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天文十八年梅千句

作品集名	天文十八年梅千句
作品集名読み	てんぶんじゅうはちねんうめせんく
作成年月日	天文十八年正月十一日（1549年2月8日）
場所

天文十八年梅千句　第一：何木［うめかかは］

天文十八年梅千句　第二：何袋［かそうめを］

天文十八年梅千句　第三：何船［つきにうめ］

天文十八年梅千句　第四：何人［みしいろは］

天文十八年梅千句　第五：何路［ふきよわる］

天文十八年梅千句　第六：山何［うめさけは］

天文十八年梅千句　第七：青何［ゆけはうめ］

天文十八年梅千句　第八：何墻［しつくさへ］

天文十八年梅千句　第九：一字露顕［にはをはるに］

天文十八年梅千句　第十：御何［うめさきて］

天文十八年梅千句　第一：何木［うめかかは］

句番号	句
001	うめかかは－さなからたたく－あさとかな
002	おのかはるとや－やとのうくひす
003	たまほこの－ゆくてののへの－ゆききえて
004	なかるるみつの－すゑはるかなり
005	いつことも－やまはわかれぬ－ふもとかは
006	ゆふきりかくれ－わたりせしふね
007	つきになる－たもとすすしき－あきのかせ
008	きけはいつしか－むしのこゑこゑ
009	こころをや－くさはのつゆに－おきてみむ
010	たをるもをしき－なてしこのいろ
011	ふりのこる－かきねのみちの－すきかてに
012	むすひすてたる－みつのさひしさ
013	こほりゐし－やまたのかけひ－すゑくちて
014	たかすみかとか－けふるくれたけ
015	そことしも－わかすくれゆく－のをとほみ
016	こよひもまたや－くさまくらせむ
017	かへるさも－こたかかりはに－わすれきて
018	うつらなきたち－あきそふけぬる
019	つきやなほ－けさまてつゆに－のこりけむ
020	はれてほとふる－むらさめのあと
021	いそくにも－さかぬをはなの－こころにて
022	くれなはあたら－はるとしらすや
023	なれしのを－おもふかすみの－ころもてに
024	おきわかれたる－しののめのそら
025	おもかけは－ゆめにまさらぬ－うつつにて
026	つらくはなにに－みえもきつらむ
027	いひかくる－われにうらみは－おもからす
028	さためなきをも－たのみなるよそ
029	あらましに－すくすをやまや－おもふらむ
030	くもゐるみねの－なかめするくれ
031	しのひつつ－なかさらめやは－ほとときす
032	まつもましれる－すきのこかくれ
033	ふきおくる－あらしもとほし－かねのこゑ
034	ひとりめさめぬ－あかつきのとこ
035	つきにまつ－ゆくかたさそふ－あひやとり
036	おちてもつゆは－はきのおとつれ
037	さをしかの－わけこすやまち－はるかにて
038	あくるあさけの－のへのしつけさ
039	なよたけに－かせやひとむら－のこるらむ
040	さとはいりひの－しくれせしあと
041	ねにゆくを－さむけにとりの－うちなきて
042	くやしもふゆや－かくれすくなき
043	をりたくも－しはしのほとの－たのしみに
044	よるのあるしと－まくらかるやま
045	ともとする－たひやつきさへ－またるらむ
046	いはむかたなく－あきそさひしき
047	となりたに－きりのまかきに－へたたりて
048	みちとほしとは－かことなりけり
049	うつろふを－ひとのこころと－をるはなに
050	はるよりけにも－われそあたなる
051	とふとみし－こてふのゆめに－あくかれて
052	うはのそらには－なにおもふらむ
053	ゆふへゆふへ－すすしさそふる－あまそそき
054	こけのしつくの－いはねもるおと
055	ふゆふかく－なりゆくしはの－したいほに
056	くもすさましく－かせもこそふけ
057	ほのかなる－きぬたのひひき－かりのこゑ
058	たかすそのとか－こすゑいろつく
059	ふちはかま－きつつなれにし－たひのみち
060	みやこにみつる－つきのかけかも
061	わすれしと－いひけむもこそ－はかなけれ
062	まつとせしまに－よわるたまのを
063	ひとふての－すさひをおもふ－よすかにて
064	うらみのゆくへ－しられさらめや
065	かきりあれは－かせもふきあへす－ちるはなに
066	なかきひもはや－いりあひのかね
067	はるのよは－あめのつれつれ－ねてもみむ
068	かすむやたより－しのふかよひち
069	をくるまの－おとをはたれに－おほせまし
070	おもふなけきは－いかにつみてむ
071	むかしなほ－こころにあまる－としのくれ
072	ゆきのときとや－まつのことのは
073	やまかけや－こととふともの－ふねさして
074	すみはなれその－さとのをちこち
075	もしほたく－けふりやつきに－ふけぬらむ
076	さよのあらしそ－わきてみにしむ
077	つゆけさを－そのまましかむ－そてもうし
078	あはてもすくす－おもひみえはや
079	かたいとの－ひとによるこそ－あはれなれ
080	われもいへすむ－のきのささかに
081	みのむしも－こゑたてつへき－あきちかみ
082	ちりにましはる－みちのへのくれ
083	よにふるも－かろきみのみや－やすからむ
084	おくらしきけり－けふことのやま
085	まきのはは－ふかきつゆにも－そめやらて
086	ものおもふつきに－そてそくちぬる
087	われからの－こころやあきに－かこつらむ
088	ゆふへはかりの－つらさともやは
089	わかれむを－あひみぬさきに－うちわひて
090	なこりはせきの－こなたたにいさ
091	ゆかははな－しからむはなの－みつもうし
092	よるなみくつす－きしのやまふき
093	かたやまの－かけのおくてた－かへしすて
094	くれてたくひの－けふるひとむら
095	かのこゑも－うすらくはかり－かせたちて
096	おもはぬつきの－そらにみえたる
097	そてにいつ－はれむともなき－あきのあめ
098	みたれこころか－つゆのをすすき
099	かりそめに－やすらふのへも－むつましみ
100	かはらしとたのむ－いちのともなひ

