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天文廿四年梅千句

作品集名	天文廿四年梅千句
作品集名読み	てんぶんにじゅうよねんうめせんく
作成年月日	天文二十四年正月七日（1555年1月29日）
場所

天文廿四年梅千句　第一：何木［つみそへよ］

天文廿四年梅千句　第二：何人［うめいつく］

天文廿四年梅千句　第三：何船［つきにうめ］

天文廿四年梅千句　第四：初何［うめかをる］

天文廿四年梅千句　第五：何垣［あさきりに］

天文廿四年梅千句　第六：山何［うちなひき］

天文廿四年梅千句　第七：何路［とりのねも］

天文廿四年梅千句　第八：二字反音［くれなゐの］

天文廿四年梅千句　第九：何袋［ふたあゐの］

天文廿四年梅千句　第十：花之何［かみかきの］

天文廿四年梅千句　追加：唐何［にほひきて］

天文廿四年梅千句　第一：何木［つみそへよ］

句番号	句
001	つみそへよ－わかなにうめの－はなかたみ
002	のへはゆきまの－そてのあさかせ
003	ひかけさす－かすみのうへに－やまみえて
004	のきはのたけに－うつるとりのね
005	しつかなる－さとはゆききや－くれぬらむ
006	かねはむかひに－うかふかはふね
007	みつとほき－なかれのつきは－こかけにて
008	きりにのこれる－あめはすきけり
009	すすしさや－いつくのあきを－さそふらむ
010	ひくらしなきて－やまふかきかた
011	しはのとの－ゆふへはわきて－ものさひし
012	とふひとかへる－あとしたひつつ
013	もらしても－うらみはつきぬ－ゆくへにて
014	いひよりてこそ－いととつらけれ
015	とけやらぬ－こころのほとも－いかはかり
016	まくらにちかき－たきのしらいと
017	やまおろし－ふきたつおとに－ゆめさめて
018	しもをはらへは－そてのつきかけ
019	わくるのや－けささえまさる－そらならむ
020	しはしなれぬる－やとりをそしる
021	ちるあとの－はなにこてふの－たつねきて
022	のこるさくらの－あはれひともと
023	ふるさとの－はるはこととふ－ひともなし
024	こほりのひまの－いさらゐのみつ
025	かはおとの－あめかときけは－あくるよに
026	つきさやかなる－みねのあきかせ
027	かきつらね－みたれぬくもに－かりなきて
028	とほきこすゑを－うつしゑのいろ
029	まひひとの－ころものそての－めもあやに
030	なこりわすれぬ－おもかけやいつ
031	うつつにも－なさまほしきは－ゆめにして
032	つらきをたのむ－こひははかなし
033	よやかくと－おもひなからも－まよふらむ
034	そむくものから－こはあはれなり
035	ききいれぬ－みちのをしへの－たひたひに
036	いさめしこそは－なほほとけなれ
037	ゆるしなき－はなにはいとと－なかめして
038	いたつらにしも－くらすはるのひ
039	うきことを－かすめややらむ－しのふみに
040	かこちくさより－なかもたえぬる
041	くやしさを－おもひかへすも－なにならて
042	ゑひのねむりの－さむるたまくら
043	つゆかをる－まかきのきくに－つきふけぬ
044	きりにぬれたる－やまひとのそて
045	あきさむき－ゆふかはをふね－ほのかにて
046	たくひのかけは－たけのひとむら
047	つつしさく－かたをかのへの－あめのうち
048	ききすなきたつ－こゑのさひしさ
049	あらしふく－かすみのすゑに－こまとめて
050	しはしといふも－たひそはるけき
051	わけてゆく－かたもしられぬ－むさしのに
052	しけるをままの－なつくさのいろ
053	こぬあきを－きみかこころの－やとにして
054	たのめおきぬる－あふきもそうき
055	ほのみつる－そてはたれとも－しらつゆに
056	したひかほなる－ゆめのなかきよ
057	すててたに－おなしうきよの－そらのつき
058	いつくのやまに－みはすみてまし
059	ゆくかりも－はるのこころを－さためかね
060	はなになこりや－をしみきぬらむ
061	さくふちの－かかれはまつは－ふりはてて
062	かせもたえたる－さみたれのころ
063	いまいくか－うらのとまやの－とまりふね
064	しるもしらぬも－うちかたるひと
065	たちにたつ－うきなはかりは－かひなきに
066	おもひのけふり－きえなむもいつ
067	つれなきに－くらへくるしき－わかこころ
068	ゆきてやとはむ－まちやあかさむ
069	をしむかた－あるにやおそき－よはのつき
070	あきもいまはた－きりふかきやま
071	まきのはは－もみちののちに－あらはれて
072	ふきもたゆまぬ－こからしのかせ
073	ふえのねは－さそはれかへる－をちこちに
074	ひはくれにけり－みちのくさかり
075	めくみたた－□□□のたのむ－そののうち
076	さかゆるいへゐ－ふくちなるらむ
077	うつりきて－さたむるをこそ－このみやこ
078	こよみにしるし－としつきのかす
079	いかにして－あらたまのはる－おいぬらむ
080	なれてひさしき－うくひすのこゑ
081	くれたけの－かけもちひろに－うちかすみ
082	みつはそこまて－あをむいはふち
083	ゆくゆくも－ものすさましき－やまみちに
084	まつもあやなし－ゆふやみのつき
085	とふほたる－あきかせにのみ－まよひきて
086	こほるるうへの－むらくさのつゆ
087	かしはきの－かれはにもりの－たまあられ
088	まきれしなにか－ひとのおとつれ
089	なかたちも－まきかへすらむ－ふみはうし
090	かはるこころを－かたみなれとや
091	かすならぬ－みはあるかひも－なみたにて
092	あさのころもの－あさましきのみ
093	よそめさへ－はいりのこやの－つれつれに
094	けふりもわひし－かやりたくかけ
095	すゑとほき－みちやよをこめ－いてつらむ
096	もとめてゆかは－あとしらしやは
097	はることに－□□□をのこす－はなさきて
098	かせにみたるる－つゆのあをやき
099	よせかへる－おとものとけき－かはなみに
100	せきいれてたみの－みつゆたかなり

