－あしたのはらも－なにならむ
046	のこるひかけを－かすみにそみる
047	うらつたふ－はるものかなし－おきつなみ
048	あしのわかはに－まくらゆははや
049	すすろにや－はなのかけみち－にほふらむ
050	なみたわすれぬ－くさのかりいほ
051	なれしよを－こころともなく－うちすてて
052	とりもつかはす－いつちさるらむ
053	あととほき－くもにうへみぬ－わしのやま
054	なほかけてらせ－みよしののつき
055	しらつゆや－たたまきのはの－いろならむ
056	またほのほのと－あきのあさあけ
057	わかれつつ－こころほそさを－さきたてて
058	なみたならては－みにそはぬみち
059	とほつまに－ゆくそらもなき－かりころも
060	ものおもふにや－やつれはつらむ
061	あひみるは－しらすかすくる－なかもうし
062	かくまてかはる－ほとのあささよ
063	ひとははや－われにこえても－うるふみに
064	いくよになりぬ－ともしひのかけ
065	はなにあめ－はるるかまたや－ふりぬらむ
066	みくさかくれに－かはつなくこゑ
067	ゆくはるの－いたゐにいたく－さとふりて
068	おもかけにさへ－かすかなれとか
069	そなたこそ－むかふかうへに－まもらるれ
070	あまつめくみは－かきりしられす
071	そてにみよ－われにもつきや－やとるらむ
072	をささかるをの－みちのへのつゆ
073	すみあらす－あきのひとむら－かこふのに
074	またきふゆめく－やまのしたかせ
075	おほかたの－こしのしらねか－たひよまて
076	ゆくにくやしき－こともあらすや
077	みはなにを－なすともしらぬ－つきひにて
078	はるのものとや－むすほほるらむ
079	こそよりも－のこるころこそ－にはのゆき
080	かれはにさむし－もゆるしたくさ
081	やまかせの－のひはたれたく－かけならて
082	わひぬるひとの－まきれさりけり
083	いにしへは－まことあるにや－のこるらむ
084	たえしゆくへも－ちきりにそとふ
085	うつつとも－おもひさためす－よるのゆめ
086	いつきのみやの－つきふくるそら
087	あきかせに－かものかはおと－たてそへて
088	きりにはれたる－かたやみなそこ
089	なかるるを－みれはおちはの－うきしつみ
090	わかこのもとに－たのむよはいさ
091	いささめに－とはれしやまは－へたてきて
092	をのへのかねに－こひなまさりそ
093	たかさこや－こころのまつに－なりぬらむ
094	みちのしるへも－うらかなしかり
095	ゆかむより－むすははくるし－いそまくら
096	ききもならはぬ－かせはあらまし
097	かくはかり－はなちることや－まれならむ
098	くもにももちも－きゆるとりのね
099	ほとときす－はるくれかたの－けさなきて
100	なつをもまたす－やましけるみゆ