天文十八年梅千句　第二：何袋［かそうめを］

句番号	句
001	かそうめを－なにのはなそもの－ゆふへかな
002	をちかたひとの－そてかすむみゆ
003	かりかなく－うらわのはるに－ふなてして
004	なきたるあさの－なみのゆくすゑ
005	やまはつき－ひかりをさまる－ありあけに
006	あふきにあきの－かせかよふそら
007	たますたれ－つゆもいくへの－くれならむ
008	やとはしくれの－すきあへぬくれ
009	いつくとも－わかすこのはの－うちみたれ
010	いりひのすゑに－なれるむらとり
011	ひとかたに－おもひさたむる－こころかは
012	なるるよかれも－ひとにあやしき
013	ゆめにたに－つもるうらみは－みえもせよ
014	よしやはらはし－さむしろのちり
015	なてしこの－ゆふつゆさそふ－かせたちて
016	なつをもそてに－わすれゐのみつ
017	さしくみに－ゆかしきやとり－たれならし
018	とははあはれも－たひにかけてよ
019	わひつつも－さすらふるよの－なからへに
020	たへこしこころ－いかはかりうき
021	みこそあれ－はなやはひとの－またさらむ
022	かすめてつきも－あくるよなよな
023	うくひすも－とりのそらねに－なきいてて
024	おほえすこゆる－あふさかのやま
025	かへるさや－みやこにきほふ－そてならむ
026	むらくもなから－かせはくれけり
027	あまのはら－かはらぬものの－あきみえて
028	くさはのつゆそ－あめとのみふる
029	ゆきかひも－すさましきのの－をちこちに
030	つきくらきよの－いなつまのかけ
031	たけなひく－まとにほたるや－すきぬらむ
032	かせのすすしく－なりそむるそら
033	ひとまつと－やすらふかたの－くれふかみ
034	こころのうらよ－たのみたにあれ
035	ほのかなる－ゆめをうつつの－はしめにて
036	はなにみしのも－ふゆかれのころ
037	をかのへや－けさのはつゆき－きえぬらむ
038	かすみのいつこ－ききすなくこゑ
039	かりころも－はるをひととも－ともなひて
040	のとけきかたや－みにもわかれむ
041	ゆくすゑは－こころこころの－みなとふね
042	つきはへたても－あらしあしかき
043	そてになと－うきゆふつゆの－しくるらむ
044	うらみをそふる－かせのまくすは
045	ちかひても－あきにはたへぬ－いろみえて
046	いはてこそすめ－やまのさひしさ
047	よにいまた－ありとたにたれ－みをしらむ
048	われしもおいを－なくさめよかし
049	あかなくも－はるしりそむる－はなにねて
050	ふるすわかなく－とりのさへつり
051	かすみこそ－きみかめくみの－そらならめ
052	もるるかたやは－つゆにみるへき
053	くさのなの－しのふこころを－ねさしにて
054	おもひのたねと－なれるよのつき
055	をはすての－やまのたかねの－うきくもに
056	しくれをさそふ－かせのはけしさ
057	けふこそと－かみもたひたつ－ふゆはきて
058	ちさともふねの－うへにのこさし
059	いそまくら－あけはつるまて－みるゆめに
060	まつのひひきの－あかぬなつのよ
061	わかはうつ－あめさへにほふ－ふちさきて
062	したはさらめや－くれてゆくはる
063	よふことり－こゑのこたへも－あやにくに
064	かすみにふかく－たとるやまひと
065	ひとふしも－つつかぬうたひ－うちつれて
066	なさけのゑひの－みたれなきやは
067	いさめおく－みちにこころを－ゆるすなよ
068	にはのをしへの－あはれなるあと
069	そこはかも－ふるきいはきに－みつのおと
070	あきかせさひし－もりのしめなは
071	しととなく－つゆのかたはら－くるるひに
072	よさむもしるし－ささのかりいほ
073	うちふかす－きぬたいつれの－さとならむ
074	つきみむためか－たれもいをねぬ
075	いとふにも－なほひとまなき－なかはうし
076	かたみにつくす－こころいくたひ
077	はなそのの－こてふのいろも－をりにふれ
078	たまゆらすかる－はるくさのつゆ
079	おきあへぬ－のへのあさしも－かすむひに
080	みつうちけふる－をちのひとむら
081	たかふねの－さしてやとりも－とひよらむ
082	いりえいりえに－すめるよのつき
083	ふしみのや－あきのやまかせ－ふきたちて
084	とはたのいなは－いまやいろつく
085	なるこなは－ひけはかたよる－むらすすめ
086	さわくはかりを－つねのこころか
087	とひくやと－おもふおもかけ－あとたえて
088	ゆふへのものと－なみたこほるる
089	あすまてと－みをはたのまぬ－はなさかり
090	いささくらにと－かりねするやま
091	さそはれて－はるやいへちも－わするらむ
092	のかひのこまの－いはふこゑこゑ
093	うちわたす－まへのたなはし－みつきよみ
094	こころあるひとの－すまひしるしも
095	よにふるも－おもひとるみは－やすかれや
096	いりなむやまも－しのふゆくへそ
097	ほとときす－さらにかけみる－つきならて
098	さみたれくらす－このころのそら
099	たまほこの－たよりたえたる－あともうし
100	をさまるくにに－ありやつくらむ