天文廿四年梅千句　第二：何人［うめいつく］

句番号	句
001	うめいつく－けさはかすみの－にほひかな
002	かりねのやまは－うくひすのこゑ
003	はらひゆく－たもとにはるの－ゆききえて
004	みつのけふりに－ひのうつるかけ
005	かはかみの－くさもむらむら－うちなひき
006	かせのまにまに－ほたるとふくれ
007	あきちかき－そらとしかはる－けしきにて
008	いさなはれてや－つきのしらつゆ
009	ふけてやや－さむきしくれと－なりけらし
010	このはふみわけ－をしかなくなり
011	さととほき－やまたのいほり－ふりはてて
012	ひとすちのこる－みつのたえたえ
013	たきつせや－こほらぬおとを－くたくらむ
014	あけはなれても－かせのはけしき
015	さわきたつ－いちのかりやの－かすおほみ
016	ゆくあとしたひ－なくむらからす
017	ちるはなの－はやしのかたへ－はるくれて
018	かすみにもるる－かけそこたかき
019	めくるひの－なかてをみちに－ゆきかへり
020	はるかにつきを－わくるののすゑ
021	ここかしこ－えらふにすたく－むしのこゑ
022	むらさめすくる－つゆのしつけさ
023	のわきせし－なこりきりたつ－あさほらけ
024	かよふともなく－つなきおくふね
025	みなとたや－うゑしにまかふ－やなきかけ
026	こぬあきうかふ－みつのすすしさ
027	やまたかみ－くものなみよる－ゆふくれに
028	へたてやいくへ－ふるさとのそら
029	あはれにも－むすひなれたる－ささまくら
030	かせもいとはぬ－しものかたしき
031	さめすはと－ゆめちふけゆく－つきをみて
032	ひひきもそふや－すすむしのなく
033	うちはふる－そてはこたかに－かかつらひ
034	たよりこととふ－をののやまかけ
035	さひしくも－かけひのなかれ－かすかにて
036	さすかあとある－こけのいはかと
037	せきのとや－あくるをまちて－すきぬらむ
038	さきおふこゑの－とほきをくるま
039	そのひとと－おもひもわかぬ－たそかれに
040	ものうたかひを－みやさためまし
041	もろともに－かけしいのちの－はてもうし
042	かはらはいのる－かみやとかめむ
043	すくなるを－みちとしめくむ－きみかよに
044	そめむころもの－かきりやはなき
045	けふあすと－みをおくやまに－すてかねて
046	いつのほとにか－としもふりぬる
047	はるあきの－はなになれきて－にはのゆき
048	みさをのかけも－しもさむきまつ
049	かはかせの－くるれはつきに－ふねとめて
050	みきはにおつる－かりのともなひ
051	やまかけて－ひくあととほき－はつしほに
052	のへのいろなる－あけかたのくも
053	なこりある－おのかきぬきぬ－うちわひぬ
054	なみたはほさし－そてのうつりか
055	□□をさへ－わすれかたみの－はなのはる
056	つゆなからをる－つつしやまふき
057	わけてゆく－やまちのとかに－あめはれて
058	みねよりをちの－かせのうきくも
059	ふしかはや－ゆふへのくもも－しらなみに
060	かしらのゆきは－みにもおほえす
061	あきのよの－つきのこほりに－たつなきて
062	のはうらかれに－まつたてるみゆ
063	ひとむらの－きりにこもれる－おくふかみ
064	はるかになれる－いりあひのこゑ
065	たのめても－あやなくひとや－とはさらむ
066	しのふにまたも－おつるなみたか
067	たまつさも－あたなるこそは－かなしけれ
068	なにもあふきは－てにふれしとや
069	うつみひの－あたりはなれぬ－ゆきのうち
070	ふゆさくうめよ－ひとえたもかな
071	おしてるや－なにはのあさけ－ふねうけて
072	いりかたになる－つきそありあけ
073	こすのとや－ことのねすめる－あきかせに
074	きくのかをりそ－をりにあひたる
075	たはむれや－つゆはこてふの－ものならむ
076	はるにのこれる－いにしへのあと
077	たえすなほ－かこふかすみの－まかきにて
078	へたてはいつく－ちりのほかなる
079	なかめやる－みやこはやまを－そのままに
080	こしけきやとや－とふほとときす
081	をりにふれ－いもかあたりの－こひしくて
082	つきにものおもふ－ゆふへあけほの
083	しのふには－つゆのかことも－あやしきに
084	ひとまちかてら－きぬたうつなり
085	あさちふや－みにしめならす－かせのおと
086	まつはひとりの－かけのさひしさ
087	かたをかの－ゆききもみえす－くるるひに
088	あしたのはらは－いててよふかし
089	なけきこる－ましはのみちや－いそくらむ
090	ゆきけのくもに－ふゆこもるいほ
091	かせませの－しくれはとたえ－かちにして
092	いくたひのこす－ゆめのゆくすゑ
093	まことなき－こころとしるは－かひなきに
094	いはぬうらみの－たへてこそくれ
095	つらかりし－なかになさけの－かつみえて
096	わすれむとたに－おもひおかれす
097	おこたらは－なほおろかなる－ふみならむ
098	ねむれるまとに－のこるともしひ
099	あくるよの－まくらのうへに－はなおちて
100	またたちかへる－はるやちきらむ