宗長追善千句　第八：薄何［くもとりや］

句番号	句
001	くもとりや－おつれはのへの－ゆふひはり
002	みねになこりの－かりしはしまて
003	ふきみたれ－さそふこのめの－あまかせに
004	つきはくもりし－ままのこのころ
005	あけほのの－そらよりあきの－ふけそめて
006	かたしくよたた－すさましきそて
007	なるかみや－わかうへにのみ－しらるらむ
008	いなひかりする－をちこちのくれ
009	うゑしたは－やまのすそわの－ひろきのに
010	みつみえわたり－なかれぬもなし
011	たかこころ－いすすみもすそ－すまさらむ
012	とほつよさへや－うかふおもかけ
013	わかれにし－ひとにおほかた－てををりて
014	はなになさはや－うきくさのはら
015	たへてやは－まつさへあるる－やとのあき
016	まととふつきも－ななめなるかけ
017	よひすくる－ほとなきかねの－こゑはして
018	まちわひぬるを－きこえやらはや
019	ひとにそふ－ほかはこころも－それならす
020	なにをたよりの－みやまちのすゑ
021	はなみれは－いはにひともと－さきいてて
022	さひしくたてる－はるのときはき
023	かすみより－かみのとりゐや－おくならむ
024	いまはたしもは－ふりまさりけり
025	あきこそと－おもひしつきに－ふゆのきて
026	よのまにかはる－かせあらきこゑ
027	かからむと－たのめぬひとに－ふけはてぬ
028	こころよわくは－みきといはめや
029	たけくまの－まつよりとほき－かたもなし
030	なとふるさとに－かへらさりけむ
031	かきりとも－たひにしられぬ－なかゐして
032	よはかりなから－やすけきもあり
033	つきくさに－あきをやおもひ－わするらむ
034	こはきまれなる－すりのころもて
035	やまふかく－なりてしかなき－ふくあらし
036	ゆふなみよする－たきやおつらむ
037	かはおとの－せせにひまなき－ゆきはれて
038	さえわたるなり－はしのひとすち
039	かけとほく－さとのむかひの－よわるひに
040	つはさやおもき－とりのとふこゑ
041	はないくへ－ちりかかるとも－みえやらて
042	あくるをまたは－なほはるのそら
043	かすみつつ－まくらのつきも－うときよに
044	それもにほはし－すつるゆくすゑ
045	まゆのこと－みやこのやまや－へたつらむ
046	みちにかたちも－かはりぬるひと
047	たききをり－くめるはみなれ－ころもにて
048	てらやふりても－なほたのむらむ
049	いつくにて－とふともおなし－なきあとに
050	わするるかたは－あらしとをしれ
051	こひしさは－にしになりても－よはのつき
052	わかみはもとの－ねさめするあき
053	おもひとる－まくらなりせは－すゑのつゆ
054	なつもややはた－したをきのこゑ
055	のきはより－はなたちはなの－ちりそめて
056	たちいてぬれは－たたならぬそら
057	いとはしき－こころはなこり－あらしよに
058	みにしられけり－ふかきとほやま
059	さひしとや－ひとりはくもも－おもふらむ
060	あめよりのちの－かせのありなし
061	のこるひは－あをはましりの－はなのあと
062	はるやすつらむ－このもとのみち
063	ひとみえぬ－かすみかくれの－みつのこゑ
064	なからのはしは－いつのたまのを
065	ゆくすゑも－しらてやおもひ－わたるらむ
066	さりともとのみ－うちなたのみそ
067	こよひとて－いつはりならぬ－ことはいさ
068	なかむることに－あらましのつき
069	あきのかせ－あたなるくもに－なほふきて
070	もみちはちるも－はなのしらきく
071	あかなくに－たちまふそてや－いくかへり
072	をとめのすかた－いりひたにまて
073	さむからし－かつきてうかふ－なみのうへ
074	ふるのみならす－ゆきのいろかひ
075	すきかてに－ひかたのけふり－ほのみえて
076	まつひとむらに－やとりをやせむ
077	はるのゆく－けふはやまちも－たえねたた
078	かすみにのこる－おくのかけはし
079	つららとく－しつくにいはの－あとふりて
080	こけのみとりは－かせかよふなり
081	つゆみれは－なこりすくさぬ－むらさめに
082	そてはくもまの－つきやとふらむ
083	むしのねに－そのへもいらぬ－よはふけて
084	ひとにいまさら－みはよわりきぬ
085	うらむこそ－みしかかりける－こころなれ
086	おもふことやは－かなはさるへき
087	ゆきかへり－いのるあさみや－ゆふみやに
088	そてのにほひと－なれるさかきは
089	こかくれに－うめさきましる－みねこえて
090	またはるさむき－やまやとふらし
091	うちとけは－またましゆきの－しはのとに
092	ひはつれつれと－としふかきかけ
093	かたるとも－きこえぬみつや－こほるらむ
094	よははなほこそ－しつかなりけれ
095	あかつきは－またいりあひの－かねなりて
096	いつるににたる－やまのはのつき
097	まとふらむ－ひとたのめなる－あきのそら
098	なみたのいろは－こすゑにもみす
099	あさちふや－はるすきはなも－おく□□て
100	なかなかしひに－かせそをさまる