天文十八年梅千句　第三：何船［つきにうめ］

句番号	句
001	つきにうめ－いろわくつゆの－かたえかな
002	やなきかうへの－ふかきゆふかけ
003	うくひすの－あらそふねくら－うつりきて
004	かすみをさむみ－すさふやまかせ
005	とほきのの－ゆきまあさたつ－かりころも
006	いそくをたひの－ならひなるみち
007	ふるさとの－そらやちかくも－なりぬらむ
008	あきまちあへぬ－をきのはのつゆ
009	いくかありて－はなさきいてむ－こはきはら
010	いまはたくもに－かりのひとつら
011	こひしさや－こころのつてに－うかるらむ
012	おもはぬうちに－おもふましはり
013	みはしもか－したやすからす－すくしきぬ
014	しはこるすまひ－あはれともみよ
015	とはれしは－いつとたになる－あとなれや
016	きえままたるる－みちのへのしも
017	ちかくなる－はるひなりけり－くさのいほ
018	きのふはけふに－またそかはれる
019	なみかせに－まかせもてこし－ふねのうへ
020	なかめさらめや－うらのあけほの
021	はなそのの－しかつやまつの－おもふらむ
022	むかしなからの－あとそかすめる
023	いりあひの－かねさへはるは－あはれにて
024	すすろにおつる－そてのなみたか
025	つつむにも－なほうきふしや－たえさらむ
026	こころみたるる－ゆくへとそなる
027	わすられぬ－すちやいかなる－たまかつら
028	ねてのあさけの－つゆのあさかほ
029	あらかりし－のわきやよはに－たゆむらむ
030	あなかまゆかの－きりきりすなく
031	さひしさを－まくらのつきに－なくさめて
032	にほふとやまの－はなはちりけり
033	なにのうへに－しはしもはるを－ととめまし
034	かすむなかめは－たかふてのあと
035	おいてのち－まなふることや－かたからむ
036	まといたつらに－くらきくれたけ
037	ゆきはまた－いろなきあめの－おとさえて
038	みやこもけさは－をちのやまかせ
039	さそひけむ－ゆめのみをしき－かりまくら
040	なきつくすよの－ふかきとりのね
041	わかれては－あけやらぬつきの－かけもうし
042	なみたにまとひ－つゆをうらむる
043	おもひをも－しののをすすき－ほにいてて
044	まねくによらは－あはさらめやも
045	たをやめに－たれかこころの－とまりふね
046	かせをかことの－たひのやすらひ
047	くるしさの－あせほすやまち－あつきひに
048	ぬきてかへはや－せみのはころも
049	いかにして－はかなきよをも－すくすらむ
050	あすしらぬみの－けふのたのしみ
051	くさのとは－かろきつまきを－こころにて
052	あらしをそてに－かへるゆふくれ
053	しらくもも－なこりならすや－やまさくら
054	たちさらはうし－はるのおもかけ
055	わかゆてふ－みつをたのみの－みはふりて
056	ふりわけかみの－すゑのあはれさ
057	ちきりしも－そのこととなく－かはるよに
058	ふゆかれけりな－もすのくさくき
059	たつねむも－ゆきのしたいほ－みちたえて
060	たくやしはしの－けふりこそたて
061	そらにたに－しきみのかをり－しるかれや
062	ほとけもさそな－たむけうくらむ
063	たきのおと－みやまのつきに－ひひききて
064	しくれしあとの－あきのあかつき
065	おなしゆめ－まくらのつゆや－したふらむ
066	あひみることも－まれのなさけか
067	ことのはも－つくさまほしく－あくかれて
068	みすのへたての－ゆふへもやなに
069	つまおとも－またききなれぬ－うひことに
070	おやしもかかる－をしへくるしき
071	いつよりか－みをおくやまは－もとむらむ
072	ふかきたににも－ならひありきや
073	かしかなく－こゑもかはせの－あきたちて
074	みつすさましく－こいしなかるる
075	つきやまた－しほひのあとに－のこるらむ
076	いへちわすれて－ひとのたたすむ
077	をののえも－くたすはかりの－はなのかけ
078	かすみをくめは－ものおもひもなし
079	うちつけに－ゆるふこころの－はるみえて
080	しのひあまるや－やまほとときす
081	むらさめの－すきけるくもに－よひふけぬ
082	かせのたえまの－かねかすかなり
083	ささまくら－ゆめやかよひも－あへさらむ
084	ひをふるままに－しらぬののすゑ
085	いつかまた－いつくのつきに－くらさまし
086	つゆよりあたの－こころなるひと
087	さらてたに－うきてふあきに－ちきりてよ
088	つれなきにねを－そふるまつむし
089	しめゆひし－よもきふをなと－わするらむ
090	ふかくなりゆく－みちのなつくさ
091	ゆふたちに－なかれぬかたも－みつすみて
092	にほのうきすそ－くかにまとへる
093	われのみや－よるへなきよと－なけくらむ
094	ひとつなみたに－とものかたらふ
095	ふるさとは－はなもつゆけき－いろみえて
096	つむあとわかす－すみれさくなり
097	ゆくそては－かすみはてつつ－くるるのに
098	あさたかひとの－かへるさのみち
099	かきくもり－そらやゆきにも－なりつらむ
100	かけはみとりも－ふかきやまやま

天文十八年梅千句　第四：何人［みしいろは］

句番号	句
001	みしいろは－すゑつむはなか－ゆきのうめ
002	しけらむのへも－いつのしたもえ
003	みつきよみ－はるにひかるる－こまとめて
004	かすみをわくる－いはのかけみち
005	かすかなる－いりひをそての－やまこえに
006	しくれしあとそ－つきになりゆく
007	こすゑより－ひかりかすそふ－つゆおきて
008	ほたるみたるる－あきかせのくれ
009	しきのふす－とこあらはなる－えをとほみ
010	かりふくかけも－しけきあしのや
011	わひつつも－たのむよこそは－あはれなれ
012	なににかさのみ－ひとのつれなき
013	こひよわる－いのちやあすも－またさらむ
014	しのふになほも－なはもれにけり
015	たれにかも－かさねてにほふ－からころも
016	おもひにおもき－むくひしらなむ
017	ことこころ－つりのほかには－なきふねに
018	かせいかなれや－なみをたてゆく
019	さえわたる－とりのこゑこゑ－うちはふき
020	またきにくるる－やまのしたみち
021	むすふへき－はなのまくらの－よはのつき
022	ゆめにもさくら－ちるとみはをし
023	すきやらて－てふはまかきに－なれなれて
024	ふるさととしも－しるひとやたれ
025	うゑおくも－こころのまつは－あはれみに
026	あはむかきりは－かかれたまのを
027	くりかへし－ねかふほとけに－ちかからて
028	かねかすかなり－やまたかきてら
029	このまもる－つきはあかつき－すむそらに
030	あきのまくらや－しくれむとする
031	むしのねも－そてにうれふる－くさのいほ
032	うしやつつりの－ころもさむけし
033	またともも－なみのすさきの－あまをふね
034	みはさすらへを－わふとつけてよ
035	ふくかせも－たよりならすや－みちのすゑ
036	けふるこころに－たえぬいへいへ
037	あまねくも－たみのかまとの－ゆふけふり
038	おほふめくみは－ほかにしるしも
039	うちかへす－たのものなかれ－あめはれて
040	をりをえかほに－かはつなくなり
041	うくひすの－こゑよりはるや－さそふらむ
042	かすみにのこる－よはのかりふし
043	めかれせし－はなにともしひ－ほのかにて
044	こととひよれは－みきりしつけし
045	そことなく－こすのひまもる－もののねに
046	ゆきにやくるる－つきのあきかせ
047	すすきちる－すそののゆくて－そてさむみ
048	はつかりころも－なれなるるひと
049	ことのはの－つゆのなさけに－むすほほれ
050	あさくもこころ－みえてくやしも
051	やまのゐの－あかてもきみは－すくさめや
052	わかあふさかよ－たれかせきもる
053	おもひねの－みやこのゆめは－ゆるさなむ
054	たひのつかれを－よるややすむる
055	なさけある－あるしにけふの－やとりして
056	ちとせのともも－こころなりけり
057	とりみては－むかしもいまも－ふてのあと
058	いつはりくるは－かこちなほさて
059	ふたみちや－うまれなからの－くせならむ
060	やまにもかよふ－なみのうきとり
061	かせふけは－このはもふねの－ゆくへにて
062	ものすさましき－あきのかはかみ
063	むらくもの－たえまのつきの－ふくるよに
064	なひくたつらの－のこるひとかた
065	つまこひに－しかのわけぬる－みちなれや
066	そまやまかくれ－あともつつかす
067	はなのきを－つくりいたせる－はるくれて
068	まつとみつれは－ふちさきにけり
069	ほとときす－なつをもまたて－なくやとに
070	このよもはやく－あけむとやする
071	かたるまも－なみたなからに－わかるらむ
072	ちきりもあたの－ひとやりのなか
073	つれなきを－いさむるおもひ－ふかからて
074	ならひあやなき－よをやなけかむ
075	わきてしも－まてはくもれる－つきのくれ
076	へたてむとする－あまのかはきり
077	ふねにかせ－はてはいかにと－みにしめて
078	たつねいりては－まくらかるやま
079	をりしくも－みねのしたしは－ふるしもに
080	とたえにけりな－ゆめのうきはし
081	ひとりねは－とこもおきうき－あさほらけ
082	みさへなかるる－なみたならすや
083	いかてかは－あさきになしも－はてつらむ
084	このゆふくれを－かきりなるそら
085	こえむとし－たれもいそくを－こころにて
086	はるのすさひに－おいやわすれむ
087	たちましる－かすみのそては－わかれめや
088	たをらはにほへ－はなのひとえた
089	やまふきや－うきをもいはぬ－いろならむ
090	みつゆくかきね－たれかしめおく
091	てれるひの－なつをよそなる－やまふかみ
092	いててあきまつ－つきのみしかさ
093	まくらさへ－とらてやよをも－ふかさまし
094	あへるうれしき－こころとけつつ
095	つもりしも－いつらかうらみ－のこるらむ
096	おのれうちはらふ－まつのしらゆき
097	ふゆもなほ－はなたちはなに－かをとめて
098	にははとこよと－すみもなすとか
099	いはたたむ－みつはなかれの－とほからし
100	うゑおくたけの－ちひろあるかけ