天文廿四年梅千句　第三：何船［つきにうめ］

句番号	句
001	つきにうめ－あらそふはるの－たもとかな
002	かすみのゆふへ－あけほののつゆ
003	ききすなく－のをかりそめに－なれてきて
004	やとかすたれに－をかのへのさと
005	ゆくみちは－こととふもなく－くれわたり
006	かせもおとして－あめそそくそら
007	ちれはまた－かたえよりまつ－うすもみち
008	あきををしかの－もりのこかくれ
009	あけかたの－つきはひかりも－かすかにて
010	きりたちのほる－をちのやまのは
011	ゆくふねの－あとやしらなみ－へたつらむ
012	みるみるくるる－うらかせのすゑ
013	むらあしの－わつかになひく－しもふりて
014	ひのさすさとは－うちけふりつつ
015	かねのおと－しるへはかりの－ひろきのに
016	ねくらのやまと－からすとふなり
017	おやもこに－したかふみちは－□□□にて
018	うきみをしらは－すまむみやこか
019	こころこそ－なすにまかする－ものならめ
020	まなひもそめは－よきやたつねむ
021	うつすにや－にはもよしのの－はなさかり
022	かすみをふかみ－おつるたきなみ
023	おとなきも－しみみにふれる－はるのあめ
024	うらみられての－かへるさのそて
025	つれなきを－つかひのとかに－なすもうし
026	とはぬさはりを－たれにおほせむ
027	かよひちも－かたへはやとの－やへむくら
028	あつきひくれて－あきのはつかせ
029	めつらしき－つきはとみれは－みかのそら
030	きりのたえまの－やまほのかなり
031	かりわたる－えはよこくもに－あけはなれ
032	からろおとして－いつるふなひと
033	かなしきは－さすらふるみの－はてならむ
034	ゆかりとてたに－あとはたつねし
035	うちむかふ－こころはみたれ－こもしらす
036	かくれかそたた－しつかなるうち
037	たのしみは－ひるまのほとの－ひとねむり
038	たひにしあれは－あはのかれいひ
039	やまかつの－いほりをたにも－とひよりて
040	ゆきくらしたる－みちのすゑすゑ
041	ものことや－おもふはかりの－おいのとし
042	はなみるときそ－なみたわするる
043	たをりくる－さくらのみかは－ふてのあと
044	かすみにくたす－あけのそほふね
045	うかへるや－しられぬとりも－なみのうへ
046	みつゆくかたの－なほふかきやま
047	いろにいま－こすゑのあきの－うつろひて
048	ややおとたかき－つきのしたかせ
049	うちなひき－そとものきりの－あさほらけ
050	たけのさえたの－つゆもたまらす
051	ささかにの－いとかけすつる－くさわけて
052	のすちのみちそ－たえたえになる
053	みつとほき－つつみのうへは－こすなみに
054	おとあらましき－ゆふたちのそら
055	わかなかは－なるかみもやは－さけてまし
056	こころをおかは－ひとのくちのは
057	さかしらは－うらみはつへき－はしめにて
058	ゆくへをしるも－やすからぬよや
059	ねかふこそ－たたたまのをの－かきりなれ
060	やなきのつゆに－さくらをもみむ
061	てふとりも－をしむかきねは－さりやらて
062	あはれなれこし－はるもくれけり
063	おもふとち－かすみをくみて－ふかすよに
064	つきにかたりて－なきみわらひみ
065	あきかせの－こゑさへかはる－かたゐなか
066	つゆおもけにも－おつるきりのは
067	ふるあとは－みつつゐつつの－みつかれて
068	すきにけらしも－なつのひさかり
069	うつせみの－はやましけやま－みちとほみ
070	おもひいりなは－よもあちきなし
071	ひとしれす－こめおくのみの－まとのうち
072	いへのつたへは－ふたりともやは
073	おしなへて－もらさぬこそは－のりならめ
074	くみよるかたは－あかつきのみつ
075	ありあけの－うつろふはなに－おきなれて
076	あたにはなさし－ひとときのはる
077	のとけさは－ともによるこそ－やさしけれ
078	おくるるをまち－かへるやまみち
079	はなちおく－こまのけしきも－ゆふかけに
080	つゆのはえある－のへのくさむら
081	あきのしも－ところところに－おきそめて
082	いたまみえたる－かせはすさまし
083	こゑちかき－まくらのつきに－きりきりす
084	こよひもふけぬ－ひとりかもねむ
085	とやかくと－よそめやすらふ－ほともうし
086	にくむとすれと－なほしたひつる
087	われにひと－おもはせかほを－つくるらむ
088	きさめるよりそ－ほとけとはみゆ
089	いはかねや－まきたつやまは－しつかにて
090	なかれてはやき－はしのかはかみ
091	さみたれは－たきつみかさや－まさるらむ
092	とはれぬみちも－ふりはてにけり
093	ひとしきを－えらふこころの－ともなくて
094	おもふはかりに－つくすはかなさ
095	としつきの－かきりはいつと－たのままし
096	うらやましきや－ほしあひのそら
097	かならすも－おなしあきとし－めくりきて
098	しつくもにほふ－きくのさかつき
099	さきてより－ちるまてなるる－はなのかけ
100	あかぬこころに－はるもくははれ

天文廿四年梅千句　第四：初何［うめかをる］

句番号	句
001	うめかをる－このまはゆきの－しつくかな
002	こけのみとりも－したもえのいろ
003	いはねゆく－みつにもはるや－うかふらむ
004	やまはかすみに－をふねさすそて
005	はるはると－おきいつるのの－あけわたり
006	あとかすかなる－よるのしかのね
007	ふきおくる－あらしのすゑに－つきすみて
008	にははおちはに－あきふけぬめり
009	しくれては－くももこころや－かへつらむ
010	おともあられの－おほくふるやま
011	あはれにも－はこふしはしの－ひまをなみ
012	さをもゆるさぬ－まきのしまふね
013	かはかみの－かせにやなみの－たちぬらむ
014	ねくらにさわく－とりとりのこゑ
015	ひととほり－あめすきてゆく－くれたけに
016	はしゐにならす－そてのすすしさ
017	こすのとに－つきまちいつる－よひふけて
018	しらへはあきに－すめるもののね
019	やまかけて－きりやおほゐに－つつくらむ
020	をくらのみねに－くものゐるみゆ
021	のへはけさ－ゆきにおとろく－はなさきて
022	はねうちはふき－うくひすのなく
023	ねぬるよも－しはしはかりの－はるのゆめ
024	こちたきまてに－ちきるゆくすゑ
025	あたひとと－しらぬをふかき－たのみにて
026	こととひよれは－おもかけのくれ
027	おほつかな－なにのうらみに－そむくらむ
028	よをかくれかの－すみそめのそて
029	こころたた－こころからなる－やまのおく
030	いはきものりに－もるるとはみし
031	むろのとに－おこなひひとや－こもるらむ
032	あけかたふかく－のこるともしひ
033	さをしかも－よらぬかけのの－ねらひかり
034	つきになるよの－みちあらはなり
035	たまならは－ひろひもとらむ－つゆのいろ
036	きよきなきさの－あきのすすしさ
037	しほかせの－おきつなみまに－ふきこして
038	とわたるちとり－をちこちになく
039	わかかとの－ふゆたのおちほ－くちのこり
040	このはこきませ－ましはほすいほ
041	あめはるる－やまのかたはら－ひはさして
042	たひゆくたれそ－そてかすかなり
043	くれつつも－やとりわひぬる－くさまくら
044	なさけひとつは－よにゆるせかし
045	いましめの－みちにみたるる－ものおもひ
046	つきさへかなし－かへるさのそら
047	しのふれは－きりのまよひに－たちかくれ
048	すてしみをなと－あきはとひくる
049	はなのかも－またれしかせの－ゆくへにて
050	なかれてとほし－はるのやまみつ
051	そてしろき－かすみのうちや－ふねならむ
052	またみぬかたは－あひみまくほし
053	うかるるを－うつりこころの－くせにして
054	かよひてたまや－もののけとなる
055	うらみのみ－おくるはてはて－いかならし
056	むくひあるよと－うちもおとろけ
057	きき□□ぬ－こはいさむるを－たとへにて
058	おひいつるたけの－としとしのかけ
059	かりいほの－ふるすわすれぬ－つはくらめ
060	ふりぬるおとも－あめののとけさ
061	そことしも－わかすゆふへの－かすむのに
062	いとまなきまて－かへすあらをた
063	かせはたた－をかのくすはを－やとりにて
064	まつのこすゑの－つきのさやけさ
065	あさしもや－よさむのほとを－むすふらむ
066	みつゆくかはの－はしのたえたえ
067	なつしらぬ－さはのほとりは－おりたちて
068	ととめてしはし－まくさをそかふ
069	はるかなる－みちやいかにと－おもひやり
070	いりそむるより－かたきまなひよ
071	みるいしを－みをしはなれぬ－ともとして
072	たたひとりすむ－にはのあけくれ
073	うゑおきて－さかりあれとの－はるのはな
074	たちよるかけを－たのむふちかえ
075	やよひこそ－はつねとはせめ－ほとときす
076	つきもさひしき－おくやまのさと
077	あきよりも－さらにしくれの－はれやらて
078	□□をはらへは－またそてのつゆ
079	とはれての－のちもおもひの－いやましに
080	わかまへわたり－よきやかぬらむ
081	あちきなき－ひとめつつみの－なみたかは
082	さらぬつらさも－つもりてそしる
083	ちりのよは－みたるるまての－なからへに
084	とこなつにみる－しものひとはな
085	みつのうへに－おもかけたえぬ－ゆきのしま
086	はるまたさむき－いけのささなみ
087	ひのいろも－かすむいはほに－とりなきて
088	かせのすゑのの－こてふきえゆく
089	くれかかる－つゆのまかきは－しつかなり
090	ちるあとなから－あをやきのいと
091	あきはまつ－つきまつそてに－おもほえて
092	□□をみにしめ－ひとのつれなき
093	おしこむる－おもひはむねに－みえもせむ
094	なにわすられす－むかしこひしき
095	そのことと－かすならぬたに－てををりて
096	すみれにわらひ－ましるやまつと
097	ちりゆくを－とひくるはなの－あともなし
098	はるもあらしの－かすみふきとく
099	うすらひに－みなはうかへる－せをはやみ
100	わたすをふねの－そてはさえたり