宗長追善千句　第九：夕何［はるのひに］

句番号	句
001	はるのひに－おもひいてすは－けさもなし
002	もゆるくさはに－おなしかけろふ
003	ひとつつつ－そののこてふの－うつりきて
004	ものしつかなる－かせのゆくすゑ
005	こぬあきを－おくりてすすみ－あかすよに
006	またあらはるる－みなつきのそら
007	ほししろき－かけもゆふたつ－くもかけて
008	いつくのかたに－かへるうらなみ
009	なかめする－あしのまろやの－まとのまへ
010	かりそめなから－たれかとふらむ
011	およはぬや－おもひたえまし－やみなまし
012	ふもとにみれは－なほこひのやま
013	つきにこそ－ちきりしものを－いてやらて
014	よひふけかたの－いなつまのかけ
015	あきたもる－かりほのとこの－はつしもに
016	そてまてかせの－なにすさふらむ
017	すみそめの－ゆふへひとしほ－たへかたみ
018	ゆかむとするも－そことなかりき
019	このはるは－のやまのあまり－はなさきて
020	かすめるころの－まやのさひしさ
021	とりそなく－なれしのきはや－かへるらむ
022	かたふけるひの－ほのくらきかけ
023	かなしきは－つきまつほとの－あきのそら
024	いまこむことは－つゆもしられし
025	わかれちに－はひまつはれよ－まくすはら
026	まててふきかす－とほさかるみね
027	きのふたに－すてむといひし－みのゆくへ
028	あとなきものは－くもにかきらし
029	きりはらふ－かせのまにまに－みそきして
030	ひかすとともの－なみのはやかは
031	うちはしや－はるのみなとに－のこるらむ
032	さくらひときの－ふかくさのさと
033	たちもらす－かたもかすみの－のへのくれ
034	たれほととほく－ゆくもみゆらし
035	かけはなほ－さやまのつきの－したみちに
036	こころもおかす－しものあきのよ
037	きりきりす－きやとるこゑや－そてならむ
038	ふるきすまゐは－よもきにもしれ
039	ここをしも－はなれかたきは－なになれや
040	うきこひせしと－おもひこしのみ
041	ときうつり－かはるもひとつ－こころにて
042	わひぬといつか－なほやゆくらむ
043	しらくもの－たなひくやまち－おくふかみ
044	をちかたひとに－ゆふかせそふく
045	いくめくり－しくれにそてを－かしつらむ
046	かりほやまつに－かかるこのもと
047	はなののち－つたはわかはの－かさなりて
048	はるよりたつは－あきのおもかけ
049	あらたまの－ことしもほとは－あらしよに
050	けふみかつきの－こむるあはれさ
051	やまのはの－くもにやきりの－わたるらむ
052	ふりこはあめの－すさましきそら
053	さもこそは－ふくるかよひの－くらからめ
054	まつよのねやに－うつしてしかな
055	あまのとや－まつあけかたに－なりぬらむ
056	きよみかなみに－ふねそおくるる
057	いそきゆく－こころもなきは－せきちにて
058	こすゑなかめは－けさのつきゆき
059	おちはより－かきたくけふり－たちのほり
060	かくれすみしは－いかにおくやま
061	ありときく－みとりはみまく－ほらにして
062	つるのなきゆく－あとしたふなり
063	ひとりゐる－たのむのさはの－かりのこゑ
064	みつくさしをれ－あきふかきかけ
065	ころもうつ－ころとしにはも－かこひすて
066	よさむならひし－ありあけのつき
067	おもかけは－むすはぬゆめに－かはりきて
068	ひたすらひとに－こころこそそへ
069	ひとえたも－ゆるさはなにか－はなのもと
070	さらてもはるの－くれむとやする
071	うらうらと－てるひのままに－おくらはや
072	おもひやらるる－あまのたのしみ
073	よはなにに－ぬれてそてふる－やまならむ
074	こひちはたれも－こえむみつかき
075	たのむなよ－ゆふつけとりの－なきよかは
076	かりねにしらぬ－かねやまたまし
077	つきみても－かかるのなかの－くさまくら
078	ゆくへやおなし－みちのへのあき
079	けふまては－つゆうちはらひ－とふあとに
080	ふるきみやこの－ありしかたらむ
081	まこととは－おもはしひとの－こころにて
082	をりてもはなの－またきつけはや
083	たつねこは－はるよりまれの－やまさとに
084	あらしものこる－みねのしらゆき
085	みつむすふ－のりのあかつき－そてさえて
086	たくひはみえす－たれともすかけ
087	ゆかしけは－いやしきうちの－おほつかな
088	なをあらはすは－ひとつこころそ
089	もののふや－ふみのみちにも－すすむらむ
090	ゆみはりつきの－まとのあさゆふ
091	ちりちりに－のこらぬやなき－あきふけて
092	たてるひさきの－かけなかれゆく
093	あすもこむ－しほひにきよき－はまつたひ
094	ひははるかなる－にしのすみよし
095	さみたれの－はれましられて－うちいてて
096	くもゐるかたや－なくほとときす
097	おきてみる－しののめうすき－なつのよに
098	わきてゆめなる－みをたのみけり
099	いくたひの－としのやくをか－すくすらむ
100	しをたれまさる－そてやまつしま