天文十八年梅千句　第五：何路［ふきよわる］

句番号	句
001	ふきよわる－のかせもうめの－ひときかな
002	つきはかすみの－ゆふへあけほの
003	ももちとり－をりしもはるに－ほのめきて
004	やまはのきはの－たけのはかくれ
005	はれまおく－つゆめつらしき－さみたれに
006	のこるひをさす－ふねのとまふき
007	はままつの－ひひきにかねも－さそはれて
008	まくらのなみに－ゆめそわかるる
009	よこくもや－たひねのそらを－いそくらむ
010	こえしなこりを－かへりみるやま
011	うさつらさ－かたるもいかて－つくさまし
012	こころのかきり－かけるたまつさ
013	もらさしの－なのみかすかす－おもはれて
014	まかきのうちや－あきのいろくさ
015	つきもたた－つゆやよすかと－やとるらむ
016	ありとはかりの－きりのふるみや
017	のわきたつ－かせのゆくへの－たえたえに
018	かへりこすゑの－とりのなくこゑ
019	はなはねに－ちりてはるひや－くれぬらむ
020	なかめさひしく－うちかすむやま
021	のとかなる－ときをもわかぬ－くさのとに
022	むかしをおもひ－いつるあめのよ
023	あはれつき－そてにすすしき－かけきえて
024	ほたるのいろも－あけかたのそら
025	わかたまや－きみかあたりを－かへるらむ
026	しらせてこそは－うきもうらみめ
027	いひあへぬ－こひちはなほも－はかなくて
028	こころいかにと－あやふまれつつ
029	みわたしの－すゑはくちきの－ひとつはし
030	たてるやなきに－みつのさひしさ
031	つはめとふ－ゆふへしつかに－あめおちて
032	はいりののきの－かすむやまもと
033	わひてふる－みやなくさめも－まれならむ
034	おもふなかをも－よははなれきぬ
035	わすれよと－いひしこころも－たのみにて
036	さすかにゆめも－うつつおほゆる
037	おくりけむ－としこそうつれ－ますかかみ
038	まつよこたはる－いけのみつかけ
039	ひなつるも－こけをさなから－ふるすにて
040	いはかさなれる－かめのをのやま
041	うこきなき－みよとやたれも－いのるらむ
042	ひとよのうちの－あらたまのはる
043	あけゆけは－あらしもかすむ－つきみえて
044	ねやのひまをも－さそふはなのか
045	からころも－きつつかへさは－いかなれや
046	とはれてのちの－おもひもそそふ
047	うきやたた－きのふになして－しのはまし
048	なからへむみの－ゆくすゑもなに
049	ものことに－おやのひかみと－いとはれて
050	かたるあかしや－たたいそのうへ
051	ほとときす－なのりすてつつ－ゆくふねに
052	こころをつれよ－なみのしほあひ
053	おもふひと－なきにしもあらぬ－たひはうし
054	くるれはいとと－つゆのたまくら
055	をみなへし－まねくをはなに－うちみたれ
056	あれたるやとは－あきののらなり
057	いつるより－いるまてつきの－かけやみむ
058	むなしきそらや－あらましのすゑ
059	とやかくと－ことしもすきぬ－はなさかり
060	いつをかいとま－はるのみやひと
061	うくひすも－さそふはかりの－あさなあさな
062	こほりくたくる－たにのしたみつ
063	やまかせは－ゆきのうへより－ふきおちて
064	ゆふひにかかる－くものひとむら
065	こころをも－まつよのつきに－つくせとや
066	あきをかことの－なみたとそなる
067	おほかたは－なれこしつゆの－あさちふに
068	しもさむからし－かへになくむし
069	みをしらは－たかよのことも－おもへたた
070	しのはれぬへき－みちあらまほし
071	ゆくはるの－やとりやのこる－やまさくら
072	えたさしかはし－かせかすむまつ
073	ふねよする－いそへのなみの－うららかに
074	あかぬみるめそ－ひろふかひある
075	こころさし－しらぬかすにも－いりぬらむ
076	のりのすすめの－おろかならめや
077	はるはると－みちはつつける－みねのてら
078	かねもこゑくれ－わたるかけはし
079	そてかへす－あらしのすゑは－しもふりて
080	さかきはうたふ－よはふけにけり
081	にはにたく－ひかりやうすく－なりぬらむ
082	いまみえそめし－ありあけのつき
083	きりはるる－ききのしたくさ－つゆおきて
084	ゆふへふかむる－ひくらしのこゑ
085	あはれさの－かきりやあきの－ものならむ
086	たのめぬとても－ひとのとへかし
087	のこるとも－いはまほしさの－たまのをに
088	こころくらへの－つれなさのすゑ
089	おもひこそ－ふしよりうへの－けふりなれ
090	うきなやいかに－そてのうらなみ
091	なきあとも－おろかなるみを－うちわひて
092	なほよもきふに－すみなせるかけ
093	はなのみや－もとありしよの－いろならむ
094	ここらのともに－おくれつるはる
095	せきこゆる－やまちのかすみ－たちこめて
096	おきゆくかたの－よやふかからむ
097	ひとおとは－しつまるさとの－いぬのこゑ
098	さしものこさぬ－たそかれのかと
099	あはてしも－かへるおもひは－しれかしな
100	ちきりくちすは－きてやとふへき