天文廿四年梅千句　第五：何垣［あさきりに］

句番号	句
001	あさきりに－ぬれてうめさく－みたにかな
002	はるさへしかの－あととむるやま
003	のとけさや－いくありあけに－うつるらむ
004	すゑほのかなる－みつのひとすち
005	うちけふる－たけのはこしの－さとみえて
006	くれぬるかたの－みちはるかなり
007	たれにけふ－いひさためてか－くさまくら
008	おくれてこしも－たひのかたらひ
009	おりゐるに－こゑうちそふる－あまつかり
010	あしへによする－あきのうらなみ
011	ふねひとり－くちのこるえは－きりこめて
012	つきかけたかき－あけかたのやま
013	おほろけの－こころもとけす－おきわかれ
014	うきをかこつに－ききいれぬひと
015	まよひこし－ゆきにかとさす－くれふかみ
016	あらしもさゆる－すきのむらたち
017	はなのきや－それとしるしに－かすむらむ
018	おとさへはるに－おつるたきなみ
019	かめのをの－やまもふるてふ－としこえて
020	いくくすりをは－もとめえまほし
021	このままに－つらくはたへむ－おもひかは
022	わたりかねたる－わかなみたかは
023	たのみつる－ゆめのうきはし－たえはてて
024	かたしくとこは－ちりもはらはし
025	さむしろに－なれたるあとは－つきはかり
026	みやこのあきに－いててきにけり
027	くもきりの－やまのはめくる－ゆふしくれ
028	おとはいくもと－かせのむらまつ
029	はるかにも－いそのあしふき－かれわたり
030	をふねすておく－うらのさひしさ
031	かすかすの－かたしろのこる－みそきして
032	いまよりそてに－ものはおもはし
033	うつりかや－わかたまくらに－ならさらむ
034	ゆめかうつつか－ひとのおもかけ
035	しはしたに－とりとめはやの－わかれちに
036	あふさかすきて－うまのはなむけ
037	こしかたも－かたりゆくにや－わするらむ
038	おもひのへむも－ともによるへく
039	をりふしの－つれなからさる－おとつれに
040	かせはあきなる－なつのころもて
041	やまかけや－こすゑをたかみ－せみなきて
042	くるるみきはは－ほたるとふなり
043	なみよりや－あめのひひきを－いそくらむ
044	たかふねなれや－よるのよつのを
045	つきみれは－まくらもとらす－ふかしきて
046	きりのたつなも－よしやいとはし
047	はるのはなに－なれにしのへの－をみなへし
048	くれぬるあきや－こてふかなしむ
049	いたつらに－にはもまかきも－あれはてて
050	かへらむほとの－たひのひさしさ
051	ひとのくに－とほきところに－かかつらひ
052	まめならさると－みをはなれゆく
053	あさはかに－おもひつめなは－いかかせむ
054	またうひことの－ほのかなるこゑ
055	ももちとり－けさのあさけに－ほころひて
056	かすみのころも－ひまはみえけり
057	やままゆや－はるのけしきに－にほふらむ
058	ふてかきりあり－うつしゑもやは
059	みちにとは－かしこきをこそ－たつねつれ
060	きくもたへなる－のりのことわり
061	よしあしを－いひもてゆけは－ひとつなり
062	おとこそかはれ－はまをきのかせ
063	きりのうちや－ひかたもなみの－たちぬらむ
064	よさむのつきに－たつさはになく
065	おもふこと－いはねとしるは－あめにして
066	ひろきめくみや－おほきみのかけ
067	かみはたた－いのるにこそは－かひもあれ
068	むすふちきりの－ゆくへたかはし
069	たまつさに－ふかきなさけの－ほとみえて
070	うれしきにさへ－なみたおちつつ
071	あらぬよと－おもひしひとは－めくり□□
072	しつめるつみの－ゆるさるるとき
073	まつりには－いけるをはなつ－うをならし
074	かたよるみくさ－あきかせそふく
075	はれてゆく－きりのたえまの－つきすみて
076	しもをへしかも－かねちかきこゑ
077	ともしひの－はなのひかりも－きゆるよに
078	あけはなれたる－はるのやままと
079	ひとすちの－みねのかすみに－とりなきて
080	ひのさすかたの－みちかすかなり
081	はわけより－たけあむはしを－ゆくみつに
082	かせふきすくる－ゆふへさひしも
083	たのめぬも－もしやとこころ－あくかれて
084	ことはのすゑを－まつもはかなき
085	きえやらて－かかるちきりは－つゆはかり
086	いろはしをれて－のこるあさかほ
087	かけたにも－しはしはとまれ－そらのつき
088	けふのあきとは－たれかをしまぬ
089	ともときく－むしのねもはた－かれかれに
090	のなかのさとは－いかてすむへき
091	やまちかき－かたよりみつは－せきおとし
092	つくるたのもや－ちまちなりけむ
093	をさまれは－たみのかまとも－にきはひて
094	こころをのはへ－うたふひとふし
095	うしつらし－かかみのかけも－わすれめや
096	あらはにみつる－ひとはくやしも
097	あたなるや－おもひかけぬに－うつるらむ
098	いひなしのみか－ちかおとりする
099	わかそのの－はなにくらへむ－やまならて
100	くもやかすみを－いくへわけけむ