宗長追善千句　第十：三字中略［ふしのねや］

句番号	句
001	ふしのねや－かたみのけふり－かすみかな
002	やまほとときす－はるもあととへ
003	こけふかみ－のこるやとはふ－ふちさきて
004	のきはのまつの－ひともとのかけ
005	かへるのの－わかあたりにや－うつるらむ
006	ちかきもたれと－きかぬふえのね
007	つきよよし－よよしもいたく－そらふけて
008	さそはれきぬる－あきかせのくも
009	むらさめや－しきのはねかき－みたるらむ
010	あはれゆふへと－いはてすくさし
011	うとからぬ－こころみえむは－いかはかり
012	すゑたのむにや－ひとのなすらむ
013	ひとはるも－あははとはなを－うゑすてて
014	ひかりのかけを－のとかならはや
015	かすみふく－かせなこやかに－あまのはら
016	ゆくもおほえす－けふのふなみち
017	うれたきも－うれしきたひや－かへるらむ
018	みしよりむくら－おふるふるさと
019	のこりては－なになれかほの－よはのつき
020	あさつゆならぬ－みをやかこたむ
021	わかれちの－たもとにあきの－なみこえて
022	おもひわたるや－かなしさもそふ
023	いつくにか－すまむとひなの－いてたちに
024	かかるよよりも－あらはあらやま
025	ひとこころ－とらおほかみは－ものならて
026	とほきくにをや－おとにきくらむ
027	わかれしは－たたそのままの－ふるさとに
028	はるはととへは－なつのならすや
029	きのふにも－はなはかきらぬ－すみれくさ
030	あさなあさなや－つみにゆくらむ
031	みちのへに－かすまぬゆきを－ふみわけて
032	よふかきつきに－たれとなきかけ
033	あやにくに－かへれはあかす－あきのそら
034	こすゑにおもふ－いろをたにみむ
035	つねならぬ－あとにまつこそ－かなしけれ
036	あたしかせにや－さそはるるはて
037	あまくもの－たくひになりて－なかめわひ
038	ゆふこえゆけは－ふかきやまのは
039	かりころも－はらふやゆきに－わするらむ
040	かれのにはるる－ひかけさすみち
041	いほむすふ－たけのひとむら－はるちかみ
042	なにならさりし－みにもまちとれ
043	よわるをも－うきこととはは－いのちにて
044	うらみはあとも－みえしとやする
045	ちりのこる－はなのこころを－しるもうし
046	なみのまもなき－きしのやまふき
047	ゆくみつに－はるやわれもと－おもふらむ
048	かけそふままに－くるるよのつき
049	まつむしも－すすしかりけり－かせのこゑ
050	おとはのやまや－まつあきのいろ
051	けさみれは－みやこのこすゑ－しくれして
052	くものまよはぬ－かたもなきそら
053	ひとことに－ならふこころの－なにならす
054	うけかたきみを－しるよしもかな
055	こひせしと－いのりけらしや－ももちたひ
056	はらふによらぬ－うきことはなそ
057	さくらはな－かせのとたえも－ゆきちりて
058	くもにやよひの－あととめぬやま
059	さほひめや－ころもほすひを－かさぬらむ
060	あそふならては－ひまもやはある
061	おもふとち－とけはこころの－かきりにて
062	いつれかおくれ－さきたちなまし
063	つきをまつ－さとのをちこち－かはるよに
064	しきるきぬたも－うちたゆむなり
065	ゆふあらし－はつかりかねや－わたるらむ
066	みたるかうへの－なみたとそなる
067	きこえしは－またなほさりに－みえそめて
068	おもひさたむる－ことはしらしな
069	さしもくさ－さしもいつくに－あととめむ
070	われよのなかや－たたはなのかけ
071	あちきなく－おいのはるのよ－つきにめて
072	わかれちめくる－きさらきのころ
073	ことのはに－にしへゆきしや－のこるらむ
074	あきまちとほの－なつのひくらし
075	あふきより－ほかはおとする－かせならて
076	おもふかたとや－みをこかすらむ
077	なかめしも－もみちかさねの－うきそてに
078	やまちいくたひ－をしかなくくれ
079	あしひきの－みねこすつきに－やとりして
080	たのみありとも－ゆくすゑのそら
081	こころなと－とさまかくさま－まよふらむ
082	あまたみるにも－なほやみとりこ
083	あさとこに－よなきのふすま－まきれめや
084	いかにかくさむ－なこりともなし
085	はなにそて－おほふはかりも－かせふきて
086	あたらうめとや－にほひゆくらむ
087	やまかつの－あたりのはらの－はるののに
088	あはゆきけふり－うくひすそなく
089	ふゆこもる－たけのうきふし－うつりきて
090	いつをなみたの－ひまのひととせ
091	つきにせぬ－ものおもひなき－あきことに
092	さこそはこよひ－まつあまのかは
093	くさのうへの－つゆとりあへす－ふけそめて
094	なにそととはは－たまとこたへむ
095	いせのうみや－なきさのつとの－かへるさに
096	きよするなみは－そてなぬらしそ
097	さらてたに－いもこひわたる－たつなきて
098	ほとはくもゐに－たてるおもかけ
099	あめとなる－あとやなみたも－はれさらむ
100	うきふることの－なきにしもあらす