天文十八年梅千句　第六：山何［うめさけは］

句番号	句
001	うめさけは－やなきもいその－くさはかな
002	こすゑさためす－うつるてふとり
003	つゆまよふ－そとものかすみ－ひまわかて
004	かせのゆくへに－つきそのこれる
005	いかにねし－よさむのやまの－かりまくら
006	ひとりをしかの－のへになくこゑ
007	こはきはら－ひとはとひきて－かへるさに
008	すさましかれや－ふかきゆふくれ
009	まきのとの－さしあへぬまに－あめおちて
010	ひかけへたつる－うきくものそら
011	おもひやる－こころはなにに－さはらまし
012	なけくとみえて－ゆめもつたへよ
013	すまのうら－かへるなみにや－たへさらむ
014	なきてちとりの－ともしたひゆく
015	おくままの－しもさゆるよも－あけはてて
016	あしひふきけつ－やまかせのいほ
017	ましはるも－みのおとろへの－くるしきに
018	ひとひひとひと－よやはいとはぬ
019	かはらしの－そのかねことを－たのみにて
020	ほのみしひとの－やとりいつらは
021	おもふあたり－はなをかことに－たつねはや
022	こほれてにほふ－つゆのやまふき
023	かりまくら－かたしくはるの－ころもてに
024	かせふかぬまと－ふねなからねむ
025	さとのあまの－よとこいふせき－くれかけて
026	あめになりぬる－くものむらむら
027	かすかにも－をちのやまのは－うつるひに
028	ともさそひつつ－かへるしはひと
029	かたらふも－こころやなかに－へたつらむ
030	はてはてしるし－さかしおろかさ
031	いりそむる－みちはおくをも－またわかて
032	かつさきにけり－みよしののはな
033	かすむらむ－はるのかはかせ－やまおろし
034	ゆきのひまより－おつるたきなみ
035	さほひめや－たたぬぬのをし－さらしけむ
036	いとはへなかき－ひはうららなり
037	こころのみ－うはのそらめに－あくかれて
038	つつむにたのむ－ほともありけり
039	みにおはぬ－ふみをかへさは－いかかせむ
040	かすならてしも－おもひかけめや
041	ちかひてし－かみもいつはる－ひたちおひ
042	かへらむたひを－いそくあつまち
043	いつくにも－こころはとめむ－ものならて
044	さそはれゆくや－うきくさのつき
045	おとはまた－たてぬもしるき－あきかせに
046	ころもうてとか－かりのなくそら
047	ひとむらの－かたやまかけの－くれそめて
048	なつのほかにも－ひさきおひそふ
049	しけるはの－かつかつひろき－やなきはら
050	きしのしつくは－なみののこすか
051	ふなひとの－みのにさをさす－あめすきて
052	をりにもあはぬ－すかたとそみる
053	あけほのの－はるにあやなく－かへるかり
054	そらよこたはり－うすくかすめる
055	まつかきの－かたへにかをる－はなおちて
056	あらしのにはに－つもるしらゆき
057	とふもうし－とはぬもつらし－ゆふまくれ
058	うらみとちめて－ほともへにけり
059	いつまてか－きみかししまに－むかはまし
060	よしやつきには－こころとけてよ
061	あさかほや－よふかきはなの－したひもに
062	たかふちはかま－ぬきもすてつる
063	ぬれてゆく－すそののきりの－あさほらけ
064	いるさのやまか－すかるなくなり
065	われはまた－あらましのみに－うちくれて
066	すくるつきひは－みにもおほえす
067	まつことも－なすこともなき－くさのとに
068	してのたをさの－こゑいかならし
069	ひとりゆく－しらぬやまちは－ゆふへにて
070	とりあつめても－ものおもへとや
071	かたみたた－うれしきもこそ－あたならめ
072	つむもわらひの－つらきをりをり
073	はるさへも－あちきなきよを－つくつくし
074	くれぬるかたに－ききすなくなり
075	かすみより－いはたのをのの－つきいてて
076	かはなみいつこ－よひふくるおと
077	つなきすて－ひとこそかへれ－わたしふね
078	よははこたへよ－やまのあまひこ
079	すむもたた－ひとりのみねの－しはのいほ
080	まとよりなかは－くもそたちいる
081	はれぬへき－そらともみえぬ－さみたれに
082	ほしのかけかと－ほたるとふなり
083	ふきすさふ－おとさへたかき－あきのかせ
084	そののえのみの－こかくれのいろ
085	やまかつの－ふもとつつきに－たはかりて
086	きりまにしろき－みつかすかなり
087	つきははや－ゆふかけみゆる－あまのかは
088	とはむといひし－ひとこそはいさ
089	いつはりも－またならはねは－たのまれて
090	こころみかてら－おとろかさはや
091	ちきりつる－はなにけふまて－つてもなし
092	いつかさくらの－にほふはるかせ
093	ととまらは－しはしこころも－やよやよひ
094	かすみはかりを－けしきなるやま
095	みやことて－かへりみるさへ－へたたりぬ
096	よもあけかたの－しかのうらふね
097	かみまつり－もよほすそての－いさなひに
098	わかおもふひとよ－いつあふひくさ
099	たまかつら－かけはなれつつ－としもへぬ
100	きよくすますを－こころなりけり