天文廿四年梅千句　第六：山何［うちなひき］

句番号	句
001	うちなひき－うめやのつかさ－はるのいろ
002	くさはみなから－あをやきのかけ
003	こほりとく－あらたのなかれ－さとわけて
004	あけゆくかたに－かりおつるこゑ
005	うすくもに－のこりてつきの－かけほそみ
006	あきやいくかの－そてのさむけさ
007	をちこちに－うちもたゆまぬ－からころも
008	かへらむたひの－そらやまつらむ
009	はれすのみ－さみたれくらす－ころにして
010	かせのいつくか－にほふたちはな
011	ふかきよを－しらてまきつる－たますたれ
012	ゆめちさえたる－つきのかたしき
013	とひきつる－あとははかなき－まくらにて
014	そのひとならぬ－かたらひはうし
015	つてにのみ－わかおもひやは－つくされむ
016	みえはとしのふ－みつくきのすゑ
017	なかれては－けかれぬなをし－なけけたた
018	やすからさるを－よのならひとか
019	さけはちる－はなのことわり－しるかれや
020	くははるやよひ－それもくれけり
021	あちきなく－しをるるそての－はるさめに
022	ひとかへりぬる－のちのつれつれ
023	ことはつる－かみのまつりの－しめのうち
024	ひをかそへつつ－こもるものいみ
025	ゆききさへ－まれなるみちは－しつかにて
026	くさのみしけく－なれるふるみや
027	やりみつの－おともとたえの－いはかくれ
028	あらしよりまつ－こほりそめけり
029	ころもてに－しみつくはかり－しもふりて
030	つゆのまをたに－ゆめはむすはす
031	まくらゆふ－あたりはつきの－ふくるよに
032	ものかなしくも－きりきりすなく
033	あしひきの－やまとなてしこ－うらかれて
034	あはれをかけよ－しつかかりいほ
035	つまきさへ－ともしくすめる－かくれかに
036	まつのはすきて－あるはあるかは
037	ひくれての－かせのままなる－くものみね
038	あめはすきゆく－あとのすすしさ
039	なよたけや－おのかすかたに－なひくらむ
040	こころはみえて－ひとのつれなき
041	たひたひの－おもはせかほも－なにならす
042	とれはかたみに－しるきとしなみ
043	いはふてふ－よにももちひを－かさねあけ
044	よそになたかき－ゆみのいきほひ
045	まきまきを－ひらくにみちは－たたしくて
046	なへてをさまる－よものくにくに
047	ひとはなや－あまねきはるを－つけつらむ
048	かすむあしたの－うくひすのこゑ
049	のとかにも－ねやのとをしき－よはのつき
050	こころすむより－のりもこそえめ
051	しもむすふ－のてらのゆふへ－かねなりて
052	ふるゐのみつの－あきはすさまし
053	もるあとも－あらぬたなかの－やまきはに
054	かせにほのめく－すすきひとむら
055	いなつまや－つゆとともにも－きえぬらむ
056	みることことに－なにたのむみそ
057	はかなしや－おもひおもはす－うかれつま
058	もらさしとする－ちきりならすや
059	あめつちの－ひらけそめたる－こひのみち
060	にはにむつまし－にはたたきなく
061	にはかにも－ゆきやふりこむ－かせさむし
062	かへれはやかて－たききなりけり
063	もみちはに－あきのさかつき－とりそへむ
064	そらゆくつきは－いくめくりとか
065	かりころも－のはたまくらの－つゆふけて
066	そてになきよる－まつむしのこゑ
067	おのつから－さとはあさちや－かこふらむ
068	いりひをおくる－かはかせのすゑ
069	さすかけは－ふねかとはかり－あととほみ
070	かさかたふけて－ひとかへるみち
071	ものまうて－たかきいやしき－いのるらむ
072	あひみるしるし－いまはつせやま
073	すきもすき－はなもはなそと－さきいてて
074	かせやかすみを－わけてふくらむ
075	はるのよも－つきのひかりは－ありあけに
076	ゆくかかへるか－かりそなくなる
077	たかふねの－なみにやすらふ－あさほらけ
078	よをはのかれて－つりたるるひと
079	さとるをは－ねむりのうちの－ゆめうつつ
080	わかちかたしや－まことそらこと
081	なのらぬは－きつねとたにも－おもへたた
082	つゆののこらぬ－かるかやのせき
083	ゆくあきや－しはしとここに－ととむらむ
084	もなかののちの－そてのつきかけ
085	きさらきの－わかれはいまも－なみたにて
086	なこりいつまて－さえかへるくも
087	よそはみな－きえてもゆきの－いこまやま
088	みねみねつつく－はなはみよしの
089	しをりする－みちもわかれす－よふことり
090	いつくにねなむ－ゆふへならまし
091	ふたしへに－かけしちきりを－おもひわひ
092	あらそひまけて－さすかつらしや
093	みたれこは－てをもゆるさむ－ものならて
094	おいにけらしな－かそふみそよそ
095	なにことも－すくるのみはた－しのふよに
096	かはらぬそらは－たたあきのつき
097	ふるさとの－のきははつゆに－あれわたり
098	みにしむのみの－かせはいくたひ
099	うつろはむ－そののちくさの－はなもをし
100	まつときくとの－みちそのこれる