宗長追善千句　追加：何衣［ゆくはるに］

句番号	句
001	ゆくはるに－うめともみえね－さくらはな
002	いまひとしほの－うくひすのこゑ
003	よこくもや－やまのかすみに－わたるらむ
004	いりかたまよへ－みねのつきかけ
005	あきははや－いくよといはむ－ころならて
006	□とやあさかほ－さきつくすらむ
007	□□かきね－いろめきかはす－こはきはら
008	ひくらしなきぬ－のちのやすらひ

宗長追善千句

宗長追善千句 第一：何人［はるのよの］

宗長追善千句 第二：白何［みしやいつ］

宗長追善千句 第三：何色［うくひすの］

宗長追善千句 第四：何舟［よもすから］

宗長追善千句 第五：片何［やまさくら］

宗長追善千句 第六：何路［やまふきに］

宗長追善千句 第七：山何［こほるるや］

宗長追善千句 第八：薄何［くもとりや］

宗長追善千句 第九：夕何［はるのひに］

宗長追善千句 第十：三字中略［ふしのねや］

宗長追善千句 追加：何衣［ゆくはるに］

宗長追善千句　第一：何人［はるのよの］

宗長追善千句　第二：白何［みしやいつ］

宗長追善千句　第三：何色［うくひすの］

宗長追善千句　第四：何舟［よもすから］

宗長追善千句　第五：片何［やまさくら］

宗長追善千句　第六：何路［やまふきに］

宗長追善千句　第七：山何［こほるるや］

宗長追善千句　第八：薄何［くもとりや］

宗長追善千句　第九：夕何［はるのひに］

宗長追善千句　第十：三字中略［ふしのねや］

宗長追善千句　追加：何衣［ゆくはるに］