天文十八年梅千句　第七：青何［ゆけはうめ］

句番号	句
001	ゆけはうめ－のへをはてなき－にほひかな
002	たもとのいつち－すくるはるかせ
003	おほろけに－かたへよふかき－つきすみて
004	まくらにちかし－あまつかりかね
005	たひにかる－うつらのとこね－さむかれや
006	をはなしもふる－やまきはのみち
007	かけうすき－いりひのあとの－くれそめて
008	ひとすちしろし－みつのゆくすゑ
009	こからしの－いろにももるる－たきつなみ
010	まつにしくれの－すくるかはかみ
011	はつゆきや－もよほすくもの－あさほらけ
012	なくさめてすめ－みねのかりいほ
013	うきものと－おもひすてたる－ちりのよに
014	みるもくやしき－いにしへのゆめ
015	つきひとり－かはらぬあきの－さよまくら
016	とひしはさらに－たまゆらのつゆ
017	ひとむらの－をきにゆふかせ－おとつれて
018	みにしむそらそ－さひしさもそふ
019	ふるさとは－いててやいなむ－たへやせむ
020	すむはよしのと－つてにしもきく
021	はなにさへ－うとくはいつを－まちてまし
022	ひとにこころの－のとかにもなき
023	をしめとも－うきはるのよの－とりなきて
024	ひかりのかけの－あけやすきそら
025	あらましの－わかよいまはた－いかにせむ
026	おそきまなひは－おもひたえてよ
027	いそけとも－ゆふへのみちは－ゆきやらて
028	のへになつめる－こまのかへるさ
029	かれはてし－くさははしもの－しろたへに
030	よとむかきねの－みさひゐにけり
031	なつをこそ－せきあらためむ－なかれなれ
032	こころこころに－うゑしあらをた
033	たれしかも－うきすかかさの－あめのおと
034	やつれもてゆく－たひのやすらひ
035	おもひには－すかたさへこそ－かはるらめ
036	つきにみえむも－さすかなるくれ
037	ことわりの－あきのそてとは－おくつゆに
038	ころももきりも－うすきすみそめ
039	ふかくいる－のりともひとは－みさらめや
040	あさなゆふなに－しきみつむやま
041	なれてさへ－くるしきみねの－つつらをり
042	いはほそはたつ－みつのすゑすゑ
043	さしのほる－うふねのたくひ－かすかにて
044	さとはかつらの－よはのしつけさ
045	まくらにや－ふしみのゆめの－かよふらむ
046	なみたにうかふ－むかしならすや
047	なれこしを－はなもおいきと－うちわひて
048	したふともしれ－あさちふのはる
049	つきになほ－いるかたかすむ－ありあけに
050	かさなるやまの－おくやたかけむ
051	いはこゆる－たきのひひきに－かせたちて
052	ねむれるをしの－さわくあかつき
053	そてにしもや－はらひもあへす－まよふらむ
054	ふゆこそとをる－はなのしらきく
055	めてきつる－もみちのあきは－くれはてて
056	かへるをしかの－こゑのあはれさ
057	やまはなほ－しくれよきりの－あさまたき
058	すそのはつきの－かけそのこれる
059	かたしくも－つらかりしよの－かりころも
060	わすれむとすれは－ふるさとのゆめ
061	わかこころ－ちちになれとや－かかるらむ
062	たえなむものの－たまのをのすゑ
063	しのふるも－つひにしられむ－なかはうし
064	かこともとめて－うときひとなり
065	さりともと－おもへはなほや－したふらむ
066	ちるこかけにも－はなのひともと
067	よとともの－こころにくるる－はるもなし
068	かすみのひまも－ことのしけけむ
069	うみやまも－みやこならはと－なかめして
070	うつすかしこき－しほかまのうら
071	ふてにさへ－およはぬをたれ－かたらめや
072	あははつくさむ－うらみかすかす
073	ふけはてて－とふにそふまも－あらしかし
074	おもふによその－ゆめやのこれる
075	みるらむも－はかなきつきの－たまくらに
076	うきみをしれは－あさかほもやは
077	つゆをこそ－くさのとほその－ものならめ
078	なににかさのみ－なくきりきりす
079	たかうへも－あきいとはるる－かせのおと
080	ちらはさくらの－したはさへをし
081	うのはなの－はるをよそけに－さきいてて
082	ほとときすにや－かへるうくひす
083	あはれなる－すもりのとりの－ゆくへみむ
084	さとはかたはら－かすむむらたけ
085	さしこもり－さそふゆきまの－さとありて
086	たききつきぬと－もとる□□やま
087	をしへこそ－つるのはやし□－なこりなれ
088	かくれてくもに－つきかたふきぬ
089	あふきをも－おきわすれぬる－あきのよに
090	わかものかほの－ねやのしらつゆ
091	おもひくさ－こころつからの－いろにいてて
092	しのふかきりや－むさしののはら
093	うきをたに－ゆかりたつねて－いひやらむ
094	はかなやみより－たれかわひひと
095	うへかうへの－しなをはさらに－さしおきて
096	うちかたるよの－あめのつれつれ
097	やまははな－いつれとからむ－おそからむ
098	かすみにたとる－みちのをちこち
099	よふことり－こゑするかたに－ひはくれて
100	ゆきてはかへり－あかさりしはる

天文十八年梅千句　第八：何墻［しつくさへ］

句番号	句
001	しつくさへ－のきはのうめの－ちしほかな
002	したとけぬらし－まつのしらゆき
003	さえかへる－あらしのくもも－みねこえて
004	ゆふかけのこす－みつのみなかみ
005	あつきひや－なかれのほかに－しらるらむ
006	つきにをふねの－さをさせるそて
007	さととほき－たつらのかくれ－かりはねて
008	つゆうちはらふ－しきのはねおと
009	あめやかつ－はれてもくもに－みえぬらむ
010	やとりわかるる－みちのやすらひ
011	さくはなは－しつかすまひの－かをとめて
012	さくらにさひし－はるのやまかせ
013	きえやらぬ－ふもとののへの－うちかすみ
014	みつのけふりの－たちやそふらむ
015	いつるひは－かはよりをちに－ほのめきて
016	いそくいちちに－ふねわたすかけ
017	かへるさの－そてのゆくへや－くれぬらむ
018	かたらひすてし－なこりやはなき
019	うへもこそ－こころおきてむ－にひまくら
020	よふかきつきを－おもかけのとこ
021	しらつゆの－おきわかれぬる－あともうし
022	あきよりさきに－すてはつるよそ
023	わけいりし－やまちあさくも－かへらめや
024	あかぬなこりを－したふたひひと
025	すみつけは－かたつゐなかも－なにならて
026	くさのとほそを－あけくれのやと
027	みにいまも－ふりにしこひは－わすられす
028	こころのまつの－くちもはてめや
029	いろにこそ－うきをもみえね－たのめきぬ
030	つもるおもひは－いかはかりそも
031	ふむもをし－かけもみやまの－はなのゆき
032	すきまのくれに－かすむとりのね
033	けさやまつ－せきをもこえし－はるならむ
034	よるもひかたの－すまのうらなみ
035	かけきよき－まさこのうへに－つきおちて
036	ややさむからし－あきのはつしも
037	きりきりす－なきよわりゆく－くれことに
038	みのおとろへの－あはれもそそふ
039	へたてこし－あとやはるかに－なりぬらむ
040	そてにふきこす－みちのやまかせ
041	くもとのみ－みるみるそらに－ゆきちりて
042	こほりにむすふ－にはのやりみつ
043	うつみひに－ふゆやわすれし－あさほらけ
044	かたらひひとも－よはひたけつつ
045	ぬれころも－おもふかなかは－きまほしみ
046	あふよもおつる－なみたことわれ
047	つれなさに－ならひきにける－みはつらし
048	たのむともとや－あさちふのまつ
049	さひしさの－くれをもつきに－なくさめて
050	あきのたもとそ－みるもすすしき
051	むしなけは－つゆおとさしの－やすらひに
052	のへのいろはた－をりにふれたり
053	みやこひとの－たつぬるやとり－あはれしれ
054	こころふかきは－すゑたのみあり
055	うらみをも－たへすつらくは－いかにせむ
056	わかこひくさの－つかねをもかな
057	おもひには－たましひもみに－そひかたみ
058	なかめこそやれ－ゆふくれのくも
059	きのふかも－なきつとききし－ほとときす
060	はなたちはなの－あめかをるそら
061	ゆふやみの－さつきのかけは－いつかみむ
062	いむてふものと－おろしこめたり
063	とふひとも－ののみやところ－まれにして
064	ふりてしはふく－こゑそさひぬる
065	くれふかき－しもよやそてに－はらふらむ
066	てかひになるる－をしのはかなさ
067	かへるへき－わかくもゐをも－わすれきて
068	さめてはつきの－かりふしのゆめ
069	ひととほり－つゆのしくるる－をささはら
070	いつちあらしの－さそふしかのね
071	あかしかた－やまはそことも－しらなみに
072	たえたるみねや－こころなるらむ
073	よのつてを－きかはいてこし－かひもやは
074	いひなひけては－あたにならふな
075	おほぬさの－なにたちぬへき－ちきりにて
076	とひすてぬれは－うれしけもなし
077	みぬかたの－はなのにほひは－かせもふけ
078	かすみにまとふ－はるのやまふみ
079	のるこまや－いてしひなかさ－なつむらむ
080	しはしはみちの－なかやとりせよ
081	おほえすも－たみののしまに－あめすきて
082	しめるもくつの－けふるゆふしほ
083	なみまより－ひかりかすかす－とふほたる
084	つきなきころの－そらもふけけり
085	しのふよを－さはりあるやと－みにしめて
086	こころをくたく－をきのうはかせ
087	あたにおく－つゆやはそてに－みたるらむ
088	たたおほかたも－ふるさとのくれ
089	うきをいつ－たひにはおもひ－わすれまし
090	ゆけともいまた－とほきむさしの
091	くさまくら－ゆめもみなから－あはれにて
092	ふきたつかせの－おとのさやけさ
093	なよたけの－すゑはにのこる－ひをうすみ
094	かたやまかけは－よはのあさしも
095	のとかなる－のきはをたより－とりなきて
096	ちりにしはなの－あとのさひしさ
097	いつとなく－かすむはかりの－まつかせに
098	うらうらうかふ－あまのつりふね
099	あけわたる－なみのをちこち－えははれて
100	やまのみとりそ－みつにうつれる