天文廿四年梅千句　第七：何路［とりのねも］

句番号	句
001	とりのねも－うめかかふくむ－はかせかな
002	こほりのひまの－さむきえのみつ
003	のをとほみ－ゆくふねおそき－ひはくれて
004	やまよりひひく－かねかすかなり
005	うちはらふ－まくらのしもの－ふかきよに
006	とほそにおつる－つきのさやけさ
007	かつみれは－このまのそひて－したもみち
008	そらにもしれと－あきはいぬめり
009	かせませに－みたるるつゆの－むらしくれ
010	みさをのたけも－かしけたるいろ
011	みきりにも－こけのむすまて－さされいし
012	いくひさしさを－きみかよのすゑ
013	そのかみは－かみのつたふる－みちにして
014	おもはさらめや－やまとことのは
015	そへてやる－こころをはなの－ひとえたに
016	はるにさひしき－おくやまのいほ
017	はとのなく－かたへはあめの－うちかすみ
018	ゆふひをのこす－たけのやふはら
019	かけはまつ－くさのはつかに－つきみえて
020	すゑはいつくそ－むさしののあき
021	うかれたる－くもすさましく－ふくかせに
022	このかはかみや－たつのほるらむ
023	たきおつる－いきほひしるし－ふてのあと
024	はやくあはむの－ふみのこころよ
025	けさわかれ－ひるまのへたて－くるしきに
026	われなからかく－おもふあやしさ
027	みのはてし－ふかきたににと－こひわひて
028	すますはいかに－あはれしはのと
029	こととへは－こたへかほなる－まつのかせ
030	はるのみなとや－はなのゆくすゑ
031	ありあけの－かすめるかたに－かりなきて
032	ゆききえやらぬ－みこしちのそら
033	さもこそと－おもひしられて－さむからむ
034	ゆふへよりうつ－よるのころもて
035	こころたた－きりのへたての－ちかとなり
036	くさのまかきに－うらかれのころ
037	みせはやと－さかりまたれし－はきかはな
038	ひくらしのねに－なくとたにきけ
039	かりころも－きつつさかしき－やまこえて
040	やすむふもとや－あせをこそほせ
041	つけそふる－おもにおこして－ゆきなやみ
042	ふねさしとむる－いはかけのなみ
043	みちくるは－おとさへあらき－しほかまに
044	かせにたたよふ－ちとりなくなり
045	いくたひも－ねさめのまくら－うちしくれ
046	つきにはいとと－ひとのおもかけ
047	かならすと－いひてしあきよ－いかならむ
048	よのあらましに－きりこむるやま
049	かたかたに－うつしうゑての－ききのいろ
050	うとましけなる－もりのしたみち
051	そことなき－いはほつたひや－くれぬらむ
052	かけひのみつの－かすかなるおと
053	すむとたに－しらしいほりは－しつかにて
054	ふかきやまこそ－たのしみはあれ
055	とりのこゑ－きかぬはかりの－みねたかみ
056	ゆきのひかりは－よるもわかれす
057	あたりさへ－くももかからぬ－あきのつき
058	このころはけし－のわきたつころ
059	むしのねも－かきほのうちや－のこるらむ
060	すすきにましる－はなのあはれさ
061	つゆしもに－ふりそふみちは－あらはにて
062	あさあけいそき－たれいつるそて
063	なこりある－わかれはみたに－おくれかし
064	おもひおくとも－しらぬはてはて
065	うくひすを－たちゆくあとの－ほとときす
066	いろをさきつつ－はなはうのはな
067	ひとなつに－たをるしきみの－いかはかり
068	ほとけのみちは－さまさまにのみ
069	まことある－のりのをしへは－きかまほし
070	かちこたへより－よふねをもこく
071	ゆふつつは－つきまつなみに－うつろひて
072	そてひややかに－かせはすきけり
073	うちそそき－ふりもとほらぬ－あきのあめ
074	やまをはなれて－くもそうかへる
075	くれぬれは－はるもむかしの－はなのいろ
076	うちなひきたる－まつのふちかえ
077	なかきひも－いりあやをしむ－かさしにて
078	そふるおもひを－ひともしれかし
079	みをわくる－こころはかよふ－よるのゆめ
080	なほいやましに－みやここひしき
081	わたりする－ふねもまちてよ－すみたかは
082	ここにやとかる－あつまやのうち
083	くれてより－あつまるのきの－むらすすめ
084	ゆきけもよほす－あらしこからし
085	すみかまや－みねにはふゆを－いそくらむ
086	いちにたちたる－おきなさひけり
087	うちみるに－そのなかくすは－かひなくて
088	おもふとしらは－こころとけてよ
089	かはらしも－なかのころもの－うらめしや
090	ひとりかたしく－つきのさむしろ
091	あきのよは－あけむとしても－なほひさし
092	きりふるさとは－そことわかれす
093	たちよらむ－やまかけいつこ－たひのすゑ
094	をりたくしはし－みちのやすらひ
095	きのふけふ－はなにこころの－あくかれて
096	ゆくへをおもふ－はつはるのそら
097	あさまたき－ひらくもかすむ－かとのまへ
098	たれかへるさを－しのふをくるま
099	ことさらに－やつすとみえし－かへころも
100	つかへひまなき－をりにこそあれ

天文廿四年梅千句　第八：二字反音［くれなゐの］

句番号	句
001	くれなゐの－ゆふひをうめの－ちしほかな
002	あめはこのめも－はれのこるには
003	みつけふる－かきねのかはつ－こゑそひて
004	たつらにつつく－みちのうくひす
005	しつかなる－たけのはやしの－かけふかみ
006	しつくおとして－まよふあさしも
007	ふむあとも－そはのかけはし－たえたえに
008	つきにこまひく－むらのかたはら
009	あきくさの－のはかりころも－よはにきて
010	むすふまくらも－つゆのしたふし
011	おもひやる－わかれのそらを－いかかせむ
012	またあひみむと－たのめおくなか
013	いもせこそ－よよのちきりの－すゑならめ
014	えにしくちせぬ－こころたかふな
015	となへつつ－そのあかつきを－まつほとけ
016	とりかねよりや－はるはたつらむ
017	はなにつき－なれしこてふの－ゆめもなし
018	やまちかくれや－かすみたなひく
019	ゆくかたも－しられぬなみの－ふねのうへ
020	あとよりかせの－とたえぬるおと
021	きほふかと－おもへはよその－ゆふしくれ
022	はれてもさむき－くものむらむら
023	くらきよや－ほしのひかりと－なりぬらむ
024	たとるみちをや－ほたるとふそら
025	うすものの－そてにおほゆる－あきのきて
026	あたためさけを－かさねかはらけ
027	たつたひの－けさのつゆしも－いかはかり
028	もみちのにしき－やまそいろこき
029	かけもやや－よをまつつきの－てりそひて
030	こころいられの－なみたこほるる
031	はかなくも－おもはぬひとを－こひわひぬ
032	たえたるあとそ－けしめみせたる
033	おほかたは－ふきつきてくる－いへのかせ
034	とほきさくらの－みきりともちる
035	いけみつに－みねのかすみの－うつろひて
036	あかねさすより－ひはのとかなり
037	いろとりの－しもうちはふく－あさほらけ
038	かたえにのこる－あきのこからし
039	ほのかにも－すすきひとむら－うちなひき
040	たれまねけとか－つきはゆくらむ
041	きぬきぬの－なこりもしらぬ－ころもてに
042	へたつるせきや－みすのおもかけ
043	たきものは－いくしなしなに－かをるらむ
044	くらしわひたる－あめのつれつれ
045	かへるさを－いひもととめは－かたれひと
046	たえすおとして－みつおつるやま
047	そまききる－かはかみふかき－いはつたひ
048	かみのほこらそ－うつすときなる
049	いかきには－はなのしらゆふ－かけそへて
050	もりのこすゑの－かすむしののめ
051	はるのよの－ねくらのからす－たちわかれ
052	わひしきものは－やもめすみなり
053	うきことや－ゆふへゆふへに－かきるらむ
054	ほのかなりつる－をきのうはかせ
055	みかつきは－いつるもくもに－かくろひて
056	しくれそめけり－やまのはのあき
057	よさむさも－いまやみやこの－そらならむ
058	もすなくはしの－こすゑさひしも
059	いりひさす－かたののみちは－ゆくもなし
060	むすひすてつつ－みさひゐにけり
061	たかすみし－あとともみえす－かとふりて
062	しけるをままの－よもきふのやと
063	むらさめの－はれますすしく－ふくかせに
064	うちまとろめる－ほとはへぬめり
065	むつことは－いひもつたへぬ－こころにて
066	たよりをいそく－いまのひとふて
067	わかるとも－かたみにおもひ－わするなよ
068	たひのやとりの－ともはしたしも
069	うつみひを－あけはつるまて－かたらひて
070	とはれてやまは－のちそものうき
071	いにしへに－とすれはかへる－わかこころ
072	すみのころもは－あさはかのいろ
073	つらなるは－こきむらさきの－たもとにて
074	つむやすみれに－のへをつくせる
075	まつとしも－いはたのもりの－はなはいつ
076	やまちゆくゆく－かすみこめたり
077	おほつかな－くれぬるかたの－よふことり
078	つきこそさとの－しるへとはなれ
079	ふくるよに－あきのかはふね－さしうけて
080	あつさやみつの－おとにのこさぬ
081	ゆふたちの－すくるこけちの－あをやかに
082	かたやまてらの－まへいさきよし
083	ふむくつの－まさこのうへの－しつかにて
084	まりにくらせる－けふはわすれし
085	かりそめの－おもひやふかく－なりぬらむ
086	いのるにこひそ－いやまさりゆく
087	もののけの－みたれこころは－みにそひて
088	□□さへにほふ－ひとりねのとこ
089	よそめたに－くちきとみるは－かひなきに
090	はなをあるしは－さそなをしまむ
091	ありあけの－あさつゆはらふ－ももちとり
092	かすみなからの－ひはいてにけり
093	なかむれは－やまのあなたの－やまたかみ
094	はまちのなみに－あわとこすふね
095	いそちかく－さとのあまひと－おりたちて
096	さかなもとめつ－あそふましはり
097	はなはあれと－きくさくかけや－よきところ
098	わけゆくかたは－きりふかきみち
099	あけぬとや－こたかにいつる－のをとほみ
100	ふりはへみゆる－そてのいろいろ

天文廿四年梅千句　第九：何袋［ふたあゐの］

句番号	句
001	ふたあゐの－あやおるみつか－うめのはな
002	みいけのふねの－なみののとけさ
003	かりかへる－あとはあしかも－ともなひて
004	ひもくれかかる－かけのをやまた
005	あきさむき－はれてもまたや－しくるらむ
006	かせのたひたひ－つゆそこほるる
007	はしちかく－つきまつよはの－ふかしきて
008	のはかたはらの－むしのなくらむ
009	なみかかる－かはへの□くさ－いろいろに
010	すゑはるかなる－まつのしたみち
011	すきてたに－しつくにのこる－あめみえて
012	ふりたるのきの－ゆふへさひしも
013	ほとときす－むかしなからの－ひとこゑに
014	あとはなみたの－かたしきのゆめ
015	みにしらぬ－なきなをひとの－いひすてて
016	わするるとしを－かそふるはうし
017	ひをへても－かへりくるこそ－たひならめ
018	おもひへたてぬ－ここのへのくも
019	とほやまも－まかきのききの－はなさかり
020	すたれをまけは－はるのあさかせ
021	うくひすの－ちかきまくらに－おとろきて
022	こころやうつる－かたにひかれし
023	われにのみ－つなしにくきを－くせなれや
024	うきものねたみ－いかにこらさむ
025	おもひには－をむなもおにに－なりつへし
026	こむよのむくひ－たれもおそれよ
027	ここにきえ－かしこにうかふ－みつのあわ
028	ふねつなくえに－ほたるとふかけ
029	ゆふやみは－さとあるかたも－わかなくて
030	つきにやすらふ－やまみちのすゑ
031	あめかとも－もみちをうくる－ころもてに
032	おとはまきれす－かせのおちくり
033	くれかたは－わひしらましら－なきよりて
034	くもりつはれつ－そらのうきくも
035	さためなき－よのならひをは－いかかせむ
036	ちとせもあかす－ちきるいのちよ
037	ふたりこそ－おなしはちすの－うへならめ
038	ふかきたのみを－かくるのりのし
039	みをすてて－なつみみつくみ－たまたすき
040	ゆきちかふにや－のははるかなり
041	くるかりに－つはさやかはす－つはくらめ
042	たのもいろつき－やなきむらたつ
043	すむかけは－きりよりおくに－かとみえて
044	あらしにいつる－つきのさやけさ
045	あはれなほ－つまとふしかの－こゑこゑに
046	つらしやわれは－たれをたのまむ
047	なれてたに－なかたえぬへく－おとろへて
048	けのかはころも－かさねむもいさ
049	ゆきとのみ－はなのふふきや－さむからし
050	まつはいつより－はるのひとしほ
051	すみよしの－うらはかすみの－とほひかた
052	なみのまかひに－あくるはつしま
053	ふねはたた－かたわれつきの－かけににて
054	ほしのあふせの－ときもきにけり
055	うきあきも－けさはかたみの－ささめこと
056	つゆもなみたも－すかくよつのを
057	こころから－なくさめかぬる－おもひにて
058	ゆめにまされる－うつつはかなや
059	ちるはなの－あとはひかすも－すゑのはる
060	かすみのひまの－やまみとりなり
061	ゆきとけて－くもよりおつる－たきつなみ
062	あけてもおとは－よるのかはかせ
063	いくとほり－あちのむらとり－わたるらむ
064	たつらにひとり－たてるしらつる
065	うちけふる－まつはこたかき－かけなれや
066	しもにしをるる－あきのくさむら
067	のらにすむ－そてはいつしか－つゆをへて
068	つきみるたひに－おもひもそそふ
069	まつよはに－またふけてゆく－かねのこゑ
070	みふさへさひし－とふのすかこも
071	いまははや－みをおくやまに－いほしめて
072	こたへをきくは－こたまあまひこ
073	かせかよふ－くれものすこく－ひもきえぬ
074	とらのうそふく－ときもこそあれ
075	からきよは－したかひてたに－ふまれめや
076	あまのしほやは－のきそかたふく
077	ぬれつつも－まつにかけます－あさころも
078	にしのつらぬく－ひはさやかなり
079	ひとことに－よきことをのみ－そねむらむ
080	つかふるみちは－くるしからすや
081	たかかりや－こえゆくやまは－さかしきに
082	ゆきにはなつむ－こまのあしなみ
083	かせをいたみ－くれあへすしも－やととひて
084	わたさてここに－かへるかはふね
085	あふことの－よとのによはふ－いももうし
086	しのひいらむも－いつくねところ
087	うつりかは－あるここちする－からころも
088	きえはともにと－ちきりおきつる
089	あさかほの－かきほのつゆや－こほるらむ
090	のこるもほそし－あさきりのつき
091	よもすから－あきのかやりの－ゆふけふり
092	あらはにのみも－すみなせるやま
093	このはをは－はらひつくして－まつのかせ
094	はなをわすれぬ－はるのゆくすゑ
095	うみつらや－かすみをかけて－よるなみに
096	ひもなかかれや－ふねのうけなは
097	ひきとつる－あしのまろやは－ここかしこ
098	つれつれいかに－ふりつつくあめ
099	うゑわたす－をたのほなみは－うちなひき
100	きりにくれゆく－やまもとのむら