天文十八年梅千句　第九：一字露顕［にはをはるに］

句番号	句
001	にはをはるに－うめのつくれる－いはねかな
002	うはきえこほる－いけはしまやま
003	かほとりや－つはさにしもを－はらふらむ
004	たけのうれはの－ひはほのかなり
005	かすかなる－みちのかたはら－くれやらて
006	うつおとしけし－あさのさころも
007	いくあきか－をちかたひとの－すくすらむ
008	まちとるつきや－ありあけのそら
009	このころの－はしゐによはを－ふかしきぬ
010	はなたちはなの－かをるしたかせ
011	なこりをも－おもはてゆくか－ほとときす
012	のきのとやまの－むらさめのくも
013	くれぬれは－ひひきかさなる－たにのみつ
014	ききしはいつら－いりあひのかね
015	たまほこの－たよりもとむる－やすらひに
016	とるまもかなと－おもふひとふて
017	うきほとも－しらせてこそは－さもあらめ
018	こころおくにそ－ゆかしけもなき
019	さくはなも－おにのかはらの－ふるてらに
020	ほとけぬかつく－けふのきさらき
021	よはのちの－はるをもちきる－つきをみて
022	あかしくらすや－いのちなりけむ
023	いまこむと－たのむはかりも－いたつらに
024	こころのかきり－うきにつくしつ
025	なみたこそ－すすりのうみの－あとならめ
026	まとにふりにし－ひとのおもかけ
027	まつたけを－ちとせのともと－うゑおきて
028	いはほをみれは－こけむしてけり
029	すすしさを－なほせきいるる－さされみつ
030	なかれおとそひ－あめすくるくれ
031	わたしすて－ちひさきふねの－たたよひて
032	さととほけなり－かへるうまひと
033	いなりやま－はるはゆききも－しけきひに
034	かすみのいくへ－すきたてるかけ
035	はなのきに－あらさらねとも－にほふらむ
036	そてふれしよの－つきはわすれし
037	なみたにも－つゆのなさけを－かすかすに
038	のはいろふかき－はつかりのこゑ
039	をらてはと－すきかてにみる－こはきはら
040	ゆふへゆふへの－かせのはけしさ
041	つりをやめ－かへれはうらに－しほみちて
042	わかすむさとか－みちもわかれぬ
043	まつたれも－とほきたひのま－ありなしに
044	さらにみやこの－こととはまほし
045	あはれにも－このやまかけの－はるたちて
046	もえこそわふれ－ゆきのしたくさ
047	さえかへる－そらはかすみも－たえたえに
048	かせのすゑゆく－みつそおとする
049	たけのはに－つきのひかりや－なひくらむ
050	よそのつゆまて－わかそてのうへ
051	あきはなほ－かたみのころも－かさねきて
052	わすれしゆくへ－おもひおこせよ
053	めくりあはむ－たひをいまはた－さかつきに
054	さかきにそへて－まかちとるふね
055	なみまより－はまのとりゐや－みえぬらむ
056	いさこちりなき－かけのはるけさ
057	たかふめる－あとをのこせる－けさのゆき
058	ゆくかたしらぬ－みちのひとすち
059	うくひすの－ともなひいつる－のをとほみ
060	かりねのゆめそ－はなにかへたる
061	かたときも－をしまさらめや－はるのそら
062	ほのかすみつつ－いまかあふひと
063	つきこそは－たたなかたちの－くれならめ
064	まつてふむしの－ねをそふるそて
065	わけつつも－なくさめくさの－つゆふれて
066	そのふるあとの－ゆかりをそとふ
067	よはきみか－たたすめくみを－あふけたた
068	みのさすらへは－なきななりけり
069	たつねとも－なほうみつらや－すまさらむ
070	やまはけはしき－いはのかけみち
071	わひしらに－ましらなくなり－くれやらて
072	おくかたしろし－しものならしは
073	つきのこる－いほりののきの－ひまひまに
074	かせはよさむの－まくらにそしる
075	おもかけも－きえこそかへれ－あきのゆめ
076	はかなやたのむ－そてのうつりか
077	ほのかなる－みちゆきふりに－あくかれて
078	うはのそらめに－まよふこころか
079	このうちに－はねうちはふく－とりのこゑ
080	うきみにまさる－せはきよもやは
081	たえたえに－かけひのみつは－つたひきて
082	あまりふかくも－ふゆやなりけむ
083	こととひし－ひともかへらぬ－やまさとに
084	はなにこころや－のこすゆふかけ
085	てふのぬる－そののしたくさ－はるすきて
086	つゆもさひしく－うちかすむころ
087	しつかにも－かたへはあめや－はれぬらむ
088	えのこゑたかく－ふねいつるみゆ
089	あけぬとて－ひとさそふよの－いそまくら
090	つきのなこりは－たれもおもふか
091	かつはちり－かつはいろつく－おそもみち
092	やまはわきての－あきのこからし
093	むらむらに－うきてそまよふ－みねのくも
094	しくれやゆきに－ならむとすらむ
095	ふゆはなほ－わひてすむいほ－あはれにて
096	かこふかきほも－ささのかりそめ
097	ひとなつや－みつゆくかたに－おくらまし
098	こころもきよく－なせるおこなひ
099	まきのたつ－とほやまなかの－あさみとり
100	そのいろとなく－ゆたかなるとき