天文廿四年梅千句　第十：花之何［かみかきの］

句番号	句
001	かみかきの－ちきにもうめの－ひときかな
002	みやちにいそけ－さくらはのいろ
003	たますたれ－うくひすさそふ－あめはれて
004	ほのかにあくる－しののめのやま
005	ふねとめし－つきのゆくへの－わたのはら
006	かせのまにまに－なみのうすきり
007	のをとほみ－つゆおきなひく－むらすすき
008	そてうちわたす－みちはくれけり
009	ひにむかふ－にしはさなから－はしににて
010	さとのさかひの－やまちかきかけ
011	つまきとる－あとかすかなる－ゆきのうち
012	くもにみえつつ－しくれいくたひ
013	さためなき－うきよのほとを－そらにしれ
014	とふにまことを－たのむうらかた
015	ゆめかたり－あはするひとも－むつましみ
016	なほゆくすゑを－おもひこそやれ
017	いかたさす－いはまいはまの－しらなみに
018	いへあらたむる－さかのふるみち
019	かくてしも－あかしのをかの－うきすまひ
020	くるれはすさふ－まつかせのこゑ
021	みるひとの－こころつくしや－はるのはな
022	やへここのへに－かすむつきかけ
023	まさこちは－あられはしりに－よのふけて
024	みちもあまたに－つつくかとかと
025	いつくにか－やとりさためむ－たひのそら
026	むれつつとりの－こゑこゑになく
027	あきのたの－かりしほちかく－いろつきて
028	ゆふへのつゆよ－けさのはつしも
029	まちしより－みにしめきつる－きぬきぬに
030	つきみるこそは－ものおもひなれ
031	よはひもや－ねさめのうちに－つもるらむ
032	ふることのはに－しのひかなしむ
033	おこたりし－みちはいまさら－くやしきに
034	あはれにすめる－よもきふのおく
035	かきならす－こともさひしき－ねにたてて
036	とふかりいつち－かへりゆくらむ
037	ときははる－なもこそはなの－みやこなれ
038	かすみにそての－しけきかよひち
039	さとちかき－あたりはゆきの－まつきえて
040	なかれいてたる－せりかはのみつ
041	うゑわたす－たけたのさなへ－うちしけり
042	あるかなきかに－すみかくれぬる
043	うつしゑは－ちたひももたひ－まきかへし
044	わくるこころに－いひもこそよれ
045	あひおもふ－ゆかりとみれは－ゆかしくて
046	ゆふつけとりの－こゑもたつなり
047	かはなみの－しろきやつきを－うかふらむ
048	あきのあらしは－おつるみなかみ
049	なかきよの－あしたのとこは－ゆめもなし
050	なにをわかれの－かたみともせむ
051	みとりこの－おひたたむまも－おほつかな
052	ねのひのまつの－かけこたかかれ
053	はることに－かはらすちきる－やとりにて
054	ふるすわすれぬ－とりのあはれさ
055	かはかりや－ふせこのうちの－ものならむ
056	ひとまちかほの－けはひしるしも
057	ゆふくれは－なにとなけれと－たちかくれ
058	ゆきかあられか－くものひとむら
059	そともなる－ならのかれはの－ちりのこり
060	をかはとみれは－みつのたえたえ
061	あつきひや－いつくにゆきて－しのかまし
062	おもきたききや－たにふかきおく
063	くれそむる－かたはやまてら－かねなりて
064	さらにかすみの－うへのかけはし
065	はなはいま－およはぬえたに－くちのこり
066	やなきとみるも－ひこはえのいろ
067	うちかへす－こそのあらたは－さひしきに
068	ときもわすれす－かはつなくなり
069	さみたれは－はれてもおなし－にはたつみ
070	わたりかねたる－はやかはのすゑ
071	わかよなと－なかなかしくも－すみぬらむ
072	おいてはよそに－ましはるもいさ
073	みちとほみ－すかるもはとの－つゑにして
074	かへるかたとは－たけのうちなり
075	さとみえて－けふりほのかに－たちのほり
076	くもよりうへの－つきのさやけさ
077	ひととほり－ふきてすくるや－あきのかせ
078	つゆふるのへは－あめかあらぬか
079	たひたつも－しをれもてゆく－ひかすへて
080	おもふのみとは－ふるさとのそら
081	くやしきは－かへらしなみの－みつのえに
082	なかめにかかる－おきのつりふね
083	ともしひは－かすかなりしも－きえのこり
084	ほとけのみかほ－むかふたふとさ
085	やまをたに－つくりいてたる－けさのゆき
086	よるのあらしを－にはのささはら
087	あともなき－ことはのすゑは－はかなくて
088	いつをかとはむ－をりとまつへき
089	うつきより－さつきみなつき－ほとときす
090	あきをかなしみ－なくきりきりす
091	いろなから－のはむらむらに－しもおきて
092	ちくさのはなは－われもかうはし
093	そてしけき－みゆきのみちの－ありあけに
094	ものみくるまは－ところせきまて
095	たれにしも－すけるこころは－ならふらむ
096	よにへぬもはた－ましるあたこと
097	あをやきの－いとしもなかき－ひかけにて
098	さきちるほとは－ゆめのまのはな
099	きみかよの－としはいくとせ－こえぬらむ
100	あふけはたかし－このみかさやま

天文廿四年梅千句　追加：唐何［にほひきて］

句番号	句
001	にほひきて－このまのうめの－たちえかな
002	かすむあさけの－そののとりのね
003	はるのあめ－そらもしつかに－ふりいてて
004	おもはすゆきの－さえかへるやま
005	いはねゆく－みつのおとのみ－むすほほれ
006	なかれのすゑは－たえたえにみゆ
007	きりふかき－のへはかたはら－つきふけて
008	そことしもなき－しかのこゑこゑ

天文廿四年梅千句

天文廿四年梅千句 第一：何木［つみそへよ］

天文廿四年梅千句 第二：何人［うめいつく］

天文廿四年梅千句 第三：何船［つきにうめ］

天文廿四年梅千句 第四：初何［うめかをる］

天文廿四年梅千句 第五：何垣［あさきりに］

天文廿四年梅千句 第六：山何［うちなひき］

天文廿四年梅千句 第七：何路［とりのねも］

天文廿四年梅千句 第八：二字反音［くれなゐの］

天文廿四年梅千句 第九：何袋［ふたあゐの］

天文廿四年梅千句 第十：花之何［かみかきの］

天文廿四年梅千句 追加：唐何［にほひきて］

天文廿四年梅千句　第一：何木［つみそへよ］

天文廿四年梅千句　第二：何人［うめいつく］

天文廿四年梅千句　第三：何船［つきにうめ］

天文廿四年梅千句　第四：初何［うめかをる］

天文廿四年梅千句　第五：何垣［あさきりに］

天文廿四年梅千句　第六：山何［うちなひき］

天文廿四年梅千句　第七：何路［とりのねも］

天文廿四年梅千句　第八：二字反音［くれなゐの］

天文廿四年梅千句　第九：何袋［ふたあゐの］

天文廿四年梅千句　第十：花之何［かみかきの］

天文廿四年梅千句　追加：唐何［にほひきて］