天文十八年梅千句　第十：御何［うめさきて］

句番号	句
001	うめさきて－こえぬいかきの－かせもなし
002	よははなのとき－かみのまにまに
003	ふるそらも－めくみのあめは－のとかにて
004	かへすたのもの－みつのささなみ
005	うちなきて－さはへのかりや－のこるらむ
006	おちくるつきは－あしのはかくれ
007	みわたせは－とほききりまの－ひとさとに
008	きぬたのひひき－くるるやまきは
009	あらしふく－かたをかこえは－さえさえて
010	ともまつゆきの－まつのむらたち
011	なきいつる－こゑもやもめの－あさからす
012	わひてねしよの－あはれたにとへ
013	おもかけの－ゆめをそたのむ－からころも
014	わかれてのちの－みをいかにせむ
015	こころにも－さらにまかせぬ－わかいのち
016	よのうきつきに－うちむかふくれ
017	おもひいる－やまのはさそへ－あきのくも
018	このしたもみち－しくれまつころ
019	あちきなく－ひとりをしかの－ねになきて
020	うちまとろみし－ほとやありけむ
021	おとろかす－ひとのこころは－はつかしみ
022	いとけなきにし－むすふちきりか
023	おろかにも－かきかはすふみに－なはちりて
024	うきをはのちの－かたみとやせむ
025	いとひつつ－さくらにききし－まつのかせ
026	をのへのかねの－くれかたのはる
027	けふことに－かすみをしのく－ふねよせて
028	たひもなほはた－しつかなるころ
029	このみよや－とほつくにまて－なひくらむ
030	うらなふひとの－すゑのかしこさ
031	みえつるを－ともにしかたる－よるのゆめ
032	つきはまたても－いかてねぬらむ
033	くれぬれは－つゆのそこなる－はきかはな
034	おのかやとりと－すかるなくこゑ
035	しきのたつ－あきのをやまた－さむきひに
036	きりのゆくへの－のははるかなり
037	かきりなく－しをれもてこし－かりころも
038	ひとやりならは－うらみもやせむ
039	つれなきも－こころひとつに－あくかれて
040	うきをつたふる－たよりしもかな
041	くれことに－へたてきぬるは－いくちさと
042	みねみねめくる－やまほとときす
043	ありあけの－かけはみしかき－なつのよに
044	かれてあやめそ－のきにのこれる
045	まきのやの－しつくもあめの－おとたえて
046	ともなふひとや－かへらむとせし
047	いとふよも－なけのなさけを－おくなかに
048	つらしとてやは－おもひすつへき
049	ちりぬとも－をらてはすきむ－はなならて
050	かすみにぬるる－みちのへのくれ
051	つゆにさへ－こてふのはねや－よわからむ
052	ひかけまつまの－のこそさむけれ
053	さととほき－やふしかくれの－やすらひに
054	たかすむかたの－ほのかにも□く
055	をふねさす－いそのむかひの－ゆふわたり
056	このやまかはそ－うみにいてたる
057	しかまなる－かちちしらるる－いちかりや
058	くるもかへるも－こまいはふこゑ
059	われならぬ－ひともこたかに－かかつらひ
060	たもとしをるる－ならしはのつゆ
061	うちしくれ－あきやさひしさ－まさるらむ
062	あかつきつきに－くもそのこれる
063	ふるさとは－いつくともなき－よはのゆめ
064	うはのそらふく－かせのおとのみ
065	みねにおふる－まつともひとは－しれかしな
066	やかてとこそは－たちわかれつれ
067	ねになくや－ともよひつきの－はまちとり
068	ねさめあけはつる－すまのせきのと
069	たれみよと－いろもわかきの－はなさかり
070	あらたまりゆく－はるはこのはる
071	めつらしく－のちこそまれの－やよひなれ
072	かすみにのこる－ゆきのとほやま
073	うくひすは－のへにいへゐし－あさほらけ
074	たかくさまくら－しきもすてける
075	あつめても－ひきやるふみは－よまれめや
076	にくまれかほを－するもはかなし
077	しのふれは－みすしらぬひとの－おもかけに
078	こころあわをの－よるかひやなに
079	くるるまて－つりするふねの－なみのうへ
080	あきのひうすみ－つきはえのみつ
081	ひとはちる－やなきにさきの－うちねむり
082	さなからきりも－うつしゑのやま
083	すまひなしと－すつるよをたれ－かこちけむ
084	のりのほかには－おもふことやは
085	つかれつつ－ゆくてふひとの－みちとほみ
086	あらしのかせや－ふきむかふくれ
087	くれなゐに－ほほゑむうめの－さきわひて
088	うちはふきたる－かほとりのこゑ
089	いしまゆく－みつのすゑすゑ－かすむるに
090	ふるきみきりの－かけのあはれさ
091	むらむらに－このこのたけの－うちしけり
092	きみかよはひや－ひさしかるへき
093	ためしある－そのことのはの－かすかすに
094	こひちにたれか－つらきものなる
095	あめさわき－かみなるよはも－いとはめや
096	ちからをそへて－もつあつさゆみ
097	くれてゆく－ひとりのやまは－おほつかな
098	やりしこころよ－まもりともなれ
099	さきなはと－はなにかけおく－すすのこゑ
100	ゆききもしけき－はるのうまやち

天文十八年梅千句

天文十八年梅千句 第一：何木［うめかかは］

天文十八年梅千句 第二：何袋［かそうめを］

天文十八年梅千句 第三：何船［つきにうめ］

天文十八年梅千句 第四：何人［みしいろは］

天文十八年梅千句 第五：何路［ふきよわる］

天文十八年梅千句 第六：山何［うめさけは］

天文十八年梅千句 第七：青何［ゆけはうめ］

天文十八年梅千句 第八：何墻［しつくさへ］

天文十八年梅千句 第九：一字露顕［にはをはるに］

天文十八年梅千句 第十：御何［うめさきて］

天文十八年梅千句　第一：何木［うめかかは］

天文十八年梅千句　第二：何袋［かそうめを］

天文十八年梅千句　第三：何船［つきにうめ］

天文十八年梅千句　第四：何人［みしいろは］

天文十八年梅千句　第五：何路［ふきよわる］

天文十八年梅千句　第六：山何［うめさけは］

天文十八年梅千句　第七：青何［ゆけはうめ］

天文十八年梅千句　第八：何墻［しつくさへ］

天文十八年梅千句　第九：一字露顕［にはをはるに］

天文十八年梅千句　第十：御何［うめさきて］